(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-25
(54)【発明の名称】水溶性有益剤の送達を増強するための石鹸バー組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/36 20060101AFI20230118BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20230118BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20230118BHJP
A61K 8/67 20060101ALI20230118BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20230118BHJP
A61K 8/92 20060101ALI20230118BHJP
C11D 9/24 20060101ALI20230118BHJP
C11D 9/30 20060101ALI20230118BHJP
C11D 9/26 20060101ALI20230118BHJP
C11D 9/10 20060101ALI20230118BHJP
C11D 9/50 20060101ALI20230118BHJP
C11D 9/18 20060101ALI20230118BHJP
【FI】
A61K8/36
A61Q19/10
A61K8/19
A61K8/67
A61K8/81
A61K8/92
C11D9/24
C11D9/30
C11D9/26
C11D9/10
C11D9/50
C11D9/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022529346
(86)(22)【出願日】2020-11-19
(85)【翻訳文提出日】2022-06-20
(86)【国際出願番号】 EP2020082694
(87)【国際公開番号】W WO2021099471
(87)【国際公開日】2021-05-27
(32)【優先日】2019-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521042714
【氏名又は名称】ユニリーバー・アイピー・ホールディングス・ベスローテン・ヴェンノーツハップ
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100172683
【氏名又は名称】綾 聡平
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】アガークヘッド,アジート・マノハール
(72)【発明者】
【氏名】ヘギシュテ,スワプニル・ラビカント
(72)【発明者】
【氏名】イヤー,ビドゥラ
(72)【発明者】
【氏名】コーカール,ジャスミート・カウル
(72)【発明者】
【氏名】パルチュリ,ディヴィヤ
(72)【発明者】
【氏名】プラタープ,シャイレンダ
【テーマコード(参考)】
4C083
4H003
【Fターム(参考)】
4C083AB332
4C083AB341
4C083AB441
4C083AB442
4C083AC011
4C083AC012
4C083AC122
4C083AC242
4C083AC792
4C083AD021
4C083AD131
4C083AD132
4C083AD631
4C083CC23
4C083DD11
4C083DD21
4C083EE12
4C083FF01
4C083FF05
4C083FF06
4H003AB03
4H003AB15
4H003BA01
4H003EA19
4H003EA27
4H003EB02
4H003EB05
4H003EB08
4H003EB20
4H003EB28
4H003ED02
4H003FA34
(57)【要約】
本発明は、有益剤の所望の活性が洗浄後に長期間観察されるように、水溶性皮膚有益剤の送達を増強する石鹸バー組成物に関する。これは、有益剤を特定の粘土上に吸収させ/コーティングし、続いて、ワックスまたはワセリンから選択される疎水性材料によってさらにコーティングすることによって達成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)40~80%の石鹸;
(b)多孔質粘土粒子であって、10~50重量%の範囲の保水力を有し、25℃の水への少なくとも0.001重量%の溶解度を有する水溶性有益剤によってコーティングされ、且つ、ワックスまたはワセリンから選択される疎水性材料によってその上にさらにコーティングされた多孔質粘土粒子
を含む、水溶性有益剤の送達を増強するための石鹸バー組成物。
【請求項2】
前記水溶性有益剤が、抗微生物性カチオン性活性物質;水溶性ビタミンもしくはその誘導体;水溶性日焼け止め剤;αヒドロキシ酸もしくはβヒドロキシ酸;または水溶性アルカリ金属塩もしくは水溶性アルカリ土類金属塩のうちの少なくとも1つから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記抗微生物性カチオン性活性物質がポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(PDADMAC)を含み、
前記水溶性ビタミンがビタミンB3を含み、
前記αヒドロキシ酸が乳酸を含み、
前記水溶性アルカリ土類金属塩が塩化カルシウムを含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記有益剤が、前記粘土粒子の重量の1~20%含まれる、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記疎水性材料がワセリンである、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記粘土が、スメクタイト粘土、好ましくはカオリン、ベントナイトまたはチャイナクレーである、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記粘土粒子の重量の0.1~10%の疎水性材料を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記多孔質粘土粒子が、前記組成物の重量の1~25%含まれる、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物に使用するためのコーティングされた粘土粒子の製造方法であって、下記:
(a)前記多孔質粘土粒子を、前記水溶性有益剤の水溶液と混合する工程;
(b)前記多孔質粒子を乾燥させて、水分を実質的に含まないようにする工程;
(c)前記乾燥した多孔質粒子を、有機溶媒と前記疎水性材料との溶液混合物に混合する工程;
(d)前記粒子物質を前記溶液混合物から分離し、前記粒子物質を乾燥させて前記コーティングされた粒子を調製する工程
を含む、製造方法。
【請求項10】
前記有機溶媒が、ヘキサン、ヘプタン、オクタンまたは四塩化炭素から選択される、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
請求項1から8のいずれか一項に記載の石鹸組成物の溶液を用いて皮膚を洗浄した後、前記石鹸が実質的になくなるように水を用いて前記皮膚をすすぐ工程を含む、皮膚上に水溶性活性物質を送達する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性皮膚有益剤の送達を増強する石鹸バー組成物に関する。本発明は、さらに詳細には、身体の局所表面を洗浄するために使用されるが、有益剤の所望の活性が洗浄後に長時間観察されるように、水溶性活性物質、特にカチオン性活性物質を皮膚上に十分に送達することができる石鹸バーに関する。
【背景技術】
【0002】
人体の局所表面を洗浄するために使用される生成物は、クレンジング組成物を通して送達される。それらは、毛髪、顔、体または手を洗浄するために使用され得る。これらの組成物の大部分は、石鹸のように天然源から作製されるか、または合成起源であり得るアニオン性界面活性剤を含む。そのような組成物はまた、加湿、皮膚美白、抗老化、抗炎症、コンディショニングまたは抗微生物効果などのクレンジング以外の効果をもたらすために使用される。トリクロロカルバニリド、トリクロサン、クロロキシレノール、塩化ベンザルコニウムなどのような多くの抗微生物性活性物質も、そのようなクレンジング組成物に含まれている。カチオン電荷を有する活性物質は、抗微生物性活性物質として非常に効果的であると考えられている。アニオン系界面活性剤系におけるこのような活性物質の電荷中和のために、このような生成物にカチオン性活性物質を含めることは課題であった。水溶性活性物質は、一般にすすぎ水によって洗い流される傾向があるため、そのような組成物を通して十分な量の水溶性活性物質を確実に堆積させることも課題である。高い電荷密度を有するポリマーカチオン性活性物質のような化合物は、そのような系に組み込むことがさらに困難である。
【0003】
活性物質を皮膚に送達すると主張されている石鹸バーは、以前に開示されている。米国特許出願公開第2005003975号(P&G)では、規定された影響力のある適合性を有する香料組成物が開示されており、それらの香料組成物を含むパーソナルクレンジング組成物、特に石鹸バーが提供されている。好ましい態様では、香料組成物は、シャワー中などに水にさらされた際に芳香剤を放出するようにデンプンなどに封入される。
【0004】
米国特許出願公開第2005123574号(Unilever)は、皮膚および毛髪に同時に剥離およびマッサージを提供する崩壊性凝集体を含有するマッサージ用トイレットバー組成物を開示している。凝集体は、それらを親水性液体、疎水性液体またはそれらの組合せを用いて処理することによって作製される。この処理は、凝集体をさらに柔らかくするが、バーの製造中に崩壊させるほど柔らかくはしない。
【0005】
上記で引用した公開された技術は、活性物質を皮膚に送達すると主張する凝集体を開示しているが、それらは、洗浄作用が完了した後長時間にわたって所望の作用が確実に発揮される水溶性活性物質、特にカチオン性化合物を石鹸バーによって送達することができないことが見出されている。
【0006】
したがって、当技術分野では、多量のアニオン性界面活性剤を含むクレンジング組成物中の水溶性またはカチオン性活性物質の送達の増強を提供する必要性が存在する。本発明者らは、活性物質を多孔質粘土粒子内に含めるか、または活性物質を多孔質粘土粒子上にコーティングし、さらにその上にワセリンまたはワックスのような疎水性成分をコーティングすることによってこれを達成した。本発明者らはまた、驚くべきことに、本発明が、コーティングされた粘土粒子が石鹸バーのような固形クレンジング組成物に組み込まれ、送達が液体組成物に製剤化される場合ほど良好ではない場合に効果的であることを見出した。
【0007】
本発明の利点は、そのような水溶性有益剤が、製造および貯蔵中に相互作用し得る他の石鹸バー成分から分離された状態で保持されるが、石鹸バーがパーソナルウォッシング中に人によって使用される際に十分に高い量で利用可能になり、その際に確実に効果的に堆積することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005003975号
【特許文献2】米国特許出願公開第2005123574号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、水溶性皮膚有益剤の送達を増強するためのアニオン性界面活性剤を含む組成物を提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、そのようなウォッシュオフ石鹸バー組成物によるカチオン性抗微生物性活性物質の送達の増強を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様によれば、以下を含む水溶性有益剤の送達を増強するための石鹸バー組成物が提供される:
(a)40~80%の石鹸;
(b)多孔質粘土粒子であって、10~50重量%の範囲の保水力を有し、25℃の水への少なくとも0.001重量%の溶解度を有する水溶性有益剤によってコーティングされ、且つ、ワックスまたはワセリンから選択される疎水性材料によってその上にさらにコーティングされた多孔質粘土粒子。
【0012】
本発明の第2の態様は、以下の工程を含む、第1の態様の石鹸バー組成物に使用するためのコーティングされた粘土粒子の製造方法に関する:
(a)多孔質粘土粒子を、水溶性有益剤の水溶液と混合する工程;
(b)多孔質粒子を乾燥させて、水分を実質的に含まないようにする工程;
(c)乾燥した多孔質粒子を、有機溶媒と疎水性材料との溶液混合物に混合する工程;
(d)粒子物質を溶液混合物から分離し、粒子物質を乾燥させてコーティングされた粒子を調製する工程。
【0013】
本発明の第3の態様は、第1の態様の石鹸組成物の溶液を用いて皮膚を洗浄した後、石鹸が実質的になくなるように水を用いて皮膚をすすぐ工程を含む、皮膚上に水溶性活性物質を送達する方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
これらおよび他の態様、特徴および利点は、以下の詳細な説明および添付の特許請求の範囲を読むことにより、当業者に明らかになるであろう。疑義を避けるために、本発明の一態様の任意の特徴が、本発明の他の任意の態様において利用されてもよい。用語「含む(comprising)」は、「含む(including)」を意味することを意図しているが、必ずしも「からなる(consisting of)」または「から構成される(composed of)」を意味するものではない。言い換えれば、列挙された工程または選択肢は網羅的である必要はない。以下の説明に示される実施例は、本発明を明確にすることを意図しており、本発明をそれらの実施例自体に限定することを意図していないことに留意されたい。同様に、すべてのパーセンテージは、他に指示がない限り重量/重量%である。操作および比較実施例、または他に明示されている場合を除いて、材料の量または反応条件、材料および/または使用の物理的特性を示す本明細書および特許請求の範囲中のすべての数字が、用語「約」によって修飾されると理解されるべきである。「xからy」の形式で表される数値範囲は、xおよびyを含むと理解される。特定の特徴について複数の好ましい範囲が「xからy」の形式で記載されている場合、異なる端点を組み合わせるすべての範囲も企図されることが理解される。言い換えれば、いかなる数値範囲の指定においても、あらゆる特定の上限値はあらゆる特定の下限値を伴い得る。
【0015】
請求項が多項従属または重複なしに見出され得るという事実に関わりなく、本明細書に見出される本発明の開示は互いに多項従属しているため、特許請求の範囲に見出されるような実施形態をすべて包含するものと考えられるべきである。
【0016】
本発明の特定の態様(例えば、本発明の組成物)に関して特徴が開示されている場合、そのような開示は、必要な変更を加えて、本発明の任意の他の態様(例えば、本発明に関する方法またはプロセス)にも適用されると考えられるべきである。
【0017】
石鹸バー組成物とは、成形された固体の形態であり、身体の局所表面を洗浄するために使用され、石鹸(脂肪酸の塩)を主に含む組成物を意味する。そのような組成物は、水によって溶液/分散液に希釈され、一般に、数秒から最大数分の期間にわたって、身体の所望の局所表面に塗布される。その後、組成物は、表面が石鹸が実質的になくなるように、一般に水を用いてすすぎ落とされる。そのような組成物には、外観、クレンジング、臭気制御または一般的な美観も改善するために人体に塗布される任意の製品が含まれる。本発明の石鹸バー組成物は、(シャンプーまたはコンディショナーのように)毛髪を洗浄するために使用されてもよいか、またはハンドウォッシュ、洗顔料もしくはボディウォッシュに使用されてもよい。本発明の石鹸バー組成物は、さらに好ましくは、手、もしくは人体の他の部分を消毒するために、またはその上に他の皮膚有益剤を送達する/堆積させるために使用される。
【0018】
本発明は、水溶性皮膚有益剤の送達の増強を確実にするように製剤化される石鹸バー組成物に関する。石鹸バー組成物は、40~80%の石鹸と、コーティングされた多孔質粘土粒子とを含む。多孔質粘土粒子は、10~50重量%の範囲の保水力を有するように選択される。これは、100gの粘土粒子ごとに、過度に湿っているように見えることなく10~50gの水を吸収または保持することができる、すなわち、水が粘土の細孔に主に吸収されることを意味する。言い換えれば、水を吸収した後であっても自由流動しているように見える。粘土粒子は、25℃の水への少なくとも0.001重量%の溶解度を有する水溶性有益剤によってコーティングされる。水溶性有益剤は、必ずしも粘土粒子の外面にコーティングされているだけではない。「によってコーティングされた」とは、水溶性有益剤が粘土粒子の細孔に部分的に吸収され得、残りがコーティングされて粘土粒子の外面に少なくとも部分的に層を形成することを意味する。水溶性有益剤によってそのようにコーティングされた粘土粒子は、ワックスまたはワセリンから選択される疎水性材料によってその上にさらにコーティングされる。
【0019】
石鹸は、好ましくはC8~C24石鹸、さらに好ましくはC10~C20石鹸、最も好ましくはC12~C18石鹸である。石鹸のカチオンは、アルカリ金属、アルカリ土類金属またはアンモニウムであり得る。好ましくは、石鹸のカチオンは、ナトリウム、カリウムまたはアンモニウムから選択される。さらに好ましくは、石鹸のカチオンは、ナトリウムまたはカリウム、最も好ましくはナトリウムである。
【0020】
典型的な脂肪酸ブレンドは、石鹸の重量の5~30%のココナッツ脂肪酸および70~95%の獣脂脂肪酸からなる。例えば、落花生、大豆、獣脂、パーム、パーム核などの他の好適な油/脂肪に由来する脂肪酸もまた、他の所望の割合で使用され得る。
【0021】
石鹸は、石鹸バー組成物の重量の40~80%、好ましくは50~75%の量で存在する。
【0022】
25℃で0.001重量%の水溶解度基準を満たす任意の水溶性皮膚有益剤が使用され得るが、抗微生物性カチオン性活性物質;水溶性ビタミンもしくはその誘導体;水溶性日焼け止め剤;αヒドロキシ酸もしくはβヒドロキシ酸;または水溶性アルカリ金属塩もしくは水溶性アルカリ土類金属塩のうちの1つ以上が好ましい。上記活性物質のうち、さらに好ましいものは、抗微生物性カチオン性活性物質;水溶性ビタミンもしくはその誘導体;または水溶性日焼け止め剤のうちの1つ以上である。最も好ましい活性物質は、抗微生物性ポリマーカチオン性活性物質である。
【0023】
エマルジョン組成物に好ましく含まれ得る抗微生物性ポリマーカチオン性活性物質は、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(PDADMAC)またはキトサンのうちの1つ以上、好ましくはPDADMACである。PDADMACは、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド(DADMAC)のホモポリマーである。本発明で使用するための好ましいPDADMAC分子量は、2,00,000~20,00,000、好ましくは4,00,000~6,00,000の範囲である。それは、好ましくは2meq/gmを超える高い電荷密度を有し、10,000~20,000mPasの範囲の粘度を有するカチオン性ポリマーである。ポリマーは、商品名Merquat-100(INCI:Polyquaternium-6)の下にLubrizol Inc.から入手可能である。含まれ得る水溶性ビタミンまたはその誘導体は、ビタミンC、E、B3、B5またはN-メチルニコチンアミドのうちの1つ以上、さらに好ましくはビタミンB3から選択される。含まれ得る水溶性日焼け止め剤は、2-フェニルベンズイミダゾール-5-スルホン酸(Enulizoleとして販売されている)またはサリチル酸エチルヘキシル(Neoheliopan OSとして販売されている)のうちの1つ以上から選択される。含まれ得るαヒドロキシ酸は、乳酸、グリコール酸またはサリチル酸のうちの1つ以上、好ましくは乳酸から選択される。水溶性有益剤は、粘土粒子の重量の1~20%の範囲で含まれることが好ましい。
【0024】
水溶性皮膚有益剤は、多孔質粘土粒子内に含まれるおよび/または多孔質粘土粒子上にコーティングされる。粘土は、好ましくはスメクタイトクラスの粘土である。好ましい粘土は、カオリン、ベントナイトまたはチャイナクレーである。
【0025】
粘土は、細かく粉砕された天然岩または土壌材料である。物理的性質および化学的性質に基づいて、これらの粘土は、多くの粘土鉱物群にさらに分類される。例えば、カオリナイトの構造は、八面体アルミナシートと交互になった四面体シリカシートである。構造単位内の電荷は平衡している。カオリナイト基に共通する分子式は、Al2Si2O5(OH)4である。
【0026】
ベントナイトは、水と揺変性ゲルを形成する能力と、大量の水を吸収するのに伴って体積がその乾燥バルクの12~15倍も増加する能力と、高いカチオン交換容量とを有する。これらのカチオンは、それらのゆるい結合のために交換可能であり、破壊された結合(交換容量の約20%)とともに、モンモリロナイトにかなり高い(約100meq/100g)カチオン交換容量を与え、これは粒径の影響をほとんど受けない。
【0027】
これらの粘土は、English India Clays(EICL)、Clariant、Ashapura Minehem Ltd.、Shree Ram Mineralsなどの企業から調達することができる。
【0028】
多孔質粘土粒子は、石鹸バー組成物の重量の1~25%、好ましくは2~10%の範囲で含まれる。
【0029】
次いで、水溶性皮膚有益剤を組み込んだ/水溶性皮膚有益剤によってコーティングされた多孔質粘土粒子は、ワックスまたはワセリン、好ましくはワセリンから選択される疎水性材料によってさらにコーティングされる。
【0030】
以下のタイプのワックス、すなわち、微結晶性ワックス、蜜蝋またはカルナウバのいずれかが使用され得る。微結晶性ワックスは、はるかに微細であまり区別されない結晶と、比較的高い融点および粘度とを有するという点でパラフィンワックスとは異なる石油由来プラスチック材料からなる。融点範囲は、パラフィンワックスよりも高く、市販グレードでは63°~93℃に及ぶ。化学的には、微結晶性ワックスは、飽和脂肪族炭化水素からなる。
【0031】
蜜蝋は、ミツバチ(Apis)属のミツバチによって産生される天然のワックスである。蜜蝋は、いくつかの化学化合物の混合物から形成される強靭なワックスである。蜜蝋の近似化学式は、C15H31COOC30H61である。その主成分は、長鎖(30~32個の炭素)脂肪族アルコールのパルミチン酸エステル、パルミトレイン酸エステルおよびオレイン酸エステルである。蜜蝋は、62~64℃の比較的低い融点範囲を有する。
【0032】
ブラジル蝋またはパーム蝋とも呼ばれるカルナウバは、ヤシの葉のワックスである。カルナウバは、大部分が脂肪族エステル、4-ヒドロキシケイ皮酸のジエステル、ω-ヒドロキシカルボン酸および脂肪アルコールからなる。この化合物は、C26~C30の範囲の酸およびアルコールから主に誘導される。カルナウバワックスの特徴は、ジエステルおよびメトキシケイ皮酸の含有量が高いことである。融点は、一般に82~86℃の範囲である。
【0033】
黄色ワセリンとしても知られているワセリンは、25以上の炭素鎖長を有する、石油から得られる半固体炭化水素の精製混合物である。黄色ワセリンは保湿性に優れ、融点が約37℃である。黄色ワセリンは、無色または淡黄色(高度に蒸留されていない場合)であり、半透明であり、純粋な場合は味および匂いがない。黄色ワセリンは、水に不溶性/不混和性である。ワセリンは、一般に黄色ワセリンとしても知られている。本発明で使用するための好ましいワセリンは、45~75℃の範囲のスリップ融点を有するものである。疎水相はまた、脂肪酸、トリグリセリドまたはシリコーンなどの比較的少量の他の疎水性材料を含んでもよい。
【0034】
疎水性材料は、粘土粒子の重量の0.1~10%の範囲で含まれる。
【0035】
他のアニオン性界面活性剤が、本発明の石鹸バー組成物に含まれていてもよい。他のアニオン性界面活性剤は、好ましくは、アルキルエーテルサルフェート、第一級アルキルサルフェート、第二級アルキルスルホネート、アルキルベンゼンスルホネートまたはエトキシル化アルキルサルフェートから選択される。本発明の石鹸バー組成物に対して好ましい、石鹸以外のアニオン性界面活性剤は、アルキルエーテルサルフェート、好ましくは天然源もしくは合成源のいずれかに由来する、1~3個のエチレンオキシド基を有するもの、および/またはスルホン酸である。ナトリウムラウリルエーテルサルフェートが特に好ましい。アルキルポリグルコシド、好ましくはC6~C16の炭素鎖長を有するものも組成物中に存在し得る。好ましい組成物は、香料、顔料、防腐剤、軟化剤、日焼け止め剤、ゲル化剤および増粘剤などの他の公知の成分を含み得る。これらの成分の選択は、組成物の形態に大きく依存する。水が好ましい担体である。水は、存在する場合、好ましくは組成物の重量の少なくとも1%、さらに好ましくは少なくとも2%、さらになお好ましくは少なくとも5%の範囲で存在する。水が担体である場合、好ましいクレンジング組成物は、10~40重量%、さらに好ましくは12~25重量%の水を含む。
【0036】
石鹸バー組成物は、好ましくは、従来の粉砕および圧出による石鹸製造プロセスを使用して調製される。粉砕および圧出経路では、石鹸は、高い含水量を有するように調製され、次いで、水分含有量を減少させ、石鹸を冷却するように噴霧乾燥され、その後に他の成分が加えられ、次いで、石鹸は圧出機を通して押し出され、切断および型押しされて最終的な石鹸バーを調製してもよい。粉砕および圧出された石鹸は、一般に、60~80重量パーセントの範囲の高いTFMを有する。あるいは、石鹸は、プラウシェアミキサー内で比較的乾式の混合方法によって調製される。その後、従来の方法で押し出されてもよい。粉砕および圧出された石鹸バーは、押出石鹸バーとしても知られている。それらは、非常に多くの異なるタイプの石鹸から構成される。ほとんどの石鹸組成物は、水不溶性および水溶性石鹸の両方を含む。それらの構造は、一般に、レンガおよびモルタル型構造を特徴とする。不溶性石鹸(レンガと呼ばれる)は、通常、比較的高鎖のC16およびC18石鹸(パルミテートおよびステアレート石鹸)からなる。それらは、一般に、構造化効果を提供するために石鹸バーに含まれ、すなわち、バーになる形状をもたらす。石鹸バーはまた、短鎖脂肪酸(一般にC8~C12またはさらには最大C14石鹸)と組み合わせた一般に不飽和C18:1および18:2ナトリウム石鹸(オレエート石鹸)である水溶性石鹸(モルタルとして作用する)からなる。水溶性石鹸は、一般に洗浄に役立つ。
【0037】
本発明の石鹸バー組成物では、本発明の石鹸バー組成物に含めるためのコーティングされた粘土粒子は、一般に以下に記載されるプロセスによって調製される。
【0038】
有益剤の水溶液を乾燥多孔質粘土媒体にゆっくりと加え、数分間、例えば、約5分~1時間混合する。次いで、有益剤によってコーティングされた粒子をオーブン内で乾燥させて、自由流動するように、水分を低レベル、例えば、約1~5重量%の水分含有量に実質的に下げる。このコーティング工程後に粒子凝集があってもよい。凝集した粒子は、粒子粉砕機内で所望の微粉末サイズに分解される。得られたコーティングされた粉末は、疎水性材料が可溶化された、所望の有機溶媒の溶液混合物中で混合される。溶媒は、溶媒回収抽出プロセスを介して粉末溶液から回収され、コーティングされた粘土粒子は、自由流動状態まで乾燥される。
【0039】
本発明はまた、本発明の組成物を所望の皮膚表面に塗布する工程を含む、皮膚有益剤を皮膚に送達する方法に関する。これに続いて、指定された時間量の後に石鹸を表面から実質的に除去する。通常、人々は身体部分を洗浄するのに約10秒~2分を費やし、この時間枠内で活性物質の所望の堆積が起こると予測される。洗浄時間は、10秒~1分が好ましく、10秒~30秒がさらに好ましい。表面からの組成物の除去は、好適なワイプを使用して表面から組成物を拭き取ることによって達成されてもよい。あるいは、さらに好ましくは、石鹸が実質的になくなるように、水を用いて表面をすすぐことによって達成されてもよい。組成物は、通常、水を用いて組成物を希釈した後に所望の皮膚表面に塗布される。組成物は、希釈溶液の重量の1~50%、好ましくは2~20%の濃度に水を用いて希釈され得る。
【0040】
これより、以下の非限定的な例の助けを借りて本発明を説明する。
【0041】
[実施例]
以下の表-1に示すような石鹸バーを調製した:
実施例A:対照
実施例B:コーティングされていない粘土を含むバー
実施例C:粘土+PDADMACを含むバー
実施例1:(本発明による)ワセリンによってコーティングされたPDADMAC粘土を含むバー
【0042】
以下に示すプロセスを使用して、粘土をPDADMACによってコーティングし、次いで、ワセリンによってコーティングする:
ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリドの水溶液を乾燥多孔質粘土媒体(Supershine Plus Kaolin、EICL,India)に順次加え、約45分間混合する。次いで、有益剤によってコーティングされた粒子をオーブン内で乾燥させて、水分を約2%の低レベルに実質的に下げる。凝集した粒子はいずれも、粒子粉砕機内で所望の微粉末サイズに分解される。得られたコーティングされた粉末を、ワセリンが可溶化された、有機溶媒ヘキサンの溶液混合物中で混合する。溶媒をコーティングされた粘土粒子から分離し、自由流動状態まで乾燥させる。
【0043】
【0044】
洗浄の6時間後に、Vitro skin上の黄色ブドウ球菌(S.aureus)の再増殖について上記石鹸バーを試験した。
【0045】
これを測定するために使用した手順は以下の通りである:
a)5×5cm2の滅菌vitro skinをペトリ皿に取り、任意の処理の前に2mlの滅菌水を用いて洗浄した。10分後、水を除去し、skinを新たなペトリ皿内で乾燥させるために維持した。
b)skinを20分間乾燥させた。skinは過度に乾燥しておらず、試験領域に対して、湿ったハーフカットのバーを水平パターンで15秒間擦り付けた。15秒後、1mlの水をピペットを用いてVITRO-SKINに加え、Lスプレッダーを使用して広げて、試験領域を水平および垂直パターンで45秒間かけて覆った(これにより、石鹸の泡立ちをもたらす)。
c)1分後(45+15秒)、片手でvitro-skinを45度の角度で取り、もう一方の手で蒸留水(約20~30ml)をskin上に注いだ。skin上に石鹸跡が残ってはならない。次いで、skinを30分間乾燥させた。
d)30分間の乾燥後、100μlの106個の細菌接種物(黄色ブドウ球菌)を加え、L字形スプレッダーを使用して広げた。細菌をskin表面に十分に吸着させ、乾燥させた。
e)処理したskinをTSAプレート上に置き、プレートを37度のインキュベーターで6時間インキュベートした。6時間後、処理したskinを9mlのBPB中和剤チューブに直ちに加え、Griffinシェーカーを使用して3分間激しく振盪して、skinから細菌を除去した。10倍段階希釈を行った後、TSA培地にプレーティングした。
【0046】
残存するlog cfu/mlを以下の表-2に要約する:
【0047】
【0048】
上記の表-2のデータは、本発明による石鹸バー(実施例-1)が、同じ成分を有するが所望のコーティング構成を有しないように調製された石鹸バー(実施例BおよびC)よりも桁違いに効果的であることを示している。
【国際調査報告】