(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-24
(54)【発明の名称】化粧品のための、天然機能性成分を有する天然ポリマーで作製されたナノファイバーマトリックス
(51)【国際特許分類】
D04H 1/728 20120101AFI20230117BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20230117BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20230117BHJP
A61K 8/64 20060101ALI20230117BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230117BHJP
【FI】
D04H1/728
A61K8/02
A61K8/73
A61K8/64
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022519009
(86)(22)【出願日】2020-10-08
(85)【翻訳文提出日】2022-05-20
(86)【国際出願番号】 NZ2020050121
(87)【国際公開番号】W WO2021071365
(87)【国際公開日】2021-04-15
(31)【優先権主張番号】201910992250.0
(32)【優先日】2019-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201910992362.6
(32)【優先日】2019-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522115228
【氏名又は名称】ナノレイヤー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】カナン,ブヴァネスワリ
(72)【発明者】
【氏名】ホージー,イアン キャメロン
(72)【発明者】
【氏名】ツェン,ハン ユエ
【テーマコード(参考)】
4C083
4L047
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083AA112
4C083AA121
4C083AC471
4C083AD211
4C083AD212
4C083AD241
4C083AD242
4C083AD261
4C083AD301
4C083AD321
4C083AD331
4C083AD332
4C083AD392
4C083AD411
4C083AD431
4C083AD432
4C083AD441
4C083AD611
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4C083AD642
4C083AD651
4C083AD661
4C083AD671
4C083BB11
4C083BB41
4C083BB51
4C083CC03
4C083CC07
4C083CC11
4C083CC12
4C083CC14
4C083CC28
4C083CC36
4C083DD12
4C083EE01
4C083EE07
4C083EE10
4C083EE11
4C083EE13
4C083EE16
4L047AA29
4L047AB08
4L047CC03
(57)【要約】
化粧品として使用するための、多糖及び/又はタンパク質から選択される100%天然バイオポリマーを任意選択的な機能性成分とともに含むナノファイバーマトリックスが本明細書に記載される。特に、いかなる防腐剤、界面活性剤、溶媒及び架橋剤も含有することなく乾燥シートを含む、電界紡糸法によって製造されたナノファイバーマトリックスである。ナノファイバー化粧品を使用するために、単に皮膚を濡らし、その後、皮膚にナノファイバーを適用する。異なる美容効果を提供するために、任意選択的に、機能性成分が電界紡糸中にナノファイバーマトリックスに混入され得る。機能性成分は、保湿、アンチエイジング、しわの減少、ブライトニング、抗酸化及びにきび治療などの皮膚有益性を提供する。機能性成分は、精油であり得、この場合、それは、ナノファイバーマトリックス中に混入されて、匂いの効果を化粧品に提供する。機能性成分は、天然色素でもあり得、この場合、それは、ナノファイバーマトリックス中に混入されて、着色ナノファイバーを作製する。着色ナノファイバーは、頬紅、アイシャドー、アイブロウ、ネイルポリッシュ、リップスティック、コントゥアリング及び染毛製品などのメイクアップ製品に使用され得る。機能性成分を有する又は有しない、100%天然バイオポリマーを含むナノファイバーマトリックスは、異なる目的で皮膚の異なる領域上で使用するために、種々の形状に加工されるか、又は消費者によって容易に切断され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の多糖;及び/又は任意選択的に、
少なくとも1種のタンパク質
を含むナノファイバーマトリックスであって、
前記ナノファイバーマトリックスは、任意選択的に、高度なスキンケア用途のための機能性活性物質又は成分を保持し、ナノファイバーは、加えられた前記機能性活性物質又は成分を有する又は有しない混合多糖及び/又はタンパク質溶液から製造され、且つ乾燥ナノファイバーシートのような乾燥ナノファイバー不織布に電界紡糸され;好ましくは、前記乾燥ナノファイバーシートは、異なる形状に加工され、且つ皮膚の異なる領域に適用され;且つ好ましくは濡れた皮膚との接触時、前記ナノファイバーは、高度な治療的有益性のために、溶解され、前記皮膚中に徐々に溶解され、且つ任意の活性物質を放出するか、又は前記皮膚上に留まって任意の活性物質を放出する、ナノファイバーマトリックス。
【請求項2】
前記ナノファイバーマトリックスは、天然ポリマーから誘導され、溶媒を含まず、界面活性剤を含まず、防腐剤を含まず、且つ架橋剤を含まず;合成又は石油由来の化学物質を含まない、請求項1に記載のナノファイバーマトリックス。
【請求項3】
前記多糖は、動物性若しくは植物性又は両方の組み合わせである、請求項1又は2に記載のナノファイバーマトリックス。
【請求項4】
前記動物性多糖は、キチン、キトサン、ヒアルロン酸又はそれらの組み合わせを含み、且つ前記植物性多糖は、デキストラン、プルラン、フコイダン、アルギン酸塩、ペクチン、ヒアルロン酸、アミロース、アミロペクチン又はそれらの組み合わせを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のナノファイバーマトリックス。
【請求項5】
前記タンパク質は、動物性若しくは植物性又は両方の組み合わせである、請求項1~4のいずれか一項に記載のナノファイバーマトリックス。
【請求項6】
前記動物性タンパク質は、コラーゲン、加水分解コラーゲン、変性コラーゲン、変性完全鎖コラーゲン、ゼラチン、ケラチン、加水分解ケラチン又はそれらの組み合わせを含み、及び前記植物性タンパク質は、乳清タンパク質、加水分解乳清タンパク質、ゼイン、コムギタンパク質、加水分解コムギタンパク質、ダイズタンパク質、加水分解ダイズタンパク質、エンドウタンパク質、加水分解エンドウタンパク質、ヘンプタンパク質、加水分解ヘンプタンパク質又はそれらの組み合わせを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のナノファイバーマトリックス。
【請求項7】
前記ナノファイバーマトリックスは、少なくとも1種の多糖及び/又は少なくとも1種のタンパク質で作製され;且つ好ましくは、1種以上の多糖及び/又は1種以上のタンパク質は、ナノファイバーマトリックスを製造するために選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載のナノファイバーマトリックス。
【請求項8】
前記ナノファイバーマトリックスは、多糖及び/又はタンパク質の組み合わせであり、且つ皮膚に対して多糖及びタンパク質の両方からの有益性を提供する、請求項1~7のいずれか一項に記載のナノファイバーマトリックス。
【請求項9】
前記機能性成分は、前記ナノファイバーマトリックス中に混入されて、より高度な皮膚有益性を提供し;且つ好ましくは、前記ナノファイバーマトリックスは、機能性成分のための良好な安定剤、担体及び送達プラットフォームである、請求項1~8のいずれか一項に記載のナノファイバーマトリックス。
【請求項10】
前記機能性成分の前記皮膚有益性は、限定されないが、保湿、ブライトニング、しわの減少、くまの軽減、抗菌性、タイトニング、抗酸化及びにきび治療を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のナノファイバーマトリックス。
【請求項11】
前記機能性成分は、膨化、紅潮及び着色の他の有益性を提供する、請求項1~10のいずれか一項に記載のナノファイバーマトリックス。
【請求項12】
前記機能性成分は、限定されないが、ビタミン、果実抽出物、植物抽出物、ハーブ抽出物及び生物由来油又は精油を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のナノファイバーマトリックス。
【請求項13】
前記ビタミンは、限定されないが、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンB1、B2、B3、B5若しくはそれらの誘導体又はそれらの組み合わせを含む、請求項12に記載のナノファイバーマトリックス。
【請求項14】
前記果実抽出物機能性成分は、限定されないが、グレープシード抽出物、キウイフルーツ皮抽出物、トマト抽出物、ビルベリー抽出物、クコの実抽出物を含む、請求項12に記載のナノファイバーマトリックス。
【請求項15】
前記植物又はハーブ抽出物機能性成分は、限定されないが、アロエベラ抽出物、タイム抽出物、エルダーフラワー抽出物、セージ抽出物、ローズマリー抽出物、カンナビノイド抽出物を含む、請求項12に記載のナノファイバーマトリックス。
【請求項16】
前記精油は、匂いの機能を提供し、限定されないが、ホホバ油、ペパーミント油、ラベンダー油、ローズヒップ油、ビャクダン油、ラベンダー油、スクアラン油、スクアレン油、マヌカ油、ティーツリー油、カンナビノイド油、ヤシ油、オリーブ油、アマニ油、桂皮油、アサイー油、アルガン油、ヒマシ油及びそれらの組み合わせを含む、請求項12に記載のナノファイバーマトリックス。
【請求項17】
機能性成分の組成物は、複数の高度な有益性を得るために前記多糖及び/又はタンパク質のナノファイバーマトリックス中に加えられ;好ましくは、異なる機能性成分を保持する前記ナノファイバーマトリックスは、皮膚のための異なる機能を提供する、請求項1~16のいずれか一項に記載のナノファイバーマトリックス。
【請求項18】
前記機能性成分は、前記ナノファイバーに対する着色効果を提供し、前記着色ナノファイバーは、頬紅、アイシャドー、アイブロウ製品、ネイルポリッシュ、リップ製品、コントゥアリング及び染毛製品のようなメイクアップ製品に使用される、請求項17に記載のナノファイバーマトリックス。
【請求項19】
前記ナノファイバーマトリックスの前記着色ナノファイバーは、植物、野菜又は果実から抽出された天然色素に由来し、前記天然色素は、限定されないが、ビート根抽出物、エルダーベリー抽出物、アンナット抽出物、クルクミン、アスタキサンチン、ニンジン根抽出物及びそれらの組み合わせを含む、請求項18に記載のナノファイバーマトリックス。
【請求項20】
1種の機能性成分又は複数種の機能性成分を保持することができる、請求項1~19のいずれか一項に記載のナノファイバーマトリックス。
【請求項21】
化粧品は、前記濡れた皮膚上に適用され、且つナノファイバーは、前記皮膚によって吸収されて、皮膚有益性、匂いの機能又は着色効果を提供する、請求項1~20のいずれか一項に記載のナノファイバーマトリックス。
【請求項22】
皮膚有益性及び前記ナノファイバーの前記皮膚中への溶解速度は、機能性成分によって変化する、請求項1~21のいずれか一項に記載のナノファイバーマトリックス。
【請求項23】
前記ナノファイバーの直径は、10nm~2ミクロンである、請求項1~22のいずれか一項に記載のナノファイバーマトリックス。
【請求項24】
前記ナノファイバーマトリックスの密度は、1gsm~100gsmである、請求項1~23のいずれか一項に記載のナノファイバーマトリックス。
【請求項25】
前記ナノファイバーマトリックス中の機能性成分の重量比は、0.1重量%~30重量%である、請求項1~24のいずれか一項に記載のナノファイバーマトリックス。
【請求項26】
請求項1~25のいずれか一項に記載のナノファイバーマトリックスで作製された乾燥ナノファイバーシートであって、前記乾燥ナノファイバーシートは、皮膚の異なる領域:顔全体、上部フェイスマスク、下部フェイスマスク、目の下、額、鼻、顎、頬、唇、Tゾーン及び首に使用するための異なる形状に加工されるように使用される乾燥ナノファイバーシート。
【請求項27】
前記乾燥ナノファイバーシートは、使用者により、その要求に適合するように任意の所望の形状に手作業で切断される、請求項26に記載の乾燥ナノファイバーシート。
【請求項28】
加えられた機能性活性物質又は成分を有する又は有しない乾燥ナノファイバーマトリックスの形態の化粧品であって、前記ナノファイバーマトリックスは、多糖及び/又はタンパク質から選択される100%天然バイオポリマーから製造され、且つ乾燥ナノファイバーシートに電界紡糸される、化粧品。
【請求項29】
ナノファイバーマトリックスを製造する方法であって、多糖及び/又はタンパク質の水性溶媒中の溶液を電界紡糸溶液として作製するステップと;電界紡糸法を使用することにより、高電圧下で前記電界紡糸溶液を乾燥ナノファイバーに変換するステップと;ナノファイバーを収集基材材料上に堆積するステップとを含む方法。
【請求項30】
前記電界紡糸溶液は、数時間にわたって撹拌下で多糖及び/又はタンパク質材料を溶媒中に逐次加えることによって、又は多糖溶液及び/又はタンパク質溶液を別々に調製し、その後、2つの溶液を一緒に混合することによって調製される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
機能性成分は、前記電界紡糸溶液中に加えられるか、又は機能性成分は、前記あらかじめ混合された多糖/タンパク質溶液中に加えられるか、又は機能性成分は、多糖/タンパク質を加える前に前記溶媒中に加えられ;且つ好ましくは、溶液のpHは、機能性成分の安定性を確保するために、酸又は塩基を加えることによって調整される、請求項29又は30に記載の方法。
【請求項32】
機能性成分を有するナノファイバーマトリックスを製造する方法であって、
多糖、タンパク質及び機能性成分を一緒に水性溶媒中に溶解させるステップと;電界紡糸法を使用することによって変換するステップであって、溶液は、高電圧下で乾燥ナノファイバーに変換する、ステップと;
前記ナノファイバーを前記基材上に堆積するステップと
を含み、前記製造されたナノファイバーマトリックスは、機能性成分が混入された多糖/タンパク質ナノファイバーマトリックスである、方法。
【請求項33】
請求項1~28のいずれか一項に記載のナノファイバーマトリックスを含む、機能性成分を有する又は有しない多糖/タンパク質ナノファイバーマスクであって、前記マスクが、濡れた皮膚に適用される場合、前記ナノファイバーは、高度な治療的有益性のために、前記皮膚中に徐々に溶解され、及び任意の活性物質を放出するか、又は前記皮膚上に留まって任意の活性物質を放出する、多糖/タンパク質ナノファイバーマスク。
【請求項34】
フェイシャルマスク(顔全体用マスク、上部フェイスマスク、下部フェイスマスク)、目の下用パッチ、額用マスク、鼻用マスク、顎用マスク、頬用マスク、唇用マスク、Tゾーン及び又は首用マスクを含む全体美容術パッケージであって、前記マスクのそれぞれは、請求項1~28のいずれか一項に記載のナノファイバーマトリックスを含み、前記パッケージは、複合的な種類の皮膚を有する使用者のためのものであり、及び各種類のマスクは、対象とする異なる皮膚の問題を提供するために、同じナノファイバーマトリックスであるが、異なる機能性成分の組み合わせから作製され得る、全体美容術パッケージ。
【請求項35】
天然及び/又は植物性成分によって作製されたナノファイバー製品であって、請求項1~28のいずれか一項に記載のナノファイバーマトリックスで作製され、及び「可食性」化粧品と見なされるナノファイバー製品。
【請求項36】
天然及び/又は植物性成分によって作製されたナノファイバー製品であって、請求項1~28のいずれか一項に記載のナノファイバーマトリックスで作製され、且つビーガン用製品と見なされるナノファイバー製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、参照により本明細書に援用される中国特許出願公開第2019109923626号及び中国特許出願公開第2019109922500号からの優先権を得るものである。
【0002】
技術分野
化粧品として使用するための、多糖及び/又はタンパク質から選択される100%天然バイオポリマーを任意選択的な機能性成分とともに含むナノファイバーマトリックスが本明細書に記載される。特に、いかなる防腐剤、界面活性剤、溶媒及び架橋剤も含有することなく乾燥シートを含む、電界紡糸法によって製造されたナノファイバーマトリックスである。ナノファイバー化粧品を使用するために、単に皮膚を濡らし、その後、皮膚にナノファイバーを使用する。異なる美容効果を提供するために、任意選択的に、機能性成分が電界紡糸中にナノファイバーマトリックスに混入され得る。機能性成分は、保湿、アンチエイジング、しわの減少、ブライトニング、抗酸化及びにきび治療などの皮膚有益性を提供する。機能性成分は、精油であり得、この場合、それは、ナノファイバーマトリックス中に混入されて、匂いの効果を化粧品に提供する。機能性成分は、天然色素でもあり得、この場合、それは、ナノファイバーマトリックス中に混入されて、着色ナノファイバーを作製する。着色ナノファイバーは、頬紅、アイシャドー、アイブロウ、ネイルポリッシュ、リップスティック、コントゥアリング(contouring)及び染毛製品などのメイクアップ製品に使用され得る。機能性成分を有する又は有しない、100%天然バイオポリマーを含むナノファイバーマトリックスは、異なる目的で皮膚の異なる領域上で使用するために、消費者によって、種々の形状に加工されるか、又は容易に切断され得る。
【背景技術】
【0003】
背景技術
近年、化粧品産業は、急速に成長し続けており、消費者は、進んでより多くを化粧品に費やしている。消費者は、効果、安全性、健康、持続可能性、倫理及び利便性に基づいて製品を選択している。消費者は、天然で環境に優しい製品をより好んで購入し、食品グレードの成分に関する規制強化、より持続可能なプロセス、より少ない負の副作用のため、食品規格及び化粧品/GMP認証の化粧品を好んでいる。
【0004】
多様な化粧品が市場に存在する。フェイシャルマスクの分野は、シートマスク、ゲルマスク、クレイマスク及び乾燥マスクなどの多くの異なる変形体を有する。シートマスクは、市場における非常に一般的な変形体である。従来のシートマスクは、布材料に溶液を吸い込ませることによって製造される。この溶液は、通常、有効成分、粘度調整ポリマー、水、防腐剤、浸透促進剤、溶媒及び界面活性剤を含有する。使用の際には従来のシートマスクは、濡れたシートを皮膚上に約10~30分間置き、シートを取り除いて廃棄し、次いで洗い流すことが必要となる。これは、人々が使用するのに便利ではなく、典型的には自宅又はスパ若しくは診療所において座った状態又は腹臥位で適用される。
【0005】
さらに、従来のシートマスクは、液体環境中での細菌増殖を防止するために防腐剤を含む必要がある。パラベン、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム及びフェノキシエタノールなどの防腐剤は、皮膚に有害となる場合がある。防腐剤又は溶媒は、場合により、非常に敏感な皮膚を有する人々に刺激、紅斑又は不快感を生じさせることがある。市場におけるより教養のある顧客は、これらの化学物質の副作用を理解しており、これらの成分を回避しようとする。
【0006】
設定された期間着用されない場合、従来のシートマスクは、所望の皮膚有益性を提供しないが、あまりにも長く着用された場合、水の蒸発によって皮膚が乾燥する。皮膚によって吸収される成分の量及び効率の制御も困難である。さらに、従来のシートマスクは、すべての皮膚状態にとって理想的とはならない。例えば、従来のマスクは、湿潤環境条件によって細菌増殖を助長するため、にきびのできやすい皮膚に適さないことが分かっており、これによりにきびの問題が悪化することがある。
【0007】
乾燥マスク技術は、防腐剤又は有機溶媒を回避する新たな分類の1つである。販売されるほとんどの乾燥マスクは、凍結乾燥法によって製造される。成分は、基材(支持布)中に維持される。乾燥マスクを適用するために、皮膚に適用する前に最初に乾燥マスクを水中に浸漬する必要がある。乾燥マスクによって有機溶媒の問題が克服されるが、長い使用時間、通常、依然として10~30分が依然として必要となる。従来のシートマスクのすべての既存の問題が克服されるわけではない。皮膚によって吸収される成分の量の制御は、依然として困難であり、通常、合成ポリマー及び架橋剤を含み、このため、敏感な皮膚の場合に依然として理想的でない。
【0008】
電界紡糸は、湿潤ポリマー溶液を乾燥ナノファイバーに変換するために高電圧を使用する製造方法である。ナノファイバーフェイシャルマスクにより、長い使用時間、限定された使用環境条件、制御されない使用量、望ましくない溶媒及び材料の含有など、上記で参照された従来のマスクの問題を解決することができる。
【0009】
中国特許第104703507B号の特許は、電界紡糸によって製造されたナノファイバーで構成された化粧品用フィルムを開示している。中国特許第104703507B号に開示されるナノファイバーは、水溶性ポリマーのポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドン並びに架橋剤によって製造される。
【0010】
中国特許出願公開第109576817A号の特許は、ポリビニルアルコール及びアルギン酸ナトリウムによって作製されたナノファイバーフェイシャルマスクを製造する方法を開示している。中国特許出願公開第109576817A号におけるポリビニルアルコールの濃度は、7%~10%であり、アルギン酸ナトリウムは、電界紡糸溶液中で0.4%~3%であった。
【0011】
中国特許出願公開第109363967A号の特許は、60~80部のヒアルロン酸、10~20部の酸化ポリエチレン及び5~10部の生理活性ペプチドで作製されたナノファイバーフェイシャルマスクを開示している。
【0012】
前述のこれらの特許は、ポリマーの電界紡糸能力及びナノファイバーの潜在的な用途を示している。しかし、これらの特許において製造されたナノファイバーは、合成ポリマーで作製されるか又は部分的に合成ポリマーで作製される。それは、従来のマスクにおける既存の問題を解決しない。それは、合成ポリマーに耐えられない敏感な皮膚を持つ人々に適していない。それは、人々が合成プラスチックの分解に関する環境上の懸念を有し、より天然であり且つ生物由来の製品を好む場合にも人々が使用するに理想的でない。また、特許中国特許第104703507B号において使用される架橋剤は、化粧品中で通常好ましくない化学物質である。一部の合成ポリマー及び化学物質は、長期間使用されると皮膚に有害となる場合がある。
【0013】
米国特許第9,775,917号の特許は、コラーゲンナノファイバーが水分と接触すると有効成分を迅速に放出することができる、海洋由来のコラーゲンナノファイバーを開示している。しかしながら、この発明におけるナノファイバーは、動物性コラーゲンに限定される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
以上から、合成ポリマーの問題を克服する一方、従来のフェイシャルスキンマスクにおける長い使用時間、制御されない使用量の問題を克服するか、又は少なくとも有用な選択を人々に提供するナノファイバー組成物及び関連製品の用途が存在することが分かる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、これらの問題を克服することができ、100%天然ポリマー、特に多糖及び/又はタンパク質を含む化粧品の発明を開示することが想定される。高い皮膚有益性、色、匂い又は香りを得るために、ビタミン、果実/植物/ハーブ抽出物、精油及び天然色素などの機能性成分をナノファイバーマトリックス中に任意選択的に混入することができる。
【0016】
製品、組成物、方法及びそれらの使用のさらなる態様及び利点は、単なる例として提供される以下の説明から明らかとなるであろう。
【0017】
概要
スキンケア及び化粧品のための、機能性成分を有する多糖及び/又はタンパク質のナノファイバーマトリックスが本明細書に記載される。特に、スキンケア/化粧品中に使用するための多糖及び/又はタンパク質の組み合わせから製造され、及び電界紡糸法によって製造される、生体材料をベースとするナノファイバーマトリックスである。高度な皮膚有益性のために、任意選択的に、機能性成分が電界紡糸中にナノファイバーマトリックスに混入され、及びナノファイバーによって皮膚中に送達され得る。これにより、従来の化粧品における既存の問題が克服される。所望の機能性成分を選択することにより、本発明において開示されるナノファイバーマトリックスは、種々の皮膚有益性、メイクアップの目的又は匂いの機能を提供することができる。その乾燥形式のため、それは、種々の目的のために異なる形状に容易に加工されるか、又は消費者によって手作業で切断され得る。
【0018】
第1の態様では、
少なくとも1種の多糖;及び/又は任意選択的に、
少なくとも1種のタンパク質
を含むナノファイバーマトリックスであって、任意選択的に、高度なスキンケア用途のための機能性活性物質又は成分を保持し、ナノファイバーは、加えられた機能性活性物質又は成分を有する又は有しない混合多糖及び/又はタンパク質溶液から製造され、且つ乾燥ナノファイバーシートなどの乾燥ナノファイバー不織布に電界紡糸され;好ましくは、乾燥ナノファイバーシートは、異なる形状に加工され、且つ皮膚の異なる領域に適用され;好ましくは濡れた皮膚との接触時、ナノファイバーは、高度な治療的有益性のために、皮膚中に徐々に溶解され、且つ任意の活性物質を放出するか、又は皮膚上に留まって任意の活性物質を放出する、ナノファイバーマトリックスが提供される。
【0019】
第2の態様では、加えられた機能性活性物質又は成分を有する又は有しない乾燥ナノファイバーマトリックスの形態の化粧品であって、ナノファイバーマトリックスは、多糖及び/又はタンパク質から選択される100%天然バイオポリマーから製造され、且つ乾燥ナノファイバーシートに電界紡糸される、化粧品が提供される。
【0020】
第3の態様では、実質的に前述されるナノファイバーマトリックスを製造する方法が提供される。
【0021】
前述のように、従来のフェイシャルマスクは、長い使用時間の必要性、合成ポリマーの含有、界面活性剤の含有、有機溶媒の含有、防腐剤の含有及びさらに制御されない浸透量の問題を有する。本発明に記載のナノファイバーフェイシャルマスクの利点により、従来のフェイシャルマスクにおいて列挙される問題が克服される。制御された量の成分が皮膚中に直ちに効率的に送達される。ナノファイバー製品の使用は、単純で便利である。これらの機能性成分を有する又は有しないナノファイバーは、濡れた皮膚上に使用され、及び皮膚によって直ちに吸収される。フェイシャルマスクに使用される機能性成分を有する又は有しないナノファイバーマトリックスは、従来のフェイシャルマスクに関連する既存の障害を克服することができる。従来のフェイシャルマスクは、長期間の使用時間、遅い浸透及び制御されない浸透量が必要となる。従来のフェイシャルマスクは、酸化又は細菌増殖などの環境脆弱性から製品を安定化させるために、合成ポリマー、界面活性剤、有機溶媒、防腐剤及び他の機能性添加剤も含む。本発明において記載されるナノファイバーフェイシャルマスクは、これらの問題を克服する。多糖及び/又はタンパク質で作製されたナノファイバーフェイシャルマスクは、天然由来のものであり、いかなる合成ポリマーも含まない。その乾燥形式及び低水分活性のため、細菌増殖を阻害するためのいかなる防腐剤も必要ない。本発明において開示されるナノファイバーマスクは、いかなる界面活性剤及び溶媒も含まず、そのため、敏感な皮膚を有する人々に理想的である。さらに、多糖又はタンパク質は、天然ポリマーであり、生分解性であるため、合成ポリマーよりも環境への影響が小さい。ナノファイバーマトリックスを製造するために食品グレードの多糖及び/又はタンパク質を選択することにより、得られる製品は、「可食性」及び「皮膚に対して安全」と見なすことができる。植物性多糖及び/又は植物性タンパク質を選択することにより、ビーガン用製品の選択肢が使用者に提供される。
【0022】
前述のように、マスクは、いかなる防腐剤、界面活性剤、有機溶媒も含まず、これは、敏感な皮膚を有する人々に好ましい。さらに、ポリマーマトリックスは、植物由来の成分から選択される。これにより、使用者は、動物性製品を回避する選択肢が得られ、合成ポリマーの使用に関する環境問題を有する使用者にも適切となる。さらに、乾燥ナノファイバーマスクを使用することで、顔全体用マスク、鼻用マスク、目の下用パッチ、額用マスク、顎用マスク、頬用マスク、首用マスク及び唇用マスクなどを含む種々の形状に加工することができる。また、マスクの形状は、使用者によって決定され得、使用者は、その要求に適合するようにシートマスクを任意の形状に手作業で切断することができる。その乾燥した性質のため、任意の形状に切断することが容易である。本発明は、日常の使用者に対して常に良好に適合するわけではない現行の「単一サイズ」のマスクの問題を克服することができる。特に、にきび治療の場合、使用者は、無影響の皮膚に影響を与えずに感染部位に適用可能なサイズに乾燥ナノファイバーを切断することのみが必要となる。従来のマスクの場合、これらは、にきびの皮膚に適さないことが多く、なぜなら、従来のマスクは、液体を含み、その湿潤環境は、細菌増殖の原因となり得るからである。皮膚上に長時間維持する必要があるため、細菌増殖は、にきびができやすい皮膚に理想的ではなく、にきびの問題を悪化させることがある。本発明では、ナノファイバーマトリックスは、植物性のものから抽出された材料などの広範囲の多糖及びタンパク質に拡張される。これにより、ビーガン用製品の製造の可能性が得られる。適用時間が短く、1分未満である。成分は、制御された量で存在し、皮膚によって吸収される。これは、交通機関、職場、公共の場などのあらゆる状況での使用に好都合であり、適している。
【0023】
最後に、本発明は、革新的なスキンケア製品を製造する方法を開示し、従来のフェイシャルマスクにおける問題を克服する。皮膚有益性は、多糖及び/又はタンパク質ナノファイバーマトリックス中に異なる機能性成分を選択することによって調節することができる。
【0024】
図面の簡単な説明
製品、組成物、方法及びそれらの使用のさらなる態様は、単なる例として提供され、添付の図面を参照する以下の説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】デキストラン、プルラン及びコラーゲンを含むナノファイバーマトリックスを示し、(a)SEM画像、(b)直径分布である。
【
図2】ナノファイバーが皮膚表面上に使用された後の異なる時間枠における光干渉断層信号を有する光干渉断層法のグラフを示し、(a)t=0、t=20分及びt=30分であり、(b)t=0、t=35分、t=45分及びt=50分である。
【
図3】デキストラン、プルラン及びフコイダンを含むビーガン用ナノファイバーマトリックスを示し、(a)SEM画像、(b)直径分布である。
【
図4】24時間の培養後の、陰性対照(無処理表皮)、陽性対照(0.1%SDSで処置した表皮)及び試験試料(ビーガン用ナノファイバー及び0.1%SDSで処置した表皮)中のTNF-α濃度の表を示す。
【
図5】96時間の培養後の、細胞のみ、コウジ酸を有する細胞及びナノファイバーとエチルアスコルビン酸とを有する細胞中のメラニン濃度のグラフを示す。
【
図6】細胞のみ、コラーゲン及びヒアルロン酸で作製されたナノファイバーマトリックスを有する細胞並びにデキストラン、プルラン及びコラーゲンで作製されたナノファイバーマトリックスを有する細胞中のエラスチン濃度のグラフを示す。
【
図7】本発明のナノファイバー製品の使用前後のしわの減少の写真を示す。
【
図8】本発明のナノファイバー製品を使用することによる且つ使用しないことによる(対照)、時間に対するしわの変化のグラフを示す。
【
図9】ナノファイバー製品を使用する一方の側及び本発明のナノファイバー製品を使用しないもう一方の側(対照)の28日後の眼角弾性変化のグラフを示す。
【
図10】唇用マスクのための代表的な着色ナノファイバーの写真を示す。
【
図11】ナノファイバーマスクの種々の代表的な形状を示す。
【
図12】線維芽細胞及びケラチノサイトを用いた培養後の乳酸デヒドロゲナーゼアッセイの吸光度値の表を示す。
【
図13】開始時、室温で2か月保管後及び40℃で2か月保管後の微生物含有量の表を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
詳細な説明
前述のように、スキンケア及び化粧品のための、機能性成分を有する多糖及び/又はタンパク質ナノファイバーマトリックスが本明細書に記載される。特に、スキンケア及び化粧品に使用するための多糖及び/又はタンパク質の組み合わせから製造され、及び電界紡糸法によって製造される、生体材料をベースとするナノファイバーマトリックスである。高度な皮膚有益性のため、任意選択的に、機能性成分が電界紡糸中にナノファイバーマトリックスに混入され、且つナノファイバーによって皮膚中に送達され得る。
【0027】
本明細書の目的のために、「約」又は「およそ」という用語並びにそれらの文法的変形は、基準の量、レベル、程度、値、数、頻度、パーセント値、寸法、サイズ、量、重量又は長さに対して30%、25%、20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%又は1%まで変動する量、レベル、程度、値、数、頻度、パーセント値、寸法、サイズ、量、重量又は長さを意味する。
【0028】
「実質的に」という用語又はその文法的変形は、少なくとも約50%、例えば75%、85%、95%又は98%を意味する。
【0029】
「含む」という用語及びその文法的変形は、包含の意味を有するものとし、すなわち直接言及され列挙される成分だけでなく、他の明記されない成分又は要素をも含むことを意味すると解釈される。
【0030】
第1の態様では、
少なくとも1種の多糖;及び/又は任意選択的に、
少なくとも1種のタンパク質
を含むナノファイバーマトリックスであって、任意選択的に、高度なスキンケア用途のための機能性活性物質又は成分を保持し、ナノファイバーは、加えられた機能性活性物質又は成分を有する又は有しない混合多糖及び/又はタンパク質溶液から製造され、且つ乾燥ナノファイバーシートなどの乾燥ナノファイバー不織布に電界紡糸され;好ましくは、乾燥ナノファイバーシートは、異なる形状に加工され、且つ皮膚の異なる領域に適用され;好ましくは濡れた皮膚との接触時、ナノファイバーは、高度な治療的有益性のために、皮膚中に急速に又は徐々に溶解される、ナノファイバーマトリックスが提供される。
【0031】
ナノファイバーマトリックスは、100%天然由来のポリマー、好ましくは多糖、タンパク質及び/又はそれらの組み合わせの電界紡糸によって製造することができる。多糖は、デキストラン、プルラン;フコイダン;アルギン酸塩;キトサン、キチン、アミロース、アミロペクチン、ペクチン、ヒアルロン酸、一般には植物性多糖及び/又はそれらの組み合わせのいずれか1つから好ましくは選択されるが、これらに限定されない。
【0032】
タンパク質は、いずれか1つ又は以下:完全鎖コラーゲン、変性コラーゲン、変性完全鎖コラーゲン、加水分解コラーゲン、コラーゲンペプチド、ゼラチン、ケラチン、加水分解ケラチン、ゼイン、乳清タンパク質、加水分解乳清タンパク質、コムギタンパク質、加水分解コムギタンパク質、ダイズタンパク質、加水分解ダイズタンパク質、エンドウタンパク質、加水分解エンドウタンパク質、ヘンプタンパク質、加水分解ヘンプタンパク質及び/又はそれらの組み合わせから選択され得るが、これらに限定されない。
【0033】
本発明は、
I.種々の皮膚状態のための皮膚有益性の提供;
II.メイクアップ製品に使用される着色効果の提供;及び/又は
III.化粧品のための匂い又は香りの機能の提供
のための機能性成分の少なくとも3つの分類を含むことができる。
【0034】
一実施形態では、機能性成分としては、種々の皮膚状態を対象として皮膚有益性を提供することができるビタミン、ケトン、脂肪酸、テルペン、ポリフェノール、カロテノイド、ハーブ抽出物及び果実抽出物を挙げることができる。果実抽出物機能性成分の例としては、グレープシード抽出物、キウイフルーツ皮抽出物、トマト抽出物、ビルベリー抽出物及びクコの実抽出物を挙げることができる。植物及びハーブ抽出物機能性成分の例としては、アロエベラ抽出物、ミント抽出物、タイム抽出物、カンナビノイド抽出物、エルダーフラワー抽出物、セージ抽出物及びローズマリー抽出物を挙げることができる。これらの機能性成分は、抗酸化、しわの減少、目の下のくまの軽減、ブライトニング、抗菌性、抗微生物性、にきび治療及び保湿などの優れた皮膚有益性を提供するために、電界紡糸中にナノファイバーに混入され得る。このように、ナノファイバー製品の使用は、便利であり、簡単である。
【0035】
幾つかの実施形態では、機能性成分は、果実又は植物から抽出された天然色素を使用することによって着色機能を提供し得る。天然メイクアップ製品として人々に適した着色ナノファイバーを形成するために、天然色素を種々の濃度でナノファイバーマトリックス中に加えることができる。このように、多糖又はタンパク質などの天然ポリマーは、天然色素を保持する優れた力を有することが示されている。
【0036】
天然色素としては、ビート根抽出物、エルダーベリー抽出物、アンナット抽出物、クルクミン、アスタキサンチン、ニンジン根抽出物及び/又はそれらの組み合わせのいずれか1つを挙げることができるが、それらに限定されると見なすべきではないと考えられる。メイクアップ用途の着色ナノファイバーを製造するために、電界紡糸中に天然色素の1つ以上の組み合わせをマトリックス中に加えることができる。天然色素は、溶液中に均質に混合することができ、ナノファイバーマトリックス中に均一に分散させることができる。ナノファイバーは、色素に応じてピンク色、オレンジ色、褐色、暗色などに染色することができる。ピンク色のナノファイバーは、リップ製品又は頬紅製品として使用することができる。褐色又は暗色のナノファイバーは、アイシャドー、アイブロウ、コントゥアリング、染毛製品として使用することができる。
【0037】
機能性成分は、匂い及び香りの付いたナノファイバー製品を製造するための精油であり得る。精油としては、ホホバ油、ペパーミント油、ローズヒップ油、ビャクダン油、ラベンダー油、スクアラン油、スクアレン油、マヌカ油、ティーツリー油、カンナビノイド油、ヤシ油、オリーブ油、アマニ油、桂皮油、アサイー油、アルガン油、ヒマシ油及び/又はそれらの組み合わせを挙げることができるが、それらに限定されると見なすべきではないと考えられる。例えば、ペパーミント油は、唇に使用されるナノファイバーマスクに快適な風味を提供することができるか、又は皮膚に使用されるナノファイバーに対する冷却効果として機能することができる。
【0038】
材料の説明
前述のように、本発明は、スキンケア用途のためのナノファイバーマトリックスとして、好ましくは多糖及び/又はタンパク質材料である天然ポリマーを使用する。当業者によって認識されるように、多糖は、ポリマー炭水化物分子であり、グリコシド結合によって互いに結合した単糖単位の長鎖でできている。
【0039】
好ましくは、多糖ポリマーは、植物性多糖又は動物性多糖から選択され得る。動物性多糖としては、キチン、キトサン及びヒアルロン酸のいずれか1つを挙げることができるが、これらに限定されない。植物性多糖としては、デキストラン、プルラン、フコイダン、ペクチン、ヒアルロン酸、アルギン酸塩、アミロース及びアミロペクチンのいずれか1つを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0040】
好ましい実施形態では、多糖は、ヒアルロン酸であり得る。ヒアルロン酸は、グルクロニド結合によって結合したD-グルクロン酸及びN-アセチル-D-グルコサミンの繰り返しで構成される。ヒアルロン酸は、天然多糖であり、すべての動物組織の細胞外マトリックス中に見られる。ヒアルロン酸の生物学的機能としては、水和、関節潤滑、空間充填及び細胞移動のための骨格が挙げられる。このように、ヒアルロン酸は、優れた保水能力を有し(その分子量の最大1000倍の水を保持することができる)、そのため、非常に良好な保湿能力を有する。老化した皮膚では、ヒアルロン酸の合成速度は、ヒアルロン酸の分解速度よりも遅く、結果として乾燥し、くすみ、しわの多い皮膚状態が生じる。経皮的な水分減少の軽減及びしわの深さの減少を促進するために、日々の手入れにおいてヒアルロン酸を補うことが重要である。皮膚中のヒアルロン酸が重要であるため、これは、化粧品市場において非常に一般的な成分であり、アンチエイジング、保湿、創傷治癒及び弾性の増加という有益性が得られる。これは、天然ポリマーであり、そのため、ほとんどの人々に刺激又はアレルギーを生じさせることなく安全であると一般に見なされている。市場で使用されるほとんどのヒアルロン酸は、植物性であり、微生物発酵によって生成される。
【0041】
ヒアルロン酸の分子量は、数千ダルトン~百万ダルトンで変動する。高分子量のヒアルロン酸は、低分子量のものより優れた保湿及び膨化効果が得られる。しかし、高分子量ヒアルロン酸は、非常に低い皮膚浸透特性を有する。通常、高分子量ヒアルロン酸の局所適用は、フィルムとしての表面上であり、且つ真皮層中に浸透しない。しわの減少のために高分子量ヒアルロン酸を使用するための最も有効な方法は、細い針を用いてヒアルロン酸を真皮層中に直接注入することである。針による注入は、スパ及び皮膚科診療所で行う必要があり、炎症及び腫脹が生じる危険性がある。ヒアルロン酸を含むナノファイバーマトリックスにより、これらの問題が克服される。ナノ状態(300nmの繊維寸法)では、あらゆるバルクの高分子の溶解力は、それ自体の分子量の溶解力を上回る。従って、高い極性及び親水性のヒアルロン酸は、水中において、そのバルク状態よりもはるかに速く、皮膚の細孔のサイズ(30μm)よりも小さく分解され、皮膚に迅速に浸透する。
【0042】
タンパク質は、植物性タンパク質、動物性タンパク質及び/又は両方の組み合わせから選択され得る。植物性タンパク質としては、コムギタンパク質、加水分解コムギタンパク質、ゼイン、ダイズタンパク質、加水分解ダイズタンパク質、エンドウタンパク質、加水分解エンドウタンパク質、ヘンプタンパク質及び加水分解ヘンプタンパク質のいずれか1つを挙げることができるが、これらに限定されない。動物性タンパク質としては、コラーゲン、加水分解コラーゲン、ゼラチン、ケラチン及び加水分解ケラチンのいずれか1つを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0043】
本発明では、好ましくは、ナノファイバーマトリックスを製造するために、コラーゲン、ヒアルロン酸、デキストラン、プルラン及びそれらの組み合わせを選択する。
【0044】
ナノファイバーを製造するために、多糖及びタンパク質の材料は、酸性溶液中に溶解させて、支持基材上に電界紡糸することができる。この酸性溶液は、好ましくは、酢酸水溶液である。多糖及びタンパク質のナノファイバーマトリックスの一例は、デキストランと、プルランと、加水分解コラーゲンとの組み合わせであり得る。
【0045】
さらなる好ましい実施形態では、多糖ポリマーは、デキストランであり得る。デキストランは、水溶性ポリマーであり、無臭である場合がある。当技術分野において周知のように、これは、スクロースの発酵によって製造することができ、このスクロースは、野菜由来である。デキストランは、40kDa、60kDa、70kDa、110kDa、250kDaなどの異なる分子量で入手可能である。
【0046】
このように、デキストランは、非常に良好な生体適合性を有し、医薬用途、眼科用途、食品添加物及び化粧品用途に使用されている。化粧品中に使用される場合、これにより、皮膚の保湿、安定剤、鎮静及びひきしめという有益性が得られる。本発明におけるデキストランは、単独で又は別の天然ポリマーとともに電界紡糸されることが示されている。デキストランを含むナノファイバーマトリックスは、迅速な溶解、迅速な吸収及び保湿効果という有益性を提供し得る。
【0047】
プルランは、水溶性のポリマーであり、真菌のアウレオバシジウム・プルランス(Aureobasidium pullulans)による加水分解デンプンの発酵によって生成される。プルランは、食品添加物、薬物送達及びスキンケア製品に使用されている。これは、可食性であり、味がなく、匂いのない性質のため、ビーガンのための代替品としてゼラチンの代わりとなる良好な候補であり、ゼラチンと同様の挙動を示す。例えば、米国のCapsugel(登録商標)は、ビーガン消費者のためにゼラチンカプセルの代わりとなる、プルランで作製されたPlantcaps(商標)カプセルという製品を発売している。これは、ゼラチンカプセルのすべての有益性を提供し、上品であり、非常に明瞭であり、透明な外観を提供することができる。プルランは、口腔リフレッシャーとして、例えばListerine PocketPaks(登録商標)オーラルケアストリップとして使用されている。これがスキンケア製品に使用される場合、これにより、製品の滑らかさの形成、フィルム形成性及び瞬時のスキンタイトニング効果という有益性が得られる。可食性のため、化粧品中への使用は、安全であると考えられる。プルランを含むナノファイバーマトリックスにより、迅速な溶解、迅速な吸収、滑らかにすること及びスキンタイトニング効果という有益性を得ることができる。
【0048】
フコイダンは、大部分がL-フコース及び硫酸塩を含有する硫酸化多糖である。これは、水溶性ポリマーであり、褐海藻から抽出される。フコイダンの抽出に使用される方法としては、熱水抽出、塩酸又は硫酸を用いた酸抽出及び塩化カルシウムを用いた塩抽出が挙げられる。良好な品質なフコイダンは、高L-フコース、高度な硫酸化及び低レベルの汚染を有すると一般に考えられている。これは、栄養補助食品、化粧品及び医薬品として使用されている。フコイダンにより、皮膚の弾性の増加、UV保護、アンチエイジング、抗酸化、抗腫瘍、抗炎症性及び鎮静作用の有益性が得られる。
【0049】
コラーゲンは、動物に存在する主要タンパク質の1つである。コラーゲンは、アミノ酸でできており、三重らせん構造を形成する。無傷の(intact)三重らせんコラーゲンは、皮膚の細胞外マトリックス中に見られる不溶性繊維状タンパク質である。線維芽細胞は、コラーゲンを産生する最も一般的な細胞である。若い皮膚と比較して、老化した皮膚の線維芽細胞は、コラーゲンの合成量が少ない。従って、経口摂取又は局所適用のいずれかにより、老化した皮膚にコラーゲンを補うことが必要である。加水分解コラーゲンは、加水分解された形態のコラーゲンである。これは、消化可能であり、水溶性であり、容易に吸収されるため、アンチエイジング効果のための種々の製品中に広く使用されている。加水分解コラーゲンは、コラーゲン繊維の形成のためのブロックを形成する遊離のアミノ酸を提供することができ、リガンドとして機能することもでき、線維芽細胞上に存在する受容体に結合することができ、新しいコラーゲンの産生を刺激することができる。
【0050】
高度な皮膚有益性のために、機能性成分がナノファイバーマトリックス中に混入され得る。
【0051】
予期外にも、本発明者らは、広い表面積のため、ナノファイバーが、機能性成分を保持する最良のプラットフォームとなることを示すことを見出した。機能性成分の高い担持率は、電界紡糸法を使用することによって達成され得る。
【0052】
ポリマーマトリックス中の機能性成分の全重量は、好ましくは、0.1重量%~30重量%であり得る。1つの機能性成分又は複数の機能性成分をマトリックス中に混入できることが想定される。
【0053】
好ましい実施形態では、天然由来の活性物質/成分を機能性成分に使用することができる。このようなものとしては、ビタミン、ハーブ抽出物、果実抽出物、生物由来油及びビタミンを挙げることができるが、これらに限定されると見なすべきではない。
【0054】
好ましくは、ビタミンとしては、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンB1、B2、B3、B5及び/又はそれらの誘導体を挙げることができるが、これらに限定されると見なすべきではない。
【0055】
記載の果実抽出物としては、グレープシード抽出物、キウイフルーツ皮抽出物、トマト抽出物、ビルベリー抽出物、クコの実抽出物が挙げられるが、これらに限定されると見なすべきではない。
【0056】
記載のハーブ抽出物としては、アロエベラ抽出物、タイム抽出物、エルダーフラワー抽出物、セージ抽出物、ローズマリー抽出物及びカンナビノイド抽出物が挙げられるが、これらに限定されると見なすべきではない。
【0057】
記載の生物由来油としては、ホホバ油、ペパーミント油、ラベンダー油、スクアラン油、スクアレン油、ティーツリー油、ヤシ油、オリーブ油、アマニ油、桂皮油、アサイー油、アルガン油、ヒマシ油及びカンナビノイド油が挙げられるが、これらに限定されると見なすべきではない。
【0058】
機能性成分を含むナノファイバーマトリックスの製造が想定されており、機能性成分は、あらかじめ混合された多糖/タンパク質溶液中に加えることができる。別の実施形態では、多糖及びタンパク質は、あらかじめ混合された機能性成分溶液中に加えられ得る。
【0059】
溶媒は、水性酸性溶媒であり得、溶液の粘度及び伝導率は、加えられた機能性成分で変化され得る。
【0060】
高電圧でポリマー溶液から乾燥ナノファイバーシートを形成することができ、電界紡糸によって機能性成分をナノファイバーマトリックス中に問題なく混入することができる。
【0061】
フェイシャルマスク中にビタミンが利用される一例では、ナノファイバーマトリックス中にビタミンC誘導体を混入することができる。多糖ポリマーの有益性以外に、ビタミンCにより、抗酸化、コラーゲン合成の刺激及びメラニン形成の阻害などの他の有益性を得ることができる。別の実施形態では、ローズマリーハーブ抽出物がナノファイバーマトリックスに混入され、同様に抗酸化特性を提供し得る。ティーツリー油がナノファイバーマトリックス中に混入され、抗菌性の皮膚有益性を提供し得、且つにきび治療に有用であり得る。
【0062】
皮膚の異なる領域を対象にするため、乾燥ナノファイバーシートは、顔全体用マスク、目の下用パッチ、鼻用マスク、額用マスク、顎用マスク、頬用マスク、首用マスク並びに他の形状及び構成などの種々の形状に加工できることが想定される。
【0063】
全体美容術は、顔全体用マスク、目の下用パッチ、鼻用マスク、額用マスク、顎用マスク、頬用マスク及び首用マスクの組を含むことができ、それぞれの種類のマスクが異なる機能性成分を有することができる。例えば、使用者が、顎、頬及び鼻の領域の周囲のにきび、額及び首の周囲のしわ、目の周囲のくま並びに全体的な乾燥皮膚が生じやすいという皮膚の問題を有する場合である。美容パッケージは、アロエベラ抽出物のような全体的な保湿効果が得られる機能性成分を有するナノファイバーマトリックスで作製された顔全体用マスクを含むことができる。目の下用パッチは、くま軽減効果を得ることが可能なビタミンCを有するナノファイバーマトリックスで作製され得る。顎用マスク、頬用マスク、Tゾーン及び鼻用マスクは、抗菌性及びにきび治療のためのティーツリー油を有するナノファイバーマトリックスで作製され得る。額用マスク及び首用マスクは、抗しわ減少のためのビタミンA又は誘導体を有するナノファイバーマトリックスで作製され得る。それぞれの種類のマスクは、対象とする領域上に数秒間放置することのみを必要とする。機能性成分を保持するナノファイバーは、皮膚に効率的に送達され、異なる皮膚の領域に対して異なる機能及び有益性を提供する。この乾燥ナノファイバーシートマスクは、従来のシートマスクに関連する問題を克服する革新的な技術である。
【0064】
機能性成分の目的は、抗酸化、ブライトニング、保湿、しわの減少などのその皮膚有益性に限定されず、これによって着色などの他の性質を提供することもできる。機能性成分は、天然色素抽出物であり得る。このように、天然色素を有するナノファイバーマトリックスは、リップスティック又は唇の処置に使用することができる。ナノファイバーマトリックスは、可食性成分から製造できることも想定される。このようにして、これは、リップスティック又は唇の処置に安全に使用できる。
【0065】
ヒアルロン酸及びペパーミント油を含むナノファイバーは、非常に良好な膨化効果も示す。
【0066】
第2の態様では、実質的に前述されるナノファイバーマトリックスを製造する方法が提供される。
【0067】
多糖/及び又はタンパク質ナノファイバーマトリックスを製造する方法は、任意選択的に、スキンケア製品のための機能性活性物質又は成分を含むことができる。
【0068】
多糖/及び又はタンパク質ナノファイバーマトリックスは、電界紡糸法によって製造することができ、これによって水溶性多糖ポリマーが乾燥ナノファイバーになる。機能性成分を有する又は有しない乾燥多糖ナノファイバーマトリックスは、濡れた皮膚によって迅速に効率的に吸収され得、優れた治療的有益性を提供することができる。
【0069】
一実施形態では、多糖ポリマーは、水溶性ポリマーであり得る。
【0070】
タンパク質としては、コラーゲン、加水分解コラーゲン、ゼラチン、乳清タンパク質、加水分解乳清タンパク質、ケラチン、加水分解ケラチン、コムギタンパク質、加水分解コムギタンパク質、ダイズタンパク質、加水分解ダイズタンパク質、エンドウタンパク質、加水分解エンドウタンパク質、ヘンプタンパク質及び/又は加水分解ヘンプタンパク質を挙げることができるが、これらに限定されると見なすべきではない。
【0071】
ナノファイバーマトリックスは、少なくとも1種の多糖及び/又は少なくとも1種のタンパク質で作製され得る。ナノファイバーマトリックスを製造するために、1種以上の多糖及び/又は1種以上のタンパク質が選択され得る。
【0072】
電界紡糸溶液
多糖ナノファイバーマトリックスを製造する方法では、多糖及びタンパク質を水性溶媒中に溶解させることができる。電界紡糸法を使用することにより、高電圧下で多糖及びタンパク質溶液がナノファイバーに変換され、これらのナノファイバーを収集基材材料上に堆積することができる。
【0073】
前述のように、ナノファイバーマトリックスは、電界紡糸法によって製造することができる。第1のステップは、電界紡糸溶液を作製することである。多糖及び/又はタンパク質を水溶液中に加え、すべての材料が完全に溶解するまで1~3時間混合する。ここで、水溶液は、好ましくは、水中における10~30重量%のエタノール又は酢酸である。溶液中の全ポリマー濃度は、選択されたポリマーの組成及びポリマーの分子量によって10重量%~50重量%であり得る。溶液の粘度は、100cst~400cstであり得、溶液の伝導率は、1~5mS/cmであり得る。本発明では、ポリマーは、天然ポリマーであり、調製される電界紡糸溶液は、いかなる合成ポリマー、防腐剤、架橋剤及び界面活性剤も含まない。
【0074】
電界紡糸条件
前述のように、電界紡糸溶液を調製するために、数時間にわたって撹拌下で多糖及びタンパク質材料を溶媒中に逐次加えることができる。別の実施形態では、多糖溶液及びタンパク質溶液を別々に調製し、その後、2つの溶液を互いに混合することができる。
【0075】
電界紡糸法は、無針電界紡糸法を含むことができる。
【0076】
電界紡糸パラメーター、特に電圧、電流、電界紡糸距離、溶液供給速度は、最終的にポリマーの選択及びポリマーの分子量によって決定される溶液の粘度及び伝導率に応じて調節する必要がある。湿度及び温度などの周囲環境条件は、電界紡糸プロセスにおいて重要である。本発明における好ましい環境相対湿度は、25%~50%であり、温度は、15℃~35℃であり得る。調製された電界紡糸溶液は、電界紡糸装置に加えられる。高電圧下でポリマーがナノファイバーに電界紡糸される。溶媒は、電界紡糸プロセス中に蒸発し、そのため、製造されるナノファイバーは、溶媒を含まない乾燥シートである。製造されたナノファイバーマトリックスは、タンパク質ナノファイバー、多糖ナノファイバー又はタンパク質と多糖とのナノファイバーの組み合わせである。
【0077】
製造された多糖及びタンパク質のナノファイバーマトリックスの組み合わせは、皮膚に対して多糖及びタンパク質の両方からの有益性を提供し得る。
【0078】
機能性成分をナノファイバーマトリックス中に混入することで、より高度な皮膚有益性を得ることができる。ナノファイバーは、機能性成分の良好な安定剤、担体及び送達プラットフォームとなることが分かっている。
【0079】
ナノファイバーの直径は、10nm~2ミクロンであり得る。
【0080】
ナノファイバーマトリックスの密度は、1gsm~100gsmであり得る。
【0081】
ナノファイバーマトリックス中の機能性成分の重量比は、0.1重量%~30重量%であり得る。
【0082】
上記の実施形態は、本出願の明細書中で個別に又は一括して言及又は指定される部分、要素及び特徴並びに上記の部分、要素又は特徴のいずれか2つ以上のあらゆる組み合わせを含むと広く言うこともできる。
【0083】
機能性成分を有するナノファイバーマトリックス
高度な皮膚有益性を達成するために、機能性成分がナノファイバーマトリックス中に混入される。それらの広い表面積のため、ナノファイバーは、機能性成分を保持するための最良のプラットフォームになることが示されている。電界紡糸法を使用することにより、機能性成分の高担持率を達成することができる。ポリマーマトリックス中の機能性成分の全重量は、好ましくは、0.01重量%~30重量%である。1つの機能性成分又は複数の機能性成分をマトリックス中に混入することができる。機能性成分は、
I.種々の皮膚状態のための皮膚有益性の提供;
II.メイクアップ製品のための着色効果の提供;及び
III.化粧品のための匂い又は香りの機能の提供
の3つの分類に分割することができる。
【0084】
機能性成分を含むナノファイバーマトリックスは、以下のステップによって製造される。最初に、多糖及び/又はタンパク質を水溶液中に溶解させる。ここで、水溶液は、水中において10重量%~30重量%のエタノール又は酢酸である。その後、機能性成分を多糖/タンパク質溶液中に加え、ポリマー溶液中に機能性成分が溶解するまで又は均一に分散するまで十分に混合する。機能性成分を含むポリマー溶液を電界紡糸装置に加える。電界紡糸後、機能性成分は、ナノファイバーマトリックス中に問題なく混入される。
【0085】
皮膚有益性が得られる機能性成分は、ビタミン、ケトン、脂肪酸、テルペン、ポリフェノール、カロテノイド、植物抽出物、ハーブ抽出物、果実抽出物、植物抽出物、精油及びそれらの組み合わせから選択され得るが、これらに限定されない。ビタミンとしては、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンB1、B2、B3、B5又はそれらの誘導体を挙げることができるが、これらに限定されない。果実抽出物としては、グレープシード抽出物、キウイフルーツ皮抽出物、トマト抽出物、ビルベリー抽出物及びクコの実抽出物が挙げられるが、これらに限定されない。植物/ハーブ抽出物としては、アロエベラ抽出物、タイム抽出物、エルダーフラワー抽出物、カンナビノイド抽出物、セージ抽出物及びローズマリー抽出物が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、ローズマリーハーブ抽出物を含むナノファイバーマトリックスにより、抗酸化特性が得られる。ビタミンCを含むナノファイバーマトリックスにより、皮膚のブライトニング効果が得られる。ビタミンAを含むナノファイバーにより、にきび治療機能が得られる。
【0086】
皮膚のための機能性成分は、抗酸化、ブライトニング、保湿、しわの減少などの効果をもたらすが、それは、着色などの別の機能を提供することもできる。着色ナノファイバーは、メイクアップ製品に使用することができる。着色ナノファイバーを製造するために、電界紡糸前にポリマー溶液中に天然色素が加えられる。天然色素としては、ビート根抽出物、エルダーベリー抽出物、アンナット抽出物、クルクミン、アスタキサンチン、ニンジン根抽出物及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。ビート根抽出物は、色素のベタニンを含むため、赤色/ピンク色を示す。エルダーベリー抽出物中の主要色素は、シアニジン3-グルコシドである。アンナット抽出物中の主要色素は、ビキシン及びノルビキシンであり、これらは、黄色~オレンジ色として存在する。ニンジン根抽出物中のβ-カロチンは、オレンジ色に寄与する。天然色素を有するナノファイバーマトリックスは、ネイルポリッシュ、リップ、頬紅、アイブロウ製品、アイシャドー、コントゥアリング及びヘア製品に使用することができる。前述のように、本発明におけるナノファイバーマトリックスは、すべて天然成分を含む。従って、これは、安全に使用でき、特にリップ型製品に有益である。
【0087】
皮膚有益性、着色効果とは別に、機能性成分は、ナノファイバー製品に匂いを提供するためにも選択され得、例えば精油をナノファイバー中に加えることができる。精油としては、ホホバ油、ペパーミント油、ラベンダー油、スクアラン油、スクアレン油、ティーツリー油、ヤシ油、オリーブ油、マヌカ油、カンナビノイド油、アマニ油、桂皮油、アサイー油、アルガン油、ヒマシ油及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0088】
さらに、実施形態が関係する技術分野において周知の均等物を有する特定の整数が本明細書において言及される場合、そのような周知の均等物は、個別に記載されるかのように本明細書に援用されると見なされる。
【実施例】
【0089】
実施例
ここで、具体例を参照することにより、上記の製品、組成物、方法及びそれらの使用について説明する。
【0090】
実施例1
ナノファイバーマトリックスの形態
図1に示されるように、本発明では、製造されたナノファイバーマトリックスの形態は、走査型電子顕微鏡法(SEM)によって分析され、繊維直径分布は、Fibraquantソフトウェアによって分析される。
【0091】
示されているように、デキストラン、プルラン及びコラーゲンを含むポリマー溶液は、問題なくナノファイバーに電界紡糸されている。特に、ナノファイバーマトリックスは、
図1(a)に示されるような連続ネットワークであり、繊維直径分布は、
図1(b)に示されている。この種類のマトリックスの平均直径は、495nmであり、メジアン径は、426nmである。本発明の実施形態は、10~2000nmの繊維直径に及ぶことが想定される。
【0092】
実施例2
適用方法
ナノファイバーマトリックスマスクを使用するために、最初に清浄な水で皮膚を濡らす。この水は、氷水、室温の水又は温水であり得、消費者に対して種々の選択肢が提供される。水の代わりに、水性化粧液若しくはミスト又はエアロゾルを使用することもできる。
【0093】
ナノファイバーマトリックスは、濡れた皮膚上に直接使用され、ナノファイバーは、皮膚によって瞬時に吸収される。洗い落とす必要はない。
【0094】
実施例3
ナノファイバーマトリックスの皮膚浸透特性
ナノファイバーマトリックスによって製造された化粧品は、皮膚によって吸収され、時間が経つとより深く皮膚に浸透する。この機能を示すための分析ツールとして光干渉断層法が使用される。当技術分野において周知のように、光干渉断層法は、皮膚層構造の研究、病気の診断及び薬物送達のために皮膚科学において広く使用されている非侵襲方法である。
【0095】
実験の場合、ナノファイバーマトリックスを死産のブタの皮膚上に使用し、t=0、20分、30分、35分、45分及び50分において皮膚の断面を走査する。各時点における光信号を
図2に示す。ここで、ナノファイバーマトリックスは、デキストラン、プルラン及びコラーゲンを含み、他の成分を含まない。
【0096】
ナノファイバーが皮膚表面上にちょうど適用されるt=0において、ピークは、1.44mmの深さに位置する。t=20分において、ピークは、1.53mmの深さまで移動する。これは、皮膚層中のナノファイバーの浸透が20分以内に起こることを示す。ピークは、30分後に1.6mm、35分後に1.7mm、45分後に1.76mm、50分後に1.89の深さまで移動し続ける。これは、このナノファイバーマトリックス及び成分が皮膚中に浸透し続け、時間が経つと皮膚中にさらに浸透することを示す。
【0097】
実施例4
植物性又はビーガンのためのナノファイバーマトリックス
本発明において開示されるビーガン用製品は、植物性多糖及び/又は植物性タンパク質を選択することによって達成される。消費者は、動物虐待、持続可能性及び動物性製品に関連する農業の環境フットプリントを考慮するため、ビーガン用製品は、一層人気が高まっている。
【0098】
ナノファイバーマトリックスは、100%植物性ポリマーを用いて製造することができる。この実施例では、ビーガン用ナノファイバーマトリックスは、デキストラン、プルラン及びフコイダンを用いて製造される。ビーガン用ナノファイバーマトリックスの形態及び繊維直径分布を
図3に示す。このナノファイバーマトリックスを製造するために、最初にデキストラン、プルラン及びフコイダンを酢酸水溶液中に加え、すべてのポリマーが完全に溶解するまで1~3時間撹拌することにより、ポリマー溶液を調製する。ポリマー中に加えられるフコイダンの重量は、100mg/gである。その後、ポリマー溶液を電界紡糸装置に加え、高電圧下でナノファイバーマトリックスに電界紡糸される。
【0099】
このビーガン用ナノファイバーマトリックスは、繊維の連続ネットワークである。ナノファイバーの平均直径は、320nmであり、メジアン径は、275nmである。デキストラン、プルラン及びフコイダンにより、異なる化粧品の有益性を得ることができる。デキストランは、優れた保湿の有益性を有する。プルランは、優れた皮膚引き締め効果を有し、フコイダンにより、抗酸化、抗炎症性及びUV保護特性などの有益性を得ることができる。このビーガン用ナノファイバーマトリックスは、複数の化粧品の有益性を提供し、同時に非常に安全に使用することができる。さらに、これらは、すべて可食性材料であり、食品産業で補助剤として加えられている。食品グレードのデキストラン、プルラン及びフコイダンがナノファイバーの製造に利用される場合、結果として得られるナノファイバーマトリックスは、「可食性」化粧品と見なすことができる。
【0100】
ビーガン用ナノファイバーマトリックス中のフコイダンの存在を実証するために、分光光度法が周知の方法で使用される。フコイダンは、大きい命題のL-フコースを含み、そのため、L-フコースをマトリックス中のフコイダンの存在のマーカー又は指標として使用することができる。製造されたビーガン用ナノファイバーマトリックスをMilli-Q水中におよそ100mg/mLの濃度で溶解させる。この溶液のアリコートを12M硫酸中に希釈し、常に撹拌しながら100℃で15分間加熱する。室温まで冷却した後、3%w/vのL-システイン塩酸塩を加える。同じ方法でL-フコースの溶液を調製することによって較正曲線を作成する。フコイダンの精製抽出物をこの実験の陽性対照として分析する。試料及び標準物質をマイクロプレート中に等分し、405nmにおいてマイクロプレートリーダーを用いて読み取る。ビーガン用ナノファイバーの分析を3回行うと、ナノファイバー中のL-フコースの平均値は、147mg/gである。デキストラン及びプルランは、L-フコースを含まないため、検出されるL-フコース量は、フコイダンに由来する。これにより、ナノファイバーマトリックス中のフコイダンの存在が示される。L-フコース含有量は、抽出方法及び海藻種によって大きく左右される。全ポリマー重量中の加えられたフコイダンは、100mg/gである。これは、ビーガン用ナノファイバーマトリックスの製造に利用されるフコイダンが多量のL-フコースを含むことを意味する。
【0101】
デキストラン、プルラン及びフコイダンを含むビーガン用ナノファイバーマトリックスは、良好な抗炎症性を示し、これは、インビトロ研究によって示される。ヒト再構成表皮をビーガン用ナノファイバーに接触させ(実際の使用条件を模倣するために局所適用)、炎症事象を抑制するビーガン用ナノファイバーの能力を評価するためにドデシル硫酸ナトリウム(SDS)などの刺激性炎症性物質で処理する。評価は、陰性対照としての無処理表皮と、陽性対照として炎症性物質(SDS)のみで処理した表皮とを用いて行われる。TNF-αは、急性炎症誘発性マーカーとして炎症過程及び酸化的ストレスと関連付けられることが多い。24時間の培養後、試験試料中及び対照試料中の炎症誘発性サイトカインTNF-αの濃度が
図4のように得られ、これらは、表皮の炎症状態を示す。
【0102】
TNF-αの濃度は、無処理表皮中で25.68pg/ml、0.1%炎症性物質SDSで処理した表皮中で47.92pg/ml、ビーガン用ナノファイバー及び0.1%炎症性物質で処理した表皮中で45.1pg/mlである。ビーガン用ナノファイバーで処理した表皮はTNF-αの放出が減少する。従って、これらの結果は、デキストラン、プルラン及びフコイダンによって製造されたビーガン用ナノファイバーが抗炎症性及び炎症性物質に対する防護能力を有することを示す。
【0103】
実施例5
配合物の開発:ブライトニング
本発明のさらなる一例は、皮膚のブライトニング効果のためのビタミンC(アスコルビン酸)誘導体を含むナノファイバーマトリックスである。この実施例では、ナノファイバーマトリックスは、コラーゲン及びヒアルロン酸によって製造される。エチルアスコルビン酸は、安定な形態のビタミンCであり、ナノファイバーマトリックス中に混入される機能性成分として加えられる。ブライトニング化粧品のためのこの配合物を製造するために、最初に電界紡糸溶液が調製される。コラーゲン及びヒアルロン酸を酢酸水溶液中に加え、それらが完全に溶解するまで十分に混合する。その後、エチルアスコルビン酸をこのポリマー溶液中に加え、これが完全に溶解するまで十分に混合する。本発明におけるポリマー中のエチルアスコルビン酸の濃度は、好ましくは、0.05%~10%である。この溶液を電界紡糸装置に加える。この配合物の製造を最適化するために、電界紡糸パラメーター及び周囲環境条件を調節する。製造されたナノファイバーマトリックスは、エチルアスコルビン酸を含む。この配合物のブライトニング効果をインビトロ研究によって評価する。
【0104】
ブライトニング効果を評価するためにインビトロ研究が用いられ、メラノサイトのメラニン産生を分析することによって判定される。メラノサイトによって産生されるメラニンの量によって皮膚の色が決定され、従って、ブライトニング効果は、メラノサイトのメラニン産生に対する配合物の効果によって評価することができる。この研究では、ヒト表皮メラノサイトが利用される。ブライトニング成分として従来使用されるコウジ酸が陽性対照として用いられる。コウジ酸は、15%エタノール/ハンクス平衡塩類溶液中で調製し、細胞培養に加えられて、細胞培養中42μg/mlの最終濃度を得る。ナノファイバーの0.8cmの円を細胞培養中に直接適用して、細胞培養中3μg/mlのエチルアスコルビン酸の最終濃度を得る。
図5は、96時間の培養後の、細胞のみ、コウジ酸で処理した細胞及びナノファイバーで処理した細胞中のメラニン濃度の結果を示す。
【0105】
各試料の吸光度を405nmにおいて読み取り、その後、合成メラニンの検量線と比較して、細胞培養中のメラニンの濃度を評価する。示される結果は、3回の測定の平均値である。メラニン濃度は、細胞のみで101.5μg/mlであり、コウジ酸を有する細胞で101.1μg/mlであり、ナノファイバーを有する細胞で97.48μg/mlである。コウジ酸は、メラニン産生に対してわずかな阻害を示すが、統計的に有意ではない。これは、おそらく、加えたコウジ酸濃度が非常に低いためである。エチルアスコルビン酸を有するナノファイバーマトリックスは、細胞のみと比較してメラニン産生に対して4%の阻害を示す。細胞培養中のエチルアスコルビン酸の濃度は、わずか3μg/mlであり、コウジ酸の濃度の14分の1である。しかし、メラニン阻害能力は、コウジ酸よりも優れている。これは、ナノファイバーマトリックスが、有効成分を保持する良好なプラットフォームとなり、機能性成分の有益性を効果的に最大化することを示す。この配合物は、ブライトニング効果を目的とする顔全体用マスク又は目の下のくまを軽減するための目の下用パッチに使用することができる。
【0106】
実施例6
配合物の開発:アンチエイジング及びしわの減少
インビトロ評価:エラスチン刺激
異なる種類の多糖及びタンパク質を選択することにより、ナノファイバーマトリックスは、皮膚有益性に対する異なる目的を実現することができる。本発明において開発されたナノファイバーマトリックスの一例は、インビトロ研究によりエラスチン刺激特性の向上を示す。このナノファイバーマトリックスは、しわの減少及び皮膚の弾性の改善のために使用することができる。
図6は、皮膚線維芽細胞中の24時間の培養後の、細胞のみ、コラーゲン及びヒアルロン酸を含むナノファイバーマトリックスを有する細胞並びにデキストラン、プルラン及びコラーゲンを含むナノファイバーマトリックスを有する細胞のエラスチン濃度を示す。
【0107】
皮膚線維芽細胞培養中の24時間の培養後、産生したエラスチンの濃度は、細胞のみで0.143ng/mlであり、コラーゲン及びヒアルロン酸を含むナノファイバーマトリックスで0.544ng/mlであり、デキストラン、プルラン及びコラーゲンを含むナノファイバーマトリックスで0.165ng/mlである。ナノファイバーマトリックスの両方の配合物がエラスチン刺激性の向上を示す。コラーゲン及びヒアルロン酸のナノファイバーマトリックスは、細胞のみと比較して280%だけエラスチン産生を刺激する。デキストラン、プルラン及びコラーゲンのナノファイバーマトリックスは、細胞のみと比較して15%だけエラスチン産生を刺激する。両方のナノファイバーマトリックスがエラスチン刺激特性を示すが、コラーゲン及びヒアルロン酸で作製されたナノファイバーマトリックスがはるかに良好な性能を示すため、このマトリックスが、加齢の兆候を軽減するための抗しわ特性のために好ましくは選択されるであろう。
【0108】
インビボ評価:しわの減少
機能性成分をナノファイバーマトリックス中に混入することで、さらなる有益性を得ることができる。機能性成分は、果実抽出物から選択され得る。キウイフルーツ及びグレープシードの抽出物を有するコラーゲン及びヒアルロン酸のナノファイバーマトリックスを含む開発された配合物の一例は、優れたしわ減少効果を示し、これは、このナノファイバー配合物の使用前後を示す
図7に最もよく示されている。
【0109】
志願者は、目の端の周囲にナノファイバー製品を使用し、使用前後の写真を撮影する。見ることができるように、このナノファイバー配合物を用いた後、しわの量及び深さが明らかに減少している。
【0110】
キウイフルーツ及びグレープシードの抽出物を有するコラーゲン及びヒアルロン酸のマトリックス配合物のアンチエイジング特性を示すために、30人の中年の志願者(32歳~58歳の年齢分布、平均年齢45歳)のフォーカスグループに対して別の独立したインビボ研究を行った。志願者は、目の下の領域の一方の側にのみナノファイバー製品を使用し、他方の側には対照としてナノファイバー配合物を使用しなかった。志願者は、このナノファイバー製品を1日1回使用し、これを28日間連続して使用した。しわ及び弾性の情報が得られ、VISIA皮膚分析ソフトウェアによって周知の方法で分析する。情報は、0日、14日及び28日に収集した。
【0111】
図8は、ナノファイバー製品を使用する顔の一方の側及びナノファイバー製品を使用しない他方の側の経時的なしわの変化の結果を示す。
【0112】
試験開始前のD0において、ナノファイバー製品の適用を選択した側は、より重大なしわを有するように見える。ナノファイバー製品の使用開始後に時間が経つと、しわが徐々に減少し、しわは、28日において3%減少する。ナノファイバー製品を使用しない対照側では、しわが徐々に増加し、28日において8%だけ増加した。
【0113】
同じ試験プロトコルを使用して、目の領域の周囲の眼角弾性変化を試験し、結果を
図9に示す。
【0114】
前述のように、志願者は、ナノファイバー製品を一方の側にのみ使用し、他方の側には対照として何も使用しなかった。D0の開始時点では、対照側が試験側よりも良好な弾性を有することを示す。しかし、ナノファイバー製品を適用しないと、経時的に弾性が徐々に減少し、28日後に2%だけ減少する。志願者がナノファイバー製品を1日1回使用し、28日間連続して適用する試験側は、弾性が6%だけ増加した。
【0115】
インビトロ研究及びインビボ研究の両方は、キウイフルーツ及びグレープシードの抽出物を有するコラーゲン及びヒアルロン酸のナノファイバーマトリックスの配合物が、優れたしわ減少特性を有し、化粧品として使用する場合に加齢の兆候を減少するために使用できることを示す。
【0116】
実施例7
配合物の開発:唇用マスクのための着色ナノファイバー
メイクアップ製品のための着色ナノファイバーを製造するための機能性成分として天然色素が選択される。
図10は、唇型のピンク色ナノファイバーの一例を示し、これは、唇用マスク用途に使用することができる。ピンク色ナノファイバーは、電界紡糸前にコラーゲン及びヒアルロン酸のポリマー溶液中にベタニン(ビート根から抽出される)を加えることによって実現される。
【0117】
タンパク質及び多糖などの天然ポリマーは、天然色素を保持する優れた性質が示されている。この配合物を製造するために、最初にコラーゲン及びヒアルロン酸を酸性酸水溶液中に十分に混合する。その後、ベタニンをポリマー溶液中に加え、ポリマー溶液と十分に混合する。電界紡糸後、ベタニンは、コラーゲン及びヒアルロン酸のナノファイバーマトリックス中に問題なく混入される。ナノファイバーシート全体は、均一に着色され、凝集粒子が全く見られない。加えたベタニンのため、ピンク色のナノファイバーが達成される。合成生成物及び防腐剤を含む別のリップ製品と異なる。この唇用製品は、3つの成分のみを含む。すべての成分が天然であり、それぞれの機能を有する。コラーゲンは、しわの減少に有益であり、ヒアルロン酸は、保湿及び膨化効果を有する一方、ベラニンは、色を提供する。有色色素は、均一なコーティングとして唇表面上に残存する。これらの3つの成分は、可食性であるため、これらは、安全に使用できると考えられる。
【0118】
実施例8
種々の形状
製造された乾燥ナノファイバーシートは、
図11に示されるように顔全体用マスク、上部フェイスマスク、下部フェイスマスク、目の下用パッチ、鼻用マスク、額用マスク、顎用マスク、頬用マスク、首用マスク及び対象とする皮膚の異なる領域などの種々の形状に加工することができる。
【0119】
例えば、全身美容術の計画は、顔全体用マスク、目の下用パッチ、鼻用マスク、額用マスク、顎用マスク、頬用マスク及び首用マスクの組を含むことができ、それぞれの種類のマスクは、異なる機能性成分を含むことができる。
【0120】
通常、消費者は、複数の皮膚状態の組み合わせを有する。例えば、使用者は、顎、頬及び鼻の領域の周囲のにきび、額及び首の周囲のしわ、目の周囲のくま並びに全体的な乾燥皮膚が生じやすいという皮膚の問題を有する。カスタマイズされた美容パッケージは、全体的な保湿効果が得られる機能性成分、例えばアロエベラ抽出物を有するナノファイバーマトリックスから製造される顔全体用マスクを含むことができる。目の下用パッチは、くま軽減効果を得ることができるビタミンCを有するナノファイバーマトリックスから製造される。顎用マスク、頬用マスク及び鼻用マスクは、にきび治療のためのビタミンAを有するナノファイバーマトリックスから製造することができる。額用マスク及び首用マスクは、抗しわ減少のためのキウイフルーツ及びグレープシードの抽出物を有するナノファイバーマトリックスから製造される。それぞれの種類のマスクは、対象とする領域上にわずか数秒間放置することのみを必要とする。機能性成分を保持するナノファイバーは、皮膚によって効率的に吸収され、種々の皮膚状態に対して異なる機能及び有益性を提供する。従って、この乾燥ナノファイバーシートマスクは、既存の従来のシートマスクの問題を克服する発明性がある。
【0121】
さらに、本発明は、消費者の必要性に応じて任意の形状にナノファイバーを手作業で切断する選択肢も消費者に提供する。本発明は、すべての人に適合するとは限らず、所望の形状に容易に切断することができない現行の単一サイズのマスクの問題を克服することができる。例えば、にきび治療の場合、使用者は、ナノファイバー製品を切断して、皮膚の別の部分に影響を与えずに、単に影響のある領域に使用することができる。
【0122】
実施例9
ナノファイバー製品の安全性及び安定性
細胞毒性試験
使用の安全性を評価するために、ナノファイバー製品の細胞毒性試験をインビトロで行った。この試験は、皮膚線維芽細胞及びケラチノサイトに対して行われる。結果は、乳酸デヒドロゲナーゼの活性によって求められる。コラーゲン及びヒアルロン酸のナノファイバーマトリックス、キウイフルーツ及びグレープシードの抽出物を有するコラーゲン及びヒアルロン酸のナノファイバーマトリックス並びにデキストラン、プルラン及びコラーゲンのナノファイバーマトリックスの3つの配合物の試験を行う。
図12は、皮膚線維芽細胞及びケラチノサイト中のこれらの異なる配合物からの乳酸デヒドロゲナーゼ量を示す。
【0123】
72時間の培養時間後、上記の配合物は、いずれも線維芽細胞及びケラチノサイトに対する毒性作用を示さなかった。
【0124】
微生物試験
多糖及び/又はタンパク質から製造されるナノファイバーマトリックスについて開示される本発明は、いかなる防腐剤も含まない。ナノファイバーマトリックスの微生物含有量の結果は、防腐剤が不要であることを示す。
【0125】
特に、
図13は、開始時と、室温及び40℃において2か月の時間の保管後との微生物含有量の結果を示す。この配合物は、キウイフルーツ及びグレープシードの抽出物を有するコラーゲン及びヒアルロン酸のナノファイバーマトリックスで作製される。
【0126】
全好気性中温性細菌、全酵母及びカビ数及び全好気性中温性微生物は、室温及び40℃における2か月の時間の保管後、すべて1cfu未満である。制御された条件下では、40℃における保管は、室温における8か月の保管の結果を示すことができる。特定の微生物は、存在しない。これは、本発明によって製造された化粧品が防腐剤を必要としないことを示す。
【0127】
本発明の態様は、単なる例として説明されており、本明細書の請求項の範囲から逸脱することなく、それらの修正形態及び追加形態がなされ得ることが認識されるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2021-08-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然バイオポリマー組成物由来のナノファイバーマトリックスであって、前記天然バイオポリマー組成物は、
天然由来の高分子量デキストラン及びプルランのいずれか又は両方である少なくとも1つのベースポリマー及び水溶性の多糖、並びに
少なくとも
さらに1種の
機能性天然由来の多糖又は天然由来のタンパク質
を含
み、
前記ナノファイバーマトリックスは
、高度なスキンケア用途のための
、高度な治療的有益性を有する機能性活性物質又は成分を
さらに含み、
前記ナノファイバー
マトリックスは、
1gsm~100gsmの間の密度で乾燥ナノファイバーシートのような乾燥ナノファイバー不織布に電界紡糸され;
且つ好ましくは濡れた皮膚との接触時、前記ナノファイバーは、高度な治療的有益性のために、前記皮膚中に徐々に溶解され、且つ
前記機能性活性物質
又は成分を放出するか、又は前記皮膚上に留まって
前記機能性活性物質
又は成分を放出する、ナノファイバーマトリックス。
【請求項2】
前記ナノファイバーマトリックスは、天然ポリマーから誘導され、溶媒を含まず、界面活性剤を含まず、防腐剤を含まず、且つ架橋剤を含まず;合成又は石油由来の化学物質を含まない、請求項1に記載のナノファイバーマトリックス。
【請求項3】
前記
高分子量多糖は、
10kDa~1000kDaの範囲であり、動物性若しくは植物性又は両方の組み合わせである、請求項1又は2に記載のナノファイバーマトリックス。
【請求項4】
前記動物性多糖は、キチン、キトサン、ヒアルロン酸又はそれらの組み合わせを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のナノファイバーマトリックス。
【請求項5】
前記植物性多糖は、デキストラン、プルラン、フコイダン、アルギン酸塩、ペクチン、ヒアルロン酸、
セルロース、アミロース、アミロペクチン又はそれらの組み合わせを含む、請求項1~
4のいずれか一項に記載のナノファイバーマトリックス。
【請求項6】
前記タンパク質は、動物性若しくは植物性又は両方の組み合わせである、請求項1~
5のいずれか一項に記載のナノファイバーマトリックス。
【請求項7】
前記機能性動物性タンパク質は、コラーゲン、加水分解コラーゲン、変性コラーゲン、変性完全鎖コラーゲン、ゼラチン、ケラチン、加水分解ケラチン又はそれらの組み合わせを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のナノファイバーマトリックス。
【請求項8】
前記
機能性植物性タンパク質は、乳清タンパク質、加水分解乳清タンパク質、ゼイン、コムギタンパク質、加水分解コムギタンパク質、ダイズタンパク質、加水分解ダイズタンパク質、エンドウタンパク質、加水分解エンドウタンパク質、ヘンプタンパク質、加水分解ヘンプタンパク質又はそれらの組み合わせを含む、請求項1~
7のいずれか一項に記載のナノファイバーマトリックス。
【請求項9】
前記ナノファイバーマトリックスは、少なくとも1種の多糖及び/又は少なくとも1種のタンパク質で作製され;且つ好ましくは、1種以上の多糖及び/又は1種以上のタンパク質は、ナノファイバーマトリックスを製造するために選択される、請求項1~
8のいずれか一項に記載のナノファイバーマトリックス。
【請求項10】
前記ナノファイバーマトリックスは、多糖及び/又はタンパク質の組み合わせであり、且つ皮膚に対して多糖及びタンパク質の両方からの有益性を提供する、請求項1~
9のいずれか一項に記載のナノファイバーマトリックス。
【請求項11】
前記機能性成分は、前記ナノファイバーマトリックス中に混入されて、より高度な
治療的皮膚有益性を提供し;前記ナノファイバーマトリックスは、機能性成分のための良好な安定剤、担体及び送達プラットフォームである、請求項1~
10のいずれか一項に記載のナノファイバーマトリックス。
【請求項12】
前記機能性成分の前記皮膚有益性は、限定されないが、保湿、ブライトニング、しわの減少、くまの軽減、抗菌性、タイトニング、抗酸化及びにきび治療を含む、請求項1~
11のいずれか一項に記載のナノファイバーマトリックス。
【請求項13】
前記機能性成分は、膨化、紅潮及び着色の他の有益性を提供する、請求項1~1
2のいずれか一項に記載のナノファイバーマトリックス。
【請求項14】
前記機能性成分は、限定されないが、ビタミン、果実抽出物、植物抽出物、ハーブ抽出物及び生物由来油又は精油を含む、請求項1~1
3のいずれか一項に記載のナノファイバーマトリックス。
【請求項15】
前記ビタミンは、限定されないが、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンB1、B2、B3、B5若しくはそれらの誘導体又はそれらの組み合わせを含む、請求項1
4に記載のナノファイバーマトリックス。
【請求項16】
前記果実抽出物機能性成分は、限定されないが、グレープシード抽出物、キウイフルーツ皮抽出物、トマト抽出物、ビルベリー抽出物、クコの実抽出物を含む、請求項1
4に記載のナノファイバーマトリックス。
【請求項17】
前記植物又はハーブ抽出物機能性成分は、限定されないが、アロエベラ抽出物、タイム抽出物、エルダーフラワー抽出物、セージ抽出物、ローズマリー抽出物、カンナビノイド抽出物を含む、請求項1
4に記載のナノファイバーマトリックス。
【請求項18】
前記精油は、匂いの機能を提供し、限定されないが、ホホバ油、ペパーミント油、ラベンダー油、ローズヒップ油、ビャクダン油、ラベンダー油、スクアラン油、スクアレン油、マヌカ油、ティーツリー油、カンナビノイド油、ヤシ油、オリーブ油、アマニ油、桂皮油、アサイー油、アルガン油、ヒマシ油及びそれらの組み合わせを含む、請求項1
4に記載のナノファイバーマトリックス。
【請求項19】
機能性成分の組成物は、複数の高度な有益性を得るために前記多糖及び/又はタンパク質のナノファイバーマトリックス中に加えられ;好ましくは、異なる機能性成分を保持する前記ナノファイバーマトリックスは、皮膚のための異なる機能を提供する、請求項1~1
8のいずれか一項に記載のナノファイバーマトリックス。
【請求項20】
前記機能性成分は、前記ナノファイバーに対する着色効果を提供し、前記着色ナノファイバーは、頬紅、アイシャドー、アイブロウ製品、ネイルポリッシュ、リップ製品、コントゥアリング及び染毛製品のようなメイクアップ製品に使用される、請求項1
3に記載のナノファイバーマトリックス。
【請求項21】
前記ナノファイバーマトリックスの前記着色ナノファイバーは、植物、野菜又は果実から抽出された天然色素に由来し、前記天然色素は、限定されないが、ビート根抽出物、エルダーベリー抽出物、アンナット抽出物、クルクミン、アスタキサンチン、ニンジン根抽出物及びそれらの組み合わせを含む、請求項
20に記載のナノファイバーマトリックス。
【請求項22】
1種の機能性成分又は複数種の機能性成分を保持することができる、請求項1~
21のいずれか一項に記載のナノファイバーマトリックス。
【請求項23】
化粧品は、前記濡れた皮膚上に適用され、且つナノファイバーは、前記皮膚によって吸収されて、皮膚有益性、匂いの機能又は着色効果を提供する、請求項1~2
2のいずれか一項に記載のナノファイバーマトリックス。
【請求項24】
皮膚有益性及び前記ナノファイバーの前記皮膚中への溶解速度は、機能性成分によって変化する、請求項1~2
3のいずれか一項に記載のナノファイバーマトリックス。
【請求項25】
前記ナノファイバーの直径は、10nm~2ミクロンである、請求項1~2
4のいずれか一項に記載のナノファイバーマトリックス。
【請求項26】
前記天然由来の多糖はデキストラン又はプルランである、請求項1~25のいずれか一項に記載のナノファイバーマトリックス。
【請求項27】
請求項1~2
6のいずれか一項に記載のナノファイバーマトリックスで作製された乾燥ナノファイバーシートであって、前記乾燥ナノファイバーシートは、皮膚の異なる領域:顔全体、上部フェイスマスク、下部フェイスマスク、目の下、額、鼻、顎、頬、唇、Tゾーン及び首に使用するための異なる形状に加工されるように使用される乾燥ナノファイバーシート。
【請求項28】
前記乾燥ナノファイバーシートは、その要求に適合するように任意の所望の形状に
、使用者により手作業で、又は機械的に、切断される、請求項2
7に記載の乾燥ナノファイバーシート。
【請求項29】
加えられた機能性活性物質又は成分を有する又は有しない乾燥ナノファイバーマトリックスの形態の化粧品であって、前記ナノファイバーマトリックスは、多糖及び/又はタンパク質から選択される100%天然バイオポリマーから製造され、且つ乾燥ナノファイバーシートに電界紡糸される、化粧品。
【請求項30】
ナノファイバーマトリックスを製造する方法であって、多糖及び/又はタンパク質の水性溶媒中の溶液を電界紡糸溶液として作製するステップと;電界紡糸法を使用することにより、高電圧下で前記電界紡糸溶液を乾燥ナノファイバーに変換するステップと;ナノファイバーを収集基材材料上に堆積するステップとを含む方法。
【請求項31】
前記電界紡糸溶液は、数時間にわたって撹拌下で多糖及び/又はタンパク質材料を溶媒中に逐次加えることによって、又は多糖溶液及び/又はタンパク質溶液を別々に調製し、その後、2つの溶液を一緒に混合することによって調製される、請求項
30に記載の方法。
【請求項32】
機能性成分は、前記電界紡糸溶液中に加えられるか、又は機能性成分は、前記あらかじめ混合された多糖/タンパク質溶液中に加えられるか、又は機能性成分は、多糖/タンパク質を加える前に前記溶媒中に加えられ;且つ好ましくは、溶液のpHは、機能性成分の安定性を確保するために、酸又は塩基を加えることによって調整される、請求項
30又は3
1に記載の方法。
【請求項33】
機能性成分を有するナノファイバーマトリックスを製造する方法であって、
所定の割合と分子量の前記多糖を選択して前記ベースポリマーを形成し、且つ、所定の溶媒系中の前記多糖、タンパク質及び機能性成分を一緒に水性溶媒中に溶解させるステップと;電界紡糸法を使用することによって変換するステップであって、溶液は、高電圧下で乾燥ナノファイバーに変換するステップと;
前記ナノファイバーを前記基材上に堆積するステップと;
を含み、前記製造されたナノファイバーマトリックスは、機能性成分が混入された多糖
、多糖/タンパク質
、又は多糖ナノファイバーマトリックスである、方法。
【請求項34】
請求項1~2
9のいずれか一項に記載のナノファイバーマトリックスを含む、機能性成分を有する又は有しない多糖/タンパク質ナノファイバーマスクであって、前記マスクが、濡れた皮膚に適用される場合、前記ナノファイバーは、高度な治療的有益性のために、前記皮膚中に徐々に溶解され、及び任意の活性物質を放出するか、又は前記皮膚上に留まって任意の活性物質を放出する、多糖/タンパク質ナノファイバーマスク。
【請求項35】
フェイシャルマスク(顔全体用マスク、上部フェイスマスク、下部フェイスマスク)、目の下用パッチ、額用マスク、鼻用マスク、顎用マスク、頬用マスク、唇用マスク、Tゾーン及び又は首用マスクを含む全体美容術パッケージであって、前記マスクのそれぞれは、請求項1~2
9のいずれか一項に記載のナノファイバーマトリックスを含み、前記パッケージは、複合的な種類の皮膚を有する使用者のためのものであり、及び各種類のマスクは、対象とする異なる皮膚の問題を提供するために、同じナノファイバーマトリックスであるが、異なる機能性成分の組み合わせから作製され得る、全体美容術パッケージ。
【請求項36】
天然及び/又は植物性成分によって作製されたナノファイバー製品であって、請求項1~2
9のいずれか一項に記載のナノファイバーマトリックスで作製され、及び「可食性」化粧品と見なされるナノファイバー製品。
【請求項37】
天然及び/又は植物性成分によって作製されたナノファイバー製品であって、請求項1
、2、5、8~29のいずれか一項に記載のナノファイバーマトリックスで作製され、且つビーガン用製品と見なされるナノファイバー製品。
【国際調査報告】