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特表2023-502000車両の周囲を検知するためのシステム及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-20
(54)【発明の名称】車両の周囲を検知するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/02 20060101AFI20230113BHJP
   G01S 13/50 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
G01S7/02 216
G01S13/50
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022526423
(86)(22)【出願日】2020-11-09
(85)【翻訳文提出日】2022-06-29
(86)【国際出願番号】 IB2020060508
(87)【国際公開番号】W WO2021090285
(87)【国際公開日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】62/932,511
(32)【優先日】2019-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/955,487
(32)【優先日】2019-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/037,021
(32)【優先日】2020-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/037,026
(32)【優先日】2020-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522178898
【氏名又は名称】バヤー イメージング リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ポポブ、マーク
(72)【発明者】
【氏名】ロムニッツ、ユヴァル
(72)【発明者】
【氏名】シェルニヤコワ、ターニャ
(72)【発明者】
【氏名】トゥール、ローネン
(72)【発明者】
【氏名】メスター、フェリックス
(72)【発明者】
【氏名】ハレル、トム
(72)【発明者】
【氏名】カルトウスキー、アサーフ
(72)【発明者】
【氏名】ロン、オレル
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AB09
5J070AB19
5J070AC01
5J070AC06
5J070AC11
5J070AD03
5J070AD05
5J070AD10
5J070AE01
5J070AE07
5J070AE09
5J070AE20
5J070AF03
5J070AF05
5J070AF06
5J070AH19
5J070AH35
5J070AH40
5J070AH45
5J070AK07
5J070AK10
5J070AK22
5J070BA01
(57)【要約】
車載レーダー・センサを介して車両の周囲を検知するためのシステム及び方法。指向性トランスミッタ・アレイは、車両を囲む領域に放射線を伝送し、レシーバ・アレイは、反射して戻された放射線を受け取る。コントローラは、自己速度計算モジュール、壁検出モジュール、ダイナミック・レンジ強化モジュール、二重反射検出モジュール及び同様のもの使用して、車両の相対スピード、及び車両の周囲における危険要素の識別などの、有用な情報を得ることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の周囲を検知するためのシステムであって、
発振器に接続され、前記車両を囲む領域に電磁波を伝送するように構成された、伝送アンテナのアレイを備えるレーダー伝送ユニット、及び
前記車両を囲む前記領域内の物体によって反射された電磁波を受信するように構成された少なくとも1つの受信アンテナを備え、未加工データを生成するように動作可能な、レーダー受信ユニット、
を備える、車載レーダー・ユニットと、
前記レーダー受信ユニットと通信しており、前記レーダー・ユニットから未加工データを受信するように構成され、前記受信されたデータに基づく環境情報を生成するように動作可能な、プロセッサ・ユニットと、
を備え、
前記プロセッサが、
未加工データから前記車両の速度を計算するように動作可能な自己速度計算モジュール、
前記車両を囲む前記領域における平坦な表面を検出するように動作可能な壁検出モジュール、
弱く反射する物体を、同じ近傍内の強く反射する物体と区別するように動作可能なダイナミック・レンジ強化モジュール、及び
前記レーダー受信ユニットに向かって物体によって直接的に反射された単反射電磁波を、中間反射面を介して前記レーダー受信ユニットに向かって物体から間接的に反射された二重反射電磁波と区別するように動作可能な二重反射識別モジュール、
から選択された少なくとも1つのモジュールを備える、システム。
【請求項2】
前記レーダー伝送ユニットが、円偏波された電磁波を生成するように構成され動作可能な偏波子をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記レーダー受信ユニットが、前記受信された電磁波の偏波を検出するように構成され動作可能な偏波検出器をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記二重反射識別モジュールが、
円偏波された電磁波を生成するように構成され動作可能な円形偏波子と、
前記受信された電磁波の前記偏波を検出するように構成され動作可能な偏波検出器と、
を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記自己速度計算モジュールが、画像生成ユニット、メモリ・ユニットを備え、
前記画像生成ユニットが、ボクセルの行列を含む前記車両を囲む前記領域を表す3次元画像を構築するように構成され動作可能であり、各ボクセルが、
前記車両の経路に平行な軸に沿った反射物体の水平空間座標(x)、
前記車両の前記経路に直角の垂直軸に沿った前記反射物体の垂直空間座標(y)、
前記車両から放射状に分かれる軸に沿った前記反射物体の放射空間座標(R)、
強度値、及び
前記反射物体の見掛けの視線速度vを示すドップラー偏移値、
を含むボクセル・パラメータのセットによって特徴付けられ、
前記メモリ・ユニットが、少なくとも、
第1の瞬間における前記車両を囲む前記領域を表す第1の3次元画像、及び
遅延時間(dt)後の第2の瞬間における前記車両を囲む前記領域を表す第2の3次元画像、
に関するデータを格納するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記壁検出モジュールが、処理ユニットと、仮想ボックス内のエネルギー・プロフィールを、2次元反射器を示す性質をもつ基準エネルギー・プロフィールと比較するための実行可能コードを格納するメモリ・ユニットとを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
車両の周囲を検知するための方法であって、
発振器に接続された伝送アンテナのアレイを備えるレーダー伝送ユニット、及び少なくとも1つの受信アンテナを備えるレーダー受信ユニットを備える、車載レーダー・ユニットを用意するステップと、
前記レーダー受信ユニットと通信しているプロセッサ・ユニットを用意するステップと、
前記車両を囲む前記領域に電磁放射を伝送するステップと、
前記車両を囲む前記領域における物体から反射された電磁放射を受信するステップと、
受信された電磁波の偏波を検出するステップと、
前記車両を囲む前記領域内の2次元に広がるターゲットを検出するステップと、
ダイナミック・レンジ強化フィルタの組合せを適用することによって、弱く反射する物体を、同じ近傍内の強く反射する物体と区別するステップと、
前記車両を囲む前記領域の一連の3次元画像を構築するステップと、
前記車両の速度を判定するために前記一連の3次元画像を分析するステップと、
を含む、方法。
【請求項8】
前記車両を囲む前記領域における2次元に広がるターゲットを検出する前記ステップが、
反射された放射線におけるスペクトル反射点を検出するステップ、
候補の壁状物体を収める容積のまわりに仮想ボックスを構築するステップ、
前記仮想ボックス内のレーダー画像のエネルギー・プロフィールを計算するステップ、
前記エネルギー・プロフィールに分類機能を適用するステップ、
を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
分類機能を適用する前記ステップが、仮想ボックス内から反射された全エネルギーと、仮想ボックスのセグメント内から反射されたエネルギーのプロフィールと、閾値を上回るエネルギー値を有する仮想ボックス内のボクセルの数と、これらの組合せとから成るグループから選択された、少なくとも1つの壁指示パラメータを計算するステップを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
一連の3次元画像を構築する前記ステップが、
少なくとも、第1の瞬間における前記車両を囲む前記領域を表す第1の3次元画像を構築するステップと、
遅延時間(dt)の間、待つステップと、
第2の瞬間における前記車両を囲む前記領域を表す第2の3次元画像を構築するステップと、
を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記車両の前記速度を判定するために前記一連の3次元画像を分析する前記ステップが、
前記第1の3次元画像と前記第2の3次元画像における共通反射物体を検出するステップと、
検出された共通反射物体の水平偏移(dx)を判定するステップと、
前記反射物体の水平偏移dxに応じて、見掛けの視線速度vのプロットの勾配を計算するステップと、
を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
一連の3次元画像を構築する前記ステップが、一連のボクセルの行列を構築することを含み、各ボクセルが、
前記車両の経路に平行な軸に沿った反射物体の水平空間座標(x)と、
前記車両の前記経路に直角の垂直軸に沿った前記反射物体の垂直空間座標(y)と、
前記車両から放射状に分かれる軸に沿った前記反射物体の放射空間座標(R)と、
強度値と、
前記反射物体の見掛けの視線速度vを示すドップラー偏移値と、
を含むボクセル・パラメータのセットによって特徴付けられる、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記水平偏移(dx)を判定する前記ステップが、
前記反射物体のx座標(x)を判定するステップ、
前記反射物体のy座標(y)を判定するステップ、
前記反射物体の前記x座標と前記反射物体の前記y座標との比率(x/y)のアークタンジェントを計算することによって、前記反射物体の余緯度角(θ)を見つけるステップ、
dx=sin(arctan(x/y))であるような前記余緯度角のサインを計算するステップ、
を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
車両を囲む領域における2次元に広がるターゲットを検出するための方法であって、
車載レーダー・ユニットを用意するステップ、
前記車両を囲む前記領域に電磁放射を伝送するステップ、
前記車両を囲む前記領域における物体から反射された電磁放射を受信するステップ、
反射された放射線におけるスペクトル反射点を検出するステップ、
候補の壁状物体を収める容積のまわりに仮想ボックスを構築するステップ、
前記仮想ボックス内の前記レーダー画像のエネルギー・プロフィールを計算するステップ、
前記エネルギー・プロフィールに分類機能を適用するステップ、
を含む、方法。
【請求項15】
分類機能を適用する前記ステップが、仮想ボックス内から反射された全エネルギーと、仮想ボックスのセグメント内から反射されたエネルギーのプロフィールと、閾値を上回るエネルギー値を有する仮想ボックス内のボクセルの数と、これらの組合せとから成るグループから選択された、少なくとも1つの壁指示パラメータを計算するステップを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
経路に沿って移動している車両の速度を判定するための方法であって、
車載レーダー・ユニットを用意するステップと、
前記車両を囲む領域に電磁放射を伝送するステップと、
前記車両を囲む前記領域における物体から反射された電磁放射を受信するステップと、
第1の瞬間における前記車両を囲む前記領域を表す第1の3次元画像を構築するステップと、
遅延時間(dt)後、第2の瞬間における前記車両を囲む前記領域を表す第2の3次元画像を構築するステップと、
前記第1の3次元画像と前記第2の3次元画像における共通反射物体を検出するステップと、
検出された反射物体の水平偏移(dx)を判定するステップと、
前記反射物体の水平偏移dxに応じて、見掛けの視線速度vのプロットの勾配を計算するステップと、
を含む、方法。
【請求項17】
前記見掛けの視線速度vが、前記反射物体から反射された放射線のドップラー偏移から判定される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
各3次元画像が、ボクセルの行列を含み、各ボクセルが、
前記車両の前記経路に平行な軸に沿った反射物体の水平空間座標(x)と、
前記車両の前記経路に直角の垂直軸に沿った前記反射物体の垂直空間座標(y)と、
前記車両から放射状に分かれる軸に沿った前記反射物体の放射空間座標(R)と、
強度値と、
前記反射物体の前記見掛けの視線速度vを示すドップラー偏移値と、
を含むボクセル・パラメータの第1のセットによって特徴付けられる、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記水平偏移(dx)を判定する前記ステップが、
前記反射物体のx座標(x)を判定するステップ、
前記反射物体のy座標(y)を判定するステップ、
前記反射物体の前記x座標と前記反射物体の前記y座標との比率(x/y)のアークタンジェントを計算することによって、前記反射物体の余緯度角(θ)を見つけるステップ、
dx=sin(arctan(x/y))であるような前記余緯度角のサインを計算するステップ、
を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記車両を囲む前記領域に電磁放射を伝送する前記ステップが、
前記アレイの各伝送アンテナのために、0度及び180度から選択された実数成分、並びに90度及び270度から選択された虚数成分を含む、必要な複素QPSK誘導ベクトルを判定することと、
レーダー伝送ユニットが、振動信号を生成することと、
第1の時間間隔中、180度の実数成分に関連付けられた誘導ベクトルを有する各伝送アンテナのために、前記二位相調整器が、伝送される信号に180度位相偏移を適用することと、
第2の時間間隔中、180度の虚数成分に関連付けられた誘導ベクトルを有する各伝送アンテナのために、前記二位相調整器が、前記伝送される信号に180度位相偏移を適用することと、
によって、四位相偏移変調(QPSK)ビーム形成をシミュレートするステップを含み、
前記車両を囲む前記領域における物体から反射された電磁放射を受信する前記ステップが、
ポスト・プロセッサが、前記第2の時間間隔中に受信された信号に90度位相偏移を適用するステップと、
前記ポスト・プロセッサが、前記第1の時間間隔中に受信された信号を前記第2の時間間隔中に受信された90度位相偏移された信号に合計するステップと、
を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
各伝送アンテナに対して、
前記関連付けられた誘導ベクトルの前記実数成分に必要な振幅ARを選択するステップと、
前記第1の時間間隔中、前記伝送される信号に第1の利得GRを適用するステップと、
前記関連付けられた誘導ベクトルの前記虚数成分に必要な振幅AIを選択するステップと、
前記第2の時間間隔中、前記伝送される信号に第2の利得GIを適用するステップであって、前記第2の利得GIが、GRとAR対AIの比率との積に等しい、第2の利得GIを適用するステップと、
をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
経路に沿って移動している車両の速度を判定するための方法であって、
車載レーダー・ユニットを用意するステップと、
前記車両を囲む領域に電磁放射を伝送するステップと、
前記車両を囲む前記領域における物体から反射された電磁放射を受信するステップと、
前記第1の瞬間における前記車両を囲む前記領域を表す第1の3次元画像を構築するステップであって、前記3次元画像が、ボクセルの行列を含み、各ボクセルが、
前記車両の前記経路に平行な軸に沿った反射物体の水平空間座標(x)、
前記車両の前記経路に直角の垂直軸に沿った前記反射物体の垂直空間座標(y)、
前記車両から放射状に分かれる軸に沿った前記反射物体の放射空間座標(R)、
強度値、及び
前記反射物体の見掛けの視線速度vを示すドップラー偏移値、
を含むボクセル・パラメータの第1のセットによって特徴付けられる、第1の3次元画像を構築するステップと、
遅延時間(dt)後、第2の瞬間における前記車両を囲む前記領域を表す第2の3次元画像を構築するステップであって、前記3次元画像が、ボクセルの行列を含み、各ボクセルが、ボクセル・パラメータの第2のセットによって特徴付けられる、第2の3次元画像を構築するステップと、
ボクセル・パラメータの前記第1のセット及びボクセル・パラメータの前記第2のセットにおける共通反射物体を検出するステップと、
検出された反射物体の水平偏移(dx)を判定するステップと、
前記反射物体の水平偏移dxに応じて、前記見掛けの視線速度vのプロットの勾配を計算するステップと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年11月8日に提出された米国仮特許出願第62/932,511号、2019年12月31日に提出された米国仮特許出願第62/955,487号、2020年6月10日に提出された米国仮特許出願第63/037,021号、及び2020年6月10日に提出された米国仮特許出願第63/037,026号からの優先権の利益を主張し、その内容が全体として参照により組み込まれる。
【0002】
本明細書における本開示は、車両の周囲を検知するためのシステム及び方法に関する。詳細には、移動している車両を囲む領域における物体を検出するように動作可能な車載レーダー・センサを提供するためのシステム及び方法が説明される。
【背景技術】
【0003】
物体を検知するために、様々なセンサが使用され得る。実際は、自動運転車及び同様のものなどの自律車両の利用の増加に伴い、走行車両の近くの物体を検出するために、多すぎるほどのセンサが使用される。例えば、ビデオ・カメラ、超音波センサ、赤外線、LIDARセンサ、及び同様のものなどのセンサが、車両が走行している環境に関する情報を提供するために使用され得る。
【0004】
レーダーの利用は、RFIC及び信号技術の発展に伴って、ますます広く普及したものになりつつある。レーダー・センサには、完全な闇、霧、もや、及び雨の中で動作するという長所がある。レーダーは、低コスト、低電力消費量、及び高精度という長所を有する電子システムである。スペース・シャトル・トポグラフィック・ミッション、光学系、地質工学マッピング、気象学的検出などを含む様々な用途において著しく利用され得る。レーダー・システムの作業効率は、広いカバレッジ、高い指向性、高い利得、及び低い信号対雑音比を有する信頼でき安定したレーダー信号に基づく。
【0005】
車載センサとしてのレーダーの有用性は、方向、範囲、及びスピードを判定するその解像度及び正確さに依存する。アンテナによって実現可能な指向性は、動作周波数における波長に対するその物理サイズに依存する。これは、機械的に誘導されるビームと電子的に誘導されるビームの両方に当てはまることである。電子ビームの誘導は、アンテナ素子から/へ信号の位相を、所与の方向に揃えることを伴う。アンテナ・アレイのビーム形状は、アレイにおける各アンテナ素子に適用される位相偏移に依存する。典型的には、各アンテナ素子は、アンテナ素子への信号経路に沿った伝送回線及び増幅器に関連した先験的実装依存位相偏移を有する。追加の位相偏移が適用されない場合、結果のビームは、典型的には、明確に定義されたビーム形状を有さず、反射されたビームが受信される方向は判定しにくい。
【0006】
高指向性ビームを実現するよく知られた方法は、異なる要素からの伝送が、所与の伝搬方向にコヒーレントに組み合わさるように、各経路に沿った位相偏移を、対応するアンテナ素子に適用することである。それでも、任意の位相偏移を適用することは、実装複雑性を招き、時には、粗い位相制御に頼る必要がある。粗い位相制御の実例は、2つ又は4つの可能な位相の1つを選択することであり、一方で、より細かい制御は、各位相制御経路における8個又は16個の位相値の選択を可能にし得る。
【0007】
伝送されるビームへの指向性は、二位相偏移変調(BPSK:binary phase shift keying)ベースのビーム形成を通じて実現され得る。これは、選択されたアンテナを介して伝送される信号に0度又は180度位相偏移を適用することによって実現され得る。それでも、BPSKビーム形成キャリアには、標準的には、最適な所望の位相と実際の位相との間の、粗い位相量子化と大きい差による不利がある。BPSKビーム形成は、標準的には、伝送エネルギーの約60%を浪費し得る著しいサイドローブを引き起こす。サイドローブの低減は、例えば、180度ではなく90度毎など、位相のより細かい制御を必要とする。位相制御の90度の粒度では、エネルギーの20%しか、サイドローブに奪われない。
【0008】
実例として、画像化のコンテキストでは、伝送アンテナは、いくつかの時間間隔にわたって様々なコード・シーケンスでスキャンされ得る(例えば、経時的にアンテナ間で切り替えること、又はHadamardコードでアンテナをコーディングすること、又は特有の方向に向けてビーム形成すること)。指向特性は、エンコード行列の反転と組み合わされた、帰納的ビーム形成によって再現されることが可能である。移動しているターゲットからの反射は、画像化に有害な様式で、これらの時間間隔にわたる位相回転を生み出し得る。良いビーム形成器を生成する理由は、各時間間隔において異なる方向にエネルギーを濃縮することが、位相回転の効果を低減させるということから生まれる。さらに、アップチャープ又はダウンチャープなど、周波数の範囲にわたる伝送スイープが時間周期にわたって伝送される場合、時間間隔の間の遅延が、さらに増加される。
【0009】
結果として、ターゲットの位置を正確に特定するのが非常に困難になり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許公開番号第16/802,610号
【特許文献2】米国仮特許出願第62/955,482号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、走行車両を囲む領域における物体を正確に検知するために使用され得る効果的なレーダー・センサの必要性が残っている。本明細書で説明される発明は、上述の必要性に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示の主題の1つの態様によれば、車両の周囲を検知するためのシステムが導入される。システムは、発振器に接続され、車両を囲む領域に電磁波を伝送するように構成された、伝送アンテナのアレイを備えるレーダー伝送ユニット、及び車両を囲む領域内の物体によって反射された電磁波を受信するように構成された少なくとも1つの受信アンテナを備え、未加工データを生成するように動作可能な、レーダー受信ユニットを含む、車載レーダー・ユニットを備え得る。
【0013】
システムは、レーダー受信ユニットと通信しており、レーダー・ユニットから未加工データを受信するように構成され、受信されたデータに基づく環境情報を生成するように動作可能な、プロセッサ・ユニットをさらに含み得る。
【0014】
必要に応じて、プロセッサは、未加工データから車両の速度を計算するように動作可能な自己速度計算モジュール、車両を囲む領域における平坦な表面を検出するように動作可能な壁検出モジュール、弱く反射する物体を、同じ近傍内の強く反射する物体と区別するように動作可能なダイナミック・レンジ強化モジュール、及びレーダー受信ユニットに向かって物体によって直接的に反射された単反射電磁波を、中間反射面を介してレーダー受信ユニットに向かって物体から間接的に反射された二重反射電磁波と区別するように動作可能な二重反射識別モジュールなどの、様々な追加モジュールを備え得る。
【0015】
いくつかのシステムにおいて、レーダー伝送ユニットは、円偏波された電磁波を生成するように構成され動作可能な偏波子をさらに備える、及び/又はレーダー受信ユニットは、受信された電磁波の偏波を検出するように構成され動作可能な偏波検出器をさらに備える。したがって、二重反射識別モジュールは、円偏波子及び偏波検出器を備え得る。
【0016】
必要であれば、システムは、画像生成ユニット及びメモリ・ユニットを備える自己速度計算モジュールを含む。画像生成ユニットは、ボクセルの行列を含む車両を囲む領域を表す3次元画像を構築するように構成され動作可能であり得、各ボクセルは、車両の経路に平行な軸に沿った反射物体の水平空間座標(x)、車両の経路に直角の垂直軸に沿った反射物体の垂直空間座標(y)、車両から放射状に分かれる軸に沿った反射物体の放射空間座標(R)、強度値、及び反射物体の見掛けの視線速度vを示すドップラー偏移値を含む、ボクセル・パラメータのセットによって特徴付けられる。メモリ・ユニットは、少なくとも、第1の瞬間における車両を囲む領域を表す第1の3次元画像、及び遅延時間(dt)後の第2の瞬間における車両を囲む領域を表す第2の3次元画像に関するデータを格納するように構成され得る。
【0017】
追加又は代替として、システムは、処理ユニットと、仮想ボックス内のエネルギー・プロフィールを、2次元反射器を示す性質をもつ基準エネルギー・プロフィールと比較するための実行可能コードを格納するメモリ・ユニットとを備える壁検出モジュールを含み得る。
【0018】
したがって、発振器に接続された伝送アンテナのアレイを備えるレーダー伝送ユニット、及び少なくとも1つの受信アンテナを備えるレーダー受信ユニットを備える、車載レーダー・ユニットを用意するステップと、レーダー受信ユニットと通信しているプロセッサ・ユニットを用意するステップと、車両を囲む領域に電磁放射を伝送するステップと、車両を囲む領域における物体から反射された電磁放射を受信するステップと、受信された電磁波の偏波を検出するステップと、車両を囲む領域内の2次元に広がるターゲットを検出するステップと、ダイナミック・レンジ強化フィルタの組合せを適用することによって、弱く反射する物体を、同じ近傍内の強く反射する物体と区別するステップと、車両を囲む領域の一連の3次元画像を構築するステップと、車両の速度を判定するために一連の3次元画像を分析するステップとによって、車両の周囲を検知するための方法を教示することが、本開示の別の態様である。
【0019】
適切であれば、車両を囲む領域における2次元に広がるターゲットを検出するステップは、反射された放射線におけるスペクトル反射点を検出するステップと、候補の壁状物体を収める容積のまわりに仮想ボックスを構築するステップと、仮想ボックス内のレーダー画像のエネルギー・プロフィールを計算するステップと、エネルギー・プロフィールに分類機能を適用するステップとを含み得る。
【0020】
追加又は代替として、方法は、仮想ボックス内から反射された全エネルギーと、仮想ボックスのセグメント内から反射されたエネルギーのプロフィールと、閾値を上回るエネルギー値を有する仮想ボックス内のボクセルの数と、これらの組合せとから成るグループから選択された、少なくとも1つの壁指示パラメータを計算するステップを含む、分類機能を適用することを含み得る。
【0021】
必要であれば、一連の3次元画像を構築するステップは、少なくとも、第1の瞬間における車両を囲む領域を表す第1の3次元画像を構築するステップと、遅延時間(dt)の間、待つステップと、第2の瞬間における車両を囲む領域を表す第2の3次元画像を構築するステップとを含む。
【0022】
したがって、車両の速度を判定するために一連の3次元画像を分析するステップは、第1の3次元画像と第2の3次元画像における共通反射物体を検出するステップと、検出された共通反射物体の水平偏移(dx)を判定するステップと、反射物体の水平偏移dxに応じて、見掛けの視線速度vRのプロットの勾配を計算するステップとを含み得る。適切であれば、水平偏移(dx)を判定するステップは、反射物体のx座標(xn)を判定するステップと、反射物体のy座標(yn)を判定するステップと、反射物体のx座標と反射物体のy座標との比率(xn/yn)のアークタンジェントを計算することによって、反射物体の余緯度角(θn)を見つけるステップと、dx=sin(arctan(xn/yn))であるような余緯度角のサインを計算するステップとを含む。
【0023】
さらに別の態様において、アンテナ・アレイにおける四位相偏移変調(QPSK:quadrature phase-shift key)ビーム形成をシミュレートするための方法が教示され、アレイの各アンテナは、二位相調整器(binary phase shifter)を介して共通トランスミッタに接続される。方法は、アレイの各伝送アンテナのために、必要な複素QPSK誘導ベクトルを判定することを含み得る。誘導ベクトルは、典型的には、0度及び180度から選択された実数成分と、90度及び270度から選択された虚数成分とを有する。
【0024】
したがって、トランスミッタは、振動信号を生成する。第1の時間間隔中、180度の実数成分に関連付けられた誘導ベクトルを有する各伝送アンテナのために、前記二位相調整器は、伝送される信号に180度位相偏移を適用する。第2の時間間隔中、180度の虚数成分に関連付けられた誘導ベクトルを有する各伝送アンテナのために、前記二位相調整器は、伝送される信号に180度位相偏移を適用する。ポスト・プロセッサは、90度位相偏移を、第2の時間間隔中に受信された信号に適用するために使用され得、ポスト・プロセッサは、第1の時間間隔中に受信された信号を、第2の時間間隔中に受信された90度位相偏移された信号に合計し得る。任意選択として、トランスミッタは、各時間間隔中に周波数の範囲にわたって振動信号をスイープし得る。
【0025】
実施例をより良く理解するため、及び実施例がどのように実行され得るかを示すために、純粋に実例として、添付の図面をここで参照する。
【0026】
ここで詳しく図面を具体的に参照しながら、示された詳細が、実例としてのもの、及び選択された実施例の例証的議論のためだけのものであり、最も有用であり、原理及び概念的態様の説明を容易に理解されると思われるものを提供するために提示されることを強調する。この点に関して、基本的な理解に必要なものより詳細に構造上の詳細を示すことは試みられず、図面とともに行われる説明は、様々な選択された実施例がどのように実践され得るかを当業者に明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1A】車両を囲む領域における物体を検知するように構成された車載レーダー・ユニットを概略的に表す図である。
図1B】車両の周囲を検知するための可能なシステムの選択された要素を示すブロック図である。
図2A】車両の周囲を検知するための可能な方法において選択されるステップを示すフローチャートである。
図2B】車両の周囲を検知するための可能な方法において選択されるステップを示すフローチャートである。
図2C】車両の周囲を検知するための可能な方法において選択されるステップを示すフローチャートである。
図3A】移動している車両にマウントされた本開示のレーダー・ユニットが、車両を囲む領域における物体の見掛けの動きを検出することを概略的に表す図である。
図3B】移動している車両にマウントされた本開示のレーダー・ユニットが、車両を囲む領域における物体の見掛けの動きを検出することを概略的に表す図である。
図3C】移動している車両にマウントされた本開示のレーダー・ユニットが、車両を囲む領域における物体の見掛けの動きを検出することを概略的に表す図である。
図3D】移動している車両にマウントされた本開示のレーダー・ユニットが、車両を囲む領域における物体の見掛けの動きを検出することを概略的に表す図である。
図4A】異なるスピードで走行する車両にマウントされたレーダー・ユニットによって測定されたような、反射物体の水平偏移dxに応じた見掛けの視線速度vのプロットの3つの実例を示す図である。
図4B】異なるスピードで走行する車両にマウントされたレーダー・ユニットによって測定されたような、反射物体の水平偏移dxに応じた見掛けの視線速度vのプロットの3つの実例を示す図である。
図4C】異なるスピードで走行する車両にマウントされたレーダー・ユニットによって測定されたような、反射物体の水平偏移dxに応じた見掛けの視線速度vのプロットの3つの実例を示す図である。
図5】移動している車両にマウントされた本開示のレーダー・ユニットが、車両を囲む領域における壁タイプの2次元に広がるターゲットを検出することを概略的に表す図である。
図6A】0度又は180度だけ、選択されたアンテナの位相をBPSK位相偏移させることによって誘導ベクトルがどのように生成され得るかを示す図である。
図6B】180度だけ、アンテナへの信号を位相偏移させるための可能なBPSKメカニズムを示す図である。
図6C】0度、90度、180度、又は270度だけ、選択されたアンテナの位相をQPSK位相偏移させることによって誘導ベクトルがどのように生成され得るかを示す図である。
図6D】0度、90度、180度、又は270度だけ、アンテナへの信号を位相偏移させるための可能な直交変調メカニズムを示す図である。
図7A】四位相偏移変調(QPSK)ビーム形成をシミュレートするためのシステムの、第1の実施例の選択された要素を概略的に表すブロック図である。
図7B】第1の実施例の各伝送アンテナから伝送された信号の位相がどのように経時的に変化し得るかについての実例を示すプロフィールの可能なセットを示すグラフのセットである。
図7C】第1の実施例のシステムで四位相偏移変調(QPSK)ビーム形成をシミュレートするための方法において選択されるステップを示すフローチャートである。
図8A】各アンテナが利得制御ユニットに接続された、四位相偏移変調(QPSK)ビーム形成をシミュレートするためのシステムの、第2の実施例の選択された要素を概略的に表すブロック図である。
図8B】第2の実施例の各伝送アンテナから伝送された信号の位相がどのように経時的に変化し得るかについての実例を示すプロフィールの可能なセットを示すグラフのセットである。
図8C】第2の実施例のシステムで四位相偏移変調(QPSK)ビーム形成をシミュレートするための方法において選択されるステップを示すフローチャートである。
図9A】第3の実施例による全てのアンテナによって共有される、偏移された共通の二位相を含むシステムのブロック図である。
図9B】第3の実施例の各伝送アンテナから伝送された信号の位相がどのように経時的に変化し得るかについての実例を示すプロフィールの可能なセットを示すグラフのセットである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本開示の態様は、車両の周囲を検知するためのシステム及び方法に関する。詳細には、移動している車両を囲む領域における物体を検出するように動作可能な車載レーダー・センサを提供するためのシステム及び方法が説明される。さらに、広い視野を有する指向性レーダー・アレイが説明される。
【0029】
車両を囲む物体を検知するように動作可能な車載レーダー・ユニットが本明細書において提示され、車載レーダー・ユニットは車両にマウントされている。レーダー・ユニットは、レーダー・ユニットが移動している環境に関する情報を得るために使用され得る。本開示は、車両の相対スピード、及び車両の周囲における危険要素の識別などの、有用な情報を集め得るように受信されたデータを、レーダー・ユニットが分析し得る様々な技法を教示する。
【0030】
サイドローブを低減させることによって、十分な指向性を有するレーダー・ユニットが提供され得る。サイドローブを低減させるために、アレイの各アンテナによって伝送される信号は、必要な時間位相偏移プロフィールに従って二位相偏移され得る。例えば、四位相偏移変調(QPSK)ビーム形成など、複数の位相偏移ビーム形成をシミュレートするために、処理後の方法が、複数の時間周期にわたって受信された反射信号に適用され得る。典型的には、レシーバとトランスミッタは、信号が組み合わされる時間間隔中に一貫した結果を生み出すように同期され得る。
【0031】
必要に応じて、本発明の詳細な実施例が本明細書で開示されるが、開示の実施例が、様々な及び代替の形式で具体化され得る本発明の実例にすぎないことが理解されよう。図は必ずしも拡大縮小されないが、特定の構成要素の詳細を示すために、いくつかの特徴が誇張又は最小化されることがある。したがって、本明細書で開示される固有の構造的且つ機能的な詳細は、限定するものと解釈されるべきではなく、本発明を様々に用いるための、当業者に教示するための代表的な基礎にすぎない。
【0032】
本開示の様々な実施例において、複数の命令を実行するためのコンピューティング・プラットフォーム又は分散コンピューティング・システムなどのデータ・プロセッサによって、本明細書で説明されるような1つ又は複数のタスクが実施され得る。任意選択として、データ・プロセッサは、命令、データ、又は同様のものを格納するための揮発性メモリを含むか、これにアクセスする。追加又は代替として、データ・プロセッサは、命令及び/又はデータを格納するための、例えば、磁気ハード・ディスク、フラッシュ・ドライブ、取外し可能媒体、又は同様のものなどの、不揮発性ストレージにアクセスし得る。
【0033】
本明細書における本開示のシステム及び方法は、その用途において、「発明を実施するための形態」に示された又は図面及び実例に示された構造の詳細及び構成要素又は方法の配置に限定され得ないことに特に留意されたい。本開示のシステム及び方法は、他の実施例を行うこと、又は様々なやり方及び技術で実践及び実行されることが可能であり得る。
【0034】
本明細書で説明されるものと同様又は同等の代替方法及び材料が、本開示の実施例の実践又はテストにおいて使用され得る。それでも、特定の方法及び材料が、例証のためだけに本明細書で説明される。材料、方法、及び実例は、必ずしも限定するためのものではない。
【0035】
本明細書で説明されるものと同様又は同等の代替方法及び材料が、本開示の実施例の実践又はテストにおいて使用され得る。それでも、特定の方法及び材料が、例証のためだけに本明細書で説明される。材料、方法、及び実例は、必ずしも限定するためのものではない。したがって、様々な実施例が、必要に応じて、様々な手順又は構成要素を省略、代用、又は追加し得る。例えば、方法は、説明されたものとは異なる順序で実施され得、しかも、様々なステップが、追加、省略、又は組み合わされ得る。さらに、一定の実施例について説明された態様及び構成要素が、他の様々な実施例において組み合わされ得る。
【0036】
ここで図1Aを参照し、図1Aは、車両を囲む領域120における物体を検知するように構成された車載レーダー・ユニット100の実例を概略的に表し、車載レーダー・ユニット100は車両にマウントされている。レーダー・ユニット100は、車、トラック、バイク、トレーラ、キャラバン及び同様のものなどの道路車両、掘取機、クレーン及び同様のものなどの作業車両、並びに、適切であれば、航空機及び船舶などの、様々な車両に必要に応じてマウントされてもよい。
【0037】
実例として、レーダー・ユニット100は、車にマウントされ、他の車121、自転車122、歩行者123、道路標識124、壁125、縁石126、樹木127及び同様のものなど、レーダー・ユニット100の近傍における様々な物体を検出するために使用されてもよい。
【0038】
したがって、レーダー・ユニット100は、車両が走行している環境に関する情報を得るために使用され得る。本開示は、車両の相対スピード、及び車両の周囲における危険要素の識別などの、有用な情報を集め得るように受信されたデータを、レーダー・ユニットが分析し得る様々な技法を教示する。
【0039】
ここで図1Bのブロック図を参照すると、可能な車両の周囲を検知するためのレーダー・システムの選択された要素が提示される。システムは、レーダー・ユニット110及びコントローラ130を含む。レーダー・ユニット110は、レーダー伝送ユニット112及びレーダー受信ユニット114を含み得る。
【0040】
レーダー伝送ユニット112は、発振器116に接続され、車両を囲む領域に電磁波を伝送するように構成された、伝送アンテナTXのアレイを含む。レーダー受信ユニット114は、車両を囲む領域120内の物体によって反射された電磁波を受信するように構成された少なくとも1つの受信アンテナRXを含み、未加工データを生成するように動作可能であり得る。
【0041】
コントローラ130は、プロセッサ・ユニット132、自己速度計算モジュール134、壁検出モジュール136、ダイナミック・レンジ強化モジュール138、二重反射検出モジュール139及び同様のものなどの、様々なモジュールを含み得る。
【0042】
プロセッサ・ユニット132は、レーダー・ユニット114から未加工データを受信し、受信されたデータに基づく環境情報を生成するように、レーダー受信ユニット114と通信していていよい。例えば、自己速度計算モジュール134は、未加工データから車両の速度を計算するために提供され得、壁検出モジュール136は、車両を囲む領域における平坦な表面を検出するために提供され得、ダイナミック・レンジ強化モジュール138は、歩行者123などの弱く反射する物体を、同じ近傍内の壁125又は縁石126などの強く反射する物体を区別するために提供され得る。
【0043】
二重反射識別モジュール139は、レーダー受信ユニット114に向かって物体によって直接的に反射された単反射電磁波を、中間反射面を介してレーダー受信ユニット114に向かって物体から間接的に反射された二重反射電磁波と区別するように提供され得る。例えば、レーダー伝送ユニット112は、本明細書において全体として組み込まれる本出願人の同時係属中の米国特許公開番号第16/802,610号に記載されたものなどの、円偏波された電磁波を生成するように構成され動作可能な円形偏波子を含み得る。したがって、レーダー受信ユニット114は、受信された電磁波の偏波を検出するように構成され動作可能な偏波検出器を含み得る。
【0044】
円偏波された電磁波は、偶数回反射する波を、奇数回反射する波と容易に区別し得るように、反射時にその極性を反転させる。受信波の偏波が伝送波の偏波と一致する場合、受信波は、反射物体から直接的に受信されたと考えることができる。受信波の偏波が反転されている場合、受信波は、2次反射物を介して間接的に受信されたと考えることができる。
【0045】
ここで図2Aのフローチャートを参照し、図2Aは、車両の周囲を検知するための可能な方法200において選択されるステップを示す。方法は、発振器に接続された伝送アンテナのアレイを備えるレーダー伝送ユニット、及び少なくとも1つの受信アンテナを備えるレーダー受信ユニットを備える、車載レーダー・ユニット、並びに、レーダー受信ユニットと通信しているプロセッサ・ユニットを用意すること210と、車両を囲む領域に電磁放射を伝送すること220と、車両を囲む領域における物体から反射された電磁放射を受信すること230と、受信された電磁波の偏波を検出すること240と、車両を囲む領域内の2次元に広がるターゲットを検出すること250と、場合によっては、ダイナミック・レンジ強化フィルタの組合せを適用することによって、弱く反射する物体を、同じ近傍内の強く反射する物体と区別すること260と、車両を囲む領域の一連の3次元画像を構築すること270と、車両の速度を判定するために一連の3次元画像を分析すること280とというステップのいずれか又は全てを含み得る。
【0046】
車両の周囲を検知するための方法200の上述のステップは、適する要件に応じて様々な組合せ及び様々な順序で実行されてもよいことに留意されたい。必要であれば、当業者は、さらなるステップを含めてもよい。
【0047】
図2B及び図2Cは、一連の3次元画像を構築すること280及び車両を囲む領域における2次元に広がるターゲットを検出すること250についてのステップのステップを実行するための可能な方法のサブステップを提示する。
【0048】
ここで図2Bのフローチャートを参照すると、一連の3次元画像を構築するステップ280を実行するための可能な方法のサブステップが詳述される。サブステップは、少なくとも、第1の瞬間における車両を囲む領域を表す第1の3次元画像を構築すること281と、遅延時間(dt)の間、待ち、第2の瞬間における車両を囲む領域を表す第2の3次元画像を構築すること282と、第1の3次元画像と第2の3次元画像における共通反射物体を検出すること283と、検出された共通反射物体の水平偏移(dx)を判定すること284と、反射物体の水平偏移dxに応じて、見掛けの視線速度vのプロットを通じて傾向線の勾配を計算すること285とを含む。
【0049】
したがって、自己速度計算モジュールは、画像生成ユニット、及びメモリ・ユニットを含み得る。画像生成ユニットは、車両を囲む領域を表す3次元画像を構築するように構成され動作可能であり、メモリ・ユニットは、少なくとも、第1の瞬間における車両を囲む領域を表す第1の3次元画像、及び遅延時間(dt)後の第2の瞬間における車両を囲む領域を表す第2の3次元画像を含む、連続に関するデータを格納するように構成され動作可能である。
【0050】
自己速度判定の方法をより良く示すように、図3A図3Dをここで参照し、図3A図3Dは、移動している車両310にマウントされた本開示のレーダー・ユニット300が、車両310を囲む領域における物体322、324の見掛けの動きを検出することを概略的に表す。
【0051】
車両の側面図及び上面図を示す図3A及び図3Bに示されているように、反射物体のポジション320は、少なくとも、水平空間座標(x)、垂直空間座標(y)、及び放射空間座標(R)によって定義され得る。
【0052】
したがって、ボクセルの行列を構築することによって車両を囲む領域の3次元画像が構築され得、各ボクセルは、車両の経路に平行な軸に沿った反射物体の水平空間座標(x)、車両の経路に直角の垂直軸に沿った反射物体の垂直空間座標(y)、車両から放射状に分かれる軸に沿った反射物体の放射空間座標(R)を含む、ボクセル・パラメータのセットによって特徴付けられる。各ボクセルは、各ボクセルから反射された放射線のエネルギーを示す強度値と、車両のまわりの領域におけるこれらの座標に位置する任意の反射物体の見掛けの視線速度vを示し得るドップラー偏移値とに、さらに関連付けられてもよい。静止物体でも、典型的には、移動している車両にマウントされたセンサによって検出されるとき、見掛けの視線速度を有することになるということに留意されたい。
【0053】
対応する3次元画像は、車両を囲む領域における反射物体に特徴的な、高強度ボクセルのクラスタ又は形状を含み得る。したがって、各3次元画像における各反射物体のx座標(x)及びy座標(y)が判定され得る。
【0054】
一連のこのような3次元が生成され、各3次元画像がローカル・メモリ・ユニットに格納されると、2つ以上の3次元画像における異なる座標において共通反射物体が識別され得る。したがって、3次元画像のペアの間の水平偏移dxは、反射物体のx座標と反射物体のy座標との比率(x/y)のアークタンジェントを計算することによって、反射物体の余緯度角(θ)を見つけることと、dx=sin(arctan(x/y))であるような余緯度角のサインを計算することとによって定義され得る。
【0055】
したがって、水平偏移は、
【数1】

と定義される。
【0056】
図3C及び3Dに示されているように、レーダー・ユニット300に比較的近いポイント321に位置する静止した反射物体は、典型的には、大きい水平偏移dxを有することになり、その一方で、レーダー・ユニット300から比較的遠いポイント322に位置する静止した反射物体は、典型的には、より大きい水平偏移dxを有することになる。各反射物体は、その見掛けの放射スピードvR1、vR2によってさらに特徴付けられることにさらに留意されたい。
【0057】
各静止した反射物体について、見掛けの放射スピードは、関数v=vcar・dxによる水平偏移に関係していることを示すことができる。したがって、全ての検出された物体の対応する水平偏移に対する、全ての検出された物体の放射スピード値を表すグラフがプロットされるとき、例えば最小二乗の方法を使用して傾向線が構築され得、結果の傾向線の勾配は、車両の速度vcarを示し得る。
【0058】
例証として、図4A図4Cは、異なるスピードで走行する車両にマウントされたレーダー・ユニットによって測定されたような、反射物体の水平偏移dxに応じた見掛けの視線速度vのこのようなプロットの3つの実例である。図4Aは、静止した車両によって記録されるような、水平偏移に対する放射スピードのプロットを表す。結果の線の勾配は平らであり、車両の動きがないことを示す。
【0059】
図4Bは、20kphで走行する車両によって記録されるような、水平偏移に対する放射スピードのプロットを表し、図4Cは、40kphで走行する車両によって記録されるような、水平偏移に対する放射スピードのプロットを表す。車両のスピードvcarが増加すると同時に、傾向線の勾配も比例して増加することに留意されたい。
【0060】
ここで図2Cのフローチャートを再び参照すると、車両を囲む領域における2次元に広がるターゲットを検出するステップ250を実行するための可能な方法のサブステップが詳述される。サブステップは、反射された放射線におけるスペクトル反射点を検出すること251と、候補の壁状物体を収める容積のまわりに仮想ボックスを構築すること252と、仮想ボックス内のレーダー画像のエネルギー・プロフィールを計算すること253と、エネルギー・プロフィールに分類機能を適用すること254とを含む。実例として、分類機能は、仮想ボックス内から反射された全エネルギーと、仮想ボックスのセグメント内から反射されたエネルギーのプロフィールと、閾値を上回るエネルギー値を有する仮想ボックス内のボクセルの数と、これらの組合せとから成るグループから選択された、少なくとも1つの壁指示パラメータを計算することを伴い得る。
【0061】
車両が、車両の周囲内の壁及び同様のものなどの非常に長い物体を検出できることは重要であるが、レーダー・ベースの遠距離場センサは、このような広大又は複雑な形状の寸法を表すとき、問題に遭遇し得ることに留意されたい。
【0062】
実例として、広大な壁から反射された信号は、単一の反射点からの優性反射、並びに、検出しにくいことがあるずっと弱い回折及び「拡散性」反射から成り得る。それでも、検出された物体の寸法を推定できることは、様々なレーダー用途にとって、及び特に自動車レーダー用途において、非常に重要であり得、非常に長い障害物の縁部は、安全な運転ルートの判定及びメンテナンスに関係し得る。
【0063】
したがって、本明細書で説明されるシステムのシステムは、壁、フェンス、縁石及び同様のものなどの非常に長い2次元障害物を検出及び分類するための方法を適用することによって、車両の領域における平坦な表面を検出するように動作可能な壁検出モジュールを含み得る。モジュールはさらに、歩行者、ポール、道路標識及び同様のものなどの場所を特定した単一の物体と、このような障害物を見分けるように動作可能であってもよい。具体的には、壁検出モジュールは、処理ユニットと、仮想ボックス内のエネルギー・プロフィールを、2次元反射器を示す性質をもつ基準エネルギー・プロフィールと比較するための実行可能コードを格納するメモリ・ユニットとを含み得る。
【0064】
方法は、物体からの最強反射の検出、及び物体に沿ったレーダー画像のエネルギー・プロフィールからの物体の寸法の推定を含み得る。最強反射は、物体の鏡面反射点から検出されることになる。
【0065】
ここで図5を参照すると、移動している車両510にマウントされた本開示のレーダー・ユニット500は、反射点530を識別することによって、車両を囲む領域における壁タイプの2次元に広がるターゲット520を検出し得る。2次元物体の鏡面反射点は、典型的には、反射点530に接し、センサと反射点との間の法線に垂直であることに特に留意されたい。ミリ波領域のレーダーのために、2次元物体の広大な表面に沿った複数の弱い反射が予想される。したがって、仮想ボックス540は、壁の予想される容積を収めるように構築され得、仮想ボックス内のレーダー画像のエネルギー・プロフィールは計算され得る。
【0066】
仮想ボックス内のレーダー画像のエネルギー・プロフィールを計算すると、物体が壁状物体である可能性を判定するために分類機能が適用され得る。例えば、分類機能は、仮想ボックス容積を収めた容積内の全ての反射の統合された全エネルギー、仮想ボックス内のセグメント内の全ての反射の統合されたエネルギー、特定の閾値を超過するボックス内のボクセルの数、又は、K平均法、DBSCAN若しくは同様のものなどのボックス内のボクセル・クラスタリングの使用などの、様々な壁指示パラメータを計算し組み合わせ得る。ハード閾値、SVM、NN\CNN等などの様々な分類法を、抽出された特徴に適用することができる。
【0067】
候補の壁状物体の寸法は、以下の実例などの様々な方法によって評価され得ることに留意されたい。場合によっては鏡面反射自体を除く、ボックス内のエネルギー分布に対して二乗平均平方根値が計算され得る。追加又は代替として、特定の閾値を超過するボクセルの連続性が判定され得る。さらに、主なクラスタの寸法は、クラスタリング・アルゴリズムをボックス内のボクセルに適用した後、判定され得る。
【0068】
適切であれば、例えば、水平軸に沿った広い視野が提供される場合、非常に長いターゲットに沿った反射の速度プロフィールは、本明細書で説明されるものなどの、自己速度判定技法を使用して判定され得る。したがって、センサについての鏡面反射の履歴及び相対速度を参照することによって、壁状物体検出の信頼性を向上させることができ得る。例えば、移動しているセンサによって検出された強い反射の不変ゼロ相対速度は、車両の動きに平行の非常に長い物体の存在を示し得る。
【0069】
異なる物体が異なる強度の電磁放射を反射し得ることにさらに留意されたい。したがって、より弱く反射する物体が、同じ近傍で強く反射する物体からのより優勢な反射によって不明瞭になり得るというおそれがある。例えば、駐車した車両が、歩行者より強く反射することがあり、プラスチック配管が、この配管が突き出た構造壁より弱く反射することがあり、このような場合、より弱い反射をより強い反射と区別するのが難しくなり得る。
【0070】
したがって、本明細書で説明されるシステムは、弱く反射する物体を、同じ近傍内の強く反射する物体と区別するように構成され動作可能なダイナミック・レンジ強化モジュールを含み得る。
【0071】
弱いターゲットを強める1つの方法は、特定のターゲットの予想されるプロパティに一致させるために専用フィルタを適用することによるものでよい。それでも、これは、関心のある他のターゲットを犠牲にすることになり得、場合によっては、その検出可能性を減じて悪化させる。
【0072】
驚いたことに、ダイナミック・レンジは、同じ画像に対していくつかのフィルタを組み合わせることによって強められ得ることが分かってきた。例えば、弱い反射を強めるために、フィルタなしの画像がフィルタありの画像とマージされてもよい。
【0073】
1つの可能な組合せによれば、有限インパルス応答(FIR)フィルタリング又は無限インパルス応答(IIR)フィルタリングが、複数のフレームにわたる時間フィルタのないレーダー画像とマージされ得る。このような組合せは、弱いが動的な物体を強めるのに有用であり得る。このような動的な物体は、歩行者、自転車、又は、動きが固有であり得る他の車両を含む。他の動的な物体は、例えば、車両に対して静止しているように見えることがある半静的な壁などの広大な表面に対する、プラスチック・パイプなどの薄く且つ場所を特定された物体など、移動している車載検出器によって見掛けの動きが誘発される静止物体であり得る。
【0074】
別の可能な強化技法によれば、1つ1つが異なる時間スケールに対応すると予想される、いくつかの画像が生成されるような複数のフレームに対して、様々なハイパス・フィルタ又はバンドパス・フィルタが適用されてもよい。
【0075】
さらに別の強化技法は、ドップラー・ドメイン・フィルタリングを含んでもよい。ドップラー解像度が可能であれば、大きい静的物体の動きに関連付けられた予想されるドップラー・ヒストグラムは、その予測される容積上で除去され得る。これは、より弱いがより動的なターゲット(例えば歩行者)のマイクロ・ドップラー・シグネチャを残し得る。
【0076】
したがって、複数の層を含む多層画像が導入され得、各層が、異なるフィルタに対応する。したがって、層は、様々な組合せで組み合わされ得る。必要であれば、全体として参照により本明細書に組み込まれる本出願人の同時係属中の米国仮特許出願第62/955,482号において説明されるものなどの、ポイント・クラウド画像を生成すること、及びその特徴を検出することなどによって、特徴抽出が各層に対して別々に実施され得ることにさらに留意されたい。追加又は代替として、好ましい場合、共通の特徴抽出手順が、複数の層に対して同時に実施され得る。同様に、例えばターゲット検出強化のために、必要に応じて他の層からのデータ処理をサポートするために、1つの層からのデータが使用され得る。
【0077】
ここで図6A及び図6Bを参照する。図1Aは、誘導ベクトルがBPSK位相偏移によってどのように生成され得るかを示す。人工位相偏移がないと、アンテナのアレイは、(「アレイ要因」と呼ばれる)所望の誘導方向への波動伝搬によって生成された位相に加えて、電子回路及び同様のものの性質による位相偏移の範囲を生じ得る。位相のこの範囲は、図6A(i)の円の範囲で表される。図に示されたフェーザは、一貫して辻褄が合わない。円の左側内部の位相を生じるアンテナ全てに、180度位相偏移を選択的に追加することによって、図6A(ii)に示されているように、これらのフェーザを部分的に揃え、したがって、所望の誘導方向に向かってエネルギーを放つことができる。したがって、アレイの各アンテナ1116は、図6Bに示されているように、二位相調整器1114を介して信号生成発振器1112に接続されてもよい。実際にはBPSKメカニズムが誘導ベクトル1110を生成し得るが、結果として生じるビームは、著しいサイドローブ及び大きい損失をこうむる。
【0078】
さらなる位相偏移オプションを提供することによって、より効率的な誘導ベクトルが生成され得る。図6C及び図6Dを参照すると、図6C(iii)に示されているものなどの位相の範囲は、必要に応じて、0度、90度、180度、又は270度だけ、各伝送信号を選択的に偏移させること(QPSK)によって、図1C(iv)に示されているものなどの、ネット誘導ベクトル1130にコンバートされ得る。
【0079】
図6Dは、アレイのアンテナ1148においてこのような位相偏移を生み出すための可能なハードウェア配置1140を示す。アレイの各アンテナ1148は、同相アーム(Re)及び直角位相アーム(Im)という、2つの並列アームを有する位相偏移メカニズムを介して信号生成発振器1142に接続されてもよい。
【0080】
同相アーム(Re)は、必要に応じて、振動信号に180度位相偏移を追加するために選択的に活性化され得る第1の二位相調整器1144を含む。代替として、第1の二位相調整器を活性化させないことによって、信号は、伝送アンテナに同相で移送される。
【0081】
直角位相アーム(Im)は、第2の二位相調整器1146及び4分の1サイクル位相調整器1145を含む。4分の1サイクル位相調整器1145は、振動信号に90度位相偏移を追加するように構成される。したがって、第2の二位相調整器1146が活性化されない場合、90度位相偏移が、アンテナに移送される信号に適用される。代替として、第2の二位相調整器が、さらなる180度位相偏移を追加するために活性化される場合、270度の全位相偏移が、必要に応じて、アンテナに移送される信号に適用される。
【0082】
図6Dに示されているものなどの、このようなハードウェア直交変調メカニズムは、全般的な誘導ベクトルを著しく改善し得ることが理解されよう。それでも、配置は、図6Bの簡単な二位相調整器1120より著しく多くのハードウェア要素を必要とする。アンテナ自体の物理的に近くに位置する必要があり得る4分の1サイクル位相調整器を含む各アンテナのための直角位相アームの追加は、アンテナ・アレイ回路の設計者に著しいハードウェア制限をかける。
【0083】
二位相調整器要素だけを使用した、改善された誘導ベクトルを生成するための可能な解決策が、ここで説明される。
【0084】
ここで図7Aのブロック図を参照すると、アンテナ・アレイ1200における四位相偏移変調(QPSK)ビーム形成をシミュレートするためのシステムの第1の実施例の選択された要素が表されている。システムは、トランスミッタ1250、アンテナ・アレイ1210、各伝送アンテナに関連付けられた二位相調整器1220、コントローラ1230、受信アンテナ1240、及びポスト・プロセッサ1260を含む。
【0085】
トランスミッタ1250は、アンテナ・アレイ1210による伝送のために振動信号を生成するように構成され動作可能である。適切であれば、トランスミッタ1250は、周波数の範囲を通じてスイープする信号、又はチャープを生成するようにさらに動作可能であってもよいことに留意されたい。
【0086】
アンテナ・アレイ1210は、いくつかのアンテナA1~Anを含む。各アンテナは、必要な位相偏移と同時に発振器1270によって生成された信号を伝送するように動作可能である。アレイにおけるアンテナ全てから伝送される信号を重ね合わせると、特徴的な形状を有する全般的な信号ビームを生じることに気づくであろう。
【0087】
各伝送アンテナAnに関連付けられた二位相調整器1220は、必要に応じて、振動信号に180度の位相偏移を選択的に適用するように構成され動作可能である。代替として、二位相調整器1220が活性化されない場合、位相偏移は、振動信号に適用されない。したがって、関連付けられたアンテナによって伝送される信号は、必要に応じて、発振器1270によって生み出された振動信号と同相又は逆位相である。
【0088】
コントローラ1230は、必要なアンテナだけが、位相偏移された信号を伝送するように、活性化命令を二位相調整器1220に送るように構成される。
【0089】
(1つ又は複数の)受信アンテナ1240は、ターゲットから反射された帰還信号を受信するように構成される。
【0090】
ポスト・プロセッサ1260は、受信信号を操作するように動作可能であり、メモリ1280素子及び処理ユニット1290を含む。メモリ素子1280は、受信信号を保存するように動作可能である。処理ユニットは、メモリ1280に格納された選択された受信信号に位相偏移を適用するように動作可能であり、メモリ1280に格納された受信信号を合計するようにさらに動作可能である。
【0091】
特定の実例では、処理ユニットは、選択された受信信号に90度位相偏移を適用し、これらを他の受信信号と合計して、必要な出力信号を生み出してもよい。
【0092】
したがって、コントローラは、アレイの各アンテナに必要な複素誘導ベクトルC=R+jIを判定するように動作可能であってもよい。複素誘導ベクトルCは、+1及び-1から選択されたバイナリ実数成分R、並びに+1及び-1から選択されたバイナリ虚数成分Iを含む。+1の値は、位相偏移が必要ないことを示し、-1の成分は、位相偏移が必要であることを示す。したがって、実数成分は、0度及び180度から選択された必要な位相偏移を表すことができ、虚数成分は、90度及び270度から選択された必要な位相偏移を表すことができ、全てが、R=+1、I=+1の組合せに関連している。
【0093】
ここで図7Bのグラフを参照すると、第1の実施例の各伝送アンテナA1~Anから伝送された信号の位相S1~Snがどのように経時的に変化し得るかについての実例を示すプロフィールの可能なセットを示す。
【0094】
各アンテナの位相偏移は、所与の時間間隔Δtの間、固定されたままであることに留意されたい。各アンテナAnは、その時の必要な誘導ベクトルCiによって判定された一意のプロフィールを受信する。各複素誘導ベクトルCiは、2つの連続的な時間間隔Δti、Δti+1の間の必要な位相偏移を判定し得る。
【0095】
第1の時間間隔Δti中、コントローラは、伝送される信号に180度位相偏移を適用するように、-1の実数成分Riに関連付けられた誘導ベクトルCiを有するアンテナA1~Anの二位相調整器1220に命令する。
【0096】
第2の時間間隔Δti+1中、コントローラは、伝送される信号に180度位相偏移を適用するように、-1の虚数I成分に関連付けられた誘導ベクトルCiを有するアンテナの二位相調整器1220に命令する。
【0097】
したがって、ポスト・プロセッサ1260は、第1の時間間隔及び第2の時間間隔中に受信された反射信号をメモリに格納するように動作可能であり得る。プロセッサ・ユニットは、次に、第1の時間間隔中に受信された信号を第2の時間間隔中に受信された90度位相偏移された信号に合計する前に、第2の時間間隔中に受信された信号に90度位相偏移を適用し得る。
【0098】
ポスト・プロセッサからの結果の出力信号は、直角位相偏移された信号の特性を有することになる。
【0099】
ここで図7Cのフローチャートを参照すると、アレイ1210のアンテナが各二位相調整器1220を介して共通トランスミッタに接続される図7Aのシステムで、四位相偏移変調(QPSK)ビーム形成をシミュレートするための方法1400の選択されるステップが示されている。
【0100】
アレイの各伝送アンテナのために、+1及び-1から選択された実数成分R、並びに+1及び-1から選択されたバイナリ虚数成分Iを含む、必要な複素QPSK誘導ベクトルCが判定される1410。
【0101】
トランスミッタは、二位相調整器を介して各アンテナに伝えられる振動信号を生成する1420。任意選択として、各伝送される信号は、各時間間隔中に周波数の範囲にわたってスイープし得る。
【0102】
第1の時間間隔中1430、+1の実数成分Rに関連付けられた誘導ベクトルを有する各伝送アンテナのために、関連付けられた二位相調整器が、伝送される信号に180度位相偏移を適用し1432、アンテナが信号を伝送し1434、受信された信号が、ポスト・プロセッサのメモリに格納される1436。
【0103】
第2の時間間隔中1440、+1の虚数成分Iに関連付けられた誘導ベクトルを有する各伝送アンテナのために、関連付けられた二位相調整器が、伝送される信号に180度位相偏移を適用し1442、アンテナが信号を伝送し1444、受信された信号が、ポスト・プロセッサのメモリに格納される1446。
【0104】
ポスト・プロセッサは、次に、第2の時間間隔中1440に受信された信号に90度位相偏移を適用し1450、第1の時間間隔中に受信された信号を第2の時間間隔中に受信された90度位相偏移された信号に合計し得る1460。
【0105】
本明細書で説明されるシステム及び方法の特定の特徴は、シミュレートされた様式で、強化されたビーム形成器の長所をシミュレートするため、及びそこから利益を得るために、いくつかの時間間隔にわたって受信された信号の線形結合である。この特徴は、当業者には明らかな、また、実例としてここで言及される、様々な形式で拡張することができる。
【0106】
1つの拡張では、位相の特定の選択肢(例えば、4位相QPSK、8位相8-PSK等)、又は利得を使用したビーム形成をトランスミッタが既にサポートしている場合、M個の時間間隔にわたるM個の符号語(2つ以上)の組合せは、要因Mによって位相のより大きい選択肢を生成するために使用することができる(例えば、シミュレートされた8-PSKを生成するために、BPSKを伴う4個の時間間隔又はQPSKを伴う2個の時間間隔を使用する)。
【0107】
シミュレートされたQPSK方式は、代替として、伝送アンテナ毎に所望のフェーザCを取ることと、X=Sgn(Re{C・e-jφ})を伝送することと(ここでφは、第1の間隔の間、0であり、第2の間隔の間、90度である)、次に、ejφを掛けることによって受信されたものにおけるこの位相を補償することとによって、説明することができる。本発明の別の拡張では、「変調」位相φのシーケンスは、経時的に異なる方式で、例えば異なるスキャンされた周波数又はフレームで、選ぶことができる。
【0108】
本発明の別の拡張では、M個の間隔にわたって受信された信号は、(本明細書で説明されるようなQPSKの場合のa=1、a=jではなく)ユニット・ゲインを必ずしも有していない任意のフェーザa,..aと組み合わされる。これらのM個の間隔にわたるビーム形成符号語は、a,..aで重み付けされたこれらの線形結合が、(サイドローブ・レベルへの高いピークなどの)所望の特性を生ずるやり方で選ばれる。
【0109】
二位相調整器及び2つの時間間隔を使用することによって、QPSK(4位相)ビーム形成を実装するための上記で説明された方法は、例証のためだけに提示される。この方法は、n個の時間間隔にわたって位相の任意の偶数2nを実装するようにさらに一般化され得る。例えば、3つの時間間隔では、6-PSK変調が実現され得る。
【0110】
N個の時間間隔の間、以下の条件に従って、トランスミッタが特定のアンテナに180度位相偏移を選択的に適用する方法が実装されてもよい。n番目の時間間隔において、n*180/N度だけ回転された誘導ベクトルの実数値が負の場合、180度位相偏移がk番目のアンテナに適用される。したがって、以下の公式が真の場合、k番目のアンテナに対して180度位相偏移が適用され、
Real(C*e-j*φ[n])<0
ここで、Cは、誘導ベクトルのk番目の成分であり、φ=πn/Nは、回転シーケンスである。
【0111】
したがって、適切であれば、ポスト・プロセッサにおいて、全ての時間間隔において受信された信号の総和の前に、n番目の時間間隔の間、φnラジアンの回転が適用され得る。
【0112】
本明細書で説明されるものなどの方法は、N個の時間間隔にわたって伝送された信号の中間値が、所望の尺度を満たすように、N個の位相偏移シーケンスのセットを選ぶことによって、所望のビーム形成器のためのさらなる尺度を組み込むために拡張され得る。例えば、アポディゼーションのための利得制御、及びトランスミッタ利得均一化のために、固有の伝送アンテナのための効果的な減衰が必要とされ得る。これは、アナログ利得制御がなくても、固有の伝送アンテナのために固有の回転シーケンスを使用することによって実現され得、例えば、各アンテナの誘導ベクトルは、例えば角度ステップ(1-a)*φnだけ回転され得、ここで、aの値は、各伝送アンテナに適するように具体的に選択される。
【0113】
説明される方法を適用するのに必要な複数の時間間隔は、他の目的のためにさらに使用されてもよい。1つの可能な実施例では、各フレーム内のドップラー処理を可能にするため、チャネル・コヒーレンス時間より長くなり得る統合時間を可能にするため、及びターゲットの速度に関する情報を取得するために、複数の時間間隔が使用され得る。スキャンされることになる各空間トランスミッタ方向は、N個の時間間隔を含み得、ドップラー後処理は、視線速度に対応し得る間隔の間の線形の位相偏移を求めてサーチし得る。これは、例えば、時間間隔にわたる高速フーリエ変換(FFT)を使用して、実装され得る。
【0114】
適切であれば、各時間間隔はそれ自体が、時間間隔の期間中経時的に、段階的周波数連続波、チャープ、又は他のいくつかの周波数関数を使用して、複数の周波数にわたって伝送された信号をスイープすることを含み得ることに留意されたい。したがって、上記で説明されたように、時間間隔の間でビーム形成器を変えることによって、サイドローブ・レベルは、典型的には、任意の所与の速度における位相量子化により、低減されるはずである。それでも、関連するビーム形成量子化誤差が、他の速度におけるサイドローブを生成し得る。
【0115】
サイドローブを生成する量子化ノイズの大部分が、固有の用途において予想されるものより高い視線速度に対応する高い周波数に限定されるように、時間間隔の間、固有の順序を選択することによって、生成されたサイドローブのスペクトル形状が制御され得ることが現在の方法のもう1つの特徴である。必要であれば、n番目の時間間隔の間の位相回転φn(ここでnは、0からN-1までの任意の整数値を取り得る)は、以下のように選択され得、
φ=π[(n(N-1)/2)mod N]
ここで「mod」は、所与の整数で割った余りを返すモジュロ演算であり、Nが4の整数倍であると仮定される。上記のように、180度回転は、Real(Cke-jφ[n])<0の場合のみ、トランスミッタにおいて適用され得、ポスト・プロセッサは、φnだけ回転を適用する。時間間隔のこのような並べ替えにより、サイドローブ電力の大部分は、ドップラーのNyquist周波数に存在する。
【0116】
適する要件として、量子化ノイズのスペクトル形状を最適化するように、位相回転シーケンス、又は誘導ベクトルのシーケンスにおける順序を選択するために、他の構造が使用され得ることが理解されよう。
【0117】
上記の構造では、既知の必要な誘導ベクトルが、二位相選択のためにφだけ回転される。代替アプローチは、例えば、必要な誘導ベクトルが既知でない場合、Real(H({b})exp(jφ))の値が最大値lであるトランスミッタにおける位相選択を求めてサーチすることを伴い得、ここで、H({b})は、固有の位相選択bとの所望の空間方向の全ての伝送アンテナの組合せを表すフェーザである。このような最大化は、例えば、(2のオプションがあるK個の伝送アンテナによる)全ての二位相の組合せにまたがる網羅的なサーチによる、様々なやり方で実施することができる。Hは、例えば所望の空間方向に位置する参照ターゲットによって反射された電磁波の直接測定の分析によって、取得され得る。
【0118】
時間間隔の数は、例えば、サイドローブ・レベル、(場合によっては、間隔を追加することによって長くなった統合時間を使用した)信号対雑音比(SNR)、及びドップラー推定解像度の観点から、必要なビーム形成精度を実現するように選択され得る。その一方で、時間間隔の数は、電子コンポーネントのメモリ容量及び処理能力、並びにフレーム内のぼけの回避など、他の要因によって限定され得る。したがって、選択される時間間隔の実際の数は、これら全ての考慮の妥協であり得る。
【0119】
いくつかの空間方向が他より重要になり得るので、必要なSNR及びドップラー解像度の観点から、より多くの時間間隔がこれらの好ましい方向に、及び、より少ない時間間隔が他のより低い優先度の方向にアロケートされることが好ましくなり得る。
【0120】
このスキャン方式は、ADAS(高度運転支援システム)又は自律運転のために使用される外部カー・レーダー・センサなどの様々な用途で使用され得る。このような用途では、関心のある水平角度範囲(方位範囲)が、典型的には、関心のある垂直角度範囲(高度範囲)より広いことが理解されよう。これは、カー・レーダー・センサが一般的に道路表面の下をスキャンする必要がないからである。したがって、サイドローブが高い優先高度範囲の外側になるように、垂直線形配列でトランスミッタのアンテナを並べることが好ましくなり得る。レシーバのアンテナは、直角に向けられた水平線形配列で配置され得る。
【0121】
他の可能な用途は、部屋、競技場、ゴール・ライン、又は同様のものなどの、囲まれた空間の監視を含み得る。さらに他の用途は、場合によっては、ボディ・スキャンのための大きいアレイを使用した、ターゲット領域内の物体の追跡を伴い得る。さらに他の用途が、当業者には思いつくであろう。
【0122】
ここで、図8Aのブロック図を参照すると、図8Aは、直交振幅変調(QAM)ビーム形成がシミュレートされ得るような、各アンテナが利得制御ユニット1550に接続されたシステムの第2の実施例の選択された要素を概略的に表す。
【0123】
図7Aの第1の実施例のシステムに示された構成要素に加えて、専用利得制御ユニット1530は、各伝送アンテナに関連付けられる。したがって、コントローラは、複素誘導ベクトルによって判定された必要な利得によって、伝送された信号を増幅するように、利得制御ユニットに命令するようにさらに構成される。
【0124】
コントローラは、やはり、アレイの各アンテナに必要な複素誘導ベクトルC=R+jIを判定するように動作可能であってもよい。ここで、それでも、誘導ベクトルは、範囲+1>R>-1から選択された連続的な実数成分R、及び範囲+1>I>-1から選択された連続的な虚数成分Iを有してもよい。
【0125】
したがって、コントローラは、関連付けられた誘導ベクトルの実数成分に必要な振幅Rを選択し、第1の時間間隔中、関連付けられた第1の利得GRを、伝送される信号に適用するように、関連付けられた利得制御ユニットに命令するようにさらに動作可能であってもよい。同様に、コントローラは、関連付けられた誘導ベクトルの虚数成分に必要な振幅Iを選択し、第2の時間間隔中、第2の利得GIを、伝送される信号に適用するように、関連付けられた利得制御ユニットに命令するように動作可能であり、第2の利得GIは、GRとI対Rの絶対比率との積に等しい。
【0126】
図8Bに示されたグラフのセットを参照すると、各時間周期中に各アンテナによって生み出された結果の信号は、したがって、振幅変調され、位相変調され得る。
【0127】
ここで図8Cのフローチャートを参照すると、アレイのアンテナが、関連付けられた二位相調整器及び利得制御ユニット1530を介して共通トランスミッタにそれぞれ接続される図8Aのシステムで直交振幅変調(QAM)ビーム形成をシミュレートするための方法の選択されるステップが示されている。
【0128】
アレイの各伝送アンテナのために、範囲+1>R>-1から選択された実数成分R、及び範囲+1>I>-1から選択された虚数成分Iを含む、必要な複素QPSK誘導ベクトルCが判定される1610。
【0129】
トランスミッタは、二位相調整器を介して各アンテナに伝えられる振動信号を生成する1620。任意選択として、各伝送される信号は、各時間間隔中に周波数の範囲にわたってスイープし得る。
【0130】
第1の時間間隔中1630、負の実数成分Rに関連付けられた誘導ベクトルを有する各伝送アンテナに対して、関連付けられた二位相調整器は、伝送される信号に180度位相偏移を適用する1632。関連付けられた利得制御ユニットは、第1の値GR=|R|G0だけ信号を増幅させ1633、アンテナは、増幅された信号を伝送し1634、受信された信号は、ポスト・プロセッサのメモリに格納される1636。
【0131】
第2の時間間隔中1640、負の虚数成分Iに関連付けられた誘導ベクトルを有する各伝送アンテナに対して、関連付けられた二位相調整器は、伝送される信号に180度位相偏移を適用する1642。関連付けられた利得制御ユニットは、第2の値GI=|I|G0だけ信号を増幅させる1643。次に、アンテナは、増幅された信号を伝送し1644、受信された信号は、やはり、ポスト・プロセッサのメモリに格納される1646。
【0132】
したがって、ポスト・プロセッサが、第2の時間1640間隔中に受信された信号に90度位相偏移を適用し1650、これらの信号を第1の時間間隔中に受信された信号と合計すると1660、結果として生じる信号は、必要な任意の値の仮想位相偏移を有し得る。
【0133】
本明細書で説明されるシステムは、各アンテナに専用の二位相調整器を含むが、図9Aに示されているように、位相調整器のない代替のシステムが、追加の時間間隔を利用することによって動作し得ることにさらに留意されたい。
【0134】
このようなシステムの使用は、位相偏移のない、第1の時間周期の間、+1の実数成分を有するこれらのアンテナだけを活性化させることと、180度の位相偏移がレシーバにおいて適用される、第2の時間周期の間、-1の実数成分を有するこれらのアンテナだけを活性化させることと、位相偏移のない、第3の時間周期の間、+1の虚数成分を有するこれらのアンテナだけを活性化させることと、第4の時間周期の間、-1の虚数成分を有するこれらのアンテナだけを活性化させることと、レシーバにおいて180度の位相偏移を適用することとによって可能にされ得る。
【0135】
システムの各アンテナが、図9Aに示されているものなどの、独立して制御可能な接続スイッチ1740を有する場合、発振器1770から直接的に、又は後処理中に、このような位相偏移を適用することが可能であり得ることにさらに留意されたい。追加又は代替として、共通の二位相調整器が、必要に応じて、複数の伝送アンテナに接続されてもよい。
【0136】
このようなシステムの実例によって生み出された信号プロフィールの実例が、図4Bに提示されている。ポスト・プロセッサは、第1の時間周期、第2の時間周期、第3の時間周期、及び第4の時間周期のそれぞれからの受信信号をメモリに格納し得る。
【0137】
4つの信号は、0度、180度、90度、270度位相偏移を第1、第2、第3、及び第4のステップにそれぞれ適用した後、レシーバによって合計され得る。これら全ての信号を合計することによって、位相調整器のないシミュレートされたQPSK誘導ベクトルが、システムにおいて実現され得る。
【0138】
複数の時間間隔にわたって受信された信号の線形結合のさらなる拡張が、当業者には思いつくであろう。
【0139】
技術注記
本明細書で使用される技術的且つ科学的な用語は、本開示が関係する当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有するはずである。それでも、本出願から成熟する特許の存続期間中、多くの関連システム及び方法が開発されることになると予想される。したがって、コンピューティング・ユニット、ネットワーク、ディスプレイ、メモリ、サーバ及び同様のものなどの用語の範囲は、このような全ての新しい技術を演繹的に含むことが意図される。
【0140】
本明細書で使用されるように、用語「約(about)」は、少なくとも±10%を指す。
【0141】
用語「備える(comprises)」、「備える(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(having)」及びその同根語は、「含むがこれらに限定されない(including but not limited to)」を意味し、挙げられた構成要素が含まれるが、全体的に他の構成要素を除外しないことを示す。このような用語は、用語「から成る(consisting of)」及び「から本質的に成る(consisting essentially of)」を包含する。
【0142】
句「から本質的に成る」は、構成物又は方法が、追加の成分及び/又はステップを含み得るが、追加の成分及び/又はステップが、特許請求される構成物又は方法の基本的且つ斬新な特性を実質的に変化させない場合のみであることを意味する。
【0143】
本明細書で使用されるように、単数形「a」、「an」、及び「the」は、別途文脈が明確に指示しない限り、複数形の参照を含み得る。例えば、用語「化合物」又は「少なくとも1つの化合物」は、複数の化合物を含み、これらの混合を含む得る。
【0144】
単語「例示的」は、「実例、事例、又は例証として機能する」を意味するために本明細書で使用される。「例示的」と表現された任意の実施例は、必ずしも、他の実施例より好ましい又は有利であると解釈されることも、他の実施例からの特徴の組込みを除外することも行われるべきではない。
【0145】
単語「任意選択として」は、本明細書では、「提供される実施例もあれば、提供されない実施例もある」を意味するために使用される。本開示の任意の特定の実施例は、このような特徴が競合しない限り、複数の「任意選択の」特徴を含み得る。
【0146】
本明細書で数値の範囲が示されるときはいつでも、示された範囲内の任意の引用された数(分数又は整数)を含むことが意図される。第1の指示番号と第2の指示番号と「の間の範囲/範囲(ranging/range between)」、及び第1の指示番号「から(from)」第2の指示番号「までの(to)」「範囲/範囲(ranging/range)」という句は本明細書では区別なく使用され、第1と第2の指示番号、及びその間の全ての分数番号及び整数番号を含むことが意図される。したがって、範囲の形式の表現は、単に便宜上及び簡潔さのためのものであり、本開示の範囲に対する柔軟性のない限定と解釈されるべきでないことを理解されたい。したがって、範囲の表現は、可能な小範囲全て、及びこの範囲内の個々の数値を具体的に開示したものと考えられるべきである。例えば、1から6までなどの範囲の表現は、1から3まで、1から4まで、1から5まで、7から4まで、7から6まで、3から6まで等、並びに、例えば、1、7、3、4、5、及び6などのこの範囲内の個々の数字、並びに、非整数の中間値などの小範囲を具体的に開示したものと考えられるべきである。これは、範囲の広さに関わらず適用される。
【0147】
明瞭さのために、別々の実施例のコンテキストにおいて説明される本開示の特定の特徴は、同様に、単一の実施例において組み合わせて提供されてもよいことが理解されている。逆に、簡潔さのために、単一の実施例のコンテキストで説明される本開示の様々な特徴は、同様に、別々に、又は任意の適切な小結合で、又は本開示の任意の他の説明される実施例において適するように、提供されてもよい。様々な実施例のコンテキストにおいて説明される特定の特徴は、これらの要素がない実施例が無効でない限り、これらの実施例の不可欠の特徴と考えられるべきではない。
【0148】
本開示は、その固有の実施例と併用して説明されてきたが、多くの代替形態、変更形態、及び変形形態が当業者には明らかであることは明白である。したがって、添付の特許請求の範囲の精神及び広範な範囲に含まれる全てのこのような代替形態、変更形態、及び変形形態を包含することが意図される。
【0149】
本明細書において言及される全ての公報、特許、及び特許出願は、各個々の公報、特許、又は特許出願が、参照により本明細書に組み込まれると具体的且つ個別に示された場合と同じ程度まで、本明細書において本明細書に参照により全体として組み込まれる。さらに、本出願における任意の参照の引用又は確認は、このような参照が、本開示に対する従来技術として利用可能であるという容認と解釈されてはならない。セクションの見出しが使用される限り、これらは、必ずしも限定するものと解釈されるべきではない。
【0150】
開示の主題の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義され、上記で説明された様々な特徴の結合と小結合の両方、並びにその変形形態及び変更形態を含み、これらは、前述の説明を読むと当業者に思いつくはずである。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
【国際調査報告】