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特表2023-501945炭素酸化物から製造されたコークスの熱処理
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-20
(54)【発明の名称】炭素酸化物から製造されたコークスの熱処理
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/205 20170101AFI20230113BHJP
【FI】
C01B32/205
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022525272
(86)(22)【出願日】2020-10-16
(85)【翻訳文提出日】2022-06-16
(86)【国際出願番号】 US2020056070
(87)【国際公開番号】W WO2021086643
(87)【国際公開日】2021-05-06
(31)【優先権主張番号】62/926,978
(32)【優先日】2019-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514261926
【氏名又は名称】シーアストーン リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】スミス ランドール
【テーマコード(参考)】
4G146
【Fターム(参考)】
4G146AA02
4G146AB01
4G146AC07B
4G146AC16B
4G146AC17B
4G146AC20B
4G146AC22B
4G146AC25B
4G146BA09
4G146BA50
4G146BC02
4G146BC04
4G146BC22
4G146BC25
4G146BC26
4G146BC32A
4G146BC33A
4G146BC35A
4G146BC35B
4G146BC37A
4G146BC42
4G146BC44
(57)【要約】
反応ガスからのメタンの製造も含むプロセスを用いて、鉄触媒を反応器に供給しながら、所定の温度および圧力で二酸化炭素と水素の混合物を反応器で反応させることにより、カーボンピッチまたは乾燥コークスが製造される。反応生成物は冷却される。容器を所定の速度で加熱し、不活性ガス流を注入しながら、反応生成物は、減圧下の反応容器内で、黒鉛化され得る。容器は1600℃~2800℃の温度に加熱され、その温度で数時間維持される。容器を冷却し、反応生成物を取り出す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素および水素を含む反応混合物を、所定の温度および所定の圧力で反応器に第1の所定の供給速度で供給するステップであって、反応混合物が反応器に供給されながら、反応混合物の一部がメタンに変換される、ステップ、
触媒を第2の所定供給速度で反応器に供給するステップ、
反応プロセスを所定時間維持して、固体炭素反応生成物を製造するステップ、
反応器から固体炭素反応生成物を除去し、固体炭素反応生成物を冷却するステップ、
固体炭素反応生成物から水およびその他のガス状不純物を凝縮させるステップ、
ある量の固体炭素反応生成物を反応容器に入れるステップ、
反応容器を、真空ポンプを備えた真空炉に装填するステップ、
炉を閉じ、炉を加熱し始めて反応容器の温度を上昇させるステップ、
真空ポンプを始動させるステップ、
炉の温度を第1の所定の速度で上昇させるステップ、
反応容器の温度を第1の所定温度で第1の所定時間維持するステップ、
反応容器温度が第2の所定温度に達するまで、炉の温度を第2の所定速度で上昇させるステップ、
反応容器温度を第2の所定温度で第2の所定時間維持するステップ、
処理された固体炭素反応生成物が炉の開放時に酸化しないことを保証するのに十分な速度で反応容器を冷却するステップ、
炉を開き、反応容器をハンドリング温度まで冷却するステップ、ならびに
処理された固体炭素反応生成物を反応容器から除去するステップ、
を含む、合成黒鉛を製造する方法。
【請求項2】
相対的に不活性なガスの流れを所定の流量で炉に導入するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
非晶質炭素と繊維状炭素の混合物を処理して秩序と導電性を高める方法であって、
非晶質もしくは繊維状の炭素またはそれらの組み合わせを含む、ある量の炭素系材料を反応容器に入れるステップ、
反応容器を、真空ポンプを備えた真空炉に装填し、炉を閉じ、炉を加熱し始めて反応容器の温度を上昇させるステップ、
真空ポンプを始動させるステップ、
炉の温度を第1の所定の速度で上昇させるステップ、
反応容器の温度を第1の所定温度で第1の所定時間維持するステップ、
反応容器温度が第2の所定温度に達するまで、炉の温度を第2の所定速度で上昇させるステップ、
反応容器の温度を第2の所定温度で第2の所定時間維持するステップ、
処理された炭素系材料が炉の開放時に酸化しないことを保証するのに十分な速度で反応容器を冷却するステップ、
炉を開き、反応容器をハンドリング温度まで冷却するステップ、ならびに
反応容器から炭素系材料を除去するステップ、
を含む方法。
【請求項4】
第1の所定速度が毎分約20℃である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
第1の所定温度が約2000℃であり、第1の所定時間が約30分である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
第2の所定温度が約2400℃であり、第2の所定速度が毎分約20℃である、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
第2の所定時間が約4時間である、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
相対的に不活性なガスの流れを所定の流量で炉に導入するステップをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
二酸化炭素および水素を含む反応混合物を、所定の温度および所定の圧力で反応器に第1の所定の供給速度で供給するステップであって、反応混合物が反応器に供給されながら、反応混合物の一部がメタンに変換される、ステップ、
触媒を第2の所定供給速度で反応器に供給するステップ、
反応プロセスを所定時間維持して、所定量のカーボンピッチ反応生成物を製造するステップ、
反応生成物を反応器から除去し、反応生成物を冷却するステップ、
反応生成物から水および他のガス状不純物を凝縮させるステップ、ならびに
反応生成物を回収するステップ、
を含む、カーボンピッチを製造する方法。
【請求項10】
反応混合物が2%~89.2%の水素含有量および2%~60%の二酸化炭素含有量を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
反応混合物が反応器に供給された後、変換されたメタンが反応混合物の0.5%~65.7%を構成する、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
所定の温度が340℃~540℃である、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
所定の圧力が1平方インチ当たり14~610ポンドである、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
所定時間が1~1250時間である、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年10月28日に出願された米国仮特許出願第62/926,978号の出願日の利益を主張し、「Process for Making Synthetic Graphite from Carbon Oxides」と題し、その開示は、この参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
異なる形態の炭素を製造するための様々な方法が存在する。例えば、その明細書がこの参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,679,444号は、炭素繊維(「ノイエスプロセス(Noyes Process)」)、カーボンナノチューブ、非晶質炭素、および他の形態を製造する新規な方法を開示している。その開示は、ナノダイヤモンド(米国特許第9,475,699号参照、その明細書はこの参照により本明細書に組み込まれる)および炭素の他の形態の製造のために拡張されている。
ノイエスプロセスを使用する場合の炭素捕捉および炭素製造コストの利点から、炭素酸化物(例えば、一酸化炭素および二酸化炭素)からコークス材料を製造するような方法でノイエスプロセスを適応できることが有用であろう。以前は、このようなコークスの製造方法では、液相を通過していた。H. Marsh Introductions to Carbon Science, Chapter 1, page 1, 3rd paragraph:「前者(コークス)は、熱分解時に液相を通過する炭素質前駆体から生じる(例えば、ピッチ)。」を参照されたい。ノイエスプロセスC-H-O平衡図(米国特許第8,679,444号参照)は、炭化水素熱分解、ブードゥアール(Boudouard)反応およびボッシュ(Bosch)反応の間の関係を示している。
【0003】
ブードゥアールおよびボッシュプロセスは、適切な条件(すなわち、温度、触媒、圧力、およびガス組成)の下で、通常、異方性炭素を製造する。この炭素は、非常に無秩序な炭素であり(図16を参照)、黒鉛化可能であってもよい(図36を参照)。H. Marshの黒鉛化可能な炭素の定義、30ページ、結論「黒鉛化可能な炭素は、熱分解の間に流体相を通過している」も参照されたい。ブードゥアールまたはボッシュプロセスは、いかなる時点でも流体相を通過しない。
ノイエスプロセスを用いて製造された炭素は、反応を触媒するために鉄または他の金属を使用するため、通常、鉄または他の触媒物質を含む。用途によっては、この鉄を炭素生成物から除去した方が良い場合もある。また、表面積が小さい、または構造がタイトな炭素を製造する利点もある。したがって、炭素を取り、様々な特性を有する生成物を作り出す方法があると役立つであろう。
【発明の概要】
【0004】
本開示によれば、熱処理プロセスは、炭素原料に異なる特性を付与する。炭素原料は、ノイエスプロセス炭素(通常、これは、いくつかの非晶質またはおそらく黒鉛状炭素も有するカーボンナノチューブおよび炭素繊維である)、または他の炭素形態であるかもしれない。現時点では、天然由来の黒鉛状炭素、他の合成的に製造された炭素(炭素繊維、ナノチューブ、黒鉛、および非晶質炭素を含む)、および他の炭素源を含む、炭素の様々な形態が使用され得るようである。
黒鉛化に使用するカーボンピッチを製造する方法の1つは、コークス用材料を作ることである。このプロセスによれば、水素とCO2の反応ガス混合物が加熱され、反応器に注入される。通常、熱交換器の建設に使用される配管の冶金に含まれるニッケルの存在により、CO2の一部とH2が反応してメタンを形成するサバティエ(Sabatier)プロセス反応が誘発される。反応器内では、鉄、ニッケル、クロム、その他の金属または金属合金の触媒材料により、CO2とH2が約340℃と715℃の温度で反応し、これらの温度で、炭素酸化物とメタンは、触媒の存在下で固体炭素と水に変換される。その結果、黒鉛状炭素と熱分解性炭素の混合種が得られることが多い。これらの炭素の比率は、反応器内のメタンの比率を制御することにより変化させることができる。熱分解性炭素は、反応のこの部分でメタンが固体炭素と水素に変換されることによって形成される。黒鉛状炭素は、ボッシュ反応によって製造される。触媒供給装置は、触媒を反応器に堆積させる。
【0005】
炭素が反応容器内で形成されるので、反応器内の滞留時間を制御することによって、例えば、炭素繊維をコークスおよびその混合種に変換することによって、様々な形態を生成することができる。滞留時間は、反応器を通過する反応ガスの流量によって制御される。得られた炭素生成物は、次に反応器から搬出される。反応ガスは冷却され、反応ガスから水分が凝縮する。得られた炭素(カーボンピッチまたはコークス)は、その後、黒鉛化プロセスに使用することができる。
本開示の方法の一実施形態によれば、コークスまたはカーボンピッチは、本方法に関与する温度に耐えることができる材料で作られたるつぼまたは他の容器に入れられる。炭素および容器を真空炉に入れ、真空ポンプをオンにし、炉を徐々に所望の温度にする。例えば、処理温度(通常1500℃を超えている)に達するまで、炉の温度を毎分20℃ずつ上げることができる。いくつかの実施形態では、その後、真空ポンプがオフにされ、ヘリウム流(または窒素、アルゴン、またはネオンなどの他の比較的不活性なガス)が炉に通される。他の実施形態では、ガス流は使用されない。
【0006】
炉は、しばしば数時間、所望の高い温度で維持される。その後、炉は冷却され、容器が取り出される。以下に記載する実験で、得られた炭素は、処理前の元の炭素と著しく異なる特性を有することが分かった。例えば、得られた炭素を試験したところ、熱伝導率および電気伝導率が著しく高く、D間隔がより一定で、表面積が小さく、また、鉄の含有量が少なく、いくつかの実験では、鉄が著しく少ないことが分かった。
さらに、生成物のTEM画像を調べると、得られた生成物は著しく「タイト」な間隔を有することが分かった。すなわち、炭素原子は、黒鉛状により良く整列しているように見える。
【0007】
本プロセスは、反応に異なる触媒と異なるガス供給速度を使用していることもあり、以前のノイエスプロセスとは一部異なる。例えば、本プロセスは、元素状鉄ではなく、FeC、Fe23、およびFe34を使用してもよい。また、以下に説明する実験プロセスで扱われるように、ガス供給速度も異なる。しかし、最終的な結果は、炭素酸化物からの炭素が、コークスまたはカーボンピッチの形態に捕捉または隔離され得るということである。競争力のある速度で大量のコークスを生産することは、鉄鋼生産に大いに役立つことになる。実際、本プロセスでは、製鉄所が、製鉄所から排出される炭素酸化物を取り出し、炭素酸化物を元素状炭素に変換し、その炭素を(コークスの形で)高炉に戻し、捕捉した炭素酸化物を製鉄プロセスに(再び、コークスの形で)組み込むことを可能にしている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1-8】本開示の実験に使用される炭素原料のSEM画像を示す。
図9図1~8に示される試料の鉄の割合を示すエネルギー分散型分光法(「EDS」)のグラフおよびチャートを示す。
図10-16】熱処理前の炭素原料のTEM画像を示す。
図17-18】図13に示される炭素原料の内側および外側D間隔のグラフを示す。
図19-20】図16に示される炭素原料の内側および外側D間隔のグラフを示す。
図21-24】1600℃の熱処理からの生成物のTEM画像を示す。
図25-26】図23に示される炭素生成物の内側および外側D間隔のグラフを示す。
図27-30】2000℃の熱処理からの生成物のTEM画像である。
図31-32】図30に示される2000℃処理原料の内側および外側D間隔のグラフを示す。
図33-36】2400℃の熱処理からの生成物のTEM画像を示す。
図37-38】図36に示される2400℃処理原料の内側および外側D間隔のグラフを示す。
図39】3つの実験生成物のそれぞれの表面積、密度、導電率、抵抗率、EDS(エネルギー分散型分光法)、およびTGA(サーモグラフィ分析)を示す;および
図40】例示的なプロセスフロー図の図式的な表示を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示は、鉄を除去するための炭素の熱処理の効果、および異なる温度で0.3トン反応器からの材料を熱アニールすることによる炭素特性の変化に関する。この場合、0.3トン反応器は、様々な形態の炭素を作るために使用される。しかし、本プロセスは、米国仮特許出願第62444587号に開示された酢酸鉄触媒プロセスを用いて作られたものを含む、他の炭素形態で機能するはずであり、その開示は、この参照により本明細書に組み込まれる。
図1~8は、本実験で使用される炭素原料のSEM画像を示している。示されるように、図1は、5000倍の倍率である。図2は、図1に示される材料の一部であるが、10000倍の倍率で示されている。図3は、25,000倍の倍率の原料炭素を示す。図3では、小さな鉄の粒子が強調されている。図4は、50,000倍の倍率での原料を示す。
図5は、5000倍の原料の異なる部分を示す。図6は、図5と同一の部分であるが、10,000倍の倍率で示されている。図7および図8は、図5および図6に示される原料のクローズアップ画像であり、それぞれ25000倍および50000倍の倍率で示されるものである。
図9は、図1~8に示される試料の鉄の割合を示すエネルギー分散型分光法(「EDS」)のグラフおよびチャートを示す。そこに示されるように、原料炭素の鉄含有量は12%を超えていた。炭素がコークスとして使用されることを意図している場合、このような鉄含有量は許容される。しかし、試料を熱処理して黒鉛を形成する場合、熱処理の一部はこの鉄含有量を減少させる助けとなる。
図9で参照されるK比は、各元素についてX線強度比k=Iunknown/Istandardを測定し、波長分散型分光器(WDS)を備えた電子プローブマイクロアナライザー(EPMA)用にもともと開発されたように、電子後方散乱とエネルギー損失(Z)、X線吸収(A)、特性および連続波誘導二次蛍光X線(F)のマトリックス補正をかけて、濃度を計算することによって算出される。K比プロトコルを利用することにより、SEM/EDSは、重大なピーク干渉が生じた場合でも、主要成分(濃度C>0.1質量分率)および上部微量範囲(0.001<C<0.01)成分についてEPMA/WDSの正確さや精度と一致できることが示されてきた。
【0010】
図10~13は、熱処理前の炭素原料を示している。これらの画像、特に図12および13を詳しく調べることにより、示されている炭素原料の小片は、比較的無秩序な炭素原子を有することが分かる。すなわち、炭素原子の「線」はバラバラで、切断されており、短いストレッチを除いて特に直線状ではない。また、前処理された炭素原料を示す図14~16を詳しく調べることにより、同じ特性を有することが分かる。
【0011】
図17および図18は、図13に示される原料炭素のD間隔をグラフ化したものである。図19および図20は、図16に示される炭素原料のD間隔をグラフ化したものである。
【0012】
熱処理プロセス
炭素の異なる試料(上述の毎月0.3トンの反応器から)を、熱処理のプロセスに供した。3つのそのような実験を以下に簡単に記載する。3つの実験での最高温度は、1600℃、2000℃、および2400℃であった。
各場合に、プロセスは、30グラムの炭素原料を黒鉛るつぼに入れることを伴った(黒鉛は、関与する温度に耐えることができることが知られているので使用される)。るつぼと原料を真空炉に入れ、炉を閉じ、真空ポンプを始動させた。炉の温度を、毎分約20℃ずつ上昇させた。
最初の2つの実験(1600℃および2000℃)では、原料を指定温度で4時間炉内に放置した。その後、炉を150℃まで冷却し、炉を開いて、材料を室温まで冷却した。その後、原料を炉から取り出した。
【0013】
以下に概説するように、2400℃の実験では、2000℃の温度に達した後、その温度で熱的に安定するのに十分長く、炉をその温度で保持した。真空ポンプを止め、炉を通過する毎分5標準立方フィートのヘリウム流を開始した。内部温度が2400℃に達するまで、毎分約20℃の速度で炉の温度を再び上昇させた。炉を2400℃で4時間保持し、その後、炉を150℃に冷却し、炉を室温に戻すために開放し、材料を取り出した。
【0014】
各実験において、設定温度に達した後、真空ポンプを止め、低速のガス流(毎秒約5立方フィート)を炉に注入した。使用したガスは、通常、約2000℃の温度までは窒素、2000℃~約2400℃ではアルゴン、2400℃以上ではヘリウムであった。実験は下記のように行い、最高温度を表題として用い、実験のステップを番号で示した。
1600℃
1.黒鉛るつぼに材料30gmを入れる。
2.るつぼを真空炉に入れる。
3.炉を閉じる。
4.真空ポンプを始動させる。
5.炉のヒーターエレメントを始動させる。
6.アルゴン流を開始する。
7.炉内を毎分20℃の速度で昇温する。
8.1600℃で4時間保持する。
9.炉内を150℃まで冷却する。
10.炉を開けて、るつぼを室温まで冷却する。
11.るつぼから材料を取り出す。
2000℃
1.黒鉛るつぼに材料30gmを入れる。
2.るつぼを真空炉に入れる。
3.炉を閉じる。
4.真空ポンプを始動させる。
5.炉のヒーターエレメントを始動させる。
6.アルゴン流を開始する。
7.炉内を毎分20℃の速度で昇温する。
8.2000℃で4時間保持する。
9.炉内を150℃まで冷却する。
10.炉を開けて、るつぼを室温まで冷却する。
11.るつぼから材料を取り出す。
2400℃
1.黒鉛るつぼに材料30gmを入れる。
2.るつぼを真空炉に入れる。
3.炉を閉じる。
4.真空ポンプを始動させる。
5.炉のヒーターエレメントを始動させる。
6.炉を毎分20℃の速度で昇温する。
7.2000℃で保持し、温度を安定させるのに十分長く(公称30分間)保持し、5scfh[std ft3/hr]でヘリウム流を開始する。
8.真空ポンプを停止する。
9.炉を2400℃まで毎分20℃の速度で昇温する。
10.2400℃で4時間保持する。
11.炉を150℃まで冷却する。
12.炉を開けて、るつぼを室温まで冷却する。
13.るつぼから材料を取り出す。
【0015】
図22に示される生成物の特定部分から取られた図23は、炭素原子がどのように秩序化されたかを示している。元の炭素原料が持っていたよりも、かなりより秩序化された原子炭素を示す、黒鉛状炭素の線に留意されたい。
図27~30は、2000℃の熱処理からの生成物のTEM画像を示す。TEM画像は、HRTEM(高解像度透過電子顕微鏡)装置を用いて作製された。図27は倍率30万倍、図28は倍率60万倍、図29は倍率100万倍、図30は倍率1000万倍である。
図28および図29に示される生成物の特定部分から取られた図30は、炭素原子がどのように秩序化されたかを示している。元の炭素原料が持っていたよりも、かなりより秩序化された原子炭素を示す、黒鉛状炭素の線に留意されたい。
図31図32は、図30に示される2000℃処理原料の内側と外側のD間隔(それぞれ)をグラフ化したものである。処理後のこのタイトなD間隔は、C原子の秩序が増加したことも示している。さらなる試験は、炭素生成物の導電性が改善されたことを示し、これも2000℃で処理された炭素生成物における炭素原子の秩序化が進んだことを示す。
図33~36は、2400℃の熱処理からの生成物のTEM画像を示す。TEM画像は、HRTEM(高解像度透過電子顕微鏡)装置を用いて作製された。図33は倍率60万倍、図34は倍率100万倍、図35は倍率500万倍、図36は倍率1000万倍である。
図33に示される生成物の特定部分から取られた図35、および図35の特定部分から取られた図36はそれぞれ、炭素原子がどのように秩序化されたかを示している。元の炭素原料が持っていたよりも、かなりより秩序化された原子炭素を示す、黒鉛状炭素の比較的強い線に留意されたい。
【0016】
図37および図38は、図36に示される2400℃処理原料の内側および外側のD間隔(それぞれ)をグラフ化したものである。処理後のこのD間隔も、炭素原子の秩序の増加を示している。特に、2000℃処理原料のD間隔よりもさらに著しく改善している、D間隔の規則性に留意されたい。
【0017】
下のチャートに、3つの実験生成物の表面積、密度、導電率、抵抗率、EDS(エネルギー分散型分光法)、およびTGA(サーモグラフィ分析)をそれぞれ示す。
【表1】

チャート
【0018】
図39は、炭素原料(左端の点または円)と、実験による1600℃、2000℃、2400℃の炭素生成物の表面積(平方メートル/グラム)をグラフ化したものである。また、2400℃で処理した原料製品では、鉄含有量が大幅に減少した。これは、BETが下がるにつれて(すなわち、高温の試料では)、炭素の形態がより黒鉛化していることを示す。さらに高い温度で実験が行われた場合、炭素生成物はさらに黒鉛化する可能性が高いようである。
本プロセスによる黒鉛化に使用される炭素は、様々なプロセスで製造することができるが、好ましいプロセスを本明細書で説明する。図40は、例示的なプロセスフロー図の図式的な表示を示す。図40に示される様々な要素は、以下のように分類される。
MFC:マスフローコントローラ
CFM:コリオリ流量計
UGA:ユニバーサルガスアナライザー(Universal Gas Analyzer)
VTA:大気へのベント
X1:触媒供給装置
E1:熱交換器
E2:熱交換器
H1:管状炉
H2:管状炉
R1:流動床反応器
K2:エアコンプレッサ
F1:バグフィルタ
F2:微粒子ガードフィルタ
E3:グリコール熱交換器
V3:凝縮槽
V1:圧力容器(低圧)
V2:圧力容器(高圧)
E4:熱交換器
K1:再循環コンプレッサ
【0019】
図40に示されているように、H2とCO2は指定されたマスフローコントローラ(MFC)を介してプロセスに入る。システムに入るガスの量は、反応プロセス内のガス組成を維持するために制御され、0.1標準リットル/分(「sl/m」)~40sl/mのH2および2.0sl/m~38sl/mのCO2とすることができる。CO2とH2は、マスバランスが測定されるコリオリ流量計(CFM)の前(上流側)でプロセスに入る。ユニバーサルガスアナライザー(UGA1)は、ガスが反応器R1へ向けて通過する前に、反応ガスの組成を測定する。
【0020】
反応プロセスに入るガス組成は、2%~89.2%の間で変化する水素含有量、2%~60%の間で変化するCO2含有量、.05%~65.7%の間で変化するCH4含有量、および5%~60%の間で変化するCO含有量を有している。これらの反応ガスは、E1チューブインチューブ式熱交換器の外管に入り、ここでガスは、反応器R1から出る高温ガスによって予熱され、通常、340℃~550℃と測定される。熱交換器E1、E2および流動床反応器R1までの配管は、INCONEL(登録商標)、例えば、製品名HASTELLOY(登録商標)から作られる。
【0021】
触媒材料は、通常、約22質量%(質量%)未満のクロム、および約14質量%未満のニッケル(しばしば約8質量%未満のニッケル)を含む。いくつかの実施形態では、触媒材料は、316Lステンレス鋼を含む。316Lステンレス鋼は、約16質量%のクロム~約18.5質量%のクロム、および約10質量%のニッケル~約14質量%のニッケルを含む。
【0022】
反応ガスが反応器R1に入ると、熱交換器の建設に使用される配管の冶金中のニッケルの存在下で、CO2とH2が反応するので、サバティエプロセスが開始する。すなわち、そのプロセスは
【数1】
CO2+4H2→CH4+2H2O(加圧下、温度400℃)である。
予熱されたガスは、熱交換チューブE1を出た後、H1およびH2管状炉を通過してガス混合物を340℃および715℃まで加熱し、この温度で炭素酸化物およびメタンが流動床反応器R1に入ると、反応容器R1の鉄触媒の存在下で固体炭素および水に変換される。これらの炭素は、黒鉛状炭素と熱分解性炭素の混合種とすることができる。これらの炭素の比率は、反応器内のメタン割合を制御することによって変化させることができる。流動床反応器R1内では、CO2がCOに変換されるブードゥアール反応によって、反応ガス混合物中のCOの存在が説明される。熱分解性炭素は、反応のこの部分でメタンが固体炭素と水素に変換されることによって形成される。黒鉛状炭素は、ボッシュ反応CO2+2H2←→C(s)+H2Oが起こり製造される。
【0023】
触媒供給装置X1は、触媒を反応器R1に堆積させる。様々なグレードの触媒材料を使用することができる。例えば、触媒材料は、鉄-、クロム-、モリブデン-、コバルト-、タングステン-、またはニッケル-含有合金または超合金のグレードであってよい。このような材料は、多くの供給元から市販されており、例えば、ニューヨーク州ニューハートフォードのSpecial Metals Corp.からINCONEL(登録商標)という商品名で、またはインディアナ州ココモのHaynes, Int’l,Inc.からHASTELLOY(登録商標)(例えば、HASTELLOY(登録商標)B-2、HASTELLOY(登録商標)B-3、HASTELLOY(登録商標)C-4、HASTELLOY(登録商標)C-2000、HASTELLOY(登録商標)C-22、HASTELLOY(登録商標)C-276、HASTELLOY(登録商標)G-30、HASTELLOY(登録商標)NまたはHASTELLOY(登録商標)W)という商品名で、またはステンレス鋼として入手することができる。
【0024】
0.3トン/月(生成炭素)の反応器を用いた本実施例では、触媒供給装置X1に鉄触媒FeC、Fe23またはFe34を装填し、反応容器への鉄の供給速度は5グラム/時間~50グラム/時間であった。炭素が反応容器R1内で形成されると、反応器内の滞留時間を制御することにより、例えば、炭素繊維をコークスやその混合種に変換することにより、様々な形態が生成された。滞留時間は、反応器R1を通過する反応ガスの流量、通常、40sl/m~215sl/mにより制御した。得られた炭素生成物は、その後、ガス流に巻き込まれて反応器から搬出された。反応ガスは、反応器R1を出て、熱交換器E1の内管に入り、そこで反応器から出た反応ガス(および炭素)は、コリオリ流量計CFM1から管状炉H1およびH2に向かう反応ガスを予熱するために使用された。
【0025】
触媒材料はステンレス鋼を含むことができ、その場合、触媒は通常、約22質量%(質量%)未満のクロム、および約14質量%未満のニッケル(しばしば約8質量%未満のニッケル)を含む。いくつかの実施形態では、触媒材料は、316Lステンレス鋼を含む。316Lステンレス鋼は、約16質量%のクロム~約18.5質量%のクロム、および約10質量%のニッケル~約14質量%のニッケルを含む。
【0026】
エアコンプレッサK2からの圧縮空気は、熱交換器E1を出る反応ガス(および炭素)を冷却するために、制御された速度で使用され、バグフィルタハウジングF1に使用されるバグフィルタ媒体の熱損傷を回避する。熱交換器E1から出た反応ガス(および炭素)は、熱交換器E2に入り、熱交換器E2の内管を通過する一方、コンプレッサK2からの冷却空気が熱交換器E2の外管を通過する。反応ガスの冷却に使用される圧縮空気は、その熱を分散させるために大気(VTA)へ排出される。熱交換器E2の内管を通過する反応ガスは、反応ガスから水が早期に凝縮するのを防ぐために、すなわち反応ガスが熱交換器E3に入る前に、十分に高温に保たれなければならない。微粒子ガードフィルタF2は、バグフィルタF1によって上流で捕捉されなかった炭素を捕捉する。なお、反応の水は、逆水性ガスシフト反応の結果である。
【0027】
次に、ガス流は、バグフィルタF1下流からグリコール熱交換器E3へ流れる。熱交換器E3から、反応ガスは凝縮槽V3に入り、ここで逆水性ガスシフトが起こる。こうして凝縮槽V3に集められた水は、ポンプでカーボイに送られ、廃棄または使用される。凝縮槽V3を出たガスは、次に第2のコリオリ流量計CFM2を通過し、そこでマスバランスが測定され、ガス組成を決定するために使用されるユニバーサルガスアナライザーUGA2を通過する。コリオリ流量計CFM1とユニバーサルガスアナライザーUGA1の第1セットと、コリオリ流量計CFM2とユニバーサルガスアナライザーUGA2の第2セットからの測定により、プロセス全体のガス変換を決定することができる。上記の実験中の測定では、プロセスの炭素転換率は毎時6.3グラム~毎時1480.2グラムの範囲であった。
【0028】
次に、ガスは、閉ループプロセスを通じてガスを循環させるために使用される再循環コンプレッサK1の低圧側である圧力容器(低圧)V1に流れる。その後、ガスはコンプレッサK1によって必要なプロセス圧力まで加圧される。圧力容器(高圧)V2はスタビライザーとして機能し、コンプレッサK1からのガスパルスを除去する。熱交換器E4は、コンプレッサ高圧側からのガスを冷却するために使用され、システムの圧力制御に使用されるフローバルブを保護する。
【実施例
【0029】
二酸化炭素と水素を、温度を590℃に設定し、反応器を50psiの圧力を維持するように設定して、連続フロー反応器に供給した。CO2供給速度は2.2sl/mに、H2は8.7sl/mに設定した。鉄触媒の供給速度は、毎時5グラムに設定した。これらの条件で112時間運転した。この間、反応器の平均ガス組成は、H2 9.2%、CH4 6.1%、CO 38.75%、CO2 47.2%で、ガス組成は128sl/mで反応器を流れるように設定した。反応では、112時間のランタイムで7.74kgのカーボンピッチ(またはコークス)が製造された。
このように、本開示によれば、炭素原料の処理は、所望の特性を有する炭素生成物を製造するためにカスタマイズすることができる。すなわち、本明細書に記載されるように製造された炭素は、不純物を除去するだけでなく、炭素生成物の黒鉛化を増加させるために、熱処理することができる。この結果、炭素生成物の導電性が増加する。
さらに、これらのプロセスでは、二酸化炭素(精製所の排煙から取り除かれたものなど)を使用して、合成黒鉛を製造するためのカーボンピッチ、またはそれらのまさに精製所反応器の排煙からの「乾燥」コークスを作る。この「乾燥」カーボンピッチまたはコークスは、石油タールまたは従来から知られているような他の「湿潤」原料からは製造されない。さらに、その「乾燥」コークスは、その後、合成黒鉛を作るために使用でき、通常、かなりの炭素繊維含有量を有し、その繊維含有量は、製造の操作パラメータに基づいて増加または減少し得る。
【0030】
本発明の特定の実施形態が説明されたが、当業者は、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な修正および変更が当業者によってなされ得ることを理解するであろう。本発明は、本明細書で広く説明され、以下に請求されるようなその構造、方法、または他の本質的特徴から逸脱することなく、他の特定の形態で具現化され得る。説明された実施形態は、あらゆる点で例示としてのみ考慮されるべきであり、限定的ではないと見なされるべきである。
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【国際調査報告】