IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ▲荊▼▲門▼市格林美新材料有限公司の特許一覧 ▶ 格林美股▲ブン▼有限公司の特許一覧

特表2023-502146電池グレードのNi-Co-Mn混合液及び電池グレードのMn溶液の調製方法
<>
  • 特表-電池グレードのNi-Co-Mn混合液及び電池グレードのMn溶液の調製方法 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-20
(54)【発明の名称】電池グレードのNi-Co-Mn混合液及び電池グレードのMn溶液の調製方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 7/00 20060101AFI20230113BHJP
   C22B 3/22 20060101ALI20230113BHJP
   C22B 3/08 20060101ALI20230113BHJP
   C22B 3/10 20060101ALI20230113BHJP
   C22B 3/44 20060101ALI20230113BHJP
   C22B 3/26 20060101ALI20230113BHJP
   C22B 47/00 20060101ALI20230113BHJP
   C22B 23/00 20060101ALI20230113BHJP
   H01M 10/54 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
C22B7/00 C
C22B3/22
C22B3/08
C22B3/10
C22B3/44 101A
C22B3/26
C22B47/00
C22B23/00 101
H01M10/54
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022540943
(86)(22)【出願日】2019-12-31
(85)【翻訳文提出日】2022-06-30
(86)【国際出願番号】 CN2019130632
(87)【国際公開番号】W WO2021134515
(87)【国際公開日】2021-07-08
(31)【優先権主張番号】201911389887.7
(32)【優先日】2019-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508149663
【氏名又は名称】▲荊▼▲門▼市格林美新材料有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】522263633
【氏名又は名称】格林美股▲ブン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】GEM CO,. LTD
【住所又は居所原語表記】NUMBER 2008, 20F BLOCK A, MARINA BAY CENTER, SOUTH OF XINGHUA RD., BAO’AN CENTER, SHENZHEN, GUANGDONG 518101, CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】許 開 華
(72)【発明者】
【氏名】蒋 振 康
(72)【発明者】
【氏名】李 琴 香
(72)【発明者】
【氏名】張 坤
(72)【発明者】
【氏名】王 文 杰
(72)【発明者】
【氏名】王 峻
(72)【発明者】
【氏名】温 世 紅
【テーマコード(参考)】
4K001
5H031
【Fターム(参考)】
4K001AA07
4K001AA16
4K001AA19
4K001AA34
4K001AA36
4K001AA38
4K001BA22
4K001DB03
4K001DB04
4K001DB16
4K001DB22
4K001DB23
4K001DB26
4K001DB34
4K001HA12
4K001JA01
4K001JA03
4K001JA10
5H031RR02
(57)【要約】
電池グレードのNi-Co-Mn混合液及び電池グレードのMn溶液の調製方法であって、そのステップは酸分解(S1)、アルカリ化による不純物の除去(S2)、カルシウム-マグネシウム-リチウム同時沈殿(S3)、深い熟成による不純物の除去(S4)、相乗抽出(S5)及び精製抽出(S6)を含み、前記深い熟成による不純物の除去(S4)と相乗抽出(S5)のステップは、前記カルシウム-マグネシウム-リチウム同時沈殿(S3)ステップを経た後に得られた濾液を深く熟成し、濾過して不純物を除去した後に熟成濾液を得ることと、P204を用いて前記熟成濾液を抽出して担持有機相を得て、前記担持された有機をグレード別に逆抽出した後に電池グレードのNi-Co-Mn混合液及びMn含有溶液を得ることとを含む。カルシウム-マグネシウム-リチウム同時沈殿(S3)、深い熟成による不純物の除去(S4)及び相乗抽出(S5)の複数のプロセスステップ間の組み合わせにより、得られた電池グレードのNi-Co-Mn混合液の不純物含有量を著しく低減させ、且つ該電池グレードのNi-Co-Mn混合液はリチウム電池三元前駆体材料の調製に直接使用可能であり、同時に電池グレードのMn溶液を得て、プロセスの大規模な使用に寄与し、経済性を向上させることもできる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池グレードのNi-Co-Mn混合液及び電池グレードのMn溶液の調製方法であって、
そのステップは酸分解、アルカリ化による不純物の除去、カルシウム-マグネシウム-リチウム同時沈殿、深い熟成による不純物の除去、相乗抽出及び精製抽出を含み、
前記深い熟成による不純物の除去のステップは、前記カルシウム-マグネシウム-リチウム同時沈殿のステップを経た後に得られた濾液を深く熟成し、濾過して不純物を除去した後に熟成濾液を得ることを含み、ただし、熟成時間は4hを超え、熟成温度は25℃である、ことを特徴とする電池グレードのNi-Co-Mn混合液及び電池グレードのMn溶液の調製方法。
【請求項2】
前記酸分解のステップは、具体的に、リチウムイオン電池の正極と負極の混合粉末を酸液に浸入させて還元剤を添加し、有価金属が完全に溶解するまで酸分解混合液を得ることを含み、ただし、前記酸液は硫酸又は塩酸であり、前記還元剤はH、SO、亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウムの1種又は複数種の混合物である、ことを特徴とする請求項1に記載の電池グレードのNi-Co-Mn混合液及び電池グレードのMn溶液の調製方法。
【請求項3】
前記酸液の添加量はその反応過程における理論モル量の1~2倍であり、前記還元剤の添加量はその反応過程における理論モル量の1~3倍である、ことを特徴とする請求項2に記載の電池グレードのNi-Co-Mn混合液及び電池グレードのMn溶液の調製方法。
【請求項4】
前記リチウムイオン電池の正極と負極の混合粉末はニッケル、コバルト、マンガンの元素を含むリチウムイオン電池システム混合物である、ことを特徴とする請求項2に記載の電池グレードのNi-Co-Mn混合液及び電池グレードのMn溶液の調製方法。
【請求項5】
前記アルカリ化による不純物の除去のステップは、
前記酸分解混合液に酸化剤及びアルカリ液を添加し、溶液のpH値を2.5~5.5に調整した後に、濾過して鉄及びアルミニウムを除去し、アルカリ化混合液を得ることを含み、
前記酸化剤は空気、酸素、塩素酸ナトリウム、過酸化水素水、二酸化硫黄/空気の1種又は複数種の混合物であり、且つ前記酸化剤の添加量はその反応過程における理論モル量の1.05倍を超え、
前記アルカリ液は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水の1種又は複数種の混合物であり、且つ前記アルカリ液の濃度は5~32%である、ことを特徴とする請求項2に記載の電池グレードのNi-Co-Mn混合液及び電池グレードのMn溶液の調製方法。
【請求項6】
前記カルシウム-マグネシウム-リチウム同時沈殿のステップは、
前記アルカリ化混合液に可溶性フッ化塩を添加し、撹拌反応してから、濾過してリチウム、カルシウム、マグネシウムを除去し、同時沈殿した濾液を得ることを含み、
前記可溶性フッ化塩はフッ化ナトリウム、フッ化アンモニウムの1種又は2種の混合物であり、且つ前記可溶性フッ化塩の添加量は溶液におけるリチウム-カルシウム-マグネシウムのモル量の1~2倍であり、
前記撹拌反応の温度は60℃であり、反応時間は2hである、ことを特徴とする請求項5に記載の電池グレードのNi-Co-Mn混合液及び電池グレードのMn溶液の調製方法。
【請求項7】
前記相乗抽出のステップは、
P204抽出剤を用いて前記熟成濾液を相乗的に抽出し、担持有機相及びラフィネートを得ることと、
前記担持有機相を酸洗してから、段階的に逆抽出し、それぞれ、電池グレードのNi-Co-Mn混合液及びマンガン含有溶液を得ることとを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の電池グレードのNi-Co-Mn混合液及び電池グレードのMn溶液の調製方法。
【請求項8】
前記精製抽出のステップは、P204抽出剤を用いて前記Mn含有溶液を抽出して不純物を除去することを含み、得られたラフィネートは電池グレードのMn溶液である、ことを特徴とする請求項7に記載の電池グレードのNi-Co-Mn混合液及び電池グレードのMn溶液の調製方法。
【請求項9】
廃水処理のステップをさらに含み、前記廃水処理のステップは前記相乗抽出のステップで得られたラフィネートを処理するために用いられる、ことを特徴とする請求項7に記載の電池グレードのNi-Co-Mn混合液及び電池グレードのMn溶液の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリチウムイオン電池の分野に関し、特に電池グレードのNi-Co-Mn混合液及び電池グレードのMn溶液の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中国の自動車用パワーリチウムイオン電池市場は爆発的に成長し、応用市場ではリチウムイオン電池の性能に対する要求がますます厳しくなっており、現在、国内外で最も広く使用されているパワーリチウムイオン電池システムは、主にリン酸鉄リチウム系及び三元系であり、例えば、ニッケルとマンガンとコバルト又はニッケルとコバルトとアルミニウムの3種の金属元素からなる電池システムであり、且つ高性能の自動車用リチウムイオン電池の製造コストが高い。新エネルギー自動車に使用されるリチウム電池の使用量が増えているため、大量の廃電池が発生し、廃リチウムイオン電池をいかに効果的に回収するかが現在早急に解決すべき問題となっている。
【0003】
現在、廃リチウムイオン電池の回収は主に湿式処理を採用し、例えば、三元材料電池では、湿式処理に主に還元・酸浸出-浄化・不純物除去-抽出分離のプロセスフローを使用しており、その浄化・不純物除去のステップにおける、プロセスの要点は、いかに浸出液に含まれるカルシウム、マグネシウム、鉄、アルミニウムなどの不純物を十分に除去し、より高品質のNi-Co-Mn回収液を回収して取得するかにある。従来の技術では、複数回の抽出を採用し、電池グレードの硫酸ニッケル溶液、硫酸マンガン溶液及び硫酸コバルト溶液をそれぞれ取得し、且つ電池グレードの硫酸ニッケル溶液、硫酸マンガン溶液及び硫酸コバルト溶液をそれぞれ抽出した後に、さらに配合比で再度混合して三元電池システムの前駆体を調製する必要があり、このプロセス過程は比較的複雑である。また、従来の技術では、ニッケル、コバルト、マグネシウムを回収するときに、フッ化塩を添加する方法によって浸出液に対して不純物除去処理を行うことが多いが、実際の操作では、この方法の不純物除去効果は望ましくなく、得られた溶液には一定量のカルシウム、マグネシウムの不純物元素が含まれている。したがって、上記問題を解決するために、不純物を除去して回収する新たな方法を提案する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、従来の技術で廃リチウムイオン電池におけるCo、Ni、Mn元素を回収するときの回収率が低く、且つ不純物除去効果が望ましくないという問題を解決するために、電池グレードのNi-Co-Mn混合液及び電池グレードのMn溶液の調製方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記技術的問題を解決するために、本発明は、電池グレードのNi-Co-Mn混合液及び電池グレードのMn溶液の調製方法であって、そのステップは、酸分解、アルカリ化による不純物の除去、カルシウム-マグネシウム-リチウム同時沈殿、深い熟成による不純物の除去、相乗抽出のステップ及び精製抽出を含み、深い熟成による不純物の除去のステップは、カルシウム-マグネシウム-リチウム同時沈殿のステップを経た後に得られた濾液を深く熟成し、濾過して不純物を除去した後に熟成濾液を得ることを含み、ただし、熟成時間は4hを超え、熟成温度は25℃である、電池グレードのNi-Co-Mn混合液及び電池グレードのMn溶液の調製方法を提供する。
【0006】
ここで、酸分解のステップは、具体的に、リチウムイオン電池の正極と負極の混合粉末を酸液に浸入させて還元剤を添加し、有価金属が完全に溶解するまで酸分解混合液を得ることを含み、ただし、酸液は硫酸又は塩酸であり、還元剤はH、SO、亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウムの1種又は複数種の混合物である。
【0007】
ここで、酸液の添加量はその反応過程における理論モル量の1~2倍であり、還元剤の添加量はその反応過程における理論モル量の1~3倍である。
【0008】
ここで、リチウムイオン電池の正極と負極の混合粉末はニッケル、コバルト、マンガンの元素を含むリチウムイオン電池システム混合物である。
【0009】
ここで、アルカリ化による不純物の除去のステップは、酸分解混合液に酸化剤及びアルカリ液を添加し、溶液のpH値を2.5~5.5に調整した後に、濾過して鉄及びアルミニウムを除去し、アルカリ化混合液を得ることを含み、酸化剤は空気、酸素、塩素酸ナトリウム、過酸化水素水、二酸化硫黄/空気の1種又は複数種の混合物であり、且つ酸化剤の添加量はその反応過程における理論モル量の1.05倍を超え、アルカリ液は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水の1種又は複数種の混合物であり、且つアルカリ液の濃度は5~32%である。
【0010】
ここで、カルシウム-マグネシウム-リチウム同時沈殿のステップは、アルカリ化混合液に可溶性フッ化塩を添加し、撹拌反応してから、濾過してリチウムとカルシウムとマグネシウムを除去し、同時沈殿した濾液を得ることを含み、可溶性フッ化塩はフッ化ナトリウム、フッ化アンモニウムの1種又は2種の混合物であり、且つ可溶性フッ化塩の添加量は溶液におけるリチウム-カルシウム-マグネシウムのモル量の1~2倍であり、撹拌反応の温度は60℃であり、反応時間は2hである。
【0011】
ここで、相乗抽出のステップは、P204抽出剤を用いて熟成濾液を相乗的に抽出し、担持有機相(loaded organic phase)及びラフィネートを得ることと、担持有機相を酸洗してから、段階的に逆抽出し、それぞれ、電池グレードのNi-Co-Mn混合液及びMn含有溶液を得ることとを含む。
【0012】
ここで、精製抽出のステップは、P204抽出剤を用いてMn含有溶液を抽出して不純物を除去することを含み、得られたラフィネートは電池グレードのMn溶液である。
【0013】
ここで、電池グレードのNi-Co-Mn混合液及び電池グレードのMn溶液の調製方法は、廃水処理のステップをさらに含み、廃水処理のステップは相乗抽出のステップで得られたラフィネートを処理するために用いられる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の有益な効果は次のとおりである。従来の技術の状況とは異なり、本発明は電池グレードのNi-Co-Mn混合液及び電池グレードのMn溶液の調製方法を提供し、カルシウム-マグネシウム-リチウム同時沈殿、及び相乗抽出の複数のプロセスステップ間の組み合わせにより、得られた電池グレードのNi-Co-Mn混合液の不純物含有量を著しく低減させ、ニッケル-コバルト-マンガンの回収率を著しく向上させ、他の純化処理を行う必要がなく、得られた電池グレードのNi-Co-Mn混合液をリチウム電池三元前駆体材料の調製に直接使用可能であり、さらに電池グレードのMn溶液を得て、プロセスの大規模な使用に寄与し、経済性を向上させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る電池グレードのNi-Co-Mn混合液及び電池グレードのMn溶液の調製方法の一実施形態のプロセスフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施例における図面を参照しながら、本発明の実施例における技術案を明確且つ完全に説明するが、説明される実施例は、本発明の一部の実施例にすぎず、すべての実施例ではないことは明らかである。本発明における実施例に基づいて、当業者が創造的な労働を行わない前提で得られるすべての他の実施例は、いずれも本発明の保護範囲に属する。
【0017】
図1を参照し、図1は本発明に係る電池グレードのNi-Co-Mn混合液及び電池グレードのMn溶液の調製方法の一実施形態のプロセスフローチャートである。本発明に係る電池グレードのNi-Co-Mn混合液及び電池グレードのMn溶液の調製方法は、そのステップが酸分解S1、アルカリ化による不純物の除去S2、カルシウム-マグネシウム-リチウム同時沈殿S3、深い熟成による不純物の除去S4、相乗抽出S5、精製抽出S6及び廃水処理S7を含み、具体的に、該調製方法における各ステップをそれぞれ詳しく説明する。
【0018】
S1:酸分解。本ステップは、具体的に、リチウムイオン電池の正極と負極の混合粉末を組み合わせた酸液に浸入させて還元剤を添加し、完全に溶解するまで酸分解混合液を得ることを含み、ただし、酸液は硫酸又は塩酸であり、酸液の添加量はその反応過程における理論モル量の1~2倍であり、還元剤はH、SO、亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウムの1種又は複数種の混合物であり、還元剤の添加量はその反応過程における理論モル量の1~3倍であり、リチウムイオン電池の正極と負極の混合粉末におけるニッケル、コバルト、マンガン、リチウムなどの金属元素が十分に溶解可能であることを確保するために、実際に添加する酸液及び還元剤はいずれも理論値より過剰である。本実施形態では、リチウムイオン電池の正極と負極の混合粉末は、ニッケル、コバルト、マンガンの元素を含むリチウムイオン電池システム混合物であり、例えば、ニッケル、コバルト、マンガンの元素を含むNi-Co-Mo-Li系、コバルト酸リチウム系、Ni-Co-Al系の1種又は複数種からなるシステム混合物であり、これらのシステム混合物は、いずれも上記リチウムイオン電池の正極と負極の混合粉末として本発明の調製プロセスに使用可能である。
【0019】
S2:アルカリ化による不純物の除去。本ステップは、具体的に、酸分解混合液に酸化剤及びアルカリ液を添加し、溶液のpH値を2.5~5.5に調整した後に、濾過して鉄及びアルミニウムを除去し、アルカリ化混合液を得ることを含み、酸化剤は空気、酸素、塩素酸ナトリウム、過酸化水素水、二酸化硫黄/空気の1種又は複数種の混合物であり、且つ酸化剤の添加量はその反応過程における理論モル量の1.05倍を超え、アルカリ液は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水の1種又は複数種の混合物であり、且つアルカリ液の濃度は5~32%であり、本ステップの目的は、上記酸分解混合液を適切なアルカリ性区間に調整し、主に溶液における鉄及びアルミニウムの元素を水酸化物の形で除去することにある。
【0020】
S3:カルシウム-マグネシウム-リチウム同時沈殿。本ステップは、具体的に、アルカリ化混合液に可溶性フッ化塩を添加し、撹拌反応してから、濾過してリチウム、カルシウム、マグネシウムの元素を除去し、同時沈殿した濾液を得ることを含み、可溶性フッ化塩はフッ化ナトリウム、フッ化アンモニウムの1種又は2種の混合物であり、且つ可溶性フッ化塩の添加量は溶液におけるリチウム-カルシウム-マグネシウムのモル量の1~2倍であり、撹拌反応の温度は60℃であり、反応時間は2hであり、本ステップの目的は、上記アルカリ化混合液におけるCa2+、Mg2+、LiイオンをFと反応させ、CaF、MgF及びLiFの沈殿を同時生成し、Ca2+、Mg2+、Liをアルカリ化混合液から同時に分離することにある。
【0021】
S4:深い熟成による不純物の除去。本ステップは、具体的に、カルシウム-マグネシウム-リチウム同時沈殿のステップを経た後に得られた濾液を深く熟成し、濾過して不純物を除去した後に熟成濾液を得ることを含み、ただし、熟成時間は4hを超え、熟成温度は25℃であり、本ステップの目的は、次のとおりである。上記S3ステップで添加される可溶性フッ化塩の量を厳しく制御することにより、S3ステップの処理を経た後の濾液でほとんどのCa2+、Mg2+、Liが分離され、同時にNi2+、Co2+、Mn2+がそれに伴い析出して損失を起こさないようにし、ただし依然として一部のCa2+、Mg2+、Liが濾液に残留するようにし、この時、熟成することにより、生成されたフッ化物沈殿粒子をさらに成長させ、残留したCa2+、Mg2+、Liを十分に析出させ、濾過後に得られた熟成濾液におけるCa2+、Mg2+、Liの含有量を大幅に低減させる。
【0022】
S5:相乗抽出。本ステップは、具体的に、P204抽出剤を用いて熟成濾液を相乗的に抽出し、担持有機相及びラフィネートを得ることと、担持有機相を酸洗してから、段階的に逆抽出し、それぞれ、電池グレードのNi-Co-Mn混合液及びMn含有溶液を得ることとを含む。本ステップの目的は、次のとおりである。P204抽出剤を用いて逆抽出するのは、熟成濾液におけるCa2+、Mg2+、Liをよりさらに除去することにより、得られたMn含有溶液及び電池グレードのNi-Co-Mn混合液の品質を向上させるためであるが、逆抽出時に一定量の不純物元素が含まれるため、さらに後続の精製抽出S6ステップを行う必要がある。
【0023】
S6:精製抽出。本ステップは、具体的に、P204抽出剤を用いてMn含有溶液をさらに抽出して不純物を除去し、溶液におけるカルシウム及びマグネシウムの不純物をさらに減少させることを含み、得られたラフィネートは電池グレードのMn溶液である。
【0024】
S7:廃水処理。本ステップは、主に相乗抽出ステップで得られたラフィネートを処理するために用いられ、廃水を処理する具体的な形は、実際の要求に応じて設定可能であり、ここでは限定されない。
【0025】
本方案と従来の技術案を比較すると、従来の技術は複数回の抽出を採用し、電池グレードの硫酸ニッケル溶液、硫酸マンガン溶液及び硫酸コバルト溶液をそれぞれ取得するが、本発明の特徴は相乗抽出であり、ニッケル、コバルト、マンガンをすべて同時抽出し、段階的に逆抽出することにより、高純度の電池グレードのニッケル-コバルト-マンガン溶液及びカルシウム含有硫酸マンガン溶液を得て、カルシウム含有硫酸マンガン溶液をさらに精製抽出した後に電池グレードの硫酸マンガン溶液を得て、得られた電池グレードのNi-Co-Mn混合液は不純物含有量が非常に少なく、他の純化加工ステップを行う必要がなく、リチウム電池三元前駆体材料の調製に直接使用可能であり、回収効率を著しく向上させ、且つプロセス過程が簡単である。
【0026】
以下、具体的な実施例を参照しながら、本発明に係る電池グレードのNi-Co-Mn混合液の調製方法をさらに詳細に説明する。
【実施例1】
【0027】
リチウムイオン電池の正極と負極の混合粉末100gを秤量し、硫酸100mlを添加し、30%過酸化水素水60gによる酸浸出をし、濾過して不溶性残渣を除去して浸出液を得て、コバルト、ニッケル、マンガンの浸出率は、それぞれ91.64%、91.65%、90.67%である。空気を導入しながら浸出液を10%の液体アルカリでpHを5.0に調整し、2時間反応した後に濾過して鉄及びアルミニウムを除去し、アルカリ化混合液を得た。アルカリ化混合液に理論量の1.5倍のフッ化ナトリウムを添加し、60℃下で2時間撹拌反応した後に濾過してリチウム、カルシウム、マグネシウムを除去し、同時沈殿した濾液を得て、得られた同時沈殿した濾液を室温下で4時間熟成してカルシウム、マグネシウム、リチウムを深く除去し、濾過してコバルト、ニッケル、マンガンを55g/L含む熟成濾液を得て、その中、Fe:0.0001g/L、Al:0.0001g/L、Ca:0.0007g/L、Mg:0.0001g/L、Li:0.645g/L、不純物含有量が非常に低い。
【実施例2】
【0028】
リチウムイオン電池の正極と負極の混合粉末100gを秤量し、硫酸123mlを添加し、30%過酸化水素水135gによる酸浸出をし、濾過して不溶性残渣を除去して浸出液を得て、コバルト、ニッケル、マンガンの浸出率は、それぞれ99.64%,99.65%,98.67%である。濾過して不溶性残渣を除去し、浸出液に理論モル量の1.05倍の過酸化水素水を添加し、10%の液体アルカリを添加してpHを4.5に調整し、2時間反応した後に濾過して鉄及びアルミニウムを除去し、アルカリ化混合液を得た。アルカリ化混合液に理論量の1.2倍のフッ化ナトリウムを添加し、60℃下で2時間撹拌反応した後に濾過してリチウム、カルシウム、マグネシウムを除去し、同時沈殿した濾液を得て、得られた同時沈殿した濾液を室温下で4時間熟成してカルシウム、マグネシウム、リチウムを深く除去し、濾過してコバルト、ニッケル、マンガンを60g/L含む熟成濾液を得て、その中、Fe:0.0002g/L、Al:0.0001g/L、Ca:0.0029g/L、Mg:0.0001g/L、Li:0.722g/L、不純物含有量が非常に低い。
【実施例3】
【0029】
実施例1で調製された熟成濾液を使用し続け、熟成濾液をけん化率が45%のP204有機溶媒と1:3の比率で7段に向流抽出し、溶液におけるニッケル、コバルト、マンガンをすべて抽出し、得られたニッケル、コバルト、マンガンが担持された有機相を0.8mol/Lの希酸と3:1の比率で8段に向流洗浄した。洗浄後に、有機相を4mol/Lの硫酸と8:1の比率で8段に向流逆抽出し、逆抽出液、即ち、得られた電池グレードのニッケル-コバルト-マンガン溶液におけるニッケル、コバルト、マンガンの総含有量>100g/Lである。逆抽出の段階の中間にマンガン含有溶液の出口を設立し、マンガン含有溶液をP204抽出剤で精製して不純物を除去し、電池グレードの硫酸マンガン溶液を得ることができる。
【実施例4】
【0030】
実施例2で調製された熟成濾液を使用し続け、熟成濾液をけん化率が55%のP204有機溶媒と1:4の比率で12段に向流抽出し、溶液におけるニッケル、コバルト、マンガンをすべて抽出し、得られたニッケル、コバルト、マンガンが担持された有機相を1mol/Lの希酸と4:1の比率で12段に向流洗浄した。洗浄後に、有機相を4.5mol/Lの硫酸と9:1の比率で12段に向流逆抽出し、逆抽出液、即ち、得られた電池グレードのニッケル-コバルト-マンガン溶液におけるニッケル、コバルト、マンガンの総含有量>130g/Lである。逆抽出段の中間にマンガン含有溶液の出口を設立し、マンガン含有溶液をP204抽出剤で精製して不純物を除去し、電池グレードの硫酸マンガン溶液を得ることができる。
【0031】
従来の技術の状況とは異なり、本発明は電池グレードのNi-Co-Mn混合液及び電池グレードのMn溶液の調製方法を提供し、カルシウム-マグネシウム-リチウム同時沈殿、深い熟成による不純物の除去及び相乗抽出の複数のプロセスステップ間の組み合わせにより、得られた電池グレードのNi-Co-Mn混合液の不純物含有量を著しく低減させ、ニッケル、コバルト、マンガンの回収率を著しく向上させ、他の純化処理を行う必要がなく、得られた電池グレードのNi-Co-Mn混合液をリチウム電池三元前駆体材料の調製に直接に使用可能であり、同時に電池グレードのMn溶液を得て、プロセスの大規模な使用に寄与し、経済性を向上させることもできる。
【0032】
なお、以上の各実施例はいずれも同一の発明思想に属し、各実施例の説明はそれぞれ重点を置いており、個々の実施例で詳細に説明されていないことは、他の実施例における説明を参照可能である。
【0033】
上述の実施例は、本発明の実施形態を表現するものにすぎず、その説明は、具体的で詳細であるが、これにより特許の範囲を限定するものとは理解できない。なお、当業者であれば、本発明の思想から逸脱しない前提でいくつかの変形及び改善を行うことができ、これらはすべて本発明の保護範囲に属する。したがって、本特許の保護範囲は、請求の範囲に従うべきである。
図1
【手続補正書】
【提出日】2022-07-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池グレードのNi-Co-Mn混合液及び電池グレードのMn溶液の調製方法であって、
そのステップは酸分解、アルカリ化による不純物の除去、カルシウム-マグネシウム-リチウム同時沈殿、深い熟成による不純物の除去、相乗抽出及び精製抽出を含み、
前記アルカリ化による不純物の除去のステップは、前記酸分解混合液に酸化剤及びアルカリ液を添加し、溶液のpH値を2.5~5.5に調整した後に、濾過して鉄及びアルミニウムを除去し、アルカリ化混合液を得ることを含み、
前記カルシウム-マグネシウム-リチウム同時沈殿のステップは、前記アルカリ化混合液に可溶性フッ化塩を添加し、撹拌反応してから、濾過してリチウム、カルシウム、マグネシウムを除去し、同時沈殿した濾液を得ることを含み、前記可溶性フッ化塩はフッ化ナトリウム、フッ化アンモニウムの1種又は2種の混合物であり、且つ前記可溶性フッ化塩の添加量は溶液におけるリチウム-カルシウム-マグネシウムのモル量の1~2倍であり、前記撹拌反応の温度は60℃であり、反応時間は2hであり、
前記深い熟成による不純物の除去のステップは、前記カルシウム-マグネシウム-リチウム同時沈殿のステップを経た後に得られた濾液を深く熟成し、濾過して不純物を除去した後に熟成濾液を得ることを含み、ただし、熟成時間は4hを超え、熟成温度は25℃であり、
前記相乗抽出のステップは、P204抽出剤を用いて前記熟成濾液を相乗的に抽出し、担持有機相及びラフィネートを得ることと、前記担持有機相を酸洗してから、段階的に逆抽出し、それぞれ、電池グレードのNi-Co-Mn混合液及びマンガン含有溶液を得ることとを含み、
前記精製抽出のステップは、P204抽出剤を用いて前記Mn含有溶液を抽出して不純物を除去することを含み、得られたラフィネートは電池グレードのMn溶液である、
ことを特徴とする電池グレードのNi-Co-Mn混合液及び電池グレードのMn溶液の調製方法。
【請求項2】
前記酸分解のステップは、具体的に、リチウムイオン電池の正極と負極の混合粉末を酸液に浸入させて還元剤を添加し、有価金属が完全に溶解するまで酸分解混合液を得ることを含み、ただし、前記酸液は硫酸又は塩酸であり、前記還元剤はH、SO、亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウムの1種又は複数種の混合物である、ことを特徴とする請求項1に記載の電池グレードのNi-Co-Mn混合液及び電池グレードのMn溶液の調製方法。
【請求項3】
前記酸液の添加量はその反応過程における理論モル量の1~2倍であり、前記還元剤の添加量はその反応過程における理論モル量の1~3倍である、ことを特徴とする請求項2に記載の電池グレードのNi-Co-Mn混合液及び電池グレードのMn溶液の調製方法。
【請求項4】
前記リチウムイオン電池の正極と負極の混合粉末はニッケル、コバルト、マンガンの元素を含むリチウムイオン電池システム混合物である、ことを特徴とする請求項2に記載の電池グレードのNi-Co-Mn混合液及び電池グレードのMn溶液の調製方法。
【請求項5】
記酸化剤は空気、酸素、塩素酸ナトリウム、過酸化水素水、二酸化硫黄/空気の1種又は複数種の混合物であり、且つ前記酸化剤の添加量はその反応過程における理論モル量の1.05倍を超え、
前記アルカリ液は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水の1種又は複数種の混合物であり、且つ前記アルカリ液の濃度は5~32%である、ことを特徴とする請求項2に記載の電池グレードのNi-Co-Mn混合液及び電池グレードのMn溶液の調製方法。
【請求項6】
廃水処理のステップをさらに含み、前記廃水処理のステップは前記相乗抽出のステップで得られたラフィネートを処理するために用いられる、ことを特徴とする請求項に記載の電池グレードのNi-Co-Mn混合液及び電池グレードのMn溶液の調製方法。
【国際調査報告】