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特表2023-502203炭化水素流のためのハロゲン化物除去洗浄システム
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  • 特表-炭化水素流のためのハロゲン化物除去洗浄システム 図1
  • 特表-炭化水素流のためのハロゲン化物除去洗浄システム 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-23
(54)【発明の名称】炭化水素流のためのハロゲン化物除去洗浄システム
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/18 20060101AFI20230116BHJP
【FI】
B01D53/18 150
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022526349
(86)(22)【出願日】2020-10-28
(85)【翻訳文提出日】2022-05-09
(86)【国際出願番号】 EP2020080240
(87)【国際公開番号】W WO2021094086
(87)【国際公開日】2021-05-20
(31)【優先権主張番号】19208793.0
(32)【優先日】2019-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590000282
【氏名又は名称】トプソー・アクチエゼルスカベット
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】リスビェア・ヤレコヴ・クラウス
(72)【発明者】
【氏名】ヤアアンスン・ラース
【テーマコード(参考)】
4D020
【Fターム(参考)】
4D020AA10
4D020BA23
4D020BB03
4D020CB25
4D020CC01
4D020CD10
4D020DA03
4D020DB20
(57)【要約】
プロセスガスダクト内のプロセスガスからハロゲン化物を吸収するためのハロゲン化物除去洗浄システムであって、洗浄水注入ノズルおよび当該ノズル、注入パイプの周囲およびプロセスダクト内に配置された抗析出手段を備えた、ハロゲン化物除去洗浄システム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素およびハロゲン化物を含むプロセスガスのためのプロセスガスダクトを備えたハロゲン化物除去洗浄システムであって、インジェクターパイプが前記プロセスガスダクト中へ伸びており、前記インジェクターパイプは、前記プロセスガスダクトの外側に配置された前記インジェクターパイプの第1の端部に洗浄水入口を、および前記インジェクターパイプの第2の端部に、インジェクターノズルの下流でプロセスガスダクトにおけるプロセスガスに洗浄水を噴霧するように適合されたインジェクターノズルを備えた洗浄水出口を有する、ハロゲン化物除去洗浄システム。
【請求項2】
プロセスガスダクト中に伸びる前記インジェクターパイプの少なくとも一部の周囲に配置された抗析出手段をさらに含む、請求項1に記載のハロゲン化物除去洗浄システム。
【請求項3】
前記インジェクターノズルの少なくとも一部の周囲に配置された抗析出手段をさらに含む、請求項1または2に記載のハロゲン化物除去洗浄システム。
【請求項4】
前記の抗析出手段が断熱材である、請求項2または3に記載のハロゲン化物除去洗浄システム。
【請求項5】
前記の抗析出手段が、洗浄水の温度と比較して相対的に熱いインジェクターパージ流体を供するように適合されたインジェクターパージチャネルである、請求項2または3に記載のハロゲン化物除去洗浄システム。
【請求項6】
前記抗析出手段が、電熱線である、請求項2または3に記載のハロゲン化物除去洗浄システム。
【請求項7】
前記プロセスガスダクトが、インジェクターノズルの下流でプロセスガスダクトの内面に配置された防食ライナーを有する、請求項1~6のいずれか1つに記載のハロゲン化物除去洗浄システム。
【請求項8】
防食ライナーが、前記プロセスガスダクト内に、前記インジェクターノズルの下流でプロセスガスダクトの内面に隣接して、プロセスガスダクトの内面と防食ライナーとの間に防食ライナーとプロセスガスダクトとの間のダクトパージ流体を可能にするギャップを有するように配置される、請求項1~7のいずれか1つに記載のハロゲン化物除去洗浄システム。
【請求項9】
防食ライナーが、前記プロセスガスダクト内に、前記インジェクターノズルの下流でプロセスガスダクトの内面に隣接して、プロセスガスダクトの内面と防食ライナーとの間に防食ライナーとプロセスガスダクトとの間のダクトパージ流体を可能にする0.2~50mmのギャップを有するように配置される、請求項1~8のいずれか1つに記載のハロゲン化物除去洗浄システム。
【請求項10】
さらに、前記防食ライナーと前記プロセスガスダクトとの間のシーリング、および、前記防食ライナーと前記プロセスガスダクトとの間のギャップに流体をパージするように適合された前記インジェクターノズルの下流でプロセスガスダクトへのダクトパージ流体接続部を含む、請求項8または9に記載のハロゲン化物除去洗浄システム。
【請求項11】
ダクトパージ流体消費が予め設定した値を超えた場合に、アラーム出力を提供するように適合された、ダクトパージ流体消費モニタリングシステムを含む、請求項8、9または10のいずれか1つに記載のハロゲン化物除去洗浄システム。
【請求項12】
前記インジェクターノズルの下流でプロセスガスダクト内に配置された少なくとも1つの流体ミキサーエレメントをさらに含む、請求項1~11のいずれか1つに記載のハロゲン化物除去洗浄システム。
【請求項13】
複数のインジェクターパイプおよび複数のインジェクターノズルを含む、請求項1~12のいずれか1つに記載のハロゲン化物除去洗浄システム。
【請求項14】
複数のプロセスガスダクトおよび複数のインジェクターパイプおよびインジェクターノズル;前記インジェクターノズルの上流にある共通のプロセスガスダクト、および前記インジェクターノズルの各々の下流にある複数のプロセスガスダクトを含む、請求項1~13のいずれか1つに記載のハロゲン化物除去洗浄システム。
【請求項15】
水素化処理プロセスにおける、請求項1~14のいずれか1つに記載のハロゲン化物除去洗浄システムの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素系供給材料の転化のためのシステムであって、転化される供給材料のうちのある量が凝固し得るシステム、具体的には、1種または複数のハロゲン化物を含む炭化水素流からハロゲン化物を除去するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
製油所プロセスは、ガソリン、ディーゼル等の形態の生成物を提供するために、炭化水素リッチ流の複数の処理を含む。このような処理には、水素化処理、水素化分解、精留およびストリッピング、ならびに中間熱交換および不純物の除去が含まれる。
【0003】
製油所で処理されるべき炭化水素リッチ流の一部は、ハロゲン化物(例えば塩素を含む)を含む。ハロゲン化物は、生成物(複数可)中において望ましくなく、そして、プラントのユニット内の腐食問題のために、製油所プラント内においても不利である。
【0004】
ハロゲン化物に加えて、他のヘテロ原子、例えば窒素も、処理される炭化水素中に存在する。水素化処理の間には、有機的に結合した窒素がアンモニアとして放出され得る。アンモニアとハロゲン化物は反応して塩、例えば塩化アンモニウムを形成し得、これは270℃未満の温度では固体である。このような塩の析出は、プロセスラインの部分的または完全なブロッキングをもたらし得、従って、回避されなければならない。従って、プロセス温度が270℃を超えることを保証することが重要である。
【0005】
典型的には、水素化処理反応は発熱性であり、従って、供給材料と流出物との間の熱交換によって、プロセスのエネルギー消費を最適化することが可能である。しかしながら、アンモニアおよびハロゲン化物が存在する場合、この点における問題は、供給材料/流出物熱交換器において、270℃未満の供給材料温度が、当該熱交換器に低温ゾーンをもたらし得ることであり、そこでは例えば塩化アンモニウムが析出し得る。
【0006】
本発明によると、インジェクターパイプおよびインジェクターノズルによってプロセスガス流中に注入される洗浄水を用いて、プロセスガス流からハロゲン化物を吸収することができる、ハロゲン化物除去洗浄システムが記載されている。
【0007】
WO2015/050635(引用文献1)は、水素化処理によって炭化水素流から硫黄およびハロゲン化物を除去するための方法に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO2015/050635
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記文献は、中間流中の窒素の存在については言及しておらず、本開示とは対照的に、冷却水を用いた熱交換による水素化処理生成物からの熱の回復を明示的に推奨しており、これは、窒素が存在する場合には塩の析出を引き起こす可能性が極めて高い。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のハロゲン化物除去洗浄システムは、ハロゲン化物を含むプロセスガスを導くのに適したプロセスガスダクトを含む。また、当該システムは、プロセスガスダクト中へ伸びるインジェクターパイプも含む。前記インジェクターパイプは、プロセスガスダクトの外側に配置された第1の端部に洗浄水入口を有し、プロセスガスダクト内に配置されたインジェクターパイプの第2の端部にインジェクターノズルを備えた洗浄水出口を有する。前記インジェクターノズルは、プロセスガスからハロゲン化物を吸収するために、インジェクターノズルの下流でプロセスガスダクト中のプロセスガスに洗浄水を噴霧するように適合されている。
【0011】
本発明のハロゲン化物除去洗浄システムは、ハロゲン化物を含むプロセスガスを含むプロセスガスダクトにおいて使用されると、適切に稼働された場合にはNHClがいずれの表面上にも析出しないことを確実にするという利点を有する。注入時の耐圧部分における熱応力は、図に関してより詳細に説明するような機械設計によって回避される。洗浄水と供給材料との混合は、99.9%を超えるHClのウォッシュアウトを確実にする。
【0012】
本発明の一実施態様において、前記システムは、プロセスガスダクト中に伸びるインジェクターパイプの少なくとも一部の周囲に配置された抗析出手段を含む。抗析出手段は、インジェクターパイプの表面がプロセスガスに対して低温にならないことを保証することに役立つ手段であることが理解されるべきである。インジェクターパイプの表面がその周囲のプロセスガスと比較して相対的に冷たい場合、プロセスガスの一部がインジェクターパイプの表面上に析出し、それが腐食を引き起こし得るリスクがある。前記抗析出手段は、例えば、加熱手段または断熱体であってもよい。
【0013】
さらなる実施態様では、前記抗析出手段が、インジェクターノズルの少なくとも一部の周囲に配置される。インジェクターパイプ及びインジェクターノズルに抗析出手段を設けることが特に有益であり、なぜなら、これらの部材は、さもなければ相対的に冷たい表面をもたらし得、そのような表面上ではプロセスガスの一部の析出のリスクが高いからである。
【0014】
前記抗析出手段は、断熱材の形態であってもよい。さらなる実施態様では、前記の抗析出手段は、洗浄水の温度と比較して相対的に熱いパージ流を供するように適合されたインジェクターパージチャネルであってもよい。さらなる実施態様では、前記抗析出手段は、ヒートトレーシング、例えば電熱線、すなわち、電流が電線を通して送られるとインジェクターノズルおよびインジェクターパイプの表面を熱することができる電線であってもよい。
【0015】
断熱材、パージチャネル、ヒートトレーシングおよびさらに別の抗析出手段の効果は、さもなければプロセスガスと比較して相対的に冷たいであろう表面上での析出の回避である。
【0016】
本発明の一実施態様において、前記プロセスガスダクトは、インジェクターノズルの下流でプロセスガスダクトの内面に配置された防食ライナーを有する。一実施態様において、この防食ライナーは、プロセスガスダクトの内面に隣接して配置し、プロセスガスダクトの内面と防食ライナーとの間にギャップを残してもよい。このギャップは、パージ流体が、防食ライナーとプロセスガスダクトとの間を流れることを可能にする。前記ギャップは、一実施態様において、0.2~50mmの範囲であることができる。さらに、プロセスガスがギャップに入らないように、かつパージガスの制御された流れのために、シーリングを防食ライナーとプロセスガスダクトとの間に設けることができる。また、インジェクターノズルの下流でプロセスガスダクトへのパージ流体接続部が設けられていてもよく、これは、流体をギャップ中にパージするように適合されている。
【0017】
本発明の一実施態様では、プロセスガスの混合を提供するために、インジェクターノズルの下流でプロセスガスダクト内に1つまたは複数のミキサーが配置される。
【0018】
本発明のさらなる実施態様では、1つだけでなく複数のインジェクターパイプ及び複数のインジェクターノズルが設けられる。複数のインジェクターパイプおよび-ノズルが、単一のプロセスガスダクト内に配置されていてもよく、あるいは、各々が1つまたは複数のインジェクターパイプおよび-ノズルを有する複数のプロセスガスダクトが存在していてもよい。複数のプロセスガスダクトは、全て、マニホールドセットアップにおいて、インジェクターノズルの上流にある共通のプロセスガスダクトに接続されていてもよい。
【0019】
上述のように、上述のハロゲン化物除去洗浄システムは、水素化処理プロセスにおいて使用することができる。
【0020】
本明細書全体を通して、「有機ハロゲン化物」という用語は、1つまたは複数の炭素原子が1つまたは複数のハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素またはアスタチン-現行のIUPAC用語では17族)と共有結合によって連結されている化学化合物である。「無機ハロゲン化物」は、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物またはアスタチン化合物を生じさせる、ハロゲン原子と、ハロゲンよりも電気陰性度が低い(またはより陽性である)元素またはラジカルとの間の化合物であるが、炭素が当該化合物の一部ではないというさらなる制限を伴う。
【0021】
「ハロゲン化物を除去する」という用語は、存在するハロゲン化物の一部または存在するハロゲン化物の全てが除去される状況を含むことを意味する。従って、この用語は、存在するハロゲン化物の特定の割合が除去される状況に限定されない。
【0022】
開示されるシステムは、供給材料が、ハロゲン化物を含む廃棄物である場合に、例えばプラスチック廃棄物の直接水素化処理またはプラスチック廃棄物の熱分解からの生成物の水素化処理に有用であることが見出され得る。供給材料はまた、塩水中で成長した藻類脂質、または炭化水素および塩化物を含む他の生物学的供給材料に由来してもよい。
【0023】
前記ハロゲン化物除去洗浄システムの一例を、図面を参照して以下により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、ハロゲン化物除去洗浄システムの概要を示す。
図2図2は、ハロゲン化物除去システムの一部の詳細図を示す。
【0025】
位置番号
01. プロセスガスダクト
02. インジェクターパイプ
03. インジェクターノズル
04. インジェクター接続フランジ
05. 断熱材
06. インジェクターパージチャネル
07. ヒートトレーシング
08. ダクトライナー
09. ダクトシーリング
10. 混合エレメント
11. ダクトパージ
【0026】
図面の詳細な説明
図1は、本発明の一実施態様によるハロゲン化物除去洗浄システムの概要を示す。この実施態様では、マニホールド溶液が使用され、複数の、この場合は4つのプロセスガスダクト01が共通のプロセスガスダクトに接続されている。簡略化のために、プロセスガスダクトのうちの1つのみが位置番号を有し、他の3つのプロセスガスダクトが同様の位置番号を有する類似の構成要素を含むことが理解されるべきである。各プロセスガスダクト内には、共通のプロセスガスダクトを通って、当該共通のプロセスガスダクトの上流に、そして上記共通のプロセスガスダクトの下流で前記プロセスガスダクト内に、インジェクターパイプ02が配置されている。前記インジェクターパイプの第1の端部において、インジェクター接続フランジ04が、洗浄水入口を提供する。前記インジェクターパイプの第2の端部において、インジェクターノズル03が、前記インジェクターパイプ及び前記インジェクター接続フランジに流体接続して配置される。前記インジェクターノズルは、前記プロセスガスダクト内を流れるプロセスガス流に洗浄水を噴霧するように適合されている。前記インジェクターノズルの下流、かつ前記プロセスガスダクト内に、多数の混合エレメント10が連続して配置されて、プロセスガスの混合をもたらす。
【0027】
図2に、インジェクターパイプおよびインジェクターノズルを備えたハロゲン化物除去洗浄システムの一部をより詳細に示す。このより大きな図では、相対的に冷たい洗浄水を有するインジェクターパイプ上での相対的に熱いプロセスガスの析出を防ぐために、インジェクターパイプが断熱材05およびヒートトレーシング07の両方を備えていることが分かる。また、前記インジェクターノズルは、ヒートトレーシングを有し、それはさらに、相対的に熱いプロセスガスの析出を防ぐために、当該ノズルの周囲にインジェクターパージチャネル06を有する。
【0028】
プロセスガスダクトは、当該プロセスガスダクト内に、前記ダクトの内面に隣接して配置され、インジェクターノズルの少し上流から始まり、インジェクターノズルの下流へ伸びているダクトライナー08を有する。前記ライナーは、ライナーとプロセスガスダクトの内面との間にギャップを有して配置され、それによってダクトパージ11流体の流れを可能にする。このパージ流体の流れを制御するために、前記ライナーとプロセスガスダクトの内面との間の、前記ライナー上流の開始点に、ダクトシーリング09が配置される。
図1
図2
【国際調査報告】