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特表2023-502226フッ素化ポリマーを官能化する方法、官能化フッ素化ポリマー、及びそのコーティング組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-23
(54)【発明の名称】フッ素化ポリマーを官能化する方法、官能化フッ素化ポリマー、及びそのコーティング組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 8/00 20060101AFI20230116BHJP
   C08F 14/18 20060101ALI20230116BHJP
【FI】
C08F8/00
C08F14/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022527667
(86)(22)【出願日】2020-11-06
(85)【翻訳文提出日】2022-05-12
(86)【国際出願番号】 IB2020060462
(87)【国際公開番号】W WO2021094884
(87)【国際公開日】2021-05-20
(31)【優先権主張番号】62/934,598
(32)【優先日】2019-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】オーデナート, フランス エー.
(72)【発明者】
【氏名】ヒンツァー,クラウス
(72)【発明者】
【氏名】ベルシューレ, アレン ジー.
【テーマコード(参考)】
4J100
【Fターム(参考)】
4J100AC24P
4J100AC26P
4J100AC27P
4J100AE56P
4J100BB18P
4J100CA31
4J100HA61
4J100HB33
4J100HB50
4J100HC05
4J100HC11
4J100HC36
4J100HE14
4J100HE32
4J100JA01
(57)【要約】
本明細書で開示されているのは、フッ素化ポリマーを官能化する方法であり、反応化合物が、少なくとも1つのBr、I及びCl基を含み、-CHCH-結合を含まないフッ素化ポリマー上にグラフトされる。一実施形態では、全フッ素化ポリマー主鎖を含む官能化フッ素化ポリマーであって、全フッ素化ポリマー主鎖は、そこから延びたペンダント基を有し、少なくとも1つのペンダント基は、式I:(式中、Rfは、結合、又は任意選択で少なくとも1つの鎖内エーテル結合を含む二価の全フッ素化基であり、Zは、I、Br又はClであり、Xは、アルコール、亜リン酸及びその塩、リン酸及びその塩、シラン、アミン、アミド、任意選択で鎖内酸素、窒素又は硫黄結合を含む炭化水素、カルボン酸及びその塩、エステル、フッ化スルホニル、スルホン酸及びその塩、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される官能基を含む)で表される、官能化フッ素化ポリマーが開示される。そのような官能化フッ素化ポリマーは、コーティング組成物中で使用され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非フッ素化セグメントをフッ素化ポリマー上にグラフトして官能化フッ素化ポリマーを形成する方法であって、
少なくとも1つのBr、I及びCl基を含み、かつ-CHCH-結合を実質的に含まない前記フッ素化ポリマーを、非水性ビヒクルに溶解すること、並びに
前記フッ素化ポリマーを、(a)非フッ素化末端オレフィン基、及び(b)官能基を含む少なくとも1つの反応化合物と、フリーラジカル開始剤の存在下で反応させること
を含む、方法。
【請求項2】
前記フッ素化ポリマーが、少なくとも1つのBr及びI基を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フッ素化ポリマーが、非晶質ポリマーである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記フッ素化ポリマーが、
(a)
(i)式IIIのフッ素化ジヨードエーテル化合物:
【化1】
(式中、
各R’は、独立して、F、及び1個~3個の炭素を有する一価のペルフルオロアルカンから選択され、
各Zは、独立して、-CX’X’CX’R’’-、及び-CX’R’’CX’X’-から選択され、
各X’は、独立して、F及びClから選択され、
’’は、F、又は1個~3個の炭素を含む全フッ素化アルカンであり、
は、1個~5個の炭素を有する二価の全フッ素化アルキレン、又は1個~8個の炭素及び少なくとも1つのエーテル結合を有する二価の全フッ素化アルキレンエーテルであり、
vは、0又は1であり、
a、b、c及びdは、独立して、0~5の整数から選択され、但し、vが0である場合、a+bは少なくとも1であり、c+dは少なくとも1である)、
(ii)CF=CF-R-Q(式中、Rは、任意選択で少なくとも1つの鎖内エーテル結合を含む全フッ素化アルキレンであり、Qは、I、Br及びClのうちの少なくとも1つを含む)、及び
(iii)I-(CF-I(式中、wは、1~8の整数である)
のうちの少なくとも1つを含む、ハロゲン化化合物、並びに
(b)テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン、全フッ素化アリルエーテル、全フッ素化ビニルエーテル、及びそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含むフッ素化モノマー
から誘導されたものである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記フッ素化ポリマーが、全フッ素化ポリマーである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記フッ素化ポリマーが、前記フッ素化ポリマーの総重量に対して、少なくとも0.4重量%~最大で5重量%のBr、I及びClを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記フッ素化ポリマーが、少なくとも50,000g/mol、及び最大で500,000g/molの数平均分子量を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記非水性ビヒクルが、フッ素化溶媒を含み、任意選択で、前記フッ素化溶媒が、全フッ素化アルカン、全フッ素化アミン、全フッ素化エーテル及びヒドロフルオロエーテルのうちの少なくとも1つを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記官能基が、アルコール、亜リン酸及びその塩、リン酸及びその塩、シラン、アミン、アミド、任意選択で鎖内酸素、窒素又は硫黄結合を含む炭化水素、カルボン酸及びその塩、エステル、フッ化スルホニル、スルホン酸及びその塩、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記フリーラジカル開始剤が、過硫酸塩、過酸エステル、過炭酸塩、アゾ及び過酸化物のうちの少なくとも1つを含み、任意選択で、前記フリーラジカル開始剤が、過硫酸アンモニウム、(ジ)アルキル過酸化物、ジアシル過酸化物及びヒドロペルオキシドから選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
全フッ素化ポリマー主鎖を含む官能化フッ素化ポリマーであって、前記全フッ素化ポリマー主鎖は、そこから延びたペンダント基を有し、少なくとも1つのペンダント基は、式I:
【化2】
(式中、Rは、結合、又は任意選択で少なくとも1つの鎖内エーテル結合を含む二価の全フッ素化基であり、Zは、I、Br又はClであり、Xは、アルコール、亜リン酸及びその塩、リン酸及びその塩、シラン、アミン、アミド、任意選択で鎖内酸素、窒素又は硫黄結合を含む炭化水素、カルボン酸及びその塩、エステル、フッ化スルホニル、スルホン酸及びその塩、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される官能基を含む)
で表される、官能化フッ素化ポリマー。
【請求項12】
共重合したテトラフルオロエチレンモノマー単位を含む、請求項11に記載の官能化フッ素化ポリマー。
【請求項13】
共重合した全フッ素化エーテルモノマー単位を含む、請求項11又は12に記載の官能化フッ素化ポリマー。
【請求項14】
5~100の間の121℃でのムーニー粘度(ML1+10)を有する、請求項11~13のいずれか一項に記載の官能化フッ素化ポリマー。
【請求項15】
少なくとも1g/10分、及び最大で1000g/10分のMFIを有する、請求項11~13のいずれか一項に記載の官能化フッ素化ポリマー。
【請求項16】
請求項11~15のいずれか一項に記載の官能化フッ素化ポリマー、及びフッ素化溶媒を含むコーティング組成物であって、任意選択で、前記フッ素化溶媒が、ヒドロフルオロエーテル及びペルフルオロケトンのうちの少なくとも1つを含む、コーティング組成物。
【請求項17】
フィラーを更に含む、請求項16に記載のコーティング組成物。
【請求項18】
コーティングされた物品を製造する方法であって、基材を、請求項16又は17に記載のコーティング組成物でコーティングすることを含み、任意選択で、前記基材が、ガラス、セラミック、及び金属のうちの少なくとも1つを含み、前記金属が、任意選択でステンレス鋼、炭素鋼又はアルミニウムから選択される、方法。
【請求項19】
前記基材が、前記コーティング組成物をその上に配置する前に、最初にプライマーでコーティングされ、任意選択で、前記プライマーが、アミノシラン及びアルコキシシランのうちの少なくとも1つである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記コーティングされた物品の熱処理を更に含む、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
無機基材及びそれに結合したフルオロポリマー組成物を含む物品であって、前記フルオロポリマー組成物が、請求項11~15のいずれか一項に記載の官能化フッ素化ポリマーを含み、任意選択で、前記フルオロポリマー組成物が、少なくとも30nmの厚さを有する、物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
フッ素化ポリマーを官能化する方法が、得られた官能化フッ素化ポリマーと共に開示される。一実施形態では、得られた官能化フッ素化ポリマーは、基材上のコーティング組成物中で使用される。
【発明の概要】
【0002】
フッ素化ポリマーに官能価を導入するための新規な方法を特定することが望まれている。そのような官能価は、例えば、フッ素化ポリマーの、基材への接着を改善するために有用であり得る。
【0003】
一態様では、官能基をフッ素化ポリマー上にグラフトして官能化フッ素化ポリマーを形成する方法が開示される。その方法は、
(i)少なくとも1つのBr、I及びCl基を含み、かつ(ii)-CHCH-結合を実質的に含まないフッ素化ポリマーを、非水性ビヒクルに溶解すること、並びに
フッ素化ポリマーを、(a)非フッ素化末端オレフィン基を有し、(b)官能基を含む、反応化合物と、フリーラジカル開始剤の存在下で反応させること、を含む。
【0004】
一実施形態では、フッ素化ポリマー主鎖を含む官能化フッ素化ポリマーであって、フッ素化ポリマー主鎖は、そこから延びたペンダント基との-CHCH-結合を実質的に含まず、少なくとも1つのペンダント基は、式I:
【化1】
(式中、Rfは、結合、又は任意選択で少なくとも1つの鎖内エーテル結合を含む二価の全フッ素化基であり、Zは、I、Br又はClであり、Xは、アルコール、亜リン酸及びその塩、リン酸及びその塩、シラン、アミン、アミド、任意選択で鎖内酸素(すなわちエーテル)、窒素(すなわちアミン)又は硫黄(すなわちチオール)結合を含む炭化水素、カルボン酸及びその塩、エステル、フッ化スルホニル、スルホン酸及びその塩、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される官能基を含む)で表される、官能化フッ素化ポリマーが開示される。
【0005】
なおも別の実施形態では、コーティング組成物が開示される。(i)フッ素化ポリマー主鎖を含む官能化フッ素化ポリマーであって、フッ素化ポリマー主鎖は、そこから延びたペンダント基との-CHCH-結合を実質的に含まず、少なくとも1つのペンダント基は、式I:
【化2】
(式中、Rfは、結合、又は任意選択で少なくとも1つの鎖内エーテル結合を含む二価の全フッ素化基であり、Zは、I、Br又はClであり、Xは、アルコール、亜リン酸及びその塩、リン酸及びその塩、シラン、アミン、アミド、任意選択で鎖内酸素(すなわちエーテル)、窒素(すなわちアミン)又は硫黄(すなわちチオール)結合を含む炭化水素、カルボン酸及びその塩、エステル、フッ化スルホニル、スルホン酸及びその塩、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される官能基を含む)で表される、官能化フッ素化ポリマーと、(ii)フッ素化溶媒と、を含むコーティング組成物が開示される。
【0006】
なおも別の実施形態では、基材及びそれに結合したフルオロポリマー組成物を含む物品であって、フルオロポリマー組成物は、フッ素化ポリマー主鎖を含む官能化フッ素化ポリマーを含み、フッ素化ポリマー主鎖は、そこから延びたペンダント基との-CHCH-結合を実質的に含まず、少なくとも1つのペンダント基は、式I:
【化3】
(式中、Rfは、結合、又は任意選択で少なくとも1つの鎖内エーテル結合を含む二価の全フッ素化基であり、Zは、I、Br又はClであり、Xは、アルコール、亜リン酸及びその塩、リン酸及びその塩、シラン、アミン、アミド、任意選択で鎖内酸素(すなわちエーテル)、窒素(すなわちアミン)又は硫黄(すなわちチオール)結合を含む炭化水素、カルボン酸及びその塩、エステル、フッ化スルホニル、スルホン酸及びその塩、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される官能基を含む)で表される、物品が開示される。
【0007】
上記の概要は、各実施形態を説明することを意図したものではない。本発明の1つ以上の実施形態の詳細は、以下の説明にも記載される。その他の特徴、目的及び利点は、記載及び特許請求の範囲から明らかになろう。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書で用いる場合、
用語「a」、「an」及び「the」は、互換的に用いられ、1つ以上を意味し、
用語「及び/又は」は、述べられた事柄の一方又は両方が起こり得ることを示すために用いられ、例えば、A及び/又はBは、(A及びB)並びに(A又はB)を含み、
「主鎖」は、ポリマーの主な連続鎖を指し、
「架橋」は、予め形成した2つのポリマー鎖を、化学結合又は化学的な基を使用して連結することを指し、
「硬化部位」は、架橋に関与する場合がある官能基を指し、
「共重合した(interpolymerized)」は、モノマーが一緒に重合してポリマー主鎖を形成することを指し、
「モノマー」は、重合を経てその後ポリマーの基本的構造の部分を形成することができる分子であり、かつ
「全フッ素化」は、全ての水素原子がフッ素原子に置き換えられている、炭化水素から誘導された基又は化合物を意味する。しかしながら、全フッ素化化合物は、なおも、酸素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子のような、フッ素原子及び炭素原子以外の原子を含有してもよい。
【0009】
更に本明細書では、端点による範囲の記載は、その範囲内に包含される全ての数を含む(例えば、1~10は、1.4、1.9、2.33、5.75、9.98などを含む)。
【0010】
更に本明細書では、「少なくとも1つ」の記載は、1以上の全ての数(例えば、少なくとも2、少なくとも4、少なくとも6、少なくとも8、少なくとも10、少なくとも25、少なくとも50、少なくとも100など)を含む。
【0011】
本明細書で用いる場合、「A、B及びCのうちの少なくとも1つを含む」は、単独の要素A、単独の要素B、単独の要素C、A及びB、A及びC、B及びC、並びに3つ全ての組み合わせを指す。
【0012】
本開示では、フルオロポリマー上に官能化を添加するための方法が開示される。そのような官能化フッ素化ポリマーは、例えば、コーティング組成物中で使用され得る。
【0013】
官能化フッ素化ポリマー
【0014】
官能化部分を、フルオロポリマー、特に全フッ素化ポリマーに添加することは、全フッ素化基の反応性の固有の欠如に起因して、特に困難であり得る。
【0015】
本明細書に開示されるのは官能化フッ素化ポリマーであり、ポリマー主鎖は、-CHCH-結合を実質的に含まず、ポリマー主鎖のペンダント基を含み、少なくとも1つのペンダント基は、式I:
【化4】
(波線がポリマー主鎖を表す場合、Rfは、結合、又は二価の全フッ素化基であり、Zは、I、Br又はClであり、Xは、アルコール、亜リン酸及びその塩、リン酸及びその塩、シラン、アミン、アミド、任意選択で鎖内酸素(すなわちエーテル)、窒素(すなわちアミン)又は硫黄(すなわちチオール)結合を含む炭化水素、カルボン酸及びその塩、エステル、フッ化スルホニル、スルホン酸及びその塩、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される官能基を含む)で表される。以下で論じられるように、フッ素化ポリマーは、Z部分とエチレン性不飽和基との間のフリーラジカル反応を介して官能化される。Z部分は、Z部分がポリマー中にどのように組み込まれたかに応じて、重合が開始する又は終端する末端基として、又は側鎖として、存在し得る。したがって、本明細書で使用される場合、ペンダント基は、ポリマー主鎖に沿った両側鎖と、ポリマー主鎖の末端に位置された末端基との両方を指す。
【0016】
Rfが二価の全フッ素化基である場合、Rfは、本質的に直鎖状であっても分枝状であってもよく、かつ/又は環状であってもよい。一実施形態では、Rfは、少なくとも1、2、3の、又は更には4個の炭素原子を含む。一実施形態では、Rfは、6、8、10、12、14、16、又は更には18個以下の炭素原子を含む。
【0017】
一実施形態では、Rfは、直鎖状の全フッ素化アルキレン、例えば-(CF-(式中、nは、少なくとも1、2、3、又は更には4、及び最大で5、6、7、又は更には8の整数である)である。一実施形態では、Rfは、分枝状の全フッ素化アルキレン、例えば-[(CFCF(CF)])-又は-[(CF(CF)CF)-(式中、mは、少なくとも1、2、3、4、及び最大で5、6、7、又は更には8の整数である)である。
【0018】
一実施形態では、二価の全フッ素化基Rfは、少なくとも1個の鎖内酸素原子を含有し得る。例えば、Rfは、-(CF-O-(CF-、-(OCFCF-、-(OCFCF(CF))-、-(OCF(CF)CF-、-(CFCF(CF))-O-(CF-及び/又は-(CF(CF)CF-O-(CF-(式中、pは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又は11の整数であり、qは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又は11の整数であり、pとqとが両方とも存在する場合、p+qの和は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12である)を含み得る。
【0019】
官能化フッ素化ポリマーの主鎖は、-CHCH-結合を実質的に含まず、これは、フッ素化ポリマーが、0.5、0.1、0.05、又は更には0.01mol%未満の-CHCH-結合を含むこと、又は更にはフッ素化ポリマーを製造するために使用されるモノマーのモルに対する、ポリマー主鎖に沿った-CHCH-結合を全く含まないことを意味する。
【0020】
官能基Xで官能化されて官能化フッ素化ポリマーを形成することができるフッ素化ポリマーが、以下に論じられる。本明細書に開示される官能基は、元のフッ素化ポリマーの性質を変化させる基である。官能基は、フリーラジカル条件下では非反応性であるが、極性官能価、イオン性特性などの官能価を有する基を含み、これは、その後、基材への接着を改善するために利用され得る(無機及び有機を含む)。例示的な官能基としては、アルコール、亜リン酸及びその塩、リン酸及びその塩、シラン、アミン、アミド、任意選択で鎖内酸素(すなわちエーテル)、窒素(すなわちアミン)又は硫黄(すなわちチオール)結合を含む炭化水素、カルボン酸及びその塩、エステル、フッ化スルホニル、スルホン酸及びその塩、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0021】
製造の方法
【0022】
本明細書に開示されているのは、上に開示された官能化フッ素化ポリマーを製造する方法であって、炭化水素末端オレフィン基及び官能基を有する反応化合物は、溶液中のフッ素化ポリマー上にグラフトされ、官能基のフッ素化ポリマーへの組み込みをもたらす。
【0023】
本明細書に開示されているグラフト方法は、部分フッ素化ポリマー及び全フッ素化ポリマーを官能化するために使用され得る。しかしながら、この方法は、反応するのが困難な全フッ素化ポリマーにとって特に有利である。全フッ素化ポリマーは、重合が開始する部位及び終端する部位を除いて、フッ素化ポリマーがC-H結合を含まず、C-H結合が、主にC-F結合に、かつ任意選択でC-Br、C-I又はC-Cl結合に置き換えられていることを意味する。好ましくは、このポリマーは、少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも71重量%のフッ素を含む。部分フッ素化ポリマーは、重合が開始する部位及び終端する部位を除いて、フッ素化ポリマーがC-F結合とC-H結合との両方を含み、かつ任意選択で炭素-臭素結合、炭素-塩素結合、及び炭素-ヨウ素結合を含むことを意味する。好ましくは、部分フッ素化ポリマーは高度にフッ素化されており、ポリマー中のC-H結合のうちの少なくとも65、70、75、80、又は更には85%がC-F結合によって置き換えられ、かつポリマー中のC-H結合のうちの最大で90、95%、又は更には99%がC-F結合によって置き換えられている。
【0024】
典型的には、フッ素化ポリマーは、1つ以上のフッ素化モノマー、例えばTFE(テトラフルオロエチレン)、VF(フッ化ビニル)、VDF(フッ化ビニリデン)、HFP(ヘキサフルオロプロピレン)、ペンタフルオロプロピレン、トリフルオロエチレン、CTFE(クロロトリフルオロエチレン)、ペルフルオロエーテル、及びそれらの組み合わせから誘導される。
【0025】
例示的なペルフルオロエーテルモノマーは、式(II)
【化5】
(式中、R 及びR は、独立して、2、3、4、5又は6個の炭素原子を含む直鎖状又は分枝状のペルフルオロアルキレンラジカル基であり、hは、0又は1であり、i及びjは、独立して、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9及び10から選択される整数であり、R は、1、2、3、4、5又は6個の炭素原子を含むペルフルオロアルキル基である)のものである。例示的なペルフルオロビニルエーテルモノマーとしては、ペルフルオロ(メチルビニル)エーテル(perfluoro(methyl vinyl)ether、PMVE)、ペルフルオロ(エチルビニル)エーテル(perfluoro(ethyl vinyl)ether、PEVE)、ペルフルオロ(n-プロピルビニル)エーテル(perfluoro(n-propyl vinyl)ether、PPVE-1)、ペルフルオロ-2-プロポキシプロピルビニルエーテル(perfluoro-2-propoxypropylvinyl ether、PPVE-2)、ペルフルオロ-3-メトキシ-n-プロピルビニルエーテル、ペルフルオロ-2-メトキシ-エチルビニルエーテル、ペルフルオロ-メトキシ-メチルビニルエーテル(CF-O-CF-O-CF=CF)及び
【化6】
が挙げられる。例示的なペルフルオロアリルエーテルモノマーとしては、ペルフルオロ(メチルアリル)エーテル(CF=CF-CF-O-CF)、ペルフルオロ(エチルアリル)エーテル、ペルフルオロ(n-プロピルアリル)エーテル、ペルフルオロ-2-プロポキシプロピルアリルエーテル、ペルフルオロ-3-メトキシ-n-プロピルアリルエーテル、ペルフルオロ-2-メトキシ-エチルアリルエーテル、ペルフルオロ-メトキシ-メチルアリルエーテル、及び
【化7】
が挙げられる。
【0026】
フッ素化ポリマーは、実質的に(上に定義した)-CHCH-結合を含まず、少なくとも1つのペンダントI、Br及び/又はCl基を含む。一実施形態では、フッ素化ポリマーは、フッ素化ポリマーの総重量に対して、少なくとも0.4、0.6、0.8、1、又は更には1.5重量%、及び最大で2、3、4、又は更には5重量%のI、Br及びCl原子を含む。反応性のために、ヨウ素原子が好ましい。
【0027】
フッ素化ポリマー中のBr、I及びCl基は、連鎖移動剤及び/又は硬化部位モノマーの存在下でフッ素化モノマーを重合させた結果であり得る。
【0028】
例示的な連鎖移動剤としては、ヨード連鎖移動剤又はブロモ連鎖移動剤が挙げられる。例えば、好適な連鎖移動剤としては、R (式中、R は、3個~12個の炭素原子を有するペルフルオロアルキル又はクロロペルフルオロアルキル基であり、Zは、I又はBrであり、y=1又は2である)の式が挙げられる。例示的な連鎖移動剤としては、1,3-ジヨードペルフルオロプロパン、1,4-ジヨードペルフルオロブタン、1,6-ジヨードペルフルオロヘキサン、1,8-ジヨードフルオロオクタン、1,10-ジヨードペルフルオロデカン、1,12-ジヨードペルフルオロドデカン、2-ヨード-1,2-ジクロロ-1,1,2-トリフルオロエタン、4-ヨード-1,2,4-トリクロロペルフルオロブタン、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0029】
一実施形態では、フッ素化ポリマーは、式(a)CF=CF(U)(式中、Uは、(i)I、Br若しくはCl、又は(ii)R Z(式中、Zは、I又はBrであり、R は、任意選択で少なくとも1つのエーテル結合を含有する全フッ素化又は部分フッ素化アルキレン基である)のうちの1つ以上の化合物から誘導され得る。例示的な化合物には、CF=CHI、CF=CFI、CF=CFCFI、CF=CFCHCHI、CF=CFCFCFI、CF=CFOCFCFI、CF=CFOCFCFCFI、CF=CFOCFCFCHI、CF=CFCFOCHCHI、CF=CFO(CF-OCFCFI、CF=CHBr、CF=CFBr、CF=CFCFBr、CF=CFOCFCFBr、CF=CFCl、CF=CFCFC、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0030】
一実施形態では、フルオロポリマーは非晶質であり、これは、長距離秩序がないことを意味する(すなわち、長距離秩序では、最近接隣接物より大きな巨大分子の配列及び配向があると理解される)。非晶質フルオロポリマーは、DSC(示差走査熱量測定)によって検出可能な結晶特性を有さず、これは、DSC下で研究される場合、-85℃で開始し、10℃/分の昇温速度で350℃までとして、10℃/分の速度で-85℃まで冷却する第1の加熱サイクル、及び-85℃で開始し、10℃/分の昇温速度で350℃までとする第2の加熱サイクルでのDSCサーモグラムを用いて試験されるとき、フルオロポリマーは、加熱/冷却/加熱サイクルのうちの、第2の加熱サイクルからの0.002、0.01、0.1、又は更には1ジュール/gを超えるエンタルピーを有する融点又は融解転移を有さないと考えられることを意味する。例示的な非晶質ランダムコポリマーは、以下を含み得る:TFE及び全フッ素化ビニルエーテルモノマー単位を含むコポリマー(例えばTFE及びPMVEを含むコポリマー、並びにTFE及びPEVEを含むコポリマー)、TFE及び全フッ素化アリルエーテルモノマー単位を含むコポリマー、コポリマーが-CH-CH-結合を実質的に含まない限りVDFモノマー単位を含むコポリマー、及びそれらの組み合わせ。VDFモノマー単位を含む例示的なコポリマーには、VDF及びHFPモノマー単位を含むコポリマー、TFE、VDF及びHFPモノマー単位を含むコポリマー、VDF及び全フッ素化ビニルエーテルモノマー単位を含むコポリマー(例えば、VDF及びCF=CFOCを含むコポリマー)モノマー単位、CTFE及びVDFモノマー単位を含むコポリマー、TFE及びVDFモノマー単位を含むコポリマー、TFE、VDF及び全フッ素化ビニルエーテルモノマー単位を含むコポリマー(例えば、TFE、VDF及びPMVEを含むコポリマー)モノマー単位、並びにTFE、VDF及び全フッ素化ビニルエーテルモノマー単位を含むコポリマー(例えば、TFE、VDF及びCF=CFO(CFOCFを含むコポリマー)モノマー単位が挙げられる。
【0031】
一実施形態では、フッ素化ポリマーは、
(a)式(III)のフッ素化ジヨードエーテル化合物:
【化8】
(式中、
各R’は、独立して、F、及び1個~3個の炭素を有する一価のペルフルオロアルカンから選択され、
各Yは、独立して、-CX’X’CX’R’’-及び-CX’R’’CX’X’-から選択され、
各Xは、独立して、F、H及びClから選択され、
’’は、F、又は1個~3個の炭素を含む部分フッ素化若しくは全フッ素化アルカンであり、
は、1個~5個の炭素を有する二価のフッ素化アルキレン、又は1個~8個の炭素及び少なくとも1つのエーテル結合を有する二価のフッ素化アルキレンエーテルであり、
vは、0又は1であり、
a、b、c及びdは、独立して、0~5の整数から選択され、但し、vが0である場合、a+bは少なくとも1であり、c+dは少なくとも1であり、但し、式IIIは-CHCH-結合を含有しないことを条件とする)、並びに
(b)フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、フッ素化アリルエーテル、フッ素化ビニルエーテル、及びそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含むフッ素化モノマーから誘導された非晶質フッ素化ポリマーである。そのようなフッ素化エラストマーは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,982,091号に開示されている。一実施形態では、非晶質フッ素化ポリマーは、少なくとも0.1、0.5、1.0、1.5、又は更には2.0重量%、及び最大で3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、又は更には5.5重量%の式IIIで表されるフッ素化ジヨードエーテル化合物から誘導される。
【0032】
一実施形態では、フッ素化ポリマーは、(i)
(a)I-(CF-I(式中、wは、1、2、3、4、5、6、7又は8である)、
(b)I-(CF-O-(CF-(O)-(CF-I(式中、nは、2、3、4、5又は6であり、oは、2、3、4、5又は6であり、mは、1、2、3、4、5又は6であり、pは、0又は1である)、
(c)CF=CF-(CF-O-(CF-(O)-(CF-I(式中、aは、0又は1であり、bは、1、2、3、4、5又は6であり、cは、0又は1であり、dは、1、2、3、4、5又は6である)、及び
(d)CF=CF(CFI(式中、mは、1、2、3、4、5又は6である)
から選択される少なくとも1つのヨード含有化合物、並びに
(ii)フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、(全)フッ素化アリルエーテル、(全)フッ素化ビニルエーテル、ヨード含有ペルフルオロビニルエーテル、ヨード含有ペルフルオロアリルエーテル及びそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含むフッ素化モノマーから誘導された非晶質フッ素化ポリマーである。
【0033】
一実施形態では、フッ素化ポリマーは、(i)
(a)Br-(CF-CH(式中、wは、0、1、2、3、4、5、6、7又は8である)、
(b)Br-(CF-Br(式中、wは、1、2、3、4、5、6、7又は8である)、
(c)Br-(CF-O-(CF-(O)-(CF-Br(式中、nは、2、3、4、5又は6であり、oは、2、3、4、5又は6であり、mは、1、2、3、4、5又は6であり、pは、0又は1である)、
(d)CF=CF-(CF-O-(CF-(O)-(CF-Br(式中、aは、0又は1であり、bは、1、2、3、4、5又は6であり、cは、0又は1であり、dは、1、2、3、4、5又は6である)、及び
(e)CF=CF(CFBr(式中、mは、1、2、3、4、5又は6である)
から選択される少なくとも1つのブロモ含有化合物、並びに
(ii)テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン、(全)フッ素化アリルエーテル、(全)フッ素化ビニルエーテル、ブロモ及び/又はヨード含有ペルフルオロビニルエーテル、ブロモ及び/又はヨード含有ペルフルオロアリルエーテル、及びそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含むフッ素化モノマーから誘導された非晶質フッ素化ポリマーである。
【0034】
一実施形態では、フッ素化ポリマーは、
(a)CF=CF(CFCl(式中、mは、1、2、3、4、5又は6である)、並びに
(b)テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、全フッ素化アリルエーテル、全フッ素化ビニルエーテル、及びそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含むフッ素化モノマー
から誘導された非晶質フッ素化ポリマーである。
【0035】
一実施形態では、フッ素化ポリマーは、CF=CF-Rf-Z(式中、Rfは、全フッ素化アルキレンであり、任意選択で少なくとも1つの鎖内エーテル結合を含み、Zは、I、Br及びClのうちの少なくとも1つを含む)、並びにテトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、全フッ素化アリルエーテル、全フッ素化ビニルエーテル、及びそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含むフッ素化モノマー、から誘導された非晶質フッ素化ポリマーである。
【0036】
一実施形態では、フッ素化ポリマーは、I-(CF-I(式中、wは、1~8の整数である)、並びにテトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、全フッ素化アリルエーテル、全フッ素化ビニルエーテル、及びそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含むフッ素化モノマー、から誘導されたフッ素化エラストマーガムである。
【0037】
一実施形態では、フッ素化ポリマーは半結晶質であってもよい。一実施形態では、フッ素化プラスチックポリマーは、150、120、又は更には100℃未満の融点を有する。一実施形態では、フッ素化プラスチックポリマーは、少なくとも50、60、又は更には70℃の融点を有する。一実施形態では、フッ素化プラスチックポリマーは、TFE及びHFPから誘導されたモノマー単位、並びに任意選択で、上記のようなヨウ素化、臭素化及び/又は塩素化化合物と共に、全フッ素化ビニルエーテル及び/又は全フッ素化アリルエーテルを含む。一実施形態では、フッ素化プラスチックポリマーは、10mol%~20mol%の全フッ素化ビニルエーテル及び/又は全フッ素化アリルエーテルから誘導される。一実施形態では、フッ素化プラスチックポリマーは、上記の、0.05mol%~3mol%の、ヨウ素化、臭素化及び/又は塩素化化合物から誘導される。
【0038】
一実施形態では、フッ素化ポリマーは、少なくとも50000、100000、又は更には150000ダルトン、及び最大で175000、200000、250000、300000、350000、400000、又は更には500000ダルトンの数平均分子量を有する。典型的には、これらのポリマーの分子量の決定は、ゲル浸透クロマトグラフィーによって行うことが困難であり、したがって、半結晶性である場合、分子量は、非晶質の場合は粘度に基づいて、又は半結晶の場合はメルトフローインデックス(melt flow index、MFI)に基づいて決定される。一実施形態では、フッ素化ポリマーは、ASTM D1646-06に開示されているものと同様の方法で測定された場合、少なくとも1、2、5、10、15、又は更には20、及び最大で50、60、80、100、120、又は更には140の、121℃でのムーニー粘度(ML1+10)を有する。一実施形態では、フッ素化ポリマーは、少なくとも1、2、又は更には3g/10分、及び最大で1000、500、又は更には100g/10分の、MFI(265℃/5kg)を有する。
【0039】
改質されたフッ素化ポリマーを形成するために、フッ素化ポリマーは、最初に非水性液体ビヒクルに溶解される。一実施形態では、非水性液体ビヒクルは、1、0.5、0.1、又は更には0.05重量%未満の水を含み、又は更には検出可能な量の水を含まない。使用される非水性液体ビヒクルは、フッ素化ポリマーに依存する。例えば、フッ素化溶媒(C-F結合を含む)は全フッ素化ポリマーに適当であり、その一方でフッ素化溶媒又は非フッ素化溶媒(C-F結合を有さない)は、部分フッ素化ポリマーに使用され得る。
【0040】
例示的な溶媒としては、ペルフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン、ヒドロフルオロカーボン、フッ素化エーテル(例えば、ペルフルオロポリエーテル及びヒドロフルオロエーテル)、フッ素化及び非フッ素化ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン及びNMP)、フッ素化アルキルアミン、フッ素化スルホン、非フッ素化アルコール(例えばメタノール又はエタノール)、非フッ素化エーテル、例えばテトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン及びメチルテトラヒドロフルフリルエーテル、並びに非フッ素化エステル(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル又は酢酸ブチル)、非フッ素化環状エステル、例えばデルタ-バレロラクトン及びガンマ-バレロラクトンが挙げられる。溶媒は、単独で使用されても互いに組み合わせて使用されてもよい。非フッ素化溶媒がフッ素化溶媒と組み合わされる場合、非フッ素化溶媒の濃度は、典型的には、溶媒の総量に対して、30、25、20、15、10、又は更には5重量%未満である。
【0041】
フルオロポリマーが全フッ素化されている場合、フッ素化溶媒が典型的には必要とされる。フルオロポリマーが部分フッ素化されている場合、使用されるポリマー及び溶媒のフッ素化度に応じて、フッ素化溶媒が使用されても非フッ素化溶媒が使用されてもよい。当業者であれば、ポリマーが溶液にある場合、ある量のフルオロポリマーを溶媒に添加し、激しく撹拌し、目視で決定することによって、フルオロポリマーが溶媒に溶解可能であるかどうかを決定することができる。
【0042】
一実施形態では、フッ素化エーテル溶媒は、部分フッ素化エーテル又は部分フッ素化ポリエーテルである。部分フッ素化エーテル又はポリエーテルは、直鎖状、環状、又は分枝状であってもよい。一実施形態では、部分フッ素化エーテル又はポリエーテルは、式R-O-R(式中、Rは、エーテル酸素によって1回又は1回以上中断され得る全フッ素化又は部分フッ素化アルキル基であり、Rは、直鎖状、分枝状又は環状であってもよい非フッ素化又は部分フッ素化アルキル基である)に相当する。典型的には、Rは、1個~12個の炭素原子を有し得る。Rは、第一級、第二級、又は第三級フッ素化又は全フッ素化アルキル残基であってもよい。これは、Rが第一級アルキル残基である場合、エーテル原子に連結した炭素原子は2個のフッ素原子を含有し、フッ素化又は全フッ素化アルキル鎖の別の炭素原子に結合していることを意味する。そのような場合、Rは、R-CF-に相当すると考えられ、ポリエーテルは、一般式R-CF-O-R(式中、Rは、エーテル酸素によって1回又は1回以上中断され得る部分フッ素化又は全フッ素化アルキル基である)によって説明され得る。Rが第二級アルキル残基である場合、エーテル原子に連結した炭素原子はまた、1個のフッ素原子に、かつ部分フッ素化及び/又は全フッ素化アルキル鎖の2個の炭素原子にも連結しており、Rは、(R )CF-に相当する。ポリエーテルは、(R )CF-O-Rに相当すると考えられる。Rが第三級アルキル残基である場合、エーテル原子に連結した炭素原子はまた、3つの部分フッ素化及び/又は全フッ素化アルキル鎖の3個の炭素原子にも連結しており、Rは、(R )-C-に相当する。そうであれば、ポリエーテルは、(R )-C-OR(式中、R 、R 及びR は、独立して、エーテル酸素によって1回又は1回以上中断され得る部分フッ素化又は全フッ素化アルキル基であり、Rは、非フッ素化又は部分フッ素化アルキル基である)に相当する。これらの基は、独立して、直鎖状、分枝状又は環状であってもよい。また、ポリエーテルの組み合わせを使用してもよく、第一級、第二級及び/又は第三級アルキル残基の組み合わせもまた使用され得る。
【0043】
が部分フッ素化アルキル基である溶媒の例としては、COCHFCF(CAS No.3330-15-2)が挙げられる。Rがポリエーテルである溶媒の例は、COCF(CF)CFOCHFCF(CAS No.3330-14-1)である。
【0044】
いくつかの実施形態では、部分フッ素化エーテル溶媒は、式:
2p+1-O-C2q+1
(式中、qは、1~5の整数、例えば1、2、3、4又は5であり、pは、5~11の整数、例えば5、6、7、8、9、10又は11である)に相当する。好ましくは、C2p+1は分枝状である。好ましくは、C2p+1は分枝状であり、qは、1、2又は3である。
【0045】
代表的な溶媒としては、例えば、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5-デカフルオロ-3-メトキシ-4-(トリフルオロメチル)ペンタン及び3-エトキシ-1,1,1,2,3,4,4,5,5,6,6,6-ドデカフルオロ-2-(トリフルオロメチル)ヘキサンが挙げられる。そのような溶媒は、例えば、3M Company(St.Paul,MN)から商品名「3M NOVEC ENGINEERED FLUID」で市販されている。
【0046】
一実施形態では、少なくとも5、9、又は更には10重量%、及び最大で15、18、20、又は更には25重量%のフッ素化ポリマーが、非水性液体ビヒクルに溶解される。
【0047】
(a)非フッ素化末端オレフィン基(CH=CH-)を有し、かつ(b)官能基(-X)を含む、反応化合物を、フリーラジカル開始剤の存在下でフッ素化ポリマーと反応させる。反応化合物は官能化され、これは、反応化合物が部分を含み、これがフッ素化ポリマーに異なる官能化を付与することを意味する。例示的な官能性部分としては、アルコール、亜リン酸及びその塩、リン酸及びその塩、カルボン酸及びその塩、エステル、アミン、アミド、シラン、任意選択で鎖内酸素(すなわちエーテル)、窒素(すなわちアミン)又は硫黄(すなわちチオール)結合を含む炭化水素基、フッ化スルホニル、スルホン酸及びその塩、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。この官能基は、フリーラジカル開始剤の存在下では反応しない。
【0048】
一実施形態では、反応化合物は単独重合しない。
【0049】
一実施形態では、反応化合物は、構造CH=CHX(式中、Xは、アルコール、亜リン酸及びその塩、リン酸及びその塩、シラン、アミン、アミド、任意選択で鎖内酸素(すなわちエーテル)、窒素(すなわちアミン)又は硫黄(すなわちチオール)結合を含む炭化水素、カルボン酸及びその塩、エステル、フッ化スルホニル、スルホン酸及びその塩、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される官能基を含む)のものである。Xは、追加の炭素結合(非フッ素化、部分フッ素化又は全フッ素化炭素結合を含む)、及び任意選択で、鎖内ヘテロ原子、例えば酸素(すなわちエーテル結合)及び窒素(すなわちアミン結合)を含み得る。例示的な反応化合物としては、ビニルホスホン酸(vinyl phosphonic acid、VPA)、ビニルトリエトキシシラン(vinyl triethoxy silane、VTES)、ブテノール及びアリルアルコールなどのアルコール、並びにCH=CH(-O)-(CHOH)-(CHR(式中、nは、0、1であり、mは、2~6であり、oは、0~6であり、Rは、C~Cアルキル、リン酸二水素アリルなどのリン酸アリル、アリルアミン、N-ビニルアセトアミド、N-ビニルピロリドン、3-ブテン酸、4-ペンテン酸、フッ化アリルスルホニル、アリルスルホン酸ナトリウムなどのアリルスルホン酸及びその塩、並びに酢酸ビニルである)などのポリオールが挙げられる。1つの例示的な反応化合物は、式CH=CH-O-R-Y[式中、Yは、COOH、COOM、SOF、SOH、SOM、P(O)(OH)(式中、Mは、Y基とバランスがとれた充填量のカチオン性金属(例えば、アルカリ又はアルカリ土類金属)である)であり、Rは、全フッ素化、部分フッ素化又は非フッ素化アルキレン基、例えば-(CH-又は-[CF-CF(CF)O-]-(C2m)-(式中、nは、0、1、2、3、4、5又は6であり、mは、1、2、3、4、5又は6の整数である)である]のものである。
【0050】
理想的には、反応化合物は、非水性液体ビヒクルに可溶性であり、これは、溶媒中に十分な量で混合されるとき、反応化合物が溶媒と相分離しないこと(液体の場合)、及び固体形態にある反応化合物の少なくとも一部が溶媒に溶解することを意味する。典型的には、反応化合物は非気体状であり、これは、その反応化合物が周囲条件にて液体又は固体であることを意味する。
【0051】
一実施形態では、反応化合物中の反応性基の、フッ素化ポリマー中のI、Br及びClの量に対する当量比は、少なくとも1:0.1、及び最大で1:10である。好ましくは、使用される反応化合物の量は、フッ素化ポリマー中のI、Br及びClの量の過剰量であるため、グラフト反応が好ましい。一実施形態では、グラフトされたポリマーは、官能化フッ素化ポリマー中に、少なくとも0.5重量%、及び1重量%以下、1.5重量%以下、又は更には2重量%以下の未反応ヨウ素化基及び/又は臭素化基を含み、これは、その後、例えば、過酸化物硬化系を使用して官能化フッ素化ポリマーを架橋するために使用され得る。
【0052】
当該技術分野で既知のフリーラジカル開始剤を使用して、反応化合物の、フッ素化ポリマーとの反応を開始することができる。
【0053】
一実施形態では、フリーラジカル開始剤としては、有機過酸化物などの過酸化物が挙げられる。多くの場合、ペルオキシ酸素に結合した第三級炭素原子を有する第三級ブチルペルオキシドを使用することが好ましい。例示的なペルオキシドとしては、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、ジクミルペルオキシド、ジ(2-t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジアルキルペルオキシド、ビス(ジアルキルペルオキシド)、2,5-ジメチル-2,5-ジ(第三級ブチルペルオキシ)3-ヘキシン、過酸化ジベンゾイル、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、過安息香酸第三級ブチル、α,α’-ビス(t-ブチルペルオキシ-ジイソプロピルベンゼン)、t-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、t-ブチルペルオキシ2-エチルヘキシルカーボネート、t-アミルペルオキシ2-エチルヘキシルカーボネート、t-ヘキシルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジ[1,3-ジメチル-3-(t-ブチルペルオキシ)ブチル]カーボネート、カルボノペルオキソ酸、O,O’-1,3-プロパンジイルOO,OO’-ビス(1,1-ジメチルエチル)エステル、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0054】
一実施形態では、フリーラジカル開始剤としては、過酢酸などの過酸が挙げられる。過酸のエステルも同様に使用することができ、これらの例としては、tert-ブチルペルオキシアセテート及びtert-ブチルペルオキシピバレートが挙げられる。使用され得る開始剤の更なる部類は、アゾ化合物である。開始剤として使用するのに好適なレドックス系としては、例えば、ペルオキソ二硫酸塩と亜硫酸水素塩若しくは二亜硫酸水素塩との組み合わせ、チオ硫酸塩とペルオキソ二硫酸塩との組み合わせ、又はペルオキソ二硫酸塩とヒドラジンとの組み合わせが挙げられる。使用され得る更なる反応開始剤は、過硫酸塩、過マンガン酸又はマンガン酸、過酸エステル(perester)又は過炭酸塩の、アンモニウム塩、アルカリ塩又はアルカリ土類塩である。
【0055】
使用されるフリーラジカル開始剤の量は、フッ素化ポリマー100重量部当たり、一般に、少なくとも0.03、0.1、0.2、0.4、0.6、0.8、1、1.2、又は更には1.5重量部、及び最大で2、2.25、2.5、2.75、3、3.5、4、4.5、5、又は更には5.5重量部となる。
【0056】
非水性ビヒクル中にフッ素化ポリマー、反応化合物及びフリーラジカル開始剤を含む反応混合物は、次いで、例えば、ラジカルの形成を開始するために加熱され、これは、上に開示されている官能化フッ素化ポリマーを形成するために、I、Br及びCl部位において起こる、反応化合物の、フッ素化ポリマー上へのグラフトを可能にする。典型的には、反応混合物は、少なくとも30、40、50、又は更には75℃、及び最大で100、110、又は更には150℃の温度にて、少なくとも1、2、4、6、又は更には8時間、及び最大で12、16、20、24、28、又は更には36時間、加熱される。この反応は、典型的には周囲圧力で行われる。
【0057】
用途
【0058】
官能化に応じて、官能化フッ素化ポリマーは様々な用途で使用され得る。
【0059】
官能基が、アルコール、亜リン酸及びその塩、リン酸及びその塩、カルボン酸及びその塩、アミン又はシランからなる群から選択される場合、官能化フッ素化ポリマーは、例えば、コーティング用途において、フッ素化ポリマーを無機基材に接着するのに特に有用であり得る。
【0060】
一実施形態では、官能化フッ素化ポリマーは、コーティング組成物中で使用される。官能化フルオロポリマーは、反応混合物から直接コーティングされ得る。別の実施形態では、反応混合物は、コーティング前に希釈され得る。なおも別の実施形態では、反応混合物中の官能化フルオロポリマーは、乾燥され、次いで再溶解されて、コーティング溶液を形成し得る。
【0061】
溶媒を使用して、官能化フッ素化ポリマーを可溶化させ又は分散させて、コーティング組成物を形成することができる。例示的な溶媒としては、上に開示されている溶媒、及びグリコールエーテル、テトラヒドロフラン、並びに溶媒の組み合わせが挙げられる。典型的には、これらの溶媒は、5、3、2、1、又は更には0.5重量%未満などの少量で使用される。一実施形態では、溶媒は、少なくとも30、40、50、80、又は更には100℃、及び最大で120、150、200、225、又は更には250℃の沸点を有する。一実施形態では、溶媒は、湿潤剤として使用され、基材の表面をコーティングするのを支援する。溶媒は、フッ素化されていてもされていなくてもよく、溶媒の選択は、特定の溶媒中での官能化前に、フッ素化ポリマーの溶解度によって誘導され得る。一実施形態では、コーティング組成物中で使用される溶媒は、1-メトキシヘプタフルオロプロパン、メトキシ-ノナフルオロブタン及びエトキシ-ノナフルオロブタンなどの上記のフッ素化エーテルである。
【0062】
理想的には、コーティング溶液は、非揮発性有機化合物(non-volatile organic compound、non-VOC)である、大気寿命が短い、地球温暖化係数(global warming potential、GWP)が低い、などの環境への影響が少ない溶媒を使用するべきである。一実施形態では、溶媒は、1000未満、700未満、又は更には500未満の地球温暖化係数(GWP)を有する。一実施形態では、溶媒は、10年未満、又は更には5年未満の大気寿命を有する。GWP計算及び大気寿命試験方法の説明については、2018年5月15日に出願された米国参照特許出願62/671500号を参照されたい。VOCの定義、VOCのリスト、及びコンプライアンスの試験については、出願日現在の40CFR(連邦規則のコード)§51.100を参照されたい。
【0063】
一実施形態では、コーティング組成物は、少なくとも0.1、0.2、0.5、1、1.5、又は更には2重量%の官能化フッ素化ポリマー、及び最大で5、6、8、10、12、15、18、又は更には25重量%の官能化フッ素化ポリマーを含む。
【0064】
例えば、強度を強化する又は官能価を付与する目的で、従来の補助剤、例えば加工助剤(ワックス、カルナバワックスなど)、Struktol Co.(Stow,OH)から入手される、商品名「STRUKTOL WB222」で入手可能なものなどの可塑剤、フィラー及び/又は着色剤が、組成物に添加されてもよい。
【0065】
そのようなフィラーとしては、有機又は無機フィラー、例えば、クレイ、アルミナ、ベンガラ、タルク、珪藻土、硫酸バリウム、炭酸カルシウム(CaCO)、フッ化カルシウム、酸化チタン、窒化ホウ素及び酸化鉄、ポリテトラフルオロエチレン粉末、PFA(TFE/ペルフルオロビニルエーテルコポリマー)粉末、導電性フィラー、放熱フィラーなどが挙げられ、任意選択の成分としてコーティング組成物に添加されてもよい。
【0066】
一実施形態では、カーボンブラックがコーティング組成物に添加される。カーボンブラックフィラーは、典型的には、ポリマー組成物の弾性率、引張強度、伸び、硬度、摩耗抵抗性、導電性及び加工性のバランスを取る手段として利用される。好適な例としては、N-991、N-990、N-908及びN-907の品番のMTブラック(ミディアムサーマルブラック)、FEF N-550、並びに大粒径ファーネスブラックが挙げられる。使用される場合、官能化フッ素化ポリマー100重量部当たり1重量部~100重量部の大粒径の黒色フィラーが、一般に十分である。
【0067】
一実施形態では、この組成物は、官能化フッ素化ポリマーの100重量部当たり、40、30、20、15、又は更には10重量%未満のフィラーを含む。
【0068】
コーティング組成物は、官能化フッ素化ポリマー、溶媒、及びハロゲン化硬化部位のための任意選択の一般的に使用される硬化系、例えば過酸化物、置換剤など、並びに任意選択の添加剤を混合することによって調製され得る。
【0069】
一実施形態では、コーティング組成物は、重量に基づいて、少なくとも5、10、20、25、又は更には30%の固形分、及び最大で40、50、60、又は更には70%の固形分を含む。一般に、より多くの固形分を有する組成物が好ましい。
【0070】
本開示のコーティング組成物は、無機及び有機基材などの基材上にコーティングされ得る。例示的な無機基材としては、ガラス、セラミック、ガラスセラミック、又は金属、例えば炭素鋼(例えば、高炭素鋼、ステンレス鋼、アルミ化鋼)、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、及びそれらの組み合わせが挙げられる。例示的な有機基材としては、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリテレフタレート、ポリアミド、オレフィン基材(例えばポリエチレン及びポリプロピレン)、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0071】
理想的には、官能基は、特定の基材への接着を改善するように選択されると考えられる。例えば、無機基材に結合するために、アルコール(ポリオール)、ホスホネート、シラン、ホスフェート、アミン及びカルボン酸などの官能基が使用され得る。例えば、有機基材に結合するために、アミンなどの官能基、又は任意選択で鎖内酸素(すなわちエーテル)、窒素(すなわちアミン)又は硫黄(すなわちチオール)結合を含む炭化水素が好ましい場合がある。
【0072】
本開示では、基材は、滑らかであっても粗くてもよい。一実施形態では、基材は、使用前に処理される。基材は、使用前に表面を洗浄する又は粗くするために、化学処理(例えば、化学洗浄、エッチングなど)されてもよく、又は研磨処理(例えばグリットブラスティング、マイクロブラスティング、ウォータージェットブラスティング、ショットピーニング、アブレーション又はミリング加工)されてもよい。
【0073】
接着剤及びプライマーを使用して、コーティング前に有機又は無機基材の表面が前処理されてもよい。例えば、金属表面へのコーティングの接着は、アミノシラン又はアルコキシシランなどの、接着剤又はプライマーを適用することによって改善され得る。例示的なアミノシランとしては、第二級又は第三級アミノ官能性化合物による第一級、第二級、又は第三級アミノ官能性化合物が挙げられ、これは、式(RN-R-[Si(Y)(R3-p[式中、Rは、1つ以上のエーテル結合又は最大で3つのアミン(-NR-)基によって任意選択で中断された多価アルキレン基であり、Rは、アルキル又はアリールアルキレニルであり、各Rは、独立して、水素、ヒドロキシ、アルキル、ヒドロキシアルキル、アリールアルキレニルヒドロキシアリールアルキレニル、又は-R-[Si(Y)(R3-p](Yは、アルコキシ、アシルオキシ、アリールオキシ、ポリアルキレンオキシ、ハロゲン又はヒドロキシルである)であり、pは、1、2又は3であり、qは、1、2又は3であり、但し、少なくとも2つの独立して選択された-Si(Y)(R3-p基が存在すること、及び両方のR基が水素であることはないことを条件とする]によって表され、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第2017-0081523号(Audenaert)及び第2018-0282578号(Audenaertら)に開示されている通りである。いくつかの実施形態では、そのようなアルコキシシランは、化学式:
Si(OR
(式中、Rは、独立して、任意選択で、1つ以上のエーテル結合又は最大で3つのアミン(-NR-)基によって中断された多価アルキレン基であり、
は、独立して、水素、アルキル、アリール、アルカリール、又はOR(式中、Rは、1つ以上のエーテル結合又は最大で3つのアミン(-NR-)基によって任意選択で中断された多価アルキレン基である)であり、
mは、1、2又は3であり、典型的には2又は3である)
を有する「非官能性」として特徴付けられ得る。
【0074】
式RSi(ORの好適なアルコキシシランとしては、テトラ-、トリ-又はジアルコキシシラン、並びにそれらの任意の組み合わせ又は混合物が挙げられるがそれらに限定されない。代表的なアルコキシシランとしては、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ペンチルトリメトキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、ヘプチルトリメトキシシラン、ヘプチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン、オクタメチルトリメトキシシタン、オクタデシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランジメトキシシラン及びジミメチルジエトキシシランが挙げられる。
【0075】
好ましくは、アルコキシシランのアルキル基は、1個~6個、より好ましくは1個~4個の炭素原子を含む。本明細書での使用に好ましいアルコキシシランは、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、及びそれらの任意の混合物からなる群から選択される。本明細書での使用に好ましいアルコキシシランは、テトラエトキシシラン(tetraethoxysilane、TEOS)を含む。コーティング組成物を製造する方法において利用される有機官能基を欠くアルコキシシランは、例えば三菱化学株式会社から商品名「MS-51」で入手可能な部分的に加水分解されたテトラメトキシシラン(tetramethoxysilane、TMOS)の事例におけるように、部分的に加水分解されてもよい。
【0076】
市販のプライマー又は結合剤の例としては、例えば、Lord Corp.(Cary,NC)から入手可能な、商品名CHEMLOK5150及びCHEMLOK8116で入手可能なものが挙げられる。一実施形態では、本開示の物品は、基材と官能化フッ素化ポリマー組成物との間にプライマーを含まない。
【0077】
この基材は、ディップコーティング、ロールコーティング、ペインティング、スプレーコーティング、ナイフコーティング、グラビアコーティング、押出成形、ダイコーティングなどが挙げられるがこれらに限定されない当該技術で既知の従来技術を用いて、本明細書に開示されるコーティング溶液で含浸される又はコーティングされ得る。コーティング剤は、組成物が、顔料、例えば二酸化チタン、又はグラファイト若しくはススのような黒色フィラーを含有する場合は着色されていてもよく、又はコーティング剤は、顔料又は黒色フィラーが存在しない場合は無色であってもよい。
【0078】
コーティング後、溶媒は、有利には、例えば蒸発、乾燥によって、又は試料から溶媒を沸騰させることによって、低減され得る又は完全に除去され得る。コーティングされた試料は、使用される溶媒及び基材に応じて、室温にて、又は更に高い温度にて、例えば最大で100℃、又は更には最大で180℃の温度にて加熱されて、溶媒を除去し得る。
【0079】
典型的には、コーティングされた試料は、室温にて乾燥させ、かつ/又は加熱してフルオロポリマー組成物を基材に結合させ、任意選択で官能化フッ素化ポリマーを硬化させる。一実施形態では、コーティングされた試料は、コーティングの断面厚さに応じて、少なくとも75、80、90、100、120、又は更には130℃の温度、及び最大で150、200、220、250、又は更には300℃の温度で、少なくとも2、5、10、15、30分間、又は更には60分間、及び最大で2、5、10、15、24、36時間、又は更には48時間、加熱される。コーティングの厚い部分では、加熱する工程中の温度は、通常、範囲の下限から所望の最高温度まで次第に上昇される。いくつかの実施形態では、コーティングされた物品の加工は、コーティングされた物品を、入口から出口まで上昇する温度プロファイルを伴うオーブンを通して運搬することで実行される。
【0080】
一実施形態では、硬化されたコーティングは、少なくとも12、15、20、25、50、又は更には100マイクロメートル厚、及び最大で500、1000、又は更には2000マイクロメートル厚である。一実施形態では、硬化されたコーティングは、少なくとも20、30、40、50、75、又は更には100ナノメートル(nm)厚、及び最大で120、150、200、500、750、又は更には1000nm厚を有する、薄いコーティングである。
【0081】
一実施形態では、本開示のコーティング組成物は、基材への接着性を有する。例えば、溶媒で擦ると、コーティング層は5サイクル未満では基材から除去されない。例えば、沸騰水中に60分間浸漬された後に剥離すると、コーティングの層は基材から除去され得ないか、又はコーティング層の一部が破断した場合、その破断は基材コーティング界面においてではない。
【0082】
一実施形態では、本開示のコーティング組成物は、下地基材にステインリリース(stain release)を付与する。例えば、一実施形態では、基材に塗布されたときの本開示のコーティング組成物は、Artlin Blue永久マーカーに対して改善されたステインリリース特性を有する。
【0083】
一実施形態では、湿式摩耗後のステインリリースについて試験される場合、コーティングされた試料は、少なくとも1.5、又は更には2.0のステインリリースを有する。
【実施例
【0084】
別段断りのない限り、実施例及び明細書のその他の部分における、全ての部、百分率、比などは、重量によるものであり、実施例で用いた全ての試薬は、総合的な化学物質供給元、例えば、Sigma-Aldrich Company(Saint Louis,Missouri)などから入手した若しくは入手可能なものであるか、又は、通常の方法によって合成することができる。
【0085】
試験方法及び手順:
【0086】
核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance、NMR)分光光度:
【0087】
プロトン、19F及び13C NMRスペクトルを、Bruker Corp.(Billerica,MA)からの300MHz NMRで実行した。
【0088】
ムーニー粘度:
【0089】
ムーニー粘度は、ASTM D1646-07(2012)に従って、1分間の予熱、及び121℃における10分間の試験(ML1+10@121℃)で決定した。
【0090】
粘度:
【0091】
ブルックフィールド粘度は、スピンドルS62を用いるBrookfield LVDV-II+Pro粘度計を使用して、室温(20℃~23℃)にて測定した。
【0092】
静的接触角測定(HCA及びWCA)
【0093】
静的接触角対ヘキサデカン(static contact angles versus hexadecane、HCA)及び静的接触角対水(static contact angles versus water、WCA)を、摩耗試験に供される前に、かつ任意選択で後に、コーティングされた及びコーティングされていない試験パネル上で測定した。WCA測定のために、Millipore Corporation(Billerica,MA)から入手した濾過システムを通して濾過した脱イオン水を使用した。測定は、DSA100接触角分析装置(Kruss GmbH、ドイツから市販)を使用して行った。水接触角は、コーティングの調製1日後に、堆積30秒後に、5マイクロリットルの体積を有する液滴において測定した。接触角の値は9回の測定の平均(3つのコーティングされた基材上で3滴)であり、度(°)で報告する。
【0094】
機械的湿式摩耗試験:
【0095】
摩耗試験を、力が加えられていない4000サイクルの間、Scrub抵抗性試験機(Erichsen GmbH&Co.、ドイツから市販)を使用して、コーティングされた試験パネルで実施した。摩耗サイクルに使用した布は、脱イオン水で湿潤させた「Scotchbrite」スポンジ(3M Company、米国から市販)の黄色の側とした。
【0096】
ステイン撥性(Stain repellency)試験:
【0097】
Artline Blue永久マーカーを使用して、コーティングされた基材上に10mm×50mmのステインストライプ(Stain stripes)を適用した。この撥性を1~5のスケールで評価し、「1」はマーカーが完全にビーズ状になること、「5」は、マーカーが表面を完全に濡らしていることを意味する。
【0098】
ステイン除去の試験(Stain removal test、ST)の平易度
【0099】
幅5mm~10mm、長さ30mm~40mmのマーカーのステイン(商品名ARTLINE100Nで市販されている永久マーカーを使用)を、コーティングされた試験パネル及びコーティングされていない試験パネルに適用した。次いで、マーキングした試験パネルを、ステイン除去手順を実行する前に、室温で30分間乾燥させた。ステイン除去の平易度を、ステインを付与した表面(stained surface)を乾燥綿布で20秒間擦ることによって評価した。ステイン除去を1~3の範囲のスケールで評価し、1は「除去が平易である」を、2は「除去が中程度である」を、3は「除去が難しい」を意味する。
【0100】
ステインリリース試験(SR)
【0101】
ステインを乾燥綿布で20秒間擦った(上記のステイン除去試験)後、残留しているステインを8点スケールに従って視覚的にレーティングし、「1」は完全にステインされていること、「8」はステインが見えないことを意味する。
【0102】
試験基材
【0103】
ステンレス鋼パネル
【0104】
ステンレス鋼パネル(Type1.403IIID、125mm×75mm×2mmの寸法を有する)を、Rocholl GmbH、ドイツから入手した。使用前に、ステンレス鋼試験パネルを、MEKで、次いでヘプタンで、再度MEKで洗浄した。
【0105】
ガラスパネル
【0106】
標準フロートガラスを150mm×50mmの片に切断した。ガラスパネルを、ガラス洗浄剤、及び小売店舗の家庭用部門から入手できる、商品名「CIF CREAM CLEANER」で入手可能な多目的洗浄剤で洗浄し、続いて水及びアセトンで濯いだ。
【0107】
コーティング配合物を塗布する前に、洗浄した試験パネルを室温で最低1時間乾燥させた。
【0108】
コーティング手順
【0109】
コーティング配合物を、指定された小片状のフッ素化ポリマーを100mlバイアル中のHFE-7300溶媒に添加して、0.2%フッ素化ポリマー溶液を得ることによって調製した。このバイアルを、Lab-Shaker(Adolf Kuhner AG、スイスから入手可能)上に、毎分250回転(rpm)で、均質な溶液が得られるまで置いた。
【0110】
結合を最適化するために、基材を、任意選択で、アミノシランプライマー(BTMSPA)の溶液で噴霧塗布によって予備コーティングした。典型的な噴霧条件は、2バールの圧力及び40ミリリットル/分の流量で空気霧化スプレーガンを使用することとした。2回通過させて、プライマー層を室温(RT)にて3時間乾燥させた。
【0111】
本開示によるコーティング配合物を、基材に直接塗布し、又は別法では上記のようにプライマー層上に塗布可能である場合、Bungard(ドイツ)から入手可能なRDC-21ディップコーターを用いて塗布した。これにより、試験パネルを、毎分300ミリメートル(mm/分)の速度でコーティング配合物中に垂直に浸漬させた。部品が完全に浸漬したら、部品を浴中に15秒間保持した。
【0112】
試験パネルを300mm/分の速度で浴から取り出し、室温で1分間垂直に乾燥させ、続いて85℃で30分間垂直に乾燥させた。
各コーティング配合物を3枚の試験パネル上にコーティングした。
【表1】
【0113】
実施例
【0114】
実施例EX-1
【0115】
実施例EX-1では、官能化フッ素化ポリマー1を、ヨード基の、二重結合に対する当量比1:2で、FFKM1をアリルアルコールと反応させることによって調製した。したがって、100ml(ミリリットル)反応瓶に、FFKM1未加工ガム(10.00g(グラム))の小片、及び40.15gのHFE-7300を装入し、Launder-O-meter中で75℃で2時間加熱し、透明で均質な溶液を得た。アリルアルコール(37mg、0.646ミリ当量)及び50mgのV-59を、冷却後に添加した。瓶をウォータージェット真空で脱気し、続いて窒素雰囲気で真空を破壊した。脱気及び真空を破壊するこの手順を3回繰り返した。次いで、反応瓶を密閉し、予熱したLaunder-O-meter中、75℃で16時間実行した。冷却後、50mgのV-59を添加し、瓶を再度脱気し、窒素雰囲気で覆った。次いで、反応瓶を75℃で更に16時間実行し、20%のポリマー固体を含有する濁った粘性溶液を得た。
【0116】
溶媒及び残っている過剰量のアリルアルコールを、ウォータージェット真空を用いて、Buchiロータリーエバポレーターで留去し、淡黄色の固体を得た。
【0117】
官能化フッ素化ポリマー1の生成物構造をプロトンNMR分析によって確認したところ、CHI-CH-OH部分に起因するシグナルが3.9及び4.5ppmで現れた。同じとき、アリルアルコールの二重結合シグナルはもはや存在していなかった。フッ素化ポリマー1の生成物構造を、F19NMR分析によって更に確認した。出発材料からの-CFCF-I部分のシグナル-53.77及び-56.39ppmは、反応後に消失した。
【0118】
実施例EX-2
【0119】
実施例EX-2では、官能化フッ素化ポリマー2を、FFKM1の、3-ブテン-1-オールとのラジカル挿入反応(radical insertion reaction)(当量比1:2)によって調製した。反応は、官能化フッ素化ポリマー1の合成について概説したのと本質的に同じ手順に従って行ったが、表1に示す適切な試薬を使用した。
【0120】
実施例EX-3及び実施例EX-4
【0121】
実施例EX-3及びEX-4では、官能化フッ素化ポリマー3及び4を、FFKM1の、それぞれ、10-ウンデカン-1-オールとの反応(当量比1:2)、及びVPAとの反応(当量比1:10)によって調製した。反応は、表1に示す適切な量の試薬を使用して、官能化フッ素化ポリマー1の合成について概説したのと本質的に同じ手順に従って行った。しかしながら、これらの場合、反応後、溶媒のみを除去した。過剰な反応物、10-ウンデセン-1-オール又はVPAは、沸点が高いため、除去しなかった。
【0122】
実施例EX-5
【0123】
実施例EX-5では、官能化フッ素化ポリマー5を、官能化フッ素化ポリマー1の合成について概説したのと本質的に同じ手順を用いて、表1に示す適切な量の試薬を使用して、FFKM1の、VTESとの反応(当量比1:2)によって調製した。しかしながら、溶媒及び過剰量のVPESは、シラン基の反応を回避するために反応後に除去しなかった。
【0124】
実施例EX-6
【0125】
実施例EX-6では、官能化フッ素化ポリマー6を、官能化フッ素化ポリマーFKM1の、3-ブテン-1-オールとのラジカル挿入反応(当量比1:5)によって調製した。したがって、250mlの反応瓶に、FKM1未加工ガムの小片(25.00g、0.67ヨウ素meq.)及び143.03gのMEKを、Lab-Shaker(Adolf Kuhner(AG、スイス)から入手可能)に、250rpmで、ポリマーが完全に溶解するまで置いた。次いで、3-ブテン-1-オール(241mg、3.35meq.)及び126mgのV-59を添加した。この瓶を、ウォータージェット真空で脱気し、続いて窒素雰囲気で真空を破壊した。この手順を3回繰り返した。反応瓶を密閉し、予熱したLaunder-O-meter中、75℃で16時間実行した。冷却後、126mgのV-59を添加し、瓶を再度脱気し、窒素雰囲気で覆った。次いで、反応瓶を75℃で更に16時間実行し、15%のポリマー固体を含有する準透明な非粘性溶液を得た。
【0126】
溶媒及び残っている過剰量のブテノールを、ウォータージェット真空を使用して、Buchiロータリーエバポレーターで留去し、白色の弾性ポリマー固体を得た。
【0127】
実施例EX-7
【0128】
実施例EX-7では、官能化フッ素化ポリマー7を、FKM2の、3-ブテン-1-オールとの反応(当量比1:5)によって調製した。この反応は、官能化フッ素化ポリマー6の合成について概説したのと本質的に同じ手順に従って行ったが、表1に示す適切な試薬を使用した。
【0129】
EX-1~EX-7の官能化フッ素化ポリマーの組成の概要を表1に見出すことができ、Eq比は、反応化合物に対するヨウ素化基の比である。表1は、それらのそれぞれの出発のフッ素化ポリマー(C-1~C-3)と比較した、官能化フッ素化ポリマーのいくつかの特徴を更に列挙する。
【表2】
【0130】
表1から分かるように、フッ素化ポリマーの官能化は、色にわずかな影響を及ぼす。
【0131】
実施例EX-1~EX-4の官能化フッ素化ポリマーの溶解度を、HFE-7300で評価した。したがって、250mlの反応瓶に、それぞれ、官能化フッ素化ポリマー1~4の小片、及びある量のHFE-7300を装入して、表2に示す溶液を得た。混合物を、Lab-Shaker(Adolf Kuhner(AG、スイス)から入手可能)上に、250rpm(毎分回転数)で一晩置いた。官能化フッ素化ポリマー1~3は完全に溶解したようであった。官能化フッ素化ポリマー4は、5重量%固形分で、HFE-7300中に乳白色の分散液を形成した。粘度を、上で概説したように測定した。混合物の粘度及び外観の結果を表2に列挙する。
【表3】
【0132】
実施例EX-8~EX-11及び参照例REF-1
【0133】
実施例EX-8~EX-11を、最初に、実施例EX-1、EX-2、EX-4及びEX-5(表1に示す)からの官能化フッ素化ポリマーのコーティング溶液を0.2%固形分の濃度でHFE-7300中で調製することによって製造した。洗浄したステンレス鋼試験パネルを、このようにして得た溶液で直接コーティングした。各配合物を、上で概説したコーティング手順を用いて、3枚の異なる試験パネル上にコーティングした。コーティングされた試験パネルを室温で一晩調整した。コーティングされた試験パネルを、上記の方法に従って、湿式摩耗の前及び後に、それらのステインリリース特性について試験した。その結果を、コーティングされていないステンレス鋼試験パネル(REF-1)と比較して、表3に記録する。
【表4】
【0134】
データから分かるように、本開示による官能化フッ素化ポリマーは、非改質フッ素化ポリマーと比較して、より良好なステイン撥性及びステイン抵抗性(stain resistance)の特性を有する。
【0135】
実施例EX-12~EX-19並びに比較例C-4及びC-5並びに参照例REF-2及びREF-3
【0136】
実施例EX-12~EX-19の洗浄したステンレス鋼試験パネルを、表4に示す濃度で、かつ上に示す一般的手順に従って、BTMSPAプライマーで予備コーティングした。乾燥後、ステンレス鋼試験パネルを、表4に示すように、HFE-7300中フッ素化ポリマー中0.2重量%溶液でコーティングした。コーティングされた試験パネルを、室温で一晩調整した。Artline Blueマーカーに対する静的接触角(WCA&HCA)及びステインリリース特性を、湿式摩耗の前及び後に、上記の方法に従って測定した。比較例C-4及びC-5を、非改質FFKM1と同じ方法で製造した。参照例REF-2及びREF-3は、BTMSPAプライマーでのみコーティングされたステンレス鋼パネルの結果を表す。結果は、3枚の試験パネルの平均値であり、表4及び表5に表す。
【表5】
【表6】
【0137】
実施例EX-20及びEX-21並びに比較例C-6及びC-7並びに参照例REF-4及びREF-5
【0138】
実施例EX-20及びEX-21並びに比較例C-6及びC-7において、第1の工程では、0.2%固形分コーティング溶液を、上で概説した手順に従って、HFE-7300中、それぞれ官能化フッ素化ポリマー5(EX-20及びEX-21)又はFFKM1(C-6及びC-7)から調製した。コーティング組成物をガラスパネルに塗布する前に、ガラスパネルを、シランプライマー(Btmspa)で、上記の一般的手順に従って、表6及び表7に示す異なる濃度で洗浄し前処理した。乾燥後、プライミングしたガラスパネルを、上で概説したフッ素化ポリマーコーティング組成物でコーティングした。コーティングされた試験パネルを室温で一晩調整した。参照例REF-4及びREF-5では、ガラスパネルはBTMSPAプライマーでのみコーティングした。Artline Blueマーカーに対する静的接触角(WCA&HCA)及びステインリリース特性を、湿式摩耗の前及び後に、上記の方法に従って測定した。結果は、3枚の試験パネルの平均値であり、表6及び表7に記録する。
【表7】
【表8】
【0139】
本発明の範囲及び趣旨を逸脱することなく、本発明の予見可能な改変及び変更が、当業者には明らかであろう。本発明は、例示目的のために本出願に記載されている実施形態に限定されるものではない。本明細書の記述と、本明細書に述べられる又は参照により組み込まれる任意の文書中の開示との間に何らかの不一致又は矛盾が存在する場合、本明細書の記述が優先される。
【国際調査報告】