IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アーエムエス インターナショナル アーゲーの特許一覧

特表2023-502420スイッチトキャパシタ増幅器、及びそれを含むパイプライン型アナログ-デジタル変換器
<>
  • 特表-スイッチトキャパシタ増幅器、及びそれを含むパイプライン型アナログ-デジタル変換器 図1
  • 特表-スイッチトキャパシタ増幅器、及びそれを含むパイプライン型アナログ-デジタル変換器 図2
  • 特表-スイッチトキャパシタ増幅器、及びそれを含むパイプライン型アナログ-デジタル変換器 図3
  • 特表-スイッチトキャパシタ増幅器、及びそれを含むパイプライン型アナログ-デジタル変換器 図4
  • 特表-スイッチトキャパシタ増幅器、及びそれを含むパイプライン型アナログ-デジタル変換器 図5
  • 特表-スイッチトキャパシタ増幅器、及びそれを含むパイプライン型アナログ-デジタル変換器 図6
  • 特表-スイッチトキャパシタ増幅器、及びそれを含むパイプライン型アナログ-デジタル変換器 図7
  • 特表-スイッチトキャパシタ増幅器、及びそれを含むパイプライン型アナログ-デジタル変換器 図8
  • 特表-スイッチトキャパシタ増幅器、及びそれを含むパイプライン型アナログ-デジタル変換器 図9
  • 特表-スイッチトキャパシタ増幅器、及びそれを含むパイプライン型アナログ-デジタル変換器 図10
  • 特表-スイッチトキャパシタ増幅器、及びそれを含むパイプライン型アナログ-デジタル変換器 図11
  • 特表-スイッチトキャパシタ増幅器、及びそれを含むパイプライン型アナログ-デジタル変換器 図12
  • 特表-スイッチトキャパシタ増幅器、及びそれを含むパイプライン型アナログ-デジタル変換器 図13A
  • 特表-スイッチトキャパシタ増幅器、及びそれを含むパイプライン型アナログ-デジタル変換器 図13B
  • 特表-スイッチトキャパシタ増幅器、及びそれを含むパイプライン型アナログ-デジタル変換器 図14
  • 特表-スイッチトキャパシタ増幅器、及びそれを含むパイプライン型アナログ-デジタル変換器 図15
  • 特表-スイッチトキャパシタ増幅器、及びそれを含むパイプライン型アナログ-デジタル変換器 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-24
(54)【発明の名称】スイッチトキャパシタ増幅器、及びそれを含むパイプライン型アナログ-デジタル変換器
(51)【国際特許分類】
   H03F 3/70 20060101AFI20230117BHJP
   H03M 1/44 20060101ALI20230117BHJP
   H03M 1/14 20060101ALI20230117BHJP
   H03M 1/74 20060101ALI20230117BHJP
【FI】
H03F3/70
H03M1/44
H03M1/14 A
H03M1/74
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022529329
(86)(22)【出願日】2020-11-18
(85)【翻訳文提出日】2022-07-15
(86)【国際出願番号】 EP2020082503
(87)【国際公開番号】W WO2021104960
(87)【国際公開日】2021-06-03
(31)【優先権主張番号】19211524.4
(32)【優先日】2019-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521548733
【氏名又は名称】アーエムエス インターナショナル アーゲー
【氏名又は名称原語表記】AMS INTERNATIONAL AG
【住所又は居所原語表記】Eichwiesstrasse 18b, Jona, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マイケル フリドリン
【テーマコード(参考)】
5J022
5J500
【Fターム(参考)】
5J022AA15
5J022AB06
5J022BA05
5J022CA07
5J022CA10
5J022CB06
5J022CF01
5J022CF02
5J500AA01
5J500AA48
5J500AC65
5J500AF17
5J500AH10
5J500AK05
5J500AK34
5J500AM13
5J500AT06
(57)【要約】
スイッチトキャパシタ増幅器は、コンパレータ(110)と、サンプルキャパシタ及び増幅キャパシタ(120、130)と、コンパレータの出力信号に応じて充電電流源及び放電電流源(135、136)を制御する、コントローラ(140)と、を備える。閉ループ制御回路(151、152、153)は、コンパレータ(110)の遅延を決定し、決定された遅延に応答してコンパレータのオフセットを制御するように構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチトキャパシタ増幅器であって、
- 入力端子と出力端子を有するコンパレータ(110)と、
- 前記入力端子のうちの1つに結合されたサンプルキャパシタ(120)と、
- 前記入力端子のうちの前記1つに結合され、第1のスイッチ(141)を介して放電電流源(135)に、かつ、第2のスイッチ(142)を介して充電電流源(136)に結合された増幅キャパシタ(130)と、
- 前記コンパレータ(140)の出力信号(Vc)に依存して前記第1及び第2のスイッチ(135、136)を操作するように構成されたコントローラ(140)と、
- 前記コンパレータ(110)の遅延を決定し、前記決定された遅延に応答して前記コンパレータのオフセットを制御するように構成された閉ループ制御回路(151、152、153)と、
を備える、スイッチトキャパシタ増幅器。
【請求項2】
前記閉ループ制御回路が、前記コンパレータ(110)の前記遅延に依存する信号(DTDC)を決定するための時間-デジタル変換器(151)を備え、前記信号が、前記コンパレータのオフセットを設定するために前記コンパレータにフィードバックされる、請求項1に記載のスイッチトキャパシタ増幅器。
【請求項3】
前記閉ループ制御回路が、前記コンパレータの前記遅延に応じて前記信号(DTDC)から減算される信号(Dc)をプリセットするための端子(155)をさらに備える、請求項2に記載のスイッチトキャパシタ増幅器。
【請求項4】
前記コンパレータの前記遅延に依存する前記信号(DTDC)から減算された前記プリセット信号(Dc)が、前記閉ループ制御回路が収束状態にあるとき、ゼロにプリセットされる、請求項3に記載のスイッチトキャパシタ増幅器。
【請求項5】
前記閉ループ制御回路が、前記時間-デジタル変換器(151)と前記コンパレータ(110)との間に接続された積分器(153)をさらに備える、請求項2~4のいずれかに記載のスイッチトキャパシタ増幅器。
【請求項6】
前記コンパレータ(110)が、基準電位が動作可能に供給されるように構成された別の入力端子を備え、
前記コントローラ(140)が、前記コンパレータが仮想接地状態(210)を検出するまで、前記サンプルキャパシタ(120)の放電を生じさせるように構成されており、
前記コントローラが、前記コンパレータが別の仮想接地状態(220)を検出するまで、前記サンプルキャパシタ(120)の充電を生じさせるように構成されている、請求項2~5のいずれかに記載のスイッチトキャパシタ増幅器。
【請求項7】
前記コンパレータ(110)が、差動プリ増幅器ステージ(310)と、
前記コンパレータの前記遅延に依存する前記信号(DTDC)に応じて制御され、前記信号(DTDC)を前記差動プリ増幅器ステージの分岐(311、312)のうちの1つに印加される電流信号に変換する、少なくとも1つのデジタル-アナログ変換器(320、330)と、を備える、請求項2~6のいずれかに記載のスイッチトキャパシタ増幅器。
【請求項8】
前記時間-デジタル変換器が、遅延回路(420、421、422)のチェーン(410)を備え、前記チェーンが、前記サンプルキャパシタ(120)の充電の開始に応答して、開始信号(TDCstart)を動作可能に受信するように構成されている、請求項2~7のいずれかに記載のスイッチトキャパシタ増幅器。
【請求項9】
前記時間-デジタル変換器(151)が、遅延回路(420、421、422)のチェーン(410)を備え、前記コンパレータ(110)による前記仮想接地状態(210)の前記検出に応答して開始インパルス(TDCstart)を受信し、かつ、前記コンパレータ(110)による前記他の仮想接地状態(220)の前記検出に応答して停止インパルス(TDCstop)を受信するように構成されており、
前記時間-デジタル変換器(151)が、前記開始インパルス(TDCstart)が前記遅延回路の前記チェーン(420、421、422)を通じて伝搬するようにさせるように、かつ、前記遅延回路の前記チェーンの前記ステータスを示す前記停止インパルス(TDCstop)の前記受信に応答して出力信号(DTDC)を生成するようにさらに構成されている、請求項6に記載のスイッチトキャパシタ増幅器。
【請求項10】
前記遅延回路の各々が、第1の電流スターブ型インバータ(431)と、
前記第1のインバータ(431)と供給電位端子(VDED、GND)との間に接続された電流源トランジスタと、前記第1のインバータに下流に接続された第2のインバータ(441)と、を備える、請求項8または9に記載のスイッチトキャパシタ増幅器。
【請求項11】
前記閉ループ制御回路が、前記コンパレータ(510)の前記遅延に依存して充電され、前記コンパレータの前記遅延に依存する信号(VD)を生成するキャパシタ(521)を備え、
前記信号が前記コンパレータにフィードバックされて、前記コンパレータ(510)のオフセットが設定される、請求項1に記載のスイッチトキャパシタ増幅器。
【請求項12】
前記閉ループ制御回路が、
前記コンパレータの前記遅延に依存する前記信号(VD)から基準信号(Vc)を減算する減算器(523)と、
前記減算器に接続された積分器(524)と、をさらに備え、
前記積分器の出力が、前記コンパレータ(510)の別の入力端子に接続されて、前記コンパレータのオフセットを生成する、請求項11に記載のスイッチトキャパシタ増幅器。
【請求項13】
前記コンパレータ(1510)の前記入力端子の別の1つに結合された別の増幅キャパシタ(1531)をさらに備え、
前記放電電流源(1535)及び前記充電電流源(1536)が、前記増幅キャパシタ(1530)と前記別の増幅キャパシタ(1531)との間に接続され、
前記サンプルキャパシタ(1520)または別のサンプルキャパシタ(1521)が、前記コンパレータ(1510)の前記入力端子の別の1つに結合されている、
請求項1~5のいずれかに記載のスイッチトキャパシタ増幅器。
【請求項14】
互いに直列に接続された少なくとも2つの変換器ステージ(610、620、630)を備えるパイプライン型アナログ-デジタル変換器であって、前記変換器ステージの少なくとも1つが、
- アナログ入力信号(Vin)用の入力端子(616)と、
- 前記入力端子に接続されたアナログ-デジタル変換器(611)及び前記アナログ-デジタル変換器(611)の下流に接続されたデジタル-アナログ変換器(612)と、
- 前記変換器ステージの前記入力端子に接続され、かつ、前記デジタル-アナログ変換器(612)の出力端子に接続された減算器(613)と、
- 前記減算器(613)の出力端子に接続され、前記減算器の前記出力端子によって供給された残差信号を増幅する、請求項1~13のいずれかに記載のスイッチトキャパシタ増幅器(614)と、
を備える、パイプライン型アナログ-デジタル変換器。
【請求項15】
前記少なくとも2つの変換器ステージ(1001、1310、1330)の前記アナログ-デジタル変換器が、逐次比較デジタル-アナログ変換を実行するように構成され、各々が、複数のキャパシタ(1010、...、1017)を備え、
前記少なくとも2つの変換器ステージ(1310)のうちの前の1つが、最上位ビットの数値を決定するように構成され、
前記少なくとも2つの変換器ステージ(1001、1030)のうちの別の1つが、最下位ビットの数値を決定するように構成され、
前記スイッチトキャパシタ増幅器(1320)が、前記少なくとも2つの変換器ステージ(1310)のうちの前記前の1つの前記残差信号(Vn)を増幅し、前記増幅された残差信号(Vresidue)を前記少なくとも2つの変換器ステージ(1001、1030)のうちの前記別の1つに転送するように構成されている、請求項14に記載のパイプライン型アナログ-デジタル変換器。
【請求項16】
前記スイッチトキャパシタ増幅器(1320)の前記時間-デジタル変換器(851)が、少なくとも2つの変換器ステージ(1310)のうちの前記前の1つに動作可能に接続されたとき、前記コンパレータが前記仮想接地状態(910)を検出するまで、前記サンプルキャパシタ(820)を放電する前記時間に依存する信号(TDCout)を決定するように構成され、前記少なくとも2つの変換器ステージのうちの前記別の1つ(1330)の前記複数のキャパシタのサブセット(1014、...、1017、1330)が、前記サンプルキャパシタを放電する前記時間に依存する前記信号(TDCout)に応答して、電荷でプリセットされるように構成されている、請求項15に記載のパイプライン型アナログ-デジタル変換器。
【請求項17】
前記少なくとも2つの変換器ステージの前記アナログ-デジタル変換器(1001、1310、1330)のそれぞれ1つが、
- 基準電圧電位(Vref)用の端子(1041)及びサンプリングされる入力電圧電位(Vin)用の端子(1042)であって、前記複数のキャパシタ(1010、...、1017)のうちの1つ以上に交互に結合されるように構成された前記端子(1041、1042)と、
- 前記基準電圧(Vref)に依存して基準電流(Iref)を生成する回路(1050)と、
- 前記基準電流(Iref)に依存して前記充電電流源の前記電流(icoarse)を生成する回路(1251)及び前記基準電流(Iref)に依存して前記放電電流源の前記電流(ifine)を生成する回路(1252)と、
をさらに備える、請求項15または16に記載のパイプライン型アナログ-デジタル変換器。
【請求項18】
前記基準電流を生成する前記回路(1050)が、
トランジスタ(1230)であって、そのソース端子が抵抗器(1240)を介して接地電位(GND)用の端子に接続されており、そのドレイン端子が前記基準電流(Iref)を供給する、前記トランジスタ(1230)と、
基準電圧電位(Vref)用の端子に接続され、かつ、前記抵抗器(1240)に接続された誤差増幅器(1210)であって、前記トランジスタ(1230)を制御する前記誤差増幅器(1210)と、
を備える、請求項17に記載のパイプライン型アナログ-デジタル変換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スイッチトキャパシタ増幅器に関する。具体的には、本開示は、サンプルキャパシタ及び増幅キャパシタに結合されたコンパレータを備えるスイッチトキャパシタ増幅器に関し、サンプルキャパシタは、コンパレータの出力信号に応じて対応するスイッチによって充電及び放電される。本開示はまた、アナログ-デジタル変換器、デジタル-アナログ変換器、減算器、及び残差信号を増幅するためのスイッチトキャパシタ増幅器を含む少なくとも2つの変換器ステージを備えるパイプライン型アナログ-デジタル変換器に関する。
【背景技術】
【0002】
信号増幅器は、電子信号を増幅するために電子デバイスにおいて広く用いられている。アナログ増幅器の概念は、固定された時間にわたりキャパシタ上でg電流を統合する相互コンダクタンス増幅器を使用し得る。しかしながら、このようなアナログの概念は、製造プロセス、供給電圧、及び動作温度(PVT-プロセス、電圧、温度)の変動の影響を受け得、ゲインがPVT全体に広がることがあり、非線形性の問題を生じさせるようになっている。このことは、時間とコストのかかるプロセスである増幅器の較正を必要とする。
【0003】
コンパレータに基づいたスイッチトキャパシタ増幅器の概念があり、入力信号は、サンプルキャパシタで転送され、構成要素が、接地電位である可能性があるコンパレータの基準電圧に近づく仮想接地ノードを検出するまで、電荷がそこから除去される。コンパレータは、入力側で検出された遷移が出力側に現れるまでスイッチング遅延を呈する。従って、コンパレータベースのスイッチトキャパシタ増幅器は、サンプルキャパシタを放電するための粗電流源と、サンプルキャパシタを再充電して、その後、コンパレータの遅延によって生じる電荷オーバーシュートによる誤差を低減するための微電流源と、を含む。しかしながら、再充電フェーズは、充電電流が比較的低く、このことが従来のコンパレータベースのキャパシタ増幅器の動作を遅くすることから、かなり長い時間を要し得る。コンパレータには、オーバーシュートを低減するための調整可能な閾値を有し得るが、しかしながら、これには、コンパレータの遅延をPVTで知る必要があり困難であるか、またはほとんど不可能である。
【0004】
コンパレータベースのスイッチトキャパシタ増幅器は、前ステージの残差信号をフルスケールに増幅し、次ステージに転送するために、パイプライン型アナログ-デジタル変換器(ADC)で使用され得る。様々なタイプのADCの概念の中でも、パイプライン型ADCのステージで使用されるADCの1つの可能なクラスは、逐次比較型アルゴリズムを採用することができる。
【0005】
ADCの変換速度は実質的に残差増幅器の動作速度によって決定されるので、パイプライン型ADCなどのADCの変換速度を上げるために、コンパレータベースのスイッチトキャパシタ増幅器の動作速度を上げる必要がある。さらに、コンパレータベースのスイッチトキャパシタ残差増幅器を使用してパイプライン型ADCの精度を高めるために、PVT変動が増幅器の速度と精度に影響を与えるのを防ぐ必要がある。
【0006】
本開示の目的は、より高速に動作するコンパレータベースのスイッチトキャパシタ増幅器を提供することである。
【0007】
本開示の別の目的は、製造プロセスの変動並びに供給電圧及び温度などの動作条件の変動にあまり依存しないコンパレータベースのスイッチトキャパシタ増幅器を提供することである。
【0008】
本開示のさらに別の目的は、より高い精度でより速く動作するパイプライン型アナログ-デジタル変換器を提供することである。
【発明の概要】
【0009】
上述の目的の1つ以上は、本請求項1に記載の特徴を備えるスイッチトキャパシタ増幅器によって達成される。
【0010】
一実施形態によれば、コンパレータベースのスイッチトキャパシタ増幅器は、1つ以上の入力端子及び出力端子を有するコンパレータを備える。サンプルキャパシタは、スイッチを介して入力端子の1つに結合される。増幅キャパシタは、コンパレータの入力端子に、かつ、電流源に結合されて、サンプルキャパシタを放電し、同様に電流源に結合されて、対応するスイッチを介してサンプルキャパシタを充電する。充電電流源は、放電電流源の電流よりも小さな電流を供給する。コントローラは、コンパレータの出力信号に応じてスイッチを操作するように構成されている。負荷キャパシタは増幅キャパシタに結合されることができ、増幅された出力電荷を蓄積することができ、増幅キャパシタとサンプルキャパシタの静電容量の比が、増幅プロセスの増幅係数を決定する。増幅器は、シングルエンド構成または差動構成を有してもよい。
【0011】
本開示の原理によれば、閉ループ制御回路が提供され、これがコンパレータの出力からコンパレータの入力へのループを閉じる。閉ループ制御回路は、コンパレータの遅延を決定し、決定された遅延に応答してコンパレータのオフセットを制御または決定するように構成される。閉ループ制御回路は、シングルエンド構成及び差動構成に含めることができる。
【0012】
閉ループ制御回路は、コンパレータの遅延が大幅に低減されるか、または補償されるように、コンパレータのオフセットを動的に制御することを可能にする。その結果、仮想接地状態の検出後の接地電位などの、コンパレータの基準信号を超えるサンプルキャパシタの放電の信号オーバーシュートが、大幅に低減されるか、ゼロに近くなる。その後、次の仮想接地状態の検出までの充電電流源を介したサンプルキャパシタの充電時間は、短くなる。制御ループは、サンプルキャパシタの放電時のオーバーシュートが小さくなり、その後のサンプルキャパシタの充電が短くなり、その結果、スイッチトキャパシタ増幅器の増幅動作が高速になることを確実にする。閉ループ制御回路は、定常状態フェーズでオーバーシュートを可能な限り小さく保つために、反復的かつ動的に動作する。これにより、調整ループはまた、関連する電子構成要素のPVT依存パラメータも補償し、その結果、増幅速度はPVT変動に実質的に依存していない。従来の増幅器の場合のように、例えば、増幅器内の構成要素を融合またはトリミングするためのパラメータの測定値を使用するデバイステスト中の較正は、これに関して必要ない。加えて、較正後のドリフトは本質的に回避される。
【0013】
増幅器はデジタルで動作し、コンパレータ、スイッチ、キャパシタ、及び電流源を使用してアナログ入力信号を増幅する。増幅器の増幅率は、主にサンプルキャパシタに対する増幅キャパシタの静電容量の比率によって決まる。これらの構成要素はすべて、より小さなフィーチャサイズに容易にスケーリングされ得、増幅器の設計はスケーリング可能であるようになっている。従って、性能が維持されることが期待できる一方で、本開示の原理に従って検証された増幅器の設計及び寸法を、スケーリングによってより小さなフィーチャサイズを使用する新しいプロセスに移行することは簡単である。このことは、アナログ-デジタル変換器などの大規模なシステムで増幅器を使用する際の重要な利点である。同様に、PVT変動に対する増幅器のロバストネスも維持される。
【0014】
実施形態によれば、閉ループ制御回路は、デジタル構成要素を使用することができ、主にデジタルで動作することができる。閉ループ制御回路は、コンパレータ遅延に依存する信号を決定するための時間-デジタル変換器(TDC)を備えることができ、信号の情報は、コンパレータのオフセットを設定するためにコンパレータに戻され、フィードバックされる。TDC変換器を使用するデジタル実施形態は、非常にPVTロバストである。充電時間が、コンパレータ遅延に依存するオーバーシュートの量に依存するように、時間はコンパレータ遅延を表すものであることから、TDCは、微充電フェーズの間のサンプルキャパシタの充電時間を決定することができる。TDCは、微充電フェーズの開始から、仮想接地状態の検出に応答してコンパレータによって決定される微充電フェーズの終了までの時間のデジタル信号を決定することができる。TDCは、ゼロをわずかに上回る固定プリセット信号を使用して、TDC出力がゼロであり得るときに、負のフィードバック値を有効にすることができる。このことは、開始直後に微充電フェーズが非アクティブ化されたときに、正の初期コンパレータオフセットで発生する可能性がある。従って、閉ループ制御回路内の負のフィードバック値は、対応するデッドゾーンから出て移動するのに役立つ。コンパレータの遅延に依存する信号から差し引いたデジタルプリセット信号は、双方向コンパレータオフセットチューニングのTDC出力がゼロか、またはゼロより大きいときに、負のフィードバック値を有効にする。フィードバックループが十分に高い制御信号を蓄積した後、例えば、ループ内の積分器がコンパレータオフセットを負の範囲に押し込むと仮定すると、ループは、コンパレータオフセットのさらなる微チューニングを可能にするためにゼロかゼロに近い値に下げられているプリセット信号で動作し続けることができる。ループが収束すると、かつ、ループが収束状態にあるか、または定常状態にあると、デジタルプリセット信号がゼロに設定されることができる。統合される信号は線形信号であり、そのため、制御ループは線形で動作し、安定化され、ゼロの誤差をもたらす。
【0015】
積分器は、時間-デジタル変換器とコンパレータの入力端子との間に接続されることができる。積分器は、離散時間積分器などのデジタル化されて動作する積分器であり得る。離散時間積分器は、アキュムレータとしても具現化され得る。代替的に、デジタルゲインブロックが使用されてもよい。積分器は時間信号を整形して制御ループを閉じ、コンパレータのオフセット設定を有効化する。コンパレータのオフセットは、例えば、コンパレータの基準入力を介して、またはオフセットの設定を可能にするコンパレータの補助端子を介してなど、当業者には既知の様々な方法で設定され得る。
【0016】
コンパレータは、サンプルキャパシタ及び増幅キャパシタまたはフィードバックキャパシタに接続される第1の入力端子を備え得る。コンパレータの第2の入力端子は、接地電位などの基準電位に接続され得る基準入力の機能を有し得る。コンパレータの第1の入力端子は負の入力端子であり得、第2の入力端子はコンパレータの正の入力端子であり得る。また、第1の入力端子正の入力であり、第2の入力端子が負の入力である他の構成も有用である。コントローラは、スイッチを操作し、それを介して、サンプルキャパシタの放電と充電が行われる。コントローラは、コンパレータが仮想接地状態を検出するまでサンプルキャパシタを放電させ、かつ、コンパレータが別の仮想接地状態を検出するまでサンプルキャパシタを充電させるように構成されることができる。
【0017】
実施形態によれば、コンパレータは、コンパレータの入力側に前置増幅器ステージを備えることができ、閉ループ制御回路から送達される信号に応じて電流を加えることによってオフセットの設定を可能にする。コンパレータの前置増幅器ステージは、第1の分岐及び第2の分岐を有する差動前置増幅器であり得る。デジタル-アナログ変換器は、積分器から出力されるデジタル信号によって制御されるという点で、コンパレータの決定された遅延に応答して制御されることができる。デジタル-アナログ変換器は、閉ループ制御回路によって供給される信号に応じて電流を生成し、これは、コンパレータの差動前置増幅器ステージの分岐の1つに印加または追加される。分岐の一方は、デジタル-アナログ変換器を介して負のフィードバック信号によって調整されることができ、分岐の他方は、別のデジタル-アナログ変換器を介して正のフィードバック信号によって調整されることができる。積分器から出力されるデジタル信号などのデジタル信号に応答して電流を生成するために、デジタル-アナログ変換器について様々な可能性が考えられる。
【0018】
時間-デジタル変換器(TDC)は、遅延回路のチェーンを備え得る。チェーンは、遅延回路のステージを伝搬する開始信号を受信するための入力を有し得る。開始信号は、サンプルキャパシタの充電開始を表すことができる。チェーンに入るインパルスはチェーンを通って伝播し、仮想接地状態が満たされたときのチェーン内のインパルスの場所が読み取られてエンコードされ、TDCのデジタル出力信号が生成される。仮想接地状態は、対応する停止インパルスでTDCに伝達される。TDCの出力信号は、コンパレータの遅延の測定値であるサンプルキャパシタの充電時間を表す。
【0019】
一実施形態では、遅延チェーンの遅延ステージの1つ以上またはすべては、電流スターブ型インバータを含み得、そこでは電流源トランジスタが、CMOSインバータと供給電位端子との間に接続されている。インバータの遷移スイッチングフェーズでインバータを流れる電流は、電流源トランジスタによって制限され、遷移スイッチング動作は遅延され、インバータが規定された遅延を使用するようになっている。別のインバータが、電流スターブ型インバータの下流に接続され、出力信号を形成し、極性を適応させる。電流スターブ型インバータの電流源トランジスタは、電流スターブ型インバータの電流を供給電位レールに制限するためにバイアス電流が供給される電流ミラーの一部であり得る。
【0020】
さらに別の実施形態によれば、閉ループ制御回路は、アナログ制御ループとして実現化され得る。これに関して、閉ループ制御回路は、コンパレータの遅延に応じて充電されるキャパシタを含み得る。キャパシタの充電は、コンパレータの遅延を示すサンプルキャパシタの充電と並行して同時に実行され得る。閉制御ループからのキャパシタによって決定された信号は、そのオフセットを設定するために整形され、コンパレータに転送され得る。
【0021】
アナログ閉ループ制御回路は、遅延依存信号から基準信号を減算するための減算器を備え得る。減算器の下流に接続された積分器は、減算器からの出力信号を積分し、積分された信号をコンパレータの入力端子に転送して、コンパレータのオフセットを生成することができる。オフセットは、積分器の出力がコンパレータの基準入力または積分器の補助端子に接続されて、コンパレータのオフセットを設定することで生成されることができる。増幅器が積分器の代わりに使用されることもできる。アナログコンパレータの遅延補償制御ループには、減算器などのアクティブな回路要素が含まれる。アクティブな回路要素は、PVT変動の影響を受けることがあるが、制御ループの動的操作により、依然としてコンパレータの遅延を補償することができる。
【0022】
スイッチトキャパシタ増幅器は、差動構成で実現され得る。差動構成では、別のサンプルキャパシタが、スイッチを介してコンパレータの別の入力端子に接続され得、別の増幅キャパシタが、コンパレータの別の入力に接続され得、回路の差動動作を可能にする対称回路形状を生成する。充電電流源と放電電流源が、増幅キャパシタの間で接続され、サンプルキャパシタの充電と放電を可能にする。コンパレータの各入力端子に接続された対応するサンプルキャパシタを使用する代わりに、コンパレータの入力端子間に1つのサンプルキャパシタを差動接続することもできる。
【0023】
上で説明したスイッチトキャパシタ増幅器は、パイプライン型アナログ-デジタル変換器(ADC)で使用され、前のステージからの残差信号を増幅し、次のステージに転送されることができる。パイプライン型ADCは、少なくとも2つ以上の変換器ステージを備え得る。変換器ステージは、互いに直列に接続されている。変換器ステージの少なくとも1つ以上は、変換されるアナログ信号用の入力信号用の端子と、入力端子に接続されたアナログ-デジタル変換器と、アナログ-デジタル変換器の下流に接続されたデジタル-アナログ変換器と、を備える。減算器は、DACからのアナログ入力信号とアナログ再変換信号の間で減算を実行する。スイッチトキャパシタ増幅器は、減算器の出力端子に接続され、減算器によって供給される残差信号を増幅する。増幅器の出力信号は、次のステージの入力端子に転送される。次のステージは、上で説明したのと同じ構造を有する別のステージであり得るか、または単一のADCを含むパイプライン型ADCの最終ステージであり得る。
【0024】
パイプライン型ADCでは、残差信号の増幅用のスイッチトキャパシタ増幅器が、速度と電力のボトルネックをもたらし、変換の精度にとって非常に重要になっている。本開示の原理によるスイッチトキャパシタ増幅器を使用すると、オフセット補償による遅延を最小化することによってADCの動作速度が改善される。オフセット補償は、PVTロバストであるように、閉制御ループで実行される。増幅キャパシタとサンプルキャパシタの静電容量比によって、増幅率が決まる。この静電容量比は容易に再現でき、そのため精度が保証される。さらに、これはスケーラブルであり、増幅器設計が、他の製造プロセスにおいて、かつ、他の技術用途において、再利用できるようになっている。
【0025】
1つ以上の変換器ステージでのアナログ-デジタル変換器は、逐次比較型(SAR)ADCであり得る。SAR ADCは各々が、前のステージにおいて最上位ビットを変換するための、かつ、次の1つ以上のステージにおいて、いくつかの最下位ビットを変換するための複数のキャパシタを備える。本開示の原理によるスイッチトキャパシタ増幅器は、前のステージの出力と次のステージの入力との間に接続され、それによって前のステージによって提供される残差信号を増幅する。SAR ADCの概念では、残差増幅器のコンパレータは、残差信号のコンパレータベースのスイッチトキャパシタ増幅を含む複数の機能で使用でき、また、両方の操作が異なる時点で実行されるため、SARアルゴリズムのコンパレータとして使用できる。
【0026】
パイプライン型ADCの実施形態によれば、スイッチトキャパシタ増幅器のデジタル閉ループ制御回路の時間-デジタル変換器は、サンプルキャパシタを放電する時間を決定するためにも使用されることができる。この時間はアナログ信号の範囲を示しており、TDC出力信号が、次の変換器ステージに転送され、後続の変換器ステージにおいてズーム範囲を設定できるようになっている。具体的には、TDCは、サンプルキャパシタの放電中に、コンパレータの遅延を含む仮想接地状態が検出されるまでの時間を検出する。TDC出力信号は、TDCの出力信号である決定された放電時間に応じて、後続のステージのキャパシタの少なくともサブセットをプリセットするために、後続のステージに接続された下流に転送される。後続のステージの最上位キャパシタをプリセットすると、後続のステージで行われる残差変換のためのズーム範囲を設定する効果がある。デジタル閉ループ制御回路のTDCが、これにより再利用され、パイプライン型ADCコンセプトでの変換速度を向上させることができる。
【0027】
さらなる実施形態によれば、パイプライン型ADCの精度は、基準信号を互いに整合させることによって向上され得る。SARの概念によれば、SAR ADCのキャパシタには、基準電圧電位とサンプリングされるアナログ入力信号が交互に供給される。その基準電圧電位とスイッチトキャパシタ増幅器の充電電流及び放電電流を相互に相関させるために、回路が使用されることができる。相関回路は、基準電圧電位からの基準電流を生成することができ、また、電流ミラー回路は、基準電流からスイッチトキャパシタ増幅器のための充電及び放電電流を生成するために使用されることができる。
【0028】
一実施形態では、対応する回路は、トランジスタと、トランジスタのソース端子と接地端子との間に接続されたオーム抵抗器と、誤差増幅器を含む制御ループと、を含み得る。トランジスタのドレイン端子は、基準電流をシンクし、そこから充電電流と放電電流が引き出される。誤差増幅器は、抵抗器からの信号を受け取り、それをSAR変換器キャパシタにも印加される基準電圧と比較する。誤差増幅器は、基準電流が基準電圧に直接関係するようにレギュレーションを提供する。オーム抵抗は実質的に温度不変であり、そのため、基準電圧と基準電流の相関関係は温度安定性がある。誤差増幅器は、相関精度をさらに高めるためにオフセット補償され得る。基準電流生成回路をスケーリングする場合、通常、基準電圧と基準電流の適切な相関関係を維持するために、オーム抵抗を予測可能にスケーリングすることが可能である。
【0029】
前述の一般的な説明と以下に述べる詳細な説明とは、共に例示的なものであり、特許請求の範囲で請求された本技術にさらなる説明を加えることを意図していると理解すべきである。添付の図面は、さらなる理解を提供するために含まれており、この説明に組み込まれ、その一部を構成する。図面は、1つ以上の実施形態を示し、この説明とともに、様々な実施形態の原理及び動作を説明するのに役立つ。図面の異なる図の同一要素は、同一参照記号で示される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】デジタル閉制御ループ回路を使用する本開示の原理によるコンパレータベースのスイッチトキャパシタ増幅器を示す。
図2図1の増幅器からの信号と電圧の波形図を示す。
図3図1の増幅器のコンパレータのオフセットを設定するための回路を示す。
図4図1の増幅器の時間-デジタル変換器のブロック図、及び遅延ステージの1つの詳細な回路図を示す。
図5】アナログ閉ループ制御回路を使用する本開示の原理によるコンパレータベースのスイッチトキャパシタ増幅器の別の実施形態を示す。
図6】パイプライン型アナログ-デジタル変換器のブロック図を示す。
図7図6のパイプライン型アナログ-デジタル変換器の一部分を示しており、コンパレータベースのスイッチトキャパシタ増幅器及び関連回路要素を詳述している。
図8】ズーム範囲を使用する逐次比較レジスタ型のパイプライン型アナログ-デジタル変換器で使用される、図1のコンパレータベースのスイッチトキャパシタ増幅器の実施形態を示す。
図9図8の増幅器からの信号と電圧の波形図を示す。
図10】ズーム範囲の設定を有効化するSAR ADCの主な回路図を示す。
図11図10の回路におけるSARズーム範囲を採用するための概念を示す。
図12】基準電圧に相関する電流を生成するための回路を示す。
図13A】ズーム範囲を使用するパイプライン型SAR ADCの詳細図を示す。
図13B図13Aの右側に配置される、ズーム範囲を使用するパイプライン型SAR ADCの詳細図を示す。
図14図13A及び図13Bの回路からの信号及び電圧の波形図を示す。
図15】デジタル閉制御ループ回路を使用する差動構成における本開示の原理によるコンパレータベースのスイッチトキャパシタ増幅器を示す。
図16】コンパレータベースのスイッチトキャパシタ増幅器の差動構成において使用される単一のサンプルキャパシタを示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本開示は、これから、本開示の実施形態を示す添付の図面を参照して、以下により完全に説明される。しかしながら、本開示は、多くの異なる形態で具体化されることができ、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が本開示の範囲を当業者に完全に伝えるように提供される。図面は、必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではないが、本開示を明確に説明するように構成されている。
【0032】
図1は、コンパレータベースのスイッチトキャパシタ増幅器のブロック図を示す。増幅器は、入力端子がサンプルキャパシタ120及び増幅キャパシタ130に結合されている中心構成要素としてのコンパレータ110を備える。具体的には、サンプルキャパシタ120の端子は、コンパレータ110の入力端子に切り替え可能に接続されている。スイッチ122が、サンプルキャパシタ120の端子とコンパレータ110の入力端子との間に接続されている。増幅キャパシタ130の端子は、コンパレータ110の入力端子に接続されている。増幅キャパシタ130の端子はまた、サンプルキャパシタ120の端子に接続されているスイッチ122にも接続されている。コンパレータ110の出力端子は、スイッチ141、142を操作する制御信号E1及びE2を生成するコントローラ140に結合されている。スイッチ141は、正の供給電位VDDに接続された電流源135と直列に接続されている。スイッチ142は、接地電位GNDに接続された電流源136と直列に接続されている。電流源135、136及び対応するスイッチ141、142は、増幅キャパシタ130の端子に接続されている。負荷キャパシタ160は、電流源135、136と増幅キャパシタ130との間のノードに接続されている。負荷キャパシタは、増幅器の出力に接続された容量性負荷CLを表す。
【0033】
いくつかのスイッチが、増幅器を操作し、スイッチトキャパシタ動作を実行するために設けられている。サンプルキャパシタ120の端子は、対応するスイッチ121及び123を介して、増幅される入力電圧vinが供給される入力端子125及び接地電位にそれぞれ交互に接続されることができる。サンプルキャパシタ120の別の端子は、対応するスイッチ122及び124を介して、コンパレータ110の入力端子の1つ及び接地電位にそれぞれ交互に接続されることができる。スイッチは、重複しないクロック信号φ1、φ2によって操作される。図1に示す回路では、コンパレータ110の負の入力端子「-」は、サンプルキャパシタ120及び増幅キャパシタ130に接続され、一方で、正の入力端子「+」は、接地電位GNDに接続されている。分極を逆にして、正の入力をキャパシタ120、130に接続し、負の入力を接地電位に接続することも可能である。図1に示される増幅器は、シングルエンド構成であり、入力信号は、シングルエンド方式で接続されたサンプルキャパシタ120によって供給される。
【0034】
動作中、サンプルキャパシタ120は入力電圧vinで充電され、増幅キャパシタ130及び負荷キャパシタ160は、信号φ1のアクティブフェーズ中に短絡及び放電される。次に、サンプルキャパシタは、信号φ2のアクティブフェーズ中に、入力端子125から接続解除され、接地電位とコンパレータ110の入力端子との間に接続される。第1の制御信号E1は、スイッチ141を閉じ、増幅キャパシタ130を通してサンプルキャパシタ120を放電するために、アクティブになる。図2の波形図に示されるように、コンパレータ110の負の入力ノード「-」における電圧vnは、コンパレータが仮想接地状態210を検出するまで、電流源135から電流icoarseを供給することによって上昇する。仮想接地では、コンパレータ110の負の入力での入力電圧vnは、図2の210に示すように、接地電位GNDであるコンパレータ110の正の入力での電圧に等しくなる。電荷は、コンパレータがGNDに近づく仮想接地を検出するまで、電流源135からの電流icoarseによってサンプルキャパシタ120から除去される。放電電流がフィードバックキャパシタ130を通過すると、サンプルキャパシタ120の電圧は、キャパシタ130、120の静電容量の比率、Csample/Campによって増幅されたように見える。従って、ゲインは理想的にはキャパシタ比率にのみ依存する。しかしながら、実際には、コンパレータ遅延は、コンパレータ110の負の入力端子での入力電圧vnのオーバーシュート211をもたらす。
【0035】
次に、信号E1による高速粗放電フェーズの後に、より低い充電電流ifineを使用する、コントローラ140によって生成された第2の制御信号E2の第2の微充電フェーズが続き、これがコンパレータ110の負の入力において入力電圧vnの別の接地状態220になる。仮想接地点220で別の小さなオーバーシュートが発生する可能性があるが、電流が比較的低いため、このオーバーシュートは無視できる。第2の制御信号E2がアクティブであるときの第2の微電流フェーズは、かなりの量の時間を消費することがある。図2に示すように、微充電フェーズの期間t2は、粗放電フェーズの期間t1の約3倍である。信号E1、E2は、コンパレータ110の出力端子の電圧Vcに応答して、コントローラ140によって供給される。放電フェーズの間、スイッチ141は閉じられ、放電電流源135から電流icoarseを供給し、一方で、スイッチ142は開いている。微充電フェーズの間、スイッチ142は閉じられ、電流源136を介して電流ifineを供給し、一方で、スイッチ141は開いている。
【0036】
本開示の原理によれば、オーバーシュートを補償し、それによってサンプルキャパシタの微充電のフェーズを低減するために、閉制御ループが提供される。閉ループ制御回路は、コントローラ140の出力141とコンパレータ110の入力端子115との間に接続されている。閉ループ制御回路は、コンパレータ110のオフセットを制御するために信号Doffsetを生成する。制御ループは反復的に動作し、オーバーシュートを可能な限りゼロに近づける。図2に示されている領域230で見られるように、充電/放電フェーズの次のパフォーマンスでのオーバーシュートははるかに少なくなる。それに対応して、コンパレータ110の入力115に供給される信号Doffsetは、動作時間が増加するにつれて低減する。定常状態では、微電流ifineによる充電フェーズがはるかに短くなり、増幅動作が高速化される。閉ループ制御回路は動的に動作し、図1の増幅回路が開始される度にコンパレータ110のオフセットを調整する。従って、スイッチトキャパシタ増幅器回路の製造プロセスの変動によって引き起こされる何らかの回路の固有の変動、または供給電圧VDDの変動によって引き起こされる何らかの変動、または温度などの他の周囲条件によって生成される変動、いわゆるPVT変動は、閉ループ制御回路によって可能な限りゼロに近く動的に低減される。
【0037】
閉ループ制御回路は、時間-デジタル変換器(TDC)151を含み、これは微充電フェーズ(その間に電流源136の微充電電流ifineがスイッチ142の閉フェーズを通じて供給される)を表す制御信号E2の時間t2を測定する。時間-デジタル変換器151は、その期間のデジタル表現である出力信号DTDCを生成する。この期間は、コンパレータ110の遅延に対応し、これは、その入力での仮想接地状態の検出から、コンパレータ出力での対応する出力信号Vcの設定までの伝播時間である。積分器153は、TDC151の下流に接続され、デジタル信号DTDCを、コンパレータ110の端子115に供給されるオフセット制御信号Doffsetに統合する。積分器153は、デジタル積分器であり得る。代替的に、デジタル積分器153の代わりに、デジタルゲインブロックも使用されることができる。さらに、減算器152が、TDC151と積分器153との間に供給されることができ、デジタル時間情報DTDCから端子155における一定信号Dcを減算する。デジタル信号Dcは、TDC出力信号DTDCがゼロであるときに、正のフィードバック値を有効にするために、ゼロよりもわずか上に設定される。これは、開始直後に微フェーズが非アクティブ化されたときの、正の初期コンパレータオフセットで発生する。従って、負のフィードバック値を有効にすることは、このデッドゾーンから抜け出すのに役立つ。減算器152及びデジタルプリセット信号Dcは、双方向コンパレータオフセット調整のための負のフィードバック値を有効にする。これにより、双方向制御ループが安定する。従って、TDC151の出力信号は、常に少なくともゼロまたはゼロよりも大きいことが保証される。デジタル信号Dcはループに注入され、正のフィードバック値を有効にする。これは、TDC出力がゼロのときに該当し得る。ループが収束すると、デジタル信号Dcはゼロに設定される。これにより、ゼロであるオーバーシュートが残り、線形信号が統合された線形制御ループを有効にし、ここで、制御ループが安定化され、誤差はゼロになる。
【0038】
図3は、プリ増幅器ステージと、プリ増幅器のオフセットを設定するための差動プリ増幅器ステージの分岐の各々についてのデジタル-アナログ変換器(DAC)と、を詳述するコンパレータ110の実施形態を示す。DACは、TDC151によって提供される時間信号DTDCに依存する信号Doffsetによって制御され、分岐の1つに印加される対応する電流に信号を変換する。印加された電流は、差動プリ増幅器ステージに非対称性を挿入し、オフセットをもたらす。閉制御ループは、コンパレータの遅延が実質的に補償されるようにオフセットを引き起こす。
【0039】
より詳細には、図3は、差動プリ増幅器ステージの負の分岐311及び正の分岐312を有するプリ増幅器ステージ310を示している。デジタル-アナログ変換器320は、端子321で電流を生成し、分岐311を通る電流に追加される。DAC320は、信号Doffsetの負の値を受信し、一方で、対応するDAC330は、信号Doffsetが正の値を有するとき、対応する電流を正の分岐312に加える。電流を生成するDACの多くの可能性が考えられる。図3は、一連のバイナリ加重電流IU、2IU、...、2M-1IUを備えるDACの一例を示している。スイッチは、各電流源に直列に接続され、各スイッチは、デジタル値Doffsetによって制御され、スイッチを制御する信号に依存して、DAC320の出力321でバイナリ加重電流に寄与するようになっている。DAC320は、負のデジタル制御値に使用されるが、DAC330は、対応する構造を有し、スイッチは、正のデジタル制御値によって制御される。デジタルコードDoffsetは、コンパレータのオフセットを個別のステップでプログラムする。コンパレータの遅延は、入力スロープに依存するため、オフセット補償は、サンプルキャパシタが放電されたときの粗電流フェーズの結果に基づいて実行される。サンプルキャパシタが充電される微電流フェーズでは、必要とされるオフセットは異なるが、充電が遅いため、遅延とオフセットの影響は無視できる。
【0040】
図4は、時間-デジタル変換器151の実現例を示している。TDCは、コンパレータ110における仮想接地検出に応答して生成されたコンパレータ110の出力信号Vcのスイッチングに応答して生成された制御信号E2の(立ち上がり)エッジに応答して開始インパルスTDCstartを受信する。インパルスTDCstartは、サンプルキャパシタの微充電フェーズの開始に応答して生成される。インパルスTDCstartは、信号E2が、図1に示されるように立ち上がりまたは立ち下がりエッジを有するときにインパルスを形成する制御信号E2を受信するインパルス形成回路145によって形成され得る。インパルスTDCstartは、いくつかの回路の、例えば2M遅延回路420、421、422の直列接続を備える遅延チェーン410を介して伝播する。各遅延回路は、伝播するインパルスにTDの遅延を適用する。停止信号TDCstopのインパルスは、遅延回路420、...、422の各々の出力に接続されたエンコーダ440をトリガーして、遅延チェーン内で伝播する開始インパルスの現在の状態をフリーズする。エンコーダ440は、閉ループ制御回路内で転送されるデジタル出力信号DTDCを提供する。停止信号インパルスTDCstopは、コンパレータ110において別の仮想接地検出に応答して生成されたコンパレータ110の出力信号Vcのスイッチングに応答して生成された制御信号E2の別の(立ち下がり)エッジに応答して生成される。インパルスTDCstopは、サンプルキャパシタの微充電フェーズの終了に応答して生成される。インパルスTDCstopは、サンプルキャパシタの微充電フェーズの終了に応答して生成される。開始インパルスTDCstartは、時間-デジタル変換器の遅延回路のチェーンを介して伝播する。停止インパルスTDCstopを受信すると、出力信号DTDCが生成される。出力信号DTDCは、遅延回路のチェーンの現在のスイッチステータスを決定し、これは、遅延回路のチェーンを通って伝播する開始インパルスの伝播状態によって与えられ、このステータスは、停止インパルスが遅延回路のチェーンを通って伝搬する期間を示す。出力信号DTDCは、停止インパルスの受信時の遅延回路のチェーンのステータスを示す。出力信号DTDCは、微充電フェーズの測定値であり、その持続時間を示すものであり、従って、コンパレータの遅延の測定値である。
【0041】
本実施形態では、図4に示される時間-デジタル変換器は、サンプルキャパシタの微充電フェーズを決定する第2の制御信号E2の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジによって示されるコンパレータ110のスイッチングイベントに関する開始インパルスTDCstart及び停止インパルスTDCstopを使用する。この期間t2は、コンパレータ110のスイッチング遅延を示し、比例的に関連付けられている。
【0042】
図4の右側部分には、遅延チェーン410の遅延回路420、421、422のうちの1つ以上またはすべての実現化の例が示されている。遅延回路は、電流スターブ型インバータセルを含み、これは、供給電圧端子のいずれかの側に電流制限トランジスタを含む第1の電流スターブ型インバータ431を含む。例えば、接地電位GNDの側では、電流ミラー432が、第1のインバータのNMOSトランジスタ433と接地電位用の端子との間に接続されている。電流ミラーは、第1のインバータ431の供給経路にミラーリングされる電流Ibiasによって制御される。Ibiasへの電流を制限する対応する電流ミラーが、インバータ431の供給電位VDDへの経路に設けられている。第1のインバータ431が高から低または低から高に切り替えられるとき、切り替え電流は、電流Ibiasによって制限され、その結果、切り替え操作の遅延が生じる。第2のインバータ441は、第1のインバータ431の下流に接続されて、鋭いエッジを生成し、伝播するインパルスの適切な極性を生成する。
【0043】
遅延チェーン410の遅延回路420、421、422は、動的回路として実装されているため、かなりのPVT変動の影響を受ける可能性がある。しかしながら、閉ループ構成が、時間-デジタル変換器の出力信号DTDCをゼロに駆動し、その結果、コントローラの動作が正確な、絶対精度に依存しないことから、このことは、閉ループ制御回路の本発明のトポロジでは問題にならない。遅延チェーンの有効ステップサイズは、十分なマージンのために遅延チェーンと制御ループを設計することによって達成できる、制御ループの安定した範囲内にとどまるだけで十分である。これは、時間-デジタル変換器のPVT拡散の影響を受ける有効なループ収束時間であり、回路の電源投入後の初期サイクルにのみ影響を与える。閉制御ループが安定すると、実際のコンパレータベースの増幅器の性能は、時間-デジタル変換器の特性に依存しなくなる。
【0044】
図1に示すコンパレータベースのスイッチトキャパシタ増幅器、並びに主要構成要素が図3及び4に示されるデジタル閉ループ制御は、動的消費電力のみを必要とし、そのため、定常状態での消費電力は比較的低くなる。回路は、完全にデジタルで動作し、より小さな処理済みフィーチャサイズ、かつ、より小さな処理済みノードにスケーラブルであるようになっている。閉ループ制御概念は、コンパレータの遅延をゼロまたはほぼゼロに動的に調整する。制御ループは、完全にデジタルで動作し、アクティブなゲイン依存要素が含まれておらず、そのため、回路が容易にスケーラブルであることを可能にしている。同じ回路設計が、ダウンスケールしたフィーチャサイズを有する製造プロセスで使用され得、回路の正しい機能が保証される。
【0045】
ここで図5を参照すると、コンパレータベースのスイッチトキャパシタ増幅器のコンパレータ遅延を補償するための別の閉ループ制御ソリューションが示されており、これは、図1に示されているソリューションの代替案である。図5に示される回路は、第2の制御信号E2がアクティブであるときに電流源522によって充電される遅延キャパシタ521を含む。キャパシタ521における電圧信号VD内の情報は、そのオフセットを制御するためにコンパレータ510の入力に転送される。その正の入力で電圧信号VDを受信する減算器523が設けられている。減算器523の負の入力には、固定電圧電位Vcが供給される。電圧Vcの機能は、図1の端子155に示されているデジタルプリセット信号Dcの機能に対応している。積分器524は、減算器523の出力とコンパレータ510の正の入力との間に接続されている。減算器523及び積分器524は、アクティブな構成要素を含み得るアナログデバイスであり、これらのデバイス自体がPVT変動の影響を受け得るようになっている。しかしながら、コンパレータ510のオフセット制御は、動的閉制御ループで実行されており、そのため、コンパレータの補償されたスイッチング遅延は、定常状態でのPVT変動から独立している。
【0046】
コンパレータ110、510のオフセット制御は、異なる方法で実行され得る。オフセット設定信号は、コンパレータの正と負の入力端子のうちの1つを介して、またはオフセットの設定を生じさせる補助入力を介して入力され得る。デジタルケースでオフセットを設定する1つの例は、図3に関連して上で説明されている。
【0047】
図1及び図5に関連して示されているスイッチトキャパシタ増幅器は、パイプライン型アナログ-デジタル変換器(ADC)に関連して残差増幅器として使用され得る。パイプライン型ADCの一般的な例を図6に示す。パイプライン型ADCは、直列方式で接続された、いくつかの変換器ステージ610、620、630を備える。ステージの各々は、ステージ610に関連して説明されたものと実質的に同じ回路構造を有する。ステージ610は、端子616においてアナログ入力信号vinを受信する。サンプルアンドホールド(S&H)ステージが有用であることがある。入力信号は、サンプルキャパシタCsampleに記憶され、アナログ-デジタル変換器611は、N個のビットなどのビットのサブセットをデジタルドメインに変換する。N個の変換されたビットは、すべてのステージに共通のコンバイナステージ640に転送される。ADC611からのデジタルビットは、デジタル-アナログ変換器612によってアナログドメインに再変換される。アナログ再変換された信号は、減算器613においてアナログ入力信号vinから減算される。従って、減算器613は、DAC612の出力及び入力端子616に接続されている。減算器613の出力は、そのステージの残差電荷を蓄積するキャパシタ615に接続されている。電荷は、残差増幅器614によってフル信号スイングに変換され、これは、図1及び図5に示すような、コンパレータ遅延を補償するための閉ループ制御回路を含む、コンパレータベースのスイッチトキャパシタ増幅器のような、上で説明した増幅器の実施形態の1つであり得る。
【0048】
パイプライン型トポロジは、620などの連続するステージへの入力信号であるフルスケール信号への610などの前のステージの残差信号の増幅を必要とする。ステージ620は、ステージ610に関連して説明された変換と同様に、M個のビットの別のサブセットの変換を実行する。ステージ610、620、...、630のすべての追加出力は、完全に変換されたデジタル信号を生成するコンバイナ640に転送される。前のステージは、入力信号の別の次のサンプルを変換できるが、一方で、連続するステージは、入力信号の前のサンプルを変換しており、パイプライン動作が行われるようになっている。このようなパイプライン型ADCでは、増幅器614などの残差増幅器が、消費電力と変換速度のボトルネックになっている。図1及び5に関連して説明した原理による残差増幅器は、精度とPVTロバストネスに影響を与えるコンパレータの遅延がない線形セトリング(linear settling)を提供する。本開示の原理による残差増幅器の使用は、PVTの許容度及び精度を損なうことなく、パイプライン型ADCにおける全体的な変換時間を高速化する。
【0049】
図7は、図6に示したADCなどのパイプライン型ADCでの残差増幅器としてのコンパレータベースのスイッチトキャパシタ増幅器の使用を示している。前のステージ710の残差信号は、コンパレータベースのスイッチトキャパシタ増幅器720のサンプルキャパシタとして機能する残差キャパシタ711に記憶される。サンプリングキャパシタ711は、残差電荷を保持するすべてのDACキャパシタの合計である。増幅器720の出力負荷キャパシタは、次のステージ730のサンプルキャパシタ731である。
【0050】
パイプライン型ADC構成に有用なコンパレータベースのスイッチトキャパシタ増幅器の実施形態を図8に示す。図8は、デジタル閉ループ制御を有する図1のコンパレータベースのスイッチトキャパシタ増幅器を示し、第1の制御信号E1のアクティブフェーズ中に粗電流源icoarseを介してサンプルキャパシタ820を放電する時間を決定するようにさらに構成された時間-デジタル変換器851を含んでいる。放電時間は、コンパレータ遅延を含む仮想接地状態910が達成されるまで、コンパレータ810の入力電圧vnのランピングを含む。サンプルキャパシタ820の放電のための時間は、TDC851による開始インパルスTDCstart1及び停止インパルスTDCstop1によって示されている(図9)。ORゲート830は、制御信号E1とE2との間にOR動作を生成し、そのため、信号E1、E2の両方がTDC851に転送される。TDC851の出力信号TDCoutは、パイプライン型ADCのステージ620などの連続するステージのズーム範囲を設定するために使用され、TDCout値は、ステージ610などの前のステージから取得される。サンプリングキャパシタ820は、粗電流源835の定電流icoarseによって放電されるので、総放電時間は信号依存である。従って、放電時間は残差電圧に関する情報を含んでいる。TDC851によって測定された放電時間は、放電時間をデジタルに変換するために再利用される。放電時間は信号依存であるため、パイプライン型ADCの後続の変換器ステージで、図10及び図11に関連して詳しく説明されているズーム範囲を設定するために使用できる。
【0051】
図10は、パイプライン型ADCの変換器ステージの1つにあるADC611などのアナログ-デジタル変換器の実施形態を示している。図10は、逐次比較アルゴリズムに従ってアナログ-デジタル変換を実行する逐次比較型(SAR)ADC1001を示している。ADCは、キャパシタ1010、1011、1012、1013、1014、1015、1016、1017など、いくつかのキャパシタを備える。キャパシタ1010、...、1017は、他の加重原理も可能であるが、バイナリ加重を有することができる。キャパシタは基準電圧vrefで事前充電され、次いで、サンプリングされる電圧vinに接続される。端子1041は、基準電圧vrefを供給し、端子1042は入力電圧vinを供給する。コンパレータ1030は、SARコントローラ1060によって実行される逐次近似アルゴリズムの決定を行う。
【0052】
本開示の原理によれば、ズーム範囲セレクタ1040には、図8に示されるTDC851からの出力信号TDCoutが供給される。信号TDCoutは、図8及び図9に関連して説明されるように、粗電流源835を通るサンプルキャパシタ820の放電動作の放電時間を表す。ズーム範囲セレクタ1040は、ズームキャパシタ1014、1015、1016、1017の1つ以上への電荷をプリセットする。図10に示す例では、4つのズームビットであるビット4[1:0]、ビット3[1:0]が使用されている。
【0053】
図11は、4つのズームビットに関連する範囲を示す。本例では、7つのズーム範囲を区別するためにズームビットの7つの組み合わせが使用されている。ズームビットを使用してズーム範囲を設定することで、TDC851の出力信号TDCoutによって提供される推定値の上下の範囲をカバーすることができる。これにより、変換サイクルを増やすことなく、誤差許容範囲が提供される。ズームビットの使用は、パイプライン型ADCのADCがSAR構成を有する場合に特に有用である。時間-デジタル変換器の出力によって生成されるズームビットに対するTDC範囲の広がりは、許容範囲の影響を受ける。必要な許容範囲を達成するには、増幅器回路で使用される電流源の電流が、SARサンプリングプロセスで使用される基準電圧に関連付けられる必要がある。端子1041においてサンプリングキャパシタに供給される基準電圧vrefと、交互に端子1042において供給されるサンプリングされる入力電圧vinと、の間での必要な許容範囲を達成するための回路1050は、放電電流源835及び充電電流源836の粗電流icoarse及び微電流ifineに関連付けられるものである。
【0054】
図12は、電圧vrefと電流icoarseとの間の相関を可能にするための相関回路1050を示している。この回路は、MOSトランジスタ1230を備え、そのソース端子は、オーム抵抗器1240を介して接地電位GNDに接続されている。抵抗器1240における電圧は、抵抗器1240における電圧と端子1041からの基準電圧vrefとの間の差を決定する誤差増幅器1210にフィードバックされる。誤差増幅器1210の出力は、トランジスタ1230のゲート端子を制御する。MOSトランジスタ1230のドレイン端子における基準電流irefは、基準電圧vrefと密接に関連している。粗電流源135、835及び微電流源136、836などのスイッチトキャパシタ増幅器で使用される電流は、対応する電流ミラー1251、1252を介して基準電流irefから生成される。回路1050は、オーム抵抗器1240を使用し、それ自体がPVT変動の影響を受ける。しかしながら、オーム抵抗器の設計と製造は、十分に制御可能なプロセスである。回路をより小さなフィーチャサイズにスケーリングするとき、必要に応じて、抵抗器1240を予測可能な方法で再設計することも簡単であり、そのため、図12に示す回路も、アクティブ構成要素と抵抗器1240などのPVT関連構成要素を含んでいても予測可能な方法でスケーラブルになる。
【0055】
図13図13A及び図13Bからなる)並びに図14は、残差増幅器として本開示の原理によるコンパレータベースのスイッチトキャパシタ増幅器を使用する2ステージパイプライン型アナログ-デジタル変換器を示している。図13は、回路構造を示し、図14は、図13の回路の関連信号の波形を示す。ADCは、SARアーキテクチャを使用して、12ビット[ビット0....ビット11]の出力信号を生成する。第1のステージ1310は、5つの最上位ビット(MSB)を変換し、一方で、第2のステージ1330は、7つの最下位ビット(LSB)の分解能で第1のステージからの増幅された残差を変換する。残差増幅器1320は、第1のステージ1310と第2のステージ1330との間に接続され、第1のステージ1310からの出力信号vnを受信して、それを次のステージ1330によって転送及びサンプリングされる全範囲Vresidueに増幅する。コントローラ1340は、適切な第1及び第2のステージ動作、増幅器のスイッチトキャパシタ動作、並びに変換されたデジタルビットの収集を実行するための制御信号を生成する。
【0056】
コントローラは、残差増幅器1320のTDC及び第2のステージ1330のズーム範囲キャパシタに関連して、ズーム範囲検出及びズーム範囲制御を実行するように構成されている。スイッチトキャパシタ増幅器1320のオフセット制御ループのTDCは、第1のステージ1310からのサンプルキャパシタの放電時間を示す出力信号TDCoutを生成するために再利用される。放電時間は、サンプルキャパシタの放電が開始されてから仮想接地状態に達するまでの時間に、インパルスTDCstart1からTDCstop1の間の信号E1のアクティブフェーズによって示されるコンパレータ遅延を加えた持続時間である。第1のステージ1310から取得したこのTDCout値は、第2のステージ1330のズーム範囲キャパシタを設定するために使用され、ビット5[1:0]、ビット6[1:0]などの4ビットを表す。第1のステージ1310は、第1のステップにおいて残差増幅器1320に動作可能に接続され得る。第2のステージ1330は、次の第2のステップにおいて残差増幅器1320に動作可能に接続され得、ズーム範囲は、第1のステージ1310が残差増幅器1320に接続されたときに取得されたTDCout値に応答して設定される。
【0057】
図13に示す回路は、コンパレータベースのスイッチトキャパシタ増幅器1320が、オフセット補償のために閉ループ制御を使用して、コンパレータ遅延に応答してオーバーシュートを低減するために、向上した動作速度を有する。回路は完全にデジタルで動作するため、回路がCMOS製造プロセスの様々なフィーチャサイズに合わせて容易にスケーラブルになっている。回路は、増幅器のコンパレータのオフセット補償のために、デジタル閉制御ループ内の時間-デジタル変換器によって有効化されたズームビットを使用し、これにより、より多くの変換サイクルを必要とせずに誤差許容範囲が達成され、TDCによる放電時間の決定によって得られた範囲の推定値を上回るか下回る範囲をカバーできるようになる。増幅器は完全にデジタルで動作し、そのため、PVTに耐性があり、PVT変動に対してよりロバストである。増幅器のゲインは、増幅キャパシタとサンプルキャパシタの比率によって比較的正確に設定できる。残差増幅器は、高速、スケーラビリティ、及びPVT耐性を可能にする。パイプライン型SAR ADCの第2のステージのズーム範囲検出により、有意な回路オーバーヘッドを伴わずに、同じ変換時間でより高い分解能が可能になる。
【0058】
図15は、コンパレータベースのスイッチトキャパシタ増幅器の差動構成を示す。回路は、コンパレータ1510の負の入力端子「-」に接続された第1の増幅キャパシタ1530と、コンパレータ1510の正の入力端子「+」に接続された第2の増幅キャパシタ1531と、を備える。粗放電電流源1535及び微充電電流源1536は、第1の増幅キャパシタ1530と第2の増幅キャパシタ1531との間に、コンパレータ1510からの出力信号に応答してコントローラ1540によって生成された制御信号E1、E2によってそれぞれ操作される対応するスイッチ1541、1542と共に接続されている。電流源1535及び電流源1536は、異なる反対方向の異なる強度の電流を生成する。出力信号は、第1の負荷キャパシタ1560と第2の負荷キャパシタ1561との間の差動信号であり、各々が増幅キャパシタのうちの1つに接続されている。入力側では、差動入力信号Vinが、正の入力端子1525と負の入力端子1526との間に供給され、これら端子は、対応するスイッチを介して対応するサンプルキャパシタ1520、1521にそれぞれ接続されている。サンプルキャパシタは、対応するスイッチを介してコンパレータの正の入力端子及び負の入力端子に接続されている。さらに、サンプルキャパシタの各端子は、交互に動作する対応するスイッチを介して接地電位端子に接続されている。制御信号φ1、φ2は、スイッチ制御信号φ1のアクティブフェーズ中に、差動入力信号でのサンプルキャパシタの充電を生じさせ、制御信号φ2のアクティブフェーズ中に、コンパレータ1510の入力端子への接続及び電荷移動を生じさせる。
【0059】
図15の差動増幅器回路の閉ループ制御回路1550は、図1の回路のシングルエンドの場合の閉ループ制御回路と同一である。また、図2に示すシングルエンド増幅器回路のタイミング図は、図15の差動回路の動作に対応して適用される。
【0060】
図16は、差動コンパレータベースのスイッチトキャパシタ増幅器の入力部分を示しており、図15の回路におけるキャパシタ1520、1521などの2つのサンプルキャパシタの代わりに、単一のサンプルキャパシタ1620が使用されている。サンプルキャパシタ1620は、対応するスイッチを介して、コンパレータ1510の正の入力端子と負の入力端子との間に接続されている。サンプルキャパシタ1620の端子を差動入力電圧Vinの端子1525、1526に接続する他のスイッチが設けられている。入力電圧Vinの端子またはコンパレータの入力端子のいずれかにサンプルキャパシタ1620を接続するスイッチは、制御信号φ1、φ2によって交互に操作される。
【0061】
本開示の範囲または精神から逸脱することなく、本開示において様々な修正及び変形をなし得ることは当業者には明らかであろう。本開示の趣旨及び実体を組み込んでいる、記載された実施形態に対する修正、コンビネーション、サブコンビネーション、及び変更は、当業者に想起され得るものであり、本開示は、添付の特許請求の範囲内にある全てのものを含むように解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14
図15
図16
【国際調査報告】