(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-20
(54)【発明の名称】細菌感染および創傷治癒のための医薬組成物を含む局所的抗生物質
(51)【国際特許分類】
A61K 31/351 20060101AFI20230113BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20230113BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20230113BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230113BHJP
A61K 31/722 20060101ALI20230113BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20230113BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230113BHJP
A61K 38/39 20060101ALI20230113BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20230113BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20230113BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20230113BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20230113BHJP
A61K 47/06 20060101ALI20230113BHJP
A61K 47/14 20060101ALI20230113BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20230113BHJP
A61K 47/16 20060101ALI20230113BHJP
A61K 31/575 20060101ALI20230113BHJP
A61K 31/65 20060101ALI20230113BHJP
A61K 31/7036 20060101ALI20230113BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20230113BHJP
C08B 37/08 20060101ALN20230113BHJP
C07D 407/06 20060101ALN20230113BHJP
C07J 9/00 20060101ALN20230113BHJP
C07H 15/236 20060101ALN20230113BHJP
C07D 215/56 20060101ALN20230113BHJP
【FI】
A61K31/351
A61K9/06
A61P17/02
A61P17/00 101
A61K31/722
A61K47/36
A61P43/00 121
A61K38/39
A61K47/10
A61K47/02
A61K47/12
A61K47/32
A61K47/06
A61K47/14
A61K47/38
A61K47/16
A61K31/575
A61K31/65
A61K31/7036
A61K31/496
C08B37/08 A
C07D407/06
C07J9/00
C07H15/236
C07D215/56
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022523839
(86)(22)【出願日】2020-10-19
(85)【翻訳文提出日】2022-05-10
(86)【国際出願番号】 IB2020059815
(87)【国際公開番号】W WO2021079254
(87)【国際公開日】2021-04-29
(31)【優先権主張番号】201941043186
(32)【優先日】2019-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522161812
【氏名又は名称】スラー ヴィシャガン ヴァナンガムディ
(74)【代理人】
【識別番号】100113376
【氏名又は名称】南条 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100179394
【氏名又は名称】瀬田 あや子
(74)【代理人】
【識別番号】100185384
【氏名又は名称】伊波 興一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100137811
【氏名又は名称】原 秀貢人
(72)【発明者】
【氏名】スラー ヴィシャガン ヴァナンガムディ
(72)【発明者】
【氏名】スラー ヴァナンガムディ サブラマニアン
(72)【発明者】
【氏名】スリニバザン マドヴァン
【テーマコード(参考)】
4C057
4C063
4C076
4C084
4C086
4C090
4C091
【Fターム(参考)】
4C057BB02
4C057CC03
4C057CC04
4C057DD01
4C057JJ43
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4C091PA02
4C091PA05
4C091PB05
4C091QQ01
(57)【要約】
細菌皮膚感染、火傷および創傷を処置するための医薬組成物が開示される。それは、活性成分(好ましくはムピロシン)、生体高分子(好ましくはキトサンであって、250,000Da~600,000Daの範囲の分子量、および80%以上の脱アセチル化度を有する)、加水分解されたコラーゲン(好ましくはI型であって、3kDa~6kDaの範囲の分子量を有する)、および、乳化剤とグリコールと可溶化剤とを含む軟膏基剤を含む。本発明は、既存の軟膏よりも改善された安定性を有しており、既存の処置よりも速く皮膚を治癒させて再上皮化させ、したがって、入院期間を短くさせる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細菌感染および創傷治癒のための医薬組成物であって、
前記製剤が以下の構成要素:
-局所的な抗生薬学的活性剤;
-生体高分子;
-加水分解されたI型コラーゲン;
-軟膏基剤;
を含むことを特徴とし、
全ての構成要素が均一に混合されて、pH値6.8~7.2の軟膏を形成する、
医薬組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の医薬組成物であって、
前記局所的な抗生薬学的活性剤は、0.1%(w/w)~5%(w/w)、好ましくは2%(w/w)の量で存在するムピロシンである、
医薬組成物。
【請求項3】
請求項1および2の組成物であって、
前記生体高分子は、0.01%(w/w)~0.5%(w/w)、好ましくは0.05%(w/w)の量で存在するキトサンである、
組成物。
【請求項4】
請求項1~3の組成物であって、
前記加水分解されたI型コラーゲンは、約0.01(w/w)~0.5%(w/w)、好ましくは0.05%(w/w)の量で存在する、
組成物。
【請求項5】
請求項1~4に記載の組成物であって、
前記軟膏基剤は、ワックス状の材料、共溶媒、酸、および緩衝剤 保存剤、抗酸化剤、キレート剤、保湿剤、水を、以下の割合で含む:
-ワックス状の材料は、ポリエチレングリコール(PEG)、例えば、PEG400、PEG500、PEG1000、PEG1200、PEG1500、PEG1800、PEG2000、PEG2200、PEG3550およびPEG4000の単独または組み合わせなどを含む群から選択され、5%(w/w)~80%(w/w)の量で存在する、
-共溶媒は、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、PEG-200、300、400、500を含む群から選択され、5%(w/w)~80%(w/w)の量で存在する、
-酸、例えばHCl、H
2SO
4、HNO
3、乳酸などは、0.005%(w/w)~1%(w/w)の量で存在する、
-増粘剤、例えば、アクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリン酸ナトリウム共重合体/イソヘキサデカンおよびポリソルベート80(商標名-SepineoP600)、微結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロースなどを単独または組み合わせて、0.05%(w/w)~10%(w/w)の量で存在する、
-保存剤は、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロロクレゾール、ソルビン酸カリウム、ベンジルアルコール、フェノキシエタノールなどを含む群から選択され、0.05%(w/w)~2.0%(w/w)の量で存在する、
-抗酸化剤は、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエンなどを含む群から選択され、0.05%(w/w)~5%(w/w)の量で存在する、
-キレート剤は、EDTA二ナトリウムなどを含む群から選択され、0.05%(w/w)~1%(w/w)の量で存在する、
組成物。
【請求項6】
請求項1~5に記載の組成物であって、
前記キトサンは、70%以上、より好ましくは80%以上の脱アセチル化度を有する、
組成物。
【請求項7】
請求項1~6に記載の組成物であって、
前記キトサンは、100 IU/gの細菌エンドトキシンレベルを有する、
組成物。
【請求項8】
請求項1~7に記載の組成物であって、
前記キトサンは、250,000Da~600,000Daの範囲内の分子量を有する、
組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細菌感染および創傷治癒のための医薬組成物に関する。特に、本発明は、局所的な抗生薬学的活性剤;生体高分子;加水分解されたI型コラーゲン;および軟膏基剤を含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、感染を引き起こす細菌に対する体の最初のバリアである。細菌皮膚感染は小さなスポットに影響を及ぼし、または広がって大きな領域に影響し得る。それらは、処置可能な感染から生命を脅かす皮膚状態にまで及び得る。一般的な皮膚感染は、蜂巣炎、丹毒、膿痂疹、毛包炎ならびにフルンケルおよび癰を含む。蜂巣炎は、あまり境界が画定されていない真皮および皮下組織の感染であり、通常、連鎖球菌またはブドウ球菌種に起因する。丹毒は、はっきりと境界が画定された蜂巣炎の表面形態であり、ほぼ例外なく連鎖球菌に起因する。膿痂疹もまた連鎖球菌またはブドウ球菌に起因し、角質層を持ち上げ得て、共通して見られる水疱性効果をもたらす。毛包炎は毛包の炎症である。感染が機械的(mechanical in nature)よりもむしろ細菌性である場合、ブドウ球菌に起因することが最も一般的である。濾胞の感染がより深く、より多くの濾胞を含む場合は、フルンケルおよび癰の段階に移行し、通常は切開およびドレナージを要する。これらの感染は全て、典型的に臨床症状によって診断され、経験的に処置される。
【0003】
創傷は異種性であり、創傷治癒プロセスは多機能の性質であり、外部から導入される多くの因子および化合物によって影響を受ける。創傷薬理学の定義は薬剤および創傷環境におけるそれらの作用の研究である。3つのクラスの薬剤が創傷治癒の処置において用いられる。それらは、薬物、生物製剤および特別な生物製剤、例えばバイオテクノロジーによって産生されるものである。これらの薬剤は薬理学的産物のグループに入る。非薬理学的産物のグループは、創傷治癒に対して直接的な薬理学的作用を有さない産物からなる。これらは相互作用物質および受動物質に分けることができる。
【0004】
局所および全身性の両方の、非常に多くの処置が、グラム陽性およびグラム陰性生物に起因する一次、二次細菌感染の処置、ならびに火傷および創傷治癒に現在のところ用いられている。局所および全身性の細菌感染の処置組成物は典型的に、担体構成要素と組み合わせて活性成分を用いる。活性成分は典型的に、抗生物質/抗菌性、例えば、ムピロシン、フシジン酸、フシジン酸ナトリウム、安息香酸ベンジル、テトラサイクリン、ネオマイシン、ゲンタマイシン、フラマイセチン、シソマイシン、シプロフロキサシン、ポビドンヨードなどを含む。
【0005】
一次感染:
3つの形態の膿痂疹が、臨床、細菌学、および組織学的知見に基づき認識されている。一般的または表面的な膿痂疹の病変は、A群β溶血性連鎖球菌、黄色ブドウ球菌または両方を含んでよく、これらの生物のどちらが一次病原体であるかについて、議論されている。病変は、分厚い粘着性の、紅斑性の縁を有する再発性の汚い黄色い痂皮を有する。膿痂疹の形態は、小児における最も一般的な皮膚感染である。幼児における膿痂疹は非常に伝染性であり迅速な処置を要する。
【0006】
水疱性(ブドウ球菌性)膿痂疹における病変は、常に黄色ブドウ球菌に起因し、表面的であり、壁が薄く、水疱性である。病変が破裂すると、薄い透明のニス様の痂皮が現れ、一般的な膿痂疹の痂皮上のスタック(stuck)から区別することができる。水疱性膿痂疹の区別されるこの外観は、表皮溶解性毒素の局所的作用から生じる。
【0007】
膿瘡は膿痂疹のより深い形態である。病変は通常、足および通常覆われている体の他の領域に生じ、それらはしばしば、衰弱および寄生の合併症として生じる。潰瘍は、痂皮または化膿性物質が除去されると、打ち抜かれた外観を有する。病変はゆっくり治癒し、瘢痕が残る。
【0008】
化膿性連鎖球菌は、疎性結合組織、特に皮下組織の蜂巣炎、びまん性炎症の最も一般的な因子(agent)である。連鎖球菌性の蜂巣炎および丹毒の間に絶対的な特質は見ることができない。臨床上、丹毒はより表面的であり、蜂巣炎の定義されていない境界とは違い、はっきりした縁を有する。
【0009】
毛包炎は、組織学的位置:表面および深度に基づき、2つの主なカテゴリに分けることができる。皮膚感染の最も表面形態は、周囲皮膚を伴わない微小の紅斑性小胞の膿疱によって明らかにされるブドウ球菌性毛包炎である。深い毛包炎においては、感染が濾胞内に深く広がり、生じた毛包周囲炎は、表面毛包炎において見られるよりも顕著な炎症性応答を引き起こす。鬚毛瘡(床屋かゆみ症)においては、一次病変は、毛髪により突き通された小胞膿疱である。顎髭のある男性は、髭を剃った男性よりもこれに感染しやすい。
【0010】
フルンケル(おでき)は、皮下組織を伴う濾胞のブドウ球菌性感染である。フルンケルの好ましい部位は、摩擦および浸軟に曝されている毛深い部位または領域である。癰は、おできの集合体であり、複数の排出(draining)部位を有する大きな硬化した痛みのある病変である。
【0011】
類丹毒は、漁師および肉を扱う者において最も頻繁に生じる良性感染であり、数日間続く皮膚(通常は指または手の甲)の赤みによって特徴付けられる。感染はブタ丹毒菌に起因する。
【0012】
孔紋表皮剥脱症は足底面の表面感染であり、打ち抜かれた外観をもたらす。最も頻繁に感染する領域は、踵 母指球、足の裏(volarpads)および爪先である。湿度および高い温度が悪化因子であることが多い。グラム陽性コリネ型細菌が病変から単離されている。
【0013】
紅色陰癬は、恥骨、趾間(toe web)、鼠径部腋窩(groin axilla)および乳房下溝(inflammatory folds)の慢性の表面感染である。Corynebacterium minutissimumがこれに関与している。
【0014】
毛髪糸状菌症は、腋窩および陰部の毛髪に関与し、異なる密度および色の小結節の発達によって特徴付けられる。コリネ型細菌が毛髪糸状菌症と関連する。
【0015】
二次感染:
間擦疹は、太った幼児または肥満成人において最も一般的に見られる。皮下脂肪において、熱、水分および摩擦は、紅斑、浸軟、または、びらんさえも生じさせる。
【0016】
急性感染湿疹様皮膚炎は、感染滲出液の元である、おできまたは排液する(draining)耳または鼻などの一次病変から生じる。
【0017】
顎髭の須毛部仮性毛包炎(Pseudofolliculitis)は、一般的な障害であり、髭を剃った人の顎髭領域に生じることが最も多い。
【0018】
潰瘍は、皮下組織に浸潤する傷または疾患に起因する深い皮膚感染であり、治癒の際に瘢痕を残す。潰瘍は一次および二次潰瘍に分けることができるが、全て、細菌により二次感染する。
【0019】
創傷治癒
2つのタイプの皮膚創傷が存在する:
a)全層の創傷
b)部分層の創傷
【0020】
a)全層の創傷:
表皮と真皮全層とが失われる。欠陥は、付属器(毛包、分泌腺汗管)よりも深い。これらの創傷は、収縮(筋線維芽細胞の発達と関連する)、肉芽組織形成(線維増殖および血管新生による)、および上皮再形成によって治癒する。収縮は創傷のサイズを40%低減させる。上皮形成は創傷の縁から生じる。
【0021】
b)部分層の創傷:
表皮、および付属器部分を有する真皮の一部は、創傷床内に残る。そのような創傷は、シェービング切除(shave excision)、掻爬および電気乾固、皮膚切除術、ケミカルピーリング、および二酸化炭素(CO2)レーザー外科的処置によって生じる。これらの創傷は、創傷の縁および創傷の基底における付属器の構造からの上皮再形成によって迅速に治癒する。真皮の最も表面の部分のみが失われた場合は、創傷収縮は最小限である。
【0022】
より一般に用いられる活性化合物の一部は局所において見いだされた(found in topical)。一次および二次細菌皮膚感染の処置製剤は、局所フシジン酸、フシジン酸ナトリウム、ムピロシン、安息香酸ベンジル、テトラサイクリン、ネオマイシン、ゲンタマイシン、シプロフロキサシン、ポビドンヨードなどを含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明の目的:
局所的な細菌感染および火傷を処置するために利用可能な治療は、感染を除去するのにかかる時間、損傷した皮膚の再建、および外傷性感染の場合の入院期間の観点から完全に満足なものではない。
【0024】
さらに、ムピロシンのような抗菌剤は不安定であり、ムピロシンを用いて作製された製品の貯蔵寿命を減少させることが知られている。
【0025】
本発明の1つの目的は、感染の除去のための時間、損傷した皮膚の再建、および、入院が必要となった場合の入院期間を減少させる局所的な薬学的抗菌性組成物を提供することである。
【0026】
本発明の別の目的は、改善された貯蔵寿命を有する抗菌性組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明の概要:
本発明は、一次および二次の細菌皮膚感染、火傷および創傷治癒を処置するための局所的な軟膏組成物に関し、以下を含む:
a.活性成分(ムピロシン)(250,000Da~600,000Daの範囲の狭義の分子量および80%以上の脱アセチル化度を有する2単位のN-アセチル-D-グルコサミンおよびD-グルコサミンからなる分岐していない二成分多糖類キトサン(バイオポリマーとして)とともに、一次および二次の細菌皮膚感染の処置において用いられる)
b.好ましくはI型の、加水分解されたコラーゲン(3kDa~6kDaの範囲の分子量を有するポリペプチドである)、および
c.軟膏基剤(乳化剤、グリコールおよび可溶化剤を含む)。
【0028】
本発明はまた、前述の軟膏を作製するプロセス、および、感受性グラム陽性生物、例えば、ブドウ球菌種、連鎖球菌種および嫌気性グラム陰性生物、例えば、ヘモフィルス属、エンテロバクター属、ナイセリア属、ブランハメラ属、パスツレラ属、プロテウス属、シトロバクター属、ボルデテラ属の両方に起因する一次、二次の皮膚感染の処置にも関する。本発明はまた、火傷および切除/切開による切り傷および打撲傷に起因する創傷を治癒させる処置においても示される。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の詳細な説明
実施例以外、または特に指示のない場合、成分の量を表わす全ての数字は、全ての場合において用語「約」によって修飾されるものとして理解される。
【0030】
局所的抗菌剤
局所的抗菌剤は、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)などに起因する細菌感染に関する皮膚を標的化することが意図される。抗菌剤は、細菌リボソームと結合してmRNAリボソーム結合と干渉することによって、細胞壁合成を阻害することにより作用する。別の仮定では、抗菌作用剤は、間違ったアミノ酸を用いてペプチド鎖を製造するようにリボソームを誘導し、それにより、細菌細胞を最終的に破壊すると考えられている。
【0031】
ムピロシン
ムピロシンは、狭域性の活性を有する抗生物質である(主にグラム陽性細菌)。ムピロシンは、蛍光菌の浸水発酵によって生産される抗生物質である。この薬物は、プソイドモン酸であり、他の現在利用可能な抗感染剤とは構造的に関係がない。ムピロシン(プソイドモン酸A)は、抗菌活性を示す蛍光菌の主な発酵代謝産物であり;構造的にムピロシンに類似しており似ているがより強力でない抗菌活性を有する少ない方の発酵代謝物は、プソイドモン酸B、C、およびDとして同定されている。ムピロシンは、塩基(base)およびカルシウム塩として市販される。ムピロシンは、白~灰白色の粉末として生じ、20℃で、水中に1mg/mLおよびアルコール中に0.5mg/mLの溶解度を有する。この薬物は、22℃でpKaが5である。ムピロシンの分子式はC26H44O9であり、分子量は500.629g/molである。それは、エタノール中に可溶性の白色粉末である。
【0032】
薬理学
ムピロシンは、膿痂疹、黄色ブドウ球菌、β溶血性連鎖球菌および化膿性連鎖球菌に起因する皮膚の細菌性疾患の処置のために、局所的に(皮膚に対して)用いられる抗生物質である。それはまた、鼻の内側にコロニー形成したメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)を除去するために、患者および保健所で働く人々によって鼻腔内に(鼻の内側に)用いられる。
【0033】
作用機序
ムピロシンは、黄色ブドウ球菌におけるタンパク質およびRNA合成を著しく阻害する一方で、DNAおよび細胞壁形成は、より少ない程度に負の影響が及ぼされることが示されている。RNA合成の阻害は、1つのアミノ酸(イソロイシン)の欠如に応答する防御機構であることが示された。
【0034】
薬物動態
無傷のヒト皮膚を通るムピロシンの体内吸収は最小限である。体循環に到達する任意のムピロシンは、主に不活性のモニック酸(monic acid)に急速に代謝されて、腎排泄によって除去される。
【0035】
適応症
ムピロシンは、黄色ブドウ球菌および化膿性連鎖球菌の感受性株に起因する二次感染の外傷性皮膚病変(最大で長さ10cm、または面積100cm2)の処置に適応される。局所的な製品のほとんどは、クリームまたは軟膏のいずれかとして製剤化されている。
【0036】
以下のような一次および二次の細菌皮膚感染の局所的な処置に適応される:
一次皮膚感染:膿痂疹、毛包炎、フルンケル症および膿瘡。
二次皮膚感染:感染性皮膚症、例えば感染性湿疹、感染性の外傷性病変、例えば擦過傷、昆虫咬傷、小さな創傷および小さな火傷。
予防的に、小さな創傷、切開および他の清浄化病変の細菌汚染を避けるため、および、擦過傷および小さな切り傷および創傷の感染を防ぐために用いられ得る。
【0037】
ムピロシンは、細菌におけるイソロイシル・トランスファーRNA合成酵素を阻害することによって作用し、それにより、細菌タンパク質の合成が止まる。この特定の作用モードおよびその独特の化学構造に起因して、ムピロシンは、他の臨床的に利用可能な抗生物質といかなる交差耐性も示さない。ムピロシンは、処方どおりに用いれば、耐性菌の選択のリスクがほとんどない。ムピロシンは、最小阻止濃度では静菌特性を有し、局所的に適用された場合に到達するより高濃度では殺菌特性を有する。
【0038】
キトサン
キトサンは、本発明において、局所的作用部位において創傷治癒を高める機能的賦形剤として用いられる。キトサンは、β(1->4)の様式で連結された2単位のN-アセチル-D-グルコサミンおよびD-グルコサミンからなる分岐していない二成分多糖類である。製品は、キトサンの部分的脱アセチル化によって得られ、70%以上の脱アセチル化度をもたらす。キトサンは、小エビおよびカニの殻から抽出され、両方とも、ヒト用途に適切な食用源由来であるはずである。より低い脱アセチル化度で抽出されたキトサンは、相乗効果の提供において効果的でないことが分かった。
【0039】
キトサンは、痒みを減少させ、影響を受けた皮膚のための完全な解決となる。痒みは日常生活を著しく制約し得る現象であり、痒みの原因には、蚊咬傷、アレルギー反応、日焼け、神経皮膚炎、乾癬、アトピー性皮膚炎、じんましんおよび乾燥肌が含まれる。これらの全身の炎症性疾患の面積のほとんどは、赤み、腫れおよび水疱を伴う。高齢者は特に、極度の乾燥肌になる傾向に起因して痒みを患う。
【0040】
キトサンは創傷治癒を加速させる。改善された創傷治癒および抗菌活性の組み合わせは、キトサンを、創傷被覆、歯周処置のような生体医学用途に特に有用にさせる。キトサンは、5000Da~5,000,000Daの範囲の様々な分子量において利用可能である。しかしながら、本発明者らは、製剤化された製品の適応症に対する優れた治療的効果を単独で確実にする250,000Da~600,000Daの鎖範囲(chain range)内の分子量を試験によって注意深く選択した。80%以上の脱アセチル化度は、キトサンがより多くの遊離アミンを有して、創傷のより良好な接着および迅速な効果のためにアニオン性粘液膜と反応するためも重要である。
【0041】
上皮再形成。初めに全ての創傷は滲出液を排出するので感染しやすい。したがって、新しい創傷領域に対する任意の局所的適用は、より速い創傷治癒を確実にするために、好ましくは100 IU/g未満のエンドトキシンレベルであるべきである。
【0042】
コラーゲン
コラーゲンは、「接着剤(glue)」を意味するギリシャ語の「kolla」と、「産生するもの(something that produces)」を意味するフランス語-geneに由来する。換言すれば、コラーゲンは、「接着剤を産生する(glue-producing)」タンパク質である。
【0043】
コラーゲンは、ヒト体内で最も大量のタンパク質である(特にI型コラーゲン)。それは、筋肉、骨、皮膚、血管、消化器系および腱に見られる。
【0044】
アミノ酸は、コラーゲンのビルディング・ブロックである。体は、鶏肉、乳製品、および肉などのタンパク質が豊富な食物から飲食物アミノ酸を分解した後に、コラーゲンを産生することができる。ビタミンCはコラーゲン合成に必須である。それは、コラーゲン形成アミノ酸を結合させるのを助ける。
【0045】
コラーゲンのタイプ
体内の最も大量のタンパク質であるコラーゲンは、全タンパク質の3分の1よりも多くを構成している。それは、グリシン、プロリン、およびヒドロキシプロリン(新たなコラーゲンを体が生成するのを助けるアミノ酸)が豊富である。
【0046】
2ダースを超える公知のタイプのコラーゲンが存在する。しかしながら、体のコラーゲンの約90%はI型であり、最も一般的な5つのタイプは以下である:
・コラーゲンI:最も大量であるので、I型は、体のほぼ全ての組織:腱、皮膚、骨、軟骨、結合組織および歯に存在する。I型コラーゲン原線維は非常に強力である。壊れることなく高い圧力に耐えることができ、グラムで比較して(gram for gram)、コラーゲンIはスチールよりも強い。
・コラーゲンII:主に軟骨において見られる。
・コラーゲンIII:III型は、I型に沿って、筋肉、臓器、動脈、および、細網線維と呼ばれるある種の特別な結合組織に見ることができ、肝臓、脂肪組織、骨髄、脾臓、およびそれよりも多くを形成する。
・コラーゲンIV:上皮の下にある細胞外マトリックスの層である基底層(細胞を支持するネット)を形成する。基本的に、基底層は、皮膚細胞に外部からの支持を与える。
・コラーゲンV:コラーゲンVは、骨マトリックス、角膜、ならびに、筋肉、肝臓、肺、および胎盤の細胞間に存在する結合組織(間質マトリックスとしても知られる)に見ることができる。
【0047】
コラーゲンおよび創傷管理
ほとんどの創傷では、傷ついた組織をその傷ついていない状態に完全に置き換えることは不可能である。創傷は、組織を再結合させるための特別な物質を用いて治癒されなければならない。コラーゲンは、皮膚の治癒を助ける:
1.損傷の数秒以内に、コラーゲンは創傷において凝血を活性化して出血を止める。
2.血管が原線維を形成すると、瘢痕がより硬く見えるようになるまで、線維芽細胞(コラーゲンを製造する場所)が、より多くのコラーゲン(別名「接着剤(glue)」)を設ける(lay down)。
3.創傷後の第2週中に、白血球が創傷領域を徐々に捨てて、細胞は、I型コラーゲン(正常な皮膚を構成するタイプ)を作り出し始める。
【0048】
軟膏は、様々な体表面に局所的に用いられる、APIを含む粘性の半固体製剤である。軟膏のビヒクルは軟膏基剤として知られる。基剤の選択は、軟膏の臨床適応症に依存し、異なるタイプの軟膏基剤が通常用いられる:
-炭化水素基剤、例えば硬質パラフィン、軟質パラフィン
-吸収基剤、例えば羊毛脂、みつろう
【0049】
両方の基剤は、油質で脂肪分の多い性質であり、それにより、皮膚への軟膏の適用およびその最終的な除去における困難性のような望ましくない効果をもたらす。さらに、このことは、使用者の衣服の染色をもたらす。
【0050】
ヒトの皮膚のpH値は4.5~6である。新生児の皮膚pHは中性(pH7)により近いが、皮膚はすぐに酸性になる。酸性度は細菌を死滅させるので、これはおそらく幼児の皮膚を保護するために生来設計されたものであると考えられる。年を重ねると、皮膚は次第に中性になり、以前のように多くの細菌を死滅させない。これは、皮膚が弱くなって問題を抱え始める理由である。実際に皮膚問題または皮膚疾患を有するときには、pH値は6を超えている。このことは、若年成人の皮膚に近いpH値を有する外用剤(topical)を選択する必要があることを示している。
【0051】
アルカリ性pHへのわずかなシフトは、微生物が繁殖するのにより良好な環境を提供する。軟膏製剤中の活性化合物は、イオン化状態で利用可能であるが、軟膏の場合、これらは非イオン化状態で存在している。クリーム/軟膏製剤は美容的に上品であり、活性化合物はイオン化状態で利用可能であり、薬物は皮膚層に迅速に浸透することができ、それにより製剤が全体的に患者フレンドリになるので、クリーム/軟膏製剤は一般に、局所剤形の設計および開発における処方の最初の選択肢である。本発明のムピロシン軟膏のpHは皮膚に優しく、6.8~7.2の範囲である。他方で、市販される軟膏は、7.5よりも高いpHを有しており、脂肪分が多く染色性である。市販製品のより高いpHはアルカリ度のせいで皮膚に刺激性であり、一方で、本発明は、ほぼ中性のpHを有しており、非刺激性を確実にし、そのことは前臨床動物モデル評価によって実証されている。
【0052】
抗菌性-ムピロシンと、キトサンおよび加水分解されたコラーゲンの組み合わせの軟膏基剤における使用の理論的根拠:
現行の皮膚の治療には、いくつかのアンメット・メディカル・ニーズが存在し、それを対処しなければならない。例えば、皮膚の状態は、炎症、刺激および痒みを伴うアレルギーにしばしば起因し、したがって、これらの状態は細菌感染によってさらに悪化する。非常に多くの局所的処置が現在のところ一次および二次の細菌皮膚感染において用いられている。しかしながら、皮膚を保護し、表面出血、創傷および火傷を制御するための効果的な治療はない。このニーズを手頃なコストで満たすために、本発明は、全ての国/地域社会にわたる集団の分散したセグメントに対する安全な治療を確実にする。本発明-新規の軟膏製剤-は、創傷治癒特性を有する、キトサン、生体高分子および加水分解されたI型コラーゲンの独特な組み合わせであり、細菌制御/感染処置(特に黄色ブドウ球菌に起因するもの)のために、抗細菌性-ムピロシンとともに、元の自然状態の皮膚マトリックスを作る。
【0053】
ムピロシンのような局所的抗生物質は、小さな切り傷、擦り傷および火傷に入り込む細菌に起因する感染を防ぐのを助ける。ムピロシンのような抗生物質を用いて小さな創傷を処置することは治癒を確実にする。創傷が処置されないままでいると、細菌が増殖し、痛み、赤み、腫れ、痒み、および滲出を引き起こす。処置されない感染は、最終的に拡散し得て、さらによりいっそう重症になる。
【0054】
製剤中にキトサンを含めることは多くの特質を有しており、それらは皮膚病の処置において非常に本質的である。抗菌剤ムピロシンとともに、キトサンと加水分解されたI型コラーゲンとを組み合わせることは独特かつ新規であり、世界中で利用可能になっていない。組み合わせの概念は、抗菌剤ムピロシンと、キトサンおよびコラーゲンの物理的、化学的および治療的特性を考慮することにより正当化される。本出願人は、ムピロシンの治療的効果が、キトサンおよびコラーゲンの取り込みによって高められることを見いだした。
【0055】
キトサンは、フィルムを形成する特性があり、生体適合性および非アレルギー性であり、皮膚の上皮再形成を確実にし、皮膚をその正常な元の状態に若返らせ再生するのを助ける。さらにまた、創傷治癒を加速させて、生分解性のマイクロフィルム形成を通して創傷にバリアを提供する。それはさらに、擦り傷に起因する表面出血を制御して、そのカチオン性の電荷によって病原体の移動性を確実にする。これだけで、迅速な創傷治癒効果が提供される。
【0056】
製剤中のコラーゲンの役割は、迅速な皮膚の上皮再形成のためのマトリックスを作ることと、皮膚をその本来の状態に戻すことである。任意の抗菌治療において、ムピロシンのような抗菌剤は、感染の制御/処置を対処する。しかしながら、創傷治癒、皮膚の再生および若返り、皮膚のバイオフィルム保護、出血、および、ある部位から別の部位への病原体の移動性など問題は、これまで従来技術では対処されてこなかった。
【0057】
本発明は、キトサンおよびコラーゲンをムピロシンの軟膏マトリックスに取り込む革新的な技術によってこのギャップを埋め、したがって、創傷治癒を加速する本質的な要求を確立し、上記に定義した現在の治療におけるギャップを対処する。
【0058】
キトサン/ポリグルコサミンは、ヒアルロン酸と構造的に似ており、瘢痕のない創傷治癒を助けることが期待される。ヘパリンは、線維芽細胞増殖刺激因子(FGF)の導入および安定化によって分裂促進因子を高める。ポリグルコサミンは、ヘパリンと複合体を形成して、成長因子の半減期を延長する作用をすることによって、組織成長および創傷治癒を促進し得る。キトサンの特性は、血液を急速に凝血させるのを可能にし、バンデージおよび他の止血剤としての使用について米国で最近になって承認を得た。火傷/切り傷/創傷は、任意の場所および時間に、即時の医療支援の不存在下で発生し得て、手当のされない創傷/切り傷/火傷はしばしば、合併症および高い可能性の二次細菌/真菌感染をもたらし、治療的応答が必要な原因となっている病状を何倍にもする。本発明は、皮膚状態に対して重大な影響を有する、医療介入、便宜性、費用負担、信頼性、有効性、安全性の観点から、応答の第一ラインを提供する。
【0059】
現在のところ、創傷治癒および止血のために利用できる処置はない。皮膚の症状において、現在のところ利用可能な治療は、皮膚の保護や止血などの問題を対処しない。本発明の独特の革新的な製剤は、皮膚の保護および部位における出血の制御とともに、処置によって皮膚状態のケアをする。したがって、この未だ対処されていないギャップは、この革新的な技術によって満たされ、そのような場合における問題を最小限化/除去するのに非常に貴重である。さらに、医療支援システムに対する圧力がますます高まり、その付随する希少性(scarcity)/高コストにより、そのような場合における以下の問題に対処することが世界中で緊急に必要とされている。
-患者が処置を待つ時間が長すぎる
-不要な入院
-回避可能な来院頻度
【0060】
入院期間の短縮は、ほとんどの場合において取り組まれるべき重要な問題である。
【0061】
本発明の新規の軟膏は、周囲条件でほぼ安定/有効であり、輸送/保管中に特定の温度制御を必要とせず、したがって、社会全般の利益に対する社会的目標を達成する。それは、証明された相乗効果およびキトサンまたはコラーゲンを含まないムピロシン組成物と比較して増強された医学的有効性を有する。
【0062】
さらに、特許番号US6,489,358の従来技術に説明されているように、ムピロシンは、適合溶媒中に可溶化されない場合は安定性の問題を有している。本発明の製剤は、安定で安全かつ治療的に増強された製剤を与えるための最適化された比の溶媒および共溶媒の割合を用いることにより、この安定性問題を克服した。活性のムピロシンが適切な溶媒によって製剤中に分散されていない場合は、室温で保管した場合でさえ急速に分解しやすい。溶媒を正しく選択するだけで、より重要なことには、生体高分子キトサンおよび天然ペプチドコラーゲンの取り込みによって、本発明の製剤は安定化された。活性のムピロシンの分解速度は、比較的より遅いことが分かる。
【0063】
本発明において達成される利点は以下に挙げるとおりである:
a)本発明のために採用された新規の手法により、安定の軟膏製剤として初めて、キトサンおよびコラーゲンが組み込まれたムピロシンを有する。
b)この製剤は、小さな切り傷、火傷、切除および切開創傷の処置において、および、重要なことに、グラム陽性微生物に起因する細菌皮膚感染に適応される。
c)この製剤のこの組成物は、GlaxoSmithKline(GSK)のT-Bactのような現在利用可能なムピロシン組成物と比較して、より良好な治療的効果を生じる軟膏を開示し、良好な散布可能性および皮膚付着を有しており、ムピロシンの高い透過性および拡散を確実にする。一般に、現在のところ利用可能な軟膏組成物は、脂肪分の多い製剤であり、散布可能性がないので、皮膚に長期間付着して透過性を確実にする。一方で、本発明の製剤は、脂肪分の問題を対処し、APIの透過性および拡散可能性をかなり改善するために、より良好な散布可能性を有する油っぽくない軟膏基剤を製剤化した。
【0064】
組成物中の生体高分子およびコラーゲンの存在は、活性を局在化させる、より良好かつより長い皮膚付着をもたらし、現在利用可能な市販製品と比較して高い活性を達成する。
【0065】
本発明の一実施態様によれば、ヒト皮膚上の細菌皮膚感染/火傷および創傷治癒の、この局所的処置のための組成物が提供される。組成物は以下を含む:
a)約0.1%~約5%(重量)、好ましくは約2重量%の酸形態の活性化合物ムピロシン。
b)約0.01%~約0.5%(重量)、好ましくは約0.05重量%のキトサン。本発明に好ましい分子量鎖長は、250,000Da~600,000Daの範囲である。
【0066】
【0067】
c)約0.01%~約0.5%(重量)、好ましくは約0.05重量%の加水分解されたコラーゲン(3kDa~6kDaの範囲の分子量)。
【0068】
本発明の別の実施態様によれば、ヒト皮膚を上記に開示された組成物と接触させるステップを含む、一次、二次の細菌皮膚感染および火傷、創傷治癒を処置するためのプロセスも提供される。
【0069】
したがって、本発明は以下を含む組成物を開示する:
a)一次、二次の細菌皮膚感染および小さな切り傷、火傷を処置するための、酸形態の活性成分。
b)特定の分子量範囲の、2単位のN-アセチル-D-グルコサミンおよびD-グルコサミンからなる、分岐していない二成分多糖類である、キトサン構成要素
c)特定の分子量範囲の、海産由来のペプチドである、コラーゲン構成要素
d)塗布基剤。
【0070】
本発明の一実施態様では、酸形態の活性成分は、好ましくはムピロシンである。
【0071】
別の実施態様では、酸形態の活性成分(好ましくはムピロシン)は、組成物の重量に基づく重量で約0.1%~約5%の量で組成物中に存在する。
【0072】
さらなる一実施態様では、組成物中に存在するキトサンは、組成物の重量に基づく重量で約0.01~約0.5%の量で存在する。
【0073】
さらなる一実施態様では、組成物中に存在する加水分解されたコラーゲンはI型であり、組成物の重量に基づく重量で約0.01~約0.5%の量で存在する。
【0074】
本発明の好ましい実施態様によれば、ヒト皮膚上の細菌皮膚感染、火傷および創傷治癒の局所的処置のための組成物が提供され、組成物は、約0.001%(w/w)~約5%(w/w)(重量)、好ましくは約2%(w/w)のムピロシン、約0.01%~約1%(重量)、好ましくは約0.05重量%のキトサン(分子量-300,000Da~600,000Da)、および、約0.01%~約1%(重量)、好ましくは約0.05重量%の加水分解されたコラーゲンを含み、
-塗布基剤は、ワックス状の材料、共溶媒、酸、および緩衝剤保存剤、抗酸化剤、キレート剤、保湿剤、水を含み、全ての重量は組成物の重量に基づいており、
-ワックス状の材料は、ポリエチレングリコール(PEG)、例えば、PEG400、PEG500、PEG1000、PEG1200、PEG1500、PEG1800、PEG2000、PEG2200、PEG3550およびPEG4000の単独または組み合わせなどを含む群から選択され(約5%(w/w)~80%(w/w))、
-共溶媒は、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、PEG-200、300、400、500などを含む群から選択され(約5%(w/w)~80%(w/w))、
-酸、例えば、HCl、H2SO4、HNO3、乳酸など(約0.005%(w/w)~1%(w/w))、
-増粘剤、例えば、アクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリン酸ナトリウム共重合体/イソヘキサデカンおよびポリソルベート80(商標名-SepineoP600)、微結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロースなどの単独または組み合わせ(約0.05%(w/w)~10%(w/w))、
-保存剤は、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロロクレゾール、ソルビン酸カリウム、ベンジルアルコール、フェノキシエタノールなどを含む群から選択され(約0.05%(w/w)~2.0%(w/w))、
-抗酸化剤は、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエンなどを含む群から選択され(約0.05%(w/w)~5%(w/w))、
-キレート剤は、EDTA二ナトリウムなどを含む群から選択される(約0.05%(w/w)~1%(w/w))。
【0075】
本発明は、付随する実施例に関してさらに明瞭化されるが、決して本発明の限定を意図しない。
【実施例】
【0076】
プロセスは、製品のより良好な貯蔵寿命安定性および高い治療的効果のために、活性の薬物分子ムピロシンとともに、キトサンおよびコラーゲンの添加を確実にするように達成された。
【0077】
【0078】
キトサンおよびコラーゲンを含む、局所的に適用される革新的な抗菌性ムピロシン軟膏の治療的有効性は、皮膚感染の原因となる生物に対する活性ムピロシンの顕著な抗菌活性、無傷の皮膚に浸透する活性の独特な能力、および、キトサンおよびコラーゲンの創傷治癒および緩和特性に起因する。最終製剤のほぼ中性のpHは、その優しい組成によって皮膚の非刺激を確実にする。
【0079】
創傷治癒および相乗作用
本発明の製剤は、他の成分(生体高分子キトサン)と抗菌剤のコンビナトリアル効果を有し、感染領域上にマイクロフィルムを提供し、二次感染を防止する。キトサンはまた、影響を受けた領域における血液凝固時間も減少させ、したがって失血を防止する。コラーゲンは表皮層において補助し、活性ムピロシンを用いた細菌処置が達成された後に、皮膚がその元の状態へ上皮再形成/若返りするのを確実にする。
【0080】
高い有効性、相乗作用、および安定性を支持する実験的データ:
複数の研究が、本出願人に代わってApex Laboratories Private Limitedによって委託された:
【0081】
A. Mahatma Gandhi Medical College&Research Institute,Sri Balaji Vidyapeeth Deemed University,Pillaiyarkuppam,Cuddalore road、Puducherry-607403(インド)によって2020年2月に実施されたwistarラットにおける感染創傷に基づく、GlaxoSmithKline(GSK)のT-Bact軟膏のムピロシン軟膏と比較した、本発明のムピロシン軟膏の軟膏製剤の有効性の決定
【0082】
この研究の目的は、本発明のムピロシン軟膏の有効性を評価し、感染創傷治癒の病態生理学を正確に再現しヒトでのさらなる研究のための正当な基礎として役立つことが期待されるラット感染モデルにおけるGSKのムピロシン軟膏(T-Bact軟膏)と比較することであった。研究に用いた本発明の製品は、生体高分子(ポリ-β-(1,4)-2-アミノ-2-デオキシ-D-グルコース)(q.s.)と、保存剤として用いたベンジルアルコールIP 1.0% w/wおよびフェノキシエタノールIP 0.5% w/wとを含む軟膏基剤中、ムピロシンIP 2.0% w/wを含んでいた。合計24匹の動物を以下のように分類した試験に供した:
群I:正常コントロールのラット-創傷あり-感染なし
群II:ネガティブコントロールのラット-創傷あり-MRSA感染あり
群III:標準的なコンパレーター(ムピロシン軟膏-GSKによるT-Bact軟膏)で処置されたラット
群IV:試験(本発明のムピロシン軟膏)で処置されたラット
【0083】
上述のようにパンチ生検方法を用いて創傷を作製し、カウントが7.03±0.37 log10に到達するまでMRSAを感染させた。動物を以下の群に従って割り当て、12日の期間にわたり毎日処置を行なった。
【0084】
以下の微生物学的推論が導かれた:
群2:創傷が処置されないままであったので、この群は連続的に細菌増殖した。試験期間後、動物を従来の処置によって処置した。
群3:試験期間中、この群における動物の創傷から回収されたコロニー形成単位(CFU)は減少した。このことは、動物が抗菌性軟膏(GSKのT-Bact軟膏)に応答することを示唆した。
群4:試験期間中、この群の全ての動物においてCFU数の減少が観察され、apexの抗菌性ムピロシン軟膏に対するポジティブの応答が示唆された。この群は、6日目および9日目に細菌カウント(CFU)のかなりの減少を示した。
【0085】
2つの群(本発明のムピロシン軟膏およびGSKのT-Bactのムピロシン軟膏)に関するデータに対する微生物学的な統計分析は、定量的に、本発明のムピロシン軟膏で処置された群において、6日目および9日目にMRSAのCFU数のより早期の減少が存在するという結論を導いた。
【0086】
以下の組織病理学推論が導かれた:病理組織学的検査報告によって、正常およびGSKのT-Bact軟膏で処置した群と同程度の群4における健康組織の治癒プロセスが明らかになり、より多くの組織の肉芽組織形成が群4において見られた。また、病理組織学的には、群4では他の群と比較して肉芽組織(治癒組織)がより多く見られ、より良好の創傷拘縮%(創傷治癒率)と符合する。
【0087】
最後に、血液学的評価も行ない、それにより、正常コントロール群と同程度の非感染性サンプルの結果が試験終了時の群4について明らかとなった。組織炎症浸潤の健康な治癒プロファイルが、血液パラメーターの評価によって見ることができる。
【0088】
得られた上記の試験結果から、本発明のムピロシン軟膏は、GSKのムピロシン軟膏(T-Bact軟膏)と比較した場合、より効果的かつより良好な創傷治癒成果を提供すると結論付けられ得る。換言すれば、ムピロシンの有効性が、注意深く選択された特性のキトサンおよびコラーゲンの存在に起因して増強され、それにより、ムピロシン、キトサンおよびコラーゲンの間の相乗効果が確立されたことが明らかである。
【0089】
2つの他の実験セットを行なった:
-Wistarラットにおける実験的に誘導された火傷の創傷治癒に対するムピロシン軟膏およびT-Bact軟膏の有効性評価;および
-Wistarラットにおける実験的に誘導された切除創傷治癒に対するムピロシン軟膏およびT-Bact軟膏の有効性評価
【0090】
両方の試験はRAK College Of Medical Sciences,Ras Al Khaimah,UAEによって、2019年12月に行なわれた。
【0091】
これらの実験の結果の要約を、以下の表において、参照製品(T-Bact)に対するムピロシン軟膏の上皮形成の期間(eriod)の観点から示す。
【0092】
【0093】
切除創傷、火傷および感染創傷に関する動物モデルにおいて実施された前臨床有効性試験から、本発明の製品の治癒速度が、試験された参照製品と比べて優れていることが明らかである。
【0094】
上皮形成の速度は、上記の表に見られるように、本発明のムピロシン軟膏に関するより迅速な治癒を明らかにし、ムピロシン軟膏で処置された群の治癒は、コントロール製品およびGSKのT-backよりも速く治癒した。16日目の火傷収縮は、本発明について79%で有意により高く、GSKのT-backについてはたった67%であり、一方で、コントロールの未処置群は、たった40%の創傷収縮を生じた。
【0095】
別の感染創傷モデル試験を行ない、その結果は、12日目に、ムピロシン軟膏について観察された創傷収縮測定値は75.2%であり、参考製品についてはたった69%であったことを結論付ける。
【0096】
火傷創傷治癒の速度の減少における有意性は、本発明におけるキトサンおよびコラーゲンの存在が寄与している。活性ムピロシンと組み合わせたキトサンおよびコラーゲンは、創傷治癒の相乗効果をもたらし、それは、キトサンもコラーゲンも含まない参照製品では顕著でなかった。
【0097】
さらに、感染創傷モデルを用いた細菌培養試験は、参照製品と比較して、試験終了時に、創傷部位における有意な微生物コロニー形成を示さなかった。このことは、キトサンおよびコラーゲンの両方の存在が、本発明の製品中の活性ムピロシンの本来備わっている抗菌特性を妨げないことを示している。
【0098】
さらなる病理組織学的および血液学的評価により、本発明の製品は、治癒中に、より多くの肉芽組織を生産し、したがって、創傷収縮を促進することが明らかである。評価した血液学的パラメーターは、正常皮膚に匹敵することを示している。上記観察は、いかなる曖昧なポートレートもなく、本発明者らの発明の優れた有効性である。
【0099】
キトサンおよびコラーゲンを伴うムピロシンの活性は、影響を受けた皮膚に対して相乗効果を生じ、処置期間のかなりの減少を保証する。組成物中のキトサンおよびコラーゲンは、皮膚がその天然の形態になるのを促進する。この組成物において見られる相乗作用は、現在利用可能ないかなる市販製品においても見られない。これらのクレームは、火傷、切除創傷および感染創傷モデルの治癒に関するラットに対して行われた動物モデル試験から得られた結果によって実証された。
【0100】
製剤の安定化:
*製品パックに示される市販製品の貯蔵寿命は12ヶ月であったが、安定性試験は比較分析のために15ヶ月間続けた。
【0101】
安定性試験によって、本発明の製品は、ICHの安定性ガイドラインによって試験した場合、試験された市販製品よりも安定であることが明らかである。市販製品は、含有量が約12%減ることが示され、本発明の製品は、活性ムピロシンの含有量は5.6%の減少を示しただけで、その減少は市販製品のたった半分である。APIムピロシンも同一仕様が確認されており、この製剤は、革新的な市販製品よりも相対的にはるかにより良好に分子を安定化させている。このことは、API分子を用いた治療が、市販製品と比較して優れた処置を提供することを確実にする。
【0102】
上記データから、本発明の製品の安定性が市販製品よりも優れていることが明らかである。
【0103】
上記説明は多くの特殊性を含んでいるが、これらは本発明の範囲の限定と解釈されるべきではなく、むしろ、それらの好ましい実施態様の適例として解釈されるべきである。改変および変動は、本発明の要旨および範囲を逸脱せずに、上記を考慮して本開示に基づき可能であると認識されるべきである。したがって、本発明の範囲は、例示される実施態様によって決定されるべきではなく、添付の特許請求の範囲およびそれらの法的等価物によって決定されるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2022-05-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細菌感染および創傷治癒のための医薬組成物であって、
前記製剤が以下の構成要素:
-局所的な抗生薬学的活性剤;
-生体高分子;
-加水分解されたI型コラーゲン;
-軟膏基剤;
を含むことを特徴とし、
全ての構成要素が均一に混合されて、pH値6.8~7.2の軟膏を形成
し、
前記局所的な抗生薬学的活性剤は、0.1%(w/w)~5%(w/w)、好ましくは2%(w/w)の量で存在するムピロシンであり、
前記生体高分子は、0.01%(w/w)~0.5%(w/w)、好ましくは0.05%(w/w)の量で存在するキトサンであり、
前記加水分解されたI型コラーゲンは、約0.01(w/w)~0.5%(w/w)、好ましくは0.05%(w/w)の量で存在する、
医薬組成物。
【請求項2】
請求項
1に記載の
医薬組成物であって、
前記軟膏基剤は、ワックス状の材料、共溶媒、酸、および緩衝剤 保存剤、抗酸化剤、キレート剤、保湿剤、水を、以下の割合で含む:
-ワックス状の材料は、ポリエチレングリコール(PEG)、例えば、PEG400、PEG500、PEG1000、PEG1200、PEG1500、PEG1800、PEG2000、PEG2200、PEG3550およびPEG4000の単独または組み合わせなどを含む群から選択され、5%(w/w)~80%(w/w)の量で存在する、
-共溶媒は、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、PEG-200、300、400、500を含む群から選択され、5%(w/w)~80%(w/w)の量で存在する、
-酸、例えばHCl、H
2SO
4、HNO
3、乳酸などは、0.005%(w/w)~1%(w/w)の量で存在する、
-増粘剤、例えば、アクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリン酸ナトリウム共重合体/イソヘキサデカンおよびポリソルベート80(商標名-SepineoP600)、微結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロースなどを単独または組み合わせて、0.05%(w/w)~10%(w/w)の量で存在する、
-保存剤は、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロロクレゾール、ソルビン酸カリウム、ベンジルアルコール、フェノキシエタノールなどを含む群から選択され、0.05%(w/w)~2.0%(w/w)の量で存在する、
-抗酸化剤は、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエンなどを含む群から選択され、0.05%(w/w)~5%(w/w)の量で存在する、
-キレート剤は、EDTA二ナトリウムなどを含む群から選択され、0.05%(w/w)~1%(w/w)の量で存在する、
医薬組成物。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の
医薬組成物であって、
前記キトサンは、70%以上、より好ましくは80%以上の脱アセチル化度を有する、
医薬組成物。
【請求項4】
請求項1~
3に記載の
医薬組成物であって、
前記キトサンは、100 IU/gの細菌エンドトキシンレベルを有する、
医薬組成物。
【請求項5】
請求項1~
4に記載の
医薬組成物であって、
前記キトサンは、250,000Da~600,000Daの範囲内の分子量を有する、
医薬組成物。
【国際調査報告】