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特表2023-501878グループ15除草剤に対するイネの保護
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-20
(54)【発明の名称】グループ15除草剤に対するイネの保護
(51)【国際特許分類】
   A01G 22/22 20180101AFI20230113BHJP
   A01N 25/00 20060101ALI20230113BHJP
   A01N 37/26 20060101ALI20230113BHJP
   A01P 13/00 20060101ALI20230113BHJP
   A01G 7/06 20060101ALI20230113BHJP
   A01M 21/04 20060101ALI20230113BHJP
   A01C 1/00 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
A01G22/22
A01N25/00
A01N37/26
A01P13/00
A01G7/06 A
A01M21/04 C
A01C1/00 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022519522
(86)(22)【出願日】2020-09-28
(85)【翻訳文提出日】2022-05-24
(86)【国際出願番号】 US2020053027
(87)【国際公開番号】W WO2021062348
(87)【国際公開日】2021-04-01
(31)【優先権主張番号】62/906,902
(32)【優先日】2019-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500467264
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ ユニバーシティ オブ アーカンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100218578
【弁理士】
【氏名又は名称】河井 愛美
(72)【発明者】
【氏名】ノーズワーシー ジェイソン キース
(72)【発明者】
【氏名】ブラバム チャド
【テーマコード(参考)】
2B022
2B051
2B121
4H011
【Fターム(参考)】
2B022EA10
2B051AB01
2B051BA09
2B051BA20
2B051BB01
2B051BB14
2B121AA19
2B121CC05
4H011BA03
4H011BB06
4H011BC09
4H011DD04
(57)【要約】
本発明は、イネを薬害軽減剤及びマイクロカプセル化グループ15除草剤の両方で処理することによってイネの傷害を軽減し、且つ雑草防除を達成する方法を提供する。本明細書で、本発明者らは、フェンクロリムで保護されたイネのグループ15除草剤アセトクロールに対する耐性が、マイクロカプセル化配合剤として施与される場合、特に、それが発芽前又は遅延発芽前に施与される場合に実質的に向上することを実証する。これらの方法によって生産されるイネ植物及び前記イネ植物によって生産される種子も提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イネを栽培する方法であって、イネ種子を薬害軽減剤で処理すること、及び土壌に除草剤を施与することを含み、前記除草剤はグループ15除草剤であり、前記除草剤はマイクロカプセル化されている、方法。
【請求項2】
前記除草剤がアセトクロール、メトラクロール、ジメテナミド、及びアラクロールからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記除草剤が、イネが植え付けられる前又は植え付けられた後に施与される、請求項1~2の何れか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記除草剤施与が発芽前又は遅延発芽前である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記除草剤が有効成分少なくとも250グラム/ヘクタールの割合で施与される、請求項1~4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記除草剤が有効成分少なくとも1,260グラム/ヘクタールの割合で施与される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記薬害軽減剤がフェンクロリムである、請求項1~6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記薬害軽減剤が植え付け前にイネ種子に施与される、請求項1~7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記イネ種子が植え付け前に前記薬害軽減剤でコーティングされる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記イネがサティバ種(Oryza sativa L.)である、請求項1~9の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記イネがシードドリルで播種される、請求項1~10の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
雑草が前記除草剤によって防除される、請求項1~11の何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記除草剤がイヌビエ及び/又は雑草イネを防除する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
雑草防除率が少なくとも50%である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記除草剤単独で処理した作物に比べて前記除草剤により引き起こされる作物傷害の軽減及び/又は直立低下の軽減をもたらす、請求項1~14の何れか一項に記載の方法。
【請求項16】
作物傷害率が20%以下であり、及び/又は直立低下率が20%以下である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
商業的に許容される雑草防除率と商業的に許容される作物傷害率が同時に達成される、請求項1~16の何れか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記除草剤がアセトクロールであり、前記薬害軽減剤がフェンクロリムであり、且つ前記薬害軽減剤は植え付け前にイネ種子に施与される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記イネが冷涼及び湿潤環境条件で栽培される、請求項1~18の何れか一項に記載の方法。
【請求項20】
請求項1~19の何れか一項に記載の方法によって生産されるイネ植物。
【請求項21】
請求項20に記載のイネ植物によって生産される種子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許出願は、2019年9月27日に出願された米国仮特許出願第62/906,902号の優先件の利益を主張するものであり、その全内容は本明細書の一部として援用される。
【背景技術】
【0002】
イネは古来の農業作物であり、世界の主要な食用作物の1つであり続けている。イネには、アジア稲であるサティバ種(Oryza sativa L.)とアフリカ稲であるブラベリマ種(O. glaberrima Steud.)の2つの栽培品種がある。サティバ種は、世界の栽培イネの実質的に全てを構成し、米国で栽培されている種である。
雑草イネ(Oryza sativa L. var. sylvatica)は、赤米(Oryza sativa L.)としても知られ、イネの生産において最も問題のある雑草の1つである。雑草イネ植物は一般に栽培イネよりも生長速度が速く、分げつが多いが、穀粒生産は遙かに少ない。しかしながら、雑草イネは栽培イネと近縁であるので、周囲のイネに害を与えずに選択的に防除することが困難である。混入した雑草イネを除去するためには余分な精米が必要であるので、低レベルの混入であっても、栽培イネの収量及び品質に深刻な損失をもたらし得る。従って、雑草イネは生産コストを高騰させ、農家の利益を低下させる。残念なことに、雑草イネは、CO2レベルの上昇に対して栽培イネよりも積極的に反応する。よって、雑草イネの競争力は、気候変動の継続とともに増す可能性があり、現在よりも更に深刻な問題となる(Agron. J. (2010) 102:118-123)。
【0003】
2002年のイミダゾリノン抵抗性イネ(クリアフィールド(登録商標)BASF Corpotration、リサーチトライアングルパーク、NC)の導入以前は、雑草イネは主として湛水直播並びにダイズ、トウモロコシ、及びソルガムとの輪作(Weed Technologcrop rotationy (2008) 22:200-208)を用いて防除されていた。クリアフィールド(登録商標)技術は、栽培者がアセト乳酸合成酵素(ALS)阻害除草剤を用いて雑草イネ及びイヌビエ(Echinochloa crus-galli (L.) Beauv.)などの厄介なイネ科植物を選択的に防除することを可能としたことから、米国中南部で急速に採用された。2014年には、アーカンソー州のイネ作付面積の約49%にクリアフィールド(登録商標)イネが植えられた(AAES Research Series (2014) 626:11-22)が、近年、そのパーセンテージは、一部にはこれらの除草剤に対する雑草イネ及びイヌビエの抵抗性のためにやや下降している。2000年の中頃には、イマゼタピルやイマザモックスなどのALS阻害剤の広範な使用は、適正使用指針の遵守不足もあって、幾つかの雑草集団に急速に抵抗性をもたらした。現在までに、アーカンソー州では、雑草イネ、ワセビエ、ショクヨウガヤツリ、コゴメガヤツリ、及びパルマーアマランスを含む11種でALS作用部位(SOA)に対する抵抗性が確認されている(The International Survey of Herbicide Resistant Weeds (2018))。しかし、雑草イネと栽培イネとの間の自然交配とその結果生じる異型交配は、ALS抵抗性雑草イネ集団の増加に大きく関与している(Crop Protection (2007) 26:349-356)。
【0004】
同じ除草剤SOAを繰り返し使用するとすぐに除草剤抵抗性に至ることが示されている。同じSOAが繰り返し標的化されると、選択圧に応じて集団内で抵抗性対立遺伝子の頻度が増加し、それにより、除草剤の有効性が低下し、防除選択肢が制限される(Weed Science (1996) pp: 176-193)。しかしながら、イヌビエ及び雑草イネなどの問題のある雑草での抵抗性の進化は、異なる除草剤SOAを回転させたり混合したりすることで遅延させることができる(Weed Science (2012) 60:31-62)。近年、新しいSOAを含む除草剤が商業化されていないため、栽培者は効果的な防除の選択肢が限定される。従って、イネにおいて抵抗性を遅らせ、抵抗性雑草を防除するために使用され得る代替除草剤を探索する必要がある。
超長鎖脂肪酸(VLCFA)阻害除草剤(WSSAグループ15)は、一年草及び種子の小さな広葉種の防除のために条播作物に使用されている(Weed Technology (2000) 14:161-166;American Journal of Plant Sciences (2014) 5:2040)。しかしながら、VLCFA阻害除草剤は、主に米に有害であるため、米国の米生産の表示はない。しかし、イネ耐性が確立できれば、VLCFA阻害除草剤は代替除草剤SOAとなるであろう。植え付け前の秋施与及び徐放性マイクロカプセル化除草剤背後物などの特定の施与方法は、これらの除草剤によって誘発される傷害を軽減することが示されている。しかしながら、現在利用可能な方法は、傷害を商業的に許容可能なレベルまで軽減するものではない。従って、当技術分野には、作物を著しく傷つけずに栽培イネから雑草イネ及び他の雑草を選択的に除去するための新しい方法の需要がある。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、イネを栽培する方法を提供する。これらの方法は、イネを薬害軽減剤で処理すること、及び土壌にマイクロカプセル化グループ15除草剤を施与することを含む。好ましい実施形態では、薬害軽減剤は、フェンクロリムであり、グループ15除草剤は、アセトクロールである。
本発明は更に、本明細書に開示される方法によって生産されるイネ植物、並びに前記イネ植物によって生産される種子を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、有効成分1,050グラム/ヘクタールのマイクロカプセル化(ME)アセトクロール(ワラント(登録商標)、Bayer CropScience、セントルイス、MO)が同時に施与された雑草イネと栽培イネを比較する温室試験の一組の写真であり、これらの種子は、植え付け3週間前に土壌にアセトクロールを加えた場合には、栽培イネ単独を植え付けるか、又は本明細書に提供される薬害軽減剤で処理した栽培イネ種子を植え付けた。除草剤が植え付け前に施与された場合及び種子が薬害軽減剤で前処理された場合にも傷害量の低減が見られた。
図2図2は、図1の温室試験の結果を植物に対する傷害のパーセンテージとして示す棒グラフである。
図3図3は、薬害軽減剤フェンクロリムと除草剤MEアセトクロールの組合せの発芽前施与による処理21日後(DAT)イネ傷害パーセントを示す棒グラフである。乳剤(EC;濃いグレーのバー)又はマイクロカプセル剤(ME;薄いグレーのバー)として配合されたアセトクロールを、313、632、1,262及び2,524グラム有効成分/ヘクタールの割合で施与した。
図4図4は、薬害軽減剤フェンクロリム及び除草剤アセトクロールの組合せの、植え付け4日後の遅延発芽前施与による処理21日後(DAT)イネ傷害パーセントを示す棒グラフである。乳剤(EC;濃いグレーのバー)又はマイクロカプセル剤(ME;薄いグレーのバー)として配合されたアセトクロールを、有効成分313、632、及び1,262グラム/ヘクタールの割合で施与した。
図5図5は、アセトクロール処理イネ(左)、非処理イネ(中央)、及びフェンクロリム種子処理、次いでアセトクロールで処理したイネ(右)の適用4週間後の一組の写真である。MEアセトクロールは、遅延発芽前適用とした。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明において、薬害軽減剤及びマイクロカプセル化グループ15除草剤の両方でイネを処理すると、有効な雑草イネ防除をなお提供しつつイネの傷害が商業的に許容されるレベルにまで軽減されることが発見された。複数の実施形態において、イネを薬害軽減剤フェンクロリムとグループ15除草剤アセトクロールのマイクロカプセル化配合剤の組合せで処理する。重要なこととして、本発明者らは、フェンクロリム又はマイクロカプセル化アセトクロールの何れか単独の施与はイネに対して部分的な保護を提供するに過ぎないことを示す。よって、これらの2つの処理の組合せは、グループ15除草剤の商業的使用率に対する十分な耐性を達成するために必要である。
本発明は、イネを栽培する方法であって、薬害軽減剤とマイクロカプセル化グループ15除草剤の組合せでイネを処理することを含む方法を提供する。
【0008】
除草剤
本明細書において使用する場合、用語「除草剤」は、望ましくない植生を破壊又は阻害するために使用される物質を指して使用される。本明細書において除草剤が名称によって一般に呼称される場合、特に断りのない限り、その除草剤は、当技術分野で公知の全ての市販形態、例えば塩、エステル、遊離酸及び遊離塩基、並びにこれらの立体異性体を含む。除草剤は、乳化性濃縮物(EC)として一般的に使用される。しかしながら、本発明において、主要な除草剤は、除草剤分子が多孔質ポリマーシェルによって分解プロセスから保護されるマイクロカプセル化(ME)配合物にも利用される。例えば、その全内容が本明細書の一部として援用される米国特許第9,877478号を参照。土壌水分に曝されると(例えば、活性化降雨によって)、ポリマーシェルは溶解し、除草剤の徐放を可能にする。この除草剤の遅延放出は、発芽中にイネが土壌水を吸収し、施与後ある期間阻害されずに生長する時間を与える。更に、除草剤が経時的に徐々に放出されることで、除草剤はEC配合物と比較して標的雑草のより長い残留防除を提供することができる。本願及び他所で、本発明者らは、イネがECよりもME除草剤配合物により耐性があることを実証したが、これはおそらく降雨後にEC配合物からの除草剤の即時吸収の可能性によるものである(Weed Technology (2018) 33:239-245)。
【0009】
マイクロカプセル化配合物において、コア物質の放出速度は、シェル壁組成、シェル壁材料に対する除草剤の質量比、コア材料成分、平均マイクロカプセル粒径、混合剪断及び時間などの加工条件、並びにこれらの組合せを含む幾つかのパラメーターの選択によって制御することができる。幾つかの配合物では、希釈剤、例えば溶媒を、マイクロカプセルからの活性成分の放出速度を増加又は減少させるようにコア物質の溶解特性を変化させるために添加してもよい。希釈剤は、コア材料及びシェルと適合する限り、本質的に当技術分野で公知のもの何れかのから選択され得る。幾つかの配合物において、コア材料は、粒子状マイクロカプセル化除草剤の第1集団と第2集団のブレンドを含んでよく、多峰性(例えば、二峰性)の放出速度を提供する。更なる成分は、その特性を改善するためにコア材料に添加することができる。例示的な成分としては、限定するものではないが、増粘剤、安定剤、充填防止剤、ドリフト制御剤、殺生物剤又は保存剤、凍結防止剤、及び消泡剤が挙げられる。
【0010】
グループ15除草剤は、超長鎖脂肪酸(VLCFA)阻害剤である。従って、用語「グループ15除草剤」、「VLCA阻害剤」、及び「VLCFA阻害除草剤」は、本願を通して互換的に使用される。これらの土壌施与除草剤は、主に苗条及び根から吸収され、そこで細胞の発達及び細胞分裂を阻害する。VLCFA阻害除草剤に抵抗性がある雑草種は世界中でわずか5種であり、これらは他のイネ除草剤と比較してこのクラスの除草剤に対する抵抗性のリスクが低いことを示唆している。VLCFA阻害除草剤には、クロロアセトアニリド化学系(例えば、アセトクロール、アラクロール、メトラクロール、ジメテナミド、ペトキサミド、プレチラクロール、ブタクロール)及びイソオキサゾリン化学系(例えば、ピロキサスルホン)が挙げられる。
VLCFA阻害剤プレチラクロール及びブタクロールはアジアのイネ生産に一般的に使用されているが、それらは周辺の雑草防除のみを提供する。従って、好ましい実施形態において、本発明で使用される除草剤は、商業的に許容されるレベルでの雑草防除を提供する。適切な除草剤としては、限定するものではないが、アセトラクロール、メトラクロール及びジメテナミドが挙げられる。特に好ましい実施形態では、アセトクロールの除草剤が利用される。アセトクロールは、クロロアセトアミド系に属する広く使用されているVLCFA阻害剤である。現在、米国では、トウモロコシ、ワタ、ダイズ、ソルガムにおける使用に関して表示されている。アセトクロールは、一般に、一年草及び種子の小さな広葉種の防除のために発芽前施与される。アセトクロールは、マイクロカプセル化(ME)配合物(ワラント(登録商標)、モンサント社、セントルイス、MO)で市販されている。
【0011】
本発明の方法において、グループ15除草剤は、イネが植え付けられる前又は後の何れに施与してもよい。幾つかの実施形態において、除草剤は、植え付けの1~250日前に圃場に施与される。他の実施形態において、除草剤は、植え付け後に施与され、施与は、発芽前又は発芽後の何れであってもよい。発芽前の植物に比べて、発芽植物は一般に苗の生長阻害除草剤によって比較的影響を受けない。そのため、従来技術の実践は、作物の発芽後、雑草の発芽前に除草剤を施与することであった。発芽後処理には、早期発芽後(EPOST)施与、並びにスパイキング(spiking)期、1~2葉期、又は3~4葉期での施与が含まれる。幾つかの実施形態において、除草剤施与は、発芽前である。「発芽前」とは、作物植物の植え付けから作物植物の発芽(すなわち、裂開又はスパイキング前)までの間(発芽時は含まない)の任意の時点を指す。発芽前処理は、播種前の作物領域の処理(すなわち、植え付け前取り込み)と、植物がまだ発芽していない播種作物領域の処理の両方を含む。特に、アセトクロールなどの除草剤の活性は降雨に大きく依存するところが大きく、それより早い施与時機ではイネが損傷する可能性が高くなる。従って、他の実施形態では、グループ15除草剤は、遅延発芽前遅延施与が行われる。「遅延発芽前」とは、一般に、植え付け少なくとも4日後及び長ければ植え付け14日後の、種子が水分を吸収して発芽したが、苗条の出現前の時機を指す。
農業分野に施与されるマイクロカプセルの有効量は、封入される除草剤の属性、マイクロカプセルの放出速度、処理される作物、及び環境条件、特に土壌の種類及び水分に依存する。一般に、除草剤、例えばアセトクロールの施与率は、除草剤約0.1、0.2、0.5、1、2、3、4若しくは5キログラム/ヘクタール、又はこれらの範囲、例えば、0.1~5キログラム/ヘクタール、0.2~4キログラム/ヘクタール、0.25~2キログラム/ヘクタール、又は0.5~1キログラム/ヘクタール程度である。好適には、約0.25~約2キログラム/ヘクタールの施与率が使用される。幾つかの実施形態において、除草剤は、活性成分少なくとも250グラム/ヘクタールの割合で施与される。他の実施形態では、除草剤は、有効成分少なくとも1,260グラム/ヘクタールの割合で施与される。
【0012】
本方法は、更なる除草剤と組み合わせて適与してもよい。作用機序の異なる幾つかの除草剤を施与することは、例えば、イヌビエなどの除草剤抵抗性雑草のある圃場を処理するために有用であり得る。例示的な補助除草剤としては、限定するものではないが、ACCase阻害剤(例えば、アリールオキシフェノキシプロピオニクス)、エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸合成酵素(EPSPS)阻害剤(例えば、グリホサート)、グルタミン合成酵素阻害剤(例えば、グルホシネート)、合成オーキシン(例えば、芳香族酸、フェノキシ及びピリジン除草剤)、光系II(PSII)阻害剤(例えば、尿素及びトリアジン)、ALS又はAHAS阻害剤(例えば、スルホニル尿素、トリアゾロピリミダイニン及びイミダゾリノン)、光系I(PSI)阻害剤(例えば、パラコート)、プロトポルフィリノーゲンオキシダーゼ(PPO)阻害剤(例えば、ジフェニルエーテル、フェニルピラゾール、アリールトリアゾン及びオキサジアゾール)、有糸分裂阻害剤(例えば、アニリド、アミド、特定の有機リン及びカルバニル酸除草剤)、セルロース阻害剤(例えば、ニトリル及びオキサゾール除草剤)、酸化的リン酸化アンカプラー、ジヒドロプテロエート合成酵素阻害剤、脂肪酸及び脂質生合成阻害剤(例えば、チオカルバメート及び特定の有機リン除草剤)、オーキシン輸送阻害剤(例えば、アミド及び尿素除草剤)並びにカロテノイド生合成阻害剤(例えば、イソオキサゾリジノン、ベンゾイルシクロヘキサンジオン及びベンゾイルピラゾール除草剤)、これらの塩及びエステル、並びにこれらの混合物が挙げられる。本発明の幾つかの実施形態において、これらの1以上の補助除草剤は封入されていない。
【0013】
薬害軽減剤
本明細書で使用される場合、用語「薬害軽減剤」は、栽培植物に対する除草剤の有害な影響に拮抗する化合物を指すために使用される。薬害軽減剤は、以前は「解毒剤」と呼ばれており、これらの用語は互換的に使用できる。好ましくは、これらの化合物は、雑草に対する除草剤の作用に顕著な影響を与えることなく栽培植物を保護する(それは防除することを意味する)。本発明の方法は、グループ15除草剤からの傷害からイネ植物を保護する何れの薬害軽減剤を利用してもよい。好ましい実施形態において、薬害軽減剤はフェンクロリム(4,6-ジクロロ-2-フェニルピリミジン)である。
薬害軽減剤は、その傷害をそれらが予防する除草剤の前又は同時に適用すると最も効果的である。それらの特性に応じて、薬害軽減剤は、栽培植物の種子(粉衣種子又は苗条)の前処理に使用でき、種子を播種する前又は後に土壌(例えば、溝内)に組み込むことができ、或いは又単独で又は除草剤と共に(例えば、タンク混合物として)植物の発芽前又は発芽後に施与することができる。従って、薬害軽減剤による植物又は種子の処理は、除草剤の施与時とは独立に行うことができ、或いは又、処理を同時に行うことができる。好ましい実施形態では、薬害軽減剤は、植え付け前に種子に施与される(すなわち、種子を薬害軽減剤でコーティングすることによる)。
【0014】
除草剤に関連して薬害軽減剤が施与される施与率は、施与様式に大きく依存する。薬害軽減剤を単独で、又は除草剤とのタンク混合物として圃場処理として施与する場合、薬害軽減剤と除草剤の比率は、通常、1:100~10:1であるが、より一般には1:5~8:1である。しかしながら、薬害軽減剤を種子粉衣として施与する場合、後で施与する場合よりも、作物面積のヘクタール当たりの遙かに少ない量しか必要とされない。種子粉衣の場合、通常、種子1kg当たり0.1~10gの薬害軽減剤が必要とされ、好ましい量は種子1kg当たり0.1~3gである。
薬害軽減剤は、非修飾形態で、又は従来の助剤及び担体を伴う組成物として使用され得る。薬害軽減剤は、任意の公知の方法で、例えば、乳剤、直接噴霧可能又は希釈可能な溶液、希薄乳剤、水和剤、可溶性粉末、粉剤、顆粒剤、及び例えば高分子物質へのカプセル封入として配合してもよい。組成物は又、特殊な効果を達成するために、安定剤、消泡剤、粘度調節剤、結合剤、接着剤、並びに肥料又は他の活性化合物などの更なる成分を含有することができる。
薬害軽減剤配合物は、公知の方法で、例えば活性成分を増量剤、例えば溶媒、固体担体及び、適切な場合には界面活性化合物(界面活性剤)と混合及び/又は粉砕することによって調製される。好適な薬害軽減剤溶媒としては、限定するものではないが、芳香族炭化水素、好ましくは8~12個の炭素原子を含む画分、例えばキシレン混合物又は置換ナフタレン、フタル酸ジブチル又はフタル酸ジオクチルなどのフタル酸エステル類、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素類、又はパラフィン類、アルコール類及びグリコール類並びにそれらのエーテル類及びエステル類、例えばエタノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチル又はモノエチルエーテル;シクロヘキサノンなどのケトン類、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド又はジメチルホルムアミドなどの強極性溶媒;並びにエポキシ化ココナッツオイル又は大豆油などのエポキシ化植物油;又は水が挙げられる。例えば粉剤及び分散性粉末のために使用される好適な固体担体は、通常、方解石、タルク、カオリン、モンモリロナイト又はアタパルジャイトなどの天然鉱物充填剤である。又、物性を向上させるために、高分散ケイ酸又は高分散吸収性ポリマーを添加することもできる。好適な造粒吸着性担体は、多孔質タイプ、例えば軽石、崩壊レンガ、セピオライト又はベントナイトであり、好適な非吸着担体は、方解石又は砂などの材料である。加えて、無機又は有機性の多数の予め造粒した材料、例えば特にドロマイト又は粉砕植物残渣を使用することができる。配合される薬害軽減剤の性質に応じて、好適な界面活性化合物は、良好な乳化、分散及び湿潤特性を有する非イオン性、陽イオン性及び/又は陰イオン性界面活性剤である。このような配合物において慣用される界面活性剤は、例えば以下の刊行物に記載されている:“McCutcheon’s Detergents and Emulsifiers Annual”, MC Publishing Corp., Ringwood, N.J., 1979; Sisely and Wood, “Encyclopedia of Surface Active Agents”, Chemical Publishing Co. Inc., New York, 1964。
【0015】
分子レベルでは、除草剤とそれらの個々の薬害軽減剤は通常極めて似ている。従って、薬害軽減剤は、活性形態でその標的部位に到達する除草剤の量に影響を及ぼす「生体調節物質」として、又は同様の作用部位における除草剤の「拮抗剤」として作用し得る。一部の薬害軽減剤は、その取り込み及び/又は転流の速度を低下させることによって、その作用部位に到達する除草剤の量を減少させるが、現在開発されているほとんどの薬害軽減剤は、代謝解毒の速度を高めることによって機能する。幾つかの化学種(すなわち、フェニルピリミダイン、ジクロロアセトアミド、オキシムエーテル、及びチアゾール)に属する薬害軽減剤は、これらの除草剤のチオールグルタチオンの還元型への結合を増強することによって、クロロアセトアニリド除草剤(グループ15除草剤の1つのクラス)からの傷害から植物を保護すると考えられている。除草剤が細胞質内でグルタチオンと結合された後、分解のために液胞に隔離され、その結果、解毒される。グルタチオンS-トランスフェラーゼ酵素(GST)は、様々な基質へのグルタチオンの結合を触媒する。従って、これらの薬害軽減剤は、還元型グルタチオンのレベルを上昇させるか、又はGSTの活性を誘導することによって機能し得る。
【0016】
施与
本発明の方法は、何れの栽培イネ品種を栽培するためにも使用することができる。栽培されるイネは一般にオリザ属由来のものであり、最も一般的にはサティバ種及びグラベリマ種に由来する。本発明で利用されるイネには、形質が付与されていない(non-traited)イネ品種と形質が付与された(traited)イネ品種の両方が含まれていてもよい。本明細書において使用する場合、用語「形質が付与されたイネ」は、除草剤抵抗性形質を有するイネを指して使用される。一般的に使用される形質イネの品種には、イミダゾリノン抵抗性(クリアフィールド(登録商標)、BASF Corpotration、リサーチトライアングルパーク、NC)イネ及びキザロフォップ抵抗性(プロビシア(登録商標)、BASF Corpotration、リサーチトライアングルパーク、NC)イネが含まれる。これらの形質が付与された品種は非常に人気があるが、これらの品種と共に使用される特定の阻害剤の広範な使用と適正使用指針遵守不足は、幾つかの雑草集団で急速に抵抗性の発達に至った。従って、作用部位の異なる除草剤を利用する本発明の方法は、抵抗性雑草に悩まされる、形質が付与された品種を栽培するために特に有用である。本明細書に提供される方法と共に使用され得る特定の栽培品種としては、限定するものではないが、イネ品種ダイヤモンド、タイタン、FP7521、FP7321、PVL01、及びPVL02が挙げられる。
【0017】
本発明の方法で処理したイネは幾つかの技術を用いて植え付けることができる。米国では、米の生産は乾田直播又は湛水直播の何れかに大別される。乾田直播法では、条播機で、または種子を散布してディスク又はハローですき込むことによって、準備された苗床にイネを播種する。種子の発芽のための水分は、その後、灌漑又は降雨によって供給される。好ましい実施形態において、薬害軽減剤は、粉衣配合物又は濃縮配合物としてイネ種子に施与され、種子は乾田直播法によって植え付けられる。これに対して湛水直播法では、イネ種子を12~36時間浸漬して発芽を誘発し、種子を湛水田に飛行機で散布する。苗条は浅い湛水によって発芽するか、又は苗条の定着を強化するために短期間田から水を抜いてもよい。従って、湛水直播法が使用される実施形態では、薬害軽減剤は、発芽を誘発するために使用される浸漬溶液に施与され得る。
更に、本発明の方法で処理されたイネは、好ましくない環境条件で栽培され得る。具体的には、本発明者らは、本方法が冷涼な湿潤条件で使用され得ることを実証した(実施例5参照)。従って、幾つかの実施形態では、イネは、冷涼湿潤の環境条件下で栽培される。10~15℃の範囲の温度は、イネ植物の繁殖段階によっては植物体に冷害をもたらす可能性がある。従って、平均10℃~16℃の夜間温度及び/又は平均20℃~27℃の日中温度の気候は、イネの栽培には「冷涼」と見なすことができる。本明細書において使用する場合、イネを栽培するための「湿潤」条件は、土壌水分が平均70%~90%であるものを含む。
実験は、13.8℃(夜)と23.8℃(昼)の生育チャンバー内で、10時間夜及び14時間昼の光周期を用いて行った。ダイヤモンド米は、実験を通して80%の土壌水分を維持するために、同じ質量の土壌を充填した鉢に植え付けた。処理は、0及び1,050g ai/ha-1でのMEアセトクロール並びに0及び2.5g ai/kg-1種子のフェンクロリム種子処理の施与からなった。データを、Rを用いて分析し、ANOVAに供した。平均はフィッシャーのLSD(α=0.05)を用いて分離した。
【0018】
本発明の方法は、多様な雑草、すなわち、商業的に重要な作物植物の有害物又は競争物とみなされる植物を防除するために有用であり得る。本発明の方法に従って防除され得る雑草の例としては、限定するものではないが、イヌビエ(Echinochloa crus-galli)及びヒエ属(Echinochloa)内の他の雑草種、デジタリア属(Digitaria)内のメヒシバ、パルマーアマランス(Amaranthus palmeri)及びアマランサス属内の他の雑草種、スベリヒユ(Portulaca oleracea)及びポルチュラカ属(Portulaca)内の他の雑草種、アカザ(Chenopodium album)及び他のアカザ属種(Chenopodium spp.)、キンエノコロ(Setaria lutescens)及び他のセタリア属種(Setaria spp.)、イヌホオズキ(Solanum nigrum)及び他のナス属種(Solanum spp.)、ネズミムギ(Lolium multiflorum)及び他のドクムギ属(Lolium spp.)、メリケンニクキビ(Brachiaria platyphylla)及び他のビロードキビ属種(Braehiaria spp.)、ヒメムカシヨモギ(Conyza canadensis)及び他のイズハハコ属(Conyza spp.)、及びオヒシバ(Eleusine indica)が挙げられる。特定の好ましい実施形態において、雑草種は、Oryza sativa L. var. sylvatica(雑草イネ)又はOryza sativa L.(赤米)である。
【0019】
本明細書において更に使用される場合、「雑草防除」は、植物生長の制御の任意の観察可能な尺度を指し、これは、(1)枯死、(2)生長、繁殖又は増殖の阻害、及び(3)植物の発生及び活性を除去、破壊、又はそうでなければ減少させる作用のうちの1以上を含み得る。雑草防除は、当技術分野で公知の種々の方法の何れかによって測定することができる。例えば、雑草防除は、植物枯死率及び生長低下が当業者によって視覚的に評価される標準的な手順に従って、未処理植物と比較してパーセンテージとして決定することができる。防除は、例えば、平均植物質量減少又は発芽前除草剤施与後に発芽できない植物のパーセンテージに関して定義され得る。「商業的に許容される雑草防除率」は、雑草種、侵入の程度、環境条件、及び関連する作物植物によって異なる。商業的に有効な雑草防除は、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、又は更には少なくとも85%、又は更には少なくとも90%の破壊(又は阻害)と定義され得る。一般に、商業的観点からは雑草の80%以上が破壊されることが好ましいが、商業的に許容される雑草防除は、特に幾つかの極めて有害な除草剤抵抗植物では、遙かに低い破壊又は阻害レベルで起こり得るにすぎない。有利には、本発明に従って使用される除草マイクロカプセルは、除草剤マイクロカプセルの施与後3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、又は12週間の施与期間において商業的に許容される雑草防除を達成する。
作物傷害は、雑草防除決定のために上記したもののような、当技術分野で公知の任意の手段によって測定することができる。本発明の「商業的に許容される作物傷害率」も同様に、作物植物種によって異なる。一般に、商業的に許容される作物傷害率は、約20%未満、18%、16%、15%、13%、12%、11%、10%又は更には約5%未満と定義される。本発明の方法は、作物傷害を施与後約24時間(約1DAT)~3週間(約21DAT)まで測定されるような商業的に許容される割合に限定する。
【0020】
本開示は、本明細書に示される構成、構成要素の配合、又は方法工程の特定の詳細に限定されない。本明細書に開示される組成物及び方法は、以下の開示に照らして当業者に明らかであろう様々な方法で作製、実施、使用、実行及び/又は形成することができる。本明細書で使用される語句及び用語は単に説明を目的とするものであり、特許請求の範囲に限定されるものと見なされるべきではない。第1、第2、及び第3などの序数指標は、様々な構造又は方法工程を参照するために説明及び特許請求の範囲で使用される場合、任意の特定の構造若しくは工程、又はそのような構造若しくは工程に対する任意の特定の順序若しくは構成を示すと解釈されることを意味するものではない。本明細書に記載される全ての方法は、本明細書に特に断りのない限り、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施することができる。本明細書に提供されるありとあらゆる例、又は例示的言語(例えば、「など」)の使用は、単に開示を容易にすることを意図しており、特に断りがない限り、開示の範囲に対するいかなる制限も意味しない。本明細書のいかなる言語も、図面に示される構造は、任意の非特許請求要素が開示された主題の実施に不可欠であることを示すものとして解釈されるべきでない。用語「含む(including)」、「含む(comprising)」、又は「有する」及びそれらの変形の本明細書における使用は、その後に列挙される要素及びそれらの等価物、並びに追加の要素を包含することを意味する。特定の要素を含む(including)」、「含む(comprising)」、又は「有する」と列挙された実施形態は、それらの特定の要素から「本質的になる」及び「からなる」としても企図される。
【0021】
本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書に特に断りのない限り、範囲内に入る各個別の値を個々に参照する簡略法として役立つことを意図しているにすぎず、且つ、各個別の値は、あたかも本明細書で個々に列挙されたかのように本明細書に組み込まれる。例えば、濃度範囲が1%~50%と記載されている場合、それは2%~40%、10%~30%、又は1%~3%などの値が本明細書に明示的に列挙されることが意図される。これらは、具体的に意図されているものの一例に過ぎず、列挙された最低値と最高値を含んでその間の数値の全ての可能な組合せは、本開示において明示的に述べられているとみなされるべきである。特定の列挙量又は量の範囲を記述するための「約」という語の使用は、製造公差、測定を形成する際の機器及び人為的エラーなどのために説明され得る、又は本来説明されるであろう値など、列挙された量に極めて近い値がその量に含まれることを示すことを意味する。量に言及する全てのパーセンテージは、特に断りのない限り質量による。
【0022】
本明細書に引用されている何れの非特許文献又は特許文献も含むいかなる参照も、先行技術を構成することを認めるものではない。特に、特に断りのない限り、本明細書における何れの文献の参照も、これらの文献の何れかが、米国又は他の何れの国においても、当技術分野における共通の一般知識の一部を形成することを認めるものではないことが理解されるであろう。何れの参考文献の考察も、それらの著者らが主張していることを述べており、出願人は、本明細書に引用された文献の正確性と妥当性に異議を唱える権利を留保する。本明細書に引用される全ての参考文献は、明示的に断りがない限り、全内容が本明細書の一部として援用される。引用される参照文献に見出される定義及び/又は説明の間に何らかの相違がある場合には、本開示が優先するものとする。
以下の実施例は例示を意味するに過ぎず、本発明の範囲又は添付の特許請求の範囲の限定を意味するものではない。本発明は又、本明細書に開示される方法によって栽培されたイネ植物、並びにこれらのイネ植物によって生産される種子も提供する。
【実施例
【0023】
以前の研究で、本発明者らは、この除草剤をマイクロカプセル化(ME)、徐放性配合物で提供することにより、グループ15除草剤アセトクロールに対するイネ抵抗性が改良されたことを決定付けた(Weed Technology (2018) 33:239-245)。以下の実施例では、MEアセトクロールと薬害軽減剤の組合せでイネを処理した。又、フェレンフロムを種子処理として施与し、出芽前又は遅延出芽後の何れかにMEアセトクロールを施与した。
【0024】
実施例1:温室研究
除草剤の施与の時機又は他の任意の方法がイネにおいてグループ15除草剤の使用を可能にするかどうかを決定するために、本発明者らはいくつかの温室試験を行った。図1は、グループ15除草剤アセトクロールが、植え付け時に施与した場合に、効果的に雑草イネの生育を低下させる得ることを示す温室試験の1組の写真である。しかしながら、マイクロカプセル化(ME)アセトクロールを植え付け時にイネ作物に施与した場合、図2に示すように、それはイネに著しい量の傷害を起こした(80%を超える傷害)。これに対して、アセトクロールを植え付け3週間前に施与した場合には、イネ作物に対する傷害は約50%に低減され。これは商業的に使用するにはやはり大きすぎる傷害である。最後に、栽培されたイネ種子を薬害軽減剤で処理し、MEアセトクロール除草剤を植え付け3週間前に土壌に施与した。この試験では、イネに対する傷害は約10%に過ぎず(図2参照)、これは商業的使用に許容される。
【0025】
実施例2:圃場研究
材料及び方法:
フェンクロリムで保護されたイネの、異なる割合、時機、及び配合のアセトクロールに対する耐性を評価するために圃場試験を行った。試験は全てシルト質ローム土壌で行った。試験前に、イネ品種ダイヤモンドの種子を、標準的な手順を用いて、種子1kg当たり0、0.25、又は2.5グラム(g kg種子-1)のフェンクロリムでコーティングした。アセトクロール率及び配合物を主試験区とし、フェンクロリム処理した種子を副試験区とした分割試験区計画を用いて試験を設定した。処理は4反復とした。各試験区は幅2.2m×長さ1.5mで、1.5mの境界に囲まれていた。各試験区において、イネ種子は、10条コーンドリルプランターによって作った15cm間隔の溝に、0.3m当たり22種子を手で植え付けた。種子は0、0.25、2.5g kg種子-1のフェンクロリムで処理した種子をそれぞれ畝2、及び3と5と6、及び8と9に植え付けた。
【0026】
結果:
処理1:アセトクロールの発芽前施与
乳剤(EC、ハーネス(登録商標))又はマイクロカプセル化(ME、ワラント(登録商標))として配合されたアセトクロールを、有効成分313、632、1,262及び2,524グラム/ヘクタール(g ai ha-1)相当のアセトクロール率で発芽前施与した。施与は、ヘクタール当たり140リットルを送達するように較正された110015AIXRノズルを取り付けたCO2加圧バックパック噴霧器を用いて、1時間当たり4.8キロメートル(km hr-1)で行った。その後、土壌溶液中に除草剤をすき込むために、オーバーヘッド側方灌漑システムを用いて試験区に灌漑した。処理後21日目に、イネの傷害を記録し、それらの結果を図3に示す。
処理2:アセトクロールの遅延発芽前施与
乳剤(EC、ハーネス(登録商標))又はマイクロカプセル化(ME、ワラント(登録商標))として配合されたアセトクロールを、313、632、及び1,262g ai ha-1相当のアセトクロール率で遅延発芽前施与した。施与は、140L ha-1を送達するように較正された110015AIXRノズルを取り付けたCO2加圧バックパック噴霧器を用いて、4.8km hr-1で行った。イネ種子を植え付けた後、発芽を促進するために、側方灌漑システムを用いて試験区を上から灌漑した。除草剤処理は4日後に行い、除草剤は2日後の自然降雨によって土壌用液中に取り込まれた。この時に土壌からイネ植物の子葉鞘が突き出始めた(スパイキング期)。処理後21日目に、イネの傷害を記録し、それらの結果を図4に示す。
【0027】
結論:
マイクロカプセル化アセトクロールと薬害軽減剤フェンクロリムの組合せで処理したイネは除草剤耐性の増大を示し、強力なグループ15除草剤アセトクロールを雑草イネなどのイネ科雑草を防除するために使用可能とした。この組合せ処理は、アセトクロールが発芽前に施与される場合及び遅延発芽前に施与される場合の両方で有効であり、遅延施与の場合に最も劇的なイネ傷害の軽減が見られた。
【0028】
実施例3:マイクロカプセル化(ME)アセトクロールの発芽前(PRE)施与及び遅延発芽前(DPRE)施与に対するイネの耐性
フェンクロリムのイネ種子処理が典型的な植え付け条件下でマイクロカプセル化(ME)アセトクロールに対するイネ作物の耐性を増すかどうかを判定するために、2020年春に試験を行った。イネ栽培品種「ダイヤモンド」を畝1メートル当たり72種子(m-1)として植え付けた。イネ試験区を、標準的な小試験区研究法を用いて処理した。処理は2種類の施与時機[発芽前(PRE)及び遅延発芽前(DPRE)]、3種類のMEアセトクロール率(0、1,260、及び1,890g ai ha-1)、及びフェンクロリム種子処理(0及び2.5g ai kg-1種子)からなった。データはRを用いて分析し、分散分析(ANOVA)を行い、フィッシャーのLSD(α=0.05)を用いて分離した。
【0029】
【表1】

【表2】
【0030】
結論:
フェンクロリム種子処理は、MEアセトクロールからの直立損失(stand loss)の軽減という形で薬剤軽減効果を示した。施与時機及びアセトクロール率に関して平均を求めたところ、アセトクロールからの直立損失は50%より大きく低下した(表1)。有意ではないが、PRE及びDPRE施与時機並びにアセトクロール率による処理を比較すると、直立低下はフェンクロリムの種子処理無しの試験区で大きかった(表2)。直立低下は、PRE施与時機によるフェンクロリム種子処理を含む処理では16%以下であり、DPRE施与時機では13%以下であった。
【0031】
実施例4:フェンクロリム種子処理を用いる場合のMEアセトクロール対する複数のイネ栽培品種の耐性
フェンクロリムイネ種子処理及びMEアセトクロールに対する栽培品種の応答を決定するために2020年春に試験を行った。2つの近交系栽培品種(「ダイヤモンド」及び「チタン」)並びに2つのハイブリッド栽培品種(「FP7521」及び「FP7321」)をそれぞれ72及び36種子m-1畝に植え付けた。イネ試験区を標準的な小試験区研究法を用いて処理した。処理は、0及び1,260g ai ha-1でのMEアセトクロール及び0、2.5、及び5.0g ai kg-1種子のフェンクロリム種子処理からなった。栽培品種を、Rを用いて個別に分析し、ANOVAを行い、フィッシャーのLSD(α=0.05)を用いて平均を分離した。
【0032】
【表3】
【表4】
【0033】
結論:
栽培品種試験からの結果は、フェンクロリム種子処理の保護効果を示す。処理6週間後の地表被覆データから保護効果を観察することができる(表3)。フェンクロリム種子処理率が増加するにつれ、直立損失及び傷害は一般に減少した(表4)。フェンクロリム種子処理は、アセトクロール処理なしに、イネ栽培品種チタンの地上空間閉鎖(canopy closure)における正の応答をもたらした。更に、アセトクロールで処理した試験区では、フェンクロリム種子処理は地上空間閉鎖を改善し、これは全ての栽培品種の種子処理による保護を示す。
【0034】
実施例5:冷涼及び湿潤土壌条件下でのMEアセトクロールに対するイネの耐性
冷涼及び湿潤環境条件下で、フェンクロリムイネ種子処理で処理した場合のMEアセトクロールに対するイネの耐性を決定するために、2019年秋に試験を行った。10時間夜及び14時間昼の光周期を用い、13.8℃(夜)及び23.8℃(昼)の生育チャンバーを用いて試験を行った。ダイヤモンド米を、試験中80%の土壌水分を維持するように同じ質量の土壌を詰めたポットに植え付けた。処理は、0及び1,050g ai ha-1のMEアセトクロールの施与及び0及び2.5g ai kg-1種子のフェンクロリム種子処理からなった。データはRを用いて分析し、ANOVAを行った。平均はフィッシャーのLSD(α=0.05)を用いて分離した。
【0035】
【表5】

冷涼、湿潤条件下で、フェンクロリム種子処理は、MEアセトクロールは十分な安全性を提供した(表5)。施与後3週間(WAA)及び4WAAの時点で行った評価では、フェンクロリム種子処理とMEアセトクロールの両方で処理した種子は、非処理イネと有意に異ならなかった。図5は、生育チャンバーで見られた保護効果を示す。
【0036】
実施例6:MEアセトクロール及びフェンクロリム種子処理による雑草防除及びイネの耐性
フェンクロリムイネ種子処理で処理した際のMEアセトクロールに対する栽培イネにおけるイヌビエ及び雑草イネの防除を決定するために、2020年春に試験を行った。標準的な小試験区研究法下で試験を行った。ダイヤモンド米を72種子m-1畝で植え付けた。処理は、4種類の施与時機(発芽前、遅延発芽前、スパイキング及び1葉)、3種類の施与率(630、1,260、及び1,890g ai ha-1)でのMEアセトクロールの施与、並びに0及び2.5g ai kg-1種子でのフェンクロリム種子処理からなった。データはRを用いて分析し、ANOVAを行った。フィッシャーのLSDを用いて平均を分離した(α=0.05)。
【0037】
【表6】


【表7】

MEアセトクロール(1,260及び1,890g ai ha-1)のPRE及びDPRE施与に関して、除草剤は80%を超えるイヌタデ防除及び50%超える雑草イネ防除(表6)もたらした。フェンクロリム種子処理がない場合には、栽培イネから雑草イネを除去することはできない。更に、フェンクロリム種子処理は又、MEアセトクロール施与から観察される傷害のレベルも減少させ、種子処理は、雑草防除に悪影響を及ぼさなかった(表7)。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】