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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-20
(54)【発明の名称】作動シリンダのピストン・ユニット
(51)【国際特許分類】
   F16J 1/14 20060101AFI20230113BHJP
   F16J 7/00 20060101ALI20230113BHJP
   B23K 26/21 20140101ALI20230113BHJP
【FI】
F16J1/14
F16J7/00
B23K26/21 N
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022526521
(86)(22)【出願日】2020-11-06
(85)【翻訳文提出日】2022-06-27
(86)【国際出願番号】 DE2020000268
(87)【国際公開番号】W WO2021089070
(87)【国際公開日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】202019004570.8
(32)【優先日】2019-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522178522
【氏名又は名称】ビューラハ エンジニアリング インターナショナル ベー.フェー.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビューター、ヨーゼフ
【テーマコード(参考)】
3J044
4E168
【Fターム(参考)】
3J044AA01
3J044AA18
3J044BA03
3J044BB28
3J044BC17
3J044CA24
3J044DA10
3J044EA10
4E168BA14
4E168BA25
4E168BA83
(57)【要約】
本発明は、ピストン1及びピストン・ロッド2を有する作動シリンダのピストン・ユニットであって、ピストン1が、ピストン・ロッド2が受容される、軸方向せん孔3を有し、ピストン・ロッド2及びピストン1が、周方向レーザ・リング溶接4によって互いに一体的に接続され、レーザ・リング溶接4が、圧力密封平面を形成する、作動シリンダのピストン・ユニットに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動シリンダのピストン・ユニットであって、
ピストン(1)及びピストン・ロッド(2)を備え、
前記ピストンが、前記ピストン・ロッド(2)が受容される、軸方向せん孔(3)を有し、
前記ピストン・ロッド(2)及び前記ピストン(3)が、周方向レーザ・リング溶接継目(4)によって、マテリアル・ボンディング方式で接続され、
前記レーザ・リング溶接継目(4)が、圧力媒体密封平面を形成する、作動シリンダのピストン・ユニット。
【請求項2】
前記レーザ・リング溶接継目(4)が、前面側の底側面(5)に配置され、前記ピストン・ロッド(2)の長手方向主軸(7)に平行に配置される、溶接継目中心軸(6)を有することを特徴とする、
請求項1に記載の作動シリンダのピストン・ユニット。
【請求項3】
前記レーザ・リング溶接継目(4)が、ピストン・ロッド側のピストン・ロッド側側面(8)に配置され、前記溶接継目中心軸(6)が、2~15度の溶接継目傾斜角アルファで、前記ピストン・ロッド(2)の前記長手方向主軸(7)に対して傾斜して配置されることを特徴とする、
請求項1又は2に記載の作動シリンダのピストン・ユニット。
【請求項4】
第1のレーザ・リング溶接継目(4.1)及び第2のレーザ・リング溶接継目(4.2)を有し、
前記第1のレーザ・リング溶接継目(4.1)が、前面側の前記底側面に配置され、その溶接中心軸(6)が、前記ピストン・ロッド(2)の長手方向主軸(7)に平行であり、前記第2のレーザ・リング溶接継目(4.2)が、ピストン・ロッド側の前記ピストン・ロッド側側面(8)に配置され、その溶接継目中心軸(6)が、前記長手方向主軸(7)に対して2~15度の傾斜角アルファで傾斜して配置されることを特徴とする、
請求項1から3までのいずれか一項に記載の作動シリンダのピストン・ユニット。
【請求項5】
前記ピストン・ユニットが、同調シリンダのピストン・ユニットとして設計され、
前記ピストン(1)が、第1のピストン・ロッド側側面(8.1)及び第2のピストン・ロッド側側面(8.2)を有し、
前記ピストン・ユニットが、第1のレーザ・リング溶接継目(4.1)及び第2のレーザ・リング溶接継目(4.2)を有し、
前記レーザ・リング溶接継目(4.1、4.2)が、互いに軸方向に対向して配置され、
前記第1のレーザ・リング溶接継目(4.1)が、前記第1のピストン・ロッド側側面(8.1)に配置され、前記第2のレーザ・リング溶接継目(4.2)が、前記第2のピストン・ロッド側側面(8.2)に配置され、それぞれがピストン・ロッド側であり、前記レーザ・リング溶接継目(4.1、4.2)の各溶接継目中心軸(6)が、前記長手方向主軸(7)に対して2~15度の傾斜角アルファで傾斜して配置されることを特徴とする、
請求項1から4までのいずれか一項に記載の作動シリンダのピストン・ユニット。
【請求項6】
前記ピストン・ロッド(2)が、クロムめっき外側面を有することを特徴とする、
請求項1から5までのいずれか一項に記載の作動シリンダのピストン・ユニット。
【請求項7】
前記外側面が、クロムめっきを施されていない、断面が縮小した環状部(9)を有し、
環状補填層(10)が、前記ピストン(1)と前記断面が縮小した環状部(9)との間に配置され、
前記ピストン・ロッド(2)が、半径方向内側レーザ・リング溶接継目(11)によって前記環状補填層(10)へ接続され、前記環状補填層(10)が、半径方向外側レーザ・リング溶接継目(12)によって前記ピストン(1)へ接続されることを特徴とする、
請求項6に記載の作動シリンダのピストン・ユニット。
【請求項8】
前記ピストン(1)が、硬化表面を有し、
前記ピストン・ロッド(2)が、前面軸方向接触面(13)を有し、
前記ピストン(1)が、ピストン・ロッド側の扁平円筒形機械成形部(14)を有し、前記扁平円筒形機械成形部(14)の前面が、前記ピストン・ロッド側側面の軸方向合せ接触面(15)を形成し、
前記合せ接触面(15)が、表面除去を特徴とし、硬化表面が、前記表面除去によって取り除かれ、
前記レーザ・リング溶接継目(4)が、前記長手方向主軸(7)に対して横方向に配置され、マテリアル・ボンディング方式で前記接触面(13)と前記合せ接触面(15)とを接続することを特徴とする、
請求項1から7までのいずれか一項に記載の作動シリンダのピストン・ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピストン及びピストン・ロッドから形成される、作動シリンダのピストン・ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
ピストンをピストン・ロッドへ連結するための様々な解決手段が、先行技術から公知である。ポジティブ・ロッキング、フォース・ロッキング、及びマテリアル・ボンディング連結の3種が公知である。ポジティブ・ロッキング及びフォース・ロッキング連結には、一般的に、ピストンとピストン・ロッドとの連結が弛むのを防止するために追加的措置が必要であるという問題がある。さらに、ポジティブ・ロッキング連結には、通常、ピストン・ロッドにおいて作成される溝やねじ山などの機械成形された箇所により、ピストン・ロッドが、十分な安定性を得るために完全に形成されるか、又は少なくとも大きな肉厚を有さなければならないという欠点がある。加えて、切欠効果が欠点となり得る。さらに、ピストン・ロッド及びピストンの通常の機械加工は、比較的に、大量の材料を要し、費用が掛かる。さらに、バックラッシュのないポジティブ・ロッキング連結を提供することは困難である。
【0003】
さらに、マテリアル・ボンディングによってピストンとピストン・ロッドとを互いに接続することが、主として公知である。この方法によって弛みが防止され得るが、それには他の欠点がある。この連結が接着によって行われる限り、接続の強度が比較的低く、破損に対する信頼性が比較的低いという欠点がある。したがって、接着は、特定の用途においてのみ可能である。
【0004】
特に、溶接継手が原理的には公知であるが、これらは高度に熟練した人材を雇用する必要があり、製造が困難である。特に、連結相手に掛かる熱応力という欠点があり、それにより、特にピストン・ロッドの材料構造の変化が引き起こされ、したがって、非常に肉厚なピストン・ロッド又は剛性材料から製作されるピストン・ロッドが必要となり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、ピストンとピストン・ロッドとを連結することによって形成され、少ない費用で製造することができ、非常に高レベルの動作安全性を保証する、作動シリンダのピストン・ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本課題は、請求項1に規定される特徴によって解決される。好ましいさらなる実施例が、従属請求項からもたらされる。
【0007】
本発明によると、作動シリンダのピストン・ユニットは、ピストン及びピストン・ロッドを備える。特に好ましい実施例では、ピストン及びピストン・ロッドは、鋼材から製作される。
【0008】
本発明によるピストン・ユニットは、特に、差動シリンダ、同調シリンダ、又はさらに例えば空気圧シリンダ又は牽引シリンダなどの、他の種類の作動シリンダのピストン・ユニットであり得る。特に蓄圧シリンダ、油圧緩衝器、又はガス・スプリング・シリンダのピストン・ユニットが、それらがピストン・ロッドへ連結されるピストンを備える場合に、同様に含まれる。
【0009】
本発明によると、ピストンは、ピストン・ロッドが受容される、軸方向せん孔を有する。ピストンにおける軸方向せん孔は、ピストン・ロッドがそれに受容され得るように設計される。軸方向せん孔は、好ましくは、円形断面を有する。
【0010】
本発明によると、ピストン・ロッド及びピストンは、周方向レーザ・リング溶接継目によって、マテリアル・ボンディング(一体的に接続される)方式で接続される。したがって、レーザ・リング溶接継目は、ピストン及びピストン・ロッドの対向する接触面に配置され、ピストン・ロッドの円筒形外側面及びピストンの円筒形内側面は、一般的に、互いに面する。しかしながら、接触面の他の設計もまた可能である。
【0011】
レーザ・リング溶接継目は、特に、レーザ溶接が有利に非常に狭い、先細りした、実質的にV形の溶接継目を作ることで特徴付けられる。レーザ溶接継目の横フランクは、好ましくは15度未満、及び特に好ましい設計では10度未満の鋭角な溶接継目角度を形成する。
【0012】
レーザ・リング溶接継目は、本発明による圧力密封平面(pressure-tight sealing plane)を形成する。レーザ・リング溶接継目は、ピストンとピストン・ロッドとの間の接触面に沿って連続して延びる。それは、したがって、例えば封止などの追加の手段を必要とせずに圧力媒体の通過を防ぐ、密閉マテリアル・ボンディング接続を形成する。
【0013】
本発明によるピストン・ユニットにより、特に、先行技術を超える以下の著しい利点を有する、解決手段が見出された。
【0014】
このようにしてもたらされるピストン・ユニットの第1の利点は、その高い精度及び同心度である。溶接のために供給される必要がある、溶接継目の長さ当たりエネルギーが、ごく少量(単位長当たり低エネルギー入力)であるので、ピストン・ロッドの歪みにつながり得る熱応力が、実質的により低くなる。
【0015】
さらなる利点は、断面を弱める機械加工によって取り除かれる材料が必要でなく、特にピストン・ロッドのために必要でないことである。この利点は、機械的荷重容量を増加させ、同時に材料消費を減らす。
【0016】
さらに、ピストン・ロッドを所定の長さへ切ることを除いて、ピストン・ロッドを機械加工する必要がほとんどない。これは、有利なことに、機械加工技術、工具費、時間、及びエネルギーにおける支出を減らす。
【0017】
特に重要な利点は、高強度である。レーザ・リング溶接継目は、小さい幅を有するが、それにもかかわらず、大きい溶接継目深さを有する。大きい溶接継目深さにより、大きい面積が溶接され、その結果、特に高い力が同じ機械的応力でレーザ・リング溶接継目において伝達され得るか、又はその逆に、低い機械的応力が同じ力でレーザ・リング溶接継目において生じる。
【0018】
有利なことに、これはまた、低い機械的張力は、荷重が生じる前に特に高い予備容量があることを意味するので、特に高レベルの動作安全性を達成する。特に、連結は、通常は油圧作動シリンダにおいて生じる、頻繁に荷重が変動する動的荷重を受ける場合に、長期にわたって信頼性が高く、安定である。
【0019】
比較的に大きい溶接継目深さに加えて、溶接継目の幅は、有利に小さい。小さい溶接継目幅により、連結相手の材料は、表面に近い熱応力のみを受け、それは、このようにして連結相手の材料が弱められる、又は熱で歪められることがほとんどないので、ピストン・ロッドに関して特に有利である。
【0020】
全体として、レーザ・リング溶接はまた、体積が小さく、その結果、全体的入熱が低い。より低い入熱は、そうでなければさらなる作業工程で再び取り除かれる必要がある、材料のスケーリングがないことを意味する。
【0021】
特に、説明される利点の驚くほど達成可能な組合せにより、ピストン・ロッドは、特に材料を節減して設計され得、したがって、原料資源が保護され得る。
【0022】
さらに、封止の追加手段が、ピストンとピストン・ロッドとの間に設けられる必要がないことは有利である。封止リングと比較して、ピストンとピストン・ロッドとの間にレーザ・リング溶接継目によって作られた圧力密封平面は、摩耗しにくい。
【0023】
製造技術に関して、レーザ溶接の高速性という利点もまたあり、低いエネルギー入力により、さらなる加工が開始され得る前の、冷却に必要な時間が特に短い。
【0024】
別の製造における利点は、ガイド又はエラストマー封止などの熱に弱い構成要素が、ピストンをピストン・ロッドへレーザ溶接する前に、既にピストンに取り付けられ得ることである。
【0025】
有利なさらなる展開によると、レーザ・リング溶接継目は、前面の底側面に配置され、溶接中心軸は、ピストン・ロッドの長手方向主軸に平行に延びる。溶接継目中心軸は、ピストン・ロッドの長手方向主軸に平行に、ピストンとピストン・ロッドとの間の接触面に沿って配置される。このさらなる展開では、溶接継目中心軸は、連結相手の接触面の経路と一致する。レーザが接触面に沿って正確に進む場合に、ピストン及びピストン・ロッドは、実質的に同じ熱負荷を受け、また、同じ材質で、溶接継目中心軸に沿って対称な溶接継目に溶融される。
【0026】
したがって、このさらなる展開では、接触面の特に大面積の接続は、有利なことに、連結相手へ同時に加えられる熱負荷が低く、達成される。
【0027】
特に、このさらなる展開は、有利なことに、溶接継目の中心軸に沿って、接続される接触面にわたってレーザの移動の自由度が十分にある場合で、これが特にピストンの底側面に適用されるような場合に、実行可能である。
【0028】
さらに有利なさらなる展開によると、レーザ・リング溶接継目は、ピストン・ロッド側のピストン・ロッド側側面に配置され、溶接継目中心軸は、2から15度までの範囲の傾斜角アルファで長手方向主軸に対して傾斜して配置される。ピストン・ロッド側側面を溶接することが可能であるためには、レーザは、それに対して傾斜した位置に設置されなければならない。レーザの進入経路とも一致する溶接継目の中心軸と長手方向主軸とは、傾斜角アルファを成す。このさらなる展開では、傾斜角アルファは、2~15度の間、好ましくは4~8度、及び特に好ましい設計では5度である。ピストンとピストン・ロッドとの間のより強固な接続を達成するために、両連結相手間の接触面に沿って、可能な限り大きい溶融面積を得ることが意図される。レーザ・リング溶接継目の円錐形断面により、十分な溶融が、その縁部の領域が接触面に沿って延びる場合に、達成されることが見出された。したがって、傾斜角は、好ましくは、レーザ・リング溶接継目の溶接継目角度の半分以下である。
【0029】
このさらなる展開の利点は、特にピストン・ロッドに沿ったレーザの移動の自由度がより少ない状態でも、有効な大きい溶接継目深さを有するレーザ・リング溶接継目が、もたらされ得ることである。
【0030】
有利なさらなる展開によると、ピストン・ユニットは、第1及び第2のレーザ・リング溶接継目を有する。
【0031】
この有利なさらなる展開によると、第1のレーザ・リング溶接継目は、前面側の底側面に配置され、その溶接継目中心軸が、ピストン・ロッドの長手方向主軸に平行に延び、第2のレーザ・リング溶接継目は、ピストン・ロッド側のピストン・ロッド側側面に配置され、その溶接継目中心軸が、長手方向主軸に対して2~15度の傾斜角アルファで傾斜される。第2のレーザ・リング溶接継目の傾斜角アルファは、好ましくは、4から8度までの範囲であり、特に好ましい設計では、それは5度である。
【0032】
このさらなる展開では、前述の両方の有利なさらなる実施例が組み合わされる。
【0033】
有利な実施例では、第1及び第2のレーザ・リング溶接継目の溶接継目深さは、ピストンとピストン・ロッドとの間の全接触面にわたって全体に延び、その結果、ピストンとピストン・ロッドとの間のマテリアル・ボンディング接続は、全接触面を利用する。したがって、連結の最大荷重容量が達成される。
【0034】
両方のレーザ・リング溶接継目が、接触面に沿って部分的にのみ、ピストンとピストン・ロッドとを接続することもまた可能である。このようにして形成された2つのレーザ・リング溶接継目の2つのリング面を介して、軸方向の力の伝達が互いに行われ、連結の特に高い荷重容量もまた、もたらされる。入熱は、連続して溶接された接触面を有する場合より低い。
【0035】
なおさらに有利な展開によると、ピストン・ユニットは、同調シリンダのピストン・ユニットとして設計される。同調シリンダのピストン・ユニットは、ピストンがピストン・ロッドの中心に固定されるように設計される。ピストン・ロッドは、ピストンを通して完全に導入され、両側でそれを軸方向に突出させる。
【0036】
この有利なさらなる展開によると、ピストンは、第1及び第2のピストン・ロッド側側面を有する。同調シリンダの特定の設計により、ピストンは、底側面を有さず、代わりに2つのピストン・ロッド側側面を有する。
【0037】
有利なさらなる展開によると、ピストン・ユニットは、第1及び第2のレーザ・リング溶接継目を有し、レーザ・リング溶接継目は、互いに対向して配置される。ピストンは、2つの周方向レーザ・リング溶接継目によって、ピストン・ロッドへ取り付けられる。
【0038】
この有利なさらなる展開によると、第1及び第2のレーザ・リング溶接継目は各々、1つのピストン・ロッド側側面に配置され、それらの溶接継目中心軸は、長手方向主軸に対して2~15度の傾斜角アルファで傾斜される。ピストン・ロッドがピストンを通して延びるので、両方のレーザ・リング溶接継目は、溶接中心軸が角度αで傾角を付けられて作成される。角度アルファは、2~15度の間、好ましくは4~8度、及び特に好ましい設計では5度である。このように、ピストンとピストン・ロッドとの間の最適な接続が、有利には、このピストン設計により確立される。
【0039】
さらなる有利な展開によると、ピストン・ロッドは、クロムめっき外側面を有する。特殊な荷重のために、ピストン・ロッドは、しばしば、クロムめっき外側面を有して設計される。この場合に、ピストン・ロッドは、クロムめっきロッド材として購入され、所定の長さに切られ、その後、既にクロムめっきを施された表面を有してさらに加工される。
【0040】
ここで、製造上の問題は、実際には、クロムめっき外側面に先行技術による溶接を行えないことである。
【0041】
クロムめっき外側面へのレーザ・リング溶接継目の熱効果によって、クロム層における構造的変化が引き起こされ、その結果、それが、高い粘着性の摩擦が対向する接触面に、すなわち、ピストン・ロッドの円筒形外側面とピストンの円筒形内側面との間に達成されるように、ピストン及びピストン・ロッドの鋼材間の構造を変化させることが見出された。これは、ピストンとピストン・ロッドとの間の、十分に高い軸方向の力の伝達をもたらす。
【0042】
このさらなる展開の特有の利点は、そうでない場合に必要なクロムめっき外側面の除去が省かれ得ることである。
【0043】
別の有利なさらなる展開によると、クロムめっき外側面は、断面が縮小した、クロムめっきを施されていない環状部を有する。この目的のために、クロム層は、機械加工プロセス、好ましくは研削又は旋削によって、環状部において取り除かれる。その断面が、取り除かれたクロム層の厚さだけ少なくとも縮小する、環状部を囲んでピストン・ロッドがある。
【0044】
この有利なさらなる展開によると、環状補填層(annular compensation layer)が、ピストンと断面が縮小した環状部との間に設けられる。補填層は、断面が縮小した、クロムめっきを施されていない環状部とピストン・ロッドの残りの部分との間の直径における差を補い、また、必要な場合にその差を超過し得る。この目的のために、環状補填層は、好ましくは少なくとも1つの成形体からなり、断面が縮小した環状部に挿入され得、ピストンはその上で押され得る。カッティング・リングとして環状補填層を挿入することもまた可能である。
【0045】
この有利なさらなる展開では、ピストン・ロッドは、半径方向内側レーザ・リング溶接継目によって環状補填層へ接続され、環状補填層は、半径方向外側レーザ・リング溶接継目によってピストンへ接続される。この目的のために、環状補填層の材料は、融合が起こり得るように、ピストンの材料に対して、並びにピストン・ロッドのクロムめっき外側面の下の材料に対して調整される。
【0046】
このようにして、クロムめっきなどの追加の表面処理を受ける、ピストン・ユニットの構成要素はまた、有利なことに、溶接され得る。
【0047】
有利なさらなる展開によると、ピストンは表面硬化されている。ピストンの表面は、窒化などの先行技術から公知の方法によって硬化される。表面の材料特性におけるそのような変化は、先行技術による溶接継手を複雑にするか、又はそれを除外する。
【0048】
有利なさらなる展開によると、ピストン・ロッドは、前面に軸方向接触面を有する。好ましくは、これは、ピストン・ロッドの長手方向主軸に直交して配置される平面である。これは、非硬化接触面である。心出しピンが、好ましくは、接触面の中心に配置される。
【0049】
有利なさらなる展開によると、ピストンは、ピストン・ロッド側側面に扁平円筒形機械成形部を有し、前記部分の前面は、ピストン・ロッド側の軸方向合せ接触面を形成する。
【0050】
合せ接触面はまた、好ましくは、長手方向主軸に直交して位置を合わせられ、平面として設計される。
【0051】
扁平円筒形機械成形部の中央に、心出しせん孔が好ましくは設けられ、ピストン・ロッドの心出しピンが係合し、したがって、連結されると互いに対して半径方向にピストン及びピストン・ロッドを固定する。
【0052】
接触面及び合せ接触面は、連結中それらの表面全体にわたって接触する。
【0053】
この有利なさらなる展開によると、合せ接触面は表面除去を特徴とし、硬化表面は、この表面除去によって取り除かれている。合せ接触面の領域において、硬化表面は、好ましくは、基材に到達するまで表面研削によって取り除かれる。
【0054】
この有利なさらなる展開によると、レーザ・リング溶接継目は、長手方向主軸に対して横方向に配置され、マテリアル・ボンディング方式で接触面と合せ接触面とを接続する。
【0055】
このさらなる展開は、特に、マイクロシリンダのピストン・ユニットに関して有利である。ここで、マイクロシリンダは、特に、50mmまでのピストン直径を有する作動シリンダであると理解される。このさらなる展開は、高い製造上の効率性という利点を有し、同時にピストンの十分な荷重容量をもたらす。
【0056】
本発明が、以下の図によってより詳細に、例示的な実施例として説明される。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1】作動シリンダのピストン・ユニット(底側面で溶接された)の図である。
図2】作動シリンダのピストン・ユニット(ピストン・ロッド側側面で溶接された)の図である。
図3】作動シリンダのピストン・ユニット(閉鎖ピストン)の図である。
図4】作動シリンダのピストン・ユニット(両側で溶接された)の図である。
図5】同調シリンダのピストン・ユニット(両側で溶接された)の図である。
図6】作動シリンダのピストン・ユニット(環状補填層を有する)の図である。
図7】硬化ピストン表面を有するピストン・ユニット(分解図)の図である。
図8】硬化ピストン表面を有するピストン・ユニット(溶接された)の図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
図1は、概略断面図において作動シリンダのピストン・ユニットの第1の実施例を示す。ピストン・ユニットは、ピストン1及びピストン・ロッド2を備える。ピストン1は、ピストン・ロッド2が受容される、軸方向せん孔3を有する。それは、底側面5及びピストン・ロッド側側面8を有する。ピストン・ユニットは、マテリアル・ボンディング方式でピストン1とピストン・ロッド2とを接続する、レーザ溶接継目4を有する。レーザ溶接継目4は、底側面5に配置される。レーザ・リング溶接継目4は、レーザ・リング溶接継目4の断面を通して中心に延びる、溶接継目中心軸6を有する。この溶接継目中心軸6は、ピストン・ロッド2の主中心軸7に平行に、ピストン1とピストン・ロッド2との間の対応する接触面に沿って延びる。この実施例では、溶接は、レーザ溶接プロセスによって底側面5から行われる。レーザ溶接プロセスは、溶接継目中心軸6が長手方向主軸7に平行に延び、レーザ発光器の移動の要求される自由度により、底側面で可能である。
【0059】
図2は、ピストン・ロッド側側面で溶接された、ピストン・ユニットの別の実施例を示す。ここで、レーザ・リング溶接継目4は、5度の傾斜角αで傾斜される。他の全ての点で、図2に例示されるピストン・ユニットは、図1に示されたピストン・ユニットと構造において同一である。ピストン・ロッド2により、レーザは、ピストン・ロッド2の長手方向主軸7に対して傾斜角αで傾斜される。したがって、溶接継目中心軸6は、レーザ光線の経路と一致し、図1におけるように主中心軸7に平行でなく、それと傾斜角αを成す。この実施例では、レーザ・リング溶接継目4の縁部領域は、ピストン1とピストン・ロッド2との間の接触面と重なり、したがって、それらの間の接合部を作り出す。
【0060】
図3は、閉鎖ピストンを有するピストン・ユニット1を示す。先のピストン・ユニットと比較して、軸方向せん孔3は、ピストン1を貫通せず、止りせん孔として設計される。ここで、ピストン・ロッド2は、ピストン1を通して完全に導入されない。レーザ・リング溶接継目4は、ピストン・ロッド側側面に、傾角を付けられた溶接継目中心軸6を有して、図2におけるものと同様に配置され、溶接継目中心軸6は、主中心軸7と傾斜角αを成す。傾斜角αは、ここでも5度である。
【0061】
図4に示されるピストン・ユニットは、図1及び図2におけるピストン・ユニットと実質的に対応する。この実施例では、ピストン1のピストン・ロッド2への接続は、第1のレーザ・リング溶接継目4.1及び第2のレーザ・リング溶接継目4.2によって確立される。第1のレーザ・リング溶接継目4.1は、図1のレーザ・リング溶接継目4と対応し、溶接継目中心軸6が長手方向主軸7に平行に延び、溶接が底側面5から行われる。第2のレーザ・リング溶接継目4.2は、図2及び図3のレーザ・リング溶接継目4と対応し、溶接継目中心軸6と長手方向主軸7とが傾斜角αを成す。ここでも、傾斜角αは、5度である。ここで、溶接は、ピストン・ロッド側側面8から行われる。
【0062】
この実施例では、第1のレーザ・リング溶接継目4.1及び第2のレーザ・リング溶接継目4.2は、互いに接触するか、又は重なり、結果として、ピストン1及びピストン・ロッド2の円筒形接触面全体にわたる接合部をもたらす。したがって、連結の最大荷重容量が得られる。
【0063】
図5は、同調シリンダのピストン・ユニットを示す。同調シリンダの特殊な特徴は、それが、貫通するピストン・ロッド2により、底側面5を有さないことである。この理由により、2つの側面は、第1のピストン・ロッド側側面8.1及び第2のピストン・ロッド側側面8.2として定義される。この実施例では、両方のピストン・ロッド側側面8.1、8.2は、同じ設計のものである。ピストン・ユニットの他の実施例と比較して、第1のレーザ・リング溶接継目4.1及び第2のレーザ・リング溶接継目4.2の両方は、長手方向主軸に対して傾斜角αで傾角を付けられる。ここでも、傾斜角αは、5度である。この設計において、第1のレーザ・リング溶接継目4.1は、第1のピストン・ロッド側側面8.1からレーザ溶接され、第2のレーザ・リング溶接継目4.2は、第2のピストン・ロッド側側面8.2からレーザ溶接される。
【0064】
図6は、環状補填層10を有するピストン・ユニットを示す。この実施例では、ピストン・ロッド2の表面は、クロムめっきを施される。
【0065】
環状部9の表面は、断面が縮小した部分が形成される程度まで、旋削によって取り除かれる。明確にするために、断面縮小の度合は、図6において誇張して示される。環状補填層10は、この実施例において分割された鋼製スリーブとして設計され、この断面が縮小した環状部9に挿入される。ピストン1は、環状補填層10の上で押される。ピストン・ロッド2は、半径方向内側レーザ溶接継目11によって環状補填層10へ溶接される。環状補填層10は、クロム層の下のピストン・ロッド2と、及びピストン1と材質的に同等である。ここで、溶接継目中心軸6は、傾斜角αで傾斜される。傾斜角αは、5度である。ピストン1は、半径方向外側レーザ溶接継目12によって環状補填層10へ溶接される。半径方向外側レーザ溶接継目及び半径方向内側レーザ溶接継目11の溶接継目中心軸6は、平行に延びる。
【0066】
図7は、硬化表面16を有する、ピストン1を有するピストン・ユニットを示す。さらに、ピストン1は、ピストン・ロッド側側面8上でピストン1の外面の残りの部分にわたってわずかに突出する、扁平円筒形機械成形部14を有する。硬化表面は、表面研削によって扁平円筒形機械成形部14の領域において、軸方向合せ接触面15から取り除かれる。扁平円筒形機械成形部15の中心には、ピストン・ロッド2の軸方向接触面13の中心における心出しピンと符号する、心出しせん孔がある。このようにして、ピストン1は、ピストン・ロッド2に設置され得、したがって、その両方が、それらの半径方向相対位置で固定される。
【0067】
図8は、完全に組み立てられた図7のピストン・ユニットを示す。ピストン1は、ピストン・ロッド2に軸方向に設置され、その結果、接触面13及び合せ接触面14が接触する。心出しピンは、心出しせん孔と係合する。ピストン1及びピストン・ロッド2は、レーザ・リング溶接継目4によって、対応する接触面13、14に沿って接続される。前述のピストン・ユニットと比較して、溶接継目中心軸6は、長手方向主軸に垂直に延びる。
【符号の説明】
【0068】
1 ピストン
2 ピストン・ロッド
3 軸方向せん孔
4 レーザ・リング溶接継目
4.1 第1のレーザ・リング溶接継目
4.2 第2のレーザ・リング溶接継目
5 底側面
6 溶接継目中心軸
7 長手方向主軸
8 ピストン・ロッド側側面
8.1 第1のピストン・ロッド側側面
8.2 第2のピストン・ロッド側側面
9 断面が縮小した環状部
10 環状補填層
11 半径方向内側レーザ溶接継目
12 半径方向外側レーザ溶接継目
13 軸方向接触面
14 扁平円筒形機械成形部
15 軸方向合せ接触面
16 硬化表面
α 傾斜角アルファ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】