(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-24
(54)【発明の名称】パルス発生および刺激エンジンシステム
(51)【国際特許分類】
A61N 1/36 20060101AFI20230117BHJP
A61N 1/20 20060101ALI20230117BHJP
【FI】
A61N1/36
A61N1/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022529892
(86)(22)【出願日】2020-11-24
(85)【翻訳文提出日】2022-07-07
(86)【国際出願番号】 US2020062077
(87)【国際公開番号】W WO2021102448
(87)【国際公開日】2021-05-27
(32)【優先日】2019-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520299832
【氏名又は名称】プレシディオ・メディカル・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・エー・フォルティーズ
(72)【発明者】
【氏名】アーロン・ハーディンガー
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ・ハリス
(72)【発明者】
【氏名】ダグラス・マイケル・アッカーマン
(72)【発明者】
【氏名】ケネス・エス・ウー
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053GG01
4C053JJ02
4C053JJ05
4C053JJ21
(57)【要約】
単一アーキテクチャを用いて複数の電気変調モードで動作するように構成されたニューロモジュレーションデバイスを含むことのできるシステムおよび方法が、本明細書において開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一アーキテクチャを用いて複数の電気変調モードで動作するように構成されたニューロモジュレーションデバイスであって、
電源と、
制御ユニットと、
少なくとも1つの作用電極に接続されるように構成された双極性電流発生器と、
刺激回路であって、直流を阻止するように構成された少なくとも1つの阻止コンデンサ、少なくとも1つの不関電極と電気的に連通するように構成された少なくとも1つの不関電極スイッチ、および少なくとも1つの阻止コンデンサをバイパスするために電気的に連通する少なくとも1つの阻止コンデンサスイッチを備える、刺激回路と
を備え、
当該デバイスは、前記電流発生器が前記少なくとも1つの作用電極に交流を供給するように構成される、第1の刺激モードと、前記電流発生器が前記少なくとも1つの作用電極に直流を供給するように構成される、第2の刺激モードとを含み、両リターン電極が前記不関電極を通じて吸収され、
前記第1の刺激モードにおいて、前記制御ユニットが、第2の作用電極を通るように別の電流発生器を構成し、前記少なくとも1つの不関電極スイッチに、前記電流発生器と前記少なくとも1つの不関電極との間の電気的連通をディスエーブルさせ、少なくとも1つの阻止コンデンサが、直流を阻止するために機能し、
前記第2の刺激モードにおいて、オフセット電流が前記不関電極スイッチを通過して前記不関電極に向かうように構成されるように、前記2つの電流発生器が構成され、かつ前記制御ユニットが、少なくとも2つの阻止コンデンサスイッチに、前記電流発生器と前記少なくとも1つの阻止コンデンサとの間の電気的連通をディスエーブルさせ、それにより、前記少なくとも2つの阻止コンデンサをバイパスさせる、
ニューロモジュレーションデバイス。
【請求項2】
前記直流が超低周波電流を含む、請求項1に記載のニューロモジュレーションデバイス。
【請求項3】
前記超低周波電流が約5Hz未満である、請求項2に記載のニューロモジュレーションデバイス。
【請求項4】
前記超低周波電流が約2Hz未満である、請求項2に記載のニューロモジュレーションデバイス。
【請求項5】
前記超低周波電流が約1Hz未満である、請求項2に記載のニューロモジュレーションデバイス。
【請求項6】
前記交流が高周波交流である、請求項1に記載のニューロモジュレーションデバイス。
【請求項7】
前記高周波交流が少なくとも約1kHzである、請求項6に記載のニューロモジュレーションデバイス。
【請求項8】
前記交流が約5Hzから約1kHzの間である、請求項1に記載のニューロモジュレーションデバイス。
【請求項9】
前記電源がバッテリを備える、請求項1に記載のニューロモジュレーションデバイス。
【請求項10】
前記制御ユニットが、独立したアルゴリズムを実行するように構成された第1の制御ユニットおよび第2の制御ユニットを備える、請求項1に記載のニューロモジュレーションデバイス。
【請求項11】
前記デバイスが前記第2の刺激モードにあるときに前記オフセット電流を測定するように構成される、請求項1に記載のニューロモジュレーションデバイス。
【請求項12】
前記少なくとも1つの作用電極の周期的Vppを測定するように構成される、請求項1に記載のニューロモジュレーションデバイス。
【請求項13】
前記不関電極に動作可能に接続されるように構成された仮想グランドをさらに備え、その場合、前記仮想グランドが、電力消費を最小限に抑えるために任意のレベルに設定され得る、請求項1に記載のニューロモジュレーションデバイス。
【請求項14】
(a)不関電極からのバイアス電流を測定し、前記バイアス電流が事前設定パラメータ外に逸脱する場合、動作を一時停止または変更するように構成された制御システム、
(b)任意の作用電極対間、作用電極とリファレンス電極との間、および作用電極と不関電極との間の電極電圧を測定するように構成された制御システム、
(c)波形遷移に関連して電極モニタリングを解決するように構成された制御システム、ならびに
(d)電極特性に基づく統計学的解析を受ける電極電圧の全体または成分に関するデータを受信するように構成された制御システム
からなる群から選択される軽減メカニズムのうちの1つまたは複数を備える、請求項1に記載のニューロモジュレーションデバイス。
【請求項15】
全ての前記軽減メカニズムを備える、請求項14に記載のニューロモジュレーションデバイス。
【請求項16】
ニューロモジュレーション療法デバイスを利用して患者の電気的興奮性組織に電気的ニューロモジュレーションを送達する方法であって、
前記電気的興奮性組織と電気的に連通する少なくとも1つの作用電極に交流を供給するステップ
を含み、
交流を供給するステップが、前記ニューロモジュレーション療法デバイスの少なくとも1つの阻止コンデンサを利用して直流を阻止するステップと、前記ニューロモジュレーション療法デバイスと少なくとも1つの不関電極との間の電気的連通を妨げるステップとを含む、
方法。
【請求項17】
交流の供給を中断するステップと、
前記少なくとも1つの作用電極に直流を供給するステップと、前記少なくとも1つの不関電極にオフセット電流を供給するステップと
をさらに含み、
直流を供給するステップが、前記ニューロモジュレーション療法デバイスの前記少なくとも1つの阻止コンデンサをバイパスするステップを含む、
請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つの作用電極への直流の供給を中断するステップと、前記少なくとも1つの作用電極への交流の供給を再開するステップとをさらに含み、交流の供給を再開するステップが、前記ニューロモジュレーション療法デバイスの前記少なくとも1つの阻止コンデンサを利用して直流を阻止するステップと、前記ニューロモジュレーション療法デバイスと少なくとも1つの不関電極との間の電気的連通を妨げるステップとを含む、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
直流が超低周波電流を含む、請求項16または17に記載の方法。
【請求項20】
前記超低周波電流が約5Hz未満である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記超低周波電流が約2Hz未満である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記超低周波電流が約1Hz未満である、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記交流が高周波交流である、請求項16に記載の方法。
【請求項24】
前記高周波交流が少なくとも約1kHzである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記交流が約10Hzから約1kHzの間である、請求項16に記載の方法。
【請求項26】
前記ニューロモジュレーションデバイスを使用して前記オフセット電流を測定するステップをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項27】
前記少なくとも1つの作用電極の周期的Vppを測定するステップをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項28】
ニューロモジュレーション療法デバイスを利用して患者の電気的興奮性組織に電気的ニューロモジュレーションを送達する方法であって、
少なくとも1つの作用電極に直流を供給するステップと、少なくとも1つの不関電極にオフセット電流を供給するステップと
を含み、
直流を供給するステップが、前記ニューロモジュレーション療法デバイスの少なくとも1つの阻止コンデンサをバイパスするステップを含む、
方法。
【請求項29】
前記少なくとも1つの作用電極への前記直流の供給、および前記少なくとも1つの不関電極への前記オフセット電流の供給を中断するステップと、
前記電気的興奮性組織と電気的に連通する前記少なくとも1つの作用電極に交流を供給するステップと
をさらに含み、
交流を供給するステップが、前記ニューロモジュレーション療法デバイスの少なくとも1つの阻止コンデンサを利用して直流を阻止するステップと、前記ニューロモジュレーション療法デバイスと少なくとも1つの不関電極との間の電気的連通を妨げるステップとを含む、
請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記交流の供給を中断するステップと、
前記少なくとも1つの作用電極への直流の供給、および前記少なくとも1つの不関電極への前記オフセット電流の供給を再開するステップと
をさらに含み、
直流の供給を再開するステップが、前記ニューロモジュレーション療法デバイスの前記少なくとも1つの阻止コンデンサをバイパスするステップを含む、
請求項29に記載の方法。
【請求項31】
直流が超低周波電流を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記超低周波電流が約5Hz未満である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記超低周波電流が約2Hz未満である、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記超低周波電流が約1Hz未満である、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記交流が高周波交流である、請求項29に記載の方法。
【請求項36】
前記高周波交流が少なくとも約1kHzである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記交流が約10Hzから約1kHzの間である、請求項29に記載の方法。
【請求項38】
前記ニューロモジュレーションデバイスを使用して前記オフセット電流を測定するステップをさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項39】
前記少なくとも1つの作用電極の周期的Vppを測定するステップをさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項40】
単一アーキテクチャを用いて複数の電気変調モードで動作するように構成されたニューロモジュレーションデバイスであって、
電源と、
制御ユニットと、
少なくとも1つの作用電極に接続されるように構成された電流発生器と、
刺激回路であって、直流を阻止するように構成された少なくとも1つの阻止コンデンサ、少なくとも1つの不関電極と電気的に連通するように構成された少なくとも1つの不関電極スイッチ、および前記少なくとも1つの阻止コンデンサとバイパスするために電気的連通状態にある少なくとも1つの阻止コンデンサスイッチを備える、刺激回路と
を備える、デバイス。
【請求項41】
前記電流発生器が前記少なくとも1つの作用電極に交流を供給するように構成される、第1の刺激モードを含む、請求項40に記載のデバイス。
【請求項42】
前記電流発生器が前記少なくとも1つの作用電極に直流を供給するように構成される、第2の刺激モードをさらに含み、両リターン電極が前記不関電極を通じて吸収される、請求項41に記載のデバイス。
【請求項43】
前記第1の刺激モードにおいて、前記制御ユニットが、第2の作用電極を通るように別の電流発生器を構成し、前記少なくとも1つの不関電極スイッチに、前記電流発生器と前記少なくとも1つの不関電極との間の電気的連通をディスエーブルさせ、少なくとも1つの阻止コンデンサが、直流を阻止するために機能する、請求項41または42に記載のデバイス。
【請求項44】
前記第2の刺激モードにおいて、0μAから100μAまでの、またはそれ以上のオフセット電流が前記不関電極スイッチを通過して前記不関電極に向かうように構成されるように、前記2つの電流発生器が構成され、前記制御ユニットが、少なくとも2つの阻止コンデンサスイッチに、前記電流発生器と前記少なくとも1つの阻止コンデンサとの間の電気的連通をディスエーブルさせ、それにより、前記少なくとも2つの阻止コンデンサをバイパスさせる、請求項41から43のいずれか一項に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先出願の参照による組み込み
本出願は、参照によりそれらの全体が組み込まれている2019年11月24日に出願した米国仮出願第62/939,666号および2020年1月24日に出願した米国仮出願第62/965,772号の非仮出願としての米国特許法第119条(e)項に基づく利益を主張するものである。本出願とともに提出された出願データシートにおいて外国または国内の優先権主張が特定されるありとあらゆる出願がここに、連邦規則法典第37巻第1.57条の下で参照により組み込まれている。
【0002】
本出願は、いくつかの実施形態では、神経系組織内の生体組織、心臓組織、または他の電位感受性組織の処理を含む、神経組織を通じた生体信号の遮断、変調、または減衰を容易にすることに関する。
【背景技術】
【0003】
疼痛のゲートコントロール理論は、1960年代に開発され、脊髄内の非侵害受容線維(非疼痛伝達線維(non-pain transmitting fiber))を選択的に刺激して疼痛の刺激が脳に伝達するのを抑制することによって、疼痛の入力が脳に到達するのを低減させる、刺激ベースの疼痛管理療法を出現させた(Mendell、Constructing and Deconstructing the Gate Theory of Pain、Pain、2014年2月 155(2):210-216を参照されたい)。このゲートコントロール理論に基づいて疼痛を間接的に低減させるように作用する、脊髄刺激療法(SCS)のための電流刺激システムは、典型的には、<100Hzの周波数範囲内、最近ではkHzの周波数範囲内の、刺激信号を利用してきた。同じメカニズムを通じて分節性の疼痛を低減させるために、類似の周波数範囲内の後根神経節DRGへの刺激も用いられてきた。
【0004】
しかし、この前提に基づく技術には欠点があり、というのも、疼痛伝達抑制は完全ではなく、知覚異常などの副作用は患者にとって不快となり得るためである。したがって、非侵害受容線維のゲート理論による活性化を通じて疼痛信号を間接的に低減させるのではなく、疼痛線維を通じた疼痛信号の伝達をより効果的に遮断もしくは減衰するかまたは疼痛信号を処理するニューロンの興奮性を減少させ、かつ望ましくない副作用を回避する、疼痛を治療するシステムおよび方法があることが望ましい。さらに、神経組織または神経活動の遮断または減衰は、疼痛に影響を及ぼすことのみならず、運動障害、精神疾患、心臓血管の健全性の管理、ならびに糖尿病などの病状の管理にも関係してきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第10,071,241号
【特許文献2】米国特許第9,008,800号
【特許文献3】米国特許出願公開第2018/0280691号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Mendell、Constructing and Deconstructing the Gate Theory of Pain、Pain、2014年2月 155(2):210-216
【非特許文献2】Nahin、Estimates of Pain Prevalence and Severity in Adults:United States、2012、The Journal of Pain、2015年8月 16(8):769-780
【非特許文献3】Borsook、A Future Without Chronic Pain:Neuroscience and Clinical Research、Cerebrum、2012年6月
【非特許文献4】Tjepkema-Cloostermansら、Effect of Burst Stimulation Evaluated in Patients Familiar With Spinal Cord Stimulation、Neuromodulation、2016年7月 19(5):492-497
【非特許文献5】BhadraおよびKilgore、Direct Current Electrical Conduction Block of Peripheral Nerve、IEEE Transactions on Neural Systems and Rehabilitation Engineering、2004年9月 12(3):313-324
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
さまざまなシステム、デバイス、および方法が、本明細書において開示される。いくつかの変形形態では、ニューロモジュレーションデバイスが、単一アーキテクチャを用いて複数の電気変調モードで動作することができる。ニューロモジュレーションデバイスは、電源を含むことができる。ニューロモジュレーションデバイスは、制御ユニットを含むことができる。ニューロモジュレーションデバイスは、少なくとも1つの作用電極に接続することのできる双極性電流発生器を含むことができる。ニューロモジュレーションデバイスは、刺激回路を含むことができ、刺激回路は、直流を阻止することのできる少なくとも1つの阻止コンデンサ、少なくとも1つの不関電極と電気的に連通することができる少なくとも1つの不関電極スイッチ、および/または少なくとも1つの阻止コンデンサをバイパスするために電気的に連通する少なくとも1つの阻止コンデンサスイッチを含むことができる。デバイスは、電流発生器が少なくとも1つの作用電極に交流を供給することのできる、第1の刺激モード、および/または電流発生器が少なくとも1つの作用電極に直流を供給することのできる、第2の刺激モードを含むことができ、両リターン電極が不関電極を通じて吸収される。第1の刺激モードにおいて、制御ユニットは、第2の作用電極を通るように別の電流発生器を構成することができ、少なくとも1つの不関電極スイッチに、電流発生器と少なくとも1つの不関電極との間の電気的連通をディスエーブルさせることができ、少なくとも1つの阻止コンデンサは、直流を阻止するために機能する。第2の刺激モードにおいて、0μAから1,000μAまでの、またはそれ以上のオフセット電流が不関電極スイッチを通過して不関電極に向かうことができるように、2つの電流発生器が構成され、制御ユニットは、少なくとも2つの阻止コンデンサスイッチに、電流発生器と少なくとも1つの阻止コンデンサとの間の電気的連通をディスエーブルさせ、それにより、少なくとも2つの阻止コンデンサをバイパスさせることができる。
【0008】
いくつかの変形形態では、直流は超低周波電流を含むことができる。
【0009】
いくつかの変形形態では、超低周波電流は約5Hz未満とすることができる。
【0010】
いくつかの変形形態では、超低周波電流は約2Hz未満とすることができる。
【0011】
いくつかの変形形態では、超低周波電流は約1Hz未満とすることができる。
【0012】
いくつかの変形形態では、交流は高周波交流とすることができる。
【0013】
いくつかの変形形態では、高周波交流は少なくとも約1kHzとすることができる。
【0014】
いくつかの変形形態では、交流は約5Hzから約1kHzの間とすることができる。
【0015】
いくつかの変形形態では、電源はバッテリを含むことができる。
【0016】
いくつかの変形形態では、制御ユニットは、独立したアルゴリズムを実行することのできる第1の制御ユニットおよび第2の制御ユニットを含むことができる。
【0017】
いくつかの変形形態では、デバイスは、デバイスが第2の刺激モードにあるときにオフセット電流を測定することができる。
【0018】
いくつかの変形形態では、デバイスは、少なくとも1つの作用電極の周期的Vppを測定することができる。
【0019】
いくつかの変形形態では、デバイスは、不関電極に動作可能に接続することのできる仮想グランドを含むことができ、その場合、仮想グランドは、電力消費を最小限に抑えるために任意のレベルに設定され得る。
【0020】
いくつかの変形形態では、デバイスは、(a)不関電極からのバイアス電流を測定し、バイアス電流が事前設定パラメータ外に逸脱する場合、動作を一時停止または変更するように構成された制御システム、(b)任意の作用電極対間、作用電極とリファレンス電極との間、および作用電極と不関電極との間の電極電圧を測定するように構成された制御システム、(c)波形遷移に関連して電極モニタリングを解決するように構成された制御システム、ならびに(d)電極特性に基づく統計学的解析を受ける電極電圧の全体または成分に関するデータを受信するように構成された制御システムからなる群から選択される軽減メカニズムのうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0021】
いくつかの変形形態では、デバイスは、(a)不関電極からのバイアス電流を測定し、バイアス電流が事前設定パラメータ外に逸脱する場合、動作を一時停止または変更するように構成された制御システム、(b)任意の作用電極対間、作用電極とリファレンス電極との間、および作用電極と不関電極との間の電極電圧を測定するように構成された制御システム、(c)波形遷移に関連して電極モニタリングを解決するように構成された制御システム、ならびに(d)電極特性に基づく統計学的解析を受ける電極電圧の全体または成分に関するデータを受信するように構成された制御システムの、全ての軽減メカニズムを備えることができる。
【0022】
いくつかの変形形態では、ニューロモジュレーション療法デバイスを利用して患者の電気的興奮性組織に電気的ニューロモジュレーションを送達する方法が開示される。方法は、電気的興奮性組織と電気的に連通する少なくとも1つの作用電極に交流を供給することを含むことができる。交流を供給することは、ニューロモジュレーション療法デバイスの少なくとも1つの阻止コンデンサを利用して直流を阻止することと、ニューロモジュレーション療法デバイスと少なくとも1つの不関電極との間の電気的連通を妨げることとを含むことができる。
【0023】
いくつかの変形形態では、方法は、交流の供給を中断すること、ならびに/または少なくとも1つの作用電極に直流を供給すること、および少なくとも1つの不関電極にオフセット電流を供給することを含むことができ、直流を供給することは、ニューロモジュレーション療法デバイスの少なくとも1つの阻止コンデンサをバイパスすることを含む。
【0024】
いくつかの変形形態では、方法は、少なくとも1つの作用電極への直流の供給を中断すること、および/または少なくとも1つの作用電極への交流の供給を再開することを含むことができる。交流の供給を再開することは、ニューロモジュレーション療法デバイスの少なくとも1つの阻止コンデンサを利用して直流を阻止することを含むことができる。方法は、ニューロモジュレーション療法デバイスと少なくとも1つの不関電極との間の電気的連通を妨げることを含むことができる。
【0025】
いくつかの変形形態では、直流は超低周波電流を含むことができる。
【0026】
いくつかの変形形態では、超低周波電流は約5Hz未満とすることができる。
【0027】
いくつかの変形形態では、超低周波電流は約2Hz未満とすることができる。
【0028】
いくつかの変形形態では、超低周波電流は約1Hz未満とすることができる。
【0029】
いくつかの変形形態では、交流は高周波交流とすることができる。
【0030】
いくつかの変形形態では、高周波交流は少なくとも約1kHzとすることができる。
【0031】
いくつかの変形形態では、交流は約10Hzから約1kHzの間とすることができる。
【0032】
いくつかの変形形態では、方法は、ニューロモジュレーションデバイスを使用してオフセット電流を測定することを含むことができる。
【0033】
いくつかの変形形態では、方法は、少なくとも1つの作用電極の周期的Vppを測定することを含むことができる。
【0034】
いくつかの変形形態では、ニューロモジュレーション療法デバイスを利用して患者の電気的興奮性組織に電気的ニューロモジュレーションを送達する方法が、本明細書において開示される。方法は、少なくとも1つの作用電極に直流を供給することと、少なくとも1つの不関電極にオフセット電流を供給することとを含むことができ、直流を供給することは、ニューロモジュレーション療法デバイスの少なくとも1つの阻止コンデンサをバイパスすることを含むことができる。
【0035】
いくつかの変形形態では、方法は、少なくとも1つの作用電極への直流の供給、および少なくとも1つの不関電極へのオフセット電流の供給を中断することを含むことができる。方法は、電気的興奮性組織と電気的に連通する少なくとも1つの作用電極に交流を供給することを含むことができる。交流を供給することは、ニューロモジュレーション療法デバイスの少なくとも1つの阻止コンデンサを利用して直流を阻止することと、ニューロモジュレーション療法デバイスと少なくとも1つの不関電極との間の電気的連通を妨げることとを含むことができる。
【0036】
いくつかの変形形態では、方法は、交流の供給を中断することを含むことができる。方法は、少なくとも1つの作用電極への直流の供給、および少なくとも1つの不関電極へのオフセット電流の供給を再開することを含むことができ、直流の供給を再開することは、ニューロモジュレーション療法デバイスの少なくとも1つの阻止コンデンサをバイパスすることを含むことができる。
【0037】
いくつかの変形形態では、直流は超低周波電流を含むことができる。
【0038】
いくつかの変形形態では、超低周波電流は約5Hz未満とすることができる。
【0039】
いくつかの変形形態では、超低周波電流は約2Hz未満とすることができる。
【0040】
いくつかの変形形態では、超低周波電流は約1Hz未満とすることができる。
【0041】
いくつかの変形形態では、交流は高周波交流とすることができる。
【0042】
いくつかの変形形態では、高周波交流は少なくとも約1kHzとすることができる。
【0043】
いくつかの変形形態では、交流は約10Hzから約1kHzの間とすることができる。
【0044】
いくつかの変形形態では、方法は、ニューロモジュレーションデバイスを使用してオフセット電流を測定することを含むことができる。
【0045】
いくつかの変形形態では、方法は、少なくとも1つの作用電極の周期的Vppを測定することを含むことができる。
【0046】
いくつかの変形形態では、単一アーキテクチャを用いて複数の電気変調モードで動作するように構成されたニューロモジュレーションデバイスが、本明細書において開示される。デバイスは、電源を含むことができる。デバイスは、制御ユニットを含むことができる。デバイスは、少なくとも1つの作用電極に接続することのできる電流発生器を含むことができる。デバイスは、刺激回路を含むことができ、刺激回路は、直流を阻止することのできる少なくとも1つの阻止コンデンサ、少なくとも1つの不関電極と電気的に連通することができる少なくとも1つの不関電極スイッチ、および少なくとも1つの阻止コンデンサとバイパスするために電気的連通状態にある少なくとも1つの阻止コンデンサスイッチを含むことができる。
【0047】
いくつかの変形形態では、デバイスは、電流発生器が少なくとも1つの作用電極に交流を供給することのできる、第1の刺激モードを含むことができる。
【0048】
いくつかの変形形態では、デバイスは、電流発生器が少なくとも1つの作用電極に直流を供給することのできる、第2の刺激モードを含むことができ、両リターン電極が不関電極を通じて吸収される。
【0049】
いくつかの変形形態では、第1の刺激モードにおいて、制御ユニットは、第2の作用電極を通るように別の電流発生器を構成し、少なくとも1つの不関電極スイッチに、電流発生器と少なくとも1つの不関電極との間の電気的連通をディスエーブルさせ、少なくとも1つの阻止コンデンサは、直流を阻止するために機能することができる。
【0050】
いくつかの変形形態では、第2の刺激モードにおいて、0μAから100μAまでの、またはそれ以上のオフセット電流が不関電極スイッチを通過して不関電極に向かうように構成されるように、2つの電流発生器が構成され、制御ユニットは、少なくとも2つの阻止コンデンサスイッチに、電流発生器と少なくとも1つの阻止コンデンサとの間の電気的連通をディスエーブルさせ、それにより、少なくとも2つの阻止コンデンサをバイパスさせる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1】特定用途向け集積回路(ASIC)の概略図である。
【
図2】DCおよびACディスクリート手法をとるASICの概略図である。
【
図3】DCを供給するように適合されたASICの概略図である。
【
図4】電流ソースを用いてDCを供給するように適合されたASICの概略図である。
【
図5】電流ソースを用いたシステムの概略図である。
【
図5B】電流ソースを用いたシステムの概略図である。
【
図6】フェイルセーフハイブリッドシステムの概略図である。
【
図7】例示的なメカニズムおよび軽減策(mitigation)の表である。
【
図8】喪失容量および電圧保護に関するグラフである。
【
図9A】リファレンス電極の外れ(disconnection)に関するグラフである。
【
図10】刺激開始と秒単位の時間との関係を示すグラフである。
【
図11】HWおよびFWのフェイルセーフに関する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
本出願は、いくつかの実施形態では、(ニューロンおよびグリア細胞を含むがそれらに限定されない)神経系組織内の生体組織、心臓組織、または他の電位感受性組織の処理を含む、神経組織を通じた生体信号の遮断、変調、および/または減衰を容易にするための内部および外部のパルス発生および/または刺激エンジンシステムに関する。いくつかの実施形態では、患者への送達波形のアノード相もしくはカソード相、またはアノード相とカソード相の両方が、例えば神経組織などの電気的興奮性組織に対する治療効果を有することが可能である。
【0053】
いくつかの実施形態では、パルス発生および/または刺激エンジンシステムは、本開示において説明する特徴のうちのいずれか1つまたは複数を備える。
【0054】
いくつかの実施形態では、パルス発生および/または刺激エンジン方法は、本開示において説明する特徴のうちのいずれか1つまたは複数を含む。
【0055】
従来の刺激システムは、コンデンサを利用してフェイルセーフ動作を保証または促進することができ、というのも、コンデンサは高信頼かつ低コストなためである。
【0056】
システムによってはコンデンサを使用することができず、というのも、コンデンサはシリコン上に完全に集積されており、出力周波数があまりにも低く、コンデンサはあまりにも大きく、またはシステムによっては直流(DC)を通過させなければならないためである。システムのいくつかの実施形態は、低周波AC(LF-AC)波形を、電極動作範囲をある電位窓内に保つための低レベルDCバイアスとともに提供することによって、動作することができる。この安全性メカニズムにより基本的には、確実に、両成分が仕様内に留まるようになり、また結果として得られる電極電圧が、例えば少なくとも2つの独立したチェックメカニズムによって評価される規定の範囲内に留まるようになる。従来の高周波ACに関しては、DCから保護するためにコンデンサをインに切り替える(switched in)ことができ、スイッチ故障からの保護は、DCが通る可能性のある唯一の単一障害経路であるカンを、DCが実質的に全く通過しないことを確実にすることにより、得ることができる。
【0057】
いくつかの実施形態では、患者の安全性を高めるためのコンデンサに代わる実施形態、および/または保護を行うための、また場合によってはより高い周波数を得るためだけのコンデンサの併用が、本明細書において開示される。
【0058】
理論によって限定されるべきではないが、電気的興奮性組織、例えば神経組織内の活動電位の伝搬は、ナトリウムチャネルではミリ秒程度の、典型的には約1msから約20msの間の、または絶対不応期と相対不応期の組合せでは約2msから約5msの間の不応期を生じさせ、したがって、半周期がこの不応期よりも有意に大きく(例えば約1ms、1.5ms、2ms、2.5ms、3ms、10ms、30ms、50ms、100ms、300ms、500ms、1000ms、2000ms、5000ms、6000ms、またはそれ以上よりも大きく)、活動電位を引き起こさないほど十分に小さな差動レート(例えば立上り時間および立下り時間)を有する極低周波AC電流波形も、組織の遮断または減衰を生み出すために使用され得、この極低周波AC電流波形は、電気的興奮性組織によって直流刺激として感知される。したがって、本明細書において定義される直流(DC)は、その活動電位または神経処理が変調されている組織の観点から、直流として感知され、機能的に直流である、低周波AC電流波形を含む。周波数は、例えば、標的組織の少なくとも不応期全体にわたって、または不応を生じさせる膜チャネル時定数(refractory-causing membrane channel time constant)(例えば高速ナトリウムチャネル不活性化ゲート時定数(fast sodium channel inactivation gate time constant))の少なくとも2倍の長さ、もしくは少なくとも5倍の長さ、もしくは少なくとも10倍の長さにわたって、電流の流れの方向が一定である限り、約10Hz、9Hz、8Hz、7Hz、6Hz、5Hz、4Hz、3Hz、2Hz、1Hz、0.5Hz、0.1Hz、0.05Hz、0.01Hz、0.005Hz、0.0001Hz未満、または前述の値のうちのいずれか2つを含む範囲とすることができる。
【0059】
いくつかの実施形態では、システムおよび方法は、例えば約1.2~50kHzまたはそれ以上の高周波数、例えば約20~1.2kHzの従来周波数、例えば約1~20Hzの低周波数、および例えば約1Hz未満の超低周波数を含む、多様な波形周波数を組み込むことができる。本明細書の他の場所で述べたように、本明細書において定義される直流は、その活動電位が変調されている組織の観点から、直流として感知され、機能的に直流である、低周波AC電流波形を含む。
【0060】
慢性疼痛は、個人および社会全体の著しい負担になっている。米国だけで、5千万人近くの大人に著しい慢性疼痛または重度の疼痛があると推定されている(Nahin、Estimates of Pain Prevalence and Severity in Adults:United States、2012、The Journal of Pain、2015年8月 16(8):769-780を参照されたい)。世界的には、慢性疼痛は、15億人を上回る人々に影響を及ぼしていると推定されている(Borsook、A Future Without Chronic Pain:Neuroscience and Clinical Research、Cerebrum、2012年6月)。多くは神経が侵害されることによる特定の疼痛源を除去するために、外科的技法が時折適用されるが、多くの場合、疼痛の正確な原因は明確ではなく、外科的処置を介して確実に対処することができない。疼痛管理はその代わりに、疼痛入力のレジストレーション(registration)を妨げる刺激信号を用いて中枢神経系を圧倒すること(疼痛のゲートコントロール理論)によって、対処することができる。典型的には、脊髄刺激療法(SCS)の場合のこの刺激は、金属電極および交流(AC)刺激を使用して、痛覚を妨げるこれらの追加の刺激信号を生成することによって、実施される。しかし、1つの主要な欠点は、刺激された神経から下流にある神経支配領域内に、チクチクする感覚である知覚異常が存在することである。患者が不快と気付き得る知覚異常を解消するための方法が、従来のトニックSCS(約30~120Hz)刺激とは異なる、高周波刺激(約10kHz)およびバースト刺激(例えば1秒あたり40回送達される500Hzの5つのパルス)を含む刺激手段をもたらした(Tjepkema-Cloostermansら、Effect of Burst Stimulation Evaluated in Patients Familiar With Spinal Cord Stimulation、Neuromodulation、2016年7月 19(5):492-497)。
【0061】
中枢神経系への疼痛信号伝達を管理するための代替手段は、従来のSCSおよびゲート理論のように代替の神経入力を発生させて疼痛信号の伝達を排除し抑制することによって疼痛信号をマスクするのとは対照的に、疼痛信号を直接遮断または減衰することによって、末梢信号源からの疼痛信号の伝導を妨げるというものである。これを行うための1つの手段は、活動電位(AP)の発生および伝達を妨げるために、神経に直流(DC)を印加することによるものである。これにより従来の刺激のように神経が刺激されないので、知覚異常を回避することができる。AP遮断に至るメカニズムは、電極部位下での活動電位イベントに必要なナトリウムチャネルを不活性化する脱分極性遮断または過分極性遮断(hyperpolarization block)によるものとされている(BhadraおよびKilgore、Direct Current Electrical Conduction Block of Peripheral Nerve、IEEE Transactions on Neural Systems and Rehabilitation Engineering、2004年9月 12(3):313-324を参照されたい)。広作動域(WDR)ニューロンは、疼痛信号を統合し、また患者における疼痛の原因源として関係することが示唆されており、直流(DC)の印加は、この活動を低減させるように十分に位置決めされ、WDR活動を駆動する関連する抑制性ニューロンおよび興奮性ニューロンに影響を及ぼすことができる。
【0062】
直流を軽減せずに使用することは、電極-神経間界面に有毒種を生み出すため、神経組織にとって危険であることが長い間知られてきた。したがって、直流療法の安全な送達を容易にするシステムおよび方法が大いに望ましい。いくつかの実施形態では、システムおよび方法は、侵害受容性疼痛を治療するように構成することができる。いくつかの実施形態では、疼痛および他の医学的なものを治療するシステムおよび方法には、脊髄内の側柱組織(antero-lateral column tissue)の選択的遮断が関与することができる。さらに、いくつかの実施形態は、前述したシステムおよび方法によって、特に後根組織および/または後根神経節の選択的遮断を通じて、疼痛を治療するシステムおよび方法に関する。さらに、いくつかの実施形態では、特に1つまたは複数の末梢神経の遮断または減衰を通じて疼痛を治療するシステムおよび方法が、本明細書において開示される。
【0063】
いくつかの実施形態では、システムおよび方法は、硬膜上腔内に最大で2週間またはそれ以上にわたって極低周波刺激を送達することによって、脊柱内で疼痛信号を安全に遮断または減衰して(これには疼痛処理の変調を含む)、脊髄刺激療法(SCS)の候補である慢性腰痛患者において臨床的に測定可能な疼痛低減を達成することができる。
【0064】
標的神経遮断(targeted nerve block)を用いて、特定の皮膚知覚帯からの疼痛および局所的身体部位内の疼痛を管理することができる。疼痛信号の伝達(transduction)を緩和することに関係するいくつかの局部標的に対処することが可能である。例えば、脊髄視床路や後根神経節など、どちらもより中心に位置する神経組織を標的にして、疼痛のさまざまな考慮すべき事項の中でもとりわけ、腰痛、座骨神経痛、および複合性局所疼痛症候群(CPRS)を管理することができる。
【0065】
いくつかの実施形態では、電極は、高電荷容量材料を備える接点を含むことができる。電極接点は、いくつかの場合には、約1mm2から約10mm2の間の、または約1mm2、2mm2、3mm2、4mm2、5mm2、6mm2、7mm2、8mm2、9mm2、10mm2、20mm2、50mm2、100mm2の、または前述の値のうちのいずれか2つを含む範囲の、幾何学的表面積を有することができる。電極接点自体は、例えば、ここに参照によりその全体が組み込まれているBhadraらの米国特許第10,071,241号に記載されているような高電荷容量材料から製作することができる。あるいは、電極接点は、少なくとも部分的にまたは全体が高電荷容量材料で被覆されたベースを備えることもできる。いくつかの実施形態では、高電荷容量材料は、少なくとも約25、50、100、200、300、400、500、1,000、2,500、5,000、10,000、50,000、100,000、500,000μC、もしくはそれ以上の、または前述の値のうちのいずれか2つを含む範囲の、Q値(Q value)を有することができる。電極接点のQ値は、身体のノミナルの輸送機構を通じて除去することのできないレートで電極接点が不可逆化学反応を発生させ始める前に電極接点を通じて送達することのできる電荷の総量を指すことができる。これらの化学反応には、それらに限定されないが、酸素もしくは水素の発生、または電極材料の溶解が含まれる。高電荷容量材料の非限定的な例は、白金黒、酸化イリジウム、窒化チタン、タンタル、塩化銀、ポリ(エチレンジオキシチオフェン)、およびそれらの適切な組合せである。電極は、いくつかの実施形態では、フラクタル被覆または高表面積形式を備えることができる。高電荷容量材料は、モノリシックであるように、またはベース基体上の被覆として、構成することができる。被覆の場合の基体の非限定的な例には、304および316LVMなどのステンレス鋼、MP35N(登録商標)などのニッケル-コバルト-クロム合金、白金および白金-イリジウム、チタン、Nitinolなどのニッケル-チタン合金が含まれる。いくつかの実施形態では、電極は、窒化チタンで被覆したタンタルを含むことができる。非限定的な一例としてのタンタルは、それが優れた放射線不透過性を有し、したがって、埋め込み可能なニューロモジュレーションデバイスの埋め込み、検証、および/または除去の改善が可能になるため、特に有利な材料となり得る。いくつかの実施形態では、電極は、窒化チタン、タンタル、およびMP35Nのうちの1つまたは複数を含むことができる。電気化学反応が生じるためのより多くの表面積を生み出すべく、従来の電極は、追加の材料表面積を露出させるための粗面、織面、パターン化表面、網状発泡体構造(reticulated foam structure)、多孔質焼結ビーズ構造(porous sintered bead structure)、ナノ-またはマイクロ-パターン化構造など、体積に対して高い表面積比をもつ構造(high surface area to volume structure)から作製される場合がある。いくつかの実施形態では、電極は、例えば、ここに参照によりそれらの全体が組み込まれているAckermannらの米国特許第9,008,800号およびAckermannらの米国特許出願公開第2018/0280691号に記載されているように、電極が電解質溶液中に浸漬され、電解質溶液がイオン伝導材料-電解質溶液界面を用いてイオン伝導材料と接触し、イオン伝導材料が心臓組織または心臓組織に近接したエリアと電気的に接触する、SINE(分離界面神経電極(separated-interface nerve electrode))またはEICCC(電子-イオン電流変換セル(electron to ion current conversion cell))電極とすることができる。
【0066】
いくつかの実施形態では、有利にはDCから高周波数までの多様な波形を利用することのできる、神経組織を安全かつ効果的に刺激するためのシステムおよび方法が、本明細書において開示される。DCを用いた刺激は、潜在的に非常に有用であるが、神経変調に商用的に利用されてきておらず、というのも、DCを長い時間期間にわたって安全に供給することの可能な神経刺激システムが利用可能になっていないためである。利用可能な商用システムは、不可逆電気化学反応を制限するためにDCの供給を妨げ、電荷平衡メカニズムを利用している。これらのシステムは、DC成分をコンデンサ、すなわち阻止コンデンサを用いて阻止すること、または刺激サイクルの終わりに電荷蓄積を除去するメカニズムを含むことがある。典型的なコンデンサは、高信頼であるが、電荷を相あたり約1ミリクーロン(mC)未満に制限し、この電荷容量を超える大きな電荷の大きさでの超低周波信号の使用を可能にしない。他の広く利用されている技法は、能動的に平衡化される電流源を利用しているが、これらの電流源は、フォールトトレラントになるには冗長性が必要であり、典型的には、一部の電極技術にとって重要である電極電圧を意図的に制御せず、また長期の高電荷送達にとって有利であることは示されていない。能動システムが被覆とともに、網膜埋め込みのようなデバイスにおいて、電荷密度を約2mC/cm2に増大させるために利用されてきたが、これらの密度は、DCに必要となる相あたりの電荷が非常に高い波形、または十分な電流振幅をもつ極低周波波形の使用を可能にするには、依然として不十分である。
【0067】
いくつかの実施形態には、高表面積電極被覆と、長期動作耐久性を得るべく電極電圧を特定の電極材料にとって最適な範囲内に維持するための例えばDCバイアスなどのバイアス電流とが関与する。この手法は、相あたりの電荷を、例えば電極または電気的興奮性組織に損傷を与えずに、従来のシステムにおいて使用される約50μC/cm2から、約または少なくとも約5,000μC/cm2、25,000μC/cm2、50,000μC/cm2に、場合によってはそれを超えて増大させることができる。意図的な正味のバイアス電流、例えばDCバイアスを、制御システムなどを介して可能にするように構成されたシステムおよび方法は、いくつかの場合には、有利には、(腐食、例えば酸化、または電極への他の損傷を防止または抑制することによって)高電荷容量電極の健全性を維持するとともに、組織の損傷を招くおそれのある望ましくない反応およびOH-、H+、または酸素フリーラジカルなどの種の発生を最小限に抑えるかまたは防止することができる。いくつかの実施形態では、アノード相および/またはカソード相あたりの電荷は、例えば、相あたり約4,000μCから約5,000μCの間など、約3,000μC、3,500μC、4,000μC、4,500μC、5,000μC、5,500μC、6,000μC、またはそれ以上もしくはそれ以下、および前述の値のうちのいずれか2つを含む範囲である。
【0068】
いくつかの実施形態では、埋め込み電極を介して電流を供給するためのシステムおよび方法は、阻止コンデンサなどのコンデンサを含まない。いくつかの実施形態では、埋め込み電極を介して電流を供給するためのシステムおよび方法は、抵抗器を含まない。
【0069】
いくつかの実施形態では、バイアス電流は、標的の興奮性組織または電位感受性組織に近接する電極接点または作用電極に同時に供給されている電流が合計される結果生じる電流である。いくつかの実施形態では、バイアス電流は、電極接点または作用電極に同時に供給されている電流の合計と大きさが等しく、極性が反対である。いくつかの実施形態では、電極接点または作用電極に同時に供給されている電流を、バイアス電流を変調するように調整することができる。
【0070】
いくつかの実施形態では、AC専用システムを含むことのできる従来のACシステムは、組織へのDCの供給を妨げるために、各/全ての出力、例えば電極上に、コンデンサを利用する。従来のACシステムは、典型的には、(例えば上述したように超低周波数の、を含む)直流波形の送達に必要となることのある、コンデンサを迂回することのできるバイパススイッチを含まない。
【0071】
いくつかの実施形態では、単一アーキテクチャを用いて複数の電気変調モードで動作するように構成されたニューロモジュレーションデバイスが、本明細書において開示される。デバイスは、例えば、電源、制御ユニット、および/または少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、もしくはそれ以上の作用電極に接続されるように構成された1つもしくは複数の電流発生器(例えば単極性および/もしくは双極性)を含むことができる。
【0072】
いくつかの実施形態では、デバイスは、直流を阻止するように構成された少なくとも1つ、2つ、またはそれ以上の阻止コンデンサ、少なくとも1つ、2つ、またはそれ以上の不関電極と電気的に連通するように構成された少なくとも1つ、2つ、またはそれ以上の不関電極スイッチ、および少なくとも1つ、2つ、またはそれ以上の阻止コンデンサをバイパスするために電気的に連通する少なくとも1つ、2つ、またはそれ以上の阻止コンデンサスイッチを含む、刺激回路を含むことができる。
【0073】
デバイスは、電流発生器が少なくとも1つの作用電極に交流を供給するように構成される、第1の刺激モード、および電流発生器が少なくとも1つの作用電極に直流を供給するように構成される、第2の刺激モードを含むことができ、両リターン電極が不関電極を通じて吸収される。
【0074】
いくつかの実施形態では、第1の刺激モードにおいて、制御ユニットが、第2の作用電極を通るように別の電流発生器を構成し、少なくとも1つの不関電極スイッチに、電流発生器と少なくとも1つの不関電極との間の電気的連通をディスエーブル(disable)させ、少なくとも1つの阻止コンデンサが、直流を阻止するために機能する。
【0075】
いくつかの実施形態では、第2の刺激モードにおいて、例えば0μAから1,000μAまでの、またはそれ以上のオフセット電流が不関電極スイッチを通過して不関電極に向かうように構成されるように、2つの電流発生器が構成され、制御ユニットは、少なくとも2つの阻止コンデンサスイッチに、電流発生器と少なくとも1つの阻止コンデンサとの間の電気的連通をディスエーブルさせ、それにより、少なくとも2つの阻止コンデンサをバイパスさせる。
【0076】
いくつかの実施形態では、デバイスは、超低周波、従来周波、または高周波の交流が、電流発生器から任意数の作用電極に供給され得るように、一方では、阻止コンデンサスイッチが阻止コンデンサをバイパスするように構成された状態でアノードまたはカソードバイアス電流が任意数の作用電極に供給されるように構成することができ、このことは、例えば電極寿命にとって有利となり得る。
【0077】
いくつかの実施形態では、本明細書におけるいくつかの実施形態を含む特定用途向け集積回路(ASIC)が、低電力で非常に用途の広いAC刺激用に構成される。いくつかの実施形態は、DCを追加することができるが、必ずしもDCにとって最適であるとは限らない可能性があり、というのも、DAC(デジタル-アナログ変換器)の分解能は比較的低く、それにより、DCバイアス/オフセット選択性が制限される(DCオフセットは、同一チャネル上で例えば25mAの高さの刺激電流を同時に提供している間、例えば1μAの低さとなり得る)ためであり、またDCモードで実行されているときの電力が比較的高いためであり、というのも、従来のAC刺激パルスは25mSごとに250μSオンになる(1%デューティサイクル)ことがあるのに対して、電流が連続して(100%デューティサイクル)または実質的に連続してオンになることがあるためである。
【0078】
いくつかの実施形態では、
図1を参照すると、特定用途向け集積回路(ASIC)を使用したDCおよびAC手法は、各出力阻止コンデンサを迂回するバイパススイッチを含むことができ、それによって、バイパススイッチが閉じられているときは電流、例えばDCが供給され得、バイパススイッチが開いているときは電荷平衡ACが供給され得る。これは、例えばチャネル1やチャネル16などの各チャネルに適用することができる。したがって、バイパススイッチが故障し、スイッチ内の短絡(または他の原因)により、電流が電流源の不平衡のため流れて組織に至る場合、「センス」安全性メカニズム(
図1に示す「センス」回路)を使用して、システムの中を流れて不関電極を通って戻る過電流を検出することができ、例えばIPGは、次いで刺激を止め、かつ/または別の安全措置対策を講じることができる。
【0079】
いくつかの実施形態では、
図2を参照すると、DCおよびACディスクリート手法を、より少数のコンポーネントを用いて実装することができる。例えば、阻止コンデンサおよびバイパススイッチを、電流源とマルチプレクサ(mux)との間の単一セットに低減することができ、マルチプレクサが、例えば16チャネルのうちの1つなど、いくつかのチャネルに電流を向かわせる。いくつかの実施形態では、2セット以上が使用される。いくつかの実施形態では、16チャネルよりも多くの、もしくは16チャネルよりも少ないチャネルを使用することができ、かつ/または電流を1つもしくは複数のチャネルに向かわせることができる。第2の電流源およびmuxを使用して、双極性動作のために電流をシンクまたはソースすることもできる。mux出力(電極)ごとにコンデンサおよびスイッチを含めないことにより、このディスクリート手法を有利には簡易化することができ、それによりコスト、製造上の複雑さなどが低減し得る。上で説明し、
図3~
図4に示したディスクリート手法が実装されないとき、チャネルごとのコンデンサおよびスイッチが必要となる場合がある(例えば16チャネルシステムの場合、16対のコンデンサとスイッチが必要となる場合がある)。
図2を参照して説明したように、DCおよびACディスクリート手法においても、「センス」安全性メカニズムおよびIEを使用することができる。
【0080】
図3は、DCとACをどちらも供給するように適合されたASICの一実施形態を概略的に示す。DACが、電流発生器(ソースおよびシンク)を直接制御することができ、DCをサポートするために外部コンデンサバイパススイッチがシステム内に含められている。バイパススイッチ、例えばシリコンバイパススイッチは、身体に触れるので、不関電極(IE)/カンを通じてDC電流が検出されればシャットダウンして、安全性を確保することができる。
【0081】
あるいは、ACシステムとDCシステムをどちらも、共通コンポーネントを共有するディスクリートシステムを用いて実装することもできる。いくつかの実施形態は、いくつかの場合には16個の電極など、システム内の任意対の電極にわたって構成することのできる、単一の双極性チャネルを含む。ACシステムは、単一の電流シンクのみを含むように構成することができ、いくつかの実施形態では、約10V/μSのスルーレートを要する約10μSのパルスを生成するのに十分なほど高速であるように構成することができる。この電流源は最初に、コンデンサのセットにわたって極性を交番させるためのクロスポイントスイッチを通ることができ、それらのコンデンサが次いで、例えば1対16チャネルマルチプレクサなどのマルチチャネルマルチプレクサに経路される。各電極上のコンデンサではなく単一セットのコンデンサが使用できるのは、IE/CANを通じてDC電流を検出することによって安全性がこの場合もやはり確認できるためである。
【0082】
例えば上で説明したACディスクリートアーキテクチャの実施形態を、
図4に概略的に示すものなど、電流ソースを追加することによりDCを取り扱うように拡張することができる。電力を節減するために、この電流ソースは、電流シンクが要する例えば10V/μSまたはそれ以上などのより大きな量ではなく、例えば約5、4、3、2、もしくは1V/mS、または約5、4、3、2、もしくは1V/mS未満を要する極めて低速のものとすることができる。加えて、DC構成の場合にはなくてよいコンデンサをバイパスするために、スイッチを追加することができる。DCは一般に、バイアス/オフセット電流を正確に設定することができるように、ACよりも高い電流分解能を必要とする。したがって、いくつかの実施形態では、電流ソースと電流シンクの両方に関するDACの分解能は、約10、9、8、7、6、5、4、3、2、もしくは1μA未満、または場合によっては約5μA未満とすべきである。
【0083】
電流シンクおよび電流ソースに関して、いくつかの場合には、ディスクリート電流シンクは、簡単かつ安価に実装することができる。電流ソースは、場合によっては、より複雑な場合があり、
図5A~
図5Bに示すものと類似の回路が必要になる場合がある。電流シンクはACを実施し、一般に高性能である必要があるのに対し、電流ソースは一般に、専ら低速DCを取り扱い、またはるかに低速で動作して、有利には電力を著しく低減させることができる。
【0084】
本明細書において説明したように、一部の刺激システムは、コンデンサを利用してほぼフェイルセーフ動作(near fail-safe operation)を保証しており、というのも、コンデンサは受動の、低コストの、かつ一般に高信頼のコンポーネントであるためである。しかし、システムによってはコンデンサを使用することができず(またはコンデンサを使用することが少なくともそれほど望ましくなく)、というのも、コンデンサはシリコン上に完全に集積されており、出力周波数があまりにも低い場合があり、システムがDCを通過させることが可能な場合があり、かつ/またはコンデンサはあまりにも大きい場合があるためである。
【0085】
図5Bは、AC刺激またはDC刺激を発生させるように動的に再構成されることの可能な双極性電流発生器の概略図である。DAC AおよびBが、刺激振幅を提供する。速度の遅いDC刺激の場合、DAC AおよびBは、各電流にバイアスが加えられた状態で低速で(例えば100Hz以下で)更新される。ACの場合、DAC AおよびBは、活性化および回復電流(activation and recovery current)の値で更新され、S1が、高速AC活性化および回復パルス(fast AC activation and recovery pulse)を形成するように切り替えられる。受動的再充電(passive recharge)などの他のACモードを生み出すために、放電スイッチが利用可能である。
【0086】
図6は、フェイルセーフハイブリッドシステムのブロック図を概略的に示す。システムは、電流発生器およびIE電圧出力を通じた電荷管理アルゴリズムを実施するように構成された、第1の制御ユニット、例えばメインマイクロコントローラユニット(MCU)を有することができる。システムはまた、本明細書においてはモニタリングMCUとも呼ばれる、第2のMCU、例えばウォッチドッグMCUを含むことができ、これは、メインMCUをモニタリングすることができ、相違がある場合にシステムをシャットダウンすることができる、独立した電荷管理アルゴリズムを有することができる。メインおよびウォッチドッグMCUは、電極およびシステムを多様な方途でモニタリングするように構成することができ、この方途は、例えば、(1)電極の劣化および故障ならびに電子的な故障から保護するための電極電圧のモニタリング、(2)ACモードもしくはDCモードにおけるデバイス故障から保護するためのIE電流のモニタリング、および/または(3)デバイス故障から保護するための電圧波形形態解析(voltage waveform morphology analysis)のうちの任意数を含むことができる。ACモードの間、阻止コンデンサはインラインに切り替えることができる。メインおよびウォッチドッグMCUは、適切な配向かどうかを相互にクロスチェックすることができる。システムは、デバイスがリセットされるのを妨げることのできる第3のMCU、例えばスーパーバイザウォッチドッグMCUを含むことができる。外部の非埋め込み変形形態では、電極に電荷が負荷されているときの刺激サイクル終了(stim cycling termination)を回避するために、臨床医のみがバッテリを交換することが許されている場合がある。
【0087】
図7は、各行にリストされた非限定的な潜在的故障メカニズムおよび各列の軽減メカニズムからなる表を示す。チェックマークは、いくつかの実施形態に従って、どの軽減策がどの故障から保護するかを示す。故障が生じると、刺激が即座に停止される(瞬時オフ)か、または充電平衡状態で終わることが有益であるときは刺激サイクルの終わりに停止される。例えば、バイアス電流モニタ範囲外(bias current monitor out of range)は、瞬時オフ刺激という結果になる表面電極(IE)外れ、電流源エラー、結合コンデンサエラー、または計測信号チェーンエラーから保護する。周期的VPP範囲外(Cyclic VPP out of range)(例えば10サイクルまたは他のサイクル数)は、刺激サイクルの完了時に刺激が終了するという結果になる長期電極劣化から保護する主要なメカニズムである。波形形態違反(例えば10サイクルまたは他のサイクル数)は、刺激サイクルの完了時に刺激サイクルが終了するという結果になる電極外れ、電流源故障、または計測エラーから保護する。MCU/WD電圧監視は、刺激または他の電源の問題から保護し、刺激を即座に終了し、場合によっては電力をオフする。ハードウェアウォッチドッグ保護は、全体リセットおよび刺激サイクルの即座の終了という結果になるファームウェア/MCU故障から保護する。オフラインインピーダンスチェックは、故障した電極および不十分な電極容量を排除するための事前チェックである。MCU/WDクロスチェックは、全体リセットおよび刺激サイクルの即座の終了という結果になる、両MCUが適切に動作していることを確実なものにする。独立した電荷管理アルゴリズム(独立したコードベースをもつ2つの異なるアルゴリズム)は、全体リセットおよび刺激サイクルの即座の終了という結果になるファームウェアバグおよび予期せぬアルゴリズムの欠陥から保護する。
【0088】
いくつかの実施形態では、デバイスは、不関電極に動作可能に接続されるように構成された仮想グランドを含むことができ、その場合、仮想グランドは、電力消費を最小限に抑えるために任意のレベルに設定され得る。
【0089】
いくつかの実施形態では、特にESD放電損傷が原因で生じる部品故障による意図せぬDC電流を防止すべく、身体に直接結合される能動シリコンコンポーネント内に故障があればそれを検出するために、出力マルチプレクサからの使用される電流が測定される。
【0090】
いくつかの実施形態では、デバイスは、次の任意数の軽減メカニズムを備える。(a)バイアス電流が事前設定の最小および最大範囲から逸脱する場合、不関電極電流モニタリングにより動作が一時停止される。使用される電流は、統計学的プロセスを用いてノイズを除去するように処理することができる、(b)各作用電極から不関電極への、各作用電極からリファレンス電極への、または作用電極対間の電極電圧モニタリング、(c)電極モニタリングは、例えば1μsから1時間、もしくはそれ以上もしくはそれ以下までの事前設定時間にわたって瞬間的にもしくは統計学的に解決されるか、または波形遷移に同期され、統計量は、平均、中央、分散、最小、および/または最大を含むことができる、(d)電極モニタリングは、電極電圧全体を検査するか、または電極について分かっている事柄、例えば測定される事柄もしくは電極の仕様に基づいて、フィルタメカニズムを使用して、もしくは成分を取り去ることによって、電極電圧を成分に分割することができる。一例として、前述した上記のフィルタリングされた電圧-刺激電流*測定されたアクセス抵抗は、指定の値未満とすることができる。
【0091】
図8は、電圧保護に関係し得る喪失容量に関するグラフを示す。周期的VPP:VPP-2*RA*I、これは、刺激サイクルにわたるピーク電圧が規定の限度内に留まって、確実に電極が時間にわたって十分な容量を有するようにすることを、確実なものにするのに役立つことができる。電極波形形態(のこぎり波)は、規定された電流について電極電圧波形が期待通りであることを確実なものにするのに役立つことができ、そのことが、システムが適切に動作していることを保証するのに役立ち得る。
【0092】
図9Aおよび
図9Bは、バイアス電流モニタリングに関する。
図9Aは、リファレンス電極の外れに関するグラフを示す。
図9Bは、バイアス電流の除去に関するグラフを示す。バイアス電流モニタリングは、IE故障(開路もしくはHi-Z)、WE故障(開路もしくはHi-Z)、WE電流源故障(高レベルもしくは低レベル)、IE電圧源故障(電流源の故障を引き起こす電流はない)、および/またはコンデンサバイパススイッチ故障(電流リークもしくはフェイルオープン(fail open))を含むことのできるさまざまな障害から保護することができる。DC専用変調モードでは、モニタは、バイアスが正しい範囲(例えば25~75μA)内にあることをチェックすることができる。AC専用変調モードでは、モニタは、DC電流が例えば≦100nAなどの所定の値未満であることをチェックすることができる(例えば電子回路故障または複合コンデンサ故障)。
【0093】
図10は、回復不能電荷(irrecoverable charge)を低減すること(例えば最小限に抑えること)に関する。
図10は、刺激開始と秒単位の時間との関係を示す。バイアス電流の注入は、電荷および/または電極寿命の最大化などの増大を可能にすることのできる動作電圧範囲内に、電極を据えることができる。電極の動作状態を決定することができ、これには、電極が良好な動作状態にあるとの決定をすることを含むことができる。例えば、(1)参照される電圧波形のピークが、計算されたもしくは経験的に計算された電圧未満であるとの決定(例えば保証)をすること、かつ/または(2)不可逆電荷の指標としてのサイクルの電圧を取り込み、かつ/もしくはそれが特定のしきい値未満であるとの決定(例えば保証)をすることによって、電極が良好な動作状態にあるとの決定をすることができる。
【0094】
図11は、HWおよびFWのフェイルセーフに関する例示的なブロック図を示す。電荷管理アルゴリズム-メインMCUがASIC(またはディスクリートの電流発生器)を制御する。MCU/WD電圧/電流監視-ウォッチドッグMCUが、確実にHWおよびFWが動作可能であるようにすることによって、メインおよびウォッチドッグ内の独立したADCおよびアルゴリズムの活動状態が保たれることが可能である。MCU/WDクロスチェック-メインおよびウォッチドッグMCUが相互にチェックして、確実にHWおよびFWが動作可能であるようにする。MCU/WD ASICリセット-問題が検出されたときにメインとウォッチドッグMCUのどちらかがASICをリセットすることができる。
【0095】
AC神経刺激システムは、主として、直列コンデンサを用いて身体から能動回路を分離することに依拠することができる。内部の放電抵抗器/スイッチと併せて、コンデンサは、回路故障から保護するのみならず、電荷平衡波形の提供もする。超低周波で動く不平衡電荷二相波形を利用する高容量電極システムは、DC刺激を利用し、コンデンサを容易に利用することはできず、したがって、代替の安全性メカニズムを実装しなければならない。
【0096】
DCは、電極を長期電極容量が最適化および保全されるその保護電圧領域内で動作させることのできる、不平衡電荷超低周波不平衡波形(imbalanced charge ultra-low frequency imbalanced waveform)を提供することによって、動作する。この安全性メカニズムにより、確実に、結果として得られる電極電圧が、少なくとも2つの独立したメカニズムによって評価される規定の範囲内に留まるようになることが可能であり、1つまたは複数のシステム障害の場合でさえ、検出された障害があればそれにより、刺激がシャットダウンされ、刺激エンジンが電源切断される結果となり得る。
【0097】
軽減策についてより良く理解するために、電極を、簡易Randlesセル、すなわち直列アクセス抵抗(Ra)および容量(Cdl)および分極抵抗器(RpまたはRct)によってモデリングすることができる。分極抵抗器は、それがRaよりも約>10×大きいので、この扱いにおいて無視される。電極にわたる合計電圧(Vt)は、Ra*I+周期的Vppに等しく、ただし、周期的Vppは電極の容量性成分(Cdl)にわたるピークツーピーク電圧である。この関係が与えられた場合、(Ra×Iからの)Vaと周期的Vppは、Vtの実時間測定とRaが計算可能であることとを使用して、各刺激サイクル上で分離することができる。
【0098】
組織の安全性を確保するために、電極をそれらの電極容量内で動作させることが重要となり得る。電極をそれらの容量外に駆動すると、最終的には、電極容量が低減し、組織の健全性に影響を及ぼすおそれのある反応が促進し、不可逆電気化学反応が起こる場合がある。周期的Vppは、電極健全性の主要な評価基準であり、電極の容量に反比例する。周期的Vppは、電極が定常状態動作を達成した後はほぼ一定となることが期待される。電極の寿命にわたって電極への変化が生じた場合、それらの変化は周期的Vppを介して検出することができ、電極容量内での動作を確保するように刺激を調整することができ、または必要に応じて刺激電極が交換されてよい。
【0099】
刺激エンジンは、いくつかの軽減メカニズムを含むことができ、ファームウェアベースの電荷管理アルゴリズム(CMA)コンポーネントにカテゴリ分けすることができ、それらのコンポーネントが、
図7に示す表中に要約した、ファームウェアベース軽減メカニズムおよびハードウェア軽減メカニズムである。
【0100】
ファームウェアは100%の長期故障確率を有するので、CMAコンポーネントは、独立した複数の、例えばメインおよび安全性MCU上に、独立に実装することができる。2つの独立したアルゴリズムを実行する2つの独立したファームウェアイメージを2つの独立したプロセッサ上で実行すると、有限の時間ウィンドウにおける非常に低い故障確率を得ることができる。故障が1秒以内に検出され、両システムが独立に、1日に1回の平均故障率を有する場合、10年寿命における故障確率は、(1/86,4002)×10y×365d/y=1/31,104,000である。
【0101】
前述の説明および例は、本開示をさまざまな実施形態に従って例示するために記載されたものであり、過度に限定的なものとして意図されているのではない。本明細書において提示される見出しは、構成を目的としたものにすぎず、実施形態を限定するために使用されるべきではない。本開示の開示した態様および例はそれぞれ、個別に、または本開示の他の態様、例、および変形形態と組み合わせて、考慮されてよい。加えて、別段の指定のない限り、本開示の方法のステップはいずれも、どんな特定の実施順序にも制限されない。本明細書において引用されている参考文献は、参照によりそれらの全体が組み込まれている。
【0102】
本明細書において説明した方法およびデバイスは、さまざまな修正形態および代替形態を可能とする場合があるが、その特定の例が、図面内に示してあり、本明細書において詳細に説明されている。しかし、開示した実施形態は、本明細書において説明したさまざまな実施形態および添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲内に含まれる修正形態、等価物、および代替形態を包含すべきことを理解されたい。
【0103】
実施形態に応じて、本明細書において説明したアルゴリズム、方法、またはプロセスのいずれかの、1つまたは複数の動作(act)、イベント、または機能が、異なる順番で実施されることが可能であり、追加、併合、または完全に除外されることが可能である(例えば、説明した全ての動作またはイベントがアルゴリズムの実行に必要であるとは限らない)。いくつかの例では、動作またはイベントは、逐次的にではなく、例えばマルチスレッド処理、割り込み処理、または複数のプロセッサもしくはプロセッサコアを通じて、あるいは他の並列アーキテクチャ上で、同時に実施されることが可能である。
【0104】
「次いで」、「次に」、「~の後で」、「その後」など、逐次的または時間順序的な文言の使用は、別段の具体的な定めのない限り、または使用されている文脈において他の意味に理解されるのでない限り、一般に、本文の流れを円滑にすることが意図されており、実施される動作の順番を限定することは意図されていない。
【0105】
本明細書において開示した実施形態に関連して説明した、さまざまな例示的な論理ブロック、モジュール、プロセス、方法、およびアルゴリズムは、電子ハードウェアとして、コンピュータソフトウェアとして、または両方の組合せとして、実装することができる。ハードウェアとソフトウェアのこの交換可能性について明確に示すために、さまざまな例示的なコンポーネント、ブロック、モジュール、動作、およびステップについては上で、一般にそれらの機能性の点から説明してきた。そのような機能性がハードウェアとして実装されるか、それともソフトウェアとして実装されるかは、特定の用途、およびシステム全体に課される設計制約に応じて決まる。説明した機能性は、特定の用途ごとにさまざまな方途で実装することができるが、そのような実装の決定は、本開示の範囲からの逸脱を生じさせるものと解釈すべきではない。
【0106】
本明細書において開示した実施形態に関連して説明した、さまざまな例示的な論理ブロックおよびモジュールは、本明細書において説明した機能を実施するように設計された、汎用プロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)もしくは他のプログラマブル論理デバイス、ディスクリートのゲートもしくはトランジスタ論理回路、ディスクリートのハードウェアコンポーネント、またはそれらの任意の組合せなどのマシンによって、実装または実施することができる。汎用プロセッサは、マイクロプロセッサとすることができるが、代替形態では、プロセッサは、コントローラ、マイクロコントローラ、またはステートマシン、それらの組合せなどとすることができる。プロセッサは、コンピューティングデバイス同士の組合せ、例えばDSPとマイクロプロセッサとの組合せ、複数のマイクロプロセッサ、1つもしくは複数のマイクロプロセッサとDSPコア、または他の任意のそのような構成として実装することもできる。
【0107】
本明細書において開示した実施形態に関連して説明した、方法、プロセス、またはアルゴリズムのブロック、動作、またはステップは、直接ハードウェアとして、プロセッサによって実行されるソフトウェアモジュールとして、またはその2つの組合せとして、具現化することができる。ソフトウェアモジュールは、RAMメモリ、フラッシュメモリ、ROMメモリ、EPROMメモリ、EEPROMメモリ、レジスタ、ハードディスク、リムーバブルディスク、光ディスク(例えばCD-ROMもしくはDVD)、または当技術分野において知られる他の任意の形態の揮発性もしくは不揮発性のコンピュータ可読記憶媒体内に存在することができる。記憶媒体をプロセッサに結合し、それによって、プロセッサが記憶媒体から情報を読み出し、そこに情報を書き込むことができるようにすることができる。代替形態では、記憶媒体はプロセッサと一体をなすことができる。プロセッサおよび記憶媒体は、ASIC内に存在することができる。ASICは、ユーザ端末内に存在することができる。代替形態では、プロセッサおよび記憶媒体は、ユーザ端末内のディスクリートコンポーネントとして存在することができる。
【0108】
さまざまな中でもとりわけ、「できる(can)」、「してよい(might)」、「してよい(may)」、「例えば」など、本明細書において使用される条件付き文言は、別段の具体的な定めのない限り、または使用されている文脈において他の意味に理解されるのでない限り、一般に、ある特定の特徴、要素、および/または状態を含む例もあれば、含まない例もある、ということを伝えることが意図されている。したがって、そのような条件付き文言は一般に、特徴、要素、ブロック、および/もしくは状態が、いかなる形であれ、1つもしくは複数の例に必要とされること、または1つもしくは複数の例が、著者の入力もしくは指示の有無にかかわらず、これらの特徴、要素、および/もしくは状態が任意の特定の実施形態に含まれるかどうか、もしくは任意の特定の実施形態において実施されることになるかどうかを決定するための論理を必ず含むこと、を示唆することは意図されていない。
【0109】
本明細書において開示した方法は、実務者によって行われるいくつかのアクションを含むことができるが、方法は、明示的または暗示的に、それらのアクションの任意の第三者命令を含むこともできる。例えば、「電極を位置決めすること」などのアクションは、「電極を位置決めする命令をすること」を含む。
【0110】
本明細書において開示した範囲は、ありとあらゆる重なり、部分範囲、およびそれらの組合せも包含する。「最大で」、「少なくとも」、「~よりも大きい」、「~未満」、「~の間」などの文言は、記載された数を含む。「約」や「およそ」などの語が先に付された数は、記載された数を含み、状況に基づいて(例えば状況に基づいて合理的に可能な限り正確に、例えば±5%、±10%、±15%など)、解釈すべきである。例えば、「約1時間」は「1時間」を含む。「実質的に」などの語が先に付された句は、記載された句を含み、状況に基づいて(例えば状況に基づいて合理的に可能な限り広く)解釈すべきである。例えば、「実質的に垂直の」は「垂直の」を含む。別段の定めのない限り、全ての測定値は、温度および圧力を含む標準条件におけるものである。「~のうちの少なくとも1つ」という句は、後続のリスト内の各項目から項目ごとに1種類を求めることではなく、後続のリストから少なくとも1つの項目を求めることが意図されている。例えば、「A、B、およびCのうちの少なくとも1つ」は、A、B、C、AおよびB、AおよびC、BおよびC、またはA、B、およびCを含むことができる。
【国際調査報告】