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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-24
(54)【発明の名称】増殖因子の回復
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/63 20060101AFI20230117BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20230117BHJP
   C12N 15/861 20060101ALI20230117BHJP
   C12N 15/863 20060101ALI20230117BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20230117BHJP
   C12N 15/869 20060101ALI20230117BHJP
   C12N 15/86 20060101ALI20230117BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230117BHJP
   C12N 15/33 20060101ALI20230117BHJP
   C07K 14/005 20060101ALI20230117BHJP
   A61P 19/00 20060101ALI20230117BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20230117BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230117BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20230117BHJP
   A61K 35/761 20150101ALI20230117BHJP
   A61K 35/763 20150101ALI20230117BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230117BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20230117BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20230117BHJP
【FI】
C12N15/63 Z ZNA
C12N15/864 100Z
C12N15/861 Z
C12N15/863 Z
C12N15/867 Z
C12N15/869 Z
C12N15/864 Z
C12N15/86 Z
C12N5/10
C12N15/33
C07K14/005
A61P19/00
A61P19/02
A61P43/00 105
A61K35/76
A61K35/761
A61K35/763
A61K48/00
A61K38/16
A61P43/00 121
C12N15/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022530183
(86)(22)【出願日】2020-11-20
(85)【翻訳文提出日】2022-07-21
(86)【国際出願番号】 US2020061486
(87)【国際公開番号】W WO2021102250
(87)【国際公開日】2021-05-27
(31)【優先権主張番号】62/938,879
(32)【優先日】2019-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522202632
【氏名又は名称】リミディアム バイオ,インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】REMEDIUM BIO,INC.
【住所又は居所原語表記】1116 Great Plain Ave, Suite 203, Needham, Massachusetts 02492, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】ルピーノ,フランチェスコ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AA97X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA23
4B065CA44
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA13
4C084DB54
4C084MA02
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA961
4C084ZA962
4C084ZC751
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087CA12
4C087MA02
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZA96
4C087ZB21
4C087ZC75
4H045AA10
4H045CA01
4H045EA20
4H045EA28
(57)【要約】
本発明は、自殺遺伝子、および線維芽細胞増殖因子18(FGF-18)ポリペプチドまたはその機能的断片をコードする核酸を含む発現ベクターを用いて軟骨障害を処置するための組成物および方法を提供する。本発明は、軟骨細胞、心筋細胞、および滑膜細胞などの、組織の産生および維持に関与する細胞の増殖を促進するための発現ベクター、ならびにその使用方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)自殺遺伝子、および(2)線維芽細胞増殖因子18(FGF-18)ポリペプチドまたはその機能的断片をコードする核酸を含む、組換え発現ベクター。
【請求項2】
発現ベクターが、ウイルスベクターである、請求項1に記載の発現ベクター。
【請求項3】
発現ベクターが、非ウイルス粒子を含む、請求項1に記載の発現ベクター。
【請求項4】
発現ベクターが、ウイルスおよび非ウイルスハイブリッド粒子を含む、請求項1に記載の発現ベクター。
【請求項5】
ウイルスベクターが、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アデノウイルス、パルボウイルス、コロナウイルス、ラブドウイルス、パラミクソウイルス、ピコルナウイルス、アルファウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、レンチウイルスおよびレトロウイルス科ファミリーウイルスからなる群から選択される、請求項2に記載の発現ベクター。
【請求項6】
ウイルスベクターが、AAVである、請求項5に記載の発現ベクター。
【請求項7】
ウイルスベクターが、カプシドをさらに含む、請求項2に記載の発現ベクター。
【請求項8】
カプシドが、天然に存在するカプシドまたは操作されたカプシドを含む、請求項7に記載の発現ベクター。
【請求項9】
操作されたカプシドが、リガンドに結合されている、請求項8に記載の発現ベクター。
【請求項10】
天然に存在するカプシドが、AAV1、AAV2、AAV2quad(Y-F)、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、rh10、rh39、rh43、rh74、Anc80、Anc80L65、DJ/8、DJ/9、7m8、PHP.B、PHP.eB、またはPHP.Sカプシドである、請求項8に記載の発現ベクター。
【請求項11】
AAVが、AAV2またはAAV5である、請求項6に記載の発現ベクター。
【請求項12】
自殺遺伝子が、単純ヘルペスウイルス-1チミジンキナーゼ(HSV-TK)遺伝子、カスパーゼ9(Casp9)遺伝子、シトシンデアミナーゼ遺伝子、RQR85ポリペプチド、または切断型ヒト上皮成長因子受容体ポリペプチドを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の発現ベクター。
【請求項13】
自殺遺伝子が、HSV-TK遺伝子である、請求項12に記載の発現ベクター。
【請求項14】
自殺遺伝子が、Casp9遺伝子である、請求項12に記載の発現ベクター。
【請求項15】
自殺遺伝子が、配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする、請求項1~14のいずれか一項に記載の発現ベクター。
【請求項16】
自殺遺伝子が、発現ベクターを発現する細胞に、プログラム細胞死を起こさせる遺伝子を指す、請求項1~15のいずれか一項に記載の発現ベクター。
【請求項17】
自殺遺伝子が、発現ベクターを発現する細胞に、発現ベクターの転写または翻訳を終了させる遺伝子を指す、請求項1~15のいずれか一項に記載の発現ベクター。
【請求項18】
自殺遺伝子が、発現ベクターを発現する細胞において、発現ベクターの発現レベルの低下を引き起こす遺伝子を指す、請求項1~15のいずれか一項に記載の発現ベクター。
【請求項19】
自殺遺伝子が、誘導性自殺遺伝子である、請求項1~18のいずれか一項に記載の発現ベクター。
【請求項20】
誘導性自殺遺伝子が、ラパマイシン活性化Casp9である、請求項19に記載の発現ベクター。
【請求項21】
自殺遺伝子が、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする、請求項1~20のいずれか一項に記載の発現ベクター。
【請求項22】
FGF-18ポリペプチドが、配列番号3のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする、請求項1~21のいずれか一項に記載の発現ベクター。
【請求項23】
発現ベクターが、FGF-18またはその機能的断片をコードする核酸に作動可能に連結された転写調節因子をさらに含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の発現ベクター。
【請求項24】
発現ベクターが、非ウイルス粒子をさらに含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の発現ベクター。
【請求項25】
転写調節因子が、TATAボックス、B認識エレメント認識エレメント、転写因子IIB認識エレメント、および下流プロモーターエレメントのいずれか1つ以上を含む、請求項23~24のいずれか一項に記載の発現ベクター。
【請求項26】
非ウイルス粒子が、脂質エンベロープ、リン脂質二重層、リポソーム、ニオソーム、フラーレン、タンパク質系ナノ粒子、ナノ結晶、デンドリマー、有機/無機コロイド、ペグ化リポソーム、高分子ミセル、逆ミセル、混合ミセル、感受性ミセル、多成分ミセル、あるいは多分子または単分子樹状ミセルのいずれか1種以上を含む、請求項24に記載の発現ベクター。
【請求項27】
請求項1~16のいずれか一項に記載の発現ベクターを含む、医薬組成物。
【請求項28】
医薬組成物が、薬学的に許容し得る担体、希釈剤、または賦形剤をさらに含む、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項29】
軟骨障害を処置する方法であって、請求項27~28のいずれか一項に記載の医薬組成物を対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項30】
軟骨障害が、変形性関節症である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
医薬組成物が、静脈内、関節内、軟骨下、滑膜内、または軟骨内に投与される、請求項29~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
医薬組成物が、滑膜性関節に投与される、請求項29~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
軟骨細胞または軟骨前駆細胞の増殖を促進する方法であって、細胞を請求項1~26のいずれか一項に記載の発現ベクター、または請求項27~28に記載の医薬組成物と接触させることを含む、前記方法。
【請求項34】
軟骨を置換するための細胞外マトリックスの分泌を促進する方法であって、細胞を請求項1~26のいずれか一項に記載の発現ベクター、または請求項27~28に記載の医薬組成物と接触させることを含む、前記方法。
【請求項35】
細胞が、ex vivoでトランスフェクトまたは形質導入されて、発現ベクターを発現する、請求項33~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
請求項1~26のいずれか一項に記載の発現ベクター、または請求項27~28のいずれか一項に記載の医薬組成物、および添付文書を含むキットであって、添付文書が、キットの使用者に請求項29~25のいずれか一項に記載の方法を行うように指示する、前記キット。
【請求項37】
カートン、不正開封防止シール、針、シリンジ、または充填済シリンジのうちの1つ以上をさらに含む、請求項36に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表
本願は、ASCII形式で電子的に提出されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、配列表を含む。2020年11月19日に作成された前記ASCIIコピーは、「51518-003WO2_Sequence_Listing_11_19_20_ST25」という名称であり、サイズが13,487バイトである。
【0002】
関連出願
本願は、2019年11月21日に出願された米国仮出願第62/938,879号の出願日の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
技術分野
本発明は、ヒト患者などの患者における、組織障害および特に軟骨障害の治療的処置の分野に関する。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
増殖因子(例えば、線維芽細胞増殖因子18)は、他の多くの生物学的機能の中でも、細胞増殖、遊走、生存、分化、組織沈着、ターンオーバー(turnover)、および維持を調節するタンパク質である。一般に、組織における増殖因子のレベルは、加齢に伴い低下する。この低下は、一部は、遺伝子サイレンシング、細胞密度の全般的な低下(これは、増殖因子のレベルの低下との正のフィードバックループ(feedback loop)として仮定されている)、翻訳の効率および有効性の減少、ならびに、老化細胞の割合の増加といった多くのメカニズムのうちの一つを介した遺伝子発現の減少に起因する。組織における細胞密度は、組織の組成および物理化学的特性と相関する。増殖因子濃度の低下の少なくとも一部は、疾患、組織萎縮、および組織変性と関連している。増殖因子の補充、代替、または正常でないもしくは欠如した増殖因子の置換は、変形性関節症によって劣化した軟骨を回復させるために広く用いられている手段であるが、改善された治療的手段の必要性は引き続き存在している。
【発明の概要】
【0005】
発明の概要
本発明は、軟骨細胞、心筋細胞、および滑膜細胞などの、組織の産生および維持に関与する細胞の増殖を促進するための発現ベクター、ならびにその使用方法に関する。本明細書において提供される組成物および方法は、疾患、組織萎縮、および組織変性に関連する軟骨障害の処置または予防に有用であり得る。いくつかの態様において、軟骨障害は、変形性関節症である。
【0006】
第一の側面において、本発明は、自殺遺伝子、および線維芽細胞増殖因子18(FGF-18)ポリペプチドまたはその機能的断片をコードする核酸を含む、組換え発現ベクターを特徴とする。
第一の側面のいくつかの態様において、発現ベクターは、ウイルスベクターである。
第一の側面のいくつかの態様において、発現ベクターは、非ウイルス粒子、ならびに(1)自殺遺伝子、および(2)FGF-18ポリペプチドまたはその機能的断片をコードする核酸を含む。
第一の側面のいくつかの態様において、発現ベクターは、ウイルスおよび非ウイルスハイブリッド粒子(a hybrid viral and non-viral particle)、ならびに(1)自殺遺伝子、および(2)FGF-18ポリペプチドまたはその機能的断片をコードする核酸を含む。
【0007】
いくつかの態様においては、ウイルスベクターが、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アデノウイルス、パルボウイルス、コロナウイルス、ラブドウイルス、パラミクソウイルス、ピコルナウイルス、アルファウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、レンチウイルスおよびレトロウイルス科ファミリー(Retroviridae family)ウイルスから選択される。
前述の側面のいずれかのいくつかの態様においては、ウイルスベクターが、AAVである。
前述の側面のいずれかのいくつかの態様においては、AAVが、カプシドをさらに含む。
前述の側面のいずれかのいくつかの態様においては、カプシドが、天然に存在するカプシドまたは操作された(engineered)カプシド(例えば、修飾された配列を含有するカプシド)を含む。
前述の側面のいずれかのいくつかの態様においては、操作されたカプシドが、(例えば、細胞種特異性または免疫原性調節の目的で)リガンドに結合されている。
【0008】
前述の側面のいずれかのいくつかの態様においては、天然に存在するカプシドが、AAV1、AAV2、AAV2quad(Y-F)、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、rh10、rh39、rh43、rh74、Anc80、Anc80L65、DJ/8、DJ/9、7m8、PHP.B、PHP.eB、またはPHP.Sカプシドである。
前述の側面のいずれかのいくつかの態様においては、AAVが、AAV2またはAAV5である。
前述の側面のいずれかのいくつかの態様においては、自殺遺伝子が、単純ヘルペスウイルス-1チミジンキナーゼ(HSV-TK)遺伝子、カスパーゼ9(Casp9)遺伝子、シトシンデアミナーゼ遺伝子、RQR85ポリペプチド、または切断型(truncated)ヒトEGFRポリペプチドを含む。
前述の側面のいずれかのいくつかの態様においては、自殺遺伝子が、HSV-TK遺伝子である。
前述の側面のいずれかのいくつかの態様においては、自殺遺伝子が、Casp9遺伝子である。
前述の側面のいずれかのいくつかの態様においては、自殺遺伝子が、配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性)を有するアミノ酸配列をコードする。
【0009】
前述の側面のいずれかのいくつかの態様において、自殺遺伝子は、発現ベクターを発現する細胞に、プログラム細胞死を起こさせる遺伝子を指す。
前述の側面のいずれかのいくつかの態様において、自殺遺伝子は、発現ベクターを発現する細胞に、発現ベクターの転写または翻訳を終了させる遺伝子を指す。
前述の側面のいずれかのいくつかの態様において、自殺遺伝子は、発現ベクターを発現する細胞において、発現ベクターの発現レベルの低下を引き起こす遺伝子を指す。
前述の側面のいずれかのいくつかの態様においては、自殺遺伝子が、誘導性自殺遺伝子である。
前述の側面のいずれかのいくつかの態様においては、誘導性自殺遺伝子が、ラパマイシン活性化(rapamycin-activated)Casp9である。
【0010】
前述の側面のいずれかのいくつかの態様においては、自殺遺伝子が、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性)を有するアミノ酸配列をコードする。
前述の側面のいずれかのいくつかの態様においては、FGF-18ポリペプチドが、配列番号3のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性)を有するアミノ酸配列をコードする。
【0011】
前述の側面のいずれかのいくつかの態様においては、発現ベクターが、FGF-18またはその機能的断片をコードする核酸に作動可能に連結された転写調節因子をさらに含む。
前述の側面のいずれかのいくつかの態様においては、発現ベクターが、非ウイルス粒子をさらに含む。
前述の側面のいずれかのいくつかの態様においては、転写調節因子が、TATAボックス、B認識エレメント認識エレメント、転写因子IIB認識エレメント、および下流プロモーターエレメントのいずれか1つ以上を含む。
前述の側面のいずれかのいくつかの態様においては、非ウイルス粒子が、脂質エンベロープ、リン脂質二重層、リポソーム、ニオソーム(noisome)、フラーレン、タンパク質系ナノ粒子(protein-based nanoparticle)、ナノ結晶、デンドリマー、有機/無機コロイド、ペグ化リポソーム、高分子ミセル、逆ミセル、混合ミセル、感受性ミセル、多成分ミセル、あるいは多分子または単分子樹状ミセルのいずれか1種以上を含む。
【0012】
他の側面において、本発明は、前述の側面のいずれかの発現ベクターを含む、医薬組成物を特徴とする。
前述の側面のいずれかのいくつかの態様においては、医薬組成物が、薬学的に許容し得る担体、希釈剤、または賦形剤をさらに含む。
他の側面において、本発明は、軟骨障害を処置する方法であって、前述の側面のいずれか1つの医薬組成物を対象に投与することを含む、前記方法を提供する。
他の側面において、本発明は、軟骨障害を処置することにおける使用のための、前述の側面のいずれか1つの医薬組成物を提供する。
【0013】
他の側面において、本発明は、軟骨障害を処置するための、前述の側面のいずれかの医薬組成物の使用を提供する。
他の側面において、本発明は、軟骨障害を処置するための医薬の製造における、前述の側面のいずれかの医薬組成物の使用を提供する。前述の側面のいずれかのいくつかの態様においては、軟骨障害が、変形性関節症である。
前述の側面のいずれかのいくつかの態様においては、医薬組成物が、静脈内に、関節内に(intra-articularly)、軟骨下に(sub-chondrally)、滑膜内に(intra-synovially)、または軟骨内に(intra-chondrally)投与される。
【0014】
前述の側面のいずれかのいくつかの態様においては、医薬組成物が、滑膜関節に投与される。
他の側面において、本発明は、(例えば、軟骨細胞または軟骨前駆細胞の生存を増加させることにより、あるいは軟骨前駆細胞の分化を増加させることにより)軟骨細胞または軟骨前駆細胞の増殖を促進する方法であって、細胞を前述の側面のいずれかの発現ベクターまたは医薬組成物と接触させることを含む、前記方法を提供する。
他の側面において、本発明は、(例えば、軟骨細胞または軟骨前駆細胞の生存を増加させることにより、あるいは軟骨前駆細胞の分化を増加させることにより)軟骨細胞または軟骨前駆細胞の増殖を促進することにおける使用のための、前述の側面のいずれかの発現ベクターまたは医薬組成物を提供する。
【0015】
他の側面において、本発明は、(例えば、軟骨細胞または軟骨前駆細胞の生存を増加させることにより、あるいは軟骨前駆細胞の分化を増加させることにより)軟骨細胞または軟骨前駆細胞の増殖を促進するための、前述の側面のいずれかの発現ベクターまたは医薬組成物の使用を提供する。他の側面において、本発明は、(例えば、軟骨細胞または軟骨前駆細胞の生存を増加させることにより、あるいは軟骨前駆細胞の分化を増加させることにより)軟骨細胞または軟骨前駆細胞の増殖を促進するための医薬の製造における、前述の側面のいずれかの発現ベクターまたは医薬組成物の使用を提供する。
【0016】
他の側面において、本発明は、(例えば、軟骨細胞または軟骨前駆細胞の増殖を促進することにより、軟骨細胞または軟骨前駆細胞の生存を増加させることにより、あるいは軟骨前駆細胞の分化を増加させることにより)軟骨を置換するための細胞外マトリックスの分泌を促進する方法であって、細胞を前述の側面のいずれかの発現ベクター、または医薬組成物と接触させることを含む、前記方法を提供する。
他の側面において、本発明は、(例えば、軟骨細胞または軟骨前駆細胞の増殖を促進することにより、軟骨細胞または軟骨前駆細胞の生存を増加させることにより、あるいは軟骨前駆細胞の分化を増加させることにより)軟骨を置換するための細胞外マトリックスの分泌を促進することにおける使用のための、前述の側面のいずれかの発現ベクター、または医薬組成物を提供する。
【0017】
他の側面において、本発明は、(例えば、軟骨細胞または軟骨前駆細胞の増殖を促進することにより、軟骨細胞または軟骨前駆細胞の生存を増加させることにより、あるいは軟骨前駆細胞の分化を増加させることにより)軟骨を置換するための細胞外マトリックスの分泌を促進するための、前述の側面のいずれかの発現ベクター、または医薬組成物の使用を提供する。
他の側面において、本発明は、軟骨を置換するための細胞外マトリックスの分泌を促進するための医薬の製造における、前述の側面のいずれかの発現ベクター、または医薬組成物の使用を提供する。
【0018】
前述の側面のいずれかのいくつかの態様においては、細胞が、ex vivoでトランスフェクトまたは形質導入されて、発現ベクターを発現する。他の側面において、本発明は、前述の側面のいずれかの一つの発現ベクターまたは医薬組成物、および添付文書を含むキットであって、添付文書が、キットの使用者に前述の側面のいずれか一つの方法を行うように指示する、前記キットを特徴とする。他の側面において、本発明は、カートン、不正開封防止シール(tamper evident seal)、針、シリンジ、または充填済(prefilled)シリンジのうちの1つ以上をさらに含む、前述の側面のキットを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図面の簡単な説明
図1図1は、単純ヘルペスウイルス-1チミジンキナーゼ(HSV-TK)自殺遺伝子によって媒介される、本質的に安全な線維芽細胞増殖因子18(FGF18)ポリペプチドの継続的発現のための例示的なアデノ随伴ウイルス2(AAV2)ウイルスベクターの模式図である。色の濃いボックスは、ヒトFGF18(hFGF18)ポリペプチドに動作可能に連結されたサイトメガロウイルス(CMV)エンハンサー(CMVenh)、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント変異体6(WPREmut6;発現レベルを実質的に増加させるがプロモーター活性を有さないことが知られているDNAエレメント)、ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナル(bGHpA)、HSV-TK自殺遺伝子、変異SV40初期ポリアデニル化シグナル(SV40pA)、および隣接するAAV2逆末端反復配列(ITR)をコードする核酸配列を表す。白いボックスは、それぞれ、CMVおよびホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)プロモーター(CMVprおよびPGKpr)を表す。白いボックスと色の濃いボックスとを結ぶ太線は、CMVプロモーターの機能を最適化するためのマウス微小ウイルス(minute virus of mice)(MVM)イントロンを表す。
【0020】
図2図2は、ラパマイシン活性化カスパーゼ9(rapaCas9)に基づく自殺遺伝子によって媒介される、本質的に安全なFGF-18ポリペプチドの継続的発現のための例示的なAAV2ウイルスベクターの模式図である。色の濃いボックスは、hFGF18ポリペプチドと動作可能に連結されたCMVenh、WPREmut6、bGHpA、rapaCas9自殺遺伝子、SV40pA、および隣接するAAV2ITRをコードする核酸配列を示す。白いボックスは、それぞれ、CMVprおよびPGKprを表す。白いボックスと色の濃いボックスとを結ぶ太線は、MVMイントロンを表す。
【0021】
定義
本明細書において用いられる通り、「活性」は、自然の(native)または天然に存在する(naturally-occurring)ポリペプチドの生物学的活性を保持するポリペプチドの形態を指し、「生物学的」活性は、ネイティブまたは天然に存在するポリペプチドによって引き起こされる生物学的機能(例えば、増殖因子機能)を指す。
本明細書において用いられる通り、「投与」は、任意の有効な経路によって治療剤(例えば、発現ベクター)を対象に提供することまたは与えることを指す。例示的な投与経路は、本明細書および以下に記載される(例えば、静脈内、関節内、軟骨下、滑膜内、または軟骨内注射)。
本明細書において用いられる通り、用語「対立遺伝子バリアント(allelic variant)」は、生物または生物集団の染色体上の所定の座を占める遺伝子の、天然に存在するいくつかの可能な代替形態のうちの1つを指す。
【0022】
本明細書において用いられる通り、「心筋細胞」は、心筋を構成する筋肉細胞(筋細胞)を指す。本明細書において用いられる通り、「軟骨障害」は、患者において、軟骨の変性;関節腔の狭小化;軟骨下骨の肥厚;骨棘(osteophyte)または骨棘突起(bone spur)の形成;腫脹および痛みを伴う関節内の炎症;細胞、タンパク質、プロテオグリカンおよび多糖類を含む、1種以上の軟骨組織成分、関節組織成分の減少;ならびに他の症状として呈する障害を指す。機械的損傷に加えて、軟骨障害はまた、腫瘍壊死因子アルファ、インターロイキン6(IL-6)、およびインターロイキン1(IL-1)ベータなどの炎症促進性サイトカインのレベルの増加と関連している。これらのサイトカインは軟骨に拡散して、プロテアーゼ活性の上方制御を引き起こし、マトリックスメタロプロテアーゼ、アグリカナーゼ、ヒアルロニダーゼ、および他の組織消化酵素によって軟骨細胞外マトリックスの複数の巨大分子の分解をもたらし得る。
【0023】
本明細書において用いられる通り、用語「細胞種(cell type)」は、遺伝子発現データに基づいて統計的に分離可能な表現型を共有する細胞群を指す。例えば、共通の細胞種である細胞(例えば、軟骨細胞または滑膜細胞)は、同様の遺伝子活性化パターンおよび抗原提示プロファイルなどの、同様の構造的および/または機能的特徴を共有し得る。共通の細胞種である細胞は、共通の組織(例えば、関節組織)から単離されるもの、および/または生物における共通の器官、組織系、血管、あるいは他の構造および/または領域から単離されるものを含み得る。
本明細書において用いられる通り、用語「軟骨細胞」は、健康な軟骨において見出される初代細胞を構成する細胞集団を指す。機能的には、軟骨細胞は、主にコラーゲンおよびプロテオグリカンからなる軟骨マトリックスを、産生および維持する。
本明細書において用いられる通り、用語「閉末端(closed-end)DNA」は、共有結合で閉じた末端を有する直鎖状二本鎖DNAを指す。
【0024】
本明細書において用いられる通り、「コドン最適化」は、コードDNAにおける同義コドン(例えば、同じアミノ酸をコードするコドン)の出現頻度が、異なる種では偏りがあるという原理に従って、核酸配列を修飾するプロセスを意味する。かかるコドン縮退は、同一のポリペプチドが様々なヌクレオチド配列によりコードされることを可能にする。このように修飾された配列を、本明細書においては「コドン最適化」と称する。このプロセスは、発現または安定性を増大させるために、本明細書に記載される配列のいずれに対しても行われ得る。コドン最適化は、例えば、米国特許第7,561,972号、第7,561,973号、および第7,888,112号(これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている方法などで行われ得る。翻訳開始部位を囲んでいる配列は、既知の方法に従ってコンセンサスコザック配列に変換することができる。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Kozakら、Nucleic Acids Res.15:8125-8148 (1989)を参照。複数の停止コドンが組み込まれ得る。
【0025】
本明細書において用いられる通り、「併用療法」は、2つ(またはそれ以上)の異なる薬剤または処置が、特定の疾患または状態のための規定された処置療法の一部として、対象に投与されることを意味する。処置療法は、対象に対する別々の薬剤の効果が重複するように、各薬剤の用量および投与周期を規定する。いくつかの態様においては、2つ以上の薬剤の送達は同時であるかまたは並行しており、薬剤は共に製剤化され(co-formulated)てもよい。他の態様においては、2つ以上の薬剤は共に製剤化されることなく、処方された療法の一部として逐次的に投与される。いくつかの態様においては、2つ以上の薬剤または処置を組み合わせた投与は、症状または障害に関連する他のパラメータの減少が、1つの薬剤または処置が単独で送達される場合、または他の薬剤が存在しない場合に観察されるであろうものよりも、大きくなるようにする。2つの処置の効果は、部分的に相加的であってもよく、全体的に相加的であってもよく、または相加的よりも大きくてもよい(例えば、相乗的)。各治療薬剤の逐次投与または実質的に同時の投与は、経口経路、静脈内経路、筋肉内経路、および粘膜組織を介した直接吸収を含むがこれらに限定されない、任意の適切な経路によって影響を受け得る。治療薬剤は、同じ経路でまたは異なる経路で投与され得る。例えば、併用の第1の治療薬剤は静脈内注射によって投与されてもよく、一方、併用の第2の治療薬剤は経口投与されてもよい。
【0026】
本明細書において用いられる通り、用語「ドギーボーン(doggybone)DNA」は、鎖状DNAの酵素消化によって生じる閉じた直鎖状二本鎖DNAを指す。
本明細書において用いられる通り、用語「発現する」は、以下の事象:(1)(例えば、転写による)DNA配列からのRNA鋳型の産生;(2)(例えば、スプライシング、編集、5’キャップ形成、および/または3’末端プロセシングによる)RNA転写物のプロセシング;(3)RNAのポリペプチドまたはタンパク質への翻訳;および(4)ポリペプチドまたはタンパク質の翻訳後修飾、のうちの1つ以上を指す。対象における目的遺伝子の発現は、例えば、(例えば、定量的ポリメラーゼ連鎖反応およびRNA配列決定技術などの当該技術分野において既知のRNA検出手順を用いて、評価される)対応するタンパク質をコードするmRNAの量もしくは濃度の増加、および/または(例えば、ウェスタンブロッティングなどの当該技術分野において既知の記載されたタンパク質検出方法を用いて、評価される)対応するタンパク質の量もしくは濃度の増加、を検出することにより、明らかにすることができる。
【0027】
本明細書において用いられる通り、用語「発現ベクター」は、核酸ベクター、例えば、プラスミドなどのDNAベクター、RNAベクター、ウイルス、または他の適したレプリコン(例えば、ウイルスベクター)を指す。外来性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを原核細胞または真核細胞に送達するために、様々なベクターが開発されてきた。かかる発現ベクターの例は、例えば、WO1994/011026に開示されており、これは、目的遺伝子の発現に適したベクターに関し、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書において記載されている組成物および方法と共に用いるのに適した発現ベクターは、ポリヌクレオチド配列、ならびに、例えば、タンパク質の発現および/またはこれらのポリヌクレオチド配列の哺乳動物細胞のゲノムへの統合に用いられる追加的配列エレメントを含有する。本明細書において記載されている通りの発現ベクターの発現に使用できるあるベクターには、遺伝子転写を指図するプロモーターおよびエンハンサー領域などの調節配列を含有するプラスミドが含まれる。発現ベクターの発現のための他の有用なベクターは、これらの遺伝子の翻訳速度を増大させるか、または遺伝子の転写から生じるmRNAの安定性もしくは核輸出を改善する、ポリヌクレオチド配列を含有する。これらの配列エレメントには、発現ベクター上に担持された遺伝子の効率的な転写を指図するために、例えば、5’および3’非翻訳領域、IRES、ならびにポリアデニル化シグナル部位が含まれる。本明細書において記載されている組成物及び方法と共に用いるのに適した発現ベクターはまた、かかるベクターを含有する細胞の選択のためのマーカーをコードするポリヌクレオチドを含有してもよい。適したマーカーの例は、アンピシリン、クロラムフェニコール、カナマイシン、ノルセオトリシン、またはゼオシンなどの抗生物質に対する耐性をコードする遺伝子である。
【0028】
本明細書において用いられる通り、用語「線維芽細胞増殖因子18」、「FGF-18」、および「FGF18」は、ヒトFGF-18タンパク質の少なくとも1つの生物学的活性を維持しているタンパク質を指す。本明細書において用いられている通り、FGF-18は、その自然形態(native form)、その成熟形態、組換え形態、ならびに天然に存在するFGF-18バリアント(例えば、スプライスバリアント、対立遺伝子バリアント、または翻訳後修飾もしくは二次構造から生じるバリアント)のいずれかの他の形態であるFGF-18を指す。本明細書において用いられる通り、FGF-18はまた、融合タンパク質を含むFGF-18タンパク質を指し、ここでそのハイブリッドタンパク質は、ヒトFGF-18タンパク質の少なくとも1つの生物学的活性を維持する。本明細書において用いられる通り、FGF-18はまた、修飾されたFGF-18タンパク質を指し、ここで、修飾は、例えば、分解に対する耐性を増加させるか、またはその受容体のうちの1つ以上への結合に対する親和性を調節する。ヒトFGF-18タンパク質の生物学的活性には、とりわけ、軟骨細胞または骨芽細胞の増殖の増加(WO98/16644参照)、あるいは軟骨形成の増加(WO2008/023063参照)が含まれる。自然のヒトFGF-18は、関節軟骨の軟骨細胞によって発現されるタンパク質である。ヒトFGF-18は、最初にzFGF-5と命名され、WO98/16644に完全に記載されている。ヒトFGF-18は、NCBI Gene ID NO 8817となっている。例示的な野生型ヒトFGF-18核酸配列は、NCBI RefSeq Acc. No. NM_003862.3(配列番号3)として提供されており、例示的な野生型FGF-18アミノ酸配列は、NCBI RefSeq Acc.No. NP_003853.1(配列番号4)として提供されている。
【0029】
本明細書において用いられる通り、用語「その機能的断片」は、その自然形態、その成熟形態、組換え形態、完全な天然に存在するFGF-18バリアントよりも短い形態であってもよく、または天然に存在するFGF-18バリアントの任意の他の形態(例えば、スプライスバリアントまたは対立遺伝子バリアント)であってもよいが、ヒトFGF-18タンパク質の少なくとも一つの生物学的活性を維持するFGF-18ポリペプチドを指す。
【0030】
本明細書において用いられる通り、用語「IRES」は、内部リボソーム進入部位を指す。一般に、IRES配列は、真核生物のリボソームがmRNA転写物に結合し、5’キャップ末端に結合することなく翻訳を開始することを可能にする特徴である。IRES配列を含有するmRNAは、mRNAの5’末端から開始するものと、IRESにより媒介される内部翻訳メカニズムからのもう一つのものとの、2つの翻訳産物を産生する。
【0031】
「レベル」は、参照と比較した、タンパク質または核酸のレベルを意味する。参照は、本明細書において定義される通り、任意の有用な参照であり得る。タンパク質または核酸の「減少したレベル」または「増加したレベル」は、参照と比較した、タンパク質または核酸レベルの減少または増加(例えば、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約100%、約150%、約200%、約300%、約400%、約500%、もしくはそれ以上の減少または増加;参照と比較して、約10%、約15%、約20%、約50%、約75%、約100%、もしくは約200%を超える減少または増加;約0.01倍、約0.02倍、約0.1倍、約0.3倍、約0.5倍、約0.8倍もしくはそれ以下よりも少ない、減少または増加;あるいは、約1.2倍、約1.4倍、約1.5倍、約1.8倍、約2.0倍、約3.0倍、約3.5倍、約4.5倍、約5.0倍、約10倍、約15倍、約20倍、約30倍、約40倍、約50倍、約100倍、約1000倍もしくはそれ以上よりも大きい増加)を意味する。タンパク質のレベルは、質量/容量(例えば、g/dL、mg/mL、μg/mL、ng/mL)または試料中の総タンパク質もしくは総核酸に対する割合で表され得る。
【0032】
本明細書において用いられる通り、用語「成熟形態」は、リーダー配列を欠損しているFGF-18ポリペプチドを指し、(リーダー配列を有するまたは有さない)アミノ末端および/またはカルボキシル末端のタンパク質分解プロセシング、大きい前駆体からの小さいポリペプチドの切断、N-結合型および/またはO-結合型グリコシル化、ならびに当業者により理解される他の翻訳後修飾などの、ポリペプチドの他の修飾をも含み得る。
【0033】
本明細書において用いられる通り、用語「ミニサークル(minicircle)」は、任意の細菌プラスミドDNAバックボーンを欠いた環状発現カセットとして産生されるエピソームDNAベクターを指す。
本明細書において用いられる通り、用語「ミニストリング(ministring)DNA」は、目的遺伝子および必要な真核生物発現エレメントのみを含む、直鎖状の共有結合で閉じたDNAベクターを指す。これは、免疫原性細菌配列を欠いている。
本明細書において用いられる通り、用語「ナノプラスミド(商標)」は、500bp未満のバックボーンを有し、抗生物質マーカーを含まず、R6K複製起点を有するDNAベクターを指す。これは、Nature Technology Corporationから入手可能である。
【0034】
本明細書において用いられる通り、核酸分子、ポリペプチド、宿主細胞等などの生物学的物質に関連して用いられる場合、用語「自然の」または「天然に存在する」は、自然界に存在し、人間によって処理されていないものを指す。
本明細書において用いられる通り、「変形性関節症」は、骨の末端における柔軟な組織が摩耗した場合に生じ、関節の痛みおよびこわばり、関節の腫れ、可動域の減少、手足の脱力またはしびれ、ならびに他の症状を呈する、軟骨障害の一種を指す。
【0035】
参照ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列に関して、「配列同一性パーセント(%)」は、配列を整列させ、必要に応じてギャップを導入して最大パーセントの配列同一性を達成した後、参照ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列中の核酸またはアミノ酸と同一である候補配列中の核酸またはアミノ酸の百分率として定義される。核酸またはアミノ酸の配列同一性パーセントを決定する目的でのアライメントは、当業者の能力の範囲内にある様々な様式で、例えば、BLAST、BLAST-2、またはMegalignソフトウェアなどの公的に利用可能なコンピュータソフトウェアを用いて、達成することができる。 当業者は、比較される配列の全長にわたって最大のアライメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、配列をアライメントするための適切なパラメータを決定することができる。例えば、配列同一性パーセント値は、配列比較コンピュータプログラムBLASTを使用して生成され得る。
【0036】
例示として、所定の核酸またはアミノ酸配列Aの、所定の核酸またはアミノ酸配列Bに対する、所定の核酸またはアミノ酸配列Bとの、あるいは、所定の核酸またはアミノ酸配列Bに対しての、配列同一性パーセント(これは、代替的に、所定の核酸またはアミノ酸配列Bに対する、所定の核酸またはアミノ酸配列Bと、あるいは、所定の核酸またはアミノ酸配列Bに対して、ある配列同一性パーセントを有する所定の核酸またはアミノ酸配列Aと言い換えることができる)は、以下:
100に(割合X/Y)を乗じる
ここで、Xは、配列アラインメントプログラム(例えば、BLAST)により、AおよびBのそのプログラムでのアラインメントにおいて、同一である一致(identical match)として得点されたヌクレオチドまたはアミノ酸の数であり、YはBにおける核酸の総数である、
の通りに算出される。核酸またはアミノ酸配列Aの長さが、核酸またはアミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、AのBに対する配列同一性パーセントは、BのAに対する配列同一性パーセントと等しくないことが理解されるであろう。
【0037】
本明細書において用いられる通り、用語「医薬組成物」は、本明細書において記載されている核酸を含有し、薬学的に許容し得る賦形剤と製剤化され、ならびに対象における疾患の処置のための治療的療法の一部として政府規制機関の承認を得て製造または販売される組成物を指す。
本明細書において用いられる通り、用語「薬学的に許容し得る」は、合理的な利益/リスク比に見合った過度の毒性、刺激、アレルギー反応および他の問題となる合併症なしに、哺乳動物(例えば、ヒト)などの対象の組織との接触に適している、これらの化合物、物質、組成物および/または剤型を指す。
【0038】
本明細書において用いられる通り、用語「プラスミド」は、追加的DNAセグメントがライゲーションされ得る染色体外環状二本鎖DNA分子を指す。プラスミドは、ベクターの一種であり、連結された別の核酸を輸送することができる核酸分子である。あるプラスミドは、それが導入される宿主細胞において自律的な複製が可能である(例えば、細菌の複製起点を有する細菌性プラスミドおよびエピソーム哺乳動物プラスミド)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入の際に宿主細胞のゲノムに統合されてもよく、それにより宿主ゲノムと一緒に複製される。あるプラスミドは、それが作動可能に連結されている遺伝子の発現を指図することができる。
【0039】
本明細書において用いられる通り、用語「プログラム細胞死」は、アポトーシスまたはオートファジーなどの、細胞内部での事象の結果としての細胞死を指す。
本明細書において用いられる通り、用語「プロモーター」は、RNAポリメラーゼによって結合されるDNA上の認識部位を指す。ポリメラーゼは、導入遺伝子の転写を進める。本明細書において記載されている組成物および方法と共に用いるのに適した例示的なプロモーター。さらに、用語「プロモーター」は、生物学的システムにおいて天然に存在しない調節DNA配列である、合成プロモーターを指す場合がある。合成プロモーターは、自然に存在しないポリヌクレオチド配列と組み合わせた天然に存在するプロモーターの一部を含有し、様々な導入遺伝子、ベクター、および標的細胞種を用いて、組換えDNAを発現するように最適化され得る。
【0040】
本明細書において用いられる通り、用語「スプライスバリアント」は、RNA転写物におけるイントロン配列の代替的プロセシングによって生成される核酸分子(通常はRNA)を指す。
本明細書において用いられる通り、用語「対象」は、例えば、実験的、診断的、予防的、および/または治療的目的のために、本発明に従った組成物が投与され得る任意の生物を指す。典型的な対象には、任意の動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長類、およびヒトなどの哺乳類動物)が含まれる。対象は、処置を求めてももしくは処置の必要があってもよく、処置を必要としていてもよく、処置を受けていてもよく、将来処置を受けてもよく、または特定の疾患もしくは病状について訓練された専門家によりケアを受けているヒトもしくは動物であってもよい。いくつかの態様において、対象はヒトである。
【0041】
本明細書において用いられる通り、用語「自殺遺伝子」は、細胞にプログラム細胞死を起こさせる遺伝子、発現ベクターの転写もしくは翻訳を終了させる遺伝子それ自体、RNA干渉を介して発現ベクターの発現レベルを低下させる遺伝子、または(例えば、RQR85および切断型ヒト上皮成長因子受容体ポリペプチドなどの)表面タンパク質をコードする遺伝子を指す。
本明細書において用いられる通り、用語「滑膜細胞」は、線維芽細胞様滑膜細胞を指し、これは、関節の潤滑に不可欠な滑液糖タンパク質を産生する、滑膜内の関節内側に位置する特殊な細胞種である。
本明細書において用いられる通り、用語「転写調節因子」は、刺激(例えば、炎症、サイトカイン、低レベルの細胞外増殖因子、感染、低酸素、低レベルまたは高レベルの鉄、低レベルまたは高レベルのフェリチン、低レベルまたは高レベルのアンピシリン、低レベルまたは高レベルのイソプロピルβ-d-1-チオガラクトピラノシド、ドキシサイクリン、一酸化窒素、一酸化窒素合成酵素(NOS);パラクリン、エンドクリン、またはオートクリンシグナル;あるいは発現ベクターを担持する細胞の近傍で構造変化を引き起こす組織変性または感染を引き起こす外部刺激)に応答してタンパク質、例えばFGF-18、の発現を調節することができる誘導性エレメントを指す。
【0042】
本明細書において用いられる通り、用語「形質導入」および「形質導入する」は、発現ベクター、例えば、ウイルスベクター構築物またはその一部、を細胞に導入する方法、およびその後の発現ベクター構築物またはその一部によってコードされる導入遺伝子の細胞における発現を指す。
本明細書において用いられる通り、用語「トランスフェクション」は、原核生物または真核生物宿主細胞への外因性DNAの導入に一般的に用いられる多種多様な技術のいずれかを指し、例えば、エレクトロポレーション、リポフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ジエチルアミノエチル(DEAE)-デキストラントランスフェクション、NUCLEOFECTION(商標)、スクイーズポレーション(squeeze-poration)、超音波照射(sonoporation)、光学トランスフェクション(optical transfection)、MAGNETOFECTION(商標)、インペールフェクション(impalefection)、金粒子衝突等などである。
【0043】
本明細書において用いられる通り、用語「処置する」、「処置される」、または「処置すること」は、治療的処置および予防的または抑制的手段の両方を意味し、その目的は、望ましくない生理学的病状、障害もしくは疾患を抑制するまたは遅延させる(軽減する)こと、あるいは有益または望ましい臨床結果を得ることである。有益なまたは望ましい臨床結果には、症状の緩和;病状、障害、または疾患の程度の縮小;病状の安定化(すなわち、悪化しない)状態;発症の遅延、あるいは病状、障害、または疾患の進行の遅延;病状、障害、または疾患の状態の改善または寛解、これは(部分的であってもまたは全体的であってもよく)検出可能であってもまたは検出不可能であってもよい;患者によって必ずしも識別可能ではない少なくとも一つの測定可能な身体的パラメータの改善;あるいは、病状、障害、または疾患の向上または改善、が含まれるが、これらに限定されない。処置には、過度のレベルの副作用を伴わない臨床的に有意な反応を引き出すことが含まれる。処置にはまた、処置を受けない場合に予想される生存期間と比較して、生存を延長することも含まれる。
本明細書において用いられる通り、用語「U-リッチモチーフ」は、連続する核酸の少なくとも80%がウラシル(U)である、連続する核酸の鎖を指す。
【0044】
利点
本明細書において例示される発現ベクターおよびその使用方法は、軟骨細胞および各軟骨の増殖を促進するために、FGF-18ポリペプチドを繰り返し関節内に注射することを標準的に含む、従来の治療法を超えるいくつかの利点を提供する。これらの処置療法は、注射を中止した際に軟骨の急速な喪失が再開するため、軟骨の増加を維持するために継続的に繰り返されなければならない。第一に、これらの組成物および方法は、複数回の処置の必要なしに、関節内でFGF-18の治療的発現を継続することを可能にする。第二に、本明細書において記載されている発現ベクターは、過剰産生を抑制するか、またはFGF-18発現のレベルの条件付き減少を可能にする、「安全スイッチ」メカニズムとして機能する自殺遺伝子をコードしている。したがって、本明細書において例示される発現ベクターおよびその使用方法は、滑膜関節の細胞(例えば、滑膜細胞および/または軟骨細胞)に、誘導性自殺遺伝子によって媒介される、本質的に安全なFGF-18ポリペプチドの遺伝子配列を形質導入することによって、従来のFGF-18補充の限界を克服し、FGF-18発現により媒介される継続的な治療的再生特性を可能にする。
【0045】
詳細な説明
本明細書において記載されている組成物および方法は、軟骨障害を処置するための発現ベクター(例えば、アデノ随伴ウイルス(AAV)によって送達される自殺遺伝子および線維芽細胞増殖因子18(FGF-18)ポリペプチドまたはその機能的断片をコードする核酸)を包含する。いくつかの態様において、軟骨障害は、変形性関節症である。FGF-18は、分解(例えば、変形性関節症における軟骨の分解)に続いて軟骨を回復させる。
【0046】
自殺遺伝子
本発明の発現ベクターは、自殺遺伝子(例えば、自殺遺伝子をコードする発現ベクターを担持する細胞のアポトーシスを引き起こすことができる遺伝子、発現ベクターの転写または翻訳を終了させる遺伝子それ自体、または干渉RNA分子をコードすることによって発現ベクターの発現レベルを低下させる遺伝子)をコードする核酸を特徴としている。
いくつかの態様において、本発明は、自殺遺伝子をコードする発現ベクターを担持する細胞のアポトーシスを引き起こすことができる遺伝子である、自殺遺伝子を特徴とする。いくつかの態様において、本発明は、アデノウイルス(ADV)E1A、ADV E4、ADV E4orf6、B型肝炎ウイルス(HBV)HBx、ヒトパピローマウイルス(HPV)E1^E4、HPV E6、HPV E7、ポリオウイルス(PLV)2Apro、PLV 2B、PLV 3A、PLV 3Cpro、鳥脳脊髄炎ウイルス(AEV)2C、AEV VP3、牛白血病ウイルス(BLV)G4、口蹄疫ウイルス(FMDV)VP1、C型肝炎ウイルス(HCV)NS3、HCV NS4A、ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)Env、HIV-1 Nef、HIV-1 Protease、HIV-1 Tat、HIV-1 Vpr、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)p13(II)、インフルエンザAウイルス(IAV)PB1-F2、SARSコロナウイルス(SARS-CoV)7A、水疱性口内炎ウイルス(VSV)M、VSV P、ウォーリー皮膚肉腫ウイルス(WDSV)OrfC、西ナイルウイルス(WNV)カプシド、WNV NS2B、WNV NS3、Akt2、Pik3r2、Tnfrsf1a、Pp3cb、Ppp1r13b、Ikbkb、Prkar2a、c-Myc、CHOP、TRAF-2、ATF-4、XBP-1spl、MnSOD、IkBアルファ、Hsp70、Hsp26、Fas、CD40、CEBPベータ、CEBPデルタ、D-bind、IL-15、IL-10、MCP-1、ICAM-1、MHC-1関連遺伝子、Stat-1、IRF-1、IRF-7、c-jun、p53、AP-1、HRK、Fas-L、Bim、Bak、Bax、PIDD、Bid、Apaf-1、TRAILR2、PUMA、NOXA、GZMB、カスパーゼ6(CaspP6)、カスパーゼ3(CaspP3)、カスパーゼ7(CaspP7)、およびTRAIL-Rを含むリストから選択される、1種以上の遺伝子から選ばれる自殺遺伝子を特徴とする。いくつかの態様において、自殺遺伝子は、プロテアソーム構成要素に関連する1種以上の遺伝子であってもよい。
【0047】
いくつかの態様において、自殺遺伝子は、シトシンデアミナーゼ遺伝子、RQR85ポリペプチドをコードする遺伝子、または切断型ヒト上皮成長因子受容体ポリペプチドをコードする遺伝子である。
いくつかの態様において、自殺遺伝子は、発現ベクターの転写または翻訳を終了させる遺伝子である。いくつかの態様において、自殺遺伝子は、ヌクレアーゼであり、ここで、ヌクレアーゼは、発現ベクターの転写または翻訳を破壊する。いくつかの態様において、ヌクレアーゼは、クラスタ化され規則的に間隔を置いた短鎖パリンドローム反復(clustered regulatory interspaced short palindromic repeat)(CRISPR)関連タンパク質である。いくつかの態様において、CRISPR関連タンパク質は、CRISPR関連タンパク質9である。いくつかの態様において、CRISPR関連タンパク質は、CRISPR関連タンパク質12aである。いくつかの態様において、ヌクレアーゼは、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、メガヌクレアーゼ、またはジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)である。いくつかの態様において、誘導性自殺遺伝子は、ヌクレアーゼを介した遺伝子編集システムにおけるガイドRNA(gRNA)である。
【0048】
いくつかの態様において、自殺遺伝子は、干渉RNA分子をコードすることによって発現ベクターの発現レベルを低下させる遺伝子である。いくつかの態様において、自殺遺伝子は、核酸分子(例えば、DNA分子またはRNA分子、例えば、mRNAまたは阻害性RNA分子(例えば、短干渉RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)、または短ヘアピンRNA(shRNA))、あるいはハイブリッドDNA-RNA分子)である。
【0049】
I.誘導性自殺遺伝子
いくつかの態様において、本発明は、誘導性自殺遺伝子(例えば、小分子によって活性化される自殺遺伝子)を特徴とする。
いくつかの態様において、誘導性自殺遺伝子は、HSV-TK遺伝子である(例えば、Dey, Dilip, and Gregory RD Evans, “Suicide gene therapy by herpes simplex virus-1 thymidine kinase (HSV-TK).” Targets in Gene Therapy (2011):65参照。
いくつかの態様において、誘導性自殺遺伝子は、配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性)を有するアミノ酸配列をコードする。
【0050】
いくつかの態様では、誘導性自殺遺伝子は、ラパマイシン活性化Casp9(例えば、Stavrou, Maria, et al., "A rapamycin-activated caspase 9-based suicide gene." Molecular Therapy 26.5 (2018):1266-1276.を参照)である。
いくつかの態様において、誘導性自殺遺伝子は、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性)を有するアミノ酸配列をコードする。
【0051】
いくつかの態様では、本発明は、チミジンキナーゼ自殺遺伝子、シトシンデアミナーゼ/5フルオロシトシン応答エレメント、単純ヘルペスウイルス/ガンシクロビル(HSV-tk/GCV)応答エレメント、カルボキシルエステラーゼ/イリノテカン、水痘帯状疱疹ウイルスチミジンキナーゼ/6-メトキシプリンアラビノヌクレオシド、ニトロ還元酵素Nfsb/5-(アジリジン-1-イル)-2 4-ジニトロベンズアミド、カルボキシペプチダーゼ G2/4-[(2-クロロエチル)(2-メシルオキシエチル)アミノ]ベンゾイル-L-グルタミン酸およびシトクロムp450-イホスファミドまたはシトクロムp450-シクロフォスファミドを含む、誘導性自殺遺伝子システムを特徴とする。
【0052】
II.ヌクレアーゼを介した発現ベクターの破壊
いくつかの態様において、自殺遺伝子は、ヌクレアーゼまたはgRNAであってもよい。任意の適したヌクレアーゼが用いられもよい。いくつかの態様においては、自殺遺伝子が、ヌクレアーゼを介した遺伝子編集システムの構成要素である。例えば、自殺遺伝子は、発現ベクターの転写または翻訳を可能にする遺伝子に改変(例えば、挿入、欠失(例えば、ノックアウト)、転座、反転、単一点変異、または他の変異)を導入する。例示的な遺伝子編集システムには、CRISPRシステム、メガヌクレアーゼ、ZFN、およびTALENが含まれる。CRISPRに基づく方法、ZFN、およびTALENは、例えば、Gaj et al., Trends Biotechnol. 31.7(2013):397-405に記載されている。
【0053】
例えば、細胞のゲノムへの標的遺伝子の破壊および/または統合のための有用なツールは、CRISPR/Casシステムであり、これは、本来、ウイルス感染に対するバクテリアおよび古細菌の適応的な防御メカニズムとして進化したシステムである。CRISPR/Casシステムは、プラスミドDNA内のパリンドローム反復配列およびCasタンパク質(例えば、Cas9またはCas12a)を含む。このDNAとタンパク質との集合体は、まず外来DNAをCRISPR遺伝子座に組み込むことによって、標的配列の部位特異的なDNA切断を指図する。これらの外来配列とCRISPR遺伝子座の反復スペーサー(repeat-spacer)エレメントを含有するポリヌクレオチドは、順番に宿主細胞内で転写されてgRNAを生じ、次いで、これが標的配列にアニーリングしてCasヌクレアーゼをこの部位に局在させることができる。このようにして、Casを標的DNA分子の近接範囲内にもたらす相互作用は、RNA:DNAハイブリダイゼーションによって支配されるため、高度に部位特異的なCasを介したDNA切断が外来ポリヌクレオチドにおいて引き起こされ得る。その結果、目的の標的DNA分子(例えば、発現ベクターの転写または翻訳を可能にする遺伝子)を切断するCRISPR/Casシステムを設計することができる。この技術は、真核生物のゲノムを編集するために利用されており(Hwang et al. Nature Biotechnology 31:227 (2013)、その開示は参照により本明細書に組み込まれる)、標的遺伝子をコードする遺伝子の組み込み前にDNAを切断するために、細胞ゲノムを部位特異的に編集する効率的な手段として用いることが可能である。遺伝子発現を調節するためのCRISPR/Casの使用は、例えば、US8,697,359に記載されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0054】
CRISPRシステムは、真核生物における遺伝子編集(例えば、ある遺伝子の変更(changing)、サイレンシング、および/またはエンハンシング(enhancing))において用いられるために修飾されている。例えば、Wiedenheft et al., Nature 482:331、2012を参照。例えば、かかるシステムの修飾は、真核生物細胞に、特異的に設計されたCRISPRおよび1種以上の適切なCasタンパク質を含有するプラスミドを導入することを含む。CRISPR遺伝子座は、RNAに転写されて、Casタンパク質(例えば、Cas9)によって、スペーサーに挟まれた反復配列を含有する小分子RNAにプロセシングされる。RNAは、スペーサー配列に応じて、Casタンパク質が特定のDNA/RNA配列をサイレンシングするように指図するガイドとしての役割を果たす。例えば、Horvath et al., Science 327:167, 2010;Makarova et al., Biology Direct 1:7、2006;Pennisi, Science 341:833、2013を参照。いくつかの例では、CRISPRシステムは、DNAの両鎖を切断するヌクレアーゼである、Cas9タンパク質を含む。
【0055】
いくつかの態様において、本明細書において記載されている使用のためのCRISPRシステムでは、例えば、本明細書において記載されている1つ以上の方法に従って、CRISPRのスペーサーは、標的遺伝子配列に、例えば、発現ベクターの転写または翻訳を可能にする遺伝子の配列に、由来する。
いくつかの態様において、自殺遺伝子は、遺伝子編集のためのCRISPRシステムにおいて用いるためのgRNAを含む。いくつかの態様において、自殺遺伝子は、発現ベクターの転写または翻訳を可能にする遺伝子の核酸配列(例えば、DNA配列)を標的とする(例えば、切断する)、メガヌクレアーゼまたはメガヌクレアーゼをコードするmRNAを含有する。いくつかの態様において、自殺遺伝子は、発現ベクターの転写または翻訳を可能にする遺伝子の核酸配列(例えば、DNA配列)を標的とする(例えば、切断する)、ZFNまたはZFNをコードするmRNAを含有する。いくつかの態様において、自殺遺伝子は、発現ベクターの転写または翻訳を可能にする遺伝子の核酸配列(例えば、DNA配列)を標的とする(例えば、切断する)、TALENまたはTALENをコードするmRNAを含有する。いくつかの態様において、自殺遺伝子は、発現ベクターの転写または翻訳を可能にする遺伝子の核酸配列(例えば、DNA配列)を標的とする(例えば、切断する)、Cas(例えば、Cas9)またはCas(例えば、Cas9)をコードするmRNAを含有する。
【0056】
ある態様において、CRISPRシステムは、標的遺伝子、例えば、発現ベクターの転写または翻訳を可能にする遺伝子、を編集する(例えば、塩基対を付加するまたは削除する)ために用いられる。他の態様において、CRISPRシステムは、早期停止コドンを導入するために用いられ、例えば、それによって標的遺伝子の発現を減少させる。さらに他の態様において、CRISPRシステムは、例えば、RNA干渉と同様に、可逆的な様式で標的遺伝子をオフにするために用いられる。いくつかの態様において、CRISPRシステムは、Cas(例えば、Cas9)が標的遺伝子、例えば、発現ベクターの転写または翻訳を可能にする遺伝子、のプロモーターに向かうように用いられ、それによってRNAポリメラーゼを立体的に遮断する。
【0057】
いくつかの態様において、CRISPRシステムは、例えば、米国公開第20140068797号;Cong, Science 339: 819, 2013;Tsai, Nature Biotechnol., 32:569, 2014;ならびに米国特許第8,871,445号;第8,865,406号;第8,795,965号;第8,771,945号;および第8,697,359号に記載されている技術を用いて、発現ベクターの転写または翻訳を可能にする遺伝子を編集するために作製され得る。
いくつかの態様において、CRISPR干渉(CRISPRi)技術は、特定の遺伝子、例えば、発現ベクターの転写または翻訳を可能にする遺伝子、の転写抑制のために用いられ得る。CRISPRiにおいては、操作されたCas9タンパク質(例えば、ヌクレアーゼ欠損dCas9、またはdCas9融合タンパク質、例えば、dCas9-KRABまたはdCas9-SID4X融合)は、配列特異的ガイドRNA(sgRNA)と対になることができる。Cas9-5gRNA複合体は、RNAポリメラーゼを遮断することができ、それにより転写の伸長に干渉する。複合体はまた、転写因子の結合に干渉することにより、転写開始を遮断することができる。CRISPRi法は、オフターゲット効果を最小にするのに特異的であり、多重化が可能であり、例えば、(例えば、複数のgRNAを使用して)2つ以上の遺伝子を同時に抑制することができる。また、CRISPRi法は、可逆的な遺伝子抑制を可能にする。
【0058】
いくつかの態様において、CRISPRを介した遺伝子活性化(CRISPR-mediated gene activation)(CRISPRa)は、例えば、本明細書において記載されている1種以上の遺伝子、例えば、発現ベクターの転写または翻訳を可能にする遺伝子を阻害する遺伝子、の転写活性化のために用いられ得る。CRISPRa技術において、dCas9融合タンパク質は、転写活性化因子を動員する。例えば、dCas9は、VP64またはp65活性化ドメイン(p65D)などのポリペプチド(例えば、活性化ドメイン)を動員するために用いられることが可能であり、sgRNA(例えば、単一のsgRNAまたは複数のsgRNA)とともに用いられて、遺伝子または複数の遺伝子、例えば、内因性遺伝子、を活性化することができる。複数のsgRNAを用いることにより、複数の活性化因子が動員されることが可能であり、このことにより活性化効率を増加させることができる。様々な活性化ドメインおよび単一または複数の活性化ドメインが用いられ得る。活性化因子を動員するようにdCas9を操作することに加え、sgRNAもまた、活性化因子を動員するように操作され得る。例えば、RNAアプタマーをsgRNAに組み込んで、VP64などのタンパク質(例えば、活性化ドメイン)を動員することができる。いくつかの例では、相乗的活性化メディエーター(SAM)システムを転写活性化に用いることができる。SAMでは、MS2アプタマーがsgRNAに付加される。MS2は、p65ADおよび熱ショック因子1(HSF1)に融合したMS2コート(coat)タンパク質(MCP)を動員する。CRISPRiおよびCRISPRa技術は、より詳細には、例えば、Dominguez et al., Nat. Rev. Mol. Cell Biol. 17:5, 2016に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0059】
いくつかの態様において、gRNAまたはCas(例えば、Cas9)は、遺伝子(例えば、発現ベクターの転写または翻訳を可能にする遺伝子)における改変を操作するためにCRISPRシステムで用いられ得る。他の例では、メガヌクレアーゼ、ZFN、および/またはTALENは、遺伝子(例えば、発現ベクターの転写または翻訳を可能にする遺伝子)における改変を操作するために用いられ得る。例示的な改変には、挿入、欠失(例えば、ノックアウト)、転座、反転、単一点変異、または他の変異が含まれる。改変は、例えば、in vitro、ex vivo、またはin vivoで、細胞内の遺伝子に導入され得る。いくつかの態様において、改変は、発現ベクターの転写または翻訳を可能にする遺伝子のレベルおよび/または活性を減少させ(例えば、ノックダウンまたはノックアウト)、例えば、改変は、機能の負の調節因子である。さらに別の例では、改変は、発現ベクターの転写または翻訳を可能にする遺伝子において、欠損(例えば、欠損を引き起こす変異)を誘発する。
【0060】
細胞内への目的遺伝子の組み込みの前にゲノムDNAを部位特異的に切断することによる標的DNA破壊のための代替的方法には、メガヌクレアーゼ、ZFN、およびTALENの使用が含まれる。CRISPR/Casシステムとは異なり、これらの酵素は、特定の標的配列に局在するためのガイドポリヌクレオチドを含有しない。標的特異性は、その代わりに、これらの酵素内のDNA結合ドメインによって制御される。ゲノム編集用途におけるメガヌクレアーゼ、ZFN、およびTALENの使用は、例えば、Urnov et al., Nature Reviews Genetics 11:636(2010);およびJoung et al., Nature Reviews Molecular Cell Biology 14:49(2013)に記載されており、これら両方の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの態様において、発現ベクターの転写または翻訳を可能にする遺伝子は、本明細書において記載されているこれらの遺伝子編集技術を用いて、発現ベクターを含有する細胞において破壊されてもよい。
【0061】
III.干渉RNA分子をコードすることにより発現ベクターの発現レベルを低下させる自殺遺伝子
いくつかの態様において、自殺遺伝子は、例えば、RNA干渉(RNAi)経路によって作用する、阻害性RNA分子である。阻害性RNA分子は、発現ベクターの転写または翻訳を可能にする遺伝子の発現レベル(例えば、タンパク質レベルまたはmRNAレベル)を減少させることができる。例えば、阻害性RNA分子には、発現ベクターの転写または翻訳を可能にする遺伝子を標的とする、siRNA、shRNA、および/またはmiRNAが含まれる。siRNAは、典型的には、約19~25塩基対の長さを有する二本鎖RNA分子である。shRNAは、RNAiを介して標的遺伝子の発現を減少させるヘアピンカーブ(hairpin turn)を含有するRNA分子である。shRNAは、プラスミド(例えば、ウイルスベクターまたは細菌ベクター)の形態で、トランスフェクション、エレクトロポレーション、または形質導入によって細胞に送達され得る。miRNAは、典型的には約22ヌクレオチドの長さを有する非コードRNA分子である。miRNAは、mRNA分子上の標的部位に結合し、例えば、mRNAの切断、mRNAの不安定化、またはmRNAの翻訳阻害を引き起こすことによって、mRNAをサイレンシングする。いくつかの態様において、阻害性RNA分子は、発現ベクター機能の転写または翻訳を可能にする遺伝子の機能のレベルおよび/または活性を減少させる。他の態様において、阻害性RNA分子は、機能の正の調節因子の阻害剤のレベルおよび/または活性を減少させる。
【0062】
阻害性RNA分子は、例えば、修飾ヌクレオチド、例えば、2’-フルオロ、2’-o-メチル、2’-デオキシ、アンロック(unlocked)核酸、2’-ヒドロキシ、ホスホロチオエート、2’-チオウリジン、4’-チオウリジンまたは2’-デオキシウリジン、を含有するように、修飾され得る。理論に拘束されるものではないが、ある修飾は、ヌクレアーゼ耐性および/または血清安定性を増加させることができ、あるいは免疫原性を減少させることができると考えられている。
いくつかの態様において、阻害性RNA分子は、発現ベクターの転写または翻訳を可能にする遺伝子のレベルおよび/または活性または機能を低下させる。いくつかの態様において、阻害性RNA分子は、発現ベクターの転写または翻訳を可能にする遺伝子の発現を阻害する。他の態様において、阻害性RNA分子は、発現ベクターの転写または翻訳を可能にする遺伝子の分解を増加させる。阻害性RNA分子は、化学的に合成され得るか、またはインビトロで転写され得る。リボザイム、RNAase P、siRNA、およびmiRNAなどの非コードRNAに基づく阻害性治療薬剤の製造および使用もまた、例えば、Sioud, RNA Therapeutics;Function, Design, and Delivery (Methods in Molecular Biology), Humana Press 2010に記載されている通り、当該技術分野において知られている。
【0063】
安全性エレメント
いくつかの態様において、本発明は、安全性エレメント(例えば、構築物を担持する細胞の、発現の抑制、転写の抑制、翻訳の抑制、有効性の減衰、老化、または発現ベクターを担持する細胞のアポトーシスを引き起こすことができる遺伝子)をコードしている核酸を特徴とする。
いくつかの態様において、本発明は、短干渉RNA、マイクロRNA、または短ヘアピンRNAなどの干渉RNA分子;あるいは、RNA誘導サイレンシング複合体、DroshaもしくはDicerを介した経路を介して、または単にFGF-18 mRNAの隔離(sequestration)もしくは不安定化を介して、FGF-18 mRNAに干渉するように設計された長い非コードRNA;あるいはFGF-18の分解のためのリボザイムを介したシステムを転写することができる安全性エレメントを特徴とする。
【0064】
いくつかの態様において、本発明は、FGF-18またはその機能的断片をコードする核酸に特異的なリプレッサータンパク質をコードすることができる安全性エレメントを特徴とする。
いくつかの態様において、本発明は、細胞老化を容易にする(facilitate)ための一般的なリプレッサータンパク質をコードすることができる安全性エレメントを特徴とする。
いくつかの態様において、本発明は、ポリコーム(polycomb)タンパク質の1種以上をコードする遺伝子、PRE TF結合エレメントの1種以上をコードする遺伝子、NRR(EAR-r)をコードする遺伝子、AtERF4をコードする遺伝子、HAD-19をコードする遺伝子、またはヒストン脱アセチル化酵素ファミリータンパク質の1種以上をコードする遺伝子、から選ばれる1種以上の一般的なリプレッサーである安全性スイッチを特徴とする。
【0065】
線維芽細胞増殖因子18ポリペプチドまたはその機能的断片
本発明の発現ベクターは、線維芽細胞増殖因子18(FGF-18)ポリペプチドまたはその機能的断片をコードする核酸を特徴とする。
いくつかの態様において、発現ベクターは、FGF-18ポリペプチドまたはその機能的断片をコードし、FGF-18ポリペプチドは、配列番号3のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性)を有する。
【0066】
いくつかの態様において、発現ベクターは、FGF-18ポリペプチドをコードし、これは、その自然形態、その成熟形態、組換え形態、またはFGF-18の任意の天然に存在するバリアント(例えば、スプライスバリアントまたは対立遺伝子バリアント)であってもよい。
いくつかの態様において、発現ベクターは、FGF-18ポリペプチドまたはその翻訳後修飾バリアントをコードし、ここでFGF-18ポリペプチドは、FGF-18翻訳後修飾バリアントにおいて存在する、1つ以上の天然に存在する翻訳後修飾を含む。
【0067】
転写調節因子
いくつかの態様において、本発明の発現ベクターは、刺激(例えば、内部刺激、炎症、サイトカイン、低レベルの細胞外増殖因子、感染、低酸素、低レベルまたは高レベルの鉄、低レベルまたは高レベルのフェリチン、低レベルまたは高レベルのアンピシリン、低レベルまたは高レベルのイソプロピルβ-d-1-チオガラクトピラノシド、ドキシサイクリン、一酸化窒素、一酸化窒素合成酵素(NOS);パラクリン、エンドクリン、またはオートクリンシグナル;外部刺激、あるいは発現ベクターを担持する細胞の近傍で構造変化を引き起こす組織変性または感染を引き起こす外部刺激)に応答して機能する、FGF-18またはその機能的断片をコードする核酸配列に作動可能に連結された転写調節因子を特徴とする。
いくつかの態様において、転写調節因子は、プロモーター、リプレッサー、TATAボックス、B認識エレメント認識エレメント、転写因子IIB認識エレメント、および下流プロモーターエレメントを含むリストから選択される1つ以上のエレメントである。
【0068】
いくつかの態様において、本発明は、転写調節因子が、lacUV5プロモーター、FGF遺伝子ファミリープロモーター、形質転換増殖因子遺伝子ファミリープロモーター、ヒアルロナン合成酵素遺伝子ファミリープロモーター、炎症応答性プロモーター、サイトカイン誘導性プロモーター、tacプロモーター、trcプロモーター、サルモネラprpBCDE(prpB)プロモーター、イソクエン酸リアーゼ(aceA)/リンゴ酸合成酵素(aceB)プロモーター、グルコン酸透過酵素(gntP)/グルコノキナーゼ(gntK)プロモーター、CJ10x2プロモーター、tac-Mプロモーター、マルトースABCトランスポーターペリプラズムタンパク質(malE1)プロモーター、ARF GTPase活性化タンパク質GIT1(git1)プロモーター、細胞死BCL-2関連アゴニスト(BCL-2 associated agonist of cell death)(BAD)プロモーター、Squamosaプロモーター結合タンパク質様転写因子(SPLs)、4-N14プロモーター、ハイブリッドインターロイキン1エンハンサー/インターロイキン6プロモーター、プロスタグランジンエンドペルオキシド合成酵素2(COX-2)プロモーター、誘導性サイトカインプロモーター、C-X-Cモチーフケモカインリガンド10(CXCL10)プロモーター、Lac/LacUV5プロモーター、T7プロモーター、NOSプロモーター、ユビキチン1プロモーター、リブロース-1,5-ビスリン酸カルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ(rbcS)プロモーター、アラビノース誘導性araBADプロモーター(araPBAD)、大腸菌ラムノースBADプロモーター(rhaPBAD)、ファージラムダpL/pRプロモーター、大腸菌低温ショックタンパク質A(cspA)プロモーター、カリフラワーモザイクウイルスプロモーター、カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター、RNA低分子制御RNAアンチトキシンSokC(SokC)プロモーター、機能未知リポタンパク質YafT(yafT)プロモーター、推定インテグラーゼ(pintF)プロモーター、アンヒドロムロペプチド透過酵素(ampG)プロモーター、酸(ポリ)ホスファターゼ(appY)プロモーター、リソソーム酸リパーゼ型(lipA)プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)初期プロモーター、伸長因子1(EF1)アルファプロモーター、EF1プロモーター、CAGプロモーター、単純ヘルペスウイルス-1チミジンキナーゼプロモーター、ヒトベータ-アクチンプロモーター、サル空胞(simian vacuolating)ウイルス40(SV40)プロモーター、マウス幹細胞ウイルスプロモーター、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)プロモーター、ユビキチンC(UbC)プロモーター、あるいは、他の任意の既知の構成的または誘導性プロモーターを含むリストから選択される1つ以上のプロモーターであることを特徴とする。
いくつかの態様において、プロモーターは、PGKプロモーターである。
いくつかの態様において、プロモーターは、CMVプロモーターである。
【0069】
追加的構成要素または修飾
遺伝子は、イントロン(例えば、天然に存在するイントロン、マウス微小ウイルスイントロン、または合成イントロン)と共にまたはこれを含まずに、または/またはイントロン(例えば、天然に存在するイントロン、マウス微小ウイルスイントロン、または合成イントロン)のサブセットのみと共に、および/または発現ベクターにおける核酸配列のコドン最適化と共に、用いられ得ることが理解されるべきである。
いくつかの態様において、FGF-18ポリペプチドまたはその機能的断片をコードする核酸は、ポリペプチドが適切な細胞コンパートメントまたは細胞外空間に標的化されることを確保するための1つ以上の分泌配列を追加的に含んでもよい。
【0070】
いくつかの態様において、分泌配列は、下記:
【表1】

を含むリストから選択される1つ以上のアミノ酸配列である。
【0071】
いくつかの態様において、発現ベクターはまた、エンハンサーを含んでもよい。
いくつかの態様において、発現ベクターはまた、プロモーターを含んでもよい。
いくつかの態様において、プロモーターは、構成的プロモーターである。
いくつかの態様において、プロモーターは、誘導性プロモーターである。
いくつかの態様において、誘導性プロモーターは、lacUV5、tac、trc、prpB、aceA/aceB、gntP/gntK、CJ10x2、tac-M、malE1、git1、BAD、SPLs、4-N14、CXCL10、Lac/LacUV5、T7、araPBAD、rhaPBAD、pL/pR、cspA、COX-2、ハイブリッドIL-1エンハンサー/IL-6プロモーター、CASIプロモーター(例えば、CMVおよびUbCエンハンサーエレメントおよびニワトリb-アクチンプロモーターを含む合成プロモーター)、II型コラーゲンプロモーター、またはサイトカイン誘導性プロモーターを含むリストから選択される1つ以上の誘導性プロモーターである。
【0072】
いくつかの態様において、プロモーターは、転写調節因子と直交性の、半直交性の、および/または対立性の刺激に対して応答性である。
いくつかの態様において、発現ベクターはまた、自殺遺伝子と直交性の、半直交性の、および/または対立性の刺激に対して応答する1つ以上のサイレンサーを含んでもよい。
いくつかの態様において、サイレンサーは、CBX、Bcl6、E2F6、PDGFA5’SHS、T39、Jarid2、REST、YY1、PRE-2-S5、Gal4-CBX4、Myh6 PNR、ZEBB、Gfi1/1b、Elk-3、ETV6/7、Stat5、Gata3、Runx1、Sp1/Klf、Xist、COOLAIRもしくはHOTAIR、Meg3、またはFendrrを含む遺伝子リストから選択される1つ以上のサイレンサーであってもよい。
いくつかの態様において、発現ベクターはまた、ポリアデニル化シグナル(例えば、天然に存在するポリアデニル化シグナル、ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナル、または合成ポリアデニル化シグナル)を含んでもよい。
【0073】
いくつかの態様において、ポリアデニル化シグナルは、Uリッチストレッチ(U-rich stretch)を含む一般的な哺乳動物ポリアデニル化コンセンサス配列またはその変形であり、これには、約0~20ヌクレオチドが続き(例えば、1~19ヌクレオチド、2~18ヌクレオチド、3~17ヌクレオチド、4~16ヌクレオチド、5~15ヌクレオチド、6~14ヌクレオチド、7~13ヌクレオチド、8~12ヌクレオチド、9~11ヌクレオチド、または約10ヌクレオチド)、ATAAAという半保存的コンセンサス配列が続き、約15~30(例えば、16~29ヌクレオチド、17~28ヌクレオチド、18~27ヌクレオチド、19~26ヌクレオチド、20~25ヌクレオチド、21~24ヌクレオチド、または22~23ヌクレオチド)ヌクレオチドが続き、シトシン(C)Aが続き、0~20ヌクレオチド(例えば、1~19ヌクレオチド、2~18ヌクレオチド、3~17ヌクレオチド、4~16ヌクレオチド、5~15ヌクレオチド、6~14ヌクレオチド、7~13ヌクレオチド、8~12ヌクレオチド、9~11ヌクレオチド、または約10ヌクレオチド)が続き、分化特異的エレメント、GもしくはU、またはUリッチストレッチが続く。
【0074】
いくつかの態様において、発現ベクターはまた、終止領域を含んでもよい。
いくつかの態様において、終止配列は、TAG、TAA、TGA、またはTTTATTを含む停止コドンまたは終止をコードする核酸のリストから選択される1つ以上の停止コドンまたは終止配列であってもよい。
いくつかの態様において、発現ベクターはまた、1つ以上の代替的スプライシングエクソンおよび/イントロン、近位制御エレメント(control element)、および/または下流配列を含んでもよい。
いくつかの態様において、発現ベクターはまた、1つ以上のシス調節モジュールを含んでもよい。
いくつかの態様において、発現ベクターはまた、ウッドチャック肝炎ウイルス(WHP)転写後調節エレメント(WPRE)を含んでもよい。
【0075】
送達
任意の適した発現ベクターは、自殺遺伝子およびFGF-18ポリペプチドまたはその機能的断片をコードする核酸の構成要素を設計して組み立てるために、本組成物および方法と併せて用いられてもよい。一つの態様において、発現ベクターは、自殺遺伝子、およびFGF-18ポリペプチドまたはその機能的断片をコードする核酸を担持するウイルスベクターである。組換えベクターの組み立てのための方法は、当該技術分野で知られている。例えば、Griffiths, A. J., et al., "Making recombinant DNA." An Introduction to Genetic Analysis. 7th edition. New York: WH Freeman参照。http://www. ncbi. nlm. nih. gov/books/NBK21881 (2000)から入手可能である。
【0076】
I.治療用核酸の発現のためのウイルスベクター
ウイルスゲノムは、哺乳動物細胞(例えば、軟骨細胞、軟骨前駆細胞、および滑膜細胞)への外因性遺伝子の効率的な送達に用いられ得るベクターの豊富な供給源を提供する。典型的には、かかるゲノム内に含有されるポリヌクレオチドが、一般的なまたは特化した形質導入によって哺乳動物細胞の核ゲノムに組み込まれるため、ウイルスゲノムは遺伝子送達のための特に有用なベクターである。これらのプロセスは、自然なウイルス複製サイクルの一部として生じ、遺伝子の統合を誘導するためにタンパク質または試薬を加える必要がない。ウイルスベクターの例は、レトロウイルス(例えば、レトロウイルス科ファミリーウイルスベクター)、アデノウイルス(例えば、Ad5、Ad26、Ad34、Ad35、およびAd48)、パルボウイルス(例えば、アデノ随伴ウイルス)、コロナウイルス、オルトミクソウイルス(例えば、インフルエンザウイルス)などのマイナス鎖RNAウイルス、ラブドウイルス(例えば、狂犬病および水疱性口内炎ウイルス)、パラミクソウイルス(例えば、麻疹およびセンダイ)、ピコルナウイルスおよびアルファウイルスなどのプラス鎖RNAウイルス、ならびに、アデノウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス1型および2型、エプスタイン-バーウイルス、サイトメガロウイルス)、およびポックスウイルス(例えば、ワクシニア、改変ワクシニアアンカラ(MVA)、鶏痘およびカナリーポックス)を含む二本鎖DNAウイルスである。その他のウイルスとしては、ノーウォークウイルス、トガウイルス、フラビウイルス、レオウイルス、パポバウイルス、ヘパドナウイルス、ヒトパピローマウイルス、ヒト泡状(foamy)ウイルス、および肝炎ウイルスが含まれる。レトロウイルスの例としては、トリ白血病肉腫、トリC型ウイルス、哺乳動物C型、B型ウイルス、D型ウイルス、オンコレトロウイルス、HTLV-BLV群、レンチウイルス、アルファレトロウイルス、ガンマレトロウイルス、スプーマウイルス(Coffin,J.M,Retroviridae:The viruses and their replication,Virology, Third Edition (Lippincott-Raven, Philadelphia,(1996))が含まれる。他の例は、マウス白血病ウイルス、マウス肉腫ウイルス、マウス乳腺腫瘍ウイルス、ウシ白血病ウイルス、ネコ白血病ウイルス、ネコ肉腫ウイルス、トリ白血病ウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス、ヒヒ内在性ウイルス、ギボンサル白血病ウイルス、メイソンファイザーサルウイルス、サル免疫不全ウイルス、サル肉腫ウイルス、ラウス肉腫ウイルスおよびレンチウイルスである。ベクターの他の例は、例えば、McVey et al.,(米国特許第5,801,030号)に記載されており、その教示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0077】
IA.ウイルスカプシドタンパク質
本明細書において記載されている核酸およびベクターは、核酸またはベクターの細胞への導入を容易にするために、組換えビリオン(virion)に組み込まれ得る。いくつかの態様において、ウイルスカプシドタンパク質は、天然に存在するカプシドまたは操作されたカプシドタンパク質(例えば、修飾配列を含有するカプシド)である。
【0078】
ウイルスベクターのカプシドタンパク質は、ビリオンの外側の非核酸部分を構成しており、核酸によってコードされている。一つの態様において、ウイルスカプシドタンパクは、下記リスト:天然および/または合成の血清型を含むAAVカプシドタンパク質、1つ以上の血清型のレンチウイルスカプシドタンパク質、1つ以上の血清型のレトロウイルスカプシドタンパク質、1つ以上の血清型のヘルペスウイルス科カプシドタンパク質、1つ以上の血清型を含むアデノウイルス科カプシドタンパク質、1つ以上の血清型を含むパルボウイルス科カプシドタンパク質、1つ以上の血清型を含むラブドウイルス科カプシドタンパク質、1つ以上の血清型を含むレオウイルス科カプシドタンパク質、1つ以上の血清型を含むオルトミクソウイルス科カプシドタンパク質、1つ以上の血清型を含むブニヤウイルス科カプシドタンパク質、1つ以上の血清型を含むフラビウイルス科カプシドタンパク質、1つ以上の血清型を含むレトロウイルス科カプシドタンパク質、1つ以上の血清型を含むパラモキシウイルス科カプシドタンパク質、1つ以上の血清型を含むポティウイルス科カプシドタンパク質、1つ以上の血清型を含むコロナウイルス科カプシドタンパク質、1つ以上の血清型を含むカリシウイルス科カプシドタンパク質、1つ以上の血清型を含むパピローマウイルス科カプシドタンパク質、1つ以上の血清型を含むポックスウイルス科カプシドタンパク質、1つ以上の血清型を含むポリマウイルス科カプシドタンパク質、または1つ以上の血清型を含む任意の他の既知のウイルスもしくはウイロイドカプシドタンパク質、の1つ以上から構造的に構成されてもよい。
【0079】
いくつかの態様において、天然に存在するウイルスカプシドタンパク質は、(例えば、細胞種特異的標的化のための、天然に存在するウイルスカプシドタンパク質の表面において非ウイルスペプチドを発現させるための結合によって、または、指向性を狭めるための、ウイルスカプシドタンパク質、真核生物タンパク質もしくはタンパク質断片との間の融合タンパク質の発現のための結合によって)修飾されている。
いくつかの態様において、操作されたウイルスカプシドタンパク質は、(例えば、細胞種特異性または免疫原性の調節のために)リガンドに結合されている。
【0080】
IB.レトロウイルスベクター
本明細書において記載されている方法および組成物において用いられる送達ベクターは、レトロウイルスベクターであってもよい。本明細書において記載されている方法および組成物において用いられてもよいレトロウイルスベクターの種類の一つは、レンチウイルスベクターである。レトロウイルスの一種であるレンチウイルスベクター(LV)は、広範な分裂細胞種および非分裂細胞種に、高い効率で形質導入し、導入遺伝子の安定した長期発現をもたらす。LVをパッケージングし、形質導入するための最適化戦略の概論は、Delenda, The Journal of Gene Medicine 6: S125 (2004)に提供されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0081】
レンチウイルスに基づく遺伝子導入技術の使用は、目的導入遺伝子が収容される高度に欠失したウイルスゲノムを担持する組換えレンチウイルス粒子のin vitroでの産生に頼るものである。具体的には、組換えレンチウイルスは、(1)パッケージングコンストラクト、すなわち、Revと一緒に(またはトランスで発現される)Gag-Pol前駆体を発現するベクター;(2)一般には異種天然である、エンベロープ受容体を発現するベクター;ならびに(3)すべてのオープンリーディングフレームを除去されているが、複製、カプシド形成および発現に必要とされる配列を維持している、ウイルス相補DNA(cDNA)からなり、発現されることになる配列が挿入されている、導入ベクター、の許容細胞株におけるトランスでの共発現によって回収される。
【0082】
本明細書において記載されている方法および組成物に用いられるLVは、5’-長鎖末端反復配列(LTR)、HIVシグナル配列、HIV Psiシグナル5’-スプライシング部位(SD)、デルタGAGエレメント、Rev応答エレメント(RRE)、3’-スプライシング部位(SA)、伸長因子(EF)1-アルファプロモーターおよび3’-自己不活性化LTR(SIN-LTR)の1つ以上を含み得る。レンチウイルスベクターは、米国特許第6,136,597号(その開示は、参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている通り、任意に、中心ポリプリン領域(central polypurine tract)(cPPT)およびウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)を含む。レンチウイルスベクターは、pHR’バックボーンをさらに含んでもよく、これは、例えば、下記に提供される通り、含み得る。
【0083】
Lu et al., Journal of Gene Medicine 6:963 (2004)に記載されているLentigen LVは、DNA分子の発現および/または細胞の形質導入に用いられてもよい。本明細書において記載されている方法および組成物において用いられるLVは、5’-長鎖末端反復配列(LTR)、HIVシグナル配列、HIV Psiシグナル5’-スプライシング部位(SD)、デルタGAGエレメント、Rev応答エレメント(RRE)、3’-スプライシング部位(SA)、伸長因子(EF)1-アルファプロモーターおよび3’-自己不活性化LTR(SIN-LTR)であり得る。任意にこれらの領域の1つ以上が、同様の機能を果たす別の領域で置換されることは、当業者には当然に明らかであろう。
【0084】
エンハンサーエレメントは、修飾DNA分子の発現を増加させるために、またはレンチウイルスの統合効率を増加させるために用いられ得る。本明細書において記載されている方法および組成物において用いられるLVは、nef配列を含んでもよい。本明細書において記載されている方法および組成物において用いられるLVは、ベクターの統合を増大させるcPPT配列を含んでもよい。cPPTは、(+)鎖DNA合成の二次的な起点として作用し、その自然HIVゲノムの途中に部分的な鎖の重複を導入する。導入ベクターバックボーンにおけるcPPT配列の導入により、標的細胞の核内輸送および標的細胞のDNAに統合されたゲノムの総量が、大きく増加した。本明細書において記載されている方法および組成物に用いられるLVは、ウッドチャック転写後調節エレメント(WPRE)を含み得る。WPREは、転写物の核輸出を促進することにより、および/または新生転写物(nascent transcript)のポリアデニル化効率を高めることにより、転写レベルで作用し、それゆえに細胞におけるmRNAの総量を増加させる。LVに対するWPREの付加は、in vitroおよびin vivoの両方において、いくつかの異なるプロモーターからの導入遺伝子の発現レベルにおける実質的な改善をもたらす。本明細書において記載されている方法および組成物において用いられるLVは、cPPT配列およびWPRE配列の両方を含み得る。ベクターはまた、単一プロモーターからの複数のポリペプチドの発現を可能にするIRES配列を含んでもよい。
【0085】
IRES配列に加えて、複数のポリペプチドの発現を可能にする他のエレメントも有用である。本明細書において記載されている方法および組成物において用いられるベクターは、2つ以上のポリペプチドの発現を可能にする複数のプロモーターを含んでもよい。本明細書において記載されている方法および組成物において用いられるベクターは、2つ以上のポリペプチドの発現を可能にするタンパク質切断部位を含んでもよい。2つ以上のポリペプチドの発現を可能にするタンパク質切断部位の例は、Klump et al., Gene Ther. 8:811 (2001), Osborn et al., Molecular Therapy 12:569 (2005), Szymczak and Vignali, Expert Opin Biol Ther. 5:627(2005)、およびSzymczak et al., Nat Biotechnol. 22:589(2004)に記載されており、これらの開示は、2つ以上のポリペプチドの発現を可能にするタンパク質切断部位に関し、参照により本明細書に組み込まれる。将来的に同定される複数のポリペプチドの発現を可能にする他のエレメントが有用であり、本明細書において記載されている組成物および方法と共に用いるために適したベクターにおいて利用され得ることは、当業者には当然に明らかであろう。
本明細書に記載されている方法および組成物において用いられるベクターは、臨床グレードのベクターであってもよい。
【0086】
IC.アデノ随伴ウイルスベクター
本明細書において記載されている組成物および方法の核酸は、細胞(例えば、軟骨細胞、軟骨前駆細胞、および滑膜細胞)への導入を容易にするために、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターおよび/またはビリオンに組み込まれてもよい。AAVベクターは、中枢神経系で用いられることができ、適切なプロモーターおよび血清型は、Pignataro et al., J Neural Transm., 125:575(2018)において議論されており、その開示は、CNS遺伝子療法において有用であるプロモーターおよびAAV血清型に関し、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書において記載されている組成物および方法において用いられるAAVプロモーターは、ホスホグリセリン酸キナーゼプロモーターまたはサイトメガロウイルスプロモーターの1つ以上を含んでもよい。本明細書において記載されている組成物および方法において有用であるrAAVベクターは、組み換え核酸構築物(例えば、軟骨細胞、軟骨前駆細胞、および滑膜細胞において発現が可能である核酸)であって、(1)発現されることになる異種配列および(2)異種遺伝子の統合および発現を容易にするウイルス配列を含むものである。ウイルス配列は、ビリオンへのDNAの複製およびパッケージング(例えば、機能的逆末端反復配列(ITR))にシスで(in cis)必要とされるAAVのウイルス配列を含んでもよい。かかるrAAVベクターはまた、マーカーまたはレポーター遺伝子を含有し得る。有用なrAAVベクターは、全部または一部が欠失しているが隣接する機能的ITR配列は保持している、AAV WT遺伝子を1つ以上有する。AAV ITRは、特定の用途に適した任意の血清型であり得る。rAAVベクターを用いるための方法は、例えば、Tai et al., J. Biomed. Sci. 7:279 (2000)、およびMonahan and Samulski, Gene Delivery 7:24 (2000)に記載されており、その各々の開示は、遺伝子送達用のAAVベクターに関し、参照により本明細書に組み込まれる。
【0087】
ICI.アデノ随伴ウイルスベクターカプシドタンパク質
本明細書において記載されている核酸およびベクターは、核酸またはベクターの細胞への導入を容易にするために、rAAVビリオンに組み込まれることができる。AAVのカプシドタンパク質は、ビリオンの外側の非核酸部分を構成しており、AAV cap遺伝子によってコードされている。cap遺伝子は、ビリオンの組み立て(virion assembly)に必要とされる3種のウイルス被覆タンパク質である、VP1、VP2、およびVP3をコードしている。rAAVビリオンの構築は、例えば、米国特許第5,173,414号;米国特許第5,139,941号;米国特許第5,863,541号;米国特許第5,869,305号;米国特許第6,057,152号;および米国特許第6,376,237号;ならびにRabinowitz et al., J. Virol. 76:791(2002)およびBowles et al., J.Virol. 77:423 (2003)に記載されており、その各々の開示は、遺伝子送達のためのAAVベクターに関し、参照により本明細書に組み込まれる。
【0088】
本明細書において記載されている組成物および方法と併せて有用なrAAVビリオンは、AAV1、2、3、4、5、6、7、8、9、10およびrh74を含む、様々なAAV血清型に由来するものを含む。異なる血清型のAAVベクターおよびAAVタンパク質の構築および使用は、例えば、Chao et al., Mol. Ther. 2:619(2000);Davidson et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:3428(2000);Xiao et al., J. Virol. 72:2224(1998);Halbert et al., J. Virol. 74:1524(2000);Halbert et al., J. Virol. 75:6615(2001);およびAuricchio et al., Hum. Molec. Genet. 10:3075 (2001)に記載されており、その各々の開示は、遺伝子送達のためのAAVベクターに関し、参照により本明細書に組み込まれる。
いくつかの態様において、ウイルスベクターは、AAV2である。
いくつかの態様において、ウイルスベクターは、AAV5である。
【0089】
また、本明細書において記載されている組成物および方法と併せて有用なのは、偽型(pseudotyped)rAAVベクターでもある。偽型ベクターには、所定の血清型(例えば、特に、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、およびAAV10)以外の血清型に由来するカプシド遺伝子を用いて偽型化された所定の血清型のAAVベクターが含まれる。偽型rAAVビリオンの構築および使用を包含する技術は、当該技術分野において知られており、例えば、Duan et al., J.Virol. 75:7662(2001);Halbert et al., J.Virol. 74:1524 (2000);Zolotukhin et al., Methods, 28:158 (2002);およびAuricchio et al., Hum. Molec. Genet. 10:3075 (2001)に記載されている。
【0090】
ビリオンカプシド内に変異を有するAAVビリオンは、変異していないカプシドビリオンよりも効果的に特定の細胞種に感染させるために用いられ得る。例えば、適したAAV変異体は、特定の細胞種へのAAV標的化を容易にするためのリガンド挿入変異を有していてもよい。挿入変異体、アラニンスクリーニング変異体、およびエピトープタグ変異体を含むAAVカプシド変異体の構築および特徴付けは、Wu et al., J. Virol. 74:8635 (2000)に記載されている。本明細書において記載されている方法において用いられ得る他のrAAVビリオンは、ウイルスの分子育種(molecular breeding)によって、およびエクソンシャッフリングによって生成されるそのカプシドハイブリッド(capsid hybrid)を含む。例えば、Soong et al., Nat. Genet., 25:436(2000)およびKolman and Stemmer, Nat. Biotechnol. 19:423 (2001)参照。
【0091】
発現ベクターへの組み立てのための望ましいAAV断片には、vp1、vp2、vp3、および超可変領域を含むcapタンパク質、rep78、rep68、rep52、およびrep40を含むrepタンパク質、ならびにこれらのタンパク質をコードする配列が含まれる。これらの断片は、様々なベクターシステムおよび宿主細胞で容易に利用され得る。かかる断片は、単独で、他のAAV血清型配列または断片と組み合わせて、あるいは、他のAAVまたは非AAVウイルス配列からのエレメントと組み合わせて、用いられてもよい。本明細書において用いられる通り、人工AAV血清型は、限定されないが、天然に存在しないカプシドタンパク質を有するAAVを含む。かかる人工カプシドは、選択されたAAV配列(例えば、vp1カプシドタンパクの断片)を、選択された異なるAAV血清型、同じAAV血清型の非近接部分、非AAVウイルス源、または非ウイルス源から得られる異種配列と組み合わせて用い、任意の適した技術によって生成することができる。人工AAV血清型は、限定されないが、偽型AAV、キメラAAVカプシド、組換えAAVカプシド、または「ヒト化」AAVカプシドであってもよい。あるAAVのカプシドが、異なるカプシドタンパク質を有するAAVからのITRと共に利用される偽型ベクターは、本発明において有用である。
いくつかの態様において、ウイルスカプシドタンパク質は、ライゲーションされた(ligated)誘導体(例えば、合成、生物学的、または半合成誘導体)を含む。
【0092】
II.標的細胞への外因性核酸送達のための方法
コドン最適化DNAまたはRNAを含むDNAまたはRNAなどのポリヌクレオチドを哺乳動物細胞(例えば、軟骨細胞、軟骨前駆細胞、および滑膜細胞)に導入するために用いられることができる技術は、当該技術分野では周知である。例えば、エレクトロポレーションは、目的細胞への静電電位の印加によって哺乳動物細胞(例えば、ヒト標的細胞)を透過化するために用いられ得る。このような様式で外部電界を施されたヒト細胞などの哺乳動物細胞は、その後、外因性核酸(例えば、軟骨細胞、軟骨前駆細胞、および滑膜細胞において発現が可能である核酸)を取り込みやすくなる。哺乳動物細胞のエレクトロポレーションは、例えば、Chu et al., Nucleic Acids Research 15:1311(1987)において詳細に記載されており、その開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。同様の技術であるNUCLEOFECTION(商標)は、真核細胞の核への外因性ポリヌクレオチドの取り込みを刺激するために、印加電界を利用する。NUCLEOFECTION(商標)およびこの技術を行うために有用なプロトコルは、例えば、Distler et al., Experimental Dermatology 14:315 (2005)、および米国特許出願公開第2010/0317114号明細書に詳細に記載されており、その各々の開示は、参照によりここに組み込まれる。
【0093】
標的細胞のトランスフェクションに有用な追加的技術は、スクイーズポレーション方法論である。この技術は、適用されたストレスに応答して形成する膜孔を通して外因性DNAの取り込みを刺激するために、細胞の急速な機械的変形を誘導する。この技術は、ヒトの標的細胞などの細胞への核酸の送達にベクターを必要としない点で有利である。スクイーズポレーションは、例えば、Sharei et al., Journal of Visualized Experiments 81:e50980 (2013)において詳細に記載されており、その開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0094】
リポフェクションは、標的細胞のトランスフェクションに有用な別の技術を代表するものである。この方法は、第4級またはプロトン化アミンなどのカチオン性官能基をリポソーム外側に向けてしばしば提示するリポソームへの、核酸の積載(loading)を包含する。これにより、細胞膜のアニオン性の性質に起因してリポソームと細胞との間の静電的相互作用が促進され、このことは最終的に、例えば、リポソームと細胞膜の直接的な融合により、または複合体のエンドサイトーシスにより、外因性核酸の取り込みをもたらす。リポフェクションは、例えば、米国特許第7,442,386号において詳細に記載されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。外来核酸の取り込みを誘発するために細胞膜とのイオン的相互作用を活用する同様の技術は、カチオン性ポリマー-核酸複合体を細胞に接触させる。細胞膜との相互作用に好ましい正電荷を付与するためにポリヌクレオチドと会合する例示的なカチオン性分子は、活性化デンドリマー(例えば、Dennig, Topics in Current Chemistry 228:227 (2003)に記載されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる)ポリエチレンイミン、およびDEAE-デキストランであり、そのトランスフェクション剤としての使用は、例えば、Gulick et al., Current Protocols in Molecular Biology 40:1:9.2:9.2.1 (1997)において詳細に記載されており、その開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0095】
標的細胞による外因性核酸の取り込みを誘導するための別の有用なツールは、光学トランスフェクションとも呼ばれる、レーザフェクション(laserfection)であり、細胞を穏やかに透過化させ、ポリヌクレオチドが細胞膜を通り抜けることを可能にするために、特定の波長の電磁放射に細胞を暴露することを包含する技術である。この技術の生物活性はエレクトロポレーションと同様であり、場合によってはエレクトロポレーションよりも優れていることが見出されている。
【0096】
インペールフェクションは、標的細胞に遺伝物質を送達するために用いられ得る別の技術である。カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、およびナノワイヤーなどのナノ原料の使用に頼るものである。針状のナノ構造体は、基質表面に対して垂直に合成される。細胞内送達を目的とする遺伝子を含有するDNAは、ナノ構造体の表面に付着される。次いで、この針が配列されたチップを、細胞または組織に対して押し当てる。ナノ構造体によって突き刺された細胞は、送達された遺伝子を発現することができる。この技術の例は、Shalek et al., PNAS 107:25 1870 (2010)に記載されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0097】
MAGNETOFECTION(商標)はまた、核酸を標的細胞に送達するために用いられ得る。MAGNETOFECTION(商標)の原理は、核酸をカチオン性磁性ナノ粒子と会合させることである。磁性ナノ粒子は、完全に生分解性である酸化鉄でできており、用途に応じて特定のカチオン性専用分子(proprietary molecule)で被覆されている。その遺伝子ベクター(DNA、siRNA、ウイルスベクター等)との会合は、塩により誘導されるコロイド凝集および静電相互作用によって達成される。次いで、磁性粒子は、磁石により生成された外部磁場の影響によって、標的細胞に集結される。この技術は、Scherr et al., Gene Therapy 9:102 (2002)において詳細に記載されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。この方法論が核酸の取り込みを指図するために、印加された磁場を利用するので、磁性ビーズは、穏やかで効率的な方法で標的細胞をトランスフェクションするために用いられ得る別のツールである。この技術は、例えば、米国特許出願公開第2010/0227406号明細書において詳細に記載されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0098】
標的細胞による外因性核酸の取り込みを誘導するための別の有用なツールは、超音波照射であり、細胞形質膜の透過性を修飾するための、音(典型的には超音波周波数)の使用を包含する技術であり、細胞を透過させてポリヌクレオチドが細胞膜を通り抜けることを可能にする。この技術は、例えば、Rhodes et al., Methods in Cell Biology 82:309 (2007)において詳細に記載されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0099】
マイクロベシクル(microvehicle)は、本明細書において記載されている方法に従って、標的細胞のゲノムを修飾するために用いられることができる、別の可能性のあるビヒクルを代表するものである。例えば、糖タンパク質VSV-Gと、例えばヌクレアーゼなどのゲノム修飾タンパク質との共過剰発現(co-overexpression)によって誘導されるマイクロベシクルは、タンパク質を細胞内に効率的に送達するために用いられることができ、遺伝子または制御配列などの目的ポリヌクレオチドの共有結合による取り込みのために細胞のゲノムを調製するために、続いて内因性ポリヌクレオチド配列の部位特異的切断を触媒する。真核細胞の遺伝子修飾のための、ゲシクル(Gesicle)とも呼ばれるかかるベシクルの使用は、例えば、Quinn et al., Genetic Modification of Target Cells by Direct Delivery of Active Protein [abstract]: Methylation changes in early embryonic genes in cancer [abstract]: Proceedings of the 18th Annual Meeting of the American Society of Gene and Cell Therapy; 2015 May 13, Abstract No. 122において詳細に記載されている。
【0100】
エクソソーム、細胞外ベシクル、ミニサークルDNA、ナノプラスミド(nanoplasmid)(商標)、ミニストリングDNA、ドギーボーンDNA、および閉末端DNAは、本明細書において記載されている方法に従って、標的細胞のゲノムを修飾するために用いられ得る他の可能性のあるベシクルを代表するものである。
いくつかの態様において、発現ベクターは、修飾された核標的配列を含む核酸配列を含む。
いくつかの態様において、発現ベクターは、(例えば、効率的発現のために)環状化された核酸配列を含む。
【0101】
IIA.非ウイルス粒子
いくつかの態様において、本発明は、非ウイルス粒子を含む発現ベクターを特徴とする。いくつかの態様において、非ウイルス粒子は、脂質ナノ粒子、脂質エンベロープ、リン脂質二重層、リポソーム、ニオソーム、フラーレン、タンパク質系ナノ粒子、ナノ結晶、デンドリマー、有機/無機コロイド、ペグ化リポソーム、高分子ミセル、逆ミセル、混合ミセル、感受性ミセル、多成分ミセル、あるいは多分子または単分子樹状ミセルを含む群から選択されるいずれか1つ以上である。
いくつかの態様において、本発明は、本発明は、細胞種特異的ターゲティング、または細胞もしくは組織指向性の最適化のための、1つ以上の化学的部分にライゲーションされている非ウイルス粒子を含む発現ベクターを特徴とする。
【0102】
IIB.ウイルスカプシドタンパク質
いくつかの態様において、本発明は、核酸またはベクターの細胞への導入を容易にするために、ウイルスカプシドタンパク質を含む発現ベクターを特徴とする。いくつかの態様においては、ウイルスカプシドタンパク質は、天然に存在するカプシドまたは操作されたカプシドタンパク質(例えば、修飾配列を含有するカプシド)である。
【0103】
ウイルスベクターのカプシドタンパク質は、ビリオンの外側の非核酸部分を構成しており、核酸によってコードされている。一つの態様において、ウイルスカプシドタンパク質は、下記リスト:天然および/または合成の血清型を含むAAVカプシドタンパク質、1つ以上の血清型のレンチウイルスカプシドタンパク質、1つ以上の血清型のレトロウイルスカプシドタンパク質、1つ以上の血清型のヘルペスウイルス科カプシドタンパク質、1つ以上の血清型を含むアデノウイルス科カプシドタンパク質、1つ以上の血清型を含むパルボウイルス科カプシドタンパク質、1つ以上の血清型を含むラブドウイルス科カプシドタンパク質、1つ以上の血清型を含むレオウイルス科カプシドタンパク質、1つ以上の血清型を含むオルトミクソウイルス科カプシドタンパク質、1つ以上の血清型を含むブニヤウイルス科カプシドタンパク質、1つ以上の血清型を含むフラビウイルス科カプシドタンパク質、1つ以上の血清型を含むレトロウイルス科カプシドタンパク質、1つ以上の血清型を含むパラモキシウイルス科カプシドタンパク質、1つ以上の血清型を含むポティウイルス科カプシドタンパク質、1つ以上の血清型を含むコロナウイルス科カプシドタンパク質、1つ以上の血清型を含むカリシウイルス科カプシドタンパク質、1つ以上の血清型を含むパピローマウイルス科カプシドタンパク質、1つ以上の血清型を含むポックスウイルス科カプシドタンパク質、1つ以上の血清型を含むポリマウイルス科カプシドタンパク質、または1つ以上の血清型を含む任意の他の既知のウイルスもしくはウイロイドカプシドタンパク質、の1つ以上から構造的に構成されてもよい。
【0104】
いくつかの態様において、天然に存在するウイルスカプシドタンパク質は、(例えば、細胞種特異的標的化のための、天然に存在するウイルスカプシドタンパク質の表面において非ウイルスペプチドを発現させるための結合によって、または、指向性を狭めるための、ウイルスカプシドタンパク質、真核生物タンパク質もしくはタンパク質断片との間の融合タンパク質の発現のための結合によって)修飾されている。
いくつかの態様において、操作されたウイルスカプシドタンパク質は、(例えば、細胞種特異性または免疫原性の調節のために)リガンドに結合されている。
【0105】
III.治療用核酸の発現のための例示的な発現ベクター
いくつかの態様において、発現ベクターは、ヒトFGF18(hFGF18)ポリペプチドに動作可能に連結されたサイトメガロウイルス(CMV)エンハンサー(CMVenh)、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント変異体6(WPREmut6;発現レベルを実質的に増加させるがプロモーター活性を有さないことが知られているDNAエレメント)、ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナル(bGHpA)、HSV-TK自殺遺伝子、変異SV40初期ポリアデニル化シグナル(SV40pA)、および隣接するAAV2逆末端反復配列(ITR)をコードする核酸配列を含み得る(図1)。あるいは、例えば、ウイルスベクターは、hFGF18ポリペプチドと作動可能に連結されたCMVenh、WPREmut6、bGHpA、rapaCas9自殺遺伝子、SV40pA、および隣接するAAV2ITRの核酸配列を含み得る。
いくつかの態様において、発現ベクターは、(例えば、ITRを除去し、発現ベクターを、統合の有無にかかわらず、効率的な発現のために核への最適な標的化がなされ得る、ミニサークルまたは他の任意の構造に配置するために)修飾される。
【0106】
IV.治療用核酸の送達のための送達デバイス
本発明は、限定されることなく、遺伝子銃、充填済シリンジ、自動注射器、エアゾールスプレー、スプレーキャニスター、またはパッチインジェクターなどの薬物送達デバイスを介して送達されてもよく、あるいは、その後の適した二次的手段を介した投与のためのアンプル、カートリッジ、カプセル、バイアル、製袋充填(form-fill-seal)または成形同時充填(blow-fill-seal)容器に貯蔵されてもよい。
送達は、標的組織、周辺、または遠位組織もしくは器官へ行われてもよい。このように、構築物は、発現されるタンパク質または酵素の標的である細胞で、オートクリン物質において発現されてもよい。あるいは、構築物は、発現されるタンパク質の最終標的である細胞および組織の周辺、周囲、近傍、または混在する細胞により発現されてもよい。最終的に、構築物は、標的組織または器官の外部の細胞によって発現されてもよく、1つ以上の標的組織、器官、または細胞に対してエンドクリン物質において作用してもよい。具体的には、本発明の範囲を限定することなく、構築物は滑膜関節に送達されてもよく、FGF-18の発現および隣接する軟骨細胞へのFGF-18の送達のために、軟骨細胞を標的としてもよく、またはFGF-18の発現および近位軟骨細胞へのFGF-18の送達のために、関節包を満たしている細胞を標的としてもよい。
【0107】
医薬組成物の製剤化および投与
本明細書において記載されている発現ベクター(例えば、核酸)は、in vivoにおける投与に適した生物学的に適合する形態で、軟骨障害を示すまたは発症するリスクのあるヒト患者などの患者への投与のための医薬組成物に製剤化することが可能である。例えば、自殺遺伝子およびFGF-18ポリペプチドまたはその機能的断片をコードする核酸含むAAV2またはAAV5などの、本明細書において記載されている発現ベクターを含有する医薬組成物は、典型的には、薬学的に許容し得る希釈剤または担体を含む。医薬組成物は、例えば、無菌生理食塩水および核酸を含んでも(例えば、からなっても)よい。無菌生理食塩水は、典型的には、医薬グレードの生理食塩水である。医薬組成物は、例えば、滅菌水および核酸を含んでも(例えば、からなっても)よい。滅菌水は、典型的には、医薬グレードの水である。医薬組成物は、例えば、緩衝液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-2,2’,2’’-ニトリロトリエタノール(BIS-TRIS)、ジグリシン(Gly-Gly)、生理食塩水、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(AMP)、またはN-(2-ヒドロキシ-1,1-ビス(ヒドロキシメチル)エチル)グリシン(トリシン))と、核酸とを含んでも(例えば、からなっても)よい。緩衝液は、典型的には、医薬グレードの緩衝液である。
【0108】
ある態様においては、医薬組成物は、1つ以上の発現ベクターと1種以上の賦形剤とを含む。ある態様において、賦形剤は、水、塩溶液、アルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、乳糖、アミラーゼ、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、粘性パラフィン、ヒドロキシメチルセルロースおよびポリビニルピロリドンから選択される。
ある態様においては、発現ベクターは、医薬組成物または製剤の調製のために、薬学的に許容し得る活性物質および/または不活性物質と混和され得る。医薬組成物の製剤化のための組成物および方法は、投与経路、疾患の程度、または投与されるべき用量を含むがこれらに限定されない、多くの基準に依存する。
【0109】
ある態様において、発現ベクターを含む薬学的組成物は、阻害剤の任意の薬学的に許容し得る塩、阻害剤のエステル、またはかかるエステルの塩を包含する。ある態様において、発現ベクターを含む医薬組成物は、対象(例えば、ヒト)への投与に際し、生物学的に活性な代謝物またはその残基を(直接的または間接的に)提供することが可能である。したがって、例えば、本開示はまた、阻害剤の薬学的に許容し得る塩、プロドラッグ、かかるプロドラッグの薬学的に許容し得る塩、および他の生物学的等価物に係るものである。適した薬学的に許容し得る塩には、ナトリウム塩およびカリウム塩が含まれるが、これらに限定されない。ある態様において、プロドラッグは、発現ベクターに付着された1つ以上の結合基を含み、結合基は、体内の内因性ヌクレアーゼにより切断される。
【0110】
脂質部位は、様々な方法における核酸療法に用いられてきた。かかるある方法では、核酸は、カチオン性脂質と中性脂質との混合物で作られている予め形成されたリポソームまたはリポプレックス(lipoplex)に導入される。ある方法においては、モノまたはポリカチオン性脂質とのDNA複合体が、中性脂質の存在なしに形成される。ある態様においては、脂質部分は、特定の細胞または組織への医薬製剤の分布を増加させるために選択される。ある態様において、脂質部分は、脂肪組織への医薬製剤の分布を増加させるために選択される。ある態様において、脂質部分は、筋肉組織への医薬製剤の分布を増加させるために選択される。
【0111】
ある態様において、医薬組成物は送達システムを含む。送達システムの例には、リポソームおよびエマルジョンが含まれるがこれらに限定されない。ある送達システムは、疎水性化合物を含むものを含む、ある医薬組成物を調製するための有用である。ある態様においては、ジメチルスルホキシドなどの、ある有機溶媒が用いられる。
ある態様において、医薬組成物は、本発明の1つ以上の医薬製剤を特定の組織又は細胞種に送達するために設計された1つ以上の組織特異的送達分子を含む。例えば、ある態様において、医薬組成物は、組織特異的抗体で被覆されたリポソームを含む。
【0112】
ある態様において、医薬組成物は、共溶媒系(co-solvent system)を含む。かかる共溶媒系のあるものには、例えば、ベンジルアルコール、非極性界面活性剤、水混和性有機ポリマー、および水性相が含まれる。ある態様において、かかる共溶媒系は、疎水性化合物に用いられる。かかる共溶媒系の非限定的な例は、3%w/vベンジルアルコール、8%w/v非極性界面活性剤ポリソルベート80(商標)((x)-ソルビタンモノ-9-オクタデセン酸ポリ(オキシ-1,2-エタンジイル))および65%w/vポリエチレングリコール300を含む無水エタノール溶液である、VPD共溶媒系である。かかる共溶媒系の比率は、その溶解度および毒性の特性を著しく変えることなく大きく異なってもよい。さらに、共溶媒成分の同一性は異なってもよい:例えば、ポリソルベート80(商標)((x)-ソルビタンモノ-9-オクタデセン酸ポリ(オキシ-1,2-エタンジイル))の代わりに、他の界面活性剤が用いられ得る;ポリエチレングリコールの分画サイズは異なってもよい;他の生体適合性ポリマーは、ポリエチレングリコールと置き換わってもよい、例えば、ポリビニルピロリドン;ならびに、他の糖または多糖類はデキストロースの代わりになり得る。
【0113】
ある態様において、医薬組成物は、注射による投与(例えば、静脈内、関節内、軟骨下、滑膜内、または軟骨内)のために調製される。かかるある態様においては、医薬組成物は担体を含み、水、または、ハンクス液、リンゲル液、もしくは生理食塩緩衝液などの生理学的に適合する緩衝液などの、水溶液中に製剤化される。ある態様においては、他の成分が含まれる(例えば、溶解性を補助する成分または防腐剤として機能する成分)。ある態様において、注射用懸濁液は、適切な液体担体、懸濁化剤などを用いて調製される。ある注射用医薬組成物は、単位投与形態で、例えば、アンプル中または複数用量容器中に、提供される。ある注射用医薬組成物は、油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液またはエマルジョンであり、懸濁剤、安定化剤および/または分散剤などの処方剤を含有し得る。注射用医薬組成物における使用に適したある溶媒には、脂溶性溶媒、および、ゴマ油などの脂肪油、オレイン酸エチルまたはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、ならびに、リポソームが含まれるが、これらに限定されない。
【0114】
本明細書において記載されている通りの、軟骨障害(例えば、変形性関節症)の処置のために対象に投与される医薬組成物の用量は、例えば、ヒアルロン酸軟骨の形態およびまたは発現プロファイル、対象、医薬の製剤化方法、投与方法(例えば、投与時間)、対象の年齢、体重、性別、処置されている軟骨障害の重篤度、および、対象が併用療法で処置されたことがあるか否か、に依存し得る。投与される医薬組成物の用量は、例えば、0.1mg~1.0mg(例えば、0.2~0.9mg、0.3~0.8mg、0.4~0.6mg、または約0.5mg)であってもよい。医薬組成物は、任意の適した投与量で投与され得る。投与量の非限定的な例は、医薬組成物約0.3mg~医薬組成物約0.7mg(例えば、医薬組成物約0.31mg~医薬組成物約0.69mg、医薬組成物約0.33mg~医薬組成物約0.67mg、医薬組成物約0.38mg~医薬組成物約0.62mg、医薬組成物約0.48kg~医薬組成物約0.58kg、または医薬組成物約0.53mg)である。追加的な例示の投与量は、医薬組成物約0.1mg~医薬組成物約3.0mg(例えば、医薬組成物約0.2mg~医薬組成物約2.9mg、医薬組成物約0.4mg~医薬組成物約2.7mg、医薬組成物約0.9mg~医薬組成物約2.2mg、医薬組成物約1.4mg~医薬組成物約1.7mg、または医薬組成物約1.55mg)である。
【0115】
医薬組成物は、送達されるウイルス粒子の数が、約1.0×10vg/mL~約4.5×1011vg/mL(例えば、約1.1×10vg/mL~約4.4×1011vg/mL、約1.5×10vg/mL~約4.0×1011vg/mL、約2.5×10vg/mL~約3.0×1011vg/mL、または約9.1×1010vg/mL)となるように任意の適した投与量で投与され得る。
本明細書において記載されている組成物は、軟骨障害(例えば、変形性関節症)における1つ以上の病理学的特徴を改善するのに十分な量で投与され得る。本明細書において記載されている組成物の投与は、軟骨細胞の形態および/または発現プロファイルを、それぞれ、硝子軟骨につながっている細胞外マトリックスの形態および/または発現プロファイルにより厳密に類似するように改善することができ;滑膜細胞の形態および/または発現プロファイルを、それぞれ、硝子軟骨につながっている細胞外マトリックスの形態および/または発現プロファイルにより厳密に類似するように改善することができ;軟骨細胞増殖を増加させ、軟骨前駆細胞増殖を増加させ、軟骨の厚さを増加させ、または大腿脛骨関節軟骨の全体的な厚さを増加させることができる。FGF-18のレベルは、標準的な技術、例えば、酵素結合免疫測定法、ウェスタンブロット解析、免疫組織化学解析、または定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応を用いて、組織試料における処置前後の対象のFGF-18遺伝子および/またはタンパク質のレベルを比較するように評価されてもよい。評価の結果に応じて、対象は追加的処置を受ける場合がある。
【0116】
キット
本明細書において記載されている組成物は、軟骨障害の処置における使用のためのキットにおいて提供され得る。キットは、本明細書において記載されている通りの1つ以上の発現ベクターまたは医薬組成物を含み得る。キットは、医師などのキットの使用者に、本明細書において記載されている方法のいずれか1つを行うように指示する添付文書を含むことができる。キットは、任意に、組成物を投与するためのシリンジまたは他のデバイスを含み得る。キットは、任意に、カートン、不正開封防止シール、針、または充填済シリンジを含み得る。いくつかの態様において、キットは、1種以上の追加的治療剤を含んでもよい。
【0117】
併用療法
本明細書において記載されている発現ベクターは、軟骨障害の処置のために、1種以上の追加的治療剤と組み合わせて投与されることができる。1種以上の追加的治療剤には、非ステロイド性抗炎症剤(例えば、ピロキシカム、イブプロフェン、セレコキシブ、アスピリン、エトドラク、メロキシカム、ジクロフェナク、インドメタシン、およびナプロキセン)、鎮痛剤(例えば、カプサイシンおよびアセトアミノフェン)、栄養補助剤(例えば、s-アデノシルメチオニンおよびヒアルロン酸)、または麻酔剤(例えば、トラマドール)、あるいはそれらの組合せが含まれ得る。
【0118】

下記の例は、本開示を限定するのではなく説明することを意図しており、当業者に、本明細書において記載されている組成物および方法がどのように使用、製造、および評価され得るかについての記載を提供するために提示されている。例は、本開示を純粋に例示することを意図しており、本発明者らが発明とみなすものの範囲を限定することを意図しない。
【0119】
例1:ウイルスベクターを用いたヒト対象における軟骨障害の処置
本明細書において開示されている方法に従って、ヒト対象などの対象に、医薬組成物(例えば、自殺遺伝子およびFGF-18ポリペプチドまたはその機能的断片をコードする核酸と、薬学的に許容し得る担体、希釈剤または賦形剤とを含む、AAV2またはAAV5ウイルスベクター;図1および2)を投与し、対象における軟骨障害を処置することができる。この目的のために、患者は、医薬組成物(例えば、自殺遺伝子およびFGF-18ポリペプチドまたはその機能的断片をコードする核酸と、薬学的に許容し得る担体、希釈剤または賦形剤とを含む、AAV2またはAAV5ウイルスベクター)が投与される。その医薬組成物は、対象に、静脈内、関節内、軟骨下、滑膜内、または軟骨内投与される。その医薬組成物は、滑膜関節へ、静脈内に、関節内に、軟骨下に、滑膜内に、または軟骨内に、および両側に(bilaterally)、投与されてもよい。医薬組成物は、任意の適した投与量で投与され得る。投与量の非限定的な例は、医薬組成物0.1mg、0.2mg、0.3mg、0.4mg、および0.5mgなどの、約0.1mg~0.5mgである。対象は、医薬組成物約0.5mg~約1.0mgの投与量を与えられることが可能であり、例えば、対象は、医薬組成物約1.0mgの投与量を与えられることが可能である。
【0120】
例2:レンチウイルスベクターを用いたヒト対象における軟骨障害の処置
本明細書において開示されている方法に従って、ヒト対象などの対象に、医薬組成物(例えば、自殺遺伝子およびFGF-18ポリペプチドまたはその機能的断片をコードする核酸と、薬学的に許容し得る担体、希釈剤または賦形剤とを含む、レンチウイルスベクター)を投与し、対象における軟骨障害を処置することができる。この目的のために、患者は、医薬組成物(例えば、自殺遺伝子およびFGF-18ポリペプチドまたはその機能的断片をコードする核酸と、薬学的に許容し得る担体、希釈剤または賦形剤とを含む、レンチウイルスベクター)が投与される。その医薬組成物は、対象に、静脈内、関節内、軟骨下、滑膜内、または軟骨内投与される。その医薬組成物は、滑膜関節へ、静脈内に、関節内に、軟骨下に、滑膜内に、または軟骨内に、および両側に、投与されてもよい。医薬組成物は、任意の適した投与量で投与され得る。投与量の非限定的な例は、医薬組成物0.1mg、0.2mg、0.3mg、0.4mg、および0.5mgなどの、約0.1mg~0.5mgである。対象は、医薬組成物約0.5mg~約1.0mgの投与量を与えられることが可能であり、例えば、対象は、医薬組成物約1.0mgの投与量を与えられることが可能である。
【0121】
例3:非ウイルス粒子を用いたヒト対象における軟骨障害の処置
本明細書において開示されている方法に従って、ヒト対象などの対象に、医薬組成物(例えば、自殺遺伝子およびFGF-18ポリペプチドまたはその機能的断片をコードする核酸と、薬学的に許容し得る担体、希釈剤または賦形剤とを含むDNAミニサークルおよび非ウイルス粒子(例えば、脂質ナノ粒子)を含む、発現ベクター)を投与し、対象における軟骨障害を処置することができる。この目的のために、患者は、医薬組成物(例えば、自殺遺伝子およびFGF-18ポリペプチドまたはその機能的断片をコードする核酸と、薬学的に許容し得る担体、希釈剤または賦形剤とを含むDNAミニサークルおよび非ウイルス粒子(例えば、脂質ナノ粒子)を含む、発現ベクター)が投与される。その医薬組成物は、対象に、静脈内、関節内、軟骨下、滑膜内、または軟骨内投与される。その医薬組成物は、滑膜関節へ、静脈内に、関節内に、軟骨下に、滑膜内に、または軟骨内に、および両側に、投与されてもよい。医薬組成物は、任意の適した投与量で投与され得る。投与量の非限定的な例は、医薬組成物0.001mg/kg、0.002mg/kg、0.003mg/kg、0.004mg/kg、0.005mg/kg、0.015mg/kg、0.055mg/kg、0.155mg/kg、0.500mg/kg、および1.0mg/kgなどの約0.001mg/kg~1.0mg/kgの投与量を与えられることが可能であり、例えば、対象は、医薬組成物約1mg/kgの投与量を与えられることが可能である。
【0122】
他の態様
本明細書において言及された全ての刊行物、特許および特許出願は、各独立の刊行物または特許出願が参照により組み込まれるように具体的かつ個別に示されている場合と同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
本発明は、その特定の態様に関連して記載されているが、さらなる修飾が可能であることが理解され、本願は、一般に、本発明の原理に従っており、および本発明に関連する技術分野において既知または慣用の範囲内にあってかつ本明細書において記載されている本質的特徴に適用され得る本発明のかかる逸脱を含む、本発明の任意の変形、使用、または適応を対象とし、クレームの範囲に引き継がれることが意図される。
他の態様は、クレームの範囲内である。
図1
図2
【配列表】
2023502520000001.app
【国際調査報告】