(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-20
(54)【発明の名称】硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 67/06 20060101AFI20230113BHJP
C08K 3/01 20180101ALI20230113BHJP
【FI】
C08L67/06
C08K3/01
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022528608
(86)(22)【出願日】2020-11-12
(85)【翻訳文提出日】2022-05-16
(86)【国際出願番号】 EP2020081830
(87)【国際公開番号】W WO2021094413
(87)【国際公開日】2021-05-20
(32)【優先日】2019-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】596089399
【氏名又は名称】ビック-ケミー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(71)【出願人】
【識別番号】522193226
【氏名又は名称】ビック ネザーランズ べスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】ジェラード フーベルトゥス レーストマン
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ビーカー
(72)【発明者】
【氏名】フレデリック ピースタルト
(72)【発明者】
【氏名】トルステン クレーラー
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CD00X
4J002CF00X
4J002CF21W
4J002CF22W
4J002CF24W
4J002CF25W
4J002CH00X
4J002CK02X
4J002DD026
4J002DD066
4J002DE077
4J002DE087
4J002DE107
4J002DF036
4J002DG046
4J002DH046
4J002FD010
4J002FD206
4J002FD207
4J002GC00
4J002GF00
4J002GL00
4J002GM00
4J002GN00
4J002GQ01
(57)【要約】
無機塩(a)の使用であって、ポリエステル樹脂(c)及び無機塩(a)とは異なる無機増粘剤(d)を含む組成物における、酸官能性添加剤(b)の粘度減少効果を補償するための、ハロゲンイオン、硝酸イオン、リン酸イオン、硫酸イオン及びそれらの混合物から選択されるアニオンを含む無機塩(a)の使用。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機塩(a)の使用であって、ポリエステル樹脂(c)及び前記無機塩(a)とは異なる無機増粘剤(d)を含む組成物における、酸官能性添加剤(b)の粘度減少効果を補償するための、ハロゲンイオン、硝酸イオン、リン酸イオン、硫酸イオン及びそれらの混合物から選択されるアニオンを含む無機塩(a)の使用。
【請求項2】
前記無機塩(a)がアルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記無機塩(a)が、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム及びカルシウムの群から選択される塩である、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記無機塩(a)が塩化カルシウムを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記酸官能性添加剤(b)が、カルボン酸官能基、酸性リン酸エステル基、リン酸基、及びそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記酸官能性添加剤(b)が、10~250mg KOH/gの範囲の酸価を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
酸官能性添加剤(b)が300~15,000g/molの数平均分子量を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記ポリエステル樹脂(c)が、不飽和ポリエステル樹脂である、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
前記組成物がエチレン性不飽和重合性モノマーを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
前記無機増粘剤(d)が、アルカリ金属、アルカリ土類金属及びそれらの組み合わせから選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
前記無機増粘剤(d)が、塩基性金属酸化物、金属水酸化物、及びそれらの組み合わせから選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
前記無機増粘剤(d)が酸化マグネシウムを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
下記を含有している組成物:
ハロゲンイオン、硝酸イオン、リン酸イオン、硫酸イオン及びそれらの混合物から選択されるアニオンを含む無機塩(a)、
酸官能性添加剤(b)、
ポリエステル樹脂(c)、及び
前記無機塩(a)とは異なる無機増粘剤(d)。
【請求項14】
下記を含有している、請求項13に記載の組成物(重量%は前記組成物の全重量に対して計算される):
0.0001~1.0000重量%の無機塩(a)、
0.0100~5.0000重量%の酸官能性添加剤(b)、
10.0000~50.0000重量%のポリエステル樹脂(c)、
0.1000~1.0000重量%の前記無機塩(a)とは異なる無機増粘剤(d)、
43.0000~89.8899重量%の(a)~(d)とは異なる成分。
【請求項15】
下記の工程を含む、3次元物品を調製する方法:
請求項13又は14に記載の組成物を提供すること、
前記組成物を所望の三次元形状にすること、及び
前記組成物を硬化させること。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル樹脂及び無機増粘剤を含む組成物における酸官能性添加剤の粘度低減効果を補償するための無機塩の使用に関する。さらに、本発明は、前記組成物及び3三次元物品の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
不飽和ポリエステル樹脂のような熱硬化性樹脂は、鋳造材料及び繊維強化材料のような多種多様な製品に一般に使用されている。不飽和ポリエステル樹脂は通常、ジカルボン酸又は無水物と二官能性アルコールとの縮合生成物であり、架橋に必要な主鎖不飽和を提供する。架橋プロセスの間に、樹脂の硬化が起こる。このプロセスは粘度の増加をもたらし、樹脂の硬質化(硬化)をもたらす。また、樹脂の作業性を向上させるために補助成分を添加してもよい。一般的に使用される補助成分の1つは、添加剤、例えばプロセス添加剤であり、これは様々な方法で樹脂の製造工程を促進し、また熱硬化性樹脂の製造に不可欠である。しかしながら、ポリエステル樹脂のような硬化システムの増粘は、酸によって影響される。したがって、これらの添加剤(一般に酸性添加剤である)の使用は、一定の条件下で、樹脂の増粘時間の遅延をもたらし得る。酸性基を多く添加するほど、増粘に要する時間は長くなる。したがって、増粘時間の遅延を補償し、かつそれに応じて硬化プロセスを調整する必要性が継続的に存在する。
【0003】
米国特許第3,538,188号は、ポリエステル樹脂用の増粘剤を取り扱っている。無機リチウム及びマグネシウム塩の混合物を、不飽和ポリエステル樹脂に添加して、樹脂の粘度を増加させる。混合物は、最初の24~48時間の間、粘度の増加を抑制し、その後、急速な高粘度の増加を引き起こす。しかしながら、それは添加剤の添加も、樹脂に対するそれらのそれぞれの効果も扱っていない。
【0004】
US2007/00041A1は、現場硬化管(Cured-In-Place-Pipe)オープン成形プロセスで使用されるポリエステル樹脂用の増粘剤を扱っている。ポリエステル樹脂の粘度を増加させるために、酸化マグネシウム及び酸化カルシウムを含む活性剤が使用される。この文献も、このような樹脂系における添加剤の使用に関するものではなく、したがって、それらの潜在的に生じる副作用を減少させることを目的としていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は先行技術の欠点を克服し、作業性のための減少した増粘時間を生じる化合物を提供することである。他の目的は、少量でのみ使用しなければならず、安価であり、使用が容易であり、樹脂の粘度を増加させる化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
驚くべきことに、本発明による使用は、上記の要件を満たすことが見出された。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、ポリエステル樹脂(c)と無機塩(a)とは異なる無機増粘剤(d)とを含む組成物において、酸官能性添加剤(b)の粘度低減効果を補償するための、ハロゲンイオン、硝酸イオン、リン酸イオン、硫酸イオン及びそれらの混合物から選択されるアニオンを含む無機塩(a)の使用に関する。
【0008】
さらなる実施形態では、本発明は、酸官能性添加剤(b)、ポリエステル樹脂(c)、及び無機塩(a)とは異なる無機増粘剤(d)を含む組成物の粘度を増加させるための、ハロゲンイオン、硝酸イオン、リン酸イオン、硫酸イオン及びそれらの混合物から選択されるアニオンを含む無機塩(a)の使用に関する。
【0009】
好ましくは、無機塩(a)は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩である。アルカリ金属は、周期律表の第1族を含み、他方で第2族はアルカリ土類金属を表す。このようなアルカリ金属又はアルカリ土類金属の例は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム及びストロンチウムである。無機塩(a)は、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム及びカルシウムの群から選択される塩であることが好ましい。無機塩(a)は、ナトリウム、カリウム及びカルシウムの群から選択される塩であることがより好ましい。さらにより好ましくは、無機塩(a)はカルシウムの塩を含む。
【0010】
無機塩(a)は、ハロゲンイオン、硝酸イオン、リン酸イオン、硫酸イオン、及びそれらの混合物から選択されるアニオンを含む。
【0011】
ハロゲンイオンは、負電荷を有するハロゲン原子である。ハロゲンアニオンは、フッ素イオン(F-)、塩素イオン(Cl-)、臭素イオン(Br-)、ヨウ素イオン(I-)、及びアスタチンイオン(At-)である。好ましくは、塩素イオン、臭素イオン又はヨウ素イオンが使用される。無機塩(a)は、塩素アニオンを含むことがより好ましい。硝酸イオンは、分子式NO3
-を有するイオンであり、リン酸イオンは分子式(PO4)3-を有するイオンであり、硫酸イオンは分子式SO2
-4を有する。無機塩(a)は硫酸イオン及びハロゲンイオンから選択されるアニオンを含むことが好ましい。無機塩(a)がハロゲンイオンを含むことがさらに好ましい。好ましくは、無機塩(a)は塩化カルシウムを含む。別の実施形態では、無機塩(a)は塩化カルシウムからなる。
【0012】
組成物は、酸官能性添加剤(b)を含む。酸官能性添加剤は、酸官能基を有し、かつ酸官能性を示す添加剤である。酸の塩は、本発明による酸官能基添加剤を表さない。酸官能性添加剤(b)は、カルボン酸官能基、酸性リン酸エステル基、リン酸基及びそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを適切には含む。より好適には、酸官能性添加剤(b)は、ポリエーテル、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ-アミン-付加物、直鎖又は分岐鎖であるC10~C100アルキル鎖、又はそれらの組み合わせを典型的には含む第1の部分と、酸官能基を含む第2の部分とを含む。本発明の好ましい実施形態では、第2の部分は酸官能基からなる。1つの好ましい実施形態では、酸官能基はリン酸エステル基である。典型的には、このような実施形態の添加剤は、湿潤剤及び分散剤として適切である。別の好ましい実施形態では、酸官能基はカルボン酸基である。このような実施形態の添加剤は、典型的にはプロセス剤及び離型剤として好適である。
【0013】
一般に、酸官能性添加剤(b)は、10~250mg KOH/gの範囲の酸価を有する。酸官能性添加剤(b)は、酸価が10~200mgの範囲であることが好ましく、10~150mgの範囲であることがより好ましい。酸価は使用した原料に基づいて計算してもよいし、滴定によって決定してもよい。酸価は、1gの物質を中和するのに必要なKOH量(mg)である。酸価は、DIN EN ISO 2114に従って、エタノール中の0.1N KOHとの中和反応によって測定した。
【化1】
【0014】
酸官能性添加剤(b)は、数平均分子量が300~15000g/molであることが好ましい。酸官能性添加剤(b)は、数平均分子量が300~10000g/molであることがより好ましく、300~7000g/molであることがさらに好ましい。酸官能性添加剤(b)は、数平均分子量が300~5000g/molであることが最も好ましい。数平均分子量は、DIN 55672 part 2(2016年)に従って、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(溶離液:ジメチルアセトアミド中の臭化リチウム溶液(含有量5g/l)、標準:ポリメチルメタクリレート、カラム温度:50℃)によって測定することができる。数平均分子量は、計算によって決定することもできる。さらに、1000g/molまでの小分子の数平均分子量は、質量分光分析法又は核磁気共鳴分光分析法等の他の方法によって決定することができる。
【0015】
無機塩(a)は、ポリエステル樹脂(c)及び無機増粘剤(d)を含む組成物中の酸官能性添加剤(b)の粘度低減効果を補償するために使用される。酸官能基添加剤(b)は、ポリエステル樹脂の増粘に必要な時間の増加をもたらし、かつ達成可能な粘度の最終レベルをかなり低下させることができる。この望ましくない効果を相殺するために、無機塩(a)が添加され、これは増粘の加速につながる。本発明に関する粘度低減効果の補償は、増粘時間を増加させ、また増粘挙動を低減させるという望ましくない効果が、少なくとも部分的に相殺されることを意味する。無機塩(a)を添加することにより、酸官能基添加剤(b)及び無機塩(a)を含まないポリエステル樹脂(c)と比較して、増粘時間を最終的にさらに短縮し、部分的に短縮し、又は正確に補償することができる。すなわち、粘度減少効果を補償することにより、少なくとも、ポリエステル樹脂(c)の粘度の増加をもたらす。
【0016】
好ましくは、ポリエステル樹脂(c)は、不飽和ポリエステル樹脂である。さらに、組成物は、好適にはエチレン性不飽和重合性モノマーを含む。ポリエステル樹脂は、硬化プロセス中に架橋する、従来技術において公知のものいずれかであり得る。硬化は、ポリマー鎖の架橋によってポリマー材料の強化又は硬化を生じる化学プロセスである。硬化プロセスは、当技術分野で公知の任意の方法によって行うことができる。硬化は、室温又は加温で行うことができる。架橋は、重付加、重縮合、又は重合反応の手段によって行うことができる。好ましい硬化プロセスは、ラジカル又はイオン重合反応、及び重付加反応から選択される。
【0017】
不飽和ポリエステル樹脂は、炭素-炭素二重結合のラジカル連鎖反応を介して硬化する樹脂系である。それらは、適切には1又は複数のエチレン性不飽和基、好ましくはビニル、置換ビニル、アリル、(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリルアミド基が結合される不飽和化合物等のモノマーを含む。不飽和ポリエステル樹脂は、従来技術において公知のものいずれでもよく;不飽和ポリエステル樹脂は、ビニルエステル樹脂(好ましくはエポキシ樹脂と不飽和モノカルボン酸との反応によって得ることができる)も含む。適切な例は、ジシクロペンタジエン(DCPD樹脂)のようなジエンのポリエステル、並びに主な量のオレフィン性不飽和、好ましくは100個のエステル基当たり10~75個のオレフィン基を有するジオールとジカルボン酸とのポリエステルである。典型的なジオールは、エチレングリコール及びプロピレングリコールである。典型的な不飽和酸には、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、及びフタル酸が含まれ、これらは、これらの酸の無水物、エステル又はハロゲン化物から出発するポリエステル樹脂に組み込むこともできる。不飽和ポリエステル樹脂の硬化は、モノマーの存在下で行うことが好ましい。好ましくは、モノマーはエチレン性不飽和重合性モノマーである。
【0018】
不飽和ポリエステル樹脂において従来使用されている任意のエチレン性不飽和モノマー及びエチレン性不飽和オリゴマーを使用することができ、これは、不飽和ポリエステルと架橋することができる。エチレン性不飽和重合性モノマーは、好ましくは、スチレン及び置換スチレン(α-メチルスチレン等)、アリル、アリルベンゼン、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、及びオレフィン化合物から選択される。
【0019】
任意選択で、これらの系は、ジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリルアミド、ジビニルベンゼン、トリ(メタ)アクリレート、テトラ(メタ)アクリレート等の架橋剤をさらに含む。不飽和ポリエステル樹脂系は好ましくは、開始剤(過酸化物又はアゾ開始剤等)の存在下で、場合により第三級アミン又はコバルト化合物(例えば、オクタン酸コバルト又はナフテン酸コバルト)等の促進剤の存在下で、硬化させることができる。硬化プロセスは、周囲温度で、又は加温で、任意選択で、型内等でシステムに圧力を加えることによって、開始することができる。
【0020】
無機増粘剤(d)は、無機塩(a)とは異なる。好適には、無機増粘剤(d)は、塩基性金属酸化物、金属水酸化物、及びそれらの組み合わせから選択される。塩基性金属酸化物は一般に、7を超えるpHを有する酸化物である。それらは、通常、酸素を金属、特にアルカリ金属及びアルカリ土類金属と反応させることによって形成される。塩基性金属酸化物の好適な例は、MgO、CaO、ZnO、BaOである。金属水酸化物は金属の水酸化物であり、一般に7を超えるpHを有する強塩基として知られている。多くの金属水酸化物は、水酸化物イオンと、それを構成する特定の金属のイオンとから構成される。金属水酸化物の適当な事例は、Ca(OH)2、Mg(OH)2、Zn(OH)2である。
【0021】
無機増粘剤(d)は、アルカリ金属、アルカリ土類金属及びそれらの組み合わせから選択されることが好ましい。好ましくは、無機増粘剤(d)が酸化マグネシウムを含む。さらなる実施形態において、無機増粘剤(d)は、無機増粘剤(d)の重量に基づいて計算して、少なくとも50重量%の酸化マグネシウムを含む。さらに別の実施形態では、無機増粘剤(d)は酸化マグネシウムからなる。
【0022】
本発明はさらに、以下を含む組成物に関する:
ハロゲンイオン、硝酸イオン、リン酸イオン、硫酸イオン及びそれらの混合物から選択されるアニオンを含む無機塩(a)、
酸官能性添加剤(b)、
ポリエステル樹脂(c)、及び
無機塩(a)とは異なる無機増粘剤(d)。
【0023】
好ましい実施形態において、組成物は下記を含む(重量%は組成物の総重量に対して計算される):
ハロゲンイオン、硝酸イオン、リン酸イオン、硫酸イオン及びそれらの混合物から選択されるアニオンを含む、0.0001~1.0000重量%の無機塩(a)、
0.0100~5.0000重量%の酸官能性添加剤(b)、
10.0000~50.0000重量%のポリエステル樹脂(c)、
無機塩(a)とは異なる、0.1000~1.0000重量%の無機増粘剤(d)、
(a)~(d)とは異なる43.0000~89.8899重量%の成分。
【0024】
さらに、この組成物は一般に、充填剤、顔料、繊維、難燃性(例えば、Al(OH)3)、及びそれらの組み合わせから選択される固形粒子を含んでもよい。固体粒子は、無機増粘剤(d)及び無機塩(a)とは異なる。
【0025】
適切な充填剤は例えば、通常の微粉末状又は顆粒状充填剤であり、水硬性ケイ酸塩、チョーク、カオリン、ドロマイト、バライト、セメント、タルク、珪藻土、木粉、木材チップ、クレー、タルク、シリカ粉末、ガラス粉末、ガラスビーズ、マイクロセルロース、硅砂、河川砂、大理石廃棄物、砕石、又はそれらの任意の組合せを含むことができる。
【0026】
繊維強化複合材料は、ポリマーマトリックス中に埋め込まれた繊維を含む。ポリマーマトリックスは、繊維間のバインダーとして働く。繊維は一般に、マトリックスポリマー単独と比較して、複合材料の機械的特性を改善する。繊維は、無機又は有機であってもよい。適切な繊維は、ガラス繊維、炭素繊維、玄武岩繊維及びポリマー繊維、ラインセルロース、並びにポリエチレン、ポリカルボン酸エステル又はポリアミド樹脂の繊維である。それらは5cmまでの長さを有する短繊維の形態、又は粉砕繊維の形態であり得るが、好ましくは個々のロービング、平行ロービングのウェブ、繊維マット、繊維ウェブ、繊維織物又は繊維ニットとしての長繊維の形態である。それらは、一般に、組成物の総重量に基づいて60重量%まで使用することができる。炭素繊維には、非晶質炭素繊維及びグラファイト繊維が含まれる。種々の出発材料から製造されたカーボン繊維、例えば、ポリアクリロニトリル、ピッチ、又はレーヨンから製造されたカーボン繊維も、同様に好適である。炭素繊維は例えば、繊維製造中に公知のサイジング剤で、化学的又は機械的表面前処理を受けていてもよい。特定の前処理を施されていない炭素繊維も、同様に使用することができる。意図される最終用途に応じて、炭素繊維は、フィラメント繊維、ステープル繊維、又はチョップド繊維として存在してもよい。いくつかの実施形態では、炭素繊維が織布又は不織布として存在する。他の実施形態では、炭素繊維はロービングとして存在する。
【0027】
全ての公知の種類の顔料が、本発明による組成物において使用され得る。無機又は有機の顔料及びそれらの混合物を好適に使用することができる。典型的には、有機顔料は着色顔料である。これは、顔料の性質をもつ有機化合物でできた着色素材を指す。いくつかの実施形態において、無機及び有機顔料は、好ましくは組成物の総重量に基づいて、30重量%までで使用され得る。
【0028】
さらに、本発明は、以下の工程を含む、三次元物品を提供する方法を包含する:
本発明の組成物を提供すること、
組成物を所望の三次元形状にすること、及び
組成物を硬化させること。
【0029】
三次元形状部品の例は、ボート、タンク(例えば、油、水、化学製品用)、管及びチューブ(例えば、飲用及び排水用)、壁被覆及び外壁、キャラバン、浴室及び洗面所内部(例えば、流し、浴槽、シャワートレー)、座席(例えば、バス、列車、スタジアム用)、自動車、トラック、トラクタ等の乗物のための部品(例えば、ラジエータカウル、トランク蓋、エアデフレクタ、スポイラ、取付部品、屋根)、ドア、窓枠及びケーシング枠、プロファイル材、バッテリハウジング、ブレード、ハウジング等の風力発電プラント用部品等の構成要素又は部品である。
【0030】
好適には、組成物を所望の三次元形状にする工程が組成物を型に導入することによって実施される。
【0031】
典型的な手順は、シート成形配合(SMC)、バルク成形配合(BMC)、注入成形(RIM-樹脂注入成形、RTM-樹脂トランスファー成形)、圧縮成形、VARI(真空適用樹脂注入)、フィラメントワインディング、引抜成形、及びオートクレーブ硬化を含む。
【0032】
さらなる成分、特に熱硬化性樹脂の製造に典型的に使用されるそのような成分が、組成物中に存在してもよい。そのような成分の例には、UV安定剤、離型剤、及び消泡剤が含まれる。
【0033】
本方法は、繊維に本発明による組成物を含浸させる工程を含むことがさらに好ましい。
【0034】
本発明はさらに、以下の工程を含む、組成物の粘度を制御する方法に関する:
ハロゲンイオン、硝酸イオン、リン酸イオン、硫酸イオン、及びこれらの混合物から選択されるアニオンを含む無機塩(a)を提供すること、
酸官能性添加剤(b)を提供すること、
ポリエステル樹脂(c)を提供すること、
無機塩(a)とは異なる無機増粘剤(d)を提供すること、
成分を混合すること。
【0035】
混合は、成分を組み合わせ、組み合わせた成分にせん断力を作用させることである。成分を混合する工程は、当業者に知られている現在のプロセスに従って実行することができる。これは、とりわけ、手動又は電動手段による混合を含み得る。好適には、混合工程は押出機中で行われる。
【実施例】
【0036】
配合物の一般的な調製:
ポリエステル樹脂、ポリスチレン溶液、及び添加剤を、充填剤、顔料、過酸化物等のすべての残りの成分を添加する前に一緒に混合する。次いで、全配合物を、手動で混合することによって均質化する。次いで、この混合物を、以下の条件下で、ディゾルバーディスク40±10mmを取り付けたディゾルバー、TYPE Pendraulik 5HWM-FDe80N 12-2を用いて撹拌する:930rpm±50rpmの速度で、60秒±10秒間分散、次いで1865rpm±125rpm(周速3.9±0.3m/s)の速度でさらに120秒±10秒分散。完成した均質化コンパウンドをアルミニウムカップに移し、密閉し、水浴中において30℃±5℃の温度で30分間±5分間にわたって貯蔵する。
【0037】
粘度は、5upm~30rpmの回転速度で、スピンドル(対応する結果に列挙される測定のためのスピンドルのタイプ)を使用して、Brookfield DV II+-測定機器を用いて測定する。全ての量は、樹脂100部当たりの部[phr]である。
【0038】
【0039】
実験I
【0040】
【0041】
【0042】
表3は、追加の添加剤を含むSMC配合物1の時間依存粘度プロフィールを示す。配合物に塩化カルシウムを添加することによって、時間依存性粘度プロフィールが改善される(配合物2及び3)。したがって、塩化カルシウムをSMC配合物に添加すると、増粘時間が増加するだけでなく、配合物の最終粘度が全体的に増加する。
【0043】
実験II
【0044】
【0045】
【0046】
表5は、不十分な粘度増加を有する配合物4の時間依存性粘度プロファイルを示す。0.3phrの塩化カルシウム(配合物5)を配合物に添加することによって、増粘時間が促進され、最終粘度が増加する。
【0047】
実験III-I/実験III-II
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
表8及び9は、異なる濃度で添加された異なる無機塩の効果を比較している(配合物7~12)。標準対照として、無機塩を含まない配合物を示す(配合物6)。実施例7~12で使用された全ての追加添加された無機塩は、増粘抑制を克服し、かつ増粘時間の増加及び最終粘度の増加をもたらすことを確実にする。
【国際調査報告】