(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-25
(54)【発明の名称】血中の肝酵素レベルを測定するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/50 20060101AFI20230118BHJP
G01N 27/327 20060101ALI20230118BHJP
G01N 27/416 20060101ALI20230118BHJP
G01N 27/333 20060101ALI20230118BHJP
【FI】
G01N33/50 Z
G01N27/327
G01N27/416 336B
G01N27/333 331A
G01N27/416 336N
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021510731
(86)(22)【出願日】2019-09-17
(85)【翻訳文提出日】2021-02-26
(86)【国際出願番号】 US2019051383
(87)【国際公開番号】W WO2021054937
(87)【国際公開日】2021-03-25
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】501464761
【氏名又は名称】ノヴァ バイオメディカル コーポレイション
【住所又は居所原語表記】200 Prospect Street Waltham MA 02454(US)
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ペイ ジァンホン
(72)【発明者】
【氏名】ベダード ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ウシマンジァン イリヤシ
(72)【発明者】
【氏名】フロリンディ アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】ヤン チュン チャン
【テーマコード(参考)】
2G045
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045CA25
2G045DA20
2G045FB01
2G045FB05
2G045HA10
2G045JA07
(57)【要約】
血液試料中の1つ以上の肝酵素の濃度を定量するための使い捨て検査カートリッジは、複数のチャンバを有するカートリッジ本体と、カートリッジ本体に接続された取り外し可能なカートリッジカバーと、カートリッジ本体に接続された検査ストリップモジュールとを備える。チャンバのうちの少なくとも1つは、血液試料中の肝酵素ALT、AST、ALP、又はGGTのうちの1つによって触媒作用を及ぼされると反応し、反応溶液を形成する反応混合物を含む。検査ストリップモジュールは、反応溶液の一部を受容して反応溶液中の反応生成物である少なくとも1つの検体を電気化学的に測定するように構成された少なくとも1つの検体検査ストリップを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液試料中の1つ以上の肝酵素の濃度を定量するポイント・オブ・ケア分析器で使用する使い捨て検査カートリッジであって、
カートリッジ本体と、
取り外し可能なカートリッジカバーと、
検査ストリップモジュールと、を備え、
前記カートリッジ本体は、複数のチャンバを有し、前記複数のチャンバの各々は、前記カートリッジ本体の上部に開口を有し、前記複数のチャンバのうちの少なくとも1つが、血液試料と組み合わせると化学反応を起こして少なくとも1つの反応生成物を含む反応溶液を形成することができる反応混合物を含み、前記反応混合物が、前記血液試料中の肝酵素ALT、AST、ALP、又はGGTのうちの1つによって触媒作用を及ぼされることに特化した化学物質を含み、
前記取り外し可能なカートリッジカバーは、前記カートリッジ本体に接続されて前記複数のチャンバを覆っており、キャピラリ受容開口と、前記カートリッジカバーに取り外し可能に挿入可能なキャピラリ要素と、を有し、前記キャピラリ要素は、血液試料を取得するように構成され、
前記検査ストリップモジュールは、前記カートリッジ本体に直接接続されており、前記反応溶液の一部を受容するとともに、前記少なくとも1つの反応生成物である少なくとも1つの検体を測定するように構成された少なくとも1つの検体検査ストリップを含む、使い捨て検査カートリッジ。
【請求項2】
ALTの定量に特化した化学物質を含む前記反応混合物は、L-アラニンと、α-ケトグルタル酸と、を含む、請求項1に記載の使い捨て検査カートリッジ。
【請求項3】
ASTの定量に特化した化学物質を含む前記反応混合物は、L-アスパラギン酸と、α-ケトグルタル酸と、を含む、請求項1に記載の使い捨て検査カートリッジ。
【請求項4】
ASTの定量に特化した化学物質を含む前記反応混合物は、L-アスパラギン酸と、α-ケトグルタル酸と、オキサロ酢酸デカルボキシラーゼと、を含む、請求項1に記載の使い捨て検査カートリッジ。
【請求項5】
ALPの定量に特化した化学物質を含む前記反応混合物は、フェニルリン酸ナトリウム又はその誘導体を含む、請求項1に記載の使い捨て検査カートリッジ。
【請求項6】
GGTの定量に特化した化学物質を含む前記反応混合物は、L-グルタミン酸ガンマアニリド又はその誘導体と、グリシルグリシンと、を含む、請求項1に記載の使い捨て検査カートリッジ。
【請求項7】
前記複数のチャンバのうちの少なくとも1つが、肝酵素ALT又はASTのいずれかによって触媒作用を及ぼされることに特化した化学物質を含む場合に、前記検査ストリップモジュールに、ピルビン酸又はL-グルタミン酸を測定するように構成された検体検査ストリップが組み込まれる、請求項1に記載の使い捨て検査カートリッジ。
【請求項8】
前記複数のチャンバのうちの少なくとも1つが、肝酵素ALTによって触媒作用を及ぼされる化学物質を含む場合に、前記検査ストリップモジュールに、フェノールを測定するように構成された検体検査ストリップが組み込まれる、請求項1に記載の使い捨て検査カートリッジ。
【請求項9】
前記複数のチャンバのうちの少なくとも1つが、肝酵素GGTによって触媒作用を及ぼされる化学物質を含む場合に、前記検査ストリップモジュールに、アニリンを測定するように構成された検体検査ストリップが組み込まれる、請求項1に記載の使い捨て検査カートリッジ。
【請求項10】
前記検査ストリップモジュールに、ピルビン酸オキシダーゼ、グルタミン酸オキシダーゼ又はグルタミン酸デヒドロゲナーゼのうちの1つを含む作用電極上に配置された試薬マトリックスを有する検体検査ストリップが組み込まれる、請求項1に記載の使い捨て検査カートリッジ。
【請求項11】
前記検査ストリップモジュールに、作用電極上に配置された試薬マトリックスを有する検体検査ストリップが組み込まれ、前記試薬マトリックスは酵素又は媒介物を含まない、請求項1に記載の使い捨て検査カートリッジ。
【請求項12】
前記検体検査ストリップが、電気接点端と、試料端と、前記試料端から予め定められた距離を置いた試料受入ポートとを有する、請求項1に記載の使い捨て検査カートリッジ。
【請求項13】
前記試料端が、ベント開口部と、前記試料受入ポートと前記ベント開口部との間の試料チャネルとを含む、請求項12に記載の使い捨て検査カートリッジ。
【請求項14】
前記検査ストリップモジュールに、2つ以上の検体検査ストリップが組み込まれ、前記2つ以上の検体検査ストリップの少なくとも2つが、同じ検体を測定する、請求項1に記載の使い捨て検査カートリッジ。
【請求項15】
前記検査ストリップモジュールに、2つ以上の検体検査ストリップが組み込まれ、前記2つ以上の検体検査ストリップの各々が、異なる検体を測定する、請求項1に記載の使い捨て検査カートリッジ。
【請求項16】
血液試料中の1つ以上の肝酵素の濃度を定量する方法であって、
血液試料受容チャンバを提供することと、
前記血液試料中の肝酵素ALT、AST、ALP、又はGGTのうちの1つによって触媒作用を及ぼされる予め定められた化学物質を含む反応物チャンバを提供することと、
血液試料を取得して、前記血液試料の少なくとも一部を前記試料受容チャンバに配置することと、
前記血液試料を希釈して希釈された血液試料を形成することと、
予め定められた量の前記希釈された血液試料を前記反応物チャンバに配置することと、
前記予め定められた化学物質と前記希釈された血液試料との間の反応を予め定められた期間継続させて、少なくとも1つの反応生成物を含む反応溶液を形成することと、
前記反応溶液の一部を、前記反応溶液中の前記少なくとも1つの反応生成物の量を測定可能な検体検査ストリップに移すことと、
前記反応溶液中に存在する前記少なくとも1つの反応生成物の量を測定することと、
前記反応溶液中の前記少なくとも1つの反応生成物の量を、前記血液試料中の肝酵素ALT、AST、ALP、又はGGTのうちの1つの量に相関させること、とを含む方法。
【請求項17】
前記測定することが、前記反応溶液中のピルビン酸、グルタミン酸、フェノール、又はアニリンのうちの1つの量を測定することをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記相関させることが、前記反応溶液中のピルビン酸、グルタミン酸、フェノール、又はアニリンのうちの1つの量を、前記血液試料中のALT、AST、ALP、又はGGTの量にそれぞれ相関させることをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記測定することが、電気化学的測定手法を使って、前記少なくとも1つの反応生成物を測定することをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記測定することが、アンペロメトリーを使って、ALT、AST、ALP、又はGGTの定量のための前記少なくとも1つの反応生成物を測定することをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記測定することが、リニアスイープボルタンメトリーを使って、ALPの定量のための前記少なくとも1つの反応生成物を測定することをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
血液試料中の1つ以上の肝酵素の濃度を定量するポイント・オブ・ケア分析器で使用する使い捨て検査カートリッジキットであって、
カートリッジ本体と、
取り外し可能なカートリッジカバーと、
使い捨てピペットチップと、
検査ストリップモジュールと、を備え、
前記カートリッジ本体は、複数のチャンバを有し、前記複数のチャンバの各々は、前記カートリッジ本体の上部に開口を有し、前記複数のチャンバのうちの少なくとも1つが、血液試料と組み合わせると化学反応を起こして少なくとも1つの反応生成物を含む反応溶液を形成することができる反応混合物を含み、前記反応混合物が、前記血液試料中の肝酵素ALT、AST、ALP、又はGGTのうちの1つによって触媒作用を及ぼされることに特化した化学物質を含み、
前記取り外し可能なカートリッジカバーは、前記カートリッジ本体に接続されて前記複数のチャンバを覆っており、キャピラリ受容開口と、前記カートリッジカバーに取り外し可能に挿入可能なキャピラリ要素と、を有し、前記キャピラリ要素は、血液試料を取得するように構成され、
前記使い捨てピペットチップは、前記複数のチャンバのうちの1つに配置され、
前記検査ストリップモジュールは、前記カートリッジ本体に直接接続されており、前記反応溶液の一部を受容するとともに、前記少なくとも1つの反応生成物である少なくとも1つの検体を測定するように構成された少なくとも1つの検体検査ストリップを含む、使い捨て検査カートリッジキット。
【請求項23】
前記使い捨て検査カートリッジの使用方法及び前記キャピラリ要素の使用説明書をさらに含む、請求項22に記載のキット。
【請求項24】
ポイント・オブ・ケア分析器を使用して血液試料中の1つ以上の肝酵素の濃度を電気化学的に定量する方法であって、
ポイント・オブ・ケア分析器を提供することと、
前記ポイント・オブ・ケア分析器で使用する使い捨て検査カートリッジを取得することであって、前記使い捨て検査カートリッジが、
カートリッジ本体と、
取り外し可能なカートリッジカバーと、
使い捨てピペットチップと、
検査ストリップモジュールと、を備え、
前記カートリッジ本体は、複数のチャンバを有し、前記複数のチャンバの各々は、前記カートリッジ本体の上部に開口を有し、前記複数のチャンバのうちの少なくとも1つが、血液試料と組み合わせると化学反応を起こして少なくとも1つの反応生成物を含む反応溶液を形成することができる反応混合物を含み、前記反応混合物が、前記血液試料中の肝酵素ALT、AST、ALP、又はGGTのうちの1つによって触媒作用を及ぼされることに特化した化学物質を含み、
前記取り外し可能なカートリッジカバーは、前記カートリッジ本体に接続されて前記複数のチャンバを覆っており、キャピラリ受容開口と、前記カートリッジカバーに取り外し可能に挿入可能な取り外し可能なキャピラリ要素と、を有し、前記キャピラリ要素は、血液試料を取得するように構成され、
前記使い捨てピペットチップは、前記複数のチャンバのうちの1つに配置され、
前記検査ストリップモジュールは、前記カートリッジ本体に直接接続されており、前記反応溶液の一部を受容するとともに、前記少なくとも1つの反応生成物である少なくとも1つの検体を測定するように構成された少なくとも1つの検体検査ストリップを含む、前記ポイント・オブ・ケア分析器で使用する使い捨て検査カートリッジを取得することと、
前記キャピラリ要素を前記取り外し可能なカートリッジカバーから取り外し、前記キャピラリ要素内の血液試料を受容して、前記血液試料を含むキャピラリ要素を前記取り外し可能なカートリッジカバーに再配置することと、
前記使い捨て検査カートリッジを前記ポイント・オブ・ケア分析器に配置することと、
前記ポイント・オブ・ケア分析器で検査サイクルを開始することと、を含む、方法。
【請求項25】
前記開始することが、
前記血液試料を前記キャピラリ要素から前記キャピラリ要素の真下のチャンバの底に吸引することと、
前記カートリッジカバーを前記カートリッジ本体から取り外すことと、
前記ピペットチップを前記ポイント・オブ・ケア分析器内の自動ピペッタ装置に取り付けることと、
予め定められた量の希釈剤を複数のチャンバのうちの別のチャンバからピペットで移し、前記予め定められた量を前記血液試料を含むチャンバに配置して希釈された血液試料を形成することにより、前記血液試料を希釈することと、
予め定められた量の前記希釈された血液試料を取り出し、前記予め定められた量を、前記血液試料中の肝酵素ALT、AST、ALP、又はGGTのうちの1つによって触媒作用を及ぼされることに特化した化学物質の前記反応混合物を含む前記複数のチャンバのうちの別のチャンバにピペットで移して反応溶液を形成することにより、前記予め定められた量の希釈された血液試料を配置することと、
予め定められた反応時間後に、予め定められた量の前記反応溶液を取り出し、前記少なくとも1つの検体検査ストリップ上に配置して、前記少なくとも1つの検体を測定することと、
前記反応溶液中の前記少なくとも1つの検体の量を測定することと、
前記反応溶液中の前記少なくとも1つの検体の量を、前記血液試料中の肝酵素ALT、AST、ALP、又はGGTのうちの1つの量に相関させることと、をさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記測定することが、前記反応溶液中のピルビン酸、グルタミン酸、フェノール、又はアニリンのうちの1つの量を測定することを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記測定することが、アンペロメトリーを用いて、ALT、AST、ALP、又はGGTの定量のための前記少なくとも1つの反応生成物を測定することを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記測定することが、リニアスイープボルタンメトリーを用いて、ALPの定量のための前記少なくとも1つの反応生成物を測定することを含む、請求項26に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の背景]
1.発明の分野
本発明は、主に酵素活性を測定するための検出手法に関する。特に、本発明は、肝酵素活性を測定するための検出手法に関する。
【0002】
2.先行技術の説明
アミノトランスフェラーゼは、グリコーゲンを作るために肝臓が使用する酵素である。グリコーゲンは、ブドウ糖の貯蔵型である。すぐに使用されないブドウ糖は、グリコーゲンに変換されて、将来的な使用のために細胞に貯蔵される。大部分は肝臓に貯蔵され、残りは骨格筋、脳のグリア細胞、及び他の器官に貯蔵される。
【0003】
肝酵素は、通常、肝臓において高濃度で見られる物質である。いくつかのより重要な肝酵素には、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、γ-グルタミルトランスフェラーゼ(GGT)、アルカリホスファターゼ(ALP)が含まれる。血中に見られるこれらの肝酵素レベルのいずれかの上昇は、肝臓の問題の兆候である可能性がある。
【0004】
アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)及びアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)は、肝臓の問題の兆候を調べるのに重要な2つの酵素である。両方を使用する場合、ALTレベルとASTレベルの比較は、肝毒性、肝疾患、又は肝障害を特定するのに役立つ。
【0005】
ALT及びASTは、主に肝臓に見られる酵素であるが、赤血球、心臓細胞、筋肉組織、及び膵臓や腎臓などの他の臓器にも見られる。特に、ASTは、肝臓、脳、膵臓、心臓、腎臓、肺、及び骨格筋を含む様々な組織に見られる。これらの組織のいずれかが損傷した場合、ASTが血流に放出される。ASTレベルの上昇は、組織損傷を示すが、それは肝臓に特有のものではない。他方で、ALTは、主に肝臓に見られる。ALTの上昇は、肝障害の直接的な兆候である。
【0006】
ALPは、人の血液中の酵素であり、タンパク質を分解するのに役立つ。体は、様々なプロセスにALPを使用し、肝機能と骨の発達に特に重要な役割を果たす。ALP検査を使用することにより、この酵素がどのぐらい人の血液中で循環しているのかを測定できる。ALPレベルがわずかに不規則であっても、通常は心配する必要はない。ひどく異常なレベルであれば、重度の基礎疾患、通常は、肝臓、骨、又は胆嚢に関連する疾患を示すことがある。ALPは、骨と肝臓に最も豊富であるため、血中ALPレベルの上昇は、一般的に、肝臓又は骨の状態の兆候である。肝臓の閉塞又は肝臓の損傷は、ALPレベルを上昇させる。これは、骨細胞の活動が増加した場合にも起きる。
【0007】
ALPレベルの異常は、通常、以下の状態の一つを示す:胆石、胆嚢炎(すなわち、胆嚢の炎症)、肝臓がん、肝臓の異常及び非癌性増殖、肝硬変(すなわち、肝臓の瘢痕化)、肝炎(すなわち、多くは感染による肝臓の炎症)、胆汁癌、肝臓に有害な薬物の乱用、アルコールの過剰摂取、栄養失調(特に、ビタミンD、カルシウム、タンパク質、マグネシウム、及び亜鉛の欠乏)、及び骨の癌。
【0008】
GGTは、体中の多くの臓器で見られる酵素であり、肝臓に最も高濃度で見られる。通常、GGTは、血液中に低いレベルで存在する。GGTは、通常、肝臓から腸へ胆汁を運ぶ胆管のいずれかが、例えば腫瘍や石によって閉塞されたときに血中で上昇する最初の肝酵素である。このことが、GGTを胆管の問題を検出するための最も感度の高い肝酵素検査にしている。しかしながら、GGT検査は、肝臓がんやウイルス性肝炎などの多くの種類の肝疾患だけでなく、急性冠症候群などの他の非肝疾患でも上昇する可能性があるため、あまり特異的でなく、肝障害の様々な原因を区別するのには役立たない。GGTテストを単独で日常的に使用することは勧められない。しかしながら、他の検査と組み合わせて、ALPレベルが高い原因を特定するのに役立つことがある。肝疾患においてはGGTとALPの両方が増加するが、骨組織に影響する病気ではALPのみが増加する。したがって、GGTは、上昇したALPのフォローアップとして、高ALPの結果が肝臓又は骨の病気のいずれによるものかを判断するのに使用できる。GGT検査の結果が正常なGGTレベルである場合、骨の問題を示している可能性がある。他方で、高いGGTレベルは、肝臓又は胆管の問題を示す可能性がある。GGTレベルは、少量のアルコールの摂取で増加することがある。高いレベルは、一日2~3杯未満しか飲まない人や、たまにしか大量に飲酒しない人(短時間で大量に飲酒する人)よりも、慢性的な大量飲酒者に多く見られる。GGT検査は、誰かについての急性又は慢性のアルコール乱用を評価する際にも使用できる。
【0009】
現在のALT、AST、ALP、及びGGTの検査方法は、血液試料を必要とする。血液試料は、瀉血専門医又は看護師が、針と針の端に取り付けられたプラスチックチューブを使用して患者の肘の内側の静脈から、一定量の血液を採取することにより得られる。血液試料は、その後、臨床検査室に送られて分析される。
【0010】
正常ラボ値は、国際単位/リットル(IU/L)で測定され、個人のボディマス指数と個々のラボの参照値に基づいて変化する。通常、大人の正常基準範囲は、ASTで8~48IU/L、ALTで7~55IU/L、ALPで20~140IU/L、GGTで0~30IU/Lである。範囲の上限は、肝酵素がどの程度上昇しているかを確認するために使用される。ASTやALTレベルは、主に肝疾患の診断に大いに役立つ。AST/ALT比は、何が起こっており、その問題が急性か慢性かについての貴重な手掛かりを提供できる。AST/ALT比は、血中のASTとALTのレベルを比較する計算である。どちらの値がどの程度上昇しているかは、どの疾患が関与しているかについての強力な指標となる。
【0011】
例えば、AST/ALT比が1未満である場合、非アルコール性脂肪性肝疾患を示唆している。AST/ALT比が1である場合、急性ウイルス性肝炎又は薬物関連の肝毒性を示唆している。AST/ALT比が1より大きい場合、肝硬変を示唆している。AST/ALT比が2対1を超える場合は、アルコール性肝疾患を示唆している。比率だけでは不十分である。上昇の大きさが重要である。
【0012】
例えば、アルコール性脂肪性肝疾患では、一般的に、ASTは、正常上限値の8倍を超え、ALTは、正常上限値の5倍を超える。ASTとALTが両方とも各正常上限値の4倍を超える場合、非アルコール性脂肪性肝疾患を示している。急性ウイルス性肝炎においては、ASTとALTの両方が各々の正常上限値の25倍になる。慢性C型肝炎では、AST及びALTは、各正常上限値の2~10倍になる場合がある。AST及びALTが各正常上限値の50倍を超える場合は、虚血性肝障害を示している。
【0013】
AST及びALTを測定するのに利用できる検出手法はいくつかあり、「アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST/GOT)及びアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT/GPT)検出手法」(センサ、2006、6、pp.756-782)と題された雑誌記事に記載されている。これらには、比色分析、分光光度分析、化学発光、クロマトグラフィー、蛍光及びUV吸光度、放射化学的分析、及び電気化学的手法が含まれる。
【0014】
比色分析の限界は、検量線を作成し、酵素反応を停止する必要があることである。分光光度分析は、分光光度計、3-Tシグマスキャナーなどの追加の機器が必要であり、そのため、ポイント・オブ・ケア用途や家庭用検査システムには適さない。さらに、分光光度法は、血清が黄疸性又は脂肪血症性であるか、又は臨床試料において一般的である溶血の生成物を含む場合、信頼できる結果が出ない。化学発光では、スーパーオキシドジスムターゼやN-ニトロ-L-アルギニンメチルエステル塩酸塩などの化学発光の阻害剤がいくつか存在し、その存在により、検出前にこれらの阻害剤を削減又は排除する必要がある。クロマトグラフィーには、独自の問題がある。反応混合物のクロマトグラフィー分離は、疎水性および電荷が互いに非常に異なっているのに非常に類似するクロマトグラフィー挙動を持つ化合物が存在するため、より複雑である。検査条件の最適化は、単一の血清試料中の両方の酵素の定量に非常に重要である。
【0015】
蛍光及びUV吸光度手法にも問題がある。pH、イオン強度、非共有相互作用、光強度、温度などを含む多くの環境要因が、これらの手法を使用した結果に影響を与える。厳格な試薬条件、容器条件、機器条件も必要である。そうでない場合、非特異的蛍光又は蛍光消光が結果に影響を与える可能性がある。電気化学的手法は、未修飾金電極を使用した検出、ピルビン酸オキシダーゼ修飾電極を使用した検出、グルタミン酸オキシダーゼ修飾電極を使用した検出、及びGOT及びGPT用のL-乳酸バイオセンサを使用した検出を含む。しかし、電気化学的測定は、血清試料中に存在する干渉レベルに対する信号分解能が低い傾向があり、これは、電極触媒表面の性質と、電極に固定された酵素のタンパク質負荷が比較的低いことに起因する可能性がある。
【0016】
[発明の概要]
ポイント・オブ・ケアのトランスアミナーゼ検査をするための最新の試みは、2013年5月に臨床消化器病学及び肝臓病学(Clinical Gastroenterology and Hepatology)に掲載された、Nira R.Pollockらによる「ポイント・オブ・ケアの紙ベースのフィンガスティックトランスアミナーゼ検査:発展途上世界のための低コストの“ラブ・オン・チップ”手法に向けて(A point-of-care paper-based fingerstick transaminase test:towards low-cost“lab-on-a-chip”technology for the developing world)」と題された国立衛生研究所の研究で説明されている。著者は、パターン化された紙を切手サイズの装置に重ねて作成した3D装置について説明しており、この装置は、1つの臨床試料に対して15分で2つの別々の検査を実行し、一方のゾーンはASTを測定し、他方のゾーンはALTを測定する。装置はまた、適切な装置パフォーマンスを確保するために3つの制御ゾーンを含む。メチルグリーンのスルホン化に基づくASTアッセイ作用は、青からピンクへの視覚的変換をもたらす。ペルオキシダーゼの化学的性質に基づくALTアッセイは、上昇したALTレベルの存在下で赤色色素を生成する。しかし、この装置は、まだ臨床使用できない。
【0017】
したがって、肝酵素の測定が可能で、信頼できる正確な結果を提供するポイント・オブ・ケア分析装置の必要性がある。
【0018】
本発明の目的は、血中の肝酵素レベルを測定するポイント・オブ・ケア装置及び方法を提供することである。
【0019】
本発明の別の目的は、電気化学的手法を用いて血中の肝酵素レベルを測定するポイント・オブ・ケアシステム及び方法を提供することである。
【0020】
本発明の更なる目的は、血中のALT及び/又はAST、及び/又はALP、及び/又はGGTを測定するポイント・オブ・ケアシステム及び方法を提供することである。
【0021】
本発明の目的は、血液試料中のALT及び/又はAST、及び/又はALP、及び/又はGGTの定量に電気化学的手法を使用する場合に信頼できる正確な結果を提供することである。
【0022】
本発明は、一実施形態において、血液試料中の1つ以上の肝酵素の濃度を判断するためのポイント・オブ・ケアシステム用の使い捨て検査カートリッジを提供することにより、これら及び他の目的を達成する。
【0023】
本発明の一実施形態において、検査カートリッジは、カートリッジ本体と、取り外し可能なカートリッジカバーと、検査ストリップモジュールとを含む。カートリッジ本体は、複数のチャンバを有し、複数のチャンバの各々が、カートリッジ本体の上部に開口部を有する。複数のチャンバのうちの少なくとも1つは、血液試料と組み合わせると化学反応を起こして少なくとも1つの反応生成物を含む反応溶液を形成することができる反応混合物を含む。反応混合物は、血液試料中の肝酵素ALT、AST、ALP、又はGGTのいずれかによって触媒作用を及ぼされることに特化した化学物質を含む。取り外し可能なカートリッジカバーは、カートリッジ本体に取り外し可能に接続され、複数のチャンバを覆う。取り外し可能なカートリッジカバーは、キャピラリ受容開口と、カートリッジカバーに取り外し可能に挿入可能なキャピラリ要素も有する。キャピラリ要素は、取り外し可能なカートリッジカバーがカートリッジ本体に接続されているとき、複数のチャンバのうちの1つのチャンバ内に延びる。キャピラリ要素は、キャピラリ要素が血液試料に触れると、毛細管現象によって血液試料を取得するように構成されている。検査ストリップモジュールは、カートリッジ本体に直接接続され、反応溶液の一部を受容するとともに、少なくとも1つの反応生成物である少なくとも1つの検体を測定するように構成された少なくとも1つの検体検査ストリップを含む。
【0024】
本発明の別の実施形態では、ALTの定量に特化した化学物質を含む反応混合物が、L-アラニンとα-ケトグルタル酸とを含む。
【0025】
本発明の別の実施形態では、ASTの定量に特化した化学物質を含む反応混合物が、L-アスパラギン酸とα-ケトグルタル酸とを含む。
【0026】
別の実施形態では、ASTの定量に特化した化学物質を含む反応混合物が、L-アスパラギン酸と、α-ケトグルタル酸と、オキサロ酢酸デカルボキシラーゼとを含む。
【0027】
別の実施形態では、ALPの定量に特化した化学物質を含む反応混合物が、フェニルリン酸ナトリウム又はその誘導体を含む。以下の反応は、反応物、すなわち、フェニルリン酸ナトリウム、の誘導体と、反応生成物であるフェノール及びその誘導体の化学構造を表している。
【0028】
【0029】
ここで、R1及びR2は、-H、-R、-OR、-NO2、-COOR、-SO3H、などであってもよい。後述する検査データでは、R1及びR2は、-Hである。
【0030】
別の実施形態では、GGTの定量に特化した化学物質を含む反応混合物が、L-グルタミン酸ガンマアニリド及びその誘導体とグリシルグリシン及びその誘導体とを含む。以下の反応は、反応物、すなわち、L-グルタミン酸ガンマアナリド、の誘導体と、反応生成物のアナリン及びその誘導体の化学構造を表している。
【0031】
【0032】
ここで、X1及びX2は、-H、-R、-OR、-NO2、-COOR、-SO3H、などであってもよい。
【0033】
別の実施形態では、複数のチャンバのうちの少なくとも1つが、肝酵素ALT又はASTの1つによって触媒作用を及ぼされることに特化した化学物質を含む場合に、検査ストリップモジュールに、ピルビン酸又はL-グルタミン酸を測定するように構成された検体検査ストリップが組み込まれる。
【0034】
別の実施形態では、複数のチャンバのうちの少なくとも1つが、肝酵素ALPによって触媒作用を及ぼされる化学物質を含む場合に、検査ストリップモジュールに、フェノール又はその誘導体を測定するように構成された検体検査ストリップが組み込まれる。
【0035】
別の実施形態では、複数のチャンバのうちの少なくとも1つが、肝酵素GGTによって触媒作用を及ぼされる化学物質を含む場合に、検査ストリップモジュールに、アニリン又はその誘導体を測定するように構成された検体検査ストリップが組み込まれる。
【0036】
別の実施形態では、検査ストリップモジュールに、ピルビン酸オキシダーゼ、グルタミン酸オキシダーゼ又はグルタミン酸デヒドロゲナーゼのいずれかを含む作用電極上に配置された試薬マトリックスを有する検体検査ストリップが組み込まれる。
【0037】
別の実施形態では、検査ストリップモジュールに、酵素又は媒介物を含まない作用電極上に配置された試薬マトリックスを有する検体検査ストリップが組み込まれる。
【0038】
別の実施形態では、検体検査ストリップが、電気接点端と、試料端と、試料端から予め定められた距離を置いた試料受入ポートとを有する。
【0039】
一実施形態では、試料端は、ベント開口部と、試料受入ポートとベント開口部との間の試料チャネルとを含む。
【0040】
一実施形態では、検査ストリップモジュールに、2つ以上の検体検査ストリップが組み込まれ、2つ以上の検体検査ストリップの少なくとも2つが同じ検体を測定する。
【0041】
一実施形態では、検査ストリップモジュールに、2つ以上の検体検査ストリップが組み込まれ、2つ以上の検体検査ストリップの各々が異なる検体を測定する。
【0042】
一実施形態では、血液試料中の1つ以上の肝酵素の濃度を定量する方法が開示される。該方法は、血液試料受容チャンバを提供することと、血液試料中の肝酵素ALT、AST、ALP、又はGGTのいずれかによって触媒作用を及ぼされる予め定められた化学物質を含む試薬チャンバを提供することと、血液試料を取得して、試料受容チャンバに血液試料の少なくとも一部を配置することと、血液試料を希釈して希釈された血液試料を形成することと、予め定められた量の希釈された血液試料を試薬チャンバに配置することと、予め定められた化学物質と希釈された血液試料との間の反応を予め定められた期間継続させて、少なくとも1つの反応生成物を含む反応溶液を形成することと、反応溶液の一部を反応溶液中の少なくとも1つの反応生成物の量を測定可能な検体検査ストリップに移すことと、反応溶液中に存在する少なくとも1つの反応生成物の量を測定することと、反応溶液中の少なくとも1つの反応生成物の量を血液試料中の肝酵素ALT、AST、ALP、又はGGTのいずれかの量に相関させることとを含む。
【0043】
一実施形態では、測定することが、反応溶液中のピルビン酸、グルタミン酸、フェノール(又はその誘導体)、又はアニリン(又はその誘導体)のいずれかの量を測定することをさらに含む。
【0044】
一実施形態では、相関させることが、反応溶液中のピルビン酸、グルタミン酸、フェノール、又はアニリンのいずれかの量を、血液試料中のALT、AST、ALP、又はGGTの量に相関させることをさらに含む。
【0045】
一実施形態では、測定することがさらに、電気化学的測定手法を用いて、少なくとも1つの反応生成物を測定することを含む。
【0046】
一実施形態では、測定することがさらに、アンペロメトリーを用いて、ALT、AST、ALP、又はGGTの定量のための少なくとも1つの反応生成物を測定することを含む。
【0047】
一実施形態では、測定することが、リニアスイープボルタンメトリーを用いて、ALPの定量のための少なくとも1つの反応生成物を測定することを含む。
【0048】
別の実施形態では、血液試料中の1つ以上の肝酵素の濃度を定量するためのポイント・オブ・ケア分析器で使用する使い捨て検査カートリッジキットが開示される。キットは、カートリッジ本体と、取り外し可能なカートリッジカバーと、検査ストリップモジュールとを含む。カートリッジ本体は、複数のチャンバを有し、複数のチャンバの各々が、カートリッジ本体の上部に開口部を有する。複数のチャンバのうちの少なくとも1つが、血液試料と組み合わせると化学反応を起こして少なくとも1つの反応生成物を含む反応溶液を形成することができる反応混合物を含む。反応混合物は、血液試料中の肝酵素ALT、AST、ALP、又はGGTのいずれかによって触媒作用を及ぼされることに特化した化学物質を含む。使い捨てピペットチップは、複数のチャンバのうちの別のチャンバに配置されている。取り外し可能なカートリッジカバーは、カートリッジ本体に取り外し可能に接続され、複数のチャンバを覆う。取り外し可能なカートリッジカバーは、キャピラリ受容開口と、カートリッジカバーに取り外し可能に挿入可能なキャピラリ要素も有する。キャピラリ要素は、取り外し可能なカートリッジカバーがカートリッジ本体に接続されているとき、複数のチャンバのうちの1つのチャンバ内に延びる。キャピラリ要素は、キャピラリ要素が、使い捨て検査カートリッジから取り外され、血液試料に触れると、毛細管現象によって血液試料を取得するように構成されている。検査ストリップモジュールは、カートリッジ本体に直接接続されており、反応溶液の一部を受容するとともに、少なくとも1つの反応生成物である少なくとも1つの検体を測定するように構成された少なくとも1つの検体検査ストリップを含む。
【0049】
別の実施形態では、キットに、使い捨て検査カートリッジ及びキャピラリ要素の使用説明書が含まれている。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】ポイント・オブ・ケア分析器と、ポイント・オブ・ケア分析器のための使い捨て検査カートリッジを示す、本発明の一実施形態の斜視図である。
【
図2】
図1の使い捨て検査カートリッジの拡大断面図であり、検査ストリップモジュールと、キャピラリワイパーと、使い捨てピペットチップとを示している。
【
図3】
図1の使い捨て検査カートリッジの分解斜視図である。
【
図4】
図1の使い捨て検査カートリッジの分解側面図である。
【
図5】
図1の使い捨て検査カートリッジのカートリッジ本体の上面図である。
【
図7】
図1の使い捨て検査カートリッジのカートリッジ本体の上面図である。
【
図8】
図7の線A-Aに沿って取られたセンサモジュールの拡大断面図である。
【
図9】
図7の線B-Bに沿って取られたセンサモジュールの拡大断面図である。
【
図10】
図1の使い捨てカートリッジのカートリッジ本体の正面左側斜視図である。
【
図11】
図10の長方形Dによって囲まれた領域の拡大図である。
【
図12】
図1に示す使い捨てカートリッジの検体センサストリップの一実施形態の拡大正面斜視図である。
【
図13】
図12に示す検体センサストリップの拡大上面図である。
【
図14】
図12に示す検体センサストリップの分解斜視図である。
【
図15】使い捨て検査カートリッジの検体センサストリップの別の実施形態の拡大斜視図である。
【
図16】
図15に示す検体センサストリップの拡大上面図である。
【
図17】表1のデータをグラフ化したものであって、ピルビン酸ストリップセンサを使用したALTセンサ電流対ALT濃度に関する結果を示している。
【
図18】表2のデータをグラフ化したものであって、グルタミン酸ストリップセンサを使用したALTセンサ電流対ALT濃度に関する結果を示している。
【
図19】表3のデータをグラフ化したものであって、ピルビン酸センサを使用したASTセンサ電流対AST濃度に関する結果を示している。
【
図20】表4のデータをグラフ化したものであって、電流センサを使用したALPセンサ電流対ALP濃度に関する結果を示している。
【
図21】
図20の電流センサを使用したALP電流対ボルトの線形スキャン(つまりスイープ)ボルタモグラム応答をグラフ化したものである。
【
図22】
図20の電流センサを使用したALPセンサ電流対時間のアンペロメトリック応答をグラフ化したものである。
【
図23】表5のデータをグラフ化したものであって、電流センサを使用したGGTセンサ電流対GGT濃度に関する結果を示している。
【発明を実施するための形態】
【0051】
図1は、様々な肝酵素の定量のためにポイント・オブ・ケア分析器300に使用される使い捨て検査カートリッジ10の一実施形態を示している。検査カートリッジ10は、カートリッジ本体20と、カートリッジカバー40と、キャピラリ要素60と、キャピラリワイパー80(図示せず)と、1つ以上の検体検査ストリップ230、430を有する検査ストリップモジュール200とを含む。キャピラリ要素60は、カートリッジカバー40から取り外し可能である。
【0052】
次に、
図2を参照する。
図2は、使い捨て検査カートリッジ10の断面図を示し、キャピラリ要素60と、キャピラリワイパー80と、カートリッジカバー40と、検査ストリップモジュール200とが示されている。キャピラリ要素60は、本体上面64を有するキャピラリ要素本体62と、キャピラリ要素容積部68を規定するぶら下がりキャピラリ要素フィンガ66と、キャピラリ要素容積部68と連通する本体上部開口70と、フィンガ端部66aから延びる毛細管72とを含む。キャピラリ要素容積部68は、本体上部開口70からフィンガ端部66aにかけて断面積が減少している。キャピラリ要素容積部68は開口しているとともに、本体上部開口70から毛細管72を通して連続していると理解される。キャピラリ要素容積部68は、連続的なテーパ、段差を設けたテーパ、又は同心円状に縮径した複数の径を有していてもよい。キャピラリワイパー80は、上方部82とテーパ状下方部88とを有する。図から分かるように、毛細管72は、キャピラリワイパー80のテーパ状下方部88を貫通してカートリッジ本体20内の複数のチャンバ22のうちの1つのチャンバ内に延びる。検査ストリップモジュール200は、カートリッジ本体20に接続されている。本実施形態では、検査ストリップモジュール200は、カートリッジ本体20の前壁24に接続されている。検査ストリップモジュール200は、ファスナー、接着剤コーティング、インターロック構造などによって物理的に接続されてもよいし、あるいは、カートリッジ本体20の一部として成形されて単一構造を形成してもよい。検査ストリップモジュール200は、カートリッジ本体20の側面に沿って接続されてもよいと考えられる。
【0053】
図3及び
図4は、
図1に示す使い捨て検査カートリッジ10の分解図である。
図3は、正面斜視図であり、
図4は検査カートリッジ10の側方断面図である。カートリッジ本体20は、カートリッジ本体上面24下方に延びる複数のチャンバ22を有し、複数のチャンバ22の各々は開口26を有する。複数のチャンバ22は、カートリッジ本体前壁24とカートリッジ本体後壁23との間で前後に一列に並んでいる。ただし、この配置は、重要ではない。複数のチャンバ22の各々は、検査試料を受容すること、特定の検査に適した化学薬品、一つ以上の較正標準、血液試料を希釈するための溶液を保持すること等の特定の用途を有している。例えば、ポイント・オブ・ケア分析器と併用される使い捨て検査カートリッジ10は、ALT、AST、ALP、GGT、HbA1C、eAG、総コレステロール、HDLコレステロール、トリグリセリド、LDLコレステロール、コレステロール/HDL比、非HDLコレステロール、尿中アルブミン、尿中クレアチニン、及びアルブミン/クレアチニン比等の検査結果を提供してもよいが、検査結果はこれらに限定されない。より詳細には、
図4を参照する。カートリッジ本体20の複数のチャンバ22は、次の順に配置される。チャンバ22aは、使い捨てピペットチップ25を含む。チャンバ22bは、毛細管が挿入されて血液試料が置かれる試料受容用のチャンバである。チャンバ22bは、血液試料が希釈されるチャンバでもある。チャンバ22cから22eは、予め定められた検査結果群を判定するための多様な試薬を含む。チャンバ22fは、通常、チャンバ22bに置かれた血液試料を希釈するための緩衝液又は他の塩溶液を含む。
図3及び
図4に示されていないのは、ホイルシールであり、ホイルシールは複数のチャンバ22の全ての開口26を覆ってチャンバ22の汚染及び一部のチャンバ内に含まれる試薬の汚染を防ぐ。
【0054】
キャピラリワイパー80は、上方部82とテーパ状下方部88とを有する。上方部82とテーパ状下方部88とは筒状である、つまり、キャピラリワイパー80はキャピラリワイパー容積部94を規定する。下方容積部96は、キャピラリフィンガ要素66の一部と毛細管72とを受容するように構成されている。
【0055】
カートリッジカバー40は、カバー凹部46を形成する複数の下向きカバー側面44を有するカバー上面42を備える。カバー上面42から上方に延びているのはカバー延長部48であり、カバー延長部48もまたカバー凹部46の凹部46aを形成している。カバー延長部48は段差を設けた延長部50を有し、段差を設けた延長部50は、延長部上面52と、カバー凹部46の凹部46aと連通するキャピラリ受容開口54と、を有する。カバーの管延長部56は、キャピラリ受容開口54から凹部46a内へ予め定められた距離だけ延出している。カバーの管延長部56は、キャピラリワイパー80の上方部82に嵌合する。カバー凹部46は、カートリッジ本体20の上部28を受容するとともに、取り外し可能なタブ28aにより位置が固定される。本実施形態において、カートリッジカバー40は、後方延長部端58aを有する後方側延長部58をさらに有する。後方側延長部58は、カートリッジ本体後壁23に沿って隣接して延びている。後方延長部端58aは、カートリッジ本体20に設けられたカバー受容スロット28内に受容される。後方延長部端58aは、小さく鋭い先端58b(
図3にてより明確に示している)を有する。先端58bは、ポイント・オブ・ケア分析器300により、使い捨て検査カートリッジ10の使用中に複数のチャンバ22のホイルに覆われた開口26を突き抜くために使用される。ピペットチップ25は、分析器300により、試料を希釈し、試薬との混合のために予め定められた量の希釈試料を選択するために使用され、試薬が予め定められた期間、希釈された血液試料と反応した後、検査品が形成される。ピペットチップ25は、ストリップモジュール200の1つ以上の検体ストリップ230、430(
図13から
図14に示されている)によるその後の測定用の予め定められた量の検査品を取り出すのにも使用される。いったん毛細管72と試料とがカートリッジカバー40に挿入されてカートリッジカバー40と組み付けられ、次いで、使い捨て検査カートリッジ10が分析器200に挿入されると、分析器はカートリッジカバー40を取り外してホイルシールを突き抜くために後方延長部端58aを使用すると理解される。
【0056】
先述したように、キャピラリ要素60は、要素本体62と、本体上面64と、キャピラリ要素容積部68を規定するぶら下がりキャピラリ要素フィンガ66と、キャピラリ要素容積部68と連通する本体上部開口70と、フィンガ端部66aから延びる毛細管72と、を有する。毛細管72は、任意に先細っていてもよい管遠位端72aを有する。
【0057】
センサストリップモジュール200は、モジュール本体210と、1つ以上の検体センサストリップ230とを有する。1つ以上の検体センサストリップ230は、単回使用で使い捨てである。モジュール本体210は、1つ以上の検体センサストリップ230を受容するためのモジュール本体プラットフォーム212と、本体プラットフォーム212上の対応するストリップ受容領域224において1つ以上の検体センサストリップ230を捕捉して保持する複数の保持装置214とを含む。
【0058】
次に、
図5を参照する。
図5には、カートリッジ本体20及びストリップモジュール本体210の上面図が示されている。本実施形態では、取り外し可能なタブ28aが、カートリッジ本体20の向かい合う側壁27a、27b上に位置するものとして示され、カバー40をカートリッジ本体20に組み付けた後にカバー40の位置を固定する。取り外し可能なタブ28aは、検査カートリッジ10の挿入前に事前にチャンバ22に置かれた血液試料を検査するために検査カートリッジ10が分析器300に挿入されると、ポイント・オブ・ケア分析器300が検査カートリッジ10からカバー40を取り外すとともに、検査が完了した後に検査カートリッジ10の取り出しと廃棄のために、カバー40を再び取り付けられることを可能とするように機能する。本実施形態では、ストリップモジュール本体210は、ストリップモジュール本体210の第1ストリップモジュール壁216に隣接するカートリッジ本体20のカートリッジ前壁24に接続している。
図6は、
図5において楕円Cによって囲まれた領域の拡大図である。本実施形態では、ストリップモジュール本体210は、第1ストリップモジュール壁216と、第2ストリップモジュール壁218と、モジュール前壁220と、モジュール後壁222と、モジュール本体プラットフォーム212と、複数のストリップ保持装置214とを有する。この図では、モジュール本体プラットフォーム212は、3つの領域に分かれている。3つの領域の各々が、検体検査ストリップを受容して保持するように構成されている。ゆえに、本実施形態では、ストリップモジュール本体210は、血液試料中のALT及び/又はAST及び/又はALP及び/又はGGTを間接的に測定するための3つの検体検査ストリップを保持できる。
【0059】
図7は、カートリッジ本体20及びストリップモジュール本体210の上面図である。カートリッジ本体20のこの図においては、複数のチャンバ22と、第1カートリッジ本体壁27aと、第2カートリッジ本体壁27bと、複数のカバー保持タブ28aと、カートリッジ本体前壁24と、第1ストリップモジュール壁216と、第2ストリップモジュール壁218と、前方ストリップモジュール壁211aと、後方ストリップモジュール壁211bと、モジュール本体のビューラインA及びBとが示されている。
図8は、
図7のビューラインA-Aに沿って取られたストリップモジュール本体210の拡大断面図である。より明確に示されているように、モジュール本体プラットフォーム212は、上部ストリップモジュール面210aから凹んでおり、ストリップ保持装置214は、検体センサストリップ230の長手方向縁部236を受容するように構成されたフックエンド214aを有する。モジュール本体プラットフォーム212はまた、複数のプラットフォーム開口212aを含む。プラットフォーム開口212aを通って、複数のストリップ保持装置214のうちの対応する1つがモジュール本体プラットフォーム212上方に延びる。
図9は、
図7のビューラインB-Bに沿って取られたストリップモジュール本体210の拡大断面図である。
図8に示すフックエンド214aと比較した場合、この図の複数のストリップ保持装置214のフックエンド214aが反対方向を向いていることに留意されたい。これは、検体センサストリップ230(
図12~
図13に示されている)の対向する長手方向縁部236両方を、ストリップ受容領域224内でモジュール本体プラットフォーム212に固定するためである。1つ以上のストリップ保持装置214が、対向する長手方向縁部236の一部を捕捉する一方で、各ストリップ受容領域224の一方の側が、検体センサストリップ230の一方の長手方向縁部236の一部を捕捉する隆起(図示せず)を有してもよいと考えられる。
【0060】
図10は、カートリッジ本体20の斜視正面図であり、
図11は、
図10における囲まれた領域Cの拡大斜視図である。
図11は、プラットフォーム開口212aを通って延びるストリップ保持装置214と凹んだ本体プラットフォーム212上方のフックエンド214aをより明確に示している。複数のストリップ保持装置214全てに弾力性があり、検体センサストリップ230をストリップ受容領域224に挿入する際の曲げを制限できるため、各ストリップ保持装置214は、ストリップ受容領域224内のモジュール本体プラットフォーム212に対して検体センサストリップ230を捕捉する初期位置に戻る。
【0061】
[センサ構造]
次に、
図12及び
図13を参照する。
図12及び
図13では、検体センサストリップ230の一実施形態が示されている。検体センサストリップ230は、電極端部232と、電極端232aと、電気接点端部234と、電気接点端234aと、向かい合う長手方向縁部236とを有する多層の一体型センサストリップである。本実施形態では、電極端部232は、反応溶液の一部を受容するための試料注入口238と、ストリップ検査チャンバ240と、ベント開口部242とを含む。電気接点端部234は、ストリップ検査チャンバ240内に配置された各電極と電気的に接触する2つ以上の電気結合パッド244を有する。本実施形態では、検体センサストリップの長さは約30.2mm(1.1インチ)であり、幅は約5.5mm(0.22インチ)である。
【0062】
図14は、
図12及び
図13の検体センサストリップ230の実施形態の拡大分解斜視図である。図示するように、本実施形態の一体型センサストリップは、4つのストリップ層を有する。検体センサストリップ230は、基部層250と、絶縁及び電極画定層270と、チャネル形成層290と、カバー層310とを含む。検体センサストリップ230の全ての層は、誘電性材料、好ましくはプラスチックから作られる。好ましい誘電性材料の例としては、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ナイロン、ポリウレタン、硝酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、ポリエステル、ポリイミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレンが挙げられる。
【0063】
基部層250は、導電層252を有し、導電層252上には、3つの導電パス254、256、258が画定されている。導電パス254、256、258は、導電層252にスクライビング又はスコアリングを行うことにより形成されてもよい。あるいは、基部層250は、誘電性材料上に導電パス254、256、258をシルクスクリーン捺染したものであってもよい。一片の金ポリエステルフィルムを使用し、
図14に示す形に切断して、検体センサストリップ230の基部層250を形成してもよい。
【0064】
導電層252のスクライビング又はスコアリングは、少なくとも2つの独立した導電パス254、256を形成するのに十分なように導電層252を機械的にスクライビングすることにより行ってもよく、任意の第3導電パス258とを生成するものであってよい。本発明の好ましいスクライビング又はスコアリング法は、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー又はエキシマレーザーを使用して行われる。スコアリング線は非常に細いが2つ以上の別々の電気パスを作成するのに十分である。導電層252は、どんな導電材料からできていてもよく、例えば、金、酸化スズ/金、パラジウム、他の貴金属又はそれらの酸化物、又は炭素膜組成物などからできていてもよい。好ましい導電材料は、金又は酸化スズ/金である。雑音信号を発生させ得る静電気の問題を回避するため、追加的なスコアリング線264(説明のためだけに拡大されていて実際の寸法にはなっていない)が基部層250の外縁に沿って設けられていてもよい。なお、スコアリング線264は、検体センサストリップ230を機能させるのに必要なものではない。
【0065】
ストリップ絶縁及び電極画定層270(試薬保持層270とも称される)は、第1導電パス258の一部を露出させる第1電極開口272と、第2導電パス256の一部を露出させる第2電極開口274と、任意の第3導電パス254の一部を露出させる第3電極開口276とを有する。
図14に示すように、電極開口272、274、276は、互いに整列しており、隣接する開口間の間隔は約0.03インチ(0.64mm)であるが、間隔は、重要ではない。円形の開口は、説明のみを目的としている。開口の形やサイズは必ずしも重要ではない。表面積の比率が実質的に一定である限り、円形の開口のサイズを実質的に等しくする必要はない。
【0066】
試薬保持層270は、プラスチック材料から作られ、好ましくは、ペンシルベニア州グレンロックのアドヒーシブリサーチ社(Adhesive Research、Inc.)又はGlobal Instrument Corporation(GIC)(台湾)から購入可能な医療用の片面粘着テープから作られる。本発明に適用できるテープの厚さは、約0.001インチ(0.025mm)から約0.005インチ(0.13mm)の範囲である。好ましい厚さは、約0.003インチ(0.075mm)である。テープの使用は必ずしも必要ではない。試薬保持層270は、プラスチックシートから作られてもよく、上記のポリエステル製テープを使用するのと同じ結果を得るために、感圧接着剤、光硬化性樹脂で覆ってもよいし、基部層250に超音波を使って接着してもよいし、基部層250にシルクスクリーン捺染してもよいし、基部層250に3D印刷してもよい。
【0067】
3つの電極開口272、274、276は、電極ウェルW、R、Bをそれぞれ規定し、作用電極(W)と、参照電極(R)と、ブランク電極(B)とを形成する化学薬品を保持する。ALT及びASTの定量のために、電極ウェルWには、自らの基質に関わる反応に対して触媒作用を及ぼすことができる酵素又は当該酵素に対して触媒として反応性を有する基質と、酵素触媒反応と作用電極との間で運搬される電子を運搬でき、その結果、酵素又は基質(測定される肝酵素に対応する)の活性に対応した電流を生成することができる媒介物と、少なくとも1つのポリマー結合剤とが充填される。基質電極ウェルBには電極ウェルWと同様の化学的性質が充填されるが、酵素は含まない。追加のポリマー、安定剤、及び充填剤などの1つ以上の化学成分を任意に試薬マトリックスに含めてもよい。電極ウェルRには参照試薬マトリックスが充填される。
【0068】
ALP又はGGTの定量のために、電極ウェルWには、後述する理由により酵素又は媒介物は充填されない。つまり、ALP又はGGTの定量では、電極ウェルWは酵素も媒介物も含まない。
【0069】
参照マトリックスが、還元型のレドックス媒介物、酸化型のレドックス媒介物、又は還元型と酸化型のレドックス媒介物の混合物などの少なくとも1つの化学酸化試薬を含むのが好ましい。例えば、好ましい導電性被覆材を使用する際に参照電極を機能させるために、フェリシアン化カリウム、又はフェロシアン化カリウム、又はフェリシアン化カリウムとフェロシアン化カリウムの混合物を充填してもよい。フェリシアン化カリウムとフェロシアン化カリウムの混合物は、フェリシアン化カリウム濃度が最大約10%の範囲にあり、フェロシアン化カリウム濃度が最大約5%の範囲にあるように調整してもよい。あるいは、参照電極(電極ウェルR)にAg/AgCl層を充填してもよいし(例えば、Ag/AgClインクを塗布するか、又は(a)Ag層をスパッタコーティングした後、Agを塩素化するか、又は(b)Ag/AgCl層をスパッタコーティングすることによる)、又は適切に機能するのにレドックス媒介物を必要としない他の参照電極材料を充填してもよい。センサから使用可能な結果を得るのに、チャネルにおける作用電極、参照電極、ブランク電極の配置位置は重要ではないことに留意すべきである。
【0070】
チャネル形成層290は、電極端部232にチャネルノッチ292を有する。チャネルノッチ292の長さは、チャネル形成層40が試薬保持層270に積層される際、電極領域W、R及びBがチャネルノッチ292によって規定される空間内に納まるような長さである。チャネルノッチ292の長さ、幅、厚さは、キャピラリチャンバ容積を規定する。チャネル形成層290は、絶縁及び電極画定層270に積層される。絶縁及び電極画定層270のように、チャネル形成層290は、プラスチックシートから作られてもよく、感圧接着剤、光硬化性樹脂で覆うか、絶縁及び電極画定層270に超音波接着するか、絶縁及び電極画定層270にシルクスクリーン捺染するか、又は絶縁及び電極画定層270に3D印刷してもよい。
【0071】
チャネル形成層290は、プラスチック材料から作られ、好ましくは、ペンシルベニア州グレンロックのアドヒーシブリサーチ社(Adhesive Research,Inc.)又はGlobal Instrument Corporation(台湾)から購入可能な医療用の両面感圧粘着テープから作られる。テープの厚さは、好ましくは約0.001インチ(0.025mm)から約0.010インチ(0.25mm)の範囲である。チャネルノッチ292は、レーザー又は型抜き(好ましい方法)によって作ることができる。液体試料開口312を含まないチャネルノッチ292の長さは、約0.22インチ(5.68mm)から約0.250インチ(6.35mm)であり、幅は、約0.05インチ(1.28mm)から約0.07インチ(1.778mm)であり、厚さは、約0.0039インチ(0.1mm)から約0.009インチ(0.225mm)である。チャネルノッチ292の厚さとサイズは必ずしも重要ではない。
【0072】
チャネル形成層290に積層されるカバー層310は、検体センサストリップ230の電極端232aから距離をおいて設けられた液体試料開口312を有する。カバー層310は、電極端232aにベント開口部242を形成し、反応生成物試料を液体試料開口312に入れたときに、ストリップ検査チャンバ240内の試料が確実に電極領域W、R及びBを完全に覆うようにしている。カバー310の好ましい材料は、ポリエステルフィルムである。検査チャンバ240内の試料液の毛細管現象を促進するために、ポリエステルフィルムが、ストリップ検査チャンバ240を形成するポリエステルフィルムのその部分に親水性の高い表面を有することが望ましい。3M又はGICの透明フィルムを使用してもよい。
【0073】
次に、
図15及び
図16を参照する。
図15及び
図16では、検体センサストリップ430の別の実施形態が示されている。本実施形態では、検体センサストリップ430は、積層体432と、試料受容ウェル434と、電気接点端436とを有する。積層体432は、基部層450とカバー460とを有する。カバー460は、基部層450と組み合わせた場合に、試料受容ウェル434を形成する試料開口462を有する。基部層450は、少なくとも3つの電気パス452、454、456を有し、少なくとも3つの電気パス452、454、456は、センサ測定器又はモジュール(図示せず)に接続するための電気接点端436で露出される第1の部分と、試料受容ウェル434によって露出される第2の部分とを有する。本実施形態のスクライビングされた電気パス(検体検査ストリップ430)のレイアウトは、試料受容ウェル464内の3つの電極領域W、R、Bを収容するために先に説明した実施形態の電気パス(検体検査ストリップ230)から変更されていることが理解される。このような配置の一例は、一実施形態を描く破線により
図16に示されている。
【0074】
試料受容ウェル434によって露出される電気パス452、454、456の第2の部分は、少なくとも作用電極Wと、参照/対極電極Rと、任意のブランク電極Bとを作成する。ALT及びASTの定量について上記に説明したように、第1試薬マトリックス460は、自らの基質に関わる反応に対して触媒作用を及ぼすことができる酵素又は当該酵素に対して触媒として反応性を有する基質と、酵素触媒反応と作用電極との間で運搬される電子を運搬でき、その結果、酵素又は基質(測定される肝酵素に対応する)の活性に対応した電流を生成することができる媒介物と、少なくともポリマー結合剤とを含み、作用電極W上に配置される。第2試薬マトリックス462は、任意のブランク電極B上に配置され、電極ウェルWに似た化学的性質を備えるが、酵素及び媒介物を有しない。上述したように、追加のポリマー、安定剤、充填剤などの1つ以上の化学成分を、任意に試薬マトリックスに含んでよい。参照/対極電極Rは、先に説明した任意の標準物質を含んでよい。
【0075】
ALP又はGGTの定量では、電極ウェルWには、以下に説明する理由により酵素又は媒介物が充填されていない。
【0076】
本発明の本実施形態では、試料受容ウェル434が、試料注入口及び反応生成物を受容するための試料チャンバの両方の役割を果たす。
【0077】
本実施例に開示されるいずれの実施形態のコンジットパスも、腐食しない金属からできていてもよいことが理解されるべきである。例えば、カーボンペースト又はカーボンインクなどの炭素堆積物は、当業者にもよく知られているように、コンジットパスとしても使用できる。さらに、ブランク電極Bは、ALT又はASTの定量のために任意に検体センサストリップ230、430に含まれる場合、血液試料中の干渉物質によって生成される任意の電流を修正するために使用されることが理解される。ALP又はGGTの定量では、検査チャンバに流れ込む試料中の異常を判断するために主に使用される。
【0078】
[ALT又はASTの定量用の検体検査ストリップの化学薬品]
[酵素]
本発明の検体検査ストリップ230は、試薬マトリックスで使用される酵素に応じてピルビン酸又はグルタミン酸のいずれかを消費する作用電極Wの試薬マトリックスに少なくとも化学薬品を含む。化学薬品は、使用中に検査カートリッジ10内で生じた反応溶液に存在するピルビン酸と選択的に反応できるピルビン酸オキシダーゼ、又は使用中に検査カートリッジ10内で生じた反応溶液に存在するL-グルタミン酸と選択的に反応できるグルタミン酸オキシダーゼ又はグルタミン酸デヒドロゲナーゼのうちの1つである。ブランク電極Bは、本発明では必要ではなく、センサストリップ230、430は、電極Wと電極Rを持つだけでよい。ブランク電極Bは、血液試料中の干渉化学種によって引き起こされる可能性のある電気的バックグラウンド電流を排除するために任意に含まれてもよい。上記に説明したように、このようなブランク電極Bの使用は、場合によっては、媒介物との組み合わせでピルビン酸又はL-グルタミン酸のいずれかによって引き起こされる電流を、反応生成物中の他の酸化可能種によって引き起こされる電流からよりよく区別するのに役立つ。市販のピルビン酸オキシダーゼは、現在ではMilliporeSigmaとして知られているシグマアルドリッチ(Sigma-Aldrich)、AG Scientific,Inc.、Sekisui Diagnostics、及びToyoba USA,Inc.を含む様々なソースから購入可能であるがこれらに限定されない。市販のL-グルタミン酸オキシダーゼは、シグマアルドリッチ(Sigma-Aldrich)、Cosmo Bio USA、Sorachim SAを含む様々なソースから購入可能であるがこれらに限定されない。市販のグルタミン酸デヒドロゲナーゼは、シグマアルドリッチ(Sigma-Aldrich)、MyBioSource.com、Lee Biosolutions,Inc.、BBI Solutionsを含む様々なソースから購入可能であるがこれらに限定されない。センサストリップのための試薬マトリックスにおけるこれらの化学薬品の濃度は、約0.1%から10%、好ましくは、0.5%から2%の範囲である。
【0079】
[化学酸化試薬]
レドックス媒介物などの化学酸化試薬は、参照電極Rが、例えば、Ag-AgCl参照電極のような化学酸化試薬を必要としないものでない限り、作用電極W、任意のブランク電極B、参照電極Rの試薬マトリックスに含まれる。レドックス媒介物を使用する際は、酸化型のレドックス媒介物を使用するのが好ましい。また、媒介物の還元型が、印加電位で電極表面で電気化学的に酸化されることができるのが望ましい。媒介物が、試薬マトリックスで安定していることがさらに望ましい。参照電極で使用する場合、媒介物が参照電極を適切に機能させることができるのがさらに望ましい。レドックス媒介物は、様々な金属化合物及び有機レドックス化合物から選択可能だがそれらに制限されない。許容できるレドックス媒介物の例としては、様々な金属化合物及び有機レドックス化合物が挙げられるがそれらに制限されない。許容できるレドックス媒介物の例としては、カリウム(又はナトリウム)フェリシアニド、フェロセン及びその誘導体、ヘキサアンミンルテニウム(III)クロリド及びその誘導体などのルテニウム化合物、オスミウム錯体、1,10-フェナントロリン-5,6-ジオン、メルドラブルー、テトラチアフルバレン7,7.8.8-テトラシアノキノジメタン、テトラチアフルバレン、TCNQ、ヒドロキノン、ジクロロフェノールインドフェノール、p-ベノキノン、o-フェニレンジアミン、3,4-ジヒドロキシベンズアルデヒド、インドフェノール、フェナジン、フェノチアジン、2,6-ジクロロインドフェノール、トルイジンブルーOなどが挙げられる。好ましい媒介物は、1,10-フェナントロリン-5,6-ジオンである。試薬マトリックスにおける1,10-フェナントロリン-5,6-ジオンの濃度は、好ましくは試薬マトリックスの約0.1%から約5%(w/w)で、好ましくは約0.1%から0.5%である。
【0080】
[酵素補因子]
検体センサストリップ230、430の試薬マトリックスに含まれる酵素補因子は、有機補因子であるチアミン三リン酸(TPP)及びフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)であり、ピルビン酸オキシダーゼを使用する場合は、無機補因子Mg2+である。グルタミン酸デヒドロゲナーゼを使用する場合は、NADの補因子が使用される。試薬マトリックスにおける各補因子の濃度は約0.25%(w/w)である。
【0081】
[ポリマー結合剤]
試薬マトリックスにおける結合剤として使用されるポリマーは、十分に水溶性であり、かつ、試薬中の全ての他の化学物質を安定化して電極領域の導電性表面層に結合させることができなければならない。好適なポリマーには、低分子量及び高分子量ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール(PVA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、及びポリアミノ酸が含まれるがこれらに制限されない。試薬結合剤は、単一のポリマー又はポリマーの組み合わせであってもよく、好ましい濃度は、約0.02%(w/w)から約7.0%(w/w)である。本発明の試薬マトリックスの好ましい結合剤は、ポリエチレンオキシド(PEO)とメチルセルロースの組み合わせである。PEOの分子量は、数千から数百万の範囲であり、米国ニューヨーク州のScientific Polymer Productsから購入可能である。試薬マトリックスにおけるPEOの濃度は、好ましくは約0.04%(w/w)から約2%(w/w)である。メチルセルロースは、Methocel 60HG(Cat.No.64655、米国ワイオミング州ミルウォーキーのフルカケミカルズ(Fluka Chemicals))のブランド名で購入可能であり、試薬マトリックスにおける好ましい濃度は、約0.02%(w/w)から約5%(w/w)の範囲である。
【0082】
[界面活性剤]
界面活性剤は、試薬マトリックスの電極領域への分注を容易にするために任意に試薬マトリックスに含むことができる。界面活性剤はまた、試料液を検体検査ストリップの試料チャネルに入れたときに、乾燥した化学薬品を素早く溶解させるのに役立つ。界面活性剤の量とタイプは、前述した機能を確保し、酵素への変性効果を避けるように選択される。界面活性剤は、様々なアニオン性、カチオン性、非イオン性、及び両性イオン性洗剤から選択可能だがそれらに制限されない。許容できる界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンエーテル、Tween 20、コール酸ナトリウム水和物、ヘキサデシルピリジニウムクロリド一水和物及びCHAPが挙げられる。好ましい界面活性剤は、ポリオキシエチレンエーテルである。より好ましくは、t-オクチルフェノキシポリエトキシエタノールであり、Triton X-100のブランド名で購入可能である。試薬マトリックスにおける界面活性剤の濃度は、好ましくは約0.01%(w/w)から約2%である。
【0083】
[緩衝液]
必要に応じて、本発明のセンサストリップにおいて、緩衝液が乾燥した状態で存在してもよい。緩衝液は、試薬マトリックスのpHを実質的に維持するために十分な量存在する。好適な緩衝液の例としては、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、TRIS緩衝液などが挙げられる。緩衝液のpHは、好ましくは約5.0から約8.5の範囲である。
【0084】
[増量試薬]
水溶性で不活性成分である任意の増量剤を、試薬混合物/マトリックスに添加するのが好ましい。電極形成層が試薬マトリックスを含むように使用される場合に、増量剤を使用して、試料液がキャピラリチャネルを満たす際に電極形成層の電極開口が気泡を閉じ込めないようにするのは有利である。例えば、トレハロース、ガラクトース、グルコース、スクロース、ラクトース、マンニトール、マンノース、フルクトース、スクロース、ラクトース、ラクチトール、ソルビトール、キシリトール、ニコチンアミド、マルトースなどの様々な糖は、他の成分と反応せず、電極表面で不活性である限り、試薬混合物/マトリックスに添加可能である。増量剤は、1つの化学物質又は化学物質の組み合わせであってもよい。含まれる場合の試薬混合物/マトリックス中の増量剤の量は、約1%から約15%(w/w)の範囲である。
【0085】
[ALP又はGGTの定量用の検体検査ストリップの化学薬品]
[ポリマー結合剤、界面活性剤、増量試薬(酵素又は媒介物なし)]
ポリマー結合剤、界面活性剤、及び増量試薬は、ALT及びASTの定量用の検体検査ストリップについて上記にリストされたものと同じである。酵素又は媒介物が、ALP及びGGTの定量用の検体センサストリップのための試薬マトリックスに使用されていないことは注目に値する。これは、ALP及びGGTの定量のために測定される反応生成物が電極表面で直接酸化可能であるためであり、電流を生成するために反応生成物の基質と媒介物を必要としないからである。
【0086】
[緩衝液]
緩衝液は、ALPの定量用の検体センサストリップの試薬マトリックスに存在し、7から12のpH範囲を提供する。緩衝液が、10から11のpH範囲を提供するのが好ましい。このような緩衝液の例としては、ジエタノールアミン緩衝液、AMP(2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール)緩衝液などが挙げられる。
【0087】
緩衝液は、GGTの定量用の検体センサストリップの試薬マトリックスにも存在し、7から9のpH範囲を提供する。緩衝液が、8.3のpHを提供するのが好ましい。このような緩衝液の例としては、リン酸緩衝液、TRIS緩衝液、クエン酸緩衝液などが挙げられる。好ましい緩衝液は、TRIS緩衝液である。
【0088】
[ALT、AST、ALP又はGGTの定量用の使い捨て検査カートリッジのチャンバに配置される化学薬品]
[ALT用の試薬]
血液試料中の肝酵素ALTの量を計測するために、使い捨て検査カートリッジ10の複数のチャンバ22のうちの少なくとも1つに試薬を配置し、使い捨て検査カートリッジの組み立て中に反応混合物を形成する。ALTについては、チャンバ22が、以下の試薬を含む:L-アラニン、α-ケトグルタル酸、ポリマー結合剤、界面活性剤、緩衝液、糖などの増量剤、及び防腐剤。
【0089】
L-アラニン濃度は、0.01Mから2Mの範囲である。好ましい濃度は、0.1Mから1Mの範囲であり、0.2から0.5Mの範囲の濃度が最も好ましい。後述する検査データでは、使用される濃度は0.3Mである。
【0090】
α-ケトグルタル酸濃度は、0.01から2Mの範囲である。好ましい濃度は、0.05Mから1Mの範囲であり、0.1Mから0.5Mの範囲の濃度が最も好ましい。後述する検査データでは、使用される濃度は0.2Mである。
【0091】
反応混合物において結合剤として使用されるポリマーは、十分に水溶性で、かつ、反応混合物中の全ての他の化学物質を安定化して結合させることができなければならない。好適なポリマーには、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール(PVA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、魚ゼラチン、キトサン、増粘剤及びポリアミノ酸が含まれるが、これらに制限されない。ポリマー結合剤は、単一のポリマー又はポリマーの組み合わせであってもよい。PEOについては、PEOの分子量は、数千から数百万の範囲であり、米国ニューヨーク州のScientific Polymer Productsから購入可能である。反応混合物中のPEOの濃度は、好ましくは約0.04%(w/w)から約2%である。メチルセルロースは、Methocel 60HG(Cat.No.64655、米国ワイオミング州ミルウォーキーのフルカケミカルズ(Fluka Chemicals))のブランド名で購入可能であり、試薬層組成物中の濃度は、好ましくは約0.02%(w/w)から約5%の範囲である。
【0092】
界面活性剤は、様々なアニオン性、カチオン性、非イオン性、及び両性イオン性洗剤から選択されるがそれらに制限されない。許容できる界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンエーテル、Tween 20、コール酸ナトリウム水和物、ヘキサデシルピリジニウムクロリド一水和物及びCHAPS(両性イオン性洗剤である)が挙げられる。好ましい界面活性剤は、ポリオキシエチレンエーテルである。より好ましくは、トクチルフェノキシポリエトキシエタノールであり、Triton X-100のブランド名で購入可能である。反応混合物中のTriton X-100の濃度は、好ましくは約0.01%(w/w)から約2%である。
【0093】
緩衝液を反応混合物に添加する。許容できるpH範囲は、5から11である。好ましい範囲は、7から8のpHである。後述する検査データでは、7.4のpHが使用される。ALTの定量に適用できる緩衝液は、リン酸緩衝液、トリズマ緩衝液(Trizma buffer)、クエン酸緩衝液などを含む。
【0094】
水溶性であり不活性成分である任意の増量剤を、反応混合物に添加するのが好ましい。増量剤の使用は、血液試料が反応混合物を含むチャンバ22に添加されると反応混合物中に気泡を閉じ込める傾向を低減するのに有利である。例えば、トレハロース、ガラクトース、スクロース、ラクトース、マンニトール、マンノース、フルクトース、ラクチトール、ソルビトール、キシリトール、ニコチンアミド、マルトース、デンプンなどの様々な糖が、他の成分と反応しない限り、増量剤として反応混合物に添加されてもよい。増量剤は、1つの化学物質又は化学物質の組み合わせであってもよい。反応混合物中の増量剤の量は、約1%から約15%(w/w)の範囲である。
【0095】
組み立て済み使い捨てカートリッジは、通常、使用前に数か月間保管されるため、少なくとも1つの防腐剤を含めることが推奨される。組み立て済み使い捨てカートリッジにおいて、防腐剤は反応混合物の長期の安定性を提供する。プロリン(タンパク質構成アミノ酸である)などの防腐剤が、0.05%から2%の範囲の濃度で反応混合物に含まれている。
【0096】
[AST用の試薬]
血液試料中の肝酵素ASTの量を測定するために、使い捨て検査カートリッジ10の複数のチャンバ22のうちの少なくとも1つに試薬を配置し、使い捨て検査カートリッジの組み立て中に反応混合物を形成する。ASTの場合、チャンバ22は、以下の試薬を含む:L-アスパラギン酸、α-ケトグルタル酸、ポリマー結合剤、界面活性剤、緩衝液、糖などの増量剤、緩衝液、防腐剤、及び、任意のオキサロ酢酸デカルボキシラーゼ。
【0097】
L-アスパラギン酸濃度は、0.01Mから2Mの範囲である。好ましい濃度は、0.1Mから1Mの範囲であり、0.2から0.5Mの範囲の濃度が最も好ましい。後述する検査データでは、使用される濃度は、0.5Mである。
【0098】
α-ケトグルタル酸濃度は、0.01から2Mの範囲である。好ましい濃度は、0.05Mから1Mの範囲であり、0.1Mから0.5Mの範囲の濃度が最も好ましい。後述する検査データでは、使用される濃度は、0.25Mである。
【0099】
オキサロ酢酸デカルボキシラーゼ濃度は、50IU/mLから500IU/mLの範囲である。後述する検査データでは、使用される濃度は100IU/mLから150IU/mLの範囲である。
【0100】
ポリマー結合剤、界面活性剤、任意の増量剤、及び防腐剤は、ALTの測定用に上記にリストされたものと同じである。
【0101】
緩衝液は、反応混合物に添加される。許容できるpH範囲は、5から11である。好ましい範囲は、7から9のpHである。後述する検査データでは、8のpHが使用される。ALTの定量に適用できる緩衝液は、リン酸緩衝液、TRIS緩衝液、クエン酸緩衝液などを含む。
【0102】
[ALP用の試薬]
血液試料中の肝酵素ALPの量を測定するために、使い捨て検査カートリッジ10の複数のチャンバ22のうちの少なくとも1つに試薬を配置し、使い捨て検査カートリッジの組み立て中に反応混合物を形成する。ALPの場合、チャンバ22は以下の試薬を含む:フェニルリン酸ナトリウム又はその誘導体、ポリマー結合剤、界面活性剤、緩衝液、糖などの増量剤、緩衝液、及び防腐剤。
【0103】
フェニルリン酸ナトリウム濃度は、100mMから300mMの範囲である。後述する検査データでは、使用される濃度は、200mMである。
【0104】
ポリマー結合剤、界面活性剤、任意の増量剤、及び防腐剤は、ALTの定量用に上記にリストされたものと同じである。
【0105】
緩衝液を反応混合物に添加する。許容できるpH範囲は7から12である。好ましい範囲は、10から11のpHである。ALPの定量に適用できる緩衝液は、ジエタノールアミン緩衝液、AMP(2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール)緩衝液などを含む。
【0106】
[GGT用の試薬]
血液試料中の肝酵素GGTの量を測定するために、使い捨て検査カートリッジ10の複数のチャンバ22のうちの少なくとも1つに試薬を配置し、使い捨て検査カートリッジの組み立て中に反応混合物を形成する。GGTの場合、チャンバ22は、以下の試薬を含む:L-グルタミン酸ガンマアニリド又はその誘導体、グリシルグリシン、ポリマー結合剤、界面活性剤、緩衝液、糖などの増量剤、緩衝液、及び防腐剤。
【0107】
L-グルタミン酸ガンマアニリド濃度は、10mMから30mMの範囲である。後述する検査データでは、使用される濃度は、20mMである。
【0108】
グリシルグリシン濃度は、200mMから400mMの範囲である。後述する検査データでは、使用される濃度は、300mMである。
【0109】
ポリマー結合剤、界面活性剤、任意の増量剤、及び防腐剤は、ALTの定量用に上記にリストされたものと同じである。
【0110】
緩衝液を反応混合物に添加する。許容できるpH範囲は、5から11である。好ましい範囲は、7から9のpHである。後述する検査データでは、8.3のpHを使用する。ALTの定量に適用できる緩衝液は、リン酸緩衝液、TRIS緩衝液、クエン酸緩衝液などを含む。
【0111】
[血液試料中のALT、AST、ALP、及びGGTの定量のための一般化された手順]
ALT、AST、ALP、及びGGTなどの肝酵素の定量のために、特定の肝酵素を定量するための以下の一般化された検査手順を実行する。この検査では、予め定められた量の毛細血管の血液が取得され、予め定められた量の毛細血管の血液が希釈され、予め定められた量の希釈された毛細血管の血液が特定の肝酵素の定量のための反応混合物を含むチャンバ22にピペットで移され、希釈された毛細血管の血液で反応混合物を再懸濁し、希釈された毛細血管の血液を反応混合物と混合し、得られた希釈された毛細血管の血液と反応混合物との混合物を予め定められた時間反応させて、反応溶液を形成する。予め定められた反応時間の終わりに、予め定められた量の反応溶液をポイント・オブ・ケア分析器300の内部のピペットにより抜き出して検査ストリップモジュール200上の検体検査ストリップ230、430上に置き、検体検査ストリップ230、430が定量可能な反応溶液中の特定の肝酵素の定量に直接関係する特定の検体の量を測定する。
【0112】
より具体的には、ランセットを使用して患者の指を穿刺して血液試料を取得する。実行する特定の検査のために使い捨て検査カートリッジ10を選択する。この場合、4つの肝酵素ALT、AST、ALP、及びGGTのうちの1つの存在を検査できる使い捨て検査カートリッジ10である。特定の検査カートリッジ10は、検体を測定するために検査ストリップモジュール200に取り付けられた少なくとも1つの検体センサストリップ230、430を有する。各使い捨て検査カートリッジ10は、肝酵素定量のタイプ及び検体センサストリップ230、430のタイプに応じてコーディングされている。
【0113】
キャピラリ要素60は、使い捨て検査カートリッジ10から分離されている。キャピラリ要素フィンガ66のフィンガ端部66aは、患者の皮膚を穿刺したことによって生成された指上の血滴に触れさせられる。血滴の一部が、毛細管現象によってキャピラリ要素60に入る。キャピラリ要素60は、血液試料を得る前に使い捨て検査カートリッジ10から取り外された時と同じ向きに、使い捨て検査カートリッジ10に挿入されて再び取り付けられる。再び取り付けられると、使い捨て検査カートリッジ20はポイント・オブ・ケア分析器300に挿入される準備ができる。挿入されると、ポイント・オブ・ケア分析器300が始動する。
【0114】
ポイント・オブ・ケア分析器300において、キャピラリ要素66にある毛細血管の血液の試料が分析器300によってチャンバ22内に吸引され、その中でキャピラリ要素66が吊り下げられている。使い捨て検査カートリッジ20からカバー40を取り外し、使い捨て検査カートリッジ10の別のチャンバ22にある予め定められた量の予め定められた希釈剤(すなわち、緩衝液又は塩溶液)を取り出し、ピペットによって血液試料を含むチャンバ22に入れる。血液試料を含むチャンバ22に十分な量の希釈剤を添加し、希釈率を1:1から1:50の範囲にする。好ましい希釈率の範囲は、1:2から1:20の範囲である。最も好ましい分析器300の希釈率の範囲は1:5から1:10の範囲である。図示した検査データでは、使用される希釈率は、1:10である。希釈剤は、希釈率の大きいほうの数であるか又はチャンバ内の毛細血管の血液の量に等しいことが理解される。希釈後、予め定められた量の希釈された血液試料が、希釈された血液試料中の特定の肝酵素活性を定量するための反応混合物を含む使い捨て検査カートリッジ10のチャンバ22に、ピペットで移される。各使い捨て検査カートリッジ10を1つの肝酵素専用にしてもよいが、使い捨て検査カートリッジ10は、本願で開示される他の肝酵素の検査を含んでもよいと考えられる。さらに、他の肝酵素を定量するための追加の検体検査ストリップを、血液試料中の2つ以上の肝酵素を検査するように構成された使い捨て検査カートリッジ10に組み込んでもよいと考えられる。
【0115】
[血液試料中のALTの定量]
触媒としてのALTの存在下で、L-アナリン及びα-ケトグルタル酸は、ピルビン酸及びL-グルタミン酸を生成する反応を起こす。これは、式1で表される。
【0116】
【0117】
希釈後、予め定められた量の希釈された血液試料が、血液試料中のALT活性を定量するための反応混合物を含む使い捨て検査カートリッジ10のチャンバ22にピペットで移される。予め定められた量の希釈された血液試料の量は、5から100マイクロリットルの範囲である。予め定められた量の希釈された血液試料が、10から50マイクロリットルの範囲であるのが好ましい。得られた検査データでは、予め定められた量の希釈された血液試料は、15から30マイクロリットルの範囲である。希釈された毛細血管の血液は、反応混合物と混合し、得られた希釈された毛細血管の血液と反応混合物との混合物を予め定められた時間反応させて、反応溶液を形成する。ALT定量の場合、反応時間は、5分から60分の範囲である。好ましい反応時間は、10分から30分の範囲である。より好ましい反応時間は、20分から30分の範囲である。以下で得られたデータでは、反応時間は、摂氏40~45度の温度で25分である。
【0118】
検査に使用されるのは、反応溶液中のピルビン酸を測定するための検体検査ストリップ230である。ピルビン酸検査ストリップ反応では、センサストリップ試薬マトリックスにピルビン酸オキシダーゼを使用する。反応式は以下のとおりである。
【0119】
【0120】
ここで、Medoxは、媒介物の酸化型であり、Medredは、媒介物の還元型である。
【0121】
ピルビン酸センサの作用電極及び参照電極間のバイアス電位は、100mvから500mvの範囲、好ましくは300mVから400mVの範囲である。範囲内の電圧値は、重要ではないが、一定でなければならない。作用電極及び参照電極間のバイアス電位は、媒介物を電極表面で還元状態から酸化状態に変化させ、それによって反応生成物におけるピルビン酸の濃度に基づいて電流を生成する。
【0122】
式1からわかるように、ピルビン酸センサストリップの代わりに、グルタミン酸を測定するための検体センサストリップを使用することもできる。グルタミン酸検査ストリップ反応では、センサストリップ試薬マトリックスにグルタミン酸オキシダーゼ又はグルタミン酸デヒドロゲナーゼを使用する。反応式は以下のとおりである。
【0123】
【0124】
ここで、Medoxは媒介物の酸化型であり、Medredは媒介物の還元型である。
【0125】
グルタミン酸センサの作用電極及び参照電極間のバイアス電位は、100mvから500mvの範囲、好ましくは300mVから400mVの範囲である。ピルビン酸センサと同様に、範囲内の電圧値は、重要ではないが、一定でなければならない。作用電極及び参照電極間のバイアス電位は、媒介物を電極表面で還元状態から酸化状態に変化させ、それによって反応生成物におけるグルタミン酸の濃度に基づいて電流を生成する。
【0126】
ALTの血液試料の濃度値は、ニューヨーク州タリータウンにあるシーメンヘルスケアダイアグノスティックス社(Siemens Healthcare Diagnostics,Inc.)によって販売されているDimension RxL化学分析器として知られている血液分析器を使って取得した。検体検査ストリップからの検査データは、CH Instruments Potentiostat、model no.CHI 812B又はmodel no.CHI 660Aを使って取得した。
【0127】
[ピルビン酸センサを使用したALT定量のための検査データ]
血中ALT濃度とピルビン酸検査ストリップに基づく応答との間の直線応答性を判定するために、検査に3つの異なるALT濃度レベルを使用した。それらのレベルは、61IU/L、135IU/L、468IU/Lである。試料は、これらのALTレベル用に準備され、各ALT濃度について電流測定を10回行った。各測定で、新しいピルビン酸センサストリップを使用した。表1は、ALTの定量で得られた検査データを示す。
【0128】
【0129】
図17は、様々なALT濃度に対して測定された作用電極(すなわち、ピルビン酸オキシダーゼベースの電極)の電流応答を示す。電流応答は、検査されたALT濃度範囲全体でピルビン酸濃度に対して線形である。ALT濃度は、ピルビン酸濃度に正比例する。
【0130】
[グルタミン酸センサを使用したALT定量のための検査データ]
血中ALT濃度とグルタミン酸検査ストリップに基づく応答との間の直線応答性を判定するため、検査に3つの異なるALT濃度レベルを使用した。それらのレベルは、61IU/L、269IU/L、468IU/Lである。試料は、これらのALTレベル用に準備され、各ALT濃度について電流測定を3回行った。各測定で、新しいグルタミン酸センサストリップを使用した。表2は、グルタミン酸センサストリップを使用したALTの定量で得られた検査データを示す。
【0131】
【0132】
図18は様々なALT濃度に対して測定された作用電極(すなわち、グルタミン酸デヒドロゲナーゼベースの電極)の電流応答を示す。電流応答は、検査されたALT濃度範囲全体でグルタミン酸濃度に対して線形である。ALT濃度は、グルタミン酸濃度に正比例する。
【0133】
[血液試料中のASTの定量]
触媒としてのASTの存在下で、L-アスパラギン酸及びα-ケトグルタル酸は、オキサロ酢酸とL-グルタミン酸を生成する反応を起こす。これは、式2で表される。
【0134】
【0135】
この状況では、グルタミン酸感知検査ストリップは、ASTの定量に使用され、グルタミン酸検査ストリップの試薬マトリックスにグルタミン酸オキシダーゼ又はグルタミン酸デヒドロゲナーゼを含む前述の反応によって表される。しかしながら、結果がより正確であるために、ピルビン酸センサが好ましい。ピルビン酸検査ストリップを使用するためには、以下で説明するように、追加の化合物が必要である。
【0136】
式2のオキサロ酢酸生成物も、ピルビン酸及び二酸化炭素を生成するオキサロ酢酸デカルボキシラーゼの存在下でさらなる反応を起こすことができる。これは、式3で表される。
【0137】
【0138】
したがって、オキサロ酢酸デカルボキシラーゼが、カートリッジチャンバ22の反応混合物中にある場合、ピルビン酸が形成され、反応溶液に存在するピルビン酸を計測するためにピルビン酸検査ストリップを使用してもよい。血液試料中のASTの濃度は、測定されたピルビン酸の濃度に正比例する。
【0139】
希釈後、予め定められた量の希釈された血液試料を、血液試料中のAST活性を定量するための反応混合物を含む使い捨て検査カートリッジ10のチャンバ22にピペットで移す。予め定められた量の希釈された血液試料の量は、5から100マイクロリットルの範囲である。好ましくは、予め定められた量の希釈された血液試料は、10から50マイクロリットルの範囲である。得られた検査データでは、予め定められた量の希釈された血液試料は、15から30マイクロリットルの範囲である。希釈された毛細血管の血液は、反応混合物と混合し、得られた希釈された毛細血管の血液と反応混合物との混合物を予め定められた時間反応させて、反応溶液を形成する。AST定量では、反応時間は、5分から60分の範囲である。好ましい反応時間は、10分から30分の範囲である。より好ましい反応時間は、20分から30分の範囲である。以下で得られたデータでは、反応時間は、摂氏40~45度の温度で25分である。
【0140】
ASTの測定について前述したように、反応溶液中のピルビン酸を測定するための検体検査ストリップ230は、使い捨て検査カートリッジ10の反応混合物にオキサロ酢酸デカルボキシラーゼが存在する場合に検査に使用される。ピルビン酸検査ストリップ反応では、センサストリップ試薬マトリックスにピルビン酸オキシダーゼを使用する。反応式は、ピルビン酸検査ストリップについて上述したのと同様である。
【0141】
ALT定量について上述したように、AST用の血液試料の濃度値をニューヨーク州タリータウンにあるシーメンヘルスケアダイアグノスティックス社(Siemens Healthcare Diagnostics,Inc.)によって販売されているDimension RxL化学分析器として知られている血液分析器を使って取得した。検体検査ストリップからの検査データは、CH Instruments Potentiostat、model no.CHI 812B又はmodel no.CHI 660Aを使って取得した。
【0142】
[ピルビン酸センサを使用したAST定量のための検査データ]
血中AST濃度とピルビン酸検査ストリップに基づく応答との間の直線応答性を判定するために、検査に3つの異なるAST濃度レベルを使用した。それらのレベルは、25IU/L、196IU/L、698IU/Lである。試料は、これらのASTレベル用に準備され、各ALT濃度について電流測定を10回行った。各測定で、新しいピルビン酸センサストリップを使用した。表3は、ASTの定量で得られた検査データを示す。
【0143】
【0144】
図19は、様々なAST濃度に対して測定された作用電極(すなわち、ピルビン酸オキシダーゼベースの電極)の電流応答を示す。電流応答は、検査されたAST濃度範囲全体でピルビン酸濃度に対して線形である。AST濃度は、ピルビン酸濃度(又はグルタミン酸オキシダーゼやグルタミン酸デヒドロゲナーゼを使用する場合はグルタミン酸濃度)に正比例する。
【0145】
[血液試料中のALPの定量]
触媒としてのALPの存在下で、フェニルリン酸ナトリウム又はその誘導体は、フェノール又はその誘導体及びリン酸塩を生成する反応を起こす。これは、式4で表される。
【0146】
【0147】
ALT及びAST定量について前述したように、希釈後、予め定められた量の希釈された血液試料を、血液試料中のALP活性を定量するための反応混合物を含む使い捨て検査カートリッジ10のチャンバ22にピペットで移す。予め定められた量の希釈された血液試料の量は、5から100マイクロリットルの範囲である。好ましくは、予め定められた量の希釈された血液試料は、10から50マイクロリットルの範囲である。得られた検査データでは、予め定められた量の希釈された血液試料は15から30マイクロリットルの範囲である。希釈された毛細血管の血液は、反応混合物と混合し、得られた希釈された毛細血管の血液と反応混合物との混合物を予め定められた時間反応させる。ALP定量では、反応時間は、5分から60分の範囲である。好ましい反応時間は、10分から30分の範囲である。より好ましい反応時間は、20分から30分の範囲である。以下で得られたデータでは、反応時間は、摂氏40~45度の温度で25分である。
【0148】
ALT及びAST定量で使用したセンサストリップとは異なり、作用電極の試薬マトリックスに酵素又は媒介物は必要ない。これは、式4に示す反応物生成物フェノールが、電極表面で直接電気化学的に酸化されるからである。
【0149】
ALPの血液試料の濃度値を、ニューヨーク州タリータウンにあるシーメンヘルスケアダイアグノスティックス社(Siemens Healthcare Diagnostics,Inc.)によって販売されているDimension RxL化学分析器として知られている血液分析器を使って取得した。検体検査ストリップからの検査データは、CH Instruments Potentiostat、model no.CHI 812B又はmodel no.CHI 660Aを使って取得した。
【0150】
[電流センサを使用したALP定量のための検査データ]
血中ALP濃度と電流測定検査ストリップに基づく応答との間の直線応答性を判定するために、検査に3つの異なるALP濃度レベルを使用した。それらのレベルは、72IU/L、178IU/L、458IU/Lである。試料は、これらのALPレベル用に準備され、各ALP濃度について電流測定を10回行った。各測定で、新しいセンサストリップを使用した。表4は、ALPの定量で得られた検査データを示す。
【0151】
【0152】
図20は、様々なALP濃度に対して測定された作用電極(すなわち、電流感知電極)の電流応答を示す。電流応答は、検査されたALP濃度範囲全体でフェノール濃度に対して線形である。ALP濃度は、フェノール濃度に正比例する。
【0153】
図21は、上記の3つのALP濃度標準の電流トレースを示す電流センサの線形スキャンボルタモグラムである。線形スキャンボルタモグラムは、電位スキャンが作用電極と参照電極の間で0mVから500mVであることを示している。これは、未確定の電位センサ手法である。線形スキャンボルタモグラムを使用した全ての電流検査で、検体センサストリップ230、430は、0mVから500mVの間の電流スキャンを受ける。この手法を使用しているときの電流測定値が取得されるのは、ALPの濃度レベル間の最大の電流分離により、スキャンが350mVに達したときである。
【0154】
図22は、3つのALP濃度についての電流対時間のアンペロメトリック応答プロットである。このアンペロメトリック手法は、作用電極及び参照電極間の固定電位(すなわち、バイアス電位)を使用する。固定電位は、上述したALT又はASTを測定するための電位と類似する。このプロットは、電流センサストリップへの試料の導入後いつ電流測定を記録するかを判断するために使用される。ALPを定量するためのアンペロメトリック手法を使用した全ての電流検査について、電流測定は、試料が作用電極と参照電極の両方を覆った後、10秒間(すなわち、「期間」)記録される。試料が作用電極と参照電極の両方を覆うと、電流測定に大きな変化がある。これが、10秒の期間の始まりを示す。プロットでは、10秒の開始時間は、大きな電流変化があった瞬間に始まる。
図22に示すように、これは、約2.5~3秒で現れる。これは、プロットによる電流記録時間が約12.5~13秒であることを意味する。実用的な観点から、計器が大きな電流変化を感知するとタイマーが始まり、タイマーの開始から10秒後に電流記録が記録される。
【0155】
[血液試料中のGGTの定量]
触媒としてのGGTの存在下で、L-グルタミン酸ガンマアニリド及びグリシルグリシンは、L-γ-グルタミル-グリシルグリシン及びアニリンを生成する反応を起こす。これは、式5により表される。
【0156】
【0157】
希釈後、ALPの定量について上記に説明したように、予め定められた量の希釈された血液試料を、血液試料中のGGT活性を定量するための反応混合物を含む使い捨て検査カートリッジ10のチャンバ22へピペットで移す。予め定められた量の希釈された血液試料の量は、5から100マイクロリットルの範囲である。好ましくは、予め定められた量の希釈された血液試料は、10から50マイクロリットルの範囲である。得られた検査データでは、予め定められた量の希釈された血液試料は、15から30マイクロリットルの範囲である。希釈された毛細血管の血液は、反応混合物と混合し、得られた希釈された毛細血管の血液と反応混合物との混合物を予め定められた時間反応させる。GGT定量の場合、反応時間は、5分から60分の範囲である。好ましい反応時間は、10分から30分の範囲である。より好ましい反応時間は、20分から30分の範囲である。以下で得られたデータでは、反応時間は、摂氏40~45の温度で25分である。
【0158】
ALPの定量用のセンサストリップと同様に、作用電極の試薬マトリックスに酵素又は媒介物は必要ない。これは、式5に示す反応物生成物アナリンが、電極表面で直接電気化学的に酸化されるからである。
【0159】
ALPの血液試料の濃度値をニューヨーク州タリータウンにあるシーメンヘルスケアダイアグノスティックス社(Siemens Healthcare Diagnostics,Inc.)によって販売されているDimension RxL化学分析器として知られている血液分析器を使って取得した。検体検査ストリップからの検査データは、CH Instruments Potentiostat、model no.CHI 812B又はmodelno.CHI 660Aを使って取得した。
【0160】
[電流センサを使用したGGT定量のための検査データ]
血中GGT濃度と電流測定検査ストリップに基づく応答との間の直線応答性を判定するために、検査に3つの異なるGGT濃度レベルを使用した。それらのレベルは52IU/L、153IU/L、430IU/Lである。試料は、これらのGGTレベル用に準備され、各GGT濃度について電流測定を10回行った。各測定で、新しいセンサストリップを使用した。表5は、ALPの定量で得られた検査データを示す。
【0161】
【0162】
図23は、様々なGGT濃度に対して測定された作用電極(すなわち、電流検出電極)の電流応答を示す。電流応答は、検査されたGGT濃度範囲全体でアニリン濃度に対して線形である。GGT濃度は、アニリン濃度に正比例する。
【0163】
本明細書では、本発明の好ましい実施形態について説明されてきたが、上記の説明は例示にすぎない。当業者であれば、本明細書で開示された発明のさらなる変更に想到することであろう。また、そのようなあらゆる全ての変更は、添付の特許請求の範囲に定義されるように、本発明の範囲内にあると見なされる。
【国際調査報告】