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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-20
(54)【発明の名称】ミスト吸入器
(51)【国際特許分類】
   A24F 40/05 20200101AFI20230113BHJP
   A24F 40/40 20200101ALI20230113BHJP
【FI】
A24F40/05
A24F40/40
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022543534
(86)(22)【出願日】2021-12-15
(85)【翻訳文提出日】2022-07-15
(86)【国際出願番号】 GB2021053312
(87)【国際公開番号】W WO2022129907
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】17/122,025
(32)【優先日】2020-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/220,189
(32)【優先日】2021-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522238642
【氏名又は名称】シャヒーン イノベーションズ ホールディング リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イマド ラフード
(72)【発明者】
【氏名】モハンメド アルシャイバ サレハ ガナム アルマズルーイ
(72)【発明者】
【氏名】サジド バッティ
(72)【発明者】
【氏名】ジェフ マコヴェック
(72)【発明者】
【氏名】クレメント ラムール
【テーマコード(参考)】
4B162
【Fターム(参考)】
4B162AA12
4B162AB14
4B162AB23
4B162AC06
4B162AC27
4B162AC34
4B162AD08
4B162AD22
(57)【要約】
使用者が吸入するための治療薬を含むミストを生成するためのミスト吸入器(200)である。この装置は、ミスト発生装置(201)と、ドライバ装置(202)とを備えている。ドライバ装置(202)は、ミスト発生装置(201)によるミスト発生の効率を最大化するために最適な周波数でミスト発生装置(201)を駆動するように構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者による吸入のために治療薬を含むミストを生成するためのミスト吸入器装置であって、該装置は、
ミスト発生装置であって、
細長く、空気入口ポート及びミスト出口ポートを備えるミスト発生器ハウジング、
前記ミスト発生器ハウジング内に設けられた液体チャンバであって、霧化される液体を含み、該液体が治療薬を含む液体チャンバ、
前記ミスト発生器ハウジング内に設けられた超音波処理チャンバ、
前記液体チャンバと前記超音波処理チャンバとの間に延びる毛細管要素であって、前記毛細管要素の第1の部分が前記液体チャンバ内にあり、前記毛細管要素の第2の部分が前記超音波処理チャンバ内にあるようにする毛細管要素、
霧化表面を有する超音波トランスデューサであって、前記毛細管要素の第2の部分の一部が前記霧化表面の一部に重なっており、前記超音波トランスデューサが交流駆動信号によって駆動されると、前記霧化表面が振動して前記毛細管要素の前記第2の部分によって運ばれる前記液体を霧化して、前記霧化された液体と空気を含むミストを前記超音波処理チャンバ内に発生させる超音波トランスデューサ、及び、
前記ミスト出口ポートで吸引する使用者が空気を前記入口ポートから引き込み、前記超音波処理チャンバを通り、前記ミスト出口ポートから出るように、前記空気入口ポート、前記超音波処理チャンバ及び前記空気出口ポートの間に空気流路を提供する空気流配置であって、前記超音波処理チャンバで発生した前記ミストが前記空気によって前記ミスト出口ポートから運ばれて前記使用者によって吸入される空気流配置を含むミスト発生装置を備え、前記装置はさらに、
ドライバ装置であって、
バッテリ、
前記超音波トランスデューサに接続されるHブリッジ回路であって、該Hブリッジ回路は、前記超音波トランスデューサを駆動するための交流駆動信号を生成するように構成される、Hブリッジ回路、
前記Hブリッジ回路に接続され、前記Hブリッジ回路を制御して前記交流駆動信号を生成するマイクロチップであって、該マイクロチップは、
発振器であって、
主クロック信号、
前記主クロック信号の正の半周期の間に初めてハイであり、前記主クロック信号の負の半周期の間にローである第1の位相クロック信号、及び、
前記主クロック信号の前記負の半周期の間に再びハイであり、前記主クロック信号の前記正の半周期の間にローである第2の位相クロック信号であって、前記第1の位相クロック信号と前記第2の位相クロック信号の位相はセンターアラインメントされている、第2の位相クロック信号
を生成するように構成される発振器、
パルス幅変調(PWM)信号発生器サブシステムであって、
前記第1の位相クロック信号と前記第2の位相クロック信号とを用いて2倍周波数クロック信号を生成するように構成される遅延ロックループであって、前記2倍周波数クロック信号は前記主クロック信号の2倍の周波数であり、前記遅延ロックループは、前記第1の位相クロック信号および前記第2の位相クロック信号の立ち上がり縁を前記2倍周波数クロック信号の立ち上がり縁と同期するよう制御するように構成され、前記遅延ロックループが、ドライバ制御信号に応答して、前記第1の位相クロック信号および前記第2の位相クロック信号の周波数およびデューティサイクルを調整して、第1の位相出力信号および第2の位相出力信号を生成するように構成され、前記第1の位相出力信号および前記第2の位相出力信号が、前記Hブリッジ回路を駆動して前記超音波トランスデューサを駆動する交流駆動信号を生成するように構成される、遅延ロックループ、
前記第1の位相出力信号を前記Hブリッジ回路に出力するように構成される第1の位相出力信号端子、
前記第2の位相出力信号を前記Hブリッジ回路に出力するように構成される第2の位相出力信号端子、
前記Hブリッジ回路からフィードバック信号を受信するように構成されるフィードバック入力端子であって、前記Hブリッジ回路が前記液体を霧化するために前記超音波トランスデューサを交流駆動信号で駆動しているときに、前記フィードバック信号は前記Hブリッジ回路又は前記交流駆動信号の動作のパラメータを示す、フィードバック入力端子、
を備えるPWM信号発生器サブシステム、
アナログ/デジタル変換器(ADC)サブシステムであって、
複数のそれぞれのアナログ信号を受信するように構成される複数のADC入力端子であって、前記複数のADC入力端子のうちの1つのADC入力端子が、前記ADCサブシステムが前記Hブリッジ回路から前記フィードバック信号を受信するように前記フィードバック入力端子に接続され、前記ADCサブシステムが、前記主クロック信号の前記周波数に比例するサンプリング周波数で前記複数のADC入力端子で受信したアナログ信号をサンプリングするように構成され、前記ADCサブシステムが前記サンプリングされたアナログ信号を使用してADCデジタル信号を生成するように構成される、複数のADC入力端子を備えるADCサブシステム、
前記ADCサブシステムから前記ADCデジタル信号を受信し、前記ADCデジタル信号を処理して前記ドライバ制御信号を生成するように構成されるデジタルプロセッササブシステムであって、該デジタルプロセッササブシステムは、前記ドライバ制御信号を前記PWM信号発生器サブシステムに伝達して前記PWM信号発生器サブシステムを制御するように構成される、デジタルプロセッササブシステム、及び、
デジタル/アナログ変換器(DAC)サブシステムであって、
前記デジタルプロセッササブシステムによって生成されたデジタル制御信号をアナログ電圧制御信号に変換して、前記Hブリッジ回路による変調のための電圧を生成する電圧レギュレータ回路を制御するように構成されるデジタル/アナログ変換器(DAC)、及び、
前記超音波トランスデューサの動作を示すフィードバック信号に応答して、前記超音波トランスデューサを駆動するための前記Hブリッジ回路による変調のための所定の電圧を生成するように前記電圧レギュレータ回路を制御するための前記アナログ電圧制御信号を出力するように構成されるDAC出力端子を備えるデジタル/アナログ変換器(DAC)サブシステム
を含む、相互接続された複数の組み込みコンポーネントおよびサブシステムを含む単一ユニットである、マイクロチップ
を含むドライバ装置をさらに備える装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であって、前記マイクロチップが、
前記発振器に接続され、前記発振器から前記主クロック信号を受信する分周器であって、前記主クロック信号を所定の除数で分周して、周波数基準信号を前記遅延ロックループに出力するように構成された分周器をさらに備える装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の装置であって、前記遅延ロックループは、端から端まで接続された複数の遅延線を備え、前記遅延線の合計遅延が前記主クロック信号の周期に等しい、装置。
【請求項4】
請求項3に記載の装置であって、前記遅延ロックループが、前記遅延ロックループ内の各遅延線の遅延を変化させることにより、前記ドライバ制御信号に応答して前記第1の位相クロック信号および前記第2の位相クロック信号の前記デューティサイクルを調整するように構成された、装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の装置であって、前記フィードバック入力端子が、前記共振回路を駆動している交流駆動信号の実効電流を示す電圧の形態で前記Hブリッジ回路からフィードバック信号を受信するように構成された、装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の装置であって、前記ADCサブシステムが、前記バッテリの電圧または前記装置に接続されたバッテリ充電器の電圧の少なくとも1つを示すフィードバック信号を受信するように構成された複数のさらなるADC入力端子を備える、装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の装置であって、前記マイクロチップがさらに、
前記マイクロチップ内に埋め込まれた温度センサであって、前記温度センサは、前記マイクロチップの温度を示す温度信号を生成するように構成され、前記温度信号は、前記ADCサブシステムのさらなるADC入力端子によって受信され、前記温度信号は、前記ADCによってサンプリングされる温度センサを備えた、装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の装置であって、前記ADCサブシステムが、前記ADCサブシステムによってサンプリングされる各信号とともに前記複数のADC入力端子で受信された信号をそれぞれ所定回数順次サンプリングするように構成された、装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の装置であって、前記マイクロチップがさらに、
前記バッテリの充電を制御するように構成されたバッテリ充電サブシステムを備えた、装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の装置であって、前記DACサブシステムが、
前記デジタルプロセッササブシステムによって生成されたさらなるデジタル制御信号を、前記電圧レギュレータ回路を制御するためのさらなるアナログ電圧制御信号に変換するように構成されたさらなるデジタル/アナログ変換器(DAC)を備えた、装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の装置であって、前記装置がさらに、
さらなるマイクロチップであって、前記さらなるマイクロチップは、
第1の電源端子、
第2の電源端子、
第1のスイッチ、第2のスイッチ、第3のスイッチ、および第4のスイッチを含む前記Hブリッジ回路であって、
前記第1のスイッチと前記第3のスイッチが、前記第1の電源端子と前記第2の電源端子との間で直列に接続され、
第1の出力端子が、前記第1のスイッチと前記第3のスイッチとの間で電気的に接続され、前記第1の出力端子は、前記超音波トランスデューサの第1の端子に接続され、
前記第2のスイッチと前記第4のスイッチが、前記第1の電源端子と前記第2の電源端子との間で直列に接続され、
第2の出力端子が、前記第2のスイッチと前記第4のスイッチとの間で電気的に接続され、前記第2の出力端子は、前記超音波トランスデューサの第2の端子に接続されている、前記Hブリッジ回路、
前記パルス幅変調(PWM)信号発生器サブシステムから前記第1の位相出力信号を受信するように構成された第1の位相端子、
前記PWM信号発生器サブシステムから第2の位相出力信号を受信するように構成された第2の位相端子、
前記第1の位相出力信号及び前記第2の位相出力信号に基づいてタイミング信号を生成し、前記タイミング信号を前記Hブリッジ回路の前記スイッチに出力して、前記Hブリッジ回路が前記超音波トランスデューサを駆動するための交流駆動信号を出力するように前記スイッチをシーケンスでオン及びオフに制御するように構成されたデジタル状態機械であって、前記シーケンスが、前記超音波トランスデューサによって蓄えられたエネルギーを放散させるために前記第1のスイッチ及び前記第2のスイッチがオフされ前記第3のスイッチ及び前記第4のスイッチがオンされるフリーフロート期間を含む、デジタル状態機械、
電流センサであって、
前記第1のスイッチと前記第1の電源端子との間で直列に接続された第1の電流感知抵抗器、
前記第1の電流感知抵抗器の電圧降下を測定し、前記第1の電流感知抵抗器を流れる電流を示す第1の電圧出力を提供するように構成された第1の電圧センサ、
前記第2のスイッチと前記第1の電源端子との間で直列に接続された第2の電流感知抵抗器、
前記第2の電流感知抵抗器の電圧降下を測定し、前記第2の電流感知抵抗器を流れる電流を示す第2の電圧出力を提供するように構成された第2の電圧センサ、及び、
前記第1の電圧出力および前記第2の電圧出力に等しい対地実効出力電圧を提供するように構成された電流センサ出力端子、を含み、
前記実効出力電圧は、前記第1のスイッチまたは前記第2のスイッチを流れる実効電流と、前記第1の出力端子と前記第2の出力端子との間で接続された前記超音波トランスデューサを流れる電流とを示す、電流センサ、
を含む、相互接続された複数の埋め込まれたコンポーネントおよびサブシステムを含む単一のユニットである、さらなるマイクロチップを備えた、装置。
【請求項12】
請求項11に記載の装置であって、前記Hブリッジ回路が、前記第1の出力端子と前記第2の出力端子との間に接続される前記超音波トランスデューサに22Wから50Wの電力を出力するように構成された、装置。
【請求項13】
請求項11または請求項12に記載の装置であって、前記さらなるマイクロチップが、
前記さらなるマイクロチップ内に埋め込まれる温度センサであって、前記温度センサは、前記さらなるマイクロチップの温度を測定し、前記温度センサが前記さらなるマイクロチップが所定の閾値を超える温度であると感知する場合に、前記さらなるマイクロチップの少なくとも一部を無効にするように構成された温度センサを備えた、装置。
【請求項14】
請求項11から請求項13のいずれか1項に記載の装置であって、前記装置がさらに、
前記DAC出力端子からの前記アナログ電圧出力信号に応答して、前記バッテリの電圧をブースト電圧に上昇させるように構成されたブーストコンバータ回路であって、前記ブースト電圧が前記Hブリッジ回路の前記スイッチを切り替えることによって変調されるように、前記第1の電源端子において前記ブースト電圧を提供するように構成されたブーストコンバータ回路を備えた、装置。
【請求項15】
請求項11から請求項14のいずれか1項に記載の装置であって、前記電流センサが、前記フリーフロート期間中に前記共振回路を流れる電流を感知するように構成され、前記デジタル状態機械が、前記フリーフロート期間中に前記共振回路を流れる電流がゼロであると前記電流センサが感知したときに前記第1のスイッチまたは前記第2のスイッチのいずれかをスイッチオンするために前記タイミング信号を適応するように構成された、装置。
【請求項16】
請求項11から請求項15のいずれか1項に記載の装置であって、前記装置の動作のセットアップフェーズの間、前記さらなるマイクロチップが、
前記第1のスイッチおよび前記第2のスイッチがオフにされ、前記第3のスイッチおよび前記第4のスイッチがオンにされたときに、前記共振回路を流れる電流がゼロになるのにかかる時間の長さを測定し、
前記フリーフロート期間の時間の長さを、前記測定された時間の長さと等しくなるように設定するように構成された、装置。
【請求項17】
請求項1から請求項16のいずれか1項に記載の装置であって、前記装置がさらに、
前記ドライバ装置を制御するためのプロセッサ、及び、
命令を格納するメモリであって、前記プロセッサによって実行されると、前記ドライバ装置に、
A.前記超音波トランスデューサにスイープ周波数で交流駆動信号を出力するように前記ドライバ装置を制御させ、
B.前記フィードバック信号に基づいて、前記超音波トランスデューサによって使用されている有効電力を計算させ、
C.前記超音波トランスデューサによって使用されている前記有効電力を最大化するために前記交流駆動信号を変調するように前記ドライバ装置を制御させ、
D.前記超音波トランスデューサによって使用される最大有効電力と前記交流駆動信号の前記スイープ周波数の記録を前記メモリに保存させ、
E.所定の反復回数が発生した後、前記スイープ周波数が開始スイープ周波数から終了スイープ周波数まで増加または減少するように、各反復で前記スイープ周波数が増加または減少しながら、ステップA-Dを前記所定の反復回数繰り返させ、
F.前記メモリに格納された前記記録から、前記超音波トランスデューサによって最大有効電力が使用される前記交流駆動信号の前記スイープ周波数である前記交流駆動信号の最適周波数を特定させ、
G.前記ドライバ装置を制御して、前記最適周波数で前記超音波トランスデューサに交流駆動信号を出力し、前記超音波トランスデューサを駆動して液体を霧化させる、
命令を格納するメモリを備えた、装置。
【請求項18】
請求項17に記載の装置であって、前記開始スイープ周波数が2900kHzであり、前記終了スイープ周波数は3100kHzである、装置。
【請求項19】
請求項1から請求項18のいずれか1項に記載の装置であって、前記ドライバ装置が前記ミスト発生装置から分離可能であるように、前記ドライバ装置が前記ミスト発生装置に解放可能に取り付けられている、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願へのクロスリファレンス
本願は、それぞれの優先権の利益を主張し、参照によりその全体を本願に組み入れる。2020年12月15日に出願された米国特許出願第17/122025号、及び2021年4月1日に出願された米国特許出願第17/220189号。
【0002】
本発明は、ミスト吸入器に関するものである。本発明は、より詳細には、使用者による吸入のために治療薬を含む液体を霧化するための超音波ミスト吸入器に関連するものである。
【背景技術】
【0003】
ミスト吸入器は、使用者が吸入するためのミスト又は蒸気を発生させるために使用される。ミストは、使用者が吸入し、使用者の血流に吸収される治療薬、薬物又は医薬品を含ませることができる。
【0004】
治療用エアロゾルの送達は、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)及び嚢胞性線維症の治療の主流となっている。治療用エアロゾルはまた、インフルエンザや骨粗しょう症の治療、ワクチンの送達にも応用されている。
【0005】
非呼吸器系全身疾患の治療のための治療薬の肺への送達は、高い肺血管性、薄い血液-肺胞バリア、大きな表面積、胃酵素の回避、肝初回通過代謝などの理由から魅力的である。また、患者の快適性と服薬遵守が向上することも魅力である。肺のシステムは、抗体、タンパク質、鎮痛剤、核酸の送達に活用することができる。タバコ依存症などの中枢神経系疾患の治療は、肺を通してニコチンを全身循環に効率よく送り込むことによって、著しく向上する可能性がある。
【0006】
治療用エアロゾルの有効性は、口腔咽頭領域を超えて沈着する薬物の量に関係する。堆積が起こる領域は、吸入される粒子の大きさの関数である。
【0007】
現在、吸入薬剤の投与に使用されている装置は、ネブライザー、定量噴霧式吸入器、乾燥粉末式吸入器の3つに分類される。ネブライザーは一般的にジェット式と超音波式の2種類に分けられるが、従来の装置ではどちらのタイプにも弱点があり、問題点があった。
【0008】
ジェットネブライザーはベルヌーイ原理に基づいており、比較的大きな液滴を生成するため、一般に口腔咽頭部に沈着し、特に有効ではない。超音波ネブライザーは、1MHzから1.7MHzの周波数で振動する圧電結晶を使用し、振動エネルギーを液体に伝達してエアロゾルに変換する。超音波ネブライザーは、粘性のある懸濁液又は溶液が使用される場合には有効ではなく、薬物を加熱し、それ故に分子を破壊し、吸入の利点を取り除く傾向があることが認められている。
【0009】
したがって、本明細書に記載された問題の少なくともいくつかに対処しようとする改良されたミスト吸入器に対する必要性が当技術分野において存在する。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、請求項1に記載のミスト吸入器を提供する。本発明はまた、従属請求項に記載されるような好ましい実施形態を提供する。
【0011】
以下に説明する本開示の様々な例は、従来のミスト吸入器と比較して複数の利点及び利益を有する。これらの利点及び利益は、以下の説明に記載されている。
【0012】
本開示の例のミスト吸入器は、従来のミスト吸入器よりも高効率な動作が可能であるため、本開示の例のミスト吸入器は、必要電力が低減することによる環境面でのメリットを有している。
【0013】
一態様によれば、使用者による吸入のためのミストを生成するためのミスト吸入器が提供され、この装置は以下を備える:
ミスト発生装置であって、以下を含むもの:
細長く、空気入口ポート及びミスト出口ポートを備えるミスト発生器ハウジング
ミスト発生器ハウジング内に設けられた液体チャンバであって、霧化される液体を収容するための液体チャンバ
ミスト発生器ハウジング内に設けられた超音波処理チャンバ
液体チャンバと超音波処理チャンバとの間に延びる毛細管要素であって、毛細管要素の第1の部分が液体チャンバ内にあり、毛細管要素の第2の部分が超音波処理チャンバ内にあるようにする毛細管要素
超音波処理チャンバ内に設けられた概して平面状の霧化表面を有する超音波トランスデューサであり、霧化表面の平面がミスト発生器ハウジングの長手方向の長さと実質的に平行であるように、超音波トランスデューサがミスト発生器ハウジング内に取り付けられる、超音波トランスデューサ。前記毛細管要素の第2の部分の一部が、前記霧化面の一部に重なっており、前記超音波トランスデューサが、前記霧化面を振動させて、前記毛細管要素の第2の部分によって運ばれる液体を霧化して、前記超音波処理チャンバ内に霧化した液体及び空気からなるミストを生成するように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の超音波処理装置
空気入口ポート、超音波処理チャンバと前空気出口ポートとの間に空気流路を提供する気流配置であって、ミスト出口ポートから使用者が入口ポートを通って空気を引き出し、超音波処理チャンバを通ってミスト出口ポートを通って出て行き、音波処理チャンバ内で生成されたミストが使用者による吸入のためにミスト出口ポートを通って空気によって運ばれるミスト吸入装置であり、さらに次のものを含むもの:
次のものを内蔵するドライバ装置:
バッテリー
前記バッテリーからの電圧を所定の周波数の交流駆動信号に変換して前記超音波トランスデューサを駆動する交流ドライバ
超音波トランスデューサが交流駆動信号によって駆動されるときに、超音波トランスデューサによって使用される有効電力を監視するための有効電力監視配置であって、超音波トランスデューサによって使用される有効電力を示す監視信号を提供する有効電力監視配置
交流ドライバを制御し、有効電力監視配置から監視信号駆動を受信するためのプロセッサ
プロセッサによって実行されたとき、プロセッサに以下を行わせる命令を格納するメモリ:
A. 交流ドライバを制御して、所定のスイープ周波数で超音波トランスデューサに交流駆動信号を出力させる
B. 監視信号に基づいて、超音波トランスデューサによって使用されている有効電力を計算する
C. 交流ドライバを制御して交流駆動信号を変調し、超音波トランスデューサが使用する有効電力を最大化する
D. 超音波トランスデューサによって使用される最大有効電力と交流駆動信号のスイープ周波数の記録をメモリに保存する
E. 所定の反復回数の後、スイープ周波数がスイープ開始周波数からスイープ終了周波数まで増加又は減少するように、各反復でスイープ周波数が増加又は減少しながら、ステップA~Dを所定の回数だけ繰り返す
F. メモリに格納された記録から、超音波トランスデューサによって最大の有効電力が使用される交流駆動信号のスイープ周波数である交流駆動信号の最適周波数を特定する
G. 交流ドライバを制御して、最適な周波数で超音波トランスデューサに交流駆動信号を出力し、超音波トランスデューサを駆動して液体を霧化させる。
【0014】
いくつかの例では、ドライバ装置は、ドライバ装置がミスト発生装置から分離可能であるように、ミスト発生装置に解放可能に取り付けられる。
【0015】
別の態様によれば、以下を組み込んだミスト発生装置が提供される:
細長く、空気入口ポート及びミスト出口ポートを備えるミスト発生器ハウジング
ミスト発生器ハウジング内に設けられた液体チャンバであって、霧化される液体を収容するための液体チャンバ
ミスト発生器ハウジング内に設けられた超音波処理チャンバ
液体チャンバと超音波処理チャンバとの間に延びる毛細管要素であって、毛細管要素の第1の部分が液体チャンバ内にあり、毛細管要素の第2の部分が超音波処理チャンバ内にあるようにする毛細管要素
超音波処理チャンバ内に設けられた概して平面状の霧化表面を有する超音波トランスデューサであり、霧化表面の平面がミスト発生器ハウジングの長手方向の長さと実質的に平行であるように、超音波トランスデューサがミスト発生器ハウジング内に取り付けられる、超音波トランスデューサ。前記毛細管要素の第2の部分の一部が、前記霧化面の一部に重なっており、前記超音波トランスデューサが、前記霧化面を振動させて、前記毛細管要素の第2の部分によって運ばれる液体を霧化して、前記超音波処理チャンバ内に霧化した液体及び空気からなるミストを生成するように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の超音波処理装置
ミスト出口ポートで吸引する使用者が、入口ポートを通して、超音波処理チャンバを通り、ミスト出口ポートを通して外に出るように、空気入口ポートと超音波処理チャンバと空気出口ポートとの間に空気流路を提供する空気流配置と、超音波処理チャンバで発生したミストが空気によって、使用者によって吸入するためにミスト出口ポートを介して外に運ばれる、ミスト吸入器
いくつかの例では、ミスト発生装置には次のものが備えられている:ミスト発生器ハウジング内に保持されるトランスデューサホルダであって、トランスデューサ要素は、超音波トランスデューサを保持し、霧化表面の一部に重ねられた毛細管要素の第2の部分を保持するトランスデューサホルダと、液体チャンバと超音波処理チャンバの間にバリアを提供する仕切り部であって、仕切り部は毛細管要素の第1の部分の一部が延びる毛細管開口を構成している仕切り部をさらに備える。
【0016】
いくつかの例では、トランスデューサホルダは、液体シリコンゴムである。
【0017】
いくつかの例では、液状シリコンゴムは、ショアA60の硬度を有する。
【0018】
いくつかの例では、毛細管開口部は、0.2mm~0.4mmの幅を有する細長いスロットである。
【0019】
いくつかの例では、毛細管要素は、概して長方形の形状を有する第1の部分と、部分的に円形の形状を有する第2の部分とを有する概して平面的である。
【0020】
いくつかの例では、毛細管要素は、実質的に0.28 mmの厚さを有する。
【0021】
いくつかの例では、毛細管要素は、毛細管要素が2つの層を有するように互いに重ね合わされる第1の部分と第2の部分とから構成されている。
【0022】
いくつかの例では、毛細管要素は、少なくとも75%の竹繊維である。
【0023】
毛細管要素は100%竹繊維である。
【0024】
いくつかの例では、空気流配置は、空気の流れが超音波処理チャンバに通過するときに、空気の流れが超音波トランスデューサの霧化表面に対して実質的に垂直になるように、空気流路に沿った空気の流れの方向を変えるように構成される。
【0025】
いくつかの例では、空気の流れの方向転換は、実質的に90゜である。
【0026】
いくつかの例では、空気流配置は、実質的に11.5mm2の平均断面積を有する空気流路を提供する。
【0027】
いくつかの例では、ミスト発生装置には次のものが備えられている:ミスト出口ポートに隣接して設けられ、ミスト出口ポートで液体を吸収する少なくとも1つの吸収性要素。
【0028】
いくつかの例では、各吸収性要素は竹繊維である。
【0029】
いくつかの例では、ミスト発生器ハウジングは、少なくとも一部が異相共重合体である。
【0030】
いくつかの例では、異相共重合体はポリプロピレンである。
【0031】
いくつかの例では、超音波トランスデューサは円形であり、実質的に16mmの直径を有する。
【0032】
いくつかの例では、液体チャンバは、1.05 Pa-sから1.412 Pa-sの間の動粘度と1.1 g/mlから1.3 g/mlの間の液体密度を有する液体を含む。
【0033】
いくつかの例では、液体チャンバは、1:1のモル比でニコチンレブリネート塩を含む液体を含む。
【0034】
いくつかの例では、ミスト発生装置は、ミスト発生器ハウジングに設けられる識別配置をさらに備え、識別配置は、ミスト発生器装置の一意の識別子を格納するメモリを有する集積回路と、集積回路と通信するための電子インターフェースを提供する電気接続を備える。
【0035】
いくつかの例では、集積回路のメモリは、ミスト発生装置の歴史的使用又は液体チャンバ内の液体の体積の少なくとも1つを示す、ミスト発生装置の状態の記録を格納する。
【0036】
一態様によれば、ミスト吸入器のためのドライバ装置が提供され、該装置は以下を備える:
バッテリー
前記バッテリからの電圧を所定の周波数の交流駆動信号に変換して超音波トランスデューサを駆動する交流ドライバ
超音波トランスデューサが交流駆動信号によって駆動されるときに、超音波トランスデューサによって使用される有効電力を監視するための有効電力監視配置であって、超音波トランスデューサによって使用される有効電力を示す監視信号を提供する有効電力監視配置
交流ドライバを制御し、有効電力監視配置から監視信号駆動を受信するためのプロセッサ
プロセッサによって実行されたとき、プロセッサに以下を行わせる命令を格納するメモリ:
A. 交流ドライバを制御して、所定のスイープ周波数で超音波トランスデューサに交流駆動信号を出力させる
B. 監視信号に基づいて、超音波トランスデューサによって使用されている有効電力を計算する
C. 交流ドライバを制御して交流駆動信号を変調し、超音波トランスデューサが使用する有効電力を最大化する
D. 超音波トランスデューサによって使用される最大有効電力と交流駆動信号のスイープ周波数の記録をメモリに保存する
E. 所定の反復回数の後、スイープ周波数がスイープ開始周波数からスイープ終了周波数まで増加又は減少するように、各反復でスイープ周波数が増加又は減少しながら、ステップA~Dを所定の回数だけ繰り返す
F. メモリに格納された記録から、超音波トランスデューサによって最大の有効電力が使用される交流駆動信号のスイープ周波数である交流駆動信号の最適周波数を特定する
G. 交流ドライバを制御して、最適な周波数で超音波トランスデューサに交流駆動信号を出力し、超音波トランスデューサを駆動して液体を霧化させる。
【0037】
いくつかの例では、アクティブ電力監視配置は、超音波トランスデューサを駆動する交流駆動信号の駆動電流を感知するための電流感知配置を備え、有効電力監視配置は、感知された駆動電流を示す監視信号を提供する。
【0038】
いくつかの例では、電流感知配置は、感知された駆動電流をプロセッサによって処理するためのデジタル信号に変換するアナログ-デジタル変換器を備える。
【0039】
いくつかの例では、メモリは、プロセッサによって実行されると、プロセッサに、スイープ周波数が2900kHzのスイープ開始周波数から2960kHzのスイープ終了周波数まで増加するステップA~Dを繰り返すように命令することを記憶している。
【0040】
いくつかの例では、メモリは、プロセッサによって実行されると、プロセッサに、スイープ周波数が2900kHzのスイープ開始周波数から3100kHzのスイープ終了周波数まで増加するステップA~Dを繰り返すように命令することを記憶している。
【0041】
いくつかの例では、メモリは、プロセッサによって実行されると、プロセッサに:ステップGにおいて、最適周波数から所定のシフト量だけシフトされた周波数で超音波トランスデューサに交流駆動信号を出力するように交流ドライバを制御させる命令を格納する。
【0042】
いくつかの例では、所定のシフト量は、最適な周波数の1~10%の間である。
【0043】
いくつかの例では、バッテリは、3.7V DC Li-Poバッテリである。
【0044】
いくつかの例では、ドライバ装置は、ドライバ装置を通って延びるドライバ装置流路に沿った空気の流れを感知するための圧力センサをさらに備える。
【0045】
いくつかの例では、ドライバ装置は、プロセッサと通信する無線通信システムをさらに備え、無線通信システムは、ドライバ装置とコンピューティング装置との間でデータを送信および受信するように構成される。
【0046】
いくつかの例では、ドライバ装置は、少なくとも一部が金属であるドライバ装置ハウジングをさらに備え、ドライバ装置ハウジングは、バッテリー、プロセッサ、メモリ、有効電力監視配置及び交流ドライバを収容し、ドライバ装置ハウジングは、ミスト発生装置の一部を受け入れて保持するための凹部を含む。
【0047】
いくつかの例では、交流ドライバは、超音波トランスデューサによって使用されている有効電力を最大化するために、パルス幅変調によって交流駆動信号を変調する。
【0048】
以下の開示で使用される「ミスト」という表現は、先行技術から知られる従来の吸入器において通常行われるように液体が加熱されないことを意味することに留意されたい。実際、従来の吸入器は、液体をその沸騰温度以上に加熱して蒸気を発生させるために加熱素子を使用するが、これはミストとは異なるものである。
【0049】
実際、液体を高強度で超音波処理する場合、液体媒体中に伝播する音波は、周波数に依存して異なる速度で、高圧(圧縮)及び低圧(希釈)サイクルを交互に生じる。低圧サイクルでは、高強度の超音波が液体中に小さな真空の気泡や空隙を作る。この気泡がエネルギーを吸収できない体積になると、高圧サイクルで激しく崩壊する。この現象をキャビテーションという。このとき、局所的に非常に高い圧力が発生する。キャビテーションでは、壊れた毛細管波が発生し、液体の表面張力を破った微小な液滴が霧状になって素早く空中に放出される。
【0050】
以下、キャビテーション現象について、より具体的に説明する。
【0051】
超音波振動により液体を霧化すると、液体中に微細な水泡が発生する。
【0052】
この気泡の生成は、超音波振動手段によって発生する強い超音波による負圧によって生じる空洞の形成過程である。
【0053】
正圧サイクルの間、空洞の大きさが比較的小さく無視できるほど小さくなり、空洞の急速な成長につながる高強度の超音波。
【0054】
超音波は、他の音波と同様に、圧縮と膨張のサイクルで構成されている。液体と接触すると、圧縮サイクルは液体に正の圧力をかけ、分子同士を押し付ける。膨張のサイクルでは、負の圧力がかかり、分子が互いに引き離される。
【0055】
強い超音波は、正圧と負圧の領域を作り出す。負圧の時に空洞ができ、大きくなることがある。空洞が臨界サイズに達すると、空洞は崩壊する。
【0056】
必要な負圧の大きさは、液体の種類と純度によって異なる。純度の高い液体の場合、引張強度が非常に大きいため、市販の超音波発生装置では空洞を形成するのに十分な負圧を発生させることができない。例えば、純水では1,000気圧以上の陰圧が必要だが、最も強力な超音波発生装置でも50気圧程度の陰圧しか発生しない。液体の引張強さは、液体粒子の隙間に閉じ込められた気体によって低下する。この効果は、固体材料に発生する亀裂による強度低下と類似している。気体で満たされた隙間に音波による負圧サイクルをかけると、圧力低下により隙間の気体が膨張し、小さな気泡が溶液中に放出される。
【0057】
しかし、超音波を照射された気泡は、音波の圧縮と膨張のサイクルを交互に繰り返すことでエネルギーを吸収し続ける。これにより、気泡は成長・収縮を繰り返し、気泡内部の空隙と外部の液体との間でダイナミックなバランスを保っている。また、超音波によって、気泡の大きさが変化することもある。また、気泡の平均的な大きさが大きくなる場合もある。
【0058】
空洞の成長は、音の強さに依存する。高強度の超音波は、負圧サイクルの間に空洞を急速に拡大し、正圧サイクルの間に空洞が収縮する機会がないようにすることができる。このように、空洞は1回の音波の周期で急速に成長することができる。
【0059】
低強度の超音波の場合、空洞の大きさは膨張と圧縮のサイクルと同位相で振動する。低強度の超音波によって生成された空洞の表面は、膨張サイクルの方が圧縮サイクルよりもわずかに大きくなる。空洞に出入りする気体の量は表面積に依存するので、膨張サイクルでは空洞への拡散が圧縮サイクルでの拡散よりわずかに大きくなる。つまり、音の周期ごとに、空洞は収縮より膨張の方が少し大きくなる。何度も繰り返しているうちに、空洞はゆっくりと大きくなっていく。
【0060】
成長した空洞は、最終的に超音波のエネルギーを最も効率的に吸収する臨界サイズに到達することが分かっている。この臨界サイズは、超音波の周波数に依存する。高強度の超音波によって空洞が非常に急速に成長すると、もはや超音波からエネルギーを効率的に吸収することができなくなる。このエネルギー入力がなければ、空洞はもはやそれ自体を維持することができない。液体が押し寄せ、空洞は非線形応答により崩壊する。
【0061】
爆縮によって放出されたエネルギーによって、液体は微細な粒子に分解され、ミストとして空気中に飛散する。
【0062】
上記の非線形応答現象を記述する方程式は、「レイリー-プレセット」方程式で記述することができる。この式は、流体力学で用いられる「ナビエ・ストークス」方程式から導き出すことができる。
【0063】
本発明者らのアプローチは、気泡体積Vを動的パラメータとし、散逸を記述する物理学が、半径を動的パラメータとする、より古典的な形式で用いられるものと同一である「レイリー-プレセット」方程式を書き換えることであった。
【0064】
この方程式は次のように導かれる:
【0065】
【数1】
【0066】
超音波霧化吸入器では、液体は動粘度が1.05パスカル秒から1.412パスカル秒の間である。
【0067】
粘度、密度、空気中への液体噴霧の所望の目標気泡体積を適切なパラメータとして上記の式を解くことにより、液体の粘度範囲1.05パスカル秒と1.412パスカル秒で2.8MHzから3.2MHzの周波数囲が約0.25ミクロンから0.5ミクロンの気泡体積を作り出すことが判明している。
【0068】
超音波キャビテーションのプロセスは、生成されたミスト中のニコチン濃度に大きな影響を与える。
【0069】
発熱体を使用しないため、発熱体の焦げ付きがなく、副流煙の影響を低減することができる。
【0070】
いくつかの例では、前記液体は、57~70%(w/w)の植物性グリセリンと30~43%(w/w)のプロピレングリコールを含み、前記プロピレングリコールは、ニコチン及び任意に香料を含む。
【0071】
超音波ミスト吸入器において、毛細管要素は、超音波処理チャンバと液体チャンバの間に延びてもよい。
【0072】
超音波ミスト吸入器において、毛細管要素は、少なくとも一部が竹繊維である材料である。
【0073】
毛細管要素により、高い吸収容量、高い吸収速度だけでなく、高い液保持率も実現できる。
【0074】
毛細管に使用される提案材料の固有の特性は、超音波ミスト吸入器の効率的な機能に大きな影響を与えることが判明した。
【0075】
さらに、本材料の固有の特性として、良好な透湿性を維持しつつ、良好な吸湿性を有している。これにより、吸引した液体を効率よく毛細管に浸透させることができるとともに、高い吸水性により大量の液体を保持することができ、市販されている他の製品と比較して超音波ミスト吸入器をより長く使用することができるようになった。
【0076】
竹繊維を使用するもう一つの大きな利点は、竹繊維の中にもともと存在する天然由来の抗菌性生物製剤である「クン」によって、抗菌性、抗真菌性、防臭性があり、医療用途に適していることである。
【0077】
この竹繊維固有の特性は、超音波処理における竹繊維の利点に関して、数値解析により検証されている。
【0078】
以下の式は、毛細管要素として使用するための竹繊維材料及び綿、紙、又は他の繊維ストランドなどの他の材料でテストされており、竹繊維が超音波処理での使用のためにはるかに優れた特性を有することを実証している:
【0079】
【数2】
【0080】
超音波ミスト吸入器において、毛細管要素は、少なくとも一部が竹繊維である材料とすることができる。
【0081】
また、超音波ミスト吸入器において、毛細管要素の材料は、竹繊維100%とすることができる。
【0082】
広範な試験により、100%純粋な竹繊維が超音波処理に最も最適な選択であると結論付けられている。
【0083】
超音波ミスト吸入器では、毛細管要素の材料は、少なくとも75%が竹繊維で、オプションとして25%が綿であってもよい。
【0084】
100%純粋な竹繊維又は竹繊維の高い割合からの毛細管要素は、高い吸収能力を示すだけでなく、超音波ミスト吸入器のアプリケーションのための最適な選択となる改善された流体透過性を有する。
【0085】
超音波ミスト吸入器において、毛細管要素は、平坦な形状を有していてもよい。
【0086】
超音波ミスト吸入器において、毛細管要素は、中央部分と周辺部分とから構成されてもよい。
【0087】
超音波ミスト吸入器において、周辺部は、液体チャンバに向かって延びるL字型の断面を有していてもよい。
【0088】
超音波ミスト吸入器において、中央部は、超音波処理チャンバまで延びるU字形状の断面を有していてもよい。
【0089】
一例に係る超音波ミスト吸入器において、前記液体チャンバに受容される前記液体は、57~70%(w/w)の植物性グリセリンと30~43%(w/w)のプロピレングリコールとを含み、前記プロピレングリコールはニコチン及び香料を含む、ことを特徴とする超音波ミスト吸入器。
【0090】
超音波ミスト吸入器又は個人用超音波霧化装置は次を含む:
霧化される液体を受け取るように適合された液体チャンバ又はカートリッジを含む液体リザーバ構造体
前記液体チャンバ又は前記カートリッジと流体連通している超音波処理チャンバ
前記の液体チャンバに受容される前記液体は、57~70%(w/w)の植物性グリセリン及び30~43%(w/w)のプロピレングリコールを含み、前記プロピレングリコールはニコチン及び香料を含む。
【図面の簡単な説明】
【0091】
本発明をより容易に理解するために、本発明の実施形態は、次に、添付の図面を参照しながら、例として説明する:
図1図1は、超音波ミスト吸入器の構成要素の分解斜視図である。
図2図2は、吸入器液体リザーバ構造体の構成要素の分解斜視図である。
図3図3は、吸入器液体リザーバ構造体の構成要素の断面図である。
図4A図4Aは、図2及び図3による吸入器液体リザーバ構造体の空気流部材の等角図である。
図4B図4Bは、図4Aに示す送風部材の断面図である。
図5図5は、RLC回路としてモデル化された圧電トランスデューサを示す模式図である。
図6図6は、RLC回路の周波数対対数インピーダンスのグラフである。
図7図7は、圧電トランスデューサの動作の誘導性領域と容量性領域を示す周波数対対数インピーダンスのグラフである。
図8図8は、周波数コントローラの動作を示すフロー図である。
図9図9は、本開示のミスト吸入器の図解的透視図である。
図10図10は、本開示のミスト吸入器の図解的透視図である。
図11図11は、本開示のミスト発生装置の斜視透視図である。
図12図12は、本開示のミスト発生装置の斜視透視図である。
図13図13は、本開示のミスト発生装置の図解的な分解透視図である。
図14図14は、本開示のトランスデューサホルダの斜視透視図である。
図15図15は、本開示のトランスデューサホルダの斜視透視図である。
図16図16は、本開示の毛細管要素の斜視透視図である。
図17図17は、本開示の毛細管要素の斜視透視図である。
図18図18は、本開示のトランスデューサホルダの斜視透視図である。
図19図19は、本開示のトランスデューサホルダの斜視透視図である。
図20図20は、本開示のハウジングの一部の図解的な透視図である。
図21図21は、本開示の吸収性要素の斜視透視図である。
図22図22は、本開示のハウジングの一部の図解的な透視図である。
図23図23は、本開示のハウジングの一部の図解的な透視図である。
図24図24は、本開示の吸収性要素の斜視透視図である。
図25図25は、本開示のハウジングの一部の図解的な透視図である。
図26図26は、本開示のハウジングの一部の図解的な透視図である。
図27図27は、本開示のハウジングの一部の図解的な透視図である。
図28図28は、本開示の回路基板の図解的な透視図である。
図29図29は、本開示の回路基板の図解的な透視図である。
図30図30は、本開示のミスト発生装置の図解的な分解透視図である。
図31図31は、本開示のミスト発生装置の図解的な分解透視図である。
図32図32は、本開示のミスト発生装置を示す断面図である。
図33図33は、本開示のミスト発生装置を示す断面図である。
図34図34は、本開示のミスト発生装置を示す断面図である。
図35図35は、本開示のドライバ装置の斜視分解透視図である。
図36図36は、本開示のドライバ装置の一部を示す斜視透視図である。
図37図37は、本開示のドライバ装置の一部を示す斜視透視図である。
図38図38は、本開示のドライバ装置の一部を示す斜視透視図である。
図39図39は、本開示のドライバ装置の一部を示す斜視透視図である。
図40図40は、本開示のドライバ装置の一部を示す斜視透視図である。
図41図41は、本開示のドライバ装置の一部を示す斜視透視図である。
図42図42は、本開示のドライバ装置の一部を示す斜視透視図である。
図43図43は、本開示の集積回路配置の概略図である。
図44図44は、本開示の集積回路の概略図である
図45図45は、本開示のパルス幅変調発生器の概略図である。
図46図46は、本開示の一例のタイミング図である。
図47図47は、本開示の一例のタイミング図である。
図48図48は、本開示の一例のポート機能を示す表である。
図49図49は、本開示の集積回路の概略図である
図50図50は、本開示の一例のHブリッジの回路図である。
図51図51は、本開示の一例の電流感知配置の回路図である。
図52図52は、本開示の一例のHブリッジの回路図である。
図53図53は、図50のHブリッジの動作の相の間の電圧を示すグラフである。
図54図54は、図50のHブリッジの動作の相の間の電圧を示すグラフである。
図55図55は、超音波トランスデューサが図50のHブリッジによって駆動されている間の、超音波トランスデューサの端子における電圧及び電流を示すグラフである。
図56図56は、本開示の集積回路間の接続を示す模式図である。
図57図57は、本開示の集積回路の概略図である
図58図58は、本開示の一例の認証方法のステップを説明するための図である。
図59図59は、本開示のドライバ装置のエンドキャップの斜視透視図である。
図60図60は、本開示のドライバ装置のハウジングの斜視透視図である。
図61図61は、本開示のミスト吸入器に対するEMC試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0092】
詳細な説明
本開示の態様は、添付の図と共に読まれた場合、以下の詳細な説明から最もよく理解される。当業界の標準的な慣行にしたがって、様々な特徴は縮尺通りに描かれていないことに留意されたい。実際、様々な特徴の寸法は、議論を明確にするために任意に増やしたり減らしたりすることができる。
【0093】
以下の開示は、提供される主題の異なる特徴を実施するための多くの異なる実施形態、又は例を提供する。構成要素、濃度、用途、及び配置の具体例は、本開示を簡略化するために以下に説明される。もちろん、これらは単なる例であり、限定することを意図していない。例えば、以下の説明における第1の特徴及び第2の特徴の取り付けは、第1の特徴及び第2の特徴が直接接触して取り付けられる実施形態を含んでもよく、また、第1の特徴及び第2の特徴が直接接触していなくてもよいように、第1の特徴と第2の特徴との間に追加の特徴が配置され得る実施形態を含んでもよい。加えて、本開示は、様々な例において参照数字及び/又は文字を繰り返すことがある。この繰り返しは、単純化及び明確化のためであり、それ自体は、議論された様々な実施形態及び/又は構成間の関係を指示するものではない。
【0094】
以下の開示は、代表的な例について説明するものである。各例は、実施形態とみなされてもよく、本開示において、「例」への言及は、「実施形態」に変更されてもよい。
【0095】
本開示のいくつかの部分は、電子式気化吸入器に向けられている。以下に説明する具体例は、ニコチンを含む。しかし、治療薬、薬、及びハーブサプリメントのための吸入器など、他の例も想定される。さらに、この装置は、タバコに似ていない医療機器のように見えるようにパッケージ化することができる。
【0096】
超音波ミスト吸入器は、使い捨て又は再利用可能のいずれかである。本書で使用される「再利用可能」という用語は、エネルギー貯蔵装置が再充電可能又は交換可能であること、又は液体が再充填又は液体リザーバ構造体の交換のいずれかによって補充可能であることを意味する。あるいは、いくつかの例では、再利用可能な電子デバイスは、再充電可能であり、液体を補充することができる両方である。
【0097】
従来の電子気化吸入器は、吸入器内の液体を加熱するように構成された金属部品の高温を誘発し、したがって、吸い込むことができる液体を気化させることに依存する傾向がある。液体は、通常、プロピレングリコール(PG)及び植物性グリセリン(VG)の溶液にブレンドされたニコチン及び香料を含み、これらは、高温で加熱部品を介して気化される。従来の吸入器の問題点として、金属が燃える可能性があり、その後、燃えた液体と一緒に金属を吸い込む可能性がある。また、加熱された液体による焦げた臭いや味を好まない人もいる。
【0098】
図1図4は、超音波処理チャンバを構成する超音波吸入器の一例を示す図である。
【0099】
図1には、使い捨ての超音波ミスト吸入器100が描かれている。図1から分かるように、超音波ミスト吸入器100は、直径に比して長さが比較的長い円筒形の本体を有している。使い捨ての例では、第1部分と第2部分とは、単一の、しかし分離可能な装置の領域である。第1部分101及び第2部分102という呼称は、各部分に主に含まれる構成要素を便宜的に区別するために用いられる。
【0100】
図1から分かるように、超音波ミスト吸入器は、マウスピース1、リザーバ構造体2、及びケーシング3から構成されている。第1部分101はケーシング3を構成し、第2部分102はマウスピース1及びリザーバ構造体2を構成する。
【0101】
第1の部分101には、電源エネルギーが含まれている。
【0102】
蓄電装置30は、超音波ミスト吸入器100に電力を供給する。蓄電装置30は、リチウムイオン電池、アルカリ電池、亜鉛-炭素電池、ニッケル水素電池、ニッケル-カドミウム電池などの電池、スーパーキャパシタ、又はこれらの組み合わせとすることができるが、これらに限定されるわけではない。使い捨ての例では、電気貯蔵装置30は再充電可能ではないが、再使用可能な例では、電気貯蔵装置30は再充電可能であるように選択されるであろう。使い捨ての例では、電気貯蔵装置30は、主に、吸入器100の寿命にわたって一定の電圧を供給するように選択される。そうでなければ、吸入器の性能は時間とともに劣化することになる。装置の寿命にわたって一定の電圧出力を提供することができる好ましい電気貯蔵装置には、リチウムイオン電池及びリチウムポリマー電池が含まれる。
【0103】
電気貯蔵装置30は、一般に正端子に対応する第1の端部30aと、一般に負端子に対応する第2の端部30bとを有する。負極端子は、第1端部30aまで延びている。
【0104】
蓄電装置30は第1部分101に位置し、液体リザーバ構造体2は第2部分102に位置するので、接合部は、それらの構成要素の間に電気的な通信を提供することが必要である。本発明では、第1の部分101が第2の部分102に締め付けられるときに一緒に圧縮される少なくとも電極又はプローブを用いて電気通信が確立される。
【0105】
この例では、再利用可能とするために、蓄電装置30は充電可能である。ケーシング3には、充電口32が設けられている。
【0106】
集積回路4は、近位端4a及び遠位端4bを有する。電気貯蔵装置30の第1端30aの正端子は、フレキシブル集積回路4の正リードと電気的に連通している。電気貯蔵装置30の第2の端部30bの負端子は、集積回路4の負リードと電気的に通信している。集積回路4の遠位端4bは、マイクロプロセッサを含んで構成されている。マイクロプロセッサは、センサからのデータを処理し、ライトを制御し、第2の部分102における超音波振動5に電流の流れを指示し、予めプログラムされた時間の後に電流の流れを終了させるように構成されている。
【0107】
センサは、超音波ミスト吸入器100が使用されているとき(使用者が吸入器を吸引したとき)を検出し、マイクロプロセッサを作動させる。センサは、圧力、空気流、又は振動の変化を検出するように選択することができる。一例では、センサは圧力センサである。デジタル装置では、センサは連続的な読み取りを行い、その結果、デジタルセンサは連続的に電流を引き込む必要があるが、その量は小さく、全体の電池寿命は無視できるほど影響されるだろう。
【0108】
いくつかの例では、集積回路4は、高周波で直流を交流に変換するために4つのMOSFETによって形成されてもよいHブリッジを構成している。
【0109】
図2及び図3を参照すると、一例による液体リザーバ構造体2の図解が示されている。液体リザーバ構造2は、霧化される液体を受け取るように適合された液体チャンバ21と、液体チャンバ21と流体連通している超音波処理チャンバ22とからなる。
【0110】
示されている例では、液体リザーバ構造2は、超音波処理チャンバ22から周囲に向かう空気通路を提供する吸入チャネル20を備える。
【0111】
センサ位置の一例として、超音波処理チャンバ22にセンサを配置してもよい。
【0112】
吸入チャンネル20は、錐体部20aと内部容器20bを有する。
【0113】
図4A及び図4Bに描かれているように、さらに吸入チャネル20は、周囲から超音波処理チャンバ22に空気流を供給するための空気流部材27を有する。
【0114】
気流部材27は、一体に作られた気流ブリッジ27a及び気流ダクト27bを有し、気流ブリッジ27aは吸入チャネル20の一部を形成する2つの気道開口27a’を有し、気流ダクト27bは気流ブリッジ27aから超音波処理チャンバ22内に延びて周囲から超音波処理チャンバへの空気流を提供するためにある。
【0115】
気流ブリッジ27aは、第2の直径20a2において錐体要素20aと協働する。
【0116】
気流ブリッジ27aは、気流を気流ダクト27bに供給する2つの対向する周辺開口部27a’’を有する。
【0117】
気流ブリッジ27aとフラストコニカル要素20aとの協働は、2つの対向する周辺開口部27a’’がフラストコニカル要素20aの相補的開口部20a’’と協働するように配置される。
【0118】
口金1と錐体部20aは半径方向に間隔をあけて配置され、その間に気流チャンバ28が配置されている。
【0119】
図1及び図2に描かれているように、マウスピース1は、2つの対向する周辺開口部1’’を有する。
【0120】
気流ブリッジ27aの周辺開口部27a’’、20a’’、1’’、フラストコニカル要素20a及びマウスピース1は、超音波処理チャンバ22に最大限の空気流を直接供給する。
【0121】
錐体要素20aは、吸入チャネル20と同様の方向に整列された内部通路を含み、第1の直径20a1が第2の直径20a2のそれよりも小さく、内部通路が錐体要素20aにわたって直径を減少させるように、内部通路を有している。
【0122】
錐体要素20aは、超音波振動手段5及び毛細管要素7と整列して配置され、第1の直径20a1はマウスピース1の内部ダクト11に連通し、第2の直径20a2は内部容器20bに連通している。
【0123】
内部容器20bは、超音波処理チャンバ22と液体チャンバ21とを区画する内壁を有する。
【0124】
液体リザーバ構造体2は、液体チャンバ21の外壁を区画する外容器20cを有している。
【0125】
内側容器20b及び外側容器20cは、それぞれ、液体チャンバ21の内壁及び外壁である。
【0126】
液体リザーバ構造体2は、口金1とケーシング3との間に配置され、口金1及びケーシング3に対して着脱可能である。
【0127】
液体リザーバ構造体2及びマウスピース1又はケーシング3は、互いに係合するための相補的な配置を含んでもよく;さらにそのような相補的配置は、バヨネット型配置;ねじ係合型配置;磁気配置;又は摩擦嵌合配置のいずれかを含んでもよく、液体リザーバ構造体2は配置の一部分を含み、マウスピース1又はケーシング3は、配置の相補的部分を含んでいる。
【0128】
再使用可能な例では、構成要素は実質的に同じである。使い捨ての例に対する再使用可能な例の違いは、液体リザーバ構造体2を交換するためになされる収容である。
【0129】
図3に示すように、液体チャンバ21は、液体チャンバ21の内側容器20bと外側容器20cを閉じる上壁23と底壁25を有する。
【0130】
毛細管要素7は、内側容器20bの第1部分20b1と第2部分20b2との間に配置されている。
【0131】
毛細管要素7は、超音波処理チャンバから液体チャンバまで延びる平坦な形状を有する。
【0132】
図2又は図3に描かれているように、毛細管要素7は、U字形の中央部7aとL字形の周辺部7bとから構成されている。
【0133】
L字形状の部分7bは、内側容器20b上の液体チャンバ21内に、底壁25に沿って延びている。
【0134】
U字状部分7aは、超音波処理チャンバ21内に収容されている。U字状部分7aは、内側容器20b上で、底壁25に沿うように設けられている。
【0135】
超音波霧化吸入器において、U字部7aは、内側部分7a1と外側部分7a2とを有し、内側部分7a1は超音波振動手段5の霧化面50と面接触しており、外側部分7a2は超音波振動手段5と面接触していない。
【0136】
液体チャンバ21の底壁25は、液体チャンバ21と超音波処理チャンバ22とを閉鎖する底板25である。底板25は密閉されているため、超音波処理チャンバ22からケーシング3への液体の漏れは防止されている。
【0137】
底板25は、弾性部材8が挿入される凹部25bを有する上面25aを有している。超音波振動手段5は、弾性部材8によって支持されている。弾性部材8は、超音波振動手段5を維持するための溝が設計された内孔8’を有する環状板状のゴムから形成されている。
【0138】
液体チャンバ21の上壁23は、液体チャンバ23を閉じるキャップ23である。
【0139】
天壁23は、液体チャンバ21が収容し得る液体の最大レベルを表す上面23と、液体チャンバ21内の液体の最小レベルを表す下面25とを有する。
【0140】
天壁23は密閉されているため、液体チャンバ21から口金1への液体の漏れは防止される。
【0141】
天壁23と底壁25は、ネジ、接着剤、摩擦などの固定手段により、液体リザーバ構造体2に固定されている。
【0142】
図3に描かれているように、弾性部材は超音波振動手段5と線接触しており、超音波振動手段5と吸入器の壁との接触を防ぐことで、液体リザーバ構造体の振動の抑制がより効果的に防止される。したがって、霧化部材によって霧化された液体の微粒子をより遠くまで噴霧することができる。
【0143】
図3に描かれているように、内側容器20bは、第1部分20b1と第2部分20b2との間に、毛細管要素7が超音波処理チャンバ21から延びている開口部20b’を有している。毛細管要素7は、開口部20b’を介して液体チャンバ21から液体を吸収する。毛細管要素7は、ウィックである。毛細管要素7は、毛細管現象によって液体を超音波処理チャンバ22に輸送する。いくつかの例では、毛細管要素7は、竹繊維で作られている。いくつかの例では、毛細管要素7は、0.27mmから0.32mmの間の厚さであり、38g/m2 から48g/m2 の間の密度を有していてもよい。
【0144】
図3から分かるように、超音波振動手段5は、毛細管要素7の直下に配置されている。
【0145】
超音波振動手段5は、トランスデューサであってもよい。例えば、超音波振動手段5は、圧電トランスデューサであってもよく、円形の板状に設計されていてもよい。圧電トランスデューサの材質は、セラミックであってもよい。
【0146】
また、超音波振動手段5には、様々なトランスデューサ材料を使用することができる。
【0147】
送風ダクト27b1の端部は、超音波振動手段5と向き合っている。超音波振動手段5は、電気接触器101a、101bと電気的に連絡している。注目すべきは、集積回路4の遠位端4bは、内側電極と外側電極を有することである。内側電極は、スプリングコンタクトプローブである第1の電気接触子101aに接触し、外側電極は、サイドピンである第2の電気接触子101bに接触する。集積回路4を介して、第1の電気接点101aは、マイクロプロセッサにより蓄電装置30の正極端子と電気的に通信し、第2の電気接点101bは、蓄電装置30の負極端子と電気的に通信している。
【0148】
電気接点101a、101bは、底板25を横断している。底板25は、液体リザーバ構造体2の周壁26の内側に受けられるようになっている。底板25は、相補的な隆起の上に載っており、それによって、液体チャンバ21と超音波処理チャンバ22を形成している。
【0149】
内側容器20bは、機械的なバネが適用される円形の内側スロット20dから構成される。
【0150】
中央部分7a1を超音波振動手段5に押し付けることによって、機械的なバネ9は、それらの間の接触面を確保する。
【0151】
液体リザーバ構造体2及び底板25は、様々な熱可塑性材料を用いて作ることができる。
【0152】
使用者が超音波ミスト吸入器100を吸引すると、空気流が周辺開口部1’’から吸引されて気流チャンバ28を貫通し、気流ブリッジ27aの周辺開口部27a’’とフラストコニカル要素20aを通り、気流ダクト27bを介して超音波処理チャンバ22に流れ落ち、直接毛細管要素7にかかる。同時に、液体は毛細管現象によりリザーバチャンバ21から複数の開口部20b’を通り、毛細管要素7に吸い込まれる。毛細管要素7は、液体を吸入器100の超音波振動手段5と接触させる。また、使用者の吸引により、圧力センサが集積回路4を作動させ、集積回路4が超音波振動手段5に電流を導く。このように、使用者が吸入器100のマウスピース1で吸引すると、2つの動作が同時に起こる。まず、センサが集積回路4を作動させ、これが超音波振動手段5が振動を開始するきっかけとなる。第2に、吸引によって、開口部20b’を通る液体の流れが始まるように、リザーバチャンバ21の外の圧力を低下させ、これが毛細管要素7を飽和させる。毛細管要素7は、液体を超音波振動手段5に搬送し、超音波振動手段5によって毛細管路内に気泡を形成させ、液体をミスト化させる。そして、ミスト化された液体を使用者が吸引する。
【0153】
いくつかの例では、集積回路4は、超音波振動手段5が動作する周波数を制御するように構成されている周波数コントローラを含んでいる。周波数コントローラは、プロセッサとメモリとを備え、メモリは、プロセッサによって実行されると、プロセッサに周波数コントローラの少なくとも1つの機能を実行させる実行可能命令を記憶している。
【0154】
上述したように、いくつかの例では、超音波ミスト吸入器100は、約0.25~0.5ミクロンの気泡体積を生成するために、1.05Pa・s~1.412Pa・sの液体粘度を有する液体を気化するために2.8MHz~3.2MHzの周波数を持つ信号で超音波振動手段5を駆動させる。しかし、異なる粘度を有する液体又は他の用途のために、それは超音波振動手段5が異なる周波数で駆動される可能性がある。
【0155】
ミスト発生装置の異なる用途ごとに、ミストの発生を最適化するために超音波振動手段5を駆動するための最適な周波数又は周波数範囲が存在する。超音波振動手段5が圧電トランスデューサである例では、最適な周波数又は周波数範囲は、少なくとも以下の4つのパラメータに依存することになる。
【0156】
1.トランスデューサの製造工程
いくつかの例では、超音波振動手段5は、圧電セラミックからなる。圧電セラミックは、化合物を混合してセラミック生地を作ることによって製造されるが、この混合工程は、製造全体を通じて一貫していない場合がある。この不均一性により、硬化した圧電セラミックの共振周波数にばらつきが生じることがある。
【0157】
圧電セラミックの共振周波数が装置の必要動作周波数に対応していない場合、装置の動作中にミストが発生しない。治療用ミスト吸入器の場合、圧電セラミックの共振周波数がわずかにずれただけでもミストの生成に影響を与え、その装置が使用者に適切な治療レベルを提供できないことを意味する。
【0158】
2.トランスデューサへの負荷
動作中、圧電トランスデューサへの負荷が変化すると、圧電トランスデューサ全体の振動の変位が抑制される。圧電トランスデューサの振動を最適に変位させるには、回路が最大変位に十分な電力を供給できるように駆動周波数 を調整する必要がある。
【0159】
発振器の効率に影響を与える負荷の種類としては、トランスデューサ上の液体の量(ウィッキング材料の湿度)、トランスデューサとの永久的な接触を保つためにウィッキング材料に加えられるバネの力などを挙げることができる。また、電気的な接続手段も含まれる場合がある。
【0160】
3.温度
圧電トランスデューサの超音波振動は、装置に組み込んで部分的に減衰させる。これには、トランスデューサをシリコン/ゴムのリングに入れ、スプリングでトランスデューサの上にあるウィッキング材に圧力をかけることが考えられる。この振動の減衰により、トランスデューサの上とその周辺の局所的な温度は上昇する。
【0161】
温度の上昇は、トランスデューサの分子挙動の変化により、振動に影響を与える。温度の上昇は、セラミックの分子により多くのエネルギーを与え、その結晶構造に一時的な影響を及ぼす。温度が下がるとこの影響は逆転するが、最適な発振を維持するためには供給する周波数の変調が必要である。この周波数変調は、従来の固定周波数デバイスでは実現できなかった。
【0162】
また、温度上昇により気化される溶液(e リキッド)の粘度が低下するため、キャビテーションを誘起して連続的なミスト生成を維持するために駆動周波数の変更が必要となる場合がある。従来の固定周波数装置の場合、駆動周波数を変更せずに液体の粘度を下げると、ミスト生成が減少又は完全に停止し、装置が動作不能になる。
【0163】
4.電源までの距離
電子回路の発振周波数は、トランスデューサと発振器-ドライバ間の配線長によって変化することがある。電子回路の周波数は、トランスデューサと残りの回路との距離に反比例する。
【0164】
距離パラメータは主にデバイスに固定されているが、デバイスの製造過程で変化し、デバイスの全体的な効率を低下させる可能性がある。そのため、デバイスの駆動周波数を変更して変動を補償し、デバイスの効率を最適化することが望まれる。
【0165】
圧電トランスデューサは、図5に示すように、電子回路中のRLC回路としてモデル化することができる。上述した4つのパラメータは、RLC回路全体のインダクタンス、キャパシタンス、抵抗の変化としてモデル化することができ、トランスデューサに供給される共振周波数範囲を変化させることができる。回路の周波数がトランスデューサの共振点付近まで上昇すると、回路全体の対数インピーダンスは最小に落ち込み、次に最大に上昇してから中央の範囲に落ち着く。
【0166】
図6は、RLC回路における周波数上昇に伴う全体インピーダンスの変化を説明する一般的なグラフである。図7は、圧電トランスデューサが、第1の所定周波数fs 以下の周波数では第1の容量性領域で、第2の所定周波数fp以上の周波数では第2の容量性領域でコンデンサとして作用する様子を示す図である。圧電トランスデューサは、第1及び第2の所定周波数fs、fpの間の周波数において、誘導性領域でインダクタとして作用する。トランスデューサの最適な発振を維持し、したがって最大効率を得るためには、トランスデューサを流れる電流を誘導領域内の周波数に維持する必要がある。
【0167】
いくつかの例の装置の周波数コントローラは、装置の効率を最大化するために、圧電トランスデューサ(超音波振動手段5)の発振周波数を誘導領域内に維持するように構成される。
【0168】
周波数コントローラは、所定のスイープ周波数範囲にわたって漸次追跡する周波数でトランスデューサを駆動するスイープ動作を実行するように構成されている。周波数コントローラがスイープを実行するとき、周波数コントローラは、トランスデューサに結合されたアナログ-デジタル変換器のアナログ-デジタル変換(ADC)値を監視する。いくつかの例では、ADC値は、トランスデューサを横切る電圧に比例するADCのパラメータである。他の例では、ADC値は、トランスデューサを流れる電流に比例するADCのパラメータである。
【0169】
以下により詳細に説明するように、いくつかの例の周波数コントローラは、トランスデューサを流れる電流を監視することによって、超音波トランスデューサによって使用されている有効電力を決定する。
【0170】
スイープ動作の間、周波数コントローラは、トランスデューサのための周波数の誘導領域を探し出す。周波数コントローラが誘導領域を特定すると、周波数コントローラは、ADC値を記録し、トランスデューサによる超音波キャビテーションを最適化するために、トランスデューサの駆動周波数を誘導領域内の周波数(すなわち、第1及び第2の所定の周波数fs、fpの間)でロックする。駆動周波数が誘導領域内にロックされると、トランスデューサの電気機械結合係数が最大化され、それによって、装置の効率が最大化される。
【0171】
いくつかの例では、周波数コントローラは、発振が開始又は再始動されるたびに誘導領域の位置を特定するためにスイープ動作を行うように構成される。例では、周波数コントローラは、発振が開始されるたびに誘導領域内の新しい周波数で駆動周波数をロックし、それによって、装置の動作効率に影響を与えるパラメータの変化を補償するように構成されている。
【0172】
いくつかの例では、周波数コントローラは、最適なミスト生成を保証し、使用者への薬物送達の効率を最大化する。いくつかの例では、周波数コントローラは、デバイスを最適化し、効率を向上させ、使用者への治療送達を最大化する。
【0173】
他の例では、周波数コントローラは、デバイスを最適化し、超音波を使用する他の任意のデバイスの効率を向上させる。いくつかの例では、周波数コントローラは、超音波応答性薬物送達システムからの薬物放出の促進を拡張するために、治療用途の超音波技術と共に使用するように構成される。動作中に正確で最適な周波数を有することにより、マイクロバブル、ナノバブル、ナノドロップレット、リポソーム、エマルジョン、ミセル、又は他の任意の送達システムが非常に効果的であることが保証される。
【0174】
いくつかの例では、上記のような最適なミスト生成及び化合物の最適な送達を保証するために、周波数コントローラは、再帰モードで動作するように構成される。周波数コントローラが再帰モードで動作する場合、周波数コントローラは、デバイスの動作中に周波数のスイープを周期的に実行し、ADC値を監視して、ADC値がトランスデューサの最適発振を示す所定の閾値以上であるか否かを判断する。
【0175】
いくつかの例では、周波数コントローラは、周波数コントローラがトランスデューサのための可能なより良い周波数を特定できる場合に備えて、装置が液体をエアロゾル化する過程にある間にスイープ動作を実行する。周波数コントローラがより良い周波数を特定した場合、周波数コントローラは、装置の最適な動作を維持するために、駆動周波数を新たに特定されたより良い周波数でロックする。
【0176】
いくつかの例では、周波数コントローラは、デバイスの動作中に周期的に所定の持続時間の間、周波数のスイープを実行する。上述した例の装置の場合、スイープの所定の持続時間及びスイープ間の時間期間は、装置の機能を最適化するように選択される。超音波ミスト吸入器に実装される場合、これは、使用者の吸入全体を通じて使用者への最適な送達を保証する。
【0177】
図8は、いくつかの例の周波数コントローラの動作のフロー図である。
【0178】
以下の開示は、上述した例と同じ要素の多くからなるミスト吸入器のさらなる例を開示する。上述した例の要素は、本開示の残りの部分で説明した例の要素のいずれかと入れ替えることができる。
【0179】
十分なエアロゾル生成を保証するために、この例では、ミスト吸入器は、正確に又は実質的に16mmの直径の超音波/圧電トランスデューサからなる。このトランスデューサは、所望のエアロゾル量生成に必要な周波数及び電力を制御するために、特定の静電容量及びインピーダンス値に合わせて製造される。
【0180】
直径16mmの円盤状の超音波トランスデューサを水平に配置すると、装置が大きくなり、手持ち式としては人間工学的に不利になる可能性がある。この懸念を軽減するために、この例の超音波トランスデューサは、超音波処理チャンバ内で垂直に保持される(超音波トランスデューサの平面が、マウスピースへのエアロゾルミストの流れに概ね平行であり、及び/又はミスト吸入器の長手方向の長さに概ね平行である)。別の言い方をすれば、超音波トランスデューサは、ミスト吸入器の基部に対して一般に垂直である。
【0181】
ここで添付図面の図9及び図10を参照すると、いくつかの例のミスト吸入器200は、ミスト発生装置201及びドライバ装置202から構成されている。ドライバ装置202は、この例では、ミスト発生装置201の一部を受け入れて保持する凹部203を備えている。したがって、ミスト発生装置201は、図9に示すように、ドライバ装置202と結合して、コンパクトで携帯可能なミスト吸入器200を形成することができる。
【0182】
ここで添付図面の図11から図13を参照すると、ミスト発生装置201は、細長く、任意に互いに取り付けられる2つのハウジング部分205、206から形成されるミスト発生器ハウジング204から構成される。ミスト発生器ハウジング204は、空気入口ポート207とミスト出口ポート208とから構成される。
【0183】
この例では、ミスト発生器ハウジング204は、射出成形プラスチック、具体的には、医療用途に典型的に使用されるポリプロピレンである。この例では、ミスト発生器ハウジング204は、異相共重合体である。より詳細には、非常に高い剛性と高い衝撃強度の最適な組み合わせを有するBF970MO異相共重合体である。この材料で成形されたミスト発生器ハウジング部品は、良好な帯電防止性能を示す。
【0184】
ポリプロピレンなどの異相共重合体は、この材料が超音波処理チャンバ219からマウスピースを通って使用者に流れる際にエアロゾルの凝縮を引き起こさないので、ミスト発生器ハウジング204に特に好適である。このプラスチック材料はまた、工業的な破砕及び洗浄プロセスを用いて容易に直接リサイクルすることができる。
【0185】
図9、10及び12において、ミスト出口ポート208は、閉鎖要素209によって閉鎖されている。しかしながら、ミスト吸入器200の使用時には、図11に示すように、閉鎖要素209がミスト出口ポート208から取り外されることが理解されよう。
【0186】
ここで図14及び図15を参照すると、ミスト発生装置200は、ミスト発生器ハウジング204内に保持されるトランスデューサホルダ210を備える。トランスデューサホルダ210は、この例では、円柱状又は概ね円筒状の本体部211と、円形の上下の開口部212、213から構成されている。トランスデューサホルダ210には、図15に示すように、超音波トランスデューサ215の端部を受け入れるための内部チャネル214が設けられている。
【0187】
トランスデューサホルダ210は、電極217がドライバ装置の交流ドライバに電気的に接続され得るように、超音波トランスデューサ215から電極217が延びる切断部216を内蔵し、以下により詳細に説明されるように、電極217は、超音波トランスデューサ215から延びる。
【0188】
再び図13を参照すると、ミスト発生装置201は、ミスト発生器ハウジング204内に設けられる液体チャンバ218を備える。液体チャンバ218は、霧化される治療用液体などの液体を収容するためのものである。いくつかの例では、液体が液体チャンバ218に収容される。他の例では、液体チャンバ218は、最初は空であり、その後液体チャンバに液体が充填される。
【0189】
好ましくは、液体は、患者に所望の治療を提供するために、患者による吸入を通じて肺にエアロゾル送達するのに適した少なくとも1つの治療薬を含む。治療薬のいくつかの例には、最小限の副作用を生じさせながら全身的又は直接的な臨床効果を促進するために、肺への薬学的薬剤のエアロゾル送達が含まれるが、これらに限定されない。治療薬はまた、例えば、天然薬物、疼痛緩和及び他の治療のためのCBDなどのカンナビノイド誘導体、植物薬、オピオイド、RNA、DNA、化学療法、例えばリボソーム、小胞体、細胞骨格及びミトコンドリアを含む細胞内成分、性能向上のためのサプリメント(喘息患者用のアルブテロール/サルブタモール、β-ラクタム、ポリミキシン、アミノグリコシド殺菌抗生物質などの薬剤、アンフォテリシンB、モルヒネ、フェンタニル、プロスタサイクリン、アミロライド、インターフェロンG、肺移植患者の救助療法拒絶反応及び喘息の治療としてのサイクロスポリンなどを含むことができるが、これらに限定されない。
【0190】
以下の説明はニコチンに言及するが、本開示の他の例では、ニコチンは、本明細書に記載される治療薬の1つ以上に限定されないが、そのような治療薬で置き換えられる。
【0191】
レブリン酸ニコチンからなるニコチン塩からなる、3.7Vリチウムポリマー(LiPo)電池によって3.0MHz(±0.2MHz)の周波数で駆動する超音波装置での使用に適した液体(ここではeリキッドとも呼ばれる)組成物であって、以下のものである:
組成物中の植物性グリセリンの相対量は:55から80%(w/w)、又は60から80%(w/w)、又は65から75%(w/w)、又は70%(w/w)、及び/又は
組成物中のプロピレングリコールの相対量は:5~30%(w/w)、又は10から30%(w/w)、又は15から25%(w/w)、又は20%(w/w)、及び/又は
組成物中の水の相対量は:5から15%(w/w)、又は7から12%(w/w)、又は10%(w/w)、及び/又は
組成物中のニコチン及び/又はニコチン塩の量は:0.1から80mg/ml、又は0.1から50mg/ml、又は1から25mg/ml、又は10から20mg/ml、又は17mg/ml。
【0192】
いくつかの例では、ミスト発生装置201は、1.05パスカル●秒から1.412パスカル●秒の間の動粘度を有する電子液体を収容する。
【0193】
いくつかの例では、液体チャンバ218は、1:1のモル比でニコチンレブリネート塩を含む液体を含有する。
【0194】
いくつかの例では、液体チャンバ218は、1.05パスカル秒~1.412パスカル秒の間の動粘度と1.1g/ml~1.3g/mlの間の液体密度とを有する液体を含む。
【0195】
粘度、密度の正しいパラメータを持つ電子液体を使用し、空気中に液体スプレーの所望の目標バブルボリュームを持つことによって、1.05パスカル●秒から1.412パスカル●秒の液体粘度範囲と約1.1~1.3 g/mL の密度(Hertzから密度範囲を取得)に対する2.8MHz~3.2MHzの周波数は、液滴の90%は1ミクロン以下とその50%は0.5ミクロン以下の液滴ボリュームを生み出すことがわかっている。
【0196】
ミスト発生装置201は、ミミスト発生器ハウジング204内に設けられる超音波処理チャンバ219を含んで構成される。
【0197】
図14及び図15に戻り、トランスデューサホルダ210は、液体チャンバ218と超音波処理チャンバ219との間に障壁を提供する仕切り部220を含んで構成される。仕切り部分220によって提供される障壁は、超音波処理チャンバ219が液体チャンバ218から液体で溢れるリスク、又は超音波トランスデューサ215上の毛細管要素が過飽和になるリスクを最小限にし、そのいずれもが超音波トランスデューサ215の過負荷と効率を低下させる。さらに、超音波処理チャンバ219を溢れさせたり、毛細管要素を過飽和にすることは、吸入の際に使用者が液体を吸い込むという不快な体験も引き起こしかねない。このリスクを軽減するために、トランスデューサホルダ210の仕切り部分220は、超音波処理チャンバ219と液体チャンバ218との間の壁として着座する。
【0198】
仕切り部220は、毛細管要素を介して、液体チャンバ218から超音波処理チャンバ219へ液体が流れることができる唯一の手段である毛細管開口部221を構成している。この例では、毛細管開口部221は、0.2mm~0.4mmの幅を有する細長いスロットである。毛細管開口221の寸法は、毛細管開口221の縁が、超音波処理チャンバ219への液体流の制御を加えるために毛細管開口221を通って延びる毛細管に作用するバイアス力を提供するようなものである。
【0199】
この例では、トランスデューサホルダ210は、液体シリコンゴム(LSR)である。この例では、液体シリコンゴムは、ショアA 60の硬度を有する。のLSR材料は、トランスデューサホルダ210が振動を減衰させることなく、超音波トランスデューサ215が振動することを保証する。この例では、超音波トランスデューサ215の振動変位は2~5ナノメートルであり、何らかの減衰効果があると、超音波トランスデューサ215の効率が低下する可能性がある。したがって、このLSRの材料と硬度は、最小限の妥協で最適な性能を得るために選択される。
【0200】
次に図16及び図17を参照すると、ミスト発生装置201は、液体チャンバ218から超音波処理チャンバ219に(薬剤又は他の物質を含む)液体を移送するための毛細管又は毛細管要素222を含んでいる。管要素222は、第1部分223と第2部分224とを有する平面状又は概ね平面状である。この例では、第1部分223は、長方形又は概ね長方形の形状を有し、第2部分224は、部分的に円形の形状を有する。
【0201】
この例では、毛細管要素222は、第1及び第2の部分223、224とそれぞれ同じ形状の第3の部分225及び第4の部分226から構成される。この例の毛細管要素222は、図17に示すように、第1及び第2の部分223、224と第3及び第4の部分225、226とが互いに重ね合わされるように折り線227を中心に折り畳まれる。
【0202】
この例では、毛細管要素は、約0.28mmの厚さを有する。図17に示すように、毛細管要素222を折り曲げて2つの層を有するようにすると、毛細管要素の全体の厚さは約0.56mmとなる。この二重層はまた、最適なエアロゾル生成のために超音波トランスデューサ215上に常に十分な液体が存在することを保証する。
【0203】
この例では、毛細管要素222が折り畳まれると、第1及び第3部分223、225の下端は、毛細管要素222が液体を吸収する速度を最大化するために液体チャンバ218内の液体中に位置する毛細管要素222の部分の表面積を増大させる拡大下端228を画定する。
【0204】
この例では、毛細管要素222は100%竹繊維である。他の例では、毛細管要素は少なくとも75%の竹繊維のものである。毛細管要素として竹繊維を使用する利点は、上述したとおりである。
【0205】
ここで図18及び図19を参照すると、毛細管要素222は、超音波トランスデューサ215の霧化表面の一部に重畳した毛細管要素222の第2部分224をトランスデューサホルダ210が保持するように、トランスデューサホルダ210によって保持される。この例では、円形の第2部分224は、トランスデューサホルダ210の内側凹部214内に収まっている。
【0206】
毛細管要素222の第1部分223は、トランスデューサホルダ210の毛細管開口221を通って延びている。
【0207】
次に図20から図22を参照すると、ミスト発生器ハウジング204の第2部分206は、トランスデューサホルダ222を受け、超音波処理チャンバ219の壁の一部を形成する概ね円形の壁229からなる。
【0208】
接触開口部230及び231は、超音波トランスデューサ215の電極との電気的接続を形成する電気接触部232及び233を受け入れるために、第2部分206の側壁に設けられている。
【0209】
この例では、ミスト出口ポート208で液体を吸収するために、吸収性チップ又は吸収性要素234が、ミスト出口ポート208に隣接して設けられている。この例では、吸収性要素234は竹繊維のものである。
【0210】
次に図23から図25を参照すると、ミスト発生器ハウジング204の第1部分205は、第2部分206と同様の形状であり、超音波処理チャンバ219の壁のさらなる部分を形成し、トランスデューサホルダ210を保持する概して円形の壁部235をさらに備える。
【0211】
この例では、ミスト出口ポート208に隣接して、ミスト出口ポート208で液体を吸収するための吸収性要素236がさらに設けられる。
【0212】
この例では、ミスト発生器ハウジング204の第1部分205は、図26に示すように、リテーナばね238の下端を支持するばね支持配置237を構成している。
【0213】
リテーナばね238の上端は、リテーナばね238が毛細管要素222を超音波トランスデューサ215の霧化表面に対してバイアスするバイアス力を与えるように、毛細管要素222の第2の部分224に接触する。
【0214】
図27を参照すると、ミスト発生器ハウジング204の2つの部分205、206が互いに取り付けられる前に、トランスデューサホルダ210が所定の位置にあり、ミスト発生器ハウジング204の第2の部分206によって保持されていることが示されている。
【0215】
図28図31を参照して、この例では、ミスト発生装置201は、識別配列239を含んで構成されている。識別配置239は、一面に設けられた電気接点241を有するプリント基板240と、他面に設けられた集積回路242及び別のオプション部品243とから構成される。
【0216】
集積回路242は、ミスト発生装置201に固有の識別子を記憶するメモリを有する。電気接点241は、集積回路242と通信するための電子的なインタフェースを提供する。
【0217】
プリント回路基板240は、この例では、ミスト発生器ハウジング204の一側面の凹部244内に取り付けられている。集積回路242及び任意の他の電子部品243は、プリント回路基板240がミスト発生器ハウジング204の側面と概ね面一となるように、さらなる凹部245内に収まっている。
【0218】
この例では、集積回路242は、製造業者からの純正ミスト発生装置のみを装置と共に使用することを可能にする偽造防止機能であるワンタイムプログラマブル(OTP)デバイスである。この偽造防止機能は、ミスト発生装置201に(プリント基板240と)接着される特定のカスタム集積回路(IC)として、ミスト発生装置201に実装される。ICとしてのOTPは、ミスト発生装置201(及びその内容物)のその寿命にわたる完全なトレーサビリティ、ならびに使用者による消費の正確な監視を可能にする真にユニークな情報を含んでいる。OTP ICにより、ミスト発生装置201は、許可された場合にのみミストを発生させるように機能することができる。
【0219】
本開示の一例のOTP ICの実装について、以下に詳細に説明する。
【0220】
OTPは、特徴として、特定のミスト発生装置201のオーソライズドステータスを規定する。実際、カルボニルの排出を防止し、エアロゾルを安全な水準に保つために、実験により、約1000秒間のエアロゾル化後にミスト発生装置201は液体チャンバ218内の液体が空になったと見なされることが示されている。そのようにして、純正品でない、又は空のミスト発生装置201は、この所定の使用時間の後、作動させることができなくなる。
【0221】
特徴としてのOTPは、デジタルセールポイント、モバイルコンパニオンアプリケーション、及びミスト発生装置201の連携による完全な連鎖の一部であってもよい。信頼できる当事者によって製造され、デジタルセールポイントで販売された純正のミスト発生装置201のみを使用することができる。モバイルコンパニオンデジタルアプリは、製造者のデジタルプラットフォーム上の使用者アカウントとミスト発生装置201との間のリンクであり、既知の安全なコンテンツを安全な量のパフ持続時間で安全に使用することを保証するものである。
【0222】
また、機能としてのOTPは、信頼できる医療施設とのB2B(business to business)使用の場合に医療用医薬品行政として要求される高いアクセス制御及び監視を可能にする。OTP ICは、挿入されたミスト発生装置201とそれに関連する処方箋を認識できるドライバ装置202によって読み取られる。ドライバ装置202は、このミスト発生装置201を処方箋で指定された期間以上にも期間外にも使用することができない。さらに、モバイルコンパニオンアプリのリマインダーを提供することで、使用者が服用し損ねることを最小限に抑えることができる。
【0223】
いくつかの例では、OTP ICは、ミスト発生装置201と同じように使い捨てである。ミスト発生装置201が空であるとみなされるときはいつでも、ドライバ装置202に挿入された場合、それは活性化されない。同様に、偽造されたジェネレータ装置201は、ドライバ装置202において機能しないであろう。
【0224】
図32図34は、動作中のミスト発生装置201内を空気が流れる様子を示す図である。
【0225】
液体治療剤(医療用溶液、医療用懸濁液、タンパク質溶液、サプリメントなど)を超音波処理することにより、ミストに変化する(エアロゾル化)。しかし、このミストは、上昇するエアロゾルを置換するのに十分な周囲空気が利用可能でなければ、超音波トランスデューサ215の上に沈降してしまう。超音波処理チャンバ219では、ミスト(エアロゾル)が発生し、マウスピースを介して使用者に引き出されるため、空気を継続的に供給することが要求される。この要件に応えるために、空気流路が設けられる。この例では、気流チャネルは11.5mm2の平均断面積を有し、これは平均的な使用者からの負圧に基づいて計算されて超音波処理チャンバ219に設計されている。これはまた、吸入されたエアロゾルのミスト対空気比を制御し、使用者に送達される薬物の量を制御する。
【0226】
設計要件に基づき、空気流路は、超音波処理チャンバ219の底部から開始するように経路設定される。エアロゾルチャンバの底部の開口部は、装置内の気流ブリッジへの開口部と整列し、かつこれに緊密に隣接している。空気流路は、リザーバに沿って垂直に上方に走り、超音波処理チャンバの中心(超音波トランスデューサ215と同心)まで続く。ここで、90°内側に曲がる。その後、流路は超音波トランスデューサ215から約1.5mmのところまで続いている。この経路により、超音波トランスデューサ215の霧化面の方向に直接供給される周囲空気が最大化される。空気は、チャネルを通ってトランスデューサに向かって流れ、生成されたミストを集めながら、マウスピースを通って使用者へと出て行く。
【0227】
次に、ドライバ装置202について、最初に図35及び図36を参照して説明する。空気は、後述するように、ドライバ装置202内の気流ブリッジと流体連通している空気入口ポート207を介してミスト発生装置201内に流入する。空気は、空気の流れを超音波トランスデューサ215に向けるために、空気の流れの方向を約90°変える流路に沿って流れる。
【0228】
いくつかの例では、空気流配置は、空気の流れが超音波処理チャンバに通過するときに、空気の流れが超音波トランスデューサの霧化表面に対して実質的に垂直になるように、空気流路に沿った空気の流れの方向を変えるように構成される。
【0229】
ドライバ装置202は、少なくとも一部が金属製のドライバ装置ハウジング246で構成されている。いくつかの例では、ドライバ装置ハウジング246は、全体がアルミニウム(AL6063 T6)であり、内部コンポーネントを環境(埃、水しぶきなど)から保護し、また衝撃(不意の落下など)による損傷から保護する。
【0230】
いくつかの例では、ドライバ装置ハウジング246は、2つの目的のために周囲の空気が装置に入ることを可能にする通気口をその側面に備え、1つは電子部品の周りに換気を有し、それらを動作温度内に維持し、これらの通気口は、空気がこれらの通気口から装置内に入り、次に気流ブリッジを通ってミスト発生装置201に入る空気入口としても作用する。
【0231】
ドライバ装置ハウジング246は、ドライバ装置202の構成要素を収容する内部チャンバ247を有する細長い形状である。ドライバ装置ハウジング246の一端は、エンドキャップ248によって閉じられている。ドライバ装置ハウジング247の他端は、ドライバ装置202の凹部203のための開口部を提供する開口部249を有する。
【0232】
ドライバ装置202は、プリント回路基板251に接続される電池250から構成される。いくつかの例では、電池250は、容量1140mAh、放電速度10Cの3.7V DC Li-Po電池である。高い放電率は、望ましい動作のために超音波トランスデューサ215が必要とする最大15Vの電圧増幅のために必要とされる。電池の形状及びサイズは、物理的制約の範囲内で、装置の形状及びサイズ、ならびに電源のために割り当てられたスペースにしたがって設計される。
【0233】
プリント回路基板251には、プロセッサやメモリなど、ドライバ装置202の電気的機能を実現するための電子部品が組み込まれている。充電ピン258は、プリント回路基板251の一端に設けられ、エンドキャップ248を通って延び、バッテリ250を充電するための充電接続を提供するものである。
【0234】
プリント回路基板251は、スケルトン252によってドライバ装置ハウジング246内に保持されている。スケルトン252は、プリント回路基板251を受容するチャネル253を有する。スケルトン252は、バッテリ250を支持する隆起した側部254、255を組み込んでいる。
【0235】
いくつかの例では、スケルトン252は、工業用射出成形プロセスを用いて製造される。成形されたプラスチックのスケルトンは、すべての部品が固定され、ケース内に緩く嵌らないことを保証する。また、ミスト発生装置201がドライバ装置202に挿入されたときに、それを受けたPCB(Printed Circuit Board)の前部分を覆うカバーを形成する。
【0236】
ドライバ装置202は、超音波発生やエアロゾル生成のためのトランスデューサを作動させ電力を供給するためのスイッチとして機能する気流センサから構成されている。気流センサは、装置内のPCBに取り付けられており、ドライバ装置202を作動させるために、その周囲に一定の大気圧の降下が必要である。このために、図39から図41に示すような気流ブリッジ259が、周囲からの空気をブリッジ259を通してエアロゾルチャンバ262に導く内部チャネル260、261を備えて設計されている。骨格252は、図42に示すように、気流ブリッジ259の一部を受け入れるための対向するチャネル256、257から構成される。
【0237】
気流ブリッジ259の内部チャンネルには、気流センサを完全に覆うチャンバ264に向かって伸びるマイクロチャンネル263(直径0.5mm)がある。空気が側面の入口から流入してエアロゾルチャンバ262に上向きになると、マイクロチャネル263に負圧が生じ、気流センサが装置を作動させるトリガーとなる。
【0238】
本装置は、正確で安全なエアロゾル化を監視することができる、コンパクトで携帯可能な高度な装置である。これは、IPCクラス3(医療グレード)を考慮して設計された高品質の電子部品を組み込むことによって行われる。
【0239】
ドライバ装置202の電子部品は、次のように分割されている:
1. 超音波処理部
携帯機器での吸入のために、1um以下の粒子径で、これまでで最も効率的なエアロゾル化を得るために、超音波処理部は、高い適応周波数(約3MHz)で超音波トランスデューサ215(圧電セラミックディスク(PZT))を受けるコンタクトパッドを提供しなければならない。
【0240】
このセクションは、高周波を提供するだけでなく、超音波トランスデューサ215を故障から保護しながら、常に最適化されたキャビテーションを提供する必要がある。
【0241】
PZTの機械的変形は、それに印加される交流電圧振幅と連動しており、超音波照射のたびにシステムの最適な機能及び送達を保証するためには、最大変形が常にPZTに供給される必要がある。
【0242】
しかし、PZTの故障を防ぐためには、PZTに伝達される有効電力を正確に制御する必要がある。
【0243】
これは、市場に存在しないカスタム、電力管理集積回路(PMIC)チップを設計することによってのみ達成され、このチップは、ドライバ装置202のプリント回路基板上に設けられる。このPMICは、PZTの機械的な振動振幅を損なうことなく、PZTに与えられる有効電力を瞬間的に変調することを可能にする。
【0244】
PZTに印加する交流電圧をPWM(Pulse Width Modulation)することで、振動の機械的な振幅を一定に保つことができる。
【0245】
このため、デジタル-アナログ変換器(DAC)を使って出力する交流電圧を変更することが唯一の「既製の」選択肢であった。PZTに伝わるエネルギーは減少するが、機械的な変形も起こり、その結果、適切なエアロゾル化を完全に阻害してしまう。実際、電圧変調の場合と同様に、実効デューティサイクル変調でも印加される実効電圧は同じになるが、PZTに伝達される有効電力は劣化する実際、以下の式で表される:
【0246】
【数3】
【0247】
第一高調波を考える場合、Irmsはトランスデューサに印加される実電圧の振幅の関数であり、パルス幅変調はトランスデューサに供給される電圧の持続時間を変化させるため、Irmsを制御する。
【0248】
PMICの具体的な設計は、最先端の設計を採用し、制御部が使用するフィードバックループと監視経路の完全なセットを含む、PZTに適用する周波数範囲とステップの超精密制御を可能にする。
【0249】
エアロゾル化セクションの残りの部分は、3.7VバッテリーからPZTコンタクトパッドに必要な電力を供給するDC/DC昇圧コンバータと変圧器で構成されている。
【0250】
ここで添付図面の図43を参照すると、ドライバ装置202は、本書では電力管理集積回路又はPMIC300と呼ばれる超音波トランスデューサドライバマイクロチップから構成されている。PMIC300は、共振回路を駆動するためのマイクロチップである。共振回路は、LCタンク、アンテナ、又は、この場合、圧電トランスデューサ(超音波トランスデューサ215)である。
【0251】
本開示において、チップ、マイクロチップ、集積回路という用語は、互換性がある。マイクロチップ又は集積回路は、相互に接続された複数の組み込みコンポーネント及びサブシステムから構成される単一ユニットである。マイクロチップは、例えば、少なくとも一部がシリコンなどの半導体であり、半導体製造技術を使用して製造される。
【0252】
ドライバ装置202はまた、PMIC300に電気的に接続される、本書においてブリッジ集積回路又はブリッジIC301と称される第2のマイクロチップを備える。ブリッジIC301は、LCタンク、アンテナ又は圧電トランスデューサなどの共振回路を駆動するためのマイクロチップである。ブリッジIC301は、相互に接続された複数の組み込み部品やサブシステムから構成される1つのユニットである。
【0253】
この例では、PMIC300とブリッジIC301は、ドライバ装置202の同一基板に実装されている。この例では、PMIC300の物理的な寸法は幅1~3mm、長さ1~3mmであり、ブリッジIC301の物理的な寸法は幅1~3mm、長さ1~3mmである。
【0254】
ミスト発生装置201は、プログラマブル集積回路又はワンタイムプログラマブル集積回路又はOTP IC242を含んで構成される。ミスト発生装置201がドライバ装置202に結合されるとき、OTP ICは、PMIC300に電気的に接続されて、PMIC300がOTP IC 242に供給される電圧を管理できるように、PMIC300から電力を受けるようになっている。また、OTP IC 242は、ドライバ装置202内の通信バス302に接続されている。この例では、通信バス302はI2Cバスであるが、他の例では、通信バス302は他のタイプのデジタルシリアル通信バスである。
【0255】
ミスト発生装置201内の超音波トランスデューサ215は、ブリッジIC301に電気的に接続されており、装置200の使用時にブリッジIC301が生成する交流駆動信号により超音波トランスデューサ215を駆動することができる。
【0256】
ドライバ装置202は、通信バス302と通信可能に電気的に結合されたマイクロコントローラ303の形態のプロセッサで構成されている。この例では、マイクロコントローラ303は、BluetoothTMlow energy(BLE)マイクロコントローラである。マイクロコントローラ303は、バッテリ250によって駆動される低ドロップアウトレギュレータ(LDO)304から電力を受け取る。LDO304は、電池250の電圧に変動があっても、マイクロコントローラ303が安定して動作できるように、マイクロコントローラ303に安定したレギュレートされた電圧を供給する。
【0257】
ドライバ装置202は、バッテリ250から給電されるDC-DC昇圧コンバータ305の形態で電圧レギュレータを構成している。昇圧コンバータ305は、バッテリ250の電圧をプログラム可能な電圧VBOOSTまで上昇させる。プログラム可能な電圧VBOOSTは、PMIC300からの電圧制御信号VCTLに応答して、昇圧コンバータ305によって設定される。詳細は後述するが、昇圧コンバータ305は、電圧VBOOSTをブリッジIC301に出力する。他の例では、電圧レギュレータは、選択可能な電圧を出力する降圧コンバータ又は他のタイプの電圧レギュレータである。
【0258】
電圧制御信号VCTLは、この例では、PMIC300内に実装されるデジタル-アナログ変換器(DAC)により生成される。DACはPMIC300内に統合されているため、図43では見えない。DAC及びPMIC300内にDACを統合する技術的利点は、以下に詳細に説明される。
【0259】
この例では、PMIC300は、USBコネクタ306がUSB充電器に結合されたときにPMIC300が充電電圧VCHRGを受け取ることができるように、ユニバーサルシリアルバス(USB)コネクタ306の形態の電源コネクタに接続される。
【0260】
ドライバ装置202は、この例では、静圧センサである第1圧力センサ307からなる。また、ドライバ装置202は、この例では、動的圧力センサである第2の圧力センサ308を含んで構成される。しかしながら、他の例では、ドライバ装置202は、2つの圧力センサ307、308のうちの1つのみから構成される。上述したように、圧力センサ307、308は、エアロゾルチャンバ262内の圧力の変化を感知して、使用者がミスト吸入器200を吸引しているときを感知する。
【0261】
この例では、ドライバ装置202は、PMIC300によって制御される複数のLED308で構成されている。
【0262】
マイクロコントローラ303は、通信バス302上のマスターデバイスとして機能し、PMIC300は第1のスレーブデバイス、OTP IC 242は第2のスレーブデバイス、第2の圧力センサ308は第3のスレーブデバイス、第1の圧力センサ307は第1のスレーブデバイスとなる。通信バス302により、マイクロコントローラ303は、ドライバ装置202内の以下の機能を制御することができる。
【0263】
1. PMICの全ての機能は、マイクロコントローラ303によって高度に設定可能である。
2. 超音波トランスデューサ215を流れる電流は、高帯域幅のセンス・整流回路によって、高いコモンモード電圧(ブリッジのハイサイド)でセンシングされる。感知された電流は、実効電流に比例した電圧に変換され、ブリッジIC301の電流感知出力端子309にバッファリングされた電圧として提供される。この電圧はPMIC300に供給されてサンプリングされ、I2C要求を通じてデジタル表現として利用できるようになる。超音波トランスデューサ215を流れる電流を感知することは、共振周波数追跡機能の一部を形成する。本明細書で説明するように、ブリッジIC301内でこの機能性を有効にする装置の能力は、重要な技術的利点を提供する。
3. PMIC300内に集積されたDAC(図43には示されていない)により、DC-DC昇圧コンバータ電圧VBOOSTを10Vから20Vの間になるようにプログラムすることが可能である。
4. マイクロコントローラ303は、装置202の充電器サブシステムが、この例では単一セル電池である電池250の充電を管理することを可能にする。
5. 発光ダイオード(LED)ドライバモジュール(図示せず)は、リニアモード又はガンマ補正モードのいずれかでLED308を駆動し、デジタル的に調光するためにPMIC300によって給電される。
6. マイクロコントローラ303は、圧力センサ307、308からPressure#1及びPressure#2センサ値を読み取ることができる。
【0264】
ここで添付図面の図44を参照すると、PMIC300は、この例では、統合されたサブシステムと、PMIC300に電気入出力を提供する複数のピンとからなる自己完結型のチップ又は集積回路である。本開示における集積回路又はチップへの言及は交換可能であり、いずれの用語も、例えばシリコンであってもよい半導体デバイスを包含する。
【0265】
PMIC300は、リファレンスブロック(BG)311、LDO312、電流センサ313、温度センサ314及び発振器315を含むアナログ部品から構成されるアナログコア310を備えている。
【0266】
以下により詳細に説明するように、発振器315は、パルス幅変調(PWM)フェーズA及びフェーズBを出力する遅延ロックループ(DLL)に結合されており、発振器315及びDLLは、ブリッジIC301内のHブリッジを駆動する2相中心整合PWM出力を生成する。
【0267】
DLLは、端と端が接続された複数の遅延線からなり、遅延線の合計遅延時間は、メインクロック信号clk_mの周期に等しくなっている。この例では、DLLは、発振器315からのクロック信号とLDO312からの安定化電源電圧とを受け取るPMIC300の、本書ではデジタルコア316と呼ばれるデジタルプロセッサ・サブシステムに実装されている。DLLは、デジタルコア316において端から端まで接続される多数の(例えば、数百万のオーダーの)遅延ゲートで実装される。
【0268】
現在のところ、集積回路市場における信号発生器部品でこの実装を構成するものはないので、二相中心整列PWM信号を生成するためにPMIC300の同じ集積回路に発振器315とDLLを実装することはユニークなことである。
【0269】
本明細書で説明したように、PWMは、ミストの発生を最適化するために電気エネルギーから運動エネルギーへの効率的な伝達を維持するために、ドライバ装置202が超音波トランスデューサ215の共振周波数を正確に追跡することを可能にする機能の一部分である。
【0270】
この例では、PMIC300は、例えばUSB電源からの電力によるバッテリ250の充電を制御する充電器回路317を含んで構成される。
【0271】
PMIC300は、バッテリ250からの電力によって、又はバッテリ250が充電中である場合には外部電源からの電力によってアナログコア310に電力を供給するようにPMIC300を構成する統合電力スイッチVSYSを含んで構成される。
【0272】
PMIC300は、組み込み型アナログ-デジタル変換器(ADC)サブシステム318を構成する。発振器315と共にADC318を同じ集積回路内に実装することは、それ自体、集積回路市場において、集積回路内にサブブロックとして実装された発振器とADCからなる他の集積回路が存在しないので、ユニークである。来の装置では、ADCは発振器とは別のディスクリート部品として提供され、ADCと発振器は同じPCBに実装されるのが一般的である。この従来の配置の問題点は、ADCと発振器の2つの独立したコンポーネントがPCB上で不必要にスペースを取ることである。さらに、従来のADCと発振器は、通常、I2Cバスなどのシリアルデータ通信バスで互いに接続されており、その通信速度は最大でも400kHzと限られているという問題がある。従来の装置とは対照的に、PMIC300は、ADC318と発振器315とが同一の集積回路内に集積されて構成されているため、ADC318と発振器315との間の通信にラグがなく、ADC318と発振器315とは互いに高速通信、例えば発振器315の速度(例えば3MHzから5MHz)で通信できることを意味する。
【0273】
この例のPMIC300では、発振器315は5MHzで動作しており、5MHzのクロック信号SYS CLOCKを生成している。しかしながら、他の例では、発振器315は、最大105MHzのはるかに高い周波数でクロック信号を生成する。本明細書で説明する集積回路は、全て発振器315の高い周波数で動作するように構成されている。
【0274】
ADC318は、複数のGPIO入力(IF_GPIO1~3)を構成する複数のフィードバック入力端子又はアナログ入力319からなる。フィードバック入力端子又はアナログ入力319の少なくとも1つは、ブリッジIC301内のHブリッジ回路からのフィードバック信号を受け、そのフィードバック信号は、Hブリッジ回路の動作のパラメータ又はHブリッジ回路が交流駆動信号で超音波トランスデューサ215などの共振回路を駆動しているときの交流駆動信号のパラメータを示すものである。後述するように、GPIO入力は、ブリッジIC301から、ブリッジIC301が報告するルート平均二乗(rms)電流を示す電流感知信号を受信するために使用される。この例では、GPIO入力の1つは、ブリッジIC301内のHブリッジからのフィードバック信号を受信するフィードバック入力端子である。
【0275】
ADCサブシステム318は、複数のADC入力端子319で受信したアナログ信号を、メインクロック信号の周波数に比例するサンプリング周波数でサンプリングする。そして、ADCサブシステム318は、サンプリングされたアナログ信号を用いて、ADCデジタル信号を生成する。
【0276】
この例では、PMIC300に内蔵されるADC318は、Hブリッジ334及び超音波トランスデューサ215を流れるRMS電流だけでなく、システムで利用できる電圧(例えば、VBAT、VCHRG、VBOOST)、PMIC300の温度、電池250の温度及び将来の拡張を可能にするGPIO入力(IF_GPIO1~3)などもサンプリングする。
【0277】
デジタルコア316は、ADCサブシステムからADC生成デジタル信号を受信し、ADCデジタル信号を処理して、ドライバ制御信号を生成する。デジタルコア316は、ドライバ制御信号をPWM信号発生器サブシステム(DLL332)に伝達し、PWM信号発生器サブシステムを制御する。
【0278】
現在市場に存在する整流回路は、非常に限られた帯域幅(典型的には1MHz未満)である。PMIC300の発振器315は最大5MHz、あるいは最大105Mhzで動作しているため、高帯域幅の整流回路がPMIC300に実装される。後述するように、ブリッジIC301のHブリッジ内のRMS電流を感知することは、ドライバ装置202が超音波トランスデューサ215を高精度で駆動することを可能にするフィードバックループの一部を形成している。フィードバックループは、圧電トランスデューサの製造におけるあらゆるプロセス変動(共振周波数の変動)に対応し、共振周波数の温度効果を補償するので、超音波トランスデューサの駆動という産業におけるゲームチェンジャーである。これは、ADC318、発振器315及びDLLをPMIC300の同一の集積回路内に統合するという発明的実現によって、部分的に達成される。この統合により、これらのサブシステムは、高速(例えば、5MHz又は最大105MHzのクロック周波数で)で互いに通信することが可能になる。これらのサブシステム間のラグを低減することは、超音波産業、特にミスト発生装置の分野において、ゲームチェンジャーとなる。
【0279】
ADC318は、バッテリ電圧監視入力VBATと充電器入力電圧監視入力VCHGの他、電圧監視入力VMON、VRTH、温度監視入力TEMPから構成される。
【0280】
温度監視入力TEMPは、PMIC300内に内蔵される温度センサ314から温度信号を受信する。これにより、PMIC300は、PMIC300内の実際の温度を正確に感知し、PMIC300内の誤動作、ならびにPMIC300の温度に影響を与えるプリント回路基板上の他のコンポーネントへの誤動作を検出することができる。そして、PMIC300は、ミスト吸入器200の安全性を維持するために、誤動作があれば超音波トランスデューサ215の励振を行わないようにブリッジIC301を制御することができる。
【0281】
追加温度センサ入力VRTHは、バッテリ250の温度を監視するドライバ装置202内の外部温度センサから温度感知信号を受信する。したがって、PMIC300は、過度に高いバッテリ温度によって引き起こされる損傷のリスクを低減するために、高いバッテリ温度の場合にバッテリ250の充電を停止するように反応するか、さもなければドライバ装置202をシャットダウンすることが可能である。
【0282】
PMIC300は、この例では、デジタルコア316からデジタル駆動信号を受信し、PMIC300の出力ピンに結合されるように構成された6つのLED321~326にLED駆動出力信号を提供するLEDドライバ320から構成される。したがって、LEDドライバ320は、最大6つの独立したチャネルでLED321~326を駆動し、調光することができる。
【0283】
PMIC300は、PMIC300内のデジタル信号をアナログの電圧制御信号に変換し、出力端子VDAC0を介してPMIC300から出力する第1デジタル-アナログ変換器(DAC)327を含んで構成される。第1DAC327は、デジタルコア316が生成したデジタル制御信号をアナログ電圧制御信号に変換し、出力端子VDAC0を介して出力して昇圧コンバータ305などの電圧レギュレータ回路を制御する。このようにして電圧制御信号は、共振回路(超音波トランスデューサ215)の動作を示すフィードバック信号に応答して、超音波トランスデューサ215などの共振回路を駆動するためのHブリッジ回路による変調用の所定の電圧を生成するように電圧レギュレータ回路を制御する。
【0284】
この例では、PMIC300は、PMIC300内のデジタル信号を、PMIC300から第2のアナログ出力端子VDAC1を介して出力されるアナログ信号に変換する第2のDAC328を含んで構成されている。
【0285】
DAC327、328をPMIC300の他のサブシステムと同じマイクロチップ内に埋め込むことにより、DAC327、328は、PMIC300内のデジタルコア316及び他のコンポーネントと、通信ラグがない、又は最小で高速に通信することができる。DAC327、328は、外部フィードバックループを制御するアナログ出力を提供する。例えば、第1DAC327は、昇圧コンバータ305に制御信号VCTLを供給し、昇圧コンバータ305の動作を制御する。他の例では、DAC327、328は、昇圧コンバータ305の代わりに、又はそれに加えて、DC-DC降圧コンバータに駆動信号を供給するように構成される。PMIC300に2つの独立したDACチャネルを統合することにより、PMIC300は、ドライバ装置202で使用される任意のレギュレータのフィードバックループを操作することができ、ドライバ装置202が超音波トランスデューサ215の超音波照射パワーを調節したり、超音波トランスデューサ215の絶対最大電流及び温度設定に対するアナログ閾値を設定することができるようにすることができる。
【0286】
PMIC300は、シリアル通信インターフェースを構成し、この例では、ピンを通して設定された外部I2Cアドレスを内蔵するI2Cインターフェースである。
【0287】
PMIC300はまた、マイクロチップの機能を実装するためのデジタルマシン(FSM)を含む様々な機能ブロックから構成される。これらのブロックは、以下でより詳細に説明される。
【0288】
ここで添付図面の図45を参照すると、パルス幅変調(PWM)信号発生器サブシステム329がPMIC300内に組み込まれている。PWM発生器システム329は、発振器315と、分周器330と、マルチプレクサ331と、遅延ロックループ(DLL)332とから構成される。後述するように、PWM発生系329は、2相センターアライメント型PWM発生器である。
【0289】
分周器330、マルチプレクサ331及びDLL332は、デジタルコア316内のデジタル論理部品(例えば、トランジスタ、論理ゲート等)で実装される。
【0290】
本開示の例では、発振器315及びそれぞれPWM生成システム329によってカバーされる周波数範囲は、50kHz~5MHz又は最大105MHzである。PWM生成システム329の周波数精度は±1%であり、温度に対する広がりは±1%である。現在のIC市場において、50kHz~5MHz又は105MHzまでの周波数範囲を提供できる発振器及び2相中心整合型PWM発生器を内蔵したICはない。
【0291】
発振器315は、50kHz~5MHz、又は105MHzまでの周波数のメインクロック信号(clk_m)を生成する。メインクロックclk_mは、分周器330に入力され、メインクロックclk_mの周波数を1つ以上の所定の除数量で分周する。この例では、分周器330は、メインクロックclk_mの周波数を2、4、8、16で分周し、分周された周波数のクロックを出力としてマルチプレクサ331に供給する。マルチプレクサ331は、分周された周波数のクロックを多重化し、分周された周波数の出力をDLL332に供給する。このDLL332に渡される信号は、DLL332が所望の周波数で信号を出力するように制御する周波数基準信号である。なお、他の例では、分周器330及びマルチプレクサ331は省略される。
【0292】
また、発振器315は、第1位相クロック信号フェーズ1と第2位相クロック信号フェーズ2の2つの位相を生成する。第1位相クロック信号と第2位相クロック信号の位相は、センターアライメントされている。図46に示されるように:
第1相クロック信号フェーズ1は、clk_mの正の半周期の可変時間だけHighになり、clk_mの負の半周期にはLowになる。
第2相クロック信号フェーズ2は、clk_mの負の半周期の可変時間だけHighになり、clk_mの正の半周期の間Lowになる。
【0293】
そして、第1相クロック信号フェーズ1と第2相クロック信号フェーズ2を用いて、2倍周波数のクロック信号を生成するDLL332に送られる。この2倍周波数クロック信号は、メインクロック信号clk_mの2倍の周波数である。この例では、DLL332内の「OR」ゲートが、第1位相クロック信号フェーズ1と第2位相クロック信号フェーズ2とを用いて、2倍周波数のクロック信号を生成する。この2倍周波数クロック又は分周器330から来る分周された周波数は、選択された目標周波数に基づいて選択され、その後、DLL332の基準として使用される。
【0294】
DLL332内では、以下「クロック」と称する信号がメインクロックclk_mを2倍したものを表し、以下「クロック_del」と称する信号がクロックを1周期分遅らせたレプリカを表している。クロックとclock_delは位相周波数検出器を通過させる。そして、位相誤差の極性に基づき、ノードVcをチャージポンプで充放電する。DLL332の総遅延が正確に1周期になるまで、DLL332内の一つ一つの遅延ユニットの遅延を制御するために、制御電圧が直接供給される。
【0295】
DLL332は、第1相クロック信号フェーズ1及び第2相クロック信号フェーズ2の立ち上がりエッジを、2倍周波数クロック信号の立ち上がりエッジに同期するように制御する。DLL332は、それぞれの周波数基準信号及びデューティサイクル制御信号に応じて、第1位相クロック信号フェーズ1及び第2位相クロック信号フェーズ2の周波数及びデューティサイクルを調整し、第1位相出力信号フェーズA及び第2位相出力信号フェーズBを生成してHブリッジ又はインバータを駆動して超音波トランスデューサを駆動する交流駆動信号を発生させる。
【0296】
PMIC300は、第1相出力信号フェーズAをHブリッジ回路に出力する第1相出力信号端子PHASE_Aと、第2相出力信号フェーズBをHブリッジ回路に出力する第2相出力信号端子PHASE_Bとから構成されている。
【0297】
この例では、DLL332は、デューティサイクル制御信号に応答してDLL332の各遅延線の遅延時間を変化させることにより、第1相クロック信号フェーズ
1及び第2相クロック信号フェーズ2のデューティサイクルを調節する。
【0298】
クロックは、より良い精度を保証するため、その周波数の2倍の周波数で使用される。図47に示すように、説明のためにメインクロックclk_mの周波数が使用される場合(本開示の例では使用されない)、フェーズAはクロックの立ち上がりエッジRに同期し、フェーズBはクロックの立ち下がりエッジFに同期する。DLL332の遅延線は立ち上がりエッジRを制御し、したがって、立ち下がりエッジFについては、PWM発生システム329は不完全となりうるDLL332の遅延ユニットの完全一致を頼る必要が生じるであろう。しかし、この誤差を取り除くために、PWM生成システム329は、フェーズAとフェーズBの両方が2倍周波数クロックの立ち上がりエッジRと同期するように、2倍周波数クロックを使用する。
【0299】
20%から50%までのデューティサイクルを2%のステップサイズで実行するために、DLL332の遅延線は25個の遅延ユニットからなり、それぞれの遅延ユニットの出力はフェーズ nを表している。最終的には、最後の遅延ユニットの出力の位相が入力クロックに対応することになる。すべての遅延がほぼ同じになることを考慮すると、デジタルコア316の単純な論理で特定の遅延ユニットの出力で特定のデューティサイクルが得られる。
【0300】
DLL332が遅延の期間をロックすることができないかもしれないが、2つ以上の期間があり、DLL332を非収束ゾーンに持っていくので、DLL332の起動に注意することが重要である。この問題を回避するために、PWM発生システム329に起動回路が実装され、これによりDLL332は既知の確定的な状態から起動することができる。起動回路はさらに、DLL332が最小の遅延で起動することを可能にする。
【0301】
本開示の例では、PWM発生器システム329によってカバーされる周波数範囲が拡張されるので、DLL332内の遅延ユニットは、4ns(発振器周波数5MHzの場合)~400ns(発振器周波数50kHzの場合)の遅延を提供することが可能である。これらの異なる遅延に対応するために、コンデンサCbがPWM発生システム329に含まれ、コンデンサ値は必要な遅延を提供するように選択される。
【0302】
フェーズAとフェーズBはDLL332から出力され、デジタルIOを介してブリッジIC301に渡され、フェーズAとフェーズBをブリッジIC301の動作制御に使用できるようにする。
【0303】
次に、ドライバ装置202のバッテリ充電機能について、より詳細に説明する。バッテリ充電サブシステムは、PMIC300に内蔵され、PMIC300にホストされたデジタル充電コントローラによって制御される充電器回路317から構成される。充電器回路317は、通信バス302を介してマイクロコントローラ303により制御される。バッテリ充電サブシステムは、上述したバッテリ250のような単セルリチウムポリマー(LiPo)又はリチウムイオン(Li-ion)バッテリを充電することが可能である。
【0304】
この例では、バッテリ充電サブシステムは、5V電源(例えば、USB電源)から最大1Aの充電電流でバッテリ又はバッテリを充電することができる。通信バス302(I2Cインターフェース)を介して、以下のパラメータのうちの1つ以上をプログラムして、バッテリの充電パラメータを適応させることができる。
【0305】
充電電圧は、3.9Vから4.3Vの間で100mVステップで設定することができる。
【0306】
充電電流は150mAから1000mAまで50mA単位で設定可能である。
【0307】
プリチャージ電流は、充電電流の1/10である。
【0308】
プリチャージ、急速充電のタイムアウトはそれぞれ5~85分、20~340分
の間で設定可能である。
【0309】
オプションとして、外部負温度係数(NTC)サーミスタを使用して電池温度を監視することができる。
【0310】
いくつかの例では、バッテリ充電サブシステムは、ホストマイクロコントローラ303への割り込みを発生させることによって、以下のイベントのうちの1つ以上を報告する。
バッテリ検出
バッテリー充電中
バッテリーが完全に充電されている
バッテリーがない
充電タイムアウト
充電用電源が不足電圧限界以下である
【0311】
充電器回路317をPMIC300に埋め込むことの主な利点は、バッテリ充電サブシステムの安全な動作を保証するPMIC300内に、記載された全てのプログラミングオプション及びイベント表示を実装することができることである。さらに、PCB上に別々に実装された充電システムの離散的な構成要素からなる従来のミスト吸入器と比較して、著しい製造コスト及びPCBスペースの節約を達成することが可能である。また、充電器回路317は、充電電流と電圧の汎用性の高い設定、異なる故障タイムアウト、詳細な状態解析のための多数のイベントフラグを可能にする。
【0312】
次に、アナログ-デジタル変換器(ADC)318について、より詳細に説明する。本発明者らは、高速発振器315を有するPMIC300内にADC318を統合するために、重要な技術的課題を克服しなければならなかった。さらに、PMIC300内にADC318を統合することは、IC市場で入手可能な多くのディスクリートADCデバイスのうちの1つを使用することに依存する当技術分野の従来のアプローチに反するものである。
【0313】
この例では、ADC318は、メインクロック信号clk_mの周波数に等しいサンプリングレートで超音波トランスデューサドライバチップ(PMIC300)内の少なくとも1つのパラメータをサンプリングする。この例では、ADC318は、マイクロプロセッサ303のリソースを節約するためにマイクロプロセッサ303からデジタルサンプリングをアンロードすることができる10ビットアナログ-デジタル変換器である。PMIC300内にADC318を統合することはまた、そうでなければADCのサンプリング能力を遅くするI2Cバスを使用する必要性を回避する(従来の装置は、専用のディスクリートADCとマイクロコントローラの間で、典型的には最大400kHzの限られたクロック速度でデータを伝達するためにI2Cバスに依存する)。
【0314】
本開示の例では、以下のパラメータのうちの1つ又は複数が、ADC318によって順次サンプリングされ得る。
【0315】
i. 超音波トランスデューサを駆動している外部インバータ回路から超音波トランスデューサドライバチップ(PMIC300)で受信されるrms電流信号。この例では、このパラメータは、ブリッジIC301によって報告される二乗平均平方根(rms)電流である。実効電流を感知することは、超音波トランスデューサ215を駆動するために使用されるフィードバックループを実装するのに重要である。ADC318は、この情報がI2Cバスを介して伝送されることに依存しないので、最小限の遅れ又は全くない信号を介して、ブリッジIC301から直接、実効電流を感知することが可能である。これは、I2Cバスの比較的低い速度によって制約される従来の装置と比較して、重要な速度及び精度の利点を提供する。
ii. PMIC300に接続された電池の電圧。
iii. PMIC300に接続された充電器の電圧。
iv. PMIC300のチップ温度を示す温度信号など。上述したように、温度センサ314が発振器315と同じICに内蔵されているため、この温度は非常に正確に測定することができる。例えば、PMIC300の温度が上がれば、PMIC300によって電流、周波数、PWMが制御され、トランスデューサの発振が制御され、それが温度を制御する。
v. 二つの外部端子。
vi. バッテリーパックの温度を監視するための外部NTC温度センサ。
【0316】
いくつかの例では、ADC318は、例えばラウンドロビン方式で、1つ又は複数の上記ソースを順次サンプリングする。ADC318は、最大5MHz又は最大105MHzであってよい発振器315の速度のような高速でソースをサンプリングする。
【0317】
いくつかの例では、デバイス202は、使用者又はデバイスの製造者が、平均化のために各ソースから何個のサンプルを取るかを指定できるように構成される。例えば、使用者は、rms電流入力から512サンプル、バッテリ電圧から64サンプル、充電器入力電圧から64サンプル、外部ピンから32サンプル、NTCピンから8サンプルを取るようにシステムを設定することができる。さらに、使用者は上記のソースのうち1つをスキップするかどうかを指定することもできる。
【0318】
いくつかの例では、使用者は各ソースに対して、全範囲を複数のゾーン(例えば3ゾーン)に分割する2つのデジタル閾値を指定することができる。その後、サンプリングされた値がゾーン 2 からゾーン 3 へと変化したときに、割り込みを発生させるように設定することができる。
【0319】
現在市場で入手可能な従来のICでは、PMIC300の上記の機能を実行することはできない。このような柔軟性と粒度を有するサンプリングは、超音波トランスデューサのような共振回路又はコンポーネントを駆動する場合に最も重要である。
【0320】
この例では、PMIC300は、8ビット汎用デジタル入力出力ポート(GPIO)で構成される。各ポートは、デジタル入力及びデジタル出力として構成することができる。また、図48の表に示すように、一部のポートにはアナログ入力機能がある。
【0321】
PMIC300のGPIO7~GPIO5ポートは、通信(I2C)バス302上の装置のアドレス設定に使用することができる。その後、8個の同一デバイスを同一のI2Cバスで使用することができる。これは、アドレスが競合することなく、8つの同一の装置を同一のI2Cバス上で使用することができるため、IC業界ではユニークな機能である。これは、各デバイスがPMIC300の起動後の最初の100μsの間にGPIO7-GPIO5の状態を読み取り、その部分のアドレスをPMIC300に内部記憶させることで実現されている。PMIC300が起動した後、GPIOは他の目的に使用することができる。
【0322】
以上のように、PMIC300は、6チャンネルのLEDドライバ320を含んで構成される。この例では、LEDドライバ320は、5V耐圧のN-Channel Metal-Oxide Semiconductor(NMOS)電流源で構成されている。LEDドライバ320は、LED電流を5mA、10mA、15mA、20mAの4つの離散レベルで設定できるように構成されている。LEDドライバ320は、ガンマ補正の有無にかかわらず、12ビットPWM信号で各LEDチャネルを調光するように構成されている。LEDドライバ320は、PWM周波数を300Hzから1.5KHzの間で変化させるように構成されている。この機能は、PMIC300のサブシステムとして組み込まれているため、超音波ミスト吸入器の分野ではユニークである。
【0323】
この例では、PMIC300は、PMIC300に組み込まれた2つの独立した6ビットデジタル-アナログ変換器(DAC)327、328で構成されている。DAC327、328の目的は、外部レギュレータ(例えば、DC-DC昇圧コンバータ305 降圧コンバータまたはLDO)のフィードバック経路を操作するためにアナログ電圧を出力することである。さらに、いくつかの例では、DAC327、328は、後述するように、ブリッジIC301の過電流シャットダウンレベルを動的に調整するために使用することも可能である。
【0324】
各DAC327、328の出力電圧は、0Vと1.5Vの間、又は0VとV_battery(Vbat)の間でプログラム可能である。この例では、DACの出力電圧の制御は、I2Cコマンドを介して行われる。PMIC300に2つのDACを組み込んだことはユニークであり、電流の動的な監視制御が可能になる。もし、DAC327、328のいずれかが外部チップであった場合、I2Cプロトコルによる速度制限と同じ制約を受けることになる。これら全ての組み込み機能がPMIC内にある場合、デバイス202の有効電力監視配置は最適な効率で機能する。これらが外付け部品であったならば、有効電力監視配置は全く非効率的であったろう。
【0325】
ここで添付図面の図49を参照すると、ブリッジIC301は、埋め込まれた電力スイッチング回路333を構成するマイクロチップである。この例では、電力スイッチング回路333は、図50に示すHブリッジ334であり、これは以下に詳細に説明される。しかしながら、他の例のブリッジIC301は、超音波トランスデューサ215を駆動するための交流駆動信号を生成するための同等の機能を果たす電力スイッチング回路であれば、Hブリッジ334に代わる電力スイッチング回路を組み込んでもよいことは理解されるであろう。
【0326】
ブリッジIC301は、PMIC300のPWM信号生成サブシステムから第1位相出力信号フェーズAを受信する第1位相端子フェーズAを構成している。また、ブリッジIC301は、PMIC300のPWM信号発生器サブシステムから第2相出力信号フェーズBを受信する第2相端子フェーズBを構成する。
【0327】
ブリッジIC301は、Hブリッジ334の電流の流れを直接感知し、ブリッジIC301のRMS_CURR端子を介してRMS電流出力信号を提供する電流感知回路335から構成される。電流検出回路335は、Hブリッジ334に流れる電流が所定の閾値以上であることを検出する過電流監視用に構成されている。Hブリッジ334を構成する電力スイッチング回路333と電流検出回路335の全てをブリッジIC301の同じ組み込み回路内に統合したことは、IC市場においてユニークな組み合わせである。現時点では、IC市場において、Hブリッジを流れる実効値電流を検知するための回路が埋め込まれたHブリッジを構成する集積回路は他にない。
【0328】
ブリッジIC301は、過温度監視を含む温度センサ336から構成される。温度センサ336は、温度センサ336がブリッジIC301が所定の閾値を超える温度で動作していることを検出した場合に、ブリッジIC301をシャットダウンするか、又はブリッジIC336の少なくとも一部を無効にするように構成される。したがって、温度センサ336は、ブリッジIC301が過度に高い温度で動作する場合に、ブリッジIC301又はドライバ装置202内の他のコンポーネントの損傷を防止する統合された安全機能を提供する。
【0329】
ブリッジIC301は、電源スイッチング回路333に一体的に接続されたデジタルステートマシン337を含んで構成される。デジタルステートマシン337は、PMIC300からのフェーズA信号及びフェーズB信号と、マイクロコントローラ303からの例えばENABLE信号とを受信する。デジタルステートマシン337は、第1相出力信号フェーズAと第2相出力信号フェーズBとに基づいてタイミング信号を生成する。
【0330】
デジタルステートマシン337は、電力切替回路333を制御するために、フェーズA信号及びフェーズB信号に対応するタイミング信号、ならびにBRIDGE PR信号及びBRIDGE EN信号を電力切替回路333へ出力する。これにより、デジタルステートマシン337は、Hブリッジ回路334のスイッチ
1-T4にタイミング信号を出力して、Hブリッジ回路が超音波トランスデューサ215などの共振回路を駆動するための交流駆動信号を出力するように、スイッチT1-T4が順番にオン/オフするように制御する。
【0331】
詳細は後述するが、スイッチングシーケンスは、共振回路(超音波トランスデューサ215)が蓄えたエネルギーを放散するために、第1スイッチT1及び第2スイッチT2 をオフし、第3スイッチT3 及び第4スイッチT4 をオンするフリーフロート期間から構成されている。
【0332】
ブリッジIC301は、ブリッジIC301内の組み込み部品が正常に動作しているかどうかを判定するために、ブリッジIC301を試験することができる試験コントローラ338を含んで構成される。テストコントローラ338は、TEST DATA、TEST CLK、TEST LOAD端子に結合されており、ブリッジIC301にデータを送り込み、ブリッジIC301の動作をテストする外部制御装置に接続することができるようになっている。また、ブリッジIC301は、TST PAD端子を介してブリッジIC301内のデジタル通信バスをテストすることができるTEST BUSを構成している。
【0333】
ブリッジIC301は、ブリッジIC301の起動動作を制御するパワーオンリセット回路(POR)339を含んで構成される。POR339は、電源電圧が所定範囲内にある場合にのみ、ブリッジIC301が正常に起動するようにする。電源電圧が所定の範囲外である場合、例えば電源電圧が高すぎる場合、POR339は、電源電圧が所定の範囲内に入るまでブリッジIC301の起動を遅延させる。
【0334】
ブリッジIC301は、ブリッジIC301の他のサブシステムが使用するための正確な基準電圧を提供する基準ブロック(BG)340を含んで構成される。
【0335】
ブリッジIC301は、電流センサ335などのブリッジIC301内の電力スイッチング回路333及び/又は他のサブシステムに正確な電流を提供する電流基準341を構成する。
【0336】
温度センサ336は、ブリッジIC301のシリコンの温度を連続的に監視する。温度が所定の温度閾値を超えた場合、パワースイッチング回路333は自動的にスイッチオフされる。さらに、過熱を外部ホストに報告して、過熱事象が発生したことを外部ホストに知らせるようにしてもよい。
【0337】
デジタルステートマシン(FSM)337は、電力スイッチング回路333のためのタイミング信号を生成し、この例では、Hブリッジ334を制御するためのタイミング信号である。
【0338】
ブリッジIC301は、ブリッジIC301の様々なサブシステムからの信号を電圧及び電流基準340、341と比較し、ブリッジIC301のピンを介して基準出力信号を提供する比較器342、343から構成される。
【0339】
添付図面の図50を再び参照すると、この例のHブリッジ334は、Hブリッジ334の両側のNMOS電界効果トランジスタ(FET)スイッチの形態の4つのスイッチから構成される。Hブリッジ334は、Hブリッジ構成で接続される
4つのスイッチ又はトランジスタT1-T4からなり、各トランジスタT1-T4は、それぞれの論理入力A~Dによって駆動される。トランジスタT1-T4は、図50に図示されるように接続される2つの外部コンデンサCbを用いて内部で生成されるブートストラップ電圧によって駆動されるように構成される。
【0340】
Hブリッジ334は、ブリッジIC301の各ピンに接続される各種電源の入出力を構成している。Hブリッジ334は、図50においてVBOOSTと表示された第1の電源端子を介して、昇圧コンバータ305から出力されるプログラマブル電圧VBOOSTを受け取る。Hブリッジ334は、図50においてVSS_Pと表示された第2の電源端子を構成する。
【0341】
Hブリッジ334は、Hブリッジ334から出力される交流駆動信号が超音波トランスデューサ215を駆動できるように、超音波トランスデューサ215のそれぞれの端子に接続するように構成された出力OUTP、OUTNを構成する。
【0342】
4つのスイッチ又はトランジスタT1-T4の切り替えは、論理入力A~Dを介したデジタル状態マシン337からの切り替え信号により制御される。図50は4つのトランジスタT1-T4を示しているが、他の例では、Hブリッジ334は、Hブリッジの機能を実現するために、より多くのトランジスタ又は他のスイッチング部品を組み込んでいることを理解されたい。
【0343】
この例では、Hブリッジ334は、超音波トランスデューサ215を駆動してミストを最適に発生させるのに十分な電力を有する交流駆動信号を供給するために、22W~50Wのスイッチング電力で動作する。この例のHブリッジ334がスイッチングする電圧は±15Vであるが、他の例では±20Vである。
【0344】
この例では、Hブリッジ334は、3MHzから5MHz、又は最大105MHzの周波数でスイッチングする。これは、IC市場で入手可能な従来の集積回路Hブリッジと比較して、高いスイッチング速度である。例えば、現在IC市場で入手可能な従来の集積回路Hブリッジは、最大周波数がわずか2MHzで動作するように構成されている。本明細書で説明するブリッジIC301は別として、IC市場で入手可能な従来の集積回路Hブリッジは、最大105MHzどころか、最大5MHzの周波数で22V~50Vの電力で動作可能なものは存在しない。
【0345】
次に添付図面の図51を参照して、電流センサ335は、図50に示すように、
Hブリッジ334のそれぞれのハイサイド及びローサイドと直列に接続される正及び負の電流感知抵抗RshuntP、RshuntNから構成される。電流感知抵抗RshuntP、RshuntNは、この例では、0.1 Ω.の低値抵抗である。電流センサ335は、第1の電流センサ抵抗RshuntPを横切る電圧降下を測定する第1のオペアンプ344の形態の第1の電圧センサと、第2の電流センサ抵抗RshuntNを横切る電圧降下を測定する第2のオペアンプ345の形態の第2の電圧センサから構成されている。この例では、各オペアンプ344、345の利得は2V/Vである。各オペアンプ344、345の出力は、この例では、1mA/Vである。電流センサ335は、プルダウン抵抗Rcsからなり、この例では、2kΩである。オペアンプ344、345の出力は、信号CSoutの過渡現象を除去するローパスフィルタ346を通過した出力CSoutを提供する。ローパスフィルタ346の出力Voutは、電流センサ335の出力信号である。
【0346】
このようにして、電流センサ335は、Hブリッジ334を通り、それぞれ超音波トランスデューサ215を通って流れる交流電流を測定する。電流センサ335は、交流電流を、接地に対する等価なRMS出力電圧(Vout)に変換する。Hブリッジ334は、最大5MHz又はいくつかの例では最大105MHzの周波数で動作させることができるので、電流センサ335は、高帯域幅能力を有する。電流センサ335の出力Voutは、超音波トランスデューサ215を流れる測定された交流実効電流に相当する正の電圧を報告する。電流センサ335の出力電圧Voutは、この例では、ブリッジIC301内の制御回路にフィードバックされ、Hブリッジ334を流れる電流、ひいてはトランスデューサ215を流れる電流が所定の閾値を超えた場合に、ブリッジIC301がHブリッジ334を停止することを可能にする。さらに、過電流閾値イベントは、ブリッジIC301がブリッジIC301のOVC TRIGGピンを介して過電流イベントを報告できるように、ブリッジIC301の第1のコンパレータ342に報告される。
【0347】
次に添付図面の図52を参照して、Hブリッジ334の制御について、超音波トランスデューサ215の等価圧電モデルを参照しながらも説明する。
【0348】
図52のV_outで示されるように、Hブリッジ334の出力OUTP、OUTNにわたって正の電圧を発生させるために(矢印の方向に注意)、入力A~Dを介したトランジスタT1-T4のスイッチングシーケンスは次のとおりである:
1. 超音波トランスデューサ215を横切る正の出力電圧:A-オン、B-オフ、C-オフ、D-オン
2. 正の出力電圧からゼロへの移行: A-オフ、B-オフ、C-オフ、D-オン。この遷移の間、Aのスイッチングエラー又は遅延がある場合、A及びCに流れる電流を最小化又は回避することにより、電力損失を最小化又は回避するために、Cが最初にスイッチオフされる。
3. 出力電圧ゼロ:A-OFF、B-OFF、C-ON、D-ON。この出力電圧ゼロのフェーズでは、Hブリッジ334の出力OUTP、OUTNの端子は、オンのままのC、Dスイッチにより接地される。これにより、超音波トランスデューサの等価回路のコンデンサが蓄えたエネルギーが散逸し、超音波トランスデューサに印加されるスイッチング波形電圧の電圧オーバーシュートが最小化される。
4. 出力電圧ゼロからマイナスへの遷移A-OFF、B-OFF、C-ON、D-OFF。
5. 超音波トランスデューサ215を横切る負の出力電圧:A-OFF、B-ON、C-ON、D-OFF。
【0349】
最大5MHz、あるいは最大105MHzの高周波数では、スイッチングシーケンスの各部分の時間が非常に短く、ナノ秒又はピコ秒のオーダーであることが理解されるであろう。例えば、スイッチング周波数が6MHzの場合、スイッチングシーケンスの各部分は約80ナノ秒で発生する。
【0350】
上記スイッチングシーケンスによるHブリッジ334の出力電圧OUTP、OUTNを示すグラフが添付図面の図53に示されている。スイッチングシーケンスのゼロ出力電圧部分は、超音波トランスデューサ215によって蓄積されたエネルギー(例えば、超音波トランスデューサの等価回路のコンデンサによって蓄積されたエネルギー)に対応するために含まれている。これにより、上述したように、超音波トランスデューサに印加されるスイッチング波形電圧の電圧オーバーシュートを最小限に抑えることができるので、超音波トランスデューサにおける不要な電力散逸や加熱を最小限に抑えることができる。
【0351】
また、電圧のオーバーシュートを最小化又は除去することにより、ブリッジIC301内のトランジスタが定格電圧を超える電圧を受けることを防止し、トランジスタが損傷するリスクを低減することができる。さらに、電圧オーバーシュートの最小化又は除去は、ブリッジIC301が、本明細書に記載の電流感知フィードバックループの破壊を最小化する方法で、超音波トランスデューサを正確に駆動することを可能にする。その結果、ブリッジIC301は、最大5MHz、あるいは最大105MHzの高い周波数で、22W~50W、あるいは70Wという高い電力で超音波トランスデューサを駆動することができる。
【0352】
この例のブリッジIC301は、PMIC300によって制御され、本書において強制モードとネイティブ周波数モードと呼ばれる2つの異なるモードで動作するように構成されている。これら2つの動作モードは、既存のブリッジICよりも新規なものである。特に、ネイティブ周波数モードは、従来の装置と比較して、超音波トランスデューサの駆動の精度及び効率において実質的な利点を提供する主要な革新である。
【0353】
強制周波数モード(FFM)
強制周波数モードでは、Hブリッジ334は上記の順序で制御されますが、使用者が選択可能な周波数で制御される。結果として、HブリッジトランジスタT1-T4は、超音波トランスデューサ215の固有の共振周波数とは無関係に強制的に制御され、超音波トランスデューサ215にわたる出力電圧を切り換える。したがって、強制周波数モードでは、Hブリッジ334は、共振周波数f1を有する超音波トランスデューサ215を異なる周波数f2で駆動することができる。
【0354】
超音波トランスデューサをその共振周波数とは異なる周波数で駆動することは、異なる用途に動作を適合させるために適切である場合があります。例えば、共振周波数からわずかにずれた周波数で超音波トランスデューサを駆動することが適切である場合がある(トランスデューサの機械的損傷を防止するための機械的理由による)。あるいは、超音波トランスデューサを低い周波数で駆動することが適切であるかもしれないが、超音波トランスデューサは、そのサイズのために、異なる固有の共振周波数を有する。
【0355】
ドライバ装置202は、特定のアプリケーション又は特定の超音波トランスデューサに対するドライバ装置202の構成に対応して、超音波トランスデューサ215を強制周波数モードで駆動するようにブリッジIC301を制御する。例えば、ドライバ装置202は、ミスト吸入器200が、使用者に送達するための薬剤を含む特定の粘度の液体からミストを生成するような特定の用途に使用されている場合、強制周波数モードで動作するように構成されてもよい。
【0356】
ネイティブ周波数モード(NFM)
以下のネイティブ周波数モードの動作は重要な開発であり、現在IC市場で入手可能な従来の超音波ドライバと比較して、精度と効率の改善における利点を提供するものである。
【0357】
ネイティブ周波数モードの動作は、上述と同じスイッチングシーケンスに従うが、シーケンスのゼロ出力部分のタイミングは、強制周波数モード動作における電流スパイクに起因して発生し得る問題を最小化又は回避するように調整される。これらの電流スパイクは、超音波トランスデューサ215にかかる電圧がその反対側の電圧極性に切り替わるときに発生する。圧電結晶からなる超音波トランスデューサは、並列接続されたコンデンサを組み込んだ電気的等価回路を有する(例えば、図52のピエゾモデルを参照のこと)。超音波トランスデューサを横切る電圧が正の電圧から負の電圧にハードスイッチされる場合、高いdV/dtのために、コンデンサに蓄えられたエネルギーが消散する際に大きな電流の流れがあり得る。
【0358】
ネイティブ周波数モードは、超音波トランスデューサ215にかかる電圧を正電圧から負電圧にハードスイッチすることを回避する(逆もまた然りである)。その代わりに、反転電圧を印加する前に、超音波トランスデューサ215(圧電結晶)は、フリーフロート期間の間、その端子にわたってゼロ電圧を印加した状態でフリーフロート状態にされる。PMIC300は、ブリッジ334が、フリーフロート期間中に超音波トランスデューサ215の内部に流れる電流(圧電結晶内に蓄積されたエネルギーによる)が超音波トランスデューサ215の端子間の電圧を反転させるように、ブリッジIC301の駆動周波数を設定する。
【0359】
その結果、Hブリッジ334が超音波トランスデューサ215の端子に負の電圧を印加するとき、超音波トランスデューサ215(等価回路のコンデンサ)は既に逆充電されており、高いdV/dtが存在しないため電流スパイクは生じない。
【0360】
しかしながら、超音波トランスデューサ215が最初に作動したときに、超音波トランスデューサ215(圧電結晶)内の電荷が蓄積されるのに時間がかかることは理解されたい。したがって、超音波トランスデューサ215内のエネルギーがフリーフロート期間中に電圧を反転させるという理想的な状況は、超音波トランスデューサ215内の発振が電荷を蓄積した後にのみ発生する。これに対応するために、ブリッジIC301が超音波トランスデューサ215を初めて起動するとき、PMIC300は、Hブリッジ334を介して超音波トランスデューサ215に供給される電力を低い値である第1の値(例えば、5V)に制御する。次いで、PMIC300は、超音波トランスデューサ215内に蓄積されたエネルギーを構築するために、超音波トランスデューサ215にHブリッジ334を介して供給される電力を、ある期間にわたって第1の値よりも高い第2の値(例えば15V)まで増加させるように制御する。超音波トランスデューサ215内部の電流が十分に発達するまで、この発振のランプの間にも電流スパイクが発生する。しかしながら、起動時に低い第1の電圧を使用することによって、それらの電流スパイクは十分に低く保たれ、超音波トランスデューサ215の動作への影響を最小限に抑えることができる。
【0361】
ネイティブ周波数モードを実現するために、ドライバ装置202は、発振器315の周波数と、Hブリッジ334から出力される交流駆動信号のデューティサイクル(ターンオン時間とフリーフロート時間の比)を高精度に制御する。この例では、ドライバ装置202は、超音波トランスデューサ215の端子における電圧反転を可能な限り正確にし、電流スパイクを最小化又は回避するように、発振器周波数及びデューティサイクルを調節するための3つの制御ループを実行する。制御ループを用いた発振器及びデューティサイクルの正確な制御は、IC超音波ドライバの分野において重要な進歩である。
【0362】
ネイティブ周波数モードの動作中、電流センサ335は、フリーフロート期間中に超音波トランスデューサ215(共振回路)を流れる電流を感知する。デジタル状態マシン337は、電流センサ335がフリーフロート期間中に超音波トランスデューサ215(共振回路)を流れる電流がゼロであることを感知すると、第1スイッチT1又は第2スイッチT2 のいずれかをオンにするようにタイミング信号を適合させる。
【0363】
添付図面の図54は、発振器電圧波形347(V(osc))と、Hブリッジ334の左側ハイスイッチT1のターンオン及びターンオフによるスイッチング波形348と、Hブリッジ334の右側ハイスイッチT2のターンオン及びターンオフによるスイッチング波形349とを示している。フリーフロート期間350の間、Hブリッジ334のハイスイッチ、T1、T2は共にオフされる(フリーフロート相)。フリーフロート期間350の期間は、フリーフロート制御電圧351(Vphioff)の大きさによって制御される。
【0364】
添付図面の図55は、超音波トランスデューサ215の第1の端子における電圧波形352(超音波トランスデューサ215の第2の端子では電圧波形が反転している)と、超音波トランスデューサ215を流れるピエゾ電流353とを示している。ピエゾ電流353は、(ほぼ)理想的な正弦波波形を表している(強制周波数モードやIC市場のどのブリッジでも、これは決して不可能である)。
【0365】
ピエゾ電流353の正弦波がゼロになる前に、Hブリッジ334の左側のハイスイッチT1はオフされる(ここでは、ピエゾ電流353が約6AのときにスイッチT1がオフされる)。超音波トランスデューサ215(ピエゾ等価回路のコンデンサ)に蓄えられたエネルギーにより超音波トランスデューサ215内を流れる残りのピエゾ電流353は、フリーフロート期間350の電圧反転の役割を果たす。ピエゾ電流353は、フリーフロート期間350の間にゼロに減衰し、それ以降は負の電流の流れ領域へ移行する。超音波トランスデューサ215の端子電圧は、電源電圧(この場合19V)から2V以下に低下し、ピエゾ電流353がゼロになると低下が停止する。これは、電流スパイクを最小化又は回避するために、Hブリッジ334のローサイドスイッチT3をオンにするのに最適なタイミングである。
【0366】
上述の強制周波数モードと比較して、ネイティブ周波数モードは少なくとも3つの利点を有する。
1. パッケージキャパシタのハードスイッチングに関連する電流スパイクが大幅に減少するか、又は完全に回避される。
2. ハードスイッチングによる電力損失がほとんどない。
3. 周波数制御は制御ループで行い、圧電トランスデューサの共振周波数(圧電トランスデューサの固有共振周波数)に近づけることができる。
【0367】
制御ループによる周波数調節の場合(上記の利点3)、PMIC300は、ブリッジIC301を制御して、圧電トランスデューサの共振以上の周波数で超音波トランスデューサ215を駆動することから開始する。その後、PMIC300は、起動中に交流駆動信号の周波数が減衰/減少するようにブリッジIC301を制御する。周波数が圧電トランスデューサの共振周波数に近づくと、圧電電流は急速に発達/増加する。ピエゾ電流が所望の電圧反転を引き起こすのに十分な高さになると、PMIC300によって周波数の減衰/減少が停止される。その後、PMIC300の制御ループは、交流駆動信号の周波数及びデューティサイクルの調節を引き継ぐ。
【0368】
強制周波数モードでは、超音波トランスデューサ215に供給される電力は、デューティサイクル及び/又は周波数シフトを通じて、及び/又は供給電圧を変化させることによって制御される。しかしながら、この例では、ネイティブ周波数モードにおいて、超音波トランスデューサ215に供給される電力は、供給電圧を通じてのみ制御される。
【0369】
この例では、ドライバ装置の動作のセットアップフェーズにおいて、ブリッジIC301は、第1のスイッチT1 及び第2のスイッチT2 がオフにされ、第3のスイッチT3 及び第4のスイッチT4 がオンにされたときに、超音波トランスデューサ215(共振回路)を流れる電流がゼロになるまでの時間の長さを測定するよう構成される。そして、ブリッジIC301は、フリーフロート期間の時間の長さを、測定した時間の長さと等しくなるように設定する。
【0370】
ここで添付図面の図56を参照すると、この例のPMIC300とブリッジIC301は、コンパニオンチップセットとして一緒に動作するように設計されている。PMIC300とブリッジIC301は、互いに通信するために電気的に接続されている。PMIC300とブリッジIC301は、互いに通信するために電気的に接続されている。この例では、PMIC300とブリッジIC301との間には、以下の2つのカテゴリーの通信を可能にする相互接続が存在する。
【0371】
1. 制御信号
2. フィードバック信号
PMIC300のPHASE_A端子とPHASE_B端子とブリッジIC301との接続は、Hブリッジ334を駆動するPWM変調された制御信号を伝送するものである。PMIC300のEN_BR端子とブリッジIC301との接続は、Hブリッジ334の起動のトリガーとなるEN_BR制御信号を伝達する。PHASE_A、PHASE_B、EN_BR制御信号の間のタイミングは重要であり、PMIC300のデジタルブリッジ制御によって処理される。
【0372】
PMIC300のCS、OC、OT端子とブリッジIC301の接続は、CS(電流感知)、OC(過電流)、OT(過熱)フィードバック信号をブリッジIC301からPMIC300に戻す。最も注目すべきは、CS(電流感知)フィードバック信号が、ブリッジIC301の電流センサ335によって測定される超音波トランスデューサ215を流れるrms電流に相当する電圧からなることである。
【0373】
OC(過電流)及びOT(過温)フィードバック信号は、過電流又は過電圧のいずれかの事象がブリッジIC301によって検出されたことを示すデジタル信号である。この例では、過電流及び過温度の閾値は、外部抵抗で設定される。あるいは、PMIC300からの2つのDACチャネルVDAC0、VDAC1のうちの1つからブリッジIC301のOC_REF端子に渡される信号に応答して、閾値を動的に設定することも可能である。
【0374】
この例では、PMIC300とブリッジIC301の設計により、これら2つの集積回路のピンを互いに直接接続することができるので(例えばPCB上の銅トラックを介して)、PMIC300とブリッジIC301の間の信号の通信に最小限の遅れしか生じないようにすることが可能である。これにより、一般的にデジタル通信バスを介した信号によって制御されるIC市場における従来のブリッジと比較して、大幅な速度上の利点が得られる。例えば、標準的なI2Cバスは、わずか400kHzでクロックされ、これは、本開示の例の最大5MHzの高クロック速度でサンプリングされたデータを通信するには遅すぎる。
【0375】
以上、本開示の例をマイクロチップのハードウェアに関連して説明したが、本開示の他の例は、各マイクロチップのコンポーネント及びサブシステムを操作して本明細書に記載の機能を実行する方法からなることが理解されよう。例えば、強制周波数モード又はネイティブ周波数モードのいずれかでPMIC300及びブリッジIC301を動作させる方法である。
【0376】
次に添付図面の図57を参照すると、OTP IC 242は、パワーオンリセット回路(POR)354、バンドギャップリファレンス(BG)355、キャップレスロードロップアウトレギュレータ(LDO)356、通信(例えばI2C )インターフェース357、ワンタイムプログラマブルメモリバンク(eFuse)358、発振器359及び汎用入出力インターフェース360から構成される。また、OTP IC 242は、暗号認証器を含むデジタルコア361から構成される。この例では、暗号認証器は、ECDSA(Elliptic Curve Digital Signature Algorithm)を用いて、OTP IC 242内に格納されたデータ及びOTP IC 242と送受信されるデータの暗号化/復号化を行っている。
【0377】
POR354は、電源電圧が所定の範囲内である場合にのみ、OTP IC242が正常に起動するようにするものである。電源電圧が所定範囲外の場合、POR354は、OTP IC242をリセットし、電源電圧が所定範囲内に入るまで待機する。
【0378】
BG355は、LDO356と発振器359に正確な基準電圧と電流を供給する。LDO356は、デジタルコア361、通信インタフェース357、eFuseメモリバンク358に供給する。
【0379】
OTP IC 242は、少なくとも以下のモードで動作するように構成されている:
ヒューズプログラミング(Fusing):ヒューズプログラミング(ワンタイムプログラマブルメモリのプログラミング)中、eFuseメモリバンク358内の関連ヒューズを焼くために高電流が必要とされる。このモードでは、調節ループの利得と帯域幅を維持するために、より高いバイアス電流が供給される。
【0380】
ヒューズの読み取り:このモードでは、eFuseメモリバンク358内のヒューズ読み取りを維持するために、中程度の電流が必要とされる。このモードは、OTP IC 242の起動時に実行され、ヒューズの内容をシャドウレジスタに転送する。このモードでは、レギュレーションループのゲインと帯域幅は、ヒューズモードよりも低い値に設定される。
【0381】
通常動作:このモードでは、LDO356は非常に低いバイアス電流の状態で駆動され、OTP IC242を低電力で動作させるため、OTP IC242の消費電力をできるだけ少なくすることができる。
【0382】
発振器359は、テスト(SCAN Test)時、定着時、及び通常動作時に、デジタルコア/エンジン361に必要なクロックを供給する。発振器359は、定着モード中の厳しいタイミング要件に対処するためにトリミングされる。
【0383】
この例では、通信インタフェース357は、I2C規格のFM+仕様に準拠しているが、スローモードとファストモードにも準拠している。OTP IC 242は、通信インタフェース357を使用して、ドライバ装置202(ホスト)とデータ及び鍵の交換のための通信を行う。
【0384】
デジタルコア361は、OTP IC 242の制御機能及び通信機能を実装している。デジタルコア361の暗号認証器は、OTP IC 242がドライバ装置202との間で(例えばECDSA暗号化メッセージを用いて)自己認証を行い、OTP IC 242が本物であること、OTP IC 242がドライバ装置202(又は他の製品)との接続を許可されたことを保証することを可能にするものである。
【0385】
添付図面の図58を参照して、OTP IC 242は、ホスト(例えばドライバ装置202)で使用するために、OTP IC 242を認証するために、以下のPKI手順を実行する:
1. 署名者公開鍵の検証:ホスト は製造者公開鍵と証明書を要求する。ホスト は証明書を認証局公開鍵で検証する。
2. デバイス公開鍵の検証:検証が成功した場合、ホストはデバイス公開鍵と証明書を要求する。ホストは、製造業公開鍵を用いて証明書を検証する。
3. チャレンジ-レスポンス:検証が成功した場合、ホストは乱数チャレンジを作成し、それをデバイスに送信する。最終製品は、デバイスの秘密鍵で乱数チャレンジに署名する。
4. 署名はデバイスの公開鍵を用いて検証するためにホストに送り返される。
【0386】
認証手順のすべてのステップが成功裏に完了した場合、信頼の連鎖は信頼の根まで検証され、OTP IC 242 はホストで使用するために正しく認証されたことになる。しかし、認証手順のいずれかのステップが失敗した場合、OTP IC 242 はホストとの使用のために認証されず、OTP IC 242 を組み込んだデバイスの使用は制限又は阻止される。
【0387】
ドライバ装置は、電池からの電圧を所定の周波数の交流駆動信号に変換して超音波トランスデューサを駆動するための交流ドライバで構成される。
【0388】
ドライバ装置は、超音波トランスデューサが交流駆動信号によって駆動されるときに超音波トランスデューサ(上述)によって使用される有効電力を監視するための有効電力監視配置を構成する。有効電力監視配置は、超音波トランスデューサによって使用される有効電力を示す監視信号を提供する。
【0389】
ドライバ装置内のプロセッサは、交流ドライバを制御し、有効電力監視配置から監視信号駆動を受信する。
【0390】
ドライバ装置のメモリは、プロセッサによって実行されたとき、プロセッサに以下を行わせる命令を格納する:
A. 交流ドライバを制御して、所定のスイープ周波数で超音波トランスデューサに交流駆動信号を出力させる
B. 監視信号に基づいて、超音波トランスデューサによって使用されている有効電力を計算する
C. 交流ドライバを制御して交流駆動信号を変調し、超音波トランスデューサが使用する有効電力を最大化する
D. 超音波トランスデューサによって使用される最大有効電力と交流駆動信号のスイープ周波数の記録をメモリに保存する
E. 所定の反復回数の後、スイープ周波数がスイープ開始周波数からスイープ終了周波数まで増加又は減少するように、各反復でスイープ周波数が増加又は減少しながら、ステップA~Dを所定の回数だけ繰り返す
F. メモリに格納された記録から、超音波トランスデューサによって最大の有効電力が使用される交流駆動信号のスイープ周波数である交流駆動信号の最適周波数を特定する
G. 交流ドライバを制御して、最適な周波数で超音波トランスデューサに交流駆動信号を出力し、超音波トランスデューサを駆動して液体を霧化させる。
【0391】
いくつかの例では、アクティブ電力監視配置は、超音波トランスデューサを駆動する交流駆動信号の駆動電流を感知するための電流感知配置を備え、アクティブ電力監視配置は、感知された駆動電流を示す監視信号を提供する。
【0392】
いくつかの例では、電流感知配置は、感知された駆動電流をプロセッサによって処理するためのデジタル信号に変換するアナログ-デジタル変換器を備える。
【0393】
いくつかの例では、メモリは、プロセッサによって実行されると、プロセッサに、スイープ周波数が2900kHzのスイープ開始周波数から2960kHzのスイープ終了周波数まで増加する上記のステップA~Dを繰り返すように命令することを記憶している。
【0394】
いくつかの例では、メモリは、プロセッサによって実行されると、プロセッサに、スイープ周波数が2900kHzのスイープ開始周波数から3100kHzのスイープ終了周波数まで増加する上記のステップA~Dを繰り返すように命令することを記憶している。
【0395】
いくつかの例では、メモリは、プロセッサによって実行されると、プロセッサに:ステップGにおいて、最適周波数から所定のシフト量だけシフトされた周波数で超音波トランスデューサに交流駆動信号を出力するように交流ドライバを制御させる命令を格納する。
【0396】
いくつかの例では、所定のシフト量は、最適な周波数の1~10%の間である。
【0397】
2. コントロール&インフォメーション (CI) 部
制御・情報部は、データ保存用の外部EEPROM、使用者表示用のLED、気流検出用の圧力センサ、エアロゾル化部の常時監視・管理用のBluetooth Low Energy(BLE)対応マイクロコントローラで構成されている。
【0398】
本装置に使用されている圧力センサは、2つの目的を兼ねている。1つ目の目的は、音波エンジンの不要な偶発的な始動(超音波トランスデューサの駆動)を防止することである。この機能はデバイスの処理配置に実装されているが、低消費電力に最適化されており、真の吸入と呼ばれるものを正確に検出し分類するために、温度や周囲の圧力などの環境パラメータを内部補正と基準設定により常に測定している。
【0399】
市場にある他のすべてのミスト吸入器とは異なり、このソリューションはマイクロコントローラの強みを生かし、1つのセンサのみを使用することを可能にしている。
【0400】
圧力センサの第二の目的は、正確な吸入量測定のために使用者の吸入時間を正確に監視できるだけでなく、適切な処方と健康状態の監視のために医療現場で重要な情報である使用者の吸入の強さを判断できるようにすることである。全体として、我々はすべての吸入の圧力プロファイルを完全に吸入することができ、エアロゾル化の最適化と医療データの動作理解の両方のために吸入の終わりを予測することができる。
【0401】
これは、BluetoothTM Low Energy(BLE)マイクロコントローラを使用することで可能となった。これにより、極めて正確な吸入時間、最適化されたエアロゾル化、安全なミストを保証する多数のパラメータの監視、非純正のeリキッドやエアロゾルチャンバの使用防止、過熱のリスクに対するデバイスとオーバーミストに対する使用者の保護の両方を、市場の他の製品とは異なり一度に実現することが可能になった。
【0402】
BLEマイクロコントローラを使用することで、無線アップデートが可能になり、匿名化されたデータ収集とPZTモデリング用のトレーニング済みAIに基づいて、改善されたソフトウェアを使用者に継続的に提供できる。
【0403】
3. パワーマネージメント (PM) 部
パワーマネージメント部は、3.7V LiPoバッテリーから制御・情報部に電力を供給するLDO(Low Dropout Regulator)、内蔵LiPoバッテリーに高い保護と充電を行うBMS(Battery Management System)のパスで構成されている。
【0404】
このように一体化したコンパクトなデバイスでありながら、超音波照射部への高い電力供給と制御・情報部への安定した電力供給を実現するために、このセクションの部品は慎重かつ徹底的に選定されている。
【0405】
実際、3.7Vのリポバッテリーからエアロゾル化部に高電力を供給する場合、動作中の電源電圧の変動が大きい。低ドロップアウトレギュレーターがなければ、バッテリー電圧がこのセクションのコンポーネントの最小定格より0.3Vも低い電圧まで低下したときに、制御・情報セクションに必須の安定した電源を供給することができず、そのためLDOはここで重要な役割を果たす。このため、LDOは重要な役割を担っている。CI部の損失は、機器全体の機能を停止させる。
【0406】
このため、部品を慎重に選択することで、デバイスの高い信頼性を確保するだけでなく、厳しい条件下での動作や充電間隔の延長を可能にしているのである。
【0407】
制御されたエアロゾル化
この装置は、医療用処方箋と日常的な顧客使用のための正確で信頼できる安全なエアロゾル化ソリューションであるため、制御された信頼できるエアロゾル化を提供しなければならない。
これは、次のようにいくつかのセクションに分けることができる内部メソッドによって実行される。
【0408】
1.超音波処理
最適なエアロゾル化を実現するために、超音波トランスデューサ(PZT)は最も効率的な方法で振動させる必要がある。
【0409】
周波数
圧電セラミックスの電気機械的特性から、部品は共振周波数で最も効率が高くなる。しかし、PZTを長時間共振させ続けると、部品が破損し、エアロゾルチャンバが使用できなくなることが避けられない。
【0410】
また、圧電材料を使用する際の重要なポイントとして、製造時のばらつきと、温度や寿命によるばらつきがある。
【0411】
1um以下の液滴を生成するためにPZTを3MHzで共振させるには、吸入のたびに、装置で使用するすべてのエアロゾルチャンバ内で特定のPZTの「スイートスポット」を探し、ターゲットするための適応的な方法が必要である。
【0412】
スイープ
吸入のたびに「スイートスポット」を特定する必要があるため、また使いすぎのため、PZTの温度は社内のダブルスイープ方式で変化している。
【0413】
最初のスイープは、装置が特定のエアロゾル・チャンバで、すべての熱放散が起こり、PZTが「デフォルト温度」まで冷却するのに十分と考えられる時間使用されていないときに使用される。この手順は、コールドスタートとも呼ばれる。この手順の間、PZTは必要なエアロゾルを生成するためにブーストが必要である。これは、広範な研究と実験を考慮し、共振点をカバーする2900kHzから2960kHzの間の周波数の小さなサブセットのみを通過することで達成される。
【0414】
この範囲内の各周波数は、音波エンジンが作動し、PZTを通過する電流が積極的に監視され、アナログ-デジタル変換器(ADC)を介してマイクロコントローラによって保存され、PZTが使用する電力を正確に差し引くことができるように電流に変換される。
【0415】
これにより、周波数に関するPZTのコールドプロファイルが得られ、吸入中に使用される周波数は、最も電流を使用するもの、つまり最も低いインピーダンスの周波数となる。
【0416】
2回目のスイープは、その後の吸入中に行われ、温度と変形に関するPZTプロファイルの修正により、2900kHzから3100kHzの間の全周波数範囲をカバーする。このホットプロファイルは、適用するシフトを決定するために使用される。
【0417】
シフト
エアロゾル化が最適でなければならないため、低温吸入時にはシフトは使用されず、PZTは共振周波数で振動することになる。これは、短時間で繰り返さない限り起こりえず、そうでなければPZTは必然的に壊れる。
【0418】
しかし、シフトは、低インピーダンス周波数をターゲットとする方法として、ほとんどの吸入時に使用され、故障から保護しながらPZTの準最適な動作を実現する。
【0419】
吸入中にホットプロファイルとコールドプロファイルが保存されるので、マイクロコントローラは、スイープ中にPZTを流れる電流の測定値にしたがって適切なシフト周波数を選択し、安全な機械的動作を保証することができる。
【0420】
圧電部品は、二重共鳴/反共鳴周波数の外側と内側とでは挙動が異なるため、シフトする方向の選択が重要である。PZTは誘導性であり、容量性ではないので、選択するシフトは常に共振周波数と反共振周波数で定義されるこの範囲であるべきである。
【0421】
最後に、最低インピーダンスに近いが共振から十分離れるように、シフトの割合は10%以下に維持される。
【0422】
調整
PZTの本質的な性質により、吸入は毎回異なる。ピエゾ素子以外にも、エアロゾルチャンバ内に残っているeリキッドの量、ガーゼのウィッキング状態、デバイスのバッテリーレベルなど、数多くのパラメータが吸入の結果に影響を及ぼす。
【0423】
このため、エアロゾルチャンバ内のPZTが使用する電流を常時監視し、マイクロコントローラが周波数やデューティーサイクルなどのパラメータを常に調整することで、エアロゾルチャンバにあらかじめ定義された範囲内で最も安定した電力を供給し、最も最適な安全エアロゾル化に関する研究及び実験結果に基づいている。
【0424】
バッテリー監視
15Vの交流電圧を供給し、PZT内部の電流を2.5A程度に維持するために、バッテリーからの電流は7~8A程度に達し、バッテリー電圧の低下を招く。一般的なリポバッテリーでは、6秒を超える吸入の間、この過酷なリソースを維持することはできない。
【0425】
そこで、PZTの最大許容電流の50%以上である約11Aを処理できるカスタムリポバッテリーを開発し、コンパクトで一体型のポータブルデバイスとしてシンプルに使えるようにした。
【0426】
超音波発生部を作動させると電池の電圧が低下し、大きく変動するため、マイクロコントローラはエアロゾルチャンバ内のPZTが使用する電力を常に監視し、適切かつ安全なエアロゾル発生を保証している。
【0427】
また、エアロゾル化の鍵は制御であるため、この装置はまず、装置の制御・情報部が常に機能し、超音波処理部の不利益となるような停止をしないことを保証している。
【0428】
このため、調整方法はリアルタイムのバッテリー残量を大きく考慮し、必要であれば、バッテリーを安全なレベルに維持するためにデューティーサイクルなどのパラメーターを変更し、ソニックエンジン始動前にバッテリー残量が少なくなった場合、制御・情報セクションが始動を阻止するようになっている。
【0429】
パワーコントロール
エアロゾル化の鍵は制御であると言われるように、この装置で使われている方法は、PZTのプロファイル、PZT内部の電流、装置のバッテリーレベルを常に考慮したリアルタイムの多次元関数である。
【0430】
これらはすべて、最適な吸入を実現するために装置のあらゆる要素を監視・制御できるマイクロコントローラの使用によってのみ達成可能である。
【0431】
1. 吸入制御
この装置はBNS(Broughton Nicotine Services)の報告書でも確認されている安全な装置だが、ミストの安全性とエアロゾルチャンバと装置両方の完全性を保証するために、各吸入を制御する必要がある。
【0432】
吸入時間
e-liquidの加熱により発生する可能性のあるカルボニルなどの有害成分への曝露を低減するため、最大吸入時間を6秒に設定し、これらの成分への曝露を完全に抑えている。
【0433】
インターバル
ピエゾ電気部品に依存しているため、吸入が停止すると超音波照射部が作動しないようになっている。2回の吸入の間の安全ディレイは、前の吸入の持続時間によって適応される。これにより、次の作動の前にガーゼが適切に吸引されるようになる。
【0434】
この機能により、デバイスは安全に動作し、PZT素子を破損したり、使用者を有毒成分にさらすことなく、エアロゾル化をより最適な状態にすることができる。
【0435】
コネクティビティ(BLE)
デバイスの制御・情報部は、Bluetooth Low Energy対応マイクロコントローラによる無線通信システムで構成されている。無線通信システムは、デバイスのプロセッサと通信し、ドライバ装置とスマートフォンなどのコンピューティングデバイスとの間でデータを送受信するように構成されている。
【0436】
Bluetooth Low Energyによるコンパニオン・モバイル・アプリケーションとの接続は、この通信に必要な電力が小さいため、Wi-Fi、従来のBluetooth、GSM、さらにはLTE-MやNB-IOTなどの従来の無線接続ソリューションと比較して、まったく使用しない場合でもデバイスを長期間にわたって機能させ続けることが可能である。
【0437】
最も重要なのは、この接続性によって、機能としてのOTPと、吸入の完全な制御と安全性が実現されることである。
【0438】
吸入の共振周波数から使用したもの、又は使用者によって作られた陰圧と持続時間に至るまで、あらゆるデータが保存され、さらなる分析と組み込みソフトウェアの改良のためにBLEを介して転送される。
【0439】
さらに、これらの情報はすべて、医療プログラムにおいてデバイスが使用される際に、医師や使用者に吸入のプロセスに関するすべての情報を提供し、処方や使用状況をリアルタイムで追跡することができるため、極めて重要である。
【0440】
最後に、この接続性により、機器内部及び無線経由(OTA)で組み込みファームウェアの更新が可能になり、常に最新バージョンを迅速に展開できることが保証される。これにより、デバイスの拡張性が高まり、デバイスがメンテナンスされることが保証される。
【0441】
臨床目的でのデータ収集
パフ回数やパフ時間などの使用者データを収集し、使用者が1回のセッションで消費した治療量の総量を把握することができる。
【0442】
このデータは、医師の勧告に基づいて時間帯ごとの消費制限を設定するアルゴリズムによって解釈することができる。
【0443】
これにより、医師や薬剤師によって管理され、エンド使用者が乱用できない治療用量の薬物を使用者に投与することができるようになる。
【0444】
医師は、使用者にとって安全な管理された方法で、時間をかけて徐々に投与量を減らしていくことができる。
【0445】
パフの限界
超音波キャビテーションのプロセスは、生成されたミスト中のニコチン濃度に大きな影響を与える。
【0446】
7秒以下のパフ時間というデバイスの制限は、電子ニコチンデリバリーシステムによって一般的に生成されるカルボニルの暴露を使用者に制限することになる。
【0447】
Broughton Nicotine Servicesの実験結果によると、使用者が7秒未満のパフを10回連続して行った後、カルボニルの総量は、ホルムアルデヒドが2.67μg/10パフ未満(平均:1.43μg/10パフ)、アセトアルデヒドが0.87μg/10パフ未満(平均:0.50μg/10パフ)、プロピオンアルデヒドが0.40μg/10パフ未満(平均:0.40μg/10パフ)、 クロトンアルデヒドが<0.16μg/10パフ(平均:0.16μg/10パフ)、ブチルアルデヒドが<0.19μg/10パフ(平均:0.17μg/10パフ)、ダイアセチルが<0.42μg/10パフ(平均:0.25μg/10パフ)で、アセチルプロピオニルは連続<7秒パフの排出では全く検出されなかった。
【0448】
電子タバコのエアロゾル化は、液体を直接加熱するのではなく、圧電ディスクの機械的作用によって達成されるため、電子タバコの個々の成分(プロピレングリコール、植物性グリセリン、香料成分など)はほとんどそのままで、従来の電子タバコで見られた高い割合でアクロレイン、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒドなどの小さな有害成分に分解されない。
【0449】
超音波装置を使用している間の使用者のカルボニルへの曝露を制限するために、上記の結果が曝露の点で絶対的に最悪のシナリオとなるように、パフの長さが最大6秒に制限される。
【0450】
次に図59及び60を参照すると、エンドキャップ248がドライバ装置ハウジング246に取り付けられると、アルミニウムであるドライバ装置ハウジング246はファラデーケージとして機能し、装置がいかなる電磁波も放射するのを防止する。ドライバ装置ハウジング246を備えたデバイスは、電磁適合性(EMC)のテストを受けており、テストの結果、エミッションはデバイスの許容限界の半分以下であることが明らかになっている。EMC試験結果は、図61のグラフに示されている。
【0451】
本開示の他の例のミスト吸入器は、上述したミスト発生装置200の要素のほとんど又は好ましくは全てからなるが、ドライバ装置202のメモリが、プロセッサによって実行されるとミスト吸入器に追加の機能を提供する命令を記憶することを備える。
【0452】
一例では、ミスト吸入器200は、超音波トランスデューサ215を駆動する交流駆動信号のrms駆動電流を感知するための、上述の電流センサ335などの電流センサを組み込んだ有効電力モニタを具備している。アクティブパワーモニタは、上述したように、感知された駆動電流を示す監視信号を提供する。
【0453】
この例の追加機能により、ミスト吸入器200は、超音波トランスデューサが作動している間、超音波トランスデューサの作動を監視することができる。ミスト吸入器200は、超音波トランスデューサが装置内の液体を霧化するためにどれだけ効果的に動作しているかを示す有効性値又は品質指数を計算する。装置は、有効性値を使用して、超音波トランスデューサの活性化の持続時間にわたって発生したミストの実際の量を計算する。
【0454】
ミストの実際の量が計算されると、装置は、液体中の治療薬の濃度に基づいて、ミスト中に存在した治療薬の実際の量、したがって、使用者によって吸入された治療薬の実際の量を計算するように構成される。使用者に送達される治療薬の正確な量を知ることは、ミスト吸入器が治療治療プログラムの一部として使用される場合に特に重要である。各吸入又はパフの間に使用者に送達される治療剤の正確な量を知ることは、各吸入又はパフが使用者に同じ量の治療剤を送達すると仮定して、単に吸入又はパフの数を数える従来の装置を使用する場合と比較して、治療治療プログラムをより正確かつ効果的に作動させることを可能にする。
【0455】
実際には、上記のように、超音波トランスデューサの動作に影響を与え、超音波トランスデューサによって生成されるミストの量、ひいては使用者に提供される治療薬の実際の量に影響を与える様々な要因が存在する。
【0456】
例えば、電池の低充電が超音波トランスデューサを流れる電流を減少させるために、ミスト吸入器内の超音波トランスデューサが最適な方法で動作しない場合、デバイスが最適に動作する場合と比較して、より少ない量のミストが生成され、より少ない量の治療薬が使用者に提供されることになる。したがって、装置は、超音波トランスデューサが最適に動作している場合に許容されるパフの数と比較して、ある期間にわたって設定量の治療薬を使用者に送達するために、使用者に対してより多くのパフ数を許容することができる。これにより、使用者が吸うパフの数を単に数えて制限する装置の使用に依存する従来のプログラムと比較して、治療的治療プログラムをより効果的かつ正確に作動させることができる。
【0457】
次に、幾つかの例のミスト吸入器の構成及びそのミスト吸入器を用いたミスト生成方法について以下に詳細に説明する。
【0458】
この例では、ミスト吸入器は、上述したミスト吸入器200の構成要素を組み込んでいるが、ドライバ装置202のメモリは、プロセッサによって実行されると、プロセッサにミスト発生装置200を第1の所定時間だけ起動させる命令をさらに記憶している。上述したように、ミスト発生装置は、ミスト発生装置200内の超音波トランスデューサ215を交流駆動信号で駆動して、超音波トランスデューサ215が毛細管要素222によって運ばれる液体を霧化することによって起動される。
【0459】
実行された命令は、プロセッサに、電流センサを用いて、第1の所定時間の間、定期的に超音波トランスデューサ215を流れる交流駆動信号の電流を感知し、定期的に測定された電流値をメモリに格納するようにさせる。
【0460】
実行された命令は、プロセッサに、メモリに格納された電流値を使用して効果値を計算させる。有効性値は、液体を霧化する際の超音波トランスデューサの動作の有効性を示すものである。
【0461】
一例では、実行された命令は、プロセッサに、この方程式を使用して有効性値を計算させる:
【0462】
【数4】
【0463】
一例では、メモリは、プロセッサによって実行されると、プロセッサに、超音波トランスデューサを駆動する交流駆動信号のデューティサイクルを第1の所定時間の間に周期的に測定させ、周期的に測定されたデューティサイクル値をメモリに記憶させる命令を格納する。そして、ミスト吸入器は、メモリに記憶された現在の値に基づいて、アナログ-デジタル変換器副効果値QAを修正する。その結果、この例のミスト吸入器は、装置が効果値を計算する際に、超音波トランスデューサ215の活性化を通して発生し得るデューティサイクルの変動を考慮に入れる。したがって、ミスト吸入器は、超音波トランスデューサが作動している間に生じ得る交流駆動信号のデューティサイクルの変動を考慮することによって、実際に発生するミストの量を正確に計算することができる。
【0464】
一例では、メモリは、プロセッサによって実行されると、プロセッサに、第1の所定時間の間、ミスト発生装置に電力を供給しているバッテリの電圧を周期的に測定させ、周期的に測定されたバッテリ電圧値をメモリに記憶させる命令を格納する。そして、ミスト吸入器は、メモリに記憶された電池の電圧値に基づいて、アナログ-デジタル変換器の副効果値QAを修正する。その結果、この例のミスト吸入器は、装置が効果値を計算する際に、超音波トランスデューサ215の作動の間中発生する可能性のある電池電圧の変動を考慮に入れる。したがって、ミスト吸入器は、超音波トランスデューサが作動している間に発生する可能性のあるバッテリ電圧の変動を考慮して、実際に発生するミストの量を正確に計算することができる。
【0465】
有効性値は、ミスト吸入器によって、デバイスが最適に動作している場合に発生するであろうミストの最大量の値を比例的に減少させることによって、ミスト吸入器によって発生するミストの実際の量を計算するための重み付けとして使用される。
【0466】
一例では、メモリは、プロセッサによって実行されると、プロセッサに、超音波トランスデューサ215を駆動する交流駆動信号の周波数を第1の所定時間の間に周期的に測定させ、周期的に測定された周波数値をメモリに記憶させる命令を格納する。そして、装置は、上述したように、電流値に加えて、メモリに格納された周波数値を用いて効果値を計算する。
【0467】
一例では、メモリは、プロセッサによって実行されると、プロセッサに、超音波トランスデューサ215が第1の所定の長さの継続時間にわたって最適に動作していた場合に発生するであろうミストの最大量の値を計算させる命令を格納する。一例では、ミストの最大量の値は、超音波トランスデューサが最適に動作していたときに発生するであろうミストの最大量を決定するモデリングに基づいて計算される。
【0468】
ミストの最大量の値が計算されると、ミスト吸入器は、ミストの最大量の値を有効性値に基づいて比例的に減少させて、第1の所定の長さの時間の継続期間にわたって発生した実際のミスト量を決定することにより、実際のミスト量値を計算することができる。
【0469】
実際のミスト量が算出されると、ミスト吸入器は、第1の所定長さの継続時間にわたって発生した実際のミスト量における治療薬の量を示す治療量値を算出することができる。そして、ミスト吸入器は、治療量値の記録をメモリに格納する。このようにして、ミスト吸入器は、各吸入又はパフにおいて使用者に供給された治療薬の実際の量を正確に記録することができる。
【0470】
一例では、メモリは、プロセッサによって実行されると、プロセッサに、有効性値に応答して第2の所定時間の長さを選択させる命令を格納する。この場合、第2の所定の長さは、超音波トランスデューサ215が使用者による第2の吸入又はパフの間に活性化される時間の長さである。一例では、第2の所定の長さの時間は、第1の所定の長さの時間と等しいが、有効性値にしたがって比例的に減少又は増加された時間である。例えば、有効性値が超音波トランスデューサ215が有効に動作していないことを示す場合、第2の所定の長さの時間の間に所望の量のミストが生成されるように、有効性値によって第2の所定の長さの時間が長くなるようにされる。
【0471】
次の吸入になると、ミスト吸入器は、ミスト発生装置が第2の所定時間の間に所定量のミストを発生させるように、第2の所定時間の間、ミスト発生装置を作動させる。このようにして、ミスト吸入器は、ミスト吸入器の動作に影響を与える有効性値によって反映される様々なパラメータを考慮して、第2の所定時間の間に発生するミストの量を正確に制御する。
【0472】
一例では、メモリは、プロセッサによって実行されると、プロセッサにミスト発生装置を複数の所定の長さの時間の間作動させる命令を格納する。例えば、ミスト発生装置は、使用者による複数の連続した吸入又はパフの間に作動される。
【0473】
ミスト吸入器は、複数の治療量値をメモリに記憶し、各治療量値は、所定の長さの時間のそれぞれの1つの継続時間にわたって生成されたミスト中の治療量の指標となる。一例では、ミスト吸入器は、所定の長さの時間の持続期間にわたって生成されたミスト中の治療薬の総量が所定の閾値以上である場合、所定の持続期間にわたってミスト発生装置のさらなる起動を阻止する。一例では、所定の持続時間は、1時間から24時間の範囲内の持続時間である。他の例では、所定の持続時間は、24時間又は12時間である。
【0474】
本開示のいくつかの例のミスト吸入器は、治療量値を示すデータをミスト発生装置からコンピューティング装置へ(例えば、BluetoothTM Low Energy通信を介して)送信し、コンピューティングデバイス(例えば、スマートフォン)のメモリに格納するように構成される。コンピューティングデバイス上で実行される実行可能なアプリケーションは、使用者に提供された治療薬の量を記録することができる。実行可能なアプリケーションは、ミスト吸入器の作動を制限して、ある期間にわたって使用者に送達される治療薬の量を制限するために、ミスト吸入器の作動を制御することも可能である。
【0475】
したがって、本開示のいくつかの例のミスト吸入器は、1日の間に消費される治療薬の量など、設定された時間枠の間に使用者が治療薬の設定量を消費したら、さらなる作動を防ぐように構成される。
【0476】
超音波技術を含む上記の全ての用途は、最適な性能のために超音波処理の周波数を最適化する周波数コントローラによって達成される最適化から利益を得ることができる。
【0477】
本書の開示は、ニコチン送達のための使用に限定されないことが理解されよう。実際、いくつかの例では、ミスト吸入器は、ニコチンを含まない治療薬を含む液体を含む。いくつかの例は、様々な医療目的(例えば、疼痛緩和のためのCBDの送達、パフォーマンス向上のためのサプリメント、喘息患者のためのアルブテロール/サルブタモールなど)のために使用するように構成される。
【0478】
本書に開示される装置は、任意の治療薬、薬剤、又は他の化合物と共に使用するためのものであり、薬剤又は化合物は、装置によるエアロゾル化のために装置の液体チャンバ内で液体で提供される。いくつかの例では、本書に開示されたデバイスは、以下を含むがこれらに限定されない治療薬、薬物、及び化合物と共に使用するためのものである:
【0479】
呼吸器系
ブロコディレーター
オロダテロール
レバルブテロール
ベロデュアル(イプラトロピウム臭化物/フェノテロール)
コンビベント(臭化イプラトロピウム/サルブタモール)
【0480】
抗炎症剤
ベタメタゾン
デキサメタゾン
メチルプレドニゾロン
ヒドロコルチゾン

粘液溶解剤
N-アセチルシステイン
【0481】
肺高血圧症
シルデナフィル
タダラフィル
エポプロステノール
トレプロステニル
イロプロスト
【0482】
感染症
抗菌薬
アミノグリコシド系(ゲンタマイシン、トブラマイシン、アミカシン、コロマイシン、ネオマイシン、リポソームアミカシン、)
キノロン系抗菌剤(シプロフロキサシン、レボフロキサシン、モキシフロキサシン、オフロキサシン)
マクロライド系(アジスロマイシン)
ミノサイクリン
ベータラクタム系(ピペラシリン・タゾバクタム、セフタジジム、チカルシリンなど)
セファロスポリン(Cefotaxime、Cefepime、Ceftriaxone、Cefotaxime)
糖ペプチド(バンコマイシン)
メロペネム
ポリミキシン(コリスチン、ポリミキシンB)
【0483】
抗真菌剤
アムホテリシン
フルコナゾール
カスポファンガン
【0484】
抗ウイルス剤
バルガンシクロビル
ファビピラビル
レムデシビル
アシクロビル
抗結核
イソニアジド
ピラジナミド
リファンピン
エタンブトール
【0485】
がん領域
生物学的製剤
ジロトリフ
アファチニブ
カプラシズマブ
デュピルマブ
イサリルマブ
アリルコマブ
ボラセルチブ
ニンテダニブ
イマチニブ
シロリムス
【0486】
化学療法
アザシチジン
デシタビン
ドセタキセル
ゲムシタビン
シスプラチナ
【0487】
中枢神経系・精神
バルプロ酸ナトリウム
テリフルノミド
ゾミトリプタン
【0488】
代謝・ホルモン
インスリン
エストロゲン
【0489】
免疫学
ワクチン
モノクローナル抗体
幹細胞
【0490】
ビタミン
亜鉛
アスコルビン酸
【0491】
その他
ニクロサミド
ヒドロキシクロロキン
イベルメクチン
【0492】
いくつかの例の超音波ミスト吸入器100は、現在の携帯用医療用ネブライザーをより強力にしたものである。
【0493】
超音波ミスト吸入器の他の例は、タバコの外観を有しない薬物送達デバイスを含む、容易に想定されるものである。
【0494】
前述は、当業者が本開示の様々な側面をより良く理解できるように、いくつかの例又は実施形態の特徴を概説したものである。当業者は、本書に導入された様々な例又は実施形態の同じ目的を遂行し及び/又は同じ利点を達成するための他のプロセス及び構造を設計又は修正するための基礎として本開示を容易に使用し得ることを理解するべきである。また、当業者は、そのような同等の構造が本開示の精神及び範囲から逸脱しないこと、並びに、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、本書に様々な変更、置換、及び改変を行うことができることを認識すべきである。
【0495】
構造的特徴又は方法論的行為に特有の言語で主題を説明してきたが、添付の請求項の主題は、必ずしも上記の特定の特徴又は行為に限定されないことが理解される。むしろ、上述した特定の特徴や行為は、請求項の少なくとも一部を実施するための例示的な形態として開示されている。
【0496】
本書では、例又は実施形態の様々な動作が提供される。動作の一部又は全部が説明される順序は、これらの動作が必ずしも順序に依存することを意味するように解釈されるべきではない。代替的な順序は、本書の利益を有することが理解されるであろう。さらに、すべての操作が、本書で提供される各実施形態に必ずしも存在するわけではないことが理解されよう。また、いくつかの例又は実施形態において、すべての操作が必要であるとは限らないことも理解されよう。
【0497】
さらに、「例示的な」は、本書では、例、インスタンス、イラストレーションなどとして役立つことを意味し、必ずしも有利であるとは限らない。本願で使用される「又は」は、排他的な「又は」ではなく、包括的な「又は」を意味することが意図される。さらに、本願及び添付の特許請求の範囲で使用される「a」及び「an」は、他に指定されない限り、又は文脈から単数形に向けられることが明らかでない限り、一般に「1つ又は複数」を意味するものと解釈される。さらに、「含む」、「有する」、「有する」、「有する」、又はそれらの変形が使用される限り、かかる用語は、用語「含む」と同様の方法で包括的であることを意図している。また、特に断らない限り、「第1」、「第2」などは、時間的側面、空間的側面、順序などを示唆することを意図していない。むしろ、このような用語は、特徴、要素、アイテムなどの識別子、名称などとして使用されるに過ぎない。例えば、第1の要素及び第2の要素は、一般に、要素A及び要素B、又は2つの異なる要素もしくは2つの同一の要素又は同一の要素に対応する。
【0498】
また、本開示は、1つ以上の実施態様に関して示され、説明されてきたが、本書及び添付図面の読解及び理解に基づき、当業者の他の者には、同等の変更及び修正が生じるであろう。本開示は、すべてのそのような変更及び修正を含み、以下の請求項の範囲によってのみ制限される。特に、上述した特徴(例えば、要素、資源など)によって実行される様々な機能に関して、そのような特徴を説明するために使用される用語は、特に示されない限り、開示された構造と構造的に同等ではないとしても、説明された特徴の所定の機能を実行する任意の特徴(例えば、機能的に同等である)に対応すると意図されている。加えて、本開示の特定の特徴は、いくつかの実施態様のうちの1つに関してのみ開示されたかもしれないが、かかる特徴は、任意の所与の又は特定の用途に対して所望され有利であるように、他の実施態様の1つ又は複数の他の特徴と組み合わされるかもしれない。
【0499】
本明細書に記載された主題及び機能的動作の例又は実施形態は、本明細書に開示された構造及びそれらの構造的等価物を含むデジタル電子回路、又はコンピュータソフトウェア、ファームウェア、又はハードウェアで、又はそれらの1つ以上の組み合わせで実装され得る。
【0500】
いくつかの例又は実施形態は、データ処理装置による実行、又はデータ処理装置の動作を制御するためにコンピュータ可読媒体上に符号化されたコンピュータプログラム命令の1つ又は複数のモジュールを使用して実装される。コンピュータ可読媒体は、コンピュータシステム又は組込みシステムにおけるハードドライブなどの製造品とすることができる。コンピュータ可読媒体は、有線又は無線ネットワークを介したコンピュータプログラム命令の1つ又は複数のモジュールの配信などによって、別々に取得し、後にコンピュータプログラム命令の1つ又は複数のモジュールで符号化することができる。コンピュータ可読媒体は、機械可読記憶装置、機械可読記憶基板、記憶装置、又はそれらの1つ以上の組合せとすることができる。
【0501】
「コンピューティングデバイス」及び「データ処理装置」という用語は、データを処理するためのすべての装置、デバイス、及び機械を包含し、例としてプログラマブルプロセッサ、コンピュータ、又は複数のプロセッサやコンピュータが含まれる。装置は、ハードウェアに加えて、当該コンピュータプログラムの実行環境を構築するコード、例えば、プロセッサファームウェア、プロトコルスタック、データベース管理システム、オペレーティングシステム、ランタイム環境、又はそれらの1つ以上の組合せを構成するコードを含むことが可能である。さらに、本装置は、ウェブサービス、分散コンピューティング、グリッドコンピューティング基盤など、様々な異なるコンピューティングモデル基盤を採用することができる。
【0502】
本書に記載されたプロセス及び論理フローは、1つ以上のコンピュータプログラムを実行する1つ以上のプログラマブルプロセッサによって実行され、入力データに対して動作し、出力を生成することによって機能を実行することが可能である。
【0503】
コンピュータ・プログラムの実行に適したプロセッサには、一例として、汎用及び特殊目的のマイクロプロセッサ、及びあらゆる種類のデジタル・コンピュータの任意の1つ又は複数のプロセッサが含まれる。一般に、プロセッサは、読み取り専用メモリ、ランダムアクセスメモリ、又はその両方から命令とデータを受け取ることになる。コンピュータの本質的な要素は、命令を実行するためのプロセッサと、命令とデータを格納するための1つ以上のメモリ装置である。一般に、コンピュータは、データを格納するための1つ以上の大容量記憶装置、例えば、磁気ディスク、光磁気ディスク、又は光ディスクからデータを受信するか、又はその両方にデータを転送するように動作可能に結合されるか、又はその両方を含むことになる。しかしながら、コンピュータはそのようなデバイスを有する必要はない。コンピュータプログラム命令及びデータを格納するのに適したデバイスには、あらゆる形態の不揮発性メモリ、媒体、及びメモリデバイスが含まれる。
【0504】
本書において、「compose」は「含む、構成する」を意味し、「comprising」は「含む、構成する」を意味する。
【0505】
前述の説明、又は以下の請求項、又は添付図面に開示された特徴は、それらの具体的な形態で、又は開示された機能を実行するための手段、又は開示された結果を達成するための方法又はプロセスの観点から適宜表現され、別々に、又はそれらの特徴の任意の組み合わせで、その多様な形態で発明を実現するために利用されることができる。
【0506】
代表的な特徴
代表的な特徴は、以下の条項に記載されており、これらは単独で、又は本書の本文及び/又は図面に開示された1つ以上の特徴と、任意の組み合わせで組み合わせることができる。
【0507】
1.使用者による吸入のために治療薬を含むミストを生成するためのミスト吸入器であって、該装置は、以下を備える:
【0508】
ミスト発生装置であって、以下を含むもの:
細長く、空気入口ポート及びミスト出口ポートを備えるミスト発生器ハウジング
ミスト発生器ハウジング内に設けられた液体チャンバであって、霧化される液体を含み、該液体が治療薬を含む液体チャンバ
ミスト発生器ハウジング内に設けられた超音波処理チャンバ
液体チャンバと超音波処理チャンバとの間に延びる毛細管要素であって、毛細管要素の第1の部分が液体チャンバ内にあり、毛細管要素の第2の部分が超音波処理チャンバ内にあるようにする毛細管要素
霧化表面を有する超音波トランスデューサであって、毛細管要素の第2の部分の一部が霧化表面の一部に重なっており、超音波トランスデューサが交流駆動信号によって駆動されると、霧化表面が振動して毛細管要素の第2の部分によって運ばれる液体を霧化して、霧化液体と空気を含むミストを超音波処理チャンバ内に発生させる超音波トランスデューサ
ミスト出口ポートで吸引する使用者が空気を入口ポートから引き込み、超音波処理チャンバを通り、ミスト出口ポートから出るように、空気入口ポート、超音波処理チャンバ及び空気出口ポートの間に空気流路を提供する空気流配置で、超音波処理チャンバで発生したミストが空気によってミスト出口ポートから運ばれて使用者によって吸入されるもので、次の装置が含まれる:
【0509】
次のものを内蔵するドライバ装置:
バッテリー
超音波トランスデューサに接続されるHブリッジ回路であって、該Hブリッジ回路は、該超音波トランスデューサを駆動するための交流駆動信号を生成するように構成される、Hブリッジ回路
【0510】
Hブリッジ回路に接続され、Hブリッジ回路を制御して交流駆動信号を生成するマイクロチップであって、マイクロチップは、相互に接続された複数の組み込みコンポーネントとサブシステムとからなる単一ユニットである、マイクロチップであり、次を含むもの:
発振器であって、以下のものを生成するように構成されているもの:
主クロック信号
主クロック信号の正の半周期の間、第1の時間だけハイになり、負の半周期の間、ローになる第1の位相クロック信号
前記主クロック信号の負の半周期の間に第2の時間だけハイになり、前記主クロック信号の正の半周期の間にローになる第2の位相クロック信号であって、前記第1の位相クロック信号と前記第2の位相クロック信号の位相はセンターアラインメントされている、第2の位相クロック信号
【0511】
パルス幅変調(PWM)信号発生器サブシステムで、次を含むもの:
前記第1位相クロック信号と前記第2位相クロック信号とを用いて2倍周波数クロック信号を生成するように構成され、前記2倍周波数クロック信号は前記メインクロック信号の2倍の周波数であり、前記遅延ロックループは、前記第1位相クロック信号と前記第2位相クロック信号との立ち上がり縁を前記2倍周波数クロック信号の立ち上がり縁と同期するよう制御するように構成されている遅延ロックループと 前記遅延ロックループが、前記ドライバ制御信号に応答して、前記第1位相クロック信号及び前記第2位相クロック信号の周波数及びデューティサイクルを調整して、第1位相出力信号及び第2位相出力信号を生成するように構成され、前記第1位相出力信号及び前記第2位相出力信号が、Hブリッジ回路を駆動して超音波トランスデューサを駆動する交流駆動信号を生成するように構成される、請求項1に記載の超音波トランスデューサシステム
前記第1相出力信号を前記Hブリッジ回路に出力するように構成された第1相出力信号端子
前記Hブリッジ回路に第2相出力信号を出力するように構成された第2相出力信号端子
Hブリッジ回路からフィードバック信号を受信するように構成されたフィードバック入力端子であって、Hブリッジ回路が液体を霧化するために超音波トランスデューサを交流駆動信号で駆動しているときに、フィードバック信号はHブリッジ回路又は交流駆動信号の動作のパラメータを示す、フィードバック入力端子
【0512】
アナログ-デジタル変換器(ADC)サブシステムであり、次を含むもの:
複数のそれぞれのアナログ信号を受信するように構成される複数のADC入力端子であって、複数のADC入力端子のうちの1つのADC入力端子が、ADCサブシステムがHブリッジ回路からフィードバック信号を受信するようにフィードバック入力端子に接続され、ADCサブシステムが、メインクロック信号の周波数に比例するサンプリング周波数で複数のADC入力端子で受信したアナログ信号をサンプルするように構成され、ADCサブシステムがサンプルしたアナログ信号を使用してADCデジタル信号を生成するように構成される、複数のアナログ信号のアナログ化装置
ADCサブシステムからADCデジタル信号を受信し、ADCデジタル信号を処理してドライバ制御信号を生成するように構成され、デジタルプロセッササブシステムは、ドライバ制御信号をPWM信号生成サブシステムに伝達してPWM信号生成サブシステムを制御するように構成されるデジタル処理装置
【0513】
デジタル-アナログ変換器(DAC)サブシステムであり、次を含むもの:
デジタル・プロセッサ・サブシステムによって生成されたデジタル制御信号をアナログ電圧制御信号に変換して、Hブリッジ回路による変調のための電圧を生成する電圧レギュレータ回路を制御するように構成されたデジタル-アナログ変換器(DAC)
前記超音波トランスデューサの動作を示すフィードバック信号に応答して、前記超音波トランスデューサを駆動するための前記Hブリッジ回路による変調のための所定の電圧を生成するように前記電圧調整回路を制御するためのアナログ電圧制御信号を出力するように構成されたDAC出力端子。
【0514】
2.条項1に記載の装置であり、マイクロチップが以下を備えるもの:
前記発振器に接続され、前記発振器からメインクロック信号を受信する分周器であって、前記メインクロック信号を所定の除数で分周して周波数基準信号を前記遅延ロックループに出力するように構成された分周器
【0515】
3.第1項又は第2項に記載の装置であり、前記遅延ロックループが端から端まで接続された複数の遅延線からなり、前記遅延線の合計遅延時間が前記メインクロック信号の周期に等しいもの。
【0516】
4.第3項に記載の装置であり、前記ディレイロックループは、前記ディレイロックループ内の各遅延線の遅延を変化させることにより、前記ドライバ制御信号に応答して前記第1位相クロック信号及び前記第2位相クロック信号のデューティサイクルを調整するように構成されるもの。
【0517】
5.フィードバック入力端子は、共振回路を駆動している交流駆動信号の実効電流を示す電圧の形態でHブリッジ回路からフィードバック信号を受信するように構成されている、前記条項のいずれか1つに記載の装置。
【0518】
6.ADCサブシステムが、バッテリーの電圧又はデバイスに接続されたバッテリー充電器の電圧の少なくとも1つを示すフィードバック信号を受信するように構成された複数のさらなるADC入力端子を備える、先行条項のいずれか1つに記載の装置。
【0519】
7.前記条項のいずれか1つに記載の装置であり、マイクロチップがさらに以下を備えるもの:
前記マイクロチップ内に埋め込まれた温度センサであって、前記温度センサは、前記マイクロチップの温度を示す温度信号を生成するように構成され、前記温度信号は、前記ADCサブシステムのさらなるADC入力端子によって受信され、前記温度信号は、前記ADCによってサンプリングされる。
【0520】
8.前記ADCサブシステムは、前記ADCサブシステムによってサンプリングされる各信号とともに前記複数のADC入力端子で受信された信号をそれぞれ所定回数サンプリングするように構成されている前項のいずれか1項の装置。
【0521】
9.前記条項のいずれか1つに記載の装置であり、マイクロチップがさらに以下を備えるもの:
バッテリの充電を制御するように構成されたバッテリ充電サブシステム。
【0522】
10.前記条項のいずれか1つに記載の装置であり、DACサブシステムがさらに以下を備えるもの:
デジタルプロセッササブシステムによって生成されたさらなるデジタル制御信号を、電圧レギュレータ回路を制御するためのさらなるアナログ電圧制御信号に変換するように構成されたさらなるデジタル-アナログ変換器(DAC)。
【0523】
11.前記条項のいずれか1つに記載の装置であり、装置がさらに以下を備えるもの:
さらなるマイクロチップであって、ここで、前記さらなるマイクロチップは、相互接続された複数の組み込みコンポーネント及びサブシステムを含む単一のユニットである:
【0524】
第1の電源端子
第2の電源端子
第1のスイッチ、第2のスイッチ、第3のスイッチ、及び第4のスイッチを内蔵するHブリッジ回路であって、ここで:
【0525】
前記第1のスイッチと前記第3のスイッチが、前記第1の電源端子と前記第2の電源端子との間に直列に接続される
第1の出力端子が、第1のスイッチと第3のスイッチとの間に電気的に接続され、第1の出力端子は、超音波トランスデューサの第1の端子に接続される、請求項1に記載の方法
前記第1の電源端子と前記第2の電源端子との間に、第2のスイッチと第4のスイッチとが直列に接続される
前記第2のスイッチと前記第4のスイッチとの間に第2の出力端子が電気的に接続され、前記第2の出力端子は前記超音波トランスデューサの第2の端子に接続されている、請求項1に記載の超音波トランスデューサ
【0526】
パルス幅変調(PWM)信号発生器サブシステムから第1位相出力信号を受信するように構成された第1位相端子
PWM信号発生器サブシステムから第2位相出力信号を受信するように構成された第2位相端子
【0527】
前記第1位相出力信号及び前記第2位相出力信号に基づいてタイミング信号を生成し、前記タイミング信号を前記Hブリッジ回路のスイッチに出力して、前記Hブリッジ回路が前記超音波トランスデューサを駆動するための交流駆動信号を出力するように前記スイッチをシーケンスでオン及びオフに制御するように構成されたデジタル状態機械であって、前記シーケンスが、前記第1スイッチ及び前記第2スイッチがオフされ前記第3スイッチ及び前記第4スイッチがオンされるフリーフロート期間からなり、前記超音波トランスデューサによって蓄えられたエネルギーを消滅させるために前記スイッチをターンさせるもの
【0528】
次のものを内蔵する電留線さ:
前記第1のスイッチと前記第1の電源端子との間に直列に接続された第1の電流感知抵抗器
第1の電流感知抵抗の電圧降下を測定し、第1の電流感知抵抗に流れる電流を示す第1の電圧出力を提供するように構成された第1の電圧センサ
前記第2のスイッチと前記第1の電源端子との間に直列に接続される第2の電流感知抵抗器
第2の電圧センサであって、第2の電流センサ抵抗の電圧降下を測定し、第2の電流感知抵抗に流れる電流を示す第2の電圧出力を提供するように構成された第2の電圧センサ
前記第1の電圧出力と前記第2の電圧出力に等しい対地実効電圧を出力するように構成された電流センサ出力端子
【0529】
前記実効出力電圧は、前記第1のスイッチ又は前記第2のスイッチを流れる実効電流と、前記第1の出力端子と前記第2の出力端子との間に接続される前記超音波トランスデューサを流れる電流とを示す、請求項1に記載の超音波トランスデューサ
【0530】
12.前記Hブリッジ回路は、前記第1の出力端子と前記第2の出力端子との間に接続される前記超音波トランスデューサに22W~50Wの電力を出力するように構成される、条項11に記載の装置。
【0531】
13.第11項又は第12項に記載の装置であり、さらにマイクロチップが以下を備えるもの:
さらなるマイクロチップ内に埋め込まれる温度センサであって、温度センサは、さらなるマイクロチップの温度を測定し、温度センサがさらなるマイクロチップが所定の閾値を超える温度であると感知する場合に、さらなるマイクロチップの少なくとも一部を無効にするように構成される、温度センサ
【0532】
14.第11項から第13項のいずれか1つに記載の装置であり、装置がさらに以下を備えるもの:
DAC出力端子からのアナログ電圧出力信号に応答して、バッテリの電圧をブースト電圧に上昇させるように構成された昇圧コンバータ回路であって、ブースト電圧がHブリッジ回路のスイッチの切り替えによって変調されるように、第1の電力供給端子においてブースト電圧を提供するように構成された昇圧コンバータ回路と、を備える。
【0533】
15. 前記電流センサは、前記フリーフロート期間中に前記共振回路を流れる電流を感知するように構成され、前記デジタル状態機械は、前記フリーフロート期間中に前記共振回路を流れる電流がゼロであると前記電流センサが感知したときに前記第1のスイッチ又は前記第2のスイッチのいずれかにスイッチを入れるためにタイミング信号を適応するように構成されている、条項11から14のいずれか1項に記載の装置。
【0534】
16.第11項から15のいずれか1項に記載の装置で、デバイスの動作のセットアップフェーズの間、さらなるマイクロチップが以下のように構成されるもの:
第1のスイッチ及び第2のスイッチがオフにされ、第3のスイッチ及び第4のスイッチがオンにされたときに、共振回路を流れる電流がゼロになるのにかかる時間の長さを測定し、
前記フリーフロート期間の時間の長さを、前記測定された時間の長さと等しくなるように設定する。
【0535】
17.前記条項のいずれか1つに記載の装置であり、装置がさらに以下を備えるもの:
前記ドライバ装置を制御するためのプロセッサ
プロセッサによって実行されたとき、ドライバ装置に以下を行わせる命令を格納するメモリ:
A. 超音波トランスデューサにスイープ周波数で交流駆動信号を出力するようにドライバ装置を制御する
B. フィードバック信号に基づいて、超音波トランスデューサによって使用されている有効電力を計算する
C. 超音波トランスデューサによって使用されている有効電力を最大化するために交流駆動信号を変調するようにドライバ装置を制御する
D. 超音波トランスデューサによって使用される最大有効電力と交流駆動信号のスイープ周波数の記録をメモリに保存する
E. 所定の反復回数の後、スイープ周波数がスイープ開始周波数からスイープ終了周波数まで増加又は減少するように、各反復でスイープ周波数が増加又は減少しながら、ステップA~Dを所定の回数だけ繰り返す
F. メモリに格納された記録から、超音波トランスデューサによって最大の有効電力が使用される交流駆動信号のスイープ周波数である交流駆動信号の最適周波数を特定する
G. ドライバ装置を制御して、最適な周波数で超音波トランスデューサに交流駆動信号を出力し、超音波トランスデューサを駆動して液体を霧化させる。
【0536】
18.条項17に記載の装置であり、前記開始スイープ周波数は2900kHzであり、前記終了スイープ周波数は3100kHzであるもの。
【0537】
19.先行する条項のうちのいずれか1つに記載の装置であり、ドライバ装置がミスト発生装置から分離可能であるように、ドライバ装置がミスト発生装置に解放可能に取り付けられているもの。
【0538】
20.使用者による吸入のためのミストを生成するためのミスト吸入器であって、該装置は、以下を備える:
【0539】
以下のものを備える、ミスト発生装置:
超音波処理チャンバ
霧化される液体を含む液体チャンバ
前記液体チャンバと前記超音波処理チャンバとの間に延在する毛細管要素
超音波トランスデューサであって、毛細管要素によって液体チャンバから超音波処理チャンバに運ばれる液体を霧化するために振動するように構成され、霧化された液体と空気から成るミストを超音波処理チャンバ内に生成するもの
ミスト出口ポートで吸引する使用者が超音波処理チャンバからミストを吸入するように、超音波処理チャンバと流体連通しているミスト出口ポートと、ここで、ミスト吸入器は、さらに以下のものを含んでいるもの:
【0540】
次のものを内蔵するドライバ装置:
バッテリー
電池からの電圧を交流駆動信号に変換して超音波トランスデューサを振動させるための交流ドライバ
超音波トランスデューサが交流駆動信号によって駆動されるときに、超音波トランスデューサによって使用される有効電力を監視するための有効電力モニタであって、有効電力モニタが、超音波トランスデューサを駆動する交流駆動信号の駆動電流を感知するための電流センサを含み、有効電力モニタ配置が、感知された駆動電流を示す監視信号を提供する、有効電力モニタ配置
交流ドライバを制御し、アクティブパワーモニタから監視信号を受信するためのプロセッサ
プロセッサによって実行されたとき、プロセッサに以下を行わせる命令を格納するメモリ:
【0541】
ミスト発生装置を第1の所定の時間だけ作動させることであって、ミスト発生装置を作動させることは、超音波トランスデューサが毛細管要素によって運ばれる液体を霧化するように、交流駆動信号でミスト発生装置内の超音波トランスデューサを駆動することを含む、
電流センサを使用して、超音波トランスデューサを流れる交流駆動信号の電流を第1の所定時間の間に周期的に感知し、周期的に測定された電流値をメモリに保存する
メモリに格納された電流値を使用して有効性値を計算し、有効性値は液体を霧化する際の超音波トランスデューサの動作の有効性を示す
前記有効性値に応答して、第2の所定の時間の長さを選択する
前記ミスト発生装置が前記第2の所定時間の間に所定量のミストを発生させるように、前記第2の所定時間の間、前記ミスト発生装置を作動させる、請求項1に記載の方法。
【0542】
21.メモリが、プロセッサによって実行されたときに、プロセッサに以下を行わせる命令を格納する、第20項に記載の装置:
超音波トランスデューサを駆動する交流駆動信号の周波数を第1の所定の長さの時間の間に周期的に測定し、周期的に測定された周波数値をメモリに記憶する
前記メモリに格納された周波数値を用いて、前記有効性値を算出する
【0543】
22.メモリが、プロセッサによって実行されたときに、プロセッサにこの式を使用して有効性値を計算させる命令を格納する、第21項に記載の装置:
【0544】
【数5】
【0545】
23.メモリが、プロセッサによって実行されたときに、プロセッサに以下を行わせる命令を格納する、第22項に記載の装置:
超音波トランスデューサを駆動する交流駆動信号のデューティサイクルを第1の所定の長さの時間の間に周期的に測定し、周期的に測定されたデューティサイクル値をメモリに記憶する
前記メモリに格納された現在の値に基づいて、前記アナログ-デジタル変換器副効果値QAを修正する。
【0546】
24.メモリが、プロセッサによって実行されたときに、プロセッサに以下を行わせる命令を記憶する、第22項又は第23項に記載の装置:
ミスト発生装置に電力を供給しているバッテリの電圧を第1の所定の時間の間に周期的に測定し、周期的に測定されたバッテリ電圧値をメモリに記憶する
メモリに格納されたバッテリ電圧値に基づいて、アナログからデジタルへの変換器の副効果値QAを修正する。
【0547】
25.前記条項のいずれか1つの装置であって、前記メモリは、前記プロセッサによって実行されると、前記プロセッサに以下のことをさせる命令を記憶する:
前記第1の所定の長さの時間の間、前記超音波トランスデューサが最適に動作していた場合に発生するであろうミストの最大量の値を計算する
前記効果値に基づいて前記ミストの最大量の値を比例的に減少させて、前記第1の所定時間の間に発生した実際のミスト量を求める実ミスト量値を算出する。
【0548】
26.メモリが、プロセッサによって実行されたときに、プロセッサに以下を行わせる命令を格納する、第25項に記載の装置:
前記第1の所定時間の間に発生した実際のミスト量に含まれる治療量を示す治療量値を算出する
治療量の値をメモリに保存する。
【0549】
27.メモリが、プロセッサによって実行されたときに、プロセッサに以下を行わせる命令を格納する、第26項に記載の装置:
複数の所定の時間の長さの間、ミスト発生装置を作動させる
複数の治療量値をメモリに記憶し、各治療量値は、予め定められた時間のそれぞれの長さの期間にわたって生成されたミスト中の治療量を示す
所定の長さの時間の持続期間にわたって生成されたミスト中の治療薬の総量が所定の閾値以上である場合、所定の持続期間にわたってミスト発生装置のさらなる起動を阻止する
【0550】
28.第27項の装置であり、所定の持続時間が1時間から24時間の範囲内である。
【0551】
29.メモリが、プロセッサによって実行されたときに、プロセッサに以下を行わせる命令を記憶する、第27項又は第28項に記載の装置:
治療量値を示すデータをミスト発生装置からコンピューティングデバイスに送信し、コンピューティング装置のメモリに記憶させる
【0552】
30.使用者による吸入のためのミストを生成する方法であり、以下を備える:
ミスト発生装置を第1の所定時間の間作動させることであって、ミスト発生装置を作動させることは、超音波トランスデューサが振動して液体を霧化し、霧化した液体と空気とを含むミストを生成するように、交流駆動信号でミスト発生装置内の超音波トランスデューサを駆動することを含む
前記超音波トランスデューサを流れる前記交流駆動信号の電流を前記第1の所定時間の間に定期的に測定し、定期的に測定した電流値をメモリに記憶する
メモリに記憶された電流値を用いて効果値を計算し、効果値は、液体を霧化する際の超音波トランスデューサの動作の有効性を示す
前記有効性値に応答して、第2の所定の時間の長さを選択する
前記ミスト発生装置が前記第2の所定時間の間に所定量のミストを発生させるように、前記ミスト発生装置を前記第2の所定時間の間作動させる
【0553】
31.条項30に記載の方法であり、以下を備えるもの:
超音波トランスデューサを駆動する交流駆動信号の周波数を第1の所定の長さの時間の間に周期的に測定し、周期的に測定された周波数値をメモリに記憶する
前記メモリに格納された周波数値を用いて、前記有効性値を算出する
【0554】
32.条項31に記載の方法であり、この式を用いて有効性値を計算することを含むもの:
【0555】
【数6】
【0556】
33.条項32に記載の方法であり、以下を備えるもの:
超音波トランスデューサを駆動する交流駆動信号のデューティサイクルを第1の所定の長さの時間の間に周期的に測定し、周期的に測定されたデューティサイクル値をメモリに記憶する
前記メモリに格納された現在の値に基づいて、前記のアナログ-デジタル変換器(「ADC」)の副効果値QAを修正する。
【0557】
34.第32項もしくは第33項に記載の方法であり、以下を備えるもの:
ミスト発生装置に電力を供給しているバッテリの電圧を第1の所定の時間の間に周期的に測定し、周期的に測定されたバッテリ電圧値をメモリに記憶させる
メモリに格納されたバッテリ電圧値に基づいて、アナログ-デジタル変換器(「ADC」)の副効果値QAを修正する。
【0558】
35.第30項から第34項のいずれか1つに記載の方法であり、さらに以下を備えるもの:
前記第1の所定の長さの時間の間、前記超音波トランスデューサが最適に動作していた場合に発生するであろうミストの最大量の値を計算する
前記効果値に基づいて前記ミストの最大量の値を比例的に減少させて、前記第1の所定時間の間に発生した実際のミスト量を求める実ミスト量値を算出する。
【0559】
36.条項35に記載の方法であり、以下を備えるもの:
前記第1の所定時間の間に発生した実際のミスト量に含まれる治療量を示す治療量値を算出する
治療量の値をメモリに保存する。
【0560】
37.条項36に記載の方法であり、以下を備えるもの:
複数の所定の時間の長さの間、ミスト発生装置を作動させる
複数の治療量値をメモリに記憶し、各治療量値は、予め定められた時間のそれぞれの長さの期間にわたって生成されたミスト中の治療量を示す
所定の長さの時間の持続期間にわたって生成されたミスト中の治療薬の総量が所定の閾値以上である場合、所定の持続期間にわたってミスト発生装置のさらなる起動を阻止する
【0561】
38.第37項の方法であり、所定の持続時間が1時間から24時間の範囲内であるもの。
【0562】
39.第37項もしくは第38項に記載の方法であり、以下を備えるもの:
治療量値を示すデータをミスト発生装置からコンピューティングデバイスに送信し、コンピューティング装置のメモリに記憶させる
図1
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図4A
図4B
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【国際調査報告】