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特表2023-502428電気システムのための制御信号生成デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-24
(54)【発明の名称】電気システムのための制御信号生成デバイス
(51)【国際特許分類】
   H04R 3/00 20060101AFI20230117BHJP
【FI】
H04R3/00 310
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022529347
(86)(22)【出願日】2020-11-19
(85)【翻訳文提出日】2022-07-15
(86)【国際出願番号】 EP2020082758
(87)【国際公開番号】W WO2021099509
(87)【国際公開日】2021-05-27
(31)【優先権主張番号】1913122
(32)【優先日】2019-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501089863
【氏名又は名称】サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェ サイアンティフィク
(71)【出願人】
【識別番号】519293911
【氏名又は名称】アンスティテュ ドゥ ルシェルシェ エ ドゥ コーディナシオン アコースティーク/ミュジーク
(71)【出願人】
【識別番号】507416908
【氏名又は名称】ソルボンヌ・ユニヴェルシテ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】トマ エリー
(72)【発明者】
【氏名】トリスタン ルブラン
【テーマコード(参考)】
5D220
【Fターム(参考)】
5D220AA50
(57)【要約】
本発明は、電気システム(S)のための制御信号の生成デバイス(40)において、生成デバイス(40)の入力端(42)および出力端(44)に接続されたアナログブロック(46)であって、受動アナログ構成要素と、測定構成要素と、発生器と、を有する電気回路を有しているアナログブロック(46)と、少なくとも1つのデジタル制御可能な構成要素(70)を有するデジタルブロック(50)と、を有するデバイスであって、電気回路の受動アナログ構成要素は、制御信号の第1の成分を生成するように構成されており、電気回路の発生器は、制御信号の第2の成分を生成するように構成されており、電気回路は、制御信号を得るために生成される第1の成分および第2の成分を合計するように構成されている、生成デバイス(40)に関する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気システム(S)のための制御信号(Is;Vs)の生成デバイス(40)であって、
- 前記電気システム(S)に由来する入力信号(Vc;Ic)用の入力端(42)であって、前記入力信号(Vc;Ic)がそれぞれ電圧、電流を表わすアナログ信号である、入力端(42)と、
- 前記制御信号(Is;Vs)用の出力端(44)であって、前記制御信号(Is;Vs)が、それぞれ電流、電圧を表わすアナログ信号であり、前記制御信号(Is;Vs)が第1の成分および第2の成分を有している、出力端(44)と、
- 前記生成デバイス(40)の前記入力端(42)および前記出力端(44)に接続されたアナログブロック(46)であって、第1の特徴的受動インピーダンス(R)を有する受動アナログ構成要素(62)とそれぞれ電流、電圧の測定構成要素(64)とそれぞれ電流、電圧の発生器(66)とを有する電気回路(60)を有しているアナログブロック(46)と、
- 少なくとも1つのデジタル制御可能な構成要素(70)を有するデジタルブロック(50)と、
- 前記アナログブロック(46)と前記デジタルブロック(50)との間に接続されたアナログ-デジタル変換器(48)と、
- 前記アナログブロック(46)と前記デジタルブロック(50)との間に接続されたデジタル-アナログ変換器(52)と、を有し、
前記電気回路(60)の前記受動アナログ構成要素(62)は、前記制御信号(Is;Vs)の前記第1の成分を生成するように構成されており、
前記電気回路(60)の前記発生器(66)は、前記制御信号(Is;Vs)の前記第2の成分を生成するように構成されており、
前記電気回路(60)は、前記制御信号(Is;Vs)を得るために生成される前記第1の成分および第2の成分を合計するように構成されており、
前記アナログ-デジタル変換器(48)は、前記アナログブロック(46)の前記測定構成要素(64)により行なわれた前記入力信号(Vc;Ic)の測定をデジタルに変換して、変換済み入力信号(SE-C)を得るように構成されており、
前記デジタルブロック(50)の前記制御可能な構成要素(70)は、前記変換済み入力信号(SE-C)および第2の特徴的受動インピーダンス(r)を有する受動デジタル構成要素に接続されたデジタルコントローラ(Sc)のモデル(Scr)の関数として、デジタル出力信号(Ss-num)を生成するように構成されており、
前記第2の特徴的インピーダンス(r)の値は、前記第1の特徴的インピーダンス(R)の値の関数として選択され、
前記デジタル-アナログ変換器(52)は、前記発生器(66)の制御を得るためにデジタル出力信号(Ss-num)をアナログに変換するように構成されており、
前記発生器(66)によって生成された前記制御信号(Is;Vs)の前記第2の成分は、前記デジタルブロック(50)から得た前記制御の関数である、生成デバイス(40)。
【請求項2】
前記受動アナログ構成要素(62)と前記受動デジタル構成要素とが同じ性質のものである、請求項1に記載のデバイス(40)。
【請求項3】
前記受動アナログ構成要素(62)および前記受動デジタル構成要素の各々が抵抗である、請求項1または2に記載のデバイス(40)。
【請求項4】
- 前記入力信号(Vc)が電圧を表わし、前記制御信号(Is)が電流を表わす場合、前記第2の特徴的インピーダンス(r)は、前記第1の特徴的インピーダンス(R)以上であり、
- 前記入力信号(Ic)が電流を表わし、前記制御信号(Vs)が電圧を表わす場合、前記第2の特徴的インピーダンス(r)は、前記第1の特徴的インピーダンス(R)以下である、請求項1ないし3のいずれか一項に記載のデバイス(40)。
【請求項5】
- 前記入力信号(Vc)が電圧を表わし、前記制御信号(Is)が電流を表わす場合、前記測定構成要素(64)が電圧測定構成要素であり、前記発生器(66)が電流発生器であり、前記受動アナログ構成要素(62)は、前記入力端(42)および前記出力端(44)と並列に、前記発生器(66)および前記測定構成要素(64)と並列に接続されており、
- 前記入力信号(Ic)が電流を表わし、前記制御信号(Vs)が電圧を表わす場合、前記測定構成要素(64)が電流測定構成要素であり、前記発生器(66)が電圧発生器であり、前記受動アナログ構成要素(62)は、前記入力端(42)と前記出力端(44)との間で、前記発生器(66)および前記測定構成要素(64)と直列に接続されている、請求項1ないし4のいずれか一項に記載のデバイス(40)。
【請求項6】
- 前記入力信号(Vc)が電圧を表わし、前記制御信号(Is)が電流を表わす場合、前記モデル(Scr)が、前記受動デジタル構成要素と直列に接続された前記デジタルコントローラ(Sc)のモデルであり、
- 前記入力信号(Ic)が電流を表わし、前記制御信号(Vs)が電圧を表わす場合、前記モデル(Scr)が、前記受動デジタル構成要素と並列に接続された前記デジタルコントローラ(Sc)のモデルである、請求項1ないし5のいずれか一項に記載のデバイス(40)。
【請求項7】
前記制御可能な構成要素(70)が、
- 前記アナログ-デジタル変換器(48)由来の前記変換済み入力信号(SE-C)を、前記第2の特徴的インピーダンス(r)の関数としての、出力波を表わす第1の中間信号(Sint1)へと変換し、
- 前記第1の中間信号(Sint1)を、前記第2の特徴的インピーダンス(r)の関数としての、それぞれ電圧、電流を表わす第2の中間信号(Sint2)へと変換し、
- 前記第2の中間信号(Sint2)および前記モデル(Scr)の関数として、第3の中間信号(Sint3)を計算し、
- 前記第3の中間信号(Sint3)を、前記第2の特徴的インピーダンス(r)の関数としての、出力波を表わす第4の中間信号(Sint4)へと変換し、
- それぞれ電圧、電流を表わしている前記第4の中間信号(Sint4)を、前記第2の特徴的インピーダンス(r)の関数として前記制御可能な構成要素(70)の前記デジタル出力信号(Ss-num)へと変換する、ように構成されている、請求項1ないし6のいずれか一項に記載のデバイス(40)。
【請求項8】
前記制御可能な構成要素70は、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、マイクロコントローラおよびプログラマブルゲートアレイからなるリストの中から選択される、請求項7に記載のデバイス(40)。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか一項に記載のデバイス(40)を有する、スピーカなどのオーディオシステム。
【請求項10】
請求項1ないし8のいずれか一項に記載の生成デバイス(40)から電気システム(S)用の制御信号(Is;Vs)を生成する方法であって、
- 前記生成デバイス(40)の前記入力端(42)で前記電気システム(S)に由来する入力信号(Vc;Ic)を受信するステップであって、前記入力信号(Vc;Ic)が、それぞれ電圧、電流を表わすアナログ信号であるステップと、
- 前記アナログブロック(46)の前記測定構成要素(64)により行なわれた前記入力信号(Vc;Ic)の測定をデジタルに変換して、変換済み入力信号(SE-C)を得るステップと、
- 前記デジタルブロック(50)の前記制御可能な構成要素(70)を介してデジタル出力信号(Ss-num)を生成するステップと、
- 前記デジタル出力信号(Ss-num)をアナログに変換して、前記電気回路(60)の前記発生器(66)の制御を得るステップと、
- 前記電気回路(60)の前記受動アナログ構成要素(62)を介して前記制御信号(Is;Vs)の前記第1の成分を生成するステップと、
- 前記デジタルブロック(50)から得た前記制御の関数として前記電気回路(60)の前記発生器(66)を介して前記制御信号(Is;Vs)の前記第2の成分を生成するステップと、
- 前記電気回路(60)によって生成された前記第1の成分および前記第2の成分を合計して、前記制御信号(Is;Vs)を得るステップと、を有する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気システムのための制御信号生成デバイスに関する。本発明は同様に、このようなデバイスを含むオーディオシステムにも関する。本発明は同様に、付随する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
受動性(passivite’)とは、システムが自然発生的にエネルギを生み出すことができず、エネルギを単に貯蔵しおよび/または消散することしかできないという事実を説明する(de’crit)。一例として、スピーカに接続された抵抗、ダイオード、コイルまたはコンデンサ(線形または非線形)のネットワークは、スピーカの機械的および音響的挙動を修正するものの、持続的振動(ラーセン効果(effet Larsen))または不安定性(instabilite’s)を発生させることはない。受動性は、このロバスト性を保証する。より一般的には、受動的物理システムは、正の消散済み出力(puissance)Pdis(または、保守的な(conservative)ケースではゼロ)で、dE(t)/dt=Pext(t)-Pdis(t)(貯蔵エネルギの時間的変動=外部から寄与される出力-消散出力)タイプの出力バランスを満たす。
【0003】
複雑な制御の場合、制御は、リアルタイムデジタル形態で、すなわちアナログ-デジタル変換器、電気信号発生器およびハードウェアデジタルコンピュータを含む組み込み型システムを用いて実装され得る。このとき、制御信号の計算は、ここではTと記される遅延と等価である待ち時間の後にレンダリングされる。このような遅延は、計算のために費される時間に起因してデジタルハードウェアシステム(マイクロプロセッサ、DSP、マイクロコントローラ、FPGA)によって行なわれるあらゆる制御に固有のものである。
【0004】
ここで、フィードバックループ内に遅延を含めることで、受動性特性が劣化し、ひいては制御が効果の無いものとなり、さらにはその不安定化がひき起こされる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、システムの受動制御を可能にするデバイスに対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このために、本発明は、電気システム用の制御信号の生成デバイスであって、
- 電気システムに由来する入力信号用の入力端(entre’e)であって、入力信号がそれぞれ電圧、電流を表わす(repre’sentatif d’une tension, respectivement d’un courant)アナログ信号である、入力端と、
- 制御信号用の出力端(sortie)であって、制御信号が、それぞれ電流、電圧を表わすアナログ信号であり、制御信号が第1の成分および第2の成分を有している、出力端と、
- 生成デバイスの入力端および出力端に接続されたアナログブロックであって、第1の特徴的受動インピーダンス(impe’dance caracte’ristique passive)を有する受動アナログ構成要素とそれぞれ電流、電圧の測定構成要素とそれぞれ電流、電圧の発生器とを有する電気回路を有しているアナログブロックと、
- 少なくとも1つのデジタル制御可能な構成要素を有するデジタルブロックと、
- アナログブロックとデジタルブロックとの間に接続されたアナログ-デジタル変換器と、
- アナログブロックとデジタルブロックとの間に接続されたデジタル-アナログ変換器と、を有し、
電気回路の受動アナログ構成要素(composant)は、制御信号の第1の成分(composante)を生成するように構成されており、電気回路の発生器は、制御信号の第2の成分を生成するように構成されており、電気回路は、制御信号を得るために生成される第1の成分および第2の成分を合計するように構成されており、
アナログ-デジタル変換器は、アナログブロックの測定構成要素により行なわれた入力信号の測定(値)(mesure)をデジタルに変換して、変換済み入力信号を得るように構成されており、
デジタルブロックの制御可能な構成要素は、変換済み入力信号および第2の特徴的受動インピーダンスを有する受動デジタル構成要素に接続されたデジタルコントローラのモデル(mode’lisation)の関数として(en fonction de)、デジタル出力信号を生成するように構成されており、第2の特徴的インピーダンスの値は、第1の特徴的インピーダンスの値の関数として選択され、
デジタル-アナログ変換器は、発生器の制御を得るためにデジタル出力信号をアナログに変換するように構成されており、発生器によって生成された制御信号の第2の成分は、デジタルブロックから得た制御の関数である、生成デバイスに関する。
【0007】
他の有利な態様によると、生成デバイスは、単独でまたは技術的に可能な全ての組合せにしたがって、以下の特徴のうちの1つまたは複数を有している。
- 受動アナログ構成要素と受動デジタル構成要素とは、同じ性質のものである。
- 受動アナログ構成要素および受動デジタル構成要素の各々は、抵抗である。
- 入力信号が電圧を表わし、制御信号が電流を表わす場合、第2の特徴的インピーダンスは、第1の特徴的インピーダンス以上である。
- 入力信号が電流を表わし、制御信号が電圧を表わす場合、第2の特徴的インピーダンスは、第1の特徴的インピーダンス以下である。
- 入力信号が電圧を表わし、制御信号が電流を表わす場合、測定構成要素は電圧測定構成要素であり、発生器は電流発生器であり、受動アナログ構成要素は、入力端および出力端と並列に、発生器および測定構成要素と並列に、接続されている。
- 入力信号が電流を表わし、制御信号が電圧を表わす場合、測定構成要素は電流測定構成要素であり、発生器は電圧発生器であり、受動アナログ構成要素は、入力端と出力端との間で、発生器および測定構成要素と直列に接続されている。
- 入力信号が電圧を表わし、制御信号が電流を表わす場合、モデルは、受動デジタル構成要素と直列に接続されたデジタルコントローラのモデルであり、
- 入力信号が電流を表わし、制御信号が電圧を表わす場合、モデルは、受動デジタル構成要素と並列に接続されたデジタルコントローラのモデルである。
- 制御可能な構成要素は、
・ アナログ-デジタル変換器由来の変換済み入力信号を、第2の特徴的インピーダンスの関数としての、出力波を表わす第1の中間信号へと変換し、
・ 第1の中間信号を、第2の特徴的インピーダンスの関数としての、それぞれ電圧、電流を表わす第2の中間信号へと変換し、
・ 第2の中間信号およびモデルの関数として、第3の中間信号を計算し、
・ 第3の中間信号を、第2の特徴的インピーダンスの関数としての、出力波を表わす第4の中間信号へと変換し、
・ それぞれ電圧、電流を表わしている第4の中間信号を、第2の特徴的インピーダンスの関数として制御可能な構成要素のデジタル出力信号(Ss-num)へと変換する、ように構成されている。
- 制御可能な構成要素70は、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、マイクロコントローラおよびプログラマブルゲートアレイからなるリストの中から選択される。
【0008】
本発明は同様に、先に説明されたデバイスを有する、スピーカなどのオーディオシステムに関する。
【0009】
本発明は同様に、先に説明された生成デバイスから電気システム用の制御信号を生成する方法であって、
- 生成デバイスの入力端で電気システムに由来する入力信号を受信するステップであって、入力信号が、それぞれ電圧、電流を表わすアナログ信号であるステップと、
- アナログブロックの測定構成要素により行なわれた入力信号の測定をデジタルに変換して、変換済み入力信号を得るステップと、
- デジタルブロックの制御可能な構成要素を介してデジタル出力信号を生成するステップと、
- デジタル出力信号をアナログに変換して、電気回路の発生器の制御を得るステップと、
- 電気回路の受動アナログ構成要素を介して制御信号の第1の成分を生成するステップと、
- デジタルブロックから得た制御の関数として電気回路の発生器を介して制御信号の第2の成分を生成するステップと、
- 電気回路によって生成された第1の成分および第2の成分を合計して、制御信号を得るステップと、を有する方法にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】物理システムSとデジタルコントローラScとの間の直接接続の概略図である。
図2】遅延(アウトバウンドT/2およびインバウンドT/2)を導入する受動的伝送ライン(ligne de transmission passive)を介したデジタルコントローラScに対する図1の物理システムSの接続の概略図である。
図3】ハードウェアアナログブロックおよびハードウェアデジタルブロックによって形成される遅延型受動コントローラに対する物理システムSの接続の概略図である。
図4】アドミタンスタイプのコントローラの場合における図3のアナログブロックの概略図である。
図5】インピーダンスタイプのコントローラの場合における図3のアナログブロックの概略図である。
図6】アドミタンスタイプのコントローラの場合における受動アナログ構成要素に接続されたコントローラScを含むシステムScrの概略図である。
図7】インピーダンスタイプのコントローラの場合における受動アナログ構成要素に接続されたコントローラScを含むシステムScrの概略図である。
図8図3のデジタルブロックの構成要素によって実装される方法の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の他の特徴および利点は、図面を参照しながら単なる一例として本発明の実施形態についての以下の説明を読んだ時点で明らかになるものである。
【0012】
図1は、技術的現状を概略的に例示する。この図1において、電気的に制御すべき物理システムSは、リアルタイムハードウェアデジタルコンピュータ20およびアナログ-デジタル変換器22およびデジタル-アナログ変換器24を介して、離散的時間型受動デジタルコントローラSc(contro^leur nume’rique passif Sc a` temps discret)に対し直接接続されている。この図1に示されているように、システムSに戻された信号内の遅延Tは、受動性特性を劣化させる。
【0013】
本発明の原理は、図2に示されている仮想の受動電気伝送ライン30内に、ハードウェアコンピュータに固有の遅延Tを人工的に封入することからなる。このような伝送ラインは、アウトバウンドT/2およびインバウンドT/2の遅延を導入する。伝送ライン内への遅延Tの人工的封入の原点にある原理を以下に要約する。
【0014】
システムS(それぞれSc)は、電圧Vsおよび電流Is(それぞれ電圧Vscおよび電流Isc)によって特徴付けられる(少なくとも)1つの電気ポートを有する。これら2つのシステムを伝送ラインのいずれかの側に仮想的に接続してみる。伝播は、2つの輸送方程式(e’quations de transport)によって記述され、その解は、W+/-と記されるアウトバウンド/リターン波(ここで、所与のシステムSまたはScについて、W+はアウトバウンド波を、W-はインバウンド波を示す)。ここでは、特徴的インピーダンスr(オーム単位)の媒体で、無損失の一次元伝送が考慮される。
【0015】
SおよびScに結び付けられたアウトバウンドリターン波の変数は、それぞれWs+/-およびWsc+/-と記される。瞬間tにおけるSc内の到来波(onde entrante)は、瞬間t-T/2におけるSの外向き波(onde sortante)に等しい、つまりWsc-(t)=Ws+(t-T/2)であり、相互に、SからScへWs-(t)=Wsc+(t-T/2)であり、これは、合計往復持続時間Tを含意する。
【0016】
電圧(Vs、Vsc)および電流(Is、Isc)は、以下の変数変化を介してインバウンド/アウトバウンド波の変数Ws+/-およびWsc+/-へと変換され、
【数1】
これは、選択された特徴的インピーダンスrに依存し、詳細には、Sの電気ポートにおける変換は、以下の式で表現される。
【数2】
【0017】
式(2)中、瞬間的関係(遅延無し)がrを通してVsとIsとの間に出現する。この関係は、Sとコンピュータとの間に受動アナログ構成要素を置くことによって物理的に実現されるものである。
【0018】
変換の残りの部分、すなわち(i)VsとIsとの間の瞬間的関係から除去される変換(2)、(ii)(Vc、Ic)を(Wsc+、Wsc-)に結び付けるScについての変換(1)、はコンピュータ内にデジタル移植される。
【0019】
さらに、静止システムScについては、Ws+とWsc-との間の遅延T/2をWsc+とWs-との間に伝播させて、Wsc+とWs-との間の遅延T(そしてWs+およびWsc-の間の遅延無し)を同等に考慮することができる。
【0020】
したがって、物理システムSを受動デジタルコントローラScと直接インタフェースするのではなくむしろ、本発明は、以下のことからなる。
- 物理システムSを、発生器と受動アナログ構成要素とを含むアナログ回路とインタフェースすること。ここで、受動アナログ構成要素のインピーダンスは、仮想電気伝送ラインの特徴的インピーダンスを表わすように意図されている、
- コントローラScが伝送ラインを通して見られるような形で、ハードウェアデジタルコンピュータ20を(適切なアルゴリズムにしたがって)修正すること。この修正は、先の方程式(1)を再現する一連の代数的演算の中に封入されたシステムScr(もはやScではなく)をシミュレートすることからなる。
【0021】
この構成は、受動形態でハードウェアコンピュータ内に固有の遅延を組込むことを可能にする。
【0022】
一般的原理の実装
図3は、電気システムSの制御信号を生成するデバイス40を例示する。「電気システム」は、電気的に制御されるシステムを意味する。
【0023】
生成デバイス40は、アドミタンスタイプまたはインピーダンスタイプのシステムである。アドミタンスタイプのシステムは、電圧を受取り、電流を戻すことのできるシステムである。インピーダンスタイプのシステムは、電流を受取り、電圧を戻すことのできるシステムである(Un syste`me de type impe’dance est un syste`me propre a` recevoir un courant et a` retourner une tension.)。
【0024】
生成デバイス40は、入力端42、出力端44、アナログブロック46、アナログ-デジタル変換器48、デジタルブロック50およびデジタル-アナログ変換器52を含む。
【0025】
入力端42は、電気システムS由来の入力信号Vc、Icを受信することができる。入力信号Vc、Icは、生成デバイス40がアドミタンスタイプのものである場合には電圧Vcを表わすアナログ信号であり、生成デバイス40がインピーダンスタイプのものである場合には電流Icを表わすアナログ信号である。
【0026】
出力端44は、電気システムSに対して制御信号Is、Vsを送ることができる。制御信号Is、Vsは、生成デバイス40がアドミタンスタイプのものである場合は電流Isを表わすアナログ信号であり、生成デバイス40がインピーダンスタイプのものである場合は電圧Vsを表わすアナログ信号である。
【0027】
アナログブロック46は、生成デバイス40の入力端42および出力端44に接続されている。
【0028】
図4および5によって例示されているように、アナログブロック46は、受動アナログ構成要素62、入力信号Vc、Icを測定する構成要素64、および発生器66を含むハードウェア電気回路60を含む。
【0029】
詳細には、図4(ノートンタイプ(Type Norton))によって例示されているように、生成デバイス40がアドミタンスタイプのものである場合、測定構成要素64は、電圧測定構成要素、例えば電圧計であり、発生器66は、電流発生器である。受動アナログ構成要素62は、入力端42と出力端44との間で並列に、そして発生器66および測定構成要素64と並列に接続されている。
【0030】
図5(テブナンタイプ(Type The’venin))によって例示されている実施例においては、生成デバイス40がインピーダンスタイプのものである場合、測定構成要素64は、電流測定構成要素、例えば電流計であり、発生器66は電圧発生器である。受動アナログ構成要素62は、入力端42と出力端44との間で、発生器66および測定構成要素64と直列に接続されている。
【0031】
図4および5に例示されている実施例では、受動アナログ構成要素62は、消散性構成要素(composant dissipatif)、例えば抵抗である。
【0032】
変形形態において、受動アナログ構成要素62は、コンデンサまたはコイルである。
【0033】
電気回路60は、共に電気回路60の構成要素によって生成される第1の成分と第2の成分との合計から結果としてもたらされる電気システムSの制御信号Is、Vsを生成するように構成されている。
【0034】
より具体的には、電気回路60の受動アナログ構成要素62は、受動アナログ構成要素62内を入力信号Vc、Icが通過した結果としてもたらされる制御信号Is、Vsの第1の成分を生成するように構成されている。ノートンの場合、第1の成分は電流I1である。テブナンの場合、第1の成分は電圧T1である。
【0035】
電気回路60の発生器66は、発生器66が受信した制御の関数として制御信号Is、Vsの第2の成分を生成するように構成されている。制御は、本明細書の残りの部分で説明されるように、デジタルブロック50によって生成される。こうして発生器66は、デジタルブロック50によって制御され、デジタルブロック50に由来する受信した制御の関数として第2の成分を生成する。ノートンの場合には、第2の成分は、電流I2である。テブナンの場合には、第2の成分は、電圧T2である。
【0036】
アナログ-デジタル変換器48は、アナログブロック46の出力端とデジタルブロック50の入力端との間に接続される。
【0037】
アナログ-デジタル変換器48は、アナログブロック46の測定構成要素64によって行なわれた入力信号Vc、Icの測定をデジタルへと変換して、デジタルブロック50によって読取り可能な変換済み入力信号SE-Cを得るように構成されている。
【0038】
デジタルブロック50は、少なくとも1つのデジタル制御可能な構成要素70を含む。制御可能な構成要素70は物理要素である。より具体的には、制御可能な構成要素70は、コンピュータである。
【0039】
例えば、デジタル制御可能な構成要素70は、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(”Digital Signal Processor”;DSP)、マイクロコントローラまたはフィールドプログラマブルゲートアレイ(”Field-Programmable Gate Array”;FPGA)である。
【0040】
制御可能な構成要素70は、変換済み入力信号SE-Cと第2の特徴的インピーダンスを有する受動デジタル構成要素に接続されたデジタルコントローラScのモデルScrとの関数として、(電気回路60の発生器66のデジタル制御に対応する)デジタル出力信号Ss-numを生成するように構成されている。
【0041】
受動アナログ構成要素および受動デジタル構成要素は、同じ性質のものである。例えば、受動アナログ構成要素62および受動デジタル構成要素の各々は、抵抗である。
【0042】
第2の特徴的インピーダンスの値は、第1の特徴的インピーダンスの値の関数として選択される。
【0043】
詳細には、生成デバイス40がアドミタンスタイプのものである場合、第2の特徴的インピーダンスは、第1の特徴的インピーダンス以上である。生成デバイス40がインピーダンスタイプのものである場合、第2の特徴的インピーダンスは、第1の特徴的インピーダンス以下である。
【0044】
事実上、第1の特徴的インピーダンスと第2の特徴的インピーダンスとが等しい場合、伝送ラインは、保守的なものである。それでも、実際には、第1の特徴的インピーダンスは、一定の精度範囲内でしか知られておらず、これが厳密な同等性を妨げている。例えば、抵抗の場合、第1の特徴的インピーダンスはRと記され、第2の特徴的インピーダンスはrと記される。アドミタンスの場合には、r≧Rであり、仮想ラインにより消散される出力は、(1/R-1/r)*s-num 2≧0から求められ、式中Ss-numは、デジタル出力信号である。インピーダンスの場合には、r≦Rであり、仮想ラインにより消散される出力は、(R-r)*s-num 2≧0から求められる。
【0045】
デジタルコントローラScは、電気システムSを制御するように意図された、線形または非線形の離散時間動的システム(syste`me dynamique a` temps discret)である。このデジタルコントローラScは、アドミタンスタイプのもの(電圧入力v(n)および電流入力i(n))であるかまたはインピーダンスタイプのもの(電流入力i(n)および電圧出力v(n))である。
【0046】
有利には、デジタルコントローラScは受動的である、すなわち、Pdis(n)≧0として、[E(n+1)-E(n)]/T=Pext(n)-Pdis(n)という方程式を満たす。なお、式中、外部から寄与される出力Pext(n)は、「入力・出力」の積、すなわち、両方の場合においてv(n)・i(n)である。
【0047】
受動デジタル構成要素に接続されたデジタルコントローラScのモデルScrは、コントローラScに対するフィードバックループの追加に対応する。このモデルは、新しい「電圧w(n)および電流j(n)」対を関係付ける。
【0048】
詳細には、図6により例示されている実施例において、受動デジタル構成要素は、インピーダンス抵抗rであり、生成デバイス40は、アドミタンスタイプのものである。この場合、モデルScrは、インピーダンスrを有する受動デジタル構成要素と直列に接続されたデジタルコントローラScのモデルである。ループは、w(n)=v(n)+r.i(n)&j(n)=i(n)の形で表現される。受動デジタル構成要素により消散される出力は、Pr(n)=r.i(n)2から得られる。
【0049】
図7によって例示されている実施例においては、受動デジタル構成要素はインピーダンスrの抵抗であり、生成デバイス40はインピーダンスタイプのものである。この場合、モデルScrは、インピーダンスrを有する受動デジタル構成要素と並列に接続されたデジタルコントローラScのモデルである。ループは、w(n)=v(n)&j(n)=i(n)+v(n)/rの形で表現される。受動デジタル構成要素により消散される出力は、Pr(n)=v(n)2/rから得られる。
【0050】
これらの実施例において、アセンブリScrは、インピーダンスrを有する受動デジタル構成要素がコントローラScに消散を加えることから、受動的である。実際、v(n)i(n)=-Pr(n)+w(n)j(n)であることから、出力バランスは、以下のようになる。
[E(n+1)-E(n)]/T=-[Pdis(n)+Pr(n)]+w(n).j(n)
式中、w(n).j(n)は、外部からアセンブリScrに寄与された出力を表わし、ここで、アセンブリScrによって消散された出力は、Pdis(n)+Pr(n)≧Pdis(n)≧0である。
【0051】
一実施例において、デジタルコントローラScは、以下の方程式によって記述される。これらの方程式は、入力v(n)および出力i(n)でアドミタンスタイプのものであるデジタルコントローラの場合に提供される。このようなコントローラは、以下のものにより表現される。
- サイズNxの状態ベクトルx(n)、
- 入力v(n)の関数としてのその状態のダイナミクスについての方程式
δx(n)/T=[J(x(n))-M(x(n))]▽dH(x(n),δx(n))+G(x(n))v(n) (e.1)
式中、
・ x(n+1)=x(n)+δx(n)
・ J:サイズNx×Nxの反対称行列(matrice antisyme’trique)
・ M:サイズNx×Nxの正の対称行列(matrice syme’trique positive)
・ G:サイズNxのベクトル
・ H:正の定義済み正規スカラー関数(fonction re’gulie`re scalaire)
・ ▽d:▽dH(x(n),δx(n)).δx(n)=H(x(n+1))-H(x(n))であるような演算子
- その出力i(n)についての方程式
i(n)=G(x(n))TdH(x(n),δx(n)) (e.2)
【0052】
コントローラScのエネルギは、E(n)=H(x(n))により定義される。(e.1)および(e.2)によると、このとき以下のように記すことができる。
[E(n+1)-E(n)]/T=i(n)v(n)-∇dH(x(n),δx(n))TM(x(n))∇dH(x(n),δx(n))
式中、▽dH(x(n)、δx(n))TM(x(n))▽dH(x(n),δx(n))≧0(正またはゼロの消散出力)
【0053】
離散時間システムの受動性は、以下により保証される。
[E(n+1)-E(n)]/T≦i(n).v(n)
【0054】
方程式(e.1)および(e.2)のための解法の構築は、文献中に見い出すことができる(例えばItoh T.,& Abe,K.による論文(1988年)、Hamiltonian-conserving discrete canonical equations based on variational difference quotients.「Journal of Computational Physics」,76(1),85~102、または、Falaize,A.,& Helie,T.による論文(2016年)、Passive guaranteed simulation of analog audio circuits: a port-Hamiltonian approach.「Applied Sciences」,6(10),273)を参照のこと)。
【0055】
この場合、インピーダンスrを有する受動デジタル構成要素に接続されたコントローラScを含むシステムScrのモデルは、以下の方程式によって提供される。まず、システムScrと結び付けられた入出力ループは、以下のように記される(図6を参照のこと)。
v(n)=w(n)-r.i(n)
これを、方程式(e.1)に代入すると以下のようになる。
δx(n)/T=[J(x(n))-M*(x(n))]▽dH(x(n),δx(n))+G(x(n))w(n)
なお、M*(x(n))=M(x(n))+rGT(x(n))G(x(n))≧0である。
【0056】
したがって、同じ解法が、ScおよびScrをシミュレートするために使用可能である。実際、ScからScrに行くためには、同じ特性を有するMとM*(正の対称行列)とを置換するだけで充分である。
【0057】
デジタル出力信号Ss-numを生成するために、制御可能な構成要素70は、例えば図8の流れ図に例示されているステップを含む方法を実装するように構成されている。
【0058】
該方法は、アナログ-デジタル変換器48に由来する変換済み入力信号SE-Cを、第2の特徴的インピーダンスの関数としての出力波を表わす第1の中間信号Sint1へと変換するステップ100を含むように構成されている。より具体的には、第1の中間信号Sint1は、仮想伝送ラインの出力波、すなわち物理システムSからデジタルコントローラScまで特徴的インピーダンスrの仮想伝送ラインによって伝送される波動を表わす。
【0059】
例えば、生成デバイス40がアドミタンスタイプのものであり、受動デジタル構成要素がインピーダンスrの抵抗である場合、第1の中間信号Sint1は、変換済み入力信号SE-C
【数3】
を乗算し、先行する瞬間において得られた第4の中間信号Sint4を減算することによって得られる。現瞬間における第4の中間信号Sint4の獲得は、本明細書の残りの部分で説明される。
【0060】
例えば、生成デバイス40がインピーダンスタイプのものであり、受動デジタル構成要素がインピーダンスrの抵抗である場合、第1の中間信号Sint1は、変換済み入力信号SE-C
【数4】
を乗算し、先行する瞬間において得られた第4の中間信号Sint4を加算することによって得られる。現瞬間における第4の中間信号Sint4の獲得は、本明細書の残りの部分で説明される。
【0061】
該方法は、第1の中間信号Sint1を、コントローラScに対して印加すべき電圧または電流を表わす第2の特徴的インピーダンスの関数としての第2の中間信号Sint2へと変換するステップ110を含む。
【0062】
例えば、生成デバイス40がアドミタンスタイプのものであり、受動デジタル構成要素がインピーダンスrの抵抗である場合、第2の中間信号Sint2は、第1の中間信号Sint1
【数5】
を乗算することによって得られる。
【0063】
例えば、生成デバイス40がインピーダンスタイプのものであり、受動デジタル構成要素がインピーダンスrの抵抗である場合、第2の中間信号Sint2は、第1の中間信号Sint1
【数6】
を乗算することによって得られる。
【0064】
該方法は、第3の中間信号Sint3を、第2の中間信号Sint2およびモデルScrの関数として計算するステップ120を含む。したがって、第3の中間信号Sint3は、特徴的インピーダンスrの伝送ラインとインタフェースされた元の受動システムScを再現するデジタル信号Scrのシミュレーションによって得られる。したがって、このステップにより、受動デジタル構成要素に接続されたコントローラScにより形成されたアセンブリによって出力される電流または電圧の値を得ることが可能になる。
【0065】
生成デバイス40がアドミタンスタイプのものである場合、第3の中間信号Sint3は電流を表わす。生成デバイス40がインピーダンスタイプのものである場合、第3の中間信号Sint3は電圧を表わす。
【0066】
該方法は、第3の中間信号Sint3を、第2の特徴的インピーダンスrの関数としての出力波を表わす第4の中間信号Sint4へと変換するステップ130を含む。
【0067】
例えば、生成デバイス40がアドミタンスタイプのものであり、受動デジタル構成要素がインピーダンスrの抵抗である場合、第4の中間信号Sint4は、第3の中間信号Sint3
【数7】
を乗算しかつ第1の中間信号Sint1を加算することによって得られる。
【0068】
例えば、生成デバイス40がインピーダンスタイプのものであり、受動デジタル構成要素がインピーダンスrの抵抗である場合、第4の中間信号Sint4は、第3の中間信号Sint3
【数8】
を乗算しかつ第1の中間信号Sint1を減算することによって得られる。
【0069】
該方法は、第4の中間信号Sint4を、第2の特徴的インピーダンスrの関数としての制御可能な構成要素70のデジタル出力信号Ss-numへと変換するステップ140を含む。
【0070】
例えば、生成デバイス40がアドミタンスタイプのものであり、受動デジタル構成要素がインピーダンスrの抵抗である場合、デジタル出力信号Ss-numは、第3の中間信号Sint+3
【数9】
を乗算することによって得られる。
【0071】
例えば、生成デバイス40がインピーダンスタイプのものであり、受動デジタル構成要素がインピーダンスrの抵抗である場合、デジタル出力信号Ss-numは、第3の中間信号Sint3
【数10】
を乗算することによって得られる。
【0072】
デジタル-アナログ変換器52は、アナログブロック46の入力端とデジタルブロック50の出力端との間に接続される。
【0073】
有利には、アナログ-デジタル変換器48とデジタル-アナログ変換器52とは、共通のクロック信号について同期化される。
【0074】
デジタル-アナログ変換器52は、デジタル出力信号Ss-numをアナログに変換して、発生器66による制御信号Is、Vsの第2の成分の生成を誘発する発生器66のアナログ制御を得るように構成されている。
【0075】
ここで、生成デバイス40の動作について説明する。
【0076】
最初に、生成デバイス40は、入力として電気システムS由来の入力信号Vc、Icを受信する。
【0077】
電気回路60の受動アナログ構成要素62は、入力信号Vc、Icの関数として、制御信号Is、Vsの第1の成分を生成する。
【0078】
電気回路60の発生器66は、デジタルブロック50に由来する受信した制御の関数として、制御信号Is、Vsの第2の成分を生成する。
【0079】
生成された第1の成分および第2の成分は、電気回路60の出力端で合計されて、制御信号Is、Vsを形成する。
【0080】
発生器66の制御は、以下のステップによって得られる。入力信号Vc、Icの測定を、アナログ-デジタル変換器48によってデジタルに変換して、変換済み入力信号SE-Cを得る。
【0081】
デジタルブロック50の制御可能な構成要素70が次に、発生器66のデジタル制御に対応するデジタル出力信号Ss-numを生成する。
【0082】
デジタル出力信号Ss-numは、デジタル-アナログ変換器52によってアナログに変換され、これにより、発生器66のアナログ制御を得ることが可能になる。受信した制御の関数として、発生器66は、制御信号Is、Vsの第2の成分を生成する。
【0083】
したがって、生成デバイス40は、電気制御式システムSを受動的に調節するように設計されている。これにより、特に、制御すべき連続時間システムと離散時間システムとの間の遅延の存在下で接続の受動性を保つことが可能となる。技術的現状の結果は連続領域のみかまたはデジタル領域のみに関わることから、「連続時間/離散時間」の特異性のためにこれらの結果があてはまらないことになる。
【0084】
アナログハードウェア要素(連続時間部分上)、デジタルハードウェア要素およびアルゴリズム要素(離散時間部分上)を組合わせることによって、生成デバイス40は、「半物理的、半デジタル」の受動的仮想伝送ラインの実現を可能にする。
【0085】
生成デバイス40は同様に、該方法の開発において、その物理ハードウェア形態Rとそのデジタルクローンrとを人工的に区別することによって、これらの形態における伝送ラインの特徴的インピーダンスを組合わせることのむずかしさを考慮に入れている。このアプローチと消散性分析とを組合わせることでRとrとの間の順序関係が導かれる。すなわち、該方法は、Rに関する不確実性(温度、経時的変動などに対する潜在的感応性)を考慮して、受動性を保証することを可能にする条件を提供する。
【0086】
生成デバイス40は、特に、オーディオシステム、例えばスピーカ、特に、HiFi用に補正されたスピーカ、スタジオおよびコンサートホール用の吸音装置、拡張楽器を制御するため、または、仮想楽器の線形もしくは非線形インピーダンス負荷の物理的再構築のために使用されるように意図されている。
【0087】
より一般的には、生成デバイス40は、作動されるあらゆる物理システム、例えば航空および輸送用の吸振器および吸音装置、振動表面コントローラ(スピーカ無しの音響拡散)またはメカトロニクスシステムスタビライザに対し適応可能である。
【0088】
当業者であれば、本発明が本明細書中に記載の実施例に限定されないことを理解するものである。例えば、物理システムSから収集されたかもしくはそうでない物理センサからの追加情報(条件付けされデジタルに変換された信号)またはデジタル信号(標的軌道、設定値または他のタイプの情報)をコントローラScに提供することができるという点に留意すべきである。同様に、デジタルコントローラを、デジタル接続ポートを有する均衡のとれた出力システムまたは受動システムで置換することも可能であると思われる、という点にも留意すべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】