(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-24
(54)【発明の名称】鼻腔内リドカインの治療用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20230117BHJP
A61K 31/167 20060101ALI20230117BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20230117BHJP
A61P 25/06 20060101ALI20230117BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230117BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20230117BHJP
A61K 31/221 20060101ALI20230117BHJP
A61K 31/445 20060101ALI20230117BHJP
【FI】
A61K45/00
A61K31/167
A61P25/04
A61P25/06
A61P29/00
A61K9/12
A61K31/221
A61K31/445
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021535125
(86)(22)【出願日】2019-12-04
(85)【翻訳文提出日】2021-07-02
(86)【国際出願番号】 US2019064472
(87)【国際公開番号】W WO2020131380
(87)【国際公開日】2020-06-25
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522266586
【氏名又は名称】アカスティ ファーマ ユー.エス.、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コテイル、エス.、ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】クマール、アムレシュ
(72)【発明者】
【氏名】スンサンカール、プラサンナ
(72)【発明者】
【氏名】カビュル、ヴィマル
(72)【発明者】
【氏名】パティ、カマルキショア
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA24
4C076AA93
4C076BB25
4C076CC01
4C076DD43Z
4C076FF68
4C084AA17
4C084AA19
4C084AA20
4C084MA13
4C084MA59
4C084NA05
4C084NA06
4C084ZA081
4C084ZA082
4C086AA01
4C086AA02
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4C086MA59
4C086MA63
4C086NA05
4C086NA06
4C086ZA08
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA03
4C206GA18
4C206GA31
4C206MA02
4C206MA05
4C206MA33
4C206MA79
4C206NA05
4C206NA06
4C206ZA08
4C206ZB07
(57)【要約】
鼻腔用スプレー製剤及び局所作用性ナトリウムチャネル遮断薬を使用して疼痛を治療する方法が開示され、鼻腔用スプレー製剤は、約5%~約30%w/vの局所活性ナトリウムチャネル遮断薬、約0.25%~約5%w/vの緩衝剤、及び約5~約99%w/vの経鼻投与用の薬学的に許容される担体を含む。鼻腔用スプレー製剤は、好ましくは、鼻腔用スプレー製剤の単位用量を広いプリュームと小さな液滴サイズでスプレーする機械的複数用量ポンプに含まれ、機械的複数用量スプレーポンプ装置を作動させ、鼻腔用スプレー製剤のある量をヒト対象の各鼻孔にスプレーすることによって単位用量が投与される。好ましくは、鼻腔用スプレー製剤は保存剤を含まない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
約5%~約30%w/vの局所活性ナトリウムチャンネル遮断薬、約0.25%~約5%w/vの約pH4.5~約pH7のpHを提供するための緩衝剤、及び約5~約99%w/vの経鼻投与用の薬学的に許容される担体を含む、疼痛を治療するための局所作用性ナトリウムチャンネル遮断薬の鼻腔用スプレー製剤の単位用量であって、鼻腔用スプレー製剤は約0.8~約1.1cpsの粘度を有し、機械的複数回投与スプレーポンプ装置に含まれており、単位用量は、約50~約95度の平均噴霧角によって定義される広いプリュームとして及び平均Dv10が約10~約30μm、平均Dv50が約20~約60μm、平均Dv90が約80~約120μmで定義される小さな液滴サイズとして約0.04ml~約0.2mlの体積で送達され、ヒト患者の各鼻腔内にスプレーされたときに単位用量は三叉神経痛、顔面神経障害性疼痛、顔面癌誘発性神経障害性疼痛、片頭痛、及び群発頭痛からなる群から選択される状態を治療するのに治療上有効である、上記鼻腔用スプレー製剤の単位用量。
【請求項2】
機械的複数回投与スプレーポンプ装置が、先端開口部の開口の真下に位置するばね式バルブを含み、機械的複数回投与スプレーポンプ装置が微生物が表面又は接触した液体からシステムに移動することを可能にせず、機械的複数回投与スプレーポンプ装置には、孔径0.2μm未満の疎水性フィルター膜を含む滅菌ろ過システムが含まれ、鼻腔用スプレー製剤が保存剤を含まない、請求項1に記載の鼻腔用スプレー製剤の単位用量。
【請求項3】
機械的複数回投与ポンプが約0.100mlの体積を提供する、請求項1又は2に記載の鼻腔用スプレー製剤の単位用量。
【請求項4】
局所活性ナトリウムチャネル遮断薬がリドカインであり、鼻腔内製剤が約4時間間隔で投与される、請求項1又は2に記載の鼻腔用スプレー製剤の単位用量。
【請求項5】
単位用量が、抗痙攣薬、血管拡張薬、筋弛緩薬、局所活性ナトリウムチャネル遮断薬ではない鎮痛薬、及び前述のいずれかの組み合わせからなる群から選択される第2の薬物をさらに含む、請求項1に記載の鼻腔用スプレー製剤の単位用量。
【請求項6】
約5~約500ミクロンの液滴サイズを提供する、請求項1又は2に記載の鼻腔用スプレー製剤の単位用量。
【請求項7】
機械的複数回投与ポンプスプレーのスプレーパターンが、好ましくは約15~約45mmの平均D
min、約40~約70mmのD
max、及び約0.5~約2mmの楕円率を提供する、請求項1又は2に記載の鼻腔用スプレー製剤の単位用量。。
【請求項8】
広いプリュームが、約60度~約90度の平均噴霧角によって規定される、請求項1又は2に記載の鼻腔用スプレー製剤の単位用量。
【請求項9】
単位用量が、約20~約70mmの平均プリューム幅(mm)で送達される、請求項1又は2に記載の鼻腔用スプレー製剤の単位用量。
【請求項10】
平均プリューム幅が約30~約60mmである、請求項9に記載の鼻腔用スプレー製剤の単位用量。
【請求項11】
局所活性ナトリウムチャネル遮断薬がリドカインであり、鼻腔用スプレー製剤の単位用量が約5mg~約20mgのリドカインを提供する、請求項1、2又は5に記載の鼻腔用スプレー製剤の単位用量。
【請求項12】
局所的に作用するナトリウムチャネル遮断薬が、リドカイン、メピバカイン、ブピバカイン、ロピバカイン、クロロプロカイン、プロカイン、テトラカイン、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項1又は5に記載の鼻腔用スプレー製剤の単位用量。
【請求項13】
経鼻投与用の薬学的に許容される担体が水を含む、請求項1に記載の鼻腔用スプレー製剤の単位用量。
【請求項14】
三叉神経痛、顔面神経障害性疼痛、顔面癌誘発性神経障害性疼痛、片頭痛、及び群発性頭痛から選択される症状を有するヒト患者の治療における、請求項1、2及び5に記載の鼻腔用スプレー製剤の単位用量の使用。
【請求項15】
三叉神経痛、顔面神経障害性疼痛、顔面癌誘発性神経障害性疼痛、片頭痛、及び群発性頭痛から選択される状態を有するヒト患者の治療における、請求項1に記載の鼻腔用スプレー製剤の単位用量の使用であって、機械的複数回投与鼻腔用スプレーポンプ装置を作動させ、局所活性ナトリウムチャネル遮断薬の有効量を提供するためにヒト対象の各鼻孔に1~2回のスプレーを噴霧することにより、鼻腔用スプレー製剤を鼻腔内投与することを含む、上記使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三叉神経痛、顔面神経障害性疼痛、顔面癌誘発性神経障害性疼痛、片頭痛、及び群発頭痛に関連する疼痛を治療するための、複数回用量又は二回用量又は単位用量のスプレー容器中の(好ましくは)保存剤を含まない鼻腔内組成物を開示する。
【背景技術】
【0002】
保存剤を含まない鼻腔投与製剤は、いくつかの興味深い側面を明らかにしている。長期間使用することを意図した鼻腔投与製剤は、保存されるのが通常である。しかし、現在では、保存剤が鼻腔の繊毛組織に悪影響を及ぼしていることが認識されている。毛様体上皮は、鼻の機能に決定的な役割を果たす。繊毛の動きは、鼻粘膜に閉じ込められた吸入粒子を輸送する役割を果たす。破片は喉の方へ導かれ、その後飲み込むことによって取り除かれる。このクリアリング機能により、異物が肺に到達するのを防ぐ。繊毛の拍動周波数に対する保存剤の効果は、繊毛抑制として説明することができる。通年性鼻炎などの鼻感染症の場合、鼻腔の粘液は非常に汚染されているため、感染した粘液をできるだけ早く取り除くことが重要である。感染症を治療するために、重度のアレルギーの場合、患者は保存された鼻腔用スプレーを1日3回、最長3か月間塗布する。しかし、保存剤は正反対の働きをして、粘液の除去を遅らせる。ドイツ保健当局(BfArM)は最近、広く使用されている保存剤塩化ベンザルコニウムに関するリスクステートメントを発表した。患者情報リーフレットには、塩化ベンザルコニウムの頻繁な投与は鼻粘膜を刺激するため、代替の非保存製品を使用する必要があることを記載する必要がある。保存剤として一般的に使用されるベンジルアルコールについても同じことが言える(たとえば、米国特許第8,580,282号を参照)。国立医学図書館のHSDBデータベースでは、ベンジルアルコールは3%以上のレベルで皮膚を刺激し、硝子体内注射後のトリアムシノロンアセトニド(TA)中の0.225mg/mlの濃度で、ベンジルアルコールが超微形態的な損傷を引き起こし、2時間でヒト網膜色素上皮細胞機能を障害したことが記載される。
【0003】
保存されていない鼻用製品は、1回又は2回の用量を鼻孔に送達する、単位用量及び2回用量の送達システムが一般的である。これらのデバイスは使い捨てのため、使用期間中に汚染のリスクがない。複数回投与システムは機能的なデザインが異なり、患者が最大6か月間毎日使用する必要がある。保存されていない内容物の場合、使用期間中に確実に薬物送達製品が汚染されるであろう。
【0004】
三叉神経痛(TN)は、国際疼痛学会(IASP)によって、「三叉神経の1つ又は複数の枝の分布における、「急性の、通常は片側性の、重度で、短い、刺すような、再発性の痛みの発作」と定義される。国際頭痛学会(IHS)は、三叉神経痛を「古典的」及び「症候性」(二次性)TNという2つの異なるカテゴリーに分類する。古典的なTNには、三叉神経の血管圧迫以外にTNの識別可能な原因が見つからない患者が含まれる。症候性TNは、腫瘍、動静脈奇形、多発性硬化症(MS)などの血管圧迫以外の原因が特定できる患者を表す。ヨーロッパでの研究によると、三叉神経痛は、他の神経障害性疼痛状態に匹敵し、自殺につながる可能性のある日常生活活動にかなりの干渉をもたらすことが示される。
【0005】
三叉神経痛に対する特定の治療法はない。治療は厳密に緩和的であり、症候性の痛みの緩和を目的としており、治療目標は、痛みを許容できるレベルまで下げることである。TNの症状緩和の治療に現在利用可能な薬理学的治療には、抗うつ薬、セロトニンノルアドレナリン再取り込み阻害剤(SNRI)、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、抗てんかん薬、及びオピオイドが含まれる。この特定の適応症では、薬物は迅速かつ局所的のみに作用する必要があるが、同等の薬物物質の典型的な経口製剤に関連する全身性の副作用を避けるために、全身吸収はできるだけ低くする必要がある。ナトリウムチャネル局所鎮痛剤の鼻腔内送達の本発明は、疼痛緩和の迅速な発現及び関連する副作用の低減を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明の目的と概要
本発明の目的は、三叉神経痛、顔面神経障害性疼痛、顔面癌誘発神経障害性疼痛、片頭痛、及び群発頭痛の治療のための保存剤を含まない局所麻酔製剤の鼻腔内用量の投与によりヒト及び動物の疼痛緩和を提供する製剤及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記及びその他の目的に従って、本発明は、約5%~約30%w/vの局所活性ナトリウムチャネル遮断薬、約0.25%~約5%w/vの緩衝剤、及び約5~約99%w/vの経鼻投与用の薬学的に許容される担体を含む、疼痛を治療するための局所作用性ナトリウムチャネル遮断薬の鼻腔用スプレー製剤を部分的に対象とする。鼻腔用スプレー製剤は、0.8~約1.1cpsの粘度を有し、広いプリューム(plume)と小さな液滴サイズを有する鼻腔用スプレー製剤の単位用量をスプレーする機械的複数回投与ポンプに含まれており、機械的複数回投与ポンプを作動させ、ヒト対象の各鼻孔への鼻腔用スプレー製剤の体積をスプレーすることによって単位用量が投与される。本発明はさらに、約5%~約30%w/vの局所活性ナトリウムチャネル遮断薬、0.25%~約5%w/vの約pH4.5~約pH7のpHを提供するための緩衝剤、及び約5~約99%w/vの経鼻投与用の薬学的に許容される担体を含む、疼痛を治療するための局所作用性ナトリウムチャネル遮断薬の鼻腔用スプレー製剤の単位用量を部分的に対象とする。ここで、鼻腔用スプレー製剤は約0.8~約1.1cpsの粘度を有し、機械的複数回投与スプレーポンプ装置に含まれており、単位用量は、約0.04ml~約0.2mlの体積で、約50度~約95度の平均噴霧角によって定義される広いプリューム、及び平均Dv10が約10~約30μm、平均Dv50が約20~約60μm、平均Dv90が約80~約120μmで定義される小さな液滴サイズとして、送達される。ヒト患者の各鼻腔にスプレーしたときに単位用量は、三叉神経痛、顔面神経障害性疼痛、顔面癌誘発性神経障害性疼痛、片頭痛、及び群発頭痛からなる群から選択される症状の治療に治療上有効である。好ましくは、機械的複数回投与ポンプを作動させることによって投与される各スプレーは、約40μl~約120μlの体積を提供する。特定の好ましい実施形態において、機械的複数回投与ポンプは、約100μl(0.100ml)の体積を提供する。鼻腔内に単位用量で投与された場合、鼻腔用スプレー製剤は、三叉神経痛、顔面神経障害性疼痛、顔面癌誘発性神経障害性疼痛、片頭痛、及び群発頭痛からなる群から選択される状態に関連する疼痛を治療するのに治療上有効である。特定の好ましい実施形態では、局所活性ナトリウムチャネル遮断薬は、リドカイン、ブピバカイン、ロピバカイン、メピバカイン、テトラカイン、及び前述のいずれかの混合物からなる群から選択される局所麻酔薬である。特定の好ましい実施形態では、鼻腔用スプレー製剤は、エピネフリン、血管拡張剤、抗痙攣剤、筋弛緩剤、鎮痛剤、及びそれらの組み合わせなどの第2の活性剤をさらに含む。特定の好ましい実施形態において、経鼻投与用の薬学的に許容される担体は、水を含む。特定の好ましい実施形態において、鼻腔用スプレー製剤は、スプレーされた場合、約5~約500ミクロンの液滴サイズを提供する。特定の好ましい実施形態において、局所活性ナトリウムチャネル遮断薬はリドカインであり、単位用量は、ヒト対象の鼻腔にスプレーされる約5mg~約20mgのリドカインを提供する。
【0008】
好ましい実施形態では、機械的複数回投与ポンプは、先端開口部の開口の直下に位置するばね式バルブを含み、機に移動することを械的複数回投与ポンプは、微生物がいかなる表面からも、又は接触した液体から、システムに移動することを許さず、及び/又は機械式複数回投与ポンプは、孔径が0.2μm未満の疎水性フィルター膜を含む無菌濾過システムを含み、鼻腔用スプレー製剤は保存剤を含まない。
【0009】
鼻腔用スプレー製剤は、局所活性ナトリウムチャネル遮断薬の有効量を提供するために、好ましくは、各鼻孔に約1~2回のスプレーを噴霧することによって鼻腔内に投与され、適用ごとに合計約4回のスプレーが提供される。局所活性ナトリウムチャネル遮断薬がリドカインである場合、鼻腔内製剤が約4時間間隔で投与される。
【0010】
特定の好ましい実施形態において、機械的複数回投与ポンプは、作動時に小さな液滴サイズ(μm)を提供し、平均Dv10は約10~約30であり、平均Dv50は約20~約60であり、平均Dv90は、約80~約120である。機械的複数回投与ポンプは、好ましくは、約50~約95度の平均噴霧角を提供する。好ましくは、複数回投与ポンプスプレーのスプレーパターンは、約10~約45mmの平均Dmin、約40~約70mmのDmax、約0.5~約2mmの楕円率を提供する。楕円率は、DmaxをDminで割った値として計算される。特定の実施形態において、複数回投与ポンプスプレーのスプレーパターンは、約12~約22mmの面積%を有する。
【0011】
本発明はさらに、三叉神経痛、顔面神経障害性疼痛、顔面癌誘発性神経障害性疼痛、片頭痛及び群発頭痛からなる群から選択される状態に関連する疼痛を治療する方法を対象とし、その方法は、局所活性ナトリウムチャネル遮断薬を含有する鼻腔用スプレー製剤を組み込んで疼痛を治療することを含み、その鼻腔用スプレー製剤は、約5%~約30%w/vの局所活性ナトリウムチャネル遮断薬、約0.25%~約5%w/vの緩衝剤、約5~約99%w/vの経鼻投与用の薬学的に許容される担体を含み、鼻腔用スプレー製剤は、約0.8~約1.1cpsの粘度を有し、作動時のプリュームが広く、液滴サイズが小さい鼻腔用スプレー製剤の単位用量をスプレーする機械的複数回投与ポンプに含まれており、単位用量は、三叉神経痛、神経障害性疼痛、顔面癌誘発性神経障害性疼痛、片頭痛、及び群発頭痛からなる群から選択される状態を治療するのに治療上有効である。特定の好ましい実施形態では、機械的複数回投与ポンプは、(i)先端開口部の開口の直下に位置するばね式バルブを含み、機械的複数回投与ポンプが表面又は接触した液体から微生物をシステムに移動させないようにする;又は(ii)孔径が0.2μm未満の疎水性フィルター膜を含む;又は(iii)上記の(i)及び(ii)の両方であり、及び鼻腔用スプレー製剤は保存剤を含まない。特定の好ましい実施形態では、局所活性ナトリウムチャネル遮断薬は、リドカイン、ブピバカイン、ロピバカイン、メピバカイン、テトラカイン、及び前述のいずれかの混合物からなる群から選択される局所麻酔薬である。特定の特に好ましい実施形態において、局所活性ナトリウムチャネル遮断薬はリドカインであり、単位用量は、ヒト対象の鼻腔にスプレーされる約5mg~約20mgのリドカインを提供する。特定の好ましい実施形態において、機械的複数回投与ポンプは、約0.100mlの体積を提供する。特定の好ましい実施形態において、単位用量は、約5~約500ミクロンの液滴サイズを提供する。特定の好ましい実施形態において、局所活性ナトリウムチャネル遮断薬はリドカインであり、鼻腔内製剤は約4時間間隔で投与される。特定の好ましい実施形態では、単位用量は、抗けいれん薬、血管拡張薬、筋弛緩薬、局所活性ナトリウムチャネル遮断薬ではない鎮痛薬、及び前述のいずれかの組み合わせからなる群から選択される第2の薬物をさらに含む。特定の好ましい実施形態において、機械的複数回投与ポンプスプレーのスプレーパターンは、好ましくは、約15~約45mmの平均Dmin、約40~約70mmのDmax、約0.5~約2mmの楕円率、約12~約22mmの面積%を提供する。特定の好ましい実施形態では、広いプリュームは、約60度~約90度の平均噴霧角によって規定され、及び/又は単位用量は、約20~約70mmの平均プリューム幅(mm)で送達され、及び/又は平均プリューム幅は約30~約60mmである。特定の好ましい実施形態において、経鼻投与用の薬学的に許容される担体は、水を含む。本発明の特定の実施形態は、本明細書に詳述する単位用量製剤の使用を対象とし、機械的複数回投与鼻腔用スプレーポンプ装置を作動させ、ヒト対象の各鼻孔に1~2回のスプレーを噴霧することにより鼻腔用スプレー製剤を鼻腔内投与し、局所活性ナトリウムチャネル遮断薬の有効量を提供することを含む。特定の実施形態において、鼻腔用スプレー製剤の単位用量は、鼻腔用スプレー製剤中に第2の活性剤をさらに含み、第2の活性剤は、エピネフリン、血管拡張剤、抗痙攣剤、筋弛緩剤、局所活性ナトリウムチャネル遮断薬ではない鎮痛剤、及び上記のいずれかの組み合わせからなる群から選択される。本方法の特定の好ましい実施形態において、単位用量(機械的スプレーポンプ装置を介する)は、スプレーあたり、約0.04ml(40μl)~約0.2ml(200μl)の体積を提供し、特定の実施形態において、好ましくは、約0.08ml~約0.12、特定の実施形態では約0.10mlの体積を提供する。鼻腔用スプレー製剤は、好ましくは、機械的複数回投与ポンプを作動させ、ヒト対象の各鼻孔に約1~2回のスプレー、適用ごとに合計約4回のスプレーを噴霧することにより投与され、局所活性ナトリウムチャネル遮断薬の有効用量を提供する。局所活性ナトリウムチャネル遮断薬がリドカインである場合、鼻腔内製剤は約4時間間隔で投与することができる。
【0012】
方法において、特定の好ましい実施形態において、機械的複数回投与ポンプは、作動時に機械的複数回投与ポンプが小さな液滴サイズ(μm)を提供し、平均Dv10が約10~約30であり、平均Dv50が約20~約60であり、平均Dv90が約80~約120であるように提供される。好ましくは、機械的複数回投与ポンプは、約50~約95度の平均噴霧角を提供する。好ましくは、機械的複数回投与ポンプスプレーのスプレーパターンは、約15~約45mmの平均Dmin、約40~約70mmのDmax、約0.5~約2mmの楕円率、及び約12~約22mmの面積パーセンテージ(%)を提供する。
【0013】
特定の実施形態において、経鼻投与用の薬学的に許容される担体は、水を含むか、又は水からなる。
【0014】
特定の好ましい実施形態では、この方法は、作動時に約5~約500ミクロンのスプレー液滴サイズを提供するように機械的複数回投与ポンプを配置することをさらに含む。
【0015】
特定の好ましい実施形態において、薬物(例えば、局所麻酔薬)は、組成物の約5~約20%w/vを構成する。特定の好ましい実施形態において、組成物は、組成物の約0%~約5%w/v、特定の好ましい実施形態において、約0.25%~約5%w/vの緩衝剤を含む。特定の好ましい実施形態において、溶媒担体は、約5%~約99%w/vの量の精製水を含む。特定の好ましい実施形態において、組成物は、約0.25%~約5%w/vの量の(任意選択の)保存剤を含む。特定の実施形態において、組成物の粘度は、約0.8~約1.1cpsである。
【0016】
本発明の目的のために、用語「活性剤」、「薬物」、及び医薬は互換的に使用され、本発明の鼻腔用スプレー製剤に含まれる単一の薬物または複数の薬物(2つ以上)を包含することを意味する。
【0017】
明細書及び特許請求の範囲で使用される成分の量、反応条件などを表すすべての数字は、すべての場合において用語「約」によって修飾されると理解されるべきである。したがって、特に明記しない限り、本明細書及び添付の特許請求の範囲に記載されている数値パラメータは、本発明によって得ようとする所望の特性に応じて変化する概算である。少なくとも、均等論の適用を特許請求の範囲に制限する試みとしてではなく、各数値パラメータは、有効桁数及び通常の丸めアプローチに照らして解釈されるべきである。
【0018】
本明細書で数値範囲が示されるときは常に、示される範囲内の任意の引用された数字(分数又は整数)を含むことを意味する。第1の指示数と第2の指示数「の間の範囲」という語句は、及び第1の指示数「から」第2の指示数「までの範囲」(第1の指示数~第2の指示数の範囲)は、本明細書においては交換可能に使用され、第1と第2の指示数及びその間のすべての分数及び整数の数字を含むことを意味する。
【0019】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈上明確に別段の指示がない限り、複数の言及を含む。例えば、「化合物」又は「少なくとも1つの化合物」という用語は、複数の化合物を含み、それらの混合物を含む。
【0020】
「局所麻酔薬」という用語は、局所の無感覚及び/又は鎮痛をもたらす任意の薬物又は薬物の混合物を意味する。
【0021】
本明細書で使用される「単位用量」という用語は、哺乳動物対象のための単位用量として適切な物理的に別個の単位を指し、各単位は、活性成分として所定量の活性剤(例えば、局所麻酔薬)を含む。
【0022】
本明細書で使用される「含む」("comprising")という用語は、用語の後にリストされた要素を含有する、包含する、カバーする又は含むことを意味すると解釈される包括的な用語であるが、他の言及されていない要素を除外するものではない。
【0023】
「治療有効量」は、疾患を治療するために動物に投与された場合、その疾患の治療を行うのに十分な量を意味する。
【0024】
本明細書で使用される場合、疾患の「治療する」又は「治療」という用語は、疾患にかかりやすいが、その疾患の症状をまだ経験していない、又はその症状を示していない動物において、その疾患が発生するのを防ぐこと(予防的治療)、疾患を抑制すること(発症の遅延又は阻止)、疾患の症状又は副作用の軽減を提供すること(緩和治療を含む)、及び疾患を軽減すること(疾患の退縮を引き起こすこと)を含む。本発明の目的のために、「疾患」には疼痛(痛み)が含まれる。
【0025】
本発明の目的のために、「活性剤」という用語は、薬物を包含することを意味するが、これに限定されない。活性剤という用語はさらに、製剤中に存在する単一の活性剤、又は複数(2つ以上)の活性剤を包含することを意味する。
【0026】
本明細書で使用される場合、液滴サイズ分布は、以下の測定基準によって特徴付けられ得る:体積分布(Dv10、Dv50、Dv90)及びスパン及びパーセンテージ(%)は、鼻腔用スプレー及び吸入溶液、懸濁液及びスプレー薬剤製品‐化学、製造及び管理文書に関するFDA CMCガイダンス2002年7月に従って9μm未満である。Dv10は、例えば、全スプレー体積の10%が同じかそれ以下の直径の液滴で構成される直径を意味する。Dv50は、例えば、全スプレー体積の50%が同じかそれ以下の直径の液滴で構成される直径を意味する。Dv90は、例えば、全スプレー体積の90%が同じかそれ以下の直径の液滴で構成される直径を意味する。
【0027】
本明細書で使用する場合、Dmaxは、結果として得られるスプレーパターン画像上で測定された最長直径として定義される。
【0028】
本明細書で使用する場合、Dminは、結果として得られるスプレーパターン画像上で測定された最短直径として定義される。
【0029】
本発明の目的のために、スプレーパターンは、以下の測定基準の1つ以上によって特徴付けられ得る:業界向けのFDAガイダンス:局所作用のための鼻腔用エアロゾル及び鼻腔用スプレーのための生物学的利用能及び生物学的同等性試験に従って、Dmax、Dmin、楕円率、及び面積%。
【0030】
本明細書で使用される場合、楕円率は、Dmax対Dminの比率である。この比率は、スプレーの全体的な形状の定量的な値を提供する。
【0031】
本明細書で使用される場合、噴霧角は、FDAの業界向けガイダンスに従って、スプレーコーン及びスプレーノズルの頂点から測定された放出プリュームの角度を意味する。
【0032】
本明細書で使用される場合、プリューム幅は、FDAの業界向けガイダンスに従って、スプレーノズルから所与の距離におけるプリュームの幅を意味する。
【0033】
本発明の目的のために、本明細書に記載されるすべてのパーセンテージは、特に明記しない限り「w/w」である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】
図1は、例4及び5のリドカイン鼻腔内スプレーの平均薬物動態プロファイルを示すグラフである。
【0035】
【
図2】
図2は、処置ウサギにおける例4及び5の試験製剤におけるホルマリン投与後45分間のホルマリン注射部位でのこすり動作の振幅対プラセボのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
特定の実施形態における本発明は、(機械式ポンプ)定量スプレー装置の利用を介して、保存剤を含まない鼻腔内組成物を複数回用量又は2回用量又は単位用量スプレーで投与することを含む、疼痛を治療する方法を対象とする。
【0037】
本発明は、水性局所麻酔薬(例えば、リドカインなどのナトリウムチャネル遮断薬)の鼻腔用スプレー製剤の保存剤を含まない複数回用量及び/又は単位用量及び/又は2回用量であり、この製剤は、リドカインの液滴、その薬学的に許容される塩、又はその誘導体;及び薬学的に許容される溶媒担体を含み、前記液滴は、約5ミクロン~約500ミクロンのサイズ分布を有する。本発明は、スプレー装置の利用を含む疼痛の治療方法に関する。
【0038】
本発明は、三叉神経痛、顔面神経障害性疼痛、顔面癌誘発性神経障害性疼痛、片頭痛、及び群発頭痛に関連する疼痛を治療するための、複数回用量又は二回用量又は単位用量のスプレー容器中の(好ましくは)保存剤を含まない鼻腔内組成物を開示する。特定の実施形態において、本発明の鼻腔内スプレー製剤は、全身痛、神経因性疼痛(例えば、肢端紅痛症、帯状疱疹後神経痛(PHN)、線維筋痛症及び/又は複合性局所疼痛症候群(CRPS)など)を治療するために使用され得る。
【0039】
本発明の液体医薬組成物は、薬学的に許容される液体担体、例えば、精製水中に薬学的に有効な量のナトリウムチャネル遮断薬(例えば、リドカイン)、及びpHを3~8、好ましくは3~6に維持するための任意の緩衝剤、例えばクエン酸塩、及び水性媒体からの薬剤物質の沈殿を阻害する任意の錯化剤、例えばクエン酸塩又はEDTAを含む。
【0040】
リドカイン(キシロカイン)は、1948年に局所麻酔薬として導入された。局所麻酔薬は、神経インパルスの生成及び伝導を妨げることによって作用する。それらの主要な作用部位は細胞膜である。それらは、通常、膜のわずかな脱分極によって生成される、興奮性膜のNa+への透過性の大幅な一時的な増加を減少又は防止することによって、伝導をブロックする。局所麻酔薬のこの作用は、電位依存性Na+チャネルとの直接的な相互作用によるものである。神経で麻酔作用が徐々に発達するにつれて、電気的興奮の閾値が徐々に増加し、活動電位の上昇率が低下し、インパルス伝導が遅くなり、伝導の安全係数が低下する。これらの要因により、活動電位の伝播の可能性が低下し、神経伝導が失敗する。リドカインのより長く作用する変種であるブピバカインは、好ましい局所鎮痛剤である。
【0041】
局所麻酔薬の所与の濃度によって生じるブロックの程度は、神経がどのように刺激されたか、及びその静止膜電位に依存する。したがって、休止神経は、繰り返し刺激される神経よりも局所麻酔薬に対する感受性がはるかに低くなる。刺激の頻度が高く、膜電位が高いほど、麻酔ブロックが大きくなる。局所麻酔薬のこれらの頻度及び電圧依存効果は、Na+チャネルが開いた状態にある場合にのみ、荷電形態の局所麻酔薬分子が細孔内の結合部位にアクセスするため、及び局所麻酔薬分子がNa+チャネルにより緊密に結合して、Na+チャネルの不活性化状態を安定化するために発生する。局所麻酔薬は、pKa、脂溶性、分子サイズに応じて、これらの特性をさまざまな程度に示す。
【0042】
Lidodermパッチは、使用するのが面倒である。それは10cm×14cmのパッチで提供される。患者は、最も痛みを伴う部位に3つのパッチを1回最大12時間塗布するように指示される。添付文書によると、パッチを貼った部位に、紅斑、浮腫、あざ、丘疹、水疱、変色、色素脱失、灼熱感、そう痒、及びパッチを外すと元に戻る異常な感覚が現れることがある。パッチは、痛みが上半身及び胴体領域の外側、特に顔面領域(筋筋膜痛)に現れる場合、患者に優しくない。本発明は、PHN患者の疼痛緩和を提供しながら、パッチ適用の多くの不利益を克服するための使いやすい独自の皮膚スプレー製剤であると予想される。鼻腔内製剤は、アプリケーションの利便性を提供する。
【0043】
本発明の特定の好ましい実施形態では、治療有効量の1つ又は複数の薬学的に許容される局所麻酔薬が、本発明の製剤に組み込まれる。本発明の製剤に有用な局所麻酔薬の例には、メピバカイン、リドカイン、メピバカイン、エチドカイン及びプリロカインなどのアミド型局所麻酔薬、プロカイン、クロロプロカイン、及びテトラカインなどのエステル型局所麻酔薬、ベナドリルなどの抗ヒスタミン様麻酔薬が含まれる。これらの麻酔薬は、麻酔薬の組み合わせに単独で、又はそれらの2つ以上の混合物として存在することができる。したがって、有用な局所麻酔薬の例は、リドカイン、ブピバカイン、ジブカイン、テトラカイン、エチドカイン、メピバカイン、ロピバカイン、ベンゾカイン、アンブカイン、アミロカイン、ブタムベン、2‐クロロプロカイン、シクロメチカイン、アミノ安息香酸エチル、ユープロシン、レボキサドロール、オルトカイン、ピペロカイン、及びパレトキシカインである。特定の好ましい実施形態において、局所麻酔薬は、ブピバカイン、ロピバカイン、ジブカイン、プロカイン、クロロプロカイン、プリロカイン、メピバカイン、エチドカイン、テトラカイン、リドカイン、及びキシロカイン、又はそれらの混合物である。「局所麻酔薬」という語句には、モルヒネ、フェンタニル、及び侵害受容経路(求心性及び/又は遠心性)の局所遮断を提供できる薬物など、局所麻酔特性に伝統的に関連付けられているものとは異なるクラスの薬物も含まれる。他の実施形態では、活性剤は、バルビツレート(例えば、アモバルビタール、メトヘキシタール、チアミラール、チオペンタール)、ベンゾジアゼピン(例えば、ジアゼパム、ロラゼパム、ミダゾラム)、又はエトミデート、ケタミン、又はプロポフォールなどの麻酔薬である。本発明のゲル製剤において局所麻酔薬として使用できる他の化合物には、ベナドリルなどの抗ヒスタミン様麻酔薬が含まれる。局所麻酔薬としてフェノールを使用することもある。当業者は、局所麻酔特性を有すると認識されている他の薬物、例えば、米国特許第4,302,465号(Aberg,et al)に記載されている置換ピペリジン及びピロリジン、並びに米国特許第6,413,987号(Aberg,et al.)に記載されているアミノインダンピペリジン化合物を認識するであろう。これらの特許は両方とも参照により本明細書に組み込まれている。局所麻酔薬という用語はまた、本発明の目的のために、局所麻酔薬基剤又はその薬学的に許容される塩、多形、錯体(複合体)又はプロドラッグを包含すると見なされる。薬物及び局所麻酔薬の両方の他の多くの例は、当業者には容易に明らかであり、本開示及び添付の特許請求の範囲に含まれると考えられる。
【0044】
局所麻酔薬は、塩、例えば、塩酸塩、臭化物、酢酸塩、クエン酸塩、炭酸塩、硫酸塩又はリン酸塩の形態であり得る。特定の実施形態では、局所麻酔薬は遊離塩基の形態である。局所麻酔薬は、塩、例えば塩酸塩、臭化物、酢酸塩、クエン酸塩、炭酸塩又は硫酸塩の形態、又は遊離塩基の形態であり得る。局所麻酔薬の多くは、通常、酸付加塩の形で使用される。これは、水性注射媒体への溶解性を提供するためである。本発明の特定の実施形態では、局所麻酔薬を遊離塩基形態で使用するか、又は局所麻酔薬の酸付加塩を少量のみ存在させて使用することが望ましい(必要に応じて少量の酸付加塩を添加すると、放出が増強される可能性がある)。遊離塩基は通常、初期放出を遅くし、注射部位での局所麻酔薬の早期の「減衰」(damping)を回避する。好ましい局所麻酔薬には、例えば、リドカイン、ブピバカイン、又はロピバカインが含まれる。
【0045】
特定の好ましい実施形態において、単位用量に含まれる局所麻酔薬の用量は、リドカインの単位用量に基づいて、約1mg~約30mgである。他の好ましい実施形態において、用量は、約5mg~約20mg、好ましくは約5mg~約15mgである。特定の好ましい実施形態において、局所麻酔薬の単位用量は、10mgのリドカイン、又は治療上等価量の別の局所麻酔薬である。当業者は、局所麻酔薬の等効力の用量を決定する方法を理解している。次の局所麻酔薬の最大用量と作用時間は一般的に認められている:リドカイン‐4.5mg/kg、持続時間0.75‐1.5時間;メピバカイン‐4.5mg/kg、持続時間1~2時間;プリロカイン‐8mg/kg、持続時間0.5‐1時間;ブピバカイン3mg/kg、持続時間1.5‐8時間;ロピバカイン3mg/kg、持続時間1.5‐8時間;クロロプロカイン‐12mg/kg、持続時間0.5‐1時間;プロカイン12mg/kg、0.5‐1時間;コカイン‐3mg/kg、持続時間0.5~1時間。テトラカイン‐3mg/kg、持続時間1.5~6時間。
【0046】
本発明では、薬物及び賦形剤の完全な溶解を確実にするために溶液を攪拌しながら、薬物、任意選択の緩衝剤を溶媒に添加することにより、鼻腔用スプレーを調製した。製剤は、計量スプレーポンプでしっかりと密封されたガラスバイアルに保管された。
【0047】
特定の好ましい実施形態において、活性剤(薬物)は、疼痛の治療に使用するための治療有効量の2つの異なる局所麻酔薬の組み合わせ(例えば、ブピバカインとリドカインの組み合わせ)である。
【0048】
組成物は、好ましくは約1%~約30%w/vの少なくとも1つの医薬(薬物)、より好ましくは約5%~約20%w/vの少なくとも1つの薬物、最も好ましくは約10%w/vの少なくとも1つの薬物を含有する。
【0049】
特定の好ましい実施形態において、薬物は製剤中で過飽和である。製剤中の薬物が過飽和に近いほど、例えば鼻腔にスプレーすることによって薬物を投与したときに、より多くの浸透が得られると考えられている。
【0050】
特定の好ましい実施形態において、活性剤(薬物)は、疼痛の治療に使用するための治療有効量の局所麻酔薬(例えば、リドカイン)とケタミン及び/又はアミトリプチリンとの組み合わせである。特定の実施形態では、活性剤は、塩酸リドカインと、ケタミン、アミトリプチリン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される第2の活性剤との組み合わせを含む。特定の好ましい実施形態では、活性剤(薬物)は、疼痛の治療に使用するための治療有効量の局所麻酔薬(例えば、リドカイン)とメロキシカム及び/又は他の筋弛緩薬との組み合わせである。特定の実施形態では、活性剤は、塩酸リドカインと、メロキシカム、チザニジン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される第2の活性剤との組み合わせを含む。
【0051】
特定の好ましい実施形態において、活性剤(薬物)は、疼痛の治療に使用するための治療有効量の局所麻酔薬(例えば、リドカイン)とエピネフリン及び/又は血管拡張薬との組み合わせである。特定の実施形態では、活性剤は、塩酸リドカインと、エピネフリン、血管拡張剤、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される第2の活性剤との組み合わせを含む。適切な血管拡張剤には、ジルチアゼム、クロニジン、ニフェジピン、ベラパミル、イソソルビド‐5‐一硝酸塩、有機硝酸塩、心疾患の治療に使用される薬物、及びそれらの類似体が含まれるが、これらに限定されない。
【0052】
特定の好ましい実施形態において、活性剤(薬物)は、疼痛の治療に使用するための治療有効量の局所麻酔薬(例えば、リドカイン)とカルバマゼピン及び/又は抗痙攣薬との組み合わせである。特定の実施形態において、活性剤は、局所麻酔薬(例えば、塩酸リドカイン)と、カルバマゼピン、抗けいれん薬、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される第2の活性剤との組み合わせを含む。
【0053】
本発明の製剤は、2つ以上の上記の成分(薬物)又はその薬学的に許容される塩、錯体(複合体)又は誘導体も含むことができる。
【0054】
任意選択の賦形剤
活性剤(例えば、局所麻酔薬)に加えて、鼻腔用スプレー製剤は、生理的に許容される成分、例えば塩化ナトリウム、及び典型的な体液と等張性を達成するために従来使用される同様の物質、生理学的に適合するpH範囲を確立するための、及び存在する麻酔薬、血管拡張剤、例えばエピネフリン、保存剤、安定剤及び抗酸化剤などの溶解性を高めるためのpH緩衝剤をさらに含んでもよい。
【0055】
特定の他の実施形態において、追加の界面活性剤(共界面活性剤)及び/又は緩衝剤は、好ましくは、界面活性剤及び/又は緩衝剤が製品を安定性のための最適なpHに維持するように、本明細書で先に述べた1つ又は複数の薬学的に許容されるビヒクルと組み合わせることができる。界面活性剤及び/又は緩衝剤はまた、皮膚への活性剤(例えば、局所麻酔薬)の投与に関連する最初の刺痛又は灼熱感の不快感を防止し得る。
【0056】
特定の他の実施形態では、追加の抗酸化剤及び/又は安定剤は、好ましくは、本明細書で前述した1つ又は複数の薬学的に許容されるビヒクルと組み合わせることができ、抗酸化剤及び/又は安定剤が薬物製品を安定性のための最適な不純物レベルで維持する。抗酸化剤及び/又は安定剤はまた、製造プロセス中の活性剤の初期劣化を防止する。抗酸化剤は、例えば、アスコルビン酸、EDTA、トロラミン、トコフェロール、没食子酸プロピル、亜硫酸ナトリウム、重硫酸ナトリウム、及びこれらの混合物から選択することができる。任意選択の安定剤は、例えば、抗酸化剤及び/又はpH調整剤であり得る。他の実施形態において、任意選択の安定剤は、包接複合体として使用されるシクロデキストリンであり得る。薬学的に許容されるpH調整剤には、例として、塩酸、クエン酸、酢酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、リン酸ナトリウム又は乳酸が含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、例えばクエン酸一水和物、酢酸緩衝液(例えば酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウム)及びコハク酸緩衝液から選択される緩衝液が含まれ、好ましくは製剤を約3~約9のpHに、特定の好ましい実施形態では、約pH4.5~約pH7、又は約pH5.5に維持する。特定の好ましい実施形態において、注射可能な製剤は、例えば、水及び/又は他の一般に入手可能で鼻腔内適用に適した溶液で希釈した後、pHは生理学的に適合するpH範囲であることが好ましい。
【0057】
静細菌性又は静菌性濃度の任意選択の抗菌剤は、フェノール又はクレゾール、水銀剤、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチル及びプロピルp‐ヒドロキシ安息香酸エステル、チメロサール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ホウ酸、p‐ヒドロキシ安息香酸塩、フェノール、塩素化フェノール化合物、アルコール、第四級化合物、水銀剤、これらの混合物などを含む、複数回用量容器に包装された製剤に添加することができる。任意選択の等張剤には、例として、塩化ナトリウム及びデキストロースが含まれるが、これらに限定されない。任意選択の懸濁剤及び分散剤には、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びポリビニルピロリドンが含まれる。任意選択の乳化剤には、ポリソルベート80(TWEEN(登録商標)80)が含まれる。薬学的に許容されるpH調整剤には、例として、水酸化ナトリウム、塩酸、クエン酸又は乳酸が含まれるが、これらに限定されない。本発明のいくつかの実施形態では、特に活性剤がその塩基形態(例えば、リドカイン塩基)である場合、薬学的に許容される緩衝液又は酸性化剤を使用してpHを調整する。
【0058】
特定の他の実施形態において、製剤は、典型的な体液と等張性を達成するために従来使用される等張化剤、生理学的に適合するpH範囲を確立するためのpH緩衝剤、例えば、限定はされないが、任意の薬学的に許容される糖、塩、又はそれらの任意の組み合わせ又は混合物、例えば、限定はされないが、デキストロース及び塩化ナトリウムの添加を介して等張とすることができる。等張化剤は、約100mOsm/kg~約500mOsm/kg、又は約200mOsm/kg~約400mOsm/kg、又は約280mOsm/kg~約320mOsm/kgの量で存在し得る。
【0059】
特定の好ましい実施形態において、本発明の製剤は、以下の組成(%w/w)を有する:
活性剤 5-20%w/v
緩衝剤 0.25‐5%w/v
精製水 5‐99%w/v
保存剤(任意選択) 0.25‐5w/v
粘度: 0.8‐1.1cps
【0060】
本発明の製剤は、微生物の増殖を防止するために保存剤を含んでもよい。本発明での使用に適した保存剤には、安息香酸、ホウ酸、p‐ヒドロキシ安息香酸塩、フェノール、塩素化フェノール化合物、アルコール、第四級化合物、水銀剤、これらの混合物などが含まれるが、これらに限定されない。
【0061】
保存剤を含まない製剤
保存剤を含まない複数回用量製品を使用する場合、微生物がシステムに入るには2つの方法がある:(1)ポンプ開口部を介して;及び(2)供給された液体を置換する通気空気を介して。保存された製剤(従来のシステム)では、追加された保存剤が微生物の増殖を制御し、開口部又は通気を介する微生物の侵入を防ぐために追加の措置を講じる必要はない。製剤に保存剤が含まれていない場合、装置は微生物をシステムから遠ざけることができなければならない。感染のリスクが最も高いのは、通常、開口部である。これは、開口部が、感染した体液だけでなく、皮膚や粘膜にも接触する可能性があるためである。
【0062】
本発明における微生物汚染を防止するために、ポンプ開口部に関する特定の好ましい実施形態では、装置の部品と製剤との間の相互作用を最小限にするための機械的アプローチが含まれる。例えば、特定の好ましい実施形態では、ばね式バルブが先端開口部の開口の真下に配置され、微生物が表面又は接触した液体からシステムに移動することを許さない。したがって、開口部は休止状態で「密閉」される。チップシールは、システムを作動させて定義された圧力に達するまで、システムを閉じた状態に保つ。次に、システムが開き、バルブを開くのに必要な圧力よりも高い圧力で、製剤が開口部から押し出される。作動の最後に圧力が低下すると、チップシールが外向きに動き、開口部をすぐに閉じる。これにより、汚染された可能性のある医薬やその他の液体の逆流を防ぐ。
【0063】
追加又は代替の実施形態において微生物汚染を防止するために、製剤の微生物汚染は、無菌濾過システムを使用して空気を通気することによって回避される。圧力平衡システムの通気空気は、孔径0.2μm未満の無菌フィルターに強制的に通される。フィルター膜は通常疎水性であり、通気システムを介して容器から液体が漏れるのを防ぐ。
【0064】
製造プロセス中、薬物製品溶液(製剤)は好ましくは殺菌され、薬物製品製造及び包装中の微生物汚染を避けるために、充填及びスプレーポンプの組み立ては無菌条件下で行われる。
【0065】
機械式噴霧器
特定の好ましい実施形態において、本発明の組成物は、平均スプレー体積、例えば約40μl~約120ulを有する機械的複数回投与ポンプを介して、対象(例えば、ヒト患者)の鼻孔にスプレーされる。好ましくは、複数回投与ポンプは、広いプリュームと小さな液滴サイズでスプレーする。有用な代表的な複数回投与ポンプは、Pfeiffer SAP‐62602複数回投与ポンプ(130ul/作動)(Pfeiffer,Princeton,NJ)である。本発明の目的のための「広いプリューム」とは、スプレーポンプパターンが、好ましくは約50度~約95度、より好ましくは約60度~約90度、最も好ましくは約70度~約80度の平均噴霧角;及び約20~約70mm、より好ましくは約30~約60mm、最も好ましくは約42~約52mmの平均プリューム幅(mm)を有することを意味する。本発明の目的のための「小さな液滴サイズ」という用語は、平均Dv10が約10~約30、平均Dv50が約20~約60、平均Dv90が約80~約120である液滴サイズ(μm)を意味する。複数回投与ポンプスプレーのスプレーパターンは、好ましくは、約15~約45mmの平均Dmin、約40~約70mmのDmax、約0.5~約2mmの楕円率、及び約12~約22mmの面積の%を提供する。
【0066】
本発明の特定の好ましい実施形態では、米国特許公開第2007/026090A1号(その開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載された特徴を有する複数回投与ポンプ(計量装置)が使用される。例えば、媒体を排出する目的で媒体リザーバに動作可能に接続されたポンプユニット、及び媒体リザーバ及び/又はポンプユニットに割り当てられた通気装置を備えた、少なくとも1つの媒体用の計量装置であり、フィルター膜が割り当てられている通気チャネルを有している。そこには、フィルター膜が既知のフィルター膜と比較して減少した有効断面積を有する計量装置が記載されている。有効断面積は、フィルター膜に設けられた細孔の数と、これらの細孔の平均自由断面積との積である。フィルター膜は、特に延伸又は穿孔されたプラスチックフィルム又は焼結材料として設計されるが、金属箔としても設計されており、選択した製造方法に応じて、細孔の数と細孔の自由断面積の点で幅広い範囲で変化する可能性がある。プラスチックフィルム又は焼結材料にそれぞれ形成された細孔又はチャネルは、チャネルを通過できる最大分子サイズに基づいて決定できる自由断面積を有する。有効断面積は、フィルター膜の拡散速度に直接関係する。チャネル又は細孔の数が多く、個々のチャネル又は細孔の自由断面積が大きいと、有効断面積が大きくなり、高い拡散速度が可能になる。つまり、低い圧力差でも多数の分子がフィルター膜を通過できる。特定の好ましい実施形態において、フィルター膜の有効表面積は、1.4mm2未満、好ましくは0.6mm2未満、特に好ましくは0.2mm2未満である。別の実施形態では、低減された有効断面積を得るために、フィルター膜の細孔の平均自由断面積は、既知のフィルター膜よりも小さく設計される。これは、フィルター膜を通過できる気体分子のサイズが減少することを意味する。別の実施形態において、フィルター膜は、1mm2あたり100万細孔未満、好ましくは1mm2あたり600,000細孔未満、特に好ましくは1mm2あたり300,000細孔未満の平均細孔数を有する。
【0067】
本発明の特定の好ましい実施形態では、米国特許第8,382,010号(その開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載された特徴を有する複数回投与ポンプ(計量装置)が使用される。この米国特許は、手動で作動可能なポンピング手段、ポンプ室、及びスライドバルブとして構成される注入バルブを備えた投薬装置を記載しており、これは閉位置にある投薬チャネル内で密閉状態で投薬ストロークによって移動可能であり、ポンプ室の投薬体積を規定し、投薬チャネルは注入側で注入領域の中に開口している。装置は、好ましくは、少なくとも1つの気体流毛細管をさらに含み、この毛細管は、一端が環境に開放され、他端が媒体リザーバに通じており、上記媒体リザーバに面する端にフィルターユニットが設けられている。これにより、周囲空気による媒体の汚染を引き起こすことなく、媒体リザーバを換気することができる。特定の好ましい実施形態では、複数回投与ポンプは、ポンプ室及びスライドバルブとして構築された注入バルブを有する手動で作動可能なポンプ装置を含み、スライドバルブは上部と下部からなるシリンダー状投薬チャネルを有し、この上部と下部は、ポンピング軸、円周方向に間隔を置いた流れプロファイリングを有する下部の壁面、及びポンピング軸に沿って投薬チャネルの長さ方向にスライドするように構成されたシーリングリップを有するピストンと同軸に整列されており、一方、投与チャネルの上部の壁面及び下部の壁面に順次スライドして係合しており、注入側の投薬チャネルは上部から離れた下部の注入領域に開口し、注入領域は、シーリングリップの注入領域への移動時にスライドバルブの開放を引き起こすように構成された流れプロファイリングを有し、シーリングリップは上部の壁面に密封的にスライドして係合しながらスライドバルブの閉位置にあり、シーリングリップが流れプロファイリングによって引き起こされた下部の注入領域に係合するのに応答して開くようになり、これにより媒体がシーリングリップを通過して媒体リザーバから流れプロファイリングを介して投薬チャネルに及びポンプ室に流れることができ、シーリングリップは、スライドバルブがポンプ室の投薬体積を定義するように、投薬チャネル内の投薬ストロークにわたってポンピング軸に沿って密封的に移動可能である。好ましくは、流れプロファイリングは、投薬ストロークの縦方向に向けられ、注入領域の軸方向長さにわたってポンピング軸に平行に延びる縦溝によって形成され、流れプロファイリングは、注入領域の円周方向に、互いに均一に分布した方法で配置される。特定の好ましい実施形態において、注入領域及び投薬チャネルは、別個の構成要素上に提供される。構成要素は、好ましくは同軸的に相互係合する方法で互いに接合され、対向する周面上で構成要素は、周面の間で少なくとも1つの気体流毛細管が、周面の軸方向に面する前縁の間に形成されるようにプロファイルが形成される。好ましくは、気体流毛細管は、第1の端部が装置外部の環境に開口し、第2の端部が媒体リザーバに開口し、第2の端部が媒体リザーバに面し、フィルターユニットが設けられている。
【0068】
治療
本発明の鼻腔内製剤は、三叉神経痛、顔面神経障害性疼痛、顔面癌誘発性神経障害性疼痛、片頭痛、及び群頭痛に関連する疼痛を治療するために、複数回用量又は二回用量又は単位用量のスプレー容器に包装することができる。
【0069】
鼻腔内製剤が局所麻酔薬(例えば、リドカイン、ブピバカイン、ロピバカイン、メピバカイン、テトラカインの単独及び/又は併用)を含む場合、機械的噴霧器装置は、好ましくは、例えば、約0.04ml~約0.12ml、又は約0.10mlの体積を送達する。このような例では、(有効量を提供するため)各適用で合計約4回のスプレーとして各鼻孔に1~2回スプレーすることにより、製剤を鼻腔内に投与することができる。薬物がリドカインである場合、鼻腔内製剤は、例えば、約4時間間隔で投与される。
【0070】
特定の好ましい実施形態では、治療は、エピネフリン、血管拡張剤、抗けいれん薬、筋弛緩薬、局所活性ナトリウムチャネル遮断薬ではない鎮痛薬、及び上記のいずれかの組み合わせからなる群から選択される第2の活性剤を投与することをさらに含む。好ましくは、第2の活性剤は、鼻腔用スプレー製剤に組み込まれる。しかしながら、第2の活性剤は、例えば局所麻酔薬と別個に、同時に、又は連続して投与され得る。
【実施例】
【0071】
好ましい実施形態の詳細な説明
本発明による以下の例は、いかなる意味においても本発明を限定するものとして解釈されるべきではなく、本明細書に記載される様々な製剤のサンプルに過ぎない。
【0072】
例1~3
リドカイン保存剤非含有鼻腔内製剤は、表1に示す成分を使用して調製される。
【表1】
【0073】
製剤は以下のように調製される:クエン酸一水和物を精製水に攪拌しながら加え、透明な溶液が観察されるまで混合する。リドカイン塩基又は塩、及びその他の任意選択の賦形剤を攪拌しながら加え、透明な溶液が形成されるまで30分間混合する。無菌の0.2ミクロンの孔径フィルターを使用して透明な溶液をろ過し、無菌的にガラス瓶に溶液を満たし、計量用量の機械的ポンプをしっかりとクリンプする。
【0074】
例4~5
リドカイン保存剤非含有鼻腔内製剤は、表2に示す成分を使用して調製される。
【表2】
【0075】
製剤は以下のように調製される:クエン酸一水和物を精製水に攪拌しながら加え、透明な溶液が観察されるまで混合する。リドカイン塩基又は塩、及びその他の任意選択の賦形剤を攪拌しながら加え、透明な溶液が形成されるまで30分間混合する。無菌の0.2ミクロンの孔径フィルターを使用して透明な溶液をろ過し、無菌的にガラス瓶に溶液を満たし、計量用量の機械的ポンプをしっかりとクリンプする。
例5の鼻腔内スプレーの液滴サイズ分布を表3に示す。
【表3】
【0076】
例6~8
他の薬物と組み合わせたリドカイン保存剤非含有鼻腔内製剤は、例6~8について表4に示す成分を使用して調製される。
【表4】
【0077】
製剤は以下のように調製される:クエン酸一水和物を精製水に攪拌しながら加え、透明な溶液が観察されるまで混合する。攪拌しながら、リドカイン塩基又は塩、併用薬物、及びその他の任意選択の賦形剤を加え、透明な溶液が形成されるまで30分間混合する。無菌の0.2ミクロンの孔径フィルターを使用して透明な溶液をろ過し、無菌的にガラス瓶に溶液を満たし、計量用量の機械的ポンプをしっかりとクリンプする。
【0078】
例9(インビボ試験)
例4及び5に従って作製したリドカイン鼻腔内スプレーからの薬物放出を評価するために、健康なウサギにおいてインビボ試験を行った。2つの異なる製剤(例4及び5)の薬物動態を評価し、スプレーあたり10mgのリドカイン(鼻腔内スプレー製剤)、スプレーあたり0.10mlの、局所麻酔活性にアクセスするための単一用量試験。合計18羽のニュージーランド白ウサギ(オス、メスの両方)を使用した。これらのウサギを無作為化し、3つのグループに分けた(グループ1は例5の製剤を表し、グループ2は例4の製剤を表し、グループ3はプラセボ製剤を表す)。各グループに6匹のウサギ(オス3匹、メス3匹)。
【0079】
試験製剤は、計量スプレーポンプを使用して、各鼻孔に単回スプレーとして投与された(合計2回のスプレーは20mgのリドカインに相当する)。試験製剤の投与後15分で、5%ホルマリン溶液100μlをウサギの右頬の鼻の中央付近に皮下投与し、試験箱に個別に収容した。これらのウサギを45分間観察した(ホルマリン投与後)。痛みのスコアは、動物が注射された領域、つまり右頬をこするのに費やした秒数(振幅)を測定することによって決定された。試験製剤の薬物動態を決定するために、各ウサギから試験製剤の投与後、0、0.08、0.25、0.5、0.75、1、2、4、8、及び24時間後に血液サンプルを採取した。
【0080】
組成物は、Pfeiffer SAP‐62602複数回投与ポンプ(130μL/作動)(Pfeiffer,Princeton,NJ)を使用してスプレーされた。
【0081】
鼻腔内投与(例4及び5)及びプラセボ投与経路後のリドカインの血漿濃度‐時間プロファイル、個別及び平均薬物動態パラメータを表5に示す。平均薬物動態(血漿濃度‐時間)プロファイルを
図1に示す。
【0082】
リドカイン血漿濃度は、プラセボ群#3のLLOQ未満であることが判明し、PKパラメータの推定には考慮されなかった。
【0083】
グループ1(例5):
平均Cmaxは、0.25時間の中央値Tmaxで724ng/mLであることが判明した。平均AUC0-t及びAUC0-infinityは、それぞれ964及び99ng*hr/mlであることがわかった。平均排出半減期は0.998時間であることが判明した。クリアランスと分布体積は、それぞれ345ml/minと29.2Lであった。
【0084】
グループ1(例4):
平均Cmaxは、0.25時間の中央値Tmaxで808ng/mLであることが判明した。AUC
0‐t及びAUC
0‐infinityは、それぞれ979及び1010ng*hr/mであることがわかった。平均消失半減期は0.928時間であることがわかった。クリアランスと分布体積は、それぞれ345ml/分と27Lであった。
【表5】
【0085】
ホルマリン刺激試験
測定された行動の全振幅(ホルマリン注射部位のこすりに費やされた合計時間)は、試験製剤例5、例4及びプラセボについて、それぞれ27.91、53.78及び81.83秒であることが判明した。平均振幅は、例5(
図2において試験製剤1として特定される)、例4(
図2において試験製剤2として特定される)及びプラセボ(
図2において試験製剤3として特定される)の試験製剤についてそれぞれ4.65、8.96及び13.64秒であることが判明した。試験製剤例4及び例5とプラセボ製剤との比較のために、対応のないt検定を使用してデータを統計的に分析した。こすり動作の振幅を
図2に示した。プラセボ製剤と比較した場合、試験製剤例4及び例5の両方で、ホルマリン誘発疼痛/刺激スコアの有意な減少が観察された。
【0086】
例10(安定性データ)
例10では、5mlのガラス瓶に例4(塩基)及び例5(塩酸塩)の製剤を計量スプレーポンプで充填し、以下の条件下で安定性に供した:
40℃±2℃/75%RH±5%RHでのICH加速条件(ACC);及び
25℃±2℃/60%RH±5%RHでのICH室温条件(CRT)。
【0087】
医薬品規制調和国際会議(「ICH」)は、ヨーロッパ、日本、米国の規制当局と製薬業界の専門家を結集するプロジェクトである。
【0088】
サンプルを分析して、リドカインアッセイ、不純物及び物理的安定性(薬物沈殿、色変化及びPH)を測定した。安定性データを以下の表6及び表7に示す。
【表6】
【表7】
【0089】
結論
上記に提供された例は、排他的であることを意味するものではない。本発明の他の多くの変形は当業者には明らかであり、添付の特許請求の範囲内にあると考えられる。
【0090】
活性剤は、治療上等量で鼻腔内製剤に組み込むことができる。活性剤の実際の用量(相対効力)は、本明細書に記載の活性剤の治療上有効な用量に対する比較用量に基づいて決定することができる。
【国際調査報告】