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特表2023-502308複合のゾーンコーティングされたデュアルユースアンモニア(AMOX)及び一酸化窒素酸化触媒
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-24
(54)【発明の名称】複合のゾーンコーティングされたデュアルユースアンモニア(AMOX)及び一酸化窒素酸化触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/04 20060101AFI20230117BHJP
   B01J 29/80 20060101ALI20230117BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20230117BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20230117BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20230117BHJP
   B01J 23/30 20060101ALN20230117BHJP
【FI】
B01J35/04 301L
B01J29/80 A ZAB
B01D53/94 222
B01D53/94 400
F01N3/08 B
F01N3/28 301E
F01N3/28 301P
B01J23/30 A
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022520474
(86)(22)【出願日】2020-10-16
(85)【翻訳文提出日】2022-04-11
(86)【国際出願番号】 GB2020052625
(87)【国際公開番号】W WO2021074652
(87)【国際公開日】2021-04-22
(31)【優先権主張番号】1914958.2
(32)【優先日】2019-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】19203640.8
(32)【優先日】2019-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】2004768.4
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2004769.2
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2020/068165
(32)【優先日】2020-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】2009825.7
(32)【優先日】2020-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】PCT/GB2020/052547
(32)【優先日】2020-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】シフィー、アンドリュー フランシス
(72)【発明者】
【氏名】コール、キーラン
(72)【発明者】
【氏名】クーパー、オリバー
(72)【発明者】
【氏名】ダリー、クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】エドヴァルドソン、ヨナス
(72)【発明者】
【氏名】ギルバート、リー
(72)【発明者】
【氏名】グリーン、アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】グリーンハム、ネイル
(72)【発明者】
【氏名】ハンリー、ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ジェンキンス、ケイトリン
(72)【発明者】
【氏名】マルシュ、ペール
(72)【発明者】
【氏名】ミカレフ、デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】モロー、フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】プラット、ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】フィリップス、ポール リチャード
(72)【発明者】
【氏名】ワイリー、ジェームズ
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
3G091AA17
3G091AA18
3G091AA19
3G091AB02
3G091AB05
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4G169ZF07B
(57)【要約】

複合の、ゾーンコーティングされたアンモニア及び一酸化窒素酸化触媒(12)であって、全長L及び長手方向軸を有し、第1の基材端部と第2の基材端部との間に軸方向に延在する基材表面を有する基材(5)と、耐熱性金属酸化物支持材料と上面に担持された1つ以上の白金族金属成分とを含む第1の触媒ウォッシュコート層(9)と、第1の触媒ウォッシュコート層(9)とは異なり、耐熱性金属酸化物支持材料と上面に担持された1つ以上の白金族金属成分とを含む第2の触媒ウォッシュコート層(11)と、から構成される2つ以上の触媒ウォッシュコートゾーン(1;2)であって、この2つ以上の触媒ウォッシュコートゾーン(1;2)は、基材表面上及びそれに沿って軸方向に直列に配置され、長さL(L<L)を有する第1の触媒ウォッシュコートゾーン(1)は、第1の基材端部(I)によって一方の端部において、及び長さL(L<L)を有する第2の触媒ウォッシュコートゾーン(2)の第1の端部(15)によって第2の端部(13)において画定され、第1の触媒ウォッシュコートゾーン(1)は、第1の耐熱性金属酸化物支持体と上面に担持された1つ以上の白金族金属成分とを含み、第2の触媒ウォッシュコートゾーンは、第2の耐熱性金属酸化物支持体材料と上面に担持された1つ以上の白金族金属成分とを含む、2つ以上の触媒ウォッシュコートゾーン(1;2)と、第1の基材端部から下層の第1の触媒ウォッシュコート層の軸方向長さの最大200%まで軸方向に延在するウォッシュコート被覆層(G)であって、このウォッシュコート被覆層(G)は、>48.8g/L(>0.8g/in)の粒子状金属酸化物担持量を含む、粒子状金属酸化物は、銅、鉄、及びマンガンのうちの少なくとも1つを含むアルミノケイ酸塩ゼオライトであり、基材体積1リットル当たりの白金族金属のグラム数(g/L)で定義される、第1の触媒ウォッシュコートゾーン(1)中の総白金族金属担持量は、第2の触媒ウォッシュコートゾーン(2)中の総白金族金属担持量とは異なる、ウォッシュコート被覆層(G)と、を含む、複合の、ゾーンコーティングされたアンモニア及び一酸化窒素酸化触媒(12)。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用、好ましくは重量ディーゼル車両用の圧縮点火内燃機関によって生成される排気ガスを処理するために、排気システム内で使用するための複合のゾーンコーティングされたデュアルユースアンモニア及び一酸化窒素酸化触媒であって、排気ガスはまた、アンモニアも含み、複合酸化触媒は、
基材であって、全長L及び長手方向軸を有し、第1の基材端部と第2の基材端部との間に軸方向に延在する基材表面を有する、任意選択的にハニカムフロースルー基材モノリスである、基材と、
耐熱性金属酸化物支持材料と上面に担持された1つ以上の白金族金属成分とを含む第1の触媒ウォッシュコート層と、前記第1の触媒ウォッシュコート層とは異なり、耐熱性金属酸化物支持材料と上面に担持された1つ以上の白金族金属成分とを含む第2の触媒ウォッシュコート層と、から構成される2つ以上の触媒ウォッシュコートゾーンであって、この2つ以上の触媒ウォッシュコートゾーンは、前記基材表面上及びそれに沿って軸方向に直列に配置され、長さL(L<L)を有する第1の触媒ウォッシュコートゾーンは、前記第1の基材端部によって一方の端部において、及び長さL(L<L)を有する第2の触媒ウォッシュコートゾーンの第1の端部によって第2の端部において画定され、前記第1の触媒ウォッシュコートゾーンは、第1の耐熱性金属酸化物支持材料と上面に担持された1つ以上の白金族金属成分とを含み、前記第2の触媒ウォッシュコートゾーンは、第2の耐熱性金属酸化物支持材料と上面に担持された1つ以上の白金族金属成分とを含む、2つ以上の触媒ウォッシュコートゾーンと、
前記第1の基材端部から前記下層の第1の触媒ウォッシュコート層の前記軸方向長さの最大200%まで軸方向に延在するウォッシュコート被覆層であって、このウォッシュコート被覆層は、>48.8g/L(>0.8g/in)の粒子状金属酸化物担持量を含む、前記粒子状金属酸化物は、銅、鉄、及びマンガンのうちの少なくとも1つを含むアルミノケイ酸塩ゼオライトであり、基材体積1リットル当たりの白金族金属のグラム数(g/L)で定義される、前記第1の触媒ウォッシュコートゾーン中の総白金族金属担持量は、前記第2の触媒ウォッシュコートゾーン中の前記総白金族金属担持量とは異なる、ウォッシュコート被覆層と、を含む、複合酸化触媒。
【請求項2】
前記第2の触媒ウォッシュコートゾーンは、前記第2の基材端部によってその第2の端部において画定され、前記第1の触媒ウォッシュコートゾーンは、前記第1の触媒ウォッシュコート層を含み、前記第2の触媒ウォッシュコートゾーンは、前記第2の触媒ウォッシュコート層を含む、請求項1に記載の複合酸化触媒。
【請求項3】
前記第1の触媒ウォッシュコートゾーン中の前記総白金族金属担持量は、前記第2の触媒ウォッシュコートゾーン中の前記総白金族金属担持量よりも小さい、請求項1又は2に記載の複合酸化触媒。
【請求項4】
前記第1の触媒ウォッシュコートゾーン中の前記総白金族金属担持量は、前記第2の触媒ウォッシュコートゾーン中の総白金族金属担持量よりも大きい、請求項1又は2に記載の複合酸化触媒。
【請求項5】
前記第1の触媒ウォッシュコート層と前記第2の触媒ウォッシュコート層との2層重複領域から形成された1つのゾーンを含む、3つ以上の触媒ウォッシュコートゾーンを含み、第3の耐熱性金属酸化物支持材料と、上面に担持された1つ以上の白金族金属成分と、を含む、第3の触媒ウォッシュコートゾーンは、第2の基材端部によってその第2の端部において画定され、基材体積1リットル当たりの白金族金属のグラム数(g/L)で定義される、第3の触媒ウォッシュコートゾーン中の総白金族金属担持量は、第2の触媒ウォッシュコートゾーン中の総白金族金属担持量よりも小さい、請求項4に記載の複合酸化触媒。
【請求項6】
第1の触媒ウォッシュコートゾーン中の1つ以上の白金族金属成分は、白金及びパラジウムの両方からなる、請求項1~5のいずれか一項に記載の複合酸化触媒。
【請求項7】
白金のパラジウムに対する重量比は、≧1である、請求項6に記載の複合酸化触媒。
【請求項8】
白金のパラジウムに対する重量比は、<1である、請求項6に記載の複合酸化触媒。
【請求項9】
前記ウォッシュコート被覆層は、前記第1の基材端部から前記下層の第1の触媒ウォッシュコート層の前記軸方向長さの最大150%、任意選択的に最大120%まで軸方向に延在する、請求項1~8のいずれか一項に記載の複合酸化触媒。
【請求項10】
前記ウォッシュコート被覆層中の前記アルミノケイ酸塩ゼオライトは銅を含み、前記アルミノケイ酸塩ゼオライトはまたセリウムを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の複合酸化触媒。
【請求項11】
前記ウォッシュコート被覆層の前記ウォッシュコート担持量は、0.8~3.5g in-3である、請求項1~10のいずれか一項に記載の複合酸化触媒。
【請求項12】
前記ウォッシュコート被覆層は、前記第1の基材端部から前記下層の第1の触媒ウォッシュコート層の前記軸方向長さの>50%まで軸方向に延在する、請求項1~11のいずれか一項に記載の複合酸化触媒。
【請求項13】
前記ウォッシュコート被覆層中の前記アルミノケイ酸塩ゼオライトは、フォージャサイト、クリノプチロライト、モルデナイト、シリカライト、フェリエライト、X型ゼオライト、Y型ゼオライト、超安定Y型ゼオライト、AEIゼオライト、ZSM-5ゼオライト、ZSM-12ゼオライト、ZSM-20ゼオライト、ZSM-34ゼオライト、CHAゼオライト、SSZ-13ゼオライト、オフレタイト、又はベータ型ゼオライトである、請求項1~12のいずれか一項に記載の複合酸化触媒。
【請求項14】
前記ウォッシュコート被覆層中の前記アルミノケイ酸塩ゼオライトは、≧10nmの平均細孔径を有し、及び/又は前記ウォッシュコート被覆層は、≧10nmの平均粒子間細孔径を有する、請求項1~13のいずれか一項に記載の複合酸化触媒。
【請求項15】
はLの50%未満である、請求項1~14のいずれか一項に記載の複合酸化触媒。
【請求項16】
とりわけ、窒素酸化物(NO)を含む排気ガスを処理するための車両用圧縮点火機関のための排気システムであって、この排気システムは、請求項1~15のいずれか一項に記載の複合酸化触媒と、窒素系還元剤又は窒素系還元剤前駆体源に接続された窒素系還元剤又はその前駆体用の第1の噴射装置であって、この第1の噴射装置は、前記複合酸化触媒、及び窒素系還元剤又はその前駆体用の前記第1の噴射装置と前記複合酸化触媒との間に配置されている選択的触媒還元触媒を含む第1の基材から上流を流れる排気ガス中に、前記窒素系還元剤又は窒素系還元剤前駆体を噴射するように配置されている、第1の噴射装置と、を備え、前記複合酸化触媒の前記第1の基材端部は上流側に向けられている、排気システム。
【請求項17】
アンモニアのNOに対する重量比が0.4~0.8、任意選択的に0.4~0.6又は0.7~0.8で、選択的触媒還元触媒を含む前記第1の基材へのアンモニア窒素系還元剤の送達を制御するための、事前プログラムされたコンピュータプロセッサ(複数可)を備える、エンジン及び窒素系還元剤又は窒素系還元剤前駆体電子制御ユニット(複数可)を含む、16に記載の排気システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用、好ましくは重量ディーゼル車両用の圧縮点火内燃機関によって生成される排気ガスを処理するために、排気システム内で使用するための複合のゾーンコーティングされたデュアルユースアンモニア(AMOX)及び一酸化窒素酸化触媒に関し、排気ガスはまた、アンモニアも含む。本発明は更に、窒素系還元剤又は窒素系還元剤前駆体源/選択的触媒還元触媒を含む第1の基材に接続された窒素系還元剤又はその前駆体用の第1の噴射装置から下流に配置された本発明の複合酸化触媒を含む、排気システム又は車両に関する。本発明はまた、車両用の圧縮点火内燃機関の排気システム内を流れる排気ガス中のアンモニアを酸化するため、及びフィルタ上での下流選択的触媒還元反応又は粒子状物質燃焼を促進するために排気ガス中の一酸化窒素(NO)を二酸化窒素(NO)に酸化するための、本発明の複合酸化触媒の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
燃焼機関は、一酸化炭素(CO)、未燃炭化水素(HC)、窒素酸化物(NO)、及び粒子状物質(PM)などの汚染物質を含有する排気ガスを生成する。特に車両エンジン用の燃焼機関によって生成される排気ガス中の汚染物質の排出基準は、ますます厳しくなっている。これらの基準を満たすことができ、費用効果が高いこのような排気ガス中の汚染物質を処理及び除去するための改善された触媒及び排気システムを提供する必要がある。
【0003】
車両ガソリン及びディーゼルエンジンの排気ガスは、一般に、(i)一酸化炭素(CO)を二酸化炭素(CO)に、及び(ii)炭化水素(HC)を水(HO)と二酸化炭素(CO)に酸化できる触媒で処理される。三元触媒(TWC)は、典型的には、酸化反応(i)及び(ii)と同時に、窒素酸化物(NO)を窒素(N)、水(HO)、及び二酸化炭素(CO)に還元することによって、ガソリンエンジンの排気ガスを処理するために用いられる。ディーゼルエンジンなどの圧縮点火機関の排気ガスは、典型的には、酸化反応(i)及び(ii)を行う酸化触媒(一般にディーゼル酸化触媒(DOC)と呼ばれる)で処理される。いくつかのディーゼル酸化触媒はまた、一酸化窒素(NO)を二酸化窒素(NO)に酸化することもでき、これは追加の下流にある排出ガス制御装置を使用するNOの除去を支援することができる。
【0004】
2019年9月1日から、新しい排出規制が欧州で導入された。具体的には、欧州市場に初めて導入される全ての新しい乗用車は、「実路走行排ガス」(REAL Driving Emissions、RDE)試験と呼ばれる新しい規制に従って試験されることになっている。RDE試験は、大気汚染の主な原因であるNO及び他の粒子状排ガスの、実際の運転状態におけるより現実的な路上排ガス試験である。この試験は、実際の状態で路上を走行しながら、自動車に取り付けられるポータブル排ガス測定システム(portable emission measuring system、PEMS)で実施される。
【0005】
追加的に、欧州車両ホモロゲーション方法として、今後使用されなくなる「新欧州ドライビングサイクル」(new European Driving Cycle、NEDC)を置き換えるために、近年、乗用車等の国際調和燃費・排ガス試験方法(World Harmonised Light Vehicles Test Procedure、WLTP)と呼ばれる新しい研究室ベースの試験が実施された。WLTPは、従来の車及びハイブリッド車の汚染物質であるCO排ガスのレベル、及び燃費を決定するためのグローバルな調和基準であり、国際連合欧州経済委員会(United Nations Economic Commission for Europe、UNECE)によって開発された。WLTPの主な目的の1つは、燃料消費及び排ガスの研究室評価を、路上運転時に見出されるものとより良好に一致させることである。
【0006】
2019年9月1日からの全ての新しい車両規格は、2.1のNO適合係数を満たすことが必要になり、それによって、RDEのNO排ガスの結果は、研究室WLTPのNO排ガスの結果を2.1以上超えることができない。第2の段階では、この適合係数は、全ての新しいモデルに対して2020年1月までに(全ての新しい車両登録に対して、2021年1月までに)1.43に低減される。
【0007】
更に、WLTPは、欧州規則2009/443と結びついて、それらのフリートのセールス加重平均質量、及び2021年の95g CO/kmという乗用車からのフリートワイドセールス加重平均CO排ガスの目標と比例する、限界値ラインに従う製造業者固有の目標を設定している。
【0008】
重量ディーゼルエンジンの現行の排出基準を満たすための方策は、典型的には、一連の触媒化された基材及び燃料噴射装置を備える排気システム構成を採用する。例えば、国際公開第03/054364号又は米国特許第6125629号から既知の排気システムにおいて、上流から下流まで(上流は排気システムに接続されている又は接続可能なエンジンに対して)順に、排気システムは、尿素用の第1の噴射装置(すなわち、アンモニア前駆体)と、第1の選択的触媒還元(SCR)触媒と、ディーゼル酸化触媒(DOC)と、触媒煤煙フィルタ(CSF、すなわち、触媒ディーゼル微粒子フィルタ(DPF))と、尿素用の第2の噴射装置と、1つ以上の第2のSCR触媒と、アンモニア酸化(AMOX)触媒としても知られるアンモニアスリップ(ASC)触媒と、を備える。実際のシステムでは、この排気システムはまた、炭化水素燃料を第1のSCR触媒とDOCとの間の排気ガスに注入するための炭化水素燃料噴射装置を含み得る。
【0009】
圧縮点火内燃機関用の酸化触媒は、典型的には、1つ以上の白金族金属を含有する。酸化触媒に含有させるために選択される特定の白金族金属は、特定の汚染物質を目的とする反応性、及び異なる排気ガス条件、コスト、高温での耐久性、支持材料及び触媒の任意の他の成分との化学的適合性、並びに不純物による汚染に対する感受性などの様々な要因に依存する。例えば、白金(Pt)及びパラジウム(Pd)はそれぞれ、圧縮点火機関の排気ガス中の一酸化炭素(CO)及び炭化水素(HC)を酸化することができる。パラジウムは、白金と比較して、燃料中の硫黄による汚染の影響を受けやすいが、より高い熱耐久性を有する。
【0010】
通常運転中のDOCの機能は、CO及びHC排出を制御すること、下流側パッシブフィルタ再生のためNOからNOへの変換を促進すること(排気ガス中のOよりも低い排気ガス温度でのNO内のフィルタに保持された粒子状物質の燃焼、すなわち、いわゆるCRT(登録商標)効果)、並びに、DOCの上流の排気ガスへの炭化水素燃料の噴射とDOCでの噴射された炭化水素燃料の燃焼とを含む能動的なCSF再生工程中に発熱生成触媒として作用し、下流のCSFを加熱するための発熱を生成することである。誤解を避けるため、燃料噴射/発熱生成事象は通常運転中に発生しない。通常運転は、燃料噴射と発熱生成事象との間の時間であると考えられる(C.Ruehl et alの以下の論文を参照されたい)。CSFは、粒子状物質(PM)の排出を制御し、NO→NO変換を促進して、第2のSCR触媒の性能を向上させる。アンモニアの前駆体である尿素を、第1のSCR触媒の上流及びCSFの下流に噴射し、排気ガスと混合する。NOxは、SCR触媒上でアンモニア(NH)との反応を介して変換され、未反応NHは、アンモニアスリップ触媒(ASC)/AMOX触媒上で酸化される。
【0011】
SCR触媒は、窒素系還元剤、典型的には尿素などのアンモニア前駆体から誘導され得るNHを選択的に使用してNOの還元を触媒するように設計されており、還元剤は、SCR触媒の上流の流動排気ガス中に噴射されて、以下の主なNOx還元反応を促進する。
(1)4NH+4NO+O→4N+6HO、
(2)4NH+2NO+O→3N+6HO、及び
(3)NO+NO+2NH→2NO(好適な、いわゆる「高速SCR反応」)。
【0012】
反応(1)~(3)のそれぞれは並行して生じ得るが、動力学的に最も速い反応が有利であることが理解されるであろう。したがって、NO:NO比が0.5の排気ガスでは、速度論的に有利な高速SCR反応が支配的である。全てではないが、ほとんどの用途において、ある程度の排気ガス再循環(EGR)を使用して、エンジンから排出されるNOxを、その後尿素-SCR後処理によって更に低減することができるレベルまで低減する。DPFは、EGRの使用に起因して生じるエンジンから排出されるPMの増加を低減するため、並びにEuro VIの微粒子数の放出限界に対する適合性を確保するために必要とされる。高効率SCRを使用すると、一部のEuro VIエンジンは、例えば、一時的及び/又は非冷却EGRによってEGRの使用を低減し、又はEGRを完全に排除することができる。これは、3つの主要なEuro VIエンジン戦略につながっている。
1.冷却EGR+SCR、
2.高温(非冷却)EGR+SCR、及び
3.SCRのみ。
【0013】
これらの戦略を使用すると、典型的な重量エンジンからの排出物は、約60ppmのCO及び約10ppmの未燃炭化水素燃料である。しかしながら、全てのこのようなシステムは、ディーゼル微粒子フィルタを含む。車両用ディーゼル粒子状物質フィルタシステムは、フィルタ材料と再生技術との相互作用を伴う。「再生」は、フィルタに保持されたディーゼル粒子状物質を燃焼させる選択された方法である。再生はめったに実施されないが、再生イベント間の期間は、エンジンの設計、通常運転中のろ過効率、通常運転中のエンジン負荷などの、いくつかの要因に依存する。最近の論文によると、重量ディーゼルトラックの経験的再生頻度は、3~100時間及び23~4078マイルの範囲で変化した(C.Ruehl et al,Environ.Sci.Technol,2018,52(10),pp 5868-5874を参照されたい)。
【0014】
再生技術は、受動的、能動的、並びに受動的及び能動的両方の組み合わせのカテゴリに大別することができる。受動的システムでは、粒子状物質の酸化温度は、通常の車両運転中にフィルタが自動再生され得るレベルまで低下する。このような受動的システムの例としては、フィルタ媒体を触媒すること、フィルタ上の粒子状物質が煤燃焼を促進するための組成物触媒中に含まれるように、触媒燃料添加剤を添加すること、及び、フィルタ上に保持された粒子状物質を燃焼させるためフィルタの上流に二酸化窒素(NO)を生成することが挙げられ、粒子状物質は、酸素中よりも低い温度で、NO中で燃焼する。これは、いわゆるCRT(登録商標)効果である(例えば、欧州特許第0341832号を参照されたい)。
【0015】
能動的システムは、フィルタ内に捕捉された粒子状物質の温度を上昇させることによって、フィルタ再生を能動的に引き起こす。実際には、これは、車両が既に持っている炭化水素燃料を燃焼させることによって、及び/又は電気加熱によって行うことができる。燃料を燃焼させるための2つの方法は、追加の燃料の後期サイクル噴射などのシリンダ内エンジン管理方法、又は排気ガス中、すなわち、排気ガスがエンジンシリンダ自体を出た後の燃料の噴射及び燃焼を含む。
【0016】
受動能動的システムでは、「受動的」フィルタ触媒又は上流(CRT(登録商標)効果促進)のNO酸化触媒などにより、非触媒活性システムと比較して、より低い排気ガス温度及び/又はより短い時間での能動的再生を行うことができる。いずれの場合も、能動的再生に関与する燃費のペナルティを最小化することができる(触媒の追加コストにおいて)。より低い温度での再生はまた、熱応力を低下させ、フィルタの耐用期間を延長することができる。
【0017】
第1の窒素系還元剤噴射装置と、第1の窒素系還元剤噴射装置から下流に配置された第1の選択的触媒還元触媒(SCR)と、第1のSCR触媒から下流及び第2の窒素系還元剤噴射装置から下流に配置された別個の第2の窒素系還元剤噴射装置と、第2のSCR触媒と、を特徴とする排気システムは、出願人の国際公開第03/054364号又は米国特許第6125629号から既知である。欧州特許第2230001(A1)号は、第1の密結合SCR触媒と、第2のSCR触媒と、AMOX触媒と、DOC及びDPFの上流の燃料噴射装置と、を備える排気システムを開示しており、燃料噴射装置は、下流DPF上で発熱を生成するためのDOC上での燃焼のための燃料を噴射する。
【0018】
そのようなASC/AMOX触媒を含む基材は、米国特許出願公開第2010/0058746号及び出願人の国際公開第2015/017516(A2)号から既知である。国際公開第2010/062730(A1)号は、一体型SCR及びAMOX触媒を含む単一基材を開示している。
【0019】
2つの別個のSCR触媒を含む排気システムの問題は、各SCR触媒への窒素系還元剤の適切な送達を制御することであり、これにより、システム全体は、窒素系還元剤を使用してNOのNへの触媒還元を促進することにより、NOの排出基準を満たすことができるが、同時に、窒素系還元剤の過剰供給に関連する問題を回避する。窒素系還元剤が少なすぎる場合、システム全体がNOの排出基準を満たさない場合がある。しかしながら、システム内のSCR触媒に過剰な窒素系還元剤が提供される場合、アンモニアが大気に放出されることを防止するのに問題がある場合がある。アンモニアは不快な臭いを有し、眼、鼻、及び肺などの動物粘膜表面に刺激性である。ASC/AMOX触媒を使用して過剰なアンモニアを酸化的に除去することが知られているが、このようなASC/AMOX触媒上でのNHの酸化は、100%選択的ではなく、NO、すなわち、システム吸入部とシステム吐出部との間で変換されたNOの量の正味の還元を減少させるNOへの過酸化、又は更には強力な「温室効果」ガスであるNOなど、望ましくない副生成物が生じる可能性がある。システムにおけるSCR触媒への窒素系還元剤の過剰提供はまた、窒素系還元剤又はその前駆体の供給を非効率的に使用し、その補充をより頻繁に必要とする。
【0020】
2つの別個の、すなわち上流及び下流の噴射装置/SCR触媒を含むシステムにおけるNO変換のための窒素系還元剤添加を制御するための特定の問題は、窒素系還元剤が上流SCR触媒からスリップし、下流SCR触媒に下流に移動する場合である。これは、運転者がアクセルペダルから予期せず「離れ」て、上流SCR触媒への窒素系還元剤の提供を遮断するためのフィードバックメカニズムなどによって還元剤の送達が十分に迅速に反応できない場合に発生する可能性がある。この場合、下流噴射装置を介して下流SCR触媒への窒素系還元剤の提供を較正するという問題は、窒素系還元剤が上流SCR触媒からリアルタイムでどの程度スリップするかを予測して、動的に反応し、下流SCR触媒への窒素系還元剤添加の量を調整することが困難であるため、複雑である。例えば、いくつかのNOセンサは、NHとNOとを区別できない。結果は、下流のSCR触媒への窒素系還元剤の過剰提供、すなわち、事前プログラムされたエンジン速度/負荷マッピングに従って制御され、「マップ」内の特定の場所で必要な還元剤噴射を予測するために使用される下流噴射装置を介して、下流SCR触媒への窒素系還元剤の「通常の」提供と組み合わせた、上流SCR触媒からスリップした窒素系還元剤であり得る。
【0021】
加えて、上述したように、CSF及び下流SCR触媒から上流の排気ガス中のNOからNOを生成して、これにより、フィルタ上での煤燃焼のCRT(登録商標)効果、及び下流SCR触媒上での高速SCR反応(上述の反応(3)を参照されたい)を促進したいという要望がある。この点に関して、上流SCR触媒とASC/AMOX触媒との組み合わせを通じたNOの除去が非常に成功し、下流NO酸化触媒に接触する排気ガス中に残るNOがほとんどない又は全くないという結果である場合、システム設計において下流NO酸化触媒を含めることには実質的に利点がない場合がある。このため、上流の第1のSCR触媒から上流の窒素系還元剤又はその前駆体の噴射は、上流の第1のSCR触媒に接触する排気ガス中のアンモニアのNOに対する重量比(「ANR」)(反応の化学量論について上述の反応(1)~(3)を参照されたい)が比較的低く、例えば、0.4~0.6であり、下流反応の促進のためのASC/AMOX触媒から下流でのNOへの酸化のために、いくらかのNOがASC/AMOX触媒をスリップさせるようにするために制御することができる。この点に関して、出願人の国際公開第2018/183658号は、(i)一方で、例えば、NHの除去、及び(ii)他方で、下流プロセスを促進するためのNOからNOへの酸化を促進するための複合の一体型ASC/AMOX触媒及び酸化触媒を開示している。
【0022】
2019年12月10日に出願され、かつ内部参照番号P100422US01を有する、出願人の米国特許仮出願第62/946070号は、「Zoned ammonia slip catalyst for improved selectivity,activity and poison tolerance」という名称である。
【0023】
商品としての白金族金属は、銅などの工業的卑金属に対して経済的価値が高い、比較的希少な、天然に存在する金属化学元素である。本明細書の出願日の少し前に、ロンドン金属取引所における銅のスポット価格はUS$6,509/トンであったのに対し、白金のロンドン貴金属市場協会のスポット価格はUS$31,359/トンに相当するUS$889/オンス(1メートルトンは35,274オンス)であった。しかしながら、対応するパラジウムのスポット価格は、US$2,348/オンスであった。すなわち、重量基準で、現在パラジウムは白金のコストの2.5倍を超えている。したがって、ディーゼル酸化触媒中のパラジウムの量を白金に対して低減し、可能であれば、低コストの金属元素を用いる好適な促進によって、ディーゼル酸化触媒中の白金族金属の量を低減させることに、一般的な関心が存在する。
【発明の概要】
【0024】
発明者らは、驚くべきことに、特定の構成では、基材体積の立方フィート当たりの白金族金属のグラム数(g/ft)で定義される、第1の触媒ウォッシュコート層中の総白金族金属担持量は、第2の触媒ウォッシュコート層中の総白金族金属担持量とは異なる、1つ以上の白金族金属成分を含む第1のウォッシュコート層と、1つ以上の白金族金属成分を含む第2のウォッシュコート層と、窒素酸化物の窒素系還元剤での還元を触媒するために活性である、銅、鉄、及び/又はマンガンを含むアルミノケイ酸塩ゼオライトを含むウォッシュコート層と、を配置することによって、複合触媒は、アンモニア酸化(AMOX)及び一酸化窒素酸化を含む少なくとも2つの機能を提供することができることを見出した。上述の(3)での高速SCR反応から利益を得る、フィルタ(CRT(登録商標)効果、又は第2のSCR触媒を使用する)などの、吸入部のNO/NO比の増加でより活性になる、第1の窒素系還元剤噴射装置及び下流の第1のSCR触媒から下流の、かつ排気システム構成要素から上流の排気システムにおいて、このような複合触媒を使用することができる。
【0025】
本発明の複合酸化触媒は、製造が潜在的にそれほど複雑ではなく、SCR触媒を含む2つの別個の基材を含む排気システムにおいて遭遇する上記の問題を低減又は回避することによって、以前の設計を改善し、例えば、国際公開第03/054364号又は米国特許第6125629号の各々に記載されている。すなわち、その最も基本的な構成では、本発明は、2つの主要な触媒機能:比較的低いNO形成速度によって示される、比較的高い選択性でのスリップした窒素系還元剤、特にアンモニアの除去、及び一酸化窒素(NO)の二酸化窒素(NO)への酸化、を有する。本発明の複合酸化触媒はまた、車両上で使用するための排気後処理システムのよりコンパクトなキャニング又は包装構成を可能にし得、これは、複数の触媒コンバータを収容するための空間が制限される場合に重要である。
【0026】
好ましい設計では、基材モノリスの吸入端で、より高いPGM担持量、特にバリウムなどのアルカリ土類金属を含むものを含む適切な場所のウォッシュコートにより、本発明の複合酸化触媒は加えて、能動的再生システム又は能動的受動的再生システムで使用するために噴射された炭化水素燃料から発熱を生成するように機能することができる。これらの設計では、銅、鉄、及び/又はマンガンを含むアルミノケイ酸塩ゼオライトを含むウォッシュコート被覆層は加えて、複合酸化触媒のPGM推進発熱生成機能の耐久性を改善して、エンジン潤滑剤に由来するリン及び/又は亜鉛中毒に耐え、並びにASC/AMOX機能を促進することができる。
【0027】
特定の設計は、白金に対する本発明による複合酸化触媒中のパラジウムの相対量を制限することによってコストを削減することができる。本発明はまた、そのような複合触媒を含む排気システム、並びにそのような排気システムに接続された圧縮点火機関、特に車両用重量ディーゼルエンジンを含む装置、及びそのような装置を含む車両に関する。
【0028】
第1の態様によれば、本発明は、車両用、好ましくは重量ディーゼル車両用の圧縮点火内燃機関によって生成される排気ガスを処理するために、排気システム内で使用するための複合のゾーンコーティングされたデュアルユースアンモニア及び一酸化窒素酸化触媒であって、排気ガスはまた、アンモニアも含み、複合酸化触媒は、全長L及び長手方向軸を有し、第1の基材端部と第2の基材端部との間に軸方向に延在する基材表面を有する、基材と、耐熱性金属酸化物支持材料と上面に担持された1つ以上の白金族金属成分とを含む第1の触媒ウォッシュコート層と、第1の触媒ウォッシュコート層とは異なり、耐熱性金属酸化物支持材料と上面に担持された1つ以上の白金族金属成分とを含む第2の触媒ウォッシュコート層と、から構成される2つ以上の触媒ウォッシュコートゾーンであって、この2つ以上の触媒ウォッシュコートゾーンは、基材表面上及びそれに沿って軸方向に直列に配置され、長さL(L<L)を有する第1の触媒ウォッシュコートゾーンは、第1の基材端部によって一方の端部において、及び長さL(L<L)を有する第2の触媒ウォッシュコートゾーンの第1の端部によって第2の端部において画定され、第1の触媒ウォッシュコートゾーンは、第1の耐熱性金属酸化物支持材料と上面に担持された1つ以上の白金族金属成分とを含み、第2の触媒ウォッシュコートゾーンは、第2の耐熱性金属酸化物支持材料と上面に担持された1つ以上の白金族金属成分とを含む、2つ以上の触媒ウォッシュコートゾーンと、第1の基材端部から下層の第1の触媒ウォッシュコート層の軸方向長さの最大200%まで軸方向に延在するウォッシュコート被覆層であって、このウォッシュコート被覆層は、>0.8g/inの粒子状金属酸化物担持量を含み、粒子状金属酸化物は、銅、鉄、及びマンガンのうちの少なくとも1つを含むアルミノケイ酸塩ゼオライトであり、基材体積の立方フィート当たりの白金族金属のグラム数(g/ft)で定義される、第1の触媒ウォッシュコートゾーン中の総白金族金属担持量は、第2の触媒ウォッシュコートゾーン中の総白金族金属担持量とは異なる、ウォッシュコート被覆層と、を含む、複合酸化触媒を提供する。
【0029】
特許請求される製品はまた、以下に記載される第2~第5の発明態様のいずれかに使用されたときに、第1の基材端部が上流側に向けられるべきであるという指示付きで標示され得る。
【0030】
触媒ウォッシュコートゾーンの軸長を決定する特徴は、基材体積の立方フィート当たりの白金族金属のグラム数(g/ft)での白金族金属担持量であることが理解されるであろう。典型的には、触媒ウォッシュコートゾーンの軸方向長さに沿った任意の点での白金族金属担持量は、全体としてゾーンの軸方向長さに沿った平均の+/-20%、任意に+/-15%、例えば+/-10%以下で変動する。局在化した白金族金属担持量は、X線蛍光法(XRF)又は電子プローブマイクロ分析法(EPMA)によって決定することができる。
【0031】
第2の態様によれば、本発明は、とりわけ、窒素酸化物(NO)を含む排気ガスを処理するための車両用圧縮点火機関のための排気システムであって、この排気システムは、前述の請求項のいずれか一項に記載の複合酸化触媒と、窒素系還元剤又は窒素系還元剤前駆体源に接続された窒素系還元剤又はその前駆体用の第1の噴射装置であって、この第1の噴射装置は、複合酸化触媒、及び窒素系還元剤又はその前駆体用の第1の噴射装置と複合酸化触媒との間に配置されている選択的触媒還元触媒を含む第1の基材から上流を流れる排気ガス中に、窒素系還元剤又は窒素系還元剤前駆体を噴射するように配置されている、第1の噴射装置と、を備え、複合酸化触媒の第1の基材端部は上流側に向けられている、排気システムを提供する。
【0032】
本発明の第2の態様による排気システムで使用される場合、本発明による複合酸化触媒の設計は、多くの(時には競合する)機能の影響を受ける。原則として、使用中、複合酸化触媒は、以下の反応:(i)NOの窒素系還元剤、例えば、NHによる選択的触媒還元;(ii)NHの酸化;及び(iii)NOからNOへの酸化を触媒するように機能し、複合酸化触媒の吐出部で検出されたより高いNO/NOによって示された。反応(i)及び(ii)は、NOの形成を低減又は回避するために可能な限り選択的に行われるべきである。
【0033】
第1の触媒ウォッシュコートゾーンが、白金族金属及び任意選択的にアルカリ土類金属の比較的高い担持量を含む実施形態では、複合酸化触媒はまた、(iv)下流排気システムフィルタ構成要素を加熱するための発熱生成触媒としても機能することができる。反応(iii)を触媒するために、窒素系還元剤の噴射は、いくつかのNOが、上流SCR触媒から、及び/又はウォッシュコート被覆層によって覆われていない基材の吐出端にある白金族金属含有ウォッシュコート層上で酸化するためのウォッシュコート被覆層のSCR触媒からスリップするようにするために、アンモニアのNOに対する重量比(ANR)に制御する必要がある。
【0034】
以下の実施例1~4から、反応(iii)は、SCR触媒ウォッシュコート被覆層の長さ及びSCR触媒ウォッシュコート被覆層の担持量によって次の影響を受けることが分かる:SCR触媒ウォッシュコート被覆層が長いほど(すなわち、吐出端で被覆層によってコーティングされていない露出したPGM含有触媒ウォッシュコート層が短いほど)、一般に、複合酸化触媒吐出部でのNO/NOは低くなり、逆もまた同様である;及びSCR触媒ウォッシュコート被覆層中のウォッシュコート担持量が高いほど、複合酸化触媒吐出部のNO/NOは低くなり、逆もまた同様である。また、機能(iv)の発熱生成活性は、SCR触媒ウォッシュコート被覆層のより高いウォッシュコート担持量によって悪影響を受け、逆もまた同様である。しかしながら、初期の兆候は、反応(i)及び(ii)で、SCR触媒ウォッシュコート被覆層中のウォッシュコート担持量が高くなるとNOの低下に良い影響が得られるのに対し、ウォッシュコート被覆層の軸方向長さが短いとNOの形成を不所望に促進し得ることである。
【0035】
すなわち、ANR、SCR活性、NO酸化要件、及びNO形成の間には設計上のバランスがあると思われる。特許請求される発明は、このバランスを達成するために設計変数間の相互作用の可能性が高い領域を網羅することを目的とする。
【0036】
第3の態様によれば、本発明は、重量ディーゼル車両用圧縮点火内燃機関及び第2の発明態様による排気システムを備える装置を提供し、複合酸化触媒の第1の基材端部は上流側に向けられている。
【0037】
第4の態様によれば、本発明は、第3の発明態様による装置を備える重量ディーゼル車両、すなわち、後述の任意の関連する地域的定義による重量車両を提供する。そのため、例えば、本出願が米国で審査されている場合、本明細書の背景技術の項の米国に適合する重量車両の定義が適用されるものとする。同様に、本出願が欧州特許庁の前に審査されている場合、上記本明細書の背景技術の項のEUについての重量車両の定義が適用されるものとする。
【0038】
第5の態様によれば、本発明は、車両用の圧縮点火内燃機関の排気システム内を流れる排気ガス中のアンモニアを酸化するため、及び排気ガス中の一酸化窒素(NO)を二酸化窒素(NO)に酸化するための、第1の発明態様による複合酸化触媒の使用を提供し、この排気システムは、窒素系還元剤又は窒素系還元剤前駆体源に接続された窒素系還元剤又はその前駆体用の第1の噴射装置を含み、この第1の噴射装置は、複合酸化触媒、第1の噴射装置と複合酸化触媒との間に配置された選択的触媒還元触媒を含む第1の基材、及び複合酸化触媒から下流に配置された選択的触媒還元触媒を含む第2の基材から上流を流れる排気ガス中に、窒素系還元剤又は窒素系還元剤前駆体を噴射するように配置されており、複合酸化触媒の第1の基材端部は上流側に向けられており、このNO酸化は、下流の第2の基材上の選択的触媒還元を促進し、これにより、排気システム全体がNOの一般的な排出基準を満たす。
【0039】
第6の発明態様によれば、本発明は、車両用の圧縮点火内燃機関の排気システム内を流れる排気ガス中のアンモニアを酸化するため、及び排気ガス中の一酸化窒素(NO)を二酸化窒素(NO)に酸化するための、第1の発明態様による複合酸化触媒の使用を提供し、この排気システムは、窒素系還元剤又は窒素系還元剤前駆体源に接続された窒素系還元剤又はその前駆体用の第1の噴射装置を含み、この第1の噴射装置は、複合酸化触媒、第1の噴射装置と複合酸化触媒との間に配置された選択的触媒還元触媒を含む第1の基材、及び複合酸化触媒から下流に配置されたフィルタを含む第3の基材から上流を流れる排気ガス中に、窒素系還元剤又は窒素系還元剤前駆体を噴射するように配置されており、複合酸化触媒の第1の基材端部は上流側に向けられており、このNO酸化は、下流の第3の基材フィルタ上に保持された粒子状物質の燃焼を促進し、これにより、排気システム全体が粒子状物質の一般的な排出基準を満たす。
【0040】
車両用の圧縮点火内燃機関によって生成される排気ガスを処理するために、排気システム内で使用するための複合酸化触媒、任意選択的に第1の発明態様による複合酸化触媒の製造方法も本明細書に記載されている。
【0041】
ここで、本発明を更に説明する。以下の節において、本発明の異なる態様は、より詳細に定義される。そのように定義された各態様は、別途明確に示されていない限り、任意の他の態様又は複数の態様と組み合わせることができる。特に、好ましい又は有利であると示された任意の特徴は、好ましい又は有利であると示された任意の他の特徴又は複数の特徴と組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1は、第1の触媒ウォッシュコート層から構成され、全長Lを有するフロースルーハニカム基材モノリス(5)の吸入端(I)に配置された第1の触媒ウォッシュコートゾーン(1)と、第2の触媒ウォッシュコート層から構成され、基材(5)の吐出端(O)に配置された、第1の触媒ウォッシュコートゾーン(1)に隣接する第2の触媒ウォッシュコートゾーン(2)であって、第1及び第2の触媒ウォッシュコートゾーンは、基材の表面上及びそれに沿って直列に配置される、第2の触媒ウォッシュコートゾーン(2)と、吸入端から下層の第1の触媒ウォッシュコート層の軸方向長さの最大200%まで軸方向に延在し、銅、鉄、及びマンガンのうちの少なくとも1つを含む選択的触媒還元活性アルミノケイ酸塩ゼオライトを含むウォッシュコート被覆層(G)と、を含む、本発明による複合酸化触媒(12)を示す。すなわち、使用中、複合酸化触媒の基材は、エンジンの排気ガスが最初に吸入(又は上流)端(I)を介して複合酸化触媒に入り、吐出(又は下流)端(O)を介して複合酸化触媒を出て、排気ガス流が参照番号10で矢印によって示される方向であるように、向けられる。複合酸化触媒を排気ガスと接触させるこの同じ方向及び順序は、図1図5、及び図9に開示され、本明細書に記載される全ての実施形態にわたって適用される。
【0043】
特に、出願人は、ウォッシュコート被覆層SCR触媒とPGM含有下地層との組み合わせが、以下の反応の一部又は全てを促進すると考える。
ウォッシュコート被覆層SCR触媒では:
(1)4NH+4NO+O→4N+6HO、
(2)4NH+2NO +O→3N+6HO、及び
(3)NO+NO +2NH→2N
下層の第1の触媒ウォッシュコート層/ゾーンでは:
(1)4NH+4NO+O→4N+6HO、
(2)4NH+2NO +O→3N+6HO、
(3)NO+NO +2NH→2N
(4)NO+1/ →NO、及び
(5)4NH+O→4NO+HO。
アスタリスク()で示された反応(1)~(3)のNO及びNOは、吸入部排気ガスに存在する、又は反応(4)及び(5)から生成され得る。
【0044】
図1の複合酸化触媒は、基材(5)をその軸方向長さL全体に沿って、第1の耐熱性金属酸化物支持材料と、1つ以上の白金族金属塩の水溶液と、を含む、第1の触媒ウォッシュコート層でコーティングし、コーティングした部分を乾燥して焼成し、次いで、第1の触媒ウォッシュコート層でコーティングされた基材の一部分のみを、長さL(L<L)まで、比較的高濃度の1つ以上の白金族金属及び任意選択的に1つ以上のアルカリ土類金属成分の水溶液を含浸させ、第1の触媒ウォッシュコートゾーン(1)を形成することによって作製でき、第2の触媒ウォッシュコート(2)は、未含浸の第1の触媒ウォッシュコート層を含む。あるいは、含浸媒体中に存在するアルカリ土類金属成分ではなく、第1の触媒ウォッシュコート層自体が1つ以上のアルカリ土類金属成分を含み得る。もちろん、アルカリ土類金属成分は、含浸媒体及び第1の触媒ウォッシュコート層の両方に存在してもよい。「含浸」技術の説明については、以下を参照されたい。この構成は、最終生成物において、長さLを有する第1の触媒ウォッシュコート層の部分が、白金及びパラジウムの両方を含む2つ以上の担持された白金族金属成分を含み得る。
【0045】
あるいは、図1に示される複合酸化触媒は、基材(5)を、その第1の端部から、第1のウォッシュコート触媒ゾーンを形成するための、第1の耐熱性金属酸化物支持材料と、白金のみ、又は白金及びパラジウムの両方の組み合わせなどの1つ以上の白金族金属成分(例えば、白金及びパラジウムは、唯一の白金族金属成分である)と、1つ以上のアルカリ土類金属成分と、を含む第1の触媒ウォッシュコート層を、軸方向長さL図1中9と標示された項目を参照されたい)で、並びに、第2の酸化触媒ゾーンを形成するための、第2の耐熱性金属酸化物支持材料と、1つ以上の第2の白金族金属と、任意選択的に1つ以上の第2のアルカリ土類金属成分とを含む、第2の異なる触媒ウォッシュコート層(11と標示された項目を参照)を、軸方向長さLで、いずれかの順序でコーティングすることによって得られ得る、又は得ることができ得、第1の触媒ウォッシュコート層(9)の第2の端部(13)及び第2の触媒ウォッシュコート層(11)の第1の端部(15)が、第1のウォッシュコート層と第2のウォッシュコート層との間で実質的に重なることなく、互いに当接する。図1の実施形態を作製する後者の方法では、第1の触媒ウォッシュコートゾーンの軸方向長さLは、第1の触媒ウォッシュコート層(9)の軸方向長さと同じであるか、又は実質的に同じであり、第2の触媒ウォッシュコートゾーンの軸方向長さLは、第2の触媒ウォッシュコートゾーンの軸方向長さLと同じであるか、又は実質的に同じであることが理解されるであろう。
【0046】
図1の実施形態並びに図2図5及び図9を含んで示される実施形態の各々は、第1の触媒ウォッシュコートゾーン(1)の上を被う多孔質ウォッシュコート被覆層と、下層の第1の触媒ウォッシュコート層の軸方向長さの最大200%まで第1の基材端部から軸方向に延在するウォッシュコート被覆層であって、このウォッシュコート被覆層は、>0.8g/inの粒子状金属酸化物担持量を含み、粒子状金属酸化物は、銅、鉄、及びマンガンのうちの少なくとも1つを含むアルミノケイ酸塩ゼオライトである、ウォッシュコート被覆層と、を含む。被覆層は、米国特許出願公開第2010/0058746号(参考として本明細書に組み込まれている;以下も参照されたい)の図1に示される機構に従って、窒素系還元剤の酸化及びNOの同時還元を促進する。更に、被覆層は、「保護床」として機能し、ZDDP又はZDTPなどの潤滑添加剤に由来するリン及び/又は亜鉛の堆積物によって第1の触媒ウォッシュコートゾーンが汚染されるのを低減又は防止できる。被覆層の特徴(「G」)は、図1図5及び図9を含む実施形態の各々に示されている。
【0047】
図2及び図3は、同じ製造原理に基づいた本発明による複合酸化触媒(それぞれ14、16)を示し、すなわち、第2の触媒ウォッシュコート層(7)は、基材(5)の第2の端部(吐出端(O)に相当)から、フロースルーハニカム基材モノリス(5)の全軸長L未満の軸方向長さL(すなわちL<L)だけ適用される。第2の触媒ウォッシュコート層は、第2の耐熱性金属酸化物支持材料と、1つ以上の白金族金属成分と、任意選択的に1つ以上の第2のアルカリ土類金属成分と、を含む。次いで、第2の触媒ウォッシュコート層(7)でコーティングされた基材は、それ自体が、第1の触媒ウォッシュコート層(6)で、基材(5)の反対側の端部(吸入端、つまり第1の基材の端部(I)に相当)から、第2の触媒ウォッシュコート層の基材(5)上へのコーティングが始まる場所までコーティングされる。第1の触媒ウォッシュコート層は、第1の耐熱性金属酸化物支持材料と、1つ以上の白金族金属成分と、任意選択的に1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分と、を含む。第1の触媒ウォッシュコート層(6)の軸方向コーティング長さ(L)は、基材の軸方向全長Lより短いが、第2の触媒ウォッシュコート層(7)の長さ(L)と重なるのに十分な長さであり、第1の触媒ウォッシュコート層(6)及び第2の触媒ウォッシュコート層(7)が2層構造で存在する領域、すなわち「ゾーン」を形成する。第1のウォッシュコート層と第2のウォッシュコート層の重複ゾーンの軸方向長さは、「L」と定義することができ、図2の「2」、すなわち、第2のウォッシュコート触媒ゾーン、及び図3の「4」、すなわち、第4のウォッシュコート触媒ゾーンとして示される。
【0048】
第1の触媒ウォッシュコート層(6)及び第2の触媒ウォッシュコート層(7)の重なりを含む長さLのゾーンは、重複した領域内の第1の触媒ウォッシュコート層(6)及び第2の触媒ウォッシュコート層(7)の両方に存在する1つ以上の白金族金属と1つ以上のアルカリ土類金属の量の合計を含むことが理解され得る。また、第1の触媒ウォッシュコート層(6)及び第2の触媒ウォッシュコート層(7)の重複領域が、それ自体のゾーンを表すため、第1の触媒ウォッシュコート層(6)及び第2の触媒ウォッシュコート層(7)の重複領域の第2の(下流、つまり吐出側)端部によって第1の端部(17)において、かつ、第2の基材端部(つまり吐出端(O))によって第2の端部において画定された第2の触媒ウォッシュコート層(7)の単一層を含むゾーン(図2及び図3の両方で3と標示)は、直前の隣接する上流重複ゾーン(図2のゾーン2、及び図3のゾーン4)よりも、低い総白金族金属担持量を有することも理解され得る。
【0049】
図2に示される構成では、第1の触媒ウォッシュコート層(6)と第2の触媒ウォッシュコート層(7)の重複ゾーンは、第2の触媒ウォッシュコートゾーンである(図2で2と標示)。第1の触媒ウォッシュコートゾーン(1と標示)であり、吸入/第1の基材端部(I)によって第1の端部において、かつ、第2の触媒ウォッシュコートゾーン(2)の第1の(上流、すなわち吸入端に最も近い)端部(19)によって第2の端部(第2の触媒ウォッシュコート層(7)の第1の、つまり上流端部に対応する点でもある)において画定される、第1の触媒ウォッシュコート層(6)の全長の一部は、第2の触媒ウォッシュコートゾーン(2)よりも高い総白金族金属担持量(g/ft)を含み得る。図2に示されるゾーン2は、第1のウォッシュコート層(6)及び第2のウォッシュコート層(7)の重なりを含むため、第1の触媒ウォッシュコート層(6)の軸方向長さLは、第1の触媒ウォッシュコートゾーン(1)及び第2の触媒ウォッシュコートゾーン(2)の軸方向長さの合計と同等であることが理解され得る。また、第1のウォッシュコートゾーン(1)内に存在する第1の触媒ウォッシュコート層(6)の長さは、触媒ウォッシュコート層6の全長から、重複ゾーン2内に存在する第1のウォッシュコート層の長さを引いた長さ、すなわちLである。
【0050】
第1の触媒ウォッシュコートゾーン中の総白金族金属担持量が、第2の触媒ウォッシュコートゾーン中の総白金族金属担持量よりも大きい実施形態では、図2図5に示される実施形態のそれぞれにおいて、第1の触媒ウォッシュコートゾーン(1)中の総白金族金属担持量が第2の触媒ウォッシュコートゾーン(2)中の総白金族金属担持量よりも高いという特徴は、下層の第1の触媒ウォッシュコート層(6)の所望の長さ(8)(L)を、比較的高濃度の、例えば、任意選択的に1つ以上のアルカリ土類金属の水性塩もまた含有する、その水溶液中の白金族金属塩を含浸させることによって得ることができる。「含浸」は、当業者に既知の方法であり、例えば、「Catalytic Air Pollution Control-Commercial Technology」3rd Edition,Ronald M.Heck et al.,John Wiley&Sons,Inc.(2009)at paragraph 2.3に開示されている。図2では、第1の触媒ウォッシュコートゾーン(1と標示)の軸方向長さLは、実質的に、第1の触媒ウォッシュコート層(6)が第2の触媒ウォッシュコート層(7)と点19で重なり始める点までの第1の触媒ウォッシュコート層(6)の長さである。
【0051】
第1の触媒ウォッシュコートゾーンが白金及びパラジウムの両方を含むべきであるが、第1の触媒ウォッシュコート層(6)を形成するためのウォッシュコートが白金及びパラジウムのうちの一方を含まず、含浸媒体が使用されることが意図されている場合、含浸媒体は、第1の触媒ウォッシュコート層(6)中にいずれも存在しない、パラジウム又は白金の溶質塩を含有すべきであり、下層の第1の触媒ウォッシュコート層の所望の長さ(8)(L)は、白金とパラジウムの両方を含む2つ以上の担持された白金族金属成分を含む。もちろん、任意の組み合わせにおいて、第1の触媒ウォッシュコート層自体は、白金、パラジウム、又は白金及びパラジウムの両方を含むことができ、これとは別に、含浸媒体は、白金、パラジウム、又は白金及びパラジウムの両方を含むことができ、すなわち、第1の触媒ウォッシュコート層及び含浸媒体のPGM含有量は、同じであっても異なっていてもよいが、これは、下層の第1の触媒ウォッシュコート層の得られた所望の長さ(8)(L)が、白金とパラジウムの両方を含む2つ以上の担持された白金族金属成分を含む場合に限る。
【0052】
発熱生成を促進するために第1の触媒ウォッシュコートゾーン中にアルカリ土類金属を含むが、第1の触媒ウォッシュコート層(6)を形成するためのウォッシュコートは、含浸媒体が使用される1つ以上のアルカリ土類金属成分を含まないことが意図される実施形態では、含浸媒体は、1つ以上のアルカリ土類金属の塩を含有するべきである。もちろん、第1の触媒ウォッシュコート層(6)を形成するためのウォッシュコート及び含浸媒体の両方が、1つ以上のアルカリ土類金属を含有することも可能であり、その場合、ウォッシュコート組成物中及び含浸媒体中のアルカリ土類金属又は金属のそれぞれは、同じであっても異なっていてもよい。
【0053】
第3の触媒ウォッシュコートゾーン(3と標示)は、第2の基材端部によって第2の(つまり吐出(O))端部において画定され、軸方向長さLを有する。第3の触媒ウォッシュコートゾーン(3)の第1の端部、すなわち第1の基材(つまり吸入(I))端部に最も近い端部は、(17)として上記に定義される。
【0054】
図2に示され、上述される構成から、各触媒ウォッシュコートゾーンは、触媒ウォッシュコート層の軸方向長さの一部分のみから部分的に作製され得ることが理解され得る。したがって、下層の耐熱性金属酸化物は、触媒ウォッシュコート層が部分的である触媒ウォッシュコートゾーン中の材料を支持する。その結果、触媒ウォッシュコートゾーンが触媒ウォッシュコート層の重なりを含む場合、その重なりから形成された触媒ウォッシュコートゾーン中の耐熱性金属酸化物支持材料は、その重なり中に存在する触媒ウォッシュコート層のそれぞれに耐熱性金属酸化物支持体を含むことになる。そのため、重複ゾーンにおける第1の触媒ウォッシュコート層内の耐熱性金属酸化物支持材料が、第2の触媒ウォッシュコート層内の耐熱性金属酸化物支持材料とは異なる場合、全体として、重複する触媒ウォッシュコートゾーン中に2つ(又はそれ以上)の耐熱性金属酸化物支持材料が存在する。当然ながら、個々の触媒ウォッシュコート層が、2つ以上の異なる耐熱性金属酸化物支持材料を含むことも可能であり、この場合、その触媒ウォッシュコート層の単層から形成された触媒ウォッシュコートゾーンは、2つ以上の異なる耐熱性金属酸化物支持材料を含有する。同様に、耐熱性金属酸化物支持材料が、重複によって基材上に触媒ウォッシュコートゾーンを形成する2つの触媒ウォッシュコート層のそれぞれにおいて同じである場合、その重複する触媒ウォッシュコートゾーンには1つのみの耐熱性金属酸化物支持材料が存在する。
【0055】
図3に示される構成は、第1の触媒ウォッシュコートゾーン(1と標示)の軸方向長さLが、例えば、第1の触媒ウォッシュコート層(6)でコーティングされた基材(5)のより短い長さ(8)を、比較的高濃度の水性の1つ以上の白金族金属塩及び任意選択的に1つ以上のアルカリ土類金属の塩を含浸させることによって形成された、第1の触媒ウォッシュコート層(6)の単層の長さより短いことを除いて、図2に示され、上記で説明したものと同様である。この実施形態では、第2の触媒ウォッシュコートゾーン(2と標示)は、第1の触媒ウォッシュコートゾーン1、例えば第1の触媒ウォッシュコート層(6)の含浸(8)の範囲の第2の端部(21)によって、第1の端部、すなわち第1の基材端部又は吸入部に最も近い端部において、かつ、吸入端(I)に最も近く下層の第2の触媒ウォッシュコート層(7)を有する第1の触媒ウォッシュコート層(6)の重複領域の第1の端部(23)によって、第2の端部において、画定される。存在する場合、第1の触媒ウォッシュコートゾーン中の総白金族金属担持量が、第2の触媒ウォッシュコートゾーン中の総白金族金属担持量よりも大きいという特徴は、例えば、1つ以上の白金族金属成分を含む、下層の第1の触媒ウォッシュコート層に、比較的高濃度の1つ以上の白金族金属を含浸することによって満たされる。このような含浸媒体はまた、1つ以上のアルカリ土類金属の水性塩も含み得る。
【0056】
本発明の定義によれば、第3の触媒ウォッシュコート層(3と標示)は、第2の基材端部によってその第2の(つまり吐出(O))端部において画定される。したがって、図3に示される実施形態では、第1の触媒ウォッシュコート層(6)と第2の触媒ウォッシュコート層(7)の重複から構成されるゾーンは、第2の触媒ウォッシュコートゾーン(2)と第3の触媒ウォッシュコートゾーン(3)との間に軸方向に配置されており、第4の触媒ウォッシュコートゾーンとして番号付けされ、図3において「4」と標示される。図3より、第1のウォッシュコート層(6)の軸方向長さは、第1の触媒ウォッシュコートゾーン(1)、第2の触媒ウォッシュコートゾーン(2)及び第4の触媒ウォッシュコートゾーン(4)の軸方向長さの合計であることが理解され得る。また、ゾーン2の軸方向長さは、第1の触媒ウォッシュコート層(6)の軸方向全長Lから、重複ゾーン、すなわちLに等しいゾーン4と、第1の触媒ウォッシュコートゾーン1の長さLの両方の軸方向長さを引いたものであることが分かる。ゾーン3の軸方向長さは、第2の基材端部によって第2の(吐出(O)、つまり下流端)において画定され、軸方向長さLを有する。
【0057】
図4及び図5に示される構成(それぞれ、複合酸化触媒18及び20)は、図4及び図5に示される実施形態では、第1の耐熱性金属酸化物支持材料と、1つ以上の白金族金属成分と、任意選択で上面に担持された1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分と、を含む、第1のウォッシュコート層(6)が、吸入端(I)から長さLまで最初にフロースルーハニカム基材モノリス(5)上にコーティングされることを除いて、それぞれ図2及び図3に示されるものと同様である。次いで、第1の触媒ウォッシュコート層(6)でコーティングされた基材は、それ自体が、第2の触媒ウォッシュコート層(7)(すなわち、L<1である長さまで)で、基材(5)の反対側の端部(吐出端(O)に相当)から、第1の触媒ウォッシュコート層(6)の基材(5)上へのコーティングが始まる場所までコーティングされる。第2の触媒ウォッシュコート層(7)の軸方向コーティング長さは、基材の軸方向全長Lより短いが、第1の触媒ウォッシュコート層(6)と重なるのに十分な長さであり、第2の触媒ウォッシュコート層(7)及び第1の触媒ウォッシュコート層(6)が2層のゾーンで存在する領域を形成する。繰り返しを回避するために、出願人は、類推によって、軸方向ゾーン長さ、ゾーン境界定義、総ゾーン白金族金属担持量、ゾーン耐熱性金属酸化物支持材料の説明などの記述に関して、読者には上述の説明を参照するよう勧める。
【0058】
図6は、本発明の実施形態による、第1の触媒ウォッシュコートゾーンの層などの単一層の概略図であり、第1の白金族金属(例えば、△で表される白金族金属1)の均一又は均質な分布と、第2の白金族金属(例えば、○で表される白金族金属2)の不均一(すなわち不均質)な分布とを有する。
図7は、本発明の単層触媒ウォッシュコートゾーンの実施形態における、2つの白金族金属(例えば、△で表される白金族金属1及び○で表される白金族金属2)の均一な分布を示す概略図である。
図8Aは、本発明の第1の態様、例えば、図1図5、及び図9のそれぞれに開示されているものによる、複合酸化触媒を含む代替システム構成を示す。
図8Bは、本発明の第1の態様、例えば、図1図5、及び図9のそれぞれに開示されているものによる、複合酸化触媒を含む代替システム構成を示す。
図9は、本発明による複合のゾーンコーティングされたデュアルユースアンモニア及び一酸化窒素酸化触媒50の代替実施形態の概略図であり、上記の実施形態からの共通の特徴は同じ参照を有する。この実施形態は、SCR触媒でコーティングされたフィルタから下流で使用して、下流のNOxセンサへのNHのスリップを防止するように設計されている。図面において、特徴52は、基材5、好ましくはハニカムフロースルーモノリス基材の表面上に、その50%の軸方向長さにわたって直接コーティングされ、かつ基材の吸入端に対応する基材5の第1の端部によって一方の端部において画定される、例えば、0.35g/inでアルミナ耐熱性金属酸化物上に担持された白金を含む第1の触媒ウォッシュコート層であり、特徴54は、基材5の表面上に、また、第1のウォッシュコート層との重なりが最小限になるように(以下の「定義」セクションを参照されたい)、その50%の軸方向長さにわたって直接コーティングされ、かつ基材の吐出端に対応する基材5の第2の端部によって一方の端部において画定される、例えば、0.35g/inでアルミナ耐熱性金属酸化物上に担持された白金を含む第2のウォッシュコート層である。特に、第1の触媒ウォッシュコート層/ゾーンには、アルカリ土類金属成分が添加されていない。ウォッシュコート被覆層(G)は、銅含有アルミノケイ酸塩ゼオライトCHAであり、例えば、銅担持量が約3.3重量%で、シリカのアルミナに対する比が、例えば、約25であり、下層の第1のウォッシュコート層52及び(部分的に)第2のウォッシュコート層54上に、総基材軸方向長さの75%の軸方向長さにわたって直接コーティングされる。すなわち、ウォッシュコート被覆層(G)は、下層の第1の触媒ウォッシュコート層52の軸方向長さの150%まで第1の基材端部から軸方向に延在する。
【0059】
あるいは、CHAは、銅とセリウムとの両方の組み合わせによって促進される(出願人の国際公開第2013/079954(A1)号(参照により本明細書に組み込まれている)を参照されたい)。ウォッシュコート被覆層(G)は、基材の吸入端に対応する基材5の第1の端部によって第1の端部において画定される。ウォッシュコート被覆層(G)のウォッシュコート担持量は、例えば、1.8gin-3である。
【0060】
図9の触媒の一実施形態では、第1の触媒ウォッシュコート層52は、唯一の白金族金属として白金を含み、すなわち、白金担持量が1gft-3で、白金のパラジウムに対する重量比が1:0であり、第2の触媒ウォッシュコート層54はまた、唯一の白金族金属として白金を含み、すなわち、白金担持量が3gft-3で、白金のパラジウムに対する重量比が1:0である。ウォッシュコート被覆層(G)は、CHAアルミノケイ酸塩ゼオライト(SAR約25)の唯一の添加された促進遷移金属として3.3重量%の銅を含む。
【0061】
図9の触媒の別の実施形態では、第1の触媒ウォッシュコート層52は、唯一の白金族金属として白金を含み、すなわち、白金担持量が1.25gft-3で、白金のパラジウムに対する重量比が1:0であり、第2の触媒ウォッシュコート層54はまた、唯一の白金族金属として白金を含み、すなわち、白金担持量が3.75gft-3で、白金のパラジウムに対する重量比が1:0である。ウォッシュコート被覆層(G)は、CHAアルミノケイ酸塩ゼオライト(SAR約25;3.3重量%銅;1.1重量%セリウム)の唯一の添加された促進遷移金属として銅及びセリウムを含む。
【発明を実施するための形態】
【0062】
誤解を避けるため、本明細書に記載される複合酸化触媒は、圧縮点火機関の通常のリーンバーン運転中に排気ガス中の汚染物質を酸化し、リーン排気ガス、主に一酸化炭素及び未燃炭化水素、及び窒素系還元剤、特にアンモニアを生成することができるため、「酸化触媒」と称される。複合酸化触媒はまた、排気ガス中の一酸化窒素を二酸化窒素に酸化し、CRT(登録商標)効果などの下流の触媒活性を促進することができ、かつ/又は、選択的触媒還元反応を促進することができ、そのようなNO酸化活性は、本明細書に添付の従属請求項のうちの1つ以上の特徴を使用することによって向上させることができる。ディーゼル圧縮点火機関によって生成される排気ガスを処理するために使用されることが好ましいため、「ディーゼル酸化触媒」とも称され得る。本発明による複合酸化触媒の実施形態は、排気ガス中に導入された追加の炭化水素から発熱をもたらし、それによって下流の粒子状物質フィルタを加熱し、そのことによってフィルタを再生する(すなわち、上面に捕集された煤を燃焼する(能動的再生))ように配合され得る。
【0063】
複合酸化触媒の活性は酸化反応に限定されるものではないが、酸化触媒は、通常のリーンバーン運転中に圧縮点火機関の排気ガス中の1つ以上の汚染物質を酸化できなくてはならない。例えば、適切な条件であると仮定して、酸化触媒のPGM含有成分は、還元剤として排気ガス中の炭化水素を使用して、還元反応、例えば、窒素酸化物(NO)の還元(いわゆる、リーンNO触媒作用、DeNO触媒作用、又は炭化水素-SCR)を追加的に行える場合があり、かつ/又は、NO及び/若しくは炭化水素の一時的な吸着など、1つ以上の汚染物質を排気ガスから一時的に貯蔵できる場合もある。更に誤解を避けるため、排気ガス中に噴射される追加の炭化水素燃料から発熱をもたらすために複合酸化触媒を使用することは、「通常使用」ではない(上記背景技術の項における再生頻度についての説明を参照されたい)。すなわち、「正常なリーンバーン運転」は、発熱生成事象間の時間である。
【0064】
NO酸化活性に関して、好ましくは、複合酸化触媒は全体として、通常使用中に酸化触媒の動作範囲の>10%を超えて、例えば>20%、>30%、>40%又は>50%でNO酸化を促進する。これは、上記国際公開第2009/076574号に開示される酸化触媒とは著しく異なり、ここでは、ディーゼル酸化触媒は、ディーゼル酸化触媒の動作範囲の約90%を超えてディーゼル酸化触媒を通過した後、排気ガス流に実質的に追加のNOを生成する効果がない。本発明による複合酸化触媒は、酸化触媒中に、>1、例えば>1.5:1又は>2:1の白金のパラジウムに対する重量比、任意選択的に、その特定のゾーンに白金族金属のみが存在、すなわち、1:0(又は「無限」(∞))の白金のパラジウムに対する重量比であるとき、白金のみを有する少なくとも1つのゾーンを含むことによって、これを行う。この点に関して、本発明によれば、基材体積の立方フィート当たりの白金族金属のグラム数(g/ft)で定義される、第1の触媒ウォッシュコートゾーン中の総白金族金属担持量は、第2の触媒ウォッシュコートゾーン中の総白金族金属担持量とは異なる。任意選択的に、定義「基材体積の立方フィート当たりの白金族金属のグラム数(g/ft)で定義される、第1の触媒ウォッシュコートゾーン中の総白金族金属担持量は、第2の触媒ウォッシュコートゾーン中の総白金族金属担持量とは異なる」は、「基材体積の立方フィート当たりの白金のグラム数(g/ft)で定義される、第1の触媒ウォッシュコートゾーン中の総白金(金属)担持量は、第2の触媒ウォッシュコートゾーン中の総白金担持量とは異なる」を意味する。
【0065】
第1の態様によれば、第2の触媒ウォッシュコートゾーンは、第2の基材端部によってその第2の端部において画定され得、第1の触媒ウォッシュコートゾーンは、第1の触媒ウォッシュコート層を含み、第2の触媒ウォッシュコートゾーンは、第2の触媒ウォッシュコート層を含む。すなわち、複合酸化触媒は全体として、2つの触媒ウォッシュコートゾーンを含む(例えば、図1に示される構成を参照されたい)。本発明によれば、基材体積の立方フィート当たりの白金族金属のグラム数(g/ft)で定義される、第1の触媒ウォッシュコートゾーン中の総白金族金属担持量は、第2の触媒ウォッシュコートゾーン中の総白金族金属担持量とは異なる。
【0066】
実施形態では、第1の触媒ウォッシュコートゾーン中の総白金族金属担持量は、第2の触媒ウォッシュコートゾーン中の総白金族金属担持量よりも大きい。したがって、図1の実施形態では、基材体積の立方フィート当たりの白金族金属のグラム数(g/ft)で定義される、第1の触媒ウォッシュコートゾーン中の総白金族金属担持量は、第2の触媒ウォッシュコートゾーン中の総白金族金属担持量よりも大きい。
【0067】
あるいは、第1の触媒ウォッシュコートゾーン中の総白金族金属担持量は、第2の触媒ウォッシュコートゾーン中の総白金族金属担持量よりも小さい。したがって、図9に示される実施形態では、基材体積の立方フィート当たりの白金族金属のグラム数(g/ft)で定義される、第1の触媒ウォッシュコートゾーン中の総白金族金属担持量は、第2の触媒ウォッシュコートゾーン中の総白金族金属担持量よりも小さい。
【0068】
2つの触媒ウォッシュコートゾーンを有するこのような触媒の製造方法は、方法を含み、工程(a)において、触媒ウォッシュコートは、基材の全長Lに沿って延在する。この方法では、第1の耐熱性金属酸化物支持材料は、第2の耐熱性金属酸化物支持材料と同じであることが理解されるであろう。あるいは、図1に示される複合酸化触媒は、基材(5)を、その第1の端部から、第1のウォッシュコート触媒ゾーンを形成するための、第1の耐熱性金属酸化物支持材料と、例えば、白金及びパラジウムの両方を含む2つ以上の白金族金属成分と、例えば、1つ以上のアルカリ土類金属成分と、を含む、第1の触媒ウォッシュコート層を、軸方向長さL図1中9と標示された項目を参照されたい)で、並びに、第2の酸化触媒ゾーンを形成するための、第2の耐熱性金属酸化物支持材料と、1つ以上の第2の白金族金属と、任意選択的に1つ以上の第2のアルカリ土類金属成分とを含む、第2の異なる触媒ウォッシュコート層(11と標示された項目を参照)を、軸方向長さLで、いずれかの順序でコーティングすることによって得られ得る、又は得ることができ得、第1の触媒ウォッシュコート層(9)の第2の端部(13)及び第2の触媒ウォッシュコート層(11)の第1の端部(15)が、第1のウォッシュコート層と第2のウォッシュコート層との間で実質的に重なることなく、互いに当接する。図1の実施形態を作製する後者の方法では、第1の触媒ウォッシュコートゾーンの軸方向長さLは、第1の触媒ウォッシュコート層(9)の軸方向長さと同じであるか、又は実質的に同じであり、第2の触媒ウォッシュコートゾーンの軸方向長さLは、第2の触媒ウォッシュコートゾーンの軸方向長さLと同じであるか、又は実質的に同じであることが理解されるであろう。第1の発明態様による2ゾーン複合酸化触媒の製造方法の更なる詳細は、図1に関連して上述されている。工程(a)及び(b)の組み合わせにより、白金及びパラジウムの両方を含む2つ以上の担持された白金族金属成分を含む長さLを有する第1の触媒ウォッシュコートゾーンに到達する限り、工程(a)の触媒ウォッシュコート層は、白金成分、パラジウム成分、又は白金及びパラジウム成分の両方を含み得、工程(b)の溶液は、白金、パラジウム、又は白金及びパラジウムの両方を含み得ることが理解されるであろう。ウォッシュコート被覆層の適用は、典型的には、下層の触媒ウォッシュコート層が乾燥され、基材モノリス上で焼成されたときに行われる。
【0069】
あるいは、第1の態様によれば、複合酸化触媒は、第1の触媒ウォッシュコート層と第2の触媒ウォッシュコート層との2層重複領域から形成された1つのゾーンを含む、3つ以上の触媒ウォッシュコートゾーンを含み得、第3の耐熱性金属酸化物支持材料と、上面に担持された1つ以上の白金族金属成分と、を含む、第3の触媒ウォッシュコートゾーンは、第2の基材端部によってその第2の端部において画定され、基材体積の立方フィート当たりの白金族金属のグラム数(g/ft)で定義される、第3の触媒ウォッシュコートゾーン中の総白金族金属担持量は、第2の触媒ウォッシュコートゾーン中の総白金族金属担持量よりも小さい。
【0070】
3つの触媒ウォッシュコートゾーンを含む複合酸化触媒は、第2の触媒ウォッシュコートゾーンの第2の端部によってその第1の端部において画定される第3の触媒ウォッシュコートゾーンを含み得る(例えば、図2及び4に示される構成を参照)。
【0071】
このような複合酸化触媒は、第1の触媒ウォッシュコート層及び第2の触媒ウォッシュコート層を含み、第1の触媒ウォッシュコート層は、耐熱性金属酸化物支持材料と、上面に担持された1つ以上の白金族金属成分と、を含み、長さL(L<L)を有し、第1の基材端部によって一方の端部で画定され、第2の触媒ウォッシュコート層は、耐熱性金属酸化物支持材料と、上面に担持された1つ以上の白金族金属成分と、を含み、長さL(L<L)を有し、第2の基材端部によって第2の端部において画定され、第2の触媒ウォッシュコートゾーンは、第1の触媒ウォッシュコート層及び第2の触媒ウォッシュコート層の2層重複領域を含み、第3の触媒ウォッシュコートゾーンは、重複領域に含まれない第2の触媒ウォッシュコート層の単一層を含み得る。
【0072】
本発明の第1の態様による複合酸化触媒は、4つの触媒ウォッシュコートゾーンを含み得、第4の触媒ウォッシュコートゾーンは、第2の触媒ウォッシュコートゾーンと第3の触媒ウォッシュコートゾーンとの間に位置し、第4の触媒ウォッシュコートゾーンは、第4の耐熱性金属酸化物支持材料と上面に担持された1つ以上の白金族金属成分とを含み、第2の触媒ウォッシュコートゾーンの第2の端部によってその第1の端部において、及び第3の触媒ウォッシュコートゾーンの第1の端部によってその第2の端部において画定され、基材体積の立方フィート当たりの白金族金属のグラム数(g/ft)で定義される、第4の触媒ウォッシュコートゾーン中の総白金族金属担持量は、第2の触媒ウォッシュコートゾーン及び第3の触媒ウォッシュコートゾーンのそれぞれにおける総白金族金属担持量よりも大きく、第1の触媒ウォッシュコート層は、長さL(L<L)を有し、第1の基材端部によって一方の端部において画定され、第2の触媒ウォッシュコート層は、長さL(L<L)を有し、第2の基材端部によって第2の端部において画定され、第4の触媒ウォッシュコートゾーンは、第1の触媒ウォッシュコート層及び第2の触媒ウォッシュコート層の2層重複領域を含み、第3の触媒ウォッシュコートゾーンは、重複領域に含まれない第2の触媒ウォッシュコート層の単一層を含む。
【0073】
上記の3つ及び4つのゾーン構成において、好ましくは、第3の触媒ウォッシュコートゾーン中の1つ以上の白金族金属成分は、本質的に白金からなる。第1及び第2の触媒ウォッシュコート層の重なりを特徴とする構成において、第3の触媒ウォッシュコートゾーン中の1つ以上の白金族金属が本質的に白金からなる場合、第3の触媒ウォッシュコートゾーンを形成する第2の触媒ウォッシュコート層もまた、本質的に白金からなることが理解されるであろう。
【0074】
本発明の2つ、3つ、及び4つのゾーン構成において、第1の触媒ウォッシュコートゾーンの後に、基材長さLに沿って直列に配列された各連続する触媒ウォッシュコートゾーン中の白金のパラジウムに対する質量比は、直前の触媒ウォッシュコートゾーンよりも大きい場合がある。
【0075】
第1の触媒ウォッシュコートゾーン及び/又は第1の触媒ウォッシュコート層は、耐熱性金属酸化物支持材料上に支持された1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分を含み得る。
【0076】
更に、本明細書に記載される2つのゾーンを有する複合酸化触媒において、第2の触媒ウォッシュコートゾーンは、1つ以上のアルカリ土類金属、例えばバリウム及び/又はストロンチウム、好ましくはバリウムを含み得ることが理解されるであろう。
【0077】
また、本明細書に記載される3つのゾーンを有する複合酸化触媒において、第2の触媒ウォッシュコートゾーン、第3の触媒ウォッシュコートゾーン、又は第2の触媒ウォッシュコートゾーン及び第3の触媒ウォッシュコートゾーンの両方はそれぞれ、1つ以上のアルカリ土類金属、例えばバリウム及び/又はストロンチウム、好ましくはバリウムを含み得ることも理解されよう。
【0078】
更に、本明細書に記載される4つのゾーンを有する複合酸化触媒において、第2の触媒ウォッシュコートゾーン、第3の触媒ウォッシュコートゾーン及び/又は第4の触媒ウォッシュコートゾーンはそれぞれ、1つ以上のアルカリ土類金属、例えばバリウム及び/又はストロンチウム、好ましくはバリウムを含み得ることが理解されよう。
【0079】
更に、本明細書に記載される3つ又は4つのゾーンを有する複合酸化触媒において、第1の触媒ウォッシュコート層、第2の触媒ウォッシュコート層、並びに/又は第1の触媒ウォッシュコート層及び第2の触媒ウォッシュコート層の両方はそれぞれ、1つ以上のアルカリ土類金属、例えばバリウム及び/又はストロンチウム、好ましくはバリウムを含み得ることが理解されよう。
【0080】
本発明による3つ又は4つのゾーンを有する複合酸化触媒を製造する方法は、方法を含み、工程(a)において、触媒ウォッシュコート層は、第1の基材端部から基材の全長未満まで延在する第1の触媒ウォッシュコート層であり、この方法は更に、工程(a)の前又は工程(a)の後であるが、いずれの場合も工程(b)の前に、第2の基材端部から基材の全長未満まで延在する長さで第2の触媒ウォッシュコート層を基材に適用して、第1の触媒ウォッシュコート層が部分的に第2の触媒ウォッシュコート層に重なるか、又は第2の触媒ウォッシュコート層が部分的に第1の触媒ウォッシュコート層と重なるようにする工程(a’)を含み、ここでは、第2の触媒ウォッシュコート層は、耐熱性金属酸化物支持材料と、1つ以上の白金族金属成分と、を含み、2つの重なる層を含むウォッシュコート触媒ゾーンの白金族金属組成は、ゾーンの2つの重なる層のそれぞれに存在する総白金族金属を含むことが理解される。
【0081】
上記方法が、3つ以上のゾーンを有する本発明による複合酸化触媒の一部を作製するために使用される場合、含浸工程の軸方向長さLは、軸方向基材長さに沿って存在する触媒ウォッシュコートゾーンの数を決定できることが理解されるであろう。これは、本明細書の図2図3図4及び図5を参照して更に説明される。
【0082】
が、第1の基材端部と、第1の触媒ウォッシュコート層と第1の基材端部に最も近い第2の触媒ウォッシュコート層との重なり領域の端部を表す、第2の触媒ウォッシュコートの第1の端部との間の軸方向長さよりも短い場合、第2の触媒ウォッシュコートゾーンは、第1の触媒ウォッシュコートゾーンLの第2の端部によって一方の端部において、かつ、第1の触媒ウォッシュコート層の重複領域の第1の端部と第1の基材端部に最も近い第2の触媒ウォッシュコート層によって第2の端部において画定された、第1の触媒ウォッシュコート層の単一層を含む。PGM濃度の適切な定式化により、第4の触媒ウォッシュコートゾーンは、第1の基材端部に最も近い第1及び第2のウォッシュコート層の重複領域の第1の端部によって画定され得、白金族金属担持量(g/ft)は、第1の触媒ウォッシュコートゾーン>第4の触媒ウォッシュコートゾーン>第2の触媒ウォッシュコートゾーンである。第3の触媒ウォッシュコートゾーンは、第1の触媒ウォッシュコート層が延在し始める基材端部の反対側の基材端部によって第2の端部において、かつ、第1の触媒ウォッシュコート層と第2の触媒ウォッシュコート層が延在し始める端部に最も近い第2の触媒ウォッシュコート層との重複領域の端部によって第1の端部において画定され得、すなわち、第4の触媒ウォッシュコートゾーンの第2の端部にも対応する。この構成は、本明細書の図3及び図5に示される。
【0083】
が、第1の基材端部から第1の触媒ウォッシュコート層が第2の触媒ウォッシュコートゾーンの重複領域に入るまで延在する、第1の触媒ウォッシュコート層の単一層の軸方向長さと同じ長さである場合、酸化触媒は、全体として、3つの軸方向に配置された触媒ウォッシュコートゾーンを含み、酸化触媒全体は、第1の基材端部から、第1、第2、及び第3の触媒ウォッシュコートゾーンとして順番に番号付けされ得る。
【0084】
あるいは、本発明による3つ以上の触媒ウォッシュコートゾーンを有する酸化触媒は、以下のように、上記の2つの触媒ウォッシュコートゾーンを有する第6の発明態様による酸化触媒の製造方法に適合させて部分的に作製することができる。最初に、基材を、その全長Lに沿って第1の触媒ウォッシュコート層でコーティングする。次に、耐熱性金属酸化物支持材料と、1つ以上の白金族金属成分と、を含む、第2の触媒ウォッシュコート層を、第1の触媒ウォッシュコート層の上面の第1の基材端部から、全基材長さL未満の軸方向長さまでコーティングすることができ、あるいは、第1の触媒ウォッシュコート層を、1つ以上の白金族金属塩及び任意選択的に1つ以上のアルカリ土類金属塩を含む含浸溶液で、第1の基材端部から全基材長さL未満の長さまで含浸することができる。第2の触媒ウォッシュコート層又は含浸された第1の触媒ウォッシュコート層は、部分的に、基材に沿って軸方向に配置された3つの触媒ウォッシュコートゾーンの中央又は第2を形成する。3番目に、耐熱性金属酸化物支持材料と、1つ以上の白金族金属成分と、を含み、第1の触媒ウォッシュコートゾーンLである、第3の触媒ウォッシュコート層を、第2の触媒ウォッシュコート層の上面の第1の基材端部から第2の触媒ウォッシュコート層又は上記第2の工程の第1の含浸の軸方向長さよりも短い軸方向長さまで、コーティング(あるいは、第1の触媒ウォッシュコートゾーンに相当するゾーン長さLだけ、含浸された第1のウォッシュコート層上に含浸)することができる。第1の触媒ウォッシュコートゾーンLの白金族金属含有量は、下層の第1の触媒ウォッシュコート層、第2の触媒ウォッシュコート層又は含浸溶液、及び第3の触媒ウォッシュコート層又は含浸溶液の白金族金属組成の組み合わせを含むことが理解されよう。存在する場合、1つ以上のアルカリ土類金属成分は、第1、第2、及び/又は第3の適用工程のウォッシュコート又は含浸工程において存在し得る。
【0085】
少なくとも第3の工程は、第6の発明態様の工程(b)に対応する長さLまでの含浸として実施されることが好ましい。これは、複数の層上コーティングが、ガスの通過を可能にする基材の開放前面領域の断面積を減少させ、それによって、システム内の背圧を不必要に増加させるからである。したがって、少なくとも1つの触媒ウォッシュコートゾーンが、下層の触媒ウォッシュコート層の含浸工程、好ましくは、第1の触媒ウォッシュコートゾーンの形成に対応する第3の工程から形成される複合酸化触媒が好ましい。
【0086】
車両用圧縮点火機関の排気システムでの使用において、第1の触媒ウォッシュコートゾーンを含む本発明の第1の態様による酸化触媒の第1の基材端部は、上流側、すなわちエンジンの最も近くに向けられる。すなわち、第1の基材端部は、第1の上流側の吸入基材端部として画定され得、第2の基材端部は、第2の下流側の基材(又は吐出)端部として画定され得る。
【0087】
白金族金属担持量
一般に、本発明による複合酸化触媒中の各触媒ウォッシュコートゾーンは、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、及びそれらの任意の2つ以上の混合物又は合金からなる群から選択される、1つ以上又は2つ以上の白金族金属成分を含む。一般に、第1の触媒ウォッシュコートゾーン中の1つ以上の白金族金属成分は、白金を含む。
【0088】
第1の触媒ウォッシュコートゾーン中の1つ以上の白金族金属成分は、白金から本質的になり得る(例えば、上記の図9の実施形態を参照されたい)。好ましくは、第1の触媒ウォッシュコートゾーンは、第1の触媒ウォッシュコートゾーン中に存在する唯一の白金族金属として白金及びパラジウムの両方を含む。
【0089】
具体的には、第1の触媒ウォッシュコートゾーン及び/又は第1の触媒ウォッシュコート層中の1つ以上の白金族金属成分は、白金及びパラジウムの両方を含み得、例えば、2つ以上の白金族金属成分は、白金及びパラジウムから本質的になる、又は白金及びパラジウムからなる。好ましくは、第1の触媒ウォッシュコートゾーン及び/又は第1の触媒ウォッシュコート層中に存在する唯一の白金族金属は、白金及びパラジウムである。第1の触媒ウォッシュコート層が白金及びパラジウムの両方を含む場合、第1の触媒ウォッシュコート層を含む任意の触媒ウォッシュコートゾーンもまた、白金及びパラジウムの両方を含むことが理解されるであろう。
【0090】
第1の触媒ウォッシュコートゾーン中の白金のパラジウムに対する重量比は、≧1であり得、この項は、1:0の白金のパラジウムに対する重量比を含む(例えば、図9の実施形態を参照されたい)。第1の触媒ウォッシュコートゾーン中の白金のパラジウムに対する重量比は、10:1≧1.5:1であり得る。
【0091】
あるいは、第1の触媒ウォッシュコートゾーン中の白金のパラジウムに対する重量比は、<1であり得、この項は、0:1の白金のパラジウムに対する重量比を含む。しかしながら、第1の触媒ウォッシュコートゾーンが<1である実施形態では、好ましくは、第1の触媒ウォッシュコートゾーン中の白金のパラジウムに対する重量比は、≧1:3である(後述の実施例11~13を参照されたい)。
【0092】
触媒ウォッシュコートゾーン(第1の触媒ウォッシュコートゾーン以外)が、1つの白金族金属のみを含む場合、好ましくは白金であり、すなわち、1つ以上の白金族金属成分は、本質的に白金からなるか、又は白金からなる。第2の触媒ウォッシュコートゾーン中の1つ以上の白金族金属成分は、白金を含み得る。第2の触媒ウォッシュコートゾーン中の1つ以上の白金族金属成分は、白金から本質的になり得る。更に、第2の触媒ウォッシュコートゾーン中の1つ以上の白金族金属成分は、白金、例えば白金及びパラジウムの両方を含み、すなわち意図的に含み、又は白金が、第2の触媒ウォッシュコートゾーン中に存在する唯一の白金族金属であってもよく、例えば、第2の触媒ウォッシュコートゾーン中の1つ以上の白金族金属成分は白金を含む若しくは白金からなり、又は第2の触媒ウォッシュコートゾーン中の2つ以上の白金族金属成分は、白金及びパラジウムの両方からなることが好ましい。第2の触媒ウォッシュコートゾーン中の白金のパラジウムに対する質量比は、好ましくは、第1の触媒ウォッシュコートゾーン中の白金のパラジウムに対する質量比よりも大きい。任意選択的に、第2の触媒ウォッシュコートゾーン中の白金の含有量は、ゾーン中の耐熱性金属酸化物支持材料上に担持された白金族金属及び卑金属(例えば、アルカリ土類金属)を含む総金属の1重量%超である。
【0093】
好ましくは、基材が3つ以上の触媒ウォッシュコートゾーンを含む場合、第3の触媒ウォッシュコートゾーン又は第2の触媒ウォッシュコート層は、白金、例えば白金及びパラジウムの両方を含み、すなわち意図的に含み、又は白金が、第3の触媒ウォッシュコートゾーン又は第2の触媒ウォッシュコート層中に存在する唯一の白金族金属であってもよい。任意選択的に、第3の触媒ウォッシュコートゾーン中の白金の含有量は、ゾーン中の耐熱性金属酸化物支持材料上に担持された白金族金属及び卑金属(例えば、アルカリ土類金属)を含む総金属の1重量%超である。
【0094】
好ましい構成では、白金は、第2の触媒ウォッシュコート層中の唯一の白金族金属であり、すなわち、第2の触媒ウォッシュコート層中の1つ以上の白金族金属成分は、この特徴が下流の触媒機能の動作のためのより安定したNO生成を提供するため、特に、図4及び図5に示すように、第2の触媒ウォッシュコート層が第1の触媒ウォッシュコート層と重なる構成では、白金からなる(Pt:Pd重量が1:0)。したがって、安定したNO生成のために、第2の触媒ウォッシュコート層中の1つ以上の白金族金属成分が白金からなる構成が好ましく、このとき、第2の触媒ウォッシュコート層は第1の触媒ウォッシュコート層と重なる。白金が第3の触媒ウォッシュコートゾーン又は第2の触媒ウォッシュコート層中に存在する唯一の白金族金属であり、すなわち、Pt:Pd重量比が1:0である好ましい構成では、第3の触媒ウォッシュコートゾーン又は第2の触媒ウォッシュコート層は、マンガンを含む(以下を参照されたい)。
【0095】
好ましくは、第2の触媒ウォッシュコートゾーンは白金及びパラジウムの両方を含み、例えば、第2の触媒ウォッシュコートゾーン中の2つ以上の白金族金属成分が、白金及びパラジウムからなるが、これは、この特徴が炭化水素スリップ制御を改善するからである。
【0096】
したがって、一般に、基材の第2の(吐出)端部によってその第2の端部において画定される任意の触媒ウォッシュコートゾーンは意図的に白金を含み、任意選択的に、触媒ウォッシュコートゾーン中の白金の含有量は、ゾーン中の耐熱性金属酸化物支持材料上に担持された白金族金属及び卑金属(例えば、アルカリ土類金属)を含む総金属の1重量%を超える。
【0097】
典型的には、重量ディーゼルエンジン排気システムに適用するための基材上の総白金族金属担持量は、全体として(元素金属として計算)、5~60g/ft、好ましくは8~50g/ftである。
【0098】
基材上のPt:Pdの重量比は、全体として(元素金属として計算)、好ましくは3:2~9:1、好ましくは2:1~7:1、最も好ましくは3:1~5:1である。
【0099】
第1の触媒ウォッシュコートゾーン中の白金族金属担持量(元素金属として計算)は、好ましくは100g/ft未満、好ましくは25~75g/ft、最も好ましくは35~65g/ftである。第1の触媒ウォッシュコートゾーンは、第1の触媒ウォッシュコート層、一般的には第1の触媒ウォッシュコート層の単一層内に「下層の」白金族金属担持量を含み得、これはその後、乾燥及び焼成される前に、白金族金属塩の高濃度溶液で含浸されることが理解されるであろう。結果として、第1の触媒ウォッシュコートゾーンは、第1の触媒ウォッシュコート層及び含浸溶液の両方由来の白金族金属担持量の組み合わせである。
【0100】
全体として、第2及び後続の触媒ウォッシュコートゾーン中の白金族金属担持量、すなわち、第1の触媒ウォッシュコートゾーン以外の触媒ウォッシュコートゾーン中の総白金族金属(元素金属として計算)は、使用される実施形態に依存し得る。したがって、例えば、図1及び図9に示されるような、合計2つのゾーンのみを含む実施形態では、第2の触媒ウォッシュコートゾーン中の総白金族金属担持量は、好ましくは1~10g/ftである。図9に示される特定の実施形態では、吸入端における第1の触媒ウォッシュコート層は、唯一の白金族金属として、ウォッシュコート担持量が1.25g/ftでPtを含むのに対し、吐出端における第2の触媒ウォッシュコート層は、唯一の白金族金属として、ウォッシュコート担持量が3.75g/ftでPtを含む。
【0101】
しかしながら、第2の触媒ウォッシュコートゾーンが第1及び第2の触媒ウォッシュコート層の重複領域を含む、3つの触媒ウォッシュコートゾーンを含む実施形態(例えば、図2及び4の実施形態参照)、又は、第4の触媒ウォッシュコートゾーンが第1及び第2の触媒ウォッシュコート層の重複領域を含む、4つの触媒ウォッシュコートゾーンを含む実施形態(例えば、図3及び5の実施形態参照)では、第2の(又は第4の)触媒ウォッシュコートゾーン中の総白金族金属担持量は、10~40g/ft、好ましくは15~35g/ftであり得る。
【0102】
図2図5のいずれか1つに示されるような3つ又は4つの触媒ウォッシュコートゾーンを含む実施形態では、第3の触媒ウォッシュコートゾーン中の総白金族金属担持量は、1~30g/ft、好ましくは5~20g/ftであり得る。
【0103】
図3又は図5に示されるような4つの触媒ウォッシュコートゾーンを含む実施形態では、第2の触媒ウォッシュコートゾーン中の総白金族金属担持量は、1~30g/ft、好ましくは5~20g/ftであり得る。しかしながら、第2の触媒ウォッシュコートゾーン中の総ウォッシュコート担持量は、第3の触媒ウォッシュコートゾーン中よりも常に大きい。
【0104】
耐熱性金属酸化物支持材料上に担持された1つ以上の白金族金属成分、及び/又は(存在する場合)1つ以上のアルカリ土類金属成分は、それと共にウォッシュコート層を形成する前に、耐熱性金属酸化物支持材料に予め固定することができ、そのため、このようなウォッシュコートコーティングでコーティングされた任意のウォッシュコート層全体に存在する。しかしながら、好ましい方法では、1つ以上の白金族金属成分の溶質塩、及び任意選択的に1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分の溶質塩は、例えば、「新しい」耐熱性金属酸化物材料もまた含有する水性ウォッシュコートスラリー中に存在して、基材に適用され、1つ以上の白金族金属成分及び1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分は、基材上にウォッシュコートスラリーをコーティングした後、乾燥及び焼成プロセスを通じて耐熱性金属酸化物支持材料に固定される。「新しい耐熱性金属酸化物材料」とは、白金族金属成分及び/又はアルカリ土類金属成分が、耐熱性金属酸化物成分に予め固定されていないことを意味する。この方法は、エネルギー消費が低く、すなわち、最初に支持された予め固定された耐熱性金属酸化物生成物を調製し、次いでこの予め固定された生成物を使用してコーティング用ウォッシュコートスラリーを調製する2工程プロセスを回避するため、好ましい。更に、発明者らは、少なくとも第1の触媒ウォッシュコート層が、1つ以上の白金族金属成分及び/又は1つ以上のアルカリ土類金属成分の不均一な分布をその厚さ全体にわたって有する(すなわち、基材の表面に垂直な方向は、触媒層の厚さを表す)、発熱生成に有利であり得ることを発見した。この有利な特徴は、白金族金属又はアルカリ土類金属が耐熱性金属酸化物支持材料に予め固定される所望の効果を達成する同程度にまで、利用可能でないか、又は利用可能ではない。
【0105】
出願人の発明のこの特徴の説明については、以下の「ウォッシュコート層中のアルカリ土類金属成分及び/又は白金族金属成分の不均一な分布」の見出しを参照されたい。
【0106】
以下にも記載される本発明の複合酸化触媒の可能な製造方法において、第1の触媒ウォッシュコートゾーンは、部分的に、
(a)触媒ウォッシュコート層を、基材表面に、基材の1つの端部から延在する長さ分適用する工程であって、触媒ウォッシュコート層は、耐熱性金属酸化物支持材料と、1つ以上の白金族金属成分と、を含む、工程と、
(b)第1の基材端部によって一方の端部で画定された長さLのゾーン内の触媒ウォッシュコート層に、1つ以上の白金族金属を含有する溶液を含浸させる工程とによって、得られる又は得ることが可能である。
【0107】
したがって、触媒ウォッシュコート層、例えば、耐熱性金属酸化物支持材料上に担持された1つ以上の白金族金属成分を含む第1の触媒ウォッシュコート層は、それ自体が1つ以上の白金族金属成分を含む溶液で含浸され、得られるゾーンの白金族金属組成は、下層の触媒ウォッシュコート層と含浸溶液との組み合わせであることが理解されよう。したがって、例えば、全体としての第1の触媒ウォッシュコートゾーン中の白金対パラジウム質量(すなわち重量)比は、触媒ウォッシュコート層、すなわち第1の触媒ウォッシュコート層と含浸溶液の両方に由来する白金及びパラジウムの合計から得られる。
【0108】
更に、上述の工程(a)において、触媒ウォッシュコート層は、第1の基材端部から基材の全長未満まで延在する第1の触媒ウォッシュコート層であり、この方法は更に、工程(a)の前であるが、いずれの場合も、第2の基材端部から基材の全長未満まで延在する長さにわたって第2の触媒ウォッシュコート層を基材に適用して、第1の触媒ウォッシュコート層が部分的に第2の触媒ウォッシュコート層に重なるか、又は第2の触媒ウォッシュコート層が部分的に第1の触媒ウォッシュコート層と重なるようにする工程(b)の前に、工程(a’)を含み、ここでは、第2の触媒ウォッシュコート層は、耐熱性金属酸化物支持材料と、1つ以上の白金族金属成分と、を含むことが理解されよう。
【0109】
図4及び図5に関して上述したように、好ましくは、第1の触媒ウォッシュコート層は第1の基材端部から延在し、第2の触媒ウォッシュコート層は第2の基材端部から延在し、それによって、第2の触媒ウォッシュコート層は、第1の触媒ウォッシュコート層と部分的に重なる。
【0110】
本発明によれば、第1の触媒ウォッシュコートゾーンは、白金(Pt)及びパラジウム(Pd)の両方を含み得る。第1の触媒ウォッシュコートゾーンが白金及びパラジウムの両方を含む実施形態では、白金のパラジウムに対する重量比は、≧1又は<1であり得る。以下の実施例10の試料10.5から分かるように、白金に対する複合酸化触媒中のパラジウムの量を低減して、触媒中の白金族金属の総コストを低減することが一般的に望まれているが、出願人による実験データは、第1の触媒ウォッシュコートゾーンが≧1でPt及びPdの両方を含む場合、触媒が古くなる際に発熱生成機能に悪影響を及ぼすことなく、第1の触媒ウォッシュコートゾーンからパラジウムを完全に除去することが望ましくないことを示唆している。この点に関して、実施例10の試料10.5は、Pt:Pd重量比が2:1の下層のウォッシュコート層を、パラジウムを含まない、すなわち、Pt:Pd重量比が1:0の含浸媒体に含浸させて、Pt:Pd重量比がおよそ47:1の第1の触媒ウォッシュコートゾーンを形成する場合、得られた触媒が発熱を促進する能力は損なわれる、すなわち、第1の触媒ウォッシュコートゾーンは老化に対して安定性が低くなることを示す。しかしながら、より好ましくはないが、実施例10の試料10.5は、本発明の目的のために有効な複合酸化触媒のままである。
【0111】
第1の触媒ウォッシュコートゾーンが白金及びパラジウムの両方を含む実施形態では、白金のパラジウムに対する重量比は、≧1であり得、実施例10はまた、2:1のPt:Pd重量比を含む下層の触媒ウォッシュコート層を、1:1、2:1、3:1及び4:1のPd:Pd重量比を有する含浸媒体で含浸させたときに生じる第1の触媒ウォッシュコートゾーンを有する経時変化させた複合酸化触媒について、<500℃の不発熱(℃)試験での吸入部温度が類似していることを示しているため、一般に、第1の触媒ウォッシュコートゾーン中の白金(Pt)対パラジウム(Pd)の重量比は、10:1≧1:1、好ましくは10:1≧1.5:1又は6:1≧1.5:1、より好ましくは4:1≧1.5:1、例えば6:1≧2:1、4:1≧1.5:1又は2:1≧1:1であることが好ましい。また、アルカリ土類金属成分と組み合わせると、Pt:Pd≧1:1の重量比により、発熱の着火温度が改善され(着火温度が低下する)、能動的及び能動受動的再生システムにおいて、より低い排気ガス温度からの発熱生成の増加を可能にすることも見出された。
【0112】
同等な機能について本発明による複合酸化触媒における総白金族金属コストの更なる低減は、第1の触媒ウォッシュコートゾーンがより高いPt:Pd重量比、例えば、≧1.5:1、例えば好ましくは10:1≧1.5:1の範囲、又は、吐出ゾーン、例えば、予備形成されたマンガンをドープした混合マグネシウムアルミニウム金属酸化物を含む、複合酸化触媒基材の吐出端によって1つの端部で画定された第3の触媒ウォッシュコートゾーンと組み合わせて、≧2:1の重量比を含む場合に得ることができることが理解されるであろう(パラジウムの重量による現在のコストが白金のものよりも著しく高いため)。この組成を含む吐出ゾーンを有する複合酸化触媒は、実施例8に示されて発熱性能を改善しており、吐出ゾーン又は、吐出(第3の触媒ウォッシュコート)ゾーンを部分的に形成する第2の触媒ウォッシュコート層中の白金族金属をより少量で使用することを可能にし得る。
【0113】
好ましくは、特に3つ以上の触媒ウォッシュコートゾーンを含む実施形態では、第2の触媒ウォッシュコートゾーン中の1つ以上の白金族金属は、白金及びパラジウムの両方を含む。特に好ましい特徴では、第2の触媒ウォッシュコートゾーン中の白金のパラジウムに対する質量比は、第1の触媒ウォッシュコートゾーン中の白金のパラジウムに対する質量比よりも大きい。第2の触媒ウォッシュコートゾーン中の白金族金属担持量と組み合わせて、第2の触媒ウォッシュコートゾーンにおけるこのPt:Pd質量比の利点は、触媒が炭化水素スリップ制御、CO酸化、及びNO酸化を改善することである。
【0114】
この点に関して、例えば、図1に示されるような2つのゾーンからなる実施形態では、製造方法から任意の重なりを可能にする(以下の「定義」項を参照)、好ましくは、第2の触媒ウォッシュコートゾーンは、好ましくは≧10:1、≧5:1、≧3:1又は≧2:1の重量比でパラジウムを含む、PtリッチPGM組成を含む。≧1:1のPt:Pdを含む第1の触媒ウォッシュコートゾーンと組み合わせて、この特徴は、Ptのみ(すなわち、Pt:Pd重量比が1:0)の第2の触媒ウォッシュコートゾーンが、経時変化させた触媒の発熱着火及びHCスリップに有害であることが分かっているため、有利であることが分かっている。この点に関して、第2の触媒ウォッシュコートゾーンにおいてPtに加えPdが存在することにより、第2の触媒ウォッシュコートゾーンの経時変化に対する安定性を改善することができ、すなわち、経時変化中に酸化活性を維持することができる。しかしながら、マンガンと組み合わせると、第2の触媒ウォッシュコートゾーン中の1:0のPt:Pd重量比は、NO酸化に有益であることが判明している(実施例8及び以下を参照されたい)。
【0115】
3つの触媒ウォッシュコートゾーンを含む本発明による複合酸化触媒では、好ましくは白金のパラジウムに対する質量比は、第1の触媒ウォッシュコートゾーンから第2の触媒ウォッシュコートゾーン、第3のウォッシュコートゾーンへと増加する。これは、例えば、第2の触媒ウォッシュコート層(7)が、第1の触媒ウォッシュコート層よりも高いPt:Pd質量比を有し、好ましくは質量比が1:0であり、すなわちPtのみ及び実質的にPdを含まず、これにより、第3の触媒ウォッシュコートゾーン(3)中の第2の触媒ウォッシュコート層の単一層が、基材上に配置された触媒ウォッシュコートゾーンのいずれかの中で最も高いPt:Pd比を有する、図2及び図4に示される実施形態で行うことができる。しかしながら、2つの触媒ウォッシュコートゾーンのみを含む複合酸化触媒に関連して記載されたものと同じ解説が適用されるが、すなわち、ある程度、例えば≧10:1、≧5:1、≧3:1又は≧2:1のパラジウムを含むことにより、第3の触媒ウォッシュコートゾーンの経時変化に対する安定性を改善することができつつも、第1の触媒ウォッシュコートゾーンから第2の触媒ウォッシュコートゾーン、第3の触媒ウォッシュコートゾーンへと増加する白金のパラジウムに対する質量比の好ましい配置を依然として維持している。3ゾーン複合酸化触媒の文脈では、第3の触媒ウォッシュコートゾーン(3)中にマンガンも含む利益も参照される(実施例8及び以下を参照されたい)。
【0116】
更に、4つの触媒ウォッシュコートゾーンを有する複合酸化触媒では、第1の触媒ウォッシュコートゾーンの後、基材長さLに沿って直列に配列された吸入端における各連続する触媒ウォッシュコートゾーン中の白金のパラジウムに対する質量比は、直前の触媒ウォッシュコートゾーンよりも大きい。これはまた、例えば、第2の触媒ウォッシュコート層(7)が、第1の触媒ウォッシュコート層よりも高いPt:Pd質量比を有し、好ましくは質量比が1:0であり、すなわちPtのみ及び実質的にPdを含まず、これにより、第3の触媒ウォッシュコートゾーン(3)中の第2の触媒ウォッシュコート層の単一層が、触媒ウォッシュコートゾーンのいずれかの中で最も高いPt:Pd比を有する、図3及び図5に示される実施形態で達成することができる。しかしながら、2つの触媒ウォッシュコートゾーンのみを含む複合酸化触媒に関連して記載されたものと同じ解説が適用されるが、すなわち、ある程度、例えば≧10:1、≧5:1、≧3:1又は≧2:1のパラジウムを含むことにより、第3の触媒ウォッシュコートゾーンの経時変化に対する安定性を改善することができつつも、第1の触媒ウォッシュコートゾーンから第2の触媒ウォッシュコートゾーン、第3の触媒ウォッシュコートゾーンへと増加する白金のパラジウムに対する質量比の好ましい配置を依然として維持している。4ゾーン複合酸化触媒の文脈では、第3の触媒ウォッシュコートゾーン(3)中にマンガンも含む利益も参照される(実施例8及び以下を参照されたい)。
【0117】
本発明による4ゾーン複合酸化触媒の文脈では、「吸入端における、第1の触媒ウォッシュコートゾーンの後、基材長さLに沿って直列に配列された各連続する触媒ウォッシュコートゾーン中は、直前の触媒ウォッシュコートゾーンよりも大きい」という特徴は、図3及び図5の触媒ウォッシュコートゾーンの番号とは異なる順序であることを理解されたい。すなわち、図3及び図5では、第1の触媒ウォッシュコートゾーン(1)からウォッシュコート触媒ゾーンの番号の順序は、1→2→4→3である。これは、第3の触媒ウォッシュコートゾーン(3)が第2の基材端部(又は吐出端)によって第2の端部において画定されるためである。しかしながら、「吸入端における、第1の触媒ウォッシュコートゾーンの後、基材長さLに沿って直列に配列された各連続する触媒ウォッシュコートゾーン中は、直前の触媒ウォッシュコートゾーンよりも大きい」という特徴は、例えば、第4の触媒ウォッシュコートゾーン中のPt:Pd質量比が直前の第2の触媒ウォッシュコートゾーン(2)中のPt:Pd質量比よりも大きく、かつ第3の触媒ウォッシュコートゾーン(3)中のPt:Pd質量比が直前の第4の触媒ウォッシュコートゾーン(4)よりも大きいことを必要とする。
【0118】
好ましくは、第2の触媒ウォッシュコートゾーン中の1つ以上の白金族金属は、白金及びパラジウムの両方を含み、白金のパラジウムに対する質量比は、>1:1、好ましくは10:1>3:2、例えば5:1>3:2である。
【0119】
典型的には、第1の触媒ウォッシュコートゾーン又は第1の触媒ウォッシュコート層は、ロジウムを含まない。
【0120】
第2の触媒ウォッシュコートゾーン又は第2の触媒ウォッシュコート層がロジウムを含まないことが好ましい場合がある。
【0121】
第3又は第4の触媒ウォッシュコートゾーンは、ロジウムを含まなくてもよい。
【0122】
本発明による複合酸化触媒は、ロジウムを実質的に含まないことが更に好ましい場合がある。
【0123】
発明者らはまた、1つ以上の白金族金属成分及び/又は1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分の不均一な分布が、基材の表面に垂直な方向に存在する場合、改善された発熱生成の利点が存在し得ることもまた見出した。これについては、以下の「ウォッシュコート層中のアルカリ土類金属成分及び/又は白金族金属成分の不均一な分布」の見出しで詳しく説明する。
【0124】
アルカリ土類金属成分
本発明によれば、第1の触媒ウォッシュコートゾーン及び/又は第1の触媒ウォッシュコート層は、耐熱性金属酸化物支持材料上に支持された1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分を含み得る。
【0125】
本発明による複合酸化触媒中のアルカリ土類の目的は、上述のリーンNO触媒プロセスによる後の放出及び還元のためにNOを貯蔵しないことが理解されるであろう。これは、アルカリ土類金属、白金族金属、及び任意選択的にセリア、ドープされたセリア又はセリア混合酸化物成分も含むことができる、リーンNOトラップ(LNT)と呼ばれる特別に設計された触媒の目的であるが、LNTは特別にプログラムされたエンジン制御ユニットと組み合わせて使用しなければならない。このエンジン制御は、リーンである理論空燃比運転モードで動作し、その間、NOはLNTに吸収され、運転モードでは、CO及び/又は炭化水素などの追加の還元種を含有するリッチな排気ガスのパルスがLNTと接触し、それによって吸収されたNOを脱着し、白金族金属上のリーンNO触媒反応を介して還元する。LNTの使用では、リーン/リッチサイクルの周期は、リーン約60秒、リッチ5秒の順である。LNTの脱硫酸は頻度が低いが、リッチ化の期間はより長くなり得る。しかしながら、脱硫酸事象の制御はまた、特別にプログラムされたエンジン制御ユニットを必要とする。
【0126】
本発明の複合酸化触媒は、少なくとも2つの顕著な理由でLNTと区別され得る。第1に、LNTは、代わりにSCR触媒を使用する重量ディーゼルエンジンからの排気ガスの処理に使用されない。これは主に、重量ディーゼル車両用のLNT触媒が、必要とされる白金族金属のコストが触媒のコストを高額にするほど、非常に大量である必要があるからである。第2に、好ましくは、本発明の複合酸化触媒は、セリア、ドープされたセリア又はセリア混合酸化物又は複合酸化物成分を実質的に含有しない。
【0127】
第1の触媒ウォッシュコートゾーンが、発熱を生成させる目的でアルカリ土類金属を含む場合、任意選択的に、第1の触媒ウォッシュコートゾーン以外の触媒ウォッシュコートゾーンについては、そのような他のゾーンは、第1の触媒ウォッシュコートゾーン以外のゾーン(1つ又は複数)に存在するアルカリ土類金属担持量が少ない、又は実質的にアルカリ土類金属が存在しない場合、増加したNO酸化を示す場合がある。
【0128】
第1の発明態様によれば、第1の触媒ウォッシュコートゾーンは、第1の耐熱性金属酸化物支持材料上に支持された1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分を含み得る。発明者らは、炭化水素燃料から発熱を生じさせる目的で、好ましくはバリウムを含むアルカリ土類金属成分の存在は、第1の触媒ウォッシュコートゾーン中の1つ以上の白金族金属の量を約7g/ft低減できる程度にまで、HC変換を改善し、依然として同じ活性を有することを見出した。第1の触媒ウォッシュコートゾーン中の比較的高い白金族金属担持量は、発熱反応を急速に開始し、促進する一方で、1つ以上のアルカリ土類金属の存在は、例えば焼結を軽減し、熱耐久性を改善することによってPGMを安定化させると考えられる。
【0129】
第1の触媒ウォッシュコートゾーン中の1つ以上のアルカリ土類金属成分は、好ましくはバリウム(Ba)又はストロンチウム(Sr)、好ましくはBaであり、例えば、第1の触媒ウォッシュコートゾーン中の1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分はバリウムからなる。
【0130】
他のアルカリ土類金属よりバリウムが好ましい理由は、以下の「ウォッシュコート層中のアルカリ土類金属成分及び/又は白金族金属成分の不均一な分布」で説明される。
【0131】
第1の触媒ウォッシュコートゾーン中の総アルカリ土類金属成分担持量は、元素金属として計算される10~100g/ft、好ましくは20~80g/ftであってよい。過度に多くのアルカリ土類金属成分は、発熱生成に有害であり得る。この点に関して、第1の触媒ウォッシュコートゾーン中の総元素アルカリ土類金属の総元素白金族金属に対する重量比は、<1:1、例えば、1:1~1:2、好ましくは1:1~50:80であり得る。
【0132】
開示された複合酸化触媒を作製する方法では、1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分は、工程(a)で適用される触媒ウォッシュコート層、及び/又は工程(b)の含浸溶液中に存在することができるが、好ましくは、第6の発明態様の工程(a)の触媒ウォッシュコート層、例えば第1の触媒ウォッシュコート層に存在する。これは、アルカリ土類金属、例えばバリウム塩が工程(b)の含浸媒体中に存在する場合、含浸媒体中の白金族金属塩を使用するための好ましいpH範囲を用いて制御することがより困難である場合があり、そのため、多くは、標的とする第1の触媒ウォッシュコートゾーンから吸い上げることによって移動するためである。アルカリ土類金属成分がウォッシュコート中に存在し、次にコーティング後に乾燥及び焼成される最終生成物中の最終的なアルカリ土類金属の位置をより制御できるため、この代替物が好ましい。
【0133】
1つ以上のアルカリ土類金属を含む触媒ウォッシュコート層、例えば、第1の触媒ウォッシュコート層が、工程(a)において適用され、触媒ウォッシュコート層が1つ以上のアルカリ土類金属成分を含む工程(b)における溶液でそれ自体が含浸される場合、得られる含浸ゾーンの組成は、下層の触媒ウォッシュコート層及び含浸溶液中のアルカリ土類金属成分の含有量の組み合わせであることが理解されるであろう。
【0134】
第2の触媒ウォッシュコートゾーンはまた、好ましくはバリウムを含む1つ以上のアルカリ土類金属成分を含み得る。これは、方法工程(a)の触媒ウォッシュコート層、例えば、第1の触媒ウォッシュコート層中に、又は複合酸化触媒が第3又は第4の触媒ウォッシュコートゾーンを含む場合は第2の触媒ウォッシュコート層中に存在している、1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分、好ましくはバリウム由来であり得る。第2の触媒ウォッシュコート層中に存在する1つ以上のアルカリ土類金属成分は、本明細書では、1つ以上の第2のアルカリ土類金属成分と称され得る。第3及び第4の触媒ウォッシュコート層はまた、1つ以上の第2のアルカリ土類金属成分、好ましくはバリウムを含んでもよい。
【0135】
発明者らはまた、1つ以上の白金族金属成分及び/又は1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分の不均一な分布が、基材の表面に垂直な方向に存在する場合、少なくとも第1の触媒ウォッシュコートゾーンからの改善された発熱生成の利点が存在し得ることもまた見出した。これについては、以下の「ウォッシュコート層中のアルカリ土類金属成分及び/又は白金族金属成分の不均一な分布」の見出しで詳しく説明する。
【0136】
耐熱性金属酸化物支持材料
第1、第2、第3、若しくは第4の耐熱性金属酸化物支持材料、又は第1及び/若しくは第2の触媒ウォッシュコート層の耐熱性金属酸化物支持材料は、それぞれ一般的に、アルミナ、マグネシア、シリカ、ジルコニア、チタニア、セリア、及び複合酸化物、又はこれらの2つ以上の混合酸化物からなる群から選択される。原則として、任意の好適な耐熱性金属酸化物支持材料を、第1の耐熱性金属酸化物支持材料として使用することができる。第1、第2、第3、若しくは第4の耐熱性金属酸化物支持材料、又は第1若しくは第2の触媒ウォッシュコート層の耐熱性金属酸化物支持材料のそれぞれの支持材料は、互いに同じであっても、互いに異なっていてもよい。しかしながら、図1に示される複合酸化触媒が、第1の触媒ウォッシュコートゾーン(1)及び第2の触媒ウォッシュコートゾーン(2)を画定するために、第1の端部において軸長Lまで含浸された長さLの単一ウォッシュコート層であり得る場合、第1及び第2の触媒ウォッシュコートゾーン中の耐熱性金属酸化物支持材料は同じであることが理解されるであろう。
【0137】
更に、図2図5に示される3つ及び4つの触媒ウォッシュコートゾーンを含む実施形態では、第1の触媒ウォッシュコート(6)で使用される耐熱性金属酸化物支持材料が「X」である場合、第1、第2、及び(存在する場合)第4の触媒ウォッシュコートゾーンが、第1の触媒ウォッシュコート層(6)の全長Lの一部分のみを含むため、第1、第2、及び(存在する場合)第4の触媒ウォッシュコートゾーンのそれぞれは、それぞれ、耐熱性金属酸化物支持材料「X」を含み、すなわち、第1、第2、及び(存在する場合)第4の耐熱性金属酸化物支持材料は同じである。同様に、図2図5に示される実施形態における第2の触媒ウォッシュコート層(7)が、耐熱性金属酸化物支持材料「Y」を含む場合、第3の触媒ウォッシュコートゾーン、及び存在する場合、重複領域を含む第2又は第4の触媒ウォッシュコートゾーンは、第2の触媒ウォッシュコート層(7)の全長Lの一部のみを含むため、これらのゾーンのそれぞれは、耐熱性金属酸化物支持材料「Y」を含む。
【0138】
好ましくは、耐熱性金属酸化物支持材料が、アルミナ、シリカ、ジルコニア、セリア、及びこれらの2つ以上の複合酸化物又は混合酸化物からなる群から選択され、最も好ましくは、アルミナ、シリカ及びジルコニア、並びにこれらの2つ以上の複合酸化物又は混合酸化物からなる群から選択される。混合酸化物又は複合酸化物としては、シリカ-アルミナ及びセリア-ジルコニア、最も好ましくはシリカ-アルミナが挙げられる。好ましくは、耐熱性金属酸化物支持材料は、セリア、又はセリアを含む混合酸化物若しくは複合酸化物を含まない。より好ましくは、耐熱性酸化物は、アルミナ、シリカ、及びシリカ-アルミナからなる群から選択される。耐熱性酸化物はアルミナであってもよい。耐熱性酸化物はシリカであってもよい。耐熱性酸化物はシリカ-アルミナであってもよい。
【0139】
第1の触媒ウォッシュコートゾーンは、第1の耐熱性金属酸化物支持材料上に支持された1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分を含むため、好ましくは、第1の触媒ウォッシュコートゾーン又は下層の触媒ウォッシュコート、例えば第1の触媒ウォッシュコートの第1の耐熱性金属酸化物支持材料は、ヘテロ原子成分をドープしたアルミナを含むか、又はそれから本質的になる。ヘテロ原子成分は、典型的には、ケイ素、マンガン(以下を参照されたい)、マグネシウム、バリウム、ランタン、セリウム、チタン、若しくはジルコニウム、又はこれらの2つ以上の組み合わせを含む。ヘテロ原子成分は、ケイ素の酸化物、マンガンの酸化物、マグネシウムの酸化物、バリウムの酸化物、ランタンの酸化物、セリウムの酸化物、チタンの酸化物、又はジルコニウムの酸化物を含み得るか、又はこれらから本質的になり得る、又はこれらからなり得る。より好ましくは、ヘテロ原子成分をドープしたアルミナは、シリカをドープしたアルミナ、又は酸化マグネシウムをドープしたアルミナ、又は酸化マンガンをドープしたアルミナである。更により好ましくは、ヘテロ原子成分をドープしたアルミナは、シリカをドープしたアルミナである。ヘテロ原子成分をドープしたアルミナは、当該技術分野において既知の方法を使用して、又は例えば、米国特許第5,045,519号に記載の方法によって調製することができる。
【0140】
ドーパントを含めることにより、耐熱性金属酸化物支持材料を安定化させるか、又は担持白金族金属の触媒反応を促進することができる。典型的には、ドーパントは、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、ケイ素(Si)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、サマリウム(Sm)、ネオジム(Nd)、バリウム(Ba)、及びこれらの酸化物からなる群から選択され得る。一般に、ドーパントは、耐熱性金属酸化物(すなわち、耐熱性金属酸化物のカチオン)とは異なる。したがって、例えば、耐熱性金属酸化物がチタニアである場合、ドーパントはチタン又はその酸化物ではない。
【0141】
耐熱性金属酸化物支持材料がドーパントでドープされるとき、典型的には、耐熱性金属酸化物支持材料は、0.1~10重量%のドーパントの総量を含む。好ましくは、ドーパントの総量は0.25~7重量%、より好ましくは2.5~6.0重量%である。好ましくは、白金族金属及びアルカリ土類金属と組み合わせてこのような支持材料を含む酸化触媒が、酸化反応、例えばCO及び炭化水素酸化を促進するため、ドーパントはシリカである。
【0142】
耐熱性金属酸化物支持材料がシリカ-アルミナである場合、一般的に、耐熱性酸化物は、20~95重量%のアルミナ及び5~80重量%のシリカ(例えば、50~95重量%のアルミナ及び5~50重量%のシリカ)、好ましくは35~80重量%のアルミナ及び20~65重量%シリカ(例えば、55~80重量%アルミナ及び20~45重量%のシリカ)、更により好ましくは45~75重量%のアルミナ及び25~55重量%のシリカから本質的になる。シリカ含有量がより高い、例えばシリカ含有量が約30重量%であるシリカ-アルミナは、複合酸化触媒全体に、より高い硫黄耐性を提供することができる。
【0143】
耐熱性酸化物がセリア-ジルコニアである場合、一般的に、耐熱性酸化物は、20~95重量%のセリア及び5~80重量%のジルコニア(例えば、50~95重量%のセリア及び5~50重量%のジルコニア)、好ましくは、35~80重量%のセリア及び20~65重量%のジルコニア(例えば、55~80重量%のセリア及び20~45重量%のジルコニア)、更により好ましくは45~75重量%のセリア及び25~55重量%のジルコニアから本質的になる。
【0144】
典型的には、第1及び第2の触媒ウォッシュコート層は、0.1~3.5g in-3(例えば、0.25~3.0g in-3)、好ましくは0.3~2.5g in-3、なおより好ましくは0.5~2.0g in-3、更により好ましくは0.6~1.75g in-3(例えば0.75~1.5g in-3)の第1の耐熱性金属酸化物支持材料の量を含む。
【0145】
一般に、本発明で使用する耐熱性金属酸化物支持材料は、微粒子状である。第1の支持材料は、≦50μm、好ましくは≦30μm、より好ましくは≦20μmのD90粒径を有し得る(従来のレーザー回折法によって決定される)。耐熱性金属酸化物支持材料の粒径分布は、基材への接着を補助するように選択される。粒子は、一般に粉砕によって得られる。
【0146】
加えて、第1、第2、第3、若しくは第4の耐熱性金属酸化物支持材料及び/又は第1若しくは第2の触媒ウォッシュコートの耐熱性金属酸化物支持材料のそれぞれにおける各支持材料は、炭化水素吸着剤を含んでいてもよく、又はそれから本質的になってもよく、又はそうでなくてもよい。炭化水素吸着剤は、ゼオライト、活性炭、多孔質黒鉛、及びこれらの2つ以上の組み合わせから選択されてもよい。存在する場合、好ましくは炭化水素吸着剤はゼオライトであり、最も好ましくはアルミノケイ酸塩ゼオライトである。
【0147】
支持材料が炭化水素吸着剤を含む場合、典型的には、炭化水素吸着剤の総量は、0.05~3.00g in-3、特に0.10~2.00g in-3(例えば、0.2~0.8g in-3)である。
【0148】
炭化水素吸着剤がゼオライトであるとき、好ましくは、各ゼオライトは中細孔ゼオライト(例えば、最大で10個の四面体原子の環サイズを有するゼオライト)又は大細孔ゼオライト(例えば、最大で12個の四面体原子の環サイズを有するゼオライト)である。
【0149】
好適なゼオライト又はゼオライトの型の例としては、フォージャサイト(FAU)、クリノプチロライト、モルデナイト、シリカライト(MFI)、フェリエライト、X型ゼオライト(FAU)、Y型ゼオライト(FAU)、超安定Y型ゼオライト(FAU)、AEIゼオライト、ZSM-5ゼオライト、ZSM-12ゼオライト(MTW)、ZSM-20ゼオライト、ZSM-34ゼオライト、CHAゼオライト、SSZ-13ゼオライト、SAPO-5ゼオライト(AFI)、オフレタイト、ベータ型ゼオライト、又は銅CHAゼオライトが挙げられる。存在する場合、ゼオライトは、好ましくは、ZSM-5(中細孔ゼオライト)、ベータ型ゼオライト(大細孔ゼオライト)又はY型ゼオライト(大細孔ゼオライト)である。存在する場合、Y型ゼオライト又はベータ型ゼオライトが好ましいが、ベータ型ゼオライトが最も好ましい。
【0150】
しかしながら、本発明によれば、白金族金属含有酸化触媒ゾーン及び層は、炭化水素吸着剤、特にゼオライトを全く含まないことが好ましく、ゼオライトは発熱生成イベント中に熱水分解される可能性があるため、ゼオライトを含めることはあまり望ましくない。重量ディーゼルエンジンから放出される排気ガス温度が、炭化水素吸着が全体サイクルの炭化水素変換を改善するのに望ましい温度未満で使用中に変動することがめったにないため、重量車両用の酸化触媒に炭化水素吸着剤を含める必要性も低い。
【0151】
白金族金属含有触媒ウォッシュコートゾーンの長さ
図1に示されるような2つの白金族金属含有触媒ウォッシュコートゾーンのみを含む実施形態では、第1の触媒ウォッシュコートゾーンの長さは、全基材長さの<50%、好ましくは20~40%であり得る。
【0152】
しかしながら、3つ又は4つの触媒ウォッシュコートゾーンを含む実施形態では、例えば、図2図5のいずれか1つに示されるものは、第1のウォッシュコートゾーンの長さは、全基材長さ(L)の15~35%であり得る。
【0153】
3つ又は4つの触媒ウォッシュコートゾーンを含む実施形態では、例えば、図2図5のいずれか1つに示されるものは、第1及び第2の触媒ウォッシュコート層(6、7)の重複領域の長さ、すなわち、図2及び図4の第2の触媒ウォッシュコートゾーンの長さ、又は図3及び図5の第4の触媒ウォッシュコートゾーンの長さは、全基材長さ(L)の10~40%、好ましくは10~30%であり得る。
【0154】
3つ又は4つの触媒ウォッシュコートゾーンを含む実施形態では、例えば、図2図5のいずれか1つに示されるものは、第3の触媒ウォッシュコートゾーンの長さは、全基材長さ(L)の10~40%、より好ましくは全基材長さ(L)の15~35%、例えば20~30%であり得る。
【0155】
4つの触媒ウォッシュコートゾーンを含む実施形態では、例えば、図3及び図5に示されるものは、図3及び図5の第2の触媒ウォッシュコートゾーンは、全基材長さ(L)の1~40%、好ましくは5~30%であり得る。
【0156】
特に好ましい実施形態では、吸入部触媒ウォッシュコート層6は、まず、Lの約80%の長さまで基材上にコーティングされ、次いで、吐出部触媒ウォッシュコート層7は、Lの約50%の長さまで基材上にコーティングされ、すなわち、触媒ウォッシュコート層6は、Lの30%重なる。第1のウォッシュコートゾーンの長さは、全基材長さ(L)の15~35%であり得る。
【0157】
基材の長さは変化し得るため、第1、第2、及び存在する場合、第3及び第4の触媒ウォッシュコートゾーンの長さを、軸方向全基材長さに対するそれらの軸方向長さとして、すなわち百分率又は割合として指すことがより有用である。一般に、本発明における用途を有する基材は、長さが3~6インチ、より典型的には4~6インチである。したがって、ゾーン長さの百分率×全基材長さ(L)を参照することによって、ウォッシュコート層の長さ又はウォッシュコートゾーンの長さを指すことが可能である。
【0158】
ウォッシュコート層中のアルカリ土類金属成分及び/又は白金族金属成分の不均一な分布
この態様は、図6及び図7に例示され、本明細書の図面の簡単な説明に簡潔に記載されている。
【0159】
第1の発明態様では、第1の触媒ウォッシュコートゾーンは、電子プローブマイクロ分析法(EPMA)によって決定されるとき、基材の表面に垂直な方向に、1つ以上の白金族金属成分及び/又は1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分の不均一な分布を有することができ、1つ以上の白金族金属成分及び/又は第1のアルカリ土類金属成分の濃度は、EPMAによって決定されるとき、基材の表面に向かって垂直方向に減少する。
【0160】
1つ以上の白金族金属成分及び/又は1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分の不均一な垂直分布は、単一層内で達成され得ることが見出された。したがって、触媒の層によってこれらの成分の不均一な垂直分布を達成するための層化に関連する利点は、単層に満たない層を使用することによって得ることができる。
【0161】
本発明の複合酸化触媒において、第1の触媒ウォッシュコートゾーンは、1つ以上の白金族金属成分及び/又は1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分の不均一な分布を、任意選択的に、単層、例えば、第1の触媒ウォッシュコート層などの触媒ウォッシュコート層(すなわち、触媒層は複数の層を含まない)である基材の表面に対して垂直な方向に有してもよい。
【0162】
好ましくは、触媒ウォッシュコート層は、その厚さ全体にわたって(すなわち、基材の表面に垂直な方向は、触媒層の厚さを表す)、1つ以上の白金族金属成分及び/又は1つ以上のアルカリ土類金属成分、最も好ましくは、1つ以上の白金族金属成分及び1つ以上のアルカリ土類金属成分の両方の不均一な分布を有する。
【0163】
典型的には、触媒ウォッシュコート層は、第1の表面及び第2の表面を有する。一般に、第1の表面は、第2の表面に平行(例えば、実質的に平行)である(すなわち、第1の表面を含む平面は、第2の表面を含む平面に平行である)。第1の表面及び第2の表面は、典型的には、基材の表面に平行である。したがって、基材の表面に垂直な方向は、第1の表面及び/又は第2の表面にも垂直である。
【0164】
第1の表面と第2の表面との間の垂直距離は、一般に、触媒ウォッシュコート層の厚さである。
【0165】
第1の表面は、触媒層の露出表面であってもよく、又は追加の層(例えば、第2の層)は、第1の表面上に配置又は支持されてもよい。第1の表面は、一般に、触媒層の上側である(すなわち、上面である)。露出とは、第1の表面が別の材料によって完全に又は実質的に覆われておらず、典型的には、触媒を通過する排気ガスが第2の表面の前に第1の表面と接触することを意味する。
【0166】
第2の表面は、触媒ウォッシュコート層の露出面ではない。一般に、第2の表面は、基材の表面及び/又は別の層の表面と直接接触している。したがって、第2の表面は、一般に、触媒ウォッシュコート層の下側である(すなわち、底面又は最下面である)。
【0167】
好ましくは、1つ以上の白金族金属成分及び/又は1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分の量は、基材の表面に向かって垂直方向に減少する(すなわち、1つ以上の白金族金属成分及び/又は1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分の量は、第1の表面から第2の表面へと減少する)。1つ以上の白金族金属成分及び/又は1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分の量は、基材の表面に向かって垂直方向に連続的に減少又は不連続的に減少してもよく、好ましくは連続的に減少してもよい。したがって、例えば、第1の触媒ウォッシュコートゾーンが、触媒ウォッシュコート層である単一層を含む場合、1つ以上の白金族金属成分及び/又は1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分の量は、触媒ウォッシュコート層の露出面から基材の表面に向かって減少する。
【0168】
触媒ウォッシュコート層は、基材の表面に向かって垂直方向に、1つ以上の白金族金属成分及び/又は1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分の量が線形又は非線形的に減少してもよい(すなわち、第1の表面から第2の表面へ垂直方向に、第1の白金族金属の量が線形又は非線形的に減少)。
【0169】
典型的には、(例えば、触媒ウォッシュコート層の)1つ以上の白金族金属成分及び/又は1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分の総量の少なくとも60%は、第1の表面と、第1の表面と第2の表面との間の触媒ウォッシュコート層中の中間点又は中間面(例えば、第1の表面と第2の表面との間の垂直距離の50%)との間に分布させることができる。平面は、典型的には、第1の表面に平行である。この文脈における「中間」への言及は、一般に、第1の表面と第2の表面との間の平均中間距離を指す。(例えば、触媒ウォッシュコート層の)1つ以上の白金族金属成分及び/又は1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分の総量の少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、例えば少なくとも80%、更により好ましくは少なくとも90%は、第1の表面と、第1の表面と第2の表面との間の触媒ウォッシュコート層中の中間点又は中間面との間に分布できることが好ましい。
【0170】
一般に、(例えば、触媒ウォッシュコート層の)1つ以上の白金族金属成分及び/又は1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分の総量の少なくとも60%は、第1の表面と、第1の表面から第2の表面への垂直距離の25%である触媒ウォッシュコート層中の点又は面との間に分布させることができる。平面は、典型的には、第1の表面に平行である。(例えば、触媒ウォッシュコート層の)1つ以上の白金族金属成分及び/又は1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分の総量の少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、例えば少なくとも80%、更により好ましくは少なくとも90%は、第1の表面と、第1の表面から第2の表面への垂直距離の25%である触媒ウォッシュコート層中の点又は面との間に分布できることが好ましい。
【0171】
(例えば、触媒ウォッシュコート層の)1つ以上の白金族金属成分及び/又は1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分の総量の少なくとも60%は、第1の表面と、第1の表面から第2の表面への垂直距離の10%である触媒ウォッシュコート層中の点又は面との間に分布させることができる。平面は、典型的には、第1の表面に平行である。(例えば、触媒ウォッシュコート層の)1つ以上の白金族金属成分及び/又は1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分の総量の少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、例えば少なくとも80%、更により好ましくは少なくとも90%は、第1の表面と、第1の表面から第2の表面への垂直距離の10%である触媒ウォッシュコート層中の点又は面との間に分布できることが好ましい。
【0172】
基材の表面に垂直な方向における第1の白金族金属の不均一な分布は、一般に、1つ以上の白金族金属成分及び/又は1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分の段階的な分布であってもよい。あるいは、基材の表面に垂直な方向における第1の白金族金属の不均一な分布は、1つ以上の白金族金属成分及び/又は1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分の階段状の分布であってもよい。
【0173】
触媒ウォッシュコート層は、1つ以上の白金族金属成分及び/又は1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分の均一な水平分布又は不均一な水平分布を有し得る。
【0174】
典型的には、1つ以上の白金族金属成分及び/又は1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分の、基材の表面に平行な方向(すなわち、長手方向平面)、及び基材の長手方向中心軸に垂直な方向(すなわち、基材の吸入端面及び/又は吐出端面に平行な方向)への分布は、均一又は不均一である。第1の白金族金属の、基材の表面に平行な方向、及び基材の長手方向中心軸に垂直な方向への分布が均一であることが好ましい。
【0175】
一般に、1つ以上の白金族金属成分及び/又は1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分の、基材の表面に平行な方向(すなわち、長手方向平面)、及び基材の長手方向中心軸に平行な方向(すなわち、基材の吸入端面及び/又は吐出端面に垂直な方向)への分布は、均一又は不均一であってよい。1つ以上の白金族金属成分及び/又は1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分の、基材の表面に平行な方向、及び基材の長手方向中心軸に平行な方向への分布が均一であることが好ましい。
【0176】
第1の触媒ウォッシュコートゾーン中の1つ以上の白金族金属成分及び/又は1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分の、基材の表面に垂直な方向への不均一な分布を得る方法は、1つ以上の白金族金属と、第1の耐熱性金属酸化物支持材料と、を含む、ウォッシュコートコーティングに含浸された1つ以上の白金族金属成分の溶質塩の習慣的な熱乾燥であり、1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分は、ウォッシュコートコーティング中に、及び/又は1つ以上の白金族金属成分の溶質塩を有する含浸媒体中の溶質塩として存在する。好ましくは、第1のアルカリ土類金属成分は、1つ以上の白金族金属成分を含浸するウォッシュコートコーティング中に存在する。含浸は、例えば、Heck et al.,「Catalytic Air Pollution Control-Commercial Technology」、third edition(2009),John Wiley & Sons,Incの2.3章に記載されている、一般的な一般知識の手法である。この参照章ではまた、熱乾燥及びか焼についても説明している。発明者らは、代替的な乾燥方法である、凍結乾燥(例えば、国際公開第2009/080155号を参照されたい)は、基材の表面に垂直な方向に十分によく分散したアルカリ土類金属粒子を形成し、有用な発熱がより低いことを見出した。更なる説明は、以下の「製造方法」の見出しの下で見出すことができる。
【0177】
アルカリ土類金属はバリウムであることが好ましい。発明者らは、バリウム以外のアルカリ土類金属を、例えば酢酸塩として用いる際に、非バリウムアルカリ土類金属塩は、乾燥工程において移動度が低く、したがって、ストロンチウム、カルシウム、又はマグネシウムなどのアルカリ土類金属塩の場合では、そのような不均一な分布を形成しない傾向があることを見出した。出願人は、例えば、いわゆる「クラスト」内の触媒ウォッシュコート層の上面における白金族金属、特にパラジウム、及びバリウムの存在が、本発明の複合酸化触媒の主要な意図である発熱生成機能に有益であると考える。したがって、好ましくは、EPMAによって測定されるとき、基材の表面に垂直な方向にバリウム成分の不均一な分布が存在することに加えて、濃度は、バリウム成分が基材の表面に向かって垂直方向に減少する場合、パラジウムの濃度もまた、基材の表面に向かって垂直方向に減少する。
【0178】
ウォッシュコート被覆層
本発明によれば、ウォッシュコート被覆層は、下層の第1の触媒ウォッシュコート層の軸方向長さの最大200%まで第1の基材端部から軸方向に延在し、このウォッシュコート被覆層は、>0.8g/inの粒子状金属酸化物担持量を含み、粒子状金属酸化物は、銅、鉄、及びマンガンのうちの少なくとも1つ、好ましくは銅のみ、又は銅とマンガンとの両方を含む組み合わせ、又は銅及び鉄を含むアルミノケイ酸塩ゼオライトである。
【0179】
ウォッシュコート被覆層中のアルミノケイ酸塩ゼオライトが銅を含む実施形態では、アルミノケイ酸塩ゼオライトはまたセリウムを含み得る。SCR触媒活性のための銅を有するセリウムを含む利点は、出願人の国際公開第2013/079954号(参照により本明細書に組み込まれている)に開示されている。
【0180】
ウォッシュコート被覆層のアルミノケイ酸塩ゼオライト中に含まれる銅、鉄、マンガン、及び存在する場合、セリウムの総量は、触媒の総重量の0.1~20.0重量%、例えば、約0.5重量%~約15重量%、又は0.10重量%及び約10重量%であり得る。好ましくは、ウォッシュコート被覆層のアルミノケイ酸塩ゼオライト中に含まれる銅、鉄、マンガン、及び存在する場合、セリウムの総量は、触媒の総重量の約1重量%~約9重量%、最も好ましくは約0.2重量%及び約5重量%である。
【0181】
セリウム担持量に関して、具体的には、セリウム担持量は、アルミノケイ酸塩ゼオライト、銅、及びセリウムの総重量に基づいて、0.5~5.0重量%、好ましくは0.8~2.0重量%、及び最も好ましくは0.8~1.5重量%であり得る。ウォッシュコート担持量に応じて、セリウム含有量は、約20~50g/ftである。
【0182】
本発明によれば、ウォッシュコート被覆層は、それによって、重量ディーゼルエンジンの排気システムで使用されるときにリン及び/又は亜鉛汚染を防ぐために、第1の基材端部から下層の第1の触媒ウォッシュコート層の軸方向長さの最大200%、任意選択的に150%、好ましくは、下層の第1の触媒ウォッシュコートゾーンの軸方向長さの>50%、例えば、その軸方向長さの>60%、>70%、>80%、>90%又は>100%、又は最大120%まで軸方向に延在する。下層の第1の触媒ウォッシュコート層に対するウォッシュコート被覆層の軸方向長さの好ましいパラメータ範囲は、典型的には、下層の白金族金属含有の第1の触媒ウォッシュコート層におけるゾーンの総数によって決定される。例えば、下層の第1の触媒ウォッシュコートゾーン及び下層の第1の触媒ウォッシュコート層が、例えば、図9に示されるような2つのゾーンの実施形態において同じ軸方向長さを有する場合、ウォッシュコート被覆層は、下層の触媒ウォッシュコート層の軸方向長さのより長いパーセンテージ、例えば、<200%まで延在することができる(ウォッシュコート被覆層の軸方向長さが、下層の第1のウォッシュコート層/ゾーンの軸方向長さの166%である実施例1の実施形態も参照されたい)。しかしながら、第1の触媒ウォッシュコートゾーンが、軸方向により長い下層の触媒ウォッシュコート層のみの一部で形成される実施形態(例えば、図2図5に示される3つ及び4つのゾーンの実施形態における層(6/8)を参照)では、ウォッシュコート被覆層の軸方向長さのパラメータ範囲は、スケールの下端にあり得る。この点で、図5の構造に基づいて、ウォッシュコート被覆層「G」は、第1のウォッシュコートゾーン(6/8)の軸方向長さの120%である、以下の実施例3の特定の実施形態を参照されたい。しかしながら、実施例2Bでは、使用中の複合酸化触媒によって生成されるNO/NOは、ウォッシュコート被覆層の軸方向長さ、すなわち、複合酸化触媒の吐出端における、「露出された」触媒ウォッシュコート層の軸方向長さの%の影響を受けることにも留意されたい。特に、より長い露出の軸方向長さの%は、より短い露出の軸方向長さの%と比較して、複合酸化触媒で生成されたNO/NOを増加させることが見出された。
【0183】
銅、鉄、及びマンガン、及び存在する場合、セリウムのうちの少なくとも1つを含むアルミノケイ酸塩ゼオライトは、上記の反応(1)~(3)を触媒するために活性である。下層の白金族金属含有の第1の触媒ウォッシュコートゾーン及び/又は層と組み合わせて、複合触媒は、反応(1)~(5)を触媒することができる。すなわち、ウォッシュコート被覆層は、選択的触媒還元(SCR)触媒として説明することができる。
【0184】
アルミノケイ酸塩ゼオライトを含むSCR触媒は既知である。ゼオライト系モレキュラーシーブは、国際ゼオライト協会(IZA:International Zeolite Association)によって公開されたゼオライト構造のデータベースに列挙される骨格構造のうちのいずれか1つを有する微孔性アルミノケイ酸塩である。粒子状金属酸化物がアルミノケイ酸塩ゼオライトを含む実施形態では、好適なゼオライト又はゼオライトフレームワーク型の例としては、フォージャサイト、クリノプチロライト、モルデナイト、シリカライト、フェリエライト、X型ゼオライト、Y型ゼオライト、超安定Y型ゼオライト、AEIゼオライト、ZSM-5ゼオライト、ZSM-12ゼオライト、ZSM-20ゼオライト、ZSM-34ゼオライト、CHAゼオライト、SSZ-13ゼオライト、オフレタイト、ベータ型ゼオライト、又は銅CHAゼオライトが挙げられる。ゼオライトは、好ましくは、ZSM-5、ベータ型ゼオライト又はY型ゼオライトである。アルミノケイ酸塩ゼオライトは、1つ以上の卑金属、例えば銅、鉄、又はマンガンのうちの少なくとも1つを含み得る。例えば、アルミノケイ酸塩ゼオライトがCHAフレームワーク型コードを有する場合、CHAは銅で促進され得る。
【0185】
骨格構造としては、CHA、FAU、BEA、MFI、MOR型のものが挙げられるが、これらに限定されない。これらの構造を有するゼオライトの非限定的な例としては、チャバザイト、フォージャサイト、Y型ゼオライト、超安定Y型ゼオライト、ベータ型ゼオライト、モルデナイト、シリカライト、X型ゼオライト、及びZSM-5が挙げられる。アルミノケイ酸塩ゼオライトは、少なくとも約5から、好ましくは少なくとも約20から、有用な範囲が約10~200又は好ましくは5~50のSiO/Alとして定義されるシリカ/アルミナモル比(SAR)を有することができる。
【0186】
SCR触媒のいずれも、小細孔、中細孔、又は大細孔モレキュラーシーブ、又はそれらの混合物を含み得る。「小細孔モレキュラーシーブ」は、最大で8個の四面体原子の環サイズを含有するモレキュラーシーブである。「中細孔モレキュラーシーブ」は、最大で10個の四面体原子の環サイズを含有するモレキュラーシーブである。「大細孔モレキュラーシーブ」は、最大で12個の四面体原子の環サイズを有するモレキュラーシーブである。
【0187】
SCR触媒のいずれも、ACO、AEI、AEN、AFN、AFT、AFX、ANA、APC、APD、ATT、CDO、CHA、DDR、DFT、EAB、EDI、EPI、ERI、GIS、GOO、IHW、ITE、ITW、LEV、KFI、MER、MON、NSI、OWE、PAU、PHI、RHO、RTH、SAT、SAV、SFW、SIV、THO、TSC、UEI、UFI、VNI、YUG、及びZON、並びにこれらの混合物及び/又はインターグロースからなる骨格型の群から選択される小細孔モレキュラーシーブを含み得る。好ましくは、小細孔モレキュラーシーブは、CHA、LEV、AEI、AFX、ERI、SFW、KFI、DDR、及びITEからなる骨格型の群から選択される。
【0188】
SCR触媒のいずれも、AEL、AFO、AHT、BOF、BOZ、CGF、CGS、CHI、DAC、EUO、FER、HEU、IMF、ITH、ITR、JRY、JSR、JST、LAU、LOV、MEL、MFI、MFS、MRE、MTT、MVY、MWW、NAB、NAT、NES、OBW、-PAR、PCR、PON、PUN、RRO、RSN、SFF、SFG、STF、STI、STT、STW、SVR、SZR、TER、TON、TUN、UOS、VSV、WEI、及びWEN、並びにこれらの混合物及び/又はインターグロースからなる骨格型の群から選択される中細孔モレキュラーシーブを含み得る。好ましくは、中細孔モレキュラーシーブは、MFI、FER、及びSTTからなる骨格型の群から選択した。
【0189】
SCR触媒のいずれも、AFI、AFR、AFS、AFY、ASV、ATO、ATS、BEA、BEC、BOG、BPH、BSV、CAN、CON、CZP、DFO、EMT、EON、EZT、FAU、GME、GON、IFR、ISV、ITG、IWR、IWS、IWV、IWW、JSR、LTF、LTL、MAZ、MEI、MOR、MOZ、MSE、MTW、NPO、OFF、OKO、OSI、RON、RWY、SAF、SAO、SBE、SBS、SBT、SEW、SFE、SFO、SFS、SFV、SOF、SOS、STO、SSF、SSY、USI、UWY、及びVET、並びにこれらの混合物及び/又はインターグロースからなる骨格型の群から選択される大細孔モレキュラーシーブを含み得る。好ましくは、大細孔モレキュラーシーブは、MOR、OFF、及びBEAからなる骨格型の群から選択される。
【0190】
上記では、本発明によれば、白金族金属含有酸化触媒ゾーン及び層は、ゼオライト炭化水素吸着剤を全く含まないことが好ましく、ゼオライトは発熱生成イベント中に熱水分解される可能性があるため、ゼオライトを含めることはあまり望ましくないことに留意されたい。このため、ウォッシュコート被覆層に使用するためのアルミノケイ酸塩ゼオライトは、上記の定義に従って、小細孔ゼオライトからなることが好ましい。
【0191】
Cu-SCR及びFe-SCR触媒中のモレキュラーシーブは、ACO、AEI、AEN、AFN、AFT、AFX、ANA、APC、APD、ATT、CDO、CHA、DDR、DFT、EAB、EDI、EPI、ERI、GIS、GOO、IHW、ITE、ITW、LEV、KFI、MER、MON、NSI、OWE、PAU、PHI、RHO、RTH、SAT、SAV、SIV、THO、TSC、UEI、UFI、VNI、YUG、ZON、BEA、MFI、及びFER、並びにこれらの混合物及び/又はインターグロースからなる骨格型の群から好ましくは選択される。より好ましくは、Cu-SCR及びFe-SCR中のモレキュラーシーブは、AEI、AFX、CHA、DDR、ERI、ITE、KFI、LEV、SFW、BEA、MFI、及びFER、並びにこれらの混合物及び/又はインターグロースからなる骨格型の群から選択される。
【0192】
金属交換モレキュラーシーブは、外表面上の骨格外部位上に、又はモレキュラーシーブのチャネル、空洞、若しくはケージ内に堆積された、周期表のVB族、VIB族、VIIB族、VIIIB族、IB族、又はIIB族のうちの1つから少なくとも1つの金属を有することができる。金属は、ゼロ価の金属原子若しくはクラスター、孤立したカチオン、単核若しくは多核オキシカチオン、又は拡張金属酸化物を含むがこれらに限定されない、いくつかの形態のうちの1つであってもよい。好ましくは、金属は、鉄、銅、及びそれらの混合物又は組み合わせであり得る。
【0193】
金属は、好適な溶媒中の金属前駆体の混合物又は溶液を使用してゼオライトと組み合わせることができる。用語「金属前駆体」は、触媒活性金属成分を得るためにゼオライト上に分散され得る任意の化合物又は複合体を意味する。好ましくは、溶媒は、他の溶媒を使用する経済的側面及び環境的側面の両方により水である。銅の場合、好ましい金属が使用され、好適な複合体又は化合物には、無水及び水和硫酸銅、硝酸銅、酢酸銅、アセチルアセトナート銅、酸化銅、水酸化銅、並びに銅アンミン(例えば、[Cu(NH2+)の塩が含まれるが、これらに限定されない。本発明は、特定の種類、組成物、又は純度の金属前駆体に制限されない。モレキュラーシーブを金属成分の溶液に添加して懸濁液を形成し、次いで、金属成分がゼオライト上に分配されるように反応させることができる。金属は、細孔チャネル及びモレキュラーシーブの外面に分配され得る。金属は、イオン形態又は金属酸化物として分配され得る。例えば、銅は、銅(II)イオン、銅(I)イオンとして、又は酸化銅として分配され得る。金属を含有するモレキュラーシーブは、懸濁液の液相から分離され、洗浄され、及び乾燥され得る。次いで、得られた金属含有モレキュラーシーブをか焼して、モレキュラーシーブ中の金属を固定することができる。
【0194】
更に、本明細書への導入において説明されるように、重量車両用潤滑剤は、比較的高い亜鉛及び/又はリンを含む添加剤含有量を有する。その結果、使用中、車両使用の耐用期間にわたって、重量車両の排気システム内の触媒は、比較的大量の亜鉛及び/又はリン化合物に曝露される。出願人の発明者らは、車両耐用期間の終了時(約1,000,000キロメートル)に、車両用Euro 6重量ディーゼルエンジンの下流の排気システム内に配設された第1の触媒基材であった酸化触媒を分析し、基材吸入端から測定したコーティングされた基材の最初から4分の1の酸化触媒上に、1.0~1.5重量%のリンが存在することを発見した。
【0195】
本発明では、第1の触媒ウォッシュコートゾーンは、基材上で最も高い白金族金属担持量を有し得、排気ガス中に存在する炭化水素の量の増加から発熱を発生させるために使用されている場合、吸入端に対応する第1の基材端部に画定されたゾーン内に存在する。したがって、複合酸化触媒の吸入端に入る排気ガス中の触媒を汚染する亜鉛及び/又はリンの存在は、所望の発熱温度を達成するために追加の炭化水素を必要として、間接的に車両の燃費を低下させることによって、及び/又は、炭化水素の着火温度、すなわち、触媒が炭化水素を酸化し始めるために活性を生じる温度を上昇させ、そのために同じウォッシュコート組成で均一にコーティングされた酸化触媒に対して発熱を生じさせることによって、炭化水素から発熱を生じさせるための触媒の活性の低下について、不均衡な効果を有し得る(以下、例えば、実施例2A及び7を参照されたい)。したがって、通常は特定の発熱が生成されることが予想される比較的低温で排気ガス中に導入される炭化水素により、発熱が低下し、炭化水素スリップが増加するために、大気への炭化水素排出量が高くなる、及び/又は下流排気システム構成要素若しくはプロセスの炭化水素汚染、及び/又はオンボード診断(OBD)故障モードにつながる場合もある。
【0196】
出願人の発明者らは、複合酸化触媒機能に対するリン及び/又は亜鉛化合物の汚染効果を低減又は防止する方法を研究したところ、ウォッシュコート層を第1の触媒ウォッシュコートゾーン上の被覆層として、十分な担持量(ウォッシュコート層の厚さに相当する)で配置することによって(このとき任意に、ウォッシュコートは、十分な平均細孔径の粒子状金属酸化物を含有し、及び/又は、得られるウォッシュコートは、十分な平均粒子間孔径を有する)、下層の第1の触媒ウォッシュコートゾーンとリン及び/又は亜鉛化合物との接触を防止又は低減することができ、触媒が使用されている間に保持される最初の触媒活性を、そのような追加の特徴を使用していない触媒よりも高い割合で保持する一方で、下層の第1の触媒ウォッシュコートゾーンへの排気ガスの質量移動アクセスを維持する。本発明では、粒子状金属酸化物は、アルミノケイ酸塩ゼオライトを含む。
【0197】
出願人による研究は、0.5g/inのウォッシュコート被覆層の比較的低い担持量が、1.0g/inのウォッシュコート被覆層担持量と同程度に有効でないことが見出されたため、リン及び/又は亜鉛化合物の保護床として所望の機能を達成するために、ウォッシュコート被覆層の深さが重要であると思われることを見出した(以下、実施例3及び4を参照されたい)。
【0198】
ウォッシュコート被覆層は、アルミノケイ酸塩ゼオライトから本質的になり得、ウォッシュコート被覆層は、例えば、粉末流、ウォッシュコートレオロジー変性剤などの加工を補助するための特定の結合剤又は添加剤を含み得る。すなわち、バリウム又は1つ以上の白金族金属などの触媒成分は、複合酸化触媒の製造中に、下地層からウォッシュコート被覆層中に吸い上げられるか、又は移動し得るが、粒子状金属酸化物は、例えば、そのような金属を含まないウォッシュコートでコーティングされ、そのような金属がウォッシュコート被覆層に入ることを意図するものではない。この文脈において、本明細書で使用される用語「から本質的になる」は、任意のそのような金属がウォッシュコート被覆層内に意図的に移動していない、最終生成物を包含することを意図する。
【0199】
典型的には、ウォッシュコート被覆層は、0.8~3.5g in-3、好ましくは0.9~2.5g in-3、更により好ましくは1.0~2.0g in-3、例えば1.1~1.75g in-3の粒子状金属酸化物の担持量を有する。実施例2A及び2Bから分かるように、より高いウォッシュコート担持量は、複合酸化触媒で生成されたNO/NOを減少させる場合があり、(排気ガス中の炭化水素燃料の濃度の増加から発熱を生成するために使用される複合排気触媒中において、)ウォッシュコート被覆層中のウォッシュコート担持量が高くなると、触媒床の温度が上昇し、そこから発熱が生成される場合がある。したがって、反応(1)~(3)を促進するために、これらの機能とSCR触媒活性との間のバランスが望ましい。
【0200】
好ましくは、ウォッシュコート被覆層は、第1の触媒ウォッシュコートゾーンのウォッシュコート上に直接コーティングされる。しかしながら、第1の触媒ウォッシュコートゾーンの第1の触媒ウォッシュコート層と好ましい配置のウォッシュコート被覆層との間に1つ以上のウォッシュコート層が存在することは、本発明の範囲内である。
【0201】
本発明で使用するアルミノケイ酸塩ゼオライトは、≧10nmの平均細孔径及び粒子間細孔径の一方又は両方を有することができる。好ましくは、平均細孔径又は粒子間細孔径は、≧12nm又は≧15nmである。出願人は、粒子状金属酸化物の特定のパラメータが、下層の第1の触媒ウォッシュコートゾーンの炭化水素酸化活性を不必要に低減し得ることを見出した。したがって、出願人は、ウォッシュコート被覆層で使用するための可能な粒子状金属酸化物としてコロイド状シリカ(Ludox(商標))の試験を行ったときに、ウォッシュコート層が、下層の第1の触媒ウォッシュコート層の酸化機能を維持するのに十分に多孔質かつ透過性であるには不十分であることを見出した。すなわち、粒子状金属酸化物としてコロイド状シリカを含む複合酸化触媒中の炭化水素酸化は、ガス質量移動が制限された。コロイド状シリカの担持量を低くすると質量移動を改善することができるが、ウォッシュコート被覆層の保護効果は不十分であると予想された(上記≧0.8g/inのウォッシュコート負荷制限を参照)。したがって、複合酸化触媒の主要な炭化水素酸化機能をより良好に維持するために、粒子状金属酸化物は≧10nmの平均細孔径を有し、及び/又はウォッシュコート被覆層は、≧10nmの平均粒子間細孔径を有する。
【0202】
ウォッシュコート被覆層の平均粒子間細孔径は、水銀ポロシメトリーによって測定することができる。
【0203】
粒子状金属酸化物の平均細孔径は、Barrett-Joyner-Halenda(BJH)法を使用する、N等温吸湿脱湿曲線によって決定することができる。
【0204】
粒子状金属酸化物が二峰性細孔径を有する場合、2つのピークのうちの少なくとも1つが≧10nmの粒径を超える場合に要件は満たされる。誤解を避けるため、シリカをドープした好ましい粒子状耐熱性金属酸化物アルミナは、少なくともこのパラグラフにおける一般的な定義を満たす。
【0205】
アルミノケイ酸塩ゼオライトは、一般に、≧10nmの平均細孔径の要件を満たさない。≧10nmの粒子間細孔径である特徴は、粒径、すなわち粒径分布の適切な選択によって得ることができる。コロイド状シリカに関連して上述したように、ウォッシュコートの粒子が小さすぎると、粒子間細孔が小さすぎて、下層の第1の触媒ウォッシュコート層での排気ガスの質量移動の維持ができない。粒径の適切な選択により、粒子間細孔径が≧10nmである好ましい条件を満たすように、適切なサイズの粒子間の粒子間細孔を得ることが可能である。
【0206】
例えば、粒子状金属酸化物の粒子は、<100マイクロメートルのD90を有し得る。粒子状金属酸化物の粒子は、好ましくは、<75マイクロメートル、例えば<50マイクロメートル(例えば<30マイクロメートル)、より好ましくは<20マイクロメートル、例えば<15マイクロメートルのD90を有し得る。耐熱性酸化物がより小さいD90を有する場合、より良好な充填及び接着性を得ることができる。
【0207】
当該技術分野において既知であるように、D90は、分布中の粒子の90%がこの値を下回る粒径を有する粒径の値である。誤解を避けるため、d90測定値は、体積ベースの手法であるMalvern Mastersizer 2000(商標)を使用したレーザー回折粒径分析によって得ることができ(すなわち、D90は、D90(又はD(v,0.90))とも称され得る)、数学的Mie理論モデルを適用して粒径分布を求める。
【0208】
典型的には、粒子状金属酸化物の粒子は、>0.1マイクロメートルのD90を有する。粒子状金属酸化物の粒子が、>1.0マイクロメートル、例えば>5.0マイクロメートルのD90を有することが好ましい。
【0209】
本発明で使用するアルミノケイ酸塩ゼオライトの比表面積はまた、粒子状金属酸化物成分の比表面積が高いほど、ウォッシュコート被覆層の、例えば潤滑添加剤から誘導されたガラス状のリン酸亜鉛化合物の予測される吸着能が高くなるため、重要であると考えられる。
【0210】
一般に、全アルミノケイ酸塩ゼオライトの比表面積は、100m/gよりも著しく高く、特に≧約200m/gである。しかしながら、誤解を避けるために、本発明で使用するためのアルミノケイ酸塩ゼオライトは、≧約100m/g(>約100m/g)、好ましくは≧約120m/g(>約120m/g)、例えば≧約150m/g(>約150m/g)、≧約180m/g(>約180m/g)、又は≧約200m/g(>約200m/g)の比表面積(SSA)を有する。
【0211】
耐熱性酸化物の粒子の平均比表面積(SSA)は、容積法を用いる-196℃での窒素物理吸着によって決定することができる。平均SSAは、BET吸着等温式を用いて決定される。
【0212】
改善されたNO管理及び発熱挙動のための吐出触媒ウォッシュコート層へのマンガンの添加
図5に示される4ゾーン複合酸化触媒の開発の研究中、出願人は、第2の(吐出)基材端部から適用される第2の触媒ウォッシュコート層(7)の一部としての第2の(すなわち吐出)基材端部によってその第2の端部で画定される第3の触媒ウォッシュコートゾーンにマグネシウムを添加すると、有利には、発熱生成を促進し、及び/又は能動的フィルタ再生中の発熱の消失を回避し、下流SCR触媒の活性を向上させて、窒素酸化物(NO)をNに還元し、及び/又は、下流SCR触媒で使用するための窒素還元剤噴射管理を改善することができることを見出した。これらの観察結果は、とりわけ、本発明による2、3、及び4ゾーン複合酸化触媒に等しく適用することができる。
【0213】
上記のように、NOをNに還元するための下流SCR触媒の活性を向上させることに関して、一酸化窒素及び二酸化窒素の両方を含む排気ガスにおいて、SCRの触媒作用は、反応(1)~(3)を含むSCR反応の組み合わせを介して進行することが知られており、これらの全ては、NOxを元素窒素(N)に還元する。
【0214】
関連する望ましくない非選択的な副反応は、反応(6)に従う。
2NH+2NO→NO+3HO+N (6)
【0215】
実際には、反応(1)~(3)は同時に起こり、主な反応は、とりわけ、反応の動力学及び反応物質の相対濃度に応じて有利である。動力学的に、反応(2)は反応(1)と比較して比較的遅く、反応(3)は全てのうちで最も速い。したがって、この化学的性質によれば、SCR触媒は、下流SCR触媒に入る排気ガス中のNO/NO比が約0.5、すなわち反応(3)によると、1:1のNO:NOの比である。
【0216】
出願人の研究者らは、第2の触媒ウォッシュコート層(7)の一部として図5に示す複合酸化触媒の第3の触媒ウォッシュコートゾーンにマンガンを含むことにより、ピーク受動的NO酸化活性、すなわち活性発熱/再生事象間に起こるNO酸化活性が抑制され得ることを見出した。「ピーク受動的NO酸化活性」は、表7及び表8の「300℃における初期NO/NOx(%)」列の値によって示される。
【0217】
マンガンを使用してピーク酸化活性を抑制することによって、出願人の研究者らは、「初期」及び「経時変化した」複合酸化触媒のNO/NOが、車両の耐用期間のかなりの部分に対して、より安定した0.55~0.45、すなわち、下流SCR触媒上で、反応速度論的に遅く、効率的に劣るNO還元反応(2)の代わりに、反応(3)を実施するための「スイートスポット」まで抑え得ることを見出した。NOを受動的に酸化する初期触媒の活性が高すぎる場合、排気ガス中のピークNO/NO含有量は、排気ガス組成を、下流SCR触媒において反応(3)を促進するための好ましいNO:NO比である1:1から遠ざけるだけではなく、二次的に、最も遅い反応(2)を促進する、0.65を超えるまで増加することがある。更に、過剰なNOは、望ましくないことに、反応(4)によるNOの形成をもたらし得る。
【0218】
下流SCR触媒で使用するための窒素系還元剤噴射管理を改善すると、出願人の研究者らはまた、第3のゾーンがマンガンを含む場合、複合酸化触媒全体の受動的NO酸化活性の初期と経年変化後との間の差(Δ)が減少したことも見出した(表7及び表8に示す結果を参照されたい)。すなわち、複合酸化触媒の下流の排気ガス中の得られるNO/NO値は、触媒が新たに開始し、使用を通して着実に経時変化するため、車両排気システムの耐用期間にわたってより予測可能であった。実際には、SCR触媒反応は、一般に、窒素還元剤の提供を必要とするため、この観察結果は重要である(上記反応(1)~(3)を参照されたい)。典型的には、この窒素系還元剤はアンモニア(NH)であり、これは、噴射装置を介して流れる排気ガス中に送達するための前駆体、尿素の形態で車両で運ばれている。高温の排気ガスと接触して、尿素はアンモニア及び水蒸気に分解する。反応(1)~(3)から、任意の特定の時間にどの反応が優勢であるかに応じて、NHスリップが回避される場合、NO全体の最も効率的な還元を達成するために、少量のアンモニア窒素還元剤が必要とされることが分かる。
【0219】
更に複雑であるのは、NOをNOに酸化する酸化触媒の能力が、一般に使用を通じて経時的に低下する、いわゆる「経時変化」することである。この活性の経時的な損失は、システムプログラムアルゴリズムにおいて、徐々に減少する活性を相殺する必要があるため、窒素系還元剤を送達するための制御システムの設計における負担を増加させる。しかしながら、より高いNO酸化活性を抑制することによって、本明細書で上述したように、NO/NOを約0.5に「集中させる」ことに加えて、初期NO酸化活性と経時変化したNO酸化活性との間のΔを低下させることによって、車両の耐用期間にわたる窒素系還元剤噴射のシステムプログラミング制御を管理することは、重量ディーゼル車両の製造業者にとってはあまり複雑ではないはずである。
【0220】
第3に、かつ非常に驚くべきことに、以下の実施例9に示すように、出願人の研究者らは、第3のウォッシュコートゾーン/第2のウォッシュコート層にマンガンを含めることにより、有利には、発熱生成を促進し、及び/又は能動的フィルタ再生中の発熱の消失を回避できることを見出した。この観察により、非常に高コストの白金族金属を低コストの卑金属、すなわちマンガンに交換しつつも、複合酸化触媒の機能性を維持することが可能であった。
【0221】
排気システム後処理では、マンガンは硫黄汚染によって影響され得る。パラジウムもまた、パラジウム汚染に悩まされることも知られている。このため、マンガン含有触媒ウォッシュコート層及び/又はゾーン中のマンガンに加えてパラジウムを含むことを回避することが好ましい場合がある。しかしながら、上述したように、比較的低い含有量のパラジウムは、ゾーン中の白金成分の安定性を改善することができる。この点に関して、マンガン含有触媒ウォッシュコート層及び/又はゾーンは、例えば、≧10:1の白金に富むPt:Pdの重量比を含有することが好ましく、あるいは、マンガン含有触媒ウォッシュコート層及び/又はゾーン中の1つ以上の白金族金属は、本質的に白金からなり得る、又は白金からなり得る(例えば、Pt:Pd重量比が1:0)。
【0222】
マンガン含有に対する記載された技術的効果から利益を得るために、マンガン含有触媒ウォッシュコート層及び/又はゾーン中の白金族金属担持量は、好ましくは≧2gft-3、好ましくは5~15gft-3、例えば7~13gft-3である。
【0223】
加えて、出願人は、マンガンによって減少する初期対経時変化したNOへのNO酸化「Δ」の技術的効果は、第2の基材末端、例えば、第3の触媒ウォッシュコートゾーンによって、その第2の端部で画定された触媒ウォッシュコートゾーン中、及び/又は第2の触媒ウォッシュコート層中の、耐熱性金属酸化物支持材料を適切に選択することによって強化され得ることを見出した。
【0224】
この点に関して、出願人は、ヘテロ原子支持材料をドープしたアルミナの利益を指摘しており、このとき好ましくは、ヘテロ原子は、ケイ素及び/又はマンガンであり、又は混合マグネシウムアルミニウム金属酸化物である。マンガンは、そのようなヘテロ原子として存在し、及び/又は、ウォッシュコート耐熱性金属酸化物支持材料、例えば混合マグネシウムアルミニウム金属酸化物若しくはシリカをドープしたアルミナ支持材料と組み合わせた可溶性塩として、例えば、硝酸マンガンとして導入することができ、その後、還元剤を使用して、例えば、クエン酸、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ギ酸、アスコルビン酸などを使用して、支持材料上に沈殿させる。次に、ドープしたマンガンを含む耐熱性金属酸化物支持体を追加のマンガンに含浸し得る。
【0225】
したがって、マンガン含有ゾーン又は層内の耐熱性金属酸化物支持材料は、シリカをドープしたアルミナ、マンガンをドープしたアルミナ、シリカ及びマンガンの両方をドープしたアルミナ、混合マグネシウムアルミニウム金属酸化物、又はマンガンをドープした「予め形成された」混合マグネシウムアルミニウム金属酸化物を含むことができる。含浸されたマンガン成分は、耐熱性金属酸化物支持材料上に担持されることができる。
【0226】
混合マグネシウムアルミニウム金属酸化物は、15重量%以下、例えば0.1~12重量%、又は2.0~10重量%の、Mgとして計算される予備焼成マグネシウム含有量を有することができる。混合マグネシウムアルミニウム金属酸化物を含む焼成された支持材料は、マグネシウムを欠いた、すなわち非理論空燃比のスピネルを含み得る。最も好ましくは、マンガン含有耐熱性金属酸化物支持材料は、マンガンをドープした「予め形成された」混合マグネシウムアルミニウム金属酸化物である。マンガンをドープしたマグネシウムアルミニウム金属酸化物中のマンガンドーパントの量は、MnOとして計算される、1~15重量%であり得る。実施例9は、マンガンをドープしたマグネシウムアルミニウム金属酸化物を含む試料が、初期触媒と経時変化した触媒との間の低下したNO/NO「Δ」に加えて、「連続発熱」試験によって実証されるように、より低温からの発熱生成において驚くべき改善を示したことを示す。
【0227】
基材
本発明の複合酸化触媒の触媒ウォッシュコート層及び触媒ウォッシュコートゾーン成分を担持するための基材は、当該技術分野において周知である。概して、基材はセラミック材料又は金属材料から作製される。
【0228】
基材は、コーディエライト(SiO-Al-MgO)、炭化ケイ素(SiC)、チタン酸アルミニウム(AT)、Fe-Cr-Al合金、Ni-Cr-Al合金、又はステンレス鋼合金で作製又は構成されることが好ましい。
【0229】
典型的には、基材はモノリス、すなわちモノリス基材である。好ましくは、モノリスは、フロースルーハニカムモノリス基材又はフィルタリングモノリス基材であり、最も好ましくはハニカムフロースルーモノリス基材である。
【0230】
本発明の複合酸化触媒は、ディーゼル酸化触媒(DOC)又は触媒煤煙フィルタ(CSF)として使用されることが好ましい。実際には、DOC及びCSFで使用される触媒配合物は同様である。しかしながら、一般に、DOCとCSFとの間の原理的な差は、触媒配合物がコーティングされる基材と、コーティング中の白金族金属の量である。
【0231】
典型的には、フロースルーモノリスは、それを貫通して延びる複数のチャネルを有するハニカムモノリス(例えば、金属又はセラミックのハニカムモノリス)を含み、それらのチャネルは両端部で開口する。基材がフロースルーモノリスである場合、本発明の複合酸化触媒は、典型的にはディーゼル酸化触媒(DOC)と呼ばれるか、又はディーゼル酸化触媒(DOC)として使用される。
【0232】
モノリスがフィルタリングモノリスである場合、フィルタリングモノリスはウォールフローフィルタであることが好ましい。ウォールフローフィルタでは、各吸入チャネルは、多孔質構造のウォールによって吐出チャネルから交互に分離されており、逆もまた同様である。吸入チャネル及び吐出チャネルは、ハニカム配列を有することが好ましい。ハニカム配列が存在する場合、吸入チャネルに垂直及び横方向に隣接するチャネルは上流端部で塞がれていることが好ましく、逆もまた同様である(すなわち、吐出チャネルに垂直及び横方向に隣接するチャネルは、下流端部で塞がれる)。いずれかの端部から見たとき、チャネルの交互に塞がれ、開いている端部は、チェス盤の外観をとる。基材がフィルタリングモノリスである場合、本発明の酸化触媒は、典型的には触媒煤煙フィルタ(CSF)であるか、又は触媒煤煙フィルタ(CSF)として使用される。
【0233】
原則として、基材は、任意の形状又は大きさであってもよい。しかし、基材の形状及び大きさは、通常、触媒中の触媒活性材料の排気ガスへの曝露を最適化するように選択される。基材は、例えば、管状、繊維状、又は微粒子形態を有してもよい。好適な担持基材の例としては、モノリシックハニカムコーディエライト型の基材、モノリシックハニカムSiC型の基材、層状繊維又は編地型の基材、発泡体型の基材、クロスフロー型の基材、金属ワイヤメッシュ型の基材、金属多孔質体型の基材、及びセラミック粒子型の基材が挙げられる。
【0234】
重量エンジン
誤解を避けるため、本発明の第3の態様による重量エンジンは、本発明の「背景技術」の項に記載された定義のいずれかを使用することができる。そのため、例えば、日本向けの特許出願では、日本の排出基準に必要な重量ディーゼル車両の制限を、車両に対する特許請求項に組み込むことができる。欧州又は米国などの法規制も同様である。更に誤解を避けるため、本発明で使用するための重量エンジンは、LNT触媒の通常運転又は脱硫酸に好適なリーン/リッチサイクルを動作するように管理されていない。好ましい構成では、本発明による排気システムはLNTを含まない。
【0235】
本発明の第3の態様による重量圧縮点火機関は、好ましくはディーゼルエンジン、任意選択的に圧縮天然ガス(CNG)エンジンである。重量ディーゼルエンジンは、均一予混合圧縮点火(HCCI)エンジン、予混合圧縮点火(PCCI)エンジン、又は低温燃焼(LTC)エンジンであってもよい。ディーゼルエンジンは、通常の(すなわち従来からの)ディーゼルエンジンであることが好ましい。
【0236】
内燃機関がディーゼルエンジンなどの、車両に動力を供給するための圧縮点火機関である場合、車両は軽量ディーゼル車両又は重量ディーゼル車両であってよい。
【0237】
用語「軽量ディーゼル車両(LDV)」は、米国又は欧州法令で定義される。米国では、軽量ディーゼル車両(LDV)は、≦8,500ポンド(米国ポンド)の総重量を有するディーゼル車両を指す。
【0238】
欧州では、軽量ディーゼル車両は、≦2610kgの基準質量(EU5/6)を用いて、カテゴリM、M、N、及びNの車両として定義されている。
【0239】
米国では、法令で定義される重量ディーゼル車両(HDV)は、連邦管轄区では>8,500ポンド(USポンド)、カリフォルニア州では14,000ポンド超(1995年以降のモデル)の定格車両総重量を有するディーゼル車両である。
【0240】
欧州では、EU法令(理事会指令2007/46/EC)に従う重量ディーゼル車両とは、物品運送用に設計かつ構成されており、3.5トン(すなわち、メートルトン)を超えるが12トン以下(Nカテゴリ)又は12トン超(Nカテゴリ)の最大質量(すなわち、「技術的に許容される最大積載質量」)を有する車両、すなわちトラック、又は、運転席に加えて8つを超える座席を備え、5トン以下(Mカテゴリ)、若しくは5トン超(Mカテゴリ)のいずれかの最大質量を有する、乗客を運搬するように設計及び構築された車両、すなわち、バス及びコーチである。中国は、大まかには欧州の定義に従う。
【0241】
日本では、HDVは、>7500kgの車両総重量を有すると定義された重量商用車両である。
【0242】
ロシア及び韓国では、重量車両の排出基準は欧州基準に基づくため、欧州の上記定義が適用される。
【0243】
ブラジルでは、HDVは、3,856kgを超える最大総重量又は2,720kgを超える空車重量を有する、旅客及び/又は物品運送用の動力車である。
【0244】
インドでは、HDVは、車両総重量>3,500kgの車両である。
【0245】
製造方法
本発明の酸化触媒の製造方法は、当該技術分野において既知である。例えば、国際公開第99/47260号、同第2007/077462号、及び同第2011/080525号を参照されたい。同様に、ウォッシュコートの乾燥及び焼成の条件も周知である。
【0246】
上記に述べたように、あるいは第1の発明態様によると、酸化触媒は、3つ以上の触媒ウォッシュコートゾーン、好ましくは4つの触媒ウォッシュコートゾーンを含み得る。
【0247】
このような触媒を作製する方法は、前述のものであり、工程(a)において、触媒ウォッシュコート層は、第1の基材端部から基材の全長未満まで延在する第1の触媒ウォッシュコート層であり、この方法は更に、工程(a)の前又は工程(a)の後であるが、いずれの場合も工程(b)の前に、第2の基材端部から基材の全長未満まで延在する長さで第2の触媒ウォッシュコート層を基材に適用して、第1の触媒ウォッシュコート層が部分的に第2の触媒ウォッシュコート層に重なるか、又は第2の触媒ウォッシュコート層が部分的に第1の触媒ウォッシュコート層と重なるようにする工程(a’)を含み、ここでは、第2の触媒ウォッシュコート層は、耐熱性金属酸化物支持材料と、1つ以上の白金族金属成分と、を含む。
【0248】
この点に関して、好ましくは、第1の触媒ウォッシュコート層は第1の基材端部から延在でき、第2の触媒ウォッシュコート層は第2の基材端部から延在し、それによって、第2の触媒ウォッシュコート層は、第1の触媒ウォッシュコート層と部分的に重なる。
【0249】
実施形態では、この方法は、図4及び図5に示されるものなどの構成をもたらすことができ、すなわち、工程(a’)における第2の触媒ウォッシュコート層の適用の軸方向長さ、したがって、第1の触媒ウォッシュコート層と第2の触媒ウォッシュコート層との重なりの軸方向長さに応じて、第1の触媒ウォッシュコートゾーンは、基材表面上に支持された第1の触媒ウォッシュコートの単一層を含む。工程(b)における適用Lの軸方向長さに応じて、第2又は第4の触媒ウォッシュコートゾーンは、第1の触媒ウォッシュコート層と第2の触媒ウォッシュコート層との重なりを含み得る。第3の触媒ウォッシュコートゾーンは、第2の基材端部によってその第2の端部において、かつ第1の触媒ウォッシュコート層の第2の端部によってその第1の端部において、すなわち、第2の基材端部から第1の基材端部の方向に延在する第2の層が、第1の触媒ウォッシュコート層と重なり始める点において画定される基材表面上に支持される、単一のウォッシュコート層を含む。一般に、第3の触媒ウォッシュコートゾーンの第1の端部は、第2又は第4の触媒ウォッシュコートゾーンの第2の端部である。
【0250】
第1の吸入基材端部で本発明の酸化触媒に入る排気ガスは、一般に、第3の触媒ウォッシュコートゾーンより前に、重複領域触媒ウォッシュコートゾーンと接触するため、この構成が好ましい。重複触媒ウォッシュコートゾーン(実施形態に応じて、第2又は第4の触媒ウォッシュコートゾーンのいずれか)は、第1の触媒ウォッシュコートゾーンの「安定剤」として機能する。重複領域触媒ウォッシュコートゾーンは、第1の触媒ウォッシュコートゾーンの酸化反応の一部又は全てを行うという意味で「安定剤」として機能するが、重複領域触媒ウォッシュコートゾーンは、第1の触媒ウォッシュコートゾーンのものよりもHC及び/又はCOに対してより高い着火温度を有し得る。
【0251】
本発明の第6の態様において、第1の触媒ウォッシュコートゾーンは、工程(a)で適用された触媒ウォッシュコートを含浸させることによって工程(b)で得られるため、第1の触媒ウォッシュコートゾーン中の耐熱性金属酸化物支持材料は、触媒ウォッシュコート、例えば、工程(a)で適用される第1の触媒ウォッシュコート層中の同一の耐熱性金属酸化物支持材料とすることができることが理解されよう。
【0252】
電子プローブマイクロ分析法(EPMA)によって決定されるとき、基材の表面に垂直な方向に、1つ以上の白金族金属成分、及び任意選択的に、1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分の不均一な分布を有する第1の触媒ウォッシュコートゾーンは、このとき、1つ以上の白金族金属成分及び任意選択的に第1のアルカリ土類金属成分の濃度が、EPMAによって決定されるとき、基材の表面に向かって垂直方向に減少しており、一般に、1つ以上の白金族金属成分及び/又は1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分が、耐熱性金属酸化物支持材料に急速に固定されず、乾燥中のウォッシュコーティング内で移動可能である方法によって得ることができる。1つ以上の白金族金属成分を含有するウォッシュコーティングを基材に適用し、続いて、コーティング中の1つ以上の白金族金属成分及び任意選択的に1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分の移動を可能にする条件を使用して、熱乾燥工程及び焼成工程を行い、その後定位置に固定することができる。このような条件は、特に従来技術における条件は、一般にコーティング内での移動を防止するためにコーティング(すなわちウォッシュコートコーティング)の構成要素を迅速に固定するように選択されるため、当該技術分野において既知である。すなわち、含浸によって、乾燥中のウォッシュコート内の白金族金属塩の移動を回避するための急速な固定条件であると認識される場合、このような移動を可能にする条件であると認識される。
【0253】
蒸発中、湿潤表面への、又は湿潤表面から離れる方向への溶質の移動は、他の技術分野で知られている効果である。ウェットコーティング内での第1の白金族金属(すなわち、白金族金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩)の移動は、リチャーズ式によって表すことができる。
【数1】
式中、
tは時間(例えば、溶媒(すなわち水)の実質的に又は完全に蒸発する前の時間)であり、θは典型的にはコーティングの溶媒(すなわち、水)含有量であり、Kは透水係数であり、zは位置水頭であり、Ψは圧力水頭である。透水係数は、第1の支持材料及び/又は存在し得る任意の他の支持材料の透水係数によって近似することができる。
【0254】
基材の表面に垂直な方向に、1つ以上の白金族金属成分及び/又は1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分の不均一な分布を有する触媒ウォッシュコートゾーンを達成する方法は、
(a)耐熱性金属酸化物支持材料と、1つ以上の白金族金属成分と、任意選択的に1つ以上のアルカリ土類金属成分と、を含む、水性スラリーを提供することと、
(b)水性スラリーを基材上に適用して、ウォッシュコーティングを形成することと、
(c)ウォッシュコーティングを乾燥及び焼成することであって、この乾燥条件により、少なくとも1つ以上の白金族金属成分及び、任意選択的に1つ以上のアルカリ土類金属成分が基材に向かって又はそれから離れる方向に流れ、例えば、基材の表面に垂直な方向に、1つ以上の白金族金属及び、任意選択的に1つ以上のアルカリ土類金属成分の不均一な分布を得ることを可能にする、ことと、を含む。
【0255】
ウォッシュコーティングは、2つ以上の白金族金属成分を含むことができ、第1の白金族金属成分を第1の白金族金属成分と呼ぶことができ、第2の白金族金属成分を第2の白金族金属成分と呼ぶことができる。
【0256】
通常、耐熱性金属酸化物支持材料、第1の白金族金属成分及び第2の白金族金属成分のうちの少なくとも1つは不溶性である。しかしながら、スラリーは、例えば、耐熱性金属酸化物支持材料、第1の白金族金属成分及び第2の白金族金属成分のうちの1つ以上の前駆体が全て可溶性である(すなわち、溶解される)場合、溶液を含んでもよいことを理解されたい。
【0257】
典型的には、耐熱性金属酸化物支持材料前駆体は、コーティングを乾燥及び/又は焼成した後に、耐熱性金属酸化物支持材料への変換を受ける化合物である。かかる耐熱性金属酸化物支持材料前駆体は、当該技術分野において周知であり、例えば、γ-アルミナの前駆体としてのベーマイトが挙げられる。
【0258】
一般に、第1の白金族金属成分は、第1の白金族金属の塩であるか、又は第1の白金族金属である(すなわち、第1の白金族金属自体である)。好ましくは、第1の白金族金属成分は、第1の白金族金属の塩である。第1の白金族金属の塩は、第1の白金族金属の硝酸塩、第1の白金族金属の酢酸塩、又は第1の白金族金属のカルボン酸塩(例えば、クエン酸塩)であってもよい。
【0259】
第2の白金族金属成分は、典型的には、第2の白金族金属の塩であるか、又は第2の白金族金属である(すなわち、第2の白金族金属自体である)。第2の白金族金属成分が、第2の白金族金属の塩であることが好ましい。第2の白金族金属の塩は、第2の白金族金属の硝酸塩、第2の白金族金属の酢酸塩、又は第2の白金族金属のカルボン酸塩(例えば、クエン酸塩)であってもよい。
【0260】
2つ以上の異なる白金族金属が使用される場合(例えば、第1の白金族金属は第2の白金族金属とは異なる)、存在する金属の違いから生じる、第2の白金族金属成分と比較して第1の白金族金属成分の移動度の差がある場合があり、ウォッシュコート層中の他の(又は互いの)白金族金属と比較して、それぞれの白金族金属の異なる分布プロファイルをもたらす(図6参照)。触媒ウォッシュコート層中に存在する1つ以上の白金族金属成分に対するアルカリ土類金属の移動度の差にも当てはまる。白金族金属成分が白金族金属の塩であるときに適切なアニオンを選択することにより、白金族金属成分の触媒ウォッシュコート層内の移動度、及びまた好ましい垂直方向の流れも変化させることができる。白金族金属成分はまた、耐熱性金属酸化物支持材料と異なるように相互作用する場合があり、これを基準にして選択されてもよい。同様に、触媒ウォッシュコート層内での、アルカリ土類金属成分の移動度を、その溶質塩の適切な選択によって変えることが可能である。
【0261】
第1の白金族金属の塩の対アニオンは、第2の白金族金属の塩の対アニオンとは異なることが好ましい。例えば、第1の白金族金属成分は硝酸パラジウムであってもよく、第2の白金族金属成分は、白金カルボン酸塩であってもよい。硝酸アニオンは、カルボン酸アニオンとは異なる。
【0262】
白金族金属成分の少なくとも1つの移動度は、他の白金族金属成分と混合する前に、支持材料上に担持させること(すなわち、白金族金属成分を予め固定すること)によって変更することができる。例えば、予め固定された第1の白金族金属/第1の耐熱性金属酸化物支持材料を、第2の耐熱性金属酸化物支持材料及び水性の第2の白金族金属塩、及び任意選択的に1つ以上のアルカリ土類金属の水性塩と混合してもよい。
【0263】
第1の白金族金属成分が第1の耐熱性金属酸化物支持材料前駆体上で支持され得る1つの方法は、(i)第1の耐熱性金属酸化物支持材料前駆体及び第1の白金族金属成分を溶液中で混合し、最終の第1の耐熱性金属酸化物支持材料を、好ましくは含浸するか、又は細孔を満たすこと、及び(ii)水溶液を乾燥及び/又は焼成し、第1の耐熱性金属酸化物支持材料上に担持された第1の白金族金属成分(例えば、第1の白金族金属)を提供することによる。工程(i)の後に、還元剤を添加して第1の白金族金属成分を還元し、第1の支持材料を、好ましくは含浸するか、又は細孔を満たす工程(i)(a)が続く場合がある。工程(i)及び/又は(i)(a)において、存在する白金族金属成分のみが第1の白金族金属成分であることが好ましい。
【0264】
したがって、上記方法の工程(a)は、(a)第1の支持材料前駆体上に担持された、第2の白金族金属成分と、第1の白金族金属成分と、を含む、水性スラリーを提供する工程であってもよい。
【0265】
工程(b)に関して、スラリー又はウォッシュコートを基材に適用する方法は、当該技術分野において周知である(例えば、出願人による国際公開第99/47260号を参照されたい)。
【0266】
あるモードでは、工程(c)は、少なくとも第1の白金族金属成分及び第2の白金族金属成分が、基材表面を表す平面に垂直な方向で互いに異なる速度で流れることを可能にする乾燥条件を使用して、コーティングを乾燥させることを含む。別の実施形態では、工程(c)は、第1の白金族金属成分のみが基材に向かって又はそれから離れる方向に流れることを可能にする乾燥条件を使用して、コーティングを乾燥させることを含む。
【0267】
工程(c)は、白金族金属成分が、通常は基材又は耐熱性金属酸化物支持材料上に固定される点を決定する。使用される乾燥条件は、コーティング中に存在する材料(例えば、白金族金属成分、アルカリ土類金属成分、耐熱性金属酸化物支持材料など)の同一性、及び酸化触媒のサイズ(例えば、触媒の用途に応じて変化する基材のサイズ)に依存する。
【0268】
典型的には、乾燥条件は、コーティングを少なくとも15分、好ましくは少なくとも20分間乾燥させることを含む。第1の白金族金属及び任意のアルカリ土類金属の不均一な分布は、このような条件を使用して得ることができる。乾燥時間が約5分以下であるとき、均一な分布が得られる傾向がある。
【0269】
その後、コーティングは、400~800℃の温度、好ましくは450~600℃、より好ましくは少なくとも500℃の温度で焼成され得る。
【0270】
一例として、第1の触媒ウォッシュコート層が、第1の担持量、及び、2つ以上の白金族金属成分として白金のパラジウムに対する重量比を含み、1つ以上のアルカリ土類金属成分がバリウムである場合、白金族金属及びバリウムの両方が、好ましいシリカ含有量でシリカをドープしたアルミナである耐熱性金属酸化物支持材料上に担持され、このような第1の触媒ウォッシュコート層に、比較的高濃度の白金及びパラジウム塩の水溶液を含浸させて、上記の乾燥方法の適用後に第1の触媒ウォッシュコートゾーンを形成し、パラジウム及びバリウムは、露出した触媒ウォッシュコート層表面により容易に移動し、EPMAにより「クラスト」として観察されることが見出された。下層の耐熱性金属酸化物支持材料に予め固定されていないとき、白金成分は、第1の触媒ウォッシュコート層の断面内の同じ露出面に向かっていくらかの可動性を示し、パラジウム及びバリウムと比べて、第1の触媒ウォッシュコート層の断面にわたって比較的より均一に分布したままである。完成した製品は、発熱生成に対する有益な活性を実証することが見出されている。この効果はまた、以下の実施例7、14、及び17に部分的に示される。
【0271】
排気システム
本発明の第2の態様によれば、排気システムは、本発明による複合酸化触媒と、窒素系還元剤又は窒素系還元剤前駆体源に接続された窒素系還元剤又はその前駆体用の第1の噴射装置であって、この第1の噴射装置は、複合酸化触媒、及び窒素系還元剤又はその前駆体用の第1の噴射装置と複合酸化触媒との間に配置されている選択的触媒還元触媒を含む第1の基材から上流を流れる排気ガス中に、窒素系還元剤又は窒素系還元剤前駆体を噴射するように配置されている、第1の噴射装置と、を備え、複合酸化触媒の第1の基材端部は上流側に向けられている。
【0272】
第1の基材のSCR触媒は、任意の好適なSCR触媒であり得るが、特にバナジウム系SCR触媒、例えば、V/WO/TiOである。そのようなバナジウム系SCR触媒は既知であり、不活性フロースルーハニカムモノリス基材、又はウォールフローフィルタ基材、あるいは、押出されたハニカムバナジウム系SCR触媒上にウォッシュコートされたSCR触媒を含む。あるいは、第1の基材のSCR触媒は、銅及び/又は鉄で促進される、アルミノケイ酸塩ゼオライトなどの結晶性モレキュラーシーブであり得る。特に、第1の基材のSCR触媒は、上記のウォッシュコート被覆層で使用するために記載されるもののいずれかから選択され得る。第1の基材の結晶性モレキュラーシーブ含有SCR触媒は、ウォッシュコート被覆層のものと同じであり得る、又はそれとは異なり得る。
【0273】
好ましい実施形態では、本発明の排気システムは、複合酸化触媒から下流に配置された選択的触媒還元触媒を含む第2の基材と、窒素系還元剤又は窒素系還元剤前駆体源に接続された窒素系還元剤又はその前駆体用の第2の噴射装置と、を備え、この第2の噴射装置は、複合酸化触媒から下流かつ選択的触媒還元触媒を含む第2の基材から上流を流れる排気ガス中に、窒素系還元剤又は窒素還元剤前駆体を噴射するように配置されている。
【0274】
第2の基材のSCR触媒は、好ましくは、上記の第1の基材のSCR触媒として使用するために記載されるもののいずれかから選択される。第1及び第2の基材のSCR触媒は、同じであっても異なっていてもよい。例えば、第1の基材のSCR触媒は、押出されたバナジウム系SCR触媒であり得、第2の基材のSCR触媒は、ウォッシュコートされた銅促進又は銅及びセリウム促進アルミノケイ酸塩ゼオライト、例えば、CHA又はAEIであり得る。あるいは、第1の基材のSCR触媒は、ウォッシュコートされた銅促進又は銅及びセリウム促進アルミノケイ酸塩ゼオライト、例えば、CHA又はAEIであり得、第2の基材のSCR触媒は、ウォッシュコートされた鉄促進結晶性モレキュラーシーブ、例えば、FER又はBEAであり得る。あるいは、第1の基材のSCR触媒は、ウォッシュコートされた鉄促進結晶性モレキュラーシーブであり得、第2の基材のSCR触媒は、ウォッシュコートされた銅促進又は銅及びセリウム促進アルミノケイ酸塩ゼオライトであり得る。更なる代替として、第1及び第2の基材の両方のSCR触媒は、ウォッシュコートされた銅促進又は銅及びセリウム促進アルミノケイ酸塩ゼオライト、例えば、CHA又はAEIである。
【0275】
選択的触媒還元触媒を含む第2の基材は、フィルタ基材、例えば、ウォールフローフィルタ、あるいは、ハニカムフロースルー基材であり得る。
【0276】
選択的触媒還元触媒を含む第2の基材がフィルタではない場合、排気システムは、複合酸化触媒から下流に配置された、煤煙フィルタ基材、好ましくはウォールフローフィルタ基材である第3の基材を含み得る。排気システムが第2及び第3の基材を含む場合、第3の基材は、好ましくは複合酸化触媒と第2の噴射装置との間に配置される。
【0277】
好ましくは、煤煙フィルタ基材は、触媒煤煙フィルタ基材であり、煤煙フィルタは、白金族金属触媒で触媒される。
【0278】
本発明の複合酸化触媒が、下流フィルタを加熱するための複合酸化触媒から上流を流れる排気ガス中に噴射される炭化水素燃料から発熱を生成するために使用されることを意図している場合、特に、第1の触媒ウォッシュコートゾーン中の総PGM担持量が第2の触媒ゾーンよりも大きく、任意選択的に、第1の触媒ウォッシュコートゾーンがアルカリ土類金属を含む、複合酸化触媒の実施形態では、排気システムは、液状炭化水素源に接続された液状炭化水素のための噴射装置を含み得、この噴射装置は、複合酸化触媒上で発熱を生成するために、複合酸化触媒から上流の排気システム内を流れる排気ガス中に、液状炭化水素を噴射するように配置されている。
【0279】
好ましい実施形態では、本発明による排気システムは、アンモニアのNOに対する重量比が0.4~0.8で、選択的触媒還元触媒を含む第1の基材へのアンモニア窒素系還元剤の送達を制御するための、事前プログラムされたコンピュータプロセッサ(複数可)を備える、エンジン及び窒素系還元剤又は窒素系還元剤前駆体電子制御ユニット(複数可)を含む。ANRが1.0以上でない理由は、理論的には、すなわち、反応(1)~(3)に従って、全てのNOが、第1の基材SCR触媒上での還元によって排気ガスから除去されるためである。複合酸化触媒から上流の全てのNOを除去することにより、NOの下流に保持された粒子状物質のCRT(登録商標)効果により促進された燃焼など、下流反応を促進するために、又は上記の反応(3)に従う、SCR触媒を含む第2の基材上での下流NO変換を促進するために、NOに酸化するために残された排気ガス中には実質的には一酸化窒素(NO)はない(車両の動的運転に起因して変動する排気ガスNO含有量により、単一のSCR触媒でほぼ100%のNO変換を防止することができるため、2つのSCR触媒を直列に提供することで、排気システム全体で可能な限り最高の正味NO変換が保証されることが理解されるであろう)。
【0280】
第1の基材SCR触媒から下流の排気システム内にASC/AMOX成分を提供することにより、第1の基材SCR触媒をスリップさせるアンモニアの除去が可能になり、これにより、第2の還元剤噴射装置を介した窒素系還元剤(又はその前駆体)の噴射のキャリブレーションはより簡単であり、及び/又はアンモニアは複合酸化触媒から下流の排気システム内に位置するNOセンサに干渉しない。
【0281】
特定の実施形態では、事前プログラムされたコンピュータプロセッサ(複数可)を備える、エンジン及び窒素系還元剤又は窒素系還元剤前駆体電子制御ユニット(複数可)は、アンモニアのNOに対する重量比が0.4~0.6で、選択的触媒還元触媒を含む第1の基材へのアンモニア窒素系還元剤の送達を制御するために事前プログラムされる。
【0282】
あるいは、事前プログラムされたコンピュータプロセッサ(複数可)を備える、エンジン及び窒素系還元剤又は窒素系還元剤前駆体電子制御ユニット(複数可)は、アンモニアのNOに対する重量比が0.7~0.8で、選択的触媒還元触媒を含む第1の基材へのアンモニア窒素系還元剤の送達を制御するために事前プログラムされる。0.7~0.8などのより高いANRでは、下流の第2の基材SCR触媒の体積は、上流の第1の基材SCR触媒上でより多くのNO変換を行うことができるため、一定の第2の基材SCR触媒担持量でのNOに必要な排出基準を満たすために、排気システム全体でANRが0.4~0.6で動作するシステムと比較して削減することができる。
【0283】
本発明の第2の態様によれば、本発明における用途を有する排気システムが、添付の図8A図8Bに示される。第1の排気システムの実施形態32(図8Aを参照されたい)は、重量ディーゼルエンジン30と、排気ガスを重量ディーゼルエンジン30から排気システムの一連の構成要素まで順番に、又はそこから大気36まで搬送するためのパイプ34と、を含み、項目38は、炭化水素燃料を、エンジンマニホールド40から下流かつ本発明による複合酸化触媒42(例えば、図1図5に例示されるこれらの複合酸化触媒のうちのいずれか1つ)から上流の排気ガス中に噴射するための噴射装置であり、基材はフロースルーモノリス基材であり、第1の触媒ウォッシュコートゾーン1は上流側に向けられている。組み合わせて、噴射装置38を介して噴射された炭化水素燃料を使用して、下流ディーゼル微粒子フィルタ(DPF)又は触媒煤煙フィルタ(CSF)44を加熱するために複合酸化触媒上で発熱を生成し、項目46は、窒素系還元剤前駆体流体、例えば、リザーバ48内に保持された尿素を流れる排気ガス中に噴射するための噴射装置である。第1のハニカムフロースルーモノリス基材50は、既知の構造の押出されたバナジウム系SCR触媒などの選択的触媒還元(SCR)触媒を含む。第2のハニカムフロースルーモノリス基材52は、ウォッシュコートされた又は押出されたバナジウム系SCR触媒、あるいは、銅及び鉄の両方で促進されるAEIアルミノケイ酸塩ゼオライトを含む。基材50は、アンモニアスリップ触媒/AMOX触媒を含むハニカムフロースルーモノリス基材である。使用中、事前プログラムされたコンピュータプロセッサ(複数可)(図示せず)を備える、エンジン及び窒素系還元剤又は窒素系還元剤前駆体電子制御ユニット(複数可)は、アンモニアのNOに対する重量比が0.4~0.8、任意選択的に0.4~0.6又は0.7~0.8で、選択的触媒還元触媒を含む第1の基材へのアンモニア窒素系還元剤の送達を制御する。
【0284】
第1の基材のSCR触媒が、アルミノケイ酸塩ゼオライトCHA又はAEIなどの銅促進結晶性モレキュラーシーブである代替システムでは、排気システムは、第1の基材SCR触媒中の反応(3)を促進するために、白金族金属含有ディーゼル酸化触媒(DOC)56でコーティングされた別個のフロースルー基材モノリスを含み得る。別個の炭化水素燃料噴射装置38、又は別の方法としてエンジンシリンダ噴射制御と組み合わせて、第1の基材50のSCR触媒を定期的に脱硫酸化するために、DOC56に接触する排気ガス中に増加した炭化水素濃度を送達する。
【0285】
図8Bは、軽量ディーゼルエンジンのための排気システム58であり、図8Aからの同様の番号付き特徴は、図8Bのシステムにおける同一の構成要素を指す。項目62は、銅促進CHA又はAEIアルミノケイ酸塩ゼオライトであるSCR触媒でウォッシュコートされたウォールフローフィルタである第1の基材である。特徴64は、第1の基材端部が上流側に向けられている、図9に記載の複合酸化触媒であり、項目66は、銅促進アルミノケイ酸塩ゼオライトCHA又はAEI SCR触媒を含むハニカムフロースルー基材である第2の基材である。複合酸化触媒64から下流にフィルタ基材がないため、複合酸化触媒は発熱生成に使用されず、例えば、複合酸化触媒の第1の触媒ウォッシュコートゾーンは、発熱生成を促進する目的のために高いPGM担持量又はアルカリ担持量を含まない。代わりに、DOC56は、SCRでコーティングされたフィルタ62を加熱するために、噴射装置38を介して噴射された炭化水素燃料から発熱を生成するために使用される。
【0286】
本発明の代替的な定義
本発明は、添付の特許請求の範囲のうちのいずれか1つ、あるいは以下の定義のうちの1つ以上によって定義される。
【0287】
1.車両用、好ましくは重量ディーゼル車両用の圧縮点火内燃機関によって生成される排気ガスを処理するために、排気システム内で使用するための複合のゾーンコーティングされたデュアルユースアンモニア及び一酸化窒素酸化触媒であって、排気ガスはまた、アンモニアも含み、複合酸化触媒は、
全長L及び長手方向軸を有し、第1の基材端部と第2の基材端部との間に軸方向に延在する基材表面を有する、基材と、
耐熱性金属酸化物支持材料と上面に担持された1つ以上の白金族金属成分とを含む第1の触媒ウォッシュコート層と、第1の触媒ウォッシュコート層とは異なり、耐熱性金属酸化物支持材料と上面に担持された1つ以上の白金族金属成分とを含む第2の触媒ウォッシュコート層と、から構成される2つ以上の触媒ウォッシュコートゾーンであって、この2つ以上の触媒ウォッシュコートゾーンは、基材表面上及びそれに沿って軸方向に直列に配置され、長さL(L<L)を有する第1の触媒ウォッシュコートゾーンは、第1の基材端部によって一方の端部において、及び長さL(L<L)を有する第2の触媒ウォッシュコートゾーンの第1の端部によって第2の端部において画定され、第1の触媒ウォッシュコートゾーンは、第1の耐熱性金属酸化物支持材料と上面に担持された1つ以上の白金族金属成分とを含み、第2の触媒ウォッシュコートゾーンは、第2の耐熱性金属酸化物支持材料と上面に担持された1つ以上の白金族金属成分とを含む、2つ以上の触媒ウォッシュコートゾーンと、
第1の基材端部から下層の第1の触媒ウォッシュコート層の軸方向長さの最大200%まで軸方向に延在するウォッシュコート被覆層であって、このウォッシュコート被覆層は、>0.8g/inの粒子状金属酸化物担持量を含み、粒子状金属酸化物は、銅、鉄、及びマンガンのうちの少なくとも1つを含むアルミノケイ酸塩ゼオライトであり、基材体積の立方フィート当たりの白金族金属のグラム数(g/ft)で定義される、第1の触媒ウォッシュコートゾーン中の総白金族金属担持量は、第2の触媒ウォッシュコートゾーン中の総白金族金属担持量とは異なる、ウォッシュコート被覆層と、を含む、複合酸化触媒。
2.第2の触媒ウォッシュコートゾーンは、第2の基材端部によってその第2の端部において画定され、第1の触媒ウォッシュコートゾーンは、第1の触媒ウォッシュコート層を含み、第2の触媒ウォッシュコートゾーンは、第2の触媒ウォッシュコート層を含む、1に記載の複合酸化触媒。
3.第1の触媒ウォッシュコートゾーン中の総白金族金属担持量は、第2の触媒ウォッシュコートゾーン中の総白金族金属担持量よりも小さい、1又は2に記載の複合酸化触媒。
4.第1の触媒ウォッシュコートゾーン中の総白金族金属担持量は、第2の触媒ウォッシュコートゾーン中の総白金族金属担持量よりも大きい、1又は2に記載の複合酸化触媒。
5.第1の触媒ウォッシュコート層と第2の触媒ウォッシュコート層との2層重複領域から形成された1つのゾーンを含む、3つ以上の触媒ウォッシュコートゾーンを含み、第3の耐熱性金属酸化物支持材料と、上面に担持された1つ以上の白金族金属成分と、を含む、第3の触媒ウォッシュコートゾーンは、第2の基材端部によってその第2の端部において画定され、基材体積の立方フィート当たりの白金族金属のグラム数(g/ft)で定義される、第3の触媒ウォッシュコートゾーン中の総白金族金属担持量は、第2の触媒ウォッシュコートゾーン中の総白金族金属担持量よりも小さい、2及び請求項2に従属する場合の請求項4に記載の複合酸化触媒。
6.4つの触媒ウォッシュコートゾーンを含み、第4の触媒ウォッシュコートゾーンは、第2の触媒ウォッシュコートゾーンと第3の触媒ウォッシュコートゾーンとの間に位置し、第4の触媒ウォッシュコートゾーンは、第4の耐熱性金属酸化物支持材料と上面に担持された1つ以上の白金族金属成分とを含み、第2の触媒ウォッシュコートゾーンの第2の端部によってその第1の端部において、及び第3の触媒ウォッシュコートゾーンの第1の端部によってその第2の端部において画定され、基材体積の立方フィート当たりの白金族金属のグラム数(g/ft)で定義される、第4の触媒ウォッシュコートゾーン中の総白金族金属担持量は、第2の触媒ウォッシュコートゾーン及び第3の触媒ウォッシュコートゾーンのそれぞれにおける総白金族金属担持量よりも大きく、第1の触媒ウォッシュコート層は、長さL(L<L)を有し、第1の基材端部によって一方の端部において画定され、第2の触媒ウォッシュコート層は、長さL(L<L)を有し、第2の基材端部によって第2の端部において画定され、第4の触媒ウォッシュコートゾーンは、第1の触媒ウォッシュコート層及び第2の触媒ウォッシュコート層の2層重複領域を含み、第3の触媒ウォッシュコートゾーンは、重複領域に含まれない第2の触媒ウォッシュコート層の単一層を含む、5に記載の複合酸化触媒。
7.第1の触媒ウォッシュコートゾーン中の1つ以上の白金族金属成分は、白金を含む、1~6のいずれか1つに記載の複合酸化触媒。
8.第1の触媒ウォッシュコートゾーン中の1つ以上の白金族金属成分は、白金から本質的になる、1~6のいずれか1つに記載の複合酸化触媒。
9.第1の触媒ウォッシュコートゾーン中の1つ以上の白金族金属成分は、白金及びパラジウムの両方からなる、1~6のいずれか1つに記載の複合酸化触媒。
10.白金のパラジウムに対する重量比は、≧1である、9に記載の複合酸化触媒。
11.第1の触媒ウォッシュコートゾーン(1)中の白金のパラジウムに対する重量比は、10:1≧1.5:1である、10に記載の複合酸化触媒。
12.白金のパラジウムに対する重量比は、<1である、9に記載の複合酸化触媒。
13.第2の触媒ウォッシュコートゾーン中の1つ以上の白金族金属成分は、白金を含む、1~12のいずれか1つに記載の複合酸化触媒。
14.第2の触媒ウォッシュコートゾーン中の1つ以上の白金族金属成分は、白金から本質的になる、1~12のいずれか1つに記載の複合酸化触媒。
15.第2の触媒ウォッシュコートゾーン中の1つ以上の白金族金属成分は、白金及びパラジウムの両方を含む、1~12のいずれか1つに記載の複合酸化触媒。
16.第2の触媒ウォッシュコートゾーン中の白金のパラジウムに対する質量比は、第1の触媒ウォッシュコートゾーン中の白金のパラジウムに対する質量比よりも大きい、15に記載の複合酸化触媒。
17.第1の触媒ウォッシュコートゾーン及び/又は第1の触媒ウォッシュコート層は、耐熱性金属酸化物支持材料上に支持された1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分を含む、1~16のいずれか1つに記載の複合酸化触媒。
18.第1の触媒ウォッシュコートゾーン中の総アルカリ土類金属担持量は、元素金属として計算される10~100g/ftである、17に記載の複合酸化触媒。
19.第1の触媒ウォッシュコートゾーン中の総元素アルカリ土類金属の総元素白金族金属に対する重量比は、<1:1である、17又は18のいずれか1つに記載の複合酸化触媒。
20.第1の触媒ウォッシュコートゾーン中のアルカリ土類金属は、バリウム(Ba)又はストロンチウム(Sr)、好ましくはBaを含む、17、18、又は19のいずれか1つに記載の複合酸化触媒。
21.ウォッシュコート被覆層は、第1の基材端部から下層の第1の触媒ウォッシュコート層の軸方向長さの最大150%、任意選択的に最大120%まで軸方向に延在する、1~20のいずれか1つに記載の複合酸化触媒。
22.ウォッシュコート被覆層は、第1の基材端部から下層の第1の触媒ウォッシュコート層の軸方向長さの>50%まで軸方向に延在する、1~21のいずれか1つに記載の複合酸化触媒。
23.ウォッシュコート被覆層は、第1の触媒ウォッシュコートゾーンのウォッシュコート上に直接コーティングされる、1~22のいずれか1つに記載の複合酸化触媒。
24.ウォッシュコート被覆層中のアルミノケイ酸塩ゼオライトは、フォージャサイト、クリノプチロライト、モルデナイト、シリカライト、フェリエライト、X型ゼオライト、Y型ゼオライト、超安定Y型ゼオライト、AEIゼオライト、ZSM-5ゼオライト、ZSM-12ゼオライト、ZSM-20ゼオライト、ZSM-34ゼオライト、CHAゼオライト、SSZ-13ゼオライト、オフレタイト、又はベータ型ゼオライトである、1~23のいずれか1つに記載の複合酸化触媒。
25.ウォッシュコート被覆層中のアルミノケイ酸塩ゼオライトは銅を含み、アルミノケイ酸塩ゼオライトはまたセリウムを含む、1~24のいずれか1つに記載の複合酸化触媒。
26.総量が0.1~20.0重量%の銅、鉄、マンガン、及び存在する場合、セリウムは、ウォッシュコート被覆層のアルミノケイ酸塩ゼオライト中に含まれる、1~25のいずれか1つに記載の複合酸化触媒。
27.ウォッシュコート被覆層中のアルミノケイ酸塩ゼオライトは、≧10nmの平均細孔径を有し、及び/又はウォッシュコート被覆層は、≧10nmの平均粒子間細孔径を有する、1~26のいずれか1つに記載の複合酸化触媒。
28.ウォッシュコート被覆層中のアルミノケイ酸塩ゼオライトは、100m/g超の比表面積を有する、1~27のいずれか1つに記載の複合酸化触媒。
29.ウォッシュコート被覆層のウォッシュコート担持量は、0.8~3.5gin-3である、1~28のいずれか1つに記載の複合酸化触媒。
29.第1の触媒ウォッシュコートゾーン(1)中の総白金族金属担持量が、元素金属として計算される3.53g/L未満(<100g/ft)である、1~28のいずれか1つに記載の複合酸化触媒。
30.元素金属として計算される全体として0.18~2.19g/L(5~60g/ft)の、基材(5)上の総白金族金属担持量を含む、1~29のいずれか1つに記載の複合酸化触媒。
31.複合酸化触媒(14、16、18、20)中の総Pt:Pd重量比は、全体として3:2~9:1である、1~30のいずれか1つに記載の複合酸化触媒。
32.3つの触媒ウォッシュコートゾーンを含み、第3の触媒ウォッシュコートゾーンは、第2の触媒ウォッシュコートゾーンの第2の端部によってその第1の端部において画定され、第1の触媒ウォッシュコート層は、長さL(L<L)を有し、第1の基材端部によって一方の端部において画定され、第2の触媒ウォッシュコート層は、長さL(L<L)を有し、第2の基材端部によって第2の端部において画定され、第2の触媒ウォッシュコートゾーンは、第1の触媒ウォッシュコート層及び第2の触媒ウォッシュコート層の2層重複領域を含み、第3の触媒ウォッシュコートゾーンは、重複領域に含まれない第2の触媒ウォッシュコート層の単一層を含む、5及び5に従属する場合の6~31のいずれか1つに記載の複合酸化触媒。
33.第3の触媒ウォッシュコートゾーン中の1つ以上の白金族金属成分は、白金から本質的になる、32に記載の複合酸化触媒。
34.第1の触媒ウォッシュコートゾーンの後に、基材長さLに沿って直列に配列された各連続する触媒ウォッシュコートゾーン中の白金のパラジウムに対する質量比は、直前の触媒ウォッシュコートゾーンよりも大きい、5~33のいずれか1つに記載の複合酸化触媒。
35.LはLの50%未満である、1~34のいずれか1つに記載の複合酸化触媒。
36.第1の触媒ウォッシュコートゾーンは、電子プローブマイクロ分析法(EPMA)によって決定されるとき、基材の表面に垂直の方向に、1つ以上の白金族金属成分及び/又は1つ以上の第1のアルカリ土類金属成分の不均一な分布を有し、1つ以上の白金族金属成分及び/又は第1のアルカリ土類金属成分の濃度は、基材の表面に向かって垂直方向に減少する、1~35のいずれか1つに記載の複合酸化触媒。
37.少なくとも第1の耐熱性金属酸化物支持材料は、ヘテロ原子、好ましくはシリカをドープしたアルミナを含む、1~36のいずれか1つに記載の複合酸化触媒。
38.第3の触媒ウォッシュコートゾーンはマンガンを含み、かつ/又は、第2の触媒ウォッシュコート層はマンガンを含む、5及び5に従属する場合の6~37のいずれか1つに記載の複合酸化触媒。
39.基材はハニカムフロースルー基材モノリスである、1~38のいずれか1つに記載の複合酸化触媒。
40.とりわけ、窒素酸化物(NO)を含む排気ガスを処理するための車両用圧縮点火機関のための排気システムであって、この排気システムは、前述の請求項のいずれか一項に記載の複合酸化触媒と、窒素系還元剤又は窒素系還元剤前駆体源に接続された窒素系還元剤又はその前駆体用の第1の噴射装置であって、この第1の噴射装置は、複合酸化触媒、及び窒素系還元剤又はその前駆体用の第1の噴射装置と複合酸化触媒との間に配置されている選択的触媒還元触媒を含む第1の基材から上流を流れる排気ガス中に、窒素系還元剤又は窒素系還元剤前駆体を噴射するように配置されている、第1の噴射装置と、を備え、複合酸化触媒の第1の基材端部は上流側に向けられている、排気システム。
41.複合酸化触媒から下流に配置された選択的触媒還元触媒を含む第2の基材と、窒素系還元剤又は窒素系還元剤前駆体源に接続された窒素系還元剤又はその前駆体用の第2の噴射装置と、を備え、この第2の噴射装置は、複合酸化触媒から下流かつ選択的触媒還元触媒を含む第2の基材から上流を流れる排気ガス中に、窒素系還元剤又は窒素還元剤前駆体を噴射するように配置されている、40に記載の排気システム。
42.選択的触媒還元触媒を含む第2の基材は、フィルタ基材である、41に記載の排気システム。
43.複合酸化触媒から下流に配置された煤煙フィルタ基材である第3の基材を含む、40、41、又は42のいずれか1つに記載の排気システム。
44.第3の基材は、複合酸化触媒と第2の噴射装置との間に配置される、41に従属する場合の43に記載の排気システム。
45.煤煙フィルタ基材は、白金族金属触媒で触媒される触媒煤煙フィルタ基材である、43又は44に記載の排気システム。
46.液状炭化水素源に接続された液状炭化水素用の噴射装置を備え、この噴射装置は、下流フィルタを加熱するために複合酸化触媒上で発熱を生成するために、複合酸化触媒から上流の排気システム内を流れる排気ガス中に、液状炭化水素を噴射するように配置されている、41又は45又は請求項41に従属する場合の42、43又は44に記載の排気システム。
47.アンモニアのNOに対する重量比が0.4~0.8、任意選択的に0.4~0.6又は0.7~0.8で、選択的触媒還元触媒を含む第1の基材へのアンモニア窒素系還元剤の送達を制御するための、事前プログラムされたコンピュータプロセッサ(複数可)を備える、エンジン及び窒素系還元剤又は窒素系還元剤前駆体電子制御ユニット(複数可)を含む、40~46のいずれか1つに記載の排気システム。
48.事前プログラムされたコンピュータプロセッサ(複数可)を備える、エンジン及び窒素系還元剤又は窒素系還元剤前駆体電子制御ユニット(複数可)は、アンモニアのNOに対する重量比が0.7~0.8で、選択的触媒還元触媒を含む第1の基材へのアンモニア窒素系還元剤の送達を制御するために事前プログラムされ、下流の第2の基材SCR触媒の体積は、一定の第2の基材SCR触媒担持量でのNOに必要な排出基準を満たすために、排気システム全体でANRが0.4~0.6で動作するシステムと比較して削減される、請求項47に記載の排気システム。
49.重量ディーゼル車両用圧縮点火内燃機関と、40~48のいずれか1つに記載の排気システムと、を備え、複合酸化触媒の第1の基材端部は上流側に向けられている、装置。
49.圧縮点火内燃機関は、ディーゼルエンジンである、49に記載の装置。
50.48又は49に記載の装置を備える、重量ディーゼル車両。
51.車両用の圧縮点火内燃機関の排気システムであって、この排気システムは、窒素系還元剤又は窒素系還元剤前駆体源に接続された窒素系還元剤又はその前駆体用の第1の噴射装置を含み、この第1の噴射装置は、複合酸化触媒、第1の噴射装置と複合酸化触媒との間に配置された選択的触媒還元触媒を含む第1の基材、及び複合酸化触媒から下流に配置された選択的触媒還元触媒を含む第2の基材から上流を流れる排気ガス中に、窒素系還元剤又は窒素系還元剤前駆体を噴射するように配置されており、複合酸化触媒の第1の基材端部は上流側に向けられており、このNO酸化は、下流の第2の基材上の選択的触媒還元を促進し、これにより、排気システム全体がNOの一般的な排出基準を満たす、車両用の圧縮点火内燃機関の排気システム内を流れる排気ガス中のアンモニアを酸化するため、及び排気ガス中の一酸化窒素(NO)を二酸化窒素(NO)に酸化するための、1~39のいずれか1つに記載の複合酸化触媒の使用。
52.車両用の圧縮点火内燃機関の排気システムであって、この排気システムは、窒素系還元剤又は窒素系還元剤前駆体源に接続された窒素系還元剤又はその前駆体用の第1の噴射装置を含み、この第1の噴射装置は、複合酸化触媒、第1の噴射装置と複合酸化触媒との間に配置された選択的触媒還元触媒を含む第1の基材、及び複合酸化触媒から下流に配置されたフィルタを含む第3の基材から上流を流れる排気ガス中に、窒素系還元剤又は窒素系還元剤前駆体を噴射するように配置されており、複合酸化触媒の第1の基材端部は上流側に向けられており、このNO酸化は、下流の第3の基材フィルタ上に保持された粒子状物質の燃焼を促進し、これにより、排気システム全体が粒子状物質の一般的な排出基準を満たす、車両用の圧縮点火内燃機関の排気システム内を流れる排気ガス中のアンモニアを酸化するため、及び排気ガス中の一酸化窒素(NO)を二酸化窒素(NO)に酸化するための、1~39のいずれか1つに記載の複合酸化触媒の使用。
53.酸化触媒を高濃度の炭化水素燃料を含む排気ガスと接触させることにより、通常の動作条件に対して排気システム内を流れる排気ガス中の高濃度の炭化水素燃料から発熱を生成することによって、複合酸化触媒から下流に配置された煤煙フィルタを加熱するための、17又は17に従属する場合の18~39のいずれか1つに記載の複合酸化触媒の使用。
【0288】
定義
特許請求された発明が白金のパラジウムに対する重量比の特徴を定義する場合、そのような定義は、重量比が1:0(又は「無限大」(∞)、すなわち、パラジウムが存在しない場合)を含む。すなわち、白金のパラジウムに対する重量比の請求項の定義は、例えば、重量比の特徴を使用することによって、請求項の定義にパラジウムの存在が明確に含まれていない限り、必ずしもパラジウムの存在を意味するわけではない。
【0289】
白金族金属(例えば、第1の白金族金属又は第2の白金族金属)の、基材の表面に垂直な方向(例えば、直線)における分布に関する任意の言及は、一般に、触媒層が配置されている基材の同じ表面に垂直な方向を指す。参照目的のために、基材の表面は、概して水平(すなわち、長手方向)平面にある。基材の表面に垂直な方向は、典型的には、基材の表面に垂直な触媒層(すなわち、触媒層の厚さを露出させる断面平面)を通る断面平面内の方向である。断面平面は、概して垂直(すなわち、横断)面である。断面平面は、触媒層が配置されている表面に垂直である。より典型的には、断面平面は、基材の吸入端面及び/又は基材の吐出端面(すなわち、吸入端面を含む平面及び/又は吐出端面を含む平面)と実質的に平行である。この文脈における「実質的に平行」への任意の言及は、基材の断面平面と吸入端面又は吐出端面との間の、5°未満、好ましくは2.5°未満、より好ましくは1°未満(例えば0.5°未満)の角度を指す。
【0290】
「基材の表面」への任意の言及は、一般に、基材を通るチャネルの壁の表面を指す。
【0291】
本明細書で使用するとき、用語「層」(例えば、触媒層)は、基材の表面又は別の層の表面などの表面上に広がる、ある厚さの材料を指し、典型的には、明確な境界又は縁部を有する(すなわち、従来の分析技術(例えば、透過型電子顕微鏡)を使用して、組成的に異なる第2の層から第1の層を区別することが可能である)。
【0292】
白金族金属の分布を参照して本明細書で使用するとき、用語「均一」は、一般に、組成物中の任意の点における白金族金属の量が、組成物全体(例えば、層)における白金族金属の平均量の±20%以内である組成物(例えば、層)を指す。好ましくは、組成物中の任意の点における白金族金属の量は、組成物全体(例えば、層)における白金族金属の平均量の±10%、より好ましくは±5%、更により好ましくは±1%以内である。白金族金属の平均量は、その組成物の調製中に測定される白金族金属の量に相当するべきである。組成物中の任意の点における白金族金属の量は、透過型電子顕微鏡を用いたEDX分析などの従来の分析技術を使用して決定することができる。
【0293】
本明細書で使用される用語「混合酸化物」は、概ね、当該技術分野において従来知られているように、単相にての酸化物の混合物を指す。
【0294】
本明細書で使用される用語「複合酸化物」は、概ね、当該技術分野において従来知られているように、2つ以上の相を有する酸化物の組成物を指す。
【0295】
用語「担持量」は、白金族金属成分、アルカリ土類金属成分、又は、触媒ウォッシュコートゾーン、触媒ウォッシュコート層中に存在する、若しくは全体として基材上に存在する、耐熱性金属酸化物支持材料上に担持される、1つ以上の白金族金属成分及び1つ以上のアルカリ土類金属成分の両方を含むウォッシュコート配合物などの成分の、濃度量を定義するために使用される。EPMA又はXRF法によって、各白金族金属成分又は各アルカリ土類金属成分の局所濃度を決定することが可能である。本明細書及び先行技術で使用される担持量の単位は、一般に、使用される基材の体積に概ね関連する、g ft-3若しくはg in-3、又はそれらのSI単位に相当するグラム/リットルで表される。体積成分は、例えばウォッシュコート層が適用される基材の体積成分に関する。典型的には、比較的低濃度の成分は、ある量の100分の1又は1000分の1を参照する必要がない意味のある量にするために、「g ft-3」として与えられ、ウォッシュコート総適用量など、より高濃度の量が「g in-3」として与えられる。技術常識の慣習により、担持量の単位の「体積」成分は、基材が固体である、例えば、シリンダの全体積であると仮定し、基材が、基材組成物から作製された壁によって画定された内部を延在するチャネルを有すること、又は基材組成物が本質的に多孔質であるという事実を無視する。
【0296】
用語「含む(comprising)」は、指定された要素が必須であることを意味することを意図するものであるが、他の要素が追加されてもよく、それでもなお、請求項の範囲内に構成を形成してもよい。
本明細書で使用されるとき、「本質的になる」という表現は、より広義の「含む」の代わりになり得、特定の材料又は工程、及び、その特徴若しくは他の請求項の特徴と組み合わせたその特徴の基本的かつ新規特性及び機能に実質的に影響を及ぼさない任意の他の材料又は工程を含む、特徴の範囲を制限する。触媒ウォッシュコートゾーンが白金から本質的になる場合、これは、白金からなることを意図しているが、他の白金族金属、例えばパラジウムが、例えば、製造中の触媒ウォッシュコートゾーンへのパラジウムの移動のために、最終生成物の触媒ウォッシュコートゾーンに非意図的に存在し得ることを意味する。この文脈では、「から本質的になる」は、白金から本質的になると定義される触媒ウォッシュコートゾーン中に、非意図的にパラジウムが存在することを除外しない。用語「から本質的になる」は、「からなる」という表現を包含し、「含む」又は「からなる」のいずれかと互換可能である。「からなる」は、通常それに関連する不純物を除いて、列挙されたもの以外の材料を含めることに対して請求項を閉鎖する。
【0297】
本発明による複合酸化触媒に関して、本発明の基本的かつ新規の特徴は、耐熱性金属酸化物支持材料と上面に担持された1つ以上の白金族金属成分とを含む第1の触媒ウォッシュコート層と、基材表面上及びそれに沿って軸方向に直列に配置された、第1の触媒ウォッシュコート層とは異なる第2の触媒ウォッシュコート層と、から構成される少なくとも2つの触媒ウォッシュコートゾーンの基材であり、基材吸入端によって一方の端部において画定される第1の触媒ウォッシュコートゾーンは、耐熱性金属酸化物支持材料を含み、白金及びパラジウムの両方並びに第2の触媒ウォッシュコートゾーンは、耐熱性金属酸化物支持材料と、存在する唯一の白金族金属としての白金、又は白金及びパラジウムの両方のいずれかと、を含み、第1の触媒ウォッシュコートゾーン中の総白金族金属担持量は、第2の触媒ウォッシュコートゾーン、及び第1の基材端部から下層の第1の触媒ウォッシュコート層の軸方向長さの最大200%まで軸方向に延在するウォッシュコート被覆層中の総白金族金属担持量とは異なり、このウォッシュコート被覆層は、>0.8g/inの粒子状金属酸化物担持量を含み、粒子状金属酸化物は、銅、鉄、及びマンガンのうちの少なくとも1つを含むアルミノケイ酸塩ゼオライトである。
【0298】
表現「白金族金属」(例えば、第1の白金族金属又は第2の白金族金属)の文脈において、触媒中の正確な触媒種を特徴付けることが困難であることが多く、白金族金属は、元素金属形態で存在しない場合があることを理解されたい。「白金族金属...から本質的になる」への任意の言及は、白金族金属の元素形態、白金族金属を含む合金、又は白金族金属を含む化合物(例えば、白金族金属の酸化物)の「白金族金属部分」を包含する。好ましくは、任意のそのような「白金族金属部分」は、白金族金属の元素形態又は白金族金属を含有する合金、より好ましくは白金族金属の元素形態である。
【0299】
請求項2及び図1の実施形態を参照すると、第1及び第2の触媒ウォッシュコート層は、「第1のウォッシュコート層と第2のウォッシュコート層との間で実質的に重なることなく」、互いに当接しており、用語「実質的に重なる」は、第1の触媒ウォッシュコートコーティングと第2の触媒ウォッシュコートコーティングとの間に間隙がない製品を含むことを意図する。実際には、2つの複合ウォッシュコート層の間に、それらの間の接合部においていくらかの重なりを有することなく、完全に「間隙がない」コーティングを達成することは、実質的に非常に困難である。したがって、本発明の第6の態様によって包含される方法によって作製される実際の製品は、1~2mmから軸方向長さの最大15%、例えば、最大14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、8%、6%、5%、4%、3%、2%又は1%の非意図的な重なりを有し得る。したがって、第1の態様による複合酸化触媒は、この非意図的な重なりの最大寸法を有する製品まで延在する。
【0300】
実施例
これから、以下の非限定的な実施例によって本発明を例示する。誤解を避けるため、全てのコーティング工程は、本出願人による国際公開第99/47260号に開示されている方法及び装置を用いて行われ、すなわち、(a)基材の上に収容手段を配置する工程と、(b)所定量の液体成分を、(a)の次に(b)又は(b)の次に(a)のいずれかの順で、上記収容手段に投入する工程と、(c)真空を適用することにより、上記の量の液体成分の全体を、基材の少なくとも一部に引き込み、リサイクルすることなく、基材内に上記の量の実質的に全てを保持する工程と、を含む。
【0301】
実施例1-本発明の複合のゾーンコーティングされたデュアルユースアンモニア(AMOX)及び一酸化窒素酸化触媒の製造
6つの実験試料を、以下のように作製した共通の2ゾーン複合酸化触媒に基づいて調製した。1平方インチ当たり400個のセルを有し、壁厚1000分の6インチ(6ミル)、円筒直径10.5インチ、及び全長4インチ(0.2ft又は5.7リットルの体積)又は6インチ(0.3又は8.5リットル)のコーディエライトがむき出しのハニカムフロースルー基材モノリスを、触媒ウォッシュコートを用いて、以下のようなゾーン構成でコーティングした。存在する唯一の白金族金属としての白金及びパラジウムの両方の水性塩(硝酸塩として)と、水性酢酸バリウム塩と、5重量%のシリカをドープしたアルミナ支持体とを含有する第1の触媒ウォッシュコートスラリーを、基材モノリス上に、吸入端と標示した一方の端部からの基材モノリス全長の30%の軸方向長さまでコーティングして、第1の触媒ウォッシュコートコーティングを提供した。白金及びパラジウム塩の濃度は、白金のパラジウムに対する重量比が1:2で、すなわち、総白金族金属担持量が52.5gft-3で、17.5Pt:35.0Pd gft-3の第1の触媒ウォッシュコートコーティング中担持量を達成するように選択した。第1の触媒ウォッシュコートコーティング中のバリウム担持量が、80gft-3となるように、酢酸バリウムの濃度を選択した。次いで、この吸入部コーティングを従来のオーブン内において100℃で1時間乾燥させて、過剰な水及び他の揮発性種を除去した。
【0302】
存在する唯一の白金族金属として白金及びパラジウムの水性塩(硝酸塩として)と、5重量%のシリカをドープしたアルミナ支持体とを含有する第2の触媒ウォッシュコートスラリーを、第1のコーティングが適用された端部、すなわち、吐出端に向けられることを意図した基材モノリスの端部、とは反対側の基材モノリスの端部から基材上にコーティングした。第2の触媒ウォッシュコートコーティングは、アルカリ土類金属を含有しなかった。第2の触媒ウォッシュコートのコーティングの軸方向長さは、全基材長さの70%、すなわち、実際のプロセス及び生産公差の境界内であり、完成したコーティングされた部分には、一方のウォッシュコートコーティングが他方に意図的に重なることはなく、一方のウォッシュコートコーティングと他方との間に意図的な間隙もなかった。白金及びパラジウム塩の濃度は、白金のパラジウムに対する重量比が5:1で、すなわち、総白金族金属担持量が6.0gft-3で、5.0Pt:1.0Pd gft-3の第2の触媒ウォッシュコートコーティング中担持量を達成するように選択した。第1及び第2のウォッシュコートコーティングの両方でコーティングされた基材を、従来のオーブンで100℃にて1時間乾燥させ、次いで、乾燥させた部品を500℃で1時間焼成して、白金及びパラジウム塩を分解し、白金及びパラジウムをシリカをドープしたアルミナ支持体に固定した。
【0303】
全てのウォッシュコート及び含浸溶液は本来酸性であり、pH調整を行わなかった。全体としての基材モノリス上の総白金族金属担持量は、1:1.28の総Pt:Pd重量比で20gft-3であった。
【0304】
8つの実験試料を以下のように調製した。実験試料のうち7つは、10.5×4インチ基材を使用し、選択的触媒還元(SCR)触媒被覆層の任意の適用なしで、第1の試料を対照として使用した。残りの6つの試料は、以下の表1に記載されるように、銅担持量は約3.3重量%で、吸入端から第1の触媒ウォッシュコートコーティング上に様々な軸方向長さ及びウォッシュコート担持量でコーティングされた、銅イオン交換アルミノケイ酸塩ゼオライトCHAのウォッシュコート被覆層を有した。使用したCHAアルミノケイ酸塩ゼオライトは、約25のシリカ-アルミナ比及び>100m/gのフレッシュ比表面積を有していた。単一の残りの試料を、吸入端から第1の触媒ウォッシュコートコーティング上に10.5×6インチ基材上に、銅イオン交換アルミノケイ酸塩AEIのウォッシュコート被覆層で、銅担持量が約3.75重量%で、総基材軸方向長さに対して軸方向長さが0.3、すなわち、下層の第1の触媒ウォッシュコートコーティングの100%までコーティングした。使用したAEIアルミノケイ酸塩ゼオライトは、約20のシリカ-アルミナ比及び>100m/gのフレッシュ比表面積を有していた。
【0305】
【表1】
10.5×6インチ基材。被覆層は、Cu/CHAアルミノケイ酸塩ゼオライトの代わりにCu/AEIアルミノケイ酸塩ゼオライトを含む。
【0306】
試料1.3及び1.4中のCu/CHAの絶対担持量は同一であり、唯一の違いは、試料1.3と比較して、試料1.4中の同じ(絶対)量のCu/CHAの方が、より長いゾーン長さにわたって広がったことである。
【0307】
表1の全ての複合酸化触媒試料を、580℃のオーブン内の空気中で100時間経時処理を行った。
【0308】
実施例2-アンモニア及び一酸化窒素を選択的に酸化し、発熱を生成するための実施例1の本発明の複合酸化触媒の評価
8つの経時処理を行った試料を、実施例1に列挙し、表1を、それぞれ、実験台に装着したディーゼルエンジンを使用して、順番に試験した。エンジンについては、エンジン運転及び排気ガス炭化水素濃縮(発熱生成)の両方について、EUVI B7燃料(7%Bio燃料)を注ぎ、2200rpmで運転し、その内部に、試験試料複合酸化触媒のそれぞれが、吸入端/第1の触媒、上流側に向けられた高担持量ウォッシュコートゾーンについて試験するために挿入され得る、排気配管及び取り外し可能なキャニングを含む排気システムを装備した。取り外し可能なキャニングは、押出されたV/WO/TiO選択的触媒還元触媒(10.5×7インチ)、それに続く短い間隙、及び次いで、試験される複合酸化触媒のための空間を含んだ。以下の実施例2Aに記載の「連続発熱」試験については、押出されたバナジウムSCR触媒は、取り外し可能なキャニングに含まれなかった。実施例2Bに記載のNO酸化、NO形成、及びNH変換試験について、押出されたバナジウムSCR触媒を挿入し、流入する排気ガスに最初に接触するように、押出されたバナジウムSCR触媒を複合酸化触媒の上流側に配置するように、キャニングされた触媒を配向した。
【0309】
エンジンは、世界統一過渡サイクル(World Harmonised Transient Cycle、WHTC)にて、2500rpm及び約7.5g NO/kWhで235kWを生成する、7リットル容量EUV6シリンダエンジンであった。排気システム「ハードウェア」は、炭化水素燃料を、エンジンマニホールドから下流及びキャニングされた触媒から上流の排気ガス配管に直接噴射するように配置された「7番目の噴射装置」を含んだ。この燃料噴射装置は、エンジンのシリンダに関連付けられた6つの燃料噴射装置に追加されるため、「7番目の噴射器」と名付けられる。更に、尿素(AdBlue(商標))噴射装置は、7番目の噴射装置の下流及びキャニングされた触媒の上流の排気ガスへの噴射のために位置した。
【0310】
熱電対は、複合酸化触媒への吸入部に位置し、各複合酸化触媒の基材モノリスの中心線に沿った様々な軸方向位置に挿入した。
【0311】
実施例2A-実施例1に従って調製された触媒の発熱生成比較のための試験方法及び結果
実施例1の複合酸化触媒試料及び対照試料の各々の「連続発熱」熱分析は、以下の手順によって行った。試験の過程で尿素は噴射されなかった。各キャニングされた複合酸化触媒(上流の押出されたバナジウムSCR触媒なし)を、490℃の複合酸化触媒への吸入部温度で20分間調整した後、320℃の吸入部温度まで急速冷却し、複合酸化触媒を10分間保持した。次に、7番目の噴射装置を介した炭化水素噴射を、複合酸化触媒基材吐出部において検出された500℃を生成する発熱を達成する速度で開始した。この発熱を定常状態で5分間維持した。次いで、720kg/hのガス質量流量で1分当たり1℃の吸入部温度低下を達成するため、エンジン速度及び/又は負荷を連続的に調節することによって、炭化水素酸化触媒消化温度の下降を開始した。複合酸化触媒基材吐出部の温度が400℃を下回ったとき、又は1500ppm Cの炭化水素スリップ分析限界に達したときに、操作を停止した。各試験の間に、エンジンを1200rpmで、フルトルクで運転することによって、システムを「洗浄」した。
【0312】
連続発熱試験の結果を以下の表2に示す。
【0313】
【表2】
【0314】
「<400℃発熱ができなかった吸入部温度(℃)」は、以下、「発熱消滅温度」と称される。表2に示した結果から、Cu/CHA試料の場合、発熱消滅温度は、Cu/CHA中のウォッシュコート担持量の影響を受けることが分かる(発熱消滅温度が低いほど良いことが理解されるであろう)。これは、特に、試料1.4及び1.3の発熱消滅温度の比較から分かる。両試料が、ウォッシュコート被覆層中に同じ(絶対)量のCu/CHAを有するにもかかわらず、試料1.4の発熱消滅温度は試料1.3よりも小さいという結果から分かる。ウォッシュコート担持量のこの違いはウォッシュコート層厚と相関するため、ウォッシュコート担持量がより高いと、発熱反応における質量移動を制限するように見える。
【0315】
また、発熱消滅温度は、一定のウォッシュコート担持量で、下層の第1のウォッシュコートゾーン長さの長さに対して、ウォッシュコート被覆層の軸方向長さの影響を受けることが分かる。これは、試料1.2及び1.4の結果の比較から、下層の第1のウォッシュコートゾーン長さよりも短い軸方向ゾーン長さ(試料1.2)が、下層の第1のウォッシュコートゾーン長さよりも長いウォッシュコート被覆層(1.4)よりも低い発熱消滅温度を有することが分かる。
【0316】
また、試料1.3の発熱消滅温度の結果から、ウォッシュコート被覆層の配合物は、(同じウォッシュコート担持量での試料1.2の対応する結果と比較して)得られる発熱消滅温度に影響を与え得、Cu/AEI含有試料1.3の発熱消滅温度は、Cu/CHA含有試料1.2よりも低いことが分かる。本発明者らは、この結果が粒子間細孔径の影響を示し、Cu/CHA配合物が粉砕される一方で、Cu/AEIは粉砕されないと考えている。発熱に対する粒子間細孔径の影響に関する考察については、「リン及び/又は亜鉛保護床」の見出しの下で上記の説明を参照されたい。しかしながら、この効果は、試料1.3のわずかに長い下層の第1のウォッシュコート層によっても部分的に影響を受け得る可能性がある(試料1.3で使用される6インチ基材の下層の第1の触媒ウォッシュコートゾーンの30%の軸方向ゾーン長さは1.8インチであるが、試料1.2で使用される4インチ基材の30%の軸方向ゾーン長さは1.2インチである)。
【0317】
実施例2B-実施例1に従って調製された触媒のアンモニア及び一酸化窒素酸化及びSCR活性並びに選択性の評価のための試験方法及び結果
実施例1の複合酸化触媒のSCR及びアンモニア酸化(AMOX)活性を評価するために、押出されたバナジウムSCR触媒を、実験台に装着したディーゼルエンジンの排気システム内に挿入し、エンジンが世界統一過渡サイクル(WHTC)で実行されたとき、アンモニアのNOに対する重量比(ANR)が1.0で送達するように、尿素噴射装置を制御し、その詳細については、https://dieselnet.com/standards/cycles/whtc.phpを参照されたい。十分に大きな量のNHが、上流の押出されたバナジウムSCR触媒から下流の複合酸化触媒に「スリップ」されて、ウォッシュコート被覆層ゾーン長さ及びウォッシュコート被覆層ウォッシュコート担持量のどのパラメータが、高選択性、すなわち、低NO生成で、NO及びNH変換の活性を区別するかを決定するために、1.0のANRを使用した。
【0318】
一般に、ANRが1.0であっても、押出されたバナジウムSCR触媒と、全試験試料の試料複合酸化触媒への出口との間で、NO変換の結果にほとんど違いはない。同様に、ANRが1.0では、試料複合酸化触媒の出口でNHは実際には検出されない。しかしながら、ANRが1.0では、検出された0.15g/kWhのNHは、上流の押出されたバナジウムSCR触媒からスリップされ、これは、Nの選択性の試料被覆層ウォッシュコート担持量とゾーン長さとを区別するのに十分であり、すなわち、より高いNO形成は、より低い反応選択性を示す。以下の表3のデータは、ANRが1.0で複合酸化触媒の吸入部で検出されたNHと比較して、示された試料を含む選択されたシステムのNO選択性、すなわち、消費されたNHのどの割合がNOに変換されるか、を示す。
【0319】
【表3】
【0320】
これらの初期の限定されたデータは、選択性が低下する、すなわち、SCR被覆層ウォッシュコート軸方向長さがより短いほど、NOがより高くなる傾向を示しているように見え、SCR被覆層ウォッシュコート担持量がより高いほど、NOがより低くなる結果を示唆している。
【0321】
すなわち、エンジン速度及びトルクを調節することによる、500kg/時間の触媒上の一定の質量流量のガスで、7つの定常状態(すなわち、過渡なしWHTC)の温度、すなわち、約200℃、225℃、250℃、275℃、300℃、350℃、及び400℃で、押出されたバナジウムSCR触媒を含む、WHTC試験に使用されたものと同じ実験台に装着したディーゼルエンジンを使用して、NO酸化を評価した。NO酸化活性は、より低い温度で熱力学的に制限され、より高い温度で反応速度論的に制限される受動的触媒反応である。温度に対するNO/NOのグラフプロットは、右側に偏心した特徴的な半ベル型曲線を生成する。ANRがゼロの場合、すなわち押出されたバナジウムSCR触媒の上流に尿素が噴射されない場合と、ANRが0.75の場合との両方で、300℃で複合酸化触媒から下流で検出されたNO/NOの結果を以下に報告する。300℃でのNO酸化は、試験されたシステムの典型的な重量ディーゼルエンジンWHTCにおいて、ほぼピークの触媒酸化活性及びモード吸入部排気ガス温度を表す。
【0322】
これらの2つの条件下でNO/NOを評価する理由は、完璧なシステムでは、本明細書の背景に示されている反応(1)~(3)によれば、ANRが0.75の場合、エンジンから排出される又は吸入部NOの75%が除去され、エンジン排出NOの25%のみが複合酸化触媒に流入すると予想されるためである。したがって、ANRが0.75でのNO酸化活性の評価は、ANRがゼロの結果と比較して、総NOの濃度が大幅に低下した状態でNOを酸化する触媒の活性の検査であり、これは、完全な(すなわち、約100%)エンジン排出濃度NOの酸化活性を検査する。結果を以下の表4に示す。
【0323】
【表4】
【0324】
表4に示される結果を参照すると、一般に、異なる配合物間のNO酸化に比較的小さな差がある。しかしながら、被覆層ウォッシュコートのより長いゾーン長さが、より短いゾーン長さよりも低いNO酸化を有するという一般的な傾向がある。ANRが0の場合よりもANRが0.75の試験のNO/NOx比であるが、ANRが0.75で複合酸化触媒を出るNOの絶対レベルは、ANRが0の場合よりもはるかに低くなり、例えば、ANRが0.75で、試料1.4は、25%の総エンジン排出NOの39.7%を変換するが、ANRがゼロの場合、試料1.4は、約100%の総エンジン排出NOの32.7%を変換する。また、被覆層ウォッシュコート担持量がより高くなると、NO/NOがわずかに減少する、例えば、同じゾーン長さで1.8g/in対2.4g/inとなる。
【0325】
一般に、対照は、ピーク活性で約7%高いNO/NOを生成する(図示せず)。
【0326】
実施例3-触媒のリン及び/又は亜鉛汚染を防止するためのSCR触媒被覆層の能力の評価-試料調製
使用時にリン及び/又は亜鉛汚染を低減又は防止するための「保護床」としてのSCR触媒被覆層の機能原理を示すために、被覆層を含む2つの実験試料を、図5に示す構造を有し、次のように作製された一般的な4ゾーン複合酸化触媒に基づいて調製した。長さ10.5インチ×直径4インチの寸法を有する円筒形のコーディエライトフロースルーハニカムモノリス基材を、シリカをドープしたアルミナ微粒子支持体に担持されたPt及びPdを2:1の重量比で、及び80gft-3のバリウムを含む基材上に吸入端(I)からの75%の軸方向コーティング長でコーティングされた第1の触媒ウォッシュコート層(6)、並びに、吐出端(O)から基材の軸方向長さの50%をコーティングした5重量%のシリカをドープしたアルミナ微粒子支持体(バリウムなし)上に担持されたPtのみを含む、第2のウォッシュコート層(7)でコーティングした。第1の触媒ウォッシュコートゾーンは、第1の触媒ウォッシュコート層(6)に、50gft-3の追加の合計PGM担持量で基材の軸長の25%にわたって、Pt及びPdの1:1重量比を達成するのに十分な白金及びパラジウム塩の溶液を含浸させることによって得た。複合酸化触媒は、全体として、15gft-3の総白金族金属担持量、1.45:1と同等の7.24:5のPt:Pd重量比を有していた。すなわち、この実施例3の第1の触媒ウォッシュコートゾーンは、>1:1のPt:Pd重量比を有していた。
【0327】
1.0gin-3のウォッシュコート担持量で基材(I)の吸入端から基材軸方向長さの合計30%で第1の触媒ウォッシュコートゾーン(1)上に被覆層でコーティングした5重量%のシリカをドープしたアルミナ(白金族金属を含まない)(第1(6)及び第2(7)の触媒ウォッシュコート層で使用したものと同じシリカをドープしたアルミナ)のウォッシュコートを有する、第1の実験(参照)試料(上記で承認された国際公開第2008/022160(A1)号を参照されたい)では、すなわち、第1の触媒ウォッシュコートゾーンの軸方向長さの25%は、シリカをドープしたアルミナ「保護床」のウォッシュコート被覆層で完全に被覆されており、すなわち、第1の触媒ウォッシュコートゾーンの軸方向長さの120%はウォッシュコート被覆層でコーティングされていた。使用した5重量%のシリカをドープしたアルミナの平均細孔径は、約15nmであった。
【0328】
ウォッシュコート被覆層が、銅イオン交換AEIアルミノケイ酸塩ゼオライトを含み、これは、NOに関連するNO排出基準を満たすために、窒素系還元剤NHを使用したNOの選択的触媒還元に有効であるが、第1の実験例のシリカをドープしたアルミナ被覆層はそうではないことを除いて、第2の実験試料(本発明による)を第1の実験試料と同じように調製した。使用したAEIアルミノケイ酸塩ゼオライトは、約20のシリカ-アルミナ比を有していた。Cuイオン交換AEIアルミノケイ酸塩ゼオライト中の銅担持量は、約3.8重量%であった。
【0329】
第1の参照実験試料の5重量%のシリカをドープしたアルミナ及び本発明による第2の実験試料のCu/AEIの両方は、>100m/gのフレッシュ比表面積を有した。被覆層ウォッシュコート中の5重量%のシリカをドープしたアルミナ及びCu/AEIを、それぞれ、D90が<20μm、D50(平均粒径)が<8μm(従来のレーザー回折技術で測定した場合のD90及びD50)になるように粉砕し、その出願人が考える組み合わせは、≧10nmの保護層中に平均粒子間細孔径を生成する。
【0330】
第1及び第2の実験試料に基づいているが、保護床/被覆層がない3ゾーン複合酸化触媒を、対照として使用した。
【0331】
全ての試料を、650℃の空気中で50時間オーブン中で経時処理を行った。
【0332】
実施例4-触媒のリン及び/又は亜鉛汚染を防止するためのCu/AEI SCR触媒被覆層の能力の評価-実験試料試験
実施例3で調製した2つの実験試料及び対照を、独自のキャニング構成で並行して同時にキャニングし、キャニングした基材を、実験台に装着した、ZDTP燃料添加剤を1750ppmの濃度まで混合したMK1燃料でかけているEuro 2排出基準認証の16リットル重量ディーゼルエンジンの排気システム内に挿入した。次いで、基材を、以下のサイクルを使用してエンジンにより経時処理し、これは、キャニングされた基材が全体として、サイクル毎に触媒基材1リットル当たり0.5gのZDTPまで曝露するように計算していた。
(i)定常状態である470℃の基材吸入部温度をもたらすエンジン負荷において30分間「浸漬」し、
(ii)定常状態である210℃の基材吸入部温度をもたらすエンジン負荷において15分間「浸漬」し、その後、250℃の吸入部温度で15分間、最後に325℃の吸入部温度で10分間行い、
(iii)工程(i)及び(ii)を6回繰り返した。
【0333】
次いで、上記実施例2Aに記載されている「連続発熱」方法を使用して、試料を脱キャニングし、各々を実験台に装着したディーゼルエンジンを使用して順次試験した。
【0334】
連続発熱試験の結果を以下の表5に示す。
【0335】
【表5】
【0336】
表5に示す結果から、被覆層でコーティングされた両試料は、239.3℃の発熱失敗温度を有する対照(参照)と比較して、リンによる経時変化前の発熱活性が低下していることが分かる。しかしながら、被覆層を含む両実験試料は、参照のリンによる経時変化後(285.9℃)よりも優れた性能を示した。すなわち、被覆層の適用により、発熱形態の噴射された炭化水素燃料を生成する下層の白金族金属層の能力を保護する機能を有した。しかしながら、本発明による第1の実験(参照)試料と第2の実験試料との複合酸化触媒間の差は、第2の実験例におけるCu/AEIアルミノケイ酸塩ゼオライト「保護床」が、加えて、リン及び亜鉛汚染からの保護に加えて、選択的触媒還元及びNH酸化機能を複合酸化触媒に提供することである。
【0337】
実施例5~9-導入
以下の実施例5~9は、試験された試料が被覆層の特徴を含まないため、本発明によるものではないが、それにもかかわらず、特許請求された発明の特定の好ましい特徴の利点、例えば、PGM含有吸入部ゾーン(複数可)内にアルカリ土類金属を含むことによる発熱生成の利点、及び吐出ゾーン(複数可)内に特定のMn成分を含むことによるNO酸化の利点を証明する。このため、以下の実施例内の試料は、「参照」実施例として定義される。
【0338】
実施例5(参照)-被覆層又は吸入部ゾーン内のアルカリ土類金属を含まない複合酸化触媒
1平方インチ当たり400個のセルを有し、壁厚1000分の6インチ(6ミル)、全長4インチのコーディエライトがむき出しのハニカムフロースルー基材モノリスを、触媒ウォッシュコートを用いて、以下のようなゾーン構成でコーティングした。白金及びパラジウムの水性塩(硝酸塩として)と、5重量%のシリカをドープしたアルミナ支持体とを含有する第1の触媒ウォッシュコートスラリーを、基材モノリス上に、吸入端と標示した一方の端部からの基材モノリス全長の75%の軸方向長さまでコーティングした。白金及びパラジウム塩の濃度は、第1の触媒ウォッシュコートコーティング中の白金のパラジウムに対する重量比を2:1として、6.67Pt:3.33Pd gft-3のコーティング中担持量を達成するように選択した。次いで、この吸入部コーティングを従来のオーブン内において100℃で1時間乾燥させて、過剰な水及び他の揮発性種を除去した。
【0339】
存在する唯一の白金族金属として水性硝酸白金塩と、5重量%のシリカをドープしたアルミナ支持体とを含有する第2の触媒ウォッシュコートスラリーを、第1のコーティングが適用された端部、すなわち吐出端部とは反対側の基材モノリスの端部から基材上にコーティングした。第2の触媒ウォッシュコートのコーティングの軸方向長さは、全基材長さの50%、すなわち、第1のウォッシュコート触媒コーティングと重なった第2のウォッシュコート触媒コーティングの25%であった。使用した白金塩の濃度を、コーティングされた50%軸方向基材長さにおいて、2gft-3のPt担持量を達成するように選択した。第1及び第2のウォッシュコートコーティングの両方でコーティングされた基材を、従来のオーブンで100℃にて1時間乾燥させ、次いで、乾燥させた部品を500℃で1時間焼成して、白金及びパラジウム塩を分解し、白金及びパラジウムをシリカをドープしたアルミナ支持体に固定した。
【0340】
次いで、硝酸白金と硝酸パラジウムの両方の塩を1:1重量比で含む水性媒体を、第1の触媒ウォッシュコートのコーティング上で、基材吸入端から測定された25%の基材の軸方向長さに含浸させた。塩の濃度を、基材の含浸された長さにおいて白金及びパラジウムのそれぞれについて25gft-3の重量を達成するように選択した。これにより、下層の第1の触媒ウォッシュコートコーティングのものを50gft-3上回る追加的担持量によって、吸入端のゾーン中での高PGM担持量をもたらした。含浸させた部品をオーブンで乾燥させ、上記のように焼成した。
【0341】
全てのウォッシュコート及び含浸溶液は本来酸性であり、pH調整を行わなかった。
【0342】
最終生成物は、軸方向に直列に配置された3つの触媒ウォッシュコートゾーン:吸入端から測定され、かつ下層の2Pt:1Pdの第1の触媒ウォッシュコート及び含浸された1:1のPt:Pdの組み合わせであった総白金族金属担持量を有する基材モノリスの軸方向長さの約25%として画定された第1の高担持量前面ゾーンと、続いて、軸方向に直列に、第1の触媒ウォッシュコートゾーンよりも低い総白金族金属担持量で、基材モノリスの軸方向長さの約50%の2Pt:1Pdの第1の触媒ウォッシュコートから構成される第2の触媒ウォッシュコートゾーンと、最後に、第1又は第2の触媒ウォッシュコートゾーンのいずれかよりも低い総白金族金属担持量で、基材モノリスの軸方向長さの約25%の第2の触媒ウォッシュコートコーティングから構成される吐出端における第3のPtのみのゾーンと、を含む基材モノリスを含んだ。全体としての基材モノリス上の総白金族金属担持量は、2.95:1と同等の11.8:4の総Pt:Pd重量比で20gft-3であった。
【0343】
EPMA-WDX(電子マイクロプローブ分析-波長分散型X線)画像分析を使用すると、白金及びパラジウムの両方の高濃度を含有する、この方法で調製された第1の触媒ウォッシュコートゾーンは、基材の表面に垂直な方向にPdの不均一な分布を有すること、すなわち、Pdの量は、基材の表面に向かって垂直方向に減少していることが見出された。換言すれば、基材の吸入端に入るガスと接触するウォッシュコート層の上面におけるPd濃度は、基材表面のウォッシュコート層よりも高かった。比較的程度は低いが、白金はまた、パラジウムと同じ傾向に従うことが見出された。しかしながら、第1の触媒ウォッシュコートゾーン中の基材の表面に垂直な方向におけるPdの不均一な分布が、最も顕著であった。この効果は、本明細書では、第1の触媒ウォッシュコートゾーン中のPdのいわゆる「クラスト」の形成と呼ばれる。
【0344】
実施例6(参照)-被覆層を含まないが、吸入部ゾーン内のアルカリ土類金属を含む複合酸化触媒
白金及びパラジウムの水性塩に加えて、第1の触媒ウォッシュコートスラリーが水性酢酸バリウム塩を含有することを除き、実施例5に開示したものと同一の生成物を調製した。第1の触媒ウォッシュコートコーティング中のバリウム担持量が、第1の触媒ウォッシュコートコーティングの75%軸長について80gft-3となるように、酢酸バリウムの濃度を選択した。すなわち、第1及び第2の触媒ウォッシュコートゾーンは、80gft-3の担持量でバリウムを含んでいた。総白金族金属担持量及び全体として基材モノリス上のPt:Pd重量比は、実施例1と同じ、すなわち20gft-3であった。
【0345】
EPMA-WDX画像分析を使用すると、このようにして調製された第1の触媒ウォッシュコートゾーンは、基材の表面に向かって垂直方向に減少するPdの量、及び程度は低いがPtと同じく、基材の表面に向かって垂直方向に減少するバリウムの比較的強い不均一な分布も有することが見出された。換言すれば、Pd及びBa(Ptに対して程度は低い)の両方は、基材の吸入端に入るガスと接触してウォッシュコート層の表面に「クラスト」を形成した。
【0346】
実施例7-実施例5及び6の比較のための発熱生成試験方法及び結果
実施例5及び6に従って調製された各複合酸化触媒の熱分析を、上記実施例2Aに記載の7リットル容量EUV6シリンダエンジン実験台に装着したディーゼルエンジンを使用して実施した。
【0347】
各触媒を、1000kg/時の排気ガス流量で490℃の吸入部排気ガス温度にて10分間調整した後、急速冷却工程を行った。次いで、排気ガス流量を720kg/時(試験した基材のサイズ及び体積では120,000時間-1の空間速度に対応)に設定し、設定した吸入部排気ガス温度が約270℃に安定して約1800秒間達成されるようにエンジン負荷を制御した。
【0348】
次いで、下流熱電対及び炭化水素センサによって、複合酸化触媒基材の吐出部において600℃と安定した炭化水素「スリップ」の両方を標的とする7番目の噴射装置を介して炭化水素燃料を噴射することによって、それぞれ安定した設定温度で発熱を生成させる複合酸化触媒の能力について試験した。複合酸化触媒の下流で測定された炭化水素スリップが1000ppm Cを超えた場合に試験を停止したが、すなわち、検出された炭化水素中の炭化水素鎖の長さを問わず(典型的なディーゼル燃料中の形式上炭素鎖長はC16である)、1000ppm C相当が検出された場合に試験を停止した。したがって、187.5ppm C16が検出された場合、1000ppm C(C16は5×C炭化水素と等価である)相当とした。
【0349】
約270℃に設定した吸入部温度での試験に続いて、システムを再び、吸入部排気ガス温度490℃で10分間、1000kg/時の流量でプレコンディショニングした後、急速冷却し、第2の設定温度、例えば約260℃での発熱試験を行った。このサイクルを繰り返して、約250℃、240℃及び230℃の設定温度での発熱生成を試験した。複合酸化触媒が複合酸化触媒吐出端で600℃の安定した発熱を生成できない、又は複合酸化触媒吐出部で測定された炭化水素スリップが1000ppm(C)を超えた、のいずれかの場合に試験を停止した。
【0350】
実施例5及び6で実施したこれらの試験の結果を以下の表3に示す。安定な発熱が許容可能な炭化水素スリップで達成され得る吸入部温度が低いほど、より有利であることが理解されるであろう。これは、フィルタ再生事象が、より低い吸入部排気ガス温度により、すなわち、通常運転では発生頻度が低い、通常運転条件下での排気ガス温度がフィルタ再生を開始するのに十分に高くなるまで待機する必要なしに開始することができるという点で、システムの設計柔軟性が増すためである。また、複合酸化触媒への吐出部で所望の排気ガス温度を達成するために、それほど多くの炭化水素を噴射する必要がないので、それは全体的な燃料経済性を改善する。
【0351】
【表6】
【0352】
表6は、複合酸化触媒(実施例5)は250℃以下の吸入部温度で安定した発熱を達成できず、実施例6による複合酸化触媒は230℃に至るまで安定した発熱を達成できることを示す。
【0353】
参考例8-吐出部触媒ウォッシュコートゾーンへの組成変化によるNO酸化触媒活性についての初期対経時変化後「Δ」の調査
実施例3に記載したものと同様であるが、被覆層がなく、図5に示す構造を有する一連の触媒を調製した。実施例3の触媒試料との唯一の他の違いは、複合酸化触媒が全体として30gft-3の総白金族金属担持量を有し、第2のウォッシュコート層(7)の配合を修正して吐出ゾーンのNO酸化活性を調べたことであり、その詳細は以下の表7に記載されている。この実施例8の第2のウォッシュコート層中の全ての試料中の総白金族金属担持量は12.5gft-3であり、試験した全ての試料中の第2のウォッシュコート層のウォッシュコート担持量は同等であり、試験された第2のウォッシュコート層はバリウムを含まなかった。複合酸化触媒中の総Pt:Pd重量比は全体として、実施例1の試料とは異なる。
【0354】
各新しい触媒を、実施例2Bに記載の実験台に装着したディーゼルエンジンの試験排気システム内に挿入した。まず、新しい触媒を、550℃の触媒床温度を生成するエンジン負荷及び速度で、30分間「調整」した。次に、得られた「調整済み」触媒を室温まで放冷させた。次いで、調整された初期触媒を、一定の1400rpmのエンジン速度及び空間速度を増加させる負荷勾配過渡試験サイクルにおいて試験し、複合酸化触媒のNO酸化活性を決定した。複合酸化触媒の下流の排気ガス中に検出されたNO/NOを、基材吸入部温度に対して記録した。次いで、試験した触媒を冷却し、脱キャニングし、600℃の空気/10%HO(蒸気)中で140時間、熱水的にオーブン中で経時処理し、車両耐用期間終了時の酸化活性をシミュレートした。その後、経時変化した触媒を実験台に装着したディーゼルエンジンの排気システム内に再装着し、再調整し、新しい触媒について記載したものと同じプロトコルを用いて再試験した。結果を以下の表7に示す。
【0355】
【表7】
†焼成された材料中の5.0重量%のMnOに相当する。
5重量%のシリカをドープしたアルミナに、所望の焼成されたマンガンの重量を達成するのに十分な濃度で硝酸マンガン溶液を含浸させた。
【0356】
参考例9-吐出部触媒ウォッシュコートゾーンへの組成変化によるNO酸化触媒活性についての初期対経時変化後「Δ」の更なる調査
実施例8に記載したものと同様であり、図5に示す構造を有する一連の触媒を調製した。実施例8の触媒試料との唯一の違いは、第1の触媒ウォッシュコート層(6)に、複合酸化触媒が全体として、20gft-3の総白金族金属担持量を有するように、追加の35gft-3量のPt及びPdを1:1の重量比で有する、基材の軸長の25%を含浸するのに十分な白金及びパラジウム塩の溶液を含浸させることによって、第1の触媒ウォッシュコートゾーンが得られたことであり、この実施例9の第2のウォッシュコート層中の全ての試料中の総白金族金属担持量は、7.5gft-3であった。複合酸化触媒における総Pt:Pd重量比は、1.9:1であった。
【0357】
触媒の経時処理が異なることを除いて、上記実施例8に記載したものと同じ方法で試験を実施した。この実施例9では、新しい「コンディショニングされた」触媒を、650℃の空気中で50時間オーブン中で経時処理した。結果を以下の表8に示す。
【0358】
【表8】
†5.7重量%MgO/94.3重量%Alに相当する。X線回折(XRD)によって決定されるとき、この材料は、主に単相の立方晶スピネルである。ある程度の過剰なAlが存在してもよい。
*11.0重量%MnOに相当。
*23.0重量%MnOに相当。
*35.0重量%MnOに相当。
【0359】
加えて、本実施例9の複合酸化触媒を、実施例2Aに記載の「連続発熱」試験に従うが、ZDTPによる経時処理は行わずに試験した。結果を以下の表9に示す。
【0360】
【表9】
【0361】
表8及び表9に示される結果から、予備形成されたマンガンをドープした理論空燃比に満たない混合マグネシウムアルミニウム金属酸化物を含む試料9.4、9.5及び9.6が、初期対経時処理後NO酸化活性を低下させ、発熱生成を改善させる驚くべきかつ有益な組み合わせを示すことが分かる。
【0362】
参考例10-第1の触媒ウォッシュコートゾーンPt:Pd重量比研究
現在のパラジウムの重量当たりコストは、白金のコストの2倍を超える。この参考例10では、出願人は、本発明による複合酸化触媒中のパラジウムの総量を削減するために一連の実験を行った。
【0363】
実施例9の試料9.1に記載したものと同様であり、図5に示す構造を有する一連の触媒を調製した。試料9.1触媒試料との唯一の違いは、第1の触媒ウォッシュコートゾーンの含侵溶液の組成は、追加の総PGM担持量が35gft-3で吸入基材端部から基材の軸方向長さの25%にわたって、以下の表10に記載のPt:Pd重量比の範囲を達成するのに十分に変化し、複合酸化触媒は全体として、15gft-3の総白金族金属担持量を有し、第2のウォッシュコート層中の唯一の白金族金属は、白金であった、すなわち、2.0gft-3のウォッシュコート担持量でPt:Pd重量比が1:0であった。
【0364】
表10は、実施例2Aに記載されるように経時処理して試験した触媒試料に関する「連続発熱」試験の結果を示す。
【0365】
【表10】
【0366】
表10に示される結果から、第1の触媒ウォッシュコートゾーン中の白金対パラジウムの重量比は、複合酸化触媒の発熱を生成し維持する能力に過度に影響を与えずに増加できることが分かる。しかしながら、第1の触媒ウォッシュコートゾーンを得るための含浸媒体がパラジウムを含有しない場合(実施例10.5)、発熱失敗がより高くなるため、この構成はより好ましくない。したがって、好ましくは、含浸媒体及び下層の含浸された触媒ウォッシュコート層の組み合わせたPt:Pd重量比は、白金を安定化させるために、例えば10:1≧1:1である程度のパラジウムを含有する。
【0367】
参考例11-第1の触媒ゾーンにおけるPt:Pd重量比が1:1である2ゾーン複合酸化触媒
1平方インチ当たり400個のセルを有し、壁厚1000分の6インチ(6ミル)、全長4インチのコーディエライトがむき出しのハニカムフロースルー基材モノリスを、触媒ウォッシュコートを用いて、以下のようなゾーン構成でコーティングした。第1に、白金及びパラジウムの硝酸塩水溶液を含有する(第5の発明態様による第1の触媒ウォッシュコートに対応する)触媒ウォッシュコートスラリーと、5重量%のシリカをドープしたアルミナ支持体とを、吐出端と標示した一方の端部からの総基材モノリス長さの70%の軸方向長さまで基材モノリス上にコーティングし、コーティングされた基材モノリスを、従来のオーブンで100℃で1時間乾燥させた。第2の触媒ウォッシュコートコーティング中の白金のパラジウムに対する重量比は、総白金族金属担持量が8gft-3で、5:1であった。第2の触媒ウォッシュコートコーティング中にバリウムは存在しなかった。
【0368】
次いで、白金及びパラジウムの硝酸塩水溶液を含有する(第5の発明態様による第2の触媒ウォッシュコートに対応する)異なる触媒ウォッシュコートスラリーと、酢酸バリウムと、5重量%のシリカをドープしたアルミナ支持体とを、吸入端からの総基材モノリス長さの30%の軸方向長さまで基材モノリス上にコーティングした。第1の触媒ウォッシュコートのコーティングの軸方向長さが、第1の触媒ウォッシュコートコーティングと第2の触媒ウォッシュコートコーティングとの間の実質的に任意の間隙を回避するように行われたように、コーティングプロセスを制御し、これにより、第2のウォッシュコートコーティングの第1のウォッシュコートコーティングの目標の最小2mm重複が達成された。第1の触媒ウォッシュコートコーティング中の白金のパラジウムに対する重量比は、第1の触媒ウォッシュコートコーティング中の総白金族金属担持量が50gft-3で、1:1であった。第1の触媒ウォッシュコートコーティング中のバリウム担持量は、80gft-3であった。第1及び第2のウォッシュコートコーティングでコーティングされた得られた生成物を、従来のオーブンで100℃で1時間乾燥させ、500℃で1時間か焼した。
【0369】
最終生成物は、軸方向に直列に配置された2つの触媒ウォッシュコートゾーン:第1の触媒ウォッシュコートコーティングの長さに対応し、かつ1Pt:1Pd及び80gft-3のバリウムで、総白金族金属担持量が50gft-3である基材モノリスの軸方向長さの約30%として画定された吸入端における第1の高担持量前面ゾーンと、続いて、軸方向に直列に、第2の触媒ウォッシュコートコーティング長さに対応し、かつ5Pt:1Pdで総白金族金属担持量が8gft-3である基材モノリスの軸方向長さの約70%の第2の触媒ウォッシュコートゾーンと、を含む基材モノリスを含んだ。全体としての基材モノリス上の総白金族金属担持量は、2.95:1と同等の11.8:4の総Pt:Pd重量比で20gft-3であった。
【0370】
EPMA-WDX画像分析を使用すると、このようにして調製された第1の触媒ウォッシュコートゾーンは、基材の表面に向かって垂直方向に減少するPdの量、及び程度は低いがPtと同じく、基材の表面に向かって垂直方向に減少するバリウムの比較的強い不均一な分布も有することが見出された。換言すれば、Pd及びBa(Ptに対して程度は低い)の両方は、基材の吸入端に入るガスと接触してウォッシュコート層の表面に「クラスト」を形成した。
【0371】
参考例12-第1の触媒ゾーンにおけるPt:Pd重量比が1:2である2ゾーン複合酸化触媒
第1の触媒ウォッシュコートコーティング中の白金のパラジウムに対する重量比が、第1の触媒ウォッシュコートコーティング中の総白金族金属担持量が50gft-3で、1:2であったことを除いて、参考例11に開示されているものと同一の生成物を調製した。EPMA-WDX画像分析を使用して、Pd、Ba、及びより少ない程度のPtの「クラスト」が観察された。
【0372】
実施例13-第1の触媒ゾーンにおけるPt:Pd重量比が1:3である2ゾーン複合酸化触媒
第1の触媒ウォッシュコートコーティング中の白金のパラジウムに対する重量比が、第1の触媒ウォッシュコートコーティング中の総白金族金属担持量が50gft-3で、1:3であったことを除いて、参考例11に開示されているものと同一の生成物を調製した。EPMA-WDX画像分析を使用して、Pd、Ba、及びより少ない程度のPtの「クラスト」が観察された。
【0373】
参考例14-参考例11~13の触媒の発熱生成比較のための試験方法及び結果
参考例11~13に従って調製された各参照複合酸化触媒の熱分析を、上記実施例7に記載されているように実施した。
【0374】
これらの試験の結果を以下の表11に示す。安定な発熱が許容可能な炭化水素スリップで達成され得る吸入部温度が低いほど、より有利であることが理解されるであろう。これは、フィルタ再生事象が、より低い吸入部排気ガス温度により、すなわち、通常運転では発生頻度が低い、通常運転条件下での排気ガス温度がフィルタ再生を開始するのに十分に高くなるまで待機する必要なしに開始することができるという点で、システムの設計柔軟性が増すためである。また、複合酸化触媒への吐出部で所望の排気ガス温度を達成するために、それほど多くの炭化水素を噴射する必要がないので、それは全体的な燃料経済性を改善する。
【0375】
【表11】
【0376】
表11は、参考例12及び13の複合酸化触媒が、参考例11の複合酸化触媒と比較して、272℃及び265℃の吸入部温度でより低い安定した発熱を達成し、参考例12による複合酸化触媒が、255℃に至るまで安定した発熱を更に達成することを示す。
【0377】
参考例15
第1の触媒ウォッシュコートコーティング中のバリウム担持量が40gft-3であったことを除いて、実施例11で使用したものと同じむき出しの基材モノリスを使用して、同一の複合酸化触媒を作製した。EPMA-WDX画像分析を使用して、Pd、Ba、及びより少ない程度のPtの「クラスト」が観察された。
【0378】
参考例16
第1の触媒ウォッシュコートコーティング中のバリウム担持量が120gft-3であったことを除いて、参考例11に開示されているものと同一の生成物を調製した。EPMA-WDX画像分析を使用して、Pd、Ba、及びより少ない程度のPtの「クラスト」が観察された。
【0379】
参考例17-バリウム担持量研究のための試験方法及び結果
それぞれ、参考例15、12、及び16の酸化触媒を、上記参考例7で説明したのと同じ方法で試験した。この参考例17における試験は、表11に報告される参考例12で行われた試験とは異なる日に実施された。参考例12についての結果におけるいくつかの違いが、この参考例17の試験結果について見られたが、これらは、予想される許容誤差の範囲内であり、この参考例17で観察及び報告された傾向は、参照複合酸化触媒及び比較触媒で実施された全ての試験で見られたものと同じであった。結果を以下の表12に示す。
【0380】
【表12】
【0381】
「失敗」の値は、≧1000ppm C HCのスリップである。参考例15又は参考例16の正規化された値が>1である場合、結果は参考例12よりも良好であることが理解されるであろう。すなわち、触媒は、その吸入部温度で参考例12よりも少ないC HCをスリップする。しかしながら、参考例15又は16について<1である正規化された結果について、参考例12は、その吸入部温度点での参考例15又は16の触媒よりも良好である。
【0382】
表12に示す結果から、試験された触媒から下流で検出されたスリップされた炭化水素の量によって示されるように、炭化水素を酸化するための触媒の活性は、バリウム担持量とともに変化することが分かる。更に、バリウム担持量を増加させると、全ての温度で炭化水素スリップの減少がもたらされなかった。これは、軽量ディーゼルエンジンからの排気ガスの処理に使用するために例示されたアルカリ土類金属担持量とは対照的に(出願人の国際公開第2014/080200号を参照されたい)、これらの結果は、バリウムの総PGMに対する質量比が1.6又はバリウムのPtに対する質量担持量比が3.3に相当する、HC酸化のためのアルカリ土類金属の濃度を約80gft-3超に増やすことには利点がないことを示すことを示す。この点に関して、出願人の国際公開第2014/080200号から、NO酸化も、触媒組成物中のアルカリ土類金属の量の増加の存在によって影響を受ける可能性があることに留意されたい。出願人の記録から、国際公開第2014/080200号における実施例5-1は、150gft-3のバリウム担持量を有した。更に、所望の機能を達成するために必要な量以上のアルカリ土類金属の添加は、余剰原料を含めることによって触媒の全体的なコストを増加させる。
【0383】
第2に、当業者は、最も広い利用可能な排気ガス温度操作ウィンドウで発熱の発生を可能にするため、最低吸入部温度でのHC酸化活性が重要であることが理解されよう。すなわち、エンジン管理が、吸入部排気ガス温度が≧260℃であるときに、下流フィルタを再生するためのHC酸化によってのみ、発熱をトリガすることができる場合、これは、トリガ温度が≧250℃である状況よりも望ましくない。この点に関して、当業者は、参考例12の結果が、結局、この参考例17における参考例12、15、及び16の最良の結果であり、なぜなら、参考例16のより高いバリウム担持触媒が、より高い温度で、参考例12よりもHC酸化に対して活性である(スリップされたHCがより少ないことによって証明される)にもかかわらず、参考例12が最低温度点(250℃)で半失敗HC酸化/HCスリップを達成するという結果は、参考例12が、試験された3つの触媒のその意図された目的/機能にとって技術的に最良の酸化触媒であることを示していることを理解するであろう。
【0384】
いずれの誤解も回避するために、本明細書に引用される全ての文書及び全ての文書の内容全体が、参照により本出願に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
【手続補正書】
【提出日】2021-07-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
とりわけ、窒素酸化物(NO)を含む排気ガスを処理するための車両用、好ましくは重量ディーゼル車両用の圧縮点火機関のための排気システムであって、この排気システムは、複合のゾーンコーティングされたデュアルユースアンモニア及び一酸化窒素酸化触媒と、窒素系還元剤又は窒素系還元剤前駆体源に接続された窒素系還元剤又はその前駆体用の第1の噴射装置であって、この第1の噴射装置は、前記複合酸化触媒、及び窒素系還元剤又はその前駆体用の前記第1の噴射装置と前記複合酸化触媒との間に配置されている選択的触媒還元触媒を含む第1の基材から上流を流れる排気ガス中に、前記窒素系還元剤又は窒素系還元剤前駆体を噴射するように配置されている、第1の噴射装置と、を備え、前記複合酸化触媒は、
基材であって、全長L及び長手方向軸を有し、第1の基材端部と第2の基材端部との間に軸方向に延在する基材表面を有する、任意選択的にハニカムフロースルー基材モノリスである、基材と、
耐熱性金属酸化物支持材料と上面に担持された白金及びパラジウムの両方を含む2つ以上の白金族金属成分とを含む第1の触媒ウォッシュコート層と、前記第1の触媒ウォッシュコート層とは異なり、耐熱性金属酸化物支持材料と上面に担持された1つ以上の白金族金属成分とを含む第2の触媒ウォッシュコート層と、から構成される2つ以上の触媒ウォッシュコートゾーンであって、この2つ以上の触媒ウォッシュコートゾーンは、前記基材表面上及びそれに沿って軸方向に直列に配置され、長さL(L<L)を有する第1の触媒ウォッシュコートゾーンは、前記第1の基材端部によって一方の端部において、及び長さL(L<L)を有する第2の触媒ウォッシュコートゾーンの第1の端部によって第2の端部において画定され、前記第1の触媒ウォッシュコートゾーンは、第1の耐熱性金属酸化物支持材料と上面に担持された白金及びパラジウムの両方を含む2つ以上の白金族金属成分とを含み、前記第2の触媒ウォッシュコートゾーンは、第2の耐熱性金属酸化物支持材料と上面に担持された1つ以上の白金族金属成分とを含み、前記第1の触媒ウォッシュコートゾーン中の前記総白金族金属担持量は、前記第2の触媒ウォッシュコートゾーン中の総白金族金属担持量よりも大きい、2つ以上の触媒ウォッシュコートゾーンと、前記第1の基材端部から前記下層の第1の触媒ウォッシュコート層の前記軸方向長さの最大150%まで軸方向に延在するウォッシュコート被覆層であって、このウォッシュコート被覆層は、>48.8g/L(>0.8g/in)の粒子状金属酸化物担持量を含む、前記粒子状金属酸化物は、銅、鉄、及びマンガンのうちの少なくとも1つを含むアルミノケイ酸塩ゼオライトであり、基材体積1リットル当たりの白金族金属のグラム数(g/L)で定義される、前記第1の触媒ウォッシュコートゾーン中の総白金族金属担持量は、前記第2の触媒ウォッシュコートゾーン中の前記総白金族金属担持量とは異なり、前記複合酸化触媒の前記第1の基材端部は上流側に向けられている、ウォッシュコート被覆層と、を含む、排気システム。
【請求項2】
前記複合酸化触媒において、前記第2の触媒ウォッシュコートゾーンは、前記第2の基材端部によってその第2の端部において画定され、前記第1の触媒ウォッシュコートゾーンは、前記第1の触媒ウォッシュコート層を含み、前記第2の触媒ウォッシュコートゾーンは、前記第2の触媒ウォッシュコート層を含む、請求項1に記載の排気システム。
【請求項3】
前記複合酸化触媒は、前記第1の触媒ウォッシュコート層と前記第2の触媒ウォッシュコート層との2層重複領域から形成された1つのゾーンを含む、3つ以上の触媒ウォッシュコートゾーンを含み、前記第2の触媒ウォッシュコート層を含む第3の触媒ウォッシュコートゾーンは、前記第2の基材端部によってその第2の端部において画定され、基材体積1リットル当たりの白金族金属のグラム数(g/L)で定義される、前記第3の触媒ウォッシュコートゾーン中の総白金族金属担持量は、前記第2の触媒ウォッシュコートゾーン中の前記総白金族金属担持量よりも小さい、請求項1又は2に記載の排気システム。
【請求項4】
前記複合酸化触媒において、前記第1の触媒ウォッシュコートゾーン中の前記1つ以上の白金族金属成分は、白金及びパラジウムの両方からなる、請求項1~3のいずれか一項に記載の排気システム。
【請求項5】
前記複合酸化触媒において、白金のパラジウムに対する重量比は、≧1である、請求項4に記載の排気システム。
【請求項6】
前記複合酸化触媒において、白金のパラジウムに対する重量比は、<1である、請求項4に記載の排気システム。
【請求項7】
前記複合酸化触媒において、前記ウォッシュコート被覆層は、前記第1の基材端部から前記下層の第1の触媒ウォッシュコート層の前記軸方向長さの最大120%まで軸方向に延在する、請求項1~6のいずれか一項に記載の排気システム。
【請求項8】
前記複合酸化触媒において、前記ウォッシュコート被覆層中の前記アルミノケイ酸塩ゼオライトは銅を含み、前記アルミノケイ酸塩ゼオライトはまたセリウムを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の排気システム。
【請求項9】
前記複合酸化触媒において、前記ウォッシュコート被覆層の前記ウォッシュコート担持量は、48.8~213.6g/L(0.8~3.5g in-3)である、請求項1~8のいずれか一項に記載の排気システム。
【請求項10】
前記複合酸化触媒において、前記ウォッシュコート被覆層は、前記第1の基材端部から前記下層の第1の触媒ウォッシュコート層の前記軸方向長さの>50%まで軸方向に延在する、請求項1~9のいずれか一項に記載の排気システム。
【請求項11】
前記複合酸化触媒において、前記ウォッシュコート被覆層中の前記アルミノケイ酸塩ゼオライトは、フォージャサイト、クリノプチロライト、モルデナイト、シリカライト、フェリエライト、X型ゼオライト、Y型ゼオライト、超安定Y型ゼオライト、AEIゼオライト、ZSM-5ゼオライト、ZSM-12ゼオライト、ZSM-20ゼオライト、ZSM-34ゼオライト、CHAゼオライト、SSZ-13ゼオライト、オフレタイト、又はベータ型ゼオライトである、請求項1~10のいずれか一項に記載の排気システム。
【請求項12】
前記複合酸化触媒において、前記ウォッシュコート被覆層中の前記アルミノケイ酸塩ゼオライトは、≧10nmの平均細孔径を有し、及び/又は前記ウォッシュコート被覆層は、≧10nmの平均粒子間細孔径を有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の排気システム。
【請求項13】
前記複合酸化触媒において、LはLの50%未満である、請求項1~12のいずれか一項に記載の排気システム。
【請求項14】
前記複合酸化触媒から下流に配置された選択的触媒還元触媒を含む第2の基材と、窒素系還元剤又は窒素系還元剤前駆体源に接続された窒素系還元剤又はその前駆体用の第2の噴射装置と、を備え、この第2の噴射装置は、前記複合酸化触媒から下流かつ選択的触媒還元触媒を含む前記第2の基材から上流を流れる排気ガス中に、前記窒素系還元剤又は窒素還元剤前駆体を噴射するように配置されている、請求項1~13のいずれか一項に記載の排気システム。
【請求項15】
アンモニアのNOに対する重量比が0.4~0.8、任意選択的に0.4~0.6又は0.7~0.8で、選択的触媒還元触媒を含む前記第1の基材へのアンモニア窒素系還元剤の送達を制御する事前プログラムされたコンピュータプロセッサ(複数可)を備える、エンジン及び窒素系還元剤又は窒素系還元剤前駆体電子制御ユニット(複数可)を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の排気システム。
【国際調査報告】