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特表2023-502034ヒドロゲナーゼ活性を有するモノマーポリペプチド、特にヒドロゲナーゼ活性を有する組換えモノマーポリペプチド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-20
(54)【発明の名称】ヒドロゲナーゼ活性を有するモノマーポリペプチド、特にヒドロゲナーゼ活性を有する組換えモノマーポリペプチド
(51)【国際特許分類】
   C12N 9/02 20060101AFI20230113BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230113BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230113BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230113BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230113BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230113BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20230113BHJP
   C12N 15/53 20060101ALN20230113BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20230113BHJP
   C12N 15/63 20060101ALN20230113BHJP
【FI】
C12N9/02 ZNA
C07K19/00
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/02 Z
C12N15/53
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022527726
(86)(22)【出願日】2020-11-12
(85)【翻訳文提出日】2022-06-28
(86)【国際出願番号】 EP2020081931
(87)【国際公開番号】W WO2021094465
(87)【国際公開日】2021-05-20
(31)【優先権主張番号】19208856.5
(32)【優先日】2019-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】2019/5783
(32)【優先日】2019-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522183814
【氏名又は名称】アシュ2ウィン ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゴドー、ダミアン
(72)【発明者】
【氏名】ロルジュ、フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ギーゼル、バルト
(72)【発明者】
【氏名】ヨブ、ナタリー
(72)【発明者】
【氏名】フランク、ファブリース
(72)【発明者】
【氏名】カルダレッラ、ジュゼッペ
(72)【発明者】
【氏名】カルドル、ピエール
(72)【発明者】
【氏名】レマクル、クレア
【テーマコード(参考)】
4B050
4B064
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B050CC07
4B050DD02
4B050EE10
4B050LL05
4B064AG01
4B065AA01X
4B065AA01Y
4B065AA57X
4B065AA57Y
4B065AA72X
4B065AA72Y
4B065AA83X
4B065AA83Y
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA54
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA09
4H045BA41
4H045CA11
4H045DA89
4H045EA61
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、[NiFe]-ヒドロゲナーゼ様タンパク質の活性部位を含む単一サブユニットを含むモノマーポリペプチドであって、ヒドロゲナーゼ活性を有するモノマーポリペプチドに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
[NiFe]-ヒドロゲナーゼ様タンパク質の活性部位を含む単一サブユニットを含むモノマーポリペプチドであって、ヒドロゲナーゼ活性を有する、モノマーポリペプチド。
【請求項2】
天然環境から単離され、特に天然の[NiFe]-ヒドロゲナーゼ様タンパク質から単離されることを特徴とする、請求項1に記載のモノマーポリペプチド。
【請求項3】
組換え又は異種であることを特徴とする、請求項1に記載のモノマーポリペプチド。
【請求項4】
精製されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のモノマーポリペプチド。
【請求項5】
その切断型又は非切断型アミノ酸配列が、配列番号2のアミノ酸配列及び/又は配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも15%の同一性、好ましくは少なくとも20%の同一性、より優先的には少なくとも40%の同一性、より優先的にはなお少なくとも60%の同一性、より優先的にはなお少なくとも80%の同一性、より優先的にはなお少なくとも90%の同一性、より優先的にはなお少なくとも95%の同一性、より優先的にはなお少なくとも99%の同一性を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載のモノマーポリペプチド。
【請求項6】
[NiFe]-ヒドロゲナーゼ様タンパク質の活性部位を含む前記サブユニットが、シネコキスティス(Synechocystis sp.)CCP6803中の/由来のHoxEFUYH[NiFe]-ヒドロゲナーゼ様タンパク質のHoxHサブユニットであることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のモノマーポリペプチド。
【請求項7】
少なくとも0.01μmol H.min-1.mg-1の酵素、好ましくは少なくとも0.05μmol H.min-1.mg-1の酵素、優先的には少なくとも10μmol H.min-1.mg-1の酵素のヒドロゲナーゼ活性を有することを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のモノマーポリペプチド。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載のモノマーポリペプチドを含む宿主細胞。
【請求項9】
前記[NiFe]-ヒドロゲナーゼ様タンパク質の少なくとも1つの成熟因子を更に含み、前記少なくとも1つの成熟因子が、前記宿主細胞に対して内因性及び/又は前記宿主細胞に対して外因性であり、好ましくは、前記[NiFe]-ヒドロゲナーゼ様タンパク質の少なくとも1つの成熟因子は、成熟因子HypA、HypB、HypC、HypD、HypE、HypF及びHoxWからなる群から選択され、
a)それぞれのアミノ酸配列が、それぞれ、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18のアミノ酸配列と少なくとも15%の同一性、好ましくは少なくとも20%の同一性、より優先的には少なくとも40%の同一性、より優先的にはなお少なくとも60%の同一性、より優先的にはなお少なくとも80%の同一性、より優先的にはなお少なくとも90%の同一性、より優先的にはなお少なくとも95%の同一性、より優先的にはなお少なくとも99%の同一性を有し、又は
b)これらの成熟因子の全てをコードする、配列番号19のヌクレオチド配列と、少なくとも15%の同一性、好ましくは少なくとも20%の同一性、より優先的には少なくとも40%の同一性、より優先的にはなお少なくとも60%の同一性、より優先的にはなお少なくとも80%の同一性、より優先的にはなお少なくとも90%の同一性、より優先的にはなお少なくとも95%の同一性、より優先的にはなお少なくとも99%の同一性を有する連結ヌクレオチド配列によって一緒にコードされることを特徴とする、請求項8に記載の宿主細胞。
【請求項10】
前記モノマーポリペプチド及び/又は前記少なくとも1つの成熟因子が、発現ベクターに含まれる少なくとも1つの遺伝子の発現に由来し、前記発現ベクターが前記宿主細胞に含まれることを特徴とする、請求項8又は9に記載の宿主細胞。
【請求項11】
請求項1から7のいずれか一項に記載のモノマーポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、宿主細胞。
【請求項12】
前記[NiFe]-ヒドロゲナーゼ様タンパク質の少なくとも1つの成熟因子を更に含み、前記少なくとも1つの成熟因子が、前記宿主細胞に対して内因性及び/又は前記宿主細胞に対して外因性であり、好ましくは、前記[NiFe]-ヒドロゲナーゼ様タンパク質の少なくとも1つの成熟因子は、成熟因子HypA、HypB、HypC、HypD、HypE、HypF及びHoxWからなる群から選択され、
a)それぞれのアミノ酸配列が、それぞれ、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18のアミノ酸配列と少なくとも15%の同一性、好ましくは少なくとも20%の同一性、より優先的には少なくとも40%の同一性、より優先的にはなお少なくとも60%の同一性、より優先的にはなお少なくとも80%の同一性、より優先的にはなお少なくとも90%の同一性、より優先的にはなお少なくとも95%の同一性、より優先的にはなお少なくとも99%の同一性を有し、又は
b)これらの成熟因子の全てをコードする配列番号19のヌクレオチド配列と、少なくとも15%の同一性、好ましくは少なくとも20%の同一性、より優先的には少なくとも40%の同一性、より優先的にはなお少なくとも60%の同一性、より優先的にはなお少なくとも80%の同一性、より優先的にはなお少なくとも90%の同一性、より優先的にはなお少なくとも95%の同一性、より優先的にはなお少なくとも99%の同一性を有する連結ヌクレオチド配列によって一緒にコードされることを特徴とする、請求項11に記載の宿主細胞。
【請求項13】
前記モノマーポリペプチド及び/又は前記少なくとも1つの成熟因子が、発現ベクターに含まれる少なくとも1つの遺伝子の発現に由来し、前記発現ベクターが前記宿主細胞に含まれることを特徴とする、請求項11又は12に記載の宿主細胞。
【請求項14】
以下の工程:
・遺伝物質を含む物質、例えば、宿主細胞又は発現ベクターを、インビボ又はインビトロで遺伝子改変を行って、遺伝子改変された物質、例えば、遺伝子改変された宿主細胞又は遺伝子改変された発現ベクターを得る工程と、
・前記遺伝子改変された物質、例えば、前記遺伝子改変された宿主細胞又は前記遺伝子発現ベクターをインキュベートして、[NiFe]-ヒドロゲナーゼ様タンパク質の活性部位を含む単一サブユニットを含むモノマーポリペプチドを得る工程であって、前記モノマーポリペプチドが、ヒドロゲナーゼ活性を有する工程と、
を含む、請求項1から7のいずれか1項に記載のヒドロゲナーゼ活性を有するモノマーポリペプチドを得る方法。
【請求項15】
前記遺伝子改変工程が、インビボ又はインビトロで行われ、
a)宿主細胞を、及び/又は[NiFe]-ヒドロゲナーゼ様タンパク質の活性部位を含む単一サブユニットを含むモノマーポリペプチドを少なくとも一部がコードする外因性ポリヌクレオチドを含む発現ベクターを、遺伝子改変して、前記モノマーポリペプチドを産生するために前記外因性ポリヌクレオチドの発現を維持することを可能にするインキュベーション条件に従って実施される前記インキュベーション工程中に、インキュベートされる遺伝子改変された宿主細胞及び/又は遺伝子改変された発現ベクターを得ること、又は
b)宿主細胞の少なくとも1つの遺伝子変異を誘導して、前記モノマーポリペプチドを産生するためにインキュベーション条件に従って実施される前記インキュベーション工程中に、インキュベートされる遺伝子改変された宿主細胞を得ることからなることを特徴とする、請求項14に記載のヒドロゲナーゼ活性を有するモノマーポリペプチドを得る方法。
【請求項16】
外因性ポリヌクレオチドを含めることによって前記宿主細胞を遺伝子改変する前記工程が、発現ベクター、特に、前記外因性ポリヌクレオチドを含む改変された発現ベクターを前記宿主細胞に含めることからなることを特徴とする、請求項15に記載のヒドロゲナーゼ活性を有するモノマーポリペプチドを得る方法。
【請求項17】
前記宿主細胞を遺伝子改変する前記工程が、少なくとも一部が前記モノマーポリペプチドをコードし、その切断型又は非切断型アミノ酸配列が、配列番号2のアミノ酸配列及び/又は配列番号4の配列のアミノ酸と、少なくとも15%の同一性、好ましくは少なくとも20%の同一性、より優先的には少なくとも40%の同一性、より優先的には更に少なくとも60%の同一性、より優先的には更に少なくとも80%の同一性、より優先的には更に少なくとも90%の同一性、より優先的には更に少なくとも95%の同一性、より優先的には更に少なくとも99%の同一性を有する前記外因性ポリヌクレオチドを、前記宿主細胞に含めることからなることを特徴とする、請求項15又は16に記載のヒドロゲナーゼ活性を有するモノマーポリペプチドを得るための方法。
【請求項18】
前記宿主細胞を遺伝子改変する前記工程が、前記[NiFe]-ヒドロゲナーゼ様タンパク質の少なくとも1つの成熟因子を前記宿主細胞に含めることを更に含み、前記少なくとも1つの成熟因子が、前記宿主細胞に対して内因性及び/又は前記宿主細胞に対して外因性であり、好ましくは、成熟因子HypA、HypB、HypC、HypD、HypE、HypF及びHoxWからなる群から選択される前記[NiFe]-ヒドロゲナーゼ様タンパク質の少なくとも1つの成熟因子を含めることを更に含み、
a)それぞれのアミノ酸配列が、それぞれ、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18のアミノ酸配列と少なくとも15%の同一性、好ましくは少なくとも20%の同一性、より優先的には少なくとも40%の同一性、より優先的にはなお少なくとも60%の同一性、より優先的にはなお少なくとも80%の同一性、より優先的にはなお少なくとも90%の同一性、より優先的にはなお少なくとも95%の同一性、より優先的にはなお少なくとも99%の同一性を有し、又は
b)これらの成熟因子の全てをコードする、配列番号19のヌクレオチド配列と、少なくとも15%の同一性、好ましくは少なくとも20%の同一性、より優先的には少なくとも40%の同一性、より優先的にはなお少なくとも60%の同一性、より優先的にはなお少なくとも80%の同一性、より優先的にはなお少なくとも90%の同一性、より優先的にはなお少なくとも95%の同一性、より優先的にはなお少なくとも99%の同一性を有する連結ヌクレオチド配列によって一緒にコードされることを特徴とする、請求項15から17のいずれか一項に記載のヒドロゲナーゼ活性を有するモノマーポリペプチドを得る方法。
【請求項19】
前記少なくとも1つの成熟因子が、発現ベクターに含まれる少なくとも1つの遺伝子の発現に由来し、前記発現ベクターが前記宿主細胞に含まれることを特徴とする、請求項18に記載のヒドロゲナーゼ活性を有するモノマーポリペプチドを得る方法。
【請求項20】
前記モノマーポリペプチドを単離及び/又は精製する後続の工程を含むことを特徴とする、請求項14から20のいずれか一項に記載のヒドロゲナーゼ活性を有するモノマーポリペプチドを得るための方法。
【請求項21】
前記モノマーポリペプチドが、[NiFe]-ヒドロゲナーゼ様タンパク質の活性部位を含む単一サブユニットを含み、前記モノマーポリペプチドが、ヒドロゲナーゼ活性を有し、細胞内に存在するか又は存在せず、水素の生成又は消費を確実にすることができるインキュベーション条件による前記モノマーポリペプチドのインキュベーションによって水素を生成又は消費するための、又は表面を被覆するための、特に導電体の表面を被覆するための、例えばアノード又はカソードの表面を被覆するための、請求項1から7のいずれか一項に記載のモノマーポリペプチド又は請求項14から20に記載の方法により得られたモノマーポリペプチドの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒドロゲナーゼ活性を有するモノマーポリペプチド、特にヒドロゲナーゼ活性を有する組換えモノマーポリペプチド、このモノマーポリペプチドを含む宿主細胞、及びこのモノマーポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞に関する。本発明はまた、ヒドロゲナーゼ活性を有するモノマーポリペプチドを得るための方法、特にヒドロゲナーゼ活性を有する組換えモノマーポリペプチドを得るための方法、及びそのようなモノマーポリペプチドの使用、特にそのような組換えモノマーポリペプチドの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
化石エネルギー源の利用可能性の減少及び劇的な気候変化の恐れは、クリーンで再生可能な技術の出現をもたらした。水素(H)は、その高いエネルギー含有量、並びに燃料電池で使用される場合には温室効果ガス及びナノ粒子が存在しないため、推進力のある再生可能エネルギーキャリアと考えられている。Hの製造は、現在、化石炭化水素の化学的抽出、水の電気分解又はバイオマスの熱分解によって行われている。しかし、無公害で商業的に実現可能な生産システムがないことが大きな制約となっている。バイオ水素とも呼ばれるHの生物工学的生成のための方法の使用は、解決策となり得る。バイオ水素生成に関する研究の数は、この10年間で大幅に増加している。これには、主に細菌における発酵及び微細藻類における光合成のプロセスによる微生物産生が含まれるが、「電気酵素学」による水素の酵素的生成も含まれる。これらの方法は全て、ヒドロゲナーゼと呼ばれる特定の酵素に依存している。
【0003】
ヒドロゲナーゼは、化学反応:2H+2e←→Hを触媒する金属酵素である。この酵素依存性水素生成又は消費反応は、ヒドロゲナーゼ活性と定義される。反応は可逆的であり、その方向は酵素と相互作用することができる成分の酸化還元電位に依存する。H及び電子受容体の存在下では、ヒドロゲナーゼは水素を消費する。低電位電子供与体の存在下では、ヒドロゲナーゼは電子受容体としてプロトンを使用し、Hを生成する。ヒドロゲナーゼは、その多くがエネルギーキャリア又は供給源として水素を使用するため、微生物の間で広く普及している。これらの酵素は、細菌及び古細菌の分野に多くの代表的酵素を有し、一部の単細胞真核生物にも存在する。多くの点で多様であるにもかかわらず(宿主、サイズ、四次構造、電子供与体又は受容体)、ヒドロゲナーゼは、系統発生的に異なる3つのクラス:[Fe]-ヒドロゲナーゼ、[FeFe]-ヒドロゲナーゼ及び[NiFe]-ヒドロゲナーゼに分けられる。各クラスは、活性部位の特徴的な金属組成によって特徴付けられる。生理学的には、これらの酵素は、過剰な電子のためのバルブとして機能することが示されている。
【0004】
[Fe]-ヒドロゲナーゼの触媒中心は、FeS又はNi中心を含有せず、したがって、「鉄-硫黄中心を含まないヒドロゲナーゼ」又は[Fe]-ヒドロゲナーゼ(Shima and Thauer.2007.A third type of hydrogenase catalyzing H2 activation.Chem Rec 7:37-46)と命名されている。[Fe]-ヒドロゲナーゼは、ある種のメタン生成微生物(Pilak et al.2006.The crystal structure of the apoenzyme of the iron-sulphur cluster-free hydrogenase.J Mol Biol 358:798-809)に限られており、ニッケル欠乏時の増殖に必須である(Thauer.1998.Biochemistry of methanogenesis:a tribute to Marjory Stephenson.1998 Marjory Stephenson Prize Lecture.Microbiology 144:2377-2406)。特定の補因子に関連して、これらの酵素は、他のタイプのヒドロゲナーゼとは非常に異なる触媒特性を有する。実際、これらの酵素は、可逆的H生成反応を触媒しない(Vignais and Billoud.2007.Occurrence,classification,and biological function of hydrogenases:an overview.Chem Rev 107:4206-4272)。このため、その低い分布と同様に、このクラスのヒドロゲナーゼはほとんど研究されていない。既知のヒドロゲナーゼの大部分は、他の2つのクラスに属する。
【0005】
[FeFe]-ヒドロゲナーゼは、その触媒中心が高度に保存されている単量体酵素である。それは、システイン架橋によって[4Fe-4S]中心に結合した二核鉄部位である。非タンパク質リガンドであるシアン化物(CN)及び一酸化炭素(CO)は、二核中心の鉄原子に結合している。鉄原子はまた、2つの硫黄配位子を共有する(Nicolet et al.2000.A novel FeS cluster in Fe-only hydrogenases.Trends Biochem Sci 25:138-143、Nicolet et al.2002.Fe-only hydrogenases:structure,function and evolution J Inorg Biochem 91:1-8)。追加のドメインは、複数のFeS中心をホストし、外部電子源とこれらの単量体タンパク質に埋め込まれた活性部位との間の電子伝達鎖を提供する。更に、疎水性チャネルは、表面を活性部位に接続し、プロトンのアクセス及びH分子の出口を提供する。HydE、HydF及びHydGと命名された3つのシャペロンタンパク質は、[FeFe]-ヒドロゲナーゼの正しい集合に必要であることが知られている(Vignais et al.2001.Classification and phylogeny of hydrogenases.FEMS Microbiol Rev 25:455-501)。これらの酵素は、嫌気性原核生物(クロストリジウム(Clostridium)属又はデスルホビブリオ(Desulfovibrio)属)に存在するが、嫌気性真菌又は単細胞微細藻類(クロレラ(Chlorella)属又はクラミドモナス(Chlamydomonas)属)などの一部の下等真核生物にも存在する(Vignais and Billoud.2007.Occurrence,classification,and biological function of hydrogenases:an overview.Chem Rev 107:4206-4272)。[FeFe]-ヒドロゲナーゼは熱力学的に補助因子(フェレドキシン又はNADH)の再酸化を促進し、Hを生成する。したがって、これらの酵素は、一般に、例えば発酵の停止を回避するために、細胞内の過剰な還元当量の除去に関与する。それらはまた、限られた群の微細藻類の光合成鎖と相互作用して光合成鎖を酸化し、無酸素インキュベーション後に炭素固定を活性化することができる(Ghysels et al.2013.Function of the chloroplast hydrogenase in the microalga Chlamydomonas:the role of hydrogenase and state transitions during photosynthetic activation in anaerobiosis.PLoS One 8:e64161、Godaux et al.2015.Induction of Photosynthetic Carbon Fixation in Anoxia Relies on Hydrogenase Activity and Proton-Gradient Regulation-Like1-Mediated Cyclic Electron Flow in Chlamydomonas reinhardtii.Plant Physiol 168:648-658)。
【0006】
[NiFe]-ヒドロゲナーゼは、球状ヘテロ多量体を形成する(Volbeda et al.1995.Crystal structure of the nickel-iron hydrogenase from Desulfovibrio gigas.Nature 373:580-587)。二金属[NiFe]活性部位は、鉄原子に結合した4つのシステイン及び3つの非タンパク質リガンド、1つのCO分子及び2つのCNによって配位されている大サブユニットに位置する(Happe et al.1997.Biological activation of hydrogen.Nature 385:126、Pierik et al.1999.Carbon monoxide and cyanide as intrinsic ligands to iron in the active site of [NiFe]-hydrogenases.NiFe(CN)2CO,Biology’s way to activate H2.J Biol Chem 274:3331-3337)。ヘテロ多量体の他のサブユニットは、活性部位と生理学的な電子供与体又は受容体との間で電子を伝導するいくつかの中央及び遠位FeS中心を含む。活性部位の近くに位置する[4Fe-4S]基は、活性に必須であると考えられる(Albracht.1994.Nickel hydrogenases:in search of the active site.Biochim Biophys Acta 1188:167-204)。構造遺伝子に加えて、これらのヘテロ多量体の成熟と、活性部位へのNi、Fe、CO及びCNの挿入に関与するいくつかのアクセサリー遺伝子が存在する。実際、[NiFe]-ヒドロゲナーゼの成熟は、少なくとも7つの補助タンパク質(HypA-F及びエンドペプチダーゼ)が関与する複雑な経路をたどる(Vignais and Billoud.2007.Occurrence,classification,and biological function of hydrogenases:an overview.Chem Rev 107:4206-4272)。[NiFe]-ヒドロゲナーゼの活性部位の別の特徴は、水素に対する強い親和性である。したがって、これらの酵素は、ある種の[NiFe]-ヒドロゲナーゼが良好な水素生成能力を有する場合でも、主に宿主微生物中のHを消費することによって作用する。[NiFe]-ヒドロゲナーゼは原核生物の中でかなり広く普及している酵素であり、細菌及び古細菌に多くの酵素がある。[NiFe]-ヒドロゲナーゼの分類は、異なるサブユニットのアミノ酸配列アラインメントに基づいており、[NiFe]-ヒドロゲナーゼを4つの群に分ける。注目すべきことに、この分類は、生理学的機能に由来する群とよく一致している(Vignais and Billoud.2007.Occurrence,classification,and biological function of hydrogenases:an overview.Chem Rev 107:4206-4272)。
【0007】
インビトロ及びインビボの両方でヒドロゲナーゼが極度に酸素に敏感であることは、工業レベルでの水素生成のためにこれらの酵素を考慮する場合に問題である。酸素は活性部位にリガンドとして結合し、電子を受け取り、酵素に捕捉された活性酸素種(ROS)に還元される。これは、ROSが脆弱な触媒中心を攻撃するのに十分な時間生存する場合、永続的な損傷をもたらす可能性がある。[FeFe]-ヒドロゲナーゼは、酵素が低濃度のOに曝露されると不可逆的な損傷を受けるため、Oに対して強い感受性を示す(Ghirardi et al.1997.Oxygen sensitivity of algal H2-production.Appl Biochem Biotechnol 63-65:141-151)。しかし、[NiFe]-ヒドロゲナーゼは、酸素によって引き起こされる損傷に対して[FeFe]-ヒドロゲナーゼよりも耐性があると記載されている。更に、[NiFe]-ヒドロゲナーゼは、Oによって可逆的に不活性化される。ラルストニア属(Ralstonia)などの一部の微生物は、酸素耐性活性部位を発達させ、空気の存在下でも水素を酸化することができる(Van der Linden et al.2004.The soluble [NiFe]-hydrogenase from Ralstonia eutropha contains four cyanides in its active site,one of which is responsible for the insensitivity towards oxygen.J Biol Inorg Chem 9:616-626)。これらの多様な特徴は、[NiFe]-ヒドロゲナーゼを工業的に実行可能な技術的使用のより良い候補にしている。
【0008】
HoxEFUYHは、シアノバクテリウムであるシネコキスティス(Synechocystis sp.)PCC6803に存在するよく特徴付けられた[NiFe]-ヒドロゲナーゼである。HoxEFUYHは、五量体で細胞質[NiFe]-ヒドロゲナーゼである。HoxY及びHoxHは「ヒドロゲナーゼ」部分を形成し、HoxE、HoxF及びHoxUは酸化還元補因子と接触する部分を構成する(Carrieri et al.2011.The role of the bidirectional hydrogenase in cyanobacteria.Bioresour Technol 102:8368-8377)。HoxHは、触媒活性を担うサブユニット、すなわち[NiFe]-ヒドロゲナーゼの活性部位を含むサブユニットである。HoxHは、ニッケル原子と鉄原子との結合のための保存された残基を含む。HoxYは、NiFe触媒中心付近に近位[4Fe-4S]基を含有する。HoxF及びHoxUは、基質(NADH、フラボドキシン又は還元型フェレドキシン)とのインビボ相互作用を担う鉄-硫黄型タンパク質である。HoxFUは、電子をHoxYHに輸送する中央及び遠位のFeS中心を含む。HoxEの機能は不明であるが、膜固定サブユニットである可能性がある。成熟経路の変異分析により、HypA、HypB、HypC、HypD、HypE、HypF及びHoxWと呼ばれる7つの必須成熟因子が同定された(Hoffmann et al.2006.Mutagenesis of hydrogenase accessory genes of Synechocystis sp.PCC 6803.Additional homologs of hypA and hypB are not active in hydrogenase maturation.FEBS J 273:4516-4527)。HoxEFUYHの成熟モデルが提案されている(Carrieri et al.2011.The role of the bidirectional hydrogenase in cyanobacteria.Bioresour Technol 102:8368-8377、Cassier-Chauvat et al.2014.Advances in the function and regulation of hydrogenase in the cyanobacterium Synechocystis PCC6803.Int J Mol Sci 15:19938-19951)。HoxHサブユニットは、HoxW特異的プロテアーゼによって処理され、[Ni-Fe]部位は、HypABCDEF複合体によって触媒サブユニットに付加される。シネコキスティス(Synechocystis sp.)PCC6803の完全ゲノムが配列決定されている。HoxEFUYH遺伝子は、シネコキスティス(Synechocystis)染色体に散在するhypABCDEF遺伝子とは異なり、オクタシストロン性オペロンにクラスター化していると同定された。hoxEFUYHオペロンのプロモータはあまり活性ではない(Dutheil et al.2012.The AbrB2 autorepressor,expressed from an atypical promoter,represses the hydrogenase operon to regulate hydrogen production in Synechocystis strain PCC6803.J Bacteriol 194:5423-5433)。そのプロモータは、水素、光、硝酸塩、ニッケル、酸素又は硫黄の利用可能性のような種々の環境条件によって調節される(Oliveira and Lindblad.2009.Transcriptional regulation of the cyanobacterial bidirectional Hox-hydrogenase.Dalton Trans 9990-9996)。hox遺伝子は、酸素の存在下で構成的に発現されるが(Kiss et al.2009.Transcriptional regulation of the bidirectional hydrogenase in the cyanobacterium Synechocystis 6803.J Biotechnol 142:31-37)、酸素に感受性の酵素は、したがって好気性条件下で不活性であることに留意することが重要である。正確な生理学的機能は依然として議論されているが、HoxEFUYHは、好ましくない酸化還元条件下で過剰の電子を散逸させる安全弁として機能し、したがって発酵又は光合成中に細胞内の適切な酸化/還元バランスを維持する(Carrieri et al.2011.The role of the bidirectional hydrogenase in cyanobacteria.Bioresour Technol 102:8368-8377)。
【0009】
HoxEFUYHについては多数の研究がある。多くの特徴により、この酵素はバイオ水素生成の良好な候補となる。第1に、この[NiFe]-ヒドロゲナーゼは、プロトン還元に対してバイアスがある(McIntosh et al.2011.The [NiFe]-hydrogenase of the cyanobacterium Synechocystis sp.PCC 6803 works bidirectionally with a bias to H2 production.J Am Chem Soc 133:11308-11319)。オペロン、したがって酵素は、好気性条件下でシネコキスティス(Synechocystis sp.)PCC6803において弱く発現される。(Kiss et al.2009.Transcriptional regulation of the bidirectional hydrogenase in the cyanobacterium Synechocystis 6803.J Biotechnol 142:31-37)。酸素の存在下でのHoxEFUYHの不活性化は、完全かつほぼ瞬時である。しかし、HoxEFUYHは、酸化還元条件下で(例えば、水素による還元及び/又は酸素の脱離によって)迅速に再活性化することができる(1分程度の遅延)(Appel et al.2000.The bidirectional hydrogenase of Synechocystis sp.PCC 6803 works as an electron valve during photosynthesis.Arch Microbiol 173:333-338、Germer et al.2009.Overexpression,isolation,and spectroscopic characterization of the bidirectional [NiFe] hydrogenase from Synechocystis sp.PCC 6803.J Biol Chem 284:36462-36472、McIntosh et al.2011.The [NiFe]-hydrogenase of the cyanobacterium Synechocystis sp.PCC 6803 works bidirectionally with a bias to H2 production.J Am Chem Soc 133:11308-11319)。電気化学におけるいくつかの精製プロトコル(Schmitz et al.2002.HoxE--a subunit specific for the petmeric bidirectional hydrogenase complex(HoxEFUYH)of cyanobacteria.Biochim Biophys Acta 1554:66-74、Germer et al.2009.Overexpression,isolation,and spectroscopic characterization of the bidirectional [NiFe] hydrogenase from Synechocystis sp.PCC 6803.J Biol Chem 284:36462-36472)及び実施(McIntosh et al.2011.The [NiFe]-hydrogenase of the cyanobacterium Synechocystis sp.PCC 6803 works bidirectionally with a bias to H2 production.J Am Chem Soc 133:11308-11319)が利用可能である。水素の生成を効率的に触媒する能力、及び酸素に対する限定された感度により、HoxEFUYHを良好な候補として同定することができた。
【0010】
目的のタンパク質を大量に産生するための一般的かつ効率的な方法は、異種宿主内でのこのタンパク質の組換え産生である。この生物工学的プロセスは、優れた純度で大量の目的のタンパク質を産生するために、宿主生物のゲノムへの目的の遺伝子の導入及び発現を含む。いくつかの組換え産生系が存在する。原核生物系は、依然として、目的のタンパク質を産生するための最も速く最も簡単な系であり、真核生物系は、実施するのがより遅く、より複雑である。各生物は、それ自体の利点及び欠点を有する。普遍的に適用可能な発現系は依然として存在しない。どの宿主が特定のタンパク質又は特定の最終用途に最もよく作用するかを予測することは非常に困難である。大腸菌(E.coli)は、組換え産生のための参照生物である。実際、この細菌は、遺伝子工学及び生理学的工学の観点から非常によく知られており、例えば、最適化された細胞(高生産性、コドンの使用、内因性プロテアーゼの阻害)、最適化された培養培地、短い倍加時間、低い汚染、多くの市販ベクターの利用可能性、工業規模の拡大、高い生産収率が挙げられる。
【0011】
一般に金属タンパク質などの組換えヒドロゲナーゼの産生及び操作は、限られた成功しか収めていない。文献は、大腸菌(E.coli)において異種発現された[FeFe]-ヒドロゲナーゼの例を提供する(King et al.2006.Functional studies of [FeFe] hydrogenase maturation in an Escherichia coli biosynthetic system.J Bacteriol 188:2163-2172、Yacoby et al.2012.Optimized expression and purification for high-activity preparations of algal [FeFe]-hydrogenase PLoS One 7:e35886、Kuchenreuther et al.2009.Tyrosine,cysteine,and S-adenosyl methionine stimulate in vitro [FeFe] hydrogenase activation.PLoS One 4:e7565)。[FeFe]-ヒドロゲナーゼは、限られた数の成熟因子を必要とする単量体酵素である。
【0012】
[NiFe]-ヒドロゲナーゼの異種産生は困難であると記載されている(English et al.2009.Recombinant and in vitro expression systems for hydrogenases:new frontiers in basic and applied studies for biological and synthetic H2 production.Dalton Trans 9970-9978)。
【0013】
第1に、この困難は、[NiFe]活性部位アセンブリプロセスの複雑さ及び特異性に起因し、これは、理論的には、機能的アセンブリのために少なくとも7つの成熟因子を必要とする。
【0014】
第2に、ヘテロ多量体のサブユニットのそれぞれの正しい折り畳みが必要とされ、これは、異種産生中に制御及び確保することが特に困難である。
【0015】
第3に、ヘテロ多量体複合体における各サブユニットの正しいアセンブリが必須である。ミスフォールディングは、凝集現象をもたらし、したがって活性酵素の量の減少をもたらす可能性がある(Singh et al.2015.Protein recovery from inclusion bodies of Escherichia coli using mild solubilization process.Microb Cell Fact 14:41)。正確な配列を得ることは、酵素活性を得るために必要であり、これは、異種宿主において制御及び確保することが困難である可能性がある。
【0016】
この全てが、[NiFe]-ヒドロゲナーゼが異種組換えによって産生されたときに必ずしも活性であるとは限らない理由を説明している。しかし、活性な[NiFe]-ヒドロゲナーゼが大腸菌(E.coli)において産生された文献にはいくつかの事例がある(Kim et al.2011.Production of biohydrogen by heterologous expression of oxygen-tolerant Hydrogenovibrio marinus [NiFe]-hydrogenase in Escherichia coli J Biotechnol 155:312-319、Maier et al.2015.Identification,cloning and heterologous expression of active [NiFe]-hydrogenase 2 from Citrobacter sp.SG in Escherichia coli.J Biotechnol 199:1-8、Schiffels et al.2013.An innovative cloning platform enables large-scale production and maturation of an oxygen-tolerant [NiFe]-hydrogenase from Cupriavidus necator in Escherichia coli.PLoS One 8:e68812、Weyman et al.2011.Genetic analysis of the Alteromonas macleodii [NiFe]-hydrogenase.FEMS Microbiol Lett 322:180-187)。
【0017】
特に、Sun及び共同研究者の研究(Sun et al.2010.Heterologous expression and maturation of an NADP-dependent [NiFe]-hydrogenase:a key enzyme in biofuel production.PLoS One 5:e10526)は、13の異種遺伝子(4つの構造遺伝子及び9つの成熟因子)の同時発現を可能にする4つの発現ベクターを介して、大腸菌(E.coli)における無酸素状態でのピュロコックス・フリオスス(Pyrococcus furiosus)由来の[NiFe]-ヒドロゲナーゼの発現を可能にした。より具体的には、Sunらの研究は、PF0891、PF0892、PF0893及びPF0894と呼ばれる4つのサブユニットを含む四量体組換え[NiFe]-ヒドロゲナーゼ様酵素を得ることを可能にした。精製後、この四量体組換え酵素は、P.フリオスス(P.furiosus)から精製された天然酵素と機能的に類似していることが見出された。
【0018】
HoxEFUYHはシアノバクテリアであるシネコキスティス(Synechocystis)の原核生物タンパク質であるので、大腸菌系はその組換え産生に適している。大腸菌(E.coli)でのこの産生は既に成功している。この意味で、Maeda及び共同研究者は、無酸素条件下でシアノバクテリアHoxEFUYH酵素を発現する大腸菌(E.coli)細胞における水素生成のインビボ増加を示した(Maeda et al.2007.Inhibition of hydrogen uptake in Escherichia coli by expressing the hydrogenase from the cyanobacterium Synechocystis sp.PCC 6803.BMC Biotechnol 7:25)。HoxEFUYHの存在下でのこのような水素生成の増加は、大腸菌(E.coli)における内因性H消費ヒドロゲナーゼ1及び2の活性の阻害によるものである。
【0019】
HoxEFUYH遺伝子及びこれらの関連成熟因子を大腸菌(E.coli)に導入したWells及び共同研究者にも言及すべきである(Wells et al.2011.Engineering a non-native hydrogen production pathway into Escherichia coli via a cyanobacterial [NiFe] hydrogenase.Metab Eng 13:445-453)。この研究は、内因性ヒドロゲナーゼのヌル宿主におけるHoxEFUYHを介したインビボ及びインビトロの両方での無酸素状態での水素の産生を実証した。それらは、発酵のような宿主電子伝達系との共役を示し、水素生成収率を改善するための代謝工学におけるHoxEFUYHの可能性を示す。
【0020】
先行技術分野の状況では、文献D2(Hornhardt et al.1986.Characterization of a native subunit of the NAD-linked hydrogenase isolated from a mutant of Alcaligenes eutrophus H16.Biochimie,Masson,Paris,FR,vol.68(1),pages 15-24)及びD3(Przybyla et al.1992.Structure-function relationships among the nickel-containing hydrogenases.FEMS Microbiol Rev 8:109-135)が、そのように見えると考えているようであっても、[NiFe]-ヒドロゲナーゼ様タンパク質の活性部位を含む単一サブユニット、[NiFe]特に-ヒドロゲナーゼ様複合体に由来し、それ自体ヒドロゲナーゼ活性を有する単離されたモノマーを含むモノマーポリペプチドの開示はない。
【0021】
文献D2は、アルカリゲネス・ユートロファス(Alcaligenes eutrophus)H16の[NiFe]-ヒドロゲナーゼの天然サブユニットの特性決定を記載している。このペプチドは、[NiFe]-ヒドロゲナーゼの触媒サブユニットを表し、酸化還元メディエータとしてのNADとは完全に不活性であるが、メチレンブルー、フェリシアン化物及びシトクロムCとは非常に低い残存活性を有すると記載されている。
【0022】
文献D3には、ヒドロゲナーゼ活性を有する[NiFe]-ヒドロゲナーゼ様モノマーの存在が示唆されている。例として、文献D3は、文献D2を引用して、アルカリゲネス・ユートロファス(Alcaligenes eutrophus)の[NiFe]-ヒドロゲナーゼ、及び大腸菌(Escherishia coli)の[NiFe]-ヒドロゲナーゼ-1について言及している。
【0023】
しかし、文献D1(Massanz et al.1998.Subforms and in vitro reconstitution of the NAD-reducing hydrogenase of Alcaligenes eutrophus.J Bacteriol 180:1023-1029)、D4(Senger et al.2017.Proteolytic cleavage orchestrates cofactor insertion and protein assembly in [NiFe]-hydrogenase biosynthesis.J Biol Chem 292:11670-11681)及びD5(Pinske et al.2011.Efficient electron transfer from hydrogen to benzyl viologen by the [NiFe]-hydrogenases of Escherichia coli is dependent on the coexpression of the iron-sulfur cluster-containing small subunit.ArchMicrobiol 193:893-903)に記載された研究を含む、その後に公開された研究は、文献D2及びD3の研究の結論が誤っていることを示した。
【0024】
文献D1に記載されている研究は、アルカリゲネス・ユートロファス(Alcaligenes eutrophus)H16の[NiFe]-ヒドロゲナーゼの活性部位含有サブユニットのみが、いくつかの酸化還元メディエータ、特にベンジルビオロゲンとヒドロゲナーゼ様活性を有さないことを実証した。文献D1には、ヒドロゲナーゼ活性を有する可能性が高いアルカリゲネス・ユートロファス(Alcaligenes eutrophus)の[NiFe]-ヒドロゲナーゼの最小物質が、[NiFe]中心を含む大サブユニットと、最小のFeS中心を有する小サブユニットとからなることが記載されている。同様に、文献D4及び文献D5に提示された研究は、大腸菌(Escherishia coli)の[NiFe]-ヒドロゲナーゼ-1の単一の触媒サブユニットがヒドロゲナーゼ活性を有さないことを示すことによって、文献D3の教示と矛盾する。
【0025】
文献D1、D4及びD5の研究を含む、この主題で実施された研究の大部分は、小サブユニットに位置する[4Fe-4S]中心が、[NiFe]-ヒドロゲナーゼの大サブユニットのヒドロゲナーゼ活性に必須かつ不可欠であると考えている(Albracht.1994.Nickel hydrogenases:in search of the active site.Biochim Biophys Acta 1188:167-204)。更に、[NiFe]-ヒドロゲナーゼの構造分析は、活性部位を含む触媒サブユニットにFeS中心が存在しないことを大部分実証している(Lubitz et al.2014.Hydrogenases.Chem Rev 114:4081-4148)。
【0026】
したがって、文献D2で前述した結果は、低ヒドロゲナーゼ活性の測定を可能にする調製物中のFeS中心の強調によって証明されるように、小サブユニットによる触媒サブユニットの汚染によってのみ説明することができる。
【0027】
結論として、先行技術を構成する実施された全ての研究は、サブユニットの数の減少が、ヒドロゲナーゼの活性にも安定性にも有利ではなく、NiFe様ヒドロゲナーゼの多量体複合体から単離されたNiFe中心含有サブユニットは、それ自体ヒドロゲナーゼ活性を有さないと考えている。
【0028】
残念なことに、特に上記の先行技術から明らかなように、商業的に利益のある水素のバイオ生産のための[NiFe]-ヒドロゲナーゼの使用、特にHoxEFUYHの使用を著しく妨げるいくつかの欠点が残っている。
【0029】
したがって、上記のように、[NiFe]-ヒドロゲナーゼは水素の生成の可能性が明らかに高いので、現在まで、水素生成のための[NiFe]-ヒドロゲナーゼの使用を妨げる障害を克服することが実際に必要とされている。
【発明の概要】
【0030】
これらの問題を解決するために、本明細書では、本発明に従って、[NiFe]-ヒドロゲナーゼ様タンパク質の活性部位を含む単一サブユニットを含むモノマーポリペプチドであって、酵素活性、特にヒドロゲナーゼ様酵素活性、より具体的には触媒活性、更により具体的にはヒドロゲナーゼ様触媒活性を有する当該モノマーポリペプチドが提供される。
【0031】
好ましくは、本発明によれば、当該モノマーポリペプチドは、[NiFe]-ヒドロゲナーゼ様タンパク質の活性部位を含む単一サブユニットを含む。
【0032】
好ましくは、本発明によれば、当該モノマーポリペプチドは、[NiFe]-ヒドロゲナーゼ様タンパク質の活性部位を含む単一サブユニットからなる。
【0033】
好ましくは、本発明によれば、当該モノマーポリペプチドは、[NiFe]-ヒドロゲナーゼ様タンパク質の活性部位を含む単一サブユニットで作製される。
【0034】
換言すれば、優先的に、本明細書では、本発明に従って、[NiFe]-ヒドロゲナーゼ様タンパク質の活性部位のみを含む単一サブユニットを含むモノマーポリペプチドであって、酵素活性、特にヒドロゲナーゼ様酵素活性、より具体的には触媒活性、更により具体的にはヒドロゲナーゼ様触媒活性を有する当該モノマーポリペプチドが提供される。
【0035】
本発明の文脈において、[NiFe]-ヒドロゲナーゼ様タンパク質の活性部位を含み、ヒドロゲナーゼ活性を有する単一サブユニットを含むそのようなモノマーポリペプチドは、水素生成のための[NiFe]-ヒドロゲナーゼの使用を妨げる障害を少なくとも部分的に解放することを可能にし、一方、少なくとも0.01μmol H.min-1.mg-1の酵素、好ましくは少なくとも0.05μmol H.min-1.mg-1の酵素のヒドロゲナーゼ活性を保証することが強調されている。
【0036】
実際、本発明によれば、[NiFe]-ヒドロゲナーゼ様タンパク質の活性部位を含む単一サブユニットを含むモノマーポリペプチドであるため、[NiFe]-ヒドロゲナーゼが遭遇する困難性、特に活性部位の集合を確実にすること、関与するサブユニットのそれぞれの適切な折り畳みを確実にすること、及びヘテロ多量体複合体中の各サブユニットの正しい集合を確実にすることは、大幅に低減されるか、又は排除さえされる。これにより、1つのサブユニットのみが関与するので、[NiFe]-ヒドロゲナーゼを得るプロセス中の再現性を高めることができる。実際、単一のモノマーポリペプチドの産生は、二量体、四量体及び五量体酵素と比較して、折り畳みの複雑なプロセスを大幅に単純化し、そのために、活性部位、各サブユニット及び最終的には酵素全体の正確なアセンブリを制御及び保証することが特に困難であり、これはそれらの使用の障害となる。本発明によれば、単一サブユニットの適切な折り畳みが必要であり、ヘテロ多量体複合体を形成するために異なるサブユニット間の集合は必要ではない。
【0037】
更に、本発明によるそのようなモノマーポリペプチドを産生するための方法は、好気性条件下で完全に実施することができ(発現及び精製工程中の酸素に関して予防措置を必要としない)、これにより、先行技術分野で遭遇する組換え二量体、四量体及び五量体[NiFe]-ヒドロゲナーゼを製造するための方法で遭遇する問題が回避され、その製造方法は無酸素状態で実施されることが強調されている。上述のように、バイオマスの蓄積が酸素の存在下で行われる場合であっても、組換えヒドロゲナーゼの産生段階は、それ自体、先行技術分野で公知の方法に従って無酸素状態で行われる(Sun and al.2010.Heterologous expression and maturation of an NADP-dependent [NiFe]-hydrogenase:a key enzyme in biofuel production.PLoS One 5:e10526,Wells et al.2011.Engineering a non-native hydrogen production pathway into Escherichia coli via a cyanobacterial [NiFe] hydrogenase.Metab Eng 13:445-453)。精製の様々なクロマトグラフィ工程中に酸素が存在しないことも報告されている(無酸素箱、緩衝液中の亜ジチオン酸ナトリウム)。方法の間にこのようなレベルの無酸素を維持することは、明らかに組換え産生に関連するコストの増加を伴い、これは本発明によって解決される。
【0038】
有利には、本発明によれば、本発明によるモノマーポリペプチドのサイズは、ヘテロ多量体と比較して明らかに小さく、酵素の質量活性(総タンパク質1mg当たりの触媒活性物質の数)の増加がこのようにして得られる。
【0039】
例えば、本発明によるモノマーポリペプチドの電気化学的実施中に、例えば燃料電池などで、酵素触媒のより良好な組込み及び緻密化も達成可能である。
【0040】
更に、本発明によるモノマーポリペプチドの三次元構造は、特にタンパク質の表面に露出した残基を決定するために、例えば界面に対する、例えば炭素電極に対する配向及び吸着を容易にするために容易にモデル化可能である。この特徴は、有利には、例えば、界面と酵素触媒との間の結合の安定性を改善することを可能にするだけでなく、界面と活性部位との間の直接電子伝達を最適化することも可能にする。したがって、エネルギー効率は、エネルギー損失を制限する追加の酸化還元リレーがない場合に改善される。
【0041】
本発明の文脈において、モノマーポリペプチドは、小サブユニット中に存在し、必須であると記載されている近位FeS中心の存在を伴わずに、実際に活性であり、Hの触媒的産生(例えば、酸化還元メディエータとして還元メチル-ビオロゲンを使用するヒドロゲナーゼによる標準的なインビトロH産生試験による)並びにHの触媒的消費(例えば、酸化還元メディエータとして酸化ベンジルビオロゲンを使用するヒドロゲナーゼによる標準的なインビトロH消費試験による)に適しており、更に他の酸化還元リレーにも適していることも実証されている。ヘテロ多量体酵素のこのような完全な単純化は、従来技術におけるヒドロゲナーゼ活性の強調を可能にしなかったので、これは非常に驚くべきことである。
【0042】
更に有利なことに、既知の組換え[NiFe]-ヒドロゲナーゼでは現在限られたH産生しか得られていないが(Sun et al.2010.Heterologous expression and maturation of an NADP-dependent [NiFe]-hydrogenase:a key enzyme in biofuel production.PLoS One 5:e10526、Schiffels et al.2013.An innovative cloning platform enables large-scale production and maturation of an oxygen-tolerant [NiFe]-hydrogenase from Cupriavidus necator in Escherichia coli.PLoS One 8:e68812、Maier et al.2015.Identification,cloning and heterologous expression of active [NiFe]-hydrogenase 2 from Citrobacter sp.SG in Escherichia coli.J Biotechnol 199:1-8)、本発明によるモノマーポリペプチドは、既知の(組換え)[NiFe]-ヒドロゲナーゼで得られる活性と少なくとも同等であるか、又はそれよりも高いヒドロゲナーゼ活性を有することが示された。
【0043】
本発明による一実施形態によれば、モノマーポリペプチドは、天然環境から単離され、特に[NiFe]-ヒドロゲナーゼ様天然タンパク質から単離される。
【0044】
例として、本発明によれば、当該モノマーポリペプチドは、原核生物に由来/単離することができる。例としては、エスケリキア(Escherichia)属のメンバー(例えば、大腸菌(Escherichia coli)など)、デスルホビブリオ(Desulfovibrio)属のメンバー(例えば、デスルホビブリオ・ギガス(Desulfovibrio gigas)など)、ハイドロゲノフィルス(Hydrogenophilus)属のメンバー(例えば、ハイドロゲノフィルス・サーモルテオルス(Hydrogenophilus thermoluteolus)など)、デスルホミクロビウム(Desulfomicrobium)属のメンバー(例えば、デスルホミクロビウム・バキュラタム(Desulfomicrobium baculatum)など)、シネコキスティス(例えば、シネコキスティス(Synechocystis sp.)PCC6803)、フォルミジウム(Phormidium)属のメンバー(例えば、フォルミジウム・アンビガム(Phormidium ambiguum)など)又はスピルリナ(Spirulina)属のメンバー(例えば、スピルリナ・プラテンシス(Spirulina platensis)など)が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、当該モノマーポリペプチドは、細胞若しくは微生物に由来してもよいか、又はインビトロ若しくはインビボで産生することができる。
【0045】
本発明による一実施形態によれば、モノマーポリペプチドは組換え又は異種である。
【0046】
有利には、本発明によれば、モノマーポリペプチドが精製される。
【0047】
好ましくは、本発明によれば、モノマーポリペプチドは、その切断型又は非切断型アミノ酸配列が、配列番号2のアミノ酸配列及び/又は配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも15%の同一性、好ましくは少なくとも20%の同一性、より優先的には少なくとも40%の同一性、より優先的にはなお少なくとも60%の同一性、より優先的にはなお少なくとも80%の同一性、より優先的にはなお少なくとも90%の同一性、より優先的にはなお少なくとも95%の同一性、より優先的にはなお少なくとも99%の同一性を有する。
【0048】
更により好ましくは、本発明によれば、モノマーポリペプチドは、その切断型又は非切断型アミノ酸配列が、配列番号2のアミノ酸配列及び/又は配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも81%の同一性、少なくとも82%の同一性、少なくとも83%の同一性、少なくとも84%の同一性、少なくとも85%の同一性、少なくとも86%の同一性、少なくとも87%の同一性、少なくとも88%の同一性、少なくとも89%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも91%の同一性、少なくとも92%の同一性、少なくとも93%の同一性、少なくとも94%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、少なくとも99%の同一性を有する。
【0049】
有利には、本発明によれば、当該モノマーポリペプチドは、[NiFe]-ヒドロゲナーゼ様タンパク質の活性部位を含む当該サブユニットが、シネコキスティス(Synechocystis sp.)PCC6803中の/由来のHoxEFUYH[NiFe]-ヒドロゲナーゼ様タンパク質のHoxHサブユニットであることを特徴とする。
【0050】
好ましくは、本発明によれば、当該モノマーポリペプチドは、少なくとも0.01μmol H.min-1.mg-1の酵素、好ましくは少なくとも0.05μmol H.min-1.mg-1の酵素、優先的には少なくとも10μmol H.m.mg-1の酵素のヒドロゲナーゼ活性を有する。
【0051】
本発明はまた、本発明によるモノマーポリペプチドを含む宿主細胞に関し、当該モノマーポリペプチドは、[NiFe]-ヒドロゲナーゼ様タンパク質の活性部位を含む単一サブユニットを含み、当該モノマーポリペプチドはヒドロゲナーゼ活性を有する。
【0052】
優先的には、本発明は、[NiFe]-ヒドロゲナーゼ様タンパク質の活性部位を含むサブユニットが、シネコキスティス(Synechocystis sp.)PCC6803中の/由来のHoxEFUYH[NiFe]-ヒドロゲナーゼ様タンパク質のHoxHサブユニットである、本発明によるモノマーポリペプチドを含む宿主細胞に関する。
【0053】
例として、本発明によれば、特に当該モノマーポリペプチドの発現のための宿主細胞は、エスケリキア(Escherichia)属(例えば、大腸菌(Escherichia coli)など)、バチルス(Bacillus)属(例えば、枯草菌(Bacillus subtilis)など)、ストレプロマイセス(Streptomyces)属(例えば、ストレプロマイセス・セリカラー(Streptomyces coelicolor)など)、シネコキスティス(Synechocystis)属(例えば、シネコキスティス(Synechocystis sp.)PCC6803など)、シネココッカス(Synechococcus)属(例えば、シネココッカス(Synechococcus)WH8102など)の宿主細菌細胞、又は任意の他の原核細胞、真核細胞、例えば、クラミドモナス(Chlamydomonas)属(例えば、コナミドリムシ(Chlamydomonas reinhardtii)など)、サッカロミセス(Saccharomyces)属(例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)など)、ピキア(Pichia)型(例えば、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)など)、又は別の型の真核細胞であってもよい。
【0054】
本発明によれば、当該宿主細胞に含まれる当該モノマーポリペプチドは、それ自体が、発現ベクターに含まれる遺伝子、例えば当該宿主細胞に挿入されたプラスミドの発現に由来し得るが、必ずしもそうではない。
【0055】
有利には、本発明によれば、当該宿主細胞に含まれる当該モノマーポリペプチドは、その切断型又は非切断型アミノ酸配列が、配列番号2のアミノ酸配列及び/又は配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも20%の同一性、より優先的には少なくとも40%の同一性、より優先的にはなお少なくとも60%の同一性、より優先的にはなお少なくとも80%の同一性、より優先的にはなお少なくとも90%の同一性、より優先的にはなお少なくとも95%の同一性、より優先的にはなお少なくとも99%の同一性を有する。
【0056】
好ましくは、本発明によれば、当該宿主細胞は、当該[NiFe]-ヒドロゲナーゼ様タンパク質の1つ又は複数の成熟因子、好ましくは成熟因子HypA、HypB、HypC、HypD、HypE、HypF及びHoxWからなる群から選択される当該[NiFe]-ヒドロゲナーゼ様タンパク質の1つ又は複数の成熟因子を含むことができ、
a)それぞれのアミノ酸配列が、それぞれ、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18のアミノ酸配列と少なくとも15%の同一性、好ましくは少なくとも20%の同一性、より優先的には少なくとも40%の同一性、より優先的にはなお少なくとも60%の同一性、より優先的にはなお少なくとも80%の同一性、より優先的にはなお少なくとも90%の同一性、より優先的にはなお少なくとも95%の同一性、より優先的にはなお少なくとも99%の同一性を有し、又は
b)これらの成熟因子の全てをコードする配列番号19のヌクレオチド配列と少なくとも15%の同一性、好ましくは少なくとも20%の同一性、より優先的には少なくとも40%の同一性、より優先的にはなお少なくとも60%の同一性、より優先的にはなお少なくとも80%の同一性、より優先的にはなお少なくとも90%の同一性、より優先的にはなお少なくとも95%の同一性、より優先的にはなお少なくとも99%の同一性を有する連結ヌクレオチド配列によって一緒にコードされる。
【0057】
本発明によれば、当該少なくとも1つの成熟因子は、宿主細胞に対して内因性及び/又は宿主細胞に対して外因性であってもよい。
【0058】
有利には、本発明による宿主細胞の場合、当該モノマーポリペプチド及び/又は当該少なくとも1つの成熟因子は、発現ベクターに含まれる少なくとも1つの遺伝子の発現に由来し、当該発現ベクターは当該宿主細胞に含まれる。
【0059】
本発明はまた、[NiFe]-ヒドロゲナーゼ様タンパク質の活性部位を含む単一サブユニットを含む本発明によるモノマーポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞に関し、当該モノマーポリペプチドはヒドロゲナーゼ活性を有する。
【0060】
優先的には、本発明は、[NiFe]-ヒドロゲナーゼ様タンパク質の活性部位を含むサブユニットが、シネコキスティス(Synechocystis sp.)PCC6803中の/由来のHoxEFUYH[NiFe]-ヒドロゲナーゼ様タンパク質のHoxHサブユニットであるモノマーポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞に関する。
【0061】
好ましくは、本発明によれば、モノマーポリペプチドをコードする当該ポリヌクレオチドは、配列番号1及び/又は配列番号3のヌクレオチド配列とそれぞれ少なくとも15%の同一性、好ましくは少なくとも20%の同一性、より優先的には少なくとも40%の同一性、より優先的にはなお少なくとも60%の同一性、より優先的にはなお少なくとも80%の同一性、より優先的にはなお少なくとも90%の同一性、より優先的にはなお少なくとも95%の同一性、より優先的にはなお少なくとも99%の同一性を有するヌクレオチド配列を有する。
【0062】
例として、本発明によれば、本発明によるモノマーポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含み、特に当該モノマーポリペプチドの発現に使用される宿主細胞は、エスケリキア(Escherichia)属(例えば、大腸菌(Escherichia coli)など)、バチルス(Bacillus)属(例えば、枯草菌(Bacillus subtilis)など)、ストレプロマイセス(Streptomyces)属(例えば、ストレプロマイセス・セリカラー(Streptomyces coelicolor)など)の宿主細菌細胞、シネコキスティス(Synechocystis)属(例えば、シネコキスティス(Synechocystis sp.)PCC6803など)又はシネココッカス(Synechococcus)属(例えば、シネココッカス(Synechococcus)WH8102など)の光合成細菌細胞、又は任意の他の原核細胞、真核細胞、例えば、クラミドモナス(Chlamydomonas)属(例えば、コナミドリムシ(Chlamydomonas reinhardtii)など)、サッカロミセス(Saccharomyces)属(例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)など)、ピキア(Pichia)型(例えば、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)など)、又は別の型の真核細胞であってもよい。
【0063】
本発明によれば、当該宿主細胞に含まれる当該ポリヌクレオチドは、それ自体であってもよいが、必ずしも当該宿主細胞に挿入される発現ベクター、例えばプラスミドに含まれていなくてもよい。
【0064】
有利には、本発明によれば、当該宿主細胞に含まれる当該ポリヌクレオチドによってコードされる当該モノマーポリペプチドは、その切断型又は非切断型アミノ酸配列が、配列番号2のアミノ酸配列及び/又は配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも20%の同一性、より優先的には少なくとも40%の同一性、より優先的にはなお少なくとも60%の同一性、より優先的にはなお少なくとも80%の同一性、より優先的にはなお少なくとも90%の同一性、より優先的にはなお少なくとも95%の同一性、より優先的にはなお少なくとも99%の同一性を有する。
【0065】
好ましくは、本発明によれば、モノマーポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む当該宿主細胞は、当該[NiFe]-ヒドロゲナーゼ様タンパク質の1つ又は複数の成熟因子、好ましくは成熟因子HypA、HypB、HypC、HypD、HypE、HypF及びHoxWからなる群から選択される当該[NiFe]-ヒドロゲナーゼ様タンパク質の1つ又は複数の成熟因子を含むことができ、
a)それぞれのアミノ酸配列が、それぞれ、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18のアミノ酸配列と少なくとも15%の同一性、好ましくは少なくとも20%の同一性、より優先的には少なくとも40%の同一性、より優先的にはなお少なくとも60%の同一性、より優先的にはなお少なくとも80%の同一性、より優先的にはなお少なくとも90%の同一性、より優先的にはなお少なくとも95%の同一性、より優先的にはなお少なくとも99%の同一性を有し、又は
b)これらの成熟因子の全てをコードする配列番号19のヌクレオチド配列と少なくとも15%の同一性、好ましくは少なくとも20%の同一性、より優先的には少なくとも40%の同一性、より優先的にはなお少なくとも60%の同一性、より優先的にはなお少なくとも80%の同一性、より優先的にはなお少なくとも90%の同一性、より優先的にはなお少なくとも95%の同一性、より優先的にはなお少なくとも99%の同一性を有する連結ヌクレオチド配列によって一緒にコードされる。
【0066】
本発明によれば、当該少なくとも1つの成熟因子は、宿主細胞に対して内因性及び/又は宿主細胞に対して外因性であってもよい。
【0067】
有利には、本発明による宿主細胞の場合、当該モノマーポリペプチド及び/又は当該少なくとも1つの成熟因子は、発現ベクターに含まれる少なくとも1つの遺伝子の発現に由来し、当該発現ベクターは当該宿主細胞に含まれる。
【0068】
本発明はまた、例えば宿主細胞(例えば、大腸菌(E.coli))において、本発明によるヒドロゲナーゼ活性を有するモノマーポリペプチドを得るための方法に関し、当該方法は、以下の工程、
・[NiFe]-ヒドロゲナーゼ様タンパク質の活性部位を含む単一サブユニットを含むモノマーポリペプチドを少なくとも一部がコードする外因性ポリヌクレオチドをその中に含めることによる、発現ベクター、例えばプラスミドを改変すること、及び
・当該外因性ポリヌクレオチドの発現を持続させるインキュベーション条件に従って当該改変された発現ベクターをインキュベートして、[NiFe]-ヒドロゲナーゼ様タンパク質の活性部位を含む単一サブユニットを含むモノマーポリペプチドを産生することであって、当該モノマーポリペプチドがヒドロゲナーゼ活性を有することを含む。
【0069】
本発明による方法は、[NiFe]-ヒドロゲナーゼ様タンパク質の活性部位を含む単一サブユニットの産生を実現することを可能にする。
【0070】
当業者は、当然ながら、必要かつ適切なインキュベーション条件を定義することができる。
【0071】
本発明によれば、宿主細胞を遺伝子改変する工程の間、ポリヌクレオチドは、それ自体が発現ベクター、例えばプラスミドに含まれることができるが、必ずしも含まれなくてもよい。
【0072】
有利には、本発明によれば、当該発現ベクターを改変する当該工程は、少なくとも一部が当該モノマーポリペプチドをコードし、その切断型又は非切断型アミノ酸配列が、配列番号2のアミノ酸配列及び/又は配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも20%の同一性、より優先的には少なくとも40%の同一性、より優先的にはなお少なくとも60%の同一性、より優先的にはなお少なくとも80%の同一性、より優先的にはなお少なくとも90%の同一性、より優先的にはなお少なくとも95%の同一性、より優先的にはなお少なくとも99%の同一性を有する、当該外因性ポリヌクレオチドを当該発現ベクターに含めることからなる。
【0073】
好ましくは、本発明によれば、当該発現ベクターを改変する当該工程は、当該[NiFe]-ヒドロゲナーゼ様タンパク質の1つ又は複数の成熟因子、好ましくは成熟因子HypA、HypB、HypC、HypD、HypE、HypF及びHoxWからなる群から選択される当該[NiFe]-ヒドロゲナーゼ様タンパク質の1つ又は複数の成熟因子を当該発現ベクターに含むことができ、
a)それぞれのアミノ酸配列が、それぞれ、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18のアミノ酸配列と少なくとも15%の同一性、好ましくは少なくとも20%の同一性、より優先的には少なくとも40%の同一性、より優先的にはなお少なくとも60%の同一性、より優先的にはなお少なくとも80%の同一性、より優先的にはなお少なくとも90%の同一性、より優先的にはなお少なくとも95%の同一性、より優先的にはなお少なくとも99%の同一性を有し、又は
b)これらの成熟因子の全てをコードする配列番号19のヌクレオチド配列と少なくとも15%の同一性、好ましくは少なくとも20%の同一性、より優先的には少なくとも40%の同一性、より優先的にはなお少なくとも60%の同一性、より優先的にはなお少なくとも80%の同一性、より優先的にはなお少なくとも90%の同一性、より優先的にはなお少なくとも95%の同一性、より優先的にはなお少なくとも99%の同一性を有する連結ヌクレオチド配列によって一緒にコードされる。
【0074】
本発明によれば、当該発現ベクターを改変する工程の間、当該[NiFe]-ヒドロゲナーゼ様タンパク質の1つ又は複数の成熟因子をコードする配列は、それ自体が発現ベクター、例えばプラスミドに含まれることができるが、必ずしも含まれなくてもよい。
【0075】
有利には、本発明による方法は、当該モノマーポリペプチドの単離及び/又は精製の後続の工程を含む。
【0076】
特に好ましくは、本発明は、本発明によるヒドロゲナーゼ活性を有するモノマーポリペプチドを得るための方法に関し、当該方法は、以下の工程、
・遺伝子改変された物質、例えば遺伝子改変された宿主細胞又は遺伝子改変された発現ベクターを得るために、遺伝物質を含む物質、例えば宿主細胞又は発現ベクターのインビボ又はインビトロで行われる遺伝子改変の工程、
・[NiFe]-ヒドロゲナーゼ様タンパク質の活性部位を含む単一サブユニットを含むモノマーポリペプチドを得るために、当該遺伝子改変された物質、例えば当該遺伝子改変された宿主細胞又は当該遺伝子発現ベクターをインキュベートする工程であって、当該モノマーポリペプチドがヒドロゲナーゼ活性を有する工程を含む。
【0077】
好ましくは、本発明によれば、インビボ又はインビトロで行われる遺伝子改変の当該工程は、
a)宿主細胞及び/又は[NiFe]-ヒドロゲナーゼ様タンパク質の活性部位を含む単一サブユニットを含むモノマーポリペプチドを少なくとも一部がコードする外因性ポリヌクレオチドを含む発現ベクターを遺伝子改変して、当該モノマーポリペプチドを産生するために当該外因性ポリヌクレオチドの発現を維持することを可能にするインキュベーション条件に従って実施される当該インキュベーション工程中に、インキュベートされる遺伝子改変された宿主細胞及び/又は遺伝子改変された発現ベクターを得ること、又は
b)宿主細胞の遺伝物質において少なくとも1つの遺伝子変異を誘導して、当該モノマーポリペプチドを産生するために当該インキュベーション条件に従って実施される当該インキュベーション工程中に、インキュベートされる遺伝子改変された宿主細胞を得ることからなる。
【0078】
当業者は、当然ながら、必要かつ適切なインキュベーション条件を定義することができる。
【0079】
例えば、本発明によれば、少なくとも1つの遺伝子変異の当該誘導は、当業者に周知の方法である相同組換えによって行われる。
【0080】
有利には、本発明によれば、外因性ポリヌクレオチドを含めることによる当該宿主細胞の遺伝子改変の当該工程は、発現ベクター、特に当該外因性ポリヌクレオチドを含む改変された発現ベクターを当該宿主細胞に含めることからなる。
【0081】
好ましくは、本発明によれば、当該宿主細胞の遺伝子改変の当該工程は、少なくとも一部が当該モノマーポリペプチドをコードし、その切断型又は非切断型アミノ酸配列が、配列番号2のアミノ酸配列及び/又は配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも15%の同一性、好ましくは少なくとも20%の同一性、より優先的には少なくとも40%の同一性、より優先的にはなお少なくとも60%の同一性、より優先的にはなお少なくとも80%の同一性、より優先的にはなお少なくとも90%の同一性、より優先的にはなお少なくとも95%の同一性、より優先的にはなお少なくとも99%の同一性を有する、当該外因性ポリヌクレオチドを当該宿主細胞に含めることからなる。
【0082】
有利には、本発明によれば、当該宿主細胞の遺伝子改変の当該工程は、当該[NiFe]-ヒドロゲナーゼ様タンパク質の少なくとも1つの成熟因子を当該宿主細胞に含めることを更に含み、当該少なくとも1つの成熟因子は、宿主細胞に対して内因性及び/又は宿主細胞に対して外因性であり、好ましくは、成熟因子HypA、HypB、HypC、HypD、HypE、HypF及びHoxWからなる群から選択される当該[NiFe]-ヒドロゲナーゼ様タンパク質の少なくとも1つの成熟因子を含めることを更に含み、
a)それぞれのアミノ酸配列が、それぞれ、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18のアミノ酸配列と少なくとも15%の同一性、好ましくは少なくとも20%の同一性、より優先的には少なくとも40%の同一性、より優先的にはなお少なくとも60%の同一性、より優先的にはなお少なくとも80%の同一性、より優先的にはなお少なくとも90%の同一性、より優先的にはなお少なくとも95%の同一性、より優先的にはなお少なくとも99%の同一性を有し、又は
b)これらの成熟因子の全てをコードする配列番号19のヌクレオチド配列と少なくとも15%の同一性、好ましくは少なくとも20%の同一性、より優先的には少なくとも40%の同一性、より優先的にはなお少なくとも60%の同一性、より優先的にはなお少なくとも80%の同一性、より優先的にはなお少なくとも90%の同一性、より優先的にはなお少なくとも95%の同一性、より優先的にはなお少なくとも99%の同一性を有する連結ヌクレオチド配列によって一緒にコードされる。
【0083】
好ましくは、本発明によれば、当該少なくとも1つの成熟因子は、発現ベクターに含まれる少なくとも1つの遺伝子の発現に由来し、当該発現ベクターは当該宿主細胞に含まれる。
【0084】
優先的には、本発明によるヒドロゲナーゼ活性を有するモノマーポリペプチドを得るための方法は、[NiFe]-ヒドロゲナーゼ様タンパク質の活性部位を含むサブユニットが、シネコキスティス(Synechocystis sp.)PCC6803中のHoxEFUYH[NiFe]-ヒドロゲナーゼ様タンパク質のHoxHサブユニットであるモノマーポリペプチドの取得をもたらす。
【0085】
本発明はまた、[NiFe]-ヒドロゲナーゼ様タンパク質の活性部位を含む単一サブユニットを含む本発明によるモノマーポリペプチドの使用に関し、当該モノマーポリペプチドはヒドロゲナーゼ活性を有し、細胞内に存在するか又は存在せず、水素の生成又は消費を確実にすることができるインキュベーション条件により当該モノマーポリペプチドをインキュベートすることによって水素を生成又は消費する。
【0086】
本発明はまた、本発明によるモノマーポリペプチド、又は[NiFe]-ヒドロゲナーゼ様タンパク質の活性部位を含む単一サブユニットを含む本発明による方法に従って得られたモノマーポリペプチドの使用に関し、当該モノマーポリペプチドはヒドロゲナーゼ活性を有し、細胞内に存在するか又は存在せず、特に導電体の表面を被覆するための、例えばアノード又はカソードの表面を被覆するための使用に関する。
【0087】
定義
「ポリペプチド」という用語は、本発明の意味の範囲内で、アミノ酸のカルボキシル基と次のアミノ酸のアミン基との間のペプチド結合によって互いに連結された少なくとも2つのアミノ酸から構成される単鎖を指す。「ポリペプチド」という用語はまた、複数のポリペプチドを含有する分子を含み、これらは、例えばジスルフィド架橋によって一緒に連結されているか、又はポリペプチドの複合体であり、これらは、例えば非共有結合的又は共有結合的に一緒に連結されており、多量体(例えば、二量体、三量体、四量体、五量体)を形成している。ポリペプチドはまた、無機鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、鉄-硫黄中心(FeS)、又は一酸化炭素(CO)、シアン化物(CN)若しくはフラビンなどの他の有機配位子などの非タンパク質配位子を含むことができる。ペプチド、ポリペプチド、酵素、サブユニット又はタンパク質という用語は、全てポリペプチドの定義に含まれ、これらの用語は交換可能であってもよい。「ポリペプチド」の定義は、当該ポリペプチドの長さも、当該ポリペプチドが産生される方法も考慮していない。
【0088】
「組換えポリペプチド」又は「異種ポリペプチド」という用語は、本発明の意味の範囲内で、環境中に天然には存在せず、及び/又はその産生に使用される宿主細胞、特に宿主細胞中に天然には存在せず、その産生が組換え技術によって、例えば遺伝物質を宿主細胞に添加することによって行われるポリペプチドを指す。
【0089】
「モノマーポリペプチド」という用語は、本発明の意味の範囲内で、アミノ酸のカルボキシル基と次のアミノ酸のアミン基との間のペプチド結合によって互いに連結された少なくとも2つのアミノ酸から構成される単鎖を指す。「ポリペプチド」という用語とは対照的に、「モノマーポリペプチド」という用語は、1つのポリペプチドのみを含有する、すなわち他のポリペプチドと相互作用しない分子のみを含む。例えば、それは決して多量体(例えば、二量体、三量体、四量体、五量体など)ではない。モノマーポリペプチドはまた、無機鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、鉄-硫黄中心(FeS)、又は一酸化炭素(CO)、シアン化物(CN)若しくはフラビンなどの他の有機配位子などの非タンパク質配位子を含むことができる。「モノマーポリペプチド」の定義は、当該ポリペプチドの長さも、当該ポリペプチドが産生される方法も考慮していない。
【0090】
「組換えモノマーポリペプチド」又は「異種モノマーポリペプチド」という用語は、本発明の意味の範囲内で、モノマーポリペプチドが環境中、特に宿主細胞中に天然に存在せず、その産生が組換え技術によって、例えば遺伝物質を宿主細胞に添加することによって行われることを意味する。
【0091】
「ヒドロゲナーゼ活性を有するモノマーポリペプチド」という用語は、本発明の意味の範囲内で、モノマーポリペプチドが可逆的反応H←→2H+2eを触媒することができることを意味する。ヒドロゲナーゼ活性のこの定義は、実験条件に関連せず、ヒドロゲナーゼの酵素活性による水素の生成又は消費のみに関連する。
【0092】
「活性部位」という用語は、本発明の意味の範囲内で、三次構造が形成されると、例えばヒドロゲナーゼ活性などの当該ポリペプチドの触媒活性を担うポリペプチドの部分を指す。ポリペプチドの一部は、例えば、アミノ酸配列のいくつかの部分及び/又は1つ又は複数の非タンパク質リガンドとの結合を含むことができる。
【0093】
「ポリヌクレオチド」という用語は、本発明の意味の範囲内で、リボヌクレオチドであるかデオキシヌクレオチドであるかにかかわらず、例えば共有結合によって互いに連結された少なくとも2つのヌクレオチドで構成される単鎖を指す。したがって、これには、一本鎖又は二本鎖のRNA及びDNAが含まれる。「ポリヌクレオチド」の定義は、当該ポリヌクレオチドの長さも、機能も、形状も、当該ポリヌクレオチドが産生される方法も考慮していない。ポリヌクレオチドは、例えば、プラスミド、プラスミドの一部、遺伝子又は遺伝子断片であってもよい。
【0094】
「外因性ポリヌクレオチド」という用語は、本発明の意味の範囲内で、宿主細胞に通常存在しないポリヌクレオチドを指す。例えば、外因性ポリヌクレオチドは、宿主細胞又はプラスミドに天然には存在しないポリペプチドをコードする配列であってもよい。
【0095】
「連結」という用語は、本発明の意味の範囲内で、例えばポリヌクレオチド配列の1つのみ又はポリペプチド配列を形成するためのいくつかの配列のストレッチを指す。
【0096】
「プラスミド」という用語は、本発明の意味の範囲内で、それ自体の複製起点のために自律複製が可能な、外因性染色体DNAとは異なる二本鎖DNAの分子を指す。プラスミドはまた、目的の他の配列、例えば、選択因子(抗生物質に対する耐性など)をコードする遺伝子、ポリヌクレオチドの付加を可能にする多重クローニング部位、及び/又は転写調節配列を含むことができる。「プラスミド」又は「発現ベクター」という用語は交換可能である。
【0097】
「宿主細胞」という用語は、本発明の意味の範囲内で、改変を受けた細胞を指す。この改変は、例えば、外因性ポリヌクレオチドを、例えばプラスミドを介して細胞に導入することであってもよい。
【0098】
「成熟因子」という用語は、本発明の意味の範囲内で、別の生物学的分子、例えばタンパク質の構造の形成に関与する任意の生物学的又は非生物学的分子を指す。
【0099】
「内因性成熟因子」という用語は、本発明の意味の範囲内で、別の生物学的分子、例えばタンパク質の構造の形成に関与し、宿主細胞内に天然に存在する、すなわち当該宿主細胞の遺伝子改変を伴わない任意の生物学的又は非生物学的分子を指す。
【0100】
「外因性成熟因子」という用語は、本発明の意味の範囲内で、別の生物学的分子、例えばタンパク質の構造の形成に関与し、宿主細胞に天然には存在しない、すなわち、例えば発現ベクターを添加することによって、当該外因性成熟因子を当該宿主細胞に添加するために当該宿主細胞の遺伝子改変が必要である、任意の生物学的又は非生物学的分子を指す。
【0101】
「単離された」という用語は、本発明の意味の範囲内で、その天然環境から除去された、例えば天然の[NiFe]-ヒドロゲナーゼから除去された任意の分子を指す。
【0102】
「精製された」という用語は、本発明の意味の範囲内で、生化学的技術によって分離された任意の分子を指す。この定義は、例えば天然又は組換え、化学的又は酵素的合成によって分子が生成される方法も、精製のために実施される生化学的技術、例えばアフィニティクロマトグラフィ又はモレキュラーシーブも考慮していない。例えば、ポリヌクレオチド、ポリペプチド又はHを精製することができる。好ましくは、物質は、それに関連する他の成分に対して少なくとも60%、好ましくはそれに関連する他の成分に対して75%、好ましくはそれに関連する他の成分に対して90%を表す場合に精製されている。
【0103】
「見かけの均一性」という用語は、本発明の意味の範囲内で、それに関連する他の成分に対して少なくとも90%を占める任意の精製分子を指す。
【0104】
「同一性」という用語は、本発明の意味の範囲内で、2つのポリヌクレオチド間又は2つのポリペプチド間の構造的類似性を指す。構造的類似性は、2つの配列間のアラインメント、すなわち配列に沿った同一のヌクレオチドの数又は同一のアミノ酸の数を最適化するアラインメントによって決定される。一方又は両方の配列のホールは、アラインメント、したがって構造的類似性を最適化するために許容される。しかし、ヌクレオチド又はアミノ酸の配列は同じままでなければならない。
【0105】
「遺伝物質」という用語は、本発明の意味の範囲内で、物質のゲノム、より正確にはこの物質の全ての核酸、含まれるコード配列及び非コード配列を指す。
【0106】
「遺伝子変異」という用語は、本発明の意味の範囲内で、物質、例えば宿主細胞又は発現ベクターの遺伝物質の偶発的又は誘発された改変を指す。
【0107】
「遺伝物質を含む物質」という用語は、本発明の意味の範囲内で、上記の定義による遺伝物質、例えば宿主細胞又はプラスミドなどの発現ベクターを含む物質を指す。
【0108】
「遺伝子改変された物質」という用語は、本発明の意味の範囲内で、上記の定義による遺伝物質を含み、その遺伝物質の改変、例えば遺伝子変異又はプラスミドなどを介した細胞への外因性ポリヌクレオチドの導入を受けた物質を指す。
【0109】
「遺伝子改変された宿主細胞」という用語は、本発明の意味の範囲内で、上記の定義による宿主細胞、その遺伝物質の改変、例えば遺伝子変異又はプラスミドなどを介した細胞への外因性ポリヌクレオチドの導入を受けた宿主細胞を指す。
【0110】
「遺伝子改変された発現ベクター」という用語は、本発明の意味の範囲内で、上記の定義による発現ベクター又はプラスミド、その遺伝物質の改変、例えば特定のポリペプチドをコードする遺伝子などの目的の配列の付加を受けた発現ベクター又はプラスミドを指す。
【0111】
本発明の他の特徴、詳細及び利点は、限定するものではなく、添付の図面を参照して、以下に示す例から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0112】
図1】プラスミドpET-26b(+)(5360bp)のマップを示す図である。
図2】NdeI及びBlpI制限酵素による発現ベクターpET26b(+)+HoxHの消化のアガロースゲル分析を示す図である。
図3】プラスミドpACYCDuet-1(4008bp)のマップを示す図である。
図4】NcoI及びHindIII制限酵素による発現ベクターpACYCDuet-1+HypABCDEFHoxWの消化のアガロースゲル分析を示す図である。
図5】NdeI及びBlpI制限酵素による、大腸菌(E.coli)コロニーのプラスミドDNAに由来する発現ベクターpET26b(+)+HoxHの消化のアガロースゲル分析を示す図である。
図6】NcoI及びHindIII制限酵素による、大腸菌(E.coli)コロニーのプラスミドDNAに由来する発現ベクターpACYCDuet-1+HypABCDEFHoxWの消化のアガロースゲル分析を示す図である。
図7】目的のHoxH組換えタンパク質の精製方法を示す図である。NA、Ni-NTAアフィニティカラムに吸収されなかった試料。洗浄、10mMイミダゾールを含有する洗浄緩衝液で溶出した試料。50mM、50mMイミダゾールの濃度で溶出した試料。100mM、100mMイミダゾールの濃度で溶出した試料。150mM、150mMイミダゾールの濃度で溶出した試料。200mM、200mMイミダゾールの濃度で溶出した試料。250mM、250mMイミダゾールの濃度で溶出した試料。
図8】アフィニティクロマトグラフィ中に収集された様々な画分のタンパク質組成のSDS-PAGE分析を示す図である。ロード、Ni-NTAアフィニティカラムに適用され、組換え大腸菌(E.coli)細胞の溶解に由来する上清;NA、Ni-NTAアフィニティカラムに吸収されなかった試料。洗浄、10mMイミダゾールを含有する洗浄緩衝液で溶出した試料。M、分子量マーカー。50mM、50mMイミダゾールの濃度で溶出した試料。100mM、100mMイミダゾールの濃度で溶出した試料。150mM、150mMイミダゾールの濃度で溶出した試料。200mM、200mMイミダゾールの濃度で溶出した試料。250mM、250mMイミダゾールの濃度で溶出した試料。
図9】アフィニティクロマトグラフィ中に収集された様々な画分中のHoxHの存在の免疫検出分析(ウェスタンブロット)を示す図である。M、分子量マーカー。ロード、Ni-NTAアフィニティカラムに適用され、組換え大腸菌(E.coli)細胞の溶解に由来する上清。NA、Ni-NTAアフィニティカラムに吸収されなかった試料;50mM、50mMイミダゾールの濃度で溶出した試料。200mM、200mMイミダゾールの濃度で溶出した試料。
図10】シネコキスティス(Synechocystis sp.)PCC6803由来のHoxEFUYH、[NiFe]-ヒドロゲナーゼの構造の概略図である。HoxE、19kDa及び1FeS中心;HoxF、57.5KDa、2FeS中心及びFMN中心;HoxU、26KDa及び4FeS中心;HoxY、20KDa及びFeS中心;HoxH、53KDa及び活性部位。
図11】シネコキスティス(Synechocystis sp.)PCC6803由来のHoxEFUYH、[NiFe]-ヒドロゲナーゼにおける電子伝達(影付き矢印)並びにNADPH及びメチルビオロゲン(MV)との予想される相互作用の概略図である。
図12】HoxH組換えタンパク質の活性部位がMVから電子を直接受け取ることができ、したがって追加の酸化還元リレーの非存在下で水素を生成することができるか否かについての疑問を提起する概略図である。
図13】酸素の非存在下で亜ジチオン酸ナトリウムによって予め還元されたメチルビオロゲンを含有する試薬へのHoxH組換えタンパク質の添加から生じる水素の生成によるヒドロゲナーゼ活性の強調示す図である。HoxHは、ヒドロゲナーゼ触媒反応を表す式H←→2H+2eに従って水素を生成するために、予め還元されたメチルビオロゲンの電子を受け取り、それらをプロトン(緩衝液中に存在する)と組み合わせることができる。試薬に溶解した水素のレベルは、マイクロセンサ(ユニセンス(登録商標)、デンマーク)を用いて連続的に測定される。矢印は、HoxH組換えタンパク質の添加が行われた瞬間を示し、瞬間は、マイクロセンサによって検出された溶解水素のレベルの増加に付随する。
図14】Hの存在下でのベンジルビオロゲン(BV)を含有する試薬へのHoxH組換えタンパク質の添加から生じるベンジルビオロゲンの還元によるヒドロゲナーゼ活性の強調を示す図である。HoxHは、ヒドロゲナーゼ触媒反応を表す式H←→2H+2eによるプロトンの生成と同時に、水素から電子を受け取り、それらを酸化還元メディエータ、例えばベンジルビオロゲンに移動させることができる。消費される水素のレベルは、還元ベンジルビオロゲンのレベルと同等であり、578nmの波長で分光光度法によって連続的に測定することができるレベルである。
図15】大腸菌(E.coli)に対して外因性のHupABCDEFHoxW成熟因子の非存在下で産生されたHoxH組換えタンパク質を、酸素の非存在下で亜ジチオン酸ナトリウムによって予め還元されたメチルビオロゲンを含有する試薬への添加から生じる水素の産生によるヒドロゲナーゼ活性の強調を示す図である。HoxHは、ヒドロゲナーゼ触媒反応を表す式H←→2H+2eに従って水素を生成するために、予め還元されたメチルビオロゲンの電子を受け取り、それらをプロトン(緩衝液中に存在する)と組み合わせることができる。
【発明を実施するための形態】
【0113】

1.HoxH発現ベクターの構築
1.1.HoxHの「単純」配列
HoxHは、シネコキスティス(Synechocystis sp.)PCC6803のHoxEFUYH [NiFe]-ヒドロゲナーゼの活性部位を含む大サブユニットに対応する。Genbankのタンパク質の受託番号はBAA18091.1である。HoxHの理論等電点は、52996.53ダルトンの理論分子質量に対して5.86である。HoxHのヌクレオチド配列(1425bp)は以下の通りであり、本発明の文脈において配列番号1と命名されている。
【化1】
【0114】
HoxHのアミノ酸配列(474aa)は以下の通りであり、本発明の文脈において配列番号2と命名されている。
【化2】
【0115】
図1は、pET26b(+)に配列番号3を挿入することによってHoxH発現ベクターを構築するために使用されるプラスミドpET26b(+)のマップを示す。pET26b(+)は、大腸菌(E.coli)の複製起点、カナマイシン耐性遺伝子、多数の制限部位を含むマルチクローニングサイト(MCS)、T7プロモータ及びT7転写ターミネータを有する5360bpプラスミドである。また、転写リプレッサーをコードするlacI遺伝子を含む。転写のこの抑制は、IPTGを加えることによって解除することができる。
【0116】
1.2.HoxHの「最適化された」配列
場合により、本発明の一実施形態によれば、配列番号1及び配列番号2の配列は、大腸菌(E.coli)におけるコドン使用について最適化されている。特に、NdeI(catatg)及びBlpI(gctnagc)制限部位が、プラスミドpET26b(+)におけるクローニングのためのヌクレオチド配列の最初及び最後にそれぞれ付加され、配列caccaccaccaccatcac(以下に下線を引く)も付加される(タンパク質のN末端に近いポリヒスチジンタグをコードする配列)。
【0117】
最適化されたヌクレオチド配列(1453bp)は以下の通りであり、本発明の文脈において配列番号3と命名される。
【化3】
【0118】
最適化されたアミノ酸配列(480aa)は以下の通りであり、本発明の文脈において配列番号4と命名される。
【化4】
【0119】
プラスミドpET26b(+)を使用して、pET26b(+)に配列番号3を挿入することによってHoxH発現ベクターを構築する。
【0120】
図2は、NdeI及びBlpI制限酵素による発現ベクターpET26b(+)+HoxH(配列番号3)の消化の分析を示す。約5300bp(線状化pET26b(+))及び約1500bp(プラスミドpET26b(+)から切り出されたHoxH配列)の2つのDNA断片が強調されている。これにより、発現ベクターpET26b(+)中の目的のHoxH配列の存在が確認される。
【0121】
2.少なくとも1つの成熟因子の発現ベクターの構築
本発明の文脈では、少なくとも以下の成熟因子HypA、HypB、HypC、HypD、HypE、HypF及びHoxWが考慮される。
【0122】
HypAは、シネコキスティス(Synechocystis sp.)PCC6803におけるHoxEFUYH [NiFe]-ヒドロゲナーゼの発現/形成タンパク質である。Genbankのタンパク質の受託番号はBAA18357.1である。HypAの理論等電点は、12773.47ダルトンの理論分子量に対して4.94である。HypAのヌクレオチド配列(342bp)は以下の通りであり、本発明の文脈において配列番号5と命名されている。
【化5】
【0123】
HypAのアミノ酸配列(113aa)は以下の通りであり、本発明の文脈において配列番号6と命名されている。
【化6】
【0124】
HypBは、シネコキスティス(Synechocystis sp.)PCC6803におけるHoxEFUYH [NiFe]-ヒドロゲナーゼの発現/形成タンパク質である。Genbankのタンパク質の受託番号はBAA18312.1である。HyBの理論等電点は、31242.97ダルトンの理論分子量に対して5.75である。HypBのヌクレオチド配列(858bp)は以下の通りであり、本発明の文脈において配列番号7と命名されている。
【化7】
【0125】
HypBのアミノ酸配列(285aa)は以下の通りであり、本発明の文脈において配列番号8と命名されている。
【化8】
【0126】
HypCは、シネコキスティス(Synechocystis sp.)PCC6803におけるHoxEFUYH [NiFe]-ヒドロゲナーゼの発現/形成タンパク質である。Genbankのタンパク質の受託番号はBAA18180.1である。HypCの理論等電点は、7987.42ダルトンの理論分子量に対して4.20である。HypCのヌクレオチド配列(231bp)は以下の通りであり、本発明の文脈において配列番号9と命名されている。
【化9】
【0127】
HypCのアミノ酸配列(76aa)は以下の通りであり、本発明の文脈において配列番号10と命名されている。
【化10】
【0128】
HypDは、シネコキスティス(Synechocystis sp.)PCC6803におけるHoxEFUYH [NiFe]-ヒドロゲナーゼの発現/形成タンパク質である。Genbankのタンパク質の受託番号はBAA16622.1である。HypDの理論等電点は、40632.94ダルトンの理論分子質量に対して6.31である。HypDのヌクレオチド配列(1125bp)は以下の通りであり、本発明の文脈において配列番号11と命名されている。
【化11】
【0129】
HypDのアミノ酸配列(374aa)は以下の通りであり、本発明の文脈において配列番号12と命名されている。
【化12】
【0130】
HypEは、シネコキスティス(Synechocystis sp.)PCC6803におけるHoxEFUYH [NiFe]-ヒドロゲナーゼの発現/形成タンパク質である。Genbankのタンパク質の受託番号はBAA17478.1である。HypEの理論等電点は、36425.60ダルトンの理論分子質量に対して4.93である。HypEのヌクレオチド配列(1038bp)は以下の通りであり、本発明の文脈において配列番号13と命名されている。
【化13】
【0131】
HypEのアミノ酸配列(345aa)は以下の通りであり、本発明の文脈において配列番号14と命名されている。
【化14】
【0132】
HypFは、シネコキスティス(Synechocystis sp.)PCC6803におけるHoxEFUYH [NiFe]-ヒドロゲナーゼの発現/形成タンパク質である。Genbankのタンパク質の受託番号はBAA10154.1である。HypFの理論等電点は、85358.25ダルトンの理論分子質量に対して8.19である。HypFのヌクレオチド配列(2304bp)は以下の通りであり、本発明の文脈において配列番号15と命名されている。
【化15】
【0133】
HypFのアミノ酸配列(767aa)は以下の通りであり、本発明の文脈において配列番号16と命名されている。
【化16】
【0134】
HoxWは、シネコキスティス(Synechocystis sp.)PCC6803の仮説的タンパク質である。Genbankのタンパク質の受託番号はBAA17680.1である。HoxWの理論等電点は、17129.53ダルトンの理論分子質量に対して4.93である。HoxWのヌクレオチド配列(474bp)は以下の通りであり、本発明の文脈において配列番号17と命名されている。
【化17】
【0135】
HoxWのアミノ酸配列(157aa)は以下の通りであり、本発明の文脈において配列番号18と命名されている。
【化18】
【0136】
場合により、本発明による一実施形態によれば、成熟因子HypA、HypB、HypC、HypD、HypE、HypF及びHoxWの全てが、連結ヌクレオチド配列(6515bp)の形態で組み立てられる。このヌクレオチド配列は、pACYCDuet-1プラスミドにおいてクローニングを行うために、配列の最初にNcoI制限部位(CCATGG)を含み、配列の最後にAvrII制限部位(CCTAGG)を含む。この連結ヌクレオチド配列は以下の通りであり、本発明の文脈において配列番号19と命名されている。
【化19-1】

【化19-2】

【化19-3】
【0137】
図3は、配列番号5及び/又は配列番号7及び/又は配列番号9及び/又は配列番号11及び/又は配列番号13及び/又は配列番号15及び/又は配列番号17及び/又は配列番号19をpACYCDuet-1に挿入することにより、成熟因子HypA、HypB、HypC、HypD、HypE、HypF及びHoxWの少なくとも1つの発現ベクターを構築するために使用したpACYCDuet-1プラスミドのマップを表す。pACYCDuet-1は、4008bpのプラスミドであり、大腸菌(E.coli)の複製起点、クロラムフェニコール耐性遺伝子、多数の制限部位を含む2つの多重クローニング部位(MCS)、T7プロモータ及びT7転写ターミネータを有する。また、転写リプレッサーをコードするlacI遺伝子を含む。転写のこの抑制は、IPTGを加えることによって解除することができる。
【0138】
図4は、NcoI及びHindIII制限酵素による発現ベクターpACYCDuet-1+HypABCDEFHoxW(連結配列の配列番号19)の消化の分析を示す。発現ベクターpACYCDuet-1+HypABCDEFHoxWのこのような酵素消化について予想されるように、約6000bp及び約4000bpの2つのDNA断片が強調される。これにより、発現ベクターpACYCDuet-1中の配列HypABCDEFHoxWの存在が確認される。
【0139】
3.発現ベクターpET26b(+)+HoxH及びpACYCDuet-1+HypABCDEFHoxWの大腸菌(E.coli)への導入。
大腸菌(E.coli)のコンピテント細胞(DE3)BL21を、シネコキスティス(Synechocystis sp.)PCC6803由来のHoxEFUYH [NiFe]-ヒドロゲナーゼのHoxHサブユニットの組換え発現に使用した。これらの細胞は、T7プロモータの制御下で組換えタンパク質の産生のために日常的に使用される。
【0140】
2つの発現ベクター「pET26b(+)+HoxH」及び「pACYCDuet-1+HypABCDEFHoxW」を、当業者に周知の従来のヒートショック法による共形質転換によってこれらの細胞に導入した。カナマイシン(50μg/ml)及びクロラムフェニコール(25μg/ml)に対して二重耐性を有する形質転換体を、寒天培地上に4℃で保存した。
【0141】
4.大腸菌(E.coli)における目的のDNA配列の存在の検証。
ただし、いくつかのコロニーは、目的のDNA配列、すなわちHoxH及びHypABCDEFHoxWを有することなく、使用される選択マーカーに対する耐性を可能にする2つのプラスミドを有することが可能である。したがって、目的のこれらのDNA配列の存在を検証することが重要である。当業者に周知であり、コロニーからのプラスミドDNAの抽出、続いてプラスミド中への目的のDNA配列の挿入の間に使用される制限酵素による、このプラスミドDNAの酵素消化からなる実験を行った。
【0142】
したがって、プラスミドDNAの抽出を、当業者に周知のプロトコルに従って、カナマイシン及びクロラムフェニコールに対する二重耐性を有するコロニーで行った。
【0143】
次いで、当業者に周知のプロトコルに従って酵素消化を行った。NdeI制限酵素及びBlpI制限酵素による発現ベクターpET26b(+)+HoxHの消化により、2つのDNA断片、それぞれ5300bpの線状化プラスミドpET26b(+)及び1500bpの目的のHoxH DNA断片が得られる(図5参照)。NcoI及びHindIII制限酵素による発現ベクターpACYCDuet-1+HypABCDEFHoxWの消化により、2つのDNA断片、それぞれ4000bpの線状化プラスミドpACYCDuet-1及び6500bpの目的のHypABCDEFHoxW DNA断片が得られる(図6参照)。これにより、発現ベクターpET26b(+)及びPACYCDuet-1においてそれぞれHoxH及びHypABCDEFHoxW配列の細菌コロニーにおける存在が確認される。
【0144】
5.大腸菌(E.coli)におけるHoxHの組換え産生及びアフィニティクロマトグラフィによる精製。
シネコキスティス(Synechocystis sp.)PCC6803由来のHoxEFUYH [NiFe]-ヒドロゲナーゼのHoxHサブユニットの組換え形態を得るために、2つの発現ベクターを含む大腸菌(E.coli)コロニーを使用して、それぞれ250mの体積を有する4つの三角フラスコに接種した。使用した培地は、100μM FeAmCi、50μM NiSO、50μMシステイン、50μg/mlカナマイシン及び25μg/mlクロラムフェニコールを添加した2XYT培地(1リットル当たり16gのトリプトン、10gの酵母抽出物、5gのNaCl)である。1.2の光学密度(DO600nm)で、HoxHサブユニットの組換え産生を誘導するために、18℃で200rpmの撹拌(撹拌速度)下で0.2mM IPTGを培養物に添加する。産生時間は18℃で20時間である。次いで、遠心分離(4500rpmで15分間)によって細胞を回収し、精製プロセスを開始する。
【0145】
シネコキスティス(Synechocystis sp.)PCC6803由来のHoxEFUYH [NiFe]-ヒドロゲナーゼのHoxHサブユニットの組換え型の産生を確認するために、精製方法を開発した。この方法(図7参照)は、単一のアフィニティクロマトグラフィ工程でHoxHを見かけの均一性まで精製する。この方法は、固定化金属アフィニティクロマトグラフィ(IMAC)を含む。キレート剤は、不動相と金属イオンとの間の結合を可能にするニトリロ三酢酸(NTA)である。固定化金属は、ニッケル(Ni)である。このクロマトグラフィは、ポリヒスチジンタグを含むタンパク質の非常に特異的な分離を可能にする。18℃で20時間のHoxHの組換え産生後、1リットルの大腸菌(E.coli)の培養物を遠心分離(4500rpmで15分)によって回収する。細胞を25mlの溶解緩衝液(20mMリン酸ナトリウム緩衝液pH7.5、300mM KCl+2μlベンゾナーゼ+50μl MgCl 1M+EDTAを含まないプロテアーゼ阻害剤のカクテルからなる1ペレット)に再懸濁し、次いでフレンチプレスによって溶解する。上清(25ml)を遠心分離(15000rpmで15分間)によって回収し、濾過し(0.45μm)、洗浄緩衝液(20mMリン酸ナトリウム緩衝液pH7.5、300mM KCl+10mMイミダゾール)中で予め平衡化したNi-NTAカラム(1ml)に適用する。次いで、280nmでの吸光度(タンパク質濃度を表す)が0に低下するまで、カラムを35mlの洗浄緩衝液(20mMリン酸ナトリウム緩衝液pH7.5、300mM KCl+10mMイミダゾール)で洗浄する。次いで、イミダゾールの濃度をそれぞれ50mM、100mM、150mM、200mM及び250mMに増加させながら5段階で溶出を行う(図7参照)。
【0146】
クロマトグラフィ中に得られた様々な画分のSDS-PAGE分析は、100mM、150mM、200mM及び250mMイミダゾールの濃度で溶出した画分中のHoxHサブユニットの予想サイズである54kDaに近い主なバンドを示す(図8を参照)。HoxHはまた、150mM、200mM及び250mMのイミダゾールの濃度で溶出された画分に追加のバンドが見られないので、優れた純度を示す。これにより、HoxHが単一のアフィニティクロマトグラフィ工程で見かけの均一性まで精製されたと結論付けることができる。
【0147】
実際にシネコキスティス(Synechocystis sp.)PCC6803由来のHoxEFUYH [NiFe]-ヒドロゲナーゼの活性部位を含むHoxHサブユニットの組換え形態であることを確認するために、ポリヒスチジン抗タグ抗体を使用する免疫検出を行った(図9参照)。ポリヒスチジンタグで標識されたタンパク質を含む分子量マーカーを添加して陽性対照とした。HoxH組換えタンパク質は、ロード、すなわち大腸菌の細胞の溶解に由来し、Ni-NTAアフィニティカラムに適用された上清において十分に検出される。HoxH組換えタンパク質は、Ni-NTAカラムによって吸収されない画分にも存在する。これは、Ni-NTAカラムのローディング容量を超え、HoxH組換えタンパク質の一部がカラムに結合できなかったことを示している。「50mM溶出画分」にはシグナルは現れない。HoxH組換えタンパク質は、この低いイミダゾール濃度でNi-NTAカラムに結合したままである。最後に、HoxH組換えタンパク質の存在は、予想されるサイズ、すなわち54kDaに近い200mM画分での免疫検出によって確認される。これにより、単一のアフィニティクロマトグラフィ工程におけるHoxH組換えタンパク質の精製が明確に確認される。HoxH組換えタンパク質が画分中の免疫検出によって強調される場合、低強度のいくつかのバンドも54kDa未満の分子量で現れる。これはおそらく、C末端で部分的に分解されたHoxH組換えタンパク質である。SDS-PAGE分析はこれらのバンドの存在を示さないので、分解されたHoxH組換えタンパク質の割合は最小限のようである。注意すべきこととして、免疫検出は、非常に少量のタンパク質を強調する非常に高感度の方法である。
【0148】
6.HoxH組換えタンパク質におけるヒドロゲナーゼ活性の強調
[NiFe]-ヒドロゲナーゼを組換え発現する能力は、天然の酵素とは非常に異なる特性を有する変異型を生成するという観点で、広範囲の可能性がある。図10は、シネコキスティス(Synechocystis sp.)PCC6803由来のHoxEFUYH、[NiFe]-ヒドロゲナーゼの構造を示す。NADPHは、シネコキスティス(Synechocystis sp.)PCC6803におけるインビボでのHoxEFUYHの補因子である。メチルビオロゲン(MV)は、[NiFe]-ヒドロゲナーゼの標準的なインビトロ活性試験における酸化還元メディエータとして使用される。図11は、電子伝達(影付き矢印)並びにHoxEFUYHとNADPH及び/又はMVとの間の予想される相互作用の概略図である。
【0149】
FMNを回避することによってMVが1つ又は複数のFeS中心に電子を直接伝達できることは、当業者であれば一般に習得していることである。しかし、図12に示されるように、シネコキスティス(Synechocystis sp.)PCC6803由来のHoxEFUYH [NiFe]-ヒドロゲナーゼの活性部位を含む単一のHoxHサブユニットが、MVから電子を直接受け取ることができ、したがって追加の酸化還元リレーの非存在下で水素を生成することができるかどうかは現在知られていない。
【0150】
本発明の文脈において、この可能性を試験するために、亜ジチオン酸ナトリウムによって予め還元されたHoxH組換えタンパク質及びMVの存在下での[NiFe]-ヒドロゲナーゼの標準的なインビトロ活性試験を実施する(図13参照)。HoxHは、ヒドロゲナーゼ触媒反応を表す式H←→2H+2eに従って水素を生成するために、予め還元されたメチルビオロゲンから電子を受け取り、それらを緩衝液中に存在するプロトンと組み合わせることができる。当業者に周知のプロトコルによる[NiFe]-ヒドロゲナーゼのこの標準的なインビトロ活性試験は、気密及び窒素脱気セプタムによって閉鎖された2mlフラスコの使用を含むものである。10mMリン酸緩衝液pH6.8に溶解した100mM亜ジチオン酸ナトリウム及び10mM MVから構成され、また窒素脱気した反応混合物1mlを、シリンジを用いてフラスコに添加する。200μgのHoxH組換えタンパク質も反応混合物に添加する。水素生成は、HoxH組換えタンパク質が添加された瞬間から始まる(瞬間は図13の矢印で示される)。タンパク質含有量は、Bradford法(Bradford.1976.A rapid and sensitive method for the quantitation of microgram quantities of protein utilizing the principle of protein-dye binding.Anal Biochem 72:248-254)によって決定した。水素生成は、事前に較正された水素マイクロセンサ(デンマーク、オーフスのユニセンス社)を使用して連続的に監視される。
【0151】
したがって、HoxH組換えタンパク質の活性は、添加されたHoxH組換えタンパク質の量(mg.ml-1中)が既知であり、添加されたこの特定量の組換えタンパク質の水素発生速度(μmol H.min-1)も既知であるため、計算することができる。この比活性は、例えば、0.1μmol H.min-1.mg-1の酵素であってもよい。
【0152】
予想外かつ驚くべきことに、シネコキスティス(Synechocystis sp.)PCC6803由来のHoxEFUYH [NiFe]-ヒドロゲナーゼの活性部位を含む単一の触媒性HoxHサブユニットが、酸化還元リレーとして機能する追加のFeS中心を介さずに酸化還元メディエータ(例えば、メチルビオロゲン)から電子を受け取り、プロトンの還元を触媒することができるという事実が、本発明の文脈において強調されている。
【0153】
本発明の文脈において、HoxH組換えタンパク質、ベンジルビオロゲン及び水素の存在下での[NiFe]-ヒドロゲナーゼの標準的なインビトロ活性試験も実施する(図14参照)。HoxHは、式H←→2H+2eにより水素から電子を受け取って、それらをベンジルビオロゲンに供与し、その過程でプロトンを生成することができる。当業者に周知のプロトコルによる[NiFe]-ヒドロゲナーゼのこの標準的なインビトロ活性試験は、気密及び水素ガス飽和セプタムによって閉鎖された2mlフラスコの使用を含むものである。50mM Tris緩衝液pH7.6に溶解した40μmolのベンジルビオロゲンから構成され、水素脱気した反応混合物2mlを、シリンジを用いてフラスコに添加する。実験は40℃で行う。340μgのHoxH組換えタンパク質も反応混合物に添加する。水素の消費、したがってベンジルビオロゲンの還元は、HoxH組換えタンパク質が添加された瞬間から始まる。タンパク質含有量は、Bradford法(Bradford.1976.A rapid and sensitive method for the quantitation of microgram quantities of protein utilizing the principle of protein-dye binding.Anal Biochem 72:248-254)によって決定した。ベンジルビオロゲンの還元を、578nmの波長で分光光度法によって監視する。8,600M-1cm-1のモル吸光係数を考慮に入れた。
【0154】
したがって、HoxH組換えタンパク質の活性は、添加されたHoxH組換えタンパク質の量(mg.ml-1中)が既知であり、添加された特定の量の組換えタンパク質に対するベンジルビオロゲンの還元速度と同等である水素消費速度(μmol H.min-1)も既知であるため、計算することができる。この比活性は、例えば、0.1μmol H.min-1.mg-1の酵素であってもよい。
【0155】
予想外かつ驚くべきことに、シネコキスティス(Synechocystis sp.)PCC6803由来のHoxEFUYH [NiFe]-ヒドロゲナーゼの活性部位を含む単一の触媒性HoxHサブユニットが、酸化還元リレーとして機能する追加のFeS中心を介さずに、水素の酸化を触媒してプロトンを生成し、酸化還元メディエータ(例えば、ベンジルビオロゲン)に電子を供与することができるという事実が、本発明の文脈において強調されている。
【0156】
HoxEFUYH五量体の他のサブユニットの発現がない場合、先行技術に固有の問題は少なくとも部分的に解決され、HoxH組換えタンパク質は、単独でプロトンの還元を触媒し、酸化還元リレーとして機能する追加のFeS中心を介することなく酸化還元メディエータ(例えば、メチルビオロゲン)から電子を受け取ることができる。HoxHタンパク質はまた、それ自体でHの酸化を触媒することができ、酸化還元リレーとして機能する追加のFeS中心を介さずに酸化還元メディエータ(例えばベンジルビオロゲン)を還元する。この例外的な特徴は、本発明の大きな利点、特に[NiFe]-ヒドロゲナーゼの活性部位を有し、触媒活性である単一サブユニットの組換え産生を実証する。
【0157】
7.外因性成熟因子の非存在下で大腸菌(E.coli)において組換え生産されたHoxH組換えタンパク質における組換え産生、アフィニティクロマトグラフィによる精製及びヒドロゲナーゼ活性の強調表示
上記の例3と同様の方法で、発現ベクターpET26b(+)+HoxHを、当業者に周知の熱ショックの従来の方法により、これを発現ベクターpACYCDUET-1+HypABCDEFHoxWの非存在下で形質転換することによって大腸菌(E.coli)(コンピテント細胞BL21(DE3))に導入する。形質転換体は、カナマイシン(50μg/ml)に対する耐性を有する。
【0158】
上記の例4と同様の方法で、目的のHoxH DNA配列の存在を、プラスミドDNAの抽出及び酵素消化である、当業者に周知の一連の実験によって検証した。
【0159】
上記の例5と同様の方法で、外因性成熟因子HupABCDEFHoxWをコードするプラスミドpACYCDUET-1+HupABCDEFHoxWの非存在下で、大腸菌(E.coli)でHoxHタンパク質を組換え産生した。次いで、上記の例5と同様の方法で、HoxHタンパク質をアフィニティクロマトグラフィによって精製した。
【0160】
上記の例6と同様の方法で、外因性成熟因子の非存在下で大腸菌(E.coli)で組換え産生されたHoxHタンパク質のヒドロゲナーゼ活性を、MVを含む、当業者に周知のプロトコルに従って強調した。
【0161】
本発明の文脈内で、亜ジチオン酸ナトリウムによって予め還元されたHoxH組換えタンパク質及びMVの存在下での[NiFe]-ヒドロゲナーゼの標準的なインビトロ活性試験を実施した(図15参照)。HoxHは、ヒドロゲナーゼ触媒反応を表す式H←→2H+2eに従って水素を生成するために、予め還元されたメチルビオロゲンから電子を受け取り、それらを緩衝液中に存在するプロトンと組み合わせることができる。当業者に周知のプロトコルによる[NiFe]-ヒドロゲナーゼのこの標準的なインビトロ活性試験は、気密及び窒素脱気セプタムによって閉鎖された2mlフラスコの使用を含むものである。10mMリン酸緩衝液pH6.8に溶解した100mM亜ジチオン酸ナトリウム及び10mM MVから構成され、また窒素脱気した反応混合物1mlを、シリンジを用いてフラスコに添加する。750μgのHoxH組換えタンパク質も反応混合物に添加する。水素生成は、HoxH組換えタンパク質が添加された瞬間から始まる(瞬間は図15の矢印で示される)。タンパク質含有量は、Bradford法(Bradford.1976.A rapid and sensitive method for the quantitation of microgram quantities of protein utilizing the principle of protein-dye binding.Anal Biochem 72:248-254)によって決定した。水素生成は、事前に較正された水素マイクロセンサ(デンマーク、オーフスのユニセンス社)を使用して連続的に監視される。
【0162】
したがって、HoxH組換えタンパク質の活性は、添加されたHoxH組換えタンパク質の量(mg.ml-1中)が既知であり、添加されたこの特定量の組換えタンパク質の水素発生速度(μmol H.min-1)も既知であるため、計算することができる。この比活性は、例えば、0.1μmol H.min-1.mg-1の酵素であってもよい。
【0163】
シネコキスティス(Synechocystis sp.)PCC6803由来のHoxEFUYH [NiFe]-ヒドロゲナーゼの活性部位を含む単一の触媒性HoxHサブユニットが、大腸菌(E.coli)にとって外因性の成熟因子HupABCDEFHoxWの介入なしに酸化還元メディエータ(例えば、メチルビオロゲン)から電子を受け取り、プロトンの還元を触媒することができるという事実が、本発明の文脈において強調されている。
【0164】
本発明は、純粋に例示的な値を有する特定の実施形態に関連して説明されており、限定的であると見なされるべきではない。一般に、本発明が例示及び/又は上述の例に限定されないことは、当業者には明らかであろう。
【0165】
動詞「含む(comprise)」、「含む(include)」、又は任意の他の変形、並びにそれらの活用形の使用は、言及されたもの以外の要素の存在を決して除外することはできない。
【0166】
要素を導入するための不定冠詞「a」、「an」、又は定冠詞「the」の使用は、これらの要素の複数の存在を排除するものではない。
【配列表フリーテキスト】
【0167】
配列表3 <223>最適化されたNiFe-ヒドロゲナーゼHoxEFUYH
配列表3 <223>Ndel制限部位
配列表3 <223>ポリヒスチジンタグ
配列表3 <223>BlpI制限部位
配列表19 <223>最適化された発現配列
配列表19 <223>NcoI制限部位
配列表19 <223>AvrII制限部位
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【配列表】
2023502034000001.app
【国際調査報告】