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特表2023-502489ピンリフティングシステムの監視、ポジション決定およびポジショニングのための方法
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  • 特表-ピンリフティングシステムの監視、ポジション決定およびポジショニングのための方法 図1
  • 特表-ピンリフティングシステムの監視、ポジション決定およびポジショニングのための方法 図2
  • 特表-ピンリフティングシステムの監視、ポジション決定およびポジショニングのための方法 図3a
  • 特表-ピンリフティングシステムの監視、ポジション決定およびポジショニングのための方法 図3b
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-24
(54)【発明の名称】ピンリフティングシステムの監視、ポジション決定およびポジショニングのための方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/677 20060101AFI20230117BHJP
【FI】
H01L21/68 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022529638
(86)(22)【出願日】2020-11-18
(85)【翻訳文提出日】2022-05-20
(86)【国際出願番号】 EP2020082563
(87)【国際公開番号】W WO2021099403
(87)【国際公開日】2021-05-27
(31)【優先権主張番号】102019008104.8
(32)【優先日】2019-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】593030945
【氏名又は名称】バット ホールディング アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アレハンドロ マルツィノット
(72)【発明者】
【氏名】アドリアン エシェンモーザー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ホーファー
(72)【発明者】
【氏名】フランティシェク バロン
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ツィッカー
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131AA03
5F131CA09
5F131DA02
5F131DA33
5F131DA42
5F131EA14
5F131EA23
5F131EB01
5F131EB72
5F131EB78
5F131KA03
(57)【要約】
ピンリフティング装置(10)の状態監視方法であって、ピンリフティング装置(10)は、プロセス雰囲気領域(P)内で基板を移動およびポジショニングするように設計されている。ピンリフティング装置(10)は、カップリング部材(18)と、電動モータを備えた駆動ユニット(12)とを有しており、この駆動ユニット(12)は、カップリング部材(18)が、下げられた通常ポジションから固有の有効ポジションへと、およびその逆に変位可能であるように、設計されカップリング部材(18)と共働する。この監視方法は、電動モータに加わるモータ電流に関する目下のモータ電流情報を継続的に取得するステップと、目下のモータ電流情報を目標電流情報と比較するステップと、この比較に基づき状態情報を導出するステップとを有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピンリフティング装置(10、30)の、特にピンリフタの、状態監視方法であって、
前記ピンリフティング装置(10、30)は、真空プロセスチャンバ(4)によって提供可能なプロセス雰囲気領域(P)内で基板(1)を、特にウェハまたはリングを、移動およびポジショニングするように設計されており、前記ピンリフティング装置(10、30)は、
・前記基板(1)との接触および前記基板(1)の支持のために構成されている支持ピン(7、19)を収容するように設計されたカップリング部材(18、38)と、
・電動モータを備えた駆動ユニット(6、12、32)と、
を有し、
該駆動ユニット(6、12、32)は、以下のように設計されて前記カップリング部材(18、38)と共働し、すなわち前記カップリング部材(18、38)は、変位軸線(A)に沿って直線的に、
特に、前記支持ピン(7、19)を該支持ピン(7、19)の意図されたとおりの作用に関して実質的に無効な状態で提供するための、下げられた通常ポジションから、
特に、前記支持ピン(7、19)による前記基板(1)の受け止めおよび/または準備という意図されたとおりの作用を提供するための、固有の有効ポジションへと、
およびその逆に、変位可能であり、
当該監視方法は、
・前記電動モータに加わるモータ電流に関する目下のモータ電流情報を継続的に取得するステップと、
・前記目下のモータ電流情報を目標電流情報と比較するステップと、
・前記比較に基づき状態情報を導出するステップと、
を有する、
ピンリフティング装置(10、30)の状態監視方法。
【請求項2】
ピンリフティング装置(10、30)の、特にピンリフタの、カップリング部材(18、38)のためのポジション決定方法であって、
前記ピンリフティング装置(10、30)は、真空プロセスチャンバ(4)に配置されており、前記真空プロセスチャンバ(4)によって提供可能なプロセス雰囲気領域(P)内で基板(1)を、特にウェハまたはリングを、移動およびポジショニングするように設計されており、前記ピンリフティング装置(10、30)は、
・支持ピン(7、19)を備えた前記カップリング部材(18、38)と、
・電動モータを備えた駆動ユニット(6、12、32)と、
を有し、
該駆動ユニット(6、12、32)は、以下のように設計されて前記カップリング部材(18、38)と共働し、すなわち前記カップリング部材(18、38)は、変位軸線(A)に沿って直線的に、
特に、前記支持ピン(7、19)を該支持ピン(7、19)の意図されたとおりの作用に関して実質的に無効な状態で提供するための、下げられた通常ポジションから、
特に、前記支持ピン(7、19)による前記基板(1)の受け止めおよび/または準備という意図されたとおりの作用を提供するための、固有の有効ポジションへと、
およびその逆に、変位可能であり、
当該ポジション決定方法は、
・前記真空プロセスチャンバ(4)内に基準基板を準備するステップと、
・請求項1記載の方法を実施するステップと、
・前記変位軸線(A)に沿って前記カップリング部材(18、38)を動かすステップと、
・前記支持ピン(7、19)を前記基準基板と接触した状態に移すステップと、
・目下のモータ電流情報を目標電流情報と継続的に比較することに基づき、前記変位軸線(A)に沿った前記カップリング部材(18、38)のポジションを表す接触ポイントを導出するステップと、
を有する、
ピンリフティング装置(10、30)のカップリング部材(18、38)のためのポジション決定方法。
【請求項3】
・前記目下のモータ電流情報の継続的な捕捉に基づきモータ電流推移を導出し、該モータ電流推移に基づき前記状態情報を導出する、
かつ/または
・前記モータ電流情報を、前記変位軸線(A)に沿った前記カップリング部材(18、38)のポジショニングに関するポジション情報に相関づけ、このようにして供給可能なポジション相関されたモータ電流もしくはモータ電流推移に基づき、前記状態情報を導出する、
請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記状態情報は、基板支持体(8)および/または支持ピン(7、19)への、もしくは基板支持体(8)および/または支持ピン(7、19)からの、前記基板(1)の付着および/または解離に関する情報を有する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
ピンリフティング装置(10、30)の、特にピンリフタの、カップリング部材(18、38)のポジショニング方法であって、
前記ピンリフティング装置(10、30)は、真空プロセスチャンバ(4)に配置されており、前記真空プロセスチャンバ(4)によって提供可能なプロセス雰囲気領域(P)内で基板(1)を、特にウェハまたはリングを、移動およびポジショニングするように設計されており、前記ピンリフティング装置(10、30)は、
・支持ピン(7、19)を備えた前記カップリング部材(18、38)と、
・電動モータを備えた駆動ユニット(6、12、32)と、
を有し、
該駆動ユニット(6、12、32)は、以下のように設計されて前記カップリング部材(18、38)と共働し、すなわち前記カップリング部材(18、38)は、変位軸線(A)に沿って直線的に、
特に、前記支持ピン(7、19)を該支持ピン(7、19)の意図されたとおりの作用に関して実質的に無効な状態で提供するための、下げられた通常ポジションから、
特に、前記支持ピン(7、19)による前記基板(1)の受け止めおよび/または準備という意図されたとおりの作用を提供するための、固有の有効ポジションへと、
およびその逆に、変位可能であり、
当該ポジショニング方法は、
・接触ポイントを取得するステップと、
・前記カップリング部材(18、38)が前記変位軸線に沿って前記接触ポイントに対応する接触ポジションまで変位させられるように、前記電動モータを制御するステップと、
を有する、
ピンリフティング装置(10、30)のカップリング部材(18、38)のポジショニング方法。
【請求項6】
前記接触ポイントは、
・請求項2記載の方法を先行して実施することにより規定されており、または
・前記真空チャンバ内で処理すべき基板(1)の形状および前記真空チャンバ(4)内でのポジションに基づき導出および/または規定されている、
請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記支持ピン(7、19)と前記基板(1)とを前記接触ポジションにおいて接触させ、特に前記基板(1)を前記支持ピン(7、19)により受け止める、請求項5または6記載の方法。
【請求項8】
前記状態情報に基づき、前記目下のモータ電流情報が前記目標電流情報に近づくように、特に継続的に前記目下のモータ電流情報が前記目標電流情報に割り当てられた許容範囲内に位置するまで、前記駆動ユニット(6、12、32)の制御を行う、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
ピンリフタシステム、特に、真空プロセスチャンバ(4)によって提供可能なプロセス雰囲気領域(P)内で基板(1)を、特にウェハを、移動およびポジショニングするように設計されている、ピンリフティングシステムであって、
・前記基板(1)を移動およびポジショニングするために個々に制御可能な少なくとも1つのピンリフティング装置(10、30)が設けられており、該ピンリフティング装置(10、30)は、
前記基板(1)との接触および前記基板(1)の支持のために構成されている支持ピン(7、19)を収容するように設計されたカップリング部材(18、38)と、
電動モータを備えた駆動ユニット(6、12、32)と、
を有し、
該駆動ユニット(6、12、32)は、以下のように設計されて前記カップリング部材(18、38)と共働し、すなわち前記カップリング部材(18、38)は、変位軸線(A)に沿って直線的に、
特に、前記支持ピン(7、19)を該支持ピン(7、19)の意図されたとおりの作用に関して実質的に無効な状態で提供するための、下げられた通常ポジションから、
特に、前記支持ピン(7、19)による前記基板(1)の受け止めおよび/または準備という意図されたとおりの作用を提供するための、固有の有効ポジションへと、
およびその逆に、変位可能であり、さらに
・前記駆動ユニットと接続され前記電動モータを制御するように設計された制御および処理ユニット(9)が設けられ、
前記制御および処理ユニット(9)は、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法を実施するように構成されていることを特徴とする、
ピンリフティングシステム。
【請求項10】
前記制御および処理ユニット(9)は、以下のように構成された監視機能を有しており、すなわち該監視機能が実施されると、
・前記電動モータに加わるモータ電流に関する目下のモータ電流情報が継続的に捕捉され、
・前記目下のモータ電流情報と目標電流情報との継続的な比較に基づき状態情報が導出される、
請求項9記載のピンリフティングシステム。
【請求項11】
・前記真空プロセスチャンバ(4)内に基準基板が準備されており、
・前記制御および処理ユニット(9)は、以下のように構成されたポジション決定機能を有しており、すなわち該ポジション決定機能が実施されると、
特に下げられた通常ポジションから出発し、前記変位軸線(A)に沿って前記カップリング部材(18、38)が動かされ、
該動きにより前記支持ピン(7、19)が前記基準基板と接触した状態に移され、さらに
前記目下のモータ電流情報を前記目標電流情報と継続的に比較することに基づき、前記変位軸線(A)に沿った前記カップリング部材(18、38)のポジションを表す接触ポイントが導出される、
請求項9または10記載のピンリフティングシステム。
【請求項12】
・前記カップリング部材(18、38)のためのポジショニングポイントが準備されており、
・前記制御および処理ユニット(9)は、以下のように構成されたポジショニング機能を有しており、すなわち該ポジショニング機能が実施されると、前記カップリング部材(18、38)が前記変位軸線(A)に沿って、前記ポジショニングポイントに対応する接触ポイントまで変位させられるように、前記電動モータの制御が行われる、
請求項9から11までのいずれか1項記載のピンリフティングシステム。
【請求項13】
前記カップリング部材(18、38)のための前記ポジショニングポイントは、
・請求項11記載のポジション決定機能を先行して実施することにより、接触ポイントとして導出されており、または
・前記真空チャンバ(4)内で処理すべき基板(1)の形状および前記真空チャンバ内でのポジションに基づき導出および/または確定されている、
請求項12記載のピンリフティングシステム。
【請求項14】
・前記ピンリフティングシステムは、前記基板(1)を移動およびポジショニングするために個々に制御可能な少なくとも3つのピンリフティング装置(10、30)を有しており、該ピンリフティング装置(10、30)各々は、
前記基板(1)との接触および前記基板(1)の支持のために構成されている支持ピン(7、19)を収容するように設計されたカップリング部材(18、38)と、
電動モータを備えた駆動ユニット(6、12、32)と、
を有し、
該駆動ユニット(6、12、32)は、以下のように設計されて前記カップリング部材(18、38)と共働し、すなわち前記カップリング部材(18、38)は、変位軸線(A)に沿って直線的に、
特に、前記支持ピン(7、19)を該支持ピン(7、19)の意図されたとおりの作用に関して実質的に無効な状態で提供するための、下げられた通常ポジションから、
特に、前記支持ピン(7、19)による前記基板(1)の受け止めおよび/または準備という意図されたとおりの作用を提供するための、固有の有効ポジションへと、
およびその逆に、変位可能であり、さらに
・前記制御および処理ユニット(9)は、前記駆動ユニット(6、12、32)各々と接続されており、前記電動モータを制御するように設計されており、前記ピンリフティング装置(10、30)各々のために前記監視機能もしくは前記ポジション決定機能もしくは前記ポジショニング機能を実施するように設計されており、
・前記ピンリフティング装置(10、30)各々のために前記監視機能が実施されると、状態情報が導出され、
・前記ピンリフティング装置(10、30)各々のために前記ポジション決定機能が実施されると、接触ポイントが導出され、
・前記ポジショニング機能を実施されると、各ピンリフティング装置(10、30)の前記カップリング部材(18、38)が、個々の固有の接触ポジションに変位させられる、
請求項9から13までのいずれか1項記載のピンリフティングシステム。
【請求項15】
前記ポジショニング機能が実施されると、前記カップリング部材(18、38)をそれぞれ異なるポジションに制御して変位可能であり、特に前記支持ピン(7、19)は、それぞれ異なる距離で繰り出されている、請求項14記載のピンリフティングシステム。
【請求項16】
機械可読担体に記憶されている、または電磁波によって具現化されている、コンピュータプログラム製品であって、該コンピュータプログラム製品は、
特に、請求項9から15までのいずれか1項記載のピンリフティングシステムの制御および処理ユニット(9)においてプログラムが実行されると、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法を制御もしくは実施するプログラムコードを含む、
コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロセスチャンバ内における基板を移動およびポジショニングするピンリフティングシステムのピンリフティング装置の監視、ポジション決定およびポジショニングのための方法、ならびに対応するピンリフティングシステムに関する。
【0002】
ピンリフティング装置はピンリフタとも呼ばれ、一般的にはプロセスチャンバ内で処理すべき基板を受け止め、規定どおりにポジショニングするために構想され意図されている。これらは特に真空チャンバシステムにおいて、IC、半導体、フラットパネルまたは基板の製造の分野で使用され、このような製造は、保護された雰囲気内で可能なかぎり不純物粒子が存在することなく行われなければならない。
【0003】
かかる真空チャンバシステムは特に、処理または製造すべき半導体素子または基板を収容するために設けられた真空排気可能な少なくとも1つの真空チャンバを含み、この真空チャンバは、少なくとも1つの真空チャンバ開口部を有しており、この開口部を通して半導体素子または他の基板を真空チャンバ内へ、および真空チャンバから、案内することができる。たとえば半導体ウェハまたは液晶基板のための製造施設内において、極めて敏感な半導体素子または液晶素子が順次、複数のプロセス真空チャンバを通過していき、それらの真空チャンバ内において、プロセス真空チャンバ内部に存在する部分が、それぞれ1つの処理装置によって処理される。
【0004】
かかるプロセスチャンバは少なくとも1つの切替弁を有していることが多く、この切替弁の横断面は基板およびロボットに整合されており、この切替弁を通って基板を真空チャンバ内に運び込み、必要に応じて意図された処理を行った後、取り出すことができる。別の選択肢として、たとえば第2の切替弁を設けておくことができ、この第2の切替弁を通って、処理された基板がチャンバから運び出される。
【0005】
基板たとえばウェハの案内は、たとえば相応に設計されて制御されるロボットアームによって行われ、このロボットアームは、切替弁によって提供可能なプロセスチャンバの開口部を通り抜けることができる。この場合にプロセスチャンバの装填は、ロボットアームにより基板を把持して基板をプロセスチャンバ内に運び、さらに基板をチャンバ内に規定どおりに載置することによって行われる。これに対応する手法でプロセスチャンバが空にされる。
【0006】
チャンバ内での基板の載置および基板の正確なポジショニングのためには、比較的高い精度および基板の可動性が保証されていなければならない。このためにピンリフティングシステムが使用され、これによって基板のための複数の載置ポイントが提供され、ひいては基板全体にわたる(基板の自重に基づく)負荷分散がもたらされる。
【0007】
好ましくは、受け止めポジションにピンが存在しており、このポジションに存在するピンの上にロボットが基板を載置する。別の選択肢として、基板をたとえばロボットによってリフティング装置の支持ピン上の定位置まで運び、それらのピンによって持ち上げることができる。ロボットが遠ざけられた後、基板はピンの下降によって支持体上に、たとえば電位プレート(チャック)上に、載置され、一般的には基板を支持するロボットアームが、たとえば基板の載置と同時に、チャンバから外に動かされる。基板の載置後、ピンをさらに下げることができ、そのようにするとピンが基板から分離されて位置するようになり、つまりピンと基板との間の接触がなくなる。ロボットアームが取り去られ、チャンバが閉鎖された後(さらにプロセスガスの注入もしくは真空排気の後)、処理ステップが実施される。
【0008】
特にチャンバ内でのプロセスステップの実施後、それに続いて基板を上昇させるときも、基板に僅かな力を作用させることが極めて重要であり、その理由は、基板がたとえば支持体に付着している可能性があるからである。このとき基板が支持体によって速く押しのけられすぎると、その際に基板の破損が生じてしまうおそれがあり、それというのも付着力を少なくともいくつかの載置ポイントにおいては打ち負かすことができず、または解消することができないからである。しかも支持ピンと基板との間で接触が生じるときにも、その際に基板に発生する衝撃によって、不所望な応力(または破損)が引き起こされる可能性がある。
【0009】
同時に、処理すべき基板をできるかぎりソフトに大切に扱うことのほか、同様にできるかぎり短い処理時間を可能にするのが望ましい。つまりこのことは、基板をできるかぎり迅速にチャンバ内の規定された状態すなわち装填ポジションおよび取り出しポジションならびに処理ポジションまで運ぶことができる、ということである。
【0010】
たとえば半導体ウェハを処理する際の不所望な衝撃を回避するために、米国特許第6,481,723号明細書によれば、ピンリフタにおいて硬い運動ストッパの代わりに特別なストッパ装置を使用することが提案されている。何らかの硬いプラスチックのストッパがここでは、柔らかく構成されたストッパ部分と硬いストッパとの組み合わせ体によって置き換えられ、その際、運動制限のために最初にソフトなストッパ部分との接触が形成され、その後、相応に減衰されて硬いストッパと接触させられる。
【0011】
米国特許第6,646,857号明細書によれば、発生した力を捕捉することで上昇運動を調整することが提案されている。この場合、支持ピンにおける上昇力が常に相応に配量されコントロールされて、ウェハに作用するように、取得された力信号に依存して支持ピンを動かすことができる。
【0012】
処理サイクルごとに、支持ピン(Pin)と受け止めるべき基板とが接触状態におかれ、さらにその基板から引き離される。この場合、ピンおよび駆動装置のそれ相応の機械的応力(たとえば衝撃)が自ずと発生する。処理サイクルは、比較的密なタイミングで行われることが多く、比較的短いプロセス時間を要求する。このようなプロセスの実装の結果として、比較的短い時間内に多数の繰り返しが生じる可能性がある。したがって一般的には、支持ピンは摩耗材料と見なされ、規則的な取り替えが必要とされ、つまり通常、所定数のサイクル後または特定の動作時間後、支持ピンを交換しなければならない。
【0013】
当然のことながら、かかるピンリフティング装置の一部分はプロセスボリューム(プロセスチャンバ)と接続されており、たとえばピンリフティング装置はフランジを介してプロセスチャンバに固定されている。一般的にはこのような接続によって、チャンバの様々な状態(たとえば温度、電位)が相応にピンリフティング装置の状態に影響を及ぼす。
【0014】
プロセスチャンバ内での基板の運動に関して、ピンリフタを用いた基板の正確なポジショニングも基板の相応の可動性も、保証されていなければならない。しかもたいていのケースでは、ピンリフティング装置の初期較正が必要とされ、つまりピンリフティング装置の設置後、ピンリフティング装置についてたとえば、繰り出し運動において支持ピンが基板と接触するに至るポジションを確定し、格納しなければならない。
【0015】
かかるポジションの調整は時間のかかるプロセスであるということになってしまう可能性があり、その際にピンリフタの個々のピンは、そのピンが目標ポジションに位置するようになるまで、繰り返し変位させられる。
【0016】
したがって本発明の課題は、上述の欠点を低減または回避する改善されたピンリフティングシステムを提供することにある。
【0017】
特に本発明の課題は、単純化された、特に自動化された、支持ピンポジショニングを可能にする、改善されたピンリフティングシステムを提供することにある。
【0018】
本発明のさらに別の特別な課題は、処理プロセスの監視を可能にする改善されたピンリフティングシステムを提供することにある。
【0019】
これらの課題は、特許請求の範囲に記載された特徴を実現することによって解決される。択一的なまたは有利な態様で本発明の発展形態を構成する特徴を、従属請求項から読み取ることができる。
【0020】
本発明は、ピンリフティング装置の、特にピンリフタの、状態監視方法に関する。この場合、ピンリフティング装置は、真空プロセスチャンバによって提供可能なプロセス雰囲気領域内で基板を、特に(半導体)ウェハまたはリングを、移動およびポジショニングするように設計されている。ピンリフティング装置は、基板との接触および基板の支持のために構成された支持ピンを収容するように設計されたカップリング部材を有しており、さらに電動モータを備えた駆動ユニットを有しており、この駆動ユニットは、カップリング部材が変位軸線に沿って直線的に、下げられた通常ポジションから固有の有効ポジションへと、およびその逆に変位可能であるように、設計されカップリング部材と共働する。下げられた通常ポジションは特に、支持ピンの意図されたとおりの作用(たとえば被加工物もしくは基板の移動、支持およびポジショニング)に関して実質的に無効な状態(基板に接触していない状態)で支持ピンを提供することに相応し、この場合、固有の有効ポジションは特に、支持ピンによる基板の受け止めおよび/または供給という意図されたとおりの作用を提供することに相応する。
【0021】
支持ピンの意図されたとおりの作用とは実質的に、被加工物もしくは基板の受け止め、接触、移動、支持および/またはポジショニング等のことであると解される。支持ピンの無効な状態とはこのコンテキストにおいては、ピンが意図されたとおりに接触すべき基板とは接触せずに位置している(まだ接触状態にはない、またはもはや接触状態にはない)状態として解することができ、特に意図されたとおりの目的が一時的に提供されていない、つまりたとえば下げられた待機ポジションにある状態として解することができる。このことが特に該当するのは、処理プロセスが基板において実施される期間である。ただし意図されたとおりの作用の提供とは、もっぱら支持ピンと基板との接触が発生するということだけを意味するのではなく、ピンをこの状態で繰り出された状態に位置するようにし、ウェハを受け止める(ウェハをピン上に載置する)ために用意しておくこともできる。これに続き接触した際に行われるプロセスまたは移動(ウェハの搬送)も、意図されたとおりの作用の提供として解することができる。
【0022】
この監視方法は、電動モータに加わるモータ電流に関する目下のモータ電流情報(aktuellen Motorstrominformation)を継続的に取得するステップと、目下のモータ電流情報を目標電流情報と比較するステップと、目下のモータ電流情報と目標電流情報との比較に基づき状態情報を導出するステップとを有する。
【0023】
したがってこの監視方法によれば、目下加わっているモータ電流を、特に測定によって、捕捉することができ、測定された電流がたとえば規定された目標範囲内にあるか否かについてチェックを行うことができ、または電流推移に基づき特定の状態変化を推定することができる。かくして継続的な測定およびチェックによって、ピンリフティング装置の機能に関する、かつ/またはプロセスシーケンスに関する連続的な監視を行うことができる。
【0024】
状態情報をたとえば、(音響的および/または視覚的な)出力もしくは出力信号として生成することができる。出力は、
・所望のまたは許容されるモータ負荷を上回ったまたは下回ったことに関する警告、および/または
・達成されたプロセス品質に関する情報
を含むことができ、この場合、目下のモータ電流が目標電流を中心とした許可された許容範囲内にあるのであれば、所望の処理が行われたと推定できる。
【0025】
したがってこの方法によれば、モータ電流情報に対する処理および解析機能を提供することができる。この目的でピンリフティング装置を、有線接続またはワイヤレスによる情報交換もしくはデータ交換のために、制御および処理ユニットと接続することができる。
【0026】
1つの特定の実施形態によれば、この方法は以下のステップを含むことができる。すなわちこの場合、状態情報の複数回の捕捉に基づき、システム状態および/またはシステム状態の変化について(特に出力として)状態傾向が、特に長期的傾向が、導出され、特にその際に状態情報は、特定の期間にわたり周期的に、特に継続的に、捕捉され、電流(負荷)-距離比が導出される。
【0027】
つまりモータデータのこの種の評価によって、ピンリフティング装置の機能の変化を監視し識別することができる。かくして長期にわたる観察によって、システムの一瞬の記録を捕捉できるだけでなく、傾向の導出および今後の状態変化の予測も可能となる。
【0028】
しかも状態情報が、たとえば基板が支持ピンから取り去れたことについて関係するものとすることができる。この目的で、基板を支持する支持ピンが繰り出された状態でモータ電流が監視され、この場合、電流の検出可能な低下は負荷減少に相応し、つまりは基板が取り去られたことに相応する。
【0029】
この方法をさらに、状態情報と予め規定された基準値もしくは目標情報との比較に基づき、ピンリフティング装置により実施されるプロセスの評価に関する出力を供給するように構成することができる。したがって捕捉されたモータ情報の評価に基づき、製造ステップ(たとえば積層プロセス)を監視することができる。測定された負荷情報または力情報が(特に許容範囲を含めて)目標値から逸脱しているならば、このことをたとえば、過度に大きい力の作用を受けて載置台からウェハが誤って持ち上げられた(デチャッキングされた)ことに対する指標とすることができ、このことによってウェハの損傷が引き起こされる可能性がある。
【0030】
さらに別の実施形態によれば、本発明は、ピンリフティング装置のカップリング部材のためのポジション決定方法に関する。この場合、ピンリフティング装置は、真空プロセスチャンバに配置されており、真空プロセスチャンバによって提供可能なプロセス雰囲気領域内で基板を移動およびポジショニングするように設計されている。この場合、カップリング部材は支持ピンを有しており、この支持ピンはカップリング部材により収容されており保持される。
【0031】
このポジション決定方法は、真空プロセスチャンバ内に基準基板を準備するステップを含む。しかのこの方法は、上述の状態決定方法を使用し、つまり状態決定方法が実施される。この場合、カップリング部材が変位軸線に沿って動かされて、支持ピンが基準基板と接触した状態に移され、さらに目下のモータ電流情報と目標電流情報との継続的な比較に基づき、変位軸線に沿ったカップリング部材のポジションを表す接触ポイントが導出される。
【0032】
つまりプロセスチャンバ内に、基板または適切な表面を有する他の物体(このコンテキストではこれを同様に基板と解することができる)を準備することができる。次いで、モータ電流を監視しながら、余分な負荷がないとしたならば移動時に予期されるレベル(目標電流情報)をモータ電流が上回るまで、設けられたピンリフティング装置の支持ピンが繰り出される。この時点で、支持ピンによる基板との接触が生じる。個々のカップリング部材もしくは個々の支持ピンの相応の変位ポジションを記憶し、個々の接触ポイントとして格納することができる。
【0033】
別の選択肢として、支持ピンを接触後もさらに繰り出して、モータ電流の推移を記録することができる。次いで、このようにして記録された電流推移に基づき、たとえば推移中の勾配変化に基づき、接触ポイントを導出することもできる。目標電流情報はかかるケースにおいては少なくとも、電流推移の目標勾配もしくは基準勾配のことを指す。
【0034】
目標電流情報は一般に、捕捉されたモータ電流情報が所定のプロセス要求の枠内で妥当であるように見えるか否か、についての判定の基礎を成す。
【0035】
したがってこの方法を特に、支持ピンを装備したカップリング部材を支持ポジションまで繰り出す運動中、状態変化、特に基板の接触に起因する力の増大、を捕捉し、特に繰り出しポジションとリンクさせるように、設計することができる。
【0036】
このようにすればたとえば、力と距離のグラフを捕捉して、ある特定のプロセスのために格納することができる。この場合、辿った距離および/または測定された力に関して、偏差を検出することができる。別の選択肢として、またはこれに加えて、力もしくは負荷の推移に基づき接触ポイントを導出することができ、つまり基板との接触が発生するピンの繰り出しポジションを導出することができる。
【0037】
したがって1つの実施形態によれば、目下のモータ電流情報の継続的な捕捉に基づきモータ電流推移を導出し、このモータ電流推移に基づき状態情報を導出することができる。
【0038】
さらにモータ電流情報を、変位軸線に沿ったカップリング部材のポジショニングに関するポジション情報に相関づけることができ(負荷-距離)、このようにして供給可能なポジション相関されたモータ電流もしくはモータ電流推移に基づき、状態情報を導出することができる。
【0039】
1つの実施形態によれば、状態情報は、基板支持体および/または支持ピンへの、もしくは基板支持体および/または支持ピンからの、基板の付着および/または解離に関する情報を有することができる。
【0040】
これに加え本発明は、上述のピンリフティング装置のカップリング部材のポジショニング方法に関する。このピンリフティング装置は、真空プロセスチャンバに配置されており、真空プロセスチャンバによって提供可能なプロセス雰囲気領域内で基板を移動およびポジショニングするように設計されており、このピンリフティング装置のカップリング部材は支持ピンを有する。
【0041】
このポジショニング方法は、接触ポイントを取得ステップと、カップリング部材が変位軸線に沿って接触ポイントに対応する接触ポジションまで変位させられるように、電動モータを制御するステップとを有する。
【0042】
接触ポイントは特に、支持ピンを移動させて接触状態にすることにより接触ポイントを検出する上述の方法を先行して実施することにより、または真空チャンバ内で処理すべき基板の形状および(真空チャンバ内での)ポジションに基づき、導出および/または規定されている。
【0043】
したがって第1のステップにおいて、平坦な構造、湾曲した構造、またはこれらに代わる構造を与えておくことのできる処理すべき基板のサンプルを、プロセスチャンバ内において目標ポジションに配置することができ、支持ピンを近づけることによりそれらのピンに対する個々の接触ポイントを求めることができる。次いで、この後の第2のステップでは、事前に得られたポジション情報に基づき、処理すべき1つの基板もしくは多数のかかる基板に、処理プロセスにおいて所期のように接触させてて、その基板もしくはそれらの基板を動かすことができる。
【0044】
特に、支持ピンは接触ポジションにおいて基板と接触し、特にその際に基板が支持ピンにより受け止められる。
【0045】
本発明による方法の1つの実施形態によれば、状態情報に基づき、目下のモータ電流情報が目標電流情報に近づくように、特に継続的に目下のモータ電流情報が目標電流情報に割り当てられた許容範囲内に位置するまで、駆動ユニットの制御が行われる。
【0046】
このようにすればたとえば、捕捉された、処理された、かつ/または解析された測定データに基づき、ピンリフティング運動の閉ループ制御(調整)を行うことができる。たとえば、所定の運動区間わたって一定の力を連続的に加える動作を、またはピンリフティングシステム内に設けられている支持ピンのうちの1つまたは複数に所定の負荷を加える動作を、調整することができる。かかる制御は、好ましくはシステムの制御および処理ユニットにおいて、特に少なくともアルゴリズムとして、実装されている。
【0047】
1つの実施形態によれば、状態情報に基づき制御信号を生成および出力するように、この方法を設計することができる。その際に駆動ユニットを、制御信号を受け取り、この制御信号に応じてカップリング部材を通常ポジションと支持ポジションとの間で変位させるように、配置および設計することができる。換言すれば、駆動部の制御が捕捉された測定値に基づくように、ステムを構成することができる(開ループまたは閉ループ)。
【0048】
特にこの方法を、制御信号が目下の状態情報に応じて自動的に調整可能であるように、行うことができる。制御信号の継続的な整合によって、ピンリフティング駆動部の調整を提供することができ、たとえば変位速度を、そのつど測定された押圧力に応じて調整することができる。
【0049】
かかるコンフィギュレーションによって、目下捕捉された電流情報に基づき、ピンリフタの開ループ制御および/または閉ループ制御を行うことができる。これによって駆動ユニットの制御を、特に継続的にまたはリアルタイムに、たとえば処理プロセスに作用を及ぼす可能性のある強い振動のような作用を補償できるように、整合させることができる。かくして、システムに構造上介入することなく制御を整合させるだけで、かかる補償を実装することができる。
【0050】
本発明はさらに、真空プロセスチャンバによって提供可能なプロセス雰囲気領域内で基板を、特にウェハを、移動およびポジショニングするように設計されているピンリフティングシステム、特にピンリフタシステム、に関する。このピンリフティングシステムは少なくとも、基板の移動およびポジショニングのために個々に制御可能なピンリフティング装置と、電動モータを備えた駆動ユニットとを有しており、ピンリフティング装置は、基板との接触および基板の支持のために構成されている支持ピンを収容するように設計されたカップリング部材を備えている。駆動ユニットは、以下のように設計されカップリング部材と共働するように設計されている。すなわち、カップリング部材が変位軸線に沿って直線的に、特に支持ピンをこの支持ピンの意図されたとおりの作用に関して実質的に無効な状態で提供するための、下げられた通常ポジションから、特に支持ピンによる基板の受け止めおよび/または準備という意図されたとおりの作用を提供するための、固有の有効ポジションに、およびその逆に、変位可能であるように、設計されカップリング部材と共働するように設計されている。ピンリフティングシステムはさらに、駆動ユニットと接続され電動モータを制御するように設計された制御および処理ユニットを有する。
【0051】
制御および処理ユニットは、上述の方法を実施するように構成されている。制御および処理ユニットはこの目的で、制御および処理ユニットの側で制御可能、監視可能および/または実施可能な、方法の個々のステップを実施もしくは制御することのできる相応の機能を有する。
【0052】
1つの実施形態によれば、制御および処理ユニットは、以下のように構成された監視機能を有しており、すなわちこの監視機能が実施されると、電動モータに加わるモータ電流に関する目下のモータ電流情報が継続的に捕捉され、目下のモータ電流情報と目標電流情報との継続的な比較に基づき状態情報が導出される。
【0053】
1つの実施形態によれば、真空プロセスチャンバ内に基準基板が準備されており、制御および処理ユニットは、以下のように構成されたポジション決定機能を有しており、すなわちこの機能が実施されると、カップリング部材が変位軸線に沿って、特に下げられた通常ポジションから出発して動かされ、この動きにより支持ピンが基準基板と接触した状態に移され、さらに目下のモータ電流情報と目標電流情報との継続的な比較に基づき、変位軸線に沿ったカップリング部材のポジションを表す接触ポイントが導出される。
【0054】
1つの実施形態によれば、カップリング部材のためのポジショニングポイントが提供されており、制御および処理ユニットは、以下のように構成されたポジショニング機能を有しており、すなわちこのポジショニング機能が実施されると、カップリング部材が変位軸線に沿って、ポジショニングポイントに対応する接触ポイントまで変位させられるように、電動モータの制御が行われる。
【0055】
特にカップリング部材のためのポジショニングポイントは接触ポイントとして、ポジション決定機能を先行して実施することにより導出されており、または真空チャンバ内で処理すべき基板の形状および真空チャンバ内でのポジションに基づき導出および/または確定されている。
【0056】
1つの実施形態によれば、ピンリフティング装置は、プロセス雰囲気領域を外部雰囲気領域から分離するための分離装置を有しており、その際に駆動ユニットは少なくとも部分的に、特に完全に、外部雰囲気領域に配属されており、カップリング部材は特に少なくとも部分的に、プロセス雰囲気領域に配属されている。分離装置は特に、ピンリフティング装置内部のベローズとして設計されている。ピンリフティング装置の分離装置を、駆動ユニットのハウジングによって形成することもできる。
【0057】
駆動ユニットを電動モータとして、特にステッピングモータとして、設計することができ、このようにすることでメカトロニクスによるピンリフティング装置が提供されている。
【0058】
1つの特定の実施形態によれば、ピンリフティングシステムは、基板を移動およびポジショニングするために個々に制御可能な少なくとも3つのピンリフティング装置を有する。これらのピンリフティング装置各々は、基板との接触および基板の支持のために構成されている支持ピンを収容するように設計されたカップリング部材と、電動モータを備えた駆動ユニットとを有しており、この駆動ユニットは、それぞれ以下のように設計され個々のカップリング部材と共働するように設計されている。すなわち、カップリング部材が変位軸線に沿って直線的に、特に個々の支持ピンをこの支持ピンの意図されたとおりの作用に関して実質的に無効な状態で提供するための、下げられた通常ポジションから、特に支持ピンによる基板の受け止めおよび/または準備という意図されたとおりの作用を提供するための、固有の有効ポジションに、およびその逆に、変位可能であるように、それぞれ設計され個々のカップリング部材と共働するように設計されている。
【0059】
制御および処理ユニットは、駆動ユニット各々と接続されており、個々の電動モータを(固有に)制御するように設計されている。制御および処理ユニットはさらに、ピンリフティング装置各々のために、監視機能もしくはポジション決定機能もしくはポジショニング機能を実施するように設計されている。
【0060】
監視機能が実施されると、ピンリフティング装置各々のために状態情報が導出され、ポジション決定機能が実施されると、ピンリフティング装置各々のために接触ポイントが導出され、さらにポジショニング機能が実施されると、各ピンリフティング装置のカップリング部材が個々の固有の接触ポジションに変位させられる。
【0061】
1つの実施形態によれば、ポジショニング機能が実施されると、カップリング部材をそれぞれ異なるポジションに制御して変位させることができ、特にこの場合、支持ピンはそれぞれ異なる距離で繰り出されている。このことは特に、非平坦に成形された基板を処理するために有利である。
【0062】
本発明はさらに、機械可読担体に記憶されている、または電磁波によって具現化されている、コンピュータプログラム製品に関する。このコンピュータプログラム製品は、既述のピンリフティングシステムの制御および処理ユニットにおいてプログラムが実行されると、上述の方法を制御もしくは実施するプログラムコードを含む。
【0063】
次に、本発明による装置について、図面に概略的に示された具体的な実施例に基づき、単なる例示として詳しく説明する。その際に本発明のさらに別の利点についても言及する。
【図面の簡単な説明】
【0064】
図1】本発明によるピンリフティングシステムを備えたウェハ用真空処理装置の1つの実施形態を概略的に示す図である。
図2】本発明によるピンリフティングシステムのピンリフティング装置の1つの実施形態を示す図である。
図3a】本発明によるピンリフティングシステムのピンリフティング装置のさらに別の実施形態を示す図である。
図3b】本発明によるピンリフティングシステムのピンリフティング装置のさらに別の実施形態を示す図である。
【0065】
図1には、真空条件下で半導体ウェハ1を処理するためのプロセス構造が概略的に示されている。ウェハ1は、第1のロボットアーム2によって第1の真空切替弁5aを通って、真空チャンバ4(プロセス雰囲気領域P)内に運び込まれ、本発明によるピンリフティングシステムのピンリフティング装置の支持ピン7(ここでは3つのピンが示されている)上の定位置まで運ばれる。次いでウェハ1は、ピン7によって受け止められ、もしくはその上に載置され、ロボットアーム2が遠ざけられる。ウェハ1は一般的には、ロボットアームまたはロボットアーム2、3のところに設けられた支持装置上に載置され、あるいは特別な支持装置を用いて保持される。
【0066】
ピン7によりウェハ1が受け止められた後、ロボットアームがチャンバ4から外に案内され、切替弁5aが閉鎖されてピン7が下げられる。これは、個々のピン7と結合されているピンリフティング装置の電動駆動装置6によって行われる。ウェハ1はこれによって、図示されている4つの支持部材8上に載置される。別の選択肢として、ウェハ1は、静電クランプ装置(図示せず)、いわゆる静電チャック、の上に載置され、チャック電極間に電圧を印加することによって保持され、場合によってはこれにより作用する力によって平坦化される。静電チャックは今日、一般的には真空条件下でたとえば半導体ウェハを製造するために使用される。
【0067】
しっかりと保持されたこの状態において、ウェハ7のプラニングされた処理(たとえば積層、堆積等)が真空条件下で、特に規定された雰囲気内で(すなわち定められたプロセスガスを用い規定された圧力下で)、行われる。チャンバ4はこのために、プロセスガス源、真空ポンプ、および好ましくはチャンバ圧力を調整するための真空弁と結合されている(図示せず)。
【0068】
処理後、再びピンリフティング装置を用いて、取り出し位置までウェハ1の上昇が行われる。これに続き第2のロボットアーム3によって、ウェハ1が第2の切替弁5bを通って取り出される。別の選択肢として、ただ1つのロボットアームしか用いないプロセスを構想することができ、このようにした場合には装填および取り出しを、単一の切替弁を通して行うことができる。
【0069】
さらに、ピンリフティング装置と接続された処理および制御ユニット9が示されている。このユニット9によって、ピン7の制御された運動、ならびにピンリフタの側で生成または供給される情報および信号の評価および後続処理が提供される。
【0070】
制御ユニット9を、通信可能に(たとえば無線、WiFi、Bluetooth等によってワイヤレスに)、かつ/または電子的かつ/または電気的に、ピンリフティング装置と接続することができる。さらに制御ユニット9を、システムの複数のピンリフティング装置のうちの1つに統合することができ、または制御ユニット9は、それぞれ異なるピンリフティング装置内に設けられているが共働する個々のサブ制御装置によって、総括的に具現化される。制御ユニット9を、ピンリフティング装置とワイヤレス通信するように設計することができ、この制御ユニット9によって、個々のピンリフティング装置各々のための固有の制御およびそれぞれの情報の取得を提供することができる。制御ユニットを、ピンリフティング装置とは空間的に別個に位置させることができ、制御ユニットはたとえばタブレットPC、携帯電話および/またはコンピュータワークスペースを有することができる。
【0071】
図2には、ピンリフティング装置10と制御および処理ユニット9とを備えた、本発明によるピンリフティングシステムの1つの実施形態が示されている。
【0072】
支持ピン19は、装置10のカップリング部材18内にロックされている。支持ピン19は好ましくは、金属材料、ポリマーベース材料またはセラミック材料を有しており、特にピン19は完全にかかる材料から製造されている。カップリング部材18内におけるロックを、たとえば磁気的にまたはクランプにより実現することができる。
【0073】
スライド部材14を用いて、カップリング部材18をz方向に動かすことができる。スライド部材14はこのためにねじスピンドル13と結合されており、さらにねじスピンドル13自体は駆動ユニットの電動モータ12により駆動可能である。
【0074】
1つの変形実施形態によれば、上方のカップリング部材部分と下方の駆動装置部分との間の任意選択的な熱的および電気的絶縁が、第1の絶縁部材16によって実現されており、この第1の絶縁部材16によって、上方のハウジング部分が下方のハウジング部分から熱的および電気的に分離される。好ましくは、スライド部材14によって具現化可能な第2の絶縁部材を設けることができる。ピンリフティング装置10のこの変形実施形態の場合、ねじスピンドル13は、このスピンドル13とカップリング部材18との間において、たとえ相対運動が生じても(導電性または熱伝導性の)接触が発生しないように、正確にかつ剛性に実装されて支承されている。別の選択肢として、スピンドル13は、非導電性または非熱伝導性の絶縁材料から製造されており、またはそのような材料によってコーティングされている。かくして装置10がいかなる状態であっても、上部と下部との間の完全に直流電気的および熱的な分離がもたらされる。さらに別の変形実施形態によれば、ねじスピンドル13も、このスピンドル13上に載置されたスライド部材14も、導電性で(たとえば金属で)製造することができる。このようにした場合には絶縁を特に、たとえばスピンドル/スライド部材とカップリング部材との間に中間スリーブを用いることによって、実現することができる。
【0075】
自明のとおり、上述の直流電気的分離は単なるオプションであるが、本発明はかかる分離を行わない実施形態にまで及ぶものである。
【0076】
ピンリフタ10はさらに内部にベローズ15を有する。ベローズ15は、以下のように配置され成形されている。すなわち、支持ピン19(Pin)が存在し通常は加工プロセスが行われるプロセス雰囲気領域Pと、たとえば駆動装置12およびさらに別の周辺構成要素を存在させることのできる外部雰囲気領域Oとの分離がもたらされているように、配置され成形されている。ベローズ15は、ピン19が繰り出されると圧縮され、その際に雰囲気分離が維持されたままとなる。
【0077】
図示されている特別な変形実施形態によれば、スライド部材14の変位によって、カップリング部材18もベローズ15も動かされる。カップリング部材18もベローズ15も、スライド部材と少なくとも間接的に結合される。特に、スライド部材14はカップリング部材18と接続されており、カップリング部材18はベローズ15と接続されている。ベローズの第2の端部はさらに、ピンリフティング装置のハウジングと接続されている。個々の構成要素の接続は、特に気密に実装されている。
【0078】
ピンリフティング装置10は、真空プロセスチャンバのハウジング20と接続されている。この接続は、プロセスチャンバの内部のプロセス雰囲気がピンリフティング装置10の内部にも作用するように実装されている。ピン19のために設けられているハウジング壁20内の貫通孔によって、プロセス雰囲気がリフタ10内に拡がるように配慮されている。つまりプロセスボリュームとピンリフタ10の内部ボリュームの一部とによって、1つの共通のプロセス雰囲気領域Pが形成される。
【0079】
自明のとおり、本発明によるピンリフティング装置は、別の選択肢としてベローズの代わりに、同様に雰囲気分離をもたらす他の密閉構想を実現したものとすることができ、たとえば支持ピン19の上方出口領域において、たとえばOリングまたはメンブレンによって放射状に密閉するなどである。
【0080】
可動のシステム構成要素、つまりここではカップリング部材18およびベローズ15、を動かすために、電動モータ12はこれらの構成要素によって作用するシステム負荷に打ち勝たなければならない。負荷はここでは、構成要素の構造形態(たとえば質量)、それらの運動特性(たとえば摩擦)およびそれらの目下の状態(たとえばポジション、ベローズ圧縮、膜張力等)に左右される。これらのモータシステム負荷(モータ目標状態)はピンリフタ10にとっては既知であり、もしくはこれを較正によって求めて、制御システム内に記憶させることができる。このためにルックアップテーブル、リフタ10を十分精密に記述するモデル、またはモータティーチングプロセス(特定の運動シーケンスの反復、監視、比較および記憶)を用いることができる。したがってモータシステム負荷は、規定された条件下での、特に圧力、温度等のような周囲条件の考慮の下での、動作中の電動モータの個々の目標状態もしくは通常状態を表す。
【0081】
リフタ10の運動のために、制御および処理ユニット9が設けられている。所期のとおりに制御するために、たとえば特定のピンポジションまで動かすために、モータ12に相応の信号が供給される。
【0082】
制御および処理ユニット9はさらに、モニタリング機能もしくは監視機能を有しており、監視機能が実施されると、電動モータ12に目下加わっているモータ電流に関する情報(目下のモータ電流情報)が取得され、この情報が、特に継続的に、モータに関する既知の目標電流に関する情報と比較されるように、ピンリフティング装置10と共働する。この比較に基づき、その後のステップにおいて、特にやはり継続的に、ピンリフティング装置もしくはモータのそれぞれ目下の状態が推定される。換言すれば、目下のモータ電流を対応する目標電流と比較し、電流差に基づき状態を導出することができる。
【0083】
目下加わっているモータ電流は特に、モータに加わっている負荷に対する尺度である。上述のようにこの負荷には、ピンリフティング装置の個々の構成要素によって作用が及ぼされる。とはいえモータ電流の監視によって、プロセス障害またはピンリフティング装置における摩耗を検出することもできる。
【0084】
1つの変形実施形態によれば、監視機能によって、処理後に上昇させようとしたときに、通常のプロセスサイクルという状況であるならば予期されるであろうものよりも強く、基板が静電チャックに付着している、ということを検出することができる。具体的にはこのことを、特に対応づけられた変位ポジションと相関させて、モータ電流が過度に上昇していることに基づき、検出することができる。支持ピンと基板との接触が見込まれる運動範囲において、測定されたモータ電流がたとえば、処理すべき基板の望ましい上昇について格納されている規定された許容値を超えたならば、対応する情報を出力することができ、かつ/または支持ピンもしくはカップリング部材のさらなる運動または変位を中断または停止することができる。
【0085】
制御および処理ユニット9はさらに、ポジション決定機能を有する。この機能の実施にあたり、基準基板をプロセスチャンバ内に準備することができる。基準基板を、処理すべき基板のサンプル、または好ましくは平坦な空間的な広がりおよび/または規定された質量を有する代替物体とすることができる。基準基板は、たとえば静電式収容部上に準備され、測定されたモータ電流が目標レベルを超えて上昇するまで、1つまたは複数のピンリフタが繰り出される。この場合、かかる電流上昇は、基準基板が支持ピンと接触したことを表す。その理由は、このときモータに加わる負荷が跳躍的に上昇する可能性があるからである。上昇したモータ電流の検出に基づき、または経時的なモータ電流推移に基づき、接触した状態にあるときのカップリング部材もしくは支持ピンのポジションを導出することができる。このようにして、たとえば1つまたは複数のピンリフタを較正することができる。
【0086】
接触ポジションを、システム内に、または個々のピンリフタ自体に、格納することができる。このようにして記憶されたポジション情報に基づき、これ以降、制御しながら、個々のピンリフタを事前に求められたこの接触ポジションまでダイレクトに変位させることができる。これは特に、制御および処理ユニット9のポジショニング機能の実施によりもたらされる。ピンリフタの所定のポジションのこのような調整は、特に個々のリフタの交換時に有利なものとなり得る。このようにしたならば、リフタを比較的僅かな手間しかかけずにシステムに組み込むことができ、たとえばシステムの残りのリフタと同期させて駆動することができる。
【0087】
さらに、ピンリフタシステム内の各ピンリフタについて、複数のこの種のポジションポイントを規定することができる。しかも、個々のピンリフタのポジションポイントをそれぞれ異ならせることができる。したがって、たとえば以下のことが達成される。すなわち、システム内の複数のピンリフティング装置を一方では、基板の接触が生じる第1の接触ポジションまで変位させることができ、第2のステップにおいて、基板が支持ピンから持ち上げられる取り外しポジションまで、いっしょに変位させることができる。複数のリフタについてそれぞれ異なるポジションポイントを規定することによって、たとえば湾曲形状の基板を受け止めて動かすことができ、その際、個々のピンリフティング装置への均等な力配分がもたらされたまま維持される。
【0088】
ポジションポイントを、既述のようにモータ電流の監視に基づき求めて確定することができ、その際にそれぞれ1つの基板が個々のポジションにおいて準備され、または取り出される。これに付随して生じるモータにおける負荷変化を通して、対応する電流変化を捕捉することができる。別の選択肢として、または付加的に、処理すべき基板の既知の形状に基づき、ポジションポイントを確定することができる。この目的で、たとえば基板および/またはピンリフティングシステムのモデルを使用することができ、たとえば接触ポイントをシミュレートすることができる。別の選択肢として、個々のピンリフティング装置の形状および配置を把握した上で、接触ポイントを計算により求めることもできる。
【0089】
図3aには、本発明によるピンリフティングシステムのピンリフティング装置30の1つの実施形態が示されている。ピンリフティング装置30は、電動モータとして設計された駆動ユニット32を有しており、これは装置30の下方駆動部分に対応づけられている。モータ32は、ねじスピンドル33と結合されている。ねじロッド33を、モータ32の相応の制御によって回転させることができる。
【0090】
さらに変位部材34が設けられており、これは図示の実装によればスライド部材34として設計されており、これはねじロッド33と共働し、ロッド33の回転により中心変位軸線Aに沿って直線的に移動可能である。スライド部材34は、ねじロッド33のねじに対応する雌ねじを有する。さらにスライド部材34は、これがピンリフティング装置30自体に対し相対的には回転不可能であり、そうではなく変位軸線Aに対し平行な運動方向でのみ移動可能であるように、支承されている。
【0091】
スライド部材34は、カップリング部材38とじかに結合されており、つまりカップリング部材38を、スライド部材によって直線的に動かしてポジショニングすることができる。カップリング部材38は、第1の端部において支持ピン(支持ピンは図示せず)を収容するように設計されている。カップリング部材38は、図示の実施例では実質的に軸線Aに沿って延在している。
【0092】
したがってスライド部材34とカップリング部材38とを接続することによって、カップリング部材38の、ひいてはカップリング部材38内に収容された支持ピンの、モータ32により制御可能な可動性をもたらすことができる。
【0093】
図3aには、ピンリフティング装置のカップリング部材38が下げられた通常ポジションで示されており、このポジションでは、任意選択的に設けられた支持ピンは、その意図されたとおりの作用に関して実質的に無効な状態に位置することになる。この場合、支持ピンは、ピンリフタ30が設けられている場合には、真空処理プロセスにおいて一般的には、処理すべき基板と接触しない。
【0094】
図3bには、ピンリフティング装置30のカップリング部材38が繰り出された支持ポジションで示されており、このポジションでは、結合された支持ピンが、基板の収容、運動および/または準備という意図されたとおりの作用を提供する。
【0095】
繰り出された支持ポジションを達成するために、モータ32を制御および処理ユニットによって相応に制御することができる。この目的でたとえば、スライド部材34に関する望ましいポジションを調整するために、モータの実行時間またはねじロッド33について実施すべき回転の回数を格納しておくことができる。特に、モータ軸の運動を監視可能および調整可能にする目的で、エンコーダが駆動ユニット32と結合されている。
【0096】
ピンリフタ30の直線的な可動部分すなわちスライド部材34およびカップリング部材38が、この目的で実質的に内部ボリュームV内において動かされる。カップリング部材38は、図示の実装によれば、少なくとも部分的にスリーブ状に設計されており、凹入部39を提供している。この凹入部39によって、ねじロッド33をカップリング部材38内に可変に延在させることができ、ひいてはねじロッド33に対し相対的にカップリング部材38を並進運動させることができる。
【0097】
ピンリフティング装置30と接続され、ひいてはピンリフティングシステムを成す制御および処理ユニット(図示せず)は、上述のように、ピンリフティング装置30の監視、ポジション決定およびポジショニングのための様々な機能を有することができる。
【0098】
制御および処理ユニットは、駆動ユニット32を電流情報に依存して制御するための機能を有することができる。この目的で、制御および処理ユニットは、目下のモータ電流、特に加わっている電流の目下の測定値、に関する情報を取得する。さらに目標電流情報が、特に目標電流として格納されている。目下加わっている電流と達成すべき目標電流(状態情報)との比較に基づき、電流差から駆動ユニット32のための制御信号を生成することができる。たとえば、測定されたモータ電流が規定された目標電流よりも著しく小さいならば、モータ32にいっそう多くの電流を供給し、それによってモータにおける負荷を高めることができる。
【0099】
それぞれ個別に相応に制御可能もしくは調整可能な複数のピンリフティング装置を備えたピンリフティングシステムにおいて、かかる装置をこれまで述べてきたように制御もしくは調整することにより、動かすべき基板全体にわたって所期の負荷分散が実現される。たとえばこれによって、基板の敏感な領域にはいっそう僅かな負荷を加えることができる一方で、この目的で設計された別の領域にはいっそう大きな負荷が加わる。この場合には、各ピンリフティング装置に関する目標電流情報は、基板のあるポイントまたはある領域において基板に作用させるべき、もしくは作用させてよい、個々の負荷に相応する。
【0100】
本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、とはいえ本発明の範囲を超えることなく、多くのさらなる変更および変形を行うことができる。よって、添付の特許請求の範囲は、本発明の実際の範囲内に含まれている変更および変形をカバーする、ということを意図している。
【0101】
自明のとおり、図示されている図面は、考えられる実施例を概略的に示したものにすぎない。様々なアプローチを本発明に従って互いに組み合わせることもでき、また、真空プロセスチャンバ内で基板を動かす従来技術による装置と、特にピンリフタと、組み合わせることができる。
図1
図2
図3a
図3b
【国際調査報告】