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特表2023-501986プルアウト力が低いファイバコーティング
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-20
(54)【発明の名称】プルアウト力が低いファイバコーティング
(51)【国際特許分類】
   C03C 25/1065 20180101AFI20230113BHJP
   G02B 6/44 20060101ALI20230113BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20230113BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
C03C25/1065
G02B6/44 301A
G02B6/44 331
C09D201/00
C09D5/00 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022526218
(86)(22)【出願日】2020-10-29
(85)【翻訳文提出日】2022-07-06
(86)【国際出願番号】 US2020057813
(87)【国際公開番号】W WO2021091746
(87)【国際公開日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】16/673,370
(32)【優先日】2019-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】チェン,チン-キー
(72)【発明者】
【氏名】タンドン,プシュカル
(72)【発明者】
【氏名】タンドン,ルチ
【テーマコード(参考)】
2H250
4G060
4J038
【Fターム(参考)】
2H250BA03
2H250BA32
2H250BB02
2H250BB33
2H250BC02
2H250BC03
2H250BD02
2H250BD14
2H250BD16
2H250BD17
2H250BD18
2H250BD20
4G060AA01
4G060AA02
4G060AA20
4G060AC02
4G060AC12
4G060AD43
4G060CB09
4G060CB22
4J038CG141
4J038DG131
4J038DG262
4J038KA04
4J038MA14
4J038PA07
4J038PA17
4J038PA19
4J038PB08
4J038PC03
(57)【要約】
光ファイバは:220μm未満の外径;ガラスコア及びガラスクラッドを含むガラスファイバ;一次コーティング;並びに二次コーティングを含む。上記ガラスクラッドは上記ガラスコアを取り囲み、上記ガラスコアと直接接触する。上記一次コーティングは上記ガラスファイバを取り囲み、上記ガラスファイバと直接接触する。上記一次コーティングは、0.5MPa未満のヤング率、及び30.0μm未満の厚さを有することができる。上記二次コーティングは上記一次コーティングを取り囲み、上記一次コーティングと直接接触する。上記二次コーティングは、27.5μm未満の厚さを有することができる。上記光ファイバのプルアウト力は、ドロー加工されたままの状態において、所定の閾値未満とすることができる。上記プルアウト力は、上記ガラスファイバ上の上記一次及び二次コーティングの少なくとも60日にわたるエージングで、2.0倍未満だけ上昇してよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバであって:
220μm未満の外径;
前記光ファイバの中心を通る中心線を画定するガラスコア;
前記ガラスコアを取り囲み、また前記ガラスコアと直接接触する、ガラスクラッドであって、前記ガラスコア及び前記ガラスクラッドはガラスファイバを画定し、前記ガラスファイバの外周は、センチメートルを単位とするRで表される、前記中心線からの半径を有する、ガラスクラッド;
前記ガラスクラッドを取り囲み、また前記ガラスクラッドと直接接触する、一次コーティングであって、前記一次コーティングの外周は、センチメートルを単位とするRで表される前記中心線からの半径を有し、前記一次コーティングは、30μm未満の厚さ、及び0.5MPa未満のヤング率を有する、一次コーティング;
前記一次コーティングを取り囲み、また前記一次コーティングと直接接触する、二次コーティングであって、前記二次コーティングの外径は、センチメートルを単位とするRで表される、前記中心線からの半径を有し、前記二次コーティングは、27.5μm未満の厚さを有する、二次コーティング;並びに
以下の式:
(ここでEは、ダイン/cmを単位とする前記ガラスファイバのヤング率であり、Eは、ダイン/cmを単位とする前記一次コーティングのヤング率であり、Eは、ダイン/cmを単位とする前記二次コーティングのヤング率であり、νは、前記一次コーティングのポアソン比である)によって与えられる臨界プルアウト力(Pcrit)未満のプルアウト力
を備える、光ファイバ。
【請求項2】
前記プルアウト力は0.90lb/cm(4.0034N/cm)未満である、請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項3】
前記プルアウト力は、前記光ファイバの少なくとも60日にわたるエージングで、1.6倍未満だけ上昇する、請求項1又は2に記載の光ファイバ。
【請求項4】
前記一次コーティングの引裂き強度は30J/m超である、請求項1~3のいずれか1項に記載の光ファイバ。
【請求項5】
前記光ファイバの前記外径は200μm未満である、請求項1~4のいずれか1項に記載の光ファイバ。
【請求項6】
前記一次コーティングの前記厚さは20μm未満である、請求項1~5のいずれか1項に記載の光ファイバ。
【請求項7】
前記二次コーティングは20μm未満の厚さを有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の光ファイバ。
【請求項8】
前記プルアウト力は0.66lb/cm(2.935826N/cm)未満であり、前記外径は180μm未満である、請求項1~7のいずれか1項に記載の光ファイバ。
【請求項9】
前記二次コーティングの耐穿刺性は、4.4×10-3g/μm超の正規化穿刺荷重を有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の光ファイバ。
【請求項10】
光ファイバを設計する方法であって、前記方法は:
(a)ガラスファイバを選択するステップであって、前記ガラスファイバは弾性率Eを有し、前記ガラスファイバは、ガラスコアと、前記ガラスコアを取り囲んで前記ガラスコアと直接接触するガラスクラッドとを有し、前記ガラスクラッドは半径Rを有する、ステップ;
(b)前記ガラスクラッドを取り囲んで前記ガラスクラッドと直接接触するように、一次コーティングを選択するステップであって、前記一次コーティングは、ヤング率E、ポアソン比ν、及び半径Rを有する、ステップ;
(c)前記一次コーティングを取り囲んで前記一次コーティングと直接接触するように、二次コーティングを選択するステップであって、前記二次コーティングは、ヤング率E及び半径Rを有する、ステップ;並びに
(d)前記光ファイバがPcrit未満のプルアウト力を有するように、前記ガラスファイバ、前記一次コーティング、及び前記二次コーティングの選択を構成するステップであって、ここでPcritは、
によって与えられる、ステップ
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2019年11月4日出願の米国特許出願第16/673,370号(米国特許第10,775,557号)、発明の名称「FIBER COATINGS WITH LOW PULLOUT FORCE」の優先権の利益を主張するものであり、上記特許出願は、2018年5月3日出願の米国仮特許出願第62/666376号に対する優先権を主張する2019年5月1日出願の米国特許出願第16/400,641号(米国特許第10,689,544号)、発明の名称「FIBER COATINGS WITH LOW PULLOUT FORCE」の一部継続出願であり、かつこれに対する優先権を主張するものである。以上の各文献の内容は依拠され、その全体が参照により本出願に援用される。
【技術分野】
【0002】
本開示は、スプライシングのための良好な剥離性を備えたファイバコーティングに関する。より詳細には、本開示は、プルアウト力が低く結合力が強い一次ファイバコーティングに関する。
【背景技術】
【0003】
光ファイバを通る光の透過率は、ファイバに適用されるコーティングの特性に依存する。コーティングは典型的には一次コーティング及び二次コーティングを含み、ここで二次コーティングは一次コーティングを取り囲み、また一次コーティングは、(ガラスクラッドに取り囲まれた中央ガラスコアを含む)ガラスファイバに接触する。二次コーティングは、一次コーティングよりも硬質の(ヤング率が高い)材料であり、ファイバの加工、取り扱い、及び設置中に生じる摩擦又は外力によって引き起こされる損傷から、ガラス導波路を保護するように設計される。一次コーティングは、より軟質の(ヤング率が低い)材料であり、二次コーティングの外面に印加される力に起因する応力を緩衝する又は放散させるように設計される。一次層内での応力の放散により、応力は減衰し、ガラス導波路に到達する応力が最小限に抑えられる。一次コーティングは、ファイバを曲げるときに生じる応力の放散において、特に重要である。ファイバのガラス導波路に伝達される曲げ応力は、最小限に抑える必要がある。というのは、曲げ応力はガラス導波路の屈折率プロファイルに局所的な混乱を生成するためである。局所的な屈折率の混乱は、導波路を通して伝送される光の強度損失につながる。応力を放散させることにより、一次コーティングは、曲げによって誘発される強度損失を最小限に抑える。
【0004】
曲げ損失を最小限に抑えるために、ヤング率がますます低い一次コーティング材料の開発が望まれている。ヤング率が1MPa未満のコーティング材料が好ましい。しかしながら、一次コーティングのヤング率を低下させると、一次コーティングの結合力が低下し、一次コーティングはファイバ製造プロセスにおいて、又は現場での配備中に、損傷を受けやすくなる。剥離、配線、及び接続といった作業は、一次コーティングに熱応力及び機械的応力を導入し、これは一次コーティング内での欠陥の形成につながる場合がある。一次コーティング内での欠陥の形成は、一次コーティングの結合力が低下すると、より大きな問題になる。
【0005】
良好な結合力に加えて、ファイバの剥離及びスプライシング作業には、ガラスファイバに対する適切な接着力を有する一次コーティングが必要となる。ガラスファイバに対する一次コーティングの接着力が強すぎると、一次コーティングからの残留物がガラスファイバ上に残り、きれいな剥離が困難になる。ガラスファイバをコネクタに挿入するには、きれいな剥離が必要である。ファイバコネクタの開口はガラスファイバの直径にぴったりと一致しており、ガラスファイバ上のコーティング残留物の存在は、コネクタへのファイバの挿入を妨害する。このような接着力の要件は、共通のマトリクス内に複数のファイバを含む直線状ファイバ組立体であるリボンに関して、特に厳密である。リボンを接続する際には全てのファイバが同時に剥離され、ガラスファイバの未剥離部分に残ったコーティングに欠陥を導入することなく、各ファイバをきれいに剥離する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
剥離力の印加時に欠陥の形成に耐えられる十分な結合力を有しながら、ガラスファイバからきれいに剥離できる一次コーティング材料に対して、需要が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、硬化性組成物の硬化産物として形成される一次コーティングを提供する。上記コーティングは、低いヤング率、低いプルアウト力、低い接着力、及び良好な結合力を特徴とする。プルアウト力の経時的な変動は小さく、これは、上記コーティングの長期間にわたる安定した接着力及び一貫した性能を示す。上記コーティングは、光ファイバの一次コーティングとして使用できる。上記一次コーティングはガラスファイバからきれいに剥離でき、また剥離力を受けたときの欠陥の形成に対する耐性を有する。上記一次コーティングは、個々のファイバ、又はリボン内の複数のファイバそれぞれに適用できる。上記硬化性組成物は、光ファイバの分野以外の用途に使用される硬化フィルム及び他の硬化産物の形成にも使用できる。
【0008】
本開示の第1の態様によると、光ファイバは:220μm未満の外径OFOD;その中心を通る中心線CLを画定するガラスコア;上記ガラスコアを取り囲み、また上記ガラスコアと直接接触する、ガラスクラッド;上記ガラスクラッドを取り囲み、また上記ガラスクラッドと直接接触する、一次コーティング;及び上記一次コーティングを取り囲み、また上記一次コーティングと直接接触する、二次コーティングを含む。上記ガラスコア及び上記ガラスクラッドはガラスファイバを画定する。上記ガラスファイバの外周は、センチメートルを単位とするRで表される、上記中心線からの半径を有する。上記一次コーティングは、センチメートルを単位とするRで表される上記中心線からの半径を有する外周を有する。上記一次コーティングは、30μm未満の厚さ、及び0.5MPa未満のヤング率を有する。上記二次コーティングの外径は、センチメートルを単位とするRで表される、上記中心線からの半径を有する。上記二次コーティングは、27.5μm未満の厚さを有する。上記光ファイバは、以下の式:
【0009】
によって与えられる臨界プルアウト力(Pcrit)未満のプルアウト力を有し、ここでEは、ダイン/cmを単位とする上記ガラスファイバのヤング率であり、Eは、ダイン/cmを単位とする上記一次コーティングのヤング率であり、Eは、ダイン/cmを単位とする上記二次コーティングのヤング率であり、νは、上記一次コーティングのポアソン比である。
【0010】
第1の態様の様々な例では、上記一次コーティングの上記ヤング率は、0.4MPa未満又は0.3MPa未満であってよい。いくつかの例では、上記光ファイバの上記プルアウト力は、ドロー加工されたままの状態において、1.05lb/cm(4.670633N/cm)未満、0.90lb/cm(4.0034N/cm)未満、又は0.65lb/cm(2.891344N/cm)未満であってよい。様々な例において、上記プルアウト力は、上記光ファイバの少なくとも60日にわたるエージングで、1.8倍未満又は1.6倍未満だけ上昇し得る。いくつかの例では、上記一次コーティングの引裂き強度は、30J/m超、40J/m超、又は50J/m超であってよい。様々な例において、上記一次コーティングの引張靭性は、500kJ/m~1200kJ/m、例えば500kJ/m超、又は700kJ/m超であってよい。複数の例において、上記光ファイバの上記外径は、210μm未満、200μm未満、又は180μm未満であってよい。いくつかの例では、上記一次コーティングの上記厚さは、25μm未満、又は20μm未満であってよい。様々な例において、上記二次コーティングは、25μm未満、又は20μm未満の厚さを有してよい。複数の例において、上記一次コーティングの厚さ及び上記二次コーティングの厚さはそれぞれ、25μm未満、又は20μm未満であってよい。いくつかの例では、上記二次コーティングの上記厚さに対する上記一次コーティングの上記厚さの比率は、0.7~1.25であってよい。ある具体例では、上記外径が210μm未満である場合、上記プルアウト力は1.06lb/cm(4.715115N/cm)未満であってよい。別の具体例では、上記外径が200μm未満である場合、上記プルアウト力は0.92lb/cm(4.092364N/cm)未満であってよい。更に別の具体例では、上記外径が180μm未満である場合、上記プルアウト力は0.66lb/cm(2.935826N/cm)未満である。様々な例において、上記二次コーティングの耐穿刺性は、4.4×10-4g/μm超の正規化穿刺荷重を有してよい。本明細書で開示される光ファイバを、複数の本開示の光ファイバを有する光ファイバリボンに組み込むことができることは、当業者には認識されるだろう。
【0011】
本開示の第2の態様によると、光ファイバは:220μm未満の外径OFOD;ガラスコア及びガラスクラッドを含むガラスファイバ;一次コーティング;並びに二次コーティングを含む。上記ガラスクラッドは上記ガラスコアを取り囲み、また上記ガラスコアと直接接触する。上記一次コーティングは上記ガラスファイバを取り囲み、また上記ガラスファイバと直接接触する。上記一次コーティングは、0.5MPa未満のヤング率及び30.0μm未満の厚さを有してよい。上記二次コーティングは上記一次コーティングを取り囲み、また上記一次コーティングと直接接触する。上記二次コーティングは25.0μm未満の厚さを有してよい。上記光ファイバのプルアウト力は、ドロー加工されたままの状態において、1.35lb/cm(6.005099N/cm)未満であってよい。上記プルアウト力は、上記ガラスファイバ上の上記一次及び二次コーティングの少なくとも60日にわたるエージングで、2.0倍未満だけ上昇し得る。
【0012】
第2の態様の様々な例では、上記一次コーティングの上記ヤング率は0.3MPa未満であってよい。いくつかの例では、上記一次コーティングの引張靭性は500kJ/m~1200kJ/mであってよい。複数の例において、上記一次コーティングの上記厚さに対する上記二次コーティングの上記厚さの比率は、0.7~1.25である。いくつかの具体例では、上記外径が210μm未満である場合、上記プルアウト力は1.06lb/cm(4.715115N/cm)未満である。他の具体例では、上記外径が200μm未満である場合、上記プルアウト力は0.92lb/cm(4.092364N/cm)未満である。様々な具体例において、上記外径が180μm未満である場合、上記プルアウト力は0.66lb/cm(2.935826N/cm)未満である。複数の例において、上記プルアウト力は、上記光ファイバの少なくとも60日にわたるエージングで、1.8倍未満又は1.6倍未満だけ上昇し得る。いくつかの例では、上記一次コーティングの引裂き強度は、30J/m超、40J/m超、又は50J/m超であってよい。
【0013】
本開示の第3の態様によると、光ファイバを設計する方法は:(a)ガラスファイバを選択するステップであって、上記ガラスファイバは弾性率Eを有し、上記ガラスファイバは、ガラスコアと、上記ガラスコアを取り囲んで上記ガラスコアと直接接触するガラスクラッドとを有し、上記ガラスクラッドは半径Rを有する、ステップ;(b)上記ガラスクラッドの上記半径Rを選択するステップ;(c)上記ガラスクラッドを取り囲んで上記ガラスクラッドと直接接触するように、一次コーティングを選択するステップであって、上記一次コーティングは、ヤング率E、ポアソン比ν、及び半径Rを有する、ステップ;(d)上記一次コーティングを取り囲んで上記一次コーティングと直接接触するように、二次コーティングを選択するステップであって、上記二次コーティングは、ヤング率E及び半径Rを有する、ステップ;並びに(e)上記光ファイバがPcrit未満のプルアウト力を有するように、E、R、E、R、E、及びRの選択を構成するステップであって、ここでPcritは、
【0014】
によって与えられる、ステップを含む。
【0015】
第3の態様の様々な例では、上記プルアウト力は、1.05lb/cm(4.670633N/cm)未満、0.90lb/cm(4.0034N/cm)未満、又は0.65lb/cm(2.891344N/cm)未満である。いくつかの例では、上記ガラスクラッドを取り囲んで上記ガラスクラッドと直接接触するように、一次コーティングを選択する上記ステップは、15μm超かつ30μm未満の範囲内の上記一次コーティングの厚さを選択するステップを更に含んでよい。複数の例において、上記一次コーティングを取り囲んで上記一次コーティングと直接接触するように、二次コーティングを選択する上記ステップは、7.0μm超かつ25μm未満の範囲内の上記二次コーティングの厚さを選択するステップを更に含んでよい。
【0016】
本開示の第4の態様によると、光ファイバを製造する方法は:(a)プリフォームを炉内で加熱するステップであって、上記プリフォームは、ガラスコアと、上記ガラスコアを取り囲んで上記ガラスコアと直接接触するガラスクラッドとを含む、ステップ;(b)上記プリフォームをドロー加工して、130μm未満の直径を有するガラスファイバを形成するステップであって、上記ガラスファイバは、弾性率E及び半径Rを有する、ステップ;(c)上記ガラスクラッドを取り囲んで上記ガラスクラッドと直接接触するように、一次コーティングを適用するステップであって、上記一次コーティングは、0.5MPa未満のヤング率E、30μm未満の厚さ、ポアソン比ν、及び半径Rを有する、ステップ;並びに(d)上記一次コーティングを取り囲んで上記一次コーティングと直接接触するように、二次コーティングを適用するステップであって、上記二次コーティングは、1500MPa超のヤング率E、半径R、及び25μm未満の厚さを有する、ステップを含む。
【0017】
本開示の第4の態様の様々な例では、光ファイバを製造する上記方法は、上記光ファイバのプルアウト力を試験して、上記プルアウト力がPcrit未満であることを保証するステップを更に含むことができ、上記Pcritは:
【0018】
によって与えられる。いくつかの例では、上記プルアウト力は、1.05lb/cm(4.670633N/cm)未満、0.90lb/cm(4.0034N/cm)未満、又は0.65lb/cm(2.891344N/cm)未満であってよい。複数の例において、上記一次コーティングの上記厚さは、15μm超かつ30μm未満の範囲内であってよい。様々な例において、上記二次コーティングの上記厚さは、7.0μm超かつ25μm未満の範囲内であってよい。
【0019】
更なる特徴及び利点は、以下の「発明を実施するための形態」に記載され、その一部は、当業者には本記述から容易に明らかとなるか、又は本記述及び特許請求の範囲、並びに添付の図面に記載されているように実施形態を実施することによって認識されるだろう。
【0020】
上述の「発明の概要」及び以下の「発明を実施するための形態」はいずれも単なる例であり、特許請求の範囲の性質及び特徴を理解するための概観又は枠組みを提供することを目的としたものであることを理解されたい。
【0021】
添付の図面は更なる理解を提供するために含まれており、本明細書に組み込まれて本明細書の一部を構成する。これらの図面は、本開示の選択された態様の例示であり、本記述と併せて、本開示に含まれる方法、製品、及び組成物の、原理及び動作を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】一実施形態によるコーティング済み光ファイバの概略図
図2】代表的な光ファイバリボンの概略図;代表的な光ファイバリボンは、12本のコーティング済み光ファイバを含む
図3】ファイバ試料のプルアウト力試験における、時間の関数としての力
図4】あるファイバ試料に関する、時間によるプルアウト力の変動
図5】あるファイバ試料に関する、時間によるプルアウト力の変動
図6】あるファイバ試料に関する、時間によるプルアウト力の変動
図7】あるファイバ試料に関する、時間によるプルアウト力の変動
図8】あるファイバ試料に関する、時間によるプルアウト力の変動
図9】ある例による、光ファイバを製造する方法のフローチャート
図10】ある例による、光ファイバを設計する方法のフローチャート
図11】3つの二次コーティングに関する、断面積に対する穿刺荷重の依存度
【発明を実施するための形態】
【0023】
本開示は、本発明を実現可能とする教示として提供されるものであり、以下の説明、図面、実施例及び特許請求の範囲を参照することにより、より容易に理解できる。この目的のために、関連技術分野の当業者は、本明細書に記載の実施形態の様々な態様に対して多くの変更を実施しても、その有益な結果を依然として得られることを認識及び理解するであろう。また、これらの実施形態の望ましい便益のうちの一部を、複数の特徴のうちの一部を選択し、他の特徴を利用しないことによっても得ることができることは、明らかであろう。従って当業者は、多くの修正及び適合が可能であり、また特定の状況においては望ましい場合さえあり、これらが本開示の一部であることを認識するだろう。従って、特段の記載がない限り、本開示は、開示されている具体的な組成物、物品、デバイス及び方法に限定されないことを理解されたい。また、本明細書で使用される用語法は、特定の態様を説明することのみを目的としたものであり、限定を意図したものではないことも理解されたい。
【0024】
本明細書及びそれに続く特許請求の範囲では、多数の用語が参照されることになるが、これらの用語は以下の意味を有するものとして定義されるものとする。
【0025】
「…を含む(include、includes)」等の用語は、包含するものの限定しないこと、即ち包括的ではあるものの排他的ではないことを意味する。
【0026】
用語「約(about)」は、特段の記載がない限り、当該範囲内の全ての項を参照する。例えば約1、2、又は3は、約1、約2、又は約3と同義であり、更に約1~3、約1~2、及び約2~3を含む。組成物、構成要素、成分、添加物、及び類似の態様に関して開示される特定の好ましい値、並びにその範囲は、単なる例示であり、他の明確な値、又は明確な範囲内の他の値を排除するものではない。本開示の組成物及び方法は、本明細書に記載の値、特定の値、更に具体的な値、及び好ましい値のうちの、いずれの値又はいずれの組み合わせを有する組成物及び方法を含む。
【0027】
本明細書中で使用される場合、不定冠詞「a」又は「an」及びこれに対応する定冠詞「the」は、特段の記載がない限り、「少なくとも1つの(at least one)」又は「1つ以上の(1つ以上の)」を意味する。
【0028】
本明細書に記載のコーティングは、硬化性コーティング組成物から形成される。硬化性コーティング組成物は、1つ以上の硬化性成分を含む。本明細書中で使用される場合、用語「硬化性(curable)」は、好適な硬化エネルギ源に曝露した場合に、上記成分が、上記成分の上記成分自体への又は上記コーティング組成物の他の成分への結合に関与する共有結合を形成できる、1つ以上の官能基を含むことを意味することを目的としている。硬化性コーティング組成物の硬化によって得られる産物は、本明細書では上記組成物の硬化産物と呼ばれる。硬化産物は好ましくはポリマーである。硬化プロセスはエネルギによって誘発される。エネルギの形態としては、放射線又は熱エネルギが挙げられる。好ましい実施形態では、硬化は放射線によって実施される。放射線によって誘発された硬化は、本明細書では放射線硬化又は光硬化と呼ばれる。放射線硬化性成分は、好適な強度の好適な波長の放射線に十分な期間曝露された場合に硬化反応を起こすよう誘導できる成分である。好適な波長としては、電磁スペクトルの赤外部分、可視部分、又は紫外部分が挙げられる。放射線硬化反応は好ましくは、光開始剤の存在下で発生する。放射線硬化性成分はまた、熱硬化性であってもよい。同様に、熱硬化性成分は、十分な強度の熱エネルギに十分な期間曝露された場合に硬化反応を起こすよう誘導できる成分である。熱硬化性成分はまた、放射線硬化性であってもよい。
【0029】
硬化性成分は、1つ以上の硬化性官能基を含む。硬化性官能基を1つだけ含む硬化性成分は、本明細書では単官能性硬化性成分と呼ばれる。2つ以上の硬化性官能基を有する硬化性成分は、本明細書では多官能性硬化性成分と呼ばれる。多官能性硬化性成分は、硬化プロセス中に共有結合を形成できる2つ以上の官能基を含み、硬化プロセス中に形成されるポリマーネットワークに架橋を導入できる。多官能性硬化性成分はまた、本明細書では「架橋剤(crosslinker)」又は「硬化性架橋剤(硬化性架橋剤)」とも呼ぶことができる。硬化性成分は、硬化性モノマー及び硬化性オリゴマーを含む。硬化プロセス中の共有結合形成に関与する官能基の例を以下に特定する。
【0030】
ポリオールに適用される場合、用語「分子量(molecular weight)」は数平均分子量を意味する。
【0031】
用語「(メタ)アクリレート((meth)acrylate)」は、メタクリレート、アクリレート、又はメタクリレートとアクリレートとの組み合わせを意味する。
【0032】
ヤング率、引裂き強度、引張靭性、及びプルアウト力の値は、本明細書に記載の手順によって測定条件下で決定された値を指す。
【0033】
用語「プルアウト力(pullout force)」は、更なる指定(例えばドロー加工されたままの状態でのプルアウト力、又はエージング後のプルアウト力)がなければ、特段の指定がない限り、指定されたコーティングの、ドロー加工されたままの状態でのプルアウト力を指す。
【0034】
メガパスカル(MPa)は、ヤング率に言及する際に使用される慣用の単位である。しかしながら、式(4)を参照する場合等の本開示の様々なセクションにおいて、ヤング率に関して使用される単位はダイン/cmである。MPaとダイン/cmとの間の変換には、1MPa=1×10ダイン/cmという変換係数を使用するものとする。
【0035】
これより、本記載の例示的実施形態を詳細に参照する。
【0036】
本記載は、硬化性コーティング組成物、硬化性コーティング組成物から形成されたコーティング、及び硬化性コーティング組成物の硬化によって得られたコーティングでコーティング又はカプセル化されたコーティング済み物品に関する。ある好ましい実施形態では、上記硬化性コーティング組成物は、光ファイバのコーティングを形成するための組成物であり、上記コーティングは光ファイバコーティングであり、上記コーティング済み物品は、コーティング済み光ファイバである。本記載はまた、硬化性コーティング組成物を作製する方法、上記硬化性コーティング組成物からコーティングを形成する方法、及びファイバを上記硬化性コーティング組成物でコーティングする方法に関する。上記硬化性コーティング組成物から形成されたコーティングは、ガラスファイバからきれいに剥離させることができ、また強力な結合力を有することができる。
【0037】
一実施形態は、コーティング済み光ファイバに関する。コーティング済み光ファイバの一例が、図1に概略断面図で示されている。コーティング済み光ファイバ10は、一次コーティング16及び二次コーティング18に取り囲まれたガラス光ファイバ11を含む。ある好ましい実施形態では、一次コーティング16は、本記載による硬化性コーティング組成物の硬化産物である。
【0038】
ガラスファイバ11は、当業者に公知のように、コア12及びクラッド14を含む、コーティングされていない光ファイバである。コア12はクラッド14より高い屈折率を有し、ガラスファイバ11は導波路として機能する。多くの用途において、コア及びクラッドは、識別可能なコア‐クラッド境界を有する。あるいはコア及びクラッドは、明確な境界を有しない場合がある。このようなファイバの一例は、ステップインデックスファイバである。このようなファイバの別の例は、グレーデッドインデックスファイバであり、これはファイバ中心からの距離と共に屈折率が変化するコアを有する。グレーデッドインデックスファイバは基本的に、ガラスコアとクラッド層とを互いの中に拡散させることによって形成される。クラッドは、1つ以上の層を含むことができる。1つ以上のクラッド層は、コアを取り囲む内側クラッド層と、上記内側クラッド層を取り囲む外側クラッド層とを含むことができる。内側クラッド層と外側クラッド層とは、屈折率が異なる。例えば内側クラッド層は、外側クラッド層より低い屈折率を有してよい。屈折率抑制層を、内側クラッド層と外側クラッド層との間に位置決めしてもよい。
【0039】
光ファイバは、関心対象の波長、例えば1310又は1550nmにおいて、シングルモードであってもマルチモードであってもよい。光ファイバは、データ伝送ファイバとしての使用に適合されていてよい(例えば、それぞれCorning Incorporated(ニューヨーク州コーニング)から入手可能な、SMF‐28(登録商標)、LEAF(登録商標)、及びMETROCOR(登録商標))。あるいは光ファイバは、増幅、分散補償、又は極性維持機能を実行してよい。本明細書に記載のコーティングは、環境からの保護が望まれる実質的にいずれの光ファイバとの併用に好適であることが、当業者には理解されるだろう。
【0040】
一次コーティング16は好ましくは、光ファイバのコアから誤った光信号を取り除くことができるよう、光ファイバのクラッドより高い屈折率を有する。一次コーティングは、熱及び加水分解によるエージングの間、ガラスファイバへの十分な接着力を維持する必要があり、その一方で、スプライシング目的ではガラスファイバから剥離可能である必要がある。一次コーティングは、10~30μmの厚さを有することができる。一次コーティングは、硬化性コーティング組成物をガラスファイバに、粘性液体として塗布し、硬化させることによって形成できる。
【0041】
図2は光ファイバリボン30を示す。リボン30は、複数の光ファイバ20と、上記複数の光ファイバをカプセル化するマトリクス32とを含む。光ファイバ20は、上述のように、コアガラス領域、クラッドガラス領域、一次コーティング、及び二次コーティングを含む。光ファイバ20はインク層を含む場合もある。二次コーティングは顔料を含んでよい。光ファイバ20は、互いに対して、略平面内かつ平行な関係に整列される。光ファイバリボン内の光ファイバは、従来の光ファイバリボン作製方法によって、いずれの公知の構成(例えば縁部結合リボン、薄膜カプセル化リボン、厚膜カプセル化リボン、又は多層リボン)でリボンマトリクス32によってカプセル化される。図2では、光ファイバリボン30は12本の光ファイバ20を内包しているが、ある特定の用途のために配置される光ファイバリボン30を形成するために、いずれの本数の光ファイバ20(例えば2本以上)を採用してよいことは、当業者には明らかであろう。リボンマトリクス32は、二次コーティングの調製に使用されるものと同一の組成物から形成でき、又はリボンマトリクス32は、使用に適合した異なる組成物から形成できる。
【0042】
本開示は、低いヤング率、低いプルアウト力、低い接着力、及び強い結合力を示す、光ファイバの一次コーティングを提供する。本開示は、きれいに剥離できる性質、及び剥離作業中の欠陥の形成に対する高い耐性を特徴とする、一次コーティングを形成できる、硬化性コーティング組成物を提供する。低いプルアウト力により、残留物を最小限に抑えた、一次コーティングのきれいな剥離が容易になり、また強い結合力によって、剥離力を受けたときの一次コーティング内での欠陥の発生及び伝播が阻害される。ガラスファイバに対する一次コーティングの接着力の低さにより、ガラスファイバが剥離力を受けたときの一次コーティング内での欠陥の形成が更に防止され、これにより、剥離プロセス後にガラスファイバ上に一次コーティングのデブリ又は破片が残るのが更に防止される。
【0043】
一次コーティングは、オリゴマー、モノマー、光開始剤、及び任意に添加剤を含む、放射線硬化性コーティング組成物の硬化産物である。本開示は:放射線硬化性コーティング組成物のためのオリゴマー;上記オリゴマーのうちの少なくとも1つを含有する放射線硬化性コーティング組成物;上記オリゴマーのうちの少なくとも1つを含有する放射線硬化性コーティング組成物の硬化産物;上記オリゴマーのうちの少なくとも1つを含有する放射線硬化性コーティング組成物でコーティングされた光ファイバ;及び上記オリゴマーのうちの少なくとも1つを含有する放射線硬化性コーティング組成物の硬化産物でコーティングされた光ファイバを説明する。
【0044】
オリゴマーは、ポリエーテルウレタンジアクリレート化合物及び二付加体(di‐adduct)化合物を含む。一実施形態では、ポリエーテルウレタンジアクリレート化合物は、直鎖分子構造を有する。一実施形態では、オリゴマーは、ジイソシアネート化合物、ポリオール化合物、及びヒドロキシアクリレート化合物の間の反応から形成され、上記反応は、一次産物(主要産物)としてポリエーテルウレタンジアクリレート化合物を、そして副産物(少量の産物)として二付加体化合物を生成する。上記反応は、ジイソシアネート化合物のイソシアネート基とポリオールのアルコール基との反応時に、ウレタン結合を形成する。ヒドロキシアクリレート化合物は、ジイソシアネート化合物とポリオール化合物との反応から形成される組成物中に存在する残留イソシアネート基をクエンチするように反応する。本明細書中で使用される場合、用語「クエンチ(quench)」は、ヒドロキシアクリレート化合物のヒドロキシル基との化学反応によるイソシアネート基の変換を指す。ヒドロキシアクリレート化合物による残留イソシアネート基のクエンチにより、末端イソシアネート基が末端アクリレート基に変換される。
【0045】
好ましいジイソシアネート化合物は、分子式(I):
【0046】
【化1】
【0047】
で表され、これは結合基Rで隔てられた2つの末端イソシアネート基を含む。一実施形態では、結合基Rはアルキレン基を含む。結合基Rのアルキレン基は、直鎖状(例えばメチレン若しくはエチレン)、分岐状(例えばイソプロピレン)、又は環状(例えばシクロへキシレン、フェニレン)である。環状基は、芳香族又は非芳香族である。いくつかの実施形態では、結合基Rは、4,4’‐メチレンビス(シクロヘキシル)基であり、ジイソシアネート化合物は、4,4’‐メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)である。いくつかの実施形態では、結合基Rは、芳香族基を含まないか、又はフェニレン基を含まないか、又はオキシフェニレン基を含まない。
【0048】
ポリオールは、分子式(II)
【0049】
【化2】
【0050】
で表され、ここでRはアルキレン基を含み、‐O‐R‐は反復するアルコキシレン基であり、xは整数である。好ましくは、xは20超、又は40超、又は50超、又は75超、又は100超、又は125超、又は150超、又は20~500、又は20~300、又は30~250、又は40~200、又は60~180、又は70~160、又は80~140である。Rは好ましくは直鎖又は分岐アルキレン基、例えばメチレン、エチレン、プロピレン(通常のプロピレン、イソプロピレン、若しくはこれらの組み合わせ)、又はブチレン(通常のブチレン、イソブチレン、第2級ブチレン、第3級ブチレン、若しくはこれらの組み合わせ)である。ポリオールは、ポリエチレンオキシド等のポリアルキレンオキシド、又はポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコールであってよい。ポリプロピレングリコールは、好ましいポリオールである。ポリオールの分子量は、1000g/mol超、又は2500g/mol超、又は5000g/mol超、又は7500g/mol超、又は10000g/mol超、又は1000g/mol~20000g/mol、又は2000g/mol~15000g/mol、又は2500g/mol~12500g/mol、又は2500g/mol~10000g/mol、又は3000g/mol~7500g/mol、又は3000g/mol~6000g/mol、又は3500g/mol~5500g/molであってよい。いくつかの実施形態では、ポリオールは多分散性であり、複数の分子全体が組み合わさることで上述の数平均分子量が提供されるような分子量の範囲にわたる、複数の分子を含む。
【0051】
ポリオールの不飽和は、0.25meq/g未満、又は0.15meq/g未満、又は0.10meq/g未満、又は0.08meq/g未満、又は0.06meq/g未満、又は0.04meq/g未満、又は0.02meq/g未満、又は0.01meq/g未満、又は0.005meq/g未満、又は0.001meq/g~0.15meq/g、又は0.005meq/g~0.10meq/g、又は0.01meq/g~0.10meq/g、又は0.01meq/g~0.05meq/g、又は0.02meq/g~0.10meq/g、又は0.02meq/g~0.05meq/gである。本明細書中で使用される場合、「不飽和(unsaturation)」は、ASTM D4671‐16で報告されている標準的な方法で決定される値を指す。この方法では、ポリオールを、メタノール溶液中で酢酸水銀及びメタノールと反応させて、アセトキシ水銀メトキシ化合物及び酢酸を生成する。ポリオールと酢酸水銀との反応は等モルであり、放出される酢酸の量は、アルコール性水酸化カリウムを用いた滴定によって決定され、これにより、本明細書中で使用される不飽和の尺度が提供される。酢酸の滴定に対する余剰の酢酸水銀の影響を防止するために、臭化ナトリウムを添加して、酢酸水銀を臭化物に変換する。
【0052】
オリゴマーを形成するための反応は更に、未反応の開始材料(例えばジイソシアネート化合物)中に存在する末端イソシアネート基と、又はジイソシアネート化合物とポリオールとの(例えばウレタン化合物と末端イソシアネート基との)反応で形成された産物と反応させるための、ヒドロキシアクリレート化合物の添加を含む。ヒドロキシアクリレート化合物は、末端イソシアネート基と反応して、オリゴマーの1つ以上の構成要素のための末端アクリレート基を提供する。いくつかの実施形態では、ヒドロキシアクリレート化合物は、末端イソシアネート基を末端アクリレート基に完全に変換するために必要な量より多く存在する。オリゴマーは、単一のポリエーテルウレタンアクリレート化合物、又は2つ以上のポリエーテルウレタンアクリレート化合物の組み合わせを含む。
【0053】
ヒドロキシアクリレート化合物は、分子式(III):
【0054】
【化3】
【0055】
で表され、ここでRはアルキレン基を含む。Rのアルキレン基は、直鎖状(例えばメチレン若しくはエチレン)、分岐状(例えばイソプロピレン)、又は環状(例えばフェニレン)である。いくつかの実施形態では、ヒドロキシアクリレート化合物は、アクリレート基のエチレン不飽和基の置換を含む。エチレン不飽和基の置換基としては、アルキル基が挙げられる。エチレン不飽和基が置換されたヒドロキシアクリレート化合物の一例は、ヒドロキシメタクリレート化合物である。以下の議論は、ヒドロキシアクリレート化合物について説明する。しかしながら、以下の議論は、置換されたヒドロキシアクリレート化合物、特にヒドロキシメタクリレート化合物に適用されることを理解されたい。
【0056】
異なる複数の実施形態において、ヒドロキシアクリレート化合物は、2‐ヒドロキシエチルアクリレート等のヒドロキシアルキルアクリレートである。ヒドロキシアクリレート化合物は、残留物レベル又はそれ以上のレベルで、水を含んでよい。ヒドロキシアクリレート化合物中に水が存在することにより、イソシアネート基の反応を促進でき、最終反応組成物中の未反応のイソシアネート基の濃度が低下する。様々な実施形態において、ヒドロキシアクリレート化合物の水分含有量は、少なくとも300ppm、又は少なくとも600ppm、又は少なくとも1000ppm、又は少なくとも1500ppm、又は少なくとも2000ppm、又は少なくとも2500ppmである。
【0057】
以上の例示的な分子式(I)、(II)、及び(III)において、基R、R、及びRは全て同一であるか、全て異なっているか、又は同一である2つの基及び異なる1つの基を含んでいる。
【0058】
ジイソシアネート化合物、ヒドロキシアクリレート化合物、及びポリオールは、同時に組み合わされて反応するか、又は(いずれの順序で)順次組み合わされて反応する。一実施形態では、オリゴマーは、ジイソシアネート化合物をヒドロキシアクリレート化合物と反応させ、得られた産物組成物をポリオールと反応させることによって、形成される。別の実施形態では、オリゴマーは、ジイソシアネート化合物をポリオール化合物と反応させ、得られた産物組成物をヒドロキシアクリレート化合物と反応させることによって、形成される。
【0059】
オリゴマーは、ジイソシアネート化合物、ヒドロキシアクリレート化合物、及びポリオールの反応から形成され、ここで、反応プロセスにおけるジイソシアネート化合物:ヒドロキシアクリレート化合物:ポリオールのモル比をn:m:pとする。n、m、及びpは、本明細書では、ジイソシアネート、ヒドロキシアクリレート、及びポリオールのモル数又はモル比率を指す。モル数n、m及びpは、正の整数又は正の非整数である。pが2.0である場合、nは3.0~5.0、又は3.0~4.5、又は3.2~4.8、又は3.4~4.6、又は3.6~4.4であり;mは1.50n-3~2.50n-5、又は1.55n-3~2.45n-5、又は1.60n-3~2.40n-5、又は1.65n-3~2.35n-5である。例えばpが2.0である場合、nは3.0であり、mは1.5~2.5、又は1.65~2.35、又は1.80~2.20、又は1.95~2.05である。2.0以外のpの値に関して、モル比n:m:pは比例的にスケーリングする。例えば、モル比n:m:p=4.0:3.0:2.0は、モル比n:m:p=2.0:1.5:1.0と同等である。
【0060】
モル数mは、オリゴマーの形成に使用されるジイソシアネート化合物とポリオールとの反応から形成される産物組成物中に存在する未反応のイソシアネート基と化学量論的に反応する量の、ヒドロキシアクリレート化合物を提供するように、選択してよい。イソシアネート基は、未反応のジイソシアネート化合物(未反応の開始材料)中、又はジイソシアネート化合物とポリオールとの反応中に形成されるイソシアネート末端ウレタン化合物中に存在し得る。あるいは、モル数mは、ジイソシアネート化合物とポリオールとの反応から形成される産物組成物中に存在するいずれの未反応のイソシアネート基と化学量論的に反応するために必要な量を超える量のヒドロキシアクリレート化合物を提供するように、選択してよい。ヒドロキシアクリレート化合物は、単一のアリコート又は複数のアリコートとして添加される。一実施形態では、ヒドロキシアクリレートの最初のアリコートは、オリゴマーを形成するために使用される反応混合物中に含まれ、形成される産物組成物を、(例えばFTIR分光分析を用いて、イソシアネート基の存在を検出することにより)未反応のイソシアネート基の存在に関して試験できる。ヒドロキシアクリレート化合物の更なるアリコートを上記産物組成物に添加して、(例えばFTIR分光分析を用いて、ヒドロキシアクリレート化合物によるイソシアネート基の変換に伴う、特徴的なイソシアネートの周波数(例えば2260cm-1~2270cm-1)の低下を監視することによって)未反応のイソシアネート基と化学量論的に反応させてよい。代替実施形態では、未反応のイソシアネート基と化学量論的に反応するために必要な量を超えた、ヒドロキシアクリレート化合物のアリコートを添加する。以下で更に十分に説明されるように、ある所与の値のpに関して、モル数mとモル数nとの比は、オリゴマー中のポリエーテルウレタンジアクリレート化合物及び二付加体化合物の相対比率に影響を及ぼし、ポリエーテルウレタンジアクリレート化合物及び二付加体化合物の相対比率の違いは、オリゴマーから形成されるコーティングの引裂き強度及び/又は臨界応力の違いにつながる。
【0061】
一実施形態では、オリゴマーは、4,4’‐メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、2‐ヒドロキシエチルアクリレート、及びポリプロピレングリコールを、上述したモル比n:m:pで含む、反応混合物から形成され、ここでポリプロピレングリコールは、2500g/mol~6500g/mol、又は3000g/mol~6000g/mol、又は3500g/mol~5500g/molの数平均分子量を有する。
【0062】
オリゴマーは2つの成分を含む。第1の成分は、分子式(IV):
【0063】
【化4】
【0064】
を有するポリエーテルウレタンジアクリレート化合物であり、第2の成分は、分子式(V):
【0065】
【化5】
【0066】
を有する二付加体化合物であり、ここで基R、R、R、及び整数xは、上述の通りであり、yは正の整数であり、また、分子式(IV)及び(V)中の基Rは、分子式(I)中の基Rと同一であり、分子式(IV)中の基Rは、分子式(II)中のRと同一であり、分子式(IV)及び(V)中の基Rは、分子式(III)中の基Rと同一であることが理解される。二付加体化合物は、分子式(I)のジイソシアネート化合物の両方の末端イソシアネート基と、分子式(III)のヒドロキシアクリレート化合物との反応によって形成される化合物に相当し、ここで上記ジイソシアネート化合物は、分子式(II)のポリオールとは全く反応しない。
【0067】
二付加体化合物は、オリゴマーを形成するために使用される反応中に、ジイソシアネート化合物とヒドロキシアクリレート化合物との反応から形成される。あるいは、二付加体化合物は、オリゴマーの形成に使用される反応とは独立して形成されて、ポリエーテルウレタンジアクリレート化合物の形成に使用される反応の産物に、又はポリエーテルウレタンジアクリレート化合物の精製形態に、添加される。ヒドロキシアクリレート化合物のヒドロキシ基は、ジイソシアネート化合物のイソシアネート基と反応して、末端アクリレート基を提供する。この反応がジイソシアネート化合物の各イソシアネート基で発生することにより、二付加体化合物が形成される。二付加体化合物はオリゴマー中に、少なくとも1.0重量%、又は少なくとも1.5重量%、又は少なくとも2.0重量%、又は少なくとも2.25重量%、又は少なくとも2.5重量%、又は少なくとも3.0重量%、又は少なくとも3.5重量%、又は少なくとも4.0重量%、又は少なくとも4.5重量%、又は少なくとも5.0重量%、又は少なくとも7.0重量%、又は少なくとも9.0重量%、又は1.0重量%~10.0重量%、又は2.0重量%~9.0重量%、又は2.5重量%~6.0重量%、又は3.0重量%~8.0重量%、又は3.0重量%~5.0重量%、又は3.0重量%~5.5重量%、又は3.5重量%~5.0重量%、又は3.5重量%~7.0重量%の量で存在する。なお、二付加体化合物の濃度は、コーティング組成物の重量%ではなく、オリゴマーの重量%で表現されている。
【0068】
本開示に従ってオリゴマーを合成するための例示的な反応は、ジイソシアネート化合物(4,4’‐メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、本明細書ではH12MDIとも呼ばれる)と、ポリオール(Mが~4000g/molのポリプロピレングリコール、本明細書ではPPG4000とも呼ばれる)との反応を含み、これは、式(VI):
H12MDI~PPG4000~H12MDI~PPG4000~H12MDI (VI)
のポリエーテルウレタンジイソシアネート化合物を形成し、ここで:「~」は、H12MDIの末端イソシアネート基とPPG4000の末端アルコール基との反応によって形成されるウレタン結合を示し;~H12MDI、~H12MDI~、及び~PPG4000~は、H12MDI及びPPG4000の残渣が反応後に残っていることを意味する。ポリエーテルウレタンジイソシアネート化合物は~(H12MDI~PPG4000)~のタイプの反復単位を有する。示されている特定のポリエーテルウレタンジイソシアネートは、2つのPPG4000単位を含む。この反応は、1つのPPG4000単位、又は3つ以上のPPG4000単位を有する産物を提供する場合もある。ポリエーテルウレタンジイソシアネート及びいずれの未反応のH12MDIは、末端イソシアネート基を含む。本開示によると、ヒドロキシアクリレート化合物(例えば2‐ヒドロキシエチルアクリレート、本明細書ではHEAと呼ばれる)をこの反応に含め、末端イソシアネート基と反応させて、これらを末端アクリレート基に変換する。末端イソシアネート基の末端アクリレート基への変換は、イソシアネート基のクエンチをもたらす。この反応に含まれるHEAの量は、予想された濃度の未反応のイソシアネート基と化学量論的に反応すると推定される量、又は予想された化学量論的な量を超える量であってよい。HEAとポリエーテルウレタンジイソシアネート化合物との反応により、式(VII):
HEA~H12MDI~PPG4000~H12MDI~PPG4000~H12MDI (VII)
のポリエーテルウレタンアクリレート化合物、及び/又は式(VIII):
HEA~H12MDI~PPG4000~H12MDI~PPG4000~H12MDI~HEA (VIII)
のポリエーテルウレタンジアクリレート化合物が形成され、
またHEAと、未反応のH12MDIとの反応によって、式(IX):
HEA~H12MDI~HEA (IX)
の二付加体化合物が形成され、ここで上述のように、~はウレタン結合を表し、~HEAは、ウレタン結合を形成する反応の後にHEAの残渣が残っていることを表す(式(IV)及び(V)と矛盾しない)。産物組成物中でのポリエーテルウレタンジアクリレート化合物と二付加体化合物との組み合わせにより、本開示によるオリゴマーが構成される。以下で更に十分に説明されるように、1つ以上のオリゴマーをコーティング組成物中で使用すると、引裂き強度及び臨界応力特性が改善されたコーティングが得られる。特に、二付加体化合物の割合が高いオリゴマーは、高い引裂き強度及び/又は高い臨界応力値を有するコーティングを提供することが実証されている。
【0069】
H12MDI、HEA及びPPG4000の例示的な組み合わせを示したが、上述の反応は、ジイソシアネート化合物、ヒドロキシアクリレート化合物、及びポリオールの任意の組み合わせへと一般化でき、ここで、ヒドロキシアクリレート化合物は末端イソシアネート基と反応して末端アクリレート基を形成し、ウレタン結合は、イソシアネート基と、ポリオール又はヒドロキシアクリレート化合物のアルコール基との反応から形成される。
【0070】
オリゴマーは、式(X):
(ヒドロキシアクリレート)~(ジイソシアネート~ポリオール)~ジイソシアネート~(ヒドロキシアクリレート) (X)
のポリエーテルウレタンジアクリレート化合物である化合物と、式(IX):
(ヒドロキシアクリレート)~ジイソシアネート~(ヒドロキシアクリレート) (XI)
の二付加体化合物である化合物とを含み、ここで、オリゴマーを形成するための上記反応で使用されるジイソシアネート化合物、ヒドロキシアクリレート化合物、及びポリオールの相対比率は、上で開示されているモル数n、m、及びpに対応する。
【0071】
上述の分子式(I)及び(II)で表される化合物は例えば、反応して、分子式(XII):
【0072】
【化6】
【0073】
で表されるポリエーテルウレタンジイソシアネート化合物を形成し、ここで:yは、式(IV)におけるyと同一であり、1、又は2、又は3、又は4、又はそれより大きく;xは、(上述のように)ポリオールの反復単位の数によって決定される。
【0074】
分子式(VI)のポリエーテルウレタンイソシアネートと分子式(III)のヒドロキシアクリレートとの更なる反応は、上で参照されているが以下に再び記載される分子式(IV):
【0075】
【化7】
【0076】
で表されるポリエーテルウレタンジアクリレート化合物を提供し、ここで(上述のように):yは1、又は2、又は3、又は4、又はそれより大きく;xはポリオールの反復単位の数によって決定される。
【0077】
ある実施形態では、ジイソシアネート化合物、ヒドロキシアクリレート化合物、及びポリオールの間の反応は、yが異なる一連のポリエーテルウレタンジアクリレート化合物をもたらすため、最終反応混合物中に存在する化合物の分布にわたるyの平均値は整数にならない。ある実施形態では、分子式(VI)のポリエーテルウレタンジイソシアネート及び分子式(IV)のポリエーテルウレタンジアクリレートにおけるyの平均値は、p又はp-1に対応する(ここでpは上で定義されている通りである)。ある実施形態では、分子式(XII)のポリエーテルウレタンジイソシアネート及び分子式(IV)のポリエーテルウレタンジアクリレートにおける基Rの平均出現数は、nに対応する(ここでnは上で定義されている通りである)。
【0078】
上記反応で生成されるポリエーテルウレタンジアクリレートと二付加体化合物との相対比率は、モル数n、m、及びpのモル比を変化させることによって制御される。例としてp=2.0の場合を考える。完全な反応の理論的限界では、2当量pのポリオールが3当量nのジイソシアネートと反応して、分子式(VI)(ただしy=2)の化合物を形成する。この化合物は2つの末端イソシアネート基を含み、これらは、この理論的限界において2当量mのヒドロキシアクリレート化合物を後で添加することによってクエンチでき、これによって、対応するポリエーテルウレタンジアクリレート化合物(IV)(ただしy=2)が形成される。理論上のモル比n:m:p=3.0:2.0:2.0が、この状況に関して画定される。
【0079】
上述の例示的な理論的限界において、理論上のモル比n:m:p=3.0:2.0:2.0でのジイソシアネート、ヒドロキシアクリレート、及びポリオールの反応は、二付加体化合物を形成することなく、分子式(IV)(ただしy=2)のポリエーテルウレタンジアクリレート化合物を提供する。モル数n、m、及びpを変化させることにより、反応中に形成されるポリエーテルウレタンジアクリレート及び二付加体化合物の相対比率の制御を提供する。例えば、モル数nをモル数m又はモル数pに対して増大させると、反応中に形成される二付加体化合物の量を増大させることができる。例えばnが3.0~4.5等、n>3.0であり、mが1.5n-3~2.5n-5であり、pが2.0であるモル比n:m:pでの、ジイソシアネート化合物、ヒドロキシアクリレート化合物、及びポリオール化合物の反応は、以下に記載の有益なコーティング特性を達成するために十分な、オリゴマー中の二付加体化合物の量を生成する。
【0080】
二付加体化合物及びポリエーテルウレタンジアクリレートの相対比の変化は、モル数n、m、及びpの変更によって得られ、またこのような変化により、上記オリゴマーを含むコーティング組成物から形成されるコーティングの引裂き強度、臨界応力、引張じん性、及び他の機械的特性を、正確に制御できる。一実施形態では、特性の制御は、ポリエーテルウレタンジアクリレート化合物中のポリオールの単位の数を変化させること(例えばp=2.0、p=3.0、p=4.0)によって達成できる。別の実施形態では、引裂き強度、引張じん性、及び他の機械的特性の制御は、ポリエーテルウレタンジアクリレート化合物及び二付加体化合物の比率を変化させることによって達成される。ある所与の数のポリオール単位を有するポリエーテルウレタン化合物に関して、様々な比率の二付加体化合物を有するオリゴマーを調製できる。二付加体化合物の比率の変動性を繊細に制御することにより、引裂き強度、臨界応力、引張じん性、又は他の機械的特性の正確な値又は目標値を提供するコーティングを提供する、固定された数のポリオール単位を有するポリエーテルウレタンジアクリレート化合物をベースとするオリゴマーを提供できる。
【0081】
分子式(IV)で表されるポリエーテルウレタンアクリレート化合物及び分子式(V)で表される二付加体化合物を含むオリゴマーを組み込んだコーティング組成物を利用すると、改良されたファイバのコーティングが得られ、ここで上記オリゴマー中の二付加体化合物の濃度は、少なくとも1.0重量%、又は少なくとも1.5重量%、又は少なくとも2.0重量%、又は少なくとも2.25重量%、又は少なくとも2.5重量%、又は少なくとも3.0重量%、又は少なくとも3.5重量%、又は少なくとも4.0重量%、又は少なくとも4.5重量%、又は少なくとも5.0重量%、又は少なくとも7.0重量%、又は少なくとも9.0重量%、又は1.0重量%~10.0重量%、又は2.0重量%~9.0重量%、又は3.0重量%~8.0重量%、又は3.5重量%~7.0重量%又は2.5重量%~6.0重量%、又は3.0重量%~5.5重量%、又は3.5重量%~5.0重量%である。なお、二付加体化合物の濃度は、コーティング組成物の重量%ではなく、オリゴマーの重量%で表現されている。二付加体化合物の濃度は、一実施形態では、ジイソシアネート:ヒドロキシアクリレート:ポリオールのモル比n:m:pを変化させることによって上昇する。一態様では、ポリオールに対してジイソシアネートが豊富であるモル比n:m:pによって、二付加体化合物の形成が促進される。
【0082】
上述の例示的な化学量論比n:m:p=3:2:2において、反応は、p当量のポリオール、n=p+1当量のジイソシアネート、及び2当量のヒドロキシアクリレートを用いて進行する。モル数nがp+1を超える場合、ジイソシアネート化合物は、分子式(IV)のポリエーテルウレタンアクリレートを形成するために必要なポリオール化合物の量に対して過剰に存在する。余剰のジイソシアネートの存在により、反応産物の分布が、二付加体化合物の形成の増強にシフトする。
【0083】
余剰のジイソシアネート化合物からの二付加体化合物の形成を促進するために、ヒドロキシアクリレートの量を増大させることもできる。上述のジイソシアネートの各当量、化学量論的モル数n=p+1に関して、二付加体化合物を形成するために、2当量のヒドロキシアクリレートが必要である。任意のモル数p(ポリオール)の場合、化学量論的モル数n(ジイソシアネート)及びm(ヒドロキシアクリレート)は、それぞれp+1及び2となる。モル数nがこの化学量論的な値を超えて増大すると、二付加体化合物を形成するための余剰のジイソシアネートの完全な反応に必要なヒドロキシアクリレートの当量は、m=2+2[n-(p+1)]として表現でき、ここで、最初の項「2」は、ポリエーテルウレタンアクリレート化合物(分子式(V)を有する化合物)を終端させるために必要なヒドロキシアクリレートの当量を表し、項2[n-(p+1)]は、開始材料である余剰のジイソシアネートを二付加体化合物に変換するために必要なヒドロキシアクリレートの当量を表す。モル数mの実際の値がこの当量の値より小さい場合、利用可能なヒドロキシアクリレートが、オリゴマー又は遊離ジイソシアネート分子上に存在するイソシアネート基と反応して、末端アクリレート基が形成される。これら2つの反応経路の相対的な動態は、形成されるポリエーテルウレタンジアクリレート及び二付加体化合物の相対量を規定し、全ての未反応のイソシアネート基をクエンチするために必要な量に対するヒドロキシアクリレートの欠乏を制御することによって、この反応で形成されるポリエーテルウレタンジアクリレート及び二付加体化合物の相対比率に更に影響を及ぼすことができる。
【0084】
いくつかの実施形態では、上記反応は、ジイソシアネート化合物、ヒドロキシアクリレート化合物、及びポリオールから形成される反応組成物を加熱するステップを含む。この加熱は、ヒドロキシアクリレート化合物と末端イソシアネート基との反応による、末端イソシアネート基の末端アクリレート基への変換を促進する。異なる複数の実施形態において、ヒドロキシアクリレート化合物は、初期反応混合物中に過剰に存在し、及び/又はその他の方法で利用可能であるか若しくは未反応形態で添加され、これにより、末端イソシアネート基の末端アクリレート基への変換が発生する。加熱は、40℃超の温度で少なくとも12時間、又は40℃超の温度で少なくとも18時間、又は40℃超の温度で少なくとも24時間、又は50℃超の温度で少なくとも12時間、又は50℃超の温度で少なくとも18時間、又は50℃超の温度で少なくとも24時間、又は60℃超の温度で少なくとも12時間、又は60℃超の温度で少なくとも18時間、又は60℃超の温度で少なくとも24時間、行われる。
【0085】
ある実施形態では、ポリエーテルウレタンジアクリレート化合物又は開始材料のジイソシアネート化合物上の末端イソシアネート基(未反応の初期量、又は過剰に存在する量)の、末端アクリレート基への変換を、補助的な量のヒドロキシアクリレート化合物を反応混合物に添加することによって促進する。上述のように、末端イソシアネート基をクエンチ(中和)するために必要なヒドロキシアクリレート化合物の量は、例えば不完全な反応、又はポリエーテルウレタンジアクリレート化合物及び二付加体化合物の相対比率を制御したいという要求により、理論上の当量値からずれる場合がある。上述のように、反応が完了点又は他の終点まで進行した後、残留イソシアネート基をクエンチ(中和)して、安定化された反応産物を提供することが好ましい。ある実施形態では、補助的なヒドロキシアクリレートを添加することによってこの目的を達成する。
【0086】
ある実施形態では、補助的なヒドロキシアクリレート化合物の量は、初期反応プロセスに含まれる量に追加されるものである。反応のいずれの段階における末端イソシアネート基の存在を、例えば(2265cm-1付近の特徴的なイソシアネート伸縮モードを用いた)FTIR分光分析によって監視し、このイソシアネート基の特徴的な伸縮モードの強度が無視できるものとなるか又は所定の閾値未満となるまで、補助的なヒドロキシアクリレート化合物を必要に応じて添加する。ある実施形態では、補助的なヒドロキシアクリレート化合物は、末端イソシアネート基を末端アクリレート基に完全に変換するために必要な量を超えて添加される。異なる複数の実施形態において、補助的なヒドロキシアクリレート化合物は:(ジイソシアネート及びポリオールのモル量から予想される理論上の量を超えた量として)初期反応混合物に含まれ;反応の進行に従って添加され;並びに/又はジイソシアネート及びポリオール化合物の反応が完了点又は所定の範囲まで行われた後で添加される。
【0087】
イソシアネート基を完全に変換するために必要な量を超えたヒドロキシアクリレート化合物の量は、本明細書では、ヒドロキシアクリレート化合物の「余剰量(excess amount)」と呼ばれる。ヒドロキシアクリレート化合物の余剰量が添加される場合、これは:末端イソシアネート基を末端アクリレート基に完全に変換するために必要な、補助的なヒドロキシアクリレート化合物の量の、少なくとも20%;又は末端イソシアネート基を末端アクリレート基に完全に変換するために必要な、補助的なヒドロキシアクリレート化合物の量の、少なくとも40%;又は末端イソシアネート基を末端アクリレート基に完全に変換するために必要な、補助的なヒドロキシアクリレート化合物の量の、少なくとも60%;又は末端イソシアネート基を末端アクリレート基に完全に変換するために必要な、補助的なヒドロキシアクリレート化合物の量の、少なくとも90%である。
【0088】
ある実施形態では、補助的なヒドロキシアクリレート化合物の量は、反応で形成されたオリゴマー中に存在する残留イソシアネート基を完全に又は略完全にクエンチするために十分なものであってよい。イソシアネート基のクエンチが望ましいのは、イソシアネート基が比較的不安定であり、時間が経つと反応することが多いためである。このような反応は、反応組成物又はオリゴマーの特徴を変化させ、これらから形成されるコーティングのムラにつながる場合がある。開始材料のジイソシアネート及びポリオール化合物から形成される、残留イソシアネート基を含まない反応組成物及び産物は、より優れた安定性及び特性の予測可能性を有するものと予想される。
【0089】
コーティング組成物のオリゴマーは、上述のように、ポリエーテルウレタンジアクリレート化合物及び二付加体化合物を含む。いくつかの態様では、上記オリゴマーは、2つ以上のポリエーテルウレタンジアクリレート化合物及び/又は2つ以上の二付加体化合物を含む。コーティング組成物のオリゴマー含有量は、1つ以上のポリエーテルウレタンジアクリレート化合物と1つ以上の二付加体化合物との合計量を含み、20重量%超、又は30重量%超、又は40重量%超、又は20重量%~80重量%、又は30重量%~70重量%、又は40重量%~60重量%であり、ここで、上記オリゴマー含有量中の二付加体化合物の濃度は、上述の通りである。
【0090】
硬化性コーティング組成物は更に、1つ以上のモノマーを含む。上記1つ以上のモノマーは:オリゴマーと共存できるように;加工を容易にするためにコーティングの粘度を制御するように;及び/又はコーティング組成物の硬化産物として形成されたコーティングの物理的若しくは化学的特性に影響を及ぼすように、選択される。上記モノマーとしては、エチレン不飽和化合物、エトキシ化アクリレート、エトキシ化アルキルフェノールモノアクリレート、プロピレンオキシドアクリレート、n‐プロピレンオキシドアクリレート、イソプロピレンオキシドアクリレート、単官能性アクリレート、単官能性脂肪族エポキシアクリレート、多官能性アクリレート、多官能性脂肪族エポキシアクリレート、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0091】
代表的な放射線硬化性エチレン不飽和モノマーとしては、1つ以上のアクリレート又はメタクリレート基を含むアルコキシ化モノマーが挙げられる。アルコキシ化モノマーは、1つ以上のアルコキシレン基を含むものであり、ここでアルコキシレン基は、‐O‐R‐の形態を有し、Rは直鎖又は分岐アルキレン基である。アルコキシレン基の例としては、エトキシレン(‐O‐CH‐CH‐)、n‐プロポキシレン(‐O‐CH‐CH‐CH‐)、イソプロポキシレン(‐O‐CH‐CH(CH)‐、又は‐O‐CH(CH)‐CH‐)等が挙げられる。本明細書中で使用される場合、アルコキシ化度とは、モノマー中のアルコキシレン基の数を指す。一実施形態では、複数のアルコキシレン基がモノマー中で連続して結合される。
【0092】
いくつかの態様では、コーティング組成物は、R‐R‐O‐(CH(CH)CH‐O)‐C(O)CH=CH(ここでR及びRは、脂肪族、芳香族、若しくはこれら両方の混合物であり、q=1~10である)、又はR‐O‐(CH(CH)CH‐O)‐C(O)CH=CH(ここでC(O)はカルボニル基であり、Rは脂肪族若しくは芳香族であり、q=1~10である)の形態の、アルコキシ化モノマーを含む。
【0093】
モノマーの代表的な例としては、ラウリルアクリレート(例えばSartomer Company, Inc.製SR335、BASF製AGEFLEX FA12、及びIGM Resins製PHOTOMER 4812)、エトキシ化ノニルフェノールアクリレート(例えばSartomer Company, Inc.製SR504、及びIGM Resins製PHOTOMER 4066)、カプロラクトンアクリレート(例えばSartomer Company, Inc.製SR495、及びDow Chemical製TONE M‐100)、フェノキシエチルアクリレート(例えばSartomer Company, Inc.製SR339、BASF製AGEFLEX PEA、及びIGM Resins製PHOTOMER 4035)、イソオクチルアクリレート(例えばSartomer Company, Inc.製SR440、及びBASF製AGEFLEX FA8)、トリデシルアクリレート(例えばSartomer Company, Inc.製SR489)、イソボルニルアクリレート(例えばSartomer Company, Inc.製SR506、及びCPS Chemical Co.製AGEFLEX IBOA)、テトラヒドロフルフリルアクリレート(例えばSartomer Company, Inc.製SR285)、ステアリルアクリレート(例えばSartomer Company, Inc.製SR257)、イソデシルアクリレート(例えばSartomer Company, Inc.製SR395、及びBASF製AGEFLEX FA10)、2‐(2‐エトキシエトキシ)エチルアクリレート(例えばSartomer Company, Inc.製SR256)、エポキシアクリレート(例えばSartomer Company, Inc.製CN120、並びにCytec Industries Inc.製EBECRYL 3201及び3604)、ラウリルオキシグリシジルアクリレート(例えばSartomer Company, Inc.製CN130)、並びにフェノキシグリシジルアクリレート(例えばSartomer Company, Inc.製CN131)といったエチレン不飽和モノマー、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0094】
いくつかの実施形態では、コーティング組成物のモノマー成分としては、多官能性(メタ)アクリレートが挙げられる。多官能性エチレン不飽和モノマーとしては、多官能性アクリレートモノマー及び多官能性メタクリレートモノマーが挙げられる。多官能性アクリレートは、分子1つあたり2つ以上の重合性アクリレート部分、又は分子1つあたり3つ以上の重合性アクリレート部分を有する、アクリレートである。多官能性(メタ)アクリレートの例としては:ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート(例えばIGM Resins製PHOTOMER4399);トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(例えばPHOTOMER 4355、IGM Resins)といった、アルコキシ化した又はアルコキシ化していないメチロールプロパンポリアクリレート;プロポキシ化度3以上のプロポキシ化グリセリルトリアクリレート(例えばPHOTOMER 4096、IGM Resins)といった、アルコキシ化グリセリルトリアクリレート;ペンタエリスリトールテトラアクリレート(例えばSartomer Company, Inc.(ペンシルベニア州ウェストチェスター)製SR295)、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート(例えばSR494、Sartomer Company, Inc.)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(例えばPHOTOMER 4399、IGM Resins;及びSR399、Sartomer Company, Inc.)といった、アルコキシ化した又はアルコキシ化していないエリスリトールポリアクリレート;トリプロピレングリコールジアクリレート、プロポキシ化ヘキサンジオールジアクリレート、テトラプロピレングリコールジアクリレート、ペンタプロピレングリコールジアクリレート;これらのメタクリレート類似体;並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0095】
いくつかの態様では、コーティング組成物は、N‐ビニルラクタム、又はN‐ビニルピロリドン、又はN‐ビニルカプロラクタムといったN‐ビニルアミドモノマーを含み、ここで上記N‐ビニルアミドモノマーは、コーティング組成物中に、1.0重量%超、又は2.0重量%超、又は3.0重量%超、又は1.0重量%~15.0重量%、又は2.0重量%~10.0重量%、又は3.0重量%~8.0重量%の濃度で存在する。
【0096】
ある実施形態では、コーティング組成物は、1つ以上の単官能性アクリレート又はメタクリレートモノマーを、5~95重量%、又は30~75重量%、又は40~65重量%の量で含む。別の実施形態では、コーティング組成物は、1つ以上の単官能性脂肪族エポキシアクリレート又はメタクリレートモノマーを、5~40重量%、又は10~30重量%の量で含んでよい。
【0097】
ある実施形態では、コーティング組成物のモノマー成分としては、ヒドロキシ官能性モノマーが挙げられる。ヒドロキシ官能性モノマーは、ペンダントヒドロキシ部分を、(メタ)アクリレート等の他の反応官能性に加えて有する、モノマーである。ペンダントヒドロキシ基を含むヒドロキシ官能性モノマーの例としては:カプロラクトンアクリレート(Dow ChemicalからTONE M‐100として入手可能);ポリ(エチレングリコール)モノアクリレート、ポリ(プロピレングリコール)モノアクリレート、及びポリ(テトラメチレングリコール)モノアクリレート(それぞれMonomer, Polymer & Dajac Labs製)といった、ポリ(アルキレングリコール)モノ(メタ)アクリレート;2‐ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3‐ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、及び4‐ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート(それぞれAldrich製)が挙げられる。
【0098】
ある実施形態では、上記ヒドロキシ官能性モノマーは、光ファイバに対するコーティングの接着を改善するために十分な量で存在する。ヒドロキシ官能性モノマーはコーティング組成物中に、約0.1重量%~約25重量%の量で、又は約5重量%~約8重量%の量で存在する。ヒドロキシ官能性モノマーの使用により、光ファイバに対する一次コーティングの十分な接着に必要な接着促進剤の量を削減できる。またヒドロキシ官能性モノマーの使用により、コーティングの親水性が向上する傾向もあり得る。ヒドロキシ官能性モノマーは、米国特許第6,563,996号明細書に更に詳細に説明されており、上記特許文献の開示は、参照によりその全体が本出願に援用される。
【0099】
異なる複数の実施形態において、コーティング組成物の合計モノマー含有量は、約5重量%~約95重量%、又は約30重量%~約75重量%、又は約40重量%~約65重量%である。
【0100】
いくつかの実施形態では、上記コーティング組成物は、1つ以上の重合開始剤、及び1つ以上の添加剤も含んでよい。
【0101】
重合開始剤は、コーティングを形成するためのコーティング組成物の硬化に関連する重合プロセスの開始を促進する。重合開始剤としては、熱開始剤、化学開始剤、電子ビーム開始剤、及び光開始剤が挙げられる。光開始剤が好ましい重合開始剤である。光開始剤としては、ケトン性光開始添加剤及び/又はホスフィンオキシド添加剤が挙げられる。本開示のコーティングの形成反応で使用される場合、光開始剤は、迅速な放射線硬化を可能とするために十分な量で存在する。硬化用放射線の波長は、赤外波長、可視波長、又は紫外波長である。代表的な波長としては、300nm~1000nm、又は300nm~700nm、又は300nm~400nm、又は325nm~450nm、又は325nm~400nm、又は350nm~400nmの波長が挙げられる。硬化は、ランプ光源(例えばHgランプ)、又はLED光源(例えばUVLED、可視光LED、若しくは赤外LED)を用いて達成できる。
【0102】
代表的な光開始剤としては:1‐ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(例えばBASF製IRGACURE 184);ビス(2,6‐ジメトキシベンゾイル)‐2,4,4‐トリメチルペンチルホスフィンオキシド(例えばBASF製の市販の混合物IRGACURE 1800、1850、及び1700);2,2‐ジメトキシ‐2‐フェニルアセトフェノン(例えばBASF製IRGACURE 651);ビス(2,4,6‐トリメチルベンゾイル)‐フェニルホスフィンオキシド(IRGACURE 819);(2,4,6‐トリメチルベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキシド(BASF(ドイツ、ミュンヘン)製LUCIRIN TPO);エトキシ(2,4,6‐トリメチルベンゾイル)‐フェニルホスフィンオキシド(BASF製LUCIRIN TPO‐L);並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0103】
コーティング組成物は、単一の光開始剤、又は2つ以上の光開始剤の組み合わせを含む。コーティング組成物中の光開始剤の合計濃度は、0.25重量%超、又は0.50重量%超、又は0.75重量%超、又は1.0重量%超、又は0.25重量%~5.0重量%、又は0.50重量%~4.0重量%、又は0.75重量%~3.0重量%である。
【0104】
1つ以上のモノマー、1つ以上のオリゴマー、及び1つ以上の重合開始剤に加えて、コーティング組成物は任意に、1つ以上の添加剤を含む。添加剤としては、接着促進剤、強度補助剤、抗酸化剤、触媒、安定剤、蛍光増白剤、特性向上添加剤、アミン相乗剤、ワックス、潤滑剤、及び/又はスリップ剤が挙げられる。一部の添加剤は、重合プロセスを制御することによって、コーティング組成物から形成される重合産物の物理的特性(例えば弾性、ガラス転移温度)に影響を及ぼすように作用する。他の添加剤は、コーティング組成物の硬化産物の完全性(例えば脱重合又は酸化分解に対する保護)に影響を及ぼす。
【0105】
接着促進剤は、ガラス(例えばガラスファイバのクラッド部分)に対する一次コーティング及び/又は一次コーティング組成物の接着を促進する化合物である。好適な接着促進剤としては、アルコキシシラン、メルカプト‐官能性シラン、有機チタン酸塩、及びジルコン酸塩が挙げられる。代表的な接着促進剤としては、メルカプトアルキルシラン、又は3‐メルカプトプロピル‐トリアルコキシシラン(例えば3‐メルカプトプロピル‐トリメトキシシラン、Gelest(ペンシルベニア州タリータウン)製)等のメルカプトアルコキシシラン;ビス(トリアルコキシシリル‐エチル)ベンゼン;アクリロキシプロピルトリアルコキシシラン(例えば(3‐アクリロキシプロピル)‐トリメトキシシラン、Gelest製)、メタクリロキシプロピルトリアルコキシシラン、ビニルトリアルコキシシラン、ビス(トリアルコキシシリルエチル)ヘキサン、アリルトリアルコキシシラン、スチリルエチルトリアルコキシシラン、及びビス(トリメトキシシリルエチル)ベンゼン(United Chemical Technologies(ペンシルベニア州ブリストル)製)が挙げられる。米国特許第6,316,516号明細書を参照されたい(上記特許文献の開示は、その全体が参照により本出願に援用される)。
【0106】
接着促進剤はコーティング組成物中に、0.02重量%~10.0重量%、又は0.05重量%~4.0重量%、又は0.1重量%~4.0重量%、又は0.1重量%~3.0重量%、又は0.1重量%~2.0重量%、又は0.1重量%~1.0重量%、又は0.5重量%~4.0重量%、又は0.5重量%~3.0重量%、又は0.5重量%~2.0重量%、又は0.5重量%~1.0重量%の量で存在する。
【0107】
代表的な抗酸化剤は、チオジエチレンビス[3‐(3,5‐ジ‐tert‐ブチル)‐4‐ヒドロキシ‐フェニル)プロピオネート](例えばBASF製IRGANOX 1035)である。いくつかの態様では、抗酸化剤はコーティング組成物中に、0.25重量%超、又は0.50重量%超、又は0.75重量%超、又は1.0重量%超、又は0.25重量%~3.0重量%、又は0.50重量%~2.0重量%、又は0.75重量%~1.5重量%の量で存在する。
【0108】
代表的な蛍光増白剤としては:TINOPAL OB(BASF製);Blankophor KLA(Bayer製);ビスベンズオキサゾール化合物;フェニルクマリン化合物;及びビス(スチリル)ビフェニル化合物が挙げられる。ある実施形態では、蛍光増白剤はコーティング組成物中に、0.005重量%~0.3重量%の濃度で存在する。
【0109】
代表的なアミン相乗剤としては:トリエタノールアミン;1,4‐ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、トリエチルアミン、及びメチルジエタノールアミン。ある実施形態では、アミン相乗剤は0.02重量%~0.5重量%の濃度で存在する。
【0110】
コーティング組成物の硬化により、製造中、又はスプライシングを含む後続の加工中の欠陥の形成に対する耐性が向上した、一次コーティング等の硬化産物が提供される。
【0111】
以下で更に詳細に説明されるように、本開示は、低いプルアウト力及び強い結合力を有する一次コーティングが、スプライシング中の欠陥形成に対する耐性を維持したまま、ガラスファイバからきれいに剥離できることを実証している。本開示の一次コーティングは、低いヤング率と強い結合力及び低い接着力とを組み合わせることで、光ファイバのスプライシングされた部分のコーティング残留物が最小限に抑えられ、光ファイバのスプライシングされていない部分に残ったコーティング内に欠陥がほとんどない、ファイバ及びリボンのスプライシングを可能とする。
【0112】
連続光ファイバ製造プロセスでは、ガラスファイバを、加熱されたプリフォームからドロー加工して、目標の直径(例えば125μm)へとサイズ調整する。続いてガラスファイバを冷却してコーティングシステムへと向かわせ、上記コーティングシステムは、液体の一次コーティング組成物をガラスファイバに塗布する。液体の一次コーティング組成物をガラスファイバに塗布した後、2つのプロセス選択肢が実行可能である。第1のプロセス選択肢(ウェット・オン・ドライプロセス)では、液体の一次コーティング組成物を硬化させて、固化済み一次コーティングを形成し、液体の二次コーティング組成物を硬化した一次コーティングに塗布し、液体の二次コーティング組成物を硬化させて、固化済み二次コーティングを形成する。第2のプロセス選択肢(ウェット・オン・ウェットプロセス)では、液体の二次コーティング組成物を液体の一次コーティング組成物に塗布し、両方の液体コーティング組成物を同時に硬化させて、固化済み一次コーティング及び固化済み二次コーティングを提供する。いくつかのプロセスでは、コーティングシステムは更に、三次コーティングを二次コーティングに塗布する。典型的には、三次コーティングは、識別を目的としてファイバに印を付けるために使用されるインク層である。ファイバがコーティングシステムを出た後、ファイバを回収し、室温で保管する。ファイバの回収は典型的には、ファイバをスプールに巻き付けて、このスプールを保管することを伴う。
【0113】
プロセスの効率を改善するために、プリフォームから回収地点まで延在するプロセス経路に沿ったファイバのドロー速度を上昇させることが望ましい。しかしながら、ドロー速度を上昇させると、コーティング組成物の硬化速度を上昇させなければならない。本開示のコーティング組成物は、35m/秒超、又は40m/秒超、又は45m/秒超、又は50m/秒超、又は55m/秒超、又は60m/秒超、又は65m/秒超、又は70m/秒超のドロー速度で動作するファイバドロープロセスと適合する。
【0114】
本開示の経過において、プルアウト力が、ガラスファイバに対する一次コーティングの接着力の信頼できるインジケータであることが観察された。ガラスファイバに対する一次コーティングの接着力は、通常の取り扱い中のガラスファイバからの一次コーティングの分離を防止できるよう十分に強いものの、剥離及びスプライシング作業中に一次コーティングを除去するのが困難になるほど強くはないものである必要がある。
【0115】
本明細書で開示される一次コーティングは、剥離中に残留物を発生させることなく除去できるものでありながら、ガラスファイバへの接着に必要なレベルの接着力と一致する、プルアウト力を示す。しかしながら、本開示の経過において、一次コーティングのプルアウト力が経時的に増大することが観察された。特にプルアウト力は、ドロー加工時の初期値から、後の時点でのより高い値へと上昇する。プルアウト力の経時的増大は望ましくない。プルアウト力が経時的に上昇すると、ガラスファイバに対する一次コーティングの接着力が強くなり、スプライシング中に、ファイバの剥離された部分上に残留物を残すことなく一次コーティングを除去するのがより困難になる。
【0116】
本明細書で開示される一次コーティングのプルアウト力は、従来技術の一次コーティングを上回る、改善された安定性を示す。本開示の目的のために、プリフォームからファイバを作製するために使用される製造プロセスにおいて、コーティング後にファイバを保管する時点から、経時的な安定性を測定する。オリジナルの製造プロセス中の保管の初期時点における光ファイバの状態を、本明細書では光ファイバの「ドロー加工されたままの(as‐drawn)」状態と呼ぶ。ドロー加工されたままの状態では、ファイバはコーティングされており、また、プリフォームからコーティングシステムを通って保管デバイスまで延在する連続プロセス経路に沿って位置決めされた保管デバイス(例えばスプール)上で、室温下にある。ファイバをドロー加工されたままの状態とする時点は、ファイバを保管デバイスに回収する時点である。ドロー加工されたままの状態のファイバの特性の測定は、保管デバイスでの回収に続く、実行可能な限り早期の時点で行われる。測定の遅延が発生する例では、ドロー加工されたままの状態のファイバの特性は、以下の式(3)から得られたフィッティングの外挿によって、後の時点で得られたデータから決定できる。
【0117】
結合力は、引裂き強度及び/又は引張靭性を指す。引張靭性は、コーティング内の破断を開始させるために必要な力の尺度であり、引裂き強度は、コーティングの破断が開始した後にこれを広げるために必要な力の尺度である。
【0118】
本開示の範囲は、コーティング組成物の硬化産物でコーティングされた光ファイバにまで及ぶ。上記光ファイバは、比較的低屈折率のガラスクラッド領域に取り囲まれた比較的高屈折率のガラスコア領域を備えるガラスファイバを含む。本発明のコーティング組成物の硬化産物として形成されるコーティングは、ガラスクラッドを取り囲んでガラスクラッドと直接接触する。本発明のコーティング組成物の硬化産物は好ましくは、ファイバの一次コーティングとして機能する。ファイバは、二次コーティング、又は二次コーティング及び三次コーティングの両方を含んでよい。
【0119】
図9を参照すると、光ファイバ10を製造する方法90は、プリフォームを炉内で加熱するステップ92を含むことができ、上記プリフォームは、ガラスコア12、及びガラスコア12を取り囲んでガラスコア12と直接接触するガラスクラッド14を含む。光ファイバ10を製造する方法90はまた、プリフォームをドロー加工してガラスファイバ11を形成するステップ94を含むことができる。ステップ94から得られるガラスファイバ11は、目標の直径(例えば130μm未満)、ヤング率E、及び半径Rを有することができる。光ファイバ10を製造する方法90は更に、ガラスクラッド14を取り囲んでガラスクラッド14と直接接触するように、一次コーティング16を適用するステップ96を含むことができる。いくつかの例では、一次コーティング16は、0.5MPa未満のヤング率E、30μm未満の厚さ、ポアソン比ν、及び半径Rを有する。光ファイバ10を製造する方法90はまた、一次コーティング16を取り囲んで一次コーティング16と直接接触するように、二次コーティング18を適用するステップ98を含むことができる。様々な例において、二次コーティング18は、1500MPa超のヤング率E、半径R、及び25μm未満の厚さを有する。光ファイバ10を製造する方法90は更に、光ファイバ10のプルアウト力を試験して、上記プルアウト力が臨界プルアウト力Pcrit未満であることを保証するステップを更に含むことができる。臨界プルアウト力の計算については、式(4)を参照して以下で更に詳細に説明する。
【0120】
図10を参照すると、光ファイバ10を設計する方法100は、ガラスファイバ11を選択するステップ102を含むことができる。ステップ102におけるガラスファイバ11の選択は、ガラスファイバ11の様々な特徴又はパラメータを考慮できる。例えばガラスファイバ11の選択は、ガラスファイバ11のヤング率E、ガラスコア12の直径、ガラスコア12の組成、クラッド14の直径、クラッド14の組成、及び/又はクラッド14の層の数を考慮できる。光ファイバ10を設計する方法100はまた、ガラスクラッド14のRを選択するステップ104を含むことができる。光ファイバ10を設計する方法100は更に、ガラスクラッド14を取り囲んでガラスクラッド14と直接接触するように、一次コーティング16を選択するステップ106を含むことができる。一次コーティング16は、様々な例において、一次コーティング16のヤング率E、一次コーティング16のポアソン比ν、及び一次コーティング16の半径Rのうちの少なくとも1つに基づいて選択できる。光ファイバ10を設計する方法100はまた、一次コーティング16を取り囲んで一次コーティング16と直接接触するように、二次コーティング18を選択するステップ108を含むことができる。二次コーティング18は、様々な例において、二次コーティング18のヤング率E、及び二次コーティング18の半径Rのうちの少なくとも1つに基づいて選択できる。光ファイバ10を設計する方法100は更に、光ファイバ10が臨界プルアウト力Pcrit未満のプルアウト力を有するように、様々なパラメータ(例えばE、R、E、R、E、及び/又はR)の選択を構成するステップ110を含むことができる。臨界プルアウト力の計算については、式(4)を参照して以下で更に詳細に説明する。
【実施例
【0121】
本開示によるオリゴマーを含むコーティング組成物から調製される複数の例示的なコーティングを、調製して試験した。試験は、プルアウト力、引裂き強度、及び引張靭性の測定を含んでいた。一次コーティング及び二次コーティングの様々な厚さに関するプルアウト力も試験した。オリゴマーの調製、コーティング組成物の成分の記述、オリゴマー及びコーティングの形成に使用される加工条件、試験方法、並びに試験結果を以下に説明する。
【0122】
コーティング組成物
一次コーティング組成物の成分及び各成分の濃度を表1にまとめる。表1に記載のコーティング組成物A及びBは、本開示によるものである。コーティング組成物Cは比較例の組成物である。D、E、F及びGで示される更なる市販のコーティング組成物を、比較目的で試験した。これらの市販の組成物は、DSM Desotech(イリノイ州エルギン)から入手され、従来のオリゴマーを含むものであった。具体的な配合はベンダー独自のものである。組成物Dの製品コードは950‐076であり、組成物Eの製品コードは950‐030であり、組成物Gの製品コードは3741‐143であり、組成物Fは、組成物Gの、接着促進剤を含む変形であった。比較例のコーティング組成物C~G中に存在するオリゴマーは、コーティング組成物A及びBより低濃度の二付加体化合物を含有していた。
【0123】
【表1】
【0124】
オリゴマー1及びオリゴマー2は、H12MDI(4,4’‐メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、PPG4000(Mが約4000g/molのポリプロピレングリコール)、及びHEA(2‐ヒドロキシエチルアクリレート)の反応の産物である。反応条件を以下で説明する。SR504は、エトキシ化(4)ノニルフェノールアクリレート(Sartomer製)である。NVCは、N‐ビニルカプロラクタム(ISP Technologies製)である。TPOは(2,4,6‐トリメチルベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキシド(BASF製、商品名Lucirin)であり、光開始剤として機能する。Irganox 1035はチオジエチレンビス[3‐(3,5‐ジ‐tert‐ブチル)‐4‐ヒドロキシ‐フェニル)プロピオネート](BASF製、商品名Irganox 1035)であり、抗酸化剤として機能する。3‐アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(Gelest製)及び3‐メルカプトプロピルトリメトキシシラン(Aldrich製)は、接着促進剤である。テトラチオールは、ペンタエリスリトールテトラキス(3‐メルカプトプロピオネート)(Aldrich製)であり、オリゴマー1及びオリゴマー2中に存在し得る残留ジブチルスズジラウレート触媒のクエンチャーとして機能する。
【0125】
オリゴマー1及びオリゴマー2
コーティング組成物A及びBは、本明細書で開示されているタイプのオリゴマーを含む硬化性コーティング組成物である。例示のために、上で開示されている反応スキームに従った、H12MDI(4,4’‐メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、PPG4000(Mが約4000g/molのポリプロピレングリコール)、及びHEA(2‐ヒドロキシエチルアクリレート)からの例示的なオリゴマーの調製を説明する。全ての試薬は、製造元から供給されたままの状態で使用され、更なる精製に供された。H12MDIはALDRICHから入手された。PPG4000はCOVESTROから入手され、ASTM D4671‐16規格に記載の方法で決定されるように、0.004meq/gの不飽和を有することが確認された。HEAはKOWAから入手された。
【0126】
反応物の相対量及び反応条件を変更することによって、オリゴマー1及びオリゴマー2を得た。オリゴマー1及びオリゴマー2は、異なる初期モル比の反応物を用いて調製され、ここで反応物のモル比は、比H12MDI:HEA:PPG4000=n:m:pを満たすものであり、ここでnは3.0~4.0であり、mは1.5n-3~2.5n-5であり、p=2であった。オリゴマー1及びオリゴマー2の形成に使用した反応では、ジブチルスズジラウレートを触媒として(初期反応混合物の質量をベースとして160ppmのレベルで)使用し、2,6‐ジ‐tert‐ブチル‐4‐メチルフェノール(BHT)を阻害剤として(初期反応混合物の質量をベースとして400ppmのレベルで)使用した。
【0127】
オリゴマー1及びオリゴマー2に使用した反応物の量を、以下の表2にまとめる。本明細書中では、6つのオリゴマーそれぞれを独立して含有するコーティング組成物、及びコーティング組成物から形成された硬化済みフィルムを指すために、対応する試料番号を用いる。
6つの試料それぞれの調製に使用した対応するモル数を以下の表3に列挙する。モル数は、PPG4000のモル数pを2.0に設定するように正規化されている。
【0128】
【表2】
【0129】
【表3】
【0130】
4,4’‐メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、ジブチルスズジラウレート、及び2,6‐ジ‐tert‐ブチル‐4メチルフェノールを、500mLフラスコ内で室温で混合することによって、オリゴマー1及びオリゴマー2を調製した。500mLフラスコは、温度計、塩化カルシウム管、及び撹拌装置を備えていた。フラスコの内容物を連続的に撹拌しながら、添加用ろうとを用いて、PPG4000を30~40分の期間にわたって添加した。PPG4000を添加する際に、反応混合物の内部温度を監視し、PPG4000の導入を制御して、(この反応の発熱性に起因する)過剰な発熱を防止した。PPG4000の添加後、反応混合物を、約70℃~75℃の油浴中で、約1~1.5時間加熱した。未反応のイソシアネート基の濃度を決定することによって反応の進行を監視するための、赤外線分光分析(infrared spectroscopy:FTIR)による分析のために、反応混合物の試料を様々な間隔で採取した。未反応のイソシアネート基の濃度は、2265cm-1付近の特徴的なイソシアネート伸縮モードの強度に基づいて評価した。フラスコを油浴から取り出し、その内容物を65℃未満まで冷却した。イソシアネート基の完全なクエンチを保証するために、補助的なHEAを添加した。補助的なHEAは、添加用漏斗を用いて2~5分間にわたって滴下された。補助的なHEAの添加後、フラスコを油浴に戻し、その内容物を、約70℃~75℃まで、約1~1.5時間再び加熱した。FTIR分析を反応混合物に対して実施して、イソシアネート基の存在を評価し、未反応のイソシアネート基を完全に反応させるために十分な、補助的なHEAが添加されるまで、このプロセスを繰り返した。評価可能なイソシアネート伸縮強度がFTIR測定において検出されない場合に、この反応は完了したとみなした。表1に記載のHEAの量は、組成物中のHEAの初期量と、未反応のイソシアネート基をクエンチするために必要な補充HEAの量とを含む。
【0131】
二付加体化合物の濃度(重量%)は、ゲル浸透クロマトグラフィ(gel permeation chromatography:GPC)で決定された。Waters Alliance 2690 GPC装置を用いて、二付加体の濃度を決定した。移動相はTHFであった。上記機器は、一連の3つのPolymer Labsカラムを含んでいた。各カラムの長さは300mmであり、内径は7.5mmであった。カラムのうちの2つ(カラム1及び2)は、Agilent Technologiesによって部品番号PL1110‐6504として販売されており、PLgel Mixed D静止層(ポリスチレンジビニルベンゼンコポリマー、平均粒径=5μm、指定分子量範囲=200~400,000g/mol)が詰められていた。第3のカラム(カラム3)は、Agilent Technologiesによって部品番号PL1110‐6520として販売されており、PLgel 100A静止層(ポリスチレンジビニルベンゼンコポリマー、平均粒径=5μm、指定分子量範囲=最高4,000g/mol)が詰められていた。これらのカラムは、EasiCal PS‐1 & 2ポリマー較正物キット(Agilent Technologies、部品番号PL2010‐505及びPL2010‐0601)を用いて、162~6,980,000g/molのポリスチレン標準で較正された。GPC機器を、以下の条件下で動作させた:流量=1.0mL/分、カラム温度=40℃、注入体積=100μL、及び実行時間=35分(均一濃度条件)。検出器は、40℃及び感度レベル4で動作するWaters Alliance 2410示差屈折計であった。試料は、THF+0.05%トルエンブランクと共に2回注入された。
【0132】
オリゴマー1及びオリゴマー2中の二付加体の量(重量%)は、前述のGPCシステム及び技法を用いて定量化された。較正曲線は、THF中に既知の量の二付加体化合物(HEA~H12MDI~HEA)を含有する標準溶液を用いて得られた。二付加体の濃度が115.2μg/g、462.6μg/g、825.1μg/g、及び4180μg/gの標準溶液を調製した。(本明細書中で使用される場合、単位「μg/g」は、溶液全体(二付加体+THF)のグラム数に対するに付加体のμgを指す)。各二付加体標準溶液の2つの100μLのアリコートをカラムに注入して、較正曲線を得た。二付加体の保持時間はおよそ23分であり、二付加体のGPCピークのエリアを測定して二付加体の濃度と相関させた。二付加体の濃度の関数としてのピークエリアの線形相関が得られた(相関係数(R)=0.999564)。
【0133】
オリゴマー1及びオリゴマー2中の二付加体の濃度を、較正を用いて決定した。約0.10gの各オリゴマーをTHF中で希釈して、約1.5gの試験溶液を得ることにより、試料を調製した。試験溶液をGPC機器に通し、二付加体化合物に関連するピークのエリアを決定した。μg/gを単位とする二付加体の濃度を、ピークエリア及び較正曲線から得て、試験溶液の重量(g)を乗算し、THFで希釈する前のオリゴマーの試料の重量で除算することによって、重量%に変換した。オリゴマー1及びオリゴマー2中に存在する二付加体化合物の重量%を表3で報告する。オリゴマー1及びオリゴマー2に関する表1のエントリは、ポリエーテルウレタンアクリレート化合物及び二付加体化合物の合計量を含む。
【0134】
H12MDI、HEA、及びPPG4000の相対モル比の変更により、上記例示的なオリゴマー上述の分子式(IV)に示されているタイプのポリエーテルウレタン化合物と、濃度が増強された、上述の分子式(V)に示されているタイプの二付加体化合物とを含む。以下で更に完全に説明されるように、二付加体化合物を少なくとも2.50重量%の量で含有するオリゴマーを用いて形成されたコーティングは、光ファイバの一次コーティングとして好ましいヤング率を維持しながら、(ポリエーテルウレタンアクリレート化合物のみ、又はポリエーテルウレタンアクリレート化合物と、より少量の二付加体化合物との組み合わせから形成されたコーティングに比べて)大幅に改善されたプルアウト力、引裂き強度及び/又は引張靭性を有する。
【0135】
オリゴマー3
オリゴマー3は、(Dymaxから入手された)市販のオリゴマー(製品コードBR3741)である。オリゴマー3は、オリゴマー1及びオリゴマー2に使用されたものと同様の開始材料から調製された。しかしながら、オリゴマー3の調製に使用された比n:m:pにより、二付加体化合物のより低い濃度が生成された。
【0136】
コーティング組成物の調製
表1の各コーティング組成物は、加熱バンド又は加熱マントルで60℃まで加熱された適切なコンテナ内で、高速ミキサーを用いて配合された。各場合において、天秤を用いて成分を計量してコンテナに投入し、固体成分が完全に溶解して混合物が均質に見えるようになるまで混合した。各組成物のオリゴマー及びモノマー(SR504、NVC)を、55℃~60℃で少なくとも10分間混合した。次に光開始剤、抗酸化剤、及び触媒クエンチャーを添加し、55℃~60℃の温度を維持しながら1時間にわたって混合を継続した。最後に接着促進剤を添加し、55℃~60℃で30分間混合を継続して、コーティング組成物を形成した。比較例のコーティング組成物D~Gは、ベンダーによって配合され、受け取ったままの状態で使用された。
【0137】
コーティング組成物の硬化によって形成された硬化産物の様々な特性を測定した。硬化条件、試料の較正、及び特性の説明は以下の通りである。
【0138】
ヤング率及び引張靭性
ヤング率(E)を、コーティング組成物A、B、及びCの硬化によって形成されたフィルムに関して測定した。各コーティング組成物から別個のフィルムを形成した。コーティング組成物の湿潤フィルムを、ギャップ厚さが約0.005インチ(0.127mm)のドローダウンボックスを用いて、シリコーン離型紙上に流した。湿潤フィルムを、600W/インチ(236.22W/cm)のD電球を備えたFusion Systems UV硬化装置(50%出力、およそ12フィート(365.76cm)/分のベルト速度)によって、1.2J/cmのUV線量(International Light製Light BugモデルIL490により、225~424nmの波長範囲にわたって測定)を用いて硬化させ、フィルム形状の硬化済みコーティングを得た。硬化済みフィルム厚さは約0.0030インチ(76.2μm)~0.0035インチ(88.9μm)であった。
【0139】
フィルムを試験前に少なくとも約16時間にわたってエージングした(23℃、相対湿度50%)。切断用テンプレート及び外科用メスを用いて、フィルム試料を12.5cm×13mmの寸法に切断した。ASTM規格D882‐97に記載されている手順に従って、MTS Sintech引張試験機器を用いて、フィルム試料のヤング率、破断点引張強度、及び%伸び(破断点%歪み)を室温(およそ20℃)で測定した。ヤング率は、応力‐歪み曲線の始点の最も急峻な勾配として定義される。引張靭性は、応力‐歪み曲線の下側の合計面積として定義される。フィルムを、初期ゲージ長さ5.1cmで、2.5cm/分の伸長速度で試験した。
【0140】
引裂き強度
コーティング組成物A~Cから形成されたフィルムの引裂き強度を測定した。引裂き強度(G)は、コーティングに張力を印加した場合に、コーティングの破断に必要な力に関係する。引裂き強度は式(1):
【0141】
【数1】
【0142】
から計算され、ここでFbreakは破断時の力であり、bはスリットの長さであり、dはフィルムの厚さであり、Bは試験片の幅である。B及びbは、以下で与えられる値を有する機器のパラメータである。Sは、0.05%及び2%)の伸びにおける応力から計算されるセグメント弾性率であり、Cは、引裂き強度を決定するために本明細書で使用される技法のために以下のように定義された、試料ジオメトリ係数である:
【0143】
【数2】
【0144】
引裂き強度(G)を、MTS Sintech引張試験機を用いて室温(およそ20℃)で測定した。測定された各コーティング組成物を、ギャップ厚さが約0.005インチ(127μm)のドローダウンボックスを用いてガラスプレート上に流し、1J/cmの線量を用いてUV照射下で即座に硬化させた。硬化済みフィルムの形状及び寸法は、国際規格ISO 816(第2版、1983年12月1日)「Determination of tear strength of small test pieces(Delft test pieces)」に従って準備された。硬化済みフィルムを少なくとも16時間にわたって、23℃±2℃及び相対湿度(RH)50%で調質した。初期ゲージ長さを5.0cmとし、試験速度を0.1mm/分に設定した。各フィルムの3~5個の試験片を試験した。引裂き強度(G)を式(1)及び(2)から計算した。測定に使用した試験機器について、スリットの長さbは5.0mmであり、試験片の幅Bは9.0mmであり、試料ジオメトリ係数Cは1.247であった。
【0145】
プルアウト力
プルアウト力を、コーティング組成物A~Gそれぞれでコーティングされたガラスファイバの試料について、室温(およそ20℃)で測定した。別個のガラスファイバ(直径125μm)を、コーティング組成物A~Gそれぞれでコーティングした。水銀ランプを用いてコーティング組成物を硬化させて、ガラスファイバ上に一次コーティングを形成した。一次コーティングの厚さは32.5μm以下であった。一次コーティングはガラスファイバを取り囲み、またガラスファイバと直接接触していた。ファイバ試料はまた、厚さ26μm以下、ヤング率1600MPaの二次コーティングも含んでいた。二次コーティングは、二次コーティング組成物を(硬化済みの)一次コーティングに塗布し、水銀ランプを用いて二次コーティング組成物を硬化させて二次コーティングを形成することによって、形成した。二次コーティングは一次コーティングを取り囲み、また一次コーティングと直接接触していた。二次コーティングの厚さに対する一次コーティングの厚さの比率は、0.70~1.25であった。
【0146】
プルアウト力試験は、周りを取り囲むコーティングからガラスファイバを長さ1cmだけ引き出すために必要なピークの力を測定する。試験を実施するために、コーティング済みファイバの各端部のコーティングを、1平方インチ(6.4516cm)の厚紙製のタブで作製された別個の支持面に固定(接着)した。ファイバ試料の一方の端部を、支持面から1cmの距離において切断し、支持面との界面に刻み目を入れた。次に、2つのタブを引き離すことによってコーティングからガラスファイバを引き出し、ピークの力を決定した。ピークの力は、ガラスファイバに対するコーティングの接着力の強度の尺度である。試験手順の更なる詳細は以下の通りである。
【0147】
プルアウト力の測定は、長さ5インチ(12.7cm)のファイバ試料に対して行われた。ファイバ試料の各端部を、1インチ(2.54cm)×1インチ(2.54cm)の紙製タブ(マニラフォルダに匹敵する厚紙)に接着した。ファイバ試料の各端部を紙製タブの縁部に対して垂直に配向し、上記縁部の中央からタブの中央まで0.625インチ(1.5875cm)の距離だけ延在する接着剤のストリップを貼付した。ファイバ試料を、ファイバが接着剤をわずかに超えて延在するように、接着剤上に配置した。接着剤を乾燥させた(約30分)。次にファイバ試料を、少なくとも2時間にわたって、制御された環境(室温、相対湿度約50%)で調質した。タブの縁部から1cmの位置でファイバ試料の一方の端部のコーティングを切断することによって、ゲージ長さ(1cm)を画定した。この切断はファイバ及び接着剤を通ってタブまで延在していた。次にファイバ試料を裏返し、ファイバ試料の切断された端部のコーティングに、タブの縁部において刻み目を入れた。刻み目を入れた後、ファイバ試料を垂直に配向し、タブを、5ポンド(2.26796kg)のロードセルを備えたユニバーサル引張機械(Instron製機器)の上下の空気圧グリップに挿入した。刻み目を付けたファイバの端部を伴ったタブを、上のグリップに挿入した。グリップを閉鎖し、ガラスファイバがコーティングから離れるまで(およそ2分)、5mm/分の速度で引き離した。印加した力を時間の関数として測定して記録し、力の曲線(時間の関数としての力)を提供した。プルアウト試験中に観察されたピークの力として、プルアウト力を定義した。プルアウト力の測定は室温で完了された。
【0148】
代表的かつ概略的な力の曲線を図3に示す。力は、初めは時間と共にピーク値まで上昇し、その後低下することが観察された。プルアウト力はピークの力である。ピークの力の後の力の低下は、コーティングがガラスファイバに沿って滑る際の摩擦力に関連するものである。コーティングがガラスファイバから滑るにつれて、コーティングとファイバとの間の接触面積が減少し、これに比例した力の低下が観察される。コーティングがガラスファイバから完全に除去されると、力はゼロまで降下する。
【0149】
結果‐固定されたコーティング厚さ
コーティング組成物A~Cの硬化済みフィルム試料のヤング率(E)、引裂き強度(G)、及び引張靭性、並びにコーティング組成物A~Cの硬化産物でコーティングされたファイバ試料に関するプルアウト力の結果を、表4にまとめる。プルアウト力は、上述のドロー加工されたままの状態のファイバ試料のプルアウト力に相当する。
【0150】
【表4】
【0151】
本発明の一次コーティングのヤング率(E)は、1.0MPa未満、又は0.8MPa未満、又は0.7MPa未満、又は0.6MPa未満、又は0.5MPa未満、又は0.1MPa~1.0MPa、又は0.3MPa~1.0MPa、又は0.45MPa~1.0MPa、又は0.2MPa~0.9MPa、又は0.3MPa~0.8MPaであり、ここでヤング率(E)は、本明細書に記載の手順に従って決定される。
【0152】
本発明の一次コーティングの引裂き強度(G)は、少なくとも30J/m、又は少なくとも35J/m、又は少なくとも40J/m、又は少なくとも45J/m、又は少なくとも50J/m、又は少なくとも55J/m、又は30J/m~70J/m、又は35J/m~65J/m、又は40J/m~60J/mであり、ここで引裂き強度(G)は、本明細書に記載の手順に従って決定される。
【0153】
本発明の一次コーティングの引張靭性は、500kJ/m超、又は600kJ/m超、又は700kJ/m超、又は800kJ/m超、又は500kJ/m~1200kJ/m、又は600kJ/m~1100kJ/m、又は700kJ/m~1000kJ/mであり、ここで引張靭性は、本明細書に記載の手順に従って決定される。
【0154】
様々な実施形態において、本開示によるオリゴマーを含むコーティング組成物から調製される一次コーティング又は硬化産物は:1.0MPa未満のヤング率及び少なくとも35J/mの引裂き強度;又は0.8MPa未満のヤング率及び少なくとも35J/mの引裂き強度;又は0.6MPa未満のヤング率及び少なくとも35J/mの引裂き強度;又は0.5MPa未満のヤング率及び少なくとも35J/mの引裂き強度;又は1.0MPa未満のヤング率及び少なくとも45J/mの引裂き強度;又は0.8MPa未満のヤング率及び少なくとも45J/mの引裂き強度;又は0.6MPa未満のヤング率及び少なくとも45J/mの引裂き強度;又は0.5MPa未満のヤング率及び少なくとも45J/mの引裂き強度;又は1.0MPa未満のヤング率及び少なくとも55J/mの引裂き強度;又は0.8MPa未満のヤング率及び少なくとも55J/mの引裂き強度;又は0.6MPa未満のヤング率及び少なくとも55J/mの引裂き強度;又は0.5MPa未満のヤング率及び少なくとも55J/mの引裂き強度を有し、ここで引裂き強度及びヤング率は、本明細書に記載の手順に従って決定される。
【0155】
様々な実施形態において、本開示によるオリゴマーを含むコーティング組成物から調製される一次コーティング又は硬化産物は:0.1MPa~1.0MPaのヤング率及び35J/m~75J/mの引裂き強度;又は0.45MPa~1.0MPaのヤング率及び35J/m~75J/mの引裂き強度;又は0.3MPa~0.8MPaのヤング率及び35J/m~75J/mの引裂き強度;又は0.1MPa~1.0MPaのヤング率及び45J/m~70J/mの引裂き強度;又は0.45MPa~1.0MPaのヤング率及び45J/m~70J/mの引裂き強度;又は0.3MPa~0.8MPaのヤング率及び45J/m~70J/mの引裂き強度;又は0.1MPa~1.0MPaのヤング率及び50J/m~65J/mの引裂き強度;又は0.45MPa~1.0MPaのヤング率及び50J/m~65J/mの引裂き強度;又は0.3MPa~0.8MPaのヤング率及び50J/m~65J/mの引裂き強度を有し、ここで引裂き強度及びヤング率は、本明細書に記載の手順に従って決定される。
【0156】
図4~8は、組成物A~Gの硬化産物でコーティングされたファイバ試料に関する、室温(およそ20℃)でのプルアウト力の時間依存性を示す。時点=0日は、上述のドロー加工されたままの状態のファイバ試料に対応する。結果は、ファイバ試料のエージングに従ってプルアウト力が上昇し、長いエージング時間で漸近限界に近づくことを示している。エージング挙動は、式(3):
【0157】
【数3】
【0158】
でモデル化でき、ここでtは時点(日数)であり、P(t)は時点tにおけるプルアウト力であり、Pは、ドロー加工されたままの状態のファイバ試料のプルアウト力であり、PAgedはプルアウト力の漸近限界であり、kは時間定数である。データに対するモデルのフィッティングが図4~6に示されており、これによりおおよその時間定数k=0.15/日が得られる。
【0159】
図4及び5に示されている結果は、コーティング組成物A及びBが、ドロー加工されたままの状態における低いプルアウト力と、ファイバ試料がエージングされる際のプルアウト力のわずかな経時的な上昇との両方を伴う、ファイバ試料のための一次コーティングを提供することを示している。ドロー加工されたままの状態における低いプルアウト力は、ガラスファイバに対する一次コーティングの接着力が、剥離作業中に残留物を残すことのないコーティングの除去を可能としながら、コーティングをガラスファイバ上に保持するために十分なものであることを示している。プルアウト力のわずかな経時的な上昇は、接着特性が安定したままであること、及び長期間にわたってファイバからコーティングをきれいに除去できることを示している。比較例のコーティング組成物Cに由来するコーティングは、ドロー加工されたままの状態のファイバ試料については低いプルアウト力を示すものの、ファイバ試料がエージングされる際のプルアウト力の上昇が大きい(図6)。プルアウト力の大きな経時的な上昇は、ファイバを剥離作業前に長期間保管した場合に、剥離中にファイバ上に残留物が残る傾向がより高いことを示している。比較例のコーティング組成物D~Gに由来するコーティングは、ファイバ試料がエージングされる際のプルアウト力のわずかな上昇を示すものの、ドロー加工されたままの状態のファイバ試料について、高いプルアウト力を示す(図7~8)。ドロー加工されたままの状態における高いプルアウト力は、ファイバをきれいに剥離できないことを示しており、プルアウト力の経時的な上昇は、この問題が時間の経過と共により深刻になることを示している。
【0160】
本開示の経過において、ある態様では、ファイバがドロー加工されたままの状態であるときに一次コーティングのプルアウト力が1.7lb/cm(7.56198N/cm)未満であり、また上記プルアウト力が、ファイバがドロー加工されたままの状態となった時点から始めて60日以上の期間にわたって、室温で2.0倍未満だけ上昇する場合に、一次コーティングをガラスファイバからきれいに剥離できると判断され、ここでプルアウト力は、本明細書に記載の手順に従って決定される。
【0161】
ある態様では、ファイバがドロー加工されたままの状態であるときに、一次コーティングのプルアウト力は1.7lb/cm(7.56198N/cm)未満であり、ファイバがドロー加工されたままの状態となった時点から始めて60日以上の期間にわたって、室温で2.0倍未満だけ上昇する。別の態様では、ファイバがドロー加工されたままの状態であるときに、一次コーティングのプルアウト力は1.7lb/cm(7.56198N/cm)未満であり、ファイバがドロー加工されたままの状態となった時点から始めて60日以上の期間にわたって、室温で1.9倍未満だけ上昇する。更なる態様では、ファイバがドロー加工されたままの状態であるときに、一次コーティングのプルアウト力は1.7lb/cm(7.56198N/cm)未満であり、ファイバがドロー加工されたままの状態となった時点から始めて60日以上の期間にわたって、室温で1.8倍未満だけ上昇する。以上において、プルアウト力は、本明細書に記載の手順に従って決定される。
【0162】
ある態様では、ファイバがドロー加工されたままの状態であるときに、一次コーティングのプルアウト力は1.5lb/cm(6.67233N/cm)未満であり、ファイバがドロー加工されたままの状態となった時点から始めて60日以上の期間にわたって、室温で2.0倍未満だけ上昇する。別の態様では、ファイバがドロー加工されたままの状態であるときに、一次コーティングのプルアウト力は1.5lb/cm(6.67233N/cm)未満であり、ファイバがドロー加工されたままの状態となった時点から始めて60日以上の期間にわたって、室温で1.9倍未満だけ上昇する。更なる態様では、ファイバがドロー加工されたままの状態であるときに、一次コーティングのプルアウト力は1.5lb/cm(6.67233N/cm)未満であり、ファイバがドロー加工されたままの状態となった時点から始めて60日以上の期間にわたって、室温で1.8倍未満だけ上昇する。以上において、プルアウト力は、本明細書に記載の手順に従って決定される。
【0163】
ある態様では、ファイバがドロー加工されたままの状態であるときに、一次コーティングのプルアウト力は1.3lb/cm(5.78269N/cm)未満であり、ファイバがドロー加工されたままの状態となった時点から始めて60日以上の期間にわたって、室温で2.0倍未満だけ上昇する。別の態様では、ファイバがドロー加工されたままの状態であるときに、一次コーティングのプルアウト力は1.3lb/cm(5.78269N/cm)未満であり、ファイバがドロー加工されたままの状態となった時点から始めて60日以上の期間にわたって、室温で1.9倍未満だけ上昇する。更なる態様では、ファイバがドロー加工されたままの状態であるときに、一次コーティングのプルアウト力は1.3lb/cm(5.78269N/cm)未満であり、ファイバがドロー加工されたままの状態となった時点から始めて60日以上の期間にわたって、室温で1.8倍未満だけ上昇する。以上において、プルアウト力は、本明細書に記載の手順に従って決定される。
【0164】
ある態様では、ファイバがドロー加工されたままの状態であるときに、一次コーティングのプルアウト力は1.1lb/cm(4.89304N/cm)未満であり、ファイバがドロー加工されたままの状態となった時点から始めて60日以上の期間にわたって、室温で2.0倍未満だけ上昇する。別の態様では、ファイバがドロー加工されたままの状態であるときに、一次コーティングのプルアウト力は1.1lb/cm(4.89304N/cm)未満であり、ファイバがドロー加工されたままの状態となった時点から始めて60日以上の期間にわたって、室温で1.9倍未満だけ上昇する。更なる態様では、ファイバがドロー加工されたままの状態であるときに、一次コーティングのプルアウト力は1.1lb/cm(4.89304N/cm)未満であり、ファイバがドロー加工されたままの状態となった時点から始めて60日以上の期間にわたって、室温で1.8倍未満だけ上昇する。以上において、プルアウト力は、本明細書に記載の手順に従って決定される。
【0165】
ある態様では、ファイバがドロー加工されたままの状態であるときに、一次コーティングのプルアウト力は0.9lb/cm(4.0034N/cm)未満であり、ファイバがドロー加工されたままの状態となった時点から始めて60日以上の期間にわたって、室温で2.0倍未満だけ上昇する。別の態様では、ファイバがドロー加工されたままの状態であるときに、一次コーティングのプルアウト力は0.9lb/cm(4.0034N/cm)未満であり、ファイバがドロー加工されたままの状態となった時点から始めて60日以上の期間にわたって、室温で1.9倍未満だけ上昇する。更なる態様では、ファイバがドロー加工されたままの状態であるときに、一次コーティングのプルアウト力は0.9lb/cm(4.0034N/cm)未満であり、ファイバがドロー加工されたままの状態となった時点から始めて60日以上の期間にわたって、室温で1.8倍未満だけ上昇する。以上において、プルアウト力は、本明細書に記載の手順に従って決定される。
【0166】
ある態様では、ファイバがドロー加工されたままの状態であるときに、一次コーティングのプルアウト力は0.7lb/cm(3.11376N/cm)未満であり、ファイバがドロー加工されたままの状態となった時点から始めて60日以上の期間にわたって、室温で2.0倍未満だけ上昇する。別の態様では、ファイバがドロー加工されたままの状態であるときに、一次コーティングのプルアウト力は0.7lb/cm(3.11376N/cm)未満であり、ファイバがドロー加工されたままの状態となった時点から始めて60日以上の期間にわたって、室温で1.9倍未満だけ上昇する。更なる態様では、ファイバがドロー加工されたままの状態であるときに、一次コーティングのプルアウト力は0.7lb/cm(3.11376N/cm)未満であり、ファイバがドロー加工されたままの状態となった時点から始めて60日以上の期間にわたって、室温で1.8倍未満だけ上昇する。以上において、プルアウト力は、本明細書に記載の手順に従って決定される。
【0167】
本発明のコーティングのプルアウト力は、直径125μmのガラスファイバ上の厚さ32.5μmの一次コーティングとして構成され、かつドロー加工されたままの状態で26μmの厚さ及び1600MPaのヤング率を有する二次コーティングで取り囲まれている場合、1.8lb(8.0068N)未満、又は1.6lb(7.11715N)未満、又は1.5lb(6.67233N)未満、又は1.4lb(6.22751N)未満、又は1.3lb(5.78269N)未満、又は1.2lb(5.33787N)~1.8lb(8.0068N)、又は1.3lb(5.78269N)~1.7lb(7.56198N)、又は1.4lb(6.22751N)~1.6lb(7.11715N)であり、ここでプルアウト力は、本明細書に記載の手順に従って決定される。
【0168】
結果‐変化するコーティング厚さ
削減された外径OFODを有するコーティング済み光ファイバ10は、複数の光ファイバ10が組み込まれるケーブル束のサイズの削減のために魅力的である。更に、光ファイバ10の外径を削減すると、材料の利用の減少により、製造及び/又は加工コストを削減できる。従って、ガラスファイバ11の直径を維持しながら一次コーティング16の厚さ及び二次コーティング18の厚さを削減した光ファイバ10は、個々の光ファイバ10の本数を維持しながらリボン及び/又はケーブル全体のサイズを削減するために、より高密度のリボン及びより高密度のケーブルで使用するために望ましいものとなり得る。しかしながら、一次コーティング16及び二次コーティング18の厚さが削減された光ファイバ10の剥離プロセス中に、ガラス‐一次コーティング間の境界において負荷の増大が発生し、これは一次コーティング16のせん断につながる可能性があり、これにより、一次コーティング16の残余が光ファイバ10の剥離済み部分に残る。従って剥離プロセス中に印加される力を、光ファイバ10の特定の属性に関する閾値未満とすることが望ましい。例えば、所与の光ファイバ10に関する、剥離プロセス中に印加される力の閾値の決定には、コア12の組成、コア12の直径、クラッド14の組成、クラッド14の厚さ、一次コーティング16の組成、一次コーティング16の厚さ、(使用する場合は)二次コーティング18の組成、(使用する場合は)二次コーティング18の厚さ、及び/又は光ファイバ10の属性を考慮できる。所与の光ファイバ10の剥離中に印加される力の閾値は、臨界プルアウト力(Pcrit)と呼ぶことができる。ある例では、臨界プルアウト力は、式(4):
【0169】
【数4】
【0170】
によって得ることができ、ここで、Rは、センチメートルを単位とするガラスファイバ11の半径であり、Rは、センチメートルを単位とする一次コーティング16の半径であり、Rは、センチメートルを単位とする二次コーティング18の半径であり、Eは、ダイン/cmを単位とするガラスファイバ11のヤング率であり、Eは、ダイン/cmを単位とする一次コーティング16のヤング率であり、Eは、ダイン/cmを単位とする二次コーティング18のヤング率であり、νは、一次コーティング16のポアソン比である。材料のポアソン比は、材料が圧縮の方向に対して垂直な方向に膨張する傾向を有するという現象である、ポアソン効果の尺度である。反対に、材料が圧縮されるのではなく伸ばされる場合、材料は伸ばされる方向に対して垂直な方向に収縮する傾向を有する。ポアソン比は正であることが多いが、場合によっては、材料が圧縮の方向に対して垂直な方向に収縮したり、材料が伸ばされる方向に対して垂直な方向に膨張したりすることがあり、このような場合にはポアソン比は負となる。
【0171】
本開示の様々な例示的な光ファイバ10について、一次コーティング16及び二次コーティング18のヤング率、コーティング半径、及びコーティング厚さ、並びに測定される最大のプルアウト力を、表5にまとめる。表5に示されている例は、以下のパラメータを一定に保っていた:ガラスファイバ11の半径は62.5μmで一定であり、ガラスファイバ11のヤング率は7.31×1011ダイン/cmで一定であり、一次コーティングのポアソン比は0.48で一定であり、二次コーティング18の厚さに対する一次コーティング16の厚さの比率は、1.25で一定であった。
【0172】
【表5】
【0173】
本明細書で開示される一次コーティング16及び二次コーティング18はそれぞれ、ガラスファイバ11の外面及び一次コーティング16の外面に適用でき、これにより、外径が250μm未満の光ファイバ10が得られる。例えば本開示の光ファイバ10は、250μm未満、240μm未満、230μm未満、220μm未満、210μm未満、200μm未満、190μm未満、180μm未満、170μm未満、160μm超、170μm超、180μm超、190μm超、200μm超、及び/又はこれらの組み合わせ若しくは範囲の、外径OFODを備えることができる。
【0174】
一次コーティング16は、10~30μmの厚さで適用できる。例えば一次コーティング16の厚さは、30μm未満、25μm未満、20μm未満、15μm未満、10μm超、15μm超、20μm超、及び/又はこれらの組み合わせ若しくは範囲とすることができる。一次コーティング16のヤング率は、0.5MPa未満とすることができる。例えば一次コーティング16のヤング率は、0.4MPa、0.3MPa、0.2MPa、0.1MPa、及び/又はこれらの組み合わせ若しくは範囲であってよい。
【0175】
二次コーティング18を使用する場合、これは5~25μmの厚さで適用できる。例えば二次コーティング18の厚さは、25μm未満、20μm未満、15μm未満、10μm未満、5μm超、10μm超、15μm超、20μm超、及び/又はこれらの組み合わせ若しくは範囲とすることができる。様々な例において、光ファイバ10は、ガラスファイバ11の外径が約125μmの光ファイバとすることができる。二次コーティング18のヤング率は、1,000MPa超であってよい。例えば二次コーティング18のヤング率は、1000MPa、1200MPa、1300MPa、1400MPa、1500MPa、1600MPa、1700MPa、1800MPa、1900MPa、2000MPa、2100MPa、2200MPa、2300MPa、2400MPa、2500MPa、2600MPa、2700MPa、2800MPa、2900MPa、3000MPa、及び/又はこれらの組み合わせ若しくは範囲とすることができる。
【0176】
コーティング(例えば一次コーティング16及び二次コーティング18)をガラスファイバ11から除去するために必要なプルアウト力は、1.50lb/cm(6.67233N/cm)以下であってよい。例えば上記プルアウト力は、1.40lb/cm(6.22751N/cm)未満、1.30lb/cm(5.78269N/cm)未満、1.20lb/cm(5.33787N/cm)未満、1.10lb/cm(4.89304N/cm)未満、1.00lb/cm(4.44822N/cm)未満、0.90lb/cm(4.0034N/cm)未満、0.80lb/cm(3.55858N/cm)未満、0.70lb/cm(3.11376N/cm)未満、0.60lb/cm(2.66893N/cm)未満、0.50lb/cm(2.22411N/cm)未満、0.40lb/cm(1.77929N/cm)超、0.50lb/cm(2.22411N/cm)超、0.60lb/cm(2.66893N/cm)超、0.70lb/cm(3.11376N/cm)超、0.80lb/cm(3.55858N/cm)超、0.90lb/cm(4.0034N/cm)超、1.00lb/cm(4.44822N/cm)超、1.20lb/cm(5.33787N/cm)超、及び/又はこれらの組み合わせ若しくは範囲であってよい。
【0177】
複数の例において、光ファイバ10は、230μm以下のコーティング外径OFODを備えてよく、光ファイバ10がドロー加工されたままの状態であるときに1.33lb/cm(5.916135N/cm)以下のプルアウト力を示してよく、またドロー加工されたままの状態のファイバのプルアウト力に対するエージングされたファイバのプルアウト力の比率が2.0未満であってよい。いくつかの例において、光ファイバ10は、220μm以下のコーティング外径OFODを備えてよく、光ファイバ10がドロー加工されたままの状態であるときに1.20lb/cm(5.33787N/cm)以下のプルアウト力を示してよく、またドロー加工されたままの状態のファイバのプルアウト力に対するエージングされたファイバのプルアウト力の比率が2.0未満であってよい。様々な例において、光ファイバ10は、210μm以下のコーティング外径OFODを備えてよく、光ファイバ10がドロー加工されたままの状態であるときに1.06lb/cm(4.715115N/cm)以下のプルアウト力を示してよく、またドロー加工されたままの状態のファイバのプルアウト力に対するエージングされたファイバのプルアウト力の比率が2.0未満であってよい。いくつかの例において、光ファイバ10は、200μm以下のコーティング外径OFODを備えてよく、光ファイバ10がドロー加工されたままの状態であるときに0.92lb/cm(4.092364N/cm)以下のプルアウト力を示してよく、またドロー加工されたままの状態のファイバのプルアウト力に対するエージングされたファイバのプルアウト力の比率が2.0未満であってよい。様々な例において、光ファイバ10は、180μm以下のコーティング外径OFODを備えてよく、光ファイバ10がドロー加工されたままの状態であるときに0.66lb/cm(2.935826N/cm)以下のプルアウト力を示してよく、またドロー加工されたままの状態のファイバのプルアウト力に対するエージングされたファイバのプルアウト力の比率が2.0未満であってよい。いくつかの例において、光ファイバ10は、170μm以下のコーティング外径OFODを備えてよく、光ファイバ10がドロー加工されたままの状態であるときに0.53lb/cm(2.357557N/cm)以下のプルアウト力を示してよく、またドロー加工されたままの状態のファイバのプルアウト力に対するエージングされたファイバのプルアウト力の比率が2.0未満であってよい。
【0178】
様々な例において、二次コーティング18の厚さに対する一次コーティング16の厚さの比率は、0.70~1.25とすることができる。例えば、二次コーティング18の厚さに対する一次コーティング16の厚さの比率は、0.70、0.75、0.80、0.85、0.90、0.95、1.00、1.05、1.10、1.15、1.20、1.25及び/又はこれらの組み合わせ若しくは範囲とすることができる。
【0179】
二次コーティング組成物
代表的な硬化性二次コーティング組成物を表6に列挙する。
【0180】
【表6】
【0181】
SR601は、エトキシ化(4)ビスフェノールAジアクリレート(モノマー)である。SR602は、エトキシ化(10)ビスフェノールAジアクリレート(モノマー)である。SR349は、エトキシ化(2)ビスフェノールAジアクリレート(モノマー)である。SR399は、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートである。SR499は、エトキシ化(6)トリメチロールプロパントリアクリレートである。CD9038は、エトキシ化(30)ビスフェノールAジアクリレート(モノマー)である。Photomer 3016は、ビスフェノールAエポキシジアクリレート(モノマー)である。TPOは光開始剤である。Irgacure 184は、1‐ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(光開始剤)である。Irgacure 1850は、ビス(2,6‐ジメトキシベンゾイル)‐2,4,4‐トリメチルペンチルホスフィンオキシド(光開始剤)である。Irganox 1035は、チオジエチレンビス(3,5‐ジ‐tert‐ブチル)‐4‐ヒドロキシヒドロシンナメート(抗酸化剤)である。DC190は、シリコーン‐酸化エチレン/酸化プロピレンコポリマー(滑剤)である。濃度の単位「pph」は、モノマー、オリゴマー、及び光開始剤の全てを含むベース組成物に対する量を指す。例えば二次コーティング組成物KAについて、DC‐190の1.0pphという濃度は、SR601、CD9038、Photomer 3016、TPO、及びIrgacure 184の合計100gあたり、1gのDC‐190に相当する。
【0182】
比較例の硬化性二次コーティング組成物(A)、並びに本開示の範囲内の3つの代表的な硬化性二次コーティング組成物(SB、SC、及びSD)を、表7に列挙する。
【0183】
【表7】
【0184】
PE210はビスフェノール‐Aエポキシジアクリレート(Miwon Specialty Chemical(韓国)製)であり;M240はエトキシ化(4)ビスフェノール‐Aジアクリレート(Miwon Specialty Chemical(韓国)製)であり;M2300はエトキシ化(30)ビスフェノール‐Aジアクリレート(Miwon Specialty Chemical(韓国)製)であり;M3130はエトキシ化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート(Miwon Specialty Chemical(韓国)製)であり;TPO(光開始剤)は(2,4,6‐トリメチルベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキシド(BASF製)であり;Irgacure 184(光開始剤)は1‐ヒドロキシシクロヘキシル‐フェニルケトン(BASF製)であり;Irganox 1035(抗酸化剤)はベンゼンプロパン酸、3,5‐ビス(1,1‐ジメチルエチル)‐4‐ヒドロキシチオジ‐2,1‐エタンジイルエステル(BASF製)である。DC190(スリップ剤)は、シリコーン‐エチレンオキシド/プロピレンオキシドコポリマー(Dow Chemical製)である。濃度の単位「pph」は、モノマー、オリゴマー、及び光開始剤の全てを含むベース組成物に対する量を表す。例えば二次コーティング組成物Aについて、DC‐190の1.0pphという濃度は、PE210、M240、M2300、TPO、及びIrgacure 184の合計100gあたり、1gのDC‐190に相当する。
【0185】
二次コーティング‐特性
二次コーティング組成物A、KA、KB、KC、KD、SB、SC及びSDから作製された二次コーティングの、ヤング率、破断点引張強度、及び破断時の伸びを測定した。
【0186】
二次コーティング‐特性‐測定技法
二次コーティングの特性を、以下に記載の測定技法を用いて決定した。
【0187】
引張特性
硬化性二次コーティング組成物を硬化させ、ヤング率、降伏時の引張強さ、降伏強さ、及び降伏時の伸びの測定のための硬化済みロッド試料の形状に構成した。上記硬化済みロッドは、硬化性二次コーティング組成物を、内径約0.025インチ(0.635mm)のテフロン(登録商標)チューブに注入することによって調製した。ロッド試料を、線量約2.4J/cm(International Light製Light Bug model IL390によって、225~424nmの波長範囲にわたって測定)のFusion Dタイプバルブを用いて硬化させた。硬化後、「テフロン」チューブを剥ぎ取り、二次コーティング組成物の硬化済みロッド試料を提供した。試験前に、硬化済みロッドを、23℃及び相対湿度50%の条件下に18~24時間置いた。ヤング率、破断時の引張強さ、降伏強さ、及び降伏時の伸びを、ゲージ長51mmの、欠陥のないロッド試料に対して、Sintech MTS Tensile Testerを用いて試験速度250mm/分で測定した。引張特性は、ASTM規格D882‐97に従って測定した。これらの特性は、少なくとも5つの試料の平均として決定され、欠陥を有する試料は平均から排除した。
【0188】
ガラス転移温度
一次及び二次コーティングのその場T測定を、コーティング済みファイバから得られたファイバチューブオフ試料に対して実施した。コーティング済みファイバは、直径125μmのガラスファイバと、上記ガラスファイバを取り囲んで上記ガラスファイバと直接接触する厚さ32.5μmの一次コーティングと、上記ガラスファイバを取り囲んで上記ガラスファイバと直接接触する厚さ26.0μmの二次コーティングとを含んでいた。ガラスファイバ及び一次コーティングは、測定した全ての試料について同一であった。一次コーティングは、以下で説明する基準一次コーティング組成物から形成された。比較例の二次コーティング及び本開示による二次コーティングを有する試料を測定した。
【0189】
ファイバチューブオフ試料を以下の手順を用いて得た:0.0055インチ(0.1397mm)Millerストリッパーを、コーティング済みファイバの端部からおよそ1インチ(2.54cm)下にクランプ留めした。このファイバの1インチ(2.54cm)の領域を液体窒素流中に落とし、液体窒素中で3秒間保持した。その後、コーティング済みファイバを液体窒素流から取り出し、迅速に剥離することでコーティングを除去した。ファイバの剥離済みの端部を、残留コーティングに関して検査した。残留コーティングがガラスファイバ上に残っている場合、試料を廃棄し、新たな試料を調製した。剥離プロセスの結果は、清浄なガラスファイバと、無傷の一次及び二次コーティングを含む、剥離されたコーティングの中空チューブとであった。上記中空チューブを、「チューブオフ試料(tube‐off sample)」と呼ぶ。ガラス、一次コーティング、及び二次コーティングの直径は、剥離されていないファイバの端面から測定した。
【0190】
チューブオフ試料のその場Tを、Rheometrics DMTA IV試験機器を試料ゲージ長9~10mmで使用することによって測定した。チューブオフ試料の幅、厚さ、及び長さを、試験機器の操作プログラムに入力した。チューブオフ試料を設置した後、およそ85℃まで冷却した。安定した後、温度傾斜を、以下のパラメータを用いて実施した:
周波数:1Hz
歪み:0.3%
加熱速度:2℃/分
最終温度:150℃
初期静的力=20.0g
静的力は、動的力よりも10.0%だけ大きい。
【0191】
コーティングのその場Tは、温度の関数としてのtanδのプロットにおけるtanδの最大値として定義され、ここでtanδは:
tanδ=E’’/E’
として定義され、E’’は損失弾性率であり、変形のサイクルにおける熱としてのエネルギの損失に比例し、またE’は貯蔵弾性率又は弾性率であり、変形のサイクルにおいて貯蔵されるエネルギに比例する。
【0192】
チューブオフ試料は、一次及び二次コーティングに関するtanδのプロットにおいて、明確な複数の最大値を示した。低温(約-50℃)における最大値は、一次コーティングに関するその場Tに対応し、高温(50℃超)における最大値は、二次コーティングに関するその場Tに対応する。
【0193】
二次コーティングのその場弾性率
二次コーティングに関して、その場弾性率を、ファイバ試料から準備したファイバチューブオフ試料を用いて測定した。0.0055インチ(0.1397mm)Millerストリッパーを、ファイバ試料の端部からおよそ1インチ(2.54cm)下にクランプ留めした。このファイバ試料の1インチ(2.54cm)の領域を液体窒素流中に浸漬して3秒間保持した。続いてファイバ試料を取り出し、迅速に剥離した。次にファイバ試料の剥離済みの端部を検査した。コーティングがファイバ試料のガラス部分上に残っている場合、チューブオフ試料を、欠陥があるものとみなし、新たなチューブオフを調製した。適切なチューブオフ試料は、ガラスからきれいに剥ぎ取られた、一次及び二次コーティングを有する中空チューブからなるものである。ガラス、一次コーティング、及び二次コーティングの直径は、剥離されていないファイバ試料の端面から測定した。
【0194】
チューブオフ試料に対して、Rheometrics DMTA IV試験機器を試料ゲージ長11mmで使用して測定を実施し、二次コーティングのその場弾性率を得た。幅、厚さ、及び長さを決定し、試験機器の操作ソフトウェアに入力として提供した。試料を設置し、以下のパラメータを用いて、周囲温度(21℃)において時間掃引プログラムを用いて測定を実施した:
周波数:1Rad/秒
歪み:0.3%
合計時間=120秒
測定あたりの時間=1秒
初期静的力=15.0g
静的力は、動的力よりも10.0%だけ大きい。
【0195】
完了後、最後の5つのE’(貯蔵弾性率)データ点を平均した。各試料に対して3回の測定を実施し(測定毎に新たな試料を使用)、合計15個のデータ点を得た。これら3回の測定の平均値を報告した。
【0196】
二次コーティングの耐穿刺性
耐穿刺性の測定を、ガラスファイバ、一次コーティング、及び二次コーティングを含む試料に対して実施した。ガラスファイバの直径は125μmであった。一次コーティングを、以下の表8に記載された基準一次コーティング組成物から形成した。以下に記載されているように、様々な二次コーティングを有する試料を調製した。一次コーティング及び二次コーティングの厚さを調整することによって、以下に記載されているように二次コーティングの断面積を変化させた。一次コーティングの厚さに対する二次コーティングの厚さの比は、全ての試料について約0.8に維持した。
【0197】
耐穿刺性は、第52回International Wire & Cable Symposiumの会議録の237~245ページ(2003年)において公開された、G. Scott Glaesemann及びDonald A. Clarkによる文献「Quantifying the Puncture Resistance of Optical Fiber Coatings」に記載されている技法を用いて測定した。この方法の概要をここで提供する。この方法は、インデンテーション法である。長さ4cmの光ファイバを、厚さ3mmのガラススライド上に置いた。光ファイバの一方の端部を、光ファイバを制御下で回転させることができるデバイスに取り付けた。光ファイバを、透過について100倍の倍率で検査し、また光ファイバを、ガラススライドに対して平行な方向において二次コーティング厚さがガラスファイバの両側で等しくなるまで、回転させた。この位置では、二次コーティングの厚さは、ガラススライドに対して平行な方向において、光ファイバの両側で等しかった。ガラススライドに対して垂直な方向における、ガラスファイバの上方又は下方の二次コーティングの厚さは、ガラススライドに対して平行な方向における二次コーティングの厚さとは異なっていた。ガラススライドに対して平行な方向における厚さに比べて、ガラススライドに対して垂直な方向における厚さのうちの一方は大きく、ガラススライドに対して垂直な方向における厚さのうちのもう一方は小さかった。光ファイバの両端をガラススライドにテープで貼り付けることによって、光ファイバのこの位置を固定した。この位置は、インデンテーション試験に使用される光ファイバの位置である。
【0198】
一般的な試験用機械(Instron model 5500R、又は同等のもの)を用いて、インデンテーションを実施した。倒立顕微鏡を、試験用機械のクロスヘッドの下に配置した。顕微鏡の対物レンズを、試験用機械内に設置された75°ダイヤモンドウェッジ圧子の真下に位置決めした。ファイバがテープで貼り付けられたガラススライドを、顕微鏡のステージ上に置き、圧子のウェッジの幅が光ファイバの方向と直交するように、圧子の真下に位置決めした。光ファイバを所定の位置に置いたまま、ダイヤモンドウェッジを、二次コーティングの表面に接触するまで下げた。次にダイヤモンドウェッジを、0.1mm/分の速度で二次コーティングの中へと押し込み、二次コーティングに対する荷重を測定した。二次コーティングに対する荷重は、ダイヤモンドウェッジが二次コーティングの中へと深く推押し込まれるにつれて、穿刺が発生するまで増大し、穿刺が発生した時点で、荷重の急激な低下が観察された。穿刺が観察されたインデンテーション荷重を記録した。これは本明細書では重量グラムとして報告されている。同一の配向の光ファイバを用いて実験を繰り返し、10個の測定点を得てこれらを平均し、この配向に関する耐穿刺性を決定した。10個の測定点の第2のセットを、光ファイバの配向を180°回転させて得た。
【0199】
マイクロベンド
ワイヤメッシュ被覆ドラム試験において、長さ750mのコーティング済みファイバを通る波長1550nmの光の減衰を、室温で決定した。マイクロベンドが誘発する減衰は、ワイヤメッシュドラム上でのゼロ張力での配備と高張力での配備との間の差によって決定された。2つの巻き付け構成について別個の測定を実施した。第1の構成では、ファイバを、平滑な表面及びおよそ400mmの直径を有するアルミニウム製ドラムに、ゼロ張力構成で巻き付けた。ゼロ張力巻き付け構成は、ファイバを通過する光に関する、無応力の基準減衰を提供した。十分な滞留時間の後、初期減衰測定を実施した。第2の巻き付け構成では、ファイバ試料を、目の細かいワイヤメッシュで包んだアルミニウム製ドラムに巻き付けた。この配備のために、アルミニウム製ドラムのバレル表面をワイヤメッシュで覆い、ファイバをワイヤメッシュの周りに巻き付けた。メッシュを伸ばさずにバレルの周りにしっかりと巻き付け、穴、くぼみ、裂け目、又は損傷のない無傷の状態に維持された。測定に使用したワイヤメッシュ材料は、耐腐食性304ステンレス鋼を織ったワイヤクロスから作製され、以下の特徴を有していた:リニアインチあたりのメッシュ:165×165、ワイヤ直径:0.0019インチ(48.26μm)、開口の幅:0.0041インチ(104.14μm)、及び開放面積の%:44.0。長さ750mのコーティング済みファイバを、ワイヤメッシュ被覆ドラム上に、80(±1)グラムの張力を印加しながら、巻取りピッチ0.050cmで、1m/秒で巻き付けた。張力を維持するために、ファイバの端部をテープで固定し、またファイバは交差していなかった。巻き付けられたファイバとメッシュとの接点は、ファイバに応力を加え、巻き付けられたファイバを通る光の減衰は、ファイバの、応力が誘発する(マイクロベンド)損失の尺度である。ワイヤドラム測定は、1時間の滞留時間の後に実施された。第2の構成(ワイヤメッシュ被覆ドラム)で実施された測定におけるファイバ減衰(dB/km)の、第1の構成(平滑なドラム)に対する増大を、各波長に関して決定した。3回の試験の平均を各波長において決定し、これをワイヤメッシュマイクロベンド損失として報告する。
【0200】
基準一次コーティング
その場ガラス転移温度(T)、耐穿刺性、及びワイヤメッシュ被覆ドラムマイクロベンド減衰の測定において、測定試料は、ガラスファイバと二次コーティングとの間に一次コーティングを含んでいた。一次コーティング組成物は、表8に記載の配合を有していた。
【0201】
【表8】
【0202】
ここで:オリゴマー材料は、モル比n:m:p=3.5:3.0:2.0を用いて、H12MDI、HEA、及びPPG4000から、上述のように調製され;SR504は、エトキシ化(4)ノニルフェノールアクリレート(Sartomer製)であり;NVCは、N‐ビニルカプロラクタム(Aldrich製)であり;TPO(光開始剤)は、(2,4,6‐トリメチルベンゾイル)‐ジフェニルホスフィンオキシド(BASF製)であり;Irganox 1035(抗酸化剤)は、ベンゼンプロパン酸、3,5‐ビス(1,1‐ジメチルエチル)‐4‐ヒドロキシチオジ‐2,1‐エタンジイルエステル(BASF製)であり;3‐アクリロキシプロピルトリメトキシシランは、接着促進剤(Gelest製)であり;ペンタエリスリトールテトラキス(3‐メルカプトプロピオネート)(テトラチオールとしても公知、Aldrich製)は、連鎖移動剤である。濃度の単位「pph」は、モノマー、オリゴマー、及び光開始剤の全てを含むベース組成物に対する量を表す。例えば、Irganox 1035の1.0pphの濃度は、オリゴマー材料、SR504、NVC、及びTPOの合計100gあたり、1gのIrganox 1035に相当する。
【0203】
二次コーティング‐特性‐引張特性
硬化性二次コーティング組成物から調製されたコーティングについての引張特性測定の結果を、表9に示す。
【0204】
【表9】
【0205】
結果は、組成物SB、SC、及びSDから調製された二次コーティングが、比較例の組成物Aから調製された二次コーティングに比べて、高いヤング率及び高い降伏強さを示したことを示している。これらの高い値は、本明細書に記載の硬化性コーティング組成物のために調製された二次コーティングを、小径光ファイバに更に適したものとするような、改善を表す。より具体的には、これらの高い値により、性能を犠牲にすることなく、より薄い二次コーティングを光ファイバに使用できる。二次コーティングが薄くなると、光ファイバの全体的な直径が削減され、ある所与の断面積のケーブル内のファイバの数が増大する。
【0206】
本明細書で開示される硬化性二次コーティング組成物からの硬化産物として調製される二次コーティングのヤング率は、1500MPa超、又は1600MPa超、又は1700MPa超、又は1800MPa超、又は1900MPa超、又は2000MPa超、又は2100MPa超、又は2200MPa超、又は2300MPa超、又は2400MPa超、又は2500MPa超、又は2600MPa超、又は2700MPa超、又は2400MPa~3000MPa、又は2600MPa~2800MPaである。
【0207】
本明細書で開示される硬化性二次コーティング組成物からの硬化産物として調製される二次コーティングの降伏強さは、55MPa超、又は60MPa超、又は65MPa超、又は70MPa超、又は55MPa~75MPa、又は60MPa~70MPaである。
【0208】
二次コーティング‐特性‐耐穿刺性
比較例の硬化性二次コーティング組成物A;独自の組成を有する、販売業者(DSM Desotech)からの市販の硬化性二次コーティング組成物(CPC6e);及び硬化性二次コーティング組成物SDから作製された、二次コーティングの耐穿刺性を、上述の方法に従って決定した。上記3つの二次コーティングそれぞれを有する複数のファイバ試料を調製した。各ファイバ試料は、直径125μmのガラスファイバと、表8に記載の基準一次コーティング組成物から形成された一次コーティングと、3つの上記二次コーティングのうちの1つとを含んでいた。様々な二次コーティングを有する試料を調製した。一次コーティング及び二次コーティングの厚さを調整することによって、図11に示されているように二次コーティングの断面積を変化させた。一次コーティングの厚さに対する二次コーティングの厚さの比は、全ての試料について約0.8に維持した。
【0209】
二次コーティングの厚さに対する穿刺荷重の依存度を決定するために、各二次コーティングについて、ある範囲の厚さを有するファイバ試料を調製した。ケーブル内のファイバ数を増やすための1つの戦略は、二次コーティングの厚さを削減することである。しかしながら、二次コーティングの厚さを削減すると、その性能が低下し、その保護機能が損なわれる。耐穿刺性は、二次コーティングの保護機能の尺度である。高い耐穿刺性を有する二次コーティングは、より強い衝撃に、破損することなく耐え、ガラスファイバにより良好な保護を提供する。
【0210】
これら3つのコーティングに関する、断面積の関数としての穿刺荷重を、図11に示す。二次コーティングの穿刺荷重と断面積と略線形の相関関係が観察されたため、断面積が、穿刺荷重を報告するためのパラメータとして選択される。トレース72、74、及び76は、それぞれ比較例のCPC6e二次コーティング組成物、比較例の硬化性二次コーティング組成物A、及び硬化性二次コーティング組成物SDを硬化させることによって得られる、比較例の二次コーティングに関する、断面積に対する穿刺荷重の略線形の依存度を示す。垂直な破線は、10000μm、15000μm、及び20000μmの断面積を示すガイドとして提供されている。
【0211】
トレース72が示すCPC6e二次コーティングは、当該技術分野で公知の従来の二次コーティングに対応する。トレース74が示す比較例の二次コーティングAは、大きな断面積に関する穿刺荷重の改善を示す。しかしながらこの改善は、断面積が小さくなると減少する。これは、比較例の硬化性二次コーティング組成物Aからの硬化産物として得られる二次コーティングが、直径が小さくファイバ数が多い用途には好適でない可能性があることを示している。対照的に、トレース76は、硬化性二次コーティング組成物SDからの硬化産物として得られる二次コーティングに関する、穿刺荷重の有意な増大を示す。例えば7000μmの断面積における、硬化性二次コーティング組成物SDから得られる二次コーティングの穿刺荷重は、他の2つの二次コーティングのいずれの穿刺荷重より50%以上大きい。
【0212】
10000μmの断面積における、本明細書で開示される硬化性二次コーティング組成物の硬化産物として形成される二次コーティングの穿刺荷重は、36g超、又は40g超、又は44g超、又は48g超、又は36g~52g、又は40g~48gである。15000μmの断面積における、本明細書で開示される硬化性二次コーティング組成物の硬化産物として形成される二次コーティングの穿刺荷重は、56g超、又は60g超、又は64g超、又は68g超、又は56g~72g、又は60g~68gである。20000μmの断面積における、本明細書で開示される硬化性二次コーティング組成物の硬化産物として形成される二次コーティングの穿刺荷重は、68g超、又は72g超、又は76g超、又は80g超、又は68g~92g、又は72g~88gである。実施形態は、上述の穿刺荷重のいずれの組み合わせを有する二次コーティングを含む。
【0213】
本明細書中で使用される場合、「正規化穿刺荷重(normalized puncture load)」は、断面積に対する穿刺荷重の比を指す。本明細書で開示される硬化性二次コーティング組成物の硬化産物として形成される二次コーティング18の穿刺荷重は、3.2×10-4g/μm超、又は3.6×10-4g/μm超、又は4.0×10-4g/μm超、又は4.4×10-4g/μm超、又は4.8×10-4g/μm超、又は3.2×10-4g/μm~5.6×10-4g/μm、又は3.6×10-4g/μm~5.2×10-4g/μm、又は4.0×10-4g/μm~4.8×10-4g/μmの正規化穿刺荷重を有する。
【0214】
本開示の第1の態様によると、光ファイバは:220μm未満の外径OFOD;その中心を通る中心線CLを画定するガラスコア;上記ガラスコアを取り囲み、また上記ガラスコアと直接接触する、ガラスクラッド;上記ガラスクラッドを取り囲み、また上記ガラスクラッドと直接接触する、一次コーティング;及び上記一次コーティングを取り囲み、また上記一次コーティングと直接接触する、二次コーティングを含む。上記ガラスコア及び上記ガラスクラッドはガラスファイバを画定する。上記ガラスファイバの外周は、センチメートルを単位とするRで表される、上記中心線からの半径を有する。上記一次コーティングは、センチメートルを単位とするRで表される上記中心線からの半径を有する外周を有する。上記一次コーティングは、30μm未満の厚さ、及び0.5MPa未満のヤング率を有する。上記二次コーティングの外径は、センチメートルを単位とするRで表される、上記中心線からの半径を有する。上記二次コーティングは、27.5μm未満の厚さを有する。上記光ファイバは、以下の式:
【0215】
によって与えられる臨界プルアウト力(Pcrit)未満のプルアウト力を有し、ここでEは、上記ガラスファイバのヤング率であり、Eは、上記一次コーティングのヤング率であり、Eは、ダイン/cmを単位とする上記二次コーティングのヤング率であり、νは、上記一次コーティングのポアソン比である。
【0216】
第1の態様の様々な例では、上記一次コーティングの上記ヤング率は、0.4MPa未満又は0.3MPa未満であってよい。いくつかの例では、上記光ファイバの上記プルアウト力は、1.05lb/cm(4.670633N/cm)未満、0.90lb/cm(4.0034N/cm)未満、又は0.65lb/cm(2.891344N/cm)未満であってよい。様々な例において、上記プルアウト力は、上記光ファイバの少なくとも60日にわたるエージングで、1.8倍未満又は1.6倍未満だけ上昇し得る。いくつかの例では、上記一次コーティングの引裂き強度は、30J/m超、40J/m超、又は50J/m超であってよい。様々な例において、上記一次コーティングの引張靭性は、500kJ/m~1200kJ/m、例えば500kJ/m超、又は700kJ/m超であってよい。複数の例において、上記光ファイバの上記外径OFODは、210μm未満、200μm未満、又は180μm未満であってよい。いくつかの例では、上記一次コーティングの上記厚さは、25μm未満、又は20μm未満であってよい。様々な例において、上記二次コーティングは、25μm未満、又は20μm未満の厚さを有してよい。複数の例において、上記一次コーティングの厚さ及び上記二次コーティングの厚さはそれぞれ、25μm未満、又は20μm未満であってよい。いくつかの例では、上記二次コーティングの上記厚さに対する上記一次コーティングの上記厚さの比率は、0.7~1.25であってよい。ある具体例では、上記外径OFODが210μm未満である場合、上記プルアウト力は1.06lb/cm(4.715115N/cm)未満であってよい。別の具体例では、上記外径OFODが200μm未満である場合、上記プルアウト力は0.92lb/cm(4.092364N/cm)未満であってよい。更に別の具体例では、上記外径OFODが180μm未満である場合、上記プルアウト力は0.66lb/cm(2.935826N/cm)未満である。様々な例において、上記二次コーティングの耐穿刺性は、4.4×10-4g/μm超の正規化穿刺荷重を有してよい。本明細書で開示される光ファイバを、複数の本開示の光ファイバを有する光ファイバリボンに組み込むことができることは、当業者には認識されるだろう。
【0217】
本開示の第2の態様によると、光ファイバは:220μm未満の外径OFOD;ガラスコア及びガラスクラッドを含むガラスファイバ;一次コーティング;並びに二次コーティングを含む。上記ガラスクラッドは上記ガラスコアを取り囲み、また上記ガラスコアと直接接触する。上記一次コーティングは上記ガラスファイバを取り囲み、また上記ガラスファイバと直接接触する。上記一次コーティングは、0.5MPa未満のヤング率及び30.0μm未満の厚さを有してよい。上記二次コーティングは上記一次コーティングを取り囲み、また上記一次コーティングと直接接触する。上記二次コーティングは25.0μm未満の厚さを有してよい。上記光ファイバのプルアウト力は、ドロー加工されたままの状態において、1.35lb/cm(6.005099N/cm)未満であってよい。上記プルアウト力は、上記ガラスファイバ上の上記一次及び二次コーティングの少なくとも60日にわたるエージングで、2.0倍未満だけ上昇し得る。
【0218】
第2の態様の様々な例では、上記一次コーティングの上記ヤング率は0.3MPa未満であってよい。いくつかの例では、上記一次コーティングの引張靭性は500kJ/m~1200kJ/mであってよい。複数の例において、上記一次コーティングの上記厚さに対する上記二次コーティングの上記厚さの比率は、0.7~1.25である。いくつかの具体例では、上記外径OFODが210μm未満である場合、上記プルアウト力は1.06lb/cm(4.715115N/cm)未満である。他の具体例では、上記外径OFODが200μm未満である場合、上記プルアウト力は0.92lb/cm(4.092364N/cm)未満である。様々な具体例において、上記外径OFODが180μm未満である場合、上記プルアウト力は0.66lb/cm(2.935826N/cm)未満である。複数の例において、上記プルアウト力は、上記光ファイバの少なくとも60日にわたるエージングで、1.8倍未満又は1.6倍未満だけ上昇し得る。いくつかの例では、上記一次コーティングの引裂き強度は、30J/m超、40J/m超、又は50J/m超であってよい。
【0219】
本開示の第3の態様によると、光ファイバを設計する方法は:(a)ガラスファイバを選択するステップであって、上記ガラスファイバは弾性率Eを有し、上記ガラスファイバは、ガラスコアと、上記ガラスコアを取り囲んで上記ガラスコアと直接接触するガラスクラッドとを有し、上記ガラスクラッドは半径Rを有する、ステップ;(b)上記ガラスクラッドの上記半径Rを選択するステップ;(c)上記ガラスクラッドを取り囲んで上記ガラスクラッドと直接接触するように、一次コーティングを選択するステップであって、上記一次コーティングは、ヤング率E、ポアソン比ν、及び半径Rを有する、ステップ;(d)上記一次コーティングを取り囲んで上記一次コーティングと直接接触するように、二次コーティングを選択するステップであって、上記二次コーティングは、ヤング率E及び半径Rを有する、ステップ;並びに(e)上記光ファイバがPcrit未満のプルアウト力を有するように、E、R、E、R、E、及びRの選択を構成するステップであって、ここでPcritは、
【0220】
によって与えられる、ステップを含む。
【0221】
第3の態様の様々な例では、上記プルアウト力は、1.05lb/cm(4.670633N/cm)未満、0.90lb/cm(4.0034N/cm)未満、又は0.65lb/cm(2.891344N/cm)未満である。いくつかの例では、上記ガラスクラッドを取り囲んで上記ガラスクラッドと直接接触するように、一次コーティングを選択する上記ステップは、15μm超かつ30μm未満の範囲内の上記一次コーティングの厚さを選択するステップを更に含んでよい。複数の例において、上記一次コーティングを取り囲んで上記一次コーティングと直接接触するように、二次コーティングを選択する上記ステップは、7.0μm超かつ25μm未満の範囲内の上記二次コーティングの厚さを選択するステップを更に含んでよい。
【0222】
本開示の第4の態様によると、光ファイバを製造する方法は:(a)プリフォームを炉内で加熱するステップであって、上記プリフォームは、ガラスコアと、上記ガラスコアを取り囲んで上記ガラスコアと直接接触するガラスクラッドとを含む、ステップ;(b)上記プリフォームをドロー加工して、130μm未満の直径を有するガラスファイバを形成するステップであって、上記ガラスファイバは、弾性率E及び半径Rを有する、ステップ;(c)上記ガラスクラッドを取り囲んで上記ガラスクラッドと直接接触するように、一次コーティングを適用するステップであって、上記一次コーティングは、0.5MPa未満のヤング率E、30μm未満の厚さ、ポアソン比ν、及び半径Rを有する、ステップ;並びに(d)上記一次コーティングを取り囲んで上記一次コーティングと直接接触するように、二次コーティングを適用するステップであって、上記二次コーティングは、1500MPa超のヤング率E、半径R、及び25μm未満の厚さを有する、ステップを含む。
【0223】
本開示の第4の態様の様々な例では、光ファイバを製造する上記方法は、上記光ファイバのプルアウト力を試験して、上記プルアウト力がPcrit未満であることを保証するステップを更に含むことができ、上記Pcritは:
【0224】
によって与えられる。いくつかの例では、上記プルアウト力は、1.05lb/cm(4.670633N/cm)未満、0.90lb/cm(4.0034N/cm)未満、又は0.65lb/cm(2.891344N/cm)未満。であってよい。複数の例において、上記一次コーティングの上記厚さは、15μm超かつ30μm未満の範囲内であってよい。様々な例において、上記二次コーティングの上記厚さは、7.0μm超かつ25μm未満の範囲内であってよい。
【0225】
本記載の態様1は:
光ファイバであって:
220μm未満の外径;
上記光ファイバの中心を通る中心線を画定するガラスコア;
上記ガラスコアを取り囲み、また上記ガラスコアと直接接触する、ガラスクラッドであって、上記ガラスコア及び上記ガラスクラッドはガラスファイバを画定し、上記ガラスファイバの外周は、センチメートルを単位とするRで表される、上記中心線からの半径を有する、ガラスクラッド;
上記ガラスクラッドを取り囲み、また上記ガラスクラッドと直接接触する、一次コーティングであって、上記一次コーティングの外周は、センチメートルを単位とするRで表される上記中心線からの半径を有し、上記一次コーティングは、30μm未満の厚さ、及び0.5MPa未満のヤング率を有する、一次コーティング;
上記一次コーティングを取り囲み、また上記一次コーティングと直接接触する、二次コーティングであって、上記二次コーティングの外径は、センチメートルを単位とするRで表される、上記中心線からの半径を有し、上記二次コーティングは、27.5μm未満の厚さを有する、二次コーティング;並びに
以下の式:
【0226】
(ここでEは、ダイン/cmを単位とする上記ガラスファイバのヤング率であり、Eは、ダイン/cmを単位とする上記一次コーティングのヤング率であり、Eは、ダイン/cmを単位とする上記二次コーティングのヤング率であり、νは、上記一次コーティングのポアソン比である)によって与えられる臨界プルアウト力(Pcrit)未満のプルアウト力
を備える、光ファイバ
である。
【0227】
本記載の態様2は:
上記一次コーティングの上記ヤング率が0.4MPa未満である、態様1に記載の光ファイバ
である。
【0228】
本記載の態様3は:
上記一次コーティングの上記ヤング率が0.3MPa未満である、態様1に記載の光ファイバ
である。
【0229】
本記載の態様4は:
上記プルアウト力が1.05lb/cm(4.670633N/cm)未満である、態様1~3のいずれか1つに記載の光ファイバ
である。
【0230】
本記載の態様5は:
上記プルアウト力が0.90lb/cm(4.0034N/cm)未満である、態様1~3のいずれか1つに記載の光ファイバ
である。
【0231】
本記載の態様6は:
上記プルアウト力が0.65lb/cm(2.891344N/cm)未満である、態様1~3のいずれか1つに記載の光ファイバ
である。
【0232】
本記載の態様7は:
上記プルアウト力が、上記光ファイバの少なくとも60日にわたるエージングで、1.8倍未満だけ上昇する、態様1~6のいずれか1つに記載の光ファイバ
である。
【0233】
本記載の態様8は:
上記プルアウト力が、上記光ファイバの少なくとも60日にわたるエージングで、1.6倍未満だけ上昇する、態様1~6のいずれか1つに記載の光ファイバ
である。
【0234】
本記載の態様9は:
上記一次コーティングの引裂き強度が30J/m超である、態様1~8のいずれか1つに記載の光ファイバ
である。
【0235】
本記載の態様10は:
上記一次コーティングの引裂き強度が40J/m超である、態様1~8のいずれか1つに記載の光ファイバ
である。
【0236】
本記載の態様11は:
上記一次コーティングの引裂き強度が50J/m超である、態様1~8のいずれか1つに記載の光ファイバ
である。
【0237】
本記載の態様12は:
上記一次コーティングの引張靭性が500kJ/m超である、態様1~8のいずれか1つに記載の光ファイバ
である。
【0238】
本記載の態様13は:
上記一次コーティングの引張靭性が700kJ/m超である、態様1~8のいずれか1つに記載の光ファイバ
である。
【0239】
本記載の態様14は:
上記一次コーティングの引張靭性が500kJ/m~1200kJ/mである、態様1~8のいずれか1つに記載の光ファイバ
である。
【0240】
本記載の態様15は:
上記光ファイバの上記外径が210μm未満である、態様1~14のいずれか1つに記載の光ファイバ
である。
【0241】
本記載の態様16は:
上記光ファイバの上記外径が200μm未満である、態様1~14のいずれか1つに記載の光ファイバ
である。
【0242】
本記載の態様17は:
上記光ファイバの上記外径が180μm未満である、態様1~14のいずれか1つに記載の光ファイバ
である。
【0243】
本記載の態様18は:
上記一次コーティングの上記厚さが25μm未満である、態様1~17のいずれか1つに記載の光ファイバ
である。
【0244】
本記載の態様19は:
上記一次コーティングの上記厚さが20μm未満である、態様1~17のいずれか1つに記載の光ファイバ
である。
【0245】
本記載の態様20は:
上記二次コーティングが25μm未満の厚さを有する、態様1~19のいずれか1つに記載の光ファイバ
である。
【0246】
本記載の態様21は:
上記二次コーティングが20μm未満の厚さを有する、態様1~19のいずれか1つに記載の光ファイバ
である。
【0247】
本記載の態様22は:
上記一次コーティングの上記厚さ及び上記二次コーティングの上記厚さがそれぞれ25μm未満である、態様1~17のいずれか1つに記載の光ファイバ
である。
【0248】
本記載の態様23は:
上記一次コーティングの上記厚さ及び上記二次コーティングの上記厚さがそれぞれ20μm未満である、態様1~17のいずれか1つに記載の光ファイバ
である。
【0249】
本記載の態様24は:
上記二次コーティングの上記厚さに対する上記一次コーティングの上記厚さの比率が、0.7~1.25である、態様1~23のいずれか1つに記載の光ファイバ
である。
【0250】
本記載の態様25は:
上記プルアウト力が1.06lb/cm(4.715115N/cm)未満であり、上記外径が210μm未満である、態様1~24のいずれか1つに記載の光ファイバ
である。
【0251】
本記載の態様26は:
上記プルアウト力が0.92lb/cm(4.092364N/cm)未満であり、上記外径が200μm未満である、態様1~24のいずれか1つに記載の光ファイバ
である。
【0252】
本記載の態様27は:
上記プルアウト力が0.66lb/cm(2.935826N/cm)未満であり、上記外径が180μm未満である、態様1~24のいずれか1つに記載の光ファイバ
である。
【0253】
本記載の態様28は:
上記二次コーティングの耐穿刺性が、4.4×10-4g/μm超の正規化穿刺荷重を有する、態様1~27のいずれか1つに記載の光ファイバ
である。
【0254】
本記載の態様29は:
態様1~28のいずれか1つに記載の複数の光ファイバで構成された、光ファイバリボン
である。
【0255】
本記載の態様30は:
光ファイバであって:
220μm未満の外径;
ガラスコア及びガラスクラッドを備えるガラスファイバであって、上記ガラスクラッドは上記ガラスコアを取り囲み、また上記ガラスコアと直接接触する、ガラスファイバ;
上記ガラスファイバを取り囲み、また上記ガラスファイバと直接接触する、一次コーティングであって、上記一次コーティングは、0.5MPa未満のヤング率及び30.0μm未満の厚さを有する、一次コーティング;
上記一次コーティングを取り囲み、また上記一次コーティングと直接接触する、二次コーティングであって、上記二次コーティングは25.0μm未満の厚さを有する、二次コーティング;並びに
ドロー加工されたままの状態において1.35lb/cm(6.005099N/cm)未満のプルアウト力であって、上記プルアウト力は、上記ガラスファイバ上の上記一次及び二次コーティングの少なくとも60日にわたるエージングで、2.0倍未満だけ上昇する、プルアウト力
を備える、光ファイバ
である。
【0256】
本記載の態様31は:
上記一次コーティングの上記ヤング率が0.3MPa未満である、態様30に記載の光ファイバ
である。
【0257】
本記載の態様32は:
上記一次コーティングの引張靭性が500kJ/m~1200kJ/mである、態様30又は31に記載の光ファイバ
である。
【0258】
本記載の態様33は:
上記一次コーティングの上記厚さに対する上記二次コーティングの上記厚さの比率が、0.7~1.25である、態様30~32のいずれか1つに記載の光ファイバ
である。
【0259】
本記載の態様34は:
上記プルアウト力が1.06lb/cm(4.715115N/cm)未満であり、上記外径が210μm未満である、態様30~33のいずれか1つに記載の光ファイバ
である。
【0260】
本記載の態様35は:
上記プルアウト力が0.92lb/cm(4.092364N/cm)未満であり、上記外径が200μm未満である、態様30~33のいずれか1つに記載の光ファイバ
である。
【0261】
本記載の態様36は:
上記プルアウト力が0.66lb/cm(2.935826N/cm)未満であり、上記外径が180μm未満である、態様30~33のいずれか1つに記載の光ファイバ
である。
【0262】
本記載の態様37は:
上記プルアウト力が、上記光ファイバの少なくとも60日にわたるエージングで、1.8倍未満だけ上昇する、態様30~36のいずれか1つに記載の光ファイバ
である。
【0263】
本記載の態様38は:
上記プルアウト力が、上記光ファイバの少なくとも60日にわたるエージングで、1.6倍未満だけ上昇する、態様30~36のいずれか1つに記載の光ファイバ
である。
【0264】
本記載の態様39は:
上記一次コーティングの引裂き強度が30J/m超である、態様30~38のいずれか1つに記載の光ファイバ
である。
【0265】
本記載の態様40は:
上記一次コーティングの引裂き強度が40J/m超である、態様30~38のいずれか1つに記載の光ファイバ
である。
【0266】
本記載の態様41は:
上記一次コーティングの引裂き強度が50J/m超である、態様30~38のいずれか1つに記載の光ファイバ
である。
【0267】
本記載の態様42は:
光ファイバを設計する方法であって、上記方法は:
(a)ガラスファイバを選択するステップであって、上記ガラスファイバは弾性率Eを有し、上記ガラスファイバは、ガラスコアと、上記ガラスコアを取り囲んで上記ガラスコアと直接接触するガラスクラッドとを有し、上記ガラスクラッドは半径Rを有する、ステップ;
(b)上記ガラスクラッドを取り囲んで上記ガラスクラッドと直接接触するように、一次コーティングを選択するステップであって、上記一次コーティングは、ヤング率E、ポアソン比ν、及び半径Rを有する、ステップ;
(c)上記一次コーティングを取り囲んで上記一次コーティングと直接接触するように、二次コーティングを選択するステップであって、上記二次コーティングは、ヤング率E及び半径Rを有する、ステップ;並びに
(d)上記光ファイバがPcrit未満のプルアウト力を有するように、上記ガラスファイバ、上記一次コーティング、及び上記二次コーティングの選択を構成するステップであって、ここでPcritは、
【0268】
によって与えられる、ステップ
を含む、方法
である。
【0269】
本記載の態様43は:
上記プルアウト力が1.05lb/cm(4.670633N/cm)未満である、態様42に記載の光ファイバを設計する方法
である。
【0270】
本記載の態様44は:
上記プルアウト力が0.90lb/cm(4.0034N/cm)未満である、態様42に記載の光ファイバを設計する方法
である。
【0271】
本記載の態様45は:
上記プルアウト力が0.65lb/cm(2.891344N/cm)未満である、態様42に記載の光ファイバを設計する方法
である。
【0272】
本記載の態様46は:
上記ガラスクラッドを取り囲んで上記ガラスクラッドと直接接触するように、一次コーティングを選択する上記ステップが、15μm超かつ30μm未満の範囲内の上記一次コーティングの厚さを選択するステップを含む、態様42~45のいずれか1つに記載の光ファイバを設計する方法
である。
【0273】
本記載の態様47は:
上記一次コーティングを取り囲んで上記一次コーティングと直接接触するように、二次コーティングを選択する上記ステップが、7.0μm超かつ25μm未満の範囲内の上記二次コーティングの厚さを選択するステップを含む、態様46に記載の光ファイバを設計する方法
である。
【0274】
本記載の態様48は:
光ファイバを製造する方法であって、上記方法は:
(a)プリフォームを炉内で加熱するステップであって、上記プリフォームは、ガラスコアと、上記ガラスコアを取り囲んで上記ガラスコアと直接接触するガラスクラッドとを含む、ステップ;
(b)上記プリフォームをドロー加工して、130μm未満の直径を有するガラスファイバを形成するステップであって、上記ガラスファイバは、弾性率E及び半径Rを有する、ステップ;
(c)上記ガラスクラッドを取り囲んで上記ガラスクラッドと直接接触するように、一次コーティングを適用するステップであって、上記一次コーティングは、0.5MPa未満のヤング率E、30μm未満の厚さ、ポアソン比ν、及び半径Rを有する、ステップ;並びに
(d)上記一次コーティングを取り囲んで上記一次コーティングと直接接触するように、二次コーティングを適用するステップであって、上記二次コーティングは、1500MPa超のヤング率E、半径R、及び25μm未満の厚さを有する、ステップ
を含む、方法
である。
【0275】
本記載の態様49は:
上記光ファイバのプルアウト力を試験して、上記プルアウト力がPcrit未満であることを保証するステップを更に含み、上記Pcritは:
【0276】
によって与えられる、態様48に記載の光ファイバを製造する方法
である。
【0277】
本記載の態様50は:
上記プルアウト力が1.05lb/cm(4.670633N/cm)未満である、態様49に記載の光ファイバを製造する方法
である。
【0278】
本記載の態様51は:
上記プルアウト力が0.90lb/cm(4.0034N/cm)未満である、態様49に記載の光ファイバを製造する方法
である。
【0279】
本記載の態様52は:
上記プルアウト力が0.65lb/cm(2.891344N/cm)未満である、態様49に記載の光ファイバを製造する方法
である。
【0280】
本記載の態様53は:
上記一次コーティングの上記厚さが15μm超かつ30μm未満である、態様48~52のいずれか1つに記載の光ファイバを製造する方法
である。
【0281】
本記載の態様54は:
上記二次コーティングの上記厚さが7.0μm超かつ25μm未満である、態様48~53のいずれか1つに記載の光ファイバを製造する方法
である。
【0282】
そうでないことがはっきりと言明されていない限り、本明細書に記載のいずれの方法が、その複数のステップをある具体的な順序で実施することを要求するものとして解釈されることは、全く意図されていない。従って、方法クレームが、その複数のステップが従うべき順序を実際に記載していない場合、又はそうでなくても、請求項若しくは本説明中に、上記複数のステップがある具体的な順序に限定されることが具体的に言明されていない場合、いずれの特定の順序が推定されることは全く意図されていない。
【0283】
本発明の精神又は範囲から逸脱することなく、様々な修正及び変形を実施できることは、当業者には明らかであろう。本発明の精神及び実質が組み込まれた、本開示の実施形態の修正、組み合わせ、部分的組み合わせ及び変形は、当業者に想起され得るため、本発明は、添付の請求項及びその均等物の範囲内の全てを含むものとして解釈されるものとする。
【0284】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0285】
実施形態1
光ファイバであって:
220μm未満の外径;
上記光ファイバの中心を通る中心線を画定するガラスコア;
上記ガラスコアを取り囲み、また上記ガラスコアと直接接触する、ガラスクラッドであって、上記ガラスコア及び上記ガラスクラッドはガラスファイバを画定し、上記ガラスファイバの外周は、センチメートルを単位とするRで表される、上記中心線からの半径を有する、ガラスクラッド;
上記ガラスクラッドを取り囲み、また上記ガラスクラッドと直接接触する、一次コーティングであって、上記一次コーティングの外周は、センチメートルを単位とするRで表される上記中心線からの半径を有し、上記一次コーティングは、30μm未満の厚さ、及び0.5MPa未満のヤング率を有する、一次コーティング;
上記一次コーティングを取り囲み、また上記一次コーティングと直接接触する、二次コーティングであって、上記二次コーティングの外径は、センチメートルを単位とするRで表される、上記中心線からの半径を有し、上記二次コーティングは、27.5μm未満の厚さを有する、二次コーティング;並びに
以下の式:
【0286】
(ここでEは、ダイン/cmを単位とする上記ガラスファイバのヤング率であり、Eは、ダイン/cmを単位とする上記一次コーティングのヤング率であり、Eは、ダイン/cmを単位とする上記二次コーティングのヤング率であり、νは、上記一次コーティングのポアソン比である)によって与えられる臨界プルアウト力(Pcrit)未満のプルアウト力
を備える、光ファイバ。
【0287】
実施形態2
上記一次コーティングの上記ヤング率は0.3MPa未満である、実施形態1に記載の光ファイバ。
【0288】
実施形態3
上記プルアウト力は0.90lb/cm(4.0034N/cm)未満である、実施形態1又は2に記載の光ファイバ。
【0289】
実施形態4
上記プルアウト力は、上記光ファイバの少なくとも60日にわたるエージングで、1.6倍未満だけ上昇する、実施形態1~3のいずれか1つに記載の光ファイバ。
【0290】
実施形態5
上記一次コーティングの引裂き強度は30J/m超である、実施形態1~4のいずれか1つに記載の光ファイバ。
【0291】
実施形態6
上記一次コーティングの引張靭性は500kJ/m超である、実施形態1~4のいずれか1つに記載の光ファイバ。
【0292】
実施形態7
上記光ファイバの上記外径は200μm未満である、実施形態1~4のいずれか1つに記載の光ファイバ。
【0293】
実施形態8
上記一次コーティングの上記厚さは20μm未満である、実施形態1~7のいずれか1つに記載の光ファイバ。
【0294】
実施形態9
上記二次コーティングは20μm未満の厚さを有する、実施形態1~7のいずれか1つに記載の光ファイバ。
【0295】
実施形態10
上記一次コーティングの上記厚さ及び上記二次コーティングの上記厚さはそれぞれ20μm未満である、実施形態1~9のいずれか1つに記載の光ファイバ。
【0296】
実施形態11
上記二次コーティングの上記厚さに対する上記一次コーティングの上記厚さの比率は、0.7~1.25である、実施形態1~10のいずれか1つに記載の光ファイバ。
【0297】
実施形態12
上記プルアウト力は0.66lb/cm(2.935826N/cm)未満であり、上記外径は180μm未満である、実施形態1~11のいずれか1つに記載の光ファイバ。
【0298】
実施形態13
上記二次コーティングの耐穿刺性は、4.4×10-4g/μm超の正規化穿刺荷重を有する、実施形態1~12のいずれか1つに記載の光ファイバ。
【0299】
実施形態14
実施形態1~13のいずれか1つに記載の複数の光ファイバで構成された、光ファイバリボン。
【0300】
実施形態15
光ファイバを設計する方法であって、上記方法は:
(a)ガラスファイバを選択するステップであって、上記ガラスファイバは弾性率Eを有し、上記ガラスファイバは、ガラスコアと、上記ガラスコアを取り囲んで上記ガラスコアと直接接触するガラスクラッドとを有し、上記ガラスクラッドは半径Rを有する、ステップ;
(b)上記ガラスクラッドを取り囲んで上記ガラスクラッドと直接接触するように、一次コーティングを選択するステップであって、上記一次コーティングは、ヤング率E、ポアソン比ν、及び半径Rを有する、ステップ;
(c)上記一次コーティングを取り囲んで上記一次コーティングと直接接触するように、二次コーティングを選択するステップであって、上記二次コーティングは、ヤング率E及び半径Rを有する、ステップ;並びに
(d)上記光ファイバがPcrit未満のプルアウト力を有するように、上記ガラスファイバ、上記一次コーティング、及び上記二次コーティングの選択を構成するステップであって、ここでPcritは、
【0301】
によって与えられる、ステップ
を含む、方法。
【0302】
実施形態16
上記ガラスクラッドを取り囲んで上記ガラスクラッドと直接接触するように、一次コーティングを選択する上記ステップは、15μm超かつ30μm未満の範囲内の上記一次コーティングの厚さを選択するステップを含む、実施形態15に記載の光ファイバを設計する方法。
【0303】
実施形態17
上記一次コーティングを取り囲んで上記一次コーティングと直接接触するように、二次コーティングを選択する上記ステップは、7.0μm超かつ25μm未満の範囲内の上記二次コーティングの厚さを選択するステップを含む、実施形態16に記載の光ファイバを設計する方法。
【0304】
実施形態18
光ファイバを製造する方法であって、上記方法は:
(a)プリフォームを炉内で加熱するステップであって、上記プリフォームは、ガラスコアと、上記ガラスコアを取り囲んで上記ガラスコアと直接接触するガラスクラッドとを含む、ステップ;
(b)上記プリフォームをドロー加工して、130μm未満の直径を有するガラスファイバを形成するステップであって、上記ガラスファイバは、弾性率E及び半径Rを有する、ステップ;
(c)上記ガラスクラッドを取り囲んで上記ガラスクラッドと直接接触するように、一次コーティングを適用するステップであって、上記一次コーティングは、0.5MPa未満のヤング率E、30μm未満の厚さ、ポアソン比ν、及び半径Rを有する、ステップ;
(d)上記一次コーティングを取り囲んで上記一次コーティングと直接接触するように、二次コーティングを適用するステップであって、上記二次コーティングは、1500MPa超のヤング率E、半径R、及び25μm未満の厚さを有する、ステップ;並びに
(e)上記光ファイバのプルアウト力を試験して、上記プルアウト力がPcrit未満であることを保証するステップであって、上記Pcritは:
【0305】
によって与えられる、ステップ
を含む、光ファイバを製造する方法。
【0306】
実施形態19
上記一次コーティングの上記厚さは15μm超かつ30μm未満である、実施形態18に記載の光ファイバを製造する方法。
【0307】
実施形態20
上記二次コーティングの上記厚さは7.0μm超かつ25μm未満である、実施形態18又は19に記載の光ファイバを製造する方法。
【符号の説明】
【0308】
10、20 光ファイバ
11 ガラスファイバ
12 コア、ガラスコア
14 クラッド、ガラスクラッド
16 一次コーティング
18 二次コーティング
30 光ファイバリボン
32 マトリクス、リボンマトリクス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】