(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-20
(54)【発明の名称】柱と梁とのボルト接続
(51)【国際特許分類】
E04B 1/58 20060101AFI20230113BHJP
E04B 1/24 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
E04B1/58 508R
E04B1/24 L
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022527862
(86)(22)【出願日】2020-11-13
(85)【翻訳文提出日】2022-06-17
(86)【国際出願番号】 US2020060519
(87)【国際公開番号】W WO2021097290
(87)【国際公開日】2021-05-20
(32)【優先日】2019-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516277440
【氏名又は名称】マイテック・ホールディングズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】MiTek Holdings, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】アダムズ,ジャレッド ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ラフェジー,ベーザッド
(72)【発明者】
【氏名】フイン,クアン ミン
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA02
2E125AA12
2E125AB01
2E125AB16
2E125AC15
2E125AC16
2E125AG12
2E125AG41
2E125AG59
2E125BA55
2E125BB02
2E125BB22
2E125BD01
2E125BE02
2E125BF05
2E125CA05
(57)【要約】
建築物の躯体の継手接続構造は、柱、及び、前記柱の対向する面に取り付けられ且つ前記柱から横方向外側に延在する一対の側板を備える柱アセンブリを備える。梁アセンブリは、一対の側板の間に受け入れられる一端部を有する梁を備える。柱と梁の少なくとも一方は、一対の側板の少なくとも一方を柱及び梁の一方にボルト止めするためのアクセスを提供するために、一対の側板の間の領域に開口部を有する。柱アセンブリが前記梁アセンブリに取り付けられるときに前記開口部を通じて延在する締結部材がない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の躯体の継手接続構造であって、
柱、及び、前記柱の互いに対向する面に取り付けられ且つ前記柱から横方向外側に延在する一対の側板を備える柱アセンブリと、
前記一対の側板に近接する一端部を有する梁を備える梁アセンブリと、
を備え、
前記柱及び前記梁の少なくとも一方が、前記一対の側板の少なくとも一方を前記柱及び前記梁の一方にボルト止めするためのアクセスを提供するために、前記一対の側板の間の領域に開口部を有し、前記柱アセンブリが前記梁アセンブリに取り付けられるときに前記開口部を通じて延在する締結部材がない、継手接続構造。
【請求項2】
前記柱は、梁向き面を有し、前記開口部は、前記柱の梁向き面に配置されている、請求項1に記載の継手接続構造。
【請求項3】
前記開口部は、前記側板の高さのほぼ中間に配置された中心部を有する、請求項2に記載の継手接続構造。
【請求項4】
前記一対の側板は、前記柱にボルト止めされている、請求項2に記載の継手接続構造。
【請求項5】
前記柱は、一対の側板係合面を有し、前記開口部は、前記一対の側板係合面の一方に配置されている、請求項1に記載の継手接続構造。
【請求項6】
前記開口部は、第1の開口部であり、前記一対の側板係合面の他方に第2の開口部が配置されている、請求項5に記載の継手接続構造。
【請求項7】
前記柱は、HSS柱である、請求項1に記載の継手接続構造。
【請求項8】
前記梁は、上面及び下面を有し、前記開口部は、前記梁の上面及び下面の一方に配置されている、請求項1に記載の継手接続構造。
【請求項9】
前記開口部は、前記一対の側板のほぼ中間に配置された中心部を有する、請求項8に記載の継手接続構造。
【請求項10】
前記梁は、開放長手方向端部を有し、前記開口部は、開放長手方向端部から延在している、請求項9に記載の継手接続構造。
【請求項11】
前記梁は、HSS梁である、請求項8に記載の継手接続構造。
【請求項12】
柱と、
前記柱の互いに対向する面にボルト止めされ且つ前記柱から横方向外側に延在する一対の側板と、
を備え、
前記柱には、前記一対の側板の間に配置され且つ前記一対の側板を前記柱にボルト止めするために前記柱の内部へのアクセスを提供する開口部が形成され、
前記開口部には、前記一対の側板の一方を前記柱に取り付ける締結部材がない、
柱アセンブリ。
【請求項13】
整列された側板のボルト穴及び前記柱のボルト穴を通じて延在するボルトと、前記ボルト穴に前記ボルトを固定するナットとを更に備える、請求項12に記載の柱アセンブリ。
【請求項14】
前記柱は、それぞれの側板に係合する互いに対向する一対の第1の側壁と、前記一対の第1の側壁の間に延在する互いに対向する一対の第2の側壁とを備えるHSS柱であり、前記開口部は、前記一対の第2の側壁の一方に配置されている、請求項12に記載の柱アセンブリ。
【請求項15】
前記柱は、それぞれの側板に係合する互いに対向する一対の第1の側壁と、前記一対の第1の側壁の間に延在する互いに対向する一対の第2の側壁とを備えるHSS柱であり、前記開口部は、前記一対の第1の側壁の一方に配置されている、請求項12に記載の柱アセンブリ。
【請求項16】
前記一対の側板の少なくとも一方に設けられた開口部を更に備える、請求項15に記載の柱アセンブリ。
【請求項17】
前記開口部は、前記側板の高さのほぼ中間に配置された中心部を有する、請求項12に記載の柱アセンブリ。
【請求項18】
柱アセンブリに取り付けるための梁であって、
上面、下面、及び、前記上面と前記下面との間に延在する一対の側面を有する梁部と、
前記柱アセンブリの一対の側板を前記梁部に取り付けるためのボルトを受け入れるために、前記一対の側面の各々に設けられた複数のボルト穴と、
前記上面及び前記下面の一方に配置され、前記一対の側板を前記梁部に取り付ける締結部材がない開口部と、
を備える、梁。
【請求項19】
前記梁は、開放長手方向端部を有するHSS梁であり、前記開口部は、前記開放長手方向端部から延在している、請求項18に記載の梁。
【請求項20】
前記開口部は、第1の開口部であり、前記上面及び前記下面の他方に第2の開口部が配置されている、請求項19に記載の梁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、建築物における梁と柱とのボルト接続、特に、梁及び柱の一方又は両方が箱構造又は中空構造である場合に関するものである。
【背景技術】
【0002】
構造用鋼製躯体を有するモーメント抵抗建築物において、地震又は他の極端な荷重条件のエネルギの大部分が、建築物の梁と柱との継手部又はその付近で、吸収及び消散されることが見出されている。
【0003】
モーメント抵抗建築物、タワー、及び類似の構造物の構造用鋼材建設において、梁のフランジは、最も一般的には、完全溶込み溶接、レ形溶接、溝溶接によって柱の面に溶接されている。従って、梁と柱との接続部は、拘束力の強い溶接で構成されている。垂直荷重、すなわち、床の重量や床にかかる荷重は、梁のウェブにボルト止め又は溶接されるとともに柱の面にボルト止め又は溶接された垂直剪断タブ又は背中合わせに配置された一対の垂直構造アングル材によって伝達されると、多くの人が考えていたし、今もそう考えられている。梁にかかる垂直荷重の大部分は、梁のウェブにボルト止め又は溶接されるとともに梁の両端部で柱のフランジ面にボルト止め又は溶接された剪断タブによって伝えられると考えるのが一般的である。柱に溶接された対面する側板の使用を通じて、垂直荷重の大部分は、側板によって伝達される。
【0004】
側板接続部には、柱の深さ方向に延在する平行な並置補強板が必要である。HSS(hollow structural section:中空構造部)柱及び梁の場合、側板の長さ、大きさ、位置によって、側板を柱/梁にボルト止めするための制約がある。いくつかの従来の方法として、鋼製のピン、カラー、スリーブを有する「ブラインドボルト」を使用する方法がある。ブラインドボルトは、予め開けられた穴を通じて挿入され、カラーにかかる圧力が、エキスパンダを変形させてブラインド側がしっかりと固定されように強固な接続部を生成する一方、カラーが、工具が適用される側をシールする。また、従来の方法は、HSS部の側面に溶接されるネジスタッドを使用する。しかしながら、これらの方法に関する多くの製造公差の問題がある。本開示は、側板を柱及び梁に接続するための標準的なボルト止め技術の配置及び使用において、典型的な製造アクセスに対応可能な構造を提供する。
【発明の概要】
【0005】
一態様において、建築物の躯体の継手接続構造は、一般に、柱、及び、前記柱の互いに対向する面に取り付けられ且つ前記柱から横方向外側に延在する一対の側板を備える柱アセンブリを備える。梁アセンブリは、前記一対の側板に近接する一端部を有する梁を備える。前記柱及び前記梁の少なくとも一方は、前記一対の側板の少なくとも一方を前記柱及び前記梁の一方にボルト止めするためのアクセスを提供するために、前記一対の側板の間の領域に開口部を有する。前記開口部は、前記柱アセンブリが前記梁アセンブリに取り付けられるときに前記開口部を通じて延在する締結部材がない。
【0006】
別の態様において、柱アセンブリは、一般に、柱と、前記柱の互いに対向する面にボルト止めされ且つ前記柱から横方向外側に延在する一対の側板と、を備える。前記柱には、前記一対の側板の間に配置され且つ前記一対の側板を前記柱にボルト止めするために前記柱の内部へのアクセスを提供する開口部が形成されている。前記開口部には、前記一対の側板の一方を前記柱に取り付ける締結部材がない。
【0007】
更に別の態様において、柱アセンブリに取り付けるための梁は、一般に、上面、下面、及び、前記上面と前記下面との間に延在する一対の側面を有する梁部を備えている。前記柱アセンブリの一対の側板を前記梁部に取り付けるためのボルトを受け入れるために、複数のボルト穴が、前記一対の側面の各々に設けられている。前記上面及び前記下面の一方には、開口部が配置されている。前記開口部には、前記一対の側板を前記梁部に取り付ける締結部材がない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の梁-柱-梁の継手接続構造を示す正面図である。
【
図2】
図1の梁-柱-梁の継手接続構造の右側面図である。
【
図3】
図1の梁-柱-梁の継手接続構造の上面図である。
【
図4】
図1の梁-柱-梁の継手接続構造の柱アセンブリの正面図である。
【
図7A】代替的な開口部構造を示す
図1の梁-柱-梁の継手接続構造の柱アセンブリの正面図である。
【
図8】
図1の梁-柱-梁の継手接続構造の右側における梁の断片的な斜視図である。
【
図12】
図1の梁-柱-梁の継手接続構造の左側における梁アセンブリの正面図である。
【
図15】柱アセンブリの別の実施形態の斜視図である。
【
図16】梁-柱の継手接続構造の他の実施形態の斜視図である。
【0009】
対応する参照文字は、図面全体を通して対応する部分を示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1~
図3を参照すると、本開示の梁-柱-梁のモーメント抵抗継手接続構造が、通常、11で示されている。継手接続構造は、建築物の躯体の建設に使用されてもよい。図示された実施形態において、継手接続部は、柱15を備える柱アセンブリ13を、柱15から横方向外側に互いに反対方向に延在するとともに、概ね共通の長手方向軸に沿って延在する全長梁19,20に接続する。全長梁は、構造物における隣接する柱の間に実質的に全長にわたって延在するのに十分な長さを有する梁である。継手接続構造は、本開示の範囲から逸脱することなく、単一の柱及び単一の梁、又は、付加的な梁及び柱を好適に接続できることが理解されるであろう。また、隣接する柱の間の全長よりも短く延在する梁が、本発明の範囲内で使用されてもよい。
【0011】
図示の実施形態において、柱15は、HSS(hollow structural support:中空構造支持)柱であり、梁19は、HSS梁であり、梁20は、I形梁である。しかしながら、柱15及び梁19,20は、本開示の範囲から逸脱することなく、他の構成を有してもよい。柱15と梁19,20を挟むように、互いに間隔をあけて平行に、垂直方向及び水平方向に延在する一対の側板21が配置されている。側板21は、当該側板に沿って水平方向に延在する長さL(
図3)と、当該側板に沿って垂直方向に延在する高さH(
図2)とを有する。側板21は、ボルト26を用いて柱15及び梁19,20にボルト止めされている。以下により詳細に説明するように、柱15の構造は、側板21を柱及び梁19,20にボルト止めするための製造者のアクセスを提供するように構成されている。更に、HSS梁19の構造は、側板をHSS梁にボルト止めするためのアクセスを提供するように構成されている。この効果を得るために、標準的なボルト26を使用して、側板21を柱15及び梁19,20にボルト止めしてもよい。
【0012】
図4~
図7を参照すると、柱15は、開口した長手方向端部を有する中空の柱で構成されている。柱15は、本開示の範囲から逸脱することなく、閉塞された端部を有してもよい。図示された実施形態において、柱15は、柱の長さに沿って延在する4つの側壁によって画定された矩形の断面形状を有する。互いに対向する一対の第1の側壁31は、柱15の主要な(すなわち、より大きな)寸法を横切って延在している。一対の第1の側壁31は、側板が柱15にボルト止めされるときに、それぞれの側板21と係合するように構成されている。一実施形態において、側板21は、第1の側壁31の実質的に全幅に沿って延在している。互いに対向する一対の第2の側壁33は、一対の第1の側壁31の間に延在し、柱15のより小さい横方向寸法を画定する。一対の第2の側壁33は、梁が柱アセンブリ13にボルト止めされたときに、それぞれの梁19,20の端部に対向するように位置決めされる。柱15は、第1の側壁31及び第2の側壁33が同じ横方向寸法を有するように、正方形の断面形状を有してもよいと理解されるであろう。更に、第2の側壁33は、第1の側壁31よりも大きな横方向寸法を有してもよい。
【0013】
図1~
図3に戻ると、側板21は、柱15及び梁19,20を補強し、柱及び梁が柱の梁向き面(すなわち、側壁33)に梁を直接溶接又はボルト止めするなどの他の方法で取り付けられたときに、一対の第2の側壁33にわたって通常見られる応力を低減させる。特に、側板21は、継手接続部にかかる応力を、柱15の梁向き面33から離れた側板21に沿って継手の側面に伝達させる。従って、一対の側板21の間の柱15の側壁33の領域は、継手接続部内で比較的応力が低い領域を構成する。
【0014】
図2及び
図5~
図7を参照すると、一対の第2の側壁33の少なくとも一方は、開口部35を有する。図示された実施形態において、開口部35は、一対の第2の側壁33の両方に形成されている。しかしながら、側壁33の一方のみが開口部35を有してもよい。開口部35は、角が丸くなった概ね矩形の形状を有する。開口部35は、開口部の長手方向軸が柱の長さに概ね平行に延在するように、柱15の長さに沿って延在している。しかしながら、開口部35は、本開示の範囲から逸脱することなく、他の形状及び配向を有してもよい。例えば、開口部35は、直角の角を有してもよいし、正方形の形状であってもよいし、円形の形状であってもよい。更に、開口部35は、側壁33の表面に沿って他の方向に延在してもよい。第1の側壁31に設けられたボルト穴26A(
図7)は、側板21を柱15に取り付けるためのボルト26を受け入れる穴を提供する。側壁33の開口部35は、柱15のボルト穴26Aの上下の外周境界の間に配置されている。従って、開口部35は、標準的なボルト26を使用して側板を柱に取り付けることができるように、側板21が柱にボルト止めされる位置で柱15の内部への製造者のアクセスを提供する。特に、側板21を柱に取り付けるために、ボルト26の上に通すために柱15の内部又は外部に別のナット27(
図1~
図3)を必要とするボルト26は、ボルトをボルト穴26Aに挿入し且つナットをボルトに通すために製造者がボルトの両端部にアクセスできるので使用することができる。図示の実施形態において、ナット27は、継手接続部の外側に配置されている。しかしながら、ナットは、柱15の内部でボルトにねじ込まれてもよい。従来の中空の柱構造では、柱の外側しか製造者が容易にアクセスできないため、専用のボルト(例えば、ブラインドボルト)を使用する必要がある。従って、現在の継手接続部の構造は、側板21を柱15に接続するために、標準的なボルト26を使用することを容易にする。
【0015】
図2、
図5、
図6を参照すると、開口部35は、側板21が柱15にボルト止めされたときに一対の側板21の間に配置される柱15上の位置に配置されている。側板21は、梁19からの荷重を第1の側壁31に直接伝達する。そのため、第2の側壁33に配置された開口部35は、継手接続部の応力が比較的小さい領域内にある。従って、開口部35は、継手接続部の強度を実質的に低下させることなく、柱の材料を除去することによって、柱15の内部へのアクセスを提供することになる。一実施形態において、開口部35の中心部C(
図5及び
図6)は、対向する側板21の中間の高さに位置している。また、開口部35は、柱15の側壁33を横切る荷重経路に応じて、他の位置に中心部が置かれてもよい。
【0016】
図示された実施形態において、開口部35は、側板21が柱15にボルト止めされた後、開放されたままである。しかしながら、開口部35は、開口部を形成するために除去された柱15の材料を用いて、側板21が柱に取り付けられた後に閉塞されてもよい。また、側板21が取り付けられた後、別個の材料が開口部35を覆うように使用されてもよい。付加的又は代替的に、重力フレーム部材(図示せず)が開口部35の中に又は開口部35を横切って組み立てられてもよい。開口部35を閉塞することは、適切な継手接続性能のために必ずしも構造的に必要ではないと理解されるであろう。従って、開口部35の一方又は両方は、開放されたままであってもよい。
【0017】
図示の実施形態において、開口部35が梁向き側壁33に形成されているが、開口部36が、側板21と係合する側壁31の一方又は両方に付加的又は代替的に形成され得ることが更に想定される(
図7A)。この実施形態において、開口部36は、側板21のほぼ中間の高さに配置されてもよい。特に、開口部36は、柱15の側壁31のボルト穴26A内の空間にあってもよい。付加的又は代替的に、開口部37(
図1)は、側板21が柱15及び梁20に取り付けるために位置決めされるとき、梁20の境界(すなわち、梁20の上部及び下部フランジの間)内に形成されてもよい。これらの実施例において、開口部36,37は、継手接続部内の比較的高い応力の領域に配置されると理解される。従って、開口部36,37は、柱15の側板21及び側壁31を横切る荷重経路を考慮した独自の大きさ、位置、及び向きにされることになる。更に、柱15及び/又は側板21は、応力に耐えるような大きさ及び形状にされてもよい。開口部36,37は、側板21が取り付けられた後、開放されたままでもよいし、閉塞されてもよい。
【0018】
図3及び
図8~
図11を参照すると、HSS梁19は、開口した長手方向端部を有する中空梁を備える。しかしながら、長手方向端部は、閉塞されてもよい。図示された実施形態において、梁19は、梁の長さに沿って延在する4つの側壁によって画定される矩形の断面形状を有するが、他の形状であってもよい。互いに対向する一対の第1の側壁41は、梁19の主要な(すなわち、より大きな)寸法を横切って延在している。一対の第1の側壁41は、側板が梁19にボルト止めされるときに、それぞれの側板21と係合するように構成されている。一実施形態において、側板21は、第1の側壁41の実質的に全高に沿って延在している。互いに対向する一対の第2の側壁43は、一対の第1の側壁41の間に延在し、梁の小(すなわち、より小さい)寸法を画定する。一対の第2の側壁43は、梁が柱アセンブリ13にボルト止めされたときに、梁19の上部及び下部を画定する。梁19は、第1の側壁41及び第2の側壁43が同じ横方向寸法を有するように、正方形の断面形状を有してもよいと理解されるであろう。また、第2の側壁43は、第1の側壁41よりも大きな横方向寸法を有してもよい。
【0019】
上述したように、側板21は、柱15及び梁19,20を補強する。梁19,20に関して、側板21は、継手接続部にかかる応力を、梁19,20の柱向きの端部、上部、及び下部から離れた側板21に沿って継手の側面に伝達させる。従って、一対の側板21の間の梁19,20の端部、上端部、及び下端部も、継手接続部内の応力が比較的小さい領域を構成する。
【0020】
図8及び
図9を参照すると、一対の第2の側壁43の少なくとも一方は、開口部又は切欠部45を有する。図示された実施形態において、開口部45は、一対の第2の側壁43の両方に形成されている。しかしながら、一方の側壁43のみが開口部45を有してもよいし、開口部は省略されてもよい。開口部45は、柱15に隣接する開放端部と、当該開放端部に対向する閉塞端部とを有するように、梁19の長手方向の端部から延在している。開口部45は、閉塞端部が丸められた角を有する概ね矩形の形状を有する。開口部45は、各開口部の長手方向軸が梁の長さに概ね平行に延在するように、梁19の長さに沿って延在している。しかしながら、開口部45は、本開示の範囲から逸脱することなく、他の形状及び配向を有してもよい。例えば、開口部45の閉塞端部は、直角の角を有してもよい。或いは、開口部は、正方形又は円形の形状を有してもよい。また、開口部45は、側壁43の表面に沿って他の方向に延在してもよく、及び/又は、側壁の他の位置に配置されてもよい。例えば、開口部45は、開口部の両端部が閉塞されるように、梁19の端部から挿入されてもよい。開口部45は、標準的なボルト26を使用して側板21を梁に取り付けることができるように、製造者に梁19の内部へのアクセスを提供する。特に、側板21を梁に取り付けるために、梁19の内部又は外部において、ボルト26の上にネジ止めする別のナット27(
図1~
図3)を必要とするボルト26は、製造者がボルトの両端部にアクセスしてナットをボルトにネジ止めすることができるので、使用されてもよい。従来の中空梁構造において、梁の外側しか製造者が容易にアクセスできないため、専用のボルト(例えば、ブラインドボルト)を使用する必要がある。従って、現在の継手接続部の構成は、側板21を梁19に接続するために標準的なボルト26を使用することを容易にする。
【0021】
図3を参照すると、開口部45は、側板が梁にボルト止めされたときに一対の側板21の間に配置される梁19上の位置に配置されている。このため、開口部45は、継手接続部における比較的低い応力の領域内に配置される。従って、開口部45は、継手接続部の強度を実質的に低下させることなく、梁の材料を除去することによって梁19の内部へのアクセスを提供することになる。一実施形態において、開口部45の中心部C(
図10)は、側板が梁19に取り付けられたときに、対向する一対の側板21の間の中間に位置する。また、開口部45は、梁19の側壁43を横切る荷重経路に応じて、他の位置に中心部が置かれてもよい。
【0022】
図示の実施形態において、開口部45は、側板21が梁19にボルト止めされた後、解放されたままである。しかしながら、開口部45は、開口部を形成するために除去された梁の材料を用いて、側板21が梁19に取り付けられた後に閉塞されてもよい。また、側板21が取り付けられた後に、別個の材料が開口部45を覆うように使用されてもよい。更に、側板21の開口部37は、側板が梁20に取り付けられた後に閉鎖されてもよい。開口部37,45を閉塞することは、適切な継手接続性能のために必ずしも構造的に必要ではないと理解されるであろう。従って、開口部37,45の一部又は全部は、開放されたままであってもよい。
【0023】
図示の実施形態において、開口部45が上下の側壁43に形成されているが、開口部が、側板21(
図11A)と係合する側壁41の一方又は両方に付加的又は代替的に形成され得ることが更に想定される。この実施形態において、開口部45は、側板21のほぼ中間の高さに配置されてもよい。この例において、開口部45は、継手接続部内の比較的高い応力の領域に配置されると理解される。従って、開口部45は、梁19,20の側壁41を横切る荷重経路を考慮した独自の大きさ、位置、及び向きにされることになる。また、梁19,20及び側板21は、付加的な応力に耐えられるような大きさ及び形状に形成されてもよい。側壁41の開口部45は、側板21を取り付けた後、開放されたままであってもよいし、閉塞されてもよい。更に、開口部47(
図7A)は、梁19の側壁41の開口部45と整列するか或いは梁20の必要に応じて少なくとも部分的に整列する側板21内に形成されてもよい。
【0024】
図1、
図3、
図12~
図14を参照すると、柱15の反対側の梁20は、アングル材を用いて側板21にボルト止めされている。全長梁20の上部フランジの下面には、上部アングル材51が取り付けられている。上部アングル材51は、梁の対向する側部において梁20の上部フランジの下面に取り付けられ且つ側部に沿って水平に延在する水平第1脚部を有する細長いL字型部材で構成されてもよい。各上部アングル材51の第1脚部は、ボルト26などの適切な方法で梁20の上部フランジの下面に取り付けられる。各上部アングル材51は、上部アングル材の第1脚部から、梁20の下部フランジに向かって、下方に突出する第2脚部を有してもよい。図示された実施形態において、各上部アングル材51の第1及び第2脚部は、互いに実質的に直角に配置される。各上部アングル材51の垂直な第2脚部の外面は、上部アングル材の第2脚部及び側板21の整列したボルト穴26Aを通じて延在する水平方向に間隔を置いたボルト26によって、それぞれの側板21の内面にボルト止めされている。図示された実施形態において、上部アングル材51は、水平第1脚部が梁20の上部フランジの側縁部を越えて横方向に延在するように構成されているので、垂直第2脚部の外面は、梁20の上部フランジのフランジ先端部から横方向に離れて配置される。上部アングル材51は、本発明の範囲内で他の構成及び/又は配置であってもよい。また、アングル材51が図示されているが、他の形式の連結部材が用いられてもよい。
【0025】
下部アングル材53は、全長梁20の下部フランジの上面に取り付けられている。下部アングル材53は、梁の対向する側部において梁20の下部フランジの上面に取り付けられ且つ側部に沿って水平に延在する水平第1脚部を有する細長いL字型部材で構成されてもよい。各下部アングル材53の第1脚部は、ボルト26などの適切な方法で梁20の下部フランジの上面に取り付けられる。各下部アングル材53は、下部アングル材の第1脚部から、梁20の上部フランジに向かって、上方に突出する第2脚部を有してもよい。図示された実施形態において、各下部アングル材53の第1脚部及び第2脚部は、互いに実質的に直角に配置される。各下部アングル材53の垂直な第2脚部の外面は、下部アングル材の第2脚部及び側板21の整列したボルト穴26Aを通じて延在する水平方向に間隔を置いたボルト26によって、それぞれの側板21の内面にボルト止めされている。図示された実施形態において、下部アングル材53は、水平第1脚部が梁20の下部フランジの側縁部を越えて横方向に延在するように構成されているので、垂直第2脚の外面は、梁20の下部フランジのフランジ先端部から横方向に離れて配置される。下部アングル材53は、本発明の範囲内で他の構成及び/又は配置であってもよい。また、アングル材53が図示されているが、他の形態の連結部材が用いられてもよい。
【0026】
上述した継手接続構造11は、梁-柱-梁のタイプの構造である。当業者であれば、梁-柱タイプの構造が類似の構成要素を有すると理解されるであろう。最も好ましくは、梁19,20及び柱15と同様に、継手接続構造11の各構成要素は、構造用鋼で作製されている。継手接続構造11の構成要素の一部は、溶接によって一体化されてもよく、一部はボルト止めによって一体化されてもよい。溶接は、当初、加工工場で行われてもよい。ボルト止めは、製作工場及び/又は建設現場で行われてもよいし、或いはその2つの組み合わせでもよく、これは世界の多くの地域で好ましい選択肢となり得る。
【0027】
図15を参照すると、別の実施形態の柱アセンブリが113で示されている。柱アセンブリ113は、柱115と、柱にボルト止めされた一対の側板121とを備える。柱アセンブリ113は、側板121がチャンネル形状の板材で構成され、柱115の片側のみから横方向に延在していることを除いて、第1実施形態の柱アセンブリ13の一部と実質的に同様である。
【0028】
図16~
図18を参照すると、別の実施形態の梁-柱モーメント抵抗継手接続構造が211で示されている。この継手接続構造は、建物の躯体の建設に使用されてもよい。図示された実施形態において、継手接続部は、柱215及び側板221を備える柱アセンブリ213を、梁つなぎ材223によって互いに取り付けられた一対の全長梁チャンネル219を有する全長梁アセンブリ217に接続する。1以上の梁つなぎ材(図示せず)が本発明の範囲内で使用されてもよいことは理解されるであろう。図示された実施形態において、柱215は、中空の矩形柱である。しかしながら、柱は、本開示の範囲から逸脱することなく、I梁、H梁、又は円形状などの他の構成を有してもよい。継手接続構造は、梁19が梁チャンネル219及び梁つなぎ材223に置き換えられることを除いて、第1実施形態の一部と実質的に類似している。梁チャンネル219の隙間245は、側板221を梁チャンネルにボルト止めするためのアクセスを提供する。
【0029】
各実施形態で説明した特定の接続部は、交換可能であると理解されるであろう。
【0030】
本発明又はその好適な実施形態の構成要素を紹介するとき、冠詞「a」、「an」、「 the」及び「said」は、1以上の構成要素が存在することを意味することを意図している。用語「comprising」、「including」及び「having」は、包括的であることを意図し、記載された構成要素以外の追加の構成要素が存在する可能性があることを意味する。
【0031】
以上のことから、本発明のいくつかの目的が達成され、他の有利な結果が得られることが分かるであろう。
【0032】
本発明の範囲から逸脱することなく、上記の構造、製品、及び方法において様々な変更がなされ得るので、上記の説明に含まれ、添付の図面に示された全ての事項は、例示的なものとして解釈され、制限的な意味ではないことが意図される。
【0033】
本発明の原理に従って構成されるモーメント抵抗柱-梁継手接続構造、柱アセンブリ、及び梁アセンブリは、多数の独特の特徴、利益、及び利点を提供するものである。利点及び利益が適用される実施形態のいくつかを示す図を参照されたい。
【0034】
(本発明の他の記載)
A1.柱アセンブリを構築する方法であって、
互いに対向する一対の第1の側壁と、前記互いに対向する一対の第1の側壁の間に延在する互いに対向する一対の第2の側壁とを備える柱を準備するステップと、
前記互いに対向する一対の第1の側壁に複数のボルト穴を形成するステップと、
前記互いに対向する一対の第1の側壁及び互いに対向する一対の第2の側壁の一方に、前記ボルト穴とは別の開口部を形成するステップと、
前記ボルト穴を通じて延在するボルトを、前記互いに対向する一対の第1の側壁及び互いに対向する一対の第2の側壁の一方の開口部を通じてアクセスすることによって、前記互いに対向する一対の第1の側壁に側板をボルト止めするステップと、
を含む、方法。
【0035】
A2.前記側板が前記柱に取り付けられた後に、前記互いに対向する一対の第1の側壁及び互いに対向する一対の第2の側壁の一方の開口部を覆うステップを更に含む、A1に記載の方法。
【0036】
A3.互いに対向する一対の第1の側壁及び互いに対向する一対の第2の側壁の他方に前記ボルト穴とは別の第2の開口部を形成するステップを更に含む、A1に記載の方法。
【0037】
A4.前記柱アセンブリに梁アセンブリを取り付けるステップを更に含む、A1に記載の方法。
【0038】
A5.前記梁アセンブリを取り付けるステップは、
上面、下面、及び、上面と下面との間に延在する一対の側面を有する梁を準備するステップと、
前記一対の側面の各々に複数のボルト穴を形成するステップと、
前記上面及び前記下面の一方に、前記側面の複数のボルト穴とは別の開口部を形成するステップと、
前記側面のボルト穴を通じて延在するボルトを、前記上面及び前記下面の一方の開口部を通じてアクセスすることによって、前記側面に前記側板をボルト止めするステップと、
を含む、A4に記載の方法。
【0039】
A6.前記側板が梁に取り付けられた後に、前記上面及び前記下面の一方の開口部を覆うステップを更に含む、A5に記載の方法。
【国際調査報告】