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特表2023-502323抗TIGIT抗体との組合せで抗OX40抗体を用いる癌治療の方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-24
(54)【発明の名称】抗TIGIT抗体との組合せで抗OX40抗体を用いる癌治療の方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20230117BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230117BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230117BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20230117BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20230117BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20230117BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20230117BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61P35/00
A61P35/02
A61P35/04
A61P37/04
C07K16/28 ZNA
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022524620
(86)(22)【出願日】2020-11-19
(85)【翻訳文提出日】2022-04-26
(86)【国際出願番号】 CN2020129992
(87)【国際公開番号】W WO2021098757
(87)【国際公開日】2021-05-27
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2019/120033
(32)【優先日】2019-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】514164650
【氏名又は名称】ベイジーン リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジアン、ベイベイ
(72)【発明者】
【氏名】リウ、イェ
(72)【発明者】
【氏名】ソン、シャオミン
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA14
4C085BB41
4C085BB43
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE03
4H045AA11
4H045AA30
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
抗TIGIT抗体又はそのフラグメントとの組合せで、ヒトOX40(ACT35、CD134、又はTNFRSF4)に結合する非競合アゴニスト抗OX40抗体及びその抗原結合性フラグメントを用いて、癌を治療する方法又は免疫反応を増加、増強、若しくは刺激する方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌治療の方法であって、抗TIGIT抗体又はその抗原結合性フラグメントとの組合せで有効量の非競合抗OX40抗体又はその抗原結合性フラグメントを対象に投与することを含む、方法。
【請求項2】
OX40抗体が、抗TIGIT抗体又はその抗原結合性フラグメントとの組合せで、ヒトOX40に特異的に結合し、且つ
(i)(a)配列番号3のHCDR(重鎖相補性決定領域)1と(b)配列番号24のHCDR2と(c)配列番号5のHCDR3とを含む重鎖可変領域及び(d)配列番号25のLCDR(軽鎖相補性決定領域)1と(e)配列番号19のLCDR2と(f)配列番号8のLCDR3とを含む軽鎖可変領域、
(ii)(a)配列番号3のHCDR1と(b)配列番号18のHCDR2と(c)配列番号5のHCDR3とを含む重鎖可変領域及び(d)配列番号6のLCDR1と(e)配列番号19のLCDR2と(f)配列番号8のLCDR3とを含む軽鎖可変領域、
(iii)(a)配列番号3のHCDR1と(b)配列番号13のHCDR2と(c)配列番号5のHCDR3とを含む重鎖可変領域及び(d)配列番号6のLCDR1と(e)配列番号7のLCDR2と(f)配列番号8のLCDR3とを含む軽鎖可変領域、又は
(iv)(a)配列番号3のHCDR1と(b)配列番号4のHCDR2と(c)配列番号5のHCDR3とを含む重鎖可変領域及び(d)配列番号6のLCDR1と(e)配列番号7のLCDR2と(f)配列番号8のLCDR3とを含む軽鎖可変領域、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記OX40抗体又は抗原結合が、
(i)配列番号26を含む重鎖可変領域(VH)及び配列番号28を含む軽鎖可変領域(VL)、
(ii)配列番号20を含む重鎖可変領域(VH)及び配列番号22を含む軽鎖可変領域(VL)、
(iii)配列番号14を含む重鎖可変領域(VH)及び配列番号16を含む軽鎖可変領域(VL)、又は
(iv)配列番号9を含む重鎖可変領域(VH)及び配列番号11を含む軽鎖可変領域(VL)、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記抗TIGIT抗体又はその抗原結合性フラグメントが、ヒトTIGITに特異的に結合する抗体抗原結合ドメインを含み、且つ配列番号32のHCDR1と配列番号33のHCDR2と配列番号34のHCDR3とを含む重鎖可変領域及び配列番号35のLCDR1と配列番号36のLCDR2と配列番号37のLCDR3とを含む軽鎖可変領域を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記抗TIGIT抗体が、ヒトTIGITに特異的に結合する抗体抗原結合ドメインを含み、且つ配列番号39のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)及び配列番号41のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記抗OX40抗体又は抗原結合性フラグメントが、Fab、Fab’-SH、Fv、scFv、及び(Fab’)2フラグメントからなる群から選択される抗体フラグメントである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記抗TIGIT抗体又は抗原結合性フラグメントが、Fab、Fab’-SH、Fv、scFv、及び(Fab’)2フラグメントからなる群から選択される抗体フラグメントである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記癌が、乳癌、結腸癌、頭頸部癌、胃癌、腎癌、肝癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、卵巣癌、皮膚癌、中皮腫、リンパ腫、白血病、骨髄腫、又は肉腫である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記乳癌が転移乳癌である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記治療が、前記治療の中止後に前記対象において持続抗癌反応をもたらす、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
免疫反応又は機能を増加、増強、又は刺激する方法であって、抗TIGIT抗体又はその抗原結合性フラグメントとの組合せで有効量の非競合抗OX40抗体又はその抗原結合性フラグメントを対象に投与することを含む、方法。
【請求項12】
前記OX40抗体又はその抗原結合性フラグメントが、抗TIGIT抗体又はその抗原結合性フラグメントとの組合せで、ヒトOX40に特異的に結合し、且つ
(i)(a)配列番号3のHCDR(重鎖相補性決定領域)1と(b)配列番号24のHCDR2と(c)配列番号5のHCDR3とを含む重鎖可変領域及び(d)配列番号25のLCDR(軽鎖相補性決定領域)1と(e)配列番号19のLCDR2と(f)配列番号8のLCDR3とを含む軽鎖可変領域、
(ii)(a)配列番号3のHCDR1と(b)配列番号18のHCDR2と(c)配列番号5のHCDR3とを含む重鎖可変領域及び(d)配列番号6のLCDR1と(e)配列番号19のLCDR2と(f)配列番号8のLCDR3とを含む軽鎖可変領域、
(iii)(a)配列番号3のHCDR1と(b)配列番号13のHCDR2と(c)配列番号5のHCDR3とを含む重鎖可変領域及び(d)配列番号6のLCDR1と(e)配列番号7のLCDR2と(f)配列番号8のLCDR3とを含む軽鎖可変領域、又は
(iv)(a)配列番号3のHCDR1と(b)配列番号4のHCDR2と(c)配列番号5のHCDR3とを含む重鎖可変領域及び(d)配列番号6のLCDR1と(e)配列番号7のLCDR2と(f)配列番号8のLCDR3とを含む軽鎖可変領域、
を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記OX40抗体又は抗原結合が、
(i)配列番号26を含む重鎖可変領域(VH)及び配列番号28を含む軽鎖可変領域(VL)、
(ii)配列番号20を含む重鎖可変領域(VH)及び配列番号22を含む軽鎖可変領域(VL)、
(iii)配列番号14を含む重鎖可変領域(VH)及び配列番号16を含む軽鎖可変領域(VL)、又は
(iv)配列番号9を含む重鎖可変領域(VH)及び配列番号11を含む軽鎖可変領域(VL)
を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記抗TIGIT抗体又はその抗原結合性フラグメントが、ヒトTIGITに特異的に結合する抗体抗原結合ドメインを含み、且つ配列番号32のHCDR1と配列番号33のHCDR2と配列番号34のHCDR3とを含む重鎖可変領域及び配列番号35のLCDR1と配列番号36のLCDR2と配列番号37のLCDR3とを含む軽鎖可変領域を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記抗TIGIT抗体又はその抗原結合性フラグメントが、ヒトTIGITに特異的に結合する抗体抗原結合ドメインを含み、且つ配列番号39のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)及び配列番号41のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記抗OX40抗体又はその抗原結合性フラグメントが、Fab、Fab’-SH、Fv、scFv、及び(Fab’)2フラグメントからなる群から選択される抗体フラグメントである、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記抗TIGIT抗体又はその抗原結合性フラグメントが、Fab、Fab’-SH、Fv、scFv、及び(Fab’)2フラグメントからなる群から選択される抗体フラグメントである、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
免疫反応を刺激することがT細胞又はNK細胞に関連する、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
免疫反応を刺激することが抗原刺激に対する反応性の増加により特徴付けられる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記T細胞又はNK細胞が、増加したサイトカイン分泌、増殖、又は細胞溶解活性を有する、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記T細胞がCD4+及びCD8+T細胞である、請求項18~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記投与が、前記治療の中止後に前記対象において持続免疫反応をもたらす、請求項11~21のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書には、ヒトOX40とヒトTIGITに結合する抗体又はその抗原結合性フラグメントの組合せを用いて癌を治療する方法が開示されている。
【背景技術】
【0002】
OX40(ACT35、CD134、又はTNFRSF4としても知られる)は、おおよそ50KDのI型膜貫通糖タンパク質であり且つ腫瘍壊死因子レセプタースーパーファミリー(TNFRSF)のメンバーである(Croft,2010、Gough and Weinberg,2009)。成熟ヒトOX40は、37AA細胞質内テール及び185AA細胞外領域を含む249アミノ酸(AA)残基で構成される。OX40の細胞外ドメインは、3つの完全な及び1つの不完全なシステインリッチドメイン(CRD)を含有する。OX40の細胞内ドメインは、TRAF2、TRAF3、及びTRAF5を含むいくつかのTNFR関連因子(TRAF)への結合を媒介して細胞内キナーゼへのOX40の連結を可能する1つの保存シグナリング関連QEEモチーフを含有する(Arch and Thompson,1998、Willoughby et al.,2017)。
【0003】
OX40は、活性化ラットCD4T細胞上で最初に発見され、続いて、T細胞からネズミ及びヒトホモログがクローニングされた(al-Shamkhani et al.,1996、Calderhead et al.,1993)。Tヘルパー(Th)1細胞、Th2細胞、Th17細胞、さらにはレギュラトリーT(Treg)細胞を含めて、活性化CD4T細胞上での発現のほか、OX40発現は、活性化CD8T細胞、ナチュラルキラー(NK)T細胞、好中球、及びNK細胞の表面上でも見いだされている(Croft,2010)。これとは対照的に、低OX40発現は、ナイーブCD4及びCD8T細胞上、さらにはほとんどの休止メモリーT細胞上に見いだされる(Croft,2010、Soroosh et al.,2007)。ナイーブT細胞上でのOX40の表面発現は一過性である。TCR活性化後、T細胞上でのOX40発現は、24時間以内に大幅に増加し、2~3日でピークを生じ、5~6日間持続する(Gramaglia et al.,1998)。
【0004】
OX40に対するリガンド(OX40L、gp34、CD252、又はTNFSF4としても知られる)は、OX40に対する唯一のリガンドである。他のTNFSF(腫瘍壊死因子スーパーファミリー)メンバーに類似して、OX40Lは、23AA細胞内ドメイン及び133AA細胞外ドメインを含む183AAを含有するII型糖タンパク質である(Croft,2010、Gough and Weinberg,2009)。OX40Lは、天然では、細胞表面上にホモメリックトリマー複合体を形成する。リガンドトリマーは、CRD4の関与なしに主にレセプターのCRD1、CRD2、及び部分的CRD3領域を介してリガンドモノマー-モノマー界面でOX40の3つのコピーと相互作用する(Compaan and Hymowitz,2006)。OX40Lは、活性化B細胞(Stuber et al.,1995)、成熟従来型樹状細胞(DC)(Ohshima et al.,1997)、形質細胞様DC(pDC)(Ito et al.,2004)、マクロファージ(Weinberg et al.,1999)、及びランゲルハンス細胞(Sato et al.,2002)を含めて、活性化抗原提示細胞(APC)上に主に発現される。そのほか、OX40Lは、NK細胞、マスト細胞、活性化T細胞のサブセット、さらには血管内皮細胞、平滑筋細胞などの他の細胞型上に発現されることが分かっている(Croft,2010、Croft et al.,2009)。
【0005】
トリメリックOX40Lによるライゲーションを介するOX40トリマー化又はアゴニスティック抗体によるダイマー化は、その細胞内QEEモチーフへのアダプター分子TRAF2、TRAF3、及び/又はTRAF5のリクルートメント及びドッキングに寄与する(Arch and Thompson,1998、Willoughby et al.,2017)。TRAF2及びTRAF3のリクルートメント及びドッキングはさらに、カノニカルNF-κB1経路及び非カノニカルNF-κB2経路の両方の活性化をもたらすことが可能であり、これによりT細胞の生存、分化、拡大、サイトカイン産生、及びエフェクター機能のレギュレーションに重要な役割を果たす(Croft,2010、Gramaglia et al.,1998、Huddleston et al.,2006、Rogers et al.,2001、Ruby and Weinberg,2009、Song et al.,2005a、Song et al.,2005b、Song et al.,2008)。
【0006】
正常組織では、OX40発現は低く、主にリンフォイド器官のリンパ球上で生じる(Durkop et al.,1995)。しかしながら、自己免疫性疾患(Carboni et al.,2003、Jacquemin et al.,2015、Szypowska et al.,2014)や癌(Kjaergaard et al.,2000、Vetto et al.,1997、Weinberg et al.,2000)などの病理学的病態を有する動物モデル及びヒト患者の両方で、OX40発現のアップレギュレーションが頻繁に免疫細胞上で観測されている(Redmond and Weinberg,2007)。とりわけ、OX40の発現増加は、結腸直腸癌及び皮膚メラノーマを有する患者のより長い生存に関連し、且つ遠隔転移及びより進行した腫瘍の特徴の発生に逆相関する(Ladanyi et al.,2004、Petty et al.,2002、Sarff et al.,2008)。また、抗OX40抗体治療は、各種マウスモデルにおいて抗腫瘍効能を誘発可能であることが示されたことから(Aspeslagh et al.,2016)、免疫療法標的としてOX40の潜在能力が示唆される。Curtiらにより行われた癌患者における最初の臨床試験では、腫瘍特異的T細胞の抗腫瘍効能及び活性化の証拠がアゴニスティック抗OX40モノクローナル抗体で観測されたことから、OX40抗体は、抗腫瘍T細胞反応をブーストするのに有用であることが示唆される(Curti et al.,2013)。
【0007】
抗腫瘍効能を媒介するアゴニスティック抗OX40抗体の作用機序は、主にマウス腫瘍モデルで試験されてきた(Weinberg et al.,2000)。最近まで、腫瘍でのアゴニスティック抗OX40抗体の作用機序は、エフェクターT細胞の共刺激シグナリング経路さらにはTreg細胞の分化及び機能に対する阻害効果をトリガーするその能力に帰属された(Aspeslagh et al.,2016、Ito et al.,2006、St Rose et al.,2013、Voo et al.,2013)。最近の研究では、動物腫瘍モデル及び癌患者の両方で、腫瘍浸潤Tregは、エフェクターT細胞(CD4及びCD8の両方)並びに末梢Tregよりも高レベルのOX40を発現することが示された(Lai et al.,2016、Marabelle et al.,2013b、Montler et al.,2016、Soroosh et al.,2007、Timperi et al.,2016)。したがって、抗OX40抗体が抗腫瘍反応をトリガーする二次的作用は、抗体依存細胞傷害性(ADCC)及び/又は抗体依存細胞食作用(ADCP)を介して腫瘍内OX40Treg細胞を枯渇させるそのFc媒介エフェクター機能に依拠する(Aspeslagh et al.,2016、Bulliard et al.,2014、Marabelle et al.,2013a、Marabelle et al.,2013b、Smyth et al.,2014)。この研究では、Fc媒介エフェクター機能を有するアゴニスティック抗OX40抗体は、腫瘍内Tregを優先的には枯渇させてCD8エフェクターT細胞と腫瘍マイクロ環境(TME)内のTregとの比を改善することが可能であり、その結果、抗腫瘍免疫反応の改善、腫瘍退縮の増加、及び生存の改善がもたらされることが実証される(Bulliard et al.,2014、Carboni et al.,2003、Jacquemin et al.,2015、Marabelle et al.,2013b)。これらの知見に基づけば、アゴニスティック活性及びFc媒介エフェクター機能の両方を有するアゴニスティック抗OX40抗体を開発する医療上の必要性は満たされていない。
【0008】
これまでのところ、診療でのアゴニスティック抗OX40抗体は、主に、OX40-OX40L相互作用をブロックするリガンド競合抗体である(たとえば、国際公開第2016196228A1号パンフレット)。OX40-OX40L相互作用は、有効な抗腫瘍免疫を増強するのに必須であるので、OX40-OX40Lのブロッケードは、こうしたリガンド競合抗体の効能を制限する。したがって、OX40に特異的に結合すると同時にOX40とOX40Lとの相互作用に干渉しないOX40アゴニスト抗体は、単独療法及び組合せ療法の両方により癌及び自己免疫性障害の治療に有用である。
【0009】
腫瘍浸潤リンパ球(TIL)及び末梢血単核細胞(PBMC)でのTIGIT発現のアップレギュレーションは、多くのタイプの癌、たとえば、肺癌(Tassi,et al.,Cancer Res.2017 77:851-861)、食道癌(Xie J,et al.,Oncotarget 2016 7:63669-63678)、乳癌(Gil Del Alcazar CR,et al.2017 Cancer Discov.)、急性ミエロイド白血病(AML)(Kong Y et al.,Clin Cancer Res.2016 22:3057-66)、及び黒色腫(Chauvin JM,et al.,J Clin Invest.2015 125:2046-2058)で報告されている。AMLでのTIGITの発現増加は、患者の予後不良に関連する(Kong Y et al.,Clin Cancer Res.2016 22:3057-66)。TIGITシグナリングのアップレギュレーションは、癌に対する免疫寛容だけでなく慢性ウイルス感染でも重要な役割を果たす。HIV感染時、T細胞上でのTIGITの発現は、有意により高く、ウイルスロード及び疾患進行に正に相関する(Chew GM,et al.,2016 PLoS Pathog.12:e1005349)。そのほか、TIGITレセプター単独のブロッケード又は他のブロッケードとの組合せは、in vitro及びin vivoの両方で「疲弊」T細胞を機能的にレスキュー可能である(Chauvin JM,et al.,J Clin Invest.2015 125:2046-2058、Chew GM,et al.,2016 PLoS Pathog.12:e1005349、Johnston RJ,et al.Cancer Cell 2014 26:923-937)。癌及びウイルス感染の症例では、TIGITシグナリングの活性化は、免疫細胞機能不全を促進して癌伸展又はウイルス感染拡大をもたらす。治療剤によるTIGIT媒介阻害性シグナリングの阻害は、T細胞、NK細胞、及び樹状細胞(DC)をはじめとする免疫細胞の機能活性を回復しうるので、癌又は慢性ウイルス感染に対する免疫が増強される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、アゴニスティック抗OX40抗体と抗TIGIT抗体との組合せ及びこれらの抗体の組合せを癌の治療に使用する方法に関する。
【0011】
一実施形態では、本開示は、抗TIGIT抗体との組合せの抗OX40抗体を提供する。一態様では、本開示のアゴニスティックOX40抗体及び抗原結合性フラグメントは、OX40Lと競合することも又はOX40のそのリガンドOX40Lへの結合に干渉することもない。一態様では、TIGIT抗体は、TIGITシグナリングを低減する。
【0012】
本開示は下記実施形態を包含する。
【0013】
癌治療の方法であって、抗TIGIT抗体又はその抗原結合性フラグメントとの組合せで有効量の非競合抗OX40抗体又はその抗原結合性フラグメントを対象に投与することを含む、方法。
【0014】
OX40抗体が、ヒトOX40に特異的に結合し、且つ
(i)(a)配列番号3のHCDR(重鎖相補性決定領域)1と(b)配列番号24のHCDR2と(c)配列番号5のHCDR3とを含む重鎖可変領域及び(d)配列番号25のLCDR(軽鎖相補性決定領域)1と(e)配列番号19のLCDR2と(f)配列番号8のLCDR3とを含む軽鎖可変領域、
(ii)(a)配列番号3のHCDR1と(b)配列番号18のHCDR2と(c)配列番号5のHCDR3とを含む重鎖可変領域及び(d)配列番号6のLCDR1と(e)配列番号19のLCDR2と(f)配列番号8のLCDR3とを含む軽鎖可変領域、
(iii)(a)配列番号3のHCDR1と(b)配列番号13のHCDR2と(c)配列番号5のHCDR3とを含む重鎖可変領域及び(d)配列番号6のLCDR1と(e)配列番号7のLCDR2と(f)配列番号8のLCDR3とを含む軽鎖可変領域、又は
(iv)(a)配列番号3のHCDR1と(b)配列番号4のHCDR2と(c)配列番号5のHCDR3とを含む重鎖可変領域及び(d)配列番号6のLCDR1と(e)配列番号7のLCDR2と(f)配列番号8のLCDR3とを含む軽鎖可変領域
を含む、有効量の抗体又はその抗原結合性フラグメントを、抗TIGIT抗体又はその抗原結合性フラグメントとの組合せで対象に投与することを含む、方法。
【0015】
OX40抗体又は抗原結合が、
(i)配列番号26を含む重鎖可変領域(VH)及び配列番号28を含む軽鎖可変領域(VL)、
(ii)配列番号20を含む重鎖可変領域(VH)及び配列番号22を含む軽鎖可変領域(VL)、
(iii)配列番号14を含む重鎖可変領域(VH)及び配列番号16を含む軽鎖可変領域(VL)、又は
(iv)配列番号9を含む重鎖可変領域(VH)及び配列番号11を含む軽鎖可変領域(VL)
を含む、方法。
【0016】
抗TIGIT抗体又はその抗原結合性フラグメントが、ヒトTIGITに特異的に結合する抗体抗原結合ドメインを含み
ヒトPD1に特異的に結合し、且つ配列番号32のHCDR1と配列番号33のHCDR2と配列番号34のHCDR3とを含む重鎖可変領域及び配列番号35のLCDR1と配列番号36のLCDR2と配列番号37のLCDR3とを含む軽鎖可変領域
を含む、方法。
【0017】
抗TIGIT抗体が、ヒトTIGITに特異的に結合する抗体抗原結合ドメインを含み、ヒトPD1に特異的に結合し、且つ配列番号39のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)及び配列番号41のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、方法。
【0018】
抗OX40抗体又は抗原結合性フラグメントが、Fab、Fab’-SH、Fv、scFv、及び(Fab’)2フラグメントからなる群から選択される抗体フラグメントである、方法。
【0019】
抗TIGIT抗体又は抗原結合性フラグメントが、Fab、Fab’-SH、Fv、scFv、及び(Fab’)2フラグメントからなる群から選択される抗体フラグメントである、方法。
【0020】
癌が、乳癌、結腸癌、頭頸部癌、胃癌、腎癌、肝癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、卵巣癌、皮膚癌、中皮腫、リンパ腫、白血病、骨髄腫、又は肉腫である、方法。
【0021】
乳癌が転移乳癌である、方法。
【0022】
治療が、治療の中止後に対象において持続抗癌反応をもたらす、方法。
【0023】
免疫反応又は機能を増加、増強、又は刺激する方法であって、抗TIGIT抗体又はその抗原結合性フラグメントとの組合せで有効量の非競合抗OX40抗体又はその抗原結合性フラグメントを対象に投与することを含む、方法。
【0024】
OX40抗体又はその抗原結合性フラグメントがヒトOX40に特異的に結合し、且つ
(i)(a)配列番号3のHCDR(重鎖相補性決定領域)1と(b)配列番号24のHCDR2と(c)配列番号5のHCDR3とを含む重鎖可変領域及び(d)配列番号25のLCDR(軽鎖相補性決定領域)1と(e)配列番号19のLCDR2と(f)配列番号8のLCDR3とを含む軽鎖可変領域、
(ii)(a)配列番号3のHCDR1と(b)配列番号18のHCDR2と(c)配列番号5のHCDR3とを含む重鎖可変領域及び(d)配列番号6のLCDR1と(e)配列番号19のLCDR2と(f)配列番号8のLCDR3とを含む軽鎖可変領域、
(iii)(a)配列番号3のHCDR1と(b)配列番号13のHCDR2と(c)配列番号5のHCDR3とを含む重鎖可変領域及び(d)配列番号6のLCDR1と(e)配列番号7のLCDR2と(f)配列番号8のLCDR3とを含む軽鎖可変領域、又は、
(iv)(a)配列番号3のHCDR1と(b)配列番号4のHCDR2と(c)配列番号5のHCDR3とを含む重鎖可変領域及び(d)配列番号6のLCDR1と(e)配列番号7のLCDR2と(f)配列番号8のLCDR3とを含む軽鎖可変領域
を、抗TIGIT抗体又はその抗原結合性フラグメントとの組合せで含む、方法。
【0025】
OX40抗体又は抗原結合が、
(i)配列番号26を含む重鎖可変領域(VH)及び配列番号28を含む軽鎖可変領域(VL)、
(ii)配列番号20を含む重鎖可変領域(VH)及び配列番号22を含む軽鎖可変領域(VL)、
(iii)配列番号14を含む重鎖可変領域(VH)及び配列番号16を含む軽鎖可変領域(VL)、又は
(iv)配列番号9を含む重鎖可変領域(VH)及び配列番号11を含む軽鎖可変領域(VL)
を含む、方法。
【0026】
抗TIGIT抗体又はその抗原結合性フラグメントが、ヒトTIGITに特異的に結合する抗体抗原結合ドメインを含み、且つ配列番号32のHCDR1と配列番号33のHCDR2と配列番号34のHCDR3とを含む重鎖可変領域及び配列番号35のLCDR1と配列番号36のLCDR2と配列番号37のLCDR3とを含む軽鎖可変領域
を含む、方法。
【0027】
抗TIGIT抗体又はその抗原結合性フラグメントが、ヒトTIGITに特異的に結合する抗体抗原結合ドメインを含み、且つ配列番号39のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)及び配列番号41のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、方法。
【0028】
抗OX40抗体又はその抗原結合性フラグメントが、Fab、Fab’-SH、Fv、scFv、及び(Fab’)2フラグメントからなる群から選択される抗体フラグメントである、方法。
【0029】
抗TIGIT抗体又はその抗原結合性フラグメントが、Fab、Fab’-SH、Fv、scFv、及び(Fab’)2フラグメントからなる群から選択される抗体フラグメントである、方法。
【0030】
免疫反応を刺激することがT細胞又はNK細胞に関連する、方法。
【0031】
免疫反応を刺激することが抗原刺激に対する反応性の増加により特徴付けられる、方法。
【0032】
T細胞又はNK細胞が、増加したサイトカイン分泌、増殖、又は細胞溶解活性を有する、方法。
【0033】
T細胞がCD4+及びCD8+T細胞である、方法。
【0034】
投与が、治療の中止後に対象において持続免疫反応をもたらす、方法。
【0035】
一実施形態では、抗体又はその抗原結合性フラグメントは、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号13、配列番号18、配列番号19、配列番号24、及び配列番号25からなる群から選択されたアミノ酸配列を有する1つ以上の相補性決定領域(CDR)を含む。
【0036】
他の一実施形態では、抗体又はその抗原結合性フラグメントは、(a)配列番号3、配列番号4、配列番号13、配列番号18、配列番号24、及び配列番号5からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する1つ以上の相補性決定領域(HCDR)を含む重鎖可変領域、及び/又は(b)配列番号6、配列番号25、配列番号7、配列番号19、及び配列番号8からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する1つ以上の相補性決定領域(LCDR)を含む軽鎖可変領域を含む。
【0037】
他の一実施形態では、抗体又はその抗原結合性フラグメントは、(a)配列番号3のアミノ酸配列を有するHCDR1と、配列番号4、配列番号13、配列番号18、又は配列番号24のアミノ酸配列を有するHCDR2と、配列番号5のアミノ酸配列を有するHCDR3と、の3つの相補性決定領域(HCDR)を含む重鎖可変領域、及び/又は(b)配列番号6又は配列番号25のアミノ酸配列を有するLCDR1と、配列番号7又は配列番号19のアミノ酸配列を有するLCDR2と、配列番号8のアミノ酸配列を有するLCDR3と、の3つの相補性決定領域(LCDR)を含む軽鎖可変領域を含む。
【0038】
他の一実施形態では、抗体又はその抗原結合性フラグメントは、(a)配列番号3のアミノ酸配列を有するHCDR1と、配列番号4のアミノ酸配列を有するHCDR2と、配列番号5のアミノ酸配列を有するHCDR3と、若しくは配列番号3のアミノ酸配列を有するHCDR1と、配列番号13のアミノ酸配列を有するHCDR2と、配列番号5のアミノ酸配列を有するHCDR3と、若しくは配列番号3のアミノ酸配列を有するHCDR1と、配列番号18のアミノ酸配列を有するHCDR2と、配列番号5のアミノ酸配列を有するHCDR3と、若しくは配列番号3のアミノ酸配列を有するHCDR1と、配列番号24のアミノ酸配列を有するHCDR2と、配列番号5のアミノ酸配列を有するHCDR3と、の3つの相補性決定領域(HCDR)を含む重鎖可変領域、及び/又は(b)配列番号6のアミノ酸配列を有するLCDR1と、配列番号7のアミノ酸配列を有するLCDR2と、配列番号8のアミノ酸配列を有するLCDR3と、若しくは配列番号6のアミノ酸配列を有するLCDR1と、配列番号19のアミノ酸配列を有するLCDR2と、配列番号8のアミノ酸配列を有するLCDR3と、若しくは配列番号25のアミノ酸配列を有するLCDR1と、配列番号19のアミノ酸配列を有するLCDR2と、配列番号8のアミノ酸配列を有するLCDR3と、の3つの相補性決定領域(LCDR)を含む軽鎖可変領域を含む。
【0039】
他の一実施形態では、本開示の抗体又は抗原結合性フラグメントは、配列番号3のアミノ酸配列を有するHCDR1と、配列番号4のアミノ酸配列を有するHCDR2と、配列番号5のアミノ酸配列を有するHCDR3と、を含む重鎖可変領域、及び配列番号6のアミノ酸配列を有するLCDR1と、配列番号7のアミノ酸配列を有するLCDR2と、配列番号8のアミノ酸配列を有するLCDR3と、を含む軽鎖可変領域を含む。
【0040】
一実施形態では、本開示の抗体又は抗原結合性フラグメントは、配列番号3のアミノ酸配列を有するHCDR1と、配列番号13のアミノ酸配列を有するHCDR2と、配列番号5のアミノ酸配列を有するHCDR3と、を含む重鎖可変領域、及び配列番号6のアミノ酸配列を有するLCDR1と、配列番号7のアミノ酸配列を有するLCDR2と、配列番号8のアミノ酸配列を有するLCDR3と、を含む軽鎖可変領域を含む。
【0041】
他の一実施形態では、本開示の抗体又は抗原結合性フラグメントは、配列番号3のアミノ酸配列を有するHCDR1と、配列番号18のアミノ酸配列を有するHCDR2と、配列番号5のアミノ酸配列を有するHCDR3と、を含む重鎖可変領域、及び配列番号6のアミノ酸配列を有するLCDR1と、配列番号19のアミノ酸配列を有するLCDR2と、配列番号8のアミノ酸配列を有するLCDR3と、を含む軽鎖可変領域を含む。
【0042】
他の一実施形態では、本開示の抗体又は抗原結合性フラグメントは、配列番号3のアミノ酸配列を有するHCDR1と、配列番号24のアミノ酸配列を有するHCDR2と、配列番号5のアミノ酸配列を有するHCDR3と、を含む重鎖可変領域、及び配列番号25のアミノ酸配列を有するLCDR1と、配列番号19のアミノ酸配列を有するLCDR2と、配列番号8のアミノ酸配列を有するLCDR3と、を含む軽鎖可変領域を含む。
【0043】
一実施形態では、本開示の抗体又はその抗原結合性フラグメントは、(a)配列番号9、配列番号14、配列番号20、若しくは配列番号26のアミノ酸配列、又は配列番号9、配列番号14、配列番号20、若しくは配列番号26のいずれか1つに対して少なくとも95%、96%、97%、98%、若しくは99%同一のアミノ酸配列、を有する重鎖可変領域、及び/或いは(b)配列番号11、配列番号16、配列番号22、若しくは配列番号28のアミノ酸配列、又は配列番号11、配列番号16、配列番号22、若しくは配列番号28のいずれか1つに対して少なくとも95%、96%、97%、98%、若しくは99%同一のアミノ酸配列、を有する軽鎖可変領域を含む。
【0044】
他の一実施形態では、本開示の抗体又はその抗原結合性フラグメントは、(a)配列番号9、配列番号14、配列番号20、若しくは配列番号26のアミノ酸配列、又は配列番号9、配列番号14、配列番号20、若しくは配列番号26のアミノ酸配列中に1、2、若しくは3つのアミノ酸置換を有するアミノ酸配列、を有する重鎖可変領域、及び/又は(b)配列番号11、配列番号16、配列番号22、若しくは配列番号28のアミノ酸配列、又は配列番号11、配列番号16、配列番号22、若しくは配列番号28のアミノ酸中に1、2、3、4、若しくは5つのアミノ酸置換を有するアミノ酸配列、を有する軽鎖可変領域を含む。他の一実施形態では、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。
【0045】
一実施形態では、本開示の抗体又はその抗原結合性フラグメントは、
(a)配列番号9のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域及び配列番号11のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域、又は
(b)配列番号14のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域及び配列番号16のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域、又は
(c)配列番号20のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域及び配列番号22のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域、又は
(d)配列番号26のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域及び配列番号28のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域
を含む。
【0046】
一実施形態では、本開示の抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4アイソタイプである。より具体的な実施形態では、本開示の抗体は、野生型ヒトIgG1(ヒトIgG1wt又はhuIgG1としても参照される)又はIgG2のFcドメインを含む。他の一実施形態では、本開示の抗体は、S228P及び/又はR409K置換(EU番号付けシステムによる)を有するヒトIgG4のFcドメインを含む。
【0047】
一実施形態では、本開示の抗体は、1×10-6M~1×10-10Mの結合親和性(K)でOX40に結合する。他の一実施形態では、本開示の抗体は、約1×10-6M、約1×10-7M、約1×10-8M、約1×10-9M、又は約1×10-10Mの結合親和性(K)でOX40に結合する。
【0048】
他の一実施形態では、本開示の抗ヒトOX40抗体は、カニクイザルOX40に対する種交差結合活性を示す。
【0049】
一実施形態では、本開示の抗OX40抗体は、OX40-OX40L相互作用界面の外側のヒトOX40のエピトープに結合する。他の一実施形態では、本開示の抗OX40抗体は、OX40へのOX40リガンド結合と競合しない。さらに他の一実施形態では、本開示の抗OX40抗体は、OX40とそのリガンドOX40Lとの相互作用をブロックしない。
【0050】
本開示の抗体は、アゴニスティックであり、免疫反応を有意に増強する。ある実施形態では、本開示の抗体は、混合リンパ球反応(MLR)アッセイで初代T細胞を有意に刺激してIL-2を産生可能である。
【0051】
一実施形態では、本開示の抗体は、強いFc媒介エフェクター機能を有する。抗体は、NK細胞によるレギュラトリーT細胞(Treg細胞)などのOX40Hi標的細胞に対する抗体依存細胞性細胞傷害性(ADCC)を媒介する。一態様では、本開示は、異なるOX40発現レベルに基づいて特異的T細胞サブセットの抗OX40抗体媒介in vitro枯渇を評価する方法を提供する。
【0052】
本開示の抗体又は抗原結合性フラグメントは、OX40-OX40L相互作用をブロックしない。そのほか、OX40抗体は、動物モデルで示されるように、in vivoで用量依存抗腫瘍活性を呈する。用量依存活性は、OX40-OX40L相互作用をブロックする抗OX40抗体の活性プロファイルから区別される。
【0053】
本開示は、抗体又は抗原結合性フラグメントのアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む単離された核酸に関する。一実施形態では、単離された核酸は、配列番号10、配列番号15、配列番号21、若しくは配列番号27のVHヌクレオチド配列、又は配列番号10、配列番号15、配列番号21、若しくは配列番号27に対して少なくとも95%、96%、97%、98%、若しくは99%の同一性を有するヌクレオチド配列を含み、且つ本開示の抗体又は抗原結合性フラグメントのVH領域をコードする。代替的又は追加的に、単離された核酸は、配列番号12、配列番号17、配列番号23、若しくは配列番号29のVLヌクレオチド配列、又は配列番号12、配列番号17、配列番号23、若しくは配列番号29に対して少なくとも95%、96%、97%、98%、若しくは99%の同一性を有するヌクレオチド配列を含み、且つ本開示の抗体又は抗原結合性フラグメントのVL領域をコードする。
【0054】
さらに他の態様では、本開示は、抗TIGIT抗体又はその抗原結合性フラグメントとの組合せで、必要とする被験者にOX40抗体又はその抗原結合性フラグメント又はOX40抗体医薬組成物を治療有効量で投与することを含む、被験者において疾患を治療する方法に関する。他の実施形態では、抗TIGIT抗体との組合せの抗OX40抗体により治療される疾患は、癌又は自己免疫性疾患である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1】OX40-mIgG2a、OX40-huIgG1、及びOX40-His構築物の模式図である。OX40 ECD:OX40細胞外ドメイン。N:N末端。C:C末端。
図2】表面プラズモン共鳴(SPR)による精製されたキメラ(ch445)並びにヒト化(445-1、445-2、445-3、及び445-3IgG4)抗OX40抗体の親和性決定を示す。
図3】フローサイトメトリーによるOX40結合の決定を実証する。OX40陽性HuT78/OX40細胞は、各種抗OX40抗体(抗体ch445、445-1、445-2、445-3、及び445-3IgG4)とともにインキュベートされ、FACS解析に付された。結果は、平均蛍光強度(MFI、Y軸)により示される。
図4】フローサイトメトリーによるOX40抗体の結合を示す。HuT78/OX40及びHuT78/cynoOX40細胞は、抗体445-3で染色され、平均蛍光強度(MFI、Y軸において示された)は、フローサイトメトリーにより決定された。
図5】表面プラズモン共鳴(SPR)によるOX40野生型及び点突然変異体に対する445-3Fabの親和性決定を示す。
図6】抗体445-3とOX40上のそのエピトープとの間の詳細な相互作用を示す。抗体445-3及びOX40は、それぞれ、淡灰色及び黒色で描かれる。水素結合又は塩ブリッジ、パイ-パイスタッキング、及びファンデルワールス(VDW)相互作用は、それぞれ、破線、二重破線、及び実線で表される。
図7】抗体445-3がOX40L結合に干渉しないことを実証する。HEK293/OX40L細胞を染色する前に、OX40-マウスIgG2a(OX40-mIgG2a)融合タンパク質は、ヒトIgG(+HuIgG)、抗体445-3(+445-3)、又は抗体1A7.gr1(+1A7.gr1、米国特許出願公開第2015/0307617号明細書参照)とともに1:1のモル比でプレインキュベートされた。OX40-mIgG2a/抗OX40抗体複合体へのOX40Lの結合は、HEK293/OX40L細胞及びOX40-mIgG2a/抗OX40抗体複合体の共インキュベーション、続く抗マウスIgG二次Abとの反応及びフローサイトメトリーにより決定された。結果は、デュプリケートの平均±SDで示された。統計的有意性::P<0.05、**:P<0.01。
図8】報告されたOX40/OX40L複合体(PDBコード:2HEV)とともにOX40/445-3Fabの構造アライメントを示す。OX40Lは白色で示され、445-3Fabは灰色で示され、且つOX40は黒色で示される。
図9】抗OX40抗体445-3がTCR刺激との関連でIL-2産生を誘発することを示す。OX40陽性HuT78/OX40細胞(図9A)は、抗OX40抗体の存在下で人工抗原提示細胞(APC)系(HEK293/OS8Low-FcγRI)とともに一晩共培養され、IL-2産生は、T細胞刺激に対するリードアウトとして使用された(図9B)。培養上清中のIL-2は、ELISAにより検出された。結果は、トリプリケートの平均±SDで示される。
図10】抗OX40抗体がMLR反応を増強することを示唆する。in vitro分化樹状細胞(DC)は、抗OX40抗体(0.1~10μg/ml)の存在下で同種異系CD4T細胞とともに2日間共培養された。上清中のIL-2は、ELISAにより検出された。試験はすべて、クアドルプリケートで行われ、結果は、平均±SDとして示された。統計的有意性::P<0.05、**:P<0.01。
図11】抗OX40抗体445-3がADCCを誘発することを実証する。ADCCアッセイは、抗OX40抗体(0.004~3μg/ml)又はコントロールの存在下でエフェクター細胞としてNK92MI/CD16V細胞及び標的細胞としてHuT78/OX40細胞を用いて実施された。等しい数のエフェクター細胞及び標的細胞は、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)放出を検出する前に5時間にわたり共培養された。細胞傷害性のパーセンテージ(Y軸)は、実施例12に記載のように製造業者のプロトコルに基づいて計算された。結果は、トリプリケートの平均±SDで示される。
図12】NK細胞との組合せの抗OX40抗体445-3がin vitroの活性化PBMCでCD8エフェクターT細胞とTregとの比を増加させることを示す。ヒトPBMCは、PHA-L(1μg/ml)によりあらかじめ活性化され、次いで、抗OX40抗体又はコントロールの存在下でNK92MI/CD16V細胞とともに共培養された。異なるT細胞サブセットのパーセンテージは、フローサイトメトリーにより決定された。CD8エフェクターT細胞とTregとの比がさらに計算された。図12Aは、CD8+/合計T細胞比を示す。図12Bは、Treg/合計T細胞比である。図12Cは、CD8+/Treg比を示す。データは、デュプリケートの平均±SDとして示される。指示濃度での445-3と1A7.gr1との統計的有意性が示される。:P<0.05、**:P<0.01。
図13A】1A7.gr1ではなく抗OX40抗体445-3がOX40ヒト化マウスにおけるMC38結腸直腸癌同種同系モデルで用量依存抗腫瘍活性を明らかにすることを示す。MC38ネズミ結腸癌細胞(2×10)は、雌ヒトOX40トランスジェニックマウスにおいて皮下に植え込まれた。腫瘍体積によるランダム化後、動物は、抗OX40抗体又はアイソタイプコントロールのどちらかが指示通り週1回で3回腹腔内注射された。図13Aは、漸増用量の445-3抗体と漸増用量の1A7.gr1抗体とを比較するとともに、腫瘍成長の低減を比較する。
図13B】1A7.gr1ではなく抗OX40抗体445-3がOX40ヒト化マウスにおけるMC38結腸直腸癌同種同系モデルで用量依存抗腫瘍活性を明らかにすることを示す。MC38ネズミ結腸癌細胞(2×10)は、雌ヒトOX40トランスジェニックマウスにおいて皮下に植え込まれた。腫瘍体積によるランダム化後、動物は、抗OX40抗体又はアイソタイプコントロールのどちらかが指示通り週1回で3回腹腔内注射された。図13Bは、その具体的用量で治療されたすべてのマウスのデータを提示する。データは、6匹のマウス/群で平均腫瘍体積±平均の標準誤差(SEM)として提示される。統計的有意性::P<0.05vsアイソタイプコントロール。
図14A】OX40抗体で行われたアミノ酸改変の表である。
図14B】OX40抗体で行われたアミノ酸改変の表である。
図15】転移乳癌のマウスモデルにおける抗TIGIT抗体との組合せのOX40抗体の効能を示す。
【発明を実施するための形態】
【0056】
定義
本文書中の他の箇所に具体的な定義がない限り、本明細書で用いられる他の科学技術用語はすべて、当業者により通常理解される意味を有する。
【0057】
添付の特許請求の範囲を含めて、本明細書で用いられる場合、「a」、「an」、「the」などの語の単数形は、とくに文脈上明確に規定されない限り、それらの対応する複数形の参照語を含む。
【0058】
「or(又は)」という用語は、とくに文脈上明確に規定されない限り、「and/or(及び/又は)」という用語を意味するように用いられ、それと互換的に用いられる。
【0059】
本明細書で用いられる「抗癌剤」という用語は、限定されるものではないが、細胞傷害剤、化学療法剤、放射線療法及び放射線療法剤、標的化抗癌剤、及び免疫療法剤を含めて、癌などの細胞増殖障害の治療に使用可能ないずれかの作用剤を意味する。
【0060】
「OX40」という用語は、腫瘍壊死因子レセプタースーパーファミリーのメンバーであるおおよそ50KDのI型膜貫通糖タンパク質を意味する。OX40は、ACT35、CD134、又はTNFRSF4としても知られる。ヒトOX40のアミノ酸配列(配列番号1)は、アクセッション番号NP_003318にも見いだされうるとともに、OX40タンパク質をコードするヌクレオチド配列は、アクセッション番号:X75962.1である。「OX40リガンド」又は「OX40L」という用語は、OX40の唯一のリガンドを意味し、gp34、CD252、又はTNFSF4との互換性がある。
【0061】
本明細書中の「administration(投与)」、「administering(~を投与すること)」、「treating(~を治療すること)」、及び「treatment(治療)」という用語は、動物、ヒト、実験対象、細胞、組織、器官、又は生物学的流体に適用されるとき、外因性の医薬剤、治療剤、診断剤、又は組成物と、動物、ヒト、対象、細胞、組織、器官、又は生物学的流体と、の接触を意味する。細胞の治療は、細胞への試薬の接触、さらには流体が細胞に接触している場合には流体への試薬の接触を包含する。「administration(投与)」及び「treatment(治療)」という用語は、試薬、診断剤、結合性化合物による、又は他の細胞による、細胞などのin vitro及びex vivo治療も意味する。本明細書中の「対象」という用語は、いずれかの生物、好ましくは動物、より好ましくは哺乳動物(たとえば、ラット、マウス、イヌ、ネコ、ウサギ)、最も好ましくはヒトを含む。いずれかの疾患又は障害を治療することとは、一態様では、疾患又は障害を寛解させること(すなわち、疾患又はその臨床症状の少なくとも1つの発生を緩徐化又は停止又は低減すること)を意味する。他の一態様では、「treat(~を治療する)」、「treating(~を治療すること)」、又は「treatment(治療)」とは、患者により識別できないおそれのあるものを含めて、少なくとも1つの物理的パラメーターを軽減又は寛解することを意味する。さらに他の一態様では、「treat(~を治療する)」、「treating(~を治療すること)」、又は「treatment(治療)」とは、疾患又は障害を物理的に(たとえば、識別可能な症状の安定化)、生理学的に(たとえば、物理的パラメーターの安定化)、又はその両方のどれかをモジュレートすることを意味する。さらに他の一態様では、「treat(~を治療する)」、「treating(~を治療すること)」、又は「treatment(治療)」とは、疾患又は障害の発症又は発生又は進行を予防又は遅延することを意味する。
【0062】
本開示との関連での「対象」という用語は、哺乳動物、たとえば霊長動物、好ましくは高等霊長動物、たとえばヒト(たとえば、本明細書に記載の障害を有する又は有するリスクのある患者)のことである。
【0063】
本明細書で用いられる「親和性」という用語は、抗体と抗原との相互作用の強度を意味する。抗原内では、抗体「アーム」の可変領域が非共有結合力を介して数多くの部位で抗原と相互作用し、相互作用が大きくなるほど親和性は強くなる。
【0064】
本明細書で用いられる「抗体」という用語は、対応する抗原に非共有結合で、可逆的に、且つ特異的に結合可能であるイムノグロブリンファミリーのポリペプチドを意味する。たとえば、天然に存在するIgG抗体は、ジスルフィド結合により相互接続された少なくとも2本の重(H)鎖と2本の軽(L)鎖とを含むテトラマーである。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVHと略記される)と重鎖定常領域とで構成される。重鎖定常領域は、3つのドメインCH1、CH2、及びCH3で構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVLと略記される)と軽鎖定常領域とで構成される。軽鎖定常領域は、1つのドメインCLで構成される。VH及びVL領域は、フレームワーク領域(FR)と称されるより保存された領域が介在する相補性決定領域(CDR)と称される超可変性領域にさらに細分可能である。各VH及びVLは、アミノ末端からカルボキシル末端へ次の順序で配置された3つのCDR及び4つのFR、すなわち、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、及びFR4で構成される。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合性ドメインを含有する。抗体の定常領域は、免疫系の各種細胞(たとえばエフェクター細胞)及び古典的補体系の第1成分(C1q)をはじめとする宿主組織又は因子へのイムノグロブリンの結合を媒介可能である。
【0065】
「抗体」という用語は、限定されるものではないが、モノクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、及び抗イディオタイプ(抗Id)抗体を含む。抗体は、いずれかのアイソタイプ/クラス(たとえば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、及びIgY)又はサブクラス(たとえば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2)でありうる。
【0066】
いくつかの実施形態では、抗OX40抗体は、少なくとも1つの抗原結合性部位又は少なくとも可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗OX40抗体は、本明細書に記載のOX40抗体由来の抗原結合性フラグメントを含む。いくつかの実施形態では、抗OX40抗体は、単離されているか又は組換えである。
【0067】
本明細書中の「モノクローナル抗体」又は「mAb」又は「Mab」という用語は、実質的に均一な抗体の集団を意味する。すなわち、集団に含まれる抗体分子は、マイナー量で存在しうる天然に存在する可能性のある突然変異を除いてアミノ酸配列が同一である。これとは対照的に、従来の(ポリクローナル)抗体調製物は、典型的には、その可変ドメインに、とくに、異なるエピトープに対して特異的であることの多いその相補性決定領域(CDR)に、異なるアミノ酸配列を有する多種多様な抗体を含む。「モノクローナル」という修飾語は、抗体の実質的に均一な集団から得られる抗体の特性を意味し、いかなる特定の方法による抗体の産生も必要とみなされるべきではない。モノクローナル抗体(mAb)は、当業者に公知の方法により得ることが可能である。たとえば、Kohler et al.,Nature 1975 256:495-497、米国特許第4,376,110号明細書、Ausubel et al.,CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY 1992、Harlow et al.,ANTIBODIES:A LABORATORY MANUAL,Cold spring Harbor Laboratory 1988、及びColligan et al.,CURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGY 1993を参照されたい。本明細書に開示される抗体は、IgG、IgM、IgD、IgE、IgAを含むいずれかのイムノグロブリンクラス、及びIgG1、IgG2、IgG3、IgG4などのそれらのいずれかのサブクラスでありうる。モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、in vitro又はin vivoで培養可能である。高力価のモノクローナル抗体は、in vivo産生で得ることが可能であり、この場合、個別ハイブリドーマ由来の細胞は、高濃度の所望の抗体を含有する腹水を生成するプリスティンプライムBalb/cマウスなどのマウスに腹腔内注射される。アイソタイプIgM又はIgGのモノクローナル抗体は、当業者に周知のカラムクロマトグラフィー法を用いてかかる腹水から又は培養上清から精製可能である。
【0068】
一般的には、基本抗体構造単位はテトラマーを含む。各テトラマーは、ポリペプチド鎖の2つの同一対を含み、各対は、1本の「軽鎖」(約25kDa)と1本の「重鎖」(約50~70kDa)とを有する。各鎖のアミノ末端部分は、主に抗原認識に関与する約100~110アミノ酸又はそれ以上の可変領域を含む。重鎖のカルボキシ末端部分は、主にエフェクター機能に関与する定常領域を定義可能である。典型的には、ヒト軽鎖は、カッパ及びラムダ軽鎖として分類される。さらに、ヒト重鎖は、典型的には、α、δ、ε、γ、又はμとして分類され、且つ抗体のアイソタイプをそれぞれIgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMとして定義する。軽鎖内及び重鎖内では、可変領域及び定常領域は、約12アミノ酸又はそれ以上の「J」領域により接合され、重鎖は、約10アミノ酸以上の「D」領域も含む。
【0069】
各軽鎖/重鎖(VL/VH)対の可変領域は、抗体結合性部位を形成する。そのため、一般的には、インタクト抗体は2つの結合性部位を有する。二機能性抗体又は二重特異的抗体以外は、2つの結合性部位は一般的には同一である。
【0070】
典型的には、重鎖及び軽鎖の両方の可変ドメインは、比較的保存されたフレームワーク領域(FR)間に位置する「相補性決定領域」(CDR)とも呼ばれる3つの超可変領域を含む。CDRは、通常はフレームワーク領域によりアライメントされ、特異的エピトープへの結合を可能にする。一般的には、N末端からC末端へ、軽鎖及び重鎖可変ドメインは両方とも、FR-1(又はFR1)、CDR-1(又はCDR1)、FR-2(FR2)、CDR-2(CDR2)、FR-3(又はFR3)、CDR-3(CDR3)、及びFR-4(又はFR4)を含む。CDR及びフレームワーク領域の位置は、当技術分野での周知の各種定義、たとえば、Kabat、Chothia、及びAbMを用いて決定可能である(たとえば、Johnson et al.,Nucleic Acids Res.,29:205-206(2001)、Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.,196:901-917(1987)、Chothia et al.,Nature,342:877-883(1989)、Chothia et al.,J.Mol.Biol.,227:799-817(1992)、Al-Lazikani et al.,J.Mol.Biol.,273:927-748(1997)を参照されたい)。抗原結合性部位の定義もまた、次のRuiz et al.,Nucleic Acids Res.,28:219-221(2000)、及びLefranc,M.P.,Nucleic Acids Res.,29:207-209(2001)、MacCallum et al.,J.Mol.Biol.,262:732-745(1996)、及びMartin et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86:9268-9272(1989)、Martin et al.,Methods Enzymol.,203:121-153(1991)、及びRees et al.,In Sternberg M.J.E.(ed.),Protein Structure Prediction,Oxford University Press,Oxford,141-172(1996)に記載されている。組合せKabat及びChothia番号付けスキームでは、いくつかの実施形態では、CDRは、Kabat CDR、Chothia CDR、又はその両方の一部であるアミノ酸残基に対応する。たとえば、CDRは、VH、たとえば哺乳動物VH、たとえばヒトVHでは、アミノ酸残基26~35(HC CDR1)、50~65(HC CDR2)、及び95~102(HC CDR3)、並びにVL、たとえば哺乳動物VL、たとえばヒトVLでは、アミノ酸残基24~34(LC CDR1)、50~56(LC CDR2)、及び89~97(LC CDR3)に対応する。
【0071】
「超可変領域」という用語は、抗原結合に関与する抗体のアミノ酸残基を意味する。超可変領域は、「CDR」由来のアミノ酸残基(すなわち、軽鎖可変ドメインのVL-CDR1、VL-CDR2、及びVL-CDR3、並びに重鎖可変ドメインのVH-CDR1、VH-CDR2、及びVH-CDR3及び)を含む。Kabat et al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(配列により抗体のCDR領域を定義する)を参照されたい。また、Chothia and Lesk(1987)J.Mol.Biol.196:901-917(構造により抗体のCDR領域を定義する)も参照されたい。「フレームワーク」又は「FR」残基という用語は、CDR残基として本明細書で定義される超可変領域残基以外の可変ドメイン残基を意味する。
【0072】
とくに指示がない限り、「抗原結合性フラグメント」とは、抗体の抗原結合性フラグメント、すなわち、全長抗体により結合される抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体フラグメント、たとえば、1つ以上のCDR領域を保持するフラグメントを意味する。抗原結合性フラグメントの例としては、限定されるものではないが、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFvフラグメント、ダイアボディー、線状抗体、一本鎖抗体分子、たとえば、一本鎖Fv(ScFv)、ナノボディー、並びに抗体フラグメントから形成される多重特異的抗体が挙げられる。
【0073】
抗体は、標的タンパク質に「特異的に結合する」。つまり、抗体は、他のタンパク質と比較して、その標的への優先的結合を呈する。ただし、この特異性は、絶対的結合特異性を必要とするわけではない。抗体は、その結合がサンプル中の標的タンパク質の存在の決定因子であれば、たとえば、偽陽性などの望ましくない結果を生じることがなければ、その意図される標的に対して「特異的である」とみなされる。本開示に有用な抗体又はその抗原結合性フラグメントは、非標的タンパク質との親和性の少なくとも2倍、好ましくは少なくとも10倍、より好ましくは少なくとも20倍、最も好ましくは少なくとも100倍の親和性で標的タンパク質に結合するであろう。本明細書中の抗体は、それが所与のアミノ酸配列を含むポリペプチドには結合するが、その配列の欠如したタンパク質には結合しないならば、所与のアミノ酸配列、たとえば、ヒトOX40分子のアミノ酸配列を含むポリペプチドに特異的に結合すると言われる。
【0074】
本明細書中の「ヒト抗体」という用語は、ヒトイムノグロブリンタンパク質配列のみを含む抗体を意味する。ヒト抗体は、マウスで、マウス細胞で、又はマウス細胞に由来するハイブリドーマで産生されるのであれば、ネズミ炭水化物鎖を含有可能である。同様に、「マウス抗体」又は「ラット抗体」とは、それぞれ、マウス又はラットのイムノグロブリンタンパク質配列のみを含む抗体を意味する。
【0075】
「ヒト化抗体」という用語は、非ヒト(たとえばネズミ)抗体さらにはヒト抗体に由来する配列を含有する抗体の形態を意味する。かかる抗体は、非ヒトイムノグロブリンに由来する最小限の配列を含有する。一般的には、ヒト化抗体は、超可変ループのすべて又は実質的にすべてが非ヒトイムノグロブリンものに対応し、且つFR領域のすべて又は実質的にすべてがヒトイムノグロブリン配列のものである、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的にすべてを含むであろう。ヒト化抗体はまた、任意に、イムノグロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部分、典型的にはヒトイムノグロブリンのものを含むであろう。接頭辞「hum」、「hu」、「Hu」、又は「h」は、親齧歯動物抗体からヒト化抗体を区別する必要があるときに抗体クローン指定に付加される。齧歯動物抗体のヒト化形態は、一般に、親齧歯動物抗体と同一のCDR配列を含むであろうが、ヒト化抗体の親和性の増加、安定性の増加、翻訳後修飾の除去のために、又は他の理由で、ある特定のアミノ酸置換を含むことが可能である。
【0076】
本明細書で用いられる場合、「非競合」という用語は、抗体結合が存在し且つレセプターへのリガンド結合に干渉しないことを意味する。
【0077】
「対応するヒト生殖系配列」という用語は、ヒト生殖系イムノグロブリン可変領域配列によりコードされるすべての他の既知の可変領域アミノ酸配列と比較して、参照可変領域アミノ酸配列又はサブ配列に対して最高の決定されたアミノ酸配列同一性を共有するヒト可変領域アミノ酸配列又はサブ配列をコードする核酸配列を意味する。対応するヒト生殖系配列はまた、すべての他の評価された可変領域アミノ酸配列と比較して、参照可変領域アミノ酸配列又はサブ配列に対して最高アミノ酸配列同一性を有するヒト可変領域アミノ酸配列又はサブ配列も意味しうる。対応するヒト生殖系配列は、フレームワーク領域のみ、相補性決定領域のみ、フレームワーク及び相補性決定領域、可変セグメント(以上に定義される)、又は可変領域を構成する配列又はサブ配列の他の組合せでありうる。配列同一性は、本明細書に記載の方法を用いて、たとえば、BLAST、ALIGN、又は当技術分野で公知の他のアライメントアルゴリズムを用いて2つの配列をアライメントすることにより決定可能である。対応するヒト生殖系核酸又はアミノ酸配列は、参照可変領域核酸又はアミノ酸配列に対して、少なくとも約90%、91、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有することが可能である。
【0078】
「平衡解離定数」(K、M)という用語は、解離速度定数(kd、時間-1)を会合速度定数(ka、時間-1、M-1)で除算したものを意味する。平衡解離定数は、当技術分野で公知の任意の方法を用いて測定可能である。本開示の抗体は、一般に、約10-7又は10-8M未満、たとえば、約10-9M又は10-10M未満、いくつかの態様では、約10-11M、10-12M、又は10-13M未満の平衡解離定数を有するであろう。
【0079】
本明細書中の「癌」又は「腫瘍」という用語は、当技術分野で理解される最広義の意味を有し、典型的には無制御の細胞成長により特徴付けられる哺乳動物の生理学的状態を意味する。本開示との関連では、癌は、ある特定のタイプ又は位置に制限されない。
【0080】
「組合せ療法」という用語は、本開示に記載の治療対象の病態又は障害を治療するために2種以上の治療剤を投与することを意味する。かかる投与は、実質的に同時のこれらの治療剤の共投与を包含する。かかる投与はまた、複数回での又は各活性成分に対して個別容器(たとえば、カプセル剤、粉末剤、及び液体剤)での共投与を包含する。粉末剤及び/又は液体剤は、投与前に所望の用量に再構成又は希釈することが可能である。そのほか、かかる投与はまた、おおよそ同時又は異なる時点のどちらかの各タイプの治療剤の逐次的使用を包含する。どの場合でも、治療レジメンは、本明細書に記載の病態又は障害を治療するうえで薬剤の組合せの有益な効果を提供するであろう。
【0081】
本開示との関連では、アミノ酸配列を参照するとき、「保存的置換」という用語は、抗体又はフラグメントの化学性、物理性、及び/又は機能性、たとえば、OX40へのその結合親和性を実質的に改変しない新しいアミノ酸による元のアミノ酸の置換を意味する。具体的には、アミノ酸の通常の保存的置換は、以下の表に示され、当技術分野で周知である。
【0082】
【表1】
【0083】
パーセント配列同一性及び配列類似性の決定に好適なアルゴリズムの例としては、BLASTアルゴリズムが挙げられ、それぞれ、Altschul et al,Nuc.Acids Res.25:3389-3402,1977、及びAltschul et al.,J.Mol.Biol.215:403-410,1990に記載されている。BLAST解析を実施するためのソフトウェアは、国立バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information)を介して一般公開されている。このアルゴリズムは、最初に、データベース配列中の同一長さのワードにアライメントとしたときになんらかの正値の閾値スコアTにマッチするか又はそれを満足するかのどちらかであるクエリー配列中の長さWのショートワードを同定することにより、高スコアリング配列対(HSP)を同定することが関与する。Tは、近傍ワードスコア閾値といわれる。これらの初期近傍ワードヒットは、それらを含有するより長いHSPを見いだす検索を開始するための値として作用する。ワードヒットは、累積アラインメントスコアが増加可能である限り、各配列に沿って両方向に伸長される。累積スコアは、ヌクレオチド配列では、パラメーターM(マッチング残基対に対するリワードスコア、常に>0)及びN(ミスマッチング残基に対するペナルティースコア、常に<0)を用いて計算される。アミノ酸配列では、累積スコアを計算するためにスコアリングマトリックスが使用される。各方向へのワードヒットの伸長は、累積アライメントスコアがその最大達成値から量Xだけ低下したとき、1つ以上の負スコアリング残基アライメントの蓄積に起因して累積スコアがゼロ以下に移行したとき、又はどちらの配列も末端に達したとき、停止される。BLASTアルゴリズムパラメーターW、T、及びXは、アライメントの感度及びスピードを決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列に対して)は、ワード長(W)11、期待値(E)10、M=5、N=-4、及び両方の鎖の比較をデフォルトとして用いる。アミノ酸配列では、BLASTプログラムは、ワード長3、及び期待値(E)10、並びにBLOSUM62スコアリングマトリックス(Henikoff and Henikoff,(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915を参照されたい)アライメント(B)50、期待値(E)10、M=5、N=-4、及び両方の鎖の比較をデフォルトとして使用する。
【0084】
BLASTアルゴリズムはまた、2つの配列間の類似性の統計解析も実施する(たとえば、Karlin and Altschul,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873-5787,1993を参照されたい)。BLASTアルゴリズムにより提供される類似性の1つの尺度は、2つのヌクレオチド配列間又はアミノ酸配列間のマッチが偶然に発生する確率の指標を提供する最小和確率(P(N))である。たとえば、試験核酸と参照核酸との比較の最小和確率が約0.2未満、より好ましくは約0.01未満、最も好ましくは約0.001未満であれば、核酸は参照配列に類似してみなされる。
【0085】
2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性はまた、PAM120重み残基表、ギャップ長ペナルティー12、及びギャップペナルティー4を用いて、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれたE.Meyers and W.Miller,Comput.Appl.Biosci.4:11-17,(1988)のアルゴリズムにより決定可能である。そのほか、2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性は、BLOSUM62マトリックス又はPAM250マトリックスのどちらか、並びにギャップ重み16、14、12、10、8、6、又は4、及び長さ重み1、2、3、4、5、又は6を用いて、GCGソフトウェアパッケージ中のGAPプログラムに組み込まれたNeedleman and Wunsch,J.Mol.Biol.48:444-453,(1970)アルゴリズムにより決定可能である。
【0086】
「核酸」という用語は、本明細書では「ポリヌクレオチド」という用語と互換的に用いられ、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド及び一本鎖又は二本鎖のどちらかの形態のそれらのポリマーを意味する。この用語は、合成の、天然に存在する、及び天然に存在しない、参照核酸と類似の結合性を有する、並びに参照ヌクレオチドに類似した形で代謝される、公知のヌクレオチドアナログ又は修飾骨格残基又は連結を含有する核酸を包含する。かかるアナログの例としては、限定されるものではないが、ホスホロチオエート、ホスホルアミデート、メチルホスホネート、キラルメチルホスホネート、2-O-メチルリボヌクレオチド、ペプチド核酸(PNA)が挙げられる。
【0087】
核酸との関連での「作動可能に連結された」という用語は、2つ以上のポリヌクレオチド(たとえばDNA)セグメント間の機能的関係を意味する。典型的には、それは、転写配列に対する転写レギュラトリー配列の機能的関係を意味する。たとえば、プロモーター配列又はエンハンサー配列は、それが適切な宿主細胞又は他の発現システムでコード配列の転写を刺激又はモジュレートするならば、コード配列に作動可能に連結されている。一般に、転写配列に作動可能に結合されたプロモーター転写レギュラトリー配列は、転写配列に物理的に連続する。すなわち、それらはシス作用性である。しかしながら、エンハンサーなどのいくつかの転写レギュラトリー配列は、その転写を増強するコード配列に物理的に連続する必要もなければ密に近接して位置する必要もない。
【0088】
いくつかの態様では、本開示は、組成物、たとえば、少なくとも1種の薬学的に許容可能な賦形剤と一緒に製剤化された、本明細書に記載の抗OX40抗体を含む薬学的に許容可能な組成物を提供する。本明細書で用いられる場合、「薬学的に許容可能な賦形剤」という用語は、生理学的に適合可能であるいかなる溶媒、分散媒、等張化剤、及び吸収遅延剤もすべて含む。賦形剤は、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、非経口投与、直腸投与、脊髄投与、又は表皮投与(たとえば、注射又は注入による)に好適でありうる。
【0089】
本明細書に開示される組成物は、さまざまな形態でありうる。こうしたものとしては、たとえば、液状、半固形、及び固形製剤、たとえば、液状溶液剤(たとえば、注射用及び注入用溶液剤)、ディスパージョン剤又はサスペンジョン剤、リポソーム剤、及び坐剤が挙げられる。好適な形態は、意図される投与モード及び治療用途に依存する。典型的な好適な組成物は、注射用又は注入用溶液剤の形態である。1つの好適な投与モードは非経口である(たとえば、静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内)。いくつかの実施形態では、抗体は、静脈内注入又は注射により投与される。ある特定の実施形態では、抗体は、筋肉内又は皮下注射により投与される。
【0090】
本明細書で用いられる「治療有効量」という用語は、疾患又は疾患若しくは障害の臨床症状の少なくとも1つを治療するために対象に投与するときに、疾患、障害、又は症状に対してかかる治療を行うのに十分な抗体量を意味する。「治療有効量」は、抗体、疾患、障害、及び/又は疾患若しくは障害の症状、疾患、障害、及び/又は疾患若しくは障害の症状の重症度、治療される対象の年齢、及び/又は治療される対象の体重によって異なりうる。いずれの所与の場合の適切量も、当業者には明らかでありうるか、又はルーチンの実験により決定可能である。組合せ療法の場合には、「治療有効量」は、疾患、障害、又は病態の有効治療に見合った組合せ対象物の合計量を意味する。
【0091】
本明細書で用いられる場合、「~との組合せで」という語句は、抗TIGIT抗体又は結合性フラグメントの投与と同時に、その前に、又はその後に抗OX40抗体又は結合性フラグメントが対象に投与されることを意味する。ある特定の実施形態では、抗OX40抗体又は結合性フラグメントは、抗TIGIT抗体又は結合性フラグメントとの共製剤として投与される。
【0092】
詳細な説明
抗TIGIT抗体
本開示は、VSIG9及びVSTM3(GenBank受託番号NM_173799を参照されたい)としても知られるヒトTIGITに特異的に結合する抗体、抗原結合性フラグメントを提供する。さらに、本開示は、望ましい薬動学的特性及び他の望ましい属性を有し、ひいては癌の可能性を減少させるために又は癌を治療するために使用可能である、抗体を提供する。本開示は、抗体を含む医薬組成物、並びに癌及び関連障害の予防及び治療のためにかかる医薬組成物を作製及び使用する方法、をさらに提供する。
【0093】
本開示の抗TIGIT抗体は、国際公開第2019/129261号パンフレットに見いだされうる。また、本明細書には、ヒトTIGITに特異的に結合する抗体抗原結合ドメインを含み、且つ相補性決定領域(CDR):配列番号32に示されるアミノ酸配列を含むHCDR1と配列番号33に示されるアミノ酸配列を含むHCDR2と配列番号34に示されるアミノ酸配列を含むHCDR3とを含む重鎖可変領域(VH)及び配列番号35に示されるアミノ酸配列を含むLCDR1と配列番号36に示されるアミノ酸配列を含むLCDR2と配列番号37に示されるアミノ酸配列を含むLCDR3とを含む軽鎖可変領域(VL)を含む、抗TIGIT抗体も提供される。他の一実施形態では、抗TIGIT抗体は、ヒトTIGITに特異的に結合する抗体抗原結合ドメインを含み、且つ配列番号39のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)及び配列番号41のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0094】
抗OX40抗体
本開示は、ヒトOX40に特異的に結合する抗体、抗原結合性フラグメントを提供する。さらに、本開示は、望ましい薬動学的特性及び他の望ましい属性を有し、ひいては癌の可能性を減少させるために又は癌を治療するために使用可能である、抗体を提供する。本開示は、抗体を含む医薬組成物、並びに癌及び関連障害の予防及び治療のためにかかる医薬組成物を作製及び使用する方法、をさらに提供する。
【0095】
本開示は、OX40に特異的に結合する抗体又はその抗原結合性フラグメントを提供する。本開示の抗体又は抗原結合性フラグメントは、限定されるものではないが、以下に記載のように発生させた抗体又はその抗原結合性フラグメントを含む。
【0096】
本開示は、OX40に特異的に結合する抗体又は抗原結合性フラグメントであって、抗体又は抗体フラグメント(たとえば抗原結合性フラグメント)が、配列番号14、20、又は26のアミノ酸配列を有するVHドメイン(表3)を含む、抗体又は抗原結合性フラグメントを提供する。本開示はまた、OX40に特異的に結合する抗体又は抗原結合性フラグメントであって、抗体又は抗原結合性フラグメントが、表3に列挙されるVH CDRのいずれか1つのアミノ酸配列を有するVH CDRを含む、抗体又は抗原結合性フラグメントを提供する。一態様では、本開示は、OX40に特異的に結合する抗体又は抗原結合性フラグメントであって、抗体が、表3に列挙されるVH CDRのいずれかのアミノ酸配列を有する1、2、3、又はそれ以上のVH CDRを含む(又は代替的にそれからなる)、抗体又は抗原結合性フラグメントを提供する。
【0097】
本開示は、OX40に特異的に結合する抗体又は抗原結合性フラグメントであって、抗体又は抗原結合性フラグメントが、配列番号16、22、又は28のアミノ酸配列を有するVLドメイン(表3)を含む、抗体又は抗原結合性フラグメントを提供する。本開示はまた、OX40に特異的に結合する抗体又は抗原結合性フラグメントであって、抗体又は抗原結合性フラグメントが、表3に列挙されるVL CDRのいずれか1つのアミノ酸配列を有するVL CDRを含む、抗体又は抗原結合性フラグメントを提供する。特定的には、本開示は、OX40に特異的に結合する抗体又は抗原結合性フラグメントであって、抗体又は抗原結合性フラグメントが、表3に列挙されるVL CDRのいずれかのアミノ酸配列を有する1、2、3、又はそれ以上のVL CDRを含む(又は代替的にそれからなる)、抗体又は抗原結合性フラグメントを提供する。
【0098】
本開示の他の抗体又はその抗原結合性フラグメントは、突然変異されているが、表3に記載の配列に表されるCDR領域に対して少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、又は99%のCDR領域パーセント同一性を有する、アミノ酸を含む。いくつかの態様では、それは、表3に記載の配列に表されるCDR領域と比較したときにCDR領域で1、2、3、4、又は5アミノ酸以下が突然変異されている、突然変異体アミノ酸配列を含む。
【0099】
本開示の他の抗体は、アミノ酸又はアミノ酸をコードする核酸が突然変異されているが、表3に記載の配列に対して少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、又は99%のパーセント同一性を有するものを含む。いくつかの態様では、それは、実質的に同一の治療的活性を保持しつつ、表3に記載の配列に表される可変領域と比較したときに可変領域で1、2、3、4、又は5アミノ酸以下が突然変異されている、突然変異体アミノ酸配列を含む。
【0100】
本開示はまた、OX40に特異的に結合する抗体のVH、VL、全長重鎖、及び全長軽鎖をコードする核酸配列を提供する。かかる核酸配列は、哺乳動物細胞で発現させるように最適化可能である。
【0101】
エピトープ及び同一エピトープに結合する抗体の同定
本開示は、ヒトOX40のエピトープに結合する抗体及びその抗原結合性フラグメントを提供する。ある特定の態様では、抗体及び抗原結合性フラグメントは、OX40の同一エピトープに結合可能である。
【0102】
本開示はまた、表3に記載の抗OX40抗体が結合するのと同一のエピトープに結合する抗体及びその抗原結合性フラグメントを提供する。したがって、追加の抗体及びその抗原結合性フラグメントは、結合アッセイで他の抗体と交差競合する(たとえば、統計的に有意にその結合を競合阻害する)それらの能力に基づいて同定可能である。OX40への本開示の抗体及びその抗原結合性フラグメントの結合を阻害する試験抗体の能力は、OX40への結合に関してその抗体又はその抗原結合性フラグメントと試験抗体が競合可能であることを実証する。かかる抗体は、いかなる一理論にも拘束されるものではないが、それが競合する抗体又は抗原結合性フラグメントとOX40上の同一の又は関連する(たとえば、構造的に類似した又は空間的に近接した)エピトープに結合可能である。ある特定の態様では、本開示の抗体又はその抗原結合性フラグメントとOX40上の同一のエピトープに結合する抗体は、ヒト又はヒト化モノクローナル抗体である。
かかるヒト又はヒト化モノクローナル抗体は、本明細書に記載のように調製及び単離が可能である。
【0103】
Fc領域のフレームワークのさらなる改変
さらに他の態様では、Fc領域は、抗体のエフェクター機能を改変するために、少なくとも1つのアミノ酸残基を異なるアミノ酸残基に置き換えることにより改変される。たとえば、抗体がエフェクターリガンドに対する改変された親和性を有するが親抗体の抗原結合能を保持するように、1つ以上のアミノ酸を異なるアミノ酸残基と置き換えることが可能である。親和性が改変されるエフェクターリガンドは、たとえば、Fcレセプター又はC1補体成分でありうる。このアプローチは、たとえば、両方ともWinterらにより米国特許第5,624,821号明細書及び同第5,648,260号明細書に記載されている。
【0104】
他の一態様では、抗体が改変されたC1q結合及び/又は低減若しくは消失された補体依存細胞傷害性(CDC)を有するように、1つ以上のアミノ酸残基を1つ以上の異なるアミノ酸残基と置き換えることが可能である。このアプローチは、たとえば、Idusogieらにより米国特許第6,194,551号明細書に記載されている。
【0105】
さらに他の一態様では、1つ以上のアミノ酸残基を改変することにより、補体を固定する抗体の能力を改変する。このアプローチは、たとえば、BodmerらによりPCT国際公開第94/29351号パンフレットに記載されている。具体的態様では、IgG1サブクラス及びカッパアイソタイプに対して、本開示の抗体又はその抗原結合性フラグメントの1つ以上のアミノ酸を1つ以上のアロタイプアミノ酸残基と置き換える。アロタイプアミノ酸残基はまた、限定されるものではないが、Jefferis et al.,MAbs.1:332-338(2009)に記載されるように、IgG1、IgG2、及びIgG3サブクラスの重鎖の定常領域、さらにはカッパアイソタイプの軽鎖の定常領域を含む。
【0106】
他の一態様では、抗体依存細胞性細胞傷害性(ADCC)を媒介する抗体の能力を増加させるために及び/又はFcγレセプターに対する抗体の親和性を増加させるために、1つ以上のアミノ酸を修飾することによりFc領域を修飾する。このアプローチは、たとえば、PrestaによりPCT国際公開第00/42072号パンフレットに記載されている。そのうえ、FcγRI、FcγRII、FcγRIII、及びFcRnに対するヒトIgG1上の結合性部位がマッピングされており、改善された結合を有する変異体が記載されている(Shields et al.,J.Biol.Chem.276:6591-6604,2001を参照されたい)。
【0107】
さらに他の一態様では、抗体のグリコシル化が修飾される。たとえば、アグリコシル化抗体を作製可能である(すなわち、抗体は、グリコシル化を欠如するか、又は低減されたグリコシル化を有する)。グリコシル化は、たとえば、「抗原」への抗体の親和性を増加させるように改変可能である。かかる炭水化物修飾は、たとえば、抗体配列内の1つ以上のグリコシル化部位を改変することにより、達成可能である。たとえば、1つ以上のアミノ酸置換を行って、結果として、1つ以上の可変領域フレームワークグリコシル化部位を排除することにより、その部位でグリコシル化を排除することが可能である。かかるアグリコシル化は、抗原に対する抗体の親和性を増加させることが可能である。かかるアプローチは、たとえば、Coらにより米国特許第5,714,350号明細書及び同第6,350,861号明細書に記載されている。
【0108】
追加的又は代替的に、低減量のフコシル残基を有する低フコシル化抗体や増加した二分岐化GlcNac構造を有する抗体などの改変タイプのグリコシル化を有する抗体を作製可能である。かかる改変グリコシル化パターンは、抗体のADCC能を増加させることが実証されている。かかる炭水化物修飾は、たとえば、改変グリコシル化機構を有する宿主細胞内で抗体を発現することにより達成可能である。改変グリコシル化機構を有する細胞は、当技術分野で記載されており、組換え抗体を発現させることにより改変グリコシル化を有する抗体を産生する宿主細胞として使用可能である。たとえば、Hangらによる欧州特許第1,176,195号明細書には、フコシルトランスフェラーゼをコードするFUT8遺伝子が機能的に破壊された細胞系が記載されており、その結果として、かかる細胞系で発現される抗体は低フコシル化を呈する。PrestaによるPCT国際公開第03/035835号パンフレットには、Asn(297)連結炭水化物にフコースを装着する能力が低減された変異体CHO細胞系Lecl3細胞が記載されており、これもまた、その宿主細胞で発現される抗体の低フコシル化をもたらす(Shields et al.,(2002)J.Biol.Chem.277:26733-26740も参照されたい)。UmanaらによるPCT国際公開第99/54342号パンフレットには、糖タンパク質修飾グリコシルトランスフェラーゼ(たとえば、ベータ(1,4)-NアセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII))を発現するように工学操作された細胞系が記載されており、その結果として、工学操作細胞系で発現される抗体は、抗体のADCC活性の増加をもたらす増加した二分岐化GlcNac構造を呈する(Umana et al.,Nat.Biotech.17:176-180,1999も参照されたい)。
【0109】
他の一態様では、ADCCの低減が望まれる場合、ヒト抗体サブクラスIgG4は、ごく限られたADCCを有し且つほとんどCDCエフェクター機能を有しないことが多くの既報で示された(Moore G L,et al.2010 MAbs,2:181-189)。一方、天然IgG4は、酸性緩衝液中や昇温下などのストレス条件でそれほど安定でないことが判明した(Angal,S.1993 Mol Immunol,30:105-108、Dall’Acqua,W.et al,1998 Biochemistry,37:9266-9273、Aalberse et al.2002 Immunol,105:9-19)。ADCCの低減は、低減された若しくはヌルのFcγR結合又はC1q結合活性を有する改変の組合せによりADCC及びCDCエフェクター機能を低減又は排除するように工学操作されたIgG4に抗体を作動可能に連結することにより達成可能である。生物学的薬剤として抗体の物理化学的性質を考慮すると、それほど望ましくないIgG4固有の性質の1つは、半抗体を形成する溶液中でのその2本の重鎖の動的分離であり、これは「Fabアーム交換」と呼ばれるプロセスを介してin vivoで発生する二重特異的抗体をもたらす(Van der Neut Kolfschoten M,et al.2007 Science,317:1554-157)。位置228(EU番号付けシステム)でのセリンからプロリンへの突然変異は、IgG4重鎖分離に対して阻害的であるように思われた(Angal,S.1993 Mol Immunol,30:105-108、Aalberse et al.2002 Immunol,105:9-19)。ヒンジ及びγFc領域のアミノ酸残基のいくつかは、Fcγレセプターとの抗体相互作用に影響を及ぼすと報告された(Chappel S M, et al.1991 Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88:9036-9040、Mukherjee,J.et al.,1995 FASEB J,9:115-119、Armour,K.L.et al.1999 Eur J Immunol,29:2613-2624、Clynes,R.A.et al,2000 Nature Medicine,6:443-446、Arnold J.N.,2007 Annu Rev immunol,25:21-50)。さらに、ヒト集団で稀に発生するいくつかIgG4アイソフォームもまた、異なる物理化学的性質を誘発可能である(Brusco,A.et al.1998 Eur J Immunogenet,25:349-55、Aalberse et al.2002 Immunol,105:9-19)。低いADCC、CDC、及び不安定性を有するOX40抗体を発生させるために、ヒトIgG4のヒンジ及びFc領域を修飾し、いくつかの改変を導入することが可能である。これらの修飾IgG4 Fc分子は、配列番号83~88、米国特許第8,735,553号明細書、Li et al.に見いだされうる。
【0110】
OX40抗体産生
抗OX40抗体及びその抗原結合性フラグメントは、限定されるものではないが、組換え発現、化学合成、及び抗体テトラマーの酵素消化をはじめとする当技術分野で公知のいずれかの手段により産生可能であり、一方、全長モノクローナル抗体は、たとえば、ハイブリドーマ又は組換え産生により得ることが可能である。組換え発現は、当技術分野で公知のいずれかの適切な宿主細胞、たとえば、哺乳動物宿主細胞、細菌宿主細胞、酵母宿主細胞、虫宿主細胞などから行いうる。
【0111】
本開示は、本明細書に記載の抗体をコードするポリヌクレオチド、たとえば、本明細書に記載の相補性決定領域を含む重鎖又は軽鎖の可変領域又はセグメントをコードするポリヌクレオチドをさらに提供する。いくつかの態様では、重鎖可変領域をコードするポリヌクレオチドは、配列番号15、21、又は27からなる群から選択されるポリヌクレオチドに対して、少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の核酸配列同一性を有する。いくつかの態様では、軽鎖可変領域をコードするポリヌクレオチドは、配列番号17、23、又は29からなる群から選択されるポリヌクレオチドに対して、少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の核酸配列同一性を有する。
【0112】
本開示のポリヌクレオチドは、抗OX40抗体の可変領域配列をコード可能である。それはまた、抗体の可変領域及び定常領域の両方をコード可能である。ポリヌクレオチド配列のいくつかは、例証された抗OX40抗体の1つの重鎖及び軽鎖の両方の可変領域を含むポリペプチドをコードする。いくつかの他のポリヌクレオチドは、ネズミ抗体の1つの重鎖及び軽鎖の可変領域とそれぞれ実質的に同等の2つのポリペプチドセグメントをコードする。
【0113】
本開示ではまた、抗OX40抗体を産生するための発現ベクター及び宿主細胞も提供される。発現ベクターの選択は、ベクターが発現されることが意図される宿主細胞に依存する。典型的には、発現ベクターは、抗OX40抗体鎖又は抗原結合性フラグメントをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーター及び他のレギュラトリー配列(たとえばエンハンサー)を含有する。いくつかの態様では、誘導条件の制御下以外では挿入配列の発現を防止するように、誘導性プロモーターが採用される。誘導性プロモーターは、たとえば、アラビノース、lacZ、メタロチオネインプロモーター、又は熱ショックプロモーターを含む。トランスフォーム生物の培養物は、宿主細胞が発現産物に十分な耐容性のあるコード配列の集団をバイアスすることなく非誘導条件下で拡大可能である。プロモーターのほか、他のレギュラトリーエレメントもまた、抗OX40抗体又は抗原結合性フラグメントの効率的発現のために必要とされたり又は望まれたりすることがある。こうしたエレメントは、典型的には、ATG開始コドン及び近接リボソーム結合部位又は他の配列を含む。そのほか、発現の効率は、使用時に細胞システムに適したエンハンサーを含めることにより増強可能である(たとえば、Scharf et al.,Results Probl.Cell Differ.20:125,1994、及びBittner et al.,Meth.Enzymol.,153:516,1987を参照されたい)。たとえば、SV40エンハンサー又はCMVエンハンサーを用いて、哺乳動物宿主細胞内での発現を増加させることが可能である。
【0114】
抗OX40抗体鎖を保有及び発現するための宿主細胞は、原核細胞又は真核細胞のどちらかでありうる。E.コリ(E.coli)は、本開示のポリヌクレオチドのクローニング及び発現に有用な原核宿主の1つである。使用に好適な他の微生物宿主としては、桿菌、たとえば、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)及び他のエンテロバクテリア科細菌、たとえば、サルモネラ属(Salmonella)、セラチア属(Serratia)、及び各種シュードモナス属(Pseudomonas)の種が挙げられる。こうした原核宿主では、典型的には宿主細胞に適合可能な発現制御配列(たとえば複製起点)を含有する発現ベクターを作製することも可能である。そのほか、いずれかの数のさまざまな周知のプロモーター、たとえば、ラクトースプロモーターシステム、トリプトファン(trp)プロモーターシステム、ベータラクタマーゼプロモーターシステム、又はファージラムダ由来のプロモーターシステムが存在するであろう。プロモーターは、典型的には、任意にオペレーター配列とともに発現を制御し、転写及び翻訳を開始及び終了するためのリボソーム結合部位配列を有する。他の微生物たとえば酵母もまた、抗OX40ポリペプチドを発現するように採用可能である。バキュロウイルスベクターとの組合せで昆虫細胞を使用することも可能である。
【0115】
他の態様では、本開示の抗OX40ポリペプチドを産生するために、哺乳動物宿主細胞が使用される。たとえば、それは、内因性イムノグロブリン遺伝子を発現するハイブリドーマ細胞系又は外因性発現ベクターを保有する哺乳動物細胞系のどちらかでありうる。こうしたものとしては、いずれかの正常可死性又は異常若しくは正常不死性の動物細胞又はヒト細胞が挙げられる。たとえば、CHO細胞系、各種COS細胞系、HEK293細胞、骨髄腫細胞系、トランスフォームB細胞、及びハイブリドーマを含めて、インタクトイムノグロブリンを分泌する能力のあるいくつかの好適な宿主細胞系が開発されてきた。ポリペプチドを発現するための哺乳動物組織細胞培養の使用は、たとえば、Winnacker,From Genes to Clones,VCH Publishers,NY,N.Y.,1987で一般に考察されている。哺乳動物宿主細胞用の発現ベクターは、複製起点、プロモーター、エンハンサーなどの発現制御配列(たとえば、Queen et al.,Immunol.Rev.89:49-68,1986を参照されたい)、及びリボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位、転写ターミネーター配列などの必要な情報処理部位を含みうる。こうした発現ベクターは、通常、哺乳動物遺伝子又は哺乳動物ウイルスに由来するプロモーターを含有する。好適なプロモーターは、構成的、細胞型特異的、ステージ特異的、及び/又はモジュレート可能若しくはレギュレート可能でありうる。有用なプロモーターとしては、限定されるものではないが、メタロチオネインプロモーター、構成的アデノウイルス主要後期プロモーター、デキサメタゾン誘導性MMTVプロモーター、SV40プロモーター、MRP polIIIプロモーター、構成的MPSVプロモーター、テトラサイクリン誘導性CMVプロモーター(たとえばヒト前初期CMVプロモーター)、構成的CMVプロモーター、及び当技術分野で公知のプロモーター-エンハンサー組合せが挙げられる。
【0116】
検出及び診断の方法
本開示の抗体又は抗原結合性フラグメントは、限定されるものではないが、OX40の検出方法をはじめとするさまざまな用途に有用である。一態様では、抗体又は抗原結合性フラグメントは、生物学的サンプル中のOX40の存在を検出するのに有用である。本明細書で用いられる「detecting(~を検出すること)」という用語は、定量的又は定性的な検出を含む。ある特定の態様では、生物学的サンプルは、細胞又は組織を含む。他の態様では、かかる組織は、他の組織と比べてより高レベルのOX40を発現する正常組織及び/又は癌性組織を含む。
【0117】
一態様では、本開示は、生物学的サンプル中のOX40の存在を検出する方法を提供する。ある特定の態様では、本方法は、抗原への抗体の結合を許容する条件下で生物学的サンプルと抗OX40抗体とを接触させることと、抗体と抗原との間に複合体が形成されるかを検出することと、を含む。生物学的サンプルとしては、限定されるものではないが、尿又は血液サンプルが挙げられる。
【0118】
また、OX40の発現に関連する障害を診断する方法も含まれる。ある特定の態様では、本方法は、試験細胞と抗OX40抗体とを接触させることと、OX40ポリペプチドへの抗OX40抗体の結合を検出することにより、試験細胞中のOX40の発現レベル(定量的又は定性的のどちらかで)を決定することと、試験細胞中の発現レベルと対照細胞(たとえば、試験細胞と同一の組織起源の正常細胞又は非OX40発現細胞)中のOX40発現レベルとを比較することと、を含み、コントロール細胞と比較して試験細胞中のより高レベルのOX40発現が、OX40の発現に関連する障害の存在の指標となる。
【0119】
治療方法
本開示の抗体又は抗原結合性フラグメントは、限定されるものではないが、OX40関連障害又は疾患の治療方法をはじめとするさまざまな用途に有用である。一態様では、OX40関連障害又は疾患は癌である。
【0120】
一態様では、本開示は、癌を治療する方法を提供する。ある特定の態様では、本方法は、有効量の抗OX40抗体又は抗原結合性フラグメントを必要とされる患者に投与することを含む。癌は、限定されるものではないが、乳癌、頭頸部癌、胃癌、腎癌、肝癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、卵巣癌、皮膚癌、中皮腫、リンパ腫、白血病、骨髄腫、及び肉腫を含みうる。
【0121】
本発明の抗体又は抗原結合性フラグメントは、非経口、肺内、及び鼻内、並びに局所治療が望まれる場合には病変内投与を含めて、いずれかの好適な手段により投与可能である。非経口注入は、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、又は皮下投与を含む。投与は、部分的には投与が短期であるか長期であるかに依存して、いずれかの好適な経路、たとえば、静脈内注射や皮下注射などの注射によることが可能である。限定されるものではないが、単回投与又は各種時間点にわたる複数回投与、ボーラス投与、及びパルス注入をはじめとする各種投与スケジュールが本明細書で企図される。
【0122】
本発明の抗体又は抗原結合性フラグメントは、適正医療規範に準拠して、製剤化、用量設定、及び投与されるであろう。これとの関連での考慮因子としては、治療される特定障害、治療される特定哺乳動物、個々の患者の臨床病態、障害の原因、作用剤の送達部位、投与方法、投与のスケジューリング、及び医師に公知の他の因子が挙げられる。抗体は、問題の障害を予防又は治療するために現在使用されている1種以上の作用剤とともに製剤化される必要はないが、任意にそのように製剤化される。かかる他の作用剤の有効量は、製剤中に存在する抗体の量、障害又は治療のタイプ、及び以上で考察された他の因子に依存する。これらは、本明細書に記載のものと同一の投与量及び投与経路で、又は本明細書に記載の投与量の約1~99%で、又は経験的/臨床的に適切であると決定されたいずれかの投与量及びいずれかの経路で、一般に使用される。
【0123】
疾患の予防又は治療では、本発明の抗体又は抗原結合性フラグメントの適切投与量は、治療される疾患のタイプ、抗体のタイプ、疾患の重症度及び経過、抗体が予防目的又は治療目的で投与されるか、以前の治療、患者の臨床歴及び抗体に対する反応、並びに担当医の自由裁量に依存するであろう。抗体は、好適には、1回で又は一連の治療にわたり患者に投与される。たとえば、1回以上の個別投与によるか又は連続注入によるかにもかかわらず、疾患のタイプ及び重症度に依存して、約1μg/kg~100mg/kgの抗体は、患者に投与するための初期候補投与量でありうる。典型的な一日投与量は、以上に挙げた因子に依存して、約1μg/kg~100mg/kg又はそれ以上の範囲内でありうる。数日間以上にわたる繰返し投与では、病態に依存して、治療は、一般に疾患症状の所望の抑制を生じるまで継続されるであろう。かかる用量は、断続的に、たとえば、週1回又は3週間に1回投与可能である(たとえば、患者が約2~約20用量又はたとえば6用量の抗体を摂取するように)。初期のより高ローディング用量、続いて1回以上のより低用量を投与可能である。しかしながら、他の投与レジメンが有用でありうる。この治療の進行状況は、従来の技術及びアッセイにより容易にモニターされる。
【0124】
組合せ療法
一態様では、本開示のOX40抗体は、他の治療剤たとえば抗TIGIT抗体との組合せで使用可能である。本開示のOX40抗体とともに使用可能な他の治療剤としては、限定されるものではないが、化学療法剤(たとえば、パクリタキセル又はパクリタキセル剤、(たとえば、Abraxane(登録商標))、ドセタキセル、カルボプラチン、トポテカン、シスプラチン、イリノテカン、ドキソルビシン、レナリドマイド、5-アザシチジン、イホスファミド、オキサリプラチン、ペメトレキセド二ナトリウム、シクロホスファミド、エトポシド、デシタビン、フルダラビン、ビンクリスチン、ベンダムスチン、クロラムブシル、ブスルファン、ゲムシタビン、メルファラン、ペントスタチン、マイトキサントロン、ペメトレキセド二ナトリウム)、チロシンキナーゼ阻害剤(たとえばEGFR阻害剤(たとえばエルロチニブ)、マルチキナーゼ阻害剤(たとえば、MGCD265、RGB-286638)、CD-20標的化剤(たとえば、リツキシマブ、オファツムマブ、RO5072759、LFB-R603)、CD52標的化剤(たとえばアレムツズマブ))、プレドニゾロン、ダルベポエチンアルファ、レナリドマイド、Bcl-2阻害剤(たとえばオブリマーセンナトリウム)、オーロラキナーゼ阻害剤(たとえば、MLN8237、TAK-901)、プロテアソーム阻害剤(たとえばボルテゾミブ)、CD-19標的化剤(たとえば、MEDI-551、MOR208)、MEK阻害剤(たとえばABT-348)、JAK-2阻害剤(たとえばINCB018424)、mTOR阻害剤(たとえばテムシロリムス、エベロリムス)、BCR/ABL阻害剤(たとえば、イマチニブ)、ET-Aレセプターアンタゴニスト(たとえばZD4054)、TRAILレセプター2(TR-2)アゴニスト(たとえばCS-1008)、HGF/SF阻害剤(たとえばAMG102)、EGEN-001、Polo様キナーゼ1阻害剤(たとえばBI672)が挙げられる。
【0125】
本明細書に開示される抗TIGIT抗体との組合せの抗OX40抗体は、各種公知の方式で、たとえば、経口、局所、直腸、非経口、吸入スプレー、又は植込みリザーバーで投与可能であるが、いずれの所与の症例でも最も好適な経路は、特定宿主並びに活性成分が投与される病態の性質及び重症度に依存するであろう。本明細書で用いられる「非経口」という用語は、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、動脈内、滑液嚢内、胸骨内、髄腔内、病変内、及び頭蓋内の注射又は注入技術を含む。
【0126】
抗OX40抗体と抗TIGIT抗体との組合せは、異なる経路で投与可能である。各抗体は、他の抗体に依存せずに、皮下、皮内、静脈内、又は腹腔内などに非経口投与可能である。
【0127】
一実施形態では、抗OX40抗体又は抗TIGIT抗体は、患者の必要性に基づいて、1日1回(毎日1回、QD)、1日2回(毎日2回、BID)、1日3回、1日4回、又は1日5回投与される。
【0128】
医薬組成物及び製剤
また、抗OX40抗体若しくは抗原結合性フラグメントを含む医薬製剤又は抗OX40抗体若しくは抗原結合性フラグメントをコードする配列を含むポリヌクレオチドを含めて、組成物も提供される。ある特定の実施形態では、組成物は、OX40に結合する1種以上の抗体若しくは抗原結合性フラグメント、又はOX40に結合する1種以上の抗体若しくは抗原結合性フラグメントをコードする配列を含む1種以上のポリヌクレオチドを含む。こうした組成物は、好適な担体、たとえば、当技術分野で周知の緩衝剤を含む薬学的に許容可能な賦形剤をさらに含みうる。
【0129】
本明細書に記載のOX40抗体又は抗原結合性フラグメントの医薬製剤は、所望の純度を有するかかる抗体又は抗原結合性フラグメントと、1種以上の任意の薬学的に許容可能な担体(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980))と、を混合することにより、凍結乾燥製剤又は水性溶液剤の形態で調製される。薬学的に許容可能な担体は、採用された投与量及び濃度でレシピエントに対して一般に非毒性であり、限定されるものではないが、緩衝剤、たとえば、リン酸、クエン酸、及び他の有機酸、抗酸化剤(アスコルビン酸及びメチオニンを含む)、保存剤(たとえば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ヘキサメトニウムクロライド、ベンザルコニウムクロライド、ベンゼトニウムクロライド、フェノール、ブチル又はベンジルアルコール、アルキルパラベン、たとえば、メチル又はプロピルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノール、及びm-クレゾール)、低分子量(約10残基未満)ポリペプチド、タンパク質、たとえば、血清アルブミン、ゼラチン、又はイムノグロブリン、親水性ポリマー、たとえば、ポリビニルピロリドン、アミノ酸、たとえば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、又はリシン、単糖、二糖、及び他の炭水化物(グルコース、マンノース、又はデキストリンを含む)、キレート化剤、たとえば、EDTA、糖、たとえば、スクロース、マンニトール、トレハロース、又はソルビトール、塩形成性カウンターイオン、たとえば、ナトリウム、金属複合体(たとえばZnタンパク質複合体)、及び/又は非イオン性界面活性剤、たとえば、ポリエチレングリコール(PEG)を含む。本明細書中の模範的な薬学的に許容可能な担体としては、間質薬剤分散剤、たとえば、可溶性中性活性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)、たとえば、ヒト可溶性PH-20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質、たとえば、rHuPH20(HYLENEX(登録商標)、Baxter International,Inc.)がさらに挙げられる。rHuPH20を含むある特定の模範的sHASEGP及び使用方法は、米国特許第7,871,607号明細書及び米国特許出願公開第2006/0104968号明細書に記載されている。一態様では、sHASEGPは、コンドロイチナーゼなどの1種以上の追加のグリコサミノグリカナーゼと組み合わされる。
【0130】
模範的凍結乾燥抗体製剤は、米国特許第6,267,958号明細書に記載されている。水性抗体製剤は、米国特許第6,171,586号明細書及び国際公開第2006/044908号パンフレットに記載のものを含み、後者の製剤は、ヒスチジン酢酸緩衝剤を含む。
【0131】
持続放出製剤を調製可能である。持続放出製剤の好適例は、抗体を含有する固形疎水性ポリマーの半透性マトリックスを含み、そのマトリックスは、フィルムや又はマイクロカプセルなどの造形品の形態である。
【0132】
in vivo投与に使用される製剤は、一般に無菌である。無菌性は、たとえば、滅菌濾過膜に通して濾過することによる簡単に達成可能である。
【実施例
【0133】
実施例1: 抗OX40モノクローナル抗体の発生
マイナー変更を施して従来のハイブリドーマ融合技術(de St Groth and Sheidegger,1980 J Immunol Methods 35:1、Mechetner,2007 Methods Mol Biol 378:1)に基づいて、抗OX40モノクローナル抗体を発生させた。酵素連結イムノソルベントアッセイ(ELISA)及び蛍光活性化細胞選別(FACS)アッセイで高い結合活性を有する抗体を選択し、さらなる特徴付けに供した。
【0134】
免疫化及び結合アッセイのためのOX40組換えタンパク質
GenBank配列(アクセッション番号:X75962.1)に基づいて、全長ヒトOX40をコードするcDNA(配列番号1)をSino Biological(Beijing,China)により合成した。OX-40のアミノ酸(AA)1~216(配列番号2)からなるシグナルペプチド及び細胞外ドメイン(ECD)のコード領域をPCR増幅し、マウスIgG2aのFcドメイン、ヒトIgG1野生型重鎖のFcドメイン、又はHisタグに融合されたC末端とともにインハウス開発発現ベクター中にクローニングし、それぞれ、3つの組換え融合タンパク質発現プラスミドOX40-mIgG2a、OX40-huIgG1、及びOX40-Hisを得た。OX40融合タンパク質の模式図は図1に示される。組換え融合タンパク質産生のために、OX40-mIgG2a、OX40-huIgG1、及びOX40-Hisの発現プラスミドを293G細胞に一過的にトランスフェクトし、回転シェーカーを備えたCOインキュベーターで7日間培養した。組換えタンパク質を含有する上清を捕集し、遠心分離により清澄化した。プロテインAカラム(Cat:17-5438-02,GE Life Sciences)を用いて、OX40-mIgG2a及びOX40-huIgG1を精製した。Niセファロースカラム(Cat:17-5318-02,GE Life Science)を用いてOX40-Hisを精製した。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に対してOX40-mIgG2a、OX40-huIgG、及びOX40-Hisタンパク質を透析し、少量のアリコートで-80℃フリーザーに保存した。
【0135】
安定発現細胞系
全長ヒトOX40(OX40)又はカニクイザルOX40(cynoOX40)を発現する安定細胞系を発生させるために、これらの遺伝子をレトロウイルスベクターpFB-Neo(Cat:217561,Agilent,USA)にクローニングした。以上に記載のプロトコルに基づいてレトロウイルストランスダクションを実施した(Zhang et al.,2005)。HuT78及びHEK293細胞を、それぞれ、ヒトOX40又はcynoOX40を含有するウイルスを用いてレトロウイルスによりトランスデュースし、HuT78/OX40、HEK293/OX40、及びHuT78/cynoOX40細胞系を発生させた。
【0136】
免疫化、ハイブリドーマ融合、及びクローニング
10μgのOX40-mIgG2a及びQuick-Antibody Immuno-Adjuvant(Cat:KX0210041,KangBiQuan,Beijing,China)を含有する200μLの混合物抗原で8~12週齢のBalb/cマウス(HFK BIOSCIENCE CO.,LTD,Beijing,China製)に腹腔内免疫した。手順を3週間繰り返した。2回目の免疫化の2週間後、ELISA及びFACSによりOX40結合に関してマウス血清を評価した。血清スクリーニングの10日後、最高抗OX40抗体血清中力価を有するマウスを10μgのOX40-mIgG2aでi.p.注射によりブーストした。ブースティングの3日後、脾細胞を単離し、標準的技術(Somat Cell Genet,1977 3:231)を用いてネズミ骨髄腫細胞系SP2/0細胞(ATCC,Manassas VA)に融合した。
【0137】
ELISA及びFACSによる抗体のOX40結合活性のアセスメント
いくつかの修正を加えて(Methods in Molecular Biology(2007)378:33-52)に記載のように、ハイブリドーマクローンの上清をELISAにより最初にスクリーニングした。簡潔に述べると、OX40-Hisタンパク質を96ウェルプレートに4℃で一晩コーティングした。PBS/0.05%Tween-20で洗浄後、プレートを2時間にわたりPBS/3%BSAにより室温でブロックした。続いて、プレートをPBS/0.05%Tween-20で洗浄し、細胞上清とともに室温で1時間インキュベートした。HRP連結抗マウスIgG抗体(Cat:115035-008,Jackson ImmunoResearch Inc,Peroxidase AffiniPure Goat Anti-Mouse IgG,Fcγ fragment specific)及び基質(Cat:00-4201-56,eBioscience,USA)を用いて450nmの波長で色吸光度シグナルを発生させ、それをプレートリーダー(SpectraMax Paradigm,Molecular Devices/PHERAstar,BMG LABTECH)を用いることにより測定した。間接ELISAによる融合スクリーニングから陽性親クローンを取り出した。以上に記載のHuT78/OX40及びHuT78/cynoOX40細胞を用いてFACSによりELISA陽性クローンをさらに検証した。OX40発現細胞(10細胞/ウェル)をELISA陽性ハイブリドーマ上清とともにインキュベートし、続いて、抗マウスIgG eFluor(登録商標)660抗体(Cat:50-4010-82,eBioscience,USA)を結合させた。細胞蛍光をフローサイトメーター(Guava easyCyte 8HT,Merck-Millipore,USA)を用いて定量した。
【0138】
ヒト免疫細胞ベースアッセイで良好な機能活性を有する抗体を同定するために、ELISA及びFACSスクリーニングの両方で陽性シグナルを示したハイブリドーマからの馴化培地を機能アッセイに付した(以下のセクションを参照されたい)。所望の機能活性を有する抗体をさらにサブクローニングし、特徴付けた。
【0139】
ハイブリドーマのサブクローニング及び血清フリー培地又は低血清培地への適応
以上に記載のELISA、FACS、及び機能アッセイによる一次スクリーニングの後、クローン性を確保するために限界希釈により陽性ハイブリドーマクローンをサブクローニングした。トップ抗体サブクローンを機能アッセイにより検証し、3%FBSを有するCDM4MAb培地(Cat:SH30801.02,Hyclone,USA)での成長に適合化させた。
【0140】
モノクローナル抗体の発現及び精製
トップ抗体クローンを発現するハイブリドーマ細胞をCDM4MAb培地(Cat:SH30801.02,Hyclone)で培養し、37℃で5~7日間にわたりCOインキュベーターでインキュベートした。遠心分離を介して馴化培地を捕集し、0.22μm膜に通して濾過してから精製した。製造業者の説明書に従って上清中のネズミ抗体をプロテインAカラム(Cat:17-5438-02,GE Life Sciences)に適用し結合させた。手順は、通常、純度90%超で抗体を生成した。プロテインA親和性精製抗体は、PBSに対して透析されたか、又は必要であれば、凝集物を除去するためにHiLoad 16/60 Superdex200カラム(Cat:28-9893-35,GE Life Sciences)を用いてさらに精製された。タンパク質濃度は、280nmで吸光度を測定することにより決定された。最終的抗体調製物は、-80℃フリーザー中にアリコートで貯蔵された。
【0141】
実施例2: 抗OX40抗体のクローニング及び配列解析
ネズミハイブリドーマクローンを採取し、製造業者のプロトコルに基づいてUltrapure RNAキット(Cat:74104,QIAGEN,Germany)を用いて全細胞RNAを調製した。Invitrogen製のcDNA合成キット(Cat: 18080-051)を用いて第一鎖cDNAを合成し、PCRキット(Cat:CW0686,CWBio,Beijing,China)を用いてハイブリドーマ抗体のVH及びVLのPCR増幅を実施した。重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)の抗体cDNAクローニングに用いたオリゴプライマーは、既報の配列(Brocks et al.2001 Mol Med 7:461)に基づいてInvitrogen(Beijing,China)により合成された。PCR産物は、シーケンシングに直接使用されたか、又はpEASY-Bluntクローニングベクター(Cat:CB101 TransGen,China)にサブクローニングされてからGenewiz(Beijing,China)によりシーケンシングされた。VH及びVL領域のアミノ酸配列は、DNAシーケンシング結果から推測された。
【0142】
ネズミ抗体の相補性決定領域(CDR)は、配列アノテーションにより及びコンピュータープログラム配列解析によりKabat(Wu and Kabat 1970 J.Exp.Med.132:211-250)システムに基づいて定義された。代表的トップクローンMu445(VH及びVL)のアミノ酸配列は、表1(配列番号9及び11)に列挙された。Mu445のCDR配列は、表2(配列番号3~8)に列挙された。
【0143】
【表2】
【0144】
【表3】
【0145】
実施例3: ネズミ抗ヒトOX40抗体445のヒト化
抗体ヒト化及び工学操作
Mu445のヒト化のために、IMGTのヒトイムノグロブリン遺伝子データベースに対する配列比較によりMu445可変領域のcDNA配列に対して高度の相同性を共有する配列に関して、ヒト生殖系IgG遺伝子を探索した。高頻度でヒト抗体レパートリーに存在し(Glanville et al.,2009 PNAS 106:20216-20221)且つ高度にMu445に相同的であるヒトIGHV及びIGKV遺伝子をヒト化のためのテンプレートとして選択した。
【0146】
CDR移植によりヒト化を行い(Methods in Molecular Biology,Antibody Engineering,Methods and Protocols,Vol 248:Humana Press)、インハウス開発発現ベクターを用いることによりヒトIgG1野生型フォーマットとしてヒト化抗体を工学操作した。ヒト化の初期ラウンドでは、シミュレート3D構造解析によりフレームワーク領域でネズミからヒトアミノ酸残基への突然変異をガイドし、CDRのカノニカル構造を維持する構造重要性を有するネズミフレームワーク残基をヒト化抗体445の最初のバージョンで保持した(表3の445-1を参照されたい)。445-1の6つのCDRは、HCDR1(配列番号3)、HCDR2(配列番号13)、HCDR3(配列番号5)、並びにLCDR1(配列番号6)、LCDR2(配列番号7)、及びLCDR3(配列番号8)のアミノ酸配列を有する。445-1の重鎖可変領域は、配列番号15のヌクレオチド配列によりコードされる(VH)配列番号14のアミノ酸配列を有し、軽鎖可変領域は、配列番号17のヌクレオチド配列によりコードされる(VL)配列番号16のアミノ酸配列を有する。具体的には、Mu445のLCDR(配列番号6~8)は、ヒト生殖系可変遺伝子IGVK1-39のフレームワークに移植され、2つのネズミフレームワーク残基(I44及びY71)は保持された(配列番号16)。HCDR1(配列番号3)、HCDR2(配列番号13)、及びHCDR3(配列番号5)は、ヒト生殖系可変遺伝子IGHV1-69のフレームワークに移植され、2つのネズミフレームワーク(L70及びS72)残基は保持された(配列番号14)。N末端側半分のみがシミュレート3D構造に従って抗原結合に重要であると予測されたので、445ヒト化変異体(445-1)では、Kabat HCDR2のN末端側半分のみが移植された。
【0147】
445-1は、容易適応サブクローニング部位をそれぞれ有するヒト野生型IgG1(IgG1wt)及びカッパ鎖の定常領域を含有するインハウス開発発現ベクターを用いて、ヒト化全長抗体として構築された。445-1抗体は、293G細胞への以上の2つの構築物の共トランスフェクションにより発現され、プロテインAカラム(Cat:17-5438-02,GE Life Sciences)を用いて精製された。精製抗体は、PBS中で0.5~10mg/mLに濃縮され、-80℃フリーザーにアリコートで保存された。
【0148】
445-1抗体を用いて、VL中のI44P及びY71F並びにVH中のL70I及びS72Aなど、いくつかの単一アミノ酸変化を行って、VH及びVLのフレームワーク領域中の保持ネズミ残基を対応するヒト生殖系残基に変換した。そのほか、潜在的異性化リスクを低減するために及びヒト化レベルを増加させるために、CDRでいくつかの単一アミノ酸変化を行った。たとえば、LCDR2でT51A及びD50Eの改変を行い、且つHCDR2でD56E、G57A、及びN61Aの改変を行った。ヒト化変化はすべて、特異的位置に突然変異を含有するプライマー及び部位指向突然変異誘発キットを用いて行われた(Cat:AP231-11,TransGen,Beijing,China)。所望の変化は、シーケンシングにより検証された。
【0149】
445-1抗体中のアミノ酸変化は、OX40への結合及び熱安定性に関して評価された。配列番号3のHCDR1、配列番号18のHCDR2、配列番号5のHCDR3、配列番号6のLCDR1、配列番号19のLCDR2、及び配列番号8のLCDR3を含む抗体445-2(表3参照)は、以上に記載の特異的変化の組合せから構築された。2つの抗体を比較すると、結果は、抗体445-2及び445-1の両方が同程度の結合親和性を呈すること示した(以下の表4及び表5を参照されたい)。
【0150】
445-2抗体から始めて、結合親和性/速度論をさらに改善するために、VLのフレームワーク領域でいくつかの追加のアミノ酸変化、たとえば、アミノ酸G41D及びK42Gの改変を行った。そのほか、免疫原性リスクを低下させるために及び熱安定性を増加させるために、VH及びVLの両方のCDRでいくつかの単一アミノ酸変化、たとえば、LCDR1中のS24R及びHCDR2中のA61Nを行った。得られた変化は、445-2と比較して改善された結合活性又は熱安定性のどちらかを示した。
【0151】
ヒト化445抗体は、ヒトにおける治療的使用に関する分子的及び生物物理学的性質を改善するために、CDR及びフレームワーク領域で特異的アミノ酸変化を導入することによりさらに工学操作された。考慮点には、結合活性を維持しつつ、有害な翻訳後修飾の除去、熱安定性(T)、表面疎水性、及び等電点(pI)の改善を行うことが含まれていた。
【0152】
配列番号3のHCDR1、配列番号24のHCDR2、配列番号5のHCDR3、配列番号25のLCDR1、配列番号19のLCDR2、及び配列番号8のLCDR3を含むヒト化モノクローナル抗体445-3(表3参照)は、以上に記載の成熟プロセスから構築され、詳細に特徴付けられた。抗体445-3は、ヒトIgG2の野生型重鎖のFcドメインを含むIgG2バージョン(445-3IgG2)、並びにS228P及びR409Kの突然変異を有するヒトIgG4のFcドメインを含むIgG4バージョン(445-3IgG4)も作製された。結果は、445-3及び445-2が同程度の結合親和性を呈すること示した(表4及び表5を参照されたい)。
【0153】
【表4】
【0154】
【表5】
【0155】
実施例4: SPRによる抗OX40抗体の結合速度論及び親和性決定
抗OX40抗体は、BIAcore(商標)T-200(GE Life Sciences)を用いてSPRアッセイによりその結合速度論及び親和性に関して特徴付けられた。簡潔に述べると、抗ヒトIgG抗体は、活性化CM5バイオセンサーチップ(Cat:BR100530,GE Life Sciences)上に固定された。ヒトIgG Fc領域を有する抗体は、チップ表面上で流動され、抗ヒトIgG抗体によりキャプチャーされた。次いで、Hisタグを有する組換えOX40タンパク質(Cat:10481-H08H,Sino Biological)の段階希釈物は、チップ表面上で流動され、表面プラズモン共鳴シグナルの変化は、1対1ラングミュア結合モデル(BIA Evaluation Software,GE Life Sciences)を用いることにより会合速度(ka)及び解離速度(kd)を計算すべく分析された。平衡解離定数(K)は、比kd/kaとして計算された。抗OX40抗体のSPR決定結合プロファイルの結果は、図2及び表4にまとめられる。抗体445-3の平均K(9.47nM)を有する結合プロファイルは、わずかに抗体445-2(13.5nM)及び445-1(17.1nM)よりも良好であり、ch445のものに類似していた。445-3IgG4の結合プロファイルは445-3(IgG1Fcを有する)に類似していたことから、IgG4とIgG1との間のFcの変化は、445-3抗体の特異的結合を改変しないことが示唆された。
【0156】
【表6】
【0157】
実施例5: HuT78細胞上に発現されるOX40への抗OX40抗体の結合親和性の決定
生細胞の表面上に発現されるOX40に結合する抗OX40抗体の結合活性を評価するために、HuT78細胞を実施例1に記載のヒトOX40でトランスフェクトし、OX40発現系を生成した。生存HuT78/OX40細胞を96ウェルプレートに播種し、各種抗OX40抗体の段階希釈物とともにインキュベートした。細胞表面への抗体結合を検出するために、ヤギ抗ヒトIgG-FITC(Cat:A0556,Beyotime)を二次抗体として使用した。ヒトOX40への用量依存結合のEC50値は、GraphPad Prismで用量-反応データを4パラメーターロジスティックモデルに当てはめることにより決定された。図3及び表5に示されるように、OX40抗体は、OX40への高い親和性を有していた。本開示のOX40抗体は、フローサイトメトリーにより測定された比較的高いトップレベルの蛍光強度を有していたことから(表5の最後のカラムを参照されたい)、望ましい結合プロファイルであるOX40からの抗体のより遅い解離が示唆されることも判明した。
【0158】
【表7】
【0159】
実施例6: 抗OX40抗体の交差反応性の決定
ヒト及びカニクイザル(cyno)サルOX40への抗体445-3の交差反応性を評価するために、ヒトOX40(HuT78/OX40)及びcynoOX40(HuT78/cynoOX40)を発現する細胞を96ウェルプレートに播種し、OX40抗体の一連の希釈物とともにインキュベートした。ヤギ抗ヒトIgG-FITC(Cat:A0556,Beyotime)を検出用二次抗体として使用した。GraphPad Prismで用量-反応データを4パラメーターロジスティックモデルに当てはめることにより、ヒト及びカニクイザル天然OX40への用量依存結合のEC50値を決定した。結果は、図4及び以下の表6に示される。抗体445-3は、以下に示されるように、ヒト及びカニクイザルOX40の両方と類似のEC50値で交差反応する。
【0160】
【表8】
【0161】
実施例7: OX40と445-3Fabとの共結晶化及び構造決定
本開示の抗体へのOX40の結合機序を理解するために、OX40と445-3のFabとの共結晶構造を解明した。OX40のグリコシル化をブロックし、タンパク質の均一性を改善するために、残基T148及びN160に突然変異を導入した。突然変異体ヒトOX40(2つの突然変異部位T148A及びN160Aを有する残基M1-D170)をコードするDNAをヘキサhisタグを含めて発現ベクターにクローニングし、この構築物を293G細胞に一過的にトランスフェクトし、37℃で7日間にわたりタンパク質発現に供した。細胞を採取し、上清を捕集し、4℃で1時間にわたりHisタグ親和性樹脂とともにインキュベートした。20mM Tris、pH8.0、300mM NaCl、及び30mMイミダゾールを含有する緩衝液で樹脂を3回濯いだ。次いで、20mM Tris、pH8.0、300mM NaCl、及び250mMイミダゾールを含有する緩衝液でOX40タンパク質を溶出させ、続いて、20mM Tris、pH8.0、100mM NaClを含有する緩衝液中でSuperdex200(GE Healthcare)によりさらなる精製に供した。
【0162】
重鎖のC末端にヘキサhisタグを含めて445-3Fabの重鎖及び軽鎖のコード配列を発現ベクターにクローニングし、これを一過的に293G細胞にコトランスフェクトし、37℃で7日間にわたりタンパク質発現に供した。445-3Fabの精製工程は、以上の突然変異体OX40タンパク質に用いたものと同一であった。
【0163】
精製されたOX40及び445-3Fabを1:1のモル比で混合し、氷上で30分間インキュベートし、続いて、20mM Tris、pH8.0、100mM NaClを含有する緩衝剤中でSuperdex200(GE Healthcare)によりさらなる精製に供した。複合ピークを捕集し、おおよそ30mg/mlに濃縮した。
【0164】
タンパク質複合体とリザーバー溶液とを1:1の体積比で混合することにより、共結晶スクリーンを実施した。0.1M HEPES、pH7.0、1%PEG2,000MME、及び0.95Mナトリウムスクシネートを含有するリザーバー溶液を用いて蒸気拡散により20℃で培養されたハンギングドロップから共結晶を得た。
【0165】
ナイロンループを用いて共結晶を採取し、20%グリセロールが補充されたリザーバー溶液中に結晶を10秒間浸漬した。BL17U1,Shanghai Synchrotron Radiation Facilityで回折データを収集し、XDSプログラムで処理した。分子置換検索モデルとしてIgG Fabの構造(PDB:5CZXの鎖C及びD)とOX40の構造(PDB:2HEVの鎖R)とを用いて、プログラムPHASERにより相を解明した。Phenix.refineグラフィカルインターフェースを用いてX線データに対して剛体TLS及び拘束リファインメントを実施し、続いて、COOTプログラムで調整し、そしてPhenix.refineプログラムでさらにリファインメントを行った。X線データ収集及びリファインメント統計は、表7にまとめられる。
【0166】
【表9】
【0167】
実施例8: SPRによる抗体445-3のエピトープ同定
OX40及び抗体445-3Fabの共結晶構造によりガイドして、ヒトOX40タンパク質中の一連の単一突然変異を選択及び発生し、本開示の抗OX40抗体の主要エピトープをさらに同定した。部位指向突然変異誘発キット(Cat:AP231-11,TransGen)を用いてヒトOX40/IgG1融合構築物に単一点突然変異を行った。シーケンシングにより所望の突然変異を検証した。293G細胞へのトランスフェクションによりOX40突然変異体の発現及び調製を達成し、プロテインAカラム(Cat:17-5438-02,GE Life Sciences)を用いて精製した。
【0168】
BIAcore 8K(GE Life Sciences)を用いて、445-3FabへのOX40点突然変異体の結合親和性をSPRアッセイにより特徴付けした。簡潔に述べると、EDC及びNHSを用いてCM5バイオセンサーチップ(Cat:BR100530,GE Life Sciences)上にOX40突然変異体及び野生型OX40を固定した。次いで、180秒の接触時間及び600秒の解離時間を用いて30μl/分でHBS-EP+緩衝液(Cat:BR-1008-26,GE Life Sciences)中の445-3Fabの段階希釈物をチップ表面上で流動させた。表面プラズモン共鳴シグナルの変化を分析し、1対1ラングミュア結合モデル(BIA Evaluation Software,GE Life Sciences)を用いることにより会合速度(ka)及び解離速度(kd)を計算した。平衡解離定数(K)は、比kd/kaとして計算された。突然変異体のKシフト倍率を突然変異体K/WT K比として計算した。SPRにより決定されたエピトープ同定のプロファイルは、図5及び表8にまとめられる。OX40中の残基H153、I165、及びE167からアラニンへの突然変異は、OX40への抗体445-3結合を有意に低減し、且つ残基T154及びD170からアラニンへの突然変異は、OX40への抗体445-3結合の中程度の低減を有していたことが、結果から示唆された。
【0169】
抗体445-3とX40の残基H153、T154、I165、OE167、及びD170との間の詳細な相互作用は、図6に示される。OX40上のH153の側鎖は、相互作用界面上の445-3の小さなポケットに取り囲まれ、heavyS31及びheavyG102との水素結合並びにheavyY101とのパイ-パイスタッキングを形成する。E167の側鎖は、heavyY50及びheavyN52と水素結合を形成し、一方、D170は、heavyS31及びheavyK28とそれぞれ水素結合及び塩ブリッジを形成し、複合体をさらに安定化させることが可能である。T154とheavyY105及びI165とheavyR59のファンデルワールス(VDW)相互作用は、OX40への抗体445-3の高親和性に寄与した。
【0170】
結論として、OX40の残基H153、I165、及びE167は、抗体445-3と相互作用するための重要な残基として同定された。そのほか、OX40のアミノ酸T154及びD170もまた、抗体445-3に対する重要な接触残基である。抗体445-3のエピトープは、OX40の残基H153、T154、I165、E167、及びD170であることが、このデータから示唆された。これらのエピトープは、配列
【化1】
の中に存在し、重要な接触残基は、下線付き太字で示される。
【0171】
【表10】
【0172】
実施例9: 抗OX40抗体445-3はOX40-OX40L相互作用をブロックしない。
抗体445-3がOX40-OX40L相互作用に干渉するかを決定するために、細胞ベースフローサイトメトリーアッセイを確立した。このアッセイでは、ネズミIgG2aFcとのヒトOX40融合タンパク質(OX40-mIgG2a)とともに、抗体445-3、参照抗体1A7.gr1、コントロールhuIgG、又は培地単独をプレインキュベートした。次いで、抗体及び融合タンパク質複合体をOX40L発現HEK293細胞に添加した。OX40抗体がOX40-OX40L相互作用に干渉しなければ、OX40抗体-OX40 mIgG2a複合体は、依然として表面OX40Lに結合するであろうから、この相互作用は、抗マウスFc二次抗体を用いて検出可能である。
【0173】
図7に示されるように、抗体445-3は、高濃度でさえも、OX40LへのOX40の結合を低減しなかったことから、445-3は、OX40-OX40L相互作用に干渉しないことが示唆される。このことから、445-3は、OX40L結合性部位に結合しないか、又はOX40L結合を立体障害するのに十分な程度に近づいて結合しないことが示唆される。これとは対照的に、陽性コントロール抗体1A7.gr1は、図7に示されるようにOX40LへのOX40結合を完全にブロックする。
【0174】
そのほか、445-3Fabとの複合体でのOX40の共結晶構造を解明し、図8に示されるようにOX40/OX40L複合体(PDBコード:2HEV)でアライメントした。OX40リガンドトリマーは、主に、OX40のCRD1(システインリッチドメイン)、CRD2、及び部分的CRD3領域を介してOX40と相互作用し(Compaan and Hymowitz,2006)、一方、抗体445-3は、CRD4領域のみを介してOX40と相互作用する。まとめると、445-3抗体及びOX40Lトリマーは、OX40のそれぞれ異なる領域に結合し、抗体445-3は、OX40/OX40L相互作用に干渉しない。この結果は、以上の実施例に記載のエピトープマッピングデータに相関する。OX40のCRD4は、アミノ酸127~167にあり、抗体445-3のエピトープは、この領域に部分的にオーバーラップする。OX40 CRD4の配列(アミノ酸127~167)は、以下に示されており、445-3エピトープの部分的オーバーラップは、下線付き太字で示される。
【化2】
【0175】
実施例10: 抗OX40抗体445-3のアゴニスティック活性
抗体445-3のアゴニスティック機能を調べるために、445-3又は1A7.gr1の存在下又は不在下でOX40陽性T細胞系HuT78/OX40を人工抗原提示細胞(APC)系(HEK293/OS8low-FcγRI)とともに一晩共培養し、T細胞刺激に対するリードアウトとしてIL-2産生を使用した。HEK293/OS8Low-FcγRI細胞では、膜結合抗CD3抗体OKT3(OS8)(米国特許第8,735,553号明細書に開示される)及びヒトFcγRI(CD64)をコードする遺伝子は、HEK293細胞に安定的にコトランスデュースされた。抗OX40抗体誘発免疫活性化は、抗体架橋に依存するので(Voo et al.,2013)、HEK293/OS8Low-FcγRI上のFcγRIは、OX40及びFcγRIの両方への抗OX40抗体のデュアルエンゲージメントによるOX40の抗OX40抗体媒介架橋の基礎を提供する。図9に示されるように、抗OX40抗体445-3は、0.06ng/mlのEC50で用量依存的にTCRシグナリングを増強する効力が高い。参照Ab1A7.gr1のわずかに弱い活性も観測された。これとは対照的に、コントロールヒトIgG(10μg/mL)又はブランクは、IL-2産生に影響を示さなかった。
【0176】
実施例11: 抗OX40抗体445-3は混合リンパ球反応(MLR)アッセイで免疫反応を促進した
抗体445-3がT細胞活性化を刺激可能であるかを決定するために、混合リンパ球反応(MLR)アッセイを構築した(Tourkova et al.,2001)。簡潔に述べると、GM-CSF及びIL-4とともに培養してからLPS刺激を行うことにより、ヒトPBMC誘導CD14ミエロイド細胞から成熟DCを誘導した。その次に、抗OX40 445-3抗体(0.1~10μg/ml)の存在下で、同種異系CD4T細胞とともにマイトマイシンC処理DCを2日間共培養した。MLR反応のリードアウトとして共培養でのIL-2産生をELISAにより検出した。
【0177】
図10に示されるように、抗体445-3は、IL-2産生を有意に促進したことから、CD4T細胞を活性化する445-3の能力が示唆される。これとは対照的に、参照抗体1A7.gr1は、MLRアッセイで有意に(P<0.05)より弱い活性を示した。
【0178】
実施例12: 抗OX40抗体445-3はADCC活性を示した
抗体445-3がOX40Hi発現標的細胞を死滅させることができるかを調べるために、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)放出ベースADCCアッセイを構成した。CD16v158(V158対立遺伝子)及びFcRγ遺伝子をNK細胞系NK92MI(ATCC,Manassas VA)にコトランスデュースすることにより、NK92MI/CD16V細胞系をエフェクター細胞として発生させた。OX40発現T細胞系HuT78/OX40を標的細胞として使用した。等しい数(3×10)の標的細胞及びエフェクター細胞を抗OX40抗体(0.004~3μg/ml)又はコントロールAbの存在下で5時間共培養した。CytoTox 96 Non-Radioactive Cytotoxicity Assayキット(Promega,Madison,WI)を用いてLDH放出により細胞傷害性を評価した。以下に示される式により特異的ライシスを計算した。
【数1】
【0179】
図11に示されるように、抗体445-3は、ADCCを介してOX40Hi標的を用量依存的に死滅させる高い効力を示した(EC50:0.027μg/mL)。抗体445-3のADCC作用は、1A7.grlコントロール抗体のものに類似していた。これとは対照的に、S228P及びR409K突然変異を有するIgG4 Fcフォーマットの445-3(445-3-IgG4)は、コントロールヒトIgG又はブランクと比較してなんら有意なADCC作用を示さなかった。結果は、IgG4 FcがADCCに対して弱い又はサイレントであるという従来の知見と一致する(An Z,et al.mAbs 2009)。
【0180】
実施例13: 抗OX40抗体445-3はin vitroで優先的にCD4Tregを枯渇させてCD8Teff/Treg比を増加させる
いくつかの動物腫瘍モデルでは、抗OX40抗体は、腫瘍浸潤OX40HiTregを枯渇させてCD8T細胞対Treg比を増加させうることが示されている(Bulliard et al.,2014、Carboni et al.,2003、Jacquemin et al.,2015、Marabelle et al.,2013b)。そのため、免疫反応が増強されて腫瘍退縮及び改善された生存がもたらされる。
【0181】
in vitro活性化又は腫瘍内CD4Foxp3Tregが他のT細胞サブセットよりも優先的にOX40を発現するという事実を考慮して(Lai et al.,2016、Marabelle et al.,2013b、Montler et al.,2016、Soroosh et al.,2007、Timperi et al.,2016)、OX40Hi細胞とくにTregを死滅させる抗体445-3の能力を調べるために、ヒトPBMCベースアッセイを構成した。簡潔に述べると、OX40発現の誘導のためにPHA-L(1μg/mL)によりPBMCをあらかじめ1日間活性化し、標的細胞として使用した。次いで、抗OX40抗体(0.001~10μg/mL)又はプラセボの存在下で等しい数の標的細胞とともにエフェクターNK92MI/CD16V細胞(実施例12に記載の通り、5×10)を一晩共培養した。フローサイトメトリーにより各T細胞サブセットのパーセンテージを決定した。図12A及び12Bに示されるように、抗体445-3による処理は、CD8T細胞のパーセンテージの増加及びCD4Foxp3Tregのパーセンテージの減少を用量依存的に誘発した。結果として、CD8T細胞対Treg比は大きく改善された(図12C)。1A7.gr1処理ではより弱い結果が得られた。この結果は、CD8T細胞機能をブーストするがTreg媒介免疫寛容を制限することにより抗腫瘍免疫を誘発する445-3の治療用途を実証する。
【0182】
実施例14: 抗OX40抗体445-3はマウス腫瘍モデルで用量依存抗腫瘍活性を発揮する
抗OX40抗体445-3の効能は、マウス腫瘍モデルで示された。ヒトOX40が導入されたトランスジェニックC57マウスの皮下にネズミMC38結腸腫瘍細胞を植え込んだ(Biocytogen,Beijing China)。腫瘍細胞の植込み後、腫瘍体積を週2回測定し、式:V=0.5(a×b)(式中、a及びbは、それぞれ、腫瘍の長直径及び短直径であった)を用いてmm単位で計算した。腫瘍がおおよそ190mmサイズの平均体積に達したとき、マウスをランダムに7群に割り付け、週1回で3週間にわたり445-3又は1A7.gr1抗体のどちらかで腹腔内注射した。アイソタイプコントロールとしてヒトIgGを投与した。部分退縮(PR)は、3回連続測定で投与の初日の開始腫瘍体積の50%未満の腫瘍体積として定義された。腫瘍成長阻害(TGI)は、下記式を用いて計算された。
【数2】
【0183】
445-3は、0.4mg/kg、2mg/kg、及び10mg/kgの用量の腹腔内注射として用量依存抗腫瘍効能を有することが、結果から実証された。445-3の投与は、53%(0.4mg/kg)、69%(2mg/kg)、及び94%(10mg/kg)腫瘍成長阻害をもたらし、ベースラインからの0%(0.4mg/kg)、17%(2mg/kg)、及び33%(10mg/kg)部分退縮をもたらした。これとは対照的に、抗体1A7.gr1による部分退縮は観測されなかった。リガンド非ブロッキング抗体445-3は、OX40-OX40Lブロッキング抗体1A7.gr1よりも抗腫瘍療法に好適であることが、in vivoデータから示唆さる(図13A及び13B、表9)。
【0184】
【表11】
【0185】
実施例15: 抗OX40抗体のアミノ酸改変
OX40抗体の改善のために、改変に供されるいくつかのアミノ酸を選んだ。親和性を改善するために又はヒト化を増加させるために、アミノ酸変化を行った。適切なアミノ酸改変が行われるようにPCRプライマーセットを設計し、合成し、そして抗OX40抗体を修飾するために使用した。たとえば、重鎖でのK28T及び軽鎖でのS24Rの改変は、FACSにより決定されるEC50を元の445-2抗体の1.7倍に増加させた。重鎖でのY27G及び軽鎖でのS24Rの改変は、Biacoreにより決定されKを元の445-2抗体の1.7倍に増加させた。これらの変化は、図14A~14Bにまとめられる。
【0186】
実施例16: MMTV-PyMT同種同系マウスモデルにおける抗TIGIT抗体との組合せのOX40抗体
MMTV-PyMTは、乳腺でポリオーマウイルスミドルT抗原を過剰発現させるためにMMTV-LTRが使用される乳癌転移のマウスモデルである。マウスは高転移腫瘍を発生し、通常、このモデルは乳癌進行を試験するために使用される。
【0187】
雌FVB/Nマウスにおいて、MMTV-PyMTトランスジェニックマウスの自然発生腫瘍から作製された1×10MMTV-PyMT腫瘍細胞を乳房内に植え込んだ。8日間接種後、動物を各群15匹の動物で4群にランダム化した。1つの群のマウスは、コントロールとして媒体(PBS)で治療された。
【0188】
OX86は、国際公開第2016/057667号パンフレットにすでに開示されているラット抗マウスOX40抗体であり、これは、その免疫原性を低減するために、さらにはマウス試験でそのFc媒介機能を保つために、マウスIgG2a定常領域でさらに工学操作された。OX86のVH及びVL領域は、以下に提供される。科学文献ですでに報告されているように、OX86は、OX40とOX40リガンドとの相互作用をブロックしないという点で、抗体445-3に類似した作用機序を有する(al-Shamkhani Al,et al.,Euro J.Immunol(1996)26(8)、1695-9,Zhang,P.et al.Cell Reports 27,3117-3123)。単独療法として、OX86を腹腔内(i.p.)注射により0.4mg/kgで週1回(QW)投与した。
【0189】
【表12】
【0190】
ネズミ特異的抗TIGIT抗体(muTIGIT)は、インハウスで発生され、腹腔内注射により5mg/kgで週1回投与された。muTIGITとの組合せのOX86抗体は、単独療法で以上に記載された個別の各抗体と同一用量で投与された。キャリパーを用いて2寸法で腫瘍体積及び体重を週2回決定し、式:V=0.5(a×b)(式中、a及びbは、それぞれ、腫瘍の長直径及び短直径である)を用いてmm単位で表した。データは、平均腫瘍体積±平均の標準誤差(SEM)として提示される。腫瘍成長阻害(TGI)は、下記式を用いて計算される。
【数3】
【0191】
muTIGIT治療との組合せのOX86抗体の治療に対するMMTV-PyMT同種同系モデルの反応は、図15及び表10に示される。21日目、腹腔内に週1回のOX86及びmuTIGITの各単独療法は、それぞれ、31%及び13%のTGIで腫瘍成長を阻害した。これとは対照的に、有意に改善された抗腫瘍活性は、muTIGITとの組合せのOX86を用いて、単剤として投与されたときのOX86に対して25%増のTGIにあたる56%のTGIで観測された(p<0.001、組合せ対媒体、p<0.05、組合せ対OX86単独療法、及びp<0.001、組合せ対muTIGIT単独療法)。このデータは、抗TIGIT抗体との組合せのOX40抗体がMMTV-PyMT同種同系マウスモデルで効能があることを実証する。また、抗TIGIT抗体との組合せのOX40抗体の組合せは、試験全体を通して動物体重に有意な影響を及ぼさなかった。
【0192】
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図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14A
図14B
図15
【配列表】
2023502323000001.app
【国際調査報告】