(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-25
(54)【発明の名称】トリポード型等速ジョイント
(51)【国際特許分類】
F16D 3/205 20060101AFI20230118BHJP
F16C 19/26 20060101ALI20230118BHJP
F16C 33/58 20060101ALI20230118BHJP
【FI】
F16D3/205
F16C19/26
F16C33/58
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022528633
(86)(22)【出願日】2019-11-18
(85)【翻訳文提出日】2022-07-12
(86)【国際出願番号】 EP2019081668
(87)【国際公開番号】W WO2021098945
(87)【国際公開日】2021-05-27
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507334967
【氏名又は名称】ゲーカーエン ドライブライン インターナショナル ゲゼルシャフト ミト ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】GKN DRIVELINE INTERNATIONAL GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フランソワ,マルク
(72)【発明者】
【氏名】ポスト,ハンス-ユルゲン
【テーマコード(参考)】
3J701
【Fターム(参考)】
3J701AA14
3J701AA42
3J701AA52
3J701AA63
3J701BA54
3J701BA56
3J701FA01
3J701FA60
3J701GA02
(57)【要約】
本等速ジョイント(2)は、アーム(8)を有する雄要素(4)と、一対の対称なトラック(18、20)を定め且つ中心軸(X′-X′)を有する雌要素(16)と、対応する2つのトラック(18、20)の一方又は他方の上を周辺転動表面(52)を介して転動するように設計されている外側ローラ(28)とを備える。雌要素(16)は、少なくとも1つのベアリング表面(60、62)を有し、ベアリング表面(60、62)は、雌要素の軸に対して垂直であって且つ及びアーム(8)の軸に垂直な軸の周りの外側ローラ(28)の回転を、制限する。各アーム(8)に関して、トラック(18、20)それぞれの断面プロファイルは、互いにオフセットされた半径中心を有する2つの円弧、又は、雌要素中央平面(Q-Q)上に延在する1つの単一の円弧、これらのいずれかを有し、転動表面(52)は、一部球形形状又は一部円環形形状を有する。各トラック(18、20)と転動表面(52)とは、径方向において互いに離れた第一及び第二接触点(Z1、Z2)で互いに接触することができる。ローラの傾斜は、雌要素(16)上の近位及び遠位レールによって制御され、且つ、外側ローラ(28)上の近位及び遠位制動表面によって制御される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
等速ジョイント(2)であって、
複数のアーム(8)を有する雄要素(4)と、
雌要素(16)であって、
該雌要素(16)は、雌要素中心軸(X′-X′)を有し、
該雌要素(16)は、対向する一対のトラック(18、20)を各アームごとに定めており、
該トラック(18、20)は、前記アームの両側に設けられており、且つ、該雌要素(16)の径方向長手方向平面(P)に関して対称である、前記雌要素(16)と、
機械式トランスミッションユニット(26)であって、
該機械式トランスミッションユニット(26)は、外側ローラ(28)を有し、
該外側ローラ(28)は、前記アーム(8)に対して押し込み且つ摺動するように取り付けられており、
該外側ローラ(28)は、対応する前記2つのトラック(18、20)の一方又は他方の上を、周囲の転動表面(52)を介して転動するように設計されている、前記機械式トランスミッションユニット(26)と
を備え、
前記雌要素(16)は、少なくとも1つのベアリング表面(60、62)をさらに有し、
前記ベアリング表面(60、62)は、前記雌要素中心軸(X′-X′)に垂直であって且つ前記アーム(8)の軸に垂直な軸の周りの前記外側ローラ(28)の回転を、阻止又は制限しており、
各アーム(8)に関して、
トラック(18、20)それぞれの断面プロファイルは、
互いにオフセットされた半径中心を有する2つの円弧、又は、
雌要素中央平面(Q-Q)上に延在する1つの単一の円弧、
これらのいずれかを有し、
前記転動表面(52)は、一部球形形状又は一部円環形形状を有し、
各トラック(18、20)と前記転動表面(52)とは、径方向において互いに離れた第一及び第二接触点(Z1、Z2)で、互いに接触することができる
ことを特徴とする等速ジョイント(2)。
【請求項2】
請求項1に記載の等速ジョイントであって、
第一及び第二接触点(Z1、Z2)における、前記トラック(18、20)及び前記転動表面(52)の接平面は、前記径方向長手方向平面(P)に対して斜めである
等速ジョイント。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の等速ジョイントであって、
各トラック(18、20)の断面プロファイルが2つの円弧を有する場合は、それらの半径は、前記転動表面(52)の断面の半径よりも大きいか、又は
各トラック(18、20)の断面プロファイルが1つの単一の円弧を有する場合は、この弧の半径は、前記転動表面(52)の断面の半径よりも大きい
等速ジョイント。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の等速ジョイントであって、
前記外側ローラ(28)は、前記転動表面(52)に隣接し且つ前記外側ローラの中心軸(Z-Z)に対して斜めである遠位制動表面(64)を有し、
各トラックは、遠位レール表面(66)を有し、
前記遠位制動表面と前記遠位レール表面は、協働して、前記トラックに対して前記外側ローラが前記雌要素中心軸(X-X’)に平行な軸周りに枢動することを制限するように合わされている
等速ジョイント。
【請求項5】
請求項4に記載の等速ジョイントであって、
前記遠位レール表面(66)は、平面又は凸断面を有し、
前記遠位制動表面(64)は、平面又は凸断面を有し、
前記遠位レール表面と前記遠位制動表面とは、1つの単一の接触点を定める
等速ジョイント。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の等速ジョイントであって、
前記外側ローラ(28)は、前記転動表面(52)に隣接し且つ前記外側ローラの中心軸(Z-Z)に対して傾斜した近位制動表面(70)を有し、
各トラック(18、20)は、近位レール表面(72)を有し、
前記近位制動表面と前記近位レール表面は、協働して、前記トラックに対して前記外側ローラが前記雌要素中心軸(X-X’)に平行な軸周りに枢動することを制限するように合わされている
等速ジョイント。
【請求項7】
請求項6に記載の等速ジョイントであって、
前記近位レール表面(72)は、平面又は凸断面を有し、
前記近位制動表面(70)は、平面又は凸断面を有し、
前記近位レール表面と前記近位制動表面とは、1つの単一の接触点を定める
等速ジョイント。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の等速ジョイントであって、
前記近位制動表面(70)及び近位レール表面(72)は、前記雌要素に対する前記外側ローラ(28)の近位変位を制限するように合わせられる
等速ジョイント。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のジョイントであって、
前記機械式トランスミッションユニット(26)は、前記外側ローラ(28)内に設けられた内側リング(30)を有し、
前記内側リング(30)と前記外側ローラ(28)とを連結するための手段(32)は、前記内側リング(30)と前記外側ローラ(28)が共通の旋回軸(Z-Z)上で相対的に枢動することを可能にしており、
前記内側リング(30)は、
前記アーム(8)上に押し込み及び回転するように取り付けられ、且つ、
前記外側ローラ(28)の軸に対して、前記外側ローラ(28)に相対的に軸方向に固定されて取り付けられるか、又は、
前記内側リング(30)は、
前記アーム(8)上に、前記アーム(8)の軸に対して軸方向に固定されて取り付けられ、且つ、
前記外側ローラ(28)の軸に対して、前記外側ローラ(28)に相対的に軸方向に可動に取り付けられる
ジョイント。
【請求項10】
請求項9に記載の等速ジョイントであって、
前記内側リング(30)と前記外側ローラ(28)とを連結するための手段(32)は、ニードルのクラウン(34)と、2つの支持リング(40、42)とを有し、
支持リングはそれぞれ、前記ニードルのクラウンの軸方向の両側部のうちの一方に設けられており、
支持リングはそれぞれ、前記外側ローラ(28)に対して、前記ニードルを維持し、且つ、特に前記内側リングも維持する
等速ジョイント。
【請求項11】
請求項10に記載のジョイントであって、
前記外側ローラ(28)は、2つの溝(44、46)を内側に有し、
前記2つの支持リングはそれぞれ、前記2つの溝の1つに配置されている
ジョイント。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の等速ジョイントであって、
前記外側ローラ(28)は、平坦な前表面(54)を有し、
該前表面(54)は、前記外側ローラの軸(Z-Z)に対して直角に設けられており、且つ、前記雌要素のベアリング表面(60、62)に接触するように合わせられており、
前記ベアリング表面は、ベアリング領域(24)によって構成されており、
該ベアリング領域(24)は、横断プロファイルを有し、この横断プロファイルでは、前記平坦な前表面(54)との接触位置に対応して、前記径方向長手方向平面(P)に対して略直交している又は凸である
等速ジョイント。
【請求項13】
請求項12に記載の等速ジョイントであって、
各アーム(8)に関して、
前記ベアリング領域(24)は、前記径方向長手方向平面(P)の両側に延在する2つのベアリング表面(60、62)によって構成されており、
前記2つのベアリング表面は、前記雌要素(16)の、径方向外向きに凹んだ部分によって離されている
等速ジョイント。
【請求項14】
請求項12に記載の等速ジョイントであって、
各アーム(8)に関して、
前記ベアリング領域(24)は、前記径方向長手方向平面(P)の両側に延在する単一のベアリング表面(62)によって構成されており、
前記ベアリング表面(62)は、前記雌要素の、径方向外向きに凹んだ部分によって、動作上関連する各トラック(18、20)から離されている
等速ジョイント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、以下のような種類の等速ジョイントに関する。この等速ジョイントは、
複数のアームを有する雄要素と、
雌要素であって、この雌要素は雌要素中心軸を有し、且つ、対向する一対のトラックを各アームごとに定めており、この一対のトラックはアームの両側に設けられており且つ雌要素の径方向長手方向平面に関して対称である、雌要素と、
機械式トランスミッションユニットであって、この機械式トランスミッションユニットは外側ローラを有し、この外側ローラはアームに対して押し込み且つ摺動するように取り付けられており、且つ、対応する2つのトラックの一方又は他方の上を周辺転動表面を介して転動するように設計されている、機械式トランスミッションユニットと
を備えており、雌要素は少なくとも1つのベアリング表面をさらに有し、このベアリング表面は、雌要素中心軸(X′-X′)に対して垂直であって且つアームの軸に垂直な軸の周りの、外側ローラの回転を阻止又は制限する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、特に自動車のトランスミッションシステムに用いられるトリポード型等速ジョイントに適する。
【0003】
このようなトリポード型等速ジョイントは、一般に、第一回転シャフトと一体となっている、三軸対称(ternary symmetry)の雄要素又はトリポードと、第二回転シャフトと一体となっている、三軸対称の雌要素又はチューリップとを有する。
【0004】
特許文献1には、請求項1の前文に対応する等速ジョイントが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/135219号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、屈折した角度での動作時において個々の部品間の摩擦を低減し且つローラが引っ掛かるリスクを制限した機械式ジョイントを提供することによって、既存のジョイントを改善することである。
【0007】
さらに、本発明によるジョイントは、経済的であり且つ製造が容易なものである。
【0008】
このため、本発明の目的は、以下の特徴を有する前述の種類の等速ジョイントである。
この等速ジョイントは、各アームに関して、
トラックそれぞれの断面プロファイルは、互いにオフセットされた半径中心を有する2つの円弧、又は雌要素中央平面(median plane)上に延在する1つの単一の円弧、これらのいずれか有し、
前述の転動表面は、一部球形形状又は一部円環形形状を有し、
各トラックと転動表面とは、径方向において互いに離れた第一及び第二接触点で互いに接触することができる。
【0009】
実施形態の特定の形態によれば、本ジョイントは、以下の特徴を1つ以上有し、これらの特徴は、単独でもよく又は技術的に可能な任意の組み合わせでもよい。
・第一及び第二接触点における、トラック及び転動表面の接平面は、径方向長手方向平面に対して斜めである。
・各トラックの断面プロファイルが2つの円弧を有する場合は、それらの半径は、転動表面の断面の半径よりも大きいか、又は
・各トラックの断面プロファイルが1つの単一の円弧を有する場合は、この弧の半径は、転動表面の断面の半径よりも大きい。
・外側ローラは、転動表面に隣接し且つ外側ローラの中心軸に対して斜めである遠位制動表面を有し、
各トラックは、遠位レール表面を有し、
遠位制動表面と遠位レール表面は、協働して、トラックに対して外側ローラが雌要素中心軸に平行な軸周りに枢動することを制限するように合わされている。
・遠位レール表面は、平面又は凸断面を有し、
遠位制動表面は、平面又は凸断面を有し、
遠位レール表面と遠位制動表面とは、1つの単一の接触点を定める。
・外側ローラは、転動表面に隣接し且つ外側ローラの中心軸に対して傾斜した近位制動表面を有し、
各トラックは、近位レール表面を有し、
近位制動表面と近位レール表面は、協働して、トラックに対して外側ローラが雌要素中心軸に平行な軸周りに枢動することを制限するように合わされている。
・近位レール表面は、平面又は凸断面を有し、
近位制動表面は、平面又は凸断面を有し、
近位レール表面と近位制動表面とは、1つの単一の接触点を定める。
・近位制動表面及び近位レール表面は、雌要素に対する外側ローラの近位変位を制限するように合わせられる。
・機械式トランスミッションユニットは、外側ローラ内に設けられた内側リングを有し、内側リングと外側ローラとを連結するための手段は、内側リングと外側ローラが共通の旋回軸上で相対的に枢動することを可能にしており、
内側リングは、前記アーム上に押し込み及び回転するように取り付けられ、且つ、外側ローラの軸に対して外側ローラに相対的に軸方向に固定されて取り付けられるか、
又は、
内側リングは、アーム上に、アームの軸に対して軸方向に固定されて取り付けられ、且つ、外側ローラの軸に対して外側ローラに相対的に軸方向に可動に取り付けられる。
・内側リングと外側ローラとを連結するための手段は、ニードルのクラウンと、2つの支持リングとを有し、支持リングはそれぞれ、ニードルのクラウンの軸方向の両側部のうちの一方に設けられており、外側ローラに対してニードルを維持し且つ特に内側リングも維持する。
・外側ローラは、2つの溝を内側に有し、2つの支持リングはそれぞれ、2つの溝の1つに配置されている。
・外側ローラは、平坦な前表面を有し、この前表面は、外側ローラの軸に対して直角に設けられており、且つ、雌要素のベアリング表面に接触するように合わせられており、ベアリング表面はベアリング領域によって構成されており、ベアリング領域は横断プロファイルを有し、横断プロファイルでは、平坦な前表面との接触位置に対応して、径方向長手方向平面に対して略直交している又は凸である。
・各アームに関して、ベアリング領域は、径方向長手方向平面の両側に延在する2つのベアリング表面によって構成されており、2つのベアリング表面は、雌要素の、径方向外向きに凹んだ部分によって離されている。
・各アームに関して、ベアリング領域は、径方向長手方向平面の両側に延在する単一のベアリング表面によって構成されており、ベアリング表面は、雌要素の、径方向外向きに凹んだ部分によって、動作上関連する各トラックから離されている。
【0010】
本発明は、以下の説明を読み且つ添付の図面を参照することによって、よりよく理解されるであろう。ただし、以下の説明は、単に、例として提供されたものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第一実施形態におけるトリポード型等速ジョイントの概略部分断面図である。
【
図2】
図1と同様の図であり、動作中のトリポード型ジョイントの状態を示す。
【
図3】
図1と同様の図であり、動作中のトリポード型ジョイントの状態を示す。
【
図4】本発明の第二実施形態におけるトリポード型等速ジョイントの、
図1と同様の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、トリポード型等速ジョイント2の一部を示したものである。このトリポード型等速ジョイント2は、自動車のトランスミッションシステム用に設計されており、基本的に以下の部品を備える。
【0013】
(1)雄要素又はトリポード4。この雄要素又はトリポード4は、雄要素中心軸X-X(
図1の平面に対して直交している)に関して三軸対称である。また、この雄要素又はトリポード4は、ハブ6と、120°の角度で離れた3つの径方向のアーム8(このうちの1つだけが示してある)とを有する。各アーム8の端部は、物理的に一体の球形ベアリング領域10を形成しており、このベアリング領域10は、対応するアーム8の軸Y-Yを中心とする。この雄要素4は、第一回転シャフト12に固定されている。
【0014】
(2)雌要素又はチューリップ16。この雌要素又はチューリップ16は、雌要素中心軸X′-X′に関して三軸対称であり、雌要素中心軸X′-X′は、図示されたジョイントの合わせ位置で、雄要素中心軸X-Xと一致している。このチューリップは、各アーム8の両側に2つの対向するトラック18、20を有し、このトラック18と20との間に延在するアーチ22を有する。アーチ22は、ベアリング領域24を形成する。雌要素16は、第二回転シャフト(不図示)と一体となっている。
【0015】
特段の記載のない限り、「径方向」及び「軸方向」という用語は、以下においては、雌要素16の軸X′-X′との関係で使用される。
【0016】
(3)機械式トランスミッションユニット26。この機械式トランスミッションユニット26は、各アーム8ごとに外側ローラ28を有し、且つ、旋回軸Z-Zを有する。旋回軸Z-Zは、
図1に示される位置で、対応するアーム8の軸Y-Yと一致している。外側ローラ28は、対応するトラック18、20の一方又は他方の上を転動するように合わせられる。
【0017】
三つの機械式トランスミッションユニット26は同一であり、また、雄要素4と雌要素16とが三軸対称であるので、
図1全体には、ジョイント2の部分のみを描いて説明する。
【0018】
トラック18、20は、雌要素16の径方向長手方向平面P(
図1の平面に対して直交している)に対して対称である。
【0019】
トラック18、20はそれぞれ、雌要素中央平面Q-Q(平面Pに対して直交し、軸X′-X′に平行である)の両側に延在する。
【0020】
トラック18、20それぞれの断面プロファイル、すなわち軸X′-X′を横断する平面(
図1の平面等)で見た断面プロファイルは、互いにオフセットされた半径中心CR1、CR2を有する2つの円弧CAを有する。したがって、断面プロファイルは、ゴシック型形状又はオジーブ型断面形状を有する。断面プロファイルは、すなわちゴシック型形状は、2つの円弧CAが互いに繋がる1つの頂点APXを有する。頂点APXは、平面Q-Qと一致することが有利であり、各円弧CAは、雌要素中央平面Q-Qの一方側に延在する。
【0021】
トラック18、20のうちの1つに関連する円弧の半径中心CR1、CR2は、それぞれ、雌要素中央平面Q-Qの、対応する円弧が設けられた側とは反対の側に設けられる。
【0022】
示されていない変形例では、トラック18、20それぞれの断面プロファイル、すなわち軸X′-X′を横断する平面(
図1の平面等)で見た断面プロファイルは、雌要素中央平面Q-Q上に延在する単一の円弧を1つ有する。
【0023】
機械式トランスミッションユニット26は、内側リング30と、連結手段32とを有する。内側リング30は、略円筒形の旋回軸Z-Zを有し、外側ローラ28の内側に設けられている。連結手段32は、内側リング30と外側ローラ28とを連結するためのものである。
【0024】
これらの連結手段32は、ニードルクラウン34を有し、このニードルクラウン34は、内側リング30の(軸Z-Zに関して)径方向外側にある円筒形表面36と、外側ローラ28の(軸Z-Zに関して)径方向内側にある円筒形表面38との間に設けられている。これらの連結手段32は、環状の支持リング40、42を2つさらに有し、この支持リング40、42は、(軸Z-Zに関して)リング30及びニードルクラウン34の軸方向両側部に設けられている。支持リングの1つ又は両方が閉リングであることが好ましい。あるいは、支持リングの1つ又は両方が横方向スリットリングであってもよい。横方向スリットは、ローラ28にリングが取り付けられた状態ではほぼ閉じられている。
【0025】
各支持リング40、42の周辺部は、表面38に組み込まれた環状の溝44、46に収容される。リング40及び42は、その間に、ニードルクラウン34と内側リング30とを保持しており、軸Z-Zに沿って僅かな遊びを伴っている。リング30の径方向高さは、ローラ28の径方向高さよりも小さい。
【0026】
したがって、連結手段32は、軸Z-Zの周りで、ローラ28と内側リング30との相対的枢動を可能にし、且つ、軸Z-Zに沿って、ローラ28と内側リング30の制限された相対的並進を可能にする。
【0027】
内側リング30は、軸Z-Zに関して径方向内側に、略円筒形の表面50を有し、この表面50がアーム8を受け入れるための口を定める。アーム8の球形ベアリング領域10及び内側リング30の表面50は、軸Y-Yの周りで、リング30とアーム8との間の押し込み及び摺動運動を可能にする。
【0028】
外側ローラ28は、軸Z-Zの径方向外方に設けられた、周囲の転動表面52を備える。このローラ28は、平坦な前表面54及び後表面56も備える。
【0029】
転動表面52は、外側ローラ28の中央平面Q′-Q′の両側に、軸Z-Zに沿って延在する。平面Q′-Q′はこの軸Z-Zに対して直交しており、
図1に描かれた位置において平面Q-Qと実質的に一致する。トラック18及び20は、ローラ28と雌要素との間のさらなる接触点(下記参照)と協働して、ローラ28の中央平面Q′-Q′を平面Pに対して直交するように実質的に維持する。
【0030】
転動表面52は、一部球形形状を有する。したがって、軸Z-Zを含む平面に沿ってとったその横断プロファイルは円形である。表面52の球形形状を定める円の中心CCは、この場合には中心軸Z-Z上に設けられる。したがって、転動表面は球形の一部である形状を有する。
【0031】
あるいは、転動表面52は、厳密には一部球形形状を有さず、一部円環形形状(すなわち円環の中心軸に対して垂直に延在する平行な2つの平面によって切断された部分円環である形状)を有する。
【0032】
転動表面52及びトラック18、20の形状に起因して、各トラック18、20と転動表面52とは、径方向において互いに離れた第一及び第二接触点(Z1、Z2)で、互いに接触することができる。転動表面52及びトラック18、20上における、外側ローラ28との接触点Z1及びZ2の間では、外側ローラ28と転動表面52とは接触しない。現実には、負荷があるため、接触点Z1、Z2での接触は、幾何学的点ではなく、楕円形接触表面(ヘルツ接触)である。この場合、接触点は楕円形接触表面の幾何学的中心である。
【0033】
第一及び第二接触点Z1、Z2における、トラック18、20及び転動表面52の接平面は、径方向長手方向平面Pに対して傾いているか又は斜めである。
【0034】
各トラック18、20の断面プロファイルの2つの円弧の半径R1、R2は、転動表面52の一部球形形状の断面の半径よりも大きい。
【0035】
あるいは、各トラック18、20の断面プロファイルが中央平面Q′-Q′上に延在する1つの単一の円弧を有する場合は、この円弧の半径は、転動表面52の一部球形形状の断面の半径よりも大きい。
【0036】
ベアリング領域24は、2つのベアリング表面60、62からなり、これらのベアリング表面60、62は、横断プロファイルが直線的又は凸であり、且つ、径方向長手方向平面Pに対して直交する。ベアリング領域24は、トランスミッションユニット26に対して径方向外方に設けられている。トラック18、20の横断プロファイルとベアリング表面60、62の横断プロファイルとは、その間に90°以上の角度をなす。ベアリング表面は、外側ローラが径方向外方に変位するのを防ぐ。ベアリング表面60、62とトラック18、20とは、雌要素16の湾曲し凹んだ断面を持つ部分によって繋がっている。2つのベアリング表面60、62は、径方向外向きに凹んだ部分によって、互いから離されている。したがって、硬化する必要があるエリアは小さい。
【0037】
さらに、外側ローラ28は、遠位制動表面64を有し、この遠位制動表面64は、転動表面52に隣接し且つ外側ローラの中心軸に対して斜めである。
【0038】
各トラック18、20は、遠位レール表面66をさらに有する。
【0039】
遠位制動表面64と遠位レール表面66は、外側ローラ28がトラック18、20の上を転動しているときに、協働して、トラック18、20に対して外側ローラ28が雌要素中心軸(X′-X′)に平行な軸周りに枢動するのを制限するように合わされている。
【0040】
あるいは、制動表面64と転動表面52との間であって且つトラック18、20とレール表面66との間に設けられた、小さな湾曲部分の間で接触が生じうる。
【0041】
遠位レール表面66は、ベアリング領域24に隣接して設けられている。ローラが傾斜しているときにローラとの接触を避けるために、遠位レール表面66とベアリング領域24との間にも径方向に凹んだ部分が存在する。
【0042】
図1~3の実施形態では、遠位制動表面64は、平面を有するか又は(軸Z-Zを含む平面内において)真っ直ぐな断面を有し、部分円錐の形状を有する。あるいは、遠位制動表面は凸断面を有し、例えば部分円環の形状であってもよい。
図1の実施形態では、遠位レール表面66は、平面を有するか又は(軸X′-X′に対して垂直な平面内において)真っ直ぐな断面を有する。したがって、遠位レール表面66は平面であり、軸X′-X′に平行に延在する。あるいは、遠位レール表面66は凸断面を有する。遠位制動表面と関連する遠位レール表面とは、断面において、1つの単一の接触点POC1を定める(
図3)。
【0043】
遠位レール表面66と長手方向径方向平面(P)、及び、遠位制動表面64と外側ローラの中心軸は、30°~60°の間、好ましくは40°~50°の間の角度α(アルファ)を定める。
【0044】
外側ローラ28は、近位制動表面70を有し、この近位制動表面70は、転動表面52に隣接し且つ外側ローラの中心軸に対して傾斜している。
【0045】
さらに、各トラック18、20は、近位レール表面72を有する。
【0046】
近位制動表面70と近位レール表面72は、外側ローラ28がトラック18、20上を転動しているときに、協働して、トラック18、20に対して外側ローラ28が雌要素中心軸X′-X′に平行な軸周りに枢動するのを制限するように合わされている。
【0047】
あるいは、制動表面70と転動表面52との間であって且つトラック18、20とレール表面72との間に設けられた、小さな湾曲部分の間で接触が生じうる。
【0048】
図1~3の実施形態では、近位制動表面70は、平面を有するか又は(軸Z-Zを含む平面内において)真っ直ぐな断面を有し、部分円錐の形状を有する。あるいは、近位制動表面は凸断面を有し、例えば部分円環の形状であってもよい。
図1の実施形態では、近位レール表面72は、平面を有するか又は(軸X′-X′に対して垂直な平面内において)真っ直ぐな断面を有する。したがって近位レール表面72は平面であり、軸X′-X′に平行に延在する。あるいは、近位レール表面72は凸断面を有する。近位制動表面と関連する近位レール表面とは、断面において、1つの単一の接触点POC2を定める(
図2を参照)。
【0049】
近位レール表面72と長手方向径方向平面(P)、及び、近位制動表面70と外側ローラの中心軸は、30°~60°の間、好ましくは40°~50°の間の角度β(ベータ、
図3を参照)を定める。
【0050】
「近位」及び「遠位」という語は、中心軸X-X又はX′-X′に関して使用され、「遠位」という語は中心軸から離れた位置を指し、「近位」は中心軸に近い位置を指す。
【0051】
トラック18、20両方の近位制動表面70及び近位レール表面72は、雌要素に対する外側ローラ28の近位変位を制限するように合わせられ、すなわち軸X′-X′に対して径方向内方の変位を制限するように合わせられる。
【0052】
平坦な前表面54は、環状形状であり、外側ローラの軸Z-Zに対して垂直に延在しており、ベアリング領域によって構成されているベアリング表面60、62と接触するように合わせられている。
【0053】
ジョイント1の動作時には、トラック18又は20の1つと転動表面52との間の接触は、基本的に二点接触となる。したがって、
図1のトラック18が示すように、径方向に離れ且つ平面Q′-Q′の両側にある2つの接触点Z1及びZ2が存在することになる。2つの接触点Z1及びZ2は、ローラ28が雌要素16と接触しない非接触部分によって、互いに径方向に離間している。
【0054】
動作中は、外側ローラ28の遠位制動表面64も、転動表面52がその時点で接触している(すなわち転動側の)トラック18又は20の遠位レール表面66と(点POC1で)接触し、軸X′-X′に平行な軸周りで且つ外向きの外側ローラの回転(
図1~3において時計回り、
図3参照)を制限する。
【0055】
同様に、動作中は、外側ローラ28の近位制動表面70も、転動表面52がその時点で接触している(すなわち転動側の)トラック18又は20の近位レール表面72と(点POC2で)接触し、軸X′-X′に平行な軸周りで且つ内向きの外側ローラの回転(
図1~3で反時計回り、
図2参照)を制限する。
【0056】
これらの構成のいずれにおいても、ローラ28は、反対側のトラック20及び18又はその近位又は遠位レールと接触せず、すなわちローラがその時点でその上を転動していないトラック又はレールと接触しない。これらの構成のいずれにおいても、ローラの転動表面の円環度が低い(例えば球形又は球形に近い)ことから、外側ローラ28は、トラック20及び18から同じ距離に位置する軸方向軸の周りを回転することになる。外側ローラ28は、反対側のトラック20及び18又はその近位又は遠位レールと接触せず、すなわちローラがその時点でその上を転動していないトラック又はレールと接触しない。その結果、転動摩擦が低減される。
【0057】
平坦な表面54は、ベアリング表面60、62と接触し、それにより、中心軸X-X又はX’‐Xに垂直であって且つアーム8の軸に垂直な軸の周りの外側ローラの回転(ピッチ回転)を、阻止又は制限する。
【0058】
本ジョイントの開示された構成により、動作中のジョイントにほとんど又は全く振動が発生しなくなる。本ジョイントは製造し易く、経済的で耐久性がある。
【0059】
図4は、本発明による等速ジョイントの第二実施形態を示しており、
図1に描かれた等速ジョイントとは以下の点で異なる。
【0060】
このジョイントの雌要素16は、長手方向径方向平面Pからその両側に延在する単一のベアリング表面62から構成されるベアリング領域24を有する。
【0061】
外側ローラ28の転動表面52は、0.8~1の範囲の円環度T=RT2/RT1を有する。寸法RT1は、転動表面52の半径であり、これは、中央平面Q′-Q′でとった中心軸Z-Zと転動表面52との間の距離である。寸法RT2は、中心軸Z-Zを含む平面でとった転動表面52の半径である。
【0062】
前述の実施形態では、内側リング30は、軸Y-Yに沿ってアーム8に対して摺動可能に取り付けられており、内側リング30とニードルクラウン34は、外側ローラ28の軸Z-Zに対して軸方向に固定されている。代わりの実施形態では、内側リング30は、軸Y-Yに沿ってアーム8上に軸方向に固定されて取り付けられるが、アーム8上で枢動可能であり、且つ、外側ローラの軸に沿って軸方向に摺動可能にニードルクラウン34に取り付けられている。内側リングは、アーム8の凸型球形形状と協働する凹型球形形状を有する。この場合、機械式トランスミッションユニットは、米国特許出願公開第2005/107168号の
図3及び4に記載され且つ開示されるとおりである。本実施形態の残りの特徴は、
図1~4の実施形態に関して上に開示したとおりである。
【国際調査報告】