(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-20
(54)【発明の名称】細胞をリプログラミングするための方法
(51)【国際特許分類】
C12N 5/0775 20100101AFI20230113BHJP
C12N 5/074 20100101ALI20230113BHJP
C12N 5/0789 20100101ALI20230113BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230113BHJP
C12N 5/0735 20100101ALI20230113BHJP
A61K 35/50 20150101ALI20230113BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
C12N5/0775
C12N5/074
C12N5/0789
C12N5/10
C12N5/0735
A61K35/50
A61P15/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022528048
(86)(22)【出願日】2020-11-13
(85)【翻訳文提出日】2022-07-12
(86)【国際出願番号】 AU2020051235
(87)【国際公開番号】W WO2021092657
(87)【国際公開日】2021-05-20
(32)【優先日】2019-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】304044531
【氏名又は名称】モナシュ ユニバーシティー
(71)【出願人】
【識別番号】507335687
【氏名又は名称】ナショナル ユニヴァーシティー オブ シンガポール
(71)【出願人】
【識別番号】506152885
【氏名又は名称】ナント ユニベルシテ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】ジョセ ポロ
(72)【発明者】
【氏名】リウ シアオトン
(72)【発明者】
【氏名】キャスリン デイビッドソン
(72)【発明者】
【氏名】オーウェン ラッカム
(72)【発明者】
【氏名】ジョン エフ.オウヤン
(72)【発明者】
【氏名】ローラン ダビド
(72)【発明者】
【氏名】ガエル カステル
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AB01
4B065AC20
4B065BA01
4B065BB34
4B065BB40
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB58
4C087BB64
4C087CA04
4C087NA20
4C087ZA81
(57)【要約】
本発明は、ヒト体細胞を、栄養膜幹細胞(TSC)の少なくとも1つの特徴を示す細胞にリプログラミングするための方法を提供し、この方法は、以下の工程を順番に含み:a)体細胞における1つ以上の因子のタンパク質発現を増加させる工程であって、因子は、体細胞を多能性状態に向けてリプログラミングするためのものである、工程と;b)細胞を多能性状態に向けてリプログラミングすることを可能にするのに十分な時間及び条件下で細胞を培養する工程と;c)細胞を、栄養膜幹細胞(TSC)を維持するのに適した培養培地と接触させる工程と;d)細胞がTSCの少なくとも1つの特徴を示すことを可能にするのに十分な時間及び条件下で、TSC培地中で細胞を培養する工程、それによって体細胞をTSCの少なくとも1つの特徴を示す細胞にリプログラミングする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
栄養膜幹細胞(TSC)の少なくとも1つの特徴を示す細胞に体細胞をリプログラミングする方法であって、以下の工程を:
a) 前記体細胞における1つ以上の因子のタンパク質発現又は量を増加させる工程であって、前記因子は、前記細胞を脱分化又は多能性状態に向けてリプログラミングするためのものである、工程と;
b) 脱分化又は多能性状態に向かう前記細胞の前記リプログラミングを可能にするのに十分な時間及び条件下で前記細胞を培養する工程と;
c) 栄養膜幹細胞(TSC)を維持するのに適したTSC培養培地と前記細胞を接触させる工程と;
d) 前記細胞がTSCの少なくとも1つの特徴を示すことを可能にするのに十分な時間及び条件下で、前記TSC培地中で前記細胞を培養する工程、
の順番に含み、それによって前記体細胞をTSCの少なくとも1つの特徴を示す細胞にリプログラミングする、方法。
【請求項2】
体細胞から栄養膜幹細胞(TSC)の少なくとも1つの特徴を示す細胞を生成する方法であって、以下の工程を:
a) 前記体細胞における1つ以上の因子のタンパク質発現又は量を増加させる工程であって、前記因子は、前記体細胞を脱分化又は多能性状態に向けてリプログラミングするためのものである、工程と;
b) 脱分化又は多能性状態に向かう前記細胞のリプログラミングを可能にするのに十分な時間及び条件下で前記細胞を培養する工程と;
c) 栄養膜幹細胞(TSC)を維持するのに適したTSC培養培地と前記細胞を接触させる工程と;
d) 前記細胞がTSCの少なくとも1つの特徴を示すことを可能にするのに十分な時間及び条件下で、前記TSC培養培地中で前記細胞を培養する工程、
の順番に含み、それによって前記体細胞からTSCの少なくとも1つの特徴を示す細胞を生成する、方法。
【請求項3】
前記TSC培地が、成長因子及びRhoキナーゼ(ROCK)阻害剤を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記成長因子が、上皮成長因子(EGF)、インスリン、形質転換成長因子(TGF)から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記成長因子がEGFである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ROCK阻害剤が、trans-N-(4-ピリジル)-4-(1-アミノエチル)-シクロヘキサンカルボキサミド(Y-27632)又はその塩である、請求項3~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記TSC培養培地が、以下の1つ以上:
- 4-[4-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-5-(2-ピリジル)-1H-イミダゾール-2-イル]ベンズアミド(SB 431542)若しくはその塩;
- 6-[[2-[[4-(2,4-ジクロロフェニル)-5-(4-メチル-1H-イミダゾール_2-イル)-2-ピリミジニル]アミノ]エチル]アミノ]ニコチノニトリル(CHIR 99021)若しくはその塩;及び/又は
- A83-01(3-(6-メチル-2-ピリジニル)-N-フェニル-4-(4-キノリニル)-1H-ピラゾール-1-カルボチオアミド)若しくはその塩;
をさらに含む、請求項3~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記TSC培養物がASECRiAVであり、A83-01、SB431542、EGF、CHIR、ROCK阻害剤、アスコルビン酸及びバルプロ酸を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記体細胞が、線維芽細胞、表皮細胞、ケラチノサイト又は単球、好ましくは皮膚線維芽細胞である、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記体細胞を脱分化又は多能性状態に向けてリプログラミングするための前記因子が、OCT4、SOX2、KLF4及びMYCのうちの1つ以上である、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記因子が、OCT4、SOX2、KLF4及びMYCである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記因子がLIN28及び/又はNANOGをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
体細胞を脱分化又は多能性状態に向けてリプログラミングするための前記因子のタンパク質発現又は量が、前記因子の発現を増加させる薬剤と前記細胞を接触させることによって増加する、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記薬剤が、ヌクレオチド配列、タンパク質、アプタマー及び小分子、リボソーム、RNAi薬剤及びペプチド核酸(PNA)並びにそれらの類似体又は改変体からなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記因子のタンパク質発現又は量が、前記因子をコードするか又は前記因子の機能的断片をコードするヌクレオチド配列を含む少なくとも1つの核酸を前記細胞に導入することによって増加する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記体細胞を脱分化又は多能性状態に向けてリプログラミングするための1つ以上の因子の前記タンパク質発現又は量を増加させた後、少なくとも1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、14日、21日、28日、35日、42日以上、前記体細胞を前記TSC培地と接触させる、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記リプログラミングプロセス中、及び多能性状態への前記細胞のリプログラミングの完了前に、前記体細胞を前記TSC培地と接触させる、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記リプログラミングプロセス中、及び前記TSC培地と接触させる前に、前記体細胞が非多能性培地中で培養される、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
脱分化状態又は多能性状態に向かう前記細胞の前記リプログラミングを可能にするのに十分な時間及び条件下で前記細胞を培養する前記工程が、前記体細胞の成長を支持する培地中で前記細胞を少なくとも7日間及び22日間以下の期間、培養することを含み、前記体細胞は、栄養膜幹細胞(TSC)を維持するのに適したTSC培養培地と接触させる前に多能性を達成していない、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記方法が以下:
a) 前記細胞中のOCT4、SOX2、KLF4及びMYCの量又は発現を増加させるための薬剤と体細胞と接触させる工程;
b) リプログラミング中間体細胞の生成を可能にするのに十分な時間及び条件下で、前記体細胞の成長を支持する培地中で前記細胞を培養する工程;
c) 前記リプログラミング中間体細胞を、栄養膜幹細胞(TSC)を維持するのに適したTSC培養培地と接触させる工程であって、好ましくは、前記培地がA83-01、SB431542、EGF、CHIR、ROCK阻害剤、アスコルビン酸及びバルプロ酸を含む、工程、
を含み、それによって、体細胞からTSCの少なくとも1つの特徴を示す細胞を生成する、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記体細胞を多能性状態にリプログラミングした後に、前記体細胞を前記TSC培地と接触させる、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記体細胞が、前記細胞をTSC培地と接触させ及び培養する前に、ナイーブ培地又は拡張培地中でさらに培養される、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
TSCの前記少なくとも1つの特徴が、以下:
- 未分化の二分化能状態;
- 玉石状のコロニーの外観;
- 絨毛外栄養膜(EVT)又は合胞体栄養膜(ST)の1つ以上の特徴を示す細胞に分化する能力;
- バイサルファイトアッセイにより決定される胚盤胞由来TSCに類似したメチル化パターン;
- 免疫組織化学及び/又はPCRアッセイによって決定される、TSCの1つ以上の生化学マーカーの発現、好ましくは、前記マーカーがCD49f(iTGA6)、CD249、核GATA2/3、TFAP2C、P63、及びNR2F2からなる群から選択される
のうちの1つ以上を含む、請求項1~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
TSCの少なくとも1つの特徴を示す細胞が、前記体細胞を特徴付ける前記マーカーの非存在を特徴とし、場合により、TSCの少なくとも1つの特徴を示す前記細胞が以下のマーカー:OCT4(POU5F1とも呼ばれる)、NANOG、SOX2、SALL2、OTX2、BANCR、KLF17、DPPA3、ARGFX及びDNMT3Lのうちの1つ以上を発現しない、請求項1~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記体細胞が:
- 絨毛外栄養膜(EVT)又は合胞体栄養膜(ST)の1つ以上の特徴を示す細胞に分化する能力を有する;
- 核GATA2/3、TFAP2C、P63、及びNR2F2からなる群から選択されるTSCの1つ以上の生化学的マーカーを発現する
細胞にリプログラミングされる、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
STの特徴が、SDC1+多核細胞のうちの1つ以上を含む、請求項23~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
EVTの特徴が、HLA-G、PRG2、及びPAPPA2の発現の増加のうちの1つ以上を含む、請求項23~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
TSCの少なくとも1つの特徴を示す細胞が、継代培養で維持された場合に、その未分化状態を保持する、請求項1~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
TSCの少なくとも1つの特徴を有する前記細胞が、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも40以上の細胞培養継代の間、TSCの前記少なくとも1つの特徴を保持する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
TSCの少なくとも1つの特徴を示す前記細胞を増殖させて、TSCの少なくとも1つの特徴を示す集団中の細胞の割合を増加させる工程をさらに含む、請求項1~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
請求項1~30のいずれか1項に記載の方法によって生成されたTSCの少なくとも1つの特徴を示す単離された細胞。
【請求項32】
細胞の少なくとも5%がTSCの少なくとも1つの特徴を示し、それらの細胞が請求項1~28のいずれか1項に記載の方法によって生成され、好ましくは、前記集団中の前記細胞の少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%がTSCの少なくとも1つの特徴を示す細胞集団。
【請求項33】
TSCの少なくとも1つの特徴を示す前記細胞を分化させて、EVT又はSTの少なくとも1つの特徴を示す細胞を生成する工程をさらに含む、請求項1~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
TSCの少なくとも1つの特徴を示す細胞を、再生医療に使用するために非胎盤細胞型に分化させる工程をさらに含む、請求項1~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
請求項33又は34に記載の方法によって生成された、単離された分化細胞又は分化細胞の集団。
【請求項36】
請求項32に記載の細胞集団、又は請求項35に記載の分化細胞集団に由来するオルガノイド。
【請求項37】
以下を含む医薬組成物又はサプリメント:
- 請求項31に記載の細胞;
- 請求項32に記載の細胞集団
- 請求項35に記載の分化細胞又は分化細胞集団;
- 請求項36に記載のオルガノイド又はその一部;
及び薬学的に許容される賦形剤。
【請求項38】
それを必要とする対象における栄養膜の発達及び/又は活性に関連する障害を治療及び/又は予防する方法であって、治療有効量の:
- 請求項31に記載の細胞;
- 請求項32に記載の細胞集団;
- 請求項35に記載の分化細胞又は分化細胞集団;
- 請求項36に記載のオルガノイド;又は
- 請求項37に記載の医薬組成物、
を前記対象に投与することを含み、それによって前記対象における栄養膜の前記発達及び/又は活性に関連する前記障害を治療及び/又は予防する、方法。
【請求項39】
胎盤又は胚盤胞に以下:
- 請求項31に記載の細胞;
- 請求項32に記載の細胞集団;又は
- 請求項35に記載の単離された分化細胞又は分化細胞集団
を導入することを含む、胎盤又は胚盤胞を増強する方法。
【請求項40】
栄養膜の前記発達及び/又は活性に関連する疾患又は障害を治療するための薬剤の製造における:
- 請求項31に記載の細胞;
- 請求項32に記載の細胞集団;又は
- 請求項35に記載の分化細胞又は分化細胞集団、
- 請求項36に記載のオルガノイド;
の使用。
【請求項41】
前記疾患又は障害が、反復流産、子癇前症、胎児発育遅延(FGR)、ヒドラチホルム(hydratiform)奇胎及び絨毛癌からなる群から選択される、請求項38に記載の方法、又は請求項40に記載の使用。
【請求項42】
栄養膜の発達及び/又は活性を調節することができる薬剤を同定する方法であって:
- 請求項1~30のいずれか1項によって得られたTSCの少なくとも1つの特徴を含む細胞又は細胞集団を候補薬剤と接触させること;
- 前記薬剤との前記接触後の前記細胞又は細胞集団の前記発達及び/又は活性を、前記薬剤なしの前記細胞又は細胞集団の前記発達及び/又は活性と比較すること、
を含み、
前記薬剤なしの前記細胞又は細胞集団の前記発達と比較して所定のレベルを超える、前記細胞又は細胞集団の前記発達及び/又は活性に対する前記薬剤の効果は、前記薬剤が栄養膜の発達及び/又は活性を調節することを示す、方法。
【請求項43】
栄養膜によって生成された化合物を得るための方法であって、請求項1~30のいずれか1項によって得られたTSCの少なくとも1つの特徴を含む細胞若しくは細胞集団、又は該細胞若しくは細胞集団を含む培養物を培養し、前記細胞によって分泌された化合物を培養培地から単離し、それによって前記栄養膜によって生成された前記化合物を得ることを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞から誘導栄養膜幹細胞を生成するための方法及び組成物に関する。
【0002】
関連出願
本出願はオーストラリア仮特許出願第2019904283号からの優先権を主張し、その全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
哺乳動物の胚発生は、内部細胞塊(ICM)と胚体外栄養外胚葉(TE)によって分離された胚盤胞に発達可能な全能性接合子から始まる。ICMは、胚を適切に生成する胚盤葉上層と、卵黄嚢を生成する原始内胚葉に発達する。TEは最終的に胎盤を発生させる。
【0004】
胎盤は、胎盤中の栄養膜細胞が胎児-母体境界面で胎児と母体との間の相互作用を媒介することができるため、ヒト胎児発達の重要な器官である。
【0005】
ヒト胎盤に見出すことができる栄養膜由来細胞には、3つの主要なタイプがある:絨毛外栄養膜(EVT)と合胞体栄養膜(ST)を生じることができる未分化細胞栄養膜(CT)。胚盤胞のTE細胞から生じる全ての栄養膜細胞、及びそれらの十分に制御された増殖と分化は、胎児の発育に必須である。栄養膜の発達及び機能の障害は、流産、子癇前症及び子宮内胎児発育遅延を含む妊娠中の様々な合併症につながる可能性がある。
【0006】
ヒト胚性幹細胞(hESC)及びヒト誘導多能性幹細胞(hiPSC)を含むヒト多能性幹細胞(hPSC)の研究及び臨床適用の進歩にもかかわらず、栄養膜幹細胞を生成するための再現可能な方法の開発は不足している。さらに、TSCの誘導は達成されているが、着床前胚又は胎盤からのそれらの細胞の単離は、遺伝的多様性へのアクセスを与えない。
【0007】
ヒト栄養膜幹細胞、又は着床前胚若しくは胎盤を必要としない栄養膜幹細胞の特徴を示す細胞を作製するための新規及び/又は改良された方法が必要である。
【0008】
本明細書における先行技術への言及は、この先行技術が任意の管轄区域における共通の一般的知識の一部を形成すること、又はこの先行技術が当業者によって、他の先行技術と理解され、関連すると見なされ、及び/若しくは組み合わされることが合理的に期待され得ることの承認又は示唆ではない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様において、本発明は栄養膜幹細胞(TSC)の少なくとも1つの特徴を示す細胞に体細胞をリプログラミングするための方法を提供し、この方法は、以下の工程を順番に含み:
a) 体細胞における1つ以上の因子のタンパク質発現又は量を増加させる工程であって、因子は、体細胞を脱分化又は多能性状態に向けてリプログラミングするためのものである、工程と;
b) 脱分化又は多能性状態に向かう細胞のリプログラミングを可能にするのに十分な時間及び条件下で細胞を培養する工程と;
c) 栄養膜幹細胞(TSC)を維持するのに適したTSC培養培地と細胞を接触させる工程と;
d) 細胞がTSCの少なくとも1つの特徴を示すことを可能にするのに十分な時間及び条件下で、TSC培地中で細胞を培養する工程、
それによって体細胞をTSCの少なくとも1つの特徴を示す細胞にリプログラミングする。
【0010】
好ましくは、TSC培地は、成長因子、好ましくはEGF、及びRhoキナーゼ(ROCK)阻害剤を含む。従って、本発明はまた、体細胞を栄養膜幹細胞(TSC)の少なくとも1つの特徴を示す細胞にリプログラミングするための方法を提供し、この方法は、以下の工程を順番に含み:
a) 体細胞における1つ以上の因子のタンパク質発現又は量を増加させる工程であって、因子は、体細胞を脱分化又は多能性状態に向けてリプログラミングするためのものである、工程と;
b) 脱分化又は多能性状態に向かう細胞のリプログラミングを可能にするのに十分な時間及び条件下で細胞を培養する工程と;
c) 細胞を、成長因子、好ましくはEGF、及びROCK阻害剤を含むTSC培養培地と接触させる工程と;
d) 細胞がTSCの少なくとも1つの特徴を示すことを可能にするのに十分な時間及び条件下で、TSC培養培地中で細胞を培養する工程、
それによって体細胞をTSCの少なくとも1つの特徴を示す細胞にリプログラミングする。
【0011】
本発明はまた、体細胞から栄養膜幹細胞(TSC)の少なくとも1つの特徴を示す細胞を生成するための方法を提供し、この方法は、以下の工程を順番に含み:
a) 体細胞における1つ以上の因子のタンパク質発現又は量を増加させる工程であって、因子は、体細胞を脱分化又は多能性状態に向けてリプログラミングするためのものである、工程と;
b) 脱分化又は多能性状態に向かう細胞のリプログラミングを可能にするのに十分な時間及び条件下で細胞を培養する工程と;
c) 成長因子、好ましくはEGF、及びROCK阻害剤を含むTSC培養培地と細胞を接触させる工程と;
d) 細胞がTSCの少なくとも1つの特徴を示すことを可能にするのに十分な時間及び条件下で、TSC培養培地中で細胞を培養する工程、
それによって体細胞からTSCの少なくとも1つの特徴を示す細胞を生成する。
【0012】
さらなる実施形態において、本発明は線維芽細胞をリプログラミングするための方法を提供し、この方法は、以下の工程を順番に含み:
a) 線維芽細胞における1つ以上の因子のタンパク質発現又は量を増加させる工程であって、因子は、線維芽細胞を脱分化又は多能性状態に向けてリプログラミングするためのものである、工程と;
b) 脱分化又は多能性状態に向かう細胞のリプログラミングを可能にするのに十分な時間及び条件下で細胞を培養する工程と;
c) 細胞を、成長因子、好ましくはEGF、及びROCK阻害剤を含むTSC培養培地と接触させる工程と;
d) 細胞がTSCの少なくとも1つの特徴を示すことを可能にするのに十分な時間及び条件下で、TSC培養培地中で細胞を培養する工程、
ここで線維芽細胞は、TSCの少なくとも1つの特徴を示すようにリプログラミングされる。
【0013】
体細胞を脱分化又は多能性状態に向けてリプログラミングするための任意の方法(即ち、本明細書に記載される方法の工程a)及びb)を行うための方法)が、本発明の方法に従って使用され得ることが理解される。従って、本発明は、体細胞が可塑性又は多能性に向かってリプログラミングを開始することを可能にするために、工程a)及びb)に従って使用され得る、関連因子のタンパク質発現若しくは量を増加させるための特定の方法、又は培養条件によって限定されない。このような方法は当技術分野で公知であり、本明細書にさらに記載される。
【0014】
好ましい実施形態において、体細胞を脱分化又は多能性状態に向けてリプログラミングするための因子は、転写因子である。転写因子は、OCT4、SOX2、KLF4及びMYCの因子のうちの1つ以上を含み得るか、又はこれらの因子からなり得るか、又はこれらの因子から本質的になり得る。特に好ましい実施形態では、転写因子は因子OCT4、SOX2、KLF4及びMYC(OSKM)の4つ全て、又はそれらの改変体を含む。
【0015】
従って、好ましい実施形態では、本発明は以下を提供する:
【0016】
さらなる実施形態において、本発明は線維芽細胞をリプログラミングするための方法を提供し、この方法は、以下の工程を順番に含み:
a) 線維芽細胞における転写因子OCT4、SOX2、KLF4及びMYC(OSKM)の1つ以上のタンパク質発現又は量を増加させる工程と;
b) 脱分化又は多能性状態に向かう細胞のリプログラミングを可能にするのに十分な時間及び条件下で細胞を培養する工程と;
c) 細胞を、EGF及びROCK阻害剤を含むTSC培養培地と接触させる工程と;
d) 細胞がTSCの少なくとも1つの特徴を示すことを可能にするのに十分な時間及び条件下で、TSC培地中で細胞を培養する工程、
ここで線維芽細胞はTSCの少なくとも1つの特徴を示すようにリプログラミングされる、
【0017】
さらなる実施形態において、体細胞、例えば線維芽細胞を脱分化又は多能性状態に向けてリプログラミングするための転写因子はまた、因子LIN28及び/又はNANOGを含み得る。特定の実施形態において、OCT4、SOX2、KLF4、MYC、LIN28及びNANOGのそれぞれのタンパク質発現は、体細胞において増加する。
【0018】
典型的には、本明細書に記載の転写因子のタンパク質発現又は量は、細胞を転写因子の発現を増加させる薬剤と接触させることによって増加する。好ましくは、薬剤は、ヌクレオチド配列、タンパク質、アプタマー及び小分子、リボソーム、RNAi薬剤及びペプチド核酸(PNA)並びにそれらの類似体又は改変体からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、薬剤は外因性である。本発明はまた、1つ以上の転写因子の発現を増加させるための転写活性化系(例えば、CRISPR/Cas9又はTALENのような遺伝子活性化系において使用するためのgRNA)の使用を意図する。
【0019】
典型的には、本明細書に記載の転写因子のタンパク質発現又は量は、転写因子をコードするヌクレオチド配列又はその機能的断片をコードするヌクレオチド配列を含む少なくとも1つの核酸を細胞に導入することによって増加する。
【0020】
本発明の好ましい実施形態において、転写因子タンパク質をコードする核酸配列は、プラスミドによって細胞に導入される。1つ以上の転写因子をコードする1つ以上の核酸が使用され得る。従って、1つ以上のプラスミドが、必要とされる1つ以上の転写因子の発現又は量を増加させる目的のために使用され得ることは明らかである。換言すれば、核酸配列は、単一のプラスミド中又は上にあってもよく、又は2つ以上のプラスミド中で体細胞に提供されてもよい。
【0021】
本発明の任意の実施形態において、本発明に従って使用するための1つ以上の転写因子をコードする核酸を含むプラスミドは、エピソームプラスミドであり得る。
【0022】
本発明の任意の実施形態において、検出可能なマーカーも、体細胞がTSCの少なくとも1つの特徴を示すようにリプログラミングされたときを同定するために、体細胞に導入され得る。検出可能なマーカーは、プロモーター又はエンハンサー配列に作動可能に連結された蛍光レポーターであり得る。
【0023】
好ましくは、核酸は異種プロモーターをさらに含む。好ましくは、核酸はウイルスベクター又は非ウイルスベクターなどのベクター中にある。好ましくは、ベクターは宿主細胞ゲノムに組み込まれないゲノムを含むウイルスベクターである。ウイルスベクターは、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルス又はセンダイウイルスであり得る。
【0024】
本発明の任意の実施形態において、因子のタンパク質発現又は量は、体細胞を、細胞における前記因子の発現を増加させるための1つ以上の薬剤と接触させることによって、体細胞において増加する。特定の実施形態において、因子のタンパク質発現又は量は、体細胞を、前記転写因子をコードする1つ以上のベクターで形質導入又はトランスフェクションすることによって、体細胞において増加する。ベクターは、組み込み又は非組み込みウイルスベクターを含むウイルスベクターであってもよい。更なる実施形態では、ベクターはエピソームベクターであり得る。
【0025】
「多能性状態に向かうプログラミング」という言葉は、TSC培地との接触時に細胞が多能性であることを必要としないことも理解されるであろう。換言すれば、体細胞は、細胞をTSC培地と接触させる工程の前に多能性状態へのリプログラミングを完了している必要はない。むしろ、細胞はTSC培地との接触時に、好ましくは中間状態にあり、分化状態から、より可塑性又はより成熟した状態(即ち、非分化又は脱分化状態に向かう)に転移している。
【0026】
従って、本発明はさらに、栄養膜幹細胞(TSC)の少なくとも1つの特徴を示す細胞に体細胞をリプログラミングするための方法を提供し、この方法は、以下の工程を順番に含み:
a) 体細胞における1つ以上の因子のタンパク質発現又は量を増加させる工程であって、因子は、細胞を脱分化又は多能性状態に向けてリプログラミングするためのものである、工程と;
b) 分化と多能性との間のリプログラミング中間状態への細胞のリプログラミングを可能にするのに十分な時間及び条件下で細胞を培養する工程と;
c) 栄養膜幹細胞(TSC)を維持するのに適したTSC培養培地と細胞を接触させる工程と;
d) 細胞がTSCの少なくとも1つの特徴を示すことを可能にするのに十分な時間及び条件下で、TSC培地中で細胞を培養する工程、
それによって体細胞をTSCの少なくとも1つの特徴を示す細胞にリプログラミングする。
【0027】
本明細書で使用される場合、分化と多能性との間の中間状態へのリプログラミングはまた、より「成熟していない」細胞状態に向かうリプログラミングを指すと理解され得る。
【0028】
任意の実施形態において、因子のタンパク質発現又は量を増加させることと、細胞をTSC培養培地と接触させることとの間の期間は、体細胞に関連するマーカーの減少を可能にする限り、任意の期間であり得る。さらなる例において、因子のタンパク質発現又は量を増加させることと、細胞をTSC培養培地と接触させることとの間の期間は、細胞が間葉から上皮への転移状態を通って進行することを可能にする限り、任意の期間であり得る。さらなる又は代替の実施形態では、この期間は、細胞における栄養外胚葉(TE)関連転写因子の発現のアップレギュレーションを可能にする限り、任意の期間であり得る。このような転写因子には、TFAP2C及びGATA2が含まれる。
【0029】
特定の実施形態では、細胞が脱分化又は多能性状態に向かうリプログラミングを開始する培養期間は、1つ以上の因子のタンパク質発現又は量を増加させた少なくとも1日後である。期間は、1つ以上の因子のタンパク質発現又は量を増加させた後、約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、23、25、28、30、35、42日以上であってもよい。任意の実施形態において、細胞が脱分化又は多能性状態に向かうリプログラミングを開始する培養期間は、体細胞に関連するマーカーの減少を可能にする限り、任意の期間であり得る。
【0030】
本発明のさらなる実施形態では、上記の方法は、細胞をTSC培地と接触させ、培養する前に、体細胞を培養するのに適した培地(例えば、線維芽細胞又は類似の培地)、プライミング多能性培地、ナイーブ多能性培地、又は拡張多能性培地(例えば、LCDM培地)から選択される培地中で、多能性状態に向かって細胞を培養することを含む。
【0031】
尚さらに、上記の方法は、プライミングされた培地中で多能性状態に向かって細胞を培養する工程と、続いて、ナイーブ培地又は拡張培地(例えば、LCDM培地)から選択される培地に細胞を移行する工程と、次いで、細胞をTSC培地と接触させ、培養する工程とを含み得る。
【0032】
本発明はまた、ナイーブ及び拡張多能性幹細胞からTSCを得るための方法を提供する。
【0033】
従って、さらなる態様において、本発明は、栄養膜幹細胞(TSC)の少なくとも1つの特徴を示す細胞を生成するための方法を提供し、この方法は、以下の工程を順番に含み:
a) 樹立されたナイーブ多能性幹細胞(iPSC)又は拡張誘導多能性幹細胞(EPSC)を提供する工程と;
b) EPSC又はナイーブiPSCを、成長因子、好ましくはEGF、及びROCK阻害剤を含むTSC培養培地と接触させる工程と;
c) 細胞がTSCの少なくとも1つの特徴を示すことを可能にするのに十分な時間及び条件下で、TSC培地中で細胞を培養する工程、
それによってEPSC又はナイーブiPSCをTSCの少なくとも1つの特徴を示す細胞にリプログラミングする。
【0034】
上記の態様の任意の実施形態において、細胞は、当技術分野で公知の任意の方法によって体細胞をリプログラミングすることによって得られたiPSCである。好ましい実施形態において、iPSCは、リプログラミングされた線維芽細胞から得られている。さらなる実施形態において、iPSCは、線維芽細胞における転写因子OCT4、SOX2、KLF4及びMYC(OSKM)の1つ以上の発現を増加させることによって、線維芽細胞をリプログラミングすることによって得られている。
【0035】
さらなる態様において、本発明は、栄養膜幹細胞(TSC)の少なくとも1つの特徴を示す細胞を生成するための方法を提供し、この方法は、以下の工程を順番に含み:
a) 樹立されたプライミングされた拡張多能性幹細胞(EPSC)又はナイーブ誘導多能性幹細胞(iPSC)を提供する工程と;
b) EPSC又はナイーブiPSCとナイーブ培地又はLCDM培地とを接触させる工程と;
c) EPSC又はiPSCを、成長因子、好ましくはEGF、及びROCK阻害剤を含むTSC培養培地と接触させる工程と;
d) 細胞がTSCの少なくとも1つの特徴を示すことを可能にするのに十分な時間及び条件下で、TSC培地中で細胞を培養する工程、
それによってEPSC又はナイーブiPSC細胞をTSCの少なくとも1つの特徴を示す細胞にリプログラミングする。
【0036】
上記の態様の任意の実施形態において、細胞は、当技術分野で公知の任意の方法によって体細胞をリプログラミングすることによって得られたナイーブiPSC/EPSCである。好ましい実施形態において、ナイーブiPSC/EPSCは、リプログラミングされた線維芽細胞又は他の体細胞型から得られている。さらなる実施形態において、iPSCは、線維芽細胞における転写因子OCT4、SOX2、KLF4及びMYC(OSKM)の1つ以上の発現を増加させることによって、線維芽細胞をリプログラミングすることによって得られた。
【0037】
本発明の任意の実施形態において、TSC培養培地は、ROCK阻害剤trans-N-(4-ピリジル)-4-(1-アミノエチル)-シクロヘキサンカルボキサミド(Y-27632)、又はその塩を含む。
【0038】
さらなる実施形態において、TSC培養培地はさらに、以下のうちの1つ以上を含む:
- 4-[4-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-5-(2-ピリジル)-1H-イミダゾール-2-イル]ベンズアミド(SB 431542)又はその塩;
- 6-[[2-[[4-(2,4-ジクロロフェニル)-5-(4-メチル-1H-イミダゾール_2-イル)-2-ピリミジニル]アミノ]エチル]アミノ]ミコチノニトリル(micotinonitrile)(CHIR 99021)又はその塩
- A83-01(3-(6-メチル-2-ピリジニル)-N-フェニル-4-(4-キノリニル)-1H-ピラゾール-1-カルボチオアミド)又はその塩;
【0039】
さらなる実施形態において、TSC培地はまた、Wntを刺激するための薬剤及びTGFβの1つ以上の阻害剤を含む。
【0040】
好ましい実施形態において、TSC培地は、A83-01、SB431542、EGF、CHIR、ROCK阻害剤、アスコルビン酸及びバルプロ酸を含む。(培地は、ASECRiAVと呼ばれることもある)。
【0041】
本明細書で使用される場合、TSCの特徴は、以下を含むと理解される:
- 未分化で二分化能な状態であり、絨毛外栄養膜(EVT)又は合胞体栄養膜(ST)の1つ以上の特徴を示す細胞に分化する能力;
- 玉石状のコロニーの外観;
- バイサルファイトアッセイ又はゲノムワイドなDNAメチル化プロファイリング技術により決定される胚盤胞由来TSCに類似したメチル化パターン;
- 好ましくはマーカーがCD249(アミノペプチダーゼA)、CD49f(ITGA6);核GATA2/3、TFAP2C、P63及びNR2F2からなる群から選択される、免疫組織化学及び/又はPCRアッセイによって決定される、TSCの1つ以上の生化学マーカーの発現;
- ATAC-seqを用いて決定される胚盤胞由来TSCと同様のクロマチン到達性のレベル;
- 胚盤胞由来TSCに類似したヒストン修飾プロファイル(例えば、H3K4me3、H3K27ac遺伝子改変);
- 胚盤胞由来TSCに類似したプロテオーム又はメタボロームプロファイル。
【0042】
さらなる実施形態では、TSCの少なくとも1つの特徴を示す細胞は、体細胞を特徴付けるマーカーが存在しないことを特徴とする。特定の実施形態において、TSCの少なくとも1つの特徴を示す細胞は、以下のマーカー:OCT4(POU5F1とも呼ばれる)、NANOG、SOX2、SALL2、OTX2、BANCR、KLF17、DPPA3、ARGFX及びDNMT3Lのうちの1つ以上を発現しない。
【0043】
任意の実施形態において、本発明に従って作製されるTSC細胞は、本明細書に記載されるTSCの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、又は少なくとも5つの特徴によって特徴付けられる。
【0044】
好ましい実施形態では、本明細書で定義される方法は、体細胞を:
- 絨毛外栄養膜(EVT)又は合胞体栄養膜(ST)の1つ以上の特徴を示す細胞に分化する能力を有する;
- 核GATA2/3、TFAP2C、P63及びNR2F2からなる群から選択されるTSCの1つ以上の生化学的マーカーを発現する
細胞にリプログラミングするためのものである。
【0045】
本明細書で使用される場合、STの特徴は、SDC1+多核細胞、並びにTSCと比較してマーカーCGA、CGB、PSG1、CSH1、HSD3B1、CYP19A1、SDC1及びINHAのうちの1つ以上の発現の増加:のうちの1つ以上を含む。
【0046】
本明細書で使用される場合、EVTの特徴は、TSCと比較して、マーカーHLA-G、PRG2、PAPPA2、MMP2、ITGA5及びATGA1のうちの1つ以上の発現の増加のうちの1つ以上を含む。
【0047】
さらなる実施形態において、TSCの少なくとも1つの特徴を示す細胞は、継代培養において維持される場合、その未分化状態を保持する。
【0048】
好ましくは、TSCの少なくとも1つの特徴を有する細胞は、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも40以上の細胞培養継代の間、TSCの少なくとも1つの特徴を保持する。
【0049】
体細胞は、疾患細胞を含む、本明細書に記載される任意の細胞型であり得る。体細胞は、成体細胞であってもよいし、成体又は非胚細胞の1つ以上の検出可能な特徴を示す成体由来の細胞であってもよい。疾患細胞は、疾患又は状態の1つ以上の検出可能な特徴を示す細胞であってもよい。
【0050】
好ましい態様において、体細胞は線維芽細胞である。
【0051】
典型的には、体細胞のリプログラミングに適した条件には、細胞を十分な時間、適切な培地中で培養することが含まれる。培養の十分な時間は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30日間であり得る。
【0052】
本明細書に記載される任意の方法において、方法は、TSCの少なくとも1つの特徴を示す細胞を増殖させて、TSCの少なくとも1つの特徴を示す集団中の細胞の割合を増加させる工程をさらに含み得る。細胞を増殖させる工程は、以下に記載されるように、細胞の集団を生成するための十分な時間及び条件下で細胞を培養することを含み得る。
【0053】
本明細書に記載される任意の方法において、方法は、TSCの少なくとも1つの特徴を示す細胞を分化させて、EVT又はSTの少なくとも1つの特徴を示す細胞を生成する工程をさらに含み得る。細胞を分化させる工程は、本明細書に記載されるように、EVT又はSTの少なくとも1つの特徴を有する細胞を生成するのに十分な時間及び条件下で細胞を培養することを含み得る。
【0054】
尚さらに、方法は、TSCの少なくとも1つの特徴を示す細胞を、再生医療において使用するために、胎盤外細胞型に分化させることをさらに含み得る。
【0055】
本発明はまた、TSCの少なくとも1つの特徴を有する哺乳動物の未分化前駆細胞を提供し、ここで、細胞は、本明細書に定義される任意の方法によって得られる。
【0056】
本発明はまた、本明細書に記載される方法によって生成されるTSCの少なくとも1つの特徴を示す細胞を提供する。
【0057】
本明細書に記載される任意の方法において、方法は、TSCの少なくとも1つの特徴を示す細胞を単離する工程をさらに含み得る。
【0058】
従って、さらなる実施形態では、本明細書に記載の任意の方法によって得ることができる、又は得られる、単離されたTSCが提供される。
【0059】
本発明はまた、本発明の方法に従って得られる、TSCの少なくとも1つの特徴を示す細胞に由来するか又はそれから分化した単離されたEVT又はSTを提供する。
【0060】
本発明はまた、少なくとも5%の細胞がTSCの少なくとも1つの特徴を示し、それらの細胞が本明細書に記載される方法によって生成される、細胞の集団を提供する。好ましくは、集団中の少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の細胞がTSCの少なくとも1つの特徴を示す。
【0061】
本発明はまた、少なくとも5%の細胞が、本明細書に記載される方法によって生成されるTSCの少なくとも1つの特徴を示す細胞から分化したST又はEVTである細胞の集団を提供する。好ましくは、集団中の少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の細胞が、本発明に従って得られるTSCの少なくとも1つの特徴を示す細胞を分化させることによって得られるST又はEVTである。
【0062】
本発明はまた、以下を含む医薬組成物を提供する:
- TSCの少なくとも1つの特徴を示す細胞であって、本発明の方法に従って得られるか又は得ることができる、細胞、及び
- 薬学的に許容される賦形剤。
【0063】
本発明はまた、以下を含む医薬組成物を提供する:
- ST又はEVTの少なくとも1つの特徴を示す細胞であって、本発明の方法に従って得られる又は得ることができるTSCの少なくとも1つの特徴を有する細胞を分化させることによって得られる又は得ることができる、細胞、及び
- 薬学的に許容される賦形剤。
【0064】
本発明はまた、以下を含むホメオパシー又は栄養補助食品を含む組成物を提供する:
- TSCの少なくとも1つの特徴を示す細胞若しくは細胞集団であって、該細胞は、本発明の方法に従って得られるか若しくは得ることができる、細胞若しくは細胞集団、及び/又は
- ST若しくはEVTの少なくとも1つの特徴を示す細胞若しくは細胞集団であって、該細胞は、本発明の方法に従って得られるか若しくは得ることができるTSCの少なくとも1つの特徴を有する細胞を分化させることによって得られるか若しくは得ることができる、細胞若しくは細胞集団、及び/又は
- ST若しくはEVTの少なくとも1つの特徴を示す細胞若しくは細胞集団に由来するオルガノイドであって、該細胞は、本発明の方法に従って得られるか若しくは得ることができるTSCの少なくとも1つの特徴を有する細胞を分化させることによって得られるか若しくは得ることができる、オルガノイド;
並びに
- 薬学的に許容される賦形剤。
【0065】
本発明はさらに、以下に由来するホメオパシー又は栄養補助食品を含む組成物を提供する:
- TSCの少なくとも1つの特徴を示す細胞又は細胞集団であって、該細胞は、本発明の方法に従って得られるか又は得ることができる、細胞又は細胞集団、及び
- ST又はEVTの少なくとも1つの特徴を示す細胞又は細胞集団であって、該細胞は、本発明の方法に従って得られるか又は得ることができるTSCの少なくとも1つの特徴を有する細胞を分化させることによって得られるか又は得ることができる、細胞又は細胞集団、及び
- -ST又はEVTの少なくとも1つの特徴を示す細胞又は細胞集団に由来するオルガノイドであって、該細胞は、本発明の方法に従って得られるか又は得ることができるTSCの少なくとも1つの特徴を有する細胞を分化させることによって得られるか又は得ることができる、細胞又は細胞集団。
【0066】
使用
本明細書に記載される任意の方法において、この方法は、それを必要とする対象に、以下を投与する工程をさらに含み得る:
- 本明細書に記載される方法に従って作製されたTSCの少なくとも1つの特徴を示す細胞、又は
- 本明細書に記載される方法に従って作製されたTSCの少なくとも1つの特徴を示す細胞を含む細胞集団、又は
- 本発明に従って作製されたTSCの少なくとも1つの特徴を示す細胞から得られる、分化した細胞又は分化した細胞の集団。
【0067】
いくつかの実施形態では、胎盤又は胚盤胞に以下を導入することを含む、胎盤又は胚盤胞を増強する方法が提供される:
- 本明細書に記載される方法に従って生成されたTSCの少なくとも1つの特徴を示す細胞;
- 本明細書に記載される方法に従って作製されたTSCの少なくとも1つの特徴を示す細胞を含む細胞集団
- 本発明に従って作製されたTSCの少なくとも1つの特徴を示す細胞から得られる、分化した細胞又は分化した細胞の集団。
【0068】
本発明はまた、本明細書に記載される方法に従って作製されるTSCの少なくとも1つの特徴を示す細胞から得られるオルガノイド、及び/又は本明細書に記載される方法に従って作製されるTSCの少なくとも1つの特徴を示す細胞から得られる分化細胞(例えば、ST又はEVT)を提供する。
【0069】
さらなる態様において、それを必要とする対象における栄養膜の発達及び/又は活性に関連する障害を治療及び/又は予防する方法であって、本明細書に記載される方法に従って作製されたTSCの少なくとも1つの特徴を示す細胞又は細胞集団、本明細書に記載される方法に従って作製されたTSCの少なくとも1つの特徴を示す細胞から得られた分化したST又はEVT、又は本発明による医薬製品の治療有効量を対象に投与することを含み、それによって対象における栄養膜の発達及び/又は活性に関連する障害を治療及び/又は予防する方法が提供される。
【0070】
本発明はまた、胎盤の疾患/障害の治療のための薬剤の製造における、TSCの少なくとも1つの特徴を示す、本発明に従って生成された細胞、又は細胞を含む細胞集団の使用を提供する。例えば、本発明のリプログラミングされた細胞は、胎盤の疾患又は状態を改善するために個体に導入(移植)され得る。或いは、TSCの少なくとも1つの特徴を示す細胞は、本明細書に記載される薬剤の製造における使用の前に分化され得る。
【0071】
上記の態様の任意の実施形態において、疾患は、反復流産、子癇前症、胎児発育遅延(FGR)、ヒドラチホルム(hydratiform)奇胎及び絨毛癌からなる群から選択される。本発明はまた、栄養膜の発達及び/又は活性を調節することができる薬剤を同定する方法を提供し、該方法は:
- 本発明に従って作製された単離されたTSC又は胎盤を候補薬剤と接触させることと;
- 薬剤との接触後の単離されたTSC又は胎盤の発達及び/又は活性を、薬剤なしのTSC又は胎盤の発達及び/又は活性と比較することと、を含み、
薬剤なしのTSC又は胎盤の発達及び/又は活性と比較して所定のレベルを超える、TSC又は胎盤の発達及び/又は活性に対する薬剤の効果は、薬剤が栄養膜の発達及び/又は活性を調節することを示す。
【0072】
さらに、本発明は栄養膜によって生成された化合物を得るための方法を提供し、この方法は、本発明によるTSCの少なくとも1つの特徴を含む細胞若しくは細胞集団、又はそれを含む培養物を培養し、細胞によって分泌された化合物を培養培地から単離し、それによって栄養膜によって生成された化合物を得ることを含む。
【0073】
本発明はまた、EVT又はSTによって分泌される化合物又は粒子を得るための方法を提供し、この方法は、本発明によるTSCの少なくとも1つの特徴を含む細胞を分化させることによって得られるST若しくはEVT、又はST若しくはEVTの集団を培養し、細胞によって分泌される化合物又は粒子を培養培地から単離し、それによってEVT又はSTによって生成される化合物又は粒子を得ることを含む。
【0074】
化合物は、ホルモン又は成長因子であってもよい。細胞によって分泌される粒子は、エキソソームのような細胞外小胞であってもよい。
【0075】
本発明はまた、本明細書に開示されるTSCの少なくとも1つの特徴を示す細胞を生成するためのキットに関する。いくつかの実施形態において、キットは、本明細書に開示されるように、体細胞、リプログラミング因子、及びTSC培養培地を含む。好ましくは、キットは、TSCの少なくとも1つの特徴を示す細胞を生成するために使用され得る。好ましくは、キットは、線維芽細胞である体細胞と共に使用され得る。いくつかの実施形態において、キットは、本明細書に開示される方法に従って、TSCの少なくとも1つの特徴を示す細胞に体細胞をリプログラミングするための説明書をさらに含む。好ましくは、本発明は、本明細書に記載される本発明の方法において使用される場合のキットを提供する。
【0076】
キットはまた、EVT若しくはST運命、又は他の非胎盤分化細胞型に向かってTSCを分化させるのに適した1つ以上の薬剤を含み得る。
【0077】
本明細書に記載される任意の方法は、インビトロ、エクスビボ又はインビボで行われる1つ以上又は全ての工程を有し得る。
【0078】
本明細書で使用される場合、文脈が特に必要とする場合を除き、用語「含む(comprise)」及び該用語の変形、例えば「含むこと」、「含む(comprises)」及び「含む(comprised)」は、さらなる添加剤、成分、整数又は工程を除外することを意図しない。
【0079】
本発明のさらなる態様、及び前の段落に記載された態様のさらなる実施形態は、例として与えられる以下の記載から、添付の図面を参照して、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【
図1-1】栄養外胚葉(TE)シグネチャーは、ヒトリプログラミングの間にアップレギュレートされる。a)Petropoulos et al (2016),Cell,165:1012-26により定義された、線維芽細胞のナイーブiPSCへのリプログラミング中のTE遺伝子シグネチャーの強度のヒートマップ。(b)Monocle3(黒線)を用いて構築された単一細胞軌跡と重ね合わされたFDL投影上のインビボTEシグネチャー。青色の矢印は、TE濃縮細胞集団を示す。(c)プライミング及びいくつかのナイーブ培養条件下でリプログラミングされたリプログラミング中間体及びiPS細胞におけるEPI、PE及びTE遺伝子シグネチャーの遺伝子セット濃縮分析(GSEA)(方法)。(d)ATAC-seqクラスターピークに関連する遺伝子の標準化遺伝子発現(平均zスケーリング)。(e)ATAC-seqピーククラスターの転写因子モチーフ濃縮分析。モチーフを特徴とするクラスター中の配列のパーセンテージである、色及びサイズによるモチーフ濃縮(-log(P値))ヒートマップ。赤矢印は一過性ATAC-seqクラスター(C3)におけるOCT4、SOX2、NANOG及びKLF4モチーフを指し、青矢印=TE関連転写因子TFAP2C及びGATA2(C7及びC8)の濃縮を青矢印で示す。
【
図1-2】栄養外胚葉(TE)シグネチャーは、ヒトリプログラミングの間にアップレギュレートされる。a)Petropoulos et al (2016),Cell,165:1012-26により定義された、線維芽細胞のナイーブiPSCへのリプログラミング中のTE遺伝子シグネチャーの強度のヒートマップ。(b)Monocle3(黒線)を用いて構築された単一細胞軌跡と重ね合わされたFDL投影上のインビボTEシグネチャー。青色の矢印は、TE濃縮細胞集団を示す。(c)プライミング及びいくつかのナイーブ培養条件下でリプログラミングされたリプログラミング中間体及びiPS細胞におけるEPI、PE及びTE遺伝子シグネチャーの遺伝子セット濃縮分析(GSEA)(方法)。(d)ATAC-seqクラスターピークに関連する遺伝子の標準化遺伝子発現(平均zスケーリング)。(e)ATAC-seqピーククラスターの転写因子モチーフ濃縮分析。モチーフを特徴とするクラスター中の配列のパーセンテージである、色及びサイズによるモチーフ濃縮(-log(P値))ヒートマップ。赤矢印は一過性ATAC-seqクラスター(C3)におけるOCT4、SOX2、NANOG及びKLF4モチーフを指し、青矢印=TE関連転写因子TFAP2C及びGATA2(C7及びC8)の濃縮を青矢印で示す。
【
図1-3】栄養外胚葉(TE)シグネチャーは、ヒトリプログラミングの間にアップレギュレートされる。a)Petropoulos et al (2016),Cell,165:1012-26により定義された、線維芽細胞のナイーブiPSCへのリプログラミング中のTE遺伝子シグネチャーの強度のヒートマップ。(b)Monocle3(黒線)を用いて構築された単一細胞軌跡と重ね合わされたFDL投影上のインビボTEシグネチャー。青色の矢印は、TE濃縮細胞集団を示す。(c)プライミング及びいくつかのナイーブ培養条件下でリプログラミングされたリプログラミング中間体及びiPS細胞におけるEPI、PE及びTE遺伝子シグネチャーの遺伝子セット濃縮分析(GSEA)(方法)。(d)ATAC-seqクラスターピークに関連する遺伝子の標準化遺伝子発現(平均zスケーリング)。(e)ATAC-seqピーククラスターの転写因子モチーフ濃縮分析。モチーフを特徴とするクラスター中の配列のパーセンテージである、色及びサイズによるモチーフ濃縮(-log(P値))ヒートマップ。赤矢印は一過性ATAC-seqクラスター(C3)におけるOCT4、SOX2、NANOG及びKLF4モチーフを指し、青矢印=TE関連転写因子TFAP2C及びGATA2(C7及びC8)の濃縮を青矢印で示す。
【
図2】iTSCの特徴付け。A)免疫蛍光(IF)標識はiTSCがTEマーカーCK7、GATA3、核VGLL1及びTFAP2Cを発現し、NANOG(PSCマーカー)を発現しないことを確認する。B)iTSC由来EVTはHLA-Gを発現し、iTSC-STはSDC1を発現し、多核化を示す(矢印)。DAPI核染色は青色である。
【
図3-1】ヒトiTSCの誘導のためのナイーブリプログラミング中のTEシグネチャーの安定化。(a)TSC培地中のナイーブ中間体を捕捉し、安定化するための実験デザインの概略図。(b)生成されたiTSCの位相差画像。(c)P63、TFAP2C、GATA2及びKRT7による線維芽細胞、プライミング、ナイーブt2iL GoY iPS細胞の免疫染色、n=2。スケールバー、100μm。(d)P63、TFAP2C、GATA2及びKRT7によるiTSCd21nの免疫染色。スケールバー、100μm。n=4からの代表的画像、(e)線維芽細胞、プライミング、ナイーブt2iL GoY iPS細胞、iTSCd21n並びにヒト胚盤胞(TSCblast)及び妊娠初期胎盤栄養膜(TSCCT)に由来するTS細胞(TSC)における栄養膜遺伝子の遺伝子発現、複製の平均、n=2。(f)iTSCd21nから分化したST及びEVT細胞の位相差画像、n=4。スケールバー、100μm。(g)それぞれiTSCd21nから分化した合胞体栄養膜(ST)(左)及び絨毛外栄養膜(EVT)(右)細胞のSDC1及びHLA-G免疫染色。スケールバー、100μm。n=4からの代表的な画像。(h)iTSCd21n ST及びiTSCd21nの融合指数、n=5、データは平均±s.e.m.として表される。両側不対スチューデントt検定によるP値。(i)iTSCd21nから分化したST細胞の培地及び対照培地に対する市販のhCG妊娠検査の代表的な結果、n=6。(j)ELISAにより検出されたiTSCd21n-及びiTSCd21n-ST条件培地におけるhCGレベル、n=4。(k)NOD-SCIDマウスへの注射によるiTSCd21n生着アッセイの表現。尿、血清及び病変を注射から9日後に検査した(d.p.i)。賦形剤対照と比較した、iTSCd21n注射マウスから採取した尿サンプルからのhCG妊娠検査に対する代表的な陽性結果。n=3。(l)ELISAにより検出したマウス血清中のhCGレベル、n=4。(m)NOD-SCIDマウスの皮下に生着したiTSCd21nから採取した病変、n=4。(n)NOD-SCIDマウスのiTSCd21n生着物から採取した病変におけるH&E染色、KRT7、SDC1及びHLA-Gの免疫組織化学染色。ビヒクル対照では明らかな病変は認められなかった。矢印はHLA-G陽性栄養膜細胞を示す。スケールバー、200μm。n=4からの代表的な画像。
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図3-2】ヒトiTSCの誘導のためのナイーブリプログラミング中のTEシグネチャーの安定化。(a)TSC培地中のナイーブ中間体を捕捉し、安定化するための実験デザインの概略図。(b)生成されたiTSCの位相差画像。(c)P63、TFAP2C、GATA2及びKRT7による線維芽細胞、プライミング、ナイーブt2iL GoY iPS細胞の免疫染色、n=2。スケールバー、100μm。(d)P63、TFAP2C、GATA2及びKRT7によるiTSCd21nの免疫染色。スケールバー、100μm。n=4からの代表的画像、(e)線維芽細胞、プライミング、ナイーブt2iL GoY iPS細胞、iTSCd21n並びにヒト胚盤胞(TSCblast)及び妊娠初期胎盤栄養膜(TSCCT)に由来するTS細胞(TSC)における栄養膜遺伝子の遺伝子発現、複製の平均、n=2。(f)iTSCd21nから分化したST及びEVT細胞の位相差画像、n=4。スケールバー、100μm。(g)それぞれiTSCd21nから分化した合胞体栄養膜(ST)(左)及び絨毛外栄養膜(EVT)(右)細胞のSDC1及びHLA-G免疫染色。スケールバー、100μm。n=4からの代表的な画像。(h)iTSCd21n ST及びiTSCd21nの融合指数、n=5、データは平均±s.e.m.として表される。両側不対スチューデントt検定によるP値。(i)iTSCd21nから分化したST細胞の培地及び対照培地に対する市販のhCG妊娠検査の代表的な結果、n=6。(j)ELISAにより検出されたiTSCd21n-及びiTSCd21n-ST条件培地におけるhCGレベル、n=4。(k)NOD-SCIDマウスへの注射によるiTSCd21n生着アッセイの表現。尿、血清及び病変を注射から9日後に検査した(d.p.i)。賦形剤対照と比較した、iTSCd21n注射マウスから採取した尿サンプルからのhCG妊娠検査に対する代表的な陽性結果。n=3。(l)ELISAにより検出したマウス血清中のhCGレベル、n=4。(m)NOD-SCIDマウスの皮下に生着したiTSCd21nから採取した病変、n=4。(n)NOD-SCIDマウスのiTSCd21n生着物から採取した病変におけるH&E染色、KRT7、SDC1及びHLA-Gの免疫組織化学染色。ビヒクル対照では明らかな病変は認められなかった。矢印はHLA-G陽性栄養膜細胞を示す。スケールバー、200μm。n=4からの代表的な画像。
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図3-3】ヒトiTSCの誘導のためのナイーブリプログラミング中のTEシグネチャーの安定化。(a)TSC培地中のナイーブ中間体を捕捉し、安定化するための実験デザインの概略図。(b)生成されたiTSCの位相差画像。(c)P63、TFAP2C、GATA2及びKRT7による線維芽細胞、プライミング、ナイーブt2iL GoY iPS細胞の免疫染色、n=2。スケールバー、100μm。(d)P63、TFAP2C、GATA2及びKRT7によるiTSCd21nの免疫染色。スケールバー、100μm。n=4からの代表的画像、(e)線維芽細胞、プライミング、ナイーブt2iL GoY iPS細胞、iTSCd21n並びにヒト胚盤胞(TSCblast)及び妊娠初期胎盤栄養膜(TSCCT)に由来するTS細胞(TSC)における栄養膜遺伝子の遺伝子発現、複製の平均、n=2。(f)iTSCd21nから分化したST及びEVT細胞の位相差画像、n=4。スケールバー、100μm。(g)それぞれiTSCd21nから分化した合胞体栄養膜(ST)(左)及び絨毛外栄養膜(EVT)(右)細胞のSDC1及びHLA-G免疫染色。スケールバー、100μm。n=4からの代表的な画像。(h)iTSCd21n ST及びiTSCd21nの融合指数、n=5、データは平均±s.e.m.として表される。両側不対スチューデントt検定によるP値。(i)iTSCd21nから分化したST細胞の培地及び対照培地に対する市販のhCG妊娠検査の代表的な結果、n=6。(j)ELISAにより検出されたiTSCd21n-及びiTSCd21n-ST条件培地におけるhCGレベル、n=4。(k)NOD-SCIDマウスへの注射によるiTSCd21n生着アッセイの表現。尿、血清及び病変を注射から9日後に検査した(d.p.i)。賦形剤対照と比較した、iTSCd21n注射マウスから採取した尿サンプルからのhCG妊娠検査に対する代表的な陽性結果。n=3。(l)ELISAにより検出したマウス血清中のhCGレベル、n=4。(m)NOD-SCIDマウスの皮下に生着したiTSCd21nから採取した病変、n=4。(n)NOD-SCIDマウスのiTSCd21n生着物から採取した病変におけるH&E染色、KRT7、SDC1及びHLA-Gの免疫組織化学染色。ビヒクル対照では明らかな病変は認められなかった。矢印はHLA-G陽性栄養膜細胞を示す。スケールバー、200μm。n=4からの代表的な画像。
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図4-1】scRNA-seqにより明らかになった線維芽細胞及びiTSCd8リプログラミング中間体の細胞不均一性。(a)21日目の線維芽細胞、ナイーブ及びTSCd8リプログラミング中間体の実験デザイン及びscRNA-seqライブラリーの調製。(b)21日目のリプログラミング中間体のscRNA-seqライブラリーのFDL表示(10,518細胞)。(c)FDL上のEPIシグネチャーの強度(10,518細胞)。EPIシグネチャーについて濃縮されていないが、TEシグネチャーについて濃縮された細胞集団は紫色の矢印によって示される。(d)FDL投影上のTEシグネチャー。TE様集団がライブラリーによって強調され、着色されている。(e)FDL上に投影された教師なしクラスタリングからの13細胞クラスターの表現、線維芽細胞培地細胞クラスター:D21fm1-D21fm7;ナイーブリプログラミング細胞クラスター:D21nr1-D21nr3;栄養膜リプログラミング細胞クラスター:D21tr1-D21tr3。(f)細胞クラスターの組成に対する各scRNA-seqライブラリーの寄与(%)。D21tr1クラスターは紫色の矢印で示されている。
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図4-2】scRNA-seqにより明らかになった線維芽細胞及びiTSCd8リプログラミング中間体の細胞不均一性。(a)21日目の線維芽細胞、ナイーブ及びTSCd8リプログラミング中間体の実験デザイン及びscRNA-seqライブラリーの調製。(b)21日目のリプログラミング中間体のscRNA-seqライブラリーのFDL表示(10,518細胞)。(c)FDL上のEPIシグネチャーの強度(10,518細胞)。EPIシグネチャーについて濃縮されていないが、TEシグネチャーについて濃縮された細胞集団は紫色の矢印によって示される。(d)FDL投影上のTEシグネチャー。TE様集団がライブラリーによって強調され、着色されている。(e)FDL上に投影された教師なしクラスタリングからの13細胞クラスターの表現、線維芽細胞培地細胞クラスター:D21fm1-D21fm7;ナイーブリプログラミング細胞クラスター:D21nr1-D21nr3;栄養膜リプログラミング細胞クラスター:D21tr1-D21tr3。(f)細胞クラスターの組成に対する各scRNA-seqライブラリーの寄与(%)。D21tr1クラスターは紫色の矢印で示されている。
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図5-1】ヒト線維芽細胞からのiTSCの直接誘導。(a)線維芽細胞からのiTSCd8の直接誘導の実験デザイン。(b)iTSCd8の位相差画像。スケールバー、100μm。(c)いくつかのTS細胞マーカーに対するiTSCd8の免疫染色。スケールバー、100μm。(d)陽性及び陰性対照を有するiTS細胞株におけるセンダイウイルス導入遺伝子、n=6。(e)線維芽細胞、プライミングiPS細胞、ナイーブt2iL GoY iPC、iTSCd8及びiTSCd21nにおける栄養膜遺伝子の遺伝子発現を、ヒト胚盤胞(TSCblast)及び妊娠初期胎盤栄養膜(TSCCT)に由来するTSCと比較し、データを平均として提示する(n=2)。(f)本研究からのトランスクリプトームと公表されたデータセットとのスピアマン相関。生物学的複製(n≧2)を、相関を行う前に平均する。芽球、胚盤胞;芽球/CT、胚盤胞/細胞栄養膜;CT、細胞栄養膜。(g、h)栄養膜オルガノイドサンプルを用いて本研究で生成した線維芽細胞、プライミング及びナイーブt2iL GoY iPS細胞、iTSCd8及びiTSCd21n、iTSCd8 ST及びiTSCd21n ST、iTSCd8 EVT及びiTSCd21n EVTのトランスクリプトームのスピアマン相関。(i)示された細胞株において、1,000×miR-103aの表現に正規化された19番染色体miRNAクラスターのmiRNAの発現。平均値±s.e.m.ND、検出されない。赤い点線は、プライミングiPS細胞におけるレベルを示す。n=2。(j)示された細胞型におけるELF5領域でのATAC-seqシグナル。複製の平均値(n=2)。TS細胞のピークは灰色でマークされている。(k,l)iTSCd8から分化したST(k)及びEVT(l)細胞の位相差及び免疫染色。スケールバー、100μm。n=4。(m)iTSCd8 STとiTSCd8の細胞融合指数。n=5、データは平均±s.e.m.である。両側不対スチューデントt検定によるP値。(n)iTSCd8から分化したST細胞の培地から得たhCG妊娠検査の代表的な結果、n=6。(o)ELISAによって検出されたiTSCd8-及びiTSCd8-ST条件培地のhCGレベル、n=4。(p)線維芽細胞及びEVTにおける汎HLA-A、B、CクラスIマーカー(W6/32)、HLA-Bw4及びHLA-Gの代表的なフローサイトメトリー分析、n=4。(q)iTSCd8 EVT及びiTSCd21n EVTにおける汎HLAクラスIマーカー(W6/32)及びHLA-Gの代表的なフローサイトメトリー分析。(r、s)iTSCd8及びiTSCd21n由来ST細胞におけるST遺伝子の発現(r)並びにiTSCd8及びiTSCd21n由来EVT細胞におけるEVT遺伝子の発現(s)。(t)iTSCd8注射マウスから採取した尿サンプルの代表的なhCG検査、n=3。(u)NOD-SCIDマウスの皮下に生着したiTSCd8から採取した病変、n=4。(v)マウス血清サンプルを用いたhCG ELISAにより検出したhCGタンパク質レベル、n=4。(w)NOD-SCIDマウスのiTSCd8生着物から採取した病変におけるヘマトキシリン及びエオジン(H&E)並びにKRT7、SDC1及びHLA-Gの免疫組織化学染色、n=4。ビヒクル対照では明らかな病変は認められなかった。スケールバー、200μm。
【
図5-2】ヒト線維芽細胞からのiTSCの直接誘導。(a)線維芽細胞からのiTSCd8の直接誘導の実験デザイン。(b)iTSCd8の位相差画像。スケールバー、100μm。(c)いくつかのTS細胞マーカーに対するiTSCd8の免疫染色。スケールバー、100μm。(d)陽性及び陰性対照を有するiTS細胞株におけるセンダイウイルス導入遺伝子、n=6。(e)線維芽細胞、プライミングiPS細胞、ナイーブt2iL GoY iPC、iTSCd8及びiTSCd21nにおける栄養膜遺伝子の遺伝子発現を、ヒト胚盤胞(TSCblast)及び妊娠初期胎盤栄養膜(TSCCT)に由来するTSCと比較し、データを平均として提示する(n=2)。(f)本研究からのトランスクリプトームと公表されたデータセットとのスピアマン相関。生物学的複製(n≧2)を、相関を行う前に平均する。芽球、胚盤胞;芽球/CT、胚盤胞/細胞栄養膜;CT、細胞栄養膜。(g、h)栄養膜オルガノイドサンプルを用いて本研究で生成した線維芽細胞、プライミング及びナイーブt2iL GoY iPS細胞、iTSCd8及びiTSCd21n、iTSCd8 ST及びiTSCd21n ST、iTSCd8 EVT及びiTSCd21n EVTのトランスクリプトームのスピアマン相関。(i)示された細胞株において、1,000×miR-103aの表現に正規化された19番染色体miRNAクラスターのmiRNAの発現。平均値±s.e.m.ND、検出されない。赤い点線は、プライミングiPS細胞におけるレベルを示す。n=2。(j)示された細胞型におけるELF5領域でのATAC-seqシグナル。複製の平均値(n=2)。TS細胞のピークは灰色でマークされている。(k,l)iTSCd8から分化したST(k)及びEVT(l)細胞の位相差及び免疫染色。スケールバー、100μm。n=4。(m)iTSCd8 STとiTSCd8の細胞融合指数。n=5、データは平均±s.e.m.である。両側不対スチューデントt検定によるP値。(n)iTSCd8から分化したST細胞の培地から得たhCG妊娠検査の代表的な結果、n=6。(o)ELISAによって検出されたiTSCd8-及びiTSCd8-ST条件培地のhCGレベル、n=4。(p)線維芽細胞及びEVTにおける汎HLA-A、B、CクラスIマーカー(W6/32)、HLA-Bw4及びHLA-Gの代表的なフローサイトメトリー分析、n=4。(q)iTSCd8 EVT及びiTSCd21n EVTにおける汎HLAクラスIマーカー(W6/32)及びHLA-Gの代表的なフローサイトメトリー分析。(r、s)iTSCd8及びiTSCd21n由来ST細胞におけるST遺伝子の発現(r)並びにiTSCd8及びiTSCd21n由来EVT細胞におけるEVT遺伝子の発現(s)。(t)iTSCd8注射マウスから採取した尿サンプルの代表的なhCG検査、n=3。(u)NOD-SCIDマウスの皮下に生着したiTSCd8から採取した病変、n=4。(v)マウス血清サンプルを用いたhCG ELISAにより検出したhCGタンパク質レベル、n=4。(w)NOD-SCIDマウスのiTSCd8生着物から採取した病変におけるヘマトキシリン及びエオジン(H&E)並びにKRT7、SDC1及びHLA-Gの免疫組織化学染色、n=4。ビヒクル対照では明らかな病変は認められなかった。スケールバー、200μm。
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図5-3】ヒト線維芽細胞からのiTSCの直接誘導。(a)線維芽細胞からのiTSCd8の直接誘導の実験デザイン。(b)iTSCd8の位相差画像。スケールバー、100μm。(c)いくつかのTS細胞マーカーに対するiTSCd8の免疫染色。スケールバー、100μm。(d)陽性及び陰性対照を有するiTS細胞株におけるセンダイウイルス導入遺伝子、n=6。(e)線維芽細胞、プライミングiPS細胞、ナイーブt2iL GoY iPC、iTSCd8及びiTSCd21nにおける栄養膜遺伝子の遺伝子発現を、ヒト胚盤胞(TSCblast)及び妊娠初期胎盤栄養膜(TSCCT)に由来するTSCと比較し、データを平均として提示する(n=2)。(f)本研究からのトランスクリプトームと公表されたデータセットとのスピアマン相関。生物学的複製(n≧2)を、相関を行う前に平均する。芽球、胚盤胞;芽球/CT、胚盤胞/細胞栄養膜;CT、細胞栄養膜。(g、h)栄養膜オルガノイドサンプルを用いて本研究で生成した線維芽細胞、プライミング及びナイーブt2iL GoY iPS細胞、iTSCd8及びiTSCd21n、iTSCd8 ST及びiTSCd21n ST、iTSCd8 EVT及びiTSCd21n EVTのトランスクリプトームのスピアマン相関。(i)示された細胞株において、1,000×miR-103aの表現に正規化された19番染色体miRNAクラスターのmiRNAの発現。平均値±s.e.m.ND、検出されない。赤い点線は、プライミングiPS細胞におけるレベルを示す。n=2。(j)示された細胞型におけるELF5領域でのATAC-seqシグナル。複製の平均値(n=2)。TS細胞のピークは灰色でマークされている。(k,l)iTSCd8から分化したST(k)及びEVT(l)細胞の位相差及び免疫染色。スケールバー、100μm。n=4。(m)iTSCd8 STとiTSCd8の細胞融合指数。n=5、データは平均±s.e.m.である。両側不対スチューデントt検定によるP値。(n)iTSCd8から分化したST細胞の培地から得たhCG妊娠検査の代表的な結果、n=6。(o)ELISAによって検出されたiTSCd8-及びiTSCd8-ST条件培地のhCGレベル、n=4。(p)線維芽細胞及びEVTにおける汎HLA-A、B、CクラスIマーカー(W6/32)、HLA-Bw4及びHLA-Gの代表的なフローサイトメトリー分析、n=4。(q)iTSCd8 EVT及びiTSCd21n EVTにおける汎HLAクラスIマーカー(W6/32)及びHLA-Gの代表的なフローサイトメトリー分析。(r、s)iTSCd8及びiTSCd21n由来ST細胞におけるST遺伝子の発現(r)並びにiTSCd8及びiTSCd21n由来EVT細胞におけるEVT遺伝子の発現(s)。(t)iTSCd8注射マウスから採取した尿サンプルの代表的なhCG検査、n=3。(u)NOD-SCIDマウスの皮下に生着したiTSCd8から採取した病変、n=4。(v)マウス血清サンプルを用いたhCG ELISAにより検出したhCGタンパク質レベル、n=4。(w)NOD-SCIDマウスのiTSCd8生着物から採取した病変におけるヘマトキシリン及びエオジン(H&E)並びにKRT7、SDC1及びHLA-Gの免疫組織化学染色、n=4。ビヒクル対照では明らかな病変は認められなかった。スケールバー、200μm。
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図5-4】ヒト線維芽細胞からのiTSCの直接誘導。(a)線維芽細胞からのiTSCd8の直接誘導の実験デザイン。(b)iTSCd8の位相差画像。スケールバー、100μm。(c)いくつかのTS細胞マーカーに対するiTSCd8の免疫染色。スケールバー、100μm。(d)陽性及び陰性対照を有するiTS細胞株におけるセンダイウイルス導入遺伝子、n=6。(e)線維芽細胞、プライミングiPS細胞、ナイーブt2iL GoY iPC、iTSCd8及びiTSCd21nにおける栄養膜遺伝子の遺伝子発現を、ヒト胚盤胞(TSCblast)及び妊娠初期胎盤栄養膜(TSCCT)に由来するTSCと比較し、データを平均として提示する(n=2)。(f)本研究からのトランスクリプトームと公表されたデータセットとのスピアマン相関。生物学的複製(n≧2)を、相関を行う前に平均する。芽球、胚盤胞;芽球/CT、胚盤胞/細胞栄養膜;CT、細胞栄養膜。(g、h)栄養膜オルガノイドサンプルを用いて本研究で生成した線維芽細胞、プライミング及びナイーブt2iL GoY iPS細胞、iTSCd8及びiTSCd21n、iTSCd8 ST及びiTSCd21n ST、iTSCd8 EVT及びiTSCd21n EVTのトランスクリプトームのスピアマン相関。(i)示された細胞株において、1,000×miR-103aの表現に正規化された19番染色体miRNAクラスターのmiRNAの発現。平均値±s.e.m.ND、検出されない。赤い点線は、プライミングiPS細胞におけるレベルを示す。n=2。(j)示された細胞型におけるELF5領域でのATAC-seqシグナル。複製の平均値(n=2)。TS細胞のピークは灰色でマークされている。(k,l)iTSCd8から分化したST(k)及びEVT(l)細胞の位相差及び免疫染色。スケールバー、100μm。n=4。(m)iTSCd8 STとiTSCd8の細胞融合指数。n=5、データは平均±s.e.m.である。両側不対スチューデントt検定によるP値。(n)iTSCd8から分化したST細胞の培地から得たhCG妊娠検査の代表的な結果、n=6。(o)ELISAによって検出されたiTSCd8-及びiTSCd8-ST条件培地のhCGレベル、n=4。(p)線維芽細胞及びEVTにおける汎HLA-A、B、CクラスIマーカー(W6/32)、HLA-Bw4及びHLA-Gの代表的なフローサイトメトリー分析、n=4。(q)iTSCd8 EVT及びiTSCd21n EVTにおける汎HLAクラスIマーカー(W6/32)及びHLA-Gの代表的なフローサイトメトリー分析。(r、s)iTSCd8及びiTSCd21n由来ST細胞におけるST遺伝子の発現(r)並びにiTSCd8及びiTSCd21n由来EVT細胞におけるEVT遺伝子の発現(s)。(t)iTSCd8注射マウスから採取した尿サンプルの代表的なhCG検査、n=3。(u)NOD-SCIDマウスの皮下に生着したiTSCd8から採取した病変、n=4。(v)マウス血清サンプルを用いたhCG ELISAにより検出したhCGタンパク質レベル、n=4。(w)NOD-SCIDマウスのiTSCd8生着物から採取した病変におけるヘマトキシリン及びエオジン(H&E)並びにKRT7、SDC1及びHLA-Gの免疫組織化学染色、n=4。ビヒクル対照では明らかな病変は認められなかった。スケールバー、200μm。
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図5-5】ヒト線維芽細胞からのiTSCの直接誘導。(a)線維芽細胞からのiTSCd8の直接誘導の実験デザイン。(b)iTSCd8の位相差画像。スケールバー、100μm。(c)いくつかのTS細胞マーカーに対するiTSCd8の免疫染色。スケールバー、100μm。(d)陽性及び陰性対照を有するiTS細胞株におけるセンダイウイルス導入遺伝子、n=6。(e)線維芽細胞、プライミングiPS細胞、ナイーブt2iL GoY iPC、iTSCd8及びiTSCd21nにおける栄養膜遺伝子の遺伝子発現を、ヒト胚盤胞(TSCblast)及び妊娠初期胎盤栄養膜(TSCCT)に由来するTSCと比較し、データを平均として提示する(n=2)。(f)本研究からのトランスクリプトームと公表されたデータセットとのスピアマン相関。生物学的複製(n≧2)を、相関を行う前に平均する。芽球、胚盤胞;芽球/CT、胚盤胞/細胞栄養膜;CT、細胞栄養膜。(g、h)栄養膜オルガノイドサンプルを用いて本研究で生成した線維芽細胞、プライミング及びナイーブt2iL GoY iPS細胞、iTSCd8及びiTSCd21n、iTSCd8 ST及びiTSCd21n ST、iTSCd8 EVT及びiTSCd21n EVTのトランスクリプトームのスピアマン相関。(i)示された細胞株において、1,000×miR-103aの表現に正規化された19番染色体miRNAクラスターのmiRNAの発現。平均値±s.e.m.ND、検出されない。赤い点線は、プライミングiPS細胞におけるレベルを示す。n=2。(j)示された細胞型におけるELF5領域でのATAC-seqシグナル。複製の平均値(n=2)。TS細胞のピークは灰色でマークされている。(k,l)iTSCd8から分化したST(k)及びEVT(l)細胞の位相差及び免疫染色。スケールバー、100μm。n=4。(m)iTSCd8 STとiTSCd8の細胞融合指数。n=5、データは平均±s.e.m.である。両側不対スチューデントt検定によるP値。(n)iTSCd8から分化したST細胞の培地から得たhCG妊娠検査の代表的な結果、n=6。(o)ELISAによって検出されたiTSCd8-及びiTSCd8-ST条件培地のhCGレベル、n=4。(p)線維芽細胞及びEVTにおける汎HLA-A、B、CクラスIマーカー(W6/32)、HLA-Bw4及びHLA-Gの代表的なフローサイトメトリー分析、n=4。(q)iTSCd8 EVT及びiTSCd21n EVTにおける汎HLAクラスIマーカー(W6/32)及びHLA-Gの代表的なフローサイトメトリー分析。(r、s)iTSCd8及びiTSCd21n由来ST細胞におけるST遺伝子の発現(r)並びにiTSCd8及びiTSCd21n由来EVT細胞におけるEVT遺伝子の発現(s)。(t)iTSCd8注射マウスから採取した尿サンプルの代表的なhCG検査、n=3。(u)NOD-SCIDマウスの皮下に生着したiTSCd8から採取した病変、n=4。(v)マウス血清サンプルを用いたhCG ELISAにより検出したhCGタンパク質レベル、n=4。(w)NOD-SCIDマウスのiTSCd8生着物から採取した病変におけるヘマトキシリン及びエオジン(H&E)並びにKRT7、SDC1及びHLA-Gの免疫組織化学染色、n=4。ビヒクル対照では明らかな病変は認められなかった。スケールバー、200μm。
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図5-6】ヒト線維芽細胞からのiTSCの直接誘導。(a)線維芽細胞からのiTSCd8の直接誘導の実験デザイン。(b)iTSCd8の位相差画像。スケールバー、100μm。(c)いくつかのTS細胞マーカーに対するiTSCd8の免疫染色。スケールバー、100μm。(d)陽性及び陰性対照を有するiTS細胞株におけるセンダイウイルス導入遺伝子、n=6。(e)線維芽細胞、プライミングiPS細胞、ナイーブt2iL GoY iPC、iTSCd8及びiTSCd21nにおける栄養膜遺伝子の遺伝子発現を、ヒト胚盤胞(TSCblast)及び妊娠初期胎盤栄養膜(TSCCT)に由来するTSCと比較し、データを平均として提示する(n=2)。(f)本研究からのトランスクリプトームと公表されたデータセットとのスピアマン相関。生物学的複製(n≧2)を、相関を行う前に平均する。芽球、胚盤胞;芽球/CT、胚盤胞/細胞栄養膜;CT、細胞栄養膜。(g、h)栄養膜オルガノイドサンプルを用いて本研究で生成した線維芽細胞、プライミング及びナイーブt2iL GoY iPS細胞、iTSCd8及びiTSCd21n、iTSCd8 ST及びiTSCd21n ST、iTSCd8 EVT及びiTSCd21n EVTのトランスクリプトームのスピアマン相関。(i)示された細胞株において、1,000×miR-103aの表現に正規化された19番染色体miRNAクラスターのmiRNAの発現。平均値±s.e.m.ND、検出されない。赤い点線は、プライミングiPS細胞におけるレベルを示す。n=2。(j)示された細胞型におけるELF5領域でのATAC-seqシグナル。複製の平均値(n=2)。TS細胞のピークは灰色でマークされている。(k,l)iTSCd8から分化したST(k)及びEVT(l)細胞の位相差及び免疫染色。スケールバー、100μm。n=4。(m)iTSCd8 STとiTSCd8の細胞融合指数。n=5、データは平均±s.e.m.である。両側不対スチューデントt検定によるP値。(n)iTSCd8から分化したST細胞の培地から得たhCG妊娠検査の代表的な結果、n=6。(o)ELISAによって検出されたiTSCd8-及びiTSCd8-ST条件培地のhCGレベル、n=4。(p)線維芽細胞及びEVTにおける汎HLA-A、B、CクラスIマーカー(W6/32)、HLA-Bw4及びHLA-Gの代表的なフローサイトメトリー分析、n=4。(q)iTSCd8 EVT及びiTSCd21n EVTにおける汎HLAクラスIマーカー(W6/32)及びHLA-Gの代表的なフローサイトメトリー分析。(r、s)iTSCd8及びiTSCd21n由来ST細胞におけるST遺伝子の発現(r)並びにiTSCd8及びiTSCd21n由来EVT細胞におけるEVT遺伝子の発現(s)。(t)iTSCd8注射マウスから採取した尿サンプルの代表的なhCG検査、n=3。(u)NOD-SCIDマウスの皮下に生着したiTSCd8から採取した病変、n=4。(v)マウス血清サンプルを用いたhCG ELISAにより検出したhCGタンパク質レベル、n=4。(w)NOD-SCIDマウスのiTSCd8生着物から採取した病変におけるヘマトキシリン及びエオジン(H&E)並びにKRT7、SDC1及びHLA-Gの免疫組織化学染色、n=4。ビヒクル対照では明らかな病変は認められなかった。スケールバー、200μm。
【
図5-7】ヒト線維芽細胞からのiTSCの直接誘導。(a)線維芽細胞からのiTSCd8の直接誘導の実験デザイン。(b)iTSCd8の位相差画像。スケールバー、100μm。(c)いくつかのTS細胞マーカーに対するiTSCd8の免疫染色。スケールバー、100μm。(d)陽性及び陰性対照を有するiTS細胞株におけるセンダイウイルス導入遺伝子、n=6。(e)線維芽細胞、プライミングiPS細胞、ナイーブt2iL GoY iPC、iTSCd8及びiTSCd21nにおける栄養膜遺伝子の遺伝子発現を、ヒト胚盤胞(TSCblast)及び妊娠初期胎盤栄養膜(TSCCT)に由来するTSCと比較し、データを平均として提示する(n=2)。(f)本研究からのトランスクリプトームと公表されたデータセットとのスピアマン相関。生物学的複製(n≧2)を、相関を行う前に平均する。芽球、胚盤胞;芽球/CT、胚盤胞/細胞栄養膜;CT、細胞栄養膜。(g、h)栄養膜オルガノイドサンプルを用いて本研究で生成した線維芽細胞、プライミング及びナイーブt2iL GoY iPS細胞、iTSCd8及びiTSCd21n、iTSCd8 ST及びiTSCd21n ST、iTSCd8 EVT及びiTSCd21n EVTのトランスクリプトームのスピアマン相関。(i)示された細胞株において、1,000×miR-103aの表現に正規化された19番染色体miRNAクラスターのmiRNAの発現。平均値±s.e.m.ND、検出されない。赤い点線は、プライミングiPS細胞におけるレベルを示す。n=2。(j)示された細胞型におけるELF5領域でのATAC-seqシグナル。複製の平均値(n=2)。TS細胞のピークは灰色でマークされている。(k,l)iTSCd8から分化したST(k)及びEVT(l)細胞の位相差及び免疫染色。スケールバー、100μm。n=4。(m)iTSCd8 STとiTSCd8の細胞融合指数。n=5、データは平均±s.e.m.である。両側不対スチューデントt検定によるP値。(n)iTSCd8から分化したST細胞の培地から得たhCG妊娠検査の代表的な結果、n=6。(o)ELISAによって検出されたiTSCd8-及びiTSCd8-ST条件培地のhCGレベル、n=4。(p)線維芽細胞及びEVTにおける汎HLA-A、B、CクラスIマーカー(W6/32)、HLA-Bw4及びHLA-Gの代表的なフローサイトメトリー分析、n=4。(q)iTSCd8 EVT及びiTSCd21n EVTにおける汎HLAクラスIマーカー(W6/32)及びHLA-Gの代表的なフローサイトメトリー分析。(r、s)iTSCd8及びiTSCd21n由来ST細胞におけるST遺伝子の発現(r)並びにiTSCd8及びiTSCd21n由来EVT細胞におけるEVT遺伝子の発現(s)。(t)iTSCd8注射マウスから採取した尿サンプルの代表的なhCG検査、n=3。(u)NOD-SCIDマウスの皮下に生着したiTSCd8から採取した病変、n=4。(v)マウス血清サンプルを用いたhCG ELISAにより検出したhCGタンパク質レベル、n=4。(w)NOD-SCIDマウスのiTSCd8生着物から採取した病変におけるヘマトキシリン及びエオジン(H&E)並びにKRT7、SDC1及びHLA-Gの免疫組織化学染色、n=4。ビヒクル対照では明らかな病変は認められなかった。スケールバー、200μm。
【
図5-8】ヒト線維芽細胞からのiTSCの直接誘導。(a)線維芽細胞からのiTSCd8の直接誘導の実験デザイン。(b)iTSCd8の位相差画像。スケールバー、100μm。(c)いくつかのTS細胞マーカーに対するiTSCd8の免疫染色。スケールバー、100μm。(d)陽性及び陰性対照を有するiTS細胞株におけるセンダイウイルス導入遺伝子、n=6。(e)線維芽細胞、プライミングiPS細胞、ナイーブt2iL GoY iPC、iTSCd8及びiTSCd21nにおける栄養膜遺伝子の遺伝子発現を、ヒト胚盤胞(TSCblast)及び妊娠初期胎盤栄養膜(TSCCT)に由来するTSCと比較し、データを平均として提示する(n=2)。(f)本研究からのトランスクリプトームと公表されたデータセットとのスピアマン相関。生物学的複製(n≧2)を、相関を行う前に平均する。芽球、胚盤胞;芽球/CT、胚盤胞/細胞栄養膜;CT、細胞栄養膜。(g、h)栄養膜オルガノイドサンプルを用いて本研究で生成した線維芽細胞、プライミング及びナイーブt2iL GoY iPS細胞、iTSCd8及びiTSCd21n、iTSCd8 ST及びiTSCd21n ST、iTSCd8 EVT及びiTSCd21n EVTのトランスクリプトームのスピアマン相関。(i)示された細胞株において、1,000×miR-103aの表現に正規化された19番染色体miRNAクラスターのmiRNAの発現。平均値±s.e.m.ND、検出されない。赤い点線は、プライミングiPS細胞におけるレベルを示す。n=2。(j)示された細胞型におけるELF5領域でのATAC-seqシグナル。複製の平均値(n=2)。TS細胞のピークは灰色でマークされている。(k,l)iTSCd8から分化したST(k)及びEVT(l)細胞の位相差及び免疫染色。スケールバー、100μm。n=4。(m)iTSCd8 STとiTSCd8の細胞融合指数。n=5、データは平均±s.e.m.である。両側不対スチューデントt検定によるP値。(n)iTSCd8から分化したST細胞の培地から得たhCG妊娠検査の代表的な結果、n=6。(o)ELISAによって検出されたiTSCd8-及びiTSCd8-ST条件培地のhCGレベル、n=4。(p)線維芽細胞及びEVTにおける汎HLA-A、B、CクラスIマーカー(W6/32)、HLA-Bw4及びHLA-Gの代表的なフローサイトメトリー分析、n=4。(q)iTSCd8 EVT及びiTSCd21n EVTにおける汎HLAクラスIマーカー(W6/32)及びHLA-Gの代表的なフローサイトメトリー分析。(r、s)iTSCd8及びiTSCd21n由来ST細胞におけるST遺伝子の発現(r)並びにiTSCd8及びiTSCd21n由来EVT細胞におけるEVT遺伝子の発現(s)。(t)iTSCd8注射マウスから採取した尿サンプルの代表的なhCG検査、n=3。(u)NOD-SCIDマウスの皮下に生着したiTSCd8から採取した病変、n=4。(v)マウス血清サンプルを用いたhCG ELISAにより検出したhCGタンパク質レベル、n=4。(w)NOD-SCIDマウスのiTSCd8生着物から採取した病変におけるヘマトキシリン及びエオジン(H&E)並びにKRT7、SDC1及びHLA-Gの免疫組織化学染色、n=4。ビヒクル対照では明らかな病変は認められなかった。スケールバー、200μm。
【
図6】21日目のヒト線維芽細胞リプログラミング中間体からのiTSCの誘導。(a)プライミング、ナイーブiPSC及びiTSCの誘導のための21日目の線維芽細胞リプログラミング中間体の可能性を検証するための実験デザイン。(b)21日目の線維芽細胞リプログラミング中間体から生成されたプライミング、ナイーブiPSC及びiTSCの位相差画像、n=2。スケールバー、50μm。核染色のための、NANOG、KLF17、NR2F2、KRT7及びDAPIを用いた、プライミング、ナイーブiPSC及びiTSCの免疫染色、n=2。スケールバー、200μm。(c)21日目の線維芽細胞リプログラミング中間体から生成したプライミング、ナイーブiPSC及びiTSCにおけるNANOG、ZIC2、KLF17、DPPA3、GATA2及びKRT7発現の逆転写qPCR分析、n=3。データは平均±s.e.m.である。
【
図7-1】部分的にリプログラミングされた中間体からのiTSCの誘導、ナイーブ及び拡張iPSCのTSCへの変換。(a)リプログラミングプロトコルの概略図。位相差写真は細胞形態の変化を示している。胎盤由来hTSCを対照として示す。(b)変換プロトコルの概略図。位相差写真は細胞形態の変化を示している。(c)hPSC、hEPS、hNPSC、hiTSC、hcTSC及びhTSC株並びにhTSCから分化したST及びEVTのピアソン相関係数のヒートマップ。相関は、データセットの分散された遺伝子にわたる2770個の大部分の比較から決定される(方法を参照されたい)。サンプルは、Wardの方法を用いた階層的クラスタリングによって、相関のユークリッド距離からクラスタリングされる。(d)示された系列マーカーの遺伝子発現レベルを、hPSC、hEPS、hNPSC、hiTSC、hcTSC並びに以前に樹立された胚-及び胎盤-由来hTSC株について示す。分化したST及びEVTを対照として含める。発現レベルは、mRNA分子100万当たりの転写物数として与えられる。胚及び胎盤由来hTSCを参照群とし、hPSC及びhTSCの各タイプについてWilcoxon-Mann-Whitney統計検定を行った。星印は、差異の統計的有意性を示す:
*p値<0.05;
** p値<0.01;
*** p値<0.001。(e)栄養膜関連転写因子GATA2及びNR2F2並びに多能性関連転写因子SOX2について染色したhTSC、hiTSC、hcTSC、hNPSC及びhEPSの免疫蛍光画像。核をDAPIで染色した。スケールバー:100μm。(f)EVT分化プロトコルの概略図(左)。h(i/c)TSCのEVT子孫の明視野写真(右)。(g)3D-ST分化プロトコルの概略図(左)。h(i/c)TSCに由来する3D-ST構造の明視野画像(右)。(h)ST(CGA、CGB、SDC1)、EVT(HLA-G、MMP2、ASCL2)及びhTSC(LRP2、CDKN3)に関連するマーカーのRT-qPCR定量化。hTSC及び分化細胞子孫の各タイプについてWilcoxon-Mann-Whitney統計検定を行った。星印は、差異の統計的有意性を示す:
* p値<0.05;
** p値<0.01;
*** p値<0.001。(i)合胞体を強調する、GATA3及び膜関連タンパク質デスモプラキン(DSP)、並びに合胞体栄養膜関連マーカーCGBについて染色したhiTSC、hcTSC及びhTSC株に由来する3D-ST構造の免疫蛍光画像。核をDAPIで染色した。(j)栄養膜関連転写因子GATA3及び絨毛外栄養膜特異的表面マーカーHLA-Gについて染色した、hiTSC、hcTSC及び胎盤由来hTSC株から分化したEVTの免疫蛍光画像。核をDAPIで染色した。スケールバー(f-g):100μm;(i-j):30μm。
【
図7-2】部分的にリプログラミングされた中間体からのiTSCの誘導、ナイーブ及び拡張iPSCのTSCへの変換。(a)リプログラミングプロトコルの概略図。位相差写真は細胞形態の変化を示している。胎盤由来hTSCを対照として示す。(b)変換プロトコルの概略図。位相差写真は細胞形態の変化を示している。(c)hPSC、hEPS、hNPSC、hiTSC、hcTSC及びhTSC株並びにhTSCから分化したST及びEVTのピアソン相関係数のヒートマップ。相関は、データセットの分散された遺伝子にわたる2770個の大部分の比較から決定される(方法を参照されたい)。サンプルは、Wardの方法を用いた階層的クラスタリングによって、相関のユークリッド距離からクラスタリングされる。(d)示された系列マーカーの遺伝子発現レベルを、hPSC、hEPS、hNPSC、hiTSC、hcTSC並びに以前に樹立された胚-及び胎盤-由来hTSC株について示す。分化したST及びEVTを対照として含める。発現レベルは、mRNA分子100万当たりの転写物数として与えられる。胚及び胎盤由来hTSCを参照群とし、hPSC及びhTSCの各タイプについてWilcoxon-Mann-Whitney統計検定を行った。星印は、差異の統計的有意性を示す:
*p値<0.05;
** p値<0.01;
*** p値<0.001。(e)栄養膜関連転写因子GATA2及びNR2F2並びに多能性関連転写因子SOX2について染色したhTSC、hiTSC、hcTSC、hNPSC及びhEPSの免疫蛍光画像。核をDAPIで染色した。スケールバー:100μm。(f)EVT分化プロトコルの概略図(左)。h(i/c)TSCのEVT子孫の明視野写真(右)。(g)3D-ST分化プロトコルの概略図(左)。h(i/c)TSCに由来する3D-ST構造の明視野画像(右)。(h)ST(CGA、CGB、SDC1)、EVT(HLA-G、MMP2、ASCL2)及びhTSC(LRP2、CDKN3)に関連するマーカーのRT-qPCR定量化。hTSC及び分化細胞子孫の各タイプについてWilcoxon-Mann-Whitney統計検定を行った。星印は、差異の統計的有意性を示す:
* p値<0.05;
** p値<0.01;
*** p値<0.001。(i)合胞体を強調する、GATA3及び膜関連タンパク質デスモプラキン(DSP)、並びに合胞体栄養膜関連マーカーCGBについて染色したhiTSC、hcTSC及びhTSC株に由来する3D-ST構造の免疫蛍光画像。核をDAPIで染色した。(j)栄養膜関連転写因子GATA3及び絨毛外栄養膜特異的表面マーカーHLA-Gについて染色した、hiTSC、hcTSC及び胎盤由来hTSC株から分化したEVTの免疫蛍光画像。核をDAPIで染色した。スケールバー(f-g):100μm;(i-j):30μm。
【
図7-3】部分的にリプログラミングされた中間体からのiTSCの誘導、ナイーブ及び拡張iPSCのTSCへの変換。(a)リプログラミングプロトコルの概略図。位相差写真は細胞形態の変化を示している。胎盤由来hTSCを対照として示す。(b)変換プロトコルの概略図。位相差写真は細胞形態の変化を示している。(c)hPSC、hEPS、hNPSC、hiTSC、hcTSC及びhTSC株並びにhTSCから分化したST及びEVTのピアソン相関係数のヒートマップ。相関は、データセットの分散された遺伝子にわたる2770個の大部分の比較から決定される(方法を参照されたい)。サンプルは、Wardの方法を用いた階層的クラスタリングによって、相関のユークリッド距離からクラスタリングされる。(d)示された系列マーカーの遺伝子発現レベルを、hPSC、hEPS、hNPSC、hiTSC、hcTSC並びに以前に樹立された胚-及び胎盤-由来hTSC株について示す。分化したST及びEVTを対照として含める。発現レベルは、mRNA分子100万当たりの転写物数として与えられる。胚及び胎盤由来hTSCを参照群とし、hPSC及びhTSCの各タイプについてWilcoxon-Mann-Whitney統計検定を行った。星印は、差異の統計的有意性を示す:
*p値<0.05;
** p値<0.01;
*** p値<0.001。(e)栄養膜関連転写因子GATA2及びNR2F2並びに多能性関連転写因子SOX2について染色したhTSC、hiTSC、hcTSC、hNPSC及びhEPSの免疫蛍光画像。核をDAPIで染色した。スケールバー:100μm。(f)EVT分化プロトコルの概略図(左)。h(i/c)TSCのEVT子孫の明視野写真(右)。(g)3D-ST分化プロトコルの概略図(左)。h(i/c)TSCに由来する3D-ST構造の明視野画像(右)。(h)ST(CGA、CGB、SDC1)、EVT(HLA-G、MMP2、ASCL2)及びhTSC(LRP2、CDKN3)に関連するマーカーのRT-qPCR定量化。hTSC及び分化細胞子孫の各タイプについてWilcoxon-Mann-Whitney統計検定を行った。星印は、差異の統計的有意性を示す:
* p値<0.05;
** p値<0.01;
*** p値<0.001。(i)合胞体を強調する、GATA3及び膜関連タンパク質デスモプラキン(DSP)、並びに合胞体栄養膜関連マーカーCGBについて染色したhiTSC、hcTSC及びhTSC株に由来する3D-ST構造の免疫蛍光画像。核をDAPIで染色した。(j)栄養膜関連転写因子GATA3及び絨毛外栄養膜特異的表面マーカーHLA-Gについて染色した、hiTSC、hcTSC及び胎盤由来hTSC株から分化したEVTの免疫蛍光画像。核をDAPIで染色した。スケールバー(f-g):100μm;(i-j):30μm。
【
図7-4】部分的にリプログラミングされた中間体からのiTSCの誘導、ナイーブ及び拡張iPSCのTSCへの変換。(a)リプログラミングプロトコルの概略図。位相差写真は細胞形態の変化を示している。胎盤由来hTSCを対照として示す。(b)変換プロトコルの概略図。位相差写真は細胞形態の変化を示している。(c)hPSC、hEPS、hNPSC、hiTSC、hcTSC及びhTSC株並びにhTSCから分化したST及びEVTのピアソン相関係数のヒートマップ。相関は、データセットの分散された遺伝子にわたる2770個の大部分の比較から決定される(方法を参照されたい)。サンプルは、Wardの方法を用いた階層的クラスタリングによって、相関のユークリッド距離からクラスタリングされる。(d)示された系列マーカーの遺伝子発現レベルを、hPSC、hEPS、hNPSC、hiTSC、hcTSC並びに以前に樹立された胚-及び胎盤-由来hTSC株について示す。分化したST及びEVTを対照として含める。発現レベルは、mRNA分子100万当たりの転写物数として与えられる。胚及び胎盤由来hTSCを参照群とし、hPSC及びhTSCの各タイプについてWilcoxon-Mann-Whitney統計検定を行った。星印は、差異の統計的有意性を示す:
*p値<0.05;
** p値<0.01;
*** p値<0.001。(e)栄養膜関連転写因子GATA2及びNR2F2並びに多能性関連転写因子SOX2について染色したhTSC、hiTSC、hcTSC、hNPSC及びhEPSの免疫蛍光画像。核をDAPIで染色した。スケールバー:100μm。(f)EVT分化プロトコルの概略図(左)。h(i/c)TSCのEVT子孫の明視野写真(右)。(g)3D-ST分化プロトコルの概略図(左)。h(i/c)TSCに由来する3D-ST構造の明視野画像(右)。(h)ST(CGA、CGB、SDC1)、EVT(HLA-G、MMP2、ASCL2)及びhTSC(LRP2、CDKN3)に関連するマーカーのRT-qPCR定量化。hTSC及び分化細胞子孫の各タイプについてWilcoxon-Mann-Whitney統計検定を行った。星印は、差異の統計的有意性を示す:
* p値<0.05;
** p値<0.01;
*** p値<0.001。(i)合胞体を強調する、GATA3及び膜関連タンパク質デスモプラキン(DSP)、並びに合胞体栄養膜関連マーカーCGBについて染色したhiTSC、hcTSC及びhTSC株に由来する3D-ST構造の免疫蛍光画像。核をDAPIで染色した。(j)栄養膜関連転写因子GATA3及び絨毛外栄養膜特異的表面マーカーHLA-Gについて染色した、hiTSC、hcTSC及び胎盤由来hTSC株から分化したEVTの免疫蛍光画像。核をDAPIで染色した。スケールバー(f-g):100μm;(i-j):30μm。
【
図7-5】部分的にリプログラミングされた中間体からのiTSCの誘導、ナイーブ及び拡張iPSCのTSCへの変換。(a)リプログラミングプロトコルの概略図。位相差写真は細胞形態の変化を示している。胎盤由来hTSCを対照として示す。(b)変換プロトコルの概略図。位相差写真は細胞形態の変化を示している。(c)hPSC、hEPS、hNPSC、hiTSC、hcTSC及びhTSC株並びにhTSCから分化したST及びEVTのピアソン相関係数のヒートマップ。相関は、データセットの分散された遺伝子にわたる2770個の大部分の比較から決定される(方法を参照されたい)。サンプルは、Wardの方法を用いた階層的クラスタリングによって、相関のユークリッド距離からクラスタリングされる。(d)示された系列マーカーの遺伝子発現レベルを、hPSC、hEPS、hNPSC、hiTSC、hcTSC並びに以前に樹立された胚-及び胎盤-由来hTSC株について示す。分化したST及びEVTを対照として含める。発現レベルは、mRNA分子100万当たりの転写物数として与えられる。胚及び胎盤由来hTSCを参照群とし、hPSC及びhTSCの各タイプについてWilcoxon-Mann-Whitney統計検定を行った。星印は、差異の統計的有意性を示す:
*p値<0.05;
** p値<0.01;
*** p値<0.001。(e)栄養膜関連転写因子GATA2及びNR2F2並びに多能性関連転写因子SOX2について染色したhTSC、hiTSC、hcTSC、hNPSC及びhEPSの免疫蛍光画像。核をDAPIで染色した。スケールバー:100μm。(f)EVT分化プロトコルの概略図(左)。h(i/c)TSCのEVT子孫の明視野写真(右)。(g)3D-ST分化プロトコルの概略図(左)。h(i/c)TSCに由来する3D-ST構造の明視野画像(右)。(h)ST(CGA、CGB、SDC1)、EVT(HLA-G、MMP2、ASCL2)及びhTSC(LRP2、CDKN3)に関連するマーカーのRT-qPCR定量化。hTSC及び分化細胞子孫の各タイプについてWilcoxon-Mann-Whitney統計検定を行った。星印は、差異の統計的有意性を示す:
* p値<0.05;
** p値<0.01;
*** p値<0.001。(i)合胞体を強調する、GATA3及び膜関連タンパク質デスモプラキン(DSP)、並びに合胞体栄養膜関連マーカーCGBについて染色したhiTSC、hcTSC及びhTSC株に由来する3D-ST構造の免疫蛍光画像。核をDAPIで染色した。(j)栄養膜関連転写因子GATA3及び絨毛外栄養膜特異的表面マーカーHLA-Gについて染色した、hiTSC、hcTSC及び胎盤由来hTSC株から分化したEVTの免疫蛍光画像。核をDAPIで染色した。スケールバー(f-g):100μm;(i-j):30μm。
【発明を実施するための形態】
【0081】
ここで、本発明の特定の実施形態を詳細に参照する。本発明を実施形態に関連して説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではないことが理解されるであろう。むしろ、本発明は特許請求の範囲により定義される本発明の範囲内に含まれ得る全ての代替物、修正物、及び等価物を網羅することを意図している。
【0082】
当業者は、本明細書に記載される方法及び物質と類似するか若しくは等価である多くの方法及び物質を認識する。本発明は、記載される方法及び材料に決して限定されない。本明細書に開示され、定義された本発明は、本文若しくは図面に言及され、又は本文若しくは図面から明らかな個々の特徴の2つ以上の代替的な組み合わせの全てに及ぶことが理解されるであろう。これらの異なる組み合わせの全ては、本発明の様々な代替態様を構成する。
【0083】
本明細書を解釈する目的で、単数形で使用される用語は複数形も含み、その逆も同様である。
【0084】
本発明は、核リプログラミングによって体細胞から直接ヒト栄養膜幹細胞(hTSC)を生成するための新規な方法に関する。これまでに公表されているTSCを生成する方法は、初代組織(例えば、妊娠初期胎盤又は胚盤胞)からのTSCの単離、又は「拡張潜在幹細胞」(EPSC)をTSCに分化させることによるもののみである。本発明は、アクセスが容易な患者特異的供給源(例えば、線維芽細胞)からのヒト「誘導」栄養膜幹細胞(iTSC)の生成を可能にし、従って、このような細胞の組織供給源(例えば、胎盤)又は生成が困難なEPSCを得ることへの依存を排除する。
【0085】
線維芽細胞の異なる多能性状態へのリプログラミングを研究する一方で、本発明者らは、栄養外胚葉(TE)転写ネットワークを一時的にアップレギュレートする中間細胞集団を同定した。中間TE状態を安定化させ、リプログラミング細胞を多能性培地から、TSCを支持することができる培地に移すことによって、本発明者らは、体細胞から「誘導栄養膜幹細胞」(iTSC)を生成するための方法を考案した。
【0086】
本発明者らの方法に従って生成されたiTSCの特徴付けは、これらの細胞がヒトTE及びTSCを規定する重要な因子を発現することを示す。例えば、細胞は、ヒト胎盤におけるPCNA+増殖細胞の目印となる核NR2F2を発現する。本発明に従って生成されたTSCは増殖性であり、成長速度を低下させることなく、複数の継代を通してTSCの特徴を維持する。さらに、これらの細胞は、分子的にも機能的にも、ヒト胚盤胞又は妊娠初期胎盤に由来するTSCに非常に似ている。本発明の方法に従って生成されたTSCの機能的特徴付けは、これらの細胞が合胞体栄養膜細胞(ST)又は絨毛外栄養膜細胞(EVT)のいずれかに分化できることを示す。重要なことに、これらのアッセイは、本発明の方法に従って生成されたiTSCが実際に二分化能であり、ST細胞及びEVT細胞に分化し得ることを示す。
【0087】
初代胎盤組織又はヒト胚盤胞に由来するヒト栄養膜幹細胞(TSC)は、アクセスが困難であり、高度に調節されている。従って、成体細胞から誘導できる安定した自己複製iTSC株を有することは、ヒト栄養膜発達を研究するためのユニークな機会を提供するだけでなく、多能性細胞とのその関係、並びに現代の生化学的及び分子的技術が規模を拡大して適用できるインビトロ状況における初期ヒト胚発生に関連した事象を調整する際のその役割も提供する。iTSC株はまた、疾患モデリング、薬物スクリーニング及び再生医療に用いることができる。さらに、iTSCは、胎盤に類似するオルガノイドを生成するために有用であり得る。
【0088】
本発明に従って生成された細胞はまた、生体異物、薬物及び病原体、タンパク質及びホルモンの母体-胎児伝播を研究するための栄養膜オルガノイドの生成を含む、多様な他の臨床用途に有用性を見出し得る。さらに、同じ健康な個人又は患者の体細胞に由来するヒトTSC/iTSC及びiPSCを用いて、ヒト胚盤胞様構造を組み立てることができる。これは、不妊症の治療及びIVFの成功率を改善することを含む、大規模スクリーニング研究のための合成ヒト胚盤胞様オルガノイドの無限の供給源を提供する。尚さらに、本発明に従って生成されたiTSCは、再生医療に使用することができる。例えば、胎盤細胞は、最近、心臓組織を再生するのに有用であることが示されている。本発明のiTSCは、胎盤から直接細胞を得る必要なしに、このような胎盤細胞を生成するために使用され得る。
【0089】
ヒト胎盤又はヒト胚からヒトTSCを誘導する現在の方法と比較して、ヒトiTSCを生成するための本発明のリプログラミングアプローチは、倫理的な制約なしに、よりアクセスしやすく、労力及び費用効率が高い。このアプローチは、患者から生成された疾患特異的iTSCを用いた大規模スクリーニング研究のための同質遺伝子iTSCの無限の供給を可能にする。
【0090】
細胞
本発明の方法に従って使用するための細胞は、体細胞又は疾患細胞を含む、本明細書に記載される任意の細胞型であり得る。体細胞は成体細胞であってもよいし、成体又は非胚細胞の1つ以上の検出可能な特徴を示す成体由来の細胞であってもよい。疾患細胞は、疾患又は状態の1つ以上の検出可能な特徴を示す細胞であってもよい。
【0091】
本発明に従って使用するための体細胞は、iPSC又は他の胚性若しくは成体幹細胞に由来してもよく、又は対象由来の組織外植片に由来してもよい。
【0092】
好ましい実施形態において、体細胞は、線維芽細胞(好ましくは、皮膚線維芽細胞又は心臓線維芽細胞)、ケラチノサイト(好ましくは、表皮ケラチノサイト)、単球又は内皮細胞である。
【0093】
本明細書で使用される場合、用語「幹細胞」は、最終的に分化されていない、即ち、より特定の特殊化された機能を有する他の細胞型に分化し得る細胞を指す。この用語は、胚性幹細胞、胎児幹細胞、成体幹細胞又は方向付けされた(committed)/前駆細胞を包含する。
【0094】
本明細書で使用される場合、「体細胞」は、最終的に分化された細胞を指す。本明細書で使用される場合、用語「体細胞」は、生殖系列細胞とは対照的に、生物の体を形成する任意の細胞を指す。哺乳動物では、生殖系列細胞(「配偶子」としても知られる)は精子と卵子であり、これらは受精時に融合して接合子と呼ばれる細胞を生成し、そこから哺乳動物胚全体が発生する。哺乳動物の体内の他のあらゆる細胞型(精子及び卵子、そこから精子及び卵子が作られる細胞(配偶子母細胞)、及び未分化幹細胞を除いて)は、体細胞である。体内の器官、皮膚、骨、血液、結合組織は全て体細胞でできている。いくつかの実施形態において、体細胞は「非胚性体細胞」であり、これは、胚中に存在しないか、又は胚から得られず、インビトロでのこのような細胞の増殖から生じない体細胞を意味する。いくつかの実施形態において、体細胞は「成体体細胞」であり、これは、胚又は胎児以外の生物中に存在するか、若しくはそれから得られる細胞、又はインビトロでのそのような細胞の増殖から生じる細胞を意味する。体細胞は例えば、テロメラーゼ逆転写酵素(TERT)のレベルを増加させることによって、細胞の無制限の供給を提供するために不死化され得る。例えば、TERTのレベルは、内因性遺伝子からのTERTの転写を増加させることによって、又は任意の遺伝子送達方法若しくは系を介して導入遺伝子を導入することによって増加され得る。
【0095】
ヒト、個体を含む胎児、新生児、幼若又は成体霊長類由来の細胞を含む分化体細胞は、本発明の方法において適切な体細胞である。適切な体細胞は、骨髄細胞、上皮細胞、内皮細胞、線維芽細胞、造血細胞、ケラチノサイト、肝細胞、腸細胞、間葉細胞、骨髄前駆細胞及び脾臓細胞を含むがこれらに限定されない。或いは、体細胞は、それ自身が増殖し、血液幹細胞、筋肉/骨幹細胞、脳幹細胞及び肝臓幹細胞を含む他のタイプの細胞に分化し得る細胞であり得る。適切な体細胞は、受容性であるか、又は転写因子をコードする遺伝物質を含む転写因子を取り込むように、科学文献において一般に公知の方法を使用して受容性にされ得る。取り込み増強方法は、細胞型及び発現系に応じて変化し得る。適切な形質導入効率を有する受容性細胞を調製するために使用される例示的な条件は、当業者に周知である。出発体細胞は、約24時間の倍加時間を有することができる。
【0096】
本明細書で使用される用語「単離された細胞」は、それが元々見出される生物から取り出された細胞又はそのような細胞の子孫を指す。場合により、細胞はインビトロで、例えば、他の細胞の存在下で培養されている。場合により、細胞は、後に第2の生物に導入されるか、又はそれが単離された生物(又はそれが由来する細胞)に再導入される。
【0097】
本明細書で使用される単離された細胞集団に関連する用語「単離された集団」は、細胞の混合又は不均一集団から取り出され及び分離された細胞集団を指す。いくつかの実施形態では、単離された集団は、細胞が単離又は濃縮された異種集団と比較して、実質的に純粋な細胞集団である。
【0098】
用語「実質的に純粋な」は、特定の細胞集団に関して、全細胞集団を構成する細胞に関連して、少なくとも約75%、好ましくは少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約90%、最も好ましくは少なくとも約95%純粋な細胞の集団を指す。書き直せば、用語「実質的に純粋な」又は「本質的に精製された」は、標的細胞、即ちTSCの少なくとも1つの特徴を示す細胞の集団に関して、本明細書の用語によって定義される標的細胞又はその子孫ではない細胞を約20%未満、より好ましくは約15%、10%、8%、7%、最も好ましくは約5%、4%、3%、2%、1%、又は1%未満含む細胞の集団を指す。
【0099】
当業者は、体細胞の特徴をTSCの特徴から区別する(換言すれば、体細胞表現型の消失を調べる)手段にも精通しているであろう。例えば、本明細書の実施例に提供されるように、TSCの生成のための適切な体細胞は、線維芽細胞を含む。当業者は、線維芽細胞とTSCの特徴を容易に区別することができ、例えば、線維芽細胞は、典型的にはCD44について陽性である。当業者は、このマーカーの減少した発現を観察することによって、線維芽細胞からTSCへの変換を決定することができる。
【0100】
体細胞から多能性状態への変換中に発現が変化した他のマーカーには、TWIST1、TWIST2、SNAI1、SNAI2、ZEB1及びZEB2が含まれる。
【0101】
当業者はまた、体細胞が、体細胞に典型的な形態学的特徴を失ったときに、多能性状態に向けたリプログラミングを開始した時を決定することができるであろう。再び、当業者は、線維芽細胞のものを含む様々な体細胞の形態学的特徴に精通している。
【0102】
体細胞はまた、それが多能性細胞の少なくとも1つの特徴を示す場合、多能性状態にリプログラミングされたと決定され得る。多能性細胞(例えば、iPSC又はESC)の1つ以上の特徴は、任意の1つ以上のESCマーカーのアップレギュレーション及び/又は細胞形態の変化を含む。典型的には、iPSC/EPSC様細胞に変換された細胞は、iPSC/EPSCの1、2、3、4、5、6、7、8以上の特徴を示す。
【0103】
体細胞は、それがTSCの少なくとも1つの特徴を示す場合、TSCに変換されたと決定される。例えば、線維芽細胞は、本発明の方法に従って処理された線維芽細胞がTSCの少なくとも1つの特徴を示す場合、TSCに変換されたと同定される。
【0104】
TSCの1つ以上の特徴は、任意の1つ以上の栄養膜マーカーのアップレギュレーション及び/又は細胞形態の変化を含む。典型的には、TSCに変換された細胞は、TSCの1、2、3、4、5、6、7、8以上の特徴を示す。
【0105】
本明細書で使用される場合、本発明に従って作製されたTSCの少なくとも1つの特徴を示す細胞はまた、「誘導栄養膜幹細胞」又はiTSCと呼ばれ得る。
【0106】
本発明の任意の実施形態において、TSC核CD49f(iTGA6)、CD249(アミノペプチダーゼA)、及び核NR2F2、TFAP2C、GATA2/3及びP63に特徴的なタンパク質マーカー。
【0107】
さらなる実施形態において、TSCの少なくとも1つの特徴を示す細胞は、以下のマーカーのうちの1つ以上を発現しない:OCT4(POU5F1)、NANOG、SOX2、SALL2、OTX2、BANCR、KLF17、DPPA3、及びDNMT3L。
【0108】
さらに、TSCの少なくとも1つの特徴を有する細胞は、EVT又はSTの1つ以上の特徴を示す細胞に分化する能力を有する。
【0109】
体細胞がリプログラミングされたか、又はTSCに変換されたかを決定するために使用され得るさらなるマーカーは、当業者に公知である。適切なマーカーの例は、例えば、Okae et al.,(2018) Cell Stem Cell 22:50-63,Deglincerti et al.,(2016) Nature,533:751-4,Shahbazi et al.,(2016 Nature Cell Biology 18:700-708及びNiakan&Eggan(2013) Dev Biol 375:54-64)に開示されており、これらの全内容は、全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0110】
当業者は、細胞形態の変化を観察することによる、線維芽細胞のTSCへの変換を決定するための方法に精通している。例えば、成体線維芽細胞は、楕円形の斑点のある核を取り囲む、細長い、分岐した細胞質を有することを特徴とする。
【0111】
対照的に、TSCは、典型的には、大きな玉石状のコロニーを形成する。
【0112】
本発明の任意の態様において、TSCの特徴は、細胞形態、遺伝子発現プロファイル、活性アッセイ、タンパク質発現プロファイル、表面マーカープロファイル、分化能力、又はそれらの組み合わせの分析によって決定され得る。特徴又はマーカーの例には、本明細書に記載されているもの及び当業者に知られているものが含まれる。
【0113】
リプログラミング
多能性状態に向かって体細胞をリプログラミングするための様々な方法が、当技術分野で公知である。体細胞のリプログラミングは、典型的にはリプログラミング因子(転写因子を含む)の発現を含み、続いて、体細胞のマーカーの喪失(即ち、分化の喪失)を促進するための特定の条件での培養を含み、初期胚起源の細胞型となる可能性を得る。
【0114】
体細胞をリプログラミングするための適切な方法の例は、当技術分野において豊富であり、国際公開第2009/101407号パンフレット、国際公開第2014/200030号パンフレット、国際公開第2015/056804号パンフレット、国際公開第2014/200114号パンフレット、国際公開第2014/065435号パンフレット、国際公開第2013/176233号パンフレット、国際公開第2012/060473号パンフレット、国際公開第2012/036299号パンフレット、国際公開第2011/158967号パンフレット、国際公開第2011/055851号パンフレット、国際公開第2011/037270号パンフレット、国際公開第2011/090221号パンフレット(これらの内容は、参照により本明細書に組み込まれる)に例示されている。
【0115】
本発明の方法に従って体細胞(例えば、線維芽細胞)をリプログラミングするために使用され得る、特に好ましい転写因子及びその核酸配列は、以下の表1に示される。しかしながら、本発明は、体細胞をリプログラミングするために、表1に列挙される転写因子の使用に限定されないことが理解されるであろう。
【0116】
本明細書に言及される転写因子及び他のタンパク質因子は、HUGO遺伝子命名委員会(HGNC)記号によって言及される。表1は、本明細書に列挙される転写因子についての例示的なアンサンブル遺伝子ID及びUniprot IDを提供する。ヌクレオチド配列は、Ensemblデータベース(Flicek et al.(2014).Nucleic Acids Research Volume 42,Issue D1.Pp.D749-D755)バージョン83に由来する。本明細書に言及される転写因子の任意のホモログ、オルソログ又はパラログもまた、本発明での使用が意図される。
【0117】
当業者はまた、ナイーブ多能性状態(プライミングされた多能性状態と比較して)に向かって体細胞をリプログラミングする能力に精通することになる。本発明の方法は、ナイーブ又はプライミングされた多能性状態に向かうリプログラミングを促進するように処理される細胞に適用されることが理解されるであろう。本発明の好ましい実施形態において、この方法は、ナイーブ多能性状態に向かって体細胞をリプログラミングするために、体細胞における1つ以上の因子のタンパク質発現を増加させることを含む。
【0118】
当業者は、この情報が例えば、体細胞において増加した量の転写因子を提供する目的のために、又は体細胞において転写因子を組換え的に発現するための核酸などを提供する目的のために、本発明の方法を実施する際に使用され得ることを理解するであろう。
【0119】
【0120】
用語「改変体」は、全長ポリペプチドと少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、98%、又は99%同一であるポリペプチドを指す。本発明は、本明細書に記載される転写因子の改変体の使用を意図する。改変体は、全長ポリペプチドの断片又は天然に存在するスプライスバリアントであり得る。改変体は、ポリペプチドの断片と少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、98%、又は99%同一のポリペプチドであり得、ここで断片は、全長野生型ポリペプチド又はそのドメインが、体細胞型の標的細胞型への変換を促進する能力などの目的の機能的活性を有する限り、少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、98%、又は99%である。いくつかの実施形態では、ドメインは、配列中の任意のアミノ酸位置から始まり、C末端に向かって延びる少なくとも100、200、300、又は400アミノ酸長である。タンパク質の活性を除去又は実質的に低下させることが当該技術分野で公知の変動は、好ましくは回避される。いくつかの実施形態では、改変体は、全長ポリペプチドのN及び/又はC末端部分を欠き、例えば、いずれかの末端から10、20、又は50アミノ酸まで欠く。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは成熟(全長)ポリペプチドの配列を有し、これは、シグナルペプチドなどの1つ以上の部分が、正常な細胞内タンパク質分解プロセシングの間(例えば、同時翻訳プロセシング又は翻訳後プロセシングの間)に除去されたポリペプチドを意味する。タンパク質がそれを天然に発現する細胞からそれを精製すること以外で生成されるいくつかの実施形態では、タンパク質はキメラポリペプチドであり、これは、それが2つ以上の異なる種からの部分を含むことを意味する。タンパク質がそれを天然に発現する細胞からそれを精製すること以外で生成されるいくつかの実施形態では、タンパク質は誘導体であり、これは、タンパク質が、タンパク質の生物学的活性を実質的に低下させない限り、タンパク質に関連しないさらなる配列を含むことを意味する。当業者は、当技術分野で公知のアッセイを用いて、特定のポリペプチド改変体、断片、又は誘導体が機能的であるかどうかを認識し、又は容易に確認することができるであろう。例えば、転写因子の改変体が体細胞を標的細胞型に変換する能力は、本明細書の実施例に開示されるアッセイを用いて評価することができる。他の簡便なアッセイは、ルシフェラーゼなどの検出可能なマーカーをコードする核酸配列に作動可能に連結された転写因子結合部位を含むレポーター構築物の転写を活性化する能力を測定することを含む。本発明の特定の実施形態では、機能的改変体又は断片は、全長野生型ポリペプチドの活性の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%以上を有する。
【0121】
転写因子の量を増加させることに関連した用語「量を増加させる」は、目的の細胞(例えば、線維芽細胞などの体細胞)中の転写因子の量を増加させることを指す。いくつかの実施形態では、転写因子の量が、対照(例えば、発現カセットのいずれも導入されていない線維芽細胞)と比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又はそれを超える場合、転写因子の量は、目的の細胞(例えば、1つ以上の転写因子をコードするポリヌクレオチドの発現を指示する前記発現カセットが導入されている細胞)において「増加」している。しかしながら、転写因子(又はそれをコードするmRNA前駆体又はmRNA)の転写、翻訳、安定性又は活性の量、速度又は効率を増加させる任意の方法を含む、転写因子の量を増加させる任意の方法が意図される。さらに、転写発現の負の調節因子のダウンレギュレーション又は干渉、既存の翻訳の効率の増加(例えば、SINEUP)も考慮される。
【0122】
本明細書で使用される用語「薬剤」は、限定されるものではないが、小分子、核酸、ポリペプチド、ペプチド、薬物、イオンなどの任意の化合物又は物質を意味する。「薬剤」は、合成及び天然に存在するタンパク質性及び非タンパク質性の実体を含むが、これらに限定されない、任意の化学物質、実体又は部分であり得る。いくつかの実施形態では、薬剤は、タンパク質、オリゴヌクレオチド、リボザイム、DNAzyme、糖タンパク質、siRNA、リポタンパク質、アプタマー、並びにこれらの修飾及び組み合わせなどを含むがこれらに限定されない、核酸、核酸類似体、タンパク質、抗体、ペプチド、アプタマー、核酸のオリゴマー、アミノ酸、又は炭水化物である。特定の実施形態では、薬剤は、化学部分を有する小分子である。例えば、化学部分は、非置換又は置換アルキル、芳香族、又は複素環部分(マクロライド、レプトマイシン、及び関連する天然産物又はその類似体を含む)を含んだ。化合物は、所望の活性及び/若しくは特性を有することが公知であり得るか、又は多様な化合物のライブラリーから選択され得る。
【0123】
用語「外因性」は、細胞又は生物におけるタンパク質、遺伝子、核酸、若しくはポリヌクレオチドに関して使用される場合、人工的若しくは天然の手段によって細胞若しくは生物に導入されたタンパク質、遺伝子、核酸、若しくはポリヌクレオチドを指し;又は細胞に関して使用される場合、単離され、その後、人工的若しくは天然の手段によって他の細胞若しくは生物に導入された細胞を指す。外因性核酸は、異なる生物若しくは細胞に由来し得るか、又は生物若しくは細胞内で天然に存在する核酸の1つ以上のさらなるコピーであり得る。外因性細胞は、異なる生物由来であり得るか、又は同じ生物由来であり得る。非限定的な例として、外因性核酸は、天然細胞の染色体位置とは異なる染色体位置にある核酸、又は天然に見出される核酸配列とは異なる核酸配列に隣接する核酸である。外因性核酸はまた、エピソームベクターなどの染色体外であってもよい。
【0124】
体細胞型を多能性状態にリプログラミングするために必要な1つ以上の転写因子の量を増加させる能力について1つ以上の候補因子をスクリーニングすることは、転写因子の生成物又は発現を可能にする系を候補因子と接触させる工程と、転写因子の量が増加したかどうかを決定する工程とを含み得る。系はインビボ、例えば、生物中の組織若しくは細胞、又はインビトロ、生物から単離された細胞、若しくはインビトロ転写アッセイ、又は細胞若しくは組織中のエクスビボであり得る。転写因子の量は、タンパク質又はRNA(例えば、mRNA又はmRNA前駆体)の量を測定することによって、直接的に又は間接的に測定される。候補薬剤は、転写因子をコードする遺伝子の転写における任意の工程を増加させることにより、又は対応するmRNAの翻訳を増加させることにより、転写因子の量を増加させるように機能し得る。或いは、候補薬剤は、転写因子をコードする遺伝子の転写のリプレッサーの阻害活性、又は転写因子をコードするmRNA若しくは転写因子のタンパク質自体の分解を引き起こす分子の活性を低下させてもよい。
【0125】
適切な検出手段としては、放射性ヌクレオチド、酵素、補酵素、蛍光剤、化学発光剤、色素原、酵素基質又は補因子、酵素阻害剤、補欠分子族複合体、フリーラジカル、粒子、染料などの標識の使用が挙げられる。このような標識試薬は、多様な周知のアッセイ、例えばラジオイムノアッセイ、酵素イムノアッセイ(例えば、ELISA)、蛍光イムノアッセイなど)において使用され得る。例えば、米国特許第3,766,162号明細書、同第3,791,932号明細書、同第3,817,837号明細書及び同第4,233,402号明細書を参照されたい。
【0126】
本発明の方法は、ハイスループットスクリーニング適用を含む。例えば、転写因子の生成物又は発現を可能にする系のアリコートが、マルチウェルプレートの異なるウェル内の複数の候補薬剤に曝露される、本発明によるアッセイのいずれかを含むハイスループットスクリーニングアッセイが使用され得る。さらに、本開示によるハイスループットスクリーニングアッセイは、任意の種類の小型化アッセイシステムにおいて複数の候補薬剤に曝露される転写因子の生成物又は発現を可能にする系のアリコートを含む。
【0127】
本開示の方法は、プレート当たり24、48、96又は384ウェルなどのマルチウェルプレート、マイクロチップ又はスライドを含むがこれらに限定されない、任意の許容可能な小型化方法によって、アッセイシステムにおいて「小型化」され得る。アッセイはマイクロチップ支持体上で実施されるようにサイズを縮小することができ、有利には、より少量の試薬及び他の材料を含む。ハイスループットスクリーニングを助長するプロセスの小型化のいずれも、本発明の範囲内である。
【0128】
本発明の任意の方法において、TSCの少なくとも1つの特徴を有する細胞を、体細胞が得られたのと同じ哺乳動物に移すことができる。換言すれば、本発明の方法において使用される体細胞は自己細胞であり得、即ち、標的細胞が投与される同じ個体から得られ得る。或いは、標的細胞は、別の個体に同種異系的に移され得る。好ましくは、細胞は、個体における医学的状態を治療又は予防する方法において、対象に対して自己である。
【0129】
培養培地
本明細書で言及する用語「細胞培養培地」(本明細書では「培養培地」又は「培地」とも呼ばれる)は、細胞生存率を維持し、増殖を支持する栄養素を含有する、細胞を培養するための培地である。細胞培養培地は、以下のいずれかを適切な組み合わせで含み得る:塩、緩衝液、アミノ酸、グルコース又は他の糖、抗生物質、血清又は血清代替物、及びペプチド成長因子などの他の成分。特定の細胞型のために通常使用される細胞培養培地は、当業者に公知である。本発明の方法において使用するための例示的な細胞培養培地を表2に示す。
【0130】
【0131】
【0132】
本発明の重要な発見は、一旦リプログラミングプロセスが開始されたら、リプログラミングを受けている(しかしリプログラミングを完了していない)体細胞をTSCの成長及び増殖を支持する培地に移行し得ることである。本発明者らは、細胞をこのような培地と接触させると、安定なTSC様細胞(これは、互換的に誘導栄養膜幹細胞又はiTSCとも呼ばれ得る)を生成することが可能であることを見出した。
【0133】
従って、本発明者らは、リプログラミングプロセスの間に細胞をTSC培地に曝露することによって、体細胞から直接ヒトTSCを生成するための新規な方法を開発した。
【0134】
本発明の方法によれば、一旦リプログラミングプロセスが開始されたら、体細胞を任意の時間にTSC培地と接触させ得ることが理解される。例えば、接触は、多能性運命に向かったリプログラミングの開始後、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、10日以上(14、21、28、35日以上を含む)であり得る。
【0135】
リプログラミングの初期段階の間に使用される初期培地はまた、多能性培地である必要はない。例えば、本発明の好ましい方法において、細胞は、その後の段階でTSC培地に移行される前であるが、リプログラミングの完了前に、線維芽細胞培地(又は体細胞の成長を支持する他の培地)中のリプログラミング薬剤に曝露される。
【0136】
或いは、一旦リプログラミングが開始されたら、体細胞を本明細書に記載されるように、ナイーブ若しくはプライミング培地、又は拡張培地中で、ある期間培養して(これはリプログラミングプロセスの完了を含み又は含み得ない)、誘導多能性幹細胞(iPSCを生成し得る。この時間の後、細胞をTSC培地に移行し得る。
【0137】
TSC及びその増殖を支持するために適切な培養培地は、好ましくはOkae(2018)Cell Stem Cell、及び国際公開第2016/143866号パンフレット(これらの内容は参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるような培養培地である。
【0138】
TSCの基本培地組成は、DMEM、MEM、RPMI 1640などを含む、一般に使用される任意の基本培地であり得る。培地には、血清、成長因子、ピルビン酸、アミノ酸、抗生物質等を適宜含有させることができる。
【0139】
TSC培養物は、好ましくは少なくとも1つの成長因子及び少なくとも1つのROCK阻害剤を含む。
【0140】
本明細書で使用される場合、成長因子は任意の成長因子であり得るが、好ましくは上皮成長因子(EGF)、インスリン、形質転換成長因子(TGF)から選択される1つである。成長因子の量は、任意の量、例えば0.1~1000ng/ml、好ましくは10~100ng/mlであり得る。
【0141】
本明細書で使用される場合、ROCK阻害剤は、Rho結合キナーゼの阻害剤を指す。このような阻害剤の例には、((1R,4r)-4-(((R)-1-アミノエチル)-N-(ピリジン-4-イル)シクロヘキサンカルボキサミド、Abcam)(trans-N-(4-(1-アミノエチル)-シクロヘキサンカルボキサミドとしても知られる)、1-(5-イソキノルニル)(スルホニル)ホモピペラジン(1-(5-イソキノリニルスルホニル)ホモピペラジン)が含まれる。典型的には、ROCK阻害剤の量は、約0.1~50μM、好ましくは約1~10μMとなる。
【0142】
特定の好ましい実施形態において、TSC培養物は、Okae et al.に記載されるASECRiAV培地であり、A83-01、SB431542、EGF、CHIR、ROCK阻害剤、アスコルビン酸及びバルプロ酸を含む。
【0143】
最も好ましくは、TSC培地は、以下を含む:
- DMEM/F-12、
- 0.3% BSA(Sigma)を補充したGlutaMAX(商標)(ThermoFisher)
- 0.2% FBS(ThermoFisher)、
- 1% ITS-Xサプリメント(ThermoFisher)、
- 0.1mM 2-メルカプトエタノール(ThermoFisher)、
- 0.5% Pen-Strep(ThermoFisher)、
- 1.5μg/ml L-アスコルビン酸(Sigma)、
- 5μM Y27632((1R,4r)-4-((R)-1-アミノエチル)-N-(ピリジン-4-イル)シクロヘキサンカルボキサミド、Abcam)、
- 2μM CHIR99021(6-((2-(4-(2,4-ジクロロフェニル)-5-(4-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)エチル)アミノ)ニコチノニトリルMiltenyi Biotec)、
- 0.5μM A83-01(3-(6-メチル-2-ピリジニル)-N-フェニル-4-(4-キノリニル)-1H-ピラゾール-1-カルボチオアミド、Sigma)、
- 1μM SB431542(4-[4-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-5-(2-ピリジニル)-1H-イミダゾール-2-イル]ベンズアミド)
- 50ng/ml EGF(Peprotech)及び
- 0.8mMバルプロ酸(VPA、Sigma)。
【0144】
分化
本発明はまた、分化細胞を生成する方法を含み、この方法は、本発明に従って作製されたTSCの少なくとも1つの特徴を示す細胞を分化条件に供することを含む。特定の実施形態によれば、本発明に従って作製されたTSC細胞は、系列特異的細胞、例えばST及びEVTを単離するために使用することができる。
【0145】
当業者は、本発明に従って生成されたTSCを分化させるための標準的な方法に精通しているであろう。手短には、TSCは、TSCをMEFBAP処理(MEF条件培地、BMP4、TGFβi、FGFRi、Amita et al.,2013 PNAS,110:E1212-1221に記載されているように)に供することによって、合胞体栄養膜(ST)に分化させることができる。或いは、TSCのフォルスコリン処理への曝露も、TSCをST運命に分化させるために使用され得る。
【0146】
分化のためのさらなる方法は、Kidder(2014) Methods Mol Biol,1150-201-12;Lei et al.,(2017) Placenta,28:14-12;及びChen et al.,(2013) Biochemical and Biophysical Research Communications,431;179-202に開示されている。この方法は、GFG4及びヘパリンを欠く培地中で細胞を培養することを含み得る。この方法はまた、分化因子を含む培地中での細胞の遺伝子改変を含み得る。
【0147】
STへの分化の成功は、基礎β-hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)分泌、及びヒト胎盤性ラクトゲン遺伝子の発現を測定することによって決定され得る。或いは、STへの分化の成功は、SDC1+多核細胞の存在によって決定され得る。
【0148】
EVT運命に向かう分化の成功は、HLA-G、PRG2及びPAPP2から選択される1つ以上のマーカーのタンパク質発現を決定することによって確認することができる。
【0149】
核酸及びベクター
本明細書に記載される核酸又は核酸を含むベクターは、上記の表1に言及される配列の1つ以上を含み得る。
【0150】
用語「発現」は、適用可能な場合、例えば転写、翻訳、フォールディング、改変及びプロセシングを含むがこれらに限定されないRNA及びタンパク質の生成、並びに必要に応じてタンパク質の分泌に関与する細胞プロセスを指す。
【0151】
本明細書で使用される用語「単離された」又は「部分的に精製された」は、核酸又はポリペプチドの場合、その天然の供給源において見出される核酸若しくはポリペプチドと共に存在する、及び/又は細胞によって発現され、若しくは分泌ポリペプチドの場合、分泌されるときに核酸若しくはポリペプチドと共に存在する、少なくとも1つの他の成分(例えば、核酸又はポリペプチド)から分離された核酸又はポリペプチドを指す。化学的に合成された核酸若しくはポリペプチド、又はインビトロ転写/翻訳を用いて合成された核酸若しくはポリペプチドは、「単離された」と見なされる。
【0152】
用語「ベクター」は、宿主又は体細胞への導入のためにDNA配列が挿入され得る担体DNA分子を指す。好ましいベクターは、それらが連結される核酸の自律的複製及び/又は発現が可能なベクターである。それらが作動可能に連結される遺伝子の発現を指示することができるベクターは、本明細書で「発現ベクター」と呼ばれる。従って、「発現ベクター」とは、宿主細胞における目的の遺伝子の発現に必要な、必要な調節領域を含む特殊化されたベクターである。いくつかの実施形態において、目的の遺伝子は、ベクター中の別の配列に作動可能に連結される。ベクターは、ウイルスベクター又は非ウイルスベクターであり得る。ウイルスベクターが使用される場合、ウイルスベクターは複製欠損であることが好ましく、これは、例えば、複製をコードする全てのウイルス核酸を除去することによって達成され得る。複製欠損ウイルスベクターは、依然としてその感染性を保持し、複製アデノウイルスベクターと同様の方法で細胞に侵入するが、一旦細胞に入ると、複製欠損ウイルスベクターは複製も増殖もしない。ベクターはまた、リポソーム及びナノ粒子、並びにDNA分子を細胞に送達するための他の手段を包含する。
【0153】
用語「作動可能に連結された」は、コード配列の発現に必要な調節配列が、コード配列の発現をもたらすように、コード配列に対して適切な位置でDNA分子中に配置されることを意味する。この同じ定義は、発現ベクター中のコード配列及び転写制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー、及び終結エレメント)の配置に適用されることがある。用語「作動可能に連結された」は、発現されるべきポリヌクレオチド配列の前に適切な開始シグナル(例えば、ATG)を有することと、発現制御配列の制御下でのポリヌクレオチド配列の発現、及びポリヌクレオチド配列によってコードされる所望のポリペプチドの生成を可能にするために正確なリーディングフレームを維持することを含む。
【0154】
用語「ウイルスベクター」は、細胞中への核酸構築物の担体としてのウイルス又はウイルス関連ベクターの使用を指す。構築物は、細胞への感染又は形質導入のために、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス(AAV)、若しくは単純ヘルペスウイルス(HSV)のような非複製性の欠陥ウイルスゲノム、又はレトロウイルス及びレンチウイルスベクターを含むその他に組み込まれ及びパッケージされ得る。ベクターは、細胞のゲノムに組み込まれていても、組み込まれていなくてもよい。構築物は、所望される場合、トランスフェクションのためのウイルス配列を含み得る。或いは、構築物は、エピソーム複製が可能なベクター、例えばEPVベクター及びEBVベクターに組み込まれ得る。
【0155】
本明細書で使用される場合、用語「アデノウイルス」は、アデノウイルス科(Adenovirida)のウイルスを指す。アデノウイルスは、ヌクレオカプシド及び二本鎖線状DNAゲノムから構成された中型(90~100nm)の無エンベロープ(裸)の正二十面体ウイルスである。
【0156】
本明細書で使用される場合、用語「非組み込みウイルスベクター」は、宿主ゲノムに組み込まれないウイルスベクターを指し、ウイルスベクターによって送達される遺伝子の発現が一時的である。宿主ゲノムへの組込みはほとんどないか全くないので、非組み込みウイルスベクターは、ゲノム中のランダムな地点に挿入することによるDNA変異の生成がないという利点を有する。例えば、非組み込みウイルスベクターは染色体外に留まり、潜在的に内在性遺伝子の発現を破壊するその遺伝子を宿主ゲノムに挿入しない。非組み込みウイルスベクターは、以下を含み得るがこれらに限定されない:アデノウイルス、アルファウイルス、ピコルナウイルス、及びワクシニアウイルス。これらのウイルスベクターは、それらのいずれかが、いくつかのまれな状況において、ウイルス核酸を宿主細胞のゲノムに組み込む可能性があるにもかかわらず、本明細書で使用される用語として、「非組み込み」ウイルスベクターである。重要なことは、本明細書に記載される方法において使用されるウイルスベクターが、原則として、又は使用される条件下でのそれらのライフサイクルの主要部分として、それらの核酸を宿主細胞のゲノムに組み込まないことである。
【0157】
本明細書に記載されるベクターは、治療における使用のためのそれらの安全性を増加させるために、所望される場合に選択及び濃縮マーカーを含ませるために、並びにそこに含まれるヌクレオチド配列の発現を最適化するために、科学文献において一般に公知の方法を用いて構築及び操作され得る。ベクターは、ベクターが体細胞型において自己複製することを可能にする構成要素を含むべきである。例えば、公知のEpstein Barr oriP/Nuclear Antigen-1(EBNA-I)の組み合わせ(例えば、Lindner,S.E.and B.Sugden,The plasmid replicon of Epstein-Barr virus:mechanistic insights into efficient,licensed,extrachromosomal replication in human cells,Plasmid 58:1(2007)参照)は、ベクター自己複製を支持するのに十分であり、また哺乳動物、特に霊長類細胞において機能することが公知の他の組み合わせも使用することができる。本発明における使用に適した発現ベクターの構築のための標準的な技術は当業者に周知であり、Sambrook J,et al.,“Molecular cloning:a laboratory manual”,(3rd ed.Cold Spring harbor Press,Cold Spring Harbor,N.Y.2001)(その全体があたかも記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる)などの刊行物に見出すことができる。
【0158】
本発明の方法において、変換に必要な関連する転写因子をコードする遺伝物質は、1つ以上のリプログラミングベクターを介して体細胞に送達される。各転写因子は、体細胞中のポリヌクレオチドの発現を駆動することができる異種プロモーターに作動可能に連結された転写因子をコードするポリヌクレオチド導入遺伝子として体細胞に導入することができる。
【0159】
適切なリプログラミングベクターは、感染性又は複製能力のあるウイルスを生じるのに十分なウイルスゲノムの全て又は一部をコードしないエピソームベクター(例えば、プラスミド)を含む、本明細書に記載される任意のものであるが、ベクターは1つ以上のウイルスから得られる構造エレメントを含み得る。リプログラミングベクターの1つ又は複数を、単一の体細胞に導入することができる。1つ以上の導入遺伝子が、単一のリプログラミングベクター上に提供され得る。1つの強力な構成的転写プロモーターは、発現カセットとして提供され得る複数の導入遺伝子の転写制御を提供し得る。ベクター上の別々の発現カセットは、別々の強力な構成的なプロモーターの転写制御下に置くことができ、これは、同じプロモーターのコピーであってもよく、別個のプロモーターであってもよい。様々な異種プロモーターが当技術分野で公知であり、転写因子の所望の発現レベルなどの因子に応じて使用され得る。以下に例示されるように、v細胞において異なる強度を有する異なるプロモーターを使用して、別々の発現カセットの転写を制御することが有利であり得る。転写プロモーターを選択する際に考慮すべき別の点は、プロモーターがサイレンシングされる速度である。当業者は、遺伝子の産物がリプログラミング方法におけるその役割を完了したか、又は実質的に完了した後に、1つ以上の導入遺伝子又は導入遺伝子発現カセットの発現を減少させることが有利であり得ることを理解するであろう。例示的なプロモーターは、ヒトEF1α伸長因子プロモーター、CMVサイトメガロウイルス前初期プロモーター及びCAGニワトリアルブミンプロモーター、並びに他の種由来の対応する相同プロモーターである。ヒト体細胞では、EF1αとCMVは共に強力なプロモーターであるが、前者の制御下にある導入遺伝子の発現が後者の制御下にある導入遺伝子の発現よりも早くオフになるように、CMVプロモーターはEF1αプロモーターよりも効率的にサイレンシングされる。転写因子は、体細胞において、リプログラミング効率を調節するために変化させることができる相対比で発現させることができる。好ましくは、複数の導入遺伝子が単一の転写物上にコードされる場合、内部リボソーム侵入部位は転写プロモーターから遠位の導入遺伝子の上流に提供される。因子の相対比は、送達される因子に応じて変化し得るが、本開示を所有する当業者は因子の最適比を決定することができる。
【0160】
当業者は、複数のベクターを介するのではなく単一のベクターを介して全ての因子を導入する有利な効率を理解するが、総ベクターサイズが増加するにつれて、ベクターを導入することがますます困難になることを理解するであろう。当業者はまた、ベクター上のポリシストロン性カセット内の転写因子の位置が、その時間的発現、及び得られるリプログラミング効率に影響し得ることを理解するであろう。従って、ベクターの組み合わせに対する因子の様々な組み合わせが使用され得る。本明細書では、リプログラミングを支持するために、いくつかのそのような組み合わせが示されている。
【0161】
リプログラミングベクターの導入後、及び体細胞がリプログラミングされている間、ベクターは、導入された転写遺伝子が転写及び翻訳される間、標的細胞中に存続することができる。導入遺伝子発現は、標的細胞型にリプログラミングされた細胞において、有利にダウンレギュレートされ得るか、又はオフにされ得る。リプログラミングベクターは、染色体外のまま残ることができる。極めて低い効率で、ベクターは細胞のゲノムに組み込まれることができる。以下の例は本発明を説明することを意図しているが、決して本発明を限定するものではない。
【0162】
本発明での使用のための細胞、組織又は生物の形質転換のための核酸送達に適した方法は、本明細書に記載されるように又は当業者に公知であるように、核酸(例えばDNA)を細胞、組織又は生物に導入することができる実質的に任意の方法を含むと考えられる(例えば、Stadtfeld and Hochedlinger,Nature Methods 6(5):329-330(2009);Yusa et al.,Nat.Methods 6:363-369(2009);Woltjen,et al.,Nature 458,766-770(9 Apr.2009))。そのような方法には、例えば、場合によりFugene6(Roche)又はLipofectamine(Invitrogen)などの脂質ベースのトランスフェクション試薬を用いたエクスビボトランスフェクション(Wilson et al.,Science,244:1344-1346,1989,Nabel and Baltimore,Nature 326:711-713,1987)による、マイクロインジェクション(Harland and Weintraub,J.Cell Biol.,101:1094-1099,1985;米国特許第5,789,215号明細書(参照により本明細書に組み込まれる)を含むインジェクションによる(米国特許第5,994,624号明細書、同第5,981,274号明細書、同第5,945,100号明細書、同第5,780,448号明細書、同第5,736,524号明細書、同第5,702,932号明細書、同第5,656,610号明細書、同第5,589,466号明細書及び同第5,580,859号明細書(それぞれ、参照により本明細書に組み込まれる);エレクトロポレーションによる(米国特許第5,384,253号明細書(参照により本明細書に組み込まれる);Tur-Kaspa et al.,Mol.Cell Biol.,6:716-718,1986;Potter et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA,81:7161-7165,1984);リン酸カルシウム沈殿(Graham and Van Der Eb,Virology,52:456-467,1973;Chen and Okayama,Mol.Cell Biol.,7(8):2745-2752,1987;Rippe et al.,Mol.Cell Biol.,10:689-695,1990)による;DEAE-デキストラン、続いてポリエチレングリコールを使用することによる(Gopal,Mol.Cell Biol.,5:1188-1190,19855);直接音波負荷による(Fechheimer et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA,84:8463-8467,1987);リポソーム媒介トランスフェクション(Nicolau and Sene,Biochim.Biophys.Acta,721:185-190,1982;Fraley et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA,76:3348-3352,1979;Nicolau et al.,Methods Enzymol.,149:157-176,1987;Wong et al.,Gene,10:87-94,1980;Kaneda et al.,Science,243:375-378,1989;Kato et al.,J Biol.Chem.,266:3361-3364,1991)及び受容体媒介トランスフェクション(Wu and Wu,Biochemistry,27:887-892,1988;Wu and Wu,J.Biol.Chem.,262:4429-4432,1987)によるDNAの直接送達;並びにこれらの方法の任意の組み合わせ(それぞれ、参照により本明細書に組み込まれる)が含まれるが、これらに限定されない。
【0163】
関連分子の細胞への導入を媒介することができる多数のポリペプチドが以前に記載されており、本発明に適合させることができる。例えば、Langel(2002) Cell Penetrating Peptides:Processes and Applications,CRC Press,Pharmacology and Toxicology Seriesを参照されたい。膜を横切る輸送を増強するポリペプチド配列の例としては、ショウジョウバエ(Drosophila)ホメオタンパク質アンテナペディア転写タンパク質(AntHD)(Joliot et al.,New Biol.3:1121-34,1991;Joliot et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88:1864-8,1991;Le Roux et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:9120-4,1993)、単純ヘルペスウイルス構造タンパク質VP22(Elliott and O’Hare,Cell 88:223-33,1997);HIV-1転写アクチベーターTATタンパク質(Green and Loewenstein,Cell 55:1179-1188,1988;Frankel and Pabo,Cell 55:1 289-1193,1988);カポジFGFシグナル配列(kFGF);タンパク質形質導入ドメイン-4(PTD4);Penetratin、M918、Transportan-10;核局在化配列、PEP-Iペプチド;両親媒性ペプチド(例えば、MPGペプチド);米国特許第6,730,293号明細書に記載されるような送達増強トランスポーター(30、40、又は50アミノ酸の連続セット中に少なくとも5~25以上の連続アルギニン又は5~25以上のアルギニンを含むペプチド配列を含むが、これらに限定されない;十分な、例えば少なくとも5、グアニジノ又はアミジノ部分を有するペプチドを含むが、これに限定されない);及び商業的に入手可能なPenetratin(商標)1ペプチド;並びにフランス、パリのDaitos S.A.から入手可能なVectocell(登録商標)プラットフォームのDiatosペプチドベクター(「DPV」)が挙げられるが、これらに限定されない。国際公開第2005/084158号パンフレット及び国際公開第2007/123667号パンフレット並びにそこに記載されるさらなる輸送体も参照されたい。これらのタンパク質は原形質膜を通過することができるだけでなく、本明細書に記載される転写因子などの他のタンパク質の付着が、これらの複合体の細胞取り込みを刺激するのに十分である。
【0164】
医薬組成物及び他の用途
特定の実施形態によれば、本発明は、本発明に従って作製されたTSCの少なくとも1つの特徴を有する細胞(即ち、iTSC)を使用して生成された任意の細胞、組織、及び/又は器官/オルガノイドの使用を意図する。本発明はさらに、本発明に従って作製されたTSCによって分泌されるか、又は本発明に従って作製されたTSCから分化したEVT若しくはSTによって分泌される任意の粒子又は化合物の使用を意図する。
【0165】
本発明の単離された細胞は、疾患モデリング、薬物スクリーニング及び患者特異的な細胞ベースの治療のためにさらに使用され得る。
【0166】
従って、本発明の特定の態様によれば、本発明の方法に従って作製されたTSCを含む単離された胎盤様オルガノイド、又は胚盤胞様細胞が提供される。
【0167】
さらなる態様によれば、本発明に従って作製された細胞又は細胞集団を胎盤又は胚盤胞に導入することを含む、胎盤又は胚盤胞を増強する方法が提供される。細胞又は細胞集団は、本発明の方法に従って作製された、TSCの少なくとも1つの特徴を示す細胞であってもよい。或いは、細胞又は細胞集団は、本発明のTSCの少なくとも1つの特徴を示す細胞から作製された分化細胞又は分化細胞集団であってもよい。
【0168】
細胞の導入は、発達中の宿主胎盤又は胚内での直接注射又は凝集を介して、インビトロ又はエクスビボで行うことができる。
【0169】
本発明に従って作製されるTSCの少なくとも1つの特徴を有する細胞はまた、栄養膜の発達及び/又は活性に関連する障害のためのモデル系を調製するために使用され得る。この系は、栄養膜の分化及び/若しくは活性において発現されるか、又はそれに必須な遺伝子のスクリーニング、栄養膜の発達及び/又は活性を達成する薬剤及び条件(培養条件及び操作など)のスクリーニング、特定の成長因子及びホルモンの生成、又は栄養膜の発達及び/若しくは活性に関連する障害の細胞療法としての有用性を見出す。
【0170】
従って、本発明の一態様によれば、栄養膜の発達及び/又は活性を調節することができる薬剤を同定する方法が提供され、この方法は:
(i)本発明に従って作製されたTSC、又は前記TSCに由来するオルガノイド(胚盤胞様オルガノイド、又は胎盤様オルガノイドなど)を候補薬剤と接触させることと;
(ii)前記薬剤と接触させた後のTSC又はオルガノイドの発達及び/又は活性を、前記薬剤のない前記TSC又は前記オルガノイドの発達及び/又は活性と比較することと、を含み、
前記薬剤のない前記TSC又は前記オルガノイドの発達及び/又は活性と比較して所定のレベルを超える前記TSC又は前記オルガノイドの発達及び/又は活性に対する前記薬剤の効果は、前記薬剤が栄養膜の発達及び/又は活性を調節することを示す。
【0171】
本明細書で使用される場合、用語「調節」は、阻害することによって、又は促進することによって、栄養膜の発達及び/又は活性を変化させることを指す。
【0172】
特定の実施形態によれば、調節は、発達及び/又は活性を阻害することである。
【0173】
特定の実施形態によれば、調節は、発達及び/又は活性を促進することである。
【0174】
同じ培養条件の場合、栄養膜の発達及び/又は活性に対する候補薬剤の効果は、一般に、同じ種であるが候補薬剤と接触していないか、又は対象とも呼ばれるビヒクル対照と接触した細胞における発達及び/又は活性と比較して表される。
【0175】
本明細書で使用される場合、表現「所定のレベルを超える効果」は、候補薬剤と接触させる前の発現レベルと比較して、所定のレベル、例えば約10%よりも高い、例えば約20%よりも高い、例えば約30%よりも高い、例えば約40%よりも高い、例えば約50%よりも高い、例えば約60%よりも高い、約70%よりも高い、約80%よりも高い、約90%よりも高い、約2倍よりも高い、約3倍よりも高い、約4倍よりも高い、約5倍よりも高い、約6倍よりも高い、約7倍よりも高い、約8倍よりも高い、約9倍よりも高い、約20倍よりも高い、約50倍よりも高い、約100倍よりも高い、約200倍よりも高い、約350よりも高い、約500倍よりも高い、約1000倍よりも高い、又はこれを超える、薬剤と接触した後の栄養膜の発達及び/若しくは活性、又はオルガノイドの発達における変化を指す。
【0176】
特定の実施形態によれば、候補薬剤は、化学物質、小分子、ポリペプチド及びポリヌクレオチドを含むがこれらに限定されない任意の化合物であってもよい。
【0177】
特定の実施形態によれば、選択された薬剤は、さらに、栄養膜の発達又は活性の調節を必要とする様々な状態、例えば以下に記載される状態を治療するために使用され得る。
【0178】
反復流産及び胎児発育遅延(FGR)は胎盤機能不全と関連し、ハンディキャップ及び重症例での死亡の一因となる。無傷及び健康なTSCの細胞移植は、移植細胞が未発達/損傷胎盤を支持することによりこれらの胎児の一部を救うことができる可能性があるため、臨床において非常に有望である。
【0179】
本発明の別の態様によれば、それを必要とする対象における栄養膜の発達及び/又は活性に関連する障害を治療及び/又は予防する方法であって、本発明に従って作製された治療有効量のTSCを対象に投与し、それによって対象における栄養膜の発達及び/又は活性に関連する障害を治療及び/又は予防することを含む方法が提供される。
【0180】
用語「治療する」又は「治療」は、病理(例えば、反復流産)の発生を阻害、予防若しくは停止し、及び/又は病理の減少、寛解、又は退行をもたらすことを指す。当業者は様々な方法論及びアッセイを用いて病理の発達を評価することができ、同様に、様々な方法論及びアッセイを用いて病理の減少、寛解又は退行を評価することができることを理解するであろう。
【0181】
本明細書で使用される場合、表現「それを必要とする対象」は、病理と診断された哺乳動物対象(例えば、ヒト)を指す。特定の実施形態では、この用語は、病理を発症する危険性がある個体を包含する。獣医学的使用も意図される。対象は、任意の性別、又は新生児、乳児、若年、青年、成人及び高齢成人を含む任意の年齢であり得る。特定の実施形態によれば、対象は女性である。
【0182】
本発明のこの態様は、栄養膜の発達及び/又は活性に関連する障害を治療することを意図した。特定の実施形態によれば、疾患は、反復流産、子癇前症、胎児発育遅延(FGR)、ヒダチホルム(hydatiform)奇胎及び絨毛癌からなる群から選択される。
【0183】
栄養膜はいくつかの分泌成長因子及びホルモン、並びに本発明の別の態様によるエキソソームなどの粒子を生成するので、栄養膜によって生成される化合物又は粒子を得る方法であって、本発明のTSC又はTCS細胞培養物を培養し、細胞によって分泌される化合物又は粒子を培養培地から単離し、それによって栄養膜によって生成された化合物又は粒子を得ることを含む方法が提供される。
【0184】
特定の実施形態によれば、化合物は、成長因子又はホルモン、例えばヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)であるが、これに限定されない。粒子はエキソソームであってもよい。
【0185】
本発明の細胞は、それ自体で、又はそれらが適切な担体若しくは賦形剤と混合される医薬組成物中で、対象に移植されてもよい。同様に、本発明の構築物は、それ自体で、又は医薬組成物中で対象に投与されてもよい。
【0186】
本明細書で使用される場合、「医薬組成物」は、本明細書に記載される活性成分の1つ以上と、生理学的に適切な担体及び賦形剤などの他の化学成分との調製物を指す。医薬組成物の目的は、生物への化合物の投与を容易にすることである。
【0187】
本明細書において、用語「活性成分」は、生物学的効果に関与する本発明の細胞又はオルガノイドを指す。
【0188】
以下では、互換的に使用され得る表現「生理学的に許容される担体」及び「薬学的に許容される担体」は、生物に有意な刺激を引き起こさず、投与された化合物の生物学的活性及び特性を無効にしない担体又は希釈剤を指す。
【0189】
本明細書において、用語「賦形剤」は、活性成分の投与をさらに容易にするために、医薬組成物に添加される不活性物質を指す。賦形剤の非限定的な例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖及びデンプンのタイプ、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油並びにポリエチレングリコールが挙げられる。
【0190】
本発明の医薬組成物は、当技術分野で周知のプロセスによって、例えば、従来の混合、溶解、造粒、糖衣錠製造、粉砕(levigating)、乳化、カプセル化、封入又は凍結乾燥プロセスによって製造することができる。
【0191】
従って、本発明に従って使用するための医薬組成物は、医薬的に使用され得る調製物への活性成分の加工を容易にする賦形剤及び補助剤を含む1つ以上の生理学的に許容される担体を使用する従来の様式で処方され得る。適切な製剤は、選択される投与経路に依存する。
【0192】
注射のために、医薬組成物の活性成分は、水溶液中、好ましくはハンクス溶液、リンゲル溶液、又は生理学的塩緩衝液などの生理学的に適合性の緩衝液中で処方され得る。
【0193】
典型的には、医薬組成物は、全身的な様式ではなく局所的な様式で、例えば、医薬組成物を患者の組織領域に直接注射することによって投与される。
【0194】
本明細書に記載される医薬組成物は、例えば、ボーラス注射又は連続注入による非経口投与のために処方され得る。注射用製剤は、単位剤形で、例えば、場合により保存剤を添加して、アンプルで又は多用量容器で提供され得る。組成物は、油性又は水性ビヒクル中の懸濁液、溶液又はエマルジョンであってもよく、懸濁化剤、安定化剤及び/又は分散剤などの処方剤を含んでもよい。
【0195】
非経口投与のための医薬組成物は、水溶性形態の活性調製物の水溶液を含む。さらに、活性成分の懸濁液を、適切な油性又は水性注射懸濁液として調製することができる。適切な親油性溶媒又はビヒクルには、ゴマ油などの脂肪油、又はオレイン酸エチル、トリグリセリド又はリポソームなどの合成脂肪酸エステルが含まれる。水性注射懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール又はデキストランなどの、懸濁液の粘度を増加させる物質を含むことができる。場合により、懸濁液はまた、高濃度溶液の調製を可能にするために、活性成分の溶解度を増加させる適切な安定剤又は薬剤を含むことができる。
【0196】
本発明の文脈での使用に適した医薬組成物は、活性成分が意図された目的を達成するのに有効な量で含まれる組成物を含む。治療有効量の決定は、特に本明細書に提供される詳細な開示に照らして、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0197】
本発明の組成物は、所望であれば、活性成分を含む1つ以上の単位剤形を含み得る、パック又はディスペンサーデバイス(例えば、FDA承認キット)中に提供され得る。パックは、例えば、ブリスターパックなどの金属又はプラスチック箔を含むことができる。パック又はディスペンサーのアドバイスは、注射器であってもよい。注射器は、細胞で予め充填されてもよい。パック又はディスペンサーデバイスは、投与のための説明書を伴ってもよい。パック又はディスペンサーはまた、医薬品の製造、使用又は販売を規制する政府機関によって規定された形態で容器に関連付けられた通知によって収容されてもよく、この通知は、組成物又はヒト若しくは獣医学的投与の形態の機関による承認を反映する。そのような通知は、例えば、米国食品医薬品局によって処方薬又は承認された製品挿入物について承認されたラベルのものであってもよい。適合性医薬担体中に処方された本発明の調製物を含む組成物はまた、上記でさらに詳述されるかのように、調製され、適切な容器中に配置され、示された状態の治療についてラベルされ得る。
【0198】
本発明は、以下の非限定的な実施例を含む。
【実施例】
【0199】
実施例1:体細胞リプログラミングから生成されたヒトiTSC
初代成人ヒト皮膚線維芽細胞(HDFa)をLife Technologiesから得た。核リプログラミング実験のために、LSGS(Gibco)を補充した培地106(Life Technologies)中でHDFaを増殖させた。次いで、初期継代(<P6)線維芽細胞をウェル当たり50,000~70,000細胞で6ウェルプレートに播種した後、DMEM(Gibco)、10% FBS(Hyclone)、1%非必須アミノ酸(Gibco)、1mM GlutaMAX(Gibco)、1% Pen-strep(Gibco)、0.1mM 2-メルカプトエタノール(Gibco)及び1mMピルビン酸ナトリウム(Gibco)を含有する線維芽細胞培地中で形質導入した。
【0200】
48時間後、1つのウェル中の細胞を計数のためにトリプシン処理して、形質導入に必要なウイルスの体積(MOI)を決定した。形質導入は、4つの転写因子、OCT4、SOX2、cMYC、KLF4(OKSM)からなるCytoTune 2.0 iPSC Sendai Reprogramming Kit(Invitrogen)を使用して行った。24時間後、ウイルスを除去し、培地を1日おきに交換した。
【0201】
形質導入の7日後、TrypLE Express(Life tech)を使用して細胞を回収し、線維芽細胞培地中の照射MEFフィーダーの層上に再播種した。翌日、以下にさらに記載するように、培地を、1)iTSC培地、2)ナイーブ培地、3)プライミング培地、又は4)LCDM培地に交換した。
【0202】
形質導入の7日後にiTSC培地に移された細胞は、本明細書において、「iTSCd8」リプログラミング中間体又は「D8線維芽細胞中間体」と呼ばれる。
【0203】
培地2~4(即ち、ナイーブ、プライミング、又はLCDM培地)で培養した細胞については、TSC培地に移す前に、細胞をこの培地中で5~13日間培養した。8~21日目にナイーブ培地中で培養された細胞は、「部分的にリプログラミングされた中間体」、「ナイーブリプログラミング中間体」又はD21ナイーブ中間体と呼ぶことができる。8~21日目にEssential 7(E7)培地中で培養された細胞も、「部分的にリプログラミングされた中間体」(又は「プライミングされたリプログラミング中間体」又はD21プライミングされた中間体)と呼ばれ得る。
【0204】
TSC培地中で培養した際、iTSCがコンフルエント且つ明白になったら、iTSCを1:2~1:4の比で3~4日毎に継代した。最初の4継代については、iTSCをTrpLE Express(Life tech)を使用してiMEFフィーダーに継代し、37℃、5% O2、5% CO2インキュベーター中で培養した。継代5から開始して、iTSCを、5μg/mlのCol IV(Sigma)で予めコーティングした組織培養フラスコに継代し(37℃で少なくとも1時間)、37℃、20% O2及び5% CO2インキュベーター中で培養した。
【0205】
尚さらなる実施例において、細胞を21日まで線維芽細胞培地中に保持した後、TSC培地に移行した。これらの細胞は、本明細書ではiTSCd28細胞とも呼ばれる(
図6参照)。
【0206】
一般に、使用する培地にかかわらず、本発明の方法を利用して、部分的にリプログラミングされた中間体からiTSCを得ることが可能であることが理解されるであろう。
【0207】
この実施例で使用した培地:
1.iTSC培地は、Okae et al.,Cell Stem Cell,2018に記載されている通りであり、以下を含む:
- DMEM/F-12、
- 0.3% BSA(Sigma)を補充したGlutaMAX(商標)(ThermoFisher)、
- 0.2% FBS(ThermoFisher)、
- 1% ITS-Xサプリメント(ThermoFisher)、
- 0.1mM 2-メルカプトエタノール(ThermoFisher)、
- 0.5% Pen-Strep(ThermoFisher)、
- 1.5μg/ml L-アスコルビン酸(Sigma)、
- 5μM Y27632((1R,4r)-4-((R)-1-アミノエチル)-N-(ピリジン-4-イル)シクロヘキサンカルボキサミド、Abcam)、
- 2μM CHIR99021(6-((2-((4-(2,4-ジクロロフェニル)-5-(4-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)エチル)アミノ)ニコチノニトリルMiltenyi Biotec)、
- 0.5μM A83-01(3-(6-メチル-2-ピリジニル)-N-フェニル-4-(4-キノリニル)-1H-ピラゾール-1-カルボチオアミド、Sigma)、
- 1μM SB431542(4-[4-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-5-(2-ピリジニル)-1H-イミダゾール-2-イル]ベンズアミド)
- 50ng/ml EGF(Peprotech)及び
- 0.8mMバルプロ酸(VPA、Sigma)。
【0208】
2.ナイーブ培地。
以下を含む、Guo et al.,(2016) Stem Cell Reports,6(4):P437-446)に報告されているナイーブt2iLGoY培地:
- 2mM L-グルタミン(Gibco)を補充したDMEM/F-12(Gibco)とNeurobasal培地(Gibco)の50:50混合物
- 0.1mM 2-メルカプトエタノール(Gibco)、
- 0.5% N2サプリメント(Gibco)、
- 1% B27サプリメント(Gibco)、
- 1% Pen-strep(Gibco)、
- 10ng/mlヒトLIF(自家製)、
- 250μM L-アスコルビン酸(Sigma)、
- 10μg/ml組換えヒトインスリン(Sigma)、
- 1μM PD0325901(Miltenyi Biotec)、
- 1μM CHIR99021(Miltenyi Biotec)、
- 2.5μM Goe6983(Tocris)、
- 10μM Y-27632(Abcam)。
ナイーブ培地の他の例には、5iLAF、RSeT及びPXGLが含まれる。
【0209】
3.プライミング培地。
例示的なプライミング培地は、以下を含む:
- DMEM/F12(ThermoFisher)、
- 20%ノックアウト血清置換(KSR、ThermoFisher)。
- 1mM GlutaMAX(ThermoFisher)、
- 55μM 2-メルカプトエタノール(ThermoFisher)、
- 1%非必須アミノ酸(ThermoFisher)、
- 50ng/mL組換えヒトFGF2(Miltenyi Biotec)、
- 1% Pen-strep(ThermoFisher)。
培地KSR/FGF2、E8、mTeSR、AKIT、B8は、プライミング培地のさらなる例である。
【0210】
4.LCDM培地:
- 0.5% N2サプリメント(ThermoFisher)を補充したDMEM/F-12(ThermoFisher)とNeurobasal培地(ThermoFisher)の50:50混合物、
- 1% B27サプリメント(ThermoFisher)、
- 1%非必須アミノ酸(ThermoFisher)、
- 1mM GlutaMAX(ThermoFisher)、
- 1% Pen-strep(ThermoFisher)、
- 0.1mM 2-メルカプトエタノール(ThermoFisher)、
- 0.5% KSR(ThermoFisher)、
- 10ng/mlヒトLIF(自家製)、
- 1μM CHIR99021(Miltenyi Biotec)、
- 2μM (S)-(+)-ジメチンデンマレエート(Tocris)、
- 2μM塩酸ミノサイクリン(Tocris)、
- 1μM IWR-endo-1(Selleckchem)及び
- 2μM Y-27632(Abcam)。
【0211】
実施例2:樹立されたヒト多能性幹細胞のTSCへの変換:
樹立されたナイーブEPSC/iPSCを、上述したt2itLGoY条件下で培養した。ナイーブhEPSC/hiPSCを、MEFフィーダー又はコラーゲンIV被覆プレートの層上に播種した。TSCがコンフルエント且つ明白になったとき、TSCを1:2~1:4の比で3~4日毎に継代した。TSCを、TrpLE Express(Life tech)を使用して、iMEFフィーダー又はCol IV(Sigma)に継代し、37℃、20% O2及び5% CO2インキュベーター中で培養した。
【0212】
プライミングされたヒトEPSC/iPSCは、好ましくはTSC培地と接触させる前にナイーブ培地と接触させる。
【0213】
樹立されたヒトLCDM EPSC又はiPSC(「拡張」EPSC又はiPSCとも呼ぶことができる)を、上述したようにLCDM培地中で培養した。細胞を、MEFフィーダー又はコラーゲンIV被覆プレートの層上に播種した。TSCがコンフルエント且つ明白になったとき、TSCを1:2~1:4の比で3~4日毎に継代した。TSCを、TrpLE Express(Life tech)を使用して、iMEFフィーダー又はCol IV(Sigma)に継代し、37℃、20% O2及び5% CO2インキュベーター中で培養した。
【0214】
プライミングされたヒトEPSC/iPSCは、好ましくはTSC培地と接触させる前にLCDM培地と接触させる。
【0215】
実施例3:体細胞のiTSCへの直接変換
図3は、ヒトiTSCの誘導のためのナイーブリプログラミングの間のTEシグネチャーの安定化によって生成されたTSCの特徴付けの結果を示す。
【0216】
図3aは、TSC培地中のナイーブ中間体を捕捉及び安定化するための実験デザインの概略図を提供する。
【0217】
手短には、結果は、線維芽細胞から脱分化状態へのリプログラミングの間に、TSC培地中の中間体を捕捉及び安定化することが可能であり、iTSCの生成を可能にすることを示す。
【0218】
このプロセスを介して生成された細胞の位相差画像は、細胞がTSCと同様の形態を有することを示す(玉石状の外観、
図3b)。
【0219】
核染色のためのP63、TFAP2C、GATA2、KRT7及びDAPIによる、線維芽細胞、プライミング、ナイーブt2iLiGoY iPSCの免疫染色は、TSCに特徴的なマーカーが
図3cに示されることを示す。
図3dは、d21ナイーブリプログラミング中間体から生成されたiTSCの免疫染色を示す。
【0220】
D21プライミング及びナイーブ中間体から生成された細胞をフローサイトメトリーに供した。APA+ITGA6+二重陽性細胞は、TRA-1-60陰性細胞集団からゲートされ、バルクリプログラミング細胞からiTSCを精製するために選別された(図示せず)。
図3dはまた、D21プライミング及びナイーブリプログラミング中間体から生成されたTRA-1-60陰性、APA陽性及びITGA6陽性iTSCのパーセンテージを示す。
【0221】
TSCマーカーの発現レベルを、本発明に従って作製されたヒト線維芽細胞、プライミングされたiPSC、ナイーブiPSC及びiTSCにおいて決定し、胚盤胞から得られたTSCT及びTSblastと比較した(Okae et al.,2018)。結果を
図3eに示す。
【0222】
ST細胞は、標準的な方法を用いて、本発明に従って作製されたTSCを分化させることによって得られた。分化した細胞の位相差画像及びSDC1免疫染色は、細胞がSTの特徴を示すことを示す。(
図3f及び3g)
【0223】
図3iは、hCG妊娠検査スティックを使用したiTSCから分化したST細胞についての陽性結果を示す。ELISAもまた、本発明に従って作製されたTSCによって、及びこれらのTSCを分化させることによって得られたSTによって分泌されたhCGのレベルを検出するために使用された(
図3j)。
【0224】
図3fは、本発明に従って作製されたiTSCから分化したEVT細胞の位相差画像を示す。HLA-G免疫染色も行った(
図3g)。
【0225】
iTSC生着アッセイを、本発明に従って作製したiTSCをNOD-SCIDマウスに注射することによって行った。注射後9日目に尿、病変及び血清を検査した。
図3kは、iTSC注射マウスから採取した尿サンプルが、ビヒクル対照と比較して、妊娠検査スティック上で陽性のhCG結果を示したことを示す。hCGレベルもまた、血清サンプルを用いてhCG ELISAによって検出した(
図3l)。
【0226】
図3nは、iTSC生着NOD-SCIDマウスから採取された病変におけるヘマトキシリン及びエオシン並びにKRT7、SDC1及びHLA-Gの免疫組織化学染色を示し、ビヒクル対照では明らかな病変は観察されなかった。
【0227】
図3mは、NOD-SCIDマウスにおいて、本発明に従って作製されたTSCの生着後に観察された結果を示す。手短には、80%コンフルエンシーを有するiTSCをTrypLE express(ThermoFisher)で解離させ、計数した。10
7のiTSCを、0.3% BSA(Sigma)及び1% ITS-Xサプリメント(ThermoFisher)を補充したMatrigel(Corning)及びDMEM/F-12、GlutaMAX(商標)(ThermoFisher)の1:2混合物200μlに再懸濁した。次いで、細胞混合物をNOD-SCIDマウスの背側腹部に皮下注射した(各側腹部に100μlの混合物)。注射後9日目に、尿、病変及び血清を分析のためにマウスから採取した。マウスの尿及び血清を、以下の節で詳述するように、hCG分泌の検出及び測定に利用した。採取した病変を4%パラホルムアルデヒド(PFA、Sigma)で一晩固定し、続いてパラフィンに包埋した。パラフィン包埋組織を5μmで切片化し、ヘマトキシリン-エオシン(H&E)で染色するか、又は上述したように免疫染色に進んだ。
【0228】
図4は、scRNA-seqによって明らかにされた線維芽細胞及びリプログラミング中間体(iTSCd8)の細胞不均一性を示す。
【0229】
iTSCがヒト線維芽細胞から直接誘導できるかどうかを試験するために、リプログラミング実験を開始した。8日目の中間体を、TSC培地若しくはナイーブ培地に移行するか、又は線維芽細胞培地中に保持した。次いで、21日目にscRNA-seqを行って細胞不均一性を評価した(
図4a)。TE様細胞の集団が観察され、より綿密な試験は、このTE様集団が3つのリプログラミング条件全てからの細胞を含むことを明らかにした(
図4b~d)。
【0230】
実施例4:ヒト線維芽細胞からのiTSCの直接誘導
線維芽細胞のリプログラミングを、実施例1に記載の方法に従って開始した。手短には、転写因子OKSMを発現しているセンダイウイルスでのトランスフェクション後8日目に、本明細書に記載されるように、細胞をTSC培地に移した(
図5a)。
【0231】
このプロセスを介して生成された細胞の位相差画像は、細胞がTSCと同様の形態を有することを示す(玉石状の外観、
図5b)。
【0232】
図5cは、d8線維芽細胞中間体から生成されたiTSCの免疫染色を示す。これらのiTSCは、導入遺伝子を含まない条件で自己再生することができる(
図5d)。
【0233】
TSCマーカーの発現レベルを、本発明に従って作製されたヒト線維芽細胞、プライミングされたiPSC、ナイーブiPSC及びiTSCにおいて決定し、胚盤胞から得られたTSCT及びTSblastと比較した(Okae et al.,2018)。結果を
図5eに示す。さらに、iTSC並びにiTSC由来の合胞体栄養膜(ST)及び絨毛外栄養膜(EVT)は、他の公表されたデータセットの対応する初代細胞型と共通のトランスクリプトームプロファイルを共有する(
図5f~h)。
【0234】
iTSCはまた、線維芽細胞及びiPS細胞と比較して、19番染色体miRNAクラスター由来のマイクロRNA(miRNA)の高い発現レベルを示す-これは初代栄養膜の独特な特徴である(
図5i)。
【0235】
iTSCは、TSCBT5(ヒト胚盤胞に由来する)に見られるように、ELF5遺伝子座のプロモーター領域及び推定エンハンサー領域で特定のオープンクロマチン到達性を示す(
図5j)。
【0236】
ST細胞は、標準的な方法を用いて、本発明に従って作製されたiTSCを分化させることによって得られた。分化した細胞の位相差画像及びSDC1免疫染色は、細胞がSTの特徴を示すことを示す(
図5k)。
【0237】
図5nは、hCG妊娠検査スティックを使用したiTSCから分化したST細胞についての陽性結果を示す。ELISAもまた、本発明に従って作製されたTSCによって、及びそれらのiTSCを分化させることによって得られたSTによって分泌されたhCGのレベルを検出するために使用された(
図5o)。
【0238】
図5lは、本発明に従って作製されたiTSCから分化したEVT細胞の位相差画像を示す。HLA-G免疫染色も行った(
図5I)。さらに、HLA-A、-B、-C汎マーカー(W632)の発現がiTS細胞において検出され、これまでに胚盤胞由来のTS細胞で報告されているものと同様であった(Okae et al.,2018)(
図5p及び5q)。
【0239】
図5r及び5sは、iTS細胞由来合胞体栄養膜及び絨毛外栄養膜が関連マーカー遺伝子の発現を示すことを示す。
【0240】
図5tは、本発明に従って作製されたiTSCをNOD-SCIDマウスに注射することによって行われたiTSC生着アッセイの概略図を示す。注射後9日目に尿、病変及び血清を検査した。
図5tは、iTSC注射マウスから採取した尿サンプルが、ビヒクル対照と比較して、妊娠検査スティック上で陽性のhCG結果を示したことを示す。hCGレベルもまた、血清サンプルを使用してhCG ELISAによって検出した(
図5v)。
【0241】
図5wは、iTSC生着NOD-SCIDマウスから採取された病変におけるヘマトキシリン及びエオシン並びにKRT7、SDC1及びHLA-Gの免疫組織化学染色を示し、ビヒクル対照では明らかな病変は観察されなかった。
【0242】
図5uは、NOD-SCIDマウスにおいて、本発明に従って作製されたTSCの生着後に観察された結果を示す。手短には、80%コンフルエンシーを有するiTSCをTrypLE express(ThermoFisher)で解離させ、計数した。10
7のiTSCを、0.3% BSA(Sigma)及び1% ITS-Xサプリメント(ThermoFisher)を補充したMatrigel(Corning)及びDMEM/F-12、GlutaMAX(商標)(ThermoFisher)の1:2混合物200μlに再懸濁した。次いで、細胞混合物をNOD-SCIDマウスの背側腹部に皮下注射した(各側腹部に100μlの混合物)。注射後9日目に、尿、病変及び血清を分析のためにマウスから採取した。マウスの尿及び血清を、以下の節で詳述するように、hCG分泌の検出及び測定に利用した。採取した病変を4%パラホルムアルデヒド(PFA、Sigma)で一晩固定し、続いてパラフィンに包埋した。パラフィン包埋組織を5μmで切片化し、ヘマトキシリン-エオシン(H&E)で染色するか、又は上述したように免疫染色に進んだ。
【0243】
実施例5:21日目のヒト線維芽細胞リプログラミング中間体からのiTSCの誘導
線維芽細胞のリプログラミングを、実施例1に記載の方法に従って開始した。手短には、転写因子OKSMを発現しているセンダイウイルスでのトランスフェクション後21日目に、本明細書に記載されるように、細胞をTSC培地に移した。
【0244】
21日目の線維芽細胞培地の中間体はまた、強いエピブラスト、プライミング、及びナイーブシグネチャーを有する細胞からなり、従って、これらの中間体は、多能性及びTS細胞株を生じることができた(
図6a~c)。
【0245】
実施例6:部分的にリプログラミングされた中間体からのiTSCの誘導、並びに樹立されたナイーブ及び拡張iPSCからTSCへの誘導
リプログラミング中間体を得るための線維芽細胞のリプログラミングを、実施例1に記載の方法に従って開始した。手短には、転写因子OKSMを発現しているセンダイウイルスでのトランスフェクション後7日目に、本明細書に記載されるように、細胞をE7培地に移した。
図7aは、各段階における細胞のリプログラミングプロトコル及び位相差画像の概略図を示す。
【0246】
樹立されたナイーブ及び拡張iPSCから得られたTSCを、実施例2に記載の方法に従って得た。各段階における細胞の変換プロトコル及び位相差画像の概略を
図7bに示す。
【0247】
図7cは、(1)ナイーブhPSC、(2)拡張及びプライミングhPSC、並びに(3)栄養膜の3つの細胞群を規定した階層的クラスタリングを示す。誘導及び変換hTSCの両方は、以前に樹立された胚及び胎盤由来のhTSCと共にクラスタリングされて栄養膜のグループを形成した。このグループは、樹立され、誘導され、変換されたhTSC ST及びEVTを含むいずれかのhTSCの間で細分された。ピアソン相関解析により、誘導され、変換された胚及び胎盤由来hTSCの近接がさらに確認された。拡張及びプライミングhPSCは、hTSCを形成する可能性の相対的差異にもかかわらず、高度の転写類似性を示した。
【0248】
さらなる解析により、誘導及び変換されたhTSCは重要な栄養膜系列マーカーを発現することが確認された。特に、GATA3、KRT7及びVGL1の発現レベルは、以前に樹立された胚及び胎盤由来hTSC(10~300UPMの範囲の絶対遺伝子発現)で認められたレベルと類似していた。本発明者らはまた、PEG10、NR2F2,LRP2を含むhTSCの幹細胞性に関連する遺伝子を同定した。これらはhTSC、hiTSC及びhcTSCにおいて同様のレベルで発現されたが、分化したST及びEVTにおいては発現されなかった(hTSCにおいて20~200UPMの範囲の絶対遺伝子発現、hTSC-ST及びhTSC-EVTにおいて10UPM未満)(
図7d)。
【0249】
図7eは、ヒト胚盤胞の栄養外胚葉で発現する栄養膜マーカーNR2F2及びGATA2に対するhiTSC及びhcTSCの免疫染色を示す。NR2F2及びGATA2は高度に発現し、全ての細胞の核に局在していた。逆に、SOX2はhPSCにおいて高度に発現されたが、hTSCにおいては存在しなかった(
図1e)。これらの発現パターンは、hiTSC、hcTSC及び胎盤由来hTSCの間で同等であった。これらの結果は、hi/cTSCが以前に樹立されたhTSCと同様の発現プロファイルを共有することを確認する。
【0250】
図7f~gは、ST/EVTアッセイ最適化プロトコルを示す。最適化されたST分化の際に、細胞は、hTSCにおいて発現されないCGA、CGB及びSDC1の発現をアップレギュレートした(10~1300倍の変化の範囲の相対遺伝子発現)。対照的に、HLA-G、MMP2、及びASCL2はEVT分化条件で全体的に増加した(10~700倍の変化の範囲の相対遺伝子発現)。最後に、hTSCで主に発現したLRP2及びCDKN3は、分化時にダウンレギュレートした(2~70倍の変化の範囲の相対遺伝子発現)。重要なことに、遺伝子発現パターンは胎盤細胞のそれと同等であり、これは統計解析によって確認された(
図7h)。
【0251】
図7iは、DESMOPLAKIN(DSP)及びCGBを発現し、典型的には6~10個の核を含む、多核合胞体の構造を示す。
【0252】
GATA3及びHLA-Gの免疫染色により、誘導され、変換された胎盤由来のhTSCから分化したEVTの同一性が確認された(
図7j)
【0253】
実施例7:一般的な方法
細胞培養条件
3人の女性ドナーからの初代ヒト成人皮膚線維芽細胞を、ThermoFisher(カタログ番号C-013-5C及び38Fについてロット番号1029000、55Fについてロット番号1528526及び32Fについてロット番号1569390)から得;細胞を回収し、増殖のために低血清成長サプリメント(LSGS)(ThermoFisher)を補充した培地106(ThermoFisher)中にプレーティングした。ヒト体細胞リプログラミングに用いた培養条件は、以前に記載されたように調製した。線維芽細胞培地:DMEM(ThermoFisher)、10%ウシ胎仔血清(FBS)(Hyclone)、1%非必須アミノ酸(ThermoFisher)、1mM GlutaMAX(ThermoFisher)、1%ペニシリン-ストレプトマイシン(ThermoFisher)、55μM 2-メルカプトエタノール(ThermoFisher)及び1mMピルビン酸ナトリウム(ThermoFisher)。プライミング培地:DMEM/F12(ThermoFisher)、20%ノックアウト血清置換(KSR)(ThermoFisher)、1mM GlutaMAX(ThermoFisher)、0.1mM 2-メルカプトエタノール(ThermoFisher)、1%非必須アミノ酸(ThermoFisher)、50ng/ml組換えヒトFGF2(Miltenyi Biotec)、1%ペニシリン-ストレプトマイシン(ThermoFisher)。ナイーブ培地(t2iLGoY):2mM l-グルタミン(ThermoFisher)、0.1mM 2-メルカプトエタノール(ThermoFisher)、0.5% N2サプリメント(ThermoFisher)、1% B27サプリメント(ThermoFisher)、1%ペニシリン-ストレプトマイシン(ThermoFisher)、10ng/mlヒト白血病抑制因子(LIF)(自家製)、250μM l-アスコルビン酸(Sigma)、10μg/ ml組換えヒトインスリン(Sigma)、1μM PD0325901(Miltenyi Biotec)、1μM CHIR99021(Miltenyi Biotec)、2.5μM Goe6983(Tocris)、10μM Y-27632(Abcam)を補充した、DMEM/F-12(ThermoFisher)と神経基礎培地(ThermoFisher)の50:50混合物。ナイーブヒト幹細胞培地(NHSM):Gafni,O.et al.Derivation of novel human ground state naive pluripotent stem cells.Nature 504,282-286から適合された培養条件、2014年のJ.Hanna研究所のウェブページから提案された修正を用いた。 10mg/ml AlbuMAX I(ThermoFisher)、1%ペニシリン-ストレプトマイシン(ThermoFisher)、1mM GlutaMAX(ThermoFisher)、1%非必須アミノ酸(ThermoFisher)、10% KSR(ThermoFisher)、1% N2サプリメント(ThermoFisher)、12.5μg/ml組換えヒトインスリン(Sigma)、50μgml l-アスコルビン酸(Sigma)、20ng/ml組換えヒトLIF(自家製)、8ng/mlFGF2(Peprotech)、2ng/ml組換えTGFβ1(Peprotech)、20ng/mlヒトLR3-IGF1(Prospec)及び小分子阻害剤:1μM PD0325901(Miltenyi Biotec)、3μM CHIR99021(Miltenyi Biotec)、5μM SP600125(Tocris)、2μM BIRB796(Axon)、0.4μM LDN193189(Axon)、10μM Y-27632(毎日、新たに解凍したストックアリコートから培地に補充)(Abcam)、及び1μM Goe6983(毎日、新たに解凍したストックアリコートから培地に補充)(Tocris)。1% N2サプリメント(ThermoFisher)、2% B27サプリメント(ThermoFisher)、1%非必須アミノ酸(ThermoFisher)、1mM GlutaMAX(ThermoFisher)、1%ペニシリン-ストレプトマイシン(ThermoFisher)、0.1mM 2-メルカプトエタノール(ThermoFisher)、50μg/mlウシ血清アルブミン(ThermoFisher)、1μM PD0325901(Miltenyi Biotec)、1μM IM-12(Millipore)、0.5μM SB590885(Tocris)、1μM WH-4-023(A Chemtek)、10μM Y-27632(Abcam)、20ng/mlアクチビンA(Peprotech)。8ng/ml FGF2(Miltenyi Biotec)、20ng/mlヒトLIF(自社製)及び0.5%のKSR(ThermoFisher)を補充した、DMEM/F-12(ThermoFisher)と神経基礎培地(ThermoFisher)の50:50混合物。ナイーブRSeT培地:100mlのRSeT 5×サプリメント、1mlのRSeT 500×サプリメント、及び0.5mlのRSeT 1,000×サプリメントを、1%ペニシリン-ストレプトマイシン(ThermoFisher)を補充した398.5mlのRSeT基礎培地(Stem Cell Technologies)中に入れる。ヒトTS細胞培地7:DMEM/F-12、0.3% BSA(Sigma)、0.2% FBS(ThermoFisher)、1% ITS-Xサプリメント(ThermoFisher)、0.1mM 2-メルカプトエタノール(ThermoFisher)、0.5%ペニシリン-ストレプトマイシン(ThermoFisher)、1.5μg/ml l-アスコルビン酸(Sigma)、5μM Y27632(Abcam)、2μM CHIR99021(Miltenyi Biotec)、0.5μM A83-01(Sigma)、1μM SB431542、50ng/ml EGF(Peprotech)及び0.8mMバルプロ酸(VPA)(Sigma)を補充したGlutaMAX(ThermoFisher)。
【0254】
リプログラミング実験
t2itLGoY培地をナイーブリプログラミングに使用したが、これはこの培地を使用して、ナイーブ多能性の全ての特徴を有し、他の条件と比較した場合に、より安定な核型を維持するナイーブiPS細胞に線維芽細胞をリプログラミングすることができることが以前に示されているためである。プライミング及びナイーブ多能性状態へのヒト体細胞リプログラミング実験、並びにプライミング及びナイーブiPS細胞のその後の培養を、以前に記載されたように実施した。手短には、ヒト線維芽細胞のリプログラミングは、CytoTune-iPS 2.0 Sendaiリプログラミングキットを使用して、製造業者の説明書(ThermoFisher)に従って行った。
【0255】
初代ヒト成人皮膚線維芽細胞を、線維芽細胞培地中に約5~10×104細胞の密度で播種した。細胞を、線維芽細胞培地中で、以下のような感染多重度(MOI)でセンダイウイルスで形質導入した:KLF4、OCT4及びSOX2、MOI=5又は10;MYC、MOI=5又は10;及びKLF4 MOI=6又は12。細胞を7日目にiMEFフィーダーの層上に再播種し、翌日に異なる培養培地(プライミング、t2itLGoY、NHMS、RSeT又は5iLAF)に移行した。18~21日後、iPSCを継代し、以前に記載したように増殖させることができた。プライミング又はナイーブリプログラミング中のiTSCd21nの誘導のために、21日目のプライミング又はナイーブt2iLGoYリプログラミング中間体をTS細胞培地に移行した。4~5日後、TrypLE express(ThermoFisher)を使用して、1:2~1:4の比で3~4日毎に細胞を継代した。最初の4継代については、iTSCをiMEFフィーダーに継代し、37℃、5% O2、及び5% CO2インキュベーター中で培養した。
【0256】
継代5から開始して、iTSCd21nを、5μg/mlコラーゲンIV(Sigma)で予めコーティングした組織培養フラスコに継代し(37℃で少なくとも1時間)、37℃、20% O2及び5% CO2インキュベーター中で培養した。ヒト線維芽細胞からのiTSCd8の直接誘導のために、8日目の線維芽細胞リプログラミング中間体をTSC培地に移行した。10~13日後、iTSCd8をiMEFフィーダーに継代し、iTSCd21nについて記載したように、37℃、5% O2及び5% CO2インキュベーター中で培養した。樹立されたiTSC株におけるセンダイ検出は、センダイリプログラミングプロトコル(ThermoFisher)に記載されるように行った。21日目の線維芽細胞リプログラミング中間体からのプライミング、ナイーブiPSC及びiTSCの誘導のために、21日目の線維芽細胞リプログラミング中間体を、プライミング、ナイーブ又はTSC培地に移行し、次いで、記載されたように培養し及び増殖させた。
【0257】
図7に示すデータについては、CytoTune-iPS 2.0 Sendaiリプログラミングキット(Life Technologies(商標))を使用して、ヒト成人線維芽細胞をリプログラミングした。感染の2日前に、ウェル当たり3.0~4.0×10
4の線維芽細胞を、Matrigelでコーティングした12ウェルプレート上に播種した。0日目に、細胞を3つのベクター:ポリシストロン性Klf4-Oct4-Sox2、Myc及びKlf4にそれぞれ5:5:3又は3:3:3の感染多重度(MOI)で感染させた。感染9日目に、細胞をTrypLE(5分、37℃、Life Technologies(商標))で解離させ、35mm皿内にてMEF上に播種した。翌日、細胞をE7リプログラミング培地(STEMCELL Technologies(商標))に移行した。21日目以降、細胞をhTSC培地に移行した。誘導hTSC株(hiTSC)を低酸素条件(5% O
2,5%CO
2)で37℃で日常的に培養した。hiNPSC、hiEPS及びhiPSCへの体細胞リプログラミングは、以前の報告(Kilens et al.,2018 Nature Communications 9:360; Yang et al.,2017,Cell,169:243-257)に記載されているように行った。
【0258】
hNPSC及びhEPSのhcTSへの変換
hNPSC及びhEPSをTrypLE(5分、37℃、Life Technologies(商標))で解離させ、1皿当たり0.6~1.7×105細胞の密度で35mm皿内にてMEF上に播種した。細胞を、10μMのY27632を補充したそれらの最初の培地中で1日間維持した。2日目以降、細胞をhTSC培地に移行した。変換したhTSC株(hcTSC)を、低酸素条件(5% O2、5% CO2)で37℃で日常的に培養した。変換実験に含まれるプライミングされたhPSCを、最初にKSR+FGF2又はiPS-BREW中で培養した。10個のコロニーを採取し(KSR+FGF2)、又は細胞をTrypLE(iPS-BREW)で継代し、変換アッセイのためにMEFでコーティングした35mm皿内に、1皿当たり0.5~1.25×105細胞の密度で播種した。
【0259】
インビトロにおけるiTSCd21n及びiTSCd8のST及びEVTへの分化
iTSCのST及びEVTへの分化は、以前に記載されたように行った(Okae,H.et al.(2018) Derivation of human trophoblast stem cells.Cell Stem Cell 22,50-63)。iTSCのSTへの分化のために、iTSCをウェル当たり1×105細胞の密度で、2.5μg/mlコラーゲンIV(Sigma)で予めコーティングした6ウェルプレート上に播種し、0.3% BSA(Sigma)、4% KSR(ThermoFisher)、1% ITS-Xサプリメント(ThermoFisher)、0.1mM 2-メルカプトエタノール(ThermoFisher)、0.5%ペニシリン-ストレプトマイシン(ThermoFisher)、2.5μM Y27632(Abcam)及び2μMフォルスコリン(Selleckchem)を補充した2mlのST分化培地(DMEM/F-12、GlutaMAX(ThermoFisher)中で培養した。培地を最初の4日間毎日交換し、細胞を6日目に分析した。融合指数は細胞融合の効率を定量化するために使用され、これは、合胞体において計数された核の数から合胞体の数を引いたものを使用し、次いで、計数された核の総数で割ることによって計算される。iTSCをEVTに分化させるために、iTSCをウェル当たり0.75×105細胞の密度で、1μg/mlコラーゲンIV(Sigma)で予めコーティングした6ウェルプレート上に播種し、0.3% BSA(Sigma)、4% KSR(ThermoFisher)、1% ITS-Xサプリメント(ThermoFisher)、0.1mM 2-メルカプトエタノール(ThermoFisher)、0.5%ペニシリン-ストレプトマイシン(ThermoFisher)、2.5μM Y27632(Abcam)、100ng/ml NRG1(Cell Signaling)及び7.5μM A83-01(Sigma)を補充した2mlのEVT分化培地(DMEM/F-12、GlutaMAX(ThermoFisher)中で培養した。EVT分化培地中に細胞を懸濁した直後に、Matrigel(Corning)を2%の最終濃度までオーバーレイした。分化の3日目に、ヒトNRG1(Cell Signaling)及びMatrigel(Corning)を含まないEVT分化培地を0.5%の最終濃度まで添加した。分化の6日目に、EVT分化培地を、NRG1(Cell Signaling)又はKSR(ThermoFisher)なしで交換し、Matrigel(Corning)を0.5%最終濃度まで添加した。分析を行う前に、細胞をさらに2日間培養した。
【0260】
hi/cTSCのEVT及びSTへの分化
少なくとも15継代後、細胞を分化アッセイのために収集した。ST及びEVTへの分化の前に、h(i/c)TSC(最初はMEF上で培養)をフィブロネクチンに少なくとも3継代移行した。EVT分化:継代の2~4日前に、h(i/c)TSCをEVT前培地[0.1mM 2-メルカプトエタノール、0.5%ペニシリン-ストレプトマイシン、0.3% BSA、1% ITS-Xサプリメント、4% KSR、7.5μM A83-01(Tocris(商標))、2.5μM Y27632、5μM IWR-endo-1(Miltenyi Biotec(商標))を補充したDMEM/F12]に移行した。次いで、細胞を、0.8~3.0×104細胞/cm2の密度までTrypLEで継代した。処理を開始する前に、細胞を、10μMのROCK阻害剤(Y27632)を補充した分化基礎培地[0.1mM 2-メルカプトエタノール、0.5%ペニシリン-ストレプトマイシン、0.3% BSA、1% ITS-Xを含有するDMEM/F12]中に置いた。6時間以内に、株に応じたタイミングで、細胞をEVT培地(Okae et al.,2018)[100ng/ml NRG1、7.5mM A83-01、2.5mM Y27632、4%ノックアウト血清置換、2% Matrigelを補充した分化基礎培地]に移行した。3日目に、培地を、NRG1を含まない、0.5% Matrigelを含有するEVT培地で置き換えた。典型的には、EVT形成は4~5日目までに観察された。6日目に、培地を、NRG1及びKSRを含まない、0.5% Matrigelを含有するEVT培地で置き換えた。細胞を、その後の分析のために8日目に収集した。2D-ST分化:h(i/c)TSCを、2.0~6.0×104細胞/cm2の密度までTrypLEで継代した。処理を開始する前に、細胞を、10μM ROCK阻害剤(Y27632)を補充した分化基礎培地[0.1mMメルカプトエタノール、0.5%ペニシリン-ストレプトマイシン、0.3% BSA、1% ITS-Xを含有するDMEM/F12]中に置いた。3時間以内に、株に応じたタイミングで、細胞をST培地(Okae et al.,2018)[2.5mM Y27632、2mM フォルスコリン、及び4% KSRを補充した分化基礎培地]に移行した。3日目に培地を交換し、6日目に細胞を分析した。3D-ST分化アッセイ:3D分化アッセイの前に、h(i/c)TSCを、わずかに修正した栄養膜オルガノイド培地(TOM)に移行した(Turco et al.,2018)[500nM A83-01、1.5μM CHIR99021、80ng/mlヒトR-スポンジン1、50ng/ml hEGF、100ng/ml hFGF2、50ng/ml hHGF、2μM Y-27632を補充した、DMEM/F12、1X N2サプリメント、ビタミンAを含まない1X B27サプリメント、1.25mM N-アセチル-L-システイン、1% GlutaMAX(Gibco(商標))、0.5%ペニシリン-ストレプトマイシン(TOM基礎培地)]。TrypLEで継代した0.4~1.0×105細胞を、960ngフィブロネクチン、50ngラミニン521及び50μl TOM基礎培地と共に、50μl Matrigel及び50μl PBS+/+を含む150μlの液滴に包埋した。液滴を滅菌パラフィルムで覆われた皿上に注意深く堆積させ、37℃で20分間置いて固化させた。10μM ROCK阻害剤(Y27632)を補充した完全TOMをさらに添加して、液滴を覆った。培地を3日毎にTOMで置換した。3D構造は1週間以内に出現し、その後の分析のために14日目に収集した。
【0261】
iTSCd21n及びiTSCd8のインビボ生着アッセイ
プロトコル及びマウスの使用は、2004年のオーストラリアの科学目的のための動物のケア及び使用に関する行動規範、並びにビクトリアの動物虐待防止法及び規制法律に従ったMonash大学動物福祉委員会の承認を得て行われた。80%のコンフルエンシーを有するiTS細胞を、TrypLE express(ThermoFisher)で解離させ、計数した。1000万個のiTS細胞を、Matrigel(Corning)とDMEM/F-12の1:2混合物、0.3% BSA(Sigma)を補充したGlutaMAX(ThermoFisher)、及び1% ITS-Xサプリメント(ThermoFisher)200μlに再懸濁した。次いで、5~20週齢のNOD/SCID IL-2R-γノックアウトマウスの雄及び雌の背側腹部に細胞混合物を皮下注射した(各側腹部に100μl)。マウスを対照とiTS細胞の間で無作為に割り付けたが、研究者は盲検化されなかった。注射の9日後に、尿、血液及び病変を分析のためにマウスから採取した。「妊娠検査及びhCG ELISA」で詳述されているように、hCG分泌の検出及び測定にはマウスの尿及び血清を使用した。採取した病変を4%パラホルムアルデヒド(PFA)(Sigma)で一晩固定し、続いてパラフィンに包埋した。採取した病変の体積は1cm3未満であった。パラフィン包埋組織を切片化し、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で染色するか、又はKRT7、HLA-G及びSDC1の免疫組織化学染色に進んだ。
【0262】
妊娠検査及びhCG ELISA
iTSCを、「インビトロにおけるiTSCd21n及びiTSCd8のST及びEVTへの分化」に詳述されるように、ST分化のために12ウェルプレート上に1mL当たり0.5×105細胞の密度で播種した。ST細胞の培地を4日目に交換し、条件培地を6日目に収集し、-80℃で保存した。対照として、12ウェルプレート上に1mL当たり0.5×105細胞の密度でiTSCを播種し、TSC培地中で培養した。2日後、条件培地を収集し、-80℃で保存した。次いで、市販のhCG妊娠検査スティック(Freedom)を使用して、製造業者の推奨に従って、条件培地を試験した。さらに、hCG ELISAキット(Abnova、ABNOKA4005)を使用して、製造業者の説明書に従って、培地中のhCGレベルも測定した。iTSC生着アッセイ後、収集したマウス尿を市販のhCG妊娠検査スティックを使用して試験し、血清中のhCGレベルをhCG ELISAキットを使用して測定した。
【0263】
フローサイトメトリー分析及び蛍光活性化細胞選別
細胞をTrypLE express(ThermoFisher)で解離させ、2% FBS(Hyclone)及び10μM Y-27632(Abcam)を補充したDPBS(ThermoFisher)を抗体標識工程及びサンプルの最終再懸濁に使用した。HLA実験のために、細胞をHLA-A、B、C(W6/32)又はHLA-Bw4(1:1、Purcell lab)で標識し、次いでAF647ヤギ抗マウスIgG抗体(1:1,000、ThermoFisher)で標識し、又は細胞を(1)HLA-G MEG-G/9(1:500、Abcam);(2)AF488ヤギ抗マウスIgG抗体(1:1,000、ThermoFisher);及び(3)PE-Cy7マウス抗ヒトHLA-A、B、WC、W6/32(1:200、Biolegend)で標識した。
【0264】
ヒトリプログラミング中間体のscRNA-seq
scRNA-seq実験のために、0日目、3日目、7日目、13日目プライミング、13日目ナイーブ、21日目プライミング、21日目ナイーブ、iPSCプライミング(継代3)、及びiPSCナイーブ(継代3)を収集し、凍結保存した。次いで、これらの収集されたサンプルをFACSに供し、0日目、3日目、7日目、13日目プライミング、13日目ナイーブ、21日目プライミング及び21日目ナイーブについてサンプルをPI-TRA-1-85+細胞について選別して、視細胞及びiMEF細胞を除去し、iPSCプライミング(継代3)及びiPS細胞ナイーブ(継代3)サンプルをPI-TRA-1-85+CD13-F11R+TRA-1-60+EPCAM+細胞について選別して、死細胞及びiMEF細胞、並びに分化細胞を除去した。その後のライブラリー調製のために拡張データ
図1cで3つのサンプルを調製し、サンプル1は、0、3及び7日目から単離した細胞を含み、サンプル2及び3は、それぞれ、プライミング13日目、21日目及びiPSC)の細胞と、ナイーブリプログラミング(13日目、21日目及びiPS細胞)を含み、少数の0、3及び7日目の細胞の混合をサンプル2及び3に加えて、完全なリプログラミング軌跡を獲得し、また潜在的なバッチ効果を説明した。収集した細胞を単離し、カプセル化し、Chromium controller(10x Genomics)を製造業者の説明書(Chromium Single Cell 3’ Reagent Kit V2 User Guide,10X Genomics document number CG00052 Revision 33)に従って使用してライブラリーを構築した。合計12回のcDNA増幅サイクルを用いた。合計16サイクルのライブラリー増幅を用いた。配列決定は、10x Genomics Chromium Single Cell 3’ Reagent Kit V2 User Guide (10x Genomics document number CG00052 Revision 3)によって概説される推奨に従って、高出力モードでSBS V2化学を使用して、Illumina NextSeq 500を使用して、第2の読み取りが98bpの代わりに115bpに拡張されたことを除いて実行された。ライブラリーを、製造業者の説明書(NextSeq 500 System User Guide,Illumina document number 15046563 v02)に従って希釈し、1.8pMでロードした。クロムバーコードを多重分離に使用し、FASTQファイルを、Cellrangerプログラム(v.2.1.0)を使用してmkfastqパイプラインから生成した。snRNA-seqに従ってhg19ゲノムに対してアラインメント及びUMI計数を行った(ただし、mRNA前駆体ではなく成熟mRNAを使用し、UMIをエキソンに割り当てた)。
【0265】
21日目の線維芽細胞、ナイーブ及びiTSCd8リプログラミング中間体のscRNA-seq
21日目の線維芽細胞、ナイーブ及びiTSCd8リプログラミング中間体を収集し、PI-TRA-1-85+細胞について選別して、死細胞及びiMEF細胞を除去した。収集した細胞を単離し、カプセル化し、製造業者の説明書(Chromium Next GEM Single Cell 3’ Reagent Kit V3.3 User Guide)に従ってChromium controller (10x Genomics)を使用して構築した。配列決定は、Illumina NovaSeq 6000で、ペアードエンド(R1 28bp及びR2 87bp)配列決定戦略を用いて行い、細胞当たり20,000のリードペアを目指した。クロムバーコードを多重分離に使用し、FASTQファイルを、Cellrangerプログラム(v.3.1.0)を使用してmkfastqパイプラインから生成した。scRNA-seq実験に従ってhg19ゲノムに対してアラインメント及びUMI計数を行った。
【0266】
実施例8:考察
本結果は、体細胞のリプログラミング中に観察される一過性TE状態が多能性培地からTSC増殖を支持する培地(例えば、Okae et al,Cell Stem Cell,2018に記載されるTSC培地)へのリプログラミング中間体の移動を介して捕捉及び安定化され得ることを実証する。注目すべきことに、ヒト栄養膜幹細胞(TSC)は、リプログラミング中に生成された。このように、これは、ヒト体細胞からTSCへの直接的なリプログラミングの最初の報告である。
【0267】
さらなる特徴付けは、本方法に従って生成されたTSCがヒトTE及びTSCを規定する重要なマーカーを発現することを示す(
図3)。これらのTSCは、成長速度を低下させることなく、これまでに30を超える継代を経ている。さらに、インビトロ及びインビボ分化アッセイを用いたTSCの機能的特徴付けにより、TSCはa)合胞体栄養膜(ST)、規定されたSDC1+多核細胞、及びb)HLA-G(胎盤で発現する重要な組織適合分子)のアップレギュレートされた発現により規定される絨毛外栄養膜細胞(EVT)を生じることが実証された。重要なことに、これらのアッセイは、TSCが実際に二分化能であり、ST細胞及びEVT細胞に分化し得ることを実証する。まとめると、これらの結果は、リプログラミング中間体のこれまで決定されていなかった胚外の可能性を明らかにし、細胞運命の特定化は、ナイーブ状態へのヒト体細胞リプログラミングの間、非常に動的で可塑的であることを示唆した。
【0268】
成体細胞から誘導できる安定した自己複製性の真正同質遺伝子ヒトiPSC及びiTSC株を有することは、現代の生化学的及び分子技術が大規模で適用できるインビトロ状況において、ヒト栄養外胚葉、栄養膜発達、多能性細胞とのその関係、並びに初期ヒト胚発生及び発達障害における細胞運命決定に関連する事象の調整におけるその役割を研究するための独特な機会を、全分野に提供するであろう。
【0269】
本明細書に開示及び定義された本発明は、本文若しくは図面に言及され、又は本文若しくは図面から明らかな個々の特徴の2つ以上の代替的な組み合わせの全てに及ぶことが理解されるであろう。これらの異なる組み合わせの全ては、本発明の様々な代替態様を構成する。
【国際調査報告】