(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-24
(54)【発明の名称】グラム陰性病原菌を選択的に殺滅する新規抗生物質
(51)【国際特許分類】
C07K 7/06 20060101AFI20230117BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20230117BHJP
C07K 1/14 20060101ALI20230117BHJP
C07K 1/16 20060101ALI20230117BHJP
C07K 1/34 20060101ALI20230117BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20230117BHJP
A61K 38/08 20190101ALI20230117BHJP
【FI】
C07K7/06 ZNA
C12P21/02 C
C07K1/14
C07K1/16
C07K1/34
A61P31/04 171
A61P31/04
A61K38/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022529489
(86)(22)【出願日】2020-11-20
(85)【翻訳文提出日】2022-07-14
(86)【国際出願番号】 EP2020025531
(87)【国際公開番号】W WO2021098989
(87)【国際公開日】2021-05-27
(32)【優先日】2019-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508159123
【氏名又は名称】ユストゥス-リービッヒ-ウニヴェルジテート・ギーセン
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】シェバレ, ティル
(72)【発明者】
【氏名】リナレス-オトヤ, ルイス, ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ボーリナー, ニルス
(72)【発明者】
【氏名】ウイサン, ゼルリーナ, ジー.
【テーマコード(参考)】
4B064
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG01
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE10
4B064DA01
4C084AA02
4C084AA06
4C084AA07
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA17
4C084BA25
4C084CA04
4C084CA53
4C084CA56
4C084DA43
4C084MA52
4C084MA56
4C084MA57
4C084MA58
4C084MA59
4C084MA60
4C084MA63
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZB351
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA14
4H045CA11
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA21
(57)【要約】
本発明は、グラム陰性菌、例えばPseudomonas aeruginosa、Klebsiella pneumoniae、Acinetobacter baumannii、Neisseria gonorrhoeae、Chlamydia trachomatis、Shigella sonnei、Salmonella enterica Typhimurium LT2、Enterobacter spp.、Bifidobacterium longum、Bacteroides fragilis、Lactobacillus reuteri、Enterococcus spp.、Yersinia pestis、および多数の他のグラム陰性菌によって引き起こされる感染症に罹っている脊椎動物またはヒトにおける使用のための二環式ヘプタペプチドを含む医薬製剤に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの二環式ヘプタペプチド、
【化1】
および/またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、互変異性体または水和物であって、
式中、
- R
1、R
2、R
3、R
4が、互いに独立して、H、-CH
3、-CH
2-CH
2-CH
2-NH-C(NH)(NH
2)、-CH
2-CO-NH
2、-CH
2-CO
2H、-CH
2-SH、-CH
2-CH
2-CO
2H、-CH
2-CH
2-CO-NH
2、(1H-イミダゾール-4-イル)-メチル、ハロゲン化(1H-イミダゾール-4-イル)-メチル、-CH(CH
3)(C
2H
5)、-CH
2-CH(CH
3)
2、-CH
2-CH
2-CH
2-CH
2NH
3、-CH
2-CH
2-S-CH
3、-CH
2-C
6H
5、ハロゲン化-CH
2-C
6H
5、(1H-インドール-3-イル)-メチル、ハロゲン化(
1H-インドール-3-イル)-メチル、(4-ヒドロキシフェニル)-メチル、ハロゲン化(4-ヒドロキシフェニル)-メチル、-CH-(CH
3)
2、1-ヒドロキシ-エチル、ヒドロキシ-メチル、sec-ブチル、1-アセトアミド、1-チオアセトアミド、-CH
2-CH
2-NH-(C=NH)-NH
2、ベンジル、ハロゲン化ベンジル、-CH
2-CH
2-CH
2-NH-(C=NH)-NH
2を含むリストから選択され;
- Xが、Xの任意の位置において、Xの他の任意の位置とは独立して、OまたはSのいずれかであり;
- R
5が、メチルスルホニル、p-トルエンスルホニルを含むリストから選択され;
- R
6が、メチルスルホニル、p-トルエンスルホニル、-(C=NH)-NH
2を含むリストから選択され;
- Z
1、Z
2が、それぞれ二重結合または単結合であり、ただし
a)Z
1およびZ
2がいずれも単結合であるか、または
b)それらのうちの一方のみが単結合であると同時に他方が二重結合であり、ここで、
i)Z
1が単結合であり、Z
2が二重結合であるか、または
ii)Z
2が単結合であり、Z
1が二重結合である;
- Y
1が、3,7-インドリレンまたはハロゲン化3,7-インドリレンであり;
- Y
2が、3,6-インドリレン、1,4-フェノキシレン、ハロゲン化3,6-インドリレン、ハロゲン化1,4-フェノキシレンのリストから独立して選択され;
- nが、1または2である、
二環式ヘプタペプチド。
【請求項2】
ダロバクチンである、請求項1に記載の二環式ヘプタペプチド。
【請求項3】
請求項1に記載の二環式ヘプタペプチドを製造する方法であって、
i)二環式ヘプタペプチドを産生する微生物を使用し、二環式ヘプタペプチドおよび微生物細胞を含有する発酵ブロスを提供する発酵ステップであって、前記微生物が、Photorhabdus spp.、Photorhabdus laumondii、Photorhabdus khanii、Pseudoalteromonas spp.、Pseudoalteromonas luteoviolacea、Pseudoalteromonas luteoviolacea、Yersinia spp.、Escherichia spp.、Vibrio sppを含む微生物のリストから選択される、発酵ステップ;
ii)前記発酵ブロスを、沈降および/または遠心分離および/またはろ過によって、微生物細胞および/または該微生物細胞の破片を含有する不溶性部分と、二環式ヘプタペプチドを含有する溶液とに分離する分離ステップであって、前記微生物細胞が、沈降および/または遠心分離および/またはろ過を前記発酵ブロスに適用する前に破壊されているか、または破壊されていない、分離ステップ;
iii)先の分離ステップii)から得られた前記溶液内に含有される二環式ヘプタペプチドを精製し、精製された二環式ヘプタペプチドの溶液を提供する精製ステップ
を含む、方法。
【請求項4】
請求項3に記載の二環式ヘプタペプチドを製造する方法であって、請求項3の前記精製ステップiii)が、
a)請求項3のステップii)から得られた前記溶液を減圧下での凍結乾燥および/または蒸留によって乾燥させ、残渣を提供するステップ、
b)先のステップa)の前記残渣をアルコールで洗浄し、洗浄した残渣を乾燥させ、乾燥させた残渣を脱イオン水に溶解し、二環式ヘプタペプチドの粗抽出物を提供するステップ、
c)先のステップb)の前記粗抽出物の不溶性部分を沈降および/またはろ過および/または遠心分離によって除去し、固体を含まない粗抽出物を提供するステップ、
d)先のステップc)から得られた前記固体を含まない粗抽出物をクロマトグラフィによって精製し、それにより二環式ヘプタペプチドの純粋な溶液を提供するステップ
を含む、方法。
【請求項5】
請求項3に記載の二環式ヘプタペプチドを製造する方法であって、請求項3の前記精製ステップiii)が、
a)請求項3のステップii)から得られた溶液を、二環式ヘプタペプチドが疎水性相互作用材料に吸着されるように、該疎水性相互作用材料と接触させるステップ、
b)残りの透明な溶液を前記疎水性相互作用材料から分離し、吸着した二環式ヘプタペプチドがロードされた前記疎水性相互作用材料を水で洗浄するステップ、
c)二環式ヘプタペプチドを、水と有機溶媒の混合物によって前記疎水性相互作用材料から溶出させるステップであって、前記有機溶媒が、MeOH、MeCN、THF、アセトン、エタノール、プロパノールを含むリストから選択され、水と有機溶媒の前記混合物が、0.001重量%から1重量%までの間の量の酸を含有してもよく、または含有しなくてもよい、ステップ、
d)ステップc)から得られた溶出液を濃縮し、真空を適用することによって前記有機溶媒を除去し、水溶液を、二環式ヘプタペプチドがカチオンイオン交換材料に吸着されるように、該強カチオンイオン交換材料と接触させるステップ、
e)二環式ヘプタペプチドがロードされた前記カチオンイオン交換材料を、0.001重量%から1重量%までの間の濃度を有する酸で洗浄するステップ、
f)pH5~pH11のpH値を有する水性緩衝溶液を適用することによって二環式ヘプタペプチドを溶出させ、二環式ヘプタペプチドを含有する分画を収集するステップ、
g)ステップf)の分画から得られた二環式ヘプタペプチドを、ステップa)に記載される様式と同一の様式で疎水性相互作用材料に吸着させるステップ、
h)二環式ヘプタペプチドをH
2Oと有機溶媒の勾配によって溶出させるステップであって、前記有機溶媒が、MeOH、MeCN、THF、アセトン、エタノール、プロパノールを含むリストから選択される、ステップ、
i)H
2Oと有機溶媒の勾配を用いたHPLCを適用することによって、ステップh)から得られた二環式ヘプタペプチドを含有する分画を精製するステップであって、前記有機溶媒が、MeOH、MeCN、THF、アセトン、エタノール、プロパノールを含むリストから選択される、ステップ
を含む、方法。
【請求項6】
請求項3に記載の二環式ヘプタペプチドまたは請求項4に記載の二環式ヘプタペプチドまたは請求項5に記載の二環式ヘプタペプチドが、化学修飾によってさらに処理される、請求項3から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記化学修飾が、二環式ヘプタペプチドを、ローソン試薬または塩化トシルまたは塩化メシルと反応させることである、請求項6に記載の二環式ヘプタペプチドを製造する方法。
【請求項8】
グラム陰性菌によって引き起こされる哺乳類における感染症を処置するための医薬組成物であって、請求項1に記載の二環式ヘプタペプチド、または、その薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは立体異性体を治療有効量含む、医薬組成物。
【請求項9】
少なくとも1つの薬学的に許容される担体、賦形剤、または希釈剤をさらに含む、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
局所投与、全身投与、非経口投与、皮下投与、または経皮投与、直腸投与、経口投与、膣内投与、鼻腔内投与、気管支内投与、眼内投与、耳内投与、静脈内投与、筋肉内投与、または腹腔内投与の形態である、請求項8から9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
細菌感染症に罹っている哺乳類に投与され、
前記哺乳類に有益な効果を提供するために十分な頻度で十分な期間にわたって、前記哺乳類に前記医薬組成物を投与することを含む、請求項8から10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
細菌感染症に罹っている哺乳類に投与され、
前記細菌感染症が、グラム陰性菌の少なくとも1つのタイプ/株を伴う感染症である、請求項8から10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
細菌感染症に罹っている哺乳類に投与され、
前記細菌感染症が、Pseudomonas aeruginosa、Klebsiella pneumoniae、Acinetobacter baumannii、Neisseria gonorrhoeae、Chlamydia trachomatis、Shigella sonnei、Salmonella enterica Typhimurium LT2、Enterobacter cloacae、Bifidobacterium longum、Bacteroides fragilis、Lactobacillus reuteri、Enterococcus faecalisおよびYersinia pestis、Pseudomonas、fluorescens、Pseudomonas acidovorans、Pseudomonas alcaligenes、Pseudomonas putida、Stenotrophomonas maltophilia、Burkholderia cepacia、Aeromonas hydrophilia、Escherichia coli、Citrobacter freundii、Salmonella typhimurium、Salmonella typhi、Salmonella paratyphi、Salmonella enteritidis、Shigella dysenteriae、Shigella flexneri、Enterobacter aerogenes、Enterobacter spp.、Klebsiella oxytoca、Serratia marcescens、Francisella tularensis、Morganella morganii、Proteus mirabilis、Proteus vulgaris、Providencia alcalifaciens、Providencia rettgeri、Providencia stuartii、Acinetobacter calcoaceticus、Acinetobacter haemolyticus、Yersinia enterocolitica、Yersinia pseudotuberculosis、Yersinia intermedia、Bordetella pertussis、Bordetella parapertussis、Bordetella bronchiseptica、Haemophilus influenzae、Haemophilus parainfluenzae、Haemophilus haemolyticus、Haemophilus parahaemolyticus、Haemophilus ducreyi、Pasteurella multocida、Pasteurella haemolytica、Branhamella catarrhalis、Helicobacter pylori、Campylobacter fetus、Campylobacter jejuni、Campylobacter coli、Borrelia burgdorferi、Vibrio cholerae、Vibrio parahaemolyticus、Legionella pneumophila、Listeria monocytogenes、Neisseria meningitidis、Kingella、Moraxella、Gardnerella vaginalis、Bacteroides distasonis、Bacteroides 3452Aホモロジー群、Bacteroides vulgatus、Bacteroides ovalus、Bacteroides thetaiotaomicron、Bacteroides uniformis、Bacteroides eggerthii、Bacteroides splanchnicusを伴う感染症である、請求項8から10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
グラム陰性菌によって引き起こされる感染症に罹っている脊椎動物またはヒトにおいて使用するためのダロバクチンまたはその誘導体を含む医薬製剤。
【請求項15】
前記グラム陰性菌が、Pseudomonas aeruginosa、Klebsiella pneumoniae、Acinetobacter baumannii、Neisseria gonorrhoeae、Chlamydia trachomatis、Shigella sonnei、Salmonella enterica Typhimurium LT2、Enterobacter cloacae、Bifidobacterium longum、Bacteroides fragilis、Lactobacillus reuteri、Enterococcus faecalis、およびYersinia pestisの群から選択される、請求項14に記載の医薬製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラム陰性病原菌に対する二環式ヘプタペプチド系抗生物質、その誘導体、およびそれらの製造(産生)、ならびに医薬における活性薬学成分(API)としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
新規の抗生物質の現在のニーズは、薬物耐性グラム陰性病原菌に関して特に緊急である。これらの微生物は、ほとんどの化合物の浸透を制限する高度に制限的な透過性バリアを有する。結果的に、グラム陰性菌に対して作用する抗生物質のクラスの最新のものでも、前世紀の60年間に開発されたものであった。
【0003】
グラム陰性菌に対して作用する化合物を発見することは難しい。グラム陰性菌は、望ましくない化合物から自身を保護するために外膜を有する。この膜は、負に帯電したリポ多糖(LPS)の外膜で覆われており、これが大きい化合物および疎水性化合物に対するバリアとしての役目を果たす。内膜は、疎水性化合物による透過性を制限する。
【0004】
結果的に、複合バリア(外膜に加えて内膜)は、全ての分子を制限し、栄養は外膜ポリンおよび専用の輸送体を通して中に入る。バリアを通して漏れる薬物は、トランスエンベロープ多剤耐性ポンプ(MDR)によって押し出され、このポンプは、細胞の親水性領域ならびに疎水性領域(例えば、膜)を通過する両親媒性化合物(ほとんどの薬物がそうである)を認識する。このように、技術水準では、グラム陰性菌の三重の防御機構(外膜、内膜、およびMDR)によって妨害されない異なる作用機序を有するAPIが大いに必要である。
【発明の概要】
【0005】
ダロバクチンA(DAR)は、リボソームによって合成され、翻訳後修飾を受けたペプチド(RiPP)系抗生物質であり、これはPhotorhabdus属に属する細菌から初めて同定された。加えて、対応する生合成遺伝子クラスタ(BGC)が同定され、次いで、これはいくつかの細菌属において検出された。DARは、新規の抗生物質治療剤の開発のための非常に有望なリード構造を表す。DARは、外膜タンパク質BamAを標的とし、したがってグラム陰性菌に対して特異的である。マウス感染症モデルにおいてin vivoでの活性が証明されたことと共に、このことにより、DARは今後の研究にとって特に有望な候補物質となる。DARの今後の研究のための化合物供給を改善するために、および新規の誘導体の産生を可能にするために、これらのクラスのRiPP抗生物質の有効かつ汎用性のある微生物産生プラットフォームを確立することが非常に望ましい。本明細書において、DARおよび/またはその誘導体に関する異種産生および操作プラットフォームの設計および構築が明らかにされるが、これは、産生収量を確実にし、構造修飾アプローチを容易にする。公知の有用なグラム陰性菌であるEscherichia coliおよびVibrio natriegensを、異種宿主として試験した。それに加えて、DAR産生株を生成し、発現構築物の最適化により、技術水準による製品説明と比較して濃度(力価)の約10倍増加および発酵時間の5倍短縮を示すDARの産生力価を得た。同様に、RiPP(ダロバクチンおよび/またはその誘導体)の異種産生にとって必要であるのは2つの遺伝子に過ぎないことから、最小のDAR BGCを同定して明らかにする。
【0006】
DARは、グラム陰性病原菌、例えばAcinetobacter baumannii(MIC、8μg/ml)、Pseudomonas aeruginosa PAO1(MIC、2μg/ml)、Escherichia coli野生型およびMDR株(MIC、2~4μg/ml)、Klebsiella pneumoniae(MIC、2~4μg/ml)、およびSalmonella enteritidis(MIC、4μg/ml)を選択的に殺滅する新規の抗生物質であり、Photorhabdus khanii HGB1456において発見された。他の天然に存在する誘導体、例えばダロバクチンB、ならびに臭素化バリアントのそれぞれの誘導体は、E. coli野生型およびMDR株(MIC、0.5~1μg/ml)、Klebsiella pneumoniae(MIC、1μg/ml)、およびSalmonella enteritidis(MIC、1μg/ml)に対して活性を示す。DARがOM β-バレルアセンブリ機構の中心成分であるBamAに結合することは、実験により証明された。BamAは、ポリンなどのβ-バレルタンパク質のフォールディングおよびOMへの挿入を助ける。このシャペロン様機能が損なわれると、OM形成の破壊をもたらす。その良好なin vitro活性に加えて、DARは、マウス敗血症およびマウス大腿感染モデルにおいて、細胞傷害作用を示すことなく有望な有効性を示した。したがって、DARは、有望な薬物リードとして出現している。
【0007】
本発明の目的は、グラム陰性菌に対して新規かつ予想外の方法で有効である医薬、およびそれ故にそれに対する耐性がグラム陰性菌に存在しない医薬の薬学的活性成分(API)として使用することができる新規物質を提供することである。驚くべきことに、式Iによる二環式ヘプタペプチドは、特徴/細胞成分との相互作用を示し、これらの正の効果を提供する:これらは、魅力的であるが非常に珍しい標的でもあるBamAシャペロンおよびトランスロケータに対して作用する。BamAシャペロンおよびトランスロケータは、ポリンなどのβ-バレルタンパク質のフォールディングおよび外膜への挿入を助ける。BamAそのものは、外膜β-バレルタンパク質である。薬物全般、特に天然産物は通常、シャペロンではなくてこの十分に定義された触媒中心を有する酵素を標的とする。ダロバクチンは、BamAとこの基質との間のタンパク質-タンパク質結合を妨害するためにおそらく必要である大きい分子である。表面上に標的が位置することは、グラム陰性菌の透過性バリアを超えて浸透するという難しい問題を解決するが、これはダロバクチンの場合ではいずれも必要ではない。外膜の表面上に露出された必須タンパク質は2つのみであり、BamAおよびLptDである。したがって、BamAを標的とする二環式ヘプタペプチドは、グラム陰性菌の三重の防御機構(外膜、内膜およびMDR)を有効に迂回しており、抗生物質の活性に関する新規作用様式を提供する。
【0008】
【0009】
スキーム1:二環式ヘプタペプチドの一般式I
スキームIでは、置換基および指数は以下の値を有する:R1、R2、R3、R4は、互いに独立して、H、-CH3、-CH2-CH2-CH2-NH-C(NH)(NH2)、-CH2-CO-NH2、-CH2-CO2H、-CH2-SH、-CH2-CH2-CO2H、-CH2-CH2-CO-NH2、(1H-イミダゾール-4-イル)-メチル、ハロゲン化(1H-イミダゾール-4-イル)-メチル、-CH(CH3)(C2H5)、-CH2-CH(CH3)2、-CH2-CH2-CH2-CH2NH3、-CH2-CH2-S-CH3、-CH2-C6H5、ハロゲン化-CH2-C6H5、(1H-インドール-3-イル)-メチル、ハロゲン化(1H-インドール-3-イル)-メチル、(4-ヒドロキシフェニル)-メチル、ハロゲン化(4-ヒドロキシフェニル)-メチル、-CH-(CH3)2、1-ヒドロキシ-エチル、ヒドロキシ-メチル、sec-ブチル、1-アセトアミド、1-チオアセトアミド、-CH2-CH2-NH-(C=NH)-NH2、ベンジル、ハロゲン化ベンジル、-CH2-CH2-CH2-NH-(C=NH)-NH2を含むリストから選択される。Xは、Xの任意の位置において、Xの他の任意の位置から独立して、OまたはSのいずれかである。R5は、メチルスルホニル、p-トルエンスルホニルを含むリストから選択され;R6は、メチルスルホニル、p-トルエンスルホニル、-(C=NH)-NH2を含むリストから選択される。Z1、Z2はそれぞれ、二重結合または単結合であり、ただし、Z1およびZ2がいずれも単結合であるか、またはそれらのうちの一方のみが単結合であると同時に他方が二重結合であり、Z1が単結合かつZ2が二重結合であるか、またはその逆である。Y1は、3,7-インドリレンまたはハロゲン化3,7-インドリレンであり、Y2は、3,6-インドリレン、1,4-フェノキシレン、ハロゲン化3,6-インドリレン、ハロゲン化1,4-フェノキシレンのリストから独立して選択され、nは1または2である。
【0010】
ダロバクチンは、アミノ酸配列W1-N2-W3-S4-K5-S6-F7を有する修飾ヘプタペプチドである。NMR試験により、ダロバクチンにおいて2つの珍しい大員環架橋:W1のC7インドールとW3のβ-炭素との間の前例のない芳香族-脂肪族エーテル結合、およびW3のC6インドールとK5のβ-炭素との間の炭素-炭素結合が明らかとなった。トリプトファン-リシン結合が、2つの非活性化炭素の間で形成され、これは抗生物質にとってユニークなものである。この二環式構造は、ダロバクチンAおよび本発明の全ての誘導体にとって特徴的かつ必須である。
【0011】
この7アミノ酸ペプチド(ダロバクチンA)の配列をP. temperataのゲノムと直接比較すると、58アミノ酸長のペプチドをコードするオープンリーディングフレームのC末端付近で完全な一致が明らかとなる。ダロバクチンのリボソームによる合成は、アミノ酸骨格がL-立体配置であることを示唆している。大員環架橋は、NOE相関に基づいてRおよびS立体配置をそれぞれ有する、W3およびK5のβ-炭素で2つのキラル中心を生成する(
図4)。ダロバクチン生合成をコードする推定のオペロン(
図2)は、食品保存剤である抗生物質ナイシン、およびチオストレプトンを含む多様なリボソーム産生天然物をコードするRiPPの典型である。
【0012】
このdarオペロンは、darAによってコードされるプロペプチド、化合物に対する宿主の耐性において役割を果たし得る小さいrelE型ORF、ABC型トランスエンベロープ輸送体をコードするdarBCD、およびラジカルSAM酵素をコードするdarEからなる。ラジカルSAMクラスの酵素は、非活性化炭素を連結可能なフリーラジカルに基づく反応を触媒する。これは、ダロバクチンおよびその誘導体におけるトリプトファン-リシンC-C結合の形成を説明する。そのようなTrp-Lys C-C結合は、Streptococcus thermophilusのペプチドフェロモンであるストレプチドにおいて最近報告された。2つの酵素の間には、全体的な相同性はほとんどないが、DarEは、SAMおよびこの群に関して特徴的なSPASMドメインを含有する。オペロンは、第1環においてエーテル結合を作製するための個別の酵素を含有しない。RiPPオペロンは、しばしば活性なペプチドを切断するプロテアーゼをコードするが、これはdarオペロンには存在しなかった。したがって、全般的なタンパク質分解、自己切断、または産生株に存在する他のプロテアーゼは、プロペプチドの成熟に関与し得る。驚くべきことに、DarEラジカルSAM酵素は、Trp-Lys C-C結合およびC-O-C Trp-Trpエーテル結合の両方の形成を触媒すると思われる。これらの2つの反応の化学は全く異なっており、DarE触媒の機序は明確に個別の調査を必要とする。推定のBGCをダロバクチン産生と結びつけるために、本発明者らは、完全なBGC darABCDEがダブルクロスオーバーによってPhotorhabdus khanii DSM3369から欠失したマーカーレスノックアウト変異体を生成した。DAR産生は、得られた変異体株では消失した;対応する分子量を有する分子は、MSによって検出できなかった(
図10)。重要なことに、ダロバクチンは、E. coliにクローニングされたdarオペロンから異種で産生された(
図10)。このことは、darオペロンがダロバクチンを作製するために十分であることを示している。本発明者らは、darオペロンが、Photorhabdusにおいて一般的であることを発見し、本発明者らはこれをゲノム配列が利用可能な16個の異なる種において検出した(
図2a;
図10)。darオペロンは、P. bodeiにのみ存在しなかった。dar座を含有するゲノムとP. bodeiのゲノムとのシンテニーは、オペロンの境界を決定するために役立った(
図2a)。本発明者らはまた、いくつかの異なるPhotorhabdusにおけるダロバクチンの産生も試験し、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen(DSMZ) culture collection由来のP. khanii DSM 3369の株においてダロバクチンの産生が最高であることを見出した。これは、BGCを持つ株が化合物を産生していることを示している。
【0013】
本発明者らは次に、プロペプチドおよびdarコードペプチドをクエリとして使用し、細菌ゲノム配列データベース(NCBI)においてdar型オペロンに関する検索を拡大した。2つの検索により、4つのダロバクチンアナログをコードすると思われるdarオペロンの相同体が同定された。したがって、本発明者らは、最初の化合物に名称ダロバクチンAを提唱し、このクラスの抗生物質の予想されるアナログに関してダロバクチンB~Eを提唱した。Photorhabdus australisおよびPhotorhabdus asymbioticaでは、配列データは、N末端で2つのアミノ酸変化(SKSF→TKRF)を含有するダロバクチンBの産生を示唆している。複数のYersinia種では、第2のアミノ酸(N→S)または第5のアミノ酸(K→R)のいずれか、または両方が修飾されている。本発明者らは、これらのアナログをダロバクチンC、D、およびEと命名した。興味深いことに、ダロバクチンC配列は、ペストの原因菌であるYersinia pestis、およびヒト腸マイクロバイオーム由来のY. frederikseniiに(それぞれ)存在する。アミノ酸配列から推定されるダロバクチンB~Eの推定構造を
図10に示す。5つの化合物の中で、ダロバクチンAは、最も一般的であり、対応するプロペプチド配列は、9つのシーケンシングしたPhotorhabdus種、7つのYersinia種、Vibrio crassostreae、およびPseudoalteromonas luteoviolaceaに存在し、その全てがγ-プロテオバクテリアである。このクラスの抗生物質の追加のメンバーは、より多くの細菌ゲノムがシーケンシングされると出現する可能性がある。
【0014】
これらの実験は、ダロバクチンが、グラム陰性病原菌に対する治療製剤または医薬製剤を開発するための有望なリード化合物であることを示唆している。本明細書に紹介した実験結果は、DARに由来する二環式ヘプタペプチドが、グラム陰性病原菌に対する医薬製剤のための有効な化合物(API)であることを示している。ダロバクチンおよび/または二環式ヘプタペプチドを含む医薬製剤は、グラム陰性菌によって引き起こされる感染症に罹っている鳥類、魚類、両生類、は虫類および哺乳類などの脊椎動物ならびにヒトにおいて有効である。グラム陰性菌は、Pseudomonas aeruginosa、Klebsiella pneumoniae、Acinetobacter baumannii、Neisseria gonorrhoeae、Chlamydia trachomatis、Shigella sonnei、Salmonella enterica Typhimurium LT2、Enterobacter cloacae、Bifidobacterium longum、Bacteroides fragilis、Lactobacillus reuteri、Enterococcus faecalis、およびYersinia pestisの群から選択される。この群は、本発明の範囲を制限することを意味せず、この群に属する他の多くのグラム陰性菌、例えばPseudomonas、fluorescens、Pseudomonas acidovorans、Pseudomonas alcaligenes、Pseudomonas putida、Stenotrophomonas maltophilia、Burkholderia cepacia、Aeromonas hydrophilia、Escherichia coli、Citrobacter freundii、Salmonella typhimurium、Salmonella typhi、Salmonella paratyphi、Salmonella enteritidis、Shigella dysenteriae、Shigella flexneri、Enterobacter aerogenes、Enterobacter spp.、Klebsiella oxytoca、Serratia marcescens、Francisella tularensis、Morganella morganii、Proteus mirabilis、Proteus vulgaris、Providencia alcalifaciens、Providencia rettgeri、Providencia stuartii、Acinetobacter calcoaceticus、Acinetobacter haemolyticus、Yersinia enterocolitica、Yersinia pseudotuberculosis、Yersinia intermedia、Bordetella pertussis、Bordetella parapertussis、Bordetella bronchiseptica、Haemophilus influenzae、Haemophilus parainfluenzae、Haemophilus haemolyticus、Haemophilus parahaemolyticus、Haemophilus ducreyi、Pasteurella multocida、Pasteurella haemolytica、Branhamella catarrhalis、Helicobacter pylori、Campylobacter fetus、Campylobacter jejuni、Campylobacter coli、Borrelia burgdorferi、Vibrio cholerae、Vibrio parahaemolyticus、Legionella pneumophila、Listeria monocytogenes、Neisseria meningitidis、Kingella、Moraxella、Gardnerella vaginalis、Bacteroides distasonis、Bacteroides 3452Aホモロジー群、Bacteroides vulgatus、Bacteroides ovalus、Bacteroides thetaiotaomicron、Bacteroides uniformis、Bacteroides eggerthii、Bacteroides splanchnicusもまた存在する。
【0015】
二環式ヘプタペプチドおよび誘導体を製造/産生するために、本発明者らは、いくつかの異なる異種宿主を選択し、BGCの上流領域を含む、異なる種由来のそれぞれのDAR BGCをクローニングし、最後にDAR産生を強化するためにDAR耐性異種宿主を作製した。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】リボソームによって合成されるダロバクチン(DAR)およびdarオペロンによってコードされる翻訳後修飾ペプチド(RiPP)の図である。(a)DARは、W
1とW
3との間にエーテル結合を有し、W
3とK
5との間にC-C結合を有する、7アミノ酸W
1-N
2-W
3-S
4-K
5-S
6-F
7からなる修飾ヘプタペプチドである。(b)dar BGC(全体で長さ6.2kb)は、前駆体ペプチドをコードするdarA;ABC輸送体のサブユニットをコードするdarBCD;およびラジカルS-アデノシルメチオニン酵素(RaS)をコードするdarEからなる。
【
図2】選択された細菌株におけるダロバクチンの生合成遺伝子クラスタ(BGC)の図である。(a)BGCは、構造遺伝子darA(青色)、darBCD(輸送体コード遺伝子、灰色)、およびdarE(ラジカルSAM酵素をコードする、オレンジ)からなる。加えて、relE様遺伝子(黒色)ORFが、異なる位置でBGCと共局在し得る。BGCは、ほとんどのPhotorhabdus株において保存された遺伝子領域で検出され得る。加えて、相同なBGC(関連する遺伝子は同一の色コードを示す)が、Yersinia、VibrioおよびPseudoalteromonas株に存在する。(b)生合成仮説を示す。darAによってコードされるプロペプチドは、58アミノ酸からなる。架橋はDarEによって線形のプロペプチドに導入される。次のステップでは、リーダーおよびテール領域が切断され、ダロバクチンは、ABC輸送体DarBCDによって分泌される。(c)選択された細菌株由来のプロペプチドのアミノ酸配列を示す。ダロバクチンコアペプチドを、太字で強調し、架橋に関係するアミノ酸を太字の赤色で強調する。星印は、終止コドンを示す。配列番号31は、Photorhabdus temperata由来のdarAであり、配列番号32は、Photorhabdus khanii由来のdarAであり、配列番号33は、Photorhabdus australis由来のdarAであり、配列番号34は、Photorhabdus laumondii由来のdarAであり、配列番号35は、Yersinia frederiksenii由来のdarAであり、配列番号36は、Vibrio tasmaniensis由来のdarAであり、配列番号37は、Pseudoalteromonas luteoviolacea由来のdarAである。枠は、式Iによる典型的なヘプタペプチドを形成する微生物由来のコンセンサス配列を示している。
【
図3】本研究において作製された発現構築物の図である。DAR BGCを、T7lacプロモータの制御下でpRSFDuet(商標)-1ベクターにクローニングした。pZW-ADC3は、全ての遺伝子間領域が除去されたP. khanii HGB1456由来の簡素化されたDAR BGCを有し、一方、pZW-ADC5およびpZW-ADC6はそれぞれ、P. khanii HGB1456およびP. khanii DSM3369由来のネイティブクラスタを有する。pZW-ADC3およびpZW-ADC5に第2のdarAコピーを追加し、pZW-ADC3.2およびpZW-ADC5.2を作製した。プラスミドpZW-ADC7は、darAの追加の200bp上流領域を有するP. khanii HGB1456由来DAR BGCを有し、pZW-ADC8は、605bp上流領域を持つ。プラスミドpZW-ADC9は、P. khanii DSM3369由来DAR BGCを持つが、darBCDを欠如し;およびpZW-YerA4は、Yersinia frederiksenii ATCC 33641由来のDAR BGCを有する。黒色の矢印は、T7lacプロモータを示し、lacI、RSFおよびカナマイシン耐性カセット(Kan
R)の色コードは、一定に保たれている。lacI遺伝子は、lacオペロンリプレッサーをコードし、RSFは、RSF1030に由来した複製開始点であり、これによってプラスミドは細胞において高コピー数で維持することができる。
【
図4-1】ダロバクチンBのNMRケミカルシフト(ppm)および追加のNMR実験データの図である。
【
図4-2】ダロバクチンBのNMRケミカルシフト(ppm)および追加のNMR実験データの図である。
【
図4-3】ダロバクチンBのNMRケミカルシフト(ppm)および追加のNMR実験データの図である。
【
図4-4】ダロバクチンBのNMRケミカルシフト(ppm)および追加のNMR実験データの図である。
【
図4-5】ダロバクチンBのNMRケミカルシフト(ppm)および追加のNMR実験データの図である。
【
図5A】ダロバクチンBのNMR帰属の図である。ダロバクチンBの構造をNMR帰属の番号付けと共に示す。
【
図5B】ダロバクチンBのNMR帰属の図である。基本的なCOSYおよびTOCSY相関(曲がった両側の矢印はCOSY相関を示し、太い結合はTOCSY相関を示す)を示す。
【
図5C】ダロバクチンBのNMR帰属の図である。基本的なHMBC相関(曲がった両側の矢印はHMBC相関を示し、太い結合はCOSY/TOCSY相関を示す)を示す。
【
図6】本発明に係る追加の例示的に提示される二環式ヘプタペプチドの図であり;これらは、本発明の範囲を制限すると理解されるものではない(二環式ヘプタペプチドIII~VI)。
【
図7】本発明に係る追加の例示的に提示される二環式ヘプタペプチドの図であり;これらは、本発明の範囲を制限すると理解されるものではない(二環式ヘプタペプチドVII~X)。
【
図8】本発明に係る追加の例示的に提示される二環式ヘプタペプチドの図であり;これらは、本発明の範囲を制限すると理解されるものではない(二環式ヘプタペプチドXI~XIV)。
【
図9】本発明に係る追加の例示的に提示される二環式ヘプタペプチドの図であり;これらは、本発明の範囲を制限すると理解されるものではない(二環式ヘプタペプチドXV~XVIII)。
【
図10A】ダロバクチンノックアウト株および異種発現、ならびにダロバクチンA~Eの推定構造および産生株の図である。ダブルクロスオーバーノックアウトベクターpNB02および標的化ゲノム領域のスキームである。
【
図10B】ダロバクチンBGC発現プラスミドのスキームである。
【
図10C】ダロバクチンBGCの喪失を証明する、P. khanii DSM3369 ΔdarABCDEの試験PCRの図であり;左:darAの増幅(プライマdarA_f/r)によって、WTでは177bp断片が得られる、変異体では断片が得られない;右:BGCが欠失している場合(プライマDSMko_f/r)、pNB02の喪失後(Kanに対する感受性によって示される)、450bp断片が増幅される;ポジティブコントロール:それぞれpNB03-darA~EおよびpNB02であり;プライマの位置をスキームaにおいて青色で示す。
【
図10D】m/z=483.7089±0.001でのLC-MS抽出イオンクロマトグラム(EIC)の図であり、黄色:P. khanii DSM3369 ΔdarABCDE+pNB03、赤色:P. khanii DSM3369 ΔdarABCDE+pNB03-darA~E、茶色:E. coli BW25113+pNB03-darA~E、青色:P. khanii DSM3369 WT、挿入図:ダロバクチンに対応する二重荷電[M+2H]
2+イオンを示すイオンピークのHRMSスペクトル。
【
図10E】ダロバクチンBGCに存在するアミノ酸配列に基づき、推定のダロバクチンアナログB~Eを描いた図である。提唱される産生生物はダロバクチンAの7アミノ酸配列のBLASTP検索によって同定され、プロペプチドの下流のdarBCDEの存在が確認された。ダロバクチンAからのアミノ酸変化を赤色で強調する。
【
図10F】様々なダロバクチンアナログのプロペプチド配列を示す表である。
【
図11】本発明に係る追加の例示的に提示される二環式ヘプタペプチドの図であり;これらは、本発明の範囲を制限すると理解されるものではない(二環式ヘプタペプチドIXX~XXI)。
【
図12】本発明に係る追加の例示的に提示される二環式ヘプタペプチドの図であり;これらは、本発明の範囲を制限すると理解されるものではない(二環式ヘプタペプチドXXII)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の以下の実施形態は、好ましい実施形態の例であり、本発明の範囲を決して限定しないことを意味する。本明細書で明らかにした株と類似の微生物株もまた、本発明の範囲から外れることなく使用することができることは、当業者に明白である。同じことが、以下の本明細書で明らかにした化学修飾、製造プロセスのステップ、ならびに提示される医薬製剤および適用方法にも当てはまる。
【0018】
(二環式ヘプタペプチドの産生のためのPhotorhabdus種の発酵の全般的説明)
Photorhabdus種の株を、適した成長培地(例えば、lysogeny broth 3mL:トリプトン10g、酵母抽出物5g、NaCl 5g)に接種し、インキュベートして成長を促進させる。この前培養物のアリコートを使用して、振とうフラスコ中の主培養(例えば、LB培地)培地に接種し、インキュベートして採取するまで成長を促進させる。
【0019】
(二環式ヘプタペプチドの産生のためのPseudoalteromonas株の発酵の全般的説明)
二環式ヘプタペプチドの発現に対応する生合成遺伝子クラスタ(例えば、プロペプチド、修飾ラジカルSAM酵素およびFAD依存的ハロゲナーゼをコードする8つの遺伝子、機能不明の1つの遺伝子、ならびに4つの輸送体遺伝子で構成される)を含有するPseudoalteromonas株、例えばPseudoalteromonas luteoviolacea H33およびH33Sを、適した培地中で培養する。適した培地は、例えば、マリンブロス、または、緩衝された人工海水処方、適した炭素源、例えば糖(例えば、グルコース、ラムノース)、適した窒素源、例えばアンモニウム含有塩(NH4Cl)、または複合炭素窒素源、例えばカシトンまたは酵母抽出物を含有する類似の培地等である。培養物を適した温度(4℃~40℃)で20mL~2Lの体積中、振とうしながら、または振とうせずに(または振とう/混合しながら、または振とう/混合せずに生産規模の発酵器中で)、および低分子誘導剤、例えばN-アシルホモセリンラクトン誘導体を加えてまたは加えずに1~7日間インキュベートする。培養培地を、例えば遠心分離によって細胞から分離し、清澄化した培地を精製のためにさらに処理する。Photorhabdus BGCに加えてFAD依存的ハロゲナーゼを有するBGCおよび機能不明の1つの遺伝子を有する株から、ハロゲン化(例えば、Cl、Br、I、F)および非ハロゲン化二環式ヘプタペプチド、および追加の二重結合を有するまたは有しないバリアント(例えば、デヒドロ誘導体)を単離することができる。ハロゲン化誘導体を生成するために、適した酵素を、Pseudoalteromonas luteoviolacea H33およびH33SのBGCにおいてコードされるFAD依存的ハロゲナーゼとしてin vivoまたはin vitroで使用することができる。当業者に公知であるように、芳香環内のハロゲンの位置は、特定の位置でのハロゲン化を触媒している異なるハロゲナーゼを使用することによって変化させることができる。
【0020】
同様に、例えば海洋生物によって産生された、天然に存在するポリハロゲン化(例えば、ポリ臭素化、ポリ塩素化)化合物も存在することもまた、技術水準において周知である。したがって、本発明の範囲は、ポリハロゲン化二環式ヘプタペプチドも明白に含む。スキーム1は、モノハロゲン化またはポリハロゲン化され得る二環式ヘプタペプチドの芳香族およびヘテロ芳香族部分構造を示す。
【0021】
【0022】
スキーム2:式Iによる二環式ヘプタペプチドの可能なハロゲン化部分構造IIa~IIf、式中、置換基R20、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R29、R30、R31、R32、R33、R34、R35、R36、R37、R38は、互いに独立して、H、F、Cl、Br、Iである。
【0023】
部分構造IIaは、式IのY1としてのハロゲン化3,7-インドリレンを表し、部分構造IIbは、式IのY2としてのハロゲン化3,6-インドリレンを表し、部分構造IIcは、式IのY2としてのハロゲン化1,4-フェノキシレンを表し、部分構造IId、IIe、IIfおよび部分構造IIcは、式Iの任意のハロゲン化芳香族またはヘテロ芳香族置換基R1、R2、R3、R4を表し、特にハロゲン化(1H-イミダゾール-4-イル)-メチル、ハロゲン化-CH2-C6H5、ハロゲン化(1H-インドール-3-イル)-メチル、ハロゲン化(4-ヒドロキシフェニル)-メチル、ハロゲン化ベンジルを表している。
【0024】
FAD依存的ハロゲナーゼを含有する製剤を、二環式ヘプタペプチドのハロゲン化のために使用することができる。酵素を、当業者に周知の手順によって異種で過剰発現させ、精製することができる。精製された酵素(100μL)を、精製フラビンレダクターゼ(酵素は、当業者に周知の手順によって生成することができる)10μL、10μM FAD、2.4mM NADH、25mM KBr、0.15mM基質(例えば、ダロバクチンA)および10mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.2)と共に全量300μL中でインキュベートした。反応物を、18℃で24時間インキュベートし、LC-MS分析の前に等量のメタノールを加えることによって停止させた。得られた産物は、臭素化ダロバクチンAであった。
【0025】
(二環式ヘプタペプチドの精製のための全般的方法)
方法A:
細胞を、10,000×gで5分間の遠心分離によって沈降させ、上清を、凍結乾燥のために丸底フラスコ内に収集する。乾燥させた上清をメタノールによって2回洗浄する。2回の洗浄ステップの後、メタノールを完全に除去し、脱イオン水を加えて粗抽出物を溶解する。10,000×gで5分間の遠心分離ステップを行って、不溶性部分を除去する。次に、粗抽出物を、逆相フラッシュクロマトグラフィ(Puriflash C18-HP30mmフラッシュカラムを備えたInterchim Puriflash 4125クロマトグラフィシステム、5%MeOH/H2O~100%MeOHの1時間の勾配溶出)に供する。DARを含有する分画をHPLCによってさらに精製する。C18カラム(Macherey Nagel、EC 250/4.6 Nucleodur C18 Gravity-SB、5μm)を、以下の方法で使用する:
【0026】
【0027】
溶媒Aは、0.1%トリフルオロ酢酸水溶液である。溶媒を、HPLCシステムの中に流速1mL/分のポンプで送る。DARは、15.90分~17.10分に分画収集器によって収集する。
【0028】
方法B:
清澄化した培地を疎水性相互作用材料(例えば、C18シリカ、Amberlite XAD-16N)に適用し、H2Oで洗浄し、有機溶媒(例えば、MeOH、MeCN)と0.1%ギ酸を含むまたは含まないH2Oとの混合物によって溶出した。溶出液を濃縮し、有機溶媒を真空下で除去し、水性の溶出液を、強カチオンイオン交換材料(例えば、SP Sepharose XL)にロードする。次いで、この材料を0.1%ギ酸で洗浄し、カラムに結合した材料を、適した緩衝系、例えばNH4CH3COOを使用してpH5~pH11で溶出する。分画を、LCMSによって分析し、目的の化合物を含有する分画をプールして、疎水性相互作用材料(例えば、C18シリカ、Amberlite XAD-16N)に結合させ、H2Oおよび有機溶媒(例えば、MeCN)の勾配によって溶出する。ピークを、UV吸収に基づいて収集し、収集した分画をLCMSによって分析する。目的のペプチドを含有する分画を、H2Oおよび適した有機溶媒(例えば MeOH、MeCN)の勾配を用いたHPLCによって分離する。ピークを収集して、目的の純粋な化合物を得る。
【0029】
上記の発酵プロセスによって産生された任意のタイプのペプチドを、例えばそれらを異なる当量のローソン試薬、O,O-ジエチルアンモニウムホスホロジチオエート塩、P4S10/ジメチコン、PSCl3/H2O/Et3N、または他の試薬と反応させることによって、必要に応じて適した保護基戦略を行ってさらに化学修飾することができることは当業者に周知である。そうすることによって、1つまたはさらには全てのアミド結合のチオアミド結合への置換を獲得することが可能である。さらに、アミノ基のスルホンアミドへの変換は、塩化メシル、塩化トシルまたは他の適した試薬で(必要に応じて保護された基質を)処理することによって可能である。したがって、この方法または他の方法で化学修飾された二環式ヘプタペプチドもまた、本発明の範囲に含まれる。
【0030】
(異種ダロバクチンA発現および最小生合成遺伝子クラスタの同定)
本発明の範囲は、当業者に明らかであるように、生合成に必要な遺伝子を任意の技術水準の発現ベクターに移入することにより、例えば異なるプロモータ、リボソーム結合部位、および発現の調節のためのさらなるエレメントを適用する、発現構築物の生成を含む。したがって、以下の例は、本発明の範囲を限定しないことを意味する。
【0031】
DARの異種発現に関するこのプロジェクトにおいて、例示的ないくつかの構築物を生成した(
図3)。本例では、発現構築物のために使用したベクターバックグラウンドは、pRSFDuet(商標)-1(Merck KGaA、Darmstadt、Germany)であった。DAR BGCを増幅するための鋳型として使用した染色体DNAを、innuPREP Bacteria DNA Kit(Analytik Jena AG、Jena、Germany)を使用して単離した。一般的に、断片を、Q5 DNAポリメラーゼ(New England Biolabs、Ipswich、USA)を使用して増幅し、Large Fragment DNA Recovery Kit(Zymo Research、Irvine、USA)を使用してアガロースゲルから精製した。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を、Biometra TRIOサーモサイクラ(Analytik Jena AG、Jena、Germany)において、以下のプログラムを使用して実施した。95℃で2分間;95℃で45秒、60~70℃で45秒(適用されるアニーリング温度はプライマ配列に依存)、72℃で30秒/kb(伸長時間は増幅される断片の長さに応じて変化)を34サイクル、続いて72℃で5分間の最後の伸長ステップ。
【0032】
本発明の範囲が、生合成遺伝子クラスタ(BGC)を有する任意の生物の使用、BGCのネイティブまたはコドン最適化型(一部または全体)を増幅または合成すること、およびこれを発現ベクターにクローニングすることを含むことは、当業者に明白である。ベクターは、その後、発現宿主に移入される。したがって、以下の例は、本発明の範囲を限定しないことを意味する。
【0033】
配列番号25は、Photorhabdus_namnaonensis由来のコドン最適化darEを示す。配列番号26は、Photorhabdus_namnaonensis由来のコドン最適化darAを示す。配列番号27は、Pseudoalteromonas_luteoviolacea由来のコドン最適化darAを示す。配列番号28は、Pseudoalteromonas_luteoviolacea由来のコドン最適化darEを示す。配列番号29は、Pseudoalteromonas_luteoviolacea_ダロバクチン-ハロゲナーゼコドン最適化を示す。配列番号30は、Pseudoalteromonas_luteoviolacea_タンパク質_wo_相同性_コドン最適化を示す。
【0034】
プラスミドpZW-ADC3は、darAとdarBとの間に遺伝子間領域を有しないDAR BGCの遺伝子を有する。したがって、darAは、プライマ対を使用してPhotorhabdus khanii HGB1456から増幅され;およびdarB~darEは、それぞれのプライマを使用して増幅され、これらの全ての増幅は当業者に公知である方法に従って実施される。pRSFDuet(商標)-1を、NdeIおよびAvrII制限酵素(New England Biolabs、Ipswich、USA)を使用して線形化し、2つの精製された断片をT7lacプロモータの制御下でベクターの第2のマルチクローニングサイトに挿入した。これを行うために、Gibsonによって記載された1ステップ等温DNAアセンブリプロトコールに従ったが、10U/μLのT5エキソヌクレアーゼを、0.64μlではなくて1.2μl加えたという軽微な変更を行った。したがって、Gibson反応混合物の最終濃度は以下の通りであった:100mM Tris-HCl pH7.5、10mM MgCl2、0.2mM各dNTP、10mM DTT、5%PEG-8000、1mM NAD、7.5U/mL T5エキソヌクレアーゼ、25U/mL Phusionポリメラーゼ、4U/μL Taq DNAリガーゼ、0.02~0.5pmol DNA断片。次に、この反応混合物を50℃で1時間インキュベートした。等温アセンブリ後、反応物を、0.025μmニトロセルロースメンブレン(Merck(商標)MF-Millipore(商標)、Ireland)を使用して透析し、次いで、Micropulser Electroporator(Bio-Rad、California、USA)を使用して0.2cm電気穿孔用キュベット中、2.5kVの電圧での電気穿孔によって、プラスミド維持宿主としてのE. coli TOP10細胞に移入した。
【0035】
第2および第3の構築物はそれぞれ、Photorhabdus khanii HGB1456(pZW-ADC5)およびPhotorhabdus khanii DSM3369(pZW-ADC6)由来のネイティブDAR BGCを有する。両方の構築物に関して、それぞれのBGCを、当業者に公知の方法に従ってPCRによって増幅した;したがって、それぞれの細菌ゲノムDNAを鋳型として使用した。Gibsonアセンブリは上記の通りに実施した。
【0036】
プラスミドpZW-ADC3.2およびpZW-ADC5.2は、pZW-ADC3およびpZW-ADC5の制限酵素消化によって作製された。各プラスミドを、NcoIおよびNotI(New England Biolabs、Ipswich、USA)を使用して制限消化した。次に、Photorhabdus sp. darA(配列番号26)の追加のコドン最適化型を、GibsonアセンブリによってpRSFDuet(商標)-1に基づくベクターの第1のマルチクローニングサイトに挿入した。
【0037】
プラスミドpZW-ADC7およびpZW-ADC8はそれぞれ、darAの追加の200bpおよび605bp上流領域を有するP. khanii HGB1456由来のネイティブDAR BGCを有する。BGCを、当業者に公知の方法に従ってPCRによって細菌ゲノムDNAから増幅した。それぞれのインサートを、Gibsonアセンブリを使用してNdeI-AvrII線形化pRSFDuet(商標)-1にアセンブルした。
【0038】
プラスミドpZW-ADC9は、輸送体遺伝子を有しない、すなわち、darAおよびdarEのみのP. khanii DSM3369由来のDAR BGCを有する。両方の断片をPCRによって増幅し、Gibsonアセンブリを使用してNdeI-AvrII線形化pRSFDuet(商標)-1にアセンブルした。
【0039】
pZW-YerA4は、Yersinia frederiksenii ATCC 33641に由来するDAR BGCを有し、これをPCRによって増幅した。増幅物をまた、Gibsonアセンブリを使用してNdeI-AvrII線形化pRSFDuet(商標)-1にアセンブルした。
【0040】
アセンブリおよびE. coli TOP10細胞における増殖後、全ての構築物を試験PCRおよびその制限パターンによって確認した。
【0041】
DAR耐性株を、1300A>G、1334A>C、および2113G>Aである3つの点変異をbamA遺伝子に導入することによって生成した。これらの3つの点変異がDAR耐性表現型をもたらすことは、過去の試験によって確認されており、DAR耐性は128μg/mLに増加した。この過去の試験は、当業者に公知である。耐性産生株を作製するための変異は、当業者に周知の手段によって生成することができる。この目的のために修飾される遺伝子は、例えばbamAであり得る。
【0042】
発現構築物を、維持宿主であるE. coli TOP10から異なる発現宿主へと電気穿孔によって移入した。E. coli発現宿主の形質転換は、E. coli TOP10に関して上述した通りに実施したが、V.natriegens Vmax(商標)の形質転換は、0.1cm電気穿孔用キュベット中、900Vの電圧で行った。電気穿孔後、株をそれぞれの増殖培地および温度で1時間インキュベートした。次に、細胞を、選択剤としてカナマイシンを上記の濃度で含有するLB(-ASW)プレートに播種し、E. coli Rosetta(商標)(DE3)を宿主として使用する場合にはクロラムフェニコールを加えた。個々の単一コロニを選択プレートから採取し、それぞれの発現プラスミドの存在を、PCRによって確認した。次に、正確な構築物を有するコロニを、必要な抗生物質を含有するLB(-ASW)3mL中に接種し、37℃または30℃で一晩インキュベートした。この前培養物500μLを使用して、カナマイシンを含有する新しいLB(-ASW)培地50mLに接種し、OD600が0.4~0.6に達するまで37℃または30℃でインキュベートし、次にIPTG(最終濃度0.5mM)によって誘導した。IPTG誘導後、培養物を180rpmで振とうしながら30℃でインキュベートした。当業者は、誘導型プロモータを発現のために使用する場合は、ある特定の細胞密度に達した場合に発現を誘導させることができることから、本発明の範囲を逸脱することなく、非耐性産生株を使用することができることを承知している。それによって、細胞は、抗生物質の産生によって殺滅されない。
【0043】
DAR産生を、UPLC-HRMSによって分析した。発現培養物から、1mLアリコートを採取し、遠心分離して培地と細菌細胞とを分離した。培地を凍結乾燥させ、メタノール1mLを加え、混合物をBandelin Sonorex RK255超音波浴(Berlin、Germany)中で30分間超音波処理し、10,000gで5分間遠心分離した。メタノールを除去し、ペレットを脱イオン水1mLに再懸濁した。10,000gで5分間の最後の遠心分離後、試料は、UPLC-HRMSシステムへの注入の準備ができた。細胞ペレットから試料を調製するために、メタノール500μLを加えた後に超音波処理を30分間行った。次に、脱イオン水500μLを加え、超音波処理をさらに15分間継続した。その後、溶液を遠心分離して不溶性部分を沈降させ、上清をUPLC-HRMSシステムに注入した。
【0044】
UPLC-HRMSシステムは、Agilent Infinity 1290 UPLCシステムであり、このシステムは、Acquity UPLC BEH C18 1.7μm(2.1×100mm)カラム(Waters、Eschborn、Germany)およびAcquity UPLC BEH C18 1.7μm VanGuardプレカラム(2.1×5mm;Waters、Eschborn、Germany)セットアップを備え、DAD検出器およびmicrOTOFQ II質量分析計(Bruker、Bremen、Germany)に連結されていた。LC部分は、勾配(A:H2O、0.1%FA;B:MeCN、0.1%FA;流速:600μL/分):0分:95%A;0.80分:95%A;18.70分:4.75%A;18.80分:0%A;23.00分:0%A;23.10分:95%A;25.00分:95%Aを使用して実施され、カラムオーブン温度を45℃に設定した。MSパラメータは以下の通りであった:ネブライザーガス1.6bar;ガス温度、200℃;ガス流速、8L/分;キャピラリ電圧、4500V;エンドプレートオフセット、500V;測定はポジティブイオンモードで行った。
【0045】
DAR標準曲線を、抽出されたイオンクロマトグラム(EIC)(483.7089および475.1956のm/z±0.01に関して)からのDARのピーク面積を、一連のDAR濃度(2、3、4、5、10、15、20、30、40mg/L)に対してプロットすることによって、作製した。異種の発現培養物からのDAR濃度を、ピーク面積を計算し、DAR標準曲線にこれを補間することによって定量した。この定量化方法の線形範囲は、3μg/mL~30μg/mLであった。したがって、境界よりも下のピーク面積は濃度に変換されなかった。標準曲線を、測定間の技術的な差を除外するために、UPLC-HRMSによって分析した全てのバッチについて測定した。
【0046】
3つの遺伝子darB、darC、およびdarDは、ABC輸送体のサブユニットをコードしている。これらの輸送体遺伝子がDARの生合成に対して追加の役割を果たすか否かという疑問に答えるために、また、最小のDAR BGCを定義するために、これらの遺伝子を発現構築物から除去した。したがって、pZW-ADC9、すなわちdarAおよびdarEのみを有する構築物を作製した。この実験は、darBCDが無くても、DARはなおも産生され得ることを示した。さらに、DARは、細胞の外部で検出された。
【0047】
輸送体コード遺伝子darBCDが異種DAR発現にとって必須であるか否か、または前駆体ペプチドをコードするdarAおよびラジカルSAM修飾酵素をコードするdarEで十分であるか否かを評価した。darBCDの欠失は、DAR産生を消失させなかった。しかし、収量は、輸送体遺伝子を含む構築物(pZW-ADC6)によって達成された収量よりも低かった(1.5倍)。最も興味深いことに、DARは、輸送体コード遺伝子が無い場合においても培地中にも存在した。一方、このことは、darAおよびdarEのみからなる最小のDAR BGCを明確に定義する。他方では、E. coliではDARが、特異的異種輸送体遺伝子darBCDが無くても細胞の外部に存在することが明らかとなった。
【0048】
(他の二環式ヘプタペプチドの異種発現)
上記で例示された発現構築物に基づき、ヘプタペプチドのアミノ酸を交換することができる。これは、個々のアミノ酸について特異的に行うことができ、または、ヘプタペプチドの配列を修飾するためにプライマを使用する無作為化アプローチにおいて行うことができる。したがって、特異的または縮重プライマ(例えば、所定の位置で組み込まれる任意のタンパク質形成性アミノ酸に関するトリプレットNNNまたはNNKを使用して)を、コア(=ヘプタ)ペプチドの1つまたは複数のアミノ酸を修飾するように設計した。例として、50μL規模の反応に適したPCR混合物は以下を含有した:水:34~34.5μL、DMSO:2.5μL、Q5反応緩衝液:10μL、dNTP:1μL、フォワードプライマ(100pmol/μL):0.5μL、リバースプライマ(100pmol/μL):0.5μL、鋳型DNA:0.5μL、Q5 DNAポリメラーゼ:0.5~1μL。PCRプログラムは、以下の通りであり得る:ステップ1、98℃、10分;ステップ2、98℃、10秒;ステップ3、65℃、20秒;ステップ4、72℃、7分;ステップ2~4を30サイクル;ステップ5、72℃、10分;ステップ6、4℃、∞。
【0049】
このようにして、式Iによるアミノ酸の全ての起こり得る組合せを、ヘプタペプチドに組み入れることができる。さらに、これらの誘導体はまた、式Iに従って、ハロゲン化させることができ、または二重結合の存在によって修飾することができる。
【0050】
(構造の解明)
全てのNMRデータをBruker Avance III HD 600 MHz NMR分光器(Bruker BioSpin MRI GmbH、Ettlingen、Germany)において記録した。全てのNMR実験に関して、重水(Deutero GmbH、Kastellaun、Germany)を溶媒として使用した。1H NMRスペクトルは、文献による溶媒残留ピークを基準とした。13Cスペクトルの参照には、3-トリメチルシリル-d4-プロピオン酸(TSPA)を、当業者に公知であるように外部標準として使用した。COSY(cosygpmfphpp)、TOCSY(mlevetgpおよびmlevgpph19)、1H-13C_HSQC(hsqcedetgpsisp2.3)、および1H-13C_HMBC(hmbcetgpl3nd)を含む2D実験を用いて、完全な帰属が得られた。1H-13C_HMBCスペクトルの解像度を向上するために、ノンユニフォームサンプリング(NUS)および/またはH2O抑制を用いて追加の実験を実施した。H2O抑制は、TOCSYスペクトルの記録にも適用した。NMRスペクトルの解析は、ソフトウェアTopSpin 3.6.0(Bruker BioSpin MRI GmbH、Ettlingen、Germany)を使用して実施した。
【0051】
(生合成遺伝子クラスタの同定)
コアペプチド配列WNWSKSFの直接スクリーニングを、Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)を使用して、公共のデータベースで利用可能な全てのPhotorhabdusゲノムについて行った。P. temperataでは、ダロバクチンの7アミノ酸配列は、ABC輸送体およびラジカルSAM酵素の上流の58アミノ酸をコードするオープンリーディングフレームのC末端の近くに位置し、このことはRiPPオペロンを示唆する。この推定のBGCは、他のダロバクチン産生株、例えばP. luminescens DSM-3368およびP. khanii DSM-3369においても同定された。クラスタの境界は、オペロンを含有しないP. bodeiゲノムとの比較によって決定された。さらに、darクラスタのGC含有量は、ゲノム中の他の平均GC含有量よりも明らかに低かった(32%対45%)。ダロバクチン様化合物を潜在的に産生する他の細菌種を同定するために、BLASTにおいてラジカルSAMタンパク質配列(DarE)をインプットとして使用して、相同な酵素を検索した。各ヒットのゲノムの内容を手動で分析し、ラジカルSAMタンパク質の近傍にDarA様プロペプチドが存在することを確認した。加えて、インプットとしてプロペプチドDarAを使用して検索を行ったところ、同一のヒットをもたらした。
【0052】
(ダロバクチン欠失変異体の生成および異種発現)
dar BGC(darABCDE)を、産生株Photorhabdus khanii DSM3369のゲノムから欠失させるために、プラスミドを、マーカーレスゲノム修飾を可能にする5つの断片のアセンブリによって構築した。したがって、染色体DNAを、innuprepBacteria DNA Kit(AnalytikJena、Jena、Germany)を使用して単離した。
【0053】
BGCの(i)上流の断片および(ii)下流の断片を、以下のプライマ対を使用して増幅した(サイズ約1kb)。
配列番号1:
5’-TTTGACGTTGGAGTCCACGTGTTATGGACGTGGCAAACGCGGTTCTTGAC-3’、および
配列番号2:
5’-TTGAAATATCAGGATAGCATTGCGCTCGCTCACCCCGGTCACATAGTTCG-3’、
ならびに
配列番号3:
5’-ATGCTATCCTGATATTTCAAATGCAAGTAAAATGTTTCATCATAATAACC-3’、および
配列番号4:
5’-TTCTTGACGAGTTCTTCTGAGATGGGTTGATATCCACTGATATAAATCTC-3’
(iii)Bacillus subtilis由来のR6K複製開始点(ori)、接合伝達開始点(oriT)およびレバンスクラーゼ遺伝子sacBを、以下のプライマを使用してベクターpNPTS138から一体として増幅した。
配列番号5:
5’-TCGAGCTCTAAGGAGGTTATAAAAAATGAACATCAAAAAGTTTGCAAAACAAGCA-3’、および
配列番号6:
5’-ACGTGGACTCCAACGTCAAA-3’
(iv)ベータラクタマーゼ(bla)プロモータが隣接するpKD46のアラビノース誘導型発現系を、以下のプライマを使用して増幅した。
配列番号7:
5’-ACTCTTCCTTTTTCAATATTATTGAAGCAT-3’、および
配列番号8:
5’-TGCATTTTTTATAACCTCCTTAGAGCTCGAATTCC-3’
(v)カナマイシンに対する耐性を付与するpCAP03由来のaph遺伝子を、以下のプライマを使用して増幅した。
配列番号9:
5’-TCAGAAGAACTCGTCAAGAAGGCGA-3’、および
配列番号10:
5’-TCAATAATATTGAAAAAGGAAGAGTATGATTGAACAAGATGGATTGCACG-3’
【0054】
全ての断片を、Q5 DNAポリメラーゼ(New England Biolabs、Ipswich、USA)によって増幅し、1%または2%TAEアガロースゲルによってゲル精製し、DNAをLarge Fragment DNA Recovery Kit(Zymo Research、Irvine、USA)を用いて回収した。次いで、全ての断片を、等温アセンブリによって融合し、プラスミドpNB02を生成した。アセンブリ後、E. coli WM3064細胞を、電気穿孔によってpNB02で形質転換し、正確なアセンブリを、標準的な手順に従うPCRおよび制限解析によって確証した。E. coli WM3064とP. khanii DSM3369との間の接合を、両方の株をOD600が約0.6になるまで成長させることによって、実施した。LB培地によって2回洗浄後、細胞を、E. coliとP. khaniiが1:3の比で混合し、ジアミノピメリン酸(0.3mM)を添加したLB寒天上に播種し、37℃で3時間インキュベートし、続いて0℃で一晩インキュベートした。菌叢を、LB培地に再懸濁させ、カナマイシン(50μg ml-1)を含むLB寒天上に連続希釈して播種した。カナマイシン耐性のシングルクロスオーバー接合完了体をLB培地中でOD600が約0.6になるまで成長させた。次に、SacBの発現を、アラビノース(0.2重量/体積%)を加え、続いて2時間インキュベートすることによって誘導した。
【0055】
次いで、培養物を、0.2%(重量/体積)アラビノースおよび10%スクロースを添加したLB寒天上に播種し、30℃で48時間インキュベートした。個々の単一コロニを、LBKanおよびLBAra/Suc寒天上で採取した。カナマイシンに対する感受性は、プラスミドの喪失を示し、それによりダブルクロスオーバー事象の成功を示す。クローンを採取し、以下のプライマを使用したPCRによってBGC喪失に関して分析した。
配列番号11:
5’-ATCTCCATCAAAGCGCTACC-3’、および
配列番号12:
5’-CCGCGCTGCAACTCGAAATC-3’
【0056】
ノックアウト株は、P. khanii DSM3369 ΔdarABCDEと呼ばれる。
E. coliにおけるダロバクチンA BGCの異種発現のために、また、P. khanii DSM3369 ΔdarABCDEを補完するために、発現プラスミドpNB03を使用した。プロペプチドと修飾酵素との間の制御系による問題を回避するために、全ての遺伝子間領域を除去し、遺伝子darA~darEをアラビノース誘導型araBプロモータの制御下で簡素化させて発現させた。
【0057】
pNB03は、
(i)pACYC177由来のp15A ori
(プライマ配列番号13:
5’-GGTCGACGGATCCCCGGAATAGCGGAAATGGCTTACGAAC-3’、および
配列番号14:
5’-CTCTAAGGAGGTTATAAAAAGCGGCCGCATCCCTTAACGTGAGTTTTC-3’)、
(ii)pNB02のアラビノース発現系およびカナマイシン耐性
(プライマ配列番号15:
5’-AAGCAGCTCCAGCCTACATCAGAAGAACTCGTCAAGAAGGCGA-3’、および
配列番号16:
5’-TTTTTATAACCTCCTTAGAGCTCGAATTCC-3’)、ならびに
(iii)oriTおよびpIJ773由来のアプラマイシンに対する耐性を付与するaac(3)遺伝子
(プライマ配列番号17:
5’-ATTCCGGGGATCCGTCGACC-3’、および
配列番号18:
5’-TGTAGGCTGGAGCTGCTT-3’)
の増幅によって作製された。
【0058】
次いで、全ての断片をゲル精製し、上記のようにアセンブルした。E. coli TOP10細胞を、ベクターで形質転換し、正確なアセンブリを確証した。
【0059】
dar BGCをP. khanii DSM3369 ΔdarABCDEに導入するために、
(i)pNB03を、下記プライマを使用して線形化し、
配列番号19:
5’-TCCCTTAACGTGAGTTTTCG-3’、および
配列番号20:
5’-TTTTATAACCTCCTTAGAGCTCGAA-3’
(ii)darAを、下記を使用して増幅し、
配列番号21:
5’-GCTCTAAGGAGGTTATAAAAATGCATAATACCTTAAATGAAACCGTTAAA-3’、および
配列番号22:
5’-AATAGCATTCATTTATGGCTCTCCTTTTAAATTTCCTGGAAGCTTT-3’
(iii)darB-darEを、下記を使用して増幅した。
配列番号23:
5’-AAAGCTTCCAGGAAATTTAAAAGGAGAGCCATAAATGAATGCTATT-3’、および
配列番号24:
5’-CGAAAACTCACGTTAAGGGATTACGCCGCGATGGTTTGTTTTATT-3’
【0060】
全ての断片をゲル精製し、上記のようにアセンブルした。得られたベクターpNB03-darABCDEを、E. coli TOP10細胞に移入し、正確なアセンブリを確証した。
【0061】
空のpNB03およびpNB03-darABCDEを、三親接合(triparental conjugation)によってP. khanii DSM3369 ΔdarABCDEに移入した。簡単に説明すると、P. khanii DSM3369 ΔdarABCDE、発現プラスミドを有するE. coli TOP10、およびpUB307接合ヘルパープラスミドを持つE. coli ET pUB307の間の接合を、前記のように実施した(細胞比3:1:1)。P. khanii DSM3369はもともとカルベニシリンに対して耐性であり、カナマイシン耐性pUB307はblaプロモータを欠如することから、最終選択は、カナマイシンおよびカルベニシリンを添加したLB寒天上で行った。カナマイシン耐性接合完了体を、LBKanにおいて成長させ、プラスミドを単離し、PCRによって同一性を確認した。異種発現の場合、ベクターpNB03-darABCDEを、電気穿孔によってE. coli BW25113(アラビノース非利用体)に移入した。次いで、P. khanii DSM3369 WT、P. khanii DSM3369 ΔdarABCDE+pNB03、P. khanii DSM3369 ΔdarABCDE+pNB03‐darABCDE、およびE. coli+pNB03‐darABCDEを、LBまたは0.2%(重量/体積)アラビノースを添加したLBKanにおいて5~7日間成長させ、LCMSによって分析した。
【0062】
(最小発育阻害濃度(MIC))
MICは、丸底96ウェルプレートにおいてマイクロブロス希釈アッセイによって決定した。E. coli ATCC35218、E. coli NRZ14408 KPC-2、E. coli K0416 VIM-1、E. coli Survcare 052 NDM-5、E. coli MMGI1 OXA-48、P. aeruginosa PAO 1、P. aeruginosa PAO 750、A. baumanii ATCC19606、K. pneumoniae ATCC30104、およびS. enterica ATCC13076の一晩培養物を、マクファーランド1.0に調整し、次いで、MHIIB中で5×105c.f.u.mL-1に希釈した。ダロバクチン誘導体を、64~0.03μg mL-1の範囲の12濃度で3連でスクリーニングした。同一の濃度を、ポジティブコントロールとしてリファンピシン、テトラサイクリン、およびゲンタマイシンについて試験した。テトラサイクリン耐性E. coli株(NRZ14408、K0416およびMMGI1)およびE. coli Survcare 052については、テトラサイクリンをコリスチン希釈系列(16~0.007μg mL-1)に置き換えた。
【0063】
標準的な抗生物質またはダロバクチンを添加していない細菌懸濁液をネガティブコントロールとして使用した。インキュベーション(18時間、180rpm、37℃、85%r.H.)後、細胞の成長を、マイクロプレート分光光度計を使用し600nmでの混濁度を測定することによって決定した。MICは、ネガティブコントロールと比較して少なくとも85%の成長阻害が測定された最小濃度として定義された。
【0064】
(発明の請求項)
本発明は、互いに密接に関連するいくつかの態様を含む。特許請求の範囲は、二環式ヘプタペプチド、その製造および医薬製剤、それぞれの医薬組成物におけるAPIとしての使用を包含する。「医薬製剤」および「医薬組成物」という表現は、本明細書において同義語として使用される。このように本発明は、以下も含む:
【0065】
請求項1:式Iの二環式ヘプタペプチド、
【化3】
および/またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、互変異性体または水和物であって、
式中、
- R
1、R
2、R
3、R
4が、互いに独立して、H、-CH
3、-CH
2-CH
2-CH
2-NH-C(NH)(NH
2)、-CH
2-CO-NH
2、-CH
2-CO
2H、-CH
2-SH、-CH
2-CH
2-CO
2H、-CH
2-CH
2-CO-NH
2、(1H-イミダゾール-4-イル)-メチル、ハロゲン化(1H-イミダゾール-4-イル)-メチル、-CH(CH
3)(C
2H
5)、-CH
2-CH(CH
3)
2、-CH
2-CH
2-CH
2-CH
2NH
3、-CH
2-CH
2-S-CH
3、-CH
2-C
6H
5、ハロゲン化-CH
2-C
6H
5、(1H-インドール-3-イル)-メチル、ハロゲン化(1H-インドール-3-イル)-メチル、(4-ヒドロキシフェニル)-メチル、ハロゲン化(4-ヒドロキシフェニル)-メチル、-CH-(CH
3)
2、1-ヒドロキシ-エチル、ヒドロキシ-メチル、sec-ブチル、1-アセトアミド、1-チオアセトアミド、-CH
2-CH
2-NH-(C=NH)-NH
2、ベンジル、ハロゲン化ベンジル、-CH
2-CH
2-CH
2-NH-(C=NH)-NH
2を含むリストから選択され;
- Xが、Xの任意の位置において、Xの他の任意の位置とは独立して、OまたはSのいずれかであり;
- R
5が、メチルスルホニル、p-トルエンスルホニルを含むリストから選択され;
- R
6が、メチルスルホニル、p-トルエンスルホニル、-(C=NH)-NH
2を含むリストから選択され;
- Z
1、Z
2が、それぞれ二重結合または単結合であり、ただし
a)Z
1およびZ
2がいずれも単結合であるか、または
b)それらのうちの一方のみが単結合であると同時に他方が二重結合であり、ここで、
i)Z
1が単結合であり、Z
2が二重結合であるか、または
ii)Z
2が単結合であり、Z
1が二重結合である;
- Y
1が、3,7-インドリレンまたはハロゲン化3,7-インドリレンであり;
- Y
2が、3,6-インドリレン、1,4-フェノキシレン、ハロゲン化3,6-インドリレン、ハロゲン化1,4-フェノキシレンのリストから独立して選択され;
- nが、1または2である、
二環式ヘプタペプチド。
【0066】
請求項2:ダロバクチンである、請求項1に記載の二環式ヘプタペプチド。
【0067】
請求項3:請求項1に記載の二環式ヘプタペプチドを製造する方法であって、
i)二環式ヘプタペプチドを産生する微生物を使用し、二環式ヘプタペプチドおよび微生物細胞を含有する発酵ブロスを提供する発酵ステップであって、前記微生物が、Photorhabdus spp.、Photorhabdus laumondii、Photorhabdus khanii、Pseudoalteromonas spp.、Pseudoalteromonas luteoviolacea、Pseudoalteromonas luteoviolacea、Yersinia spp.、Escherichia spp.、Vibrio sppを含む微生物のリストから選択される、発酵ステップ;
ii)発酵ブロスを、沈降および/または遠心分離および/またはろ過によって、微生物細胞および/または微生物細胞の破片を含有する不溶性部分と、二環式ヘプタペプチドを含有する溶液とに分離する分離ステップであって、微生物細胞が、沈降および/または遠心分離および/またはろ過を発酵ブロスに適用する前に破壊されているか、または破壊されていない、分離ステップ;
iii)先の分離ステップii)から得られた溶液内に含有される二環式ヘプタペプチドを精製し、精製された二環式ヘプタペプチドの溶液を提供する精製ステップ
を含む、方法。
【0068】
請求項4:請求項3に記載の二環式ヘプタペプチドを製造する方法であって、請求項3の精製ステップiii)が、
a)請求項3のステップii)から得られた溶液を減圧下での凍結乾燥および/または蒸留によって乾燥させ、残渣を提供するステップ、
b)先のステップa)の残渣をアルコールで洗浄し、洗浄した残渣を乾燥させ、乾燥させた残渣を脱イオン水に溶解し、二環式ヘプタペプチドの粗抽出物を提供するステップ、
c)先のステップb)の粗抽出物の不溶性部分を、沈降および/またはろ過および/または遠心分離によって除去し、固体を含まない粗抽出物を提供するステップ、
d)先のステップc)から得られた固体を含まない粗抽出物を、クロマトグラフィによって精製し、それにより二環式ヘプタペプチドの純粋な溶液を提供するステップ
を含む、方法。
【0069】
請求項5:請求項3に記載の二環式ヘプタペプチドを製造する方法であって、請求項3の精製ステップiii)が、
a)請求項3のステップii)から得られた溶液を、二環式ヘプタペプチドが疎水性相互作用材料に吸着されるように、該疎水性相互作用材料と接触させるステップ、
b)残りの透明な溶液を疎水性相互作用材料から分離し、吸着した二環式ヘプタペプチドがロードされた疎水性相互作用材料を水で洗浄するステップ、
c)二環式ヘプタペプチドを、水と有機溶媒の混合物によって疎水性相互作用材料から溶出させるステップであって、有機溶媒が、MeOH、MeCN、THF、アセトン、エタノール、プロパノールを含むリストから選択され、水と有機溶媒の混合物が、0.001重量%から1重量%までの間の量の酸を含有してもよく、または含有しなくてもよい、ステップ、
d)ステップc)から得られた溶出液を濃縮し、真空を適用することによって有機溶媒を除去し、水溶液を、二環式ヘプタペプチドがカチオンイオン交換材料に吸着されるように、強カチオンイオン交換材料と接触させるステップ、
e)二環式ヘプタペプチドがロードされたカチオンイオン交換材料を、0.001重量%から1重量%までの間の濃度を有する酸で洗浄するステップ、
f)pH5~pH11のpH値を有する水性緩衝溶液を適用することによって二環式ヘプタペプチドを溶出させ、二環式ヘプタペプチドを含有する分画を収集するステップ、
g)ステップf)の分画から得られた二環式ヘプタペプチドを、ステップa)に記載される様式と同一の様式で疎水性相互作用材料に吸着させるステップ、
h)二環式ヘプタペプチドを、H2Oと有機溶媒の勾配によって溶出させるステップであって、有機溶媒が、MeOH、MeCN、THF、アセトン、エタノール、プロパノールを含むリストから選択される、ステップ、
i)H2Oと有機溶媒の勾配を用いたHPLCを適用することによって、ステップh)から得られた二環式ヘプタペプチドを含有する分画を精製するステップであって、有機溶媒が、MeOH、MeCN、THF、アセトン、エタノール、プロパノールを含むリストから選択される、ステップ
を含む、方法。
【0070】
請求項6:請求項3に記載の二環式ヘプタペプチドまたは請求項4に記載の二環式ヘプタペプチドまたは請求項5に記載の二環式ヘプタペプチドが、化学修飾によってさらに処理される、請求項3から5のいずれか一項に記載の方法。
【0071】
請求項7:化学修飾が、二環式ヘプタペプチドを、ローソン試薬または塩化トシルまたは塩化メシルと反応させることである、請求項6に記載の二環式ヘプタペプチドを製造する方法。
【0072】
請求項8:グラム陰性菌によって引き起こされる哺乳類における感染症を処置するための医薬組成物であって、治療有効量の請求項1に記載の二環式ヘプタペプチド、または、その薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは立体異性体を含む、医薬組成物。
【0073】
請求項9:少なくとも1つの薬学的に許容される担体、賦形剤、または希釈剤をさらに含む、請求項8に記載の医薬組成物。
【0074】
請求項10:局所投与、全身投与、非経口投与、皮下投与、または経皮投与、直腸投与、経口投与、膣内投与、鼻腔内投与、気管支内投与、眼内投与、耳内投与、静脈内投与、筋肉内投与、または腹腔内投与の形態である、請求項8から9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【0075】
請求項11:細菌感染症に罹っている哺乳類に投与され哺乳類に有益な効果を提供するために十分な頻度で十分な期間にわたって、哺乳類に医薬組成物を投与することを含む、請求項8から10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【0076】
請求項12:細菌感染症に罹っている哺乳類に投与され、細菌感染症が、グラム陰性菌の 少なくとも1つのタイプ/株を伴う感染症である、請求項8から10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【0077】
請求項13:細菌感染症に罹っている哺乳類に投与される、請求項8から10のいずれか一項に記載の医薬組成物であって、細菌感染症が、Pseudomonas aeruginosa、Klebsiella pneumoniae、Acinetobacter baumannii、Neisseria gonorrhoeae、Chlamydia trachomatis、Shigella sonnei、Salmonella enterica Typhimurium LT2、Enterobacter cloacae、Bifidobacterium longum、Bacteroides fragilis、Lactobacillus reuteri、Enterococcus faecalisおよびYersinia pestis、Pseudomonas、fluorescens、Pseudomonas acidovorans、Pseudomonas alcaligenes、Pseudomonas putida、Stenotrophomonas maltophilia、Burkholderia cepacia、Aeromonas hydrophilia、Escherichia coli、Citrobacter freundii、Salmonella typhimurium、Salmonella typhi、Salmonella paratyphi、Salmonella enteritidis、Shigella dysenteriae、Shigella flexneri、Enterobacter aerogenes、Enterobacter spp.、Klebsiella oxytoca、Serratia marcescens、Francisella tularensis、Morganella morganii、Proteus mirabilis、Proteus vulgaris、Providencia alcalifaciens、Providencia rettgeri、Providencia stuartii、Acinetobacter calcoaceticus、Acinetobacter haemolyticus、Yersinia enterocolitica、Yersinia pseudotuberculosis、Yersinia intermedia、Bordetella pertussis、Bordetella parapertussis、Bordetella bronchiseptica、Haemophilus influenzae、Haemophilus parainfluenzae、Haemophilus haemolyticus、Haemophilus parahaemolyticus、Haemophilus ducreyi、Pasteurella multocida、Pasteurella haemolytica、Branhamella catarrhalis、Helicobacter pylori、Campylobacter fetus、Campylobacter jejuni、Campylobacter coli、Borrelia burgdorferi、Vibrio cholerae、Vibrio parahaemolyticus、Legionella pneumophila、Listeria monocytogenes、Neisseria meningitidis、Kingella、Moraxella、Gardnerella vaginalis、Bacteroides distasonis、Bacteroides 3452Aホモロジー群、Bacteroides vulgatus、Bacteroides ovalus、Bacteroides thetaiotaomicron、Bacteroides uniformis、Bacteroides eggerthii、Bacteroides splanchnicusを伴う感染症である、医薬組成物。
【0078】
1.グラム陰性菌によって引き起こされる感染症に罹っている脊椎動物またはヒトにおいて使用するためのダロバクチンまたはその誘導体を含む医薬製剤。
【0079】
2.グラム陰性菌が、Pseudomonas aeruginosa、Klebsiella pneumoniae、Acinetobacter baumannii、Neisseria gonorrhoeae、Chlamydia trachomatis、Shigella sonnei、Salmonella enterica Typhimurium LT2、Enterobacter cloacae、Bifidobacterium longum、Bacteroides fragilis、Lactobacillus reuteri、Enterococcus faecalis、およびYersinia pestisの群から選択される、請求項1に記載の医薬製剤。このリストは、本発明の範囲を制限しないと意味される。
【0080】
3.脊椎動物が、鳥類、魚類、両生類、は虫類、および哺乳類を含む、請求項1または2に記載の医薬製剤。
【国際調査報告】