(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-20
(54)【発明の名称】セトロレリクス酢酸塩の安定した非経口剤形
(51)【国際特許分類】
A61K 38/09 20060101AFI20230113BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230113BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20230113BHJP
C07K 7/06 20060101ALN20230113BHJP
【FI】
A61K38/09
A61P43/00 111
A61P15/00
C07K7/06 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022523629
(86)(22)【出願日】2020-10-23
(85)【翻訳文提出日】2022-06-21
(86)【国際出願番号】 IB2020059988
(87)【国際公開番号】W WO2021079339
(87)【国際公開日】2021-04-29
(31)【優先権主張番号】201921043355
(32)【優先日】2019-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503422000
【氏名又は名称】サン ファーマシューティカル インダストリーズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SUN PHARMACEUTICAL INDUSTRIES LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100172683
【氏名又は名称】綾 聡平
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ジョシ,ジェイディップ
(72)【発明者】
【氏名】サマー,ラケシュ
(72)【発明者】
【氏名】アグラワル,スディープ
(72)【発明者】
【氏名】ボウミック,サバス・バララム
(72)【発明者】
【氏名】ヤーダブ,アルンクマール
(72)【発明者】
【氏名】セナティ,ラジャマンナル
【テーマコード(参考)】
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA01
4C084BA09
4C084BA17
4C084BA23
4C084CA59
4C084DB71
4C084MA17
4C084MA66
4C084NA03
4C084NA10
4C084ZA811
4C084ZC031
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA15
4H045EA50
4H045FA20
(57)【要約】
本発明は、すぐに注射できる無菌の安定したセトロレリクス酢酸塩水溶液を用いた安定した非経口剤形に関する。本発明はまた、すぐに注射できる無菌の安定したセトロレリクス酢酸塩水溶液が予め充填された注射器具に関する。本発明は、調節卵巣刺激法を受ける女性において早発黄体形成ホルモンサージを阻害する方法に関し、方法は、すぐに注射できる無菌の安定したセトロレリクス酢酸塩水溶液を有する安定した非経口剤形を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
安定した水溶液を含む非経口剤形であって、
i) セトロレリクスまたはその薬学的に許容可能な塩、および
ii) セトロレリクス塩基1%w/v未満の量の式Iの不純物を含む、非経口剤形。
【化1】
【請求項2】
前記剤形が、無菌の安定した水溶液である、請求項1に記載の非経口剤形。
【請求項3】
前記剤形が、無菌のすぐに注入可能な剤形である、請求項1に記載の非経口剤形。
【請求項4】
前記安定した水溶液が、pHを3~5の範囲に調整するための有機酸をさらに含む、請求項1に記載の非経口剤形。
【請求項5】
前記安定した水溶液が、浸透圧剤をさらに含む、請求項4に記載の非経口剤形。
【請求項6】
セトロレリクスまたはその薬学的に許容可能な塩の量が0.25mg/mlである、請求項1に記載の非経口剤形。
【請求項7】
前記浸透圧剤が、前記溶液のオスモル濃度を250~375mOsm/Kgの範囲にするのに十分な量で存在する、請求項5に記載の非経口剤形。
【請求項8】
前記非経口剤形が、注射器具の貯蔵部中に存在するすぐに注射できる無菌の安定した水溶液である、請求項1に記載の非経口剤形。
【請求項9】
前記注射器具がプレフィルドシリンジである、請求項8に記載の非経口剤形。
【請求項10】
前記注射器具がオートインジェクターである、請求項8に記載の非経口剤形。
【請求項11】
前記注射器具がペン型オートインジェクターである、請求項8に記載の非経口剤形。
【請求項12】
前記安定した水溶液が、25℃の温度および60%の相対湿度で少なくとも1カ月間安定である、請求項1に記載の非経口剤形。
【請求項13】
前記安定した水溶液が、25℃の温度および60%の相対湿度で少なくとも3カ月間安定である、請求項1に記載の非経口剤形。
【請求項14】
前記安定した水溶液が、25℃の温度および60%の相対湿度で少なくとも6カ月間安定である、請求項1に記載の非経口剤形。
【請求項15】
前記非経口剤形が皮下使用に適している、請求項1に記載の非経口剤形。
【請求項16】
前記非経口剤形が筋肉内使用に適している、請求項1に記載の非経口剤形。
【請求項17】
セトロレリクスまたはその薬学的に許容可能な塩の医薬組成物であって、式Iのデカペプチドを含む、医薬組成物。
【化2】
【請求項18】
調節卵巣刺激法を受ける女性において早発黄体形成ホルモンサージを阻害する方法であって、
すぐに注射できる無菌の安定した水溶液を含む非経口剤形であって、前記水溶液が
i) セトロレリクスまたはその薬学的に許容可能な塩と、
ii) セトロレリクス塩基1%w/v未満の量の不純物A(式Iのデカペプチド)と、を含む、非経口剤形を含む、方法。
【化3】
【請求項19】
下記式Iのデカペプチド。
【化4】
【請求項20】
前記デカペプチドがHPLC分析によって同定され、そのプロセスが、
a)水、アセトニトリル、ギ酸を含む希釈剤をクロマトグラフシステムに注入することと、
b)セトロレリクス酢酸塩、希釈剤、不純物原液を含むシステム適合性溶液を注入すること、およびクロマトグラムを記録することと、
c)セトロレリクス酢酸塩、希釈剤を含む標準溶液をクロマトグラフシステムに注入することと、
d)セトロレリクス酢酸塩水溶液を含む試料およびプラセボ調製物をクロマトグラフシステムに注入することと、
e)セトロレリクス酢酸塩に関して不純物およびセトロレリクス酢酸塩の相対保持時間および相対応答係数を決定することと、を含む、請求項19に記載のデカペプチド。
【請求項21】
HPLC分析によって請求項19に記載のデカペプチドを同定するプロセスであって、前記プロセスが、
a)水、アセトニトリル、ギ酸を含む希釈剤をクロマトグラフシステムに注入することと、
b)セトロレリクス酢酸塩、希釈剤、不純物原液を含むシステム適合性溶液を注入すること、およびクロマトグラムを記録することと、
c)セトロレリクス酢酸塩、希釈剤を含む標準溶液をクロマトグラフシステムに注入することと、
d)セトロレリクス酢酸塩水溶液を含む試料およびプラセボ調製物をクロマトグラフシステムに注入することと、
e)セトロレリクス酢酸塩に関して不純物およびセトロレリクス酢酸塩の相対保持時間および相対応答係数を決定することと、を含む、プロセス。
【請求項22】
HPLC分析における移動相AおよびBが、緩衝液、アセトニトリル、およびテトラヒドロフランを含み、
デカペプチドの相対保持時間および相対応答係数が、それぞれ0.57および1.0であると決定される、請求項20または請求項21に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、すぐに注射できる無菌の安定したセトロレリクス酢酸塩水溶液を有する安定した非経口剤形に関する。本発明はまた、すぐに注射できる無菌の安定したセトロレリクス酢酸塩水溶液が予め充填された注射器具に関する。本発明は、調節卵巣刺激法を受ける女性において早発黄体形成ホルモンサージを阻害する方法に関し、方法は、すぐに注射できる無菌の安定したセトロレリクス酢酸塩水溶液を有する安定した非経口剤形を含む。
【背景技術】
【0002】
セトロレリクスは、次の式を有する、ゴナドトロピン放出ホルモン拮抗薬(GnRH拮抗薬)アセチル-D-3-(2’-ナフチル)-アラニン-D-4-クロロフェニルアラニン-D-3-(3’-ピリジル)-アラニン-L-セリン-L-チロシン-D-シトルリン-L-ロイシン-L-アルギニン-L-プロリン-D-アラニン-アミド-(C
70H
92ClN
17O
14)である。末端酸アミド基を有するデカペプチドである。これは、下垂体に対するGnRHの作用を遮断することによって作用し、それ故に黄体形成ホルモンおよび卵胞刺激ホルモンの産生および作用を急速に抑制する。
【化1】
【0003】
非経口投与にはペプチドの水溶液が必要である。しかしながら、セトロレリクスなどのペプチドの水溶液は、化学分解の影響を受けやすい。また、凝集を起こしやすく、それによって溶液の濁度または混濁が貯蔵時に増大する。
【0004】
最初の市販製品は、Cetrotide(登録商標)であった。0.25mgまたは3mgのセトロレリクスを含有するガラスバイアル入りの凍結乾燥粉末として入手可能である。注射用の滅菌水1mlまたは3mlを有するガラス製プレフィルドシリンジは別個に提供され、溶液は注射前にのみ調製される。従って、第一の生成物は、長期にわたり貯蔵する必要のある水溶液を含有する剤形を調製することを単に回避することによって、水溶液中の分解の問題を解決した。代わりに、不安定性の問題を避けるために、水が除去され、凍結乾燥物が調製された。しかし、この問題に対する解決策には、(1)高価で時間のかかるプロセスである、(2)生成物はすぐに注射できるものではなく、投与前に再調製が必要である、(3)再調製された溶液は短期間のみ安定である、という明らかなデメリットがある。それ故に、Cetrotide(登録商標)は、すぐに注射できる水溶液に対するニーズを満たしていなかった。
【0005】
米国特許第7,718,599号は、セトロレリクス水溶液が凝集しやすいことを開示している。偏光顕微鏡下で液晶構造が観察された。セトロレリクス酢酸塩溶液(2.5mg/ml)にグルコン酸を添加し、それによって0.07%未満のグルコン酸の濃度で、pHは3.7になり、2日以内に凝集が見られた。pHが3.7以上である時、同様の失敗が報告された。グルコン酸の濃度が0.71%に上昇し、pHが3.1となると、凝集は12日以内に見られ、これは高くなったグルコン酸の濃度と、それ故に低くなったpHが改善につながったことを示す。本方法のデメリットは、凝集の問題の解決の程度がグルコン酸濃度に依存し、グルコン酸が増えるとpHが低下することである。しかしながら、米国特許第7,718,599号には、セトロレリクスの化学的安定性に対するpHの影響の報告がなかった。さらに、長期貯蔵安定性試験中に凝集が観察されなかった製剤はなかった。米国特許出願公開第2013/0303464号明細書は、セトロレリクス酢酸塩、氷酢酸、等張化剤、および注射用水を含むセトロレリクスのすぐに使用可能な水溶性調製物を開示している。適切なpHは、pHが約3であった実施例によって図示された。この発明による好ましいpHは、pH2.8~3.5であった。
【0006】
米国特許第7,214,662号は、セトロレリクス酢酸塩を含むペプチドの水溶液と、凝集の問題に対する推奨溶液とを開示している。これは、カルボン酸、特にヒドロキシカルボン酸、好ましくはグルコン酸と界面活性剤との組み合わせが凝集を減少させることを教示した。米国特許第7,214,662号によるカルボン酸の使用は、pH2.5~3などの低pHをもたらした。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、すぐに注射できる無菌の安定したセトロレリクス酢酸塩水溶液を含む非経口剤形を提供することである。本発明の別の目的は、無菌の安定したセトロレリクス酢酸塩水溶液で予め充填された注射器具を提供することである。本明細書で使用される「すぐに注射できる」という言葉は、直接の皮下投与または筋肉内投与に適した、すぐに注射できる無菌の安定したセトロレリクス酢酸塩水溶液、すなわち、すぐに注射でき、注射前の再調製または希釈の必要がないことを意味する。より具体的に、注射器具に分注された無菌の安定したセトロレリクス酢酸塩水溶液は、すぐに注射でき、凝集または混濁の発生に対する制御の面で物理的に安定であるだけでなく、非経口剤形が棚に貯蔵される間、かつ非経口剤形が患者の皮下または筋肉内に注射されるまで不純物が低いままであるように、化学的に安定であることが別の目的である。
【0008】
ペプチドの分解は、薬理学的活性を有しうる他のペプチドおよび/またはペプチド誘導体の生成をもたらすことができる。従って、目的はより具体的に、個々の不純物を分離し、それらを定量化するための適切な方法を開発することであった。目的は、そのような不純物の濃度を制限することであった。発明者らは、以前からあって先行技術では報告されていない幾つかの不純物について別個のピークを与えた高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)法を発見した。先行技術では低pH値が凝集の傾向を減少させることを提唱したのに対し、発明者らはHPLC方法の使用によって、本発明の非経口剤形において、pH値3~5が、時間経過に伴う不純物レベルの増加という点で化学的安定性に最適であったこと、またセトロレリクス酢酸塩水溶液が、凝集の問題なしにこの高めのpHで調製できることを見いだした。
【0009】
発明者らが発見した新規の不純物は、以下の式Iの化合物によって表される不純物Aであった。
【化2】
【0010】
不純物Bは、以下の式IIの化合物によって表される構造を有するように特徴付けられる。
【化3】
【0011】
不純物Dは、以下の式IIIの化合物によって示される構造を有するように特徴付けられる。
【化4】
【0012】
不純物Fは、以下の式IVの化合物によって示される構造を有するように特徴付けられる。
【化5】
【0013】
先行技術では低いpH値3.0が安定性のための最適なpHであると考えられていたが、本発明では、先行技術によって提唱された2.5~3.0のpH値で、25℃/60%の相対湿度での溶液の貯蔵後に不純物Aのレベルが有意に増加することを見いだした。
【0014】
先行技術のいずれも、式I、II、III、IVの化合物、すなわちそれぞれ不純物A、B、D、Fを同定しなかった。
【0015】
本発明は、安定したセトロレリクス酢酸塩水溶液が凝集の問題なしにpH3~5で調製されうるだけでなく、不純物Aおよび総不純物のレベルも良好に制御され、非経口剤形を25℃/60%RHで少なくとも1カ月、少なくとも2カ月、少なくとも3カ月、または少なくとも6カ月にわたり貯蔵した後に、低濃度であり続けることを見いだした。非経口剤形はまた、2~8℃で少なくとも24カ月にわたり良好な安定性で貯蔵することができる。
【0016】
一態様において、本発明は安定した水溶液を含む非経口剤形を提供し、水溶液は以下を含む:
(i)セトロレリクスまたはその薬学的に許容可能な塩、および
(ii)セトロレリクス塩基5%w/v未満の量の式Iの不純物。
【化6】
【0017】
好ましくは、非経口剤形は、セトロレリクス塩基4%w/v未満の量で式Iの不純物を含む。より好ましくは、非経口剤形は、セトロレリクス塩基3%w/v未満の量で式Iの不純物を含む。より好ましくは、非経口剤形は、セトロレリクス塩基2%w/v未満の量で式Iの不純物を含む。より好ましくは、非経口剤形は、セトロレリクス塩基1%w/v未満の量で式Iの不純物を含む。
【0018】
非経口剤形は浸透圧剤および注射用水をさらに含む。
【0019】
好ましい一態様において、本発明は安定した水溶液を含む非経口剤形を提供し、水溶液は以下を含む:
(i)セトロレリクスまたはその薬学的に許容可能な塩、および
(ii)セトロレリクス塩基1%w/v未満の量の式Iの不純物。
【化7】
【0020】
別の態様において、本発明は安定した水溶液を含む非経口剤形を提供し、水溶液は以下を含む:
(i)セトロレリクスまたはその薬学的に許容可能な塩、および
(ii)セトロレリクス塩基1%w/v未満の量の式Iの不純物。
【化8】
【0021】
別の態様において、本発明はすぐに注射できる無菌の安定した水溶液を含む非経口剤形を提供し、水溶液は以下を含む:
(i)セトロレリクスまたはその薬学的に許容可能な塩、
(ii)pHを3~5の範囲で調整するための有機酸、
(iii)セトロレリクス塩基1%w/v未満の量の不純物A(式Iのデカペプチド)、
【化9】
(iv)浸透圧剤、および
(v)注射用水。
【0022】
一実施形態において、本発明はすぐに注射できる無菌の安定した水溶液を含む非経口剤形を提供し、水溶液は以下から成る:
(i)セトロレリクスまたはその薬学的に許容可能な塩、
(ii)pHを3~5の範囲で調整するための有機酸、
(iii)セトロレリクス塩基1%w/v未満の量の不純物A(式Iのデカペプチド)、
【化10】
(iv)浸透圧剤、および
(v)注射用水。
【0023】
本発明による、すぐに注射できる無菌の安定したセトロレリクス水溶液を含む非経口剤形は、2~8℃で少なくとも1カ月、少なくとも3カ月、少なくとも6カ月、少なくとも12カ月、少なくとも18カ月、もしくは少なくとも24カ月にわたり、または室温(25℃/60%RH)で少なくとも1カ月、少なくとも3カ月、もしくは少なくとも6カ月にわたり貯蔵された時、物理的および化学的に安定したままである。
【0024】
安定した非経口剤形の好ましい実施形態は、2~8℃で少なくとも24カ月または24カ月の貯蔵寿命でラベル付けされうる。非経口剤形のより好ましい実施形態は、少なくとも6カ月の、または室温(25℃/60%RH)貯蔵条件で6カ月の保存寿命でラベル付けされうる。
【0025】
2~8℃で少なくとも1カ月、少なくとも2カ月、少なくとも3カ月、少なくとも6カ月、少なくとも12カ月、少なくとも18カ月、もしくは少なくとも24カ月にわたり、および/または室温(25℃/60%RH)で少なくとも1カ月、少なくとも2カ月 少なくとも3カ月、もしくは少なくとも6カ月にわたり貯蔵した後に、式Iのデカペプチド(不純物A)の濃度は、0.001%~1.0%の範囲内のままで、好ましくはセトロレリクス塩基の重量で0.05~0.5%であり、単一の最大の未知の不純物は、セトロレリクス塩基の重量で0.5%未満のままであり、総不純物は、セトロレリクス塩基の重量で3.5%以下のままである。
【0026】
本発明によるすぐに注射できる無菌のセトロレリクス水溶液を含む非経口剤形は物理的に安定していて、貯蔵寿命の間、水溶液の凝集、ゲル形成、または沈殿がない。凝集またはゲル形成は、溶液の混濁または濁度を測定することによって決定されることができる。FTU単位(ホルマジン濁度単位)またはNTU単位(ネフェロメ濁度単位)で測定される。
【0027】
試験は、ヨーロッパ薬局方9.0に記載のプロトコルに従って実施される。溶液は、混濁/濁度の値が8 FTU/NTU以下である場合、いかなる凝集またはゲル形成もないと言われる。FTU/NTUの値が高いほど、溶液の混濁や濁度が高く、その逆もまた可能である。初期に、および剤形を2~8℃で少なくとも1カ月、少なくとも2カ月、少なくとも3カ月、少なくとも6カ月、少なくとも12カ月、少なくとも18カ月、もしくは少なくとも24カ月にわたり、および/または室温(25℃/60%RH)で少なくとも6カ月にわたり長期保存した後に、本発明によるすぐに注射できる非経口剤形のNTU値は、2NTU未満、好ましくは1NTU未満、より好ましくは0.5NTU未満のままである。それ故に、貯蔵寿命の間に水溶液の凝集、ゲル形成、または沈殿は発生しない。また、貯蔵後に溶液の粘度の実質的な増加は生じない。
【0028】
本発明によるすぐに注射できる無菌の安定したセトロレリクス水溶液を含む非経口剤形は、0.26mg/ml~0.28mg/mlの範囲の濃度のセトロレリクス酢酸塩を含有し、この量は0.25mg/mlのセトロレリクス塩基に相当する。好ましくは、セトロレリクス酢酸塩は、0.25mg/mlのセトロレリクス塩基に相当する濃度で、すぐに注射できる無菌の安定した水溶液中に存在する。
【0029】
一実施形態において、本発明によるすぐに注射できる無菌の安定したセトロレリクス水溶液を含む非経口剤形は、pHを3~6の範囲に調整するのに十分な濃度のpH調整剤を含む。
【0030】
好ましい一実施形態において、本発明によるすぐに注射できる無菌の安定したセトロレリクス水溶液を含む非経口剤形は、pHを3~5の範囲内に、より好ましくは4~4.5の範囲内に調整するのに十分な濃度のpH調整剤としての有機酸を含む。本発明によるすぐに注射できる無菌の安定した水溶液のpHは、例えば3、3.05、3.10、3.15、3.20、3.25、3.30、3.35、3.40、3.45、3.5、3.55、3.60、3.65、3.70、3.75、3.80、3.85、3.90、3.95、4.00、4.05、4.10、4.15、4.20、4.25、4.30、4.35、4.40、4.45、4.50、4.55、4.60、4.65、4.70、4.75、4.80、4.85、4.90、4.95、5.00、5.05、5.10、5.15、5.20、5.25、5.30、5.35、5.40、5.45、5.50、5.55および6、または、その中間にある範囲でありうる。
【0031】
有機酸は、水に可溶性の任意の非経口的に許容可能な有機酸から選択されうるが、好ましくは酢酸、より好ましくは乳酸である。例えば、乳酸は、約0.013mg/ml~0.53mg/mlの範囲の濃度、好ましくは約0.033mg/ml~約0.53mg/mlの範囲の量、およびそれらの中間にある範囲で、本発明によるすぐに注射できる無菌の水溶液に使用されうる。
【0032】
本発明によると、すぐに注射できる無菌の安定したセトロレリクス水溶液は、セトロレリクス(塩基)と有機酸とを、5 0.47:1~19.23:1の範囲の重量比、好ましくは約0.47:1~7.57:1の範囲の重量比、より好ましくは約1.56:1~7.57:1の範囲の重量比、およびそれらの中間にある範囲で含む。
【0033】
本発明によるすぐに注射できる無菌の安定したセトロレリクス水溶液を含む非経口剤形は、溶液の浸透圧を約250~375mOsm/kg、好ましくは270~330mOsm/kgの範囲内に調整するために適切な量の浸透圧剤または等張化剤を含む。本発明による水溶液に使用されてもよい浸透圧剤は、マンニトール、グリセロール、ソルビトール、塩化ナトリウム、塩化カリウム、デキストロース、スクロース、およびこれに類するもの、ならびにそれらの混合物から選択されるが、これらに限定されない。
【0034】
好ましい一実施形態によると、浸透圧剤はマンニトールであり、約40.0mg/ml~60.0mg/mlの範囲の量で、好ましくは約50.0mg/ml~58.0mg/mlの範囲の量で水溶液に使用されうる。好ましい一実施形態において、浸透圧剤はマンニトールであり、すぐに注射できる無菌の水溶液に約55.0mg/mlの量で使用される。
【0035】
本発明の非経口剤形のすぐに注射できる無菌の水溶液は、乳酸の誘導体、ポリマー、または共重合体(ポリ乳酸または乳酸-グリコール酸共重合体など)の形態で乳酸を含有しない。好ましくは、乳酸は単独のpH調整剤として使用される。好ましい実施形態において、すぐに注射できる無菌の水溶液は、トゥイーン80、ポリソルベート、ポロキサマー、スパンなどの界面活性剤を何も含まない。非経口剤形のすぐに注射できる無菌の水溶液は、可溶化または安定化のための界面活性剤、錯化剤、防腐剤または抗酸化剤の使用を回避する。特定の実施形態において、溶液は、シクロデキストリンなどの錯化剤を含まず、アルコールまたはグリコールなどの共溶媒を含まず、防腐剤および抗酸化剤も含まない。
【0036】
別の態様において、本発明は、上記の通りの無菌のセトロレリクス酢酸塩水溶液を提供し、これは25℃の温度および60%の相対湿度で少なくとも1カ月、好ましくは少なくとも3カ月、より好ましくは少なくとも6カ月にわたり安定のままである。
【0037】
さらに別の態様において、本発明は、上記の通りの無菌のセトロレリクス酢酸塩水溶液を提供し、これは2~8℃で少なくとも1カ月、好ましくは少なくとも3カ月、より好ましくは少なくとも6カ月、さらにより好ましくは少なくとも12カ月または18カ月、最も好ましくは少なくとも24カ月にわたり安定のままである。
【0038】
本発明によるすぐに注射できる無菌の安定したセトロレリクス水溶液を含む安定した非経口剤形は、皮下経路または筋肉内経路による投与に適している。すぐに注射できる無菌の安定した水溶液は、直接の皮下投与に適している、すなわち、すぐに注射できるか、またはすぐに自己投与ができ、使用前に再調製または希釈の必要がない。本発明によるすぐに注射できる無菌の安定した水溶液は、凍結乾燥を伴わない。
【0039】
本発明の安定した非経口剤形は自己投与に適していて、患者が少量の水溶液を皮下に自己投与することを可能にする。注射器具の貯蔵部に充填されたすぐに注射できる無菌のセトロレリクス水溶液の量は、約0.5ml~10.0ml、好ましくは1.0ml~2.0ml、より好ましくは1.0mlの範囲である。好ましい実施形態の一つによると、すぐに注射できる無菌の安定したセトロレリクス水溶液は、1.0mlの量で注射器具の貯蔵部に充填される。本発明による非経口剤形は、セトロレリクス酢酸塩の単回用量の投与に適していることが好ましい。一実施形態において、非経口剤形は、単回用量としての自己投与に適した約1.0mlのセトロレリクス酢酸塩水溶液の充填量を含む。一部の実施形態において、非経口剤形は、複数回用量の投与に適した、約10.0mlの充填量のセトロレリクス水溶液を含みうる。
【0040】
本発明の安定した非経口剤形による注射器具は、プレフィルドシリンジ、オートインジェクターなどから選択されうるが、これらに限定されない。好ましい一実施形態において、注射器具はプレフィルドシリンジである。別の好ましい実施形態において、注射器具はペン型オートインジェクターなどのオートインジェクターである。これらのプレフィルドシリンジまたはオートインジェクターは、薬剤溶液の自己投与または自動注入を必要とする患者に適していて、それ故に使いやすい方法を提供する。
【0041】
好ましい一実施形態において、注射器具はプレフィルドシリンジである。プレフィルドシリンジは以下の構成要素、すなわち水溶液を貯蔵する、例えばバレルまたはカートリッジなどの貯蔵部と、貯蔵部の一端に取り付けられた固定針と、針を覆う、かつ針先端の開口部を封止する針シールドまたは先端キャップ(随意に、針シールドまたは先端キャップを覆う硬質シールド)と、貯蔵部中に充填された水溶液を塞いで封止する、貯蔵部のもう一方の端部にあるプランジャーストッパーと、プランジャーストッパーに嵌合し、プランジャーストッパーを薬剤投与中に針端に向かって溶液とともに押すために使用されるプランジャーロッドとを備える。
【0042】
別の好ましい実施形態において、注射器具はオートインジェクターである。オートインジェクターは様々な設計を有することができる。一つの好ましい設計において、オートインジェクターは、以下の構成要素、すなわちプレフィルドシリンジを保持するのに適した中央アセンブリまたは本体部分と、水溶液を貯蔵するバレルまたはカートリッジなどの貯蔵部を含むシリンジと、一端に固定針、かつもう一方の端にプランジャーストッパーを有する貯蔵部とを備える。中央本体部分は、透明な検査ウィンドウを有してもよく、これを通して貯蔵部中の溶液が見える。オートインジェクターは、針シールドまたは先端キャップを保持するキャップ部分を有する前部アセンブリをさらに備え、これは、固定針を覆う、かつ針先端開口部を封止する中央アセンブリに取り付け可能である。オートインジェクターは、ばねアセンブリおよび起動ボタンを有するプラスチックロッドを備える後部アセンブリをさらに含む。水溶液の自己投与中、まず、本体部分から針シールドとともにキャップを取り外して針を露出させ、その後、オートインジェクターの本体部分を投与部位に定置した後に起動ボタンを押すと、ばねアセンブリを有するプラスチックロッドをプランジャーストッパーに向かって押し込み、針を通した患者への水溶液の送達をもたらす。
【0043】
貯蔵部は、バレルまたはカートリッジ(例えば、プレフィルドシリンジのバレル、またはオートインジェクターのカートリッジなど)であってもよい。これはガラス、プラスチック、または高分子材料から選択される材料でできていてもよい。一部の好ましい実施形態において、貯蔵部は、USPタイプIケイ素化ガラスまたは非発熱性ガラス材料などのガラスでできている。その他の実施形態において、貯蔵部は、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー、ポリオレフィン、スチレン-ポリオレフィン系のポリマーおよびブロックコポリマー、ポリカーボネートなどから選択される非ガラスのプラスチックまたはポリマー材料でできている。好ましい一実施形態において、貯蔵部は、プレフィルドシリンジの非発熱性ガラスバレル、またはオートインジェクターの非発熱性ガラスカートリッジである。
【0044】
一つ以上の実施形態において、貯蔵部は一端に固定針を有してもよい。一部の他の実施形態において、貯蔵部は針がなく、使用前に針をルアーチップに取り付けるための装備のあるルアーチップロックを一端に有する。固定針はステンレス鋼でできていてもよい。針先端は、針シールドまたは先端キャップで遮蔽されている、または覆われている。薬剤の滅菌水溶液を含有する貯蔵部はさらに、もう一方の端にあるプランジャーストッパーなどのストッパーで封止される。これらのストッパー、針シールド、または先端キャップは、外部環境に対する物理的な無菌性のバリアを提供する。
【0045】
好ましくは、プランジャーストッパー、針シールド/先端キャップ、またはルアーロックのキャップは、非ガラス構成要素でできている。非ガラス構成要素は、例えばブロモブチルゴム、クロロブチルゴム、USPタイプIIゴム、ポリ-シス-1,4-イソプレンでできた天然ゴム、スチレンブタジエンゴムなどのゴムまたはエラストマー材料であってもよい。他の適切な材料には、高密度ポリエチレンまたは低密度ポリエチレンまたは他のプラスチック材料が含まれる。好ましい実施形態において、プランジャーストッパーはブロモブチルゴムでできていて、針シールドまたは先端キャップは天然ゴムでできている。針シールドは外側で、ポリプロピレンでできている硬質シールドによってさらに覆われていてもよい。それによって針シールドを損傷から保護し、注射前の針シールドの取り外しを向上させる。注射器具アセンブリは、プランジャーストッパーに取り付けられる、かつ薬剤投与中にプランジャーストッパーを溶液とともに針端に向かって押すために使用されるプランジャーロッドを有してもよい。
【0046】
好ましくは、すぐに注射できる無菌の安定したセトロレリクス水溶液は、注射器具の貯蔵部に充填され、貯蔵部内部の上部に空気が実質的に残らない様態で塞がれる。貯蔵部内の水溶液は常に、貯蔵中にエラストマー材料またはゴム材料でできているプランジャーストッパーと接触したままである。ステンレス鋼でできている固定針を有するプレフィルドシリンジの場合、針は針シールドまたは先端キャップで覆われていて、水溶液は、貯蔵中に針および針シールドまたは先端キャップと接触したままである。
【0047】
注射器具は随意に、二次包装で包装または封入されてもよい。二次包装は、ブリスター包装またはアルミニウムパウチおよび/または不透明なカートンであってもよい。随意に、適切な脱酸素剤が二次包装内部に入れられてもよい。
【0048】
非経口剤形の安定性試験は、剤形を2~8℃で、および室温(25℃/60%の相対湿度)で保存することによって行われる。安定性試験中に、すぐに注射できるセトロレリクス無菌溶液は、エラストマーゴム材料でできているプランジャーストッパーおよび針シールドと、ステンレス鋼でできている固定針とに接触したままである。好ましい実施形態において、本発明によるすぐに注射できる無菌のセトロレリクス水溶液を含む非経口剤形は、2~8℃で1年、好ましくは2年にわたり、および室温(25℃、相対湿度60%)で少なくとも6カ月にわたり貯蔵された時に、物理的および化学的に安定したままである。不純物Aの濃度は、室温(25℃/相対湿度60%)で少なくとも6カ月にわたり、および2~8℃で少なくとも24カ月にわたり、充填された注射器具を保管後に、セトロレリクス塩基の重量で1.0%未満のままである。1%以下のレベルを考慮して、Minitabによる不純物Aの計算によって決定されたセトロレリクス水溶液の推定貯蔵寿命は、122カ月であることが分かった。
【0049】
一態様において、本発明は、調節卵巣刺激法を受ける女性において早発黄体形成ホルモンサージを阻害する方法に関し、方法は、
すぐに注射できる無菌の安定した水溶液を含む非経口剤形を含み、水溶液は以下を含む:
(i)セトロレリクスまたはその薬学的に許容可能な塩、および
(ii)セトロレリクス塩基5%w/v未満の量の式Iの不純物。
【化11】
【0050】
好ましくは、安定した水溶液は、セトロレリクス塩基4%w/v未満の量で式Iの不純物を含む。より好ましくは、安定した水溶液は、セトロレリクス塩基3%w/v未満の量で式Iの不純物を含む。より好ましくは、安定した水溶液は、セトロレリクス塩基2%w/v未満の量で式Iの不純物を含む。より好ましくは、安定した水溶液は、セトロレリクス塩基1%w/v未満の量で式Iの不純物を含む。
【0051】
安定した水溶液は、浸透圧剤および注射用水をさらに含む。
【0052】
一態様において、本発明は、調節卵巣刺激法を受ける女性において早発黄体形成ホルモンサージを阻害する方法に関し、方法は、
すぐに注射できる無菌の安定した水溶液を含む非経口剤形を含み、水溶液は以下を含む:
(i)セトロレリクスまたはその薬学的に許容可能な塩、
(ii)セトロレリクス塩基1%w/v未満の量の不純物A(式Iのデカペプチド)。
【化12】
【0053】
一態様において、本発明は、調節卵巣刺激法を受ける女性において早発黄体形成ホルモンサージを阻害する方法に関し、方法は、すぐに注射できる無菌の安定した水溶液を含む非経口剤形を含み、水溶液は以下を含む:
(i)セトロレリクスまたはその薬学的に許容可能な塩、
(ii)セトロレリクス塩基1%w/v未満の量の不純物A(式Iのデカペプチド)。
【化13】
【0054】
好ましい一態様において、本発明は、調節卵巣刺激法を受ける女性において早発黄体形成ホルモンサージを阻害する方法に関し、方法は、すぐに注射できる無菌の安定した水溶液を含む非経口剤形を含み、水溶液は以下を含む:
(i)セトロレリクスまたはその薬学的に許容可能な塩、
(ii)pHを3~5の範囲で調整するための有機酸、
(iii)セトロレリクス塩基1%w/v未満の量の不純物A(式Iのデカペプチド)、
【化14】
(iv)浸透圧剤、および
(v)注射用水。
【0055】
別の態様において、本開示は式Iのデカペプチドを提供する。
【化15】
【0056】
この化合物は、セトロレリクス溶液の不純物であるため、本明細書において「不純物A」と呼ばれる。
【0057】
本開示はまた、式Iのデカペプチドを含む組成物を提供する。
【化16】
【0058】
別の態様において、本開示は、HPLC分析によって式Iのデカペプチドを同定するプロセスを提供し、本プロセスは、
a)水、アセトニトリル、ギ酸を含む希釈剤をクロマトグラフシステムに注入することと、
b)セトロレリクス酢酸塩、希釈剤、不純物原液を含むシステム適合性溶液を注入すること、およびクロマトグラムを記録することと、
c)セトロレリクス酢酸塩、希釈剤を含む標準溶液をクロマトグラフシステムに注入することと、
d)セトロレリクス酢酸塩水溶液を含む試料およびプラセボ調製物をクロマトグラフシステムに注入することと、
e)セトロレリクス酢酸塩に関して不純物およびセトロレリクス酢酸塩の相対保持時間および相対応答係数を決定することと、を含む。
【0059】
本開示はまた、HPLC分析によって同定される式Iのデカペプチドを提供し、本プロセスは、
1.水、アセトニトリル、ギ酸を含む希釈剤をクロマトグラフシステムに注入することと、
2.セトロレリクス酢酸塩、希釈剤、不純物原液を含むシステム適合性溶液を注入すること、およびクロマトグラムを記録することと、
3.セトロレリクス酢酸塩、希釈剤を含む標準溶液をクロマトグラフシステムに注入することと、
4.セトロレリクス酢酸塩水溶液を含む試料およびプラセボ調製物をクロマトグラフシステムに注入することと、
5.セトロレリクス酢酸塩に関して不純物およびセトロレリクス酢酸塩の相対保持時間および相対応答係数を求めることと、を含む。
【0060】
以下、本発明は実施例によって、より具体的に記述される。実施例は、本発明の範囲を限定することを意図するものではなく、単に例示として用いられる。
【0061】
[実施例1A] 分解生成物の同定
セトロレリクスの分解を調査するために、セトロレリクスのペプチド関連物質を、固相ペプチド合成の周知の技法によって調製した。合成は、樹脂上のC末端アミノ酸から順次開始して、一度に一つのアミノ酸をカップリングすることを含む。ペプチド鎖の合成は、カップリング試薬としてN,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIPC)を用いたフルオレニルメチルオキシカルボイル(Fmoc)/tブチル(Fmoc/tBu)を使用して行った。ジメチルホルムアミド中の20%ピペリジンで処理することによってFmoc基を除去した。樹脂上に形成されたペプチドを、トリフルオロ酢酸を使用して最終的に切断して関連物質を得て、これをさらに、0.1%トリフルオロ酢酸を含有するアセトニトリル/水の勾配を使用するC18 Silicaカラム上での逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)によって精製した。精製したペプチド関連物質を凍結乾燥して、純粋な固体形態を得た。これらの関連物質の構造は、Proton NMR、Carbon NMR、質量分析法および元素分析によって特徴付けられ、不純物A、B、D、Fと呼ばれた。
【0062】
不純物-A:Ac-2-D-Nal-4-Cl-D-Phe-3-D-Pal-Ser-Tyr-D-Cit-Leu-Arg-Pro-D-Ala-OH(詳細構造は式Iの化合物として描写)、
【0063】
不純物-B:2-D-Nal-4-Cl-D-Phe-3-D-Pal-Ser-Tyr-D-Cit-leu-Arg-Pro-D-Ala-NH2(詳細構造は式IIの化合物として描写)、
【0064】
不純物-D:Ac-2-D-Nal-4-Cl-D-Phe-3-D-Pal-Ser-Tyr-D-Cit-Leu-OH(詳細構造は式IIIの化合物として描写)、および
【0065】
不純物-F:Ac-2-D-Nal-4-Cl-D-Phe-3-D-Pal-Ser-Tyr-D-Cit-Leu-Arg-Pro-OH(詳細構造は式IVの化合物として描写)。
【0066】
HPLCカラム上で分離された分解ピークは、化合物の相対保持時間に基づいて、これらの化合物であると同定された。HPLC方法の詳細は、以下の実施例1Bに提供されている。
【0067】
[実施例1B]
セトロレリクス、および水溶液サンプルから同定された不純物、すなわち不純物A、不純物B、不純物D、不純物Fを、勾配法(カラム:X-Select CHS C18、(150×4.6)mm、2.5μ(Waters製(アイルランド)、部品番号:186006729)を使用して逆相(C-18)カラム上で分離し、225nm波長で紫外線分光法によって検出および定量した。移動相を0.7ml/分および1.0ml/分の流量で実行した。クロマトグラムの実行時間は150分であった。
【0068】
移動相の詳細:
移動相A:下記の緩衝液と、アセトニトリルおよびテトラヒドロフランとの混合物(比率700:280:20)を、超音波処理によって脱気した。
【0069】
移動相B:下記の緩衝液と、アセトニトリルおよびテトラヒドロフランとの混合物(比率500:480:20)を、超音波処理によって脱気した。
【0070】
緩衝液:2.5gのオルトリン酸二水素アンモニウム、および0.75gの1-オクタン硫酸ナトリウム塩を1000mlの水に入れ、トリエチルアミンを使用してpHを8.0±0.05に調整した。
【0071】
希釈剤:水、アセトニトリル、ギ酸の混合物(比率700:300:1)。
【0072】
【0073】
不純物の原液の調製:
それぞれ3.125mgの不純物A、不純物B、不純物D、不純物Fを、50mlのメスフラスコに取り、超音波処理によって約5mlの希釈剤に溶解し、続いて希釈剤を使用して量を補った。
【0074】
システム適合性溶液の調製:
これは、100mlのメスフラスコに約12.5mgのセトロレリクス酢酸塩標準試薬を計量して移し、超音波処理によって約50mlの希釈剤に溶解し、続いて約2mlの不純物原液を加え、希釈剤を使用して量を補うことによって調製した。
【0075】
セトロレリクス酢酸塩の標準溶液の調製:
セトロレリクス酢酸塩の標準溶液を、20mgのセトロレリクス酢酸塩標準試薬を計量し、250mlのメスフラスコに移し、超音波処理によって約50mlの希釈剤に溶解し、希釈剤で量を補うことによって調製した。2mlのこの溶液を、250mlのメスフラスコに移し、希釈剤を混合しながら使用して、目印まで量を補った。
【0076】
試験溶液の調製:
試験される試料の約10個のプレフィルドシリンジからのセトロレリクス酢酸塩水溶液(上述の実施例に従って調製)を、容器中で混合した。溶液はセトロレリクス酢酸塩、有機酸、浸透圧剤、注射用水を含む。正確に約5.0mlのこの溶液を10mlのメスフラスコに移し、約3mlの希釈剤を加え、溶液を中間振とうしながら5分間超音波処理した。混合しながら希釈剤を使用して量を補った。
【0077】
プラセボは、正確に約5.0mlのプラセボ溶液を10mlのメスフラスコに移し、約3mlの希釈剤を加え、中間振とうしながら5分間超音波処理することによって調製された。混合しながら希釈剤を使用して量を補った。ブランク試料である複製の希釈剤の50マイクロリットルの注射剤をクロマトグラフシステムに注入した。その後、システム適合性溶液を注入し、クロマトグラムを記録した。不純物Dと不純物Fの間の解像度は2.0以上である。これに続いて、標準溶液の複製を6回注入した。その後、試料およびプラセボ調製物をクロマトグラフシステムに注入した。
【0078】
セトロレリクス酢酸塩に関してセトロレリクス酢酸塩および不純物A、B、D、Fの相対保持時間および相対応答係数を表2に示す。
【0079】
【0080】
不純物A、B、D、Fおよび未知の不純物の割合を、希釈剤およびプラセボからのピークを除外して計算した。すべての既知および未知の不純物の総和は、総不純物%をもたらした。
【0081】
同定された不純物(A、B、D、F)の%を、以下の式によって計算した:
【数1】
【0082】
式中、
A1=試験調製物のクロマトグラムにおける各既知の不純物のピーク応答、AS=標準調製物のクロマトグラムにおけるセトロレリクスの平均ピーク応答、WS=セトロレリクス酢酸塩標準試薬の重量(mg)
V=採取した試料の量(mL)
P=セトロレリクス標準試薬(現状のまま)の効力の%、LC=セトロレリクスのラベルクレーム(mg/ml)(0.25mg/ml)、RRF=各不純物の相対応答係数
【0083】
未知の不純物の%を以下の式によって計算した。
【数2】
【0084】
式中、
A1=試験調製物のクロマトグラムにおける各未知の不純物のピーク応答、AS=標準調製物のクロマトグラムにおけるセトロレリクスの平均ピーク応答、WS=セトロレリクス酢酸塩標準試薬の重量(mg)
V=採取した試料の量(mL)
P=セトロレリクス標準試薬(現状のまま)の効力の%、LC=セトロレリクスのラベルクレーム(mg/ml)(0.25mg/ml)
総不純物(%)=既知の不純物%と未知の不純物%の合計。
【0085】
【0086】
調製方法:
注射用水を2℃~8℃の温度で容器内に採取した。マンニトールを加え、透明な溶液が得られるまで攪拌しながら注射用水に徐々に溶解させた。これにセトロレリクス酢酸塩を加え、攪拌しながら徐々に溶解させた。溶液のpHをチェックし、0.1%w/v乳酸溶液の指定量(量)を使用して、本発明の各実施例および比較例について表3に記載の通りのpHに調整した。注射用水を加えて所定量とした。溶液を10~15分間攪拌した。実施例の溶液を、0.2ミクロンのメンブレンフィルターの層を通して無菌的に濾過した。注射器具の貯蔵部(すなわち、充填容量1.1mlの1mlのガラスシリンジのバレル内)に溶液を無菌的に充填した。バレル内の固定針は、充填前は硬質のキャップで覆われたエラストマー針シールドによって塞がれていた。充填後、ガラスシリンジ(バレル)を、シリンジ内部の上部に空気が実質的に残らない様態で真空締めによってプランジャーストッパーで塞いだ。水溶液は貯蔵後に、ゴムでできているプランジャーストッパー、ステンレス鋼でできている固定針、天然ゴムでできている針シールドと接触したままである。
【0087】
実施例1~9および比較実施例10~14のすぐに注射できる水溶液について、異なる段階で化学分析を行った。最初に、濾過前後の溶液中のセトロレリクスの%アッセイを、上述のHPLC方法によって分析した。濾過前後の化学アッセイ%の変化を決定した。
【0088】
次いで、ガラスシリンジに含まれる実施例の溶液について、貯蔵安定性試験を行った。初期の時点で、および室温(25℃/60%の相対湿度)ならびに2~8℃での異なる時点での貯蔵後の非経口剤形の注射器具に充填された濾過溶液中の%アッセイ、式I、II、III、IVの化合物のような分解生成物のレベル、および未知の不純物と総不純物のレベルは、上述の高性能液体クロマトグラフィー法を使用して決定された。
【0089】
室温での6カ月の貯蔵後、不純物A、Bのレベル、単一最大の未知の不純物および総不純物は変化しないままであったか、または変化は小さかったことが分かった。このデータに基づいて、本発明の非経口剤形は、長期間にわたって化学的に安定であることが期待される。溶液は、調製された時、および注射器具に充填され貯蔵された時、凝集の問題または粘度の増大を呈しなかったことが分かった。データはまた、装置の構成要素(例えば、貯蔵期間中に溶液と接触していたゴムストッパー)上または内部にセトロレリクスが吸収または吸着しなかったことを実証した。
【0090】
本発明による、25℃/60%RHおよび2~8℃での安定した非経口剤形についての安定性の結果を、以下の表4および表5に提供する。
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
25℃/60%RHおよび2~8℃での貯蔵後に、異なる時点での追加の中間pH範囲についての安定性の結果を、以下の表7に提示した。
【0095】
【0096】
【0097】
各mLは、セトロレリクス0.25Mgに相当するセトロレリクス酢酸塩、マンニトール54.8mg、pHを5.0に調整するのに適量の乳酸、1mLにするのに適量の注射用水を含む
【0098】
【比較実施例】
【0099】
【0100】
【比較実施例2】
【0101】
米国特許出願公開第2013/0303464号(Patel他)の開示に従って、セトロレリクス酢酸塩水溶液を調製した。組成を以下の表12に示す。
【0102】
【0103】
調製方法:注射用水を2℃~8℃の温度で容器内に採取した。マンニトールを加え、透明な溶液が得られるまで攪拌しながら注射用水に徐々に溶解させた。これにセトロレリクス酢酸塩を加え、攪拌しながら徐々に溶解させた。次いで、氷酢酸を加え、溶液のpHを約3.0に調整した。注射用水を加えて所定量とした。溶液を10~15分間攪拌し、その後0.2μmのメンブレンフィルター(オプティスケール47カプセル、ポリエーテルスルホンメンブレンフィルター、ミリポア製)の層を通して無菌的に濾過した。注射器具の貯蔵部(すなわち、充填容量1.1mlの1mlのガラスシリンジのバレル内)に溶液を無菌的に充填した。バレル内の固定針は、充填前は硬質のキャップで覆われたエラストマー針シールドによって塞がれていた。充填後、ガラスシリンジ(バレル)を、シリンジ内部の上部に空気が実質的に残らない様態で真空締めによってプランジャーストッパーで塞いだ。水溶液は貯蔵後に、ゴムでできているプランジャーストッパー、ステンレス鋼でできている固定針、天然ゴムでできている針シールドと接触したままである。
【0104】
ガラスシリンジに充填したこの比較例(比較例2)の溶液について保存安定性試験を行った。溶液中の不純物A、不純物B、総不純物のレベルを、高性能液体クロマトグラフィー法によって、初期に、および室温(25℃/60%の相対湿度)で貯蔵した後に分析した。結果を以下の表13に提供する。
【0105】
【0106】
米国特許出願公開第2013/0303464号(比較対象)のセトロレリクス酢酸塩の溶液は、室温での貯蔵後に不純物Aおよび総不純物のレベルの有意な増加を示したことが観察された。特に、分解不純物である不純物Aのレベルは、6カ月で有意に増加し、セトロレリクスの重量で1.77重量%に増加する。また、総不純物のレベルは、6カ月でセトロレリクスの重量で2.83%に増加する。
【0107】
対照的に、本発明のすぐに注射できるセトロレリクス酢酸塩水溶液を含む非経口剤形は、室温で長期間にわたって安定したままであり、それによって、貯蔵後に不純物A、他の不純物、または総不純物の分解またはレベルの増加は実質的に発生せず、溶液は24カ月を超える推定貯蔵寿命を有する。
【国際調査報告】