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特表2023-501971癌の治療のための、放射線療法と共に用いるPD-1、TGFβ、及びATMの組み合わせ阻害
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-20
(54)【発明の名称】癌の治療のための、放射線療法と共に用いるPD-1、TGFβ、及びATMの組み合わせ阻害
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/06 20060101AFI20230113BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230113BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230113BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230113BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20230113BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230113BHJP
   A61K 31/437 20060101ALI20230113BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20230113BHJP
   C07K 19/00 20060101ALN20230113BHJP
【FI】
A61K45/06
A61P35/00 ZNA
A61P35/02
A61P43/00 121
A61P43/00 111
A61P37/04
A61K39/395 U
A61K39/395 N
A61K39/395 D
A61K31/437
C07K16/28
C07K19/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022525755
(86)(22)【出願日】2020-11-02
(85)【翻訳文提出日】2022-06-28
(86)【国際出願番号】 EP2020080682
(87)【国際公開番号】W WO2021084124
(87)【国際公開日】2021-05-06
(31)【優先権主張番号】62/929,379
(32)【優先日】2019-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BRIJ
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】504104899
【氏名又は名称】アレス トレーディング ソシエテ アノニム
(71)【出願人】
【識別番号】522174155
【氏名又は名称】グラクソスミスクライン インテレクチュアル プロパティ(ナンバー 4)リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100196977
【弁理士】
【氏名又は名称】上原 路子
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ラン
(72)【発明者】
【氏名】アダム エス.レイザーチャック
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA24
4C084MA02
4C084NA05
4C084ZB09
4C084ZB26
4C084ZB27
4C084ZC01
4C084ZC20
4C084ZC41
4C084ZC75
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB31
4C085CC22
4C085CC23
4C085EE03
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB05
4C086MA03
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZB09
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC01
4C086ZC20
4C086ZC41
4C086ZC75
4H045AA11
4H045AA30
4H045DA76
4H045EA22
4H045EA28
(57)【要約】
本発明は、癌の治療に有用な組み合わせ療法に関する。特に、本発明は、癌を治療するための、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、ATM阻害剤、及び放射線の組み合わせの使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における癌を治療する方法における使用のためのPD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びATM阻害剤であって、該方法は、前記PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びATM阻害剤を放射線療法と組み合わせて対象に投与することを含む、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びATM阻害剤。
【請求項2】
前記PD-1阻害剤は、PD-L1に結合可能な抗PD-L1抗体又はその断片である、請求項1に記載の使用のための化合物。
【請求項3】
前記抗PD-L1抗体又はその断片は、配列番号1の配列を有するCDR1、配列番号2の配列を有するCDR2、及び配列番号3の配列を有するCDR3を含む重鎖配列、並びに配列番号4の配列を有するCDR1、配列番号5の配列を有するCDR2、及び配列番号6の配列を有するCDR3を含む軽鎖配列を含む;又は
前記抗PD-L1抗体又はその断片は、配列番号19の配列を有するCDR1、配列番号20の配列を有するCDR2、及び配列番号21の配列を有するCDR3を含む重鎖配列、並びに配列番号22の配列を有するCDR1、配列番号23の配列を有するCDR2、及び配列番号24の配列を有するCDR3を含む軽鎖配列を含む、
請求項2に記載の使用のための化合物。
【請求項4】
前記PD-1阻害剤と前記TGFβ阻害剤は、(a)PD-L1に結合可能かつPD-1とPD-L1との間の相互作用を阻害可能な抗体又はその断片、及び(b)TGFβに結合可能かつTGFβとTGFβRIIとの間の相互作用を阻害可能なTGFβRII又はその断片の細胞外ドメインを含む分子へと融合されている、
請求項2又は3に記載の使用のための化合物。
【請求項5】
前記TGFβRII又はその断片の細胞外ドメインは、前記抗体又はその断片の重鎖配列のそれぞれに融合され;かつ、
前記軽鎖配列及び前記重鎖配列と前記TGFβRII又はその断片の細胞外ドメインを含む配列は、(1)配列番号7及び配列番号8、(2)配列番号15及び配列番号17、並びに(3)配列番号15及び配列番号18からなる群より選択される配列にそれぞれ対応する、請求項4に記載の使用のための化合物。
【請求項6】
前記融合されたPD-1阻害剤とTGFβ阻害剤のアミノ酸配列は、ビントラフスプアルファのアミノ酸配列と同一である、請求項4又は5に記載の使用のための化合物。
【請求項7】
前記融合されたPD-1阻害剤とTGFβ阻害剤は、2週間に1回1200mgの用量、あるいは3週間に1回1800mg又は2400mgの用量で投与される、請求項4~6のいずれか1項に記載の使用のための化合物。
【請求項8】
前記ATM阻害剤はイミダゾ[4,5-c]キノリン誘導体である、請求項1~7のいずれか1項に記載の使用のための化合物。
【請求項9】
前記ATM阻害剤は、8-(1,3-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イル)-1-(3-フルオロ-5-メトキシ-ピリジン-4-イル)-7-メトキシ-3-メチル-1,3-ジヒドロ-イミダゾ[4,5-c]キノリン-2-オン又はその医薬的に許容される塩である、請求項8に記載の使用のための化合物。
【請求項10】
前記ATM阻害剤は、8-(1,3-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イル)-1-(Sa)-(3-フルオロ-5-メトキシ-ピリジン-4-イル)-7-メトキシ-3-メチル-1,3-ジヒドロ-イミダゾ[4,5-c]キノリン-2-オン又はその医薬的に許容される塩である、請求項9に記載の使用のための化合物。
【請求項11】
前記ATM阻害剤は、1日あたり25~400mgの用量で投与される、請求項1~10のいずれか1項に記載の使用のための化合物。
【請求項12】
対象における癌を治療する方法における使用のためのPD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びATM阻害剤であって、該方法は、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びATM阻害剤を放射線療法と組み合わせて対象に投与することを含み;かつ、前記PD-1阻害剤と前記TGFβ阻害剤は、ビントラフスプアルファのアミノ酸配列を有する分子へと融合され、そして前記ATM阻害剤は8-(1,3-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イル)-1-(Sa)-(3-フルオロ-5-メトキシ-ピリジン-4-イル)-7-メトキシ-3-メチル-1,3-ジヒドロ-イミダゾ[4,5-c]キノリン-2-オン又はその医薬的に許容される塩である、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びATM阻害剤。
【請求項13】
前記癌は、扁平上皮癌、骨髄腫、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、神経膠腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、急性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、消化器(管)癌、腎癌、卵巣癌、肝臓癌、リンパ芽球性白血病、リンパ性白血病、結腸直腸癌、子宮内膜癌、腎臓癌、前立腺癌、甲状腺癌、黒色腫、軟骨肉腫、神経芽細胞腫、膵臓癌、膠芽腫、子宮頸癌、脳癌、胃癌、膀胱癌、肝細胞癌、乳癌、結腸癌、胆道癌、及び頭頸部癌からなる群より選択される、請求項1~12のいずれか1項に記載の使用のための化合物。
【請求項14】
(a)PD-L1に結合可能かつPD-1とPD-L1との間の相互作用を阻害可能な抗体又はその断片、及び(b)TGFβに結合可能かつTGFβとTGFβRIIとの間の相互作用を阻害可能なTGFβRII又はその断片の細胞外ドメインを含む分子;並びに、
対象における癌を治療又は進行を遅延させるために、前記分子をATM阻害剤及び放射線療法と組み合わせて使用するための説明書を含む添付文書;
を含むキット。
【請求項15】
ATM阻害剤;並びに、
対象における癌を治療又は進行を遅延させるために、前記ATM阻害剤をPD-1阻害剤、TGFβ阻害剤及び放射線療法と組み合わせて使用するための説明書を含む添付文書;
を含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌の治療に関する。特に、本発明は、癌の治療における使用のための、放射線療法と共に用いるPD-1、TGFβ、及びATMを阻害するための化合物の組み合わせに関する。
【背景技術】
【0002】
放射線療法は多くの異なるタイプの癌を治療するための標準的な治療法だが、治療抵抗性が大きな懸念事項として残されている。放射線療法に対する抵抗性の機構は多彩で複雑であり、その中には、DNA損傷応答経路(DDR)、免疫細胞機能の変化、及びトランスフォーミング増殖因子ベータ(TGFβ)などの免疫抑制サイトカインのレベル上昇が含まれる。抵抗性と戦うための戦略には、放射線療法を、これらの機構を標的とする治療法と組み合わせることが含まれる。
【0003】
DDR阻害剤は放射線療法にとって有望な組み合わせパートナーである。放射線療法がDNAを損傷させることによって癌細胞を殺すと、細胞がその損傷を修復しようとするときにDDR経路を活性化させる。DDR経路は正常な細胞では過多であるが、悪性化が進行する間に1つ以上の経路が失われることがしばしばあり、その結果として癌細胞は残存している経路により多く依存するようになり、エラーの可能性を増大させる。そのため癌細胞はDDR阻害剤を用いた治療に対して独自の脆弱さを示す。DNA二本鎖切断(DSB)は放射線によって誘導される細胞死の主要な原因であると見なされているため、DSB修復機構を標的とするDDR阻害剤は放射線療法と組み合わせて使用されるときに特に有効である可能性がある。実際、DSB修復に関与するセリン/トレオニンキナーゼであるATMの阻害剤は、臨床前モデルにおいて癌細胞を放射線療法に対して感受性にするのに有効であることが実証された(T. Fuchss et al.: “Selective ATM Kinase inhibitor M3541: A Clinical Candidate Drug with Strong Anti-Tumor Activity in Combination with Radiotherapy”;AACR Annual Meeting;2018年4月14~18日で発表)。
【0004】
免疫抑制経路(TGFβ又はプログラムされた死リガンド(PD-L1)/プログラムされた死(PD-1)など)を標的とする治療法は、それぞれが、単独で、又は放射線療法と組み合わせて調べられてもいる。TGFβというサイトカインは免疫自己寛容を維持する上で生理学的な役割を持つが、癌では自然免疫と獲得免疫に対する効果を通じて腫瘍増殖と免疫逃避を促進する可能性がある。PD-L1/PD-1シグナル伝達によって媒介される免疫チェックポイントはT細胞の活性を減弱させ、癌によって利用されて抗腫瘍T細胞応答を抑制する。放射線は、放射線抵抗性に寄与する可能性のあるPD-L1とTGF-β両方の発現を誘導する。
【0005】
WO2015/118175には、PD-L1を阻止するヒトIgG1抗体と融合してTGF-β「トラップ」として機能する腫瘍増殖因子ベータ受容体II型(TGFβRII)の細胞外ドメインからなる二機能性融合タンパク質が記載されている。具体的には、このタンパク質は、抗PD-L1抗体の2つの免疫グロブリン軽鎖と、可撓性グリシン-セリンリンカーを介してヒトTGFβRIIの細胞外ドメインに遺伝子操作で融合された抗PD-L1抗体の重鎖をそれぞれが含む2つの重鎖とからなるヘテロ四量体である(図1参照)。この融合分子は、腫瘍微小環境において免疫抑制の2つの主要な機構を標的とするように設計されている。
【0006】
癌を治療するための新規な治療選択肢を開発する必要性が依然として残っている。さらに、既存の治療法よりも効果が大きい治療法が必要とされている。本発明の好ましい組み合わせ療法は、いずれかの治療剤だけを用いる治療法よりも大きな効果を示す。
【発明の概要】
【0007】
以下に記載される実施形態のそれぞれは、当該実施形態と矛盾しない本明細書記載の他の任意の実施形態と組み合わせることができる。さらに、本明細書に記載の実施形態のそれぞれは、その範囲内で、本明細書に記載の化学的な化合物の医薬的に許容される塩も想定内である。したがって、「又はその医薬的に許容される塩」という用語は、暗黙的に、本明細書に記載の全ての化学的な化合物の記載の範囲内である。以下に説明するような態様内の実施形態は、同じ態様又は異なる態様内で矛盾しない他の任意の実施形態と組み合わせることができる。
【0008】
本発明は、癌を有する対象の放射線療法の治療結果は、対象を更にPD-1、TGFβ及びATMを阻害する化合物の組み合わせで治療することにより改善できるという発見から生じる。よって、第一の態様では、本発明は、対象における癌を治療する方法における使用のための、悪性腫瘍を有する対象における腫瘍の増殖又は進行の阻害における使用のための、対象における悪性細胞の転移の阻害における使用のための、対象における転移の発生及び/又は転移の増殖のリスクの低減における使用のための、そして悪性細胞を有する対象における腫瘍の退縮の誘導における使用のための、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びATM阻害剤を提供し、ここで、前記使用は、前記化合物を放射線療法と組み合わせて対象に投与することを含む。本発明は、上記使用のための医薬の製造のための前記PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤及び/又はATM阻害剤、並びに、上記使用に関する治療の方法も提供する。好ましくは、PD-1阻害剤とTGFβ阻害剤は融合されている。放射線療法と組み合わせた治療により、対象における客観的な反応、好ましくは完全な反応又は部分的な反応がもたらされる。いくつかの実施形態では、癌は、PD-L1陽性の癌性疾患として同定される。
【0009】
癌は、好ましくは、癌腫、リンパ腫、白血病、芽細胞腫、及び肉腫から選択される。
【0010】
PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、ATM阻害剤、及び放射線療法は、癌の一次、二次、三次、又はそれよりも高次の治療において投与することができる。いくつかの実施形態では、癌は、以前の癌療法に対し耐性であるか耐性になっている。本発明の組み合わせ療法は、以前に1つ又は複数の化学療法による治療あるいは放射線療法を受けたが、かかる以前の治療が失敗した癌を有する対象の治療にも使用できる。
【0011】
好ましい実施形態では、治療する対象はヒトである。
【0012】
好ましくは、PD-1阻害剤とTGFβ阻害剤は融合されている。より好ましくは、融合された分子は抗PD-L1/TGFβ Trapである。最も好ましくは、抗PD-L1/TGFβ Trapのアミノ酸配列はビントラフスプアルファのアミノ酸配列と同一である。
【0013】
更なる態様では、本発明はまた、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、ATM阻害剤、及び放射線療法を組み合わせた治療を宣伝するための方法であって、ターゲットオーディエンスに対し、例えば、対象から採取された試料、好ましくは腫瘍試料中のPD-L1発現、に基づいて癌を有する対象を治療するための組み合わせの使用を促進することを含む方法にも関する。PD-L1発現は、例えば、1つ又は複数の一次抗PD-L1抗体を使用する免疫組織化学的方法によって決定することができる。
【0014】
本明細書は、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、ATM阻害剤、及び少なくとも医薬的に許容される賦形剤又は補助剤を含み、PD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤が好ましくは融合されている、医薬組成物も提供する。PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びATM阻害剤は、単一又は別個の単位剤形として提供される。
【0015】
更なる態様では、本発明は、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、ATM阻害剤、及び、対象における癌を治療又は進行を遅延させるために、前記化合物を放射線療法と組み合わせて使用するための説明書を含む添付文書を含むキットに関する。更なる態様では、本発明は、PD-1阻害剤、並びに、対象における癌を治療又は進行を遅延させるために、前記PD-1阻害剤を、TGFβ阻害剤と、ATM阻害剤と、放射線療法と組み合わせて使用するための説明書を含む添付文書を含むキットに関する。更なる態様では、本発明は、TGFβ阻害剤、並びに、対象における癌を治療又は進行を遅延させるために、前記TGFβ阻害剤を、PD-1阻害剤と、ATM阻害剤と、放射線療法と組み合わせて使用するための説明書を含む添付文書を含むキットに関する。更なる態様では、本発明は、ATM阻害剤、並びに、対象における癌を治療又は進行を遅延させるために、前記ATM阻害剤を、PD-1阻害剤と、TGFβ阻害剤と、放射線療法と組み合わせて使用するための説明書を含む添付文書を含むキットに関する。更なる態様では、本発明は、抗PD-L1/TGFβ Trap、並びに、対象における癌を治療又は進行を遅延させるために、前記抗PD-L1/TGFβ Trapを、ATM阻害剤と放射線療法と組み合わせて使用するための説明書を含む添付文書を含むキットに関する。キットの化合物は、1つ又は複数の容器に含まれていてもよい。説明書には、これらの医薬が、免疫組織化学的(IHC)アッセイによってPD-L1発現について陽性であることを検査する癌を有する対象の治療に使用する意図であると記載されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1はビントラフスプアルファのアミノ酸配列を示す。(A)配列番号8はビントラフスプアルファの重鎖配列を示す。配列番号1、2、及び3のアミノ酸配列を持つCDRに下線が引かれている。(B)配列番号7はビントラフスプアルファの軽鎖配列を示す。配列番号4、5、及び6のアミノ酸配列を持つCDRに下線が引かれている。
【0017】
図2図2は抗PD-L1/TGFβ Trapの代表的な構造を示す。
【0018】
図3-1】図3:ビントラフスプアルファ、放射線療法(RT)、及び化合物Aの組み合わせは、ビントラフスプアルファとRTの二重組み合わせと比べて抗腫瘍活性を増大させた。BALB/cマウスの筋肉内(i.m.)に0.5×105個の4T1細胞を接種し(-7日目)、アイソタイプ対照(400 μg i.v.;0、2、4日目)+ビヒクル対照(0.2 mL、経口[per os;p.o.]、0~10日目)、ビントラフスプアルファ(492 μg i.v.;0、2、4日目)+RT(8 Gy、0~3日目)、又はビントラフスプアルファ+RT+化合物A(100 mg/kg、p.o、0~10日目)で処理した(n=10匹のマウス/群)。腫瘍の体積を週に2回測定し、(A)平均値±SEM、又は(B)個別の腫瘍体積として表わした。p値は、テューキー又はシダックの事後検定を用いた二元配置反復測定分散分析によって計算した。(C)生存分析のため、腫瘍体積が約2000 mm3に達したときにマウスを安楽死させ、生存期間中央値を計算した。
図3-2】図3:ビントラフスプアルファ、放射線療法(RT)、及び化合物Aの組み合わせは、ビントラフスプアルファとRTの二重組み合わせと比べて抗腫瘍活性を増大させた。BALB/cマウスの筋肉内(i.m.)に0.5×105個の4T1細胞を接種し(-7日目)、アイソタイプ対照(400 μg i.v.;0、2、4日目)+ビヒクル対照(0.2 mL、経口[per os;p.o.]、0~10日目)、ビントラフスプアルファ(492 μg i.v.;0、2、4日目)+RT(8 Gy、0~3日目)、又はビントラフスプアルファ+RT+化合物A(100 mg/kg、p.o、0~10日目)で処理した(n=10匹のマウス/群)。腫瘍の体積を週に2回測定し、(A)平均値±SEM、又は(B)個別の腫瘍体積として表わした。p値は、テューキー又はシダックの事後検定を用いた二元配置反復測定分散分析によって計算した。(C)生存分析のため、腫瘍体積が約2000 mm3に達したときにマウスを安楽死させ、生存期間中央値を計算した。
【0019】
図4-1】図4:ビントラフスプアルファ、RT、及び化合物Aの組み合わせは、化合物Aの投与スケジュールとは無関係に、ビントラフスプアルファとRTの二重組み合わせと比べて抗腫瘍活性を増大させた。BALB/cマウスの筋肉内(i.m.)に0.5×105個の4T1細胞を接種し(-7日目)、アイソタイプ対照(400 μg i.v.;0、2、4日目)+ビヒクル対照(0.2 mL、p.o.、0~17日目)、ビントラフスプアルファ(492 pg i.v.;0、2、4日目)+RT(8 Gy、0~3日目)、又はビントラフスプアルファ+RT+化合物A(100 mg/kg、p.o、0~3日目、0~10日目、又は0~17日目)で処理した(n=10匹のマウス/群)。腫瘍の体積を週に2回測定し、(A)平均値±SEM又は(B)個別の腫瘍体積として表わした。p値は、テューキーの事後検定を用いた二元配置反復測定分散分析によって計算した。(C)生存分析のため、腫瘍体積が約2000 mm3に達したときにマウスを安楽死させ、生存期間中央値を計算した。
図4-2】図4:ビントラフスプアルファ、RT、及び化合物Aの組み合わせは、化合物Aの投与スケジュールとは無関係に、ビントラフスプアルファとRTの二重組み合わせと比べて抗腫瘍活性を増大させた。BALB/cマウスの筋肉内(i.m.)に0.5×105個の4T1細胞を接種し(-7日目)、アイソタイプ対照(400 μg i.v.;0、2、4日目)+ビヒクル対照(0.2 mL、p.o.、0~17日目)、ビントラフスプアルファ(492 pg i.v.;0、2、4日目)+RT(8 Gy、0~3日目)、又はビントラフスプアルファ+RT+化合物A(100 mg/kg、p.o、0~3日目、0~10日目、又は0~17日目)で処理した(n=10匹のマウス/群)。腫瘍の体積を週に2回測定し、(A)平均値±SEM又は(B)個別の腫瘍体積として表わした。p値は、テューキーの事後検定を用いた二元配置反復測定分散分析によって計算した。(C)生存分析のため、腫瘍体積が約2000 mm3に達したときにマウスを安楽死させ、生存期間中央値を計算した。
【0020】
図5-1】図5:ビントラフスプアルファ、RT、及び化合物Aの組み合わせは、二重組み合わせ及び単剤療法と比べて抗腫瘍活性を増大させた。BALB/cマウスの筋肉内(i.m.)に0.5×105個の4T1細胞を接種し(-7日目)、アイソタイプ対照(400 pg i.v.;0、2、4日目)+ビヒクル対照(0.2 mL、p.o.、0~4日目)、ビントラフスプアルファ(492 pg i.v.;0、2、4日目)+ビヒクル対照、RT(8 Gy、0~3日目)+アイソタイプ対照+ビヒクル対照、化合物A(100 mg/kg、p.o、0~4日目)+アイソタイプ対照、ビントラフスプアルファ+RT、ビントラフスプアルファ+化合物A、RT+化合物A、又はビントラフスプアルファ+RT+化合物Aで処理した(n=10匹のマウス/群)。腫瘍の体積を週に2回測定し、(A)平均値±SEM又は(B)個別の腫瘍体積として表わした。p値は、テューキーの事後検定を用いた二元配置反復測定分散分析によって計算した。(C)生存分析のため、腫瘍体積が約2000 mm3に達したときにマウスを安楽死させ、生存期間中央値を計算した。
図5-2】図5:ビントラフスプアルファ、RT、及び化合物Aの組み合わせは、二重組み合わせ及び単剤療法と比べて抗腫瘍活性を増大させた。BALB/cマウスの筋肉内(i.m.)に0.5×105個の4T1細胞を接種し(-7日目)、アイソタイプ対照(400 pg i.v.;0、2、4日目)+ビヒクル対照(0.2 mL、p.o.、0~4日目)、ビントラフスプアルファ(492 pg i.v.;0、2、4日目)+ビヒクル対照、RT(8 Gy、0~3日目)+アイソタイプ対照+ビヒクル対照、化合物A(100 mg/kg、p.o、0~4日目)+アイソタイプ対照、ビントラフスプアルファ+RT、ビントラフスプアルファ+化合物A、RT+化合物A、又はビントラフスプアルファ+RT+化合物Aで処理した(n=10匹のマウス/群)。腫瘍の体積を週に2回測定し、(A)平均値±SEM又は(B)個別の腫瘍体積として表わした。p値は、テューキーの事後検定を用いた二元配置反復測定分散分析によって計算した。(C)生存分析のため、腫瘍体積が約2000 mm3に達したときにマウスを安楽死させ、生存期間中央値を計算した。
図5-3】図5:ビントラフスプアルファ、RT、及び化合物Aの組み合わせは、二重組み合わせ及び単剤療法と比べて抗腫瘍活性を増大させた。BALB/cマウスの筋肉内(i.m.)に0.5×105個の4T1細胞を接種し(-7日目)、アイソタイプ対照(400 pg i.v.;0、2、4日目)+ビヒクル対照(0.2 mL、p.o.、0~4日目)、ビントラフスプアルファ(492 pg i.v.;0、2、4日目)+ビヒクル対照、RT(8 Gy、0~3日目)+アイソタイプ対照+ビヒクル対照、化合物A(100 mg/kg、p.o、0~4日目)+アイソタイプ対照、ビントラフスプアルファ+RT、ビントラフスプアルファ+化合物A、RT+化合物A、又はビントラフスプアルファ+RT+化合物Aで処理した(n=10匹のマウス/群)。腫瘍の体積を週に2回測定し、(A)平均値±SEM又は(B)個別の腫瘍体積として表わした。p値は、テューキーの事後検定を用いた二元配置反復測定分散分析によって計算した。(C)生存分析のため、腫瘍体積が約2000 mm3に達したときにマウスを安楽死させ、生存期間中央値を計算した。
【0021】
図6図6:ビントラフスプアルファ+化合物A+RTは、4T1モデルにおいて、ビントラフスプアルファ+RTと比べてより少ない用量のRTで同じかより優れた抗腫瘍効果と生存を示す。Balb/cマウスの右大腿筋に4T1細胞(0.5×106個)を接種した(-7日目)。平均腫瘍体積が150 mm3に達したときである0日目に、マウス(n=10匹のマウス/群)をアイソタイプ対照(400 μg i.v.;0、2、4日目)、ビントラフスプアルファ(492 μg/マウス i.v.;0、2、4日目)+RT(8 Gy、QD×4)、又はビントラフスプアルファ+化合物A(100 mg/kg p.o.、QD×4)+RT(8 Gy又は6 Gy又は4 Gy又は2 Gy、QD×4)で処理した。腫瘍の体積を週に2回測定し、平均値±SEMとして表わした。p値は、テューキー又はシダックの事後検定を用いた二元配置反復測定分散分析によって計算した。生存期間中央値を比較するp値はログ-ランク(マンテル-コックス)検定を用いて計算した。
【0022】
図7-1】図7:ビントラフスプアルファ+化合物A+RTは、MC38モデルにおいて、単剤療法と二重組み合わせ療法のそれぞれと比べて抗腫瘍効果と生存を増大させた。C57BL/6マウスの右大腿筋の筋肉内にMC38細胞(0.25×105個)を接種した(-7日目)。平均腫瘍体積が50 mm3に達したときである0日目に、マウス(n=10マウス/群)をアイソタイプ対照(133 μg i.v.;0日目)。ビントラフスプアルファ(164 μg i.v.;0日目)、化合物A(100 mg/kg p.o.;QD×4)、RT(1.8 Gy;QD×4)、ビントラフスプアルファ+RT、ビントラフスプアルファ+化合物A、RT+化合物A、又はビントラフスプアルファ+化合物A+RTで処理した。腫瘍の体積を週に2回測定し、平均値±SEMとして、又は個別の腫瘍体積として表わした。p値は、テューキー又はシダックの事後検定を用いた二元配置反復測定分散分析によって計算した。
図7-2】図7:ビントラフスプアルファ+化合物A+RTは、MC38モデルにおいて、単剤療法と二重組み合わせ療法のそれぞれと比べて抗腫瘍効果と生存を増大させた。C57BL/6マウスの右大腿筋の筋肉内にMC38細胞(0.25×105個)を接種した(-7日目)。平均腫瘍体積が50 mm3に達したときである0日目に、マウス(n=10マウス/群)をアイソタイプ対照(133 μg i.v.;0日目)。ビントラフスプアルファ(164 μg i.v.;0日目)、化合物A(100 mg/kg p.o.;QD×4)、RT(1.8 Gy;QD×4)、ビントラフスプアルファ+RT、ビントラフスプアルファ+化合物A、RT+化合物A、又はビントラフスプアルファ+化合物A+RTで処理した。腫瘍の体積を週に2回測定し、平均値±SEMとして、又は個別の腫瘍体積として表わした。p値は、テューキー又はシダックの事後検定を用いた二元配置反復測定分散分析によって計算した。
【発明を実施するための形態】
【0023】
定義
以下の定義は読者を助けるために提示されている。異なる定義がなされているのでなければ、本明細書で用いられているあらゆる技術用語、概念、及び他の科学又は医学の用語又は用語法は、化学と医学の当業者によって一般に理解されている意味を持つことが想定されている。いくつかの場合には、一般に理解されている意味を持つ用語が、明確にするため、及び/又は参照を容易にするために本明細書に定義されており、本明細書にそのような定義が含まれることを、当該分野で一般に理解されている用語の定義と実質的に異なることを表わすと解釈してはならない。
【0024】
「1つの」と「その」には、文脈が明らかにそうでないことを述べているのでない限り複数形が含まれる。従って例えば1つの抗体への言及は、1つ以上の抗体、又は少なくとも1つの抗体を意味する。そのため「1つの」、「1つ以上の」、及び「少なくとも1つの」という用語は、本明細書では交換可能に用いられる。
【0025】
「約」は、数値で定義されるパラメータ(例えばPD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、又はATM阻害剤の用量、又は本明細書に記載されている組み合わせ療法の治療時間の長さ)を修飾するのに用いられるときには、そのパラメータが、そのパラメータに関して述べられている数値の多くて上下10%だけ変化してもよいことを意味する。例えば約10 mg/kgの用量は、9 mg/kgと11 mg/kgの間で変化してもよい。
【0026】
薬を患者に「投与する」又は患者への薬「の投与」(と、この表現と文法的に同等な表現)は、直接的な投与(医療の専門家による患者への投与、又は自己投与が可能である)、及び/又は間接的な投与(薬を処方する行動が可能である)を意味し、例えば患者に薬を自己投与するよう指示するか患者に薬の処方箋を提供する医師は、その患者に薬を投与している。
【0027】
「抗体」は、免疫グロブリン分子の可変領域内に位置する少なくとも1つの抗原認識部位を通じて標的に特異的に結合することのできる免疫グロブリン分子(炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチドなど)を意味する。本明細書では、「抗体」という用語に、完全なポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体だけでなく、特に断わらない限り、その任意の抗原結合断片又は抗体断片で特異的結合に関してその完全な抗体と競合するもののほか、その抗原結合断片又は抗体断片を含む任意のタンパク質(融合タンパク質(例えば抗体-薬複合体、サイトカインに融合した抗体、又はサイトカイン受容体に融合した抗体)、ポリエピトープ特異性を持つ抗体組成物、及び多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)が含まれる)も包含される。
【0028】
抗体の「抗原結合断片」、又は「抗体断片」には、完全な抗体の一部で、抗原に相変わらず結合することのできる部分が含まれる。抗原結合断片に含まれるのは、例えばFab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、Fd断片、及びFv断片、ドメイン抗体(dAb、例えばサメとラクダの抗体)、相補性決定領域(CDR)を含む断片、一本鎖可変断片抗体(scFv)、一本鎖抗体分子、多重特異性抗体(抗体断片、マキシボディ、ナノボディ、ミニボディ、イントラボディ、ディアボディ、トリアボディ、テトラボディ、v-NAR、及びビス-scFvから形成されているもの)、線形抗体(例えば米国特許第5,641,870号、実施例2;Zapata et al.(1995)Protein Eng. 8HO: 1057を参照されたい)、及び免疫グロブリンの少なくとも一部を含有するポリペプチドであって、その部分がそのポリペプチドに抗原を特異的に結合させるのに十分であるようなポリペプチドである。抗体をパパインで消化させると、「Fab断片と呼ばれる2つの同じ抗原結合断片と、残留「Fc」断片(容易に結晶化する能力を反映した名称)が生成する。Fab断片は、1つのL鎖全体に加え、H鎖(VH)の可変領域ドメインと、1つの重鎖(CH1)の第1の定常ドメインからなる。それぞれのFab断片は抗原結合に関して1価である。すなわちそれは単一の抗原結合部位を持つ。抗体をペプシンで処理すると単一の大きなF(ab’)2断片が生成する。これは、異なる抗原結合活性を持っていてジスルフィドで連結された2つのFab断片に大まかに対応し、相変わらず抗原に架橋することができる。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域からの1個以上のシステインを含むCH1ドメインのカルボキシ末端に数個の追加残基を持つ点がFab断片と異なっている。Fab’-SHは、定常ドメインのシステイン残基が自由なチオール基を有するFab’の名称である。F(ab’)2抗体断片は、元々、ヒンジシステインを間に持つFab’断片のペアとして生成された。抗体断片の他の化学的カップリングも知られている。
【0029】
「抗体依存性細胞介在性細胞傷害」又は「ADCC」は細胞傷害の1つの形態を意味し、ある種の細胞傷害性細胞(例えばナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、及びマクロファージ)の表面に存在するFc受容体(FcR)に結合した分泌Igにより、これら細胞傷害性エフェクタ細胞が抗原担持標的細胞に特異的に結合することが可能になり、その後その標的細胞を細胞毒素で殺す。抗体は細胞傷害性細胞を武装しているため、この機構によって標的細胞を殺すのに必要である。ADCCを媒介する主要な細胞であるNK細胞はFcγRIIIだけを発現するのに対し、単球はFcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIを発現する。造血細胞の表面でのFc発現が、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol. 9: 457-92 (1991)の464ページの表3にまとめられている。
【0030】
「抗PD-L1抗体」又は「抗PD-1抗体」は、癌細胞の表面に発現したPD-L1がPD-1に結合するのを阻止する抗体又はその抗原結合断片を意味する。ヒト対象を治療する本発明のどの治療法、薬、及び使用でも、抗PD-L1抗体はヒトPD-L1に特異的に結合し、ヒトPD-1へのヒトPD-L1の結合を阻止する。ヒト対象を治療する本発明のどの治療法、薬、及び使用でも、抗PD-1抗体はヒトPD-1に特異的に結合し、ヒトPD-1へのヒトPD-L1の結合を阻止する。抗体は、モノクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、又はキメラ抗体が可能であり、ヒト定常領域を含むことができる。いくつかの実施形態では、ヒト定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4の定常領域からなる群より選択され、好ましい実施形態では、ヒト定常領域はIgG1又はIgG4の定常領域である。いくつかの実施形態では、抗原結合断片は、Fab断片、Fab’-SH断片、F(ab’)2断片、scFv断片、及びFv断片からなる群より選択される。
【0031】
「抗PD-L1/TGFβ Trap」は、PD-1阻害剤とTGFβ阻害剤の融合分子で、(1)PD-L1に結合することができてPD-1とPD-L1との間の相互作用を阻害する抗体又はその断片と、(2)TGFβに結合することができてTGFβとTGFβ受容体との間の相互作用を阻害するTGFβRIIの細胞外ドメイン又はその断片を含むものを意味する。
【0032】
「ATM阻害剤」は、本明細書では、好ましくはATMキナーゼの活性を阻害することによってATMシグナル伝達経路を阻害する分子を意味する。ATM阻害剤は、化合物Aであるか、その医薬的に許容される塩であることが好ましい。
【0033】
「バイオマーカー」は一般に、疾患状態を示す生物分子と、その定量的測定及び定性的測定を意味する。「予後バイオマーカー」は、療法とは独立に、疾患の転帰と相関する。例えば腫瘍低酸素状態は負の予後マーカーであり、腫瘍低酸素状態が強いほど、疾患の転帰はよくない可能性が大きい。「予測バイオマーカー」は、患者がある特定の療法にプラスの応答をする可能性が大きいかどうかを示す。例えばHER2プロファイリングが乳癌患者で一般に使用されており、それらの患者がハーセプチン(トラスツズマブ、Genentech)に応答する可能性が大きいかどうかが判断される。「応答バイオマーカー」はある治療法に対する応答の1つの指標を提供するため、ある治療法がうまくいっているかどうかの1つの目安を提供する。例えば前立腺特異的抗原のレベル低下は、一般に、前立腺癌患者のための抗癌療法がうまくいっていることを示す。本明細書に記載されているある治療法のための患者を同定又は選択するための基礎としてあるマーカーを用いるとき、そのマーカーを治療前及び/又は治療中に測定し、得られた値を臨床医が用いて以下の項目を評価すること、すなわち(a)ある個人が最初に受ける治療に適している確率又は可能性;(b)ある個人が最初に受ける治療に適していない確率又は可能性;(c)治療に対する応答性;(d)ある個人が治療を受け続けるのに適している確率又は可能性;(e)ある個人が治療を受け続けるのに適していない確率又は可能性;(f)用量の調節;(g)臨床上の利益の可能性の予測;又は(h)毒性を評価することができる。当業者であればよくわかるように、臨床設定におけるバイオマーカーの測定は、このパラメータが本明細書に記載されている治療の投与を開始、継続、調節、及び/又は停止するための基礎として利用されたことの明確な印である。
【0034】
「血液」は、対象の中を循環している血液の全構成成分を意味し、その非限定的な例に含まれるのは、赤血球細胞、白血球細胞、血漿、凝固因子、小タンパク質、血小板、及び/又は寒冷沈降物である。これは典型的にはヒト患者が血液を与えるときに提供するタイプの血液である。血漿は、本分野では血液の黄色い液体成分として知られており、その中では全血の中の血液細胞は典型的には懸濁されている。血漿は血液の全体積の約55%を占める。血漿は、抗凝固剤を含有する新鮮な血液を入れたチューブを血液細胞がそのチューブの底に落ちるまで遠心分離機の中で回転させることによって調製することができる。血漿はその後注ぐか取り出して除去される。血漿は、約1025 kg/m3又は1.025 kg/lの密度を持つ。
【0035】
「癌」、「癌性」、又は「悪性」は、哺乳類における典型的には制御されない細胞増殖を特徴とする生理学的状態、又はその記述を意味する。癌の非限定的な例に含まれるのは、癌、リンパ腫、白血病、芽細胞腫、及び肉腫である。このような癌のより具体的な例に含まれるのは、扁平上皮癌、骨髄腫、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、神経膠腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、急性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、消化器(管)癌、腎臓癌、卵巣癌、肝臓癌、リンパ芽球性白血病、リンパ性白血病、結腸直腸癌、子宮内膜癌、腎臓癌、前立腺癌、甲状腺癌、黒色腫、軟骨肉腫、神経芽細胞腫、膵臓癌、膠芽腫、子宮頚癌、脳癌、胃癌、膀胱癌、肝細胞癌、乳癌、結腸癌、胆道癌、及び頭頸部癌である。
【0036】
「化学療法」は、癌の治療に有用な化合物である化学療法剤が関与する療法である。化学療法剤の例に含まれるのは、アルカリ化剤(チオテパとシクロホスファミドなど);スルホン酸アルキル(ブスルファン、インプロスルファン、及びピポスルファンなど);アジリジン(ベンゾドーパ、カルボコン、メツレドーパ、及びウレドーパなど);エチレンイミンとメチルアメラミン(アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホロアミド、トリエチレンチオホスホロアミド、及びトリメチローロメラミンが含まれる;アセトゲニン(特にブラタシンとブラタシノン);デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(ドロナビノール);ベータ-ラパコン;ラパコール;コルヒチン;ベツリン酸;カンプトテシン(合成類似体トポテカン(CPT-11(イリノテカン)、アセチルカンプトテシン、スコポレクチン、及び9-アミノカンプトテシンが含まれる);ブリオスタチン;ペメトレキセド;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン、及びビゼレシン合成類似体が含まれる);ポドフィロトキシン;ポドフィリン酸;テニポシド;クリプトフィシン(特にクリプトフィシン1とクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似体KW-2189とCB1-TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン;TLK-286;CDP323、経口アルファ-4インテグリン阻害剤;サルコジ口イン;スポンギスタチン;ナイトロジェンマスタード(クロラムブシル、クロルナファジン、コロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、塩酸メクロレタミンオキシド、メルファラン、ノベムビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、及びウラシルマスタードなど);ニトロソウレア(カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、及びラニムスチンなど);抗生剤(エンジイン抗生剤(例えばカリケアマイシン、特にカリケアマイシンガンマIIとカリケアマイシンオメガII(例えばNicolaou et al. (1994) Angew. Chem Inti. Ed. Engl. 33: 183を参照されたい)など);ジネマイシン(ジネマイシンAが含まれる);エスペラマイシンのほか;ネオカルジノスタチン発色団と関連する色素タンパク質エンジイン抗生剤発色団、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オートラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシニス、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン、ドキソルビシンHClリポソーム注射、及びデオキシドキソルビシンが含まれる)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン(マイトマイシンCなど)、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、及びゾルビシン;代謝拮抗剤(メトトレキサート、ゲムシタビン、テガフール、カペシタビン、エポチロン、及び5-フルオロウラシル(5-FU)など);葉酸類似体(ノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、及びトリメトレキサートなど);プリン類似体(フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、及びチオグアニンなど);ピリミジン類似体(アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフリジン、エノシタビン、フロクスウリジン、及びイマチニブ(2-フェニルアミノピリミジン誘導体)などのほか、他のc-Kit阻害剤);抗副腎剤(アミノグルテチミド、ミトタン、及びトリロスタンなど);葉酸補充剤(フォリン酸など);アセグラトン;アルドホスアファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキサート;デフォファミン;デメコルシン;ジアジクオン;エルフォルニチン;酢酸エリプチニウム;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダミン;メイタンシノイド(メイタンシンとアンサマイトシンなど);ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモール;ニトラエリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK多糖複合体(JHS Natural Products、ユージン、オレゴン州);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’,2”-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特にT-2毒素、ベラクリンA、ロリジンA、及びアングイジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);チオテパ;タキソイド(例えばパクリタキセル、パクリタキセルのアルブミン操作したナノ粒子製剤、及びドキセタキセル);クロラムブシル;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;白金類似体(シスプラチンとカルボプラチンなど);ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;オキサリプラチン;ロイコボビン;ビノレルビン;ノバントロン;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;イバンドロナート;トポイソメラーゼ阻害剤RFS 2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイド(レチノイン酸など);上記の任意のものの医薬的に許容される塩、酸、又は誘導体のほか;上記のものの2つ以上の組み合わせ(CHOP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、及びプレドニゾロンの組み合わせ療法の略号)、又はFOLFOX(オキサリプラチンに5-FUとロイコボビンを組み合わせて用いた治療レジメンの略号)など)である。
【0037】
「臨床転帰」、「臨床パラメータ」、「臨床応答」、又は「臨床応答エンドポイント」は、療法に対する患者の反応に関する臨床でのあらゆる所見又は測定を意味する。臨床転帰の非限定的な例に含まれるのは、腫瘍反応(TR)、全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)、無病生存、腫瘍再発までの時間(TTR)、腫瘍の無増悪期間(TTP)、相対リスク(RR)、毒性、又は副作用である。
【0038】
「組み合わせ」は、本明細書では、第1の活性なモダリティに加えて1つ以上のさらなる活性なモダリティを設けることを意味する(その場合、1つ以上の活性なモダリティを融合させることができる)。本明細書に記載されている組み合わせの範囲で考慮されるのは、単一又は多数の化合物及び組成物に包含されるモダリティ又はパートナー(すなわち活性な化合物、成分、又は薬剤)を組み合わせる任意のレジメン(PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びATM阻害剤の組み合わせなど)である。単一の組成物、製剤、又は単位剤形(すなわち固定された用量の組み合わせ)の中のあらゆるモダリティが同じ投薬レジメンと送達経路を持たねばならないと理解される。複数のモダリティを(例えば同じ組成物、製剤、又は単位剤形に)製剤化して一緒に送達せねばならない意味であるとは想定されていない。組み合わされたモダリティは同じか異なる製造者が製造及び/又は製剤化することができる。したがって組み合わせパートナーは例えば完全に別々の医薬剤形又は医薬組成物であることが可能であり、それらは互いに独立にも販売される。TGFβ阻害剤はPD阻害剤に融合されることが好ましいため、単一の組成物に包含され、同じ投薬レジメンと送達経路を持つ。
【0039】
「組み合わせ療法」「と組み合わせて」、又は「と併用して」は、本明細書では、少なくとも2つの異なる治療モダリティ(すなわち化合物、成分、標的とされる薬剤、又は治療剤)の共同治療、並列治療、同時治療、順次的治療、又は間欠的治療の任意の形態を表わす。そのためこれらの用語は、一方の治療モダリティを、他方の治療モダリティを対象に投与する前、投与している間、又は投与した後に投与することを意味する。組み合わされるモダリティは任意の順番で投与することができる。治療的に活性なモダリティは、医療者によって、又は規制当局に従って処方されるやり方と投薬レジメンで、一緒に(例えば同じ、又は別々の組成物、製剤、又は単位剤形にして同時に)又は別々に(例えば同じ日又は異なる日に、別々の組成物、製剤、又は単位剤形のための適切な投与プロトコルに従って任意の順番で)投与される。一般に、それぞれの治療モダリティは、その治療モダリティに関して決められた用量及び/又は時間スケジュールで投与される。場合により、4つ以上のモダリティを組み合わせ療法で利用することができる。それに加え、本明細書に提示されている組み合わせ療法は、他のタイプの治療と併用して利用することができる。例えば他の抗癌治療は、対象に関する現在標準的な治療に関係する他の治療の中の化学療法、外科手術、放射線療法(照射線)及び/又はホルモン療法からなる群より選択することができる。
【0040】
「完全奏功」又は「完全寛解」は、治療に応答して癌のあらゆる徴候が消失することを意味する。これは必ずしも癌が治癒したことを意味しない。
【0041】
「含む」は、本明細書では、組成物と方法が、列挙されている要素を含むが、他の要素を除外はしないことを意味することが想定されている。「本質的に…からなる」は、組成物と方法を規定するのに用いられるときには、その組成物又は方法にとって本質的に重要なすべての要素以外の要素を除外することを意味する。「からなる」は、言及されている組成物と方法の実質的な工程のため他の成分の痕跡要素以上は除外することを意味する。これら接続表現のそれぞれによって規定される実施形態は本発明の範囲に入る。したがって方法と組成物は、追加の工程と成分を含むこと(含む)、又はその代わりに、重要でない工程と組成物を含むこと(本質的に…からなる)、又はその代わりに、言及されている方法の工程又は組成物だけを意味すること(からなる)ができることが意図されている。
【0042】
「用量」と「投与量」は、投与するための活性剤又は治療剤の具体的な量を意味する。そのような量が「剤形」に含まれる。剤形は、ヒト対象とそれ以外の哺乳類にとって単位用量として適した物理的に離散した単位を意味し、各単位は、望む効果発現、忍容性、及び治療効果を生じさせるために計算された所定量の活性剤を、1つ以上の適切な医薬用賦形剤(担体など)とともに含有する。
【0043】
「T細胞機能を増強する」は、維持された、又は増幅された生物学的機能をT細胞が持つよう誘導する、導く、又は刺激すること、又は疲弊しているか不活性なT細胞を再生又は再活性化させることを意味する。T細胞機能の増強の例に含まれるのは、CD8+T細胞からのy-インターフェロンの分泌、増殖、抗原応答性が介入前のこれらのレベルと比べて増加していること(例えばウイルス、病原体、又は腫瘍の排除)である。一実施形態では、増強のレベルは、少なくとも50%、又は60%、70%、80%、90%、100%、120%、150%、200%である。この増強を測定する方法は当業者に知られている。
【0044】
「Fc」は、ジスルフィドによって互いに保持された両方のH鎖のカルボキシ末端部分を含む断片である。抗体のエフェクタ機能はFc領域の中の配列によって決まり、この領域は、いくつかのタイプの細胞に見られるFc受容体(FcR)によっても認識される領域である。
【0045】
「Fv」は、抗原認識と抗原結合の1つの完全な部位を含有する最小抗体断片である。この断片は、1つの重鎖可変領域ドメインと1つの軽鎖可変領域ドメインがしっかりと非共有結合した二量体からなる。これら2つのドメインの折り畳みから、抗原に結合するためのアミノ酸残基に寄与して抗体に対する抗原結合特異性を与える6つの超可変ループ(3つのループがそれぞれH鎖とL鎖に由来)が生じる。しかし単一可変ドメイン(又は抗原に対して特異的なわずか3つのHVRを含む、Fvの半分)でさえ、結合部位全体よりも小さな親和性でだが、抗原を認識してその抗原に結合する能力を持つ。
【0046】
「ヒト抗体」は、ヒトが産生する抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有する抗体、及び/又は本明細書に開示のヒト抗体を作製する任意の技術を利用して作製された抗体である。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を特に除外している。ヒト抗体は、本分野で知られている多彩な技術を利用して生成させることができ、その技術にはファージ提示ライブラリ(例えばHoogenboom and Winter (1991), JMB 227: 381;Marks et al. (1991) JMB 222: 581を参照されたい)が含まれる。ヒトモノクローナル抗体の調製にやはり利用できるのは、Cole et al. (1985) Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, page 77;Boerner et al. (1991), J. Immunol 147(1): 86;van Dijk and van de Winkel (2001) Curr. Opin. Pharmacol 5: 368)に記載されている方法である。ヒト抗体は、抗原を、抗原チャレンジに応答してそのような抗原を生成させるように改変されているが内在性遺伝子座は無効にされたトランスジェニック動物(例えば免疫化されたゼノマウス(例えばXENOMOUSE技術に関する米国特許第6,075,181号と第6,150,584号を参照されたい))に投与することによって調製することができる。例えばヒトB細胞ハイブリドーマ技術によるヒト抗体の生成に関するLi et al. (2006) PNAS USA, 103: 3557も参照されたい。
【0047】
非ヒト(例えばマウス)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含有するキメラ抗体である。一実施形態では、ヒト化抗体は、レシピエントのHVRからの残基が、望む特異性、親和性、及び/又は能力を持つ非ヒト種(ドナー抗体)(マウス、ラット、ウサギ、又は非ヒト霊長類など)のHVRからの残基で置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの場合には、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク(「FR」)残基が、対応する非ヒト残基で置換されている。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体又はドナー抗体には見られない残基を含むことができる。これらの修飾は、抗体の性能(結合親和性など)をさらに洗練させるようにすることができる。一般に、ヒト化抗体は少なくとも1つの(典型的には2つの)可変ドメインの実質的にすべてを含み、その中では、超可変ループのすべて又は実質的にすべてが非ヒト免疫グロブリン配列の超可変ループに対応しており、FR領域のすべて又は実質的にすべてがヒト免疫グロブリン配列の超可変ループであるが、FR領域は、抗体の性能(結合親和性、異性化、免疫原性など)を改善する1つ以上の個々のFR残基置換を含むことができる。FRの中のこれらアミノ酸置換の数は、典型的にはH鎖の中に6以下、L鎖の中には3以下である。ヒト化抗体は、場合により、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンのFcの少なくとも一部を含むことになろう。さらなる詳細に関しては、例えばJones et al. (1986) Nature 321: 522;Riechmann et al. (1988), Nature 332: 323;Presta (1992) Curr. Op. Struct. Biol. 2: 593;Vaswani and Hamilton (1998), Ann. Allergy, Asthma & Immunol. 1: 105;Harris (1995) Biochem. Soc. Transactions 23: 1035;Hurle and Gross (1994) Curr. Op. Biotech. 5: 428;及び米国特許第6,982,321号と第7,087,409号を参照されたい。
【0048】
「免疫グロブリン」(Ig)は、本明細書では「抗体」と交換可能に用いられる。基本的な4鎖抗体ユニットは、2つの同じ軽(L)鎖と2つの同じ重(H)鎖からなるヘテロ四量体糖タンパク質である。IgM抗体は、5つのこの基本的なヘテロ四量体ユニットに加えてJ鎖と呼ばれる追加ポリペプチドからなり、抗原結合部位を含有しているのに対し、IgA抗体は2~5個の基本的な4鎖ユニットを含み、それらがJ鎖と組み合わさって重合して多価集合体を形成することができる。IgGの場合には、4鎖ユニットは一般に約150,000ダルトンである。それぞれのL鎖は1つの共有ジスルフィド結合によってH鎖に連結されているのに対し、2つのH鎖は、H鎖のアイソタイプに応じて1つ以上のジスルフィド結合によって互いに連結されている。それぞれのH鎖とL鎖は、規則的な間隔の鎖内ジスルフィド架橋も有する。各H鎖はN末端に可変ドメイン(VH)を持ち、その後に、α鎖とγ鎖のそれぞれのための3つの定常ドメイン(CH)と、μアイソタイプとεアイソタイプのための4つのCHドメインが続く。各L鎖はN末端に可変ドメイン(VL)を持ち、その後に、他端に位置する定常ドメインが続く。VLはVHと揃い、CLは重鎖(CH1)の第1の定常ドメインと揃う。特定のアミノ酸残基が軽鎖と重鎖の可変ドメインの間のインターフェイスを形成すると考えられている。VHとVLをペアにすると単一の抗原結合部位が形成される。異なるクラスの抗体の構造と特性に関しては、例えばBasic and Clinical Immunology, 8th Edition, Sties et al. (eds.), Appleton & Lange, Norwalk, CT, 1994年、71ページと第6章を参照されたい。任意の脊椎動物種からのL鎖を、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づき、カッパとラムダと呼ばれる2つの明らかに異なるタイプの1つに割り当てることができる。免疫グロブリンは、その重鎖(CH)の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて異なるクラス又はアイソタイプに割り当てることができる。5つのクラスの免疫グロブリン、すなわちIgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMが存在しており、それぞれα、δ、ε、γ、及びμと名づけられた重鎖を持つ。γクラスとαクラスは、CH配列と機能の比較的わずかな違いに基づいてさらにサブクラスに分けられ、例えばヒトは以下のサブクラス、すなわちIgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgK1を発現する。
【0049】
「輸液」又は「輸液する」は、治療を目的として静脈を通じて体内に薬含有溶液を導入することを意味する。一般に、これは静脈内(IV)バッグを通じて実現される。
【0050】
「単離された」は、他の材料を実質的に含まない分子又は生物材料又は細胞材料を意味する。1つの態様では、「単離された」という用語は、核酸(DNA又はRNAなど)、又はタンパク質又はポリペプチド、又は細胞又は細胞オルガネラ、又は組織又は臓器が、それぞれ、天然の供給源に存在する他のDNA又はRNA、又はタンパク質又はポリペプチド、又は細胞又は細胞オルガネラ、又は組織又は臓器から分離されていることを意味する。「単離された」という用語は、核酸又はペプチドが、組み換えDNA技術によって作製されたときには細胞材料、ウイルス材料、又は培地を実質的に含まず、化学的に合成されたときには化学的前駆体又は他の化学物質を含まないことも意味する。さらに、「単離された核酸」は、断片としては天然に生じない核酸断片を含むことを意味するため、天然状態では見られと考えられる。「単離された」という用語は、本明細書ではポリペプチドが他の細胞タンパク質から単離されていることを指すのにも用いられるため、精製されたポリペプチドと組み換えポリペプチドの両方を包含することを意味する。「単離された」という用語は、本明細書では、細胞又は組織が他の細胞又は組織から単離されていることを指すのにも用いられるため、培養された細胞又は組織と、操作された細胞又は組織の両方を包含することを意味する。例えば「単離された抗体」は、その作製環境(例えば天然又は組み換え)の成分から同定、分離、及び/又は回収された抗体である。単離されたポリペプチドは、その作製環境からの他のあらゆる成分と無関係であることが好ましい。その作製環境の汚染成分(組み換えトランスフェクトされた細胞から生じるものなど)は、典型的には研究、診断、又は治療での抗体の使用を妨げると考えられる材料であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質性又は非タンパク質性の溶質を含む可能性がある。好ましい実施形態では、ポリペプチドは精製され、(1)例えばLowry法によって求めると95重量%超の抗体に、そしていくつかの実施形態では99重量%超になる;(1)スピニングカップシークエネータの利用によってN末端又は内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分な程度になる、又は(3)クマシー・ブルー、又は好ましくは銀染色を用いた非還元条件又は還元条件でのSDS-PAGEによって均一になる。「単離された抗体」には、組み換え細胞そのものの中の抗体が含まれる。というのもその抗体の天然環境の少なくとも1つの成分は存在しないことになるからである。しかし通常は、単離されたポリペプチド又は抗体は少なくとも1つの精製工程によって調製される。
【0051】
「転移」癌は、身体の1つの部分(例えば肺)から身体の別の部分へと広がった癌を意味する。
【0052】
「モノクローナル抗体」は、本明細書では、実質的に均一な抗体の集団から得られた抗体を意味する。すなわちその集団に含まれる個々の抗体は、わずかな量で存在する可能性のある可能な天然の変異及び/又は翻訳後修飾(例えば異性化とアミド化)を除いて同じである。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、単一の抗原部位に向かう。典型的には、異なる決定基(エピトープ)に向かう異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は抗原上の単一の決定基に向かう。モノクローナル抗体は、その特異性に加え、ハイブリドーマ培養によって合成される点と、他の免疫グロブリンによって汚染されていない点が有利である。「モノクローナル」という修飾語は、抗体の実質的に均一な集団から得られるという抗体の性質を示しており、なんらかの特別な方法によって抗体を作製する必要があると解釈されてはならない。例えば本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は多彩な技術によって作製することができ、技術に含まれるのは、例えばハイブリドーマ法(例えばKohler and Milstein (1975) Nature 256: 495;Hongo et al. (1995) Hybridoma 14 (3): 253;Harlow et al. (1988) Antibodies: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2nd ed.;Hammerling et al. (1981) In: Monoclonal Antibodies and T- Cell Hybridomas 563 (Elsevier, N.Y.))、組み換えDNA法(例えば米国特許第4,816,567号を参照されたい)、ファージ提示技術(例えばClackson et al. (1991) Nature 352: 624;Marks et al. (1992) JMB 222: 581;Sidhu et al. (2004) JMB 338(2): 299;Lee et al. (2004) JMB 340(5): 1073;Fellouse (2004) PNAS USA 101(34): 12467;及びLee et al. (2004) J. Immunol. Methods 284(1-2): 119を参照されたい)、及びヒト免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリンの遺伝子座又は遺伝子の一部又は全部を有する動物の体内でヒト抗体又はヒト様抗体を生成させる技術(例えばWO1998/24893;WO1996/34096;WO1996/33735;WO1991/10741;Jakobovits et al. (1993) PNAS USA 90: 2551;Jakobovits et al. (1993) Nature 362: 255;Bruggemann et al. (1993) Year in Immunol. 7: 33;米国特許第5,545,807号;第5,545,806号;第5,569,825号;第5,625,126号;第5,633,425号;及び第5,661,016号;Marks et al. (1992) Bio/Technology 10: 779;Lonberg et al. (1994) Nature 368: 856;Morrison (1994) Nature 368: 812;Fishwild et al. (1996) Nature Biotechnol. 14: 845;Neuberger (1996), Nature Biotechnol. 14: 826;及びLonberg and Huszar (1995), Intern. Rev. Immunol. 13: 65- 93を参照されたい)である。本明細書のモノクローナル抗体には特にキメラ抗体(免疫グロブリン)(その中では重鎖及び/又は軽鎖の一部が、特定の種に由来するか抗体の特定のクラス又はサブクラスに属する抗体の中の対応する配列と同一か相同であるのに対し、鎖の残部は、別の種に由来するか抗体の別のクラス又はサブクラスに属する抗体の中の対応する配列と同一か相同である)のほか、そのような抗体の断片(ただしそれらが望む生物活性を示す限り)が含まれる(例えば米国特許第4,816,567号;Morrison et al. (1984) PNAS USA, 81: 6851を参照されたい)。
【0053】
「客観的奏功」は測定可能な応答を意味し、その中には完全奏功(CR)又は部分奏功(PR)が含まれる。
【0054】
「部分奏功」は、治療に応答して1つ以上の腫瘍又は病巣のサイズが縮小すること、又は体内の癌の広がりが減少することを意味する。
【0055】
「患者」と「対象」は本明細書では交換可能に用いられ、癌の治療を必要とする哺乳類を意味する。一般に患者は、癌の1つ以上の症状を持つと診断されたヒト、又はその症状に苦しむリスクがあるヒトである。ある実施形態では、「患者」又は「対象」は、非ヒト哺乳類(非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ウサギ、ブタ、マウス、又はラットなど)、又は例えば薬と療法のスクリーニング、特徴づけ、及び評価に使用される動物を意味することができる。
【0056】
「PD阻害剤」は、本明細書では、好ましくはPD-1軸結合パートナー(PD-L1とPD-1など)の相互作用を阻害することによってPD経路を阻害する分子を意味する。このような阻害の可能な効果には、PD-1シグナル伝達軸上でのシグナル伝達から生じるT細胞機能不全の除去が含まれる。PD-1阻害剤は、PD-L1又はPD-1に結合してこれら分子の間の相互作用を阻害することが好ましい(抗PD抗体又は抗PD-L1抗体など)。PD阻害剤はPD-L1抗体であることが好ましく、そのような抗体はTGFβ阻害剤(抗PD-L1/TGFβ Trap分子など)に融合されることがより好ましい。
【0057】
「PD-L1発現」は、本明細書では、細胞表面でのPD-L1タンパク質の発現、又は細胞又は組織の中でのPD-L1 mRNAの発現のあらゆる検出可能なレベルを意味する。PD-L1タンパク質発現は、腫瘍組織切片のIHCアッセイで診断用PD-L1抗体を用いて検出すること、又はフローサイトメトリーによって検出することができる。あるいは腫瘍細胞によるPD-L1タンパク質の発現は、PD-L1に特異的に結合する結合剤(例えば抗体断片、アフィボディなど)を用いてPETイメージングによって検出することができる。PD-L1 mRNAの発現を検出して測定する技術にはRT-PCRとリアルタイム定量RT-PCRが含まれる。
【0058】
「PD-L1陽性」癌(「PD-L1陽性」癌性疾患が含まれる)は、細胞表面に存在するPD-L1を有する細胞を含む癌である。「PD-L1陽性」という用語は、抗PD-L1抗体がPD-L1に結合することにより抗PD-L1抗体が治療効果を有するよう癌細胞の表面に十分なレベルのPD-L1を生じさせる癌も意味する。例えば癌又は腫瘍の表面のバイオマーカー(PD-L1 など)を検出する方法は本分野では定型的であり、本明細書で考慮される。非限定的な例に含まれるのは、免疫組織化学(IHC)、免疫蛍光、及び蛍光活性化セルソーティング(FACS)である。いくつかのアプローチが、腫瘍組織切片のIHCアッセイにおけるPD-L1タンパク質の発現の定量について記載されている。PD-L1陽性細胞の比は、Tumor Proportion Score(TPS)又はCombined Positive Score(CPS)として表わされることがしばしばある。TPSは、膜が部分的に染色されるか完全に染色された(例えばPD-L1に関する染色)生きている腫瘍細胞の割合を記述する。CPSは、PD-L1染色細胞(腫瘍細胞、リンパ球、マクロファージ)の数を生きている腫瘍細胞の総数で割り、100を掛けたものである。例えばいくつかの実施形態では、「PD-L1高」は、PD-L1 Dako IHC 73-10アッセイによって求まるPD-L1陽性腫瘍細胞が80%以上であること、又はDako IHC 22C3 PharmDxアッセイによって求まるTumor proportion score(TPS)が50%以上であることを意味する。IHC 73-10アッセイとIHC 22C3アッセイの両方とも、そのそれぞれのカットオフで同様の患者集団を選択する。ある実施形態では、(22C3 PharmDxアッセイ(Sughayer et al., Appl. Immunohistochem. Mol. Morphol., (2018)参照)と多くが一致する)Ventana PD-L1(SP263)アッセイを利用してPD-L1発現のレベルを求めることもできる。癌の中のPD-L1発現を求める別のアッセイはVentana PD-L1(SP142)アッセイである。いくつかの実施形態では、癌がPD-L1陽性であるとカウントされるのは、腫瘍細胞の少なくとも1%、少なくとも5%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、又は少なくとも80%がPD-L1発現を示す場合である。
【0059】
「医薬的に許容される」は、物質又は組成物が、製剤を含む他の成分、及び/又はそれを用いて治療する哺乳類と化学的及び/又は毒物学的に適合せねばならないことを示す。「医薬的に許容される担体」に含まれるのは、生理学的に適合するあらゆる溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤と抗真菌剤、等張剤、及び吸収遅延剤などである。医薬的に許容される担体の例に含まれるのは、水、生理食塩水、リン酸塩緩衝化生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなどの1つ以上のほか、これらの組み合わせである。
【0060】
「再発」癌は、最初の療法(外科手術など)に対して応答した後に初期部位又は遠隔部位で再増殖した癌である。局所的な「再発」癌は、治療後に以前に治療した癌と同じ場所に再び生じる癌である。
【0061】
1つ又は複数の症状の「低減」(と、この表現と文法的に同等な表現)は、その症状の重症度又は頻度の低下、又はその症状の除去を意味する。
【0062】
「血清」は、凝固した血液から分離することのできる透明な液体を意味する。血清は、赤血球と白血球と血小板を含有する正常な凝固していない血液の液体部分である血漿とは異なる。血清は、血液細胞(血清は赤血球と白血球を含有しない)でも凝固因子でもない成分である。それは、凝血塊の形成を助けるフィブリノーゲンを含まない血漿である。血清と血漿の違いを生じさせるのは凝血塊である。
【0063】
「一本鎖Fv」(「sFv」又は「scFv」とも略される)は、接続されて単一のポリペプチド鎖にされた抗体ドメインVHとVLを含む抗体断片である。sFvポリペプチドは、sFvが抗原結合に関して望む構造を形成することを可能にするポリペプチドリンカーをVHドメインとVLドメインの間にさらに含むことが好ましい。sFvの概説に関しては、例えばPluckthun (1994), In: The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore (eds.), Springer-Verlag, New York, pp. 269を参照されたい。
【0064】
「実質的に同一」は、(1)少なくとも75%、望ましくは85%、90%、又は95%、より望ましくは99%のアミノ酸配列が参照アミノ酸配列と同一であるポリペプチド、又は(2)アミノ酸位置の40%以下、望ましくはアミノ酸位置の30%以下、より望ましくはアミノ酸位置の20%以下が参照アミノ酸配列のアミノ酸配列と異なるポリペプチドを意味する(ただしアミノ酸位置の違いは、アミノ酸の置換、欠失、又は付加のいずれかである)。配列一致の程度を求めるための比較配列の長さは、一般に少なくとも20又は25個の連続したアミノ酸、より望ましくは少なくとも50、75、90、100、150、200、250、300、又は350個の連続したアミノ酸、最も望ましくは完全長アミノ酸配列になる。
【0065】
「療法に適した」又は「治療に適した」は、患者が、同じ癌を持っていて同じ療法を受けたが比較の目的で考慮する異なる特徴を持つ患者と比べて1つ以上の望ましい臨床転帰を示す可能性が大きいことを意味する。1つの態様では、考慮する特徴は、遺伝子多型又は体細胞変異である(例えばSamsami et al. ((2009) J Reproductive Med 54(1): 25を参照されたい)。1つの態様では、考慮する特徴は、遺伝子又はポリペプチドの発現レベルである。1つの態様では、より望ましい臨床転帰は、相対的により大きな、又は相対的により優れた腫瘍応答である(腫瘍負荷軽減など)。別の1つの態様では、より望ましい臨床転帰は、相対的により長い全生存期間である。さらに別の1つの態様では、より望ましい臨床転帰は、相対的により長い無増悪生存期間又は腫瘍無増悪期間である。さらに別の1つの態様では、より望ましい臨床転帰は、相対的により長い無病生存期間である。別の1つの態様では、より望ましい臨床転帰は、腫瘍再発の相対的な減少又は遅延である。別の1つの態様では、より望ましい臨床転帰は、相対的に減少した転移である。別の1つの態様では、より望ましい臨床転帰は、相対的により少ない相対リスクである。さらに別の1つの態様では、より望ましい臨床転帰は、相対的により減少した毒性又は副作用である。いくつかの実施形態では、2つ以上の臨床転帰が同時に考慮される。1つのそのような態様では、ある特徴(遺伝子多型の遺伝子型など)を持つ患者は、同じ癌を持ち、同じ療法を受けたが、その特徴を持たない患者と比べて2つ以上のより望ましい臨床転帰を示す可能性がある。本明細書に規定されているように、患者はその療法に適すると見なされる。別のそのような1つの態様では、ある特徴を持つ患者は、1つ以上の望ましい臨床転帰を示すが、それと同時に1つ以上のより望ましくない臨床転帰を示す可能性がある。臨床転帰がその後総合的に考慮され、患者がその療法に適しているかどうかの判断が、患者の特殊な状況と臨床転帰の重要性を考慮してなされる。いくつかの実施形態では、無憎悪生存期間又は全生存期間は、総合的な判断における腫瘍応答よりも大きな重みを付けられる。
【0066】
「持続応答」は、本明細書に記載されている治療剤又は組み合わせ療法を用いた治療の終了後に持続する治療効果を意味する。いくつかの実施形態では、持続応答は、治療期間と少なくとも同じ期間、又は治療期間よりも少なくとも1.5、2.0、2.5、又は3倍長い期間を持つ。
【0067】
「全身」治療は、薬物質が血流を通じて移動して身体全体の細胞に到達して影響を与える治療である。
【0068】
「TGFβ阻害剤」は、本明細書では、好ましくはTGFβとTGFβ受容体(TGFβR)との間の相互作用を阻害することによってTGFβ経路を阻害する分子を意味する。TGFβ阻害剤はTGFβ又はTGFβRと結合してこれら分子間の相互作用を阻害することが好ましい。TGFβ阻害剤は、TGFβRIIの細胞外ドメイン、又はTGFβに結合することのできるTGFβRIIの断片を含むことが好ましい。このようなTGFβ阻害剤は例えば抗PD-L1/TGFβ TrapとしてPD-1阻害剤に融合されることが好ましい。
【0069】
「TGFβRII」又は「TGFβ受容体II」は、野生型ヒトTGFβ受容体2型アイソフォームA配列(例えばNCBI参照配列(RefSeq)アクセッション番号NP_001020018(配列番号9)のアミノ酸配列)を持つポリペプチド、又は野生型ヒトTGFβ受容体2型アイソフォームB配列(例えばNCBI RefSeqアクセッション番号NP_003233(配列番号10)のアミノ酸配列)を持つか、野生型配列のTGFβ結合活性の少なくとも25%、50%、75%、90%、95%、又は99%を保持している配列番号9又は配列番号10のアミノ酸配列と実質的に同一の配列を持つポリペプチドを意味する。発現したTGFβRIIのポリペプチドはシグナル配列を欠いている。
【0070】
「TGFβにに結合可能なTGFβRIIの断片」は、NCBI RefSeqアクセッション番号NP_001020018(配列番号9)又はNCBI RefSeqアクセッション番号NP_003233(配列番号10)の任意の部分を意味するか、長さが少なくとも20個(例えば少なくとも30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、175、又は200個)のアミノ酸で、野生型受容体又は対応する野生型断片のTGFβ結合活性の少なくともいくらか(例えば少なくとも25%、50%、75%、90%、95%、又は99%)を保持している、配列番号9又は配列番号10と実質的に同一な配列を意味する。典型的には、このような断片は可溶性断片である。いくつかの実施形態では、TGFβRIIの断片は、配列番号11、配列番号12、及び配列番号13からなる群より選択される。
【0071】
「TGFβ発現」は、本明細書では、細胞又は組織の中でのTGFβタンパク質又はTGFβ mRNAの検出可能な任意の発現レベルを意味する。TGFβタンパク質の発現は、腫瘍組織切片のIHCアッセイにおいて診断用TGFβ抗体を用いて検出すること、又はフローサイトメトリーによって検出することができる。あるいは腫瘍細胞によるTGFβタンパク質発現は、TGFβに特異的に結合する結合剤(例えば抗体断片、アフィボディなど)を用いてPETイメージングによって検出することができる。TGFβ mRNAの発現を検出して測定する技術に含まれるのはRT-PCRとリアルタイム定量RT-PCRである。
【0072】
「TGFβ陽性」癌(「TGFβ陽性」癌性疾患を含む)は、TGFβを分泌する細胞を含む癌である。「TGFβ陽性」という用語は、癌細胞の中で十分なレベルのTGFβを産生するためにTGFβ阻害剤が治療効果を持つ癌も意味する。
【0073】
本発明のそれぞれの場合におけるPD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、ATM阻害剤、又は放射線療法の「治療的有効量」は、癌を有する患者に投与されるとき、癌患者の治療中に意図する治療効果(例えば患者における癌の1つ以上の徴候の緩和、改善、軽減、又は除去)又は他の任意の臨床結果を、必要な投与量において必要な期間にわたってもたらすことになる有効な量を意味する。治療効果が1回用量の投与で起こる必要はなく、一連の用量を投与した後にだけ起こってもよい。したがって治療的有効量は1回以上の投与で投与することができる。このような治療的有効量は、個人の疾患状態、年齢、性別、及び体重や、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、ATM阻害剤、又は放射線療法が個人に望む応答を引き起こす能力などの因子に応じて変化する可能性がある。治療的有効量は、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、ATM阻害剤、又は放射線療法のあらゆる毒性効果又は有害効果を治療の有効な効果が上回る量でもある。
【0074】
病気又は患者「を治療している」、又は病気又は患者「の治療」は、有益な結果又は望む結果(臨床結果を含む)を得るために採用する諸工程を意味する。本発明の目的では、有益な臨床結果又は望む臨床結果の非限定的な例に含まれるのは、癌の1つ以上の症状の緩和、改善;疾患の程度の軽減;疾患進行の遅延又は鈍化;疾患状態の改善、軽減、又は安定化;又は他の有益な結果である。「治療している」又は「治療」への言及には、ある病気の予防のほか、確立された症状の緩和が含まれることに注意されたい。したがってある状態、障害、又は病気「を治療している」又はその「治療」に含まれるのは、(1)その状態、障害、又は病気に苦しむか、その傾向を持つ可能性があるが、その状態、障害、又は病気の臨床症状又は無症候性症状をまだ経験していないか示していない対象で進行しているその状態、障害、又は病気の臨床症状の出現を阻止するか遅延させること、(2)その状態、障害、病気を抑制すること、すなわちその疾患又はその再発(維持治療の場合)又はその少なくとも1つの臨床症状又は無症候性症状の進行を停止、低減、又は遅延させること、又は(3)その疾患を緩和するか減弱させること、すなわちその状態、障害、又は病気、又はその臨床症状又は無症候性症状の少なくとも1つの退行を引き起こすことである。
【0075】
「腫瘍」は、癌であると診断されるか、癌であることが疑われる対象に適用されるときには、悪性であるか潜在的に悪性である任意のサイズの新生物又は組織の塊を意味し、原発腫瘍と二次的新生物を含む。固形腫瘍は、通常は、組織の異常な増殖又は塊で、嚢胞又は液体領域を含有しないものである。異なるタイプの固形腫瘍は、その腫瘍を形成する細胞のタイプにちなんで名づけられる。固形腫瘍の例は、肉腫、癌、及びリンパ腫である。白血病(血液の癌)は一般に固形腫瘍を形成しない。
【0076】
「単位剤形」は、本明細書では、治療する対象に適した治療用製剤の物理的に離散された単位を意味する。しかし本発明の組成物の1日の合計用量は、担当医によって正しい医学的判断の範囲で決定されることを理解されたい。任意の特定の対象又は生物にとっての具体的な有効用量レベルは多彩な因子に依存し、その因子に含まれるのは、治療している障害、その障害の重症度;使用する具体的な活性剤の活性;使用する具体的な組成物;対象の年齢、体重、全体的な健康状態、性別、及び食事;投与の時刻と、使用する具体的な活性剤の排泄速度;治療期間;使用する具体的な化合物と組み合わされるか同時に使用される薬及び/又は追加の治療法、及び医学で周知の同様の因子である。
【0077】
抗体の「可変領域」又は「可変ドメイン」は、その抗体の重鎖又は軽鎖のアミノ末端ドメインを意味する。重鎖と軽鎖の可変ドメインは、それぞれ「VH」と「VL」と呼ぶことができる。これらドメインは一般に抗体の最も変化しやすい部分であり(同じクラスの他の抗体との比較)、抗原結合部位を含有する。
【0078】
本明細書では、複数の事項、構造要素、構成要素、及び/又は材料が便宜上一般的なリストにして提示されている可能性がある。しかしこれらのリストは、リストの各メンバーが、そのリストの各メンバーが個別に別々の独自のメンバーとして特定されているかのように解釈されるべきである。
【0079】
濃度、量、及び他の数値データは、本明細書では、範囲の形態で表現又は提示することができる。そのような範囲の形態は、単に便宜上と簡便さのために利用されているため、範囲の境界として明示的に示されている数値を含むだけでなく、それぞれの数値と部分範囲が明示的に示されている場合にはその範囲に包含されるあらゆる個別の数値又は部分範囲も含むと柔軟に解釈されるべきであることを理解されたい。一例として、「約1~約5」という数値範囲は、約1~約5という明示的に示されている値だけでなく、示されている範囲内の個別の値と部分範囲も含むと解釈されるべきである。したがってこの数値範囲に含まれるのは、個々の数値(2、3、及び4など)と部分範囲(1~3、2~4、及び3~5など)のほか、個別の1、2、3、4、及び5である。この同じ原理が、最小値又は最大値として1つの数値だけが示されている範囲に当てはまる。さらに、このような解釈は、記載されている範囲の幅、又は特徴に関係なく適用すべきである。
【0080】
説明的実施形態
療法の組み合わせ及びその使用の方法
本発明は、部分的に、ATM阻害剤、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及び放射線療法の組み合わせの有益性という驚くべき発見より生じる。治療スケジュールと用量は、相乗効果の可能性を明らかにするように設計された。前臨床データは、ATM阻害剤、特に化合物Aが、PD-1阻害剤とTGFβ阻害剤との組み合わせ(特にビントラフ化剤分子として融合される場合)と、放射線療法との、相乗効果を示した。
【0081】
よって、一態様では、本発明は、それを必要とする対象における癌を治療する方法におけるPD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、ATM阻害剤、及び放射線療法の使用であって、前記PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、ATM阻害剤、及び放射線療法を対象に投与することを含む使用に関する。PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、ATM阻害剤、及び放射線療法の治療的有効量が、各治療方法で適用されることが理解されるべきである。好ましくは、PD-1阻害剤はTGFβ阻害剤と融合している。より好ましくは、かかる融合分子は抗PD-L1/TGFβ Trapである、例えば、軽鎖配列及び重鎖配列が配列番号7及び配列番号8、配列番号15及び配列番号17、又は配列番号15及び配列番号18にそれぞれ対応する抗PD-L1/TGFβ Trapである。最も好ましくは、抗PD-L1/TGFβ Trapの軽鎖配列及び重鎖配列が配列番号7及び配列番号8にそれぞれ対応する。
【0082】
好ましくはPD-1阻害剤はPD-1と少なくとも1つのそのリガンド、例えばPD-L1又はPD-L2との相互作用を阻害し、それによりPD-1経路、例えば、PD-1の免疫抑制シグナルを阻害する。PD-1阻害剤はPD-1又は1つのそのリガンド、例えば、PD-L1と結合してもよい。好ましい実施形態では、PD-1阻害剤は、PD-1とPD-L1との間の相互作用を阻害する。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、PD-1とPD-L1との間の相互作用を阻害可能な抗PD- 抗体又は抗PD-L1抗体である。いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体は、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、アベルマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、スパルタリズマブ、カムレリズマブ、シンチリマブ、チスレリズマブ、トリパリマブ、セミプリマブ、及び軽鎖及び重鎖が配列番号7及び配列番号16又は配列番号15及び配列番号14にそれぞれ対応する抗体、又はこの群の抗体のいずれかと結合について競合する抗体からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体は、PD-1又はPD-L1に結合可能で、アミノ酸配列がは、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、アベルマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、スパルタリズマブ、カムレリズマブ、シンチリマブ、チスレリズマブ、トリパリマブ、セミプリマブ、及び軽鎖及び重鎖が配列番号7及び配列番号16又は配列番号15及び配列番号14にそれぞれ対応する抗体からなる群より選択される抗体の1つの配列と実質的に同一な抗体である。
【0083】
いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、軽鎖及び重鎖配列の各々が、ビントラフスプアルファ抗体部分の重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列に対し80%以上の配列同一性、例えば、90%以上の配列同一性、95%以上の配列同一性、99%以上の配列同一性、又は100%の配列同一性を有する抗PD-L1抗体であり、かつPD-1阻害剤はPD-L1に結合可能である。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、軽鎖及び重鎖配列の各々が、ビントラフスプアルファ抗体部分の重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列に対し80%以上の配列同一性、例えば、90%以上の配列同一性、95%以上の配列同一性、99%以上の配列同一性、又は100%の配列同一性を有する抗PD-L1抗体であり、かつそのCDRがビントラフスプアルファのCDRに対し完全に同一である。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、ビントラフスプアルファ抗体部分の重鎖及び軽鎖のそれぞれに対し50個以下、40個以下、25個以下、10個以下のアミノ酸残基が異なるアミノ酸配列を有する抗PD-L1抗体であり、かつPD-1阻害剤はPD-L1に結合可能である。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、ビントラフスプアルファ抗体部分の重鎖及び軽鎖のそれぞれに対し50個以下、40個以下、25個以下、10個以下のアミノ酸残基が異なるアミノ酸配列を有する抗PD-L1抗体であり、かつそのCDRがビントラフスプアルファのCDRに対し完全に同一である。
【0084】
好ましくは、PD-1阻害剤は、PD-1とPD-L1との間の相互作用を阻害可能である抗PD-L1抗体である。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体は、配列番号19(CDR1)、配列番号20(CDR2)、及び配列番号21(CDR3)のアミノ酸配列を有する3つのCDRを含む重鎖、並びに配列番号22(CDR1)、配列番号23(CDR2)、及び配列番号24(CDR3)のアミノ酸配列を有する3つのCDRを含む軽鎖を含む。好ましい実施形態では、抗PD-L1抗体は、配列番号1、2、及び3のアミノ酸配列を有する3つのCDRを含む重鎖、並びに配列番号4、5、及び6のアミノ酸配列を有する3つのCDRを含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体の軽鎖可変領域及び重鎖可変領域は配列番号25及び配列番号26をそれぞれ含む。好ましくは、抗PD-L1抗体の軽鎖及び重鎖は配列番号7及び配列番号16、又は配列番号15及び配列番号14にそれぞれ対応する。
【0085】
好ましくは、TGFβ阻害剤は、TGFβとTGFβ受容体の間の相互作用を阻害可能で、例えばTGFβ受容体、又はTGFβリガンド-又は受容体-ブロッキング抗体、TGFβ結合パートナー間を阻害する小分子、TGFβ受容体に結合する不活性変異TGFβリガンドであり、内因性TGFβと結合について競合する。好ましくは、TGFβ阻害剤は可溶性TGFβ受容体(例えば、可溶性TGFβ受容体II又はIII)又はTGFβに結合可能なその断片である。より好ましくは、TGFβ阻害剤は、ヒトTGFβ受容体II(TGFβRII)の細胞外ドメイン又はTGFβに結合可能なその断片である。いくつかの実施形態では、TGFβRIIは、野生型ヒトTGF-β2型受容体アイソフォームA配列(例えば、NCBI Reference Sequence (RefSeq) Accession No. NP_001020018 のアミノ酸配列(配列番号9))、又は野生型ヒトTGF-β2型受容体アイソフォームB 配列(例えば、NCBI RefSeq Accession No. NP_003233のアミノ酸配列(配列番号10))に対応する。好ましくは、TGFβ阻害剤は、配列番号11又はTGFβに結合可能なその断片に対応する配列を含むかそれからなる。例えば、TGFβ阻害剤は配列番号11の全長配列に対応してもよい。あるいは、N末端が欠失していてもよい。例えば、配列番号11の26個以下のN末端アミノ酸、例えば、14~21個又は14~26個のN末端アミノ酸が欠失していてもよい。いくつかの実施形態では、配列番号11の14、19、又は21個のN末端アミノ酸が欠失している。好ましくは、TGFβ阻害剤は、配列番号11、配列番号12、及び配列番号13からなる群より選択される配列を含むかそれからなる。好ましくは、TGFβ阻害剤は、配列番号11、配列番号12、及び配列番号13のいずれか1つの全長アミノ酸配列に対し少なくとも80%、好ましくは90%、より好ましくは95%の配列同一性を有し、かつTGFβに結合可能である。他の好ましい実施形態では、TGFβ阻害剤は、配列番号11の全長アミノ酸配列に対し80%の配列同一性を有し、かつTGFβに結合可能である。好ましい実施形態では、TGFβ阻害剤は、配列番号11に対し25個を超えるアミノ酸配列の差異が無いアミノ酸配列を有し、かつTGFβに結合可能であり、ここで差異は、アミノ酸の置換、欠失、又は追加であってもよい。いくつかの実施形態では、TGFβ阻害剤は、配列番号11、配列番号12、及び配列番号13からなる群より選択される配列に対し実質的に同一なアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、配列番号11に対し実質的に同一なアミノ酸配列を有する。
【0086】
いくつかの実施形態では、TGFβ阻害剤は、ビントラフスプアルファのTGFβRのアミノ酸配列に対し実質的に同一、例えば、少なくとも90%の配列同一性を有し、かつTGFβに結合可能なタンパク質である。いくつかの実施形態では、TGFβ阻害剤は、ビントラフスプアルファのTGFβRに対し50個以下、40個以下、25個以下、10個以下のアミノ酸残基が異なるアミノ酸配列を有し、かつTGFβに結合可能なタンパク質である。いくつかの実施形態では、TGFβ阻害剤は、100~160個のアミノ酸残基又は110~140個のアミノ酸残基を有する。いくつかの実施形態では、TGFβ阻害剤のアミノ酸配列は、ビントラフスプアルファのTGFβRの第1~136位に対応する配列、ビントラフスプアルファのTGFβRの第20~136位に対応する配列、ビントラフスプアルファのTGFβRの第22~136位に対応する配列からなる群より選択される。
【0087】
いくつかの実施形態では、TGFβ阻害剤は、レルデリムマブ、XPA681、XPA089、LY2382770、LY3022859、1D11、2G7、AP11014、A-80-01、LY364947、LY550410、LY580276、LY566578、SB-505124、SD-093、SD-208、SB-431542、ISTH0036、ISTH0047、ガルニセルチブ(LY2157299一水和物、TGF-βRIの小分子キナーゼ阻害剤)、LY3200882(Pei et al. (2017) CANCER RES 77(13 Suppl):Abstract 955に開示の小分子キナーゼ阻害剤TGF-BRI)、メテリムマブ(TGF-βを標的とする抗体、Colak et al. (2017) TRENDS CANCER 3(1):56-71参照)、フレソリムマブ(GC-1008;TGF-β1及びTGF-β2を標的とする抗体)、XOMA 089(TGF-β1及びTGF-β2を標的とする抗体、Mirza et al. (2014) INVESTIGATIVE OPHTHALMOLOGY & VISUAL SCIENCE 55:1121参照)、AVlD200(TGF-β1及びTGF-β3 trap, Thwaites et al. (2017) BLOOD 130:2532参照)、Trabedersen/AP12009(TGF-β2アンチセンスオリゴヌクレオチド、Jaschinski et al. (2011)CURR PHARM BIOTECHNOL. 12(12):2203-13参照)、Belagen-pumatucel-L(TGF-β2を標的とする腫瘍細胞ワクチン、例えばGiaccone et al. (2015) EUR J CANCER 51(16):2321-9参照), Colak et al. (2017), supraに記載されているTGB-β経路標的剤(KI26894、SD208,SM16、IMC-TR1、PF-03446962、TEW-7197、及びGW788388を含む)からなる群より選択される。
【0088】
好ましくは、PD-1阻害剤とTGFβ阻害剤は融合されている。いくつかの実施形態では、融合分子は、WO2015/118175、WO2018/205985、WO2020/014285又はWO2020/006509に記載のPD-1阻害剤とTGFβ阻害剤との融合タンパク質の一つである。好ましくは、融合分子は抗PD-L1/TGFβ Trap 分子である。好ましくは、TGFβRII又はその断片の配列のN末端は、抗体又はその断片の各重鎖配列のC末端に融合している。好ましくは、抗体又はその断片とTGFβRII又はその断片の細胞外ドメインは遺伝子工学的にリンカー配列を介して融合されている。いくつかの実施形態では、リンカー配列は、短くて柔軟なペプチドである。好ましい実施形態では、リンカー配列は、(G4S)xGであり、式中xは3~6、好ましくは4~5、最も好ましくは4である。
【0089】
例示的な抗PD-L1/TGFβ Trapは図2に記載されている。記載のヘテロテトラマーは、抗PD-L1抗体の2つの軽鎖配列と、それぞれC末端がリンカー配列を介してTGFβRII又はその断片の細胞外ドメインのN末端に遺伝子工学的に融合している抗PD-L1抗体の重鎖配列を含む2つの配列からなる。
【0090】
好ましい実施形態では、抗PD-L1/TGFβ TrapのTGFβRII又はその断片の細胞外ドメインは、配列番号11と25個を超えるアミノ酸の差異がないアミノ酸配列を有し、かつTGFβに結合可能であり、ここで、差異はアミノ酸の置換、欠失、又は追加である。いくつかの実施形態では、抗PD-L1/TGFβ Trapは、WO2015/118175、WO2018/205985に開示の抗PD-L1/TGFβ Trap 分子の一つである。例えば、抗PD-L1/TGFβ Trapは、WO2015/118175のそれぞれ配列番号1と配列番号3の軽鎖と重鎖を含んでもよい。別の一実施形態では、抗PD-L1/TGFβ Trapは、WO2018/205985の表2に記載の構造体の一つ、例えば、WO2018/205985の構造体9又は15である。別の実施形態では、抗PD-L1/TGFβ Trapは、それぞれがWO2018/205985の配列番号12に相当する2つの軽鎖配列と、それぞれがWO2018/205985の配列番号14(式中、リンカー配列の“x”は4である)又は配列番号15(式中、リンカー配列の“x”は5である)に相当するTGFβRII 細胞外ドメイン配列へリンカー配列(G4S)xGを介して融合されるWO2018/205985の配列番号11に相当する重鎖配列を含む2つの配列とからなるヘテロテトラマーである。別の一実施形態では、抗PD-L1/TGFβ Trap はSHR1701である。更なる一実施形態では、PD-1阻害剤とTGFβ阻害剤融合タンパク質は、WO2020/006509に開示の融合分子の一つである。一実施形態では、PD-1阻害剤とTGFβ阻害剤との融合タンパク質は、WO2020/006509に開示のBi-PLB-1、Bi-PLB-2又はBi-PLB-1.2である。一実施形態では、PD-1阻害剤とTGFβ阻害剤との融合タンパク質は、WO2020/006509に開示のBi-PLB-1.2である。一実施形態では、PD-1阻害剤とTGFβ阻害剤融合タンパク質は、WO2020/006509に開示の配列番号128び配列番号95を含む。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤とTGFβ阻害剤融合タンパク質は、それぞれ(1)本願明細書の配列番号7及び配列番号8、(2)本願明細書の配列番号15及び配列番号17、及び(3)本願明細書の配列番号15及び配列番号18、並びに(4)WO2020/006509に開示の配列番号128及び配列番号95からなる群より選択される軽鎖配列及び重鎖配列にそれぞれ対応する重鎖及び軽鎖配列を含む。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤とTGFβ阻害剤融合タンパク質は、PD-L及びTGFβに結合可能であり、かつそれぞれ(1)本願明細書の配列番号7及び配列番号8、(2)本願明細書の配列番号15及び配列番号17、及び(3)本願明細書の配列番号15及び配列番号18、並びに(4)WO2020/006509に開示の配列番号128及び配列番号95からなる群より選択される軽鎖配列及び重鎖配列と実質的に同一、例えば少なくとも90%の配列同一性を有する重鎖及び軽鎖配列を含む。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤とTGFβ阻害剤の融合タンパク質のPD-1阻害剤の軽鎖配列及び重鎖配列のアミノ酸配列はそれぞれ、ビントラフスプアルファの抗体部分の軽鎖配列及び重鎖配列と50個以下、40個以下、25個以下、又は10個以下のアミノ酸残基の差異があり、CDRはビントラフスプアルファのCDRと完全に同一である、及び/又は、PD-1阻害剤はPD-L1に結合可能である。いくつかの実施形態では、抗PD-L1/TGFβ Trap のアミノ酸配列は、ビントラフスプアルファのアミノ酸配列と実質的に同一、例えば、少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ、PD-L1 とTGF-βに結合可能である
【0091】
いくつかの実施形態では、抗PD-L1/TGFβ Trapの軽鎖配列及び重鎖配列のアミノ酸配列は、(1)配列番号7及び配列番号8、(2)配列番号15及び配列番号17、並びに(3)配列番号15及び配列番号18からなる群よりそれぞれ選択される。好ましくは、抗PD-L1/TGFβ Trapのアミノ酸配列はビントラフスプアルファのアミノ酸配列と同一である。いくつかの実施形態では、抗PD-L1/TGFβ Trapはビントラフスプアルファである。
【0092】
特定の一実施形態では、PD-1阻害剤とTGFβ阻害剤の融合タンパク質は、WO2020/014285、例えば、図4又は実施例1(表2-9、表16を含む)に記載のPD-1とTGF-βに両方に結合する融合分子の一つ、特に、PD-1とTGF-βの両方に結合する融合タンパク質であり、上記明細書の配列番号15又は配列番号296と実質的に同一、例えば、少なくとも90%の配列同一性を有する配列、並びに、配列番号16、配列番号143、配列番号144、配列番号145、配列番号294、又は配列番号295と実質的に同一、例えば、少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む。一実施形態では、PD-1阻害剤とTGFβ阻害剤の融合タンパク質は、WO2020/014285の配列番号15及び配列番号16を含む。一実施形態では、PD-1阻害剤とTGFβ阻害剤の融合タンパク質は、WO2020/014285の配列番号15及び配列番号143を含む。一実施形態では、PD-1阻害剤とTGFβ阻害剤の融合タンパク質は、WO2020/014285の配列番号15及び配列番号144を含む。一実施形態では、PD-1阻害剤とTGFβ阻害剤の融合タンパク質は、WO2020/014285の配列番号15及び配列番号145を含む。一実施形態では、PD-1阻害剤とTGFβ阻害剤の融合タンパク質は、WO2020/014285の配列番号15及び配列番号294を含む。一実施形態では、PD-1阻害剤とTGFβ阻害剤の融合タンパク質は、WO2020/014285の配列番号15及び配列番号295を含む。一実施形態では、PD-1阻害剤とTGFβ阻害剤の融合タンパク質は、WO2020/014285の配列番号296及び配列番号16を含む。一実施形態では、PD-1阻害剤とTGFβ阻害剤の融合タンパク質は、WO2020/014285の配列番号296及び配列番号143を含む。一実施形態では、PD-1阻害剤とTGFβ阻害剤の融合タンパク質は、WO2020/014285の配列番号296及び配列番号144を含む。一実施形態では、PD-1阻害剤とTGFβ阻害剤の融合タンパク質は、WO2020/014285の配列番号296及び配列番号145を含む。一実施形態では、PD-1阻害剤とTGFβ阻害剤の融合タンパク質は、WO2020/014285の配列番号296及び配列番号294を含む。一実施形態では、PD-1阻害剤とTGFβ阻害剤の融合タンパク質は、WO2020/014285の配列番号296及び配列番号295を含む。更なる実施形態では、PD-1阻害剤とTGFβ阻害剤との融合タンパク質は、WO2020/006509に記載の融合分子の一つである。一実施形態では、PD-1阻害剤とTGFβ阻害剤との融合タンパク質は、WO2020/006509に記載のBi-PB-1、Bi-PB-2、又はBi-PB-1.2である。一実施形態では、PD-1阻害剤とTGFβ阻害剤との融合タンパク質は、WO2020/006509に記載のBi-PB-1.2である。一実施形態では、PD-1阻害剤とTGFβ阻害剤との融合タンパク質は、WO2020/006509に記載の配列番号108及び配列番号93を含む。
【0093】
好ましくは、ATM阻害剤はATMキナーゼを阻害し1 mM未満、より好ましくは100μM未満、より好ましくは1 μM未満、より好ましくは100 nM未満、そして最も好ましくは10nM未満のIC50を有する。好ましくは、ATM阻害剤は、他のキナーゼ、好ましくはATRよりもATMを阻害する特異性を有し、他のキナーゼのIC50に対するATMのIC50の比率で測定すると少なくとも10倍、より好ましくは少なくとも100倍、そして最も好ましくは少なくとも1000倍である。
【0094】
ATM阻害剤のIC50を測定するためのアッセイは当業者に周知である。IC50は、例えば以下の生化学ATMキナーゼアッセイの助けを借りて求めることができる。このアッセイは2工程からなる。すなわち酵素反応工程と検出工程である。最初に、基質タンパク質p53とATPを添加してATMタンパク質と試験物質を異なる濃度でインキュベートする。ATMはp53のリン酸化をいくつかの位置(アミノ酸S15が含まれる)で媒介する。リン酸化されたp53の量は特異的抗体とTR-FRET技術の助けを借りて求められる。この酵素式ATMアッセイは、TR-FRET(HTRFTM、Cisbio Bioassays)に基づく384ウエルのアッセイとして実施される。第1の工程では、精製されたヒト組み換えATM(ヒトATM、完全長、GenBank ID NM_000051、哺乳類細胞系の中で発現)をアッセイ用バッファの中で15分間にわたり、さまざまな濃度のATM阻害剤とともにと、陰性対照又は中性対照として試験物質なしでインキュベートする。アッセイ用バッファは、25 mMのHEPES pH 8.0、10 mMのMg(CH3COO)2、1 mMのMnCl2、0.1%のBSA、及び0.01%のBrij 35、5 mMのジチオトレイトール(DTT)を含む。試験物質溶液を、ECHO 555(Labcyte)を用いて微量滴定プレートに分配する。第2の工程では、精製されたヒト組み換えcmycで標識したp53(ヒトp53、完全長、GenBank ID BC003596、Sf21昆虫細胞の中で発現)とATPを添加し、この反応混合物を22℃で30~35分間インキュベートする。薬理学的に重要なアッセイ体積は5 μlである。反応混合物をインキュベートしている間のアッセイ中の最終濃度は、0.3~0.4 nMのATM、50~75 nMのp53、及び10 μMのATPである。EDTAの添加によって酵素反応を停止させる。ATPの存在下でのATMを媒介とした反応の結果としてリン酸化されたp53が形成されたことは、FRETを可能にする[ドナーとしての蛍光体(fluorophorene)ユーロピウム(Eu)と、アクセプタとしてのd2で標識した(Cisbio Bioassays)]特異的抗体を通じて検出される。2 μlの抗体含有停止溶液(12.5 mMのHEPES pH 8.0、125 mMのEDTA、30 mMの塩化ナトリウム、300 mMのフッ化カリウム、0.1006%のTween-20、0.005%のBrij 35、0.21 nMの抗ホスホ-p53(ser15)-Eu抗体、及び15 nMの抗-cmyc-d2抗体)を反応混合物に添加する。シグナルを発達させるため通常は2時間(1.5時間と15時間の間)にわたるインキュベーションの後、プレートを、プレートリーダー(EnVision、PerkinElmer)をTRFモード(とレーザー励起)で利用して分析する。ドナーであるユーロピウムを340 nmの波長で励起させた後、アクセプタd2から665 nmで発生する蛍光とドナーEuから615 nmで発生する蛍光の両方を測定する。リン酸化されたp53の量は、665 nmと615 nmでの発光量の商、すなわち相対蛍光単位(RFU)に正比例する。測定データをGenedata Screenerソフトウエアによって処理する。IC50決定は、非線形回帰分析により特に用量/作用曲線をデータ点にフィットさせることによって実施される。
【0095】
IC50=50%阻害濃度
ATP=アデノシン三リン酸
TR-FRET=時間分解蛍光共鳴エネルギー移動
HTRF=均一時間分解蛍光
HEPES=2-(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル)-エタンスルホン酸
Mg(CH3COO)2=酢酸マグネシウム
MnCl2=塩化マンガン(II)
BSA=ウシ血清アルブミン
EDTA=テトラ酢酸エチレンジアミン
TRF=時間分解蛍光
【0096】
ATM阻害剤は以下の群から選択することができる:
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【0097】
いくつかの実施形態では、ATM阻害剤は、イミダゾ[4,5-c]キノリン誘導体である。いくつかの実施形態では、ATM阻害剤は、式(I)
【化1】
(式中、
R1は、メチルを表し、
R3は、メチル又はHを表し、
Aは、各場合において独立して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個のC原子を有する非分岐又は分岐アルキルを表し、ここで、1、2、3、4、5、6、又は7個のH原子は、互いに独立してHalにより置換されていてもよく、
Het1は、ピリジニル、ピリミジニル、ピラゾリル、トリアゾリル、イミダゾリル、ベンズイミダゾリル、イミダゾ[4,5-b]ピリジニル、及びベンゾジアゾリルからなる群より選択され、ここでこれらの基はそれぞれ、非置換であっても、あるいは互いに独立して、Hal、A、CN、-(CY2p-OY、-(CY2p-NYY、-(CY2p-COOY、-(CY2p-CO-NYY、-(CY2p-NY-COY、-Het2及び/又は-SO2-Het2により一、二、又は三置換されていてもよく、
Het2は、2、3、4、5、6、又は7個のC原子及び1、2、3、又は4個のN、O及び/又はS原子を有する単環に開示の飽和複素環を表し、ここで、当該複素環は、非置換であってもあるいはAにより一置換されていてもよく、
HETは、1、2、又は3個のN原子及び場合により1個のO原子又はS原子を有する5又は6員芳香族複素環を表し、ここで当該複素環は、この環のC原子を介して骨格のN原子に結合され、かつ、ピリジニル、ピリミジニル、ピラゾリル、チアゾリル、イミダゾリル;ピロロ[3,2-c]ピリジニル、ピロロ[2,3-b]ピリジニル及びキノリニルからなる群より選択され;ここで、この複素環は、非置換であっても、あるいは互いに独立してHal、A、Het2、CN、-(CY2p-OY、-(CY2p-OZ、-(CY)p-O-Het2、-(CY2p-O-(CY2t-Het2、-(CY2p-O-(CY2t-NYY、-(CY2p-O-(CY2t-OY、-(CY2p-O-(CY2t-POAA、-(CY2p-NYY、-(CY2p-COOY、-(CY2p-CO-NYY、-(CY2p-NY-COY、-SO2-Het2、CyA、-(CY2p-O-(CY2t-SO2-Y、-(CY2p-NY-SO2-Y、及び-(CY2p-SO2-Yからなる群より選択される基により一、二、又は三置換されていてもよく、
Yは、H又はAを表し、
Zは、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個のC原子を有する非分岐又は分岐アルケニルを表し、ここで、1、2、3、4、5、6、又は7個のH原子は、互いに独立してHalにより置換されていてもよく、
CyAは、3、4、5、6、7又は8個環のC原子を有するシクロアルキルを表し、非置換であっても、あるいは互いに独立してHal、A、CN、-(CY2p-OY、-(CY2p-NYY、-(CY2p-COOY、-(CY2p-CO-NYY及び/又は-(CY2p-NY-COYにより一又は多置換されていてもよく、
Halは、F、Cl、Br又はIを表し、かつ、
p は、0、1、2、3、4、5、又は6を表し、
tは、1、2、3、4、5、又は6を表す)
の化合物及び/又はその医薬的に許容される塩である。
【0098】
特定の例示的な実施形態では、HETは、互いに独立して、F、Cl、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ピペラジニル、テトラヒドロピラニル、-CN、2-メトキシエトキシ、2-ヒドロキシエトキシ、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、N-メチルカルバモイル(-C(=O)-NH-CH)、2-メチルアミノエトキシ、1-メチル-アゼチジン-3-イルメトキシ、トリデウテリオメトキシ、トリフルオロメトキシ、メチルスルホニルメトキシ、メチルスルホニル、シクロプロピル、アリルオキシ、ピペラジニル、及びアゼチジンイルオキシからなる群より選択される置換基により一、二、三又はそれ以上置換されていてもよい。
【0099】
いくつかの例示的な実施形態では、HETは、以下の5-又は6-員環の単環芳香族複素環:ピリジン-2-イル、ピリジン-4-イル、5-アリルオキシ-3-フルオロピリジン-2-イル、5-(アゼチジン-3-イルオキシ)-3-フルオロ-ピリジン-2-イル、5-クロロ-3-フルオロピリジン-2-イル、3-シクロプロピルピリジン-4-イル、3-シクロプロピル-5-フルオロピリジン-4-イル、3,5-ジフルオロピリジン-2-イル、3,5-ジフルオロピリジン-4-イル、5-ジフルオロメトキシ-3-フルオロピリジン-2-イル、3-ジフルオロメトキシ-5-フルオロピリジン-4-イル、5-エトキシ-3-フルオロピリジン-2-イル、3-フルオロ-5-(1-メチルアゼチジン-3-イルメトキシ)ピリジン-2-イル、3-フルオロ-5-メトキシピリジン-4-イル、3-フルオロ-5-メトキシピリジン-2-イル、3-フルオロ-5-フルオロ-メトキシピリジン-2-イル、3-フルオロ-5-フルオロメトキシピリジン-4-イル、3-フルオロピリジン-2-イル、3-フルオロ-5-メチルスルホニルメトキシピリジン-2-イル、3-フルオロ-5-メチルスルホニルピリジン-2-イル、3-フルオロ-5-(2-メチルアミノ-エトキシ)ピリジン-2-イル、3-フルオロ-5-メチルピリジン-4-イル、3-フルオロ-5-メチルピリジン-2-イル、3-フルオロピリジン-4-イル、3-フルオロピリジン-2-イル、3-フルオロ-5-ピペラジン-1-イルピリジン-2-イル、3-クロロ-ピリジン-4-イル、3-エチルピリジン-4-イル、3-エチル-5-フルオロピリジン-4-イル、3-エチル-5-メチルピリジン-4-イル、5-フルオロピリジン-2-イル、3-メチルピリジン-4-イル、3-メトキシピリジン-4-イル、2-シアノ-ピリジン-4-イル、3-シアノピリジン-4-イル、3-シアノピリジン-6-イル、3-シアノ-5-フルオロピリジン-4-イル、3-フルオロ-5-(2-メトキシエトキシ)ピリジン-2-イル、3-フルオロ-5-(2-ヒドロキシエトキシ)ピリジン-2-イル、3-フルオロ-5-(トリデウテリオメトキシ)ピリジン-4-イル、3-フルオロ-5-(トリデウテリオメトキシ)ピリジン-2-イル、5-フルオロ-3-(N-メチルカルバモイル)ピリジン-6-イル、5-フルオロピリミジン-2-イル、5-フルオロピリミジン-4-イル、ピリミジン-2-イル、ピリミジン-5-イル、1H-ピラゾール-4-イル、1-エチル-3-メチル-1H-ピラゾール-4-イル、1,2-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イル、1,3-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イル、1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル、1-(テトラヒドロピラン-4-イル)-1H-ピラゾール-4-イル、2-メチル-2H-ピラゾール-3-イル、3-メチル-1H-ピラゾール-4-イル、2-メチルチアゾール-4-イル、3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イル、3-フルオロ-1-メチルピラゾール-4-イル、チアゾール-2-イル、及び1-メチル-1H-イミダゾリルから選択される。
【0100】
例示的な実施形態では、Het1は非置換であるか、あるいは互いに独立して、非置換又はHal、特にF、により一置換又は多置換されてもよいA、又は-OY、-NYY、Hal、及び-Het2、特に好ましくはメチル、エチル、アミノ、メトキシ、フルオロメチル、ジフルオロメチル、フッ素、アゼチジニルから選択される1つ又は2つの基により置換される。
【0101】
例えば、Het1は、1H-ピラゾール-4-イル、2H-ピラゾール-3-イル、1H-ピラゾール-3-イル、1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル、3-メチル-1H-ピラゾール-4-イル、5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル、4-メチル-1H-ピラゾール-3-イル、1-フルオロメチル-1H-ピラゾール-1-イル、1-ジフルオロメチル-1H-ピラゾール-4-イル、1,3-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イル、1-エチル-1H-ピラゾール-4-イル、1-エチル-3-メチル-1H-ピラゾリル、3-フルオロ-1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル、3-アミノ-1H-ピラゾール-5-イル、2H-1,2,3-トリアゾール-4-イル、3H-1,2,3-トリアゾール-4-イル-、1-メチル-1H-1,2,3-トリアゾール-4-イル、2-メチル-2H-1,2,3-トリアゾール-4-イル、2-アミノ-1H-イミダゾール-4-イル、6-メトキシピリジン-3-イル、1-(アゼチジン-3-イル)-3-メチル-1H-ピラゾール-4-イル、2-メチル-3H-ベンゾイミダゾール-5-イル,及び2-メチル-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-6-イルから選択されてもよい。
【0102】
更なる例示的な実施形態では、ATM阻害剤は、式(II)
【化2】
(式中、
Het1は、非置換又は互いに独立してHal又はAにより一、二、又は三置換されていてもよいピラゾリルであり、
Aは、各場合において独立して、1、2、3、4、5、又は6個のC原子を有する非分岐又は分岐アルキルを表し、ここで、1、2、3、4、又は5個のH原子は、互いに独立してHalにより置換されていてもよく、
Halは、F、Cl、Br又はIを表し、
HETは、非置換又は上記式(I)のHETについて記載したように置換されているピリミジニル、例えば、ピリジン-4-イル、であり、例えば、3-ジフルオロメトキシ-5-フルオロピリジン-4-イル、3-フルオロ-5-メトキシピリジン-4-イル、3-フルオロ-5-フルオロメトキシピリジン-4-イル、及び3-フルオロ-5-(トリデウテリオメトキシ)ピリジン-4-イルから選択されてもよい)
の化合物又はその医薬的に許容される塩である。
【0103】
式(II)の化合物の例示的な実施形態では、Het1は、1H-ピラゾール-4-イル、2H-ピラゾール-3-イル、1H-ピラゾール-3-イル、1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル、3-メチル-1H-ピラゾール-4-イル、5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル、4-メチル-1H-ピラゾール-3-イル、1-フルオロメチル-1H-ピラゾール-4-イル、1-ジフルオロメチル-1H-ピラゾール-4-イル、1,3-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イル、1-エチル-1H-ピラゾール-4-イル、1-エチル-3-メチル-1H-ピラゾリル、及び3-フルオロ-1-メチル-1H-ピラゾール-4-イルから選択される。
【0104】
好ましくは、ATM阻害剤は、WO2012/028233 A1の請求項6に記載の化合物又はWO2016/155884 A1の請求項18に記載の化合物からなる群より選択されるいずれか1つである。より好ましくは、ATM阻害剤は、3-フルオロ-4-[7-メトキシ-3-メチル-8-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-2-オキソ-2,3-ジヒドロイミダゾ[4,5-c]-キノリン-1-イル]ベンゾニトリル又は8-(1,3-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イル)-1-(3-フルオロ-5-メトキシ-ピリジン-4-イル)-7-メトキシ-3-メチル-1,3-ジヒドロ-イミダゾ[4,5-c]キノリン-2-オン(「化合物A」と称されることもある)である。最も好ましくは、ATM阻害剤は化合物Aである。化合物Aは、WO2016/155884 A1に詳述される化合物A(表2に化合物4として記載されるもの)である。
【0105】
驚くべきことに、化合物Aが以下の2つのアトロプ異性体の形で存在することが発見された:
【化3】
式中、太字の部分と破線の部分は、三環式環が位置する平面に対するピリジン環の部分的な回転を示す。
【0106】
上記式から明らかなように、化合物A1は8-(1,3-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イル)-1-(Sa)-(3-フルオロ-5-メトキシ-ピリジン-4-イル)-7-メトキシ-3-メチル-1,3-ジヒドロ-イミダゾ[4,5-c]キノリン-2-オンであり、化合物A2は8-(1,3-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イル)-1-(Ra)-(3-フルオロ-5-メトキシ-ピリジン-4-イル)-7-メトキシ-3-メチル-1,3-ジヒドロ-イミダゾ[4,5-c]キノリン-2-オンである。
【0107】
化合物A1とA2は、化合物Aから出発してキラル固定相でのクロマトグラフィを利用して得ることができる(例えばChiral Liquid Chromatography; W. J. Lough, Ed. Chapman and Hall, New York, (1989);Okamoto, “Optical resolution of dihydropyridine enantiomers by high-peformance liquid chromatography using phenylcarbamates of polysaccharides as a chiral stationary phase”, J. of Chromatogr. 513:375-378, (1990)を参照されたい)。化合物1と2は、キラル固定相でのクロマトグラフィ(例えばChiralpak ICカラム(5 mm、150×4.6 mm内径))により、例えばH2O/ACN 50/50 v/vを含有する移動相を持つアイソクラティック溶離液を利用して(例えば1.00 ml/分の流量;260 nmでのUV測定;TcとTS:25±5℃、Scconc 0.20 mg/ml;注入体積10 mlを利用して)単離することができる。
【0108】
化合物Aを化合物A1とA2に分離するための上記のクロマトグラフィ法に対する1つの代替法として、分取超臨界流体クロマトグラフィを利用することができる。これは、例えばChiralpak AS-H(20 mm×250 mm、5 μm)カラム;アイソクラティック溶離液(0.1%v/vのNH3を含む20:80のエタノール:CO2)、BPR(背圧制御):大気圧よりも約100バール上;カラムの温度40℃、流速50 ml/分、注入体積2500 μl(125 mg)、検出器波長265 nmを含む。
【0109】
いくつかの実施形態では、化合物Aは化合物A2である。好ましい実施形態では、化合物Aは化合物A1である。
【0110】
特に断わらない限り、「化合物A、A1、及びA2」という用語に、その医薬的に許容される塩も含まれる。本明細書に記載されている方法は、化合物Aの製剤、用量、及び投薬レジメン/スケジュールに適用することができるが、そのような製剤、用量、及び投薬レジメン/スケジュールは、化合物Aの医薬的に許容される任意の塩にも同様に適用可能であることが理解される。したがっていくつかの実施形態では、化合物Aの医薬的に許容される塩、すなわちその医薬的に許容される塩の用量又は投薬レジメンは、本明細書に記載されている化合物Aに関するいずれかの用量又は投薬レジメンから選択される。化合物Aの可能な用量はWO2016/155884 A1に記載されている。本発明の一実施形態では、化合物A、A1、又はA2は、投与単位あたり5mg~1gの用量、例えば投与単位あたり10~750mgの間(投与単位あたり20~500mgの間など、例えば、投与単位あたり25、50、75、100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、又は350 mgなど)で投与される。例えば化合物A、A1、又はA2は、1日に約1~750 mg、例えば1日に20~500 mg(1日に25~400 mgなど)の用量で投与することができる。化合物A1の生物学的有効量は、1日に1回、25~350 mgの範囲であると推定されている。
【0111】
3-フルオロ-4-[7-メトキシ-3-メチル-8-(1-メチル-1H-ピラゾル-4-イル)-2-オキソ-2,3-ジヒドロイミダゾ[4,5-c]-キノリン-1-イル]ベンゾニトリルは、例えば1日に50~400 mgの用量、例えば、50、100、200、300、又は400 mg/日など、で投与することができる。
【0112】
医薬的に許容される塩は、別の分子(酢酸イオン、コハク酸イオン、又は他の対イオンなど)を含める必要がある可能性がある。対イオンとして、親化合物の表面の電荷を安定化する任意の有機部分又は無機部分が可能である。さらに、医薬的に許容される塩は、その構造中に2個以上の帯電した原子を持つことができる。多数の帯電原子が医薬的に許容される塩の一部である場合は多数の対イオンを持つことができる。したがって医薬的に許容される塩は、1個以上の帯電した原子、及び/又は1個以上の対イオンを持つことができる。本発明の化合物が塩基である場合には、望む医薬的に許容される塩は、本分野で利用できる適切な任意の方法(例えば無機酸(塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、メタンスルホン酸、リン酸など)、又は有機酸(酢酸、マレイン酸、コハク酸、マンデル酸、フマル酸、マロン酸、ピルビン酸、シュウ酸、グリコール酸、サリチル酸、ピラノシジル酸(グルクロン酸やガラクツロン酸など)、アルファヒドロキシ酸(クエン酸や酒石酸など)、アミノ酸(アスパラギン酸やグルタミン酸など)、芳香族酸(安息香酸やケイ皮酸など)、スルホン酸(p-トルエンスルホン酸やエタンスルホン酸など))を用いた遊離塩基の処理など)によって調製することができる。本発明の化合物が酸である場合には、望む医薬的に許容される塩は、適切な任意の方法(例えば無機塩基又は有機塩基(アミン(第一級、第二級、又は第三級)、アルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物など)を用いた遊離酸の処理など)によって調製することができる。適切な塩の非限定的な代表例に含まれるのは、アミノ酸(グリシンやアルギニンなど)、アンモニア、第一級、第二級、及び第三級アミン、及び環状アミン(ピペリジン、モルホリン、及びピペラジンなど)に由来する有機塩と、ナトリウム、カルシウム、カリウム、マグネシウム、マンガン、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム、及びリチウムに由来する無機塩である。
【0113】
いくつかの実施形態では、放射線療法は化学放射線療法(CRT)の一部である。化学療法剤として、エトポシド、ドキソルビシン、トポテカン、イリノテカン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、パクリタキセル、プラチン、アントラサイクリン、及びこれらの組み合わせが可能である。
【0114】
放射線療法として、電子、フォトン、プロトン、アルファ放射体、他のイオン、放射性ヌクレオチド、ホウ素捕獲中性子、及びこれらの組み合わせを用いて与える治療が可能である。いくつかの実施形態では、放射線療法は約35~70 Gy/20~35回を含む。
【0115】
一実施形態では、本発明の治療法組み合わせがヒト対象の治療に利用される。一実施形態では、PD-1阻害剤はヒトPD-L1を標的とする。治療法組み合わせを用いた治療において主に予想される有益な効果は、これらヒト患者におけるリスク/有益な効果比における利得である。
【0116】
一実施形態では、癌はPD-L1陽性癌性疾患と特定される。本発明によれば、癌は、その癌の細胞の少なくとも0.1%~少なくとも10%、より好ましくは少なくとも0.5%~5%、最も好ましくは少なくとも1%が、その細胞表面に存在するPD-L1を持つ場合に、PD-L1陽性と見なされることが好ましい。一実施形態では、PD-L1の発現は免疫組織化学(IHC)によって明らかにされる。
【0117】
ある実施形態では、本発明により、過剰又は異常な細胞増殖を特徴とする疾患、障害、及び病気の治療が提供される。そのような疾患に含まれるのは、増殖性又は過剰増殖性の疾患である。増殖性又は過剰増殖性の疾患の例に含まれるのは、癌と骨髄増殖性障害である。
【0118】
別の一実施形態では、癌は、癌腫、リンパ腫、白血病、芽細胞腫、及び肉腫から選択される。より具体的には、このような癌として、扁平上皮癌、骨髄腫、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、神経膠腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、急性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、消化器(管)癌、腎癌、卵巣癌、肝臓癌、リンパ芽球性白血病、リンパ性白血病、結腸直腸癌、子宮内膜癌、腎臓癌、前立腺癌、甲状腺癌、黒色腫、軟骨肉腫、神経芽細胞腫、膵臓癌、膠芽腫、子宮頸癌、脳癌、胃癌、膀胱癌、肝細胞癌、乳癌、結腸癌、胆道癌、及び頭頸部癌が挙げられる。問題の疾患又は医学的障害は、好ましくはWO2015118175、WO2018029367、WO2018208720、PCT/US18/12604、PCT/US19/47734、PCT/US19/40129、PCT/US19/36725、PCT/US19/732271、PCT/US19/38600、PCT/EP2019/061558に記載のいずかかから選択される。
【0119】
様々な実施形態では、本発明の方法は、一次、二次、三次、又はそれよりも高次の治療として利用される。治療の次数は、患者が受ける様々な医薬品又は他の療法を用いる治療の順番における順位を意味する。一次療法レジメンは最初に与えられる治療であるのに対し、二次又は三次の治療は、それぞれ一次療法の後、又は二次療法の後に与えられる。したがって一次療法は、疾患又は病気のための最初の治療である。癌を有する患者では、一次療法(初期療法又は初期治療と呼ばれることが時々ある)として、外科手術、化学療法、放射線療法、又はこれら療法の組み合わせが可能である。典型的には、患者は、一次療法又は二次療法に対してプラスの臨床転帰を示さなかったか、無症状性応答しか示さなかった、あるいはプラスの臨床応答を示したものの後に再発した(時に、以前にプラスの応答を誘導した以前の療法に対して今は抵抗性になった疾患を伴う場合がある)という理由により、後に化学療法計画(二次又は三次の治療)を与えられる。
【0120】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、癌の高次の治療、特に二次治療又はより高次の治療として利用される。対象が以前に少なくとも1ラウンドの癌療法を受けている限り、以前の治療の数に制限はない。以前の癌療法のラウンドは、例えば1つ以上の化学療法剤、放射線療法、又は化学放射線療法を利用して対象を治療するための規定されたスケジュール/フェーズを意味し、その対象では、スケジュールが完了するか、スケジュールよりも前に終了したそのような以前の治療が失敗している。1つの理由は、癌が以前の療法に対して抵抗性であったか抵抗性になったことである可能性がある。癌患者を治療するための現在の標準治療(SoC)は、毒性があって旧式の化学療法計画の投与を含むことがしばしばある。このようなSoCは、生活の質を低下させる可能性が大きい強い有害事象の大きなリスク(二次的癌など)と関係する。一実施形態では、PD阻害剤、TGFβ阻害剤、及びATM阻害剤の組み合わせ投与は、癌を有する患者においてSoCと同様に有効で、SoCよりもよく忍容される可能性がある。PD阻害剤、TGFβ阻害剤、及びATM阻害剤の作用様式は異なっているため、本発明の治療の投与が免疫関連有害事象(irAE)の増加につながる可能性は小さいと考えられる。
【0121】
一実施形態では、本発明の方法は、以前に治療された再発転移性NSCLC、切除不能な局所進行NSCLC、以前治療されたSCLC ED、全身治療に不適なSCLC、以前治療された再発又は転移性SCCHN、再照射可能な再発性SCCHN、及び以前に治療されたマイクロサテライト状態不安定低(MSI-L)又はマイクロサテライト状態安定(MSS)転移結腸直腸癌(mCRC)の群から選択される癌の二次治療、又はそれよりも高次の治療である。SCLCとSCCHNは特に以前に全身治療されている。MSI-L/MSS mCRCは全mCRCの85%に発生する。
【0122】
一実施形態では、癌はマイクロサテライト不安定性(MSI)を示す。マイクロサテライト不安定性(「MSI」)は、ある種の細胞(腫瘍細胞など)のDNAの変化であるか、そのような変化を含み、その細胞では、マイクロサテライト(DNAの短い反復配列)の反復数が、遺伝したDNAに含まれる反復数とは異なっている。マイクロサテライト不安定性は、DNAミスマッチ修復(MMR)系の欠損が原因で複製関連エラーの修復に失敗することで生じる。この失敗により、ミスマッチ変異がゲノム全体に、しかし特にマイクロサテライトとして知られるDNA反復領域に残存できるようになり、変異負荷の増加につながる。高マイクロサテライト不安定性(MSI-H)状態を特徴とする少なくともいくつかの腫瘍はある種の抗PD-1剤に対する応答が改善することが実証されている(Le et al. (2015) N. Engl. J. Med. 372(26): 2509-2520;Westdorp et al. (2016) Cancer Immunol. Immunother. 65(10): 1249-1259)。
【0123】
いくつかの実施形態では、癌はMSI-H状態を有する。いくつかの実施形態では、癌は低マイクロサテライト不安定性(MSI-L)状態を有する。いくつかの実施形態では、癌はマイクロサテライト安定(MSS)状態を有する。いくつかの実施形態では、マイクロサテライト不安定性状態は、次世代シークエンシング(NGS)に基づくアッセイ、免疫組織化学(IHC)に基づくアッセイ、及び/又はPCRに基づくアッセイによって評価される。いくつかの実施形態では、マイクロサテライト不安定性はNGSによって検出される。いくつかの実施形態では、マイクロサテライト不安定性はIHCによって検出される。いくつかの実施形態では、マイクロサテライト不安定性はPCRによって検出される。
【0124】
いくつかの実施形態では、癌は大きな腫瘍変異負荷(TMB)と関係している。いくつかの実施形態では、癌は、大きなTMBと、MSI-Hとに関係している。いくつかの実施形態では、癌は、大きなTMBと、MSI-L又はMSSとに関係している。いくつかの実施形態では、癌は大きなTMBと関係する子宮内膜癌である。いくつかの関連する実施形態では、子宮内膜癌は、大きなTMBと、MSI-Hとに関係している。いくつかの関連する実施形態では、子宮内膜癌は、大きなTMBと、MSI-L又はMSSとに関係している。
【0125】
いくつかの実施形態では、癌はミスマッチ修復欠損(dMMR)癌である。
【0126】
いくつかの実施形態では、癌は高頻度変異癌である。いくつかの実施形態では、癌はポリメラーゼイプシロン(POLE)に変異を有する。いくつかの実施形態では、癌はポリメラーゼデルタ(POLD)に変異を有する。
【0127】
いくつかの実施形態では、癌は子宮内膜癌(例えばMSI-H子宮内膜癌又はMSS/MSI-L子宮内膜癌)である。いくつかの実施形態では、癌は、POLE又はPOLDに変異を含むMSI-H癌である(例えばPOLE又はPOLDに変異を含むMSI-H非子宮内膜癌)。
【0128】
いくつかの実施形態では、癌は進行した癌である。いくつかの実施形態では、癌は転移癌である。いくつかの実施形態では、癌は再発癌である(例えば再発婦人科癌(再発上皮卵巣癌、再発卵管癌、再発原発性腹膜癌、又は再発子宮内膜癌など))。一実施形態では、癌は再発であるか、進行している。
【0129】
一実施形態では、癌の選択は、虫垂癌、膀胱癌、乳癌、子宮頚癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、食道癌(特に食道扁平上皮癌)、卵管癌、胃癌、神経膠腫(びまん性橋膠腫など)、頭頸部癌(特に頭頸部扁平上皮癌及び/又は中咽頭癌)、白血病(特に急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病)肺癌(特に非小細胞肺癌(NSCLC))、リンパ腫(特にホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫)、黒色腫、中皮腫(特に悪性胸膜中皮腫)、メルケル細胞癌、神経芽細胞腫、口腔癌、骨肉腫、卵巣癌、前立腺癌、腎臓癌、唾液腺腫瘍、肉腫(特にユーイング肉腫又は横紋筋肉腫)扁平上皮癌、軟組織肉腫、胸腺腫、甲状腺癌、尿路上皮癌、子宮癌、膣癌、陰門癌、又はウィルムス腫瘍からなされる。さらなる一実施形態では、癌の選択は、虫垂癌、膀胱癌、子宮頚癌、結腸直腸癌、食道癌、頭頸部癌、黒色腫、中皮腫、NSCLC、前立腺癌、及び尿路上皮癌からなされる。さらなる一実施形態では、癌の選択は、子宮頚癌、子宮内膜癌、頭頸部癌(特に頭頸部扁平上皮癌及び/又は中咽頭癌)、肺癌(特にNSCLC)、リンパ腫(特に非ホジキンリンパ腫)、黒色腫、口腔癌、甲状腺癌、尿路上皮癌、又は子宮癌からなされる。別の一実施形態では、癌の選択は、頭頸部癌(特に頭頸部扁平上皮癌及び/又は中咽頭癌)、肺癌(特にNSCLC)、尿路上皮癌、黒色腫、又は子宮頚癌からなされる。
【0130】
一実施形態では、ヒトは固形腫瘍を有する。一実施形態では、固形腫瘍は進行した固形腫瘍である。一実施形態では、癌の選択は、頭頸部癌、頭頸部の扁平上皮癌(SCCHN又はHNSCC)、胃癌、黒色腫、腎細胞癌(RCC)、食道癌、非小細胞細胞肺癌、前立腺癌、結腸直腸癌、卵巣癌、及び膵臓癌からなされる。一実施形態では、癌の選択は、結腸直腸癌、子宮頚癌、膀胱癌、尿路上皮癌、頭頸部癌、黒色腫、中皮腫、非小細胞肺癌、前立腺癌、食道癌、及び食道扁平上皮癌からなる群よりなされる。1つの態様では、ヒトは、SCCHN、結腸直腸癌、食道癌、子宮頚癌、膀胱癌、乳癌、頭頸部癌、卵巣癌、黒色腫、腎細胞癌(RCC)、食道扁平上皮癌、非小細胞細胞肺癌、中皮腫(例えば悪性胸膜中皮腫)、及び前立腺癌の1つ以上を有する。
【0131】
別の1つの態様では、ヒトは液体腫瘍(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、多発性骨髄腫、慢性リンパ芽球性白血病、濾胞性リンパ腫、急性骨髄性白血病、及び慢性骨髄性白血病など)を有する。
【0132】
一実施形態では、癌は頭頸部癌である。一実施形態では、癌はHNSCCである。扁平上皮癌は、扁平上皮と呼ばれる特定の細胞から生じる癌である。扁平上皮は皮膚の外層と粘膜(体腔(気道や腸など)を覆い尽くしている湿潤な組織)に見られる。頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)は、口、鼻、及び喉の粘膜で発達する。HNSCCは、SCCHN及び頭頸部の扁平上皮癌としても知られる。
【0133】
HNSCCは、口の中(口腔)、口に近い喉の中央部(中咽頭)、鼻の裏側の空間(鼻腔と副鼻腔)、鼻腔に近い喉の上部(鼻咽頭)、発声器(喉頭)、又は喉頭に近い喉の下部(下咽頭)に発生する可能性がある。この癌は、位置に応じ、口又は喉の異常な詰まり又は傷口(潰瘍)、口内の異常な出血や痛み、明確でない副鼻腔うっ血、喉の痛み、耳痛、飲み込み時の痛み又は飲み込み困難、嗄れ聲、呼吸困難、又はリンパ節肥大を引き起こす可能性がある。
【0134】
HNSCCは身体の他の部分(リンパ節、肺、又は肝臓など)に転移する可能性がある。
【0135】
喫煙とアルコール消費がHNSCCの発達に関する2つの最も重要なリスク因子であり、リスクへのこれらの寄与は相乗的である。それに加え、ヒトパピローマウイルス(HPV)、特にHPV-16が、今やよく確立された独立なリスク因子になっている。HNSCCを有する患者は予後が比較的悪い。再発/転移(R/M)HNSCCはヒトパピローマウイルス(HPV)の状態に関係なく特に難題であり、現在のところ有効な治療選択肢はほとんど存在しない。HPV-陰性HNSCCには標準治療の後に19~35%の局所領域再発率と14~22%の遠方転移率が伴うのに対し、HPV陽性HNSCCではそれぞれ9~18%及び5~12%という割合である。R/M疾患を有する患者の全生存期間中央値は、一次化学療法の設定では10~13ヶ月、二次療法の設定では6ヶ月である。現在の標準治療は、セツキシマブあり又はなしの、白金ベースの二重化学療法である。二次の標準治療の選択肢には、セツキシマブ、メトトレキサート、及びタキサンが含まれる。化学療法剤のすべてに顕著な副作用が伴っており、患者の10~13%だけが治療に応答する。既存の全身療法によるHNSCC退縮は一過性であり、生存期間を有意に増加させることはなく、ほぼすべての患者が自らの悪性腫瘍に屈する。
【0136】
一実施形態では、癌は頭頸部癌である。一実施形態では、癌は頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)である。一実施形態では、癌は再発/転移(R/M)HNSCCである。一実施形態では、癌は再発/難治性(R/R)HNSCCである。一実施形態では、癌は、HPV陰性又はHPV陽性のHNSCCである。一実施形態では、癌は局所的に進行したHNSCCである。一実施形態では、癌は、CPSが1%以上、又はTPSが50%以上であるPD-L1陽性患者におけるHNSCC((R/M)HNSCCなど)である。CPS又はTPSは、FDA又はEMAが認可した試験(Dako IHC C PharmDxアッセイなど)によって求まる。一実施形態では、癌は、PD阻害剤を経験した患者、又はPD阻害剤を未経験の患者におけるHNSCCである。一実施形態では、癌は、PD阻害剤を経験した患者、又はPD阻害剤を未経験の患者におけるHNSCCである。
【0137】
一実施形態では、頭頸部癌は中咽頭癌である。一実施形態では、頭頸部癌は口腔癌(すなわち口の癌)である。
【0138】
一実施形態では、癌は肺癌である。いくつかの実施形態では、肺癌は、肺の扁平上皮癌である。いくつかの実施形態では、肺癌は小細胞肺癌(SCLC)である。いくつかの実施形態では、肺癌は非小細胞肺癌(NSCLC)(扁平上皮NSCLCなど)である。いくつかの実施形態では、肺癌はALK転座肺癌(例えばALK転座NSCLC)である。いくつかの実施形態では、癌は、同定されたALK転座を持つNSCLCである。いくつかの実施形態では、肺癌はEGFR変異肺癌(例えばEGFR変異NSCLC)である。いくつかの実施形態では、癌は、同定されたEGFR変異を持つNSCLCである。一実施形態では、癌は、TPSが1%以上、又はTPSが50%であるPD-L1陽性患者におけるNSCLCである。TPSは、FDA又はEMAが認可した試験(Dako IHC 22C3 PharmDxアッセイ又はVENTANA PD-L1(SP263)アッセイなど)によって求まる。
【0139】
一実施形態では、癌は黒色腫である。いくつかの実施形態では、黒色腫は進行した黒色腫である。いくつかの実施形態では、黒色腫は転移黒色腫である。いくつかの実施形態では、黒色腫はMSI-H黒色腫である。いくつかの実施形態では、黒色腫はMSS黒色腫である。いくつかの実施形態では、黒色腫はPOLE変異黒色腫である。いくつかの実施形態では、黒色腫はPOLD変異黒色腫である。いくつかの実施形態では、黒色腫は高TMB黒色腫である。
【0140】
一実施形態では、癌は結腸直腸癌である。いくつかの実施形態では、結腸直腸癌は進行した結腸直腸癌である。いくつかの実施形態では、結腸直腸癌は転移結腸直腸癌である。いくつかの実施形態では、結腸直腸癌はMSI-H結腸直腸癌である。いくつかの実施形態では、結腸直腸癌はMSS結腸直腸癌である。いくつかの実施形態では、結腸直腸癌はPOLE変異結腸直腸癌である。いくつかの実施形態では、結腸直腸癌はPOLD変異結腸直腸癌である。いくつかの実施形態では、結腸直腸癌は高TMB結腸直腸癌である。
【0141】
いくつかの実施形態では、癌は婦人科癌(すなわち女性生殖系の癌である卵巣癌、卵管癌、子宮頚癌、膣癌、陰門癌、子宮癌、又は原発性腹膜癌、又は乳癌など)である。いくつかの実施形態では、女性生殖系の癌の非限定的な例に含まれるのは、卵巣癌、卵管の癌、腹膜癌、及び乳癌である。
【0142】
いくつかの実施形態では、癌は卵巣癌(例えば漿液卵巣癌又は明細胞卵巣癌)である。いくつかの実施形態では、癌は卵管癌(例えば漿液卵管癌又は明細胞卵管癌)である。いくつかの実施形態では、癌は原発性癌(例えば漿液原発性腹膜癌又は明細胞原発性腹膜癌)である。
【0143】
いくつかの実施形態では、卵巣癌は上皮癌である。上皮癌は卵巣癌の85%~90%を占める。歴史的には卵巣の表面で始まると見なされているが、新たな証拠は、少なくともいくつかの卵巣癌が卵管の一部の中の特殊な細胞で始まることを示唆している。卵管は女性の卵巣を子宮とつなぐ小さな管であり、女性生殖系の一部である。正常な女性生殖系には2つの卵管が存在しており、子宮のそれぞれの側に1つが位置する。卵管で始まる癌細胞は初期に卵巣の表面に行く可能性がある。「卵巣癌」という用語は、卵巣内で始まる上皮癌、卵管内で始まる上皮癌、及び腹膜と呼ばれる腹腔のライニングから始まる上皮癌を記述するのに用いられることがしばしばある。いくつかの実施形態では、癌は生殖細胞腫瘍であるか、生殖細胞腫瘍を含む。生殖細胞腫瘍は、卵巣の卵子産生細胞の中で発達するタイプの卵巣癌である。いくつかの実施形態では、癌は間質腫瘍であるか、間質腫瘍を含む。間質腫瘍は、卵巣をまとめて保持する結合組織細胞の中で発達し、エストロゲンと呼ばれる女性ホルモンを作る組織であることが時々ある。いくつかの実施形態では、癌は、顆粒膜細胞腫瘍であるか、顆粒膜細胞腫瘍を含む。顆粒膜細胞腫瘍はエストロゲンを分泌することができ、その結果として診断時に膣が異常出血している。いくつかの実施形態では、婦人科癌は、相同組み換え修異常/相同修復異常(HRD)及び/又はBRCA1/2変異と関係している。いくつかの実施形態では、婦人科癌は白金感受性である。いくつかの実施形態では、婦人科癌は白金ベースの療法に応答した。いくつかの実施形態では、婦人科癌は白金ベースの療法に対する抵抗性を発達させている。いくつかの実施形態では、婦人科癌は一時的に白金ベースの療法に対する部分奏功又は完全奏功(例えば白金ベースの最後の療法、又は白金ベースの最後から2番目の療法に対する部分奏功又は完全奏功)を示した。いくつかの実施形態では、婦人科癌は現在、白金ベースの療法に対して抵抗性である。
【0144】
いくつかの実施形態では、癌は乳癌である。通常は、乳癌は、乳腺の小葉として知られる細胞の中で発生するか、乳管の中で発生する。より頻度が低い乳癌は間質組織の中で始まる可能性がある。間質組織には乳房の脂肪性結合組織と繊維性結合組織が含まれる。時間が経過すると乳癌細胞は転移として知られるプロセスにおいて近傍組織(腋の下のリンパ節又は肺など)に侵入することができる。乳癌のステージ、腫瘍のサイズ、及びその増殖速度が、提供される治療のタイプを決める全因子である。治療の選択肢に含まれるのは、腫瘍を除去する外科手術、化学療法とホルモン療法を含む薬物治療、放射線療法、及び免疫療法である。予後と生存率は広く変動し、5年相対生存率は発生する乳癌のタイプに応じて98%から23%まで変動する。乳癌は世界中で2番目に多い癌で2012年には約170万の新たなケースがあり、癌死の原因としては5番目に多く、約521,000人が亡くなっている。これらのケースのうちの約15%が、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体(PR)、又はHER2を発現しないトリプルネガティブである。いくつかの実施形態では、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)は、エストロゲン受容体の発現が陰性(細胞の1%未満)、プロゲステロン受容体の発現が陰性(細胞の1%未満)、及びHER2が陰性である乳癌細胞を特徴とする。一実施形態では、この癌は、PD-L1を発現している腫瘍浸潤免疫細胞(IC)が1%以上であるPD-L1陽性患者におけるTNBCである。ICは、FDA又はEMAが認可した試験(Ventana PD-L1(SP142)アッセイなど)によって求められる。
【0145】
いくつかの実施形態では、癌は、エストロゲン受容体(ER)陽性乳癌、ER陰性乳癌、PR陽性乳癌、PR陰性乳癌、HER2陽性乳癌、HER2陰性乳癌、BRCA1/2陽性乳癌、BRCA1/2陰性乳癌、又はTNBCである。いくつかの実施形態では、乳癌は転移乳癌である。いくつかの実施形態では、乳癌は進行した乳癌である。いくつかの実施形態では、癌は、ステージII、ステージIII、又はステージIVの乳癌である。いくつかの実施形態では、癌はステージIVの乳癌である。いくつかの実施形態では、乳癌はトリプルネガティブ乳癌である。
【0146】
一実施形態では、癌は子宮内膜癌である。子宮内膜癌は女性生殖、管の最も一般的な癌であり、1年に100,000人あたり10~20人を占める。1年あたりの新たな子宮内膜癌(EC)の数は世界中で約32万5千件と推定されている。さらに、ECは閉経後の女性に最も多く発生する癌である。子宮内膜癌の約53%は先進国で発生する。2015年には約55,000件のECが米国で診断されたが、ECで用いるためのそれを標的とする療法は現在のところ認可されていない。1Lと2Lの設定において進行したECと再発ECの生存期間を改善する薬剤と計画が必要とされている。米国では2016年に約10,170人がECで亡くなると予測された。最も一般的な組織学的形態は類内膜腺癌であり、診断されたケースの約75~80%を占める。他の組織学的形態に含まれるのは、子宮体部漿液性(10%未満)、明細胞が4%、粘液性が1%、扁平上皮が1%未満、そして混合型が約10%である。
【0147】
病理学の観点からするとECは2つの異なるタイプに分かれる。いわゆるI型とII型である。I型腫瘍は低グレードでエストロゲンに関連した類内膜癌(EEC)であるのに対し、II型は非類内膜(NEEC)(主に漿液細胞と明細胞)癌である。世界保健機関はECの病理学的分類を更新し、9つの異なるサブタイプのECを認めたが、EECと漿液癌(SC)が大半のケースを占める。EECはエストロゲンに関連した癌であり、閉経期患者に発生し、前癌病変(子宮内膜過形成/類内膜上皮内腫瘍)が先行する。顕微鏡的には、低グレードEEC(EEC 1~2)は増殖性の子宮内膜にいくらか似た管状腺を含有し、その管状腺による構造的な複雑さと、篩状パターンを持つ。高グレードのEECは確固とした増殖パターンを示す。それとは対照的に、SCはエストロゲン過剰でない閉経後患者に発生する。顕微鏡レベルでは、SCは、腫瘍細胞の顕著な層化、細胞の出芽、及び大きな好酸性細胞質を持つ未分化細胞を伴う厚くて繊維状又は浮腫状の乳頭状突起を示す。EECの大半は低グレードの腫瘍(グレード1と2)であり、子宮に限定されているときにはよい予後と関係している。グレード3のEEC(EEC3)は浸潤性の腫瘍であり、リンパ節転移の頻度が増加する。SCは非常に浸潤性であり、エストロゲン刺激とは関係せず、主に老齢の女性に発生する。EEC3とSCは高グレードの腫瘍と見なされる。SCとEEC3を、1998年から2001年のsurveillance, epidemiology and End Results(SEER)プログラムのデータを用いて比較した。これらはECのそれぞれ10%と15%を占めるが、癌死のそれぞれ39%と27%である。子宮内膜癌は4つの分子サブグループに分類することもできる。すなわち(1)超変異/POLE変異;(2)高頻度変異MSI+(例えばMSI-H又はMSI-L);(3)コピー数が少ない/マイクロサテライト安定(MSS);及び(4)コピー数が多い/漿液様である。約28%のケースが高MSIである。(Murali, Lancet Oncol. (2014)。いくつかの実施形態では、患者は、2L子宮内膜癌のミスマッチ修復欠損サブセットを有する。いくつかの実施形態では、子宮内膜癌は転移子宮内膜癌である。いくつかの実施形態では、患者はMSS子宮内膜癌を有する。いくつかの実施形態では、患者はMSI-H子宮内膜癌を有する。
【0148】
一実施形態では、癌は子宮頚癌である。いくつかの実施形態では、子宮頚癌は進行した子宮頚癌である。いくつかの実施形態では、子宮頚癌は転移子宮頚癌である。いくつかの実施形態では、子宮頚癌はMSI-H子宮頚癌である。いくつかの実施形態では、子宮頚癌はMSS子宮頚癌である。いくつかの実施形態では、子宮頚癌はPOLE変異子宮頚癌である。いくつかの実施形態では、子宮頚癌はPOLD変異子宮頚癌である。いくつかの実施形態では、子宮頚癌は高TMB子宮頚癌である。一実施形態では、癌は、CPSが1%以上であるPD-L1陽性患者における子宮頚癌である。CPSは、FDA又はEMAが認可した試験(Dako IHC 22C3 PharmDxアッセイなど)によって求められる。
【0149】
一実施形態では、癌は子宮癌である。いくつかの実施形態では、子宮癌は進行した子宮癌である。いくつかの実施形態では、子宮癌は転移子宮癌である。いくつかの実施形態では、子宮癌はMSI-H子宮癌である。いくつかの実施形態では、子宮癌はMSS子宮癌である。いくつかの実施形態では、子宮癌はPOLE変異子宮癌である。いくつかの実施形態では、子宮癌はPOLD変異子宮癌である。いくつかの実施形態では、子宮癌は高TMB子宮癌である。
【0150】
一実施形態では、癌は尿路上皮癌である。いくつかの実施形態では、尿路上皮癌は進行した尿路上皮癌である。いくつかの実施形態では、尿路上皮癌は転移尿路上皮癌である。いくつかの実施形態では、尿路上皮癌はMSI-H尿路上皮癌である。いくつかの実施形態では、尿路上皮癌はMSS尿路上皮癌である。いくつかの実施形態では、尿路上皮癌はPOLE変異尿路上皮癌である。いくつかの実施形態では、尿路上皮癌はPOLD変異尿路上皮癌である。いくつかの実施形態では、尿路上皮癌は高TMB尿路上皮癌である。一実施形態では、癌は、CPSが10%以上であるPD-L1陽性患者における尿路上皮癌である。CPSは、FDA又はEMAが認可した試験(Dako IHC 22C3 PharmDxアッセイなど)によって求められる。一実施形態では、癌は、PD-L1を発現している腫瘍浸潤免疫細胞(IC)が5%以上であるPD-L1陽性患者における尿路上皮癌である。ICは、FDA又はEMAが認可した試験(Ventana PD-L1(SP)アッセイなど)によって求められる。
【0151】
一実施形態では、癌は甲状腺癌である。いくつかの実施形態では、甲状腺癌は進行した甲状腺癌である。いくつかの実施形態では、甲状腺癌は転移甲状腺癌である。いくつかの実施形態では、甲状腺癌はMSI-H甲状腺癌である。いくつかの実施形態では、甲状腺癌はMSS甲状腺癌である。いくつかの実施形態では、甲状腺癌はPOLE変異甲状腺癌である。いくつかの実施形態では、甲状腺癌はPOLD変異甲状腺癌である。いくつかの実施形態では、甲状腺癌は高TMB甲状腺癌である。
【0152】
腫瘍として、造血器(又は血液又は血液系又は血液関連)癌(例えば血液細胞又は免疫細胞に由来する癌であり、それは「液体腫瘍」と呼ぶことができる)が可能である。血液腫瘍に基づく臨床状態の具体例に含まれるのは、白血病(慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、及び急性リンパ性白血病など);形質細胞悪性腫瘍(多発性骨髄腫、意義不明(又は未知、又は不明確)の単クローン性免疫グロブリン血症(MGUS)、及びワルデンシュトレームマクログロブリン血症など);リンパ腫(非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫など)などである。
【0153】
一実施形態では、癌は、胃癌(GC)又は胃食道接続部癌(GEJ)である。一実施形態では、癌は、CPSが10%以上であるPD-L1陽性患者におけるGC又はGEJである。CPSは、FDA又はEMAが認可した試験(Dako IHC 22C3 PharmDxアッセイなど)によって求められる。
【0154】
一実施形態では、癌は食道扁平上皮癌(ESCC)である。一実施形態では、癌は、CPSが10%以上であるPD-L1陽性患者におけるESCCである。CPSは、FDA又はEMAが認可した試験(Dako IHC C PharmDxアッセイなど)によって求められる。
【0155】
癌として、異常な数の芽球細胞又は望まない細胞増殖が存在するか、血液癌と診断される任意の癌が可能であり、その中にはリンパ性悪性腫瘍と骨髄性悪性腫瘍の両方が含まれる。骨髄性悪性腫瘍の非限定的な例に含まれるのは、急性骨髄性(又は骨髄球性又は骨髄性又は骨髄芽球性)白血病(未分化又は分化)、急性前骨髄性(又は前骨髄球性又は前骨髄性又は前骨髄芽球性)白血病、急性骨髄単球性(又は骨髄単芽球性)白血病、急性単球性(又は単芽球性)白血病、赤白血病、及び巨核球性(又は巨核球芽球性)白血病である。これら白血病は、まとめて急性骨髄性(又は骨髄球性又は骨髄性)白血病(AML)と呼ぶことができる。骨髄性悪性腫瘍には骨髄増殖性疾患(MPD)も含まれ、その非限定的な例に含まれるのは、慢性骨髄性(又は骨髄性又は骨髄球性)白血病(CML)、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、本態性血小板血症(又は血小板増加症)、及び真性多血症(PCV)である。骨髄性悪性腫瘍には骨髄異形成(又は骨髄異形成症候群又はMDS)も含まれ、それは、難治性貧血(RA)、芽球増加を伴う難治性貧血(RAEB)、及び移行期の芽球増加を伴う不応性貧血(RAEBT)のほか;特発性骨髄化生あり、又はなしの骨髄線維症(MFS)と呼ぶことができる。
【0156】
一実施形態では、癌は非ホジキンリンパ腫である。造血器癌にはリンパ性悪性腫瘍も含まれ、それは、リンパ節、脾臓、骨髄、末梢血、及び/又は結節外部位を侵す可能性がある。リンパ性癌にはB細胞悪性腫瘍が含まれ、その非限定的な例に含まれるのはB細胞非ホジキンリンパ腫(B-NHL)である。B-NHLとして、くすぶり型(又は低グレード)、中間グレード(又は浸潤性)、又は高グレード(非常に浸潤性)が可能である。低悪性度B細胞リンパ腫に含まれるのは、濾胞性リンパ腫(FL);小リンパ球性リンパ腫(SLL);辺縁帯リンパ腫(MZL)(結節MZL、結節外MZL、脾臓MZL、及び有毛リンパ球を伴う脾臓MZLが含まれる);リンパ形質細胞性リンパ腫(LPL);及び粘膜関連リンパ組織(MALT又は結節外性辺縁帯)リンパ腫である。中間グレードのB-NHLに含まれるのは、白血病が関与する、又は関与しないマントル細胞リンパ腫(MCL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性大細胞(又はグレード3又は3B)リンパ腫、及び原発性縦隔リンパ腫(PML)である。高グレードB-NHLに含まれるのは、バーキットリンパ腫(BL)、バーキット様リンパ腫、小型非切れ込み核細胞性リンパ腫(SNCCL)、及びリンパ芽球性リンパ腫である。他のB-NHLに含まれるのは、免疫芽球性リンパ腫(又は免疫細胞腫)、原発性滲出性リンパ腫、HIV関連(又はエイズ関連)リンパ腫、及び移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)又はリンパ腫である。B細胞悪性腫瘍には、その非限定的な例として、慢性リンパ性白血病(CLL)、前リンパ球性白血病(PLL)、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症(WM)、有毛細胞白血病(HCL)、大型顆粒リンパ球(LGL)白血病、急性リンパ性(又はリンパ性又はリンパ芽球性)白血病、及びキャッスルマン病も含まれる。NHLにはT細胞非ホジキンリンパ腫(T-NHL)も含めることができ、その非限定的な例に含まれるのは、非特定型T細胞非ホジキンリンパ腫(NOS)、末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)、未分化大細胞型リンパ腫(ALCL)、血管免疫芽球性リンパ節症(AILD)、鼻ナチュラルキラー(NK)細胞/T細胞リンパ腫、ガンマ/デルタリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、菌状息肉症、及びセザリー症候群である。
【0157】
造血器癌にはホジキンリンパ腫(又は疾患)も含まれ、その中に含まれるのは、古典的ホジキンリンパ腫、結節性硬化型ホジキンリンパ腫、混合型ホジキンリンパ腫、リンパ球優位型(LP)ホジキンリンパ腫、結節性LPホジキンリンパ腫、及びリンパ球減少型ホジキンリンパ腫である。造血器癌には、多発性骨髄腫(MM)などの形質細胞の疾患又は癌も含まれ、その中に含まれるのは、くすぶり型MM、意義不明(又は未知、又は不明確)の単クローン性ガンマグロブリン血症(MGUS)、形質細胞腫(骨、髄外)、リンパ形質細胞性リンパ腫(LPL)、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、形質細胞白血病、及び原発性アミロイドーシス(AL)である。造血器癌には、追加の造血細胞(多形核白血球(又は好中球)、好塩基球、好酸球、樹状細胞、血小板、赤血球、及びナチュラルキラー細胞が含まれる)の他の癌も含めることができる。造血細胞を含んでいて本明細書で「造血細胞組織」と呼ぶ組織に含まれるのは、骨髄;末梢血;胸腺;及び末梢リンパ系組織(脾臓、リンパ節、粘膜関連リンパ系組織(腸管関連リンパ系組織など)、扁桃腺関連、パイエルス板関連、及び虫垂関連のリンパ系組織、及び他の粘膜(例えば気管支ライニング)関連リンパ系組織など)である。
【0158】
一実施形態では、治療は、HNSCCの一次又は二次の治療である。一実施形態では、治療は、再発/転移HNSCCの一次又は二次の治療である。一実施形態では、治療は再発/転移(1L R/M)HNSCCの一次治療である。一実施形態では、治療は、PD-L1陽性である1L R/M HNSCCの一次治療である。一実施形態では、治療は再発/転移(2L R/M)HNSCCの二次治療である。
【0159】
一実施形態では、治療は、PD-1/PD-L1を未経験のHNSCCの一次、二次、三次、四次、又は五次の治療である。一実施形態では、治療は、PD-1/PD-L1を経験したHNSCCの一次、二次、三次、四次、又は五次の治療である。
【0160】
いくつかの実施形態では、癌の治療は癌の一次治療である。一実施形態では、癌の治療は癌の二次治療である。いくつかの実施形態では、治療は癌の三次治療である。いくつかの実施形態では、治療は癌の四次治療である。いくつかの実施形態では、治療は癌の五次治療である。いくつかの実施形態では、癌の前記二次、三次、四次、又は五次の治療の前の治療は、放射線療法、化学療法、外科手術、又は放射線化学療法の1つ以上を含む。
【0161】
一実施形態では、以前の治療は、ジテルペノイド(パクリタキセル、nab-パクリタキセル、又はドセタキセルなど);ビンカアルカロイド(ビンブラスチン、ビンクリスチン、又はビノレルビンなど);白金配位錯体(シスプラチン又はカルボプラチンなど);ナイトロジェンマスタード(シクロホスファミド、メルファラン、又はクロラムブシルなど);スルホン酸アルキル(ブスルファンなど);ニトロソウレア(カルムスチンなど);トリアゼン(ダカルバジンなど);アクチノマイシン(ダクチノマイシンなど);アントロサイクリン(ダウノルビシン又はドキソルビシンなど);ブレオマイシン;エピポドフィロトキシン(エトポシド又はテニポシドなど);代謝拮抗抗新生物剤(フルオロウラシル、メトトレキサート、シタラビン、メカプトプリン、チオグアニン、又はゲムシタビンなど);メトトレキサート;カンプトテシン(イリノテカン又はトポテカンなど);リツキシマブ;オファツムマブ;トラスツズマブ;セツキシマブ;ベキサロテン;ソラフェニブ;erbB阻害剤(ラパチニブ、エルロチニブ、又はゲフィチニブなど);ペルツズマブ;イピリムマブ;ニボルマブ;FOLFOX;カペシタビン;FOLFIRI;ベバシズマブ;アテゾリズマブ;セリクレルマブ;オビノツズマブ、又はこれらの任意の組み合わせを用いた治療を含む。一実施形態では、癌の前記二次、三次、四次、又は五次の治療の前の治療は、イピリムマブとニボルマブを含む。一実施形態では、癌の前記二次、三次、四次、又は五次の治療の前の治療は、FOLFOX、カペシタビン、FOLFIRI/ベバシズマブ、及びアテゾリズマブ/セリクレルマブを含む。一実施形態では、癌の前記二次、三次、四次、又は五次の治療の前の治療は、カルボプラチン/Nab-パクリタキセルを含む。一実施形態では、癌の前記二次、三次、四次、又は五次の治療の前の治療は、ニボルマブと電気化学療法を含む。一実施形態では、癌の前記二次、三次、四次、又は五次の治療の前の治療は、放射線療法、シスプラチン、及びカルボプラチン/パクリタキセルを含む。
【0162】
一実施形態では、治療は、頭頸部癌(特に頭頸部扁平上皮癌及び/又は中咽頭癌)の一次又は二次の治療である。一実施形態では、治療は、再発/転移HNSCCの一次又は二次の治療である。一実施形態では、治療は、再発/転移(1L R/M)HNSCCの一次治療である。一実施形態では、治療は、PD-L1陽性である1L R/M HNSCCの一次治療である。一実施形態では、治療は、再発/転移(2L R/M)HNSCCの二次治療である。
【0163】
一実施形態では、治療は、PD-1/PD-L1を未経験のHNSCCの一次、二次、三次、四次、又は五次の治療である。一実施形態では、治療は、PD-1/PD-L1を経験したHNSCCの一次、二次、三次、四次、又は五次の治療である。
【0164】
いくつかの実施形態では、治療の結果として、治療前のレベル(例えばベースラインのレベル)と比べた腫瘍浸潤リンパ球(細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、及びNK細胞が含まれる)の増加、T細胞の増加、グランザイムB+細胞の増加、増殖する腫瘍細胞の減少、及び活性化されたT細胞の増加の1つ以上が生じる。活性化されたT細胞は、OX40とヒト白血球抗原DRのより大きな発現によって観察することができる。いくつかの実施形態では、治療の結果として、PD-1及び/又はPD-L1が治療前のレベル(例えばベースラインのレベル)と比べて上方調節される。
【0165】
一実施形態では、本発明の方法は、少なくとも1つの新生物剤又は癌補助剤を前記ヒトに投与することをさらに含む。本発明の方法は他の癌治療法とともに用いることもできる。
【0166】
典型的には、腫瘍(治療中の感受性腫瘍など)に対する活性を持つ任意の抗癌剤又は癌補助剤を本発明における癌の治療で同時投与することができる。このような薬剤の例は、V.T. Devita, T.S. Lawrence, and S.A. Rosenberg(編者)、第10版(2014年12月5日)、Lippincott Williams & Wilkins PublishersによるCancer Principles and Practice of Oncologyに見いだすことができる。
【0167】
一実施形態では、ヒトは以前に1つ以上の異なる癌治療モダリティで治療されている。いくつかの実施形態では、癌患者集団の患者の少なくとも何人かは以前に1つ以上の療法(外科手術、放射線療法、化学療法、又は免疫療法など)で治療されている。いくつかの実施形態では、癌患者集団の患者の少なくとも何人かは以前に化学療法(例えば白金ベースの化学療法)による治療を受けている。例えば2つの次数の癌治療を受けた患者は2L癌患者(例えば2L NSCLC患者)として特定することができる。いくつかの実施形態では、患者は2つ以上の次数の癌治療を受けた(例えば2L+子宮内膜癌患者などの2L+癌患者)。いくつかの実施形態では、患者は以前に抗体療法(抗PD-1療法など)による治療を受けていない。いくつかの実施形態では、患者は以前に少なくとも1つの次数の癌治療を受けた(例えば患者は以前に少なくとも1つの次数又は少なくとも2つの次数の癌治療を受けた)。いくつかの実施形態では、患者は転移癌に関して以前に少なくとも1つの次数の治療を受けた(例えば患者は転移癌に関して以前に1つの次数又は少なくとも2つの次数の治療を受けた)。いくつかの実施形態では、対象はPD-1阻害剤を用いた治療に対して抵抗性である。いくつかの実施形態では、対象はPD-1阻害剤を用いた治療に対して難治性である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている方法は、対象を、PD-1阻害剤を用いた治療に対して感受性にする。
【0168】
ある実施形態では、治療する癌はPD-L1陽性である。例えばある実施形態では、治療する癌はPD-L1+の発現を示す(例えば高PD-L1発現)。例えば癌又は腫瘍の表面のバイオマーカー(PD-L1など)を検出する方法は本分野では定型的であり、それが本明細書で考慮される。非限定的な例に含まれるのは、免疫組織化学、免疫蛍光、及び蛍光活性化セルソーティング(FACS)である。
【0169】
様々な実施形態では、本発明の方法は、一次、二次、三次、又はそれよりも高次の治療として利用される。治療の次数は、患者が受ける様々な医薬品又は他の療法を用いる治療の順番における順位を意味する。一次療法レジメンは最初に与えられる治療であるのに対し、二次又は三次の治療は、それぞれ一次療法の後、又は二次療法の後に与えられる。したがって一次療法は、疾患又は病気のための最初の治療である。癌を有する患者では、一次療法(初期療法又は初期治療と呼ばれることが時々ある)として、外科手術、化学療法、放射線療法、又はこれら療法の組み合わせが可能である。典型的には、患者は、一次療法又は二次療法に対してプラスの臨床転帰を示さなかったか、無症状性応答しか示さなかった、あるいはプラスの臨床応答を示したものの後に再発した(時に、以前にプラスの応答を誘導した以前の療法に対して今は抵抗性になった疾患を伴う場合がある)という理由により、後に化学療法計画(二次又は三次の治療)を与えられる。
【0170】
本発明の治療法組み合わせによって提供される安全性と臨床での利益が確認される場合には、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、ATM阻害剤、及び放射線療法のこの組み合わせが、癌患者における妥当な一次の設定である。
【0171】
いくつかの実施形態では、本発明の治療法組み合わせは、癌の高次の治療、特に二次又はより高次の治療に適用される。対象が以前に少なくとも1ラウンドの癌療法を受けている限り、以前の治療の数に制限はない。以前の癌療法のラウンドは、例えば1つ以上の化学療法剤、放射線療法、又は化学放射線療法を用いて対象を治療するための規定されたスケジュール/フェーズを意味し、その対象では、スケジュールが完了するか、スケジュールよりも前に終了したそのような以前の治療が失敗している。1つの理由は、癌が以前の療法に対して抵抗性であったか抵抗性になったことである可能性がある。癌患者を治療するための現在の標準治療(SoC)は、毒性があって旧式の化学療法計画の投与を含むことがしばしばある。このようなSoCは、生活の質を低下させる可能性が大きい強い有害事象の大きなリスク(二次的癌など)と関係する。本発明の治療法組み合わせの毒性プロファイルはSoC化学療法よりもはるかに優れていることが期待される。一実施形態では、PD阻害剤、TGFβ阻害剤、及びATM阻害剤の組み合わせ投与は、癌を有する患者においてSoCと同様に有効で、SoCよりもよく忍容される可能性がある。PD阻害剤、TGFβ阻害剤、及びATM阻害剤の作用様式は異なっているため、本発明の治療の投与が免疫関連有害事象(irAE)の増加につながる可能性は小さいと考えられる。
【0172】
好ましい一実施形態では、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、ATM阻害剤、及び放射線療法は、以前治療された再発転移性NSCLC、切除不能な局所進行NSCLC、以前に治療されたSCLC ED、全身治療に適さないSCLC、以前治療された再発又は転移性SCCHN、再照射可能な再発性SCCHN、及び以前に治療されたマイクロサテライト状態不安定低(MSI-L)又はマイクロサテライト状態安定(MSS)転移結腸直腸癌(mCRC)の群から選択される癌の二次又はそれよりも高次の治療、より好ましくは二次治療において投与される。SCLCとSCCHNは特に以前に全身治療されている。MSI-L/MSS mCRCは全mCRCの85%に発生する。
【0173】
組み合わせ療法において抗PD-L1/TGFβ Trapを採用するある実施形態では、投薬レジメンは、抗PD-L1/TGFβ Trapを、約1200mg~約3000mg (例えば、約1200mg~約3000mg、約1200mg~約2900mg、約1200mg~約2800mg、約1200mg~約2700mg、約1200mg~約2600mg、約1200mg~約2500mg、約1200mg~約2400mg、約1200mg~約2300mg、約1200mg~約2200mg、約1200mg~約2100mg、約1200mg~約2000mg、約1200mg~約1900mg、約1200mg~約1800 mg、約1200mg~約1700mg、約1200mg~約1600mg、約1200mg~約1500mg、約1200mg~約1400mg、約1200mg~約1300mg、約1300mg~約3000mg、約1400mg~約3000mg、約1500mg~約3000mg、約1600mg~約3000mg、約1700mg~約3000mg、約180mg~約3000mg、約1900mg~約3000mg、約2000mg~約3000mg、約2100mg~約3000mg、約2200mg~約3000mg、約2300mg~約3000mg、約2400mg~約3000mg、約2500mg~約3000mg、約2600mg~約3000mg、約2700mg~約3000mg、約2800mg~約3000mg、約2900mg~約3000mg、約1200 、約1300 、約1400 、約1500、約1600、約1700、約1800、約1900、約2000、約2100、約2200、約2300、約2400、約2500mg、約2600mg、約2700mg、約2800mg、約2900mg、又は約3000mg)の用量で投与することを含む。ある実施形態では、約1200mgの抗PD-L1/TGFβ Trap 分子が対象に2週間に1回投与される。ある実施形態では、約1800mgの抗PD-L1/TGFβ Trap 分子が対象に3週間に1回投与される。ある実施形態では、約2400mg の抗PD-L1/TGFβ Trap 分子が対象に3週間に1回投与される。
【0174】
組み合わせ療法においてATM阻害剤、例えば、化合物A、A1 又はA2を採用するある実施形態では、投薬レジメンは、ATM阻害剤を、約1~1000mg、例えば、約1mg~約900mg、約1mg~約800mg、約1mg~約800mg、約1mg~約700mg、約1mg~約600mg、約1mg~約500mg、約1mg~約400mg、約1mg~約300mg、約1mg~約200mg、約1mg~約100mg、約10mg~約1000mg、約10mg~約900mg、約10mg~約800mg、約10mg~約700mg、約10mg~約600mg、約10mg~約500mg、約10mg~約400mg、約10mg~約300mg、約20mg~約1000mg、約20mg~約900mg、約20mg~約800mg、約20mg~約700mg、約20mg~約600mg、約20mg~約500mg、約20mg~約400mg、約20mg~約300mg、約20mg~約200mg、約25mg~約1000mg、約25mg~約900mg、約25mg~約800mg、約25mg~約700mg、約25mg~約600mg、約25mg~約500mg、約25mg~約400mg、約25mg~約300mg)の用量で投与することを含む。ある実施形態では、約25mg~約500mg のATM阻害剤、最も好ましくは化合物A又はA1が対象に毎日、好ましくは1日1回投与される。ある実施形態では、約25mg~約350mg の化合物A1が対象に毎日投与される。ある実施形態では、約25、50、75、100、125、175、200、225、250、275、300、325、350、375又は400 mgのATM阻害剤、好ましくは化合物A又は A1が対象に毎日投与される。
【0175】
ある実施形態では、放射線療法は約35~70 Gy/20~35回を含む。いくつかの実施形態では、放射線療法は、代わりに標準的な回数(1日に1.8~2 Gyを週に5日間)で合計線量が50~70 Gyになるまで与える。他の回数でのスケジュールも考慮できよう。例えば、1回あたりより少ない線量で1日2回投与してもよい。1日の線量をより多くしてより短期間にすることもできる。一実施形態では、定位放射線療法のほかガンマナイフが使用される。緩和の設定では他の回数のスケジュールも広く利用され、例えば25 Gyを5回与えるか、30 Gyを10回与える。放射線療法に関しては、治療期間は、放射線療法が与えられる時間フレームになる。これらの介入は、電子、フォトンとプロトン、アルファ放射体、又は他のイオンを用いる治療、放射性ヌクレオチドを用いる治療(例えば甲状腺癌を有する患者のほか、ホウ素捕獲中性子療法で治療された患者に対して133Iを用いる治療)に適用される。
【0176】
患者のウエルビーイングにとって必要であると見なされる併用治療は、治療を担当する医師の裁量で与えることができる。いくつかの実施形態では、本発明により、本明細書に記載されている1つ以上の疾患又は障害の重症度又は進行を治療する、安定化させる、又は低下させる方法が提供され、この方法は、それを必要とする患者に、PD阻害剤、TGFβ阻害剤、ATM阻害剤、及び放射線療法を、追加の治療剤(化学療法剤など)と組み合わせて投与することを含む。ある実施形態では、化学療法剤は、エトポシド、ドキソルビシン、トポテカン、イリノテカン、フルオロウラシル、プラチン、アントラサイクリン、及びこれらの組み合わせの群から選択される。
【0177】
PD阻害剤、TGFβ阻害剤、ATM阻害剤、及び放射線療法は、上に示した障害の重症度を治療するか軽減させるのに有効な任意の量と任意の投与経路を用いて投与される。必要とされる正確な量は、対象の人種、年齢、及び全体的な状態、感染症の重症度、具体的な薬剤、その投与方式などに応じて対象ごとに異なるであろう。
【0178】
いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、ATM阻害剤、及び放射線療法は、同時に、別々に、又は順次に任意の順番で投与される。PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、ATM阻害剤、及び放射線療法は、任意の順番で(つまり同時又は順次に)患者に投与され、これらの化合物は別々の組成物、製剤、又は単位剤形内にあってもよく、あるいは一緒に単一の組成物、製剤、又は単位剤形内にあってもよい。一実施形態では、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、ATM阻害剤、及び放射線療法は、同時に、又は順次に任意の順番で、併用治療的に有効な量(例えば、相乗的に有効な量で)で、例えば、本明細書に記載の量に対応する投与量で毎日又は間欠的に投与される。PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、ATM阻害剤、及び放射線療法と組み合わせる個々の相手は、治療経過中の異なる時期に別個にまたは共同的に投与されてもよい。典型的には、このような組み合わせ療法では、個々の化合物は別々の医薬組成物又は医薬に製剤化される。これらの化合物が別々に製剤化される場合、個々の化合物と放射線は、同時又は順次に、場合により化合物毎に異なる経路を介して、投与することができる。場合によりPD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、ATM阻害剤、及び放射線療法のそれぞれの治療レジメンは、例えば、一方を毎日又は1日2回とし、もう一方を単回投与又は毎週の投与とするといった異なるが重複する送達レジメンを有する。ある実施形態では、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤及びATM阻害剤は、これらPD-1阻害剤、TGFβ阻害剤及びATM阻害剤を含む同一の組成物により同時に投与される。ある実施形態では、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤及びATM阻害剤は、例えば、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤及びATM阻害剤がそれぞれ別々の単位剤形により同時に投与されるといった様式で、別々の組成物により同時に投与される。好ましくは、PD-1阻害剤とTGFβ阻害剤は融合され、ATM阻害剤とは別の単位剤形により投与され、PD-1阻害剤とTGFβ阻害剤はATM阻害剤及び放射線療法と同時に又は順次に任意の順番で投与される。PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、ATM阻害剤、及び放射線療法は、適切な投薬プロトコルに従って、同じ日又は異なる日に任意の順番で投与されることが理解されよう。したがって、本発明は、かかる同時又は順次の治療のすべてのレジメンを包含するものとして理解されるべきであり、「投与する」という用語は、それに応じて解釈されるべきである。
【0179】
いくつかの実施形態では、抗PD-L1/TGFβ Trap、ATM阻害剤及び放射線療法 は、同時に、別々に、又は順次に任意の順番で投与される。抗PD-L1/TGFβ Trap、ATM阻害剤及び放射線療法は、任意の順番で(つまり同時又は順次に)、別々の組成物、製剤、又は単位剤形により、あるいは一緒に単一の組成物、製剤、又は単位剤形により患者に投与される。一実施形態では、増殖性疾患を治療する方法は、抗PD-L1/TGFβ Trap、ATM阻害剤及び放射線療法の組み合わせ投与を含み、個々の組み合わせの相手は、同時に、又は順次に任意の順番で、併用治療的に有効な量(例えば、相乗的に有効な量で)で、例えば、本明細書に記載の量に対応する投与量で毎日又は間欠的に投与されてもよい。抗PD-L1/TGFβ Trap、ATM阻害剤及び放射線療法と組み合わせる個々の相手は、治療経過中の異なる時期又は同時期に別々に分割又は単一の組み合わせ形式で投与されてもよい。典型的には、このような組み合わせ療法では、個々の化合物は別々の医薬組成物又は医薬に製剤化される。別々に製剤化される場合、個々の化合物は、同時又は順次に、場合により化合物毎に異なる経路を介して、投与することができる。場合により抗PD-L1/TGFβ Trap、ATM阻害剤及び放射線療法のそれぞれの治療レジメンは、例えば、一方を毎日又は1日2回とし、もう一方を1回のみ投与又は毎週の投与とするといった異なるが重複する送達レジメンを有する。抗PD-L1/TGFβ Trapは、ATM阻害剤及び/又は放射線療法の前、実質的に同時に、ともに、又は後に送達されてもよい。ある実施形態では、抗PD-L1/TGFβ Trapは、抗PD-L1/TGFβ TrapとATM阻害剤を含む同一の組成物により同時に投与される。ある実施形態では、抗PD-L1/TGFβ TrapとATM阻害剤は、例えば、抗PD-L1/TGFβ Trap とATM阻害剤が、それぞれ別々の単位剤形により同時に投与されるといった様式で、別々の組成物により同時に投与される。抗PD-L1/TGFβ Trap、ATM阻害剤及び放射線療法は、適切な投薬プロトコルに従って、同じ日又は異なる日に任意の順番で投与されることが理解されよう。したがって、本発明は、かかる同時又は順次の治療のすべてのレジメンを包含するものとして理解されるべきであり、「投与する」という用語は、それに応じて解釈されるべきである。
【0180】
いくつかの実施形態では、組み合わせレジメンは、(a)医療従事者の指示又は管理の下で、対象が第1回目の放射線療法を受ける前に、融合されたPD-1阻害剤とTGFβ阻害剤、及びATM阻害剤を摂取する工程;及び(b)医療従事者の指示又は管理の下で、対象が放射線療法を受ける工程を含む。いくつかの実施形態では、組み合わせレジメンは、(a)医療従事者の指示又は管理の下で、対象が第1回目の融合されたPD-1阻害剤とTGFβ阻害剤、及びATM阻害剤の摂取前に、放射線療法を受ける工程;及び(b)医療従事者の指示又は管理の下で、対象が融合されたPD-1阻害剤とTGFβ阻害剤、及びATM阻害剤を摂取する工程を含む。いくつかの実施形態では、組み合わせレジメンは、(a)医療従事者の指示又は管理の下で、対象が第1回目の融合されたPD-1阻害剤とTGFβ阻害剤の摂取前に、放射線療法を受けATM阻害剤を摂取する工程;及び(b)医療従事者の指示又は管理の下で、対象が融合されたPD-1阻害剤とTGFβ阻害剤を摂取する工程を含む。いくつかの実施形態では、組み合わせレジメンは、(a)医療従事者の指示又は管理の下で、対象が第1回目の放射線療法とATM阻害剤の摂取前に、融合されたPD-1阻害剤とTGFβ阻害剤を摂取する工程;及び(b)医療従事者の指示又は管理の下で、対象が放射線療法を受けATM阻害剤を摂取する工程を含む。いくつかの実施形態では、組み合わせレジメンは、(a)医療従事者の指示又は管理の下で、対象が第1回目の放射線療法、並びにATM阻害剤の摂取前に、融合されたPD-1阻害剤とTGFβ阻害剤を摂取する工程;及び(b)医療従事者の指示又は管理の下で、対象が放射線療法を受け、かつATM阻害剤を摂取する工程を含む。いくつかの実施形態では、組み合わせレジメンは、(a)医療従事者の指示又は管理の下で、対象が第1回目のATM阻害剤の摂取前に、融合されたPD-1阻害剤とTGFβ阻害剤を摂取し、かつ放射線療法を受ける工程;及び(b)医療従事者の指示又は管理の下で、対象がATM阻害剤を摂取する工程を含む。いくつかの実施形態では、組み合わせレジメンは、(a)医療従事者の指示又は管理の下で、対象が第1回目の融合されたPD-1阻害剤とTGFβ阻害剤の摂取前に、ATM阻害剤を摂取しかつ放射線療法を受ける工程;及び(b)医療従事者の指示又は管理の下で、対象が融合されたPD-1阻害剤とTGFβ阻害剤を摂取する工程を含む。
【0181】
また、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びATM阻害剤を含む組み合わせも提供する。さらに、抗PD-L1/TGFβ Trap及びATM阻害剤を含む組み合わせも提供する。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びATM阻害剤を含む組み合わせ、又は、抗PD-L1/TGFβ Trap及びATM阻害剤を含む組み合わせは、放射線療法とさらに組み合わせて医薬として使用するため、又は放射線療法とさらに組み合わせて癌の治療に使用するためのものである。
【0182】
上記の様々な実施形態において、PD-1阻害剤とTGFβ阻害剤は、好ましくは融合され、より好ましくは、抗PD-L1/TGFβ Trapに対応することが理解されるべきである。
【0183】
医薬製剤及びキット
いくつかの実施形態では、本発明は、PD-1阻害剤を含む医薬的に許容される組成物を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、TGFβ阻害剤を含む医薬的に許容される組成物を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、抗PD-L1/TGFβ Trapを含む医薬的に許容される組成物を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、ATM阻害剤、好ましくは化合物A又はその医薬的に許容される塩を含む医薬的に許容される組成物を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、化学療法剤の医薬的に許容される組成物を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、PD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤を含む医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、TGFβ阻害剤及びATM阻害剤を含む医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、PD-1阻害剤及びATM阻害剤を含む医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、抗PD-L1/TGFβ Trap及びATM阻害剤を含む医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びATM阻害剤を含む医薬組成物を提供する。医薬的に許容される組成物は、少なくとも医薬的に許容される賦形剤又は補助剤、例えば、医薬的に許容される担体、を更に含んでもよい。
【0184】
いくつかの実施形態では、融合されたPD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤、例えば、抗PD-L1/TGFβ Trapを含む組成物は、ATM阻害剤、例えば、化合物Aを含む組成物と別個である。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤とTGFβ阻害剤は、例えば、抗PD-L1/TGFβ Trapとして融合され、ATM阻害剤、好ましくは化合物Aと同じ組成物内に存在する。
【0185】
医薬的に許容されるこのような組成物の例は本明細書の以下にさらに記載されている。
【0186】
本発明の組成物は様々な形態にすることができる。形態に含まれるのは、例えば液体、半固体、及び固体の剤形、例えば溶液(例えば注射可能な溶液と輸液可能な溶液)、分散液又は懸濁液、錠剤、ピル、粉末、リポソーム、及び座薬である。本発明の組成物は、経口、非経口で、吸入スプレーによって、局所、直腸、鼻、口腔、膣、又は移植されたリザーバを通じて投与される。本明細書では、「非経口」という用語に、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑膜内、胸骨内、髄腔内、肝臓内、病巣内、及び頭蓋内への注射又は輸液の技術が含まれる。組成物は、経口投与、腹腔内投与、皮下投与、又は静脈内投与されることが好ましい。好ましい一実施形態では、PD阻害剤又はTGFβ阻害剤は静脈内の輸液又は注射によって投与される。別の好ましい一実施形態では、PD阻害剤又はTGFβ阻害剤は筋肉内注射又は皮下注射によって投与される。好ましい一実施形態では、抗PD-L1/TGFβ Trapは静脈内への輸液又は注射によって投与される。別の好ましい一実施形態では、抗PD-L1/TGFβ Trapは筋肉内注射又は皮下注射によって投与される。好ましい一実施形態では、ATM阻害剤は経口投与される。
【0187】
いくつかの実施形態では、抗PD-L1/TGFβ Trapは静脈内投与(例えば静脈内輸液として)又は皮下投与されるが、静脈内投与が好ましい。抗PD-L1/TGFβ Trapは静脈内輸液として投与されることがより好ましい。いくつかの実施形態では、抗PD-L1/TGFβ Trapは、約1200 mg、1800 mg、又は2400 mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、抗PD-L1/TGFβ Trapは、約1200 mg、1800 mg、又は2400 mgの用量で2週間に1回(Q2W)、又は3週間に1回(Q3W)投与される。
【0188】
本発明の組成物で使用される医薬的に許容される担体、補助剤、又はビヒクルの非限定的な例に含まれるのは、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質(ヒト血清アルブミンなど)、バッファ物質(リン酸塩など)、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩、又は電解質であり、例えば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースに基づく物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、蝋、ポリエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックポリマー、ポリエチレングリコール、及び羊毛脂などがある。
【0189】
経口投与のための液体剤形の非限定的な例に含まれるのは、医薬的に許容されるエマルション、マイクロエマルション、溶液、懸濁液、シロップ、及びエリキシルである。液体剤形は、本分野で一般に用いられている不活性な希釈剤(例えば水又は他の溶媒など)、可溶剤、及び乳化剤を追加して含有することができ、それは例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に綿実油、ピーナツ油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、及びゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、及びソルビタンの脂肪酸エステルと、これらの混合物である。経口組成物は不活性な希釈剤以外に補助剤(湿潤剤、乳化剤と懸濁剤、甘味剤、香味剤、及び芳香剤など)も含むことができる。
【0190】
注射調製物、例えば水性又は油性の減菌注射懸濁液は、適切な分散剤又は湿潤剤と懸濁剤を用いて既知の技術に従って製剤化することができる。減菌注射調製物として、非毒性で非経口の許容される希釈剤又は溶媒の中の減菌された注射用の溶液、懸濁液、又はエマルションも可能である(例えば1,3-ブタンジオールの中の溶液)。使用してもよい許容できるビヒクルと溶媒には、水、リンゲル液、U.S.P.、及び等張塩化ナトリウム溶液がある。それに加え、減菌不揮発性油が溶媒又は懸濁媒体として一般に使用される。この目的のため、任意の無刺激不揮発性油(合成物グリセリド又はジグリセリドが含まれる)を用いることができる。それに加え、脂肪酸(オレイン酸など)が注射調製物で使用される。
【0191】
注射製剤は、例えば細菌保持フィルタを通過させて濾過することによって、又は使用する前に減菌水又は他の減菌注射媒体の中に溶かすか分散させることのできる減菌固体組成物の形態の殺菌剤を組み込むことによって殺菌することができる。
【0192】
本発明の化合物の効果を長持ちさせるには、皮下注射又は筋肉内注射からの吸収を遅らせると望ましいことがしばしばある。これは、水溶性が悪い結晶材料又はアモルファス材料の懸濁液を用いることによって実現できる。すると吸収速度はその解離速度に依存し、解離速度のほうは結晶のサイズと結晶の形態に依存する可能性がある。あるいは非経口投与されたPD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及び/又はATM阻害剤の遅延吸収は、その化合物を油ビヒクルに溶かすか懸濁させることによって実現される。注射デポ形態は、生物分解性ポリマー(ポリラクチド-ポリグリコリドなど)の中でPD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及び/又はATM阻害剤のマイクロカプセル化されたマトリックスを形成することによって作製される。ポリマーに対する化合物の比と、用いる具体的なポリマーの性質に応じ、化合物の放出速度を制御することができる。他の生物分解性ポリマーの例に含まれるのは、ポリ(オルトエステル)とポリ(無水物)である。デポ注射製剤は、体組織に適合するリポソーム又はマイクロエマルションの中に化合物を封じ込めることによっても調製される。
【0193】
直腸又は膣に投与するための組成物は座薬であることが好ましい。座薬は、本発明の化合物を適切な非刺激性賦形剤又は担体(カカオバター、ポリエチレングリコール、又は座薬ワックス(周囲温度では固体だが体温で液体であるため直腸又は膣の中で溶けて活性化合物を放出する)など)と混合することによって調製することができる。
【0194】
経口投与のための剤形には、カプセル、錠剤、ピル、粉末、及び顆粒、水性の懸濁液又は溶液が含まれる。固体剤形では、活性化合物と混合されるのは、少なくとも1つの不活性な医薬的に許容される賦形剤又は担体(クエン酸ナトリウム又はリン酸二カルシウムなど)、及び/又はa)充填剤又は増量剤(デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、及びケイ酸など)、b)結合剤(例えばカルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、及びアラビアゴムなど)、c)保湿剤(グリセロールなど)、d)崩壊剤(寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモ又はタピオカのデンプン、アルギン酸、ある種のケイ酸塩、及び炭酸ナトリウムなど)、e)溶解遅延剤(パラフィンなど)、f)吸収加速剤(第四級アンモニウム化合物など)、g)湿潤剤(例えばセチルアルコールやモノステアリン酸グリセロールなど)、h)吸収剤(カオリンとベントナイト粘土など)、及びi)潤滑剤(タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムなど、及びこれらの混合物)である。カプセル、錠剤、及びピルの場合には、剤形は緩衝剤も含むことができる。
【0195】
似たタイプの固体組成物も、ラクトース、又は乳糖のほか、高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を用いるゼラチン製の軟カプセルと硬カプセルの中の充填剤として使用することができる。錠剤、ドラジェ、カプセル、ピル、及び顆粒の固体剤形は、コーティングとシェル(腸溶コーティングや医薬製剤化分野で周知の他のコーティングなど)を用いて調製することができる。これらは場合により乳白剤を含有することができ、活性成分だけを、又は活性成分を優先的に腸管のある部分に、場合によっては遅延させて放出する組成にすることもできる。使用できる包埋組成物の例に含まれるのは、ポリマー物質と蝋である。
【0196】
PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及び/又はATM阻害剤は、上に指摘したように、1つ以上の賦形剤とともにマイクロカプセル化された形態にすることもできる。錠剤、ドラジェ、カプセル、ピル、及び顆粒の固体剤形は、コーティングとシェル(腸溶コーティング、放出制御コーティング、及び医薬製剤化の分野で周知の他のコーティングなど)を用いて調製することができる。このような固体剤形では、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及び/又はATM阻害剤は、少なくとも1つの不活性な希釈剤(スクロース、ラクトース、又はデンプンなど)と混合することができる。このような剤形は、慣行通り、不活性な希釈剤以外の追加物質(例えば錠剤用潤滑剤とそれ以外の錠剤用助剤(ステアリン酸マグネシウムと微結晶セルロースなど))も含むことができる。カプセル、錠剤、及びピルの場合には、剤形は緩衝剤も含むことができる。これらは場合によって乳白剤を含有することができ、活性成分だけを、又は活性成分を優先的に腸管のある部分に、場合によっては遅延させて放出する組成にすることもできる。使用できる包埋組成物の例に含まれるのは、ポリマー物質と蝋である。
【0197】
PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及び/又はATM阻害剤を局所投与又は経皮投与するための剤形に含まれるのは、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、粉末、溶液、スプレー、吸入剤、又はパッチである。活性成分は、必要に応じ、減菌条件下で医薬的に許容される担体及び必要な任意の保存剤又はバッファと混合される。これの化合物を局所投与するための代表的な担体は、鉱物油、流動ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化ワックス、及び水である。あるいは提供される医薬的に許容される組成物は、1つ以上の医薬的に許容される担体に懸濁されるか溶解された活性成分を含有する適切なローション又はクリームの中で製剤化することができる。適切な担体の非限定的な例に含まれるのは、鉱物油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2オクチルドデカノール、ベンジルアルコール、及び水である。眼科製剤、点耳剤、及び点眼剤も本発明の範囲に含まれるとして考慮される。それに加え、本発明では経皮パッチの使用を考慮する。これは、身体への化合物の制御された送達を提供するという追加の利点を持つ。このような剤形は、化合物を適切な媒体に溶かすか分散させることによって製造される。皮膚を通過する化合物流を増やすために吸収増強剤も用いることができる。速度は、速度制御膜を用意することによって、又はポリマーマトリックス又はゲルの中にその化合物を分散させることによって制御することができる。
【0198】
本発明の医薬的に許容される組成物は、場合により、鼻用エアロゾル又は吸入によって投与される。このような組成物は医薬製剤化の分野で周知の技術に従って調製され、ベンジルアルコール又は他の適切な保存剤、生物学的利用能を増大させるための吸収促進剤、フルオロカーボン、及び/又は他の一般的な可溶剤又は分散剤を用い、生理食塩水の中の溶液として調製される。
【0199】
更なる態様では、本発明は、PD-1阻害剤、並びに、対象における癌を治療又は進行を遅延させるために、PD-1阻害剤を、ATM阻害剤、TGFβ阻害剤、及び放射線療法と組み合わせて使用するための説明書を含む添付文書を含むキットに関する。また、ATM阻害剤、並びに、対象における癌を治療又は進行を遅延させるために、ATM阻害剤を、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及び放射線療法と組み合わせて使用するための説明書を含む添付文書を含むキットも提供する。また、TGFβ阻害剤、並びに、対象における癌を治療又は進行を遅延させるために、TGFβ阻害剤を、PD-1阻害剤、ATM阻害剤、及び放射線療法と組み合わせて使用するための説明書を含む添付文書を含むキットも提供する。また、抗PD-L1/TGFβ Trap、並びに、対象における癌を治療又は進行を遅延させるために、抗PD-L1/TGFβ Trapを、ATM阻害剤及び放射線療法と組み合わせて使用するための説明書を含む添付文書を含むキットも提供する。また、PD-1阻害剤及びATM阻害剤、並びに、対象における癌を治療又は進行を遅延させるために、PD-1阻害剤及びATM阻害剤を、TGFβ阻害剤及び放射線療法と組み合わせて使用するための説明書を含む添付文書を含むキットも提供する。また、TGFβ阻害剤及びATM阻害剤、並びに、対象における癌を治療又は進行を遅延させるために、TGFβ阻害剤及びATM阻害剤を、PD-1阻害剤及び放射線療法と組み合わせて使用するための説明書を含む添付文書を含むキットも提供する。また、PD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤、並びに、対象における癌を治療又は進行を遅延させるために、PD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤を、ATM阻害剤及び放射線療法と組み合わせて使用するための説明書を含む添付文書を含むキットも提供する。また、抗PD-L1/TGFβ Trap及びATM阻害剤、並びに、対象における癌を治療又は進行を遅延させるために、抗PD-L1/TGFβ Trap、ATM阻害剤、及び放射線療法を使用するための説明書を含む添付文書を含むキットも提供する。また、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びATM阻害剤、並びに、対象における癌を治療又は進行を遅延させるために、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、ATM阻害剤、及び放射線療法を使用するための説明書を含む添付文書を含むキットも提供する。キットは、第1容器、第2容器、第3容器、及び添付文書を含み、ここで、第1容器は少なくとも1回の用量のPD-1阻害剤を含み、第2容器は少なくとも1回の用量のATM阻害剤を含み、第3容器は少なくとも1回の用量のTGFβ阻害剤を含み、添付文書は対象における癌を治療するためにこれら3つの化合物と放射線療法を使用するための説明書を含むものであってもよい。いくつかの実施形態では、キットは、第1容器、第2容器、及び添付文書を含み、ここで、第1容器は少なくとも1回の用量の抗PD-L1/TGFβ Trapを含み、第2容器は少なくとも1回の用量のATM阻害剤を含み、添付文書は対象における癌を治療するためにこれら2つの化合物と放射線療法を使用するための説明書を含むものであってもよい。第1、第2、及び第3容器は、同じ形状又は異なる形状(例えば、バイアル、注射器、及びボトル)及び/又は材料(例えば、プラスチック又はガラス)で構成されていてもよい。キットは、医薬を投与するのに有用であり得る他の材料、例えば、希釈剤、フィルター、IVバッグ及び管、針及び注射器をさらに含んでもよい。説明書には、医薬が、免疫組織化学的(IHC)アッセイ、FACS又はLC/MS/MSによって、PD-L1に対し陽性であると試験された癌を有する対象の治療に使用する意図である旨が記載されることがある。
【0200】
さらなる診断、予測、予後判断、及び/又は治療方法
本開示により、診断、予測、予後判断、及び/又は治療方法がさらに提供され、これらの方法は、少なくとも一部が、興味あるマーカーの発現レベルの素性を明らかにすることに基づいている。特に、癌患者試料中のヒトPD-L1の量を用い、その患者が本発明の治療法組み合わせを利用した癌療法に対して好ましい応答をする可能性が大きいかどうかを予測することができる。いくつかの実施形態では、癌患者試料中、好ましくは血清試料中のヒトTGFβの量を用い、その患者が本発明の治療法組み合わせを利用した癌療法に対して好ましい応答をする可能性が大きいかどうかを予測することができる。
【0201】
適切な任意の試料をこの方法のために用いることができる。その非限定的な例に含まれるのは、血清試料、血漿試料、全血、膵液試料、組織試料、腫瘍ライセート、又は腫瘍試料のうちの1つ以上であり、これらは、針生検、コア生検、及び針吸引物から単離することができる。例えば組織、血漿又は血清の試料を、本発明の治療法組み合わせで治療する前の患者と、場合によっては治療中の患者から採取する。治療で得られた発現レベルを、患者の治療を開始する前に得られた値と比較する。得られた情報は、患者が癌療法に対して好ましく応答したか好ましくなく応答したかを示すことができるという意味で、予後を予測している可能性がある。
【0202】
本明細書に記載の診断アッセイを利用して得られる情報は、単独で、又は他の情報(他の遺伝子の発現レベル、臨床化学パラメータ、組織病理学的パラメータ、又は対象の年齢、性別、及び体重などだが、これらに限定されない)と組み合わせて使用できることを理解されたい。本明細書に記載されている診断アッセイを利用して得られる情報が単独で用いられるときには、治療の臨床転帰の判断又は同定、治療する患者の選択、又は患者の治療などに役立つ。それに対して本明細書に記載されている診断アッセイを利用して得られる情報が他の情報と組み合わせて用いられるときには、治療の臨床転帰の判断又は同定の補助、治療する患者の選択の補助、又は患者の治療の補助などに役立つ。特別な1つの態様では、発現レベルを診断パネルで利用することができ、そのパネルのそれぞれは、患者のために選択される最終的な診断、予後判断、又は治療に寄与する。
【0203】
適切な任意の方法を利用して、PD-L1タンパク質又はTGFβタンパク質、DNA、RNA、又はPD-L1又はTGFβのレベルに関する他の適切な読み出しを測定することができる。その例は、本明細書に記載されている、及び/又は当業者に周知である。
【0204】
いくつかの実施形態では、PD-L1又はTGFβのレベルの測定は、PD-L1又はTGFβの発現を決定することを含む。いくつかの実施形態では、PD-L1又はTGFβのレベルは、例えばPD-L1又はTGFβに対して特異的なリガンド(抗体又は特異的結合パートナーなど)を用い、患者試料中のPD-L1又はTGFβタンパク質の濃度によって求められる。結合イベントは、例えば競合的又は非競合的な方法によって検出することができる。方法に含まれるのは、標識したリガンド、又はPD-L1又はTGFβに対して特異的な部分(例えば抗体)、又はその結合イベントに関してマーカータンパク質と競合する標識した競合部分(標識したPD-L1基準又はTGFβ基準が含まれる)の利用である。マーカー特異的リガンドがPD-L1又はTGFβと複合体を形成できる場合には、その複合体形成は、試料中のPD-L1又はTGFβの発現を示している可能性がある。様々な実施形態では、バイオマーカータンパク質のレベルは、定量的ウエスタンブロット、多重イムノアッセイ形式、ELISA、免疫組織化学、組織化学、又は腫瘍ライセートのFACS分析の利用、免疫蛍光染色、ビーズに基づく懸濁イムノアッセイ、Luminex技術、又は近接ライゲーションアッセイを含む方法によって求められる。好ましい一実施形態では、PD-L1又はTGFβの発現は1つ以上の一次抗PD-L1抗体又は一次抗TGFβ抗体を用いて免疫組織化学によって求められる。
【0205】
別の一実施形態では、バイオマーカーRNAのレベルを、マイクロアレイチップ、RT-PCR、qRT-PCR、多重qPCR、又はインサイチュハイブリダイゼーションを含む方法によって求める。本発明の一実施形態では、DNAアレイ又はRNAアレイは、固体表面に固定化されたPD-L1遺伝子又はTGFβ遺伝子によって提示されるポリヌクレオチドの配置、又はその遺伝子にハイブリダイズするポリヌクレオチドの配置を含む。例えばPD-L1又はTGFβのmRNAを明らかにすることに限ると、試料のmRNAを必要な場合には十分な試料調製工程(例えば組織均質化)の後に単離し、増幅あり、又は増幅なしで特にマイクロアレイプラットフォーム上のマーカー特異的プローブとハイブリダイズさせるか、PCRに基づく検出法(例えばマーカーmRNAの一部に対して特異的なプローブを用いたPCR伸長ラベリング)のためのプライマーとハイブリダイズさせることができる。
【0206】
腫瘍組織切片のIHCアッセイにおいてPD-L1タンパク質の発現を定量するためのいくつかのアプローチが記載されている(Thompson et al. (2004) PNAS 101(49): 17174;Thompson et al. (2006) Cancer Res. 66: 3381;Gadiot et al. (2012) Cancer 117: 2192;Taube et al. (2012) Sci Transl Med 4, 127ra37;及びToplian et al. (2012) New Eng. J Med. 366 (26): 2443)。1つのアプローチでは、PD-L1発現に関して陽性又は陰性という単純な2値エンドポイントを使用し、陽性結果は、細胞表面の膜が染色されるという組織学的証拠を示す腫瘍細胞の割合で定義される。PD-L1発現が全腫瘍細胞の少なくとも1%、好ましくは5%だと、腫瘍組織切片が陽性であるとカウントされる。
【0207】
PD-L1又はTGFβのmRNAの発現レベルは、定量RT-PCRで頻繁に用いられる1つ以上の参照遺伝子(ユビキチンCなど)のmRNA発現レベルと比較することができる。いくつかの実施形態では、腫瘍内の悪性細胞及び/又は浸潤免疫細胞によるPD-L1又はTGFβの発現のレベル(タンパク質及び/又はmRNA)は、適切な対照によるPD-L1又はTGFβの発現のレベル(タンパク質及び/又はmRNA)との比較に基づいて「過剰発現した」又は「上昇した」と判断される。例えば対照となるPD-L1又はTGFβのタンパク質又はmRNAの発現レベルとして、同じタイプの非悪性細胞、又はマッチした正常な組織からの切片の中で定量されたレベルが可能である。
【0208】
好ましい一実施形態では、本発明の治療法組み合わせの効果は、腫瘍試料中のPD-L1又はTGFβの発現によって予測される。抗PD-L1一次抗体又は抗TGFβ一次抗体を用いた免疫組織化学を、抗PD-L1抗体又は抗TGFβ抗体で治療した患者からのホルマリン固定パラフィン包埋試料の連続切片で実施した。
【0209】
本開示はまた、本発明の組み合わせが癌患者の治療に適しているか否かを決定するためのキットであって、患者から単離された試料中のPD-L1又はTGFβのタンパク質レベル、又はそのRNAの発現レベルを決定するための手段、及び使用のための説明書を含むキットを提供する。別の態様では、キットは免疫療法用の抗体PD-L1抗体をさらに含む。本発明の一態様では、PD-L1又はTGFβレベルが高いと決定されることは、患者が本発明の治療的組み合わせで治療されたときに、PFS又はOSが増加することを示す。キットの一実施形態では、PD-L1又はTGFβタンパク質レベルを決定するための手段は、それぞれ、PD-L1又はTGFβに特異的に結合する抗体である。
【0210】
更に別の態様では、本発明は、TGFβ阻害剤、ATM阻害剤、及び放射線療法と組み合わせたPD-1阻害剤を宣伝するための方法であって、ターゲットオーディエンスに対し、癌、好ましくは対象から得られた試料におけるPD-L1及び/又はTGFβ発現に基づいて選択される癌、を有する対象を治療するために上記組み合わせの使用を促進することを含む方法を提供する。更に別の態様では、本発明は、放射線療法、PD-1阻害剤、及びTGFβ阻害剤と組み合わせたATM阻害剤を宣伝するための方法であって、好ましくはPD-1阻害剤とTGFβ阻害剤は融合されており、ターゲットオーディエンスに対し、癌、好ましくは対象から得られた試料におけるPD-L1及び/又はTGFβ発現に基づいて選択される癌、を有する対象を治療するために上記組み合わせの使用を促進することを含む方法を提供する。更に別の態様では、本発明は、PD-1阻害剤、ATM阻害剤、及び放射線療法と組み合わせたTGFβ阻害剤を宣伝するための方法であって、ターゲットオーディエンスに対し、癌、好ましくは対象から得られた試料におけるPD-L1及び/又はTGFβ発現に基づいて選択される癌、を有する対象を治療するために上記組み合わせの使用を促進することを含む方法を提供する。更に別の態様では、本発明は、ATM阻害剤及び放射線療法と組み合わせた抗PD-L1/TGFβ Trapを宣伝するための方法であって、ターゲットオーディエンスに対し、癌、好ましくは対象から得られた試料におけるPD-L1及び/又はTGFβ発現に基づいて選択される癌、を有する対象を治療するために上記組み合わせの使用を促進することを含む方法を提供する。更に別の態様では、本発明は、放射線療法と組み合わせたPD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びATM阻害剤を宣伝するための方法であって、ターゲットオーディエンスに対し、癌、好ましくは対象から得られた試料におけるPD-L1及び/又はTGFβ発現に基づいて選択される癌、を有する対象を治療するために上記組み合わせ(放射線療法を含む)の使用を促進することを含む方法を提供する。促進は、任意の利用可能な手段で実施することができる。いくつかの実施形態では、促進は、本発明の治療的組み合わせの市場用製剤に付される添付文書によるものである。また、促進は、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、ATM阻害剤又は他の医薬(治療が本発明とさらなる医薬の治療的組み合わせによる療法である場合)の市場用製剤に付される添付文書によるものであってもよい。いくつかの実施形態では、促進は、PD-L1及び/又はTGFβ発現レベルを測定した後、本発明の治療的組み合わせ、いくつかの実施形態では別の医薬との組み合わせ、で治療を受けるための指示を提供する添付文書によるものである。いくつかの実施形態では、促進に続いて、別の医薬の有無にかかわらず、本発明の治療的組み合わせによる患者の治療が行われる。いくつかの実施形態では、添付文書は、患者の癌試料が高いPD-L1/高いTGFβバイオマーカーレベルを特徴とする場合、本発明の治療的組み合わせが患者を治療するために使用されることを示している。いくつかの実施形態では、添付文書は、患者の癌試料が低いPD-L1/低いTGFβバイオマーカーレベルを特徴とする場合、本発明の治療的組み合わせが患者を治療するために使用されないことを示している。いくつかの実施形態では、高いPD-L1及び/又はTGFβバイオマーカーレベルは、患者が本発明の治療的組み合わせで治療された場合、測定されたPD-L1及び/又はTGFβレベルは、PFS及び/又はOSが増加する可能性と相関することを意味し、その逆も然りである。いくつかの実施形態では、PFS及び/又はOSは、本発明の治療的組み合わせで治療されていない患者と比較して減少する。いくつかの実施形態では、促進は、PD-L1及び/又はTGFβを最初に測定した後、ATM阻害剤及び放射線療法と組み合わせた抗PD-L1/TGFβ Trapによる治療を受けるための指示を提供する添付文書によるものである。いくつかの実施形態では、促進に続いて、別の医薬の有無にかかわらず、ATM阻害剤及び放射線療法と組み合わせた抗PD-L1/TGFβ Trapによる患者の治療が行われる。本発明による適用可能な広告及び指示のさらなる方法、又はビジネス方法は、例えば、US2012/0089541に(他の薬物及びバイオマーカーについて)記載されている。
【0211】
下記実施形態が好ましい:
1.対象における癌を治療する方法における使用のためのPD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びATM阻害剤であって、該方法は、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びATM阻害剤を放射線療法と組み合わせて対象に投与することを含むPD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びATM阻害剤。
【0212】
2.対象における癌を治療する方法における使用のためのPD-1阻害剤であって、該方法は、PD-1阻害剤をTGFβ阻害剤、ATM阻害剤、及び放射線療法と組み合わせて対象に投与することを含む、PD-1阻害剤。
【0213】
3.対象における癌を治療する方法における使用のためのTGFβ阻害剤であって、該方法は、TGFβ阻害剤をPD-1阻害剤、ATM阻害剤、及び放射線療法と組み合わせて対象に投与することを含む、TGFβ阻害剤。
【0214】
4.対象における癌を治療する方法における使用のためのATM阻害剤であって、該方法は、ATM阻害剤をPD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及び放射線療法と組み合わせて対象に投与することを含む、ATM阻害剤。
【0215】
5.対象における癌を治療する方法における使用のためのPD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤であって、該方法は、PD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤をATM阻害剤及び放射線療法と組み合わせて対象に投与することを含み;かつ、
PD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤は融合されている、PD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤。
【0216】
6.対象における癌を治療する方法であって、該方法は、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びATM阻害剤を放射線療法と組み合わせて対象に投与することを含む、方法。
【0217】
7.対象における癌を治療する方法のための医薬の製造のためのPD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びATM阻害剤の使用であって、該方法は、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びATM阻害剤を放射線療法と組み合わせて対象に投与することを含む、使用。
【0218】
8.対象における癌を治療する方法のための医薬の製造のためのPD-1阻害剤の使用であって、該方法は、PD-1阻害剤をTGFβ阻害剤、ATM阻害剤、及び放射線療法と組み合わせて対象に投与することを含む、使用。
【0219】
9.対象における癌を治療する方法のための医薬の製造のためのTGFβ阻害剤の使用であって、該方法は、TGFβ阻害剤をPD-1阻害剤、ATM阻害剤、及び放射線療法と組み合わせて対象に投与することを含む、使用。
【0220】
10.対象における癌を治療する方法のための医薬の製造のためのATM阻害剤の使用であって、該方法は、ATM阻害剤をPD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及び放射線療法と組み合わせて対象に投与することを含む、使用。
【0221】
11.対象における癌を治療する方法のための医薬の製造のためのPD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤の使用であって、該方法は、PD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤をATM阻害剤及び放射線療法と組み合わせて対象に投与することを含み;かつ、
PD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤は融合されている、使用。
【0222】
12.PD-1阻害剤は、PD-1とPD-L1との間の相互作用を阻害可能である、項目1~11のいずれか1項に記載の使用のための化合物、治療方法、又は使用。
【0223】
13.PD-1阻害剤は、抗PD-1又は抗PD-L1抗体である、項目12に記載の使用のための化合物、治療方法、又は使用。
【0224】
14.PD-1阻害剤は、抗PD-L1抗体である、項目13に記載の使用のための化合物、治療方法、又は使用。
【0225】
15.抗PD-L1抗体は、配列番号1の配列を有するCDR1、配列番号2の配列を有するCDR2、及び配列番号3の配列を有するCDR3を含む重鎖配列、並びに配列番号4の配列を有するCDR1、配列番号5の配列を有するCDR1、及び配列番号6の配列を有するCDR3を含む軽鎖配列を含む、項目14に記載の使用のための化合物、治療方法、又は使用。
【0226】
16.TGFβ阻害剤は、TGFβとTGFβ受容体との間の相互作用を阻害可能である、項目1~15のいずれか1項に記載の使用のための化合物、治療方法、又は使用。
【0227】
17.TGFβ阻害剤は、TGFβに結合可能なTGFβ受容体又はその断片である、項目1~16のいずれか1項に記載の使用のための化合物、治療方法、又は使用。
【0228】
18.TGFβ受容体は、TGFβに結合可能なTGFβ受容体II又はその断片である、項目17に記載の使用のための化合物、治療方法、又は使用。
【0229】
19.TGFβ受容体は、TGFβに結合可能なTGFβ受容体II又はその断片の細胞外ドメインである、項目18に記載の使用のための化合物、治療方法、又は使用。
【0230】
20.TGFβ阻害剤は、配列番号11、配列番号12、及び配列番号13のいずれか1つの全長アミノ酸配列に対し少なくとも80%、好ましくは90%、より好ましくは%95の配列同一性を有し、かつTGFβに結合可能である、項目1~19のいずれか1項に記載の使用のための化合物、治療方法、又は使用。
【0231】
21.TGFβ阻害剤は、配列番号11の全長アミノ酸配列に対し少なくとも80%の配列同一性を有し、かつTGFβに結合可能である、項目1~20のいずれか1項に記載の使用のための化合物、治療方法、又は使用。
【0232】
22.TGFβ阻害剤は、配列番号11、配列番号12、及び配列番号13のいずれか1つの配列を含む、項目1~19のいずれか1項に記載の使用のための化合物、治療方法、又は使用。
【0233】
23.TGFβ阻害剤は、配列番号11の配列を含む、項目22に記載の使用のための化合物、治療方法、又は使用。
【0234】
24.PD-1阻害剤とTGFβ阻害剤は融合されている、項目1~4、6~10、及び12~23のいずれか1項に記載の使用のための化合物、治療方法、又は使用。
【0235】
25.PD-1阻害剤とTGFβ阻害剤は、(a)PD-L1に結合可能かつPD-1とPD-L1との間の相互作用を阻害可能な抗体又はその断片、及び(b)TGFβに結合可能かつTGFβとTGFβ受容体との間の相互作用を阻害可能なTGFβRII又はその断片の細胞外ドメインを含む分子へと融合されている、項目5、11、及び24のいずれか1項に記載の使用のための化合物、治療方法、又は使用。
【0236】
26.融合された分子は、WO2015/118175又はWO2018/205985に開示の各融合された分子の1つである、項目25に記載の使用のための化合物、治療方法、又は使用。
【0237】
27.TGFβRII又はその断片の細胞外ドメインは、前記抗体又はその断片の重鎖配列のそれぞれに融合されている、項目25に記載の使用のための化合物、治療方法、又は使用。
【0238】
28.前記TGFβRII又はその断片の細胞外ドメインと前記抗体又はその断片の重鎖配列との間の融合は、リンカー配列を介して起こる、項目27に記載の使用のための化合物、治療方法、又は使用。
【0239】
29.前記軽鎖配列のアミノ酸配列、及び前記重鎖配列と前記TGFβRII又はその断片の細胞外ドメインを含む配列は、(1)配列番号7及び配列番号8、(2)配列番号15及び配列番号17、並びに(3)配列番号15及び配列番号18からなる群より選択される配列にそれぞれ対応する、項目28に記載の使用のための化合物、治療方法、又は使用。
【0240】
30.融合されたPD-1阻害剤とTGFβ阻害剤のアミノ酸配列は、ビントラフスプアルファのアミノ酸配列と同一である、項目25に記載の使用のための化合物、治療方法、又は使用。
【0241】
31.融合されたPD-1阻害剤とTGFβ阻害剤は、ビントラフスプアルファである、項目5、11、及び24のいずれか1項に記載の使用のための化合物、治療方法、又は使用。
【0242】
32.ATM阻害剤は、1μM未満のIC50 を有する、項目1~31のいずれか1項に記載の使用のための化合物、治療方法、又は使用。
【0243】
33.ATM阻害剤はイミダゾ[4,5-c]キノリン誘導体である、項目1~32のいずれか1項に記載の使用のための化合物、治療方法、又は使用。
【0244】
34.ATM阻害剤は、式(I)
【化4】
(式中、
R1は、メチルを表し、
R3は、メチル又はHを表し、
Aは、各場合において独立して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個のC原子を有する非分岐又は分岐アルキルを表し、ここで、1、2、3、4、5、6、又は7個のH原子は、互いに独立してHalにより置換されていてもよく、
Het1は、ピリジニル、ピリミジニル、ピラゾリル、トリアゾリル、イミダゾリル、ベンズイミダゾリル、イミダゾ[4,5-b]ピリジニル、及びベンゾジアゾリルからなる群より選択され、ここでこれらの基はそれぞれ、非置換であっても、あるいは互いに独立して、Hal、A、CN、-(CY2p-OY、-(CY2p-NYY、-(CY2p-COOY、-(CY2p-CO-NYY、-(CY2p-NY-COY、-Het2及び/又は-SO2-Het2により一、二、又は三置換されていてもよく、
Het2は、2、3、4、5、6、又は7個のC原子及び1、2、3、又は4個のN、O及び/又はS原子を有する単環式飽和複素環を表し、ここで、当該複素環は、非置換であってもあるいはAにより一置換されていてもよく、
HETは、1、2、又は3個のN原子及び場合により1個のO原子又はS原子を有する5又は6員芳香族複素環を表し、ここで当該複素環は、この環のC原子を介して骨格のN原子に結合され、かつ、ピリジニル、ピリミジニル、ピラゾリル、チアゾリル、イミダゾリル;ピロロ[3,2-c]ピリジニル、ピロロ[2,3-b]ピリジニル及びキノリニルからなる群より選択され;ここで、この複素環は、非置換であっても、あるいは互いに独立してHal、A、Het2、CN、-(CY2p-OY、-(CY2p-OZ、-(CY)p-O-Het2、-(CY2p-O-(CY2t-Het2、-(CY2p-O-(CY2t-NYY、-(CY2p-O-(CY2t-OY、-(CY2p-O-(CY2t-POAA、-(CY2p-NYY、-(CY2p-COOY、-(CY2p-CO-NYY、-(CY2p-NY-COY、-SO2-Het2、CyA、-(CY2p-O-(CY2t-SO2-Y、-(CY2p-NY-SO2-Y、及び-(CY2p-SO2-Yからなる群より選択される基により一、二、又は三置換されていてもよく、
Yは、H又はAを表し、
Zは、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個のC原子を有する非分岐又は分岐アルケニルを表し、ここで、1、2、3、4、5、6、又は7個のH原子は、互いに独立してHalにより置換されていてもよく、
CyAは、3、4、5、6、7又は8個環のC原子を有するシクロアルキルを表し、非置換であっても、あるいは互いに独立してHal、A、CN、-(CY2p-OY、-(CY2p-NYY、-(CY2p-COOY、-(CY2p-CO-NYY及び/又は-(CY2p-NY-COYにより一又は多置換されていてもよく、
Halは、F、Cl、Br 又はIを表し、かつ、
p は、0、1、2、3、4、5、又は6を表し、
tは、1、2、3、4、5、又は6を表す)
の化合物及び/又はその医薬的に許容される塩である、項目33に記載の使用のための化合物、治療方法、又は使用。
【0245】
35.ATM阻害剤は、3-フルオロ-4-[7-メトキシ-3-メチル-8-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-2-オキソ-2,3-ジヒドロイミダゾ[4,5-c]-キノリン-1-イル]ベンゾニトリル又はその医薬的に許容される塩である、項目34に記載の使用のための化合物、治療方法、又は使用。
【0246】
36.ATM阻害剤は、8-(1,3-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イル)-1-(3-フルオロ-5-メトキシ-ピリジン-4-イル)-7-メトキシ-3-メチル-1,3-ジヒドロ-イミダゾ[4,5-c]キノリン-2-オン又はその医薬的に許容される塩である、項目34に記載の使用のための化合物、治療方法、又は使用。
【0247】
37.ATM阻害剤は、8-(1,3-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イル)-1-(Sa)-(3-フルオロ-5-メトキシ-ピリジン-4-イル)-7-メトキシ-3-メチル-1,3-ジヒドロ-イミダゾ[4,5-c]キノリン-2-オン又はその医薬的に許容される塩である、項目36に記載の使用のための化合物、治療方法、又は使用。
【0248】
38.対象における癌を治療する方法における使用のためのPD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びATM阻害剤であって、該方法は、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びATM阻害剤を放射線療法と組み合わせて対象に投与することを含み;
PD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤は融合されており、前記融合された分子のアミノ酸配列は、ビントラフスプアルファのアミノ酸配列と同一であり;かつ、
ATM阻害剤は、8-(1,3-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イル)-1-(3-フルオロ-5-メトキシ-ピリジン-4-イル)-7-メトキシ-3-メチル-1,3-ジヒドロ-イミダゾ[4,5-c]キノリン-2-オン、好ましくは8-(1,3-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イル)-1-(Sa)-(3-フルオロ-5-メトキシ-ピリジン-4-イル)-7-メトキシ-3-メチル-1,3-ジヒドロ-イミダゾ[4,5-c]キノリン-2-オン又はその医薬的に許容される塩である、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びATM阻害剤。
【0249】
39.対象における癌を治療する方法における使用のためのATM阻害剤であって、該方法は、ATM阻害剤をPD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及び放射線療法と組み合わせて対象に投与することを含み;
PD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤は融合されており、前記融合された分子のアミノ酸配列は、ビントラフスプアルファのアミノ酸配列と同一であり;かつ、
ATM阻害剤は、8-(1,3-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イル)-1-(3-フルオロ-5-メトキシ-ピリジン-4-イル)-7-メトキシ-3-メチル-1,3-ジヒドロ-イミダゾ[4,5-c]キノリン-2-オン、好ましくは8-(1,3-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イル)-1-(Sa)-(3-フルオロ-5-メトキシ-ピリジン-4-イル)-7-メトキシ-3-メチル-1,3-ジヒドロ-イミダゾ[4,5-c]キノリン-2-オン又はその医薬的に許容される塩である、ATM阻害剤。
【0250】
40.対象における癌を治療する方法における使用のためのPD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤であって、該方法は、PD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤をATM阻害剤及び放射線療法と組み合わせて対象に投与することを含み;かつ、
PD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤は融合されており、前記融合された分子のアミノ酸配列は、ビントラフスプアルファのアミノ酸配列と同一であり;かつ、
ATM阻害剤は、8-(1,3-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イル)-1-(3-フルオロ-5-メトキシ-ピリジン-4-イル)-7-メトキシ-3-メチル-1,3-ジヒドロ-イミダゾ[4,5-c]キノリン-2-オン、好ましくは8-(1,3-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イル)-1-(Sa)-(3-フルオロ-5-メトキシ-ピリジン-4-イル)-7-メトキシ-3-メチル-1,3-ジヒドロ-イミダゾ[4,5-c]キノリン-2-オン又はその医薬的に許容される塩である、PD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤。
【0251】
41.対象における癌を治療する方法であって、該方法は、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びATM阻害剤を放射線療法と組み合わせて対象に投与することを含み;
PD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤は融合されており、前記融合された分子のアミノ酸配列は、ビントラフスプアルファのアミノ酸配列と同一であり;かつ、
ATM阻害剤は、8-(1,3-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イル)-1-(3-フルオロ-5-メトキシ-ピリジン-4-イル)-7-メトキシ-3-メチル-1,3-ジヒドロ-イミダゾ[4,5-c]キノリン-2-オン、好ましくは8-(1,3-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イル)-1-(Sa)-(3-フルオロ-5-メトキシ-ピリジン-4-イル)-7-メトキシ-3-メチル-1,3-ジヒドロ-イミダゾ[4,5-c]キノリン-2-オン又はその医薬的に許容される塩である、方法。
【0252】
42.対象における癌を治療する方法のための医薬の製造のためのPD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びATM阻害剤の使用であって、該方法は、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及びATM阻害剤を放射線療法と組み合わせて対象に投与することを含み;
PD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤は融合されており、前記融合された分子のアミノ酸配列は、ビントラフスプアルファのアミノ酸配列と同一であり;かつ、
ATM阻害剤は、8-(1,3-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イル)-1-(3-フルオロ-5-メトキシ-ピリジン-4-イル)-7-メトキシ-3-メチル-1,3-ジヒドロ-イミダゾ[4,5-c]キノリン-2-オン、好ましくは8-(1,3-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イル)-1-(Sa)-(3-フルオロ-5-メトキシ-ピリジン-4-イル)-7-メトキシ-3-メチル-1,3-ジヒドロ-イミダゾ[4,5-c]キノリン-2-オン又はその医薬的に許容される塩である、使用。
【0253】
43.対象における癌を治療する方法のための医薬の製造のためのATM阻害剤の使用であって、該方法は、該方法は、ATM阻害剤をPD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及び放射線療法と組み合わせて対象に投与することを含み;
PD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤は融合されており、前記融合された分子のアミノ酸配列は、ビントラフスプアルファのアミノ酸配列と同一であり;かつ、
ATM阻害剤は、8-(1,3-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イル)-1-(3-フルオロ-5-メトキシ-ピリジン-4-イル)-7-メトキシ-3-メチル-1,3-ジヒドロ-イミダゾ[4,5-c]キノリン-2-オン、好ましくは8-(1,3-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イル)-1-(Sa)-(3-フルオロ-5-メトキシ-ピリジン-4-イル)-7-メトキシ-3-メチル-1,3-ジヒドロ-イミダゾ[4,5-c]キノリン-2-オン又はその医薬的に許容される塩である、使用。
【0254】
44.対象における癌を治療する方法のための医薬の製造のためのPD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤の使用であって、該方法は、PD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤をATM阻害剤及び放射線療法と組み合わせて対象に投与することを含み;
PD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤は融合されており、前記融合された分子のアミノ酸配列は、ビントラフスプアルファのアミノ酸配列と同一であり;かつ、
ATM阻害剤は、8-(1,3-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イル)-1-(3-フルオロ-5-メトキシ-ピリジン-4-イル)-7-メトキシ-3-メチル-1,3-ジヒドロ-イミダゾ[4,5-c]キノリン-2-オン、好ましくは8-(1,3-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イル)-1-(Sa)-(3-フルオロ-5-メトキシ-ピリジン-4-イル)-7-メトキシ-3-メチル-1,3-ジヒドロ-イミダゾ[4,5-c]キノリン-2-オン又はその医薬的に許容される塩である、使用。
【0255】
45.癌は、癌腫、リンパ腫、白血病、芽細胞腫、及び肉腫からなる群より選択される、項目1~44のいずれか1項に記載の使用のための化合物、治療方法、又は使用。
【0256】
46.癌は、扁平上皮癌、骨髄腫、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、神経膠腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、急性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、消化器(管)癌、腎癌、卵巣癌、肝臓癌、リンパ芽球性白血病、リンパ性白血病、結腸直腸癌、子宮内膜癌、腎臓癌、前立腺癌、甲状腺癌、黒色腫、軟骨肉腫、神経芽細胞腫、膵臓癌、膠芽腫、子宮頸癌、脳癌、胃癌、膀胱癌、肝細胞癌、乳癌、結腸癌、胆道癌、及び頭頸部癌からなる群より選択される、項目1~45のいずれか1項に記載の使用のための化合物、治療方法、又は使用。
【0257】
47.PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、ATM阻害剤、及び放射線療法は、癌の一次治療において投与される、項目1~46のいずれか1項に記載の使用のための化合物、治療方法、又は使用。
【0258】
48.対象は、以前に少なくとも1回の癌療法を受けている、項目1~46のいずれか1項に記載の使用のための化合物、治療方法、又は使用。
【0259】
49.癌は、以前の癌療法に対し耐性であるか耐性になっている、項目48に記載の使用のための化合物、治療方法、又は使用。
【0260】
50.PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、ATM阻害剤、及び放射線療法は、癌の二次又はさらに高次の治療において投与される、項目1~46のいずれか1項に記載の使用のための化合物、治療方法、又は使用。
【0261】
51.癌は、以前治療された再発転移性NSCLC、切除不能な局所進行NSCLC、以前治療されたSCLC ED、全身治療に不適なSCLC、以前治療された再発又は転移性SCCHN、再照射可能な再発性SCCHN、及び以前治療されたマイクロサテライト状態不安定性低(MSI-L)又はマイクロサテライト状態安定(MSS)転移性結腸直腸癌(mCRC)からなる群より選択される、項目50に記載の使用のための化合物、治療方法、又は使用。
【0262】
52.放射線療法は約35~70 Gy/20~35回を含む、項目1~51のいずれか1項に記載の使用のための化合物、治療方法、又は使用。
【0263】
53.放射線療法は、電子、フォトン、プロトン、アルファ放射体、又は他のイオン、放射性ヌクレオチド、ホウ素捕獲中性子及びそれらの組み合わせを用いる治療からなる群より選択される、項目1~52のいずれか1項に記載の使用のための化合物、治療方法、又は使用。
【0264】
54.PD-L1阻害剤及びTGFβ阻害剤は融合されて静脈内注入により投与される、項目1~53のいずれか1項に記載の使用のための化合物、治療方法、又は使用。
【0265】
55.PD-L1阻害剤及びTGFβ阻害剤は融合されて約1200mg、1800mg又は2400mgの用量で投与される、項目1~54のいずれか1項に記載の使用のための化合物、治療方法、又は使用。
【0266】
56.PD-L1阻害剤及びTGFβ阻害剤は融合されて2週間に1回、好ましくは1200mg、あるいは3週間に1回、好ましくは1800mg又は2400mgの用量で投与される、項目1~54のいずれか1項に記載の使用のための化合物、治療方法、又は使用。
【0267】
57.ATM阻害剤は経口投与される、項目1~56のいずれか1項に記載の使用のための化合物、治療方法、又は使用。
【0268】
58.ATM阻害剤は、1日1回(QD)又は1日2回(BID)投与される、項目1~57のいずれか1項に記載の使用のための化合物、治療方法、又は使用。
【0269】
59.ATM阻害剤は、約20~500mg、好ましくは25~400mgの用量で投与される、項目1~58のいずれか1項に記載の使用のための化合物、治療方法、又は使用。
【0270】
60.導入期間を含み、場合により導入期間終了後に持続期間が続く、項目1~59のいずれか1項に記載の使用のための化合物、治療方法、又は使用。
【0271】
61.PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、ATM阻害剤、及び放射線療法は、導入又は持続期間のいずれかでは共同的に(concurrently)、場合により他の期間では非共同的に(non-concurrently)投与されるか、あるいは、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、ATM阻害剤、及び放射線療法は、導入及び持続期間で非共同的に投与されるか、あるいは、導入及び持続期間においてPD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、ATM阻害剤、及び放射線療法のうち2つ以上が共同的に投与され、それ以外は非共同的に投与される、項目60に記載の使用のための化合物、治療方法、又は使用。
【0272】
62.共同的な投与は順次に任意の順番で又は実質的に同時に起こる、項目61に記載の使用のための化合物、治療方法、又は使用。
【0273】
63.持続期間は、PD-1阻害剤の単独投与、或いはATM阻害剤、TGFβ阻害剤及び/又は放射線療法、又はそれ以外のものとの共同的な投与を含む、項目60~62のいずれか1項に記載の使用のための化合物、治療方法、又は使用。
【0274】
64.PD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤は融合され、かつ持続期間は、前記融合されたPD-1阻害剤とTGFβ阻害剤の単独投与、或いはATM阻害剤及び/又は放射線療法、又はそれ以外のものとの共同的な投与を含む、項目60~62のいずれか1項に記載の使用のための化合物、治療方法、又は使用。
【0275】
65.導入期間は、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、ATM阻害剤、及び放射線療法の共同的な投与を含む、項目60~64のいずれか1項に記載の使用のための化合物、治療方法、又は使用。
【0276】
66.癌は対象から得られた試料におけるPD-L1発現に基づいて選択される、項目1~65のいずれか1項に記載の使用のための化合物、治療方法、又は使用。
【0277】
67.PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、ATM阻害剤及び少なくとも医薬的に許容される賦形剤又は補助剤を含む医薬組成物。
【0278】
68.PD-1阻害剤及びTGFβ阻害剤は融合されている、項目67に記載の医薬組成物。
【0279】
69.ATM阻害剤は、8-(1,3-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イル)-1-(3-フルオロ-5-メトキシ-ピリジン-4-イル)-7-メトキシ-3-メチル-1,3-ジヒドロ-イミダゾ[4,5-c]キノリン-2-オン、好ましくは、8-(1,3-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イル)-1-(Sa)-(3-フルオロ-5-メトキシ-ピリジン-4-イル)-7-メトキシ-3-メチル-1,3-ジヒドロ-イミダゾ[4,5-c]キノリン-2-オン、又はその医薬的に許容される塩である、項目67又は68に記載の医薬組成物。
【0280】
70.療法における使用、好ましくは癌の治療における使用のための、項目67~69のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0281】
71.療法は更に放射線療法を含む、項目70に記載の使用のための医薬組成物。
【0282】
72.PD-1阻害剤;並びに、
対象における癌を治療又は進行を遅延させるために、前記PD-1阻害剤を、ATM阻害剤、TGFβ阻害剤、及び放射線療法と組み合わせて使用するための説明書を含む添付文書;
を含むキット。
【0283】
73.ATM阻害剤;並びに、
対象における癌を治療又は進行を遅延させるために、前記ATM阻害剤を、PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、及び放射線療法と組み合わせて使用するための説明書を含む添付文書;
を含むキット。
【0284】
74.TGFβ阻害剤;並びに、
対象における癌を治療又は進行を遅延させるために、前記TGFβ阻害剤を、PD-1阻害剤、ATM阻害剤、及び放射線療法と組み合わせて使用するための説明書を含む添付文書;
を含むキット。
【0285】
75.抗PD-L1/TGFβ Trap;並びに、
対象における癌を治療又は進行を遅延させるために、前記抗PD-L1/TGFβ Trapを、ATM阻害剤及び放射線療法と組み合わせて使用するための説明書を含む添付文書;
を含むキット。
【0286】
76.添付文書には、前記医薬がPD-L1発現に対し陽性であると試験される癌を有する対象の治療における使用を意図するものである旨が記載されている、項目72~75のいずれか1項に記載のキット。
【0287】
77.PD-1阻害剤、TGFβ阻害剤、ATM阻害剤、及び放射線療法を宣伝するための方法であって、ターゲットオーディエンスに対し、癌、好ましくは対象から得られた試料におけるPD-L1発現に基づいて選択される癌、を有する対象を治療するために組み合わせの使用を促進することを含む、方法。
【0288】
本明細書で引用されているあらゆる参考文献は、本発明の開示の中に参照によって組み込まれている。
【0289】
本発明が、本明細書に記載されている特定の分子、医薬組成物、使用、及び方法に限定されることはなく、それらはもちろん変化しうることを理解されたい。本明細書で用いられている用語は特定の実施形態を記述することだけを目的としていて、本発明の範囲を制限することは意図しておらず、本発明の範囲は添付の請求項によってだけ規定されることも理解されたい。本発明に不可欠な技術は本明細書に詳細に記載されている。詳細には記載されていない他の技術は、当業者に周知の既知の標準的な方法に対応するか、その技術は、引用されている参考文献、特許出願、又は標準的な文献により詳しく記載されている。本出願に他のヒントが与えられていない場合には、それらは例として用いられているだけであり、本発明によれば本質的であるとは見なされず、他の適切なツール又は生物材料で置き換えることができる。
【0290】
本明細書に記載されているのと同様又は同等な方法と材料を利用して本発明を実施又は試験することができるが、以下には適切な実施例が記載されている。実施例の範囲では、(実現可能なときにはいつでも)汚染活性のない標準的な試薬とバッファを使用する。実施例は、特徴の明示的に実証された組み合わせに限定されることはなく、例示されている特徴は、本発明の技術的問題が解決されるのであれば再び制限なく組み合わせることができると解釈すべきである。同様に、任意の請求項の特徴を1つ以上の他の請求項の特徴と組み合わせることができる。要約と明細書に記載されている本発明は例示であり、以下の実施例によって制限されることはない。
【実施例
【0291】
実施例
実施例1:4T1哺乳類腫瘍モデルにおける、ビントラフスプアルファと放射線療法(RT)にATM阻害剤である化合物Aを組み合わせた抗腫瘍活性の評価
ビントラフスプアルファと放射線療法(RT)にATM阻害剤である化合物Aを組み合わせた抗腫瘍活性を4T1哺乳類腫瘍モデルにおいて評価した。
ビントラフスプアルファとRTを用いる二重組み合わせ療法は、PD-L1結合機能を欠くが相変わらずTGF-βにに結合可能なアイソタイプ対照と比べて腫瘍増殖を有意に阻害した(p<0.0001、13日目)。ビントラフスプアルファとRTに化合物Aを組み合わせると、ビントラフスプアルファとRTの二重組み合わせ療法と比べて抗腫瘍活性をさらに増強した(p<0.0001、13日目と28日目)(図3A~B)。それに加え、生存期間中央値は、ビントラフスプアルファ、RT、及び化合物Aの組み合わせ(34日間)で、ビントラフスプアルファとRTの二重組み合わせ療法(26日間、p<0.0001)又はアイソタイプ対照(13日間、p<0.0001)と比べて有意に延長された(図3C)。
【0292】
実施例2:4T1哺乳類腫瘍モデルにおいて、ビントラフスプアルファ、RT、及び化合物Aの三重組み合わせに対する化合物Aの投与スケジュールの影響を評価する
化合物Aの異なる投与スケジュールが三重組み合わせ療法の抗腫瘍活性に及ぼす効果を4T1哺乳類腫瘍モデルにおいて評価した。
実施例1と同様、ビントラフスプアルファとRTを用いる二重組み合わせ療法はアイソタイプ対照と比べて腫瘍増殖を有意に阻害した(p<0.0001、14日目)が、ビントラフスプアルファ、RT、及び化合物Aの組み合わせは、化合物Aの投与スケジュールに関係なく、ビントラフスプアルファとRTの二重組み合わせ療法と比べて抗腫瘍活性をさらに増強した(p<0.0001、14日目と28日目)(図4A~B)。実際、化合物Aを0~3日目、0~10日目、又は0~17日目に与えたとき、三重組み合わせ療法の抗腫瘍活性の間に有意差は存在していなかった。生存期間中央値も、化合物Aを0~3日目(41日間)、0~10日目(39.5日間)、又は0~17日目(39日間)に投与した三重組み合わせ療法の間に有意差がなかった。しかし三重組み合わせ療法は、化合物A投与スケジュールに関係なく、ビントラフスプアルファとRTの二重組み合わせ療法(26日間、p<0.0001)又はアイソタイプ対照(13日間、p<0.0001)と比べて生存中央値を有意に延長させた(図4C)。
【0293】
実施例3:4T1哺乳類腫瘍モデルにおいてビントラフスプアルファ、RT、及び化合物Aの三重組み合わせを二重療法対照及び単剤療法対照と比較して評価する
実施例3では、4T1哺乳類腫瘍モデルにおいてビントラフスプアルファ、RT、及び化合物Aの三重組み合わせを二重療法対照及び単剤療法対照と比較して評価した。
アイソタイプ対照と比べると、腫瘍増殖は、ビントラフスプアルファ(p<0.0001、14日目)、RT(p<0.0001、14日目)、又は化合物A(p<0.0001、14日目)という単剤療法で有意に阻害された(図5A~B)。ビントラフスプアルファと化合物Aの二重組み合わせ療法がビントラフスプアルファ単剤療法及び化合物A単剤療法と比べて抗腫瘍活性をさらに増強することはなかった(p>0.05、18日目)が、ビントラフスプアルファとRTの二重組み合わせ療法は、ビントラフスプアルファ単剤療法(p<0.0001、18日目)及びRT単剤療法(p<0.0001、18日目)と比べて抗腫瘍活性を増強し、RTと化合物Aの二重組み合わせ療法は、RT単剤療法(p<0.0001、18日目)及び化合物A単剤療法(p<0.0001、18日目)と比べて抗腫瘍活性を増強した(図5A~B)。さらに、ビントラフスプアルファ、RT、及び化合物Aの組み合わせは、ビントラフスプアルファ+RT(p<0.0001、28日目)、ビントラフスプアルファ+化合物A(p<0.0001、18日目)、及びRT+化合物A(p<0.0001、28日目)と比べて抗腫瘍活性を有意に増強した。三重組み合わせ療法は、単剤療法及び二重組み合わせ療法と比べて生存期間中央値(40.5日)も延長させたが、RT+化合物A(35.5日間)と比べて有意ではなかった(図5C)。
【0294】
実施例4:4T1哺乳類腫瘍モデルにおいてビントラフスプアルファ、RT、及び化合物Aの三重組み合わせをビントラフスプアルファとRTの二重組み合わせと比較して評価する
4T1マウス乳癌細胞系をBalb/cマウスに注射し、これらの腫瘍担持動物を、ビントラフスプアルファ+RT(8 Gy、QD×4)、又はビントラフスプアルファ+化合物A+様々な用量のRT(2 Gy、QD×4;4 Gy、QD×4;6 Gy、QD×4;8 Gy、QD×4)で治療した。このモデルでは、ビントラフスプアルファ+化合物A+8 Gy×4RTの組み合わせが、アイソタイプ対照(p<0.0001、14日目)、ビントラフスプアルファ+8 Gy、QD×4RT(p<0.0001、21日目)、又はビントラフスプアルファ+化合物A+6 Gy、QD×4RT(p=0.0066)と比べて腫瘍増殖の最大阻害を示した。ビントラフスプアルファ+化合物A+8 Gy、QD×4RT群は、ビントラフスプアルファ×8 Gy、QD×4RT(生存期間中央値=26日間;p<0.0001)、又はビントラフスプアルファ+化合物A+6 Gy、QD×4RT(生存期間中央値=29日間;p=0.0038)と比べて最長の全生存期間中央値(生存期間中央値=39日間)を示した。ビントラフスプアルファ+化合物A+4 Gy、QD×4RTの三重組み合わせ療法は、ビントラフスプアルファ+8 Gy、QD×4RTの二重組み合わせ療法(p>0.9999、21日目の腫瘍増殖;p=0.5124、生存期間中央値)と同等な効果と生存期間を示した。ビントラフスプアルファ+化合物A+6 Gy、QD×4RTの三重組み合わせ療法は、ビントラフスプアルファ+8 Gy、QD×4RTの二重組み合わせ療法と比べて優れた効果と生存期間を示した(p>0.0.0121、21日目の腫瘍増殖;p=0.0017、生存期間中央値)(図6)。
【0295】
実施例5:MC38マウス結腸癌モデルにおいてビントラフスプアルファ、RT、及び化合物Aの三重組み合わせを二重療法対照及び単剤療法対照と比較して評価する
筋肉内MC38マウス結腸癌モデルにおいて、ビントラフスプアルファ+化合物A+RTの組み合わせは、アイソタイプ対照(p<0.0001、13日目)、ビントラフスプアルファ+化合物A(p<0.0001、17日目)、ビントラフスプアルファ+RT(p<0.0319、31日目)、又は化合物A+RT(p<0.0001、20日目)よりも有意に大きい腫瘍増殖阻害を示した。ビントラフスプアルファ+化合物A+RT治療の結果として10匹のマウスのうちの10匹が 65日目に無腫瘍生存を示していたのに対し、ビントラフスプアルファ+RTの二重組み合わせでは10匹のマウスのうちの6匹が無腫瘍生存を示していた。この研究の他のどの治療群も完全な腫瘍退縮と長期無腫瘍生存を示すことはなかった(図7)。
【0296】
実施例1~5の材料と方法-
細胞系
4T1マウス乳癌細胞はAmerican Type Culture Collection(ATCC)から取得した。4T1細胞を、10%のFBS、2 mMのL-グルタミン、10 mMのHEPES、1 mMのピルビン酸ナトリウム、4500 mg/Lのグルコース、及び1500 mg/Lの炭酸水素ナトリウムを補足したRPMI 1640培地の中で培養した。MC38マウス結腸癌細胞系は、10%のFBS、4500 mg/Lのグルコース、及び2 mMのL-グルタミンを補足したDMEM培地の中で培養した。細胞を生体内移植の前に継代させ、接着細胞をTrypLE Express(Gibco)又は0.25%のトリプシンで回収した。
【0297】
マウス
BALB/cマウスとC57BL/6マウスをCharles River Laboratoriesから取得した。実験に使用したすべてのマウスが6~12週齢の雌であった。マウスは、餌と水に自由にアクセスできる状態で、病原体のない施設に収容した。
【0298】
マウス腫瘍モデル
4T1腫瘍モデル
実施例1~3の効果研究と生存研究のため、-7日目に0.5×105個の4T1細胞をBALB/cマウスの大腿筋内に接種した(i.m.)。7日後の0日目に治療を開始し、腫瘍の体積が約2000 mm3に達したときマウスを安楽死させた。
【0299】
実施例4と5の効果研究のため、-7日目に0.5×105個の 4T1細胞をBALB/cマウスの右大腿筋内に接種した(i.m.)。平均腫瘍体積が約150 mm3に到達した0日目に治療を開始した。腫瘍体積が約2500 mm3に達したときマウスを安楽死させた。
【0300】
MC38腫瘍モデル
効果研究のため、-7日目に0.25×105個の MC38細胞をC57BL/6マウスの右大腿筋内に接種した。平均腫瘍体積が約50 mm3に達した0日目に治療を開始した。腫瘍体積が約2500 mm3に達したときマウスを安楽死させた。
【0301】
治療
すべての研究について、治療開始日(0日目)にマウスをランダム化して複数の治療群に分けた。
【0302】
ビントラフスプアルファとアイソタイプ対照
腫瘍を有するマウスで、ビントラフスプアルファ(492 μg又は164 μg)、又はアイソタイプ対照(400 μg又は133 μg)を0.2 mLのPBSに入れて静脈内注射(i.v.)で投与した。それぞれの実験のための正確な用量と治療スケジュールは図面の説明に掲載されている。ビントラフスプアルファのアイソタイプ対照はビントラフスプアルファの変異したバージョンであり、これはPD-L1結合を完全に欠いていた(が、それでもTGF-βに結合することができた)。
【0303】
放射線療法(RT)
2、4、6、又は8 Gy/日の線量のRTを送達するため、鉛の遮蔽を有するコリメータ装置を用いてマウスの腫瘍担持大腿部に局所送達した。セシウム-137ガンマ線照射装置(GammaCell 40 Exactor、MDS Nordion、オタワ、オンタリオ州、カナダ国)に時間を決めて曝露することによってこの領域に照射した。RTは1日に1回、4日間(0~3日目)にわたって適用した。それぞれの実験のための正確な用量と治療スケジュールは図面の説明に記載されている。
【0304】
化合物Aとビヒクル対照
化合物A、特に化合物A1を強制経口投与(p.o.)によって100 mg/kg(10 μL/g)で投与した。化合物A、0.5%のMethocel KM Premium、及び0.25%のTween 20を含む水というのビヒクル対照をp.o.(10 μL/g)投与した。それぞれの実験のための正確な用量と治療スケジュールは図面の説明に記載されている。腫瘍担持マウスを1日に1回の投与で4、5、11、又は18日間にわたって治療した(0~3日目、0~4日目、0~10日目、又は0~17日目)。
【0305】
腫瘍の増殖と生存
腫瘍のサイズをディジタルノギスで週に2回測定し、実施例1~3ではWinWedgeソフトウエアを、実施例4と5ではStudyLogソフトウエアを用いて自動的に記録した。腫瘍の体積は、以下の式、すなわち腫瘍体積(mm3)=腫瘍の長さ×幅×高さ×0.5236を用いて計算した。腫瘍増殖阻害(TGI)は、以下の式、すなわちTGI (%)=[1-(Ti-T0)/(Vi-V0)]×100を用いて計算した(ただしTiは所与の日における治療群の平均腫瘍体積(mm3)であり、T0は治療の初日における治療群の平均腫瘍体積であり、ViはTiと同じ日のビヒクル対照群の平均腫瘍体積であり、V0は治療の初日におけるビヒクル対照群の平均腫瘍体積である)。異なる治療群の間の生存率を比較するため、カプラン-マイヤー生存曲線を作成した。体重を週に2回測定し、腫瘍の体積が2,000 mm3を超えたときにマウスを安楽死させた。
【0306】
統計分析
GraphPad Prism Softwareのバージョン8.0又は8.0.1を用いて統計分析を実施した。腫瘍体積のデータは、シンボルによって平均値±SEMとして、又は線によって個々のマウスとしてグラフ表示されている。治療群の間の腫瘍体積の差を評価するため、二元配置分散分析(ANOVA)に続けてテューキー又はシダックの多重比較検定を実施した。治療群ごとの生存を示すためカプラン-マイヤープロットを実施し、有意性をログ-ランク(マンテル-コックス)検定によって評価した。
【0307】
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
図1
図2
図3-1】
図3-2】
図4-1】
図4-2】
図5-1】
図5-2】
図5-3】
図6
図7-1】
図7-2】
【配列表】
2023501971000001.app
【国際調査報告】