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特表2023-502195被検体のX線画像を取得するためのシステム及び方法
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  • 特表-被検体のX線画像を取得するためのシステム及び方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-23
(54)【発明の名称】被検体のX線画像を取得するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/02 20060101AFI20230116BHJP
   A61B 6/00 20060101ALI20230116BHJP
【FI】
A61B6/02 300F
A61B6/00 300B
A61B6/02 301H
A61B6/00 350A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022523077
(86)(22)【出願日】2020-10-12
(85)【翻訳文提出日】2022-05-26
(86)【国際出願番号】 GB2020052539
(87)【国際公開番号】W WO2021074600
(87)【国際公開日】2021-04-22
(31)【優先権主張番号】1915036.6
(32)【優先日】2019-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521400327
【氏名又は名称】アダプティクス リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ADAPTIX LTD
【住所又は居所原語表記】Begbroke Science Park, Centre for Innovation and Enterprise (CIE), Woodstock Road, Begbroke, Oxford Oxfordshire OX5 1PF (GB)
(74)【代理人】
【識別番号】100105131
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 満
(74)【代理人】
【識別番号】100105795
【弁理士】
【氏名又は名称】名塚 聡
(72)【発明者】
【氏名】ディルクス,コンラッド
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA11
4C093CA01
4C093CA34
4C093DA06
4C093DA10
4C093EA06
4C093EB17
4C093EC16
4C093EC25
4C093EC29
4C093EE16
4C093FA13
4C093FA15
4C093FA55
4C093FF28
(57)【要約】
フラットパネルアレイトモシンセシス取得のための画質は、DTにおいて取得される画像角度の数が減少するためにCTと同等ではなく、また、画質はボリューム全体にわたって均一ではなく、固定検出器アレイ及び固定フラットパネルソースに近いところで低下する。本発明は、エミッタパネル(3)及び検出器(7)がスマートアーマチャ(9)上で移動可能である、被検体(1)のX線画像を得るためのシステムを提供する。このようにして、画質は例えば、異なる向きから取られた取得を組み合わせることによって改善することができ、それによって、従来のCTイメージングの品質に近づく一方で、従来のDTイメージングのより低いコスト及び線量を依然として維持する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線エミッタのアレイを含むX線エミッタパネルと、
X線検出器と、
前記エミッタパネルと検出器を動かすためのアーマチャと、
前記エミッタパネル及び前記検出器の空間位置を決定するための少なくとも1つのセンサと、
前記少なくとも1つのセンサから空間位置信号を受信することに応答して、前記検出器及び前記エミッタパネルの前記位置を監視するための空間トラッカーと、
前記エミッタパネルの第1のセットのエミッタを作動させて関心領域を識別するように構成されたコントローラ、を備え、前記コントローラはさらに、前記エミッタパネルの第2のセットのエミッタを作動させるように構成され、前記第2のセットのエミッタは、前記関心領域と重なり合うことになる前記エミッタパネルのエミッタのみとなるように制限される、被検体のX線画像を取得するためのシステム。
【請求項2】
前記空間トラッカーは、前記エミッタパネルと検出器との分離を決定するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記空間トラッカーは、前記エミッタパネルに対する前記検出器の向きを決定するように構成される、請求項1又は請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記空間トラッカーは、前記エミッタパネルの軸からの前記検出器の横方向の変位を決定するように構成される、請求項1~3のいずれかに記載のシステム。
【請求項5】
前記空間トラッカーは、前記エミッタパネル及び検出器の絶対位置を決定するように構成される、請求項1~4のいずれかに記載のシステム。
【請求項6】
X線エミッタのアレイを含むX線エミッタパネルを提供するステップと、
X線検出器を提供するステップと、
コントローラを提供するステップと、
アーマチャを使用して前記X線エミッタパネルを第1の位置に移動させるステップと、
少なくとも1つのセンサを用いて前記エミッタパネルの空間位置を決定するステップと、
前記アーマチャを使用して前記X線検出器を第2の位置に移動させるステップと、
前記少なくとも1つのセンサを用いて前記検出器の空間位置を決定するステップと、
前記少なくとも1つのセンサから空間位置信号を受信することに応答して、空間トラッカーを用いて前記検出器及び前記エミッタパネルの前記位置を監視するステップと、
前記エミッタパネルの第1のセットのエミッタを作動させて関心領域を識別し、前記エミッタパネルの第2のセットのエミッタを作動させるために前記コントローラを用いることによって、前記エミッタパネルのエミッタを作動させることによって撮像データを取得するステップであって、前記第2のセットのエミッタは、前記関心領域と重なり合うことになる前記エミッタパネルのエミッタのみに制限される該ステップ、を含む、被検体のX線画像を取得する方法。
【請求項7】
前記取得された撮像データを使用して、プロセッサを用いて前記エミッタパネルと検出器との間の領域の3D画像を再構成するステップをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記X線エミッタパネルを第3の位置へ移動させるステップと、
前記少なくとも1つのセンサを用いて前記エミッタパネルの新しい空間位置を決定するステップと、
前記X線検出器を第4の位置へ移動させるステップと、
前記少なくとも1つのセンサを用いて前記検出器の新しい空間位置を決定するステップと、
前記少なくとも1つのセンサから新しい空間位置信号を受信することに応答して、空間トラッカーを用いて前記検出器及び前記エミッタパネルの前記新しい位置を監視するステップと、
前記エミッタパネル上のエミッタを作動させることによって、更なる撮像データを取得するステップ、をさらに含む、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記取得された撮像データ及び前記さらなる撮像データを使用して、プロセッサを用いて、前記エミッタパネルと検出器との間の領域の3D画像を再構成するステップをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、被検体のX線画像を取得するためのシステム及び方法に関し、デジタルトモシンセシスにおいて特に有用であるが、これに限定されるものではない。
【0002】
従来のX線装置は単一の点源から関心領域を照射し、平坦な検出器上に投影することにより、単一の2D画像を生成する。したがって、複雑な3D解剖学的形状はうまく表現することが困難であるが、システムは比較的安価であり、被検体は比較的低い線量しか受けない。
【0003】
CアームX線装置は線源と検出器が互いに対して固定された位置にあり、被検体の周囲を一緒に移動する機械的なC字型アーム上の従来のX線源を使用する。
【0004】
X線を使用する3D医療イメージング(又は、撮像)は、単一方向にある範囲の角度にわたって動かされる従来のX線点源を使用するトモシンセシスの発明以来可能であった。必要とされる画像の限られた角度範囲は「トモシンセシスアーチファクト」、すなわち、スライス間の画像特徴のブリーディング、非等方性ボクセルサイズ、及び焦点面外の低減された画像品質につながる。
【0005】
1970年代のコンピュータ断層撮影(CT)イメージングは今日も、3DX線イメージングにとっての絶対的基準のままであり、高速の取得及び再構成速度及び優れた画質を提供する。これは、関心ボリューム(又は、関心体積部分/Volume of Interest)の周りに360度機械的に動かされる検出器アレイと結合された単一のX線源を使用する。単一のX線源からの固定された発光コーンプロファイル(又は、プロフィール/profile)のために、検出器アレイの位置はX線源の位置によって決定される。すなわち、X線源からの検出器アレイの相対的な変位は、変化しない。具体的には線源及び検出器が関心領域の周囲をアーク状に一緒に動かされる。
【0006】
近年、X線デジタルトモシンセシス(DT)技法が開発されており、これは、X線源の静的アレイを使用して、線源又は検出器を移動させる必要なしにトモシンセシス取得を実行することによって、より低いコスト及び線量で3D画像再構成の可能性を提供する。しかしながら、フラットパネルアレイトモシンセシス取得のための画質はDTにおいて取得される画像のアングルの数が減少するためにCTと同等ではなく、また、画質はボリューム(又は、体積/volume)全体にわたって均一ではなく、固定検出器アレイ及び固定フラットパネル源に近いところで減少する。
【0007】
本発明の第1の態様によれば、被検体のX線画像を取得するためのシステムが提供され、該システムは、X線エミッタパネルと、X線検出器と、該エミッタパネル及び検出器を移動させるためのアーマチャ(又は、電機子/電動子/armature)と、該エミッタパネル及び該検出器の空間位置を決定するための少なくとも1つのセンサと、該少なくとも1つのセンサからの空間位置信号を受信することに応答して、該検出器及び該エミッタパネルの位置を監視するための空間トラッカーと、を含む。
【0008】
このようにして、従来のDTイメージングのより低いコスト及び線量を依然として維持しながら、従来のCTイメージングのものに近づく画質を改善することができる。
【0009】
システムは、DTシステムを含むことができる。被検体は、人間、動物、器具の一部、無生物、及び/又はその一部を含むことができる。
【0010】
X線エミッタパネルは、個々にアドレス指定可能であってもよいX線エミッタのアレイを含んでもよい。エミッタパネルは実質的に平坦であってもよいが、代替の構成では湾曲させることができる。エミッタパネルは実質的に正方形又は長方形の形態を有することができるが、代替の構成では六角形などの他の構成が想定される。エミッタは、パネル上に正方形又は三角形の配置で配置することができる。
【0011】
X線検出器パネルは、ピクセルのアレイを含んでもよい。検出器パネルは実質的に平坦であってもよいが、代替の構成では湾曲されてもよい。検出器パネルは実質的に正方形又は長方形の形態を有することができるが、代替的な構成では六角形などの他の構成が想定される。ピクセルは、パネル上で正方形又は三角形の配置で配列されてもよい。
【0012】
エミッタパネルは、第1のアーマチャ上に配置することができる。検出器は検出器パネルを備えることができ、第2のアーマチャ上に配置することができる。それぞれのアーマチャ上に配置されるパネル又はそれぞれのパネルは、それぞれのアーマチャに接続及び/又は結合されるパネル又はそれぞれのパネルを備えることができる。
【0013】
アーマチャ(及び/又は第1及び/又は第2のアーマチャ)が可動であることは、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又はそれ以上の自由度を有することを含み得、その結果、それぞれのパネルは領域内の実質的に任意の位置に動かすことができ、及び/又は実質的に任意の向きに配向され得る。例えば、第1及び/又は第2のアーマチャは最大及び最小のそれぞれの延長部の間で、実質的に3つのデカルト方向(すなわち、3次元)でのそれぞれのパネルの並進を可能にすることができ、かつ/又は第1及び/又は第2のアーマチャは、いくつかの外部基準フレームに対して第1及び/又は第2の軸の周りでのパネルの回転を可能にすることができる。
【0014】
アーマチャ及び/又は第1及び/又は第2のアーマチャは、接合されていてもよく、かつ/又は入れ子式であってもよく、又は他の方法で伸張可能であってもよい。アーマチャが接合される場合、1つ又は複数のジョイントの対向する両側の1つ又は複数の部材は入れ子式であり得るか、又はさもなければ伸張可能であり得る;あるいは、全ての部材が固定されていてもよい(すなわち、非入れ子式/伸張可能)。1つ又は複数のジョイントは1つ又は複数の回転軸を可能にしてもよく、例えば、ジョイントは、ヒンジジョイント、平面ジョイント、ボールジョイント、又は同様のものであってもよい。アーマチャは可撓性及び/又は可鍛性であってもよく、又は弾性であってもよく、例えば、一体の(unitary)ジョイント部材(部材とは別個のジョイントではない)を備える。
【0015】
エミッタ及び/又は検出器パネルの空間位置を決定することは、エミッタ及び/又は検出器パネルの位置及び/又は向きを決定することを含むことができる。
【0016】
少なくとも1つのセンサは、エミッタパネルの空間位置を決定するための少なくとも1つの第1のセンサと、検出器の空間位置を決定するための少なくとも1つの第2のセンサと、を含んでもよい。少なくとも1つのセンサ、及び/又は少なくとも1つの第1及び/又は第2のセンサは、1つだけ又は複数の第1及び/又は第2のセンサを備えることができる。センサは(例えば、パネル上に配置された基準ピン、トランシーバなどの位置を決定することによって)それぞれのパネルの空間位置を直接決定することができ、又は部材又はそれぞれの部材の伸長量を決定することによって、及び/又は、ジョイント又はそれぞれのジョイントの回転量を決定することによって、それぞれのパネルの空間位置を推測することができる。例えば、それぞれのセンサを各ピボット点に配置することができる。
【0017】
第1及び第2のアーマチャは、互いに独立していてもよい。代替的に又は追加的に、システムは、エミッタ及び検出器パネルを一緒に大規模に移動させ、次いで、第1及び/又は第2のアーマチャによってエミッタ及び/又は検出器パネルを互いに対して小規模に移動させることを可能にするマスターアーマチャを含むことができる。例えば、第1のアーマチャ又は第2のアーマチャはマスターアーマチャを備え、第2のアーマチャ又は第1のアーマチャは(それぞれ)第1のアーマチャに結合することができる。あるいは、第1及び第2のアーマチャが両方ともマスターアーマチャに結合されてもよい。
【0018】
アーマチャは、スマートアーマチャを含むことができる。センサは、それぞれの空間位置信号を空間トラッカー(又は、追跡装置)に送信するように構成されてもよい。
【0019】
空間トラッカーはプロセッサを含み、コンピュータ・システムで実施されてもよい。
【0020】
検出器パネル及びエミッタパネルの位置は、エミッタパネルに対する検出器パネルの相対位置及び/又は検出器パネルに対するエミッタパネルの相対位置を含むことができる。検出器パネル及びエミッタパネルの位置は、検出器パネル及びエミッタパネルの絶対位置、又は何らかの所定の/前もって決められた基準点に対する検出器パネル及びエミッタパネルの位置を含むことができる。
【0021】
空間トラッカーは、エミッタパネルと検出器パネルとの分離(separation)を決定するように構成されてもよい。
【0022】
エミッタパネルと検出器パネルとの分離は、検出器パネル及び/又はエミッタパネルに垂直な方向における検出器パネルからエミッタパネルまでの最短距離、最長距離及び/又は平均距離を含むことができる。エミッタパネルと検出器パネルとの分離は検出器パネル上の少なくとも1つの所定の/前もって決められた点から、実質的に任意の方向のエミッタパネル上の少なくとも1つの所定の/前もって決められた点までの、最短、最長、及び/又は平均距離を含んでもよい。エミッタパネルと検出器パネルとの分離は、エミッタパネルから放出されて検出器パネルに到達するX線がとる最短、最長及び/又は平均経路長を含むことができる。しかしながら、分離の他の決定も考えられる。
【0023】
代替的に、エミッタパネルと検出器パネルとの分離は、外部基準フレーム及び/又は何らかの所定の/前もって決められた位置に対するエミッタパネル及び/又は検出器パネル(又はその上の少なくとも1つの位置)の空間的位置を含むことができる。
【0024】
空間トラッカーは、エミッタパネルに対する検出器パネルの向きを決定するように構成されてもよい。
【0025】
検出器パネルの向きは、一方のパネルの他方のパネルに対する傾斜、及び/又はその傾斜の方向を含むことができる。代替的に、エミッタパネルに対する検出器パネルの向きは、検出器パネルの向き及び/又は所定の/前もって決められた基準の向きに対するエミッタパネルの向きを決定することを含むことができる。
【0026】
空間トラッカーは、エミッタパネルの軸からの検出器パネルの横方向変位を決定するように構成されてもよい。
【0027】
検出器パネルの横方向変位は、エミッタパネルから検出器パネル上に放出されるX線の重複を含んでもよい。検出器パネルの横方向変位は、1つのパネル上の1つのみの又は少なくとも1つの所定の/前もって決められた点と、1つのパネルに平行な方向で且つパネルの分離距離だけ1つのパネルから離間された別のパネル上の1つのみの又は少なくとも1つの所定の/前もって決められた点との間の間隔を含むことができる。
【0028】
空間トラッカーは、エミッタパネル及び検出器パネルの絶対位置を決定するように構成されてもよい。すなわち、空間トラッカーは、固定点に対するエミッタパネル及び検出器パネルの位置を決定することができる。
【0029】
エミッタパネル及び検出器パネルの絶対位置は、パネルの絶対位置及び/又は絶対配向を含むことができる。
【0030】
空間トラッカーは、エミッタパネル及び検出器パネルの以前の位置に対するエミッタパネル及び検出器パネルの位置を決定するように構成されてもよい。このようにして、撮像は、関心対象の2つ以上の側面から実行することができる。
【0031】
パネルのうちの1つの上の所定の/前もって決められた点は、パネル上の中心、コーナー、又は他の何らかの位置を含むことができる。
【0032】
システムは、エミッタパネルと検出器パネルとの間の領域の3D画像を再構成するための再構成プロセッサをさらに備えることができる。
【0033】
本発明の第2の態様によれば、被検体のX線画像を得る方法が提供され、該方法は、X線エミッタパネルを提供するステップと、X線検出器を提供するステップと、アーマチャを使用して、前記X線エミッタパネルを第1の場所に移動させるステップと、少なくとも1つのセンサで、該エミッタパネルの空間位置を決定するステップと、前記アーマチャを使用して、前記X線検出器パネルを第2の場所に移動させるステップと、前記少なくとも1つのセンサで、前記検出器パネルの空間位置を決定するステップと、前記少なくとも1つのセンサからの空間位置信号を受信することに応答して、空間トラッカーで、前記検出器パネル及び前記エミッタパネルの位置を監視するステップと、前記エミッタパネル上のエミッタを作動させる(又は、アクティベートする)ことによって、撮像データを取得するステップと、を含む。
【0034】
コントローラ(例えば、コンピュータ制御装置)は検出器パネル及びエミッタパネルの位置から、各エミッタから放出されたX線が検出器に衝突する可能性があるかどうかを判断してもよく、コントローラは、画像データ取得中に検出器に衝突するエミッタのみを作動させてもよい。このようにして、被検体に対する不必要な放射線量を回避することができる。
【0035】
さらに、取得された画像データを使用して(例えば、従来の/合成2D画像を生成することによって)、新しいエミッタ及び検出器位置からの後続の取得のために関心領域を識別することができる。これは、手動又は自動で行うことができる。
【0036】
いくつかの実施形態では、第1の取得から取得された画像データを使用して、同じエミッタ位置及び検出器位置からの後続の取得のために関心領域を識別することができる。これは、手動又は自動で行うことができる。
【0037】
特にCTでは、医用画像の自動解析や特徴検出アルゴリズムの普及が進んでいる。これは、自動観察準備、自動脊椎ラベリングなどのアプリケーション(又は、応用/用途)や、スクリーニングに使われるより高度化されたCADアプリケーションにも見られる。デジタルトモシンセシスでは、マンモグラフィにおける自動乳頭検出のような、いくつかの既存の自動特徴検出作業が利用可能である(「デジタル乳房トモシンセシスにおける完全自動乳頭検出」、Computer Methods and Programs In Biomedicine、Volume 143 Issue C、2017年5月、113~120頁を参照されたい)。
【0038】
実際、そのような2D画像は、関心領域の画像データ取得のための最適な新しいエミッタ及び検出器位置を識別するために使用されてもよい。新しいエミッタ及び検出器の位置の指示はアーマチャを自動的に移動させるために(例えば、サーボ又はモータを用いて)、又はアーマチャの手動操作のための命令をオペレータに提供するために、空間トラッカーに送り返されてもよい。
【0039】
いずれにしても、アーマチャは、画像データの第1の取得のためにオペレータによって手動で位置決めされてもよい。
【0040】
本方法は、取得された撮像データを使用して、プロセッサを用いて、エミッタパネルと検出器パネルとの間の領域の3D画像を再構成するステップをさらに含むことができる。
【0041】
このようにして、3D画像を使用して、新しいエミッタ及び検出器位置からの後続の取得のために関心領域を識別することができる。実際、3D画像は上述のように、関心領域の画像データ取得のための最適な新しいエミッタ及び検出器位置を識別するために使用されてもよい。
【0042】
ユーザは2D又は3D画像表示ソフトウェアを使用して、又は自動画像特徴識別(例えば、自動脊柱検出)を介して、関心領域を手動で選択し得る。関心領域の識別は、第2の取得中に使用されるエミッタの数を減らすことによって、画質を損なうことなく、線量及び取得時間を最小限に抑えることを可能にする。
【0043】
本方法は、X線エミッタパネルを第3の位置に移動させるステップと、少なくとも1つのセンサを用いてエミッタパネルの新しい空間位置を決定するステップと、X線検出器パネルを第4の位置に移動させるステップと、少なくとも1つのセンサを用いて検出器の新しい空間位置を決定するステップと、少なくとも1つのセンサからの新しい空間位置信号の受信に応答して、空間トラッカーを用いて検出器パネル及びエミッタパネルの新しい位置を監視するステップと、エミッタパネル上のエミッタをアクティブ化することによってさらなる撮像データを取得するステップをさらに含むことができる。
【0044】
エミッタ及び検出器は例えば、所望の角度(典型的には90度)だけ回転することによって移動されてもよい。この装置の1つのバージョンは位置決めを自動化し、第1の走査からの角度及び選択された関心領域/関心ボリュームに基づく最適なサンプリングスキームの計算に基づいて、第2の取得のための最適な位置を選択することができる。
【0045】
コントローラは各エミッタから放出されたX線が検出器に衝突する可能性があるかどうかを、検出器パネル及びエミッタパネルの新しい位置から判断することができ、コントローラは、画像データ取得中に検出器に衝突するエミッタのみを作動させることができる。同様に、コントローラは検出器パネル及びエミッタパネルの新しい位置、及び/又は関心領域から、各エミッタから放出されたX線が検出器に衝突することができるか、及び/又は関心領域を通過することができるかどうかを決定することができ、コントローラは、画像データ取得中に検出器に衝突する及び/又は関心領域を通過することになるエミッタのみを作動させることができる。
【0046】
第2の取得の間、使用されるエミッタのセットは、選択された関心ボリュームとオーバーラップする(又は、重なり合う/overlap)エミッタに取得を制限することによって、さらに制約される。この効果は、取得時間を短縮することと、患者に送達される総線量を制限することとの両方である。
【0047】
本方法は、取得された撮像データ及びさらなる撮像データを使用して、プロセッサを用いて、エミッタパネルと検出器パネルとの間の領域の3D画像を再構成するステップをさらに含むことができる。
【0048】
すなわち、第1及び第2のデータセットからの画像を組み合わせて、関心領域の合成データセットを形成する。これは、より高い画像品質を有する3Dデータセットを提供するために、2つ以上の取得データセットが組み合わされることを可能にすることによって、フラットパネルアレイトモシンセシスによって提供される画像品質を著しく改善する。ある意味で、これは、フラットパネルトモシンセシスシステムの利点を有するCアームシステムの位置決め柔軟性を付加する。
【0049】
第2の再構成の再構成中に、生フレームデータは位置情報と共に、両方のデータセットから使用され、単一の3Dデータセットを形成するために使用される。
【0050】
さらなる画像データ取得は例えば、関心領域に対するさらなる制限を考慮して、及び/又は異なる角度の放射及び検出を提供することによって、最終的な再構成を改善するために行われてもよい。
【0051】
本発明の上記及び他の特性、特徴及び利点は、本発明の原理を例として示す添付の図面と併せて、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。この説明は、本発明の範囲を限定することなく、単に例示のために与えられる。以下に引用する参考図は、添付図面を参照する。
【0052】
図1は、被検体のX線画像を取得するためのシステムの図である。
【0053】
本発明は特定の図面に関して説明されるが、本発明はそれに限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。記載された図面は、概略的なものにすぎず、非限定的なものである。各図面は、本発明の特徴のすべてを含むわけではなく、したがって、必ずしも本発明の実施形態であると見なされるべきではない。図面において、いくつかの要素のサイズは、説明の目的のために誇張され、縮尺通りに描かれていないことがある。寸法及び相対的寸法は、本発明の実施に対する実際の縮小に対応しない。
【0054】
さらに、説明及び特許請求の範囲における第1、第2、第3などの用語は同様の要素を区別するために使用され、必ずしも時間的に、空間的に、ランキングで、又は任意の他の方法で順序(又は、シーケンスで、in a sequence)を説明するために使用されるわけではない。そのように使用される用語は適切な状況下で交換可能であり、動作は、本明細書で説明又は図示されたものとは別の順序で可能であることを理解されたい。同様に、特定の順序で説明又は特許請求される方法ステップは、異なる順序で動作すると理解され得る。
【0055】
さらに、明細書及び特許請求の範囲における頂部、底部、上方、下方などの用語は、説明の目的のために使用され、必ずしも相対的な位置を説明するために使用されるわけではない。そのように使用される用語は適切な状況下で交換可能であり、動作は、本明細書で説明又は図示されたものとは別の向きで可能であることを理解されたい。
【0056】
特許請求の範囲で使用される「含む」という語は、その後に列挙される手段に限定されるものとして解釈されるべきではなく、他の要素又はステップを排除するものではないことに留意されたい。したがって、言及されたような記載された特徴、整数、ステップ又は構成要素の存在を明示するものとして解釈されるべきであるが、1つ又は複数の他の特徴、整数、ステップ又は構成要素、又はそれらのグループの存在又は追加を排除するものではない。したがって、「手段A及びBを含む装置」という表現の範囲は、構成要素A及びBのみからなる装置に限定されるべきではなく、本発明に関して、装置の関連する構成要素はA及びBのみであることが手段である。
【0057】
同様に、本明細書で使用される「接続される(connected)」という用語は、直接接続のみに限定されるものとして解釈されるべきではないことに留意されたい。したがって、「装置Bに接続される装置A」という表現の範囲は装置Aの出力が装置Bの入力に直接的に接続されている装置やシステムに限定されるものではなく、Aの出力とBの入力との間には他の装置や手段を含む経路であってもよい経路が存在することを意味する。「接続される」とは2つ以上の要素が直接物理的又は電気的に接触していること、又は2つ以上の要素が互いに直接接触していないが、依然として互いに協働又は相互作用していることを意味し得る。例えば、無線接続が考えられる。
【0058】
本明細書全体を通して、「実施形態」又は「態様」という言及は、実施形態又は態様に関連して記載された特定の特徴、構成、又は特性が本発明の少なくとも1つの実施形態又は態様に含まれることを意味する。したがって、本明細書を通して様々な場所における「一実施形態において」、「実施形態において」、又は「一態様において」という語句の出現は、必ずしもすべてが同じ実施形態又は態様を参照しているわけではなく、異なる実施形態又は態様を参照することができる。さらに、本発明の任意の1つの実施形態又は態様の特定の特徴、構造、又は特性は本開示から当業者には明らかなように、1つ又は複数の実施形態又は態様において、本発明の別の実施形態又は態様の任意の他の特定の特徴、構造、又は特性と任意の適切な方法で組み合わせることができる。
【0059】
同様に、説明において、本発明の様々な特徴は開示を合理化し、様々な本発明の態様のうちの1つ又は複数の理解を助けるために、単一の実施形態、図、又はそれらの説明において一緒にグループ化されることがあることを理解されたい。しかしながら、この開示方法は、請求項に記載された発明が各請求項に明示的に記載されたよりも多くの特徴を必要とするという意図を反映するものとして解釈されるべきではない。さらに、任意の個々の図面又は態様の説明は、必ずしも本発明の実施形態であると見なされるべきではない。むしろ、以下の特許請求の範囲が反映するように、本発明の態様は、前述の単一の開示された実施形態のすべての特徴よりも少ない特徴にある。したがって、詳細な説明に続く特許請求の範囲はこの詳細な説明に明確に組み込まれ、各特許請求の範囲はそれ自体が本発明の別個の実施形態として存在する。
【0060】
さらに、本明細書に記載されるいくつかの実施形態は他の実施形態に含まれるいくつかの特徴を含むが、異なる実施形態の特徴の組み合わせは当業者によって理解されるように、本発明の範囲内であり、さらなる実施形態を形成することを意味する。例えば、以下の特許請求の範囲では、特許請求の範囲に記載された実施形態のいずれも、任意の組み合わせで使用することができる。
【0061】
本明細書で提供される説明では、多数の具体的な詳細が記載される。しかしながら、本発明の実施形態は、これらの特定の詳細なしに実施され得ることが理解される。他の例では、この説明の理解を不明瞭にしないために、周知の方法、構造、及び技法は詳細に示されていない。
【0062】
本発明の議論では反対に述べられていない限り、パラメータの許容範囲の上限又は下限に対する代替値の開示は前記値のうちの1つが他の値よりも非常に好ましいという指示と相まって、前記代替値のうちのより好ましい値とより好ましくない値との間にある前記パラメータの各中間値自体が前記より好ましくない値よりも好ましく、また、前記より好ましくない値と前記中間値との間にある各値よりも好ましいという暗黙のステートメントとして解釈されるべきである。
【0063】
用語「少なくとも1つ」の使用は、特定の状況において1つのみを意味し得る。用語「いずれか」の使用は、特定の状況において「全て」及び/又は「各々」を意味し得る。
【0064】
ここで、本発明の原理を、例示的な特徴に関する少なくとも1つの図面の詳細な説明によって説明する。他の構成が基礎となる概念又は技術的教示から逸脱することなく、当業者の知識に従って構成され得ることは明らかであり、本発明は、添付の特許請求の範囲の用語によってのみ限定される。
【0065】
図1は被検体1のX線画像を得るためのシステムを表したものであり、該システムは、複数のそれぞれのX線エミッタからX線5の個々のコーン(又は、円錐、円錐体/cone)を放出するように構成されたエミッタパネル3を含む。明確にするために、オーバーラップしないX線コーン5のサブセットのみが示されている。X線の各コーンはエミッタパネルと検出器7との間の領域を通過し、その一部は被検体1を通過して検出器7に衝突する。
【0066】
エミッタパネル3は20x20cmのフラットパネルアドレス可能(又は、フラットパネルで対処できる/flat panel addressable)X線源を含んでもよいが、他のサイズ及び構成が想定される。同様に、検出器7は30x30cmの動的検出器を含んでもよいが、やはり、他のサイズ及び構成が想定される。
【0067】
エミッタパネル3及び検出器7はそれぞれ、固定基準点(例えば、壁又は支柱)11に対向する端部で固定されたアーマチャ構造9に取り付けられている。アーマチャ構造9は、回転ジョイント15を中心として回転部材17に接続された固定部材13を備えるマスターアーマチャを備える。回転部材17の自由端からは、第1伸縮式アーマチャ19及び第1伸縮式アーマチャ19と逆向きの第2伸縮式アーマチャ21が取り付けられている。伸縮式アーマチャ19、21上のハンドル23、25は回転ジョイント15の周りの回転27と同様に、伸縮式アーマチャの手動による伸縮を可能にする。各伸縮式アーマチャ19、21は、その反対側の端部において、接続部材29、31によってエミッタパネル3及び検出器7のそれぞれ1つに取り付けられている。
【0068】
これにより、線源/検出器対の少なくとも90度の回転を可能にし、20cmから50cmの間で線源検出器間の距離を増加/減少させることができる。典型的には線源及び検出器が(図のように)互いに平行であるが、代替の構成では検出器の位置を容易に変更できない状況において、それらを独立して位置決めすることができる。
【0069】
線源及び検出器の相対位置を1cm以内、特に5mm以内、より詳細には1mm以内に決定する位置センサ(図示せず)が含まれる。
【0070】
また、1組の2Dフレームを使用して標準トモシンセシスデータセットを再構成することができるソフトウェアを実行し、ユーザが関心ボリュームを強調表示することを可能にする関心ボリューム描画ツールを含むGUIに3D再構成画像を表示することができる制御及び再構成コンピュータも示されていない。
【0071】
任意選択で、制御及び再構成コンピュータは検出器7に衝突しないコーン5が作動しないように、線源及び検出器の位置に基づいて使用されるべきエミッタを決定してもよい。
【0072】
同様に、制御及び再構成コンピュータは線源及び検出器の位置と共に、識別された関心ボリュームに基づいて、第2の取得に使用されるべきエミッタを計算するように構成されてもよい。
【0073】
さらなる代替として、制御及び再構成コンピュータは、第1のスキャンからの関心ボリューム、再構成ボリューム、及び角度情報に基づいて、第2の取得のための線源及び検出器の最適位置を計算するように構成されてもよい。
【0074】
さらに、制御及び再構成コンピュータは、2組の直交入力データセット、又は潜在的に任意の相対位置の2つの入力データセットを使用してトモシンセシスデータセットを再構成するように構成することができる。
【0075】
例えば、頸椎の3D画像を最適に取得するためには、1つのデータセットを頭頸部の前後方向に取得し、3D体積を形成するように再構成するであろう。自動又は手動の領域識別技法を使用して、頸椎周辺の関心ボリュームを識別する。関心領域を遮るエミッタのみを用いて内外方向に直交して取得された第2のセットが取得される。次いで、両方のデータセットを使用して、完全な3D再構成を実行することができる。
下記は、本願の出願当初に記載の発明である。
<請求項1>
X線エミッタパネルと、
X線検出器と、
前記エミッタパネル及び検出器を動かすためのアーマチャと、
前記エミッタパネル及び前記検出器の空間位置を決定するための少なくとも1つのセンサと、
前記少なくとも1つのセンサから空間位置信号を受信することに応答して、前記検出器及び前記エミッタパネルの前記位置を監視するための空間トラッカー、を備える被検体のX線画像を取得するためのシステム。
<請求項2>
前記空間トラッカーは、前記エミッタパネル及び検出器パネルの分離を決定するように構成される、請求項1に記載のシステム。
<請求項3>
前記空間トラッカーは、前記エミッタパネルに対する前記検出器パネルの向きを決定するように構成される、請求項1又は請求項2に記載のシステム。
<請求項4>
前記空間トラッカーは、前記エミッタパネルの軸からの前記検出器パネルの横方向の変位を決定するように構成される、請求項1~3のいずれかに記載のシステム。
<請求項5>
前記空間トラッカーは、前記エミッタパネル及び検出器パネルの絶対位置を決定するように構成される、請求項1~4のいずれかに記載のシステム。
<請求項6>
X線エミッタパネルを提供するステップと、
X線検出器を提供するステップと、
アーマチャを使用して前記X線エミッタパネルを第1の位置に移動させるステップと、
少なくとも1つのセンサを用いて前記エミッタパネルの空間位置を決定するステップと、
前記アーマチャを使用して前記X線検出器パネルを第2の位置に移動させるステップと、
前記少なくとも1つのセンサを用いて前記検出器パネルの空間位置を決定するステップと、
前記少なくとも1つのセンサから空間位置信号を受信することに応答して、空間トラッカーを用いて前記検出器パネル及び前記エミッタパネルの前記位置を監視するステップと、
前記エミッタパネル上のエミッタを作動させることによって撮像データを取得するステップ、を含む、被検体のX線画像を取得する方法。
<請求項7>
前記取得された撮像データを使用して、プロセッサを用いて前記エミッタパネルと検出器パネルとの間の領域の3D画像を再構成するステップをさらに含む、請求項6に記載の方法。
<請求項8>
前記X線エミッタパネルを第3の位置へ移動させるステップと、
前記少なくとも1つのセンサを用いて前記エミッタパネルの新しい空間位置を決定するステップと、
前記X線検出器パネルを第4の位置へ移動させるステップと、
前記少なくとも1つのセンサを用いて前記検出器の新しい空間位置を決定するステップと、
前記少なくとも1つのセンサから新しい空間位置信号を受信することに応答して、空間トラッカーで前記検出器パネル及び前記エミッタパネルの前記新しい位置を監視するステップと、
前記エミッタパネル上のエミッタを作動させることによって、更なる撮像データを取得するステップ、をさらに含む、請求項6又は7に記載の方法。
<請求項9>
前記取得された撮像データ及び前記さらなる撮像データを使用して、プロセッサを用いて、前記エミッタパネルと前記検出器パネルとの間の領域の3D画像を再構成するステップをさらに含む、請求項8に記載の方法。
図1
【国際調査報告】