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特表2023-502014持続放出のためのマイクロスフェアおよびこの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-20
(54)【発明の名称】持続放出のためのマイクロスフェアおよびこの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/16 20060101AFI20230113BHJP
   A61K 9/50 20060101ALI20230113BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20230113BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230113BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20230113BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
A61K9/16
A61K9/50
A61K47/34
A61K45/00
A61P25/28
A61P25/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022526486
(86)(22)【出願日】2020-11-08
(85)【翻訳文提出日】2022-05-30
(86)【国際出願番号】 KR2020015565
(87)【国際公開番号】W WO2021091333
(87)【国際公開日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】10-2019-0142635
(32)【優先日】2019-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.SPAN
(71)【出願人】
【識別番号】522179714
【氏名又は名称】ホワン イン ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【弁理士】
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(72)【発明者】
【氏名】キム、ビョン ヒョク
(72)【発明者】
【氏名】ジュン、チャン ウン
(72)【発明者】
【氏名】ホン、ヨン スン
(72)【発明者】
【氏名】シン、ホ チョル
(72)【発明者】
【氏名】チェ、ドン フン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ソ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】チャ、セ ロム
(72)【発明者】
【氏名】リュ、ミン ジ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
【Fターム(参考)】
4C076AA32
4C076AA67
4C076AA94
4C076BB12
4C076CC01
4C076EE24A
4C076FF31
4C076FF67
4C076GG28
4C084AA17
4C084MA05
4C084MA38
4C084MA43
4C084MA66
4C084NA06
4C084NA12
4C084ZA02
4C084ZA15
4C084ZA16
(57)【要約】
薬物が持続的に放出可能なマイクロスフェアおよびこの製造方法を開示する。
【選択図】図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性成分および生分解性高分子を有機溶媒に溶解させて分散相を製造するステップと、
塩を水に溶解させて連続相を製造するステップと、
分散相と連続相とを混合しかつ攪拌してエマルジョンを形成するステップと、
有機溶媒を除去するステップと、
乾燥ステップと、
を含むマイクロスフェアの製造方法。
【請求項2】
前記塩は、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カリウム(KCl)、塩化カルシウム(CaCl)、硫酸マグネシウム(MgSO)、硫酸ナトリウム(NaSO)、マンニトール、アンモニウム、硫酸カリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸二カリウム、リン酸三ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、クエン酸三ナトリウムまたはコハク酸ナトリウムよるなる群から一種以上選ばれることを特徴とする請求項1に記載のマイクロスフェアの製造方法。
【請求項3】
前記塩は、連続相における濃度が1~10%(w/v)であることを特徴とする請求項2に記載のマイクロスフェアの製造方法。
【請求項4】
生分解性高分子は、ポリラクチド、ポリ(ラクチド-CO-グリコリド)、ポリグリコラクチドおよびポリ(ラクチド-CO-グリコリド)グルコースよるなる群から一種以上選ばれることを特徴とする請求項1に記載のマイクロスフェアの製造方法。
【請求項5】
前記連続相は、さらに水溶性高分子を含むことを特徴とする請求項1に記載のマイクロスフェアの製造方法。
【請求項6】
前記水溶性高分子は、ポリビニルアルコール、ポリソルベート、ポロキサマー、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエーテルよるなる群から一種以上選ばれることを特徴とする請求項5に記載のマイクロスフェアの製造方法。
【請求項7】
前記活性成分は、中枢神経系に作用する物質であることを特徴とする請求項1に記載のマイクロスフェアの製造方法。
【請求項8】
前記活性成分は、認知症治療活性またはアルツハイマー治療活性のある物質であることを特徴とする請求項7に記載のマイクロスフェアの製造方法。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の製造方法に従って製造されたマイクロスフェア。
【請求項10】
請求項9に記載のマイクロスフェアを含有する持続放出型注射剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、徐放性注射剤に用いられる薬物含有マイクロスフェアおよびこの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
徐放性注射剤は、一般に、薬物を封じ込めたマイクロスフェアを製造してこれを注射剤内に含有させて製造し、ここで、前記マイクロスフェアは、その中に薬物が封じ込められているように製造する。前記含マイクロスフェア注射剤が体内に注射されれば、体内に注入されたマイクロスフェア内から薬物が徐々に放出されるようにして、薬理効果が持続的に現れるようにすることができる。
【0003】
したがって、持続放出用マイクロスフェアを含む注射液を体内に注射した場合、体内において薬物がマイクロスフェアから徐々に放出されるようにすることで、薬物の薬理効果が長期にわたって現れるようにすることができる。
【0004】
このような徐放性注射剤によって体内侵襲回数を減らすことができ、患者の服薬順応度を向上させることができる。例えば、1日1回もしくは2回経口投与したり、1日1回注射投与したりしなければならない薬物を上述したような含マイクロスフェア持続放出型注射剤として製造するならば、1回注射投与した後に薬効が30日間続くように剤型化することができる。
【0005】
したがって、毎日経口服用をしなければならないか、または毎日注射を打たなければならないという不便さを解消して、患者の服薬順応度を向上させることができる。
【0006】
とりわけ、認知症またはアルツハイマー患者、パーキンソン病患者またはうつ病障害患者などのように、中枢神経系に作用する治療剤または精神病治療剤を服用しなければならないものの、これを規則的に服用し難い患者の場合、含マイクロスフェア注射剤のように持続放出型製剤に剤型化して、例えば、1ヶ月に1回ずつ投与することができれば、患者の服薬順応度面からみて、非常に大きなメリットを与えることができる。
【0007】
現時点で、マイクロスフェアは、一般に、溶媒蒸発法によって製造されている。溶媒蒸発法は、揮発性の有機溶媒に高分子物質および薬物を溶解させた後、有機溶媒を蒸発させてマイクロスフェア内に薬物が封じ込められるように製造する方法である。
【0008】
しかしながら、このようにして製造されたマイクロスフェアは、マイクロスフェアの表面に薬物が存在してしまうが故に、体内に注射したときに初期に薬物が急速に放出されてしまうという不都合がある。このように、注射の初期に薬物が急速に放出されてしまう場合、薬物の血中濃度が急速に上がってしまう結果、患者に副作用を招いてしまうおそれがある。特に、中枢神経系に作用する薬物の血中濃度が急速に上がってしまうと、振戦または縮瞳などの副作用が突然出てしまう虞がある。
【0009】
この理由から、このようなマイクロスフェアの薬物の初期放出を抑制することが肝要である。
【0010】
マイクロスフェアの薬物の初期放出を抑制するために、表面を洗浄する方法が一般的に用いられる。例えば、マイクロスフェアの表面に析出された薬物をエタノール水溶液にて洗浄したり、Tween系もしくはSpan系の界面活性剤にて洗浄したりすることにより、溶媒蒸発法などにより製造されたマイクロスフェアの表面に析出された薬物を除去することができる。
【0011】
しかしながら、このような方法を用いてマイクロスフェアの表面を洗浄する場合、洗浄工程が複雑であり、工程時間が長引く他、しかも、エタノールや界面活性剤にて処理する工程がマイクロスフェアまたは薬物それ自体に悪い影響を及ぼす虞があるが故に、決して望ましいとは言えない。
【0012】
したがって、マイクロスフェアまたはここに封じ込められた薬物にあまり影響を与えないつつも、工程が単純であり、短い工程時間の間にマイクロスフェアの初期の薬物放出を抑制することのできる新規なマイクロスフェアの製造方法の開発が切望される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで、本発明者らは、マイクロスフェアの初期の薬物放出が抑制できる方法について鋭意研究を重ねた結果、連続相に塩を添加してマイクロスフェアを製造する場合にマイクロスフェアの表面に薬物が形成されることを防止し、かつ、マイクロスフェアの表面に気孔が形成されることを防止して、体内への注射に際して薬物が初期に過剰に放出されてしまうことを防止することができるということを知見した。
【0014】
したがって、本発明は、マイクロスフェアまたはここに封じ込められた薬物にあまり影響を与えないつつも、工程が単純であり、しかも、工程時間を短縮させて、初期の薬物放出が抑制されたマイクロスフェアを製造する方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、薬物が含有された持続放出型マイクロスフェアを製造する方法に関する。
【0016】
具体的に、本発明に係るマイクロスフェアの製造方法は、活性成分および生分解性高分子を有機溶媒に溶解させて分散相を製造するステップと、塩を水に溶解させて連続相を製造するステップと、分散相と連続相とを混合しかつ攪拌してエマルジョンを形成するステップと、有機溶媒を除去するステップと、乾燥ステップと、を含む。
【0017】
本発明によれば、マイクロスフェアの周りまたは表面に薬物の結晶が生成されないので、別途にエタノールまたは界面活性剤にてマイクロスフェアを洗浄する必要がない。
【0018】
本発明において、連続相に含有させる塩としては、例えば、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カリウム(KCl)、塩化カルシウム(CaCl)、硫酸マグネシウム(MgSO)、硫酸ナトリウム(NaSO)、マンニトール、アンモニウム、硫酸カリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸二カリウム、リン酸三ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、クエン酸三ナトリウムまたはコハク酸ナトリウムなどの塩を用いることができ、連続相における濃度が1~10%(w/v)、好ましくは、2~8%(w/v)になるように用いる。
【0019】
本発明に係るマイクロスフェアは、薬物を封じ込めたままで体内に注射されるので、例えば、ポリラクチド、ポリ(ラクチド-CO-グリコリド)、ポリグリコラクチドおよびポリ(ラクチド-CO-グリコリド)グルコースなどの生分解性高分子を用いることができる。
【0020】
本発明において、前記連続相は、さらに水溶性高分子を含むように製造して用いてもよい。例えば、ポリビニルアルコール、ポリソルベート、ポロキサマー、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエーテルなどよるなる群から一種以上選んで用いてもよい。前記水溶性高分子によってエマルジョンの分散性が保持できる。
【0021】
本発明に使用可能な活性成分としては、中枢神経系に作用する物質を用いる場合に、患者の服薬順応度の面からみてなお一層効果的である。前記活性成分としては、例えば、ドネペジルなどの認知症治療活性のある物質、プラミペキソール、ロチゴチン、ロピニロールなどのパーキンソン病治療剤、リスペリドン、ブロナンセリン、ルラシドンなどの抗精神病薬物、ナルトレキソンなどのアルコール中毒治療薬物などを用いることができる。
【0022】
本発明のマイクロスフェアにおいて、薬物は、マイクロスフェアの総重量に対して約30~50%、好ましくは、40~50%にて存在してもよい。
【0023】
本発明の他の局面によれば、本発明は、上記のような製造方法によって製造されたマイクロスフェアに関する。
【0024】
本発明のさらに他の局面によれば、本発明は、上記のようなマイクロスフェアを含有する持続放出型注射剤に関する。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る徐放性マイクロスフェアを含有する注射剤は、マイクロスフェアの周りまたは表面に薬物結晶が形成されることを防止し、マイクロスフェア内への薬物の封じ込め率を向上させるので、投与に際して初期に過剰に薬物が放出されてしまうことを防止することができる。なお、薬物が持続的に放出されるので、患者の服薬順応度を高め、用量ダンピング(dose dumping)による副作用を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】それぞれの実施例と比較例によるドネペジル・マイクロスフェアの形態(morphology)を確認するための走査電子顕微鏡(SEM)画像を示す写真である。
図2】それぞれの実施例と比較例によるドネペジル・マイクロスフェアの形態(morphology)を確認するための走査電子顕微鏡(SEM)画像を示す写真である。
図3】それぞれの実施例と比較例によるドネペジル・マイクロスフェアの形態(morphology)を確認するための走査電子顕微鏡(SEM)画像を示す写真である。
図4】それぞれの実施例と比較例によるドネペジル・マイクロスフェアの形態(morphology)を確認するための走査電子顕微鏡(SEM)画像を示す写真である。
図5】それぞれの実施例と比較例によるドネペジル・マイクロスフェアの形態(morphology)を確認するための走査電子顕微鏡(SEM)画像を示す写真である。
図6】それぞれの実施例と比較例によるドネペジル・マイクロスフェアの形態(morphology)を確認するための走査電子顕微鏡(SEM)画像を示す写真である。
図7】それぞれの実施例と比較例によるドネペジル・マイクロスフェアの形態(morphology)を確認するための走査電子顕微鏡(SEM)画像を示す写真である。
図8】それぞれの実施例と比較例によるドネペジル・マイクロスフェアの形態(morphology)を確認するための走査電子顕微鏡(SEM)画像を示す写真である。
図9】それぞれの実施例と比較例によるドネペジル・マイクロスフェアの形態(morphology)を確認するための走査電子顕微鏡(SEM)画像を示す写真である。
図10】それぞれの実施例と比較例によるドネペジル・マイクロスフェアの形態(morphology)を確認するための走査電子顕微鏡(SEM)画像を示す写真である。
図11】それぞれの実施例と比較例によるドネペジル・マイクロスフェアの形態(morphology)を確認するための走査電子顕微鏡(SEM)画像を示す写真である。
図12】それぞれの実施例と比較例によるドネペジル・マイクロスフェアの形態(morphology)を確認するための走査電子顕微鏡(SEM)画像を示す写真である。
図13】比較例1において製造されたマイクロスフェアの表面を拡大した走査電子顕微鏡(SEM)画像を示す写真である。
図14】実施例1において製造されたマイクロスフェアの表面を拡大した走査電子顕微鏡(SEM)画像を示す写真である。
図15】実施例1、比較例1、比較例2、比較例2-1に従い製造されたマイクロスフェアをスプラーグドーリー(SD)ラットに投与した後、24時間の間に得られた血中濃度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の理解への一助となるために実施例を挙げて詳述する。しかしながら、下記の実施例は、単に本発明の内容を例示するものに過ぎず、本発明の範囲が下記の実施例によって限定されることはない。本発明の実施例は、当業界において平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【実施例
【0028】
実施例1:ポリラクチド高分子をNaCl 1%(w/v)連続相に添加してマイクロスフェアを製造
ドネペジル(ニューランド・ラボラトリーズ社製、インド)2g(マイクロスフェアのうち、ローディングされる薬物ローディング量(以下、「薬物ローディング量」とのみ表わす)は40%)および生分解性高分子であるポリD,L-ラクチド(Resomer R 203H;エボニック社製、ドイツ)3gをジクロロメタン(大井化金株式会社製、大韓民国)9gに添加しかつ攪拌して完全に溶解させて、分散相である高分子溶液を製造した。なお、ポリビニルアルコール6.25gとNaCl 12.5gを水1.25Lに溶解させて連続相を製造した。
【0029】
二重ジャケットビーカーに連続相を仕込み、恒温循環水槽を用いて10℃以下の温度を保持させた後、分散相(すなわち、含ドネペジル高分子溶液)を連続相(すなわち、ポリビニルアルコールおよびNaCl水溶液)に仕込みながら高速にて攪拌してエマルジョンを形成した。
【0030】
次いで、有機溶媒を除去し、固形化されたマイクロスフェアを得るために、47℃の温度において2時間かけて有機溶媒を揮発させ、1時間かけて10℃まで徐々に冷却させた。硬化されたマイクロスフェアを注射用水にて数回洗浄した後、ふるい網を用いてウェットろ過し、凍結乾燥させてドネペジルが含有されたマイクロスフェアを最終的に得た。
【0031】
実施例1-1:ポリラクチド高分子をNaCl 1%(w/v)連続相に添加してマイクロスフェアを製造
ドネペジル(ニューランド・ラボラトリーズ社製、インド)2.25g(薬物ローディング量45%)および生分解性高分子であるポリD,L-ラクチド(Resomer R 203H;エボニック社製、ドイツ)2.75gをジクロロメタン(大井化金株式会社製、大韓民国)8.25gに添加しかつ攪拌して完全に溶解させて、分散相である高分子溶液を製造した。なお、ポリビニルアルコール6.25gとNaCl 12.5gを水1.25Lに溶解させてNaCl1%(w/v)連続相を製造した。残りの製造方法は、実施例1の方法と同様にして、マイクロスフェアを製造した。
【0032】
実施例2:ポリラクチド高分子をNaCl 5%(w/v)連続相に添加してマイクロスフェアを製造
連続相の製造に際して、NaClを5%(w/v)になるように添加するということを除いては、残りの製造方法は、実施例1の方法と同様にして、マイクロスフェアを製造した。
【0033】
実施例2-1:ポリラクチド高分子をNaCl 10%(w/v)連続相に添加してマイクロスフェアを製造
連続相の製造に際して、NaClを10%(w/v)になるように添加するということを除いては、残りの製造方法は、実施例1の方法と同様にして、マイクロスフェアを製造した。
【0034】
実施例3:ポリラクチド高分子をKCl 1%(w/v)連続相に添加してマイクロスフェアを製造
連続相の製造に際して、NaClの代わりに、KClを1%(w/v)になるように添加するということを除いては、残りの製造方法は、実施例1の方法と同様にして、マイクロスフェアを製造した。
【0035】
実施例3-1:ポリラクチド高分子をKCl 5%(w/v)連続相に添加してマイクロスフェアを製造
連続相の製造に際して、NaClの代わりに、KClを5%(w/v)になるように添加するということを除いては、残りの製造方法は、実施例1の方法と同様にして、マイクロスフェアを製造した。
【0036】
実施例4:ポリ(D,L-ラクチド-CO-グリコリド)高分子をNaCl 5%(w/v)連続相に添加してマイクロスフェアを製造
ドネペジル(ニューランド・ラボラトリーズ社製、インド)2g(薬物ローディング量40%)および生分解性高分子であるPLGA(ポリ(D,L-ラクチド-CO-グリコリド);Resomer RG 753 H;エボニック社製、ドイツ)3gをジクロロメタン(大井化金株式会社製、大韓民国)9gに添加しかつ攪拌して完全に溶解させて、分散相である高分子溶液を製造した。残りの製造方法は、実施例1の方法と同様にするが、ただ、連続相の製造に際して、NaClを5重量%になるように添加して、マイクロスフェアを製造した。
【0037】
比較例1:ポリラクチド高分子を塩無添加の連続相に添加してマイクロスフェアを製造
ドネペジル(ニューランド・ラボラトリーズ社製、インド)2g(薬物ローディング量40%)および生分解性高分子であるポリD,L-ラクチド(Resomer R 203 H;エボニック社製、ドイツ)3gをジクロロメタン(大井化金株式会社製、大韓民国)9gに添加しかつ攪拌して完全に溶解させて、分散相である高分子溶液を製造した。なお、ポリビニルアルコール6.25gを水1.25Lに溶解させて連続相を製造した(NaClやKClなどの塩は添加しなかった。)。
【0038】
二重ジャケットビーカーに連続相を仕込み、恒温循環水槽を用いて10℃以下の温度に保持させた後、分散相(すなわち、含ドネペジル高分子溶液)を連続相(すなわち、ポリビニルアルコール水溶液)に仕込みながら高速にて攪拌してエマルジョンを形成した。
【0039】
次いで、有機溶媒を除去し、固形化されたマイクロスフェアを得るために、47℃の温度において2時間かけて有機溶媒を揮発させ、1時間かけて10℃まで徐々に冷却させた。硬化されたマイクロスフェアを注射用水にて数回洗浄した後、ふるい網を用いてウェットろ過し、凍結乾燥させてドネペジルが含有されたマイクロスフェアを最終的に得た。
【0040】
比較例1-1:ポリラクチド高分子を塩無添加の連続相に添加してマイクロスフェアを製造
ドネペジル(ニューランド・ラボラトリーズ社製、インド)2.25g(薬物ローディング量45%)および生分解性高分子であるポリD,L-ラクチド(Resomer R 203 H;エボニック社製、ドイツ)2.75gをジクロロメタン(大井化金株式会社製、大韓民国)8.25gに添加しかつ攪拌して完全に溶解させて、分散相である高分子溶液を製造した。残りの製造方法は、比較例1の方法と同様にして、マイクロスフェアを製造した。
【0041】
比較例2:塩無添加の連続相を用いてマイクロスフェアを製造した後、EtOH水溶液にて洗浄
ドネペジル(ニューランド・ラボラトリーズ社製、インド)2gおよび生分解性高分子であるポリD,L-ラクチド(Resomer R 203 H;エボニック社製、ドイツ)3gをジクロロメタン(大井化金株式会社製、大韓民国)9gに添加しかつ攪拌して完全に溶解させて、分散相である高分子溶液を製造した。なお、ポリビニルアルコール6.25gを水1.25Lに溶解させて連続相を製造した(NaClやKClなどの塩は添加しなかった。)。
【0042】
二重ジャケットに連続相を仕込み、恒温循環水槽を用いて10℃以下の温度に保持させた後、分散相(すなわち、含ドネペジル高分子溶液)を連続相(すなわち、ポリビニルアルコール水溶液)に仕込みながら高速にて攪拌してエマルジョンを形成した。
【0043】
次いで、有機溶媒を除去し、固形化されたマイクロスフェアを得るために、47℃の温度において2時間かけて有機溶媒を揮発させ、1時間かけて10℃まで徐々に冷却させた。硬化されたマイクロスフェアは注射用水にて数回洗浄した後、ふるい網を用いて1次的にウェットろ過して、1次的にマイクロスフェアを得た。
【0044】
前記1次的に得たマイクロスフェアを10℃において20% EtOH水溶液にて1時間かけて洗浄した後、ふるい網を用いて再びウェットろ過し、凍結乾燥させてドネペジルが含有されたマイクロスフェアを最終的に得た。
【0045】
比較例2-1:連続相に塩を添加しなかったマイクロスフェアを製造した後、Tween水溶液にて洗浄
ドネペジル・マイクロスフェアを1次的に得るまで比較例2の方法と同様にした。
【0046】
次いで、前記1次的に得られたマイクロスフェアを10℃において3% Tween 20水溶液にて1時間かけて洗浄した後、ふるい網を用いて再びウェットろ過した後、凍結乾燥させてドネペジルが含有されたマイクロスフェアを最終的に得た。
【0047】
比較例3:ポリ(D,L-ラクチド-CO-グリコリド)高分子を塩無添加の連続相に添加してマイクロスフェアを製造
ドネペジル(ニューランド・ラボラトリーズ社製、インド)2g(理論薬物ローディング量40%)および生分解性高分子であるポリ(D,L-ラクチド-CO-グリコリド)(Resomer RG 753 H;エボニック社製、ドイツ)3gをジクロロメタン(大井化金株式会社製、大韓民国)9gに添加しかつ攪拌して完全に溶解させて、分散相である高分子溶液を製造した。なお、ポリビニルアルコール6.25gを水1.25Lに溶解させて連続相を製造した(NaClやKClなどの塩は含んでいない。)。
【0048】
二重ジャケットビーカーに連続相を仕込み、恒温循環水槽を用いて10℃以下の温度に保持させた後、分散相(すなわち、含ドネペジル高分子溶液)を前記ポリビニルアルコール水溶液(連続相)に仕込みながら高速にて攪拌してエマルジョンを形成した。
【0049】
次いで、有機溶媒を除去し、固形化されたマイクロスフェアを得るために、47℃の温度において2時間かけて有機溶媒を揮発させ、1時間かけて10℃まで徐々に冷却させた。硬化されたマイクロスフェアは注射用水にて数回洗浄した後、ふるい網を用いてウェットろ過し、凍結乾燥させてドネペジルが含有されたマイクロスフェアを最終的に得た。
【0050】
実験例1:走査電子顕微鏡(SEM)を用いたマイクロスフェア形態(morphology)の観察
実施例および比較例において得た各マイクロスフェア約20mgをカーボンテープを用いてアルミニウムスタブ(stub)に固定し、真空度0.1torrおよび高電圧(10kV)の条件下で3分間白金コーティングを施した後、走査電子顕微鏡(SEM)(装備名:SEC-SNE 4500M Plus A、大韓民国)本体(SEMステージ)に取り付け、画像解析プログラム(mini-SEM)を用いてマイクロスフェアの表面の形態を観察した。
【0051】
図1から図14は、それぞれ実施例1、実施例1-1、実施例2、実施例2-1、実施例3、実施例3-1、実施例4、比較例1、比較例1-1、比較例2、比較例2-1、比較例3において製造したマイクロスフェアの走査電子顕微鏡(SEM)画像である。
【0052】
図1乃至図7から確認できるように、実施例において製造されたマイクロスフェアは、ほとんどその周辺部に薬物結晶が見られなかった。なお、図10および図11から確認できるように、既存の薬物結晶の除去工程(すなわち、エタノール洗浄工程または界面活性剤洗浄工程)を適用した比較例2と比較例2-1に従い製造されたマイクロスフェアもまた、周辺部に薬物結晶が見られなかった。
【0053】
しかしながら、図8図9および図12から確認できるように、比較例1、比較例1-1、比較例3に従い製造されたマイクロスフェアの周辺部には多量の薬物結晶が見られた。
【0054】
図13から確認できるように、比較例1において製造されたマイクロスフェアは表面に気孔が形成されているということを観察することができるものの、図14から確認できるように、本発明に従い連続相に塩を添加して製造した実施例1のマイクロスフェアは、表面に気孔が形成されなかった。
【0055】
実験例2:マイクロスフェアの表面の薬物結晶の除去
走査電子顕微鏡(SEM)の撮影画像から薬物結晶の存否を大まかに確認することができたが、実際にマイクロスフェアの製造に際してマイクロスフェア内に封じ込められずに外部に生成される薬物結晶の量を定量的に確認するために、各実施例および比較例1、比較例1-1、比較例3において製造したマイクロスフェアを20% EtOH水溶液にて10℃において1時間かけて洗浄した後に凍結乾燥させて、マイクロスフェアの表面と周辺部の薬物結晶を除去した。
【0056】
実験例3:マイクロスフェア内のドネペジルの実際の含有量、封じ込め率およびマイクロスフェアの外部に存在する薬物結晶の量の測定
前記実施例1~4および比較例1~3において製造したそれぞれのマイクロスフェア100mgをアセトニトリルに完全に溶かした後、移動相にて希釈した。希釈された溶液20μLを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に注入して検出波長318nmにおいて測定した。
【0057】
また、前記実施例1~4および比較例1、比較例1-1、比較例3において製造し、上記の実験例2においてエタノール水溶液にて洗浄したそれぞれのマイクロスフェア100mgをアセトニトリルに完全に溶かした後、移動相にて希釈した。希釈された溶液20μLを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に注入して検出波長318nmにおいて測定した。
【0058】
カラム:Luna フェニルへキシル、C18 5μm、4.6X250mm
移動相:pH 2.0テトラヒドロフラン、トリエチルアミン溶液(溶液A)とメタノールテトラヒドロフラン溶液(溶液B)との3:1混合溶液
【0059】
各測定された薬物の封じ込め率(%)、エタノール洗浄後のマイクロスフェア内への薬物の封じ込め率を表1に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
<上記の表において用いられた用語の説明>
理論薬物ローディング量(%)=マイクロスフェアの製造に際して投入された薬物の量/(マイクロスフェアの製造に際して投入された薬物の量+マイクロスフェアの製造に際して投入された高分子の量)×100%
【0062】
測定された薬物の封じ込め率(%)A=比較例および実施例において製造された直後における、マイクロスフェア100mg当たりに含有されている実際の薬物の測定量(mg)/(マイクロスフェア100mg×理論薬物ローディング量(%))×100%
【0063】
エタノール洗浄後の薬物の封じ込め率(%)B=実験例2において洗浄した後、マイクロスフェア100mg当たりに含有されている実際の薬物の測定量(mg)/(マイクロスフェア100mg×理論薬物ローディング量(%))×100%
【0064】
マイクロスフェアの外部に存在する薬物結晶の計算された量(%)=A-B
【0065】
比較例1と比較例1-1から確認できるように、さらにエタノールや界面活性剤にて洗浄する工程を適用せずに製造したマイクロスフェアは、その外部に存在する薬物結晶量が2%を超えていた。
【0066】
しかしながら、連続相に塩を添加して製造した実施例の場合、マイクロスフェアの外部に存在すると確認された薬物結晶の量は極く少量であった。
【0067】
したがって、連続相にNaClなどの塩を添加してマイクロスフェアを製造する場合、マイクロスフェアの外部に存在し得る薬物結晶の量を最小化させることができ、これにより、薬物のマイクロスフェア内への実際の封じ込め率を最大化させることができる。
【0068】
実験例4:マイクロスフェアの試験管内(In-vitro)での初期放出試験
実施例および比較例において製造したマイクロスフェア10mgをそれぞれpH 7.4 HEPES(ヒドロキシエチルピペラジンエタンスルホン酸)溶液100mLに仕込み、37.0℃に保たれる恒温震盪水槽に仕込んだ後、24時間が経ってから上澄み液を取って0.45μmシリンジフィルターにてろ過した。
【0069】
マイクロスフェアから放出されたドネペジルの1日における初期溶出量を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて測定した。このときに用いられたカラムは、XTerra Shield RP18 column 5μm、4.6×150mmであり、注入量は20μlであり、検出波長は271nmであった。なお、移動相としては、pH 5.0リン酸緩衝液、アセトニトリル溶液(リン酸緩衝液:アセトニトリル=60:40)を用いた。
【0070】
次の表2は、各実施例と比較例によるドネペジル・マイクロスフェアの1日溶出率を示すものである。
【0071】
【表2】
【0072】
表2から明らかなように、実施例1(連続相にNaCl 1%を添加)と実施例2(連続相にNaCl 5%を添加)は、比較例1(連続相にNaClを添加せず)と比べたときに相対的に低い溶出率を示している。
【0073】
実験例3のように、マイクロスフェアの外部に存在する薬物結晶の量が少なければ少ないほど、1日溶出率が低かった。
【0074】
実施例3および実施例3-1から明らかなように、KClを用いる場合、NaClと同等の効果を奏するということを確認することができた。
【0075】
また、分散相の高分子がPLGA(Resomer RG 753 H)である場合にも、実施例4のマイクロスフェアの初期の溶出率が比較例3の初期の溶出率よりも低かった。
【0076】
実験例5:SDラットを用いたマイクロスフェア薬物の動態試験
連続相に塩を添加して製造したマイクロスフェアの初期放出の抑制効果を確認するために、ラットの頸背部に皮下投与した後、血中ドネペジルの濃度を測定した。
【0077】
実施例1、比較例1、比較例2および比較例2-1において製造されたマイクロスフェアを対象として、ラット1匹当たりのマイクロスフェア内へのドネペジルの投与容量が25.2mg/kgになるようにマイクロスフェアを秤量して、0.3mL懸濁液に分散させた後、SDラットに皮下注射した。
【0078】
一定の時間おきにラットの頸静脈から0.3mLの血液を採取して氷冷状態に保ち、遠心分離して100μLの血漿を分離した。液体クロマトグラフィー質量分析法(LC/MS/MS)を用いて、分離された血漿中のドネペジルの濃度を分析した。
【0079】
測定の結果を図15に示す。
【0080】
図15に示すように、エタノールまたは界面活性剤にて洗浄する工程を適用しなかった比較例1のマイクロスフェアは、Cmaxが220.5ng/mLと最も高かったものの、エタノールにて洗浄した比較例2のマイクロスフェアおよび界面活性剤にて洗浄した比較例2-1のマイクロスフェアは洗浄によって薬物結晶が除去されるため、Cmaxがそれぞれ141.03ng/mLおよび90.2ng/mLまで低くなったということを確認することができた。
【0081】
連続相にNaClを1%の含量にて添加して製造した実施例1のマイクロスフェアは、マイクロスフェアの周りの薬物結晶が除去され、かつ、表面気孔もまた除去されるので、Cmaxが58.9ng/mLと最も低かった。すなわち、初期に過量の薬物が放出されてしまうことを防止することができた。この結果は、試験管内(In vitro)での結果とほぼ同様であった。
【0082】
本発明に従い連続相にNaClを添加してマイクロスフェアを製造する場合、マイクロスフェアの周りに薬物結晶が形成されることが抑制されるので、別途に薬物結晶を除去する工程をさらに導入しなくても済み、しかも、マイクロスフェア内への薬物の封じ込め率を向上させることができる。なお、マイクロスフェアの周りに薬物結晶が形成されないので、マイクロスフェアを体内に注射したときに、薬物の初期放出を抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明によれば、マイクロスフェアの周りに薬物結晶が形成されないので、マイクロスフェアを体内に注射したときに、薬物の初期放出を抑制することができる。なお、薬物が持続的に放出されるので、1回の注射によりかなり長い時間の間に薬効が発揮されることが可能になる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【国際調査報告】