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特表2023-502197除草剤および植物成長調節剤の特定および特性決定
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-23
(54)【発明の名称】除草剤および植物成長調節剤の特定および特性決定
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/06 20060101AFI20230116BHJP
【FI】
C12Q1/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022525888
(86)(22)【出願日】2020-11-04
(85)【翻訳文提出日】2022-07-01
(86)【国際出願番号】 IB2020060331
(87)【国際公開番号】W WO2021090182
(87)【国際公開日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】2019904145
(32)【優先日】2019-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521088642
【氏名又は名称】オックスフォード ユニバーシティ イノベーション リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100182730
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 浩明
(72)【発明者】
【氏名】クレメント チャンピオン
(72)【発明者】
【氏名】リアム ドラン
(72)【発明者】
【氏名】サラ アットリル
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA18
4B063QQ04
4B063QQ09
4B063QR90
4B063QS39
4B063QX02
(57)【要約】
本発明は、除草活性または植物成長調節活性について化合物をスクリーニングすることが可能なハイスループット方法を提供し、さらに、除草化合物または植物成長調節剤の作用様式の予測を可能にする。本明細書で提供される方法はまた、植物における除草剤への耐性に関与する変異の特定および除草剤標的の特定を容易にする。本方法はさらに、植物成長調節に関与する変異の特定および植物成長調節剤標的の特定を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
除草活性または植物成長調節活性について候補化合物をスクリーニングする方法であって、前記方法が、
(i)一連の異なる候補化合物を、非維管束植物からの複数の試験試料と接触させるステップと、
(ii)候補化合物と接触していない非維管束植物からの対照試料の表現型と比較することによって、前記試験試料が、前記一連の異なる候補化合物に対する表現型応答を提供するかどうかを決定するステップと、を含み、
前記試験試料および前記対照試料が、全植物、胞子、胞子発芽体(sporeling)、外植片、プロトプラスト、または栄養繁殖体を含み、前記表現型応答が、前記除草活性または前記植物成長調節活性の指標である、方法。
【請求項2】
前記候補化合物が、除草活性についての候補化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記非維管束植物が、蘚類、角苔類または苔類である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記試験試料および対照試料が、胞子発芽体である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
試験胞子発芽体および対照胞子発芽体が、同じ種の非維管束植物の胞子に由来する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記試験胞子発芽体が、蘚類胞子発芽体、苔類胞子発芽体、角苔類胞子発芽体、またはそれらの任意の組み合わせである、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
前記一連の異なる候補化合物の各メンバーが、異なる試験試料と接触する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記一連の異なる候補化合物の複数のメンバーが、単一の試験試料と接触する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記試験試料および対照試料が、葉状苔類胞子発芽体、単純葉状性(thalloid)苔類胞子発芽体、複雑葉状性苔類胞子発芽体、またはそれらの任意の組み合わせである、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記試験試料および対照試料が、Marchantia alpestris胞子発芽体、Marchantia aquatica胞子発芽体、Marchantia berteroana胞子発芽体、Marchantia carrii胞子発芽体、Marchantia chenopoda胞子発芽体、Marchantia debilis胞子発芽体、Marchantia domingenis胞子発芽体、Marchantia emarginata胞子発芽体、Marchantia foliacia胞子発芽体、Marchantia grossibarba胞子発芽体、Marchantia inflexa胞子発芽体、Marchantia linearis胞子発芽体、Marchantia macropora胞子発芽体、Marchantia novoguineensis胞子発芽体、Marchantia paleacea胞子発芽体、Marchantia palmata胞子発芽体、Marchantia papillate胞子発芽体、Marchantia pappeana胞子発芽体、Marchantia polymorpha胞子発芽体、Marchantia rubribarba胞子発芽体、Marchantia solomonensis胞子発芽体、Marchantia streimannii胞子発芽体、Marchantia subgeminata胞子発芽体、Marchantia vitiensis胞子発芽体、Marchantia wallisii、Marchantia nepalensis、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
複数の試験胞子発芽体が、一連の異なるウェルで提供され、各ウェルが、400~800個/mLの胞子発芽体、300~900個/mLの胞子発芽体、または200~1000個/mLの胞子発芽体を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記試験試料および/または前記対照試料が、蛍光分子を発現するように操作されている、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記対照試料が、陽性対照である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記陽性対照が、既知の除草剤または植物成長調節剤と接触する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記対照試料が、陰性対照である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記陰性対照試料が、既知の除草剤または植物成長調節剤と接触していない、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
ステップ(ii)が、前記試験試料の表現型を、既知の除草化合物または植物成長調節化合物と接触した陽性対照試料の表現型と比較することを含み、前記試験試料の表現型を、既知の除草化合物または植物成長調節化合物と接触していない陰性対照試料の表現型と比較することをさらに含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記既知の除草化合物が、既知の作用様式を有しており、前記試験試料表現型を陽性対照試料表現型と比較することを使用して、除草活性または植物成長調節活性を有すると特定された候補化合物の前記作用様式を予測する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記試験試料、前記陰性対照試料、および前記陽性対照試料が、前記同じ種の非維管束植物の胞子に由来する胞子発芽体である、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
前記試験試料、前記陰性対照試料、および前記陽性対照試料が、蛍光分子を発現するように操作されている、請求項17~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
ステップ(ii)が、前記試験試料を好適な培地中、前記候補化合物とともに好適な条件下、前記接触させた後1~3日間、1~5日間、3~6日間、3~5日間、2~3日間、1~10日間、5日未満、4日未満、または3日未満の期間成長させた後、前記試験試料の表現型応答を測定することを含み、前記対照胞子発芽体の前記表現型が、前記好適な培地中、前記好適な条件下で等価な成長期間の後に決定される、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
ステップ(ii)が、試料長さ、試料幅、試料形状、試料色素沈着、試料真円度、試料クロロフィル濃度、および/または試料当たりの細胞数のうちのいずれか1つ以上の測定値を得ることを含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記測定値がデジタルで記録される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記試験試料の前記表現型応答を、任意の前記対照試料表現型と比較することが、分布型確率的近傍埋め込み法、主成分分析(一般化重み付き最小二乗法)、主成分分析(最小化重み付きカイ二乗法)、主成分分析(最小残差法)、共通因子分析(主軸)、共通因子分析(最尤)
または共通因子分析(重み付き最小二乗)のうちのいずれか1つ以上を含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記候補化合物が、ランダムフォレストアルゴリズムまたはニューラルネットワークアルゴリズムなどの人工知能アルゴリズムを使用して、潜在的除草剤として選択される、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
ステップ(ii)が、
前記試験試料および任意の前記対照試料から表現型測定値を得て、それによってデータセットを生成することと、
前記データセットの少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または99%を少なくとも前記人工知能アルゴリズムの訓練セットとして使用することと、を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記対照試料が、陽性対照試料を含み、前記人工知能アルゴリズムを使用して、任意の前記候補化合物の作用様式を予測する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記方法が、
(a)ステップ(i)および(ii)において除草活性または植物成長調節活性を有すると特定された候補化合物を、全植物、胞子、胞子発芽体、外植片、プロトプラスト、または栄養繁殖体を含む一連の変異誘発試料と接触させることであって、前記試験試料および変異誘発試料が、前記同じ種の非維管束植物からのものである、接触させること、
(b)(a)において前記接触させることから生き残るか、または(a)において前記接触させた後に成長異常を示さない、耐性変異誘発試料からDNAを抽出すること、
(c)前記耐性変異誘発試料のゲノムまたはゲノム部分を配列決定し、それによって変異誘発試料DNA配列を得ること、
(d)(c)において得られた前記変異誘発DNA配列を参照DNA配列にアラインメントし、前記変異誘発試料DNA配列と前記参照DNA配列との間の第1のセットの配列ミスマッチを特定すること、
(e)第1の比較試料からのDNA配列を前記参照DNA配列にアラインメントし、前記第1の比較DNA配列と前記参照DNA配列との間の第2のセットのミスマッチを特定すること、ならびに
(f)前記第2のセットのミスマッチに関して前記第1のセットのミスマッチをフィルタリングして、前記第1のセットのミスマッチに固有である第1のサブセットのミスマッチを特定することであって、前記第1のサブセットのミスマッチが、除草剤または植物成長調節剤への耐性を付与し得る候補変異である、フィルタリングすることのステップ(iii)をさらに含み、
前記第1の比較試料が、前記候補化合物と接触して生き残らないか、または前記候補化合物と接触させた後に成長異常を示す、独立した試料からのものであり、前記耐性変異誘発試料と同じ属のものであり、前記参照DNA配列が、前記属の植物の既知の参照配列である、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記方法が、
(e-i)第2の比較試料のDNA配列を前記参照DNA配列にアラインメントし、前記第2の比較試料と参照DNA配列との間の第3のセットのミスマッチを特定することと、
(f)前記第3のセットのミスマッチに関して前記第1のセットのミスマッチをフィルタリングし、前記第1のセットのミスマッチに固有である第2のサブセットのミスマッチの特定を容易にすることと、前記第2のサブセットのミスマッチに関して前記第1のサブセットのミスマッチをフィルタリングすることによって、第3のサブセットのミスマッチを生成することであって、前記第1および第2のサブセットのミスマッチが、除草剤への耐性または植物成長調節剤への耐性を付与し得る候補変異である、生成することと、をさらに含み、
前記第2の比較試料が、前記候補化合物と接触して生き残らないか、または前記候補化合物と接触させた後に成長異常を示す、独立した試料からのものであり、前記変異誘発試料と同じ属のものである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記変異誘発試料が、M1試料である、請求項28または29に記載の方法。
【請求項31】
前記変異誘発試料が、天然に存在しない変異を含む、請求項28~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記方法が、分離比分析、複雑な分離比分析、またはバルク分離比分析のステップを含まない、請求項28~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
(e)の前記アラインメントすることが、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15個、またはそれよりも多くの比較試料の前記DNA配列を前記参照DNA配列にアラインメントすることと、2つの配列間の前記第2のセットの配列ミスマッチを特定することと、を含む、請求項28~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記方法が、前記候補変異を生物学的フィルタでフィルタリングすることをさらに含む、請求項28~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記変異誘発試料が、単数体である、請求項28~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記候補変異が、除草活性または植物成長調節活性を有すると特定された前記候補化合物によって標的化されるタンパク質をコードする遺伝子中にある、請求項28~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
ステップ(iii)が、コンピュータを使用して実装される、請求項28~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記方法が、酵素アッセイ、クロロフィル蛍光動態アッセイ、光合成酸素発生アッセイ、電解質漏出アッセイ、放射線測定アッセイ、分光光度アッセイ、蛍光測定アッセイ、吸光度アッセイ、比色分析アッセイ、質量分析、分裂指数分析、定量的PCR分析、トランスクリプトームプロファイリング、プロテオミクスプロファイリング、ゲノムワイド分析、および/または定量的形質遺伝子座分析、インシリコドッキング試験、化学構造分析のうちのいずれか1つ以上を使用して、前記方法によって除草活性を有すると特定された候補化合物によって標的化される植物分子または生物学的経路を特定することをさらに含む、請求項1~37のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、除草剤および植物成長調節剤の分野に関する。より具体的には、本発明は、多くの除草剤および植物成長調節剤の発見、除草剤もしくは/および植物成長調節剤の作用様式の予測、除草剤もしくは植物成長調節剤の標的の特定、ならびに/または除草剤もしくは植物成長調節剤への耐性を付与する変異の特定のうちのいずれか1つを容易にする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景に関する以下の考察は、読者が本発明を理解するのを助けるために提供されるに過ぎず、本発明の先行技術を説明または構成することは許容されない。
【0003】
除草剤の導入前は、多くの農家は、手作業および機械的な雑草制御対策に頼っていた。
【0004】
手作業による除草方法は、きわめて労働集約的であり、不利益な社会的コストを有しているが、一方、耕運などの機械的な除草対策は、土壌の構造が損傷を受け、侵食にさらされることに起因して、環境問題を引き起こし、多くの場合、雑草によるさらなる侵入を促してしまう。種子を植える前に焼畑を行うと、雑草のさらなる広がりを防ぐことができ、ヒトの介入を最小限にしつつ、広い領域にわたって行うことができるが、耕運と同様に、これも土壌表面が侵食にさらされる。
【0005】
除草剤などの作物保護化学物質は、選択的除草剤の導入を始めとして、ほぼ70年間にわたって農家にとって重要なツールであった。非選択的除草剤(例えば、1960年代からのパラコートおよび1970年代からのグリホサート)は、作物生産を確立するために、耕運なし(直接的な掘削、ゼロ耕起)および他の栽培システムの減少の採用を可能にした。植え付けの前に除草剤によって雑草を除去する場合、雑草を埋めるための鋤き起こしは必要とされない。耕運を行わないシステムは、作物が適切に確立されると、収穫量を増加させることができ、多くの環境的利益および経済的利益をもたらすことができる。
【0006】
除草剤のみを用いることが可能である、耕運を行わないシステムの利点としては、必要な労働力の削減、土壌侵食の減少、水の節約、使用される燃料の減少、温室効果ガスの排出量の削減、生物多様性の増加が挙げられる。特に、気候変動との戦いが話題となっている。鋤き起こしは、土壌に過度に通気させ、有機物質の酸化を引き起こす。このことは、良好な土壌構造(例えば、回転させた牧草地の後に積み上げられた)を破壊するだけではなく、大量の二酸化炭素を放出する。除草剤を噴霧して、雑草を焼き払った後に、耕運を行わないシステムで植え付けると、COの排出量を80%より多く減らすことができる。
【0007】
その世界的な重要性を反映して、2018年には、除草剤は、640億ドルに達する作物および非作物農薬の世界市場の40%より多くを占めていた。しかし、1990年代後半以降、新しい除草剤は、これよりはるかに遅い速度で市場に届いている。最も良く販売され、最も広く使用されている活性成分の多く(例えば、グリホサート)は、数十年にわたって農家によって使用されてきた。新規の作用様式を有する主要な除草剤は、過去30年間上市されていない。これにより、農家にとって利用可能となった新しい除草剤は、同じ限定された作用様式を与え、耐性雑草を生じさせるため、世界的な作物保護に非常に深刻な問題を引き起こしている。
【0008】
初期の除草剤の発見は、温室条件で全植物に化学物質を噴霧し、数日後または数週間後の表現型の変化を観察することによって主に達成された。より最近のアプローチの1つは、既知または予測される除草剤標的へのスクリーニング化合物の結合をシミュレーションすることであり、このアプローチは、インシリコスクリーニングと呼ばれる。別のアプローチは、その生物学的状況から単離された既知または予測される除草剤標的の活性に対するスクリーニング化合物の阻害効果を経験的に試験することであり、このアプローチは、インビトロスクリーニングと呼ばれる。さらに別のアプローチは、関連する生体系の成長または生存能力に対するスクリーニング化合物の阻害効果を経験的に試験することであり、このアプローチは、インビボスクリーニングと呼ばれる。除草剤の発見の場合には、インビボスクリーニングの標的生物は、一般的に、雑草全植物である。しかしながら、雑草全植物がスクリーニング化合物に曝露され、その成長/生存能力をスコアリングするインビボ除草剤スクリーニングプラットフォームによって生成する出力データの質は、インビトロアプローチまたはインシリコアプローチよりも低いスループットを犠牲にしてなされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
新しい除草剤、特に、新規の作用様式を有する除草剤に対する、満たされていない需要がある。雑草が耐性を発生させた作用様式を有する既存の除草剤に対する、非常に需要のある代替物を提供すること以外に、除草剤の作用様式に関する知識は、ヒト、野生動物、および一般的に環境に対する安全性を予測するのにも役立つ場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、除草活性または植物成長調節活性について候補化合物をスクリーニングするための方法を提供することによって、当該技術分野において満たされていない需要を少なくとも1つ満たす。
【0011】
これに加えて、または代替的に、本方法を使用して、既知または新しく特定された除草化合物または植物成長調節剤の作用様式を特定してもよい。また、本方法を使用して、例えば、除草剤耐性または植物成長調節を含む、植物における特定の表現型の変異/原因を特定してもよい。
【0012】
出力データの質およびスループットの速度は、除草剤スクリーニングプラットフォームの2つの重要なパラメータであり、それらの間に含まれる有効なものを打ち出すことが、大きな課題である。本願発明者らは、高いスループット能力を有する非常に効果的なインビボ除草剤スクリーニング方法を開発した。本方法は、胞子および/または胞子発芽体(sporeling)、例えば、非維管束植物(例えば、苔類)からのものに基づくスクリーニングプラットフォームを利用して、除草活性についての候補化合物をスクリーニングする。除草活性または植物成長調節活性を有する新規化合物の特定以外に、本方法を利用して、新しく特定した、および/または既知の除草化合物または植物成長調節剤の作用様式を予測または決定することができる。現在、除草剤業界は、代表的なスクリーニング系として双子葉植物Arabidopsis thalianaを使用する。
【0013】
Marchantia polymorphaなどの非維管束植物は、Ishizaki et al.,2016(Ishizaki,K.,et al.”Molecular genetic tools and techniques for Marchantia polymorpha research”,Plant and Cell Physiology.2016,v.57,n.2,pp.262-270)に詳細に説明されるように、遺伝子スクリーニングのための可能なツールとして、ならびに遺伝子モデルとして(例えば、Sugano et al.,2014(Sugano,S.S.,et al.’CRISPR/Cas9-mediated targeted mutagenesis in the liverwort Marchantia polymorpha L.’,Plant and Cell Physiology.2014,v.55,n.3,pp.475-481)を参照されたい)、既に考慮されてきた。しかしながら、除草剤または植物成長調節剤をスクリーニングする文脈で、非維管束の全植物、胞子、胞子発芽体、外植片、プロトプラスト、または栄養繁殖体を使用することは明らかではない。Marchantia polymorpha細胞が、光合成電子輸送阻害剤の調査のために限定された方法で検討されているが(Sato,F.,et al.“Photoautotrophic cultured plant cells:a novel system to survey new photosynthetic electron transport inhibitors”,Zeitschrift fur Naturforschung C.1991,v.46,n.7-8,pp.563-568を参照されたい)、劣悪な非維管束の全植物、胞子、胞子発芽体、外植片、プロトプラスト、および/または栄養繁殖体が、除草化合物または植物成長調節剤のスクリーニングプラットフォームとして使用することは考慮されないという、明確な課題および根本的な生物学的差異が存在する。例えば、Marchantia Polymorphaは、望ましくない雑草植物よりも、実際に現在の代表的なスクリーニング系Arabidopsis thalianaのものよりも、はるかに物理的に小さく、単純な植物系を表す。加えて、非維管束植物は、より高等な植物とは多くの観点で構造的に異なっており、例えば、胞子発芽体、繁殖体、外植片および、非維管束全植物で形成されるクチクラは、より高等な植物とは化学的に非常に異なっている。さらに、Marchantia polymorphaは、グリコホスフェートなどの主要な除草剤に対して非感受性であることが知られているため、Marchantia polymorphaなどの非維管束植物は、除草剤または植物成長調節剤をスクリーニングするための論理的な選択ではない。
【0014】
しかしながら、本願発明者らは、驚くべきことに、苔類を含む非維管束植物の胞子発芽体を使用して、除草剤または植物成長調節剤をスクリーニングすることができることを発見した。さらに、非維管束植物を使用することで、Arabidopsis thalianaの使用に関連するいくつかの制限を克服し、大幅に改善されたスクリーニング方法を提供する。Arabidopsis thalianaの胞子発芽体または全植物のサイズが大きいことと、複雑な性質を考慮すると、スクリーニングのスループットは、植物を成長させるのに必要な持続時間、ならびに植物を栽培するのに必要な関連する追加の空間、資源および人員によって制限される。例えば、非維管束植物は、典型的には、スクリーニングに使用することができるようになるまでに、4日間の成長しか必要としない。このことは、Arabidopsis thalianaに典型的な値である7日間と比較される。したがって、本発明は、典型的にはArabidopsisに基づく方法よりも少なくともほぼ10倍高いスループットを有する方法を提供する。スループットの制限に加えて、Arabidopsis thalianaの胞子発芽体または全植物を使用することで、除草剤または植物成長調節剤のハイコンテントスクリーニングに対する蛍光イメージングに基づくアプローチの妨げとなる。蛍光イメージングに基づくアプローチは、可能な限り最小限の水平空間に収まるイメージングされたオブジェクトから利益を受け、Arabidopsis thalianaのサイズおよび複雑さは、そのようなアプローチでの使用を不可能にする。非維管束植物は、そのサイズの小ささ、単純なボディプラン、異なる作用様式を有する除草剤に対する感受性、および/または遺伝子操作に対する影響の受けやすさを考慮すると、本発明の方法における使用に有利である。これにより、現在存在するより複雑なスクリーニング系、例えば、Arabidopsis thalianaと比較して、より高いスループット、候補化合物(例えば、除草剤および植物成長調節剤)についての高価ではなく、より効率的なスクリーニング系が得られる。
【0015】
第1の態様では、本発明は、除草活性または植物成長調節活性について候補化合物をスクリーニングする方法であって、この方法が、
(i)一連の異なる候補化合物を、非維管束植物からの複数の試験試料と接触させるステップと、
(ii)候補化合物と接触していない非維管束植物からの対照試料の表現型と比較することによって、試験試料が、上述の一連の異なる候補化合物に対する表現型応答を提供するかどうかを決定するステップと、を含み、
試験試料および対照試料が、全植物、胞子、胞子発芽体、外植片、プロトプラスト、または栄養繁殖体を含み、表現型応答が、除草活性または植物成長調節活性の指標である、方法を提供する。
【0016】
一実施形態では、候補化合物は、除草活性についての候補化合物である。
【0017】
別の実施形態では、非維管束植物は、蘚類、角苔類または苔類である。
【0018】
さらなる実施形態では、試験試料および対照試料は、胞子発芽体である。
【0019】
追加の実施形態では、試験胞子発芽体および対照胞子発芽体は、同じ種の非維管束植物の胞子に由来する。
【0020】
一実施形態では、試験胞子発芽体は、蘚類胞子発芽体、苔類胞子発芽体、角苔類胞子発芽体、またはそれらの任意の組み合わせである。
【0021】
別の実施形態では、一連の異なる候補化合物の各メンバーは、異なる試験試料と接触する。
【0022】
別の実施形態では、一連の異なる候補化合物の複数のメンバーは、単一の試験試料と接触する。
【0023】
なお別の実施形態では、試験試料および対照試料は、葉状苔類胞子発芽体、単純葉状性(thalloid)苔類胞子発芽体、複雑葉状性苔類胞子発芽体、またはそれらの任意の組み合わせである。
【0024】
一実施形態では、試験試料および対照試料は、Marchantia alpestris胞子発芽体、Marchantia aquatica胞子発芽体、Marchantia berteroana胞子発芽体、Marchantia carrii胞子発芽体、Marchantia chenopoda胞子発芽体、Marchantia debilis胞子発芽体、Marchantia domingenis胞子発芽体、Marchantia emarginata胞子発芽体、Marchantia foliacia胞子発芽体、Marchantia grossibarba胞子発芽体、Marchantia inflexa胞子発芽体、Marchantia linearis胞子発芽体、Marchantia macropora胞子発芽体、Marchantia novoguineensis胞子発芽体、Marchantia paleacea胞子発芽体、Marchantia palmata胞子発芽体、Marchantia papillate胞子発芽体、Marchantia pappeana胞子発芽体、Marchantia polymorpha胞子発芽体、Marchantia rubribarba胞子発芽体、Marchantia solomonensis胞子発芽体、Marchantia streimannii胞子発芽体、Marchantia subgeminata胞子発芽体、Marchantia vitiensis胞子発芽体、Marchantia wallisii、Marchantia nepalensis、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0025】
一実施形態では、複数の試験胞子発芽体は、一連の異なるウェルで提供され、各ウェルが、400~800個/mLの胞子発芽体、300~900個/mLの胞子発芽体、または200~1000個/mLの胞子発芽体を含む。
【0026】
さらなる実施形態では、試験試料および/または対照試料は、蛍光分子を発現するように操作されている。
【0027】
一実施形態では、対照試料は、陽性対照である。
【0028】
さらなる実施形態では、陽性対照は、既知の除草剤または植物成長調節剤と接触する。
【0029】
一実施形態では、対照試料は、陰性対照である。
【0030】
別の実施形態では、陰性対照試料は、既知の除草剤または植物成長調節剤と接触していない。
【0031】
追加の実施形態では、本方法のステップ(ii)は、試験試料の表現型を、既知の除草化合物または植物成長調節化合物と接触した陽性対照試料の表現型と比較することを含み、試験試料の表現型を、既知の除草化合物または植物成長調節化合物と接触していない陰性対照試料の表現型と比較することをさらに含む。
【0032】
追加の実施形態では、既知の除草化合物は、既知の作用様式を有しており、上述の試験試料表現型を陽性対照試料表現型と比較することを使用して、除草活性または植物成長調節活性を有すると特定された候補化合物の作用様式を予測する。
【0033】
さらなる実施形態では、試験試料、陰性対照試料、および陽性対照試料は、同じ種の非維管束植物の胞子に由来する胞子発芽体である。
【0034】
さらなる実施形態では、試験試料、陰性対照試料、および陽性対照試料は、蛍光分子を発現するように操作されている。
【0035】
一実施形態では、本方法のステップ(ii)は、試験試料を好適な培地中、上述の候補化合物とともに好適な条件下、上述の接触させた後1~3日間、1~5日間、3~6日間、3~5日間、2~3日間、1~10日間、5日未満、4日未満、または3日未満の期間成長させた後、試験試料の表現型応答を測定することを含み、上述の対照胞子発芽体の表現型が、上述の好適な培地中、上述の好適な条件下で等価な成長期間の後に決定される。
【0036】
一実施形態では、本方法のステップ(ii)は、試料長さ、試料幅、試料形状、試料色素沈着、試料真円度、試料クロロフィル濃度、および/または試料当たりの細胞数のうちのいずれか1つ以上の測定値を得ることを含む。
【0037】
さらなる実施形態では、測定値は、デジタルで記録される。
【0038】
別の実施形態では、試験試料の表現型応答を、任意の上述の対照試料表現型と比較することは、分布型確率的近傍埋め込み法、主成分分析(一般化重み付き最小二乗法)、主成分分析(最小化重み付きカイ二乗法)、主成分分析(最小残差法)、共通因子分析(主軸)、共通因子分析(最尤)、または共通因子分析(重み付き最小二乗)のうちのいずれか1つ以上を含む。
【0039】
さらなる実施形態では、候補化合物は、ランダムフォレストアルゴリズムまたはニューラルネットワークアルゴリズムなどの人工知能アルゴリズムを使用して、潜在的除草剤として選択される。
【0040】
一実施形態では、本方法のステップ(ii)は、
試験試料および任意の上述の対照試料から表現型測定値を得て、それによってデータセットを生成することと、
データセットの少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または99%を少なくとも人工知能アルゴリズムの訓練セットとして使用することと、を含む。
【0041】
一実施形態では、対照試料は、陽性対照試料を含み、人工知能アルゴリズムを使用して、任意の上述の候補化合物の作用様式を予測する。
【0042】
別の実施形態では、本方法は、
(a)ステップ(i)および(ii)において除草活性または植物成長調節活性を有すると特定された候補化合物を、全植物、胞子、胞子発芽体、外植片、プロトプラスト、または栄養繁殖体を含む一連の変異誘発試料と接触させることであって、試験試料および変異誘発試料が、同じ種の非維管束植物からのものである、接触させること、
(b)(a)において上述の接触させることから生き残るか、または(a)において上述の接触させた後に成長異常を示さない、耐性変異誘発試料からDNAを抽出すること、
(c)耐性変異誘発試料のゲノムまたはゲノム部分を配列決定し、それによって変異誘発試料DNA配列を得ること、
(d)(c)において得られた変異誘発DNA配列を参照DNA配列にアラインメントし、変異誘発試料DNA配列と参照DNA配列との間の第1のセットの配列ミスマッチを特定すること、
(e)第1の比較試料からのDNA配列を上述の参照DNA配列にアラインメントし、第1の比較DNA配列と参照DNA配列との間の第2のセットのミスマッチを特定すること、ならびに
(f)第2のセットのミスマッチに関して第1のセットのミスマッチをフィルタリングして、第1のセットのミスマッチに固有である第1のサブセットのミスマッチを特定することであって、第1のサブセットのミスマッチが、除草剤または植物成長調節剤への耐性を付与し得る候補変異である、フィルタリングすることのステップ(iii)をさらに含み、
第1の比較試料が、候補化合物と接触して生き残らないか、または候補化合物と接触させた後に成長異常を示す、独立した試料からのものであり、耐性変異誘発試料と同じ属のものであり、参照DNA配列が、上述の属の植物の既知の参照配列である。
【0043】
別の実施形態では、本方法は、
(e-i)第2の比較試料のDNA配列を参照DNA配列にアラインメントし、第2の比較試料と参照DNA配列との間の第3のセットのミスマッチを特定することと、
(f)第3のセットのミスマッチに関して第1のセットのミスマッチをフィルタリングし、第1のセットのミスマッチに固有である第2のサブセットのミスマッチの特定を容易にすることと、第2のサブセットのミスマッチに関して第1のサブセットのミスマッチをフィルタリングすることによって、第3のサブセットのミスマッチを生成することであって、第1および第2のサブセットのミスマッチが、除草剤への耐性または植物成長調節剤への耐性を付与し得る候補変異である、生成することと、をさらに含み、
第2の比較試料が、候補化合物と接触して生き残らないか、または候補化合物と接触させた後に成長異常を示す、独立した試料からのものであり、変異誘発試料と同じ属のものである。
【0044】
別の実施形態では、変異誘発試料は、M1試料である。
【0045】
別の実施形態では、変異誘発試料は、天然に存在しない変異を含む。
【0046】
さらなる実施形態では、本方法は、分離比分析、複雑な分離比分析、またはバルク分離比分析のステップを含まない。
【0047】
一実施形態では、(e)のアラインメントすることは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15個、またはそれよりも多くの比較試料のDNA配列を参照DNA配列にアラインメントすることと、2つの配列間の第2のセットの配列ミスマッチを特定することと、を含む。
【0048】
別の実施形態では、本方法は、候補変異を生物学的フィルタでフィルタリングすることをさらに含む。
【0049】
一実施形態では、変異誘発試料は、単数体である。
【0050】
一実施形態では、候補変異は、除草活性または植物成長調節活性を有すると特定された候補化合物によって標的化されるタンパク質をコードする遺伝子中にある。
【0051】
別の実施形態では、ステップ(iii)は、コンピュータを使用して実装される。
【0052】
別の実施形態では、本方法は、酵素アッセイ、クロロフィル蛍光動態アッセイ、光合成酸素発生アッセイ、電解質漏出アッセイ、放射線測定アッセイ、分光光度アッセイ、蛍光測定アッセイ、吸光度アッセイ、比色分析アッセイ、質量分析、分裂指数分析、定量的PCR分析、トランスクリプトームプロファイリング、プロテオミクスプロファイリング、ゲノムワイド分析、および/または定量的形質遺伝子座分析、インシリコドッキング試験、化学構造分析のうちのいずれか1つ以上を使用して、方法によって除草活性を有すると特定された候補化合物によって標的化される植物分子または生物学的経路を特定することをさらに含む。
【0053】
一実施形態では、複数の試験試料は、全植物を含有しない。
【0054】
定義
以下のように示される意味を有する特定の用語が本明細書で使用される。
【0055】
本出願で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明確に他のことを指示しない限り、複数の参照物を含む。例えば、本明細書で使用される「化合物(a compound)」は、別段の記載がない限り、複数の化合物も包含する。
【0056】
本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」という用語は、「含む(including)」を意味する。「含む(comprising)」という単語の変形形態、例えば、「含む(comprise)」および「含む(comprises)」は、それに対応して変形した意味を有する。例えば、材料Aを「含む(comprising)」組成物は、排他的に材料Aからなっていてもよく、または材料Aと任意の他の数の他の追加の構成要素(例えば、材料B、および/または材料C)とを含んでいてもよい。
【0057】
本明細書で使用される場合、「複数の」という用語は、1つより多くを意味する。特定の具体的な態様または実施形態では、複数のとは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、250、300、350、400、450、500、600、700、800、900、1000、1250、1500、1750、2000、2500、3000、3500、4500、5000、6000、7000、8000、9000、10000、15000、20000、30000、40000、50000、60000、70000、80000、90000、100000、200000、300000、400000、500000、600000、700000、800000、900000、1000000、またはそれより多く、およびそれらの中の導き出すことができる任意の数値、ならびにそれらの中の導き出すことができる任意の範囲を意味し得る。
【0058】
本明細書で使用される場合、ある数値範囲に関して使用される場合、「~」という用語は、その範囲の各端点における数値を包含する。
【0059】
本明細書で使用される場合、「ハイスループットスクリーニング」(HTS)は、複数の合成化合物または天然産物が1つ以上の生物学的標的に対する活性についてスクリーニングされる方法を指す。HTSを使用して、例えば、薬物、農薬、除草剤などの様々な生物活性を有する化合物を特定してもよい。
【0060】
本明細書で使用される場合、「非維管束植物」という用語は、維管束系(すなわち、木部および師部)を欠く植物を指す。「非維管束植物」は、本明細書において、非維管束全植物、非維管束全植物の構成要素、非維管束全植物の胞子、および非維管束全植物の胞子発芽体を包含すると理解されるであろう。非維管束植物の非限定的な例としては、蘚類、苔類および角苔類などのコケ植物が挙げられる。
【0061】
本明細書で使用される場合、「全植物」は、完全な植物、特に、完全な非維管束植物を指す。全植物は、矮小化植物または幼植物(すなわち、まだその成長した形態に達しておらず、したがって、完全に成熟していなくてもよく、またはまだ性的に成熟していなくてもよい植物)を指すために使用することもできる。Marchantia polymorphaの場合には、全植物は、根系、1つ以上の分裂組織、光合成組織、表皮、クチクラ、1つ以上の杯状体、および1つ以上の生殖器床(すなわち、生殖器官)を有する配偶体を指すことができる。Marchantia polymorphaの幼植物または矮小化植物の場合、植物は、根構造、光合成組織および1つ以上の分裂組織を少なくとも含む、完全な植物の組織、器官および特徴のサブセットを有する。
【0062】
本明細書で使用される場合、「雑草」は、水、光、栄養素および/または空間のうちのいずれか1つ以上について、栽培される植物と有害に競合して成長する植物を指すと理解されるであろう。雑草の非限定的な特徴としては、栽培される植物と比較して、経済的価値が低いか、または全くないこと、生態学的および/もしくは経済的損失の提供、旺盛な成長特徴、ならびに/または大量の種子数の産生が挙げられる。
【0063】
本明細書で使用される場合、「除草剤」および「除草化合物」という用語は、限定されないが雑草およびその種子を含め、植物、植物細胞、植物種子または植物組織を死滅させるか、またはその成長を阻害することができる合成化合物または天然産物を指す。
【0064】
本明細書で使用される場合、「植物成長調節剤」という用語は、植物の成長を調節し、例えば、植物の成長、発育、または植物の成熟を加速し、促進し、速度を上げ、遅らせ、阻害し、遅延させ、またはそれ以外の方法で変化させる化合物(天然または有機物)を指す。
【0065】
本明細書で使用される場合、「表現型」という用語は、個体、例えば、個々の植物、または上述の植物の一部分の一連の観察可能な特徴を意味すると解釈されるであろう。「表現型応答」という用語は、固有の環境に応答して、例えば、候補除草剤または候補植物成長調節剤などの候補化合物への曝露に応答して、個体、例えば、個々の植物、または上述の植物の一部分の観察可能な応答を意味すると解釈される。
【0066】
本明細書で使用される場合、「参照DNA配列」は、所与の植物の参照ゲノム配列を指す。参照DNA配列は、例えば、データベースなどで公的に入手可能である。
【0067】
本明細書で使用される場合、「ミスマッチ」は、リードが最良にアラインメントする参照DNA配列の一部分と比較して、リードの配列(例えば、原因となる変異を特定するために試験される植物のDNA配列の一部分)の差を指す。
【0068】
本明細書で使用される場合、「原因となる変異」という用語は、目的の表現型を引き起こすか、またはそれに寄与する変異、例えば、除草剤耐性を引き起こすか、またはそれに寄与する変異を意味すると解釈されるであろう。
【0069】
本明細書で使用される場合、「M0」は、変異原への曝露前の変異誘発実験における植物集合体(すなわち、親集合体)を示す。本明細書で使用される「M1」は、変異原への曝露後の同じ植物集合体(すなわち、M0集合体)を指す表記である。本明細書で使用される「M2」は、自家受粉後のM1子孫(すなわち、変異体をそれ自体と交雑させるプロセス)を指す。
【0070】
本明細書で使用される場合、「分離比分析」は、試験対象の形質または疾患についての最も可能性の高い遺伝様式を決定するために、生物学的ファミリーメンバーにおいて発現された形質または疾患表現型に関するデータに正式な遺伝子モデルをフィッティングするための統計的技術を指す。分離比分析は、分析される表現型の遺伝パターンを決定するために、複数世代のファミリーメンバーを必要とする。
【0071】
本明細書における従来技術の文書、またはそれらの文書に由来するか、もしくはそれらに基づく本明細書における記述のいずれの説明も、その文書または導き出された記述が関連技術の一般的な知識の一部であることを認めるものではない。
【0072】
説明の目的のために、本明細書で言及されるすべての文書は、別段の記載がない限り、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0073】
本発明の実施形態は、以下に記載される添付の図面を参照しつつ、例としてのみ記載される。
【図面の簡単な説明】
【0074】
図1】96ウェルアッセイプレートの1個のウェルで成長させた50個のMarchantia polymorphaの胞子発芽体を示す遠赤色光蛍光顕微鏡写真である。胞子発芽体密度は、最大数の胞子発芽体を含み、互いに接触した状態で成長する胞子発芽体の数を最小限に抑えるように調節した。前者は、アッセイの統計的有意性を増加させ、一方、後者は、除草剤処理に対する全植物の応答を説明する正確なデータを生成することが必要であった。
【0075】
図2】5日齢のMarchantia polymorphaの胞子発芽体の10倍顕微鏡写真を提供する。左の画像では、透過光を記録した(明視野画像)。中央の画像では、遠赤色光子のみがカメラチップによって記録された(遠赤色画像)。右の画像では、シアン光子のみが記録された(シアン画像)。単一の胞子発芽体を示すように画像をトリミングした。同じMarchantia polymorphaの胞子発芽体が、3つすべての画像に示される。第三者のソフトウェアFIJIを使用して画像を生成した。
【0076】
図3】5日齢の胞子発芽体のリンクした10倍顕微鏡写真を提供する。左側の遠赤色顕微鏡写真は、明視野画像(紫色の線)、遠赤色画像(赤色の線)およびシアン画像(青色の線)を使用してセグメント化されたオブジェクトの輪郭と重ね合わせられる。中央、シアン画像。右側、明視野画像。第三者のソフトウェアGE Developerを使用して画像を生成した。
【0077】
図4】1日齢のMarchantia polymorpha proMpEF1a::YFP-NLS(3X)の胞子発芽体の10倍顕微鏡写真を提供する。左側の透過光顕微鏡写真は、未発芽の胞子(矢印)および2細胞の胞子発芽体を示す。中央の蛍光顕微鏡写真は、2細胞の胞子発芽体の2つの核を示す。第三者のソフトウェアFIJIを使用して画像を生成した。右側の図は、第三者のソフトウェアGE Developerを使用してセグメント化された核の輪郭を提供する示す。
【0078】
図5】スケーリング前(上側パネル)およびスケーリング後(下側パネル)の低解像度データセット(2倍)からの10個の変数の分布を示す。
【0079】
図6】低解像度データセット(2倍)における一連の10個の変数から作成された因子のスクリーンプロット(screen plot)である。水平線は、Kaiser基準、Elbow法またはJoliffe基準のいずれかに従って形成する推奨因子数を表す。第三者のソフトウェアStratomineRを使用して画像を生成した。
【0080】
図7】0.1%のDMSO(陰性対照、赤色)、低濃度での既知の除草剤イソキサベン(陽性対照、緑色)、または未知の活性を有する化学物質(スクリーニング化合物、青色)のいずれかを含有するウェル中の植物の平均表現型距離を示すヒット選択グラフである。赤色の波線は、閾値を示し、それより上は、ある化合物が、処理された植物において統計的に有意な応答を引き起こし、ヒットとして選択された。第三者のソフトウェアStratomineRを使用して画像を生成した。
【0081】
図8】0.1%のDMSO(陰性対照、赤色)、低濃度での既知の除草剤イソキサベン(陽性対照、緑色)、または未知の活性を有する化学物質(スクリーニング化合物、青色)のいずれかを含有するウェル中の植物の平均表現型距離を示すヒット選択グラフである。赤色の波線は、閾値を示し、それより上は、ある化合物が、処理された植物において統計的に有意な応答を引き起こし、ヒットとして選択された。第三者のソフトウェアStratomineRを使用して画像を生成した。
【0082】
図9】0.1%のDMSO(赤色表面)によって、または異なる作用様式を有する3つの異なる除草剤によって処理された植物の表現型応答の予測座標を示す等高線プロットを提供する。円は、表現型モデルを試験するために使用されるデータセットの20%を表す。円が、同じ色の表面上に位置する場合、その対応するモデルは、正確であった。第三者のソフトウェアStratomineRを使用して画像を生成した。
【0083】
図10】異なる色で同じクラスタに属するヒットを示す、クラスタリンググラフを提供する。
【0084】
図11】1μM、100μMまたは1000μMの既知の除草剤ノルフルラゾン上で成長した14日齢の胞子発芽体を含有するペトリ皿の写真を提供する。1000μMのノルフルラゾン上では、胞子発芽体はすべて死亡している。3つの複製物が示される。
【0085】
図12】1μM、100μMまたは1000μMの既知の除草剤クロルスルフロン上で成長した14日齢の胞子発芽体を含有するペトリ皿の写真を提供する。1000μMのクロルスルフロン上で、胞子発芽体は、全て死亡しているわけではないが、成長の著しい低下を示す。3つの複製物が示される。
【0086】
図13】異なる時間量のUV-B照射によって変異誘発されるMarchantia胞子の用量応答曲線である。図13は、2つの複製物を提供する。50%の死滅は、胞子にUV-Bを20秒間照射することによって達成した。
【0087】
図14】UV-B処理なし(左側)、またはUV-B処理をした0.1ppmのクロルスルフロン(左側および中央)上で成長する14日齢の胞子発芽体の暗視野顕微鏡写真を提供する。大きい方の植物は、クロルスルフロン耐性変異体であり、右側パネルに示される0.1%のDMSO上で成長する、UV-B処理した14日齢の胞子発芽体に類似した表現型を有していた。
【0088】
図15】本発明の実施形態に係る、試験試料において目的の表現型を生じさせる原因となる変異の特定のための方法のプロセスフロー図である。
【0089】
図16】2日齢のMarchantia polymorpha植物の仮根表現型。野生型仮根表現型(A)、波状仮根表現型(B)。仮根は、野生型(A)ではまっすぐに成長する細胞であり、いくつかの変異体では波状の細胞である(B)。
【0090】
図17】2ヶ月齢のMarchantia polymorpha植物の背部表皮の表現型。野生型表皮表現型(A)、伸びた表皮表現型(B)。背部表皮は、空気孔(A、矢印)を示し、いくつかの変異体では伸びている(B)。
【0091】
図18】UV4.32における非対立性に基づく変異発見パイプラインの性能。A:フィルタリング効率に対する、非対立遺伝子変異体バックグラウンドの数が増加することの影響。B:8個の非対立遺伝子変異体株を使用した場合、買うフィルタリングステップ後に残っているUV4.32ミスマッチの数。
【0092】
図19】クロルスルフロン耐性変異体における非対立性に基づく変異発見パイプラインの性能。対立遺伝子変異体バックグラウンドの数が増加するにつれて、フィルタリング効率が改善する。最も左の散乱ボックスは、再配列決定された野生型ゲノムでも観察されたミスマッチをフィルタリングにより除去する前のクロルスルフロン耐性変異体株における全ミスマッチの数を表す。
【0093】
図20】3個の5日齢の胞子発芽体のリンクした4倍顕微鏡写真を提供する。上側パネルは、0.1%のDMSOに曝露された植物を示し、中央パネルは、10uMのイソキサベンに曝露された植物を示し、下側パネルは、ヒットとして選択された10uMの試験化合物に曝露された植物を示す。左側から右側に向かって、遠赤色顕微鏡写真が、明視野画像を使用してセグメント化されたオブジェクトの輪郭(外側の赤色の線)および遠赤色画像を使用してセグメント化された植物の本体の輪郭(入れ子になった赤色の線)と重ねて置かれる。次に、遠赤色顕微鏡写真が、明視野画像を使用してセグメント化されたオブジェクトの輪郭(外側の赤色の線)および遠赤色画像を使用してセグメント化された植物の分裂組織の輪郭(入れ子になった紫色の線)と重ねて置かれる。次に、遠赤色顕微鏡写真が、明視野画像を使用してセグメント化されたオブジェクトの輪郭(外側の赤色の線)および遠赤色画像を使用してセグメント化された植物の仮根の輪郭(入れ子になった緑色の線)と重ねて置かれる。次に、シアン顕微鏡写真が、明視野画像を使用してセグメント化されたオブジェクトの輪郭(外側の赤色の線)およびシアン画像を使用してセグメント化されたシアン蛍光塊の輪郭(入れ子になった黄色の線)と重ねて置かれる。最後に、遠赤色顕微鏡写真が、明視野画像を使用してセグメント化されたオブジェクトの輪郭(外側の赤色の線)および遠赤色画像を使用してセグメント化された葉緑体の輪郭(入れ子になった青色の線)と重ねて置かれる。
【発明を実施するための形態】
【0094】
除草剤耐性は、世界中の作物および牧草地生産に影響を与える主要な問題である。除草剤耐性雑草のレベルは、異なる作用様式を示す除草剤が特定され、上市されるまでは上昇すると当然に予想される。除草活性または植物成長調節活性を有する新規化合物を特定することが可能な方法、およびこのような化合物の作用様式を特定することは、雑草および他の類似の植物における増大しつつある除草剤耐性のレベルに対抗するために非常に重要である。
【0095】
本発明は、除草活性または植物成長調節活性について化合物をスクリーニングすることが可能なハイスループット方法を提供し、したがって、新しい除草剤または植物成長調節剤の発見の可能性を提供する。本方法はさらに、本明細書に記載の方法によって特定された化合物、作用様式について特性決定されていなくてもよい任意の既知の除草剤または植物成長調節剤を含め、除草化合物または植物成長調節剤の作用様式の予測を可能にする。したがって、本明細書で提供される方法を使用して、新規な作用様式を有する化合物(例えば、除草化合物または植物成長調節剤)を特定し得る。本明細書で提供される方法はまた、植物(例えば、雑草)における除草剤への耐性に関与する変異の特定および除草剤標的の特定を提供する。本明細書で提供される方法はまた、植物成長調節に関与する変異の特定および植物成長調節剤標的の特定を提供する。
【0096】
現在、全植物を使用して除草活性について化合物をスクリーニングすることは、全植物のサイズおよび複雑さが、ハイスループット表現型特性決定に適していないため、比較的低いスループットである。除草活性または植物成長調節活性について多数の化合物を同時にスクリーニングし、その作用様式を予測し、その標的を特定することが可能な、非維管束植物を使用したハイスループットスクリーニング方法を本明細書に記載する。本明細書に記載の方法はまた、除草化合物への耐性を付与する原因となる変異の特定に使用され得る。
【0097】
ハイスループットスクリーニング
本発明は、除草活性または植物成長調節活性について化合物をスクリーニングするためのインビボハイスループット方法を提供する。ハイスループットスクリーニング(HTS)は、新規の薬物、農薬、除草剤などの膨大な数の候補から有用な化合物を迅速かつ効率的に選別するために使用される技術であり、これを使用して、様々な生物活性を有する化合物を特定し得る。限定されないが、本明細書で企図されるHTSは、一般的に、スクリーニングのための化合物の好適なライブラリー、アッセイ方法、ならびにアッセイによって生成されたデータを取扱い、および/または分析するためのシステムといった3つの要素を含む。
【0098】
本発明の方法で使用するための化合物ライブラリーは、コンビナトリアルケミストリーから、あるいは天然産物、例えば、植物、動物、および/または微生物由来の二次代謝産物から作製され得る。本発明のいくつかの実施形態では、天然化合物は、化合物ライブラリーに含める前に処理され得る。当業者に周知の好適な処理技術の非限定的な例は、固相抽出である。本発明のさらなる実施形態では、スクリーニングされるコンビナトリアルライブラリーは、アッセイが行われる区画内で合成されてもよく、それによって候補化合物の参照アドレスを提供する。任意の所与の化合物の濃度範囲を試験してもよい。固体化合物を可溶化するために様々な溶媒を使用してもよい。任意の好適な化合物は、候補天然化合物、合成化合物、および化学化合物を含むがこれらに限定されない本発明の方法を使用して、スクリーニングされ得る。
【0099】
本発明の方法によれば、非維管束植物を、候補化合物(候補除草化合物または候補植物成長調節剤化合物のいずれか)と接触させ、それらの候補化合物に対するそれらの応答を評価し得る。定義の章で示されるように、「非維管束植物」という用語には、非維管束全植物、その構成要素、それらの胞子、および/またはそれらの胞子発芽体が含まれる。植物は、例えば、苔類、蘚類、および/または角苔類などの非維管束植物であってもよい。
【0100】
非限定的な例として、非維管束植物は、苔類であり得る。苔類は、葉状苔類、単純葉状性苔類、または複雑葉状性苔類であり得る。本明細書に記載されるスクリーニング方法で使用され得る苔類の非限定的な例は、以下の通りである。Marchantia alpestris、Marchantia aquatica、Marchantia berteroana、Marchantia carrii、Marchantia chenopoda、Marchantia debilis、Marchantia domingenis、Marchantia emarginata、Marchantia foliacia、Marchantia grossibarba、Marchantia inflexa、Marchantia linearis、Marchantia macropora、Marchantia novoguineensis、Marchantia paleacea、Marchantia palmata、Marchantia papillate、Marchantia pappeana、Marchantia polymorpha、Marchantia rubribarba、Marchantia solomonensis、Marchantia streimannii、Marchantia subgeminata、Marchantia vitiensis、Marchantia wallisii、およびMarchantia nepalensis。本明細書に記載のスクリーニング方法で使用され得る苔類のさらなる非限定的な例は、Jungermanniopsida(例えば、JungermanniidaeもしくはMetzgeriidae亜綱の植物)、Marchantiopsida(例えば、MarchantiidaeもしくはSphaerocarpidae亜綱の植物)または苔類のHaplomitriopsida網の植物である。
【0101】
非限定的な例として、非維管束植物は、蘚類であり得る。本明細書に記載されるスクリーニング方法で使用され得る蘚類の非限定的な例は、以下の通りである。Physcomitrella patensまたはPhyscomitrella readeri moss。
【0102】
非限定的な例として、非維管束植物は、角苔類であり得る。本明細書に記載されるスクリーニング方法で使用され得る角苔類の非限定的な例は、以下の通りである。Anthoceros、Dendroceros、Folioceros、Megaceros、Notothylas、およびPhaeoceros generaの角苔類。
【0103】
本発明のいくつかの実施形態では、非維管束植物は、グリホサートおよび/またはグルホシネートに対して非感受性であり得る。
【0104】
本発明の方法は、非維管束植物からの植物物質を使用する。本方法は、(i)一連の異なる候補化合物を、複数の試験試料と接触させるステップと、(ii)候補化合物と接触していない対照試料の表現型と比較することによって、試験試料が、上述の一連の異なる候補化合物に対する表現型応答を提供するかどうかを決定するステップと、を含み得る。試験試料および対照試料は、非維管束植物物質を含み得る。一実施形態では、試験試料および対照試料は、非維管束植物からの全植物、胞子、胞子発芽体、外植片、プロトプラスト、または栄養繁殖体を含む。一実施形態では、試験試料および対照試料は、非維管束植物からの胞子、胞子発芽体、外植片、プロトプラスト、または栄養繁殖体を含む。一実施形態では、試験試料および対照試料は、非維管束植物からの胞子または胞子発芽体を含む。一実施形態では、試験試料および対照試料は、非維管束植物からの胞子を含む。好ましい実施形態では、試験試料および対照試料は、苔類植物からの胞子を含む。本発明の方法で使用するのに好適な苔類の胞子または胞子発芽体としては、例えば、Marchantiaの胞子または胞子発芽体が挙げられる。
【0105】
本発明の方法で使用される胞子発芽体は、仮根、植物光合成細胞および/または発生期の分裂組織を有し得る。植物は、1日齢未満、2日齢未満、3日齢未満、4日齢未満、5日齢未満、6日齢未満、7日齢未満、8日齢未満、9日齢未満、10日齢未満、11日齢未満、12日齢未満、13日齢未満、または14日齢未満でハイスループットスクリーニングに使用され得る。代替的に、それより日齢が長い植物が使用されてもよい。
【0106】
本明細書に記載の方法で使用される非維管束植物は、自家蛍光であってもよい(すなわち、内因性蛍光分子を含有してもよい)。自家蛍光の性質は、非維管束植物が、光合成色素、光保護色素、ストレス誘発性一次代謝産物、ストレス誘発性二次代謝産物を含有することを示し得る。例えば、クロロフィルは、非維管束植物の葉緑体に位置する光合成色素であり、「遠赤色光」スペクトルにおいて蛍光を発する。例えば、NADHおよびNADPHは、ストレスを受けた非維管束植物に蓄積し、「シアン」スペクトルにおいて蛍光を発する。自家蛍光の大きさは、蛍光分子が非維管束植物に蓄積する程度を示し得る。その延長線上で考えると、自家蛍光の性質および大きさは、試験化合物に接触した非維管束植物の様々な生理学的応答の指標であり得る。例えば、クロロフィル含有量は、植物成長の指標であってもよく、NAD(P)H含有量は、化学物質誘発性細胞ストレスの指標であり得る。別の例として、細胞または植物におけるクロロフィルの局在化およびNAD(P)Hの局在化は、試験化合物の接触によって損なわれる光プロセスおよび代謝プロセスの指標であり得る。
【0107】
本明細書に記載の方法で使用される非維管束植物は、蛍光マーカーまたは発光細胞マーカーを発現するように操作されてもよい。これらの蛍光マーカーまたは発光マーカーの発現を使用して、表現型応答の測定値を得る際に使用するためのデジタル画像を作成してもよい。生物学的構造の画像を作成するための蛍光細胞マーカーの発現の使用は、しばらくの間、当該技術分野で一般的であった。植物細胞において蛍光タンパク質を発現するための様々な技術が存在する。蛍光タンパク質をコードする外因性核酸は、当業者に既知の標準的な植物形質転換方法を使用して植物細胞に導入され得る。本発明のいくつかの実施形態で使用され得る一般的に使用される方法の1つは、Agrobacterium tumefaciensトランスファーDNA(T-DNA)誘導挿入変異である。単純かつ非常に効率的なT-DNA形質転換プロトコルは、例えば、「フローラルディップ」方法(Clough and Bent,The Plant Journal,1998;16(6):735-743)を含む、長年にわたって当業者に利用可能であった。当業者は、T-DNA形質転換プロトコルが非維管束植物に対して利用可能であることを知るであろう(Genetic transformation of moss plant,Jing et al,2013,African Journal of Biotechnology;12(3):227-232に概説されている)。T-DNA媒介性挿入は、ランダムであるが、挿入されたDNA断片は、25bpの境界配列(T-DNA)に隣接しているため、T-DNAの左側境界から設計されたプライマーを使用して、ゲノム/T-DNA配列接合部を単離することができ、次いで、ゲノムにマッピングして、染色体挿入位置を正確に特定することができる。トランスポゾン媒介性変異誘発は、T-DNAの有無にかかわらず、当該技術分野で一般的に使用され、これを使用して、本発明で使用される植物において蛍光タンパク質を発現させ得る。
【0108】
本発明で使用され得る、植物細胞に外因性核酸を導入するための他の一般的に使用される方法としては、限定されないが、プロトプラストのカチオンもしくはポリエチレングリコール処理(O’Neill et al.The Plant Journal,1993;3(5):729-738)、リン酸カルシウム沈殿、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、ウイルス感染、プロトプラスト融合、微粒子爆撃、形質転換DNAでコーティングされたマイクロビーズもしくは微粒子を用いた溶液中の細胞懸濁液の撹拌、直接DNA取り込み、およびリポソーム媒介性DNA取り込みが挙げられる。このような方法は、例えば、Glick,Methods in Plant Molecular Biology and Biotechnology,2018;CRC Press、Sambrook et al.Molecular Cloning:a laboratory manual,1998、Cold Spring Harbor Laboratoryなどの当業者によって一般的に使用される広範囲の文書に十分に記載されている。CRISPR/Cas9ゲノム編集技術は、内因性植物タンパク質に蛍光タグを付けるためにも使用され得る。
【0109】
多種多様な蛍光タンパク質が市販されている(例えば、Shaner et al.,Nature Methods,2015;2(12):905-909を参照されたい)、当業者は、必要な画像に基づいて、本発明で使用するマーカーを選択してもよい。種々の植物型、植物器官のイメージングにおける蛍光タンパク質の使用を説明し、様々な顕微鏡検査技術を用いる、多くの刊行物が入手可能である(例えば、Berg and Beachy,Methods in Cell Biology,2005;85:153-177を参照されたい)。
【0110】
本発明のいくつかの実施形態では、緑色蛍光タンパク質(GFP)、またはGFPの修飾態様を蛍光マーカーとして使用してもよい。クラゲAequorea victoriaから単離された元のGFP、および植物におけるその発現を可能にする野生型GFPに対する多くの修飾が、当該技術分野で既知である。シアン強化蛍光タンパク質および黄色強化蛍光タンパク質(ECFPおよびEYFP)などのGFPスペクトル変異体は、一般的に、発色団の種類に基づいて7種類に分けられる(Zacharias and Tsien,Green Fluorescent Protein:Properties,Applications、およびProtocols,2006,John Wiley and Sons;83-120を参照されたい)。フルオロフォアの選択は、スペクトル的に分離され得る対の選択を必要とする、1つより多い蛍光マーカーが使用されるかどうかに依存する。本発明のいくつかの実施形態では、赤色蛍光タンパク質(RFP)、またはRFPの修飾態様を蛍光マーカーとして使用してもよい。植物は、特定の植物構造において蛍光タンパク質(例えば、RFPおよび誘導体)を発現するように操作され得る。
【0111】
本明細書に記載の方法で使用される非維管束植物は、蛍光細胞色素またはプローブで染色されてもよい。蛍光細胞色素またはプローブを、アッセイ中の任意の時点で適用して、任意の特定の細胞区画、任意の特定の細胞型、または植物の任意の特定の部分を標識してもよい。本発明のいくつかの実施形態では、そのような蛍光色素としては、Calcofluor White、S4B、ヨウ化プロピジウム、FM1-43、FM4-64、Mitotracker色素またはHoechst色素が挙げられる。蛍光細胞色素またはプローブはまた、[Ca2+]またはpH指インジケータ、または酸化還元インジケータを含むイオン含有量インジケータとして使用され得る。本発明のいくつかの実施形態では、かかる蛍光色素またはプローブは、OxiORANGE、HySOx、HYDROP、ヒドロキシフェニルフルオレシン(Hydroxyphenyl fluorescin)である。
【0112】
本発明のスクリーニング方法は、HTSアッセイに適した区画(例えば、ウェル、チューブなど)の任意の好適な配置を使用し得る。
【0113】
例えば、96ウェルマイクロタイタープレートは、HTSの自動化された形態および自動化されていない形態の両方のために使用され得る。アッセイは、手動で、または液体取扱ロボットなどのロボットシステムによって設定され得る。
【0114】
異なる候補化合物を、個々の区画で別々に除草活性または植物成長調節活性についてスクリーニングする。所与の候補化合物は、単一の区画または複数の区画でスクリーニングされ得る。代替的に、複数の異なる候補化合物が、単一の区画における除草活性または植物成長調節活性についてスクリーニングされ得る。(例えば、天然抽出物ライブラリーまたは合成分子混合物。)
【0115】
本発明のいくつかの実施形態では、溶媒は、スクリーニングの準備中に、非維管束植物および候補化合物と混合され得る。好適な溶媒の非限定的な例としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトン、水、メタノールおよびエタノールが挙げられる。DMSOは、多数の小分子を溶解し、膜を通して小分子を運ぶ能力を有する担体/普遍的な溶媒である。理論に拘束されることを望まないが、DMSOまたは別の好適な溶媒、界面活性剤、および任意の他の好適な添加剤もまた、試験化合物による植物細胞/組織の浸透を増強し、アッセイ中に植物細胞/組織を保存するのに役立ち得る。
【0116】
これに加えて、または代替的に、液体またはゼリー状栄養培地は、スクリーニングの準備中に、非維管束植物および候補化合物と混合され得る。好適な栄養培地の非限定的な例として、ジョンソン培地、M51C、Gamborg B5およびMS培地が挙げられる。ジョンソン培地が利用されるいくつかの実施形態では、ジョンソン培地は、イノシトール(100mg/L)、スクロース(10g/L)、KNO(6000μM)、MgSO(1000μM)、Ca(NO*4HO(4000μM)、KCl(25μM)、HBO(10μM)、MnSO*4HO(1μM)、ZnSO*7HO(1μM)、CuSO*5HO(0.25μM)、(NHMo4*4HO(0.25μM)、FeSO*7HO(25μM)、NaEDTA(25μM)、NHPO(600μM)、および(NHSO(400μM)を含むものから構成される。
【0117】
当業者であれば、所与のアッセイプレートのウェル当たりの非維管束植物の密度を、測定値の正確度に影響を及ぼし得る各ウェル内の材料の重なり合いを避けながら、アッセイの統計的有意性を最大化するために変化させ得ることを認識するであろう。本発明の1つの例示的な実施形態は、標準的な96ウェルマイクロタイタープレートのウェル当たり50~70個の胞子または胞子発芽体を使用する。代替的に、密度は、ウェル当たり40~80個、30~90個、または20~100個の植物、胞子または胞子発芽体であり得る。いくつかの実施形態では、密度は、100~225個の胞子または胞子発芽体/cm、85~260個の胞子または胞子発芽体/cm、55~285個の胞子または胞子発芽体/cmである。当業者であれば、所与のアッセイプレートのウェル当たりの非維管束植物の密度を、材料が他の測定値の正確度に影響を及ぼすことなく重なり合う可能性があるときに、飽和状態まで増加させ得ることを認識するであろう。例えば、飽和密度は、11400~17100個の胞子もしくは胞子発芽体/cm、8550~19950個の胞子もしくは胞子発芽体/cm、5700~22800個の胞子もしくは胞子発芽体/cm、または285~28500個の胞子もしくは胞子発芽体/cmであってよい。そのような他の測定値としては、限定されないが、胞子もしくは胞子発芽体懸濁液の分光光度測定、または胞子もしくは胞子発芽体懸濁液における自家蛍光、蛍光タンパク質の蛍光、または蛍光染料もしくはプローブの蛍光の蛍光測定が挙げられる。非維管束植物の光への曝露は、アッセイ中に変化し得る。いくつかの実施形態では、非維管束植物を、連続照明下で成長させてもよい。代替的に、光への曝露は、アッセイ中に中断されてもよい。照明は、300nm~900nm(例えば、400nm~700nm)の波長で提供されてもよい。照明は、例えば、紫外線(UV)光、可視光、または赤外線(IR)光)であってもよい。
【0118】
アッセイにおいて非維管束植物が成長する温度は、例えば、15℃未満、16℃未満、17℃未満、18℃未満、19℃未満、20℃未満、21℃未満、22℃未満、23℃未満、24℃未満、25℃未満、26℃未満、27℃未満、28℃未満、29℃未満、または30℃未満であり得る。いくつかの実施形態では、温度は、21℃~24℃である。
【0119】
アッセイにおいて非維管束植物が成長する湿度は、例えば、40%~80%、45~75%、または50%~60%の範囲であってもよい。
【0120】
非維管束植物が成長するアッセイの持続時間は、例えば、1日未満、2日未満、3日未満、4日未満、5日未満、6日未満、7日未満、8日未満、9日未満、10日未満、11日未満、12日未満、13日未満、14日未満、15日未満、16日未満、17日未満、18日未満、19日未満、20日未満、21日未満、22日未満、23日未満、24日未満、25日未満、26日未満、27日未満、または28日未満であってもよい。代替的に、アッセイにおいて、それより日齢が長い植物が使用されてもよい。
【0121】
本発明の例示的な一実施形態では、植物胞子発芽体(例えば、Marchantia胞子発芽体)を、測定を行う前に、約23℃で約5日間、連続照明下で成長させる。
【0122】
アッセイの間および/または完了時に、非維管束植物が種々の候補化合物で処理される試験試料と、非維管束植物が種々の候補化合物で処理されない対照試料との間で、好適な比較を行うことができる。対照試料(複数可)は、非維管束植物が除草剤もしくは植物成長調節剤と混合されない陰性対照試料であってもよく、および/または対照試料(複数可)は、非維管束植物が除草剤もしくは植物成長調節剤(例えば、既知の作用様式を有する除草剤もしくは植物成長調節剤)と混合された陽性対照試料であってもよい。これらの比較を使用して、限定されないが、所与の候補化合物または候補化合物の混合物が除草活性を有するかどうか、観察される任意の除草活性の効力、除草活性を示すことが見出された所与の候補化合物に応答する非維管束植物の表現型応答、および/または除草活性を示すことが見出された所与の候補化合物の予測される作用様式を含む因子を決定することができる。同様に、これらの因子は、植物成長調節剤に関連して決定することができる。当該技術分野で既知の試験試料、陰性対照試料、および/または陽性対照試料間の比較を行う任意の好適な手段が使用され得る。例えば、比較は、視覚的比較、顕微鏡法によるイメージング(例えば、蛍光顕微鏡法)などを介して行われ得る。一実施形態では、本方法は、除草活性を有する候補をスクリーニングし、表現型応答は、候補化合物への曝露後の非維管束植物の死亡である(すなわち、植物物質は、候補化合物への曝露後に死亡する)。一実施形態では、死亡は、曝露の1週間後の植物の死亡として決定される。一実施形態では、死亡は、曝露の2週間後の植物の死亡として決定される。一実施形態では、死亡は、曝露の3週間後の植物の死亡として決定される。
【0123】
一実施形態では、本方法は、植物成長調節活性を有する候補をスクリーニングし、表現型応答は、候補化合物への曝露後の非維管束植物の成長である(すなわち、植物物質は、候補化合物への曝露後に成長する)。一実施形態では、成長は、曝露の1週間後の植物の成長として決定される。一実施形態では、成長は、曝露の2週間後の植物の成長として決定される。一実施形態では、成長は、曝露の3週間後の植物の成長として決定される。当業者は、植物のサイズ(直径)、密度、幅、直径または高さの測定値を含むがこれらに限定されない、植物の成長を決定するための多数の方法があることを理解する。表現型応答のより複雑な分析は、以下に詳述するように、ハイコンテントスクリーニングを使用して実行することができる。
【0124】
一実施形態では、除草活性または植物成長調節活性について候補化合物をスクリーニングする方法であって、この方法が、
(i)一連の異なる候補化合物を、複数の試験試料と接触させるステップと、
(ii)候補化合物と接触していない対照試料の表現型と比較することによって、試験試料が、上述の一連の異なる候補化合物に対する表現型応答を提供するかどうかを決定するステップと、を含み、
試験試料および対照試料が、非維管束植物からの全植物、胞子、胞子発芽体、外植片、プロトプラスト、または栄養繁殖体を含み、表現型応答が、除草活性または植物成長調節活性の指標である、方法が提供される。好ましい実施形態では、非維管束植物は、苔類であり、最も好ましくは、Marchantiaである。
【0125】
一実施形態では、除草活性または植物成長調節活性について候補化合物をスクリーニングする方法であって、この方法が、
(i)一連の異なる候補化合物を、複数の試験試料と接触させるステップと、
(ii)候補化合物と接触していない対照試料の表現型と比較することによって、試験試料が、上述の一連の異なる候補化合物に対する表現型応答を提供するかどうかを決定するステップと、を含み、
試験試料および対照試料が、苔類植物からの全植物、胞子、胞子発芽体、外植片、プロトプラスト、または栄養繁殖体を含み、表現型応答が、除草活性または植物成長調節活性の指標である、方法が提供される。
【0126】
一実施形態では、除草活性または植物成長調節活性について候補化合物をスクリーニングする方法であって、この方法が、
(i)一連の異なる候補化合物を、複数の試験試料と接触させるステップと、
(ii)候補化合物と接触していない対照試料の表現型と比較することによって、試験試料が、上述の一連の異なる候補化合物に対する表現型応答を提供するかどうかを決定するステップと、を含み、
試験試料および対照試料が、Marchantiaからの全植物、胞子、胞子発芽体、外植片、プロトプラスト、または栄養繁殖体を含み、表現型応答が、除草活性または植物成長調節活性の指標である、方法が提供される。
【0127】
非限定的な方法については、以下において考察され、本出願の実施例においても提示される。
【0128】
ハイコンテントスクリーニング
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、ハイコンテントスクリーニング(HCS)を用いる。一般的に、HCSは、ハイスループット形式で試料の蛍光または発光の測定値を使用し、様々なパラメータを定量的に分析する。
【0129】
本明細書に記載の方法に従ってHCSで使用され得るパラメータの非限定的な例としては、非維管束植物の長さ、幅、形状、色素沈着、真円度、クロロフィル含有量、および非維管束植物あたりの細胞数が挙げられる(上に記載されるように、本明細書で使用される「非維管束植物」は、非維管束全植物、その構成要素、それらの胞子およびそれらの胞子発芽体を包含することに留意されたい)。これらのパラメータのうちの任意の1つ以上(任意選択により他のパラメータを含む)は、化合物に対する植物の表現型応答を含む。
【0130】
イメージングは、様々な技術によって行われ得る。当業者であれば、HCSがしばしば完全に自動化された蛍光イメージングシステムを用いて実行されることを認識するであろう。本発明のいくつかの実施形態では、液体取扱ロボットは、完全に自動化された蛍光イメージングシステムに組み込まれる。他の実施形態では、アッセイは、ハイスループットイメージングのための完全に自動化された蛍光イメージングシステムを用いたイメージングの前に手動で設定され得る。完全に自動化された蛍光イメージングシステムは、ハイスループット蛍光顕微鏡を含み得る。本発明のいくつかの実施形態は、共焦点顕微鏡法の使用を必要としない。
【0131】
所与のアッセイで利用される各非維管束植物試料について、いくつかの画像を生成し得る。本発明のいくつかの実施形態では、透過光を記録することによって画像を生成し得る。これに加えて、または代替的に、透過光を記録することによって画像を生成し得る。遠赤色光子のみ、および/またはシアン光子のみを使用して、画像を生成し得る。2倍対物レンズを使用して、96ウェルマイクロタイタープレートの1つのウェル全体をカバーする視野を有する遠赤色画像または黄色画像を生成し得る。この画像は、遠赤色光蛍光顕微鏡写真であり得る。この画像は、黄色蛍光顕微鏡写真であり得る。4倍対物レンズは、96ウェルマイクロタイタープレートの1つのウェルの境界内に正確に適合する視野を有する遠赤色画像、シアン画像、黄色画像、または明視野画像を生成し得る。10倍対物レンズを使用して、ウェルの小さな部分(例えば、ウェルの底部表面の32分の1~3分の1)をカバーする1~9個の遠赤色画像、1~9個のシアン画像、1~9個の黄色画像、および1~9個の明視野画像のセットを生成し得る。本発明のいくつかの実施形態では、画像は、別の画像によって作成されたオブジェクトの輪郭と重ね合わせられる。画像は、同じまたは異なる光子を使用した画像によって作成された輪郭と重ね合わせられ得る。画像は、2倍、4倍、10倍、20倍、または40倍の光学倍率の対物レンズを使用することによって、ウェルの直径よりも大きい、等しい、または小さい視野を有し得る。本発明のいくつかの実施形態では、植物と、核などの細胞内の物体を、背景から識別する画像分析プロトコルが使用される。
【0132】
本発明のいくつかの実施形態では、いくつかの画像は、非維管束植物の構造全体の異なる点で生成される。これらの画像は、スライスと呼ばれる。スライスは、5μm未満、10μm未満、20μm未満、30μm未満、40μm未満、50μm未満、60μm未満、70μm、80μm未満、90μm未満、または100μmの深さであってもよい。当業者は、試料の厚さに基づいて、完全な構造全体を画像化するのに必要なスライスの数を決定することができる。手動でのイメージングを使用して、当業者が自動プロトコルを策定することを可能にし得る。空間的および/または時間的に関連する画像を組み合わせて、表示および/または分析の目的で「スタック」を形成してもよい。例えば、本発明のいくつかの実施形態では、各スライスが深さ20μmである、5つのスライスで構成されるスタックの最大強度投影である遠赤色画像が作成されてもよい。スタックは、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、またはそれよりも多くの画像で作成されてもよい。スタックはまた、20個未満、30個未満、40個未満、50個未満、60個未満、70個未満、80個未満、90個未満、100個未満の画像で作成されてもよい。画像は、デジタル形式で保存されてもよい。作成されたいずれかまたはすべての画像は、その後の分析で使用されてもよい。本発明のいくつかの実施形態は、コンピュータスクリプトを使用して、画像にメタデータを追加する。メタデータは、アッセイプレート、日付、画像取得プロトコルおよび/または画像分析プロトコルのバーコードを含み得る。コンピュータスクリプトは、画像が他の画像(複数可)にリンクされているかどうかを記録し得る。
【0133】
化学物質に対する生体系の応答の表現型の「フィンガープリンティング」は、薬物発見の分野で広く使用されており(例えば、Reisen et al.,Assay and Drug Development Technologies,2015;13(7):415-427を参照されたい)、当業者を支援するためのソフトウェアツールは、広く利用可能である(例えば、Omta et al.,Assay and Drug Development Technologies,2016;14(8):439-452を参照されたい)。
【0134】
表現型のフィンガープリントは、化合物の既知の効果と一致し得る。例えば、色素合成を阻害する化合物は、接触した植物に、より少ない色素を産生させ、より小さく成長させ得る。したがって、フィンガープリントは、いくつかの表現型変数によって説明されるような、この予想される植物応答の定量的表現であり得る。表現型のフィンガープリントは、予想されない場合もある。例えば、光合成を阻害する化合物は、細胞の伸長および葉緑体の細胞局在化のシフトを引き起こし得る。したがって、フィンガープリントは、いくつかの表現型変数によって説明されるような驚くべき植物応答の定量的表現でもあり得る。
【0135】
本発明のいくつかの実施形態では、データを、プレートレベルで陰性対照の中央値によって正規化し、プレート間のノイズを最小限に抑える。さらなる実施形態では、変数の分布は、正規性についてチェックされ、必要に応じて変換される。データの変換は、分析に使用されるソフトウェアによって推奨されてもよく、データ変換方法も推奨してもよく、および/または変換を自動的に実行してもよい。本発明での使用に適し得るデータ変換方法の非限定的な例としては、平方根、2のべき乗、3のべき乗、log、log2、log10、逆数が挙げられる。その後、変数をスケーリングして、下流の分析ステップにおいて異なる手段を有する変数の重みを均等化してもよい。本発明のいくつかの実施形態では、スケーリングは、プレートレベルでZスコア法を使用して実行される。このステップでは、画面レベルのスケーリングも可能である。
【0136】
データを分析するために使用される統計的方法に関連した制限は、特にない。多くのソフトウェアパッケージは、使用される統計的方法およびパラメータを変更することによって各ステップを当業者によってカスタマイズすることができるデータ分析パイプラインを提供する本発明の方法とともに使用するのに適している。本発明のいくつかの実施形態では、陰性対照およびスクリーニング化合物のデータにおける相関関係のある変数は、共通因子分析(例えば、分布型確率的近傍埋め込み法、主成分分析(一般化重み付き最小二乗法)、主成分分析(最小化重み付きカイ二乗法)、主成分分析(最小残差法)、共通因子分析(主軸)、共通因子分析(最尤)、または共通因子分析(重み付き最小二乗))によって、因子へと減らされる。さらなる実施形態では、斜交(非直交)回転を使用して、因子の数を減らしてもよい。保持される因子の数は、Kaiser基準、Elbow法またはJoliffe基準に従って自動的に決定され得る。これに加えて、または代替的に、保持される因子は、スクリーンプロットの目視検査時に手動で選択されてもよい。
【0137】
代替的に、候補除草剤で処理した植物と、陰性対照または陽性対照との間の表現型の差を記述する、生の変数のすべてまたはサブセットを選択してもよい。
【0138】
保持される因子を使用して、本発明のいくつかの実施形態では、多因子空間における陰性対照の中央値までの表現型ユークリッド距離に従って、化合物を「ヒット」として選択してもよい。代替的に、候補除草剤で処理した植物と、陰性対照または陽性対照との間の表現型の差を記述する、生の変数のすべてまたはサブセットを選択してもよい。本発明の別の実施形態では、生の変数および因子の組み合わせは、ヒット選択のために保持される。
【0139】
当業者は、化合物が「ヒット」とみなされるであろう有意性のレベルを選択してもよい。いくつかの実施形態では、陽性対照を有する「ヒット」のクラスタリングを使用して、潜在的除草剤の作用様式を予測し得る。いくつかの実施形態では、陽性対照を有する「ヒット」のクラスタリングを使用して、潜在的植物成長調節剤の作用様式を予測し得る。「ヒット」および陽性対照のクラスタは、K平均が自動的に選択され、クラスタ重心間の距離が多因子空間内のユークリッド距離として計算される、ウォード凝集型法を使用して生成され得る。代替の凝集型法としては、McQuitty/Weighted Pair Group Method with Arithmetic Mean、Single agglomeration、Complete agglomeration、Centroid agglomeration、またはMedian agglomerationが挙げられる。代替の距離計算としては、Maximum距離、Manhattan距離、Canberra距離、Minkowski距離、またはCosine距離が挙げられる。いくつかの実施形態において、「ヒット」が既知の作用様式の陽性対照に関連するクラスタの外側にある場合、そのヒットは、非定型症状の存在について視覚的に検査されてもよく、非定型症状が観察される場合には、そのヒットは、新規の作用様式を有すると予測され得る。本発明のいくつかの実施形態では、「ヒット」は、既知または新規の作用様式のいずれかであると予測することができない。このシナリオでは、ヒットを、植物を1nM~50000nMの範囲の「ヒット」の濃度範囲で処理する用量応答実験に手動で進めてもよく、すべての得られたデータ点を、本明細書に記載されている方法に従って処理する。このような用量応答実験の例示的な濃度は、1nM~50000nMの範囲であってもよい。
【0140】
人工知能は、「ヒット」選択のために使用され得る。本発明のいくつかの実施形態では、陰性対照化合物に対する植物の表現型応答を測定することによって得られるデータの少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、または少なくとも80%が、人工知能アルゴリズムの訓練セットとして使用される。アルゴリズムは、ランダムフォレストアルゴリズムであってもよい。本発明のいくつかの実施形態では、人工知能アルゴリズム、例えば、ランダムフォレストアルゴリズムを、作用様式の予測に使用してもよい。代替的に、ニューラルネットワークアルゴリズムを、作用様式の予測に使用してもよい。陽性対照化合物に対する植物の表現型応答を測定することによって得られるデータの少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、または少なくとも80%が、作用様式を予測するために使用される人工知能アルゴリズムの訓練セットとして使用され得る。統計的検定を使用して、「ヒット」が人工知能によって作成される表現型モデルにマッチする確率を決定し得る。本発明のいくつかの実施形態では、この意思決定ステップは自動化され得る。これに加えて、または代替的に、この意思決定ステップは、手動で実行され得る。
【0141】
本発明は、表現型を作製するための非維管束植物(例えば、候補化合物、陰性対照および/または陽性対照に曝露された試験試料)の形態学的特徴および/または生理学的特徴を測定することを包含する。表現型応答を使用して、作用様式を予測することができる。本発明のいくつかの実施形態では、測定値は、個々の植物当たり、10個未満、20個未満、30個未満、40個未満、50個未満、60個未満、70個未満、80個未満、90個未満、100個未満、250個未満、500個未満、または1000個未満の形態学的特徴および/または生理学的特徴の測定値が記録され得る。測定され得る形態学的特徴および/または生理学的特徴の非限定的な例としては、植物の長さ、植物の幅、植物の形状、植物の色素沈着、植物の真円度、クロロフィル濃度、および植物当たりの細胞数が挙げられる。
【0142】
本発明のさらなる実施形態では、測定値は、対照試料の10個未満、20個未満、30個未満、40個未満、50個未満、60個未満、70個未満、80個未満、90個未満、100個未満、250個未満、500個未満、または1000個未満の形態学的特徴および/または生理学的特徴の測定値が記録され得る。また、対照試料について測定され得る形態学的特徴および/または生理学的特徴の非限定的な例としては、非維管束植物の長さ、幅、形状、色素沈着、真円度、クロロフィル濃度、および細胞数が挙げられる。対照試料は、試験試料と同一のアッセイ条件に供されたが、試験化合物が添加されていない、同じ非維管束植物の試料であってもよい。本発明のいくつかの実施形態では、DMSOを、試験化合物の代わりに対照試料に添加してもよい。他の実施形態では、別の溶媒を対照試料に添加してもよい。添加した溶媒は、試験化合物を含むアッセイウェルに添加した溶媒であってもよい。
【0143】
本発明の方法を使用して、除草活性または植物成長調節活性を潜在的に有するものとして選択された化合物は、本明細書では「ヒット」と称され得る。アッセイ後の非維管束植物の表現型と陰性対照非維管束植物の表現型との差は、本明細書において、化合物に対する表現型応答と称される。化合物は、化合物に対する非維管束植物物質または胞子発芽体の表現型応答の大きさに基づいて、「ヒット」として選択され得る。これに加えて、または代替的に、化合物は、化合物に対する非維管束植物物質または胞子発芽体の表現型応答の性質に基づいて、「ヒット」として選択され得る。
【0144】
本発明のいくつかの実施形態では、「ヒット」の作用様式が予測され得る。このことは、既知の除草活性または植物成長調節活性を有する化合物を用いてアッセイした場合に、非維管束植物についての表現型を作成することによって達成され得る。次に、試験化合物を用いてアッセイした植物または胞子発芽体の表現型を、既知の除草活性を有する化合物(本明細書では「陽性対照」と称される)を用いてアッセイした非維管束植物の表現型と比較してもよい。陽性対照として本発明の方法で使用され得る既知の除草活性を有する化合物としては、作用様式の特定の症状を引き起こすことが知られている濃度で使用される市販の除草剤が挙げられる。このような化合物の例としては、クロジナホップ-プロパルギル、シハロホップ-ブチル、ジクロホップ-メチル、フェノキサプロップ-P-エチル、フルアジホップ-P-ブチル、ハロキシホップ-R-メチル、プロパキザホップ、キザロホップ-P-エチル、アロキシジム、ブトロキシジム、クレトジム、シクロキシジム、プロホキシジム、セトキシジム、テプラロキシジン(tepraloxydin)、トラルコキシジム、ピノキサデン、アミドスルフロン、アジムスルフロン、ベンスルフロン-メチル、クロリムロン-エチル、クロルスルフロン、シノスルフロン、シクロスルファムロン、エタメツルフロン-メチル、エトキシスルフロン、フラザスルフロン、フルピルスルフロン(flupyrsulfuron)-メチル-Na、ホラムスルフロン、ハロスルフロン-メチル、イマゾスルフロン、ヨードスルフロン、メソスルフロン、メツルフロン-メチル、ニコスルフロン、オキサスルフロン、プリミスルフロン-メチル、プロスルフロン、ピラゾスルフロン-エチル、リムスルフロン、スルホメツロン-メチル、スルホスルフロン、チフェンスルフロン-メチル、トリアスルフロン、トリベヌロン-メチル、トリフロキシスルフロン、トリフルスルフロン-メチル、トリトスルフロン、イマザピック、イマザメタベンズ-メチル、イマザモックス、イマザピル、イマザキン、イマゼタピル、クロランスラム-メチル、ジクロスラム、フロラスラム、フルメトスラム、メトスラム、ペノキススラム、ビスピリバック-Na、ピリベンゾキシム、ピリフタリド、ピリチオバック-Na、ピリミノバック-メチル、フルカルバゾン-Na、プロポキシカルバゾン-Na、ベンフルラリン、ブトラリン、ジニトラミン、エタルフルラリン、オリザリン、ペンジメタリン、トリフルラリン、アミプロホス-メチル、ブタミホス、ジチオピル、チアゾピル、プロピザミド=プロナミド、テブタム、クロルタール-ジメチル、クロメプロップ、2,4-D、2,4-DB、2,4-DP、MCPA、MCPB、メコプロップ、クロランベン、ディカンバ、TBA、クロピラリド、フルロキシピル、ピクロラム、トリクロピル、カルボン酸キンクロラック、キンメラック、ベナゾリン-エチル、アメトリン、アトラジン、シアナジン、デスメトリン、ジメタメトリン、プロメトン、プロメトリン、プロパジン、シマジン、シメトリン、テルブメトン、テルブチラジン、テルブトリン、トリエタジン、ヘキサジノン、メタミトロン、メトリブジン、アミカルバゾン、ブロマシル、レナシル、ターバシル、クロリダゾン、デスメディファム、フェンメディファム、ブロモフェノキシム、ブロモキシニル、アイオキシニル、ベンタゾン、ピリデート、ピリダフォル(pyridafol)、クロロブロムロン、クロロトルロン、クロロクスロン、ジメフロン、ジウロン、エチジムロン、フェヌロン、フルオメツロン、イソプロツロン、イソウロン、リニュロン、メタベンズチアズロン、メトブロムロン、メトクスロン、モノリヌロン、ネブロン、シデュロン、テブチウロン、プロパニル、ペンタノクロール、ブチレート、シクロエート、ジメピペレート、EPTC、エスプロカルブ、モリネート、オルベンカルブ、ペブレート、プロスルホカルブ、ベンチオカーブ、チオカルバジル、トリアレート、バーノレート、ベンスライド、ベンフレセート、エトフメセート、グリホサート、スルホサート、グルホシネート-アンモニウム、ビラナホス(bilanaphos)、アミトロール、ノルフルラゾン、ジフルフェニカン、ピコリナフェン、ベフルブタミド、フルリドン、フルロクロリドン、フルルタモン、クロマゾン、アシフルオルフェン-Na、ビフェノックス、クロメトキシフェン、フルオログリコフェン-エチル、ホメサフェン、ハロサフェン(halosafen)、ラクトフェン、オキシフルオルフェン、フルアゾラート、ピラフルフェン-エチル、シニドン-エチル、フルミオキサジン、フルミクロラック-ペンチル、フルチアセット-メチル、チジアジミン、オキサジアルギル、アザフェニジン、カルフェントラゾン-エチル、スルフェントラゾン、ペントキサゾン、ベンズフェンジゾン、ブタフェナシル、ピラクロニル、プロフルアゾール、フルフェンピル-エチル、アセトクロル、アラクロール、ブタクロール、ジメタクロール、ジメテナミド、メタザクロル、メトラクロル、ペトキサミド、プレチラクロール、プロパクロル、プロピソクロール、テニルクロール、ジフェナミド、ナプロパミド、ナプロアニリド、フルフェナセット、メフェナセット、フェントラザミド、アニロホス、カフェンストロール、ピペロホス、DSMA、MSMA、アシュラム、ナプタラム、ジフルフェンゾピル-Na、ジクロベニル、クロルチアミド、イソキサベン、フルポキサム、ジクワット、パラコート、クロルプロファム、プロファム、カルベタミド、ジニトロフェノールDNOC、ジノセブ、ジノテルブ、フラムプロップ-M-メチル/-イソプロピル、クインクロラック、TCA、ダラポン、フルプロパネート、ジフェンゾコート、メソトリオン、スルコトリオン、イソキサクロルトール、イソキサフルトール、ベンゾフェナップ、ピラゾリネート、ピラゾキシフェン、ベンゾビシクロン、ブロモブチド、(クロロ)-フルレノール、シンメチリン、クミルロン、ダゾメット、ダイムロン、エトベンザニド、ホサミン、インダノファン、メタム、オキサジクロメホン、オレイン酸、ペラルゴン酸、ピリブチカルブが挙げられる。当業者は、本方法において陽性対照として使用するための既知の作用様式を有する任意の除草剤を選択してもよい。同様に、陽性対照として本発明の方法で使用され得る既知の植物成長調節活性を有する化合物としては、作用様式の特定の症状を引き起こすことが知られている濃度で使用される市販の植物成長調節剤が挙げられる。当業者は、本方法において陽性対照として使用するための既知の作用様式を有する任意の植物成長調節剤を選択してもよい。
【0145】
標的特定
本発明の方法は、除草剤の標的(例えば、タンパク質標的)、例えば、スクリーニングされ、除草活性を有すると特定された候補化合物の標的、および/または作用様式が未知である既知の除草剤の標的の特定のための分析を含み得る。
【0146】
いくつかの実施形態では、標識特定は、本発明の方法によって特定される「ヒット」を、変異誘発された非維管束植物と接触させることを含み得る。次いで、DNAを、上述の接触して生き残る植物から抽出してもよい。変異誘発法は、当該技術分野において標準である。変異原は、例えば、放射線であってもよい。いくつかの実施形態では、変異原は、紫外(UV)光、X線、γ線、および中性子からなる群から選択される。さらなる実施形態では、変異原は、UV光であってもよく、UV光は、UV-A、UV-B、またはUV-C光であり得る。これに加えて、または代替的に、変異誘発は、化学薬剤を使用して行なわれてもよい。非限定的な例としては、メタンスルホン酸エチル(EMS)などのアルキル化剤が挙げられる。いくつかの実施形態では、硫酸ジメチル、アジ化ナトリウム、またはメチルニトロニトロソグアニジン(MNNG)を使用して、非維管束植物に変異を導入してもよい。化学薬剤はまた、脱アミノ化剤または挿入剤であってもよい。本発明のさらなる実施形態では、変異原は、転置可能な要素である。
【0147】
DNA抽出方法は、当該技術分野において標準である。DNAを、フェノール、クロロホルム、およびイソアミルアルコールを使用して抽出してもよい。他の周知のDNA抽出技術としては、酵素法、シリカ(スピン)カラムに基づく方法、アニオン性樹脂、磁気ビーズを使用する方法、およびCaCl密度勾配DNA抽出法が挙げられる。セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)および2-β-メルカプトエタノールは、植物組織が高レベルの多糖類、ポリフェノールおよび/または他の二次代謝産物を含有する植物DNA抽出に一般的に使用される(例えば、Clark,Plant molecular biology-a laboratory manual,1997;Springer:305-328を参照されたい)。DNAは、変異体非維管束植物全植物、または変異体非維管束植物全植物の部品、あるいは変異体非維管束植物の変異体胞子、胞子発芽体、外植片、プロトプラスト、または栄養繁殖体から抽出されてもよい。
【0148】
本発明のいくつかの実施形態では、ゲノムDNAライブラリーを調製する。次いで、さらなる実施形態では、ライブラリーを配列決定する。クローン増幅に基づく技術、半導体に基づく技術、および単一分子リアルタイム(SMRT)配列決定を含め、植物のゲノム全体を配列決定することが可能な任意のハイスループット配列決定技術を使用し得る(潜在的に適した市販のプラットフォームの最近の概説については、Reuter et al.,Molecular Cell,2015;58:586-597を参照されたい)。次いで、生の配列決定リードを「トリミング」して、プライマーおよび配列決定アダプターなどの配列決定プロセスの質の悪い配列および/またはアーチファクトを除去してもよい。例えば、Trimmomaticなどの任意の好適な既知のソフトウェアプログラムを使用し得る。Trimmomaticは、Illumina配列決定アダプターおよび悪い配列決定品質に関連するリードの一部をトリミングする。品質トリミングを実行するための他の既知のプロセスも使用され得る。
【0149】
本発明のいくつかの実施形態では、リードファイルは、インターリーブされ得る。インターリーブすることは、任意の好適な構文解析スクリプトを使用して実行され得る。例えば、対になったリードが、配列決定システムによって得られる場合、構文解析スクリプトを使用して、すべての対になったリードの2つのメイトペアを単一のファイルに再結合してもよい。
【0150】
いくつかの実施形態は、正規化ステップを含み得る。正規化プロセスは、例えば、Khmerなどの任意の好適な既知のソフトウェアプログラムを呼び出すスクリプトを使用して、31-merによって正規化することによって実行され得る。この例では、正規化プログラムは、あらかじめ定義されたkの値を使用して、すべてのリードにおいてk-merの分布を調べ、冗長な情報のみを提供するという理由で、最も頻繁なk-merを含有する相応する量のリードを破棄する。このステップは、アラインメントプロセスをより効率的なメモリにするために実行され得る。
【0151】
次いで、正規化されたリードファイルを、2つのファイル中のすべての対になったリードの2つのメイトペアを分離する任意の好適な構文解析スクリプトを使用して、デインターリーブまたはデカップリングしてもよい。このステップは、インターリーブステップの反対である。各々の対になったリードについて、同じ対になったリードに属すると特定された2つのメイトが存在する。これらを、同じファイルに書き込む(すなわち、インターリーブする)ことができ、または別個のファイルに書き込む(デインターリーブする)ことができる。一方から他方へと進むプロセスは、同じ対になったリードに属するものとしてメイトを特定するタグ付け文字列に従って解析するだけである。このタグ付けは、配列決定プラットフォームによって生成されたファイルに由来し、例えば、メイト1の場合はXYZ/1、メイト2の場合はXYZ/2のように見える場合がある。このソフトウェアは、テキストマッチングによってそれらを特定し、対応するDNA配列を、同じファイルまたは2つの別個のファイルのいずれかに書き込む。
【0152】
その後、配列決定されたゲノムが、植物の基準ゲノムにアラインメントされ得る。参照DNA配列は、属の植物の既知の参照配列であってもよい。参照DNA配列は、公的に入手可能なデータベースで公開されている。ゲノム全体の配列は、例えば、Marchantiaなどの苔類を含む、多くの非維管束植物について公的に入手可能である(核ゲノムおよびオルガネラゲノムについての参照配列は、Marchantiaについて公的に入手可能である)。
【0153】
参照DNA配列を、本発明のいくつかの実施形態では、さらなる比較配列にアラインメントされてもよい。比較配列は、化合物と接触して生き残らない同じ属の独立した植物からのものであってもよい。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、変異体植物のDNA配列と参照DNA配列との間のミスマッチのセットを得ることを含み得る。次に、参照DNA配列と比較配列との間で第2のセットのミスマッチを得てもよい。次いで、本発明のさらなる実施形態は、第2のセットのミスマッチに関して第1のセットのミスマッチをフィルタリングして、第1のセットのミスマッチに固有であるミスマッチのサブセットを特定することを含み得る。ミスマッチのサブセットは、除草剤耐性または植物成長調節の原因となる変異の候補変異であり得る。これは、本発明の方法によって特定される新規の除草剤または植物成長調節剤の標的を特定するのに役立ち得る。
【0154】
本発明の実施形態に係る、試験試料において目的の表現型を生じさせる原因となる変異の特定のための方法が、図15で提供される。
【0155】
一実施形態では、非維管束植物における目的の表現型と関連する変異を特定するための標的特定は、以下の方法に従って実行される。
(a)試験試料のDNA配列を参照DNA配列にアラインメントすることと、2つの配列間の第1のセットの配列ミスマッチを特定すること、
(b)少なくとも1つの比較試料のDNA配列を参照DNA配列にアラインメントすることと、2つの配列間の第2のセットの配列ミスマッチを特定すること、
(c)第2のセットのミスマッチに関して第1のセットのミスマッチをフィルタリングして、第1および第2のセットのミスマッチに共通であるサブセットのミスマッチを特定することであって、このサブセットのミスマッチが、原因となる変異の候補変異である、フィルタリングすること、
試験試料および比較試料(複数可)が、目的の表現型を示す独立した非維管束植物からのものであり、独立した非維管束植物が、同じ属であること、
参照DNA配列は、その属の非維管束植物の既知の参照配列である。
【0156】
一実施形態では、非維管束植物における目的の表現型と関連する変異を特定するための標的特定は、以下の方法に従って実行される。
(a)試験試料のDNA配列を参照DNA配列にアラインメントすることと、2つの配列間の第1のセットの配列ミスマッチを特定すること、
(b)少なくとも1つの比較試料のDNA配列を参照DNA配列にアラインメントすることと、2つの配列間の第2のセットの配列ミスマッチを特定すること、
(c)第2のセットのミスマッチに関して第1のセットのミスマッチをフィルタリングして、第1のセットのミスマッチに固有であるサブセットのミスマッチを特定することであって、このサブセットのミスマッチが、原因となる変異の候補変異である、フィルタリングすること、
試験試料が、目的の表現型を示す非維管束植物からのものであり、比較試料が、目的の表現型を示さない同じ属の独立した非維管束植物からのものであり、
参照DNA配列は、その属の非維管束植物の既知の参照配列である。
【0157】
一実施形態では、試験試料は、非維管束陸上植物からの生物学的物質および/または少なくとも1つの比較試料であり、非維管束植物は、コケ植物である。一実施形態では、試験試料および/または少なくとも1つの比較試料は、蘚類、苔類および角苔類からなる群から選択されるコケ植物からの生物学的物質である。一実施形態では、試験試料および/または少なくとも1つの比較試料は、生物学的物質の葉状苔類、単純葉状性苔類、または複雑葉状性苔類である。一実施形態では、試験試料および/または少なくとも1つの比較試料は、Marchantia種の植物からの生物学的物質である。
【0158】
本発明のいくつかの実施形態では、追加の比較試料のDNA配列を参照DNA配列にアラインメントさせてもよく、それによって2つの配列間の第3のセットの配列ミスマッチを特定する。次いで、第1のセットのミスマッチを第3のセットのミスマッチに関してフィルタリングして、第1および第3のセットのミスマッチに共通であるミスマッチのサブセットを特定し得る。次いで、2つのミスマッチのサブセットは、除草剤耐性または植物成長調節の原因となる変異の候補変異であり得る。追加の比較試料は、化合物と接触して生き残らない同じ属の独立した植物からのものであってもよい。本発明のいくつかの実施形態は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15個、またはそれよりも多くの比較試料のDNA配列を参照DNA配列にアラインメントして、2つの配列間のミスマッチのセットを特定することを含み、次いで、これを使用して、変異体植物のDNA配列と参照DNA配列との間のミスマッチのセットを比較して、除草剤耐性または植物成長調節についての候補変異の固有のミスマッチを特定してもよい。当業者がDNA配列をアラインメントさせ、ミスマッチのセットをフィルタリングするのを支援するために、多くのソフトウェアパッケージが利用可能である。
【0159】
本発明のいくつかの実施形態では、予想よりも多くのリードがアラインメントするゲノムの領域は除外され得る。すなわち、配列決定深さは、参照DNA配列のある領域に対してアラインメントする試料からの配列決定リードの数によって定義される。試料のDNA配列を配列決定する場合、ユーザは、DNA配列の同じ部分を何回配列決定するかを選択してもよい。この選択は、予想される配列決定深さを定義する。例えば、1の配列決定深さを目指すには、試料の全DNA配列を一度に配列決定するサンプリングシステムが必要である。予想される配列決定深さが20である場合、サンプリングシステムは、試料のDNAの20倍の配列決定を行う。
【0160】
したがって、例として、定義された位置での観察された配列決定深さが10である場合、10個の配列決定リードが、この位置を含む参照DNA配列の領域にアラインメントされる。予想される配列深さが1であった場合、このことは、10個のリードのうち9個が、間違ってDNA配列のこの領域に対してアラインメントしたことを示唆するだろう。このため、ソフトウェアは、観察された配列決定深さが予想される配列決定深さよりも大きい参照DNA配列の領域における任意のミスマッチを、誤ってアラインメントされたリードを有する可能性のある結果であるとみなし、したがって、ミスマッチデータのセットからそれを除去する。言い換えれば、ミスマッチは、アラインメントアーチファクトとみなされ、候補変異とはみなされないため、データセットから廃棄されるか、または除去される。別の言い方をすると、第1のセットまたはさらなるセットのミスマッチDNA配列データを決定するために、記載の方法およびソフトウェアは、予想されるリード深さを超える実際のリード深さに基づき、参照DNA配列とアラインメントする試料DNA配列の少なくとも1つの領域を拒否し得る。多くの好適なソフトウェアプログラムを使用して、この機能を実装し得る。
【0161】
さらに、ゲノム中のある位置でアラインメントするリードの群におけるミスマッチの発生頻度を使用して、アラインメントアーチファクトをフィルタリングにより除去し得る。例えば、変異体が二倍体種である場合、変異体ゲノム中のミスマッチの予想される頻度は50%であり、一方、単数体種では100%である。観察されたミスマッチ頻度が、定義された種についての予想されるミスマッチ頻度とマッチしない場合、その関連するリードは、データのセットから破棄される。繰り返しになるが、このことは、試料および比較DNA配列の両方のデータのセットに適用される。
【0162】
本発明のいくつかの実施形態では、変異誘発された非維管束植物は、M1変異体である。「M1」は、変異体の第1の世代を指し、M1変異体が、変異誘発された非維管束植物の子孫ではないことを意味する。変異誘発された非維管束植物は、天然に存在しない変異を含んでもよい。本発明のいくつかの実施形態は、分離比分析、複雑な分離比分析、またはバルク分離比分析のステップを含まない。
【0163】
これに加えて、または代替的に、標的特定は、酵素アッセイ、クロロフィル蛍光動態アッセイ、光合成酸素発生アッセイ、電解質漏出アッセイ、放射線測定アッセイ、分光光度アッセイ、蛍光測定アッセイ、吸光度アッセイ、比色分析アッセイ、質量分析、分裂指数分析、定量的PCR分析、トランスクリプトームプロファイリング、プロテオミクスプロファイリング、ゲノムワイド分析、定量的形質遺伝子座分析、インシリコドッキング試験、化学構造分析のうちのいずれか1つによって達成され得る(Dayan 2015“Biochemical markers and enzyme assays for herbicide mode of action and resistance studies”に一部分が概説される)。当業者は、下流の分析のための前述の技術のすべてに精通しているであろう。
【0164】
相互参照による組み込み
本出願は、2019年11月4日に出願されたオーストラリア仮特許出願番号第2019/904145号の優先権を主張し、その内容全体が相互参照によって本明細書に組み込まれる。
【実施例
【0165】
ここで、本発明は、以下の特定の実施例を参照して説明され、これらは、いかなる方法でも限定するものとして解釈されるべきではない。
【0166】
実施例1:除草活性のスクリーニング系としてのMarchantia polymorpha胞子発芽体
アッセイプレートの調製
フロントエンドアッセイを、手動で設定するか、液体取扱ロボットによって設定した。96ウェルマイクロタイタープレート中のウェルの底部に10%DMSO溶液1μLを添加し、続いて液体栄養培地中の細胞懸濁液99μLを添加して、手動アッセイプレート調製を開始した。96ウェルマイクロタイタープレート中のウェルの底部に1.4%DMSO溶液7μLを添加し、続いて液体栄養培地中の細胞懸濁液93μLを添加して、自動化アッセイプレート調製を開始した。典型的には、1つのスクリーニング化合物のみを1つのウェルで試験し、1つのウェルのみを使用してスクリーニング化合物を試験した。
【0167】
胞子発芽体の重なりを回避しつつ、アッセイの統計的有意性を最大化するために、50~70個のMarchantia polymorpha胞子を、96ウェルプレートの各ウェルに配置した(図1)。
【0168】
成長条件
アッセイプレートを、光および温度を制御するキャビネット内に配置した。植物を連続照明下で5日間成長させた。温度を23℃に設定した。植物をジョンソン培地中で成長させた。
【0169】
イメージング
陰性対照(DMSO)、陽性対照(市販の除草剤)またはスクリーニング化合物のいずれかの存在下で成長させた1日齢~5日齢のMarchantia polymorpha胞子発芽体を含有するマイクロタイタープレートを、ハイスループット蛍光顕微鏡InCell Analyzer 2500(GE Healthcare)内に配置した。いくつかの画像を生成した(図2図5)。遠赤色光子のみがカメラチップによって記録された画像(遠赤色画像)、シアン光子のみが記録された画像(シアン画像)、黄色光子のみが記録された画像(黄色画像)、透過光が記録された画像(明視野画像)。2倍対物レンズを使用して、ウェル全体をカバーする視野を有する遠赤色画像を生成した。ここで、遠赤色画像は、2D蛍光顕微鏡写真であった。4倍対物レンズを使用して、ウェルの境界内に正確に適合する視野を有する遠赤色画像を生成した。ここでも、遠赤色画像は、2D蛍光顕微鏡写真であった。10倍対物レンズを使用して、ウェルの小さな部分(8分の1)をカバーする4個の遠赤色画像、4個のシアン画像、4個の黄色画像、および4個の明視野画像のセットを生成した。ここで、遠赤色画像は、各スライスが深さ20μmである5スライススタックの最大強度投影であった。シアン画像および黄色画像は、各スライスが深さ20μmである4スライススタックの最大強度投影であった。明視野画像は、単一の深さ20μmのスライスであった。いずれかまたはすべての4つのチャネル画像を、その後の画像分析に使用してもよい。画像は、2倍、4倍、10倍、20倍、または40倍の光学倍率の対物レンズを使用することによって、ウェルの直径よりも大きい、等しい、または小さい視野を有し得る。
【0170】
考察
Marchantia胞子、または任意の胞子発芽体を形成する植物の胞子は、除草剤発見のモデル生物として現在まで使用されていない。除草剤発見のためのモデル生物としてのMarchantia polymorphaの選択は、Marchantia polymorphaが、一般的な苔類と同様に、主要な除草剤であるグリホサートおよびグルホシネートに対して非感受性であることが知られているため、自明なものではなかった。
【0171】
高含有量の表現型特性決定に適した多数の植物を成長させるために、Marchantia胞子発芽体の発達段階を微調整しなければならなかった。
【0172】
-発達段階の影響
Marchantia胞子を、全植物に代表的な細胞型および組織の多様性が形成された発達段階に達するまで、5日間成長させた。すなわち、5日齢の胞子発芽体は、仮根、植物光合成細胞および発生期の分裂組織を有する。さらに、5日齢の胞子芽細胞は、その後の発達段階よりも顕微鏡検査に便利なサイズおよび形状を示した。
【0173】
実施例2:MoA Galaxyを使用した除草剤ヒットの特定および作用様式の予測
背景
植物は、ほとんど検出することができない生理学的変化、軽微な病変から植物の死亡まで、除草剤処理に様々な方法で応答する。応答の大きさは、植物に適用される化学物質の効力と相関関係にある。応答の性質は、様々な作用様式を介して作用する化学物質ごとに異なる。
【0174】
スクリーニング化合物で処理した植物の表現型応答の大きさの定量化は、除草剤の効力に基づくヒットの選択に役立つ。応答の強度とは独立して、スクリーニング化合物によって処理した植物によって示される症状の性質を使用して、ヒットを選択し得る。まとめると、スクリーニング化合物に対する植物の応答の大きさおよび性質は、除草剤の効力の指標となるだけではなく、除草剤の作用様式の指標となる場合もある。化学物質に対する生体系の応答の表現型のフィンガープリントは、薬物発見の分野で使用されており(フィンガープリントのハイコンテントスクリーニングを介した、表現型と作用様式の連結)、実験者を支援するためのソフトウェアツールが広く利用可能である。この化学スクリーニングへのアプローチは、ハイコンテントスクリーニングと呼ばれ、長さ、面積、色、形状などの多数の表現型記述子を同時に記録することに依存している。
【0175】
しかしながら、この除草剤発見へのアプローチを翻訳することには、現在使用されているインビボモデルがその形態的複雑さによって妨げられているため、課題がある。3D苗は、2D細胞培養物よりもイメージングするのにさらに複雑な物体であり、特に、大規模な化学ライブラリーをスクリーニングするのに十分なスループットを有する場合はそうである。本願発明者らは、2Dに近い状態で成長させるため(および蛍光細胞マーカーで変換されるため)のMarchantia胞子の適合性を利用するハイコンテントスクリーニングプラットフォームを開発した。
【0176】
方法
-画像分析
画像は、ソフトウェア開発業者を使用して、個別に処理した。画像分析プロトコルは、植物と、核などの細胞内の物体を、背景から識別するように設計された(図3および図20)。
【0177】
複数の画像が生成された場合、1つの画像を使用してセグメント化された任意のオブジェクトが、別の画像を使用してセグメント化された多数のオブジェクトの親になるように、セグメント化されたオブジェクトがリンクされ得る。次に、植物の形態学的および生理学的表現型を記述した10~50個の測定値を抽出した。測定値の非網羅的な一覧は、例えば、「植物の長さ」、「植物の幅」、「植物の真円度」、「クロロフィル蛍光強度」、および「植物当たりの細胞数」であった。測定値は、最終的に、イメージングされた各ウェル内の各植物について、.csvファイルまたは.txtファイルで記録された。
【0178】
-データフォーマッティング
出力ファイルは、カスタム構文解析スクリプトを使用して、下流の分析適合性について再フォーマットされた。スクリプトは、分析されるアッセイプレートのバーコード、および/または画像取得および画像分析の日付およびプロトコルなどの関連するメタデータを自動的に追加した。さらに、高解像度分析出力ファイル(4倍および10倍のデータセット)のためのスクリプトは、親明視野オブジェクトが、それぞれ、シアンオブジェクト、遠赤色ジェクト、またはシアンオブジェクトおよび遠赤色ジェクトの両方とリンクしなかった場合に、シアンオブジェクト、遠赤色ジェクト、またはシアンオブジェクトおよび遠赤色ジェクトの両方が定義される場合にのみ値をとる変数のデフォルト値±誤差因子を導入した。
【0179】
-データ作成
データ分析は、CoreLifeAnalylitcsによって開発されたHC StratoMineRソフトウェアを使用して実施した。このソフトウェアは、使用される統計的方法およびパラメータを変更することにより、各ステップをカスタマイズすることができるデータ分析パイプラインを提供した。この実施例で使用されるステップ、方法およびパラメータを、以下に提供する。
【0180】
データを、プレートレベルで陰性(DMSO)対照の中央値によって正規化し、プレート間のノイズを最小限に抑えた。変数の分布は、ソフトウェアの自動化された推奨に従って、正規性をチェックし、必要に応じて変換された。データ変換方法は、平方根、2のべき乗、3のべき乗、log、log2、log10、逆数のリストから手動で選択することもできる。その後、変数をスケーリングして、下流の分析ステップにおいて異なる手段を有する変数の重みを均等化した。スケーリングは、プレートレベルでZスコア法を使用して実行した(図5)。プレートごとのデータ点の数が低すぎて、下流の分析ステップを正確に実行することができなかった場合、スクリーンレベルのスケーリングもこのステップで可能であった。
【0181】
陰性対照およびスクリーニング化合物のデータにおける相関変数を、200回のt-SNE反復、t-SNEパープレキシティを30に設定し、斜交回転法、およびten Bergeのような因子スコアリング法を実行するように設定した共通因子分析によって、因子へと減らした。保持される因子の数は、Kaiser基準、Elbow法またはJoliffe基準に従って自動的に決定され得るか、またはスクリープロットの目視検査時に手動で選択されてもよい(図6)。
【0182】
-ヒット選択
-教師なしヒット選択
スクリーニング化合物を、以前に保持された因子によって定義された多因子空間における陰性対照の中央値に対する表現型ユークリッド距離に従って、ヒットとして選択した。0.0001のp値が、有意性閾値として選択され、それより上は、スクリーニング化合物が、陰性対照の中央値と有意に異なるとみなされた(図7)。
【0183】
-人工知能教師ありヒット選択
スクリーニング化合物を、陰性対照の表現型モデルとの相違点に従って、ヒットとして選択した(図8)。陰性対照および陽性対照の表現型モデルを、80%の訓練のための対応するデータセットと、生成したモデルを試験するための残りの20%とを使用した128個のツリーを有するランダムフォレストアルゴリズムによって生成した(図9)。
【0184】
-既知または未知の作用様式予測
-教師なし作用様式予測
教師なし法で選択されたヒットの作用様式を、陽性対照を有するヒットのクラスタリングによって予測した。陽性対照は、特定の作用様式症状を引き起こすことが知られている濃度で使用される市販の除草剤であった。特定の作用様式症状を引き起こすことが知られている市販の除草剤の濃度は、植物をある範囲の除草剤濃度に曝露した用量応答実験の目視検査によって実験的に決定した。
【0185】
ヒットおよび陽性対照標準のクラスタは、K平均が自動的に選択され、クラスタ重心間の距離が、p値=0.0001の有意性閾値を適用した多因子空間内のユークリッド距離として計算される、ウォード凝集型法を使用して生成した(図10)。
【0186】
平均して、クラスタへのヒットの自動化された分類は、表現型類似性のグループへのヒットの手動での分類と86%一致していた。ヒットが既知の作用様式の陽性対照に関連するクラスタの外側にある場合、そのヒットは、固有の症状の存在について視覚的に検査され、固有の症状が観察された場合には、そのヒットは、新規の作用様式を有すると予測された。
【0187】
ヒットが、既知の作用様式または新規の作用様式のいずれかであると予測することができない場合には、そのヒットを、植物を1nM~50000nMの範囲のヒットの濃度範囲で処理する用量応答実験に手動で進め、すべての得られたデータ点を、「画像分析」以降に既に記載されている方法に従って処理した。
【0188】
-AI教師あり作用様式予測
統計的検定を実施して、ヒットが、表現型モデル(陽性対照のいずれか)とマッチする確率を決定した。確率が、陽性対照表現型モデルの数に依存して任意に定義された閾値よりも高い場合、そのヒットは、既知の作用様式を有すると予測され、この作用様式が、そのヒットが最も強く関連付けられている表現型モデルの除草剤の作用様式であると予測された。この意思決定ステップは、現在手動で実行されたが、カスタム構文解析スクリプトによって自動化することができる。
【0189】
ヒットが、すべての陽性対照表現型モデルの任意に定義された有意性閾値より下にある場合、そのヒットは、固有の症状の存在について視覚的に検査され、固有の症状が観察された場合には、そのヒットは、新規の作用様式を有すると予測された。
【0190】
ヒットが、既知の作用様式または新規の作用様式のいずれかを有すると予測することができない場合には、そのヒットを、植物を1~50000nMの範囲のヒットの濃度範囲で処理する用量応答実験に進め、すべての得られたデータ点を、「画像分析」以降に記載されている方法に従って処理した。
【0191】
考察
除草剤の発見スクリーニングには、現在のところハイコンテントスクリーニングは適用されていない。除草剤の発見および同時に行う作用様式予測に適用されるハイコンテント分析に対する最新技術は、いくつかの作用様式に限定されている(植物における微小管パターンの特定のための自動化された定量化画像分析ツール)。さらに、これらの方法は、より高い解像度(共焦点顕微鏡法)を必要とし、結果として、矮小化植物または全植物のスクリーニング系ではなく、植物の外植片または部品に依存する。
【0192】
対照的に、本方法は、より多くの作用様式に適用可能であり、共焦点顕微鏡法に依存しないため、矮小化植物を使用する。その結果、本発明の方法は、スループットがより高く、より広い範囲を有する。
【0193】
矮小化植物または全植物を使用したスクリーニング系の利用可能性が不足しているため、ハイコンテントスクリーニングアプローチが除草剤の発見活動に適用され得ることは自明ではなかった。
【0194】
実施例3:除草剤ヒットに耐性がある変異体の特定
背景
標的の知識は、作用様式、毒性、耐性の破壊、およびさらなるスクリーニング、またはリード最適化の努力を提供する。タンパク質標的をコードする遺伝子の変異は、除草剤に対する耐性を付与し得る。したがって、標的遺伝子の逆特定が、本発明の発明者によって試みられた。
【0195】
変異誘発された小胞子は、その小さなサイズと、単純な照射変異誘発法に対する適合性のため、除草剤耐性を付与する変異をスクリーニングするのに簡便な系であった。胞子変異誘発の後の除草剤耐性スクリーニングは、Marchantiaでは以前に報告されていない。
【0196】
方法
変異誘発濃度の条件で、除草剤ヒットの致死濃度を決定した。20000個のMarchantia胞子を、1.4%の寒天を含有し、1~50000nMの範囲の除草剤ヒット濃度範囲を追加した25mLのジョンソン培地を含有する90mmペトリ皿に配置した。致死濃度は、野生型Marchantia植物の100%を死滅させるのに十分な除草剤ヒットの最小濃度として定義された(図11)。
【0197】
致死濃度が観察されない場合、致死濃度の代わりに最も高い濃度が使用されるが、その濃度が植物に未処理の植物の表現型とは異なる表現型を示させることを条件とする。例えば、この代替的な表現型は、成長の強力な低下(図12)、植物の形状の顕著な変化、または植物の色素沈着の変化であり得る。
【0198】
Marchantia胞子の変異誘発集合体は、胞子の変異誘発集合体の任意に定義された割合を死滅させる用量で物理的変異原または化学的変異原のいずれかを使用して生成した(図13)。実験的な変異原用量を定義した胞子の変異誘発集合体の任意に定義された割合は、当該分野で標準的な50%であってもよく、あるいは変異誘発スクリーニング濃度の除草剤ヒットで処理された野生型植物の表現型に応じて、これより高くてもよく、またはこれより低くてもよい。
【0199】
400000個以上の変異誘発胞子の集合体を、1.4%の寒天を含有し、致死濃度の10倍高い濃度の除草剤ヒットを追加した25mLのジョンソン培地を含有する20個の90mmペトリ皿に広げた。代替的に、400000個以上の野生型胞子を、1.4%の寒天を含有し、致死濃度の10倍高い濃度の除草剤ヒットを追加した25mLのジョンソン培地を含有する20個の90mmペトリ皿に広げ、次いで、野生型胞子に変異誘発させた。
【0200】
変異誘発法の一例は、UV-B変異誘発である。400000個の胞子を、1.4%の寒天を含有し、致死濃度の10倍高い濃度の除草剤を追加した25mLのジョンソン培地を含有する20個の90mmペトリ皿に広げた。次いで、ペトリ皿を、胞子が直接的にUV-B光源に直接的に面するようにして蓋を取り外しつつ、UV-Bトランスイルミネータに上下を逆にして挿入した。UV-B光を、所望な変異誘発用量に達するのに必要な持続時間、胞子に照射した。次いで、ペトリ皿を閉じ、光を排除するためにアルミホイルで包み、ペトリ皿を23℃のインキュベーターに一晩置いた。
【0201】
所望の濃度の除草剤ヒットを含有するペトリ皿中の変異誘発胞子を、一定の照明、ルクスおよび23℃のインキュベーターに配置し、植物を14日間成長させた。生存しているもの(図14)、またはその他の未処理に見える植物を、除草剤ヒットが存在しない状態で新しいペトリ皿に移し、さらに14日間成長させた。成長した植物の断片を、1.4%の寒天を含有し、致死濃度の10倍高い濃度を追加した新鮮なジョンソン培地に移すことによって、除草剤耐性を検証した。
【0202】
耐性表現型が検証された場合、任意のDNA抽出方法(限定されないが、フェノール-クロロホルム-IAA抽出を含む)を使用して、全変異体植物の任意の部分または全変異体植物からゲノムDNAを抽出した。ゲノムDNAライブラリーを調製し、HiSeq 2000よりも最近の任意のIllumina Next-Generation Sequencingを使用して配列決定した。
【0203】
実施例4:稔性を損なわせる植物エンハンサータンパク質遺伝子のRHO GTPaseにおける原因となる変異の特定(ケースB)
この実施例では、本発明の方法論を使用して、以下に詳細に記載されるように、Marchantia polymorphaにおける仮根/表皮表現型に関連する原因となる変異を特定する。これらの方法は、除草剤耐性または植物成長調節に関連する表現型の決定に等しく適用可能である。
【0204】
いくつかの独立した変異体株は、Marchantia polymorpha胞子に紫外線Bを照射することによって生成された。変異体株は、2つの表現型群に分類された。いくつかは、まっすぐな仮根を有しており(図16A)、無傷の表皮を有しており(図17A)、いくつかは、波状の仮根を有しており(図16B)、伸びた表皮を有していた(図17B)。
【0205】
波状の仮根および伸びた表皮を有するUV4.32変異体株において、原因となる変異を特定することを目指した。試料として全植物を使用し、標準的なDNA PhenolChlorophorm-IAA抽出を使用して、波状の仮根および伸びた表皮を有するUV4.32変異体からDNAを抽出した。UV4.32のゲノムと、まっすぐな仮根および無傷の表皮を有する7つの独立した変異体株のゲノムを、Illumina’のHiSeq-2000プラットフォーム技術を使用して配列決定した。
【0206】
Trimmomatic-0.32を使用して、生データを品質トリミングし、k-merサイズが31のKhmer0.7.1を使用して正規化した。得られたリードを、--very-sensitive-localモードに設定したbowtie2-2.1.0を使用して、参照ゲノムに対してアラインメントした。使用される参照ゲノムは、NCBI Whole Genome Shotgun(WGS)データベースで公的に入手可能な原稿Marchantia polymorphaゲノムアセンブリである。
【0207】
アラインメントは、位置のソートを行い、q品質が35より大きなリード内のミスマッチを、bio-samtools-2.0.5からの関数ソートおよびmpileupを使用して抽出した。誤ったアラインメントによって引き起こされている可能性が高いため、100倍を超えるカバレッジを有する領域中のミスマッチを、samtools-0.1.9パッケージのbcftoolsからのvarFilter関数を使用して除外した。次いで、ミスマッチが、7つを超えるリードによってサポートされている場合にのみ、また、ミスマッチが、負のFQ値または0.5001より大きなAF1値に基づいて十分にホモ接合されているように見える場合には、そのミスマッチは保持された。
【0208】
合計で、143292個のミスマッチをUV4.32において特定した後、フィルタリングを行った。UV4.32に特異的なミスマッチの数は、フィルタリングに使用されるまっすぐな仮根および無傷の表皮を有するUV変異体株の数が減るにつれて減少した(図18A)。
【0209】
最終的に、配列決定されたすべてのフィルタリング株を用いて、候補ミスマッチの数は、12000個のミスマッチまで減少したか、または90%を超えて減少した(図18B)。このことは、試験試料中のミスマッチのセットを、原因となる変異を有していないと予測される比較試料中のミスマッチのセットによって減算するフィルタリングステップが、標準的なフィルタリングステップの前に、候補ミスマッチ特定の厳密さを高めたことを示している。
【0210】
その後のフィルタリングステップを実行して、UVシグネチャと一致しないミスマッチをフィルタリングし、遺伝子コード配列に外側にあるミスマッチをフィルタリングし、非同義的ミスマッチをフィルタリングした。これらの3つのフィルタリングステップは、さらに、候補ミスマッチの数を、予想されるUV変異シグネチャと一致した10個の変異まで減少させ(図18)、遺伝子のコード配列中にあると予測され(図18)、対応するタンパク質のアミノ酸配列を変化させると予測された(表1)。
【表1】
【0211】
10個の変異のうち、最も強い変異は、MpRENにおいて早期終止コドンを生じさせる2塩基対の欠失である(表1)。Ren変異体は、UV4.32と同じ表現型を示すことが知られている(Honkanen et al,2016)。このことは、その後のフィルタリングステップが、十分に保存的であったことを示唆している。
【0212】
まとめると、このことは、試験試料中のミスマッチのセットを、原因となる変異を有していないと予測される比較試料中のミスマッチのセットによって減算することに基づく、本願発明者らのパイプラインの態様が、変異体株を異系交配させる必要なく、原因となる変異を含む少数の変異の特定を可能にすることを示す。
【0213】
実施例5:クロルスルフロン耐性を引き起こすアセト乳酸シンターゼ遺伝子における変異の発見(ケースA)
Marchantia polymorpha胞子に、紫外線B照射を照射し、除草剤クロルスルフロンに耐性がある7つの独立した変異体株を特定した。致死用量のクロルスルフロン(0.1ppm用量、すなわち、野生型植物を100%死滅させるのに十分な用量)に曝露した2週間後に生きていたMarchantia polymorpha植物によって、クロルスルフロン耐性を決定した。
【0214】
すべての変異体植物は、同じ表現型であるクロルスルフロン耐性を共有していたため、それぞれが同じ原因となる変異を有すると仮定した。クロルスルフロン耐性変異体を参照ゲノムと比較して、個々に100000個を超えるミスマッチを特定し、最初に、M0野生型ゲノムにも存在する本願発明者らのミスマッチをフィルタリングした(図19、2つの最も左の散乱ボックス)。
【0215】
本願発明者らのパイプラインの非対立性に基づく態様の効率を試験するために、4、5、6、および7つすべてのクロルスルフロン変異体の組み合わせに適用した。対立遺伝子減算ラインをより多く使用するほど、パイプラインがより効率的になる。実際に、7つすべてのクロルスルフロン耐性株を使用して、ミスマッチの数を、ほぼ100000個から、予想される変異シグネチャと一致し、遺伝子のコード配列中にある11個の候補変異まで減少させた(図19)。
【0216】
7つすべてのクロルスルフロン耐性変異体に共通であるが、野生型には存在しない11個の候補変異のうち、5個は、コードされたタンパク質のアミノ酸配列に変化を引き起こす(表2)。これらの5個の候補変異のうち、予測される機能を有する遺伝子の存在は、1つのみである。実際に、アセト乳酸シンターゼ遺伝子におけるまさにこの変異は、他の植物モデルにおいてクロルスルフロン耐性を引き起こすことが知られている。
【表2】
【0217】
実施例6:クロルスルフロン耐性を引き起こすアセト乳酸シンターゼ遺伝子における変異の発見(ケースAB)
実施例1および実施例2に例示されるパイプラインの力を改善するために、両方のアプローチを組み合わせた。パイプラインのこの実施形態では、原因となる変異を、対立遺伝子変異体に共通し、野生型および非対立遺伝子変異体には存在しないミスマッチの群で探す。
【0218】
3つのクロルスルフロン感受性の変異誘発株を使用して、予想される変異シグネチャと一致し、遺伝子のコード配列中にあると以前に特定された11個のクロルスルフロン耐性の特定のミスマッチのうち、4個をフィルタリングし、最終的に、タンパク質のアミノ酸配列において変化を引き起こすと予測される4個の候補変異(表3)のみを残した。
【0219】
このことは、実施例2のみで例示したパイプラインと比較して、パイプラインの力が20~30%増加したことを表す。実施例1および2のパイプラインの力は、それぞれ対立遺伝子および非対立遺伝子の減算ラインの数に応じて増加するため、本実施例に例示されるパイプラインの力は、より多くの対立遺伝子および非対立遺伝子の減算ラインを使用する場合に、さらに増加すると予測する。
【表3】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16A
図16B
図17A
図17B
図18
図19
図20
【手続補正書】
【提出日】2022-07-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
除草活性または植物成長調節活性について候補化合物をスクリーニングする方法であって、前記方法が、
(i)一連の異なる候補化合物を、非維管束植物からの複数の試験試料と接触させるステップと、
(ii)候補化合物と接触していない非維管束植物からの対照試料の表現型と比較することによって、前記試験試料が、前記一連の異なる候補化合物に対する表現型応答を提供するかどうかを決定するステップと、を含み、
前記試験試料および前記対照試料が、全植物、胞子、胞子発芽体(sporeling)、外植片、プロトプラスト、または栄養繁殖体を含み、前記表現型応答が、前記除草活性または前記植物成長調節活性の指標である、方法。
【請求項2】
前記試験試料および対照試料が、全植物、胞子発芽体、外植片、または栄養繁殖体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記試験試料および対照試料が、胞子発芽体である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記候補化合物が、除草活性についての候補化合物である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記非維管束植物が、蘚類、角苔類または苔類である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
試験胞子発芽体および対照胞子発芽体が、同じ種の非維管束植物の胞子に由来する、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記試験胞子発芽体が、蘚類胞子発芽体、苔類胞子発芽体、角苔類胞子発芽体、またはそれらの任意の組み合わせである、請求項3または6に記載の方法。
【請求項8】
前記一連の異なる候補化合物の各メンバーが、異なる試験試料と接触する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記一連の異なる候補化合物の複数のメンバーが、単一の試験試料と接触する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記試験試料および対照試料が、葉状苔類胞子発芽体、単純葉状性(thalloid)苔類胞子発芽体、複雑葉状性苔類胞子発芽体、またはそれらの任意の組み合わせである、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記試験試料および対照試料が、Marchantia alpestris胞子発芽体、Marchantia aquatica胞子発芽体、Marchantia berteroana胞子発芽体、Marchantia carrii胞子発芽体、Marchantia chenopoda胞子発芽体、Marchantia debilis胞子発芽体、Marchantia domingenis胞子発芽体、Marchantia emarginata胞子発芽体、Marchantia foliacia胞子発芽体、Marchantia grossibarba胞子発芽体、Marchantia inflexa胞子発芽体、Marchantia linearis胞子発芽体、Marchantia macropora胞子発芽体、Marchantia novoguineensis胞子発芽体、Marchantia paleacea胞子発芽体、Marchantia palmata胞子発芽体、Marchantia papillate胞子発芽体、Marchantia pappeana胞子発芽体、Marchantia polymorpha胞子発芽体、Marchantia rubribarba胞子発芽体、Marchantia solomonensis胞子発芽体、Marchantia streimannii胞子発芽体、Marchantia subgeminata胞子発芽体、Marchantia vitiensis胞子発芽体、Marchantia wallisii、Marchantia nepalensis、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
複数の試験胞子発芽体が、一連の異なるウェルで提供され、各ウェルが、400~800個/mLの胞子発芽体、300~900個/mLの胞子発芽体、または200~1000個/mLの胞子発芽体を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記試験試料および/または対照試料が、蛍光分子を発現するように操作されている、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記対照試料が、陽性対照である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記陽性対照が、既知の除草剤または植物成長調節剤と接触する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記対照試料が、陰性対照である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記陰性対照試料が、既知の除草剤または植物成長調節剤と接触していない、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
ステップ(ii)が、前記試験試料の表現型を、既知の除草化合物または植物成長調節化合物と接触した陽性対照試料の表現型と比較することを含み、前記試験試料の表現型を、既知の除草化合物または植物成長調節化合物と接触していない陰性対照試料の表現型と比較することをさらに含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記既知の除草化合物が、既知の作用様式を有しており、前記試験試料表現型を陽性対照試料表現型と比較することを使用して、除草活性または植物成長調節活性を有すると特定された候補化合物の前記作用様式を予測する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記試験試料、前記陰性対照試料、および前記陽性対照試料が、同じ種の非維管束植物の胞子に由来する胞子発芽体である、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
前記試験試料、前記陰性対照試料、および前記陽性対照試料が、蛍光分子を発現するように操作されている、請求項18~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
ステップ(ii)が、前記試験試料を好適な培地中、前記候補化合物とともに好適な条件下、前記接触させた後1~3日間、1~5日間、3~6日間、3~5日間、2~3日間、1~10日間、5日未満、4日未満、または3日未満の期間成長させた後、前記試験試料の表現型応答を測定することを含み、前記対照胞子発芽体の表現型が、前記好適な培地中、前記好適な条件下で等価な成長期間の後に決定される、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
ステップ(ii)が、試料長さ、試料幅、試料形状、試料色素沈着、試料真円度、試料クロロフィル濃度、および/または試料当たりの細胞数のうちのいずれか1つ以上の測定値を得ることを含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記測定値がデジタルで記録される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記試験試料の表現型応答を、任意の前記対照試料表現型と比較することが、分布型確率的近傍埋め込み法、主成分分析(一般化重み付き最小二乗法)、主成分分析(最小化重み付きカイ二乗法)、主成分分析(最小残差法)、共通因子分析(主軸)、共通因子分析(最尤)
または共通因子分析(重み付き最小二乗)のうちのいずれか1つ以上を含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記候補化合物が、ランダムフォレストアルゴリズムまたはニューラルネットワークアルゴリズムなどの人工知能アルゴリズムを使用して、潜在的除草剤として選択される、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
ステップ(ii)が、
前記試験試料および任意の前記対照試料から表現型測定値を得て、それによってデータセットを生成することと、前記データセットの少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または99%を少なくとも前記人工知能アルゴリズムの訓練セットとして使用することと、を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記対照試料が、陽性対照試料を含み、前記人工知能アルゴリズムを使用して、任意の前記候補化合物の作用様式を予測する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記方法が、
(a)ステップ(i)および(ii)において除草活性または植物成長調節活性を有すると特定された候補化合物を、全植物、胞子、胞子発芽体、外植片、プロトプラスト、または栄養繁殖体を含む一連の変異誘発試料と接触させることであって、前記試験試料および変異誘発試料が、同じ種の非維管束植物に由来する、接触させること、
(b)(a)において前記接触させることから生き残るか、または(a)において前記接触させた後に成長異常を示さない、耐性変異誘発試料からDNAを抽出すること、
(c)前記耐性変異誘発試料のゲノムまたはゲノム部分を配列決定し、それによって変異誘発試料DNA配列を得ること、
(d)(c)において得られた前記変異誘発DNA配列を参照DNA配列にアラインメントし、前記変異誘発試料DNA配列と前記参照DNA配列との間の第1のセットの配列ミスマッチを特定すること、
(e)第1の比較試料からのDNA配列を前記参照DNA配列にアラインメントし、前記第1の比較試料DNA配列と前記参照DNA配列との間の第2のセットのミスマッチを特定すること、ならびに
(f)前記第2のセットのミスマッチに関して前記第1のセットのミスマッチをフィルタリングして、前記第1のセットのミスマッチに固有第1のサブセットのミスマッチを特定、前記第1のサブセットのミスマッチが、除草剤または植物成長調節剤耐性を付与し得る候補変異である、フィルタリングすることのステップ(iii)をさらに含み、
前記第1の比較試料が、前記候補化合物と接触して生き残らないか、または前記候補化合物と接触させた後に成長異常を示す独立した試料からのものであり、前記耐性変異誘発試料と同じ属のものであり、前記参照DNA配列が、前記属の植物の既知の参照配列である、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記方法が、
(e-i)第2の比較試料のDNA配列を前記参照DNA配列にアラインメントし、前記第2の比較試料と参照DNA配列との間の第3のセットのミスマッチを特定することと、
(f)前記第3のセットのミスマッチに関して前記第1のセットのミスマッチをフィルタリングして、前記第1のセットのミスマッチに固有第2のサブセットのミスマッチの特定を容易にすることと、前記第2のサブセットのミスマッチに関して前記第1のサブセットのミスマッチをフィルタリングすることによって、第3のサブセットのミスマッチを生成することであって、前記第1および第2のサブセットのミスマッチが、除草剤耐性または植物成長調節剤耐性を付与し得る候補変異である、生成することと、をさらに含み、
前記第2の比較試料が、前記候補化合物と接触して生き残らないか、または前記候補化合物と接触させた後に成長異常を示す独立した試料からのものであり、前記変異誘発試料と同じ属のものである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記変異誘発試料が、M1試料である、請求項29または30に記載の方法。
【請求項32】
前記変異誘発試料が、天然に存在しない変異を含む、請求項29~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記方法が、分離比分析、複雑な分離比分析、またはバルク分離比分析のステップを含まない、請求項29~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
(e)の前記アラインメントすることが、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15個、またはそれよりも多くの比較試料の前記DNA配列を前記参照DNA配列にアラインメントすることと、2つの配列間の第2のセットの配列ミスマッチを特定することと、を含む、請求項29~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記方法が、前記候補変異を生物学的フィルタでフィルタリングすることをさらに含む、請求項29~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記変異誘発試料が、単数体である、請求項29~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記候補変異が、除草活性または植物成長調節活性を有すると特定された前記候補化合物によって標的化されるタンパク質をコードする遺伝子中にある、請求項29~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
ステップ(iii)が、コンピュータを使用して実装される、請求項29~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記方法が、酵素アッセイ、クロロフィル蛍光動態アッセイ、光合成酸素発生アッセイ、電解質漏出アッセイ、放射線測定アッセイ、分光光度アッセイ、蛍光測定アッセイ、吸光度アッセイ、比色分析アッセイ、質量分析、分裂指数分析、定量的PCR分析、トランスクリプトームプロファイリング、プロテオミクスプロファイリング、ゲノムワイド分析、および/または定量的形質遺伝子座分析、インシリコドッキング試験、化学構造分析のうちのいずれか1つ以上を使用して、前記方法によって除草活性を有すると特定された候補化合物によって標的化される植物分子または生物学的経路を特定することをさらに含む、請求項1~38のいずれか一項に記載の方法。
【国際調査報告】