(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-24
(54)【発明の名称】LED光硬化用のクマリングリオキシレート
(51)【国際特許分類】
C08F 2/50 20060101AFI20230117BHJP
C07D 311/92 20060101ALI20230117BHJP
C07D 311/08 20060101ALI20230117BHJP
【FI】
C08F2/50
C07D311/92 101
C07D311/92 CSP
C07D311/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022521230
(86)(22)【出願日】2020-10-12
(85)【翻訳文提出日】2022-06-07
(86)【国際出願番号】 IB2020059547
(87)【国際公開番号】W WO2021070152
(87)【国際公開日】2021-04-15
(31)【優先権主張番号】102019000018575
(32)【優先日】2019-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516358093
【氏名又は名称】アイジーエム レシンス イタリア ソチエタ レスポンサビリタ リミタータ
(74)【代理人】
【識別番号】100083389
【氏名又は名称】竹ノ内 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100198317
【氏名又は名称】横堀 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】マリカ モローネ
(72)【発明者】
【氏名】ガブリエーレ ピエトロ ノルチーニ
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン ポストル
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンチェンツォ ラッツァーノ
【テーマコード(参考)】
4J011
【Fターム(参考)】
4J011QA03
4J011QA06
4J011QA07
4J011QA08
4J011QA09
4J011QA12
4J011QA13
4J011QA18
4J011QA19
4J011QA20
4J011QA23
4J011QA24
4J011QA34
4J011QA39
4J011QA45
4J011QB20
4J011QB24
4J011QB25
4J011RA03
4J011RA09
4J011RA10
4J011SA02
4J011SA04
4J011SA06
4J011SA12
4J011SA14
4J011SA15
4J011SA16
4J011SA20
4J011SA22
4J011SA23
4J011SA24
4J011SA25
4J011SA26
4J011SA27
4J011SA28
4J011SA29
4J011SA42
4J011SA61
4J011SA62
4J011SA63
4J011SA64
4J011SA78
4J011SA84
4J011TA03
4J011TA08
4J011TA09
4J011TA10
4J011UA01
4J011VA01
4J011WA01
4J011WA02
4J011WA05
(57)【要約】
本発明は、新規のクマリングリオキシレート、その製法、及び光重合組成物における光開始剤としてのその使用に係る。本発明は、前記クマリングリオキシレートを含んでなる組成物の光重合法にも係る。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1のエチレン系不飽和化合物50~99.9質量%、好ましくは、70~98.9質量%(可及的な水及び溶媒を除く組成物の総含量に基づく);
(b)少なくとも1の式(I)の化合物0.1~35質量%、好ましくは、0.1~20質量%、さらに好ましくは、0.2~15質量%(可及的な水及び溶媒を除く組成物の総含量に基づく)
を含んでなる光硬化性組成物。
式(I)
【化1】
(I)
[ここで、
R
1は、置換又は未置換のC1-C20アルキル基、又は置換又は未置換のC1-C50アルキル基(1以上の酸素によって中断され、ヒドロキシ基にて終止してもよい)であり;
Couは、式
【化2】
(A)
(ここで、
R
2、R
3、R
4、及びR
5は、相互に独立して、水素、置換又は未置換のC1-C20アルキル、-N(C1-C6アルキル)
2、ピペリジノ、モルホリノ、ピペラジノ、-O-R
7又は-S-R
7(ここで、R
7は、水素、置換又は未置換のC1-C20アルキル、C2-C12アルケニル、置換又は未置換のアリール、ヘテロアリール又はC5-C6シクロアルキルである)であり;
R
6は水素、ヒドロキシ基、又はC1-C4アルキル基である)
のクマリン基であるか;又は
Couは、式
【化3】
(B)、
【化4】
(C)、
【化5】
(D)
(式中、アスタリスクは、式(I)のケト基に結合される炭素原子を示す)
の置換又は未置換のナフト-クマリン基である。]
【請求項2】
式(I)において、R
1が置換又は未置換のC1-C20アルキル基である請求項1に記載の光硬化性組成物。
【請求項3】
式(I)において、Couが式(A)(式中、R
2、R
3、R
4、及びR
5の少なくとも1は水素とは異なる)のクマリン基である請求項1又は2に記載の光硬化性組成物。
【請求項4】
式(I)において、Couが(A)であり及びR
6が水素であるか、又はCouが(C)である請求項1~3のいずれかに記載の光硬化性組成物。
【請求項5】
式(I)において、Couが式(A)(式中、R
6が水素であり、R
2、R
3、R
4及びR
5の少なくとも2が-O-R
7基であり、及びR
7及びR
1がC1-C20 アルキル基である)のクマリン基である請求項1~4のいずれかに記載の光硬化性組成物。
【請求項6】
さらに、
c)1以上の光増感剤0.01~15質量%(可及的な水及び溶媒を除く組成物の総含量に基づく);及び/又は
d)促進剤/共-開始剤0.2~15質量%(可及的な水及び溶媒を除く組成物の総含量に基づく);及び/又は
e)1以上の更なる光開始剤0.5~15質量%(可及的な水及び溶媒を除く組成物の総含量に基づく);及び/又は
f)添加剤
を含んでなる請求項1~5のいずれかに記載の光硬化性組成物。
【請求項7】
式(Ia)の化合物。
式(Ia)
【化6】
(Ia)
[ここで、
R
1は、置換又は未置換のC1-C20アルキル基、又は置換又は未置換のC1-C50アルキル基(1以上の酸素によって中断され、ヒドロキシ基にて終止してもよい)であり;
Couは、式
【化7】
(A)
(ここで、
R
2、R
3、R
4、及びR
5は、相互に独立して、水素、置換又は未置換のC1-C20アルキル、-N(C1-C6アルキル)
2、ピペリジノ、モルホリノ、ピペラジノ、-O-R
7又は-S-R
7(ここで、R
7は、水素、置換又は未置換のC1-C20アルキル、C2-C12アルケニル、置換又は未置換のアリール、ヘテロアリール、又はC5-C6シクロアルキルである)であり;
R
6は、水素、ヒドロキシ基、又はC1-C4アルキル基である)
のクマリン基であり;又は
Couは、式
【化8】
(B)、
【化9】
(C)、
【化10】
(D)
(式中、星印は、式(Ia)のケト基に結合される炭素原子を示す)
の置換又は未置換のナフト-クマリン基であり;
ただし、
R
1がメチルである場合、R
2、R
3、R
4、R
5、及びR
6の少なくとも1は水素とは異なり;
R
1がメチル又はエチルである場合、R
4はメチルとは異なり;
R
1がメチルである場合、R
6はヒドロキシではなく;
R
1がメチル又はエチルである場合、R
2はメトキシではなく;及び
R
1がメチル又はエチルである場合、R
2及びR
4は、共に、三級-ブチルではない。]
【請求項8】
式(Ia)において、R
1が置換又は未置換のC1-C20アルキル基である請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
式(Ia)において、Couが式(A)(式中、R
3が置換又は未置換のC1-C20アルキル、-O-R
7又は-S-R
7(ここで、C1-C20アルキル)である)のクマリン基である請求項7又は8に記載の化合物。
【請求項10】
式(Ia)において、Couが式(A)であり及びR
6が水素であるか、又はCouが式(C)である請求項7~9のいずれかに記載の化合物。
【請求項11】
式(Ia)において、Couが式(A)(式中、R
6が水素であり、R
2、R
3、R
4、及びR
5の少なくとも2が-O-R
7基であり、及びR
7及びR
1がC1-C20アルキル基である)のクマリン基である請求項7~10のいずれかに記載の化合物。
【請求項12】
下記の反応を含んでなる式(I)又は(Ia)の化合物の製法。
【化11】
[ここで、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、及びR
6は上記のとおりであり;
触媒は、好ましくは、酢酸、ギ酸、ポリリン酸、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、硫酸、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硝酸、過塩素酸、フッ化水素酸、亜硝酸、及びその混合物から選ばれる酸であるか、或いは、触媒は、無水トリフルオロメタンスルホン酸、無水トリフルオロ酢酸、及び五酸化リンから選ばれ、ただし、触媒はFeCl
3ではなく;
溶媒は、有機溶媒であり、好ましくは、芳香族溶媒、さらに好ましくは、ベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、キシレン混合物、クロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、1,3-ジクロロベンゼン、1,4-ジクロロベンゼン、及びその混合物から選ばれ;
或いは、反応は溶媒無しでも行われる。]
【請求項13】
光重合性組成物及びインクを光硬化する方法にあって、
(i)請求項1において定義した化合物(a)及び(b);又は、請求項1において定義した化合物(a)及び(b)、及び請求項6で定義した成分(c)、(d)、(e)、及び(f)から選ばれる1以上の成分、好ましくは、(d)を含んでなる光重合性組成物を提供すること;
(ii)工程(i)の組成物を光源にて光重合すること
を含んでなる光重合法。
【請求項14】
光源が、UVA、UVB、及びUVC領域の少なくとも1におけるUV光を含んでなる請求項13に記載の方法。
【請求項15】
光源が、350~420 nmの領域において発光するLED光源であることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項16】
さらに、光重合性組成物を、光重合する前に、基材に塗布する工程を含んでなる請求項13~15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
請求項13~16のいずれかに記載の方法に従って、又は請求項1~6のいずれかに記載の組成物又は請求項7~11のいずれかに記載の化合物を含んでなる混合物の三次元プリンティングによって得られた工業製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規のクマリングリオキシレート、その製法、及び光重合組成物における光開始剤としてのその使用に係る。本発明は、前記クマリングリオキシレートを含んでなる組成物の光重合法にも係る。
【背景技術】
【0002】
光重合性系は、適切な波長の光照射への曝露によってラジカルを発生する、又は別の化学種によって、光重合を開始できるラジカルを発生させる官能基を有する光開始剤を含有する。
【0003】
この分野において使用される光照射源の中でも、発光ダイオード(LED)は、従来の中圧水銀アーク硬化ランプと比べて、作動温度が低い、寿命が極めて長いとの利点により、過去数年間にわたり、重要な開発の対象であった。そのように、LEDユニットが、本質的に小サイズであること、その構造安定性、及び例えば、市販の印刷システムに容易に応用される可能性のため、LEDランプは有利である。
【0004】
インク及びコーティングを光硬化するためにLEDランプを使用する場合、この光源の波長に適合する特別な光開始剤系を使用することが必要である。水銀アークランプは、多色発光スペクトルを有するが、LEDランプは、350~420 nmの範囲に、シングル発光バンドを有するのみである
【0005】
このように、LEDランプを使用するためには、350~420 nmの領域において吸収する光開始剤が求められる。さらに、LEDの適用には、通常、高濃度の光活性物質が必要であるため、光開始剤は、光重合性系との高度の適合性を有していなければならない。チオキサントン、例えば、イソプロピルチオキサントン(ITX)及びその誘導体、及びアシルホスフィンオキシドは、この分野において一般的に使用される光開始剤の例である。
【0006】
残念ながら、チオキサントン誘導体は、曝露される際、黄変を生じ易く、一方、アシルホスフィンオキシドは酸素感受性であり、これらの欠点は、多くのLEDの用途を制限する。
【0007】
過去数年間では、これらの課題を克服できる新規の光開始剤を開発するために、各種の試みがなされており、そのいくつかの例は、3-ケトクマリン(US 9951034、WO 2017/216699)、アシルゲルマニウム光開始剤(EP 3150641、EP 2649981)、フェニルテルル化ベンゾイル光開始剤(Macromolecules, 2014, 47(16), 5526-5531)、アシルホスフィンオキシド(EP 2877500)、多環式グリオキシレート(WO 2018/041935)である。
【0008】
特に、グリオキシレートは、最近、その容易な合成ルート及び低黄変特性のため、注目されている。残念ながら、新規のグリオキシレート化合物は、LED波長の下では、反応性に乏しいことが示されている。
【0009】
クマリングリオキシレート誘導体の調製は、2012年に初めて仮定された(Tetrahedron 68 (2012) 8817-8822)。しかし、この文献は、所望の化合物の全てが調製されることを示しておらず、また、ここに開示された化合物の使用/活性に関する実験テストが提供されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来技術の欠点、例えば、黄変及び酸素感受性を克服する、及び更なる興味ある特性、例えば、LED波長に対しても反応性を有すること等を示す新規の光開始剤のついての要求が常に存在している。
【課題を解決するための手段】
【0011】
驚くべきことには、発明者らは、ある種のクマリングリオキシレートは、UVA、UVB、及びUVC波長域で良好に反応するとともに、350~420 nmの波長域で発光するLED源とも又はより好適に反応するとの知見を得た(LED源とも反応することは、従来技術と比べて技術的進歩である)。
【0012】
従って、本発明は、光開始剤として有用な特殊なクマリングリオキシレート、前記光開始剤を含んでなる組成物、その製法、及び前記クマリングリオキシレートを含んでなる組成物の光重合法に係る。
【発明を実施するための形態】
【0013】
その態様の1によれば、本発明は、
a)少なくとも1のエチレン系不飽和化合物50~99.9質量%、好ましくは、70~98.9質量%(可及的な水及び溶媒を除く組成物の総含量に基づく);及び
b)少なくとも1の式(I)の化合物0.1~35質量%、好ましくは、0.1~20質量%、さらに好ましくは、0.2~15質量%(可及的な水及び溶媒を除く組成物の総含量に基づく)
を含んでなる光硬化性組成物に係る。
式(I)
【化1】
(I)
[ここで、
R
1は、置換又は未置換のC1-C20アルキル基、又は置換又は未置換のC1-C50アルキル基(1以上の酸素によって中断され、ヒドロキシ基にて終止してもよい)であり;
Couは、式
【化2】
(A)
(ここで、
R
2、R
3、R
4、及びR
5は、相互に独立して、水素、置換又は未置換のC1-C20アルキル、-N(C1-C6アルキル)
2、ピペリジノ、モルホリノ、ピペラジノ、-O-R
7又は-S-R
7(ここで、R
7は、水素、置換又は未置換のC1-C20アルキル、C2-C12アルケニル、置換又は未置換のアリール、ヘテロアリール又はC5-C6シクロアルキルである)であり;
R
6は、水素、ヒドロキシ基、又はC1-C4アルキル基である)のクマリン基であり;又は
Couは、式
【化3】
(B)、
【化4】
(C)、
【化5】
(D)
(式中、星印は、式(I)のケト基に結合される炭素原子を示す)
の置換又は未置換のナフト-クマリン基である。]
【0014】
表現「可及的な水及び溶媒を除く」は、組成物の化合物及び追加の成分の質量%の量が、水及び/又は溶媒が組成物中に存在できるとの事実とはかかわりなく、前記化合物及び前記追加の成分の総含量に基づくことを意味する。
【0015】
他の態様によれば、本発明は、式(Ia)の化合物に係る。
式(Ia)
【化6】
(Ia)
[ここで、
R
1は、置換又は未置換のC1-C20アルキル基、又は置換又は未置換のC1-C50アルキル基(1以上の酸素によって中断され、ヒドロキシ基にて終止してもよい)であり;
Couは、式
【化7】
(A)
(ここで、
R
2、R
3、R
4、及びR
5は、相互に独立して、水素、置換又は未置換のC1-C20アルキル、-N(C1-C6アルキル)
2、ピペリジノ、モルホリノ、ピペラジノ、-O-R
7又は-S-R
7(ここで、R
7は、水素、置換又は未置換のC1-C20アルキル、C2-C12アルケニル、置換又は未置換のアリール、ヘテロアリール、又はC5-C6シクロアルキルである)であり;
R
6は、水素、ヒドロキシ基、又はC1-C4アルキル基であり、
ただし、下記の要件(i)~(v)の全てを満足する:
(i)R
1がメチルである場合、R
2、R
3、R
4、R
5、及びR
6の少なくとも1は、水素とは異なる;
(ii)R
1がメチル又はエチルである場合、R
4はメチルとは異なる;
(iii)R
1がメチルである場合、R
6はヒドロキシではない;
(iv)R
1がメチル又はエチルである場合、R
2はメトキシではない;及び
(v)R
1がメチル又はエチルである場合、R
2及びR
4は、共に、三級-ブチルではない)
のクマリン基であり;又は
Couは、式
【化8】
(B)、
【化9】
(C)、
【化10】
(D)
(式中、星印は、式(Ia)のケト基に結合される炭素原子を示す)
の置換又は未置換のナフト-クマリン基である。]
【0016】
1具体例によれば、式(Ia)において、R1がメチルである場合、R3はメトキシではない。
【0017】
具体例によれば、C2-C12アルケニルはC3-C12アルケニルである。
【0018】
他の態様によれば、本発明は、下記スキームに従って、上記のように定義される式(I)又は(Ia)の化合物を製造する方法に係る。
スキーム
【化11】
[ここで、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、及びR
6は上記のとおりであり;
触媒は、好ましくは、酢酸、ギ酸、ポリリン酸、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、硫酸、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硝酸、過塩素酸、フッ化水素酸、亜硝酸、及びその混合物から選ばれる酸であるか、或いは、触媒は、無水トリフルオロメタンスルホン酸、無水トリフルオロ酢酸、及び五酸化リンから選ばれ;
溶媒は、有機溶媒であり、好ましくは、芳香族溶媒、さらに好ましくは、ベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、キシレン混合物、クロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、1,3-ジクロロベンゼン、1,4-ジクロロベンゼン、及びその混合物から選ばれる。]
【0019】
或いは、反応は溶媒無しで行われる。
【0020】
具体例によれば、上記方法において、触媒はFeCl3ではない。
【0021】
本発明によれば、用語「光硬化」及び「光重合」及び関連する用語は同義語である。
【0022】
他の態様によれば、本発明は、
(i)上記のように定義される化合物(a)及び(b)を含んでなる組成物を提供する工程;及び
(ii)工程(i)の組成物を光源にて光重合する工程
を含んでなる光重合法に係る。
【0023】
本明細書では、用語「アルキル」又は「アルキル基」は、別に表示しない場合、所定の炭素数を有する、直鎖状又は分枝状の飽和アルキル鎖を意味し、アルキル基における各炭素数についての全ての可能性、例えば、炭素原子3個について(n-プロピル及びイソプロピル);炭素原子4個について(n-ブチル、イソブチル、及び三級-ブチル);炭素原子5個について(n-ペンチル、1,1-ジメチル-プロピル、2,2-ジメチル-プロピル、及び2-メチル-ブチル)等を含む。
【0024】
「アルケニル」又は「アルケニルル基」は、炭素原子3~12個を含有する不飽和基、例えば、アリル、メタリル、又はウンデセニルを意味する。
【0025】
用語「シクロアルキル」又は「シクロアルキル基」は、別に表示しない場合、炭素原子5又は6個を含有する脂肪族環、例えば、シクロペンチル又はシクロヘキシルを意味する。
【0026】
用語「アリール」又は「アリール基」は、例えば、置換又は未置換のフェニル基、置換又は未置換のナフチル基、アントラセニル基、インデニル基、フルオレニル基を含むが、これらに限定されない。
【0027】
用語「ヘテロアリール」又は「ヘテロアリール基」は、例えば、フラン、チオフェン、ピロール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ピラゾール、ピラン、ピリジン、ピロリジン、ピペリジン、インドール、キノリン、イソキノリン、キサンテン、カルバゾール、アクリジン、インデリン、ジュロリジン等を含むが、これらに限定されない。
【0028】
表現「1以上の酸素によって中断されたC1-C50アルキル」は、1より大の酸素原子が存在する場合、前記酸素原子は、少なくとも1のメチレン基によって、相互に分離され、すなわち、酸素原子が非連続であることを意味する。例としては、-O-CH2-OCH3、-O-CH2CH2-OCH2CH3、-O-[CH2CH2O]vCH3、-O-[CH2CH2O]vOH、-O-[CH2CH2O]vCH2CH3、CH2-O-[CH2CH2O]vCH3(v=1-24)、-O-[CH2CH2CH2O]pOH、-O-[CH2CH2CH2O]pCH3、-O-[CH2CH2CH2O]pCH2CH3、-CH2O-[CH2CH2CH2O]pCH3(p=1-16)が含まれる。
【0029】
用語「置換された」基とは、前記基が1以上の置換基を有していることを意味し、前記置換基は、好ましくは、ハロゲン原子、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルチオ又はアリールチオ基、複素環基から選ばれ、好ましくは、メチル、エチル、イソプロピル、三級-ブチル、フェニル、トリフルオロメチル、シアノ、アセチル、エトキシカルボニル、カルボキシル、カルボキシレート、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、エチルアミノ、ジエチルアミノ、イソプロピルアミノ、ジイソプロピルアミノ、シクロヘキシルアミノ、ジシクロヘキシルアミノ、アセチルアミノ、ピペリジノ、ピロリジル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、フェノキシ、ヒドロキシル、アセトキシ、-PO3H、メチルチオ、エチルチオ、i-プロピルチオ、n-プロピルチオ、フェニルチオ、メルカプト、アセチルチオ、チオシアノ、メチルスルフィニル、メチルスルホニル、ジメチルスルホニル、スルホネート基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリメチルスタニル、フリル、チエニル、ピリジル、及びモルホリノから選ばれる。前記置換基の中でも、アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、三級-ブトキシ、又はフェノキシ基)、メチル、エチル、エチル、イソプロピル、ヒドロキシル、アセトキシ、ベンゾイルオキシ基等、又はチオアルキル基(例えば、メチルチオ、エチルチオ、n-プロピルチオ、i-プロピルチオ、ブチルチオ、ペンチルチオ)又はアリールチオ(例えば、フェニルチオ)のような電子供与基が好ましい。
【0030】
好適な具体例によれば、上記のように定義される式(I)又は(Ia)において、下記の条件の少なくとも1が好ましい:
R1は、置換又は未置換のC1-C20アルキル基、さらに好ましくは、C1-C12アルキル基である;
Couは、式(A)(式中、R2、R3、R4、及びR5の少なくとも1は水素とは異なる)のクマリン基であり、さらに好ましくは、式(A)(式中、R2、R3、R4、及びR5の少なくとも1は、-O-R7又は-S-R7であり、及びR7はC1-C20アルキルである)のクマリン基であり、最も好ましくは、式(A)(式中、R3が-O-R7又は-S-R7であり、及びR7はC1-C20アルキルである)のクマリン基である;
R6は、好ましくは、水素である。
【0031】
好適な具体例によれば、上記条件の2、3、又は全てを同時に満足する。
【0032】
好適な具体例によれば、Couは(C)である。
【0033】
他の好適な具体例では、式(I)又は(Ia)の化合物において、Couは、式(A)(式中、R6は水素であり、R2、R3、R4、及びR5の少なくとも2は-O-R7基であり、及びR7及びR1はC1-C20アルキル基である)のクマリン基である。
【0034】
好適な具体例によれば、式(I)又は(Ia)の化合物において、R3がメトキシ基であり、R1がメチル基である場合、R2、R4、R5、及びR6 の少なくとも1は水素ではない。
【0035】
式(Ia)の化合物に関する好適な全ての具体例において、上記の条件(i)~(v)が満足されなければならない
【0036】
式(I)又は(Ia)によって表される化合物は、例えば、Tetrahedron 68 (2012) 8817-8822に報告されているように、当業者には公知の一般的方法に従って調製される。
【0037】
或いは、化合物は、ここに開示する方法に従って調製され、該方法では、驚くべきことには、従来技術の方法に従っては調製されない化合物も提供できる(実施例1のクマリンのエチルヘキシル置換基の位置参照)。
【0038】
本発明によれば、式(I)又は(Ia)の光開始剤は、エチレン系不飽和化合物(a)を含んでなる光硬化性組成物を調製するために使用される。
【0039】
前記不飽和化合物(a)は、1以上のオレフィン系二重結合を含有することができる。これらは、低分子量(モノマー系)又は高分子量(オリゴマー系)である。
【0040】
二重結合1個を有する好適な低分子量モノマーの例は、アルキル又はヒドロキシアルキルアクリレート又はメタクリレート、例えば、メチル-、エチル-、ブチル-、2-エチルヘキシル-、2-ヒドロキシエチル-、イソボロニル-アクリレート、及びメチル又はエチルメタクリレートである。更なる例は、ケイ素又はフッ素で修飾された樹脂、例えば、シリコーンアクリレートである。これらのモノマーの更なる例は、アクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-置換(メタ)アクリルアミド、スチレン、アルキルスチレン、及びハロゲノスチレン、ビニルエステル(例えば、酢酸ビニル)、ビニルエーテル(イソ-ブチルビニルエーテル)、N-ビニルピロリドン、塩化ビニル、又は塩化ビニリデンである。
【0041】
1個より大の二重結合を有するモノマーの例は、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルジアクリレート、ヘキサメチレングリコールジアクリレート、ビスフェニレンAジアクリレート、4'-ビス-(2-アクリロイルオキシエトキシ)-ジフェニルプロパン、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート又はテトラアクリレート、ビニルアクリレート、ジビニルベンゼン、ジビニルスクシネート、ジアリルフタレート、トリアリルホスフェート、トリアリルイソシアヌレート、又はトリス-(2-アクリロイルエチル)イソシアヌレートである。
【0042】
高分子量(オリゴマー系)多不飽和化合物の例は、アクリル化エポキシ樹脂、アクリル化又はビニル-エーテル-又はエポキシ基-含有ポリエステル、アクリル化ポリウレタン、又はアクリル化ポリエーテルである。不飽和オリゴマーの更なる例は、通常、マレイン酸、フタル酸、及び1以上のジオールから調製され、約500~3,000 Daの分子量を有する不飽和ポリエステル樹脂である。このような不飽和オリゴマーは、プレポリマーとも称される。
【0043】
本発明の実施に特に好適な化合物(a)の例は、エチレン系不飽和カルボン酸及びポリオール又はポリエポキシドのエステル、及び鎖又は側鎖にエチレン系不飽和基を含有するポリマー、例えば、不飽和ポリエステル、ポリアミド、及びポリウレタン、及びそのコポリマー、アルキル樹脂、ポリブタジエン及びブタジエンコポリマー、ポリイソプレン及びイソプレンコポリマー、側鎖に(メタ)アクリル基を有するポリマー及びコポリマー、及びそれらの混合物である。
【0044】
上記エステルの調製に有用な不飽和カルボン酸又は無水物の例示的な例は、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、クロトン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、及び不飽和脂肪酸、例えば、リノレン酸及びオレイン酸である。アクリル酸及びメタクリル酸が好ましい。
【0045】
エステル化されるポリオールの例は、芳香族及び脂肪族及び脂環式ポリオール、好ましくは、脂肪族及び脂環式ポリオールである。
【0046】
芳香族ポリオールは、例えば、ノボラック及びレゾールとともに、ヒドロキノン、4,4'-ジヒドロキシジフェニル、2,2-ジ(4-ヒドロキシフェニル)プロパンである。エステル化されるポリエポキシドとしては、前記ポリオール、特に、芳香族ポリオールに基づくもの及びエピクロロヒドリンが含まれる。ポリマー鎖又は側鎖にヒドロキシル基を含有するポリマー及びコポリマー、例えば、ポリビニルアルコール及びそのコポリマー、又はポリメタクリル酸ヒドロキシアルキルエステル又はそのコポリマーも、ポリオールとして好適である。更なる好適なポリオールは、ヒドロキシル末端基を有するオリゴエステルである。
【0047】
脂肪族及び脂環式ポリオールの例としては、好ましくは、炭素原子2~12個を含有するアルキレンジオール、例えば、エチレングリコール、1,2-又は1,3-プロパンジオール、1,2-、1,3-、又は1,4-ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ドデカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、好ましくは、200~1,500 Daの分子量を有するポリエチレングリコール、1,3-シクロペンタンジオール、1,2-、1,3-、又は1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-ジヒドロキシメチルシクロヘキサン、グリセロール、トリス(β-ヒドロキシ-エチル)アミン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、及びソルビトールが含まれる。
【0048】
更なる好適なエチレン系不飽和化合物(a)は、不飽和カルボン酸及び、好ましくは、2~6個、好ましくは、2~4個のアミノ基を有する芳香族、脂肪族、及び脂環式不飽和ポリアミンから得られる不飽和ポリアミドである。このようなポリアミンの例は、エチレンジアミン、1,2-又は1,3-プロピレンジアミン、1,2-、1,3-、又は1,4-ブチレンジアミン、1,5-ペンチレンジアミン、1,6-ヘキシレンジアミン、オクチレンジアミン、ドデシレンジアミン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、フェニレンジアミン、ビスフェニレンジアミン、ジ-(β-アミノエチル)エーテル、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、及びジ(β-アミノエトキシ)-及びジ(β-アミノプロポキシ)-エタンである。他の好適なポリアミンは、側鎖に追加のアミノ基を含有できるポリマー及びコポリマー及びアミノ末端基を含有するオリゴアミンである。
【0049】
このような不飽和ポリアミドの具体的な例は、メチレンビスアクリルアミド、1,6-ヘキサメチレンビスアクリルアミド、ジエチレントリアミントリスメタクリルアミド、ビス(メタクリルアミドプロパン)エタン、及びN-[(β-ヒドロキシエトキシ)エチル]-アクリルアミドである。
【0050】
本発明の実施には、不飽和ポリウレタン、例えば、飽和又は不飽和ジイソシアヌレート及び不飽和又は飽和ジオールから誘導されるものも好適である。ポリブタジエン及びポリイソプレン及びそのコポリマーも使用される。好適なコモノマーとしては、例えば、オレフィン、例えば、エチレン、プロペン、ブテン、及びヘキセン、(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、スチレン、及び塩化ビニルが含まれる。
【0051】
側鎖に不飽和(メタ)アクリレート基を有するポリマーは、成分(a)として使用される。これらは、一般的には、ノボラック系のエポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応生成物;ビニルアルコール又は(メタ)アクリル酸にてエステル化されたヒドロキシアルキル誘導体のホモポリマー又はコポリマー;及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートにてエステル化された(メタ)アクリレートのホモポリマー及びコポリマーである。
【0052】
本発明の光硬化性組成物は、上記の成分(a)及び(b)に加えて、次の成分:(c)光増感剤及び/又は(d)促進剤/共-開始剤及び/又は(e)更なる光開始剤及び/又は(f)添加剤の1以上を含むこともできる。
【0053】
本発明の光硬化性組成物は、さらに、水及び/又は溶媒、例えば、有機溶媒を含んでなる組成物としても処方される。
【0054】
光増感剤(c)は、総含量(可及的な水及び溶媒を除く)の0.01~15質量%、好ましくは、0.01~10質量%の量で存在する。
【0055】
光増感剤の例は、当分野において一般的に使用されているもの、芳香族カルボニル化合物、例えば、ベンゾフェノン、チオキサントン、アントラキノン、及び3-アシルクマリン誘導体、テルフェニル、スチリルケトン、及び3-(アロイルメチレン)-チアゾリン、カンファーキノン、及びエオシン、ローダミン、及びエリスロシン染料である。
【0056】
チオキサントンの例は、チオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-ドデシルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、1-メトキシカルボニルチオキサントン、2-エトキシカルボニルチオキサントン、3-(2-メトキシエトキシカルボニル)チオキサントン、4-ブトキシカルボニルチオキサントン、3-ブトキシカルボニル-7-メチルチオキサントン、1-シアノ-3-クロロチオキサントン、1-エトキシカルボニル-3-クロロチオキサントン、1-エトキシカルボニル-3-エトキシチオキサントン、1-エトキシカルボニル-3アミノチオキサントン、1-エトキシカルボニル-3-フェニルスルフリルチオキサントン、3,4-ジ[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシカルボニル]チオキサントン、1-エトキシカルボニル-3-(1-メチル-1-モルホリノエチル)チオキサントン、2-メチル-6-ジメトキシメチルチオキサントン、2-メチル-6-(1,1-ジメトキシベンジル)チオキサントン、2-モルホリノメチルチオキサントン、2-メチル-6-モルホリノメチルチオキサントン、N-アリルチオキサントン-3,4-ジカルボキシイミド、N-オクチルチオキサントン-3,4-ジカルボキシイミド、N-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-チオキサントン-3,4-ジカルボキシイミド、1-フェノキシチオキサントン、6-エトキシカルボニル-1-2-メトキシチオキサントン、6-エトキシカルボニル-2-メチルチオキサントン、チオキサントン-2-ポリエチレングリコールエステル、2-ヒドロキシ-3-(3,4-ジメチル-9-オキソ-9H-チオキサントン-2-イルオキシ)-N,N,N-トリメチル-1-プロパンアミニウムクロリド、又はPCT/EP2011/069514に記載のもの、例えば、n-ドデシル-7-メチル-チオキサントン-3-カルボキシレート、及びN,N-ジイソブチル-7-メチル-チオキサントン-3-カルバミドである。ポリマー性チオキサントン誘導体(例えば、Omnipol(登録商標)TX(IGM Resins B.V.)、Genopol(登録商標)TX-1(Rahn A.G.)、Speedcure(登録商標)7010(Lambson Limited))も好適である。
【0057】
ベンゾフェノンの例は、ベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、4-メトキシベンゾフェノン、4,4'-ジメトキシベンゾフェノン、4,4'-ジメチルベンゾフェノン、4,4'-ジクロロベンゾフェノン、4,4'-ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4'-ジエチルアミノベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-(4-メチルチオフェニル)ベンゾフェノン、3,3'-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、メチル2-ベンゾイルベンゾアート、4-(2-ヒドロキシエチルチオ)ベンゾフェノン、4-(4-トリルチオ)ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-N,N,N-トリメチルベンゼンメタナミニウムクロリド、2-ヒドロキシ-3-(4-ベンゾイルフェノキシ)-N,N,N-トリメチル-1-プロパナミニウムクロリド・一水和物、4-(13-アクリロイル-1,4,7,10,13-ペンタオキサトリデシル)ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-N,N-ジメチル-N-[2-(1-オキソ-2-プロペニル)オキシエチル-ベンゼンメタナミニウムクロリドである。ポリマー性ベンゾフェノン誘導体(Omnipol(登録商標)BP、Omnipol 2702及びOmnipol 682(いずれもIGM Resins B.V.)、Genopol(登録商標)BP-2(Rahn A.G.)、及びSpeedcure(登録商標)7005(Lambson Limited))も好適である。
【0058】
3-アシルクマリン誘導体の例は、3-ベンゾイルクマリン、3-ベンゾイル-7-メトキシクマリン、3-ベンゾイル-5,7-ジ(プロポキシ)クマリン、3-ベンゾイル-6,8-ジクロロクマリン、3-ベンゾイル-6-クロロクマリン、3,3'-カルボニル-ビス[5,7-ジ(プロポキシ)クマリン]、3,3'-カルボニル-ビス(7-メトキシクマリン)、3,3'-カルボニル-ビス(7-ジエチルアミノクマリン)、3-イソブチロイルクマリン、3-ベンゾイル-5,7-ジメトキシクマリン、3-ベンゾイル-5,7-ジエトキシクマリン、3-ベンゾイル-5,7-ジブトキシクマリン、3-ベンゾイル-5,7-ジ(メトキシエトキシ)クマリン、3-ベンゾイル-5,7-ジ(アリルオキシ)クマリン、3-ベンゾイル-7-ジメチルアミノクマリン、3-ベンゾイル-7-ジエチルアミノクマリン、3-イソブチロイル-1,7-ジメチルアミノクマリン、5,7-ジメトキシ-3-(1-ナフトイル)クマリン、5,7-ジメトキシ-3-(1-ナフトイル)クマリン、3-ベンゾイルベンゾ[f]クマリン、7-ジエチルアミノ-3-チエノイルクマリン、3-(4-シアノベンゾイル)-5,7-ジメトキシクマリン、又はEP 2909243及びWO 2017/216699に記載されたものである。
【0059】
3-(アロイルメチレン)チアゾリジンの例は、3-メチル-1,2-ベンゾイルメチレン-β-ナフトチアゾリン、3-メチル-2-ベンゾイルメチレン-ベンゾチアゾリン、3-エチル-2-プロピオニルメチレン-β-ナフトチアゾリンである。
【0060】
他の芳香族カルボニル化合物の例は、アセトフェノン、3-メトキシアセトフェノン、4-フェニルアセトフェノン、ベンジル(例えば、WO 2013/164394に記載のもの)、2-アセチルナフタレン、2-ナフトアルデヒド、9,10-アントラキノン、9-フルオレノン、ジベンゾスベロン、キサントン、2,5-ビス(4-ジエチルアミノベンジリデン)シクロペンタノン、α-(p-ジメチルアミノベンジリデン);ケトン、例えば、2-(4-ジメチルアミノ-ベンジリデン)-インダン-1-オン、又は3-(4-ジメチルアミノフェニル)-1-インダン-5-イル-プロぺノン、3-フェニルチオフタルイミド、N-メチル-3,5-ジ(エチルチオ)フタルイミドである。
【0061】
チオキサントン及び3-アシルクマリンが特に好ましい。
【0062】
上記成分(c)は、組成物の棚寿命を短くすることなく、光開始剤(b)の活性を増大させる。さらに、前記組成物は、光増感剤(c)を適切に選択することにより、光開始剤(b)のスペクトル感度を所望の波長領域にシフトさせることができるとの特別な利点を有する。当業者であれば、光開始剤(b)を所望の波長領域で作動させるように、好適な光増感剤(c)を選択することができる。
【0063】
促進剤/共-開始剤(d)は、組成物の総含量(可及的な水及び溶媒を除く)の0.2~15質量%、好ましくは、0.2~8質量%の量で存在できる。
【0064】
好適な促進剤/共開始剤の例は、アルコール、チオール、チオエーテル、アミン、又はヘテロ原子に隣接する炭素に結合する有効水素を有するエーテル、ジスルフィド、及びホスフィン(例えば、EP 438123及びGB 2180358に記載)である。
【0065】
アミン促進剤/共-開始剤の好適な例としては、脂肪族、脂環式、芳香族、アリール-脂肪族、複素環、オリゴマー性又はポリマー性のアミンが含まれるが、これらに限定されない。これらは、一級、二級、又は三級アミン、例えば、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルジメチルアミン、ジ-シクロヘキシルアミン、N-フェニルグリシン、トリエチルアミン、フェニル-ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ピリジン、キノリン、ジメチルアミノ安息香酸のエステル、ミヒラーケトン(4,4'-ビス-ジメチルアミノベンゾフェノン)及び対応する誘導体である。
【0066】
アミン促進剤/共-開始剤として、アミン修飾アクリレートが使用される。このようなアミン修飾アクリレートの例としては、一級又は二級アミンとの反応によって修飾されたアクリレート(US 3,844,916、EP 280222、US 5,482,649、又はUS 734,002に記載)が含まれる。
【0067】
共-開始剤として、多官能性アミン及びポリマー性アミン誘導体も使用される。いくつかの例は、Omnipol(登録商標)ASA(IGM Resins B.V.)、Genopol(登録商標)AB-2(Rahn A.G.)、Speedcure(登録商標)7040(Lambson Limited)、又はUS 2013/0012611に記載のものである。
【0068】
さらに、光開始剤(e)は、組成物の総含量(可及的な水及び溶媒を除く)0.5~15質量%、好ましくは、1~10質量%の量で存在できる。
【0069】
他の好適な光開始剤(e)の例は、カンファーキノン、ベンゾフェノン、ベンゾフェノン誘導体、アセトフェノン、アセトフェノン誘導体、ジアルコキシアセトフェノン、α-ヒドロキシケトン、α-アミノケトン、4-アロイル-1,3-ジオキソラン、ベンゾインアルキルエーテル、及びベンジルケタール、例えば、ベンジルジメチルケタール、ケトスルホン、例えば、1-[4-[(4-ベンゾイル-フェニル)-チオ]-フェニル]-2-メチル-2-[(4-メチル-フェニル)-スルホニル]-プロパン-1-オン(Esacure(登録商標)1001(IGM Resins B.V.)、3-ケトクマリン、例えば、EP 2909243及びWO 2017/216699に記載のもの、フェニルグリオキシレート及びその誘導体、二量体のフェニルグリオキシレート、ペルエステル、例えば、ベンゾフェノンテトラカルボン酸ペルエステル、例えば、EP 126541に記載のもの、アシルホスフィン光開始剤(モノ-アシルホスフィンオキシド、ビス-アシルホスフィンオキシド、トリス-アシルホスフィンオキシド、及び多官能性モノ-又はビス-アシルホスフィンオキシドの中から選ばれる)、ハロメチルトリアジン、ヘキサアリールビスイミダゾール/共-開始剤系、例えば、o-クロロヘキサフェニルビスイミダゾールと、2-メルカプトベンゾチアゾールとの組み合わせ;フェロセニウム化合物又はチタノセン、例えば、ジシクロペンタジエニル-ビス(2,6-ジフルオロ-3-ピロロ-フェニル)チタン;O-アシルオキシムエステル光開始剤である。
【0070】
α-ヒドロキシケトン及びα-アミノケトンの例は、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン)、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-フェノキシ]-フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルホリノプロパン-1-オン)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン、及び(2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン)である。
【0071】
O-アシルオキシムエステル光開始剤の例は、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-2-(O-ベンゾイルオキシム)、エタノン1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル] 1-(O-アセチルオキシム)、又はGB 2339571に記載のものである。
【0072】
アシルホスフィン光開始剤の例としては、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-(2,4-ジペンチルオキシフェニル)、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシド、及びエチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート、フェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィン酸、グリセロールエトキシ化trimester(Omnipol(登録商標)TP(IGM Resins B.V.))が含まれるが、これらに限定されない。
【0073】
ハロメチルトリアジン系光開始剤の例は、2-[2-(4-メトキシ-フェニル)-ビニル]-4,6-ビス-トリクロロメチル[1,3,5]トリアジン、2-(4-メトキシ-フェニル)-4,6-ビス-トリクロロメチル[1,3,5]トリアジン、2-(3,4-ジメトキシフェニル)-4,6-ビス-トリクロロメチル[1,3,5]トリアジン、2-メチル-4,6-ビス-トリクロロメチル[1,3,5]トリアジンである。
【0074】
本発明による光硬化性組成物が、ハイブリッド系(これに関連して、ハイブリッド系とは、フリーラジカル硬化性系及びカチオン硬化性系の混合を意味する)で使用される場合には、更なる光開始剤(e)として、カチオン性光開始剤も使用される。好適なカチオン性光開始剤の例は、例えば、US 4950,581に記載されたように、芳香族のスルホニウム塩、ホスホニウム塩、又はヨードニム塩、又は例えば、GB 2348644、US 4,450,598、US 4,136,055、WO 00/10972、及びWO 00/26219に記載されたように、シクロペンタジエニルアレン-鉄(II)錯塩、例えば、(η6-イソプロピルベンゼン)(η5-シクロペンタジエニル)鉄(II)ヘキサフルオロホスフェート又はオキシム系光潜在性酸である。
【0075】
添加剤(f)は、例えば、熱開始剤、結合剤、安定剤、及びその混合物である。
【0076】
本発明による硬化法は、特に、顔料配合組成物の場合、追加の添加剤(f)として、熱開始剤(加熱される際、フリーラジカルを生成する化合物である)、例えば、アゾ化合物、例えば、2,2'-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、トリアゼン、ジアソズルフィド、ペンタアザジエン、又はペルオキシ化合物、例えば、ヒドロペルオキシド又はペルオキシカーボネート、例えば、三級-ブチルヒドロペルオキシド(例えば、EP 245639に記載)を添加することによって促進される。
【0077】
本発明の光硬化性組成物には、結合剤も添加される。結合剤の添加は、特に、光硬化性化合物が液体又は粘稠な物質である場合に有利である。結合剤の量は、例えば、組成物の総含量(可及的な水及び溶媒を除く)の5~60質量%、好ましくは、10~50質量%である。結合剤は、使用分野及び要求される特性、例えば、水性及び有機溶媒システムにおける現像性、基材への接着性、及び酸素に対する感受性に応じて選択される。
【0078】
好適な結合剤は、例えば、重量平均分子量(Mw)約5,000~2,000,000 Da、好ましくは、10,000~1,000,000 Daを有するポリマーである。例示的な例は、アクリレート及びメタクリレートのホモポリマー及びコポリマー、例えば、メチルメタクリレート/エチルアクリレート/メタクリル酸のコポリマー、ポリ(メタクリル酸アルキルエステル)、ポリ(アクリル酸アルキルエステル);セルロースエステル及びエーテル、例えば、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース;ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、環化ゴム、ポリエーテル、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリテトラヒドロフラン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリウレタン、塩化ポリオレフィン、例えば、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル/塩化ビニリデンコポリマー、塩化ビニリデンとアクリロニトリル、メチルメタクリレート及び酢酸ビニルとのコポリマー、ポリ酢酸ビニル、コ-ポリ(エチレン/酢酸ビニル)、ポリマー、例えば、ポリカプロラクタム及びポリ(ヘキサメチレンアジパミド)、ポリエステル、例えば、ポリ(エチレングリコールテレフタレート)及びポリ(ヘキサメチレングリコールスクシネート)である。
【0079】
好適な安定剤は、例えば、熱阻害剤、例えば、ヒドロキノン、ヒドロキノン誘導体、p-メトキシフェノール、β-ナフトール、又は立体障害フェノール、例えば、2,6-ジ(三級-ブチル)-p-クレゾールであり、早期重合を阻止する。暗所貯蔵安定性を増大させるために、例えば、銅化合物、例えば、ナフテン酸銅、ステアリン酸銅、又はオクテン酸銅、リン化合物、例えば、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル、又は亜リン酸トリベンジル、四級アンモニウム化合物、例えば、塩化テトラメチルアンモニウム又は塩化トリメチルベンジルアンモニウム、又はヒドロキシルアミン誘導体、例えば、N,N-ジエチルヒドロキシルアミンを使用できる。重合の間に、雰囲気中の酸素を除去する目的で、パラフィン又は同様のワックス様物質(ポリマーに不溶)を使用でき、当該物質は、重合の開始時に表面に移動し、空気の侵入を阻止する透明な表面層を形成する。
【0080】
光安定剤、例えば、UV吸収剤、例えば、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール、ヒドロキシフェニルベンゾフェノン、シュウ酸アミド、又はヒドロキシフェニル-s-トリアジンタイプを使用できる。このような化合物は、立体障害アミン(HALS)を使用して又は使用することなく、単独で又は混合物の形で使用される。
【0081】
本発明による光硬化性組成物は、更なる添加剤(f)として、光還元性染料、例えば、キサンテン、ベンゾキサンテン、ベンゾチオキサンテン、チアジン、ピロニン、ポルフィリン、又はアクリジン染料、及び/又は放射線開裂可能なトリハロメチル化合物も含むことができる。これらの化合物は、例えば、EP 445624に記載されている。
【0082】
さらに通例の添加剤(f)は、目的の用途に応じて、光学的増白剤、フィラー、顔料(白色及び有色顔料の両方)、着色料、帯電防止剤、湿潤剤、又は流動性向上剤である。当分野において通例の添加剤、例えば、帯電防止剤、流動性向上剤、及び接着性増強剤も使用できる。
【0083】
本発明による組成物には、当分野において通例の連鎖移動剤も添加される。例は、メルカプタン、アミン、及びベンゾチアゾールである。
【0084】
本発明の組成物は、着色料及び/又は有色顔料を含んでいてもよい。目的の用途に応じて、無機顔料及び有機顔料の両方を使用できる。このような添加剤は、当業者には公知である。いくつかの例は、カーボンブラック、酸化鉄、例えば、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄、クロムイエロー、クロムグリーン、ニッケルチタンイエロー、群青、コバルトブルー、バナジウム酸ビスマス、カドミウムイエロー、及びカドミウムレッドである。有機顔料の例は、モノ-又はビス-アゾ顔料、及びその金属錯体、フタロシアニン顔料、多環式顔料、例えば、ペリレン、アントラキノン、チオインジゴ、キナクリドン、又はトリフェニルメタン顔料、及びジケト-ピロロ-ピロール、イソインドリノン、例えば、テトラクロロイソインドリノン、イソインドリノン、ジオキサジン、ベンズイミダゾロン、及びキノフタロン顔料である。処方において、顔料は、単独で又は混合物として使用される。
【0085】
目的の用途に応じて、顔料は、当分野における通例の量で、例えば、総質量(可及的な水及び溶媒を除く)基準で0.1~30質量%、又は10~25質量%の量で処方に添加される。
【0086】
組成物は、例えば、広範囲の種類の有機着色料を含んでいてもよい。例は、アゾ染料、メチン染料、アントラキノン染料、及び金属錯体染料である。通常の濃度は、組成物の総質量基準で、例えば、0.1~20質量%、特に、1~5質量%である。
【0087】
添加剤の選択は、使用分野及びその分野について望まれる特性によって決定される。上記の添加剤(f)は当分野において公知であり、従って、当分野における通例の量で使用される。
【0088】
本発明の光硬化性組成物は、水を含むことができる。
【0089】
本発明の光硬化性組成物は、各種の目的、例えば、印刷用インク、例えば、スクリーン印刷インク、フレキソ印刷インク、オフセット印刷インク、及びインクジェット印刷インクとして、クリアコートとして、例えば、木材又は金属用の着色コートとして、粉末コーティングとして、特に、紙、木材、金属、又はプラスチック用のコーティング材料として、構造体及び道路マーキング用、複写写真法用、ホログラム記録材料用、画像記録法又は有機溶媒を使用する又は水性アルカリ媒体を使用する版面の再生において、スクリーン印刷用マスクの製造用の日光-硬化性塗料として、歯科用充填材料として、接着剤として、感圧性接着剤として、ラミネート樹脂として、フォトレジスト、例えば、ガルバノレジストとして、エッチレジスト又は永久レジスト(液体及び乾燥フィルムの両方))として、光構造化性絶縁体として、及び電子回路用ソルダーマスクとして、各種のタイプのディスプレイスクリーン用のカラーフィルターの製造おける又はプラズマディスプレイ及びエレクトロルミネセントディスプレイの製造中の構造物の形成における、又は光学スイッチ、光学格子(干渉格子)の製造における、バルク硬化(透明鋳型でのUV硬化)による又はステレオリソグラフィー法(例えば、US 4,575,330に記載されている)による三次元物品の製造における、複合材料(例えば、ガラス繊維及び/又は他の繊維及び他の補助剤を含むことができるスチレンポリエステル)の製造又は当業者には周知の三次元印刷法における、電子部品のコーティング又は封止におけるレジストとして、又は光ファイバー用のコーティング剤として使用することができる。
【0090】
本発明の光硬化性組成物は、光学レンズ、例えば、コンタクトレンズ又はフレネルレンズの製造に、医療用装置、補助具又はインプラント、ドライフィルムペイントの製造においても適している。
【0091】
本発明の光硬化性組成物は、サーモトロピック特性を有するゲルの調製にも適している。このようなゲルは、例えば、DE 19700064及びEP 678534に記載されている。
【0092】
本発明の式(I)又は(Ia)又は光硬化性組成物を含んでなる各種の製品は、本発明の他の主題である。
【0093】
本発明による化合物及び組成物は、放射線硬化性粉末コーティング用のフリーラジカル光開始剤又は光開始系としても使用される。
【0094】
本発明による光硬化性組成物は、例えば、全ての種類の基材(例えば、木材、布地、紙、セラミックス、ガラス、プラスチック(例えば、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリオレフィン、及びセルロースアセテート)、特に、フィルム状の基材のため、及び金属(例えば、Al、Cu、Ni、Fe、Zn、Mg、又はCo)、及びGaAs、Si、又はSiO2(保護フィルムが塗布される、又は例えば、像様露光によって、像が適用される)の基材のためのコーティング材料として好適である。
【0095】
本発明の他の態様によれば、本発明の更なる主題は、光重合性組成物及びインクを光硬化する方法にあり、該方法は、
(i)上記の化合物成分(a)及び(b);又は、上記の(a)及び(b)及び上記の(c)、(d)、(e)、及び(f)から選ばれる1以上の成分を含んでなる光重合性組成物を提供すること;
(ii)工程(i)の組成物を光源にて光重合すること
を含んでなる。
【0096】
好ましい具体例によれば、上記工程(i)における光重合性組成物は、少なくとも上記の成分(a)、(b)、及び(d)を含んでなる。
【0097】
上記方法の第1工程における用語「提供する」は、前記組成物を調製すること、又は前記組成物を、他の可能な手段、例えば、購入等によって入手することを含む。
【0098】
1具体例によれば、前記光源は、UVA、UVB、及びUVC領域の少なくとも1におけるUV光を含んでなる。
【0099】
好ましい具体例によれば、前記光源はLED源であり、特に、365~400 nm、さらに好ましくは、365 nm、385 nm、及び395 nmの波長で発光するLED光源が特に好ましい。
【0100】
本発明によれば、ランプと、露光される基材との間の距離は、目的の用途、ランプの種類、及び強度に応じて変化でき、0.1~150 cm、好ましくは、1~50cmである。
【0101】
前記光重合性組成物は、既にコーティング又はプリントされた層を含んでなる基材上にも塗布される。前記光重合性組成物は、前記光源にて光重合された後に、プリンティング又はコーティングに好適な1以上の組成物によってオーバープリント又はオーバーコーティングされる。
【0102】
前記コーティング又はプリンティングの手段によって、前記基材上に前記光重合性組成物を塗布し、前記光源によって光重合し、さらに、コーティング又はプリンティングすることによる物品の綿密な仕上げ又は仕上げすることなく得られた物品は、本発明の更なる主題である。
【0103】
驚くべきことには、発明者らは、式(I)及び(Ia)の化合物が光開始剤として活性であり、その活性は、文献(WO 2018/041935)に記載のグリオキシレート化合物よりも高いとの知見を得た。さらに、式(I)及び(Ia)の化合物は、透明の及び着色された系の両方において、LEDランプにて、極めて反応性である。
【0104】
下記の実施例(説明のためのものであって、これに限定されない)によって、本発明を以下に詳述する。
【0105】
化学構造と、表示した化学名とが一致しない場合、化学構造が優先する。
【0106】
[実施例]
1H NMRスペクトルを、Bruker Avance 400 MHz又はBruker DMX 500 MHz又はBruker DMX 600 MHzにて記録した。
赤外スペクトルを、FT-IR 430- Jascoにて記録した。
【実施例1】
【0107】
メチル2-[7-(2-エチルヘキシルオキシ)-2-オキソ-2H-クロメン-3イル]-2-オキソアセテートの合成
【化12】
80℃において撹拌しながら、1,4-ジメチル(2E)-2-(ピペリジン-1-イル)ブテン-2-ジオエート(Chem Res Chin Univ 2015, 31(2), 212-217に報告されたようにして調製した)6.35 g(27.94ミリモル)及び4-[(2-エチルヘキシル)オキシ]-2-ヒドロキシベンズアルデヒド7.00 g(27.96ミリモル)を融解した。ついで、混合物に、酢酸7.0mlを添加した。反応温度を110℃に上げ、混合物を1時間撹拌した。反応完了後、混合物を35~40℃に冷却し、ジクロロメタン200 mlに溶解し、水400 mlにて洗浄した(×2)。有機相を、無水の硫酸ナトリウムにて乾燥し、濾過し、真空下での蒸留によって溶媒を除去した。粗製生成物をエタノールからの結晶化によって精製して、黄色の固体5.00 gを得た(収率50%)。
1H-NMR (CDCl
3, δppm):0.90 (m, 6H), 1.25-1.50 (m, 8H), 1.75 (m, 1H), 3.93-3.96 (m, 5H), 6.85 (d, 1H), 6.92 (dd, 1H), 7.55 (d, 1H), 8.52 (s, 1H)
【実施例2】
【0108】
メチル2-[7-(2-エチルヘキシル-スルファニル)-2-オキソ-2H-クロメン-3-イル]-2-オキソアセテートの合成
【化13】
無水の塩化鉄(III) 2.74 g(16.89ミリモル)を、撹拌下、トルエン50ml中に4-[(2-エチルヘキシル)スルファニル]-2-ヒドロキシベンズアルデヒド4.50 g(16.89ミリモル)及び1,4ジメチル(2E)-2-(ピペリジン-1-イル)ブテン-2-ジオエート3.84 g(16.90ミリモル)を含有する温かい溶液に少量ずつ添加した。窒素雰囲気下で、反応混合物を5時間還流した。反応の進行をTLCによってモニターした。ついで、反応混合物を冷却し、水200 mlにてクエンチし、酢酸エチル250mlにて抽出した。ワークアップの間に得られたエマルジョンをセライトのパッドを介して濾過し、相を分離した。有機相を、無水の硫酸ナトリウムにて乾燥し、濾過し、真空下での蒸留によって溶媒を除去した。粗製生成物をシリカゲル上でのフラッシュカラムクロマトグラフィー(トルエン/酢酸エチル(97.5/2.5))にて精製し、続いて、エタノールからの結晶化を行い、黄色の固体0.55 gを得た(収率9%)。
1H-NMR (CDCl
3, δ ppm):0.90 (m, 6H), 1.25-1.50 (m, 8H), 1.70 (m, 1H), 3.00 (d, 2H), 3.95 (s, 3H), 7.15 (s, 1H), 7.20 (d, 1H), 7.50 (d, 1H), 8.50 (s, 1H)
【実施例3】
【0109】
2-エチルヘキシル- 2-オキソ-2-(2-オキソ-2H-クロメン-3-イル)アセテートの合成
【化14】
ジルコニウム(IV)アセチルアセトネート0.17 g(0.35ミリモル)を、撹拌下、トルエン15ml中にメチル2-オキソ-2-(2-オキソ-2H-クロメン-3-イル)アセテート(Tetrahedron 2012, 68, 8817-8822に記載されているようにして調製した)0.80 g(3.45ミリモル)及び2-エチル-1-ヘキサノール0.90 g(6.91ミリモル)を含有する温かい溶液に添加した。反応混合物を、105℃において、1.5時間撹拌し、蒸留によってメタノールを除去した。反応の進行をTLCによってモニターした。反応完了後、混合物を、冷却し、ジクロロメタンにて希釈し、水で洗浄した。有機相を、無水の硫酸ナトリウムにて乾燥し、濾過し、真空下での蒸留によって溶媒を除去した。粗製生成物をシリカゲル上でのフラッシュカラムクロマトグラフィー(トルエン/酢酸エチル(98:2))によって精製し、白-黄色の固体0.73 gを得た(収率64%)。
1H-NMR (CDCl
3, δ ppm):0.90 (m, 6H), 1.25-1.45 (m, 8H), 1.72 (m, 1H), 4.30 (m, 2H), 7.40 (m, 2H), 7.70 (m, 2H), 8.55 (s, 1H)
【実施例4】
【0110】
メチル2-[7-(ジメチルアミノ)-2-オキソ-2H-クロメン-3-イル]-2-オキソアセテートの合成
【化15】
無水の塩化鉄(III) 7.14 g(44.02ミリモル)を、撹拌下、トルエン50ml中に4-(ジエチルアミノ)サリチルアルデヒド4.25 g(21.99ミリモル)及び1,4-ジメチル(2E)-2-(ピペリジン-1-イル)ブテン-2-ジオエート5.00 g(22.00ミリモル)を含有する温かい溶液に少量ずつ添加した。窒素雰囲気下で、反応混合物を3.5時間還流した。反応の進行をTLCによってモニターした。ついで、反応混合物を、冷却し、炭酸水素ナトリウム水溶液250 mlにてクエンチし、酢酸エチル250mlにて抽出した。ワークアップの間に得られたエマルジョンをセライトのパッドを介して濾過し、相を分離した。有機相を、無水の硫酸ナトリウムにて乾燥し、濾過し、真空下での蒸留によって溶媒を除去した。粗製生成物をシリカゲル上でのフラッシュカラムクロマトグラフィー(トルエン/酢酸エチル(85/15))にて精製し、続いて、トルエンからの結晶化を行い、さび色の固体1.10 gを得た(収率16%)。
1H-NMR (CDCl
3, δ ppm):1.25 (t, 6H), 3.50 (q, 4H), 3.95 (s, 3H), 6.50 (d, 1H), 6.65 (dd, 1H), 7.42 (d, 1H), 8.42 (s, 1H)
【実施例5】
【0111】
2-エチルヘキシル2-[7-(ジエチルアミノ)-2-オキソ-2H-クロメン-3-イル]-2-オキソアセテートの合成
【化16】
ジルコニウム(IV)アセチルアセトネート0.22 g(0.45ミリモル)を、撹拌下、トルエン12ml中にメチル2-[7-(ジエチルアミノ)-2-オキソ-2H-クロメン-3-イル]-2-オキソアセテート0.70 g(2.31ミリモル)及び2-エチル-1-ヘキサノール0.90 g(6.91ミリモル)を含有する温かい溶液に添加した。反応混合物を、105℃において、4時間撹拌し、蒸留によってメタノールを除去した。反応の進行をTLCによってモニターした。反応完了後、混合物を、冷却し、ジクロロメタンにて希釈し、水で洗浄した。有機相を、無水の硫酸ナトリウムにて乾燥し、濾過し、真空下での蒸留によって溶媒を除去した。粗製生成物をシリカゲル上でのフラッシュカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル(70:30))によって精製し、オレンジ色-黄色の固体0.82 gを得た(収率88%)。
1H-NMR (CDCl
3, δ ppm):0.90 (m, 6H), 1.25 (t, 6H), 1.25-1.45 (m, 8H), 1.70 (m, 1H), 3.45 (q, 4H), 4.25 (m, 2H), 6.50 (d, 1H), 6.65 (dd, 1H), 7.42 (d, 1H), 8.40 (s, 1H)
【実施例6】
【0112】
メチル2-(5,7-ジメトキシ-2-オキソ-2H-クロメン-3-イル)-2-オキソアセテートの合成
【化17】
80~100℃において撹拌しながら、1,4-ジメチル(2E)-2-(ピペリジン-1-イル)ブテン-2-ジオエート5.00 g(22.00ミリモル)及び2-ヒドロキシ-4,6-ジメトキシベンズアルデヒド4.00 g(21.96ミリモル)を融解した。ついで、混合物に、酢酸5.5mlを添加した。反応温度を110℃に上げ、混合物を1.5時間撹拌した。反応完了後、混合物を、35~40℃に冷却し、ジクロロメタン200 mlに溶解し、水400 mlにて洗浄した(×2)。有機相を、無水の硫酸ナトリウムにて乾燥し、濾過し、真空下での蒸留によって溶媒を除去した。粗製生成物をトルエンからの結晶化によって精製して、黄色の固体52.60 gを得た(収率41%)。
1H-NMR (CDCl
3, δ ppm):3.90 (s, 3H), 3.93 (s, 3H), 3.95 (s, 3H), 6.28 (d, 1H), 6.43 (d, 1H), 8.87 (s, 1H)
【実施例7】
【0113】
2-エチルヘキシル2-(5,7-ジメトキシ-2-オキソ-2H-クロメン-3-イル)-2-オキソアセテートの合成
【化18】
ジルコニウム(IV)アセチルアセトネート0.42 g(0.86ミリモル)を、撹拌下、トルエン25ml中にメチル2-(5,7-ジメトキシ-2-オキソ-2H-クロメン-3-イル)-2-オキソアセテート2.50 g(8.55ミリモル)及び2-エチル-1-ヘキサノール2.79 g(21.42ミリモル)を含有する温かい溶液に添加した。反応混合物を、105℃において、2時間撹拌し、蒸留によってメタノールを除去した。反応の進行をTLCによってモニターした。反応完了後、混合物を、冷却し、ジクロロメタンにて希釈し、1M塩酸及び塩水にて連続洗浄した。有機相を、無水の硫酸ナトリウムにて乾燥し、濾過し、真空下での蒸留によって溶媒を除去した。粗製生成物をエタノールからの結晶化によって精製し、黄色の固体2.00 gを得た(収率60%)。
1H-NMR (CDCl
3, δ ppm):0.86-0.92 (m, 6H), 1.26-1.46 (m, 8H), 1.70 (m, 1H), 3.90 (s, 3H), 3.93 (s, 3H), 4.24-4.31 (m, 2H), 6.28 (d, 1H), 6.44 (d, 1H), 8.88 (s, 1H)
【実施例8】
【0114】
メチル2-(7-エトキシ-2-オキソ-2H-クロメン-3-イル)-2-オキソアセテートの合成
【化19】
80℃において撹拌しながら、1,4-ジメチル(2E)-2-(ピペリジン-1-イル)ブテン-2-ジオエート6.15 g(27.06ミリモル)及び4-エトキシ-2-ヒドロキシベンズアルデヒド4.50 g(27.08ミリモル)を融解した。ついで、混合物に、酢酸7.0mlを添加した。反応温度を110℃に上げ、混合物を1.5時間撹拌した。反応完了後、混合物を、35~40℃に冷却し、ジクロロメタン200 mlに溶解し、水400 mlにて洗浄した(×2)。有機相を、無水の硫酸ナトリウムにて乾燥し、濾過し、真空下での蒸留によって溶媒を除去した。粗製生成物をトルエンからの結晶化によって精製して、黄色の固体3.53 gを得た(収率47%)。
1H-NMR (CDCl
3, δ ppm):1.47 (t, 3H), 3.95 (s, 3H), 4.15 (q, 2H), 6.82 (d, 1H), 6.91 (dd, 1H), 7.56 (d, 1H), 8.50 (s, 1H)
【実施例9】
【0115】
【化20】
の合成
ジルコニウム(IV)アセチルアセトネート0.62 g(1.27ミリモル)を、撹拌下、トルエン35ml中にメチル2-(7-エトキシ-2-オキソ-2H-クロメン-3-イル)-2-オキソアセテート3.50 g(12.67ミリモル)及びポリエチレングリコール600 19.01 g(31.68ミリモル)を含有する温かい溶液に添加した。反応混合物を、105℃において、1.5時間撹拌し、蒸留によってメタノールを除去した。反応の進行をTLCによってモニターした。反応完了後、混合物を冷却し、真空下での蒸留によって溶媒を除去した。残渣を、ジクロロメタン/EtOAc(2/1)200 mlに溶解し、1M塩酸200 mlにてクエンチし、水200 mlにて洗浄した(×4)。有機相を、無水の硫酸ナトリウムにて乾燥し、濾過し、真空下での蒸留によって溶媒を除去して、黄色の固体8.62 gを得た(収率81%)。
1H-NMR (CDCl
3, δ ppm):1.42 (t, 3H), 3.52-3.63 (m, 46H), 3.66 (t, 2H), 3.76 (t, 2H), 4.10 (q, 2H), 4.46 (t, 2H), 6.77 (d, 1H), 6.86 (dd, 1H), 7.52 (d, 1H), 8.47 (s, 1H)
【実施例10】
【0116】
メチル2-オキソ-2-(3-オキソ-3H-ベンゾ[f]クロメン-2-イル)アセテートの合成
【化21】
80℃において撹拌しながら、1,4-ジメチル(2E)-2-(ピペリジン-1-イル)ブテン-2-ジオエート5.00 g(22.00ミリモル)及び2-ヒドロキシ-1-ナフトアルデヒド3.79 g(22.01ミリモル)を融解した。ついで、混合物に、酢酸5.5mlを添加した。反応温度を110℃に上げ、混合物を1.5時間撹拌した。反応完了後、混合物を、35~40℃に冷却し、ジクロロメタン200 mlに溶解し、水400 mlにて洗浄した(×2)。有機相を、無水の硫酸ナトリウムにて乾燥し、濾過し、真空下での蒸留によって溶媒を除去した。粗製生成物をシリカゲル上でのフラッシュカラムクロマトグラフィー(トルエン/酢酸エチル(95:5))及び続くトルエンからの結晶化によって精製して、黄色の固体1.20 gを得た(収率19%)。
1H-NMR (DMSO-d
6, δ ppm):3.91 (s, 3H), 7.67-7.73 (m, 2H), 7.83 (m, 1H), 8.12 (d, 1H), 8.43 (d, 1H), 8.72 (d, 1H), 9.57 (s, 1H)
【実施例11】
【0117】
2-エチルヘキシル2-オキソ-2-(3-3H-ベンゾ[f]クロメン-2-イル)アセテートの合成
【化22】
ジルコニウム(IV)アセチルアセトネート0.19 g(0.39ミリモル)を、撹拌下、トルエン25ml中にメチル2-オキソ-2-(3-オキソ-3H-ベンゾ[f]クロメン-2-イル)アセテート1.10 g(3.90ミリモル)及び2-エチル-1-ヘキサノール1.27 g(9.75ミリモル)を含有する温かい溶液に添加した。反応混合物を、105℃において、2時間撹拌し、蒸留によってメタノールを除去した。反応の進行をTLCによってモニターした。反応完了後、混合物を、冷却し、ジクロロメタンにて希釈し、1M塩酸及び塩水にて連続洗浄した。有機相を、無水の硫酸ナトリウムにて乾燥し、濾過し、真空下での蒸留によって溶媒を除去した。粗製生成物をシリカゲル上でのフラッシュカラムクロマトグラフィー(トルエン/EtOAc(97.5/2.5))によって精製して、黄色の固体1.33 gを得た(収率90%)。
1H-NMR (DMSO-d
6, δ ppm):0.76-0.91 (m, 6H), 1.18-1.42 (m, 8H), 1.68 (m, 1H), 4.25 (d, 2H), 7.65-7.73 (m, 2H), 7.83 (m, 1H), 8.12 (d, 1H), 8.42 (d, 1H), 8.70 (d, 1H), 9.54 (s, 1H)
【0118】
[比較例]
本発明のクマリングリオキシレートを、WO 2018/041935の記載のようにして調製した従来技術のエチル2-(9H-フルオレノン-2-イル)-2-オキソ(COMP-1)及びエチル2-オキソ-2-チアントレン-2-イル-アセテート(COMP-2)と比較した。
【0119】
[実施例12.1]
比較テスト
[実施例12.1.1]
透明の処方
光開始剤及び共-開始剤、Esacure(登録商標)EDB (IGM Resins B.V.)を、Ebecryl(登録商標)605及びEbecryl(登録商標)350(Allnex)の混合物(99.5:0.5(質量))に、3質量%の濃度で溶解することによって、テスト用の光重合性組成物を調製した。
FT-IR(FT-IR 430-Jasco)のサンプル拠点に置いた光重合性組成物を、サンプルから距離25mm、角度30°で配置したLEDランプ(400 nm)に露光した。光重合の間に、一定の時間間隔でIRスペクトルを獲得し、IRソフトウエアを使用して、アクリル二重結合に割り当てられた1408 cm-1及び810 cm-1におけるピーク面積の経時的減少を測定した。これは、重合度、従って、光開始剤の効力の定量を可能にする。
結果(経時的重合度%として示す)を表1に報告する。
【0120】
【表1】
*:比較例
これらのテストは、式(I)及び(Ia)の化合物が、同じ量での使用の際、比較例(COMP-1及びCOMP-2)に匹敵する又はよりも優れた反応性を有することを証明している。
【0121】
[比較例12.1.2]
シアンインクジェットインクLEDランプ(400 nm)
光開始剤及び共-開始剤、Esacure(登録商標)EDB (IGM Resins B.V.)を、シアンインクジェットインクに、5質量%の濃度で溶解することによって、テスト用の光重合性組成物を調製した。
FT-IR(FT-IR 430-Jasco)のサンプル拠点に置いた光重合性組成物を、サンプルから距離25mm、角度30°で配置したLEDランプ(400 nm)に露光した。光重合の間に、一定の時間間隔でIRスペクトルを獲得し、IRソフトウエアを使用して、アクリル二重結合に割り当てられた1408 cm-1及び810 cm-1におけるピーク面積の経時的減少を測定した。これは、重合度、従って、光開始剤の効力の定量を可能にする。
結果(経時的重合度%として示す)を表2に報告する。
【0122】
【表2】
*:比較例
これらのテストは、着色系においても、式(I)及び(Ia)の化合物が高活性であることを証明している。
【0123】
[実施例12.1.3.]
透明処方におけるタックフリー
光開始剤及び共-開始剤、Esacure(登録商標)A198 (IGM Resins B.V.)を、4質量%の濃度で、
処方A:Photomer(登録商標)6577 50質量%、Photomer(登録商標)4335 155%質量%、Photomer(登録商標)4666 15質量%、Photomer(登録商標)4172 20質量%;
処方B:Photomer(登録商標)3016 50質量%、Photomer(登録商標)4335 15質量%、Photomer(登録商標)4666 15質量%、Photomer(登録商標)4172 20質量%;
処方C:Photomer(登録商標)5442 50質量%、Photomer(登録商標)4335 15質量%、Photomer(登録商標)4666 15質量%、Photomer(登録商標)4172 20質量%;
処方D:Photomer(登録商標)6628 50質量%、Photomer(登録商標)4335 15質量%、Photomer(登録商標)4666 15質量%、Photomer(登録商標)4172 20質量%
に溶解することによって、テスト用の光重合性組成物を調製した。
次の組成物:Photomer(登録商標)5662 50質量%、Photomer(登録商標)4335 15質量%、Photomer(登録商標)4666 15質量%、Photomer(登録商標)4172 20質量%に、光開始剤を、4質量%の濃度で溶解することによって処方Eを調製した。
K101コントロールコーターによって、光重合性組成物を、厚さ6μで、紙支持体上に塗布し、ついで、395 nm(16W/cm)でLEDランプの下を通過させた。タックフリーを測定した。その結果(m/分として表示)を表3に報告する。速度(m/分)が大きいほど、性能が良好である。
【0124】
【表3】
*:比較例
処方Aについて、365 nm(12W/cm)でもLEDランプで露光し、タックフリーを測定し、結果(m/分として表示)を表4に報告する。
【0125】
【表4】
*:比較例
これらのテストは、式(I)及び(Ia)の化合物が、多くの異なる処方及び異なるLEDの波長において、比較例よりも反応性であることを証明している。
【0126】
[実施例12.1.4.]
シアンオフセットインクにおけるスルー硬化(through cure)
光開始剤及び共-開始剤、Esacure(登録商標)A198 (IGM Resins B.V.)を、シアンオフセットインクに、1.5質量%の濃度で溶解することによって、テスト用の光重合性組成物を調製した。
光重合性組成物を、厚さ1.5μで、紙支持体上に塗布し、ついで、395 nm(16W/cm)又は365 nm(12W/cm)でLEDランプの下を通過させた。スルー硬化を測定し、結果(m/分として表示)を表5に報告する。速度(m/分)が大きいほど、性能が良好である。
【0127】
【表5】
*:比較例
全てのテストが、小さい厚さ及び着色系の場合でも、式(I)及び(Ia)の化合物の性能が傑出していることを証明している。
【手続補正書】
【提出日】2021-11-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1のエチレン系不飽和化合物50~99.9質量%、好ましくは、70~98.9質量%(可及的な水及び溶媒を除く組成物の総含量に基づく);
(b)少なくとも1の式(I)の化合物0.1~35質量%、好ましくは、0.1~20質量%、さらに好ましくは、0.2~15質量%(可及的な水及び溶媒を除く組成物の総含量に基づく)
を含んでなる光硬化性組成物。
式(I)
【化1】
(I)
[ここで、
R
1は、置換又は未置換のC1-C20アルキル基、又は置換又は未置換のC1-C50アルキル基(1以上の酸素によって中断され、ヒドロキシ基にて終止してもよい)であり;
Couは、式
【化2】
(A)
(ここで、
R
2、R
3、R
4、及びR
5は、相互に独立して、水素、置換又は未置換のC1-C20アルキル、-N(C1-C6アルキル)
2、ピペリジノ、モルホリノ、ピペラジノ、-O-R
7又は-S-R
7(ここで、R
7は、水素、置換又は未置換のC1-C20アルキル、C2-C12アルケニル、置換又は未置換のアリール、ヘテロアリール又はC5-C6シクロアルキルである)であり;
R
6は水素、ヒドロキシ基、又はC1-C4アルキル基である)
のクマリン基であり;又は
Couは、式
【化3】
(B)、
【化4】
(C)、
【化5】
(D)
(式中、星印は、式(I)のケト基に結合される炭素原子を示す)
の置換又は未置換のナフト-クマリン基である。]
【請求項2】
式(I)において、R
1が置換又は未置換のC1-C20アルキル基である請求項1に記載の光硬化性組成物。
【請求項3】
式(I)において、Couが式(A)(式中、R
2、R
3、R
4、及びR
5の少なくとも1は水素とは異なる)のクマリン基である請求項1又は2に記載の光硬化性組成物。
【請求項4】
式(I)において、Couが(A)であり及びR
6が水素であるか、又はCouが(C)である請求項1~3のいずれかに記載の光硬化性組成物。
【請求項5】
式(I)において、Couが式(A)(式中、R
6が水素であり、R
2、R
3、R
4及びR
5の少なくとも2が-O-R
7基であり、及びR
7及びR
1がC1-C20 アルキル基である)のクマリン基である請求項1~4のいずれかに記載の光硬化性組成物。
【請求項6】
さらに、
(c)1以上の光増感剤0.01~15質量%(可及的な水及び溶媒を除く組成物の総含量に基づく);及び/又は
(d)促進剤/共-開始剤0.2~15質量%(可及的な水及び溶媒を除く組成物の総含量に基づく);及び/又は
(e)1以上の更なる光開始剤0.5~15質量%(可及的な水及び溶媒を除く組成物の総含量に基づく);及び/又は
(f)添加剤
を含んでなる請求項1~5のいずれかに記載の光硬化性組成物。
【請求項7】
式(Ia)の化合物。
式(Ia)
【化6】
(Ia)
[ここで、
R
1は、置換又は未置換のC1-C20アルキル基、又は置換又は未置換のC1-C50アルキル基(1以上の酸素によって中断され、水酸基にて終止してもよい)であり;
Couは、式
【化7】
(A)
(ここで、
R
2、R
3、R
4、及びR
5は、相互に独立して、水素、置換又は未置換のC1-C20アルキル、-N(C1-C6アルキル)
2、ピペリジノ、モルホリノ、ピペラジノ、-O-R
7又は-S-R
7(ここで、R
7は、水素、置換又は未置換のC1-C20アルキル、C2-C12アルケニル、置換又は未置換のアリール、ヘテロアリール、又はC5-C6シクロアルキルである)であり;
R
6は、水素、ヒドロキシ基、又はC1-C4アルキル基である)
のクマリン基であり;又は
Couは、式
【化8】
(B)、
【化9】
(C)、
【化10】
(D)
(式中、星印は、式(Ia)のケト基に結合される炭素原子を示す)
の置換又は未置換のナフト-クマリン基であり;
ただし、
R
1がメチルである場合、R
2、R
3、R
4、R
5、及びR
6の少なくとも1つは水素とは異なり;
R
1がメチル又はエチルである場合、R
4はメチルとは異なり;
R
1がメチルである場合、R
6はヒドロキシではなく;
R
1がメチル又はエチルである場合、R
2はメトキシではなく;及び
R
1がメチル又はエチルである場合、R
2及びR
4は、共に、三級-ブチルではない。]
【請求項8】
式(Ia)において、R
1が置換又は未置換のC1-C20アルキル基である請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
式(Ia)において、Couが式(A)(式中、R
3が置換又は未置換のC1-C20アルキル、-O-R
7又は-S-R
7(ここで、C1-C20アルキル)である)のクマリン基である請求項7又は8に記載の化合物。
【請求項10】
式(Ia)において、Couが式(A)であり及びR
6が水素であるか、又はCouが式(C)である請求項7~9のいずれかに記載の化合物。
【請求項11】
式(Ia)において、Couが式(A)(式中、R
6が水素であり、R
2、R
3、R
4、及びR
5の少なくとも2が-O-R
7基であり、及びR
7及びR
1がC1-C20アルキル基である)のクマリン基である請求項7~10のいずれかに記載の化合物。
【請求項12】
下記の反応を含んでなる式(I)又は(Ia)の化合物の製法。
【化11】
[ここで、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、及びR
6は上記のとおりであり;
触媒は、好ましくは、酢酸、ギ酸、ポリリン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、硫酸、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硝酸、過塩素酸、フッ化水素酸、亜硝酸、及びその混合物から選ばれる酸であるか、或いは、触媒は、無水トリフルオロメタンスルホン酸、無水トリフルオロ酢酸、及び五酸化リンから選ばれ、ただし、触媒はFeCl
3ではなく;
溶媒は、有機溶媒であり、好ましくは、芳香族溶媒、さらに好ましくは、ベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、キシレン混合物、クロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、1,3-ジクロロベンゼン、1,4-ジクロロベンゼン、及びその混合物から選ばれ;
或いは、反応は溶媒無しでも行われる。]
【請求項13】
光重合性組成物及びインクを光硬化する方法にあって、
(i)請求項1において定義した化合物(a)及び(b);又は、請求項1において定義した化合物(a)及び(b)、及び請求項6で定義した成分(c)、(d)、(e)、及び(f)から選ばれる1以上の成分、好ましくは、(d)を含んでなる光重合性組成物を提供すること;
(ii)工程(i)の組成物を光源にて光重合すること
を含んでなる光重合法。
【請求項14】
光源が、UVA、UVB、及びUVC領域の少なくとも1におけるUV光を含んでなる請求項13に記載の方法。
【請求項15】
光源が、350~420 nmの領域において発光するLED光源であることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項16】
さらに、光重合性組成物を、光重合する前に、基材に塗布する工程を含んでなる請求項13~15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
請求項13~16のいずれかに記載の方法に従って、又は請求項1~6のいずれかに記載の組成物又は請求項7~11のいずれかに記載の化合物を含んでなる混合物の三次元プリンティングによって得られた工業製品。
【国際調査報告】