(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-20
(54)【発明の名称】ポリアリールエーテルケトンコポリマーのブレンド
(51)【国際特許分類】
C08L 71/10 20060101AFI20230113BHJP
C08L 81/06 20060101ALI20230113BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20230113BHJP
C08J 5/04 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
C08L71/10
C08L81/06
C08K3/013
C08J5/04 CEZ
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022525766
(86)(22)【出願日】2020-11-05
(85)【翻訳文提出日】2022-06-27
(86)【国際出願番号】 EP2020081214
(87)【国際公開番号】W WO2021089746
(87)【国際公開日】2021-05-14
(32)【優先日】2019-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512323929
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ ユーエスエー, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】リッチ, ジェーソン
(72)【発明者】
【氏名】エル-ヒブリ, モハメド ジャマル
【テーマコード(参考)】
4F072
4J002
【Fターム(参考)】
4F072AA04
4F072AA08
4F072AB22
4F072AB28
4F072AB29
4F072AB30
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4F072AL01
4J002CH09W
4J002CN03X
4J002DA016
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4J002DJ006
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4J002FA067
4J002FD016
4J002FD017
4J002FD069
4J002FD079
4J002FD098
4J002FD109
4J002FD119
4J002FD139
4J002FD179
4J002GB01
4J002GM00
4J002GN00
4J002GQ00
4J002GQ01
4J002GQ02
4J002GQ05
(57)【要約】
本発明は、PEDEK-PEEKコポリマーに基づくポリマーブレンドであって、コポリマー(PEDEK-PEEK)中のPEDEK型の単位が優勢であることに起因して且つポリフェニルスルホンポリマー(PPSU)とのブレンドに起因して、高温における改善された強度及び弾性率と、改善された延性との優れた組み合わせを提供することにおいて有効であり、且つポリマー(PPSU)成分の同様の高温耐性を保持するためのみならず、相分離並びに/又は結晶化速度の低下及び高温性能の喪失を回避するために、予想外且つ有利である有益な部分混和挙動を備えるポリマーブレンドに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物[組成物(C)]であって、
- 少なくとも1種のポリアリールエーテルケトンコポリマー[コポリマー(PEDEK-PEEK)]であって、
- 式(I):
【化1】
の繰り返し単位(R
PEEK)、及び
- 式(II):
【化2】
の繰り返し単位(R
PEDEK)
(上記の式(I)及び(II)において、R’及びR’’のそれぞれは、互いに等しいか又は異なり、各存在において、任意選択的に1つ以上のヘテロ原子を含むC
1~C
12基;スルホン酸及びスルホネート基;ホスホン酸及びホスホネート基;アミン及び第四級アンモニウム基から独立して選択され;j’及びk’’のそれぞれは、互いに等しいか又は異なり、各存在において、0及び1~4の整数から独立して選択される)
であって、55:45~99:1のモル比(R
PEDEK):(R
PEEK)に含まれる、式(I)の繰り返し単位(R
PEEK)及び式(II)の繰り返し単位(R
PEDEK)
を含む少なくとも1種のポリアリールエーテルケトンコポリマー[コポリマー(PEDEK-PEEK)]と;
- 少なくとも1種のスルホンポリマー[ポリマー(SP)]であって、
(PS-1)全ての繰り返し単位に対して50モル%を超える、式(P-1):
【化3】
(式中、
- それぞれのR
PPSUは、それぞれの場合において互いに等しいか又は異なり、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン及び第四級アンモニウムからなる群から独立して選択され;
- それぞれのdは、それぞれの場合において互いに等しいか又は異なり、0、1、2、3及び4から独立して選択され、好ましくは0である)
の繰り返し単位(R
PPSU)を含むポリフェニルスルホンポリマー[ポリマー(PPSU)];及び
(PS-2)全ての繰り返し単位に対して50モル%を超える、式(P-2):
【化4】
(式中、
- それぞれのR
PESUは、それぞれの場合において互いに等しいか又は異なり、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン及び第四級アンモニウムからなる群から独立して選択され;
- それぞれのeは、それぞれの場合において互いに等しいか又は異なり、0、1、2、3及び4から独立して選択され、好ましくは0である)
の繰り返し単位(R
PESU)を含むポリエーテルスルホンポリマー[ポリマー(PESU)]
からなる群から選択される少なくとも1種のスルホンポリマー[ポリマー(SP)]と
を含む組成物[組成物(C)]。
【請求項2】
前記コポリマー(PEDEK-PEEK)は、55:45~99:1、好ましくは60:40~95:5、より好ましくは65:35~90:10、更により好ましくは68:32~80:20、一層より好ましくは70:30~80:20のモル比(R
PEDEK):(R
PEEK)において、上記で詳述された繰り返し単位(R
PEDEK)及び(R
PEEK)を含み、及び/又はコポリマー(PEDEK-PEEK)は、繰り返し単位(R
PEEK)及び(R
PEDEK)と異なる繰り返し単位(R
PAEK)を追加的に含み、繰り返し単位(R
PAEK)の量は、好ましくは、コポリマー(PEDEK-PEEK)の繰り返し単位の総モル数に対して0~5モル%に含まれ、及び/又は前記繰り返し単位(R
PAEK)は、好ましくは、以下の式(K-A)~(K-M):
【化5】
【化6】
(上記の式(K-A)~(K-M)のそれぞれにおいて、R’のそれぞれは、互いに等しいか又は異なり、各存在において、任意選択的に1つ以上のヘテロ原子を含むC
1~C
12基;スルホン酸及びスルホネート基;ホスホン酸及びホスホネート基;アミン及び第四級アンモニウム基から独立して選択され;及びj’のそれぞれは、互いに等しいか又は異なり、各存在において、0及び1~4の整数から独立して選択され、好ましくは、j’は、ゼロに等しい)
のいずれかに従う、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
コポリマー(PEDEK-PEEK)において、式(I)の繰り返し単位(R
PEEK)中で、フェニル基間の結合は、概して、フェニル環のそれぞれのパラ位にあり、及び/又はj’のそれぞれは、ゼロであり、好ましくは、繰り返し単位(R
PEEK)は、式(Ia):
【化7】
に従い、式(II)の繰り返し単位(R
PEDEK)中で、フェニル基間の結合は、概して、フェニル環のそれぞれのパラ位にあり、及び/又はk’のそれぞれは、ゼロであり、好ましくは、繰り返し単位(R
PEDEK)は、式(IIb):
【化8】
に従う、請求項1又は2に記載の組成物(C)。
【請求項4】
ポリマー(SP)は、少なくとも1種のポリマー(PPSU)であり、ポリマー(PPSU)の繰り返し単位(R
PPSU)は、式:
【化9】
の単位であり、いずれのポリマー(PPSU)も、繰り返し単位(R
PPSU)以外の繰り返し単位を本質的に含まないか、又はポリマー(PPSU)は、50モル%未満の、繰り返し単位(R
PPSU)と異なる、式(P-3):
-Ar
1-(T’-Ar
2)
n-O-Ar
3-SO
2-[Ar
4-(T-Ar
2)
n-SO
2]
m-Ar
5-O- (P-3)
(式中、
- Ar
1、Ar
2、Ar
3、Ar
4及びAr
5は、互いに且つ各存在において等しいか又は異なり、独立して、芳香族の置換又は無置換の単核基又は多核基であり;
- 各T及びT’は、互いに且つ各存在において等しいか又は異なり、独立して、結合又は任意選択的に1つ以上のヘテロ原子を含む二価基であり;好ましくは、T’は、結合、-CH
2-、-C(O)-、-C(CH
3)
2-、-C(CF
3)
2-、-C(=CCl
2)-、-SO
2-、-C(CH
3)(CH
2CH
2COOH)-及び式:
【化10】
の基からなる群から選択され;
- n及びmは、互いに等しいか又は異なり、独立してゼロ又は1~5の整数である)
に従う繰り返し単位(R
PAES)を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
ポリマー(SP)は、少なくとも1種のポリマー(PESU)であり、ポリマー(PESU)の繰り返し単位(R
PESU)は、式:
【化11】
の単位であり、いずれのポリマー(PESU)も、繰り返し単位(R
PESU)以外の繰り返し単位を本質的に含まないか、又はポリマー(PESU)は、50モル%未満の、繰り返し単位(R
PESU)と異なる、式(P-3):
-Ar
1-(T’-Ar
2)
n-O-Ar
3-SO
2-[Ar
4-(T-Ar
2)
n-SO
2]
m-Ar
5-O- (P-3)
(式中、
- Ar
1、Ar
2、Ar
3、Ar
4及びAr
5は、互いに且つ各存在において等しいか又は異なり、独立して、芳香族の置換又は無置換の単核基又は多核基であり;
- 各T及びT’は、互いに且つ各存在において等しいか又は異なり、独立して、結合又は任意選択的に1つ以上のヘテロ原子を含む二価基であり;好ましくは、T’は、結合、-CH
2-、-C(O)-、-C(CH
3)
2-、-C(CF
3)
2-、-C(=CCl
2)-、-SO
2-、-C(CH
3)(CH
2CH
2COOH)-及び式:
【化12】
の基からなる群から選択され;
- n及びmは、互いに等しいか又は異なり、独立してゼロ又は1~5の整数である)
に従う繰り返し単位(R
PAES)を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
繰り返し単位(R
PAES)は、以下の式(S-A)~(S-D):
【化13】
(式中、
- R’のそれぞれは、互いに等しいか又は異なり、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン及び第四級アンモニウムからなる群から選択され;
- j’のそれぞれは、互いに等しいか又は異なり、独立して、ゼロであるか又は1~4の整数であり;
- T及びT’は、互いに等しいか又は異なり、結合又は任意選択的に1つ以上のヘテロ原子を含む二価基であり;好ましくは、T’は、結合、-CH
2-、-C(O)-、-C(CH
3)
2-、-C(CF
3)
2-、-C(=CCl
2)-、-C(CH
3)(CH
2CH
2COOH)-、-SO
2-及び式:
【化14】
の基からなる群から選択される)
のものからなる群から選択され、繰り返し単位(R
PPSU)と異なるか又は繰り返し単位(R
PESU)と異なり;及び/又は
- ポリマー(SP)がポリマー(PPSU)である場合、繰り返し単位(R
PAES)は、式(i)~(iv)及び(j)~(jjj)の繰り返し単位からなる群から選択され;ポリマー(SP)がポリマー(PESU)である場合、繰り返し単位(R
PAES)は、式(i)~(iv)、(j)、(jj)及び(jv):
【化15】
の繰り返し単位からなる群から選択される、請求項4又は5に記載の組成物。
【請求項7】
5/95~95/5の重量比又は好ましくは10/90~90/10の重量比でコポリマー(PEDEK-PEEK)及びポリマー(SP)を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物(C)。
【請求項8】
ポリマー(SP)は、前記コポリマー(PEDEK-PEEK)及びポリマー(SP)の合計重量を基準として少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%又は更に少なくとも35%の重量の量で存在し;及び/又は組成物(C)は、前記コポリマー(PEDEK-PEEK)及びポリマー(SP)の合計重量を基準として90%未満、70%未満、60%未満又は50%未満の重量の量でポリマー(SP)を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物(C)。
【請求項9】
前記コポリマー(PEDEK-PEEK)及びポリマー(PPSU)の合計重量を基準として60~90%の量のコポリマー(PEDEK-PEEK)及び10~40%の量のポリマー(PPSU)を含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記コポリマー(PEDEK-PEEK)及びポリマー(SP)を、前記組成物(C)の総重量を基準として、少なくとも95%ではないとしても、少なくとも90%の合計重量の量で含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
繊維状及び粒子状のフィラーから選択される少なくとも1種の補強フィラーであって、無機フィラー(タルク、マイカ、カオリン、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウムなど)、ガラス繊維、炭素繊維、合成高分子繊維、アラミド繊維、アルミニウム繊維、チタン繊維、マグネシウム繊維、ホウ素カーバイド繊維、ロックウール繊維、鋼繊維及びウォラストナイトから好ましくは選択される少なくとも1種の補強フィラーと、任意選択的に、(i)特に染料などの着色剤、(ii)特に二酸化チタン、硫化亜鉛及び酸化亜鉛などの顔料、(iii)光安定剤、例えばUV安定剤、(iv)熱安定剤、(v)特に有機亜リン酸エステル及び亜ホスホン酸エステルなどの酸化防止剤、(vi)酸捕捉剤、(vii)加工助剤、(viii)結晶化核剤、(ix)内部潤滑剤及び/又は外部潤滑剤、(x)難燃剤、(xi)煙抑制剤、(x)帯電防止剤、(xi)ブロッキング防止剤、(xii)特にカーボンブラック及びカーボンナノフィブリルなどの導電性添加剤、(xiii)可塑剤、(xiv)流動調整剤、(xv)増量剤、(xvi)金属不活性化剤並びに前述の前記添加剤の1つ以上を含む組み合わせからなる群から概して選択される、前記補強フィラー及び前記コポリマー(PEDEK-PEEK)と異なる1つ以上の追加の成分(I)とを含み;
- 前記補強フィラーの重量は、前記組成物(C)の総重量を基準として有利には60重量%未満、より好ましくは50重量%未満、更により好ましくは45重量%未満、最も好ましくは35重量%未満であり;及び/又は
- 前記補強フィラーは、前記組成物(C)の総重量を基準として10~60重量%、好ましくは20~50重量%、好ましくは25~45重量%、最も好ましくは25~35重量%の範囲の量で存在する、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物(C)。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物(C)を製造する方法であって、前記少なくとも1種のコポリマー(PEDEK-PEEK)、少なくとも1種のポリマー(SP)の混合を伴い、且つ好ましくは乾式混合、懸濁混合、スラリー混合、溶液混合、溶融混合及びこれらの任意の組み合わせの少なくとも1つ、特に乾式混合と溶融混合との組み合わせを含む方法。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物(C)のマトリックスを含む複合材料であって、
- マットなどの不織布、多軸織物、織布又は編組布を含むが、これらに限定されない、含浸された布の1つ以上のプライを含む複合材料;及び
- 好ましくは繊維が整列されている、一方向(連続又は不連続)繊維強化テープ又はプリプレグ;及び
- 繊維強化テープ又はプリプレグの複数の層を含む多方向繊維強化テープ又はプリプレグ
からなる群から選択される複合材料。
【請求項14】
請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物(C)を含む成形物品であって、好ましくは、(i)好ましくはロッド、スラブ、チューブ、パイプ又はプロファイルからなる群から選択される押出形状;及び(ii)射出成形物品からなる群から選択される前記物品である、成形物品。
【請求項15】
チップ製造を目的とした半導体ウェハに接続されるように設計された静電気放電(ESD)保護デバイスのパーツからなる群から選択される、請求項14に記載の成形物品。
【請求項16】
請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物(C)から製造された少なくともパーツを含む石油及びガス回収用物品。
【請求項17】
石油及び/又はガスを回収する方法であって、請求項16に記載の少なくとも1つの石油及びガス回収用物品を使用することを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年11月8日出願の先行する米国仮特許出願第62/932739号に対する優先権を主張するものであり、この出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、改善された耐熱性及び機械的特性を有する、ポリアリールエーテルケトンコポリマーとポリフェニルスルホンポリマーとの新規な組成物、それを製造する方法並びに石油及びガスの探査及び抽出などの様々な分野におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリアリールエーテルケトン系材料は、高い耐熱性を有する高性能プラスチックとして知られており、極端な条件に対する耐性が要求される多くの工業用途のために使用されている。
【0004】
特に、石油及びガスの探査では、高温及び高圧に耐えることができ、且つ特に塩水、炭化水素、CO2、H2Sなどを含むダウンホール環境に存在する反応性が高い化学物質への前記極端な圧力及び温度条件での長時間の曝露後、要求される性能を維持することができる材料が求められる。
【0005】
したがって、この分野では、式-O-Ph-O-Ph-CO-Ph-の特徴的な繰り返し単位を有し、Ph=パラ-フェニレンであるポリエーテルエーテルケトン(PEEK)は、許容できる加工を可能にする約340℃のその結晶融点のため、広い有用性を見出しているものの、約150℃のそのガラス転移温度は、150℃以上の温度での連続作業に耐える能力をやや制限することになる。
【0006】
この分野では、単位-O-Ph-O-Ph-CO-Ph-(PEEK)と単位-O-Ph-Ph-O-Ph-CO-Ph-(PEDEK)との混合物を含むコポリマーは、許容可能な加工特性を示しながら、PEEKよりも増加したTgを有する材料を提供する試みとして提案されてきた。
【0007】
例えば、国際公開第2018/086873号パンフレットは、耐高温性及び優れた耐薬品性及び機械的特性を備えた、PEDEKを多く含むPEDEK-PEEKコポリマーを開示している。しかしながら、約170℃のガラス転移温度(Tg)により、非常に高温の用途(例えば170℃超)における使用は、制限される。PEDEK-PEEKの結晶化度のため、170℃超で使用可能であるものの、これらの高温では強度及び弾性率が大幅に低下する。現在、一部の用途では、PEDEK-PEEKコポリマーの耐薬品性及び他の特性が必要とされているが、PEDEK-PEEKコポリマーによって提供され得るものよりも更に大きい機械的剛性及び強度が、170℃を超える温度で必要とされる。本明細書では、本明細書で提供されるPEDEKを多く含むPEDEK-PEEKコポリマーと、スルホンポリマーを含む他の様々なポリマー系材料との可能な組み合わせを広く予見しているものの、これらのブレンドを行う手法に起因する特有の有利な特性は、関連付けられないことが付随して認識される。
【0008】
したがって、これらのPEDEK-PEEKコポリマーの制約のため、PEDEK-PEEKコポリマーで実現できるよりも高い温度性能及び改善された機械的特性を提供することができるポリアリールエーテルケトン系材料に対する満たされていない要求が存在する。
【0009】
化学修飾なしで熱的特性、機械的特性及び衝撃特性が変化する、新規な材料を作り出すことを目的とした異なるポリマーのブレンドは、ポリアリールエーテルケトンの領域で既に追求されてきた手法である。加えて、物理的特性は、1つ以上のブレンド成分の結晶化挙動を変更することにより、ブレンドすることによって変更することができる。
【0010】
例えば、特定の温度範囲におけるPEEKの機械的特性を少なくともある程度改善するためにポリフェニルスルホンポリマー(PPSU)をPEEKポリマーにブレンドすることは、数十年にわたって知られている。特に、PEEK/PPSUブレンドは、米国特許出願公開第10,119,023号明細書に開示されている。更に、例えば、国際公開第2014/177392号パンフレットは、石油及びガス関連事業で使用されるパイプラインをライニングするための特定のPEEK/PPSUブレンドの使用を開示しており、特に、そのようなブレンドが、より高い熱たわみ温度(例えば、PEEK/PPSUブレンド、75/25wt/wtについて約181℃のHDT)を備えていることが教示されており、参照のPEEKライナーよりも優れた熱的-機械的安定性が示されている。したがって、PEEK/PPSUブレンドは、より高いアモルファス含有量のため、ブレンドのガラス転移温度超で機械的耐性と化学的耐性との間のトレードオフが存在するものの、約150~190℃の範囲の温度でPEEKよりも改善された機械的特性を示すことが当技術分野で広く認識されている。
【0011】
したがって、特に石油及びガスの探査及び抽出などの非常に要求の厳しい用途で使用するのに適した材料を提供するために、非常に優れた機械的性能を維持しながら、熱定格/熱性能及び耐薬品性の有利な組み合わせを有するポリアリールエーテルケトンポリマーが当技術分野で継続的に求められている。
【0012】
本発明によるPEDEKを多く含むPEDEK-PEEKコポリマーとPPSUとのポリマーブレンドは、この満たされていない要求に対処する。
【0013】
概して、選択的レーザー焼結(SLS)法において、(i)式-O-Ph-O-Ph-CO-Ph-の単位(PEEK単位)を少なくとも50%有するPEEK型の材料と、(ii)ポリ(アリールエーテルスルホン)ポリマーとの粉末ブレンドを使用することに関する、国際公開第2019/053239号パンフレットは、(i)前記PEEK型の材料が、場合により式-O-Ph-Ph-O-Ph-CO-Ph-の単位(すなわちPEDEK単位)を少量ながらも更に含むPEEKコポリマーであり得ること、及び(ii)前記ポリ(アリールエーテルスルホン)ポリマーが、式:
【化1】
の繰り返し単位を有するPPSUであり得ることを更に教示している。これらの教示によれば、ポリ(アリールエーテルスルホン)をPEEK系材料中にブレンドすると、例えば靭性などのPEEKの期待される性能に影響を及ぼすことなしに、その粉末化されたブレンドのSLS加工条件におけるリサイクル性及び熱安定性が改善される。ここで、本出願人は、そのようなPEEKを多く含むPEEK-PEDEKコポリマーにスルホンポリマー、特にPPSUを配合することが、目的とする高温挙動を得るのに効果的ではなく、そのような添加が、高温で価値のある性能の向上を提供できないことを見出した。
【発明の概要】
【0014】
したがって、本発明の第1の目的は、組成物[組成物(C)]であって、
- 少なくとも1種のポリアリールエーテルケトンコポリマー[コポリマー(PEDEK-PEEK)]であって、
- 式(I):
【化2】
の繰り返し単位(R
PEEK)、及び
- 式(II):
【化3】
の繰り返し単位(R
PEDEK)
(上記の式(I)及び(II)において、R’及びR’’のそれぞれは、互いに等しいか又は異なり、各存在において、任意選択的に1つ以上のヘテロ原子を含むC
1~C
12基;スルホン酸及びスルホネート基;ホスホン酸及びホスホネート基;アミン及び第四級アンモニウム基から独立して選択され;j’及びk’’のそれぞれは、互いに等しいか又は異なり、各存在において、0及び1~4の整数から独立して選択される)
であって、55:45~99:1のモル比(R
PEDEK):(R
PEEK)に含まれる、式(I)の繰り返し単位(R
PEEK)及び式(II)の繰り返し単位(R
PEDEK)
を含む少なくとも1種のポリアリールエーテルケトンコポリマー[コポリマー(PEDEK-PEEK)]と;
- 少なくとも1種のスルホンポリマー[ポリマー(SP)]であって、
(PS-1)全ての繰り返し単位に対して50モル%を超える、式(P-1):
【化4】
(式中、
- それぞれのR
PPSUは、それぞれの場合において互いに等しいか又は異なり、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ(alkali)又はアルカリ(alkaline)土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスネート、アミン及び第四級アンモニウムからなる群から独立して選択され;
- それぞれのdは、それぞれの場合において互いに等しいか又は異なり、0、1、2、3及び4から独立して選択され、好ましくは0である)
の繰り返し単位(R
PPSU)を含むポリフェニルスルホンポリマー[ポリマー(PPSU)];及び
(PS-2)全ての繰り返し単位に対して50モル%を超える、式(P-2):
【化5】
(式中、
- それぞれのR
PESUは、それぞれの場合において互いに等しいか又は異なり、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン及び第四級アンモニウムからなる群から独立して選択され;
- それぞれのeは、それぞれの場合において互いに等しいか又は異なり、0、1、2、3及び4から独立して選択され、好ましくは0である)
の繰り返し単位(R
PESU)を含むポリエーテルスルホンポリマー[ポリマー(PESU)]
からなる群から選択される少なくとも1種のスルホンポリマー[ポリマー(SP)]と
を含む組成物[組成物(C)]である。
【0015】
本発明は、溶融状態で前記コポリマー(PEDEK-PEEK)と前記ポリマー(SP)とをブレンドすることを含む、前記組成物(C)を製造する方法に更に関する。
【0016】
本発明は、特に、上記で詳述された本発明の組成物(C)からそれらのパーツを成形することを含む、石油及びガスの回収に使用される装置に含まれるパーツを製造する方法に更に関する。
【0017】
本出願人は、上記で詳述された本発明の組成物(C)が、コポリマー(PEDEK-PEEK)中でのPEDEK型単位が優勢であることに起因して且つポリマー(SP)とのブレンドに起因して、高温における改善された強度及び弾性率と、改善された延性との優れた組み合わせを提供することにおいて有効であることを見出した。更に、ブレンドは、PEDEK-PEEKコポリマー自体と比較して、加工をより容易にする低下した粘度を示す。したがって、本発明の組成物(C)は、高温性能、高延性及び耐衝撃性、耐薬品性並びに加工中の高流動性の組み合わせが求められる成形品の製造に適している。特に、石油及びガスの掘削及び生産用途では、より高い温度及び圧力に耐えることができる溶融加工可能且つ耐薬品性を有する材料が長い間必要とされており、本発明の組成物(C)は、そのような満たされていない要求を満たす。加えて、本発明の組成物は、ポリマー(PPSU)成分の同様の高温耐性を保持するためのみならず、相分離(場合により完全な非混和性に関係する)並びに/又は結晶化速度の低下及び高温性能の低下(場合により完全な混和性に関係する)を回避するために、予想外且つ有利である有益な部分混和挙動を備えている。換言すると、非常に限られた部分的な混和性は、大部分が非混和性のままでありながら、ブレンドを効果的に相溶性にするのに十分である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】PEDEKを多く含むPEDEK-PEEKコポリマーに基づく代表的な実施例と、PEEKを多く含むPEEK-PEDEKコポリマーに基づく対照との破断点引張伸びデータのスケッチであり、全て同量の純粋なPPSUを含む。
【
図2】PEDEKを多く含むPEDEK-PEEKコポリマーに基づく代表的な実施例と、PEEKを多く含むPEEK-PEDEKコポリマーに基づく対照とのDynatupピークエネルギーのスケッチであり、全て同量の純粋なPPSUを含む。
【
図3】400℃における剪断速度の関数としての溶融粘度の傾向を示す(表2のデータ)。C1は、純粋なPEDEK-PEEKコポリマーであり、E2は、PPSUとPEDEK-PEEKコポリマーとの40/60ブレンドである本発明によるポリマーブレンドであり、CE1は、PPSU/PEEKの37/63ブレンドである。本発明による組成物の粘度は、純粋なPEDEK-PEEKコポリマーの粘度と比較して低下している。
【
図4】本発明に従って調製されたブレンド組成物の破断点引張伸び及びDynatup耐衝撃性の傾向を示す(表1のデータ)。
【
図5】本発明に従って調製されたブレンド組成物の高温での曲げ強度の傾向を示す(表1のデータ)。
【
図6】スルホンポリマーとしてのPSUを含む比較のブレンド組成物の高温での曲げ強度の傾向を示す(表2のデータ)。
【発明を実施するための形態】
【0019】
コポリマー(PEDEK-PEEK)
コポリマー(PEDEK-PEEK)は、55:45~99:1、好ましくは60:40~95:5、より好ましくは65:35~90:10、更により好ましくは68:32~80:20のモル比(RPEDEK):(RPEEK)において、上記で詳述された繰り返し単位(RPEDEK)及び(RPEEK)を含む。特に有利であることが見出されたコポリマー(PEDEK-PEEK)は、70:30~80:20の(RPEDEK):(RPEEK)のモル比の、上記で詳述された繰り返し単位(RPEDEK)及び(RPEEK)を含むものである。
【0020】
コポリマー(PEDEK-PEEK)において、繰り返し単位(RPEDEK)及び(RPEEK)の量の合計は、繰り返し単位の総モル数に対して通常少なくとも70モル%、好ましくは少なくとも80モル%、更により好ましくは少なくとも90モル%、最も好ましくは少なくとも95モル%である。
【0021】
コポリマー(PEDEK-PEEK)は、上記で詳述された繰り返し単位(RPEEK)及び(RPEDEK)と異なる繰り返し単位(RPAEK)を更に含み得る。そのような場合、繰り返し単位(RPAEK)の量は、通常、コポリマー(PEDEK-PEEK)の繰り返し単位の総モル数に対して0~5モル%で含まれ、繰り返し単位(RPEEK)及び(RPEDEK)は、コポリマー(PEDEK-PEEK)の繰り返し単位の総モル数に対して少なくとも95モル%の量で存在する。
【0022】
コポリマー(PEDEK-PEEK)中に繰り返し単位(R
PEEK)及び(R
PEDEK)と異なる繰り返し単位(R
PAEK)が存在する場合、これらの繰り返し単位(R
PAEK)は、通常、以下の式(K-A)~(K-M):
【化6】
【化7】
(上記の式(K-A)~(K-M)のそれぞれにおいて、R’のそれぞれは、互いに等しいか又は異なり、各存在において、任意選択的に1つ以上のヘテロ原子を含むC
1~C
12基;スルホン酸及びスルホネート基;ホスホン酸及びホスホネート基;アミン及び第四級アンモニウム基から独立して選択され;及びj’のそれぞれは、互いに等しいか又は異なり、各存在において、0及び1~4の整数から独立して選択され、好ましくは、j’は、ゼロに等しい)
のいずれかに従う。
【0023】
それにもかかわらず、コポリマー(PEDEK-PEEK)は、上記で詳述された繰り返し単位(RPEEK)及び(RPEDEK)から本質的に構成されることが通常好ましい。コポリマー(PEDEK-PEEK)に関連した「~から本質的に構成される」という表現は、欠陥、末端基及びモノマーの不純物が、有利には本発明のブレンド中の同じものの性能に悪影響を及ぼさないように、コポリマー(PEDEK-PEEK)中にごく少量組み込まれ得ることを示すことが意図されている。
【0024】
式(I)の繰り返し単位(R
PEEK)では、フェニル基間の結合は、概して、各フェニル環のパラ位にある。更に、各j’がゼロであるか、又は換言すると、各フェニル環が、カテナリーエーテル又はケトン架橋基に加えて、追加の置換基を有さないことが通常好ましい。これらの好ましい実施形態によれば、繰り返し単位(R
PEEK)は、式(Ia)に従う。
【化8】
【0025】
同様に、式(II)の繰り返し単位(R
PEDEK)では、フェニル基間の結合は、概して、各フェニル環のパラ位にある。更に、各k’’がゼロであるか、又は換言すると、それぞれのフェニル環が、カテナリーエーテル基又はケトン架橋基に加えて、追加の置換基を有さないことが通常好ましい。これらの好ましい実施形態によれば、繰り返し単位(R
PEDEK)は、式(IIb)に従う。
【化9】
【0026】
ポリフェニルスルホンポリマー[ポリマー(PPSU)]
前述したように、ポリフェニルスルホンポリマー[ポリマー(PPSU)]は、全ての繰り返し単位に対して50モル%を超える、上述した式(P-1):
【化10】
の繰り返し単位(R
PPSU)を含む。
【0027】
好ましくは、式(P-1)における各dは、ゼロである。換言すると、ポリマー(PPSU)の繰り返し単位(R
PPSU)は、好ましくは、式:
【化11】
の単位である。
【0028】
ポリマー(PPSU)は、50モル%未満の、上記で詳述された繰り返し単位(RPPSU)と異なる繰り返し単位を含み得る。
【0029】
特に、ポリマー(PPSU)は、上述した繰り返し単位(R
PPSU)と異なる、式(P-3):
-Ar
1-(T’-Ar
2)
n-O-Ar
3-SO
2-[Ar
4-(T-Ar
2)
n-SO
2]
m-Ar
5-O-(P-3)
(式中、
- Ar
1、Ar
2、Ar
3、Ar
4及びAr
5は、互いに且つ各存在において等しいか又は異なり、独立して、芳香族の置換又は無置換の単核基又は多核基であり;
- 各T及びT’は、互いに且つ各存在において等しいか又は異なり、独立して、結合又は任意選択的に1つ以上のヘテロ原子を含む二価基であり;好ましくは、T’は、結合、-CH
2-、-C(O)-、-C(CH
3)
2-、-C(CF
3)
2-、-C(=CCl
2)-、-SO
2-、-C(CH
3)(CH
2CH
2COOH)-及び式:
【化12】
の基からなる群から選択され;
- n及びmは、互いに等しいか又は異なり、独立してゼロ又は1~5の整数である)
に従う繰り返し単位(R
PAES)を含み得る。
【0030】
好ましくは、式(P-2)において、Tは、結合、-CH
2-、-C(O)-、-C(CH
3)
2-、-C(CF
3)
2-、-C(=CCl
2)-、-C(CH
3)(CH
2CH
2COOH)-及び式:
【化13】
の基からなる群から選択される。
【0031】
繰り返し単位(R
PAES)は、繰り返し単位(R
PPSU)と異なる、以下の式(S-A)~(S-D):
【化14】
(式中、
- R’のそれぞれは、互いに等しいか又は異なり、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン及び第四級アンモニウムからなる群から選択され;
- j’のそれぞれは、互いに等しいか又は異なり、独立して、ゼロであるか又は1~4の整数であり;
- T及びT’は、互いに等しいか又は異なり、結合又は任意選択的に1つ以上のヘテロ原子を含む二価基であり;好ましくは、T’は、結合、-CH
2-、-C(O)-、-C(CH
3)
2-、-C(CF
3)
2-、-C(=CCl
2)-、-C(CH
3)(CH
2CH
2COOH)-、-SO
2-及び式:
【化15】
の基からなる群から選択され;
好ましくは、Tは、結合、-CH
2-、-C(O)-、-C(CH
3)
2-、-C(CF
3)
2-、-C(=CCl
2)-、-C(CH
3)(CH
2CH
2COOH)及び式:
【化16】
の基からなる群から選択される)
のものからなる群から特に選択することができる。
【0032】
繰り返し単位(R
PAES)は、以降で詳述される式(i)~(iv)及び(j)~(jjj):
【化17】
の繰り返し単位並びにそれらの混合物からなる群から選択され得る。
【0033】
好ましくは、ポリマー(PPSU)の繰り返し単位の少なくとも60モル%、より好ましくは少なくとも70モル%、一層より好ましくは少なくとも80モル%、最も好ましくは少なくとも90モル%は、上述した繰り返し単位(RPPSU)である。ポリマー(PPSU)中に繰り返し単位(RPPSU)以外の繰り返し単位が本質的に含まれていない場合、優れた結果が得られた。ポリマー(PPSU)の代表的な例は、特にSolvay Specialty Polymers USA,L.L.C.から市販されているRADEL(登録商標)PPSUである。
【0034】
ポリエーテルスルホンポリマー[ポリマー(PESU)]
前述したように、ポリエーテルスルホンポリマー[ポリマー(PESU)]は、全ての繰り返し単位に対して50モル%を超える、式(P-2):
【化18】
の繰り返し単位(R
PESU)を含む。
【0035】
好ましくは、式(P-2)における各eは、ゼロである。換言すると、ポリマー(PESU)の繰り返し単位(R
PESU)は、好ましくは、式:
【化19】
の単位である。
【0036】
ポリマー(PESU)は、50モル%未満の、上記で詳述された繰り返し単位(RPESU)と異なる繰り返し単位を含み得る。
【0037】
特に、ポリマー(PESU)は、上述した繰り返し単位(RPESU)と異なる、上記で詳述された式(P-3):
-Ar1-(T’-Ar2)n-O-Ar3-SO2-[Ar4-(T-Ar2)n-SO2]m-Ar5-O- (P-3)
に従う繰り返し単位(RPAES)を含み得る。
【0038】
繰り返し単位(RPAES)は、繰り返し単位(RPESU)と異なる、上記で既に詳述された式(S-A)~(S-D)のものからなる群から特に選択することができる。
【0039】
繰り返し単位(R
PAES)は、式(i)~(iv)並びに(j)、(jjj)及び(jv):
【化20】
の繰り返し単位並びにこれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0040】
好ましくは、ポリマー(PESU)の繰り返し単位の少なくとも60モル%、より好ましくは少なくとも70モル%、一層より好ましくは少なくとも80モル%、最も好ましくは少なくとも90モル%は、上述した繰り返し単位(RPESU)である。ポリマー(PESU)中に繰り返し単位(RPESU)以外の繰り返し単位が本質的に含まれていない場合、優れた結果が得られた。ポリマー(PESU)の代表的な例は、特にSolvay Specialty Polymers USA,L.L.C.から市販されているVERADEL(登録商標)PESUである。
【0041】
コポリマー(PEDEK-PEEK)とポリマー(SP)とを含む組成物
組成物(C)は、少なくとも1種のコポリマー(PEDEK-PEEK)を含む:これは、1種以上のコポリマー(PEDEK-PEEK)、例えばそれぞれの分子量(RV、MV・・・)のため、又はそれらの繰り返し単位の性質のため、又は何らかの他のパラメータのため、又はこれらの組み合わせを含む理由のために異なり得る、多数のコポリマー(PEDEK-PEEK)を含み得る。
【0042】
組成物(C)は、上記で詳述されたポリマー(PPSU)及びポリマー(PESU)からなる群から選択される少なくとも1種のポリマー(SP)を含む。すなわち、組成物(C)は、1種のみのポリマー(SP)を含み得、これは、上述したポリマー(PPSU)若しくはポリマー(PESU)であり得るか、又は複数のポリマーを含み得、それらのそれぞれは、ポリマー(PPSU)及びポリマー(PESU)、例えば複数のポリマー(PPSU)、複数のポリマー(PESU)又は1種以上のポリマー(PPSU)と1種以上のポリマー(PESU)との組み合わせから独立して選択することができる。
【0043】
特定の実施形態では、組成物(C)は、少なくとも1種のポリマー(PPSU)を含む:これは、1種以上のポリマー(PPSU)、例えばそれぞれの分子量(RV、MV・・・)のため、又はそれらの繰り返し単位の性質のため、又は何らかの他のパラメータのため、又はこれらの組み合わせを含む理由のために異なり得る、多数のコポリマー(PPSU)を含み得る。
【0044】
特定の実施形態では、組成物(C)は、少なくとも1種のポリマー(PESU)を含む:これは、1種以上のポリマー(PESU)、例えばそれぞれの分子量(RV、MV・・・)のため、又はそれらの繰り返し単位の性質のため、又は何らかの他のパラメータのため、又はこれらの組み合わせを含む理由のために異なり得る、多数のコポリマー(PESU)を含み得る。
【0045】
組成物(C)は、5/95~95/5の重量比又は好ましくは10/90~90/10の重量比でコポリマー(PEDEK-PEEK)及びポリマー(SP)を含み得る。
【0046】
意図される使用分野に応じて、コポリマー(PEDEK-PEEK)とポリマー(SP)との間の重量比を調整することができ、本発明の有益な効果を考慮して、例えば特性の相乗的な強化を組成の全範囲にわたって達成することができる。
【0047】
例えば、ポリマー(SP)は、コポリマー(PEDEK-PEEK)及びポリマー(SP)の合計重量を基準として少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%又は更に少なくとも35%の重量の量で存在し得る。
【0048】
逆に、組成物(C)は、上記で詳述されたポリマー(SP)を、コポリマー(PEDEK-PEEK)及びポリマー(SP)の合計重量を基準として90%未満、70%未満、60%未満又は50%未満の重量の量で含み得る。
【0049】
別の好ましい実施形態によれば、組成物(C)は、上記で詳述されたコポリマー(PEDEK-PEEK)及びポリマー(SP)を、前記組成物(C)の総重量を基準として、少なくとも95%ではないとしても、少なくとも90%の合計重量の量で含む。更に、組成物(C)が、上記で詳述されたコポリマー(PEDEK-PEEK)とポリマー(SP)とから本質的になる実施形態が提供される。本発明の目的のために、「~から本質的になる」という表現は、上記で詳述されたコポリマー(PEDEK-PEEK)及びポリマー(SP)と異なる任意の追加の成分が、組成物の有利な特性を実質的に変えないように、組成物(C)の総重量を基準として最大1重量%の量で存在することを意味すると理解すべきである。
【0050】
それにもかかわらず、組成物(C)には、多くの場合、コポリマー(PEDEK-PEEK)及びポリマー(SP)の他に追加的な成分が配合される。
【0051】
組成物(C)は、例えば、少なくとも1種の補強フィラーを更に含み得る。補強フィラーは、当業者に周知である。それらは、好ましくは、繊維状及び粒子状のフィラーから選択される。繊維状フィラーは、チョップド繊維として又は布地の形態を含む連続繊維として組成物(C)に添加することができる。より好ましくは、補強フィラーは、無機フィラー(タルク、マイカ、カオリン、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム、窒化ホウ素など)、ガラス繊維、炭素繊維、合成高分子繊維、アラミド繊維、アルミニウム繊維、チタン繊維、マグネシウム繊維、ホウ素カーバイド繊維、ロックウール繊維、鋼繊維、ウォラストナイトなどから選択される。一層より好ましくは、これは、マイカ、カオリン、ケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ガラス繊維、炭素繊維及びウォラストナイトなどから選択される。
【0052】
好ましくは、フィラーは、繊維状フィラーから選択される。特定の分類の繊維状フィラーは、ウィスカー、すなわちAl2O3、SiC、BC、Fe及びNiなどの様々な原料から製造された単結晶繊維からなる。
【0053】
本発明の一実施形態では、補強フィラーは、ウォラストナイト及びガラス繊維から選択される。繊維状フィラーの中でも、ガラス繊維が好ましい。それらとしては、Additives for Plastics Handbook,2nd edition,John Murphyのチャプター5.2.3,p.43-48に記載されているようなチョップドストランドA-、E-、C-、D-、S-、T-及びR-ガラス繊維が挙げられる。
【0054】
ポリマー組成物(C)中に任意選択的に含まれ得るガラス繊維は、円形断面又は非円形断面(楕円形又は長方形の断面など)を有し得る。
【0055】
使用されるガラス繊維が円形断面を有する場合、それらは、好ましくは、3~30μm、特に好ましくは5~12μmの平均ガラス繊維直径を有する。円形の断面を有する様々な種類のガラス繊維は、それらを製造するためのガラスの種類に応じて市場で入手可能である。特に、E-ガラス又はS-ガラスから製造されたガラス繊維を挙げることができる。
【0056】
非円形断面を有する標準的なE-ガラス材料で良好な結果が得られた。丸い断面のS-ガラス繊維を用いてポリマー組成物を補強する場合、特に直径6μmの丸い断面の繊維(E-ガラス又はS-ガラス)を使用する場合、優れた結果が得られた。
【0057】
本発明の別の実施形態では、補強フィラーは、炭素繊維である。
【0058】
本明細書で使用される「炭素繊維」という用語は、黒鉛化された、部分的に黒鉛化された及び黒鉛化されていない炭素強化繊維又はそれらの混合物を含むことが意図されている。本発明に有用な炭素繊維は、例えば、レーヨン、ポリアクリロニトリル(PAN)、芳香族ポリアミド又はフェノール樹脂などの異なるポリマー前駆体の熱処理及び熱分解によって有利に得ることができる。本発明に有用な炭素繊維は、ピッチ系材料から得ることもできる。「グラファイト繊維」という用語は、炭素繊維の高温熱分解(2000℃超)によって得られる炭素繊維を指すことが意図されており、炭素原子は、グラファイト構造と同様の方法で配置される。本発明に有用な炭素繊維は、好ましくは、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、グラファイト繊維及びこれらの混合物から構成される群から選択される。
【0059】
前記補強フィラーの重量は、組成物(C)の総重量を基準として有利には60重量%未満、より好ましくは50重量%未満、更により好ましくは45重量%未満、最も好ましくは35重量%未満である。
【0060】
好ましくは、補強フィラーは、組成物(C)の総重量を基準として10~60重量%、好ましくは20~50重量%、好ましくは25~45重量%、最も好ましくは25~35重量%の範囲の量で存在する。
【0061】
補強フィラーは、単層又は多層カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、グラフェン、モンモリロナイトなどのナノクレイ又は当技術分野で公知の他の任意のナノフィラーなどのナノ材料であり得る。
【0062】
組成物(C)は、任意選択的に、(i)特に染料などの着色剤、(ii)特に二酸化チタン、硫化亜鉛及び酸化亜鉛などの顔料、(iii)光安定剤、例えばUV安定剤、(iv)熱安定剤、(v)特に有機亜リン酸エステル及び亜ホスホン酸エステルなどの酸化防止剤、(vi)酸捕捉剤、(vii)加工助剤、(viii)結晶化核剤、(ix)内部潤滑剤及び/又は外部潤滑剤、(x)難燃剤、(xi)煙抑制剤、(x)帯電防止剤、(xi)ブロッキング防止剤、(xii)特にカーボンブラック及びカーボンナノフィブリルなどの導電性添加剤、(xiii)可塑剤、(xiv)流動調整剤、(xv)増量剤、(xvi)金属不活性化剤並びに前述の添加剤の1つ以上を含む及び組み合わせからなる群から概して選択される、上記で詳述された補強フィラー並びにコポリマー(PEDEK-PEEK)及びポリマー(SP)と異なる1つ以上の追加の成分(I)を更に含み得る。
【0063】
1つ以上の追加の成分(I)が存在する場合、ポリマー組成物(C)の総重量を基準としたそれらの総重量は、通常、20%未満、好ましくは10%未満、より好ましくは5%未満、更により好ましくは2%未満である。
【0064】
特定の実施形態によれば、組成物(C)は、コポリマー(PEDEK-PEEK)と異なるポリアリールエーテルポリマー(例えば、PEEK、PEK、PEKKなど)及びポリアリールスルフィドなどの1種以上の追加のポリマー成分との組み合わせにおいて、上記で詳述されたコポリマー(PEDEK-PEEK)及びポリマー(SP)を含み得る。
【0065】
それにもかかわらず、組成物(C)は、典型的には、コポリマー(PEDEK-PEEK)とポリマー(SP)とに基づく組成物であることが理解される。一般的に言えば、これは、コポリマー(PEDEK-PEEK)及びポリマー(SP)の合計重量が、その中に含まれる可能性がある他のあらゆるポリマー成分の重量の量を超えていることを意味する。
【0066】
別の実施形態によれば、上記で詳述されたコポリマー(PEDEK-PEEK)及びポリマー(SP)のみが組成物(C)中のポリマー成分である。
【0067】
「ポリマー成分」という表現は、その通常の意味に従って理解されるべきである。すなわち、典型的には2000以上の分子量を有する、繰り返される連結単位によって特徴付けられる化合物が包含される。
【0068】
特定の実施形態によれば、ポリマー(SP)は、ポリマー(PPSU)であり、組成物(C)は、コポリマー(PEDEK-PEEK)及びポリマー(PPSU)の合計重量を基準として少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%又は更に少なくとも35%の重量の量で前記ポリマー(PPSU)を含み得る。これらの実施形態では、組成物(C)は、コポリマー(PEDEK-PEEK)及びポリマー(PPSU)の合計重量を基準として90%未満、70%未満、60%未満又は50%未満の重量の量において、上記で詳述されたポリマー(PPSU)を含み得る。ポリマー(SP)及びコポリマー(PEDEK-PEEK)を含む組成物(C)に関連した上記で詳述された全ての特徴は、本明細書で言及される実施形態の特性であり、ポリマー(SP)は、ポリマー(PPSU)である。特に有利な実施形態は、コポリマー(PEDEK-PEEK)及びポリマー(PPSU)の合計重量を基準として60~90%の量のコポリマー(PEDEK-PEEK)及び10~40%の量のポリマー(PPSU)を含む組成物(C)である。
【0069】
別の実施形態によれば、ポリマー(SP)は、ポリマー(PESU)であり、組成物(C)は、コポリマー(PEDEK-PEEK)及びポリマー(PESU)の合計重量を基準として少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%又は更に少なくとも35%の重量の量で前記ポリマー(PESU)を含み得る。これらの実施形態では、組成物(C)は、コポリマー(PEDEK-PEEK)及びポリマー(PESU)の合計重量を基準として90%未満、70%未満、60%未満又は50%未満の重量の量において、上記で詳述されたポリマー(PESU)を含み得る。ポリマー(SP)及びコポリマー(PEDEK-PEEK)を含む組成物(C)に関連した上記で詳述された全ての特徴は、ここで言及される実施形態と同様の特性であり、ポリマー(SP)は、ポリマー(PESU)である。別の特に有利な実施形態は、コポリマー(PEDEK-PEEK)及びポリマー(PESU)の合計重量を基準として60~90%の量のコポリマー(PEDEK-PEEK)及び10~40%の量のポリマー(PESU)を含む組成物(C)である。
【0070】
組成物(C)は、例えば、乾式混合、懸濁混合、スラリー混合、溶液混合、溶融混合及びこれらの任意の組み合わせ、特に乾式混合と溶融混合との組み合わせにより、上記で詳述された少なくとも1種のコポリマー(PEDEK-PEEK)、少なくとも1種のポリマー(SP)、任意選択的に補強フィラー及び任意選択的にポリマー系材料に望まれる追加の成分(I)を均質に混合することを伴う様々な方法によって調製することができる。
【0071】
典型的には、好ましくは粉末状態の上記で詳述されたコポリマー(PEDEK-PEEK)及びポリマー(SP)並びに任意選択的に補強フィラー及び任意選択的に追加の成分(I)の乾式混合は、物理的混合物、特に少なくとも1種のコポリマー(PEDEK-PEEK)及び少なくとも1種のポリマー(SP)並びに任意選択的に補強フィラー及び任意選択的に追加の成分(I)の粉末混合物を得るために、特にヘンシェル型ミキサー及びリボンミキサーなどの高強度ミキサーを使用することによって行われる。
【0072】
代わりに、組成物(C)で望まれる少なくとも1種のコポリマー(PEDEK-PEEK)、少なくとも1種のポリマー(SP)、任意選択的に補強フィラー及び任意選択的に追加の成分(I)の均質な混合は、物理的混合物を得るための単軸又は多軸の回転機構に基づくタンブルブレンドによって行われる。
【0073】
代わりに、上記で詳述された粉末形態の前記コポリマー(PEDEK-PEEK)及び前記ポリマー(SP)並びに任意選択的に補強フィラー及び任意選択的に追加の成分(I)を、例えばメタノールなどの適切な液体中で撹拌機を使用して最初にスラリー化し、続いて液体を濾過により除去して、少なくとも1種のコポリマー(PEDEK-PEEK)、少なくとも1種のポリマー(SP)、任意選択的に補強フィラー及び任意選択的に追加の成分(I)を得ることにより、コポリマー(PEDEK-PEEK)、前記ポリマー(SP)、任意選択的に補強フィラー及び任意選択的に追加の成分(I)のスラリー混合が行われる。
【0074】
別の実施形態では、例えばジフェニルスルホン、ベンゾフェノン、4-クロロフェノール、2-クロロフェノール、メタ-クレゾールなどの適切な溶媒又は溶媒ブレンド中で撹拌機を使用して、上記で詳述されたコポリマー(PEDEK-PEEK)、ポリマー(SP)、任意選択的に補強フィラー及び任意選択的に追加の成分(I)を溶液混合することが行われる。ジフェニルスルホン及び4-クロロフェノールが最も好ましい。
【0075】
前述した手法の1つによる物理的混合工程に続いて、少なくとも1種のコポリマー(PEDEK-PEEK)、少なくとも1種のポリマー(SP)、任意選択的に補強フィラー及び任意選択的に追加の成分(I)の物理的混合物、特に得られる粉末混合物は、典型的には、圧縮成形、射出成形、押出成形などの特に溶融製造プロセスを含む当技術分野で公知の方法によって溶融製造され、成形物品、特に以下でより詳細に説明する石油及びガス回収用物品のパーツ又は完成した石油及びガス回収用物品などを提供する。
【0076】
そのようにして得られた物理的混合物、特に得られた粉末混合物は、上記で詳述された重量比において、上記で詳述されたコポリマー(PEDEK-PEEK)、ポリマー(SP)、補強フィラー及び任意選択的に他の成分(I)を含むことができるか、又はマスターバッチとして使用されてから、後続の処理工程で追加の量の上記で詳述されたコポリマー(PEDEK-PEEK)、ポリマー(SP)、上記で詳述された補強フィラー及び任意選択的に他の成分(I)で希釈される濃縮混合物であり得る。例えば、得られる物理的混合物は、スラブ又はロッドのようなストック形状に押し出すことができ、これらから最終パーツを機械加工することができる。代わりに、物理的混合物は、石油及びガス回収用物品の完成パーツ又はストック形状に圧縮成形又は射出成形することができ、これらから石油及びガス回収用物品の完成パーツを機械加工することができる。
【0077】
溶融混錬により本発明の組成物を製造することも可能である。組成物(C)は、上述した粉末混合物を更に溶融混錬することによって製造することができる。代替形態として、溶融混錬は、上記で詳述されたコポリマー(PEDEK-PEEK)及びポリマー(SP)、上記で詳述された補強フィラー及び任意選択的に他の成分(I)に直接影響を与え得る。そのような場合、コポリマー(PEDEK-PEEK)及びポリマー(SP)は、溶融混錬装置に供給されるペレットの形態又は粉末の形態で供給することができ、確実に安定供給するためにペレットが好ましい形態である。同方向回転及び逆回転押出機、単軸押出機、コニーダ、ディスクパックプロセッサー及び他の様々なタイプの押出装置などの従来の溶融混錬装置を使用することができる。好ましくは、押出機、より好ましくは二軸押出機を使用することができる。
【0078】
必要に応じて、混錬スクリューの設計、例えばフライトピッチ及び幅、クリアランス、長さ並びに運転条件は、混合物(例えば、予め形成された粉末混合物)又は上記で詳述された成分を有利に完全に溶融し、様々な成分の均一な分布を有利に得るのに十分な熱及び機械的エネルギーが供給されるように有利に選択される。バルクポリマー成分とフィラー成分との間で最適な混合が達成されると、本発明の組成物(C)のストランド押出物を得ることが有利に可能である。組成物(C)のストランド押出物は、水噴霧を備えたコンベア上での冷却時間後に例えば回転カッティングナイフなどによって細かく切断することができる。その結果、組成物(C)は、ペレット又はビーズの形態で提供することができ、これらは、その後、異なる加工技術により、特に異なる形状及びサイズの成形物品の製造のために更に使用することができる。
【0079】
組成物(C)は、付加製造における使用、例えば選択的レーザー焼結又は溶融フィラメント製造による加工のための粉末(例えば、粉砕、製粉及び/又は分級による)又はフィラメント(例えば、押出により製造)の形態で更に提供することができる。
【0080】
いくつかの実施形態では、組成物(C)は、組成物(C)から製造されたポリマーマトリックスと、その中に埋め込まれた複数の繊維とを含む複合材料を製造するために使用することができる。組成物(C)のマトリックスを含む複合材料は、実質的に二次元の材料の形態、例えばシート及びテープなど、他の2つの次元(幅及び長さ)よりも大幅に小さい1つの次元(厚さ又は高さ)を有する材料の形態で提供され得る。特定の好ましい実施形態では、組成物(C)のマトリックスを含む複合材料は、
- マットなどの不織布、多軸織物、織布又は編組布を含むが、これらに限定されない、含浸された布の1つ以上のプライを含む複合材料;及び
- 好ましくは繊維が整列されている、の一方向(連続又は不連続)繊維強化テープ又はプリプレグ;及び
- 繊維強化テープ又はプリプレグの複数の層を含む多方向繊維強化テープ又はプリプレグ
からなる群から選択される。
【0081】
上述した複合材料において使用される布及び繊維は、任意のタイプのものであり得る。ただし、特に連続炭素繊維の一方向テープを提供するために、炭素布地及び繊維を使用することが好ましい。
【0082】
成形物品
本発明の別の目的は、上記で詳述された組成物(C)を含む成形物品である。
【0083】
上記で詳述された組成物(C)は、成形物品を提供するために、特に押出成形、射出成形及び圧縮成形を含む通常の溶融加工技術によって加工することができる。
【0084】
本発明の成形物品は、好ましくは、(i)好ましくはロッド、スラブ、チューブ、パイプ又はプロファイルからなる群から選択される押出形状;及び(ii)射出成形物品からなる群から選択される。
【0085】
特定の実施形態によれば、成形物品は、例えば、特にフィルム、シース及びシートなど、1つの寸法(厚さ又は高さ)が他の2つの特徴的な寸法(幅及び長さ)よりも大幅に小さいパーツなど、実質的に二次元の物品の形態である。
【0086】
別の実施形態によれば、成形物品は、例えば、アンダーカット及びインサートなどを含む可能性がある凹面又は凸面の部分を有する複雑な形状のパーツの形態など、例えば同様の形で空間の三次元に実質的に広がっている三次元パーツとして提供される。
【0087】
潜在的な用途としては、半導体及びICチップ製造のための静電気放電(ESD)構成要素、電気電子機器、ワイヤ及びケーブル絶縁、高性能フィルム、医療用及び医薬品構成要素など、自動車、航空宇宙、半導体製造における様々な産業のための及び耐久性のある構成要素が挙げられる。
【0088】
特定の実施形態によれば、上記で詳述された組成物(C)から製造された成形物品は、静電気放電(ESD)保護デバイスのパーツとして提供され、これは、例えば、チップ製造を目的とした半導体ウェハに接続されるように設計され得る。
【0089】
特定の実施形態によれば、上記で詳述された組成物(C)から製造された成形物品は、石油及びガス回収用物品のパーツとして提供される。
【0090】
O&Gにおけるコポリマー(PEDEK-PEEK)の使用
本発明は、組成物(C)からパーツを成形することを含む、石油及びガスの回収に使用される装置に含まれるパーツを製造する方法に更に関する。成形は、特に押出成形、射出成形、圧縮成形などを含む任意の溶融加工技術によって実現することができる。
【0091】
上記で詳述された組成物(C)から製造された少なくとも1つのパーツを含む石油及びガス回収用物品は、本発明の更に別の目的である。
【0092】
本発明の目的のために、「石油及びガス回収用物品」という用語は、特に高圧(HP)/高温(HT)条件において、石油及びガス回収用途で便利に使用されるように設計された任意の物品を意味することが意図されている。
【0093】
明確にするために明記しておくと、「石油及びガス回収用物品のパーツ」という用語は、他のものと組み合わされて石油及びガス回収用物品全体を構成する部品又は部分を示すことが意図されている。したがって、石油及びガス回収用物品の外面コーティングは、この範囲に含まれる。したがって、本発明による石油及びガス回収用物品の少なくとも1つのパーツは、コーティングであり得る。
【0094】
石油及びガス回収用途の代表的な例としては、限定するものではないが、(i)米国特許第5662170号明細書(これらの開示全体は、参照により本明細書に組み込まれる)に特に記載されている、深い、より高温、より高圧の石油及びガス井の掘削及び仕上、(ii)従来、3つの段階、すなわち一次油回収段階、二次又は補助油回収段階及び三次又は強化油回収段階に細分される石油及びガス回収方法、(iii)集ガス及び集油処理用途、(iv)前記深い、より高温の、より高圧の坑井から製油所などへのガス及び石油の複雑な輸送が挙げられる。
【0095】
本明細書の上記で述べた全てのこれらの用途は、当業者によく知られており、共通した意味で理解されるべきである。
【0096】
本発明において有用な石油及びガス回収用物品の非限定的な例としては、掘削システム;掘削リグ;特に米国特許出願公開第2010239441号明細書(この開示全体は、参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているようなコンプレッサーシステム;ポンプシステム;モーターシステム、リザーバセンサーなどのセンサー;温度及び/又は圧力などの制御システム;刺激及び流れ制御システム;特に米国特許第6655456号明細書(この開示全体は、参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているようなライナーハンガーシステム;特に米国特許第7874356号明細書(この開示全体は、参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているようなパッカーシステム;パイプシステム、バルブシステム、チュービングシステム、ケーシングシステムなどが挙げられる。
【0097】
本明細書の上記で述べた全てのこれらのシステムは、当業者によく知られており、共通した意味で理解されるべきである。
【0098】
「掘削リグ」という用語は、油井又は天然ガス抽出井を掘削するために使用される構造的なハウジング設備を意味し、これは、単一の物品を含み得るか、又は2つ以上の構成要素を含み得る。典型的には、前記掘削リグの構成要素としては、限定するものではないが、泥タンク、シェールシェーカー、泥ポンプ、ドリルパイプ、ドリルビット、掘削ライン及び電気ケーブルトレイが挙げられる。
【0099】
本発明において有用なポンプシステムの非限定的な例は、ジェットポンプシステム、水中ポンプシステム、特に米国特許第6863124号明細書(この開示全体は、参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているような水中電動ポンプ及びビームポンプである。
【0100】
本発明において有用なモーターシステムの非限定的な例は、特に米国特許出願公開第2012234603号明細書(この開示全体は、参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているようなマッドモーターアセンブリである。
【0101】
本発明において有用なパイプシステムの非限定的な例としては、硬質パイプ及び軟質パイプ、フレキシブルライザー、パイプインパイプ、パイプライナー、海底ジャンパー、スプール及びアンビリカルを含むパイプを挙げることができる。
【0102】
典型的な軟質パイプは、例として、国際公開第01/61232号パンフレット、米国特許第6123114号明細書及び米国特許第6085799号明細書に記載されており、これらの開示全体は、参照により本明細書に組み込まれる。このような軟質パイプは、特に、パイプの長さ全体にわたって非常に高い又は非常に異なる水圧がみられる流体の輸送のために使用することができ、例えば海底から海面又はその近くの設備まで延びるフレキシブルライザーの形態をとることができ、また、これらは、一般的に、様々な機器間で液体又は気体を輸送するためのパイプとして、又は海底深くに敷設されたパイプとして、又は海面近くの機器間のパイプとして、使用することもできる。
【0103】
好ましいパイプシステムは、パイプ、フレキシブルライザー及びパイプライナーである。
【0104】
「バルブ」という用語は、通路、パイプ、入口、出口などを通る液体、気体又は他の任意の物質の流れを停止又は制御するための任意の装置を意味する。本発明において有用なバルブシステムの非限定的な例としては、特にチョークバルブ、熱膨張バルブ、チェックバルブ、ボールバルブ、バタフライバルブ、ダイヤフラムバルブ、ゲートバルブ、グローブバルブ、ナイフバルブ、ニードルバルブ、ピンチバルブ、ピストンバルブ、プラグバルブ、ポペットバルブ、スプールバルブ、減圧バルブ、サンプリングバルブ及び安全バルブを挙げることができる。
【0105】
本発明による石油及びガス回収用物品の少なくとも1つのパーツは、取り付けパーツ;シール、特にシールリング、好ましくはバックアップシールリング、留め具など;スナップフィットパーツ;相互に移動可能なパーツ;機能要素、操作要素;追跡要素;調整要素;キャリア要素;フレーム要素;フィルム;スイッチ;コネクタ;ワイヤ、ケーブル;ベアリング、ハウジング、コンプレッサー構成要素、例えばコンプレッサーバルブ及びコンプレッサープレート並びに石油及びガス回収用物品で使用されるハウジング以外の任意の他の構造パーツ、例えばシャフト、シェル、ピストンなどの多数のリストの物品から選択することができる。
【0106】
特に、組成物(C)は、シール、留め具、ケーブル、電気コネクタ及び石油及びガス回収用物品のハウジングパーツの製造に非常に適している。
【0107】
好ましい一実施形態では、本発明による石油及びガス回収用物品の少なくとも1つのパーツは、有利には、石油及びガス回収のためのハウジング、シール、電気コネクタ又はケーブルである。
【0108】
ケーブルは、特に、石油及びガス回収用物品内の異なるパーツを電気的に接続する、例えば異なる電気コネクタを接続するか、ツールをコネクタ、機器若しくは他のツールに接続するか、機器をコネクタ、他の機器若しくはツールに接続するか、又は電源をコネクタ、機器若しくはツールに接続するワイヤであり得る。ケーブルは、信号をコンピュータシステムに運ぶために有利に使用することもできる。
【0109】
特に好ましい実施形態では、ケーブルは、被覆されたワイヤである。
【0110】
「石油及びガス回収ハウジング」とは、石油及びガス回収用物品の裏面カバー、前面カバー、フレーム及び/又はバックボーンの1つ以上を意味する。ハウジングは、単一の物品であり得るか、又は2つ以上の構成要素を含み得る。「バックボーン」とは、石油及びガス回収用物品の他の構成要素が取り付けられる構造構成要素を意味する。バックボーンは、石油及びガス回収用物品の外部から見えないか又は部分的にのみ見える内部構成要素であり得る。
【0111】
典型的な留め具は、例えば、国際公開第2010/112435号パンフレット(それらの開示全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されており、それらとしては、限定するものではないが、ボルト、ナット、スクリューねじ、ヘッドレスセットねじ、スクリベット、ねじ山付スタッド及びねじ山付きブッシングなどのねじ山付き留め具;並びに特にピン、止め輪、リベット、ブラケット及び留め具ワッシャーなどのねじ山なし留め具が挙げられる。
【0112】
石油及びガス回収用物品の構成要素のシーリングは、重要であり、シールは、あらゆる種類の石油及びガス回収用物品だけでなく、坑井の仕上、試験及び生産後も坑内に残っている石油及びガス回収用物品にも使用されていると言うことができる。したがって、シールは、上述したこれらの過酷な条件に実質的に無期限耐える必要がある。電子機器を除いて、シールは、石油及びガス回収用物品の最も脆弱な部分と見なすことができることに言及しておくことが重要である。
【0113】
本発明の一実施形態では、石油及びガス回収用物品の少なくとも一部は、シールシステムであり、前記シールシステムは、金属シール、エラストマーシール、金属-金属シール並びにエラストマー及び金属-金属シールからなる群から選択される。
【0114】
シールシステムは、典型的には、ドリルビット、モーターシステム、特にマッドモーター、リザーバセンサー、刺激及び流量制御システム、ポンプシステム、特に水中電動ポンプ、パッカー、ライナーハンガー、チューブ、ケーシングなどにおいて使用される。
【0115】
シールシステムの代表的な例は、限定するものではないが、特にC-リング、E-リング、O-リング、U-リング、ばね入りC-リング、バックアップリングなどのシールリング;ファスナーシール;ピストンシール;gask-O-シール;一体型シール;及びラビリンスシールである。
【0116】
特に好ましい実施形態では、本発明による石油及びガス回収用物品の少なくとも1つのパーツは、シールリング、好ましくはバックアップシールリングである。
【0117】
石油及びガス回収用物品の総重量を基準とした組成物(C)の重量は、通常、1%超、5%超、10%超、好ましくは15%超、20%超、30%超、40%超、50%超、60%超、70%超、80%超、90%超、95%超、99%超である。
【0118】
石油及びガス回収用物品は、1つのパーツから構成することができる。すなわち、これは、単一構成要素の物品である。その場合、単一のパーツは、好ましくは、組成物(C)からなる。
【0119】
代わりに、石油及びガス回収用物品は、複数のパーツから構成され得る。その場合、石油及びガス回収用物品の1つのパーツ又は複数のパーツのいずれかは、組成物(C)から構成され得る。石油及びガス回収用物品の複数のパーツが組成物(C)から構成されている場合、それらのそれぞれは、全く同じ組成物(C)から構成され得る。代わりに、これらの少なくとも2つは、異なる組成物(C)から構成され得る。
【0120】
本発明の別の目的は、石油及びガス回収用物品の上述したパーツを製造する方法を提供することである。そのような方法は、特に限定されない。上記で詳述された組成物(C)は、通常、射出成形、押出成形、圧縮成形又は他の成形技術によって加工することができる。
【0121】
本発明の一実施形態では、石油及びガス回収用物品の上述したパーツ又は石油及びガス回収用物品を製造する方法は、圧縮成形又は射出成形及びそれに続く組成物(C)の固化の工程を含む。
【0122】
別の実施形態では、石油及びガス回収用物品の上述したパーツ又は石油及びガス回収用物品を製造する方法は、コーティングの工程を含む。
【0123】
例えば、組成物(C)は、任意の適切なコーティング方法を使用することにより、好ましくはワイヤの周りに押出コーティングしてコーティングされたワイヤを形成することにより、コーティングとしてワイヤに塗布することができる。
【0124】
ワイヤコーティングを製造するための技術は、当技術分野で周知である。
【0125】
本発明の別の実施形態では、石油及びガス回収用物品の上述したパーツ又は上述した石油及びガス回収用物品を製造する方法は、あらゆる種類のサイズ及び形状を有するパーツにおける標準的な形状の構造パーツの機械加工を含む。前記標準的な形状の構造パーツの非限定的な例としては、特に、プレート、ロッド、スラブなどが挙げられる。前記標準的な形状の構造パーツは、組成物(C)の押出成形、圧縮成形又は射出成形によって得ることができる。
【0126】
コポリマー(PEDEK-PEEK)を使用する石油及び/又はガスの回収方法
本発明の別の態様によれば、本明細書により、上記で定義した少なくとも1つの石油及びガス回収用物品を使用することを含む、石油及び/又はガスを回収する方法が提供される。
【0127】
本発明の方法は、有利には、前記石油及びガス回収用物品を使用することを含む、地下層から石油及び/又はガスを回収する方法である。
【0128】
地下層は、有利には、深く埋まっている貯留層であり得、6,000メートルを超える深さで300℃近い温度及び1,500バールを超える圧力に遭遇する場合がある。本発明の前記石油及びガス用物品は、地下の過酷な条件に長時間耐えるために必要な全ての要件及び特性を備えている。
【0129】
本発明の方法は、以下からなる群から選択される作業の少なくとも1つを有利に含むことができる:
1.上記で定義した少なくとも1つの石油及びガス回収用物品を使用して、地下層の石油及び/又はガス貯留層を探索又は開発するために少なくとも1つの坑井を掘削すること;
2.上記で定義した少なくとも1つの石油及びガス回収用物品を使用して少なくとも1つの坑井の仕上を行うこと;
3.地下層の石油及び/又はガス貯留層から地表面へ石油及び/又はガスを輸送すること。
【0130】
石油及び/又は天然ガス貯留層を探索又は開発するための掘削ボアホールの操業は、通常、上記で定義した石油及びガス回収用物品の実施形態である掘削リグ装置の使用を含む。
【0131】
図1は、掘削リグ装置を概略的に示している。この装置では、ドリルパイプ又はストリング(#5)が掘削流体の導管として機能する。これは、通常、一体に連結された、デリックに垂直に立っている中空管のジョイントから製造される。ドリルビット(#7)装置は、ドリルストリングの端に取り付けられており、このビットは、掘削される岩を粉々にする。これには、掘削流体を通して排出するためのジェットも含まれる。回転台(#6)又はトップドライブ(図示せず)は、取り付けられたツール及びビットと共にドリルストリングを回転させる。
【0132】
機械セクション又はドローワークセクション(#13)は、スプールを含み、その主な機能は、ドリルラインをリールイン/アウトして、トラベリングブロックを上下させることである。
【0133】
マッドポンプ(#11)は、掘削流体をシステム全体に循環させるために使用され、泥は、掘削流体の予備貯留場となるマッドタンク又はマッドピット(#9)から吸引される。泥は、導管#14を通り、ドリルパイプ(#5)を通ってビット(#7)まで流れる。これは、掘削切削物を含んでボアホール内を上向きに流れ、導管(#12)を通って抜き出されたマッドピットに戻される。シェールシェーカー(#10)は、掘削流体がボアホールにポンプで戻される前に、掘削流体から掘削切削物を分離する。
【0134】
装置は、ボアホールから流体及びガスが意図せずに逃げるのを防ぐために坑口に設置された装置(図示せず)を更に含むことができる。
【0135】
上記で詳述された掘削リグの構成要素のいずれも、上記で詳述された石油及びガス回収用物品であり得る。すなわち、上記で定義した組成物(C)を含むか又はそれから製造された少なくともパーツを含み得る。
【0136】
坑井を仕上げる作業2.は、坑井からの地質層を操業に持ち込むために必要な全ての準備又は艤装作業を包括する作業である。これには、主に、必要な仕様に合わせて坑底を準備し、生産チュービングとそれに関連するダウンホールツール及び制御装置を運転し、必要に応じて穿孔及び刺激を行うことが含まれる。場合により、ケーシングを行ってセメンチングするプロセスも含まれる。これらの全ての単一の作業において、上記で詳述された組成物(C)を含む少なくとも1つのパーツを含む物品を使用することができる。
【0137】
参照により本明細書に組み込まれる任意の特許、特許出願及び刊行物の開示が用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【0138】
ここで、以下の実施例を参照して本発明を説明するが、実施例の目的は、例示にすぎず、本発明の範囲を限定することを意図されていない。
【実施例】
【0139】
使用材料
これらの実施例で使用されるコポリマー(PEDEK-PEEK)は、4,4’-ジフルオロベンゾフェノン(DFBP)と、4,4’-ジヒドロキシジフェニル(別名ビフェノール)と、ヒドロキノンとの重縮合から誘導されたコポリマーであった。このコポリマーは、重合におけるビフェノールの総化学量論量内のヒドロキノン部位と比較して、ビフェノール残基部位を多く含む。PEDEKは、ビフェノールと4,4’-ジフルオロベンゾフェノンとの重縮合からのポリマー繰り返し単位を表す。本発明の実施に使用することができるコポリマー(PEDEK-PEEK)は、ポリマー骨格内のPEDEK繰り返し単位とPEEK繰り返し単位のモル比を変えることができるが、実施例では、PEDEK/PEEKのモル比が75-25であるコポリマー(以降PEDEK-PEEKコポリマー)を使用した。前記PEDEK-PEEKコポリマーは、ASTM D3835に準拠してキャピラリーレオメーターを使用して測定したときに、420℃且つ1000s-1で400Pa・sの溶融粘度を有する。
【0140】
比較例のために、PEDEK繰り返し単位と比較してPEEK繰り返し単位を多く含む、類似のPEEKを多く含むPEEK-PEDEKコポリマーも使用した。下の比較例で使用される前記PEEKを多く含むPEEK-PEDEKコポリマー(以降PEEK-PEDEKコポリマー)は、70-30及び80-20のPEEK/PEDEKモル比を有しており、ASTM D3835に準拠してキャピラリーレオメーターを使用して測定したときに、370℃且つ1000s-1でそれぞれ200Pa・s及び190Pa・sの溶融粘度を有する。
【0141】
使用したポリマー(PPSU)は、Solvay Specialty Polymers USA,LLC.のRadel(登録商標)R-5100 NT PPSU天然樹脂であった。これは、汎用の押出成形及び射出成形用途向けのPPSUの標準グレードである。これは、5.0kgの重りを使用して365℃でASTM D1238に準拠してメルトインデックス装置を使用して測定した場合、14~20g/10分のメルトフローレート範囲を有する。
【0142】
使用したポリマー(PESU)は、Solvay Specialty Polymers USA,LLC.のVerade(登録商標)A-201 NT PESU天然樹脂であった。これは、汎用の押出成形及び射出成形用途向けのPESUの標準グレードである。これは、2.16kgの重りを使用して380℃でASTM D1238に準拠してメルトインデックス装置を使用して測定した場合、15~25g/10分のメルトフローレート範囲を有する。
【0143】
比較例で使用したポリマー(PSU)は、Solvay Specialty Polymers USA,LLC.のUdel(登録商標)P-1700 NT PSU天然樹脂であった。これは、汎用の押出成形及び射出成形用途向けのPSUの標準グレードである。これは、2.16kgの重りを使用して343℃でASTM D1238に準拠してメルトインデックス装置を使用し測定した場合、5~9g/10分のメルトフローレート範囲を有する。
【0144】
比較例で使用したPEEKポリマーは、Solvay Specialty Polymers USA,LLC.のKetaSpire(登録商標)KT-820 NT PEEK天然樹脂であった。これは、汎用の押出成形及び射出成形用途向けのPEEKの標準グレードである。これは、ASTM D3835に準拠してキャピラリーレオメーターを使用して測定したときに、400℃且つ1000s-1で380~500Pa・sの溶融粘度を有する。
【0145】
配合物の調製
本発明によるポリマーブレンドは、48:1のL/D比を有する26mmのCoperion(登録商標)同方向回転部分噛合型二軸押出機を使用して溶融混錬することによって調製した。押出機は12個のバレルセクションを有しており、バレルセクション2~12は390℃の温度設定で加熱した。ダイ温度も390℃に設定した。押出機は、30lb/hrのスループット速度及び200rpmのスクリュー速度で運転し、押出機のトルクの読み取り値は、全ての組成物の混錬中、50~70%の範囲に維持した。コンパウンドから水分及び存在し得る残留揮発性物質を除去するために、混錬中にバレルセクション10に25inHgを超える真空レベルで真空ベントを適用した。それぞれの実行からの押出物をストランドにし、ウォータートラフ中で冷却し、その後直径約2.7mm、長さ3.0mmのペレットへとペレット化した。
【0146】
配合物の試験
機械的特性は、1)タイプI引張棒、2)5インチ×0.5インチ×0.125インチの曲げ棒、及び3)計装化衝撃(Dynatup)試験のためのプラーク4インチ×4インチ×0.125インチからなる、射出成形された0.125インチ(3.2mm)の厚さのASTM試験片を使用して全ての配合物について試験した。対照及び比較例の配合物も、同じ試験片に射出成形した。純粋なPPSU、PESU及びPSUの試験片を除いて、射出成形した試験片は、試験前にオーブン中でアニール処理した。PSUを含むブレンド組成物からの射出成形試験片のアニール処理について、試験片の反りを防ぐために200℃で2時間のアニール処理条件を使用したことを除き、使用したアニール処理条件は230℃で2時間であった。成形したパーツは、2つの平らな厚さ0.5インチのガラスプレート間でアニール処理した。
【0147】
全ての組成物の評価において以下のASTM試験方法を採用した:
- ASTM D638:引張特性(試験速度=2.0インチ/分);
- ASTM D790:曲げ特性;
- ASTM D3763:Dynatup衝撃という名称でも知られている耐計装化衝撃性。
【0148】
溶融粘度は、370℃の温度が使用されたPEEKを多く含むPEEK-PEDEKコポリマーを含有する比較組成物を除き、400℃の温度を使用するASTM D3835に準拠したキャピラリーレオメトリーによって評価した。
【0149】
射出成形した試験片(ASTMタイプI引張棒の中心から切り取った)に対して、ねじりモードで動的機械分析(DMA)も行った。50℃~350℃の動的温度スイープは、10.0rad/sの周波数及び0.05%のひずみ振幅で行った。
【0150】
表1に、本発明の例示的な配合物の機械的及び熱的特性がまとめられている。
【0151】
【0152】
表1の破断点引張伸びのデータによって示されるように、周囲条件でのPEDEK-PEEKコポリマーの延性は、PPSU又はPESUのいずれかを添加することによって大幅に強化される。本発明によるポリマーブレンドの延性は、2つの成分の線形加重平均から予測されるものよりも大幅に大きい。周囲温度での引張強さと引張弾性率はブレンドの濃度比に対して直線的に変化する傾向が観察されるため、延性のこの改善は、強度又は剛性を犠牲にすることなしに達成される。
【0153】
代表的な実施例と、純粋なPPSUを含む対照の破断点引張伸びのデータを
図1に示す。
【0154】
表1のDynatup測定のピーク負荷エネルギーによって示されるように、PEDEK-PEEKコポリマーとPPSUとのブレンドの衝撃エネルギーも、純粋な樹脂対照と比較して大幅に強化される。測定値は、2つの成分の線形加重平均から予測される値を全て上回っている。実施例及び対照の破断点引張伸びとDynatup衝撃データを
図4に示し、曲げ強さのデータを
図5に示す。
【0155】
PEDEK-PEEKコポリマーへのPPSU又はPESUの添加も、高温における機械的特性を改善する。表1の160℃における引張及び曲げのデータは、160℃におけるPEDEK-PEEKコポリマーとPPSUとのブレンドでは、降伏点引張強さ、降伏点伸び及び曲げ強さが、2つの成分の線形加重平均から予測されるものよりも上回っていることを示している(
図4及び5を参照)。PPSU濃度範囲全体にわたる強度及び延性のこれらの改善は、2つの成分の線形加重平均と比較して、160℃における引張弾性率及び曲げ弾性率を大幅に低下させることなしに達成される。
【0156】
更に、本発明によるポリマーブレンドのDMA測定からは、表1に示されているように、本発明の組成物が、PEDEK-PEEK対PPSU又はPESUの重量比の範囲全体にわたって2つの異なるガラス転移温度(Tg)を示すことが示された。加えて、PPSUとのブレンドについて、PPSUを多く含む相に対応する高いTgが、PEDEK-PEEKコポリマーの濃度が増加するのに伴って低い値にシフトし、純粋なPPSUの226℃から、PEDEK-PEEKコポリマー中で多く含まれるPPSUとのブレンドの約221~223℃に、及び純粋なPESUの233.4℃から、PEDEK-PEEKコポリマー中で多く含まれるPESUとのブレンドの232.0℃にシフトする。この挙動の組み合わせは、ブレンドが部分的に混和性であることを示しており、これは、驚くべき且つ有益な結果である。2つの成分の加重平均に対応する単一のTgを示すと予想される完全に混和性のブレンドと異なり、部分的に混和性のブレンドは、スルホンポリマーを多く含む相のより高いTgを保持する。更に、加工が困難である可能性があるか、又は溶融加工中に相分離を示して成形されたパーツの機械的特性を損なう可能性がある完全に非混和性のブレンドよりも、部分的に混和性のブレンドは、加工が容易であると理解される。
【0157】
表2には、ブレンド中のスルホンポリマーとしてPSUを含む比較例の機械的及び熱的特性がまとめられている。
【0158】
【0159】
表2のデータは、本発明の例示的なブレンドとは対照的に、PEDEK-PEEKコポリマーへのPSUの添加は、2つの成分の線形加重平均から予測されるものを超えて高温機械的特性を改善しないことを示している。例として、PSUとのブレンドにおけるPEDEK-PEEKコポリマーの量の関数としての160℃における曲げ強さを
図6に示す。
【0160】
表3には、PPSUとPEEKを多く含むPEEK-PEDEKコポリマーとのブレンドの比較例の機械的及び熱的特性がまとめられている。
【0161】
【0162】
表3の比較例の破断点引張伸びのデータが
図1にプロットされている。本発明によるブレンドと比較して、PEEKを多く含むPEEK-PEDEKコポリマーを含むブレンドは、破断点引張伸びが小さく、延性が低いことを示している。更に、本発明によるブレンドの破断点引張伸びは、2つの成分の線形加重平均から予測されるものよりも大幅に大きい一方で、
図1は、PEEKを多く含むPEEK-PEDEKコポリマーを含む比較のブレンドでは、破断点引張伸びは、2つの成分の線形加重平均から予測されるものにはるかに近くなることを示している。同様に、表3の比較例についての衝撃エネルギーデータも
図2にプロットされている。本発明によるブレンドと比較して、PEEKを多く含むPEEK-PEDEKコポリマーを含むブレンドは、低いDynatupピーク負荷エネルギーを有する。更に、本発明によるブレンドのDynatupピークエネルギーは、2つの成分の線形加重平均から予測されるものよりも大幅に大きい一方で、PEEKを多く含むPEEK-PEDEKコポリマーを含む比較のブレンドでは、Dynatupピークエネルギーは、2つの成分の線形加重平均から予測されるものよりも小さいか又は通常はるかに近くなる。
【0163】
表4に、PEEKに基づく類似のブレンドと比較した、本発明の例示的な配合物の溶融粘度のデータがまとめられている。
【0164】
【0165】
表4に示されているように、本発明によるポリマーブレンドの溶融粘度は、純粋なPEDEK-PEEKコポリマー対照と比較して低下した溶融粘度を示す。この溶融粘度の低下により、特に薄肉パーツの射出成形又は3D印刷用途でより容易に加工し易くなる。表4の溶融粘度データは、本発明によるポリマーブレンドの溶融粘度が、純粋なPEDEK-PEEKコポリマー対照の溶融粘度と、同様のPPSU濃度を有する類似のPEEK/PPSUブレンドの溶融粘度との間にあることを示している。
図1の溶融粘度対剪断速度のプロットも参照のこと。
【0166】
表5に、PEEKを多く含むPEEK-PEDEKコポリマーとのPPSUブレンドの比較例の溶融粘度データがまとめられている。
【0167】
【0168】
表4は、PEDEK-PEEKにPPSUを添加すると溶融粘度が有益に低下することを示している一方で、表5のデータは、PPSUをPEEK-PEDEKコポリマーに添加すると、溶融粘度が上昇し、加工性に悪影響があることを示している。
【0169】
【0170】
表6には、PEEK又は80-20若しくは70-30のPEEK/PEDEK繰り返し単位モル比を有するPEEKを多く含むPEEK-PEDEKコポリマーのいずれかに基づく類似のブレンドと比較した、本発明の例示的な配合物についての高温(180℃及び200℃)でのDMAからの貯蔵弾性率データがまとめられている。
【0171】
より具体的には、表6は、180℃及び200℃におけるねじりモードDMA試験からの貯蔵弾性率の測定値を示している。データは、本発明によるポリマーブレンドの剛性が、純粋なPEDEK-PEEKコポリマー対照の剛性並びにPEEK又は80-20若しくは70-30のモル比のPEEK繰り返し単位及びPEDEK繰り返し単位を有するPEEKを多く含むPEEK-PEDEKコポリマーのいずれかとのPPSUのブレンドからなる比較例の剛性を上回っていることを示している。更に、PPSUの添加によって引き起こされる貯蔵弾性率の変化は、PPSUをPEEK系材料に又はPEEKを多く含むPEEK-PEDEKコポリマーに添加する場合よりも、PEDEKを多く含むPEDEK-PEEKコポリマーに添加する場合の方がより大幅な改善である。最も驚くべきことには、180~200℃の温度範囲で有益な効果が増加するため、より高温で最も価値のある性能が強化される。
【国際調査報告】