(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-25
(54)【発明の名称】チオフェン中央環を含むSREBP阻害剤
(51)【国際特許分類】
C07D 409/14 20060101AFI20230118BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230118BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20230118BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20230118BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20230118BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20230118BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20230118BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230118BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230118BHJP
A61P 37/00 20060101ALI20230118BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20230118BHJP
A61K 31/4545 20060101ALI20230118BHJP
【FI】
C07D409/14 CSP
A61P43/00 111
A61P3/00
A61P3/10
A61P3/04
A61P1/16
A61P3/06
A61P35/00
A61P29/00
A61P37/00
A61P9/10 101
A61K31/4545
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022527681
(86)(22)【出願日】2020-11-12
(85)【翻訳文提出日】2022-06-23
(86)【国際出願番号】 US2020060276
(87)【国際公開番号】W WO2021097122
(87)【国際公開日】2021-05-20
(32)【優先日】2019-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520279720
【氏名又は名称】カピュラス セラピューティクス リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】グリーン マイケル ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ハート バリー パトリック
【テーマコード(参考)】
4C063
4C086
【Fターム(参考)】
4C063AA03
4C063BB01
4C063BB06
4C063CC92
4C063DD12
4C063EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC21
4C086GA04
4C086GA07
4C086GA08
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA75
4C086ZB07
4C086ZB11
4C086ZB26
4C086ZC02
4C086ZC21
4C086ZC33
4C086ZC35
(57)【要約】
化合物(3-クロロ-4-(4-(2-(2-ヒドロキシプロパン-2-イル)ピリジン-4-イル)チオフェン-2-イル)フェニル)(4-ヒドロキシピペリジン-1-イル)メタノン(化合物1)、およびその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体が本明細書で提供される。また、化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体を用いて、SREBPまたはSREBP切断活性化タンパク質(SCAP)等のステロール調節エレメント結合タンパク質(SREBP)経路の構成成分を阻害する方法も本明細書で提供される。さらに、肝疾患、非アルコール性脂肪性肝炎、インスリン抵抗性、またはがんなど、その必要のある対象における障害を治療する方法が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物(3-クロロ-4-(4-(2-(2-ヒドロキシプロパン-2-イル)ピリジン-4-イル)チオフェン-2-イル)フェニル)(4-ヒドロキシピペリジン-1-イル)メタノン:
、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体と、薬学的に許容される賦形剤とを含む、医薬組成物。
【請求項3】
ステロール調節エレメント結合タンパク質(SREBP)を阻害する方法であって、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体、あるいは請求項2に記載の医薬組成物と、前記SREBPを接触させるか、またはSREBP切断活性化タンパク質(SCAP)を接触させることを含む、前記方法。
【請求項4】
ステロール調節エレメント結合タンパク質(SREBP)のタンパク質分解活性化を阻害する方法であって、SREBP切断活性化タンパク質(SCAP)を、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体、あるいは請求項2に記載の医薬組成物と接触させることを含む、前記方法。
【請求項5】
その必要のある対象において障害を治療する方法であって、前記障害がステロール調節エレメント結合タンパク質(SREBP)によって媒介され、前記方法が有効量の請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体、あるいは請求項2に記載の医薬組成物を前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項6】
その必要のある対象において障害を治療する方法であって、有効量の請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体、あるいは請求項2に記載の医薬組成物を前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項7】
前記SREBPがSREBP-1である、請求項3~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記SREBP-1がSREBP-1aである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記SREBP-1がSREBP-1cである、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記SREBPがSREBP-2である、請求項3~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
SREBPが、その必要のある対象において阻害される、請求項3~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
SCAPが、その必要のある対象において阻害される、請求項3~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
SREBPまたはSCAPを、前記化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体、あるいは前記医薬組成物と接触させることを含み、ACSS2、ALDOC、CYP51A1、DHCR7、ELOVL6、FASN、FDFT1、FDPS、HMGCS1、HSD17B7、IDI1、INSIG1、LDLR、LSS、ME1、PCSK9、PMVK、RDH11、SC5DL、SQLE、STARD4、TM7SF2、PNPLA3、SREBF1、SREBF2、HMGCR、MVD、MVK、ACLY、MSMO1、ACACA、およびACACBからなる群から選択される1以上の遺伝子の発現が、前記SREBPまたはSCAPを、前記化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体、あるいは前記医薬組成物と接触させた後に減少する、請求項3~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記障害が、メタボリックシンドローム、2型糖尿病、肥満、肝疾患、インスリン抵抗性、脂肪症(adiposopathy)、または脂質異常症である、請求項5または6に記載の方法。
【請求項15】
前記脂質異常症が、高トリグリセリド血症、またはコレステロールレベルの上昇である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記肝疾患が、非アルコール性脂肪性肝炎、肝線維症、もしくは肝炎症、またはそれらの組み合わせである、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記障害が過剰増殖性障害である、請求項5または6に記載の方法。
【請求項18】
前記過剰増殖性障害ががんである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記がんが、乳がん、肝臓がん、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がん、軟組織肉腫、膀胱がん、子宮内膜がん、皮膚がん、結腸がん、血液がん、胎盤がん、脳がん、腎臓がん、肺がん、または骨がんである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記障害が、内毒素ショック、全身性炎症、またはアテローム性動脈硬化症である、請求項5または6に記載の方法。
【請求項21】
その必要のある対象においてステロール調節エレメント結合タンパク質(SREBP)を阻害するための薬剤の製造における、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体の使用。
【請求項22】
前記阻害が、前記化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体と、前記SREBPを接触させるか、またはSREBP切断活性化タンパク質(SCAP)を接触させることを含む、請求項21に記載の使用。
【請求項23】
その必要のある対象においてステロール調節エレメント結合タンパク質(SREBP)のタンパク質分解活性化を阻害するための薬剤の製造における、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体の使用。
【請求項24】
前記阻害が、SREBP切断活性化タンパク質(SCAP)を、前記化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体と接触させることを含む、請求項23に記載の使用。
【請求項25】
その必要のある対象において障害を治療するための薬剤の製造における、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体の使用であって、前記障害がステロール調節エレメント結合タンパク質(SREBP)によって媒介される、前記使用。
【請求項26】
その必要のある対象において障害を治療するための薬剤の製造における、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体の使用。
【請求項27】
前記SREBPがSREBP-1である、請求項21~25のいずれか一項に記載の使用。
【請求項28】
前記SREBP-1がSREBP-1aである、請求項27に記載の使用。
【請求項29】
前記SREBP-1がSREBP-1cである、請求項27に記載の使用。
【請求項30】
前記SREBPがSREBP-2である、請求項21~25のいずれか一項に記載の使用。
【請求項31】
SREBPが、その必要のある対象において阻害される、請求項21~30のいずれか一項に記載の使用。
【請求項32】
SCAPが、その必要のある対象において阻害される、請求項21~31のいずれか一項に記載の使用。
【請求項33】
SREBPまたはSCAPが、前記化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体と接触させられ、ACSS2、ALDOC、CYP51A1、DHCR7、ELOVL6、FASN、FDFT1、FDPS、HMGCS1、HSD17B7、IDI1、INSIG1、LDLR、LSS、ME1、PCSK9、PMVK、RDH11、SC5DL、SQLE、STARD4、TM7SF2、PNPLA3、SREBF1、SREBF2、HMGCR、MVD、MVK、ACLY、MSMO1、ACACA、およびACACBからなる群から選択される1以上の遺伝子の発現が、前記SREBPまたはSCAPを、前記化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体と接触させた後に減少する、請求項21~32のいずれか一項に記載の使用。
【請求項34】
前記障害が、メタボリックシンドローム、2型糖尿病、肥満、肝疾患、インスリン抵抗性、脂肪症、または脂質異常症である、請求項25または26に記載の使用。
【請求項35】
前記脂質異常症が、高トリグリセリド血症またはコレステロールレベルの上昇である、請求項34に記載の使用。
【請求項36】
前記肝疾患が、非アルコール性脂肪性肝炎、肝線維症、もしくは肝炎症、またはそれらの組み合わせである、請求項34に記載の使用。
【請求項37】
前記障害が過剰増殖性障害である、請求項25または26に記載の使用。
【請求項38】
前記過剰増殖性障害ががんである、請求項37に記載の使用。
【請求項39】
前記がんが、乳がん、肝臓がん、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がん、軟組織肉腫、膀胱がん、子宮内膜がん、皮膚がん、結腸がん、血液がん、胎盤がん、脳がん、腎臓がん、肺がん、または骨がんである、請求項38に記載の使用。
【請求項40】
前記障害が、内毒素ショック、全身性炎症、またはアテローム性動脈硬化症である、請求項25または26に記載の使用。
【請求項41】
ステロール調節エレメント結合タンパク質(SREBP)を阻害するための、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体、あるいは請求項2に記載の医薬組成物の使用。
【請求項42】
前記阻害が、前記化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体と、前記SREBPを接触させるか、またはSREBP切断活性化タンパク質(SCAP)を接触させることを含む、請求項41に記載の使用。
【請求項43】
ステロール調節エレメント結合タンパク質(SREBP)のタンパク質分解活性化を阻害するための、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体、あるいは請求項2に記載の医薬組成物の使用。
【請求項44】
前記阻害が、SREBP切断活性化タンパク質(SCAP)を、前記化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体と接触させることを含む、請求項43に記載の使用。
【請求項45】
その必要のある対象において障害を治療するための、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体、あるいは請求項2に記載の医薬組成物の使用であって、前記障害が、ステロール調節エレメント結合タンパク質(SREBP)によって媒介される、前記使用。
【請求項46】
その必要のある対象において障害を治療するための、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体、あるいは請求項2に記載の医薬組成物の使用。
【請求項47】
前記SREBPがSREBP-1である、請求項41~45のいずれか一項に記載の使用。
【請求項48】
前記SREBP-1がSREBP-1aである、請求項47に記載の使用。
【請求項49】
前記SREBP-1がSREBP-1cである、請求項47に記載の使用。
【請求項50】
前記SREBPがSREBP-2である、請求項41~45のいずれか一項に記載の使用。
【請求項51】
SREBPが、その必要のある対象において阻害される、請求項41~50のいずれか一項に記載の使用。
【請求項52】
SCAPが、その必要のある対象において阻害される、請求項41~51のいずれか一項に記載の使用。
【請求項53】
SREBPまたはSCAPが、前記化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体、あるいは前記医薬組成物と接触させられ、ACSS2、ALDOC、CYP51A1、DHCR7、ELOVL6、FASN、FDFT1、FDPS、HMGCS1、HSD17B7、IDI1、INSIG1、LDLR、LSS、ME1、PCSK9、PMVK、RDH11、SC5DL、SQLE、STARD4、TM7SF2、PNPLA3、SREBF1、SREBF2、HMGCR、MVD、MVK、ACLY、MSMO1、ACACA、およびACACBからなる群から選択される1以上の遺伝子の発現が、前記SREBPまたはSCAPを、前記化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体、あるいは前記医薬組成物と接触させた後に減少する、請求項41~52のいずれか一項に記載の使用。
【請求項54】
前記障害が、メタボリックシンドローム、2型糖尿病、肥満、肝疾患、インスリン抵抗性、脂肪症、または脂質異常症である、請求項45または46に記載の使用。
【請求項55】
前記脂質異常症が、高トリグリセリド血症またはコレステロールレベルの上昇である、請求項54に記載の使用。
【請求項56】
前記肝疾患が、非アルコール性脂肪性肝炎、肝線維症、もしくは肝炎症、またはそれらの組み合わせである、請求項55に記載の使用。
【請求項57】
前記障害が過剰増殖性障害である、請求項45または46に記載の使用。
【請求項58】
前記過剰増殖性障害ががんである、請求項57に記載の使用。
【請求項59】
前記がんが、乳がん、肝臓がん、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がん、軟組織肉腫、膀胱がん、子宮内膜がん、皮膚がん、結腸がん、血液がん、胎盤がん、脳がん、腎臓がん、肺がん、または骨がんである、請求項58に記載の使用。
【請求項60】
前記障害が、内毒素ショック、全身性炎症、またはアテローム性動脈硬化症である、請求項45または46に記載の使用。
【請求項61】
その必要のある対象において非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を治療する方法であって、有効量の請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体、あるいは請求項2の医薬組成物を前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項62】
その必要のある対象において非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を治療するための、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体、あるいは請求項2の医薬組成物の使用。
【請求項63】
その必要のある対象において非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を治療するための薬剤の製造における、請求項1の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体、あるいは請求項2に記載の医薬組成物の使用。
【請求項64】
その必要のある対象において過剰増殖性障害を治療する方法であって、有効量の請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体、あるいは請求項2に記載の医薬組成物を前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項65】
その必要のある対象において過剰増殖性障害を治療するための、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体、あるいは請求項2に記載の医薬組成物の使用。
【請求項66】
その必要のある対象において過剰増殖性障害を治療するための薬剤の製造における、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体、あるいは請求項2に記載の医薬組成物の使用。
【請求項67】
ステロール調節エレメント結合タンパク質(SREBP)を阻害する際に使用するための、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体。
【請求項68】
ステロール調節エレメント結合タンパク質(SREBP)のタンパク質分解活性化を阻害する際に使用するための、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体。
【請求項69】
その必要のある対象において障害を治療する際に使用するための、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体であって、前記障害が、ステロール調節エレメント結合タンパク質(SREBP)によって媒介される、前記化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体。
【請求項70】
その必要のある対象において障害を治療する際に使用するための、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体。
【請求項71】
その必要のある対象において非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を治療する際に使用するための、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体。
【請求項72】
その必要のある対象において過剰増殖性障害を治療する際に使用するための、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年11月13日に出願された米国仮特許出願第62/935,028号、2020年1月27日に出願された米国仮特許出願第62/966,356号、および2020年7月24日に出願された米国仮特許出願第63/056,408号の利益を主張し、これらの開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本開示は、化合物(3-クロロ-4-(4-(2-(2-ヒドロキシプロパン-2-イル)ピリジン-4-イル)チオフェン-2-イル)フェニル)(4-ヒドロキシピペリジン-1-イル)メタノン、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体、SREBPまたはSREBP切断活性化タンパク質(SCAP)などのステロール調節エレメント結合タンパク質(SREBP)経路の構成成分を阻害するためのそれらの使用、および障害を治療する治療法におけるそれらの使用、に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
SREBPは、コレステロール、脂肪酸、トリグリセリドの生合成、および脂質の取り込みを調節する膜結合型転写因子である。脂肪酸および脂質はエネルギー源であり、細胞の脂質膜などの多くの生物学的構造の重要な構成成分である。コレステロールは生物学的プロセスおよび構造の重要な構成成分である。哺乳類には、SREBP-1a、SREBP-1c、およびSREBP-2の3つの既知のSREBPアイソフォームがある。SREBP-1aは、脂肪酸、トリグリセリド、リン脂質、およびコレステロールの産生に関与する幅広い標的遺伝子を制御する。SREBP-1cは、主に脂肪酸およびトリグリセリドの合成を制御する遺伝子を活性化する。SREBP-2は、コレステロール代謝の調節因子の合成に関与する遺伝子を活性化し、これは、マウス、ヒト、およびショウジョウバエの研究で実証されている。SREBPの活性は、SREBP切断活性化タンパク質(SCAP)によって調節され、これは、SREBPを小胞体からゴルジ装置に輸送し、そこでSREBPがタンパク質分解的に切断され、転写因子ドメインを放出する。
【0004】
SREBPおよびSCAPによって調節される経路は、高血圧、脂質異常症、肥満、2型糖尿病、インスリン抵抗性、脂肪肝、および非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)などの代謝障害に関係している。例えば、NASHは、肝臓に脂肪が蓄積した結果としての肝臓の炎症および肝細胞のバルーニングであり、肝硬変などの肝臓の損傷につながる可能性がある。NASHは、インスリン抵抗性およびメタボリックシンドロームなどの他の代謝障害とも関連している可能性がある。
【0005】
脂肪酸、コレステロール、およびトリグリセリドの代謝も、がんなどの過剰増殖性障害に関連し得る。がん細胞の発がん性形質転換の特徴の1つは、代謝が異化プロセスから同化プロセスにシフトすることである。多くのがんは、脂肪酸および他の脂質(コレステロールなど)、ならびにステロイド(アンドロゲンなど)の合成を必要とする。したがって、SREBP経路の構成成分は、前立腺がんなどの過剰増殖性障害において役割を果たし得る。SREBP-1cは、脂肪酸の生合成の主要な転写調節因子であり、この転写因子の発現は、前立腺がん細胞のアンドロゲンおよび上皮成長因子によって刺激される可能性がある。SREBP-1cの過剰発現は、腫瘍形成性および前立腺がん細胞の浸潤を促進し得る。アンドロゲン合成の調節に加えて、SREBP-2自体もアンドロゲン産生の直接フィードバック回路でアンドロゲンによって調節される。しかし、前立腺がん細胞はコレステロールの恒常性が機能不全であり、コレステロールの蓄積および増殖の増加をもたらす。コレステロールレベルのこの増加は、SREBP-2活性の増加によって調節されることによって引き起こされることが示されている。SREBP-2の発現は、疾患の進行中に増加し、去勢後は去勢前と比較して有意に高くなる。
【0006】
SCAPまたはSREBPなどのSREBP経路の構成成分を調節することは、代謝性疾患およびがんなどの障害を治療するための重要な治療アプローチである。したがって、SREBPおよびSCAPなどのSREBP経路の構成成分を阻害できる化合物が必要である。
【発明の概要】
【0007】
概要
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるのは、(3-クロロ-4-(4-(2-(2-ヒドロキシプロパン-2-イル)ピリジン-4-イル)チオフェン-2-イル)フェニル)(4-ヒドロキシピペリジン-1-である。イル)メタノン:
、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体である。
【0008】
他の実施形態では、本明細書で提供されるのは、化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体と、薬学的に許容される賦形剤とを含む、医薬組成物である。
【0009】
さらに他の実施形態では、本明細書に提供されるのは、化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体、あるいは、前述のいずれかと薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物と、SREBPを接触させるか、またはSREBP切断活性化タンパク質(SCAP)を接触させることによって、ステロール調節エレメント結合タンパク質(SREBP)を阻害する方法である。いくつかの実施形態では、SREBPは、その必要のある対象において阻害される。
【0010】
特定の実施形態では、本明細書に提供されるのは、SREBP分裂活性化タンパク質(SCAP)を、化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体、あるいは、前述のいずれかと薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物と接触させることによって、ステロール調節エレメント結合タンパク質(SREBP)のタンパク質分解活性化を阻害する方法である。いくつかの実施形態では、タンパク質分解活性化は、その必要のある対象において阻害される。
【0011】
他の実施形態では、本明細書で提供されるのは、その必要のある対象において障害を治療する方法であって、前記障害がステロール調節エレメント結合タンパク質(SREBP)によって媒介され、前記方法が有効量の化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体、あるいは、前述のいずれかと薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物を前記対象に投与することによる、方法である。
【0012】
他の実施形態では、本明細書で提供されるのは、その必要のある対象において障害を治療する方法であって、有効量の化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体、あるいは、前述のいずれかと薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物を対象に投与することによる、方法である。
【0013】
特定の実施形態では、本明細書に提供されるのは、その必要のある対象においてステロール調節エレメント結合タンパク質(SREBP)を阻害するための薬剤の製造における、化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体の使用である。
【0014】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるのは、その必要のある対象においてステロール調節エレメント結合タンパク質(SREBP)のタンパク質分解活性化を阻害するための薬剤の製造における、化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体の使用である。
【0015】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるのは、その必要のある対象においてステロール調節エレメント結合タンパク質(SREBP)のタンパク質分解活性化を阻害するための方法であって、対象に、治療有効量の化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体、あるいは、前述のいずれかと薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物を投与することによる、方法である。
【0016】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるのは、その必要のある対象においてステロール調節エレメント結合タンパク質(SREBP)のタンパク質分解活性化を阻害するための、化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体の使用である。
【0017】
特定の実施形態では、本明細書に提供されるのは、その必要のある対象において障害を治療するための薬剤の製造における、化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体に使用であって、障害がステロール調節エレメント結合タンパク質(SREBP)によって媒介される、前記使用である。
【0018】
他の実施形態では、本明細書で提供されるのは、その必要のある対象において障害を治療するための薬剤の製造における、化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体の使用である。
【0019】
他の実施形態では、本明細書で提供されるのは、ステロール調節エレメント結合タンパク質(SREBP)を阻害するための、化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体の使用である。いくつかの実施形態では、SREBPは、その必要のある対象において阻害される。
【0020】
特定の実施形態では、本明細書で提供されるのは、ステロール調節エレメント結合タンパク質(SREBP)のタンパク質分解活性化を阻害するための、化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体の使用である。いくつかの実施形態では、タンパク質分解活性化は、その必要のある対象において阻害される。
【0021】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるのは、その必要のある対象において障害を治療するための、化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体の使用であって、障害がステロール調節エレメント結合タンパク質(SREBP)によって媒介される、使用である。
【0022】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるのは、その必要のある対象において障害を治療するための、化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体の使用である。
【0023】
本明細書に記載の実施形態のいくつかの変形例では、SREBPはSREBP-1である。特定の変形例では、SREBPはSREBP-1aである。他の変形例では、SREBPはSREBP-1cである。さらに別の実施形態では、SREBPはSREBP-2である。いくつかの変形例では、障害はメタボリックシンドローム、2型糖尿病、肥満、脂肪肝疾患、インスリン抵抗性、脂肪症(adiposopathy)、または脂質異常症である。他の変形例では、障害は、がんなどの過剰増殖性障害である。さらに別の変形例では、障害は、内毒素ショック、全身性炎症、またはアテローム性動脈硬化症である。
【0024】
他の実施形態では、本明細書で提供されるのは、その必要のある対象において脂肪肝疾患を治療する方法であって、有効量の化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体、あるいは前述のいずれかと薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物を対象に投与することによる、方法である。
【0025】
さらに別の実施形態では、本明細書で提供されるのは、その必要のある対象において脂肪肝疾患を治療するための、化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体、あるいは前述のいずれかと薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物の使用である。
【0026】
さらに別の実施形態では、本明細書で提供されるのは、その必要のある対象において脂肪肝疾患を治療するための薬剤の製造における、化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体、あるいは前述のいずれかと薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物の使用である。
【0027】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるのは、その必要のある対象において非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を治療する方法であって、有効量の化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体、あるいは前述のいずれかと薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物を対象に投与することによる、方法である。
【0028】
他の実施形態では、本明細書で提供されるのは、その必要のある対象において非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を治療するための、化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体、あるいは前述のいずれかと薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物の使用である。
【0029】
特定の実施形態では、本明細書に提供されるのは、その必要のある対象において非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を治療するための薬剤の製造における、化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体、あるいは前述のいずれかと薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物の使用である。
【0030】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるのは、その必要のある対象において過剰増殖性障害を治療する方法であって、有効量の化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体、あるいは前述のいずれかと薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物を対象に投与することによる、方法である。
【0031】
他の実施形態では、本明細書で提供されるのは、その必要のある対象において過剰増殖性障害を治療するための、化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体、あるいは前述のいずれかと薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物の使用である。
【0032】
特定の実施形態では、本明細書に提供されるのは、その必要のある対象において過剰増殖性障害を治療するための薬剤の製造における、化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体、あるいは前述のいずれかと薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物の使用である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
本出願は、添付の図と併せて以下の説明を参照することにより理解することができる。
【
図1】雄性C57BL/6マウスに2mg/kgで静脈内投与した後の化合物1の平均(±SD)血漿濃度対時間プロファイルのグラフである。
【
図2】雄性C57BL/6マウスに10mg/kgで経口投与した後の化合物1の平均(±SD)血漿濃度対時間プロファイルのグラフである。
【
図3】雄性C57BL/6マウスに2mg/kgで静脈内投与した後の化合物2の平均(±SD)血漿濃度対時間プロファイルのグラフである。
【
図4】雄性C57BL/6マウスに10mg/kgで経口投与した後の化合物2の平均(±SD)血漿濃度対時間プロファイルのグラフである。
【
図5】C33A子宮内膜細胞株を用いたモデルにおける化合物1およびビヒクルの投与後の化合物1の腫瘍体積対時間プロファイルのグラフである。
【
図6】A1780卵巣がん細胞株を用いたモデルにおける化合物1およびビヒクルの投与後の化合物1の腫瘍体積対時間プロファイルのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
詳細な説明
I.化合物1
本明細書で提供されるのは、化合物(3-クロロ-4-(4-(2-(2-ヒドロキシプロパン-2-イル)ピリジン-4-イル)チオフェン-2-イル)フェニル)(4-ヒドロキシピペリジン-1-イル)メタノン:
、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体である。
【0035】
いくつかの実施形態では、提供されるのは、化合物1の薬学的に許容される塩、またはその溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体である。「薬学的に許容される塩」には、一般に安全で、毒性がなく、かつ生物学的または他の意味で望ましくないものでない塩が含まれ、獣医学に関する使用ならびにヒトの製薬の使用に許容される塩が含まれる。そのような塩には、酸付加塩および塩基付加塩が含まれ得る。酸付加塩は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等に限定されない無機酸、または酢酸、2,2-ジクロロ酢酸、アジピン酸、アルギン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、4-アセトアミド安息香酸、ショウノウ酸、ショウノウ-10-スルホン酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、炭酸、桂皮酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデシル硫酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチシン酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルクロン酸、グルタミン酸、グルタル酸、2-オキソ-グルタル酸、グリセロリン酸、グリコール酸、馬尿酸、イソ酪酸、乳酸、ラクトビオン酸、ラウリン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムチン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ニコチン酸、オレイン酸、オロチン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモン酸、プロピオン酸、ピログルタミン酸、ピルビン酸、サリチル酸、4-アミノサリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、酒石酸、チオシアン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、もしくはウンデシレン酸に限定されない有機酸で形成され得る。無機塩基に由来する塩には、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩、マンガン塩、およびアルミニウム塩が含まれ得るが、これらに限定されない。有機塩基に由来する塩には、第一級、第二級、および第三級アミンの塩、天然に存在する置換アミンを含む置換アミン、環状アミン、アンモニア、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、デアノール、2-ジメチルアミノエタノール、2-ジエチルアミノエタノール、ジシクロヘキシルアミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、ベネタミン、ベンザチン、エチレンジアミン、グルコサミン、メチルグルカミン、テオブロミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、またはN-エチルピペリジンが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0036】
いくつかの実施形態では、提供されるのは、化合物1の溶媒和物、またはその薬学的に許容される塩、互変異性体、同位体もしくは異性体である。特定の実施形態では、溶媒和物は水和物である。したがって、本明細書で提供されるのは、化合物1の水和物である。
【0037】
いくつかの実施形態では、提供されるのは、化合物1の同位体、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体もしくは異性体である。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるのは、1つ以上の同位体濃縮された原子を含む化合物1である。化合物1は、化合物1を構成する1つ以上の原子に自然ではない割合の原子同位体を含み得る。いくつかの実施形態では、化合物は同位体標識されており、例えば、同位体標識された化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体もしくは異性体であり、1つ以上の原子の一部が同じ元素の同位体によって置き換えられている。化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体もしくは異性体に組み込むことができる例示的な同位体には、水素、炭素、窒素、酸素、リン、硫黄、および塩素の同位体、例えば2H、3H、11C、13C、14C、13N、15O、17O、35S、18F、および36Clが含まれる。特定の同位体標識化合物(例えば、3Hおよび14C)は、化合物または基質組織の分布研究に役立ち得る。重水素(2H)などのより重い同位体の組み込みは、いくつかの実施形態で、より大きな代謝安定性、例えば、インビボ半減期の増加、または必要な投与量の減少から生じる特定の治療上の利点を提供し得る。
【0038】
本明細書でさらに提供されるのは、化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体と、薬学的に許容される賦形剤とを含む、医薬組成物である。医薬的に許容される賦形剤には、例えば、米国食品医薬品局によってヒトまたは家畜での使用が許容されるものとして承認されている、補助剤、担体、流動促進剤、甘味剤、希釈剤、防腐剤、染料/着色剤、香味増強剤、界面活性剤、湿潤剤、分散剤、懸濁化剤、安定剤、等張剤、溶媒、または乳化剤が含まれ得る。薬学的に許容される賦形剤には、水、NaCl、通常の生理食塩水、乳酸加リンゲル液、通常のスクロース、通常のグルコース、結合剤、充填剤、崩壊剤、潤滑剤、コーティング、甘味料、香味料、塩溶液(リンゲル液など)、アルコール、油、ゼラチン、炭水化物(ラクトース、アミロース、スターチなど)、脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリジン、および着色料が含まれるが、これらに限定されない。
【0039】
本明細書で一般的に使用される場合、「薬学的に許容される」という語句は、正しい薬学的判断の範囲内で、適切な利益/リスク比に相応の、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症なしにヒトおよび動物の組織、器官、および/または体液との接触における使用に好適な化合物、材料、組成物、担体、および/または剤形を指す。
【0040】
II.化合物1および化合物1を含む医薬組成物の使用方法
本明細書で提供されるのは、化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体、あるいは前述のいずれかと薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物を使用する方法である。これらには、SREBPまたはSCAPなどのSREBP経路の構成成分を阻害する方法、およびその必要のある対象において障害を治療する方法が含まれる。いくつかの実施形態では、障害は、SREBPまたはSCAPによって媒介される。
【0041】
「治療する(treat)」、「治療する(treating)」、または「治療(treatment)」という用語は、軽減;寛解;症状の軽減、または傷害、疾患、障害、病状もしくは状態を対象に対してより許容できるものにすること;変性、衰退、または発達の速度を遅らせるまたは停止させること;障害(例えば、傷害、疾患、病状、または状態)の進行を遅らせること;変性の最終点を衰弱の少ないものにすること;対象の身体的もしくは精神的健康を改善すること;または、障害(例えば、傷害、疾患、病状、または状態)を軽減または退行させることなどの客観的または主観的なパラメーターを含む、傷害、疾患、病状もしくは状態などの障害の改善における成功の任意の証拠を指す。症状の改善を含む症状の治療は、身体検査、神経精神医学的検査、および/または精神医学的評価の結果を含み得る客観的または主観的パラメーターに基づくことができる。本明細書で提供されるのは、過剰増殖性障害を治療する方法である。いくつかの実施形態では、過剰増殖性障害はがんである。本明細書に開示される特定の方法は、例えば、がんの発生率を低下させること、がんの寛解をもたらすこと、がん細胞の成長速度を遅くすること、がん細胞の拡散速度を遅くすること、転移を減少させること、もしくは転移性腫瘍の成長を減少させること、1つ以上の腫瘍のサイズを縮小させること、1つ以上の腫瘍の数を減少させること、またはそれらの任意の組み合わせによってがんを治療し得る。
【0042】
治療方法について本明細書に記載されている実施形態はまた、障害(例えば、傷害、疾患、病理学、または状態)の治療ための、化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体の使用;および、SREBPを阻害するため、またはSREBPのタンパク質分解活性化を阻害するための、化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体の使用;および、本明細書に記載されているように、化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体の他の使用;ならびに、薬剤の製造における、化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体の使用、に適用することが考えられるべきである。
【0043】
A.SREBPまたはSCAPの阻害
本明細書で提供されるのは、SREBPまたはSCAPなどのSREBP経路の構成成分を阻害する使用および方法である。いくつかの実施形態では、SREBPとSCAPとの組み合わせは阻害される。そのような方法は、SREBPを、化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体、あるいは、前述のいずれかと薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物と接触させることを含み得る。そのような方法はまた、SCAPを、化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体、あるいは、前述のいずれかと薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物と接触させることを含み得る。
【0044】
特定の実施形態では、化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体を、その必要のある対象に投与して、SREBP経路の構成成分を阻害する。他の実施形態では、薬学的に許容される賦形剤と化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体とを含む医薬組成物が、その必要のある対象に投与される。特定の実施形態では、化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体の量は、対象の体重に対して約0.01mg/kg~約100mg/kgである。いくつかの実施形態では、毎日約0.7mg~約7g、もしくは毎日約7mg~約350mg、もしくは毎日約350mg~約1.75g、もしくは毎日約1.75~約7gの、化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体が、その必要のある対象に投与されて、SREBP経路の構成成分を阻害する。特定の実施形態では、化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体は、本明細書に記載されるように、医薬組成物として投与される。
【0045】
本明細書に記載の方法および使用によって阻害されるSREBP経路の構成成分は、SREBPまたはSCAPであり得る。いくつかの実施形態では、SREBPは阻害される。SREBPは、例えば、SREBP-1(SREBP-1aまたはSREBP-1cなど)またはSREBP-2であり得る。特定の変形例では、SREBP-1a、SREBP-1c、およびSREBP-2のうちの2つまたは3つが阻害される。いくつかの実施形態では、構成成分はSREBP-1である。他の実施形態では、SREBPはSREBP-1aである。特定の実施形態では、構成成分はSREBP-1cである。さらに他の実施形態では、SREBPはSREBP-2である。他の実施形態では、SREBP経路の構成成分はSCAPである。いくつかの実施形態では、SREBPおよびSCAPの両方が阻害される。特定の実施形態では、SREBP-1a、SREBP-1c、およびSREBP-2のうちの2つまたは3つが阻害され、SCAPが阻害される。
【0046】
SREBPまたはSCAPなどのSREBP経路の構成成分の阻害には、部分的阻害または完全な阻害が含まれ得る。部分的阻害には、SREBP経路の構成成分の活性を依然として検出可能なレベルまで減少させることが含まれ得る。完全な阻害には、SREBP経路の構成成分のすべての活動を停止すること(SREBPまたはSCAPの活動を停止するなど)、またはSREBP経路の構成成分の活動を検出未満のレベルに下げることが含まれ得る。SREBP経路の構成成分の阻害は、当技術分野で知られている任意の方法を使用して、直接的または間接的に測定することができる。
【0047】
いくつかの実施形態では、SREBP経路の構成成分の阻害は、例えば、SREBP経路構成成分によって触媒される反応の生成物を測定することによって、直接測定される。SREBP活性化の阻害(例えば、SCAPを阻害することによる)は、いくつかの実施形態では、ウエスタンブロッティング、ならびに細胞株(例えば、肝細胞株)もしくは初代細胞(マウス、ラット、またはヒト由来の初代肝細胞など)由来の、完全長および切断されたSREBP-1および/またはSREBP-2タンパク質のレベルを定量的に評価することによって実証され得る。
【0048】
いくつかの実施形態では、SREBP経路の構成成分の阻害は、例えば、SREBPによって調節される1つ以上の遺伝子の発現レベルを測定することによって、間接的に測定される。SREBPまたはSCAPなどのSREBP経路の構成成分の阻害は、SREBPによって調節される1つ以上の遺伝子、例えばSREBP-1(SREBP-1aまたはSREBP-1cなど)またはSREBP-2の発現を減少させ得る。SCAPはSREBPを活性化する役割を果たしているため、SCAPの活性の阻害は、SREBPによって調節される1つ以上の遺伝子の発現を減少させ得る。SREBP経路阻害は、ACSS2、ALDOC、CYP51A1、DHCR7、ELOVL6、FASN、FDFT1、FDPS、HMGCS1、HSD17B7、IDI1、INSIG1、LDLR、LSS、ME1、PCSK9、PMVK、RDH11、SC5DL、SQLE、STARD4、TM7SF2、PNPLA3、SREBF1、SREBF2、HMGCR、MVD、MVK、ACLY、MSMO1、ACACA、またはACACBのうちの1つ以上などの、SREBP-1および/またはSREBP-2の1つ以上の標的遺伝子の遺伝子転写レベルを評価することによっても決定できる。転写レベルは、例えば、q-PCRを含むがこれに限定されないトランスクリプトミクス分析によって評価することができる。これらの遺伝子のうちの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれ以上の減少は、SREBP活性化の阻害を示し得る。内因性SREBP遺伝子発現のこの評価は、細胞株(肝細胞株など)または初代細胞(マウス、ラット、またはヒト由来の初代肝細胞など)で評価することができる。いくつかの実施形態では、PCSK9もしくはPNPLA3、またはそれらの組み合わせの遺伝子転写レベルが評価される。
【0049】
したがって、本明細書で提供されるのは、ACSS2、ALDOC、CYP51A1、DHCR7、ELOVL6、FASN、FDFT1、FDPS、HMGCS1、HSD17B7、IDI1、INSIG1、LDLR、LSS、ME1、PCSK9、PMVK、RDH11、SC5DL、SQLE、STARD4、TM7SF2、PNPLA3、SREBF1、SREBF2、HMGCR、MVD、MVK、ACLY、MSMO1、ACACA、およびACACBからなる群から選択される1つ以上の遺伝子の発現を低減する使用および方法であって、SREBPまたはSCAPを、化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体と接触させることを含む、使用および方法である。いくつかの実施形態では、PCSK9の発現が減少する。他の実施形態では、PNPLA3の発現が減少する。さらに別の実施形態では、PCSK9およびPNPLA3の両方の発現が減少する。特定の実施形態では、1つ以上のSREBP、例えば、SREBP-1(SREBP-1aまたはSREBP-1cなど)もしくはSREBP-2、またはそれらの任意の組み合わせが接触される。他の実施形態では、SCAPが接触される。さらに別の実施形態では、SREBP-1a、SREBP-1c、SREBP-2、およびSCAPのうちの1つ以上が接触される。特定の実施形態では、SREBP経路の構成成分の阻害は、本明細書に記載されているように、障害などのSREBPによって媒介される障害を治療し得る。したがって、特定の実施形態では、上記のような1つ以上の遺伝子の発現は、その必要のある対象において減少する。
【0050】
SREBP経路阻害を間接的に検出する別の方法には、LSSプロモーターの制御下でルシフェラーゼを発現する血清飢餓肝細胞株(HepG2)が、SREBP活性化およびルシフェラーゼ発現の増加を誘導することが含まれ得る。次に、細胞を、化合物1などの化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体で処理することができる。処理後、ルシフェラーゼ活性の減少はSREBP活性化の阻害を反映しており、化合物の非細胞毒性はLDH放出によって評価できる。
【0051】
B.障害の治療
本明細書で提供されるのは、その必要のある対象において障害を治療する使用および方法であって、化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体を対象に投与することを含む、使用および方法である。いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるのは、その必要のある対象において障害を治療する使用および方法であって、化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体と薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物を対象に投与することを含む、使用および方法である。いくつかの実施形態では、障害は、SREBPによって媒介される。
【0052】
本明細書に記載の使用および治療方法は、化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体、あるいは、化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体と薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物を使用することができる。
【0053】
1.代謝障害
いくつかの実施形態では、障害は、脂質代謝、コレステロール代謝、またはインスリン代謝に影響を与える障害などの代謝障害である。特定の実施形態では、障害は、脂質代謝、コレステロール代謝、またはインスリン代謝、例えば、肝臓における脂肪の蓄積の結果としての肝疾患、または心血管疾患に関連している。
【0054】
いくつかの実施形態では、障害は、慢性肝疾患などの肝疾患である。いくつかの実施形態では、肝疾患は、SREBPまたはSCAPなどのSREBP経路の構成成分によって媒介される。いくつかの実施形態では、肝疾患は、SREBPによって媒介される。特定の実施形態では、肝疾患は、PNPLA-3などのSREBPの下流の遺伝子標的によって媒介される。他の実施形態では、肝疾患はSCAPによって媒介される。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるのは、その必要のある対象において肝疾患を治療する使用および方法であって、化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体、あるいは前述のいずれかと薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物を対象に投与することを含む、使用および方法である。慢性肝疾患は、例えば、原発性アルコール性肝疾患、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、または非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)であり得る。いくつかの実施形態では、肝疾患は、肝脂肪、肝炎症、もしくは肝線維症、またはそれらの組み合わせである。
【0055】
特定の実施形態では、肝疾患は、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)である。NAFLDは、肝臓での脂肪の蓄積に関連する状態のグループである。非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は、肝臓の炎症を含むNAFLDの一種である。NASHでは、肝臓の炎症が肝臓の損傷および瘢痕化を引き起こす可能性があり、これは不可逆的である可能性があり、肝硬変および肝不全に進行する可能性もある。NAFLDおよびNASHは、肥満、脂質異常症、インスリン抵抗性、2型糖尿病などの代謝障害に関連している。NAFLDおよびNASHに関連する他の障害には、腹部脂肪の増加および高血圧が含まれる。いくつかの実施形態では、NASHは、SREBPまたはSCAPなどのSREBP経路の構成成分によって媒介される。
【0056】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるのは、その必要のある対象においてNASHを治療する使用および方法であって、化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体、あるいは前述のいずれかと薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物を対象に投与することを含む、使用および方法である。NASHの治療には、平均肝脂肪含有量の減少が含まれ得る。これは、例えば、磁気共鳴画像法(MRI)、磁気共鳴エラストグラフィ(MRE)、超音波、もしくはコンピューター断層撮影法(CT)、肝酵素アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の減少、肝酵素アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(ALT)の減少、肝生検の組織学的スコアリングによって評価された肝炎症の減少、肝生検の組織学的スコアリングによって評価された肝線維症の減少、肝生検の組織学的スコアリングによって評価された肝脂肪含有量の減少、またはそれらの任意の組み合わせによって評価され得る。NASHの治療は、NAFLD活動スコア(NAS)、または脂肪症、活動、および線維症スコア(SAF)、または他のNASH診断、および/もしくはスコアリングメトリック(FIB4またはELFなど)を使用して評価できる。
【0057】
本明細書でさらに提供されるのは、その必要のある対象において障害を治療する使用および方法であって、障害がNASHに関連する肝線維症であり、化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体、あるいは前述のいずれかと薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物を対象に投与することを含む、使用および方法である。いくつかの実施形態では、肝線維症は、SREBPによって媒介される。肝線維症の治療は、例えば、磁気共鳴画像法(MRI)、磁気共鳴エラストグラフィ(MRE)、超音波、もしくはコンピューター断層撮影法(CT)、肝酵素アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の減少、肝酵素アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(ALT)の減少、肝生検の組織学的スコアリングによって評価された肝臓の炎症および/または線維症の減少、またはそれらの任意の組み合わせによって評価することができる。
【0058】
本明細書でさらに提供されるのは、その必要のある対象において障害を治療する使用および方法であり、障害が脂肪肝疾患であり、化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体、あるいは前述のいずれかと薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物を対象に投与することを含む、使用および方法である。いくつかの実施形態では、脂肪肝疾患は、SREBPによって媒介される。特定の実施形態では、対象の肝臓の脂肪含有量が5%以上である場合、対象は脂肪肝疾患を有し得る。いくつかの実施形態では、脂肪肝疾患を有する対象は、NASH、またはNASHに関連する肝線維症を有する。特定の実施形態では、脂肪肝疾患を有する対象は、NASHまたはNASHに関連する肝線維症と診断されていない。脂肪肝疾患の治療は、例えば、磁気共鳴画像法(MRI)、磁気共鳴エラストグラフィ(MRE)、超音波、もしくはコンピューター断層撮影法(CT)、肝酵素アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の減少、肝酵素アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(ALT)の減少、肝生検の組織学的スコアリングによって評価された肝炎症の減少、肝生検の組織学的スコアリングによって評価された肝線維症の減少、肝生検の組織学的スコアリングによって評価された肝脂肪含有量の減少、またはそれらの任意の組み合わせによって評価され得る。
【0059】
肝線維症、脂肪肝疾患、またはNASHを治療する方法などの、本明細書で提供される肝疾患を治療する使用および方法のいくつかの実施形態では、対象の体重に対して約0.01mg/kg~約100mg/kgの化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体が対象に投与される。いくつかの実施形態では、毎日約0.7mg~約7g、もしくは毎日約7mg~約350mg、もしくは毎日約350mg~約1.75g、もしくは毎日約1.75~約7gの化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体が、その必要のある対象に投与される。特定の実施形態では、化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体は、本明細書に記載されるように、医薬組成物として投与される。
【0060】
本明細書に記載の化合物または医薬組成物で治療できる他の代謝障害には、例えば、インスリン抵抗性、高血糖症、真性糖尿病、脂質異常症、脂肪症、肥満、およびメタボリックシンドロームが含まれ得る。いくつかの実施形態では、代謝障害は、遺伝的要因によって媒介される。他の実施形態では、代謝障害は、脂肪が豊富な食事、糖が豊富な食事、またはそれらの組み合わせなどの1つ以上の環境要因によって媒介される。いくつかの実施形態では、代謝障害は、SREBPによって媒介される。いくつかの実施形態では、真性糖尿病はI型糖尿病である。特定の実施形態では、真性糖尿病はII型糖尿病である。
【0061】
本明細書で提供されるのは、その必要のある対象において糖尿病を治療する使用および方法であって、化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体、あるいは前述のいずれかと薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物を対象に投与することを含む、使用および方法である。糖尿病(真性糖尿病としても知られている)は、体内の適切な血糖レベルを維持できない結果となるブドウ糖の生成および利用における代謝障害を一般的に特徴とする疾患または状態を指す。いくつかの実施形態では、糖尿病は、インスリン抵抗性を特徴とするII型糖尿病であり、インスリンは、広範囲の濃度にわたってその生物学的効果を発揮する能力を失う。いくつかの実施形態では、糖尿病は、SREBPまたはSCAPなどのSREBP経路の構成成分によって媒介される。
【0062】
本明細書でさらに提供されるのは、その必要のある対象においてインスリン抵抗性を治療する使用および方法であって、化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体、あるいは前述のいずれかと薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物を対象に投与することを含む、使用および方法である。インスリン抵抗性は、高血圧、耐糖能異常、高インスリン血症、トリグリセリドレベルの上昇、HDLコレステロールの低下、ならびに中枢性および全体的な肥満のクラスター化を統一すると仮定されている。「メタボリックシンドローム」とは同様の症状の集まりを指し、腹部肥満、高血圧、高血糖、高血清トリグリセリド(空腹時血清トリグリセリドの上昇など)、低HDLレベルなどが含まれ得、心血管疾患および/またはII型糖尿病を発症するリスクに関連している。本明細書でさらに提供されるのは、その必要のある対象においてメタボリックシンドロームを治療する使用および方法であって、化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体、あるいは前述のいずれかと薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物を対象に投与することを含む、使用および方法である。いくつかの実施形態では、メタボリックシンドロームまたはインスリン抵抗性は、SREBPまたはSCAPなどのSREBP経路の構成成分によって媒介される。
【0063】
本明細書で提供されるインスリン抵抗性、高血糖症、糖尿病、肥満、またはメタボリックシンドロームを治療する使用および方法のいくつかの実施形態では、対象の体重に対して約0.01mg/kg~約100mg/kgの化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体が対象に投与される。いくつかの実施形態では、毎日約0.7mg~約7g、もしくは毎日約7mg~約350mg、もしくは毎日約350mg~約1.75g、もしくは毎日約1.75~約7gの化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体が、その必要のある対象に投与される。特定の実施形態では、化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体は、本明細書に記載されているように医薬組成物として投与される。
【0064】
他の実施形態では、代謝障害は脂質異常症である。したがって、他の実施形態では、本明細書で提供されるのは、その必要のある対象において脂質異常症を治療する使用および方法であって、化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体、あるいは前述のいずれかと薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物を対象に投与することを含む、使用および方法である。脂質異常症は、1つ以上の脂質もしくは1つ以上のリポタンパク質、またはそれらの任意の組み合わせの異常な血漿レベルを指す。脂質異常症には、1つ以上の脂質および/もしくは1つ以上のリポタンパク質の低下したレベルまたは上昇したレベル、あるいは低下したレベルと上昇したレベルとの組み合わせ(例えば、あるタイプの脂質の上昇したレベルおよび別のタイプの脂質の低下したレベルおよび/またはリポタンパク質)が含まれ得る。脂質異常症には、低密度リポタンパク質コレステロール(LDL)の上昇、アポリポタンパク質Bの上昇、トリグリセリド(TG)の上昇、リポタンパク質(a)の上昇、アポリポタンパク質Aの上昇、高密度リポタンパク質コレステロール(HDL)の減少、またはアポリポタンパク質A1の減少、またはそれらの任意の組み合わせが含まれ得るが、これらに限定されない。異常なコレステロールまたは異常なTGレベルなどの脂質異常症は、血管疾患(心臓発作や脳卒中など)、アテローム性動脈硬化症、および冠状動脈疾患のリスクの増加と関連している。本明細書で提供される方法のいくつかの実施形態では、脂質異常症は高脂血症である。高脂血症とは、血中の脂質レベルが異常に上昇していることを指し、(1)高コレステロール血症(コレステロールレベルの上昇)、(2)高トリグリセリド血症(トリグリセリドレベルの上昇)、および(3)複合型高脂血症(高コレステロール血症と高トリグリセリド血症との組み合わせ)が含まれ得る。脂質異常症は、遺伝的素因と食事療法との組み合わせから生じる可能性があり、太りすぎ、糖尿病、またはメタボリックシンドロームに関連している可能性がある。脂質障害は、特定の薬物療法(臓器または組織移植を受けた人々の拒絶反応抑制レジメンに使用される薬物療法など)の結果としても発生する可能性がある。いくつかの実施形態では、高脂血症などの脂質異常症は、SREBPまたはSCAPなどのSREBP経路の構成成分によって媒介される。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるのは、その必要のある対象において、コレステロールレベルを減少させる、コレステロール代謝を調節する、コレステロール異化作用を調節する、食餌性コレステロールの吸収を調節する、コレステロール輸送を逆転させる、またはトリグリセリドを低下させる使用および方法であって、対象に、化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体、あるいは前述のいずれかと薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物を投与することを含む、使用および方法である。
【0065】
本明細書で提供されているように、その必要のある対象において、コレステロールレベルを減少させる、コレステロール代謝を調節する、コレステロール異化作用を調節する、食餌性コレステロールの吸収を調節する、コレステロール輸送を逆転させる、またはトリグリセリドを低下させるなどの、本明細書で提供される脂質異常症を治療する使用および方法のいくつかの実施形態では、対象の体重に対して約0.01mg/kg~約100mg/kgの化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体が対象に投与される。いくつかの実施形態では、毎日約0.7mg~約7g、もしくは毎日約7mg~約350mg、もしくは毎日約350mg~約1.75g、もしくは毎日約1.75~約7gの化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体が、その必要のある対象に投与される。特定の実施形態では、化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体は、本明細書に記載されているように、医薬組成物として投与される。
【0066】
さらに他の実施形態では、本明細書で提供されるのは、その必要のある対象において脂肪症を治療することであって、化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体、あるいは前述のいずれかと薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物を対象に投与することを含む、治療である。いくつかの実施形態では、脂肪症はメタボリックシンドロームに関連している。いくつかの実施形態では、脂肪症は、SREBPまたはSCAPなどのSREBP経路の構成成分によって媒介される。
【0067】
特定の実施形態では、本明細書で提供されるのは、その必要のある対象において胆石を治療する使用および方法であって、化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体、あるいは前述のいずれかと薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物を対象に投与することを含む、使用および方法である。胆石は、胆嚢の炎症、膵臓の炎症、または肝臓の炎症に関連している可能性がある。特定の実施形態では、胆石はコレステロール胆石であり、胆汁が高濃度のコレステロールを含み、十分な胆汁酸塩がない場合に形成され得る。いくつかの実施形態では、コレステロール胆石疾患を含み得る胆石は、SREBPまたはSCAPなどのSREBP経路の構成成分によって媒介される。
【0068】
他の実施形態では、障害は膵炎である。さらに他の実施形態では、障害は、内毒素ショック、全身性炎症、または黄色腫である。さらに別の実施形態では、障害は、アテローム性動脈硬化症、冠状動脈疾患、狭心症、頸動脈疾患、脳卒中、または脳動脈硬化症である。特定の実施形態では、前述の障害のいずれかは、SREBPまたはSCAPなどのSREBP経路の構成成分によって媒介される。
【0069】
本明細書で提供される胆石、膵炎、内毒素ショック、全身性炎症、黄色腫、アテローム性動脈硬化症、冠状動脈疾患、狭心症、頸動脈疾患、脳卒中、または脳動脈硬化症を治療する使用および方法のいくつかの実施形態では、対象の体重に対して0.01mg/kg~約100mg/kgの化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体が対象に投与される。いくつかの実施形態では、毎日約0.7mg~約7g、もしくは毎日約7mg~約350mg、もしくは毎日約350mg~約1.75g、もしくは毎日約1.75~約7gの化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体が、その必要のある対象に投与される。特定の実施形態では、化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体は、本明細書に記載されているように、医薬組成物として投与される。
【0070】
上記の実施形態のうちいずれかのいくつかの実施形態では、対象は、過体重、肥満、インスリン抵抗性、前糖尿病、または2型糖尿病を有する。前述の実施形態のいずれかの特定の実施形態では、対象はNASHを有する。
【0071】
2.過剰増殖性障害
他の実施形態では、障害は過剰増殖性障害である。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるのは、その必要のある対象において過剰増殖性障害を治療する使用および方法であって、化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体、あるいは前述のいずれかと薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物を対象に投与することを含む、使用および方法である。
【0072】
上記のように、脂肪酸、コレステロール、およびトリグリセリドの代謝は、がんなどの過剰増殖性障害において役割を果たし得る。多くの場合、非がん性細胞からがん性細胞への変換中に、細胞代謝は異化プロセスから同化プロセスに移行する。腫瘍の種類によっては、腫瘍細胞が最大95%の飽和および一不飽和脂肪酸を合成する場合がある。一部のがんは、脂肪酸および他の脂質(コレステロールなど)、ならびにステロイド(アンドロゲンなど)の合成の増加を示す。脂肪酸シンターゼ(FAS)発現の上昇は、がん細胞のS期への進行を誘発する可能性があり、FAS発現の阻害は、細胞増殖を減少させ、アポトーシスを誘発する可能性がある。したがって、SREBP経路の構成成分は、過剰増殖性障害において役割を果たす可能性がある。
【0073】
ある程度の異常な細胞増殖に関連する障害である過剰増殖性障害は、良性または悪性である可能性がある。良性の過剰増殖性障害には、前がん性障害が含まれる場合がある。
【0074】
本明細書で提供される使用および方法のいくつかの実施形態では、障害は良性の過剰増殖性障害である。いくつかの実施形態では、良性の過剰増殖性障害は、SREBPまたはSCAPなどのSREBP経路の構成成分によって媒介される。他の実施形態では、障害は、悪性の過剰増殖性障害である。いくつかの実施形態では、悪性の過剰増殖性障害は、SREBPまたはSCAPなどのSREBP経路の構成成分によって媒介される。
【0075】
いくつかの実施形態では、過剰増殖性障害は、乳がん、肝臓がん、卵巣がん、膵臓がん、または前立腺がんである。
【0076】
いくつかの実施形態では、過剰増殖性障害は、軟組織肉腫、膀胱がん、子宮内膜がん、皮膚がん、結腸がん、血液がん、胎盤がん、脳がん、腎臓がん、肺がん、または骨がんである。肉腫には、骨および軟部組織から発生するがんが含まれる場合がある。肉腫には、例えば、筋肉がんなどの結合組織がんが含まれる。
【0077】
本明細書に記載されているように、その必要のある対象において過剰増殖性障害を治療する使用および方法のいくつかの実施形態では、約0.01mg/kg~約100mg/kgである。いくつかの実施形態では、対象の体重に対して毎日約0.7mg~約7g、もしくは毎日約7mg~約350mg、もしくは毎日約350mg~約1.75g、もしくは毎日約1.75~約7gの化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体が、その必要のある対象に投与される。特定の実施形態では、化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体は、本明細書に記載されているように、医薬組成物として投与される。
【0078】
III.投与量および投与方法
開示された使用および方法のいずれかに従ってその必要のある対象に投与される化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体の用量は、化合物1および特定のその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体、投与方法、治療される特定の障害、および対象の特性(体重、性別、および/または年齢など)の間で異なり得る。いくつかの実施形態では、化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体の量は、治療上有効な量である。
【0079】
化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体の有効量は、対象の体重に対して、いくつかの実施形態では、約0.01mg/kg~約100mg/kgであり得る。いくつかの実施形態では、毎日約0.7mgから約7g、もしくは毎日約7mgから約350mg、もしくは毎日約350mgから約1.75g、もしくは毎日約1.75から約7gの化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体、またはそれらの異性体が、その必要のある対象に投与される。特定の実施形態では、化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体は、本明細書に記載されているように、医薬組成物として投与される。
【0080】
本明細書で提供される使用および方法のいずれかは、有効量の化合物1、または対応する量のその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体と薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物を、その必要のある対象に投与することを含み得る。
【0081】
本明細書で提供されているように化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体、あるいは前述のいずれかと薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物は、例えば、静脈内、筋肉内、皮下、経口、または経皮経路を含む任意の適切な経路を介して対象に投与され得る。
【0082】
特定の実施形態では、本明細書で提供されるのは、その必要のある対象において障害を治療する使用および方法であって、本明細書で提供されるように有効量の化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体、あるいは、本明細書で提供されるように前述のいずれかと薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物を対象に非経口投与することによる、使用および方法である。いくつかの実施形態では、障害は過剰増殖性障害である。特定の実施形態では、過剰増殖性障害はがんである。他の実施形態では、障害は脂肪肝疾患である。特定の実施形態では、障害はNASHである。いくつかの実施形態では、投与経路は、静脈内、動脈内、筋肉内、または皮下である。いくつかの実施形態では、投与経路は経皮的である。
【0083】
特定の実施形態では、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載されているように障害を治療する際に使用するための、化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体と、薬学的に許容される賦形剤とを含む、医薬組成物である。いくつかの実施形態では、障害が予防されるか、発症が遅れるか、または発達が遅れる。いくつかの実施形態では、障害は過剰増殖性障害である。特定の実施形態では、過剰増殖性障害はがんである。いくつかの実施形態では、障害は脂肪肝疾患である。特定の実施形態ではて、障害はNASHである。特定の実施形態では、組成物は、1つ以上の単位剤形、例えば、1、2、3、4、またはそれ以上の単位剤形で存在する医薬製剤を含む。
【0084】
IV.キット
化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体、または前述のものを含む医薬組成物を含む製品、あるいは、本明細書に記載の方法において使用するための適切に包装された本明細書に記載されるこれらのいずれかを含む単位剤形も提供される。適切な包装には、例えば、バイアル、容器、アンプル、ボトル、ジャー、可撓性包装などが含まれ得る。製品は、さらに滅菌および/または密封されたキットであり得る。
【0085】
本明細書でさらに提供されるのは、化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体もしくは異性体、あるいはそれと薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物、を含むキットである。キットは、本明細書に記載される方法のいずれかで使用することができる。いくつかの実施形態では、キットはさらに説明書を含む。キットは、本明細書に記載の使用のいずれか1つ以上に使用することができ、したがって、過剰増殖性疾患(がんなど)、脂肪肝疾患、またはNASHの治療のための説明書を含むことができる。キットは、1つ以上の容器を含み得る。各構成成分(複数の構成成分がある場合)は、別々の容器に包装することができ、または、交差反応性および貯蔵寿命が許す限り、いくつかの構成成分を1つの容器にまとめることもできる。
【0086】
キットは、単位剤形、バルクパッケージ(例えば、複数回投与パッケージ)またはサブユニット用量であり得る。例えば、1週間、2週間、3週間、4週間、6週間、8週間、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、またはそれ以上などの長期間にわたる対象の効果的な治療を提供するために、本明細書に開示されているように、十分な用量の化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体、および/あるいは本明細書に詳述される障害に有用な第2の薬学的に活性な化合物を含むキットが提供され得る。キットには、複数の単位用量の化合物1、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体、および使用説明書が含まれている場合があり、キットは、薬局(例えば、病院の薬局または調剤薬局)での保存および使用に十分な量で包装され得る。
【0087】
キットは、本明細書に記載されているように、方法の構成成分の使用に関連して、説明書を含む電子記憶媒体(例えば、磁気ディスケットまたは光ディスク)も許容されるが、一組の説明書、一般には文書での説明書を任意選択で含み得る。キットに含まれている説明書には、構成成分およびその個人への投与に関する情報が含まれている場合がある。
【0088】
本説明は、多数の例示的な構成、方法、パラメーターなどを記載する。しかしながら、かかる説明が本開示の範囲を限定ようには意図されておらず、代わりに、例示的な実施形態の説明として提供されることを認識されたい。
【0089】
列挙した実施形態
実施形態I-1.化合物(3-クロロ-4-(4-(2-(2-ヒドロキシプロパン-2-イル)ピリジン-4-イル)チオフェン-2-イル)フェニル)(4-ヒドロキシピペリジン-1-イル)メタノン:
、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体。
【0090】
実施形態I-2.実施形態I-1の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体と、薬学的に許容される賦形剤とを含む、医薬組成物。
【0091】
実施形態I-3.ステロール調節エレメント結合タンパク質(SREBP)を阻害する方法であって、実施形態I-1の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体、あるいは実施形態I-2の医薬組成物と、前記SREBPを接触させるか、またはSREBP切断活性化タンパク質(SCAP)を接触させることを含む、前記方法。
【0092】
実施形態I-4.ステロール調節エレメント結合タンパク質(SREBP)のタンパク質分解活性化を阻害する方法であって、SREBP切断活性化タンパク質(SCAP)を、実施形態I-1の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体、あるいは実施形態I-2の医薬組成物と接触させることを含む、前記方法。
【0093】
実施形態I-5.その必要のある対象において障害を治療する方法であって、前記障害がステロール調節エレメント結合タンパク質(SREBP)によって媒介され、前記方法が有効量の実施形態I-1の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体、あるいは実施形態I-2の医薬組成物を前記対象に投与することを含む、前記方法。
【0094】
実施形態I-6.その必要のある対象において障害を治療する方法であって、有効量の実施形態I-1の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体、あるいは実施形態I-2の医薬組成物を前記対象に投与することを含む、前記方法。
【0095】
実施形態I-7.SREBPがSREBP-1である、実施形態I-3~I-5のいずれか1つの方法。
【0096】
実施形態I-8.SREBP-1がSREBP-1aである、実施形態I-7の方法。
【0097】
実施形態I-9.SREBP-1がSREBP-1cである、実施形態I-7の方法。
【0098】
実施形態I-10.SREBPがSREBP-2である、実施形態I-3~I-5のいずれか1つの方法。
【0099】
実施形態I-11.SREBPが、その必要のある対象において阻害される、実施形態I-3~I-10のいずれか1つの方法。
【0100】
実施形態I-12.SCAPが、その必要のある対象において阻害される、実施形態I-3~I-11のいずれか1つの方法。
【0101】
実施形態I-13.SREBPまたはSCAPを、前記化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体、あるいは前記医薬組成物と接触させることを含む、実施形態I-3~I-12のいずれか1つの方法であって、ACSS2、ALDOC、CYP51A1、DHCR7、ELOVL6、FASN、FDFT1、FDPS、HMGCS1、HSD17B7、IDI1、INSIG1、LDLR、LSS、ME1、PCSK9、PMVK、RDH11、SC5DL、SQLE、STARD4、TM7SF2、PNPLA3、SREBF1、SREBF2、HMGCR、MVD、MVK、ACLY、MSMO1、ACACA、およびACACBからなる群から選択される1以上の遺伝子の発現が、前記SREBPまたはSCAPを、前記化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体、あるいは前記医薬組成物と接触させた後に減少する、前記方法。
【0102】
実施形態I-14.障害が、メタボリックシンドローム、2型糖尿病、肥満、肝疾患、インスリン抵抗性、脂肪症、または脂質異常症である、実施形態I-5またはI-6の方法。
【0103】
実施形態I-15.脂質異常症が、高トリグリセリド血症またはコレステロールレベルの上昇である、実施形態I-14の方法。
【0104】
実施形態I-16.肝疾患が、非アルコール性脂肪性肝炎、肝線維症、もしくは肝炎症、またはそれらの組み合わせである、実施形態I-14の方法。
【0105】
実施形態I-17.障害が過剰増殖性障害である、実施形態I-5またはI-6の方法。
【0106】
実施形態I-18.過剰増殖性障害ががんである、実施形態I-17の方法。
【0107】
実施形態I-19.がんが、乳がん、肝臓がん、卵巣がん、膵臓がん、または前立腺がんである、実施形態I-18の方法。
【0108】
実施形態I-19-A.がんが、乳がん、肝臓がん、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がん、軟組織肉腫、膀胱がん、子宮内膜がん、皮膚がん、結腸がん、血液がん、胎盤がん、脳がん、腎臓がん、肺がん、または骨がんである、実施形態I-18の方法。
【0109】
実施形態I-20.障害が、内毒素ショック、全身性炎症、またはアテローム性動脈硬化症である、実施形態I-5またはI-6の方法。
【0110】
実施形態I-21.その必要のある対象においてステロール調節エレメント結合タンパク質(SREBP)を阻害するための薬剤の製造における、実施形態I-1の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体の使用。
【0111】
実施形態I-22.阻害が、前記化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体と、前記SREBPを接触させるか、またはSREBP切断活性化タンパク質(SCAP)を接触させることを含む、実施形態I-21の使用。
【0112】
実施形態I-23.その必要のある対象においてステロール調節エレメント結合タンパク質(SREBP)のタンパク質分解活性化を阻害するための薬剤の製造における、実施形態I-1の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体の使用。
【0113】
実施形態I-24.阻害が、SREBP切断活性化タンパク質(SCAP)を、前記化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体と接触させることを含む、実施形態I-23の使用。
【0114】
実施形態I-25.その必要のある対象において障害を治療するための薬剤の製造における、実施形態I-1の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体の使用であって、前記障害がステロール調節エレメント結合タンパク質(SREBP)によって媒介される、前記使用。
【0115】
実施形態I-26.その必要のある対象において障害を治療するための薬剤の製造における、実施形態I-1の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体の使用。
【0116】
実施形態I-27.SREBPがSREBP-1である、実施形態I-21~I-25のいずれか1つの使用。
【0117】
実施形態I-28.SREBP-1がSREBP-1aである、実施形態I-27の使用。
【0118】
実施形態I-29.SREBP-1がSREBP-1cである、実施形態I-27の使用。
【0119】
実施形態I-30.SREBPがSREBP-2である、実施形態I-21~I-25のいずれか1つの使用。
【0120】
実施形態I-31.SREBPが、その必要のある対象において阻害される、実施形態I-21~I-30のいずれか1つの使用。
【0121】
実施形態I-32.SCAPが、その必要のある対象において阻害される、実施形態I-21~I-31のいずれか1つの使用。
【0122】
実施形態I-33.SREBPまたはSCAPが、前記化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体と接触させられ、ACSS2、ALDOC、CYP51A1、DHCR7、ELOVL6、FASN、FDFT1、FDPS、HMGCS1、HSD17B7、IDI1、INSIG1、LDLR、LSS、ME1、PCSK9、PMVK、RDH11、SC5DL、SQLE、STARD4、TM7SF2、PNPLA3、SREBF1、SREBF2、HMGCR、MVD、MVK、ACLY、MSMO1、ACACA、およびACACBからなる群から選択される1以上の遺伝子の発現が、前記SREBPまたはSCAPを、前記化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体と接触させた後に減少する、実施形態I-21~I-32のいずれか1つの使用。
【0123】
実施形態I-34.障害が、メタボリックシンドローム、2型糖尿病、肥満、肝疾患、インスリン抵抗性、脂肪症、または脂質異常症である、実施形態I-25またはI-26の使用。
【0124】
実施形態I-35.脂質異常症が、高トリグリセリド血症またはコレステロールレベルの上昇である、実施形態I-34の使用。
【0125】
実施形態I-36.肝疾患が、非アルコール性脂肪性肝炎、肝線維症、もしくは肝炎症、またはそれらの組み合わせである、実施形態I-34の使用。
【0126】
実施形態I-37.障害が過剰増殖性障害である、実施形態I-25またはI-26の使用。
【0127】
実施形態I-38.過剰増殖性障害ががんである、実施形態I-37の使用。
【0128】
実施形態I-39.がんが、乳がん、肝臓がん、卵巣がん、膵臓がん、または前立腺がんである、実施形態I-38の使用。
【0129】
実施形態I-39-A.がんが、乳がん、肝臓がん、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がん、軟組織肉腫、膀胱がん、子宮内膜がん、皮膚がん、結腸がん、血液がん、胎盤がん、脳がん、腎臓がん、肺がん、または骨がんである、実施形態I-38の使用。
【0130】
実施形態I-40.障害が、内毒素ショック、全身性炎症、またはアテローム性動脈硬化症である、実施形態I-25またはI-26の使用。
【0131】
実施形態I-41.ステロール調節エレメント結合タンパク質(SREBP)を阻害するための、実施形態I-1の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体、あるいは実施形態I-2の医薬組成物の使用。
【0132】
実施形態I-42.阻害が、前記化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体と、前記SREBPを接触させるか、またはSREBP切断活性化タンパク質(SCAP)を接触させることを含む、実施形態I-41の使用。
【0133】
実施形態I-43.ステロール調節エレメント結合タンパク質(SREBP)のタンパク質分解活性化を阻害するための、実施形態I-1の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体、あるいは実施形態I-2の医薬組成物の使用。
【0134】
実施形態I-44.阻害が、SREBP切断活性化タンパク質(SCAP)を、前記化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体と接触させることを含む、実施形態I-43の使用。
【0135】
実施形態I-45.その必要のある対象において障害を治療するための、実施形態I-1の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体、あるいは実施形態I-2の医薬組成物の使用であって、前記障害がステロール調節エレメント結合タンパク質(SREBP)によって媒介される、前記使用。
【0136】
実施形態I-46.その必要のある対象において障害を治療するための、実施形態I-1の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体、あるいは実施形態I-2の医薬組成物の使用。
【0137】
実施形態I-47.SREBPがSREBP-1である、実施形態I-41~I-45のいずれか1つの使用。
【0138】
実施形態I-48.SREBP-1がSREBP-1aである、実施形態I-47の使用。
【0139】
実施形態I-49.SREBP-1がSREBP-1cである、実施形態I-47の使用。
【0140】
実施形態I-50.SREBPがSREBP-2である、実施形態I-41~I-45のいずれか1つの使用。
【0141】
実施形態I-51.SREBPが、その必要のある対象において阻害される、実施形態I-41~I-50のいずれか1つの使用。
【0142】
実施形態I-52.SCAPが、その必要のある対象において阻害される、実施形態I-41~I-51のいずれか1つの使用。
【0143】
実施形態I-53.SREBPまたはSCAPが、前記化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体、あるいは前記医薬組成物と接触させられ、ACSS2、ALDOC、CYP51A1、DHCR7、ELOVL6、FASN、FDFT1、FDPS、HMGCS1、HSD17B7、IDI1、INSIG1、LDLR、LSS、ME1、PCSK9、PMVK、RDH11、SC5DL、SQLE、STARD4、TM7SF2、PNPLA3、SREBF1、SREBF2、HMGCR、MVD、MVK、ACLY、MSMO1、ACACA、およびACACBからなる群から選択される1以上の遺伝子の発現が、前記SREBPまたはSCAPを、前記化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体、あるいは前記医薬組成物と接触させた後に減少する、実施形態I-41~I-52のいずれか1つの使用。
【0144】
実施形態I-54.障害が、メタボリックシンドローム、2型糖尿病、肥満、肝疾患、インスリン抵抗性、脂肪症、または脂質異常症である、実施形態I-45またはI-46の使用。
【0145】
実施形態I-55.脂質異常症が、高トリグリセリド血症またはコレステロールレベルの上昇である、実施形態I-54の使用。
【0146】
実施形態I-56.肝疾患が、非アルコール性脂肪性肝炎、肝線維症、もしくは肝炎症、またはそれらの組み合わせである、実施形態I-55の使用。
【0147】
実施形態I-57.障害が過剰増殖性障害である、実施形態I-45またはI-46の使用。
【0148】
実施形態I-58.過剰増殖性障害ががんである、実施形態I-57の使用。
【0149】
実施形態I-59.がんが、乳がん、肝臓がん、卵巣がん、膵臓がん、または前立腺がんである、実施形態I-58の使用。
【0150】
実施形態I-59-A.がんが、乳がん、肝臓がん、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がん、軟組織肉腫、膀胱がん、子宮内膜がん、皮膚がん、結腸がん、血液がん、胎盤がん、脳がん、腎臓がん、肺がん、または骨がんである、実施形態I-58の使用。
【0151】
実施形態I-60.障害が、内毒素ショック、全身性炎症、またはアテローム性動脈硬化症である、実施形態I-45またはI-46の使用。
【0152】
実施形態I-61.その必要のある対象において非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を治療する方法であって、有効量の実施形態I-1の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体、あるいは実施形態I-2の医薬組成物を前記対象に投与することを含む、前記方法。
【0153】
実施形態I-62.その必要のある対象において非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を治療するための、実施形態I-1の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体、あるいは実施形態I-2の医薬組成物の使用。
【0154】
実施形態I-63.その必要のある対象において非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を治療するための薬剤の製造における、実施形態I-1の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体、あるいは実施形態I-2の医薬組成物の使用。
【0155】
実施形態I-64.その必要のある対象において過剰増殖性障害を治療する方法であって、有効量の実施形態I-1の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体、あるいは実施形態I-2の医薬組成物を前記対象に投与することを含む、前記方法。
【0156】
実施形態I-65.その必要のある対象において過剰増殖性障害を治療するための、実施形態I-1の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体、あるいは実施形態I-2の医薬組成物の使用。
【0157】
実施形態I-66.その必要のある対象において過剰増殖性障害を治療するための薬剤の製造における、実施形態I-1の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体、あるいは実施形態I-2の医薬組成物の使用。
【0158】
実施形態I-67.ステロール調節エレメント結合タンパク質(SREBP)を阻害する際に使用するための、実施形態I-1の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体。
【0159】
実施形態I-68.ステロール調節エレメント結合タンパク質(SREBP)のタンパク質分解活性化を阻害する際に使用するための、実施形態I-1の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体。
【0160】
実施形態I-69.その必要のある対象において障害を治療する際に使用するための、実施形態I-1の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体であって、前記障害がステロール調節エレメント結合タンパク質(SREBP)によって媒介される、実施形態I-1の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体。
【0161】
実施形態I-70.その必要のある対象において障害を治療する際に使用するための、実施形態I-1の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体。
【0162】
実施形態I-71.その必要のある対象において非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を治療する際に使用するための、実施形態I-1の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体。
【0163】
実施形態I-72.その必要のある対象において過剰増殖性障害を治療する際に使用するための、実施形態I-1の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、同位体もしくは異性体。
【実施例】
【0164】
以下の実施例は、単に例示的なものであり、本開示のいかなる態様を決して限定することを意図するものではない。
【0165】
いくつかの例において、化合物の構造の小さな変化がインビトロおよびインビボでの生物活性に予期しない変化をもたらす可能性があることを示すために、生物学的実施例1~6は、化合物1をその1炭素同族体である化合物2と比較する。
【0166】
合成例1:化合物1の合成
化合物1は、上記のスキームに従って合成された。
【0167】
ステップ1 - 化合物I-3の合成:水中の化合物I-1(500mg、2.083mmol)、化合物I-2(401.00mg、1.88mmol)、および炭酸カリウム(877.30mg、6.249mmol)の撹拌溶液(1.5mL)、および1,4-ジオキサン(5.0mL)を、48mlのガラスシールチューブに入れ、窒素ガスで20分間パージした。パラジウムテトラキス(240.307mg、0.208mmol)を加えた後、反応混合物を窒素ガスで20分間パージし、反応塊を80℃に16時間加熱した。反応の進行は、TLC(TLCシリカゲルプレート、スポットを可視化するためのUV)およびLCMSによってモニターした。反応の完了後、混合物を25℃~30℃に冷却し、セライト床を通して濾過し、酢酸エチル(30mL)で洗浄した。併せた有機層を減圧下で濃縮して、粗製物(800mg)を得た。粗化合物(800mg)を、溶離液として石油エーテル中の15~20%酢酸エチルを使用する230~400シリカゲル(カラムクロマトグラフィー)によって精製した。適切な画分を収集し、減圧下で濃縮して、生成物I-3(440mg、65%の収率)をオフホワイトの固体として得た。TLC系:石油エーテル中の30%酢酸エチル(Rf値=0.50)。1H NMR(400MHz,CDCl3):δ8.17(d,J=2.00Hz,1H),7.96(dd,J=1.60,8.00Hz,1H),7.60(d,J=8.00Hz,1H),7.42(d,J=1.60Hz,1H),7.38(d,J=1.60Hz,1H),3.97(s,3H)。
【0168】
ステップ2 - 化合物I-4の合成:THF:MeOH:H2O中の化合物I-3(440mg、1.337mmol)の撹拌溶液に、0~5℃でLiOH.水和物(140.5mg、3.343mmol)を加え、反応塊を室温で2時間撹拌した。反応の進行は、TLC(TLCシリカゲルプレート、スポットを可視化するためのUV)およびLCMSによってモニターした。反応終了後、反応混合物からの溶媒を完全に蒸発させ、水を加え、混合物を1N HClで酸性化し、酢酸エチル(30mL)で抽出した。併せた有機層を減圧下で濃縮して、生成物I-4(380mg、65%の収率)をオフホワイトの固体として得た。TLCシステム:MDC中の10%MeOH(Rf値=0.20)。1H NMR(400MHz,CDCl3):δ13.49(s,1H),8.04(s,1H),7.93-7.92(m,2H),7.82(d,J=8.0Hz,1H),7.61(s,1H);LCMS:89.66%(m/z=316.8[M+H])。
【0169】
ステップ3 - 化合物I-6の合成:THF中の化合物I-4(360mg、1.139mmol)の撹拌溶液に、HATU(657.8mg、1.708mmol)を0~5℃で添加し、続いてDIPEA(440.8mg、3.417mmol)を加えた。次に、反応混合物を0~5℃で30分間撹拌し、続いてピペリジン-4-オール(172.6mg、1.708mmol)を加えた。反応混合物を室温で16時間撹拌し、反応の進行をTLC(TLCシリカゲルプレート、スポットを可視化するためのUV)およびLCMSによってモニターした。完了後。反応塊を氷水でクエンチし、酢酸エチル(100mL)で抽出した。有機層を水およびブラインで洗浄し、減圧下で濃縮して、粗製物質(600mg)を得た。粗化合物(600mg)を、溶離液として石油エーテル中の55~60%酢酸エチルを使用する230~400シリカゲル(カラムクロマトグラフィー)により精製した。適切な画分を収集し、減圧下で濃縮して、生成物I-6(390mg、収率56%)をオフホワイトの固体として得た。TLCシステム:石油エーテル中の70%EtOAc(Rf値=0.3)。1H NMR(400MHz,DMSO-d6):δ7.54-7.52(m,2H),7.33-7.26(m,3H),5.94(s,1H),5.30(br s,1H),4.00-4.01(m,1H),3.69-3.66(m,2H),3.29(m,2H),2.05-1.85(m,2H),1.60-1.50(m,2H)。LCMS:83.24%(m/z=400.17[M+H])。
【0170】
ステップ4 - 化合物I-7の合成:1,4-ジオキサン(8mL)中の化合物I-6(390mg、0.9789mmol)、ビスピナコラートジボロン(371.87mg、1.469mmol)、および酢酸カリウム(289.14mg、2.9367)の撹拌溶液を、48mlの密封ガラス管内で、窒素ガスで10分間パージした。PdCl2(dppf)DCM付加物(79.87mg、0.0979mmol)を加えた後、反応混合物を窒素ガスで20分間パージし、反応塊を80℃で16時間加熱した。反応の進行は、TLC(TLCシリカゲルプレート、スポットを可視化するためのUV)およびLCMSによってモニターした。反応の完了後、混合物を25℃~30℃に冷却し、セライト床を通して濾過し、酢酸エチル(2×30mL)で洗浄した。併せた有機層を減圧下で直接濃縮して、粗製物(800mg)を得た。粗化合物(800mg)をメタノールで3回(それぞれ10mlで)共蒸留し、材料を石油エーテル中の5%酢酸エチルと撹拌し、次にデカントし、完全に蒸発させて、所望のボロネート(320mg、42%収率)を得た。これを、さらに精製することなく、次のステップで使用した。TLCシステム:DCM中の10%MeOH(Rf値=0.3)。LCMS:80.54%(m/z=448.1[M+H])および(m/z=366.1[M+H]、ボロン酸の質量)。
【0171】
ステップ5 - 化合物1の合成:水(0.9mL)および1,4-ジオキサン(3.0ml)中の、化合物I-7(300mg,0.6696mmol)、化合物I-8(172.0mg,0.8035mmol)、および炭酸カリウム(278.30mg,2.0088mmol)の撹拌溶液を、48mLの密閉ガラス管内で、窒素ガスで10分間パージした。パラジウムテトラキス(77.35mg、0.066mmol)を加えた後、反応混合物を再び窒素ガスで30分間パージし、混合物を80℃で16時間加熱した。反応の進行は、TLC(TLCシリカゲルプレート、スポットを可視化するためのUV)およびLCMSによってモニターした。反応の完了後、混合物を25℃~30℃に冷却し、セライト床を通して濾過し、酢酸エチル(40mL)で洗浄した。併せた有機層を減圧下で濃縮して、粗製物質(400mg)を得た。次に、粗化合物を分取HPLCにより精製した。収集した画分を減圧下で濃縮して、化合物1(70mg、25.5%)をオフホワイトの固体として得た。TLCシステム:DCM中の10%MeOH(Rf値=0.3)。1H NMR(400MHz,DMSO-d6):δ8.54-8.52(m,1H),8.33(d,J=1.60Hz,1H),8.02(d,J=1.60Hz,1H),7.99(d,J=0.80Hz,1H),7.84(dd,J=8.00Hz,1H),7.62-7.60(m,2H),7.45(dd,J=1.60,8.00Hz,1H),5.28(s,1H),4.81(d,J=3.60Hz,1H),3.99(br s,1H),3.78-3.73(m,1H),3.51(d,J=4.00Hz,1H),3.30-3.15(br s,2H),1.85-1.70(m,2H),1.48(s,6H),1.45-1.30(m,2H)。LCMS:97.32%(m/z=457.00[M+H])。
【0172】
合成例2:化合物1のスケール変更された合成
化合物1は、上記のスキームに従って代替的に合成した。
【0173】
ステップ1:2-(4-ブロモピリジン-2-イル)プロパン-2-オール(I-8)の合成:テトラヒドロフラン(3000mL)中の化合物I-9(200g、0.9258モル)の撹拌溶液に窒素雰囲気下、-70±10℃でメチルマグネシウムブロミド溶液(ジエチルエーテル中3.0M)(1543mL、4.628モル)を加えた。反応質量を-65±5℃で3分間維持した後、飽和塩化アンモニウム溶液(2000mL)でクエンチした(-65±5℃でクエンチを開始し、温度を25±5℃までゆっくりと上げた)。有機層を分離し、水層を酢酸エチル(2000mL)で再抽出した。併せた有機層を水(2000mL)で洗浄し、乾燥させ、減圧下(真空100~300mbar)で40±5℃で濃縮して、粗化合物2-(4-ブロモピリジン-2-イル)プロパン-2-オール(化合物I-9)を茶色の液体(197g、粗製)として得、これはさらにカラム精製することなくステップ4で使用した。
【0174】
ステップ2:4-(4-ブロモチオフェン-2-イル)-3-クロロ安息香酸(I-3)の合成:テトラヒドロフラン(3200mL)中の化合物I-1(400g、1.6533モル)の撹拌溶液に、窒素雰囲気下で25±5℃で、化合物I-2(319g 1.4878)および炭酸ナトリウム水溶液(注:350.18gの炭酸ナトリウムを3200mLの水に溶解し、30分間窒素でパージした)を加えた。再び、反応塊を窒素で60分間パージし、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(76.38g、0.0661モル)を反応に加えた。反応塊を65±5℃に20時間加熱し、次に25±5℃に冷却し、有機層を分離した。水層を酢酸エチル(2000mL×2)で抽出し、併せた有機層を水(2000mL×2)で洗浄し、減圧下(真空100~300ミリバール)で40±5℃で濃縮して、粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル60~120メッシュ、石油エーテル中の0~2%酢酸エチルを溶離液として使用)により精製した。適切な画分を収集し、減圧下(真空100~300mbar)で40±5℃で濃縮して、4-(4-ブロモチオフェン-2-イル)-3-クロロ安息香酸メチル(化合物I-3)をオフホワイトの固体(265.0g、53.7%の収率)として得た。
【0175】
ステップ3:メチル3-クロロ-4-(4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)チオフェン-2-イル)安息香酸(I-10)の合成:窒素雰囲気下で、テトラヒドロフラン(2500mL)中の化合物I-3(250g、0.754モル)の撹拌溶液に、ビス(ピナコラート)ジボロン(230g、0.905モル)および酢酸カリウム(223g、2.272モル)を25±5℃で加えた。反応塊をさらに窒素で25±5℃で20~30分間パージし、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)(27.7g 0.0378モル)を加えた。反応塊を65±5℃に27時間加熱し、次に25±5℃に冷却し、セライト床を通して濾過し、酢酸エチル(1000mL)で洗浄した。併せた有機層を減圧下(真空100~300mbar)で40±5℃で濃縮して、粗生成物を得た。石油エーテル(1500mL)を加え、30分間撹拌した後、固体からデカントし、減圧下(真空100~300mbar)で40±5℃で完全に蒸発させて、粗メチル3-クロロ-4-(4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)チオフェン-2-イル)ベンゾエート(化合物I-10)を褐色の粘着性の塊(285g、粗製)として得た。これは、100%の収率とみなされ、さらなる精製なしに次のステップに使用した。
【0176】
ステップ4:メチル3-クロロ-4-(4-(2-(2-ヒドロキシプロパン-2-イル)ピリジン-4-イル)チオフェン-2-イル)ベンゾエート(I-11)の合成:窒素雰囲気下、25±5℃で、へテトラヒドロフラン(1248mL)中の化合物I-8(156.0g、0.7219モル)の撹拌溶液に、化合物I-10(281.7g、0.7439)および炭酸ナトリウム水溶液(注:153.0gの炭酸ナトリウムを1248mLの水に溶解し、60分間窒素でパージした)を加えた。反応塊をさらに窒素で60分間パージし、次にテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(33.39g、0.0289モル)を反応に加えた。反応塊を65℃に3時間加熱し、25±5℃に冷却し、有機層を分離した。水層を酢酸エチル(780mL×2)で抽出し、併せた有機層を水(780mL×2)で洗浄し、減圧下(真空100~300ミリバール)で40±5℃で濃縮して、粗生成物を得た粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル100-200メッシュ、溶離液として石油エーテル中の10-30%酢酸エチルを使用)により精製して、メチル3-クロロ-4-(4-(2-(2-ヒドロキシプロパン)-2-イル)ピリジン-4-イル)チオフェン-2-イル)ベンゾエート(化合物I-11)をオフホワイトの固体(180.0g、64.2%収率)として得た。
【0177】
ステップ5:3-クロロ-4-(4-(2-(2-ヒドロキシプロパン-2-イル)ピリジン-4-イル)チオフェン-2-イル)安息香酸(化合物I-12)の合成:テトラヒドロフラン(1800mL)中の化合物7(180g、0.4645モル)の撹拌混合物に、25±5℃でメタノール(1080mL)を加えた。反応塊を5℃に冷却し、水酸化リチウム一水和物溶液(48.8gの水酸化リチウム一水和物を720mLの水に溶解した)を5±5℃でゆっくりと加えた。反応塊を25℃に1時間温め、次に有機溶媒を減圧下(真空100~300mbar)下で40±5℃で蒸留した。残留物を25±5℃の水(1800mL)に溶解し、酢酸エチル(1500mL×3)で洗浄した。水層のpHを、飽和クエン酸溶液(約60mL)を使用して約5に調整した。得られたスラリー塊を25±5℃で1時間撹拌し、濾過し、水(1000mL)で洗浄した。湿った固体を減圧下(真空10~30mbar)で50±5℃でさらに乾燥させて、3-クロロ-4-(4-(2-(2-ヒドロキシプロパン-2-イル)ピリジン-4-イル)チオフェン-2-イル)安息香酸(化合物I-12)をオフホワイトの固体(150.0g、86.4%収率)として得た。
【0178】
ステップ6:(3-クロロ-4-(4-(2-(2-ヒドロキシプロパン-2-イル)ピリジン-4-イル)チオフェン-2-イル)フェニル)(4-ヒドロキシピペリジン-1-イル)の合成メタノン(化合物1):25±5℃で、アセトニトリル(1500mL)中の化合物I-12(150g、0.401モル)の撹拌溶液に、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸塩(115.4g、0.602モル)およびの4-ジメチルアミノピリジン(73.5g、0.602モル)を加えた。10~15分間撹拌した後、化合物I-5(40.52g、0.401モル)を加え、反応混合物を25±5℃で27時間維持した。次に、反応を水(1500mL)でクエンチし、アセトニトリルを減圧下(真空100~300mbar)で45±5℃で蒸留した。次に、生成物を酢酸エチル(1500mL)で抽出し、水(1500mLx5)で洗浄し、減圧下(真空100~300mbar)で45±5℃で濃縮して、粗生成物を得た。この物質をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル100~200メッシュ、溶離液としてジクロロメタン中の0-5%メタノールを使用)により精製した。適切な画分を収集し、減圧下(真空100~300mbar)で40±5℃で濃縮して、(3-クロロ-4-(4-(2-(2-ヒドロキシプロパン-2-イル)ピリジン-4-イル)チオフェン-2-イル)フェニル)(4-ヒドロキシピペリジン-1-イル)メタノン(化合物1)をオフホワイトの固体(92.0g、50.2%収率)として得た。特性は、実施例1の対応するステップの特性と一致する。
【0179】
生物学的実施例1:レポータースクリーニングアッセイ
転写活性に対する化合物1の効果SREBPは、SRE-ルシフェラーゼレポーターコンストラクトを使用して評価した。LSS-ルシフェラーゼ導入遺伝子を安定して発現するHepG2の化合物1のEC50は150nMであった。
【0180】
24時間のインキュベーション後、培地細胞を様々なロバスタチン濃度(10μM、5μM、および1μM)で処理した。24時間後、処理プレートをアルミホイルで覆い、-80℃で一晩凍結した。プレートを室温まで解凍し、ルシフェラーゼアッセイを実施した。細胞を10%FCS DMEM培地で96ウェルプレートに播種し、24時間インキュベートした。次に、化合物1またはDMSOコントロールを含む0%FCS培地にさらに24時間切り替え、その時点でLSS_レポーターの活性をアッセイする。
【0181】
ルシフェラーゼアッセイを行うための試薬は、-20℃で保存した。凍結乾燥したアッセイ基質のチューブに1mLの基質溶媒を加え、よく混合した。再構成後の基質チューブは、光から保護するためにアルミホイルで覆った。アッセイバッファーを室温まで解凍した。20mLのアッセイバッファーに200μLの再構成した100倍基質を加え、よく混合した。再構成された基質およびアッセイ溶液(緩衝液+基質)は、アルミホイルで覆われた状態を維持することにより、手順全体を通して光から保護した。
【0182】
マルチチャンネルピペットを使用して、100μLのアッセイ溶液(バッファー+基質)をプレート1の各サンプルウェルに直接添加し、30分間インキュベートした(プレートをアルミホイルで覆った)。30分のインキュベーション後、プレートの全発光を読み取った。プレートルミノメーターで各ウェルを2秒間読み取った。(マイクロプレートリーダーである、Perkin ElmerからのEnvision Microplateマイクロプレートリーダー)。プレートリーダーで読み取る前に、プレートを正確に30分間インキュベートするように注意した。
【0183】
材料:SREBPv1レポーター細胞株:HepG2-番号32251。増殖培地:MEM(Corning10-010)、10%FBS、1%GlutaMax(Invitrogenカタログ番号35050061)、μg/mlピューロマイシン(Invitrogenカタログ番号A1113803)、および1%ペニシリン-ストレプトマイシン(Pen-Strep)。処理培地:フェノール不含有MEM(Invitrogenカタログ番号51200-038)および1%GlutaMax(Invitrogenカタログ番号35050061)。ルシフェラーゼアッセイ:LightSwitch Luciferase Assay Kit(カタログ番号32032)。LDHアッセイ:Pierce LDH Cytotoxicity Assay Kit(カタログ番号SD249616)。
【0184】
生物学的実施例2:遺伝子発現試験
HepG2細胞の遺伝子発現に対する化合物1の効果を評価した。
【0185】
HepG2細胞(P2)を、RNA抽出用に24ウェルプレート(80,000細胞/ウェル)に、Cell Titer Glow(CTG)用に96ウェルプレート(10,000細胞/ウェル)に播種した。使用した培地はDMEMで、10%FBSを含んでいた。化合物1を500nmで48時間評価した。実験グループごとに2つの生物学的複製をRNAについて評価し、実験グループごとに3つの生物学的複製をCTGで分析した。
【0186】
遺伝子解析のために、RNAをRNEasyキットで収集し、20~100ngを使用してランダムプライマーでcDNAを合成した。定量的PCRは、ACACA、ACLY、FASN、LSS、PNPLA3の遺伝子について1pg~100ngのcDNAで実行した。遺伝子発現レベルは、処理された細胞をベースラインとしてのモックまたはビヒクル処理された細胞と比較するΔΔCT法を用いて測定した。結果を以下の表1に示す。
【0187】
(表1)化合物1で48時間、500nM処理したHepG3細胞におけるSREBPターゲット遺伝子のQ-PCR分析
【0188】
生物学的実施例3:追加の遺伝子発現試験
生物学的実施例2に記載されている手順に従って、以下の追加の遺伝子HMGCR、MVD、MVK、ACSS1、ACSS2、ACACB、ELOVL6、SCD、SREBF1、SREBF2、SCAP、ACTB18Sについても定量的PCRを実施する。
【0189】
生物学的実施例4:化合物1のインビトロでのADME特性の評価
インビトロでの化合物1のADME特性を評価した。結果を以下の表2に示す。
【0190】
【0191】
速度論的溶解性手順:化合物1の10mMストック溶液をDMSOで調製し、次に4μLのストックを396μLのpH7.4バッファーを含むディープウェルプレートに添加した。サンプルプレートを、室温のサーモミキサー上で、800rpmで24時間ボルテックスした。インキュベーションプロセスの間、プレートは十分に密封された。サンプル中のDMSO含有量は1.0%であった。最終インキュベーションにおける化合物1の濃度は100μMであった。インキュベーション期間の最後に、サンプルプレートを4000rpmで10分間遠心分離し、検量線(CC)に対してLC-UVで分析した。
【0192】
半減期のヒトミクロソーム:化合物1は、ヒト肝ミクロソームの安定性について評価した。化合物1の10mMストック溶液をDMSOで調製し、水:アセトニトリル(1:1)で1mMの濃度に希釈した。水:アセトニトリル(1:1)でさらに希釈することにより、100μMの作業濃度を調製した。プレインキュベーション混合物を作成するために、2.5μLの希釈した化合物1を75μLのヒト肝臓ミクロソーム(3.33mg/mL)および85μLの100mMリン酸カリウムバッファーと混合し、この混合物を37℃で10分間プレインキュベートした。補因子を含まない60分間の混合物を作成するために、32.5μLのプレインキュベーション混合物を17.5μLの100mMリン酸カリウムバッファーと混合し、37℃で60分間インキュベートした。補因子(NADPH)を含む0分のサンプルを作成するために、16.25μLのプレインキュベーション混合物を、内部標準を含む200μLのアセトニトリルおよび8.75μLの補因子(NADPH)と混合した。インキュベーション混合物を作成するために、62μLの補因子(2.85mM)を残りのインキュベーション混合物と混合し、37℃で60分間インキュベートした。評価するサンプル混合物を調製するために、25μLのインキュベーション混合物を、内部標準を含む200μLのアセトニトリルと混合し、1200rpmで5分間ボルテックスした後、4000rpmで10分間遠心分離した。上澄みを水で2倍に希釈し、LC-MS/MSに注入した。サンプル混合物は、水性移動相として0.1%FA、有機移動相としてメタノールを含む10mM酢酸アンモニウムを使用したLC-MS/MSによって評価した。
【0193】
半減期のラットおよびマウスのミクロソーム:化合物1は、ヒトの肝臓のミクロソームについて上記したのと同様の手順に従って、ラットおよびマウスの肝臓のミクロソームで評価した。
【0194】
Log D手順:化合物1のLog Dは、オクタノール/水性緩衝液の分配によって評価した。500μLの有機相(1-オクタノール)を2mLのディープウェルプレートの各ウェルに添加し、続いて500μLのバッファーおよび15μLのDMSO(0.15mM)中の試験化合物を添加した。プレートを10秒間ボルテックスし、200rpmのプレートシェーカー上で、室温で1時間インキュベートした。インキュベーション後、サンプルを20分間平衡化させ、4000rpmで30分間遠心分離して、完全な相分離を行った。緩衝液およびオクタノール相中の試験化合物の分布をHPLC-UVで分析した。Log D=Log(オクタノールの面積/バッファーの面積)
【0195】
生物学的実施例5:化合物1のインビボでの薬物動態特性の評価
静脈内投与および経口投与の両方による化合物1のインビボでの薬物動態特性を、雄性C57BL/6マウスで評価した。静脈内投与および経口投与の両方による化合物2のインビボでの薬物動態特性を、比較のために雄性C57BL/6マウスで評価した。
【0196】
動物は清潔な寝具を備えたケージに収容した。認定されたげっ歯類の食事を提供した。水は自由に利用させた。動物室の環境管理は、22~25℃の温度、40~70%RHの湿度、および12時間の明期/12時間の暗期のサイクルを維持するように設定した。担当の獣医によって認定された正常な健康な動物を選択し、研究開始前に最低3日間順応させた。
【0197】
採血の手順:ガス麻酔を使用してマウスを麻酔した。血液サンプルは、毛細血管を介して収集し、眼窩後神経叢に誘導した。各時点で、それぞれのグループの3匹のマウスから血液サンプルを収集した。血液サンプルは、事前にラベル付けされたチューブに収集した。各マウスから0.2~0.3mLの血液を採取した。各時点で血液サンプルを収集した後、遠心分離の前にサンプルを氷上に保存した。血液サンプルを15分以内に遠心分離して血漿を分離した。遠心分離は、1540rcf(5000rpm)、4℃で10分間行った。血漿を分離し、事前にラベルを付けたマイクロ遠心チューブに移し、バイオアナリシスを行うまで-80±10℃で迅速に凍結した。サンプルは、テスト項目、グループ、動物番号、および収集時点によって識別した。
【0198】
静脈内送達の薬物動態特性を評価するために、9匹の雄性C57BL/6マウスに動物体重1kg当たり2.00mgの化合物1を尾静脈から投与した。動物の血漿中の化合物1の濃度は、マウスから血液サンプルを採取することにより、0.083、0.25、0.5、1、2、4、8、および24時間に評価した。血漿濃度対時間のグラフを
図1に示す。動物体重1kg当たり2.00mgの化合物1の静脈内送達の薬物動態パラメーターの要約を表3に提供する。比較のために化合物2を同様に投与した。血漿濃度対時間のグラフを表3に示す。動物体重1kg当たり2.00mgの化合物2の静脈内送達の薬物動態学的パラメーターの要約を
図3に提供する。
【0199】
【0200】
経口送達の薬物動態特性を評価するために、9匹の雄性C57BL/6マウスに動物体重1kg当たり10mgの化合物1を経口投与した。動物の血漿中の化合物1の濃度は、血液サンプルを採取することにより、0.25、0.5、1、2、4、6、8、および24時間に評価した。血漿濃度対時間のグラフを
図2に示す。動物体重1kg当たり10mgの化合物1の経口送達の薬物動態パラメーターの要約を表4に提供する。比較のために化合物2を同様に投与した。血漿濃度対時間のグラフを表4に示す。動物体重1kg当たり10mgの化合物2の経口送達の薬物動態パラメーターの要約を
図4に提供する。
【0201】
【0202】
生物学的実施例6:C33A子宮内膜細胞株を使用した化合物1のインビボでの薬理学の評価
動物は清潔な寝具を備えたケージに収容した。認定されたげっ歯類の餌および水を自由に摂取させた。動物室の環境管理は、22~25℃の温度、40~70%RHの湿度、および12時間の明期/12時間の暗期のサイクルを維持するように設定した。担当の獣医によって認定された正常な健康な動物を選択し、研究開始前の最低3日間順応させた。
【0203】
Balb/cヌードマウス(6~8週齢)は、各ケージに最大5匹の動物を入れた個別換気ケージで飼育した。寝具の材料(トウモロコシの穂軸)は週に2回交換した。
【0204】
C33A腫瘍細胞は、10%熱不活化ウシ胎児血清、100U/mLペニシリン、100μg/mlストレプトマイシンを添加したイーグル最小必須培地で37℃、空気中5%CO2の雰囲気で培養した。腫瘍細胞は、週に2~3回定期的に継代培養した。指数増殖期に細胞を回収し、腫瘍接種についてカウントした。
【0205】
各Balb/cヌードマウスの右側腹部に、腫瘍発生のために0.1mL PBS中のC33A腫瘍細胞(1e6)を皮下接種した。
【0206】
腫瘍体積は、ノギスを使用して二次元で週2回、最大20日間測定され、体積は式V=0.5a×b
2(式中、aおよびbはそれぞれ腫瘍の長径および短径である)を使用してmm
3で表した。ビヒクルのそれと比較した腫瘍体積に対する化合物1の効果を示すグラフを
図5に提供する。
【0207】
生物学的実施例7:A2780卵巣がん細胞株を使用した化合物1のインビトロでの薬理学の評価
雌マウス(Mus Musculus、Foxn1nu/nu株、生後6~8週、18~22g)は、Shanghai Lingchang Bio-Technology Co.,Ltd.から供給された。マウスは、Individual Ventilation Cages中で、一定温度(20~26℃)および湿度(40~70%)で各ケージに3匹の動物で維持した。動物には、研究期間全体を通して、滅菌飲料水および照射滅菌乾燥顆粒食品を自由に摂取させた(Jiangsu Province Synergy Pharmaceutical Bioengineering Co.,Ltd.カタログ番号1010019)。動物は耳のコーディングによってマークした(グループ当たり10匹の動物)。
【0208】
細胞培養:A2780腫瘍細胞は、10%熱不活化ウシ胎児血清、100U/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシンを添加したEMEM(イーグル最小必須培地)で、37℃、空気中5%CO2の雰囲気で培養した。腫瘍細胞は、通常、週に2~3回継代培養した。指数増殖期に増殖している細胞を採取し、腫瘍接種のためにカウントした。腫瘍接種には、生存率が90%を超える細胞を使用した。マイコプラズマ試験は培養中に毎週実施し、STR試験は細胞株を検証するために実施した。
【0209】
腫瘍の接種および測定:各マウスの右側腹部に、50%Matrigel(登録商標)(Corning、カタログ番号:354234)を含む/含まない0.1mL PBSの量で、動物当たり1×10
6 A2780腫瘍細胞(生きた生細胞)を皮下接種して、腫瘍の発生を促進した。注射には26ゲージの針を使用した。腫瘍が触知可能になった後、腫瘍体積をキャリパーを使用して二次元で週2回測定し、体積は、式V=0.5a×b
2(式中、aおよびbはそれぞれ腫瘍の長径および短径である)を使用してmm
3で表した。腫瘍サイズがエンドポイントサイズ(2000mm
3)に達するまで腫瘍サイズを週に2回測定して動物を人道的に安楽死させるか、または動物に21日間投与して動物を安楽死させ、生物分析のためにサンプルを収集した。ビヒクルのそれと比較した腫瘍体積に対する化合物1の効果を示すグラフを
図6に提供する。
【0210】
生物学的実施例8:がん細胞増殖阻害に関する化合物1の評価
様々ながん細胞株の細胞増殖を阻害する選択された化合物の能力を評価する。細胞を10uM~1pMの範囲の用量の化合物で処理して、細胞株増殖阻害のIC50曲線を作成する。表5に示される細胞株は、増殖培地での72時間の処理にわたって、10uM以下で少なくとも50%増殖を減少させた。表6に示す細胞株は、IC50が10uMを超えると、増殖が少なくとも50%減少している。
【0211】
6つの10倍化合物希釈液をDMSOで調製する(例:10mM、1mM、100uM、10uM、1uM、および0.1uM)。濃度ごとに単一のデータポイントが取得される。DMSOの最終濃度は0.1%である。処理期間は72時間である。成長阻害は、タンパク質染色アッセイでスルホローダミンBを使用して測定する。薬剤の活性は、次のパラメーターを評価することによって決定する:IC50、GI50、IC10、TGI、LC50、IC90、およびGI90(これらの値は計算することができる)。
【0212】
【0213】
(表6)IC50>10uMの、または未決定の非レスポンダー細胞株
【国際調査報告】