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特表2023-502099コドン最適化された新世代の調節可能な融合性腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス1型ウイルスおよび使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-20
(54)【発明の名称】コドン最適化された新世代の調節可能な融合性腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス1型ウイルスおよび使用方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/869 20060101AFI20230113BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20230113BHJP
   C12N 15/31 20060101ALI20230113BHJP
   C12N 15/19 20060101ALI20230113BHJP
   C12N 15/38 20060101ALI20230113BHJP
   C12N 15/26 20060101ALI20230113BHJP
   C12N 15/24 20060101ALI20230113BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20230113BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20230113BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20230113BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230113BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230113BHJP
   C07K 14/495 20060101ALI20230113BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230113BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20230113BHJP
   A61K 35/763 20150101ALI20230113BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20230113BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230113BHJP
   A61K 38/20 20060101ALI20230113BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230113BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20230113BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
C12N15/869 Z
C12N7/01 ZNA
C12N15/31
C12N15/19
C12N15/38
C12N15/26
C12N15/24
C12N15/13
C12N15/12
C12N15/62 Z
C07K19/00
C12N15/63 Z
C07K14/495
C12N5/10
C12N5/0783
A61K35/763
A61P35/04
A61P35/00
A61K38/20
A61K48/00
A61K38/16
A61K39/395 D
A61K39/395 N
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022528593
(86)(22)【出願日】2020-11-13
(85)【翻訳文提出日】2022-07-08
(86)【国際出願番号】 US2020060372
(87)【国際公開番号】W WO2021101796
(87)【国際公開日】2021-05-27
(31)【優先権主張番号】62/936,776
(32)【優先日】2019-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503146324
【氏名又は名称】ザ ブリガム アンド ウィメンズ ホスピタル インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】The Brigham and Women’s Hospital, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ヤオ フェン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AA92X
4B065AA92Y
4B065AA94X
4B065AA94Y
4B065AA95X
4B065AA95Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA26
4B065CA44
4C084AA02
4C084AA13
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA23
4C084DA12
4C084DA14
4C084DA46
4C084NA14
4C084ZB26
4C085AA13
4C085BB11
4C085EE01
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB65
4C087BC83
4C087CA12
4C087NA14
4C087ZB26
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA03
4H045CA40
4H045DA01
4H045DA02
4H045DA04
4H045DA50
4H045DA51
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
【書約】従来の療法に抵抗性である悪性腫瘍は、重大な治療上の課題である。本発明の態様は、標的細胞、例えば腫瘍細胞の選択的死滅においてより効果的である、コドン最適化された新世代の調節可能な融合性腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス-1を提供する。本明細書において提示される様々な態様において、本明細書において記載される腫瘍溶解性ウイルスは、固形腫瘍および他の癌の処置に適している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組換えDNAを含む腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス(HSV)であって、
該組換えDNAが、
(g) 5’非翻訳領域と、TATA要素を含むVP5プロモーターに機能的に連結されているHSV-1またはHSV-2のVP5遺伝子とを含む、遺伝子;
(h) TATA要素に対して3’の、6~24ヌクレオチドの間に位置するテトラサイクリンオペレーター配列であって、VP5遺伝子がテトラサイクリンオペレーター配列に対して3’にある、テトラサイクリンオペレーター配列;
(i) HSV最初期プロモーターに機能的に連結されているテトラサイクリンリプレッサーをコードし、ICP0遺伝子座に位置する、遺伝子配列;
(j) 野生型と比較してシンシチウム形成を増大させる変異体遺伝子であって、HSV-1またはHSV-2の変異体遺伝子が、糖タンパク質K(gK)変異体、糖タンパク質B(gB)変異体、UL24変異体、およびUL20遺伝子変異体からなる群より選択される、変異体遺伝子;
(k) 機能的ICP34.5タンパク質をコードする遺伝子配列;ならびに
(l) 改変HSVプロモーターに機能的に連結されている遺伝子配列であって、該遺伝子がUL26遺伝子およびUL27遺伝子の遺伝子間領域に位置する、遺伝子配列
を含み、
該腫瘍溶解性HSVが、機能的ICP0をコードせず、かつVP5の5’非翻訳領域に位置するリボザイム配列を含まない、
前記腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス。
【請求項2】
組換えDNAを含む腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス(HSV)であって、
該組換えDNAが、
(g) 5’非翻訳領域と、TATA要素を含むVP5プロモーターに機能的に連結されているHSV-1またはHSV-2のVP5遺伝子とを含む、遺伝子;
(h) TATA要素に対して3’の、6~24ヌクレオチドの間に位置するテトラサイクリンオペレーター配列であって、VP5遺伝子がテトラサイクリンオペレーター配列に対して3’にある、テトラサイクリンオペレーター配列;
(i) HSV最初期プロモーターに機能的に連結されているテトラサイクリンリプレッサーをコードし、ICP0遺伝子座に位置する、遺伝子配列;
(j) 野生型と比較してシンシチウム形成を増大させる変異体遺伝子であって、HSV-1またはHSV-2の変異体遺伝子が、糖タンパク質K(gK)変異体、糖タンパク質B(gB)変異体、UL24変異体、およびUL20遺伝子変異体からなる群より選択される、変異体遺伝子;
(k) 機能的ICP34.5タンパク質をコードする遺伝子配列;ならびに
(l) 改変HSVプロモーターに機能的に連結されている遺伝子配列であって、該遺伝子がUL21遺伝子およびUL22遺伝子の遺伝子間領域に位置する、遺伝子配列
を含み、
該腫瘍溶解性HSVが、機能的ICP0をコードせず、かつVP5の5’非翻訳領域に位置するリボザイム配列を含まない、
前記腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス。
【請求項3】
組換えDNAを含む腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス(HSV)であって、
該組換えDNAが、
(g) 5’非翻訳領域と、TATA要素を含むVP5プロモーターに機能的に連結されているHSV-1またはHSV-2のVP5遺伝子とを含む、遺伝子;
(h) TATA要素に対して3’の、6~24ヌクレオチドの間に位置するテトラサイクリンオペレーター配列であって、VP5遺伝子がテトラサイクリンオペレーター配列に対して3’にある、テトラサイクリンオペレーター配列;
(i) HSV最初期プロモーターに機能的に連結されているテトラサイクリンリプレッサーをコードし、ICP0遺伝子座に位置する、遺伝子配列;
(j) 野生型と比較してシンシチウム形成を増大させる変異体遺伝子であって、HSV-1またはHSV-2の変異体遺伝子が、糖タンパク質K(gK)変異体、糖タンパク質B(gB)変異体、UL24変異体、およびUL20遺伝子変異体からなる群より選択される、変異体遺伝子;
(k) 機能的ICP34.5タンパク質をコードする遺伝子配列;ならびに
(l) 改変HSVプロモーターに機能的に連結されている遺伝子配列であって、該遺伝子がUL26遺伝子、UL27遺伝子、UL21遺伝子およびUL21遺伝子の遺伝子間領域に位置する、遺伝子配列
を含み、
該腫瘍溶解性HSVが、機能的ICP0をコードせず、かつVP5の5’非翻訳領域に位置するリボザイム配列を含まない、
前記腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス。
【請求項4】
(f)の遺伝子配列が、LacZ遺伝子配列である、請求項1~3のいずれか一項記載の腫瘍溶解性HSV。
【請求項5】
(f)の遺伝子配列が、ドミナントネガティブTGF-β突然変異体配列である、請求項1~3のいずれか一項記載の腫瘍溶解性HSV。
【請求項6】
前記ドミナントネガティブTGF-β突然変異体配列が、mmTGF-β2-7M断片配列である、請求項5記載の腫瘍溶解性HSV。
【請求項7】
(f)のプロモーターが、改変HSV最初期プロモーター、HCMV最初期プロモーター、またはヒト伸長アルファプロモーターである、請求項1~3のいずれか一項記載の腫瘍溶解性HSV。
【請求項8】
前記変異体遺伝子が、
SEQ ID NO:2のアミノ酸40位に対応するAlaからThrへのアミノ酸置換;SEQ ID NO:2のアミノ酸40位に対応するAlaから「x」へのアミノ酸置換であって、「x」が任意のアミノ酸である、アミノ酸置換;SEQ ID NO:2のアミノ酸99位に対応するAspからAsnへのアミノ酸置換;SEQ ID NO:2のアミノ酸304位に対応するLeuからProへのアミノ酸置換;およびSEQ ID NO:2のアミノ酸310位に対応するArgからLeuへのアミノ酸置換からなる群より選択されるアミノ酸置換
をコードするgK変異体遺伝子である、請求項1~3のいずれか一項記載の腫瘍溶解性HSV。
【請求項9】
前記テトラサイクリンオペレーター配列が、2つのOp2リプレッサー結合部位を含む、請求項1~8のいずれか一項記載の腫瘍溶解性HSV。
【請求項10】
前記VP5プロモーターが、HSV-1またはHSV-2のVP5プロモーターである、請求項1~9のいずれか一項記載の腫瘍溶解性HSV。
【請求項11】
前記最初期プロモーターが、HSV-1またはHSV-2の最初期プロモーターである、請求項1~10のいずれか一項記載の腫瘍溶解性HSV。
【請求項12】
前記HSV最初期プロモーターが、ICP0プロモーター、ICP4プロモーター、およびICP27プロモーターからなる群より選択される、請求項1~11のいずれか一項記載の腫瘍溶解性HSV。
【請求項13】
前記組換えDNAがHSV-1ゲノムの一部である、請求項1~12のいずれか一項記載の腫瘍溶解性HSV。
【請求項14】
前記組換えDNAがHSV-2ゲノムの一部である、請求項1~12のいずれか一項記載の腫瘍溶解性HSV。
【請求項15】
薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項1~13のいずれか一項記載の腫瘍溶解性HSV。
【請求項16】
抗腫瘍特異的免疫を誘導するために腫瘍溶解性HSVの有効性を高めることができる少なくとも1つのポリペプチドをさらにコードする、請求項1~15のいずれか一項記載の腫瘍溶解性HSV。
【請求項17】
前記少なくとも1つのポリペプチドが、インターロイキン2(IL2)、インターロイキン12(IL12)、インターロイキン15(IL15)、抗PD-1抗体または抗体試薬、抗PD-L1抗体または抗体試薬、抗OX40抗体または抗体試薬、CTLA-4抗体または抗体試薬、TIM-3抗体または抗体試薬、TIGIT抗体または抗体試薬、可溶性インターロイキン10受容体(IL10R)、可溶性IL10RとIgG-Fcドメインの融合ポリペプチド、可溶性TGFβ II型受容体(TGFBRII)、可溶性TGFBRIIとIgG-Fcドメインの融合ポリペプチド、抗IL10R抗体または抗体試薬、抗IL10抗体または抗体試薬、抗TGFBRII抗体または抗体試薬、および抗TGFBRII抗体または抗体試薬からなる群より選択される産物をコードする、請求項16記載の腫瘍溶解性HSV。
【請求項18】
前記腫瘍溶解性HSVが融合活性をさらにコードする、請求項1~17のいずれか一項記載の腫瘍溶解性HSV。
【請求項19】
組換えDNAを含む腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス(HSV)であって、
該組換えDNAが、
(g) 5’非翻訳領域と、TATA要素を含むVP5プロモーターに機能的に連結されているHSV-1またはHSV-2のVP5遺伝子とを含む、遺伝子;
(h) TATA要素に対して3’の、6~24ヌクレオチドの間に位置するテトラサイクリンオペレーター配列であって、VP5遺伝子がテトラサイクリンオペレーター配列に対して3’にある、テトラサイクリンオペレーター配列;
(i) HSV最初期プロモーターに機能的に連結されているテトラサイクリンリプレッサーをコードし、ICP0遺伝子座に位置する、遺伝子配列;
(j) 野生型と比較してシンシチウム形成を増大させる変異体遺伝子であって、HSV-1またはHSV-2の変異体遺伝子が、糖タンパク質K(gK)変異体、糖タンパク質B(gB)変異体、UL24変異体、およびUL20遺伝子変異体からなる群より選択される、変異体遺伝子;
(k) 機能的ICP34.5タンパク質をコードする遺伝子配列;ならびに
(l) 改変HSV-2最初期プロモーターに機能的に連結されているドミナントネガティブTGF-β突然変異体配列であって、該遺伝子がUL26遺伝子およびUL27遺伝子の遺伝子間領域に位置する、ドミナントネガティブTGF-β突然変異体配列
を含み、
該腫瘍溶解性HSVが、機能的ICP0をコードせず、かつVP5の5’非翻訳領域に位置するリボザイム配列を含まない、
前記腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス。
【請求項20】
組換えDNAを含む腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス(HSV)であって、
該組換えDNAが、
(g) 5’非翻訳領域と、TATA要素を含むVP5プロモーターに機能的に連結されているHSV-1またはHSV-2のVP5遺伝子とを含む、遺伝子;
(h) TATA要素に対して3’の、6~24ヌクレオチドの間に位置するテトラサイクリンオペレーター配列であって、VP5遺伝子がテトラサイクリンオペレーター配列に対して3’にある、テトラサイクリンオペレーター配列;
(i) HSV最初期プロモーターに機能的に連結されているテトラサイクリンリプレッサーをコードし、ICP0遺伝子座に位置する、遺伝子配列;
(j) 野生型と比較してシンシチウム形成を増大させる変異体遺伝子であって、HSV-1またはHSV-2の変異体遺伝子が、糖タンパク質K(gK)変異体、糖タンパク質B(gB)変異体、UL24変異体、およびUL20遺伝子変異体からなる群より選択される、変異体遺伝子;
(k) 機能的ICP34.5タンパク質をコードする遺伝子配列;ならびに
(l)改変HSV-2最初期プロモーターに機能的に連結されているドミナントネガティブTGF-β突然変異体配列であって、該遺伝子がUL21遺伝子およびUL22遺伝子の遺伝子間領域に位置する、ドミナントネガティブTGF-β突然変異体配列
を含み、
該腫瘍溶解性HSVが、機能的ICP0をコードせず、かつVP5の5’非翻訳領域に位置するリボザイム配列を含まない、
前記腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス。
【請求項21】
組換えDNAを含む腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス(HSV)であって、
該組換えDNAが、
(g) 5’非翻訳領域と、TATA要素を含むVP5プロモーターに機能的に連結されているHSV-1またはHSV-2のVP5遺伝子とを含む、遺伝子;
(h) TATA要素に対して3’の、6~24ヌクレオチドの間に位置するテトラサイクリンオペレーター配列であって、VP5遺伝子がテトラサイクリンオペレーター配列に対して3’にある、テトラサイクリンオペレーター配列;
(i) HSV最初期プロモーターに機能的に連結されているテトラサイクリンリプレッサーをコードし、ICP0遺伝子座に位置する、遺伝子配列;
(j) 野生型と比較してシンシチウム形成を増大させる変異体遺伝子であって、HSV-1またはHSV-2の変異体遺伝子が、糖タンパク質K(gK)変異体、糖タンパク質B(gB)変異体、UL24変異体、およびUL20遺伝子変異体からなる群より選択される、変異体遺伝子;
(k) 機能的ICP34.5タンパク質をコードする遺伝子配列;ならびに
(l) 改変HSV-2最初期プロモーターに機能的に連結されているドミナントネガティブTGF-β突然変異体配列であって、該遺伝子がUL21遺伝子、UL22遺伝子、UL26遺伝子およびUL27遺伝子の遺伝子間領域に位置する、ドミナントネガティブTGF-β突然変異体配列
を含み、
該腫瘍溶解性HSVが、機能的ICP0をコードせず、かつVP5の5’非翻訳領域に位置するリボザイム配列を含まない、
前記腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス。
【請求項22】
前記ドミナントネガティブTGF-β突然変異体配列が、mmTGF-β2-7M断片配列である、請求項19~21のいずれか一項記載の腫瘍溶解性HSV。
【請求項23】
(f)のHSV-2最初期プロモーターが、ICP0、ICP4、およびICP27からなる群より選択される、請求項19~21のいずれか一項記載の腫瘍溶解性HSV。
【請求項24】
(f)のHSV-2最初期プロモーターが、tetオペレーターを含む、請求項19~21のいずれか一項記載の腫瘍溶解性HSV。
【請求項25】
前記HSVが、テトラサイクリンまたはドキシサイクリンで調節可能である、請求項19~21のいずれか一項記載の腫瘍溶解性HSV。
【請求項26】
組換えDNAを含む、腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス(HSV)であって、該組換えDNAが、機能的なICP0遺伝子もICP34.5遺伝子もコードせず、かつ機能的mmTGF-β2-7M断片配列をコードする、前記腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス。
【請求項27】
組換えDNAを含む、腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス(HSV)であって、該組換えDNAが、機能的ICP0をコードせず、かつ機能的mmTGF-β2-7M断片配列をコードする、前記腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス。
【請求項28】
HSVが融合活性をさらにコードする、請求項26または27記載の腫瘍溶解性HSV。
【請求項29】
前記HSVが、テトラサイクリンまたはドキシサイクリンで調節可能である、請求項26または27記載の腫瘍溶解性HSV。
【請求項30】
機能的mmTGF-β2-7M断片配列をコードする、腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項31】
機能的mmTGF-β2-7M断片配列をコードする、組換えウイルス。
【請求項32】
請求項1~31のいずれか一項記載のウイルスを含む、組成物。
【請求項33】
薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項32記載の組成物。
【請求項34】
請求項1~31のいずれか一項記載のウイルスまたは請求項32もしくは33記載の組成物のいずれかを発現する、細胞。
【請求項35】
哺乳動物のものである、請求項34記載の細胞。
【請求項36】
癌細胞または免疫細胞である、請求項34または35記載の細胞。
【請求項37】
前記免疫細胞が、B細胞またはT細胞である、請求項36記載の細胞。
【請求項38】
高レベルのmmTGF-β2-7Mを発現する、請求項34~37のいずれか一項記載の細胞。
【請求項39】
請求項1~31のいずれか一項記載のウイルスまたは請求項32もしくは33記載の組成物を癌を有する対象に投与する段階を含む、癌を処置するための方法。
【請求項40】
前記癌が固形腫瘍である、請求項39記載の方法。
【請求項41】
前記腫瘍が、良性または悪性である、請求項40記載の方法。
【請求項42】
前記対象が、癌腫、黒色腫、肉腫、胚細胞腫瘍、および芽腫からなるリストより選択される癌を有すると診断されるか、または診断されている、請求項39~41のいずれか一項記載の方法。
【請求項43】
前記対象が、非小細胞肺癌、膀胱癌、乳癌、脳腫瘍、結腸癌、前立腺癌、肝臓癌、肺癌、卵巣癌、皮膚癌、頭頸部癌、腎臓癌、および膵臓癌からなる群より選択される癌を有すると診断されるか、または診断されている、請求項39~42のいずれか一項記載の方法。
【請求項44】
前記癌が転移性である、請求項39~43のいずれか一項記載の方法。
【請求項45】
tetオペレーター含有プロモーターを調節する剤を投与する段階をさらに含む、請求項39~44のいずれか一項記載の方法。
【請求項46】
前記剤が、ドキシサイクリンまたはテトラサイクリンである、請求項45記載の方法。
【請求項47】
前記剤が、局所的または全身的に投与される、請求項46記載の方法。
【請求項48】
前記全身投与が経口投与である、請求項47記載の方法。
【請求項49】
前記ウイルスまたは組成物が、腫瘍に直接投与される、請求項39~48のいずれか一項記載の方法。
【請求項50】
治療抗体およびmmTGF-β2-7Mの配列を含む、ハイブリッド核酸配列であって、mmTGF-β2-7Mが該治療抗体のFcドメインに融合されている、前記ハイブリッド核酸配列。
【請求項51】
前記治療抗体の配列が、免疫療法抗体の配列である、請求項50記載のハイブリッド核酸配列。
【請求項52】
前記治療抗体の配列が、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗Tim3抗体、抗-抗CTLA4抗体、抗TDM-1抗体、および抗TIGIT抗体からなるリストより選択される配列である、請求項50または51記載のハイブリッド核酸配列。
【請求項53】
請求項50~52のいずれか一項記載のハイブリッド核酸によってコードされる、ポリペプチド。
【請求項54】
請求項50~52のいずれか一項記載のハイブリッド核酸または請求項53記載のポリペプチドのいずれかを発現する、ベクター。
【請求項55】
a.ドミナントネガティブTGF-β突然変異体配列を含む細胞外ドメイン;
b.膜貫通ドメイン;
c.共刺激性ドメイン;および
d.細胞内シグナル伝達ドメイン
の少なくとも1つを含む、キメラ抗原受容体(CAR)ポリペプチド。
【請求項56】
前記ドミナントネガティブTGF-β突然変異体配列が、mmTGF-β2-7M断片配列である、請求項55記載のCARポリペプチド。
【請求項57】
請求項55または56記載のCARポリペプチドをコードする、核酸。
【請求項58】
a.請求項55もしくは56記載のCARポリペプチド;または
b.請求項57記載のコード核酸
を含む、哺乳動物細胞。
【請求項59】
T細胞である、請求項58記載の細胞。
【請求項60】
ヒト細胞である、請求項58または59記載の細胞。
【請求項61】
少なくとも第2のCARポリペプチドをさらに含む、請求項58~60のいずれか一項記載の細胞。
【請求項62】
前記少なくとも第2のCARポリペプチドが、チェックポイント阻害剤に結合する配列を含む細胞外ドメインを含む、請求項61記載の細胞。
【請求項63】
前記チェックポイント阻害剤が、PD-L1、PD-1、TIGIT、TIM3、およびCTLA4より選択される群より選択される、請求項62記載の細胞。
【請求項64】
癌を有するかまたは癌を有すると診断された個体から得られたものである、請求項58~63のいずれか一項記載の細胞。
【請求項65】
癌の処置を必要とする対象において癌を処置する方法であって、請求項58~64のいずれか一項記載の細胞を対象に投与する段階を含む、前記方法。
【請求項66】
癌の処置を必要とする対象において癌を処置する方法であって、
a.請求項55もしくは56記載のCARポリペプチドまたは請求項57記載のコード核酸をT細胞の表面上に含むように、T細胞を操作する段階;および
b.該操作されたT細胞を対象に投与する段階
を含む、前記方法。
【請求項67】
前記操作されたT細胞が、少なくとも第2のCARポリペプチドをさらに含む、請求項66記載の方法。
【請求項68】
少なくとも1つのさらなる抗癌治療剤を投与する段階をさらに含む、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項69】
組換えDNAを含む、腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス(HSV)であって、該組換えDNAが、機能的ICP0遺伝子およびICP34.5遺伝子をコードせず、かつ機能的mmTGF-β2-7M断片配列をコードする、前記腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は35 U.S.C. § 119(e)の下で、2019年11月18日に出願された米国仮出願第62/936,776号の恩恵を主張し、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0002】
技術分野
本発明は、コドン最適化された調節可能な融合性腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス1(HSV-1)ウイルスを使用して癌を処置する組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
腫瘍溶解性ウイルス療法は、ウイルスがヒト細胞中で複製し、ヒト細胞を溶解する能力を利用すること、およびこのウイルス複製依存的溶解を癌性細胞に優先的に向けることを必然的にともなう。感染細胞におけるウイルス産生の制御における、宿主因子の役割およびウイルスにコードされる遺伝子産物の詳細な理解とともに、癌生物学の進歩は、癌に対する有望な治療剤としてのいくつかのウイルスの使用を促進した(Aghi and Martuza, 2005;Parato et al., 2005)。単純ヘルペスウイルス(HSV)は、腫瘍溶解剤としてのいくつかのユニークな性質を有する(Aghi and Martuza, 2005)。これは、幅広い細胞タイプに感染することができ、新しいウイルスの複製および細胞死につながる。HSVは短い複製サイクル(9~18時間)を有し、欠失した場合にウイルスが非分裂正常細胞で複製する能力を大きく制限する、多くの非必須遺伝子をコードする。その大きなゲノムが理由で、複数の治療用遺伝子を腫瘍溶解性組換え体のゲノム中に入れることができる。
【0004】
腫瘍溶解剤としてのHSV-1の複製条件的系統の使用は、悪性神経膠腫の処置について最初に報告された(Martuza et al., 1991)。それ以来、その治療有効性を広げ、腫瘍細胞におけるウイルスの複製特異性を高めようとして、様々な試みが行われた。しかし、当然のことながら、正常細胞においてウイルス複製を損なう遺伝子の欠失は、標的腫瘍細胞に対するウイルスの腫瘍溶解活性の顕著な低下にもつながる(Advani et al., 1998;Chung et al., 1999)。現在、腫瘍細胞のみを死滅させることができ、一方で正常細胞をインタクトなままにする腫瘍溶解性ウイルスは利用可能ではない。したがって、現行の腫瘍溶解性ウイルスの治療用量は著しく制限されている(Aghi and Martuza, 2005)。複製を薬理学的に堅固に制御し、調整することができる腫瘍溶解性ウイルスが利用可能であることによって、安全性および治療有効性が大きく高められるであろう。そのような調節可能腫瘍溶解性ウイルスは、隣接する組織および離れた組織における望まれない複製、ならびに腫瘍が排除された後の標的領域における望ましくない後代ウイルスの過負荷を最小限にするであろう。この調節性の特色によって、万一有害作用が検出される場合に、ウイルスの腫瘍溶解活性がすばやくシャットダウンされることが可能になるであろう(Aghi and Martuza, 2005;Shen and Nemunaitis, 2005)。本明細書において記載される研究は、他の腫瘍溶解性HSVウイルスよりも癌細胞を死滅させるのに著しく効果的である、腫瘍溶解性HSVの新世代の調節可能な融合性変異体を提示する。
【発明の概要】
【0005】
本発明では、HSV-1組換えウイルスにおいてレポーター遺伝子からの非常に効率的な遺伝子発現を駆動するHSV-2最初期プロモーターの使用を第1に記載する。第2に、改変HSV-2 ICP4プロモーターの制御下で、コドン最適化したドミナントネガティブTGF-β突然変異体、すなわち開発されたmmTGF-β2-7Mをコードするプラスミドを発現する哺乳動物細胞を構築した。第3に、相同組換えによって、HSV-1のUL26遺伝子およびUL27遺伝子の遺伝子間領域への関心対象の遺伝子の効率的な挿入を可能にするシャトルベクターを確立した。第4に、tetO含有HSV-2 ICP4プロモーターの制御下でmmTGF-β2-7Mをコードする、テトラサイクリンで調節可能な融合性HSV-1腫瘍溶解性ウイルスを構築した。mmTGF-β2-7Mの分泌を促進するために、コドン最適化したmmTGF-β2-7MをHSV-1 gD遺伝子のシグナルペプチドと融合する。
【0006】
したがって、本明細書において記載される一局面は、組換えDNAを含む腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス(HSV)であって、該組換えDNAが、(a)5’非翻訳領域と、TATA要素を含むVP5プロモーターに機能的に連結されているHSV-1またはHSV-2のVP5遺伝子とを含む、遺伝子;(b)TATA要素に対して3’の、6~24ヌクレオチドの間に位置するテトラサイクリンオペレーター配列であって、VP5遺伝子がテトラサイクリンオペレーター配列に対して3’にある、テトラサイクリンオペレーター配列;(c)HSV最初期プロモーターに機能的に連結されているテトラサイクリンリプレッサーをコードし、ICP0遺伝子座に位置する、遺伝子配列;(d)野生型と比較してシンシチウム形成を増大させる変異体遺伝子であって、HSV-1またはHSV-2の変異体遺伝子が、糖タンパク質K(gK)変異体、糖タンパク質B(gB)変異体、UL24変異体、およびUL20遺伝子変異体からなる群より選択される、変異体遺伝子;(e)機能的ICP34.5タンパク質をコードする遺伝子配列;ならびに(f)改変HSVプロモーターに機能的に連結されている遺伝子配列であって、遺伝子がUL26遺伝子およびUL27遺伝子の遺伝子間領域に位置する、遺伝子配列を含み、該腫瘍溶解性HSVが、機能的ICP0をコードせず、かつVP5の5’非翻訳領域に位置するリボザイム配列を含まない、腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルスを提供する。
【0007】
本明細書において記載される一局面は、組換えDNAを含む腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス(HSV)であって、該組換えDNAが、(a)5’非翻訳領域と、TATA要素を含むVP5プロモーターに機能的に連結されているHSV-1またはHSV-2のVP5遺伝子とを含む、遺伝子;(b)TATA要素に対して3’の、6~24ヌクレオチドの間に位置するテトラサイクリンオペレーター配列であって、VP5遺伝子がテトラサイクリンオペレーター配列に対して3’にある、テトラサイクリンオペレーター配列;(c)HSV最初期プロモーターに機能的に連結されているテトラサイクリンリプレッサーをコードし、ICP0遺伝子座に位置する、遺伝子配列;(d)野生型と比較してシンシチウム形成を増大させる変異体遺伝子であって、HSV-1またはHSV-2の変異体遺伝子が、糖タンパク質K(gK)変異体、糖タンパク質B(gB)変異体、UL24変異体、およびUL20遺伝子変異体からなる群より選択される、変異体遺伝子;(e)機能的ICP34.5タンパク質をコードする遺伝子配列;ならびに(f)改変HSVプロモーターに機能的に連結されている遺伝子配列であって、遺伝子がUL21遺伝子およびUL22遺伝子の遺伝子間領域に位置する、遺伝子配列を含み、該腫瘍溶解性HSVが、機能的ICP0をコードせず、かつVP5の該5’非翻訳領域に位置するリボザイム配列を含まない、腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルスを提供する。
【0008】
本明細書において記載される一局面は、組換えDNAを含む腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス(HSV)であって、該組換えDNAが、(a)5’非翻訳領域と、TATA要素を含むVP5プロモーターに機能的に連結されているHSV-1またはHSV-2のVP5遺伝子とを含む、遺伝子;(b)TATA要素に対して3’の、6~24ヌクレオチドの間に位置するテトラサイクリンオペレーター配列であって、VP5遺伝子がテトラサイクリンオペレーター配列に対して3’にある、テトラサイクリンオペレーター配列;(c)HSV最初期プロモーターに機能的に連結されているテトラサイクリンリプレッサーをコードし、ICP0遺伝子座に位置する、遺伝子配列;(d)野生型と比較してシンシチウム形成を増大させる変異体遺伝子であって、HSV-1またはHSV-2の変異体遺伝子が、糖タンパク質K(gK)変異体、糖タンパク質B(gB)変異体、UL24変異体、およびUL20遺伝子変異体からなる群より選択される、変異体遺伝子;(e)機能的ICP34.5タンパク質をコードする遺伝子配列;ならびに(f)改変HSVプロモーターに機能的に連結されている遺伝子配列であって、遺伝子がUL21遺伝子、UL22遺伝子、UL26遺伝子およびUL27遺伝子の遺伝子間領域に位置する、遺伝子配列を含み、該腫瘍溶解性HSVが、機能的ICP0をコードせず、かつVP5の5’非翻訳領域に位置するリボザイム配列を含まない、腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルスを提供する。
【0009】
本明細書における任意の局面の一態様では、(f)の遺伝子配列は、LacZ遺伝子配列である。
【0010】
本明細書における任意の局面の一態様では、(f)の遺伝子配列は、ドミナントネガティブTGF-β突然変異体配列である。
【0011】
本明細書における任意の局面の一態様では、ドミナントネガティブTGF-β突然変異体配列は、mmTGF-β2-7M断片配列である。
【0012】
本明細書における任意の局面の一態様では、(f)のプロモーターは、改変HSV最初期プロモーター、HCMV最初期プロモーター、またはヒト伸長アルファプロモーターである。
【0013】
本明細書における任意の局面の一態様では、変異体遺伝子は、SEQ ID NO:2のアミノ酸40位に対応するAlaからThrへのアミノ酸置換;SEQ ID NO:2のアミノ酸40位に対応するAlaから「x」へのアミノ酸置換であって、し、「x」が任意のアミノ酸である、アミノ酸置換;SEQ ID NO:2のアミノ酸99位に対応するAspからAsnへのアミノ酸置換;SEQ ID NO:2のアミノ酸304位に対応するLeuからProへのアミノ酸置換;およびSEQ ID NO:2のアミノ酸310位に対応するArgからLeuへのアミノ酸置換からなる群より選択されるアミノ酸置換をコードするgK変異体遺伝子である。
【0014】
本明細書における任意の局面の一態様では、テトラサイクリンオペレーター配列は、2つのOp2リプレッサー結合部位を含む。
【0015】
本明細書における任意の局面の一態様では、VP5プロモーターは、HSV-1またはHSV-2のVP5プロモーターである。
【0016】
本明細書における任意の局面の一態様では、最初期プロモーターは、HSV-1またはHSV-2の最初期プロモーターである。
【0017】
本明細書における任意の局面の一態様では、HSV最初期プロモーターは、ICP0プロモーター、ICP4プロモーター、およびICP27プロモーターからなる群より選択される。
【0018】
本明細書における任意の局面の一態様では、組換えDNAはHSV-1ゲノムの一部である。
【0019】
本明細書における任意の局面の一態様では、組換えDNAはHSV-2ゲノムの一部である。
【0020】
本明細書における任意の局面の一態様では、腫瘍溶解性HSVは、薬学的に許容される担体をさらに含む。
【0021】
本明細書における任意の局面の一態様では、腫瘍溶解性HSVは、抗腫瘍特異的免疫を誘導するために腫瘍溶解性HSVの有効性を高めることができる少なくとも1つのポリペプチドをさらにコードする。
【0022】
本明細書における任意の局面の一態様では、少なくとも1つのポリペプチドは、インターロイキン2(IL2)、インターロイキン12(IL12)、インターロイキン15(IL15)、抗PD-1抗体または抗体試薬、抗PD-L1抗体または抗体試薬、抗OX40抗体または抗体試薬、CTLA-4抗体または抗体試薬、TIM-3抗体または抗体試薬、TIGIT抗体または抗体試薬、可溶性インターロイキン10受容体(IL10R)、可溶性IL10RとIgG-Fcドメインの融合ポリペプチド、可溶性TGFβ II型受容体(TGFBRII)、可溶性TGFBRIIとIgG-Fcドメインの融合ポリペプチド、抗IL10R抗体または抗体試薬、抗IL10抗体または抗体試薬、抗TGFBRII抗体または抗体試薬、および抗TGFBRII抗体または抗体試薬からなる群より選択される産物をコードする。
【0023】
本明細書における任意の局面の一態様では、腫瘍溶解性HSVは、融合活性をさらにコードする。
【0024】
本明細書において記載される別の局面は、組換えDNAを含む腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス(HSV)であって、該組換えDNAが、(a)5’非翻訳領域と、TATA要素を含むVP5プロモーターに機能的に連結されているHSV-1またはHSV-2のVP5遺伝子とを含む、遺伝子;(b)TATA要素に対して3’の、6~24ヌクレオチドの間に位置するテトラサイクリンオペレーター配列であって、VP5遺伝子がテトラサイクリンオペレーター配列に対して3’にある、テトラサイクリンオペレーター配列;(c)HSV最初期プロモーターに機能的に連結されているテトラサイクリンリプレッサーをコードし、ICP0遺伝子座に位置する、遺伝子配列;(d)野生型と比較してシンシチウム形成を増大させる変異体遺伝子であって、HSV-1またはHSV-2の変異体遺伝子が、糖タンパク質K(gK)変異体、糖タンパク質B(gB)変異体、UL24変異体、およびUL20遺伝子変異体からなる群より選択される、変異体遺伝子;(e)機能的ICP34.5タンパク質をコードする遺伝子配列;ならびに(f)改変HSV-2最初期プロモーターに機能的に連結されているドミナントネガティブTGF-β突然変異体配列であって、遺伝子がUL26遺伝子およびUL27遺伝子の遺伝子間領域に位置する、ドミナントネガティブTGF-β突然変異体配列を含み、該腫瘍溶解性HSVが、機能的ICP0をコードせず、かつVP5の該5’非翻訳領域に位置するリボザイム配列を含まない、腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルスを提供する。
【0025】
本明細書における任意の局面の一態様では、腫瘍溶解性HSVは、融合活性をさらにコードする。
【0026】
本明細書において記載される別の局面は、組換えDNAを含む腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス(HSV)であって、該組換えDNAが、(a)5’非翻訳領域と、TATA要素を含むVP5プロモーターに機能的に連結されているHSV-1またはHSV-2のVP5遺伝子とを含む、遺伝子;(b)TATA要素に対して3’の、6~24ヌクレオチドの間に位置するテトラサイクリンオペレーター配列であって、VP5遺伝子がテトラサイクリンオペレーター配列に対して3’にある、テトラサイクリンオペレーター配列;(c)HSV最初期プロモーターに機能的に連結されているテトラサイクリンリプレッサーをコードし、ICP0遺伝子座に位置する、遺伝子配列;(d)野生型と比較してシンシチウム形成を増大させる変異体遺伝子であって、HSV-1またはHSV-2の変異体遺伝子が、糖タンパク質K(gK)変異体、糖タンパク質B(gB)変異体、UL24変異体、およびUL20遺伝子変異体からなる群より選択される、変異体遺伝子;(e)機能的ICP34.5タンパク質をコードする遺伝子配列;ならびに(f)改変HSV-2最初期プロモーターに機能的に連結されているドミナントネガティブTGF-β突然変異体配列であって、遺伝子がUL21遺伝子およびUL22遺伝子の遺伝子間領域に位置する、ドミナントネガティブTGF-β突然変異体配列を含み、該腫瘍溶解性HSVが、機能的ICP0をコードせず、かつVP5の5’非翻訳領域に位置するリボザイム配列を含まない、腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルスを提供する。
【0027】
本明細書における任意の局面の一態様では、腫瘍溶解性HSVは、融合活性をさらにコードする。
【0028】
本明細書において記載される別の局面は、組換えDNAを含む腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス(HSV)であって、該組換えDNAが、(a)5’非翻訳領域と、TATA要素を含むVP5プロモーターに機能的に連結されているHSV-1またはHSV-2のVP5遺伝子とを含む、遺伝子;(b)TATA要素に対して3’の、6~24ヌクレオチドの間に位置するテトラサイクリンオペレーター配列であって、VP5遺伝子がテトラサイクリンオペレーター配列に対して3’にある、テトラサイクリンオペレーター配列;(c)HSV最初期プロモーターに機能的に連結されているテトラサイクリンリプレッサーをコードし、ICP0遺伝子座に位置する、遺伝子配列;(d)野生型と比較してシンシチウム形成を増大させる変異体遺伝子であって、HSV-1またはHSV-2の変異体遺伝子が、糖タンパク質K(gK)変異体、糖タンパク質B(gB)変異体、UL24変異体、およびUL20遺伝子変異体からなる群より選択される、変異体遺伝子;(e)機能的ICP34.5タンパク質をコードする遺伝子配列;ならびに(f)改変HSV-2最初期プロモーターに機能的に連結されているドミナントネガティブTGF-β突然変異体配列であって、遺伝子がUL21遺伝子、UL22遺伝子、UL26遺伝子およびUL27遺伝子の遺伝子間領域に位置する、ドミナントネガティブTGF-β突然変異体配列を含み、該腫瘍溶解性HSVが、機能的ICP0をコードせず、かつVP5の5’非翻訳領域に位置するリボザイム配列を含まない、腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルスを提供する。
【0029】
本明細書において記載される別の局面は、組換えDNAを含む腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス(HSV)であって、組換えDNAが機能的なICP0遺伝子もICP34.5遺伝子もコードせず、かつ機能的mmTGF-β2-7M断片配列をコードする腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルスを提供する。
【0030】
腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス(HSV)は、組換えDNAを含み、組換えDNAは、機能的ICP0遺伝子およびICP34.5遺伝子をコードせず、かつ機能的mmTGF-β2-7M断片配列をコードする。
【0031】
本明細書において記載される別の局面は、組換えDNAを含む腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス(HSV)であって、組換えDNAが機能的ICP0をコードせず、かつ機能的mmTGF-β2-7M断片配列をコードする腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルスを提供する。
【0032】
本明細書において記載される別の局面は、機能的mmTGF-β2-7M断片配列をコードする腫瘍溶解性ウイルスを提供する。
【0033】
本明細書において記載される別の局面は、機能的mmTGF-β2-7M断片配列をコードする組換えウイルスを提供する。
【0034】
本明細書において記載される別の局面は、本明細書において記載されるウイルスのいずれかを含む組成物を提供する。
【0035】
本明細書における任意の局面の一態様では、組成物は、薬学的に許容される担体をさらに含む。
【0036】
本明細書において記載される別の局面は、本明細書において記載されるウイルスまたは組成物のいずれかを発現する細胞を提供する。
【0037】
本明細書における任意の局面の一態様では、細胞は哺乳動物のものである。
【0038】
本明細書における任意の局面の一態様では、細胞は、癌細胞または免疫細胞である。
【0039】
本明細書における任意の局面の一態様では、免疫細胞は、B細胞またはT細胞である。
【0040】
本明細書における任意の局面の一態様では、細胞は、高レベルのmmTGF-β2-7Mを発現する。
【0041】
本明細書において記載される別の局面は、本明細書において記載されるウイルスまたは組成物のいずれかを癌を有する対象に投与する段階を含む、癌を処置するための方法を提供する。
【0042】
本明細書における任意の局面の一態様では、癌は固形腫瘍である。
【0043】
本明細書における任意の局面の一態様では、腫瘍は、良性または悪性である。
【0044】
本明細書における任意の局面の一態様では、対象は、癌腫、黒色腫、肉腫、胚細胞腫瘍、および芽腫からなるリストより選択される癌を有すると診断されるか、または診断されている。
【0045】
本明細書における任意の局面の一態様では、対象は、非小細胞肺癌、膀胱癌、乳癌、脳腫瘍、結腸癌、前立腺癌、肝臓癌、肺癌、卵巣癌、皮膚癌、頭頸部癌、腎臓癌、および膵臓癌からなる群より選択される癌を有すると診断されるか、または診断されている。
【0046】
本明細書における任意の局面の一態様では、癌は転移性である。
【0047】
本明細書における任意の局面の一態様では、方法は、tetオペレーター含有プロモーターを調節する剤を投与する段階をさらに含む。
【0048】
本明細書における任意の局面の一態様では、剤は、ドキシサイクリンまたはテトラサイクリンである。本明細書における任意の局面の一態様では、剤は、局所的または全身的に投与される。本明細書における任意の局面の一態様では、全身投与は経口投与である。
【0049】
本明細書における任意の局面の一態様では、ウイルスまたは組成物は、腫瘍に直接投与される。
【0050】
本明細書において記載される別の局面は、治療抗体およびmmTGF-β2-7Mの配列を含むハイブリッド核酸配列であって、mmTGF-β2-7Mが治療抗体のFcドメインに融合されている、ハイブリッド核酸配列を提供する。
【0051】
本明細書における任意の局面の一態様では、治療抗体の配列は、免疫療法抗体の配列である。
【0052】
本明細書における任意の局面の一態様では、治療抗体の配列は、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗Tim3抗体、抗-抗CTLA4抗体、および抗TDM-1抗体、および抗TIGIT抗体からなるリストより選択される配列である。
【0053】
本明細書において記載される別の局面は、本明細書において記載される任意のハイブリッド核酸によってコードされる、ポリペプチドを提供する。
【0054】
本明細書において記載される別の局面は、本明細書において記載されるハイブリッド核酸またはポリペプチドのいずれかを発現する、ベクターを提供する。
【0055】
本明細書において記載される別の局面は、(a)ドミナントネガティブTGF-β突然変異体配列を含む細胞外ドメイン;(b)膜貫通ドメイン;(c)共刺激性ドメイン;および(d)細胞内シグナル伝達ドメインの少なくとも1つを含むキメラ抗原受容体(CAR)ポリペプチドを提供する。
【0056】
本明細書において記載される別の局面は、本明細書において記載されるCARポリペプチドのいずれかをコードする、核酸を提供する。
【0057】
本明細書において記載される別の局面は、(a)本明細書において記載される任意のCARポリペプチド;または本明細書において記載される任意の核酸を含む、哺乳動物細胞を提供する。
【0058】
本明細書における任意の局面の一態様では、細胞はT細胞である。
【0059】
本明細書における任意の局面の一態様では、細胞はヒト細胞である。
【0060】
本明細書における任意の局面の一態様では、細胞は、少なくとも第2のCARポリペプチドをさらに含む。
【0061】
本明細書における任意の局面の一態様では、少なくとも第2のCARポリペプチドは、免疫療法抗体の配列を含む細胞外ドメインを含む。
【0062】
本明細書における任意の局面の一態様では、細胞は、癌を有するかまたは癌を有すると診断された個体から得られたものである。
【0063】
本明細書において記載される別の局面は、癌の処置を必要とする対象において癌を処置する方法であって、本明細書において記載される細胞のいずれかを投与する段階を含む、方法を提供する。
【0064】
本明細書において記載される別の局面は、癌の処置を必要とする対象において癌を処置する方法であって、(a)本明細書において記載されるCARポリペプチドのいずれかまたは本明細書において記載される任意の核酸をT細胞の表面上に含むように、T細胞を操作する段階;および(b)操作されたT細胞を対象に投与する段階を含む、方法を提供する。
【0065】
本明細書における任意の局面の一態様では、操作されたT細胞は、少なくとも第2のCARポリペプチドをさらに含む。
【0066】
本明細書における任意の局面の一態様では、方法は、少なくとも1つのさらなる抗癌治療剤を投与する段階をさらに含む。
【0067】
定義
本明細書において引用されるすべての参考文献は、完全に記載されるかのように、参照によりその全体が組み入れられる。
【0068】
本明細書において別段定義しない限り、本出願に関連して使用される科学技術用語は、本開示が属する分野の当業者によって一般に理解される意味を有するものとする。本発明は、本明細書において記載される特定の方法体系、プロトコール、および試薬などに限定されず、したがって変動し得ることを理解されたい。一般用語の定義は、Singleton et al., Dictionary of Microbiology and Molecular Biology 3rd ed., J. Wiley & Sons New York, NY (2001);March, Advanced Organic Chemistry Reactions, Mechanisms and Structure 5th ed., J. Wiley & Sons New York, NY (2001);Michael Richard Green and Joseph Sambrook, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 4th ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., USA (2012); Davis et al., Basic Methods in Molecular Biology, Elsevier Science Publishing, Inc., New York, USA (2012);Jon Lorsch (ed.) Laboratory Methods in Enzymology: DNA, Elsevier, (2013);Frederick M. Ausubel (ed.), Current Protocols in Molecular Biology (CPMB), John Wiley and Sons, (2014);John E. Coligan (ed.), Current Protocols in Protein Science (CPPS), John Wiley and Sons, Inc., (2005);およびEthan M Shevach, Warren Strobe, (eds.) Current Protocols in Immunology (CPI) (John E. Coligan, ADA M Kruisbeek, David H Margulies, John Wiley and Sons, Inc., (2003)で見出すことができ;これらのそれぞれは、本出願で使用される用語の多くに対する一般的な指針を当業者に提供する。
【0069】
本明細書において使用する場合、「癌」は、そのユニークな形質、すなわち正常な細胞制御の喪失が、調節されていない増殖、分化の欠如、局部的組織浸潤、および転移をもたらす、細胞の過剰増殖を指すことができ、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、または固形腫瘍であり得る。白血病の非限定例としては、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ性白血病(ALL)、および慢性リンパ性白血病(CLL)が挙げられる。一態様では、癌は、ALLまたはCLLである。リンパ腫の非限定例としては、びまん性大細胞B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、辺縁帯リンパ腫、バーキットリンパ腫、ヘアリーセル白血病(HCL)が挙げられる。一態様では、癌は、DLBCLまたは濾胞性リンパ腫である。固形腫瘍の非限定例としては、副腎皮質腫瘍、胞状軟部肉腫、癌腫、軟骨肉腫、結腸直腸癌、類腱腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、内分泌腫瘍、内胚葉洞腫瘍、類上皮血管内皮腫、ユーイング肉腫、胚細胞腫瘍(固形腫瘍)、骨および軟組織の巨細胞腫、肝芽腫、肝細胞癌、黒色腫、腎腫、神経芽腫、非横紋筋肉腫軟部組織肉腫(NRSTS)、骨肉腫、傍脊柱肉腫、腎細胞癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、滑膜肉腫、およびウィルムス腫瘍が挙げられる。固形腫瘍は、骨、筋肉、または器官で見出すことができ、肉腫または癌腫であり得る。本出願に列挙されていない癌を含めて、すべてのタイプの癌を処置するために、本明細書において記載される技術の任意の局面を使用することができることが企図される。本明細書において使用する場合、用語「腫瘍」は、例えば悪性タイプまたは良性タイプの、細胞または組織の異常増殖を指す。
【0070】
本明細書において使用する場合、「対象」は、ヒトまたは動物を意味する。通常、動物は、脊椎動物、例えば、霊長類、げっ歯類、飼育動物、または狩猟動物である。霊長類としては、例えば、チンパンジー、カニクイザル、クモザル、およびマカク、例えば、アカゲザルが挙げられる。げっ歯類としては、例えば、マウス、ラット、ウッドチャック、フェレット、ウサギ、およびハムスターが挙げられる。飼育動物および狩猟動物としては、例えば、雌ウシ、ウマ、ブタ、シカ、バイソン、バッファロー、ネコ科の種、例えばイエネコ、イヌ科の種、例えばイヌ、キツネ、オオカミ、鳥類、例えば、ニワトリ、エミュー、ダチョウ、ならびに魚、例えば、マス、ナマズ、およびサケが挙げられる。いくつかの態様では、対象は、哺乳動物、例えば霊長類、例えばヒトである。用語、「個体」、「患者」、および「対象」は、本明細書において互換的に使用される。
【0071】
好ましくは、対象は哺乳動物である。哺乳動物は、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、または雌ウシであり得るが、これらの例に限定されない。疾患、例えば癌の動物モデルに相当する対象として、ヒト以外の哺乳動物を好都合なことに使用することができる。対象は、雄でもよく、または雌でもよい。
【0072】
対象は、処置を必要としている状態(例えば、癌)またはそのような状態と関連する1つもしくは複数の合併症を罹患しているかまたは有していると以前に診断されたかまたは特定されており、任意で、状態または状態と関連する1つもしくは複数の合併症について処置を既に受けたものであり得る。あるいは、対象はまた、そのような状態または関連する合併症を有すると以前に診断されていないものであり得る。例えば、対象は、状態または状態と関連する1つもしくは複数の合併症に対する1つまたは複数の危険因子を示すもの、または危険因子を示さない対象であり得る。
【0073】
本明細書において使用する場合、用語「処置する」、「処置」、「処置すること」、または「回復」は、治療的処置を指し、目的は、疾患または障害、例えば癌と関係がある状態の進行または重症度を逆転させる、軽減させる、回復させる、阻害する、減速させる、または止めることである。用語「処置すること」は、状態、疾患、または障害の少なくとも1つの有害作用または症状を低減させるかまたは軽減させることを含む。処置は、一般に、1つまたは複数の症状または臨床マーカーが低減する場合に、「有効」である。あるいは、処置は、疾患の進行が低減するかまたは停止する場合に、「有効」である。すなわち、「処置」は、症状またはマーカーの改善だけでなく、処置の非存在下で予想されるであろうものと比較した場合の、症状の進行もしくは悪化の中断、または症状の進行もしくは悪化の少なくとも緩徐化も含む。有益なまたは望ましい臨床結果としては、限定されないが、検出可能または検出不可能を問わず、1つもしくは複数の症状の軽減、疾患の程度の縮小、疾患の安定した(すなわち、悪化しない)状態、疾患の進行の遅延もしくは緩徐化、病態の回復もしくは一時的緩和、寛解(部分的もしくは完全を問わない)、および/または死亡率の低下が挙げられる。疾患の「処置」という用語は、疾患の症状または副作用からの緩和(姑息的処置を含める)を提供することも含む。
【0074】
本明細書において記載される様々な態様では、記載される特定のポリペプチドのいずれかの変異体(天然に存在するかもしくはその他のもの)、アレル、相同体、保存的修飾変異体、および/または保存的置換変異体が包含されることがさらに企図される。アミノ酸配列に関して、コード配列中の単一のアミノ酸またはごく一部のアミノ酸を変化させる、核酸、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質配列に対する個々の置換、欠失、または付加は、変化が、化学的に類似したアミノ酸とのあるアミノ酸の置換をもたらし、ポリペプチドの望ましい活性を保持する「保存的修飾変異体」であることを当業者は認識するであろう。そのような保存的修飾変異体は、本開示と矛盾がない多形変異体、種間相同体、およびアレルに加えられ、かつこれらを除外しない。
【0075】
ある脂肪族残基を別のものに(例えば、Ile、Val、Leu、もしくはAlaを互いに)置換すること、またはある極性残基の別のものとの置換(例えば、LysとArg;GluとAsp;またはGlnとAsnの間)など、所与のアミノ酸を類似した生理化学的特性を有する残基で置き換えることができる。他のそのような保存的置換、例えば、類似した疎水性特性を有する全領域の置換は周知である。ネイティブまたは参照ポリペプチドの望ましい活性、例えば、リガンド(ligan)媒介性受容体活性および特異性が保持されていることを確認するために、保存的アミノ酸置換を含むポリペプチドを本明細書において記載されるアッセイのいずれか1つで試験することができる。
【0076】
アミノ酸を、それらの側鎖の性質の類似度に従ってグループ化することができる(A. L. Lehninger, in Biochemistry, second ed., pp. 73-75, Worth Publishers, New York (1975)):(1)非極性:Ala(A)、Val(V)、Leu(L)、Ile(I)、Pro(P)、Phe(F)、Trp(W)、Met(M);(2)無電荷極性:Gly(G)、Ser(S)、Thr(T)、Cys(C)、Tyr(Y)、Asn(N)、Gln(Q);(3)酸性:Asp(D)、Glu(E);(4)塩基性:Lys(K)、Arg(R)、His(H)。あるいは、天然に存在する残基を共通の側鎖性質に基づいて群に分けることができる:(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;(2)中性の親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;(3)酸性:Asp、Glu;(4)塩基性:His、Lys、Arg;(5)鎖配向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro;(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。非保存的酸置換は、これらのクラスのうちの1つのあるメンバーを別のクラスと交換することを必然的にともなう。特定の保存的置換としては、例えば以下が挙げられる;AlaからGlyもしくはSerに;ArgからLysに;AsnからGlnもしくはHisに;AspからGluに;CysからSerに;GlnからAsnに;GluからAspに;GlyからAlaもしくはProに;HisからAsnもしくはGlnに;IleからLeuもしくはValに;LeuからIleもしくはValに;LysからArg、Gln、もしくはGluに;MetからLeu、Tyr、もしくはIleに;PheからMet、Leu、もしくはTyrに;SerからThrに;ThrからSerに;TrpからTyrに;TyrからTrpに;および/またはPheからVal、Ile、もしくはLeuに。
【0077】
いくつかの態様では、本明細書において記載されるポリペプチド(またはそのようなポリペプチドをコードする核酸)は、本明細書において記載されるアミノ酸配列のうちの1つの機能的断片であり得る。本明細書において使用する場合、「機能的断片」は、当技術分野において公知のまたは本明細書において以下に記載のアッセイにより、野生型参照ポリペプチドの活性の少なくとも50%を保持するペプチドの断片またはセグメントである。機能的断片は、本明細書において開示される配列の保存的置換を含むことができる。
【0078】
いくつかの態様では、本明細書において記載されるポリペプチドは、本明細書において記載されるポリペプチドまたは分子の変異体であり得る。いくつかの態様では、変異体は保存的修飾変異体である。保存的置換変異体は、例えば、ネイティブヌクレオチド配列の突然変異によって得ることができる。本明細書において言及する「変異体」は、ネイティブまたは参照ポリペプチドに実質的に相同であるが、1つまたは複数の欠失、挿入、または置換が理由でネイティブまたは参照ポリペプチドのものと異なるアミノ酸配列を有するポリペプチドである。変異体ポリペプチドをコードするDNA配列は、ネイティブまたは参照DNA配列と比較した場合にヌクレオチドの1つまたは複数の付加、欠失、または置換を含むが、非変異体ポリペプチドの活性を保持する変異体タンパク質またはその断片をコードする配列を包含する。多種多様のPCRベースの部位特異的変異誘発アプローチが当技術分野において公知であり、当業者によって適用され得る。
【0079】
変異体のアミノ酸またはDNA配列は、ネイティブまたは参照配列に少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、またはそれ以上同一であり得る。ネイティブ配列と突然変異体配列の間の相同性の程度(同一性パーセント)は、例えば、ワールドワイドウェブでこの目的のために一般に用いられる自由に入手可能なコンピュータープログラム(例えば、デフォルト設定を用いるBLASTpまたはBLASTn)を使用して2つの配列を比較することによって、決定することができる。
【0080】
ネイティブアミノ酸配列の変化は、当業者に公知のいくつかの技法のいずれかによって達成することができる。例えば、ネイティブ配列の断片へのライゲーションを可能にする制限部位が隣接する突然変異体配列を含むオリゴヌクレオチドを合成することによって、突然変異を特定の遺伝子座に導入することができる。ライゲーションの後、得られた再構成配列は、望ましいアミノ酸挿入、置換、または欠失を有する類似体をコードする。あるいは、オリゴヌクレオチド指定部位特異的変異誘発手順を用いて、必要とされる置換、欠失、または挿入によって変化した特定のコドンを有する変化したヌクレオチド配列をもたらすことができる。そのような変化を施す技法は十分に確立されており、例えば、Walder et al. (Gene 42:133, 1986);Bauer et al. (Gene 37:73, 1985);Craik (BioTechniques, January 1985, 12-19);Smith et al. (Genetic Engineering: Principles and Methods, Plenum Press, 1981);ならびに米国特許第4,518,584号および第4,737,462号によって開示されるものが挙げられ、これらは、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。分子の酸化安定性を改善する、および異常な架橋を防止するために、ポリペプチドの適切なコンフォメーションを維持するのに関与しない任意のシステイン残基を一般にセリンで置換することもできる。逆に、ポリペプチドの安定性を改善するか、またはオリゴマー化を促進するために、システイン結合をポリペプチドに付加することができる。
【0081】
本明細書において使用する場合、用語「DNA」は、デオキシリボ核酸と定義される。用語「ポリヌクレオチド」は、本明細書において「核酸」と互換的に使用されて、ヌクレオシドのポリマーを示す。典型的には、ポリヌクレオチドは、ホスホジエステル結合によって結合しているDNAまたはRNAに天然に見られるヌクレオシド(例えば、アデノシン、チミジン、グアノシン、シチジン、ウリジン、デオキシアデノシン、デオキシチミジン、デオキシグアノシン、およびデオキシシチジン)から構成される。しかし、本用語は、天然に存在する核酸に見出されるかどうかを問わず、化学的または生物学的に修飾された塩基、修飾された骨格などを含むヌクレオシドまたはヌクレオシド類似体を含む分子を包含し、そのような分子は、ある特定の適用に好ましい可能性がある。本出願がポリヌクレオチドに言及する場合、DNA、RNAの両方、ならびにいずれの場合にも一本鎖と二本形態鎖の両方(および各一本鎖分子の相補体)が提供されることが理解されよう。本明細書において使用する場合、「ポリヌクレオチド配列」は、ポリヌクレオチド材料それ自体を、および/または特定の核酸を生化学的に特徴づける配列情報(すなわち、塩基の省略形として使用される文字の連続物)を指すことができる。本明細書において提示されるポリヌクレオチド配列は、別段指示がない限り、5’から3’の方向で提示される。
【0082】
本明細書において使用する場合、用語「機能的に連結される」は、要素が機能的に接続され、お互いに相互作用することができるような、互いに対する様々な核酸分子要素の配置を指す。そのような要素としては、非限定的に、プロモーター、エンハンサー、ポリアデニル化配列、1つまたは複数のイントロンおよび/またはエクソン、ならびに発現させる関心対象の遺伝子のコード配列を挙げることができる。核酸配列要素は、機能的に連結される場合、一緒に作用して互いの活性をモジュレートすることができ、最終的に、上記の配列によってコードされるもののいずれかを含めて、関心対象の遺伝子の発現のレベルに影響を与えることができる。
【0083】
本明細書において使用する場合、用語「ベクター」は、それが複製することができる細胞中への導入のために核酸配列を挿入することができる担体核酸分子を指す。核酸配列は「外因性」でもよく、これは、ベクターが導入されている細胞にとって核酸配列が外来性であること、または該配列が細胞中の配列と相同であるが、該配列が通常は見出されない、宿主細胞の核酸内の位置にあることを意味する。ベクターとしては、プラスミド、コスミド、ウイルス(バクテリオファージ、動物ウイルス、および植物ウイルス)、ならびに人工染色体(例えば、YAC)が挙げられる。当業者は、標準的な組換え技法によってベクターを構築する能力が十分に備わっているであろう(例えば、Maniatis et al., 1988およびAusubel et al., 1994を参照されたい。これらの両方とも参照により本明細書に組み入れられる)。さらに、本明細書において記載され、参照図に示される技法も効果的なベクター構築に関してためになる。
【0084】
用語「腫瘍溶解性HSV-1ベクター」は、標的細胞に感染すること、複製すること、およびHSV-1ビリオン中にパッケージングされることが可能な、HSV-1のゲノムの少なくとも一部に対応する遺伝子操作されたHSV-1ウイルスを指す。遺伝子操作されたウイルスは、操作されたウイルスが腫瘍細胞中で複製し、腫瘍溶解活性によって腫瘍細胞死滅させるようにウイルスを腫瘍溶解性にする、核酸の欠失およびまたは突然変異およびまたは挿入を含む。ウイルスは弱毒化されていてもよく、または弱毒化されていなくてもよい。ウイルスは、HSVウイルスゲノムと異なる導入遺伝子を送達してもよく、または送達しなくてもよい。一態様では、腫瘍溶解性HSV-1ベクターは、ウイルスにとって外来性のタンパク質を産生するための導入遺伝子を発現しない。
【0085】
本明細書において使用する場合、「UL21」はテグメントタンパク質UL21(例えば、ヒトアルファヘルペスウイルス1由来)を指す。UL21の配列は、HSV-1 UL21(NCBI遺伝子ID:2703372)ポリペプチド(例えば、NCBI参照配列YP_009137095.1)など、いくつかの種について公知である。UL21は、その天然に存在する変異体、分子、およびアレルを含めて、HSV-1 UL21を指すことができ、相同体、例えばHSV-2を指すことができる。
【0086】
本明細書において使用する場合、「UL22」は、外被糖タンパク質H(例えば、ヒトアルファヘルペスウイルス1由来)を指す。UL22の配列は、HSV-1 UL22(NCBI遺伝子ID:24271466)ポリペプチド(例えば、NCBI参照配列YP_009137096.1)など、いくつかの種について公知である。UL22は、その天然に存在する変異体、分子、およびアレルを含めて、HSV-1 UL22を指すことができ、相同体、例えばHSV-2を指すことができる。
【0087】
本明細書において使用する場合、「UL26」は、カプシド成熟プロテアーゼ(例えば、ヒトアルファヘルペスウイルス1由来)を指す。UL26の配列は、HSV-1 UL26(NCBI遺伝子ID:2703453)ポリペプチド(例えば、NCBI参照配列YP_ 009137100.1)など、いくつかの種について公知である。UL26は、その天然に存在する変異体、分子、およびアレルを含めて、HSV-1 UL26を指すことができ、相同体、例えばHSV-2を指すことができる。
【0088】
本明細書において使用する場合、「UL27」は、外被糖タンパク質B(例えば、ヒトアルファヘルペスウイルス1由来)を指す。UL27の配列は、HSV-1 UL27(NCBI遺伝子ID:24271469)ポリペプチド(例えば、NCBI参照配列YP_009137102.1)など、いくつかの種について公知である。UL27は、その天然に存在する変異体、分子、およびアレルを含めて、HSV-1 UL27を指すことができ、相同体、例えばHSV-2を指すことができる。
【0089】
本明細書において使用する場合、用語「プロモーター」は、それが機能的に連結される対応する核酸コード配列の転写を直接的かまたは間接的かのいずれかで調節する核酸配列を指す。プロモーターは、単独で機能して転写を調節するようにことができ、または、ある場合には、エンハンサーまたはサイレンサーなどの1つまたは複数の他の調節配列と協調して作用して、関心対象の遺伝子の転写を調節することができる。プロモーターはDNA調節配列を含み、調節配列は遺伝子に由来し、RNAポリメラーゼと結合することができ、下流(3’方向)のコード配列の転写を開始することができる。プロモーターは、一般に、RNA合成のための開始点を配置するように機能する配列を含む。これの最も公知の例はTATAボックスであるが、例えば、哺乳動物の末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ遺伝子のプロモーターおよびSV40後期遺伝子のプロモーターなどの、TATAボックスを欠くいくつかのプロモーターでは、開始点それ自体を覆う別の要素が開始場所を定めるのに役立つ。さらなるプロモーター要素は、転写開始の頻度を調節する。典型的には、これらは開始点の30~110bp上流の領域に位置するが、いくつかのプロモーターは、開始点の下流にも機能的要素を含むことが示されている。コード配列をプロモーター「の制御下」に置くために、選択されるプロモーターの「下流」に(すなわち、3’に)転写リーディングフレームの転写開始点の5’末端を配置することができる。「上流」のプロモーターは、DNAの転写を刺激し、コードされるRNAの発現を促進する。
【0090】
プロモーター要素間の間隔は柔軟であることが多く、その結果、要素が互いに対して反転または移動させられる場合に、プロモーター機能は保存される。使用されるプロモーターに応じて、個々の要素は、転写を活性化するように協同的または独立に機能することができる。本明細書において記載されるプロモーターは、「エンハンサー」とともに使用されても使用されなくてもよく、エンハンサーは、核酸配列の転写活性化に関与するシス作用性調節配列、例えば、本明細書において列挙される、遺伝子に対するもの、またはそれらの一部もしくは機能的同等物を指す。
【0091】
プロモーターは、コーティングセグメントおよび/またはエクソンの上流に位置する5’非コード配列を単離することによって得ることができるような、核酸配列と天然に関連しているものであり得る。そのようなプロモーターは、「内在性」と称することができる。同様に、エンハンサーは、核酸配列と天然に関係があり、その配列の下流または上流のいずれかに位置するものであり得る。あるいは、組換えまたは異種性プロモーターの制御下にコーディング核酸セグメントを配置することによって、ある特定の利点を得ることができ、組換えまたは異種性プロモーターは、通常はその天然環境において核酸配列と関係がないプロモーターを指す。組換えまたは異種性エンハンサーも通常はその天然環境において核酸配列と関係がないエンハンサーを指す。そのようなプロモーターまたはエンハンサーは、他の遺伝子のプロモーターまたはエンハンサー、および任意の他のウイルスまたは原核もしくは真核細胞から単離されたプロモーターまたはエンハンサー、ならびに天然に存在」しない、すなわち、異なる転写調節領域の異なる要素、および/または発現を変化させる突然変異を含むプロモーターまたはエンハンサーを含むことができる。例えば、組換えDNA構築で最も一般に使用されるプロモーターとしては、HCMV最初期プロモーター、ベータ-ラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)、ラクトースおよびトリプトファン(trp)プロモーターシステムが挙げられる。
【0092】
「遺伝子」または特定のタンパク質を「コードする配列」は、1つまたは複数の適切な調節配列の制御下に配置された場合に、インビトロまたはインビボで、転写され(DNAの場合)、ポリペプチドに翻訳される(mRNAの場合)核酸分子である。関心対象の遺伝子としては、決して限定されないが、真核生物のmRNA由来のcDNA、真核生物のDNA由来のゲノムDNA配列、さらには合成DNA配列を挙げることができる。転写終結配列は、通常、遺伝子配列に対して3’に位置する。典型的には、組換えウイルス中に挿入された遺伝子の転写を終結するために、ポリアデニル化シグナルが提供される。
【0093】
本明細書において使用する場合、用語「ポリペプチド」は、アミノ酸のポリマーを指す。用語「タンパク質」および「ポリペプチド」は、本明細書において互換的に使用される。ペプチドは比較的短いポリペプチドであり、典型的には約2から60アミノ酸の長さである。本明細書において使用されるポリペプチドは、典型的には、タンパク質で最も一般的に見られる20種のL-アミノ酸などのアミノ酸を含む。しかし、当技術分野において公知の他のアミノ酸および/またはアミノ酸類似体を使用することができる。例えば、化学的実体、例えば、炭水化物基、リン酸基、脂肪酸基、コンジュゲーション、官能化などのためのリンカーを付加することによって、ポリペプチド中のアミノ酸の1つまたは複数を修飾することができる。共有結合的または非共有結合的に結合した非ポリペプチド成分を有するポリペプチドは、依然として「ポリペプチド」と考えられる。例示的な修飾としては、グリコシル化およびパルミトイル化が挙げられる。ポリペプチドは、天然源から精製すること、組換えDNA技術を使用して生成すること、または従来の固相ペプチド合成などの化学的手段よって合成することなどができる。本明細書において使用する場合、用語「ポリペプチド配列」または「アミノ酸配列」は、ポリペプチド材料それ自体を、および/またはポリペプチドを生化学的に特徴づける配列情報(すなわち、アミノ酸名の省略形として使用される文字または3文字コードの連続物)を指すことができる。本明細書において提示されるポリペプチド配列は、別段指示がない限り、N末端からC末端の方向で提示される。
【0094】
用語「導入遺伝子」は、核酸配列が挿入される細胞で発現させられるポリペプチドまたはポリペプチドの一部をコードする特定の核酸配列を指す。用語「導入遺伝子」は、(1)細胞中に天然に見られない核酸配列(すなわち、異種性核酸配列);(2)それが挿入された細胞中に天然に見られる核酸配列の変異型である核酸配列;(3)それが挿入された細胞中に天然に存在する、同じである(すなわち、相同である)かもしくは類似した核酸配列のさらなるコピーを加えるように働く核酸配列;または(4)それが挿入された細胞中で発現が誘導される、サイレントな天然に存在するかもしくは相同な核酸配列を含むことが意図される。「変異型」または「改変核酸」または「改変ヌクレオチド」配列は、野生型または天然に存在する配列と異なる1つまたは複数のヌクレオチドを含む配列を意味し、すなわち、突然変異体の核酸配列は、1つまたは複数のヌクレオチド置換、欠失、および/または挿入を含む。ある場合には、関心対象の遺伝子は、導入遺伝子産物が細胞から分泌され得るように、リーダーペプチドまたはシグナル配列をコードする配列含むこともできる。
【0095】
本明細書において使用する場合、用語「抗体試薬」は、少なくとも1つの免疫グロブリン可変ドメインまたは免疫グロブリン可変ドメイン配列を含み、所与の抗原に特異的に結合するポリペプチドを指す。抗体試薬は、抗体または抗体の抗原結合ドメインを含むポリペプチドを含むことができる。局面のいずれかのいくつかの態様では、抗体試薬は、モノクローナル抗体またはモノクローナル抗体の抗原結合ドメインを含むポリペプチドを含むことができる。例えば、抗体は、重(H)鎖可変領域(本明細書においてVHと省略する)および軽(L)鎖可変領域(本明細書においてVLと省略する)を含むことができる。別の例では、抗体は、2つの重(H)鎖可変領域および2つの軽(L)鎖可変領域を含む。用語「抗体試薬」は、抗体の抗原結合性断片(例えば、単鎖抗体、FabおよびsFab断片、F(ab')2、Fd断片、Fv断片、scFv、CDR、およびドメイン抗体(dAb)断片(例えば、de Wildt et al., Eur J. Immunol. 1996; 26(3):629-39を参照されたい;これは、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる))、ならびに完全抗体を包含する。抗体は、IgA、IgG、IgE、IgD、またはIgM(ならびにこれらのサブタイプおよび組み合わせ)の構造的特徴を有し得る。抗体は、マウス、ウサギ、ブタ、ラット、ならびに霊長類(ヒトおよび非ヒト霊長類)ならびに霊長類化抗体を含めて、任意の供給源由来であり得る。抗体はミディボディ、ナノボディ、ヒト化抗体、キメラ抗体なども含む。
【0096】
本明細書において使用する場合、用語「腫瘍溶解活性」は、同じ条件下の正常細胞に対して感知できるかまたは有意ないかなる有害効果もなしで、腫瘍細胞に対して発揮される、インビトロおよび/またはインビボにおける細胞傷害性効果を指す。インビトロ条件化の細胞傷害性効果は、先行技術において公知であるような様々な手段によって、例えば、死細胞に対する選択的染色剤での染色によって、DNA合成の阻害によって、またはアポトーシスによって検出される。インビボ条件化の細胞傷害性効果の検出は、当技術分野において公知の方法によって行われる。
【0097】
本明細書において使用する場合、分子の「生物学的に活性な」部分は、より大きな分子と同様の機能を果たす、より大きな分子の部分を指す。単に非限定例として、プロモーターの生物学的に活性な部分は、たとえわずかであるとしても遺伝子発現に影響を及ぼす能力を保持する、プロモーターの任意の部分である。同様に、タンパク質の生物学的に活性な部分は、たとえわずかであるとしても完全長タンパク質の1つまたは複数の生物学的機能(例えば、別の分子との結合、リン酸化など)を果たす能力を保持する、タンパク質の任意の部分である。
【0098】
本明細書において使用する場合、用語「投与すること」は、望ましい部位における剤の少なくとも部分的な送達をもたらす方法または経路による、本明細書において開示される治療的または薬学的組成物の対象への配置を指す。本明細書において開示される剤を含む薬学的組成物は、対象において効果的処置をもたらす任意の適切な経路によって投与することができる。
【0099】
用語「統計学的に有意な」または「有意に」は統計的有意性を指し、一般に、2標準偏差(2SD)以上の差を意味する。
【0100】
操作実施例以外、または他で指示される場合以外、本明細書において使用される成分または反応条件の数量を表すすべての数は、すべての場合で、用語「約」によって修飾されると理解されるべきである。用語「約」は、パーセンテージに関連して使用される場合、±1%を意味し得る。
【0101】
本明細書において使用する場合、用語「含む」は、提示される定義された要素に加えて他の要素も存在し得ることを意味する。「含む」の使用は、限定ではなく包含を示す。用語「からなる」は、本明細書において記載される組成物、方法、およびそれらのそれぞれの構成成分を指し、これは、態様のその説明において列挙されていないいかなるも要素も除外する。本明細書において使用する場合、用語「から本質的になる」は、所与の態様に必要とされる要素を指す。本用語は、技術のその態様の基本的および新規なまたは機能的な特性に実質的に影響を与えないさらなる要素の存在を許可する。
【0102】
単数形の用語「a」、「an」、および「the」は、文脈において別段明示されない限り、複数の指示物を含む。同様に、単語「または」は、文脈において別段明示されない限り、「および」を含むことが意図される。本明細書において記載されるものと同様または均等な方法および材料を本開示の実施または試験で使用することができるが、適切な方法および材料を以下に記載する。省略形「例えば(e.g.)」はラテン語の例えば(exempli gratia)に由来し、非限定例を示すために本明細書において使用される。したがって、省略形「例えば(e.g.)は、用語「例えば(for example)と同義である。
【0103】
いくつかの態様では、本出願のある特定の態様を説明および主張するために使用される成分、性質、例えば分子量、反応条件などの数量を表す数は、場合によっては用語「約」によって修飾されるものとして理解されたい。したがって、いくつかの態様では、記述された説明および添付の特許請求の範囲で記載される数的パラメーターは、特定の態様が得ようと試みる望ましい性質に応じて変動し得る近似値である。いくつかの態様では、数的パラメーターは、報告された有効数字の数に照らして、および通常の丸め技法を適用することによって、解釈されるべきである。本出願のいくつかの態様の広い範囲を記載する数値範囲およびパラメーターは近似値であるにもかかわらず、特定例で記載される数値は、実行可能な程度に正確に報告される。
【0104】
前述の予備的な説明および定義を念頭に置いて、本明細書において記載される本発明のベクター、組成物および方法の起源および開発の状況を提供するために、さらなる背景を本明細書において以下に提供する。
【図面の簡単な説明】
【0105】
例示的な態様を参照図に図示する。本明細書において開示される態様および図は、限定的ではなく例示的であるとみなされることが意図される。
図1】QREOF-lacZのゲノムの概略図を示す。ULおよびUSは、それぞれ、HSV-1ゲノムのユニークな長い領域およびユニークな短い領域を表し、これらは、それらの対応する逆方向反復領域(白抜きのボックス)が隣接している。ICP0コード配列とtetR(黒色のボックス)およびICP0配列が隣接するウサギβ-グロビン遺伝子のイントロンII(斜めの縞模様のボックス)をコードするDNA配列との置き換えをHSV-1ゲノムの図解の上に示す。ICP5TOは、tetOを有するHSV-1 ICP5プロモーターの制御下にあるICP5をコードするHSV-1 UL19遺伝子を示す。UL26遺伝子およびUL27遺伝子の遺伝子間領域に挿入された、拡大されたDNA断は、改変HSV-2 ICP0プロモーター(クロスハッチ模様の枠)の制御下にあるlacZ遺伝子をコードする。
図2】60mmディッシュあたり7.5×10e5細胞で播種したH1299細胞を示す。ドキシサイクリンの存在または非存在下で、細胞播種から48時間後に0.05PFU/ディッシュのMOIでQREOF-lacZを細胞に感染させた。感染から48時間後にX-Galで感染細胞を染色し、これを写真に撮った。
図3】1.5×10e6細胞/ディッシュで播種したU2OS細胞を示す。播種から20時間後に、リポフェクタミン2000によって、細胞の2連ディッシュを5ug/ディッシュのpICP6-eGFPまたは5ug/ディッシュのpQUL2627-TGF-DNのいずれかでトランスフェクトした。トランスフェクションから70時間後に、細胞抽出物を調製した。トランスフェクトした細胞の抽出物およびトランスフェクトした細胞から収集した培地中のタンパク質をSDS-PAGEで分離し、続いて、ウサギ抗TGF-β1抗体(Abcam, ab179695)で免疫ブロットを行った。
図4】mmTGF-β2-7MによるTGF-β1シグナル伝達の遮断のU2OS細胞の増殖に対する効果を示す。1.5×10e6細胞/ディッシュでU2OS細胞を播種した。播種から20時間後に、リポフェクタミン2000によって、細胞の3連ディッシュを5ug/ディッシュのpICP6-EGFPまたは5ug/ディッシュのpQUL2627-TGFDNのいずれかでトランスフェクトした。トランスフェクションから76時間後に細胞を回収した。トリパンブルー排除によって生細胞を数え、平均±SEMとして表した、ディッシュあたりの生細胞の数としてグラフ化した。
図5】QREOF-DNTを感染させたU2OS細胞におけるmmTGF-β2-7Mの発現を示す。ドキシサイクリンの存在下で、3連のU2OS細胞をモック感染させたか、または3PFU/細胞のMOIでQREOF-DNTもしくはQREOF-lacZに感染させた。感染から18時間後に感染細胞の抽出物を調製した。モック感染細胞の抽出物および感染細胞の抽出物中のタンパク質をSDS-PAGEで分離し、続いて、HSV-1 ICP27に対するモノクローナル抗体(Santa Cruz)またはウサギ抗TGF-β1抗体で免疫ブロットを行った。
図6】QREO5Fゲノムの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0106】
本発明の説明
腫瘍溶解性ウイルスは、宿主癌細胞で優先的に複製する遺伝子改変ウイルスであり、新しいウイルスの産生および最終的に細胞死につながる。単純ヘルペスウイルス(HSV)腫瘍溶解剤としてのいくつかのユニークな性質を有する。これは、幅広い細胞タイプに感染することができ、短い複製サイクル(9~18時間)を有する。腫瘍溶解剤としてのHSV-1の複製条件的系統の使用は、悪性神経膠腫の処置について最初に報告された。それ以来、その治療有効性を広げ、腫瘍細胞におけるウイルスの複製特異性を高めようとして、様々な試みが行われた。しかし、当然のことながら、正常細胞においてウイルス複製を損なう遺伝子の欠失は、標的腫瘍細胞に対するウイルスの腫瘍溶解活性の顕著な低下にもつながる。現在、腫瘍細胞のみを死滅させることができ、一方で正常細胞をインタクトなままにする腫瘍溶解性ウイルスは利用可能ではない。したがって、現行の腫瘍溶解性ウイルスの治療用量は著しく制限されている。複製を薬理学的に堅固に制御し、調整することができる腫瘍溶解性ウイルスが利用可能であることによって、安全性および治療有効性が大きく高められるであろう。そのような調節可能腫瘍溶解性ウイルスは、隣接する組織および離れた組織における制御されていない複製の危険性ならびに腫瘍が排除された後の標的領域における望ましくない後代ウイルスの過負荷を最小限にするであろう。この調節性の特色によって、万一有害作用が検出された場合に、ウイルスの腫瘍溶解活性がすばやくシャットダウンされることが可能になるであろう。
【0107】
腫瘍溶解性HSV
HSVは上皮細胞および線維芽細胞で複製し、感染した個体の感覚神経節内の神経細胞体において生涯の潜伏感染を確立する。増殖性感染の間、HSV遺伝子は、その発現の時間的順序に基づいて3つの主要なクラス:最初期(IE)、初期(E)、および後期(L)に分類される(Roizman, 2001)。本発明に直接関連するHSV-1ウイルスタンパク質は、最初期調節タンパク質、すなわちICP0、およびウイルス主要カプシドタンパク質のICP5またはVP5である。増殖性感染に必須ではないが、ICP0は、正常細胞における感染の低多重度でのウイルスの効率的な遺伝子発現および複製、ならびに潜伏感染からの効率的な再活性化に必要とされる(Cai and Schaffer, 1989;Leib et al., 1989;Yao and Schaffer, 1995)。ICP0は、静止状態の細胞においてウイルスmRNAの翻訳を刺激するのに必要とされ(Walsh and Mohr, 2004)、HSV感染に対する宿主の先天的抗ウイルス応答への対抗において基本的役割を果たす。手短に述べると、これは、ウイルス転写に対するIFN誘導性核遮断(nuclear block)を防止し、ウイルス感染に対するTLR2/TLR9誘導性炎症性サイトカイン応答をダウンレギュレートし、NF-κBシグナル伝達経路のTNF-α媒介性活性化を抑制し、ウイルス感染に対するDNA損傷応答を妨げる(Lanfranca et al., 2014)。腫瘍細胞が、様々な細胞経路、例えば、DNA修復、インターフェロンシグナル伝達、および翻訳調節が損なわれていること(Barber, 2015;Critchley-Thorne et al., 2009;Kastan and Bartek, 2004;Li and Chen, 2018;Mohr, 2005;Zitvogel et al., 2015)を考えれば、ICP0欠失突然変異体が、正常細胞、特に、静止状態の細胞および最終分化細胞よりも癌細胞ではるかに効率的に複製することは驚くべきことではない。ICP0突然変異体の腫瘍溶解性能は、YaoおよびSchaffer(Yao and Schaffer, 1995)によって最初に示され、彼らは、ヒト骨肉腫細胞(U2OS)におけるICP0ヌル突然変異体のプラーク形成効率は、非腫瘍形成性アフリカミドリザル腎臓細胞(Vero)よりも100~200倍高いことを示した。U2OS細胞のインターフェロン遺伝子(STING)シグナル伝達経路の刺激物質の欠損がICP0ヌル突然変異体の増殖を効率的に支持するその実証された能力につながることが最近示された(Deschamps and Kalamvoki, 2017)。
【0108】
Dr. Feng Yaoによって発明されたT-RExTM遺伝子スイッチ技術(Thermo Fisher/Invitrogen, Carlsbad, CA)および自己切断リボザイムを使用して、HSV-1 ICP0遺伝子がテトラサイクリンリプレッサー(tetR)をコードするDNA配列に置き換えられている最初の調節可能腫瘍溶解性ウイルス、すなわちKTR27(参照によりその全体が本明細書に組み入れられる、米国特許第8236,941号)が作出され、一方で必須のHSV-1 ICP27遺伝子は、tetOを有するICP27プロモーターおよびICP27コード配列の5’非翻訳領域の自己切断リボザイムによって制御されている。KTR27-Fと名付けられたKTR27由来融合性ウイルスの最近のDNA配列分析によって、ICP0遺伝子の両方のコピーの欠失に加えて、KTR27-FウイルスからHSV-1 ICP34.5遺伝子の両方のコピーも欠失していることが示された。さらに、ICP34.5遺伝子特異的プライマーを用いたKTR27ウイルスのDNAのPCR分析により、KTR27-Fのように、KTR27はICP0遺伝子およびICP34.5遺伝子をコードしないことが明らかになった。ICP34.5遺伝子は、HSV-1ゲノムのユニークな長い配列に隣接するHSV-1ゲノムの逆方向反復領域において、ICP0遺伝子に対して5’に位置する。様々なHSV-1腫瘍溶解性ウイルスは、進行期黒色腫の処置について最近FDAによって承認されたタリモジーン・ラハーパレプベック(T-VEC)(Rehman et al., 2016)を含めて、ICP34.5遺伝子の欠失に基づく(Aghi and Martuza, 2005;Kaur et al., 2012;Lawler et al., 2017)。
【0109】
KTR27のtet依存的ウイルス複製および腫瘍選択性プロファイル、ならびにより高度のtet依存的ウイルス複製を達成するためにKTR27の構築で用いられる自己切断リボザイムは、ICP27の発現が至適ではないので、癌細胞おけるウイルス複製を有意に制限するという概念に基づいて、tetO含有VP5プロモーターの制御下にある後期HSV-1主要カプシドタンパク質VP5をコードする、新しいICP0ヌル突然変異体ベースのtetR発現腫瘍溶解性ウイルスQREO5が最近開発された。VP5は後期ウイルス遺伝子産物であり、その発現はウイルスのIE遺伝子の発現に依存しているので、tetOを有するVP5プロモーターの後期動態は、IE ICP0プロモーターから発現されるtetRによって、tetOを有するICP27プロモーターの制御下にあるICP27のもよりもストリンジェントなVP5発現の制御を可能にするであろうと仮定した。実際に、QREO5は、感染したH1299細胞およびVero細胞において、KTR27よりも有意に優れたtet依存的ウイルス複製を示す。さらに、QREO5ゲノムは自己切断リボザイムを含まず、野生型ICP34.5遺伝子をコードするので、これは、Vero細胞およびH1299細胞おいて、それぞれ、KTR27よりも100および450倍効率的に複製する。
【0110】
HSV-1は、事実上すべての脊椎動物細胞に感染することができるヒト神経向性ウイルスである。自然感染は、溶解性の複製サイクルに従うか、または通常、DNAがエピソーム状態で無期限に維持される末梢性神経節おいて、潜伏感染状態を確立するかのいずれかである。HSV-1は、約152キロベースの長さの二本鎖の直鎖状DNAゲノムを含み、これはMcGeochによって完全にシーケンスされている(McGeoch et al., J. Gen. Virol. 69: 1531 (1988);McGeoch et al., Nucleic Acids Res 14: 1727 (1986);McGeoch et al., J. Mol. Biol. 181: 1 (1985);Perry and McGeoch, J. Gen. Virol. 69:2831 (1988);Szpara ML et al., J Virol. 2010, 84:5303;Macdonald SJ et al., J Virol. 2012, 86:6371)。DNA複製およびビリオンアセンブリーは感染細胞の核で生じる。感染の後期に、コンカテマーのウイルスDNAは、ビリオン中にパッケージングされるゲノム長分子に切断される。CNSでは、単純ヘルペスウイルスは経ニューロン的に伝播し、次に、逆行性または順行性のいずれかで核への軸索内輸送が続き、核で複製が生じる。
【0111】
したがって、本明細書において記載される一局面は、組換えDNAを含む腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス(HSV)であって、該組換えDNAが、(a)5’非翻訳領域と、TATA要素を含むVP5プロモーターに機能的に連結されているHSV-1またはHSV-2のVP5遺伝子とを含む、遺伝子;(b)TATA要素に対して3’の、6~24ヌクレオチドの間に位置するテトラサイクリンオペレーター配列であって、VP5遺伝子がテトラサイクリンオペレーター配列に対して3’にある、テトラサイクリンオペレーター配列;(c)HSV最初期プロモーターに機能的に連結されているテトラサイクリンリプレッサーをコードし、ICP0遺伝子座に位置する、遺伝子配列;(d)野生型と比較してシンシチウム形成を増大させる変異体遺伝子であって、HSV-1またはHSV-2の変異体遺伝子が、糖タンパク質K(gK)変異体、糖タンパク質B(gB)変異体、UL24変異体、およびUL20遺伝子変異体からなる群より選択される、変異体遺伝子;(e)機能的ICP34.5タンパク質をコードする遺伝子配列;ならびに(f)改変HSVプロモーターに機能的に連結されている遺伝子配列であって、遺伝子がUL26遺伝子およびUL27遺伝子の遺伝子間領域に位置する、遺伝子配列を含み、該腫瘍溶解性HSVが、機能的ICP0をコードせず、かつVP5の5’非翻訳領域に位置するリボザイム配列を含まない、腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルスを提供する。
【0112】
本明細書において記載される一局面は、組換えDNAを含む腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス(HSV)であって、該組換えDNAが、(a)5’非翻訳領域と、TATA要素を含むVP5プロモーターに機能的に連結されているHSV-1またはHSV-2のVP5遺伝子とを含む、遺伝子;(b)TATA要素に対して3’の、6~24ヌクレオチドの間に位置するテトラサイクリンオペレーター配列であって、VP5遺伝子がテトラサイクリンオペレーター配列に対して3’にある、テトラサイクリンオペレーター配列;(c)HSV最初期プロモーターに機能的に連結されているテトラサイクリンリプレッサーをコードし、ICP0遺伝子座に位置する、遺伝子配列;(d)野生型と比較してシンシチウム形成を増大させる変異体遺伝子であって、HSV-1またはHSV-2の変異体遺伝子が、糖タンパク質K(gK)変異体、糖タンパク質B(gB)変異体、UL24変異体、およびUL20遺伝子変異体からなる群より選択される、変異体遺伝子;(e)機能的ICP34.5タンパク質をコードする遺伝子配列;ならびに(f)改変HSVプロモーターに機能的に連結されている遺伝子配列であって、遺伝子がUL21遺伝子およびUL22遺伝子の遺伝子間領域に位置する、遺伝子配列を含み、該腫瘍溶解性HSVが、機能的ICP0をコードせず、かつVP5の5’非翻訳領域に位置するリボザイム配列を含まない、腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルスを提供する。
【0113】
本明細書において記載される一局面は、組換えDNAを含む腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス(HSV)であって、該組換えDNAが、(a)5’非翻訳領域と、TATA要素を含むVP5プロモーターに機能的に連結されているHSV-1またはHSV-2のVP5遺伝子とを含む、遺伝子;(b)TATA要素に対して3’の、6~24ヌクレオチドの間に位置するテトラサイクリンオペレーター配列であって、VP5遺伝子がテトラサイクリンオペレーター配列に対して3’にある、テトラサイクリンオペレーター配列;(c)HSV最初期プロモーターに機能的に連結されているテトラサイクリンリプレッサーをコードし、ICP0遺伝子座に位置する、遺伝子配列;(d)野生型と比較してシンシチウム形成を増大させる変異体遺伝子であって、HSV-1またはHSV-2の変異体遺伝子が、糖タンパク質K(gK)変異体、糖タンパク質B(gB)変異体、UL24変異体、およびUL20遺伝子変異体からなる群より選択される、変異体遺伝子;(e)機能的ICP34.5タンパク質をコードする遺伝子配列;ならびに(f)改変HSVプロモーターに機能的に連結されている遺伝子配列であって、遺伝子がUL21遺伝子、UL22遺伝子、UL26遺伝子およびUL27遺伝子の遺伝子間領域に位置する、遺伝子配列を含み、該腫瘍溶解性HSVが、機能的ICP0をコードせず、かつVP5の5’非翻訳領域に位置するリボザイム配列を含まない、腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルスを提供する。
【0114】
本明細書において記載される別の局面は、組換えDNAを含む腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス(HSV)であって、該組換えDNAが、(a)5’非翻訳領域と、TATA要素を含むVP5プロモーターに機能的に連結されているHSV-1またはHSV-2のVP5遺伝子とを含む、遺伝子;(b)TATA要素に対して3’の、6~24ヌクレオチドの間に位置するテトラサイクリンオペレーター配列であって、VP5遺伝子がテトラサイクリンオペレーター配列に対して3’にある、テトラサイクリンオペレーター配列;(c)HSV最初期プロモーターに機能的に連結されているテトラサイクリンリプレッサーをコードし、ICP0遺伝子座に位置する、遺伝子配列;(d)野生型と比較してシンシチウム形成を増大させる変異体遺伝子であって、HSV-1またはHSV-2の変異体遺伝子が、糖タンパク質K(gK)変異体、糖タンパク質B(gB)変異体、UL24変異体、およびUL20遺伝子変異体からなる群より選択される、変異体遺伝子;(e)機能的ICP34.5タンパク質をコードする遺伝子配列;ならびに(f)改変HSV-2最初期プロモーターに機能的に連結されているドミナントネガティブTGF-β突然変異体配列であって、遺伝子がUL26遺伝子およびUL27遺伝子の遺伝子間領域に位置する、ドミナントネガティブTGF-β突然変異体配列を含み、該腫瘍溶解性HSVが、機能的ICP0をコードせず、かつVP5の5’非翻訳領域に位置するリボザイム配列を含まない、腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルスを提供する。
【0115】
本明細書において記載される別の局面は、組換えDNAを含む腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス(HSV)であって、該組換えDNAが、(a)5’非翻訳領域と、TATA要素を含むVP5プロモーターに機能的に連結されているHSV-1またはHSV-2のVP5遺伝子とを含む、遺伝子;(b)TATA要素に対して3’の、6~24ヌクレオチドの間に位置するテトラサイクリンオペレーター配列であって、VP5遺伝子がテトラサイクリンオペレーター配列に対して3’にある、テトラサイクリンオペレーター配列;(c)HSV最初期プロモーターに機能的に連結されているテトラサイクリンリプレッサーをコードし、ICP0遺伝子座に位置する、遺伝子配列;(d)野生型と比較してシンシチウム形成を増大させる変異体遺伝子であって、HSV-1またはHSV-2の変異体遺伝子が、糖タンパク質K(gK)変異体、糖タンパク質B(gB)変異体、UL24変異体、およびUL20遺伝子変異体からなる群より選択される、変異体遺伝子;(e)機能的ICP34.5タンパク質をコードする遺伝子配列;ならびに(f)改変HSV-2最初期プロモーターに機能的に連結されているドミナントネガティブTGF-β突然変異体配列であって、遺伝子がUL21遺伝子およびUL22遺伝子の遺伝子間領域に位置する、ドミナントネガティブTGF-β突然変異体配列を含み、該腫瘍溶解性HSVが、機能的ICP0をコードせず、かつVP5の5’非翻訳領域に位置するリボザイム配列を含まない、腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルスを提供する。
【0116】
本明細書において記載される別の局面は、組換えDNAを含む腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス(HSV)であって、該組換えDNAが、(a)5’非翻訳領域と、TATA要素を含むVP5プロモーターに機能的に連結されているHSV-1またはHSV-2のVP5遺伝子とを含む、遺伝子;(b)TATA要素に対して3’の、6~24ヌクレオチドの間に位置するテトラサイクリンオペレーター配列であって、VP5遺伝子がテトラサイクリンオペレーター配列に対して3’にある、テトラサイクリンオペレーター配列;(c)HSV最初期プロモーターに機能的に連結されているテトラサイクリンリプレッサーをコードし、ICP0遺伝子座に位置する、遺伝子配列;(d)野生型と比較してシンシチウム形成を増大させる変異体遺伝子であって、HSV-1またはHSV-2の変異体遺伝子が、糖タンパク質K(gK)変異体、糖タンパク質B(gB)変異体、UL24変異体、およびUL20遺伝子変異体からなる群より選択される、変異体遺伝子;(e)機能的ICP34.5タンパク質をコードする遺伝子配列;ならびに(f)改変HSV-2最初期プロモーターに機能的に連結されているドミナントネガティブTGF-β突然変異体配列であって、遺伝子がUL21遺伝子、UL22遺伝子、UL26遺伝子およびUL27遺伝子の遺伝子間領域に位置する、ドミナントネガティブTGF-β突然変異体配列を含み、該腫瘍溶解性HSVが、機能的ICP0をコードせず、かつVP5の5’非翻訳領域に位置するリボザイム配列を含まない、腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルスを提供する。
【0117】
本明細書において記載される腫瘍溶解性ウイルスの際立った特徴は、ウイルスゲノムが機能的ICP34.5をコードする遺伝子配列を発現することである。感染細胞タンパク質34.5(ICP34.5)は、ウイルス、例えば単純ヘルペスウイルスにおいてγ34.5遺伝子によって発現されるタンパク質(例えば、遺伝子産物)である。ICP34.5は、HSV神経毒性因子のうちの1つである(Chou J, Kern ER, Whitley RJ, and Roizman B, Science, 1990)。ICP34.5の機能のうちの1つは、ウイルス感染に対する細胞のストレス応答を遮断すること、すなわち、二本鎖RNA依存性プロテインキナーゼPKR媒介性抗ウイルス応答を遮断することである(Agarwalla, P.K., et al. Method in Mol. Bio., 2012)。
【0118】
本明細書において記載される腫瘍溶解性ウイルスは、ICP0ヌルウイルスである。感染細胞ポリペプチド0(ICP0)は、HSV-1 α0遺伝子によってコードされるタンパク質である。ICP0はウイルスの遺伝子発現の最初期相の間に生成される。ICP0は、合成され、感染宿主細胞の核に輸送され、ここで、ウイルス遺伝子からの転写を促進し、核および細胞質の細胞構造、例えば微小管ネットワークを破壊し、宿主遺伝子の発現を変化させる。当業者は、ICP0遺伝子産物が欠失しているかかどうか、またはウイルスがこの遺伝子産物の機能的形態を発現しないかどうかを、それぞれ、ウイルスゲノム中の該遺伝子の存在もしくは遺伝子産物の発現を検出するためにPCRベースのアッセイを使用して、またはその機能を評価するために機能的アッセイを使用して、決定することができる。
【0119】
一態様では、これらの遺伝子産物をコードする遺伝子は、遺伝子産物の適切な発現を阻害する突然変異、例えば不活性化突然変異を含む。例えば、遺伝子は、遺伝子産物の適切な折りたたみ、発現、機能などを阻害する遺伝子産物の突然変異をコードすることができる。本明細書において使用する場合、用語「不活性化突然変異」は、遺伝子に対する突然変異または変化であって、その遺伝子の発現が有意に低下するか、または遺伝子産物を非機能的にするかもしくは機能する能力が有意に低下する突然変異または変化を広く意味することが意図される。用語「遺伝子」は、別段指示がない限り、遺伝子産物をコードする領域とその遺伝子に対する調節領域、例えば、プロモーターまたはエンハンサーの両方を包含する。
【0120】
そのような変化を達成するための方法は、以下を含む:(a)遺伝子の産物の発現を破壊するための任意の方法、または(b)発現遺伝子を非機能的にするための任意の方法。挿入、欠失、および/または塩基変更によって、遺伝子のコード領域またはそのプロモーター配列を変化させることを含めて、遺伝子の発現を破壊するための多数の方法が公知である(Roizman, B. and Jenkins, F. J., Science 229: 1208-1214 (1985)を参照されたい)。
【0121】
本発明のDNAの必須の特色は、TATA要素を有するプロモーターに機能的に連結されている、ウイルス複製に必要とされる遺伝子の存在である。tetオペレーター配列は、プロモーターのTATA要素の最後のヌクレオチドに対して3'であり、遺伝子に対して5'である6~24ヌクレオチドの間に位置する。tetリプレッサーがオペレーター配列に結合する強度は、2~20、好ましくは、1~3または10~13個のヌクレオチドの配列によって連結した2つのop2リプレッサー結合部位(それぞれのそのような部位は、ヌクレオチド配列:
を有する)を含むオペレーターの形態を使用することによって、増強される。リプレッサーがこのオペレーターに結合している場合、関連する遺伝子の転写が、ほんの少ししか、または全く生じないであろう。これらの特性を有するDNAが、テトラサイクリンリプレッサーも発現する細胞中に存在する場合、遺伝子の転写は、オペレーターへのリプレッサーの結合によって遮断され、ウイルスの複製は生じないであろう。しかし、テトラサイクリンが例えば導入されている場合、テトラサイクリンがリプレッサーに結合し、リプレッサーをオペレーターから解離させると考えられ、ウイルス複製が進行すると考えられる。
【0122】
増殖性感染の間、HSVの遺伝子発現は、発現の時間的順序に基づいて3つの主要なクラス:最初期(α)、初期(β)、および後期(γ)に分類され、後期遺伝子は2つの群、γlおよびγ2にさらに分けられる。最初期遺伝子の発現はウイルスタンパク質のデノボ合成を必要とせず、ウイルスDNAが核に進入する場合に、細胞の転写因子とともにビリオン関連タンパク質VP16によって活性化される。最初期遺伝子のタンパク質産物は感染細胞ポリペプチドICPO、ICP4、ICP22、ICP27、およびICP47と呼ばれ、tetリプレッサー(tetR)の発現を指示するのに好ましくは使用されるのは、これらの遺伝子のプロモーターである。ウイルス複製に必要とされる遺伝子の発現はtetO含有プロモーターの制御下にあり、これらの必須遺伝子は、最初期、初期、または後期遺伝子、例えば、ICP4、ICP27、ICP8、UL9、gD、およびVP5であり得る。一態様では、tetRはSEQ ID NO:9の配列を有する。
【0123】
ICP0は、潜伏感染状態からのHSVの再活性化の増強において主要な役割を果たし、感染の低多重度時にウイルスに有意な増殖優位性を与える。ICP4は、HSV-1の主要な転写調節タンパク質であり、これは、ウイルスの初期および後期遺伝子の発現を活性化する。ICP27は増殖性ウイルス感染に必須であり、効率的なウイルスDNA複製、ならびにウイルスのβ遺伝子およびγ1遺伝子のサブセットならびにウイルスのγ2遺伝子の至適な発現に必要とされる。HSV感染の間のICP47の機能は、感染細胞の表面における主要組織適合抗原複合体(MHC)クラスIの発現をダウンレギュレートすることであるように思われる。
【0124】
組換えDNAは、テトラサイクリンリプレッサーをコードする少なくとも1つの、好ましくは少なくとも2つの配列を含むこともでき、これらの配列の発現は最初期プロモーター、好ましくはICP0またはICP4の制御下にある。HSV ICP0、ICP4およびICP27プロモーターの配列、およびこれらが内因的に制御する調節が当技術分野において周知である遺伝子の配列(Perry, et al., J. Gen. Virol. 67:2365-2380 (1986);McGeoch et al., J. Gen. Virol. 72:3057-3075 (1991);McGeoch et al., Nucl. Acid Res. 14:1727-1745 (1986))、ならびにこれらの要素を含むウイルスベクターを作製するための手順は以前に記載されている(米国特許出願公開第2005-0266564号を参照されたい)。
【0125】
これらのプロモーターは遺伝子発現の促進において非常に活性的であるだけでなく、これらはまた、HSV-1が細胞に感染すると放出されるトランスアクチベーターであるVP16によって特異的に誘導される。したがって、ICP0プロモーターからの転写は、リプレッサーが、ウイルス複製をシャットダウンするために最も必要とされる場合に、特に高い。いったん適切なDNAコンストラクトが生成されれば、当技術分野において周知の方法を使用して、これをHSV-1ウイルスに組み込むことができる。1つの適切な手順はUS2005-0266564に記載されているが、当技術分野において公知の他の方法を用いることもできる。
【0126】
(f)において遺伝子発現を駆動するために本発明者で利用することができるさらなるプロモーターとしては、限定されないが、改変HSV最初期プロモーター(例えば、HSV ICPO、ICP4、ICP27、ICP22、およびICP47プロモーター/調節配列)、HCMV最初期プロモーター(例えば、pWRG7128(Roy et al, Vaccine 19, 764-778, 2001)、ならびにWO95/20660で言及されているpBC12/CMVおよびpJW4303;これらは、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)、またはヒト伸長因子-1アルファ(EF-1アルファ)プロモーターが挙げられる。これらのプロモーターは当技術分野において公知であり、当業者は、使用されるこれらのプロモーターの配列を特定することができるであろう。一態様では、(f)のプロモーターは、tetオペレーターを含むHSV-2最初期プロモーターである。
【0127】
様々な態様では、変異体遺伝子は、遺伝子の野生型配列から逸脱する少なくとも1つのアミノ酸変化を含む。一態様では、本明細書において記載される腫瘍溶解性HSVは、少なくとも1つの変異体遺伝子中に2つ以上のアミノ酸置換を含むことができる。少なくとも2つのアミノ酸置換は同じ遺伝子中に見出すことができ、例えば、gK変異体遺伝子は少なくとも2つのアミノ酸置換を含む。あるいは、少なくとも2つのアミノ酸置換は少なくとも2つの異なる遺伝子中に見出すことができ、例えば、gK変異体遺伝子およびUL24変異体遺伝子は、それぞれ、少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。
【0128】
SEQ ID NO:2はgKをコードするアミノ酸配列である(KOS系統)。
【0129】
本明細書において記載される腫瘍溶解性ウイルスの別の際立った特徴は、ウイルスのゲノム配列が、例えばVP5の5’非翻訳領域にリボザイム配列を含まないことである。リボザイムは、タンパク質酵素と同様の様式で生化学反応を触媒することができるRNA分子である。リボザイムは、例えば、Yen et al., Nature 431:471-476, 2004にさらに記載されており、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0130】
様々な局面の一態様では、腫瘍溶解性ウイルスはLacZ遺伝子を発現し、これは当技術分野において周知である。
【0131】
様々な局面の一態様では、腫瘍溶解性ウイルスはドミナントネガティブTGFβを発現する。本明細書において使用する場合、用語「ドミナントネガティブ」は、野生型機能を有する対応するタンパク質が野生型機能を果たすのを実質的に防ぐ、突然変異タンパク質または改変タンパク質を指す。例えば、ドミネイトネガティブTGFβは、ドミナントネガティブを発現する細胞でTGFβの野生型機能を阻害することができると考えられる。
【0132】
一態様では、ドミナントネガティブTGFβは、野生型TGFβの機能(例えば、TGFβシグナル伝達を開始する能力)または発現レベル(例えば、mRNAもしくはタンパク質のレベル)を少なくとも10%阻害することができる。一態様では、ドミナントネガティブTGFβは、適切な対照と比較して、野生型機能(例えば、TGFβシグナル伝達を開始する能力)または発現レベル(例えば、mRNAもしくはタンパク質のレベル)を少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%またはそれ以上阻害することができる。本明細書において使用する場合、適切な対照は、ドミネイトネガティブTGFβが接触しなかった細胞におけるTGFβの機能または発現レベルを指す。当業者は、例えば、それぞれタンパク質およびmRNAのレベルを評価するためのウエスタンブロッティングまたはPCRベースのアッセイで、細胞中のTGFβシグナル伝達のレベル、またはTGFβの発現レベルを評価することによって、TGFβの機能を評価することができる。
【0133】
一態様では、ドミナントネガティブTGFβは、野生型TGFβに対して少なくとも90%の配列同一性を含むか、該配列同一性からなるか、または該配列同一性から本質的になり、TGFβの野生型機能を阻害することができる。別の態様では、ドミナントネガティブTGFβは、野生型TGFβに対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、またはそれ以上の配列同一性を含むか、該配列同一性からなるか、または該配列同一性から本質的になり、TGFβの野生型機能を阻害することができる。
【0134】
一態様では、ドミナントネガティブTGFβは、SEQ ID NO:10のヌクレオチド配列を有するmmTGF-b2-7M断片である。
【0135】
一態様では、ドミナントネガティブTGFβは、SEQ ID NO:11のアミノ酸配列を有するmmTGF-b2-7M断片である。
【0136】
一態様では、ドミナントネガティブTGFβは、SEQ ID NO:10またはSEQ ID NO:11に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、またはそれ以上の配列同一性を含むか、該配列同一性からなるか、または該配列同一性から本質的になる。
【0137】
一態様では、本明細書において記載される腫瘍溶解性HSVは、抗腫瘍特異的免疫を誘導するために腫瘍溶解性HSVの有効性を高めることができる産物(例えば、タンパク質、遺伝子、遺伝子産物、または抗体もしくは抗体試薬)をコードする少なくとも1つのポリペプチドをさらに含む。例示的な産物としては、限定されないが、インターロイキン2(IL2)、インターロイキン12(IL12)、インターロイキン15(IL15)、抗PD-1抗体または抗体試薬、抗PD-L1抗体または抗体試薬、抗OX40抗体または抗体試薬、CTLA-4抗体または抗体試薬、TIM-3抗体または抗体試薬、TIGIT抗体または抗体試薬、可溶性インターロイキン10受容体(IL10R)、可溶性IL10RとIgG-Fcドメインの融合ポリペプチド、可溶性TGF-β II型受容体(TGFBRII)、可溶性TGFBRIIとIgG-Fcドメインの融合ポリペプチド、抗IL10R抗体または抗体試薬、抗IL10抗体または抗体試薬、抗TGF-β1抗体または抗体試薬、および抗TGFBRII抗体または抗体試薬が挙げられる。一態様では、産物は、本明細書において以下に記載されるIL-2、IL-12、またはIL-15の同じ機能性を含む、IL-2、IL-12、またはIL-15の断片である。当業者は、当技術分野における標準的な技法を使用して抗腫瘍特異的免疫が誘導されるかどうかを決定することができ、これは、例えば、Clay, TM, et al. Clinical Cancer Research (2001);Malyguine, A, et al. J Transl Med (2004);またはMacchia I, et al. BioMed Research International (2013)にさらに記載されており、これらのそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0138】
インターロイキン-2(IL-2)は、免疫系におけるサイトカインシグナル伝達分子の1種であるインターロイキンである。IL-2は、免疫に関与する白血球細胞(例えば、白血球およびリンパ球)の活性を調節する。IL-2は、微生物感染に対する、および外来性の「非自己」と「自己」との識別における、体の自然応答一部である。これは、リンパ球が発現するIL-2受容体に結合することによって、その効果を媒介する。TCGFおよびリンホカインとしても公知であるIL-2の配列は、ヒトIL-2(NCBI遺伝子ID:3558)ポリペプチド(例えば、NCBI参照配列NP_000577.2)およびmRNA(例えば、NCBI参照配列NM_000586.3)など、いくつかの種について公知である。IL-2は、その天然に存在する変異体、分子、およびアレルを含めて、ヒトIL-2を指すことができる。IL-2は、例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、雌ウシ、ウマ、ブタなどの哺乳動物IL-2を指す。SEQ ID NO:5の核酸配列は、IL-2をコードする核酸配列を含む。
【0139】
SEQ ID NO:5はIL-2をコードするヌクレオチド配列である。
【0140】
インターロイキン-12(IL-12)は、抗原の刺激に応答して樹状細胞、マクロファージ、好中球、およびヒトB-リンパ芽球様細胞(NC-37)によって天然に産生されるインターロイキンである。IL-12は、ナイーブT細胞のTh1細胞への分化に関与する。これは、T細胞の増殖および機能を刺激することができるT細胞刺激因子として公知である。これは、T細胞およびナチュラルキラー(NK)細胞からのインターフェロン-ガンマ(IFN-γ)および腫瘍壊死因子-アルファ(TNF-α)の産生を刺激し、IFN-γのIL-4媒介性抑制を低減させる。P35、CLMF、NFSK、およびKSF1としても公知であるIL-12aの配列は、ヒトIL-12a(NCBI遺伝子ID:3592)ポリペプチド(例えば、NCBI参照配列NP_000873.2)およびmRNA(例えば、NCBI参照配列NM_000882.3)など、いくつかの種について公知である。IL-12は、その天然に存在する変異体、分子、およびアレルを含めて、ヒトIL-12を指すことができる。IL-12は、例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、雌ウシ、ウマ、ブタなどの哺乳動物IL-12を指す。SEQ ID NO:6の核酸配列は、IL-12aをコードする核酸配列を含む。
【0141】
SEQ ID NO:6はIL-12aをコードするヌクレオチド配列である。
【0142】
インターロイキン-15(IL-15)は、ウイルスによる感染後に単核貪食細胞(およびいくつかの他の細胞)によって分泌されるインターロイキンである。このサイトカインは、ナチュラルキラー細胞;すなわち、主要な役割がウイルス感染細胞を死滅させることである自然免疫系の細胞の細胞増殖を誘導する。IL-15の配列は、ヒトIL-15(NCBI遺伝子ID:3600)ポリペプチド(例えば、NCBI参照配列NP_000585.4)およびmRNA(例えば、NCBI参照配列NM_000576.1)など、いくつかの種について公知である。IL-15は、その天然に存在する変異体、分子、およびアレルを含めて、ヒトIL-15を指すことができる。IL-15は、例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、雌ウシ、ウマ、ブタなどの哺乳動物IL-15を指す。SEQ ID NO:7の核酸配列は、IL-15をコードする核酸配列を含む。
【0143】
SEQ ID NO:7はIL-15をコードするヌクレオチド配列である。
【0144】
可溶性または野生型のいずれかのインターロイキン10受容体(IL10R)は、示されたtoインターロイキン10の免疫抑制シグナルを媒介し、炎症誘発性サイトカインの合成阻害をもたらす。この受容体は、インスリン受容体基質-2/PI 3-キナーゼ/AKT経路を通じて前駆体骨髄系細胞の生存を促進することが報告されている。IL10Rの活性化は、JAK1およびTYK2キナーゼのチロシンのリン酸化につながる。この遺伝子について、1つはタンパク質をコードし、もう1つはタンパク質をコードしない、2つの転写産物変異体が発見された。IL10Rの配列は、ヒトIL10R(NCBI遺伝子ID:3587)ポリペプチド(例えば、NCBI参照配列NP_001549.2)およびmRNA(例えば、NCBI参照配列NM_001558.3)など、いくつかの種について公知である。IL10Rは、その天然に存在する変異体、分子、およびアレルを含めて、ヒトIL10Rを指すことができる。IL10Rは、例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、雌ウシ、ウマ、ブタなどの哺乳動物IL10Rを指す。SEQ ID NO:3の核酸配列は、IL10Rをコードする核酸配列を含む。
【0145】
SEQ ID NO:3はIL10Rをコードするヌクレオチド配列である。
可溶性または野生型形態のいずれかのトランスフォーミング増殖因子ベータ受容体II(TGFBRII)は、この遺伝子によってコードされるタンパク質であり、TGF-ベータに結合した場合にII型TGF-ベータ受容体とヘテロマー複合体を形成し、細胞表面からのTGF-ベータシグナルを細胞質に伝達する。TGFBRIIの配列は、ヒトTGFBRII(NCBI遺伝子ID:7048)ポリペプチド(例えば、NCBI参照配列NP_001020018.1)およびmRNA(例えば、NCBI参照配列NM_001024847.2)など、いくつかの種について公知である。TGFBRIIは、その天然に存在する変異体、分子、およびアレルを含めて、ヒトTGFBRIIを指すことができる。TGFBRIIは、例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、雌ウシ、ウマ、ブタなどの哺乳動物TGFBRIIを指す。SEQ ID NO:4の核酸配列はTGFBRIIをコードする核酸配列を含む。
【0146】
SEQ ID NO:4はTGFBRIIをコードするヌクレオチド配列である。
【0147】
PD-1またはそのリガンドPD-L1に結合する抗体または抗体試薬は、例えば、米国特許第7,488,802号;第7,943,743号;第8,008,449号;第8,168,757号;第8,217,149号、ならびにPCT公開特許出願第WO03042402号、第WO03042402号、第WO2008156712号、第WO2010089411号、第WO2010036959号、第WO2011066342号、第WO2011159877号、第WO2011082400号、および第WO2011161699号に記載されており;これらは、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。ある特定の態様では、PD-1抗体には、PD-1に結合し、そのリガンドPD-L1およびPD-L2によるPD-1の活性化を遮断する完全ヒトIgG4抗体である、ニボルマブ(MDX 1106、BMS 936558、ONO 4538);PD-1に対するヒト化モノクローナルIgG4抗体である、ランブロリズマブ(MK-3475またはSCH 900475);PD-1に結合するヒト化抗体である、CT-011;B7-DCの融合タンパク質である、AMP-224;抗体Fc部分;PD-L1(B7-H1)遮断のためのBMS-936559(MDX-1105-01)が含まれる。PD-1とPD-L1の相互作用を破壊または遮断する剤、例えば、高親和性PD-L1アンタゴニストも本明細書において特に企図される。
【0148】
PD-1抗体の非限定例としては、以下が挙げられる:ペンブロリズマブ(Merck);ニボルマブ(Bristol Meyers Squibb);ピディリズマブ(Medivation);およびAUNP12(Aurigene)。PD-L1抗体の非限定例としては、アテゾリズマブ(Genentech);MPDL3280A(Roche);MEDI4736(AstraZeneca);MSB0010718C(EMD Serono);アベルマブ(Merck);およびデュルバルマブ(Medimmune)を挙げることができる。
【0149】
OX40(CD134としても公知)に結合する抗体は、例えば、米国特許第US9006399号、第US9738723号、第US9975957号、第US9969810号、第US9828432号;PCT公開特許出願第WO2015153513号、第WO2014148895号、第WO2017021791号、第WO2018002339;および米国出願第US20180273632号:第US20180237534号;第US20180230227号;第US20120269825号に記載されており;これらは、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0150】
CTLA-4に結合する抗体は、例えば、米国特許第US9714290号、第US6984720号、第US7605238号、第US6682736号、第US7452535号;PCT公開特許出願第WO2009100140号;および米国出願第US20090117132A号、第US20030086930号、第US20050226875号、第US20090238820号に記載されており;これらは、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。CTLA-4抗体の非限定例としては、イピリムマブ(Bristol-Myers Squibb)が挙げられる。
【0151】
TIM3に結合する抗体は、例えば、米国特許第US8552156号、第US9605070号、第US9163087号、第US8329660号;PCT公開特許出願第WO2018036561号、第WO2017031242号、第WO2017178493号;および米国出願第US20170306016号、第US20150110792号、第US20180057591号、第US20160200815号に記載されており;これらは、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0152】
TIGIT(CD134としても公知)に結合する抗体は、例えば、米国特許第US10017572号、第US10017572号、第US9713641号;PCT公開特許出願第WO2017030823号;および米国出願第US20160355589号、第US20160176963号、第US20150322119号に記載されており;これらは、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0153】
インターロイキン10受容体(IL10R)(例えば、可溶性または野生型)に結合する抗体は、例えば、米国特許第7553932号;ならびに米国出願第US20040009939号、第US20030138413号、第US20070166307号、第US20090087440号、および第US201000028450号に記載されており、これらは、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0154】
TGFBRII(例えば、可溶性または野生型)に結合する抗体は、例えば、米国特許第6497729号;および米国出願第US2012114640号、第US20120021519号に記載されており、これらは、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0155】
別の局面は、機能的なICP0もICP34.5もコードせず、かつ機能的mmTGF-β2-7M断片配列をコードする組換えDNAを含む、腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス(HSV)を提供する。
【0156】
組換えDNAを含む、腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス(HSV)であって、組換えDNAが、機能的ICP0遺伝子およびICP34.5遺伝子をコードせず、かつ機能的mmTGF-β2-7M断片配列をコードする、腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス。
【0157】
別の局面は、機能的ICP0をコードせず、かつ機能的mmTGF-β2-7M断片配列をコードする、組換えDNAを含む腫瘍溶解性HSVを提供する。
【0158】
別の局面は、機能的mmTGF-β2-7M断片配列をコードする、腫瘍溶解性HSVを提供する。
【0159】
さらに別の局面は、機能的mmTGF-β2-7M断片配列をコードする、組換えウイルスを提供する。
【0160】
一態様では、本明細書において記載される腫瘍溶解性HSVのいずれかは融合活性をさらにコードする。
【0161】
本明細書において記載される本発明の一局面は、本明細書において記載される腫瘍溶解性HSVのいずれかを含む組成物を提供する。一態様では、組成物は薬学的組成物である。本明細書において使用する場合、用語「薬学的組成物」は、薬学的に許容される担体、例えば製薬業界で一般に使用される担体と組み合わせた、活性な剤を指す。
【0162】
一態様では、組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容される担体をさらに含む。薬学的に許容される担体は当技術分野において周知であり、担体としては、水溶液、例えば生理緩衝食塩水、または他の溶媒もしくはビヒクル、例えば、グリコール、グリセロール、植物油(例えば、オリーブ油)もしくは注射可能な有機エステルが挙げられる。薬学的に許容される担体は、本発明の組成物をインビトロで細胞に、またはインビボで対象に投与するために使用することができる。薬学的に許容される担体は、例えば、組成物を安定化する、または剤の吸収を増大させるように作用する、生理学的に許容される化合物を含むことができる。生理学的に許容される化合物としては、例えば、炭水化物、例えば、グルコース、ショ糖、もしくはデキストラン、抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸もしくはグルタチオン、キレート化剤、低分子量タンパク質、または他の安定化剤もしくは賦形剤を挙げることができる。他の生理学的に許容される化合物としては、湿潤剤、乳化剤、分散剤、または微生物の増殖または作用を防止するのに特に有用である防腐剤が挙げられる。様々な防腐剤が周知であり、防腐剤としては、例えば、フェノールおよびアスコルビン酸が挙げられる。生理学的に許容される化合物を含めて、薬学的に許容される担体の選択は、例えば、腫瘍溶解性HSVの投与経路に依存することを当業者は知っているであろう。
【0163】
ハイブリッド核酸
本明細書において提供される別の局面は、治療抗体およびドミネイトネガティブTGFβの配列を含むハイブリッド核酸配列であって、ドミネイトネガティブTGFβが治療抗体のFcドメインに融合されている、ハイブリッド核酸配列である。
【0164】
本明細書において提供される別の局面は、治療抗体およびmmTGF-β2-7M断片の配列を含むハイブリッド核酸配列であって、mmTGF-β2-7Mが治療抗体のFcドメインに融合されている、ハイブリッド核酸配列である。
【0165】
一態様では、治療抗体の配列は、免疫療法抗体の配列である。例えば、治療抗体の配列は、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗Tim3抗体、抗-抗CTLA4抗体、および抗TDM-1抗体、および抗TIGIT抗体からなるリストより選択される得る配列である。そのような治療抗体は、本明細書において上に記載されている。
【0166】
本明細書において記載されるハイブリッド核酸のいずれかによってコードされるポリペプチドも、本明細書において提供される。
【0167】
本明細書において記載されるハイブリッド核酸のいずれかを発現するベクターが、本明細書においてさらに提供される。
【0168】
キメラ抗原受容体
本明細書において記載される技術は、癌の処置で使用するための改善されたCARを提供する。以下は、CARおよび様々な改善を論じる。
【0169】
本明細書において使用する場合、用語「キメラ抗原受容体」または「CAR」または「CARs」は、リガンドまたは抗原特異性をT細胞(例えば、ナイーブT細胞、セントラルメモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞、またはこれらの組み合わせ)に移植する、操作されたT細胞受容体を指す。CARは、人工T細胞受容体、キメラT細胞受容体、またはキメラ免疫受容体としても公知である。
【0170】
CARは、T細胞応答の標的にされる細胞の表面上で発現している標的、例えばポリペプチドに特異的に結合するキメラの細胞外標的結合ドメインをT細胞受容体分子の膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインを含むコンストラクト上に配置する。一態様では、キメラの細胞外標的結合ドメインは、T細胞応答の標的にされる細胞上で発現している抗原に特異的に結合する抗体の抗原結合ドメインを含む。CARの細胞内シグナル伝達ドメインの性質は、当技術分野において公知のように、および本明細書において開示されるように、変動する可能性があるが、キメラの標的/抗原結合ドメインは、キメラの標的/抗原ドメインが標的細胞の表面上の標的/抗原に結合する場合に、シグナル伝達活性化に対して受容体を感受性にする。
【0171】
細胞内シグナル伝達ドメインに関して、いわゆる「第1世代」CARは、抗原結合の際にCD3ゼータ(CD3ζ)シグナルを単に提供するものを含む。いわゆる「第2世代」CARは、共刺激ドメイン(例えば、CD28またはCD137)と活性化(CD3ζ)ドメインの両方を提供するものを含み、いわゆる「第3世代」CARは、複数の共刺激(例えば、CD28およびCD137)ドメインおよび活性化ドメイン(例えば、CD3ζ)を提供するものを含む。様々な態様では、CARは、標的/抗原に対して高い親和性または結合活性を有するように選択される-例えば、抗体由来の標的または抗原結合ドメインは、天然に存在するT細胞受容体よりも、標的抗原に対して高い親和性および/または結合活性を一般に有すると考えられる。抗体について選択することができる高い特異性と組み合わせて、この性質は、CAR T細胞による非常に特異的なT細胞標的化を提供する。
【0172】
本明細書において使用する場合、「CAR T細胞」または「CAR-T」は、CARを発現するT細胞を指す。T細胞で発現する場合に、CARは、モノクローナル抗体の抗原結合性質を活用して、選択された標的に対してT細胞特異性および反応性を非MHC拘束性様式で再指示する能力を有する。非MHC拘束性抗原認識は、CARを発現するT細胞に、抗原プロセシングから独立して抗原を認識する能力を与えるので、腫瘍エスケープの主要な機構をバイパスする。
【0173】
本明細書において使用する場合、用語「細胞外標的結合ドメイン」は、標的への結合を促進するのに十分である、細胞の外側に見出されるポリペプチドを指す。細胞外標的結合ドメインは、その結合パートナー、すなわち標的に特異的に結合すると考えられる。非限定例として、細胞外標的結合ドメインは、同族の結合パートナー(例えば、TGFβ)タンパク質を認識し、これと結合する、ドミネイトネガティブペプチド、抗体の抗原結合ドメイン、またはリガンドをコードする配列を含むことができる。
【0174】
一態様では、CARは二重特異性CARである。例えば、CARは、ドミネイトネガティブTGFβ配列、例えば、mmTGF-β2-7M断片;および治療抗体、例えば、抗PD1抗体、抗CTLA4抗体、または抗TIM3抗体の配列をその細胞外ドメインに含む。
【0175】
膜貫通ドメイン
本明細書において記載される各CARは、細胞外標的結合ドメインを細胞内シグナル伝達ドメインと結合する膜貫通ドメインを必ず含む。
【0176】
本明細書において使用する場合、「膜貫通ドメイン」(TMドメイン)は、細胞の原形質膜を横断する、CARの通常疎水性の領域を指す。TMドメインは、膜貫通タンパク質(例えば、I型膜貫通タンパク質もしくは他の膜貫通タンパク質)の膜貫通領域もしくはその断片、人工疎水性配列、またはこれらの組み合わせであり得る。特定例が本明細書において提供され、実施例で使用されるが、他の膜貫通ドメインが当業者に明らかであると考えられ、技術の代替態様に関連して使用することができる。選択される膜貫通領域またはその断片は、好ましくは、CARの意図された機能を妨げないであろう。タンパク質またはポリペプチドの膜貫通ドメインに関して使用する場合、「その断片」は、タンパク質を細胞表面に固着または付着させるのに十分である、膜貫通ドメインの部分を指す。
【0177】
一態様では、本明細書において記載されるCARの膜貫通ドメインまたはその断片は、T細胞受容体のアルファ、ベータ、またはゼータ鎖、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154、KIRDS2、OX40、CD2、CD27、LFA-1(CD11a、CD18)、ICOS(CD278)、4-1BB(CD137)、GITR、CD40、BAFFR、HVEM(LIGHTR)、SLAMF7、NKp80(KLRFl)、CD160、CD19、IL2Rベータ、IL2Rガンマ、IL7R a、ITGA1、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CD11d、ITGAE、CD103、ITGAL、CD11a、LFA-1、ITGAM、CD11b、ITGAX、CD11c、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、TNFR2、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRTAM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、SLAMF6(NTB-A、Lyl08)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、PAG/Cbp、NKp44、NKp30、NKp46、NKG2D、および/またはNKG2Cの膜貫通ドメインより選択される膜貫通ドメインを含む。
【0178】
例示的な一態様では、CARの膜貫通ドメインまたはその断片は、CD8の膜貫通ドメインに由来するか、またはCD8の膜貫通ドメインを含む。CD8は、細胞傷害性Tリンパ球の細胞表面上に優先的に見出される抗原である。CD8は、免疫系内の細胞-細胞相互作用を媒介し、T細胞共受容体として作用する。CD8は、アルファ(CD8α)およびベータ(CD8β)鎖からなる。CD8aの配列は、ヒトCD8a(NCBI遺伝子ID:925)ポリペプチド(例えば、NCBI参照配列NP_001139345.1)およびmRNA(例えば、NCBI参照配列NM_ 000002.12)など、いくつかの種について公知である。CD8は、その天然に存在する変異体、分子、およびアレルを含めて、ヒトCD8を指すことができる。局面のいずれかのいくつかの態様では、例えば、獣医学的適用では、CD8は、例えば、イヌ、ネコ、雌ウシ、ウマ、ブタなどのCD8を指すことができる。ヒトCD8の相同体および/またはオルソログは、例えば、NCBIオルソログ検索機能を使用して、または参照CD8配列と類似している配列について、所与の種について利用可能な配列データを検索して、そのような種について当業者によって容易に特定される。
【0179】
共刺激性ドメイン
本明細書において記載されるCARは、共刺激性分子の細胞内ドメイン、または共刺激性ドメインを含むことができる。本明細書において使用する場合、用語「共刺激性ドメイン」は、共刺激性分子の細胞内シグナル伝達ドメインを指す。共刺激性分子は、抗原への結合の際にTリンパ球の効率的な活性化および機能に必要とされる第2のシグナルをもたらす、抗原受容体またはFc受容体以外の細胞表面分子である。そのような共刺激性分子の実例としては、CARD11、CD2、CD7、CD27、CD28、CD30、CD40、CD54(ICAM)、CD83、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD150(SLAMF1)、CD152(CTLA4)、CD223(LAG3)、CD270(HVEM)、CD273(PD-L2)、CD274(PD-L1)、CD278(ICOS)、DAP10、LAT、NKD2C SLP76、TRIM、およびZAP70が挙げられる。
【0180】
例示的な一態様では、細胞内ドメインは4-1BBの細胞内ドメインである。4-1BBLは、TNFスーパーファミリーに属する2型膜貫通糖タンパク質である。4-1BBLは、活性化したTリンパ球で発現している。4-1BBLの配列は、TNFSF9(NCBI遺伝子ID:8744)ポリペプチド(例えば、NCBI参照配列NP_003802.1)およびmRNA(例えば、NCBI参照配列NM_003811.3)としても公知であるヒト4-1BBLなど、いくつかの種について公知である。4-1BBLは、その天然に存在する変異体、分子、およびアレルを含めて、ヒト4-1BBLを指すことができる。局面のいずれかのいくつかの態様では、例えば、獣医学的適用では、4-1BBLは、例えば、イヌ、ネコ、雌ウシ、ウマ、ブタなどの4-1BBLを指すことができる。ヒト4-1BBLの相同体および/またはオルソログは、例えば、NCBIオルソログ検索機能を使用して、または参照4-1BBL配列と類似している配列について、所与の種について利用可能な配列データを検索して、そのような種について当業者によって容易に特定される。
【0181】
細胞内シグナル伝達ドメイン
本明細書において記載されるCARは細胞内シグナル伝達ドメインを含むことができる。「細胞内シグナル伝達ドメイン、」は、標的抗原への効果的なCAR結合のメッセージを免疫エフェクター細胞の内部に伝達して、エフェクター細胞の機能、例えば、活性化、サイトカイン産生、増殖、および細胞傷害活性、例えばCARが結合した標的細胞への細胞傷害因子の放出、または細胞外CARドメインへの抗原結合に続いて誘発される他の細胞応答を誘発することに関与する、CARポリペプチドの部分を指す。
【0182】
CD3は、適切な共刺激(例えば、共刺激性分子の結合)と同時に関与した場合にTリンパ球活性化を促進するT細胞共受容体である。CD3複合体は4つの異なる鎖からなり;哺乳動物CD3は、CD3γ鎖、CD3δ鎖、および2つのCD3ε鎖からなる。これらの鎖は、T細胞受容体(TCR)として公知である分子およびCD3ζと結合して、Tリンパ球において活性化シグナルを発生させる。完全なTCR複合体は、TCR、CD3ζ、および完全なCD3複合体を含む。
【0183】
任意の局面のいくつかの態様では、本明細書において記載されるCARポリペプチドは、CD3ゼータ(CD3ζ)由来の免疫受容活性化チロシンモチーフ、すなわちITAMを含む細胞内シグナル伝達ドメインを含む。任意の局面のいくつかの態様では、ITAMはCD3ζのITAMの3つのモチーフ(ITAM3)を含む。
【0184】
ITAMは、刺激的な方法または阻害的な方法のいずれかでTCR複合体の一次活性化を調節する一次シグナル伝達ドメインとして公知である。刺激的様式で作用する一次シグナル伝達ドメインは、免疫受容活性化チロシンモチーフまたはITAMとして公知であるシグナル伝達モチーフを含むことができる。本技術で特に有用なITAM含有細胞内シグナル伝達ドメインの非限定例としては、TCRζ、FcRγ、FcRβ、CD3γ、CD3□、CD3δ、CD3ε、CD3ζ、CD22、CD79a、CD79b、およびCD66dに由来するものが挙げられる。
【0185】
一態様では、CARはリンカードメインをさらに含む。本明細書において使用する場合、「リンカードメイン」は、本明細書において記載されるCARドメイン/領域のいずれかを一緒に連結する、約2~100アミノ酸の長さのオリゴまたはポリペプチド領域を指す。いくつかの態様では、リンカーは、隣接するタンパク質ドメインが互いに対して自由に移動できるように、グリシンおよびセリンなどのフレキシブル残基を含むことができるか、または該残基から構成される。2つの隣接するドメインが互いに立体的に干渉しないことを確実にすることが望ましい場合に、より長いリンカーを使用することができる。リンカーは、切断可能または切断不可能であり得る。切断可能なリンカーの例としては、2Aリンカー(例えば、T2A)、2A様リンカー、またはこれらの機能的同等物およびこれらの組み合わせが挙げられる。一態様では、リンカー領域はゾセア・アシグナ(Thosea asigna)ウイルスに由来するT2Aである。本技術で使用することができるリンカーの非限定例としては、P2AおよびF2Aが挙げられる。
【0186】
CARおよびCAR T細胞のより詳細な説明は、Maus et al. Blood 2014 123:2624-35;Reardon et al. Neuro-Oncology 2014 16:1441-1458;Hoyos et al. Haematologica 2012 97:1622;Byrd et al. J Clin Oncol 2014 32:3039-47;Maher et al. Cancer Res 2009 69:4559-4562;およびTamada et al. Clin Cancer Res 2012 18:6436-6445に見出すことができ;これらのそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0187】
本明細書において提供される別の局面は、本明細書において記載されるCARポリペプチドのいずれかをコードする核酸である。
【0188】
細胞
本明細書において記載される腫瘍溶解性または組換えウイルスのいずれかを含む細胞またはその集団が本明細書において提供される。
【0189】
ハイブリッド核酸、ハイブリッド核酸をコードするポリペプチド、またはハイブリッド核酸もしくはハイブリッド核酸をコードするポリペプチドを発現するベクターのいずれかを含む細胞またはその集団が本明細書において提供される。
【0190】
本明細書において記載される、CARポリペプチドのいずれか、またはCARポリペプチドをコードする核酸のいずれかを含む細胞またはその集団が、本明細書においてさらに提供される。
【0191】
一態様では、細胞は哺乳動物細胞である。一態様では、細胞はヒト細胞である。一態様では、細胞はヒト以外の哺乳動物細胞である。
【0192】
一態様では、細胞はT細胞である。一態様では、細胞はCAR T細胞である。
【0193】
一態様では、細胞は免疫細胞である。本明細書において使用する場合、「免疫細胞」は、免疫応答で役割を果たす細胞を指す。免疫細胞は造血起源のものであり、細胞としては、リンパ球、例えば、B細胞およびT細胞;ナチュラルキラー細胞;骨髄系細胞、例えば、単球、マクロファージ、好酸球、肥満細胞、好塩基球、および顆粒球が挙げられる。いくつかの態様では、細胞はT細胞;NK細胞;NKT細胞;リンパ球、例えば、B細胞およびT細胞;ならびに骨髄系細胞、例えば、単球、マクロファージ、好酸球、肥満細胞、好塩基球、および顆粒球である。
【0194】
一態様では、細胞は、癌を有するかまたは癌を有すると診断された個体から得られたものである。
【0195】
一態様では、細胞はCAR T細胞である。
【0196】
一態様では、細胞は、二重特異性CAR T細胞であり、1つより多いCARポリペプチドを含むことを意味する。例えば、CAR T細胞は、ドミネイトネガティブTGFβ配列、例えば、mmTGF-β2-7M断片を含む細胞外ドメインを有するCARポリペプチド、および治療抗体、例えば、抗PD1抗体、抗CTLA4抗体、または抗TIM3抗体の配列を含む細胞外ドメインを含む第2のCARポリペプチドを含む。
【0197】
ある特定の態様では、細胞は、高レベルのドミナントネガティブTGFβ、例えばmmTGF-β2-7Mを有する。ドミナントネガティブTGFβの発現レベルは、例えば、それぞれドミナントネガティブTGFβのタンパク質またはmRNAレベルを評価するためのウエスタンブロッティングまたはPCRベースのアッセイを介して、当業者が決定することができる。
【0198】
処置方法
本明細書において記載される腫瘍溶解性ウイルス、ハイブリッド核酸、およびCAR T細胞またはそれらの組成物は、癌を有する対象に投与することができる。ある特定の態様では、適切な場合は、腫瘍溶解性ウイルスのtetオペレーターを調節する剤が、本明細書において記載される腫瘍溶解性ウイルスまたはその組成物とともにさらに投与される。例示的な剤としては、限定されないが、ドキシサイクリンまたはテトラサイクリンが挙げられる。
【0199】
一局面は癌を処置する方法を提供し、本方法は、本明細書において記載されるCARポリペプチドまたはCARポリペプチドをコードする核酸のいずれかをT細胞の表面上に含むようにT細胞を操作する段階;および操作されたT細胞を対象に投与する段階含む。
【0200】
一態様では、癌は固形腫瘍である。固形腫瘍は悪性または良性であり得る。一態様では、対象は、癌腫、黒色腫、肉腫、胚細胞腫瘍、および芽腫を有すると診断されるか、または診断されている。例示的な癌としては、決して限定されないが、非小細胞肺癌、膀胱癌、乳癌、脳腫瘍、結腸癌、前立腺癌、肝臓癌、肺癌、卵巣癌、皮膚癌、頭頸部癌、腎臓癌、および膵臓癌が挙げられる。一態様では、癌は転移性である。これらのタイプの癌は当技術分野において公知であり、当技術分野において公知の標準的な技法、例えば、血液分析、血液細胞数分析、組織生検、非侵襲性イメージング、および/または家族歴の精査を使用して、熟練の臨床医が診断することができる。
【0201】
例えば、皮膚の腫瘍、口の腫瘍、または手術の結果として近づくことができる腫瘍など、腫瘍に容易に近づくことができる場合は、ウイルスを局所的に投与することができる。他の場合では、注射または注入によってウイルスを投与することができる。感染より前に、または感染症時に使用されるtetオペレーターおよびtetR相互作用を調節する剤、例えば、ドキシサイクリンまたはテトラサイクリンもこのようにして投与することができ、またはこれは、全身的に、例えば経口的に投与することができる。
【0202】
ある特定の投与経路が前述の説明で提供されるが、本発明によれば、ベクターの任意の適切な投与経路を適合させることができ、したがって、上記の投与経路は、限定を意図したものではない。投与経路としては、限定されないが、静脈内、局所動脈内注入、経口、頬側、鼻腔内、吸入、粘膜への局所投与、または注射、例えば、腫瘍内、皮内、髄腔内、嚢内、病巣内、もしくは任意の他のタイプの注射を挙げることができる。投与は、連続的に、または断続的に行うことができ、対象および治療すべき状態によって変化すると考えられる。当業者は、本明細書において記載される様々な投与経路によって、本発明のベクターまたは組成物を腫瘍もしくは標的癌細胞上に、腫瘍もしくは標的癌細胞中に、または腫瘍もしくは標的癌細胞の近くに送達することが可能になるであろうことを容易に認識するであろう。当業者は、本明細書において記載される様々な投与経路によって、本明細書において記載されるベクターおよび組成物を処置される腫瘍または個々の細胞の近傍の領域に送達することが可能になるであろうことも容易に認識するであろう。「近傍に」は、対象に投与されるベクターまたは組成物の少なくとも一部がそれらの意図された標的に届き、それらの治療効果を発揮するように腫瘍または個々の癌細胞に十分に近接している対象の任意の組織または体液を含むことができる。
【0203】
投与より前に、滅菌した等張の生理食塩水、水、リン酸緩衝食塩水、1,2-プロピレングリコール、水と混合したポリグリコール、リンゲル溶液などを含めて、任意の薬学的に許容される溶液に腫瘍溶解性ウイルスを懸濁させることができる。投与されるウイルスの正確な数は本発明にとって重要ではないが、「有効量」、すなわち、放出された腫瘍抗原に対する免疫応答を発生させるのに足りるほど広範な細胞溶解を引き起こすのに十分な量であるべきである。ウイルスは感染後に細胞中で複製されるので、最初に投与された数は、時間とともに急速に増加すると考えられる。したがって、量が大きく異なる最初に投与されたウイルスは、ウイルスが複製することができる時間、すなわち、細胞がテトラサイクリンに曝露される時間を変えることによって、同じ結果を与えることができる。一般に、最初に投与されるウイルスの数(PFU)は、1×106からl×1010の間であろうことが予想される。
【0204】
テトラサイクリンまたはドキシサイクリンは、感染症時かまたは感染より1~72時間前に、ウイルス複製を誘導するために、局所的かまたは全身的かのいずれかで投与される。投与されるテトラサイクリンまたはドキシサイクリンの量は、送達の経路に依存する。インビトロでは、1μg/mlのテトラサイクリンは、感染細胞でウイルス複製を可能にするのに十分過ぎるほどである。したがって、局所的に送達される場合、0.1μg/ml~100μg/mlのあたりを含む溶液を投与することができる。しかし、所望により、はるかに高い用量のテトラサイクリンまたはドキシサイクリン(例えば、1~5mg/ml)を用いることができる。単回で局所的に与えられる総量は、処置を受ける腫瘍または複数の腫瘍のサイズに依存するが、一般に、0.5から200mlの間のテトラサイクリンまたはドキシサイクリン溶液が一度に使用されるであろうことが予想される。全身的に与えられる場合、より高い用量のテトラサイクリンまたはドキシサイクリンが与えられることが考えられるが、必要とされる総量は、細菌感染症を処置するために典型的に使用されるものよりも有意に低いであろうことが予想される(例えば、ドキシサイクリンでは、成人で通常1日あたり1~2グラムであり、これは2~4等量に分けられ、小児では、キログラム体重あたり2.2~4.4mgであり、これは、1日あたり少なくとも2用量に分けることができる)。1日あたり5~100mgが大抵の場合効果的なはずであると予想される。テトラサイクリンおよびドキシサイクリンの投薬は当技術分野において周知であり、所与の患者について熟練の臨床医が最適に決定することができる。
【0205】
いくつかの態様では、本明細書において記載されるCAR T細胞を含む薬学的組成物は非経口投与形態であり得る。非経口剤形の投与は典型的には混入物に対する患者の自然防御をバイパスするので、構成成分は、CAR T細胞それ自体を除いて、好ましくは滅菌されているか、または患者への投与より前に滅菌され得る。非経口剤形の例としては、限定されないが、注射することができる状態の溶液剤、注射のために薬学的に許容されるビヒクルに溶解または懸濁させることができる状態の乾燥生成物、注射することができる状態の懸濁剤、および乳濁液が挙げられる。投与より前に、これらのいずれかをCAR T細胞調製物に加えることができる。
【0206】
本明細書内に開示されるCAR T細胞の非経口剤形を提供するために使用することができる適切なビヒクルは、当業者に周知である。例としては、非限定的に以下が挙げられる:生理食塩水;グルコース溶液;水性ビヒクル、例えば、限定されないが、塩化ナトリウム注射液、リンガー注射液、デキストロース注射液、デキストロースおよび塩化ナトリウム注射液、ならびに乳酸化リンガー注射液;水混和性ビヒクル、例えば、限定されないが、エチルアルコール、ポリエチレングリコール、およびプロピレングリコール;ならびに非水性ビヒクル、例えば、限定されないが、トウモロコシ油、綿実油、ピーナッツ油、ゴマ油、オレイン酸エチル、イソプロピルミリステート、およびベンジル安息香酸。
【0207】
いくつかの態様では、本明細書において記載されるCAR T細胞は単独療法として投与され、すなわち、状態に対する別の処置が対象に同時発生的に施されない。
【0208】
本明細書において記載されるT細胞を含む薬学的組成物は、一般に、範囲内のすべての整数値を含めて、104~109細胞/kg体重、場合によっては105~106細胞/kg体重の投薬量で投与することができる。必要ならば、T細胞組成物は、これらの投薬量で複数回投与することもできる。細胞は、免疫療法で一般に公知である注入技法を使用することによって投与することができる(例えば、Rosenberg et al., New Eng. J. of Med. 319:1676, 1988を参照されたい)。
【0209】
ある特定の局面では、CAR T細胞を対象に投与し、次いで、その後に、再度採血し(またはアフェレーシスを行い)、本明細書において記載されるようにそこからT細胞を活性化し、これらの活性化され、拡大されたT細胞を患者に再度注入することが望ましい場合がある。この方法は、数週ごとに複数回行うことができる。ある特定の局面では、T細胞は、l0cc~400ccの採血からT細胞を活性化され得る。ある特定の局面では、T細胞は、20cc、30cc、40cc、50cc、60cc、70cc、80cc、90cc、またはl00ccの採血から活性化される。
【0210】
投与モードは、例えば、静脈内(i.v.)注射または注入を含むことができる。本明細書において記載される組成物は、患者に経動脈、腫瘍内、結節内、または髄内投与することができる。いくつかの態様では、T細胞の組成物は、腫瘍、リンパ節、または感染部位に直接注射することができる。一態様では、本明細書において記載される組成物は、体腔または体液(例えば、腹水、胸膜液、腹膜液、もしくは脳脊髄液)に投与される。
【0211】
本明細書において使用する場合、用語「治療的有効量」は、腫瘍溶解活性を発揮し、腫瘍細胞増殖の減弱または阻害を引き起こし、腫瘍退縮につながるベクターの量を意味することが意図される。有効量は、治療すべき病状または状態に依存して、患者および患者の状況、ならびに当業者に周知の他の因子によって、変動すると考えられる。有効量は当業者によって容易に決定される。いくつかの態様では、治療域は一度導入される103~1012プラーク形成単位である。いくつかの態様では、前述の治療域の治療用量は、腫瘍内、髄腔内、対流強化(convection-enhanced)、静脈内、または動脈内経路を介して、毎日~毎月の間隔で投与される。
【0212】
併用療法
本明細書において記載される腫瘍溶解性ウイルスおよびCAR T細胞は、他の公知の剤および療法と組み合わせて使用することができる。一態様では、対象は、抗癌療法がさらに投与される。本明細書において使用する場合、「組み合わせて」投与されるは、2つ(またはそれ以上)の異なる処置が、障害で対象が苦痛を受けている過程で対象に送達され、例えば、2つ以上の処置が、障害があると対象が診断された後に、および障害が治癒もしくは排除される、または他の理由で処置が中止される前に、送達されることを意味する。いくつかの態様では、1つの処置の送達は、第2の処置の送達が始まるときに、依然として生じており、その結果、投与の点で重複が存在する。これは、本明細書において、「同時の」または「同時発生的送達」と言及されることもある。他の態様では、1つの処置の送達は、他の処置の送達が始まる前に終わる。いずれかの場合のいくつかの態様では、処置は、併用投与が理由で、より効果的である。例えば、第2の処置は、第1の処置の非存在下で第2の処置が投与された場合に見られると考えられるよりもより効果的であり、例えば、より少ない量の第2の処置で同等の効果が見られ、もしくは第2の処置は症状を大きく低減させ、または類似の状況が第1の処置で見られる。いくつかの態様では、送達は、症状、または障害と関連している他のパラメーターの低減が、1つの処置が他の処置の非存在下で送達される状態で観察されるであろうものよりも大きくなるようなものである。2つの処置の効果は、部分的に相加的であるか、完全に相加的であるか、または相加的を超える可能性がある。送達は、送達された第1の処置の効果が、第2の処置が送達されるときに依然として検出可能であるようなものであり得る。本明細書において記載される腫瘍溶解性ウイルスまたはCAR T細胞および少なくとも1つのさらなる治療剤は、同じもしくは別々の組成物中で同時に、または順次に投与することができる。順次投与については、本明細書において記載される腫瘍溶解性ウイルスまたはCAR T細胞を最初に投与することができ、さらなる剤を次に投与することができ、または投与の順序を逆転させることができる。腫瘍溶解性ウイルスもしくはCAR T細胞および/もしくは他の治療剤、手順、またはモダリティーは、活動性障害の期間中、または寛解もしくは活動性がより低い疾患の期間中に、施すことができる。腫瘍溶解性ウイルスまたはCAR T細胞は、別の処置の前に、処置と同時に、処置の後に、または障害の寛解中に投与することができる。
【0213】
組み合わせて投与される場合、腫瘍溶解性ウイルスまたはCAR T細胞およびさらなる剤(例えば、第2もしくは第3の剤)またはすべてを、例えば単独療法として個々に使用される各剤の量もしくは投薬量よりも高い、低い、または該量もしくは投薬量と同じ量または用量で投与することができる。ある特定の態様では、腫瘍溶解性ウイルスもしくはCAR T細胞、さらなる剤(例えば、第2もしくは第3の剤)、またはすべての投与される量または投薬量は、個々に使用される各剤の量または投薬量よりも低い(例えば、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%)。他の態様では、望ましい効果(例えば、癌の処置)をもたらす、腫瘍溶解性ウイルスまたはCAR T細胞、さらなる剤(例えば、第2もしくは第3の剤)、またはすべての量または投薬量は、同じ治療効果を達成するために個々に必要とされる各剤の量または投薬量よりも低い(例えば、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%低い)。さらなる態様では、本明細書において記載される腫瘍溶解性ウイルスまたはCAR T細胞は、手術、化学療法、放射線照射、mTOR経路阻害剤、免疫抑制剤、例えば、シクロスポリン、アザチオプリン、メトトレキサート、ミコフェノール酸、およびFK506、抗体、または他の免疫除去(immunoablative)剤、例えば、CAMPATH、抗CD3抗体、または他の抗体療法、サイトキシン(cytoxin)、フルダラビン、ラパマイシン、ミコフェノール酸、ステロイド、FR901228、サイトカイン、またはペプチドワクチン、例えば、Izumoto et al. 2008 J Neurosurg 108:963-971に記載されているものと組み合わせて、処置レジメンで使用することができる。
【0214】
一態様では、本明細書において記載される腫瘍溶解性ウイルスまたはCAR T細胞は、チェックポイント阻害剤と組み合わせて使用することができる。例示的なチェックポイント阻害剤としては、抗PD-1阻害剤(ニボルマブ、MK-3475、ペンブロリズマブ、ピディリズマブ、AMP-224、AMP-514)、抗CTLA4阻害剤(イピリムマブおよびトレメリムマブ)、抗PDL1阻害剤(アテゾリズマブ、アベルマブ、MSB0010718C、MEDI4736、およびMPDL3280A)、ならびに抗TIM3阻害剤が挙げられる。
【0215】
一態様では、本明細書において記載される腫瘍溶解性ウイルスまたはCAR T細胞は、化学療法剤と組み合わせて使用することができる。例示的な化学療法剤としては、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシン(例えば、リポソーマルドキソルビシン))、ビンカアルカロイド(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン)、アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、デカルバジン、メルファラン、イホスファミド、テモゾロミド)、免疫細胞抗体(例えば、アレムツズマブ、ゲムツズマブ、リツキシマブ、トシツモマブ)、代謝拮抗剤(例えば、葉酸アンタゴニスト、ピリミジン類似体、プリン類似体、およびアデノシンデアミナーゼ阻害剤(例えば、フルダラビン)を含める)、mTOR阻害剤、TNFRグルココルチコイド誘導性TNFR関連タンパク質(GITR)アゴニスト、プロテアソーム阻害剤(例えば、アクラシノマイシンA、グリオトキシン、またはボルテゾミブ)、免疫調節物質、例えば、サリドマイドまたはサリドマイド誘導体(例えば、レナリドマイド)が挙げられる。併用療法での使用が考えられる一般的な化学療法剤としては、アナストロゾール(Arimidex(登録商標))、ビカルタミド(Casodex(登録商標))、硫酸ブレオマイシン(Blenoxane(登録商標))、ブスルファン(Myleran(登録商標))、ブスルファン注射(Busulfex(登録商標))、カペシタビン(Xeloda(登録商標))、N4-ペントキシカルボニル-5-デオキシ-5-フルオロシチジン、カルボプラチン(Paraplatin(登録商標))、カルムスチン(BiCNU(登録商標))、クロラムブシル(Leukeran(登録商標))、シスプラチン(Platinol(登録商標))、クラドリビン(Leustatin(登録商標))、シクロホスファミド(Cytoxan(登録商標)またはNeosar(登録商標))、シタラビン、シトシンアラビノシド(Cytosar-U(登録商標))、シタラビンリポソーム注射(DepoCyt(登録商標))、ダカルバジン(DTIC-Dome(登録商標))、ダクチノマイシン(アクチノマイシンD、Cosmegan)、ダウノルビシン塩酸塩(Cerubidine(登録商標))、クエン酸ダウノルビシンリポソーム注射(DaunoXome(登録商標))、デキサメタゾン、ドセタキセル(Taxotere(登録商標))、ドキソルビシン塩酸塩(Adriamycin(登録商標)、Rubex(登録商標))、エトポシド(Vepesid(登録商標))、リン酸フルダラビン(Fludara(登録商標))、5-フルオロウラシル(Adrucil(登録商標)、Efudex(登録商標))、フルタミド(Eulexin(登録商標))、テザシチビン(tezacitibine)、ゲムシタビン(ジフルオロデオキシシチジン)、ヒドロキシ尿素(Hydrea(登録商標))、イダルビシン(Idamycin(登録商標))、イホスファミド(IFEX(登録商標))、イリノテカン(Camptosar(登録商標))、L-アスパラギナーゼ(ELSPAR(登録商標))、ロイコボリンカルシウム、メルファラン(Alkeran(登録商標))、6-メルカプトプリン(Purinethol(登録商標))、メトトレキサート(Folex(登録商標))、ミトキサントロン(Novantrone(登録商標))、マイロターグ、パクリタキセル(Taxol(登録商標))、フォニックス(phoenix)(イットリウム90/MX-DTPA)、ペントスタチン、カルムスチンインプラントを有するポリフェプロザン20(Gliadel(登録商標))、クエン酸タモキシフェン(Nolvadex(登録商標))、テニポシド(Vumon(登録商標))、6-チオグアニン、チオテパ、チラパザミン(Tirazone(登録商標))、注射用塩酸トポテカン(Hycamptin(登録商標))、ビンブラスチン(Velban(登録商標))、ビンクリスチン(Oncovin(登録商標))、およびビノレルビン(Navelbine(登録商標))が挙げられる。例示的なアルキル化剤としては、非限定的に、ナイトロジェンマスタード、エチレンイミン誘導体、スルホン酸アルキル、ニトロソ尿素、およびトリアゼン):ウラシルマスタード(Aminouracil Mustard(登録商標)、Chlorethaminacil(登録商標)、Demethyldopan(登録商標)、Desmethyldopan(登録商標)、Haemanthamine(登録商標)、Nordopan(登録商標)、Uracil nitrogen mustard(登録商標)、Uracillost(登録商標)、Uracilmostaza(登録商標)、Uramustin(登録商標)、Uramustine(登録商標))、クロルメチン(Mustargen(登録商標))、シクロホスファミド(Cytoxan(登録商標)、Neosar(登録商標)、Clafen(登録商標)、Endoxan(登録商標)、Procytox(登録商標)、Revimmune(商標))、イホスファミド(Mitoxana(登録商標))、メルファラン(Alkeran(登録商標))、クロラムブシル(Leukeran(登録商標))、ピポブロマン(Amedel(登録商標)、Vercyte(登録商標))、トリエチレンメラミン(Hemel(登録商標)、Hexalen(登録商標)、Hexastat(登録商標))、トリエチレンチオホスホラミン、テモゾロミド(Temodar(登録商標))、チオテパ(Thioplex(登録商標))、ブスルファン(Busilvex(登録商標)、Myleran(登録商標))、カルムスチン(BiCNU(登録商標))、ロムスチン(CeeNU(登録商標))、ストレプトゾシン(Zanosar(登録商標))、およびダカルバジン(DTIC-Dome(登録商標))が挙げられる。さらなる例示的なアルキル化剤としては、非限定的に、オキサリプラチン(Eloxatin(登録商標));テモゾロミド(Temodar(登録商標)およびTemodal(登録商標));ダクチノマイシン(アクチノマイシン-D、Cosmegen(登録商標)としても公知である);メルファラン(L-PAM、L-サルコリシン、およびフェニルアラニンマスタード、Alkeran(登録商標)としても公知である);アルトレタミン(ヘキサメチルメラミン(HMM)、Hexalen(登録商標)としても公知である);カルムスチン(BiCNU(登録商標));ベンダムスチン(Treanda(登録商標));ブスルファン(Busulfex(登録商標)およびMyleran(登録商標));カルボプラチン(Paraplatin(登録商標));ロムスチン(CCNU、CeeNU(登録商標)としても公知である);シスプラチン(CDDP、Platinol(登録商標)、およびPlatinol(登録商標)-AQとしても公知である);クロラムブシル(Leukeran(登録商標));シクロホスファミド(Cytoxan(登録商標)およびNeosar(登録商標));ダカルバジン(DTIC、DIC、およびイミダゾールカルボキサミド、DTIC-Dome(登録商標)としても公知である);アルトレタミン(ヘキサメチルメラミン(HMM)、Hexalen(登録商標)としても公知である);イホスファミド(Ifex(登録商標));プレドニムスチン;プロカルバジン(Matulane(登録商標));メクロレタミン(ナイトロジェンマスタード、ムスチン、および塩酸メクロレタミン、Mustargen(登録商標)としても公知である);ストレプトゾシン(Zanosar(登録商標));チオテパ(チオホスホアミド、TESPAおよびTSPA、Thioplex(登録商標)としても公知である);シクロホスファミド(Endoxan(登録商標)、Cytoxan(登録商標)、Neosar(登録商標)、Procytox(登録商標)、Revimmune(登録商標));ならびにベンダムスチンHC1(Treanda(登録商標))が挙げられる。例示的なmTOR阻害剤としては、例えば、テムシロリムス;リダフォロリムス(形式上、デフォロリムス、(lR,2R,45)-4-[(2R)-2 [(1R,95,125,15R,16E,18R,19R,21R,235,24E,26E,28Z,305,325,35R)-1,18-ジヒドロキシ-19,30-ジメトキシ-15,17,21,23,29,35-ヘキサメチル-2,3,10,14,20-ペンタオキソ-ll,36-ジオキサ-4-アザトリシクロ[30.3.1.04'9]ヘキサトリアコンタ-16,24,26,28-テトラエン-12-イル]プロピル]-2-メトキシシクロヘキシルジメチルホスフィネートとして公知であり、AP23573およびMK8669としても公知であり、PCT公開第WO03/064383号に記載されている);エベロリムス(Afinitor(登録商標)またはRADOOl);ラパマイシン(AY22989、Sirolimus(登録商標));シマピモド(simapimod)(CAS 164301-51-3);エムシロリムス(emsirolimus)、(5-{2,4-ビス[(35,)-3-メチルモルホリン-4-イル]ピリド[2,3-(i]ピリミジン-7-イル}-2-メトキシフェニル)メタノール(AZD8055);2-アミノ-8-[iraw5,-4-(2-ヒドロキシエトキシ)シクロヘキシル]-6-(6-メトキシ-3-ピリジニル)-4-メチル-ピリド[2,3-JJピリミジン-7(8H)-オン(PF04691502、CAS 1013101-36-4);ならびにN2-[1,4-ジオキソ-4-[[4-(4-オキソ-8-フェニル-4H-1-ベンゾピラン-2-イル)モルホリニウム-4-イル]メトキシ]ブチル]-L-アルギニルグリシル-L-a-アスパルチルL-セリン-(SEQ ID NO:29)、分子内塩(SF1126、CAS 936487-67-1)、ならびにXL765が挙げられる。例示的な免疫調節物質としては、例えば、アフツズマブ(Roche(登録商標)から入手可能);ペグフィルグラスチム(Neulasta(登録商標));レナリドマイド(CC-5013、Revlimid(登録商標));サリドマイド(Thalomid(登録商標))、アクチミド(CC4047);ならびにIRX-2(インターロイキン1、インターロイキン2、およびインターフェロンγを含むヒトサイトカインの混合物、CAS 951209-71-5、IRX Therapeuticsから入手可能)が挙げられる。例示的なアントラサイクリンとしては、例えば、ドキソルビシン(Adriamycin(登録商標)およびRubex(登録商標));ブレオマイシン(lenoxane(登録商標));ダウノルビシン(塩酸ダウノルビシン)、ダウノマイシン、および塩酸ルビドマイシン、Cerubidine(登録商標));ダウノルビシンリポソーマル(クエン酸ダウノルビシンリポソーム、DaunoXome(登録商標));ミトキサントロン(DHAD、Novantrone(登録商標));エピルビシン(Ellence(商標));イダルビシン(Idamycin(登録商標)、Idamycin PFS(登録商標));マイトマイシンC(Mutamycin(登録商標));ゲルダナマイシン;ハービマイシン;ラビドマイシン;ならびにデスアセチルラビドマイシンが挙げられる。例示的なビンカアルカロイドとしては、例えば、酒石酸ビノレルビン(Navelbine(登録商標))、ビンクリスチン(Oncovin(登録商標))、およびビンデシン(Eldisine(登録商標)));ビンブラスチン(硫酸ビンブラスチン、ビンカロイコブラスチン、およびVLB、Alkaban-AQ(登録商標)、およびVelban(登録商標)としても公知である);ならびにビノレルビン(Navelbine(登録商標))が挙げられる。例示的なプロテオソーム阻害剤としては、ボルテゾミブ(Velcade(登録商標));カルフィルゾミブ(PX-171-007、(5)-4-メチル-N-((5)-1-(((5)-4-メチル-1-((R)-2-メチルオキシラン-2-イル)-1-オキソペンタン-2-イル)アミノ)-l-オキソ-3-フェニルプロパン-2-イル)-2-((5,)-2-(2-モルホリノアセトアミド)-4-フェニルブタンアミド)-ペンタンアミド);マリゾミブ(NPT0052);イキサゾミブクエン酸エステル(MLN-9708);デランゾミブ(CEP-18770);およびO-メチル-N-[(2-メチル-5-チアゾリル)カルボニル]-L-セリル-O-メチル-N-[(11S')-2-[(2R)-2-メチル-2-オキシラニル]-2-オキソ-l-(フェニルメチル)エチル]-L-セリンアミド(ONX-0912)が挙げられる。
【0216】
当業者は、有用な化学療法剤を容易に特定することができる(例えば、Physicians' Cancer Chemotherapy Drug Manual 2014, Edward Chu, Vincent T. DeVita Jr., Jones & Bartlett Learning;Principles of Cancer Therapy, Chapter 85 in Harrison's Principles of Internal Medicine, 18th edition;Therapeutic Targeting of Cancer Cells: Era of Molecularly Targeted Agents and Cancer Pharmacology, Chs. 28-29 in Abeloff’s Clinical Oncology, 2013 Elsevier;およびFischer D S (ed): The Cancer Chemotherapy Handbook, 4th ed. St. Louis, Mosby-Year Book, 2003を参照されたい)。
【0217】
一態様では、本明細書において記載される腫瘍溶解性ウイルスまたはCAR T細胞は、GITRを標的にする、および/もしくはGITRの機能をモジュレートする分子のレベルおよび/もしくは活性を低下させる分子、Treg細胞集団を減少させる分子、mTOR阻害剤、GITRアゴニスト、キナーゼ阻害剤、非受容体型チロシンキナーゼ阻害剤、CDK4阻害剤、ならびに/またはBTK阻害剤と組み合わせて対象に投与される。
【0218】
有効性
例えば、本明細書において記載される状態処置における、または本明細書において記載される応答(例えば、癌細胞の低減、腫瘍サイズの縮化)を誘導するための、腫瘍溶解性ウイルスまたはCAR T細胞の有効性は、熟練の臨床医によって決定することができる。しかし、処置は、本用語が本明細書において使用される場合、本明細書において記載される方法による処置後に、本明細書において記載される状態の徴候または症状の1つまたは複数が有益な様式で変えられる、他の臨床的に認められる症状が改善もしくはさらに回復する、または望ましい応答が、例えば少なくとも10%誘導される場合、「有効な処置」と考えられる。有効性は、例えば、本明細書において記載される方法に従って処置される状態のマーカー、指標、症状、および/もしくは発生率、または任意の適切な他の測定可能なパラメーターを測定することによって、評価することができる。本明細書において記載される方法による処置は、状態のマーカーまたは症状のレベルを、例えば、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%またはそれ以上低減させることができる。
【0219】
有効性は、入院、または医療介入の必要性によって評価されるような、個体が悪化しないこと(すなわち、疾患の進行が停止すること)によって測定することもできる。これらの指標を測定する方法は当業者に公知であり、および/または本明細書において記載される。
【0220】
処置は、個体または動物(いくつかの非限定例としては、ヒトまたは動物が挙げられる)における疾患の任意の処置を含み、以下を含む:(1)疾患を阻害すること、例えば、症状(例えば、疼痛もしくは炎症)の悪化を防止すること;または(2)疾患の重症度を軽くすること、例えば、症状の退行を引き起こすこと。疾患の処置のための有効量は、それらを必要とする対象に投与される場合に、その疾患に対して効果的処置を、この用語が本明細書において定義される通りにもたらすのに十分である量を意味する。剤の有効性は、状態の身体的指標または望ましい応答を評価することによって決定することができる。そのようなパラメーターのいずれか1つまたはパラメーターの任意の組み合わせを測定することによって、投与および/または処置の有効性をモニターすることは、十分に当業者の能力内である。所与のアプローチの有効性は、本明細書において記載される状態、例えばALLの処置の動物モデルで評価することができる。実験動物モデルを使用する場合に、処置の有効性は、マーカーの統計学的に有意な変化が観察される場合に証明される。
【0221】
本出願の全体を通して引用される、参考文献、登録特許、公開特許出願、および同時係属特許出願を含めたすべての特許および他の刊行物は、例えば、本明細書において記載される技術に関連して使用することができる、そのような刊行物に記載されている方法体系を説明および開示する目的で、参照により本明細書に明白に組み入れられる。これらの刊行物は、本出願の出願日より前のそれらの開示のためだけに提供される。この点に関するいかなるものも、先行技術によって、または任意の他の理由で、本発明者らがそのような開示に先行する権利が与えられないことの承認として解釈されるべきでない。これらの文献の日付に関する記載または内容に関する表現のすべては、本出願人らが入手可能な情報に基づいており、これらの文献の日付または内容の正確性に関して、いかなる承認もなすものではない。
【0222】
本開示の態様の説明は、網羅的であることも本開示を開示される正確な形態に限定することも意図するものではない。本開示の特定の態様および例が例示目的で本明細書において記載されるが、当業者が認識すると考えられるように、本開示の範囲内で様々な均等な改変が可能である。例えば、方法の工程または機能は所与の順序で提示されるが、代替の態様は、異なる順序で機能を果たすことができ、または実質的に同時に機能を果たすことができる。本明細書において提供される本開示の教示は、適宜、他の手順または方法に適用することができる。さらなる態様を提供するために、本明細書において記載される様々な態様を組み合わせことができる。必要ならば、本開示のさらなる態様を提供するために、上記の参考文献および出願の組成物、機能、および概念を用いるように本開示の局面を改変することができる。さらに、生物学的機能同等性の考慮により、種類または量において生物学的または化学的作用に影響を与えことなく、タンパク質構造にいくつかの変更を行うことができる。詳細な説明に照らして、これらおよび他の変更を本開示に行うことができる。すべてのそのような改変は、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれることが意図される。
【0223】
前述の態様のいずれかの特定の要素は、組み合わせることができるか、または他の態様の要素と置換することができる。さらに、本開示のある特定の態様と関連する利点をこれらの態様の文脈で記載してきたが、他の態様もそのような利点を示すことができ、本開示の範囲に入るために、すべての態様が必ずしもそのような利点を示す必要はない。
【0224】
本明細書において記載される技術を以下の実施例でさらに例示し、これは、さらに限定するものとして決して解釈されるではない。
【0225】
本明細書において提供される本発明を、以下の番号が付けられたパラグラフでさらに説明することができる。
1.組換えDNAを含む腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス(HSV)であって、
該組換えDNAが、
(a) 5’非翻訳領域と、TATA要素を含むVP5プロモーターに機能的に連結されているHSV-1またはHSV-2のVP5遺伝子とを含む、遺伝子;
(b) TATA要素に対して3’の、6~24ヌクレオチドの間に位置するテトラサイクリンオペレーター配列であって、VP5遺伝子がテトラサイクリンオペレーター配列に対して3’にある、テトラサイクリンオペレーター配列;
(c) HSV最初期プロモーターに機能的に連結されているテトラサイクリンリプレッサーをコードし、ICP0遺伝子座に位置する、遺伝子配列;
(d) 野生型と比較してシンシチウム形成を増大させる変異体遺伝子であって、HSV-1またはHSV-2の変異体遺伝子が、糖タンパク質K(gK)変異体、糖タンパク質B(gB)変異体、UL24変異体、およびUL20遺伝子変異体からなる群より選択される、変異体遺伝子;
(e) 機能的ICP34.5タンパク質をコードする遺伝子配列;ならびに
(f) 改変HSVプロモーターに機能的に連結されている遺伝子配列であって、該遺伝子がUL26遺伝子およびUL27遺伝子の遺伝子間領域に位置する、遺伝子配列
を含み、
該腫瘍溶解性HSVが、機能的ICP0をコードせず、かつVP5の5’非翻訳領域に位置するリボザイム配列を含まない、
前記腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス。
2.組換えDNAを含む腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス(HSV)であって、
該組換えDNAが、
(a) 5’非翻訳領域と、TATA要素を含むVP5プロモーターに機能的に連結されているHSV-1またはHSV-2のVP5遺伝子とを含む、遺伝子;
(b) TATA要素に対して3’の、6~24ヌクレオチドの間に位置するテトラサイクリンオペレーター配列であって、VP5遺伝子がテトラサイクリンオペレーター配列に対して3’にある、テトラサイクリンオペレーター配列;
(c) HSV最初期プロモーターに機能的に連結されているテトラサイクリンリプレッサーをコードし、ICP0遺伝子座に位置する、遺伝子配列;
(d) 野生型と比較してシンシチウム形成を増大させる変異体遺伝子であって、HSV-1またはHSV-2の変異体遺伝子が、糖タンパク質K(gK)変異体、糖タンパク質B(gB)変異体、UL24変異体、およびUL20遺伝子変異体からなる群より選択される、変異体遺伝子;
(e) 機能的ICP34.5タンパク質をコードする遺伝子配列;ならびに
(f) 改変HSVプロモーターに機能的に連結されている遺伝子配列であって、該遺伝子がUL21遺伝子およびUL22遺伝子の遺伝子間領域に位置する、遺伝子配列
を含み、
該腫瘍溶解性HSVが、機能的ICP0をコードせず、かつVP5の5’非翻訳領域に位置するリボザイム配列を含まない、
前記腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス。
3.組換えDNAを含む腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス(HSV)であって、
該組換えDNAが、
(a) 5’非翻訳領域と、TATA要素を含むVP5プロモーターに機能的に連結されているHSV-1またはHSV-2のVP5遺伝子とを含む、遺伝子;
(b) TATA要素に対して3’の、6~24ヌクレオチドの間に位置するテトラサイクリンオペレーター配列であって、VP5遺伝子がテトラサイクリンオペレーター配列に対して3’にある、テトラサイクリンオペレーター配列;
(c) HSV最初期プロモーターに機能的に連結されているテトラサイクリンリプレッサーをコードし、ICP0遺伝子座に位置する、遺伝子配列;
(d) 野生型と比較してシンシチウム形成を増大させる変異体遺伝子であって、HSV-1またはHSV-2の変異体遺伝子が、糖タンパク質K(gK)変異体、糖タンパク質B(gB)変異体、UL24変異体、およびUL20遺伝子変異体からなる群より選択される、変異体遺伝子;
(e) 機能的ICP34.5タンパク質をコードする遺伝子配列;ならびに
(f) 改変HSVプロモーターに機能的に連結されている遺伝子配列であって、該遺伝子がUL26遺伝子、UL27遺伝子、UL21遺伝子およびUL21遺伝子の遺伝子間領域に位置する、遺伝子配列
を含み、
該腫瘍溶解性HSVが、機能的ICP0をコードせず、かつVP5の5’非翻訳領域に位置するリボザイム配列を含まない、
前記腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス。
4.(f)の遺伝子配列が、LacZ遺伝子配列である、前記いずれかのパラグラフの腫瘍溶解性HSV。
5.(f)の遺伝子配列が、ドミナントネガティブTGF-β突然変異体配列である、前記いずれかのパラグラフの腫瘍溶解性HSV。
6.前記ドミナントネガティブTGF-β突然変異体配列が、mmTGF-β2-7M断片配列である、前記いずれかのパラグラフの腫瘍溶解性HSV。
7.(f)のプロモーターが、改変HSV最初期プロモーター、HCMV最初期プロモーター、またはヒト伸長アルファプロモーターである、前記いずれかのパラグラフの腫瘍溶解性HSV。
8.前記変異体遺伝子が、
SEQ ID NO:2のアミノ酸40位に対応するAlaからThrへのアミノ酸置換;SEQ ID NO:2のアミノ酸40位に対応するAlaから「x」へのアミノ酸置換であって、「x」が任意のアミノ酸である、アミノ酸置換;SEQ ID NO:2のアミノ酸99位に対応するAspからAsnへのアミノ酸置換;SEQ ID NO:2のアミノ酸304位に対応するLeuからProへのアミノ酸置換;およびSEQ ID NO:2のアミノ酸310位に対応するArgからLeuへのアミノ酸置換からなる群より選択されるアミノ酸置換
をコードするgK変異体遺伝子である、前記いずれかのパラグラフの腫瘍溶解性HSV。
9.前記テトラサイクリンオペレーター配列が、2つのOp2リプレッサー結合部位を含む、前記いずれかのパラグラフの腫瘍溶解性HSV。
10.前記VP5プロモーターが、HSV-1またはHSV-2のVP5プロモーターである、前記いずれかのパラグラフの腫瘍溶解性HSV。
11.前記最初期プロモーターが、HSV-1またはHSV-2の最初期プロモーターである、前記いずれかのパラグラフの腫瘍溶解性HSV。
12.前記HSV最初期プロモーターが、ICP0プロモーター、ICP4プロモーター、およびICP27プロモーターからなる群より選択される、前記いずれかのパラグラフの腫瘍溶解性HSV。
13.前記組換えDNAがHSV-1ゲノムの一部である、前記いずれかのパラグラフの腫瘍溶解性HSV。
14.前記組換えDNAがHSV-2ゲノムの一部である、前記いずれかのパラグラフの腫瘍溶解性HSV。
15.薬学的に許容される担体をさらに含む、前記いずれかのパラグラフの腫瘍溶解性HSV。
16.抗腫瘍特異的免疫を誘導するために腫瘍溶解性HSVの有効性を高めることができる少なくとも1つのポリペプチドをさらにコードする、前記いずれかのパラグラフの腫瘍溶解性HSV。
17.前記少なくとも1つのポリペプチドが、インターロイキン2(IL2)、インターロイキン12(IL12)、インターロイキン15(IL15)、抗PD-1抗体または抗体試薬、抗PD-L1抗体または抗体試薬、抗OX40抗体または抗体試薬、CTLA-4抗体または抗体試薬、TIM-3抗体または抗体試薬、TIGIT抗体または抗体試薬、可溶性インターロイキン10受容体(IL10R)、可溶性IL10RとIgG-Fcドメインの融合ポリペプチド、可溶性TGFβ II型受容体(TGFBRII)、可溶性TGFBRIIとIgG-Fcドメインの融合ポリペプチド、抗IL10R抗体または抗体試薬、抗IL10抗体または抗体試薬、抗TGFBRII抗体または抗体試薬、および抗TGFBRII抗体または抗体試薬からなる群より選択される産物をコードする、前記いずれかのパラグラフの腫瘍溶解性HSV。
18.前記腫瘍溶解性HSVが融合活性をさらにコードする、前記いずれかのパラグラフの腫瘍溶解性HSV。
19.組換えDNAを含む腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス(HSV)であって、
該組換えDNAが、
(a) 5’非翻訳領域と、TATA要素を含むVP5プロモーターに機能的に連結されているHSV-1またはHSV-2のVP5遺伝子とを含む、遺伝子;
(b) TATA要素に対して3’の、6~24ヌクレオチドの間に位置するテトラサイクリンオペレーター配列であって、VP5遺伝子がテトラサイクリンオペレーター配列に対して3’にある、テトラサイクリンオペレーター配列;
(c) HSV最初期プロモーターに機能的に連結されているテトラサイクリンリプレッサーをコードし、ICP0遺伝子座に位置する、遺伝子配列;
(d) 野生型と比較してシンシチウム形成を増大させる変異体遺伝子であって、HSV-1またはHSV-2の変異体遺伝子が、糖タンパク質K(gK)変異体、糖タンパク質B(gB)変異体、UL24変異体、およびUL20遺伝子変異体からなる群より選択される、変異体遺伝子;
(e) 機能的ICP34.5タンパク質をコードする遺伝子配列;ならびに
(f) 改変HSV-2最初期プロモーターに機能的に連結されているドミナントネガティブTGF-β突然変異体配列であって、該遺伝子がUL26遺伝子およびUL27遺伝子の遺伝子間領域に位置する、ドミナントネガティブTGF-β突然変異体配列
を含み、
該腫瘍溶解性HSVが、機能的ICP0をコードせず、かつVP5の5’非翻訳領域に位置するリボザイム配列を含まない、
前記腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス。
20.組換えDNAを含む腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス(HSV)であって、
該組換えDNAが、
(a) 5’非翻訳領域と、TATA要素を含むVP5プロモーターに機能的に連結されているHSV-1またはHSV-2のVP5遺伝子とを含む、遺伝子;
(b) TATA要素に対して3’の、6~24ヌクレオチドの間に位置するテトラサイクリンオペレーター配列であって、VP5遺伝子がテトラサイクリンオペレーター配列に対して3’にある、テトラサイクリンオペレーター配列;
(c) HSV最初期プロモーターに機能的に連結されているテトラサイクリンリプレッサーをコードし、ICP0遺伝子座に位置する、遺伝子配列;
(d) 野生型と比較してシンシチウム形成を増大させる変異体遺伝子であって、HSV-1またはHSV-2の変異体遺伝子が、糖タンパク質K(gK)変異体、糖タンパク質B(gB)変異体、UL24変異体、およびUL20遺伝子変異体からなる群より選択される、変異体遺伝子;
(e) 機能的ICP34.5タンパク質をコードする遺伝子配列;ならびに
(f)改変HSV-2最初期プロモーターに機能的に連結されているドミナントネガティブTGF-β突然変異体配列であって、該遺伝子がUL21遺伝子およびUL22遺伝子の遺伝子間領域に位置する、ドミナントネガティブTGF-β突然変異体配列
を含み、
該腫瘍溶解性HSVが、機能的ICP0をコードせず、かつVP5の5’非翻訳領域に位置するリボザイム配列を含まない、
前記腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス。
21.組換えDNAを含む腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス(HSV)であって、
該組換えDNAが、
(a) 5’非翻訳領域と、TATA要素を含むVP5プロモーターに機能的に連結されているHSV-1またはHSV-2のVP5遺伝子とを含む、遺伝子;
(b) TATA要素に対して3’の、6~24ヌクレオチドの間に位置するテトラサイクリンオペレーター配列であって、VP5遺伝子がテトラサイクリンオペレーター配列に対して3’にある、テトラサイクリンオペレーター配列;
(c) HSV最初期プロモーターに機能的に連結されているテトラサイクリンリプレッサーをコードし、ICP0遺伝子座に位置する、遺伝子配列;
(d) 野生型と比較してシンシチウム形成を増大させる変異体遺伝子であって、HSV-1またはHSV-2の変異体遺伝子が、糖タンパク質K(gK)変異体、糖タンパク質B(gB)変異体、UL24変異体、およびUL20遺伝子変異体からなる群より選択される、変異体遺伝子;
(e) 機能的ICP34.5タンパク質をコードする遺伝子配列;ならびに
(f) 改変HSV-2最初期プロモーターに機能的に連結されているドミナントネガティブTGF-β突然変異体配列であって、該遺伝子がUL21遺伝子、UL22遺伝子、UL26遺伝子およびUL27遺伝子の遺伝子間領域に位置する、ドミナントネガティブTGF-β突然変異体配列
を含み、
該腫瘍溶解性HSVが、機能的ICP0をコードせず、かつVP5の5’非翻訳領域に位置するリボザイム配列を含まない、
前記腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス。
22.前記ドミナントネガティブTGF-β突然変異体配列が、mmTGF-β2-7M断片配列である、前記いずれかのパラグラフの腫瘍溶解性HSV。
23.(f)のHSV-2最初期プロモーターが、ICP0、ICP4、およびICP27からなる群より選択される、前記いずれかのパラグラフの腫瘍溶解性HSV。
24.(f)のHSV-2最初期プロモーターが、tetオペレーターを含む、前記いずれかのパラグラフの腫瘍溶解性HSV。
25.前記HSVが、テトラサイクリンまたはドキシサイクリンで調節可能である、前記いずれかのパラグラフの腫瘍溶解性HSV。
26.組換えDNAを含む、腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス(HSV)であって、該組換えDNAが、機能的なICP0遺伝子もICP34.5遺伝子もコードせず、かつ機能的mmTGF-β2-7M断片配列をコードする、前記腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス。
27.組換えDNAを含む、腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス(HSV)であって、該組換えDNAが、機能的ICP0をコードせず、かつ機能的mmTGF-β2-7M断片配列をコードする、前記腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス。
28.HSVが融合活性をさらにコードする、前記いずれかのパラグラフの腫瘍溶解性HSV。
29.前記HSVが、テトラサイクリンまたはドキシサイクリンで調節可能である、前記いずれかのパラグラフの腫瘍溶解性HSV。
30.機能的mmTGF-β2-7M断片配列をコードする、腫瘍溶解性ウイルス。
31.機能的mmTGF-β2-7M断片配列をコードする、組換えウイルス。
32.前記いずれかのパラグラフのウイルスを含む、組成物。
33.薬学的に許容される担体をさらに含む、前記いずれかのパラグラフの組成物。
34.前記いずれかのパラグラフのウイルスまたは前記いずれかのパラグラフの組成物のいずれかを発現する、細胞。
35.哺乳動物のものである、前記いずれかのパラグラフの細胞。
36.癌細胞または免疫細胞である、前記いずれかのパラグラフの細胞。
37.前記免疫細胞が、B細胞またはT細胞である、前記いずれかのパラグラフの細胞。
38.高レベルのmmTGF-β2-7Mを発現する、前記いずれかのパラグラフの細胞。
39.前記いずれかのパラグラフのウイルスまたは前記いずれかのパラグラフの組成物を癌を有する対象に投与する段階を含む、癌を処置するための方法。
40.前記癌が固形腫瘍である、前記いずれかのパラグラフの方法。
41.前記腫瘍が、良性または悪性である、前記いずれかのパラグラフの方法。
42.前記対象が、癌腫、黒色腫、肉腫、胚細胞腫瘍、および芽腫からなるリストより選択される癌を有すると診断されるか、または診断されている、前記いずれかのパラグラフの方法。
43.前記対象が、非小細胞肺癌、膀胱癌、乳癌、脳腫瘍、結腸癌、前立腺癌、肝臓癌、肺癌、卵巣癌、皮膚癌、頭頸部癌、腎臓癌、および膵臓癌からなる群より選択される癌を有すると診断されるか、または診断されている、前記いずれかのパラグラフの方法。
44.前記癌が転移性である、前記いずれかのパラグラフの方法。
45.tetオペレーター含有プロモーターを調節する剤を投与する段階をさらに含む、前記いずれかのパラグラフの方法。
46.前記剤が、ドキシサイクリンまたはテトラサイクリンである、前記いずれかのパラグラフの方法。
47.前記剤が、局所的または全身的に投与される、前記いずれかのパラグラフの方法。
48.前記全身投与が経口投与である、前記いずれかのパラグラフの方法。
49.前記ウイルスまたは組成物が、腫瘍に直接投与される、前記いずれかのパラグラフの方法。
50.治療抗体およびmmTGF-β2-7Mの配列を含む、ハイブリッド核酸配列であって、mmTGF-β2-7Mが該治療抗体のFcドメインに融合されている、前記ハイブリッド核酸配列。
51.前記治療抗体の配列が、免疫療法抗体の配列である、前記いずれかのパラグラフのハイブリッド核酸配列。
52.前記治療抗体の配列が、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗Tim3抗体、抗-抗CTLA4抗体、抗TDM-1抗体、および抗TIGIT抗体からなるリストより選択される配列である、前記いずれかのパラグラフのハイブリッド核酸配列。
53.前記いずれかのパラグラフのハイブリッド核酸によってコードされる、ポリペプチド。
54.前記いずれかのパラグラフのハイブリッド核酸または前記いずれかのパラグラフのポリペプチドのいずれかを発現する、ベクター。
55.a.ドミナントネガティブTGF-β突然変異体配列を含む細胞外ドメイン;
b.膜貫通ドメイン;
c.共刺激性ドメイン;および
d.細胞内シグナル伝達ドメイン
の少なくとも1つを含む、キメラ抗原受容体(CAR)ポリペプチド。
56.前記ドミナントネガティブTGF-β突然変異体配列が、mmTGF-β2-7M断片配列である、前記いずれかのパラグラフのCARポリペプチド。
57.前記いずれかのパラグラフのCARポリペプチドをコードする、核酸。
58.a.前記いずれかのパラグラフのCARポリペプチド;または
b.前記いずれかのパラグラフのコード核酸
を含む、哺乳動物細胞。
59.T細胞である、前記いずれかのパラグラフの細胞。
60.ヒト細胞である、前記いずれかのパラグラフの細胞。
61.少なくとも第2のCARポリペプチドをさらに含む、前記いずれかのパラグラフの細胞。
62.前記少なくとも第2のCARポリペプチドが、チェックポイント阻害剤に結合する配列を含む細胞外ドメインを含む、前記いずれかのパラグラフの細胞。
63.前記チェックポイント阻害剤が、PD-L1、PD-1、TIGIT、TIM3、およびCTLA4より選択される群より選択される、前記いずれかのパラグラフの細胞。
64.癌を有するかまたは癌を有すると診断された個体から得られたものである、前記いずれかのパラグラフの細胞。
65.癌の処置を必要とする対象において癌を処置する方法であって、前記いずれかのパラグラフの細胞を対象に投与する段階を含む、前記方法。
66.癌の処置を必要とする対象において癌を処置する方法であって、
a.前記いずれかのパラグラフのCARポリペプチドまたは前記いずれかのパラグラフのコード核酸をT細胞の表面上に含むように、T細胞を操作する段階;および
b.該操作されたT細胞を対象に投与する段階
を含む、前記方法。
67.前記操作されたT細胞が、少なくとも第2のCARポリペプチドをさらに含む、前記いずれかのパラグラフの方法。
68.少なくとも1つのさらなる抗癌治療剤を投与する段階をさらに含む、前記いずれかのパラグラフの方法。
69.組換えDNAを含む、腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス(HSV)であって、該組換えDNAが、機能的ICP0遺伝子およびICP34.5遺伝子をコードせず、かつ機能的mmTGF-β2-7M断片配列をコードする、前記腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス。
【実施例
【0226】
実施例1
序論
免疫チェックポイント遮断(ICB)は、様々な癌の処置のための心躍る新しいパラダイムに相当する。しかし、ICBの奏効率は、一般に10~35%であり(Bellmunt et al., 2017;Powles et al., 2018; Zou et al., 2016)、患者の大部分がICB療法に対して無応答性のまま残されている。免疫抑制性腫瘍微小環境は、癌免疫療法におけるICBの効力を顕著に制限する主な障壁のうちの1つをもたらす。TGF-βは、腫瘍微小環境の免疫抑制状態の促進および維持において重要な役割を果たす(Bollard et al., 2002;Gorelik and Flavell, 2002;Loffek, 2018;Massague, 2008;Wrzesinski et al., 2007;Zhang et al., 2016)。TGF-βの過剰発現が様々なタイプのヒト癌で検出されており、この過剰発現は予後不良と関連する(Calon et al., 2015;Dong and Blobe, 2006;Haque and Morris, 2017;Lin and Zhao, 2015;Mariathasan et al., 2018;Massague, 2008;Wikstrom et al., 1998;Wrzesinski et al., 2007)。
【0227】
TGF-βはTh1応答およびCD8+ T細胞の活性を抑制し、一方で、CD4+CD25+ T-reg細胞の機能を促進することが研究によって明らかになった(Chen et al., 2005;Fantini et al., 2004;Loffek, 2018;Mariathasan et al., 2018;Tauriello et al., 2018;Verrecchia and Redini, 2018)。さらに、TGF-βは、樹状細胞の成熟および抗原提示、ならびにNK細胞、M1マクロファージ、およびN1好中球の抗腫瘍活性を阻害する(Fridlender et al., 2009;Gong et al., 2012;Krneta et al., 2017;Loffek, 2018;Luo et al., 2006;Verrecchia and Redini, 2018;Zhang et al., 2016;Zheng et al., 2017)。Mariathasanらは、TGF-βが、T細胞浸潤を防止することによってPD-L1免疫遮断に対する腫瘍応答を減弱し、一方で、腫瘍微小環境におけるTGF-βシグナル伝達の遮断が抗腫瘍T細胞応答および腫瘍退縮の強い増強につながることを最近示した(Mariathasan et al., 2018)。したがって、腫瘍微小環境におけるTGF-βシグナル伝達の阻害は、癌免疫療法への著しい関心を得た(Bendle et al., 2013; Biswas et al., 2007;de Gramont et al., 2017;Haque and Morris, 2017;Hutzen et al., 2017;Knudson et al., 2018;Loffek, 2018;Muraoka et al., 2002;Strauss et al., 2018)(Ahn Myung-ju, Barlesi F et al., 2019-J Clinical Oncology-Abstract;Strauss J et al. and Gulley J, 2019-Cancer Res)。
【0228】
長年にわたって、小分子、ペプチド、ならびに可溶性形態のTGF-β II型受容体(TβRII)、および抗TGF-β1抗体を含めて、TGF-βシグナル伝達を遮断することができる様々な分子が開発されてきた(Biswas et al., 2007;Bottinger et al., 1997;de Gramont et al., 2017;Gil-Guerrero et al., 2008;Haque and Morris, 2017;Muraoka et al., 2002;Qin et al., 2016;Rowland-Goldsmith et al., 2001;Tian et al., 2015;Tojo et al., 2005)。最近、Kimらは、TGF-β II型受容体(TβRII)に高親和性を示し、一方で、TGF-βI型受容体(TβRI)に結合することができない、新規な完全に非機能性のモノマー形態のドミナントネガティブTGF-βポリペプチド、mmTGF-β2-7Mを開発した(Kim et al., 2017)。さらに、大腸菌(E. Coli)から生成および精製されたmmTGF-β2-7Mは、TGF-βレポーター細胞株において、TGF-β1、TGF-β2、およびTGF-β3シグナル伝達を遮断するのに非常に効果的である(Kim et al., 2017)。現在までに、哺乳動物細胞におけるmmTGF-β2-7Mの発現を記載した報告はない。したがって、哺乳動物細胞が発現するmmTGF-β2-7Mが、TGF-βのシグナル伝達を遮断することができる強力なドミナントネガティブ突然変異体として機能することができるかどうかは、まだ決定されていない。
【0229】
QREO5-Fは、本発明者らによって最近開発された、第2の世代の融合性のテトラサイクリンで調節可能な腫瘍溶解性HSV-1組換えウイルスである。QREO5-Fによる複数のヒト癌細胞タイプの感染は、35,000~5×107倍のテトラサイクリン依存的後代ウイルス産生をもたらし、一方で、ウイルス複製およびウイルス関連細胞傷害は、感染した増殖中のおよび増殖が停止した正常なヒト線維芽細胞において、ほどんど観察されない。QREO5-Fは、免疫適格性マウスにおいて、予め確立されたHep1-6ヘパトーマおよびCT26.WT結腸癌腫瘍に対して非常に効果的である。重要なことに、QREO5-Fウイルス療法は、同じタイプの腫瘍細胞で腫瘍がないマウスに再チャレンジした後に腫瘍増殖を防止することがきる、効果的な腫瘍特異的免疫の誘導をもたらすことができる。腫瘍生物学におけるTGF-βシグナル伝達の重要な役割およびその強力な免疫抑制活性に照らして、癌免疫療法におけるQREO5-Fの治療有効性は、限局性腫瘍微小環境中にmmTGF-β2-7Mのデノボ発現を与えた場合に、さらに増強され得ることが特に企図された。
【0230】
HSV-1のUL26遺伝子およびUL27遺伝子の遺伝子間領域において、HSV-2 ICP0最初期プロモーターの制御下でlacZ遺伝子をコードするQREO5-F由来の組換え体である、QREOF-lacZの構築および特徴づけ
プラスミドpQUL2627-TOおよびpQUL2627-lacZの説明
pQUL2627-TOは、1)HSV-1 UL26ポリAシグナルの963bp上流からUL26ポリAシグナル配列の30bp下流からなるHSV-1 DNA配列、2)HSV-2 TATA要素がHCMV TATATAAに変えられ、その後に、Yaoら(Yao et al., 1998)によって記載されている2つのタンデムなtetオペレーター、MCS、およびSV40ポリAシグナル配列が続く改変HSV-2 ICP0プロモーターを含むDNA配列、ならびに3)HSV-1 UL27ポリAシグナルの59bp下流からUL27ポリAシグナルの935bp上流からなるHSV-1 DNA配列からなる合成DNA断片を含む。pQUL2627-vは、tetオペレーター配列を含まない、pQUL2627-TO由来のプラスミドである。pQUL2627-lacZは、改変HSV-2 ICP0プロモーターの制御下でlacZ遺伝子をコードする、pQUL2627-v由来のプラスミドである。
【0231】
QREOF-lacZの構築および特徴づけ
QREOF-lacZはQREO5-F由来の組換えウイルスであり、これは、改変HSV-2 ICP0プロモーターの制御下にあるlacZ遺伝子がUL26遺伝子およびUL27遺伝子の遺伝子間領域に挿入されている(図1)。QREOF-lacZは、リポフェクタミン2000媒介性トランスフェクション(Akhrameyeva et al., 2011)によって、Sap I/Xmn Iで直鎖状にしたpQUL2627-lacZと感染性QREO5-FウイルスDNAとでU2OS細胞をコトランスフェクトすることによって生成した。次いで、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-b-D-ガラクトピラノシド(X-Gal)の存在下で、U2OS細胞において、lacZ発現ウイルスを選択し、プラーク精製を行った。
【0232】
QREOF-lacZは、U2OS細胞およびICP0発現Vero細胞株、Q0-19細胞において均一な青色の融合性プラークを示す、3ラウンドのプラーク精製を行ったQREO5-F由来の組換えウイルスである。図2に提示する結果は、lacZ遺伝子の発現とQREOF-lacZの複製の両方がQREOF-lacZ感染細胞において堅固に調節され得ることを示す。
【0233】
HSV-1のUL26遺伝子およびUL27遺伝子の遺伝子間領域において改変HSV-2 ICP4最初期プロモーターの制御下でドミナントネガティブTGF-β突然変異体、mmTGF-β2-7MをコードするQREOF-lacZ由来の組換え体である、QREO-DNTの構築および特徴づけ
プラスミドpQUL2627-TGFDNおよび一過的トランスフェクションアッセイによるmmTGF-β2-7Mのインビトロ発現の説明
pQUL2627-TGF-DNは、pQUL2627-lacZ中のHSV-2 ICP0/lacZ遺伝子含有DNA断片をtetO含有HSV-2 ICP4/TOプロモーターの制御下にあるHSV-1 gDシグナルペプチドを有するコドン最適化mmTGF-β2-7Mからなる合成DNA断片と置き換えることによって構築した。mmTGF-β2-7Mは92アミノ酸からなる。mmTGF-β2-7Mの発現を評価するために、U2OS細胞をモックトランスフェクトしたか、またはpQUL26.27-TGF-DNもしくはHSV-1 ICP6プロモーターの制御下でeGFPをコードするeGFP発現プラスミドであるpICP6-eGFPでトランスフェクトした。図3に提示するウエスタンブロット分析は、完全長TGF-β1前駆体(390アミノ酸)に相当する50kDaに近いMWを有するタンパク質が、pICP6-EGFPでトランスフェクトした細胞の抽出物とpQUL26.27-TGFDNでトランスフェクトした細胞の抽出物の両方に存在するが、pQUL26.27-TGF-DNでトランスフェクトした細胞のみが、TGF β1特異的抗体によって強く認識された11~12kDaのMWを有するタンパク質を産生することを示す。eGFPでトランスフェクトした細胞の抽出物では、TGF-β1の成熟型を検出することができなかった。しかし、成熟TGF-β1は、pICP6-eGFPでトランスフェクトした細胞とpQUL26.27-TGF-DNでトランスフェクトした細胞から収集した両方の細胞外培地で検出可能である。
【0234】
上記のトランスフェクトした細胞を位相差の光学および蛍光顕微鏡下で調べた場合に、トランスフェクションから40時間後に、pICP6-eGFPでトランスフェクトしたディッシュにおいて約35~40%の細胞がeGFP陽性であることが観察された。eGFPでトランスフェクトした細胞は、トランスフェクションから28時間~70時間後のモックトランスフェクトした細胞のものと形態学的に類似しているが、PQUL2627-TGF-DNでトランスフェクトしたU2OS細胞は、トランスフェクションから48時間および70時間後に、扁平であり、顕著に肥大し、かつ有意にストレスを受けているように思われた。さらに、pQUL2627-TGF-DNでトランスフェクトしたディッシュは、pICP6-EGFPでトランスフェクトしたディッシュよりも有意に少ない細胞を含むように思われた。これらの観察は、図4に提示される独立の実験によってさらに確認され、この実験は、pICP6-eGFPでトランスフェクトしたディッシュにおけるディッシュあたりの細胞の数は、pQUL2627-TGF-DNでトランスフェクトしたディッシュのものよりも1.6倍近く高いことを示し、これは、トランスフェクトした細胞が発現するmmTGF-β2-7Mが、U2OS細胞においてTGF-βシグナル伝達を効果的に遮断することができ、TGF-βシグナル伝達がU2OS細胞を含めた骨肉腫細胞の増殖、遊走、および侵襲性に必要とされるという以前の研究(Li et al., 2014;Matsuyama et al., 2003;Verrecchia and Redini, 2018)と矛盾がないことを示す。
【0235】
QREO-DNTの構築および特徴づけ
QREO-DNTはQREOF-lacZ由来の組換えウイルスであり、これは、改変HSV-2 ICP0プロモーターの制御下にあるlacZ遺伝子がHSV-2 ICP4/TOプロモーター配列の制御下でコドン最適化されたコドン最適化mmTGF-β2-7MをコードするDNA断片に置き換えられている。
【0236】
QREO-DNTは、リポフェクタミン2000によって、Nde I/Bbs Iで直鎖状にしたpQUL2627-TGF-DNと感染性QREOF-lacZウイルスDNAでU2OS細胞をコトランスフェクトすることによって生成した。X-Galの存在下で、U2OS細胞において、mmTGF-β2-7M発現ウイルスを選択し、プラーク精製を行った。手短に言えば、標準的なプラークアッセイによって、HSV2 ICP4TO/mmTGF-β2-7M含有DNA配列とのQREOF-lacZのLacZ遺伝子の組換え性の置き換えについて、トランスフェクションの後代ウイルスをスクリーニングした。感染から72時間後に、プラークがX-Galで染色された。mmTGF-β2-7M DNAをコードする配列によるLacZ遺伝子の置き換えを反映する白色プラークを単離した。HSV2 ICP4TOプロモーター配列およびUL27隣接配列に対して特異的なプライマーを用いるPCR分析によって、UL26遺伝子およびUL27遺伝子間領域におけるmmTGF-β2-7MをコードするDNA配列とのlacZ遺伝子の置き換えを確認した。QREO-DNTは、U2OS細胞およびICP0発現Vero細胞株、Q0-19細胞において均一な白色の融合性プラークを示す、2ラウンドのプラーク精製を行った、mmTGF-β2-7Mをコードする組換えウイルスである。
【0237】
QREO-DNTがTGF-βのドミナントネガティブ形態(TGF-DN)を効率的に発現する能力を、ドキシサイクリンの存在下で、3PFU/細胞のMOIで、U2OS細胞において評価した。図5に提示するウエスタンブロット分析は、QREOF-lacZ感染細胞とQREO-DNT感染細胞でICP27の類似したレベルが検出されるが、QREO-DNTのみが、抗TGF-β1特異的抗体と強く反応した、およそ11~12kDaのMWを有するタンパク質を発現することを示す。予想通り、TGF-β1の完全長前駆体形態は、モック感染細胞の抽出物と感染細胞の抽出物の両方で検出可能である。特に、mmTGF-β2-7Mのものよりもわずかに大きいMWを有する非常に薄いタンパク質バンドがモック感染細胞の抽出物で検出され、これは、TGF-β1の成熟型(112アミノ酸)を表すものと思われる。まとめると、図5に提示される結果は、QREO-DNTが高レベルのTGF-β1のドミナントネガティブ形態、mmTGF-β2-7Mを発現することができることを示す。
【0238】
参考文献
【0239】
実施例2
DNA配列およびアミノ酸配列
改変tetOを有するHSV-2 ICP0プロモーターの制御下にある関心対象の遺伝子をHSV-1 UL26/UL27遺伝子座に標的化するための転写カセット:
UL26のポリAシグナルの963bp上流からUL26ポリAシグナルの30bp下流からなるDNA配列:
UL27ポリAシグナルの59bp下流からUL27のポリAシグナルの935bp上流からなるDNA配列:
TetOを有する改変HSV-2 ICP0プロモーター+設計されたmcsとそれに続くSV40ポリAシグナル配列:
SV40ポリAシグナル配列:
HSV-2 ICP4/TOプロモーター配列の制御下にあるHSV-1 gDシグナルペプチドを有するコドン最適化mmTGF-β2-7M:
HSV-2 ICP4/TOプロモーター配列:
【0240】
HSV ICP4プロモーターはICP4による自己抑圧の支配下にあるので、記載されるtetO含有HSV-2 ICP4/TOプロモーターからHSV-2 ICP4プロモーターのICP4結合部位を欠失させた。
N末端にHSV-1 gDシグナルペプチドを有するコドン最適化mmTGF-β2-7M:
コドン最適化gDシグナルペプチド配列:
アテゾリズマブ(USAN/INN);アテゾリズマブ(遺伝子組換え)(JAN);Tecentriq(TN)
重鎖(448アミノ酸):
軽鎖(214アミノ酸):
重鎖のC末端に融合されたGGGGGGSリンカーを有するmmTGF-ベータ2-7Mからなるアテゾリズマブ重鎖:
融合タンパク質はリンカーなしでもよく、または2~4コピーのリンカーを有してもよい。リンカーは、また、GGGGS(SEQ ID NO:27)またはGGGGGS(SEQ ID NO:28)または2つの異なる機能タンパク質を融合するために一般に使用される他のリンカーでもよい。
KEGG DRUG:(例えば、ペンブロリズマ(Pembrolizuma);ペンブロリズマブ(USAN);ペンブロリズマブ(遺伝子組換え)(JAN);Keytruda(TN))
重鎖(447アミノ酸):
軽鎖(218アミノ酸):
重鎖のC末端に融合されたGGGGGGSリンカーを有するmmTGF-ベータ2-7Mからなるペンブロリズマブ重鎖:
【0241】
融合タンパク質はリンカーなしでもよく、または2~4コピーのリンカーを有してもよい。リンカーはまた、GGGGS(SEQ ID NO:27)またはGGGGGS(SEQ ID NO:28)でもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2022-07-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
2023502099000001.app
【国際調査報告】