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特表2023-502219特に時計製作技術のための一方向クラッチホイール組立体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-23
(54)【発明の名称】特に時計製作技術のための一方向クラッチホイール組立体
(51)【国際特許分類】
   G04B 11/00 20060101AFI20230116BHJP
【FI】
G04B11/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022527102
(86)(22)【出願日】2020-11-09
(85)【翻訳文提出日】2022-05-11
(86)【国際出願番号】 IB2020060506
(87)【国際公開番号】W WO2021094889
(87)【国際公開日】2021-05-20
(31)【優先権主張番号】19208918.3
(32)【優先日】2019-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501099611
【氏名又は名称】パテック フィリップ ソシエテ アノニム ジュネーブ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】ユメール パスカル
(72)【発明者】
【氏名】ル ブリ ジャン-バティスト
(57)【要約】
本発明による一方向クラッチホイール組立体は、第1のホイール(1)と、第1のホイール(1)と同軸であり、内歯(2b)を含む第2のホイール(2)と、第1のホイール(1)に対して回転可能に固定された剛性駆動部材(5)と、弾性ストリップ(7)により剛性駆動部材(5)に接続された少なくとも1つの剛性爪(6)と、を備える。剛体爪(6)は、剛体駆動部材(5)によって内歯(2b)に対してロックされて、第1のホイール(1)又は第2のホイール(2)が結合に対応する方向に回転駆動されたときに第1及び第2のホイール(1、2)を互いに回転可能に固定される。内歯(2b)は、非対称の歯を有する。剛性爪(6)は、内歯(2b)に対してロックされた位置において、上面視で、内歯(2b)の連続する2つの歯(20b、21b)と剛性駆動部材(5)とに点接触するように配置されている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向クラッチホイール組立体であって、
第1のホイール(1)と、該第1のホイール(1)と同軸であり内歯(2b)を含む第2のホイール(2)と、前記第1のホイール(1)に対して回転可能に固定された剛性駆動部材(5)と、弾性ストリップ(7)により前記剛性駆動部材(5)に接続された少なくとも1つの剛性爪(6)と、を備え、
前記剛性爪(6)は、前記剛性駆動部材(5)によって前記内歯(2b)にロックされて、前記第1ホイール(1)または第2のホイール(2)が結合に対応する方向に回転駆動されたときに互いに前記第1ホイール(1)及び第2のホイール(2)を回転可能に固定し、
前記内歯(2b)は、非対称の歯を有し、前記剛性爪(6)は、前記内歯(2b)に対してロックされた位置において、上面視で、前記内歯(2b)の連続する2つの歯(20b、21b)及び前記剛性駆動部材(5)と点接触するよう配置される、
ことを特徴とする一方向クラッチホイール組立体。
【請求項2】
前記剛性爪(6)は、該剛性爪(6)と前記連続する2つの歯(20b、21b)の第1の歯(20b)との間の点接触が、前記剛性爪(6)の外側凸面(6a)と前記第1の歯(20b)の丸みのある先端との間で生じるように配置されている、
ことを特徴とする請求項1記載の一方向クラッチホイール組立体。
【請求項3】
前記剛性爪は、該剛性爪(6)と前記連続する2つの歯(20b、21b)のうちの第2の歯(21b)と間の点接触が、前記剛性爪(6)の平面状の端面(6b)と前記第2の歯(21b)の丸みのある先端との間で生じるように配置されている、
ことを特徴とする請求項1又は2記載の一方向クラッチホイール組立体。
【請求項4】
前記剛性爪(6)は、前記剛性爪(6)と前記剛性駆動部材(5)との間の点接触が、前記剛性爪(6)の内面の丸みのある突起(6c)と前記剛性駆動部材(5)の嘴(5a)との間に生じるように配置されている、
ことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の一方向クラッチホイール組立体。
【請求項5】
前記剛性駆動部材(5)は、前記第1のホイール(1)又は前記第2のホイール(2)が結合解除に対応する方向に回転駆動されるときに、前記剛性爪(6)の係合解除時に前記丸みのある突起(6c)のクリアランスとして機能するノッチ(8)を含む、
ことを特徴とする請求項4に記載の一方向クラッチホイール組立体。
【請求項6】
前記剛性爪(6)が前記内歯(2b)に対してロックされた位置にあるときに、前記弾性ストリップ(7)は、前記内歯(2b)と接触していないか、又は前記内歯(2b)の1つの歯とのみ接触している、
ことを特徴とする請求項1~5の何れか1項に記載の一方向クラッチホイール組立体。
【請求項7】
請求項1~6の何れか1項に記載の一方向クラッチホイール組立体を備えた、時計機構。
【請求項8】
請求項7に記載の時計機構を備えた時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方向クラッチホイール組立体、すなわち、2つの同軸ホイールと、これら2つのホイールを一方向で互いに回転可能に固定し且つこれら2つのホイールの反対方向の相対回転を可能にするように配置された装置とを備えるホイール組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなクラッチホイール組立体では、2つのホイールが共に回転するときに2つのホイールの間で伝達されるトルクを高くできること、並びに、逆に、2つのホイールが互いに対して自由に回転するときの2つのホイールの間の抵抗トルクが可能な限り低いこと、ゼロでさえあることが重要である。
【0003】
このため、スイス国特許第541741号では、2つのホイールの一方に対して回転可能に固定された剛性駆動部にU字形弾性ストリップによって接続された爪を介して2つのホイールを結合方向に共に固定し、上記爪は、ホイール組立体が結合状態にあるときに剛性駆動部によって他のホイールの内歯に直接ロックされることを提案している。このクラッチホイール組立体の欠点は、結合方向であれ結合解除方向であれ、爪、内歯及び剛性駆動部の間の接触を有効に制御できないことであり、これにより動作が乱れ、製造及び組立公差並びに部品の摩耗状態に対して極めて敏感であることである。
【0004】
特に手巻き及び自動巻き機構のような時計機構を対象とした別の一方向クラッチホイール組立体が、本出願人による欧州特許第2392975号に記載されている。この一方向クラッチホイール組立体は、ホイールの一方に狼歯を有する内歯と、他方のホイールに対して回転可能に固定されたC形弾性爪とを備え、静止位置におけるその自由端は円周上に配置され、その直径は、狼歯の先端を通る円周より大きく、上記歯の底部を通る円周よりも小さい。この爪の配置の結果として、爪は、結合解除時に幾らかの時間のみ内歯と接触し、抵抗トルクが減少又は相殺される。他方、結合方向には、爪の自由端が、外向きに弾性変形して歯底に当接し、これにより爪が圧縮状態で動作するようになる。2つのホイール間で伝達されるトルクは、高くすることができるが、爪の座屈の危険性により制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】スイス特許第541741号明細書
【特許文献2】欧州特許第2392975号明細書
【発明の概要】
【0006】
本発明は、上述の欠点を少なくとも部分的に克服することを目的とし、このために、請求項1に記載の一方向クラッチホイール組立体、及びこれを含む時計機構、並びに該時計機構を含む時計を提案する。
【0007】
本発明の他の特徴及び利点は、添付図面を参照して与えられる以下の詳細な説明を読むと明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の特定の一実施形態による一方向クラッチホイール組立体の斜視図である。
図2図1に示された本発明の特定の一実施形態による一方向クラッチホイール組立体の軸方向断面図である。
図3】明確にする理由からクラッチホイール組立体の第1のホイール及びシャフトは示されていない、静止状態におけるこのホイール組立体を示す、図1に例示されたクラッチホイール組立体の一部の上面図である。
図4】明確にする理由からクラッチホイール組立体の第1のホイール及びシャフトは示されていない、結合モードにおけるこのホイール組立体を示す、図1に例示されたクラッチホイール組立体の一部の上面図である。
図5】明確にする理由からクラッチホイール組立体の第1のホイール及びシャフトは示されていない、結合解除モードにおけるこのホイール組立体を示す、図1に例示されたクラッチホイール組立体の一部の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
他の用途も勿論可能であるが、本発明による一方向クラッチホイール組立体は、典型的には、時計の機構、例えば欧州特許第2392975号の図10に示されるような手動及び自動巻き機構又は時打ち機構において使用される。時計は、典型的には、腕時計又は懐中時計である。
【0010】
図1図5に示す実施形態において、本発明による一方向クラッチホイール組立体は、ここではカナとして示される第1のホイール1と、第1のホイール1と同軸である第2のホイール2とを備える。第1のホイール1は、シャフト3に対して固定され、好ましくはこのシャフトと一体部品で作られる。第2のホイール2は、シャフト3上で自在に枢動される。第1及び第2のホイール1、2は各々、外歯1a,2aを有する。また、第2のホイール2は、非対称の歯を有する内歯2bを有する。内歯2bは、シャフト3の周りに固定して取り付けられた剛性駆動部材5が配置されているハウジング4の範囲を定める。この同じハウジング4において、剛性爪6が、C形弾性ストリップ7によって剛性駆動部材5に接続され、剛性爪6、弾性ストリップ7及び剛性駆動部材5は、図示のように好ましくは一体部品で作られる。
【0011】
剛性爪6は、これによって内側歯2bと同一平面上にあり、これと協働して一方向クラッチホイール組立体を結合モード又は結合解除モードで動作させることができる。第1のホイール1が、図3図5における反時計回り方向に相当する第1の方向に回転されると、剛性爪6は、剛性駆動部材5によって内歯2bに対して直接ロックされ(図4参照)、これによって第2のホイール2が第1のホイール1と共に回転するようになる。これは結合モードであり、同様に、第2のホイール2を第1の方向とは反対の第2の方向に回転させて、これによって第1のホイール1を駆動することによっても、逆の態様で得ることができる。第1のホイール1が、図3図5における時計回り方向に相当する第2の方向に回転されると、剛体駆動部材5によって弾性ストリップ7を介して駆動される剛体爪6が係合解除し(図5参照)、第2のホイール2を不動に保つことができる。これが結合解除モードであり、同様に第2のホイール2を第1の方向に回転させて、第1のホイール1を自由にすることにより、逆の態様で得ることができる。
【0012】
図面に示すように、剛性爪6は、C形弾性ストリップ7の外面を延長した大きな曲率半径を有する凸状の外面6aと、平面状の端面6bと、丸みのある突起6cを有する内面とを有する。結合モードでは、凸状の外面6aは、内歯2bの歯20bの丸みのある先端と点接触(上面視で)し、平面状の端面6bは、内歯2bの隣接する歯21bの丸みのある先端と点接触し、丸みのある突起6cは、剛性駆動部材5の嘴5aと点接触し、嘴5aと丸みのある突起6cとの間の接触点で剛体駆動部材5によって剛体爪6に加わる力が外向きに向けられて、剛体爪6が内歯2bから離脱できないようにする。この結合モードでは、従来のクラッチが牽引状態で動作するのとは対照的に、剛性爪6は、圧縮状態で動作する。これにより、はるかに大きなトルクを伝達することが可能となり、弾性ストリップ7を完全に不作動にして、非動作状態となる。嘴5aの直近において剛性駆動部材5に形成されたノッチ8は、結合解除モードにおける剛性爪6の係合解除の際に丸みのある突起6cのためのクリアランスとして機能する。
【0013】
剛性爪6、内歯2b及び剛性駆動部材5の間のこれらの点接触は、一方向クラッチホイール組立体をその設計及び動作の点で極めて正確にし、製造及び組立公差並びにその構成要素の摩耗状態に対して感度が低い。結合モードにおける剛性駆動部材5と剛性爪6との間の直接的な協働の結果として、伝達トルクを極めて高くすることができる。更に、弾性ストリップ7は、剛性駆動部材5の組立時にプレストレスを受けず、トルクの伝達に作用せず、すなわち有利には内歯2bの何れかの内歯と接触せず、多くても1つの歯とだけ接触する。換言すると、剛性爪6のみが、結合モードにおいて剛性駆動部材5と接触して動作する。従って、弾性ストリップ7は、結合解除モードにおいて剛性爪6が僅かな摩擦又は摩擦なしで係合解除可能にする低い剛性を有することができる。
【0014】
本発明は、図に示す内歯の形状及び剛性爪の形状に限定されるものではない。剛体爪を内歯に対してロック可能にする3点接触を得るために、多数の形状が想定できることは言うまでもない。
【0015】
更に、一方向クラッチホイール組立体は、シャフト3の周りに均一に分布し、各々が弾性ストリップによって剛性駆動部材5に接続された複数の剛性爪、例えば3つの剛性爪と、剛性駆動部材5上の複数の対応する嘴とを有することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】