(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-24
(54)【発明の名称】熱硬化性重合体のバッチ反応性混合および脱気のための方法および当該方法を実行する装置
(51)【国際特許分類】
C08G 18/00 20060101AFI20230117BHJP
B01F 29/10 20220101ALI20230117BHJP
B01F 35/213 20220101ALI20230117BHJP
B01F 35/222 20220101ALI20230117BHJP
B01F 35/45 20220101ALI20230117BHJP
B01F 35/51 20220101ALI20230117BHJP
B01F 35/512 20220101ALI20230117BHJP
B01F 23/47 20220101ALI20230117BHJP
B01D 19/00 20060101ALI20230117BHJP
【FI】
C08G18/00 D
B01F29/10
B01F35/213
B01F35/222
B01F35/45
B01F35/51
B01F35/512
B01F23/47
B01D19/00 102
B01D19/00 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022527248
(86)(22)【出願日】2020-11-25
(85)【翻訳文提出日】2022-05-11
(86)【国際出願番号】 EP2020083381
(87)【国際公開番号】W WO2021105220
(87)【国際公開日】2021-06-03
(32)【優先日】2019-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515266223
【氏名又は名称】コベストロ、ドイチュラント、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】COVESTRO DEUTSCHLAND AG
(71)【出願人】
【識別番号】000145286
【氏名又は名称】株式会社写真化学
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】馬場 康昭
(72)【発明者】
【氏名】坂田 徹也
(72)【発明者】
【氏名】小原 茂
(72)【発明者】
【氏名】衛藤 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】ジャンタン,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ロドリゲス,ジャン‐ポール
【テーマコード(参考)】
4D011
4G035
4G036
4G037
4J034
【Fターム(参考)】
4D011AA06
4D011AA16
4D011AB06
4D011AC05
4D011AC08
4D011AD02
4D011AD03
4D011AD06
4G035AB41
4G035AE02
4G035AE17
4G036AA26
4G037DA11
4G037DA27
4G037EA05
4J034CA15
4J034CB03
4J034CC12
4J034HA02
4J034HA07
4J034HB12
4J034HC12
(57)【要約】
ポリウレタン又はその類似物等の熱硬化性重合体のバッチ反応性混合及び脱気の為の装置であって、熱硬化性重合体のバッチを配置する少なくとも1つの密封可能な容器(1)と衛星状の回転式板を回転可能に搭載する回転式板(2)であって、衛星状の回転式板上に容器(1)を配置して、容器(1)を自転及び公転させる回転式板(2)と回転式板(2)を駆動する為の第1手段と衛星状の回転式板を駆動する為の第2手段と容器(1)を真空下に配置する為の手段(3)とを含む装置にて、当該装置は、回転式板(2)を駆動して容器(1)を任意の速度で公転させる為の第1手段と衛星状の回転式板を駆動して容器(1)を任意の速度で自転させる為の第2手段とを制御する為の手段を含み、当該制御手段は容器(1)の公転速度と自転速度とを互いに独立して連続的に変動させることが可能な装置。熱硬化性重合体のバッチ反応性混合及び脱気の為の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタンまたはその類似物などの熱硬化性重合体のバッチ反応性混合および脱気のための装置であって、
前記熱硬化性重合体のバッチを配置する少なくとも1つの密封可能な容器(1)と、
衛星状の回転式板を回転可能に搭載する回転式板(2)であって、前記衛星状の回転式板上に前記容器(1)を配置して、前記容器(1)を自転および公転させる回転式板(2)と、
前記回転式板(2)を駆動するための第1手段と、
前記衛星状の回転式板を駆動するための第2手段と、
前記容器(1)を真空下に配置するための手段(3)と、を含む前記装置において、
前記装置は、前記回転式板(2)を駆動して前記容器(1)を任意の速度で公転させるための第1手段と、前記衛星状の回転式板を駆動して前記容器(1)を任意の速度で自転させるための第2手段と、を制御するための手段を含み、前記制御するための手段は、前記容器(1)の公転速度と自転速度とを互いに独立して連続的に変動させることが可能であることを特徴とする、装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置において、
混合脱気サイクル中、前記公転速度に対する前記自転速度の比率は、可変かつゼロ以外であることを特徴とする、装置。
【請求項3】
請求項1および2のいずれかに記載の装置において、
少なくとも前記熱硬化性重合体のバッチの成分および当該成分の重量にしたがって前記容器(1)の自転速度および公転速度を決定するための手段を含むことを特徴とする、装置。
【請求項4】
請求項3に記載の装置において、
前記容器(1)に配置した前記熱硬化性重合体のバッチの成分を特定するための少なくとも1つのセンサと、
前記熱硬化性重合体のバッチの各成分の重量を測定するための重量センサと、を含み、
前記センサは、前記容器の自転速度および公転速度を決定するための手段に接続されていることを特徴とする、装置。
【請求項5】
前記請求項のいずれか1項に記載の装置において、
前記容器(1)は、
少なくとも1つの円筒状の本体(4)と、
取り外し可能なカバー(5)であって、前記本体(4)と当該取り外し可能なカバー(5)との間を確実にシールタイトに閉じることが可能なシール(6)を含む、取り外し可能なカバー(5)と、
前記カバー(5)に対して強固に接続されたポペット逆止弁(7)であって、真空下への配置のための手段(3)と協働可能であるポペット逆止弁(7)と、を含むことを特徴とする、装置。
【請求項6】
請求項5に記載の装置において、
前記容器(1)は、前記円筒状の本体(4)に配置可能な、取り外し可能な円筒状のボウル(8)を含むことを特徴とする、装置。
【請求項7】
請求項5および/または6のいずれかに記載の装置において、
前記取り外し可能なボウル(8)および/または前記本体(4)は、前記取り外し可能なボウル(8)が前記本体(4)内で回転することを防止するための手段(9、10)を含むことを特徴とする、装置。
【請求項8】
請求項5から7のいずれか1項に記載の装置において、
少なくとも、前記取り外し可能なボウル(8)の内壁は、非粘着素材から得られる層で覆われていることを特徴とする、装置。
【請求項9】
請求項5から7のいずれか1項に記載の装置において、
前記取り外し可能なボウル(8)は、ポリエチレン(PET)から得られることを特徴とする、装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の装置において、
前記容器(1)は、熱成形した、ABSと呼ばれるポリ(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)から得られる円筒状の本体(4)から形成されることを特徴とする、装置。
【請求項11】
ポリウレタンまたはその類似物などの熱硬化性重合体のバッチ反応性混合および脱気のための方法であって、
前記熱硬化性重合体のバッチの成分を、少なくとも1つの気密に閉じた容器(1)に導入する工程と、
前記容器(1)を真空下に配置する工程と、
混合脱気サイクルのために前記容器(1)を自転および公転させる工程と、
を少なくとも含む方法において、
混合脱気サイクル中、前記容器(1)の自転速度および公転速度を互いに独立して連続的に変動させることを特徴とする、方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法において、
前記公転速度に対する前記自転速度の比率は、可変かつゼロ以外であることを特徴とする、方法。
【請求項13】
請求項11および12のいずれかに記載の方法において、
前記容器(1)に配置した前記熱硬化性重合体のバッチの各成分の重量を測定する工程と、測定した重量にしたがって前記容器(1)の自転速度および公転速度を決定する工程と、を含むことを特徴とする、方法。
【請求項14】
請求項11から13のいずれか1項に記載の方法において、
前記容器(1)に配置した前記熱硬化性重合体のバッチの各成分を特定する工程と、
前記熱硬化性重合体のバッチの成分にしたがって前記容器(1)の自転速度および公転速度を決定する工程と、
を含むことを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタンまたはその類似物の配合物などの熱硬化性重合体のバッチ反応性混合および脱気ための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンまたはその他の熱硬化性重合体の配合物の成分などの複数の成分のバッチ反応性混合の分野において、遊星混合装置と呼ばれる装置を用いることは、周知の手法である。遊星混合装置は、回転板に配置した容器の公転軸を中心とする回転を組み合わせるものであり、勾配を有し、当該板の公転軸は、容器の自転軸とは同軸ではない。比較的高速な2つの回転運動を組み合わせることによって、相当な混合力を上記成分に対して発揮する。当該成分は、濃いペースト状となる程度に粘性が高いか、分散させることも可能な固体の充填材であるか、一般に粘性成分より混合は困難であるものの混合することも可能な液状成分であってもよい。
【0003】
そのような装置は、特にW02005/025717、W02011/155370、またはW02009/020167の文書に記載されている。
【0004】
W02005/025717の文書には、撹拌脱気装置について記載されている。当該装置は、高粘度体である混練対象物を、当該混練対象物を保持する入れ物を自転させると同時に旋回させることによって、撹拌し、脱気するものであり、配管(配線)が、上記入れ物を、当該入れ物が回転する際もねじれない外部装置に連結している。撹拌脱気装置は、混練対象物を保持する入れ物を、当該入れ物の自転軸を中心として回転させながら、公転軸を中心として回転させることによって、上記混練対象物を撹拌し、脱気する。上記撹拌脱気装置は、回転台を回転させる、モータなどの第1回転駆動機構と、回転台の回転とは逆方向かつ回転台と同じ速度で入れ物を回転させる第2回転駆動機構と、一端が入れ物に接続されており、他端が外部装置に接続されている、例えば吸込管などの、1または複数の分布手段と、を有する。
【0005】
W02011/155370の文書には、真空下での混練および消泡のための装置について記載されている。当該装置は、ペースト用の円筒状容器に収容したペースト状の材料を、十分かつ均一に混練し、消泡することができる。真空下での混練および消泡のための上記装置は、公転可能な回転要素と、容器を保持するための手段と、駆動機構と、を含む。回転要素は、低圧力状態に配置するチャンバ内に設けられており、自転の基準駆動軸を中心として水平面上で回転する。容器を保持するための手段は、公転可能な回転要素の軌道縁に設けられることによって、自転の基準駆動軸と平行な自転の動作軸を中心として回転することができ、またペースト用容器を、当該ペースト用容器の中心軸が自転の動作軸と斜めに交差する状態で、取り外し可能に保持する。駆動機構は、公転可能な回転要素と容器を固定するための手段とを回転させる。ペースト用容器には、ペースト材料を導入するための開口が形成されている。当該開口は、ペースト用容器の公転および自転による遠心力の作用によって、ペースト用容器の内部空間をチャンバの内部空間に対して開く脱気弁、またはペースト材料に対して不透過性の気体透析膜を有している。
【0006】
W02009/020167の文書には、混練機のための脱気器について記載されている。当該脱気器は、容器の底面の中心を実質的に通過し、公転軌道上の公転の軸と実質的に平行な自転軸を中心として容器保持器を回転させながら、処理すべき材料を収容することが可能な容器を保持する上記容器保持器を公転軸を中心として回転させることによって、混練機を脱気させながら処理すべき材料を混練することを可能とする。容器が自転軸を中心として回転しながら公転軸を中心として回転する時、容器の側面部の内壁面は、容器の高さ方向における中央部分を実質的に通過し、自転軸に対して実質的に垂直な仮想面に対して上下に動くことで、延伸して自転軸に接近する。
【0007】
我々はさらに、熱硬化性重合体の脱気およびバッチ反応性混合のための装置について記載しているJP6262087、W02009/137480、およびUS2007/002682の文書を知っている。
【0008】
JP6262087の文書には、ポリウレタンなどの熱硬化性重合体の脱気および反応性バッチ混合のための装置について記載されている。当該装置は、密封可能な容器と、衛星状の回転テーブルを回転可能に搭載する回転テーブルであって、衛星状の回転テーブル上に上記容器を位置させて、容器を自転および公転させる回転テーブルと、上記容器を真空にするための手段と、を含む。その上、上記装置は、上記容器をさせるための公転モータおよび自転モータ、または単一のモータを含む。
【0009】
W02009/137480の文書には、二軸の混合装置が開示されている。当該装置は、回転可能な主支持部と、回転台などの、1または複数の付属のオフセット支持部と、を有している。主支持部とオフセット回転性支持部とは、互いに独立して制御して、遠心機で混合する材料に不感帯が形成されるのを抑制できる。作業者は、混合する材料および混合方法中の材料の観察に基づいて、様々な回転手順を指定できる。
【0010】
US2007/002682の文書には、液体と可溶性の固体との混合物または溶液を生成する装置および方法について記載されている。当該方法は、液体と可溶性の固体とを容器に収容する工程と、当該容器を、第1軸を中心として第1方向に回転させながら、第2軸を中心として第2方向に回転させることで、可溶性の固体を溶解させ、混合物または溶液の成分を混合する工程と、を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、これらの先行技術の装置には、反応性の熱硬化性重合体、特にポリウレタン配合物を良好にバッチ混合できないという欠点がある。具体的には、先行技術の装置および方法では、あらゆる種類のポリウレタン配合物を徹底的に混合することはできない、および/または、速度が遅すぎて反応性の配合物を混合できない、および/または、あらかじめ真空下で脱気すべき成分を適切に脱気できない。
【0012】
したがって、本発明の目的の1つは、反応性の熱硬化性配合物、特にポリウレタンを、短時間かつ低コストで効果的に脱気し、混合するための装置および方法を提供することによって、上記欠点を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的のために、本発明において、
ポリウレタンまたはその類似物などの熱硬化性重合体のバッチ反応性混合および脱気のための装置であって、
前記熱硬化性重合体のバッチを配置する少なくとも1つの密封可能な容器と、
衛星状の回転式板を回転可能に搭載する回転式板であって、前記衛星状の回転式板上に前記容器を配置して、前記容器を自転および公転させる回転式板と、
前記回転式板を駆動するための第1手段と、
前記衛星状の回転式板を駆動するための第2手段と、
前記容器を真空下に配置するための手段と、を含む装置において、
当該装置は、回転式板を駆動して前記容器を任意の速度で公転させるための第1手段と、前記衛星状の回転式板を駆動して容器を任意の速度で自転させるための第2手段と、を制御するための手段を含み、当該制御手段は、容器の公転速度と自転速度とを互いに独立して連続的に変動させることが可能である、ことが注目に値する、装置を提供する。
【0014】
好ましくは、混合脱気サイクル中、前記公転速度に対する前記自転速度の比率は、可変かつゼロ以外である。
【0015】
有利には、前記装置は、
少なくとも前記熱硬化性重合体のバッチの成分および当該成分の重量にしたがって前記容器の自転速度および公転速度を決定するための手段を含む。
【0016】
追加的に、本発明に係る装置は、有利には、
前記容器に配置した熱硬化性重合体のバッチの成分を特定するための少なくとも1つのセンサと、
前記熱硬化性重合体のバッチの各成分の重量を測定するための重量センサと、を含み、
これらのセンサは、前記容器の自転速度および公転速度を決定するための手段に接続されている。
【0017】
その上、前記容器は、
少なくとも1つの円筒状の本体と、
シールを含む取り外し可能なカバーであって、カバーと当該取り外し可能なカバーとの間を確実にシールタイトに閉じることが可能なシールを含む取り外し可能なカバーと、
前記カバーに対して強固に接続されたポペット逆止弁であって、真空下への配置のための手段と協働可能なポペット逆止弁と、を含む。
【0018】
前記容器は、有利には、前記円筒状の本体に配置可能な、取り外し可能な円筒状のボウルを含む。
【0019】
前記取り外し可能なボウルおよび/または前記本体は、前記取り外し可能なボウルが本体内で回転することを防止するための手段を含む。
【0020】
脱気した組成物の除去および/または取り外し可能なボウルのクリーニングを容易にするために、少なくとも、前記取り外し可能なボウルの内壁は、非粘着素材から得られる層で覆われている。
【0021】
1つの実施変形例によると、前記取り外し可能なボウルは、ポリエチレン(PET)から得られる。
【0022】
その上、有利には、前記容器は、熱成形した、ABSと呼ばれるポリ(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)から得られる円筒状の本体から形成される。
【0023】
本発明の他の主題は、
ポリウレタンまたはその類似物などの熱硬化性重合体のバッチ反応性混合および脱気のための方法であって、
前記熱硬化性重合体のバッチの成分を、少なくとも1つの気密に閉じた容器に導入する工程と、
前記容器を真空下に配置する工程と、
混合脱気サイクルのために前記容器を自転および公転させる工程と、
を少なくとも含む方法において、
混合脱気サイクル中、前記容器の自転速度および公転速度を互いに独立して連続的に変動させる、ことが注目に値する、方法に関する。
【0024】
好ましくは、前記公転速度に対する前記自転速度の比率は、可変かつゼロ以外である。
【0025】
有利には、前記方法は、
前記容器に配置した熱硬化性重合体のバッチの各成分の重量を測定する事前工程と、
混合する配合物および測定した重量にしたがって前記容器の自転速度および公転速度を決定する工程と、を含む。
【0026】
加えて、前記方法は、有利には、
前記容器に配置した熱硬化性重合体のバッチの各成分を特定する事前工程と、
前記熱硬化性重合体のバッチの成分にしたがって前記容器の自転速度および公転速度を決定する工程と、含む。
【0027】
他の利点および特徴は、熱硬化性重合体のバッチ反応性混合および脱気のための、本発明に係る装置および方法の非限定的な例としての複数の実施変形例についての以下の記載から、また以下の添付図面を参照すると、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】熱硬化性重合体のバッチ反応性混合および脱気のための、本発明に係る装置の部分斜視図である。
【
図2】
図1に示す、本発明に係る装置の断面図である。
【
図4】本発明に係る装置の容器を真空下に配置するためのフレームに配置した容器の斜視図である。
【
図5】真空下に配置した、装置の容器の模式断面図である。
【
図6】本発明に係る装置の容器の速度および回転の曲線のグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明に係る記載の残りの全体を通して、同一の参照番号は同一の要素を表す。さらに、各図面は、必ずしも尺度通りには描かれていない。
【0030】
図1から
図5を参照すると、ポリウレタンまたはその類似物などの熱硬化性重合体のバッチ反応性混合および脱気のための装置は、通常の様態において、熱硬化性重合体のバッチを配置する少なくとも1つの密封可能な容器1と、衛星状の回転式板または腕部(図示せず)を回転可能に搭載する回転式板2であって、衛星状の回転式板上の支持部14内に容器1を配置して、容器1を自転および公転させる回転式板2と、回転式板2を駆動するための第1手段と、衛星状の回転式板(図示せず)を駆動するための第2手段と、容器1を真空下に配置するための手段3(
図5)と、を含む。支持部14は、円筒状の部分からなる。その内径は、容器1の外径よりもわずかに大きくなっており、容器1を収容する。
【0031】
各容器1は、有利には、熱成形した、ABSと呼ばれるポリ(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)から得られる円筒状の本体4と、シール6を含む取り外し可能なカバー5であって、シール6が本体4と取り外し可能なカバー5との間を確実にシールタイトに閉じることが可能な取り外し可能なカバー5と、取り外し可能なカバー5に対して強固に接続されたポペット逆止弁7であって、真空下への配置ための手段3と協働可能なポペット逆止弁7と、から形成される。より速やかに、またより容易に取り扱うことができるように、容器1は、円筒状の本体4に配置可能な、取り外し可能な円筒状のボウル8を有利に含む。追加的に、取り外し可能なボウル8および/または本体4は、取り外し可能なボウル8が本体4内で回転することを防止するための手段を含む。当該手段は、この特定の例示的な実施形態においては、突起9からなる。突起9は、取り外し可能なボウルの外壁における、取り外し可能なボウルの上端近傍から突出しており、容器1の内壁において、容器1の上端から垂直に延伸する溝10と協働する。
【0032】
取り外し可能なボウル8が本体4内で回転することを防止するための手段は、本発明の範囲から逸脱しなければ、当業者によく知られている他の任意の手段であってもよいことは、もちろん明らかである。
【0033】
脱気した組成物の除去および/または取り外し可能なボウル8のクリーニングを容易にするために、少なくとも、取り外し可能なボウル8の内壁は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)またはその類似物などの非粘着素材から得られる層で覆われている。取り外し可能なボウルは、本発明の範囲から逸脱しなければ、例えばポリエチレン(PET)などの、再生利用可能な非粘着素材から得られ、使用後に廃棄することも可能であることに留意すべきである。
【0034】
図4および
図5を参照すると、真空下への配置を容易にするために、当該装置は、フレーム11をさらに含む。フレーム11は、実質的に矩形の金属板から形成されており、2つの容器1を収容するための2つの凹部12を有する。容器同士の間の間隔は、真空下への配置のための手段3におけるカップ13同士の間の間隔に対応する。
【0035】
真空手段3は、少なくとも1つの容器1を支持部14にセットする前に、少なくとも1つの容器1を真空にするように構成されていてもよい。
【0036】
言うまでもないが、本発明の範囲から逸脱しなければ、代替的に(図示せず)、容器1は、当該装置における衛星状の回転式板上に置いた後、直接的に真空下に配置することもできる。
【0037】
本発明に係る装置の本質的な特徴によると、当該装置は、回転式板2を駆動して容器1を任意の速度で公転させるための第1手段と、衛星状の回転式板を駆動して容器1を任意の速度で自転させるための第2手段と、を制御するための手段を含む。当該制御手段は、容器1の公転速度と自転速度とを互いに独立して連続的に変動させることが可能である。容器1の自転および公転の速度をこのように連続的に変動させることによって、熱硬化性重合体のバッチの成分を、速やかに、かつ完全に脱気し、特に均一に混合することができる。
【0038】
好ましくは、混合脱気サイクル中、公転速度に対する自転速度の比率は、可変かつゼロ以外である。
【0039】
これに関して、容器の公転および自転の速度を変動させる例を、
図6に示す。上側の曲線は、混合脱気サイクル中の、容器1の公転速度の変動を表し、下側の曲線は、混合脱気サイクル中の、容器1の自転速度の変動を表す。
【0040】
さらに、有利には、当該装置は、少なくとも熱硬化性重合体のバッチの成分および当該成分の重量にしたがって容器1の自転速度および公転速度を決定するための手段を含む。これらの決定手段は、プロセッサと記憶部とを備えるコンピュータ、または、タブレット端末、スマートフォン、もしくはそれらの類似物などの、少なくともプロセッサと記憶部とを含む任意の電子装置からなる。
【0041】
追加的に、本発明に係る装置は、有利には、容器1に配置した熱硬化性重合体のバッチの成分を特定するための少なくとも1つのセンサと、熱硬化性重合体のバッチの各成分の重量を測定するための重量センサと、を含む。これらのセンサは、容器1の自転速度および公転速度を決定するための手段に接続されている。
【0042】
よって、本発明に係る、ポリウレタンまたはその類似物などの熱硬化性重合体のバッチ反応性混合および脱気のための方法は、少なくとも以下の工程を含む。
i)熱硬化性重合体のバッチの成分を、少なくとも1つの気密に閉じた容器1に導入する工程
ii)容器1を真空下に配置し、混合脱気サイクルのために容器1を自転および公転させる工程
iii)混合脱気サイクル中、容器1の自転速度および公転速度を互いに独立して連続的に変動させる工程
【0043】
なお、容器の真空下への配置は、5~20ミリバール(絶対圧)で行われる。これによって、当該成分に溶解した気体も除去できる。
【0044】
好ましくは、公転速度に対する自転速度の比率は、可変かつゼロ以外である。
【0045】
有利には、当該方法は、容器に配置した熱硬化性重合体のバッチの各成分の重量を測定する事前工程と、測定した重量にしたがって容器の自転速度および公転速度を決定する工程と、および/または、容器に配置した熱硬化性重合体のバッチの各成分を特定する事前工程と、熱硬化性重合体のバッチの成分にしたがって容器の自転速度および公転速度を決定する工程と、を含む。
【0046】
本発明に係る方法および装置の有効性を示す例として、イソシアネート(NCO)官能基を3.6%含有する(遊離モノマー含有量の少ない)TDI(トルエンジイソシアネート)ポリエステルプレポリマー100重量部と、DMTDA(ジメチルチオトルエンジアミン)などのアミン系連鎖延長剤8.7重量部と、を含む400グラムのバッチを、以下の方法によって完全に脱気し混合できる。すなわち、組成物を容器に配置し、その後、混合を開始する前に、容器内の真空度が15ミリバール(絶対圧)に達するように、30秒間、真空下に配置する。混合脱気方法の間中、当該真空を容器内で維持した状態で、混合脱気サイクルのために容器1を自転および公転させる。当該混合脱気サイクルは、公転速度が毎分回転数(rpm)740で、自転速度が毎分回転数(rpm)530の、すなわち、公転速度に対する自転速度の比率が0.71である、約50秒間の第1工程と、公転速度が毎分回転数(rpm)740で、自転速度が毎分回転数(rpm)74の、すなわち、公転速度に対する自転速度の比率が0.10である、約60秒間の第2工程と、を含む。
【0047】
上述した例で用いた自転および公転の速度は、当該装置の大きさ、特に、回転式板2および衛星状の回転式板の大きさに依存するため、本発明の範囲から逸脱しなければ、異なっていてもよいことに留意すべきである。
【0048】
本開示の様態に係る装置は、
ポリウレタンまたはその類似物などの熱硬化性重合体のバッチ反応性混合および脱気のための装置であって、
熱硬化性重合体のバッチを配置する少なくとも1つの密封可能な容器と、
衛星状の回転式部材を回転可能に搭載する回転式部材であって、衛星状の回転式部材上に容器を配置して、容器を自転および公転させる回転式部材と、
回転式部材を駆動するための第1手段と、
衛星状の回転式部材を駆動するための第2手段と、
容器を真空下に配置するための手段と、を含む装置、を含む。
【0049】
当該装置は、容器の公転速度と自転速度とを互いに独立して連続的に変動させるために第1手段と第2手段とを制御するための制御手段をさらに含んでいてもよい。
【0050】
当該容器は、少なくとも1つの円筒状の本体、および、円筒状の本体に配置可能な、取り外し可能な円筒状のボウルを含んでいてもよい。
【0051】
最後に、上述の例は単なる特定の実例であって、本発明の適応分野を限定するものでは全くないことは、もちろん明らかである。
【国際調査報告】