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特表2023-501853経口GSNOR阻害剤およびその医薬用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-20
(54)【発明の名称】経口GSNOR阻害剤およびその医薬用途
(51)【国際特許分類】
   C07D 417/14 20060101AFI20230113BHJP
   A61K 31/427 20060101ALI20230113BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20230113BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230113BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230113BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
C07D417/14 CSP
A61K31/427
A61P11/06
A61P11/00
A61P3/10
A61P9/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022505579
(86)(22)【出願日】2021-04-25
(85)【翻訳文提出日】2022-01-27
(86)【国際出願番号】 CN2021089594
(87)【国際公開番号】W WO2022141977
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】202011622515.7
(32)【優先日】2020-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512127408
【氏名又は名称】南京医科大学
【氏名又は名称原語表記】NANJING MEDICAL UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】140 Hanzhong Road, Nanjing, Jiangsu 210029 China
(74)【代理人】
【識別番号】100205936
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 海龍
(74)【代理人】
【識別番号】100132805
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 貴之
(72)【発明者】
【氏名】季 勇
(72)【発明者】
【氏名】謝 利平
(72)【発明者】
【氏名】趙 爽
(72)【発明者】
【氏名】宋 天宇
(72)【発明者】
【氏名】韓 芸
【テーマコード(参考)】
4C063
4C086
【Fターム(参考)】
4C063AA03
4C063BB04
4C063CC62
4C063DD04
4C063EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC82
4C086GA07
4C086GA10
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA36
4C086ZA59
4C086ZA61
4C086ZC35
(57)【要約】
構造が下式で表されるN6022のチアゾロン誘導体およびその医薬用途。
【化1】
N6022に比べ、本発明の化合物は、良好な経口バイオアベイラビリティおよびより長い半減期を有する。インビトロ実験では、本発明の化合物を投与することにより高グルコースによるヒト臍帯静脈内皮細胞の遊走能力およびチューブ形成能力の低下、並びに透過性の増加を改善でき、動物レベルで本発明の化合物を投与することにより、糖尿病マウスの虚血性側肢の血管新生および血流回復を明らかに促進でき、本発明の化合物は糖尿病血管合併症関連疾患の治療に適用できることを示している。インビトロ実験では、本発明の化合物を投与することにより、アンジオテンシンIIによる平滑筋細胞の表現型転換を改善でき、動物レベルで本発明の化合物を投与することにより、大動脈瘤/大動脈解離の発症率および死亡率を明らかに改善でき、本発明の化合物は大動脈瘤/大動脈解離関連疾患の治療に適用できることを示している。インビトロ実験では、本発明の化合物を投与することにより、GSNOR活性を効果的に抑制でき、本発明の化合物は喘息、嚢胞性線維症関連疾患の治療に適用できることを示している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造が下式で表されるN6022のチアゾロン誘導体。
【化1】
【請求項2】
喘息、嚢胞性線維症、糖尿病血管合併症、大動脈瘤/大動脈解離に関連する疾患を改善および治療するための医薬品の製造における請求項1に記載のN6022のチアゾロン誘導体またはその薬学的に許容される塩の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニトロソグルタチオンレダクターゼ(GSNOR)阻害剤N6022のチアゾロン誘導体およびその医薬用途に関し、特に喘息、嚢胞性線維症、糖尿病血管合併症、大動脈瘤/大動脈解離に関連する疾患を改善および治療するための医薬品の製造におけるN6022のチアゾロン誘導体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
N6022は、特異的かつ可逆的なニトロソグルタチオンレダクターゼ(GSNOR)阻害剤である。研究により、N6022は喘息およびアレルギー性気道炎症を効果的に改善できることが示されている。慢性喘息および嚢胞性線維症を治療するためのN6022の第I相および第II相臨床試験は終了した。
【0003】
糖尿病は、世界中で罹患率および死亡率を引き起こす主要な健康問題になっている。糖尿病患者の死亡の70%は心血管合併症に起因している。糖尿病血管合併症は、アテローム性動脈硬化症、末梢動脈疾患、網膜症、腎症を含み、生活の質に影響を与える要因でもある。血管内皮細胞は血管壁の内膜に位置し、血液と組織の間のバリアとして機能する。また、様々な生理学的および病理学的条件下で、内皮細胞は、血管機能を調整するための「ファーストレスポンス」エフェクター細胞としての役割を果たすこともできる。糖尿病は、主に血管内皮透過性の増加、血管新生能力の障害によって現れる内皮細胞機能障害を誘発し、様々な血管合併症の主な誘因および病態生理学的基礎となっている。糖尿病性内皮機能障害の分子メカニズムは広く研究されてきたが、糖尿病血管合併症を治療するための方法は限られている。そこで、糖尿病血管合併症を治療し、障害率と死亡率を低下させるための新しい臨床的に効果的な方法を探すことが重要である。
【0004】
大動脈瘤/大動脈解離(Aortic aneurysm/dissection,AAD)は、効果的な治療薬のない非常に致命的な病気であり、人間の健康を脅かす一般的な病気の1つである。大動脈内膜は、いくつかの病理学的要因により局所的に引き裂かれ、血流の影響下で徐々に剥離および拡大し、動脈内に真の空洞と偽の空洞が形成される。大動脈解離は、出血性ショックや心タンポナーデ、さらには突然死などの深刻な結果を引き起こす。AADは65-75歳の間で発症する場合が多く、主な危険因子には、高血圧、脂質異常症、遺伝性結合組織病、例えばマルファン症候群が含まれる。AADの死亡率は発症後48時間以内に50-68%であり、3ヶ月以内に90%に達する。つまり、AADは、致死率が高く、進行が速く、病状が複雑であるという特徴を有する。高致死率を臨床的に効果的に減らすための鍵は、AADを治療するための新しい効果的な方法を探すことである。
【0005】
本発明者らは、N6022が糖尿病血管合併症、大動脈瘤/大動脈解離に対して良好な治療作用を有するが、N6022の経口バイオアベイラビリティが低く、代謝速度が速いことを発見した。そのため、N6022の臨床応用は限られている。
【化1】
【0006】
本出願人はN6022の構造を修飾したところ、N6022のアミド誘導体N6022-1およびN6022のエステル誘導体N6022-2は、インビトロ研究においてその活性が顕著に低下することを発見した。非常に驚くべきことに、N6022のチアゾロン誘導体(目的化合物1)は、インビトロで良好な活性を示し、良好なバイオアベイラビリティを有し、同等の用量で目的化合物1の経口薬効がN6022、N6022-1、N6022-2よりも顕著に高いことを発見した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、N6022のチアゾロン誘導体を提供する。より良好なインビボおよびインビトロ活性、バイオアベイラビリティ、並びにより長い半減期を有し、喘息、嚢胞性線維症、糖尿病血管合併症、大動脈瘤/大動脈解離に関連する疾患を改善および治療するための医薬品の製造に適用できる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
構造が下式で表されるN6022のチアゾロン誘導体。
【化2】
目的化合物1は、良好なインビボおよびインビトロ活性、バイオアベイラビリティ、並びにより長い半減期を有し、喘息、嚢胞性線維症、糖尿病血管合併症、大動脈瘤/大動脈解離に関連する疾患を改善および治療するための医薬品の製造に適用できる。
【発明の効果】
【0009】
目的化合物1は、良好なインビボおよびインビトロ活性、バイオアベイラビリティ、並びにより長い半減期を有し、喘息、嚢胞性線維症、糖尿病血管合併症、大動脈瘤/大動脈解離に関連する疾患を改善および治療するための医薬品の製造に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】目的化合物1の合成経路を示す。
図2】喘息および嚢胞性線維症に対する目的化合物1のインビトロ活性の研究を示す。
図3】糖尿病血管合併症に対する目的化合物1のインビトロ活性の研究を示す。
図4】大動脈瘤/大動脈解離疾患に対する目的化合物1のインビトロ活性の研究を示す。
図5】目的化合物1およびN6022の薬物動態学の研究を示す。
図6】糖尿病血管合併症に対する目的化合物1の経口薬効の研究を示す。
図7】大動脈瘤/大動脈解離疾患に対する目的化合物1の経口薬効の研究を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施例により本発明を説明するが、これらの実施例は本発明を制限するものではない。本発明の趣旨および本質から逸脱しない限り、本発明の方法、手順および条件に加えた修正および置換は、全て本発明の範囲に含まれる。特に指定しない限り、実施例で使用される技術的手段は当業者に知られている常套手段である。
【0012】
<実施例1>4-(2-(4-(1H-イミダゾール-1-イル)フェニル)-5-(3-オキソ-3-(2-オキシチアゾリジン-3-イル)プロピル)-1H-ピロール-1-イル)-3-メチルベンズアミド(目的化合物1)の合成
【0013】
合成経路
【化3】
図1は、目的化合物1の合成経路を示す。
【0014】
実験操作
250mlの一口フラスコに、3-(5-(4-(1H-イミダゾール-1-イル)フェニル)-1-(4-カルバモイル-2-メチルフェニル)-1H-ピロール-2-イル)プロピオン酸(N6022,500mg,1.21mmol)、2-クロロ-1-メチルピリジニウムヨージド(CMPI,370mg,1.45mmol)、ジメチルアミノピリジン(DMAP,10mg,0.06mmol)、チアゾリジノン(250mg,2.41mmol)、トリエチルアミン(TEA,490.2mg,4.84mmol)を順に仕込み、さらにジクロロメタン(15ml)を加え、室温で8時間反応させた。吸引濾過し、濾液を取り、希塩酸でpHを7に調整し、ジクロロメタン(15ml)、水(15ml)を加えて抽出し、有機相を合わせ、回転蒸発で乾燥させ、カラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=25:1)にて分離することでベージュ色の粗製品400mgが得られ、無水メタノールで再結晶化して白色固体195mg(収率32%)が得られた。
H NMR(クロロホルム-d,400MHz)δ(ppm):δ7.81-7.67(m,3H),7.39(d,J=7.6Hz,1H),7.30-7.10(m,2H),6.84(s,1H),6.40(s,1H),6.13(s,1H),4.06(s,2H),3.22(s,2H),3.02(s,2H),2.60(s,2H),1.82(s,3H).
【0015】
<実施例2>喘息および嚢胞性線維症に対する目的化合物1のインビトロ活性の研究(対照:N6022、N6022-1、N6022-2)
GSNORは、喘息および嚢胞性線維症において非常に重要な調節役割を果たす。喘息患者の肺部ではGSNOR活性が顕著に高まり、GSNORの対立遺伝子の変異により小児が喘息に罹患する可能性が顕著に大きくなる。また、嚢胞性線維症患者の気道ではGSNOR活性が顕著に高まり、その触媒生成物GSNOのレベルが顕著に低下する。そこで、喘息および嚢胞性線維症における目的化合物1の保護作用を調査するために、本発明者らはインビトロでGSNOR活性に対する目的化合物1、N6022、N6022-1およびN6022-2の抑制効果を測定した。
【0016】
図2は、喘息および嚢胞性線維症に対する目的化合物1のインビトロ活性の研究を示す。それぞれN6022、目的化合物1、N6022-1およびN6022-2(10nM)でヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVECs)を24時間処理した後、細胞溶解液の上清を取り、基質GSNOおよび補酵素NADHを加えて5分間反応させ、340nmでのNADHの特徴的な吸収ピークにより1分間あたりのNADH消費量を測定し、GSNORの活性を計算した(P<0.05vs対照、P<0.05vs目的化合物1、n=3)。
【0017】
結果として、目的化合物1は、GSNOR活性に対する抑制効果がN6022と同等であり、N6022-1、N6022-2よりも顕著に高く、目的化合物1は、喘息および嚢胞性線維症に対してN6022と同等のインビトロ活性を示すことを示している。
【0018】
<実施例3>糖尿病血管合併症に対する目的化合物1のインビトロ活性の研究(対照:N6022、N6022-1、N6022-2)
糖尿病血管合併症において、血管新生の減少および血管内皮細胞透過性の増加は、局所浮腫、虚血とそれに続く潰瘍、切断を引き起こす危険因子の一つであることが知られている。糖尿病血管合併症に対する目的化合物1の治療作用を研究するために、本発明者らは細胞レベルでヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVECs)を高グルコース(30mM)で刺激し、目的化合物1、N6022、N6022-1およびN6022-2(10nM)で24時間処理し、内皮細胞チューブ形成アッセイにより内皮細胞の血管新生能力を測定した。
【0019】
図3は、糖尿病血管合併症に対する目的化合物1のインビトロ活性の研究を示す。ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVECs)に高グルコース(30mM)で処理した。図3Aでは、それぞれN6022、目的化合物1、N6022-1およびN6022-2(10nM)で24時間処理し、内皮細胞のチューブ形成能力を測定した(スケール=200μm、P<0.05vs対照、P<0.05vs高グルコース、P<0.05vs高グルコース+目的化合物1、n=3)。図3Bでは、目的化合物1(10nM)で24時間処理し、内皮細胞の発芽能力を測定した(スケール=200μm,P<0.05vs対照、P<0.05vs高グルコース、n=3)。図3Cでは、目的化合物1(10nM)で24時間処理し、内皮細胞の透過性を測定した(P<0.05vs対照、P<0.05vs高グルコース、n=3)。
【0020】
結果として、目的化合物1およびN6022は、高グルコースによる内皮細胞の血管新生能力の低下を顕著に改善でき、効果がN6022-1およびN6022-2よりも顕著に高かった(図3A)。また、スフェロイド発芽アッセイおよび透過性アッセイの結果から分かるように、目的化合物1は、高グルコースによる内皮細胞の発芽能力の低下および透過性の増加を改善でき(図3B-3C)、化合物1が糖尿病血管合併症に対して良好な治療効果を有することを示している。
【0021】
<実施例4>大動脈瘤/大動脈解離疾患に対する目的化合物1のインビトロ活性の研究(対照:N6022、N6022-1、N6022-2)
大動脈瘤/大動脈解離における目的化合物1の保護作用を調査するために、本発明者らは細胞レベルでヒト大動脈平滑筋細胞(HASMC)にアンジオテンシンII(1μM)を投与し、それぞれ目的化合物1、N6022、N6022-1およびN6022-2(10nM)で24時間処理し、細胞RNAを抽出し、平滑筋細胞収縮型/合成型マーカーを検出した。
【0022】
図4は、大動脈瘤/大動脈解離疾患に対する目的化合物1のインビトロ活性の研究を示す。ヒト大動脈平滑筋細胞にアンジオテンシンII(1μM)を投与し、それぞれN6022、目的化合物1、N6022-1およびN6022-2(10nM)で24時間処理した後、細胞RNAを抽出した。図4Aでは、平滑筋細胞の収縮型マーカー(アクチンα2、カルモジュリン1、トランスゲリン)の発現を測定した。図4Bでは、平滑筋細胞の合成型マーカー(オステオポンチン、Kruppel様因子4、Kruppel様因子5)の発現を測定した。P<0.05vs対照、P<0.05vsアンジオテンシンII、P<0.05vsアンジオテンシンII+目的化合物1、n=3
【0023】
結果として、目的化合物1およびN6022は、アンジオテンシンIIによる収縮型マーカーの発現の低下および合成型マーカーの発現の向上を顕著に抑制し、平滑筋細胞の表現型転換を抑制し、効果がN6022-1およびN6022-2よりも顕著に高く(図4A-4B)、N6022-1およびN6022-2に比べて目的化合物1は大動脈瘤/大動脈解離疾患に対してより高い治療効果を有することを示している。
【0024】
<実施例5>目的化合物1の経口バイオアベイラビリティの研究(対照:N6022)
目的化合物1の経口バイオアベイラビリティを測定するために、本発明者らは、ICRマウスを用いてそれぞれ静脈注射によりN6022(1mg/kg)および目的化合物1(1.2mg/kg)を単回投与し、経口でN6022(5mg/kg)および目的化合物1(6mg/kg)を単回投与した後、0.083,0.25,0.5,1,2,4,8,24時間目にLC-MS/MSにより血中薬物濃度を測定した(図5)。
【0025】
図5は、目的化合物1およびN6022薬物動態学の研究を示す。図5Aでは、ICRマウスにそれぞれ静脈注射によりN6022(1mg/kg)および目的化合物1(1.2mg/kg)を単回投与した。図5Bでは、ICRマウスにそれぞれ経口でN6022(5mg/kg)および目的化合物1(6mg/kg)を単回投与した。0.083,0.25,0.5,1,2,4,8,24時間目にLC-MS/MSにより血中薬物濃度を測定した(n=3)。
【0026】
結果として、N6022に比べ、目的化合物1の経口バイオアベイラビリティは顕著に高くなり(60.07±7.91%vs6.44±3.72%)、薬物半減期もある程度長くなり(1.62±0.81vs0.76±0.15h)、目的化合物1は良好な経口バイオアベイラビリティを有することを示している。
【0027】
<実施例6>糖尿病血管合併症に対する目的化合物1の経口薬効の研究(対照:N6022、N6022-1、N6022-2)
糖尿病血管合併症に対する目的化合物1の経口薬効をさらに研究するために、SPF級の8週齢雄C57BL/6Jマウス(南京医科大学医薬実験動物センターから購入)をランダムに対照群、糖尿病モデル群、糖尿病モデル+目的化合物1強制経口投与(6mg/kg/day)群、糖尿病モデル+N6022-1強制経口投与(5.6mg/kg/day)群、糖尿病モデル+N6022-2強制経口投与(5.3mg/kg/day)群、および糖尿病モデル+N6022静脈注射(1mg/kg/day)群の6群に分けた。糖尿病モデルでは、8週目にマウスにストレプトゾトシンを5日間連続して腹腔内注射し(60mg/kg/day)、10週目に血糖を測定し、血糖値が>16.6mmol/Lである場合、モデル構築が成功した。全ての群では、12週目にマウスに対して側肢虚血モデルを構築し、手術後にそれぞれ毎日N6022、目的化合物1、N6022-1およびN6022-2を投与し、それぞれ0、7、14日目にレーザースペックル血流イメージングシステムにより側肢の血流回復状況をモニタリングした(図6A)。マウスの虚血性側肢の腓腹筋を分離して凍結切片し、免疫蛍光(CD31)により血管新生の状況を調べた(図6B)。半膜様筋を分離して凍結切片し、免疫蛍光(α-SMA)により動脈形成の状況を調べた(図6B)。
【0028】
図6は、糖尿病血管合併症に対する目的化合物1の経口薬効の研究を示す。8週齢の雄C57BL/6Jマウスを用い、ストレプトゾトシンを5日間連続して腹腔内注射し(60mg/kg/day)、10週目に血糖を測定し、血糖値が>16.6mmol/Lである場合、モデル構築が成功した。12週目にマウスに対して側肢虚血モデルを構築し、手術後にそれぞれ毎日N6022(1mg/kg/day)を静脈注射し、目的化合物1(6mg/kg/day)を強制経口投与し、N6022-1(5.6mg/kg/day)を強制経口投与し、N6022-2(5.3mg/kg/day)を強制経口投与した。図6Aでは、0、7、14日目にレーザースペックル血流イメージングシステムにより側肢の血流回復状況をモニタリングした。図6Bでは、マウスの虚血性側肢の腓腹筋および半膜様筋を取り、凍結切片し、それぞれ血小板-内皮細胞接着分子抗体およびα-平滑筋アクチン抗体により免疫蛍光染色を行い、毛細血管と動脈の新生を検出した。P<0.05vs対照、P<0.05vsストレプトゾトシン、P<0.05vsストレプトゾトシン+目的化合物1、n=3。
【0029】
結果として、目的化合物1の経口投与は、糖尿病マウスの虚血性側肢の血管新生を顕著に促進し、血流回復を改善することができ、薬効はN6022静脈注射群と同等であり、N6022-1経口群およびN6022-2経口群よりも顕著に高くなり、目的化合物1の経口投与は、糖尿病血管合併症に対して良好な治療作用を有することを示している。
【0030】
<実施例7>大動脈瘤/大動脈解離疾患に対する目的化合物1の経口薬効の研究(対照:N6022、N6022-1、N6022-2)
大動脈瘤/大動脈解離疾患に対する目的化合物1の経口薬効をさらに研究するために、SPF級の3週齢雄C57BL/6Jマウス(南京医科大学医薬実験動物センターから購入)を用い、ランダムに対照群、疾患モデル群(0.25%β-アミノプロピオニトリル飲料水、28日)、疾患モデル+目的化合物1強制経口投与(6mg/kg/day)群、疾患モデル+N6022-1強制経口投与(5.6mg/kg/day)群、疾患モデル+N6022-2強制経口投与(5.3mg/kg/day)群、および疾患モデル+N6022静脈注射(1mg/kg/day)群の6群に分けた。結果として、単なるβ-アミノプロピオニトリル飲料水の疾患モデル群のマウスは、大動脈に明らかな病理学的拡大が発生し、上行大動脈/下行大動脈/胸部大動脈の直径が、いずれも対照群の約1.5倍であり、死亡率と大動脈解離の発生率が対照群と比較して顕著に増加したが、疾患モデル群のマウスに対して目的化合物1を強制経口投与した後、大動脈径の拡大とマウスの死亡率の両方が抑制された(図7)。
【0031】
図7は、大動脈瘤/大動脈解離疾患に対する目的化合物1の経口薬効の研究を示す。3週齢の雄C57BL/6Jマウスを用い、β-アミノプロピオニトリル飲料水を4週間投与して大動脈瘤/大動脈解離の発症を誘導し、毎日N6022(1mg/kg/day)を静脈注射し、目的化合物1(6mg/kg/day)を強制経口投与し、N6022-1(5.6mg/kg/day)を強制経口投与し、N6022-2(5.3mg/kg/day)を強制経口投与した。図7Aでは、マウスの生存率を測定した。図7Bでは、マウスの大動脈を分離し、上行大動脈/下行大動脈/胸部大動脈の最大直径を測定し、大動脈の病理学的拡大を検出した。P<0.05vs対照、P<0.05vsβ-アミノプロピオニトリル、P<0.05vsβ-アミノプロピオニトリル+目的化合物1、n=5。
【0032】
結果として、目的化合物1の経口薬効は、N6022静脈注射群と同等し、N6022-1経口およびN6022-2経口群よりも顕著に高くなり、目的化合物1の経口投与が大動脈瘤/大動脈解離疾患に対して良好な治療作用を有することを示している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】