(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-20
(54)【発明の名称】グラフェン製造プロセスのための転写材料層
(51)【国際特許分類】
G01N 27/22 20060101AFI20230113BHJP
C01B 32/194 20170101ALI20230113BHJP
【FI】
G01N27/22 Z
C01B32/194
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022528056
(86)(22)【出願日】2020-11-12
(85)【翻訳文提出日】2022-07-12
(86)【国際出願番号】 US2020060144
(87)【国際公開番号】W WO2021097032
(87)【国際公開日】2021-05-20
(32)【優先日】2019-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513112245
【氏名又は名称】リージェンツ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・ミネソタ
【氏名又は名称原語表記】REGENTS OF THE UNIVERSITY OF MINNESOTA
(71)【出願人】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ケスター、スティーブン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ジェン、シュエ
(72)【発明者】
【氏名】ビュールマン、フィリップ ピエール ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】スー、チュン
(72)【発明者】
【氏名】ネルソン、ジャスティン セオドア
(72)【発明者】
【氏名】シャーウッド、グレゴリー ジェイ.
【テーマコード(参考)】
2G060
4G146
【Fターム(参考)】
2G060AF10
2G060AG03
2G060AG11
2G060AG15
2G060BB10
2G060FA05
2G060GA04
2G060JA00
4G146AA01
4G146AB07
4G146CB19
4G146CB35
(57)【要約】
本明細書の実施形態はグラフェン製造プロセスの間に転写材料層をグラフェンへ適用するための方法およびシステムに関する。実施形態では、グラフェンセンサ素子を生成する方法が含まれる。方法は成長基板上にグラフェン層を形成することおよびグラフェン層の上にフルオロポリマーコーティング層を適用することを含む。方法は成長基板を除去することおよび転写基板上へグラフェンおよびフルオロポリマーコーティング層を転写することを含み、グラフェン層は転写基板上に配置され、フルオロポリマー層はグラフェン層上に配置される。方法はまたフルオロポリマーコーティング層を除去することを含む。他の実施形態もまた本明細書に含まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラフェンセンサ素子を生成する方法において、
成長基板上にグラフェン層を形成することと、
前記グラフェン層の上にフルオロポリマーコーティング層を適用することと、
前記成長基板を除去することと、
転写基板上へ前記グラフェンおよびフルオロポリマーコーティング層を転写することとを含み、前記グラフェン層は前記転写基板上に配置され、前記フルオロポリマー層は前記グラフェン層上に配置され、
前記フルオロポリマーコーティング層を除去することを含む方法。
【請求項2】
前記成長基板は銅を含む請求項1および請求項3から請求項10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項3】
前記フルオロポリマーがポリ[4,5-ジフルオロ-2,2-ビス(トリフルオロメチル)-1,3-ジオキソール-コ-テトラフルオロエチレン]、あるいはその誘導体を含む請求項1、請求項2および請求項4から請求項10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
ジオキソールのテトラフルオロエチレンに対するモル比は1:99から99:1である請求項1から請求項3および請求項5から請求項10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記フルオロポリマーは0.1重量%より大きい溶媒中の溶解度を有する請求項1から請求項4および請求項6から請求項10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
フルオロポリマーを適用することはスピンコーティングプロセス、インクジェットプリンティング、スプレーコーティングプロセス、あるいは化学蒸着プロセスを含む請求項1から請求項5および請求項7から請求項10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記成長基板を除去することは塩化第二鉄溶液あるいは過硫酸アンモニウム溶液を適用することを含む請求項1から請求項6および請求項8から請求項10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記フルオロポリマーコーティング層は少なくとも約10ナノメートルの厚みがある請求項1から請求項7、請求項9および請求項10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記フルオロポリマーコーティング層を除去することは、ペルフルオロアルカン、部分フッ素化アルカン、部分フッ素化ハロアルカン、ペルフルオロ単環あるいは多環アルカン、一つ以上のアルキル基が置換されたペルフルオロ単環あるいは多環アルカン、ペルフルオロ芳香族、(ペルフルオロアルキル)ベンゼン、ペルフルオロエーテル、ペルフルオロジエーテル、ペルフルオロトリエーテル、ペルフルオロアルキルアルキルエーテル、ペルフルオロ(トリアルキルアミン)、あるいは二つ以上の前述のいくつかの溶媒の混合物を含む溶媒を適用することを含む請求項1から請求項8および請求項10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記フルオロポリマーコーティング層を除去することは、気体のサンプルを分析するための前記グラフェンセンサ素子の使用の直前に実行される請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
グラフェンセンサ素子を生成する方法において、
成長基板上へグラフェン層を形成することと、
前記グラフェン層を官能基化することと、
前記グラフェン層の上にフルオロポリマーコーティング層を適用することと、
前記成長基板を除去することと、
転写基板上へ前記グラフェンおよびフルオロポリマーコーティング層を転写することと、
前記フルオロポリマーコーティング層を除去することとを含む方法。
【請求項12】
前記成長基板は銅を含む請求項11および請求項13から請求項15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記成長基板を除去することは塩化第二鉄溶液あるいは過硫酸アンモニウム溶液を適用することを含む請求項11、請求項12、請求項14および請求項15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記フルオロポリマーコーティング層を除去する前に、前記グラフェンセンサ素子を滅菌することをさらに含む請求項11から請求項13および請求項15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記フルオロポリマーコーティング層を除去することは、気体のサンプルを分析するための前記グラフェンセンサ素子の使用の直前に実行される請求項11から請求項14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の実施形態はグラフェン製造プロセスの間に転写材料層をグラフェンへ適用するための方法およびシステムに関する。より具体的には、実施形態はグラフェン製造プロセスの間にグラフェンに対する転写材料層としてフルオロポリマーの使用を含む方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
グラフェンは六方格子の状態で炭素原子の単一の層を含む炭素の形態である。グラフェンは、密充填されたsp2混成軌道に起因して、高い強度および安定性を有し、各炭素原子がそれぞれ三つの隣接する炭素原子と一つのシグマ(σ)結合を形成し、六角平面の外へ突出した一つのp軌道を有する。六方格子のp軌道は電子が豊富な分子あるいは電子欠損分子の両方と非共有結合に適したπ結合を形成する。
【0003】
グラフェン製造プロセスの間、グラフェンの単一の層は金属成長基板から異なる基板の上へ転写される。しかし、転写プロセスはグラフェン表面上に望ましくない残留物をもたらし、単一のグラフェン層が転写後に配置される基板に不連続な被覆がもたらされ得る。
【発明の概要】
【0004】
第1態様では、グラフェンセンサ素子を生成する方法が含まれる。前記方法は成長基板上にグラフェン層を形成することと、前記グラフェン層の上にフルオロポリマーコーティング層を適用することと、前記成長基板を除去することと、前記グラフェンおよびフルオロポリマーコーティング層を転写基板上へ転写することとを含み、前記グラフェン層は前記転写基板の上に配置され、前記フルオロポリマー層は前記グラフェン層の上に配置される。前記方法は前記フルオロポリマーコーティング層を除去することを含む。
【0005】
第2態様では、前述のあるいは後述の一つ以上の態様に加えて、あるいはいくつかの態様の代替で、前記成長基板は銅を含む。
【0006】
第3態様では、前述のあるいは後述の一つ以上の態様に加えて、あるいはいくつかの態様の代替で、前記フルオロポリマーがポリ[4,5-ジフルオロ-2,2-ビス(トリフルオロメチル)-1,3-ジオキソール-コ-テトラフルオロエチレン]、あるいはその誘導体を含む。
【0007】
第4態様では、前述のあるいは後述の一つ以上の態様に加えて、あるいはいくつかの態様の代替で、ジオキソールのテトラフルオロエチレンに対するモル比が1:99から99:1である。
【0008】
第5態様では、前述のあるいは後述の一つ以上の態様に加えて、あるいはいくつかの態様の代替で、前記フルオロポリマーがポリ[オキシ(1,1,2,2,3,3-ヘキサフルオロ-1,2-プロパンジイル)]、ポリ[オキシ(1,1,2,2,3,3-ヘキサフルオロ-1,3-プロパンジイル)]、あるいはその誘導体を含む。
【0009】
第6態様では、前述のあるいは後述の一つ以上の態様に加えて、あるいはいくつかの態様の代替で、前記フルオロポリマーは0.1重量%より大きい溶媒への溶解度を有する。
【0010】
第7態様では、前述のあるいは後述の一つ以上の態様に加えて、あるいはいくつかの態様の代替で、フルオロポリマーを適用することはスピンコーティングプロセス、インクジェットプリンティング、スプレーコーティングプロセス、あるいは化学蒸着プロセスを含む。
【0011】
第8態様では、前述のあるいは後述の一つ以上の態様に加えて、あるいはいくつかの態様の代替で、前記成長基板を除去することは塩化第二鉄溶液あるいは過硫酸アンモニウム溶液を適用することを含む。
【0012】
第9態様では、前述のあるいは後述の一つ以上の態様に加えて、あるいはいくつかの態様の代替で、前記フルオロポリマーコーティング層は少なくとも約10nmの厚さを有する。
【0013】
第10態様では、前述のあるいは後述の一つ以上の態様に加えて、あるいはいくつかの態様の代替で、さらに前記フルオロポリマーコーティング層を除去する前に、前記転写基板上に配置された前記グラフェンおよびフルオロポリマーコーティング層を滅菌することを含む。
【0014】
第11態様では、前述のあるいは後述の一つ以上の態様に加えて、あるいはいくつかの態様の代替で、前記フルオロポリマーコーティング層を除去することは、ペルフルオロアルカン、部分フッ素化アルカン、部分フッ素化ハロアルカン、ペルフルオロ単環あるいは多環アルカン、一つ以上のアルキル基が置換されたペルフルオロ単環あるいは多環アルカン、ペルフルオロ芳香族、(ペルフルオロアルキル)ベンゼン、ペルフルオロエーテル、ペルフルオロジエーテル、ペルフルオロトリエーテル、ペルフルオロアルキルアルキルエーテル、ペルフルオロ(トリアルキルアミン)、あるいは前述のいくつかの溶媒の二つ以上の混合物を含む溶媒を適用することを含む。
【0015】
第12態様では、前述のあるいは後述の一つ以上の態様に加えて、あるいはいくつかの態様の代替で、前記フルオロポリマーコーティング層を除去することは、気体のサンプルを分析するための前記グラフェンセンサ素子の使用の直前に実行される。
【0016】
第13態様では、グラフェンセンサ素子を生成する方法が含まれ、その方法は、成長基板上にグラフェン層を形成することと、前記グラフェン層を官能基化することと、前記グラフェン層の上にフルオロポリマーコーティング層を適用することと、前記成長基板を除去することと、転写基板上へ前記グラフェンおよびフルオロポリマーコーティング層を転写することと、前記フルオロポリマーコーティング層を除去することとが含まれる。
【0017】
第14態様では、前述のあるいは後述の一つ以上の態様に加えて、あるいはいくつかの態様の代替で、前記成長基板は銅を含む。
【0018】
第15態様では、前述のあるいは後述の一つ以上の態様に加えて、あるいはいくつかの態様の代替で、前記フルオロポリマーコーティング層は、ペルフルオロポリマーおよびペルフルオロポリエーテルを含む一つ以上のフルオロポリマーを含む。
【0019】
第16態様では、前述のあるいは後述の一つ以上の態様に加えて、あるいはいくつかの態様の代替で、前記フルオロポリマーが、ポリ[4,5-ジフルオロ-2,2-ビス(トリフルオロメチル)-1,3-ジオキソール-コ-テトラフルオロエチレン]、ポリ[オキシ(1,1,2,2,3,3-ヘキサフルオロ-1,2-プロパンジイル)]、ポリ[オキシ(1,1,2,2,3,3-ヘキサフルオロ-1,3-プロパンジイル)]、あるいはその誘導体を含む。
【0020】
第17態様では、前述のあるいは後述の一つ以上の態様に加えて、あるいはいくつかの態様の代替で、前記成長基板を除去することは塩化第二鉄溶液あるいは過硫酸アンモニウム溶液を適用することを含む。
【0021】
第18態様では、前述のあるいは後述の一つ以上の態様に加えて、あるいはいくつかの態様の代替で、さらに前記フルオロポリマーコーティング層を除去する前に、前記グラフェンセンサ素子を滅菌することを含む。
【0022】
第19態様では、前述のあるいは後述の一つ以上の態様に加えて、あるいはいくつかの態様の代替で、前記フルオロポリマーコーティング層を除去することは、ペルフルオロアルカン、部分フッ素化アルカン、部分フッ素化ハロアルカン、ペルフルオロ単環あるいは多環アルカン、一つ以上のアルキル基が置換されたペルフルオロ単環あるいは多環アルカン、ペルフルオロ芳香族、(ペルフルオロアルキル)ベンゼン、ペルフルオロエーテル、ペルフルオロジエーテル、ペルフルオロトリエーテル、ペルフルオロアルキルアルキルエーテル、ペルフルオロ(トリアルキルアミン)、あるいは前述のいくつかの溶媒の二つ以上の混合物を含む溶媒を適用することを含む。
【0023】
第20態様では、前述のあるいは後述の一つ以上の態様に加えて、あるいはいくつかの態様の代替で、前記フルオロポリマーコーティング層を除去することは、気体のサンプルを分析するための前記グラフェンセンサ素子の使用の直前に実行される。
【0024】
本概要は本願の教示のいくつかの概要であり、本主題を排他的あるいは包括的な扱いとする意図はない。さらなる詳細は詳細な説明および添付の特許請求の範囲に見出される。他の態様は以下の詳細な説明を読み、理解しかつその一部分を形成する図面を見ることで当業者にとって明らかであり、そのそれぞれは限定的に解釈されない。本明細書の範囲は添付の特許請求の範囲およびそれらの法的均等物によって規定される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
態様は以下の図面と関連づけることでより完璧に理解し得る。
【
図1】様々な実施形態に従った方法の異なる操作の間のグラフェンアセンブリの模式的な斜視図である。
【
図2】様々な実施形態に従った
図1の2-2’線に沿った方法の異なる操作の間のグラフェンアセンブリの模式的な横断面図である。
【
図3】様々な実施形態に従った方法の異なる操作の間の追加のグラフェンアセンブリの模式的な斜視図である。
【
図4】様々な実施形態に従った
図3の3-3’線に沿った方法の異なる操作の間の追加のグラフェンアセンブリの模式的な横断面図である。
【
図5】様々な実施形態に従ったグラフェンバラクタの模式的な斜視図である。
【
図6】様々な実施形態に従ったグラフェンバラクタの一部の模式的な横断面図である。
【
図7】様々な実施形態に従った複数のグラフェンセンサのキャパシタンスを測定するための電気回路の模式的なブロック図である。
【
図8】様々な実施形態に従ったグラフェン表面の原子間力顕微鏡(AFM)の画像を示す。
【
図9】様々な実施形態に従ったグラフェン表面の原子間力顕微鏡(AFM)の画像を示す。
【
図10】様々な実施形態に従ったグラフェン表面のX線光電子分光法(XPS)の画像を示す。
【
図11】様々な実施形態に従った様々なグラフェン表面の原子間力顕微鏡(AFM)の画像および光学顕微鏡の画像を示す。
【
図12】様々な実施形態に従った様々なグラフェン表面の原子間力顕微鏡(AFM)の画像および光学顕微鏡の画像を示す。
【0026】
実施形態が様々な修正および代替の形を受け入れる余地がある一方、その特定の物は例および図面によって示され、詳細に説明される。しかし、本明細書の範囲は説明された特定の態様に限定されないことは理解されるべきである。対照的に、その意図するところは本明細書の精神および範囲に収まる修正、均等物、および代替品を保護することにある。
【発明を実施するための形態】
【0027】
上記で参照されたように、グラフェンの単一の層は製造プロセスの間、金属成長基板から異なる基板の上へ転写される。いくつかの例では、転写材料の層(あるいは、転写サポート層)は、成長基板が取り除かれグラフェンが異なる基板へ転写される時に、グラフェン層にサポートを提供するために一時的にグラフェンの上へ配置され得る。しかし、転写プロセスはグラフェン表面に転写材料の望ましくない残留物をもたらし、結果として転写後に配置される基板上に、単一のグラフェン層の不連続な被覆がもたらされ得る。
【0028】
しかし、実施形態は特に、グラフェン製造プロセスの間にグラフェンのための転写材料層としてフルオロポリマーコーティング層の使用を含む。ここで用いられるフルオロポリマーはそれらに効果的な溶媒として働く化合物の狭い範囲の観点から見ると優れている。これはグラフェン層あるいはその表面を官能基化するために用いられるいかなる化合物を損傷することなく、正確にかつ完璧にフルオロポリマーの除去を可能にする。結果として、実施形態では、化学蒸着(CVD)あるいは類似の方法によるグラフェンの成長のための転写材料層として特にフルオロポリマー層を使用することで、グラフェン単層は成長基板から異なる基板へ転写される。
【0029】
フルオロポリマー層は製造プロセスの間の保護層と同様に、グラフェン転写プロセスの間に転写材料層として用いられ、かつ、保存用に用いられる。スピンコーティング、インクジェットプリンティング、スプレーコーティングプロセス、プラズマ増強化学蒸着を含む化学蒸着、あるいはグラフェン層上におけるフルオラス溶媒中のフルオロポリマー溶液の成膜の類似する方法は、硬化を伴うことなく直接用いられる均一なフッ化炭素層を生成する。様々な実施形態において、プラズマ蒸着プロセスはフルオロポリマー層形成の前駆体としてヘキサフルオロプロピレン(すなわち、C3F6)の使用を含む。
【0030】
様々な実施形態において転写材料層は可塑化フルオロポリマー層を含むことが理解される。様々な実施形態では、フルオロポリマーはフルオラス可塑剤と混合される。ここでの使用に適したフルオラス可塑剤は一つ以上の直鎖ペルフルオロカーボン、分岐ペルフルオロカーボン、単環ペルフルオロカーボン、多環ペルフルオロカーボン、ペルフルオロエーテル、ペルフルオロポリエーテル、ペルフルオロアミン、およびペルフルオロポリアミン等を含むが限定されない。
【0031】
コーティングされたフルオロポリマー層は、ここでさらに説明される転写基板のように標的基板の上に配置される前に、剥離した損傷の無いグラフェンを保持するために十分な機械的強度および安定性を提供する。転写プロセスは水浴において実行され、グラフェン層の下に閉じ込められた水はスピン乾燥および/あるいはバキュームベークアウトによって取り除かれ、グラフェン層上にフルオロポリマーが残される。
【0032】
保護層として用いられる時、グラフェン層上のフルオロポリマー層は機械的な傷および化学的汚染からグラフェン層を効果的に保護する。フルオロポリマー層は機械的攪拌および加熱の使用あるいは不使用を伴うフルオラス溶媒中における溶解によって取り除かれ得る。除去プロセスはグラフェン表面上に極小の残留物あるいは変形を残す。さらに、フルオロポリマー層のコーティングおよび除去はグラフェン層上の共有結合性あるいは非共有結合性の官能基化にいかなる損傷も与えない。従って、それは既に官能基化されたグラフェンを転写するかつグラフェンの表面官能基の起こり得る化学分解を阻止するために用いられる。
【0033】
さて、
図1を参照すると、グラフェンセンサ素子を生成する方法100の間の、グラフェンアセンブリの模式的な斜視図が様々な実施形態に従って示される。方法100は操作150において、成長基板104上にグラフェン層102を形成することを含む。様々な実施形態では、成長基板104上にグラフェン層102を形成する工程は、以下でさらに議論されるように、化学蒸着プロセスの使用を含む。様々な実施形態では、成長基板104は銅あるいは酸化銅を含む。
【0034】
操作152で方法100は、グラフェン層102の上にフルオロポリマーコーティング層106を適用することを含む。様々な実施形態では、フルオロポリマーコーティング層106は限定されないが、ペルフルオロポリマーおよびペルフルオロポリエーテルを含む一つ以上のフルオロポリマーを含む。様々な実施形態では、ペルフルオロポリマーは非晶質のペルフルオロポリマーを含む。ここでの方法において使用に適したフルオロポリマーはさらに以下で説明される。様々な実施形態では、フルオロポリマーを適用することはスピンコーティングプロセスを含む。他の実施形態では、フルオロポリマーを適用することはインクジェットプリンティング、スプレーコーティングプロセス、プラズマ増強化学蒸着を含む化学蒸着、あるいは類似の成膜方法を含む。様々な実施形態では、プラズマ蒸着プロセスはフルオロポリマー層形成の前駆体としてヘキサフルオロプロピレン(すなわち、C3F6)の使用を含む。
【0035】
操作154で方法100は、成長基板104を除去することを含み、グラフェン層102上に配置されたフルオロポリマーコーティング層106を残すことを含む。様々な実施形態では、成長基板104を除去することは、腐食液を用いて成長基板104をエッチングすることを含む。いくつかの実施形態では、腐食液は限定されないが、過硫酸アンモニウム((NH4)2S2O8)あるいは塩化第二鉄(Fe(III)Cl3)溶液を含む。
【0036】
様々な実施形態では、過硫酸カリウム(K2S2O8)、過硫酸ナトリウム(Na2S2O8)、あるいはMがいくつかの不活性なカウンターイオンである分子式MS2O8を有するいくつかの過硫酸溶液を含む様々な過硫酸塩がここでの使用に適していることは理解される。様々な実施形態では、硫酸第二鉄(Fe(III)2(SO4)3)、硝酸第二鉄((Fe(III)(NO3)3)、あるいはMがいくつかの不活性なカウンターイオンである分子式MFe(III)を有するいくつかの鉄溶液を含む様々な鉄化合物がここでの使用に適していることは理解される。
【0037】
操作156で方法100は、グラフェン層102の上に配置されたフルオロポリマーコーティング層106を有するグラフェン層102を、転写基板108の上に転写することを含む。いくつかの実施形態では、転写基板108はケイ素(Si)あるいは二酸化ケイ素(SiO2)を含むが、他の材料もまたここで考慮される。操作158で方法100は、フルオロポリマーコーティング層106を除去し、転写基板108の表面上に配置されたグラフェン層102を含むグラフェンセンサ素子110を残すことを含む。様々な実施形態では、フルオロポリマーコーティング層を除去する工程は気体のサンプルを分析するためのグラフェンセンサ素子の使用の直前に実行される。様々な実施形態では、方法100はさらにフルオロポリマーコーティング層を除去する工程の前に、操作156で得られるような転写基板上に配置されたグラフェンおよびフルオロポリマーコーティング層を含むグラフェンアセンブリを滅菌することを含む。いくつかの実施形態では、転写基板は以下でより詳細に議論されるように誘電性の材料を含む。
【0038】
様々な実施形態では、フルオロポリマーコーティング層106を除去することは、フルオラス溶媒を用いてフルオロポリマーコーティング層106を溶解することを含む。様々な実施形態では、フルオラス溶媒を用いるフルオロポリマーコーティング層を除去する工程は限定されないが、ペルフルオロアルカン、部分フッ素化アルカン、部分フッ素化ハロアルカン、ペルフルオロ単環あるいは多環アルカン、一つ以上のアルキル基が置換されたペルフルオロ単環あるいは多環アルカン、ペルフルオロ芳香族、(ペルフルオロアルキル)ベンゼン、ペルフルオロエーテル、ペルフルオロジエーテル、ペルフルオロトリエーテル、ペルフルオロアルキルアルキルエーテル、ペルフルオロ(トリアルキルアミン)、あるいは前述のいくつかの溶媒の二つ以上の混合物を含むフルオラス溶媒を適用することを含む。本明細書の方法において使用に適したフルオラス溶媒は以下でさらに議論される。
【0039】
さて、
図2を参照すると、
図1の2-2’線に沿った方法の間のグラフェンアセンブリの模式的な横断面図がここでの様々な実施形態に従って示される。操作150で方法100は、成長基板104上にグラフェン層102を形成することを含む。操作152で方法100は、グラフェン層102の上にフルオロポリマーコーティング層106を適用することを含む。操作154で方法100は、成長基板104を除去し、グラフェン層102上に配置されたフルオロポリマーコーティング層106を残すことを含む。操作156で方法100は、グラフェン層102の上に配置されたフルオロポリマーコーティング層106を有するグラフェン層102を転写基板108の上に転写することを含む。操作158で方法100は、フルオロポリマーコーティング層106を除去して、転写基板108の表面上に配置されたグラフェン層102を含むグラフェンセンサ素子110を残すことを含む。様々な実施形態では、方法100はさらにフルオロポリマーコーティング層を除去する工程の前に、操作156で得られるような転写基板上に配置された、グラフェンおよびフルオロポリマーコーティング層を含むグラフェンアセンブリを滅菌することを含む。
【0040】
さて、
図3を参照すると、グラフェンセンサ素子を生成する方法300の間のグラフェンアセンブリの模式的な斜視図が、ここでの様々な実施形態に従って示される。操作350で方法300は、成長基板104上にグラフェン層102を形成することを含む。様々な実施形態では、成長基板104上のグラフェン層102を形成する工程は、以下でさらに議論されるように化学蒸着プロセスの使用を含む。様々な実施形態では、成長基板104は銅あるいは酸化銅を含む。操作352で方法300は、一つ以上の官能基302によってグラフェン層を官能基化することを含む。ここでの使用に適した様々な官能基は以下でさらに議論される。
【0041】
操作354で方法300は、官能基302によって官能基化されたグラフェン層102の上にフルオロポリマーコーティング層106を適用することを含む。様々な実施形態では、フルオロポリマーコーティング層106は限定されないが、ペルフルオロポリマーおよびペルフルオロポリエーテルを含む一つ以上のフルオロポリマーを含む。様々な実施形態では、ペルフルオロポリマーは非晶質のペルフルオロポリマーを含む。本明細書の方法において使用に適したフルオロポリマーは以下でさらに説明される。様々な実施形態では、フルオロポリマーを適用することはスピンコーティングプロセスを含む。他の実施形態では、フルオロポリマーを適用することはインクジェットプリンティング、スプレーコーティングプロセス、プラズマ増強化学蒸着を含む化学蒸着、および類似の蒸着の方法を含む。様々な実施形態では、プラズマ蒸着プロセスはフルオロポリマー層形成の前駆体として、ヘキサフルオロプロピレン(すなわち、C3F6)の使用を含む。
【0042】
操作356で方法300は、成長基板104を除去し、官能基302によって官能基化されたグラフェン層102上に配置されたフルオロポリマーコーティング層106を残すことを含む。様々な実施形態では、成長基板104を除去することは腐食液を用いて成長基板104をエッチングすることを含む。いくつかの実施形態では、腐食液は限定されないが、過硫酸アンモニウム((NH4)2S2O8)あるいは塩化第二鉄(Fe(III)Cl3)溶液を含む。
【0043】
様々な実施形態では、過硫酸カリウム(K2S2O8)、過硫酸ナトリウム(Na2S2O8)、あるいはMがいくつかの不活性なカウンターイオンである分子式MS2O8を有するいくつかの過硫酸溶液を含む様々な過硫酸塩がここでの使用に適していることは理解される。様々な実施形態では、硫酸第二鉄(Fe(III)2(SO4)3)、硝酸第二鉄((Fe(III)(NO3)3)、あるいはMがいくつかの不活性な対イオンである分子式MFe(III)を有するいくつかの第二鉄溶液を含む様々な鉄化合物がここでの使用に適していることは理解される。
【0044】
操作358で方法300は、グラフェン層102の上に配置されたフルオロポリマーコーティング層106により、官能基302によって官能基化されたグラフェン層102を転写基板108上に転写することを含む。いくつかの実施形態では、転写基板108はケイ素(Si)あるいは二酸化ケイ素(SiO2)を含む。操作360で方法300は、フルオロポリマーコーティング層106を除去し、転写基板108の表面上に配置された官能基302によって官能基化されたグラフェン層102を含む官能基化されたグラフェンセンサ素子310を残すことを含む。様々な実施形態では、フルオロポリマーコーティング層を除去する工程は、気体のサンプルを分析するためのグラフェンセンサ素子を使用する直前に実行される。様々な実施形態では、方法300はさらにフルオロポリマーコーティング層を除去する工程の前に、操作358で得られるように、転写基板上に配置されたフルオロポリマーコーティング層、および、官能基によって官能基化されたグラフェンを含むグラフェンアセンブリを滅菌することを含む。いくつかの実施形態では、転写基板は以下により詳細に議論されるように誘電性の材料を含む。
【0045】
様々な実施形態では、フルオロポリマーコーティング層106を除去することはフルオラス溶媒を用いてフルオロポリマーコーティング層106を溶解することを含む。様々な実施形態では、フルオラス溶媒を用いてフルオロポリマーコーティング層を除去する工程は、限定されないが、ペルフルオロアルカン、部分フッ素化アルカン、部分フッ素化ハロアルカン、ペルフルオロ単環あるいは多環アルカン、一つ以上のアルキル基が置換されたペルフルオロ単環あるいは多環アルカン、ペルフルオロ芳香族、(ペルフルオロアルキル)ベンゼン、ペルフルオロエーテル、ペルフルオロジエーテル、ペルフルオロトリエーテル、ペルフルオロアルキルアルキルエーテル、ペルフルオロ(トリアルキルアミン)、あるいは前述のいくつかの溶媒の二つ以上の混合物を含むフルオラス溶媒を適用することを含む。本明細書の方法において使用に適したフルオラス溶媒は以下でさらに議論される。
【0046】
さて、
図4を参照すると、
図3の4-4’線に沿った方法の間のグラフェンアセンブリの模式的な横断面図がここでの様々な実施形態に従って示される。操作350で方法300は、成長基板104上にグラフェン層102を形成することを含む。操作352で方法300は、一つ以上の官能基302によってグラフェン層を官能基化することを含む。操作354で方法300は、官能基302によって官能基化されたグラフェン層102の上にフルオロポリマーコーティング層106を適用することを含む。操作356で方法300は成長基板104を除去し、官能基302によって官能基化されたグラフェン層102上に配置されたフルオロポリマーコーティング層106を残すことを含む。操作358で方法300は官能基302によって官能基化されたグラフェン層102であって、その上に配置されたフルオロポリマーコーティング層106を有するグラフェン層102を、転写基板108上に転写することを含む。操作360で方法300は、フルオロポリマーコーティング層106を除去し、官能基302によって官能基化されたグラフェン層102を有する官能基化されたグラフェンセンサ素子310を、転写基板108の表面上に配置されたまま残すことを含む。様々な実施形態では、方法300はさらに、フルオロポリマーコーティング層を除去する工程の前に、操作358で得られるように、官能基によって官能基化されたグラフェン、および、転写基板上に配置されたフルオロポリマーコーティング層を含むグラフェンアセンブリを、滅菌することを含む。
【0047】
フルオロポリマー
本明細書の様々な実施形態は、フルオロポリマーコーティング層において使用するための一つ以上のフルオロポリマーを含む。フルオロポリマーについてのさらなる詳細は以下で提供される。しかし、これは単に例として提供されるだけであり、さらなる変更が本明細書で考慮されることが理解される。
【0048】
本明細書のフルオロポリマーコーティング層は限定されないが、ペルフルオロポリマーおよびペルフルオロポリエーテルを含む一つ以上のフルオロポリマーを含む。様々な実施形態では、ペルフルオロポリマーは非晶質のペルフルオロポリマーを含む。ここでの使用に適したフルオロポリマーは様々なフルオラス溶媒に溶解し、その例は以下でさらに説明される。
【0049】
ここでの使用に適したフルオロポリマーはフルオラス溶媒において最小の溶解度が0.05重量%、0.1重量%、0.2重量%、0.3重量%、0.4重量%、0.5重量%、0.6重量%、0.7重量%、0.8重量%、0.9重量%、1.0重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%、あるいは10重量%以上の溶解度を有する。様々な実施形態では、ここでの使用に適したフルオロポリマーの最小の溶解度は10重量%より大きい。様々な実施形態では、ここでの使用に適したフルオロポリマーはフルオラス溶媒中において0.1重量%以上の機能的な溶解度を有する。
【0050】
フルオロポリマーはスピンコーティングプロセスを使用してグラフェン層へ適用される。様々な実施形態では、フルオロポリマーは化学蒸着プロセス、プラズマ活性化学蒸着プロセス、ドロップコーティングプロセス、および化学プリンティングプロセスなどを用いてグラフェン層へ適用される。
【0051】
様々な実施形態では、フルオロポリマーは、回転速度が100毎分回転数(rpm)(100min-1)、200rpm(200min-1)、300rpm(300min-1)、400rpm(400min-1)、500rpm(500min-1)、600rpm(600min-1)、700rpm(700min-1)、800rpm(800min-1)、900rpm(900min-1)、1000rpm(1000min-1)、1100rpm(1100min-1)、1200rpm(1200min-1)、1300rpm(1300min-1)、1400rpm(1400min-1)、1500rpm(1500min-1)、1600rpm(1600min-1)、1700rpm(1700min-1)、1800rpm(1800min-1)、1900rpm(1900min-1)、2000rpm(2000min-1)、2100rpm(2100min-1)、2200rpm(2200min-1)、2300rpm(2300min-1)、2400rpm(2400min-1)、2500rpm(2500min-1)、2600rpm(2600min-1)、2700rpm(2700min-1)、2800rpm(2800min-1)、2900rpm(2900min-1)、あるいは3000rpm(3000min-1)以上であり、あるいは前述のいくつかの間の範囲に収まる速度を含むスピンコーティングプロセスを使用してグラフェン層へ適用される。様々な実施形態では、フルオロポリマーは回転速度が3000rpm(3000min-1)より大きいスピンコーティングプロセスを使用してグラフェン層へ適用される。
【0052】
本明細書のフルオロポリマーは摂氏200℃未満の沸点を有する溶媒を使用するスピンコーティングプロセスを用いて蒸着される。様々な実施形態では、本明細書のフルオロポリマーは摂氏150℃未満の沸点を有する溶媒を使用するスピンコーティングプロセスを用いて蒸着される。さらに他の実施形態では、本明細書のフルオロポリマーは摂氏100℃未満の沸点を有する溶媒を使用するスピンコーティングプロセスを用いて蒸着される。
【0053】
例示的なフルオロポリマーは限定されないが、TEFLON(登録商標)-AF(The Chemours Co.,Wilmington,Delaware,USA),CYTOP(商標)(Asahi Glass Co.,Ltd.,Chiyoda,Tokyo,Japan),Hyflon(商標)AD(Solvay Group,Neder-Over-Heembeek,Brussels,Belgium),and Krytox(商標)(The Chemours Co.,Wilmington,Delaware,USA)を含む。いくつかの例示的なフルオロポリマーの化学構造は以下の表1に示される。さらなるフルオロポリマーはポリ[オキシ(1,1,2,2,3,3-ヘキサフルオロ-1,2-プロパンジイル)]およびポリ[オキシ(1,1,2,2,3,3-ヘキサフルオロ-1,3-プロパンジイル)]、あるいはその誘導体を含む。
【表1】
【0054】
様々な実施形態では、ここでの使用に適したフルオロポリマーはポリ[4,5-ジフルオロ-2,2-ビス(トリフルオロメチル)-1,3-ジオキソール-コ-テトラフルオロエチレン](すなわち、Teflon(登録商標)-AF,The Chemours Co.,Wilmington,Delaware,USA)、あるいはその誘導体のようなフルオロエチレンを含む。適したポリ[4,5-ジフルオロ-2,2-ビス(トリフルオロメチル)-1,3-ジオキソール-コ-テトラフルオロエチレン]はジオキソールのテトラフルオロエチレンへのモル比が1:99から99:1であるものを含む。様々な実施形態では、適したポリ[4,5-ジフルオロ-2,2-ビス(トリフルオロメチル)-1,3-ジオキソール-コ-テトラフルオロエチレン]はジオキソールのテトラフルオロエチレンへのモル比が1:50から50:1であるものを含む。他の実施形態では、適したポリ[4,5-ジフルオロ-2,2-ビス(トリフルオロメチル)-1,3-ジオキソール-コ-テトラフルオロエチレン]はジオキソールのテトラフルオロエチレンへのモル比が1:25から25:1であるものを含む。さらに他の実施形態では、適したポリ[4,5-ジフルオロ-2,2-ビス(トリフルオロメチル)-1,3-ジオキソール-コ-テトラフルオロエチレン]はジオキソールのテトラフルオロエチレンへのモル比が1:5から5:1であるものを含む。
【0055】
フルオロポリマーコーティング層は10ナノメートル(nm)から300nmの厚みを有するものを含む。いくつかの実施形態では、厚みは10nm、20nm、30nm、40nm、50nm、60nm、70nm、80nm、90nm、100nm、110nm、120nm、130nm、140nm、150nm、160nm、170nm、180nm、190nm、200nm、210nm、220nm、230nm、240nm、250nm、260nm、270nm、280nm、290nm、あるいは300nm以上であり、あるいは前述のいくつかの間の範囲に収まる厚さである。様々な実施形態では、フルオロポリマーコーティング層は少なくとも約10ナノメートルの厚さである。様々な実施形態では、フルオロポリマーコーティング層は少なくとも約20ナノメートルの厚さである。様々な実施形態では、フルオロポリマーコーティング層は少なくとも約100ナノメートルの厚さである。様々な実施形態では、フルオロポリマーコーティング層は少なくとも約200ナノメートルの厚さである。
【0056】
フルオラス溶媒
本明細書の様々な実施形態は一つ以上のフルオラス溶媒を含む。フルオラス溶媒についてのさらなる詳細は以下で提供される。ここで使用されるように、用語「フルオラス溶媒」は類似した炭化水素ベースの溶媒において水素原子の代わりに多数のフッ素原子を含有する溶媒を参照する。しかし、これは単に例として提供されるだけであり、さらなる変更がここで考慮されることが理解される。
【0057】
本明細書の溶媒はペルフルオロアルカン、部分フッ素化アルカン、部分フッ素化ハロアルカン、ペルフルオロ単環あるいは多環アルカン、一つ以上のアルキル基が置換されたペルフルオロ単環あるいは多環アルカン、ペルフルオロ芳香族、(ペルフルオロアルキル)ベンゼン、ペルフルオロエーテル、ペルフルオロジエーテル、ペルフルオロトリエーテル、ペルフルオロアルキルアルキルエーテル、ペルフルオロ(トリアルキルアミン)、あるいは前述のいくつかの溶媒の二つ以上の混合物を含むグループから選ばれるものを含む。
【0058】
溶媒は具体的にペルフルオロヘキサン、ペルフルオロヘプタン、ペルフルオロオクタン(また、PF5080(商標),3M,Maplewood,MN,USAと呼ばれる)ペルフルオロナン(perfluoronane)を含む様々な直鎖および分岐ペルフルオロアルカン、2H,3H-デカフルオロペンタンおよび1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンのような様々な直鎖、分岐および環状の部分フッ素化アルカン、1,1-ジクロロ-2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロパンのような様々な直鎖、分岐および環状の部分フッ素化ハロアルカン、様々なペルフルオロ単環あるいは多環アルカン、およびペルフルオロシクロヘキサン、オクタデカフルオロデカハイドロナフタレン、ペルフルオロ(メチルシクロヘキサン)、ペルフルオロ(ジメチルシクロヘキサン)、およびペルフルオロ(メチルデカリン)のような一つ以上のアルキル基が置換されたペルフルオロ単環あるいは多環アルカン、ヘキサフルオロベンゼンのような様々なペルフルオロ芳香族、トリフルオロメチルベンゼン(また、トリフルオロトルエンと呼ばれる)のような様々な(ペルフルオロアルキル)ベンゼン、ペルフルオロ(ジエチルエーテル)のような様々なペルフルオロエーテル、ペルフルオロジエーテル、およびペルフルオロトリエーテル、並びにペルフルオロ(ジイソプロピルエーテル)のような一つ以上の分岐点を有する化合物、ノナフルオロブチルメチルエーテルおよびノナフルオロブチルエチルエーテルのような様々なペルフルオロアルキルアルキルエーテル、およびペルフルオロ(2-メチルプロピル)メチルエーテルのような、ペルフルオロアルキルあるいはアルキル置換基のいずれか一方あるいは両方が分岐しているペルフルオロアルキルアルキルエーテル、ペルフルオロ(トリブチルアミン)のようなペルフルオロ(トリアルキルアミン)、あるいはこれらの溶媒のいくつかの二つ以上の混合物を含む。様々な実施形態では、溶媒はNovec(商標)7100 Engineered Fluid(3M,Maplewood,MN,USA)を含む。様々な実施形態では、いくつかの例示的なフルオラス溶媒はC2からC10のフルオラス溶媒を含む。
【0059】
例示的なフルオラス溶媒およびそれらの化学構造は表2において以下に記載される。
【表2-1】
【表2-2】
【0060】
フルオラス溶媒は摂氏200℃未満の沸点を有するものを含む。いくつかの実施形態では、フルオラス溶媒は摂氏150℃未満の沸点を有するものを含む。他の実施形態では、フルオラス溶媒は摂氏100℃未満の沸点を有するものを含む。いくつかの実施形態では、沸点は250℃、240℃、230℃、220℃、210℃、200℃、190℃、180℃、170℃、160℃、150℃、140℃、130℃、120℃、110℃、100℃、90℃、80℃、70℃、60℃、あるいは50℃以下であり、あるいは前述のいくつかの間の範囲に収まる温度である。
【0061】
グラフェンセンサ素子
本明細書の様々な実施形態はグラフェンセンサ素子を含む。グラフェンセンサ素子についてのさらなる詳細は以下で提供される。しかし、これは単に例として提供されるだけであり、さらなる変更がここで考慮されることが理解される。
【0062】
グラフェンセンサ素子はグラフェン層およびグラフェン層上のフルオロポリマーコーティング層を有するものに含まれる。様々な実施形態では、本明細書のグラフェンセンサ素子はグラフェンベースの様々な可変コンデンサ(あるいは、グラフェンバラクタ)を含む。しかし、いくつかの実施形態では、本明細書のグラフェンセンサ素子はボロフェンのような他の材料とともに形成される。さて、
図5を参照すると、グラフェンバラクタ500の模式図が本明細書の実施形態に従って示される。グラフェンバラクタは様々な配置を伴う様々な方法において作られ、
図5に示すグラフェンバラクタは本明細書の実施形態に従った唯の一例であることが理解される。
【0063】
各グラフェンバラクタ500は絶縁層502、ゲート電極504(あるいは、ゲートコンタクト)、誘電層(
図5に図示無し)、グラフェン層508aおよび508bのような一つ以上のグラフェン層、およびコンタクト電極510(あるいは、「グラフェンコンタクト」)を含む。いくつかの実施形態では、グラフェン層(複数)508a-bは隣接しており、一方、他の実施形態では、グラフェン層(複数)508a-bは隣接していない。ゲート電極504は絶縁層502に形成された一つ以上の窪み内に蒸着される。絶縁層502は二酸化ケイ素などの絶縁材料から形成され、シリコン基板(ウェハ)上等に形成される。ゲート電極504はクロム、銅、金、銀、タングステン、アルミニウム、チタン、パラジウム、プラチナ、イリジウム、ニッケル、およびそれらのいくつかの組み合わせあるいは合金のような電気伝導性の材料によって形成され、絶縁層502の上に蒸着され、あるいは中に埋め込まれる。誘電層は絶縁層502およびゲート電極504の表面上に配置される。グラフェン層(複数)508a-bは誘電層上に配置される。誘電層は
図6を参照して以下により詳細に議論される。
【0064】
各グラフェンバラクタ500は八つのゲート電極フィンガー506a-506hを含む。グラフェンバラクタ500が八つのゲート電極フィンガー506a-506hを示す一方、いくつものゲート電極フィンガー構造が考慮されることは理解される。いくつかの実施形態では、一つのグラフェンバラクタは八つのゲート電極フィンガーより少ないものを含む。いくつかの実施形態では、一つのグラフェンバラクタは八つのゲート電極フィンガーより多いものを含む。他の実施形態では、一つのグラフェンバラクタは二つのゲート電極フィンガーを含む。いくつかの実施形態では、一つのグラフェンバラクタは1,2,3,4,5,6,7,8,9,10、あるいはそれ以上のゲート電極フィンガーを含む。
【0065】
各グラフェンバラクタ500はグラフェン層508aおよび508bの一部の上に配置された一つ以上のコンタクト電極510を含む。コンタクト電極510はクロム、銅、金、銀、タングステン、アルミニウム、チタン、パラジウム、プラチナ、イリジウム、ニッケル、およびそれらのいくつかの組み合わせあるいは合金のような電気伝導性の材料から形成される。例示的なグラフェンバラクタのさらなる態様は米国特許第9,513,244号に見出され、その内容は全て参照によって本明細書に組み込まれる。
【0066】
さて、
図6を参照すると、グラフェンバラクタ600の一部の模式的な横断面図が本明細書の様々な実施形態に従って示される。グラフェンバラクタ600は絶縁層602および絶縁層602内に埋め込まれたゲート電極604を含む。ゲート電極604は
図5を参照して上述されたように、電気伝導性材料を絶縁層602の窪みに蒸着することによって形成される。誘電層606は絶縁層602およびゲート電極604の表面上に形成される。本明細書の他の部分で議論されたように、誘電層606は転写基板を含む。いくつかの例では、誘電層606は二酸化ケイ素、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化ハフニウム、酸化ハフニウム、二酸化ジルコニウム、酸化ジルコニウム、ケイ酸ハフニウム、あるいはケイ酸ジルコニウムのような材料で形成される。
【0067】
グラフェンバラクタ600は誘電層606の表面上に配置された一つのグラフェン層608を含む。グラフェン層608は修飾層610を用いて表面が修飾される。様々な実施形態では、修飾層は以下でさらに議論されるように、一つ以上の官能基を含む。いくつかの実施形態では、グラフェン層608は表面が修飾されないことは理解される。
【0068】
ここで説明したように、グラフェンバラクタの使用の間、全ての気体測定システムの励起電圧で実行されるスイープがディラック点(キャパシタンスが最小の時の電圧)に関するデータを提供する。検査対象がグラフェンバラクタによって識別された時、ディラック点の電圧はより高い値あるいはより低い値に変化する。カーブの形もまた変化する。スイープカーブにおける変化は、検査対象/受容体相互作用に対するグラフェンバラクタの応答に起因する識別特徴として用いられる。電圧スイープの間にファーストサンプリングシステムを用いると、動的な情報が提供される。結果として、完全な応答が安定した状態で測定され、安定した状態(動的な情報)になるまでどの程度かかるのかに関するデータを提供する。
【0069】
ここで説明された気体識別システムはグラフェンバラクタからの信号を生成するための電気回路を含む。そのような電気回路は能動的および受動的な識別回路を含む。そのような電気回路は有線(直接電気が接する)あるいは無線識別技術を用いて実行する。
【0070】
さて、
図7を参照すると、本明細書の別の実施形態に従った複数のグラフェンセンサ素子のキャパシタンスを測定するための電気回路の模式図が示される。電気回路はマルチプレクサ704との電気的に通信するキャパシタンス-デジタルコンバータ(CDC)702を含む。マルチプレクサ704は複数のグラフェンバラクタ706に選択的な電気通信を提供する。グラフェンバラクタ706の他方への接続はスイッチ752によって制御され(CDCによって制御されるように)、第1デジタル-アナログコンバータ(DAC)754および第2デジタル-アナログコンバータ(DAC)756との選択的な電気通信を提供する。DAC754、DAC756の他側はバス装置710に接続され、あるいはいくつかの場合にCDC702に接続される。いくつかの実施形態では、バス装置710はマイクロコントローラ712あるいは他のコンピュータの装置と相互に接続される。
【0071】
この場合では、CDCからの励起シグナルは二つのプログラム可能なデジタル-アナログコンバータ(DACs)の出力電圧の間の切り替えを制御する。二つのDACの間のプログラムされた電位差は励起振幅を決定し、測定に対して付加的なプログラム可能なスケールファクタを提供し、かつCDCによって特定されるより広い範囲のキャパシタンスの測定を可能にする。キャパシタンスが測定されるバイアス電圧は、CDC入力のバイアス電圧(マルチプレクサにより、通常VCC/2に等しく、VCCは供給電圧である)とプログラム可能なされた励起信号の平均電圧との間の差に等しい。いくつかの実施形態では、バッファ振幅器および/あるいはバイパスキャパシタンスは切り替えの間、安定した電圧を維持するためにDAC出力で用いられる。DCバイアス電圧の多くの異なる範囲が用いられる。いくつかの実施形態では、DCバイアス電圧の範囲は-3Vから3V、あるいは-1Vから1V、あるいは-0.5Vから0.5Vであり得る。例示的な識別電気回路のさらなる態様は米国特許出願公開第2019/0025237号において提供され、その内容の全てが本明細書に参照によって組み込まれる。
【0072】
官能基化グループ
本明細書の様々な実施形態は説明されたグラフェン層上に配置された官能基化グループを含む。例示的な官能基化グループについてのさらなる詳細が以下に提供される。しかしこれは単に例として提供されるだけであり、さらなる変更がここで考慮されることを理解されよう。
【0073】
ここで説明されるグラフェンセンサ素子はグラフェン層がグラフェンと例えばピレン、ピレン誘導体、およびアリール基を有する他の化合物のようなπ-電子豊富分子との間で非共有π-π相互作用によって修飾された表面であるものを含む。ここで説明されるグラフェンセンサ素子は代わりにグラフェン層がグラフェンとC1-C20アルキル鎖を含む分子あるいは複数のC1-C20アルキル基を含む分子との間で非共有静電相互作用によって修飾された表面であるものを含む。さらなる官能基化グループは、米国特許出願公開第2019/0257825A1号、米国特許出願第16/393,177号、および米国特許出願第62/889,387号に提供されるようにここでの使用に適しており、内容が全て参照によって本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、ここで説明されるグラフェンセンサ素子はグラフェン層が官能基化グループと共有結合によって修飾された表面であるものを含む。
【0074】
態様は以下の実施例を参照してより理解される。これらの実施例は特定の実施形態の代表例を意図し、本明細書の実施形態の全ての範囲を限定するという意図はない。
【0075】
実施例
実施例1:グラフェンのポリメチルメタクリレート転写
グラフェン単層は銅基板層の表面上に配置された単層のグラフェン層を含むグラフェンアセンブリをもたらすために銅基板上で成長させられた。ポリメチルメタクリレート(PMMA)ポリマー層はグラフェン層の表面上にスピンコーティングされ、銅基板層は過硫酸アンモニウム腐食液を用いて取り除かれた。グラフェン層は次に二酸化ケイ素基板に転写され、PMMAが磁気攪拌棒を用いた500rpm(500min-1)の攪拌下において40℃で48時間にわたって強い溶媒によって溶解され、二酸化ケイ素基板上に配置されたグラフェン層を残した。
【0076】
原子間力顕微鏡の撮影は官能基化を伴わないPMMA転写グラフェンの表面の表面粗さを検出するために実行された。官能基化を伴わないPMMA転写グラフェンのAFM撮影の結果は
図8に示される。AFM撮影は表面の寸法を測定し、かつ処理および調整に起因する表面粗さを検出する。表面の平均平面からの表面高さの偏差のひとつの測定方法は二乗平均平方根(RMS)である。官能基化を伴わないPMMA転写グラフェン層は4ミクロン(μm)の倍率で802に示される。画像はグラフェン層の表面上に完全なままで残っているPMMA残留物の様々な領域(明るい点および/あるいは線で示される)を有し、かつ3.130nmの二乗平均平方根(RMS)を有するPMMA転写グラフェン層を示す。官能基化を伴わない別のPMMA転写グラフェン層は500ナノメータ(nm)の倍率で804に示され、グラフェン層の表面上に完全なままで残っている残留物の様々な領域を有し、かつ1.571nmのRMSを有する。
【0077】
実施例2:グラフェンのフルオロポリマー転写
グラフェン単層は銅基板層の表面上に配置された単層のグラフェン層を含むグラフェンアセンブリをもたらすために銅基板上で成長させられた。Teflon(登録商標)AF 1600の1重量%の溶液はPF5080(商標)溶媒において調製された。溶液はグラフェン層の表面上にスピンコーティングされて、Teflon(登録商標)AF 1600の層を生成し、溶媒は蒸発された。銅基板層は塩化第二鉄腐食液を用いて取り除かれた。次にグラフェン層の上に配置されたTeflon(登録商標)AF 1600を有するグラフェン層は、二酸化ケイ素基板へ転写された。Teflon(登録商標)AF 1600層はフルオラス溶媒Novec(商標)7100の溶液槽に磁気攪拌棒を用いた500rpm(500min-1)の攪拌下において40℃で48時間にわたって浸漬された。Novec(商標)7100は12時間毎に取り換えられた。Novec(商標)7100はTeflon(登録商標)AF 1600層を溶解し、二酸化ケイ素基板上に配置されたグラフェン層を残した。
【0078】
原子間力顕微鏡による撮影は官能基化を伴わないフルオロポリマー転写グラフェンの表面の粗さを検出するために実行された。官能基化を伴わないTeflon(登録商標)AF 1600転写グラフェンのAFM撮影の結果は
図9に示される。官能基化を伴わないTeflon(登録商標)AF 1600転写グラフェン層は5μmの倍率で902にて示される。画像はグラフェン層の表面上に完全なままで残っているフルオロポリマー(FP)残留物の様々な領域(明るい点および/あるいは線で示される)を有し、かつ1.398nmの二乗平均平方根(RMS)を有するTeflon(登録商標)AF 1600転写グラフェンを示す。官能基化を伴わない別のTeflon(登録商標)AF 1600転写グラフェン層は400nmの倍率で904にて示され、グラフェン層の表面上に完全なままで残っている残留物の様々な小さな領域を有し、かつ1.284nmのRMSを有する。このように、フルオラス溶媒を用いたフルオロポリマー転写プロセスは先に説明されたPMMA転写プロセスよりも優れ、具体的には、残っている残留物が大幅に減少した。
【0079】
実施例3:ピレン-CH2COOCH3によって官能基化されたグラフェンのフルオロポリマー転写
グラフェン単層は銅基板層の表面上に配置された単層のグラフェン層を含むグラフェンアセンブリをもたらすために銅基板上で成長させられた。グラフェン層はπ豊富分子ピレン-CH2COOCH3(pyr-CH2COOCH3)によって官能基化された。フルオロポリマー層はグラフェン層上にスピンコーティングされ、銅基板層は塩化第二鉄腐食液を用いて取り除かれた。グラフェン層は次に二酸化ケイ素基板に転写され、フルオロポリマーは磁気攪拌棒を用いた500rpm(500min-1)の攪拌下において40℃で48時間にわたってフルオラス溶媒に溶解され、二酸化ケイ素基板上に配置されたグラフェン層を残した。
【0080】
原子間力顕微鏡による撮影はpyr-CH
2COOCH
3によって官能基化されたフルオロポリマー転写グラフェンの表面の表面粗さを検出するために実行された。pyr-CH
2COOCH
3によって官能基化されたフルオロポリマー転写グラフェンのAFM撮影の結果は
図10に示される。pyr-CH
2COOCH
3によって官能基化されたフルオロポリマー転写グラフェン層は5μmの倍率で1002にて示される。画像はグラフェン層の表面上に完全なままで残っているFP残留物の様々な領域(明るい点および/あるいは線で示される)を有し、かつ1.186nmの二乗平均平方根(RMS)を有する、pyr-CH
2COOCH
3によって官能基化されたフルオロポリマー転写グラフェンを示す。官能基化を伴わない、pyr-CH
2COOCH
3によって官能基化された別のフルオロポリマー転写グラフェンはグラフェン層の表面上に完全に残っているフルオロポリマー残留物の様々な小さな領域を有し、かつ497.8ピコメートル(pm)のRMSを有し、400nmの倍率で1004にて示される。このように、フルオラス溶媒によるフルオロポリマー転写プロセスは上述したPMMA転写プロセスよりも優れ、具体的には残っている残留物が大幅に減少した。
【0081】
実施例4:PMMAおよび様々な腐食液を用いた官能基化されていないグラフェンの転写比較
単一のグラフェン単層は複数の銅基板上で成長させられた。ポリメチルメタクリレート(PMMA)ポリマー層は各グラフェン層の表面上にスピンコーティングされ、銅基板層は過硫酸アンモニウムあるいは塩化第二鉄のいずれか一方を用いて取り除かれた。次に各グラフェン層は別の二酸化ケイ素基板へ転写された。PMMAは強い溶媒を用いて溶解され、PMMA層の溶解により二酸化ケイ素基板上に配置された官能基化されていないグラフェン層が残された。
【0082】
原子間力顕微鏡による撮影および光学的撮影はPMMA転写グラフェン(官能基化されていない)の表面の表面粗さを検出するために実行された。PMMA転写グラフェン(官能基化されていない)のAFM撮影および光学的撮影の結果は
図11に示される。銅基板が過硫酸アンモニウムを用いて取り除かれているPMMA転写グラフェン(官能基化されていない)は1102(500nm倍率のAFM画像、RMSは1.517nm)および1104(50μm倍率の光学顕微鏡画像)にて示される。AFMおよび光学画像は光学顕微鏡画像1104に見られるようにグラフェンの表面上にPMMA残留物1110のいくつかの領域を明らかにする。銅基板が塩化第二鉄を用いて取り除かれているPMMA転写グラフェン(官能基化されていない)は1106(400nm倍率のAFM画像、RMSは2.803nm)および1108(50μm倍率の光学顕微鏡画像)にて示される。AFMおよび光学画像は1108に見られるようにグラフェンの表面上にPMMA残留物の著しく大きい領域1110を明らかにする。いかなる特定の理論にも縛られることを望まないが、過硫酸アンモニウムと比較すると、塩化第二鉄溶媒がPMMAの架橋を増加し、結果としてPMMA転写グラフェン層の表面上に残る残留物の量を増加させると考えられる。
【0083】
実施例5:フルオロポリマーを用いた非官能基化グラフェンおよびPyr-CH2COOCH3官能基化グラフェンの転写
一つのグラフェン単層は複数の銅基板上で成長させられた。グラフェン単層の半分はPyr-CH2COOCH3によって官能基化された。フルオロポリマー層は各グラフェン層の表面上にスピンコーティングされ、銅基板層は塩化第二鉄を用いて取り除かれた。次に各グラフェン層は別の二酸化ケイ素基板へ転写された。フルオロポリマーは磁気攪拌棒を用いた500rpm(500min-1)の攪拌下において40℃で48時間にわたってフルオラス溶媒を用いて溶解され、フルオロポリマー層の溶解により、二酸化ケイ素基板上に配置されたグラフェン層が残された。
【0084】
原子間力顕微鏡による撮影および光学的撮影はPyr-CH
2COOCH
3によって官能基化されていないあるいは官能基化されたフルオロポリマー転写グラフェンの表面の表面粗さを検出するために実行された。Pyr-CH
2COOCH
3によって官能基化されていないフルオロポリマー転写グラフェンあるいは官能基化されたフルオロポリマー転写グラフェンのAFM撮影および光学的撮影の結果は
図12に示される。官能基化されておらず、銅基板が塩化第二鉄によって取り除かれているフルオロポリマー転写グラフェンは1202(400nm倍率のAFM画像、RMSは1.284nm)および1204(50μm倍率の光学顕微鏡画像)にて示される。官能基化されていないフルオロポリマー転写グラフェンのAFMおよび光学画像はグラフェンの表面上にグラフェン層の表面上に残留物1210のいくつかの領域(明るい点および/あるいは線で示される)を明らかにする。Pyr-CH
2COOCH
3によって官能基化され、銅基板が塩化第二鉄を用いて取り除かれているフルオロポリマー転写グラフェンは1206(400nm倍率のAFM画像、RMSは497.8ピコメートル(pm))、および1208(50μm倍率の光学顕微鏡画像)にて示される。Pyr-CH
2COOCH
3によって官能基化されたフルオロポリマー転写グラフェンのAFMおよび光学画像はグラフェンの表面上に残留物1210の領域がほとんどないことを明らかにする。このように、フルオラス溶媒を用いたフルオロポリマー転写プロセスは上述したPMMA転写プロセスよりも優れ、具体的には残っている残留物が大幅に減少した。
【0085】
本明細書および添付の特許請求の範囲において用いられる場合、内容が明確に指示されなければ、単数形「a」、「an」および「the」が複数の指示対象を含むことは注意されたい。例えば「a compound(化合物)」を含有する組成物に言及するとき、二つ以上の化合物の混合物を含む。また、用語「あるいは」は内容が明確に指示されなければ、一般的に「および/あるいは」を含む意味として用いられることは注意されたい。
【0086】
また、本明細書および添付の特許請求の範囲に用いられる場合、「構成される」という句は、特定の役割を実行する、あるいは特定の構成を採用するために組み立てられあるいは構成されるシステム、装置あるいは他の構造を説明することに注意されたい。「構成される」という句は配置および構成、組み立ておよび配置、組み立て、製造および配置などのような他の類似する表現と同義で用いられる。
【0087】
本明細書において全ての公開文献および特許出願は本発明に関する技術分野における一般的な技術水準を示している。個々の公開文献あるいは特許出願が具体的かつ個別に参照によって示された場合と同程度まで、全ての公開文献および特許出願は本明細書に参照によって組み込まれる。
【0088】
ここで用いられる場合、端点による数字の範囲の列挙はその範囲内に属する全ての数字を含む(例えば、2から8は2.1,2.8,5.3,7などを含む)。
【0089】
ここで用いられる見出しは、米国特許法施行規則第1.77条に従った提案あるいは他の場合に構成的な手がかりを提供するために一貫して提供される。これらの見出しは本開示から発表し得るいくつかの特許請求の範囲に規定されている発明(複数)を限定するため、あるいは特徴付けるために評価されてはならない。例として、見出しが「分野」を参照するが、そのような特許請求の範囲はいわゆる技術分野を説明するためにこの見出しに従って選ばれた言葉によって限定されるべきではない。さらに「背景」において技術の説明は、技術が本開示におけるいくつかの発明(複数)への先行技術であることを認めない。いずれも発行された特許請求の範囲に記載の発明(複数)の特徴として考慮される「概要」ではない。
【0090】
ここで説明される実施形態は、包括的であり、あるいは以下の詳細な説明に開示された正確な形式に発明を限定するという意図はない。むしろ、実施形態は他の当業者が原理および方法を評価し、かつ理解できるように選ばれ、かつ説明される。そのように、態様は様々な特定のかつ望ましい実施形態および技術を参照するとともに説明される。しかし、本明細書の主旨および範囲内にある間、多くの変更および修正がなされ得ることは理解されるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2022-07-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラフェンセンサ素子を生成する方法において、
成長基板上にグラフェン層を形成することと、
前記グラフェン層の上にフルオロポリマーコーティング層を適用することと、
前記成長基板を除去することと、
転写基板上へ前記グラフェンおよびフルオロポリマーコーティング層を転写することとを含み、前記グラフェン層は前記転写基板上に配置され、前記フルオロポリマー層は前記グラフェン層上に配置され、
前記フルオロポリマーコーティング層を除去することを含む方法。
【請求項2】
前記成長基板は銅を含む請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記フルオロポリマーがポリ[4,5-ジフルオロ-2,2-ビス(トリフルオロメチル)-1,3-ジオキソール-コ-テトラフルオロエチレン]、あるいはその誘導体を含む請求項1
あるいは請求項
2に記載の方法。
【請求項4】
ジオキソールのテトラフルオロエチレンに対するモル比は1:99から99:1である請求項1から請求項
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記フルオロポリマーは0.1重量%より大きい溶媒中の溶解度を有する請求項1から請求項
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
フルオロポリマーを適用することはスピンコーティングプロセス、インクジェットプリンティング、スプレーコーティングプロセス、あるいは化学蒸着プロセスを含む請求項1から請求項
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記成長基板を除去することは塩化第二鉄溶液あるいは過硫酸アンモニウム溶液を適用することを含む請求項1から請求項
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記フルオロポリマーコーティング層は少なくと
も10ナノメートルの厚みがある請求項1から請求項
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記フルオロポリマーコーティング層を除去することは、ペルフルオロアルカン、部分フッ素化アルカン、部分フッ素化ハロアルカン、ペルフルオロ単環あるいは多環アルカン、一つ以上のアルキル基が置換されたペルフルオロ単環あるいは多環アルカン、ペルフルオロ芳香族、(ペルフルオロアルキル)ベンゼン、ペルフルオロエーテル、ペルフルオロジエーテル、ペルフルオロトリエーテル、ペルフルオロアルキルアルキルエーテル、ペルフルオロ(トリアルキルアミン)、あるいは二つ以上の前述のいくつかの溶媒の混合物を含む溶媒を適用することを含む請求項1から請求項
8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記フルオロポリマーコーティング層を除去することは、気体のサンプルを分析するための前記グラフェンセンサ素子の使用の直前に実行される請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
グラフェンセンサ素子を生成する方法において、
成長基板上へグラフェン層を形成することと、
前記グラフェン層を官能基化することと、
前記グラフェン層の上にフルオロポリマーコーティング層を適用することと、
前記成長基板を除去することと、
転写基板上へ前記グラフェンおよびフルオロポリマーコーティング層を転写することと、
前記フルオロポリマーコーティング層を除去することとを含む方法。
【請求項12】
前記成長基板は銅を含む請求項1
1に記載の方法。
【請求項13】
前記成長基板を除去することは塩化第二鉄溶液あるいは過硫酸アンモニウム溶液を適用することを含む請求項11
あるいは請求項1
2に記載の方法。
【請求項14】
前記フルオロポリマーコーティング層を除去する前に、前記グラフェンセンサ素子を滅菌することをさらに含む請求項11から請求項1
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記フルオロポリマーコーティング層を除去することは、気体のサンプルを分析するための前記グラフェンセンサ素子の使用の直前に実行される請求項11から請求項14のいずれか一項に記載の方法。
【国際調査報告】