(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-20
(54)【発明の名称】重症急性呼吸器症候群ウイルスSARS-CoV-2に対する特異的免疫を誘導するための凍結乾燥形態(変異型)の薬剤
(51)【国際特許分類】
A61K 35/761 20150101AFI20230113BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20230113BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20230113BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20230113BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20230113BHJP
A61K 47/14 20060101ALI20230113BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20230113BHJP
C12N 15/50 20060101ALN20230113BHJP
C12N 15/63 20060101ALN20230113BHJP
【FI】
A61K35/761
A61P31/14
A61K47/18
A61K47/04
A61K47/26
A61K47/14
A61K47/02
C12N15/50 ZNA
C12N15/63 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022516677
(86)(22)【出願日】2021-04-30
(85)【翻訳文提出日】2022-06-07
(86)【国際出願番号】 RU2021000182
(87)【国際公開番号】W WO2022086364
(87)【国際公開日】2022-04-28
(32)【優先日】2021-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522075140
【氏名又は名称】フェデラル ステート バジェタリー インスティテューション“ナショナル リサーチ センター フォー エピデミオロジー アンド マイクロバイオロジー ネームド アフター ザ オナラリー アカデミシャン エヌ.エフ.ガマレヤ”オブ ザ ミニストリー オブ ヘルス オブ ザ ロシアン フェデレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ズブコワ,オルガ ヴァディモヴナ
(72)【発明者】
【氏名】オザロフスカイア,タチアナ アンドレーヴナ
(72)【発明者】
【氏名】ドルジコワ,インナ ヴァディモヴナ
(72)【発明者】
【氏名】ポポーワ,オルガ
(72)【発明者】
【氏名】シチェブリアコフ,ドミトリー ウィークトロヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】グロウソワ,ダリア ミハイロヴナ
(72)【発明者】
【氏名】ザルラエワ,アリーナ シャミロヴナ
(72)【発明者】
【氏名】ツカバツリン,アミール イルダロビヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】ツカバツリーナ,ナタリア ミハイロヴナ
(72)【発明者】
【氏名】シシェルビニン,ドミトリー ニコラエヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】エスマガムベトフ,イリアス ブラトビッチ
(72)【発明者】
【氏名】トカルスカヤ,エリザヴェータ アレクサンドロヴナ
(72)【発明者】
【氏名】ボティコフ,アンドレイ ジェンナデビッチ
(72)【発明者】
【氏名】エロコワ,アリーナ セルゲーヴナ
(72)【発明者】
【氏名】イザエヴァ,ファティマ マゴメドヴナ
(72)【発明者】
【氏名】ニキテンコ,ナタリア アナトレヴナ
(72)【発明者】
【氏名】ルベネッツ,ナデジダ レオニドヴナ
(72)【発明者】
【氏名】セミキン,アレクサンドル セルゲーヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】ボリセヴィチ,セルゲイ ウラジーミロヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】ナロディツキー,ボリス サベリエビッチ
(72)【発明者】
【氏名】ログノフ,デニス ユーリエヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】ギンツブルク,アレクサンドル レオニドヴィチ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C087
【Fターム(参考)】
4C076AA29
4C076BB15
4C076BB25
4C076CC35
4C076DD21Z
4C076DD22Z
4C076DD50Z
4C076DD67Z
4C076EE23Z
4C076FF61
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
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4C087MA44
4C087MA59
4C087MA65
4C087NA14
4C087ZB33
(57)【要約】
本発明は、重症急性呼吸器症候群ウイルスSARS-CoV-2に対する特異的免疫を誘導するための凍結乾燥(フリーズドライ)形態の生体分子薬剤であって、E1及びE3領域が欠失したヒトアデノウイルス血清型26若しくは5の組換え株のゲノムと、配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3から選択される組み込まれた発現カセットとを含む発現ベクター;又はE1及びE3領域が欠失したサルアデノウイルス血清型25の組換え株のゲノムと、配列番号4、配列番号2、若しくは配列番号3から選択される組み込まれた発現カセットとを含む発現ベクターのいずれかを含む単一の活性成分を含有する薬剤に関する。ヒトアデノウイルス血清型26の組換え株のゲノムは、ORF6-Ad5により置換されたORF6-Ad26領域を含んでいてもよい。
薬剤の凍結乾燥形態の再構成のための緩衝溶液は、質量%で以下を含有し得る:0.0180~0.0338のトリス;0.1044~0.1957の塩化ナトリウム;5.4688~10.2539のスクロース;0.0015~0.0028の塩化マグネシウム六水和物;0.0003~0.0005のEDTA;0.0037~0.0070のポリソルベート-80;及び充満するまでの水。
薬剤は、鼻腔内及び/又は筋肉内経路によって投与することができる。本発明は、広範な階層の人々の間でSARS-CoV-2ウイルスに対する液性及び細胞性免疫応答を促進する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重症急性呼吸器症候群ウイルスSARS-CoV-2に対する特異的免疫を誘導するための凍結乾燥(フリーズドライ)形態の薬剤であって、E1及びE3領域が欠失しており、且つORF6-Ad26領域がORF6-Ad5により置換されたヒトアデノウイルス血清型26の組換え株のゲノムをベースとする発現ベクターであって、配列番号1、配列番号2、配列番号3から選択される発現カセットが組み込まれた発現ベクターを含む単一の活性成分を含有する薬剤。
【請求項2】
重症急性呼吸器症候群ウイルスSARS-CoV-2に対する特異的免疫を誘導するための凍結乾燥(フリーズドライ)形態の薬剤であって、E1及びE3領域が欠失したヒトアデノウイルス血清型5の組換え株のゲノムをベースとする発現ベクターであって、配列番号1、配列番号2、配列番号3から選択される発現カセットが組み込まれた発現ベクターを含む単一の活性成分を含有する薬剤。
【請求項3】
重症急性呼吸器症候群ウイルスSARS-CoV-2に対する特異的免疫を誘導するための凍結乾燥(フリーズドライ)形態の薬剤であって、E1及びE3領域が欠失したサルアデノウイルス血清型25の組換え株のゲノムをベースとする発現ベクターであって、配列番号4、配列番号2、配列番号3から選択される発現カセットが組み込まれた発現ベクターを含む単一の活性成分を含有する薬剤。
【請求項4】
再構成された前記凍結乾燥(フリーズドライ)形態が、質量%で:
トリス 0.0180~0.0338
塩化ナトリウム 0.1044~0.1957
スクロース 5.4688~10.2539
塩化マグネシウム六水和物 0.0015~0.0028
EDTA 0.0003~0.0005
ポリソルベート-80 0.0037~0.0070
水 残りの部分
の緩衝溶液を含有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項5】
SARS-CoV-2ウイルスに対する免疫応答を誘導するための請求項1~3のいずれか一項に記載の薬剤の使用であって、前記薬剤が、鼻腔内若しくは筋肉内投与、又は鼻腔内及び筋肉内併用投与に対して特許請求される、使用。
【請求項6】
前記薬剤が、5
*10
10~5
*10
11ウイルス粒子の用量での鼻腔内投与に対して特許請求されることを特徴とする、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記薬剤が、5
*10
10~5
*10
11ウイルス粒子の用量での筋肉内投与に対して特許請求されることを特徴とする、請求項5に記載の使用。
【請求項8】
鼻腔内及び筋肉内併用投与のために、前記薬剤が、5
*10
10~5
*10
11ウイルス粒子の用量で筋肉内に、且つ5
*10
10~5
*10
11ウイルス粒子の用量で鼻腔内に投与されることを特徴とする、請求項5に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、バイオテクノロジー、免疫学及びウイルス学に関する。特許請求される薬剤は、重症急性呼吸器症候群ウイルスSARS-CoV-2によって引き起こされる疾患の予防のために使用することができる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
2019年の終わりに、湖北省(Hubei)の州都である武漢(Wuhan)を中心として、中華人民共和国において新たに発生した感染の大流行が記録された。後になって、その感染は、SARS-CoV-2と名付けられたそれまで未知であったコロナウイルスによって引き起こされることが見出された。数か月以内に、SARS-CoV-2は世界中に広がり、200を超える国に影響を与えるパンデミックとなった。2021年2月01日までに、症例の数は103百万を超え、2百万を上回る人々が死亡した。
【0003】
。
コロナウイルス感染は、以下の主要なモード:呼吸飛沫(又はダスト粒子)及び接触によって伝播される。平均潜伏期間は5~6日であり、その後、疾患の初期症状が現れる。COVID-19の通常の兆候には、発熱、乾性咳、息切れ、及び疲労が含まれる。咽頭炎、関節痛、鼻水、及び頭痛も、あまり一般的ではない症状として報告されている。しかしながら、疾患の臨床経過は、無症候性症例から重症急性呼吸器症候群及び死亡までの様々な重症度を特徴とする。
【0004】
SARS-CoV-2の急速な地理的拡散と、高い死亡率とによって、このウイルスが引き起こす疾患の予防に有効な薬剤を開発する緊急の必要性が生じた。したがって、現在、SARS-CoV-2のための安全且つ有効なワクチンの開発は、世界的な最優先事項であると認識されている。
【0005】
パンデミックの始まりから1年以内に、複数の製薬会社によってCOVID-19ワクチン候補の変異型が提唱された。
【0006】
Pfizer pharmaceutical companyは、BioNTech biocompanyと共同で、BNT162b2(トジナメラン)として知られているワクチンを開発した。これは、脂質ナノ粒子中に埋め込まれたSARS-CoV-2の変異体Sタンパク質をコードする修飾mRNAに基づく。ワクチン接種レジメンは、21日間隔で2回の注射を必要とする(F.P. Polack et al. Safety and Efficacy of the BNT162b2 mRNA Covid-19 Vaccine. N Engl J Med 2020; 383: 2603-2615)。
【0007】
Moderna pharmaceutical company及びUnited States National Institute of Allergy and Infectious Diseases(NIAID)は、mRNA-1273ワクチンを共同開発した。その活性成分は、脂質殻に包まれたSARS-CoV-2の変異体Sタンパク質をコードするmRNAである。免疫化レジメンによれば、ワクチンは、28日隔てて2回の投与で与えられなければならない(L. A. Jackson et al. An mRNA Vaccine against SARS-CoV-2 - Preliminary Report. N Engl J Med 2020; 383:1920-1931)。
【0008】
University of Oxfordは、AstraZeneca plcと共同して、ウイルスベクターワクチンChAdOx1 nCoV-19(AZD1222)を開発した。その活性成分は、ヒト組織プラスミノーゲン活性化因子リーダー配列を有するSARS-CoV-2ウイルスのコドン最適化全長Sタンパク質配列(GenBank MN908947)をコードするチンパンジーアデノウイルスChAdOx1である。免疫化レジメンによれば、ワクチンは、28日隔てて2回の投与で与えられなければならない(M. Voysey et al. Safety and efficacy of the ChAdOx1 nCoV-19 vaccine (AZD1222) against SARS-CoV-2: an interim analysis of four randomised controlled trials in Brazil, South Africa, and the UK. The Lancet. Vol. 397, Issue 10269, P99-111, 2021)。
【0009】
CanSinoは、SARS-CoV-2全長S糖タンパク質を発現する、複製不全ヒトアデノウイルス5型(Ad5)に基づいたCOVID-19に対するウイルスベクターワクチンを開発した。これは、単回投与レジメンのワクチンである(GenBankYP_009724390)(Feng-Cai Zhu et al. Immunogenicity and safety of a recombinant adenovirus type-5-vectored COVID-19 vaccine in healthy adults aged 18 years or older: a randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 2 trial. The Lancet. Vol. 369, Issue 10249, P479-488, 2020)。
【0010】
Johnson & JohnsonのJanssen Pharmaceutical Companiesの研究チームは、Beth Israel Deaconess Medical Centerと協力し、JanssenのAdVac(登録商標)技術基盤を用いて、いくつかのワクチン候補を開発した。安全性及び効力の研究結果に基づいて、ワクチン候補Ad26.COV2.S(Ad26COVS1)を選択した。ワクチンは、フューリン切断部位の突然変異及び2つの安定化プラリン(praline)突然変異を伴う、SARS-CoV-2ウイルスSタンパク質遺伝子を含有する組換えE1/E3欠失アデノウイルス血清型26ベクターに基づく。現在、2つの免疫化レジメンが試験されている:ワクチンは単回投与で、又は8週間隔てて2回投与で与えられる(J. Sadoff et al. Interim Results of a Phase 1-2a Trial of Ad26.COV2.S Covid-19 Vaccine. N Engl J Med, 2021 Jan 13. DOI: 10.1056 / NEJMoa2034201)。
【0011】
したがって、COVID-19ワクチンの大部分は、2回投与レジメンを必要とすることに注意すべきである。
【0012】
上述のワクチンのそれぞれは、その利点及び欠点を有する。したがって、mRNAワクチンはあまり重篤でない副作用を有する。しかしながら、mRNAワクチンは、ウイルスベクターワクチンと比較して免疫原性が低い。その上、RNAはより壊れやすく、貯蔵条件に敏感である。
【0013】
組換えウイルスベクターワクチンは、高い免疫原性を達成する。しかしながら、この種類のワクチンの不都合は、ベクター部分への免疫応答を誘導する可能性であり、それにより、ワクチン再接種がより困難になる。加えて、アデノウイルスはヒト集団において循環しており、したがって、一部の人々は、これらのウイルスに対して既存の免疫を有し得る。既存免疫の問題を解決するために他の哺乳類アデノウイルスに基づく発現ベクターが使用されるが、このようなベクターはヒト細胞に侵入する能力がより低く、さらにはワクチンの効力を低下させる。
【0014】
特許請求される発明の著者らによりプロトタイプとして選択された、特許RF No.2731342(01.09.2020に公開)に従う技術的な解決策がある。重症急性呼吸器症候群ウイルスSARS-CoV-2に対する特異的免疫を誘導するための医薬品の以下の変異型がこの特許から知られている:
- E1及びE3領域が欠失しており、且つORF6-Ad26領域がORF6-Ad5により置換された組換えヒトアデノウイルス血清型26のゲノムをベースとする発現ベクターであって、配列番号1、配列番号2、配列番号3から選択される発現カセットが組み込まれた発現ベクターの形態の薬剤を含む成分1を含有すると共に、E1及びE3領域が欠失した組換えヒトアデノウイルス血清型5のゲノムをベースとする発現ベクターであって、配列番号1、配列番号2、配列番号3から選択される発現カセットが組み込まれた発現ベクターの形態の薬剤を含む成分2も含有するもの
- E1及びE3領域が欠失しており、且つORF6-Ad26領域がORF6-Ad5により置換された組換えヒトアデノウイルス血清型26のゲノムをベースとする発現ベクターであって、配列番号1、配列番号2、配列番号3から選択される発現カセットが組み込まれた発現ベクターの形態の薬剤を含む成分1を含有すると共に、E1及びE3領域が欠失した組換えサルアデノウイルス血清型25のゲノムをベースとする発現ベクターであって、配列番号4、配列番号2、配列番号3から選択される発現カセットが組み込まれた発現ベクターの形態の薬剤を含む成分2も含有するもの
- E1及びE3領域が欠失した組換えサルアデノウイルス血清型25のゲノムをベースとする発現ベクターであって、配列番号4、配列番号2、配列番号3から選択される発現カセットが組み込まれた発現ベクターの形態の薬剤を含む成分1を含有すると共に、E1及びE3領域が欠失した組換えヒトアデノウイルス血清型5のゲノムをベースとする発現ベクターであって、配列番号1、配列番号2、配列番号3から選択される発現カセットが組み込まれた発現ベクターの形態の薬剤を含む成分2も含有するもの。
【0015】
また、この特許は、重症急性呼吸器症候群SARS-CoV-2ウイルスに対する特異的免疫を誘導するための薬剤の上述の変異型の投与も開示しており、ここで、成分1及び成分2は、少なくとも1週間の時間間隔を置いて連続的に有効量で使用される。
【0016】
この投与モードはいくつかの欠点を有することが指摘されなければならない。したがって、例えば、医薬品の成分のそれぞれは副作用及びアレルギー反応を引き起こす可能性があり、そのため2回投与ワクチン接種レジメンを用いる場合、このような事象の数は増加し得る。その上、特定の時間間隔の後に2回目の投与を受けるために患者が出向くことを保証する必要があるので、このような免疫化レジメンは実用面で複数の困難に関連する。加えて、必要な薬剤成分のタイムリーな送達に関係して多数の物流上の課題が存在する。
【0017】
したがって、本発明の分野は、広範な階層の人々の間でSARS-CoV-2ウイルスへの免疫応答を誘導することができる医薬品の範囲を拡大する必要性を導き出す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
特許請求される発明群の技術的目的は、単一の活性成分を含有する薬剤を作製することであり、これと同時に、広範な階層の人々の間でSARS-CoV-2ウイルスへの免疫応答の効果的な誘導を保証することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
発明の開示
技術的問題の解決策は、E1及びE3領域が欠失しており、且つORF6-Ad26領域がORF6-Ad5により置換されたヒトアデノウイルス血清型26の組換え株のゲノムをベースとする発現ベクターであって、配列番号1、配列番号2、配列番号3から選択される発現カセットが組み込まれた発現ベクターを単一の活性成分として含有する、重症急性呼吸器症候群ウイルスSARS-CoV-2に対する特異的免疫を誘導するための凍結乾燥(フリーズドライ)形態の薬剤の変異型である。
【0020】
また、E1及びE3領域が欠失したヒトアデノウイルス血清型5の組換え株のゲノムをベースとする発現ベクターであって、配列番号1、配列番号2、配列番号3から選択される発現カセットが組み込まれた発現ベクターを単一の活性成分として含有する、重症急性呼吸器症候群ウイルスSARS-CoV-2に対する特異的免疫を誘導するための凍結乾燥(フリーズドライ)形態の薬剤の変異型も作製されている。
【0021】
さらに、E1及びE3領域が欠失した組換えサルアデノウイルス血清型25のゲノムをベースとする発現ベクターであって、配列番号4、配列番号2、配列番号3から選択される発現カセットが組み込まれた発現ベクターを単一の活性成分として含有する、重症急性呼吸器症候群ウイルスSARS-CoV-2に対する特異的免疫を誘導するための凍結乾燥(フリーズドライ)形態の薬剤の変異型が特許請求されている。
【0022】
さらに、特定の実行例の場合、再構成される凍結乾燥(フリーズドライ)形態のための薬剤の緩衝溶液は、質量%で以下を含有する:
トリス 0.0180~0.0338
塩化ナトリウム 0.1044~0.1957
スクロース 5.4688~10.2539
塩化マグネシウム六水和物 0.0015~0.0028
EDTA 0.0003~0.0005
ポリソルベート-80 0.0037~0.0070
水 残りの部分。
【0023】
薬剤変異型のそれぞれは、重症急性呼吸器症候群SARS-CoV-2ウイルスに対する特異的免疫を誘導するために使用される。
【0024】
それに関して、薬剤は、鼻腔内又は筋肉内投与を目的とする。また、薬剤は、鼻腔内及び筋肉内経路によって併用して同時に投与することもできる。
【0025】
さらに、特定の実行例の場合、薬剤は、鼻腔内経路によって5*1010~5*1011ウイルス粒子の用量で、筋肉内経路によって5*1010~5*1011ウイルス粒子の用量で投与される。そして鼻腔内及び筋肉内経路による併用投与の場合、5*1010~5*1011ウイルス粒子の用量が筋肉内に投与され、5*1010~5*1011ウイルス粒子の用量が鼻腔内に投与される。
【0026】
併用投与は、単一のワクチン接種手順内での鼻腔内及び筋肉内投与を想定する。
【0027】
技術的結果は、広範な階層の人々の間でSARS-Cov-2ウイルスへの液性及び細胞性免疫応答の発生を保証する薬剤の作製である。
【0028】
免疫化の主要目的は、効果的で長く続く病原体に対する防御を保証することである。この目的を達成するための方法の1つは、複数回投与ワクチンシリーズを使用することである。人体が初めてワクチン抗原にさらされると、適応免疫応答の2つの主要な成分、すなわちBリンパ球及びエフェクターTリンパ球の活性化が起こる。
【0029】
活性化の後、Bリンパ球は、抗体産生に関与する形質細胞に転換され、そして記憶B細胞にも変換される。エフェクターTリンパ球は、2つの主要なタイプ:ヘルパーT細胞(CD4+)及び細胞傷害性(キラー)T細胞(CD8+)に分けられる。ヘルパーT細胞の重要な機能は、液性及び細胞性免疫応答の発生を促進することである。細胞傷害性T細胞の主要な機能は、宿主の損傷した細胞を死滅させることである。キラーT細胞は、抗ウイルス免疫応答の必須成分の1つであると考えられる。しかしながら、免疫化の後、抗原特異的免疫細胞の数は時間と共に減少し、したがって追加免疫投与が行われる。後者により、免疫系は適切な数の抗原特異的T細胞及びB細胞(病原体に対する身体の防御を保証するために必要とされる)を維持することが可能になる。
【0030】
単回投与免疫化レジメン後に持続可能な免疫応答を誘導し得る単一成分の薬剤の開発は、複雑な研究及び実務課題である。しかしながら、このような開発の重要性を過大評価することは困難である。単回ワクチン投与はより高い集団免疫化率を促進することができ、これはパンデミック状態において非常に重要である。また、この薬剤は、移動型の人々の集団(移住性の種族など)の緊急時使用及び免疫化のためにも有益であり得る。さらに、ヒトにおいて単回投与薬剤の投与に関連する有害事象(傷害率並びに副作用及びアレルギー反応の数など)がより少ないことは注目に値する。
【0031】
開発された薬剤の利点には、その凍結乾燥(フリーズドライ)形態の+2℃及び+8℃の温度での貯蔵(氷点下温度で貯蔵される液体形態とは対照的)も含まれ、これは、便利な貯蔵及び輸送を保証する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図面の簡単な説明
【
図1】変異型1に従う開発薬剤の凍結乾燥(フリーズドライ)形態で免疫化されたボランティアにおいてSARS-CoV-2ウイルス抗原への液性免疫応答を評価した結果を説明する。Y軸 - SARS-CoV-2のS糖タンパク質のRBDに対するIgG力価。X軸 - 日数。○ 研究に関与したボランティアのそれぞれにおける14日目のSARS-CoV-2のS糖タンパク質のRBDに対するIgG力価□ 研究に関与したボランティアのそれぞれにおける21日目のSARS-CoV-2のS糖タンパク質のRBDに対するIgG力価△ 研究に関与したボランティアのそれぞれにおける28日目のSARS-CoV-2のS糖タンパク質のRBDに対するIgG力価抗体力価の幾何平均は、データ群のそれぞれについて黒線で示される。14日目、21日目及び28日目の値の間の統計的有意差は括弧により示され、その上にウィルコクソンT検定のp値が表示される。
【
図2】変異型2に従う開発薬剤の凍結乾燥(フリーズドライ)形態で免疫化されたボランティアにおいてSARS-CoV-2ウイルス抗原への液性免疫応答を評価した結果を説明する。Y軸 - SARS-CoV-2のS糖タンパク質のRBDに対するIgG力価。X軸 - 日数。○ 研究に関与したボランティアのそれぞれにおける14日目のSARS-CoV-2のS糖タンパク質のRBDに対するIgG力価□ 研究に関与したボランティアのそれぞれにおける21日目のSARS-CoV-2のS糖タンパク質のRBDに対するIgG力価△ 研究に関与したボランティアのそれぞれにおける28日目のSARS-CoV-2のS糖タンパク質のRBDに対するIgG力価抗体力価の幾何平均は、データ群のそれぞれについて黒線で示される。14日目、21日目及び28日目の値の間の統計的有意差は括弧により示され、その上にウィルコクソンT検定のp値が表示される。
【
図3】SARS-CoV-2のS抗原により再刺激された増殖性CD8+(A)及びCD4+(B)リンパ球の百分率によって推定したときに、変異型1に従う開発薬剤の凍結乾燥形態を受けたボランティアにおける免疫化の効力を評価した結果を説明する。Y軸 - 増殖性細胞の数(%)X軸 - 日数。○(緑色) - ボランティアのそれぞれにおける0日目の増殖性CD8+の百分率を示すために使用された記号□(緑色) - ボランティアのそれぞれにおける14日目の増殖性CD8+の百分率を示すために使用された記号△(緑色) - ボランティアのそれぞれにおける28日目の増殖性CD8+の百分率を示すために使用された記号○(青色) - ボランティアのそれぞれにおける0日目の増殖性CD4+の百分率を示すために使用された記号□(青色) - ボランティアのそれぞれにおける14日目の増殖性CD4+の百分率を示すために使用された記号△(青色) - ボランティアのそれぞれにおける28日目の増殖性CD4+の百分率を示すために使用された記号中央値は、データ群のそれぞれについて黒線で示される。0日目、14日目及び28日目に得られた値の間の統計的有意差は、括弧及び記号
*、p<0.05;
**、p<0.01;
****、p<0.001(マンホイットニー検定)によって示される。
【
図4】SARS-CoV-2のS抗原により再刺激された増殖性CD8+(A)及びCD4+(B)リンパ球の百分率によって推定したときに、変異型2に従う開発薬剤の凍結乾燥(フリーズドライ)形態を受けたボランティアにおける免疫化の効力を評価した結果を説明する。Y軸 - 増殖性細胞の数(%)X軸 - 日数。○(緑色) - ボランティアのそれぞれにおける0日目の増殖性CD8+の百分率を示すために使用された記号□(緑色) - ボランティアのそれぞれにおける14日目の増殖性CD8+の百分率を示すために使用された記号△(緑色) - ボランティアのそれぞれにおける28日目の増殖性CD8+の百分率を示すために使用された記号○(青色) - ボランティアのそれぞれにおける0日目の増殖性CD4+の百分率を示すために使用された記号□(青色) - ボランティアのそれぞれにおける14日目の増殖性CD4+の百分率を示すために使用された記号△(青色) - ボランティアのそれぞれにおける28日目の増殖性CD4+の百分率を示すために使用された記号中央値は、データ群のそれぞれについて黒線で示される。0日目、14日目及び28日目に得られた値の間の統計的有意差は、括弧及び記号
*、p<0.05;
**、p<0.01;
****、p<0.001(マンホイットニー検定)によって示される。
【発明を実施するための形態】
【0033】
発明の実行
開発薬剤の活性成分は、SARS-CoV-2抗原の遺伝子を含有する発現カセットが組み込まれた組換えアデノウイルス株のゲノムをベースとする発現ベクターを含む。
【0034】
アデノウイルスベクターは多数の異なるヒト細胞型に侵入し、高レベルの標的抗原の発現を保証し、液性及び細胞性の両方の免疫応答を回避するのに役立つことができる。ロシア連邦保健省(Ministry of Health of the Russian Federation)のFSBI “N. F. Gamaleya NRCEM”は、哺乳類アデノウイルスをベースとする発現ベクターの以下の3つの変異型を開発した:
- E1及びE3領域が欠失しており、且つORF6-Ad26領域がORF6-Ad5により置換されたヒトアデノウイルス血清型26の組換え株のゲノムをベースとする発現ベクター
- E1及びE3領域が欠失したヒトアデノウイルス血清型5の組換え株のゲノムをベースとする発現ベクター
- E1及びE3領域が欠失したサルアデノウイルス血清型25の組換え株のゲノムをベースとする発現ベクターであって、配列番号4、配列番号2、配列番号3から選択される発現カセットが組み込まれた発現ベクター。
【0035】
SARS-CoV-2ウイルス表面Sタンパク質を抗原として選択した。これは、強力で長く続く免疫応答を誘導することができる最も有望な抗原の1つである。また、SARS-CoV-2のSタンパク質に対する抗体はウイルス中和活性を有することも実証された。
【0036】
誘導された免疫応答を最大にするために、著者らは、Sタンパク質遺伝子を含有する発現カセットの複数の変異型を開発した。
【0037】
発現カセット配列番号1は、CMVプロモーター、SARS-CoV-2ウイルスSタンパク質遺伝子、及びポリアデニル化シグナルを含有する。CMVプロモーターは、複数の細胞型における構成的発現を保証する、サイトメガロウイルスの前初期遺伝子のプロモーターである。しかしながら、CMVプロモーターによって制御される標的遺伝子の発現強度は、細胞型によって異なる。さらに、CMVプロモーターの制御下での導入遺伝子の発現レベルは、細胞培養の期間が増大するにつれて低下することが示された。それは、DNAメチル化に関する遺伝子発現の抑制によって起こる[Wang W., Jia YL., Li YC., Jing CQ., Guo X., Shang XF., Zhao CP., Wang TY. Impact of different promoters, promoter mutation, and an enhancer on recombinant protein expression in CHO cells. // Scientific Reports - 2017. - Vol. 8. - P. 10416]。
【0038】
発現カセット配列番号2は、CAGプロモーター、SARS-CoV-2ウイルスSタンパク質遺伝子、及びポリアデニル化シグナルを含有する。CAGプロモーターは、CMVプロモーターの初期エンハンサー、ニワトリβ-アクチンプロモーター及びキメライントロン(ニワトリβ-アクチン及びウサギβ-グロビン)を含有する合成プロモーターである。実験により、CAGプロモーターは、CMVプロモーターと比較して、より高い転写活性を有することが実証された[Yang C.Q., Li X.Y., Li Q., Fu S.L., Li H., Guo Z.K., Lin J.T., Zhao S.T. Evaluation of three different promoters driving gene expression in developing chicken embryo by using in vivo electroporation. // Genet. Mol. Res. - 2014. - Vol. 13. - P. 1270-1277]。
【0039】
発現カセット配列番号3は、EF1プロモーター、SARS-CoV-2ウイルスSタンパク質遺伝子、及びポリアデニル化シグナルを含有する。EF1プロモーターは、ヒト真核生物翻訳伸長因子1α(EF-1α)のプロモーターである。このプロモーターは、様々な細胞型において構成的に活性である[Wang X, Xu Z, Tian Z, Zhang X, Xu D, Li Q, Zhang J, Wang T. The EF-1α promoter maintains high-level transgene expression from episomal vectors in transfected CHO-K1 cells. J Cell Mol Med. 2017 Nov;21(11):3044-3054. doi: 10.1111/jcmm.13216. Epub 2017 May 30. PMID: 28557288; PMCID: PMC5661254.]。EF-1α遺伝子は、真核細胞中で最も多いタンパク質の1つである伸長因子1αをコードし、ほとんど全ての哺乳類細胞型において発現を示す。EF-1αプロモーターは、制御された遺伝子の発現をウイルスプロモーターが促進することのできない細胞において、そしてウイルスプロモーターが徐々に失われる細胞において高頻度でその活性を実証する。
【0040】
発現カセット配列番号4は、CMVプロモーター、SARS-CoV-2ウイルスSタンパク質遺伝子、及びポリアデニル化シグナルを含有する。
【0041】
したがって、達成された課題の結果として、以下の3つの変異型の薬剤が開発された。
1)重症急性呼吸器症候群ウイルスSARS-CoV-2に対する特異的免疫を誘導するための凍結乾燥(フリーズドライ)形態の薬剤であって、E1及びE3領域が欠失しており、且つORF6-Ad26領域がORF6-Ad5により置換されたヒトアデノウイルス血清型26の組換え株のゲノムをベースとする発現ベクターであって、配列番号1、配列番号2、配列番号3から選択される発現カセットが組み込まれた発現ベクターを含む単一の活性成分を含有する薬剤。
2)重症急性呼吸器症候群ウイルスSARS-CoV-2に対する特異的免疫を誘導するための凍結乾燥(フリーズドライ)形態の薬剤であって、E1及びE3領域が欠失したヒトアデノウイルス血清型5の組換え株のゲノムをベースとする発現ベクターであって、配列番号1、配列番号2、配列番号3から選択される発現カセットが組み込まれた発現ベクターを含む単一の活性成分を含有する薬剤。
3)重症急性呼吸器症候群ウイルスSARS-CoV-2に対する特異的免疫を誘導するための凍結乾燥(フリーズドライ)形態の薬剤であって、E1及びE3領域が欠失したサルアデノウイルス血清型25の組換え株のゲノムをベースとする発現ベクターであって、配列番号4、配列番号2、配列番号3から選択される発現カセットが組み込まれた発現ベクターを含む単一の活性成分を含有する薬剤。
【0042】
本発明の実行は、以下の実施例によって証明される:
【実施例】
【0043】
実施例1.ヒトアデノウイルス血清型26の組換え株のゲノムに基づいた、重症急性呼吸器症候群ウイルスSARS-CoV-2に対する特異的免疫を誘導するための薬剤の活性成分の製造
第1段階で、以下の発現カセット3つの変異型を設計した:
- 発現カセット配列番号1は、CMVプロモーター、SARS-CoV-2ウイルスSタンパク質遺伝子、及びポリアデニル化シグナルを含有する;
- 発現カセット配列番号2は、CAGプロモーター、SARS-CoV-2ウイルスSタンパク質遺伝子、及びポリアデニル化シグナルを含有する;
- 発現カセット配列番号3は、EF1プロモーター、SARS-CoV-2ウイルスSタンパク質遺伝子、及びポリアデニル化シグナルを含有する。
【0044】
SARS-CoV-2ウイルスSタンパク質遺伝子の合成は、「Eurogen」ZAO社(Moscow)により実施した。
【0045】
ヒトアデノウイルス血清型26の組換え株を得るために、ロシア連邦保健省(Ministry of Health of the Russian Federation)のFSBI “N. F. Gamaleya NRCEM”において製造された以下の2つのプラスミドを使用した:ヒトアデノウイルス血清型26のゲノムの相同性アームを保有するプラスミドpAd26-Ends、及びヒトアデノウイルス血清型5のオープンリーディングフレームORF6と、E1及びE3領域の欠失とを有する組換えヒトアデノウイルス血清型26のゲノムを保有するプラスミドpAd26-too。
【0046】
研究の第1段階で、遺伝子操作技術を使用して、発現カセット配列番号1、配列番号2又は配列番号3をそれぞれ含有すると共に、ヒトアデノウイルス血清型26のゲノムの相同性アームを保有するプラスミドpAd26-Endsに基づいたプラスミドpAd26-Ends-CMV-S-CoV2、pAd26-Ends-CAG-S-CoV2、pAd26-Ends-EF1-S-CoV2を得た。次に、得られたプラスミドを唯一の加水分解部位により直線化し、プラスミドのそれぞれを組換えベクターpAd26-tooと混合した。相同組換えの結果として、ヒトアデノウイルス血清型5のオープンリーディングフレームORF6と、E1及びE3領域の欠失とを有する組換えヒトアデノウイルス血清型26のゲノムを保有し、発現カセット配列番号1、配列番号2又は配列番号3をそれぞれ有するプラスミドpAd26-too-CMV-S-CoV2、pAd26-too-CAG-S-CoV2、pAd26-too-EF1-S-CoV2が製造された。
【0047】
次の段階で、プラスミドpAd26-too-CMV-S-CoV2、pAd26-too-CAG-S-CoV2、pAd26-too-EF1-S-CoV2を特定の制限エンドヌクレアーゼにより加水分解して、ベクター部分を除去した。得られたDNA産物をHEK293細胞培養物のトランスフェクションのために使用した。
【0048】
完了した研究の結果として、以下のヒトアデノウイルス血清型26の組換え株が得られた:Ad26-too-CMV-S-CoV2、Ad26-too-CAG-S-CoV2、Ad26-too-EF1-S-CoV2。同様のスキームを使用して、SARS-CoV-2 Sタンパク質遺伝子を含有しないヒトアデノウイルス血清型26の対照株:Ad26-tooを製造した。
【0049】
したがって、E1及びE3領域が欠失しており、且つORF6-Ad26領域がORF6-Ad5により置換された組換えヒトアデノウイルス血清型26のゲノムを含有し、配列番号1、配列番号2、配列番号3から選択される発現カセットが組み込まれた発現ベクターが得られた。この発現ベクターは、開発薬剤の活性成分である。
【0050】
実施例2.ヒトアデノウイルス血清型5の組換え株のゲノムに基づいた、重症急性呼吸器症候群ウイルスSARS-CoV-2に対する特異的免疫を誘導するための薬剤の活性成分の製造
発現カセットの3つの変異型をこの試みにおいても使用した:
- 発現カセット配列番号1は、CMVプロモーター、SARS-CoV-2ウイルスSタンパク質遺伝子、及びポリアデニル化シグナルを含有する;
- 発現カセット配列番号2は、CAGプロモーター、SARS-CoV-2ウイルスSタンパク質遺伝子、及びポリアデニル化シグナルを含有する;
- 発現カセット配列番号3は、EF1プロモーター、SARS-CoV-2ウイルスSタンパク質遺伝子、及びポリアデニル化シグナルを含有する。
【0051】
SARS-CoV-2ウイルスSタンパク質遺伝子の合成は、「Eurogen」ZAO社(Moscow)により実施した。
【0052】
ヒトアデノウイルス血清型5の組換え株を得るために、ロシア連邦保健省(Ministry of Health of the Russian Federation)のFSBI “N. F. Gamaleya NRCEM”において製造された以下の2つのプラスミドを使用した:
- アデノウイルス血清型5のゲノムの相同性アーム(相同性アームの一方は、ヒトアデノウイルス血清型5のゲノムの開始部分(左側逆位末端反復配列からE1領域まで)、及びpIXタンパク質を含むウイルスゲノムの配列である。他方の相同性アームは、ゲノムの末端を介してORF3 E4領域の後に位置するヌクレオチド配列を含有する)を保有するプラスミドpAd5-Ends
- E1及びE3領域が欠失した組換えヒトアデノウイルス血清型5のゲノムを保有するプラスミドpAd5-too。
【0053】
研究の第1段階で、遺伝子操作技術を使用して、プラスミドpAd5-Endsに基づいたプラスミドpAd5-Ends-CMV-S-CoV2、pAd5-Ends-CAG-S-CoV2、pAd5-Ends-EF1-S-CoV2を得た。製造されたプラスミドは、発現カセット配列番号1、配列番号2又は配列番号3をそれぞれ含有すると共に、アデノウイルス血清型5のゲノムの相同性アームを保有した。次に、得られたプラスミドを唯一の加水分解部位により直線化し、プラスミドのそれぞれを組換えベクターpAd5-tooと混合した。相同組換えの結果として、E1及びE3領域が欠失した組換えヒトアデノウイルス血清型5のゲノムを保有し、発現カセット配列番号1、配列番号2又は配列番号3をそれぞれ有するプラスミドpAd5-too-CMV-S-CoV2、pAd5-too-CAG-S-CoV2、pAd5-too-EF1-S-CoV2が製造された。
【0054】
次の段階で、プラスミドpAd5-too-CMV-S-CoV2、pAd5-too-CAG-S-CoV2、pAd5-too-EF1-S-CoV2を特定の制限エンドヌクレアーゼにより加水分解して、ベクター部分を除去した。得られたDNA産物をHEK293細胞培養物のトランスフェクションのために使用した。
【0055】
完了した研究の結果として、以下のヒトアデノウイルス血清型5の組換え株が得られた:Ad5-too-CMV-S-CoV2、Ad5-too-CAG-S-CoV2、Ad5-too-EF1-S-CoV2。同様のスキームを使用して、SARS-CoV-2 Sタンパク質遺伝子を含有しないヒトアデノウイルス血清型5の対照株:Ad5-tooを製造した。
【0056】
したがって、配列番号1、配列番号2、配列番号3から選択される発現カセットが組み込まれた、E1及びE3領域が欠失した組換えヒトアデノウイルス血清型5のゲノムを含有する発現ベクターが得られた。この発現ベクターは、開発薬剤の活性成分である。
【0057】
実施例3.サルアデノウイルス血清型25の組換え株のゲノムに基づいた、重症急性呼吸器症候群ウイルスSARS-CoV-2に対する特異的免疫を誘導するための薬剤の活性成分の製造
以下の発現カセットの3つの変異型をこの試みにおいて使用した:
- 発現カセット配列番号4は、CMVプロモーター、SARS-CoV-2ウイルスSタンパク質遺伝子、及びポリアデニル化シグナルを含有する;
- 発現カセット配列番号2は、CAGプロモーター、SARS-CoV-2ウイルスSタンパク質遺伝子、及びポリアデニル化シグナルを含有する;
- 発現カセット配列番号3は、EF1プロモーター、SARS-CoV-2ウイルスSタンパク質遺伝子、及びポリアデニル化シグナルを含有する。
【0058】
SARS-CoV-2ウイルスSタンパク質遺伝子の合成は、「Eurogen」ZAO社(Moscow)により実施した。
【0059】
サルアデノウイルス血清型25の組換え株を得るために、ロシア連邦保健省(Ministry of Health of the Russian Federation)のFSBI “N. F. Gamaleya NRCEM”において製造された以下の2つのプラスミドを使用した:
- サルアデノウイルス血清型25のゲノムの相同性アームを保有するプラスミドpSim25-Ends
- E1及びE3領域の欠失を有する組換えサルアデノウイルス血清型25のゲノムを保有するプラスミドpSim25-null。
【0060】
研究の第1段階で、遺伝子操作技術を使用して、pSim25-Endsに基づいたプラスミドp-Sim25-Ends-CMV-S-CoV2、p-Sim25-Ends-CAG-S-CoV2、p-Sim25-Ends-EF1-S-CoV2を得た。製造されたプラスミドは、発現カセット配列番号4、配列番号2又は配列番号3をそれぞれ含有すると共に、サルアデノウイルス血清型25のゲノムの相同性アームを保有した。次に、得られたプラスミドを唯一の加水分解部位により直線化し、プラスミドのそれぞれを組換えベクターpSim25-tooと混合した。相同組換えの結果として、E1及びE3領域が欠失した組換えサルアデノウイルス血清型25のゲノムを保有し、発現カセット配列番号4、配列番号2又は配列番号3をそれぞれ有するプラスミドpSim25-too-CMV-S-CoV2、pSim25-too-CAG-S-CoV2、pSim25-too-EF1-S-CoV2が製造された。
【0061】
次の段階で、プラスミドpSim25-too-CMV-S-CoV2、pSim25-too-CAG-S-CoV2、pSim25-too-EF1-S-CoV2を特定の制限エンドヌクレアーゼにより加水分解して、ベクター部分を除去した。得られたDNA産物をHEK293細胞培養物のトランスフェクションのために使用した。
【0062】
完了した研究の結果として、以下のサルアデノウイルス血清型25の組換え株が得られた:simAd25-too-CMV-S-CoV2、simAd25-too-CAG-S-CoV2、simAd25-too-EF1-S-CoV2。同様のスキームを使用して、SARS-CoV-2 Sタンパク質遺伝子を含有しないサルアデノウイルス血清型25の対照株:simAd25-tooを製造した。
【0063】
したがって、配列番号4、配列番号2、配列番号3から選択される発現カセットが組み込まれた、E1及びE3領域が欠失したサルアデノウイルス血清型25の組換え株のゲノムを含有する発現ベクターが得られた。この発現ベクターは、開発薬剤の活性成分である。
【0064】
実施例4.緩衝溶液の開発
本発明者らは、組換えアデノウイルス粒子の安定性を保証する水系緩衝溶液を選択した(すなわち、凍結乾燥形態の薬剤は、水による再構成の後に緩衝溶液を含有する)。溶液pH値を維持するためにトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(トリス)を緩衝液に添加した。塩化ナトリウムの添加は、必要なイオン力及びモル浸透圧濃度に到達するために必要であった。スクロースは凍結保護剤として添加した。塩化マグネシウム六水和物は二価カチオン源として添加した。EDTAはフリーラジカル酸化の阻害剤として、ポリソルベート-80は界面活性剤源として、エタノール95%はフリーラジカル酸化の阻害剤として添加した。
【0065】
医薬品の凍結乾燥形態のための緩衝溶液の組成物に含まれる物質の濃度を推定するために、実験群のいくつかの変異型が作られた(表1)。生成された緩衝溶液のそれぞれに薬剤の活性成分の1つを添加した:
- E1及びE3領域が欠失しており、且つORF6-Ad26領域がORF6-Ad5により置換されたヒトアデノウイルス血清型26の組換え株のゲノムをベースとする発現ベクターであって、発現カセット配列番号1が組み込まれた発現ベクター(Ad26-too-CMV-S-CoV2、1*1011ウイルス粒子)。
- E1及びE3領域が欠失したヒトアデノウイルス血清型5の組換え株のゲノムをベースとする発現ベクターであって、発現カセット配列番号1が組み込まれた発現ベクター(Ad5-too-CMV-S-CoV2、1*1011ウイルス粒子)。
- E1及びE3領域が欠失したサルアデノウイルス血清型25の組換え株のゲノムをベースとする発現ベクターであって、発現カセット配列番号4が組み込まれた発現ベクター(simAd25-too-CMV-S-CoV2、1*1011ウイルス粒子)。
【0066】
得られた薬剤を凍結乾燥し、+2及び+8℃で3カ月間貯蔵し、その後、組換えアデノウイルスの力価の変化を評価した。
【0067】
【0068】
実施した実験の結果により、薬剤の凍結乾燥形態のための緩衝溶液中で組換えアデノウイルスを+2℃及び+8℃の温度で3カ月間貯蔵した後に、その力価は変化しないことが実証された。
【0069】
したがって、ワクチンの凍結乾燥形態のために開発された緩衝溶液は、以下の活性部分の範囲において、開発薬剤の全ての成分の安定性を保証する:
トリス:0.0180質量%~0.0338質量%;
塩化ナトリウム:0.1044質量%~0.1957質量%;
スクロース:5.4688質量%~10.2539質量%;
塩化マグネシウム六水和物:0.0015質量%~0.0028質量%;
EDTA:0.0003質量%~0.0005質量%;
ポリソルベート-80:0.0037質量%~0.0070質量%;
溶媒:残りの部分。
【0070】
実施例5.重症急性呼吸器症候群ウイルスSARS-CoV-2に対する特異的免疫を誘導するための凍結乾燥(フリーズドライ)形態の薬剤の製造
2~8℃の温度範囲で長期貯蔵の可能性のある開発医薬品の凍結乾燥製剤を製造するために、実施例4において選択された緩衝溶液を使用し、これを関連の活性成分と混合した。
【0071】
先に選択された凍結乾燥プログラム(表2)を使用し、言及される製剤を用いて3回の個々の凍結乾燥サイクルを実施した。
【0072】
【0073】
凍結乾燥製品のために以下の適格性基準を選択した:外観 - 白色又はオフホワイト色の錠剤製剤(全体又は砕いたもの)として提示される乾燥した多孔質の塊;乾燥時の重量減少(残留水分) - 5%以下、再構成時間(5分以下)、最終剤形の比活性の値。
【0074】
凍結乾燥後に達成された指標は、適格性基準を満たした。
【0075】
したがって、以下の薬剤が得られた:
1.重症急性呼吸器症候群ウイルスSARS-CoV-2に対する特異的免疫を誘導するための凍結乾燥(フリーズドライ)形態の薬剤であって、E1及びE3領域が欠失しており、且つORF6-Ad26領域がORF6-Ad5により置換されたヒトアデノウイルス血清型26の組換え株のゲノムをベースとする発現ベクターであって、配列番号1、配列番号2、配列番号3から選択される発現カセットが組み込まれた発現ベクターを含む単一の活性成分を含有する薬剤
2.重症急性呼吸器症候群ウイルスSARS-CoV-2に対する特異的免疫を誘導するための凍結乾燥(フリーズドライ)形態の薬剤であって、E1及びE3領域が欠失したヒトアデノウイルス血清型5の組換え株のゲノムをベースとする発現ベクターであって、配列番号1、配列番号2、配列番号3から選択される発現カセットが組み込まれた発現ベクターを含む単一の活性成分を含有する薬剤
3.重症急性呼吸器症候群ウイルスSARS-CoV-2に対する特異的免疫を誘導するための凍結乾燥(フリーズドライ)形態の薬剤であって、E1及びE3領域が欠失したサルアデノウイルス血清型25の組換え株のゲノムをベースとする発現ベクターであって、配列番号4、配列番号2、配列番号3から選択される発現カセットが組み込まれた発現ベクターを含む単一の活性成分を含有する薬剤
【0076】
実施例6.マウスに対する単回の静脈内及び筋肉内投与後の開発薬剤の毒性(急性毒性)
以下の薬剤の急性毒性を評価するためにこの研究を実行した:
- 重症急性呼吸器症候群ウイルスSARS-CoV-2に対する特異的免疫を誘導するための凍結乾燥(フリーズドライ)形態の薬剤であって、E1及びE3領域が欠失しており、且つORF6-Ad26領域がORF6-Ad5により置換されたヒトアデノウイルス血清型26の組換え株のゲノムをベースとする発現ベクターであって、配列番号1、配列番号2、配列番号3から選択される発現カセットが組み込まれた発現ベクターを含む単一の活性成分を含有する薬剤
- 重症急性呼吸器症候群ウイルスSARS-CoV-2に対する特異的免疫を誘導するための凍結乾燥(フリーズドライ)形態の薬剤であって、E1及びE3領域が欠失したヒトアデノウイルス血清型5の組換え株のゲノムをベースとする発現ベクターであって、配列番号1、配列番号2、配列番号3から選択される発現カセットが組み込まれた発現ベクターを含む単一の活性成分を含有する薬剤
- 重症急性呼吸器症候群ウイルスSARS-CoV-2に対する特異的免疫を誘導するための凍結乾燥(フリーズドライ)形態の薬剤であって、E1及びE3領域が欠失したサルアデノウイルス血清型25の組換え株のゲノムをベースとする発現ベクターであって、配列番号4、配列番号2、配列番号3から選択される発現カセットが組み込まれた発現ベクターを含む単一の活性成分を含有する薬剤。
【0077】
この研究では、体重18~20gの6~8週齢のオス及びメスの非近交系マウスを使用した。
【0078】
薬剤用量の計算は、感受性動物種-シリアンゴールデンハムスターを用いる予備実験において見出された免疫用量(108v.p.)に基づいた。マウスの用量は、その体重に応じて計算した。マウスにおける毒性研究のために選択された最小用量は、治療用量に最も近い108v.p.であった。用量変換のために種間スケーリングファクター(interspecies scaling factor)を使用しなかった。ワクチン調製のためのWHOガイドラインに従って、体重に直接基づいて用量を再計算した。
【0079】
結果として、この実験ではマウスに投与するために以下の用量を選択した:
108v.p. - マウスの有効用量(ED)に近い;
109v.p. - マウスのEDよりも20倍高い;
1010v.p. - マウスのEDよりも200倍高い;
1011v.p. - マウスのEDよりも2000倍高い;
【0080】
したがって、以下の実験動物群を形成した:
1)Ad26-too-CMV-S-CoV2、1*108v.p.、20匹のマウス;
2)Ad26-too-CMV-S-CoV2、1*109v.p.、20匹のマウス;
3)Ad26-too-CMV-S-CoV2、1*1010v.p.、20匹のマウス;
4)Ad26-too-CMV-S-CoV2、1*1011v.p.、20匹のマウス;
5)Ad5-too-CMV-S-CoV2、1*108v.p.、20匹のマウス;
6)Ad5-too-CMV-S-CoV2、1*109v.p.、20匹のマウス;
7)Ad5-too-CMV-S-CoV2、1*1010v.p.、20匹のマウス;
8)Ad5-too-CMV-S-CoV2、1*1011v.p.、20匹のマウス;
9)simAd25-too-CMV-S-CoV2、1*108v.p.、20匹のマウス;
10)simAd25-too-CMV-S-CoV2、1*109v.p.、20匹のマウス;
11)simAd25-too-CMV-S-CoV2、1*1010v.p.、20匹のマウス;
12)simAd25-too-CMV-S-CoV2、1*1011v.p.、20匹のマウス;
13)プラセボ(緩衝溶液)、20匹のマウス。
【0081】
全ての動物の身体検査を毎日14日間実施して、中毒の兆候及び死んだ動物の数を記録した。
【0082】
実験動物の以下の機能状態のパラメータを記録した:活動、移動性、外観、毛の状態、眼、耳、歯及び肢。評価した生理学的機能には、呼吸、唾液分泌、唾液、尿、排泄物が含まれた。
【0083】
実験の間、動物は全て生き延びた。全ての群からの動物は健康に見え、活発に餌を食べ、刺激に対して適切な応答を有し、環境の探索に興味を示した。被毛は厚く均一で輝いており、体の近くにあり、毛の喪失又は脆弱性は見出されなかった。筋緊張は、過緊張性を特徴としなかった。外耳には痂皮、炎症兆候又は単収縮がなかった。歯色は正常であり、歯は割れなかった。マウスは栄養状態が良く、栄養不良を受けなかった。腹部領域は拡張しなかった。困難を伴わずにスムーズな呼吸。唾液分泌は正常である。排尿、尿色、胃腸系パラメータ、筋緊張、及び反射は、正常な生理学的範囲内である。実験動物の挙動は、対照群の動物の挙動と変わらなかった。
【0084】
実験の14日目に、頸椎脱臼によるマウスの計画的な安楽死を実施した。研究の過程で、不可避な死の兆候を有する危機的な状態にある動物は見出されなかった。また、動物の死も報告されなかった。
【0085】
全ての動物の完全剖検を実行した。剖検には、動物の身体状態、内部表面及び管、頭蓋内腔、胸腔、腹腔及び骨盤腔(これらの腔の内部器官及び組織を含む)、頸部(その器官及び組織を含む)、並びに骨格筋系(skeletomuscular system)の評価が含まれた。
【0086】
肉眼での死後検査により、薬剤がマウスの内臓に与える影響は何も明らかにならなかった。動物の対照群と実験群との違いは見出されなかった。体重増加は、動物の対照群と実験群とで異ならなかった。
【0087】
実施例7.
液性免疫応答の評価に基づいた、開発薬剤による免疫化の効力の評価
免疫化の効力の重要な特徴の1つは抗体力価である。この実施例は、実験動物への薬剤の投与から21日目に、SARS-CoV-2 Sタンパク質に対する抗体力価の変化に関するデータを引き出す。
【0088】
体重18gのメスの哺乳類種-BALB/cマウスを実験で使用した。全ての動物を1群当たり5匹で13群に分け、凍結乾燥形態の開発薬剤の変異型を筋肉内注射した。
【0089】
凍結乾燥形態の開発薬剤を含有するバイアル(1011ウイルス粒子/バイアル)に1.0mlの量の注射用水を添加した。したがって、再構成された凍結乾燥薬剤が得られた。次に、凍結乾燥物が完全に溶解するまでバイアルを振り混ぜ、200μlを動物に筋肉内注射した。
【0090】
以下の動物群を形成した:
1)Ad26-too-CMV-S-CoV2
2)Ad26-too-CAG-S-CoV2
3)Ad26-too-EF1-S-CoV2
4)Ad26-too
5)Ad5-too-CMV-S-CoV2
6)Ad5-too-CAG-S-CoV2
7)Ad5-too-EF1-S-CoV2
8)Ad5-too
9)simAd25-too-CMV-S-CoV2
10)simAd25-too-CAG-S-CoV2
11)simAd25-too-EF1-S-CoV2
12)simAd25-too
13)プラセボ(緩衝液)
【0091】
3週間後に、動物の尾静脈から血液サンプルを採取し、血清を分離した。酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)を使用し、以下のプロトコルに従って抗体力価を測定した:
1)96ウェルELISAプレートのウェルに抗原を+4℃の温度で16時間吸着させた。
2)次に、非特異的な結合を防止するために、1ウェル当たり100μlの量の非特異的シグナルブロック緩衝液中に溶解させた5%の乳によりプレートを「ブロック」した。それを37℃の振とう機において1時間インキュベートした。
3)免疫化マウスからの血清サンプルを100倍に希釈してから、2倍希釈系列を調製した。
4)希釈した血清サンプルのそれぞれの50μlをプレートウェルに添加した。
5)次に、37℃で1時間のインキュベーションを実施した。
6)インキュベーションの後、ウェルをリン酸緩衝液で3回洗浄した。
7)次に、西洋わさびペルオキシダーゼと結合されたマウス免疫グロブリンに対する二次抗体を添加した。
8)次に、37℃で1時間のインキュベーションを実施した。
9)インキュベーションの後、ウェルをリン酸緩衝液で3回洗浄した。
10)次に、西洋わさびペルオキシダーゼの基質として使用され、反応によって着色化合物に変換されるテトラメチルベンジジン(TMB)溶液を添加した。硫酸の添加により15分後に反応を停止させた。次に、分光光度計を用いて、各ウェルにおいて450nmの波長で溶液の光学濃度(OD)を測定した。
【0092】
抗体力価は、溶液の光学濃度が負の対照群よりも有意に高い最後の希釈度として定義された。得られた結果(幾何平均)は表3に提示される。
【0093】
【0094】
したがって、実験結果は、開発薬剤が全てSARS-CoV-2に対する液性免疫応答を誘導することを実証する。
【0095】
実施例8.ワクチン接種後の異なる時点でボランティアの血液中においてSARS-CoV-2ウイルス抗原への液性免疫応答を評価することによる、開発薬剤の免疫原性の評価
この実験の目的は、開発薬剤の異なる変異型によるワクチン接種後の異なる時点でボランティアの血液中においてSARS-CoV-2ウイルス抗原への免疫応答の強度を決定することであった。
【0096】
18~60歳の健康なボランティアが治験に含まれた。治験の全ての参加者をいくつかの群分けた。
1)重症急性呼吸器症候群ウイルスSARS-CoV-2に対する特異的免疫を誘導するための凍結乾燥(フリーズドライ)形態の薬剤であって、E1及びE3領域が欠失しており、且つORF6-Ad26領域がORF6-Ad5により置換されたヒトアデノウイルス血清型26の組換え株のゲノムをベースとする発現ベクターであって、配列番号1から選択される発現カセットが組み込まれた発現ベクターを含む単一の活性成分を含有する薬剤、1011ウイルス粒子/用量、9人。
2)重症急性呼吸器症候群ウイルスSARS-CoV-2に対する特異的免疫を誘導するための凍結乾燥(フリーズドライ)形態の薬剤であって、E1及びE3領域が欠失しており、且つORF6-Ad26領域がORF6-Ad5により置換されたヒトアデノウイルス血清型5の組換え株のゲノムをベースとする発現ベクターであって、配列番号1から選択される発現カセットが組み込まれた発現ベクターを含む単一の活性成分を含有する薬剤、1011ウイルス粒子/用量、9人。
【0097】
凍結乾燥形態の開発薬剤を含有するバイアルに1.0mlの量の注射用水を添加した。次に、凍結乾燥物が完全に溶解するまでバイアルを振り混ぜた。三角筋(上腕の外面の上部3分の1)において開発薬剤を筋肉内投与した。三角筋に注射することが不可能な場合は、薬剤を外側広筋に注射した。
【0098】
免疫化の前、並びに14、21、28及び42日目に、対象から血液サンプルを採取した。得られた血液サンプルから血清を分離し、SARS-CoV-2ウイルスS抗原に対する抗体力価を決定するために使用した。
【0099】
抗体力価は、SARS-CoV-2ウイルスSタンパク質RBDに対するIgG力価を決定するように設計された、ロシア連邦保健省(Ministry of Health of the Russian Federation)のFSBI “N. F. Gamaleya NRCEM”で開発された試験キット(RZN 2020/10393 2020-05-18)を用いて測定した。
【0100】
事前にRBD(100ng/ウェル)が吸着されたプレートを洗浄緩衝液中で5回洗浄した。次に、正の対照(100μl)及び負の対照(100μl)をデュプリケートでプレートウェルに添加した。研究サンプルの一連の2倍希釈物(サンプルあたり2回のデュプリケート)を残りのプレートウェルに添加した。プレートをフィルムで密封し、300rpmで攪拌しながら+37℃で1時間インキュベートした。次に、ウェルを洗浄緩衝液の作用溶液で5回洗浄した。次に、100μlのモノクローナル抗体結合体の作用溶液を各ウェルに添加し、プレートを接着フィルムで閉鎖し、300rpmで攪拌しながら+37℃で1時間インキュベートした。次に、ウェルを洗浄緩衝液の作用溶液で5回洗浄した。次に、100μlの発色基質を各ウェルに添加し、暗所において+20℃で15分間インキュベートした。このステップの後、ウェル当たり50μlの停止試薬(1M硫酸溶液)の添加によって反応を停止させた。分光光度計において450nmの波長で光学濃度を測定することにより、反応の停止から10分以内に結果を記録した。
【0101】
IgG力価は、免疫化された対象の血清中のOD450の値が対照血清(免疫化前の対象の血清)中の値よりも2倍高い最大血清希釈度であると定義された。
【0102】
開発薬剤の異なる変異型を投与した後のボランティアの血清中のSARS-CoV-2抗原に対する抗体力価の評価の結果は、
図1、2に示される。
【0103】
図面によって実証されるように、開発薬剤の両方の変異型によるボランティアの免疫化は、SARS-CoV-2ウイルスSタンパク質に対する抗体力価の上昇を特徴とする、強力な(対照の非免疫化ボランティア群おける値とは統計的有意差がある)液性免疫の達成を提供する。それに関して、液性免疫応答の強度は、免疫化の日からより日数が経つにつれて上昇していった。
【0104】
実施例9.ワクチン接種後の異なる時点でボランティアの血液中においてSARS-CoV-2ウイルス抗原への細胞性免疫応答を評価することによる、開発薬剤の免疫原性の評価
この実験の目的は、開発薬剤の異なる変異型による免疫化後のボランティアの血液中においてSARS-CoV-2ウイルス抗原への免疫応答の強度を決定することであった。
【0105】
18~60歳の健康なボランティアが治験に含まれた。治験の全ての参加者をいくつかの群分けた。
1)重症急性呼吸器症候群ウイルスSARS-CoV-2に対する特異的免疫を誘導するための凍結乾燥(フリーズドライ)形態の薬剤であって、E1及びE3領域が欠失しており、且つORF6-Ad26領域がORF6-Ad5により置換されたヒトアデノウイルス血清型26の組換え株のゲノムをベースとする発現ベクターであって、配列番号1から選択される発現カセットが組み込まれた発現ベクターを含む単一の活性成分を含有する薬剤、1011ウイルス粒子/用量、9人。
2)重症急性呼吸器症候群ウイルスSARS-CoV-2に対する特異的免疫を誘導するための凍結乾燥(フリーズドライ)形態の薬剤であって、E1及びE3領域が欠失しており、且つORF6-Ad26領域がORF6-Ad5により置換されたヒトアデノウイルス血清型5の組換え株のゲノムをベースとする発現ベクターであって、配列番号1から選択される発現カセットが組み込まれた発現ベクターを含む単一の活性成分を含有する薬剤、1011ウイルス粒子/用量、9人。
【0106】
関連薬剤の単回の筋肉内投与によってボランティアを免疫化した。
【0107】
凍結乾燥形態の開発薬剤を含有するバイアルに1.0mlの量の注射用水を添加した。次に、凍結乾燥物が完全に溶解するまでバイアルを振り混ぜた。三角筋(上腕の外面の上部3分の1)において開発薬剤を筋肉内投与した。三角筋に注射することが不可能な場合は、薬剤を外側広筋に注射した。
【0108】
免疫化の前、並びに免疫化後14及び28日目に、対象から血液サンプルを採取した。Ficoll溶液(1.077g/mL;PanEco)中の密度勾配遠心分離法により、サンプルから単核細胞を分離した。次に、分離した細胞を蛍光染料CFSE(Invivogen,USA)で染色し、96ウェルプレートのウェルに入れた(2*105細胞/ウェル)。次のステップとして、コロナウイルスSタンパク質を培地に添加する(最終タンパク質濃度-1μg/ml)ことにより、リンパ球をインビトロで再刺激した。抗原が添加されないインタクト細胞を負の対照として使用した。抗原添加の72時間後に増殖性細胞の百分率を測定し、ガンマ-インターフェロンを測定するために培地をサンプリングした。
【0109】
増殖性細胞の%を決定するために、これらを、Tリンパ球CD3、CD4、CD8(抗CD3 Pe-Cy7(BD Biosciences、クローンSK7)、抗CD4 APC(BD Biosciences、クローンSK3)、抗CD8 PerCP-Cy5.5(BD Biosciences、クローンSK1))のマーカー分子に対する抗体で染色した。高性能サイトフルオロメーターBD FACS AriaIII(BD Biosciences,USA)を用いて、細胞混合物中の増殖性細胞(より少量のCFSE色素を有する)CD4+及びCD8+Tリンパ球を決定した。コロナウイルスS抗原により再刺激された細胞の分析で得られた結果から、インタクト細胞の分析で得られた結果を差し引くことにより、各検体において得られた増殖性細胞の百分率を決定した。この知見は
図3及び4に示される。
【0110】
実施した研究の結果は、薬剤の異なる変異型によるボランティアの免疫化によって誘導された細胞性免疫の強度(増殖性CD4+及びCD8+Tリンパ球の数の中央値に基づく)が、免疫化の日からより日数が経つにつれて増大していくことを実証した。全ての群において、免疫化後28日目に増殖性CD4+及びCD8+Tリンパ球のピーク値が記録された。増殖性CD4+及びCD8+Tリンパ球の値における最大統計的有意差は、研究の0日目の値と28日目の値との間で報告された(p<0.001)。
【0111】
したがって、上記の知見に基づいて、開発薬剤による免疫化は、免疫化の前後で測定されるパラメータにおける高レベルの統計的有意性によって証明される、強力な抗原特異的細胞性抗感染免疫の形成を誘導することができるという結論を下すことができる。
【0112】
実施例10.開発薬剤の変異型による単回及び2回投与免疫化後のボランティアにおける有害事象の評価
この実験の目的は、開発薬剤の異なる変異型によって免疫化された後のボランティアにおける副作用を決定することであった。
【0113】
18~60歳の健康なボランティアが治験に含まれた。治験の全ての参加者をいくつかの群分けた。
1)凍結乾燥(フリーズドライ)形態の組換えヒトアデノウイルス血清型26に基づいた薬剤(Ad26-too-CMV-S-CoV2)の単回筋肉内投与、1011ウイルス粒子/用量、9人。
2)凍結乾燥(フリーズドライ)形態の組換えヒトアデノウイルス血清型5に基づいた薬剤(Ad5-too-CMV-S-CoV2)の単回筋肉内投与、1011ウイルス粒子/用量、9人。
3)最初に、凍結乾燥(フリーズドライ)形態の組換えヒトアデノウイルス血清型26に基づいた薬剤(Ad26-too-CMV-S-CoV2)(1011ウイルス粒子/用量)が投与され、21日後に、凍結乾燥(フリーズドライ)形態の組換えヒトアデノウイルス血清型5に基づいた薬剤(Ad5-too-CMV-S-CoV2)(1011ウイルス粒子/用量)が投与される、2回投与免疫化レジメン、20人。
【0114】
表4には、治験において180日目に来診(電話)により治験の開始から報告された最も一般的な有害事象についてのデータが含まれる。
【0115】
【0116】
【0117】
提示されるデータによって実証されるように、重症急性呼吸器症候群ウイルスSARS-CoV-2に対する特異的免疫を誘導するための凍結乾燥(フリーズドライ)形態の開発薬剤による免疫化の単回投与レジメン後の副作用の発生率は、2回投与免疫化レジメンと比較して有意に低かった。
【0118】
実施例11.液性免疫応答の評価に基づいた、開発薬剤による鼻腔内免疫化の効力の評価
この研究の目的は、鼻腔内投与された後の開発薬剤の効力を検証することであった。
【0119】
18~20gのメスのC57/Bl6マウスを5匹/群で実験において使用した。以下の動物群を形成した:
1)凍結乾燥(フリーズドライ)形態の組換えヒトアデノウイルス血清型26に基づいた薬剤(Ad26-too-CMV-S-CoV2)の単回鼻腔内投与、5*1010ウイルス粒子/用量。
2)凍結乾燥(フリーズドライ)形態の組換えヒトアデノウイルス血清型5に基づいた薬剤(Ad5-too-CMV-S-CoV2)の単回鼻腔内投与、5*1010ウイルス粒子/用量。
3)凍結乾燥(フリーズドライ)形態の組換えサルアデノウイルス血清型25に基づいた薬剤(simAd25-too-CMV-S-CoV2)の単回鼻腔内投与、5*1010ウイルス粒子/用量。
4)凍結乾燥(フリーズドライ)形態の組換えヒトアデノウイルス血清型26に基づいた薬剤(Ad26-too-CMV-S-CoV2)の単回鼻腔内投与、5*1011ウイルス粒子/用量。
5)凍結乾燥(フリーズドライ)形態の組換えヒトアデノウイルス血清型5に基づいた薬剤(Ad5-too-CMV-S-CoV2)の単回鼻腔内投与、5*1011ウイルス粒子/用量。
6)凍結乾燥(フリーズドライ)形態の組換えサルアデノウイルス血清型25に基づいた薬剤(simAd25-too-CMV-S-CoV2)の単回鼻腔内投与、5*1011ウイルス粒子/用量。
7)緩衝溶液の単回鼻腔内投与(負の対照)。
【0120】
3週間後に、動物の尾静脈から血液サンプルを採取し、血清を分離した。酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)を使用し、以下のプロトコルに従って抗体力価を測定した:
1)96ウェルELISAプレートのウェルに抗原を+4℃の温度で16時間吸着させた。
2)次に、非特異的な結合を防止するために、1ウェル当たり100μlの量のTPBS中に溶解させた5%の乳によりプレートを「ブロック」した。それを37℃の振とう機において1時間インキュベートした。
3)免疫化マウスからの血清サンプルを100倍に希釈してから、2倍希釈系列を調製した。
4)希釈した血清サンプルのそれぞれの50μlをプレートウェルに添加した。
5)次に、37℃で1時間のインキュベーションを実施した。
6)インキュベーションの後、ウェルをリン酸緩衝液で3回洗浄した。
7)次に、西洋わさびペルオキシダーゼと結合されたマウス免疫グロブリンに対する二次抗体を添加した。
8)次に、37℃で1時間のインキュベーションを実施した。
9)インキュベーションの後、ウェルをリン酸緩衝液で3回洗浄した。
10)次に、西洋わさびペルオキシダーゼの基質として使用され、反応によって着色化合物に変換されるテトラメチルベンジジン(TMB)溶液を添加した。硫酸の添加により15分後に反応を停止させた。次に、分光光度計を用いて、各ウェルにおいて450nmの波長で溶液の光学濃度(OD)を測定した。
【0121】
抗体力価は、溶液の光学濃度が負の対照群よりも有意に高い最後の希釈度として決定した。得られた結果(幾何平均)は表5に提示される。
【0122】
【0123】
実験結果により示されるように、開発薬剤による動物の鼻腔内免疫化は、SARS-CoV-2のSタンパク質に対する抗体力価の上昇をもたらした。したがって、この実験の結果は、鼻腔内経路により投与される凍結乾燥(フリーズドライ)形態の開発薬剤が、重症急性呼吸器症候群ウイルスSARS-CoV-2に対する特異的免疫を誘導するために使用され得ることを証明する。
【0124】
実施例12.筋肉内及び鼻腔内の併用免疫化後の開発薬剤の免疫原性の評価
この研究の目的は、筋肉内及び鼻腔内の併用免疫化後の開発薬剤の効力を検証することであった。
【0125】
18~20gのメスのC57/Bl6マウスを5匹/群で実験において使用した。以下の動物群を形成した:
1)同時に行われる、凍結乾燥(フリーズドライ)形態の組換えヒトアデノウイルス血清型26に基づいた薬剤(Ad26-too-CMV-S-CoV2)(5*1010ウイルス粒子/用量)の鼻腔内投与、及び凍結乾燥(フリーズドライ)形態の組換えヒトアデノウイルス血清型26に基づいた薬剤(Ad26-too-CMV-S-CoV2)(5*1010ウイルス粒子/用量)の筋肉内投与
2)凍結乾燥(フリーズドライ)形態の組換えヒトアデノウイルス血清型26に基づいた薬剤(Ad26-too-CMV-S-CoV2)(5*1010ウイルス粒子/用量)の鼻腔内投与
3)凍結乾燥(フリーズドライ)形態の組換えヒトアデノウイルス血清型26に基づいた薬剤(Ad26-too-CMV-S-CoV2)(5*1010ウイルス粒子/用量)の筋肉内投与
4)同時に行われる、凍結乾燥(フリーズドライ)形態の組換えヒトアデノウイルス血清型5に基づいた薬剤(Ad5-too-CMV-S-CoV2)(5*1010ウイルス粒子/用量)の鼻腔内投与、及び凍結乾燥(フリーズドライ)形態の組換えヒトアデノウイルス血清型5に基づいた薬剤(Ad5-too-CMV-S-CoV2)(5*1010ウイルス粒子/用量)の筋肉内投与
5)凍結乾燥(フリーズドライ)形態の組換えヒトアデノウイルス血清型5に基づいた薬剤(Ad5-too-CMV-S-CoV2)(5*1010ウイルス粒子/用量)の鼻腔内投与、
6)凍結乾燥(フリーズドライ)形態の組換えヒトアデノウイルス血清型5に基づいた薬剤(Ad5-too-CMV-S-CoV2)(5*1010ウイルス粒子/用量)の筋肉内投与
7)同時に行われる、凍結乾燥(フリーズドライ)形態の組換えサルアデノウイルス血清型25に基づいた薬剤(simAd25-too-CMV-S-CoV2)(5*1010ウイルス粒子/用量)の鼻腔内投与、及び凍結乾燥(フリーズドライ)形態の組換えサルアデノウイルス血清型25に基づいた薬剤(simAd25-too-CMV-S-CoV2)(5*1010ウイルス粒子/用量)の筋肉内投与
8)凍結乾燥(フリーズドライ)形態の組換えサルアデノウイルス血清型25に基づいた薬剤(simAd25-too-CMV-S-CoV2)(5*1010ウイルス粒子/用量)の鼻腔内投与
9)凍結乾燥(フリーズドライ)形態の組換えサルアデノウイルス血清型25に基づいた薬剤(simAd25-too-CMV-S-CoV2)(5*1010ウイルス粒子/用量)の筋肉内投与
10)同時に行われる、凍結乾燥(フリーズドライ)形態の組換えヒトアデノウイルス血清型26に基づいた薬剤(Ad26-too-CMV-S-CoV2)(5*1011ウイルス粒子/用量)の鼻腔内投与、及び凍結乾燥(フリーズドライ)形態の組換えヒトアデノウイルス血清型26に基づいた薬剤(Ad26-too-CMV-S-CoV2)(5*1011ウイルス粒子/用量)の筋肉内投与
11)凍結乾燥(フリーズドライ)形態の組換えヒトアデノウイルス血清型26に基づいた薬剤(Ad26-too-CMV-S-CoV2)(5*1011ウイルス粒子/用量)の鼻腔内投与
12)凍結乾燥(フリーズドライ)形態の組換えヒトアデノウイルス血清型26に基づいた薬剤(Ad26-too-CMV-S-CoV2)(5*1011ウイルス粒子/用量)の筋肉内投与
13)同時に行われる、凍結乾燥(フリーズドライ)形態の組換えヒトアデノウイルス血清型5に基づいた薬剤(Ad5-too-CMV-S-CoV2)(5*1011ウイルス粒子/用量)の鼻腔内投与、及び凍結乾燥(フリーズドライ)形態の組換えヒトアデノウイルス血清型5に基づいた薬剤(Ad5-too-CMV-S-CoV2)(5*1011ウイルス粒子/用量)の筋肉内投与
14)凍結乾燥(フリーズドライ)形態の組換えヒトアデノウイルス血清型5に基づいた薬剤(Ad5-too-CMV-S-CoV2)(5*1011ウイルス粒子/用量)の鼻腔内投与
15)凍結乾燥(フリーズドライ)形態の組換えヒトアデノウイルス血清型5に基づいた薬剤(Ad5-too-CMV-S-CoV2)(5*1011ウイルス粒子/用量)の筋肉内投与
16)同時に行われる、凍結乾燥(フリーズドライ)形態の組換えサルアデノウイルス血清型25に基づいた薬剤(simAd25-too-CMV-S-CoV2)(5*1011ウイルス粒子/用量)の鼻腔内投与、及び凍結乾燥(フリーズドライ)形態の組換えサルアデノウイルス血清型25に基づいた薬剤(simAd25-too-CMV-S-CoV2)(5*1011ウイルス粒子/用量)の筋肉内投与
17)凍結乾燥(フリーズドライ)形態の組換えサルアデノウイルス血清型25に基づいた薬剤(simAd25-too-CMV-S-CoV2)(5*1011ウイルス粒子/用量)の鼻腔内投与
18)凍結乾燥(フリーズドライ)形態の組換えサルアデノウイルス血清型25に基づいた薬剤(simAd25-too-CMV-S-CoV2)(5*1011ウイルス粒子/用量)の筋肉内投与
19)同時に行われる、緩衝溶液の鼻腔内投与、及び緩衝溶液の筋肉内投与(負の対照)
20)緩衝溶液の鼻腔内投与(負の対照)
21)緩衝溶液の筋肉内投与(負の対照)
【0126】
3週間後に、動物の尾静脈から血液サンプルを採取し、血清を分離した。酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)を使用し、以下のプロトコルに従って抗体力価を測定した:
1)96ウェルELISAプレートのウェルに抗原を+4℃の温度で16時間吸着させた。
2)次に、非特異的な結合を防止するために、1ウェル当たり100μlの量のTPBS中に溶解させた5%の乳によりプレートを「ブロック」した。それを37℃の振とう機において1時間インキュベートした。
3)免疫化マウスからの血清サンプルを100倍に希釈してから、2倍希釈系列を調製した。
4)希釈した血清サンプルのそれぞれの50μlをプレートウェルに添加した。
5)次に、37℃で1時間のインキュベーションを実施した。
6)インキュベーションの後、ウェルをリン酸緩衝液で3回洗浄した。
7)次に、西洋わさびペルオキシダーゼと結合されたマウス免疫グロブリンに対する二次抗体を添加した。
8)次に、37℃で1時間のインキュベーションを実施した。
9)インキュベーションの後、ウェルをリン酸緩衝液で3回洗浄した。
10)次に、西洋わさびペルオキシダーゼの基質として使用され、反応によって着色化合物に変換されるテトラメチルベンジジン(TMB)溶液を添加した。硫酸の添加により15分後に反応を停止させた。次に、分光光度計を用いて、各ウェルにおいて450nmの波長で溶液の光学濃度(OD)を測定した。
【0127】
抗体力価は、溶液の光学濃度が負の対照群よりも有意に高い最後の希釈度として定義された。得られた結果(幾何平均)は表6に提示される。
【0128】
【0129】
【0130】
得られた結果により示されるように、開発薬剤による動物の鼻腔内及び筋肉内の併用免疫化は、単一投与経路による免疫化と比較して、より強い液性免疫応答を誘導した。したがって、この実験の結果は、開発薬剤が、筋肉内及び鼻腔内の併用及び同時投与によって、SARS-CoV-2ウイルスに対する特異的免疫を誘導するために使用され得ることを証明する。
【0131】
産業上の利用可能性
提供される実施例は全て、SARS-CoV-2ウイルスに対する免疫応答の効果的な誘導を保証する医薬品の効力及び産業上の利用可能性を証明する。
【配列表】
【国際調査報告】