(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-24
(54)【発明の名称】分岐を有するエチレン系ポリマー組成物およびその製造のためのプロセス
(51)【国際特許分類】
C08F 279/02 20060101AFI20230117BHJP
【FI】
C08F279/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022527843
(86)(22)【出願日】2020-11-11
(85)【翻訳文提出日】2022-05-12
(86)【国際出願番号】 US2020059978
(87)【国際公開番号】W WO2021108132
(87)【国際公開日】2021-06-03
(32)【優先日】2019-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】クラソフスキー、アルカジー エル.
(72)【発明者】
【氏名】コンスタンティノフ、イヴァン エー.
(72)【発明者】
【氏名】ムンジャル、サラット
(72)【発明者】
【氏名】エワート、ショーン ダブリュー.
【テーマコード(参考)】
4J026
【Fターム(参考)】
4J026AA68
4J026AC10
4J026AC29
4J026BA01
4J026BA02
4J026BA03
4J026BB03
4J026DB07
4J026DB15
4J026DB24
4J026DB32
4J026DB33
4J026GA01
4J026GA09
(57)【要約】
本開示は、組成物を提供する。一実施形態では、組成物は、高圧(100MPa以上)フリーラジカル重合によって形成されたエチレン系ポリマー組成物である。エチレン系ポリマー組成物は、エチレンモノマーと、ヒドロキシル末端ポリブタジエン分子(PB-OH)の混合物と、を含む。各PB-OH分子は、内部アルケン基および末端アルケン基を含む。各PB-OH分子は、末端アルケン基よりも多くの内部アルケン基を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧(100MPa以上)フリーラジカル重合によって形成されたエチレン系ポリマー組成物であって、
エチレンモノマーと、ヒドロキシル末端ポリブタジエン分子(PB-OH)の混合物と、を含み、各PB-OH分子が内部アルケン基および末端アルケン基を含み、各PB-OH分子が末端アルケン基よりも多くの内部アルケン基を有する、エチレン系ポリマー組成物。
【請求項2】
炭化水素系分子が構造Iを有し、
【化1】
式中、cが0~90であり、nが0~90であり、tが0~90であり、
c+n+t≧4であるが、ただし、c、n、およびtが、各々同時に0であり得ない、請求項1に記載のエチレン系ポリマー組成物。
【請求項3】
構造Iに基づく前記ヒドロキシル末端ポリブタジエン分子の混合物が、1.2~10の分子量分布を有する、請求項2に記載のエチレン系ポリマー組成物。
【請求項4】
前記ヒドロキシル末端ポリブタジエン分子が構造IIを有し、
【化2】
式中、cが0~90であり、nが0~90であり、tが0~90であり、xが0~90であり、yが0~90であり、
c+n+t≧4であるが、ただし、c、n、およびtが、各々同時に0であり得ない、請求項1に記載のエチレン系ポリマー組成物。
【請求項5】
構造IIに基づく前記ヒドロキシル末端ポリブタジエン分子の混合物が、1.2~10の分子量分布を有する、請求項4に記載のエチレン系ポリマー組成物。
【請求項6】
前記エチレン系ポリマー組成物が、前記エチレン系ポリマー組成物の総重量に基づいて、95重量%~99.98重量%のエチレン、および5.0重量%~0.02重量%~5.0重量%の前記ヒドロキシル末端ポリブタジエン分子の混合物を、重合形態で含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のエチレン系ポリマー組成物。
【請求項7】
前記エチレン系ポリマー組成物が、0.15/1000炭素~0.9/1000炭素の末端アルケン含有量を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のエチレン系ポリマー組成物。
【請求項8】
前記エチレン系ポリマー組成物が、0.1/1000炭素~1/1000炭素の内部トランス-アルケン含有量を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のエチレン系ポリマー組成物。
【請求項9】
前記エチレン系ポリマー組成物が、0.909g/cc~0.940g/ccの密度を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載のエチレン系ポリマー組成物。
【請求項10】
ブレンド成分をさらに含み、前記ブレンド成分が、前記ヒドロキシル末端ポリブタジエン分子の混合物を含まない、請求項1~9のいずれか一項に記載のエチレン系ポリマー組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物を含む、物品。
【請求項12】
前記物品が、フィルム、コーティング、ケーブル用のコーティング、ワイヤ用のコーティング、およびコーティングされたシートからなる群から選択される、請求項11に記載の物品。
【請求項13】
プロセスであって、
フリーラジカル重合条件下、かつ100MPa以上の圧力の重合反応器において、エチレンモノマーと、ヒドロキシル末端ポリブタジエン分子の混合物とを反応させることであって、各分子が構造Iを有し、
【化3】
式中、cが0~90であり、nが0~90であり、tが0~90であり、
c+n+t≧4であるが、ただし、c、n、およびtが、各々同時に0であり得ない、反応させることと、
エチレン系ポリマー組成物を形成することと、を含む、プロセス。
【請求項14】
前記重合が、少なくとも1つの管状反応器を含む反応器構成において行われる、請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
前記重合が、少なくとも1つのオートクレーブ反応器を含む反応器構成において行われる、請求項13に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
低密度ポリエチレン(LDPE)の分岐レベルは、主に、反応器の設計、およびLDPEを作製するために使用される重合条件によるものである。分岐剤は、LDPEにおける分岐のレベルを増加させるために使用されてきた。しかしながら、高レベルの分岐を有する変性LDPEを達成するために必要とされるプロセス条件は、多くの場合、より低い結晶化度およびより高い含有量の低分子量抽出可能画分を有する最終生成物をもたらす。したがって、高い分岐レベルを有し、かつ良好なポリマー特性を維持する条件下で調製され得る、変性LDPEに対する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0002】
本開示は、組成物を提供する。一実施形態では、組成物は、高圧(100MPa以上)フリーラジカル重合によって形成されたエチレン系ポリマー組成物である。エチレン系ポリマー組成物は、エチレンモノマーと、ヒドロキシル末端ポリブタジエン分子(PB-OH)の混合物と、を含む。各PB-OH分子は、内部アルケン基および末端アルケン基を含む。各PB-OH分子は、末端アルケン基よりも多くの内部アルケン基を有する。
【0003】
本開示は、プロセスを提供する。一実施形態では、プロセスは、フリーラジカル重合条件下、かつ100MPa以上の圧力の重合反応器において、エチレンモノマーと、ヒドロキシル末端ポリブタジエン分子の混合物と、を反応させることを含む。各分子は、構造Iを有し、
【化1】
式中、cは0~90であり、nは0~90であり、tは0~90であり、
c+n+t≧4であるが、ただし、c、n、およびtは、各々同時に0であり得ない。このプロセスは、エチレン系ポリマー組成物を形成することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図1】本開示の一実施形態に従うフォルマントエチレン系ポリマー中に存在する添加剤Aの平均補正溶融力(MF)対ppmを示すグラフである。
【0005】
定義
元素周期表へのいずれの参照も、CRC Press,Inc.によって1990~1991年に発行されたときのものである。この表の元素の族についての言及は、族に番号を付けるための新たな表記法によるものである。
【0006】
米国特許実務の目的のために、参照された特許、特許出願、または刊行物の内容は、特に定義の開示に関して(本開示で具体的に提供されるいずれの定義とも矛盾しない範囲で、それらの全体が参照として組み込まれる(またはその対応する米国版が参照によってそのように組み込まれる)。
【0007】
本明細書に開示される数値範囲は、下限値および上限値を含む、下限値から上限値のすべての値を含む。明示的な値を含む範囲(例えば、1または2、または3~5、または6、または7)の場合、任意の2つの明示的な値の間の任意のサブ範囲が含まれる(例えば、上記の範囲1~7は、1~2、2~6、5~7、3~7、5~6などのサブ範囲を含む)。
【0008】
別途の記載がない限り、文脈から暗黙的、または当技術分野で慣例でない限り、すべての部およびパーセントは重量に基づき、すべての試験方法は本開示の出願日現在のものである。
【0009】
「組成物」という用語は、組成物を含む材料の混合物、ならびに組成物の材料から形成される反応生成物および分解生成物を指す。
【0010】
「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する」という用語、およびそれらの派生語は、同じことが具体的に開示されているかどうかにかかわらず、任意の追加の成分、ステップ、または手順の存在を除くことを意図しない。疑義を回避するために、「含む(comprising)」という用語の使用を通じて特許請求されるすべての組成物は、反対の記載がない限り、ポリマーであろうとなかろうと、任意の追加の添加剤、アジュバント、または化合物を含み得る。対照的に、「から本質的になる」という用語は、操作性に必須ではないものを除き、あらゆる続く記述の範囲からあらゆる他の成分、ステップ、または手順を除く。「からなる」という用語は、具体的に描写または列挙されていないあらゆる成分、ステップ、または手順も除く。「または」という用語は、特に明記しない限り、列挙されたメンバーを個別に、ならびに任意の組み合わせで指す。単数形の使用は、複数形の使用を含み、逆もまた同様である。
【0011】
本明細書で使用される「ポリマー」または「ポリマー材料」という用語は、同じタイプまたは異なるタイプであるにかかわらず、モノマーを重合することによって調製された化合物を指し、ポリマーを構成する複数および/または繰り返しの「単位」または「マー(mer)単位」を、重合形態で提供する。したがって、ポリマーという総称は、ホモポリマーという用語を包含し、通常、1つのタイプのモノマーのみから調製されたポリマーを指すのに用いられ、コポリマーという用語は、通常、少なくとも2つのタイプのモノマーから調製されたポリマーを指すために用いられる。それはまた、例えばランダム、ブロックなどのすべての形態のコポリマーを包含する。「エチレン/α-オレフィンポリマー」および「プロピレン/α-オレフィンポリマー」という用語は、それぞれ、エチレンまたはプロピレンと、1つ以上の追加の重合性α-オレフィンモノマーとを重合することから調製された上述のコポリマーを示す。ポリマーは、多くの場合、1つ以上の特定のモノマー「で作製され」、特定のモノマーまたはモノマータイプに「基づいて」、特定のモノマー含有量を「含有する」などと称されるが、この文脈では、「モノマー」という用語は、特定のモノマーの重合残留物を指し、非重合種を指すものではないと理解されることに留意する。一般に、本明細書におけるポリマーは、対応するモノマーの重合形態である「単位」に基づくものとして称される。
【0012】
反対の記載がないか、文脈から含意されるか、または当該技術分野において慣例的でない限り、すべての部分およびパーセントは重量に基づき、すべての試験方法は本出願の出願日現在で最新のものである。
【0013】
本明細書で使用される場合、「ブレンド」または「ポリマーブレンド」という用語は、2つ以上のポリマーの混合物を指す。ブレンドは、混和性であってもよいか、またはなくてもよい(分子レベルで相分離していない)。ブレンドは、相分離していてもよいか、またはしていなくてもよい。ブレンドは、透過電子分光法、光散乱、x線散乱、および当該技術分野において既知である他の方法から決定されるように、1つ以上のドメイン構成を含有してもよいか、または含有しなくてもよい。ブレンドは、マクロレベル(例えば、溶融ブレンド樹脂もしくは配合)またはミクロレベル(例えば、同じ反応器内での同時成形)で2つ以上のポリマーを物理的に混合することによって達成され得る。
【0014】
本明細書で使用される「エチレン/アルファ-オレフィンコポリマー」という用語は、50モルパーセントを超える重合エチレンモノマー(重合性モノマーの総量に基づく)と、少なくとも1つのアルファ-オレフィンと、を有するコポリマーを指す。
【0015】
本明細書で使用される「エチレン系ポリマー組成物」という用語は、重合形態で、ポリマーの重量に基づいて、50重量%を超える、または大部分の量のエチレンを含む組成物を指し、任意選択で、少なくとも1つのコモノマーまたは他の分子を含み得る。
【0016】
本明細書で使用される「エチレンモノマー」という用語は、間に二重結合を有する2個の炭素原子を有し、かつ各炭素が2個の水素原子に結合している化学単位を指し、化学単位は、他のそのような化学単位と重合して、エチレン系ポリマー組成物を形成する。
【0017】
本明細書で使用される「高密度ポリエチレン」(またはHDPE)という用語は、少なくとも0.94g/cc、または少なくとも0.94g/cc~0.98g/ccの密度を有するエチレン系ポリマーを指す。HDPEは、0.1g/10分~25g/10分のメルトインデックスを有する。HDPEは、エチレン、および1つ以上のC3~C20 α-オレフィンコモノマーを含むことができる。コモノマーは、線状または分岐状であり得る。好適なコモノマーの非限定的な例としては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、および1-オクテンが挙げられる。HDPEは、スラリー反応器、気相反応器、または溶液反応器中でチーグラーナッタ触媒、クロム系触媒、幾何拘束型触媒、またはメタロセン触媒のいずれかを用いて調製することができる。エチレン/C3~C20 α-オレフィンコポリマーは、その中に重合した少なくとも50重量%のエチレン、または少なくとも70%重量、または少なくとも80重量%、または少なくとも85重量%、または少なくとも90重量%、または少なくとも95重量%のエチレンを、重合形態で含む。
【0018】
本明細書で使用される「炭化水素系分子」という用語は、炭素原子および水素原子のみを有する化学成分を指す。
【0019】
本明細書で使用される「線状低密度ポリエチレン」(または「LLDPE」)という用語は、エチレンに由来する単位と、少なくとも1つのC3~C10 α-オレフィンまたはC4~C8 α-オレフィンコモノマーに由来する単位とを含む不均一な短鎖分岐分布を含有する線状エチレン/α-オレフィンコポリマーを指す。LLDPEは、従来のLDPEとは対照的に、長鎖分岐があるとしてもわずかであることを特徴とする。LLDPEは、0.910g/cc~0.940g/cc未満の密度を有する。LLDPEの非限定的な例としては、TUFLIN(商標)線状低密度ポリエチレン樹脂(The Dow Chemical Companyから入手可能)、DOWLEX(商標)ポリエチレン樹脂(Dow Chemical Companyから入手可能)、およびMARLEX(商標)ポリエチレン(Chevron Phillipsから入手可能)が挙げられる。
【0020】
本明細書で使用される「低密度ポリエチレン」(またはLDPE)という用語は、0.909g/cc~0.940g/cc未満、または0.917g/cc~0.930g/ccの密度と、広い分子量分布(MWDが3.0超)を有する長鎖分岐とを有するポリエチレンを指す。
【0021】
本明細書で使用される「末端アルケン基」という用語は、ポリマー鎖中の2個の炭素原子間の二重結合を指し、二重結合中の炭素のうちの1つは=CH2基である。末端二重結合は、ポリマー鎖の末端および/または分岐端に位置している。本明細書で使用される「内部アルケン基」という用語は、1,2-二置換炭素-炭素二重結合を指す。内部アルケン基は、ポリマー鎖の長さ全体に位置しているが、ポリマー鎖の末端またはポリマー鎖に沿った分岐端には位置していない。末端アルケン基および1,2-二置換内部アルケン基は、赤外線分光法(「FTIR」)によって測定される。
【0022】
試験方法
密度は、ASTM D792、方法Bに従って測定される。結果は、グラム/立方センチメートル(g/cc)のヘキサン抽出物で報告される。
【0023】
溶融力
D-MELT装置(Goettfert GmbH Buchen,Germanyから入手可能)を使用して、溶融力を測定する。DMELT装置としては、市販のプラストメーターと、カスタム加重試料を組み込むデジタル秤とが挙げられる。加重ピストンを使用して、溶融ポリマーストランドを一定温度(190℃)の標準のプラストメーターバレルから、標準のASTM D1238 MFRダイ(オリフィスの高さ[8.000±0.025mm]および直径[2.0955±0.005mm])を通して押し出す。D-MELT装置では、押出物は、2つの自由回転ローラーを通して、ステッピングモーターによって駆動されたドラム上に引っ張られ、これは、分析中に速度範囲にわたって傾斜する。力センサープラットフォームに取り付けられたテンションローラー上に引き上げるポリマーストランドの力は、D-MELT装置内の統合制御コンピューターによって記録される。取得した力データの曲線当てはめ機能から、最終的に報告された値は、ポリマーストランド速度対ダイ出口速度の一定速度比率に基づいて決定される(正確な速度比は生成物群に依存する)。測定結果は、レオメータのタイプに依存して、センチニュートン(cN)での溶融弾性(「ME」)またはミリニュートン(mN)での溶融力(「MF」)として報告される。力測定の直後に、ASTM条件でのメルトインデックス(「MI」)測定が同じ充填物で実施される。
【0024】
メルトインデックス
本明細書で使用される「メルトインデックス」または「MI」という用語は、溶融状態にあるときに熱可塑性ポリマーがどれだけ容易に流動するかの尺度を指す。メルトインデックス(I2)は、ASTM D 1238、条件190℃/2.16kgに従って測定され、10分当たりの溶出グラム数(g/10分)で報告される。I10は、ASTM D 1238、条件190℃/10kgに従って測定され、10分当たりの溶出グラム数(g/10分ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で報告される
【0025】
クロマトグラフィーシステムは、内部IR5赤外検出器(IR5)を装備したPolymerChar GPC-IR(Valencia、Spain)高温GPCクロマトグラフ、およびPrecision Detectors(現在は、Agilent Technologies)2角レーザ光散乱(LS)検出器モデル2040に結合された4-キャピラリー粘度計(DV)からなる。すべての絶対光散乱測定に関して、15度角が測定に使用される。オートサンプラーオーブン区画を摂氏160度に設定し、カラム区画を摂氏150度に設定した。使用したカラムは、4つのAgilent「Mixed A」30cm、20ミクロンの直線状混合床カラムであった。使用したクロマトグラフィー溶媒は、1,2,4-トリクロロベンゼンであり、200ppmのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含有していた。溶媒源を、窒素スパージした。使用した注入体積は200マイクロリットルであり、流量は1.0ミリリットル/分であった。
【0026】
GPCカラムセットの較正を、580~8,400,000の範囲の分子量を有する少なくとも20の狭い分子量分布のポリスチレン標準を用いて実施し、個々の分子量の間に少なくとも10の間隔を空けて、6つの「カクテル」混合物中に配置した。標準は、Agilent Technologiesから購入した。1,000,000以上の分子量については50ミリリットルの溶媒中の0.025グラムで、また1,000,000未満の分子量については50ミリリットルの溶媒中の0.05グラムでポリスチレン標準物質を調製した。ポリスチレン標準物質を穏やかに撹拌しながら摂氏80度で30分間溶解させた。ポリスチレン標準物質のピーク分子量を、式1を使用してポリエチレン分子量に変換し(Williams and Ward,J.Polym.Sci.,Polym.Let.,6,621(1968)に記載)、
【数1】
式中、Mは分子量であり、Aは0.4315の値を有し、Bは1.0に等しい。
【0027】
第三次と第五次との間の多項式を使用して、それぞれのポリエチレン同等較正点にあてはめた。120,000の分子量を有するホモポリマーポリエチレン標準となるように、カラム分解能およびバンド拡大効果を補正するために、A(約0.375~0.440)に少し調整した。
【0028】
GPCカラムセットの合計プレート計数を、(50ミリリットルのTCB中0.04gで調製され、穏やかに撹拌しながら20分間溶解された)Eicosaneで行った。プレート計数(式2)と対称性(式3)を、以下の式に従って200マイクロリットルの注入で測定した。
【数2】
式中、RVはミリリットルでの保持体積であり、ピーク幅はミリリットルであり、ピーク最大値はピークの最大高さであり、1/2高さはピーク最大値の1/2の高さである。
【数3】
式中、RVはミリリットルでの保持体積であり、ピーク幅はミリリットルであり、ピーク最大値はピークの最大位置であり、1/10の高さはピーク最大値の1/10の高さであり、リアピークはピーク最大値よりも後の保持体積でのピークテールを指し、フロントピークはピーク最大値よりも早い保持体積でのピーク前部を指す。クロマトグラフィーシステムのプレート計数は、24,000超となるべきであり、対称性は、0.98~1.22の間となるべきである。
【0029】
試料をPolymerChar「Instrument Control」ソフトウェアを用いて半自動様式で調製し、2mg/mlを試料の目標重量とし、PolymerChar高温オートサンプラを介して、予め窒素スパージされたセプタキャップ付きバイアルに溶媒(200ppmのBHTを含有)を添加した。サンプルを、「低速」振とうしながら摂氏160度で2時間溶解した。
【0030】
Mn
(GPC)、Mw
(GPC)、およびMz
(GPC)の計算は、PolymerChar GPCOne(商標)ソフトウェア、各等間隔のデータ回収点(i)におけるベースラインを差し引いたIRクロマトグラム、および式1の点(i)における狭い標準較正曲線から得られたポリエチレン等価分子量を使用して、式4~6によるPolymerChar GPC-IRクロマトグラフの内部IR5検出器(測定チャネル)を使用して、GPC結果に基づいた。
【数4】
【数5】
【数6】
【0031】
経時的な偏差を監視するために、PolymerChar GPC-IRシステムで制御されたマイクロポンプを介して各試料に流量マーカー(デカン)を導入した。この流量マーカー(FM)を、サンプル中のそれぞれのデカンピーク(RV(FMサンプル))のRVを、狭い標準較正(RV(FM較正済み))内のデカンピークのそれと整合することによって各サンプルのポンプ流量(流量(見かけ))を直線的に補正するために使用した。こうして、デカンマーカーピークの時間におけるいかなる変化も、実行の全体にわたって流量(流量(有効))における線状シフトに関連すると推測される。流量マーカーピークのRV測定の最高精度を促進するために、最小二乗フィッティングルーチンを使用して、流量マーカー濃度クロマトグラムのピークを二次方程式に適合させる。次に、二次方程式の一次導関数を使用して、真のピーク位置を求める。流量マーカーのピークに基づいてシステムを較正した後、(狭い標準較正に対する)有効流量は式7のように計算される。流量マーカーピークの処理を、PolymerChar GPCOne(商標)ソフトウェアにより行った。許容される流量補正は、有効流量が見かけ流量の+/-2%以内であるべきである。
流量(有効)=流量(見かけ)*(RV(FM較正済み)/RV(FM試料))(式7)
【0032】
トリプル検出器GPC(TDGPC)
クロマトグラフィーシステム、分析条件、カラムセット、カラム較正および従来の分子量モーメントの計算および分布を、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)に記載されている方法に従って実施した。
【0033】
IR5検出器からの粘度計および光散乱検出器オフセットの判定に関して、多重検出器オフセットの判定のための体系的手法は、Balke、Moureyらによって公開されたもの(Mourey and Balke,Chromatography Polym.Chpt 12,(1992))(Balke,Thitiratsakul,Lew,Cheung,Mourey,Chromatography Polym.Chpt 13,(1992))と一致した様式で行われ、PolymerChar GPCOne(商標)ソフトウェアを使用して、広いホモポリマーポリエチレン標準(Mw/Mn>3)からのトリプル検出器ログ(MWおよびIV)結果を、狭い標準較正曲線からの狭い標準カラム較正結果に対して最適化する。
【0034】
絶対分子量データを、PolymerChar GPCOne(商標)ソフトウェアを使用して、Zimm(Zimm,B.H.,J.Chem.Phys.,16,1099(1948))およびKratochvil (Kratochvil,P.,Classical Light Scattering from Polymer Solutions,Elsevier,Oxford,NY(1987))によって公開されたものと一致する様式で得た。分子量の決定において使用される総注入濃度を、好適な線状ポリエチレンホモポリマー、または既知の重量平均分子量のポリエチレン標準のうちの1つから導き出した、質量検出器面積および質量検出器定数から得た。(GPCOne(商標)を使用して)計算される分子量を、以下に述べるポリエチレン標準物のうちの1つ以上から導き出される、光散乱定数、および0.104の屈折率濃度係数、dn/dcを使用して得た。一般に、(GPCOne(商標)を使用して決定された)質量検出器応答(IR5)および光散乱定数は、約50,000g/モルを超える分子量を有する線状標準物から決定されるべきである。粘度計の較正(GPCOne(商標)を使用して決定された)は、製造業者によって記載された方法を使用して、または代替的に、標準基準材料(SRM)1475a(国立標準技術研究所(NIST)から入手可能)などの好適な線状標準物の公開された値を使用することによって、達成することができる。較正標準に関する特定の粘度面積(DV)および注入された質量を、その固有粘度に関連づける(GPCOne(商標)を使用して得られる)粘度計定数を計算する。クロマトグラフィー濃度は、第2のウイルス係数効果(分子量に対する濃度効果)への対処を排除するのに十分に低いと仮定される。
【0035】
絶対重量平均分子量(MW
(Abs))は、(GPCOne(商標)を使用して)光散乱(LS)面積統合クロマトグラム(光散乱定数で因数分解)を質量定数から回収された質量および質量検出器(IR5)面積で除算し得られる。分子量および固有粘度応答は、信号対雑音が低くなるクロマトグラフィーの端部で線形に外挿される(GPCOne(商標)を使用して)。他のそれぞれのモーメントであるMn
(Abs)およびMz
(Abs)は、次の式8~9に従って計算される。
【数7】
【数8】
【0036】
トリプル検出器GPC(3D-GPC)によるgpcBR分岐インデックス
gpcBR分岐インデックスは、前述のように、最初に、光散乱、粘度、および濃度の検出器を較正することによって決定される。次いで、ベースラインが光散乱、粘度計、および濃度のクロマトグラムから差し引かれる。次いで、積分ウィンドウを設定して、赤外線(IR5)クロマトグラムからの検出可能なポリマーの存在を示す光散乱および粘度計クロマトグラムの低分子量保持体積範囲のすべての積分を確実にする。次いで、線形ポリエチレン標準を使用して、ポリエチレンおよびポリスチレンのMark-Houwink定数を確立する。定数を得ると、式(10)および(11)に示すように、2つの値を使用して、溶出量の関数としてのポリエチレン分子量およびポリエチレン固有粘度の2つの線形参照従来較正を構成する。
MPE=(KPS/KPE)1/αPE+1MPS
αPS+1/αPE+1(式10)
[η]PE=KPSMPS
α+1/MPE(式11)。
gpcBR分岐インデックスは、Yau,Wallace W.の「Examples of Using 3D-GPC-TREF for Polyolefin Characterization」、Macromol.Symp.、2007、257、29-45で説明されているように、長鎖分岐の特徴付けのための堅牢な方法である。このインデックスは、ポリマー検出器領域全体を優先して、g’値の決定および分岐周波数の計算で従来使用されていた「スライスごとの」3D-GPC計算を回避する。3D-GPCデータから、ピーク面積方法を使用した光散乱(LS)検出器により、試料のバルク絶対重量平均分子量(Mw、Abs)を得ることができる。この方法は、従来のg’決定で必要とされるような、濃度検出器信号に対する光散乱検出器信号の「スライスごとの」比率を回避する。
【0037】
3D-GPCでは、試料の固有粘度も、式(8)を使用して個別に得た。式(5)および(8)における面積計算は、全体的な試料面積として、ベースラインおよび積分限界での検出器ノイズおよび3D-GPC設定によって引き起こされる変動の影響をなおさら受けにくいため、より大きな精度を提供する。さらに重要なことに、ピーク面積の計算は、検出器のボリュームオフセットに影響を受けない。同様に、高精度の試料固有粘度(IV)は、式(12)に示す面積方法によって得られる。
【数9】
ここで、η
spiは、粘度計検出器から取得した比粘度を表す。
【0038】
gpcBR分岐インデックスを決定するために、試料ポリマーの光散乱溶出面積を使用して、試料の分子量を決定する。試料ポリマー用の粘度検出器の溶出面積は、試料の固有粘度(IVまたは[η])を決定するために使用される。
最初に、SRM1475aまたは等価物などの線状ポリエチレン標準試料のための分子量および固有粘度は、溶出量の関数として分子量および固有粘度の両方について従来の較正(「cc」)を使用して、決定される。
【数10】
式(14)は、gpcBR分岐インデックスを決定するために使用される。
【数11】
式中、[η]は、測定された固有粘度であり、[η]
ccは、従来の較正からの固有粘度であり、Mwは、測定された重量平均分子量であり、Mw
,ccは、従来の較正の重量平均分子量である。光散乱(LS)による重量平均分子量は、一般的に「絶対重量平均分子量」または「Mw,Abs」と称される。従来のGPC分子量較正曲線(「従来の較正」)を使用したMw,ccは、多くの場合、「ポリマー鎖骨格分子量」、「従来の重量平均分子量」、および「Mw,
GPC」と称される。
【0039】
「cc」の下付き文字が付いたすべての統計値は、それぞれの溶出量、前述の対応する従来の較正、および濃度(Ci)を使用して決定される。下付き文字のない値は、質量検出器、LALLS、および粘度計面積に基づく測定値である。KPEの値は、線状基準試料がゼロのgpcBR測定値を有するまで反復して調整される。例えば、この特定の場合のgpcBRを決定するためのαおよびLog Kの最終値は、ポリエチレンの場合はそれぞれ0.725と-3.391、ポリスチレンの場合はそれぞれ0.722と-3.993である。次いで、これらのポリエチレン係数を式13に入力した。
【0040】
一旦前述の手順を使用してK値およびα値を決定したら、分岐試料を使用して手順を繰り返す。分岐試料は、最適な「cc」較正値が適用されるとき、線形参照から得た最終的なMark-Houwink定数を使用して分析される。
【0041】
gpcBRの解釈は、単純である。線状ポリマーの場合、LSおよび粘度計によって測定された値が従来の較正標準に近くなるため、式(14)から計算されたgpcBRはゼロに近くなることになる。分岐ポリマーの場合、特に長鎖分岐のレベルが高い場合、gpcBRはゼロより高くなることになる。これは、測定されたポリマーの分子量が計算されたMw,ccよりも高くなり、計算されたIVccが測定されたポリマーIVよりも高くなるためである。実際、gpcBR値は、ポリマーの分岐の結果としての分子サイズの収縮効果によるIVの分数変化を表している。0.5または2.0のgpcBR値は、等価重量の線状ポリマー分子に対する、それぞれ50%および200%のレベルでのIVの分子サイズ収縮効果を意味する。
【0042】
これらの特定の実施例では、従来の「g’インデックス」および分岐頻度の計算と比較して、gpcBRを使用する利点は、gpcBRの精度がより高いことによるものである。gpcBRインデックスの決定に使用されるパラメータのすべては、高精度で得られ、濃度検出器からの高分子量での低い3D-GPC検出器の応答によって悪影響を受けない。検出器体積の整列の誤差も、gpcBR指数決定の精度には影響しない。
【0043】
フーリエ変換赤外分析(「FTIR」)
1000個の炭素(または、1000C)当たりの末端および内部アルケンの量の決定は、フーリエ変換赤外分析(「FTIR」)によるものである。FTIR分析に使用される試料フィルム(厚さ約250~300ミクロン)を、190℃に設定された加熱プラテンを備えたCarver油圧プレス内で試料のペレット約0.5gをプレスすることによって圧縮成形した。1000個の炭素当たりの末端アルケンおよび内部アルケンの量を、ASTM方法D6248で概説されている手順と同様の手順に従って測定した。FTIRは、1,2-置換およびトランス構成の内部アルケン結合、シス配置の内部アルケン結合、またはFTIRによって測定されない場合の三置換もしくは四置換の内部アルケン結合を測定する。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本開示は、エチレン系ポリマー組成物を提供する。エチレン系ポリマー組成物は、エチレンモノマーと、ヒドロキシル末端ポリブタジエン分子(PB-OH)の混合物をと、含む高圧(100MPa以上)フリーラジカル重合によって形成される。各PB-OH分子は、内部アルケン基および末端アルケン基を含み、各PB-OH分子は、末端アルケン基よりも多くの内部アルケン基を有する。
【0045】
ヒドロキシル末端ポリブタジエン分子
エチレン系ポリマー組成物は、エチレンと、ヒドロキシル末端ポリブタジエン分子(PB-OH)の混合物との重合反応生成物である。本明細書で使用される「ヒドロキシル末端ポリブタジエン分子」(交換可能に「PB-OH」と称される)という用語は、炭素原子および水素原子および2つのヒドロキシル基(-OH)のみから構成されたポリマー鎖である化学成分を指し、ポリマー鎖は、分岐しており、内部アルケン基(すなわち、炭素-炭素二重結合)および末端アルケン基を有し、ポリマー鎖は、末端アルケン基よりも多くの内部アルケン基を有する。本明細書で使用される「ヒドロキシル末端ポリブタジエン分子の混合物」という用語は、2つ以上のヒドロキシル末端ポリブタジエン分子を指し、分子のうちの少なくとも2つは、構造、特性、および/または組成物において異なる。
【0046】
一実施形態では、混合物中のPB-OH分子の各々は構造Iを有し、
【化2】
式中、cは0~90であり、nは0~90であり、tは0~90であり、
c+n+t≧4であるが、ただし、c、n、およびtが、各々同時に0であり得ない。
【0047】
一実施形態では、構造Iは、0、または1から10のc、0、または1から10のnを含み、tは0、または1から20であり、c+n+t≧4であるが、ただし、c、n、およびtは、各々、同時に0であり得ない。
【0048】
一実施形態では、PB-OH系分子の混合物は、構造Iを有する2つ以上の炭化水素系分子からなり、
【化3】
式中、nは末端アルケン基の数、cはシス内部アルケン基の数、tはトランス内部アルケン基の数であり、平均c含有量は0または1から10であり、平均n含有量は0、または1から10であり、平均t含有量は0、または1~20であり、平均c+n+t含有量は4を超えるが、ただし、c、n、およびtは、各々、同時に0であり得ない。
【0049】
「平均n含有量」は、炭化水素系分子の数平均分子量(Mn)を重量平均分子量(Mw)で除算し、次いで、末端アルケン基の分数を乗算することによって計算される。「平均c含有量」は、炭化水素系分子の数平均分子量(Mn)を重量平均分子量(Mw)で除算し、次いで、内部シスアルケン基の分数を乗算することによって計算される。「平均t含有量」は、炭化水素系分子の数平均分子量(Mn)を重量平均分子量(Mw)で除算し、次いで、内部トランスアルケン基の分数を乗算することによって計算される。
【0050】
一実施形態では、PB-OH分子の混合物は、以下、0~10/0~10/0~20、または2~8/2~8/6~18のような、それぞれの平均c、n、およびt値(「c/n/t」と表示される)を有する。
【0051】
一実施形態では、構造Iに基づくPB-OH分子の混合物は、1.2~20の分子量分布を有する。別の実施形態では、構造Iに基づくPB-OH分子の混合物は、1.2、もしくは1.3、または1.4から2、または5から10もしくは20の分子量分布を有する。さらなる実施形態では、構造Iに基づくPB-OH分子の混合物は、1.2~20、または1.3~10、または1.5~5の分子量分布を有する。
【0052】
一実施形態では、PB-OH分子の各々は構造IIを有し、
【化4】
式中、cが0~90であり、nが0~90であり、tが0~90であり、xが0~90であり、yが0~90であり、c+n+t≧4であるが、ただし、c、n、およびtは、各々、同時に0であり得ない。別の実施形態では、cは0、または1から10であり、nは0、または1から10であり、tは0、または1から20であり、xは0、または1または5、または10から20、または30、または60であり、yは0、または1、または5、または10、または20から30、または60であり、c+n+t≧4であるが、ただし、c、n、およびtは、各々、同時に0であり得ない。さらなる実施形態では、cは2~8であり、nは2~8であり、tは6~18であり、c+n+t≧4である。
【0053】
構造Iおよび/または構造IIの炭化水素系分子は、以後、交換可能に「分岐剤」と称される。
【0054】
構造Iおよび構造IIにおける表記
【化5】
は、二重結合に関してシスアルキル基またはトランスアルキル基を表す。
【0055】
一実施形態では、異なる分子量を有する構造Iおよび/または構造IIを有する炭化水素系分子の混合物が使用される。
【0056】
本エチレン系ポリマー組成物は、(i)構造Iのみ、(ii)構造IIのみ、または(iii)構造Iおよび構造IIの組み合わせを含み得ることが理解される。本明細書で使用される「エチレン系ポリマー組成物」という用語は、構造Iおよび/または構造IIとのエチレンの反応生成物であるポリマーを指すことが理解される。
【0057】
一実施形態では、エチレン系ポリマー組成物は、95重量%、もしくは96重量%、もしくは97重量%、もしくは98重量%から99重量%、もしくは99.5重量%、もしくは99.7重量%、もしくは99.9重量%のエチレン、および逆数量のPB-OH分子の混合物、または5.0重量%、もしくは4.0重量%、もしくは3.0重量%、もしくは2.0重量%から1.0重量%、もしくは0.5重量%、もしくは0.3重量%、もしくは0.1重量%のPB-OH分子の混合物を、重合形態で含む。重量パーセントは、エチレン系ポリマー組成物の総重量に基づく。さらなる実施形態では、エチレン系ポリマー組成物は、95.0重量%~99.9重量%、または96重量%~99.8重量%、または98重量%~99.8重量%のエチレンを、重合形態で含み、PB-OH分子の混合物は、5.0重量%~0.1重量%、または4.0重量%~0.2重量%、または2.0重量%~0.2重量%の量で存在する。
【0058】
エチレン系ポリマー組成物は、0.909g/cc~0.940g/ccの密度を有する。一実施形態では、エチレン系ポリマー組成物は、0.909g/cc、または0.915g/cc、または0.920g/cc~0.930g/cc、または0.935g/cc、または0.940g/ccの密度を有する。別の実施形態では、エチレン系ポリマー組成物は、0.910g/cc~0.940g/cc、または0.915g/cc~0.935g/cc、または0.917g/cc~0.930g/cc、または0.917g/cc~0.926g/ccの密度を有する。
【0059】
エチレン系ポリマー組成物は、0.05/1000炭素、または0.08/1000炭素、または0.1/1000炭素からの末端アルケン含有量を有し、エチレン系組成物はまた、0.08/1000炭素、または0.10/1000炭素~1.2/1000炭素、または1.5/1000炭素のトランス内部アルケン含有量を有する。
【0060】
一実施形態では、エチレン系ポリマー組成物は、0.1~2.0の末端対内部アルケン比率を有する。別の実施形態では、エチレン系ポリマー組成物は、0.2~1.0、または0.2~0.8の末端対内部アルケン比率を有する。
【0061】
一実施形態では、エチレン系ポリマー組成物は、0.4/1000C超、または0.5~2.0/1000C、または0.5~1.5/1000CのFTIRによって測定された総アルケン含有量(末端二重結合および1,2-二置換トランス二重結合の合計)を有する。一実施形態では、エチレン系ポリマー組成物は、以下の特性のうちの1つ、いくつか、またはすべてを有する。
(i)0.1、もしくは0.5、もしくは1.0から5、もしくは10g/10分のMI、および/または
(ii)64~85mNのMF、および/または
(iii)0.15/1000炭素、もしくは0.20/1000炭素、もしくは0.24/1000炭素からの末端アルケン含有量、および/または
(iv)0.1/1000炭素、もしくは0.2/1000炭素から1.2/1000炭素、もしくは1.5/1000炭素のトランス内部アルケン含有量、および/または
(v)0.5~1.0、もしくは0.6~0.9の末端対トランス内部アルケン比率
(vi)0.910g/cc~0.935g/ccの密度。
(vii)0.3~1.0、もしくは0.4~0.7に正規化された末端対トランス内部アルケン比率
【0062】
一実施形態では、エチレン系ポリマー組成物は、ブレンド成分を含む。ブレンド成分は、炭化水素系分子の混合物を含まない(すなわち、構造Iまたは構造IIを有する分岐剤を含まない)ポリマーである。好適なブレンド成分の非限定的な例としては、エチレン系ポリマー、エチレン/アルファ-オレフィンコポリマー、エチレン/C3~C8アルファ-オレフィンコポリマー、エチレン/C4~C8アルファ-オレフィンコポリマー、およびエチレンと以下のコモノマーのうちの1つ以上とのコポリマー(アクリレート、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルエステル、一酸化炭素、無水マレイン酸、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、マレイン酸のモノエステル、マレイン酸のジエステル、ビニルトリアルコキシシラン、ビニルトリアルキルシラン、ならびにそれらの任意の組み合わせ)が挙げられる。
【0063】
一実施形態では、ブレンド成分は、炭化水素系分子の混合物を含まないエチレン系ポリマーである。
【0064】
一実施形態では、ブレンド成分は、高密度ポリエチレン(HDPE)である。
【0065】
一実施形態では、ブレンド成分は、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)である。
【0066】
別の実施形態では、ブレンド成分は、エチレン/アルファ-オレフィンコポリマーである。さらなる実施形態では、ブレンド成分のアルファ-オレフィンは、C3~C8アルファ-オレフィン、またはC4~C8アルファ-オレフィンである。
【0067】
本開示はまた、本明細書に記載の、本エチレン系ポリマー組成物または2つ以上の実施形態の組み合わせから形成された少なくとも1つの成分を含む物品を提供する。
【0068】
一実施形態では、物品は、フィルムのコーティングである。
【0069】
一実施形態では、物品は、コーティングである。
【0070】
一実施形態では、物品は、フィルムである。
【0071】
エチレン系ポリマー組成物は、本明細書に記載されるような2つ以上の実施形態の組み合わせを含む。
【0072】
物品は、本明細書に記載されるような2つ以上の実施形態の組み合わせを含む。
【0073】
プロセス
本開示はまた、本発明のエチレン系ポリマー組成物を製造するプロセスを提供する。プロセスは、高圧(100MPa超)重合条件を提供する反応器構成において、PB-OH分子の混合物(構造Iおよび/または構造II)の存在下でエチレンモノマーを重合することを含む。反応器構成は、1つ以上の管状反応器および/または1つ以上のオートクレーブ反応器である。
【0074】
高度に分岐したエチレン系ポリマー組成物を製造するために、高圧のフリーラジカル開始重合プロセスが使用される。2つの異なる高圧フリーラジカル開始重合プロセスの種類が知られている。第1のプロセスタイプでは、1つ以上の反応ゾーンを有する撹拌オートクレーブ反応器が使用される。オートクレーブ反応器は、通常、開始剤もしくはモノマー供給物、またはその両方のためのいくつかの注入点を有する。第2のプロセスタイプでは、ジャケット付きチューブが反応器として使用され、これは1つ以上の反応ゾーンを有する。適切であるがこれに限定されない反応器の長さは、100メートル~3000メートル(m)、または1000メートル~2000メートルであり得る。反応ゾーンの始まりは、どちらの種類の反応器とも、典型的には反応開始剤、エチレン、連鎖移動剤(またはテロマー)、コモノマー(複数可)、ならびにそれらの組み合わせのいずれかの側部注入によって定義される。高圧プロセスは、1つ以上の反応ゾーンを有するオートクレーブ反応器または管状反応器で、または各々が1つ以上の反応ゾーンを含むオートクレーブ反応器および管状反応器の組み合わせで実施することができる。一実施形態では、開始剤は、フリーラジカル重合が誘発されることになる反応ゾーンの前に注入される。
【0075】
一実施形態では、プロセスは、高圧(100MPa超)重合条件下の管状反応器において、PB-OH分子(構造Iおよび/または構造II)の混合物、連鎖移動剤(CTA)、およびフリーラジカル開始剤の存在下でエチレンモノマーを重合することを含む。管状反応器は、エチレンとCTAとの比率を制御し、したがってポリマー特性を制御するために新鮮なエチレンを供給する代替の場所を有するマルチゾーン管状反応器である。新鮮なエチレンモノマーを複数の場所で同時に添加して、所望のエチレンモノマーと連鎖移動との比率を達成する。ポリマー特性を制御するために、新鮮なCTA添加点の添加を選択する。新鮮なCTAを複数の場所で同時に添加して、所望のCTAとエチレンモノマーとの比率を実現する。同様に、添加点、および新鮮なPB-OH分子(構造Iおよび/または構造II)の量は、対象となる用途での溶融強度および性能の向上という所望の特性を最大化しながら、ゲル形成を制御するように制御される。新鮮なPB-OH分子(構造Iおよび/または構造II)を複数の場所に同時に添加して、所望のPB-OH分子対エチレンモノマー比率を達成する。分子量分布を広げ、かつポリマーの溶融強度を高めるためのPB-OH分子の混合物の使用は、ゲル形成、反応器のファウリング、プロセスの不安定性などの潜在的な悪影響を最小化しながら、生成物特性の所望の変化を達成するために、反応器システムに沿ったCTA、およびPB-OH分子の混合物の分布にさらなる要件を課すことになる。好適な管状重合反応器の非限定的な例としては、WO2013/059042(A1)およびWO2013/078018(A2)に開示される管状反応器および重合条件が挙げられ、各参照の内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0076】
エチレン系ポリマー組成物の生成に使用されるエチレンモノマーの非限定的な例としては、新鮮なエチレンのみが本発明のエチレン系ポリマー組成物を作製するために使用されるように、ループリサイクルストリームから極性成分を除去することによって、または反応システム構成を使用することによって得られる精製エチレンが挙げられる。エチレンモノマーのさらなる例としては、リサイクルループからのエチレンモノマーが挙げられ、このプロセスは、変換効率を改善するためのリサイクルループを含む。
【0077】
1つ以上の連鎖移動剤(CTA)を管状反応器に添加して、分子量を制御する。好適なCTAの非限定的な例としては、プロピレン、イソブタン、n-ブタン、1-ブテン、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、プロピオンアルデヒド、ISOPAR(ExxonMobil Chemical Co.)、およびイソプロパノール、ならびにそれらの混合物が挙げられる。プロセスで使用されるCTAの量は、全反応混合物の、0.01重量パーセント~10重量パーセント、または0.01重量パーセント~5重量パーセント、または0.1重量パーセント~1.0重量パーセント、または0.1重量パーセント~0.5重量パーセント、または0.01重量パーセント~0.1重量パーセントである。
【0078】
一実施形態では、CTAは、プロピオンアルデヒドである。
【0079】
一実施形態では、CTAは、プロピレンである。
【0080】
1つ以上のフリーラジカル開始剤が管状反応器の中に供給されて、エチレン系ポリマー組成物を生成する。好適なフリーラジカル開始剤の非限定的な例としては、有機過酸化物、環状過酸化物、ジアシル過酸化物、ジアルキル過酸化物、ヒドロ過酸化物、ペルオキシカーボネート、ペルオキシジカーボネート、ペルオキシエステル、ペルオキシケタール、t-ブチルペルオキシピバレート、ジ-t-ブチル過酸化物、t-ブチルペルオキシアセテート、およびt-ブチルペルオキシ-2-ヘキサノエート、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。一実施形態では、フリーラジカル開始剤は、環構造に組み込まれた少なくとも1つの過酸化物基を含む。環構造に組み込まれた過酸化物基を有するフリーラジカル開始剤の非限定的な例としては、TRIGONOX 301(3,6,9-トリエチル-3,6,9-トリメチル-1,4,7-トリペルオキソナン)およびTRIGONOX 311(3,3,5,7,7-ペンタメチル-1,2,4-トリオキセパン)(両方ともAkzo Nobelから入手可能)、ならびにUnited Initiatorsから入手可能なHMCH-4-AL(3,3,6,6,9,9-ヘキサメチル-1,2,4,5-テトロキソナン)が挙げられる。有機ペルオキシ開始剤は、重合性モノマーの重量に基づいて、0.001重量%~0.2重量%の量で使用される。
【0081】
一実施形態では、フリーラジカル開始剤は、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエートとジ-tert-ブチル過酸化物との組み合わせである。
【0082】
一実施形態では、重合は、複数の反応器ゾーン(3~6の反応器ゾーン)を有する管状反応器内で行われる。各リアクターゾーンの最高温度は、150℃~360℃、170℃~350℃、または200℃~340℃である。各反応器ゾーンにおける圧力は、100MPa~380MPa、110MPa~340MPa、または110MPa~300MPaである。PB-OH分子(構造Iおよび/または構造II)は、圧縮段階を介して直接反応ゾーンに供給されるか、または直接反応ゾーンへの供給に供給される。
【0083】
一実施形態では、PB-OH分子(構造Iおよび/または構造II)は、反応ゾーンの入口で、フリーラジカル開始剤の添加の前に、または添加と同時に添加される。別の実施形態では、炭化水素系分子(構造Iおよび/または構造II)を開始剤の添加の前に添加して、良好な分散を可能にする。
【0084】
一実施形態では、PB-OH分子(構造Iおよび/または構造II)は、反応ゾーン1にのみ供給される。
【0085】
一実施形態では、第1の反応ゾーンに供給されるエチレンは、重合に供給される全エチレンの10パーセント~100パーセントである。さらなる実施形態では、第1の反応ゾーンに供給されるエチレンは、重合に供給される全エチレンの20パーセント~80パーセント、さらに25パーセント~75パーセント、さらに30パーセント~70パーセント、さらに40パーセント~60パーセントである。
【0086】
一実施形態では、管状反応器は、3つの反応器ゾーンを有する。プロセスは、290℃~310℃の第1の反応器のピーク温度および230MPa~200MPaの圧力を維持すること、290℃~310℃の第2の反応器ピーク温度および225MPa~195MPaの圧力を維持すること、ならびに290℃~310℃の第3の反応器ピーク温度および220MPa~190MPaの圧力を維持することを含む。プロセスは、CTA(プロピオンアルデヒド)およびペルオキシラジカル開始剤(tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエートおよびジ-tert-ブチル過酸化物)を3つの反応器ゾーンの各々の中に供給して、反応器内のピーク温度および最終生成物のMIを制御することを含む。エチレンモノマー、PB-OH分子(構造Iおよび/または構造II)は、0.0016~0.0048kgの炭化水素系分子対kg(キログラム)エチレンの比率でのみ、第1の反応器ゾーンに供給される。プロセスは、PB-OH分子(構造Iおよび/または構造II)の混合物、連鎖移動剤(CTA)、およびフリーラジカル開始剤の存在下でエチレンモノマーを重合することを含む。
【0087】
一実施形態では、プロセスは、前述の重合条件下で、PB-OH分子(構造Iおよび/または構造II)の混合物、1つ以上の追加のモノマー、連鎖移動剤(CTA)、およびフリーラジカル開始剤の存在下でエチレンモノマーを重合することを含む。追加のモノマーについての非限定的な例としては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、および4-メチル-1-ペンテン、アクリレート、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、一酸化炭素、無水マレイン酸、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、マレイン酸のモノエステル、マレイン酸のジエステル、ビニルトリアルコキシシラン、ビニルトリアルキルシラン、ならびにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0088】
添加剤
一実施形態において、組成物は、1つ以上の添加剤を含む。添加剤の非限定的な例としては、安定剤、可塑剤、帯電防止剤、顔料、染料、核剤、充填剤、スリップ剤、難燃剤、加工助剤、煙抑制剤、粘度制御剤、および抗遮断剤が挙げられる。ポリマー組成物は、例えば、エチレン系ポリマー組成物の重量に基づいて、1つ以上の添加剤の合計重量の10パーセント未満を含み得る。
【0089】
一実施形態では、エチレン系ポリマー組成物は、1つ以上の安定剤、例えば、IRGANOX 1010、IRGANOX 1076、およびIRGAFOS 168などの酸化防止剤で処理される。一般に、エチレン系ポリマー組成物は、押出または他の溶融プロセスの前に、1つ以上の安定剤で処理される。
【0090】
用途
本開示のエチレン系ポリマー組成物は、単層および多層フィルム;農業用フィルム、ブロー成形、射出成形、または回転成形物品などの成形物品;コーティング;繊維;および織布または不織布、ケーブル、パイプ、グリーンハウスフィルム、サイロバッグフィルム、照合収縮フィルム、食品包装フィルム、またはフォームが挙げられるがこれらに限定されない有用な物品を生成するために、様々な従来の熱可塑性製造プロセスで採用することができる。
【0091】
エチレン系ポリマー組成物は、透明性収縮フィルム、農業用フィルム、照合収縮フィルム、キャストストレッチフィルム、サイレージフィルム、ストレッチフード、シーラント、およびおむつバックシートが挙げられるがこれらに限定されない様々なフィルムに使用され得る。他の好適な応用としては、ワイヤおよびケーブル、ガスケットおよびプロファイル、接着剤、履物構成要素、自動車内装部品が挙げられるが、これらに限定されない。本エチレン系ポリマー組成物は、農業用フィルム(大きいインフレーションフィルム)用のLLDPEとのブレンドの一部として使用することができる。
【0092】
出願人は、意外なことに、反応器内で使用されるPB-OH分子の混合物、末端アルケン基よりも多くの内部アルケン基を有するPB-OHが、増加した数の分岐点を有するエチレン系ポリマー組成物をもたらし、より大きな溶融力をもたらすことを発見した。
【実施例】
【0093】
ポリブタジエン(添加剤A:Poly bd(登録商標)R20LM、構造I)は、Cray Valley USAから供給された。この材料の特性を以下の表1に示す。
【表1】
【0094】
重合:オートクレーブ反応器
発明例I(IE I):添加剤Aを316ステンレス鋼供給容器に装填し、Isopar(商標)Eで希釈して、1.7重量%の最終濃度を生成した。この容器を、使用前に3時間窒素でパージし、操作中は70psigの窒素パッドの下に保った。
【0095】
この溶液の様々な供給レベルを反応器に導入して、ポリマー試料を製造した。
【0096】
開始剤:第2の316ステンレス鋼供給容器内で、過酸化物開始剤tert-ブチルペルオキシアセテート(TPA、ISOPAR(商標)Hの20重量%溶液)、および過酸化物開始剤ジ-tert-ブチル過酸化物(DTBP、ISOPAR(商標)Hの20重量%溶液)をISOPAR Eと組み合わせて、1500質量ppmのTPAおよび415質量ppmのDTBP(4:1モルTPA/モルDTBPの比率)を生成した。容器を、使用前に70psigの窒素で5回パッドを入れ、パッドを外し、操作中は窒素パッドの下に保った。
【0097】
エチレンを5500gm/時間、193MPaの圧力で、撹拌(1600rpm)300mL高圧CSTR反応器に注入し、外部加熱ジャケットを設定して、内部反応器温度を220℃で制御した。プロピレン(CTA)を6.2MPaの圧力でエチレンストリームに添加し、MIが約4g/10分の最終生成物を生成する速度で制御し、それから、混合物を193MPaに圧縮して注入した。適切な添加剤溶液の溶液を、高圧ポンプを介して193MPaの圧力で直接反応器にポンプで送った。過酸化物開始剤溶液を、エチレン転化率を12%近くに制御する速度で、側壁を介して193MPaの圧力で反応器に直接添加した。
【0098】
各実験の重合手順の詳細を以下の表2に示す。
【表2】
【0099】
2.溶融強度実験
上記に開示されたオートクレーブ重合条件下で追加の試料を作製した。特に、メルトインデックス(MI)を一定に保ちながら(4g/10分またはその近く)、添加剤Aの供給速度を変動させた。出願人は、メルトインデックスを一定に保ちながら、添加剤Aの量を増加させると、ポリマーの溶融強度(MS)が増加することを発見した。溶融強度実験の結果を以下の表3に示す(MF(補正済み)=log(MI)/log(4)*MF(測定済み))。
【表3】
【0100】
図1は、フォルマントエチレン系ポリマーに存在する添加剤Aの平均補正済み溶融力(MF)対ppmを示すグラフである。
図1は、以下の式によって4MIに正規化された溶融力を示す。
MF(補正済み)=log(MI)/log(4)*MF(測定済み)。
【0101】
図1は、MIを一定(4MIまたはその近く)に保つと、エチレン系ポリマーに存在する添加剤A(Poly bd)の量が増加するにつれて、エチレン系ポリマーの溶融力が増加することを示す。
【0102】
3.FTIR測定
末端二重結合(またはビニル)の量および1000C当たりのトランス-内部二重結合の量をFTIRで測定した(表4)。ここで正規化されたビニル/トランス=(発明例のビニル-ベースラインのビニル)/(発明例のトランス-ベースラインのトランス)。
【表4】
【0103】
本開示は、本明細書に含まれる実施形態および例示に限定されず、以下の特許請求の範囲に該当する実施形態の一部および異なる実施形態の要素の組み合わせを含む、これらの実施形態の変更された形態を含むことが、明確に意図されている。
【国際調査報告】