(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-20
(54)【発明の名称】オープンエンド紡績機ならびにこのようなオープンエンド紡績機を運転するための方法および制御装置
(51)【国際特許分類】
D01H 4/50 20060101AFI20230113BHJP
B65H 67/04 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
D01H4/50
B65H67/04 B
B65H67/04 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022525462
(86)(22)【出願日】2020-10-29
(85)【翻訳文提出日】2022-06-27
(86)【国際出願番号】 EP2020080339
(87)【国際公開番号】W WO2021083985
(87)【国際公開日】2021-05-06
(31)【優先権主張番号】102019129499.1
(32)【優先日】2019-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518264859
【氏名又は名称】ザウラー スピニング ソリューションズ ゲー・エム・ベー・ハー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Saurer Spinning Solutions GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Carlstr. 60, 52531 Uebach-Palenberg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヨナタン シュプレヒャー
【テーマコード(参考)】
3F112
4L056
【Fターム(参考)】
3F112AA08
3F112EB02
3F112ED04
3F112PA01
4L056AA14
4L056AA15
4L056BA01
4L056BA05
4L056BD69
4L056BF02
4L056BF05
4L056CB04
4L056CB14
4L056DB06
4L056EA17
4L056EB13
4L056EB16
(57)【要約】
本発明は、複数の作業部(2)を備えたオープンエンド紡績機(1)であって、作業部(2)が、糸(7)を製造するための紡績装置(3)と、紡績装置(3)から糸(7)を引き出すための糸引出し装置(25)と、糸(7)を一時的に貯蔵するための貯蔵ノズル(26)と、綾巻きパッケージ(8)を製造するための巻取り装置(4)と、負圧を供給することができるサクションノズル(14)とを有するオープンエンド紡績機(1)に関する。オープンエンド紡績機(1)は、作業部(2)のうちの複数の作業部(2)を操作する少なくとも1つのサービスユニット(16)を備えており、サービスユニット(16)は、操作すべき作業部(2)における糸継ぎ工程中に、特に綾巻きパッケージ/空管交換中に使用される、補助糸(24)を供給するための補助糸供給装置(21)と、補助糸引出し部(28)とを備えている。本発明は、糸継ぎされた補助糸(24)を引き出すための補助糸引出し部(28)の補助糸引出し速度(AVS)が、糸引出し装置(25)の糸引出し速度(AVA)および少なくとも1つの別の補正要因を考慮する速度のずれを有しているように、補助糸引出し部(28)を設計し、かつ運転できることを特徴としている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の作業部(2)を備えたオープンエンド紡績機(1)であって、前記作業部(2)が、糸(7)を製造するための紡績装置(3)と、該紡績装置(3)から前記糸(7)を引き出すための糸引出し装置(25)と、引き出された前記糸(7)を一時的に貯蔵するための貯蔵ノズル(26)と、綾巻きパッケージ(8)を製造するための巻取り装置(4)と、負圧を供給することができるサクションノズル(14)とをそれぞれ有しており、前記オープンエンド紡績機(1)が、前記作業部(2)のうちの複数の作業部(2)を操作するための少なくとも1つのサービスユニット(16)を備えており、該サービスユニット(16)が、操作すべき作業部(2)における糸継ぎ工程時に、特に綾巻きパッケージ/空管交換中に使用される、補助糸(24)を供給するための補助糸供給装置(21)と、補助糸引出し部(28)とを有している、オープンエンド紡績機(1)において、
前記補助糸引出し部(28)は、糸継ぎされた前記補助糸(24)を引き出すための前記補助糸引出し部(28)の補助糸引出し速度(A
VS)が、前記糸引出し装置(25)の糸引出し速度(A
VA)および少なくとも1つの別の補正要因を考慮する速度のずれを有しているように構成され、かつ運転可能であることを特徴とする、オープンエンド紡績機(1)。
【請求項2】
考慮すべき前記少なくとも1つの別の補正要因が、前記補助糸(24)の糸摩擦または糸引出し装置(25)の始動と前記補助糸引出し部(28)の始動との間の時間差を考慮する補正要因である、請求項1記載のオープンエンド紡績機(1)。
【請求項3】
前記速度のずれは、前記貯蔵ノズル(26)内に走入する糸ループ(34)が、定義されたサイズおよび/または長さを有しているように選択されているか、または調節可能である、請求項1または2記載のオープンエンド紡績機(1)。
【請求項4】
前記速度のずれは、前記貯蔵ノズル(26)内に走入する前記糸ループ(34)の前記長さが、少なくとも、好適には糸引出し部の上流側の糸走行経路内における前記糸継ぎされた補助糸のクランプによる引出しの中断開始の定義された時点において、25mm以下であるか、かつ/または前記貯蔵ノズル(26)内への前記糸ループ(34)の、該糸ループ(34)のサイズを構成する進入深さ(t)が、10mm未満であるように、選択されているか、または調節可能であるか、または調整可能である、請求項3記載のオープンエンド紡績機(1)。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項記載のオープンエンド紡績機(1)を運転するための制御装置であって、
該制御装置は、糸引出し装置(25)の糸引出し速度(A
VA)および少なくとも1つの別の補正要因を考慮する速度のずれを有する補助糸引出し速度(A
VS)で、糸継ぎされた補助糸(24)を引き出すために、補助糸引出し部(28)を運転するための制御命令を生成し、かつ伝達するように設計されていることを特徴とする、制御装置。
【請求項6】
前記制御装置が、前記オープンエンド紡績機(1)の構成部分であるか、または該オープンエンド紡績機(1)に無線または有線で前記制御命令を伝達するために接続されているか、または接続可能である、請求項5記載の制御装置。
【請求項7】
請求項1から4までのいずれか1項記載のオープンエンド紡績機(1)を運転する方法であって、
サービスユニット(16)から供給される補助糸(24)によって糸継ぎ部を製造するステップの後に、糸引出し装置(25)および補助糸引出し部(28)による、糸継ぎされた補助糸(24)の引出しのステップを行い、前記補助糸引出し部(28)を、糸継ぎされた前記補助糸(24)を引き出すために、糸引出し装置(25)の糸引出し速度(A
VA)および少なくとも1つの別の補正要因を考慮する速度のずれを有する補助糸引出し速度(A
VS)で運転することを特徴とする、方法。
【請求項8】
前記速度のずれは、前記糸継ぎされた糸の、貯蔵ノズル(26)により収容される糸ループ(34)が、定義されたサイズおよび/または長さになるように選択されるか、または調整される、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの別の補正要因が、前記補助糸(24)の糸摩擦を考慮する補正要因であり、該補正要因により、糸変向および/または糸接触により生じる機械的な摩擦力および/または空気摩擦により生じるニューマチック式の摩擦力が考慮される、請求項7または8記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの別の補正要因または1つの別の補正要因が、前記糸引出し装置(25)の始動と前記補助糸引出し部(28)の始動との間の時間差を考慮する補正要因である、請求項7、8または9記載の方法。
【請求項11】
前記補助糸引出し部(28)を、前記速度のずれを有する補助糸引出し速度(A
VS)で、前記引出しのステップの開始時から、または前記引出しのステップの開始後から、少なくとも、前記補助糸引出し部(28)の上流側の糸走行経路における前記補助糸(24)のクランプのステップに至るまでの定義された時点から運転する、請求項7、8、9または10記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の作業部を備えたオープンエンド紡績機であって、作業部が、糸を製造するための紡績装置と、紡績装置から糸を引き出すための糸引出し装置と、引き出された糸を一時的に貯蔵するための貯蔵ノズルと、綾巻きパッケージを製造するための巻取り装置と、負圧を供給することができるサクションノズルとをそれぞれ有しており、オープンエンド紡績機が、作業部のうちの複数の作業部を操作するための少なくとも1つのサービスユニットを備えており、サービスユニットが、補助糸を供給するための補助糸供給装置と、補助糸引出し部とを有しており、補助糸引出し供給装置と補助糸引出し部とが、操作すべき作業部における糸継ぎ工程時に、特に綾巻きパッケージ/空管交換中に使用される、オープンエンド紡績機と、このようなオープンエンド紡績機を運転する方法とに関する。
【0002】
オープンエンド紡績機に関連して、このような繊維機械は相並んで配置された多数の作業部を有していることが多く、これらの作業部が通常は同一に構成されていて、それぞれ種々異なる多数の作業機構を備えていることは以前から知られている。
【0003】
このようなオープンエンド紡績機の作業部は、ロータ紡績装置として構成されたそれぞれ1つのオープンエンド紡績装置を有していてよく、たとえば、欧州特許出願公開第1156142号明細書に記載されているような紡績ロータが、好適には磁気により支持されている。これに対して代替的には、作業部が、空気紡績装置を有しているオープンエンド紡績装置をそれぞれ備えていてよい。このような空気紡績装置は、たとえば独国特許出願公開第19926492号明細書または独国特許出願公開第2005022186号明細書に比較的詳細に記載されている。
【0004】
さらに、このようなオープンエンド紡績機の作業部は、しばしば十分に自律式の作業部として構成されている。つまり、このようなオープンエンド紡績機の作業部は、糸破断後に再び自動的に糸継ぎすることができる。好適には、作業部のそれぞれが、この目的のために紡績装置および巻取り装置の外側で、製造された糸を一時的に貯蔵するための貯蔵ノズルと、特に旋回可能に支持された、紡績装置と巻取り装置との間の、負圧を供給することができるサクションノズルとを有している。
【0005】
このような自律式の作業部が、糸破断後に再び自動的に糸継ぎすることができるにもかかわらず、このように構成されたオープンエンド紡績機も、しばしば、少なくとも1つのサービスユニットを備えている。サービスユニットは、操作すべき作業部における糸継ぎ工程時、特に綾巻きパッケージ/空管交換時に使用される。つまり、このようなサービスユニットは、複数の作業部のうちの1つの作業部において綾巻きパッケージが予め規定された直径に達し、新しい空管に交換しなければならない場合に介入する。
【0006】
このようなサービスユニットも、長らく公知であり、たとえば独国特許出願公開第10139072号明細書に至極詳細に記載されているように、通常は種々異なる多数の操作装置を有している。このようなサービスユニットは、たとえば、綾巻きパッケージ/空管交換に関連して、作業部の紡績再開のために必要となる補助糸を提供するための補助糸供給装置と、新たに糸継ぎされた紡績糸を該当する作業部の巻取り装置のパッケージフレームに保持された空管に固定するための糸敷設装置と、新たに糸継ぎされた紡績糸を引き出すために、特に補助糸により形成される糸継ぎ部(Anspinner)の除去時に使用される補助糸引出し部とを有している。
【0007】
補助糸供給装置は、いわゆる糸供給管を有することが多く、この糸供給管は、サービスユニットの中間壁内に旋回軸線を中心として回転可能に支持されていて、ステッピングモータにより定義されて位置決め可能である。糸供給管には、たとえば回転貫通案内部および管系統および/またはチューブ系統を介して、蓄えボビンが接続されており、この蓄えボビンは必要となる補助糸を提供する。管系統および/またはチューブ系統の領域には、さらに、蓄えボビンから補助糸を引き出す供給機構が配置されていて、かつ糸切断装置が設置されている。この糸切断装置は、作業部の、特に旋回可能に支持されたサクションノズルに補助糸を最終的に引き渡した後に、補助糸を切り落とす。このようなサービスユニットの糸敷設装置は、好適には、後方の静止位置から作業部の巻取り装置の領域内に移動可能でありかつヘッドエレメントを有している旋回アームとして構成されており、ヘッドエレメントは、複数の種々異なる操作装置を有している。ヘッドエレメントは、たとえば、糸ガイドローラ、糸ブレーキ、糸切断装置を備えている。さらに、糸敷設装置のヘッドエレメントは、巻管ディスクと巻取り装置内に保持された空管の端面との間に隙間があるように、巻取り装置の巻管ディスクに荷重を加えることができる巻管ディスク開放器を有していてよい。
【0008】
さらにこのようなサービスユニットは、大抵は、補助糸引出し部を備えており、この補助糸引出し部は、補助糸を、特にその除去時に摩擦結合式に駆動する。先行技術によれば、この補助糸引出し部の引出し速度は、作業部の糸引出し装置の糸引出し速度に一致する。
【0009】
上述のように、このようなサービスユニットは、好適には、オープンエンド紡績機の1つの作業部において、綾巻きパッケージが予め規定された直径に達し、新しい空管に交換しなければならない場合に使用される。
【0010】
このような場合、サービスユニットは、該当する作業部に呼び出され、その作業部に位置決めされて、作業部のパッケージフレームから、巻取り装置の背後に配置された、好適には機械長さの綾巻きパッケージ搬送装置へと満管の綾巻きパッケージを移送し、綾巻きパッケージ搬送装置は、綾巻きパッケージを、通常は機械の端部側に配置される引渡しステーションへと送る。次いでサービスユニットは、新しい空管を作業部のパッケージフレームに挿入する。
【0011】
作業部の引き続き行われる紡績再開時に継ぎ糸が必要とされるが、挿入された空管は継ぎ糸として使用することができる糸材料を有していないので、サービスユニットが、いわゆる補助糸を提供する。つまり、補助糸供給装置の糸供給管が、下側の運転位置へと旋回して、作業部の、特に旋回可能に支持された、いわゆる糸引渡し位置に位置決めされているサクションノズルへと補助糸の始端部を引き渡す。次いで、サクションノズルが下方へと旋回し、補助糸の糸始端部を、紡績装置の領域に配置された糸継ぎ機構に引き渡し、糸継ぎ機構は補助糸を糸継ぎ工程のために準備する。サクションノズルの旋回過程中に、補助糸はさらに作業部の糸引出し装置に通される。
【0012】
同時にまたは続いて、補助糸供給装置の糸供給管が、上側の運転位置へと旋回し、糸敷設装置が、作業部の巻取り装置の方向に旋回する。この移動時に、この時点で作業部の糸引出し装置と上方に向かって旋回させられた糸供給管との間で張られている、補助糸供給装置により提供された補助糸は、サービスユニットの糸敷設装置のヘッドエレメントに配置された操作装置によって、作業部の巻取り装置の領域へと移送される。つまり、緊張された補助糸は、巻取り装置の領域において、巻取り装置の巻管ディスクと挿入された空管の端面との間にある隙間を通って走行する。
【0013】
次いで、補助糸供給装置の糸供給管が時計方向にさらに旋回し、補助糸をサービスユニットの補助糸引出し部に挿入し、その後に補助糸は再び、改めて糸引渡し位置に位置決めされた、旋回可能に支持されたサクションノズルへと改めて引き渡される。次いで、本来の公知の糸継ぎ工程が行われる。
【0014】
紡績再開後、今、いわゆる糸継ぎ部を介して新しい紡績糸に結合された補助糸は除去される。つまり、補助糸もしくは新しい紡績糸は、作業部の糸引出し装置によって引き出され、糸敷設装置の操作エレメントを通ってガイドされ、サービスユニットの補助糸引出し部に供給されて、作業部の旋回可能に支持されたサクションノズル内に走入し、このサクションノズルが補助糸を除去する。このプロセス時に、特に糸敷設装置の操作エレメントの領域における補助糸もしくは新しい紡績糸の複数回の変向にも基づいて、高められた糸摩擦が生じ、これにより、作業部の糸引出し装置とサービスユニットの補助糸引出し部との間に糸ループが形成され、この糸ループは作業部の貯蔵ノズルによって一時的に中間貯蔵されなければならない。
【0015】
糸継ぎ部が巻取り装置、つまり巻管ディスクと空管との間にある隙間の領域を通過するや否や、新しい紡績糸は隙間を閉じることによってクランプされ、糸切断装置によって機能的に分離される。次いで、空管が回転させられて、これにより新たな紡績工程が開始させられる。
【0016】
クランプおよび切断工程中にオープンエンド紡績装置により引き続き製造され、作業部の糸引出し装置により連続的にさらに引き出される紡績糸は、同様に作業部の貯蔵ノズル内に中間貯蔵される。
【0017】
公知のオープンエンド紡績機もしくはこれらの繊維機械を運転する方法における欠点は、補助糸の除去中にも、新しい紡績糸のクランプおよび切断工程中にも、比較的大きな糸ループが生じ、この糸ループを作業部の貯蔵ノズルにより中間貯蔵しなければならないことである。つまり、作業部の貯蔵ノズル内に中間貯蔵しなければならない、頻繁に極めて大きくなる糸量に基づいて、発生した糸ループを次いで解く際にしばしば問題が生じる。つまり、たとえば、サクションノズル内に位置する、しばしばオープンエンド紡績機の機械長さの負圧通路内にまで達する糸ループが絡まり、結果として糸破断が生じるか、または貯蔵ノズル内に中間貯蔵された紡績糸が定義されていない糸張力で空管に乗り上げるという危険が生じる。
【0018】
前述の先行技術を起点として、本発明の根底にある課題は、糸継ぎ工程時に、特に綾巻きパッケージ/空管交換中に、オープンエンド紡績機の作業部の貯蔵ノズル内に一時的に中間貯蔵される糸ループの糸破断および/または制御されていない絡まりの恐れを減じるか、または最良の場合には回避することである。
【0019】
この課題は、装置に関する第1の態様によれば、糸継ぎされた補助糸を引き出すための補助糸引出し部の補助糸引出し速度が、好適には引出しの開始時に、または引出しの開始と、たとえば補助糸引出し部の上流側の糸走行経路における補助糸のクランプによる、糸継ぎされた補助糸の引出しの中断開始との間の定義された時点から、作業部の糸引出し装置の糸引出し速度と、少なくとも1つの別の補正要因とが考慮された速度のずれを有しているように、補助糸引出し部が構成され、かつ運転可能であることにより解決される。好適な定義された時点は、貯蔵ノズル内に走入する糸ループが、遅くとも糸継ぎされた補助糸の引出しの中断開始の時点で、予め規定されたサイズおよび/または長さを有しているように、選択されていてよい。
【0020】
装置に関する第2の態様によれば、課題は、オープンエンド紡績機を運転するための制御装置であって、制御装置は、糸引出し装置の糸引出し速度および少なくとも1つの別の補正要因を考慮する速度のずれを有する補助糸引出し速度で、糸継ぎされた補助糸を引き出すために、補助糸引出し部を運転するための制御命令を生成し、かつ伝達するように設計されている、制御装置により解決される。制御装置は、好適には、オープンエンド紡績機の構成部分、たとえばオープンエンド紡績機を制御する中央制御装置の構成部分またはオープンエンド紡績機の作業部を制御する作業部制御装置、または少なくとも1つのサービスユニットを制御するサービスユニット制御装置の構成部分であってよい。代替的には、制御装置は、オープンエンド紡績機から独立した外部の制御装置、たとえば複数の繊維機械を制御するための上位の制御装置または制御命令を伝達するためにオープンエンド紡績機に無線または有線で接続されているか、または接続可能であってよい可動の制御装置であってよい。
【0021】
この課題は、さらに方法に関して、サービスユニットから供給される補助糸によって糸継ぎ部を製造するステップの後に、糸引出し装置および補助糸引出し部による、糸継ぎされた補助糸の引出しのステップを行い、補助糸引出し部を、好適には引出しの開始と共に、または少なくとも、たとえば補助糸引出し部の上流側の糸走行経路において補助糸をクランプすることによる糸継ぎされた補助糸の引出しの中断開始前の定義された時点から、糸引出し装置の糸引出し速度および少なくとも1つの別の補正要因を考慮する速度のずれを有する補助糸引出し速度で運転することにより解決される。定義された時点は、上述のように選択されていてよい。さらに好適には、補助糸引出し部のこのような運転は、少なくとも中断開始の直前、または中断開始の時点まで、さらに好適には中断開始の時点の後にも、たとえば補助糸を除去するために行うことができる。後者は、特に、変更した制御命令の生成および送信を省略することができるという利点を提供する。
【0022】
本発明の有利な構成は、従属請求項の対象である。
【0023】
サービスユニットの補助糸引出し部の本発明による構成は、特に、補助糸の引出し中、特に補助糸の除去中に、糸継ぎされた補助糸の糸走行に影響を与える少なくとも1つの別の要因を考慮することに基づいて、サービスユニットの補助糸引出し部の補助糸引出し速度を、作業部の糸引出し装置の糸引出し速度に適合させることを確実にすることができるという利点を有している。つまり、補助糸の除去中に作業部の貯蔵ノズル内に走入する糸ループが、糸破断または糸ループの絡まりを招くような形状や大きさを有していないことを信頼性よく保証することができる。補助糸の引出しまたは除去中に発生する糸ループを、遅くとも引出しの中断が開始された時点で予め規定可能なサイズおよび/または長さに最小化することにより、さらに、作業部の貯蔵ノズル内に、後続の作業ステップで必然的に発生する、新しい紡績糸のしばしば比較的大きな糸ループを問題なく収容するために十分なスペースが存在していることを確実にすることができる。
【0024】
好適な1つの実施形態によれば、考慮すべき少なくとも1つの補正要因が、補助糸の糸摩擦、または糸引出し装置の始動と補助糸引出し部の始動との時間差を考慮する補正要因であることが規定されている。特に、補助糸引出し速度の手動または自動生成の選択または調節時に、好適には、定義された形式で作業部の糸引出し装置の速度プロファイル上にある速度プロファイルが選択もしくは調節され、これにより、貯蔵ノズルに中間貯蔵されなければならない比較的小さな余剰糸しか生じないか、または余剰糸が生じないことを確実にすることができる。この場合、手動の選択は、オープンエンド紡績機または制御装置に接続されているか、または無線または有線で接続可能である入力装置を介して行うことができる。自動生成の選択は、たとえば、制御装置によって行うことができ、制御装置は、好適には、速度プロファイルが呼出し可能に保存されている知識メモリに接続されていてよい。代替的または付加的には、制御装置は、選択または調節または制御すべき速度プロファイルを、紡績位置の糸引出し装置の所定の速度プロファイルまたは連続的に(たとえば定期的、非定期的または継続的に)求められた速度プロファイルと、少なくとも一つの別の補正要因とを考慮しながら生成するように設計されていてよい。さらに代替的または付加的に、制御装置は、速度プロファイルを調節するための対応する速度プロファイルが伝達されるように設計されていてよい。
【0025】
別の好適な形式で、速度のずれは、糸継ぎされた補助糸の引出しもしくは除去中に作業部の貯蔵ノズル内に走入する糸ループが、定義されたサイズおよび/または長さを有しているように、選択され、または調節可能もしくは制御可能であり、長さは、好適には25mm以下、さらに好適には10mm以下である。代替的または付加的には、糸ループの大きさを構成する、貯蔵ノズルへの糸ループの進入深さが10mm未満、より好適には5mm未満であると好適である。したがって、一方では走入する糸ループの長さと、付加的または代替的には貯蔵ノズル内への糸ループの進入深さとを必要に応じて適合または調節することができ、これによって糸破断および/または糸ループの絡まりの恐れを最小限にするか、もしくは最良の場合には阻止することができる。
【0026】
貯蔵ノズル内に走入する糸ループのサイズおよび/または長さのこのような著しい減少によって、たとえば、貯蔵ノズルに中間貯蔵しなければならない新しい紡績糸が必然的に相当な量でその都度発生する空管への敷設中または綾巻きパッケージから来る上糸端部とのスプライス中の、好適には糸継ぎされた補助糸のクランプのような後続の作業工程時に、貯蔵ノズル内に比較的大きな糸ループのためのいまだ十分なスペースが提供されることが確保されていることを好適な形式で保証することができる。つまり、新しい紡績糸が作業部の巻取り装置内に保持された空管に敷設されるか、またはスプライスのためにスプライス装置内に挿入されて、その都度クランプされるものの、作業部の糸引出し装置により相変わらず新しい紡績糸が供給されるが、短時間止められる後続の作業工程前に、常に、貯蔵ノズルの十分に大きな部分が常に空であり、これにより一時的に新しい紡績糸を貯蔵することができることが保証されている。糸継ぎされた補助糸の分離が生じるクランプ工程に次いで、補助糸の分離された部分を除去するための補助糸引出し部は、好適な形式で、分離された補助糸部分を確実かつ場合によっては円滑に除去するために必要に応じて選択可能な補助糸引出し速度で運転することができる。したがって、好適には、速度のずれを有する補助糸引出し速度での補助糸引出し部の運転は、補助糸のクランプに至るまで提供されていればよい。
【0027】
方法の態様では、同様に、作業部の貯蔵ノズル内に走入する糸ループのサイズおよび/または長さが、速度のずれを有する補助糸引出し速度での運転中に、問題があると認識され得る値を上回らないことを信頼性よく保証することができる。つまり、サービスユニットの補助糸引出し部が、作業部の糸引出し装置のその都度存在している糸供給速度もしくは糸引出し速度に少なくとも1つの補正要因を加えたものに適合させられている補助糸引出し速度で運転可能であることにより、糸継ぎされた補助糸の引出しもしくは除去中に発生する、貯蔵ノズル内に走入する糸ループが、必要に応じて選択可能な減じられたサイズおよび/または長さを有することが確実にされる。
【0028】
したがって、作業部の貯蔵ノズル内に、後続の作業工程もしくは作業ステップで発生する新しい紡績糸の比較的大きな糸ループを問題なく収容することができるように、十分なスペースを提供することができる。
【0029】
好適な1つの実施形態によれば、サービスユニットは、上記の好適な実施形態のうちの1つに関連して冒頭で詳細に説明した構成を有している。
【0030】
方法の好適な構成では、作業部の糸引出し装置の糸引出し速度の他に、作業部の糸引出し装置の始動および補助糸引出し部の始動に関して与えられている、付加的に存在する糸摩擦状況および/または時間差を考慮することができるように、速度のずれを選択または制御することが規定されている。
【0031】
特に、糸敷設装置のヘッドエレメントに配置された操作機構の周囲での引き出されるべき補助糸の複数回の変向により引き起こされる比較的高い機械的な摩擦力の結果であり得る、糸摩擦状況を考慮することによって、補助糸の引出しもしくは除去中に作業部の貯蔵ノズル内に走入する糸ループのサイズおよび/または長さを最小限にすることが比較的簡単かつ正確に成功する。
【0032】
さらに、サービスユニットの補助糸引出し部の補助糸引出し速度もしくは速度のずれを調節する場合に、作業部の糸引出し装置とサービスユニットの補助糸引出し部とが正確に同時に開始されないことを考慮することも有利である。特に、始動信号の伝達に関して、時間差が発生することがあるが、これにより、この時間差を、好適な形式で考慮することができる。
【0033】
本発明の別の詳細は、以下に図面につき説明する実施例から分かる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】1つの実施例による方法を実施するための、オープンエンド紡績機の作業部に位置決めされた1つの実施例によるサービスユニットを備えた、オープンエンド紡績機の半部を示す概略図である。
【
図2】作業部の糸引出し装置およびサービスユニットの補助糸引出し部によって、作業部の紡績装置内で新しい紡績糸に糸継ぎされた補助糸を引き出している最中の
図1に図示したサービスユニットを拡大した縮尺で示す部分図である。
【0035】
図1には、たとえば空気紡績機またはロータ紡績機として構成されたオープンエンド紡績機1の半部が図示されている。このような繊維機械は、通常、多数の作業部2を有しており、これらの作業部には、特に紡績装置3および巻取り装置4がそれぞれ装備されている。紡績装置3では、紡績ケンス5内にあるスライバ6を紡績して糸7を形成し、この糸7を次いで巻取り装置4で巻き取って綾巻きパッケージ8を形成する。このためには、巻取り装置4は、空管10もしくは綾巻きパッケージ8の巻管を回転可能に保持するためのパッケージフレーム9と、これらのエレメントを駆動する巻取りドラム11とを備えている。
【0036】
さらにこのような作業部2は、それぞれ、紡績装置3の領域に設置された糸継ぎ機構20と、糸引出し装置25と、繊維機械の機械長さの負圧通路27に接続された貯蔵ノズル26と、巻取り装置4の領域に配置された糸綾振り装置18とを有している。
【0037】
さらにこのような作業部2は、作業部固有の旋回可能に支持されたサクションノズル14をそれぞれ備えており、サクションノズルは、作業部2を十分に自律式にさせる。つまり、作業部2は、糸破断を必要に応じて自動的に克服することができるように装備されている。
【0038】
さらにこのようなオープンエンド紡績機1は、作業部2の巻取り装置4において完成した綾巻きパッケージ8を排出するための綾巻きパッケージ搬送装置12を有していることが多い。
【0039】
さらに紡績機1には、もしくは紡績機1上には、たとえばガイドレール13ならびに支持レール15において走行可能な少なくとも1つのサービスユニット16が配置されており、このサービスユニット16の走行装置17は、たとえば走行ローラもしくは支持ホイール19を有している。
【0040】
自体公知のように、このようなサービスユニット16への電気的なエネルギの供給は、好適には、滑り接触装置(図示せず)またはスリップチェーンを介して行われる。このようなサービスユニット16は、オープンエンド紡績機1の紡績/巻取り運転中に、常に作業部2に沿って巡回するか、または複数の作業部2のうちの1つの作業部において操作需要が発生した場合に自動的に介入するか、またはサービスユニット16は必要に応じて作業部2によって要求されて、該当する作業部2に位置決めされる。このような操作需要は、たとえば複数の作業部2のうちの1つの作業部において綾巻きパッケージ8が予め規定された直径に達して、新しい空管10と交換されなければならない場合に存在する。同様に、このような操作需要は、糸破断が生じ、この糸破断を糸継ぎ工程により修復することが望ましい場合も存在し得る。
【0041】
適切な綾巻きパッケージ/空管交換を実施することができるようにするために、このようなサービスユニット16は多数の操作装置を有している。これらの多数の操作装置のうち、
図1には、旋回可能に支持された糸供給管22を備えた補助糸供給装置21が図示されている。さらに、このようなサービスユニット16は、それぞれ、可動に支持された糸敷設装置23と補助糸引出し部28とを有しており、補助糸引出し部28は、好適には機械的に作業するローラ供給機構として構成されている。補助糸供給装置21の糸供給管22は、サービスユニット16の中間壁に回転可能に支持されており、たとえばステッピングモータによって、定義されて制御可能である。糸供給管22には、たとえば回転貫通案内部および管系統を介して、補助糸供給装置21の蓄えボビンが接続されており、この蓄えボビンは、綾巻きパッケージ/空管交換時に必要な補助糸24を提供する。さらに補助糸供給装置21の管系統の領域には、補助糸24を必要に応じて切断する糸切断装置が設置されている。
【0042】
糸敷設装置23は、端部側にヘッドエレメント30を有しており、ヘッドエレメント30には種々異なる操作機構が備えられている。ヘッドエレメント30は、たとえば、糸切断装置31、巻管ディスク開放器32、糸変向ローラ33ならびに糸ブレーキ35を有している。
【0043】
図2は、作業部2の一部と、綾巻きパッケージ/空管交換に関連して必要となる補助糸24の除去中のサービスユニット16とを拡大して概略的に示している。補助糸24は、直前に作業部2の紡績装置3においてたとえば紡績装置3内で回転する繊維リングに敷設されており、いま、除去される。
【0044】
確認可能であるように、いわゆる糸継ぎ部29を介して新しい紡績糸7に結合されている補助糸24は、作業部2の糸引出し装置25とサービスユニット16の補助糸引出し部28とによって紡績装置3から引き出され、作業部2の旋回可能に支持されたサクションノズル14により除去される。
【0045】
補助糸24もしくは新しい紡績糸7は、サクションノズル14に向かう経路で、糸敷設装置23によりガイドされる。糸敷設装置23は、その作業位置Aにあり、そのヘッドエレメント30の領域において特に糸ブレーキ35、糸切断装置31ならびに糸変向ローラ33を有している。さらにヘッドエレメント30は、巻管ディスク開放器32を備えており、巻管ディスク開放器32は、パッケージフレーム9に保持された空管10の端面とパッケージフレーム9の巻管受け皿との間に隙間が生じるように働き、この隙間を通って、補助糸24もしくは新しい紡績糸7がその除去時に通る。
【0046】
糸変向ローラ33において変向された糸条は、次いでサービスユニット16の補助糸引出し部28へと走行し、補助糸引出し部28から、糸収容位置FAに位置決めされているサクションノズル14へと走行する。
【0047】
作業部2の糸引出し装置25からサービスユニット16の補助糸引出し部28に向かう経路で、糸条はさらに、作業部2の、負圧が供給可能である貯蔵ノズル26を通過する。この貯蔵ノズル26は、場合によっては発生する余剰糸を中間貯蔵するために働く。
【0048】
好適な実施例による方法のフロー
複数の作業部2のうちの1つの作業部2において、綾巻きパッケージ8がその予め規定された直径に達したとき、サービスユニット16は、たとえばオープンエンド紡績機1の中央制御ユニットにより該当する作業部2に呼び出され、その作業部2において公知のように、満管の綾巻きパッケージ8を新しい空管10と自動的に交換する。つまり、満管の綾巻きパッケージ8が対応する操作装置(図示せず)によって機械長さの綾巻きパッケージ搬送装置12上に排出された後に、サービスユニット16は、新しい空管10を該当する作業部2のパッケージフレーム9の巻管ディスク間に挿入する。
【0049】
作業部2の紡績再開のためには、周知のように補助糸24が必要とされるので、次いで、先行技術から公知のように、作業部固有のサクションノズル14は、糸収容位置FAに旋回させられ、同時に、サービスユニット16の補助糸供給装置21の糸供給管22が、たとえばステッピングモータによって、糸引渡し位置に位置決めされる。つまり、糸供給管22は、この糸供給管22の開口がサクションノズル14の吸引開口の手前に位置決めされるまで、旋回させられる。
【0050】
次いで、上記で説明したように補助糸供給装置21に接続されている糸供給管22に、ニューマチック式に負荷が加えられて、補助糸24が糸供給管22の開口から出て、直ちに作業部2の負圧が加えられたサクションノズル14によって吸引される。
【0051】
サービスユニット16の糸敷設装置23は、この時点ではまだその静止位置Rに位置決めされている。
【0052】
最終的に、糸供給管22は、上方の運転位置(図示せず)へと旋回させられ、補助糸供給装置21によって対応して補助糸24が供給される。上側の運転位置への糸供給管22の旋回中に、補助糸24は糸敷設装置23の糸変向ローラ33を介して引っ張られる。糸変向ローラ33は、この時点では未だにその静止位置Rに位置決めされている。
【0053】
次のステップにおいて、糸敷設装置23をその作業位置Aへと前方に向かって旋回させる。サービスユニット16の糸敷設装置23の糸変向ローラ33内でガイドされた補助糸24は、糸敷設装置23のヘッドエレメント30に配置された糸切断装置31ならびに糸ブレーキ35に通される。
【0054】
同時に、または次いで、補助糸24をニューマチック式に位置固定するサクションノズル14が、
図1に破線で示した位置へと下方に向かって旋回させられ、補助糸24を作業部2の糸引出し装置25に通し、次いで補助糸24を作業部2の糸継ぎ機構20に引き渡す。
【0055】
次いで、糸継ぎ機構20の対応する糸準備装置、たとえばニューマチック式に負荷可能な準備管内で、補助糸24の糸端は後続の糸継ぎ工程のために準備され、補助糸24は、糸引出し装置25により糸継ぎ工程のために準備されて保持される。
【0056】
次いで、今や自由になったサクションノズル14は、再び上方に向かってその糸収容位置FAへと旋回する。
【0057】
さらに、補助糸供給装置21の糸供給管22は、旋回方向Uで時計回り方向へとさらに旋回し、再び糸引渡し位置に位置決めされる。糸供給管22のこの旋回運動中に、補助糸24は、さらにサービスユニット16の補助糸引出し部28に通される。
【0058】
次いで、補助糸24が、補助糸供給装置21内に配置された糸切断装置によって分離され、補助糸供給装置21の管系統内に占める吹出し流に基づいて糸供給管22の開口から出て、サクションノズル14の吸引開口の領域にある負圧に基づいて直ちにサクションノズル14に吸い込まれる。つまり、補助糸24は、いま、作業部2の糸引出し装置25と作業部固有のサクションノズル14との間で緊張され、糸敷設装置23の種々異なる操作機構と、サービスユニット16の補助糸引出し部28とを通って通過する。
【0059】
続いて、糸敷設装置23は、いわゆる巻管ディスク開放器32により巻取り装置4の複数の巻管ディスクのうちの1つの巻管ディスクをいくらか外方に向かって傾倒させるように制御される。その際に、パッケージフレームの巻管ディスクと、パッケージフレーム9内に保持された空管10の巻管基部の端面との間に、補助糸24の糸条が通るくさび状の隙間が生じる。さらに、糸敷設装置23の糸変向ローラ33内をガイドされた補助糸24は、糸敷設装置23の糸切断装置31および糸ブレーキ35を通過する。
【0060】
作業部2の紡績再開のために、まず、サービスユニット16の補助糸引出し部28により、補助糸24の小さな糸長さが、紡績装置3の方向に戻され、作業部2の貯蔵ノズル26に中間貯蔵される。次いで、その間に準備され、作業部2の糸継ぎ機構20により準備されて保持された補助糸24の正確に定義された糸長さが、作業部2の糸引出し装置25により紡績装置3内に精度良く戻され、紡績装置3内で回転する繊維リングに掛けられ、繊維リングはその際に開かれる。次いで、いま、いわゆる糸継ぎ部29を介して新しい紡績糸7に結合された補助糸24は、作業部2の糸引出し装置25ならびにサービスユニット16の補助糸引出し部28を介して引き出され、作業部2のサクションノズル14により除去される。
【0061】
好適な1つの実施例によれば、サービスユニット16の補助糸引出し部28は、補助糸引出し部28の補助糸引出し速度AVSが、糸摩擦を考慮した補正要因をさらに考慮しながら、作業部2の糸引出し装置25の糸引出し速度AVAに適合されているように、構成されており、かつ調節可能である。これにより、補助糸24の除去中に作業部2の貯蔵ノズル26内に走入する糸ループ34の長さと進入深さtとの両方を、最適な、つまり好適には単に数mmである小さな値に調節することができる。
【0062】
補助糸24が、糸継ぎ部29と一緒にサクションノズル14により除去されるや否や、空管10への紡績糸7の敷設ならびに糸バンチもしくは綾巻きの巻成が行われる。つまり、糸敷設装置23のヘッドエレメント30に配置された操作機構により、直接に前後する幾つかの迅速な動作が行われる。
【0063】
新しい紡績糸7は、たとえば糸切断装置31により空管10の直後で切断され、同時に空管10の直前に配置されている糸ブレーキ35によりクランプされる。その際に、サービスユニット16の補助糸引出し部28上をまだ走行している切断された糸片が、サクションノズル14を介して除去される。さらに糸分離の直後に、糸敷設装置23のヘッドエレメント30もしくは巻管ディスク開放器32は、今までに傾倒させられていた巻管ディスクが再び閉じられ、紡績糸7が空管10の端面と巻管ディスクとの間にクランプされるように制御される。糸ブレーキ35の開放直後に、巻取りドラム11が始動し、巻取りドラム11上に摩擦結合式に位置している空管10を巻取り速度にまで加速する。次いで、サービスユニット16の糸敷設装置23が、その静止位置Rに戻るように旋回させられるので、紡績糸7は巻取り装置4の領域で解放され、作業部2の糸綾振り装置18によって引き取ることができる。
【0064】
前述の経過の一部の最中に、特に糸ブレーキ35の動作と、巻管ディスクと空管10との間の紡績糸7のクランプにより、新しい紡績糸7は停止させられる。
【0065】
しかし、作業部2の紡績装置3は、再び紡績糸7を連続的に製造し、この紡績糸7は作業部2の糸引出し装置25により引き出されるので、比較的大きな余剰糸が生じ、この余剰糸は作業部2の貯蔵ノズル26内に一時的に中間貯蔵されなければならない。
【0066】
補助糸24の先行する除去時に、少なくとも1つの別の補正要因を考慮しながら、種々異なる糸引出し装置の糸引出し速度を最適に適合させることによって、この時点では単に極めて僅かな糸長さだけが貯蔵ノズル26内に中間貯蔵されていることが確実にされているので、貯蔵ノズル26は、従来はその大きさに基づいてしばしば多少問題となっていた余剰糸を適切に中間貯蔵するためにまだ十分な貯蔵スペースを有している。
【0067】
図示しない実施例によれば、スプライス装置が設けられていてよく、スプライス装置は、オープンエンド紡績機の構成部分であるか、またはサービスユニットの構成部分であってよい。スプライス装置は、糸走行経路の近傍に配置されていてよく、または糸走行経路の近傍にもたらすことができるか、またはスプライス通路により糸走行経路に一致させることができる。このようなスプライス装置は、たとえば空気紡績機の分野では一般的である。
【0068】
糸が破断の場合、サービスユニットによって提供された補助糸は、対応する形式で紡績装置に導入され、これにより後続の過程で公知の形式で糸継ぎ部を形成することができ、この場合、補助糸はスプライス装置の処理領域に移送されたか、または糸継ぎ部の製造後に移送される。
【0069】
綾巻きパッケージに乗り上げている上糸端部は、公知の方法で、たとえば、旋回可能に支持されたサクションノズルによって捕捉され、スプライス装置の処理領域に移送することができる。スプライス装置の領域への上糸および補助糸の移送は、必要に応じて互いに適合させて実行されていてよい。
【0070】
糸継ぎ部の製造後に、糸継ぎされた補助糸もしくは紡績糸は、好適には糸継ぎ部が、紡績糸のためのスプライス装置の切断装置を通過するまで、糸引出し装置および補助糸引出し部によって引き出される。紡績糸のためのスプライス装置の切断装置の通過後に、糸引出し装置による紡績糸の引出しを継続させながら、紡績糸のクランプおよび切断が行われ、これにより、貯蔵ノズルは、糸ループの走入により満たされ、補助糸の切断された部分は、補助糸引出し部を介して除去される。上糸は同様にクランプされて切断され、その際に上糸のクランプおよび切断は、紡績糸のクランプおよび切断に時間的に適合されている。紡績糸の切断された端部と上糸の切断された端部とは、公知の形式で、たとえばスプライス装置の保持管と解撚管によって解かれて準備される。解かれて準備された端部は、好適には、スプライス装置の糸ガイドフォークによってスプライス通路内にもたらされ、スプライス圧縮空気を供給しながら互いに継がれる。スプライス工程後に、綾巻きパッケージは巻取り速度の巻取りを継続するために加速させられ、貯蔵ノズルが空になるか、もしくは貯蔵ノズル内に走入した糸ループが解消される。貯留ノズルが空になるか、糸ループが解消されるや否や、綾巻きパッケージの巻取りが、糸引出し装置の糸引出し速度に適合させられた巻取り速度で継続させられる。
【0071】
図示しない別の1つの実施例によれば、補助糸引出し装置は、速度のずれを有する補助糸引出し速度で糸継ぎされた補助糸を引き出すために補助糸引出し部を運転するための制御命令を生成し、補助糸引出し部を運転するために伝達するように設計されている制御装置に接続されており、速度のずれは、糸引出し装置の糸引出し速度と、少なくとも一つのさらなる補正要因を考慮する。制御装置は、1つの実施例によれば、オープンエンド紡績機の構成部分、特にサービスユニットの構成部分であり、代替的な1つの実施例によれば、制御命令を伝達するためにオープンエンド紡績機に無線または有線で接続されている外部または可動式の制御装置として構成されている。
【符号の説明】
【0072】
1 オープンエンド紡績機
2 作業部
3 紡績装置
4 巻取り装置
5 紡績ケンス
6 スライバ
7 糸
8 綾巻きパッケージ
9 パッケージフレーム
10 空管
11 巻取りドラム
12 綾巻きパッケージ搬送装置
13 ガイドレール
14 サクションノズル
15 支持レール
16 サービスユニット
17 走行装置
18 糸綾振り装置
19 支持ホイール
20 糸継ぎ機構
21 補助糸供給装置
22 糸供給管
23 糸敷設装置
24 補助糸
25 糸引出し装置
26 貯蔵ノズル
27 負圧通路
28 補助糸引出し部
29 糸継ぎ部
30 ヘッドエレメント
31 糸切断装置
32 巻管ディスク開放器
33 糸変向ローラ
34 糸ループ
35 糸ブレーキ
FA 糸収容位置
R 静止位置
A 作業位置
U 旋回方向
t 進入深さ
AVS 28の引出し速度
AVA 25の引出し速度
【国際調査報告】