(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-20
(54)【発明の名称】メカノケミカルカルボキシル化された無機充填剤と、セメント及び/又はアスファルトのバインダーと、を含む組成物
(51)【国際特許分類】
C04B 28/02 20060101AFI20230113BHJP
C04B 18/08 20060101ALI20230113BHJP
C04B 18/10 20060101ALI20230113BHJP
C04B 14/10 20060101ALI20230113BHJP
C04B 22/08 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B18/08 Z
C04B18/10 A
C04B14/10
C04B22/08 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022526701
(86)(22)【出願日】2020-11-04
(85)【翻訳文提出日】2022-05-30
(86)【国際出願番号】 CA2020051494
(87)【国際公開番号】W WO2021087606
(87)【国際公開日】2021-05-14
(32)【優先日】2019-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522179976
【氏名又は名称】カーボン アップサイクリング テクノロジーズ インク.
【氏名又は名称原語表記】CARBON UPCYCLING TECHNOLOGIES INC.
【住所又は居所原語表記】9550 100 Street SE Calgary,Alberta T3S 0A2 (CA)
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】シンハ,アポオルヴァ
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112MB01
4G112PA06
4G112PA26
4G112PA27
4G112PB06
(57)【要約】
本発明は、メカノケミカルカルボキシル化された無機充填剤及びバインダーを含む組成物に関し、前記バインダーは、セメント及び/又はアスファルトであり、前記充填剤はメカノケミカルカルボキシル化されたケイ酸塩鉱物から得られる。また本発明は、上記組成物の製造方法にも関する。さらに本発明は、それら組成物からコンクリートを製造する方法、及び、かかる製造方法から得られるコンクリートにも関する。本発明は、さらに、メカノケミカルカルボキシル化された無機充填剤の使用方法、例えば、アスファルト又はセメント中の充填剤としての使用方法にも関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メカノケミカルカルボキシル化された無機充填剤と、セメント、アスファルト及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる1種のバインダーとを含む組成物であって、
前記メカノケミカルカルボキシル化された無機充填剤は、以下の工程
a)ケイ酸塩鉱物を含む固体原料を準備する工程であって、前記固体原料はBET表面積が0.01m
2/g超であり、D50が0.1~5000μmの範囲にある粒状物質である;
b)CO
2を含む酸化性ガスを準備する工程;
c)前記固体原料及び前記酸化性ガスを機械的攪拌装置内に供給する工程;及び
d)前記固体原料の材料を、1atm超の酸化性ガス圧である前記酸化性ガスの存在下、機械的攪拌操作に供し、メカノケミカルカルボキシル化された無機充填剤を得る工程;
を含む方法によって得られ、
前記メカノケミカルカルボキシル化された無機充填剤のCO
2含有量が、(メカノケミカルカルボキシル化された無機充填剤の総重量に対して)1重量%超であり、
前記CO
2含有量は、室温から800℃まで10℃/分で昇温し、その後室温まで15℃/分で降温する温度曲線に従ったTGA-MSにより測定された、120℃以上における質量損失量から決定される、組成物。
【請求項2】
前記固体原料が、輝石、含水ケイ酸マグネシウム、タルク、蛇紋石、かんらん石、フライアッシュ、ボトムアッシュ及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる1種の物質、好ましくはフライアッシュ、を含む、又は、前記1種の物質、好ましくはフライアッシュからなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記固体原料が、フライアッシュ、好ましくはASTM C618(2019)の要件を満たすフライアッシュ、最も好ましくはASTM C618(2019)のクラスCの要件を満たすフライアッシュを含む、又は、それらフライアッシュからなる、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記メカノケミカルカルボキシル化された無機充填剤が、D50が0.5~50μmの範囲、好ましくは1~25μmの範囲、最も好ましくは1~10μmの範囲にある、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記酸性化ガスが、90モル%超のCO
2、好ましくは95モル%超のCO
2を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記工程d)が、
3atm超、好ましくは6atm超の圧力で行われ、
100℃未満、好ましくは60℃未満、より好ましくは30℃未満の温度で行われ、及び/又は、
少なくとも1時間、好ましくは少なくとも4時間、より好ましくは少なくとも8時間行われる、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記工程d)におけるメカノケミカル攪拌操作が、混合、攪拌(低速攪拌若しくは高速攪拌)、せん断(高トルクせん断)、振とう、混練、流動床、又は超音波処理を含み、好ましくは混合、攪拌(低速攪拌若しくは高速攪拌)、せん断(高トルクせん断)又は超音波処理を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記工程d)が、触媒、好ましくは遷移金属酸化物触媒、より好ましくは遷移金属二酸化物触媒、最も好ましくは酸化鉄、酸化コバルト、酸化ルテニウム、酸化チタン及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる遷移金属二酸化物触媒の存在下で行われる、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記バインダーがセメント、好ましくは水硬性セメント、最も好ましくはポルトランドセメントである、請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
(前記組成物の総重量に対して)0.1重量%超、好ましくは1重量%超、より好ましくは5重量%超の前記メカノケミカルカルボキシル化された無機充填剤;及び、(前記組成物の総重量に対して)0.1重量%超、好ましくは1重量%超、好ましくは20重量%超の前記バインダーを含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
(前記組成物の総重量に対して)5~70重量%、好ましくは10~60重量%、より好ましくは20~50重量%の前記メカノケミカルカルボキシル化された無機充填剤、及び、(前記組成物の総重量に対して)30~95重量%、好ましくは40~90重量%、好ましくは50~80重量%の前記バインダーを含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物を製造する方法であって、以下の工程を含む組成物を製造する方法。
(i)請求項1~8のいずれか1項に記載のメカノケミカルカルボキシル化された無機充填剤を準備する工程;
(ii)セメント、アスファルト及びそれらの組み合わせから選ばれるバインダー、好ましくはセメント、より好ましくは水硬性セメント、最も好ましくはポルトランドセメントを準備する工程;及び
(iii)前記工程(i)の前記メカノケミカルカルボキシル化された無機充填剤と前記工程(ii)の前記バインダーとを組み合わせる工程
【請求項13】
以下の工程を含む、コンクリートを製造する方法。
(i)請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物を準備する工程;
(ii)建設用骨材を準備する工程;及び
(iii)前記工程(i)の前記組成物を、前記工程(ii)の前記建設用骨材と接触させる、好ましくは混合する工程
【請求項14】
請求項13に記載の方法により得られるコンクリート。
【請求項15】
請求項1~8のいずれか1項に記載のメカノケミカルカルボキシル化された無機充填剤の使用であって、
セメント、アスファルト、及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる1種のバインダー中の充填剤としての使用;
コンクリート中のバインダーの部分的な代替としての使用であって、前記バインダーはセメント、アスファルト、及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる;
コンクリートの圧縮強度を増加させるための使用;
コンクリートの耐久性を向上させるための使用;又は、
塩化物の透過性及び/又は空隙率を低下させることによる、コンクリートの耐久性を向上させるための使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メカノケミカルカルボキシル化された無機充填剤及びバインダーを含む組成物に関し、上記バインダーは、セメント及び/又はアスファルトである。また本発明は、上記組成物の製造方法にも関する。さらに本発明は、それら組成物からコンクリートを製造する方法、及び、かかる製造方法から得られるコンクリートにも関する。本発明は、さらに、メカノケミカルカルボキシル化された無機充填剤の使用方法、例えば、アスファルト又はセメント中の充填剤としての使用方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートは、骨材(通常は岩石質)のマトリックスと、上記マトリックスを拘束するバインダー(通常はポルトランドセメント又はアスファルト)とを含む複合材料である。コンクリートは、最も頻繁に使用される建築材料のひとつであり、地球上で、水に次いで2番目に広く使用されている物質であると言われている。
【0003】
コンクリートのコストを削減し、かつ世界中でのセメントの生産によって発生するCO2排出量を削減するために、多くの研究努力が、コンクリートの特性に(有害な)影響を与えることなく、バインダー成分に代わる充填剤として使用できる、安価な材料の特定に費やされている。
【0004】
広く採用されているセメントフィラーの一例として、石灰石が挙げられる。セメント系材料における充填剤の包括的な概要は非特許文献1に見出される。
【0005】
ポルトランドセメントの生産は、世界の二酸化炭素排出量の約10%を占める。Vanderleyらによれば、セメント産業におけるCO2排出に関する従来の削減戦略は、セメント需要が増加する状況において、必要量の削減を確かなものとするには不十分である。したがって、高価で環境リスクの高いカーボン回収・貯留(CCS)の採用は、セメント業界のリーダーによって、やむを得ない解決策であると考えられてきた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】John,Vanderley M.,et al.‘Fillers in cementitious materials-Experience,recent advances and future potential.’Cement and Concrete Research 114(2018):65-78
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、セメント生産量削減によるCO2排出量の削減と、カーボン回収技術によるCO2排出量削減を両立でき、かつ、コンクリートの特性を損なわない、安価な充填剤技術の開発が求められている。
【0008】
本発明の目的は、セメント又はアスファルトのバインダーに用いられる、改良された充填剤を提供することである。
【0009】
本発明のさらなる目的は、安価に製造できるセメント又はアスファルトのバインダーに用いられる、改良された充填剤を提供することである。
【0010】
本発明のさらなる目的は、CO2貯蔵技術を用いて製造されるセメント又はアスファルトのバインダーに用いられる、改良された充填剤を提供することである。
【0011】
本発明のさらなる目的は、得られるコンクリートの、圧縮強度のような特性を改善する、セメント又はアスファルトのバインダーに用いられる改良された充填剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明らは、驚くべきことに、セメント及び/又はアスファルトに用いられる充填剤として、下記工程を含む方法により得られたメカノケミカルカルボキシル化された無機充填剤を採用することにより、これら目的の1又は2以上を達成できることを見出した。
a)ケイ酸塩鉱物を含む固体原料を準備する工程;
b)CO2を含む酸化性ガスを準備する工程;
c)前記固体原料及び前記酸化性ガスを機械的攪拌装置内に供給する工程;及び
d)前記固体原料の材料を、1atm超の酸化性ガス圧である前記酸化性ガス及び任意の触媒の存在下、機械的攪拌操作に供し、メカノケミカルカルボキシル化された無機充填剤を得る工程;であって、
前記固体原料はBET表面積が0.01m2/g超であり、D50が0.1~5000μmの範囲にある粒状物質であり;かつ
前記メカノケミカルカルボキシル化された無機充填剤のCO2含有量は、(メカノケミカルカルボキシル化された無機充填剤の総重量に対して)1重量%超であり、前記CO2含有量は、室温から800℃まで10℃/分で昇温し、その後室温まで15℃/分で降温する温度曲線に従ったTGA-MSにより測定された、120℃以上における質量損失量から決定される。
【0013】
後述する実施例に示すように、このようなメカノケミカルカルボキシル化された無機充填剤をセメントのようなバインダー中の充填剤として使用すると、得られるコンクリートの圧縮強度は、純セメントを用いた場合に得られる値よりも、驚くほど増大することが分かった。さらに、かかる強度発現に要する時間が短縮される。さらに、このメカノケミカルカルボキシル化された無機充填剤を、セメントのようなバインダー中の分散剤として非常に多くの量を使用しながらも、基準を満たしたコンクリート特性を実現できる。
【0014】
さらに、上記メカノケミカルカルボキシル化された無機充填剤の生産は、安価なCO2変換技術プラットフォームに依存しており、経済的に持続可能な方法で製造でき、かつ、セメント生産量の減少によるCO2排出量削減と炭素回収技術によるCO2排出量削減を合わせた充填剤が提供される。
【0015】
さらに、上記メカノケミカルフライアッシュ充填剤を用いて得られるコンクリートの耐久性はかなり向上することを見出した。これは、本発明者らは、特定の理論に縛られることを望むものではないが、マイクロ及びサブマイクロスケールでの水和が促進され、塩化物透過性の低下、及び/又は、コンクリートの空隙率が低下することによるものと考えている。最後に、未処理の原料と比較した際の酸素含有量の増加により、極性溶媒への分散性が向上し、かつエポキシ基やカルボキシ基を有する材料との相性が良くなると考えられる。
【0016】
メカノケミカルカルボキシル化に関する一般的な説明は、国際公開第2019/012474号に記載されている。
【0017】
したがって、本発明の第一の態様は、メカノケミカルカルボキシル化された無機充填剤及びバインダーを含む組成物を提供するものであり、上記バインダーは、セメント、アスファルト及びそれらの混合物からなる群より選択され、メカノケミカルカルボキシル化された無機充填剤は以下に示す工程を含む方法により得られるものである。
a)ケイ酸塩鉱物を含む固体原料を準備する工程であって、上記固体原料はBET表面積が0.01m2/g超であり、D50が0.1~5000μmの範囲にある粒状物質である;
b)CO2を含む酸化性ガスを準備する工程;
c)上記固体原料及び前記酸化性ガスを機械的攪拌装置内に供給する工程;及び
d)上記固体原料の材料を、1atm超の酸化性ガス圧である上記酸化性ガス及び任意の触媒の存在下、機械的攪拌操作に供し、メカノケミカルカルボキシル化された無機充填剤を得る工程;であって、
上記メカノケミカルカルボキシル化された無機充填剤のCO2含有量が、(メカノケミカルカルボキシル化された無機充填剤の総重量に対して)1重量%超であり、上記CO2含有量は、室温から800℃まで10℃/分で昇温し、その後室温まで15℃/分で降温する温度曲線に従ったTGA-MSにより測定された、120℃以上における質量損失量から決定される。
【0018】
本発明の別の態様は、本明細書に記載の組成物を製造する方法を提供するものであり、かかる方法は、以下に示す工程を含む。
(i)本明細書に記載されたメカノケミカルカルボキシル化された無機充填剤を準備する工程;
(ii)セメント、アスファルト及びそれらの組み合わせから選ばれる、本明細書に記載されたバインダーを準備する工程;及び
(iii)上記工程(i)のメカノケミカルカルボキシル化された無機充填剤と上記工程(ii)のバインダーとを組み合わせる工程
【0019】
本発明の別態様は、コンクリートを製造する方法を提供するものであり、かかる方法は、以下に示す工程を含む。
(i)本明細書に記載された組成物を準備する工程;
(ii)建設用骨材を準備する工程;及び
(iii)上記工程(i)の組成物を、上記工程(ii)の建設用骨材と接触させる、好ましくは混合する工程
【0020】
本発明の別の態様は、本明細書に記載のコンクリートを製造する方法により得られるコンクリートを提供するものである。
【0021】
本発明の別の態様は、本明細書に記載のメカノケミカルカルボキシル化された無機充填剤の使用であって、
本明細書に記載のバインダー中の充填剤としての使用、
コンクリート中の、本明細書に記載のバインダーの部分的な代替としての使用、
コンクリートの圧縮強度を増加させるための使用、
コンクリートの耐久性を向上させるための使用、又は、
塩化物の透過性及び/又は空隙率を低下させることによる、コンクリートの耐久性を向上させるための使用。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の第一の態様は、メカノケミカルカルボキシル化された無機充填剤及びバインダーを含む組成物を提供するものであり、上記バインダーは、セメント、アスファルト及びそれらの混合物からなる群より選択され、メカノケミカルカルボキシル化された無機充填剤は以下に示す工程を含む方法により得られるものである。
a)ケイ酸塩鉱物を含む固体原料を準備する工程;
b)CO2を含む酸化性ガスを準備する工程;
c)上記固体原料及び上記酸化性ガスを機械的攪拌装置内に供給する工程;及び
d)上記固体原料の材料を、1atm超の酸化性ガス圧である上記酸化性ガス及び任意の触媒の存在下、機械的攪拌操作に供し、メカノケミカルカルボキシル化された無機充填剤を得る工程;であって、
上記固体原料はBET表面積が0.01m2/g超であり、D50が0.1~5000μmの範囲にある粒状物質であり;かつ
上記メカノケミカルカルボキシル化された無機充填剤のCO2含有量は、(メカノケミカルカルボキシル化された無機充填剤の総重量に対して)1重量%超であり、上記CO2含有量は、室温から800℃まで10℃/分で昇温し、その後室温まで15℃/分で降温する温度曲線に従ったTGA-MSにより測定された、120℃以上における質量損失量から決定される。
【0023】
本開示で提供される指針に照らして、本明細書に記載の特性を有するメカノケミカルカルボキシル化された無機充填剤が得られるように、関連するプロセスパラメータを適宜変更することは、当業者の能力の範囲内である。
【0024】
本発明によれば、セメントは水硬性セメント又は非水硬性セメントでもよい。好ましい態様は、セメントはポルトランドセメントのような水硬性セメントである。本実施形態におけるより好ましい態様は、セメントはEN197-1(2011)に定義されるセメントのうちの1つであり、さらに好ましくは、EN197-1(2011)に定義されるポルトランドセメントである。
【0025】
本発明によれば、BET表面積は、0.5~1gの質量である試料を用いて、77Kの温度で決定される。BET表面積、BJH脱着積算細孔表面積及び脱着平均細孔径(BETによる4V/A)を求めるより好ましい分析方法は、表面積分析を行う前の脱着サイクルに際し、試料を400℃に加熱する工程を含む。
【0026】
本発明の好ましい実施態様において、メカノケミカルカルボキシル化された無機充填剤のBET表面積は、固体原料のBET表面積に対して、少なくとも110%であり、好ましくは少なくとも120%であり、より好ましくは少なくとも150%である。
【0027】
本発明の好ましい実施態様において、メカノケミカルカルボキシル化された無機充填剤のFe2O3含有量は、固体原料のFe2O3含有量に対して、少なくとも150%であり、好ましくは少なくとも200%であり、最も好ましくは少なくとも250%である。
【0028】
特定の理論に縛られることを望むものではないが、本発明者らは、無機充填剤のメカノケミカルカルボキシル化によりBET表面積の増加が見られるのは、平均細孔径の減少及び全細孔表面積の増加から見られる細孔数の増加に大きく起因するものと考えている。したがって、本実施態様において、メカノケミカルカルボキシル化された無機充填剤の細孔のBJH脱着積算表面積は、固体原料の細孔のBJH脱着積算表面積の少なくとも110%であり、好ましくは少なくとも120%であり、より好ましくは少なくとも150%である。そして、メカノケミカルカルボキシル化された無機充填剤の脱着平均細孔径(BETによる4V/A)は、固体原料の脱着平均細孔径(BETによる4V/A)の90%以下であり、好ましくは85%以下であり、より好ましくは80%以下である。
【0029】
本明細書におけるFe2O3やCaO含有量のような無機成分の含有量を求める好ましい方法は、蛍光X線分光法によるものであり、好ましくはBrukerのTracer 5Gを用いた方法である。当業者が理解できるように、本明細書における原料、メカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュ共に、Fe2O3及びCaOの含有量は、好ましくは蛍光X線分光法により決定される。
【0030】
本明細書で用いられるTGA-MSは、本分野の当業者にとって公知の技術である、熱重量分析装置を質量分析装置に組み合わせたものを意味する。本発明の内容において、原料及びメカノケミカルカルボキシル化された材料のCO2含有量を求めるための好ましいTGA-MS装置のセットアップは、デュアルチャンバー構造のTGA/DSC装置であるSetaram社のTAG 16をAmetek Dycor Proline MSに組み合わせ、0.1~2mgの試料を用いる。
【0031】
本発明の好ましい態様において、メカノケミカルカルボキシル化された無機充填剤のCO2含有量は、(メカノケミカルカルボキシル化された無機充填剤の総重量に対して)2重量%超であり、好ましくは5重量%超であり、最も好ましくは7重量%超である。ここで、CO2含有量は、室温から800℃まで10℃/分で昇温し、その後室温まで15℃/分で降温する温度曲線に従ったTGA-MSにより測定された、120℃以上における質量損失量から決定される。
【0032】
本発明のよりさらに好ましい態様において、固体原料のCO2含有量は、(固体原料の総重量に対して)0.5重量%未満であり、好ましくは0.2重量%未満であり、最も好ましくは0.1重量%未満である。ここでCO2含有量は、室温から800℃まで10℃/分で昇温し、その後室温まで15℃/分で降温する温度曲線に従ったTGA-MSにより測定された、120℃以上における質量損失量から決定される。
【0033】
本実施態様において、固体原料は、輝石、含水ケイ酸マグネシウム、タルク、蛇紋岩、カンラン石、フライアッシュ、ボトムアッシュ、及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる材料を含み、好ましくはフライアッシュを含む。本実施態様において、固体原料の50重量%超、好ましくは80重量%超は、輝石、含水ケイ酸マグネシウム、タルク、蛇紋岩、カンラン石、フライアッシュ、ボトムアッシュ、及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる材料であり、好ましくはフライアッシュである。好ましい実施態様において、本発明の好ましい態様における固体原料は、輝石、含水ケイ酸マグネシウム、タルク、蛇紋岩、カンラン石、フライアッシュ、ボトムアッシュ、及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる材料からなり、好ましくはフライアッシュからなる。
【0034】
特定の理論に縛られることを望むものではないが、本発明者らは、固体原料の炭素質材料が不十分である場合に、性能が改善されることを見出した。本発明の実施態様において、固体原料は、(固体原料の総重量に対して)C含有量が20重量%未満であり、好ましくは10重量%未満であり、最も好ましくは5重量%未満である。本発明の実施態様において、固体原料は、(固体原料の総重量に対して)Si含有量が10重量%超であり、好ましくは15重量%超であり、最も好ましくは20重量%超である。
【0035】
本明細書で用いる‘フライアッシュ’なる語は、石炭フライアッシュ及び石油フライアッシュを含む、任意のタイプのフライアッシュを意味する。特定の理論に縛られることを望むものではないが、本発明者らは、固体原料に炭素質のフライアッシュが少ない場合に、性能が向上することを見出した。炭素質のフライアッシュとは、石油フライアッシュの大部分(SiO2、Al2O3、Fe2O3等の鉱物に次いで多い)を占める、特に特徴的なフライアッシュの一種である。
【0036】
したがって、好ましい実施態様において、フライアッシュは、褐炭フライアッシュ、亜瀝青炭フライアッシュ、無煙炭フライアッシュ、瀝青炭フライアッシュ及びこれらの組み合わせといった、石炭フライアッシュである。本発明の非常に好ましい実施態様において、固体原料は、ASTM C618(2019)の要件に適合し、好ましくは、ASTM C618(2019)のクラスCの要件に適合するフライアッシュを含むか、かかるフライアッシュからなる。
【0037】
特定の理論に縛られることを望むものではないが、本発明者らは、原料が少なくともいくらかのCaOを含む場合に、メカノケミカルカルボキシル化及び充填剤性能が改良されるという結果が得られることを見出した。したがって、本実施態様において、固体原料は(固体原料の総重量に対して)0.5重量%超、好ましくは1重量%超、より好ましくは3重量%超のCaOを含む。本発明のより好ましい態様において、固体原料は、(固体原料の総重量に対して)5重量%超、又は、8重量%超のCaOを含む。
【0038】
本発明の実施態様において、固体原料の粒度分布は、下記特性のうち1つ、2つ、3つ又はすべて、好ましくはすべてを有する。
・D10の値が0.1~50μm、好ましくは0.5~20μm、最も好ましくは1~10μmの範囲内にある;
・D50の値が1~200μm、好ましくは5~100μm、最も好ましくは10~50μmの範囲内にある;
・D90の値が50~700μm、好ましくは5~500μm、最も好ましくは60~400μmの範囲内にある;
・D(4:3)の値が10~200μm、好ましくは20~130μmの範囲内にある。
【0039】
本発明の実施態様において、メカノケミカルカルボキシル化された無機充填剤の粒度分布は、下記特性のうち1つ、2つ、3つ又はすべて、好ましくはすべてを有する。
・D10の値が0.005~5μm、好ましくは0.01~1μm、最も好ましくは0.1~0.5μmの範囲内にある;
・D50の値が0.5~50μm、好ましくは1~25μm、最も好ましくは1~10μmの範囲内にある;
・D90の値が5~200μm、好ましくは20~100μm、最も好ましくは30~50μmの範囲内にある;
・D(4:3)の値が1~100μm、好ましくは10~25μmの範囲内にある。
【0040】
本発明によれば、D10、D50、D90及びD(4:3)のような粒度分布の特性は、Fritsch Analysette 22 Nanotec、又は、他の同等以上の感度を有する装置のような、光散乱のフラウンホーファー理論を利用したレーザー光散乱粒度分析計で測定し、体積相当球モデルを用いたデータの記録により決定される。当業者には公知であるように、D50は質量メジアン径、すなわち、試料の質量の50%が、より小さい粒子からなる直径を表す。同様に、D10及びD90は、試料の質量の10%又90%が、より小さい粒子からなる直径を表す。当業者には公知であるように、D(4:3)は、体積平均径である。
【0041】
本発明の実施態様において、工程(b)で供給される酸化性ガスは、90モル%超のCO2、好ましくは95モル%超のCO2を含む。本発明の好ましい態様において、工程(b)で供給される酸化性ガスは、90モル%超のCO2、好ましくは95モル%超のCO2と、1000ppm(v/v)未満のH2O、好ましくは100ppm(v/v)未満のH2Oと、を含む。
【0042】
本発明の実施態様において、工程(d)は3atm超、好ましくは6atm超の圧力で行われる。本発明の実施態様において、工程(d)は、100℃未満、好ましくは60℃未満、より好ましくは30℃未満の温度で行われる。本発明の実施態様において、工程(d)は少なくとも1時間、好ましくは少なくとも4時間、より好ましくは少なくとも8時間、行われる。本発明の好ましい実施態様において、工程(d)は、3atm超、好ましくは6atm超の圧力;100℃未満、好ましくは60℃未満、より好ましくは30℃未満の温度;及び少なくとも1時間、好ましくは少なくとも4時間、より好ましくは少なくとも8時間、行われる。
【0043】
本発明者らはさらに、本明細書に記載されたメカノケミカルカルボキシル化の方法は、酸のような追加での酸化剤を供給することなく行うことができることを見出した。したがって、本明細書に記載されたメカノケミカルカルボキシル化の方法は、好ましくは強酸を用いることなく、好ましくは工程(b)で供給される酸化性ガス以外のさらなる酸化剤を用いることなく、行われる。
【0044】
本発明の好ましい実施態様において、工程(d)のメカノケミカル攪拌操作は、粉砕(grinding)、粉砕(milling)、混合、攪拌(低速攪拌又は高速攪拌)、せん断(高トルクせん断)、振盪、ブレンド、流動床、又は超音波処理からなり、好ましくは、粉砕(grinding)、粉砕(milling)、混合、攪拌(低速攪拌又は高速攪拌)、せん断(高トルクせん断)、超音波処理である。本発明者らは、工程(d)のメカノケミカル攪拌操作を不活性な粉砕(grinding)又は粉砕(milling)媒体、好ましくは不活性なボールやビーズの存在下で行うと、メカノケミカルカルボキシル化の工程が促進されることを見出した。好ましい不活性材料はステンレス鋼である。
【0045】
本発明の好ましい実施態様において、工程(d)は触媒、好ましくは遷移金属酸化物触媒、より好ましくは遷移金属二酸化物触媒、最も好ましくは、酸化鉄、酸化コバルト、酸化ルテニウム、酸化チタン及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれる遷移金属二酸化物触媒の存在下で行われる。
【0046】
したがって、上記から理解できるように、本発明の非常に好ましい実施態様において、工程(d)は、不活性な粉砕(grinding)又は粉砕(milling)媒体と、遷移金属酸化物触媒の存在下で、機械的攪拌操作、好ましくは粉砕(grinding)、粉砕(milling)、混合、攪拌(低速攪拌又は高速攪拌)、せん断(高トルクせん断)、振盪、ブレンド、流動床、又は超音波処理から構成される。本発明者らは、遷移金属酸化物触媒で被覆する前に、本明細書に記載の不活性媒体を用いることは、メカノケミカルカルボキシル化の効率(例えば、反応時間、CO2吸着量及び粒径の減少)の観点で有効であることを見出した。
【0047】
本発明の実施態様において、組成物は、(組成物の総重量に対して)0.1重量%超、好ましくは1重量%超、より好ましくは5重量%超のメカノケミカルカルボキシル化された無機充填剤、及び/又は、(組成物の総重量に対して)0.1重量%超、好ましくは1重量%超、より好ましくは20重量%超のバインダーを含む。
【0048】
本発明の実施態様において、組成物は、(組成物の総重量に対して)60重量%未満、好ましくは50重量%未満、より好ましくは45重量%未満のメカノケミカルカルボキシル化された無機充填剤、及び/又は、(組成物の総重量に対して)95重量%未満、好ましくは90重量%未満、より好ましくは80重量%未満のバインダーを含む。
【0049】
本発明の実施態様において、メカノケミカルカルボキシル化された無機充填剤とバインダーとの重量:重量で表される比が、1:9~2:1、好ましくは1:8~1:1、より好ましくは1:6~5:6の範囲内の組成物が提供される。
【0050】
本発明の実施態様において、組成物は、(組成物の総重量に対して)5~70重量%、好ましくは10~60重量%、より好ましくは20~50重量%のメカノケミカルカルボキシル化された無機充填剤、及び、(組成物の総重量に対して)30~95重量%、好ましくは40~90重量%、より好ましくは50~80重量%のバインダーを含む。
【0051】
本発明の実施態様において、組成物は、(組成物の総重量に対して、5重量%未満の水を含み、好ましくは1重量%未満、より好ましくは0.1重量%未満である。水の含有量は、好適には、室温から800℃まで10℃/分で昇温する温度曲線に従ったTGA-MSにより測定された、120℃までの質量損失量から決定される。
【0052】
本発明の実施態様において、組成物は、メカノケミカルカルボキシル化された無機充填剤及びバインダからなる。
【0053】
さらなる態様において、本発明は、本明細書に記載の組成物を得る方法を提供し、かかる方法は下記工程を含む。
(i)本明細書に記載のメカノケミカルカルボキシル化された無機充填剤を準備する工程;
(ii)本明細書に記載の、セメント、アスファルト及びそれらの組み合わせから選ばれるバインダーを準備する工程;及び
(iii)上記工程(i)のメカノケミカルカルボキシル化された無機充填剤と、上記工程(ii)のバインダーとを組み合わせる工程。
【0054】
さらなる態様において、本発明は、コンクリートを得る方法を提供し、かかる方法は下記工程を含む。
(i)本明細書に記載された組成物を準備する工程;
(ii)建設用骨材を準備する工程;及び
(iii)上記工程(i)の組成物を、上記工程(ii)の建設用骨材と接触させる、好ましくは混合する工程。
【0055】
本発明の実施態様において、建設用骨材は、砂、砂利、砕石、スラグ、再生コンクリート、粘土、軽石、パーライト、バーミキュライト、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。好ましい実施態様において、建設用骨材は、EN 13043(2002)、EN 13383(2019)、EN 12620(2013)又はEN 13242(2013)に定義される1の骨材であり、好ましくは、EN 12620(2013)に定義される1の骨材である。
【0056】
本発明の好ましい実施態様において、工程(iii)は、工程(i)の組成物を、工程(ii)の建設用骨材及び水と接触させること、好ましくは混合することをさらに含む。本発明によれば、工程(i)の組成物、工程(ii)の建設用骨材、及び水は、実質的に同時に接触、好ましくは混合されてもよく、又は、段階的に、工程(i)の組成物を水と最初に接触、好ましくは混合させてから、工程(ii)の建設用骨材と接触、好ましくは混合させてもよい。
【0057】
本発明の別の態様では、本明細書に記載のコンクリートを得る方法によって得られるコンクリートを提供する。
【0058】
本発明の別の態様では、本明細書に記載のメカノケミカルカルボキシル化された無機充填剤の使用が提供される。
・本明細書に記載のバインダー中の充填剤としての使用;
・コンクリート中の、本明細書に記載のバインダーの部分的な代替としての使用;
・コンクリートの圧縮強度を増加させるための使用;
・コンクリートの耐久性を向上させるための使用;又は、
・塩化物の透過性及び/又は空隙率を低下させることによる、コンクリートの耐久性を向上させるための使用。
【0059】
組成物、特にメカノケミカルカルボキシル化された無機充填剤の特徴に関連して、又は、バインダーの特徴に関連して、本明細書に記載された発明の実施態様は、本明細書に記載される上記組成物を得る方法、及び、本明細書に記載されるメカノケミカルカルボキシル化された無機充填剤の使用に適用できることが、当業者には理解される。
【0060】
さらなる態様において、本発明はメカノケミカルカルボキシル化された無機充填剤を得る方法を提供し、かかる方法は下記工程を含む。
a)本明細書に記載のケイ酸塩鉱物を含む固体原料を準備する工程であって、上記固体原料はBET表面積が0.01m2/g超であり、D50が0.1~5000μmの範囲にある粒状物質である;
b)本明細書に記載のCO2を含む酸化性ガスを準備する工程;
c)上記固体原料及び上記酸化性ガスを機械的攪拌装置内に供給する工程;及び
d)上記酸化性ガス、不活性媒体、及び遷移金属酸化物触媒の存在下、上記固体原料の材料を、上記機械的攪拌装置ユニットにおいて、1atm超の酸化性ガス圧で、本明細書に記載の機械的攪拌操作に供し、メカノケミカルカルボキシル化された無機充填剤を得る工程;
上記において、メカノケミカルカルボキシル化された無機充填剤のCO2含有量が、(メカノケミカルカルボキシル化された無機充填剤の総重量に対して)1重量%超であり、CO2含有量は、室温から800℃まで10℃/分で昇温し、その後室温まで15℃/分で降温する温度曲線に従ったTGA-MSにより測定された、120℃以上における質量損失量から決定される。好ましい態様において、上記不活性媒体、好ましくは不活性な粉砕(grinding)又は粉砕(milling)媒体は、上記遷移金属酸化物触媒で被覆されている。
【実施例】
【0061】
BET表面性、BJH脱着積算細孔表面積及び脱着平均細孔径(BETによる4V/A)は、表面積分析を行う前の脱着サイクルに際し、400℃に加熱した試料重量0.5~1gの試料を用いて、77Kの温度で決定した。
【0062】
粒度分布測定は、フラウンホーファー理論を利用したFritsch Analysette 22 Nanotecにより行った。
【0063】
無機物(SiO2、Al2O3、Fe2O3及びCaO)の含有量は、Bruker Tracer 5Gを用いて、蛍光X線分光法により求めた。
【0064】
CO2含有量は、Setaram TAG 16 TGA/DSC デュアルチャンバーバランスとAmetek Dycor Proline MSとを組み合わせたものを用い、試料は0.1~2gとし、室温から800℃まで10℃/分で昇温し、その後室温まで15℃/分で降温する温度曲線に従ったTGA-MSにより測定された、120℃以上における質量損失量より求めた。
【0065】
圧縮強度はISO1920:2005のパート4に準拠して試験した。
【0066】
実施例1
メカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュは、フライアッシュの試料10gを、二酸化チタンで被覆された不活性媒体(ステンレス鋼球)500グラムと共に、圧力セルに入れることで製造された。上記セルを1MPa(9.87atm)に加圧し、高エネルギーボールミルに設置し、5000rpmで48時間回転させる。反応は室温で開始し、加熱や冷却は行わなかった。
【0067】
実施例2
下記に示す表に示した特性を有する生成物が得られるように、機械的攪拌及びCO2圧力を変更し、実施例1と同様にして、2つの未加工のフライアッシュ試料A及びBをメカノケミカルカルボキシル化(処理)した。未加工の試料Aはアルバータ州のジェネシー(カナダ国)の石炭工場から入手し、ASTM C618(2019)のクラスFの要件を満たすものである。未加工の試料Bはシヴィタヴェッキア(イタリア国)の石炭工場から入手した。未加工の試料Cはコルドメ(フランス国)の石炭工場から入手した。試料B及びCの未加工のフライアッシュは、一般的に品質の劣ったフライアッシュであり、10重量%を超える濃度でコンクリート充填剤として用いることは不適当である。
【0068】
【0069】
メカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュA及びBは、ポルトランドセメントと重量:重量で1:5(充填剤:セメント)の比で混合し、充填剤として用いた。
【0070】
得られたメカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュとポルトランドセメントの混合物に、細砂利及び水(すべての試料に対して同じ比を採用)をそれぞれ混合し、コンクリートスラリーを得た。得られたコンクリートの、2日、7日、及び28日後の圧縮強度を観測した。
【0071】
比較のため、未加工のフライアッシュ試料A及びBと純ポルトランドセメントとを用いて、同様のコンクリートスラリーを調製した。
【0072】
【0073】
圧縮強度の測定から分かるように、本発明に係るメカノケミカルカルボキシル化された無機充填剤は、未処理の(フライアッシュのような)材料と比較して、予想外に大きな性能の向上をもたらす。さらに驚くべきことに、本発明に係るメカノケミカルカルボキシル化された無機充填剤は、純粋なセメントの混合物をも凌駕することが分かった。
【国際調査報告】