(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-25
(54)【発明の名称】グリニャールカップリング反応及びチオール化反応によるα-ヒドロキシエステルの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 319/18 20060101AFI20230118BHJP
C07C 323/52 20060101ALI20230118BHJP
C07C 69/716 20060101ALI20230118BHJP
C07C 67/30 20060101ALI20230118BHJP
A61K 31/22 20060101ALI20230118BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20230118BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20230118BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20230118BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20230118BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20230118BHJP
A61P 3/02 20060101ALI20230118BHJP
A23K 50/10 20160101ALI20230118BHJP
A23K 20/105 20160101ALI20230118BHJP
【FI】
C07C319/18
C07C323/52
C07C69/716 Z
C07C67/30
A61K31/22
A61K9/08
A61K9/14
A61K47/04
A61P15/00 171
A61P1/16
A61P3/02 101
A23K50/10
A23K20/105
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022523563
(86)(22)【出願日】2020-11-19
(85)【翻訳文提出日】2022-04-21
(86)【国際出願番号】 US2020061242
(87)【国際公開番号】W WO2021102115
(87)【国際公開日】2021-05-27
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2019/120393
(32)【優先日】2019-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500462328
【氏名又は名称】ケミン、インダストリーズ、インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】KEMIN INDUSTRIES, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100133765
【氏名又は名称】中田 尚志
(72)【発明者】
【氏名】ファング,シェンショウ
(72)【発明者】
【氏名】リー,ファンイー
(72)【発明者】
【氏名】シェイ,リー
(72)【発明者】
【氏名】ニュイエンス,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ラオ,イー
(72)【発明者】
【氏名】サラクラン,ジャトゥポルン
【テーマコード(参考)】
2B005
2B150
4C076
4C206
4H006
【Fターム(参考)】
2B005BA01
2B005BA03
2B150AA02
2B150AB07
2B150AB10
2B150DC11
4C076AA11
4C076AA29
4C076BB37
4C076CC16
4C076CC17
4C076CC22
4C076CC40
4C076DD29
4C076FF02
4C076FF12
4C206AA01
4C206AA04
4C206JA23
4C206MA02
4C206MA05
4C206MA36
4C206MA54
4C206MA72
4C206NA14
4C206ZA75
4C206ZA81
4C206ZC22
4H006AA02
4H006AB10
4H006AC29
4H006AC63
4H006BC10
4H006BN10
4H006KA31
4H006TA04
(57)【要約】
本開示は、シュウ酸エステルへのビニルグリニャール試薬の添加及び得られる二重結合のチオール化によるα-ヒドロキシエステルの製造方法を提供する。本明細書に開示の方法に従って製造されたα-ヒドロキシエステル及び合成中間体、ならびに上記α-ヒドロキシエステルを含む組成物も提供される。
【選択図】
図3B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
(式中、
R
1はC
1~4アルキルであり、
R
2はC
1~8アルキルまたはC
4~7シクロアルキルであり、
R
3及びR
4はそれぞれ独立に、H、メチル、及びエチルから選択される)
の化合物の製造方法であって、
式(IV):
【化2】
の化合物を、式(A):
【化3】
(式中、XはBrまたはClである)
のビニルグリニャール試薬とカップリングさせて式(III):
【化4】
の化合物を形成することと、
前記式(III)の化合物を前記式(I)の化合物に転化させることと
を含む、前記方法。
【請求項2】
R
1がメチルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
それぞれのR
2が、メチル、エチル、及びイソプロピルから選択される、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
それぞれのR
2がイソプロピルである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
R
3及びR
4がそれぞれHである、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記式(I)の化合物が式(I-A):
【化5】
の化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記式(III)の化合物が式(III-A):
【化6】
の化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記式(A)のビニルグリニャール試薬がビニル-MgClである、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
XがClである、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記カップリングさせることが、LiClまたはZnCl
2などの塩添加剤の存在下で行われる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記カップリングさせることが、前記式(IV)の化合物を、約0.8~約2.0モル当量、もしくは約1.0~約1.75モル当量、もしくは約1.0~約1.5モル当量、もしくは約1.2~約1.75モル当量、もしくは約1.4~約1.6モル当量、または約1.5モル当量の前記式(A)のビニルグリニャール試薬と混合することを含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記カップリングさせることが、約-80℃~約10℃、もしくは約-80℃~約-70℃、もしくは約-50℃~約10℃、もしくは約-40℃~約5℃、もしくは約-50℃~約-20℃、もしくは約-30℃~約-20℃の範囲の温度で、または約-78℃、もしくは約-20℃、もしくは約0℃の温度で行われる、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記カップリングさせることが非プロトン性溶媒中で行われる、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記非プロトン性溶媒が、任意選択でヘプタンもしくはヘキサンなどの非極性溶媒と混合された、MTBE、THF、またはEt
2Oなどのエーテルである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記非プロトン性溶媒が、任意選択でヘプタンと混合されたMTBEまたはTHFである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
カップリング反応の濃度が、約0.25M~約1.3M(反応溶媒のリットル当りの前記式(IV)の化合物のモル数)、もしくは約0.4M~約1.1M、もしくは約0.4M~約0.5M、もしくは約0.9M~約1.0M、または約0.5M、もしくは約1Mである、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記カップリングさせることにより、前記式(III)の化合物と式(III-Z):
【化7】
の化合物との混合物であって、少なくとも5:1、または少なくとも6:1、または少なくとも7:1、または少なくとも8:1、または少なくとも9:1、または少なくとも10:1、または少なくとも15:1、または少なくとも20:1の(III):(III-Z)の比率の前記混合物が生成する、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記式(III)の化合物を前記式(I)の化合物に転化させることが、式(B)または式(C):
R
1-SH (B) R
1-S
-M
+ (C)
(式中、M
+は金属カチオンである)
のチオール化剤で前記式(III)の化合物をチオール化して式(II):
【化8】
の化合物を形成することと、
前記式(II)の化合物を還元して前記式(I)の化合物を形成することと
を含む、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記チオール化することが、添加剤の存在下で前記式(B)のチオール化剤によって行われる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記添加剤が、
トリエチルアミン、ジエチルアミン、ペンチルアミン、もしくはヘキシルアミンなどのアミン塩基、
ジメチルフェニルホスフィン(DMPP)もしくはトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)などのホスフィン、
NaHCO
3もしくはNa
2CO
3などの塩基性塩、
スカンジウム(III)トリフラートもしくは無水塩化セリウム(III)などのルイス酸、または
Au-NHC錯体などのN-ヘテロ環式カルベン(NHC)錯体
である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記添加剤がトリエチルアミンである、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記式(C)のチオール化剤から前記式(B)のチオール化剤を生成させることをさらに含む、請求項18~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記生成させることが酸触媒の存在下で行われる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記酸触媒が、酢酸、p-トルエンスルホン酸、またはH
2SO
4である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記チオール化することが、約-40℃~約10℃、もしくは約-35℃~約5℃、もしくは約-30℃~約-20℃の範囲の温度、または約0℃で行われる、請求項22~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記チオール化剤が式(C)であり、前記チオール化することが、約-80℃~約35℃、または約15℃~約35℃の範囲の温度で行われる、請求項18~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
M
+がNa
+またはK
+である、請求項18~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記式(III)の化合物を有機溶媒中に抽出して式(III)の抽出液を形成することを含み、
前記式(III)の化合物をチオール化することが、前記式(III)の抽出液に前記チオール化剤を添加することを含む、
請求項18~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記式(II)の化合物を還元することが、NaBH
4、LiBH
4、及びAl(O-iPr)
3/iPrOHから選択される還元剤の存在下で行われる、請求項18~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記還元剤がNaBH
4である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
還元することが、
(a)メタノール、エタノール、もしくはイソプロパノールなどのアルコール溶媒中で、且つ/あるいは
(b)約0.25~約1.0モル当量の還元剤を使用して、且つ/あるいは
(c)前記還元剤がAl(O-iPr)
3/iPrOHではない場合には、約-10℃~約30℃の範囲の温度、もしくは約0℃で、または前記還元剤がAl(O-iPr)
3/iPrOHである場合には、約50℃~約90℃の範囲の温度、もしくは約80℃で
行われる、請求項18~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記チオール化することが、前記式(II)の化合物を有機溶媒中に抽出して式(II)の抽出液を形成することを含み、前記還元することが、前記式(II)の抽出液に前記還元剤を添加することを含む、請求項18~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
オキサリルクロリドをR
2-OHでエステル化して前記式(IV)の化合物を形成することをさらに含む、請求項1~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記エステル化することが、N,N-ジメチルピリジン、ピリジン、またはトリエチルアミンなどの少なくとも1種のアミン塩基の存在下で行われる、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記エステル化することが、約-5℃~約30℃の範囲の温度で行われる、請求項33または請求項34に記載の方法。
【請求項36】
酸触媒及び共沸による水除去、モレキュラーシーブ、またはそれらの組み合わせなどの任意選択の脱水剤の存在下、R
2-OHでシュウ酸をエステル化して前記式(IV)の化合物を形成することをさらに含む、請求項1~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記酸触媒が、p-TsOH;H
2SO
4;Amberlyst(登録商標)-15、Dowex(登録商標)、またはM32などのマクロポーラススルホン酸樹脂触媒;ケイアルミン酸塩;リン酸;ボロン酸;アセチルクロリド;及びpKaが3未満の酸から選択される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記酸触媒がp-TsOHまたはH
2SO
4である、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記酸触媒が、約0.01~約0.1モル当量もしくは約0.025~約0.05モル当量のp-TsOH、または約1~約3モル当量もしくは約2モル当量のH
2SO
4である、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
前記エステル化することが反応溶媒の還流温度で行われる、請求項36~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記エステル化することが、トルエン、CHCl
3、及びイソプロパノールから選択される反応溶媒中で行われる、請求項33~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
式(I):
【化9】
(式中、
R
1はC
1~4アルキルであり、
R
2はC
1~8アルキルまたはC
4~7シクロアルキルであり、
R
3及びR
4はそれぞれ独立に、H、メチル、及びエチルから選択される)
の化合物の製造方法であって、
式(II):
【化10】
の化合物を還元剤で還元して前記式(I)の化合物を形成することを含む、前記方法。
【請求項43】
R
1がメチルである、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
それぞれのR
2が、メチル、エチル、及びイソプロピルから選択される、請求項42または請求項43に記載の方法。
【請求項45】
それぞれのR
2がイソプロピルである、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
R
3及びR
4がそれぞれHである、請求項42~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記式(I)の化合物が式(I-A):
【化11】
の化合物である、請求項42に記載の方法。
【請求項48】
前記還元剤が、NaBH
4、LiBH
4、及びAl(O-iPr)
3/iPrOHから選択される、請求項42~47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
前記還元剤がNaBH
4である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
還元することが、
(a)メタノール、エタノール、もしくはイソプロパノールなどのアルコール溶媒中で、且つ/あるいは
(b)約0.25~約1.0モル当量の還元剤を使用して、且つ/あるいは
(c)前記還元剤がAl(O-iPr)
3/iPrOHではない場合には、約-10℃~約30℃の範囲の温度、もしくは約0℃で、または前記還元剤がAl(O-iPr)
3/iPrOHである場合には、約50℃~約90℃の範囲の温度、もしくは約80℃で
行われる、請求項42~49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
式(III):
【化12】
(式中、R
3及びR
4はそれぞれ独立に、H、メチル、及びエチルから選択される)
の化合物を式(B)または式(C):
R
1-SH (B) R
1-S
-M
+ (C)
(式中、M
+は金属カチオンである)
のチオール化剤でチオール化して、前記式(II)の化合物を形成することをさらに含む、請求項42~49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
前記式(III)の化合物が式(III-A):
【化13】
の化合物である、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
式(I-A):
【化14】
の化合物の製造方法であって、
シュウ酸をイソプロパノールでエステル化してシュウ酸ジイソプロピルを形成することと、
シュウ酸ジイソプロピルをビニルマグネシウムブロミドとカップリングさせて式(III-A):
【化15】
の化合物を形成することと、
前記式(III-A)の化合物をCH
3SHでチオール化して式(II-A):
【化16】
の化合物を形成することと、
前記式(II-A)の化合物を還元して前記式(I-A)の化合物を形成することと
を含む、前記方法。
【請求項54】
少なくとも約95%の、GC、HPLC、及び/もしくは重量による純度で前記式(I)または式(I-A)の化合物を与える、請求項1~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
重量、GC、及び/もしくはHPLCによる純度が、少なくとも約95%、もしくは少なくとも約96%、もしくは少なくとも約97%、もしくは少なくとも約98%である式(I)または式(I-A)の粗化合物であって、精製されていないか、または分留によってのみ精製された前記粗化合物を与える、請求項1~54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
実質的に単量体形態であるか、または二量体化合物及び/もしくはオリゴマー化合物の含有量が約5重量%未満、もしくは約3重量%未満である式(I)あるいは式(I-A)の粗化合物であって、精製されていないか、または分留によってのみ精製された前記粗化合物を与える、請求項1~55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
請求項1~56のいずれか1項に記載の方法によって製造された式(I)または式(I-A)の化合物。
【請求項58】
請求項57に記載の化合物を含む動物飼料組成物。
【請求項59】
乳牛飼料組成物などの牛飼料組成物、または乳牛飼料などの牛飼料用の添加剤である、請求項58に記載の動物飼料組成物。
【請求項60】
乳牛飼料組成物である、請求項59に記載の動物飼料組成物。
【請求項61】
動物飼料または動物飼料添加剤である、請求項58~60のいずれか1項に記載の動物飼料組成物。
【請求項62】
前記動物飼料添加剤が液体形態または固体形態であり、前記液体形態が前記化合物と任意選択で液体担体とを含み、前記固体形態が固体担体と混合された前記化合物を含み、任意選択で前記固体担体がシリカ(二酸化ケイ素)であり、任意選択で、前記化合物と固体担体との比が、約5:1~約1:5、または約3:2である、請求項61に記載の動物飼料組成物。
【請求項63】
生物学的に利用可能なメチオニンの乳牛への供給方法であって、前記牛に、請求項57に記載の化合物または請求項58~62のいずれか1項に記載の動物飼料組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項64】
少なくとも約50%生物学的に利用可能なメチオニンの乳牛への供給方法であって、前記牛に、請求項57に記載の化合物または請求項58~62のいずれか1項に記載の動物飼料組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項65】
乳牛から得られる乳の改善方法であって、前記牛に、請求項57に記載の化合物または請求項58~62のいずれか1項に記載の動物飼料組成物を供給することを含む、前記方法。
【請求項66】
前記乳の改善が前記乳中のタンパク質含有量の増加を含む、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記乳の改善が前記乳中の脂肪含有量の増加を含む、請求項65に記載の方法。
【請求項68】
乳牛から得られる乳の改善方法における使用のための、請求項57に記載の化合物または請求項58~62のいずれか1項に記載の動物飼料組成物。
【請求項69】
前記乳の改善が前記乳中のタンパク質含有量の増加を含む、請求項68に記載の使用のための化合物または組成物。
【請求項70】
前記乳の改善が前記乳中の脂肪含有量の増加を含む、請求項68に記載の使用のための化合物または組成物。
【請求項71】
牛の状態の改善方法であって、前記牛に、請求項57に記載の化合物または請求項58~62のいずれか1項に記載の動物飼料組成物を供給することを含む、前記方法。
【請求項72】
前記牛の前記状態の改善が受胎能力の改善を含む、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記牛の前記状態の改善が肝機能の改善を含む、請求項71に記載の方法。
【請求項74】
前記牛の前記状態の改善がエネルギーの増加を含む、請求項71に記載の方法。
【請求項75】
投与することもしくは供給することが、前記牛に前記動物飼料組成物を給餌することを含む、請求項63~67または71~74のいずれか1項に記載の方法。
【請求項76】
牛の状態の改善方法における使用のための、請求項57に記載の化合物または請求項58~62のいずれか1項に記載の動物飼料組成物。
【請求項77】
前記牛の前記状態の改善が受胎能力の改善を含む、請求項76に記載の使用のための化合物または組成物。
【請求項78】
前記牛の前記状態の改善が肝機能の改善を含む、請求項76に記載の使用のための化合物または組成物。
【請求項79】
前記牛の前記状態の改善がエネルギーの増加を含む、請求項76に記載の使用のための化合物または組成物。
【請求項80】
2-オキソブタ-3-エン酸イソプロピルである化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は2019年11月22日出願の国際出願第PCT/CN2019/120393号の優先権を主張し、上記出願は、いずれの目的についてもその全体が本明細書に援用される。
【0002】
本開示は、シュウ酸エステルへのビニルグリニャール試薬の添加及び得られる二重結合のチオール化によるα-ヒドロキシエステルの製造方法を提供する。本明細書に開示の方法に従って製造されたα-ヒドロキシエステル及び合成中間体、上記α-ヒドロキシエステルを含む組成物、ならびに上記組成物の使用方法も提供される。
【背景技術】
【0003】
天然アミノ酸のα-ヒドロキシエステル類似体は、栄養補助食品として、ならびに酵素プロセス及びタンパク質機能の研究において有用である。かかるエステルの合成には、通常、H2SO4またはAmberlyst(登録商標)カチオン交換樹脂などの強酸の存在下での、対応する酸とアルコールとの酸によって触媒されるフィッシャーエステル化、強酸の存在下での、対応するニトリルの酸によって媒介される加水分解、または酵素によって媒介される方法が使用される。しかしながら、酸によって触媒される手法では、出発物質及び生成物の分解、ならびに二量体成分及びオリゴマー成分による生成物の汚染が生じる。かかる方法では一般的に収率が低く、且つポリマー副生成物から目的化合物を単離するには複雑な精製技法が必要になる。酵素的手法では、高価で不安定な反応剤及び特別な反応条件が必要とされる。
【0004】
特に重要なα-ヒドロキシエステルは2-ヒドロキシ-4-(メチルチオ)ブタン酸イソプロピル(HMBi)である。HMBiは、メチオニンのヒドロキシ類似体である2-ヒドロキシ-4-(メチルチオ)ブタン酸(HMBA)のイソプロピルエステルである。HMBiは、牛を始めとする反すう動物においてメチオニンを補うことを助長するために使用される。乳牛のメチオニンを十分なレベルとすることは、乳タンパク質の合成の望ましいレベル、延いては乳の産生の望ましいレベルを維持するのに役立つ。しかしながら、動物の飼料中のメチオニン含有量は大幅に不十分であり、乳牛の食餌における主要な制限因子となっている。HMBiは第一胃壁を通って容易且つ迅速に拡散し、第一胃中の微生物による分解を回避するメチオニンの化学的誘導体である。HMBiは、第一胃壁を通過すると、肝臓で代謝され、乳牛における乳タンパク質合成に利用可能となる。
【0005】
安価で非毒性の反応剤及び穏和な反応条件を使用し、生成物であるエステルを高収率且つ高純度で与える、HMBiなどのα-ヒドロキシエステルを合成するためのさらなる方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
一態様において、本開示は、
式(I):
【化1】
(式中、
R
1はC
1~4アルキルであり、
R
2はC
1~8アルキルまたはC
4~7シクロアルキルであり、
R
3及びR
4はそれぞれ独立に、H、メチル、及びエチルから選択される)
の化合物の製造方法であって、
式(IV):
【化2】
の化合物を、式(A):
【化3】
(式中、XはBrまたはClである)
のビニルグリニャール試薬とカップリングさせて式(III):
【化4】
の化合物を形成することと、
上記式(III)の化合物を上記式(I)の化合物に転化させることと
を含む、上記方法を対象とする。
【0007】
一態様において、本開示は、式(I)の化合物の製造方法であって、
式(II):
【化5】
の化合物を還元剤で還元して上記式(I)の化合物を形成することを含む、上記方法を対象とする。
【0008】
いくつかの態様において、上記式(I)の化合物は式(I-A):
【化6】
の化合物である。
【0009】
別の態様において、本開示は、式(I-A):
【化7】
の化合物の製造方法であって、
シュウ酸をイソプロパノールでエステル化してシュウ酸ジイソプロピルを形成することと、
シュウ酸ジイソプロピルをビニルマグネシウムブロミドとカップリングさせて式(III-A):
【化8】
の化合物を形成することと、
上記式(III-A)の化合物をCH
3SHでチオール化して式(II-A):
【化9】
の化合物を形成することと、
上記式(II-A)の化合物を還元して上記式(I-A)の化合物を形成することと
を含む、上記方法を対象とする。
【0010】
別の態様において、本開示は、本明細書に記載の方法のいずれかのように製造された式(I)または式(I-A)の化合物を対象とする。
【0011】
別の態様において、本開示は2-オキソブタ-3-エン酸イソプロピルを対象とする。
【0012】
別の態様において、本開示は、本明細書に記載の式(I)または式(I-A)の化合物を含む動物飼料組成物を対象とする。いくつかの態様において、上記動物飼料は乳牛飼料などの牛飼料である。
【0013】
別の態様において、本開示は、生物学的に利用可能なメチオニンの乳牛への供給方法であって、上記牛に、本明細書に記載の式(I)もしくは式(I-A)の化合物または動物飼料組成物を投与することを含む上記方法を対象とする。別の態様において、本開示は、少なくとも約50%生物学的に利用可能なメチオニンの乳牛への供給方法であって、上記牛に、本明細書に記載の式(I)もしくは式(I-A)の化合物または動物飼料組成物を投与することを含む上記方法を対象とする。別の態様において、本開示は、乳牛から得られる乳の改善方法であって、上記牛に、本明細書に記載の式(I)もしくは式(I-A)の化合物または動物飼料組成物を投与することを含む上記方法を対象とする。
【0014】
別の態様において、本開示は、牛の状態の改善方法であって、上記牛に、本明細書に記載の式(I)もしくは式(I-A)の化合物または動物飼料組成物を供給することを含む上記方法を対象とする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1A】
図1Aは、例1に記載のシュウ酸ジイソプロピルの
13C NMRスペクトルである。
【
図1B】
図1Bは、例1に記載のシュウ酸ジイソプロピルの
1H NMRスペクトルである。
【
図2A】
図2Aは、例3に記載の2-オキソ-4-メチルチオブタン酸イソプロピルエステルの
13C NMRスペクトルである。
【
図2B】
図2Bは、例3に記載の2-オキソ-4-メチルチオブタン酸イソプロピルエステルの
1H NMRスペクトルである。
【
図3A】
図3Aは、例5に記載の2-ヒドロキシ-4-メチルチオブタン酸イソプロピルエステル(HMBi)の
13C NMRスペクトルである。
【
図3B】
図3Bは、例5に記載の2-ヒドロキシ-4-メチルチオブタン酸イソプロピルエステル(HMBi)の
1H NMRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
別段の明示がない限り、本開示における用語は、当業者によって理解される、それらの用語の明白で通常の意味を有する。本明細書及び特許請求の範囲で使用される以下の用語は、本開示の目的のために定義され、以下の意味を有する。
【0017】
本明細書では、用語「2-ヒドロキシ-4-(メチルチオ)ブタン酸イソプロピル」、「HMBi」、及び「2-ヒドロキシ-4-(メチルチオ)ブタン酸のイソプロピルエステル」とは、以下の構造(式(I-A)として以下に示される、R
1がメチルであり、R
2がイソプロピルである式(I))の化合物をいう。
【化10】
【0018】
本明細書では、用語「2-ヒドロキシ-4-(メチルチオ)ブタノアート」、「2-ヒドロキシ-4-(メチルチオ)ブタン酸」、及び「HMBA」とは、以下の構造の化合物をいう。
【化11】
【0019】
本明細書に記載の化合物は、ラセミ形態で、単一の鏡像異性体として、または鏡像異性体の混合物として存在していてもよい。したがって、例えば、HMBiとは、ラセミHMBi(すなわち「DL-HMBi」)、またはD-HMBiもしくはL-HMBi、あるいはそれらの混合物をいう。
【0020】
本明細書に記載の化合物はまた、塩の形態で存在していてもよい。本明細書に示される化学式は、示される構造ならびにそれらの塩形態を包含すると理解する必要がある。例えば、ある化合物がカルボン酸を含む場合、当該の式は、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、またはカルシウム塩などの共役塩基の塩形態(カルボン酸塩)も包含する。ある化合物がインドール基またはイミダゾール基を含む場合、当該の式は、その共役酸の塩、例えばHCl塩を包含する。
【0021】
「アルキル」とは、1~8個の炭素原子(例えば、1~6個の炭素原子、1~4個の炭素原子、もしくは1~3個の炭素原子)の線状、飽和、一価の炭化水素ラジカル、または3~8個の炭素原子(例えば、3~6個の炭素原子、3~4個の炭素原子、もしくは3個の炭素原子)の、分岐、飽和、一価の炭化水素ラジカル、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル(全ての異性体形態を含む)などを意味する。
【0022】
「シクロアルキル」とは、3~10個の炭素原子の、環状、飽和、一価の炭化水素ラジカル、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、またはシクロヘキシルなどを意味する。
【0023】
「任意選択の」または「任意選択で」とは、それに続いて記載される事象または状況が生じてもよいが、必ずしも生じる必要はないこと、及び上記記述は、上記事象または状況が生じる場合と生じない場合とを包含することを意味する。例えば、「任意選択で-OHで置換された」アルキル基とは、-OHが存在していてもよいが、必ずしも存在する必要はないことを意味し、且つ上記記述は、当該アルキル基が-OH基で置換された状況及び該アルキル基が-OH基で置換されていない状況を包含する。
【0024】
用語「反応溶媒」とは、溶解した反応物質の担体に使用される有機液体をいう。いくつかの実施形態において、当該反応の反応剤の1種が、反応剤として且つ反応溶媒として機能する。他の実施形態において、上記反応剤が異なる反応溶媒で希釈される。
【0025】
用語「酸触媒」とは、化学量論未満の量で反応に添加され、当該反応を触媒する機能をもつ酸をいう。酸触媒は、ブレンステッド酸(pKaが7未満の酸など、例えば、HCl、H2SO4、KHSO4、酢酸など)またはルイス酸(ボロン酸など)であってよい。いくつかの実施形態において、上記酸は、例えばアセチルクロリドまたはTMSClの水またはアルコールとの反応によって、インシチュで生成する。
【0026】
用語「濃度」とは溶媒中の溶質の量をいう。本明細書では、濃度は、重量%によってまたはモル濃度(M)もしくは規定度(N)によって示される場合がある。
【0027】
用語「ヘプタン」または「n-ヘプタン」とは、純粋なn-ヘプタン、または他のC7異性体との混合物(例えば、少なくとも90%のn-ヘプタン、且つ少なくとも95%の総C7異性体)中のn-ヘプタンをいう。
【0028】
用語「還流温度」または「還流」とは、反応溶媒が沸騰する温度をいい、通常、凝縮器を使用して、溶媒の蒸気を冷却して凝縮させ、反応器に戻す。所与の溶媒が還流に到達する正確な温度は、環境因子に応じて変化する場合がある。
【0029】
用語「約」とは、明示的な指示の有無にかかわらず、例えば、整数、分数、及び百分率を含む数値をいう。用語「約」とは一般に、当業者が記載された値と等価(例えば、同様の機能または結果を有する)と見なすであろう数値の範囲(例えば、記載された数値の±5~10%)をいう。「少なくとも」及び「約」などの用語が数値または範囲の列挙の前にある場合、当該の用語は該列挙に示される全ての値または範囲を修飾する。場合によっては、用語「約」は、丸められた数値を包含する場合がある。
【0030】
用語「抽出する(extract)」、「抽出(extraction)」、または「抽出すること(extracting)」とは、有機相と水相との間で物質を分配させる過程をいう。いくつかの態様において、上記抽出することは、反応混合物または反応混合物の濃縮された残渣に対して行われる。「抽出液(extract)」は、水相から一旦分離された有機相である。本明細書では、抽出することは、単蒸留、減圧蒸留、共沸蒸留、分留、連続蒸留、フラッシュクロマトグラフィー、HPLC、または再結晶などの粗反応生成物に対して行われる精製方法を包含しない。
【0031】
本明細書では、「精製」または「精製すること」とは、反応の完結後に該反応の生成物を単離する方法をいう。精製方法としては、単蒸留、減圧蒸留、共沸蒸留、分留、連続蒸留、フラッシュクロマトグラフィー、HPLC、または再結晶が挙げられる。
【0032】
用語「実質的に」、例えば「実質的に単量体形態で」とは、二量体類似体及び/またはオリゴマー類似体に関する、式(I)の化合物の純度をいう。
【0033】
本明細書では、用語「二量体」または「二量体化合物」とは、所与の単量体構造の2つの分子、または2種の異なる単量体構造のそれぞれ1つの分子が単一の分子に縮合した化合物をいう。本明細書では、用語「オリゴマー」または「オリゴマー化合物」とは、所与の単量体構造の3つ以上の分子、または少なくとも2種の異なる単量体構造の3つ以上の分子が単一のポリマー構造に縮合した化合物をいう。HMBiが、ホモオリゴマーまたはヘテロHMBiオリゴマー(少なくとも1つのHMBi単量体単位を含む)を形成する場合がある。
【0034】
用語「純度」または化合物の百分率(例えば、x%のHMBi)という表現は、重量により、GC分析により、及び/またはHPLC分析により測定された、試料中の化合物の純度をいう。いくつかの態様において、上記重量による純度は、GCまたはUV検出を用いたHPLC分析によって測定される。
【0035】
用語「重量による純度」とは、試料中の化合物の、該試料中の他の成分に関する純度であって、該試料の質量に対する当該化合物の質量の比が百分率として表された上記純度をいう。
【0036】
ガスクロマトグラフィー(GC)純度またはHPLC純度に関する用語「純度」とは、クロマトグラム中の全てのピーク面積の合計に対する対象化合物のピーク面積の計算された純度(%で表記)を意味する。いくつかの態様において、純度は、UV検出を備えたHPLCによって測定される。
【0037】
いくつかの態様において、純度は、規制された製品の販売規則に準拠して要求される純度である。例えば、HMBiの場合、上記化合物が含む水は0.5%以下である(例えば、カールフィッシャー分析によって測定して)。(2013年5月22日付のCommission Implementing Regulation (EU)第469/2013号を参照されたい)。
【0038】
用語「粗」、「粗生成物」、及び「粗化合物」とは、反応混合物の濃縮後、ならびに/または反応混合物の有機溶媒中への抽出及び有機抽出液の濃縮後の反応混合物から得られる化合物の試料をいう。
【0039】
用語「動物飼料組成物」とは、動物の栄養補給における使用に適した製品をいう。いくつかの態様において、上記動物飼料組成物は、動物飼料(例えば、栄養補助剤を含む食物または飲料水)、及びいくつかの態様において、上記動物飼料組成物は飼料添加剤である。上記飼料添加剤は、動物飼料または飲料水との混合に適する。
【0040】
用語「担体」とは動物飼料添加剤に適した担体をいう。好適な担体としては、水(液体または固体の飼料添加剤の場合)またはシリカ(固体の飼料添加剤の場合)が挙げられる。いくつかの態様において、上記担体はシリカ(二酸化ケイ素)である。いくつかの態様において、上記飼料添加剤は上記化合物及びシリカを3:2の比率で含む。
【0041】
いくつかの態様において、動物飼料は、2.5重量%または1重量%のHMBiが補充された、造粒された、タンパク質に富む飼料(例えば、落花生系、なたねかす系、及び/または大豆かす系)を含む。いくつかの態様において、動物飼料は、0.5重量%もしくは3.0重症%のHMBiが補充された、約45%及び約50%の穀物(トウモロコシ、大麦、小麦、及び/または小麦副産物)を含む。いくつかの態様において、動物飼料は、それぞれに2.5重量%もしくは1重量%のHMBiが補充された、糖蜜を含む粉飼または造粒飼料を含む。
【0042】
用語「投与すること」とは、対象動物に栄養補助剤を与えることをいう。投与することは、例えば、上記化合物を含む食物または飲料水の摂取を通して、または注射もしくは他の投与様式によって経口的に行われてもよい。
【0043】
本明細書では、「乳を改善すること」とは、未処置の対照動物によって産生された乳と比較した、処置した牛または処置した牛の群によって産生された乳の質及び/または量の改善をいう。乳の改善としては、例えば、乳中のタンパク質含有量の増加(例えば、α、β、及び/またはκタンパク質の増加)、乳中の脂肪含有量の増加、及び/または産生される乳の容積の増加が挙げられる。
【0044】
本明細書では、「牛の状態を改善すること」とは、未処置の対照動物の健康指標と比較した、処置した牛または処置した牛の群の健康指標の改善をいう。牛の状態の改善とは、例えば、未処置の動物と比較した、いくつかの特徴、例えば体重の増加をいう場合がある。
【0045】
本明細書では、「受胎能力の改善」としては、例えば、出産と生殖との間の間隔を短縮すること、及び/または授精中の受精率を増加させることが挙げられる。
【0046】
本明細書では、「肝機能の改善」としては、例えば、代謝上の問題の低減、超低密度リポタンパク質のレベルの改善、高ケトン血症の低減、及び/または脂肪肝の発生率の低減が挙げられる。
【0047】
本明細書では、「エネルギーの増加」とは、例えば、消化可能な有機物の増加、延いては動物にとってより多くのエネルギーにつながる、第一胃中での発酵過程の刺激をいう。
【0048】
合成プロセス
本開示は、式(I)または式(I-A)の化合物ならびに/あるいは中間体の製造方法であって、以下の反応、すなわち、
a)オキサリルクロリドもしくはシュウ酸のR2-OHでのエステル化によるシュウ酸ジエステルの形成、
b)上記シュウ酸ジエステルのアルケニルグリニャール試薬とのカップリングによるアルケニル置換α-ケトエステル(2-オキソブタ-3-エン酸エステル)の形成、
c)上記アルケニル置換α-ケトエステルのチオール化による4-アルキルチオ-2-オキソ-ブタン酸エステルの形成、及び
d)上記4-アルキルチオ-2-オキソ-ブタン酸エステルの還元による式(I)もしくは式(I-A)の化合物の形成
の1つ以上を介する上記方法に関する。シュウ酸は、例えば、シュウ酸またはシュウ酸二水和物として使用することができる。
【0049】
いくつかの実施形態において、本開示は、
式(I):
【化12】
(式中、
R
1はC
1~4アルキルであり、
R
2はC
1~8アルキルまたはC
4~7シクロアルキルであり、
R
3及びR
4はそれぞれ独立に、H、メチル、及びエチルから選択される)
の化合物の製造方法であって、
式(IV):
【化13】
の化合物を、式(A):
【化14】
(式中、XはBrまたはClである)
のビニルグリニャール試薬とカップリングさせて式(III):
【化15】
の化合物を形成することと、
上記式(III)の化合物を上記式(I)の化合物に転化させることと
を含む、上記方法に関する。
【0050】
いくつかの実施形態において、本開示は、式(IV)の化合物を式(A)のビニルグリニャール試薬とカップリングさせることを含む式(III)の化合物の製造方法に関する。
【0051】
いくつかの実施形態において、R1はメチルである。
【0052】
いくつかの実施形態において、それぞれのR2は、メチル、エチル、及びイソプロピルから選択される。いくつかの実施形態において、それぞれのR2はイソプロピルである。
【0053】
いくつかの実施形態において、R3及びR4はそれぞれHである。
【0054】
いくつかの実施形態において、上記式(I)の化合物は式(I-A):
【化16】
の化合物である。
【0055】
いくつかの実施形態において、上記式(III)の化合物は式(III-A):
【化17】
の化合物である。
【0056】
いくつかの実施形態において、上記式(A)のビニルグリニャール試薬はビニル-MgClである。いくつかの実施形態において、XはClである。いくつかの実施形態において、グリニャールカップリングはLiClまたはZnCl2などの塩添加剤の存在下で行われる。いくつかの実施形態において、上記塩添加剤はLiClである。
【0057】
いくつかの実施形態において、上記カップリングさせることは、上記式(IV)の化合物を、約0.8~約2.0モル当量、もしくは約1.0~約1.75モル当量、もしくは約1.0~約1.5モル当量、もしくは約1.2~約1.75モル当量、もしくは約1.4~約1.6モル当量、または約1.5モル当量の上記式(A)のビニルグリニャール試薬と混合することを含む。
【0058】
いくつかの実施形態において、上記カップリングさせることは、約-80℃~約10℃、もしくは約-80℃~約-70℃、もしくは約-50℃~約10℃、もしくは約-40℃~約5℃、もしくは約-50℃~約-20℃、もしくは約-30℃~約-20℃の範囲の温度で、または約-78℃、もしくは約-20℃、もしくは約0℃の温度で行われる。いくつかの実施形態において、上記カップリングさせることは、上記式(IV)の化合物のMTBE溶液を、約-50℃~約-20℃、もしくは約-30℃~約-20℃の温度で、約1.5モル当量の上記式(A)のビニルグリニャール試薬と混合することを含む。いくつかの実施形態において、上記ビニルグリニャール試薬は、ゆっくりと且つ/または数回に分けて上記式(IV)の化合物に添加される。
【0059】
いくつかの実施形態において、上記カップリングさせることは非プロトン性溶媒中で行われる。いくつかの実施形態において、上記非プロトン性溶媒は、任意選択でヘプタンもしくはヘキサンなどの非極性溶媒と混合された、MTBE、THF、またはEt2Oなどのエーテルである。いくつかの実施形態において、上記非プロトン性溶媒は、任意選択でヘプタンと混合されたMTBEまたはTHFである。いくつかの実施形態において、カップリング反応の濃度は、約0.25M~約1.3M(反応溶媒のリットル当りの上記式(IV)の化合物のモル数)、もしくは約0.4M~約1.1M、もしくは約0.4M~約0.5M、もしくは約0.9M~約1.0M、または約0.5M、もしくは約1Mである。
【0060】
いくつかの実施形態において、上記カップリングさせることにより、上記式(III)の化合物と式(III-Z):
【化18】
の化合物との混合物であって、少なくとも5:1、または少なくとも6:1、または少なくとも7:1、または少なくとも8:1、または少なくとも9:1、または少なくとも10:1、または少なくとも15:1、または少なくとも20:1の(III):(III-Z)の比率の上記混合物が生成する。
【0061】
いくつかの実施形態において、上記式(III)の化合物を上記式(I)の化合物に転化させることは、式(B)または式(C):
R
1-SH (B) R
1-S
-M
+ (C)
(式中、M
+は金属カチオンである)
のチオール化剤で上記式(III)の化合物をチオール化して式(II):
【化19】
の化合物を形成することと、
上記式(II)の化合物を還元して上記式(I)の化合物を形成することと
を含む。
【0062】
いくつかの実施形態において、本開示は、式(B)または式(C)のチオール化剤で式(III)の化合物をチオール化することを含む、式(II)の化合物の製造方法に関する。
【0063】
いくつかの実施形態において、上記チオール化することは、添加剤の存在下で上記式(B)のチオール化剤によって行われる。いくつかの実施形態において、上記添加剤は、トリエチルアミン、ジエチルアミン、ペンチルアミン、もしくはヘキシルアミンなどのアミン塩基、ジメチルフェニルホスフィン(DMPP)もしくはトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)などのホスフィン、NaHCO3もしくはNa2CO3などの塩基性塩、スカンジウム(III)トリフラートもしくは無水塩化セリウム(III)などのルイス酸、またはN-ヘテロ環式カルベン(NHC)錯体(例えばAu-NHC錯体)である。いくつかの実施形態において、上記添加剤はトリエチルアミンである。
【0064】
いくつかの実施形態において、上記方法は、上記式(C)のチオール化剤から上記式(B)のチオール化剤を生成させることをさらに含む。いくつかの実施形態において、上記生成させることは酸触媒の存在下で行われる。いくつかの実施形態において、上記酸触媒は、酢酸、p-トルエンスルホン酸、またはH2SO4である。いくつかの実施形態において、上記チオール化することは、約-40℃~約10℃、もしくは約-35℃~約5℃、もしくは約-30℃~約-20℃の範囲の温度、または約0℃で行われる。
【0065】
いくつかの実施形態において、上記チオール化剤は式(C)であり、上記チオール化することは、約-80℃~約35℃、または約15℃~約35℃の範囲の温度で行われる。
【0066】
いくつかの実施形態において、M+はNa+またはK+である。
【0067】
いくつかの実施形態において、上記カップリングさせることは、上記式(III)の化合物を有機溶媒中に抽出して式(III)の抽出液を形成することを含み、上記チオール化することは、上記式(III)の抽出液に上記チオール化剤を添加することを含む。かくして、上記チオール化反応は、該チオール化反応の前にカップリング反応由来の式(III)の中間体を精製することなく行われる。いくつかの実施形態において、上記の手順は以下に示すとおりである。
【化20】
【0068】
いくつかの実施形態において、上記式(II)の化合物を還元することは、NaBH
4、LiBH
4、及びAl(O-iPr)
3/iPrOHから選択される還元剤の存在下で行われる。いくつかの実施形態において、上記還元剤はNaBH
4である。いくつかの実施形態において、上記チオール化することは、上記式(II)の化合物を有機溶媒中に抽出して式(II)の抽出液を形成することを含み、上記還元することは、上記式(II)の抽出液に上記還元剤を添加することを含む。かくして、上記還元することは、該還元することの前に上記式(II)の化合物を精製することなく行われる。いくつかの実施形態において、上記カップリングさせることは、上記式(III)の化合物を有機溶媒中に抽出して式(III)の抽出液を形成することを含み、上記チオール化することは、上記式(III)の抽出液に上記チオール化剤を添加することと、上記式(II)の化合物を有機溶媒中に抽出して式(II)の抽出液を形成することとを含み、上記還元することは、上記式(II)の抽出液に上記還元剤を添加することを含む。かくして、以下のスキームに示すとおり、上記カップリングすること、チオール化すること、及び還元することは、上記式(II)及び式(III)の中間体を精製することなく行われる。
【化21】
【0069】
いくつかの実施形態において、上記還元することは、
(a)メタノール、エタノール、もしくはイソプロパノールなどのアルコール溶媒中で、且つ/または
(b)約0.25~約1.0モル当量の還元剤を使用して、且つ/または
(c)約-10℃~約30℃の範囲の温度、もしくは約0℃で、
NaBH4またはLiBH4を用いて行われる。
【0070】
いくつかの実施形態において、上記還元することは、約50℃~約90℃の範囲の温度、または約80℃で、Al(O-iPr)3/iPrOHを用いて行われる。
【0071】
いくつかの実施形態において、上記方法は、オキサリルクロリドをR2-OHでエステル化して上記式(IV)の化合物を形成することをさらに含む。いくつかの実施形態において、上記エステル化することは、N,N-ジメチルピリジン、ピリジン、またはトリエチルアミンなどの少なくとも1種のアミン塩基の存在下で行われる。いくつかの実施形態において、上記エステル化することは、約-5℃~約30℃の範囲の温度で行われる。
【0072】
いくつかの実施形態において、上記方法は、酸触媒及び共沸による水除去、モレキュラーシーブ、またはそれらの組み合わせなどの任意選択の脱水剤の存在下、R2-OHでシュウ酸をエステル化して上記式(IV)の化合物を形成することをさらに含む。いくつかの実施形態において、上記酸触媒は、p-TsOH;H2SO4;Amberlyst(登録商標)-15、Dowex(登録商標)、またはM32などのマクロポーラススルホン酸樹脂触媒;ケイアルミン酸塩;リン酸;ボロン酸;アセチルクロリド;及びpKaが3未満の酸から選択される。いくつかの実施形態において、上記酸触媒はp-TsOHまたはH2SO4である。いくつかの実施形態において、上記酸触媒は、約0.01~約0.1モル当量もしくは約0.025~約0.05モル当量のp-TsOH、または約1~約3モル当量もしくは約2モル当量のH2SO4である。いくつかの実施形態において、上記エステル化することは反応溶媒の還流温度で行われる。いくつかの実施形態において、上記エステル化することは、トルエン、CHCl3、及びイソプロパノールから選択される反応溶媒中で行われる。
【0073】
いくつかの実施形態において、本開示は、式(I):
【化22】
(式中、
R
1はC
1~4アルキルであり、
R
2はC
1~8アルキルまたはC
4~7シクロアルキルであり、
R
3及びR
4はそれぞれ独立に、H、メチル、及びエチルから選択される)
の化合物の製造方法であって、
式(II):
【化23】
の化合物を還元剤で還元して上記式(I)の化合物を形成することを含む、上記方法に関する。いくつかの実施形態において、上記式(I)の化合物は上記式(I-A)の化合物である。いくつかの実施形態において、上記式(II)の化合物は上記式(II-A):
【化24】
の化合物である。
【0074】
いくつかの実施形態において、上記式(II)の化合物を還元することは、NaBH4、LiBH4、及びAl(O-iPr)3/iPrOHから選択される還元剤の存在下で行われる。いくつかの実施形態において、上記還元剤はNaBH4である。
【0075】
いくつかの実施形態において、上記還元することは、
(a)メタノール、エタノール、もしくはイソプロパノールなどのアルコール溶媒中で、且つ/または
(b)約0.25~約1.0モル当量の還元剤を使用して、且つ/または
(c)約-10℃~約30℃の範囲の温度、もしくは約0℃で、
NaBH4またはLiBH4を用いて行われる。
【0076】
いくつかの実施形態において、上記還元することは、約50℃~約90℃の範囲の温度、または約80℃で、Al(O-iPr)3/iPrOHを用いて行われる。
【0077】
いくつかの実施形態において、上記方法は、式(III):
【化25】
(式中、R
3及びR
4はそれぞれ独立に、H、メチル、及びエチルから選択される)
の化合物を式(B)または式(C):
R
1-SH (B) R
1-S
-M
+ (C)
(式中、M
+は金属カチオンである)
のチオール化剤でチオール化して、上記式(II)の化合物を形成することをさらに含む。いくつかの実施形態において、上記式(II)の化合物は上記式(II-A)の化合物であり、上記式(III)の化合物は上記式(III-A):
【化26】
の化合物である。
【0078】
いくつかの実施形態において、本開示は、式(I-A):
【化27】
の化合物の製造方法であって、
シュウ酸をイソプロパノールでエステル化してシュウ酸ジイソプロピルを形成することと、
シュウ酸ジイソプロピルをビニルマグネシウムブロミドとカップリングさせて式(III-A):
【化28】
の化合物を形成することと、
上記式(III-A)の化合物をCH
3SHでチオール化して式(II-A):
【化29】
の化合物を形成することと、
上記式(II-A)の化合物を還元して上記式(I-A)の化合物を形成することと
を含む、上記方法に関する。
【0079】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、少なくとも約95%の、GC、HPLC、及び/もしくは重量による純度で上記式(I)または式(I-A)の化合物を与える。いくつかの実施形態において、上記方法は、重量、GC、及び/もしくはHPLCによる純度が、少なくとも約95%、もしくは少なくとも約96%、もしくは少なくとも約97%、もしくは少なくとも約98%である式(I)または式(I-A)の粗化合物であって、精製されていないか、または分留によってのみ精製された上記粗化合物を与える。いくつかの実施形態において、上記方法は、実質的に単量体形態であるか、または二量体化合物及び/もしくはオリゴマー化合物の含有量が約5重量%未満、もしくは約3重量%未満である式(I)あるいは式(I-A)の粗化合物であって、精製されていないか、または分留によってのみ精製された上記粗化合物を与える。
【0080】
化合物製品
いくつかの実施形態において、上記反応させることは、重量による(及び/またはGCもしくはHPLCによる)純度が、少なくとも約80%、もしくは少なくとも約90%、もしくは少なくとも約95%、もしくは少なくとも約96%、もしくは少なくとも約97%、もしくは少なくとも約98%である式(I)の粗化合物であって、精製されていないか、または分留によってのみ精製された上記粗化合物を与える。いくつかの実施形態において、上記反応させることは、実質的に単量体形態であるか、または二量体化合物及び/もしくはオリゴマー化合物の含有量が約5重量%未満、もしくは約3重量%未満である式(I)あるいは式(I-A)の粗化合物であって、精製されていないか、または分留によってのみ精製された上記粗化合物を与える。
【0081】
いくつかの実施形態において、本開示は、本明細書に記載の方法のように製造された式(I)または式(I-A)の化合物に関する。いくつかの実施形態において、本開示は、重量による(及び/またはGCもしくはHPLCによる)純度が、少なくとも約80%、もしくは少なくとも約90%、もしくは少なくとも約95%、もしくは少なくとも約96%、もしくは少なくとも約97%、もしくは少なくとも約98%であり、精製されていないか、または分留によってのみ精製された式(I)あるいは式(I-A)の化合物に関する。いくつかの実施形態において、上記化合物は、実質的に単量体形態であるか、または二量体化合物及び/もしくはオリゴマー化合物の混合量が約5重量%未満、もしくは約3重量%未満である。
【0082】
いくつかの実施形態において、上記HMBi(式(I-A))製品は、以下の規格、すなわち、(a)少なくとも約95%の、重量またはHPLC分析によるHMBi単量体含有量及び化学的純度、及び(b)約0.5%未満のカールフィッシャー分析による水分含有量、(c)約6.0より低いpH(水中、1%濃度で測定)の1つ以上を有する。
【0083】
本明細書には、本明細書に記載のいずれかの方法によって製造された式(I)または式(I-A)の化合物も開示される。いくつかの実施形態において、重量による(及び/またはGCもしくはHPLCによる)純度が、少なくとも約95%、もしくは少なくとも約96%、もしくは少なくとも約97%、もしくは少なくとも約98%であり、粗化合物であり、精製されておらず、及び/または分留によってのみ精製された式(I)あるいは式(I-A)の化合物が存在する。いくつかの実施形態において、上記化合物は、R1が-CH2CH2-S-CH3であり、R2がイソプロピルである式(I)の化合物である、もしくは上記化合物は式(I-A)の化合物である。いくつかの実施形態において、上記化合物は、実質的に単量体形態であるか、または二量体化合物及び/もしくはオリゴマー化合物の混合量が約5重量%未満、もしくは約3重量%未満である。
【0084】
動物飼料組成物及び使用
いくつかの態様において、本開示は、本明細書に記載の式(I)または式(I-A)の化合物を含む動物飼料組成物に関する。いくつかの実施形態において、動物飼料組成物は、ウシ、雌牛、ヒツジ、レイヨウ、シカ、キリン、ウシ属動物(例えば、バイソン、バッファロー、またはヤク)、ヤギ、及び/またはガゼルなどの反芻動物への投与に好適である。いくつかの実施形態において、上記動物飼料組成物は、乳牛飼料組成物などの牛飼料組成物、または乳牛飼料などの牛飼料用の添加剤である。いくつかの実施形態において、上記動物飼料組成物は乳牛飼料組成物である。
【0085】
いくつかの実施形態において、動物飼料組成物は動物飼料または動物飼料添加剤である。いくつかの実施形態において、上記動物飼料添加剤は液体形態または固体形態であり、上記液体形態は上記化合物と任意選択で液体担体とを含み、上記固体形態は固体担体と混合された上記化合物を含み、任意選択で上記固体担体はシリカ(二酸化ケイ素)であり、任意選択で、上記化合物と固体担体との比は、約5:1~約1:5、または約3:2である。いくつかの実施形態において、上記飼料組成物は、液体の飼料添加剤または固体の飼料添加剤である。いくつかの実施形態において、上記動物飼料組成物は飲料水添加剤である。いくつかの実施形態において、上記液体の飼料添加剤または飲料水添加剤のpHは約4.0~約7.5の範囲である。
【0086】
上記動物飼料組成物のいくつかの実施形態において、R1は-CH2CH2-S-CH3であり、R2はイソプロピルである。いくつかの実施形態において、上記化合物は式(I-A)の化合物である。
【0087】
いくつかの実施形態において、本開示は、生物学的に利用可能なメチオニンの乳牛への供給方法であって、上記牛に、本明細書に記載の化合物または動物飼料組成物を投与することを含む、上記方法に関する。いくつかの実施形態において、投与することは、上記牛に上記化合物を含む飼料組成物を給餌することを含む。いくつかの実施形態において、本開示は、少なくとも約50%生物学的に利用可能なメチオニンの乳牛への供給方法であって、上記牛に、本明細書に記載の化合物または動物飼料組成物を投与することを含む、上記方法に関する。いくつかの実施形態において、本開示は、乳牛から得られる乳の改善方法であって、上記牛に、本明細書に記載の化合物または動物飼料組成物を供給することを含む、上記方法に関する。いくつかの実施形態において、上記乳の改善は乳中のタンパク質含有量の増加を含む。いくつかの実施形態において、上記乳の改善は乳中の脂肪含有量の増加を含む。いくつかの実施形態において、本開示は、牛の状態の改善方法であって、上記牛に、本明細書に記載の化合物または動物飼料組成物を供給することを含む、上記方法に関する。いくつかの実施形態において、上記牛の状態の改善は受胎能力の改善を含む。いくつかの実施形態において、上記牛の状態の改善は肝機能の改善を含む。いくつかの実施形態において、上記牛の状態の改善はエネルギーの増加を含む。
【0088】
いくつかの態様において、本明細書に記載の反応のいずれも、連続流通式装置を使用して実施してもよい。
【実施例】
【0089】
装置 全てのミリモル規模の実験を、磁気撹拌機、滴下ロート、及び温度計を備えた100mLまたは250mLの3つ口丸底フラスコを使用して実施した。この反応フラスコに凝縮器及び反応温度を監視するための温度計を備え付けた。反応を還流で行う場合には、シリコーン油浴を使用して反応混合物を加熱した。室温未満の温度での実験の場合には、液体窒素浴または塩/氷混合物浴を使用した。全てのkg規模の実験は、5Lのジャケット付き反応器を使用して実施した。中間体及び粗生成物の濃縮ならびに/または精製は、実験室規模の減圧蒸留装置、ロータリーエバポレーター、もしくはカラムクロマトグラフィーを使用して、または以下の例において明示した別な方法で実施した。
【0090】
例1 シュウ酸からのシュウ酸ジイソプロピルの合成
【化30】
【0091】
5Lの実験室用反応器中、撹拌下でイソプロピルアルコール(1700mL)にシュウ酸(1kg、11.1mol)を添加した。透明な溶液が形成された。続いて上記溶液にp-トルエンスルホン酸一水和物(47.67g、2.5mol%)のトルエン(200mL)溶液をゆっくりと添加した。この反応混合物を加熱し、還流下で24時間撹拌した。生成した水を、ディーン・スタークトラップを用い、共沸によって連続的に除去し、この反応を完結させた。この反応混合物を冷却し、500mLのNaHCO
3飽和水溶液で中和し、400mLのトルエンと1Lの水との間で分配させた(2回)。一つにまとめた有機相を1LのNaCl飽和水溶液で脱水した。有機相を分離し、溶媒を減圧下で除去した。粗物質を高真空下で加熱して蒸留することにより精製して、1740g(90%)のシュウ酸ジイソプロピルを無色油状物として得た。
13C NMR (100 MHz, CDCl
3) δ (ppm) 157.96, 71.44, 21.63(
図1A);
1HNMR (400 MHz, CDCl
3)δ 5.13 (hept, J = 6.3 Hz, 2 H), 1.33 (d, J = 6.2 Hz, 12 H)(
図1B)。
【0092】
表1に示すように、出発物質としてシュウ酸二水和物(通し番号1~5)またはシュウ酸(通し番号6~7)を使用して、その他の種々の適当な反応条件を検討した。反応混合物に、4Åのモレキュラーシーブ(出発物質5g当り1~2g)を加えて、反応中にさらに水を除去した。後処理には、反応混合物を酢酸エチルで希釈すること、NaHCO
3飽和水溶液でpH7に中和すること、層を分離すること、有機抽出液をNaHCO
3飽和水溶液及びNaCl飽和水溶液で洗浄すること、ならびに濃縮して粗残渣を得ることが含まれていた。
【表1】
【0093】
例2 オキサリルクロリドからのシュウ酸ジイソプロピルの合成
【化31】
【0094】
5Lのガラスライニング実験室用反応器中の0℃のイソプロピルアルコールの試料(3L)に、温度を0~5℃に維持しながら、撹拌下でオキサリルクロリド(1019g)を数回に分けてゆっくりと添加した。添加が完了した後、この反応混合物を徐々に自然に室温まで加温し、12時間撹拌した。この混合物をロータリーエバポレーターでの留去及び高真空により濃縮して粗生成物を得た。この粗生成物をジクロロメタン(1000mL)で希釈し、NaHCO3飽和水溶液(3×500mL)で洗浄して有機抽出液を得た。最初の2回の水性洗浄液をジクロロメタン(各1L)で逆抽出して、2つのさらなる有機抽出液を得た。これらの3つの有機抽出液をNaCl飽和水溶液(3×500mL)で脱水し、一つにまとめ、濃縮し、蒸留によって精製して、シュウ酸ジイソプロピルを86%の収率で得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 5.13 (hept, J = 6.3 Hz, 2 H), 1.33 (d, J = 6.2 Hz, 12 H)。
【0095】
表2に示すように、その他の種々の適当な反応条件を検討した。
【表2】
【0096】
例3 2-オキソ-4-メチルチオブタン酸イソプロピルエステルの合成(小規模実験)
【化32】
【0097】
ステップ1、グリニャール反応シュウ酸ジイソプロピル(1.4g、8mmol、1.0当量)、16mLの溶媒(MTBE、MTBE/ヘプタン混合物、またはTHF)、及び2当量のLiCl(使用する場合、0.68g、16mmol)の混合物を、液体窒素浴下または塩浴下のいずれかで試験温度(表3に示す)に冷却した。ビニルマグネシウムクロリドの溶液(1.6MのTHF溶液)をゆっくりと添加し、得られた混合物を出発物質が消費されるまで(表3を参照)撹拌した。この反応混合物を、NH
4Cl飽和水溶液(2×100mL)で洗浄することによってクエンチした。生成物をEtOAc(2×100mL)で抽出し、Na
2SO
4上で脱水し、ろ過した。2-オキソ-3-ブテン酸イソプロピルエステルの収率をGC/MSによって測定した。この抽出液を精製することなく次のステップに直接使用した。
【表3】
【0098】
ステップ2、チオール化反応
【0099】
手順1:表4に示すように、CH3SNaの20% w/v水溶液を、-30~-20℃において酸触媒(AcOH(12mmol)もしくTsOH(12mmol))で、または50℃においてH2SO4(CH3SNaに対して2当量)で、15~30分間処理することによってCH3SHガスを発生させた。発生したCH3SHを、撹拌下、0℃のトリエチルアミン(0.1mL)を含むMTBE(20mL)の溶液中にバブリングした。得られたCH3SHのMTBE溶液を、ステップ1、表3、通し番号14由来の粗生成物のMTBE溶液に、表4に示すように、0℃または-30~-20℃で添加し、この反応混合物を15~30分間撹拌した。この反応混合物を2M HClでクエンチし、酢酸エチルで抽出し、脱水し(Na2SO4)、ろ過し、濃縮した。その後この粗物質を次の反応ステップに使用した。
【0100】
表4の通し番号1~5では、酢酸またはp-トルエンスルホン酸を使用してCH
3SHガスを発生させた。通し番号1~3では、収率はカラムクロマトグラフィー後の単離収率である。通し番号4~5では、収率は生成物の蒸留後の単離収率である。通し番号6~9では、CH
3SNaの20%水溶液とH
2SO
4を50℃で加熱することによってCH
3SHガスを発生させた。
【表4】
【0101】
手順2:-78℃の、ステップ1、表3、通し番号11由来の粗生成物のTHF溶液に、CH3SNaの20% w/v水溶液(1当量)及びH2SO4(2当量)を添加した。この反応混合物を自然に室温に加温し、16時間撹拌した。この反応混合物を2M HClでクエンチし、酢酸エチル(2×50mL)で抽出し、脱水し(Na2SO4)、ろ過し、濃縮した。その後この粗生成物を次の反応ステップに使用した。生成物を単離して、33%の収率で生成物を得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 5.12 (hept, J = 6.2 Hz, 1 H), 3.13 (t, J = 7.2 Hz, 2 H), 2.76 (t, J = 7.2 Hz, 2 H), 2.11 (s, 3 H), 1.33 (d, J = 6.3 Hz, 6 H)。
【0102】
手順3、連続流通式反応器:上記に代えて、2-オキソ-3-ブテン酸イソプロピルエステルと10mLのトリエチルアミンとの混合物を、ポンプにより制御された流量で反応器中に供給する。出口はさらにY字形混合器の入口に接続されており、該混合器において、別の入口にMeSHガス(制御された流量で)が供給される。次いで、上記2種の成分を混合し、反応温度を0℃に維持しながら、回分式反応器内でさらに撹拌する。GCによる監視により反応が完結したことが示されたところで、1N HClを添加し、この混合物を上記のように後処理する。
【0103】
例4:2-オキソ-4-メチルチオブタン酸イソプロピルエステルの合成(キログラム規模での合成)
ステップ1、グリニャール反応 20Lの実験室用反応器中、-30~-20℃、撹拌下のシュウ酸ジイソプロピル(1.7kg、10mol)の無水MTBE(3.4L)溶液に、-30℃~20℃に温度を維持しながら1時間かけて、ビニルマグネシウムクロリド(1.6MのTHF中溶液、7L)を滴加した。ガスクロマトグラフィーによりビニル付加が完結したことが示されたところで、室温で1LのNH4Cl飽和水溶液を添加することにより、この反応混合物をクエンチした。有機相を分離し、500mLの水で洗浄し、水相を400mLのMTBEで逆抽出した。これらのMTBE抽出液を一つにまとめて、90%を超える転化率で2-オキソ-3-ブテン酸イソプロピルエステルを得て、これをさらに精製または蒸留することなく、次のステップに直接使用した。
【0104】
ステップ2、チオール化ステップ1由来のMTBE抽出液を反応器中で0℃に冷却し、トリエチルアミン(10mL)で処理した。CH
3SNaの溶液(1.0当量;20%水溶液)を50℃で30分間H
2SO
4(2当量)と反応させることによって、インシチュでMeSHガスを発生させた。発生したCH
3SHガスを、撹拌下、0℃の反応溶液中にバブリングし、0℃で撹拌を継続した。GCによる監視により、上記中間体が2-オキソ-4-メチルチオブタン酸イソプロピルエステルに転化したことが示されたところで、1N HCl(780mL)を反応器に添加し、この反応混合物をクエンチした。有機層を水相から分離し、500mLの水で洗浄し、水相を650mLのMTBE(2×)で抽出した。一つにまとめた有機抽出液を減圧下での留去により濃縮し、生成物を減圧下での蒸留によって精製して、1021g(55%)の2-オキソ-4-メチルチオブタン酸イソプロピルエステルを無色油状物として得た。
13C NMR (100 MHz, CDCl
3) δ(ppm) 193.21, 160.25, 70.95, 39.33, 27.32, 21.63, 15.74(
図2A);
1HNMR (400 MHz, CDCl
3)δ 5.12 (hept, J = 6.2 Hz, 1 H), 3.13 (t, J = 7.2 Hz, 2 H), 2.76 (t, J = 7.2 Hz, 2 H), 2.11 (s, 3 H), 1.33 (d, J = 6.3 Hz, 6 H)(
図2B)。
【0105】
例5:2-ヒドロキシ-4-メチルチオブタン酸イソプロピルエステル(HMBi)の合成
【化33】
【0106】
5Lの反応器中、0~5℃の2-オキソ-4-メチルチオブタン酸イソプロピルエステル(1kg、5.25mol)のメタノール(2L)溶液に、NaBH
4(99g、2.6mol)を数回に分けて添加した。得られた反応混合物を0~5℃に維持し、1時間撹拌した。この反応混合物をNH
4Cl飽和水溶液(500mL)で洗浄した。有機相を分離し、溶媒を減圧蒸留により除去し、粗生成物を蒸留によって精製して、HMBi(859g、収率85%、97%の単量体エステル)を淡黄色油状物として得た。
13C NMR (100 MHz, CDCl
3) δ (ppm) 174.52, 69.85, 69.34, 33.76, 29.69, 21.87, 21.83, 15.60(
図3A);
1HNMR (400 MHz, CDCl
3)δ 5.08 (hept, J = 6.3 Hz, 1 H), 4.24 (dd, J = 7.9, 3.8 Hz, 1 H), 2.97 (br, 1 H), 2.67-2.55 (m, 2 H), 2.10-2.01 (m, 4 H), 1.93-1.84 (m, 1 H), 1.27 (d, J = 1.9 Hz, 3 H), 1.26 (d, J = 2.2 Hz, 3 H)(
図3B)。
【0107】
2-オキソ-4-メチルチオブタン酸イソプロピルエステル(OMBi)からの2-ヒドロキシ-4-(メチルチオ)ブタン酸イソプロピルエステル(HMBi)の合成の代替法
【化34】
【0108】
2-オキソ-4-メチルチオブタン酸イソプロピルエステルからのHMBiの製造に関して、NaBH
4、遷移金属触媒による水素化、及びケト還元を含む種々の反応剤及び条件をスクリーニングした。いくつかの反応温度、時間、反応剤、及び溶媒を試験した。それぞれの条件の組み合わせにおける生成物への転化率及び単離された生成物の収率を測定し、結果を表5に示す。
【表5】
【国際調査報告】