(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-24
(54)【発明の名称】赤外線イメージング・システム及び関連する方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/64 20060101AFI20230117BHJP
G02B 21/06 20060101ALI20230117BHJP
G02B 21/26 20060101ALI20230117BHJP
G02B 21/36 20060101ALI20230117BHJP
G02B 21/30 20060101ALI20230117BHJP
【FI】
G01N21/64 F
G02B21/06
G02B21/26
G02B21/36
G02B21/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022529562
(86)(22)【出願日】2020-11-20
(85)【翻訳文提出日】2022-07-06
(86)【国際出願番号】 CA2020051584
(87)【国際公開番号】W WO2021097577
(87)【国際公開日】2021-05-27
(32)【優先日】2019-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CA
(32)【優先日】2019-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509252173
【氏名又は名称】フォトン イーティーシー.インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リウー、デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】オヤマ、ダニエル
【テーマコード(参考)】
2G043
2H052
【Fターム(参考)】
2G043AA04
2G043BA16
2G043CA05
2G043DA06
2G043EA01
2G043HA01
2G043HA02
2G043HA05
2G043JA03
2G043KA01
2G043KA09
2G043LA03
2H052AA09
2H052AB01
2H052AC04
2H052AC13
2H052AC18
2H052AC34
2H052AD18
2H052AD20
2H052AD24
2H052AD34
2H052AF14
(57)【要約】
蛍光マーカを有する試料をイメージングするための赤外線イメージング・システム及び方法が提供される。システムは、試料接触面を照明するように構成された光源を含む。光源は、第1及び第2の照明モジュールを含み、各照明モジュールは、対応する第1及び第2の赤外線照明ビームを試料ホルダに向かって投射するように構成されており、赤外線照明ビームは、矩形で且つ均質なパワー・プロファイルを有する照明領域を画定するようにイメージング平面において相互作用する。システムは、モータ・アセンブリ及び光学機械メカニズムに動作可能に接続された制御ユニットも含む。制御ユニットは、エンクロージャ内の複数の位置のいずれかにおいて試料平面とイメージング平面とを重ね合わせるように構成されている。システムは、試料平面がイメージング平面と重ね合わされたとき、イメージング平面における試料の照明によって試料の蛍光マーカによって放出された光を受け取るように構成された検出器を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光マーカを有する試料をイメージングするための赤外線イメージング・システムであって、前記赤外線イメージング・システムは、
エンクロージャと、
前記エンクロージャに取り付けられた試料ホルダであって、試料接触面及び試料平面を有する試料ホルダと、
前記試料接触面を照明するように構成された光源であって、前記光源は、第1の照明モジュール及び第2の照明モジュールを含み、各照明モジュールは、対応する第1及び第2の赤外線照明ビームを前記試料ホルダに向かって投射するように構成されており、前記第1及び第2の赤外線照明ビームは、矩形を有し且つ均質なパワー・プロファイルを有する照明領域を画定するようにイメージング平面において相互作用する、光源と、
前記試料ホルダを前記エンクロージャ内の複数の位置において移動させるように構成されたモータ・アセンブリと、
前記照明領域を前記エンクロージャ内で移動させるために前記第1及び第2の赤外線照明ビームを配向するように構成された光学機械メカニズムと、
前記モータ・アセンブリ及び前記光学機械メカニズムに動作可能に接続された制御ユニットであって、前記エンクロージャ内の前記複数の位置のいずれかにおいて前記試料平面と前記イメージング平面とを重ね合わせるように構成されている制御ユニットと、
前記試料平面が前記イメージング平面と重ね合わされたとき、前記イメージング平面における前記試料の照明により前記試料の前記蛍光マーカによって放出された光を受け取るように構成された検出器と、を含む、赤外線イメージング・システム。
【請求項2】
前記エンクロージャが、内部容積を画定しており、前記エンクロージャが、前記内部容積の内容物にアクセスするためのドア又は引出しをさらに含む、請求項1に記載の赤外線イメージング・システム。
【請求項3】
前記試料平面は、前記試料接触面から垂直方向にずれている、請求項1又は2に記載の赤外線イメージング・システム。
【請求項4】
前記試料平面は、前記試料の厚さ又はその数分の一に対応する値だけ前記試料接触面から垂直方向にずれている、請求項3に記載の赤外線イメージング・システム。
【請求項5】
前記試料平面は、前記試料接触面と一致している、請求項1又は2に記載の赤外線イメージング・システム。
【請求項6】
前記試料接触面は、黒色粉末被覆鋼板から形成されている、請求項1から5までのいずれか一項に記載の赤外線イメージング・システム。
【請求項7】
1つ又は複数の麻酔ポートをさらに含み、前記1つ又は複数の麻酔ポートは、前記エンクロージャ内への麻酔ガスの注入及び前記エンクロージャからの前記麻酔ガスの収集のために構成されている、請求項1から6までのいずれか一項に記載の赤外線イメージング・システム。
【請求項8】
前記試料ホルダと熱接触した発熱体をさらに含む、請求項1から7までのいずれか一項に記載の赤外線イメージング・システム。
【請求項9】
前記試料ホルダに取り付けられたバリアをさらに含み、前記バリアは、前記試料平面から上方へ突出している、請求項1から8までのいずれか一項に記載の赤外線イメージング・システム。
【請求項10】
前記第1の照明モジュール及び前記第2の照明モジュールのそれぞれが、1つ又は複数のレーザ・ダイオードを含む、請求項1から9までのいずれか一項に記載の赤外線イメージング・システム。
【請求項11】
前記第1及び第2の赤外線照明ビームは、約750nm、約808nm又は約980nmの波長を有する、請求項1から10までのいずれか一項に記載の赤外線イメージング・システム。
【請求項12】
前記照明領域が、約1mW/mm
2~約3mW/mm
2にわたる範囲に含まれる照明パワー密度を有する、請求項1から11までのいずれか一項に記載の赤外線イメージング・システム。
【請求項13】
前記第1及び第2の照明モジュールのそれぞれが、ケーラー積分器を含む、請求項1から12までのいずれか一項に記載の赤外線イメージング・システム。
【請求項14】
前記第1及び第2の照明モジュールが、前記検出器の両側に対称的に配置されている、請求項1から13までのいずれか一項に記載の赤外線イメージング・システム。
【請求項15】
前記第1及び第2の照明モジュールが、較正データに基づいて較正され、前記較正データは、前記第1及び第2の照明モジュールの複数の配向を、前記第1及び第2の赤外線照明ビームの対応する複数の照明パワー密度と、前記エンクロージャ内の前記試料ホルダの対応する複数の位置とにマッピングする、請求項1から14までのいずれか一項に記載の赤外線イメージング・システム。
【請求項16】
前記検出器が、InGaAsカメラを含む、請求項1から15までのいずれか一項に記載の赤外線イメージング・システム。
【請求項17】
前記検出器が、
センサと、
前記蛍光マーカによって放出された光を収集し且つ平行にするように構成された第1の光学回路と、
前記センサ上に前記試料の画像を形成するように構成された第2の光学回路と、を含む、請求項1から16までのいずれか一項に記載の赤外線イメージング・システム。
【請求項18】
前記検出器に接続された電動式焦点メカニズムをさらに含み、前記電動式焦点メカニズムは、前記第1の光学回路と前記第2の光学回路との間の距離を変化させるように構成されている、請求項17に記載の赤外線イメージング・システム。
【請求項19】
前記第1の光学回路と前記第2の光学回路との間に位置決めされたフィルタ・ホイールをさらに含み、前記フィルタ・ホイールは複数のフィルタを含む、請求項17又は18に記載の赤外線イメージング・システム。
【請求項20】
蛍光マーカを有する試料をイメージングする方法であって、
試料接触面及び試料平面を有する試料ホルダ上に前記試料を提供することと、
矩形で且つ均質なパワー・プロファイルを有する照明領域を画定するようにイメージング平面において相互作用する第1及び第2の赤外線照明ビームを第1及び第2の照明モジュールによって前記試料に向かって生成することとパワー・プロファイル、
前記試料ホルダを前記エンクロージャ内の複数の位置において移動させることと、
前記エンクロージャ内で前記照明領域を移動させるために前記第1及び第2の赤外線照明ビームを配向することと、
前記試料平面及び前記イメージング平面を前記エンクロージャ内の前記複数の位置のいずれかにおいて重ね合わせることと、
前記試料平面が前記イメージング平面と重ね合わされたとき、前記イメージング平面において前記照明ビーム光による前記試料の照明により前記試料の前記蛍光マーカによって放出された光を収集することと
を含む、方法。
【請求項21】
前記試料平面を前記試料接触面から垂直方向にずらすことをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記試料平面が、前記試料の厚さ又はその数分の一に対応する値だけ前記試料接触面から垂直方向にずらされている、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記試料平面が、前記試料接触面と一致している、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記試料ホルダを加熱することをさらに含む、請求項20から23までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記第1及び第2の赤外線照明ビームが、約750nm、約808nm又は約980nmの波長を有する、請求項20から24までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
ケーラー積分器によって前記第1及び第2の赤外線照明ビームのそれぞれを調整することをさらに含む、請求項20から25までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
較正データに基づいて前記第1及び第2の照明モジュールを較正することをさらに含み、前記較正データは、前記第1及び第2の照明モジュールの複数の配向を、前記第1及び第2の赤外線ビームの対応する複数の照明パワー密度と、前記エンクロージャ内の前記試料ホルダの対応する複数の位置とにマッピングする、請求項20から26までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記蛍光マーカによって放出された前記光を第1の光学回路によって収集し且つ平行にすることと、
第2の光学回路によってセンサ上に前記試料の画像を形成することと
をさらに含む、請求項20から27までのいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野は、一般に、イメージング・システム及び関連する方法に関し、より詳細には、赤外線イメージング・システム及び関連する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの前臨床イメージング・システムが市場で利用可能である。非限定的な例は、Perkin ElmerからのIVIS(登録商標) Spectrum in vivo imaging system、Spectral Instruments ImagingからのLago、LiCorからのPearl Trilogy(登録商標)、UVPからのiBox(登録商標)及びViberからのNewtonを含む。これらの商業的に利用可能なソリューションは、典型的には、シリコンベースの検出器に依存し、その結果、用途に関して本質的に制限されている。なぜならば、それらは、電磁スペクトルの可視部分から電磁スペクトルの第1の近赤外ウィンドウ(NIR-I)部分まで(すなわち、約400nm~約1000nm)しかイメージングすることができないからである。
【0003】
生体組織の光吸収及び散乱は、電磁スペクトルの可視又はNIR-I部分と比較して、電磁スペクトルの第2の近赤外ウィンドウ(NIR-II、すなわち、約1000nm~約1700nm)部分において著しく弱く、これは、小型動物がNIR-IIイメージング・ウィンドウにおいてより透過性であることを意味する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、上記に示した課題の少なくとも幾つかを解決又は少なくとも軽減する技術、方法、システム及びデバイスが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
1つの態様によれば、蛍光マーカを有する試料をイメージングするための赤外線イメージング・システムが提供される。赤外線イメージング・システムは、エンクロージャ、試料ホルダ、光源、モータ・アセンブリ、光学機械メカニズム、制御ユニット及び検出器を含む。試料ホルダは、エンクロージャに取り付けられている。試料ホルダは、試料接触面及び試料平面を有する。光源は、試料接触面を照明するように構成されており、第1の照明モジュール及び第2の照明モジュールを含み、各照明モジュールは、対応する第1及び第2の赤外線照明ビームを試料ホルダに向かって投射するように構成されている。第1及び第2の赤外線照明ビームは、矩形で且つ均質なパワー・プロファイルを有する照明領域を画定するようにイメージング平面において相互作用する。モータ・アセンブリは、試料ホルダをエンクロージャ内の複数の位置において移動させるように構成されている。光学機械メカニズムは、エンクロージャ内で照明領域を移動させるために第1及び第2の赤外線照明ビームを配向するように構成されている。制御ユニットは、モータ・アセンブリ及び光学機械メカニズムに動作可能に接続されており、制御ユニットは、エンクロージャ内の複数の位置のいずれかにおいて試料平面とイメージング平面とを重ね合わせるように構成されている。検出器は、試料平面がイメージング平面と重ね合わされたとき、イメージング平面における試料の照明により試料の蛍光マーカによって放出される光を受信するように構成されている。
【0006】
幾つかの実施例において、エンクロージャが、内部容積を画定しており、エンクロージャが、内部容積の内容物にアクセスするためのドア又は引出しをさらに含む。
【0007】
幾つかの実施例において、試料平面は、試料接触面から垂直方向にずれている。
【0008】
幾つかの実施例において、試料平面は、試料の厚さ又はその数分の一に対応する値だけ試料接触面から垂直方向にずれている。
【0009】
幾つかの実施例において、試料平面は、試料接触面と一致している。
【0010】
幾つかの実施例において、試料接触面は、黒色粉末被覆鋼板から形成されている。
【0011】
幾つかの実施例において、赤外線イメージング・システムは、1つ又は複数の麻酔ポートをさらに含み、前記1つ又は複数の麻酔ポートは、エンクロージャ内に麻酔ガスを噴射するように且つエンクロージャから麻酔ガスを収集するように構成されている。
【0012】
幾つかの実施例において、赤外線イメージング・システムは、試料ホルダと熱接触した発熱体をさらに含む。
【0013】
幾つかの実施例において、赤外線イメージング・システムは、試料ホルダに取り付けられたバリアをさらに含み、バリアは、試料平面から上方へ突出している。
【0014】
幾つかの実施例において、第1の照明モジュール及び第2の照明モジュールのそれぞれが、1つ又は複数のレーザ・ダイオードを含む。
【0015】
幾つかの実施例において、第1及び第2の赤外線照明ビームは、約750nm、約808nm又は約980nmの波長を有する。
【0016】
幾つかの実施例において、照明領域が、約1mW/mm2~約3mW/mm2にわたる範囲に含まれる照明パワー密度を有する。
【0017】
幾つかの実施例において、第1及び第2の照明モジュールのそれぞれが、ケーラー積分器を含む。
【0018】
幾つかの実施例において、第1及び第2の照明モジュールが、検出器の両側に対称的に配置されている。
【0019】
幾つかの実施例において、第1及び第2の照明モジュールが、較正データに基づいて較正され、較正データは、第1及び第2の照明モジュールの複数の配向を、第1及び第2の赤外線照明ビームの対応する複数の照明パワー密度と、エンクロージャ内の試料ホルダの対応する複数の位置とにマッピングする。
【0020】
幾つかの実施例において、検出器が、InGaAsカメラを含む。
【0021】
幾つかの実施例において、検出器が、
センサと、
蛍光マーカによって放出された光を収集し且つ平行にするように構成された第1の光学回路と、
センサ上に試料の画像を形成するように構成された第2の光学回路と、を含む。
【0022】
幾つかの実施例において、赤外線イメージング・システムは、検出器に接続された電動式焦点メカニズムをさらに含み、電動式焦点メカニズムは、第1の光学回路と第2の光学回路との間の距離を変化させるように構成されている。
【0023】
幾つかの実施例において、赤外線イメージング・システムは、第1の光学回路と第2の光学回路との間に位置決めされたフィルタ・ホイールをさらに含み、フィルタ・ホイールは複数のフィルタを含む。
【0024】
別の態様によれば、蛍光マーカを有する試料をイメージングする方法が提供される。方法は、試料接触面及び試料平面を有する試料ホルダ上に試料を提供することと、矩形で且つ均質なパワー・プロファイルを有する照明領域を画定するようにイメージング平面において相互作用する第1及び第2の赤外線照明ビームを第1及び第2の照明モジュールによって試料に向かって生成することと、パワー・プロファイル試料ホルダをエンクロージャ内の複数の位置において移動させることと、エンクロージャ内で照明領域を移動させるために第1及び第2の赤外線照明ビームを配向することと、試料平面及びイメージング平面をエンクロージャ内の複数の位置のいずれかにおいて重ね合わせることと、試料平面がイメージング平面と重ね合わされたとき、イメージング平面における照明ビーム光による試料の照明により試料の蛍光マーカによって放出された光を収集することと、を含む。
【0025】
幾つかの実施例において、方法は、試料平面を試料接触面から垂直方向にずらすことをさらに含む。
【0026】
幾つかの実施例において、試料平面が、試料の厚さ又はその数分の一に対応する値だけ試料接触面から垂直方向にずらされている。
【0027】
幾つかの実施例において、試料平面が、試料接触面と一致している。
【0028】
幾つかの実施例において、方法は、試料ホルダを加熱することをさらに含む。
【0029】
幾つかの実施例において、第1及び第2の赤外線照明ビームが、約750nm、約808nm又は約980nmの波長を有する。
【0030】
幾つかの実施例において、方法は、ケーラー積分器によって第1及び第2の赤外線照明ビームのそれぞれを調整することをさらに含む。
【0031】
幾つかの実施例において、方法は、較正データに基づいて第1及び第2の照明モジュールを較正することをさらに含み、較正データは、第1及び第2の照明モジュールの複数の配向を、第1及び第2の赤外線ビームの対応する複数の照明パワー密度と、エンクロージャ内の試料ホルダの対応する複数の位置とにマッピングする。
【0032】
幾つかの実施例において、方法は、
蛍光マーカによって放出された光を第1の光学回路によって収集し且つ平行にし、
第2の光学回路によってセンサ上に試料の画像を形成することと、をさらに含む。
【0033】
本明細書に説明された方法及びシステムのその他の特徴及び利点は、添付の図面を参照してその好ましい実施例を読むことによりさらによく理解されるであろう。上記概要及び以下の詳細な説明において説明される特定の特徴は、特定の実施例又は態様に関して説明されている場合があるが、別段の定めがない限りこれらの特定の特徴を互いに組み合わせることができることに留意すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】蛍光マーカを有する試料をイメージングするための赤外線イメージング・システムの1つの実施例を示す図である。
【
図2】照明モジュールの1つの実施例を示す図である。
【
図4】試料ホルダが、初期又は第1の位置(画像の左側の部分)にあり、次いで、後続又は第2の位置(画像の右側の部分)へ移動させられる1つの実例を示す図である。
【
図5】赤外線イメージング・システムに含まれた構成要素のうちの幾つかの間の動作可能接続を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本説明において、図面における同じ特徴には同じ参照符号が付与されている。図面を雑然とさせるのを回避するために、幾つかの要素は、既に前の図面において示されている場合には、示されていない場合がある。本実施例の要素及び構造を明瞭に示すことに重点が置かれるため、図面の要素は必ずしも縮尺通りに示されていないことも理解すべきである。さらに、別の要素に対する1つの要素の位置及び/又は配向を示す位置的記述子は、本明細書では説明の容易さ及び明瞭性のために使用されている。別段の定めがない限り、これらの位置的記述子は、図面に関して解釈されるべきであり、限定するものと考えられるべきではない。より具体的には、このような空間的に相対的な用語は、図面に例示された配向に加えて、本実施例の使用又は動作における異なる配向を包含することが意図されていることが理解されよう。
【0036】
別段の定めがない限り、「接続された」及び「結合された」という用語、並びにそれらの派生語及び変化形は、本明細書では、2つ以上の要素の間の、直接的又は間接的な、あらゆる構造的又は機能的接続又は結合を指す。例えば、要素の間の接続又は結合は、機械的、光学的、電気的、熱的、論理的、又はそれらのあらゆる組合せであってよい。
【0037】
「a」、「an」及び「one」という用語は、本明細書では「少なくとも1つ」を意味するものと定義され、すなわち、これらの用語は、別段の定めがない限り、複数のアイテムを排除しない。
【0038】
例示的な実施例の特徴の値、条件又は特性を修飾する「実質的に」、「概して」及び「約」などの用語は、その値、条件又は特性が、意図された用途のためのこの例示的な実施例の適切な動作のために許容される公差、又は実験的誤差の許容される範囲内に当てはまる公差内で定義されることを意味すると理解すべきである。特に、「約」という用語は、概して、述べられた値と等しい(例えば、同じ又は同様の機能又は結果を有する)と当業者が考える数字の範囲を指す。幾つかの例において、「約」という用語は、述べられた値の±10パーセントの変動を意味する。本明細書で使用される全ての数値は、別段の定めがない限り、「約」という用語によって修飾されると仮定されることに留意されたい。
【0039】
同様に、「重ね合わせ」、「重ね合わせる」、「重ね合わされた」及び「重ね合わさっている」という用語は、本明細書では、2つの要素が同じ位置であるか又は空間的整列の観点から互いの所定の公差内にあるという条件を指すことが意図される。すなわち、これらの用語は、2つの要素を「正確に」又は「同一に」重ね合わせるのみならず、2つの要素を「実質的に」、「ほぼ」又は「主観的に」重ね合わせること、及び複数の重ね合わせ可能性の中でより高い又は最良の重ね合わせを提供することも包含することを意味する。
【0040】
本説明において、「基づく」という表現は、「少なくとも部分的に基づく」ことを意味することが意図されており、すなわち、この表現は、「のみに基づく」又は「部分的に基づく」を意味することができ、したがって、限定された意味で解釈されるべきではない。より具体的には、「基づく」という表現は、「依存する」、「代表する」、「示す」、「関連する」又は類似の表現を意味するものとして理解することもできる。
【0041】
本説明において、「光」及び「光学的」という用語、並びにそれらの変化形及び派生語は、あらゆる適切な領域の電磁スペクトルにおける放射を指すために使用される。したがって、「光」及び「光学的」という用語は、可視光に限定されず、赤外領域及び紫外領域も含むことができ、それらに限定されない。例えば、幾つかの実装において、本技術は、約400nm~約1700nm、例えば、1000nm~1700nmの範囲の波長を有する電磁信号とともに使用することができる。しかしながら、この範囲は、例示の目的のみで提供されており、本技術の幾つかの実装は、この範囲以外で動作してもよい。また、当業者は、スペクトル範囲の観点での紫外、可視、赤外及び近赤外範囲の定義、並びにそれらの間の分割ラインは、技術分野又は考慮されている定義に応じて変化することができ、本技術の用途の範囲を限定することを意味したものではないことを認めるであろう。
【0042】
本説明において、「照明ビーム・スペクトル」という表現、その同義語又は派生語は、照明ビームのスペクトル・パワー分布を広く指すために使用される。照明スペクトルは、電磁スペクトルのスペクトル領域にわたる単位面積当たり及び単位波長又は周波数当たりの放射されたパワーの分布を表すことができる。
【0043】
本説明は、概して、前臨床イメージング目的のための赤外線イメージング・システム、関連する方法及び技術に関する。現在の説明の文脈において、赤外線イメージング・システムは、時には、「IR VIVO機器」と呼ぶことができる。「前臨床イメージング」という表現は、本明細書では、生きた動物(例えば、マウス、ラットなどの小型動物)の視覚化及び検査を可能にする技術として理解されることに留意されたい。前臨床イメージング技術は、研究目的(例えば、薬品開発)のために特に有用である可能性がある。
【0044】
以下でより詳細に説明される赤外線イメージング・システムは、蛍光ベースイメージング機器である。このような機器は、概して、前臨床イメージング・システムの観点から小型動物であることができる試料内の蛍光プローブを励起させるために励起光を使用する光源を含む。機器は、これらのプローブによって生成された蛍光信号を検出するように構成された検出器も含む。例えば、イメージング・レンズ、スペクトル・フィルタ、二色性素子(例えば、出力信号を、2つの異なるカメラによって検出されてもよい2つのスペクトル帯に分離させるための)及びその他の光学構成要素などの、それらに限定されない、その他の光学構成要素を試料と検出器との間に設けることができる。
【0045】
ここで図面を参照して、赤外線イメージング・システム及び方法の異なる実施例を提供する。
【0046】
図1を参照すると、試料22をイメージングするための赤外線イメージング・システム20が示されている。留意すべきことに、試料22は、1匹又は複数匹の動物を含んでもよい。したがって、「試料」という表現は、1匹の動物のみを指すことに限定されず、限定的であることは意図されていない。蛍光マーカ(示されていない)は、試料22に提供されている。例えば、限定的ではないが、蛍光マーカは、イメージングされる小型動物内に注入することができる。「蛍光マーカ」及び「蛍光プローブ」という表現は、説明を通じて互換的に使用されることに留意されたい。蛍光マーカの非限定的な例は、量子ドット(例えば、PbS,Ag
2S)、インドシアニン・グリーン(ICG)及びIR800色素分子などの有機分子、単層カーボン・ナノチューブ、希土類元素ナノ粒子などである。
【0047】
エンクロージャ及び試料ホルダ
赤外線イメージング・システム20は、エンクロージャ24(時には「チャンバ」と呼ばれる)を含む。エンクロージャ24は、内部容積26を画定する壁部を含み、内部容積26内には、赤外線イメージング・システム20のその他の構成要素のうちの少なくとも幾つかを取り付けることができる。エンクロージャ24は、概して、例えば、限定的ではないが、前臨床試験をセットアップする又は試料22を準備するために必要とされる場合に内部容積26(すなわち、その内容物)にアクセスするためのドア又は引出し(
図1には示されていない)を含む。幾つかの実施例において、エンクロージャ24全体は、光を漏らさないことができる。幾つかの実施例において、ドア又は引出しは光を漏らさない。エンクロージャ24には、例えば、限定的ではないが、以下でより詳細に説明するように、麻酔ガス・マニホールド、ガス管及び熱プレートなどの構成要素が具備されてよいことに留意されたい。
【0048】
赤外線イメージング・システム20は、試料ホルダ28も含む。試料ホルダ28は、エンクロージャ24内に位置決めされており、試料接触面30を有する。試料接触面30は、試料平面32を有する。幾つかの実装において、試料平面32は、イメージングされる動物の厚さ(又は高さ)に対応する値又はイメージングされる動物の厚さ(又は高さ)の数分の一だけ、試料接触面30から垂直方向にずれていてもよいことに留意されたい。代替的に、試料平面32は、試料接触面30と一致又は実質的に一致していてもよい。試料平面32が試料22又は少なくともその一部と交差するように、試料22を試料接触面30上に配置することができる。以下でより詳細に説明するように、試料ホルダ28は、3つの次元、例えば、x軸、y軸及びz軸に沿った並進によって調節することができる。したがって、試料平面32の位置は、変更又は調節することができる。
【0049】
幾つかの実施例において、試料接触面30は、黒色粉末被覆鋼板から形成されている。その他の実施例では、試料接触面30は、アルミニウムから形成することができる。代替的に、試料接触面30は、低い反射及び赤外線における蛍光を有し且つエタノール溶液又は漂白剤によって清掃するのが比較的容易である限り、前臨床試験又は関連する医学的用途のための適切な特性を有するあらゆるタイプの材料(例えば、陽極処理アルミニウム、加熱ガラスなど)から形成することができる。試料接触面30を形成する材料は、様々な化学的特性(例えば、組成)及び/又は物理的特性(例えば、光学的及び磁気的特性)によって選択することができることに留意されたい。
【0050】
赤外線イメージング・システム20は、概して、典型的な前臨床機器において見られる構成要素を含む。例えば、赤外線イメージング・システム20は、概して、1つ又は複数の麻酔ポートを含んでもよい。幾つかの実施例において、赤外線イメージング・システム20は、3つの麻酔ポートを含み、これは、3つの試料22を試料接触面30に配置することができることを意味する。麻酔ポートの数は3とは異なってもよく、赤外線イメージング・システム20が3つの麻酔ポートを含んでもよいという事実は、例示目的のみで機能し、したがって、限定的であると考えられるべきではないことに留意されたい。例えば、赤外線イメージング・システム20は、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ又はそれ以上の麻酔ポートを含んでもよい。同様に、試料22を形成する動物の数も3とは異なってもよい。例えば、限定的ではなく、試料22は、1、2、3、4、5匹又はそれ以上の動物を含んでもよい。幾つかの実施例において、麻酔ポートの数は、試料22を形成する動物の数と同じであってもよい。その他の実施例において、麻酔ポートの数は、試料22を形成する動物の数に比例している又は少なくとも関連していてもよい。例えば、限定的ではなく、麻酔ポートの数と、試料22を形成する動物の数との比は、1:1、1:2、1:3又は麻酔ポートがそれらの機能を達成することを可能にするあらゆるその他の比であってもよい。これに関して、麻酔ポートは、麻酔ガスをエンクロージャ24に入れる/麻酔ガスをエンクロージャ24から出すために、麻酔ガスの注入及び収集を可能にすることに留意されたい。麻酔ガスは、概して、試料22を、試料22のイメージングの間不動に保つために有用である。
【0051】
赤外線イメージング・システム20は、熱プレート又は同様のデバイスも含んでよい。熱プレートは、内部容積26全体又はその一部のみ(例えば、試料接触面30)を任意の温度に維持することができることに留意されたい。熱プレートは、概して、試料22を任意の温度に維持するために有用である。実際、一般的に小型動物又は哺乳類の場合、麻酔下では平均体温が低下する傾向がある。したがって、熱プレートは、この結果を軽減することができる。赤外線イメージング・システム20は、試料ホルダ28に又は試料ホルダ28上に取り付けられたバリア又はフェンスも含むことができる。この特徴は、麻酔下にある間に試料22(例えば、小型動物)が覚醒するという稀な機会において、又は麻酔プロセスにおいて失敗が生じた場合、特に有用であることができる。
【0052】
試料ホルダ28の寸法及び幾何学的構成は変化することができる。しかしながら、試料ホルダ28の寸法は、好ましくは、以下でより詳細に説明するように、試料ホルダ28がイメージング・システム20の視野に実質的に一致するようになっている。実装の1つの実例において、視野は、以下の寸法である:約15.6cm×約12.5cm。
【0053】
幾つかの実施例において、試料ホルダ28は、下側プラットフォーム及び上側プラットフォームを含むことができる。下側プラットフォームは、エンクロージャ24の全フロア(すなわち、幅及び深さ)にわたっていることができる。上側プラットフォームは、より小さくてもよく、以下の寸法を有することができる:300mm×250mm。上側プラットフォームは下側プラットフォーム上に取り付けることができる。幾つかの実施例において、上側プラットフォームは、二次元並進ステージによって下側プラットフォームに機械的に接続することができる。本説明の文脈において、二次元ステージは、X軸及びY軸に沿って上面を並進させ、試料22を側方へ、これらの2つの軸に沿って且つカメラの視野に対して移動させるように構成されている。
【0054】
光源
赤外線イメージング・システム20は、試料接触面30を照明するように構成された光源34を含む。光源34は、第1の照明モジュール36及び第2の照明モジュール38を含む。第1及び第2の照明モジュール36,38はそれぞれ、対応する第1及び第2の赤外線照明ビーム40,42を試料ホルダ30に向かって投射するように構成されている。第1及び第2の照明モジュール36,38はそれぞれ、比較的高パワーの赤外線照明ビームを生成することができる。第1及び第2の照明モジュール36,38はそれぞれ、1つ又は複数のレーザ・ダイオードを含んでもよく、各レーザ・ダイオードは、対応する光学特性(例えば、強度及び/又はスペクトル・プロファイル)に関連していることに留意すべきである。比較的高いパワーは、検出されるのに十分に強い蛍光信号(約0.05~約3mW/mm2)を生成するために有用である。電磁スペクトルのNIR-II部分における蛍光マーカは、典型的には、電磁スペクトルの可視部分において使用することができる蛍光マーカに対して比較的低い効率を有することに留意すべきである。電磁スペクトルのNIR-II部分において動作するように構成された検出器は、電磁スペクトルの可視部分において動作するように構成された検出器に対して概してより感度が低いことにも留意すべきである。第1及び第2の照明モジュール36,38によって放出された赤外線照明ビーム40,42の波長を選択する又は変化させることができることに留意すべきである。選択は、手動(例えば、ユーザによって)又は自動(例えば、各モジュール36,38は順次に且つ/又は自動的に赤外線照明波長を選択することができる)であってもよい。この特徴は、異なる性質の蛍光マーカを励起するために有用であってもよい。異なる波長を有する照明は、概して、同時にではなく順次に行われることに留意されたい。使用されてもよい波長の非限定的な例は、750nm、808nm、860nm及び980nmである。
【0055】
第1及び第2の赤外線照明ビーム40,42は、照明領域46を画定するようにイメージング平面44において相互作用する。イメージング平面44は、X軸及びY軸に沿って延びている。照明領域46は、矩形で且つ均質なパワー・プロファイル(時には、「照明プロファイル」又は「パワー密度プロファイル」と呼ばれる)を有し、やはりX軸及びY軸に沿って延びている。照明領域におけるパワー又は照明密度は、第1及び第2の赤外線照明ビーム40,42の累積パワーを表している。幾つかの実施例において、パワー又は照明密度は、約20Wの合計パワーの場合、約1mW/mm2である。これらの値は、生きた組織のためのパワー又は照明密度の限界に比較的近いが、それよりも低い(すなわち、約3mW/mm2)。
【0056】
当業者は、既存の可視前臨床イメージャにおける照明が概してハロゲン白色ランプによって提供されることに留意されたい。これらのランプは、典型的には、励起フィルタリングのためにフィルタ(例えば、フィルタ・ホイール)と光学的に結合されている。既存の可視前臨床イメージは、LED源及び/又はレーザ源も使用することができる。これらの場合、照明密度は、本明細書に説明された技術に含まれる第1及び第2の照明モジュール36,38を使用して得ることができる照明密度よりも小さい。実際、本開示に提示された技術によって達成可能な照明密度は、ハロゲン及びLEDデバイスに依存する既存の技術よりも1桁大きい。
【0057】
第1及び第2の照明モジュール36,38に含まれた各レーザ・ダイオードによって生成された光は、第1及び第2の照明モジュール36,38に含まれた光学構成要素によって光学的に構造化される。これは、試料22上に、実質的に均質な矩形を有する照明領域46の画定を可能にする。照明領域46は、概して、赤外線イメージング・システム20の視野と同じ寸法を有することに留意されたい。当業者は、試料22の全ての部分が同じ照明密度を受け取ることを保証するために均質な照明が重要であることを理解するであろう。例えば、3匹のマウスがイメージングされ、視野内に配置される場合、イメージング結果を互いに比較することができるように、全てのマウスは同じパワー密度で照明されなければならない。レーザパワーを浪費することを回避するために、照明領域46を赤外線イメージング・システム20の視野に制限することも有利である。実際、レーザパワーが失われ過ぎると、よりパワフルなレーザが必要とされ、これは、システムのコストを増大させ、また、第1及び第2の照明モジュール36,38の熱管理の複雑さを増大させる。さらに、第1及び第2の赤外線照明ビーム40,42の一部を投射することは、検出器によって検出する可能性がある、赤外線イメージング・システム20における望ましくない迷光を付加することに寄与し、赤外線イメージング・システム20の全体的な感度を低下させることに留意されたい。
【0058】
ここで
図2を参照すると、第1及び第2の照明モジュール36,38は、レーザ・ダイオードによって放出された光を、ケーラー積分器設計を使用して構造化する。
図2において、第1の照明モジュール36のみが示されているが、説明は第2の照明モジュール38にも当てはまることが容易に理解されるであろう。ケーラー積分器設計は技術分野において知られており、コリメーション・レンズ48、第1のフライアイ・レンズ50、第2のフライアイ・レンズ52、投影レンズ54及びフォールド・ミラー55の使用を含む。これらの要素は、それらの間に光路を規定しており、光路は光軸56に沿って延びている。幾つかの実施例において、投影レンズ54は、光学アセンブリ(図示せず)で代用してもよい。光学アセンブリは、複数の光学素子を含んでもよい。このような光学素子は、レンズ、ミラー、フィルタ、及びその他の適切な反射的、屈折的及び/又は回折的光学構成要素を含むが、これらに限定されない。
【0059】
例示した実施例において、第1及び第2の照明モジュール36,38は、試料22の上方から光(すなわち、第1及び第2の赤外線照明ビーム40,42)を投射するように位置決めされている。ここで再び
図1を参照すると、第1及び第2の照明モジュール36,38は検出器58の両側に配置されていることが分かる。幾つかの実施例において、第1及び第2の照明モジュール36,38は、検出器58の両側に対称的に配置されている。しかしながら、第1及び第2の照明モジュール36,38は、保護の範囲から逸脱することなく、検出器に関した他の位置に配置されてもよい且つ/又は検出器に関して非対称に位置決めされてもよいことが理解されるであろう。
【0060】
第1及び第2の照明モジュール36,38、ひいては第1及び第2の赤外線照明ビーム40,42は、概して、Z軸に対して平行ではなく、Z軸に対して僅かな角度を形成している。試料22が複数の動物(すなわち、2匹以上の動物)を含む場合、動物が互いの上に影を投じるのを防止するために、第1及び第2の照明ビームと、Z軸との間の角度ができるだけ小さく保たれることことに留意すべきである。
【0061】
以下でより詳細に説明するように、第1及び第2の照明モジュール36,38を回転させることができ、これにより、例えば試料ホルダ28が上方及び/又は下方へ移動するときに、赤外線イメージング・システム20の視野の中心又はその近くへの第1及び第2の赤外線照明ビーム40,42の投射が可能になる。第1及び第2の照明モジュール36,38の回転は、照明領域46において均質な照明を保つことを可能にする。
【0062】
モータ・アセンブリ
赤外線イメージング・システム20に含まれた構成要素のうちの幾つかの間の動作可能接続を示すブロック図が、
図5に示されている。赤外線イメージング・システム20は、試料ホルダをエンクロージャ24内の複数の位置において移動させるように構成されたモータ・アセンブリ60を含む。モータ・アセンブリ60は、1つ又は複数のモータを含むことができる。モータは、あらゆるタイプの設計のものであることができる。
【0063】
幾つかの実施例において、試料ホルダ28は、モータ・アセンブリ60によって2つの軸(例えば、X軸及びY軸)に沿って移動又は並進させることができる。モータ・アセンブリ60は、試料ホルダ28をX軸及びY軸において順次に又は同時に並進させるように構成することができる。例えば、試料ホルダ28は、X軸に対して平行な方向に、次いで、Y軸に対して平行な方向に、又はその逆の順序で順次に並進させることができる。代替的に、試料ホルダ28は、X軸及びY軸に沿って同時に調節可能であるように構成することができる。モータ・アセンブリ60は、各軸に沿った試料ホルダ28の変位を監視又は記録することができることに留意されたい。監視又は記録された情報は、較正データに含まれる。
【0064】
幾つかの実施例において、モータ・アセンブリ60は2つのモータを含んでもよく、モータのそれぞれは、それぞれの方向(例えば、X軸又はY軸)に沿って試料ホルダ28を移動させるように構成されている。
【0065】
試料ホルダ28は、Z軸において移動又は並進させることもできる。試料ホルダ28の変位は、概して、試料ホルダ28がエンクロージャ24においてX軸及びY軸において整列又は位置決めされた後に行われる。この方向に沿った試料ホルダ28の移動は、1つ又は複数のモータによって提供することができる。
【0066】
モータ・アセンブリ60によって試料ホルダ28を移動させることにより、「ワイド・ビュー・モード」から「クロース・ビュー・モード」へ移行させることができることが認められるであろう。これらの2つのビュー・モードの切り替えは、試料22が複数の動物を含む場合に有用である場合がある。例えば、限定的ではなく、モータ・アセンブリ60は、試料22の全ての動物を含む第1の視野から、試料22を形成する1匹の動物のみ又はその一部を含む第2の視野へ移行することを可能にしてもよい。幾つかの実施例において、視野は、試料22を形成する各動物の一部を同時にイメージングするように調節されてもよく、これは、動物の特定の部分の比較特徴付けに関連して有用である場合がある。
【0067】
幾つかの実施例において、モータ・アセンブリ60はマニュアル式である。これらの実施例において、試料ホルダ28の並進は2つのステップを含む。第1のステップにおいて、上側プラットフォームがスライドするのを防止する、ばね負荷された、通常オンのブレーキが解放される。ブレーキは、ボタンを押下することによって瞬間的に、又は同じボタンを押下し且つロックすることによって永久的に解放させることができる。ブレーキが解放されると、上側プラットフォームは、比較的滑らかに「横方向」(例えば、X軸に沿って)及び「前後」(例えば、Y軸に沿って)に押すことができる。その他の実施例において、モータ・アセンブリ60は自動である。
【0068】
光学機械メカニズム
図5を参照すると、赤外線イメージング・システム20は、エンクロージャ24内で照明領域46を移動させるために第1及び第2の赤外線照明ビーム40,42を配向するように構成された光学機械メカニズム62を含む。第1及び第2の赤外線照明ビーム40,42を配向することは、概して、第1及び第2の照明モジュール36,38の空間的構成を(回転、並進又はそれらの組合せによって)変化させることを含む。より具体的には、モータ・アセンブリ60と組み合わされた、光学機械メカニズム62による第1及び第2の赤外線照明ビーム40,42の配向の調節は、照明領域46のサイズを制御するために使用することができる。
【0069】
幾つかの実施例において、ここで
図2を参照すると、第1及び第2の照明モジュール36,38を配向することは、光軸56を中心にそれらを回転させることを含む。初期位置から後続位置に向かって照明モジュール36,38を回転させることにより、第1及び第2の赤外線照明ビーム40,42が第1のイメージング平面(モジュール36,38の初期位置に関連する)から後続イメージング平面(モジュール36,38の後続位置に関連する)へ相互作用し、
図4を参照してより詳細に説明するように、やはり実質的に矩形で且つ実質的に均質なパワー・プロファイルを有する後続照明領域を画定することになる。第1のイメージング平面及び後続平面は、概して、Z軸に沿って同じ位置にはないことに留意されたい。例えば、後続イメージング平面は、概して、第1のイメージング平面よりも高い又は低い。したがって、第1及び第2の照明モジュール36,38を配向することにより、エンクロージャ24内のイメージング平面44の位置(例えば、Z軸に沿って)が変化することになる。その他の実施例において、フォールド・ミラー55のみを回転させることができる。その配向に加えて、第1及び第2の赤外線照明ビーム40,42のパワーも変化(すなわち、修正又は変更)することができることに留意されたい。照明領域46をエンクロージャ内で移動させるための第1及び第2の赤外線照明ビーム40,42の配向の変化又は調節は、概して、「照明変調」と呼ばれる。
【0070】
第1及び第2の照明モジュール36,38は概して較正されることに留意すべきである。較正データは、第1及び第2の照明モジュール36,38の複数の配向と、第1及び第2の赤外線照明ビーム40,42の対応する光学特性との間のマッピングを含むが、これに限定されない。したがって、エンクロージャ24における試料ホルダ28の位置が分かると、この情報が較正データに含まれるので、又は較正データに基づく計算、例えば、補間、補外及びその他の技術によって、達成される第1及び第2の照明モジュール36,38の配向を決定することができる。補間は、直線、多項式(ラグランジュ、ニュートンなど)、スプラインなどであってよい。1つの例において、較正ステップは、エンクロージャ24におけるあらゆる位置において、すなわち、試料ホルダ28と検出器58との間の距離が変化したとしても、約1mW/mm2~約3mW/mm2に含まれる比較的一定のパワー密度を維持するために有用である。より具体的には、第1及び第2の赤外線照明ビーム40,42の配向の変化により、少なくとも部分的に、ほぼ又は実質的に、エンクロージャ24内のあらゆる位置において矩形で且つ均質なパワー・プロファイルを保つことができる。幾つかの実施例において、較正データは、さらに、パワー密度を一定に又は所望の値に維持するために提供又は生成される必要がある照明パワーについての情報を含んでもよい。留意すべきことには、パワー密度は、試料ホルダ28が上昇するにつれて、すなわち、試料ホルダ28と第1及び第2の照明モジュール36,38との間の距離の場合、概して増大する。試料ホルダ28が上昇するにつれて、矩形で且つ均質な照明はより小さくなる。幾つかの実施例において、赤外線照明ビーム40,42のパワー密度は、照明領域のパワー密度を比較的一定に維持するために制御されてもよい。幾つかの実施例において、照明モジュール36,38のパワー密度は一定であってもよく、これは、プラットフォームが上昇したとき、照明領域のパワー照明密度を増大させることができる。
【0071】
制御ユニット
図5に示したように、赤外線イメージング・システム20は制御ユニット64を含む。制御ユニット64は、モータ・アセンブリ60及び光学機械メカニズム62に動作可能に接続されている。制御ユニット64は、エンクロージャ24内の複数の位置のいずれかにおいて試料平面32とイメージング平面44とを重ね合わせるように構成されている。試料平面32及びイメージング平面44が重ね合わされると、2つの平面は、Z軸に沿って実質的に同じ位置になる。試料平面32が試料接触面30から垂直方向にずれている場合、例えば、試料22の厚さ(又はその数分の一)に適応することが要求される場合、制御ユニット64は、この垂直方向ずれに従って試料平面32及びイメージング平面44を位置決めするように構成されてもよいことに留意されたい。幾つかの実施例において、垂直方向のずれの値は、赤外線イメージング・システム20によって自動的に決定されてもよい。その他の実施例において、垂直方向のずれの値は、ユーザによって提供されてもよく、例えば、手動で提供されてもよい。さらに他の実施例において、垂直方向のずれの値は、データベースから得られてもよい。このようなデータベースは、例えば、限定することなく、試料22を形成する動物の厚さの平均値をエンクロージャ24内の試料ホルダ28の対応する位置に関連付けてもよい。
【0072】
例えば、限定的ではなく、制御ユニット64は、少なくとも1つのプロセッサと、データストレージシステム(揮発性及び不揮発性メモリ及び/又はストレージ素子を含む)と、少なくとも1つの入力デバイスと、少なくとも1つの出力デバイスとを含む、プログラマブル・コンピュータによって具体化することができる。プログラマブル・コンピュータは、幾つかの実施例において、モータ・アセンブリ60及び光学機械メカニズム62を制御することを可能にするコンピュータ・プログラムを実行することができる。制御ユニット64は、エンクロージャ24における試料ホルダ28の位置を追跡し続け、監視し又は記録するように構成されている。より具体的には、制御ユニット64は、エンクロージャ24における試料ホルダ28の位置を入力として受け取り、較正データに基づいて、第1及び第2の照明モジュール36,38へ送信される信号を出力する。
【0073】
ここで
図4を参照すると、試料ホルダ28が初期又は第1の位置(図の左側部分)において出発し、次いで、後続又は第2の位置(図の右側部分)へ移動させられる実例が示されている。
【0074】
初期位置において、試料ホルダ28は、検出器58と試料ホルダ28との間の距離が(Z軸において)約400mmであるように位置決めされている。したがって、試料平面32は、検出器58から約400mmだけ離されている。初期位置において、第1及び第2の照明モジュール36,38は、照明領域46が試料22をカバーするように配向されている。イメージング平面44及び試料平面32は、重ね合わされている。
【0075】
後続位置において、試料ホルダ28は、検出器58と試料ホルダ28との間の距離が(Z軸において)約200mmであるように位置決めされており、試料ホルダ28が検出器58へ近づけられたことを意味する。したがって、試料平面32’は、検出器58から約200mmだけ離されている。後続位置において、第1及び第2の照明モジュール36,38の配向は、初期位置に対して変化させられている。
図4の非限定的な実施例に示された後続位置において、第1及び第2の照明モジュール36,38は、照明領域46’が試料22をカバーするように配向されていることに留意されたい。イメージング平面44’及び試料平面32’は、重ね合わされている。
【0076】
照明領域46の形状及び寸法は、第1及び第2の照明モジュール36,38の配向の変化及び/又はエンクロージャ24における試料ホルダ28の位置の変化に応じて変化してもよい。
【0077】
検出器
上述のように、赤外線イメージング・システム20は、検出器58を含む(例えば、
図1及び
図3参照)。検出器58は、試料平面32がイメージング平面44と重ね合わされたときイメージング平面46における第1及び第2の赤外線照明ビーム40,42光によって試料22を照明することによって試料22の蛍光マーカによって放出される光を受け取るように構成されている。示された実施例において、検出器58は、InGaAsカメラを含む。このようなカメラは、試料22内から発生する蛍光の比較的正確な位置特定を可能にし、生物学者のための貴重な情報を生じる。
【0078】
図3により詳しく示したように、検出器58は、フィルタ・ホイール70によって分離された2つの光学回路66,68を含む。検出器58は、センサ72も含む。
【0079】
第1の光学回路66は、試料22から出た光を収集し、それをほぼ平行にする。次いで、結果として生じた光は、ダブルフィルタ・ホイール70を通過する。フィルタ・ホイール70は、概して、複数のフィルタを含む。幾つかの実施例において、フィルタ・ホイール70は、バンドパスフィルタ及びエッジパスフィルタを含む。幾つかの実施例において、第1の光学回路66は、1つ又は複数の検出レンズ及び/又はあらゆるその他の光学素子を含んでもよい。例えば、1つの実施例において、光学回路66は、2つのレンズを含んでもよい。第2の光学回路68は、センサ72上に試料22の画像を形成する。幾つかの実施例において、第2の光学回路68は、1つ又は複数のレンズ及び/又はあらゆるその他の光学素子を含んでもよい。幾つかの実施例において、検出器58には、電動式焦点メカニズム74が設けられている。電動式焦点メカニズム74は、第2の光学回路68とセンサ72との間に位置決めされており、焦点を調節するために両者の間の距離を変化させることができる。
【0080】
フィルタ・ホイール70に含まれたフィルタは、典型的には、誘電干渉フィルタであり、そのための伝送の波長は角度に依存する。幾つかの実施例において、第1の光学回路66の光学設計は、光が、できるだけ垂直入射(すなわち、Z軸に対して平行)に近い状態でフィルタ・ホイール70を通過するようになっている。試料22における異なるフィールド・ポイントから来る光は、異なる角度でフィルタに衝突する。したがって、垂直入射に近い状態で光がフィルタを通過することを可能にするように第1の光学回路66の光学設計を最適化することは、検出される波長が、視野における全てのポイントで近くなることを保証する。
【0081】
2つの光学回路66,68の間でのフィルタ・ホイール70の位置決めは、迷光が垂直角度から離れてフィルタに衝突することも防止し、これは、望ましくない光がフィルタによってブロックされないという結果を生じ、センサ72に形成される画像における望ましくないアーチファクトを生じる。
【0082】
作業距離(すなわち、試料22とセンサ72との間の距離)を変化させ且つ赤外線イメージング・システム20の焦点(例えば、電動化された焦点)を調節することは、モータ・アセンブリ60及び光学機械メカニズム62の動作と組み合わせることにより、約156mm×約125mmの寸法の領域(すなわち、照明領域46)から約50mm×約40mmの寸法の領域(すなわち、照明領域46)までをイメージングすることを可能にし、これは、検出器58の視野を制御することができることを意味する。第1の構成において、最大3匹のマウス(又はその他の類似の試料22)をイメージングすることができる。第2の構成において、1匹のマウス(又は類似の試料22)の身体の約3分の1を(200mmのZ距離で)50mm×40mmの領域においてイメージングすることができる。
【0083】
照明変調、X-Y並進及びFOV調節の組合せにより、赤外線イメージング・システムは、視野が約50mm×40mmであるとき、画素当たり80μmの空間的サンプリングで、156mm×125mm×50mmの三次元空間におけるどこでも試料22の画像をキャプチャすることができる。
【0084】
方法
実施例によれば、蛍光マーカを有する試料をイメージングする方法も提供される。
【0085】
方法は、試料を試料ホルダに提供するステップを含むことができ、試料ホルダは、試料接触面及び試料平面を有する。
【0086】
方法は、第1及び第2の照明モジュールによって第1及び第2の赤外線照明ビームを試料に向かって生成するステップを含むことができ、第1及び第2の赤外線照明ビームは、矩形で且つ均質なパワー・プロファイルを有する照明領域を画定するようにイメージング平面において相互作用する。
【0087】
方法は、試料ホルダをエンクロージャ内の複数の位置において移動させるステップを含むことができる。
【0088】
方法は、エンクロージャ内で照明領域を移動させるために第1及び第2の赤外線照明ビームを配向するステップを含むことができる。
【0089】
方法は、試料平面及びイメージング平面をエンクロージャ内の複数の位置のいずれかにおいて重ね合わせるステップを含むことができる。
【0090】
方法は、試料平面がイメージング平面と重ね合わされたとき、イメージング平面において照明ビーム光による試料の照明により試料の蛍光マーカによって放出された光を収集する又は受け取るステップを含むことができる。
【0091】
幾つかの実施例において、方法は、試料平面を試料接触面から垂直方向にずらすことをさらに含む。
【0092】
幾つかの実施例において、試料平面は、試料の厚さ又はその数分の一に対応する値だけ試料接触面から垂直方向にずらされている。
【0093】
幾つかの実施例において、試料平面は、試料接触面と一致している。
【0094】
幾つかの実施例において、方法は、試料ホルダを加熱することをさらに含む。
【0095】
幾つかの実施例において、第1及び第2の赤外線照明ビームが、約750nm、約808nm又は約980nmの波長を有する。
【0096】
幾つかの実施例において、方法は、ケーラー積分器によって第1及び第2の赤外線照明ビームのそれぞれを調整することをさらに含む。
【0097】
幾つかの実施例において、方法は、較正データに基づいて第1及び第2の照明モジュールを較正することをさらに含み、較正データは、第1及び第2の照明モジュールの複数の配向を、第1及び第2の赤外線ビームの対応する複数の照明パワー密度と、エンクロージャ内の試料ホルダの対応する複数の位置とにマッピングする。
【0098】
幾つかの実施例において、方法は、蛍光マーカによって放出された光を第1の光学回路によって収集し且つ平行にし、第2の光学回路によってセンサ上に試料の画像を形成することをさらに含む。
【0099】
複数の代替的な実施例及び実例が本明細書において説明及び解説されている。上記で説明した実施例は、例示的であることのみが意図されている。当業者は、個々の実施例の特徴、並びに構成要素の可能な組合せ及び変化形を認識するであろう。当業者は、さらに、実施例のいずれも、本明細書に開示された他の実施例とのあらゆる組合せにおいて提供することができることを認識するであろう。したがって、本実例及び実施例は、全ての観点から実例であり、限定的ではないと考えるべきである。したがって、特定の実施例が解説及び説明されているが、添付の請求項に規定された範囲から著しく逸脱することなく、多くの変更が想起される。
【国際調査報告】