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特表2023-502112スパース金属導電性層の安定化のための透明導電性フィルムのコーティング及び加工
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-20
(54)【発明の名称】スパース金属導電性層の安定化のための透明導電性フィルムのコーティング及び加工
(51)【国際特許分類】
   H01B 5/14 20060101AFI20230113BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20230113BHJP
   C23C 18/44 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
H01B5/14 A
H01B13/00 503B
C23C18/44
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022528639
(86)(22)【出願日】2020-11-17
(85)【翻訳文提出日】2022-07-15
(86)【国際出願番号】 US2020060876
(87)【国際公開番号】W WO2021101885
(87)【国際公開日】2021-05-27
(31)【優先権主張番号】62/936,681
(32)【優先日】2019-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514325310
【氏名又は名称】シー3ナノ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】C3Nano Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100197583
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 健
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,シーチアン
(72)【発明者】
【氏名】ビーカー,アジャイ
【テーマコード(参考)】
4K022
5G307
5G323
【Fターム(参考)】
4K022AA16
4K022AA43
4K022BA01
4K022DA01
4K022DB24
4K022DB30
4K022EA04
5G307FA02
5G307FB02
5G307FC01
5G307FC02
5G307FC10
5G323BA01
5G323BB01
5G323BB02
5G323BB06
(57)【要約】
スパース金属導電性層を含む透明導電性フィルムは、フィルムのシート抵抗を低下させるために、オーバーコートによるコーティング後に加工される。スパース金属導電性層は、融合金属ナノ構造化ネットワークを含むことが可能である。コーティング、例えばポリマーオーバーコート又はポリマーアンダーコートは、貴金属イオンを含むことが可能であり、熱及び任意選択的な湿度の適用によってシート抵抗をさらに低下させることが可能である。特に、熱及び湿度の適用時に、融合されるか否かに関わらず、コーティング中の銀イオンはスパース金属導電性層の重要な安定化を提供することが実証される。コーティングは、さらに金属塩安定化組成物を含むことが可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明ポリマー基材と、前記基材によって支持されたスパース金属導電性層と、前記スパース金属導電性層に隣接するポリマーオーバーコートとを含む透明導電性フィルムであって、前記透明導電性フィルムが、少なくとも約88%の可視光の透過率及び約120オーム/sq以下のシート抵抗を有し、且つ前記ポリマーオーバーコートが、ポリマー及び約0.01重量%~約20重量%の貴金属イオンを含む、透明導電性フィルム。
【請求項2】
前記オーバーコートが約5nm~約250nmの平均厚さを有する、請求項1に記載の透明導電性フィルム。
【請求項3】
前記オーバーコートの前記ポリマーが、ポリシロキサン、ポリシルセスキオキサン、ポリウレタン、アクリル樹脂、アクリルコポリマー、セルロースエーテル及び/又はエステル、ニトロセルロース、他の水不溶性構造多糖類、ポリエーテル、ポリエステル、ポリスチレン、ポリイミド、フルオロポリマー、スチレン-アクリレートコポリマー、スチレン-ブタジエンコポリマー、アクリロニトリルブタジエンスチレンコポリマー、ポリスルフィド、エポキシ含有ポリマー、そのコポリマー並びにその混合物を含む、請求項1又は2に記載の透明導電性フィルム。
【請求項4】
前記ポリマーオーバーコートが、約0.1重量%~約9重量%の前記バナジウム(+5)安定化組成物を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の透明導電性フィルム。
【請求項5】
前記ポリマーオーバーコートが約10nm~約125nmの平均厚さを有し、前記オーバーコートの前記ポリマーがポリアクリレートを含み、且つ前記ポリマーオーバーコートが、メタバナジン酸アンモニウム(NHVO)、バナジン酸テトラブチルアンモニウム(NBuVO)、メタバナジン酸カリウム(KVO)、メタバナジン酸ナトリウム(NaVO)、オルトバナジン酸ナトリウム(NaVO)、バナジウムオキシトリプロポキシド、バナジウムオキシトリエトキシド、バナジウムオキシトリイソプロポキシド、バナジウムオキシトリブトキシド又はその混合物を含む、約0.5重量%~約5重量%のバナジウム(+5)安定化組成物を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の透明導電性フィルム。
【請求項6】
前記スパース金属導電性構造が、銀を含む融合金属ナノ構造化ネットワークを含み、前記貴金属イオンが銀イオンを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の透明導電性フィルム。
【請求項7】
前記透明導電性フィルムが、少なくとも約90%の透過率及び約90オーム/sq以下のシート抵抗を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の透明導電性フィルム。
【請求項8】
前記ポリマーオーバーコートが、テトラフルオロホウ酸銀(AgBF)、ヘキサフルオロリン酸銀(AgPF)、過塩素酸銀(AgClO)、ヘキサフルオロアンチモン酸銀(AgSbF)、トリフルオロ酢酸銀(CFCOO)、ヘキサフルオロ酪酸銀(AgCHF)、メチルスルホン酸銀(AgCHSO)、トリルスルホン酸銀(AgCHSO)又はその混合物として提供される、約0.25重量%~約12重量%の銀イオンを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の透明導電性フィルム。
【請求項9】
前記スパース金属導電性層がパターン化されている、請求項1~8のいずれか一項に記載の透明導電性フィルム。
【請求項10】
基材と、融合金属ナノワイヤネットワーク及びポリマーポリオールバインダーを含む透明導電性層と、約5nm~約250nmの平均厚さを有するポリマーコーティングとを含む透明導電性フィルムのシート抵抗を低下させるための方法であって、
シート抵抗を少なくとも約5%低下させるために、少なくとも約10分間、少なくとも約55℃の温度まで前記透明導電性シートを加熱するステップを含む、方法。
【請求項11】
前記加熱ステップの間、前記透明導電性シートがロール上にあり、前記ポリマーコーティングがオーバーコートであり、且つ前記オーバーコートが剥離層によって被覆されている、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記加熱ステップが、少なくとも約60%まで調整された相対湿度を用いて実行される、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記加熱が、少なくとも約60%の相対湿度で、約60℃~約100℃の温度において、約20分~約50時間実行され、且つ前記透明導電性フィルムが光学的に透明な接着剤を含まない、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項14】
前記融合金属ナノ構造化ネットワークが銀を含み、且つ前記フィルムが、120オーム/sq以下のシート抵抗及び少なくとも約88%の可視光透過率を有する、請求項10~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記ポリマーオーバーコートの適用の前に、溶媒、金属ナノワイヤ及び金属イオンのコーティングを有する前記基材を約45℃~約130℃の温度まで少なくとも約2分間加熱し、前記コーティングを乾燥させ、そして前記融合金属ナノ構造化ネットワークを形成することをさらに含む、請求項10~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記コーティングがバナジウム(+5)安定化組成物及び銀イオンを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ポリマーオーバーコートが約20nm~約125nmの平均厚さを有し、前記ポリマーオーバーコートの前記ポリマーがポリアクリレートを含み、且つ前記ポリマーオーバーコートが、約0.5重量%~約5重量%のバナジウム(+5)安定化組成物を含む、請求項10~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記ポリマーオーバーコートが約0.1重量%~約20重量%の貴金属イオンを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記融合金属ナノ構造化ネットワークが銀を含み、且つ前記ポリマーオーバーコートがポリマー及び約0.25重量%~約15重量%の銀イオンを含む、請求項10~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
基材と、融合金属ナノ構造化ネットワークを含む透明導電性層と、ポリマーオーバーコートとを含む透明導電性フィルムであって、前記透明導電性フィルムが、少なくとも約88%の透過率及び約120オーム/sq以下のシート抵抗を有し、前記透明導電性フィルムが、前記シート抵抗を少なくとも約5%減少させるように、熱及び任意選択的に湿度による少なくとも約10分間の加工によって変性されている、透明導電性フィルム。
【請求項21】
前記ポリマーオーバーコート及び/又はアンダーコートが金属イオンを含む、請求項20に記載の透明導電性フィルム。
【請求項22】
前記金属イオンが約0.01重量%~約20重量%の濃度で銀イオンを含む、請求項21に記載の透明導電性フィルム。
【請求項23】
前記金属イオンが約0.5重量%~約5重量%の濃度でバナジウム(+5)を含む、請求項21又は22に記載の透明導電性フィルム。
【請求項24】
前記融合金属ナノ構造化ネットワークが銀を含み、前記加工が、少なくとも約60%の相対湿度で約60℃~約100℃の温度における加熱を含むが、前記透明導電性フィルムが光学的に透明な接着剤を含まない、請求項20に記載の透明導電性フィルム。
【請求項25】
前記オーバーコートが約5nm~約250nmの平均厚さを有し、且つ約0.5重量%~約5重量%の濃度で架橋ポリアクリレート及びバナジウム(+5)イオンを含む、請求項24に記載の透明導電性フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照により本明細書に組み込まれる「Post Coating Processing of Transparent Conductive Films Formed With Fused Silver Nanowires」と題された、Yangらへの2019年11月18日出願の同時係属中の米国仮特許出願第62/936,681号に対する優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
機能性フィルムによって、様々な状況で重要な機能を提供することができる。例えば、静電気が好ましくないか又は危険となる可能性がある場合、静電気の消散のために導電性フィルムが重要となる可能性がある。透明導電性フィルムを電極として使用することが可能である。高品質ディスプレーは、1つ以上の透明導電性層を含むことが可能である。
【0003】
例えば、タッチスクリーン、液晶ディスプレー(LCD)、フラットパネルディスプレー、有機発光ダイオード(OLED)、太陽電池及びスマートウィンドウを含むいくつかの光電子工学での応用のために、透明導体を使用することができる。歴史的に、酸化インジウムスズ(ITO)は、高い導電性でのその比較的高い透明性のため、選択される材料であった。しかしながら、ITOにはいくつかの欠点がある。例えば、ITOは脆性のセラミックであり、スパッタリングを使用して堆積させる必要があるが、スパッタリングには高温及び真空が関与し、したがって、比較的遅く、費用効率の悪い製造プロセスである。その上、ITOは、フレキシブルな基材上で容易に亀裂が生じることが知られている。新しい携帯型電子デバイスは、薄型化する傾向がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の態様において、本発明は、透明ポリマー基材と、基材によって支持されたスパース金属導電性層と、スパース金属導電性層に隣接するポリマーオーバーコートとを含む透明導電性フィルムであって、透明導電性フィルムが、少なくとも約88%の可視光の透過率及び約120オーム/sq以下のシート抵抗を有し、且つポリマーオーバーコートが、ポリマー及び約0.01重量%~約20重量%の貴金属イオンを含む、透明導電性フィルムに関する。
【0005】
さらなる態様において、本発明は、基材と、融合金属ナノワイヤネットワーク及びポリマーポリオールバインダーを含む透明導電性層と、約5nm~約250nmの平均厚さを有するポリマーオーバーコートとを含む透明導電性フィルムのシート抵抗を低下させるための方法であって、シート抵抗を少なくとも約5%低下させるために、少なくとも約10分間、少なくとも約55℃の温度まで透明導電性シートを加熱するステップを含む方法に関する。加熱ステップは、光学的に透明な接着剤を含まない構造で実行可能である。いくつかの実施形態において、融合金属ナノ構造化ネットワークは銀を含み、そしてフィルムは、120オーム/sq以下のシート抵抗及び少なくとも約88%の可視光の透過率を有する。
【0006】
別の態様において、本発明は、基材と、融合金属ナノ構造化ネットワークを含む透明導電性層と、ポリマーオーバーコートとを含む透明導電性フィルムであって、透明導電性フィルムが、少なくとも約88%の透過率及び約120オーム/sq以下のシート抵抗を有し、透明導電性フィルムが、シート抵抗を少なくとも約5%減少させるように、熱及び任意選択的に湿度による少なくとも約10分間の加工によって変性されている、透明導電性フィルムに関する。いくつかの実施形態において、ポリマーオーバーコート及び/又はアンダーコートは金属イオンを含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、スパース金属導電性層と、スパース金属導電性層の両側の種々の追加的な透明層とを有するフィルムの部分側面図である。
図2図2は、両側面上に薄いポリマー基材を有するスパース金属導電性層を有する両面構造の概略側面図である。
図3図3は、透明導電性フィルムのロールの概略側面図である。
図4図4は、種々のレベルのNanoGlue(登録商標)を有する銀ナノワイヤインクのハンドコーティングによって調製された、銀ナノワイヤ構造試料の組合せに関する、加工時間の関数としての相対シート抵抗のプロットである。85℃において試料を加工した。
図5図5は、種々のレベルのNanoGlue(登録商標)を有する銀ナノワイヤインクのハンドコーティングによって調製された、銀ナノワイヤ構造試料の組合せに関する、加工時間の関数としての相対シート抵抗のプロットである。85℃及び85%相対湿度において試料を加工した。
図6図6は、種々のレベルのNanoGlue(登録商標)を有する銀ナノワイヤインクのハンドコーティングによって調製された、銀ナノワイヤ構造試料の組合せに関する、加工時間の関数としての相対シート抵抗のプロットである。65℃及び90%相対湿度において試料を加工した。
図7図7は、種々のレベルのNanoGlue(登録商標)を有する銀ナノワイヤインクのロール・ツー・ロール(roll-to-roll)コーティングによって調製された、銀ナノワイヤ構造試料の組合せに関する、加工時間の関数としての相対シート抵抗のプロットである。65℃及び90%相対湿度において試料を加工した。
図8図8は、NanoGlue(登録商標)を含有する銀ナノワイヤインクによって調製され、種々のレベルのNanoGlue(登録商標)を有するオーバーコートが提供された積層光学構造試料の組合せに関する、加工時間の関数としての相対シート抵抗のプロットである。85℃及び85%相対湿度において試料を加工した。
図9図9は、(NanoGlue(登録商標)を含有しない)銀ナノワイヤインク及びNanoGlue(登録商標)を有するか又は有さないオーバーコートによって調製された、2種の積層光学構造試料の組合せに関する、加工時間の関数としての相対シート抵抗のプロットである。85℃及び85%相対湿度において試料を加工した。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書で実証されるように、任意選択的に湿度の追加を伴って、熱の制御された適用を使用することによって、保護ポリマーオーバーコートを有する融合金属ナノ構造化ネットワークのシート抵抗を低下させることができる。このような加工は、電気的な性能をさらに増強するために、保護ポリマーオーバーコートを有する透明導電性フィルムのシートに適用することができる。この加工は、堆積した金属が金属ナノワイヤ間の接合部に対するものであった融合金属ナノ構造化ネットワークのために有効となる可能性がある。融合金属ナノ構造化ネットワークなどのスパース金属導電性層に隣接するオーバーコートなどのポリマーコーティング中への貴金属イオン、特に銀の配置が導電性構造をさらに安定化するために適切であるということがさらに発見される。コーティング中の貴金属によって、使用の間に利益が生じ得るため、追加的な加工が必ずしも利用される必要はないという利点がある。スパース金属導電性層が融合金属ナノ構造化ネットワークを含まない場合、本発明の実施例の結果は、オーバーコート中の貴金属イオンに由来するその有意な安定化は、融合による光及び湿度の下での安定性に対して深い影響を有することを示唆し、これはおそらくオーバーコートからの金属イオンによる。結果は、銀をベースとする導体で実証される。透明導電性フィルムは、高い透過率及び低い曇りを有することが可能である。性能増強を達成しながらも有意な分解を避けるために、加工時間及び条件を制御することができる。同様に、加工後、高温及び湿度でもある促進摩耗条件下で、フィルムは有意に増強された安定性を示す。大規模な商業的用途のためにロール・ツー・ロール(roll-to-roll)加工を使用して形成されるフィルムによる用途のために、本加工を適応することができる。
【0009】
銀ナノワイヤの分散体又はインクを表面上に堆積させ、導電性フィルムへと加工することができる。適切なプロセス条件下で、得られた透明導電性フィルムは、その機械的特性、可視光への透明性、可撓性、これらの特徴の組合せ、又は導電性フィルムの他の態様のために望ましくなる可能性がある。特に、透明導電性フィルムを形成するためのナノワイヤの使用は、ディスプレー及びタッチセンサーを有するデバイスでの有意な応用を有する可能性がある。
【0010】
金属をベースとする透明導電性素子、例えばフィルムは、スパース金属導電性層を含む。導電性層は、導電性構造の周囲よりも、導電性構造を通して、所望の量の光学透明性を提供するために一般に希薄であり、したがって、金属の被覆は、導電性素子の層上に微細ではあるが有意な間隔を一般に有する。例えば、透明導電性フィルムは、層に沿って堆積した金属ナノワイヤを含むことができ、それによって、電子パーコレーションによる適切な伝導経路が提供されるように十分な接触を提供することができる。特に興味深い実施形態において、透明導電性フィルムは、望ましい電気特性及び光学特性を示すことが見出されている融合金属ナノ構造化ネットワークを含むことができる。特に別に示されない限り、本明細書中に参照される伝導性は導電性を指す。
【0011】
以下にさらに詳細に説明されるように、金属ナノワイヤ間の接合部において慎重に金属を堆積させるために、融合プロセスを制御することができる。融合プロセスは、接合部に関連して所望の量の銀を堆積させるために制御することができる。この系は、主に、融合金属ナノ構造化ネットワークへと形成される成分である隣接する金属ナノワイヤの間の接合部において融合を発生させるための熱力学的駆動を提供するために調製されることが可能である。融合後、融合金属ナノ構造化ネットワークという名称がつけられた統一構造が形成し、そして導電性構造内の最初の金属ナノワイヤはそれらの個々の独自性を失う。徴候は、融合金属が最初の個々のナノワイヤを結合し、接合部抵抗を低下又は除去することを示唆する。市販製品に関して、実世界条件の範囲下で透明導電性フィルムの耐久性を改善することが望ましく、そして本明細書に記載される加工は、特定の促進摩耗試験下で耐久性を改善することが実証される。
【0012】
融合金属ナノ構造化ネットワークを形成することの利点は、銀ナノワイヤをベースとした透明導体に関連して完全に理解される。融合金属ナノ構造化ネットワークを形成するための融合プロセスは、非常に低い曇りを伴って、高度に透明であり且つ高度に導電性の構造をもたらすことが見出されている。融合金属ナノ構造化ネットワークは、適切な安定剤を使用して促進摩耗誘導下で非常に良好な安定性を有する。オーバーコート中での銀などの貴金属イオンの添加は安定化レベルの追加をもたらし、そしてその結果は、透明導電性層中で親水性バインダーと一緒に本明細書で使用されるバインダー系に関して、確立された熱及び湿度試験下で融合及び/又はオーバーコート中の貴金属イオンが合理的な安定性を得るために必要であることを示唆する。
【0013】
商業的な加工に関して、透明導電性層上に一般に薄い保護ポリマーオーバーコートが配置される。保護コーティングは、約250nm以下の厚を一般に有する。以下の結果が実証する通り、融合金属ナノ構造化ネットワーク及び保護ポリマーオーバーコートを有する透明導電性フィルムが、任意選択的に湿度を伴って熱を受ける場合、シート抵抗は、分解のため、最終的な増加の前に低下することが観察される。抵抗の類似の低下は、融合されていない相当するフィルムでは観察されない。結果として、融合金属ナノ構造化ネットワークを有する構造が、相当する条件で以前に試験された構造よりも安定であることを見出すことができる。熱加工が融合プロセスの改善をさらに補助することが可能である。熱加工の間の湿度の導入によって、シート抵抗のより大きい減少を実現することができる。
【0014】
融合プロセス間に湿度を使用することによって、シート抵抗の相当する値を得るために、より低い温度及びより短いプロセス時間を使用することが可能であることは以前に観察されている。参照により本明細書に組み込まれる「Metal Nanowire Inks for the Formation of Transparent Conductive Films with Fused Networks」と題されたLiらへの米国特許第9,183,968B号明細書を参照のこと。この観察は、本観察に関連し得るか、又は関連し得ない。本加工の時間フレームは、標準的な融合プロセスで使用される時間よりも非常に長い。
【0015】
ポリマーが親水性である場合、熱及び/又は湿度は導電性素子の周囲でポリマーバインダーを膨潤させる可能性がある。導電性素子が融合されない場合、導電性素子間の接触の減少により、バインダーの膨潤は伝導率を低下させ、シート抵抗を増加させる可能性がある。融合金属ナノ構造化ネットワークによって、融合素子は結合される。理論によって制限されたることを望まないが、次いで、膨潤は、金属ナノ粒子又はいずれかの残留金属イオンの移動を促進し、接合部の融合を促進する可能性があり、それによって、シート抵抗がさらに低下する可能性がある。シート抵抗の低下は以下の実施例で観察される。同様に、オーバーコートが金属イオンを有する場合、これらは経時的に移動して、さらに接合部の融合に寄与する可能性がある。これはダメージを緩和し、シート抵抗のさらなる低下をもたらす可能性がある。
【0016】
保護ポリマーオーバーコートを有する、熱による熱加工後の構造は、以前に形成された構造と性質上異なっていても、又は異なっていなくてもよい。それにもかかわらず、観察された結果は、融合金属ナノ構造化ネットワークへの銀のさらなる移動と一致し、この構造は全体的に、融合金属ナノ構造化ネットワークからの光を散乱及び吸収するナノ粒子が少ないように見える。新規構造が形成されるまで、光学特性が一般に維持されるか、又は改善されながら、新規構造が熱試験の間、改善された安定性を達成するという調査に従う。
【0017】
本明細書で提示されるデータは、導電性を改善するプロセスに関連するデータと同時に、透明導電性フィルムの摩耗試験に関するデータを提供する。摩耗試験の改善は、ポリマーオーバーコートの適用後の後処理によって、及び/又は経時的にオーバーコートへの金属イオンへの添加によって達成することができる。おそらく、シート抵抗がより低い値に到達してプロセスが停止される場合、この材料を使用して、より低いシート抵抗及び望ましい安定性を有する製品を形成することができる。一般に、後処理された透明導電性フィルムは、融合後、初期のシート抵抗値と比較して少なくとも約5%低い、いくつかの実施形態において、少なくとも約7.5%低い、そして他の実施形態において、少なくとも約10%低いシート抵抗を有することが可能である。
【0018】
環境安定性の変化に関して、このパラメーターを評価するために2つの方法が検討される。直接的な感覚で、初期試料を検討することができる。再び、これらの試料は薄い保護ポリマーオーバーコートを含む。これらの初期試料は65℃及び90%相対湿度において処理を示すことが可能であり、そして少なくとも約200時間、いくつかの実施形態において、少なくとも約300時間、そしてさらなる実施形態において、少なくとも約400時間、1.2未満の初期シート抵抗によって除算されたシート抵抗の比率(R/R)(65/90の安定性として記載される)を維持することができる。より低いシート抵抗値を示す熱処理された材料は、以前には得られなかった構造的変性による新規材料である場合、初期材料の熱安定性時間と比較された変性材料で観察される熱安定性時間を参照することができる。
【0019】
加熱が周囲湿度とともに85℃で、85℃及び85%相対湿度で、並びに65℃及び90%相対湿度で実行される場合の結果が示される。一般に、変性材料を形成する加工は、温度及び相対湿度に関するプロセス条件次第で、約10分~約100時間の時間で実行可能である。新規材料が形成される場合、そのような新規材料を形成するための加工をおそらく最適化することができる。
【0020】
銀は優れた導電性を提供する。本出願人は、商品名ActiveGrid(登録商標)で、融合金属ナノ構造化ネットワークを形成するための銀ナノワイヤインクを販売している。他の銀ナノワイヤ供給源は商業的に入手可能であり、基本的な融合技術は、以下に列挙される’207及び’807特許に十分に記載されている。Generation 5(GEN5)ActiveGrid(登録商標)製品の銀ナノワイヤの大多数(>98%)は、<25nm未満の直径を有し、generation 7(GEN7)ActiveGrid(登録商標)製品の銀ナノワイヤの大多数(>98%)は<22nmの直径を有する。薄銀ナノワイヤの合成は、参照により本明細書に組み込まれる「Thin and Uniform Silver Nanowires,Methods of Synthesis and Transparent Conductive Films Formed from the Nanowires」と題されたHuらへの米国特許第10,714,230B2号明細書に記載されている。
【0021】
高い導電性、並びに透明性及び低い曇りに関する望ましい光学特性に関して、融合金属ナノ構造化ネットワークでは改善された特性が見出された。隣接する金属ナノワイヤの融合は、商業的に適切な加工条件下での化学的プロセスに基づいて実行可能である。
【0022】
特に、金属ナノワイヤをベースとする導電性フィルムを達成することに関する有意な進歩は、導電性ネットワーク中に別個のナノワイヤを必要とすることなく、金属ナノワイヤの隣接部分が統一構造へと融合する、融合金属ネットワークを形成するための十分に制御可能なプロセスの発見であった。特に、最初に、融合金属ナノ構造を形成するために、ハロゲン化物イオンが金属ナノワイヤを融合させることができることが発見された。ハロゲン化物アニオンを含む融合剤は、電気抵抗の相当する有意な低下を伴って融合を首尾よく達成するために、種々の方法で導入された。この加工に関連するハロゲン化物イオンがナノワイヤ合成反応で使用されるハロゲン化物イオンと混同されてはならないことに留意されたい。特に、ハロゲン化物アニオンによる金属ナノワイヤの融合は、酸ハロゲン化物の蒸気及び/又は溶液、並びにハロゲン化物塩の溶液で達成された。ハロゲン化物供給源を用いた金属ナノワイヤの融合は、「Metal Nanowire Networks and Transparent Conductive Material」と題されたVirkarらへの米国特許第10,029,916号明細書、及び「Metal Nanostructured Networks and Transparent Conductive Material」と題されたVirkarらへの米国特許第9,920,207号明細書(’207特許)に記載されている。上記特許は両方とも参照により本明細書に組み込まれる。
【0023】
融合金属ナノワイヤネットワークを形成するためのプロセスの延長は、得られたフィルムの光学特性を破壊することなく、融合ナノワイヤを生じるために提供されることが可能である還元/酸化(レドックス)反応に基づくものであった。接合部の堆積のための金属は、溶解された金属塩として有効に添加されることが可能であるか、又は金属ナノワイヤ自体から溶解されることが可能である。ナノ構造化ネットワークへと金属ナノワイヤを融合するためのレドックス化学作用の有効な使用は、参照により本明細書に組み込まれる「Fused Metal Nanostructured Networks,Fusing Solutions with Reducing Agents and Methods for Forming Metal Networks」と題されたVirkarらへの米国特許第10,020,807号明細書(’807特許)に記載されている。’807特許は、融合金属ナノ構造化ネットワークの形成のための単一溶液アプローチも記載された。融合金属ナノ構造化層の形成のための単一溶液アプローチは、参照により本明細書に組み込まれる「Metal Nanowire Inks for the Formation of Transparent Conductive Films with Fused Networks」と題されたLiらへの米国特許第9,183,968B1号明細書(以下、‘968特許)にさらに記載されおり、そして融合金属ナノ構造化ネットワークを形成するための単一溶液又はインク加工が以下の実施例で使用される。
【0024】
融合ナノ構造化金属ネットワークへと硬化する有効な単一堆積インクを達成するために望ましいインクは、得られたフィルム中での金属の適切な装填を達成するために所望の量の金属ナノワイヤを含む。適切な溶液中で、インクはインクの堆積及び乾燥の前に安定である。インクは、さらなる加工のための安定な導電性フィルムの形成に関与する合理的な量のポリマーバインダーを含むことができる。1つのインク系によって良好な融合結果を得るために、セルロース又はキトサンをベースとするポリマーなどの親水性ポリマーがバインダーとして有効であることが見出された。融合プロセスの間の金属の供給源としての金属イオンは、可溶性金属塩として供給されることが可能である。
【0025】
単一インク配合物は、基材表面上でフィルムとして金属の所望の装填物を堆積するため、そして同時にインク中の成分を提供するために提供され、適切な条件下でインクを乾燥させる時に融合プロセスを誘導する。これらのインクを都合よく融合金属ナノワイヤインクと呼ぶことができ、融合は乾燥まで一般に生じないことは理解される。インクは水性溶媒を一般に含み、そしていくつかの実施形態においては、それはアルコール及び/又は他の有機溶媒をさらに含むことが可能である。インクは、融合プロセスのための金属供給源として、溶解金属塩をさらに含むことができる。理論によって制限されることを望まないが、インクの成分、例えばアルコール又は他の有機組成物が溶液からの金属イオンを減少させ、融合プロセスを引き起こすと考えられている。これらの系での融合プロセスによる以前の経験では、隣接する金属ナノワイヤ間の接合部で金属が優先的に堆積することが示唆される。フィルムを安定化し、インク特性に影響するために、ポリマーバインダーを提供することが可能である。特定の堆積アプローチのために適切であり、そして基材表面上で特定のコーティング特性を有するように、インク特性を選択するようにインクの特定の配合物を調整可能である。さらに以下に記載されるように、融合プロセスを有効に実行するように乾燥条件を選択することができる。
【0026】
一般に、金属ナノ構造化ネットワークの形成のための1つ以上の溶液又はインクは、集合的に十分に分散した金属ナノワイヤ、融合剤及び任意選択的な追加成分、例えば、ポリマーバインダー、架橋剤、湿潤剤、例えば、界面活性剤、増粘剤、分散剤、他の任意選択的な添加剤又はその組合せを含むことができる。金属ナノワイヤインク及び/又はナノワイヤインクと別個である場合、融合溶液のための溶媒は、水性溶媒、有機溶媒又はその混合物を含むことができる。特に、適切な溶媒は、例えば、水、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、例えばグリコールエーテル、芳香族化合物、アルカンなど及びその混合物を含む。具体的な溶媒は、例えば、水、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、第三ブチルアルコール、メチルエチルケトン、グリコールエーテル、メチルイソブチルケトン、トルエン、ヘキサン、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、PGMEA(2-メトキシ-1-メチルエチルアセテート)、ジメチルカーボネート又はその混合物を含む。溶媒は、金属ナノワイヤの良好な分散を形成する能力に基づいて選択されなければならないが、溶媒は、添加剤が溶媒に可溶性であるように、他の選択された添加剤とも相溶性を有さなければならない。融合剤が金属ナノワイヤによる単一溶液に含まれる実施形態に関して、溶媒又はその成分は、アルコールなどの融合溶液の有意成分であっても、又はなくてもよく、したがって、所望であれば選択されることができる。
【0027】
1インク又は2インク構成のいずれの金属ナノワイヤインクも、約0.01~約1重量パーセントの金属ナノワイヤ、さらなる実施形態において、約0.02~約0.75重量パーセントの金属ナノワイヤ、追加的な実施形態において、約0.04~約0.5重量パーセントの金属ナノワイヤを含むことができる。特に興味深い実施形態に関して、ナノワイヤは銀ナノワイヤであり、そして金属イオン供給源は溶解銀塩である。インクは、約0.01mg/mL~約2.0mg/mL、さらなる実施形態において、約0.02mg/mL~約1.75mg/mL、そして他の実施形態において、約0.025mg/mL~約1.5mg/mLの銀イオン濃度で銀イオンを含むことができる。当業者は、上記の明示的な範囲内の金属ナノワイヤ濃度及び金属イオン濃度の追加的な範囲が考えられ、そしてそれは本開示の範囲内であることを認識するであろう。金属ナノワイヤの濃度は、基材表面上での金属の装填、並びにインクの物理的特性に影響する。
【0028】
インク配合物に関して、ポリマーバインダー及び溶媒は、一般に、ポリマーバインダーが溶媒中に可溶性又は分散性であるように一貫して選択される。適切な実施形態において、金属ナノワイヤインクは、一般に、約0.02~約5重量パーセントのバインダー、さらなる実施形態において、約0.05~約4重量パーセントのバインダー、追加的な実施形態において、約0.1~約2.5重量パーセントのバインダーを含む。いくつかの実施形態において、ポリマーバインダーは架橋性有機ポリマー、例えば放射線架橋性有機ポリマー及び/又は熱硬化性有機バインダーを含む。所望のバインダーは、例えば、ポリマーポリオール、例えば多糖類-セルロースをベースとしたポリマー、キトサンをベースとしたポリマーなどを含む。バインダーの架橋を促進するために、金属ナノワイヤインクは、いくつかの実施形態において、約0.0005重量%~約1重量%、さらなる実施形態において、約0.002重量%~約0.5重量%、追加的な実施形態において、約0.005重量%~約0.25重量%の架橋剤を含むことができる。ナノワイヤインクは、レオロジー変性剤又はその組合せを任意選択的に含むことができる。いくつかの実施形態において、インクは、表面張力を低下させるために湿潤剤又は界面活性剤を含むことができ、そして湿潤剤はコーティング特性を改善するために有用であり得る。広範囲にわたる界面活性剤、例えばノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、双性イオンの界面活性剤が商業的に入手可能である。湿潤剤は、一般に溶媒に可溶性である。いくつかの実施形態において、ナノワイヤインクは、約0.001重量パーセント~約1重量パーセント、さらなる実施形態において、約0.002~約0.75重量パーセント、追加的な実施形態において、約0.003~約0.6重量パーセントの湿潤剤を含むことができる。増粘剤は、分散体を安定化して、沈殿を低減又は除去するためのレオロジー変性剤として任意選択的に使用されることが可能である。いくつかの実施形態において、ナノワイヤインクは、任意選択的に、約0.05~約5重量パーセント、さらなる実施形態において、約0.075~約4重量パーセント、そして他の実施形態において、約0.1~約3重量パーセントの増粘剤を含むことができる。当業者は、上記の明示的な範囲内のバインダー、湿潤剤及び増粘剤濃度の追加的な範囲が考えられ、そしてそれは本開示の範囲内であることを認識するであろう。
【0029】
透明導電性層の安定性は、スマートフォン、タブレット、コンピュータタッチスクリーン、大型タッチスクリーン、折り畳み式電子機器、ウェアラブル電子機器などの商業的デバイス中へのこれらの構造の利用に関する有意な考慮点である。透明導電性層によって形成されるタッチセンサーの信頼性は、広範囲にわたる商業的利用のために有意であり、そして材料の信頼性が大きくなれば、広範囲のデバイスが利用可能となる。本明細書に記載される加工及び構造は、商業的デバイス中ですでに利用されている構造のさらに大きい商業的可能性を提供する。
【0030】
透明導電性フィルム構造
図1を参照すると、代表的な透明導電性フィルム100は、基材102、任意選択的なアンダーコート層104、スパース金属導電性層106、オーバーコート層108、光学的に透明な接着剤層110及び保護表面層112を含むが、全ての実施形態が全ての層を含むというわけではない。一般に、光学的に透明な接着剤層110及び保護表面層112は、透明導電性層の安定性を改善するために、本明細書に記載される有意な加工の完了の後に追加される。透明導電性フィルムは、スパース金属導電性層の両側面上にスパース金属導電性層及び少なくとも1つの層を一般に含む。透明導電性フィルムの全体の厚さは、一般に、5ミクロン~約2ミリメートル(mm)、さらなる実施形態において、約10ミクロン~約1mm、他の実施形態において、約12ミクロン~約0.5mmの平均厚さを有することができる。当業者は、上記の明示的な範囲内の厚さの追加的な範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを認識するであろう。いくつかの実施形態において、製造されたフィルムの長さ及び幅は、製品へのさらなる加工のためにフィルムを直接導入することができるように、特定の用途に対して適切になるように選択することができる。追加的な又は別の実施形態において、フィルムの長さは、使用のために望ましい長さにフィルムを切断することができる見込みの長さであることが可能であるが、フィルムの幅は特定の用途のために選択することができる。例えば、フィルムはロングシート又はロールの形態であることが可能である。同様に、いくつかの実施形態において、フィルムはロール又は別の大型標準形態であることが可能であり、そしてフィルムの素子は使用のために望ましい長さ及び幅に従って切断することができる。
【0031】
基材102は、一般に、適切なポリマーから形成される耐久性のある支持層を含む。いくつかの実施形態において、基材は、約1ミクロン~約1.5mm、さらなる実施形態において、約5ミクロン~約1mm、そして追加的な実施形態において、約10ミクロン~約100ミクロンの平均厚さを有することができる。特に、折り畳み式構造、特に下記の両面折り畳み式構造については、基材の厚さは、一般に、約27ミクロン以下、そしてさらなる実施形態において、約5ミクロン~約25ミクロンである。当業者は、上記の明示的な範囲内の基材の厚さの追加的な範囲が考えられて、本開示の範囲内であることを認識するであろう。非常に良好な透明性、低い曇り及び良好な保護能力を有する適切な光学的に透明なポリマーを基材用に使用することができる。
【0032】
スパース金属導電性層106のための基材上に供給されるナノワイヤの量は、透明性及び導電性の所望の量を達成するための因子のバランスを含むことが可能である。ナノワイヤネットワークの厚さは原則として走査電子顕微鏡を使用して評価されるが、ネットワークは、光学透明性を提供するために比較的希薄であることが可能であり、それは測定を困難にする可能性がある。一般に、スパース金属導電性構造、例えば、融合金属ナノワイヤネットワークは、約5ミクロン以下、さらなる実施形態において、2ミクロン以下、そして他の実施形態において、約10nm~約500nmの平均厚さを有するであろう。しかしながら、スパース金属導電性構造は、一般に、サブミクロン規模の有意な表面テクスチャーを有する比較的開放構造である。ナノワイヤの装填レベルは、容易に評価可能なネットワークの有用なパラメーターを提供することができ、そして装填値は、厚さに関連する代替パラメーターをもたらす。したがって、本明細書で使用される場合、基材上へのナノワイヤの装填レベルは、一般に、基材の平方メートルあたりのナノワイヤのミリグラムとして示される。一般に、ナノワイヤネットワークは、約0.1ミリグラム(mg)/m~約300mg/m、さらなる実施形態において、約0.5mg/m~約200mg/m、そして他の実施形態において、約1mg/m~約150mg/mの装填を有することが可能である。当業者は、上記の明示的な範囲内の厚さ及び装填の追加的な範囲が考えられて、本開示の範囲内であることを認識するであろう。スパース金属導電性層がパターン化される場合、厚さ及び装填の議論は、金属がパターニングプロセスによって除外されない、又は有意に減少されない領域にのみ適用される。
【0033】
基材のための適切なポリマーには、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアクリレート、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、フルオロポリマー、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、ポリシロキサン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリノルボルネン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー、環式オレフィンポリマー、環式オレフィンコポリマー、ポリカーボネート、そのコポリマー又はそのブレンドなどが含まれる。適切な市販のポリカーボネート基材には、例えば、Bayer Material Scienceから商業的に入手可能なMAKROFOL SR243 1-1 CG;TAP Plasticsから商業的に入手可能なTAP(登録商標)Plastic;及びSABIC Innovative Plasticsから商業的に入手可能なLEXAN(商標) 8010CDEが含まれる。保護表面層112は、独立して、上記の段落で記載される基材と同一の厚さ範囲及び組成範囲を含む厚さ及び組成を有することができる。
【0034】
両面別々にパターン化可能な透明導電性層を有する構造に関して、構造が図2に示されるように、UV吸収透明基材を使用することができる。これについては以下に記載される。全ての実施形態に関して有用であるが、特にこれらの実施形態に関して適切なポリマーには、例えば、ポリイミド、ポリスルフィド(例えば、Pylux(商標)、Ares Materials)、ポリスルホン(例えば、SolvayからのUdel(登録商標))又はポリエーテルスルホン(例えば、SolvayからのVeradel(登録商標)又はBASFからのUltrason(登録商標))及びポリエチレンナフタレート(例えば、DuPontからのTeonex(登録商標))が含まれる。以下の実施例は、透明ポリイミドをベースとして示される。従来の芳香族ポリイミドは着色している。しかし、最近開発されたポリイミドは、可視光に対して透明である。透明ポリイミドは、紫外線光を吸収する。透明ポリイミドは、Kolon(韓国)、Taimide Tech.(台湾)、Sumitomo(日本)、SKC Inc.(GA,USA)及びNeXolve(AL,USA)から入手可能である。
【0035】
任意選択的なアンダーコート104及び/又はオーバーコート108をスパース金属導電性層106の下又は上にそれぞれ配置することができる。コーティング104、108は、硬化性ポリマー、例えば、熱硬化性又は放射線硬化性ポリマーを含むことが可能である。コーティング104、108は、オーバーコート及びアンダーコートを特に含む以下の項目に記載される平均厚さを有することが可能である。オーバーコートの厚さ及び組成は、オーバーコートを通してのシート抵抗測定が、オーバーコートを含まない測定と比較して有意に変化しないように選択されることが可能である。コーティング104、108は、導電性層を安定化するための、以下にさらに記載される有意な添加剤を含むことが可能である。適切なコーティングポリマーを以下に記載する。
【0036】
任意選択的な光学的に透明な接着剤層110は、約10ミクロン~約300ミクロン、さらなる実施形態において、約15ミクロン~約250ミクロン、そして他の実施形態において、約20ミクロン~約200ミクロンの平均厚さを有することが可能である。当業者は、上記の明示的な範囲内の光学的に透明な接着剤層の厚さの追加的な範囲が考えられて、本開示の範囲内であることを認識するであろう。適切な光学的に透明な接着剤は、コンタクト型接着剤であることが可能である。光学的に透明な接着剤は、例えば、コーティングが可能な組成物及び接着テープを含む。光学的に透明な接着テープは2つの接着剤層の間にキャリアフィルムを有する両面接着テープであることが可能であり、例えば、3M 8173KCLを参照のこと。UV硬化性液体光学的透明接着剤は、アクリル又はポリシロキサン化学作用に基づいて入手可能である。適切な接着テープは、例えば、Lintec Corporation(MOシリーズ);Saint Gobain Performance Plastics(DF713シリーズ);Nitto Americas(Nitto Denko)(LUCIACS CS9621T及びLUCIAS CS9622T);LG Hausys OCA(OC9102D、OC9052D);DIC Corporation(DAITAC LTシリーズOCA、DAITAC WSシリーズOCA及びDAITAC ZBシリーズ);PANAC Plastic Film Company(PANACLEANシリーズ);Minnesota Mining and Manufacturing(3M、Minnesota U.S.A.-製品番号8146、8171、8172、8173、9894及び類似製品)並びにAdhesive Research(例えば、製品8932)から市場で入手可能である。
【0037】
いくつかの光学的に透明な接着テープは、2つの接着剤表面の間でテープ中に包埋されることが可能である、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのキャリアフィルムを含む。有機安定化剤による早期の研究に基づき、光学的に透明な接着剤層中のキャリアフィルムの存在が、キャリアフィルムを含まない光学的に透明な接着テープによる相当するフィルムと比較して、光学的に透明な接着テープの安定化特性を改善するためのそれらの安定化剤と組み合わせて有効であるということが見出された。理論によって制限されることを望まないが、安定性の改善は、キャリアフィルムによる水及び酸素透過性の減少に潜在的に起因することが推測された。本明細書に記載される金属をベースとする安定化剤を使用すると、安定化特性は、使用される特定の光学的に透明な接着剤に有意に依存しないことが分かる。これは、V(+5)塩などの金属をベースとする安定化剤の利点である。
【0038】
2つの透明導電性構造を有する両面構造の実施形態を図2に示す。図2は、コア基材上の統一形態の両面導電性素子の一般構造を示す。図2を参照して、両面導電性シート150は、基材ポリマーシート152、任意選択的な第1のハードコート154、第1のスパース金属導電性層156、第1のオーバーコート158、任意選択的な第2のハードコート160、第2のスパース金属導電性層162、第2のオーバーコート164、任意選択的な第1の剥離可能な保護フィルム166及び任意選択的な第2の剥離可能な保護フィルム168を含むことができる。
【0039】
透明導電性層を有する片面又は両面シートのいずれもロール・ツー・ロール(roll-to-roll)形態で製造可能である。そのようなロール190を図3に概略的に示す。ロール・ツー・ロール形態の両面フレキシブル構造の形成は、参照により本明細書に組み込まれる「Thin Flexible Structures With Transparent Conductive Films and Processes for Forming the Structures」と題されたChenらへの米国特許出願公開第2020/0245457号明細書に記載される。
【0040】
一般に、ディップコーティング、スプレーコーティング、ナイフエッジコーティング、バーコーティング、マイヤー-ロッドコーティング、スロット-ダイコーティング、グラビア印刷、スピンコーティングなどのいずれかの合理的なアプローチを使用して銀ナノワイヤインクを適用することができる。商業的なロール・ツー・ロール加工のためには、スロット-ダイコーティングが一般に使用される。フィルムは、例えば、ヒートガン、オーブン、サーマルランプ、温風などによって乾燥させることができる。いくつかの実施形態において、乾燥の間、フィルムを約50℃~約150℃の温度まで加熱することができる。融合プロセスを促進するために、熱の送達は、一般に約30秒~約15分間続けられる。当業者は、上記の明示的な範囲内の温度及び時間の追加的な範囲が考えられて、本開示の範囲内であることを認識するであろう。
【0041】
透明導電性フィルムは、太陽電池などの透明導電性電極を組み込む製品の範囲に使用可能である。優れた光学特性によって、透明導電性フィルムは、ディスプレーに集積化されるタッチセンサーでの使用に特に有益となる。透明導電性層は、フォトリソグラフィー、レーザーアブレーション又は他の適切な技術を使用してパターン化することが可能である。パターン化された透明導電性層は、タッチセンサーを形成する適切な形態であることが可能である。そのようなタッチセンサーは、携帯用電子機器、並びに大型ディスプレーでの用途が見出される。
【0042】
ポリマーコーティング(オーバーコート及び/又はアンダーコート)
ポリマーコーティングは、望ましい機能性を提供することができ、そして全体的な構造に関して上記で一般に記載される。特に、ポリマーオーバーコートは、いくつかの機能を提供する。第一に、それは、さらなる加工の間に透明導電性層に機械的保護を提供する。第二に、それは、透明導電性層の摩耗持久力を改善するための安定化組成物とともに提供されることが可能である。アンダーコートは、融合金属ナノ構造化ネットワークを有する透明導電性層の配置のために望ましい表面を提供することができ、安定化組成物を提供することができる。本明細書に記載されるように、コーティング(オーバーコート及び/又はオーバーコート)中の銀イオンなどの貴金属イオンの包含によって、融合金属ナノ構造化ネットワーク融合の増加が導かれ、シート抵抗を低下させ、熱安定性を改善することができる。
【0043】
スパース金属導電性層は、一般に、導電性層に機械的保護を提供するために、ポリマーオーバーコートによって被覆される。いくつかの実施形態において、オーバーコートの適用後に他の特性を有意に低下させることなく曇りが有意に減少するようなオーバーコートを選択することが可能であり得る。また、オーバーコートの厚さ及び組成は、オーバーコートを通してのシート抵抗測定が、オーバーコートを含まない測定と比較して有意に変化しないように選択されることが可能である。コーティングへの追加的な安定剤の組み込みはさらに以下に、及び参照により本明細書に組み込まれる「Stabilized Sparse Metal Conductive Films and Solutions for Delivery of Stabilizing Compounds」と題されたYangらへの米国特許出願公開第2018/0105704号明細書(以下’704出願)に記載される。
【0044】
いくつかの実施形態において、オーバーコート層は、一般に、オーバーコートポリマーが一般に誘電体であるとしても、オーバーコートを通して導電性が生じることが可能であるように十分に薄い。言い換えると、オーバーコートを有する表面は、一般に、オーバーコートを有さない表面とほぼ同一のシート抵抗を有さなければならない。ポリマーオーバーコートを通して導電性を提供するために、ポリマーオーバーコートが約250nm以下、いくつかの実施形態において、約5nm~約200nm、他の実施形態において、約8nm~約125nm、そしてさらなる実施形態において、約10nm~約100nmの平均厚さを有することが望ましくなる可能性がある。当業者は、上記の明示的な範囲内の厚さの追加的な範囲が考えられて、本開示の範囲内であることを認識するであろう。
【0045】
上記の通り、導電性構造は、ポリマー基材と、一般に融合金属ナノ構造化ネットワークを有するスパース金属導電性層との間に下層を含むことができる。透明導電性層に隣接する下層は、アンダーコートと呼ぶことができる。アンダーコートは、ポリマーハードコートを含むことが可能である。アンダーコートとして、ポリマーハードコートは機械的保護を提供しないが、ポリマーハードコートは化学的攻撃からの保護を提供することができる。いくつかの実施形態において、ポリマーハードコートアンダーコートは、いくつかのポリマー基材に関して融合金属ナノ構造化層に有意な安定性を提供する。
【0046】
適切なハードコートポリマーは、一般に、ポリウレタン、エポキシポリマー、ポリシロキサン及び/又は他の架橋ポリマーなどの他の架橋部分と組み合わせることが可能な架橋ポリアクリレートによる高度に架橋されたポリマーである。分枝状アクリレートモノマーによって、高度に架橋されたポリマーの形成を提供することができ、そして架橋アクリレートは、ウレタンアクリレートなどの他の部分と共重合して、相互に噛み合った(intermeshed)架橋ポリマーを形成することができる。ハードコートポリマーは、商業的に入手可能であり、例えば、Hybrid Plastics,Inc.(Mississippi,USA)からのPOSS(登録商標)Coatingsからのコーティング溶液、California Hardcoating Company(California,USA)からのシリカ充填シロキサンコーティング、Nidek(日本)からのAcier(登録商標)Hybrid Hard Coating Material、Dexerials Corporation(日本)からのSK1100 Series Hard Coat、TOYOCHEM(日本)からのLioduras(商標)、Addison Clear Wave(IL,USA)からのHC-5619 Hard Coat、SDC Technologies,Inc.(California,USA)からのCrystalCoat UV-curable coatings、及びJSR Corporation(日本)からのOptoclear(登録商標)である。ハードコートポリマーは、参照により本明細書に組み込まれる「Transparent Polymer Hardcoats and Corresponding Transparent Films」と題されたGuらへの米国特許出願公開第2016/0369104号明細書にさらに記載される。ハードコートが構造を通しての光伝達を有意に低下させないように関連した厚さに関して高度に透明である、適切なハードコートポリマーは入手可能である。適切な架橋剤及び添加剤は上記のバインダーに関して記載されており、そしてこれらは、本明細書中で明白に議論を繰り返すことなく、等しくコーティング(例えば、任意選択的なアンダーコート104及びオーバーコート108)に適用される。
【0047】
初期加工後の構造は、一般に、比較的非粘着性の表面を提供する架橋オーバーコートを有する。輸送、貯蔵などに関して構造を保護するために、剥離可能なポリマー層で片面又は両面を保護することができる。剥離可能なポリマー層は、約15ミクロン~約200ミクロン、さらなる実施形態において、約20ミクロン~約180ミクロン、他の実施形態において、約25ミクロン~約170ミクロン、そして追加的な実施形態において、約40ミクロン~約150ミクロンの厚さで形成されることが可能である。当業者は、上記の明示的な範囲内の厚さの追加的な範囲が考えられて、本開示の範囲内であることを認識するであろう。適切な非粘着性ポリマーの範囲をポリマー剥離層に使用することができ、そして剥離層はさらなる加工のために除去されるため、光学特性は関連しない。適切なポリマーには、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリシロキサン、そのコポリマーなどが含まれる。剥離層を基材から剥離する時に材料が損傷を受けないように剥離層の剥離強度は十分低くなければならないように、特定のポリマーは低い粘着性を有するように選択されなければならない。
【0048】
ロール・ツー・ロール形態のための本明細書に記載されるさらなるコーティング後の加工のために、剥離層は一般に存在する。さらなる加工のために選択される熱及び湿度の適用の間に粘着性にならないように剥離層を選択することができる。コーティング後の加工の完了後、調製された透明導電性フィルムを、パターン化、及び上記されたような光学的に透明な接着剤をしばしば使用する追加的な層の適用を含む可能性のある、タッチセンサーなどのデバイスへの組み立てのために使用することができる。
【0049】
安定化組成物
オーバーコート及び/又はアンダーコートは、例えば、熱及び任意選択的に湿度増加による促進摩耗試験を使用して評価することができる、融合金属ナノ構造化ネットワークの改善された安定性を提供する安定化組成物を含むことが可能である。以前の研究では、バナジウム(+5)化合物が所望の安定性をもたらすために有効となる可能性があることがわかった。他には、鉄(+2)及び他の金属塩が有効な安定剤となる可能性があることがわかった。参照により本明細書に組み込まれる「Light Stability of Nanowire-Based Transparent Conductors」と題されたAllemandへの米国特許出願公開第2015/0270024A1号明細書を参照のこと。また、配位子とともに錯体となるコバルト(+2)イオンは、融合金属ナノ構造化ネットワーク層内で安定化をもたらすことがわかった。単独の又は組み合わせられたこれらの安定化組成物の性能は、おそらく金属イオンの移動による構造のさらなる融合のため、さらに安定性を増強するためのコーティング(オーバーコート及び/又はアンダーコート)内の貴金属イオン、特に銀イオンの組み込みによって増強可能である。五価バナジウムと同様に、製品中での構造の実際の使用の間にコーティング中の貴金属イオンの利点を利用することができるが、或いは、又はその上、最終製品への組み立ての前、堆積後熱/湿度加工の間にコーティング中に貴金属イオンを有することは有益となり得る。
【0050】
コーティング中への組み込みに関して、+5価を有するバナジウム化合物は、延長した摩耗試験中に望ましい安定化をもたらすことがわかった。適切な化合物には、カチオンとしてバナジウムを有する化合物、並びに多原子アニオンの一部としてバナジウムを有する化合物、例えば、メタバナデート(VO )又はオルトバナデート(VO -3)が含まれる。オキソメタレートの五価バナジウムアニオンを有する相当する塩化合物には、例えば、メタバナジン酸アンモニウム(NHVO)、メタバナジン酸カリウム(KVO)、バナジン酸テトラブチルアンモニウム(NBuVO)、メタバナジン酸ナトリウム(NaVO)、オルトバナジン酸ナトリウム(NaVO)、他の金属塩など、又はその混合物が含まれる。適切な五価バナジウムカチオン化合物には、例えば、バナジウムオキシトリアルコキシド(Rがアルキル基、例えば、n-プロピル、イソプロピル、エチル、n-ブチルなど又はその組合せであるVO(OR))、バナジウムオキシトリハライド(XがCl、F、Br又はその組合せであるVOX)、バナジウム錯体、例えば、Z及びZが独立してCo+2錯体に関して以下にさらに記載されるものなどの配位子であるVO、或いはその組合せが含まれる。コーティング中、五価バナジウムは、例えば、約0.01重量%~約9重量%、さらなる実施形態において、約0.02重量%~約8重量%、そして追加的な実施形態において、約0.05重量%~約7.5重量%で存在することが可能である。コーティング溶液中、溶液は、一般に、主に硬化性ポリマーを含む固体と一緒に、いくつかの溶媒を含む。一般に、相当するコーティング溶液は、約0.0001重量%~約1重量%の濃度で五価バナジウム化合物を有することが可能である。当業者は、上記の明示的な範囲内の濃度の追加的な範囲が考えられて、本開示の範囲内であることを認識するであろう。追加的、又は別の実施形態において、五価バナジウムイオンに加えて、又はその代わりに、鉄(+2)又は他の金属イオンが含まれることが可能である。
【0051】
さらにまた、貴金属イオン、特に銀のイオンは、コーティングを形成するための溶液中に含まれることも可能である。本明細書で使用される場合、貴金属イオンは、銀、金、白金、インジウム、オスミウム、ルテニウム及びロジウムのイオンを指す。貴金属イオンは、適切な塩、例えば硝酸塩、硫酸塩、過塩素酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、ヘキサフルオロアンチモン酸塩及びハロゲン化物として添加されることが可能である。金属イオンを提供するための適切な金属塩には、例えば、塩化金酸、塩化パラジウムが含まれる。銀塩に関して、コーティングポリマーがアルコール又は他の非水性有機溶媒によって堆積する場合、十分な溶解性を得るために適切な銀塩には、例えば、テトラフルオロホウ酸銀(AgBF)、ヘキサフルオロリン酸銀(AgPF)、過塩素酸銀(AgClO)、ヘキサフルオロアンチモン酸銀(AgSbF)、トリフルオロ酢酸銀(CFCOO)、ヘキサフルオロ酪酸銀(AgCHF)、メチルスルホン酸銀(AgCHSO)、トリルスルホン酸銀(AgCHSO)又はその混合物が含まれる。コーティング中、貴金属イオンは、例えば、約0.01重量%~約20重量%、さらなる実施形態において、約0.05重量%~約15重量%、他の実施形態において、約0.1重量%~約12重量%、いくつかの実施形態において、約0.2重量%~約9重量%、そして追加的な実施形態において、約0.25重量%~約7.5重量%で存在することが可能である。コーティング溶液中、溶液は、一般に、主に硬化性ポリマーを含む固体と一緒に、いくつかの溶媒を含む。当業者は、上記の明示的な範囲内の濃度の追加的な範囲が考えられて、本開示の範囲内であることを認識するであろう。
【0052】
特に融合金属ナノ構造化ネットワークを有する透明導電性層の直接的な使用に関して、+2原子価を有するコバルトは、融合プロセスを妨害することなく、安定化のために有効であることが見出された。適切なコバルト化合物には、例えば、ニトリト(NO )、ジエチルアミン、エチレンジアミン(en)、ニトリロトリ酢酸、イミノビス(メチレンホスホン酸)、アミノトリス(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、1,3-プロピレンジアミンテトラ酢酸(1,3-PDTA)、トリエチレンテトラミン、トリ(2-アミノエチル)アミン、1,10-フェナントロリン、1,10-フェナントロリン-5,6-ジオン、2,2’-ビピリジン、2,2’-ビピリジン-4,4’-ジカルボン酸、ジメチルグリオキシム、サリチルアルドキシム、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、1,2-シクロヘキサンジアミノテトラ酢酸、イミノジ酢酸、メチルイミノジ酢酸、N-(2-アセトアミド)イミノ酢酸、N-(2-カルボキシエチル)イミノジ酢酸、N-(2-カルボキシメチル)イミノジプロピオン酸、ピコリン酸、ジピコリン酸、ヒスチジン、その組合せなどの様々な錯化配位子を有するCo(NOが含まれる。コバルトイオンは、上記で引用された‘833出願中でナノワイヤ接合部における金属融合のための適切なイオン源として以前に提案されている。’704出願に示されるように、それが配位子によって錯化されない限り、Co+2は実際に透明導電性フィルムを不安定化する。融合金属ナノ構造化ネットワークを有する層中でのコバルト+2安定化化合物の使用に関して、安定化化合物は、コバルト+2カチオンが融合プロセス後に材料中に残るように、より容易に還元される銀塩又はカチオンの他の塩と一緒に添加される。他方、Co+2のための化学量論的量の配位子は、融合ナノ構造化ネットワークを形成するための融合プロセスを妨害することが見出された。融合金属ナノ構造化ネットワークを有する層中、コバルト+2安定化化合物の濃度は、約0.1重量%~約10重量%、さらなる実施形態において、約0.02重量%~約8重量%、そして追加的な実施形態において、約0.025重量%~約7.5重量%であることが可能である。融合プロセスを妨害することなく有効なコバルト組成物に関して、錯化配位子は、コバルト1モルあたり約0.1~約2.6の配位子結合等量、さらなる実施形態において、約0.5~約2.5、そして他の実施形態において、コバルト1モルあたり約0.75~約2.4の配位子結合同等物の量で存在することが可能である。等量に関して、この用語は、多座配位子が、それらの配位数によって除算された上記の範囲に関する相当するモル比を有することを示すように意図される。金属ナノワイヤを堆積させるために使用されるインクに関して、溶液は約0.0001重量%~約1重量%の濃度でコバルト+2化合物を含むことができる。ナノワイヤインクのさらなる詳細は以下に示される。当業者は、上記の明示的な範囲内の濃度の追加的な範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを認識するであろう。
【0053】
コーティングを形成するための広範囲の溶液が使用可能であるが、いくつかの実施形態において、溶液は、架橋性ハードコーティング前駆体と一緒に有機溶媒をベースとする。一般に、コーティング溶液は、少なくとも約7重量%の溶媒、そしてさらなる実施形態において、約10重量%~約70重量%の溶媒を含み、残りは不揮発性の固体である。一般に、溶媒は、水、有機溶媒又はその適切な混合物を含むことが可能である。適切な溶媒は、例えば、水、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、例えばグリコールエーテル、芳香族化合物、アルカンなど及びその混合物を一般に含む。具体的な溶媒には、例えば、水、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、第三ブチルアルコール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、環式ケトン、例えば、シクロペンタノン及びシクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、グリコールエーテル、トルエン、ヘキサン、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、炭酸プロピレン、炭酸ジメチル、PGMEA(2-メトキシ-1-メチルエチルアセテート)、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、ギ酸又はその混合物が含まれる。いくつかの実施形態において、非水溶媒が望ましいことも可能である。溶媒の選択は、一般に、ハードコートポリマーコーティング組成物をベースとする。適切なコーティングポリマーは、上記で示される。一般に、コーティングのためのポリマー、一般に架橋性ポリマーは、市販のコーティング組成物として供給されることが可能であるか、又は選択されたポリマー組成物によって配合されることが可能である。
【0054】
ポリマー濃度及び相当して他の不揮発性剤の濃度は、選択されたコーティングプロセスの間の適切な粘度などのコーティング溶液の所望のレオロジーを達成するために選択されることが可能である。全固体濃度を調整するために、溶媒を添加又は除去することができる。仕上げられたコーティング組成物の組成を調整するために、相対量の固体を選択することができ、そして固体の全量は、乾燥コーティングの所望の厚さを達成するために調整されることができる。一般に、コーティング溶液は、約0.025重量%~約70重量%、さらなる実施形態において、約0.05重量%~約50重量%、そして追加的な実施形態において、約0.075重量%~約40重量%のポリマー濃度を有することができる。当業者は、上記の具体的な範囲内のポリマー濃度の追加的な範囲が考えられて、本開示の範囲内であることを認識するであろう。適切な混合装置を使用して、安定化塩をポリマーコーティング組成物中に混合することができる。
【0055】
コーティング後の加工
デバイスへの透明導電性層の加工は、一般に、いくつかのステップを含む。透明基材上にナノワイヤ溶液をコーティングした後、融合プロセスを促進する条件でコーティングを乾燥させる。融合は熱力学的に引き起こされるプロセスであるが、いくつかの加熱は、融合プロセスの活性化を提供することが観察された。光学透過率又は曇りの有意な悪化が生じることなく、シート抵抗のおおよその安定期によって示されるような完全な融合が得られるように融合イオンの量を調整することが可能であるが、融合によって色の増加(b*の規模での増加)が観察され得る。オーバーコートポリマー層は、融合後に透明導体層上に添加される。商業的製造の見地から所望となり得るロール・ツー・ロール形態で、この加工の全ては、基材を形成する移動シート上で実行され、コーティングされた構造はさらなる加工のために巻き上げられる。次いで、コーティングされた製品のロールに基づいて、さらなる加工が実行され得るが、加工は、シートなどの異なる形態で実行されることが可能である。
【0056】
徴候は、さらなる熱加工が追加的融合の形成を含むことを示唆する。全体的観察によって、これらのプロセスは、初期の融合よりも長い時間フレームを有することが示唆される。操作の機構の理論に基づいて制限されることを望まないが、全体的観察によって、いくつかの残留金属イオン供給源が、融合接合部における追加的な金属形成のためのさらなる加工の間に徐々に消費され得ることが示唆される。融合金属ナノ構造化ネットワーク周囲の親水性バインダーの膨潤は、ポリマーの膨潤によって分離しない融合金属ナノ構造化ネットワークの加工を促進し得る。加工を制御するために、プロセス間に熱及び湿度を使用することができ、それは両方とも、さらなる融合を促進、並びに分解経路を提供する。実施例に実証されるように、プロセス条件の適切な制御によって、融合金属ナノ構造化ネットワークに基づく透明導体に関するシート抵抗の低下及び分解経路の低速化をもたらすことが可能である。
【0057】
このコーティング後の加工に関して、少なくとも約55℃、さらなる実施形態において、約60℃~約100℃、そして追加的な実施形態において、約70℃~約95℃の温度。湿度は周囲湿度のままであることが可能であるが、相対湿度レベルを増加させることによって、改善された結果が観察される。温度増加のために、周囲湿度のみから生じる加熱空気中の相対湿度は一般に低い値である。いくつかの実施形態において、相対湿度は、少なくとも約60%、さらなる実施形態において、少なくとも約65%、そして他の実施形態において、少なくとも約70%であることが可能である。融合金属ナノ構造化ネットワークを安定化するためのプロセス時間は、少なくとも約10分間、さらなる実施形態において、約20分間~約50時間、そして他の実施形態において、約25分間~約40時間であることが可能である。当業者は、上記の明示的な範囲内の温度、相対湿度及びプロセス時間の追加的な範囲が考えられて、本開示の範囲内であることを認識するであろう。
【0058】
熱、そして任意選択的に増加された湿度を用いた加工は、適切な制御環境条件において実行可能である。湿度が制御されない場合、環境を外気に暴露することが可能であり、そして適切な構造はオーブン又は他の適切なヒーターであることが可能である。より小さい試料は、制御された温度及び圧力の適用のために設計された試験チャンバー中で加工することができる。熱及び湿度の制御を提供する商業的な試験装置には、例えば、ESPEC Model BTL-433 Environmental Chamber(ESPEC Corp.North America,Inc.Hudsonville,MI,USA)又はThermotron SM-3.5-3800 Benchtop Environmental Chamber(Thermotron Inc.,Holland,MI,USA)が含まれる。より大きい制御された環境チャンバーは商業的に入手可能である。
【0059】
一般に、最終的なデバイスを形成する際に使用されるものなどの、追加的な層を用いて構造に組み立てることなく、コーティングされたフィルム中で加工を実行することができる。また、層状スタックの加速摩耗試験は、追加的な層の配置を含む。熱及び任意選択的な湿度の加工は、一般に、光学的に透明な接着剤などの接着剤層を含むスタック構造では実行され得ない。熱及び湿度は、商業的な加工に関してスタックを不安定化する可能性がある。試料試験に関しては、いくらかの不安定化は許容可能であるが、それは製品製造に関しては一般に許容可能となり得ない。したがって、シート抵抗低下及び安定化のための加工は、オーバーコート及び潜在的剥離層を有する試料上で一般に実行される。
【0060】
任意選択的な高い相対湿度を伴う熱は、ロール上へ装填されたロール形態のフィルムによって実行可能である。上記の通り、オーバーコートは、非粘性表面を提供し、ローリング及び解放を促進するために、ロール・ツー・ロール形態で剥離層によって被覆されることが可能であり、適切な剥離層は上記に記載されている。ロールは一般的に製造の直後に形成され、そして熱処理がしばらくの間実行されるため、ロール形態は商業的な製造のために特に都合がよくなる可能性がある。熱処理後、試料を最終製品へと組み立てることができる。
【0061】
透明フィルムの電気及び光学特性
融合金属ナノ構造化ネットワークを有するものなどの透明導電性層は、良好な光学特性を提供しながらも、低い電気抵抗を提供することができる。したがって、フィルムは透明導電性電極などとして有用となる可能性がある。透明導電性電極は、太陽電池の受光面に沿った電極などの応用範囲に関して適切となる可能性がある。ディスプレー、特にタッチスクリーンに関して、フィルムによって形成される導電性パターンを提供するために、フィルムをパターン化することが可能である。パターン化されたフィルムを有する基材は、一般に、パターンの各部で良好な光学特性を有する。
【0062】
薄フィルムの電気抵抗をシート抵抗として示すことができ、これは、測定プロセスに関連したパラメーターに従って、バルク電気抵抗値からの値と区別するために、オーム・パー・スクエア(Ω/□又はオーム/sq)の単位で報告される。フィルムのシート抵抗は、一般に、4点プローブ測定又は別の適切なプロセスを使用して測定することができる。いくつかの実施形態において、融合金属ナノワイヤネットワークは、約300オーム/sq以下、さらなる実施形態において、約200オーム/sq以下、追加的な実施形態において、約100オーム/sq以下、そして他の実施形態において、約60オーム/sq以下のシート抵抗を有することが可能である。当業者は、上記の明示的な範囲内のシート抵抗の追加的な範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを認識するであろう。特定の用途次第で、デバイスでの使用に関するシート抵抗の商業的仕様は、追加的な費用が含まれ得る場合などのように、必ずしもシート抵抗の低い値に関連しなくてもよく、そして現行の商業的に関連する値は、例えば、様々な品質及び/又はサイズのタッチスクリーンに関しては、目標値として、270オーム/sq、対150オーム/sq、対100オーム/sq、対50オーム/sq、対40オーム/sq、対30オーム/sq、対20オーム/sq以下であり得、そしてこれらの値のそれぞれは、270オーム/sq~150オーム/sq、270オーム/sq~100オーム/sq、150オーム/sq~20オーム/sqなどのように範囲の終点としての具体的な値の間の範囲を定義し、15の特定の範囲が定義される。したがって、特定の用途に関して、より低コストのフィルムは、わずかにより高いシート抵抗値と引きかえに適切となり得る。一般に、ナノワイヤの装填を増加させることによってシート抵抗を減少させることができるが、装填の増加は他の観点から望ましくなり得ず、そして金属装填は、シート抵抗の低い値を達成するための多数の因子の中の1つのみである。
【0063】
透明導電性フィルムとしての用途に関して、融合金属ナノワイヤネットワーク又は他のスパース金属導電性層が良好な光学透明性を維持することが望ましい。原則として、光学透明性は装填に反比例し、より高い装填ほど透明性の減少を導くが、ネットワークの加工も透明性に有意に影響を及ぼす可能性がある。また、良好な光学透明性を維持するために、ポリマーバインダー及び他の添加剤を選択することができる。光学透明性は、基材を通して透過した光に対して評価することができる。例えば、本明細書に記載される導電性フィルムの透明性は、UV-可視分光光度計を使用し、導電性フィルム及び支持基材を通しての全透過を測定することによって測定することができる。透過率は、入射光強度(I)に対する透過した光強度(I)の比率である。フィルムを通しての透過率(Tfilm)は、測定された全透過率(T)を、支持基材を通しての透過率(Tsub)によって除算することによって推定することができる。(T=I/I及びT/Tsub=(I/I)/(Isub/I)=I/Isub=Tfilm)。したがって、基材を通しての透過を除去し、フィルム単独の透過を得るために、報告された全透過を補正することができる。可視スペクトル全体で良好な光学透明性を有することは一般に望ましいが、便宜のため、光透過を550nmの波長の光で報告することができる。或いは、又はその上、透過は、400nm~700nmの波長の光の全透過率として報告することができ、そしてそのような結果を以下の実施例に報告する。一般に、融合金属ナノワイヤフィルムに関して、550nmの透過率の測定及び400nm~700nmの全透過率(又は便宜のため、単に「全透過率」)は、性質上異ならない。いくつかの実施形態において、融合ネットワークによって形成されるフィルムは、少なくとも80%、さらなる実施形態において、少なくとも約85%、追加的な実施形態において、少なくとも約90%、他の実施形態において、少なくとも約94%、そしていくつかの実施形態において、約95%~約99%の全透過率(TT%)を有する。透明ポリマー基材上のフィルムの透明性は、参照により本明細書に組み込まれる標準ASTM D1003(「Standard Test Method for Haze and Luminous Transmittance of Transparent Plastics」)を使用して評価することができる。フィルム全体を通してのTT%は、基材及びオーバーコートのため、透過率の低下を含み、そして上記の範囲の透過率の下端を1%から10%まで、いくつかの実施形態において、2.5%から5%までシフトさせることが可能である。当業者は、上記の明示的な範囲内の透過率の追加的な範囲が考えられ、本開示の範囲内であること認識するであろう。基材に関して以下の実施例のフィルムの測定された光学特性を調整する場合、フィルムは非常に良好な伝達及び曇り値を有し、それは観察された低いシート抵抗に加えて達成される。
【0064】
融合金属ネットワークは、望ましく低いシート抵抗を有しながらも、可視光の高い透過と一緒に低い曇りを有することが可能である。曇りは、上記で参照されたASTM D1003に基づき、ヘーズメーターを使用して測定可能であり、そして基材の曇りの寄与を除去し、透明導電性フィルムの曇り値を提供することができる。いくつかの実施形態において、焼結ネットワークフィルムは、約1.2%以下、さらなる実施形態において、約1.1%以下、追加的な実施形態において、約1.0%以下、そして他の実施形態において、約0.9%~約0.2%の曇り値を有することが可能である。実施例に記載された通り、適切に選択された銀ナノワイヤを用いて、曇り及びシート抵抗の非常に低い値が同時に達成された。良好なシート抵抗値でありながら非常に低い曇り値を得ることが可能であるように、シート抵抗及び曇り値のバランスをとるために装填を調整することができる。少なくとも約45オーム/sqのシート抵抗値で、特に0.8%以下、さらなる実施形態において、約0.4%~約0.7%の曇り値を達成することができる。また、約30オーム/sq~約45オーム/sqのシート抵抗値で、0.7%~約1.2%、そしていくつかの実施形態において、約0.75%~約1.05%の曇り値を達成することができる。これらのフィルムは全て、良好な光学透明性を維持した。当業者は、上記の明示的な範囲内の曇りの追加的な範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを認識するであろう。
【0065】
多層フィルムの相当する特性に関して、追加的な構成要素は、光学特性にわずかな影響を及ぼすように一般に選択され、そして透明素子で使用するための種々のコーティング及び基材が商業的に入手可能である。適切な光学コーティング、基材及び関連材料は上記にまとめられている。構造材料の一部は電気絶縁性であることが可能であり、そしてより厚い絶縁層が使用される場合、絶縁層を通しての間隔又は空隙によって、別に包埋された導電性素子への接近及び電気的接触を提供することができる位置を提供するために、フィルムをパターン化することができる。最終デバイスのいくつかの構成要素は、導電性透明素子への接続などの構造の視野部分を隠すために、不透明又は半透明カバーによって視野から覆われることができる。カバーは導電性層を光から保護することができるが、光吸収のため加熱し、そして被覆テープ、及び透明領域と被覆領域との間の移行部の端部は、実施例で対処される安定性の問題を有する可能性がある。
【0066】
透明導電性フィルム安定性及び安定性試験
使用時に、透明導電性フィルムが、相当するデバイスの寿命などの商業的に許容可能な時間、耐久することが望ましい。本明細書に記載される安定化組成物及び構造はこれを目的とするものであり、そしてスパース金属導電性層、例えば、融合金属ナノ構造化ネットワークの特性は十分に維持される。いくつかの加工及び相当する評価は、促進老化試験のいくつかの態様を模倣する。しかしながら、促進老化試験は、一般に、ディスプレーなどの実際のデバイスでの構造により近く相当する、より層状の構造を使用する。出願人の早期の促進老化試験による直接的な定量的比較は確立され得ないが、それにもかかわらず、性質上の傾向は非常に意味があると考えられる。
【実施例
【0067】
実施例1-シート抵抗を低下させるための熱及び湿度による加工
本実施例は、相対シート抵抗を測定することによって、種々の環境条件下でのNanoGlue(登録商標)融合剤を含有する銀ナノワイヤ構造の性能を実証する。一般に、実施例1及び2に記載される加工及び組成物は、早期のこれらの材料に関して報告されるものと比較して、構造の光学特性を有意に変化させなかった。
【0068】
実験室コーティング:図4~6は、ハンドスロットコーティングプロセスを使用する実験室セットで4種の銀ナノワイヤインク組成物の1つによって透明ポリマー基材がコーティングされた試料のための時間の関数としての相対シート抵抗(R/R)のプロットを示す。第1の試料セット(S1及びS2)は、直径25nm未満の銀ナノワイヤを有するApplicant C3Nano,Inc.からのGEN5 ActiveGrid(商標)インクを用いて調製され、1種の試料(S1)はNanoGlue(登録商標)融合剤を含み、他の試料(S2)は融合剤を含まなかった。第2の試料セット(S3及びS4)は、直径20nm未満の銀ナノワイヤを有するGEN7 ActiveGrid(商標)インクを用いて調製され、1種の試料(S3)はNanoGlue(登録商標)融合剤を含み、他の試料(S4)は融合剤を含まなかった。NanoGlue(登録商標)を有する銀ナノワイヤインク組成物及び透明導電性フィルムを形成するための加工は、本質的に、参照により本明細書に組み込まれる「Thin and Uniform Silver Nanowires,Methods of Synthesis and Transparent Conductive Films Formed From the Nanowires」と題されたHuらへの米国特許第10,714,230B2号明細書に記載される通りに合成された銀ナノワイヤによる、上記で引用された’968特許の実施例5に記載される通りであった。
【0069】
コーティング後、透明導電性フィルム構造を室温で空気乾燥し、次いで、最大約2分間、120℃のオーブン中でさらに焼成し、融合を誘導して、融合金属ナノ構造化ネットワークを形成した。堆積した銀の量は、乾燥後の測定時に約70のオーム/sqのシート抵抗をフィルムにもたらすように選択された。乾燥された各透明導電性フィルム構造上に、市販のオーバーコートを手でスロットコーティングした。約85nmの厚さを有するオーバーコートを形成するために、UVランプを用いてオーバーコートを乾燥及び架橋させた。オーバーコートには、上記で引用された’704出願に記載の安定化化合物も含まれた。
【0070】
熱処理、又は熱及び湿度による処理の効果は、熱及び湿度の制御をもたらす市販の試験装置を使用して研究された。試料をチャンバー中に配置し、照明を用いずに温度(65℃又は85℃)及び相対湿度(85%、90%、又は未制御)の種々の条件下で試験した。金属ナノワイヤをベースとするフィルムの従来の試験とは対照的に、試料をポリマーオーバーコートのみで試験した。これは、透明導電性フィルムが追加的なより厚い保護ポリマー層を有するスタックで試験される従来の試験とは対照的である。
【0071】
時間の関数として試料の相対シート抵抗(R/R)を測定した。図4は、湿度調整を行わない85℃の条件に関するデータを示し、図5は、85℃及び85%相対湿度の条件に関するデータを示し、図6は、65℃及び90%相対湿度の条件に関するデータを示す。より薄い銀ナノワイヤ及びNanoGlue(登録商標)融合剤から形成された透明導電性フィルム、試料S3は、教示条件に関して最長試験時間で最も低い相対シート抵抗を示し、最も高い安定性性能を示した。図4図5及び6と比較すると、85℃における乾燥加熱によってシート抵抗は有意に増加しなかったが、高い湿度によって大きいシート抵抗増加が引き起こされたことがわかる。図4及び5を図6と比較すると、高い相対湿度(90%)の条件でNanoGlue(登録商標)融合剤を有する試料(S1及びS3)の優れた性能は、特に50時間より長い時間に関して明白であった。図5及び6中のS3及びS4に関する劇的に異なる結果によってわかるように、NanoGlue(登録商標)融合剤の安定化効果は、特に高い相対湿度でのより小さい直径のナノワイヤ構造に関して顕著であった。より薄い銀ナノワイヤはより大きい表面対体積比を有し、そしてS3及びS4試料において観察されたNanoGlue(登録商標)の効果は、より薄いワイヤに関しての接触数の増加及び接触面積の減少によるものであり得る。
【0072】
85℃及び85%相対湿度(図5)での加工は、相対シート抵抗の最大の初期減少をもたらした。それぞれの環境条件で、シート抵抗は、コーティング中にNanoGlue(登録商標)を有する試料(S1及びS3)に関して、試験の初期時間に低下した(約10%以上)。約75時間後の湿度調整環境のない85℃でのS1(図4)を除いて、NanoGlue(登録商標)融合剤を有する試料は、試験の所与の時間において、融合剤を含まない試料よりも低い相対シート抵抗を示した。NanoGlue(登録商標)融合剤を有さない試料(S2及びS4)は、加工によって相対シート抵抗のいかなる減少も示さなかった。これらの試料では、相対シート抵抗は、経時的に増加するのみであった。
【0073】
ロール・ツー・ロールコーティング:図7は、ロール・ツー・ロール形態でスロット-ダイコーティングを使用して、3種の銀ナノワイヤインク組成物の1つによって基材がコーティングされた試料の結果を示す。3種の銀ナノワイヤインク組成物は、GEN7 ActiveGrid(商標)インク、及び異なる量のNanoGlue(登録商標)融合剤:1.5倍NanoGlue(登録商標)、3倍NanoGlue(登録商標)又はNanoGlue(登録商標)なし(対照として)を用いて調製された。なお、NanoGlue(登録商標)の量は市販のインク中の標準量と比較して参照されている。コーティング後、構造を室温で空気乾燥させ、次いで、最大約10分間、120℃のオーブン中でさらに乾燥させて、インクを乾燥させた。時間の関数としてのナノワイヤインクがコーティングされた試料の抵抗は、65℃及び90%相対湿度において空気雰囲気中で試験した。NanoGlue(登録商標)含有インクでコーティングされた2つの試料は、約80時間で約10%相対シート抵抗の初期低下を示した。初期低下後、NanoGlue(登録商標)でコーティングされた試料の相対シート抵抗は増加したが、t=約300時間まで初期抵抗値未満のままであった。NanoGlue(登録商標)融合剤を有する2種の試料に関する最終相対シート抵抗(R/R)は1.4であった。1.5倍NanoGlue(登録商標)試料は、一般に、3倍試料より低いシート抵抗を示した。融合剤を含まない試料は、約19%のシート抵抗の初期増加を示し、そしてその後、試験期間を通してシート抵抗が増加した。最終相対シート抵抗は約2.1であった。シート抵抗増加に対する1.2R/Rの標的限界は水平な線で示される。
【0074】
本実験は、1.5倍又は3倍NanoGlue(登録商標)融合剤を有するナノワイヤインクが、ナノワイヤコーティングされた構造の抵抗を約33%減少させることを示した。NanoGlue(登録商標)を含まない試料は約125時間後に1.2の標的を横切ったが、NanoGlue(登録商標)を含む試料は約650時間後に1.2の標的限界を横切った。
【0075】
研究室及びロール・ツー・ロール結果は、導電性銀ナノワイヤフィルムの環境耐久性がNanoGlue(登録商標)融合剤の使用によって改善されることを示した。この結果は、NanoGlue(登録商標)試料で観察される初期抵抗低下は、透明導電性フィルムに追加的な金属供給源が提供されていることの徴候であることを示唆する。NanoGlue(登録商標)を用いた高温/高湿度条件で観察された改善された安定性は、融合しない場合に高温/高湿度条件でより急速に増加し得る接合部抵抗が融合によって減少/排除されることと一致する。これらの結果は、コーティングされた製品の初期の熱及び湿度処理を使用して、デバイスに組み立てられる前のシート抵抗を減少し、そしておそらく透明導電性フィルムの安定性を得ることができることを示す。
【0076】
実施例2-オーバーコート中の銀イオンによる融合金属ナノ構造化ネットワークの安定化
本実施例は、融合金属ナノ構造化ネットワークに隣接するオーバーコート層中のNanoGlue(登録商標)融合剤の安定化効果を示す。
【0077】
図8は、種々のオーバーコートが提供される積層光学構造体試料のための時間の関数としての相対シート抵抗(R/R)のプロットを示す。構造は、スパース金属ナノ構造化ネットワークを形成するために融合されたか、又は融合されていないスパース金属導電性層を有する透明ポリマー基材を含んだ。この構造の形成は実施例1に記載されている。積層光学構造試料の層は、図8中に例証される。各試料はPET基材を有した。実施例1に記載の通り、NanoGlue(登録商標)融合剤を有するGEN5銀ナノワイヤインクによって基材をコーティングし、次いで乾燥させる。次に、選択された量の銀塩(NanoGlue(登録商標)として)を含有するUV硬化性ポリマー樹脂からなるオーバーコートを各構造上にコーティングした。最後に、各構造をA型ガラス上の積層体を提供した。5種のオーバーコート組成物は、異なる量のNanoGlue(登録商標)融合剤:レベル1倍、1.5倍、2倍、3倍又はNanoGlue(登録商標)なし(対照として)を用いて調製された。なお、NanoGlue(登録商標)(1倍)の参照量は、約3.0重量%~約3.5重量%の銀イオンである。試料は、高温/高湿度条件:85℃及び85%相対湿度で試験された。NanoGlue(登録商標)を含むオーバーコートを有する各試料は、相対シート抵抗の初期減少を示し、NanoGlue(登録商標)のレベルが増加するほど、減少はより顕著であった。オーバーコート中のNanoGlue(登録商標)は、光学積層構造のさらなる高温/高湿度処理において、銀ナノワイヤ構造のシート抵抗に対する明白な効果を示した。
【0078】
本実施例は、オーバーコート及び銀ナノワイヤ層の両方がNanoGlue(登録商標)を含有する構造において、高温/高湿度処理時にシート抵抗の減少がより重大であることを示す。例えば、約95時間の時点の図5のS1を図8のNanoGlue(登録商標)レベル3倍と比較すると、試料は、それぞれ、1.07及び0.85の相対シート抵抗を有する。シート抵抗のこのような減少は、接合部位置での金属銀導体へのオーバーコート中の銀イオンの化学的減少と一致している。
【0079】
図9は、NanoGlue(登録商標)を含まないGEN5銀ナノワイヤフィルムにおけるオーバーコート中のNanoGlue(登録商標)レベル3倍の効果を示す。積層は、ポリマーオーバーコートのみで試験されて、追加的なOCA又は他の層は試験されない。オーバーコート中にNanoGlue(登録商標)を有する試料及びオーバーコート中にNanoGlue(登録商標)を含まない別の試料は、85℃及び85%相対湿度の高温/高湿度条件に関して示される。オーバーコート中にNanoGlue(登録商標)を含む試料は、相対シート抵抗の初期減少を示し、続いて、継続的な減少が生じた。対照的に、オーバーコート中にNanoGlue(登録商標)を含まない試料は、顕著な増加を示した。約45時間の時点で、2つの試料は0.87対1.36であった。
【0080】
本実施例は、銀ナノワイヤ層中のNanoGlue(登録商標)の有無にかかわらず、オーバーコート中のNanoGlue(登録商標)によってシート抵抗を有意に低下させることが可能であり、促進摩耗試験で有意な安定化が提供されることを示す。
【0081】
上記の実施形態は、例証であり、制限するものではないように意図される。追加的な実施形態は、本請求の範囲内である。加えて、本発明は特定の実施形態に関して記載されたが、当業者は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、形状及び細部を変更することができることを認識するであろう。本明細書の明示的な開示とは反対である対象が組み込まれないように、上記の文献の参照によるいかなる組み込みも制限される。具体的な構造、組成物及び/又はプロセスが成分、素子、材料又は他の部分に関して記載される限り、本明細書の開示は、他に特に示されない限り、具体的な実施形態、具体的な成分、素子、材料又は他の部分を含む実施形態、又はその組合せ、並びに本開示に提示される対象の基本的性質を変更しない追加的な特徴を含むことが可能な、そのような具体的な成分、材料若しくは他の部分又はその組合せから本質的になる実施形態を含むことは理解される。「約」という用語の使用は、本明細書中、当業者によって特定の状況で理解されるであろう関連する値における予期される不確実性を指す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】