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特表2023-502019メカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュ、その製造方法及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-20
(54)【発明の名称】メカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュ、その製造方法及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C04B 18/08 20060101AFI20230113BHJP
   C04B 20/00 20060101ALI20230113BHJP
   C04B 26/02 20060101ALI20230113BHJP
   C04B 26/26 20060101ALI20230113BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20230113BHJP
   B28C 7/04 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
C04B18/08 Z ZAB
C04B20/00 B
C04B26/02 Z
C04B26/26 Z
C04B28/02
B28C7/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022526703
(86)(22)【出願日】2020-11-04
(85)【翻訳文提出日】2022-05-30
(86)【国際出願番号】 CA2020051493
(87)【国際公開番号】W WO2021087605
(87)【国際公開日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】19207206.4
(32)【優先日】2019-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522179976
【氏名又は名称】カーボン アップサイクリング テクノロジーズ インク.
【氏名又は名称原語表記】CARBON UPCYCLING TECHNOLOGIES INC.
【住所又は居所原語表記】9550 100 Street SE Calgary,Alberta T3S 0A2 (CA)
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】シンハ,アポオルヴァ
【テーマコード(参考)】
4G056
4G112
【Fターム(参考)】
4G056AA06
4G056CB23
4G112PA26
4G112PC12
4G112PC14
(57)【要約】
本発明は、BET表面積が50m/g未満であり、CO含有量が1重量%超であるメカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュに関する。本発明はさらに、例えば充填剤としてのような、製造方法や使用に関する。本発明はさらに、メカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュ、並びに、アスファルト、セメント、高分子及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる1種の材料を含む組成物と、その製造方法にも関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
BET表面積が50m/g未満であり、
CO含有量が1重量%超であり、
前記CO含有量は、室温から800℃まで10℃/分で昇温し、その後室温まで15℃/分で降温する温度曲線に従ったTGA-MSにより測定された、120℃以上における質量損失量から決定される、メカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュ。
【請求項2】
以下に示す特性のうち、1つ、2つ又は3つ、好ましくは3つを満たす、請求項1に記載のメカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュ。
・(メカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュの総重量に対する)SiO含有量が30~50重量%の範囲内である;
・(メカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュの総重量に対する)Al含有量が10~20重量%の範囲内である;
・(メカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュの総重量に対する)Fe含有量が10~40重量%の範囲内である。
【請求項3】
以下に示す特性のうち、1つ、2つ、3つ又はすべて、好ましくはすべてを満たす、請求項1又は2に記載のメカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュ。
・D10の値が0.005~5μm、好ましくは0.01~1μm、最も好ましくは0.1~0.5μmの範囲内である;
・D50の値が0.5~50μm、好ましくは1~25μm、最も好ましくは1~10μmの範囲内である;
・D90の値が5~200μm、好ましくは20~100μm、最も好ましくは30~50μmの範囲内である;
・D(4:3)の値が1~100μm、好ましくは10~25μmの範囲内である。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のメカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュの製造方法であって、以下の工程を含む、製造方法。
a)フライアッシュを含む、又は、フライアッシュからなる固体原料を準備する工程であって、前記固体原料は、BET表面積が0.01m/g超であり、D50の値が0.1~5000μmの範囲内である粒状物質である;
b)COを含む酸化性ガスを準備する工程;
c)前記固体原料及び前記酸化性ガスを機械的攪拌装置内に供給する工程;及び
d)前記固体原料の材料を、前記機械的攪拌装置に置き、1atm超の酸化性ガス圧である前記酸化性ガスの存在下、機械的攪拌操作に供し、メカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュを得る工程。
【請求項5】
前記固体原料の、SiO、Al及びFeの合計の含有量が、(前記固体原料の総重量に対して)60重量%超、好ましくは70重量%超、より好ましくは75重量%超である、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記固体原料が、ASTM C618の要件を満たすフライアッシュ、最も好ましくはASTM C618のクラスFの要件を満たすフライアッシュを含む、又は、それらフライアッシュからなる、請求項4又は5に記載の製造方法。
【請求項7】
工程(b)で供給される前記酸化性ガスが、90モル%超のCO、好ましくは95モル%超のCOを含む、請求項4~6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
工程(d)が
3atm超、好ましくは6atm超の圧力で行われる;
100℃未満、好ましくは60℃未満、より好ましくは30℃未満の温度で行われる;及び/又は
少なくとも1時間、好ましくは少なくとも4時間、より好ましくは少なくとも8時間行われる、
請求項4~7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
工程(d)のメカノケミカル攪拌操作は、混合、攪拌(低速攪拌若しくは高速攪拌)、せん断(高トルクせん断)、振とう、混練、流動床、又は超音波処理を含み、好ましくは混合、攪拌(低速攪拌若しくは高速攪拌)、せん断(高トルクせん断)又は超音波処理を含む、請求項4~8のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
工程(d)は、触媒、好ましくは遷移金属酸化物触媒、より好ましくは遷移金属二酸化物触媒、最も好ましくは酸化鉄、酸化コバルト、酸化ルテニウム、酸化チタン及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる遷移金属二酸化物触媒の存在下で行われる、請求項4~9のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
請求項4~10のいずれか1項に記載の方法により得られるメカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュ。
【請求項12】
請求項1~3又は11のいずれか1項に記載のメカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュ、並びに、アスファルト、セメント、高分子及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる1種のさらなる材料、好ましくはセメント、より好ましくはポルトランドセメントを含む、組成物。
【請求項13】
前記メカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュと前記さらなる材料との重量:重量で表される比が、1:9~2:1の範囲内、好ましくは1:8~1:1の範囲内、より好ましくは1:6~5:6の範囲内である、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
以下の工程を含むコンクリートを製造する方法により得られるコンクリート。
(i)前記さらなる材料がアスファルト又はコンクリートである請求項12又は13に記載の組成物を準備する工程;
(ii)建設用骨材を準備する工程;
(iii)工程(i)の前記組成物を、工程(ii)の前記建設用骨材と接触させる、好ましくは混合させる工程。
【請求項15】
請求項1~3又は11のいずれか1項に記載のメカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュの使用であって、
充填剤として、好ましくは、アスファルト、セメント、高分子及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる1種の材料中の充填剤としての使用;
コンクリート中のアスファルト又はセメントの部分的な代替としての使用;
コンクリートの圧縮強度を増加させるための使用;
コンクリートの耐久性を向上させるための使用;又は、
塩化物の透過性及び/又は空隙率を低下させることによる、コンクリートの耐久性を向上させるための使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュに関する。本発明はさらに、例えば充填剤としての、その製造方法及び使用にも関する。本発明はさらに、メカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュ、並びに、アスファルト、セメント、高分子及びそれら組み合わせからなる群より選ばれる1種の材料を含む組成物と、その製造方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートは、骨材(通常は岩石質)のマトリックスと、上記マトリックスを拘束するバインダー(通常はポルトランドセメント又はアスファルト)とを含む複合材料である。コンクリートは、最も頻繁に使用される建築材料のひとつであり、地球上で、水に次いで2番目に広く使用されている物質であると言われている。
【0003】
コンクリートのコストを削減し、かつ世界中でのセメントの生産によって発生するCO排出量を削減するために、多くの研究努力が、コンクリートの特性に(有害な)影響を与えることなく、バインダー成分に代わる充填剤又は新たなバインダー成分として使用できる、安価な材料の特定に費やされている。このような二次的なセメント系の材料は、産業界が広く関心を寄せている分野である。
【0004】
広く採用されているセメントフィラーの一例として、石灰石が挙げられる。セメント系材料における充填剤の包括的な概要は非特許文献1に見出される。
【0005】
ポルトランドセメントの生産は、世界の二酸化炭素排出量の約10%を占める。Vanderleyらによれば、セメント産業におけるCO排出に関する従来の削減戦略は、セメント需要が増加する状況において、必要量の削減を確かなものとするには不十分である。したがって、高価で環境リスクの高いカーボン回収・貯留(CCS)の採用は、セメント業界のリーダーによって、やむを得ない解決策であると考えられてきた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】John,Vanderley M.,et al.‘Fillers in cementitious materials-Experience,recent advances and future potential.’Cement and Concrete Research 114(2018):65-78
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、セメント生産量削減によるCO排出量の削減と、カーボン回収技術によるCO排出量削減を両立でき、かつ、コンクリートの特性を損なわない、安価な充填剤技術の開発が求められている。
【0008】
本発明の目的は、セメント又はアスファルトのバインダーに用いられる、改良された充填剤を提供することである。
【0009】
本発明のさらなる目的は、安価に製造できるセメント又はアスファルトのバインダーに用いられる、改良された充填剤を提供することである。
【0010】
本発明のさらなる目的は、CO貯蔵技術を用いて製造されるセメント又はアスファルトのバインダーに用いられる、改良された充填剤を提供することである。
【0011】
本発明のさらなる目的は、得られるコンクリートの、圧縮強度のような特性を改善する、セメント又はアスファルトのバインダーに用いられる改良された充填剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第一の態様として、本発明は、BET表面積が50m/g未満であり、CO含有量が1重量%超であり、メカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュを提供するものであり、上記CO含有量は、室温から800℃まで10℃/分で昇温し、その後室温まで15℃/分で降温する温度曲線に従ったTGA-MSにより測定された、120℃以上における質量損失量から決定される。
【0013】
後述する実施例に示すように、このようなメカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュをセメント中の充填剤として使用すると、得られるコンクリートの圧縮強度は、純セメントを用いた場合に得られる値よりも、驚くほど増大することが分かった。さらに、かかる強度発現に要する時間が短縮される。さらに、このメカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュを、分散剤として非常に多くの量を使用しながらも、基準を満たしたコンクリート特性を実現できる。
【0014】
さらに、上記メカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュの生産は、安価なCO回収技術プラットフォームに依存しており、経済的に持続可能な方法で製造でき、かつ、セメント生産量の減少によるCO排出量削減と炭素回収技術によるCO排出量削減を合わせた充填剤が提供される。
【0015】
さらに、上記メカノケミカルフライアッシュ充填剤を用いて得られるコンクリートの耐久性はかなり向上することを見出した。これは、本発明者らは、特定の理論に縛られることを望むものではないが、マイクロ及びサブマイクロスケールでの水和が促進され、塩化物透過性の低下、及び/又は、コンクリートの空隙率が低下することによるものと考えている。最後に、未処理の原料と比較した際の酸素含有量の増加により、極性溶媒への分散性が向上し、かつエポキシ基やカルボキシ基を有する材料との相性が良くなると考えられる。
【0016】
さらなる態様において、本発明はメカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュを、好ましくは本明細書に記載されたメカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュを製造する方法を提供するものであり、かかる製造方法は下記工程を含む。
a)フライアッシュを含む、又は、フライアッシュからなる固体原料を準備する工程であって、上記固体原料はBET表面積が0.01m/g超であり、D50の値が0.1~5000μmの範囲内である粒状物質である;
b)COを含む酸化性ガスを準備する工程;
c)上記固体原料及び上記酸化性ガスを機械的攪拌装置内に供給する工程;及び
d)上記固体原料の材料を、上記機械的攪拌装置に置き、1atm超の酸化性ガス圧である前記酸化性ガスの存在下、機械的攪拌操作に供し、メカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュを得る工程。
【0017】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載のメカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュの製造方法により得られるメカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュを提供する。
【0018】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載のメカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュ、並びに、アスファルト、セメント、高分子及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる1種のさらなる材料を含む組成物を提供する。
【0019】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載の組成物を得るための方法を提供し、かかる方法は以下の工程を含む。
(i)本明細書に記載のメカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュを準備する工程;
(ii)アスファルト、セメント、高分子及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれるさらなる材料を準備する工程;
(iii)工程(i)の上記メカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュを、工程(ii)の材料と混ぜ合わせる工程。
【0020】
別の態様において、本発明は、コンクリートを得るための方法を提供し、かかる方法は以下の工程を含む。
(i)上記さらなる材料がアスファルト又はコンクリートである、本明細書に記載の組成物を準備する工程;
(ii)建設用骨材を準備する工程;及び
(iii)工程(i)の組成物を、工程(ii)の建設用骨材と接触させる、好ましくは混合させる工程。
【0021】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載のコンクリートを得るための方法によって得られるコンクリートを提供する。
【0022】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載のめかのケミカルカルボキシル化されたフライアッシュの使用であって、以下の使用を提供する。
充填剤として、好ましくは、アスファルト、セメント、高分子及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる1種の材料中の充填剤としての使用;
コンクリート中のアスファルト又はセメントの部分的な代替としての使用;
コンクリートの圧縮強度を増加させるための使用;
コンクリートの耐久性を向上させるための使用;又は、
塩化物の透過性及び/又は空隙率を低下させることによる、コンクリートの耐久性を向上させるための使用。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の第一の態様は、BET表面積が50m/g未満であり、CO含有量が1重量%超であるメカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュを提供するものであり、CO含有量は、室温から800℃まで10℃/分で昇温し、その後室温まで15℃/分で降温する温度曲線に従ったTGA-MSにより測定された、120℃以上における質量損失量から決定される。
【0024】
本発明によれば、BET表面積、BJH脱着積算細孔表面積及び脱着平均細孔径(BETによる4V/A)は、0.5~1gの質量である試料を用いて、77Kの温度で決定される。BET表面積、BJH脱着積算細孔表面積及び脱着平均細孔径(BETによる4V/A)を求めるより好ましい分析方法は、表面積分析を行う前の脱着サイクルに際し、試料を400℃に加熱する工程を含む。
【0025】
本明細書で使用するTGA-MSは、本分野の当業者にとって公知の技術である、熱重量分析装置を質量分析装置に組み合わせたものを意味する。本発明の内容において、原料及びメカノケミカルカルボキシル化された材料のCO含有量を求めるための好ましいTGA-MS装置のセットアップは、デュアルチャンバー構造のTGA/DSC装置であるSetaram社のTAG 16をAmetek Dycor Proline MSに組み合わせ、0.1~2mgの試料を用いる。
【0026】
好ましい実施態様において、メカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュは、以下に示す特性のうち、1つ、2つ又は3つ、好ましくは3つを満たす。
・(メカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュの総重量に対する)SiO含有量が50重量%未満である;
・(メカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュの総重量に対する)Al含有量が20重量%未満である;
・(メカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュの総重量に対する)Fe含有量が10重量%超である。
【0027】
好ましい実施態様において、メカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュは、以下に示す特性のうち、1つ、2つ又は3つ、好ましくは3つを満たす。
・(メカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュの総重量に対する)SiO含有量が30重量%超であり、好ましくは40重量%超である;
・(メカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュの総重量に対する)Al含有量が10重量%超であり、好ましくは15重量%超である;
・(メカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュの総重量に対する)Fe含有量が40重量%未満であり、好ましくは30重量%未満である。
【0028】
非常に好ましい実施態様において、メカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュは、以下に示す特性のうち、1つ、2つ又は3つ、好ましくは3つを満たす。
・(メカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュの総重量に対する)SiO含有量が30~50重量%である;
・(メカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュの総重量に対する)Al含有量が10~20重量%である;
・(メカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュの総重量に対する)Fe含有量が10~40重量%である。
【0029】
SiO、Al、Fe又はCaOのような無機成分の含有量は、蛍光X線分光法、好ましくはBrukerのTracer 5Gを用いた方法である。当業者が理解できるように、本明細書における原料、メカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュ共に、SiO、Al、Fe及びCaOの含有量は、好ましくは本明細書に記載されるように蛍光X線分光法により決定される。
【0030】
本発明の実施態様において、メカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュの粒径分布は、下記特性のうち1つ、2つ、3つ又はすべて、好ましくはすべてを満たす。
・D10の値が0.005~5μm、好ましくは0.01~1μm、最も好ましくは0.1~0.5μmの範囲内である;
・D50の値が0.5~50μm、好ましくは1~25μm、最も好ましくは1~10μmの範囲内である;
・D90の値が5~200μm、好ましくは20~100μm、最も好ましくは30~50μmの範囲内である;
・D(4:3)の値が1~100μm、好ましくは10~25μmの範囲内である。
【0031】
本発明によれば、D10、D50、D90及びD(4:3)のような粒度分布の特性は、Fritsch Analysette 22 Nanotec、又は、他の同等以上の感度を有する装置のような、光散乱のフラウンホーファー理論を利用したレーザー光散乱粒度分析計で測定し、体積相当球モデルを用いたデータの記録により決定される。当業者には公知であるように、D50は質量メジアン径、すなわち、試料の質量の50%が、より小さい粒子からなる直径を表す。同様に、D10及びD90は、試料の質量の10%又90%が、より小さい粒子からなる直径を表す。当業者には公知であるように、D(4:3)は、体積平均径である。
【0032】
本発明の実施態様において、メカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュの密度は2.5g/cm超であり、好ましくは2.7g/cm超であり、より好ましくは3g/cm超である。
【0033】
本発明の好ましい実施態様において、メカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュは、密度が2.5g/cm超であり、D10が1μm未満であり、D50が10μm未満であり、かつ、D90が50μm未満である。
【0034】
さらなる態様において、本発明は、以下の工程を含むメカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュ、好ましくは、本明細書に記載のメカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュを得るための方法を提供する。
a)フライアッシュを含む、又は、フライアッシュからなる固体原料を準備する工程であって、上記固体原料は、BET表面積が0.01m/g超であり、D50の値が0.1~5000μmの範囲内である粒状物質である;
b)COを含む酸化性ガスを準備する工程;
c)上記固体原料及び上記酸化性ガスを機械的攪拌装置内に供給する工程;及び
d)上記固体原料の材料を、上記機械的攪拌装置に置き、1atm超の酸化性ガス圧である前記酸化性ガスの存在下、機械的攪拌操作に供し、メカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュを得る工程。
【0035】
本開示で提供される指針に照らして、本明細書に記載の特性を有するメカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュが得られるように、関連するプロセスパラメータを適宜変更することは、当業者の能力の範囲内である。
【0036】
本発明の好ましい実施態様において、メカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュのBET表面積は、固体原料のBET表面積に対して、少なくとも110%であり、好ましくは少なくとも120%であり、より好ましくは少なくとも150%である。
【0037】
特定の理論に縛られることを望むものではないが、本発明者らは、フライアッシュのメカノケミカルカルボキシル化によりBET表面積の増加が見られるのは、平均細孔径の減少及び全細孔表面積の増加から見られる細孔数の増加に大きく起因するものと考えている。したがって、本実施態様において、メカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュの細孔のBJH脱着積算表面積は、固体原料の細孔のBJH脱着積算表面積の少なくとも110%であり、好ましくは少なくとも120%であり、より好ましくは少なくとも150%である。そして、メカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュの脱着平均細孔径(BETによる4V/A)は、固体原料の脱着平均細孔径(BETによる4V/A)の90%以下であり、好ましくは85%以下であり、より好ましくは80%以下である。
【0038】
本発明の好ましい実施態様において、メカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュのFe含有量は、固体原料のFe含有量に対して、少なくとも150%であり、好ましくは少なくとも200%であり、最も好ましくは少なくとも250%である。
【0039】
本発明の好ましい態様において、メカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュのCO含有量は、(メカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュの総重量に対して)2重量%超であり、好ましくは5重量%超であり、最も好ましくは7重量%超である。ここで、CO含有量は、室温から800℃まで10℃/分で昇温し、その後室温まで15℃/分で降温する温度曲線に従ったTGA-MSにより測定された、120℃以上における質量損失量から決定される。
【0040】
本発明のよりさらに好ましい態様において、固体原料のCO含有量は、(固体原料の総重量に対して)0.5重量%未満であり、好ましくは0.2重量%未満であり、最も好ましくは0.1重量%未満である。ここでCO含有量は、室温から800℃まで10℃/分で昇温し、その後室温まで15℃/分で降温する温度曲線に従ったTGA-MSにより測定された、120℃以上における質量損失量から決定される。
【0041】
本明細書で用いる‘フライアッシュ’なる語は、石炭フライアッシュ及び石油フライアッシュを含む、任意のタイプのフライアッシュを意味する。特定の理論に縛られることを望むものではないが、本発明者らは、固体原料に炭素質のフライアッシュが少ない場合に、性能が向上することを見出した。炭素質のフライアッシュとは、石油フライアッシュの大部分を占める、特に特徴的なフライアッシュの一種である。
【0042】
したがって、好ましい実施態様において、フライアッシュは、褐炭フライアッシュ、亜瀝青炭フライアッシュ、無煙炭フライアッシュ、瀝青炭フライアッシュ及びこれらの組み合わせといった、石炭フライアッシュである。本発明の非常に好ましい実施態様において、固体原料は、ASTM C618(2019)の要件に適合し、好ましくは、ASTM C618(2019)のクラスCの要件に適合するフライアッシュを含むか、かかるフライアッシュからなる。
【0043】
実施態様において、固体原料は、(固体原料の総重量に対して、)SiO、Al及びFeの合計含有量が60重量%超であり、好ましくは70重量%超であり、より好ましくは75重量%超である。
【0044】
特定の理論に縛られることを望むものではないが、本発明者らは、原料が少なくともいくらかのCaOを含む場合に、メカノケミカルカルボキシル化及び充填剤性能が改良されるという結果が得られることを見出した。したがって、本実施態様において、固体原料は(固体原料の総重量に対して)0.5重量%超、好ましくは1重量%超、より好ましくは3重量%超のCaOを含む。本発明のより好ましい態様において、固体原料は、(固体原料の総重量に対して)5重量%超、又は、8重量%超のCaOを含む。
【0045】
本発明の実施態様において、固体原料の粒度分布は、下記特性のうち1つ、2つ、3つ又はすべて、好ましくはすべてを有する。
・D10の値が0.1~50μm、好ましくは0.5~20μm、最も好ましくは1~10μmの範囲内にある;
・D50の値が1~200μm、好ましくは5~100μm、最も好ましくは10~50μmの範囲内にある;
・D90の値が50~700μm、好ましくは5~500μm、最も好ましくは60~400μmの範囲内にある;
・D(4:3)の値が10~200μm、好ましくは20~130μmの範囲内にある。
【0046】
本発明の実施態様において、工程(b)で供給される酸化性ガスは、80モル%超のCO、好ましくは95モル%超のCOを含む。本発明の好ましい態様において、工程(b)で供給される酸化性ガスは、80モル%超のCO、好ましくは95モル%超のCOと、1000ppm(v/v)未満のHO、好ましくは100ppm(v/v)未満のHOと、を含む。
【0047】
本発明の実施態様において、工程(d)は3atm超、好ましくは6atm超の圧力で行われる。本発明の実施態様において、工程(d)は、100℃未満、好ましくは60℃未満、より好ましくは30℃未満の温度で行われる。本発明の実施態様において、工程(d)は少なくとも1時間、好ましくは少なくとも4時間、より好ましくは少なくとも8時間、行われる。本発明の好ましい実施態様において、工程(d)は、3atm超、好ましくは6atm超の圧力;100℃未満、好ましくは60℃未満、より好ましくは30℃未満の温度;及び少なくとも1時間、好ましくは少なくとも4時間、より好ましくは少なくとも8時間、行われる。
【0048】
本発明者らはさらに、本明細書に記載されたメカノケミカルカルボキシル化の方法は、酸のような追加での酸化剤を供給することなく行うことができることを見出した。したがって、本明細書に記載されたメカノケミカルカルボキシル化の方法は、好ましくは強酸を用いることなく、好ましくは工程(b)で供給される酸化性ガス以外のさらなる酸化剤を用いることなく、行われる。
【0049】
本発明の好ましい実施態様において、工程(d)のメカノケミカル攪拌操作は、粉砕(grinding)、粉砕(milling)、混合、攪拌(低速攪拌又は高速攪拌)、せん断(高トルクせん断)、振盪、ブレンド、流動床、又は超音波処理からなり、好ましくは、粉砕(grinding)、粉砕(milling)、混合、攪拌(低速攪拌又は高速攪拌)、せん断(高トルクせん断)、超音波処理である。本発明者らは、工程(d)のメカノケミカル攪拌操作を不活性な粉砕(grinding)又は粉砕(milling)媒体、好ましくは不活性なボールやビーズの存在下で行うと、メカノケミカルカルボキシル化の工程が促進されることを見出した。好ましい不活性材料はステンレス鋼である。
【0050】
本発明の好ましい実施態様において、工程(d)は触媒、好ましくは遷移金属酸化物触媒、より好ましくは遷移金属二酸化物触媒、最も好ましくは、酸化鉄、酸化コバルト、酸化ルテニウム、酸化チタン及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれる遷移金属二酸化物触媒の存在下で行われる。
【0051】
したがって、上記から理解できるように、本発明の非常に好ましい実施態様において、工程(d)は、不活性な粉砕(grinding)又は粉砕(milling)媒体と、遷移金属酸化物触媒の存在下で、機械的攪拌操作、好ましくは粉砕(grinding)、粉砕(milling)、混合、攪拌(低速攪拌又は高速攪拌)、せん断(高トルクせん断)、振盪、ブレンド、流動床、又は超音波処理から構成される。本発明者らは、遷移金属酸化物触媒で被覆する前に、本明細書に記載の不活性媒体を用いることは、メカノケミカルカルボキシル化の効率(例えば、反応時間、CO吸着量及び粒径の減少)の観点で有効であることを見出した。
【0052】
別の実施態様では、本発明は、本明細書に記載のメカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュを得る方法によって得られるメカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュを提供する。
【0053】
本開示に照らして当業者が理解できるように、本発明のメカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュは、優れた機械的性質とコスト効率の良いCO回収技術を兼ね備え、多くの用途に優れた充填剤を構成する。
【0054】
したがって、別の態様において、本発明は、本明細書に記載のメカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュと、アスファルト、セメント、高分子及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれるさらなる材料と、を含む組成物を提供する。
【0055】
本実施態様において、上記さらなる材料は、熱可塑性ポリマー及び熱硬化性ポリマーから選ばれる高分子である。好ましい態様において、上記さらなる材料は、エポキシ樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、芳香族ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、芳香族ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリイソシアヌレート、ポリアミド、ポリエーテル、ポリエステル、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリ乳酸、ポリフッ化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン、ニトリルゴム、スチレン-ブタジエン、エチレン-酢酸ビニル、及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれる1の高分子である。本明細書で用いられる‘高分子’なる語は、ブロック共重合体等の共重合体を含む。
【0056】
非常に好ましい実施態様において、上記さらなる材料は、セメント、アスファルト、及びこれらの組み合わせから選択される。
【0057】
本発明によれば、セメントは水硬性セメント又は非水硬性セメントでもよい。好ましい態様は、セメントはポルトランドセメントのような水硬性セメントである。本実施形態におけるより好ましい態様は、セメントはEN197-1(2011)に定義されるセメントのうちの1つであり、さらに好ましくは、EN197-1(2011)に定義されるポルトランドセメントである。
【0058】
本発明の実施態様において、組成物は、(組成物の総重量に対して)0.1重量%超、好ましくは1重量%超、より好ましくは5重量%超のメカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュ、及び/又は、(組成物の総重量に対して)0.1重量%超、好ましくは1重量%超、より好ましくは20重量%超のさらなる材料を含む。
【0059】
本発明の実施態様において、組成物は、(組成物の総重量に対して)60重量%未満、好ましくは50重量%未満、より好ましくは45重量%未満のメカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュ、及び/又は、(組成物の総重量に対して)95重量%未満、好ましくは90重量%未満、より好ましくは80重量%未満のさらなる材料を含む。
【0060】
本発明の実施態様において、メカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュとさらなる材料との重量:重量で表される比が、1:9~2:1、好ましくは1:8~1:1、より好ましくは1:6~5:6の範囲内の組成物が提供される。
【0061】
本発明の実施態様において、組成物は、(組成物の総重量に対して)5~70重量%、好ましくは10~60重量%、より好ましくは20~50重量%のメカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュ、及び、(組成物の総重量に対して)30~95重量%、好ましくは40~90重量%、より好ましくは50~80重量%のさらなる材料を含む。
【0062】
本発明の実施態様において、組成物は、(組成物の総重量に対して、5重量%未満の水を含み、好ましくは1重量%未満、より好ましくは0.1重量%未満である。水の含有量は、好適には、室温から800℃まで10℃/分で昇温する温度曲線に従ったTGA-MSにより測定された、120℃までの質量損失量から決定される。
【0063】
本発明の実施態様において、組成物は、メカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュ及びさらなる材料からなる。
【0064】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載の組成物を得る方法を提供し、かかる方法は下記工程を含む。
(i)本明細書に記載のメカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュを準備する工程;
(ii)アスファルト、セメント、高分子及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれるさらなる材料を準備する工程;及び
(iii)上記工程(i)のメカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュと、上記工程(ii)のさらなる材料とを組み合わせる工程。
【0065】
別の態様において、本発明は、コンクリートを得る方法を提供し、かかる方法は下記工程を含む。
(i)上記さらなる材料がアスファルト又はセメントである、本明細書に記載された組成物を準備する工程;
(ii)建設用骨材を準備する工程;
(iii)上記工程(i)の組成物を、上記工程(ii)の建設用骨材と接触させる、好ましくは混合する工程。
【0066】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載のコンクリートを得る方法によって得られるコンクリートを提供する。
【0067】
本発明の実施態様において、建設用骨材は、砂、砂利、砕石、スラグ、再生コンクリート、粘土、軽石、パーライト、バーミキュライト、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。好ましい実施態様において、建設用骨材は、EN 13043(2002)、EN 13383(2019)、EN 12620(2013)又はEN 13242(2013)に定義される1の骨材であり、好ましくは、EN 12620(2013)に定義される1の骨材である。
【0068】
本発明の好ましい実施態様において、工程(iii)は、工程(i)の組成物を、工程(ii)の建設用骨材及び水と接触させること、好ましくは混合することをさらに含む。本発明によれば、工程(i)の組成物、工程(ii)の建設用骨材、及び水は、実質的に同時に接触、好ましくは混合されてもよく、又は、段階的に、工程(i)の組成物を水と最初に接触、好ましくは混合させてから、工程(ii)の建設用骨材と接触、好ましくは混合させてもよい。
【0069】
本発明の別の態様では、本明細書に記載のメカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュの使用が提供される。
・充填剤として、好ましくはアスファルト、セメント、高分子及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれる材料中の充填剤としての使用;
・コンクリート中の、アスファルト又はセメントの部分的な代替としての使用;
・コンクリートの圧縮強度を増加させるための使用;
・コンクリートの耐久性を向上させるための使用;又は、
・塩化物の透過性及び/又は空隙率を低下させることによる、コンクリートの耐久性を向上させるための使用。
【0070】
組成物、特にメカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュの特徴に関連して、又は、さらなる材料の特徴に関連して、本明細書に記載された発明の実施態様は、本明細書に記載される上記メカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュ又は組成物を得る方法、本明細書に記載されるコンクリートを得る方法、及び、本明細書に記載されるメカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュの使用に適用できることが、当業者には理解される。
【実施例
【0071】
BET表面性、BJH脱着積算細孔表面積及び脱着平均細孔径(BETによる4V/A)は、表面積分析を行う前の脱着サイクルに際し、400℃に加熱した試料重量0.5~1gの試料を用いて、77Kの温度で決定した。
【0072】
粒度分布測定は、フラウンホーファー理論を利用したFritsch Analysette 22 Nanotecにより行った。
【0073】
無機物(SiO、Al、Fe及びCaO)の含有量は、Bruker Tracer 5Gを用いて、蛍光X線分光法により求めた。
【0074】
CO含有量は、Setaram TAG 16 TGA/DSC デュアルチャンバーバランスとAmetek Dycor Proline MSとを組み合わせたものを用い、試料は0.1~2gとし、室温から800℃まで10℃/分で昇温し、その後室温まで15℃/分で降温する温度曲線に従ったTGA-MSにより測定された、120℃以上における質量損失量より求めた。
【0075】
圧縮強度はISO1920:2005のパート4に準拠して試験した。
【0076】
実施例1
メカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュは、フライアッシュの試料10gを、二酸化チタンで被覆された不活性媒体(ステンレス鋼球)500グラムと共に、圧力セルに入れることで製造された。上記セルを1MPa(9.87atm)に加圧し、高エネルギーボールミルに設置し、5000rpmで48時間回転させる。反応は室温で開始し、加熱や冷却は行わなかった。
【0077】
実施例2
下記に示す表に示した特性を有する生成物が得られるように、機械的攪拌及びCO圧力を変更し、実施例1と同様にして、2つの未加工のフライアッシュ試料A及びBをメカノケミカルカルボキシル化(処理)した。未加工の試料Aはアルバータ州のジェネシー(カナダ国)の石炭工場から入手し、ASTM C618(2019)のクラスFの要件を満たすものである。未加工の試料Bはシヴィタヴェッキア(イタリア国)の石炭工場から入手した。未加工の試料Cはコルドメ(フランス国)の石炭工場から入手した。試料B及びCの未加工のフライアッシュは、一般的に品質の劣ったフライアッシュであり、10重量%を超える濃度でコンクリート充填剤として用いることは不適当である。
【0078】
【表1】
【0079】
メカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュA及びBは、ポルトランドセメントと重量:重量で1:5(充填剤:セメント)の比で混合し、充填剤として用いた。
【0080】
得られたメカノケミカルカルボキシル化されたフライアッシュとポルトランドセメントの混合物に、細砂利及び水(すべての試料に対して同じ比を採用)をそれぞれ混合し、コンクリートスラリーを得た。得られたコンクリートの、2日、7日、及び28日後の圧縮強度を観測した。
【0081】
比較のため、未加工のフライアッシュ試料A及びBと純ポルトランドセメントとを用いて、同様のコンクリートスラリーを調製した。
【0082】
【表2】
【0083】
圧縮強度の測定から分かるように、本発明に係るメカノケミカルカルボキシル化された無機充填剤は、未処理の(フライアッシュのような)材料と比較して、予想外に大きな性能の向上をもたらす。さらに驚くべきことに、本発明に係るメカノケミカルカルボキシル化された無機充填剤は、純粋なセメントの混合物をも凌駕することが分かった。
【国際調査報告】