(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-20
(54)【発明の名称】ピストン圧縮機およびその運転方法
(51)【国際特許分類】
F04B 49/10 20060101AFI20230113BHJP
【FI】
F04B49/10 331J
F04B49/10 331L
F04B49/10 331Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022523398
(86)(22)【出願日】2020-10-21
(85)【翻訳文提出日】2022-04-27
(86)【国際出願番号】 EP2020079589
(87)【国際公開番号】W WO2021078781
(87)【国際公開日】2021-04-29
(32)【優先日】2019-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】592229502
【氏名又は名称】ブルクハルト コンプレッション アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100116322
【氏名又は名称】桑垣 衛
(72)【発明者】
【氏名】フォーザー、アレクサンドル
【テーマコード(参考)】
3H145
【Fターム(参考)】
3H145AA03
3H145AA25
3H145BA44
3H145CA10
3H145CA21
3H145EA20
3H145EA26
3H145EA35
3H145EA42
(57)【要約】
ガスを圧縮するピストン圧縮機1はシリンダ2を備えるとともに、ピストン3、ピストンロッド16、パッキンシール12、クロスヘッド17、および駆動シャフト21を備える。ピストン3は、シリンダ2内で長手方向Lに移動可能に配置される。ピストン3は、ピストンロッド16を介してクロスヘッド17に接続される。パッキンシール12は、ピストン3とクロスヘッド17との間に配置される。ピストンロッド16はパッキンシール12の中を延在する。クロスヘッド17は駆動シャフト21によって駆動される。制御可能にした磁気軸受13は、ピストン3とクロスヘッド17との間に配置される。磁気軸受13は、少なくとも長手方向Lに対して垂直に、ピストンロッド16に磁力Fmを及ぼすことができる。制御装置22は、磁気軸受13によってピストンロッド16に及ぼされる磁力Fmを制御する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを圧縮するためのピストン圧縮機(1)であって、前記ピストン圧縮機(1)はシリンダ(2)、ピストン(3)、ピストンロッド(16)、パッキンシール(12)、クロスヘッド(17)、磁気軸受(13)、および駆動シャフト(21)を備えており、
前記ピストン(3)は前記シリンダ(2)内で長手方向(L)に移動可能に配置されており、
前記ピストン(3)は前記ピストンロッド(16)を介して前記クロスヘッド(17)に接続されており、
前記パッキンシール(12)の中に前記ピストンロッド(16)が延在するように、前記ピストン(3)と前記クロスヘッド(17)との間に前記パッキンシール(12)は配置されており、
前記クロスヘッド(17)は前記駆動シャフト(21)によって駆動されており、
前記磁気軸受(13)は、前記ピストン(3)と前記クロスヘッド(17)との間に配置されており、
前記磁気軸受(13)は、少なくとも前記長手方向(L)に対して垂直な方向の磁力(F
m)を前記ピストンロッド(16)に対して作用させることが可能にされており、
前記ピストン圧縮機(1)の状態変数(Z)を検出するべくセンサ(26)は配置されており、
前記磁気軸受(13)は制御可能にした磁気軸受(13)として設計されており、
制御装置(22)は前記状態変数(Z)の関数として前記磁気軸受(13)によって前記ピストンロッド(16)に及ぼされる前記磁力(F
m)を制御する、
ピストン圧縮機。
【請求項2】
前記シリンダ(2)は実質的に水平方向に延在する、
請求項1に記載のピストン圧縮機。
【請求項3】
前記シリンダ(2)は実質的に鉛直方向に延在する、
請求項1に記載のピストン圧縮機。
【請求項4】
前記センサ(26)は前記状態変数(Z)として、前記シリンダ内の前記ピストンの変位経路、前記ピストンロッドの延在方向の前記ピストンロッドの変位経路、前記ピストンロッドの延在方向に対して垂直な方向の前記ピストンロッドの変位経路、前記ピストンロッドの延在方向に対して垂直な方向の前記ピストンの移動、前記駆動シャフトの回転角、前記ピストンロッド(16)と前記磁気軸受(13)の磁石との間の前記磁気軸受(13)内のギャップ幅、のうちの少なくとも1つの変数を検出するように設計されている、
請求項1~3のいずれか1項に記載のピストン圧縮機。
【請求項5】
前記センサ(26)は、鉛直方向(V)に対する前記長手方向(L)の傾斜角(β)、シリンダ内面とピストン側面との間のギャップ幅、前記ピストンと前記シリンダとの相互の接触点の位置、のうちの少なくとも1つの変数を検出するように構成されている、
請求項1~4のいずれか1項に記載のピストン圧縮機。
【請求項6】
前記パッキンシール(12)は交換部品として構成されており、
前記パッキンシール(12)は少なくとも1つのシールリング(12b)と前記磁気軸受(13)との両方を備えている、
請求項1~5のいずれか1項に記載のピストン圧縮機。
【請求項7】
前記ピストン(3)はラビリンスピストンとして設計されている、
請求項1~6のいずれか1項に記載のピストン圧縮機。
【請求項8】
前記ピストン(3)は複数のシールリング(4)と、好ましくはガイドリング(5)とを備えている、
請求項1~6のいずれか1項に記載のピストン圧縮機。
【請求項9】
前記パッキンシール(12)および前記磁気軸受(13)は、冷却媒体のための冷却チャンネル(12l)を備えている、
請求項1~8のいずれか1項に記載のピストン圧縮機。
【請求項10】
前記パッキンシール(12)は、前記長手方向(L)に連続して配置された、少なくとも1つの締結部(12c)と、前記磁気軸受(13)と、および少なくとも1つのチャンバーリング(12a)とを備えており、
前記チャンバーリング(12a)は、前記チャンバーリング(12a)の中に配置されたシールリング(12b)を有している、
請求項1~9のいずれか1項に記載のピストン圧縮機。
【請求項11】
前記パッキンシール(12)は、前記長手方向(L)に相互に間隔をおいて配置された少なくとも2つの緊急軸受(12f、12g)を備えている、
請求項10に記載のピストン圧縮機。
【請求項12】
ピストン圧縮機(1)を運転する方法であって、前記ピストン圧縮機(1)はシリンダ(7)内で長手方向(L)に往復動するピストン(3)を備えており、前記ピストン(3)はピストンロッド(16)を介して駆動されており、少なくとも前記長手方向(L)に対して垂直に作用する磁力(F
m)は、前記ピストンロッド(16)に作用しており、
前記ピストン圧縮機(1)の状態変数(Z)は検出されており、
前記状態変数(Z)に依存して前記磁力(F
m)は制御されており、
結果、リリーフ力(F
h)が前記ピストンロッド(16)を介して前記ピストン(3)に及ぼされている、
ピストン圧縮機(1)を運転する方法。
【請求項13】
前記長手方向(L)は実質的に水平方向である、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記長手方向(L)は実質的に鉛直方向である、
請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記長手方向(L)は、鉛直方向(V)に対して±10°の範囲の傾斜角(β)を有する、
請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記状態変数(Z)は、前記シリンダ(7)内の前記ピストン(3)の変位経路、前記長手方向(L)における前記ピストンロッド(16)の変位経路、前記長手方向(L)に対して垂直な前記ピストンロッド(16)の移動、前記長手方向(L)に対して垂直な前記ピストン(3)の移動、前記ピストンロッド(16)を駆動する駆動シャフト(21)の回転角、前記ピストンロッド(16)と磁気軸受(13)の磁石との間の前記磁気軸受(13)内のギャップ幅、のうちの少なくとも1つの変数を備えている、
請求項12~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記ピストンロッド(16)の前記長手方向(L)に対して垂直な、前記ピストンロッド(16)と磁気軸受(13)との相互位置は、前記状態変数(Z)として測定される、
請求項12~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記状態変数(Z)として、鉛直方向(V)に対する前記シリンダの傾斜角(β)、シリンダ内面とピストン側面との間のギャップ幅、前記ピストンと前記シリンダとの間の相互の接触点の位置、のうちの少なくとも1つの変数が用いられる、
請求項12~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記長手方向(L)に対して垂直な、前記ピストンロッド(16)と磁気軸受(13)との間の相互距離と、シリンダ内面とピストン側面との間の距離と、のうちの少なくとも一方は一定に保たれる、
請求項12~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記ピストン(3)は、壁に接触することなく前記シリンダ(7)内に保持される、
請求項12~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記状態変数Zとして、鉛直方向(V)と前記長手方向(L)との間に想定される傾斜角(β(t))は、時間(t)の関数として追加的に測定される、
請求項12~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記磁力(F
m)は予測制御システムによって制御される、
請求項12~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記状態変数(Z)が時間(t)に依存するように、前記状態変数(Z)は時間(t)の関数として傾斜角(β(t))を備えている、
請求項22に記載の方法。
【請求項24】
予測状態変数Z
V(t+Δt)は、将来の時点(t+Δt)に対する傾斜角(β(t))に依存して前記状態変数Z(t)から算出されており、
前記磁力(F
m)は、前記予測状態変数Z
V(t+Δt)に依存して現在の時点(t)で制御されている、
請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記磁力(F
m)は、前記状態変数(Z)の関数として固定的に予め決定される、
請求項12~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
請求項1~11のいずれか1項に記載のピストン圧縮機を、輸送船において使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピストン圧縮機およびその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、水平方向に往復動可能にしたピストンが配置された水平方向に延在するシリンダを有するピストン圧縮機が開示されている。このピストン圧縮機は、ピストンに配置されたガイドリングおよび/またはシールリングが比較的大きな摩耗を受けるとともに、ピストン圧縮機は比較的低い回転速度でしか運転(操作、作動)できないという欠点がある。特許文献2は、鉛直方向(上下方向)に延在するシリンダを備えたピストン圧縮機を開示している。ピストンは、ラビリンスピストンとして、または捕捉(キャプチャ)されたピストンリングを備えたピストンとして、設計することが可能にされている。このピストン圧縮機もまた、摩耗が起こり得るという欠点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2014/139565号
【特許文献2】西独国特許出願公開第3805670号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、より有利なピストン圧縮機を提供することにある。好ましくは、ピストン圧縮機は、水平方向または鉛直方向に移動可能に配置されたピストンを備えている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この問題は、請求項1の特徴を有するピストン圧縮機によって解決される。装置の従属請求項は、さらなる有利な実施形態に関する。この問題は、請求項12の特徴を有する方法によってさらに解決される。方法の従属請求項は、さらなる有利な方法ステップに関する。
【0006】
この問題は、特にガス(気体)を圧縮するピストン圧縮機によって解決されている。ピストン圧縮機はシリンダと、ピストンと、ピストンロッドと、パッキンシールと、クロスヘッドと、磁気軸受と、駆動シャフトとを備えている。ピストンは、シリンダ内で長手方向に移動可能に配置されている。ピストンは、ピストンロッドを介してクロスヘッドに接続されている。ピストンとクロスヘッドとの間には、ピストンロッドが通過するパッキンシールが配置されている。クロスヘッドは、駆動シャフトによって駆動されている。磁気軸受は、前記ピストンと前記クロスヘッドとの間に配置されている。前記磁気軸受は、前記ピストンロッドに少なくとも長手方向に対して垂直な磁力(磁気力。マグネティックフォース)を及ぼすことができる。センサは、前記ピストン圧縮機の状態変数を検出するべく配置されている。前記磁気軸受は、制御可能にした磁気軸受として設計されている。制御装置は、前記状態変数に依存して前記磁気軸受によって前記ピストンロッドに及ぼされる磁力を制御する。特に好ましいのは、シリンダが実質的に水平方向に延在することである。
【0007】
この問題はさらに、特にガスを圧縮するためのピストン圧縮機によって解決されている。ピストン圧縮機は、実質的に水平方向に延在するシリンダを備えているとともに、ピストン、ピストンロッド、パッキンシール、クロスヘッド、および駆動シャフトを備えている。ピストンは、シリンダ内で長手方向に移動可能に配置されている。ピストンは、ピストンロッドを介してクロスヘッドに接続されている。ピストンとクロスヘッドとの間にパッキンシールが配置されている。そのパッキンシールを通って(介して)ピストンロッドが延在している。クロスヘッドは駆動シャフトによって駆動されている。制御可能にした磁気軸受もピストンとクロスヘッドとの間に配置されている。磁気軸受は、少なくとも長手方向に対して垂直にピストンロッドに磁力を及ぼすことができる。制御装置は、磁気軸受によってピストンロッドに及ぼされる磁力を制御する。
【0008】
この問題はさらに、特にピストン圧縮機の運転方法によって解決されている。ピストン圧縮機は、シリンダ内で長手方向に往復動するピストンを備えている。ピストンは、ピストンロッドを介して駆動されている。ピストンロッドには、少なくとも長手方向に対して垂直に働く磁力が作用する。ピストン圧縮機の状態変数が検出されている。状態変数に依存して磁力が制御されている。結果、ピストンロッドを通じてピストンに対して磁力、好ましくはリリーフ力(救済力。緩和力)が作用する。特に好ましくは、長手方向は、実質的に水平方向に延在する。
【0009】
この問題はさらに、特にピストン圧縮機を運転(操作)するための方法によって解決されている。ピストン圧縮機は、シリンダ内で長手方向に往復動するピストンを備えている。長手方向は、実質的に水平方向に延在している。ピストンは、ピストンロッドを介して駆動されている。少なくとも長手方向に対して垂直に働く制御可能にした磁力が、ピストンロッドに及ぼされる。結果、ピストンロッドを通じてピストンにリリーフ力が及ぼされる。磁力は、状態変数に依存して制御されることを特徴としている。
【0010】
ガスを圧縮する本発明によるピストン圧縮機は、ピストン圧縮機のピストンとクロスヘッドとの間に配置される制御可能にした磁気軸受を備えている。ピストンロッドは、ピストンをクロスヘッドに接続している。ピストンロッドは、磁気軸受を通って延在している。磁気軸受は、少なくともピストンロッドの延在方向に対して垂直に制御可能にした磁気引力を、ピストンロッドに対して発揮する。本発明によるピストン圧縮機はまた、制御装置および少なくとも1つのセンサを備えている。制御装置は、制御可能にした磁気軸受に配置された電磁石に電流または電力を供給するようになっている。制御装置は、ピストンが少なくとも一時的にシリンダ内で有利な位置を有するように、シリンダに対するピストンの位置に影響を与えるべく、センサによって測定された値に依存して供給電流または供給電力を調節または変更するようになっている。制御可能にした磁気軸受は、複数の電磁石を備えているラジアル軸受として設計されていることが好ましく、ラジアル軸受の複数の電磁石は、周方向に分散して配置されているとともに、制御装置によって制御可能にされている。しかしながら、磁気軸受は、例えば、2つの制御可能にした電磁石をピストンロッドに対して互いに対向して(互いに反対側に)または対称的に配置することによって、これらの電磁石によってピストンロッドに及ぼされる磁力が1つの方向にのみ作用するように、磁力が1つの方向にのみまたは1つの次元においてのみ作用するように設計することも可能にされている。
【0011】
ピストン圧縮機は、少なくとも1つのシリンダと、シリンダ内で前後に移動可能に配置されたピストンとを備えている。好ましい実施形態では、シリンダ内部、したがってピストンの動きも、水平方向または実質的に水平方向に延在している。このようなピストン圧縮機は、水平ピストン圧縮機(横型ピストン圧縮機)とも呼ばれる。磁気軸受は、少なくともピストンロッドの延在方向に対して垂直な方向で、制御可能にした磁気引力をピストンロッドに及ぼすとともに、したがって、好ましくは重力とは反対の方向で、ピストンロッドに鉛直上方に向かう力を作用させる。
【0012】
好ましい実施形態では、水平方向に移動可能にしたピストンは、シリンダ内面(内周面。内壁面)に載る(レストする)、いわゆるガイドリングを備えている。磁気軸受がピストンロッドに少なくとも鉛直方向(上下方向)に及ぼす引力および/またはピストンロッドに及ぼす反発力(斥力)は、シリンダ内面によって支持されたピストンの接触力が減少する、またはピストンまたはガイドリングがシリンダ内面に接触しなくなるという効果を有する。よって、ピストンは、またはピストンのガイドリングは、シリンダ内面に接触力を減少させてのみ載るので、特に好ましくはシリンダ内面に接触せずにシリンダ内で往復動を行う。ピストンがガイドリングを有する場合、磁気軸受の使用は、シリンダ内面へのガイドリングの接触力がひいてはガイドリングの摩耗が低減されるので、ガイドリングが交換されなければならないまでの耐用年数またはライフサイクルが長くなるという利点をもたらす。さらに、ピストン圧縮機は、所望によって、より高い回転速度で運転(作動)することができるので、好ましくは、摩耗または加熱の増加が生じないという利点もある。
【0013】
特に好ましくは、本発明によるピストン圧縮機のピストンは、ラビリンスピストンとして設計されている。そのようなラビリンスピストンは、それ自体知られているように、ピストン表面に、ピストンとシリンダ内面との間をシールするべく役立つラビリンス構造を有している。磁気軸受によってピストンロッドに及ぼされる引力は、好ましくは、前後に動くピストンが全ストローク経路に沿ってシリンダ内面に接触しないように制御されている。しかしながら、本発明によるピストン圧縮機は、ピストンにも好適であり、ピストンはピストンリングを有するとともに、必要であればさらにガイドリングを備えている。
【0014】
さらなる好ましい実施形態において、シリンダ内部は、したがってまたピストンの動きは、鉛直方向または実質的に鉛直方向に延在する。磁気軸受は、少なくともピストンロッドの延在方向に対して垂直な方向で、制御可能にした磁気引力をピストンロッドに及ぼすので、したがって、ピストンロッドに対して径方向にまたは実質的に径方向に延在する力をピストンおよびピストンロッドに及ぼす。磁気軸受が少なくとも径方向でピストンロッドに及ぼす引力および/またはピストンロッドに及ぼす斥力は、シリンダ内面に対するピストンリング軸受の接触力を、特に片側接触力を低減する効果を有する。ピストンまたはそのピストンリングは、特にラビリンスピストンとして設計されたピストンは、もはやシリンダ内面に接触しないので、ピストンまたはピストンのピストンリングは、シリンダ内面に減少した接触力でのみ載る(レストする)ので、特に好ましくはラビリンスピストンはシリンダ内面に接触することなくシリンダ内で往復動する。磁気軸受の使用によってピストンリングの摩耗が減少するので、ピストン圧縮機の耐用年数が長くなる、またはピストン圧縮機のメンテナンスが必要になるまでのライフサイクルが長くなるという利点がある。また、ピストン圧縮機をより高い回転速度(回転数)で運転するオプションもある。ピストン圧縮機がラビリンスピストンを備えている場合、磁気軸受の使用は、ラビリンスピストンとシリンダ内面との間の接触をさらに良好に回避することができるという利点を有する。なぜなら、シリンダ内部に対するラビリンスピストンの任意の偏心配置は、磁気軸受の助けによって少なくとも部分的に補正されることができるので、相互接触が生じないようにされるからである。磁気軸受の使用は、ラビリンスピストン外面とシリンダ内面との間のギャップ幅が減少しても、相互接触が発生することなくピストン圧縮機が安全に運転され得るという付加的な利点をもたらす。このギャップ幅の減少によって、ピストン圧縮機の効率が向上したり、圧縮時の損失が減少したりする。
【0015】
さらに好ましい実施形態では、ピストン圧縮機は、少なくとも1つのピストンと1つのシリンダを、好ましくは複数のピストンとシリンダを備えている。これらは、好ましくは共通のフレーム上に配置されているとともに、好ましくは共通のクランクシャフトによって駆動される。好ましい実施形態では、このようなピストン圧縮機は、船舶に配置されている。穏やかな海況下では、シリンダは、シリンダ内部は、したがってまたピストンの動きは、鉛直方向または実質的に鉛直方向である。大荒れまたは嵐の海では、波の高さが増加するにつれて船は増加するローリング運動またはピッチ運動を行うので、結果、ピストン圧縮機全体、したがって特にピストンロッドの長手方向も、波の動き(波の作用)に依存して時間の関数として可変であるとともに、角度βだけ鉛直方向から逸脱する延在方向を持つ。好ましい実施形態では、角度βは、好ましくは時間の関数としての角度βは、追加状態変数(付加的状態変数)として測定される。
【0016】
船舶において、多段ピストン圧縮機は、例えば、液化ガス容器に蓄積された排気ガスを200バール~500バール(20MPa~50MPa)の圧力へと圧縮することによって、圧縮されたガスを使用することで船舶のガスエンジンまたはディーゼルエンジンに燃料を供給するべく使用される。船舶に配置されたピストン圧縮機は、好ましくは、ピストンロッドに少なくとも径方向で磁気軸受によって及ぼされる力が、シリンダ内面に対するピストンリング軸受の接触力が、特に片側接触力が減少するように、状態変数および追加状態変数の関数として制御されている。またはピストンもしくはピストンのピストンリングは、および特にラビリンスピストンとして設計されたピストンは、もはやシリンダ内面に接触しない。よって船上では、波浪下でも、ピストン圧縮機のピストンまたはピストンリングはシリンダ内面に対して減少した接触力でのみ載る(レストする)か、もしくは特に好ましくはラビリンスピストンまたはピストンはシリンダ内面に接触することなくシリンダ内で往復動することが、確保されている。磁気軸受の使用は、波の動き下でもピストンリングの摩耗が低減される、またはラビリンスピストンのラビリンス構造のシリンダ内面への接触が回避されるという利点をもたらす。特にピストン外径とシリンダ内面との間のギャップ幅が小さい場合にも、船舶に配置されたピストン圧縮機は、ピストン圧縮機のメンテナンスを要するまでのより長い耐用期間またはより長いライフサイクルを有する。磁気軸受は、長手軸線に対して径方向のピストンロッドおよびピストンの動きを減衰させるべく、例えば波の動きによって生じるピストンの共振振動または他の横振動の発生最大振幅を低減するように、磁気軸受がピストンロッド長手軸線に対して径方向にピストンロッドの減衰効果を及ぼすように制御されていることが好ましい。
【0017】
波の動きは、あるいは測定されているとともに結果的に導かれた追加状態変数は、ピストン圧縮機の回転速度に比べて比較的遅いプロセスである。水の波の動きの周期は、ピストン圧縮機の回転周期に比べて10倍~1000倍遅いので、追加状態変数の短期間の変化を予め計算することが可能にされている。そして、この値を磁気軸受の制御に流入させるべく、波の動きに基づき予想されるピストン圧縮機の動きを、例えば1秒~50秒の範囲のある時点について予測するとともに、それに依存して磁気軸受を制御する予測制御で磁気軸受を制御する。このようにピストンロッドまたはピストンの位置に影響を与えたり制御したりするときに、波の動きによるピストン圧縮機の予測される動きが考慮されるように、磁気軸受は制御される。
【0018】
本発明によるピストン圧縮機は、ピストンまたはガイドリングがもはやシリンダ内壁に全く接触しないか、または減少した接触力でシリンダ内壁に載るだけなので、より高い回転速度またはより高い平均ピストン速度で運転できるという利点も有する。このような高い回転速度(回転数)での運転は、いわゆるドライランニングピストンすなわちラビリンスピストンを備えているピストン圧縮機において、または自己潤滑性シールリングを備えたピストンすなわち油潤滑されていないピストンリングまたはシールリングを備えているピストンであってすなわち無潤滑ピストンとも呼ばれるピストンを備えているピストン圧縮機において、特に有利である。制御可能にした磁気軸受は、ピストンをシリンダ内面に接触させずに保持する支持軸受として使用されることも、もしくはピストンが内壁に接触する場合においてピストンがシリンダ内面に及ぼす力を減少させることでリリーフ軸受(緩和軸受)として使用されることも、可能にされている。制御可能にした磁気軸受は、実質的に鉛直に延在するピストンに対してセンタリング機能を果たすこともできる。結果、ピストンはセンタリングされるので、好ましくはシリンダ内面に接触することなく保持される。
【0019】
一実施形態では、磁気軸受は水平ピストン圧縮機の所定位置に配置される。しかし、ピストンの重心位置は往復動によって運転中に絶えず変化するので、磁気軸受とピストン重心との間でピストンロッドによって形成されるレバーアームの長さは、運転中に絶えず変化する。したがって、磁気軸受に電力を供給するべく設けられた制御装置は、磁気軸受によってピストンロッドに及ぼされる磁力が、ピストンの位置に依存して、または前記レバーアームの長さに依存して、制御可能に変更されるように設計されていることが好ましい。好ましくは、鉛直方向に作用する少なくとも1つの力が、ピストンロッドに作用される。特に好ましいのは、磁気軸受は、ピストンロッドの長手方向に対して垂直に二次元的に制御可能にした力を、好ましくは鉛直方向の力と水平方向の力とを、ピストンロッドに作用させることができるラジアル軸受として設計されていることである。有利には、このようなラジアル軸受は、ピストンがその可能にした位置のいずれにおいても運転中にシリンダ内面に接触しないように、シリンダ下部内面にもシリンダ上部内面にもシリンダ側部内面にも接触しないように制御される。
【0020】
磁気軸受は、特にピストンが運転中(作動中)にシリンダ内面に接触しないようにする場合、測定された状態変数に依存して制御されることが好ましい。状態変数は、シリンダ内のピストンの変位経路、ピストンロッドの延在方向におけるピストンロッドの変位経路、ピストンロッドの延在方向に対して垂直な方向のピストンロッドの変位経路、または駆動シャフトの回転角、のうちの少なくとも1つを変数として備えている。さらに好ましい実施形態では、状態変数として、磁気軸受に対するピストンロッドの少なくとも鉛直方向の距離や、特にピストンロッドと磁気軸受との間の磁気軸受におけるギャップ幅が、好適である。
【0021】
状態変数を検出するセンサは、鉛直方向に対する長手方向の傾斜角β、時間の関数としての傾斜角β、シリンダ内面とピストン側面との間のギャップ幅、ピストンとシリンダとの相互の接触点の位置、のうちの少なくとも1つを検出するように設計されていることが好ましい。
【0022】
ピストン圧縮機は典型的には、シールリングを有するパッキンシールを備えている。ピストンロッドは、シリンダ内部を外部からシールするべく、このパッキンシールをまたはピストンロッドのシールリングを通って延在している。特に好ましい実施形態では、パッキンシール内にまた、シールリングに加えて磁気軸受が配置されている。磁気軸受を備えているこのように変更されたパッキンシールは、交換部品として設計されていることが特に好ましい。特に好ましいのは、このように変更されたパッキンシールは、磁気軸受を有しない従来公知のパッキンシールと同じ寸法を有するので、磁気軸受を備えているパッキンシールは、既存のピストン圧縮機に後付けするとともに既存のピストン圧縮機の品質を向上させるべく設置に使用できる。
【0023】
さらなる、好ましい実施形態において、変更されたパッキンシールはまた、冷却チャンネル(冷却流路)を備えている。ピストン圧縮機に取り付けられた変更されたパッキンシールにおいて、これらの冷却チャンネルは、磁気軸受をおよび/またはパッキンシールを冷却するための冷却回路に接続されている。
【0024】
実施形態の説明に用いる図面には、以下のものが示されている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】ピストン圧縮機を通る概略的に簡略化された縦断面図。
【
図3】状態変数の関数としての、すなわち駆動シャフトの回転角の関数としての、磁力の例示的な経過を示す図。
【
図7】例えば波の動きを伴う船舶に搭載された、傾斜ピストン圧縮機の図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
なお、図面において、原則として同一の部品には同一の参照符号を付している。
図1は、ガスを圧縮するためのピストン圧縮機1を示している。ピストン圧縮機1は、それぞれ長手方向Lで、水平方向に延在するシリンダ2を備えているとともに、シリンダ2内でシリンダ2の延在方向に移動可能にしたピストン3を備えている。またピストン圧縮機1は、ピストンロッド16、パッキンシール12、磁気軸受13、クロスヘッド17、押棒(プッシュロッド)19、および駆動部を備えている。クロスヘッド17は直線ガイド18を有している。駆動部は、例えば駆動シャフト21付きのクランク20を備えている。図示の例示的な実施形態では、ピストン3は複動式であるとともに、シールリングまたはピストンリング4ならびにガイドリング5を備えている。ピストン3は、シリンダ2の内部を第1内部空間6および第2内部空間7に分けている。これら2つの内部空間6、7にはそれぞれ入口弁8、9および出口弁10、11が設けられている。シリンダ2は、中間ピース14を介してハウジング15に接続されている。中間ピース14には、パッキンシール12および磁気軸受13も配設されている。磁気軸受13は、少なくとも鉛直方向(上下方向)においてピストンロッド16に磁力F
mを作用させる。制御装置22は、信号ライン(信号線)24および図示しないセンサを介して、ピストン圧縮機1の状態変数Zを検知する。ピストン圧縮機1の状態変数Zは、例えば、時間の関数としてのシリンダ7内のピストンの変位経路s(t)、時間の関数としてのピストンロッド16の変位経路s(t)、および/または駆動シャフト21の回転角α(t)である。制御装置22は、信号ライン(信号線)25を介して磁気軸受13の電磁石の電流を制御することで、磁石によってピストンロッド16に及ぼされる磁力を制御する。
【0027】
簡単な実施形態では、制御装置(駆動装置)22は、状態変数Zが測定されているとともに、磁力F
mが状態変数Zの関数として変更されている制御モード(駆動モード)で運転(作動)することができる。この場合、フィードバックは省かれることができる。
図3は、このような制御モードの一例を示すものであり、曲線K1の進行が規定されている。曲線K1は、状態変数Zここでは駆動シャフト21の回転角αと、回転角αの関数として生成されるべく磁力F
mとの関係を規定する。図示された例示的な実施形態では、角度α=0°は、第2内部空間7に対するピストン3の下死点に対応しており、α=180°は上死点に対応する。磁力F
mは、下死点で最も小さくなる。というのは下死点では、ピストン3の重心Sと磁気軸受13との間でピストンロッド16が形成するレバーアームが最も短いからである。一方、上死点では、ピストン3の重心Sと磁気軸受13との間でピストンロッド16が形成するレバーアームが最も長くなるので、磁力F
mが最も大きくなる。なお、回転角αは、図示しないセンサで測定されているとともに、信号ライン24を介して制御装置22に供給される。曲線進行度K1は、例えば、経験値に基づき予め設定することができる。本実施形態では特に好ましくは、
図1に示すように、ガイドリング5を有するピストン3が使用されている。ガイドリング5がシリンダ2の内面に対して軸受するので、磁力F
mがシリンダ2の内面に対するガイドリング5の軸受力を低減するのに役立つ。結果、特にガイドリング5の摩耗を低減する。
図3に示す曲線K1は、0°~180°のクランクシャフトの回転角(クランクシャフト角度)αの関数としての磁力F
mの進行を示すのみである。図示されていないその後の180°~360°の区間では、磁力F
mは、180°での値から始まるとともに、角度0°での磁力F
mの値まで逆方向に進行しており、角度0°での磁力F
mの値は角度360°での値と同じである。
【0028】
さらなる好ましい実施形態では、測定装置としての例えばセンサ26は、少なくとも鉛直方向におけるピストンロッド16および/またはピストン3の位置を測定するべく、設けられている。
図2は、ピストンロッド16の位置を鉛直方向で測定する実施形態を示す。好ましい実施形態では、センサ26は、磁気軸受13に近接して、あるいは磁気軸受13の内部にまで配置されている。センサ26は、好ましくは、磁気軸受13の上部コイルコア13aと、ピストンロッド16の表面との間の距離Dを測定する。好ましくは、磁気軸受13は、少なくとも、コイル13bを有する上部コイルコア13aと、コイル13dを有する下部コイルコア13cとを備えている。
図6に示すように、磁気軸受13は、周方向に分布する複数の電磁石を備えたラジアル磁気軸受として設計することもできる。その場合、好ましくは、ピストンロッド16に及ぼされる磁力F
mの方向が、コイル13b、13dの対応する制御によって決定できるように、それらのコイル13b、13dは個別に制御することが可能にされている。
【0029】
好ましい運転方法では、距離Dの設定値(セットポイント)は、設定値仕様28を介して制御装置22に対して予め設定されている。制御装置22は、ストロークs(t)またはクランクシャフト角度α(t)に関係なく、ピストンロッド16が上部コイルコア13aに対して実質的に変化しない一定の距離Dを有するように、信号ライン25を介してコイル13b、13dを電流で駆動する。結果、ピストンロッド16は、2つのコイルコア13a、13cの磁気アーマチャとして作用する。好ましくは、磁気軸受13は、ピストンロッド16に対して上向きの力および下向きの磁気引力の両方を及ぼすことができるので、磁気軸受13に対するピストンロッド16の位置を特に精密に制御することが可能にされている。
【0030】
したがって、制御可能にした磁力F
mがピストンロッド16に作用するように、少なくとも鉛直方向に作用する力(F
m)、すなわちリリーフ力(救援力。救済力)F
hが、ピストンロッド16を介してピストン3に作用するとともに重力Fに対抗するように、ピストン圧縮機1は運転されることが好ましい。磁力F
mは、例えば距離D、ストロークs(t)、または回転角α(t)などの、状態変数Zの関数として制御または変動される。
図1~
図3に記載された構成および記載された方法は、鉛直方向に延在するシリンダと鉛直方向に移動するピストンとを有するピストン圧縮機を、運転または制御するためにも好適である。
【0031】
図7は、実質的に鉛直方向に延在するシリンダ2またはシリンダの内部と、実質的に鉛直方向に延在するピストンロッド16と、当該方向に移動可能にしたピストン3と、を備えている
図1に示したピストン圧縮機1を示す。
図7において、ピストン圧縮機1は、ヒール角でヒールされた船舶に配置されている。そのため、シリンダ2およびピストンロッド16は、鉛直方向Vに対して傾斜角βを有する。ピストン圧縮機1は、海が全く穏やかであるときにシリンダ2およびピストンロッド16が正確に鉛直方向にまたは少なくともほぼ鉛直方向にあるように、船舶内に配置されることが好ましい。ピストン圧縮機1は、もちろん、陸上に配置されることも可能にされており、シリンダ2およびピストンロッド16は、好ましくは、鉛直方向に正確にまたは少なくともほぼ鉛直方向に延在する。好ましくは、鉛直方向Vに対する傾斜角βは、図示しないセンサ26によって測定されている。傾斜角βは、好ましくは時間tの関数として測定される。磁力F
mがピストンロッド16に作用するとともに、ピストンロッド16がリリーフ力F
hをピストン3に伝達することで、可能ならばシリンダ2内のピストン3の位置が、作用するリリーフ力F
hによって影響を受けるように、磁気軸受13は制御装置22を介して制御される。
【0032】
磁気軸受13を制御するための状態変数Zとしては、既に述べた状態変数Zに加えて、またはその代わりに、以下の変数のうちの少なくとも1つが好適である。鉛直方向Vに対するシリンダの傾斜角β、シリンダ内面とピストン側面との間のギャップ幅(隙間幅)、ピストンとシリンダとの相互の接触点の位置。
【0033】
好ましくは、長手方向Lに対して垂直な、ピストンロッド16と磁気軸受13との相互距離が、および/またはシリンダ内面とピストン側面との距離が、一定または実質的に一定に保たれるように、磁気軸受13は制御される。好ましくは、ピストン3は、シリンダ7内で壁面接触することなく保持される。好ましくは、鉛直方向Vと長手方向Lとの間に想定される傾斜角β(t)も、状態変数Zとして時間tの関数として測定される。特に好ましくは、船舶に配置されるピストン圧縮機の場合、磁力Fmは予測制御によって制御される。好ましくは、状態変数Zが時間tに依存するように、状態変数Zは、時間tの関数としての傾斜角β(t)を備えている。特に好ましくは状態変数Zは、時間tの関数としての傾斜角β(t)に加えて、本明細書に記載の少なくとも1つの追加状態変数を備えている。その結果、状態変数は、本明細書に記載の少なくとも2つの状態変数の組み合わせを備えている。例えば、結果として生じる状態変数は、長手方向Lに対して垂直なピストンロッドの動きの状態変数Zを備えている。長手方向Lに対して垂直なピストンロッドの動きの状態変数Zは、時間tの関数としての傾斜角β(t)の状態変数Zと組み合わされているので、予測制御の助けと、時間tの関数としての傾斜角β(t)の状態変数Zの知識とによって、以下のようになることが可能にされている。すなわち、時刻t+Δtにおける傾斜角β(t)に起因する、長手方向Lに対して垂直なピストンロッドの予想移動量を予測することが可能にされている。この予測状態変数ZV(t+Δt)を用いて、磁気軸受13を制御することが可能にされている。
【0034】
好ましくは、予測状態変数ZV(t+Δt)は、将来の時点t+Δtの傾斜角β(t)に依存して、状態変数Z(t)から算出される。磁力Fmは、予測状態変数ZV(t+Δt)に依存して、現在の時点tで制御される。
【0035】
特に好ましくは、制御可能にした磁気軸受を備えている本発明によるピストン圧縮機は、海上の輸送に用いられる輸送船と組み合わせて用いられる。
図4に示す縦断面は、複数のチャンバーリング12aを備えているそれ自体既知のパッキンシール12を示す。チャンバーリング12aの内部には、シールリング12bが配置されている。さらに、パッキンシール12は、締結部12cを備えている。この締結部12cに、詳細には図示しない方法で全てのチャンバーリング12aが締結されている。パッキンシール12は、締結部12cを介してシリンダ2のシリンダハウジング2aに接続されている。ピストンロッド16は、パッキンシール12を貫通して延在している。シリンダハウジング2aは、パッキンシール12の外部輪郭12dに対応する凹部を有しているので、パッキンシール12全体をこの凹部に挿入することができる。必要に応じて、パッキンシール12全体を交換することができるようになっている。
【0036】
図5は、磁気軸受13を備えている本発明によるパッキンシール12を通る縦断面を示す。
図6は、磁気軸受13の部分断面を示している。磁気軸受13はラジアル軸受として設計されているとともに、8つのコイルコア13a、13cを備えている。2つの対向するコイルコア13a、13cには、参照符号が付与されている。コイルコア13a、13cには、コイル13b、13dが巻かれている。さらに、ピストンロッド16に対向するコイルコア13aの端面13eが示されている。
図5によるパッキンシール12は、チャンバーリング12aの内部にシールリング12bが配置された2つのチャンバーリング12aを備えている。また、パッキンシール12は、各々が軸受面12h、12iを有する2つの緊急軸受(非常用軸受。エマージェンシーベアリング)12f、12gを備えている。磁気軸受13の停電の場合、または例えばピストン圧縮機のスイッチが切られた場合、ピストンロッド16は、緊急軸受12f、12g上に載る(レストする)ことができる。パッキンシール12は、センサ26用のホルダ12kをさらに備えている。少なくとも1つのセンサ26が上部に配置されている。好ましくは、複数のセンサ26が、円周方向に相互に間隔をおいて配置されている。さらに、パッキンシール12は、締結部12cを備えている。この締結部12cには、好ましくは
図5に示す全ての構成要素が接続されている。パッキンシール12は、外部輪郭12dを有する。好ましい実施形態において、本発明によるパッキンシール12の外部輪郭12dは、
図4に示される公知のパッキンシール12と同様または同一寸法であるので、本発明によるパッキンシール12は、公知のパッキンシール12を有する既存のピストン圧縮機1において使用することが可能にされている。好ましくは、本発明によるパッキンシール12でアップグレードされたピストン圧縮機1は、制御装置22も備えているので、既存のピストン圧縮機1も本発明による装置を備えることが可能にされているとともに、または既存のピストン圧縮機1も本発明によるプロセスで運転することが可能にされている。
【0037】
さらなる、好ましい実施形態では、
図5に示すように、本発明によるパッキンシール12は、例えば、外部ケーシング12eの内部および/またはコイルコア13a、13cの内部を通る冷却チャンネル12lも備えている。冷却チャンネル12lは、磁気軸受13をおよび/またはパッキンシール12を冷却するべく冷却回路の一部を形成している。冷却回路は概略的にのみ示されている。冷却回路の供給ラインおよび排出ラインが好ましくは締結部12cを貫通していることで、締結部(取付部)12cは、外部から好ましくは締結部12cの端面にアクセス可能にした冷却回路用の接続部12mを有する。パッキンシール12内部の冷却回路が予め規定されているとともにかつ完全に構成されているので、パッキンシール12設置後に外部から冷却媒体(冷却剤)を供給することでパッキンシール12内部の冷却回路に冷却媒体を供給するには、冷却回路の供給ラインおよび排出ラインは、締結部12cに接続するだけで済むようになっている。なお、
図5においては、特に、緊急軸受12gの内部に配置される接続チャンネル(連通流路)であって、冷却チャンネル12l同士を相互に流体導通させる接続チャンネルは、図示されていない。
【0038】
図1に示す実施形態では、ピストン3を備えているピストン圧縮機1が示されており、ピストン3はピストンリングまたはシールリング4ならびにガイドリング5を有している。ガイドリング5は、省くことも可能にされている。図示されていない別の実施形態では、ピストン3は、ラビリンスピストンとして設計することもできる。このラビリンスピストンは、好ましくは、シリンダ2の内壁に接触していない。
【手続補正書】
【提出日】2021-08-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを圧縮するためのピストン圧縮機(1)であって、前記ピストン圧縮機(1)はシリンダ(2)、ピストン(3)、ピストンロッド(16)、パッキンシール(12)、クロスヘッド(17)、磁気軸受(13)、および駆動シャフト(21)を備えており、
前記ピストン(3)は前記シリンダ(2)内で長手方向(L)に移動可能に配置されており、
前記ピストン(3)は前記ピストンロッド(16)を介して前記クロスヘッド(17)に接続されており、
前記パッキンシール(12)の中に前記ピストンロッド(16)が延在するように、前記ピストン(3)と前記クロスヘッド(17)との間に前記パッキンシール(12)は配置されており、
前記クロスヘッド(17)は前記駆動シャフト(21)によって駆動されており、
前記磁気軸受(13)は、前記ピストン(3)と前記クロスヘッド(17)との間に配置されており、
前記磁気軸受(13)は、少なくとも前記長手方向(L)に対して垂直な方向の磁力(F
m)を前記ピストンロッド(16)に対して作用させることが可能にされており、
前記ピストン(3)は複数のシールリング(4)を備えており、
前記ピストン圧縮機(1)の状態変数(Z)を検出するべくセンサ(26)は配置されており、
前記磁気軸受(13)は制御可能にした磁気軸受(13)として設計されており、
制御装置(22)は前記状態変数(Z)の関数として前記磁気軸受(13)によって前記ピストンロッド(16)に及ぼされる前記磁力(F
m)を制御
しており、
前記センサ(26)は前記状態変数(Z)として、前記シリンダ内の前記ピストンの変位経路、前記ピストンロッドの延在方向の前記ピストンロッドの変位経路、前記ピストンロッドの延在方向に対して垂直な方向の前記ピストンロッドの変位経路、前記ピストンロッドの延在方向に対して垂直な方向の前記ピストンの移動、前記駆動シャフトの回転角、のうちの少なくとも1つの変数を検出するように設計されている、
ピストン圧縮機(1)。
【請求項2】
前記シリンダ(2)はガイドリング(5)を備えている、
請求項1に記載のピストン圧縮機。
【請求項3】
前記シリンダ(2)は実質的に水平方向に延在する、
請求項1
または2に記載のピストン圧縮機。
【請求項4】
前記シリンダ(2)は実質的に鉛直方向に延在する、
請求項1
または2に記載のピストン圧縮機。
【請求項5】
前記センサ(26)は、鉛直方向(V)に対する前記長手方向(L)の傾斜角(β)、シリンダ内面とピストン側面との間のギャップ幅、前記ピストンと前記シリンダとの相互の接触点の位置、のうちの少なくとも1つの変数を検出するように
さらに構成されている、
請求項1~4のいずれか1項に記載のピストン圧縮機。
【請求項6】
前記パッキンシール(12)は交換部品として構成されており、
前記パッキンシール(12)は少なくとも1つのシールリング(12b)と前記磁気軸受(13)との両方を備えている、
請求項1~5のいずれか1項に記載のピストン圧縮機。
【請求項7】
前記パッキンシール(12)および前記磁気軸受(13)は、冷却媒体のための冷却チャンネル(12l)を備えている、
請求項1~
6のいずれか1項に記載のピストン圧縮機。
【請求項8】
前記パッキンシール(12)は、前記長手方向(L)に連続して配置された、少なくとも1つの締結部(12c)と、前記磁気軸受(13)と、および少なくとも1つのチャンバーリング(12a)とを備えており、
前記チャンバーリング(12a)は、前記チャンバーリング(12a)の中に配置されたシールリング(12b)を有している、
請求項1~
7のいずれか1項に記載のピストン圧縮機。
【請求項9】
前記パッキンシール(12)は、前記長手方向(L)に相互に間隔をおいて配置された少なくとも2つの緊急軸受(12f、12g)を備えている、
請求項
8に記載のピストン圧縮機。
【請求項10】
ピストン圧縮機(1)を運転する方法であって、前記ピストン圧縮機(1)は
シリンダ(2)、ピストン(3)、ピストンロッド(16)、クロスヘッド(17)、磁気軸受(13)、および駆動シャフト(21)を備えており、前記ピストン(3)は複数のシールリング(4)を備えており、前記ピストン(3)は前記シリンダ(7)内で長手方向(L)に往復動
しており、前記ピストン(3)は
前記クロスヘッド(17)と前記ピストンロッド(16)
とを介して駆動されており、少なくとも前記長手方向(L)に対して垂直に作用する磁力(F
m)は、
前記磁気軸受(13)によって前記ピストンロッド(16)に作用しており、
前記ピストン圧縮機(1)の状態変数(Z)
として、前記シリンダ内の前記ピストンの変位経路、前記ピストンロッドの延在方向の前記ピストンロッドの変位経路、前記ピストンロッドの延在方向に対して垂直な方向の前記ピストンロッドの変位経路、前記ピストンロッドの延在方向に対して垂直な方向の前記ピストンの移動、前記駆動シャフトの回転角、のうちの少なくとも1つの変数は検出されており、
前記状態変数(Z)に依存して前記磁力(F
m)は制御されており、
結果、リリーフ力(F
h)が前記ピストンロッド(16)を介して前記ピストン(3)に及ぼされている、
ピストン圧縮機(1)を運転する
方法。
【請求項11】
前記長手方向(L)は実質的に水平方向である、
請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
前記長手方向(L)は実質的に鉛直方向である、
請求項
10に記載の方法。
【請求項13】
前記長手方向(L)は、鉛直方向(V)に対して±10°の範囲の傾斜角(β)を有する、
請求項
10に記載の方法。
【請求項14】
前記状態変数(Z)は
さらに、前記長手方向(L)に対して垂直な前記ピストンロッド(16)の移動、前記ピストンロッド(16)と
前記磁気軸受(13)の磁石との間の前記磁気軸受(13)内のギャップ幅、のうちの少なくとも1つの変数を備えている、
請求項
10~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記ピストンロッド(16)の前記長手方向(L)に対して垂直な、前記ピストンロッド(16)と
前記磁気軸受(13)との相互位置は、前記状態変数(Z)として測定される、
請求項
14に記載の方法。
【請求項16】
前記状態変数(Z)として
さらに、鉛直方向(V)に対する前記シリンダの傾斜角(β)、シリンダ内面とピストン側面との間のギャップ幅、前記ピストンと前記シリンダとの間の相互の接触点の位置、のうちの少なくとも1つの変数が用いられる、
請求項
10~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記長手方向(L)に対して垂直な、前記ピストンロッド(16)と
前記磁気軸受(13)との間の相互距離と、シリンダ内面とピストン側面との間の距離と、のうちの少なくとも一方は一定に保たれる、
請求項
10~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記ピストン(3)は、壁に接触することなく前記シリンダ(7)内に保持される、
請求項
10~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記状態変数Zとして、鉛直方向(V)と前記長手方向(L)との間に想定される傾斜角(β(t))は、時間(t)の関数として追加的に測定される、
請求項
10~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記磁力(F
m)は予測制御システムによって制御される、
請求項
10~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記状態変数(Z)が時間(t)に依存するように、前記状態変数(Z)は時間(t)の関数として傾斜角(β(t))を備えている、
請求項
20に記載の方法。
【請求項22】
予測状態変数Z
V(t+Δt)は、将来の時点(t+Δt)に対する傾斜角(β(t))に依存して前記状態変数Z(t)から算出されており、
前記磁力(F
m)は、前記予測状態変数Z
V(t+Δt)に依存して現在の時点(t)で制御されている、
請求項
21に記載の方法。
【請求項23】
前記磁力(F
m)は、前記状態変数(Z)の関数として固定的に予め決定される、
請求項
10~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
請求項1~
9のいずれか1項に記載のピストン圧縮機を、輸送船において使用する方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
この問題は、請求項1の特徴を有するピストン圧縮機によって解決される。装置の従属請求項は、さらなる有利な実施形態に関する。この問題は、請求項10の特徴を有する方法によってさらに解決される。方法の従属請求項は、さらなる有利な方法ステップに関する。
【国際調査報告】