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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-19
(54)【発明の名称】オフセットセレクタ
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/15 20060101AFI20230112BHJP
   A61B 17/56 20060101ALI20230112BHJP
   A61F 2/46 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
A61B17/15
A61B17/56
A61F2/46
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022528958
(86)(22)【出願日】2020-11-19
(85)【翻訳文提出日】2022-07-12
(86)【国際出願番号】 EP2020082695
(87)【国際公開番号】W WO2021099472
(87)【国際公開日】2021-05-27
(31)【優先権主張番号】19209993.5
(32)【優先日】2019-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591151602
【氏名又は名称】ヴァルデマール・リンク・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Waldemar Link GmbH & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】弁理士法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】ドムシェウスキー クラウス
【テーマコード(参考)】
4C097
4C160
【Fターム(参考)】
4C097AA03
4C097BB05
4C160LL12
4C160LL26
4C160LL28
(57)【要約】
本開示は、関節インプラント部材の固定セクションと関節セクションとの間のオフセットを決定するためのオフセットセレクタ(1)に関する。オフセットセレクタは、オフセットを決定する基準となる基準部(2)であって、オフセットが距離(A)と配向(α)とによって規定される基準部と、基準部までの距離を調整する第1調整デバイス(10)と、基準部に対してオフセット回転軸(VA)を中心とした配向を調整する第2調整デバイス(20)とを備える。第1調整デバイスおよび第2調整デバイスは、互いに結合されている。第1調整デバイスおよび第2調整デバイスの一方は基準部に接続され、第1調整デバイスおよび第2調整デバイスの他方は調整部(4)に接続されている。調整部は、第1調整デバイスを介して調整可能な距離によっておよび/または第2調整デバイスを介して調整可能な角度によって、基準部に対して移動可能である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
関節インプラント部材の固定セクションと関節セクションとの間のオフセットを決定するためのオフセットセレクタ(1)であって、
オフセットを決定するための基準となる基準部(2)であって、オフセットが距離(A)および配向(α)によって規定される基準部と、基準部までの距離を調整する第1調整デバイス(10)と、基準部に対してオフセット回転軸(VA)を中心とする配向を調整する第2調整デバイス(20)とを備え、第1調整デバイスおよび第2調整デバイスは互いに結合され、第1調整デバイスおよび第2調整デバイスの一方は基準部に接続され、第1調整デバイスおよび第2調整デバイスの他方は調整部(4)に接続され、調整部は、第1調整デバイスを介して調整可能な距離によっておよび/または第2調整デバイスを介して調整可能な角度によって基準部に対して移動可能である、オフセットセレクタ。
【請求項2】
第1調整デバイス(10)は基準部(2)に接続され、第2調整デバイス(20)は調整部(4)に接続されている、請求項1に記載のオフセットセレクタ(1)。
【請求項3】
基準部(2)は、ツール、特に骨組織内に固定凹部を準備するためのツールと係合するように適合されたツールインターフェースとして提供される、請求項1または2に記載のオフセットセレクタ(1)。
【請求項4】
基準部(2)は、凹部(3)として形成され、好ましくは前記凹部の最大幅の少なくとも1倍、2倍または3倍の長さを有する、請求項1~3のいずれか1項に記載のオフセットセレクタ(1)。
【請求項5】
調整部(4)は、ツール、特に切削ガイドまたは試験インプラントに結合されるための結合インターフェース(5)を含み、結合インターフェース(5)は、好ましくは少なくとも2つの位置および/または配向で前記ツールに結合されるように構成されている、請求項1~4のいずれか1項に記載のオフセットセレクタ(1)。
【請求項6】
第1調整デバイス(10)および/または第2調整デバイス(20)は、距離(A)または配向(α)を段階的に調整するように構成されたラッチ機構を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載のオフセットセレクタ(1)。
【請求項7】
ラッチ機構は、少なくとも2つのスナップ体(22)を備えるスナップ体ラッチ機構(21)であり、スナップ体の各々は外側体(23)と内側体(24)との間で作用しかつ半径方向に付勢され、内側体は外側体内に回転可能に配置され、ならびに、内側体および外側体の1つは複数のスナップ凹部(25)を備え、スナップ体はスナップ凹部と可逆的に係合可能である、請求項6に記載のオフセットセレクタ(1)。
【請求項8】
スナップ体(22)は弾性インサート(26)によって付勢され、弾性インサートは好ましくは回転可能な前記本体(23、24)の内側体(24)、特に、内側体の内側の凹部に配置され、さらにより好ましくは内側体の内周の半分以上に沿って延在する、請求項7に記載のオフセットセレクタ(1)。
【請求項9】
弾性インサートは、長手方向におけるその端部領域の少なくとも1つに、スナップ体(22)のうちの1つを部分的に受け入れるためのスナップ体受入凹部を有する、請求項8に記載のオフセットセレクタ(1)。
【請求項10】
ラッチ機構は、2つの本体(12、13)の第1本体(12)に接続されかつ係合部材(16)と係合可能なラッチ部材(15)を含む弾性アーム(14)を含む弾性ラッチ機構(11)を備え、前記2つの本体は互いに対して移動可能であり、前記第2本体(13)は複数の前記係合部材を備える、請求項6に記載のオフセットセレクタ(1)。
【請求項11】
前記第1本体(12)および前記第2本体(13)のうちの一方、特に前記第1本体は、前記第1本体および前記第2本体のうちの他方に対して旋回可能であるための旋回軸(17)に取り付けられている、請求項10に記載のオフセットセレクタ(1)。
【請求項12】
旋回軸(17)とラッチ部材(15)および係合部材(16)の係合位置との間の距離は、少なくとも5mmであり、さらにより好ましくは少なくとも8mmである、請求項11に記載のオフセットセレクタ(1)。
【請求項13】
弾性アーム(14)は、弾性アームのラッチ部材(15)を係合解除する作動部(18)を有する、請求項9~12のいずれか1項に記載のオフセットセレクタ(1)。
【請求項14】
第1調整デバイス(10)および/または第2調整デバイス(20)は、オフセットの距離(A)または配向(α)を示すための指示器(19、29)を備える、請求項1~13のいずれか1項に記載のオフセットセレクタ(1)。
【請求項15】
オフセットセレクタ(1)、特に請求項1~14のいずれか1項に記載のオフセットセレクタを使用して、関節インプラント部材の固定セクションと関節セクションとの間のオフセットを調整する方法であって、下記ステップを含む方法:
- オフセットセレクタの基準部(2)を、第1のツール、特に患者の骨組織に固定凹部を準備するためのツールと接触させること、
- 第2のツール、特に試用インプラントまたは切削ガイドをオフセットセレクタの調整部(4)と係合させること、
- 第1調整デバイス(10)により基準部および調整部の間の距離を調整すること、
- 第2調整デバイス(20)により基準部および調整部の間の配向を調整すること、
ここで、オフセットは、距離(A)および配向(α)によって規定され、
基準部および調整部は、第1調整デバイスおよび第2調整デバイスを介して直列に結合されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、関節インプラント部材の固定セクションと関節セクションとの間のオフセットを決定し、調整するためのオフセットセレクタ、およびそのようなオフセットを調整するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関節内部人工器官(joint endoprosthesis)の成功に大きく影響しうる要素の1つは、患者の解剖学的構造に関連したそのような人工関節の位置および配向である。これらのパラメータは本質的に、移植中に、骨組織の準備および関節部材の選択によって決定される。長骨の場合、固定は、通常、インプラントステムを使用して達成される。この目的のために、骨髄管内に延びることができる骨組織内に凹部が形成される。このような凹部を形成する特に効率的な方法は、ナビゲーションシステムの支援下で外科用リーマ(reamer)を使用することである。その結果、凹部は、回転切断動作の手段によって骨組織内に正確に配置され、形成されることができる。別の方法は、これは関節置換における解剖学的形状のステムに主に使用されるが、それに応じた形状のやすりの使用である。したがって、これらのやすりは、解剖学的形状のステムに適合する凹部を骨組織に形成する。
【0003】
しかしながら、移植処置の計画中および実行中に、最適な固定のための骨凹部の配置と、解剖学的および機能的に最適な関節内部人工器官の配置のための骨凹部の配置とが異なることが起こり得る。このような場合、最適な治療のために、適切なオフセットを持つモジュールインプラントの部材を使用することで、これらの異なる目的を一致させることができる。適切な部材を決定し、設置することにより、関節インプラントの所望の固定と所望の機能的配置との間の位置決めおよび配向における違いを調整することができる。
【0004】
このオフセットの範囲はその処置を計画している間に既に推定されているが、最終的な測定、したがってオフセットの最終的な決定は、多くの場合、その処置中にのみ実行することができる。まず、インプラントステムを収容するために、骨組織の凹部が形成される。次いで、関節に近い骨組織の領域は、関節インプラント部材を収容するために準備される。後者の準備は、既に形成されたステムの挿入のための骨凹部への適切なオフセットを考慮して行うことが好ましい。
【0005】
決定されるべきオフセットは特に、2つの成分、即ち、半径方向距離と相対的配向から構成される。これらの2つのパラメータの異なる組み合わせを考慮すると、関節置換のための多くの異なる構成があり、およびこれらの構成を決定するための対応する数の計画ツールが必要となる。さらなるパラメータが考慮される場合、異なる構成の数は、それに応じて乗算される。このようなパラメータは例えば、ステム長である。さらに、関節置換は一般に、患者の身体の右側および左側について異なる構成を有する。
【0006】
その結果、関節インプラント部材の構成の決定は、依然としてかなり困難である。この作業のための計画ツールの数は、計画およびその処置を煩わしく時間のかかるものにする。これはまた、その処置の前後に洗浄および消毒の必要性を増大させる。
【発明の概要】
【0007】
したがって、関節インプラント部材の固定セクションと関節セクションとの間のオフセットの容易な測定および調整を可能にするデバイスを提供することが目的である。その狙いは、患者固有の解剖学的環境における関節インプラント部材の機能に関する患者のニーズを満たすために、関節内部人工器官の構成の適合性を高めることである。
【0008】
別の目的は、計画中のデバイスの取り扱いおよび外科的処置を容易かつ効率的にすることである。これには、関節インプラント部材の可能な限り多くの構成に対してデバイスを使いやすくすること、が含まれる。さらに、デバイスの洗浄および消毒は容易でなければならない。
【0009】
これらの目的に対処する本発明は、独立請求項の主題において規定される。また従属請求項は本発明の好ましい態様を規定する。
【0010】
解決策として、本発明は、関節インプラント部材の固定セクションと関節セクションとの間のオフセットを決定するためのオフセットセレクタを提供する。オフセットセレクタは、オフセットを決定するための基準となる基準部であって、オフセットが距離および配向(角度)によって規定される基準部と、基準部までの距離を調整するための第1調整デバイスと、基準部に対してオフセット回転軸を中心とする配向を調整するための第2調整デバイスとを備える。第1調整デバイスおよび第2調整デバイスは、互いに結合されている。第1調整デバイスおよび第2調整デバイスの一方は基準部に接続され、第1調整デバイスおよび第2調整デバイスの他方は調整部に接続されている。調整部は、第1調整デバイスを介して調整可能な距離によって、および/または第2調整デバイスを介して調整可能な角度によって、基準部に対して移動可能である。
【0011】
このようなオフセットセレクタは、固定セクションまたは基準部と関節セクションまたは調整部との間の相対距離および相対配向または角度の両方を調整し、したがって決定することを可能にする。これは、オフセットセレクタを基準部に接触させた後、両方のパラメータに対して行うことができる。オフセットセレクタの再位置決めは不要なため、オフセットセレクタは正確な結果を提供する。言い換えれば、これらのパラメータに異なるテンプレートを使用することによって生じるエラーは、基本的に除去される。
【0012】
オフセットセレクタの基準部は、固定セクションが配置されるかまたは配置されるであろう位置に対して固定された位置および方向を有するように構成されることが好ましい。言い換えれば、固定位置、特に患者の骨組織の凹部に対する基準部の位置および配向を固定するように構成されることが好ましい。したがって、基準部は患者の骨に対して位置決めされるべきであり、関節インプラント部材の固定セクションと関節セクションとの間のオフセットを決定するために、この位置に保持されるべきである。
【0013】
調整部の距離と配向の調整は順番に行われる。これにより、オペレータは、所望に応じて2つのパラメータを変更して、患者の解剖学的環境に適したモジュール関節インプラント部材のサブ部材の組み合わせを決定することができる。その結果、オフセットセレクタは、互いに関連して移動可能な少なくとも3つの本体を備える。
【0014】
言い換えれば、オフセットセレクタは、基準部と調整部との間のオフセットを調整するために使用され、それによって、関節インプラントの所望の機能性を提供しながら、関節インプラント部材の関節セクションおよび固定セクションの位置および配向を解剖学的構造と一致させる。
【0015】
オフセットセレクタは、オフセットを決定するため、および決定されたオフセットに従って関節インプラント部材のための移植部位を準備するための両方に使用されてもよい。オフセットは、好ましくは基準部の点(基準点)および/または調整部の点(調整点)の間で決定される。
【0016】
次いで、決定されたオフセットを使用して、移植部位を準備するためのツール、例えば、切削ツールのための切削経路を提供するツールを位置決めすることができる。この観点で、基準部および調整部は、好ましくはツールまたは補助デバイス(例えば、キルシュナーワイヤ)に接触しまたは係合することができるインターフェースとして働く。
【0017】
好ましくは、第1調整デバイスは基準部に接続され、第2調整デバイスは調整部に接続される。
【0018】
したがって、第1調整デバイスによって調整可能な距離は、基準部と、第2調整デバイス、ひいては調整部との間と規定される。特に、その距離は、基準部の基準点と調整部の調整点との間で調整可能である。好ましくは、この調整点は、調整部の配向を調整するために、第2調整デバイスの旋回軸に沿って配置される。これは、調整部が最初に、第1調整デバイスを介して基準部までの所望の距離に配置され得るという利点を提供する。これは、特に視覚的調整の場合に、解剖学的環境に対する調整部の配向を調整することをより容易にする。さらに、患者に最も適したオフセットおよび対応するインプラントサブ部材を繰り返し見つけることが可能である。
【0019】
基準部は、ツール、特に骨組織内に固定凹部を準備するためのツールと係合するように適合されたツールインターフェースとして提供されることが特に好ましい。
【0020】
これは、固定凹部の準備の直後に、基準部をツールに接触させ、好ましくはツールと係合させることができるので有利である。その結果、オフセットを決定する際の高い精度を提供することができる。また、インプラントツールの数も少なく保たれる。特に、基準ピンのような追加の補助デバイスは、オフセットセレクタを固定凹部に取り付けるために必要とされない。
【0021】
さらに、基準部のこの構成は、移植セット内のすべてのツールについてツールインターフェースが基本的に同じであるが、その移植セットのツールを用いて互いに異なる固定凹部およびそれらの幾何学的形状を作製できるという利点を有する。これにより、異なる寸法および/または断面を有する固定凹部を作製することができる。
【0022】
上述のリーマは、好ましくは回転対称の固定凹部に使用される。このようなリーマは、関節インプラント部材の固定セクションの幾何学的形状に対応する固定凹部を生成する。従って、リーマは、少なくともオフセットセレクタの基準部に接触することを参照するのに完全に適している。
【0023】
さらに、ツールインターフェースは一般に、ツールに対する相対的な位置および配向を固定するオフセットセレクタとの係合を可能にする構造的特徴を備える。
【0024】
同様に、やすりと係合するために、基準部にツールインターフェースを設けることが可能である。このようなやすりは、例えば、関節インプラントの解剖学的形状の固定セクションのために骨組織に凹部を形成するために使用される。
【0025】
基準部は、好ましくは凹部として形成される。凹部は、オフセットセレクタ全体に延在することが好ましい。好ましくは、凹部が凹部の最大幅の少なくとも1倍、2倍、または3倍の長さを有する。
【0026】
したがって、オフセットセレクタは、ツール、特にツールインターフェースを基準部に挿入することによって、単にツール上に配置するか、またはツールに取り付けることができる。凹部は、特にスルーホールであってもよく、挿入されるツールセクションの長さとは無関係にオフセットセレクタを作る。ツールは、単にオフセットセレクタを通って延在してもよい。長さと最大幅の比率が高いほど、オフセットセレクタとツール間の接触がより安定し、信頼性が高くなる。
【0027】
好ましくは、調整部がツール、特に切削ガイドまたは試験インプラントに結合されるための結合インターフェースを備える。さらにより好ましくは、結合インターフェースが少なくとも2つの位置および/または配向でツールに結合されるように構成される。
【0028】
この構成によれば、オフセットセレクタでオフセットを決定することができるだけでなく、移植部位の準備のためのオフセットを決定した後にそれを使用することもできる。従って、再位置決めは必要ではない。これは、骨組織を準備するときに、関節インプラント部材が取り付けられる精度を高める。
【0029】
例えば、少なくとも2つの結合位置/配向を提供することによって、オフセットセレクタは例えば、患者の右側および左側の移植部位に適用され得る。もう1つの例は、関節の反対側にオフセットセレクタを使用することである。患者の右側および左側の関節へオフセットセレクタを適用できるようにするために、結合位置は本質的に角度的に(特に90°および/または180°)離間された結合インターフェースに提供される。
【0030】
好ましくは、第1調整デバイスおよび/または第2調整デバイスは、距離または配向を段階的に調整するように適合されたラッチ機構を有する。
【0031】
段階的なこの調整、すなわち、所定の距離または角度での調整は、オフセットがより容易に調整され、定量化され得るという利点を有する。さらに、関節インプラントのモジュール構成は、所定の距離および/または角度の調整ステップにマッピングされてもよい。その結果、段階的な調整の結果を使用して、モジュール関節インプラント部材のためのサブ部材の組み合わせを容易に推定することができる。
【0032】
また、ラッチ機構は、意図しない調整がより確実に防止されるという利点を有する。ラッチ機構は、調整デバイスを調整する際に、使用者に触覚および/または可聴のフィードバックも提供する。
【0033】
好ましくは、ラッチ機構は、少なくとも2つのスナップ体を備えるスナップ体ラッチ機構であり、スナップ体の各々は外側体と内側体との間で作用しかつ半径方向に付勢され、内側体は外側体内に回転可能に配置され、内側体および外側体の1つは複数のスナップ凹部を備え、スナップ体はスナップ凹部と可逆的に係合可能である。さらに、スナップ体の対(すなわち、2つ)は、好ましくは内側体および外側体に対して正反対の位置に配置される。
【0034】
スナップ体が、内側体および外側体に対して正反対の位置に配置され、外側体と内側体との間で作用する場合、スナップ体の付勢は内側体および/または外側体に対称的に作用する力を及ぼし、それによって、内側体および外側体の互いに対する目詰りまたは傾斜を防止する。
【0035】
この好ましい実施形態のスナップ体は、好ましくは回転体(すなわち、回転の固体)として形成され、さらにより好ましくは球体として形成される。回転体として形成されることにより、スナップ体は、内側体および外側体と共に、転がり軸受としても作用し得るという追加の効果を有する。つまり、回転体の形状を有することにより、スナップ体は、回転体の可逆的な係合と同様に、外側体および内側体の互いの相対位置および相対回転をサポートする。
【0036】
好ましくは、スナップ体は、反対側のスナップ凹部の対応する配置によって、同期的に係合されかつ係合解除されてもよい(すなわち、可逆的な係合)。これは、その回転機構に作用する特に均一な付勢力をもたらし、回転機構の目詰りを防止する。半径方向の付勢力は基本的に、弾性部材(例えば、ばね)、および/または内側体の弾性変形、および/または外側体の弾性変形、および/またはスナップ体の弾性変形によって引き起こされてもよい。
【0037】
付勢力が弾性部材によって生じる場合、スナップ体は、好ましくは、回転可能な物体の内側体、特に内側体の内周面の凹部に配置された弾性インサートによって予荷重が与えられる。さらにより好ましくは、弾性インサートは、内側体の円周の半分以上に沿って延在する。例えば、弾性インサートは、本質的にU字形であってもよい。
【0038】
したがって、この実施形態では、弾性部材は、スナップ体を付勢し、スナップ体を回転可能な内側体および外側体に対して外側に押し出す。スナップ体1つにつき1つの弾性インサートを設けてもよいし、複数および特に2つのスナップ体につき1つの弾性インサートを設けてもよい。スナップ体は、好ましくは内側体のスナップ体凹部内に配置され、それによって案内される。スナップ体凹部は、それぞれ付勢されたスナップ体が外側体のスナップ凹部と係合するために、内側体に対して半径方向外側に突出することができるように寸法決めされている。
【0039】
弾性インサートを内側体の内周の凹部内に配置することによって、弾性インサートは、付勢のための予荷重を加えながら、弾性インサートのいかなる意図しない動きも基本的に防止する位置に保持され、そうでない場合、スナップ体のラッチ機構に支障が生じる可能性がある。内側体内部の弾性インサートがその内周の半分以上にわたって延在する場合、弾性インサートが両方のスナップ体に同時に作用することも可能になり、したがって、オフセットセレクタの設計が簡単になる。上述のように、弾性インサートは、基本的にU字形であってもよい。
【0040】
弾性インサートは、好ましくは一方または両方の端部領域に、スナップ体を部分的に受け入れるためのスナップ体受入凹部(スナップ体収容部)を備える。スナップ体受入凹部は、スナップ体が弾性部材に対してその位置に固定され、弾性部材がそれに力を加えることができるように構成されている。あるいは、スナップ体および弾性部材を一体的に形成してもよい。
【0041】
弾性インサートおよびスナップ体のこの配置により、ラッチ機構の確実な組み立ておよびスナップ体への付勢力(予荷重の力)の確実な適用が可能になる。
【0042】
さらに、ラッチ機構は、弾性アームを含む弾性ラッチ機構を備えることができ、弾性アームは、2つの本体の第1体目に接続され、かつ係合部材と係合可能なラッチ部材を備え、2つの本体は互いに対して移動可能であり、第2の本体は複数の上記係合部材を備える。
【0043】
弾性ラッチ機構の2つの本体は、互いに異なる所定の位置をとるように構成される。特に、複数の係合部材の各々は、ラッチ部材が係合することができる所定の(ラッチ)位置を表す。弾性アームは、好ましくは第1本体と一体的に形成される。弾性アームのラッチ機構は、信頼性があり、耐久性があり、清掃が容易で、消毒が容易なシンプルな構成の機構である。このラッチ機構はまた、互いに対して移動可能な2つの本体を、係合部材の配置によって画定される所定の(ラッチ)位置で確実に係合させる。
【0044】
好ましくは、第1本体および第2本体のうちの一方、特に第1本体は、第1本体および第2本体のうちの他方に対して旋回可能であるように旋回軸に取り付けられる。
【0045】
つまり、弾性アームのラッチ機構の第1本体および第2本体の互いに対する移動性は相対回転である。この旋回可能配置の利点は、変位可能配置(すなわち、線形変位可能配置)の場合よりも簡単な構造である。それにもかかわらず、(最も外側の2つの)係合部材の配置は、本質的に直線的な変位を可能にするように構成される。特に、係合部材は、好ましくは最大40°、特に最大35°の角度範囲にわたって配置される。つまり、第1本体および第2本体は、40°、好ましくは35°の幅を有する角度範囲にわたって互いに対して旋回可能である。さらに、係合部材は、好ましくはそのような角度範囲で均等に分配される。
【0046】
旋回軸と、ラッチ部材および係合部材の係合位置との間の距離(すなわち半径)は、少なくとも5mmであり、さらには、少なくとも8mmであることがより好ましい。さらに、この距離は、オフセットセレクタをコンパクトに構築するために、30mmまたは25mm未満であることが好ましい。
【0047】
これらの距離によって、オフセットを決定するためのラッチ部材と係合部材との間の係合位置のほぼ直線的な配置が可能となり、すなわち、基準部と調整部との間の最小距離から最大距離までの調整性が得られる。換言すれば、この距離は、基準部と調整部との間の距離をほぼ直線的に決定するのに十分に短い円弧セグメントに沿って調整される。
【0048】
弾性アームは、好ましくは、弾性アームのラッチ部材を係合解除するための作動部を含む。
【0049】
特に、作動部は、弾性アームの遠位端に設けられる。使用者は、この作動部を介して弾性アームを係合解除することができるので、この作動部により、ラッチ部材と係合部材とを係合状態に保つバネ力を増加させること(すなわち、弾性アームの剛性の増加)が可能となる。作動部のサイズは、1本の指で作動するように構成されることが好ましい。
【0050】
さらに、この実施形態の第1本体は、好ましくは旋回軸に取り付けられる。その結果、弾性アームの作動部は、係合位置間における第1本体の第2本体への相対移動を補助する役割も果たすことができる。
【0051】
好ましくは、第1調整デバイスおよび/または第2調整デバイスは、オフセットの距離または配向を示すための指示器を含む。
【0052】
使用者にとって、その指示器は、所望に応じて距離または配向を変更するための、すなわち、距離または配向の角度を減少または増加させるための、オフセットセレクタの調整を容易にする。さらに、オフセットセレクタを用いてオフセットを決定した後、適切な関節インプラント部材を容易に選択することができる。
【0053】
本発明はまた、オフセットセレクタ、特に前述の請求項のいずれか1つに記載のオフセットセレクタを使用して、関節インプラント部材の固定セクションと関節セクションとの間のオフセットを調整するための方法を提供し、ここで、オフセットは、距離および配向によって規定される。この方法は、オフセットセレクタの基準部を第1のツール、特に患者の骨組織に固定凹部を準備するためのツールと接触させること、第2のツール、特に試用インプラントまたは切断ガイドをオフセットセレクタの調整部と係合させること、第1調整デバイスによって基準部と調整部との間の距離を調整すること、および第2調整デバイスによって基準部と調整部との間の配向を調整することを含む。基準部と調整部は、第1調整デバイスおよび第2調整デバイスを介して直列に結合されている。
【0054】
距離と方向の決定は、1つのかつ同じオフセットセレクタを用いて実行される。このオフセットセレクタはツールに直接配置され(すなわち、ツールと接触させられ、好ましくはツールと係合させられる)、ツールは、好ましくは患者の骨組織内の固定セクションのための移植部位を準備するためのものである。したがって、オフセットセレクタにより、固定セクションと関節セクションとの間のオフセットを、容易かつ迅速に、さらに高精度で決定することが可能になる。さらに、オフセットセレクタによって決定され、調整されたオフセットを直接使用して、移植部位、特に関節セクションが配置されるべき骨組織をさらに準備することが可能である。このために、好ましくはオフセットセレクタに取り付け可能なツール、特に切削ガイドを使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
以下の図面は、好ましい実施形態を示す。これらの実施形態は限定として解釈されるべきではなく、単に、説明との関連で本発明の理解を強化するためのものである。これらの図において、同じまたは対応する参照符号は、同じまたは同等の機能および/または構造を有する、図全体にわたる特徴を指す。
図1図1は、本開示によるオフセットセレクタの例示的な実施形態を示す3次元図である。
図2図2は、図1のオフセットセレクタの平面図であり、オフセットセレクタは、例示的なオフセットに調整される。
図3図3は、図1のオフセットセレクタの平面図であり、オフセットセレクタは、図2に示されるオフセットとは異なる別の例示的なオフセットに調整される。
図4図4は、図1から図3に示されるオフセットセレクタの分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
図1は、基準部2と調整部4との間のオフセットの調整のために構成されたオフセットセレクタ1の例示的な実施形態を示し、これは、関節インプラント部材(図示せず)の固定セクションと関節セクションとの間のオフセットをシミュレートする。このオフセットは、以下にさらに詳細に説明するように、調整デバイス10および調整デバイス20をそれぞれ使用することによって、距離Aおよび配向αを調整することによって決定することができる。このようにして、解剖学的および機能的に患者に適合された関節インプラント部材についてオフセットを決定することができる。オフセットの決定された値に基づいて、移植部位に適した関節インプラント部材の選択が容易になる。
【0057】
以下により詳細に記載されるように、オフセットが決定されると、オフセットセレクタ1はまた、関節インプラントの関節セクションを受容するために移植部位で骨組織を準備して、オフセットセレクタ特に調整部に、ツールを配置するために使用され得る。ツールは例えば、切削ガイド(図示せず)であってもよい。
【0058】
図1に示すオフセットセレクタ1は、基準部2と、第1調整デバイス10と、第2調整デバイス20と、調整部4とを有している。基準部2は、オフセットセレクタ1を骨に対して所定の位置に位置決めするように意図されている。所定の位置は、好ましくは関節インプラント部材の固定位置である。配置後、次に固定セクションと関節セクションとの間のオフセットを、調整し、決定することができる。
【0059】
特に、基準部2は、関節インプラント部材の関節セクションが配置されるべき領域と、関節インプラント部材の固定セクションがインプラントされるべき領域との間の関係を確立するために使用される。オフセットセレクタ1は、好ましくは、関節インプラント部材のための固定部位を準備するためのツール、または試用インプラントなどの試験のためのツールに、基準部2を取り付けることによって配置される。
【0060】
上述のように、固定部位の準備には、インプラントされる関節インプラント部材に隣接する骨組織に凹部を形成することが含まれ得る。例えば、リーマまたはやすりを使用することができる。これらのツールを用いて固定セクションを収容するための骨組織を準備するため、これらのツールは基本的に、移植される固定セクションと同様のまたは類似の骨組織に配置される。結果として、そのようなツールは、少なくとも部分的に骨組織を準備した後、オフセットセレクタ1の基準部2を配置するために有利に使用され得る。したがって、基準部2は、好ましくはそのようなツールのインターフェースに結合されるように構成される。
【0061】
図示されたオフセットセレクタ1の例示的な実施形態では、基準部2は、好ましくはツールのそのようなインターフェースに適合されたツール凹部3を備える。より具体的には、ツール凹部3は、オフセットセレクタ1をツールインターフェースにまたはツールインターフェース上に配置することができるように構成することができる。これは、好ましくは特に、正の嵌合(または形状嵌合)および/または摩擦嵌合を採用することによって、少なくとも回転軸の周りの回転方向にオフセットセレクタ1と係合する構造的特徴を含む。また、回転軸は、調整部4の配向を調整する第2調整デバイス20のオフセット回転軸VAに対して平行に配置されていることが好ましい。このような構造的な係合の特徴は例えば、リーマのツールインターフェースに設けられる。ツールインターフェースのこれらの特徴は、切削動作を実行するための、回転運動などの運動の伝達を可能にする。
【0062】
好ましくは、ツール凹部3は貫通孔として構成される。これは、ツールの一部、特にツールインターフェースがツール凹部3を通って延びることができるので、オフセットセレクタ1がコンパクトな形状を有することを可能にする。その結果、オフセットセレクタ1をツールインターフェースよりも短く構成することができ、よりコンパクトにすることができる。
【0063】
すでに説明したように、ツール凹部3の寸法は、好ましくはツール凹部3の長さがその断面の最大幅よりも大きくなるように選択される(図4参照)。これにより、ツール凹部3の長さに垂直な軸を中心としたオフセットセレクタ1の角度位置が安定する効果がある。
【0064】
オフセットセレクタ1により調整可能なオフセットは、基準部2と調整部4との間に設定され、距離Aと配向角α(図2,3参照)とを含んでいる。調整部4は、第1調整デバイス10および第2調整デバイス20を調整することにより基準部2に対してオフセットされている。このオフセットは、関節インプラント部材の固定セクションと関節セクションとの間のオフセットに対応し、またはそれをシミュレートする。
【0065】
オフセットの調整または骨組織のその後の準備を容易にするために、調整部4は、好ましくは結合インターフェース5を含む。この結合インターフェース5は例えば、オフセットの調整を視覚的に補助するツールと結合されるように構成されてもよい。例えば、テンプレートを使用して、解剖学的環境に対する調整部4の位置を視覚的に強調し、したがって、オフセットの調整中に補助することができる。
【0066】
さらに、骨組織のさらなる処理をサポートするツールが、結合インターフェース5と係合され得る。好ましくは、このようなツールは切削ガイドである。このような切断ガイドは、解剖学的周囲に対する調整部4の位置の認識を容易にするために、先に述べたテンプレートの機能を含むこともできる。
【0067】
加えて、または代替的に、調整部4の幾何学的形状は、オフセットの調整を補助するように構成されてもよい。より具体的には、調整部4の形状は、解剖学的環境に対する調整部4の配置を視覚的に補助するように構成されてもよい。
【0068】
また、調整部4は、切断ガイド(図示せず)を備えていてもよい。そうでないとしても、調整部4は、少なくとも切断ガイドを取り付けるように構成された結合インターフェース5を含むことが好ましい。
【0069】
調整部4は、関節インプラント部材の固定セクションおよび関節セクションの機能性をサポートするために、オフセットの調整に加えて、さらなる調整を可能にするように構成されてもよい。特に、結合インターフェース5は、いくつかの、好ましくは2、3または4つの位置にツールを取り付けるように構成することができる。図1に示される実施形態の場合、これは、例えば、記号LおよびRによって、すなわち左および右が示される。特に、このラベルは、患者の解剖学的構造を考慮して、結合インターフェース5に結合されるツールの位置および/または配向を使用者に示す。言い換えれば、このようなラベルは、患者の身体の左側または右側の関節のためのツールが取り付けられるべき配向を示すことができる。また、関節インプラント部材を対向させ、相互作用させるためのツールの取り付けのために、そのような表示を提供することも可能である。
【0070】
結合インターフェース5の代替または追加として、基準部2も、このように構成されてもよい。これらの全ての実施形態および変更により、オフセットセレクタに、さらなる調整の可能性を提供できる。これは、用意しなければならない器具またはツールの数を減らせるという利点を有する。
【0071】
以上説明したように、図に示すオフセットセレクタ1において、距離を調整する第1調整デバイス10と、配向を調整する第2調整デバイス20とは、基準部2と調整部4との間にこの順で直列に接続されている。したがって、オフセットの距離Aは、第1調整デバイス10を介して基準部2に対して調整される。これは、距離Aの調整後、オフセット回転軸VAを中心とした配向の調整中に、第2調整デバイス20および調整部4をこの距離Aだけ基準部2から離間させる。換言すれば、好ましくはオフセット面に対して実質的に垂直に延びるオフセット回転軸VAは、そのオフセット面において基準部2の基準点Rから距離Aのところにある。
【0072】
これは、オフセットセレクタ1の上面図によって図2および図3に示されている。図2には、基準部2またはその基準点Rと調整部4またはその調整点Vとの間で調整された距離Aが示されている。つまり、第2調整デバイス20は、距離Aだけオフセットされている。調整された距離が距離指示器19を介して使用者に通信されることが好ましい。距離指示器19はこの例のように、測定値として設けることができる。そうでない場合、カテゴリ距離(例えば、1、2、3...またはA、B、C)を使用する距離指示器のような他の距離指示器19も考えられる。
【0073】
好ましくは距離Aを設定した後、第2調整デバイス20を用いて配向角αを調整することができる。配向指示器29は、好ましくは配向角αの値を使用者に示す。図示の例では、配向指示器29は、1~12の角度ステップを有するダイヤルのように構成される。言い換えれば、配向指示器29は、カテゴリごとの配向を示す。当然、配向を角度値として示す指示器のような他のタイプの指示器を使用することも可能である。配向指示器19および29の目的は、決定されたオフセットに対応する情報を使用者に提供することである。次いで、この情報は、関節インプラント部材のための適切な構成を選択するために考慮され得る。
【0074】
図2において調整および表示される例示的なオフセットは、6mmの距離Aと、12または0の配向αである。図3の例では、距離Aが0mmに、配向αが3に調整されている。基準部2に対する図2および図3に示す角度値としての配向は基本的に、それぞれ0°および90°である。
【0075】
既に上述したように、調整デバイス10および20の順序は逆にすることもできる。つまり、第2調整デバイス20を基準部2に接続してもよく、第1調整デバイス10を第2調整デバイス20に接続してもよく、調整部4を第1調整デバイス10に接続してもよい。したがって、第2調整デバイス20は、基準部2に対して配向角度αを調整するものであり、これにより第1調整デバイス10をこの配向角度αだけ回転させる。これにより、第1調整デバイス10による距離Aの調整は、予め調整された配向角αの方向に行われることになる。
【0076】
なお、以下では、第1調整デバイス10および第2調整デバイス20について、図1図4を用いてより詳細に説明する。これらの図に示すように、第1調整デバイス10は、基準部2に取り付けられている。第1調整デバイス10は、距離Aを調整する弾性アームラッチ機構11として構成されている。
【0077】
既に上述したように、弾性アームラッチ機構11の係合位置は、関節インプラント部材および/またはそのサブ部材の変形形態に基づいて構成してもよい。スナップ体ラッチ機構21にも同様の構成を設けることができ、これについては、第2調整デバイス20に関連してより詳細に後述する。これは、指示器19および29によって適切な関節インプラント部材および/またはそのサブ部材の直接的な特定が可能になる、という利点を有する。
【0078】
さらに、ラッチ機構を使用する場合、調整デバイス10または20は、使用者によって調整された位置に保持されまたはロックされるという利点がある。言い換えれば、ラッチ機構は例えば、調整デバイス10および20の一方が調整されている間に、調整デバイス10および20の他方の意図しない調整を防止することができる。ラッチ機構の別の利点は、オフセットが選択された後に、関節インプラント部材を収容するための移植部位の準備を容易にすることである。
【0079】
特に図4に示すように、第1調整デバイス10は、第1本体12と第2本体13とを有する。第1本体12は、第2本体13に対して旋回軸17を中心として旋回するように構成される。弾性アームラッチ機構11は、第1本体12と第2本体13との間で作用する。
【0080】
図に示す例示的な実施形態では、弾性アーム14は、好ましく第1本体12に一体的に設けられる。弾性アーム14はラッチ部材15を備える。ラッチ部材15は、係合部材16の少なくとも1つと可逆的に係合できるように構成されている。上述したように、係合部材16は、第2本体13の異なる位置に設けられている。ラッチ部材15および係合部材16は、好ましくは雄要素および雌要素として構成されまたはその逆である。弾性アーム14に幾つかのラッチ部材15を設けることも可能であり、その各々を第2本体13の1つの係合部材16と係合させることができる。図示した例示的な実施形態の代替として、弾性アーム14を第2本体13に設けることができる。
【0081】
図示されているように、弾性アーム14は作動部18(図1および図4参照)を有していてもよい。作動部18は例えば、使用者の指によって作動され得るように配置され、構成される。作動部は、弾性アームラッチ機構の作動、特にラッチ部材15の係合および係合解除を容易にする。
【0082】
第2本体13は、複数の係合部材16を有する。この例示において、3つの異なる距離(例えば、0mm、3mmおよび6mm)に対応する3つの係合部材16が提供されている。もちろん、他のおよび/または異なる数の距離または調整レベルが提供されてもよい。例えば、第2本体13は、2、3、4、5、6、7または8個の係合部材16を含むことができる。係合部材16および/またはラッチ部材は、好ましくは一体的に形成される。
【0083】
第1本体12は、弾性アーム14のラッチ部材15が係合部材16のいずれか1つと係合することができるように旋回可能である。図に示された例示的な実施形態において、係合は、ラッチ部材15を有する弾性アーム14が回転軸17を中心に第2本体13の係合部材16を越えてまたはその間で回転することによって行われる。
【0084】
第1調整デバイス10の距離Aは、第1本体12を旋回軸17を中心に旋回させることによって、上述したように調整される。したがって、ラッチ部材15と係合部材16との間の係合位置によって規定される距離は、直線上には存在しない。すなわち、直線状ではなく、円弧状の線上に配置されている。しかしながら、係合位置は、円弧のそのような短いセグメント上に提供されているため、それらは本質的に線上にあると見なすこともできる。
【0085】
上述のように、係合位置は、好ましくは約40°、好ましくは約35°の円弧セグメントに沿って配分される。距離Aを設定するときの第1調整デバイス10の直線性に関する精度については、関節インプラント部材の移植のために十分に正確であることが分かっている。同時に、調整デバイスのこの構成は堅牢であり、組み立てが容易であり、分解が容易であり、洗浄および消毒が容易であるという利点を有する。
【0086】
例示的な実施形態では、第1調整デバイス10の第2本体13が第2調整デバイス20に固定される。図示のように、これは好ましくは第2調整デバイス20の内側体24に取り付けられており、これについては以下でより詳細に説明する。この固定接続は、好ましくは、以下に説明する内側体24または外側体23のような第2調整デバイス20の一部と、第2本体13とを一体的に形成して確立される。
【0087】
第2調整デバイス20は、外側体23をさらに備え、内側体24の少なくとも一部は内側体24と外側体23とが互いに対して回転可能であるように、外側体23内に受容される。内側体24と外側体23との互いに対する回転は、好ましくは回転作動部24aを使用して容易にされ、または実行される。この作動部24aは、図示の例示的な実施形態では内側体24の露出部分、すなわち外側体23から突出する部分に設けられている。代替的にまたは追加的に、第2調整デバイス20の作動部24aは、外側体23に設けることができる。
【0088】
作動部24aは、第1調整デバイス10の調整および第2調整デバイス20の調整中に使用されてもよい。また、それによって、オフセットセレクタ1の保持および取り扱いも容易になり得る。
【0089】
この配向角度αの調整は、外側体23と内側体24との相対回転を介して行われる。図4に示すように、外側体23は、調整部4に固定的に接続されていてもよい。
【0090】
第1調整デバイスと同様に、第2調整デバイス20は、好ましくは、図示の例示的な実施形態においてスナップ体ラッチ機構21として構成されているラッチ機構を備える。このスナップ体ラッチ機構21の機能および構造について、以下にさらに詳細に説明する。別の実施形態では、第1調整デバイス10がスナップ体ラッチ機構21として構成されてもよく、および/または第2調整デバイス20が弾性アームラッチ機構11として構成されてもよい。
【0091】
スナップ体ラッチ機構21は、好ましくは、外側体23の内周と内側体24の外周との間に少なくとも部分的に配置された2つの半径方向に付勢されたスナップ体22を含む。上述のように、スナップ体22は、好ましくは回転体として、より好ましくは球体として形成される。その結果、これらは、内側体24と外側体23との間の転がり軸受のように作用する。したがって、これらは、内側体24と外側体23との互いに対する相対回転をサポートすることができる。
【0092】
好ましい実施形態の場合のように、スナップ体22は半径方向外側に弾性的に付勢され(すなわち、外側に力を及ぼし)、外側体23は、スナップ体22の可逆的係合のためのスナップ凹部25を有する。内側体24と外側体23との間の相対回転中、内側体24の円周に沿ったスナップ体22の相対位置は固定される。このように、相対的な回転は、外側体23の内周に沿ったスナップ体22の相対的な移動を引き起こす。外側体23は、スナップ体22の段階にスナップ凹部25を備えており、スナップ体22は半径方向外側にバイアスされているので、この相対的な動きはスナップ体22とスナップ凹部25の各々との係合および係合解除を引き起こす。これは、使用者に触覚および/または可聴フィードバックを提供する。距離指示器19と同様に、スナップ凹部25の配置も、配向指示器29と相関することが好ましい。
【0093】
スナップ凹部25は、好ましくは外側体23の壁を通って延びる貫通孔として構成される。これには、第2調整デバイス20の正しい組み立てを単純に目視で確認することができる一方で、貫通孔がオフセットセレクタ1の清掃を容易にするという利点がある。洗浄流体は、スナップ凹部25を通って内側に流れ、残留物を外側に運ぶことができる。この機能のために、外側体23または内側体24は、貫通孔23a(図示せず)を更にまたは代替的に含むことができる。
【0094】
好ましくは、スナップ体22は、内側体24内でスナップ体受入凹部28内にそれぞれ案内されて、係合および係合解除中に半径方向外方および内方にそれぞれ移動することができる。スナップ体受入凹部28の案内によって、特定の規定された方法で付勢力を加えることが可能である。
【0095】
例示的な実施形態では、付勢力が弾性インサート26からスナップ体22に伝達される。弾性インサート26は、少なくとも内側体24の内周の半分にわたって延在するように構成される。これにより、単一の弾性インサート26が、複数のスナップ体22、すなわち図示の実施形態では2つに付勢力を与えることができる。より容易な組立およびより安定した弾性インサート26の配置、それによるより正確な付勢力の適用のために、弾性インサートは、内側体24の内側の凹部(図示せず)に収容されることが好ましい。
【0096】
付勢力の規定された適用のために、スナップ体22に対向する側の弾性インサート26は、好ましくは、弾性インサート26に対して適所にスナップ体22を保持するスナップ体収容部(図示せず)を有する。好ましくは、スナップ体収容部は、スナップ体22のように配置されるために、弾性インサート26の2つの端部に配置される。スナップ体収容部は、好ましくは凹部または貫通孔として構成される。貫通孔として構成される場合、貫通孔の寸法は、スナップ体の断面よりも小さい。組み立てられた状態では、弾性インサート26は、弾性インサート26のスナップ体収容部を介してスナップ体22を半径方向外側に押圧する。
【0097】
好ましくは、U字形の弾性インサート26は、内側体24の内周の凹部内に配置される。スナップ体22は、スナップ体凹部28によって(それに沿って)案内される。スナップ凹部22は、スルーホールとして構成され、スナップ体22の半径方向の移動を可能にする寸法にされている。それらはスナップ体と相互作用するように配置され、すなわち、それらは好ましくは内側体24の円周壁に正反対に形成される。
【0098】
スナップ体22はスナップ体凹部28内に配置されているため、それらは内側体24の外周を越えて突出する。その結果、これらは、弾性インサート26の半径方向の付勢力によってスナップ凹部25内に移動または押圧されて係合するように配置されている。内側体24と外側体23とがオフセット回転軸VAを中心に互いに対して回転する場合、スナップ体22は外側体23の内周に沿って移動し、それによって、周方向に配置されたスナップ凹部25との係合および係合解除を繰り返す。
【0099】
内側体24はその長手方向において、内側が中空であり、すなわち、貫通孔として構成されていることに留意されたい。図4に示すように、前述の弾性インサート26と基準部2とをこの貫通孔内に配置してもよい。
【0100】
図示の実施形態の基準部2は管状であり、基本的にオフセットセレクタ1を通って長手方向(すなわちオフセット回転軸VAの方向)に延在する。したがって、オフセットセレクタ1は、基準部2の空孔を使用してツールインターフェース上に配置することができる。
【0101】
オフセットセレクタ1がツールインターフェースに配置され、好ましくは係合された後、第1調整デバイス10は、第1本体12および第2本体13を互いに対して旋回させることによって、次のステップで所望の距離Aに調整されてもよい。旋回動作は、好ましくは弾性アーム14の作動部18を介して行われる。
【0102】
距離Aは、関節インプラント部材の固定セクションと関節セクションとの間の距離に対応し、またはそれをシミュレートする。すでに述べたように、オフセット回転軸VAに対して本質的に垂直なオフセット面内に存在することが好ましい。所定の距離Aは、弾性アーム14のラッチ部材15が、第2本体13の対応する係合部材16に係合されるときに調整されるものと考えられる。
【0103】
さらに、基準部2と調整部4との間のオフセットの配向角度αは、好ましくは第2調整デバイス20を使用して、すなわち、外側体23と内側体24とを互いに対して回転させることによって、後で調整することができる。配向角度αは、関節インプラント部材の固定セクションと関節セクションとの間の相対的な配向に対応する。ここで、調整は、スナップ体22と対応するスナップ凹部25との係合とみなされ、これは第2調整手段20の調整を可逆的にロックする。
【0104】
調整され、それにより基準部2と調整部4との間の決定されたオフセットは、距離指示器19から取られた距離A、および配向指示器29からの配向αとしてユーザによって識別され得る。次いで、これらの値を使用して、患者の解剖学的環境における固定および関節機能の両方に役立つ適切なオフセットを有する適切な関節インプラント部材を選択することができる。
【符号の説明】
【0105】
1 オフセットセレクタ
2 基準部
3 ツール凹部
4 調整部
5 結合インターフェース
10 距離を調整するための第1の調整デバイス
11 弾性ラッチ機構(弾性アームラッチ機構)
12 第1本体
13 第2本体
14 弾性アーム
15 ラッチ部材
16 係合部材
17 旋回軸
18 ラッチ部材を調整および係合するための作動部
19 距離指示器
20 配向を調整するための第2の調整デバイス
21 スナップ体ラッチ機構
22 スナップ体またはインデキシング体
23 外側体
23a 貫通孔
24 内側体
24a 回転作動部
25 スナップ体との係合のためのスナップ凹部
26 弾性インサート
28 スナップ体受入凹部
29 配向指示器
A 距離
R 基準点
V 調整点
VA オフセット回転軸
α 配向
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】